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棚架ユウ転生したら剣でした

小説【転剣】「転生したら剣でした 10」感想・ネタバレ

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転生したら剣でした 10の表紙画像(レビュー記事導入用) 棚架ユウ

転剣9レビュー
転剣まとめ
転剣11レビュー

Table of Contents

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 師匠の解析と改修
    2. 神級鍛冶師アリステア
    3. 剣王への転職
    4. 黄金獣牙勲章
    5. 獣人国の防衛戦
  6. 登場キャラクター
    1. 主人公一行
      1. 師匠
      2. フラン
      3. ウルシ
    2. メア一行
      1. メア(ネメア・ナラシンハ)
      2. クイナ
      3. リンド(暴竜剣・リンドヴルム)
    3. 神級鍛冶師
      1. アリステア
    4. 境界山脈・ダンジョン攻略者
      1. アースラース
    5. 獣人国・王宮関係者
      1. 獣王(リグディス・ナラシンハ)
      2. レイモンド
      3. グイーサ
      4. ミアノア
    6. 獣人国軍・各都市関係者
      1. バラベラム
      2. リグダルファ
      3. ゴドダルファ
      4. ロイス
      5. リュシアス・ローレンシア
      6. ルブーフ
      7. マルマーノ
    7. シュワルツカッツェ(黒猫族の村)
      1. サリューシャ
      2. 黒猫族の村長
      3. ショーン
      4. キアラ
    8. 邪神・ダンジョン勢力
      1. ゴブリン・ネクロマンサー
      2. イビル・ゴブリン
      3. 黒い巨人(イビルジャイアント・レッサーゾンビ)
    9. 集団
      1. 馬型ゴーレム
      2. 客間のゴーレム
      3. 料理用のゴーレム
      4. 避難民たち
      5. グリンゴートの兵士たち
      6. グリンゴートの騎士たち
      7. 冒険者ギルドの解体人たち
      8. 冒険者ギルドの職員たち
      9. 赤犬族の戦士たち
      10. 黒猫族の避難民たち
  7. 展開まとめ
    1. 第一章 神級鍛冶師の館
    2. 第二章 変化と進化 
    3. 第三章 新たな自分 
    4. 第四章 メアとフラン 
    5. 第五章 黒猫族の英雄
    6.  第六章 成長の証 
    7. エピローグ 
  8. 転生したら剣でした 一覧
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、意思を持つ魔剣「師匠」と、彼を装備する黒猫族の少女「フラン」の冒険を描く無機物転生ファンタジーの第10巻である。
ミューレリアとの激闘を経てボロボロになった師匠を修復するため、フランたちは神級鍛冶師アリステアの館へと向かう。
そこで長年謎に包まれていた師匠のルーツや、内部に宿る複数の存在の真実が徐々に解き明かされていく。
しかし平穏な時間も束の間、グリンゴートの町へ再びイビル・ゴブリンや死霊の軍勢が急襲を仕掛けたとの報せが届く。
フランとメアは快速艇の準備を待たず、大切な人々を守るために再び戦場へと急行する。かつてバルボラを滅ぼしかけた宿敵の成れの果てである「黒い巨人」との壮絶な死闘が描かれ、長きにわたる獣人国編がついにクライマックスを迎える。

■ 主要キャラクター

  • 師匠:インテリジェンス・ウェポンから「インテリジェンス・ユニーク・ウェポン」へと変化を遂げた魔剣である。アリステアの改修により処理能力の負荷が軽減され、攻撃性能やスキル特化としての運用能力が向上した。
  • フラン:黒猫族の少女で、王級職である「剣王」へと転職を果たす。仲間の黒猫族やグリンゴートを救うため、強大な反動を伴う固有スキル「剣神化」を発動して死霊巨人に立ち向かう。
  • メア(ネメア・ナラシンハ):獣王リグディスの長女であり、「焔滅騎士」へと進化した王女である。神剣リンドヴルムと自身の白炎を融合させた「金火」の剣を振るい、巨人の障壁を突破する。
  • アリステア:世界に数人しか存在しない「神級鍛冶師」の一人である。師匠の本格的な修復と改修を執り行い、その刀身が失われた神剣「智慧剣ケルビム」を再利用したものである可能性を導き出す。
  • アースラース:神剣「大地剣ガイア」を所持するランクS冒険者である。フランへ実戦的な稽古をつけるとともに、目指すべき神剣の圧倒的な暴威を「神剣開放」によって実演してみせた。
  • クイナ:メアに仕える灰族の達人女中である。戦闘においては高い身体能力と幻像魔術を駆使して巨人の陽動役を引き受け、日常生活ではカレーパンを大層気に入る一面を見せる。
  • サリューシャ:シュワルツカッツェの黒猫族の少女である。フランやキアラに強く憧れて槍から剣へと持ち替え、自力で火魔術「ファイア・アロー」を発動させて黒ゴブリンを討ち取る初陣を飾った。
  • リュシアス・ローレンシア:宮廷魔術師であり、邪術師リンフォードの実の息子である。父の悪逆の歴史に苦しみ、自らの手で引導を渡すため追っていたが、フランから父の最期を聞かされて涙を流しながら深く感謝した。
  • 獣王(リグディス・ナラシンハ):獣人国の王であり、メアの父親である。快速艇にてグレイシールへ帰還し、フランが「剣王」に至ったことを見抜いて手合わせ(力量確認)を交わした。
  • ウルシ:フランの従魔であるダークネスウルフ。グリンゴートの戦いでは黒猫族が避難する宿の護衛を任され、式典では「特別功労従魔勲章」を授与される。

■ 物語の特徴

本作における最大の見どころは、主人公である「師匠」自身の驚くべき正体と、その内部システムの詳細が次々と白日の下に晒される点である。
オレイカルコスの材質、削り取られた銘、アナウンスさん(智慧剣ケルビムの残滓)との繋がり、内部に封じられた「謎の魂(フェンリルの可能性)」など、これまで作品を覆っていた最大の謎に一つの答えが提示される。
さらに、王級職「剣王」の解放に伴う固有スキル「剣神化」の圧倒的な威力と、それ以上に過絶な「使用一秒につき耐久値が千以上減少する」という強烈な代償の描写は、戦闘シーンに過去最高の緊張感を与えている。
また、ただ守られるだけだった黒猫族のサリューシャが自立の魔術を放つシーンや、フランがキアラと同じ最高位の「黄金獣牙勲章」を授与され、国家から同胞の人権保障を勝ち取る結末は、種族の悲願へ向けた確かな前進を感じさせる。最後にはメアとの対等な友情を深め、涙を浮かべながらも最高の笑顔で次の大陸(ジルバード大陸)へと船出するクライマックスは、まさに一つの大きな章の完結にふさわしいカタルシスに満ちている。

書籍情報

転生したら剣でした 10
著者:棚架ユウ 氏
イラスト:るろお
出版社:マイクロマガジン社(GCノベルズ
発売日:2020年9月30日
ISBN:9784867160572

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あらすじ・内容

ゼロスリードを退けたフランは、師匠の記憶の手がかりとなる神級鍛冶師と出会う。師匠の身体に隠された謎とは
ミューレリアを倒し、神級鍛冶師アリステアに助けられた師匠とフラン。
師匠の謎を解き明かすために神級鍛冶師がいるとされる獣人国へ訪れていた二人は、早速師匠の解析を依頼するのだが……。
獣人国編、ついにクライマックス!

転生したら剣でした 10

感想

前巻の激戦でキアラは亡くなり、師匠もボロボロになってしまった。

自己修復すらまともにできない。

念話を使うだけでも痛みが走る。

キアラを失った直後だけに、

「このまま師匠まで失ったらどうなるんだ」

という不安がかなり大きかった。

そんなところへ現れたのが神級鍛冶師アリステアである。

今回の前半は、このアリステアが師匠を修復しながら、

「そもそも師匠とは何なのか?」

を解析していく話だった。

そして調べれば調べるほど、師匠の中身がとんでもないことになっていく。

師匠、ただのインテリジェンス・ウェポンじゃなかった

まず判明したのが、師匠の刀身が《オレイカルコス》で作られていることだった。

神級鍛冶師だけが生み出せる神の金属。

しかも加工技術から考えて、師匠の外側を作った人物も神級鍛冶師である可能性が高い。

さらにアリステアが《創剣の真理》で見せた一振りの神剣。

《智慧剣・ケルビム》。

鍔の形こそ違うものの、刀身、柄、装飾、寸法まで師匠と非常によく似ている。

そこで出てきたのが、

「師匠は《廃棄神剣》なのではないか」

という説だった。

廃棄神剣。

名前だけでもワクワクする。

ケルビムは、神域に存在する膨大な知識を閲覧するだけでなく、干渉して書き換えることまで可能だったという。

だが、人間が知ってはいけない領域まで覗けてしまう。

あまりにも危険だったため、神から廃棄を命じられた神剣の一つだった。

アリステアの推測では、そのケルビムから危険な能力を取り除き、残った器を再利用して現在の師匠が作られた可能性がある。

ただし、ここはまだ確定ではない。

ケルビムの試作品や姉妹品だった可能性も残っている。

それでも師匠とケルビムに何らかの繋がりがあることは、かなり濃厚に見える。

アナウンスさん、やっぱり重要人物だった

ここで思い出されるのが《アナウンスさん》である。

師匠がレベルアップした時などに聞こえてくる、あの機械的な声。

以前、一度だけ直接会話できた時に、

自分は神に存在を許されず、製作者によって存在を消された残滓である。

そんな意味のことを話していた。

さらに《潜在能力解放》の際には神域へアクセスし、そこから情報を取得して新たなスキルまで構築している。

……これ、ケルビムの能力そのものでは?

アリステアも解析した結果、アナウンスさんがケルビムの残滓である可能性は高いと考える。

今まで何気なく聞いていたアナウンスさんが、実は廃棄された神剣の残された機能だったかもしれない。

ここはかなり面白かった。

ただ、その領域はすでに激しく損傷している。

アリステアでも完全に修復することはできない。

これ以上壊れないよう補強するのが精一杯だった。

師匠の中、いったい何人いるんだ?

さらにややこしくなる。

師匠の中には、ケルビムの残滓とは別に、

もう一つの魂

が存在していた。

たまに師匠へ話しかけてきた、少し柄の悪そうな男性。

おそらく、その声の正体がこの魂ではないかと考えられる。

しかも師匠が魔石を吸収した時、その力は直接師匠へ入っているわけではなかった。

まず謎の魂が魔石の力を吸収する。

それによって傷ついた魂が回復する。

そして回復した力の一部が師匠へ送られている。

さらにその間には、スキルや力を師匠でも扱える形へ変換する、

謎のシステム

まで組み込まれている。

自己進化ポイント。

ランクアップ。

スキル共有。

これらも、このシステムが管理しているらしい。

アリステアですら再現できず、

「作った奴は化け物」

と評するほど高度な仕組みである。

整理すると、

ケルビムの残滓である可能性が高いアナウンスさん。

魔石の力を吸収している謎の魂。

その力を師匠用に変換する謎のシステム。

元人間であり、現在の主人格になっている師匠。

……何だこの剣。

思っていた以上に混沌としている。

そりゃアリステアも解析に苦労するわ。

さらに最深部には「何か」が封印されている

そして一番不気味なのが、師匠のさらに奥である。

アリステアですら解析できない場所が存在していた。

しかも単に難しいのではない。

神級鍛冶師による解析まで想定して、意図的に中身を見せないようにしているらしい。

そこに何があるのかは分からない。

ただ師匠には以前、シードランで自分の奥底に封じられていた「どす黒い何か」が暴走しかけた経験がある。

今回の改修中にも、師匠は巨大な黒い存在を目撃している。

憤怒。

怨恨。

飢餓。

近付くだけで危険だと感じるほどの負の感情を放つ存在だった。

さらに、別に確認された謎の魂について、師匠は《フェンリル》ではないかと考える。

狼を模した鍔。

最初に刺さっていた《魔狼の平原》。

フェンリルに関する伝承。

謎の魂が人間ではなく、高位の魔獣らしいこと。

確かに怪しい。

ただしアリステアも、

「可能性はある」

というところまでしか言っていない。

謎の魂がフェンリルなのか。

最深部の黒い存在は何なのか。

両者がどう関係しているのか。

ここはまだ大きな謎として残っている。

そんな魔剣の表人格が「師匠」なのが面白い

ここまで情報が出てきて、一番面白かったのは、

「じゃあ師匠って何なんだ?」

という疑問である。

アリステア自身も不思議に思っている。

謎の魂とシステムだけでも、剣としては成立するのではないか。

なら、なぜわざわざ異世界人だった師匠の魂を剣に入れ、主人格にしたのか。

理由は分からない。

しかしフランにとって答えは簡単だった。

師匠は必要。

師匠がいたら頼もしい。

結局、これなんだよな。

神剣の再利用品かもしれない。

中には正体不明の魂がいる。

意味不明なシステムもある。

さらに奥には、解析すらできない何かが封印されている。

設定だけ見ると、とんでもなく恐ろしい魔剣である。

なのに表で喋っているのは、

カレーを作って、

フランの成長を喜んで、

危険なら真っ先にフランを守ろうとする、

いつもの師匠である。

このギャップがすごく好きだった。

修復された二人は《剣身一体》へ

アリステアによる修復と改修には五日間もかかる。

その間、フランはほとんど眠らずに師匠を見守り続けていた。

修復された師匠が目覚めた時、フランが抱きついて泣く場面も印象的だった。

キアラを失ったばかりである。

その直後に師匠まで壊れかけた。

フランがどれだけ怖かったのかを考えると、この涙もよく分かる。

そして改修された師匠とフランが、互いにさらに強くなることを誓った時、

二人の契約は、

《剣の使い手》

から、

《剣身一体》

へ変化する。

師匠がどんな存在なのかという謎は、むしろ増えた。

それでも、

「師匠はフランの剣である」

という部分だけは、以前よりはっきりしたように感じた。

読後の感想

『転生したら剣でした 10』は、師匠の正体について一気に情報が増える一冊だった。

神級鍛冶師が作ったオレイカルコスの刀身。

失われた智慧剣ケルビムとの繋がり。

アナウンスさん。

謎の魂。

自己進化を管理する謎のシステム。

解析不能の最深部。

フェンリルの可能性。

分かったことは多い。

でも、分かったせいで余計に分からなくなった。

それが面白い。

最初は、

「転生したら剣になっていた」

というだけだった師匠。

しかし今では、

「なんでこんな物騒で複雑な剣の中に、普通の日本人の魂が主人格として入っているんだ?」

という最大の謎が生まれている。

そして謎だらけだからこそ、フランが迷わず、

「師匠は必要」

と言ってくれるのがよかった。

正体が何であろうと、フランにとって師匠は師匠なのである。

獣人国での戦いもひとまず終わり、キアラとの別れを経て、メアとも再会を約束して旅立つ。

いろいろなものを失った獣人国編だった。

それでも師匠は修復され、フランとの繋がりは《剣身一体》へと深まった。

次の旅では、強くなった二人がどんな戦いを見せるのか。

そして何より、師匠の中に眠るものの正体がいつ明らかになるのか。

一気にシリーズの根幹へ近付いたように感じる第10巻だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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転剣9レビュー
転剣まとめ
転剣11レビュー

考察・解説

師匠の解析と改修

師匠の解析と改修の全貌と内部構造の真実

『転生したら剣でした 10』において、神級鍛冶師アリステアによって執り行われた「師匠の解析と改修」について、解析と改修に至る背景、アリステアの解析によって明かされた「師匠の真実」、改修プロセスの詳細、改修後の劇的な変化と進化、および総括の各点から解説する。

解析と改修に至る背景

ミューレリアとの死闘において、アースラースから奪った固有スキル「狂鬼化」の衝動と潜在能力解放を限界を超えて行使した代償として、師匠は機能停止状態に陥った。

・師匠は全身に無数のヒビが入り、自己修復も機能しない状態となった。
・この消滅寸前の危機に対し、神級鍛冶師アリステアが応急処置を施した。
・外界の魔力を遮断するために壁や天井にミスリルがメッキされた自らの工房へ師匠を運び、本格的な解析と修復が開始された。

アリステアの解析によって明かされた「師匠の真実」

アリステアが様々な鑑定系スキルや解析道具を用いた結果、師匠の極めて複雑かつ異質な構造が明らかになった。

・外身の真実:神の金属「オレイカルコス」で完璧に加工されているが、刻まれているはずの銘が削り取られていた。固有スキル「創剣の真理」で表示させた廃棄神剣「智慧剣ケルビム」の図面と、鍔の意匠を除き柄の形、寸法、刀身の装飾が完全に一致していた。智慧剣ケルビムの機能を除去した器を再利用して作られた存在であると推測された。
・魂の正体:人造魂魄ではなく、元々は人間の魂を剣に封じられた存在であることが判明した。
・アナウンスさんの正体:情報の解析、演算、スキルの発動や管理を補助する領域であり、智慧剣ケルビムの残滓である可能性が高いと判断された。
・謎の魂と謎のシステム:魔石吸収の際、魔力やスキルは内部に封印された深く傷ついた「謎の魂(魔狼フェンリルと示唆)」へと流れ、その力が師匠へ分け与えられていた。さらに、それを変換して自己進化ポイントや装備者とのスキル共有を管理する高度な魔術プログラムが存在した。
・最深部の封印と痛みの原因:神級鍛冶師の解析すら拒む最深部にはどす黒い魔力を放つ存在が封印されていた。処理能力を超えた過剰なスキル処理の負荷が、人間時代の感覚をなぞった痛みとなって生じていた。

「改修」プロセスの詳細

元の状態に戻すだけでは限界を迎えるため、内部の不要なスキルを統合・削減して処理容量を確保する改修が実行された。

・外身の修復:オレイカルコスを糸状に加工した金属の綿を刀身に押し付け、魔法薬と魔力を流すことでオレイカルコスを刀身に吸収させ、自動修復を開始させた。
・5日間に及ぶ改修儀式と精神世界:アリステアが不眠不休で5日間魔力を注ぎ込み続けた。この間、師匠は意識が曖昧になる中で自身の精神世界の底に潜む黒い存在を目撃したが、フランへと繋がる青い光を意識することで接近を免れ、意識を失った。

改修後の劇的な「変化と進化」

目覚めた師匠は、痛みが完全に消失し、大幅なスペックの向上とシステムの再編を遂げていた。

・基本性能的大幅向上:種族が「インテリジェンス・ユニーク・ウェポン」へ変化した。攻撃力が1182、保有魔力と耐久値が9500、魔力伝導率が「S+」へと上昇した。
・スキルのスリム化:メモリ容量が「50」へと減少した。狂鬼化や不要な生活スキルが削除され、主要な戦闘スキルへ集約された。
・スキル特化型への移行:謎の魂と謎のシステムがアナウンスさんの領域へと直接連結し、処理能力を補う構造へと変化した。ランクアップ時のステータス成長率が低下した代わりに、スキルの運用効率が劇的に向上する「スキル特化型」へ移行した。
・二柱の神の加護獲得:「混沌の神の加護」と「知恵の神の加護」が追加された。

まとめ

師匠の解析と改修の全貌と内部構造の真実を巡る一連の全貌は、機能停止に陥った師匠の神級鍛冶師工房への移送から始まり、外身が廃棄神剣「智慧剣ケルビム」の器であることや内部の三層構造の解明、5日間に及ぶ不眠不休の改修儀式、インテリジェンス・ユニーク・ウェポンへの進化とスキル特化型への移行、そしてフランとの「剣身一体」への契約進化に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
消滅の危機や複雑な内部構造の負荷という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、ルーツの解明と新たな進化の記録である。
沈黙の危機から、構造の解析、不要スキルの削ぎ落とし、システムの連結再編、そして二人の絆の深化へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

神級鍛冶師アリステア

神級鍛冶師アリステアと師匠の真実の全貌

『転生したら剣でした』の「獣人国編」において、物語の極めて重要な役割を果たすのが、世界に数人しか存在しない伝説の神級鍛冶師の一人、アリステアである。アリステアの人物像、アースラースとの因縁、師匠の解析によって明かされた真実、師匠の改修と黒天虎装備への新生、および異世界の告白とその後について解説する。

人物像と強烈なキャラクター性

アリステアは、美しいサラサラの銀髪に赤と白のトーガのような服装を身に纏い、外見だけなら清楚で儚げな美女である。

・その口から出るのは、〜だろ、バカ鬼、といった極めて蓮っ葉な男言葉であり、がさつそうに見えながらも細やかな気遣いができるという大きなギャップを持っている。
・長命のハーフエルフ:人間だった父親の血が濃く出たため、エルフのような尖った耳ではなく人間と同じ丸い耳をしているが、種族はハーフエルフである。100年ほどで世界の大陸をすべて制覇しているほどの長寿を誇る。
・美貌を保つ固有スキル:彼女自身が若々しいのは種族的な要因だけでなく、彼女が持つ職業の固有スキル「肉体最盛」の効果によるものである。肉体を常に最盛期に保つこのスキルにより、特別な手入れをせずとも肌の張りや髪の艶、類まれな美貌と若さを維持している。

アースラースとの意外な因縁

神剣「大地剣ガイア」の使い手であるランクS冒険者アースラースとは旧知の仲だが、アースラースはアリステアに対して極めて強い苦手意識を持っている。

・かつて狂鬼化の暴走を恐れたアースラースが彼女の元を訪ね、開口一番、神剣をぶっ壊せ、と言い放った際、神剣を子供同然に愛するアリステアは激怒した。
・アースラースの頭をかち割り、血をダラダラと流す彼を正座させて半日説教を食らわせたという過去がある。

師匠の解析によって明かされた驚愕の真実

外界の魔力を遮断するためにミスリルがメッキされた自身の携帯可能な館(工房)において、アリステアは師匠の本格的な解析と修復を執り行った。

・オレイカルコスの外身と削られた銘:師匠の金属部分は、神級鍛冶師にしか扱えない神の金属「オレイカルコス」で完璧に加工されている。また、本来あるべき銘が削り取られて消されていた。
・廃棄神剣「智慧剣ケルビム」の器:アリステアが固有スキル「創剣の真理」で呼び出した、失われた神剣「智慧剣ケルビム」の図面は、鍔のエンブレム(ケルビムは四人の女性の顔と天使の翼、師匠は狼)を除き、柄の形や組紐、刀身の装飾や刃の寸法が師匠と完全に一致していた。ケルビムは神域の知識を閲覧・干渉・書き換える能力を持っていたが、危険すぎるとして神から破棄を命じられた廃棄神剣であった。アリステアは、師匠がそのケルビムの機能を除去した器を再利用して作られた廃棄神剣(あるいは試し打ち、失敗作)であると推測した。
・内部に宿る複数の魂と謎のシステム:元人間の魂:魂を見る能力によって、師匠が人造魂魄ではなく、元は人間の魂を剣に封じられた存在であることを最初から見抜いていた。
・魔石を吸収する謎の魂:師匠が魔石を吸収した際、魔力やスキルは直接師匠に流れるのではなく、内部に封印された深く傷ついた謎の魂(魔獣、フェンリルの可能性あり)へ流れ、その魂から師匠へと力が分け与えられていることを突き止めた。
・高度な制御システム:謎の魂の力を師匠が使える形に変換し、自己進化ポイントや共有スキルなどを一括管理する、神級魔道具師や神級錬金術師にしか構築できない超高度な魔術システムが存在することを看破した。
・痛みの原因:情報の演算補助を担うケルビムの残滓(アナウンスさん)が破損した状態で、一般的な神剣の限界(30程度)を遥かに超える150以上の過剰なスキルを処理していたため、負荷による動作不良(痛み)が生じていた。

師匠の改修と黒天虎装備への新生

アリステアは修復と同時に、不要なスキルを統合・削減して処理負担を軽減させる改修を提案し、5日間に及ぶ不眠不休の儀式によってこれを完了させた。

・スキル特化型への変化:改修された師匠は種族が「インテリジェンス・ユニーク・ウェポン」へと変化し、攻撃力や耐久値が大幅に上昇した。謎のシステムがケルビムの破損領域を補う構造へと再編されたことで、剣本体の成長率は低下したものの、スキルの運用効率が劇的に向上するスキル特化型のウェポンへと生まれ変わった。
・黒天虎装備の完成:アリステアは、激戦によって劣化していたフランの防具も預かり、神級鍛冶師の技術を注ぎ込んで「黒天虎の闘衣」等の黒天虎シリーズへと大幅に改造・強化した。これは元の装備よりも格段に防御力が上がり、全ステータス+20や即死無効などの加護が与えられる、少女らしくも極めて強力なネームド級の防具へと進化を遂げた。

異世界の告白とその後

師匠から、自分は魔法もスキルのない別世界(地球)から来た人間である、という最大の秘密を打ち明けられた際も、アリステアは混乱することなくこれをすぐに受け入れた。

・彼女は、神々が別世界から渡ってきたという神誕世界の伝承(最初の神剣たる始神剣・アルファが剣の神の剣を模して作られた歴史など)を語り、師匠のルーツがその異世界人であること自体に関係している可能性を示唆した。
・改修の対価としては、自身の探究心(面白い剣を解析できたこと)を満たせたからと大金を求めず、わずか100万ゴルドと一部の魔獣素材、そしてフランが作ったカレーを鍋ごと受け取るという、職人らしくもどこか人間味に溢れる形で別れを告げた。
・アリステアは、境界山脈を引き払った後は、ジルバード大陸(ベリオス王国南西部のアルスター付近)に居を移す予定だ、と語っており、彼女と師匠たちの物語は今後、新たなる大陸へと引き継がれていくことになる。

まとめ

神級鍛冶師アリステアと師匠の真実を巡る一連の全貌は、壊滅的ダメージを負った師匠の修理引受けから始まり、ハーフエルフとしての長命と肉体最盛による若さ、アースラースを正座させた激怒のエピソード、廃棄神剣「智慧剣ケルビム」の器というルーツの解明、インテリジェンス・ユニーク・ウェポンへの進化と黒天虎装備の完成、そして異世界人としての告白の受容と新天地への旅立ちに至るまで、その歩みを明瞭に示している。
機能停止の危機や未知のルーツという不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、卓越した鍛冶技術とルーツ開示の記録である。
沈黙の全壊から、構造の解析、スキルの再構成、装備の超絶強化、ルーツの提示、そしてジルバード大陸への伝承へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

剣王への転職

剣王への転職と「剣神化」の全貌

『転生したら剣でした』の「獣人国編」において、フランが王都ベスティアの神殿で果たした「剣王への転職(クラスチェンジ)」について、転職の経緯と王級職の格、能力補正と剣身一体の役割分担、究極の神属性付与、制御の難しさと歴史、武器と使用者への負担、および剣の神が示す道標の各点から解説する。

「剣王」への転職と能力の特化

フランとメアは王都観光の最中に神殿を訪れ、お布施(三〇〇〇ゴルド)を支払って転職可能な職業を確認した。

・転職の経緯と王級職の格:フランの前には「剣王」「聖戦士」「大魔導士」「天忍」「天魔闘士」などの強力な選択肢が現れており、フランは迷うことなく「剣王」を選択した。この「剣王」は、戦闘系職業の中で最上級に位置する王級職の一つである。これは獣人国の現国王リグディスの就いている「槍王」と同格であり、本来であれば世界に数人しかいないランクS冒険者が就くような伝説的な超高位職であった。
・能力補正と「剣身一体」の役割分担:剣王に就いたことで、フランは「腕力上昇」「剣術強化」「剣技強化」という物理・剣特化の補正を獲得した。その一方で、魔導戦士時代に持っていた固有スキル「魔力収束」を忘れてしまい、フラン自身の魔術使用能力(魔力)はわずかに低下した。しかしこれはデメリットではなく、フラン自身が近接物理での剣撃(アタッカー)を担い、師匠が魔術やサポートを担うという、二人の役割分担をより強固かつ明確にする結果となった。

固有スキル「剣神化」の暴威と代償

剣王の固有スキルとして得た「剣神化」は、一時的に使用者へ「剣の神の力」を降ろす自己強化スキルである。

・究極の「神属性」付与:このスキルの真髄は、装備する武器に「神属性」を与える点にある。神属性は、この世のありとあらゆるモノ(耐性、無効化、幽体、物理無効など)を完全に無視して突破し、あたかも常時相手の弱点属性を突き続けているかのような絶大な大ダメージを与える究極属性である。
・制御の極度の難しさと悲劇の歴史:この力はあまりにも強力すぎるため、制御が至難の業であった。実際にメアの父である獣王リグディスも、初めて「槍神化」を発動させた際、威力を制御できずに標的の竜を貫通した余波で当時のパーティメンバーを巻き込んで死なせてしまうという痛恨の過去を背負っている。そのため、神化スキルは周囲に味方がいる状態では決して使えない危険なスキルとされていた。
・武器と使用者への破滅的な負担:神化は武器と使用者の双方に絶望的な負荷を与える。かつて獣王が用いたオリハルコン製の槍でさえ、槍神化をわずか3秒使用しただけで負荷に耐えきれず粉々に砕け散った。インテリジェンス・ユニーク・ウェポンへと進化した師匠であっても、剣神化の発動中は一秒につき耐久値が1000以上減少し、神属性による損傷であるため「瞬間再生」や自己修復の速度すら著しく低下してしまう。そのため、師匠が自力で修復不能なスクラップになるのを防ぐための実戦での安全マージンはわずか5秒以下と結論付けられた。さらに使用者自身への肉体的・精神的消耗もすさまじく、百戦錬磨の獣王でさえ10秒の維持が限界である。

剣の神が示す「道標」

荒野で「剣神化」を試運転した際、発動したフランが繰り出したのは、魔法もスキルも使わない、ごく基礎的な一振りの袈裟斬りであった。

・しかしその動きは、限界を極めたはずの「剣王術」すら未熟に思えるほど、滑らかで、一切の淀みがなく、完璧なものであった。
・フランはただ歩み寄って師匠を振り抜いただけで、巨大な大岩の塊を、熱したナイフでバターを切り取るかのように滑らかに両断してみせた。
・この現象を目の当たりにしたフランと師匠は、敗北感と悔しさを抱きつつも、一つの真実に到達する。
・それは、剣神化とは単なる自己強化スキルではなく、王術を得た者に、さらにその先にある遥かなる剣の神の剣理を示す「道標」なのだという確信であった。
・フランはこの神聖な道標としての自分自身の背中を見据え、決して力に溺れることなく、いつか自力の技量だけでこの時の自分に追いつき、神剣を超えることを固く誓ったのである。

まとめ

剣王への転職と「剣神化」の全貌を巡る一連の全貌は、王都神殿での王級職「剣王」への転職から始まり、物理特化補正による師匠との完全な役割分担の確立、あらゆる耐性を無効化する神属性の付与、安全マージン5秒以下という武器・使用者への破滅的負荷、そして完璧な一閃が示した剣の神の道標への誓いに至るまで、その歩みを明瞭に示している。
スキルの代償や制御不能な破滅リスクという不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な極致の獲得とたゆまぬ研鑽の記録である。
転職の決断から、補正の獲得、スキルの試運転、絶大な負荷の露呈、そして真の強さへの誓いへと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

黄金獣牙勲章

黄金獣牙勲章授与の全貌と黒猫族への恩恵

『転生したら剣でした』第10巻において、フランに授与された黄金獣牙勲章について、勲章の圧倒的な格、フランが勲章を選択した理由、黒猫族に恩恵をもたらした破格の副賞、および厳かに執り行われた式典の各点から解説する。

黄金獣牙勲章の圧倒的な「格」

黄金獣牙勲章は、獣人国における最高の栄誉を誇る名誉である。

・国家最高位の栄誉:獣人国において、国家に対して最も功績のあった者に贈られる最高位の勲章である。
・300年ぶりの奇跡:同じく北方侵攻の防衛に尽力した黒猫族の英雄キアラ(故人)への贈呈も決定していた。生存している者にこの勲章が授与されるのは、300年ぶりという極めて異例の事態であった。

フランが勲章を選択した「理由」

獣人国側からは、フランの功績を称えるにあたり、二つの選択肢が提示されていた。

・獣人国からの提案:黄金獣牙勲章の授与と副賞1000万ゴルド
・冒険者ギルドからの提案:ギルドへの大きな貸しと確実なランクBへの昇格、および報酬500万ゴルド
・金銭的には大幅に劣るものの、冒険者として大きな利点となるランクBへの昇格を蹴り、フランは一晩考えることもなく、キアラとおそろいの勲章がいい、という理由で黄金獣牙勲章を選択した。
・この無欲で純粋な決断は、同行していたメアや獣人国の重鎮たちを深く感動させることとなった。

黒猫族に恩恵をもたらした「破格の副賞」

この勲章には、上限が定められていない金銭的な副賞(報奨金)が確約されていた。

・今回のフランへの授与に伴い、1000万ゴルドという桁外れの金額が予定されることとなった。
・さらに、フランが自分へのお金を減らしてでも、黒猫族の皆を助けてほしいと願い出たことにより、財務大臣グイーサらの検討を経て、以下の黒猫族への国家規模の優遇・支援措置が正式に確約されることとなった。
・国家の名による黒猫族の人権および生活の保障
・戦士を目指す黒猫族への武具の支給
・黒猫族の村(シュワルツカッツェ)への戦闘指南役の派遣
・これにより、ただ一人の少女の活躍にとどまらず、黒猫族全体の悲願である種族の地位向上に向けた歴史的な第一歩が踏み出されることとなった。

厳かに執り行われた「式典」

王城の一室において、獣王の長女であるメアからフランへ直接勲章が授与された。

・式典は簡素ながらも厳かに進行し、防衛軍を率いた老将バラベラム、白犀族の族長リグダルファ、宮廷魔術師リュシアス・ローレンシアといった歴戦の将たちに加え、宰相レイモンドや財務大臣グイーサといった国家の重鎮たちが顔を揃えて立ち会った。
・また、この式典ではフランを支えて共に激戦を駆け抜けた従魔のウルシに対しても、急遽用意された特別功労従魔勲章がメアより授与され、その功績が称えられた。

まとめ

黄金獣牙勲章授与の全貌と黒猫族への恩恵を巡る一連の全貌は、300年ぶりとなる国家最高位勲章の授与決定から始まり、ランクB昇格よりもキアラとの絆を優先した授与の選択、個人報酬を削って勝ち取った黒猫族への支援措置、そして重鎮たちが見守る中でのウルシを含めた厳かな式典の執行に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
差別や冷遇という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、歴史的貢献と種族全体の救済の記録である。
過酷な防衛戦から、勲章の選択、無欲の懇願、国家支援の決定、そして次なる大陸への旅立ちへと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

獣人国の防衛戦

獣人国の防衛戦の全貌と黒猫族の歴史的躍進

『転生したら剣でした』の物語において、獣人国(獣王国)を舞台に繰り広げられた獣人国の防衛戦について、二つの戦線の展開、師匠とフランの戦略、邪人本隊の襲来と逆転劇、および防衛戦がもたらした偉大な結果の各点から解説する。

国家の命運を分けた二つの戦線

バシャール王国の陰謀により、戦況は二つの戦線へと分かれて展開された。

・南部戦線(正規軍の激突):バシャール王国は南部国境に万単位の兵を集めて戦端を開いた。獣人国側は高い戦意を見せ、宮廷魔術師リュシアス・ローレンシアが大地魔術「グレート・ウォール」で城壁を築き、白犀族の族長リグダルファが国境線を死守した。南部での戦いは獣人国側の圧倒的な大勝利に終わったが、これは北部からの本命の奇襲を隠すための陽動であった。
・北部戦線(グリンゴート周辺での絶望的な防衛戦):バシャール王国の真の狙いは、境界山脈のダンジョンから万を超える魔獣軍とミューレリア配下の邪人軍の精鋭を送り込んで獣人国北部を壊滅させることいであった。主力が割かれていたグリンゴートには正規軍がおらず、フランたちは黒猫族の村(シュワルツカッツェ)の同胞や避難民を救うため、単独でこの大軍を足止めする決断を下した。

師匠とフランの「長城と隘路」戦略

万を超える魔獣の軍勢を正面から全滅させることは不可能なため、地形を作り変える大規模な防衛線を構築した。

・鉄壁の長城とあえて残した隙間:師匠は無詠唱と同時演算を駆使し、最高位の土魔術「大地魔術グレイト・ウォール」で東西に数百メートル以上に及ぶ巨大な堀と、高さ15メートルに達する長城を一瞬で築き上げた。そして、あえて中央に幅15メートルほどの狭い隙間(隘路)を一つだけ残した。
・長坂の張飛作戦の成功:行く手を阻まれた魔獣の軍勢は、自然とこの狭い隘路へと殺到した。フランと師匠は、この隘路の出口に立ちはだかって次々と魔獣を切り捨て、大軍の進軍速度を完全に殺して時間を稼ぐことに成功した。

邪人の本隊襲来と、絆による逆転劇

魔獣の先遣隊を削った後、ワルキューレとデュラハンが率いる邪人軍の精鋭(本隊)が姿を現した。

・ダメージ肩代わりと執拗な狙撃:ワルキューレは自身の称号「進軍の戦乙女」によって軍勢の気配を消して接近し、魔術耐性の高い盾役デュラハンに守られながら神速の火矢でフランを狙撃した。さらに、フランが剣王技「天断」などで致命傷を与えても、周囲の邪人が身代わりとなってダメージを肩代わりする戦法に、フランたちは極限まで魔力と体力を消耗させられた。
・「金炎の王女」メアたちの参戦:フランが絶体絶命の危機に陥った際、赤竜リンドに乗ったメア(ネメア・ナラシンハ)とクイナが空から乱入した。メアは固有スキル「金炎絶火」と「白火」を融合させた白金の極大炎を解き放ち、長城の檻に閉じめた残りの邪人軍を一瞬にして焼き払い、戦いに終止符を打った。
・キアラとウルシによる別動隊の壊滅:避難する黒猫族を狙ったバシャール王国の高速別動隊は、黒天虎へ進化を遂げたキアラ、命を懸けて戦ったウルシ、そして進化を果たしたグエンダルファらの活躍によって完膚なきまでに叩き潰された。

まとめ

獣人国の防衛戦の全貌と黒猫族の歴史的躍進を巡る一連の全貌は、バシャール王国の二大戦線形成から始まり、長城と隘路を利用した極限の足止め戦術、メアやキアラたちの参戦による邪人軍・別動隊の壊滅、そして黄金獣牙勲章の授与と黒猫族への国家規模の支援決定に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
国家の滅亡や種族への差別の記憶という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、絶望的防衛戦の勝利と種族の地位向上の記録である。
奇襲の察知から、地形の改修、死闘の維持、救援の到着、そして歴史的地位の獲得へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

転剣9レビュー
転剣まとめ
転剣11レビュー

登場キャラクター

主人公一行

師匠

意思を持つ魔剣である。フランを装備者として支える立場にある。

・所属組織、地位や役職
 インテリジェンス・ユニーク・ウェポン。フランの装備。

・物語内での具体的な行動や成果
 アリステアの館で本格的な改修を受けた。これまでの負荷が軽減される。グリンゴートでは黒い巨人と対峙した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 インテリジェンス・ユニーク・ウェポンへと進化した。攻撃力や耐久値などが大幅に向上する。

フラン

黒猫族の少女である。同胞の地位向上を目指して戦う。

・所属組織、地位や役職
 ランクC冒険者。異名は「黒雷姫」。

・物語内での具体的な行動や成果
 王都の神殿で「剣王」への転職を行った。グリンゴートの戦場へ急行する。黒い巨人を相手に「剣神化」の力で勝利を収めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最高位の「黄金獣牙勲章」を授与された。国から黒猫族の人権や生活の保障を勝ち取る。

ウルシ

フランの従魔である。影に潜んで戦う。

・所属組織、地位や役職
 フランの従魔。ダークネスウルフ。

・物語内での具体的な行動や成果
 グリンゴートの戦いに参加した。黒猫族の避難民が宿泊する宿の護衛を任される。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 式典で「特別功労従魔勲章」を授与された。

メア一行

メア(ネメア・ナラシンハ)

獣王リグディスの長女である。フランのライバルであり、親友でもある。

・所属組織、地位や役職
 獣人国第一王女。赤猫族の上位種族である十始族の金火。

・物語内での具体的な行動や成果
 リンドに乗ってグリンゴートへ駆けつけた。自身の白炎とリンドヴルムの炎を融合させて戦う。黒い巨人の障壁を突破した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「焔滅騎士」へと進化した。

クイナ

メアに仕える侍女である。常に冷静沈着な態度を保つ。

・所属組織、地位や役職
 灰族の達人女中。

・物語内での具体的な行動や成果
 幻像魔術や収納スキルで戦いをサポートした。黒い巨人の陽動役を引き受ける。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 達人女中としての高い技能で完璧な給仕を行った。

リンド(暴竜剣・リンドヴルム)

メアの持つ神剣に宿る竜魂である。メアの呼びかけに応じて実体化する。

・所属組織、地位や役職
 神剣「暴竜剣・リンドヴルム」に宿る竜魂。

・物語内での具体的な行動や成果
 メアやフランを乗せてグリンゴートへ急行した。空中から敵に向けて火炎を吐く。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 メアのレベルアップに伴い、大きな体に成長した。

神級鍛冶師

アリステア

がさつな言葉遣いを話すハーフエルフである。しかし、細やかな気遣いができる性格を持つ。

・所属組織、地位や役職
 神級鍛冶師。

・物語内での具体的な行動や成果
 ボロボロになった師匠の修復を行った。師匠に本格的な改修を施す。フランの防具も新しく強化した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 師匠が「智慧剣ケルビム」の器である可能性を突き止める。

境界山脈・ダンジョン攻略者

アースラース

理性的だが暴走の危険を抱える鬼人である。

・所属組織、地位や役職
 ランクS冒険者。異名は「同士討ち」。

・物語内での具体的な行動や成果
 アリステアの館で目覚めた。フランに実戦的な指導を行う。自身の神剣開放を実演してみせた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

獣人国・王宮関係者

獣王(リグディス・ナラシンハ)

獣人国の王である。豪放磊落な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 獣人国国王。ランクS冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 快速艇を使ってグレイシールに帰還した。フランが「剣王」に至ったことを見抜く。フランと手合わせを行った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フランの実力を認める。

レイモンド

獣人国の宰相である。穏やかで実務能力に長ける。

・所属組織、地位や役職
 獣人国宰相。

・物語内での具体的な行動や成果
 フランの功績に対して男爵位の授与を検討した。フランが辞退したため、代わりに勲章を提案する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グイーサ

理性的で冷静に物事を判断する文官である。

・所属組織、地位や役職
 獣人国財務大臣。

・物語内での具体的な行動や成果
 フランに国からの勲章案を提示した。さらに、冒険者ギルドからの昇格案も同時に説明する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ミアノア

キアラの世話を焼く少女である。

・所属組織、地位や役職
 王宮の召使い。キアラの世話役。

・物語内での具体的な行動や成果
 キアラの葬儀の手続きを進めた。フランに快速艇への乗船を提案する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 キアラから「ミア」と呼ばれている。

獣人国軍・各都市関係者

バラベラム

巨大な体躯を持つ老将軍である。

・所属組織、地位や役職
 獣人国臨時将軍。紫風象。

・物語内での具体的な行動や成果
 防衛軍を率いて活躍した。フランを称える式典に出席する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

リグダルファ

感情を表に出さない冷静な白犀族の男である。ゴドダルファの弟にあたる。

・所属組織、地位や役職
 白犀族の族長。臨時将軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 南部戦線でバシャール王国軍を撃退した。戦いの後に開かれた式典に出席する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ゴドダルファ

大山の如き巨躯を持つ白犀族の戦士である。

・所属組織、地位や役職
 ランクA冒険者。獣王の護衛。

・物語内での具体的な行動や成果
 エピローグでフランたちの前に現れた。キアラへの礼を述べて頭を下げる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ロイス

神経質そうな表情を見せる兎の獣人である。

・所属組織、地位や役職
 ランクA冒険者。転術師。獣王の側近。

・物語内での具体的な行動や成果
 エピローグでゴドダルファと共に登場した。キアラへの礼を述べて深く頭を下げる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

リュシアス・ローレンシア

温和で物腰の柔らかい宮廷魔術師である。邪術師リンフォードの息子にあたる。

・所属組織、地位や役職
 宮廷魔術師。

・物語内での具体的な行動や成果
 南部戦線で大規模な大地魔術を使用した。フランから父の最期を教えられる。長年のわだかまりが解けて感謝した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルブーフ

グリンゴートのギルドをまとめる老人である。

・所属組織、地位や役職
 グリンゴートのギルドマスター。

・物語内での具体的な行動や成果
 王宮から駆けつけたメアやフランを出迎えた。彼女たちから邪人や死霊の情報を聞き出す。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

マルマーノ

重装鎧を身に纏う武人である。

・所属組織、地位や役職
 グリンゴート領主。翠山羊族。

・物語内での具体的な行動や成果
 都市を救ったフランの武功を称えた。黒猫族の安全と保護をフランに約束する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シュワルツカッツェ(黒猫族の村)

サリューシャ

フランやキアラを深く敬う、前向きで勇敢な黒猫族の少女である。

・所属組織、地位や役職
 シュワルツカッツェの黒猫族の住民。

・物語内での具体的な行動や成果
 グリンゴートの戦いにおいて自ら武器を取って戦った。初めての火魔術「ファイア・アロー」を使用する。これによりイビル・ゴブリンを討ち取る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 自立した戦士として成長を遂げた。

黒猫族の村長

フランを「姫様」と呼んで深く敬う老人である。

・所属組織、地位や役職
 シュワルツカッツェ村長。

・物語内での具体的な行動や成果
 村の迅速な避難を指揮した。戻ってきたフランに感謝の意を伝える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ショーン

サリューシャと共に戦う黒猫族の若者である。

・所属組織、地位や役職
 シュワルツカッツェの黒猫族の住民。

・物語内での具体的な行動や成果
 グリンゴート内の戦闘に参加した。黒ゴブリンによって盾を弾かれる。槍で胸を貫かれて瀕死の重傷を負うが、フランの範囲治癒により一命を取り留めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

キアラ

戦士としての誇りに満ちた強力な老黒猫族である。

・所属組織、地位や役職
 黒天虎。

・物語内での具体的な行動や成果
 ミューレリアとの死闘において自らの命を燃やして戦った。最期はフランの腕の中で静かに息を引き取る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 故人となった。遺体は王都へ運ばれて葬儀が行われる。

邪神・ダンジョン勢力

ゴブリン・ネクロマンサー

邪神石の槍を刺されたことで怪物へと変貌したゴブリンである。

・所属組織、地位や役職
 ミューレリアの支配下にあった邪人。

・物語内での具体的な行動や成果
 敗れ去る邪人から力を託された。急速に巨大化する。周囲の邪人を吸収して黒い巨人へと変貌した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

イビル・ゴブリン

邪神の加護を受けた黒い肌のゴブリンである。

・所属組織、地位や役職
 ミューレリアの支配下の特殊魔獣。

・物語内での具体的な行動や成果
 その魔石に長距離転移を補助する細工が施されていた。グリンゴートの町へ転移して破壊活動を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし.

黒い巨人(イビルジャイアント・レッサーゾンビ)

ゴブリン・ネクロマンサーが周囲の邪人を吸収して誕生した巨大なゾンビである。

・所属組織、地位や役職
 イビルジャイアント・レッサーゾンビ。

・物語内での具体的な行動や成果
 冒険者ギルドを全壊させた。町を破壊しながら領主の館へ向けて進軍する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

集団

馬型ゴーレム

意思を持たないが、高度な命令に従うゴーレムである。

・所属組織、地位や役職
 アリステアの所有物。

・物語内での具体的な行動や成果
 御者なしで馬車を正確に牽引した。魔獣除けの結界を備える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

客間のゴーレム

意思を持たず、使用人のように働くゴーレムである。

・所属組織、地位や役職
 アリステアの館の所有物。

・物語内での具体的な行動や成果
 アースラースを運んだ。さらに、客部屋の準備などを黙々と行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

料理用のゴーレム

黙々と調理作業を行うゴーレムである。

・所属組織、地位や役職
 アリステアの館の所有物。

・物語内での具体的な行動や成果
 カレーを作る師匠の様子を観察した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

避難民たち

戦火を避けてグリンゴートに集まった難民たちである。

・所属組織、地位や役職
 避難民。

・物語内での具体的な行動や成果
 笑顔を失って中央通りに身を寄せていた。一方で、黒猫族の避難民は事前準備により余裕のあるキャンプ生活を送る。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グリンゴートの兵士たち

領主マルマーノの命令に従い、都市を警備する兵士たちである。

・所属組織、地位や役職
 グリンゴートの防衛兵士。

・物語内での具体的な行動や成果
 門番として不審な者を警戒した。町の中に入り込んだ黒いゴブリンと激しく戦闘する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

グリンゴートの騎士たち

領主マルマーノに仕える、誇り高く強い騎士たちである。

・所属組織、地位や役職
 グリンゴート騎士団。

・物語内での具体的な行動や成果
 フランが黒雷姫だと分かると、領主のもとへ案内した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

冒険者ギルドの解体人たち

黙々と魔獣の解体を行う専門家たちである。

・所属組織、地位や役職
 グリンゴート冒険者ギルド。

・物語内での具体的な行動や成果
 演習場に置かれた一五〇体もの魔獣の解体作業を前に、乾いた笑いを漏らした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

冒険者ギルドの職員たち

冒険者の事務や買取を担当する職員たちである。

・所属組織、地位や役職
 グリンゴート冒険者ギルド.

・物語内での具体的な行動や成果
 フランを緊張気味に出迎えた。ギルド全壊時に瓦礫に埋もれる。その後、フランたちにより救出された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

赤犬族の戦士たち

避難中の警備を担当していた屈強な赤犬族の戦士たちである。

・所属組織、地位や役職
 元兵士、住民。

・物語内での具体的な行動や成果
 避難中に黒猫族を守ってゴブリンと戦った。グリンゴート内でも黒ゴブリンと勇敢に戦う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

黒猫族の避難民たち

長年の避難経験により、逃げることに慣れた黒猫族の人々である。

・所属組織、地位や役職
 シュワルツカッツェの住民。

・物語内での具体的な行動や成果
 グリンゴートのテント村で談笑やボードゲームを行った。フランの無事と村の安全を知ると大いに喜ぶ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

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展開まとめ

第一章 神級鍛冶師の館

崩れゆく邪人の執念

ダンジョンコアの破壊によって肉体の崩壊が始まった邪人は、ミューレリアの敗北を悟った。北部で集めた千を超える野生の邪人を率いる任務も無意味になったが、敗残者として消えることを拒み、獣人国に爪痕を残そうとした。邪神石の槍をゴブリン・ネクロマンサーに突き刺して力を譲り渡すと、邪気に侵されたゴブリンは巨大化し、周囲の邪人を取り込んでさらなる怪物へと変貌した。

アリステアへの告白

フラン、師匠、意識を失ったアースラースは、神級鍛冶師アリステアのゴーレム馬車で彼女の館へ向かった。アースラースに話を聞かれないよう、アリステアは触れた者同士だけで念話できる道具を使い、師匠の来歴を尋ねた。師匠は自分が元人間であることからフランとの出会い、魔石吸収やスキル獲得、最近起き始めた原因不明の痛みまでを包み隠さず話した。アリステアは魂の形から師匠が元人間であることをすでに見抜いており、その魂を剣へ封じる技術は神級鍛冶師である自分にも分からないと語った。

神級鍛冶師の館

館に着くと、アリステアは目覚めないアースラースを蹴り起こした。アースラースは自分から狂鬼化を奪い、暴走を止めたフランたちに深く感謝したが、キアラの死を知らなかった。フランの表情から事態を察したアースラースに、師匠は自分のせいではないとだけ伝えた。アースラースが二階へ退いた後、アリステアはミスリルで外界の魔力を遮断した研究室兼工房で、師匠の本格的な解析と修復を開始した。

オレイカルコスの刀身

解析の結果、師匠の刀身は神級鍛冶師だけが生み出せる神の金属オレイカルコスで作られていると判明した。加工の精度から外身を手掛けたのも神級鍛冶師だと考えられたが、師匠には本来あったはずの銘が削り取られた痕跡があった。アリステアはオレイカルコスを糸状に加工し、魔法薬と魔力を使って刀身の修復を進めた。

智慧剣ケルビム

神級鍛冶師の固有スキル創剣の真理から示されたのは、失われた神剣・智慧剣ケルビムであった。その外見は鍔の意匠を除いて師匠と極めて似ており、柄や刀身の装飾、寸法まで一致していた。ケルビムは神域のあらゆる知識を閲覧し、干渉して書き換える能力を持ったため、危険すぎるとして廃棄された神剣であった。アリステアは、師匠がケルビムの能力を除去した器を再利用した廃棄神剣、あるいはその試作品や姉妹品である可能性を示した。

消えたアナウンスさん

師匠はかつて潜在能力解放中に現れたアナウンスさんが、神に存在を許されず製作者に消された存在の残滓だと語っていたことを思い出した。さらに神域へアクセスして情報を取得した経験もあり、アリステアはアナウンスさんがケルビムの残滓である可能性が高いと考えた。解析でも、師匠の内部には情報処理やスキル発動を補助する領域が確認されたが、すでに激しく損傷していた。完全な復元は不可能だったため、アリステアは残った部分がこれ以上壊れないよう補強した。

謎の魂と魔石吸収

師匠の内部には、ケルビムの残滓とは別の魂も存在していた。アリステアが魔石吸収を直接調べると、吸収された力は師匠ではなく、その深く傷ついた魂へ流れ込んでいた。魂は魔石によって回復し、その力の一部を師匠へ与えていたため、師匠が得ていた魔石値や能力は直接吸収したものではなかった。強力な邪人から魔石値をほとんど得られなかったのも、その魂が強すぎる邪気を吸収できないためだと推測された。

自己進化を支える謎のシステム

謎の魂と師匠の間には、さらに別の高度なシステムが組み込まれていた。それは謎の魂の力やスキルを師匠でも扱える形に変換し、自己進化ポイントやランクアップ、フランとのスキル共有まで管理していた。アリステアにも一から再現できないほど高度であり、神級魔道具師や神級錬金術師に相当する者の仕事と考えられた。師匠の製作には、ケルビムを作った神級鍛冶師エルメラ、謎の魂自身、謎のシステムを構築した人物、そして師匠の人間の魂を剣へ封じた別の存在など、最低でも四者が関わっている可能性が浮かんだ。

最深部の封印

師匠の内部には、アリステアの解析さえ完全に拒む最深部が一ヶ所存在した。神級鍛冶師による解析まで想定した強固な防護が施されており、役割も内容も判明しなかった。師匠はシードランでどす黒い力の封印が綻び、謎の声によって再封印された経験を語っており、アリステアはその正体が最深部に封じられている可能性を考えた。

フェンリルの可能性

師匠は鍔の狼の意匠、目覚めた場所である魔狼の平原、神狼に関する伝承、謎の魂が魔獣らしいことから、その魂がフェンリルではないかと推測した。アリステアも、魔獣や神獣を内部に封じて力を借りる神剣は実在すると説明し、可能性を否定しなかった。魔王剣ディアボロス、暴竜剣リンドヴルム、蛇帝剣ヨルムンガンドなどが同様の例として挙げられた。

ファナティクスとホーリーオーダー

神剣の破壊について話す中で、アリステアはファナティクスとホーリーオーダーの因縁も説明した。ファナティクスは斬った相手の精神を所有者へ統合し、複数の肉体を一つの精神で操れる危険な神剣であった。使い続ければ多数の人格や記憶を取り込み、所有者自身も暴走してしまう。その危険性を憂えた神級鍛冶師ウルマーが対抗用の聖霊剣ホーリーオーダーを作り、両剣は戦いの末に共に破壊された。ファナティクスを作ったディオニスはウルマーの弟であり、兄への強い対抗心から癖の強い神剣を数多く生み出していた。

師匠の過剰なスキル

アリステアは、師匠が異常な痛みを感じた最大の原因を膨大なスキル数だと突き止めた。本来はケルビムの残滓が管理と演算補助を担うはずだったが、その機能が失われた今、百五十を超えるスキルを師匠自身が処理していた。一般的な神剣でも付与スキルは多くて三十程度であり、百を超えれば暴走しても不思議ではなかった。師匠が痛みを感じたのは、元人間の魂が限界を人間時代の感覚になぞらえて痛みとして認識しているためだと考えられた。

スキル整理による改修

単純に元の状態へ戻すだけでは、再び同じ限界が訪れるため、アリステアは修復と同時に改修を行うことを提案した。謎のシステムを利用して同系統のスキルを統合し、不要なものを削減することで処理負担を軽くする方法であった。ただし細かな選別はできず、有用なスキルまで失う可能性があった。フランは、失った力ならまた手に入れればよく、師匠が無事であることが最優先だと答えた。師匠もその言葉で決意を固め、今後も定期的にアリステアのもとで整備を受けることを約束し、改修を任せた。

第二章 変化と進化 

改修前の休息

アリステアは数時間にわたって師匠の内部システムへ干渉する準備を続け、夜になってようやく改修可能な状態へ整えた。疲れていないと語りながらも、激戦後から休めていないフランを気遣い、自らの休憩を理由に食堂へ連れ出した。師匠も移動してよいと分かり、再びフランの背中の鞘へ収まった。

アースラースとアリステアの因縁

食堂ではアースラースが休んでおり、フランは二人の関係を尋ねた。かつてアースラースは狂鬼化による惨事を恐れ、所有者のもとへ戻ってくる神剣ガイアを破壊してほしいとアリステアに頼んでいた。しかし神剣を子供同然に考えるアリステアは激怒し、彼の頭を割ったうえで半日説教したため、アースラースは今も彼女を苦手としていた。現在はガイアを受け入れ、狂鬼化の被害を避けるため辺境で暮らしていた。

キアラの最期

アースラースがキアラへの謝罪を口にすると、フランは自ら彼女の最期を語った。キアラはゼロスリードとの死闘で全力を出し切り、満足したまま笑顔で亡くなっていた。アースラースはその最期をキアラらしいと受け止め、自分には望めない戦士としての死を羨んだ。アリステアも含めて三人はキアラの思い出を語り合い、その生涯を偲んだ。

カレーの食卓

フランは食事として保存していたカレーを取り出し、アリステアとアースラースに振る舞った。二人は無言で食べ進めるほど気に入り、ウルシも加わって鍋を空にした。師匠が作った料理だと知ったアースラースに対し、フランは師匠が意思を持つインテリジェンス・ウェポンであることを明かした。アースラースは驚きながらもすぐに受け入れ、狂鬼化を一時的に消してくれた師匠へ改めて恩義を示した。

神剣ガイアとの対面

師匠の求めに応じ、アースラースは地剣ガイアを見せた。装飾の少ない巨大な大剣ながら、師匠は神剣としての圧倒的な格の違いを感じた。悔しさを見せる師匠に対し、フランはいつか師匠がガイアを超えると断言した。師匠もその言葉に励まされ、まずは完全な回復を目指す決意を新たにした。

五日間の改修

休憩後、アリステアは師匠の改修を開始した。魔法陣と魔力が師匠の内部へ入り込み、激しい苦痛とともに構造が作り変えられていった。意識が曖昧になった師匠は、不思議な空間で巨大な黒い存在を目撃した。そこからは憤怒や怨恨、飢餓など強烈な負の感情が伝わったが、聞き覚えのある声に近づくなと止められた。師匠の背後にはフランへ繋がる青い光があり、それを意識すると黒い存在への接近が止まった。その後、別の穏やかな声に眠るよう促され、意識を失った。

フランとの再会

目覚めた師匠は念話や念動を問題なく使え、自身の状態が大きく改善していると感じた。フランは師匠のそばで眠っており、目覚めると無事を確認して抱きつき、涙を流した。アリステアによれば改修には五日間かかっており、フランはその間一睡もせず師匠を見守り続け、三時間ほど前にようやく力尽きて眠ったのであった。

新たな師匠の能力

鑑定すると、師匠の種族はインテリジェンス・ユニーク・ウェポンへ変化し、攻撃力、保有魔力、耐久値、魔力伝導率が大幅に上昇していた。一方で自己進化ポイントは失われ、メモリ容量も五十まで減少した。狂鬼化や使用不能なスキル、芸術系など多くの不要スキルは消えたが、剣王術、剣王技、雷鳴魔術、時空魔術など主要能力は残っていた。一部の武術技能は逆に強化されていた。

内部構造の再編

アリステアが再解析すると、謎の魂と謎のシステムが、破損したケルビムの残滓の領域へ繋がり、不足していた処理能力を補う構造へ変化していた。師匠自身の成長率は低下した可能性がある一方、スキル運用能力は強化されており、剣本体よりもスキル特化型へ変化したと考えられた。今後謎の魂やシステムへ負担が生じる可能性は残ったものの、師匠自身への負荷は大きく軽減されていた。

二柱の神の加護

改修後の師匠には混沌の神の加護と知恵の神の加護が加わっていた。混沌の神の加護は混沌への高い耐性を与えるものだったが、具体的な作用は不明であった。知恵の神の加護は魔術などの熟練を促す効果を持ち、今後の成長に有利な能力であった。

黒猫装備の改造

アリステアは、激戦続きで劣化していたフランの黒猫装備も預かり、今の戦闘水準に耐えられるよう改造していた。製作者であるガルスに無断で手を加えることを気にしていたが、命には代えられないとして強化を進めていた。師匠もガルスへ自分から謝ると約束し、作業を任せた。

異世界人の告白

師匠は、これほど尽力してくれたアリステアに異世界出身であることを隠し続けることへ罪悪感を抱き、フランへ相談した。フランは師匠が話したい相手なら構わないと即座に認めたため、師匠はアリステアへ、自分が魔術もスキルも存在しない別世界で暮らしていた人間だと明かした。

神誕世界の伝承

アリステアは異世界人という話をすぐに受け入れ、神々が別世界から来たという神誕世界の伝承を語った。神々はその世界から現在の世界へ渡り、大地や生命を生み出したとされていた。邪神との戦いでは、剣の神が神誕世界から自らの分身となる剣を呼び寄せ、その剣を基に最初の神級鍛冶師が始神剣アルファを作ったという伝承も残っていた。師匠が神誕世界の出身かは判明しなかったが、アリステアは異世界人であること自体が、師匠が剣へ封じられた理由に関係している可能性を考えた。

第三章 新たな自分 

新たな力の訓練

改修翌日、フランと師匠は強化された能力の感覚を確かめた。攻撃力や魔力は大きく向上していたが、魔力を引き出し過ぎたり抑え過ぎたりしてしまい、空中跳躍や魔術の制御は以前より難しくなっていた。師匠も出力上昇によって魔術や念動の加減に苦戦した一方、魔術の同時発動や一撃に込められる魔力量は増しており、使いこなせれば以前以上の力を発揮できる状態であった。

アースラースとの模擬戦

訓練を見たアースラースは、実戦も必要だとして突然フランへ斬りかかった。危機を感じたフランは無意識にスキルを使って回避し、その後は近接戦から魔術を交えた本格的な模擬戦へ発展した。アースラースは剣技、重力操作、大地魔術を巧みに組み合わせ、フランと師匠も転移や雷鳴魔術などで対抗した。激戦を重ねるうちに二人の制御は目に見えて改善し、以前には及ばないものの実戦で大きな失敗をする危険は減っていった。

大地剣ガイアの力

訓練後、アースラースは師匠とフランに目指す頂を見せるため、神剣ガイアを解放した。真の姿となった大地剣ガイアは圧倒的な魔力と威圧感を放ち、師匠の鑑定では攻撃力四七〇〇、保有魔力二〇〇〇〇、耐久値三〇〇〇〇まで確認できた。アースラースが五割程度の力でグラビティ・ブロウを放つと、三〇メートル四方の大地が二〇メートル以上も陥没した。師匠とフランは圧倒的な差を目の当たりにしながらも諦めず、いつか神剣へ追いつき、超えることを誓った。

剣身一体への変化

二人が互いを信じて強さを目指す意思を示した直後、これまで危機の際に現れていた青い光が師匠とフランを包んだ。アナウンスによって、フランと師匠の契約状態は剣の使い手から剣身一体へ変化したと告げられた。具体的な効果は分からなかったが、二人は互いの繋がりがより温かく強くなったと感じた。

アースラースとの別れ

アースラースは次に会った時も模擬戦をしようと約束し、館を去った。表向きは一ヶ所に長居できない性分だと語ったが、狂鬼化を抱える限り周囲を危険に巻き込む可能性があるため、親しくなった相手のそばには長く留まれない事情があった。フランは寂しさを見せながらも再会を約束して見送った。

魔獣素材の解体

師匠とフランは次元収納に溜まった魔獣の死骸を整理し、アダマス・ビートルやスティール・タイタンベアなど高脅威度の魔獣を優先して解体した。フランが眠った後も師匠は夜通し作業を続け、約五〇体を処理した。翌朝アリステアに素材一覧を見せると、クリムゾン・ウルフの食道やスティール・タイタンベアの牙など一部が引き取られた。

魔石吸収の再確認

改修後も魔石吸収が問題なく機能するか確かめるため、師匠はビッグラットや邪人の魔石を順に吸収した。魔力もスキルも以前と同じように取り込め、消えていた穴掘りや大工などの技能スキルも再取得できた。アリステアの解析では、さらに一二〇から一五〇程度のスキルなら保持できる余裕が生まれていた。ただし再び限界まで増やさず、定期的に整理する必要があると忠告された。最終的に約一〇〇個の魔石から魔石値二二〇三と十五の技能スキルを得た。

黒天虎装備

出立前、アリステアはフランの黒猫装備を大幅に改造して返した。黒天虎の闘衣を中心とする新装備は防御力と耐久値が強化され、精神異常耐性、衝撃耐性、敏捷上昇、属性耐性などを備えていた。全装備時の黒天虎の加護も全能力上昇、即死無効、雷鳴無効、隠密強化へ進化していた。外見も少女らしい意匠へ変わったが、フランは可愛らしさより動きやすさと性能を気にしていた。

アリステアとの別れ

師匠の修復と改修、防具強化に対してアリステアは高額な報酬を求めず、一〇〇万ゴルドと魔獣素材、さらに大鍋一杯のカレーを受け取った。アリステアは今後ジルバード大陸へ移動し、ベリオス王国南西部のアルスター付近に滞在する予定だと伝えた。師匠の魔力を感知できるため、再び近づけば連絡を取れるという。フランと師匠は再会を約束し、グリンゴートへ向かった。

グリンゴートの避難民

グリンゴート周辺には激戦の跡が残っていたが、城壁は守り抜かれていた。都市内には周辺の村々から多数の避難民が集まっており、その中でシュワルツカッツェの黒猫族たちは整然と避難生活を送っていた。フランは村長やサリューシャたちと再会し、村がほぼ無傷で魔獣も排除されたことを伝えた。黒猫族たちは歓喜し、フランを盛大に迎えた。

キアラの死

黒猫族の後発避難組は途中で邪人に襲われたが、キアラとウルシに救われていた。村長たちがキアラの所在を尋ねると、フランは悲しみを堪えながらその最期を語った。多くの者が涙を流したが、フランはキアラなら泣き続けるより英雄として笑って称えられる方を望むはずだと伝えた。黒猫族たちは悲しみの中でもその言葉を受け止めた。

救国の英雄

騒ぎを聞いて訪れた騎士たちはフランが黒雷姫だと知ると、領主マルマーノのもとへ案内した。メアからフランの戦いを聞いていたマルマーノは、北から迫った魔獣と邪人を防ぎ、ダンジョンを破壊した功績を称えた。フランは仲間を守っただけだと答えたが、マルマーノは功績を正しく受け入れることも必要であり、過度な謙遜は周囲との関係を悪くする場合があると諭した。

獣人国の勝利

南部戦線では獣人国軍がバシャール王国軍に大勝していた。獣人国は兵数や兵士の質、特に志願して戦う兵士たちの戦意で大きく勝っており、北からの侵攻失敗が伝わるとバシャール軍は総崩れとなった。大地魔術師と白犀族の族長が国境を守り、撤退する敵軍へ大きな打撃を与えていた。メアは南部へ向かった後の消息まではグリンゴートに伝わっていなかった。

王都への出発

黒猫族の安全とグリンゴートの防備に問題がないと確認したフランは、メアの消息を知るため王都ベスティアへ向かうことを決めた。マルマーノは帰還する兵士や冒険者によって都市の防衛は回復すると保証し、黒猫族の保護も引き受けた。フランはその日のうちにウルシへ乗り、夜を徹して王都を目指した。

メアとの再会

翌朝、王都近くまで来たフランは遠方を飛ぶリンドを見つけ、その背にいるメアとクイナを見分けた。双方は進路を変えて平原に降り、フランとメアは無事を喜んで再会した。クイナが用意した席で食事をしながら、互いに別れてからの出来事を報告した。

師匠への自信

師匠が神剣ケルビムを再利用して作られた可能性や、神剣ガイアとの圧倒的な差を語ると、メアは師匠が必要以上に自分を卑下していると指摘した。師匠自身の功績を貶めることは、共に戦ったフランの功績まで貶めることになると諭したのである。師匠は自分が神剣への劣等感から卑屈になっていたと気づき、フランの剣として自分の力を正しく誇ることを決めた。

メアの南部戦線

メアは王女であることを隠し、白犀族リグダルファの護衛として南部戦線へ参加していた。本来の王女役は影武者のセレネが務めており、獣王の意向で本物とは正反対のお淑やかな姫を演じていた。メア自身が表へ出れば違いが露見するため、身分を隠して戦場へ加わっていたのである。

マグノリア家への潜入

メアたちが戦場へ到着した時にはバシャール軍はすでに敗走しており、彼女たちは追撃軍へ加わった。宮廷魔術師リュシアス・ローレンシアが大地魔術で地下道を築き、混乱した敵の砦を突破したため、獣人国軍はバシャール領内へ進撃していた。メアたちはその途中で軍を離れ、ミューレリアが救出を頼んだロミオを探すためマグノリア家へ向かった。

連れ去られたロミオ

マグノリア家へ到着した時、ロミオはすでに何者かによって連れ去られていた。屋敷の警備兵は壊滅しており、目撃された犯人は二メートルを超える長身で全身に傷を持つ凶暴な男だった。その特徴から、フランたちはゼロスリードの可能性が高いと考えた。しかし転移を使うゼロスリードをウルシの嗅覚で追うことはできず、手掛かりは途絶えた。フランは今後再会した時にはゼロスリードを倒し、ロミオについて聞き出すため、さらに強くなることを決意した。

第四章 メアとフラン 

キアラの棺

王都へ入ったフランたちは、先に戻っていたミアノアと合流した。師匠は次元収納からキアラの遺体を取り出し、用意された棺へ横たえた。獣人国では死の直後に魂が神のもとへ旅立つと考えられており、看取った者が来世の幸福を祈ることが最も重視されていた。そのため葬儀は遺された者が死を受け入れるための意味合いが強く、神官も関与しなかった。キアラの葬儀は、帰還する獣王を待って四日後に行われる予定であった。

クランゼルへの帰還予定

ミアノアは、獣王が帰還に使う快速艇へフランを乗せ、グレイシールからバルボラへ向かえるよう手配できると伝えた。フランはクランゼル王国のオークションへ参加する約束があるため、キアラの葬儀を待たずに出発することを決めた。メアは別れを惜しんだが、残る数日を一緒に遊ぶことに気持ちを切り替え、フランは王宮のメアの隣室へ泊まることになった。

王城での模擬戦

王都での初日、フランとメアは観光や食事に加え、王城の訓練場で模擬戦を行った。二人は次第に熱中して魔術やスキルまで使い始め、訓練場を大きく損傷させたが、フランと師匠にとっては改修後の力を扱う良い訓練となった。特に肉体操作や火炎への対応が上達し、フランは火傷耐性も習得した。

剣王への転職

神殿で転職可能な職業を確認すると、フランには剣王、聖戦士、大魔導士、天忍、天魔闘士などの上位職が現れていた。フランは迷わず剣王を選び、剣士としての能力を大幅に高める代わりに魔力収束を失った。新たに固有スキル剣神化を得たため、今後はフランが近接戦、師匠が魔術面をより強く担う形となった。

焔滅騎士と王級職

メアも火焔騎士から焔滅騎士へ転職していたが、攻撃力が高まる一方で制御が難しくなる危険な職業であった。フランが剣王になったと知ると、メアとクイナは王級職に就いたことに驚いた。剣王は戦闘系職業の最上位に位置し、獣王の槍王と同格の希少な職業であった。

剣神化の危険性

メアは剣神化について、獣王が持つ槍神化を例に警告した。神化系スキルは使用者を大幅に強化し、武器へあらゆる耐性や無効化を突破する神属性を与える一方、制御が極めて難しく、使用者と武器の双方へ甚大な負担を与えるものであった。獣王も初使用時に竜を倒したものの、その余波で仲間を死なせており、現在でも十秒ほどしか維持できなかった。

荒野での剣神化

フランと師匠は人のいない荒野へ移動し、剣神化を試した。発動すると外部から圧倒的な力が降り注ぎ、フランと師匠の双方が制御に苦しんだ。数秒使用しただけでフランは激しく消耗し、師匠の耐久値も一秒ごとに千以上減少したうえ、神属性による損傷のため修復速度まで低下した。実戦では五秒以上の使用は危険だと判断された。

神の剣技

休息後、二度目の剣神化では大岩を斬って性能を確認した。発動したフランの動きは、それまでの剣王術すら未熟に思えるほど完成されており、単純な歩法と斬撃だけで巨大な岩を滑らかに両断した。フランと師匠は、剣神化が単なる能力強化ではなく、剣の神が持つ遥かな剣理を一時的に示す力だと実感した。自分たちとの差を思い知らされた二人は、さらに鍛錬を重ねることを決意した。

慰労会への依頼

王城へ戻ったフランは、宰相レイモンドから戦争の防衛部隊を労う慰労会への参加を頼まれた。真の目的は、ドレスを嫌がるメアにフランと一緒なら着てもらえると考えたためであった。食事が自由に楽しめると聞いたフランは参加を承諾し、メアが以前着ていたドレスを借りることになった。

フランのドレス姿

ミアノアの手で化粧と着付けを受けたフランは、青と白を基調とした華やかなドレス姿となった。髪も結い上げられ、ティアラを着けたが、本人は見た目より動きにくさを気にしていた。師匠が白雪姫に例えると、フランは毒を見抜けずキスで目覚める物語の仕組みに疑問を抱いていた。

獣人たちの慰労会

慰労会ではフランとメアのドレス姿が注目を集めたが、近づいてきた若者たちは二人の実力を知って次々と退散した。フランは宮廷作法を身につけていたため、美しい食事作法まで披露して周囲を驚かせた。その後は獣人国らしく料理を巡る豪快な宴となり、フランとメアも大柄な兵士たちを押しのけて料理を確保した。

歴戦の将たち

会場には防衛軍を率いた紫風象の老将バラベラム、白犀族の族長リグダルファ、宮廷魔術師リュシアス・ローレンシアらも出席していた。いずれも高い戦闘能力を持っており、特にリュシアスは大地魔術の使い手ながら邪術とは無縁で、穏やかな人物であった。

リンフォードの息子

慰労会後、フランはリュシアスを訪ね、リンフォード・ローレンシアについて尋ねた。リュシアスは自らがリンフォードの息子であると明かし、父の行いについて謝罪した。フランは自分たちがリンフォードを倒したことを正直に伝えたが、リュシアスは怒るどころか涙を流して感謝した。彼は邪術師の息子として長く迫害され、父を追い続けて自ら討とうとしていたのである。

長年の復讐の終わり

リンフォードの死を知ったリュシアスは、ようやく母の墓へ報告できると涙を流した。リグダルファも友の苦しみを終わらせたフランへ礼を述べた。フランは真実を伝えたことでリュシアスの長年のわだかまりを解くことができた。

最高位勲章の提案

その後、レイモンドと財務大臣グイーサはフランへの褒賞について説明した。当初は男爵位と領地を与える案もあったが、獣王がフランは望まないと止めていた。フラン自身も貴族になる意思を示さず、黒猫族についてはグリンゴートの領主に任せると答えた。

メアの特命

フランは正式な依頼や命令を受けず自発的に参戦していたため、法的には他の現地協力者と同じ報酬しか与えられなかった。そこで獣人国側は、メアの特命を受けてフランが魔獣軍を阻止した形に変更する案を提示した。これによりフランの功績と黒猫族の名声を広めつつ、メアの功績も高められることになった。

黄金獣牙勲章

国側の案を受ければ、フランには国家最高位の黄金獣牙勲章と一〇〇〇万ゴルドが与えられる予定であった。同じ勲章はキアラにも贈られることが決まっており、生存者への授与は三〇〇年ぶりとなるほどの栄誉であった。フランは自分への金銭を減らしてでも黒猫族を助けてほしいと願った。

冒険者ギルドの提案

一方、冒険者ギルドから特別依頼を受けていた形にする案も示された。こちらでは勲章と国からの高額報酬を失い、報酬も五〇〇万ゴルド程度となるが、冒険者ギルドへの大きな貸しとなり、ランクBへの昇格が確実視されていた。ギルドはダンジョンと魔獣を利用した侵攻への対応が不十分だったと考え、自らの存在感を示す機会を求めていたのである。

キアラと同じ勲章

二つの案を提示されたフランは、一晩考えることもなく国の勲章を選んだ。理由はキアラと同じ勲章が欲しかったからであった。冒険者ギルドには代わりに大量の魔獣素材を売却することになり、ギルド側が解体費を負担して王城へ解体人と査定係を派遣する段取りが整えられた。

王族の大浴場

交渉後、フランはメアに王族用の大浴場へ案内された。巨大な湯船や魔法植物を使った薬湯など豪華な設備が整っており、二人は互いに体や髪を洗いながら親しく過ごした。師匠も一緒にいたが、元人間で周囲を見ることができると知ったクイナから注意され、風呂を出るまで天井を見続けることになった。

メアとの晩餐

風呂の後、フランはメアの部屋で晩餐を共にした。肉食系獣人であるメアに合わせて料理はほぼ肉尽くしであり、フランとウルシも次々と料理を平らげた。種族によって食の好みは異なり、獏の獣人であるクイナは野菜を好むなど、獣人国ではそれぞれの嗜好に合わせた食文化が存在していた。

第五章 黒猫族の英雄

グリンゴートへの救援

王宮滞在二日目、グリンゴートが再び邪人に襲われたとの知らせが届いた。フランが救援へ向かおうとすると、国民の危機を知ったメアとクイナも同行を決めた。三人はリンドに乗り、休憩も挟まずグリンゴートへ急行した。

邪人とゾンビの混成部隊

グリンゴート目前で、フランたちは五人の冒険者がゴブリンと獣の群れに襲われているのを発見した。フランとウルシはリンドから離れて救援に入り、冒険者を回復しながら敵を短時間で殲滅した。しかし倒した熊や狼は戦闘前から腐敗しており、死霊魔術で動かされたゾンビであることが判明した。

監視役のイビル・ゴブリン

フランたちは遠方から自分たちを監視する気配を察知し、転移で追跡した。監視者は黒い肌を持つイビル・ゴブリンであり、戦闘力自体は低かったため簡単に倒された。死霊と複数のイビル・ゴブリンが連携していることから、その背後にさらに上位の存在がいる可能性が強まった。

城門への襲撃

グリンゴートでは、メアとクイナがすでに邪人の群れを撃退していた。敵にはミノタウロスやオーク、ゾンビ、複数のイビル・ゴブリンが混じり、破城槌まで使って城門を攻撃していた。メアの火炎魔術によって危機は退けられたが、クイナは周囲への被害を考えず高威力の炎を放ったことを戒めた。

北から来た敵

冒険者ギルドで情報を整理すると、敵は北から現れ、半数を失っても逃げずに戦い続けていたことが分かった。メアたちは、まだ敵を支配する存在が残っている可能性を疑った。フランもシュワルツカッツェへの危険を案じ、メアと敵の親玉を探すことになった。

サリューシャの決意

出発前、フランは避難中の黒猫族を訪ねた。サリューシャは槍から剣へ持ち替え、フランやキアラのように強くなることを目標にしていた。フランはその決意を肯定し、サリューシャなら強くなれると励ました。他の黒猫族にも戦う意志が芽生えており、フランは彼らの変化を喜んだ。

シュワルツカッツェ周辺の捜索

フランとウルシはシュワルツカッツェ周辺を広く捜索したが、邪人の痕跡は発見できなかった。強力な魔獣もほとんど残っておらず、敵はすでに別の場所へ移動したと考えられた。フランたちは一度グリンゴートへ戻り、他の探索隊の情報を確認することにした。

Side サリューシャ

火魔術への挑戦

フランを見送ったサリューシャは、火魔術を習得するため焚火の前で訓練を続けていた。何度試しても魔術は発動せず、手を火傷するほど無理をしていたが、フランとキアラへの憧れから諦めようとはしなかった。黒猫族でも強くなれることを知った以上、自分も変わりたいと願っていた。

都市内部の異変

突然、グリンゴート内部から爆発音と巨大な咆哮が響いた。黒猫族はすぐに非戦闘員を宿へ避難させ、武器を持つ者たちは迎撃に備えた。やがて黒い肌のゴブリンとゾンビが通りへ現れ、都市内部へ敵が侵入していることが明らかになった。

サリューシャの初陣

サリューシャは赤犬族の元兵士を助けるため、初めて実戦で剣を振るった。最初の一撃は浅かったものの、敵の注意を逸らし、元兵士と連携して黒ゴブリンを倒した。続く戦いでは黒猫族同士で盾と槍を組み合わせ、フランから教わった戦い方を実践した。

黒猫族の危機

敵の数が増えるにつれ、周囲の獣人たちは次々と傷つき、黒猫族にも被害が出始めた。仲間のショーンが胸を槍で貫かれたことで皆は冷静さを失い、連携が崩れて次々と倒された。十二匹の黒ゴブリンに包囲された黒猫族は、戦意まで挫かれかけた。

サリューシャの火魔術

死を覚悟したサリューシャは、フランとキアラに救われた命を無駄にできないと仲間を鼓舞した。その瞬間、頭の中に火魔術の詠唱が浮かび、初めてファイア・アローを発動した。炎は黒ゴブリンの顔を焼き、仲間たちはその隙を逃さず敵を仕留めた。サリューシャは自分たちにも教えが身についていることを実感した。

再び現れた英雄

怒った黒ゴブリンがサリューシャへ斬りかかったが、その首は攻撃が届く前に刎ね飛ばされた。戻ってきたフランが間に合ったのである。サリューシャは、その姿に自分たちを救った時のキアラを重ねた。

黒猫族の救出

グリンゴートへ戻ったフランは、都市内部に邪人と死霊が溢れ、冒険者ギルドまで炎上している光景を目にした。転移の制御を誤って予定より高い位置へ出たものの、サリューシャの火魔術が作った隙によって間に合い、イビル・ゴブリンたちを全滅させた。さらに範囲治癒でショーンを含む負傷者たちを救い、ウルシを黒猫族の護衛として残した。

黒い巨人

フランが冒険者ギルドへ向かうと、都市を破壊しながら進む十数メートルの黒い巨人が現れていた。メアとクイナはリンドから火炎魔術を浴びせていたが、巨人を覆う黒い障壁に阻まれていた。その姿は、バルボラで戦ったリンフォードの成れの果てである漆黒の巨人と酷似していた。

冒険者ギルドの壊滅

巨人を追う前に、フランは崩壊した冒険者ギルドの瓦礫から生命反応を察知した。師匠が瓦礫を念動で除き、フランがギルドマスターや職員たちを救出した。ギルドマスターは仲間を庇って重傷を負っていたが、回復魔術で危険な状態を脱した。

魔石に仕掛けられた罠

ギルドマスターによれば、最初に倒されたイビル・ゴブリンの魔石には、長距離転移を補助する細工が仕込まれていた。敵は魔石を戦利品として都市内へ持ち帰らせ、さらに冒険者たちが周辺探索へ出て町の防備が薄くなることまで見越していた。魔石が砕けると転移魔法陣が発動し、黒い巨人が冒険者ギルド内部へ出現したのである。

巨人が生み出す軍勢

ギルドマスターは、都市内のイビル・ゴブリンやゾンビも黒い巨人が生み出していると説明した。残った敵は市民や兵士でも対処できるため、まず巨人を倒して増援を止める必要があった。フランは巨人が領主マルマーノの館にある結界の起点を狙っている可能性を考え、町中で大規模攻撃を使わずに仕留めることを決めた。

メアとの合流

フランは巨人を追って空中跳躍で進み、上空から攻撃を続けるメアたちへ近づいた。フランに気付いたメアはリンドを寄せ、巨人を倒すため力を貸してほしいと呼びかけた。

 第六章 成長の証 

黒い巨人への作戦

フランたちはリンド上で情報を交換し、黒い巨人がリンフォードの邪神化した姿と酷似していることを確認した。メアは以前の攻撃で障壁を破った際、巨人の内部に邪神石に似た核を見ていた。巨人本体の障壁と肉体、さらに邪神石を覆う障壁を突破する必要があり、フランは未熟な剣神化を使わずに仕留める作戦を提案した。

クイナの陽動

最初にクイナが巨人へ接近し、体術と幻像魔術で攻撃を引きつけた。巨人はクイナを捕らえられず、苛立って大量の魔力弾まで放った。その間にメアとフランは、それぞれ上空で大技の準備を進めた。

メアの金火

巨人がクイナへの大技を使った隙に、メアはリンドの炎を自らの白金の炎へ重ね、金火の剣を完成させた。リンドの速度を乗せた一撃で巨人の障壁を切り裂き、そのまま脇腹へ金火を叩き込んだ。巨人は全身を白金の炎に包まれたが、反撃の無数の魔力弾によってリンドの実体化が解かれ、メアも落下した。クイナが救助へ向かったため、フランは巨人への攻撃を続けた。

収束したカンナカムイ

フランは不安を抱く師匠に、失敗しても自分が邪神石を斬ると告げた。その言葉で覚悟を固めた師匠は、ミューレリアが見せた制御を参考にカンナカムイを一点へ収束させた。細く絞られた極雷は巨人の左上半身を破壊し、内部の巨大な邪神石を露出させた。

天断による邪神石の破壊

覚醒閃華迅雷を発動したフランは、師匠と一体となって急降下した。補助魔術や属性剣、加重操作に加えて濃い青い光を纏い、剣王技・天断を放った。その一撃は巨人の障壁ごと邪神石を真っ二つに断ち、巨人の動きを急激に鈍らせた。

死霊巨人への変貌

死の間際、巨人は大規模な魔法陣を発動し、漆黒の魔力に包まれて肉体の大部分を再生した。しかし鑑定結果は邪神人からイビルジャイアント・レッサーゾンビへ変化しており、自らを死霊化して生き延びたことが判明した。能力は大きく低下していたものの、巨体と高い生命力を維持したまま再び動き始めた。

黒雷と極雷の合体攻撃

フランと師匠は、黒雷招来と収束したカンナカムイを重ねた合体攻撃を放った。白い極雷と黒雷が絡み合って巨人を直撃し、頭部を吹き飛ばしたが、死霊巨人はなお再生を始めた。フランと師匠の魔力はほぼ尽き、メアも意識を失っていた。

増殖するゾンビ

死霊巨人は周囲の死者を次々とゾンビ化させ始めた。死霊化の範囲は広く、放置すればグリンゴート中にアンデッドが増え続ける状況となった。これ以上の被害を防ぐには、消耗した状態でも巨人を即座に倒す必要があった。

剣神化への覚悟

フランは最後の手段として剣神化を使うと決めた。師匠は危険性とフランの消耗を理由にためらったが、皆を助けるというフランの決意を止められなかった。師匠も負担を引き受ける覚悟を決め、二人で一瞬だけ剣神化を使うことにした。

死霊巨人の最期

剣神化したフランは巨人へ突進し、一閃で首を断った。単に首を斬っただけではなく、神属性を斬撃から体内へ浸透させ、巨人を死霊として成立させていた術式と魔力そのものを破壊したため、巨人は完全に停止した。

剣神化の反動

勝利と引き換えに、フランの全身には裂傷や筋肉の断裂、骨と肉の剥離が生じた。フランは師匠を守るため、剣神化の負荷を自ら多く引き受けていたのである。神属性の影響で治癒魔術やポーションも効きにくく、師匠は自らの判断を悔やみながら必死に治療を続けた。

祈りを込めた治癒

魔力が尽きかけた師匠は、フランの存在そのものを内側から癒すことを意識してグレーターヒールを発動した。従来より大きな治癒効果が現れたため、さらに死霊巨人の死体から魔力を強奪して補給しながら治療を重ねた。約十分後には傷の大半が塞がり、フランは意識こそ戻らないものの危険な状態を脱した。

黒猫族への帰還

メアとクイナも生還し、フランの無事を知って安堵した。残る邪人への対応はメアたちに任せ、フランは黒猫族の避難場所へ運ばれた。サリューシャたちは眠ったフランを心配したが、師匠は護衛をウルシに任せ、自身も回復に努めた。

翌朝の目覚め

フランが目を覚ましたのは翌朝であり、最初の言葉は空腹を訴えるものだった。大量の肉を食べたものの消耗は完全には抜けず、本来の二割程度しか力を出せない状態だった。それでも次元収納や回復魔術を使い、グリンゴートの復興を手伝った。

サリューシャとの約束

王都へ戻る必要があるため、フランは黒猫族に別れを告げた。サリューシャはいつか自分が強くなり、フランに会いに行くと約束した。その言葉から、黒猫族が守られるだけの存在ではなく、自ら強くなろうとしていることを感じたフランは珍しく大きく微笑んだ。

メアとの最後の夜

王都へ戻ったフランの部屋には、寝間着姿のメアが待っていた。メアは最後の夜を一緒に過ごしたいと頼み、フランはウルシも交えて眠ることを受け入れた。二人はこれまで戦った魔獣や危機の話をしながら、獣人国での最後の夜を過ごした。

黄金獣牙勲章

翌朝、フランには北方侵攻への対処とグリンゴート救援の功績を称え、最高位の黄金獣牙勲章が授与された。ウルシにも特別功労従魔勲章が贈られた。さらに黒猫族には国家による人権と生活の保障、武具の支給、戦闘指南役の派遣が決まり、フランへの一〇〇〇万ゴルドの報奨金も維持された。

キアラとの別れ

出発前、フランは安置されたキアラの遺体を静かに見つめた。涙も言葉もなかったが、部屋を後にする時には力強い表情へ変わっていた。フランはキアラへの別れを済ませ、師匠とともに前へ進むことを選んだ。

リンドとの空の旅

フランはメアと二人でリンドに乗り、港町グレイシールへ向かった。リンドは炎を推進力にして高速飛行し、メアは王亀の群れや翡翠湖、境界山脈など獣人国の景色を案内した。フランは国で経験した辛い出来事を抱えながらも、メアがいるからまた必ず戻ると約束した。

エピローグ 

獣王との再会

港町グレイシールに到着したフランとメアは、帰還していた獣王と再会した。獣王とメアは軽口を交わしながら互いの成長を確かめ、親しい父娘らしい関係を見せた。

王級職同士の挨拶

獣王は突然槍を振り下ろしてフランを試し、フランも即座に回避して反撃した。互いに王術だけを用いた一瞬の攻防によって、獣王はフランが剣王術を得て剣王となったことを見抜いた。さらに、強者ほど警戒心の薄さから実力を悟られることがあるため、力を隠すなら周囲への警戒を意識すべきだと助言した。

獣王の感謝

獣王は、国を救ったフランへの恩は簡単には返せないと告げ、その手を取って深々と頭を下げた。王として最大限の敬意を示し、今回の助力に心から感謝した。

獣王からの餞別

国からの報奨金とは別に、獣王は個人の金として五〇〇万ゴルド入りのアイテム袋をフランへ渡した。国庫を自由に扱うことはできず、文官たちの働きを尊重しているため、個人的な礼として用意したものだった。

キアラへの言葉

出航を前に、獣王たちはキアラの最期についてフランに礼を述べた。獣王は、キアラが進化を果たし、強敵と戦い、満足して戦場で死ねたのはフランがいたからだと語った。フランはキアラを死なせたのではなく、望んだ最期へ導いたのだと励まされた。

剣神化への忠告

獣王は剣神化の力に溺れないよう忠告した。槍神化を持つ自身の経験から、神化は単なる強化ではなく、王術を得た者にさらなる高みを示す道標であると考えていた。フランも、いつか剣神化した時の自分自身へ追いつくと決意した。

メアとの別れ

フランとメアは互いの手を取り、困った時には必ず駆けつけると約束した。別れを前に二人とも涙を浮かべたが、これが最後ではないと言い聞かせ、互いの涙を堪えながら再会を誓った。

クローム大陸からの出航

出航の鐘が鳴ると、フランは迷いを断ち切るように快速艇へ駆け上がった。甲板と桟橋からフランとメアは無理に笑顔を作り、感謝と再会の言葉を交わした。快速艇がグレイシールを離れて姿が見えなくなっても、フランは獣王やメアたちへ向けて長く手を振り続けた。

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