小説「異世界のんびり農家 3巻」新しい家族がまた出来た 感想・ネタバレ

小説「異世界のんびり農家 3巻」新しい家族がまた出来た 感想・ネタバレ

異世界のんびり農家 3巻

Table of Contents

どんな本?

異世界のんびり農家とは、内藤騎之介氏による日本のライトノベル。

小説家になろうにて連載されており、書籍版はKADOKAWAから刊行されている。
また、剣康之氏が作画をしている漫画版もあり。
月刊ドラゴンエイジにて連載されており、現在は11巻まで発売されている。
また、異世界のんびり農家の日常というスピンオフ作品もあり。
こちらの作画はユウズィ氏が担当している。

アニメ版もあり。
アニメ版全12話
2023年1月6日から3月24日まで放送された。
各話のタイトルやあらすじは[こちら]。

物語は、闘病の末に死んだ男性・火楽が、神によって異世界に転移し、農業生活を送るというもの。
彼は神から「万能農具」という特別な道具を授かり、死の森と呼ばれる危険な場所で農地を開拓していく。
そこで出会った吸血鬼や天使、エルフや竜などの様々な種族と交流し、やがて「大樹の村」というコミュニティを作り上げていく。

作品の特徴は、タイトル通りの「のんびり」とした作風であり、戦争や陰謀などのトラブルに巻き込まれるような展開は少なく、主人公が農業や料理を楽しんだり、仲間や家族と触れ合ったりする日常が描かれている。
また、主人公が前世で得た知識や技術を活かして異世界の文化や産業に革新をもたらす場面もある。

出版情報

出版社KADOKAWA
発売日:2018年07月05日
判型:B6判/452ページ
定価:1,430円(本体1,300円+税)
ISBN:9784047352216

読んだ本のタイトル

#異世界のんびり農家  03
著者:#内藤騎之介 氏
イラスト:#やすも 氏

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あらすじ・内容

「村の発展に尽力したい!」
新しい村の発展のため、『万能農具』で畑を拡張、さらに村の整備も整えていく。
そこへ、突然やって来た天使族の長の娘が、村長・火楽(ヒラク)に試練を課すも……!?
火楽(ヒラク)の子どもが新たに誕生し、『大樹の村』はさらに活気あふれていく!!
シリーズ累計25万部突破!!!!
農業で異世界を切り拓く、スローライフ・ファンタジー第三弾!!!!

異世界のんびり農家 03

感想

突然やって来た天使族の長の娘が、天使族と人間族の間に妊娠した事に抗議をしに来て。
試練を押し付けて来たが、、

全ての試練を主人公はアッサリクリアするが、天使族の使者の立場からしたら認める訳には行かない。
それで苦し紛れに不正を働いて、、

それにキレたドラゴン、吸血鬼、天使にメンチを切られてガクブル。
((((;゚Д゚)))))))

それで試練は全てクリアした事になり天使族は去ったが、、
何故か天子族の族長の娘はちょくちょく村に来るようになった。
そして立場がキツいとグチるww

そして、巨人族の住む洞窟の奥からモンスター達が溢れ出して来た。

それを暴れたりないドラゴンがストレス発散のために奥にカチコミをかけたら、、

死霊王がいたのだが、ドラゴンの聖属性のブレスを浴びた結果。

属性が反転して5歳児くらいになって、家族として受け入れられ。

この子はウルザと名付けられ。
元気の良いお父さん、お母さん大好きっ子な長女になる。

ただみる人から見ると、かつて魔王と相討ちになった英雄女王ウルブラーザだとわかるらしい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

【序章】過保護なグライム

新たな主との出会い

グライムは神より与えられた名を持つ存在であったが、近頃は万能農具と呼ばれていた。神の指示で新たな主に仕えることになり、その主が普通の人間であることに疑問を抱いた。しかし主には神の加護が与えられており、問題はなかった。長らく倉庫で眠っていたグライムは、森を切り拓き畑を作る勤勉な主に仕え、共に働く日々を送った。

仲間の増加と過保護な思い

主はインフェルノウルフと暮らし始め、やがてその子らも加わった。さらに強大な蜘蛛や吸血鬼の娘、天使族の娘らが現れ、共に生活する者が増えていった。グライムは戦いに向かぬ性格の主を案じ、守るべきだと周囲に思いを寄せた。ワイバーンが襲来した際には、自らの本来の姿が神槍であることを自覚し、主に使われる覚悟を示した。

名への執着と村の発展

魔族や竜族が挨拶に訪れ、竜族ドライムの名に内心反発しつつも何もできなかった。その後、吸血鬼の娘と天使族の娘が子を産み、主の仕事量は増えた。グライムは自らの力に頼りきりにならぬよう配慮する主の姿勢に不満を覚えながらも、他の村を築く大仕事を支え、自らの必要性を確信した。

日常への回帰と変わらぬ忠誠

釣り道具にはなれぬと管轄の違いを主張しつつ、武器として使われぬことや他の武器を持つ主を嘆いた。しかし農作業や玩具作りに励み、主との生活を楽しんだ。神の世界に戻ることを思いながらも、当面は主と共にある決意を固め、これからも仕え続ける覚悟を示した。

【一章】一年の終わりと始まり

1 冬です

三つの村で迎える初めての冬

強烈な雪と共に冬が訪れた。三ノ村の完成が遅れていればケンタウロス族が危機に陥るところであったが、食料の運び込みと防寒対策は万全であった。屋根の雪下ろしや川の増水、水路計画などを確認しつつ、安全重視で冬を乗り切る方針を示した。また各村の長と呼称が重複する問題から王や大村長といった案が出されたが、本人は難色を示した。

クロの子供たちと警備体制

一ノ村から三ノ村に二十頭ずつ配置されたクロの子供たちが警備に当たり、クロゴは遊撃隊として連絡員の露払いを担った。家の中ではクロとユキが寒さを避けて過ごし、冬の間は外出を控える日々が続いた。食料は十分に備蓄していたが、クロの子供の増加で不足しかけたところを、ハクレンとラスティが南で獲った大魚により解決した。

見回りと新たな仲間の構想

見回り範囲の拡大により、空からの監視は可能でも地上の密度不足が懸念された。冬は大型のみ警戒する方針とし、春にはグランマリアが天使族の友人を招く計画を許可した。さらに牧場の馬が自らを乗せるようになり、乗馬を楽しんだが、グルーワルドの視線に気まずさを覚えた。

冬の作業と創作活動

冬眠するザブトンを横目に、褒賞メダルの増産や生活用品の製作に励んだ。装飾過多の木製コップは実用品に向かず贈答用とされたため、希望者分を作ることになった。各村の社や像を整え、躍動感あるザブトン像は子供たちに好評であった。

新たな命の誕生と覚悟

リア、リゼ、ラファの三人のハイエルフが妊娠し、続いて鬼人族メイドのアンも妊娠が判明した。各種族は祝祭のような騒ぎとなり、父としての責任を自覚した。決意を新たにする中、女性たちに部屋へ追い込まれながらも、冬の日々は賑やかに続いていった。

2 冬の間のトラブル

四天王グラッツの来訪

冬の間に発生した問題の一つは来客であった。魔王国四天王の一人グラッツが腕試しを求めて来訪した。武闘会優勝者は冬眠中であり対戦相手に困ったが、最終的に獣人族のセナが相手を務めて勝利した。村は余興のように盛り上がったが、真の問題はその後に起きた。

ロナーナへの求婚

グラッツはミノタウロス族のロナーナに求婚した。治療を通じて惹かれたらしく、自身も同族であると明かして熱意を示したが、ロナーナは村に身を捧げているとして即座に断った。それでもグラッツは諦めず、許可を求めて村長のもとに話が及んだ。村長は当人の意思を最優先とし、ロナーナが望むなら応援するが、強制は認めないと条件を示した。こうして二人は様子を見ることとなった。

四天王の居住宣言と妥協

問題はさらに続き、グラッツが村に住むと言い出した。四天王であり侯爵でもある立場を捨てるとまで宣言し、ビーゼルと激しく対立した。最終的に、ビーゼルが来村する際に連絡を取り、希望すれば訪問できるという妥協案で落ち着いた。帰り際に愛を語り尽くし、以後は通信を通じて文通を続けているらしい。村長は見守る立場を貫き、周囲にも干渉を禁じた。

新たな問題の兆し

そして三つ目の問題として、ドライムの弟ドマイムが逃亡してきた。冬の騒動はなお続く気配を見せていた。

3 ドマイムとクォン

逃亡してきたドマイム

ドマイムは人の姿で村を訪れ、宿に部屋を取り、ハクレンを呼んで酒を飲み始めた。結婚を強要されそうになり逃げてきたという。相手は従姉弟で自分より強く、幼い頃から苦手な存在であった。ところがその結婚相手クォンも人の姿で現れ、当然のように隣に座った。クォンは結婚を既定事項として挨拶し、ドマイムは硬直した。

粘るクォンと動揺するドマイム

クォンは自分が苛めているのではなく、約束を破られた被害者だと主張した。ドマイムは逃げ出そうとしたが、ヒラクは引き止めた。危険な気配を感じる以上、逃げても無駄だと諭し、結婚を前提に自分の条件を整理するよう促した。直接言えないなら紙に書けと提案し、部屋で思いの丈を書かせた。

クォンにも要求を書かせる

ヒラクはクォンにも同様に、ドマイムへの希望を書かせた。一方的な受容では夫婦関係は成り立たないと説き、互いに認め合う関係を築けるか問いかけた。クォンは真剣に受け止め、別室で書き始めた。

互いの気持ちの交換

翌日、ドマイムの超大作とクォンの二十枚ほどの紙を交換させ、添削なしで全て読むよう命じた。互いの本音をぶつけ合うことで関係は一歩進むはずだと考えたのである。その後、二人は揃って村を去り、ドマイムの表情は以前より晴れていた。

波及する相談

一件落着と思われたが、竜族のラスティは仲間外れにされたと拗ね、さらにセキレンが別の恋愛相談を持ち込んだ。竜族の騒動はこれで終わらぬ気配を残していた。

4 まだ冬

餅と善哉への挑戦

冬の味覚として餅作りに挑戦した。最初は蒸しに失敗し、次は食感が理想と違ったが、三度目にミノタウロスとケンタウロスの力を借りて成功した。砂糖醤油や黄粉で味わい、来年は餅米を増やそうと決めた。続いて善哉を試作し、七度目で満足の味に到達、餅を入れて完成形とした。恵方巻きも作り好評を得たが、節分の豆撒きは食料事情から断念した。餅は特に人気となった。

パラシュート実験

緊急時に備え、ラスティの協力でパラシュートの実験を行った。木箱とガラス瓶で安全性を確認し、酒スライムでも試した。落下は安定し衝撃も小さかった。人への適用は慎重に進めるとし、改良は春まで保留となった。

橋の改修

ケンタウロスの移動安全確保のため、雪が積もる橋の改修を行った。幅は変えず、丸太一本を削って側壁付きの新橋を制作。高さを調整し排水穴も設け、通行の不安を軽減した。連絡員たちは新橋を渡って各村へ向かった。

パニックカリブーとの遭遇

帰路、凶暴な鹿のような獣をクロの子供たちが追い立てた。ヒラクは万能農具のクワで仕留め、食料とした。肉は美味であったが再遭遇は難しく、七日目にようやく一頭を確保した。角は珍味とされるが、安全を優先し不用意な狩りは控えると判断した。冬はなお続いていた。

5 楽しい春

春の到来と食料確認

春を迎え、活動を再開したザブトンたちに挨拶しつつ各村の食料を確認した。大樹の村は問題なく、二ノ村は果実消費が多いが量は足りていた。三ノ村は子供の食事量を見誤り補充が必要となったが対応可能であった。収穫が例年通りであることを前提に、今後も備える方針とした。

会議と今年の方針

各村代表を集め、二ノ村と三ノ村の発展を優先すると通達した。水路とため池建設を急務とし、建築技術も自立できるよう学ばせる方針を示した。褒賞メダルは大樹の村の労働者に配布し、他村には三十枚ずつ渡して管理を委ねた。ラスティとハクレンには功績分として二枚ずつ追加された。

教育問題への対応

二ノ村と三ノ村では子供が多く教育が行き届いていなかった。読み書き計算の習得を目標に、大樹の村から教師役を派遣することを決めた。焦らず、各村での教育体制を整えていく方針とした。

移住者募集の継続

万能農具に依存する体制や男女比の偏りという将来不安から、移住者募集を継続することを確認した。農業技術の継承と世代の健全化を見据えた判断であった。

畑と果樹園の拡張

会議後、畑を三十二面×三十二面へ拡張し、薬草畑も維持した。ザブトンの子供たちは旅立ち、残る者に感謝した。果実エリアも広げ、各種果樹とカカオを植える計画とした。蜂の巣も順調で蜂蜜にも期待が持てた。

牧場の成長と次の行動

牧場では子牛や子山羊、鶏が増えた。将来的に肉とする予定であったが、現状は乳や卵を主に利用している。大樹の村での作業を終え、クロの子供たちを伴い二ノ村へ向かった。

6 何を育てる?

二ノ村の整備と作付け計画

ヒラクは二ノ村に社とクロ、ユキ、ザブトンの像を設置し、祈りを捧げた。改良した橋に運搬時の不便があると判明し、再改良を検討することとなった。完成した竹製水路を確認し、ため池と排水路を造成。畑は十六面×十六面で穀物中心に小麦やトウモロコシ、アワ、ヒエ、キビを作付けし、果実畑は八面×八面でミカンやモモ、リンゴなどを植えた。さらに山羊六頭を導入し、乳製品生産を優先する方針とした。

三ノ村の野菜中心計画

三ノ村にも像を設置し、ため池と水路を整備した。畑は十六面×十六面でニンジンやダイコン、ナスなど野菜中心とし、果実畑は八面×八面でモモを多めに配置した。鶏の飼育も開始し、四面×四面の放牧地と鶏小屋を整え、十羽を移送した。最初の鶏は繁殖を優先させることとした。

防備とクロの旅立ち

両村の家周辺を堀と柵で囲い、防備を強化した。作業を終えて大樹の村に戻ると、前年生まれのクロの子供百頭ほどが旅立った。寂しさを感じつつも残る者に感謝し、クロやユキたちと触れ合った。

大樹の村の改築と多忙な春

大樹の村ではヒラクの家の大規模改築が始まった。木と石を用いた構造で増築し、風呂も設ける計画であった。二ノ村と三ノ村からも建築の応援が来た。収穫期が到来すると改築は一時中断し、畑作業を優先した。酒用の畑は残しつつ、各村の需要を見据えて更なる作付けに備えた。春は喜びと共に忙しさも増していた。

7 ニノ村と三ノ村の扱い

収穫物の帰属と方針の再確認

ヒラクは、二ノ村と三ノ村の収穫は各村のものと考えていた。しかし実際には、両村の収穫物はすべて大樹の村の村長であるヒラクの所有とする前提で動いていた。三ノ村の世話役ラッシャーシの説明によれば、両村は独立を望んでおらず、庇護下にある方が安全だと考えているという。防衛はクロやザブトンの子供たちに依存し、生産基盤もヒラクが整えた現状では、独立より従属の方が安定するという判断であった。ヒラクはその体制を承認した。

独立と責任の重さ

ヒラクは独立や自由が良いものだと無意識に考えていたが、自由には責任が伴うとラッシャーシに諭される。二ノ村も三ノ村も、将来的な独立は子供たちの成長後、十年から二十年先の話であるとされた。当面はヒラクが責任を負う立場となる。目の届きにくい場所に生活する者がいる現実に、ヒラクは命を預かる重みを自覚した。

各村の防衛体制

クロたちは大樹の村を中心に多数が生活しつつ、一ノ村、二ノ村、三ノ村に三十頭ずつ常駐し、さらに三十頭が巡回する体制を自主的に構築していた。ザブトンの子供たちも各村に五十匹ほど配置され、外敵の撃退や害虫駆除を担っていた。住人との関係も良好であり、防衛と農業の両面を支えていた。

日常の娯楽と交流

ヒラクはクロたちと遊び、ザブトンたちとは衣装制作を楽しんだ。貴族風の服が増えたが、ザブトンが満足しているため問題としなかった。ジャガイモパーティーも開かれ、生の芋を勧められつつも加熱の必要を説明した。

ニュニュダフネとの関係

ニュニュダフネは各村で木の姿となり連絡役を務めていた。存在感が薄いのは風景に溶け込んでいるためである。剪定を依頼されたヒラクは万能農具で対応し、その技術により崇められる結果となった。今後も定期的な剪定を約束する。

村内行事とかくれんぼ大会

大樹の村では第一回かくれんぼ大会が開催された。鬼人族がいるため「鬼」ではなく「死神」が追う形式となった。ヒラクは見つける役となったが、住人たちは隠れるのが非常に上手く、思うように見つけられなかった。ささやかな催しであったが、村全体が楽しむひとときとなった。

8 情報部?

ケンタウロス族の家族捜索依頼

ビーゼルが久しぶりに来訪し、ヒラクは三ノ村のケンタウロスたちの近況を伝えた上で頼み事をする。三ノ村に住む者たちの夫や親族の名を記した百名以上の一覧を渡し、戦火が収まりつつある地域で可能な範囲で探してほしいと依頼した。ビーゼルは状況を見て動くと応じた。

移住者問題と孤児の扱い

ヒラクは一ノ村の移住者確保について相談し、孤児の勧誘は難しいと説明を受ける。魔王領では孤児は制度的に保護され、卒院後の進路も確立しているため低く見られない。一方、他国では事情が異なり、女性が不利な立場に置かれる場合もあるという現実を聞き、ヒラクは暗い気持ちになる。

限界の自覚と新たな発想

世界中を救うことはできないと自覚しつつも、他国の不幸に対して何もできない現実に葛藤する。そこでヒラクは、他国に情報収集組織を持てないかと問う。魔族では目立ちやすいが、現地の人間を雇用するという発想に至る。寄付という形で資金を回し、現地協力者を確保する道を模索する。

資金確保とハクレンの鱗

ヒラクは村の資金に加え、ハクレンの鱗を売却して資金に充てることを決断する。ハクレンは了承し、十枚の鱗を提供した。ビーゼルはそれを大切に持ち帰る。偽善と呼ばれようとも、ヒラクなりの精いっぱいの支援であった。

孤児院網による情報収集の成果

数年後、魔王城では各地の変化がほぼ速報で集まる体制が整っていた。発案者とされるクローム伯の計画通り、各地に設立された孤児院が情報の拠点となっている。日記や日報という自然な形で集められた情報は疑われにくく、極めて有効であった。魔王国情報部は正式に稼働を開始する。

資金源の謎と噂

これほど多数の孤児院を建てる資金の出所は明確ではない。噂では、とある資産家が支援したとも言われているが、具体名は出ていない。いずれにせよ、孤児院は適切に運営され、慈善活動としての体裁も保たれていた。

戦略的優位の確立

集まる情報は軍事だけでなく物価など経済面にも及び、他国の動向が手に取るように把握できる状況となった。防衛戦においては圧倒的な優位を築けると評価される。ただし、この情報を侵攻に用いれば問題が生じるため、あくまで防衛と安定維持が前提とされた。

新たな標的と人材確保

ある有力者は、敵側に回れば厄介になりそうな優秀な人物の情報収集を依頼する。可能であれば味方に引き込み、少なくとも敵にしない方針である。情報網は軍事だけでなく人材確保にも活用され始めた。

魔王の存在感

高度な情報戦略が語られる中、魔王本人は会話に置いていかれたと嘆く。自らも交えた賢そうな会話をやり直すよう求める場面は、緊張感ある体制の裏にある余裕を示していた。魔王国は、表向き平和を保っていた。

孤児の姿が消えた理由

街角で、かつて道端で寝起きしていた子供たちの姿が見えなくなったことが話題に上る。彼らは街外れに新しく建てられた大きな建物へ移されたという。それは孤児院であった。

資金の出所と商会の関与

当初は領主の施策と思われていたが、実際には別の街の大商会が資金を出したと噂されている。商会の真意は庶民には分からないが、街の景観は改善されたと受け止められていた。

住民の本音と変化

表向きは「汚いガキを見なくて済む」と軽口を叩きつつも、以前は食べ物を与えていた事実もあり、気にかけている様子も見える。孤児院ではボランティアも募集されており、住民たちは関心を抱きつつ足を向けることになる。

孤児院の受容

各地に設立された孤児院は、概ね好意的に受け止められていた。表面上は街の治安と景観の向上として、内実では子供たちの生活基盤の安定として機能し始めていた。

閑話 クォルン

竜族の誇りと両親への複雑な尊敬

クォルンは竜族の男であり、自身の一族が名だたる血統に連なることを自覚している。父は歴史に名を残す竜族と比べれば地味だが、横柄な母に意見でき、怒りを鎮め、暴れる母に声を掛けられる点を尊敬している。母は美しく強大だが苛烈であり、クォルンは両親の関係を見て結婚に夢を抱けずにいた。

番の力と望まぬ婚約

竜族の女性には番を感じ取る力がある。クォルンは自分にはまだ番はいないと考えていたが、ドースの三女セキレンに見初められる。出会いの際に渡された大型魔物の丸焼きは好意の証であり、気付けば婚約者扱いになっていた。セキレンは美しく強いが、狩りやダンジョン攻略を好む気質に戸惑い、穏やかな関係を望むクォルンは苦悩する。

家族と友の反応

父は「慣れる」と励まし、母は孫を期待し、姉は結婚順を巡って圧をかける。唯一の心の支えはドマイムと、その兄ドライムであった。だが日々は流されるままである。

人間への畏怖と希望

衝撃の報せが届く。暴れ竜ハクレンが人間に嫁ぎ、さらにラスティスムーンもその人間の妻になったという。竜族二人を娶るその人物への尊敬と畏怖を抱く。同時に、その人間が姉とドマイムの仲を取り持ったと知り、奇跡の存在と認識する。

結婚への期待と覚悟

もしその人間なら自分の婚約問題も解決できるのではないかと期待する。しかし既にセキレンが向かったと知り、逃げるかと迷う。背後にはハクレンの気配が迫る。結局、クォルンは思ったほど悲惨ではない、むしろ幸せな結婚生活を送っていると振り返るのであった。

【二章】天使族と新しい子供

1 春夏の出来事

春夏の出来事と温泉調査

グランマリアは他の天使族に声を掛けるため村を離れた。クーデルとコローネは見張りのため残り、村の食事の魅力を理由に外へ出る気はないと語る。
その頃、北のダンジョンの巨人族からさらに北に熱い池があるという情報を得る。ヒラクは温泉と期待し調査隊を編成するが、自らの参加は止められ、ハイエルフを隊長とした二十名ほどが向かう。

三十日後、調査隊は疲労困憊で帰還する。道は険しく未知の魔物とも遭遇し、クロの子供も負傷した。発見した池は確かに熱湯であったが、熱過ぎて入浴は不可能であった。治癒魔法で手当てを施しつつ、ヒラクは軽率さを反省し、次は自ら赴く決意を固める。

防災訓練とバケツリレー

人口増加に伴い、防災対策を再確認する。火災を最重要とし、火元点検と消火方法を検証した。魔法による鎮火は可能だが、ヒラクは水を使った消火を訓練する。
水源から火元まで桶を運ぶバケツリレーを実施し、何度も水をかけてようやく鎮火する。体格差による課題も判明し、二ノ村や三ノ村にも伝える方針とした。先頭役は人気だが重労働であり、交代制の重要性も学ぶ。防災意識の高さを確認し、有意義な訓練となった。

第二回かくれんぼ大会

続いて第二回かくれんぼ大会を開催する。過度な本気や魔法使用を禁じ、ニュニュダフネにも姿の制限を設ける。だがクロやザブトンが「死神の手伝い」として待機し、ヒラクは全力で挑む。大いに盛り上がり、村の結束を深める催しとなった。

酒の販売とドワーフの思惑

村の酒の種類が増え、ドワーフたちは外部販売を提案する。理由は酒好きのドワーフを呼び込み、結果的に女性も増やしたいという思惑であった。現在四十一人中女性は四人であり、男女比の偏りが課題である。
ヒラクは酒の一部を外に売ることを承認し、マイケルは大いに喜ぶ。贈与と商売の違いについて議論しつつ、酒は村の新たな外部との接点となる。

こうして春夏の大樹の村は、冒険と訓練、娯楽と経済活動を通じて着実に変化を重ねていった。

2 今年のお祭り

今年のお祭りと来客騒動

麻雀の新王者はフラウレムとなり、魔王国四天王グラッツが挑戦者として台頭する。変則的な打牌と高打点で場を荒らし、ヒラクとブルガは翻弄される。ヒラクは辛うじて最下位を脱出。グラッツは麻雀牌の購入を希望し、魔王や王姫も遊べると判明して一組を持ち帰る。賑やかな来訪であった。

祭りの内容決定と滑走

武闘会が独立したため、新たな祭りを企画する。例年通りくじ引きで内容を決めた結果、「滑走」が当選する。下り坂を全力で走る競技であるが、村には適切な坂がない。却下を試みるも再抽選で再び滑走となり決定。小山造成や池掘削と組み合わせた大規模土木計画が必要となり、ヒラクは万能農具の出番を悟る。

駐在員の思惑と羨望

二ノ村のロナーナとミルア、三ノ村のケンタウロス駐在員たちは大樹の村で活動している。特にケンタウロス側は入れ替わりが激しい。その理由は「村長の傍で働ける名誉」と、外出時に乗せてもらえる可能性への羨望であった。力ある者に仕えることを誇りとする種族性が背景にある。

世話役たちの現状

ナーフ、ラッシャーシ、ラムリアス、マムの四名が各種族の世話役を担う。相談対応で忙しい者もいれば、比較的手がかからない担当もいる。頼られたいと願う声もあり、役割の在り方に微妙な差が生まれていた。

滑走計画の始動

滑走実現のため、小山造成や高低差確保などの具体策を練る。原型から変化しつつも、面白さを重視して計画は進行。ヒラクは大規模工事を引き受ける覚悟を決める。

大樹の村は、娯楽と土木と種族間の微妙な感情を抱えながら、今年の祭りへと動き出していた。

3 信仰とアンデッド

各村への神像設置と信仰事情

ヒラクは二ノ村に農神、三ノ村に戦神をはじめとする神々の像を設置した。既製品を取り寄せることもできたが、自作を選ぶ。
この世界では地域ごとに多様な神が信仰されており、それらを統合する宗派としてコーリン教が大きな勢力を持つ。理念は信仰の自由と相互尊重であるが、内部には創造神派を最大とする派閥構造が存在する。

始祖はそのコーリン教の要職に就いていると明かす。ヒラクは大きな驚きを示さないが、吸血鬼という立場上、誤解を避けるため公にしない方が良いとルーは助言する。

創造神のコップと始祖の反応

ヒラクが試作した創造神の彫刻入りコップは、実用性に難があるため飾られていた。始祖はその意匠を高く評価し、儀式用に持ち帰る。偶然の産物が宗教的象徴として扱われることに、ヒラクは戸惑いながらも受け入れる。

アンデッド発生の報告

始祖は山越えの北東で大規模アンデッドが発生したと警告する。距離は遠いが、念のため周辺にも伝達する。
アンデッドの正体は、実体を持たない魔物が死体や骨に取り憑いた存在であり、未練とは無関係であると説明される。

放置の是非と問題点

基本的には数年で自然消滅するため放置可能とされるが、問題もある。
第一にゾンビは衛生面の危険があり、水源汚染の懸念がある。
第二にアンデッドは魔物や魔獣の餌となり、それを目当てに強力な存在が集まる可能性がある。

ハクレンはブレスで一掃できると提案するが、周囲の地形に大きな影響が出るため却下される。当面は放置し、近隣から要請があれば対応する方針となった。

ヒラクはアンデッドよりも、それに群がる存在こそ警戒すべき対象だと理解する。

4 天使族の長の娘

死の大地と襲来者

『死の大地』『死の森』と呼ばれる地は、魔物や魔獣が鳥類を狩り尽くす環境ゆえに名付けられている。
その地に、天使族十名とハーピー族約三十名が来襲するが、ザブトンの子供たちの糸とクロの子供たちによって即座に制圧される。

来襲の理由は、ティアがヒラクの子を産んだことに対する抗議であった。主導したのは天使族の長の娘キアービットである。

天使族の事情と試練問題

天使族は基本的に女性のみの種族であり、種の存続には他種族の男性を必要とする。
しかし伝統として厳格な「試練」を設けた結果、突破者が現れず、試練を守る派と無視する派で対立が生じた。

キアービットは試練遵守派であり、ティアやグランマリアは事実上それを越えた立場となる。名誉や格式を巡る問題が、今回の突撃の背景であった。

戦力差と現実的判断

天使族全体は三百名ほどだが、即応可能なのは五十名程度。
現在捕縛している十名に対し、クロの子供たちとザブトンの子供たちを考慮すれば勝算は高い。
キアービットは報復として千や二千の協力勢力を匂わせるが、ヒラクは冷静に受け止める。

ハーピー族の転向

ハーピー族は命令に従っただけと主張する。
ヒラクはキアービットではなくグランマリアに忠誠を誓えば許すと提案し、全員が即座に従う。
食事と風呂を与えられ、彼女たちは事実上解放される。

天使族への心理戦

天使族は長の娘を裏切れば後日困るため沈黙する。
そこでヒラクは「キアービットに十の罰を科すが、謝罪一人につき一つ減らす」と宣言する。
キアービットを救う名目を与えられた天使族は全員が謝罪する。

最後にキアービット自身も涙ながらに謝罪する。
ヒラクはそれを受け入れ、「許す」と宣言。
キアービットは大泣きし、事態は収束した。

5 天使族の試練

試練の提示と即時クリア

キアービットは落ち着きを取り戻した後、天使族の試練が五つあると明かす。ヒラクはティアとの関係を認めさせるため、試練の内容を要求する。

第一の試練は財力であり、金貨七百七十七枚(この地域ではガルガルド金貨換算)を天使族へ寄付することだった。ヒラクは物納を選び、ゴルゴー石を提示する。価値は金貨千枚以上とされ、即座に条件を満たす。

知力試験とゲームの必勝

第二の試練は知力で、二十個の小石を使う「最後の一つを取った者が負け」「一度に一〜三個取る」ゲームで勝つことだった。
ヒラクは必勝法を理解し、先攻・後攻の選択権を利用して勝利を重ねる。天使族側の遊びである点、村での経験、前世の類似知識が重なり、勝負は一方的となる。

武力試験の正体とルーの登場

第三の試練は武力で「指定相手と戦い、生き残る」ことだった。勝利条件ではない。
キアービットが指定した相手は吸血姫ルールーシーであり、ルーが現れて挨拶し去るだけでキアービットは動揺する。ヒラク側は、実質的に「遭遇して無事でいる」ことが通過条件となった。

交渉力試験の空振りと偶然の解決

第四の試練は交渉力で、会話不能とされる「グルグラント山の王」との交渉が提示される。
その直後、竜族ドライムが来訪し、住む山がグルグラント山と判明する。さらにドライムは人見知りが強く「会話不能」の評判も一致し、試練は事実上成立しなくなる。キアービットは衝撃で気絶する。

運の試験とティアの介入

第五の試練は運で、天使族面が表のメダルを弾いて表を出せば成功という内容だった。
ヒラクが表を出すが、キアービットは「ヒラク以外が触るのは禁止されていない」として即座に裏返し、失敗を宣言する。
これにティアが介入し、キアービットを殴って制止したうえで、メダルを表向きにして地面に踏み込み、最終試練突破を強制する。キアービットは圧力に屈し、関係を認める。

試練が荒れる理由とキアービットの背景

試練の難度が長の一族の気分で変動するため、守らない者が出るとティアは指摘する。
背景として、現長(キアービットの母)は「顔だけの男」を低難度で通過させて結婚した過去があり、キアービットは父への劣等感から求婚者に過剰に厳しい試練を課して追い返し続けた。
その状況で、グランマリアが「試練未突破の相手の子を産んだ」と見えたことが、キアービットの怒りと嫉妬を増幅させた。

和解の試みと宴会への転落

一応の謝罪と礼を述べたいというキアービットと、ヒラク・ティアは食堂で酒を交えて話す場を設ける。
しかしキアービットは酒に極端に弱く、ドワーフたちも乱入して場は宴会化する。結局、肝心の対話は成立せず、ヒラクとティアはその日の話し合いを断念する。

6 キアービットとの話し合いとハーピー族

キアービットの素性と滞在形態

キアービットとハーピー族は一ノ村に宿泊し、食事のたびに大樹の村へ飛来する生活を始めた。家が空いている理由を問われ、ヒラクは情報共有不足を指摘される。キアービットはガーレット王国の巫女職であり、天使族が崇められる土地では王より上位の立場にあると語る。移住は仕事の都合で難しいが、グランマリアが声を掛けていた「暇な天使族」なら数名来る可能性が示される。

同行天使族の正体と強引さの自覚

今回同行した天使族は、グランマリアが勧誘していた面々ではなく、キアービットが話を聞いて自ら集めた娘たちだった。仕事があるのに集めて来た点をヒラクが咎めると、キアービットは「多少強引だった」ことを認める。感情的でなければ話が通じることも確認され、翌日に帰還する。

ハーピー族の扱いと追加受け入れ

ハーピー族は当初グランマリアに付く形で村に残る意志を見せたが、荷物移動や家族への説明のため、いったん全員がキアービットに同行して帰った。キアービットは「希望者のみ」「家族持ちは配慮」を条件に、追加のハーピー族を連れて来る提案を行い、ヒラクは受け入れる。

住居要件と生活文化の違い

グランマリアは、ハーピー族の居住には一ノ村が適しつつも、現行の家は不便が出ると説明する。ハーピー族はベッドで寝ず、止まり木か巣で休むため、屋根と壁付きの止まり木、扉の扱いやすさが重要となる。また、家族単位で暮らす一方、独身の若手は集団生活を好み、狩りの連携維持が背景にあるとされる。ヒラクは他種族にも潜在的不便がないか点検を依頼する。

綿の導入と衣服・寝具の改善

生活改善として綿に関する提案が上がる。従来の寝具はザブトン製の袋に草を詰める方式で、詰め替え頻度が高い欠点があった。これを綿に置換する案が採用され、来年は綿花畑を作る方針となる。また衣服について、ザブトンの布は高品質すぎて普段使いしづらいため、販売代金で古着を調達する仕組みが整う。結果として一人あたり複数着が配布され、不足時は追加調達とした。外部の服デザイン流入はザブトンの創作意欲を刺激し、新作衣装が増える。

滑走祭の造成作業の開始

祭り「滑走」実施のため、居住区西側で大規模造成が始まる。ヒラクは万能農具で細長い長方形の穴(幅約5m・長さ約50m、中央が深い)を掘り、入口へ誘導する細長い人工の丘(高さ約15m)を築く。コース幅は約4mに整形し、転落防止ガードを設置する。さらに反対側に水を溜める池を作る工程が残り、村総出で作業を進める。

7 新しい家

屋敷の完成と全体構造

ヒラクの新居は横幅約二百メートル、奥行き約百メートル規模の「家」ではなく貴族屋敷級の建物となった。レンガと木造の二階建てを基本に一部三階建てを含み、コの字を横倒しにした配置で五つの建物群に分かれる。中央には旧宅跡に相当する百メートル×五十メートルの玄関兼大ホールがあり、ミノタウロスでも屈まず入れる大型扉と、日常用の普通サイズ扉が併設された。

中央ホールの機能と防衛意識

ホールは雨天でも住民全員を集められる広さだが、強度確保のための大型柱が視界を遮る。二階は吹き抜けの維持管理用通路で、要所に弓矢の保管庫が置かれ、籠城を想定したような防犯設計が見える。展示棚には第一回武闘会優勝トロフィーがマクラ名義で飾られ、他種族が羨望する様子も描かれる。

右棟の食・住と地下食料庫

ホール右側の一階は食堂と台所、二階は鬼人族メイドの住居となった。地下には大規模な食料貯蔵庫が設けられ、供給体制が強化されている。屋敷規模が拡大した結果、主食堂が遠くなる弊害もあり、私室近辺にも小台所と小食堂が用意された。

会議・執務区画と居住の配分

会議室は机固定を避けて用途転換を可能にした。妊娠中のハイエルフ(リアたち)や鬼人族アンへの屋敷内居室提供も提案されたが、従来居住地を維持する意向で辞退される。フラウの屋敷内部屋は代官としての体面用に確保された。ホール左側にはヒラクの執務室兼私室、会議用途が集約され、書棚や応接的設備も整う。

来客棟・駐在員室と宝物化する武器庫

別棟は一階・二階とも来客用の八畳程度の部屋が複数並び、地下に食料庫と武器庫を備える。武器庫には剣・槍・弓・防具が保管されるが、多くがドライムやドースらからの贈答品で、実態は宝物庫に近い。地下通路はホール下を通ってメイド側食料庫と接続し、物資搬送と動線分離を両立させる。さらに執務室からのみ入れる金庫が地下深部に設置され、現金保管はあるが中身は金貨銀貨中心で控えめである。

浴場・倉庫・工房と研究室の分離

左奥棟の一階は風呂と資材倉庫で、二十人規模が同時入浴できる大浴場と広い洗い場を備える。外で沸かした湯を流し込む配管設計は山エルフの匠技とされ、個人用の小風呂も別途設置された。倉庫は木材・石材・草などの資材置き場だが湿気対策が構造で解決されている。二階はヒラクの工房と、ルー・ティア用研究室が置かれ、フローラの研究室は封印扱いとなる。

フローラ研究の隔離と生活拠点化

発酵食品(味噌・醤油)の完成を契機に量産小屋が居住エリアに作られたが、室内生産の臭気問題からフローラ研究小屋が屋敷外に独立して建てられた。フローラはそこに家具を持ち込み生活しており、食事時に顔を出さない点がヒラクの不満として残る。

三つの大きな変化:水道・トイレ増設・スパイダーウォーク

屋敷は井戸汲み中心の生活から転換し、屋上タンクとポンプ、配管で各所に水を配る簡易水道が導入された。規模の都合で五カ所設置され、朝の水汲み負担が激減してメイドを中心に評価される。トイレも大幅増設され、上階への設置も可能となったのは給水設備とスライムの働きによる。さらに天井部にザブトン子蜘蛛用通路「スパイダーウォーク」が屋敷のほぼ全域に張り巡らされ、女性個室以外への侵入を許しつつ、階移動・外部出入口まで専用動線が整備された。子蜘蛛たちは大喜びし、執務室の通路に群がって感謝を示す。

寝室の怪しい仕様と改修方針

ヒラクは寝室の防犯仕様に強い疑問を抱く。外側から鍵が掛かる、寝室と他室の間に人が通れる隙間通路がある、通路から覗ける、天井からも侵入可能な通路がある一方で寝室側から通路に出られないなど、扉方向や鍵設置ミスを疑う構造だった。結果として、天井侵入は塞ぐが隠し通路自体は残す方針となり、基本立入禁止としつつ「ザブトン子蜘蛛と緊急時のみ使用」という運用で落ち着いた。

8 滑走?試験

競技「滑走」の確定と会場構成

今年の祭り種目は滑走に決まり、会場として山・穴・池が完成していた。競技は、山頂からボードを携えて滑走し、穴に入る直前でボードに乗って加速、穴出口の跳躍で池へ飛び込み、池までの飛距離を競う方式である。ヒラクは「これが滑走か」と疑問を呈するが、文官娘は「原型はある」として押し切った。

安全設計と滑走面の工夫

武闘会より安全と判断され、穴内部の勾配は丸石を転がす反復試験で飛距離が出るよう調整された。穴の中には滑りやすくするための不燃性液体が塗布され、素材はハイエルフが草から絞った粘液であった。池の水量は十分だが、波で穴へ流入する恐れもあり、底部排水の必要性が示唆された。

試験開始とドノバンの転倒着水

試験は文官娘衆主導で開始され、くじ引きで一番手はドノバンとなる。ドノバンは走り出して転倒し、そのまま穴へ転がり込み、飛び出して池へ落下するが、大笑いして無事を示した。

ダガの理想跳躍と池拡張の検討

二番手ダガは躊躇なく全力疾走し、穴直前でボードに飛び乗って滑走、跳躍した。体勢を保ったまま水面をバウンドし対岸近くまで到達し、理想的な飛びと評価される一方、安全面から池の拡張が必要ではないかという結論が出る。

ルーの回転落下と計測基準の決定

三番手ルーはズボン姿で参加し、走らず最初からボードに乗って滑走し跳躍した。途中でボードを離して空中回転し着水する。距離計測は「選手側」で行う方針が示され、ボード計測だと投擲で距離を稼ぐ者が出るため危険だと判断された。

クロの適応試験と「最初から乗る」方式の検証

四番手はロナーナが合図役となり、クロが挑戦する。クロは最初からボードに乗って構え、高速で穴へ突入し跳躍した。続けて文官娘の指示で同方式を再試行し、クロは体重移動でボードを制御しつつ綺麗に着水して沈み、泳いで岸へ戻る。競技を気に入った様子を見せ、方式の有効性が確認された。

ロナーナの勢い不足と失速リスクの発覚

五番手ロナーナはゆっくり駆け下りて途中でボードに乗るが、穴に突入した後に出てこない。穴底で停止していたことから、勢い不足で跳躍できないケースが明確化され、運用上の課題として共有された。

実行委員会の協議と二部制の決定

試験後、実行委員会は滑走の細部を協議し、ボード制作はヒラク・山エルフ・希望者で担当、計測はティア、グランマリア、クーデル、コローネが担うと決める。競技は二部制となり、一部は「走って途中でボードに乗る」方式、二部は「最初からボードに乗る」方式とした。二部の前には坂全体にも粘液を塗る案が採用され、飛距離差は姿勢・ボード差・体重など複合要因と整理された。

9 お祭り 滑走ボード

滑走ボード開幕と来賓の顔触れ

“大樹の村”の祭りが開幕し、今年の目玉は滑走ボードとなった。度胸さえあれば誰でも参加できる競技であり、獣人族の小さな男の子も挑戦を希望する。万一の際は文官娘たちが魔法でフォローすると約束し、安全体制を整えた。

来賓として 魔王、ユーリ、ビーゼル、グラッツ、そして四天王筆頭の ランダン が訪れる。ランダンは内政担当であり、四天王が必ずしも最強の武人ではないことが明かされる。さらに竜一家の ドース、ライメイレン、ドライム らも来訪し、会場は一層にぎやかになる。

フーシュ来訪と周囲の緊張

始祖とともに現れたのはコーリン教司祭の フーシュ。穏やかな物腰ながら「悪辣フーシュ」との異名も持つ大司祭の一人であり、各国なら大パレード級の人物とされる。豪華な来賓陣に囲まれ、商人マイケルは来賓席を辞退し、距離を置いた席で観戦することを選んだ。

第一部:走って乗るスタイル

第一部は走って途中でボードに乗る形式。リザードマンのダガーが自作ボードで挑戦し、六度のバウンドで二十四メートルを記録して最長距離を叩き出す。順位は板に記され、明確に競われる。

途中には余興も挟まれ、エルフの合唱や山エルフの水車工作発表、ドワーフの新カクテル紹介、鬼人族メイドの新作料理が披露される。二ノ村のミノタウロスは豊作の歌と踊りを、三ノ村のケンタウロスは流鏑馬のような走射を見せ、会場は盛り上がる。

最終順位は一位ダガ、二位ティア、三位クロの子、四位ヤー、五位ユーリ。来賓の飛び入り参加も相次ぎ、成績よりも楽しむ姿勢が印象に残る。

第二部:最初から乗るスタイル

第二部は最初からボードに乗る形式で、坂にもローションが塗られた。こちらは飛距離だけでなくパフォーマンス性も重視される。奇抜なポーズや衣装が目立つ中、本気で挑んだ獣人族の小さな男の子は無事にジャンプを成功させるが、子供用ボードの必要性が課題として浮上する。

優勝は酒スライム。ボード上で流線型に変形し大飛距離を記録する。二位は獣人族の男の子、三位はライメイレン、四位は魔王、五位はドース。多くの来賓が参加し、競技は大いに盛り上がった。

表彰と宴会への移行

第一部と第二部の優勝者には褒賞メダル十枚と手作りトロフィーが授与される。ダガは誇らしげに掲げ、酒スライムはメダルに強い関心を示す。飛び入り参加者にもメダルが配られ、問題なく受け入れられた。

日が暮れると祭りは自然と宴会へ移行し、大樹の村の滑走ボード祭りは盛況のうちに続いていく。

10 お祭り反省会

反省会の開始と改善点の共有

お祭り実行委員会が集まり、滑走ボード祭りの反省会が始まった。大きな失敗はなかったが、改善点は多数挙がる。コースは三本ほど欲しかったこと、ボード形状の多様化、甘味が人気過多で運営側が食べられなかったことなどが指摘された。運営用の取り置き確保も来年への課題として記録される。

表彰制度の課題

ヒラクは、一部と二部で優勝者の褒賞メダル数が同じである点、芸術的・パフォーマンス的な飛び方を評価できなかった点を問題視する。基準設定は難しく、水飛沫量や拍手量も体格差や種族差の問題が生じるため決定打に欠けた。結論は棚上げとなる。

各村の参加と留守問題

一ノ村・二ノ村・三ノ村の住民を全員呼ぶと村が無防備になるという懸念も出た。若者が多く留守番役を自然に決められない現状では、補填策なしの分担は難しい。クロやザブトンの子供たちが守っているとはいえ、意思疎通できる者が不在だと対応が困難であることも確認された。

フーシュ滞在と光る像の問題

現在進行形の問題として、コーリン教大司祭の一人フーシュが村に残留している件が議題となる。彼女は日中ほぼ社の前で祈り続け、その影響かヒラクの作った像が発光している。夜間は眩しく、ザブトンの子供たちにも影響が出ているため、フーシュに光量抑制を相談するか遮光対策を検討することになった。

酒スライムの知性

酒スライムは褒賞メダルを酒と交換しに来る。一度に全て交換せず、一枚のみを使う計画性を見せ、残りを鬼人族メイドへ渡す行動も確認された。盗み飲みの代金か、飼い主への誇示かは不明だが、住人たちの酒スライムを見る目は変化した。

ハーピー族の帰還とアンデッド討伐

ハーピー族十七家族四十二人が帰還し、キアービットら天使族が同行していた。帰還が遅れたのはアンデッド討伐のためで、コーリン教からの要請による協力だったという。天使族はアンデッドに強く、協力関係上断りにくかった事情が語られた。

ハーピー族の定住と役割

ハーピー族の森内移動には不安があるため、大樹の村に専用の大きな家を用意する方針となる。役割は高度からの周辺偵察で、異変を感知すればグランマリアたちに報告する。広がった各村の警戒網を補完する存在として期待される。

天使族の立場の曖昧さ

一方で、グランマリアが誘った天使族の具体的役割が不明瞭になりつつある。ハーピー族が偵察を担うことで、天使族の配置や今後の運用に再検討の余地が生まれた。問題は残るが、反省会は一旦の区切りを迎え、村は次の段階へと進もうとしていた。

11 色々ありました

宴会の余波と二日酔い

キアービットと天使族、ハーピー族は夕食で酒を楽しみ、そのまま宴会となった。キアービットは軽快なタップダンスを披露し、ティアやヤーも加わって場は大いに盛り上がる。しかし翌日はキアービットたちが昼過ぎまで二日酔いで寝込む結果となった。住人たちは平常運転で働いており、酒への耐性差が浮き彫りになる。

副次的な影響として、ザブトンの子供たちの間でタップダンス風の足音が流行し、屋敷内にリズムが響くようになる。真夜中の練習は控えるよう依頼され、生活との折り合いが図られた。

転移魔法と始祖の技

転移魔法について話題が及ぶ。一般的な転移魔法は空間と空間を門で繋ぐ方式で、距離や規模に応じて魔力を消費する高度魔法である。使い手は限られ、ビーゼルが代表例とされる。対して始祖の魔法は物体を特定地点へ直接移動させるもので、よりテレポートに近い性質を持つが、使い手は始祖のみとされる。

フーシュ滞在の理由と薬の完成

フーシュが村に残っていた理由は、息子の重病治療薬の作成依頼であった。ルーとフローラが担当し、材料は貴重なものばかりだが、村の薬草畑に揃っていた。薬学界では二人は著名な存在であり、技術面の問題はない。完成した薬は始祖が迎えに来て持ち帰る段取りとなる。

フーシュは大量の土産と共に帰還するが、創造神像への祈りの影響で像が発光し、夜間の眩しさが問題となる。光対策の必要性が改めて意識された。

始祖の贈り物と防火の盾

始祖は再び村に戻り、礼として魔法の盾を渡す。火に対する防御効果があり、防火の守りとして屋敷玄関に飾られた。台所付近を避ける注意が添えられる。薬の正式な礼は後日とし、始祖は客室で滞在を続ける。

また、コーリン教関係者に正体を明かしても揉めないこと、伝説が納得の背景にあることなども語られた。

天使族の帰還と今後の忙しさ

キアービットたちはラスティの送迎で魔王国王都方面へ帰還する。転移魔法の難しさや封印道具の噂が話題に上る。次の行事は武闘会だが、その前にリアたちの出産が控えている。のんびりしたい気持ちとは裏腹に、村は引き続き慌ただしくなりそうであった。

12 第二回武闘会 一般の部、戦士の部、模範試合ダイジェスト!

開会と来賓の増加

第二回武闘会が開幕した。構成は前回同様、一般の部・戦士の部・騎士の部の三部制である。見学者は増加し、竜一家に加え、魔王、ユーリ、ビーゼル、グラッツ、ランダンら魔王国勢、ラミア族、獣人族のガルフも参加。始祖も滞在中であった。

審判はハクレンとラスティが担当する。

一般の部 ― 運と相性の勝負

一般の部は一戦のみのシンプル形式。魔法の当たり外れや舞台の広さが結果を左右し、運の要素が強い。文官娘の一人はミノタウロス族に敗北。ケンタウロス族は走れば場外という不利を受けるなど、舞台適性の差も目立った。大きな波乱はなく、平和裡に進行した。

戦士の部 ― 勝ち抜きの激戦

戦士の部は勝ち抜き方式。試合時間短縮のため舞台は二面化された。参加者はハイエルフ、鬼人族、リザードマン、ドワーフ、山エルフ、獣人族、ラミア族に加え、フラウ、セナ、グルーワルド、ゴードンも参戦。

結果は獣人族のガルフが優勝。徹底的に鍛え上げた実力を示した。ドノバンやグルーワルドも奮戦したが及ばず。ランダンは挑戦するも敗退し、自信を崩された様子を見せた。

模範試合トーナメント ― 豪華八名

騎士の部前に模範試合が開催された。出場者は ドース、ライメイレン、グラッファルーン、ハクレン、ラスティ、クォン、魔王、そして ザブトン。審判は始祖が務めた。

一回戦第一試合はドース対魔王。魔王は善戦するも敗北。
第二試合はラスティ対クォン。クォンが格の違いを見せ勝利。
第三試合はグラッファルーン対ハクレン。因縁を含む激戦の末、ハクレンが勝利。
第四試合はライメイレン対ザブトン。分身攻撃をザブトンが全て受け止め、糸で拘束して勝利。舞台上でザブトンと子供たちがタップダンスを披露し喝采を浴びた。

準決勝・決勝

準決勝第一試合はドース対クォン。ドースが圧倒。
第二試合はハクレン対ザブトン。ザブトンが瞬時に拘束し勝利。

決勝はドース対ザブトン。激しい攻防を繰り返した末、最終的にドースが勝利した。ザブトンは子供たちに担がれ退場。ドースは立場上の配慮があったことを匂わせつつも、勝者として振る舞った。

魔王は立場を考えつつ参加したことをぼやき、周囲に慰められる。

熱狂の余波

模範試合の迫力が凄まじく、その後の騎士の部は熱が冷めるまで休憩が入るほどであった。第二回武闘会は、村の戦力と来賓の実力を改めて示す大会となった。

13 第二回武闘会 騎士の部ダイジェスト

場繋ぎ余興と空気の切り替え

騎士の部開始まで、ハーピー族のラインダンス、ニュニュダフネたちの幻想的な舞、ハイエルフの楽器演奏が披露された。武闘会に出場しない者たちが場を温め、出場者も気持ちを整える時間となった。

出場者十六名と波乱の一回戦

参加者は前回不参加のリアとアンを除く常連勢に加え、ヤー、マサユキ、フブキ、キアービットが新規参戦。キアービットは始祖の転移で急遽参加となったが、一回戦で前回優勝者マクラと当たり敗北。涙する姿をグランマリアが慰めた。

勝ち上がりはマクラ、フブキ、ルー、ティア、ウノ、ブルガ、ジュネア、スーネア。特にラミア族の二人は蛇身を活かした高位保持戦術で観客を驚かせた。

二回戦 ― 実力と消耗

ラミア族同士の潰し合いはジュネアが制するも双方負傷。マクラ対フブキは接戦の末マクラが勝利するが、足二本を失う代償を払う。再生魔法で復帰。ルーは吸血鬼らしい戦術でティアを翻弄。ウノはブルガの分身攻撃を敢えて受けて反撃し勝利した。

準決勝 ― 罠と圧倒

マクラ対ルーは、ルーの大技の隙に設置された糸の罠が決定打となりマクラ勝利。ウノ対ジュネアは終始ウノが優勢で勝利した。

決勝 ― マクラ対ウノ

会場の空気はマクラ優勢だったが、外周でクロの子供たちが遠吠えし流れが変わる。
マクラは糸を丸めて飛ばし絡め取る遠距離戦術、ウノは炎の球で応戦。連射はマクラ、威力はウノ。
ウノは角を青く光らせ糸を断ち切り、体を倍化。炎と一撃でマクラを吹き飛ばし勝利した。

会場は歓喜に包まれ、クロサンらが遠吠えで祝福する。ヒラクも素直にウノの勝利を称えた。

思わぬ事態

決勝を見守っていたリアとアンが産気づき、表彰式直前に緊張が走る。武闘会の熱狂は、新たな出来事へと繋がっていった。

14 武闘会の後と出産

四人同時の慶事

武闘会は閉幕し、恒例の宴会へと移った。表彰式の最中に産気づいたリアとアンは無事に男児を出産。さらにリゼとラファも続き、四人全員が男の子を授かった。村に男性を望んでいたヒラクであったが、その形は予想とは異なるものであった。

ハイエルフたちは三人の男児誕生に大騒ぎし、鬼人族メイドたちは再興の希望を見て涙を流した。祝いは宴会の熱気と重なり、大いに盛り上がった。

騎士の部優勝者ウノ

騎士の部優勝はウノ。巨大化していた姿は元に戻り、前回同様にトロフィーと冠が授与された。トロフィーをくわえ、冠を載せたウノは照れながら歩き、その横でクロサンが上機嫌に寄り添う。敗れたマクラも落ち込む様子はなく、ザブトンと共に新たな技を模索していた。

余韻と即席試合

武闘会後も舞台では希望者同士の試合が続いた。戦士の部優勝者ガルフとダガの好勝負、ヤーとスティファノの連携戦などが繰り広げられる。始祖が審判を務め、住人たちは飲食や芸に興じた。

リザードマンの組体操、獣人族の曲芸、ハーピーの挑戦など、多彩な催しが続く。安全対策としてザブトンの子供たちが網を張るなど、配慮も行き届いていた。

宴の広がりと帰路

宴会は三日続いたが、畑の世話のため一部は途中で帰還。二ノ村、三ノ村の警備を担うクロやザブトンの子供たちも交代で参加した。ビーゼル、グラッツ、ランダンは二日目の夜に帰路につく。

四人の出産は村の活気を高め、さらなる出産への意欲を刺激した。薬を差し出す者も現れたが、ヒラクは慎重な姿勢を崩さない。

竜と魔王の滞在

魔王は多忙ながら所用で滞在を続け、竜一家も宴が続く限り残るという。ドースは竜の役目について語りつつも、どこか含みを持たせた発言をする。ラスティスムーンやハクレンの将来にも話題は及んだ。

人気と評価

宴後もしばらく滞在したガルフやラミア族の面々に加え、ウノ、マクラ、ダガが人気を集める。ダガは人型ゆえに親しみやすく、配慮も見せた。一方、グランマリアたちは仕事を理由に距離を保つ。

武闘会や宴会、特訓で治癒魔法を求められ続けたフローラは疲労を隠せず、ヒラクはその働きを素直に称えた。祝いと熱気に包まれた日々は、村に新たな活力をもたらしたのである。

15 名付けと未来

四人の名

子供たちの名が決まった。
リアの子はリリウス、リゼの子はリグル、アンの子はトライン、ラファの子はラテ。それぞれ母親が命名した。特にハイエルフの三人は、頭文字に共通性を持たせるなど、しきたりや美意識を感じさせる名付けであった。

ドースと始祖が考えた名は、次に生まれる男児にという約束で保留となる。ヒラクはまだ子が増える可能性を見据え、それを受け入れた。

トラインの名の決定

アンが最初に提示した名は、濁音や拗音が多く、ヒラクには呼びにくかった。互いに妥協点を探るが決め手に欠け、魔王へ相談したことが発端で、ドースと始祖まで加わる大議論へ発展する。

最終的には三候補に絞られ、大樹の社の前でくじ引きにより決定することとなった。創造神像の前で引かれた結果は「トライン」。魔王は歓喜し、選ばれなかった名も次の子へと引き継がれる約束が交わされた。

後継と役割の宣言

リアはリリウスをハイエルフのまとめ役として育てたいと改めて表明する。リゼとラファも同様に、リアの子を支える立場にする方針を示した。三人は、生まれた子が男児であってもアルフレートの立場を脅かさないと出産前から決意していた。

ヒラクは子を平等に育てたいと考えるが、この世界の種族事情や将来の安定を思う母親たちの覚悟を尊重することにした。いずれ落ち着いた時に改めて話し合う余地を残しつつ、自身は変わらず平等に愛情を注ぐと決める。

子育て体制

リリウス、リグル、ラテはハイエルフの家で育てられることとなった。ヒラクの屋敷で共に暮らす提案は退けられ、子が混乱するとの理由で母親側に預けられる。ヒラクは通って会いに行くことにする。

トラインは鬼人族メイドの長であるアンの子として屋敷で育てられるが、部屋は鬼人族メイドたちの側に置かれる。ヒラクは少し寂しさを覚えながらも、母親の意向を尊重する。ドースや始祖、魔王も同様の助言を与えた。

父としての模索

ヒラクは理想の父親像が一夫一妻を前提としていることに気づき、多妻の現状でどうあるべきか思案する。押し付けはせず、相談を重ねながら歩む姿勢を取る。

アルフレートとティゼルを新たな子らに引き合わせるが、まだ血の繋がりの意味は理解していない。それでも将来、兄弟として仲良く育つことを願う。

家族の広がり

トラインを抱くヒラクを見て、クロが寂しげに遠くから見つめる。ヒラクはクロとユキを呼び寄せ、「家族だ」と撫でる。するとクロの子供たちまで集まり、撫でる手は追いつかないほどになる。

名付けは終わり、未来への形も定まり始めた。だがヒラクにとって大切なのは、役割や立場以上に、家族としての温もりを守ることであった。

戦場に立つ三人

十数年後という設定の夢の中で、リリウスは本陣に立ち、ラテから南方戦線勝利の報告を受け取っていた。南方を制したのはトラインであり、ダガとグルーワルドが同行しているという。

ラテは単独行動を得意とし、「森の奇襲王」と呼ばれていたが、その異名に不満を漏らす。リリウスは冷静に役割の違いを指摘し、西方で戦うリグルの援護へ向かうよう命じる。

三人は自嘲気味に自らを「弱腰兄弟」と称しつつも、敵からは「深遠の死神兄弟」と呼ばれていると語られる。師であるマクラやウノ、グラッツらの名も挙がり、戦いは本格的なものとなっていた。

親としての恐怖

そこでヒラクは目を覚ます。見たのは、子供たちが戦争に身を置き、軍を率い、異名で恐れられる未来の光景であった。活躍しているとはいえ、親としては悪夢以外の何物でもない。

子供たちが外で命を賭ける必要のない環境を作るべきだと考え、畑をさらに広げようと決意する。農家として生きられる未来を用意したいと思うが、同時に無理強いはすべきでないとも自制する。

現実への回帰

夢に動揺したまま行動しようとするヒラクに、周囲が冷静な指摘をする。子供たちはまだ言葉も話せず、進路相談などできる年齢ではないという。

未来を案じるあまり先走る自分に気づきつつ、ヒラクは胸をなで下ろす。あれは夢であり、現実ではない。だが、正夢にならぬよう備える必要はあると、静かに心に刻むのであった。

【三章】アースラットと死霊王

1 秋の収穫となんやかんや

秋の収穫と種の問題

秋を迎え、大樹の村では収穫が始まった。これまでは収穫後に『万能農具』で畑を耕し、作物の残りをすべて土へと還していた。しかし今回は二ノ村と三ノ村で通常農業を行うため、種を確保する必要があった。

種のある作物はよいが、明確な種が見当たらない品種もある。根菜類は放置で増えるとしても、種なし品種が混じっていれば問題となる。マイケルから種や苗を購入する手段もあるが、まずは自力で確かめる方針となった。

ワインとラミア族の雇用

ドワーフのドノバンは、渋みの少ないワインを造るためにブドウの皮を取り除きたいと提案する。しかし収穫期はどの種族も多忙で人手が足りない。

そこで働き口を求めていたラミア族六人を雇うこととなった。報酬は滞在中の食事と宿、さらに作物を少量現物支給するという条件で合意。ラミア族は酒造りを手伝い、村には穏やかな光景が広がった。

ハウリン村との交易

収穫後はハウリン村との物々交換が行われる。今回はダガが代表として赴き、文官娘衆二名が計算役として同行。力仕事は現地で雇うことになった。

しかしハウリン村は人間のヒュマ村と揉め続けているという。詳細は交易後、ダガと共に戻ったガルフから語られる。

ハウリン村の直訴

ハウリン村は限界に近く、村を捨てることも視野に入れているという。領主に訴えれば裁定に従う義務が生じるが、領主はヒュマ村寄りと見られ、不信感から正式な訴えができない。

そこで魔王への直訴を望み、その口利きをヒラクに頼んできた。魔王は本来、領民が直接会える存在ではないためである。

揉めごとの発端

争いの発端は、ヒュマ村から嫁いだ娘をハウリン村が実家へ戻したことだった。山暮らしに馴染めず体調を崩したためであり、夫婦仲は悪くなかった。

しかしその後、ヒュマ村は取引を不平等化し、周辺にも圧力をかけた。ハウリン村が周囲へ訴えても、ヒュマ村は取引停止を選択した。

文化と責任の違い

ヒラクは状況を整理する中で、婚姻の背景を確認する。娘はヒュマ村村長の親戚であり、夫はハウリン村村長の息子。結婚はヒュマ村側の提案で、盛大な式には領主も出席していた。

これらを踏まえたフラウは、ハウリン村に落ち度があると断言する。政治的・文化的な意味合いを軽視した結果、重大な不義理と受け取られた可能性が高いという。

単純な善悪ではなく、領主や有力者を巻き込んだ婚姻とその破綻が、対立を深刻化させていたのである。

2 ハウリン村のトラブル

結婚の認識の違い

ヒラクはガルフと離れ、フラウから事情を整理して聞く。
フラウは「友好の証として送られた置物を突き返した」と例え、ハウリン村の対応が政治的には誤りだったと指摘する。

ハウリン村は娘を「普通の妻」として扱い、体調悪化を理由に実家へ返した。しかしヒュマ村側にとってその婚姻は、単なる結婚ではなく友好の象徴であった。さらに式には領主も出席している。つまり領主が後押しした縁談であり、その娘を返す行為は領主の顔に泥を塗る結果となった。

深読みすれば、娘は領主がヒュマ村に生ませた子である可能性もある。実際その通りであった。事情を理解したヒラクは、単なる善意では済まない問題だったことを知る。

鉱山咳と誤解

ガルフは娘を返した理由として「鉱山咳」を挙げる。鉱山近くで暮らせば命に関わる病の兆候であり、放置すれば死ぬ可能性が高い。そのため苦渋の判断で送り返したのだった。

しかしその病状は、再婚に不利になるとの配慮から口止めされ、ヒュマ村には十分に伝わっていなかった。結果として双方に説明不足が生じ、悪意なき行動が不信を拡大させた。

フラウはそれを「コミュニケーション不足」と断じる。

フラウとビーゼルの介入

フラウは小型ワイバーン便でビーゼルを呼び、ハウリン村・ヒュマ村・領主を往復して調整を行う。越権に近い行動であったが、話の通じる領主であったこともあり、ひとまず決着に至った。

ただし本来この地域はプギャル伯爵の系列に属しており、ビーゼルが直接介入するのは筋違いにあたる。今回は非公式処理とし、後日伯爵へ挨拶に行く必要が生じた。領地社会の系列や派閥の複雑さが浮き彫りとなる。

再婚と移住

誤解が解け、ハウリン村村長の息子ガットとヒュマ村のナーシィは改めて結婚することとなった。ナーシィは領主の娘であり、すでに獣人族の子ナートを出産していた。

しかし鉱山咳再発の危険からハウリン村には住めず、かといってヒュマ村へ入ればハウリン村が屈した形になる。結果として一家は大樹の村へ移住する。

ガットは次期村長の立場を離れ、一村人として暮らす決意を示す。セナに従う姿勢も明言し、村へ馴染もうとする。

歓迎と騒動

新婚であることから新居建設や結婚式が提案され、始祖の音頭で宴会へと発展する。ガット一家はクロやザブトン、ラミア族の姿に衝撃を受け気絶や悲鳴を上げるが、ナートはすぐに慣れ、クロの子の背に乗って遊ぶようになる。

ナーシィも徐々に環境に慣れ、ガットは酒と料理の力で立ち直りつつある。

冬の滞在

ガルフは娘の様子を見守るため冬の間大樹の村に滞在することを決める。宿ではダガ、ウノ、マクラらが模擬戦を行い、活気が続く。

こうして武力衝突に発展しかねなかった問題は、政治的調整と誠意によって収束した。だが領地社会の力関係と婚姻の重みを、ヒラクは改めて思い知ることとなったのである。

3 温泉調査隊再結成

天使族が来ない理由

グランマリアが呼んだ天使族が現れない。代わりにキアービットが頻繁に訪れている。仲が悪いわけではないが、関係は微妙らしい。来づらくなった可能性を考えつつ、いつ来てもよいよう準備だけは整えておく。

圧力鍋の失敗

ドワーフ、山エルフ、鬼人族が協力して圧力鍋を製作していた。ヒラクが利便性を語ったのがきっかけである。しかし密閉構造の再現が難しく、失敗が続く。魔法で同様の効果は出せるが、彼らは研究心から挑戦を続けていた。

始祖は難易度を軽く言うが、それは常人の尺度ではない。瞬間移動をはじめ高度な魔法を平然と扱い、風呂や遊戯を満喫する姿に、ヒラクは時間の使い方の巧みさを感じる。

冬支度と保存食

収穫が落ち着くと、薪集めや保存食づくりが始まる。主な保存食はキラーラビットやゲートボアの燻製である。クロの子供たちは単独で獲物を仕留められるほど成長していた。頼もしいが、怪我だけは避けてほしいとヒラクは願う。

温泉調査隊再結成の提案

余裕ができたところで、ヒラクは温泉調査隊の再結成を提案する。北のダンジョンのさらに北にある温泉を再調査したい。前回は熱すぎたが、水を引ければ利用可能かもしれない。さらに、北のダンジョンの巨人たちに挨拶もしたいと考える。

住人たちは調査自体には賛成するが、ヒラクの参加には反対する。巨人を呼べばよいという意見まで出るが、ヒラクはそれを拒否する。理由は単純で、呼びつけるのは気が進まないからである。

危険なら引き返すと約束し、ヒラクは押し切った。

大規模な調査隊

温泉調査隊は予想以上の規模となる。
ヒラク、ルー、フローラ、ティア、グランマリア、リア、アン、ダガ、ブルガ、スティファノ、ハクレン、ラスティ、クロとユキおよび五十頭の仲間、ザブトンの子やマクラほか百匹、さらに始祖、キアービット、ガルフまで加わった。

見送りのフラウは侵攻軍のようだと評する。留守はフラウ、ヤー、ドノバンらが守ることとなった。

出発

ヒラクは『万能農具』を鍬の形に構え、出発を宣言する。しかし始祖が転移魔法で送ると告げる。歩く必要はないという現実的判断に従い、一行は転移で北へ向かうことになった。

こうして、温泉調査隊は再結成されたのである。

4 アースラット

北のダンジョン到着

始祖の転移魔法は大人数には不向きなため、ビーゼルの転移で北へ移動する。森が開けた場所の中央に積まれた岩、その隙間が北のダンジョンの入口と思しき場所であった。背後には壁のような巨大な山がそびえ立つ。

足元の土は大樹の村より柔らかく、耕作可能に見えるが、季節は冬前。農地化は後回しとなる。

巨人族の出現

挨拶を交わそうとした矢先、岩の隙間から全身毛に覆われた巨人族が次々と飛び出してくる。三〜五メートル級の巨体であるが、こちらを避けて後方へ回る。その直後、巨大な蛇ブラッディバイパーが姿を現す。

しかし蛇は暴れ、尾を食いちぎられていた。地中から現れたのはアースラット。穴掘りを得意とする巨大魔獣である。

アースラット討伐

アースラットはブラッディバイパーを食らい、そのまま突進してくる。ヒラクが『万能農具』を構える前に、ハクレンとラスティの打撃、ダガとリアの剣撃、ルー、ティア、フローラの魔法が集中し、瞬時に討伐された。

戦力差は歴然であった。クロたちは周囲を警戒し、ザブトンの子らは糸を張って感知網を構築する。

原因の発覚

巨人族は総出で頭を下げ、救援への感謝を示す。事情を聞くと、以前ハクレンとラスティがブラッディバイパーを退治した際、ダンジョンの一部が崩落。その崩れた先に未知の穴が繋がり、そこからアースラットが出現したという。

討伐した個体の体内からは五人が救出され、死者は出なかった。

謝罪と帰還

原因が味方側の行動にあったことを知り、ヒラクは巨人族に頭を下げる。ひとまず巨人族の危機は去ったが、後処理と確認のため一度大樹の村へ帰還することにした。

短い遠征であったが、問題は残っている。温泉調査どころではなくなった北の地で、事態は次の局面へ進もうとしていた。

5 巨人族と調査再開

巨人族とブラッディバイパーの関係

北のダンジョンに住む巨人族が全身毛むくじゃらなのは、ブラッディバイパー対策として進化した結果であった。丸呑みにされても毛が胃液から身を守り、体内で暴れて脱出するという生存戦略である。

そのため成体同士では捕食関係は成立しないが、毛の少ない子供は狙われる。子供には大人の毛で作った全身用の被り物を装着させているという。

アースラット出現の原因については、崩落だけが理由ではないと巨人族は語り、ヒラクの謝罪を受け取らなかった。

大樹の村での宴会

和解と交流を兼ね、大樹の村で宴会が開かれる。巨人族は料理と酒を大いに喜び、山エルフたちが披露した蒸気動力の小麦製粉装置に歓声を上げる。

蒸留時の蒸気を利用した試作機であったが、粉が焦げる、準備に時間がかかるなど問題も多い。それでも技術の芽は確かに育ちつつあった。

宴は夜遅くまで続いた。

調査隊の再編成

翌朝、温泉調査を再開する。ダンジョン前で戦闘痕を確認し、ルーとティアが探知魔法で周囲を確認。アースラットの反応はなかった。

調査隊は二手に分かれる。温泉調査班と、崩落先に繋がった穴の調査班である。穴の原因究明は巨人族の安全に直結するため、ハクレンとラスティが強く志願した。

ヒラクも穴の調査に加わろうとするが、夜目が利かないという現実的理由で却下される。

穴調査班と温泉調査班

穴調査班はハクレンを中心に、ラスティ、ブルガ、スティファノ、ルー、フローラ、リア、アン、始祖、そしてザブトンの子供たちが参加。

温泉調査班はヒラクを中心に、ティア、グランマリア、キアービット、ダガ、ガルフ、クロの子供たちが同行する。

互いに無理をしないことを確認し、行動を開始する。

森での進行とヒラクの実力

グランマリアの案内で北へ進む。ヒラクは『万能農具』で道を切り開きながら前進する。途中、小型のブラッディバイパーや大型のグラップラーベアが出現するが、ヒラクは一撃で対処する。

それを目の当たりにしたダガやガルフ、クロの子供たちは改めてヒラクの実力を認識する。死の森に村を築いた理由、魔王とも対等に話せる背景が、実戦で裏付けられた形であった。

温泉の有無はまだ不明だが、調査は着実に進んでいた。

6 温泉?

目的地到着と周辺確認

道を切り開きながら進むこと三日、温泉候補地に到着する。途中の食料はブラッディバイパーとグラップラーベアで賄った。蛇肉は好評だったが、熊肉は評価が分かれた。

山の麓を二十メートルほど登った岩場に、小さな熱い池が存在していた。湯気を上げるが、手を入れられないほど高温である。ティアたちの調査で毒性ガスはないと判明し、安全は確保された。

保温石の特性

周囲の岩は特殊な性質を持ち、熱を保持し続けるという。百の熱を受けると、時間をかけてそれを放出する性質であり、地下水を温め温泉のような状態を生んでいた。

この岩は「保温石」として既に利用されており、火を使わずに暖を取れるため、巨人族も冬場に使用していると判明する。温室や調理利用など、新たな可能性も見えてきた。

湯船建設開始

近隣の川を発見し、水温調整を行う計画を立てる。『万能農具』で川沿いに大規模な湯船を掘削。中央を深くし、排水路を整備する。熱い池から水路を引き、水温調整用プールで川水と混合する仕組みを構築した。

男女別に区切り、脱衣所も簡易的に整備。さらに保温石を利用した四畳半ほどのサウナ小屋も完成させる。

到着から三日で露天温泉の形が整った。

入浴と反応

湯が適温になり、温泉調査隊は入浴を開始する。クロの子供たちは歓声を上げ、ダガやガルフはヒラクの建設能力に改めて驚嘆する。

キアービットとグランマリアはサウナで意地を張り合い、ティアは冷静に状況を見守る。周囲では護衛たちが警戒を続け、ブラッディバイパーやグラップラーベアへの備えを怠らない。

温泉完成

即席ではあるが、川水との混合による露天温泉とサウナが完成した。調査は成果を上げ、温泉は実用可能と判断される。

温泉調査は成功したと言える。北の地に新たな施設が誕生し、大樹の村の発展にまた一歩近づいたのであった。

閑話 アースラットの穴 西側

ラスティスの自責

ラスティス・ムーンは、北のダンジョン崩落の一件を深く反省していた。ブラッディバイパーを乱獲した結果、崩落を招き、その責任をヒラクが巨人族に対して頭を下げて詫びた。その事実はラスティスにとって大きな衝撃であった。

ハクレンもまた自分に怒りを向けている様子であり、ラスティスはこの鬱屈を晴らすためにも、アースラットの穴の調査に全力を注ぐことを決意する。

西側トンネルの探索開始

崩落現場から続くトンネルは高さ五メートルほどの広さで、東西に延びていた。ハクレンが東へ、ラスティスが西へ向かうことになる。

ラスティスは開幕から竜の炎を五分間吐き続け、通路内の雑魚を一掃する。同行者はルー、フローラ、リア、ブルガ、スティファノ、そしてザブトンの子供たちである。

洞窟内での火の使用は危険だとリアに叱責されるが、空気の流れがあるため致命的ではなかった。

広場と黒い大岩

数日進んだ末、変形した球形の広場に到達する。中央には黒い大岩が突き刺さり、何らかの文字が刻まれていた。封印のようにも見える。

その直後、ルーとフローラが「アンデッドよ!」と警告。縦穴からスケルトンやゾンビが落下し、さらにゴーストが出現する。

炎による殲滅と地上火災

ゴーストには魔法が有効であるため、ラスティスは全力の炎を放つ。アンデッドを焼却し、さらに縦穴へ炎を吹き上げた。

しかし炎は地上へ到達し、周囲の森を延焼させる結果となる。事態に気づいたラスティスはルーに運ばれ地上へ。竜の姿に戻り、風と体当たりで必死に鎮火作業を行う。

炎は自らのものゆえ容易には消えない。それでもラスティスは責任を感じながら消火に尽力する。

自責の念を晴らすつもりが、新たな問題を生む形となったのであった。

閑話 アースラットの穴 東側

始祖の思惑

吸血鬼の始祖は、血族に子が生まれた奇跡をきっかけに『大樹の村』と深く関わるようになった。食事と酒、娯楽に満ちた村は居心地がよく、本格的に住みたいとさえ思っている。

北への温泉調査にも興味本位で同行したが、アースラット襲撃後にヒラクが頭を下げたことに強い印象を受ける。体面よりも誠意を優先する姿勢こそ、村の強さの源だと感じ取っていた。

東側トンネルへ

調査隊は二手に分かれ、始祖はハクレンの班に加わる。トンネルは不自然なほど真っ直ぐで、アースラットが自然に掘ったとは思えない形状であった。

洞窟内で竜が炎を吐く無茶に内心呆れつつも、ハクレンの憤怒が収まっていないことを察する。彼女の鬱屈を晴らす何かがこの先にあることを、半ば本気で願う。

アースラットの巣と異変

三日ほど進み、アースラットの巣らしき場所に到達する。だが巣の形状は曲がりくねっており、真っ直ぐな通路とは一致しない。さらに多数の死骸には剣傷があった。

地中で剣を振るう存在。そこに現れたのは完全武装の死霊騎士であった。通常攻撃が効きにくく、魔法も通りにくい厄介なアンデッドである。

死霊騎士との戦闘

始祖が分析するより早く、ハクレンが膝蹴りで死霊騎士を叩き伏せる。物理攻撃自体は有効ではないが、反撃を封じる圧力となっていた。隙を作り、最後は炎で焼却する。

戦闘は問題なく終わったが、始祖は冷静に考える。死霊騎士にアースラットを使役する能力はない。真っ直ぐなトンネルを掘らせた存在は、別にいるはずである。

さらに奥へ

トンネルは巣を越えてさらに奥へ続いていた。ハクレンは迷いなく進む構えを見せる。始祖はアンに確認するが、食料は十分。撤退の選択肢はない。

平穏を願いつつも、始祖の胸中には別の感情もあった。未知の存在が待つ奥地へ向かう高揚である。

東側の調査は、まだ終わらない。

閑話 留守番

酒と大樹の村

ドノバンはエルダードワーフである。違いは曖昧だが、酒への情熱だけは誰にも負けない。美味い酒の噂を聞けば『死の森』であろうと迷わず飛び込む男であった。

大樹の村に辿り着いてからは酒造りに専念する日々。村の作物は酒向きに育てられ、施設も次々と整えられた。新しい製法や飲み方も生まれ、散っていたエルダードワーフたちも集まってくる。

人生で最も酒に満ちた時間を過ごしていた。

留守番の任務

村長から留守を任され、酒造りを少し抑えて村の守りに当たる決意をする。だが温泉調査隊は思ったより短時間で戻り、さらに宴会が村で開催されることになった。

宴は盛大に行われ、ドノバンも満足する。だが翌日、本格的に村長たちは出発する。今度こそ留守番である。

とはいえ、村は平穏。見張らずとも皆が自律して働き、冬支度も酒の仕込みもほぼ完了している。やることがない。

門番竜の来訪

そこへ門番竜が来訪する。接待役を巡り、ドノバン、フラウ、ヤーが張り合うが、最も素早く動いたのはザブトンであった。

宿の手配、料理の準備、芸の用意まで完璧。さらに秘蔵の酒樽まで持ち出される。

ドノバンは隠していた酒を見抜かれたことに動揺しつつも、プライドを捨てて接待に参加することを選ぶ。酒の前では体面など些末な問題である。

緊張する門番竜

一方、もてなされる門番竜ドライムは妙に緊張していた。ザブトンの新作衣装を着せられ、静かに救いを求める心の叫びを上げる。

村長不在の村は、酒と蜘蛛と竜とで奇妙な均衡を保っていた。

守り続ける者たち

クロの子供たちは村の警戒を続ける。村長が不在でも、村は揺らがない。酒と誇りと仲間意識が、その基盤を支えていた。

7 合流その一

温泉施設の拡張

温泉施設は順調に拡張されていた。大湯船を男女に仕切り、小型の家族風呂を二つ設置。足湯や打たせ湯、水風呂、さらに外気浴用の床まで整えられ、簡易ながら本格的な温泉施設となっていた。

調理場も設けられ、キアービットを中心に料理が続けられている。ダガとガルフは鍛錬と入浴を繰り返し、この生活を満喫していた。

ラスティたちの合流

南西方向から上がった火の手を確認し、ラスティたちが合流する。炎の原因はラスティの吐いた火であった。焼け跡は後で耕す予定とする。

ハクレン、アン、始祖はさらに東へ進行中で、ザブトンの子供たちの糸通信により連絡は維持されているという。

ルー、フローラ、リア、ブルガ、スティファノらは合流し、温泉で疲れを癒やす。ザブトンの子供たちも問題なく入浴し、男湯と女湯に分かれた点から知能の高さがうかがえた。

料理場の主導権

人数が増え、料理場は活気づく。ブルガとスティファノの腕前は高く、自然と主導権を握る形となる。キアービットもそれを理解し、協力体制が整う。

食材はブラッディバイパーを人間用、グラップラーベアをクロたち用と分け、野菜不足についてはラスティに村まで飛んでもらう案が出る。合理的な判断であった。

待機と不安

ハクレンたちの合流を待つが、冬が近いこともあり長期滞在には限界がある。火事跡の整備や、ラスティが言っていた黒い大岩の件も気にかかる。

ヒラクはマクラの所在をルーに尋ねるが、ルーはその存在を思い出した様子であった。

各地の様子

巨人族側では、ザブトンの子供たちが崩落現場を糸で補強し、ブラッディバイパーを瞬時に仕留めている。その働きに巨人族は感嘆し、協力体制を強める。

一方、東側ではハクレンが現れる敵を次々と蹴り倒していた。始祖は多少の配慮を促すが、アンは止める気はないと応じる。

糸通信により、東側は行き止まりであったと判明。村長たちとの合流を目指すことになる。重要そうな敵の発言もあったが、細部は顧みられないまま進行する。

温泉側と東側、双方が徐々に収束へ向かい始めていた。

8 合流その二

丸木舟と川遊びの挑戦

最大の湯船に丸木舟が浮かべられ、温泉で温まりながら舟で体を冷ますという遊びが始まった。やがてヒラクは川へと遊び場を広げようと考える。川幅や水深を確認し、実行に移すが、実際の流れは想像以上に速く、盛大に転覆。理想と現実の差を痛感する結果となった。

しかしダガは巧みに舟を操り川を下る。ヒラクは「万能農具」で舟を量産し、仲間たちは次々と川遊びを楽しむ。全員がヒラクより上手く、少なからず落ち込むことになる。

イカダの製作と失敗

クロたちも乗りたがったため、ヒラクは大きめのイカダを製作。ザブトンの子供たちの糸をロープ代わりに用い、安定した構造に仕上げる。一見順調だったが、クロの子供たちとザブトンの子供たちが一斉に乗り込んだことで沈没。積載限界を学ぶ結果となった。

その後は流れの緩やかな地点をゴールにした舟レースが行われる。最も上手いのはガルフ、次いでリア。他は団子状態であった。安全第一の方針で遊びは続く。

食料事情と保存対策

グラップラーベアの肉は量が多いものの味が劣るため燻製にして保存食とする。熊骨スープを試みるが、強烈な臭いにより断念。思いつきでの行動を反省する。

調味料も減少しており、長期滞在には限界がある。テント生活では冬を越せない状況であった。

ハクレンたちの帰還

ハクレン、始祖、アンらが帰還する。始祖は疲労困憊で温泉へ直行。アンは食材と調味料を確認し、次の献立を考え始める。

一方、ハクレンはヒラクに異様に甘え、膝枕のまま眠りにつく。事情を尋ねると、ダンジョン崩落と巨人族への謝罪を気にしていたという。ヒラクはそれを理解する。

死霊王の顛末

始祖の説明によれば、死霊王が何らかの行動を起こそうとしたが、ハクレンが蹴り飛ばし炎で焼却。資料も含めて全て消失したため詳細は不明である。

ただし死霊王の本体は聖属性のブレスを大量に受けた影響で「裏返って」生存し、五、六歳ほどの少女へと若返っていた。記憶はなく、多少の技を持つ普通の少女に近い存在となっている。

放置は危険と判断され、その少女は大樹の村で保護されることとなった。

開話 死霊王

目覚めと強制された使命

死霊王は何者かに目覚めさせられ、かの地の封印を解けという抗えぬ命令を受ける。存在理由も目的も知らぬまま、ただ従うしかなかった。王としての矜持は失っておらず、部下を率いて行動することを選ぶ。

土兵の創出と掘削開始

最初は土を人型に変え部下とするが、力は弱い。それでも数を揃え、二百体を超える土兵を従えて掘削を開始する。食料も睡眠も不要な軍勢は、何年もかけて地下深くへと穴を掘り進める。

地下水や崩落の危機を乗り越え、ついに封印の一角へ到達する。だが巨大な黒い岩を前に、破壊は一斉に行うべきだと本能的に判断し、次の封印へ向かう。

死霊騎士の誕生

掘削中に千年級の古い死体が眠る空洞を発見する。そこはかつてのダンジョンであった。死体に命じ、死霊騎士十七体と死霊戦士約八十体を創出。強力な戦力を得る。

土兵への情も失わず、両軍を率いて封印解除を目指す。死霊騎士たちは地上へ出て羊皮紙やインクを確保し、作業効率も向上する。

第二の封印と異変

魔獣を支配し掘削を続ける中、第二の封印の岩を発見。だが同時に騒ぎが起きる。様子を見に向かった死霊王が目にしたのは、恐ろしい顔をした女の足裏であった。

転生した少女

死霊王は聖属性のブレスを浴び、裏返る形で若返り、記憶を失った少女となる。少女は土兵の核を大切に抱え、周囲の存在を漠然と好き嫌いで認識する。

始祖やアンは状況を確認し、彼女を村へ連れ帰ることを決定する。少女の名はウルブラーザ。しかし本人は「ウルザ」と呼ばれることを望む。

英雄女王と推測される存在であるが、本人に自覚はない。考えても分からないことは考えない。ただ大切な土の塊を握りしめ、ウルザは新たな歩みを始める。

9 帰り道その一

地下トンネルの全貌

巨人族のダンジョン崩落地点から続く穴の先は、東西に真っ直ぐ延びる巨大なトンネルであった。途中には地上へ通じる道が複数あり、三つのダンジョンやアースラットの巣へと繋がっている。西側は黒い大岩で行き止まり、東側も同様の岩に到達するが、さらに東へ延びていた。

巨人族の安全を考え、始祖は穴を埋めるべきと提案する。ヒラクも同意し、魔法に頼らず要所を崩して封鎖する方針を決める。

東側の調査報告

山脈の向こうのダンジョンはほぼ無人で、地上出口近くには廃村が存在した。ザブトンの子供たちは通信や荷運び、戦闘で活躍していた。

ウルザの処遇については、大樹の村で保護することが決定。アンが世話役を申し出る。ハクレンに世話を任せようとするも、ウルザは露骨に嫌がり、関係はまだぎこちない。

温泉からの出発

五日間の滞在後、温泉を後にする。全員分のイカダと丸木舟を用意したため時間がかかった。始祖も名残惜しそうであった。

川下りは順調だが、一メートル級の魚が襲い掛かる。ザブトンの子供たちの糸で捕獲され、クロの子供たちの食料となる。

深い地点では三メートル級の主らしき魚が出現。ルーが雷魔法で撃破するが、水辺での使用にアンが厳しく叱責。ダガとガルフが気絶するなど被害も出た。

焼け跡と黒い大岩

ラスティが火を放った森に到着。中央には巨大な穴があり、底に黒い大岩があると推測される。

ヒラクは穴底からウルザへ伸びる黒いモヤ状の糸を発見。「万能農具」のクワで切断すると、モヤは霧散。ウルザの状態も安定したと確信する。

英雄女王の影

天使族の三人は密かに話し合う。ウルザが若返った英雄女王ウルブラーザである可能性は高い。もし事実が公になれば、かつて彼女の国から分裂した諸王国が動揺し、政治的混乱を招く恐れがある。

村長がそれを望まぬことを理解し、天使族は沈黙を選ぶ。関係者へ慎重に根回しすることを決め、波紋が広がらぬよう動き始めるのであった。

10 帰り道その二

焼け跡での野営

ラスティが燃やした森で宿泊準備を行う。周囲の魔物は討伐済みで安全は確保されている。始祖が転移で村へ送る提案をするが、ヒラクは冒険気分を優先し辞退する。子供たちに会いたい気持ちはあるものの、全員帰還の流れになることを避けた。

始祖は調味料の補充のため一時帰還を申し出る。料理担当のアンやブルガ、スティファノの要望であり、ヒラクも了承する。

野営地整備と警戒

ヒラクは「万能農具」で地面を整え、テント設営場所を準備。リア、ダガ、ガルフが手際よく設営する。離れた位置にトイレも建設し、生活環境を整える。

ルーやティアたちは偵察と水の運搬を担当。川から巨大な水球を運び、貯水と散水を行う。アンデッドは発見されなかったが、未知の魔物の存在は確認された。

ラスティはマクラとの合流と巨人族への連絡のため別行動。竜姿で飛び立つ姿にウルザは大興奮し、対抗したハクレンは見向きもされず落胆する。

黒い大岩の異変

翌朝、黒い大岩の下から触手のような黒いモヤが複数伸びているのを発見。ヒラクは「万能農具」で切断するが、次々と湧き出る。原因は大岩の下にあると推測される。

始祖の調査では正体不明。ヒラクは岩を加工することを決意する。

創造神像の建立

半日かけ、黒い大岩を削り創造神像を作り上げる。接地面は残し土台とした。完成と同時に岩の色は黒から灰色へと変化し、空気も澄んだ感覚が広がる。モヤの糸は完全に消失した。

トンネル先にも同様の大岩があると判明。封鎖前に同様の加工を行うべきと判断する。だが最終的には埋める必要があるため、始祖は名残惜しそうに反対する。ヒラクは面倒を避けるためにも封鎖を優先し、説得に苦労することとなった。

11 帰り道その三と合流その三

土兵による封鎖計画と葛藤

始祖はトンネル封鎖のため、土で兵士を大量に生み出し、内部へ送り込み所定位置で土へ戻す方法を提案する。しかしヒラクは生まれた土兵に感情移入してしまい、残酷に感じて抵抗する。

その傍ら、ウルザは土兵に強い関心を示し、自らも作ろうとするが上手くいかない。死霊王だった頃と性質が変化しているためである。

ウルザの土人形

始祖の助言で、ヒラクは上質な土を耕し、泥人形を作る。最終的にウルザ自身が小さな土人形を完成させ、土兵の核を融合。ヨチヨチと歩く土人形が誕生する。

抱きしめて壊してしまう失敗を経て、ハクレンの鱗を粉にして混ぜ込み強度を向上。竜兵並みの耐久力を持つ土人形となる。ウルザはハクレンに感謝し、二人の関係も少し前進する。

帰還優先と封鎖

冬が迫り、村への帰還を優先することを決定。アンの提案でトンネルの一部を魔法で崩落させ、魔物の巣化を防ぐ。

創造神像のある空間は純白に変わり、神聖な雰囲気を帯びていた。ザブトンの子供たちの動きが鈍くなったため、始祖の転移魔法で村へ帰還する。

合流その三 村への帰還と再出発

屋敷の中庭へ転移。ザブトンの子供たちの連絡で村中が集まる。だがラスティとマクラが未帰還のため、ヒラクは始祖と共に再度転移。

同行を申し出たルー、ティア、ハクレン、クロ、ユキと共に巨人族のダンジョンへ向かう。

巨大ムカデとの戦闘

ダンジョン奥で、竜姿のラスティ、ザブトンの子供たち、マクラが巨大ムカデと交戦中。炎は洞窟内のため使用不可。

始祖の閃光魔法でムカデを怯ませ、ラスティとハクレンが足で押さえ込む。ヒラクは「万能農具」で耕すが、ムカデは一部を削っても動き続ける。

反撃を受けかけたヒラクを、ルーとティアが防護。連携の末、巨大ムカデを討伐する。

全員無事を確認し、ようやく真の合流を果たすのであった。

12 トンネル対策?

ムカデ襲撃の経緯

ラスティの報告によれば、ダンジョン崩落地点の補修中に二メートル級のムカデが出現。撃退後も別地点から発生し、最終的に広間へ追い込んで防衛していたという。巨人族が近くにいたため、炎による一掃は控えていた。

巨大種はポイズンロックヘカトンと呼ばれ、毒を持つ可能性もある。幸い死者は出ていないが、二日間の防衛戦で消耗は激しかった。

崩落穴の拡大と内部処理

崩落でできた穴は以前より拡大していた。マクラの糸で補強されているため、内部からの封鎖を選択。事前にハクレンとラスティが炎で内部のムカデを焼却する。

西側・東側それぞれ約一キロ地点で魔法により崩落を実施。完全封鎖に成功する。

創造神像と封鎖の両立

創造神像の空間は残す案を採用。始祖は信仰心から埋没を避けたいと希望する。ヒラクは神殿建設を提案し、冬に着手することを約束。始祖は転移魔法で協力を申し出る。

ガーゴイル設置

始祖は石柱からガーゴイルを十体創造。通常は石像だが、侵入者を感知すれば門番兼警報装置として機能する。アースラット程度なら対処可能で、作動すれば始祖に伝わる仕組み。

巨人族へ封鎖とガーゴイルの説明を行い、穴への立ち入りを控えるよう依頼する。

村への帰還と宴

転移魔法で大樹の村へ帰還。宴会はヒラクたちを待って開始される。謝罪とともに宴が始まり、長い遠征はようやく幕を閉じた。

【終章】神殿

1 まったり

まったりとした冬の村

冬を迎えた大樹の村は、穏やかな空気に包まれていた。屋外作業は減ったが、完全に休んでいるわけではなく、備蓄食料の移動などを進めていた。温泉調査隊が持ち帰った保温石で温室風の小屋を作ったところ、ザブトンの子供たちに占領される。本来の目的は保温石の有効利用であり、問題はなかった。

ヒラクは保温石を利用したコタツを制作。火鉢ではないため安全で、暖かさも十分だったが、クロとユキが長時間占拠し、子供たちが順番待ちをする事態となる。数を増やしたいが、保温石も布団も不足しており、二台で交代制とした。

餅搗きと冬の賑わい

創造神像の神殿建設は、始祖が不在のため着手できていなかった。そんな中、鬼人族メイドの提案で餅搗きが始まる。ハイエルフ、ドワーフ、リザードマンらも集まり、砂糖醤油や砂糖黄粉、善哉の準備も整う。ミノタウロスの駐在員が搗いた餅が特に美味と評され、ヒラクの餅は評価が低いが、消費が早いため問題はなかった。

ウルザとハクレンの変化

当初、ウルザの部屋は鬼人族メイドの近くに用意する予定だったが、本人の希望でハクレンの隣となる。二人は共に過ごす時間が増え、ハクレンは家事にも取り組み始めた。未熟ながらも前向きな変化である。一方、世話をするつもりだったアンは少し寂しげであった。

文官娘衆の休息

フラウと文官娘衆は暖かい室内で過ごしていた。秋の収穫期に収穫量記録、消費計画作成、販売・加工・贈答の振り分けまでを担い、激務をこなしていたため、誰も咎めない。ドノバン、セナ、マイケルらとの調整も乗り越えた成果である。ただし、怠惰が続く様子にヒラクは早期の再始動を望んでいた。

来訪者と動向

ラスティはドースに呼ばれ、ブルガとスティファノも同行して実家で冬を過ごす。入れ替わるように魔王国四天王のビーゼルとグラッツが来訪。ビーゼルは解放感を漂わせ、グラッツはロナーナと初々しい関係を築いていた。

社の扉制作

ヒラクは子供用や来客用の食器を制作後、創造神像の眩しさ対策として社に扉を設けることを思いつく。観音開きの木製扉を作成し、装飾として中央に大樹を彫刻。裏面には花を彫り、『万能農具』の導きで桜を選んだ。設置は問題なく完了する。

創造神像は夜も光り続けており、農業神像との対比が目立つ。暖かくなっても光が続くなら、この像の前で花見宴会を行う構想も浮かぶが、始祖への相談が必要と考える。

穏やかな締めくくり

作業を終えたヒラクのもとへ、薄着で外に出て叱られたウルザが助けを求めてくる。ヒラクは抱き上げ、毛布を持ったハクレンと共に屋敷へ戻る。穏やかな冬の日常の中で、村の時間は静かに流れていた。

2 レース

競馬場と冬の恒例遊び

村南側の競馬場では、クロの子供たちと獣人族の男の子たちによるレースが冬の恒例行事となっていた。山エルフの改造によりコースは起伏に富み、戦略性が増している。酒スライムの鮮やかな差し脚が転機となり、参加者たちは作戦を練るようになった。

参加条件は女性のズボン着用と、クロの子供たちに無理をさせないことの二点。観客席や保温設備も整えられ、今日は本格的なレース開催日となった。

第一レース ケンタウロス族対馬

約二千メートルのエキシビション。持久力のケンタウロス族と速度の馬が競り合う展開となる。三ノ村から参戦したグルーワルドが僅差で勝利。馬は悔しげな様子を見せ、次戦への期待を残した。

第二レース ミノタウロス族チーム戦

四百メートル直線での大荷物牽引レース。六チームが出場し、重量は抽選で決定。巨体が協力してソリを引く光景は観客を沸かせた。グラッツとロナーナの組は二位。健闘を称えられた。

第三・第四レース クロの子供たち単独戦

若い世代限定の三千メートル戦では、一頭が直線で独走勝利。年齢制限なしの追加レースでは、終盤まで一団で牽制し合い、最後の直線で激戦となった。勝者には布が巻かれ、識別と誇りの証とされた。

第五レース ハーピー族走

飛行禁止の二百メートル走。得意分野ではないため苦戦しつつも、会場は温かな声援に包まれた。

第六レース 本命戦

クロの子供たちに騎乗する混合戦。体重差から酒スライムが本命視される中、ウルザが乱入参戦。草入り帽子で安全対策を施し出走した。

序盤はリザードマンの子供が逃げる展開。だが最終コーナーで後方勢が一斉に脚を伸ばす。獣人族の男の子三人とウルザが猛追し、ゴール前は横一線の激戦となった。

優勝は獣人族の男の子の一人。ウルザは三着。観客は健闘を称え、反省会が始まる。賞品の甘味は優勝者へ贈られたが、全員の奮闘が祝福された。

平和で賑やかな冬の一日であった。

3 神殿への道

始祖の帰還と準備

始祖が村へ戻ってきた。宗教関連の用事で多忙だったらしく疲労が見えたため、ヒラクは二日間の休養を勧める。風呂と食事で体力を回復させた後、神殿造りのための編成を整えた。

同行者はハイエルフと山エルフを中心に、リザードマン、鬼人族メイド、そして護衛兼偵察としてクロの子供たち五十頭。夜は始祖の転移魔法で村へ戻るため、荷物は最小限で済んだ。

現地到着と拠点構築

現場は温泉調査隊が宿泊した跡地の近く。直径四メートルほどの縦穴の底に創造神の像へ加工された黒い大岩がある。まずは作業拠点を整備し、食事用スペースや資材置き場を設置した。

クロの子供たちは周辺警戒を行い、魔獣を狩って食料を確保。血抜きの作業を終え、神殿造り前に身を清めることを確認する。

謎の縦穴と保留

穴はアースラットが螺旋状に掘った形跡があり、深さは二百メートル近いと推測された。同様の穴が別の黒い大岩にも存在したことから、何らかの意図があった可能性が浮上するが、結論は出ない。

当面は落下防止の仮蓋を設置し、本格的な処理は保留とした。

新たな掘削と水問題

地下へ資材を運ぶ手段として、ヒラクは『万能農具』で新たな斜め穴を掘ることを決断。始祖の魔法で酸欠対策を施し、螺旋状に掘り進める。しかし途中で湧き水に遭遇し、一時中断。魔法で対処可能と判明し、掘削を継続する。

数日後、新たな通路は創造神の像の空間へ到達。既に魔法で木材が運び込まれ、ハイエルフたちが測量を開始していた。上の縦穴は採光には不適と判明し、用途は依然不明のまま放置された。

地下神殿への方針転換

ヒラクは空間内に神殿を建てる案を持っていたが、始祖とハイエルフの判断で却下。既存の空間を加工し、神殿内部として整備する方針に変更される。

灯りや祭具の設置位置を指示され、『万能農具』で岩盤を削る。全面加工せず岩肌を残すことで、西洋風の意匠と自然の威厳を両立させた。足場も整えられ、作業は順調に進む。

地上の整備と思わぬ収穫

地上ではリザードマンたちが穴周辺に柵を設置。気分転換中にヒラクは角を持つ鹿型魔獣を発見し、パニックカリブーと判断して仕留める。村へ持ち帰られ英雄扱いとなり、宴会が開かれた。

初めて味わう者たちは感動し、始祖やビーゼルも冷静ながらおかわりを求める。神殿造りは宴の熱気とともに、着実に進行していた。

4 神殿と死霊騎士

光石の加工と地下神殿の完成

白い創造神像を中心とした広い地下空間。その像を照らすため、側面に配置された光石はすべて炎の形に加工され、白く燃え上がるような演出が施された。光石は本来、小石サイズでも高価で庶民が手にできない貴重品であり、照明として富裕層が用いるもの。それを子供ほどの大きさで何十個も用意した始祖に、山エルフたちは素直に驚嘆する。

武骨な配置になりかけたため、ヒラクは自ら光石を炎型に加工。光量は変わらず、光の強さにもムラはない。壁面は風景ではなく模様系で構成し、規則正しすぎず、かといって意図的な歪みも感じさせない“手作業の温かみ”を意識した意匠に仕上げた。始祖が熱心に祈っている様子からも、完成度に問題はないと判断される。

出入口はヒラクの掘った斜め螺旋穴を整形し扉を設置。床と壁も加工済み。創造神像正面には祭壇を設け、地下部分は完成とされた。

地上神殿の建設

問題は像の真上に開いた地上の穴。雨で像が汚れるため、塞ぐ方針が決まる。その結果、地上にも木造神殿を建てることになった。ハイエルフを追加で招集し、創造神像の真上の穴と、ヒラクが掘った地下通路をすべて取り込む形で建設を進める。

完成した神殿は外観こそ木造の家だが、内部は前後二エリア構成。前は生活兼休憩空間、後ろは地下へ続く扉と創造神像直上の穴がある。転落防止柵を設置し、屋根は開閉式構造。中央梁を撤去した代わりに補強を施すなど、山エルフの工夫が随所に活かされた。

魔物対策は始祖の魔除け魔法で解決。地下では土の兵士が創造神像の警備を行う。神殿は地上地下ともに機能を整えた。

第二の黒い大岩と巨大ムカデ

続いて、もう一つの黒い大岩の調査へ向かう。場所は死の森の東寄り。森の中に同様の縦穴を発見するが、内部から強烈な気配を感知。土の兵士を近づけた瞬間、巨大ムカデ――ポイズンロックヘカトンが飛び出し、兵士は瞬時に捕食された。

さらに未知の巨大虫が群れをなして出現。ヒラクは始祖に抱きつき転移で離脱。一度上空へ退避するも危険と判断し、村へ帰還した。

竜の炎と死霊騎士

再度、始祖はハクレンを伴って現地へ。上空から炎を吐き、森を焼き払う。内部の虫は殲滅され、安全は確保された。

その最中、森の中に鎧姿の存在が現れる。敵意はなく、死霊騎士と判明。主人との契約が切れた自由状態で、彷徨っていたという。村への同行は外見と雰囲気から困難と判断されるが、使命を与える案が浮上する。

神殿警備は魔除けの影響で不可。結果、温泉の番人を任されることになった。死霊騎士はやる気を示し、任務を受け入れる。

一時の寄り道

始祖、ハクレン、ウルザは温泉に浸かり、調査再開は少し遅れる。寄り道を挟みつつも、第二の穴の処理へ向けて動きは続く。

5 二つめの穴

再侵入と虫の群れ

温泉を後にし、黒い大岩のある穴へ戻る。始祖が先行して侵入するが、直後に全力で飛び出してきた。その背後から現れたのは、三十センチほどの虫の大群。ハクレンが即座に炎で焼き払い、穴内部も徹底的に焼却する。始祖でさえ、不意打ちの大量発生には動揺を見せた。

灰の山と横穴の処理

再度、全員で侵入。空気対策の魔法を施し、内部を確認する。穴の底は白い灰で埋まり、ハクレンの火力の凄まじさがうかがえる。東西の横穴にも炎を流し込み、さらに行き止まりへ続く別の横穴も焼却。黒い大岩は灰の中から現れ、始祖の魔法で灰を圧縮し、東側のトンネルを塞いだ。

黒い大岩と黒いモヤ

大岩は光を吸い込むような黒色をしていた。『万能農具』を構えると、岩の下から黒いモヤの糸が現れる。ヒラクはそれを耕すように消し去り、創造神ではなく光神の像を彫ることを選択する。同一の像を複数置くことを避けるためであり、神の選定は話し合いとくじで決められた。

光神像の完成と浄化

半日で像は完成。黒い像は徐々に白へと変化し、黒いモヤは消えていく。ただし、像の下から頭上の穴へ伸びるモヤの糸が残っていたため、『万能農具』で切断。創造神像の方も確認し、問題がないことを確かめる。地上の穴は丸太で塞ぎ、当面の処理を終えた。

七角形の仮説

帰還前、ヒラクは違和感を覚える。光神像の横穴は掘削途中だった可能性があるのではないか。地面に図を描き、創造神像と光神像を基準に角度と距離を再現すると、正七角形の構造が浮かび上がる。つまり、同様の地点があと五つ存在する可能性。

始祖も興味を示すが、即座に確認はできない。結論は保留し、村へ戻ることを選ぶ。その夜、ヒラクは久しぶりに深く眠った。

我は神であった

我はかつて神であった。だが忌々しき神々との戦いに敗れ、地位と名を奪われ、大地の奥底に封じられた。朽ちるのみの存在となりながらも、我は復讐を誓う。何千年、何万年を経ようとも、神々を討ち滅ぼすと。

封印に甘んじるつもりはなかった。我は復活のため、いくつもの仕掛けを施していた。封じられても、呪いを流し、世界に影響を及ぼし続ける算段だった。

最初の打撃

だが、異変が起こる。封印の大岩が創造神の像へと変えられ、さらに強固になった。削り続けていた檻が、より硬い檻へと置き換えられたに等しい。

痛みも伴う。巨大な杭を脛に打ち込まれるような激痛。神であろうと痛いものは痛い。怒りと混乱の中で呪いを放つが、集まるのは虫ばかり。力の衰えを思い知らされる。

第二の封鎖と竜

続いて二カ所目も封じられる。しかも竜が関与していた。竜は神にすら牙を向ける存在。神々の手ではなくとも、復活の仕掛けは確実に破壊されていく。

それでもまだ余裕はあった。復活が百年遅れる程度と自らを慰める。

第三の損失

三カ所目は人間によって破壊された。埋まっている箇所を正確に突かれ、耐えきれず体の一部を切り捨てる。神性は削がれたが、まだ残っていると自負する。

迫る四カ所目

未来を予測できる我は理解している。次も見つかる。四カ所目が発見されるのは時間の問題。

かつて神であった我は、ついに口にする。

「助けて、神っ! 今までのこと、色々と謝るからっ!」

閑話 彷徨う死霊騎士

骨としての目覚め

自らの名を思い出せないまま目覚めた。頭の中は曖昧で、まずは習慣である素振りを行うことで落ち着きを取り戻そうとする。しかし手にした剣の柄は朽ち、己の手は骨となっていた。身体も頭も骨であると理解し、混乱の末に受け入れる。

鎧は数百年放置されたかのように劣化している。自分は一度死に、蘇ったのかと推測するが、自我ははっきりしている。喋れないが意思はあり、ジェスチャーも可能。自我を持つ骨の存在に三日間悩むが、結論は出ず、自分が化け物になったと自覚する。

失われた記憶と騎士の矜持

かつては人間であり、騎士であったという感覚は残っている。王か女王に仕えていた記憶もあるが曖昧で、主君を思い出せないことに苛立つ。悩みを振り払うように素振りを重ねる。筋肉はつかないが、習慣は心を整える。

眠くもならず、腹も減らない存在となった今、何をすべきかを考える。畑も罠も不要。防御陣地の建設を思いつくが、地面も木も異様に硬く、材料も得られない。鎧は砕け、木は鉄のように硬い。環境の過酷さを思い知る。

強さの自覚と空虚

巨大な爪痕を残す魔獣に襲われるが、返り討ちにする。強いことは理解するが、やるべき使命がない。石を積んで守るという遊びを自らに課すが三日で飽きる。敵も現れず、張り合いもない。

自分に必要なのは使命、そして仕えるべき主君だと気づく。かつて飢えたことのなかった使命感を求め、主君探しの旅を決意する。

同士との出会い

旅立ちの途中、同じように鎧を纏った骨と遭遇する。互いに主君を探していることを理解し、同士と認識する。しかし相手は主君ではない。目的は同じだが、従う相手ではないと確認し合う。

主君を探すという明確な目標を得たことで、心は充実する。骨の顎を鳴らしながら、死霊騎士の新たな旅が始まる。

開話 巨人族

地下に生きる巨人族

巨人族は巨大な体躯と長い体毛を持つ種族である。他の巨人族に会ったことはないが、代々そう伝えられてきた。彼らは巨大な地下空間に住居を構え、外界にはほとんど出ない。地上は魔物や魔獣が多く危険だからである。地下にも脅威はあるが対処法を心得ており、日々は平穏に過ぎていた。

竜の来訪

外が暖かくなった頃、二頭の竜が現れる。上空を飛ぶ姿は見たことがあったが、目の前に降り立つのは初めてだった。恐怖に包まれる中、竜は人間の姿となり、目的は巨人族ではなく「ブラッディバイパー」だと告げる。

穴の中に棲む巨大蛇ブラッディバイパーは、成長すれば巨人族では太刀打ちできない存在である。子供は食料だが、成体は脅威だった。巨人族は正直に事情を説明し、小型個体を残してもらえるよう願う。竜はそれを理解し、穴から出るよう命じた。

圧倒的な殲滅

竜たちは半日で戻ると言い、穴に潜る。すぐに巨大なブラッディバイパーを仕留めて持ち帰る。競うように狩りを始め、入口付近には死体が積み上がる。外ではインフェルノウルフやハイエルフ、リザードマンも周辺の魔物を駆逐していく。

巨人族は言われた通り待ち、解体し、食べながら耐える。穴の奥からは地鳴りのような音が響き続ける。歓迎の練習をし、機嫌を損ねぬよう備える。

五日間の嵐

半日で終わるはずの討伐は五日間続いた。途中から巨人族も道案内に加わる。竜が迷って暴れたためである。穴の構造は大きく変わり、下層は崩壊箇所も出た。しかし成体のブラッディバイパーが殲滅された利益を思えば、受け入れるしかない。

新たな主の存在

竜は森の中央に住む人間に従っていると語られる。二頭の竜を娶り、インフェルノウルフを従える存在。その話を聞き、巨人族は理解する。竜に逆らうことはできない。ならば、その主にも逆らえない。

やがて問いが生まれる。従属はどうすれば受け入れてもらえるのか。巨人族は生き延びるため、新たな力の秩序を受け入れる覚悟を固め始めていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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