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Y.Aフィクション(Novel)八男って、それはないでしょう!読書感想

小説【八男】「八男って、それはないでしょう! 7」感想・ネタバレ

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Y.A

八男6巻レビュー
八男まとめ
八男8巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 貴族間の紛争
    2. 領地開発の遅延
    3. 領地開発と資材不足
    4. カルラとエルの恋
    5. ヘルタニア渓谷の攻略
    6. ブロワ家の後継者争い
  6. 登場キャラクター
    1. バウマイスター伯爵家
      1. ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター
      2. エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム
      3. エルヴィン・フォン・アルニム
      4. イーナ・ズザネ・ヒレンブラント
      5. ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク
      6. ヴィルマエトル・フォン・アスガハン
      7. ローデリヒ
      8. クラウス
      9. トーマス・トイファー
      10. モーリッツ
      11. フェリクス
      12. クラウスの孫たち
      13. クラウスの孫娘婿二人
      14. マルタ
      15. バウマイスター伯爵家諸侯軍
      16. 護衛たち
    2. ヴァイゲル準男爵家
      1. カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル
    3. バウマイスター騎士爵家
      1. ヘルマン・フォン・ベンノ・バウマイスター
    4. ブロワ辺境伯家・東部貴族
      1. 先代のブロワ辺境伯
      2. カルラ・フォン・ブロワ
      3. ゲルト・オスカー・フォン・ブロワ
      4. フィリップ・フォン・ブロワ
      5. クリストフ・フォン・ブロワ
      6. ゴドウィン・クレバー
      7. リーンハイト
      8. ベッケナー
      9. ニコラウス
      10. ハイモ
      11. クリストハルト・レッチェルト
      12. ビエンコ・ロウケル
      13. ロイ・ザールニア
      14. 『火壁』と名乗った魔法使い
      15. ヘンケル準男爵
      16. イェーリング騎士爵
      17. 先代のブロワ辺境伯の本妻
      18. フィリップの妻
      19. クリストフの妻
      20. 門を警備していた兵士
      21. 館に残っていた家臣たち
      22. ブロワ辺境伯軍側の貴族たち
      23. ブロワ辺境伯家諸侯軍
      24. 陣借りの傭兵たち
    5. ブライヒレーダー辺境伯家・南部貴族
      1. ブライヒレーダー辺境伯
      2. ブランターク・リングスタット
      3. ブリュア
      4. ランセル準男爵
      5. フリックス
      6. ベッカー騎士爵
      7. クリーガー子爵
      8. クメッチュ男爵
      9. 年配の子爵
      10. 従兵の少年
      11. ブライヒレーダー辺境伯家側の貴族たち
      12. ブライヒレーダー辺境伯家諸侯軍
    6. ヘルムート王国政府・中央貴族
      1. ヘルムート三十七世
      2. クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング
      3. エドガー軍務卿
      4. トリスタン
      5. シュティーリケ侯爵
      6. ベッカー内務卿
      7. マーラー子爵
      8. マテュー・オスカー・フォン・クナップシュタイン子爵
      9. アロイス・フォン・ヴィリ・アヒレス子爵
      10. アームストロング伯爵
      11. イシュルバーク伯爵
      12. 侍従
      13. 王城の正門を警備する兵士たち
      14. 魔道具ギルドの職人たち
      15. 王国軍
    7. 商人・その他
      1. アルテリオ
      2. ヘンリック
    8. 魔物
      1. ロックギガントゴーレム
      2. 岩狼
      3. 岩でできた猪
      4. 岩でできた熊
      5. 大鷹型のゴーレム
      6. ワイバーン型のゴーレム
      7. 岩の魔物たち
  7. 展開まとめ
    1. 第一話 カルラ・フォン・ブロワという女 
    2. 幕間一 エルの想い人 
    3. 第二話 バウマイスター伯爵家諸侯軍出陣 
    4. 第三話 紛争以上? 戦争未満? 
    5. 第四話 無意味な長対陣とその生活 
    6. 第五話 推定勝利ながらも、紛争はまだ続く 
    7. 第六話 突然の夜襲 
    8. 第七話 早く責任者は出てこいよ! 
    9. 第八話 俺は先に抜けさせてもらうから! 
    10. 第九話 ヘルタニア渓谷解放作戦 
    11. 第十話 結局、後始末をする羽目になる 
    12. 第十一話 第三の男 
  8. 同シリーズ
    1. 八男って、それはないでしょう!シリーズ
    2. 異世界帰りのパラディンは、最強の除霊師となるシリーズ
    3. 異世界帰りの勇者は、ダンジョンが出現した現実世界で、インフルエンサーになって金を稼ぎます!シリーズ
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、異世界の貧乏貴族の八男に転生した主人公・ヴェンデリンの活躍を描くファンタジー小説の第7巻である。 本巻では、南部のブライヒレーダー辺境伯家と東部のブロワ辺境伯家の間で勃発した大規模な紛争が描かれる。領地開発を優先したいヴェンデリンは静観を決め込んでいたが、病床のブロワ辺境伯から娘のカルラが送り込まれ、あろうことか側近のエルが彼女に一目惚れしてしまう。さらに紛争の長期化によって領地開発に支障が出始めたため、ヴェンデリンたちは圧倒的な魔法力を駆使して紛争に介入する。ブロワ軍を圧倒したのち、身代金減額の代わりに魔の領域「ヘルタニア渓谷」を譲り受けてその解放作戦に挑み、最後には泥沼化したブロワ辺境伯家の後継者争いを終わらせるため「第三の男」を擁立するという、怒涛の展開が繰り広げられる。

■ 主要キャラクター

  • ヴェンデリン:バウマイスター伯爵。強大な魔法力を用いて紛争を終結へと導き、広域エリアスタンや極大魔法で戦局を支配する。エルの恋を応援するため、貴族の策謀にも足を踏み入れる。
  • エルヴィン(エル):ヴェンデリンの護衛にして親友。カルラに一目惚れし、彼女との身分差の恋を実らせるために奮闘する。
  • カルラ・フォン・ブロワ:ブロワ辺境伯の娘。最近認知されたばかりの元貧乏騎士爵家の娘であり、政略結婚の駒として送り込まれるが、本人は実家の縛りから逃れることを望んでいる。
  • クラウス:老獪な策士。捕虜の管理や紛争における策、さらにはブロワ家の第三の後継者擁立のシナリオを立案し、ヴェンデリンを大いにサポートする。
  • ゲルト・オスカー・フォン・ブロワ:亡きブロワ辺境伯の年の離れた弟。「第三の男」としてヴェンデリンたちに擁立され、混乱するブロワ辺境伯家を継ぐこととなる。
  • ルイーゼ:ヴェンデリンの婚約者。ヘルタニア渓谷の解放作戦において、魔闘流の秘奥義「ビッグバンアタック」を放ち、巨大なロックギガントゴーレムを粉砕する大活躍を見せる。

■ 物語の特徴

本作の魅力は、ファンタジー世界ならではのド派手な魔法バトルと、生々しい貴族社会の政治交渉が密接に絡み合っている点である。数万の岩ゴーレムを相手にするヘルタニア渓谷での大規模戦闘や、数千人の軍勢を一瞬で無力化する魔法無双の爽快感がある一方で、死者を出さないための紛争のルール、和解金と身代金の交渉、泥沼化する後継者争いといった内政・外交要素が非常に緻密に描かれている。 また、本巻は側近であるエルの「身分違いの初恋」という人間ドラマが物語の大きな推進力となっており、一人の友人の恋を成就させるために、主人公たちが国家規模の政治的工作(新たな辺境伯の擁立)までやってのけるという、他作品とは一線を画すスケールの大きな展開が読者の興味を強く惹きつける。

書籍情報

八男って、それはないでしょう! 7
著者:Y.A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
出版社:KADOKAWAMFブックス
発売日:2015年12月25日
ISBN:9784040680200

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

紛争の間で揺れる二人の男女。エルの恋の行方は如何に!?
『暴風』カタリーナ、『謀臣』クラウスの件が片付いた矢先、ブライヒレーダー辺境伯家とブロワ辺境伯家との間で紛争が勃発した。
それは南部と東部の百を超える貴族家を巻き込む大変な事態となるが、ヴェンデリンは領地の開発を優先するためにこれを静観。
そんな中、病床のブロワ辺境伯が、娘カルラを非公式にバウマイスター伯爵領に送り込んできた。怪しみながらもカルラとの交流が始まるが……なんと、エルがカルラにどんどん惹かれていってしまう!
そして紛争は予想以上に長引き、バウマイスター伯爵領への人と物の交通網に多大なダメージを与える。領地開発に遅れが生じ、やがてヴェルも激怒に至るのだが……。 
いや、そんなことよりもエルだ! エルの恋路に目が当て……目が離せない、第七幕の登場!

八男って、それはないでしょう!7

感想

本巻で印象に残ったのは、最初は貴族同士のおままごとのように見えた紛争が、責任者不在という信じられない理由によって、次第に収拾のつかない事態へ発展していくところである。

両軍が刃を丸めた訓練用の武器を使い、敵を殺すのではなく捕虜にして身代金を取る。

一騎打ちで勝てば感状と褒美がもらえ、争う対象も銅山や中州などの限られた利権だけである。

戦争というより、貴族同士が面子と利益を懸けて行う大規模な競技のようにも見えた。

しかし、その緩いルールが守られているのは、双方に争いを終わらせる意思と責任者が存在するからである。

ブロワ辺境伯家には、それがなかった。

戦わない紛争という奇妙な世界

ブライヒレーダー辺境伯家とブロワ辺境伯家の紛争は、最初から本格的な殺し合いを目的としたものではない。

兵力を並べて相手を威圧し、有利な条件で交渉を始めるための争いである。

ところがブロワ側は、従来の慣習を破って奇襲を仕掛け、銅山や森林、中州などを次々と占拠していた。

このまま裁定に入れば、実効支配しているブロワ側が有利になる。

そこでヴェンデリンたちは、魔導飛行船で各地の紛争現場を回り、敵軍を片っ端から麻痺させて捕らえていく。

ヴェンデリン、カタリーナ、ブランタークの魔法使い三人が交代で「エリアスタン」を放ち、敵を一人も殺さずに制圧する展開は実に爽快だった。

相手が何百人いようと、強力な魔法使いの前では一瞬で勝負が決まる。

必死に名乗りを上げようとした魔法使いまで、最後まで名乗れないまま電撃の鞭で倒されてしまう。

本人にとっては気の毒だが、あまりにも実力差が大きく、思わず笑ってしまった。

勝っているのに終わらない紛争

ヴェンデリンたちの活躍によって、各地の争いはブライヒレーダー辺境伯家側の勝利に終わる。

大量の捕虜を得て、奪われた利権も取り戻した。

騎士や傭兵による腕比べでも勝ち越し、カタリーナもブロワ側の魔法使いたちを破っている。

普通なら、ここで敗北を認めて和平交渉へ進むはずである。

しかし、ブロワ辺境伯家では当主が病床にあり、長男フィリップと次男クリストフが後継者の座を争っていた。

二人とも、父が亡くなった隙に相手が家督を奪うことを恐れ、戦場へ出てこない。

現場を任された従士長ゴドウィンにも、正式な交渉権限がない。

戦場では負けている。

交渉を始めても、誰が署名するのか決まらない。

責任者が出てこないため、勝った側も争いを終わらせられない。

「早く責任者を出してくれ」と言いたくなる展開であり、大貴族の後継者争いが組織全体を機能不全にする様子が興味深かった。

現場がどれだけ努力しても、決定権を持つ者が責任から逃げれば何も進まない。

これは貴族社会に限らず、現実の組織でも起こりそうな話だと感じた。

紛争のルールを破った本気の夜襲

追い詰められたゴドウィンは、ついに従来の紛争のルールを破る。

後方に隠していた兵力まで加え、約一万人の軍勢で本気の夜襲を仕掛けてくる。

それまで使用していたのは、死者を減らすための訓練用武器だった。

しかし夜襲では通常の武器が使用され、争いは紛争ではなく明確な戦争へ変わってしまう。

ここでヴェンデリン、カタリーナ、ブランタークの三人が行った迎撃が、本巻最大の見せ場だった。

大量殺戮を避けるため、三人は大量の魔晶石を使い、広範囲へ「エリアスタン」を放つ。

敵の矢が降り注ぐ中、イーナ、ルイーゼ、ヴィルマが魔法使いたちを守る。

そして敵軍が目前まで迫った瞬間、一万人近い兵士と騎馬が一斉に倒れる。

三人も魔力を使い果たして意識を失うほどの大魔法だったが、まともに戦えばさらに多くの犠牲が出ていたはずである。

圧倒的な魔力によって敵軍を一網打尽にする展開には、大きな爽快感があった。

一方で、完全に無傷では終わらない。

突撃中の落馬や矢によって、多くの死傷者が出てしまう。

遊びのような紛争を本物の戦争へ変えた責任の重さも、はっきりと描かれていた。

交渉相手すら決まらない泥沼

夜襲を撃退したことで、ブロワ辺境伯軍はほぼ壊滅する。

本陣や補給拠点も押さえ、捕虜は各地を合わせて約二万人に達する。

それでも、争いは終わらない。

ブロワ辺境伯が亡くなった後も、フィリップとクリストフのどちらが家督を継ぐのか決まらなかったからである。

ようやく二人が交渉の場へ現れても、どちらが代表になるのかを巡って言い争う。

随員の人数すら決められない姿には、呆れるしかなかった。

敵と交渉する前に、身内同士で争っている。

寄子や家臣を守ることより、自分が当主になることを優先している。

その結果、ブロワ辺境伯家の寄子たちは次々と離反し、ブライヒレーダー辺境伯家へ鞍替えする。

夜襲の責任、捕虜の身代金、占領地の返還費用、離反した寄子への和解金。

請求額は膨れ上がり、ブロワ辺境伯家は急速に力を失っていく。

自分たちの都合で始めた争いに、自分たちで決着をつけられない。

その末路は、まさに自業自得だった。

価値のない土地を引き取る大胆な交渉

終わりの見えない交渉の中で、ヴェンデリンとカタリーナには莫大な身代金を受け取る権利が発生していた。

しかし全額を要求すれば、支払いを巡る交渉がさらに長引く。

そこでカタリーナが提案したのが、身代金の一部を減額する代わりに、ヘルタニア渓谷を譲り受ける方法だった。

ヘルタニア渓谷には、鉄、銅、金、銀、ミスリル、オリハルコン、宝石などが眠っている。

資源だけを見れば、まさに宝の山である。

ところが、渓谷には岩でできた大量の魔物が生息していた。

過去には一万の兵や高位魔法使いを投入しても攻略できず、実質的には利用不可能な土地と見なされている。

ブロワ側から見れば、攻略不能な土地を渡すだけで身代金を減らせる。

珍しくフィリップとクリストフの意見も一致し、譲渡はあっさりと認められる。

しかしヴェンデリンは、最初から渓谷を解放できる可能性に気づいていた。

相手が価値のない土地だと思って手放したものを、莫大な利益を生む鉱山へ変える。

この抜け目のなさが実に痛快だった。

岩の魔物に隠されていた古代の仕組み

ヘルタニア渓谷に生息する岩の魔物は、普通の魔物ではなかった。

古代魔法文明時代に作られた防衛用ゴーレムである。

渓谷の中央には、全長百メートルを超えるロックギガントゴーレムが存在していた。

その内部には、最大十万体もの岩ゴーレムを操る人工人格の結晶と、魔石を製造する装置が組み込まれている。

周辺の岩ゴーレムをいくら倒しても、中央の装置が新しい魔石を作り続けるため、敵の数はすぐに回復する。

過去の攻略が失敗したのも当然だった。

必要なのは、大量のゴーレムを一体ずつ倒すことではない。

すべてを制御している中心部を破壊することである。

ヴェンデリンたちは地上部隊にゴーレムを引きつけてもらい、その隙に空から中央部へ突入する。

一万を超える飛行型ゴーレムに囲まれながら、ヴェンデリンとカタリーナが竜巻で道を開く場面は、夜襲とは違った派手さがあった。

ルイーゼのビッグバンアタック

ロックギガントゴーレムとの戦いで、決定打となったのはルイーゼだった。

巨大ゴーレムは八つの頭と八本の尾を持ち、頭部を破壊しても短時間で再生する。

人工人格の結晶が胴体のどこにあるのかも分からない。

そこでルイーゼは、魔晶石と自分の魔力を拳へ集中させ、魔闘流究極の極意「ビッグバンアタック」を放つ。

細かく弱点を探すのではなく、胴体ごと粉砕してしまう。

あまりにも豪快な解決方法である。

その一撃によって人工人格の結晶は破壊され、渓谷全域の岩ゴーレムが一斉に停止する。

攻略不能とされていた危険地帯は、短期間で巨大な鉱石採掘場へ変わった。

誰も利用できなかった土地だから価値がなかった。

しかし、危険の原因さえ取り除けば、そこには豊富な資源だけが残る。

ヴェンデリンたちの力が、土地そのものの価値を大きく変えてしまう展開に爽快感を覚えた。

ブロワ辺境伯家の自業自得な結末

フィリップとクリストフが後継者争いを続ける中、ブロワ辺境伯家では叔父のゲルトが新当主として動き出す。

彼は王都へ向かい、国王から正式に辺境伯の襲爵を認められる。

ヴェンデリンの瞬間移動があったため、フィリップたちが想定するよりもはるかに早く手続きを終えることができた。

新当主が交渉の場へ現れたことで、責任者不在だった紛争はようやく動き出す。

フィリップとクリストフは交渉権を失い、拘束される。

夜襲を主導したゴドウィンたちには処刑や家の取り潰しが決まり、長く続いた紛争もようやく終結する。

ブロワ辺境伯家そのものが消滅したわけではない。

しかし、後継者争いを優先した二人は家督を失い、多くの寄子も離反した。

自分たちの権力を守るために争い続けた結果、最も欲しかった当主の座から二人とも遠ざけられる。

納得のいく着地点だった。

エルとカルラの関係

本巻のもう一つの見どころは、エルとカルラの関係である。

カルラは、ブロワ辺境伯が長年認知しなかった娘だった。

紛争を有利にするため、急に娘として利用され、ヴェンデリンとの婚姻を期待されてバウマイスター伯爵領へ送り込まれる。

しかし本人は、ブロワ辺境伯家のために働く気がない。

貧しくても、以前のベンカー騎士爵家の娘として暮らしたいと望んでいる。

そんなカルラの護衛役を自ら引き受けたのがエルだった。

エルは彼女へ一目惚れし、弓の稽古や町の散策を通じて距離を縮めていく。

普段は軽い調子で女性へ声をかけるエルだが、カルラへの気持ちは明らかに違っていた。

一騎打ちへ勝手に参加したのも、彼女へよいところを見せたかったからである。

カルラが作った料理を必要以上に褒め、服を繕ってもらっただけで結婚生活まで想像する。

浮かれすぎている部分には笑ってしまうが、それだけ本気だったのだろう。

当て馬では終わらなかったエル

カルラがブロワ辺境伯家の娘である限り、陪臣であるエルとの結婚は難しい。

二人の間には、大きな身分差があった。

ところが新当主ゲルトは、カルラ本人の希望を受け入れ、彼女をブロワ辺境伯家の籍から外す。

これによって、エルとの身分差は大きく縮まる。

本巻の時点で二人の結婚が決まったわけではない。

しかし、少なくともエルが完全な当て馬として終わる展開ではなかった。

カルラもエルには本音を話し、彼と過ごす時間を楽しんでいる。

エルの一方的な片思いに見えながら、少しずつ可能性が生まれていく。

紛争や後継者争いの裏で進む不器用な恋愛として、今後が気になる関係だった。

貴族の争いと責任者の重さ

『八男って、それはないでしょう! 7』は、貴族同士の緩い紛争から始まり、本物の戦争、後継者争い、古代ゴーレムとの戦闘まで発展する一冊だった。

最も考えさせられたのは、責任を取る人物がいない組織の恐ろしさである。

現場では多くの人間が動き、大量の物資と金が失われている。

それでも、上にいる者たちは家督争いを優先し、決断しようとしない。

その結果、終わるはずの争いが終わらず、ついには多くの死者まで出してしまう。

一方のヴェンデリンは、巻き込まれながらも前へ進む。

魔法で敵を制圧する。

交渉で価値のない土地を引き取る。

危険の原因を取り除き、優良な鉱山へ変える。

さらに新当主を王都へ運び、責任者不在の問題まで解決する。

本人は領地開発へ戻りたいだけなのに、結果として紛争の後始末まで背負わされている。

その苦労には同情するが、問題を一つずつ利益へ変えていく手腕は痛快だった。

紛争は終わり、ヘルタニア渓谷という新たな鉱山も手に入った。

エルとカルラの間にあった身分差も解消へ向かっている。

ただし、これだけの鉱山を手に入れれば、領地開発の仕事がさらに増えることは間違いない。

有能な家宰ローデリヒが、この新しい資源を見逃すはずもない。

ヴェンデリンが再びどれほどこき使われるのかも含め、次巻の展開が楽しみになる第7巻だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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本巻で印象に残ったのは、最初は貴族同士のおままごとのように見えた紛争が、責任者不在という信じられない理由によって、次第に収拾のつかない事態へ発展していくところである。

両軍が刃を丸めた訓練用の武器を使い、敵を殺すのではなく捕虜にして身代金を取る。

一騎打ちで勝てば感状と褒美がもらえ、争う対象も銅山や中州などの限られた利権だけである。

戦争というより、貴族同士が面子と利益を懸けて行う大規模な競技のようにも見えた。

しかし、その緩いルールが守られているのは、双方に争いを終わらせる意思と責任者が存在するからである。

ブロワ辺境伯家には、それがなかった。

戦わない紛争という奇妙な世界

ブライヒレーダー辺境伯家とブロワ辺境伯家の紛争は、最初から本格的な殺し合いを目的としたものではない。

兵力を並べて相手を威圧し、有利な条件で交渉を始めるための争いである。

ところがブロワ側は、従来の慣習を破って奇襲を仕掛け、銅山や森林、中州などを次々と占拠していた。

このまま裁定に入れば、実効支配しているブロワ側が有利になる。

そこでヴェンデリンたちは、魔導飛行船で各地の紛争現場を回り、敵軍を片っ端から麻痺させて捕らえていく。

ヴェンデリン、カタリーナ、ブランタークの魔法使い三人が交代で「エリアスタン」を放ち、敵を一人も殺さずに制圧する展開は実に爽快だった。

相手が何百人いようと、強力な魔法使いの前では一瞬で勝負が決まる。

必死に名乗りを上げようとした魔法使いまで、最後まで名乗れないまま電撃の鞭で倒されてしまう。

本人にとっては気の毒だが、あまりにも実力差が大きく、思わず笑ってしまった。

勝っているのに終わらない紛争

ヴェンデリンたちの活躍によって、各地の争いはブライヒレーダー辺境伯家側の勝利に終わる。

大量の捕虜を得て、奪われた利権も取り戻した。

騎士や傭兵による腕比べでも勝ち越し、カタリーナもブロワ側の魔法使いたちを破っている。

普通なら、ここで敗北を認めて和平交渉へ進むはずである。

しかし、ブロワ辺境伯家では当主が病床にあり、長男フィリップと次男クリストフが後継者の座を争っていた。

二人とも、父が亡くなった隙に相手が家督を奪うことを恐れ、戦場へ出てこない。

現場を任された従士長ゴドウィンにも、正式な交渉権限がない。

戦場では負けている。

交渉を始めても、誰が署名するのか決まらない。

責任者が出てこないため、勝った側も争いを終わらせられない。

「早く責任者を出してくれ」と言いたくなる展開であり、大貴族の後継者争いが組織全体を機能不全にする様子が興味深かった。

現場がどれだけ努力しても、決定権を持つ者が責任から逃げれば何も進まない。

これは貴族社会に限らず、現実の組織でも起こりそうな話だと感じた。

紛争のルールを破った本気の夜襲

追い詰められたゴドウィンは、ついに従来の紛争のルールを破る。

後方に隠していた兵力まで加え、約一万人の軍勢で本気の夜襲を仕掛けてくる。

それまで使用していたのは、死者を減らすための訓練用武器だった。

しかし夜襲では通常の武器が使用され、争いは紛争ではなく明確な戦争へ変わってしまう。

ここでヴェンデリン、カタリーナ、ブランタークの三人が行った迎撃が、本巻最大の見せ場だった。

大量殺戮を避けるため、三人は大量の魔晶石を使い、広範囲へ「エリアスタン」を放つ。

敵の矢が降り注ぐ中、イーナ、ルイーゼ、ヴィルマが魔法使いたちを守る。

そして敵軍が目前まで迫った瞬間、一万人近い兵士と騎馬が一斉に倒れる。

三人も魔力を使い果たして意識を失うほどの大魔法だったが、まともに戦えばさらに多くの犠牲が出ていたはずである。

圧倒的な魔力によって敵軍を一網打尽にする展開には、大きな爽快感があった。

一方で、完全に無傷では終わらない。

突撃中の落馬や矢によって、多くの死傷者が出てしまう。

遊びのような紛争を本物の戦争へ変えた責任の重さも、はっきりと描かれていた。

交渉相手すら決まらない泥沼

夜襲を撃退したことで、ブロワ辺境伯軍はほぼ壊滅する。

本陣や補給拠点も押さえ、捕虜は各地を合わせて約二万人に達する。

それでも、争いは終わらない。

ブロワ辺境伯が亡くなった後も、フィリップとクリストフのどちらが家督を継ぐのか決まらなかったからである。

ようやく二人が交渉の場へ現れても、どちらが代表になるのかを巡って言い争う。

随員の人数すら決められない姿には、呆れるしかなかった。

敵と交渉する前に、身内同士で争っている。

寄子や家臣を守ることより、自分が当主になることを優先している。

その結果、ブロワ辺境伯家の寄子たちは次々と離反し、ブライヒレーダー辺境伯家へ鞍替えする。

夜襲の責任、捕虜の身代金、占領地の返還費用、離反した寄子への和解金。

請求額は膨れ上がり、ブロワ辺境伯家は急速に力を失っていく。

自分たちの都合で始めた争いに、自分たちで決着をつけられない。

その末路は、まさに自業自得だった。

価値のない土地を引き取る大胆な交渉

終わりの見えない交渉の中で、ヴェンデリンとカタリーナには莫大な身代金を受け取る権利が発生していた。

しかし全額を要求すれば、支払いを巡る交渉がさらに長引く。

そこでカタリーナが提案したのが、身代金の一部を減額する代わりに、ヘルタニア渓谷を譲り受ける方法だった。

ヘルタニア渓谷には、鉄、銅、金、銀、ミスリル、オリハルコン、宝石などが眠っている。

資源だけを見れば、まさに宝の山である。

ところが、渓谷には岩でできた大量の魔物が生息していた。

過去には一万の兵や高位魔法使いを投入しても攻略できず、実質的には利用不可能な土地と見なされている。

ブロワ側から見れば、攻略不能な土地を渡すだけで身代金を減らせる。

珍しくフィリップとクリストフの意見も一致し、譲渡はあっさりと認められる。

しかしヴェンデリンは、最初から渓谷を解放できる可能性に気づいていた。

相手が価値のない土地だと思って手放したものを、莫大な利益を生む鉱山へ変える。

この抜け目のなさが実に痛快だった。

岩の魔物に隠されていた古代の仕組み

ヘルタニア渓谷に生息する岩の魔物は、普通の魔物ではなかった。

古代魔法文明時代に作られた防衛用ゴーレムである。

渓谷の中央には、全長百メートルを超えるロックギガントゴーレムが存在していた。

その内部には、最大十万体もの岩ゴーレムを操る人工人格の結晶と、魔石を製造する装置が組み込まれている。

周辺の岩ゴーレムをいくら倒しても、中央の装置が新しい魔石を作り続けるため、敵の数はすぐに回復する。

過去の攻略が失敗したのも当然だった。

必要なのは、大量のゴーレムを一体ずつ倒すことではない。

すべてを制御している中心部を破壊することである。

ヴェンデリンたちは地上部隊にゴーレムを引きつけてもらい、その隙に空から中央部へ突入する。

一万を超える飛行型ゴーレムに囲まれながら、ヴェンデリンとカタリーナが竜巻で道を開く場面は、夜襲とは違った派手さがあった。

ルイーゼのビッグバンアタック

ロックギガントゴーレムとの戦いで、決定打となったのはルイーゼだった。

巨大ゴーレムは八つの頭と八本の尾を持ち、頭部を破壊しても短時間で再生する。

人工人格の結晶が胴体のどこにあるのかも分からない。

そこでルイーゼは、魔晶石と自分の魔力を拳へ集中させ、魔闘流究極の極意「ビッグバンアタック」を放つ。

細かく弱点を探すのではなく、胴体ごと粉砕してしまう。

あまりにも豪快な解決方法である。

その一撃によって人工人格の結晶は破壊され、渓谷全域の岩ゴーレムが一斉に停止する。

攻略不能とされていた危険地帯は、短期間で巨大な鉱石採掘場へ変わった。

誰も利用できなかった土地だから価値がなかった。

しかし、危険の原因さえ取り除けば、そこには豊富な資源だけが残る。

ヴェンデリンたちの力が、土地そのものの価値を大きく変えてしまう展開に爽快感を覚えた。

ブロワ辺境伯家の自業自得な結末

フィリップとクリストフが後継者争いを続ける中、ブロワ辺境伯家では叔父のゲルトが新当主として動き出す。

彼は王都へ向かい、国王から正式に辺境伯の襲爵を認められる。

ヴェンデリンの瞬間移動があったため、フィリップたちが想定するよりもはるかに早く手続きを終えることができた。

新当主が交渉の場へ現れたことで、責任者不在だった紛争はようやく動き出す。

フィリップとクリストフは交渉権を失い、拘束される。

夜襲を主導したゴドウィンたちには処刑や家の取り潰しが決まり、長く続いた紛争もようやく終結する。

ブロワ辺境伯家そのものが消滅したわけではない。

しかし、後継者争いを優先した二人は家督を失い、多くの寄子も離反した。

自分たちの権力を守るために争い続けた結果、最も欲しかった当主の座から二人とも遠ざけられる。

納得のいく着地点だった。

エルとカルラの関係

本巻のもう一つの見どころは、エルとカルラの関係である。

カルラは、ブロワ辺境伯が長年認知しなかった娘だった。

紛争を有利にするため、急に娘として利用され、ヴェンデリンとの婚姻を期待されてバウマイスター伯爵領へ送り込まれる。

しかし本人は、ブロワ辺境伯家のために働く気がない。

貧しくても、以前のベンカー騎士爵家の娘として暮らしたいと望んでいる。

そんなカルラの護衛役を自ら引き受けたのがエルだった。

エルは彼女へ一目惚れし、弓の稽古や町の散策を通じて距離を縮めていく。

普段は軽い調子で女性へ声をかけるエルだが、カルラへの気持ちは明らかに違っていた。

一騎打ちへ勝手に参加したのも、彼女へよいところを見せたかったからである。

カルラが作った料理を必要以上に褒め、服を繕ってもらっただけで結婚生活まで想像する。

浮かれすぎている部分には笑ってしまうが、それだけ本気だったのだろう。

当て馬では終わらなかったエル

カルラがブロワ辺境伯家の娘である限り、陪臣であるエルとの結婚は難しい。

二人の間には、大きな身分差があった。

ところが新当主ゲルトは、カルラ本人の希望を受け入れ、彼女をブロワ辺境伯家の籍から外す。

これによって、エルとの身分差は大きく縮まる。

本巻の時点で二人の結婚が決まったわけではない。

しかし、少なくともエルが完全な当て馬として終わる展開ではなかった。

カルラもエルには本音を話し、彼と過ごす時間を楽しんでいる。

エルの一方的な片思いに見えながら、少しずつ可能性が生まれていく。

紛争や後継者争いの裏で進む不器用な恋愛として、今後が気になる関係だった。

貴族の争いと責任者の重さ

『八男って、それはないでしょう! 7』は、貴族同士の緩い紛争から始まり、本物の戦争、後継者争い、古代ゴーレムとの戦闘まで発展する一冊だった。

最も考えさせられたのは、責任を取る人物がいない組織の恐ろしさである。

現場では多くの人間が動き、大量の物資と金が失われている。

それでも、上にいる者たちは家督争いを優先し、決断しようとしない。

その結果、終わるはずの争いが終わらず、ついには多くの死者まで出してしまう。

一方のヴェンデリンは、巻き込まれながらも前へ進む。

魔法で敵を制圧する。

交渉で価値のない土地を引き取る。

危険の原因を取り除き、優良な鉱山へ変える。

さらに新当主を王都へ運び、責任者不在の問題まで解決する。

本人は領地開発へ戻りたいだけなのに、結果として紛争の後始末まで背負わされている。

その苦労には同情するが、問題を一つずつ利益へ変えていく手腕は痛快だった。

紛争は終わり、ヘルタニア渓谷という新たな鉱山も手に入った。

エルとカルラの間にあった身分差も解消へ向かっている。

ただし、これだけの鉱山を手に入れれば、領地開発の仕事がさらに増えることは間違いない。

有能な家宰ローデリヒが、この新しい資源を見逃すはずもない。

ヴェンデリンが再びどれほどこき使われるのかも含め、次巻の展開が楽しみになる第7巻だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説

貴族間の紛争

貴族間の紛争とブロワ辺境伯家との決着の全貌

『八男って、それはないでしょう! 7』のメインテーマとなる「貴族間の紛争」について、紛争の背景とブロワ辺境伯家の奇襲、貴族間の紛争の特異なルール、ヴェンデリンの参戦と電撃的な奪還作戦、泥沼の裁定交渉と掟破りの夜襲、および第三の男擁立と紛争の終結の各点から解説する。

紛争の背景とブロワ辺境伯家の奇襲

事の発端は、ブロワ辺境伯家側が事前通告の慣習を破って奇襲を仕掛け、境界線周辺にあるブライヒレーダー辺境伯家側の利権を一斉に奪い取ったことであった。

・銅山や森林、水源、河の中州など、約40箇所の利権が強奪された。

・病床にあるブロワ辺境伯の後継者を巡る長男フィリップと次男クリストフの泥沼の争いが背景に存在した。

・バウマイスター伯爵領の巨大な未開地開発利権から東部が蚊帳の外に置かれていることへの不満があった。

・不満を外に向けさせつつ、南部から開発利権の分配などの譲歩を引き出すことがブロワ側の狙いであった。

貴族間の紛争の特異なルール

王国では200年以上本格的な戦争が起きておらず、貴族同士の紛争には王家の介入を避けるための暗黙のルールが存在していた。

・死者を出さない戦闘:両軍ともに刃を丸めた訓練用の武器を使用し、敵を殺すのではなく捕虜にして身代金を得ることが目的とされた。

・限定的な争い:争うのは対象となる利権の範囲のみで、相手の領地へ攻め入って領民を殺傷したり略奪したりすることは固く禁じられていた。

・腕比べ:戦場では騎士や陣借りの傭兵、そして魔法使い同士による一騎打ちが行われ、勝者は感状と褒美を得て仕官や出世の足がかりとした。

ヴェンデリンの参戦と電撃的な奪還作戦

当初は静観を決めていたヴェンデリンであったが、紛争の長期化によって領地開発に必要な資材の輸入が滞り始めたため、少数の軍を率いて参戦した。

・小型魔導飛行船で各紛争地を飛び回った。

・相手を感電死させないよう手加減した電撃魔法エリアスタンを放ち、敵軍を無血で一網打尽にした。

・圧倒的な魔法の力により、奪われていた銅山や中州などの利権は次々と奪還された。

・戦況は一気にブライヒレーダー辺境伯家側の有利へと傾いた。

泥沼の裁定交渉と掟破りの夜襲

戦況が圧倒的不利になったブロワ軍は陣地に引きこもり、裁定交渉が開始された。

・ブロワ側は後継者が決まっていないため交渉責任者が不在であり、交渉は完全に暗礁に乗り上げた。

・追い詰められたブロワ軍の重臣たちは、裁定の不利を覆すためにすべてのルールを投げ打ち、実戦用の武器と約1万人もの大軍を用いた夜襲という暴挙に出た。

・これに対し、ヴェンデリン、カタリーナ、ブランタークの3人は最大火力の広域エリアスタンを放った。

・魔力切れで倒れるのと引き換えに、敵の夜襲軍1万人を一瞬で行動不能にして完全鎮圧を果たした。

第三の男擁立と紛争の終結

夜襲軍を壊滅させ、莫大な身代金と和解金、さらに身代金の物納としてヘルタニア渓谷の譲渡を認めさせたものの、ブロワ家は和解案にサインできる当主が不在のままであった。

・ヴェンデリンたちはブロワ辺境伯の年の離れた弟であるゲルトに着目した。

・ゲルトを第三の後継者として強引に王都へ瞬間移動させ、国王の承認を得て電撃的に新ブロワ辺境伯を襲爵させた。

・正式な交渉権を持つ新当主ゲルトが誕生したことで、長引いた紛争はようやく終結した。

・暴走した重臣たちは処罰され、東部には再び平穏が戻ることとなった。

まとめ

貴族間の紛争とブロワ辺境伯家との決着を巡る一連の全貌は、後継者争いと不満に端を発した奇襲から始まり、王国特有の非殺傷ルールによる局地戦、ヴェンデリンの電撃魔法による電撃的利権奪還、規約違反の夜襲に対する広域魔法での鎮圧、そして新当主擁立による政治的終結に至るまで、その歩みを明瞭に示している。封建社会の硬直した対立や無謀な暴走という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な武力と迅速な政治決断の記録である。利権の奪還から、夜襲の撃滅、新当主の電撃擁立、条約の締結、そして領内秩序の回復へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

領地開発の遅延

バウマイスター伯爵領の開発遅延と紛争介入の全貌

『八男って、それはないでしょう! 7』において、バウマイスター伯爵領の開発を揺るがした貴族間の紛争について、紛争の長期化による資材と輸送ルートの不足、貴族社会のしがらみによる代替調達の困難さ、ローデリヒの前倒し策と過重労働、およびヴェンデリンの激怒と紛争への武力介入の各点から解説する。

紛争の長期化による資材と輸送ルートの不足

南部を統括するブライヒレーダー辺境伯家と、東部のブロワ辺境伯家の間で勃発した紛争は、双方の軍勢がエチャゴ草原で長期間睨み合う事態となった。

・両軍合わせて数千人もの兵士が野戦陣地の構築や生活のために大量の建設資材や食料、水を消費し続けた結果、王国中の物資が前線に吸い上げられた。

・膨大な物資を輸送するために魔導飛行船までもが前線に回されたため、バウルブルクへと向かう輸送便が激減した。

・開発に必要な資材の輸入が滞り始めてしまった。

貴族社会のしがらみによる代替調達の困難さ

南部の輸送網が頼れないのであれば他地域から資材を調達すればよいとヴェンデリンたちは考えたが、封建主義の貴族社会ではそれが許されなかった。

・自軍の寄親であるブライヒレーダー辺境伯が紛争で苦労している最中に他地域と直接取引を開始すれば、重大な不義理と見なされた。

・東部から資材を買うことは紛争相手に利益を与え、敵を支援していると見なされるため不可能であった。

・ブロワ辺境伯の娘カルラが東部の商人を紹介すると持ちかけたが、これは紛争のどさくさに紛れて東部が開発利権に食い込もうとする明確な罠であった。

ローデリヒの前倒し策と過重労働

このままでは資材不足で開発全体がストップしてしまうと危惧した代官のローデリヒは、強硬策に出た。

・輸入資材を必要としない、領内から産出する石材や木材などだけで可能な基礎工事を徹底的に前倒しした。

・魔法で地形を操作し岩山から石材を切り出せるヴェンデリンやカタリーナは、休む間もなく過酷な土木作業に駆り出されることとなった。

ヴェンデリンの激怒と紛争への武力介入

領地開発の遅れに加え、寄親であるブライヒレーダー辺境伯が紛争にかかりきりになっているため、館が完成してもヴェンデリンとエリーゼたちの結婚式を挙げられないという致命的な弊害が発生した。

・本来は開発を優先して静観するつもりであったヴェンデリンであったが、自身への過重労働と結婚式の延期懸念、不毛な睨み合いを続けるブロワ辺境伯家への苛立ちから重い腰を上げた。

・事態を早期終結させるため、自らの圧倒的な魔法力でブロワ軍を物理的に叩き潰すべく最前線へと出陣することとなった。

まとめ

バウマイスター伯爵領の開発遅延と紛争介入を巡る一連の全貌は、貴族間の対立による物資と輸送手段の枯渇から始まり、封建社会における政治的しがらみによる代替路の遮断、ローデリヒによる内政工事の前倒しと現場の過重労働、そして私生活の阻害に対するヴェンデリンの激怒と戦場への介入に至るまで、その歩みを明瞭に示している。外部からの干渉や社会的な制約という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、圧倒的な力による問題解決の記録である。物流の停滞から、しがらみの露呈、現場の酷使、我慢の限界、そして最前線への直接武力介入へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

領地開発と資材不足

バウマイスター伯爵領の資材不足と対応の全貌

『八男って、それはないでしょう! 7』における「領地開発と資材不足」について、紛争の長期化による資材不足、貴族社会のしがらみによる代替調達の困難さ、ローデリヒの前倒し策と過重労働、およびヴェンデリンの激怒と紛争への武力介入の各点から解説する。

紛争の長期化による資材不足

ヴェンデリンの規格外の魔法力と資金力、そして代官ローデリヒの指揮により、バウマイスター伯爵領の未開地開発は驚異的なスピードで進んでいた。

・南部を統括するブライヒレーダー辺境伯家と東部のブロワ辺境伯家の間で勃発した紛争が長引き、状況が一変した。

・両軍合わせて数千人もの兵士がエチャゴ草原で睨み合いを続けた結果、野戦陣地の構築や生活のために大量の建設資材、食料、水が消費された。

・膨大な物資の輸送に魔導飛行船までもが前線へ回されたため、バウルブルクへと向かう輸送便が激減した。

・領地開発に必要な資材の輸入が滞り始めてしまった。

貴族社会のしがらみによる代替調達の困難さ

南部の輸送網が頼れないのであれば西部や東部など他地域から資材を調達すればよいとヴェンデリンたちは考えたが、封建主義の貴族社会ではそれが許されなかった。

・自軍の寄親であるブライヒレーダー辺境伯が紛争で苦労している最中に他地域と直接取引を開始すれば、重大な不義理と見なされてしまうためであった。

・特に東部のブロワ辺境伯家から資材を買うことは、敵の紛争を支援していると見なされるため絶対に不可能であった。

ローデリヒの前倒し策と過重労働

このままでは資材不足で開発全体が遅延してしまうと危惧したローデリヒは、強硬策に出た。

・輸入資材を必要としない領内から産出する資材だけで可能な基礎工事を徹底的に前倒しした。

・魔法で石材や木材を切り出し地形を操作できるヴェンデリンとカタリーナは、休む間もなく過酷な土木作業へ駆り出されることとなった。

ヴェンデリンの激怒と紛争への武力介入

資材不足と自身の過重労働に加え、寄親であるブライヒレーダー辺境伯が紛争にかかりきりになっているため、館が完成してもエリーゼたちとの結婚式を挙げられないという致命的な弊害が発生した。

・本来は領地開発を優先して静観するつもりであったヴェンデリンであった。

・これ以上の遅延と不毛な睨み合いを防ぐため、自らの魔法力で紛争を終わらせるべく武力介入を決意して最前線へと出陣することとなった。

まとめ

バウマイスター伯爵領の資材不足と対応を巡る一連の全貌は、隣接する貴族間の紛争長期化に伴う物資と輸送手段の途絶から始まり、封建社会の政治的制約による代替ルートの封鎖、代官ローデリヒによる内政基礎工事の前倒しと現場の過酷な労働、そして開発遅延と私生活の害に対するヴェンデリンの決意と武力介入に至るまで、その歩みを明瞭に示している。外部環境の悪化や社会的な桎梏という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、内政上の危機打開と自力解決の記録である。物流の停滞から、しがらみの露呈、現場の酷使、我慢の限界、そして最前線への出陣へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

カルラとエルの恋

エルとカルラ・フォン・ブロワの恋の行方の全貌

『八男って、それはないでしょう! 7』におけるエルヴィンとカルラ・フォン・ブロワの恋の行方について、一目惚れと急接近、身分違いの壁とクラウスの助言、カルラへのアピールとエルの奮闘、および身分差の解消と結末の各点から解説する。

一目惚れと急接近

病床にあるブロワ辺境伯が、バウマイスター伯爵領の開発利権に食い込むための特使として娘のカルラを送り込んできた。

・ヴェンデリンたちが警戒して誰も世話役をやりたがらない中、彼女を一目見た瞬間に強く惹かれたエルは自ら護衛役に立候補した。

・護衛として一緒にバウルブルクの町を散策したり、早朝の弓の稽古を共にしたりする中で二人は急速に距離を縮めた。

・カルラは最近認知されたばかりで、それ以前は貧乏騎士爵家の娘として狩猟で生活を支えていたため、非常に庶民的な金銭感覚を持っていた。

・エルは自分と生活感覚が合うと感じ、カルラもまたエルを話しやすいと信頼した。

・自分を長年放置したブロワ家のために働く気は一切ないという本心をカルラはエルにだけ打ち明けた。

身分違いの壁とクラウスの助言

カルラがエリーゼたちとも打ち解けて料理や裁縫などの家庭的な面を見せるようになると、エルは彼女を妻に迎えたいと真剣に思い描くようになった。

・バウマイスター伯爵家の家臣と東部を統括する辺境伯家の娘という圧倒的な身分差が大きな障壁となっていた。

・悩むエルに対し、クラウスは周囲の重圧に逆らって身分に合わない元の婚約者と結婚した自身の過去を語った。

・後悔しない選択をするようにとクラウスはエルの背中を押した。

カルラへのアピールとエルの奮闘

紛争が本格化すると、エルはカルラに良いところを見せようと意気込んだ。

・無断で一騎打ちに参加して敵の騎士を捕らえて得意げに報告した。

・ヘルタニア渓谷の解放作戦では、オリハルコン製の剣を振るって岩のゴーレム相手に前線で奮闘した。

・後方にいるカルラからの声援を受けて喜びを露わにする姿が描かれた。

身分差の解消と結末

エルとカルラの恋を成就させ、同時にカルラを政略結婚の駒として利用しようとするブロワ家の後継者争いから彼女を解放するため、ヴェンデリンとクラウスは一計を案じた。

・第三の候補である叔父ゲルトを新当主として擁立した。

・その見返りとしてカルラをブロワ辺境伯家の籍から外させることに成功した。

・エルとカルラの恋を阻む最大の障害であった身分差は無事に解消された。

・エルの奮闘にもかかわらず、最終的にカルラは王都にいた本来の婚約者と結婚することとなった。

・結果としてエルが当て馬として終わる結末を迎えることとなった。

まとめ

エルとカルラ・フォン・ブロワの恋の行方を巡る一連の全貌は、特使として訪れたカルラへの一目惚れと交流から始まり、身分差に悩むエルへのクラウスの示唆、戦場でのエルの獅子奮迅の活躍、政治的立ち回りによる身分差の解消、そして最終的な悲恋の結末に至るまで、その歩みを明瞭に示している。家柄の格差や政略の道具という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、青年の情熱と現実の厳しさを刻む記録である。出会いから、心の接近、身分の克服、そしてほろ苦い結末へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

ヘルタニア渓谷の攻略

ヘルタニア渓谷の攻略と鉱山解放の全貌

『八男って、それはないでしょう! 7』における「ヘルタニア渓谷の攻略」について、ヘルタニア渓谷の譲渡と背景、岩の魔物の正体と攻略計画、陽動作戦と空中戦、およびロックギガントゴーレムとの死闘と決着の各点から解説する。

ヘルタニア渓谷の譲渡と背景

東部と南部の境界近くに位置するヘルタニア渓谷は、古代魔法文明時代に開発された大規模な鉱山地帯である。

・鉄、銅、金、銀のほか、希少なミスリルやオリハルコンなどの鉱床が多数眠っている。

・内部には岩でできた狼、猪、熊、ワイバーンなどの魔物が大量に生息している。

・過去には一万の軍勢や高位の魔法使いも攻略に失敗し全滅したという難攻不落の魔物の領域であった。

・ヴェンデリンたちはブロワ辺境伯家との裁定交渉において身代金の一部を減額する代わりとして、不良債権と見なされていたヘルタニア渓谷を譲り受け、自らの手で攻略に乗り出した。

岩の魔物の正体と攻略計画

攻略の鍵となったのは、アームストロング導師が王宮から持ち出した古代の天才魔道具職人イシュルバーク伯爵の自分の作品目録という古書であった。

・岩の魔物たちは侵入者を排除するための防衛ゴーレムであることが判明した。

・渓谷中央の断裂の奥に鎮座する巨大な岩竜ロックギガントゴーレムによって操られていることが明らかとなった。

・ロックギガントゴーレムは、最大10万体のゴーレムを統括する巨大な人工人格の結晶と、1日に5000個の魔石を製造して新しいゴーレムを生み出す装置を内蔵していた。

・ロックギガントゴーレムの結晶さえ破壊できれば、渓谷全域のゴーレムはすべてただの岩塊に戻る仕掛けとなっていた。

陽動作戦と空中戦

攻略作戦は、地上部隊と突入部隊に分かれて行われた。

・地上では、ヴェンデリンが私費で集めた王国軍三千人と周辺諸侯軍が十の部隊に分かれ、境界線を出入りして約八万体の地上ゴーレムを外縁部へ引きつける大規模な陽動作戦を展開した。

・その隙を突き、ヴェンデリン、ブランターク、カタリーナ、導師、ルイーゼの五人が空からロックギガントゴーレムを目指して突入を開始した。

・断裂の上空では約二万体の飛行型ゴーレムが待ち構えていたが、ヴェンデリンとカタリーナの強力な竜巻魔法で一気に数を減らした。

・導師が単独で多数のゴーレムを引きつけながら拳と魔法で粉砕する戦闘力を発揮し、進路を切り開いた。

ロックギガントゴーレムとの死闘と決着

断裂の奥で待ち受けていたロックギガントゴーレムは、八つの頭と八本の尾を持つ全高100メートル超の巨体であり、口から岩弾を連射して激しく抵抗した。

・ヴェンデリンたちは岩弾を魔法障壁で防ぎ、頭部を破壊しながら胴体へと接近した。

・ゴーレムの再生速度は極めて早く、長期戦は魔力切れのリスクが存在した。

・決着を任されたルイーゼは、自身の魔力と魔晶石の魔力を限界まで拳に集中させ、魔闘流究極の極意であるビッグバンアタックをロックギガントゴーレムの胴体に叩き込んだ。

・一撃によりロックギガントゴーレムの胴体と人工人格の結晶は粉砕され、同時に渓谷全域の岩ゴーレムも統制を失って一斉に岩塊へと戻った。

・活動を停止した飛行型ゴーレムが落下してくる中、五人は魔法障壁を張って上空へ脱出し、見事にヘルタニア渓谷の解放作戦を成功させた。

まとめ

ヘルタニア渓谷の攻略と鉱山解放を巡る一連の全貌は、難攻不落とされた古代鉱山地帯の譲渡から始まり、古文書解析による防衛システムの正体と弱点の解明、地上と空中による精密な連動陽動作戦、そして魔闘流の極意による中枢結晶の撃破に至るまで、その歩みを明瞭に示している。前人未踏の難所や膨大な防衛兵器という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、知的解析と圧倒的武力の融合の記録である。交渉による権利獲得から、構造の解明、戦略的包囲、中枢の破壊、そして膨大な鉱脈資源の確保へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

ブロワ家の後継者争い

ブロワ辺境伯家の後継者争いと結末の全貌

『八男って、それはないでしょう! 7』において描かれるブロワ辺境伯家の後継者争いについて、対立の背景と二人の候補、紛争における指揮系統の麻痺、印綬官の逃亡とカルラの特使派遣、第三の男ゲルトの擁立、および後継者争いの結末の各点から解説する。

対立の背景と二人の候補

病床に伏せるブロワ辺境伯には、長男フィリップと次男クリストフという二人の有力な後継者候補が存在していた。

・フィリップは軍事の才に長けていたが、母親の身分が低く妻も陪臣の娘であった。

・クリストフは文官肌で、母親も妻も貴族の娘という背景を持っていた。

・年齢も1歳しか違わない二人は激しく対立しており、辺境伯は二人に領主として大切なものが欠けていると見抜き、どちらを指名しても家が割れると危惧してあえて後継者を指名しなかった。

紛争における指揮系統の麻痺

ブライヒレーダー辺境伯家との紛争が始まっても、フィリップとクリストフは父の死後の相続を警戒し、ベッドの側から離れようとせず前線に出なかった。

・最前線ではフィリップを支持する従士長ゴドウィンと、クリストフを支持する軍政官らが互いに牽制し合った。

・ブロワ辺境伯軍は有効な作戦を立てられず完全に機能不全に陥った。

・辺境伯の死後、ようやく二人が裁定交渉の場に現れた際も、どちらが代表になるかや随員の数で言い争いを始め、交渉を停滞させた。

印綬官の逃亡とカルラの特使派遣

二人の争いは手段を選ばず、当主の不首尾や不在に伴う権力闘争を過熱させた。

・辺境伯の死後、印綬官ハイモに対し自分を後継者に指名したと偽証し当主の証である印綬を渡すよう脅迫したため、ハイモは逃亡を余儀なくされた。

・辺境伯の娘であるカルラは、二人の後継者争いにおける政略結婚の道具として利用されることを防ぐため、辺境伯の配慮によって特使としてヴェンデリンのもとへ逃がされた。

第三の男ゲルトの擁立

泥沼化する紛争と後継者争いを同時に終わらせるため、ヴェンデリンとクラウスは一計を案じた。

・辺境伯の年の離れた弟であり、逃亡した印綬官ハイモを密かに匿っていた第三の後継者候補ゲルトに目を付けた。

・ヴェンデリンはゲルトと留守番の家臣たちを魔法で王都へと瞬間移動させた。

・国王から電撃的に辺境伯位とマントを下賜させて新当主として認めさせた。

後継者争いの結末

王家の後ろ盾と印綬を得たゲルトは、領地に戻り先代辺境伯の葬儀を取り仕切ることで家臣団を掌握した。

・裁定交渉の場に新当主としてゲルトが現れたことで、フィリップとクリストフは交渉権を完全に失い身柄を拘束された。

・二人の争いを煽っていた先代辺境伯の本妻やフィリップとクリストフの妻たちも王都などへ軟禁された。

・ブロワ家を揺るがした激しい後継者争いは、第三の男の電撃的な襲爵によってようやく幕を閉じることとなった。

まとめ

ブロワ辺境伯家の後継者争いと結末を巡る一連の全貌は、長男と次男による激しい派閥対立から始まり、前線の指揮系統麻痺や関係者の逃亡、第三の候補ゲルトの擁立、そして王権を背景とした新当主の即位と対立勢力の排除に至るまで、その歩みを明瞭に示している。お家騒動や権力欲の混迷という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、迅速な決断と政治的介入の記録である。対立の勃発から、機能不全、奇策の実行、王権の認可、そして新体制の確立へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

八男6巻レビュー
八男まとめ
八男8巻レビュー

登場キャラクター

バウマイスター伯爵家

ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター

本作の主人公である。バウマイスター伯爵家の当主として、広大な未開地の開発を主導している。カルラに惹かれるエルの恋を応援する友人思いな一面を持つ。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブライヒレーダー辺境伯軍に加勢し、広域エリアスタンを用いて紛争を有利に導いた。ヘルタニア渓谷の譲渡を裁定で認めさせ、魔物の討伐作戦を成功させた。ゲルトを王都へ瞬間移動させ、新ブロワ辺境伯の就任を後押しした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ブロワ辺境伯家からヘルタニア渓谷を獲得し、新たな利権を手に入れた。

エリーゼ・カタリーナ・フォン・ホーエンハイム

ヴェンデリンの婚約者である。ホーエンハイム枢機卿の孫であり、従軍神官として軍に同行している。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・正妻候補。従軍神官。
・物語内での具体的な行動や成果
 紛争による負傷者の治療にあたった。敵の夜襲の際も退避を拒否し、ヴェンデリンの傍に残ることを選んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エルヴィン・フォン・アルニム

ヴェンデリンの親友であり護衛である。カルラに一目惚れし、彼女との身分差の恋を実らせるために奮闘している。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・護衛部隊指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
 カルラの護衛に立候補し、彼女と交流を深めた。無断で一騎打ちに参加して敵の騎士を捕らえた。ヘルタニア渓谷ではオリハルコン製の剣で岩ゴーレムを多数破壊した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

イーナ・ズザネ・ヒレンブラント

ヴェンデリンの婚約者である。槍術を得意とし、真面目な性格である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・側室候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 夜襲の際、槍術で敵の矢を防いだ。ヘルタニア渓谷の作戦でも、槍術で多数のゴーレムを破壊した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェーク

ヴェンデリンの婚約者である。魔闘流の使い手である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・側室候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 夜襲の際、拳と蹴りで敵の矢を防いだ。ヘルタニア渓谷の作戦で、秘奥義ビッグバンアタックを放ち、ロックギガントゴーレムを粉砕した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヴィルマエトル・フォン・アスガハン

ヴェンデリンの護衛である。怪力の持ち主である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・護衛兼側室候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 求人広告の布に字を書いた。夜襲の際、戦斧で風を起こして敵の矢を逸らした。ゲルトを王城へ連れて行く際、抵抗する警備兵を素手で取り押さえた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ローデリヒ

バウマイスター伯爵家の代官である。領地開発において実務能力を発揮している。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・筆頭家臣。代官。
・物語内での具体的な行動や成果
 紛争による資材不足を見越し、前倒しで工事を進めるようヴェンデリンに指示を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クラウス

バウマイスター伯爵家に仕える老練な人物である。豊富な経験と知恵を持つ。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・臨時雇いの家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
 反乱未遂の捕虜を労働力として活用した。紛争参加をヴェンデリンに献策し、旧ブロワ家の陣借り者たちを勧誘して軍に組み込んだ。ゲルトを擁立する策を提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

トーマス・トイファー

旧ブロワ家の下級騎士の三男である。クラウスに説得され、バウマイスター伯爵家に仕官した。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・諸侯軍指揮官。
・物語内での具体的な行動や成果
 腕比べにおいて実の兄であるクリストハルトを破り、捕虜にした。占領地の地理に詳しいため、現地の手伝いを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 旧姓レッチェルトからトイファーへ家名を変更した。

モーリッツ

ヴィルマの兄である。諸侯軍の編成や訓練を担当している。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・警備隊幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
 陣借り者の採用面接を行った。諸侯軍の再編成と訓練を主導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フェリクス

アームストロング伯爵の三男である。
・所属組織、地位や役職
 ヘルタニア渓谷・初代代官。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルタニア渓谷の代官に任命され、実家の助けも借りながら統治を開始した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヘルタニア渓谷の代官に就任した。

クラウスの孫たち

クラウスの血縁者である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵領・新村落の名主。
・物語内での具体的な行動や成果
 バウルブルク近郊の新村落の名主として開村式に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クラウスの孫娘婿二人

クラウスの血縁者である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵領・名主。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

マルタ

クラウスの亡き妻である。近所の農家の次女であった。
・所属組織、地位や役職
 クラウスの妻。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 周囲からの重圧を受け、若くして病死した。

バウマイスター伯爵家諸侯軍

バウマイスター伯爵家が編成した軍勢である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・諸侯軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 旧ブロワ組や陣借り者を採用して規模を拡大した。ヘルタニア渓谷の外縁部で陽動作戦に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

護衛たち

ヴェンデリンの警護を担当する者たちである。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 フィリップやクリストフが主催する晩餐会に同行し、周囲の警戒を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヴァイゲル準男爵家

カタリーナ・リンダ・フォン・ヴァイゲル

没落貴族から名誉準男爵となった魔法使いである。暴風の二つ名を持つ。
・所属組織、地位や役職
 ヴァイゲル準男爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 エリアスタンを用いて敵軍の捕縛に貢献した。腕比べでブロワ家の魔法使い二人を降伏させた。ヘルタニア渓谷の突入作戦に参加し、多数のゴーレムを破壊した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

バウマイスター騎士爵家

ヘルマン・フォン・ベンノ・バウマイスター

バウマイスター騎士爵家の当主である。ヴェンデリンの兄にあたる。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター騎士爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の反乱未遂事件において、クラウスから計画を知らされなかったため不満を抱いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブロワ辺境伯家・東部貴族

先代のブロワ辺境伯

東部を治めていた有力貴族である。カルラの父にあたる。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・前当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 カルラを特使としてヴェンデリンのもとへ派遣した。後継者を指名しないまま病死した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 病死した。

カルラ・フォン・ブロワ

ブロワ辺境伯の娘である。貧乏騎士爵家の娘として育ち、最近になって認知された。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
 特使としてバウマイスター伯爵領に滞在し、家事などを手伝った。ゲルトの擁立をヴェンデリンたちに提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ブロワ辺境伯家の籍から外れることが決まった。

ゲルト・オスカー・フォン・ブロワ

先代ブロワ辺境伯の年の離れた弟である。後継者争いから距離を置いていた。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・新当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 印綬官ハイモを匿っていた。ヴェンデリンたちと共に王城へ向かい、新ブロワ辺境伯に任命された。家臣団を掌握し、先代の葬儀を取り仕切った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王家から第三位辺境伯位を授けられ、ブロワ辺境伯家の新当主となった。

フィリップ・フォン・ブロワ

先代ブロワ辺境伯の長男である。軍事的な能力に長けているとされる。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・後継者候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 裁定交渉で強硬な条件を主張し続けた。ヴェンデリンを晩餐会に招き、カルラとの婚姻を提案した。ゲルトの襲爵を認めず騒いだが、拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後継者争いに敗れ、身柄を拘束された。

クリストフ・フォン・ブロワ

先代ブロワ辺境伯の次男である。文系肌の人物である。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・後継者候補。
・物語内での具体的な行動や成果
 フィリップと対立し、別々に裁定交渉へ参加した。ヴェンデリンたちを晩餐会に招いた。ゲルトの襲爵を疑ったが、王家の決定を前にうなだれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 後継者争いに敗れ、身柄を拘束された。

ゴドウィン・クレバー

ブロワ辺境伯家の従士長である。フィリップの支持者である。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・従士長。
・物語内での具体的な行動や成果
 諸侯軍を率いて夜襲を仕掛けたが、敗北して捕虜となった。フィリップの代理として裁定交渉に出席した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 軍紀違反で拘束され、死刑と家の取り潰しが決定した。

リーンハイト

ゲルトの息子である。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家。
・物語内での具体的な行動や成果
 父のゲルトと共にヴェンデリンたちを出迎えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベッケナー

ゲルトの屋敷で働く執事である。
・所属組織、地位や役職
 ゲルトの屋敷・執事。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちを屋敷の中へ案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ニコラウス

元ブロワ辺境伯家の家臣である若者である。気転が利く性格である。
・所属組織、地位や役職
 バウマイスター伯爵家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
 道案内役として、ヴェンデリンたちをゲルトの屋敷へ導いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ハイモ

ブロワ辺境伯家の印綬官である。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・印綬官。
・物語内での具体的な行動や成果
 フィリップとクリストフから逃れ、ゲルトの屋敷に匿われていた。ゲルトの当主就任に賛成した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クリストハルト・レッチェルト

ブロワ辺境伯家側の騎士である。トーマスの兄にあたる。
・所属組織、地位や役職
 レッチェルト家。
・物語内での具体的な行動や成果
 腕比べでトーマスに敗れ、捕虜となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ビエンコ・ロウケル

ブロワ辺境伯家のお抱え魔法使いである。突風の異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 カタリーナとの一騎打ちで竜巻魔法を放ったが防がれ、魔力切れで降伏した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 捕虜となった。

ロイ・ザールニア

ブロワ辺境伯家のお抱え魔法使いである。火鞭の異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 カタリーナとの一騎打ちで火鞭を用いたが水壁に阻まれ、降伏した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 捕虜となった。

『火壁』と名乗った魔法使い

ブロワ辺境伯家側に臨時で雇われた魔法使いである。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家側・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの魔法で気絶させられ、捕虜となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘンケル準男爵

ブロワ辺境伯の寄子である。
・所属組織、地位や役職
 ヘンケル準男爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ランセル準男爵家側の銅山を占拠したが、奪還作戦により捕虜となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

イェーリング騎士爵

ブロワ辺境伯の寄子である。
・所属組織、地位や役職
 イェーリング騎士爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 河の中州を占拠したが、カタリーナの魔法で軍勢が捕縛された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

先代のブロワ辺境伯の本妻

先代ブロワ辺境伯の正妻である。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・前当主夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
 先代の葬儀でヴェンデリンやカルラに暴言を吐いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王都へ送られ、軟禁されることになった。

フィリップの妻

フィリップの妻である。ゴドウィンの娘にあたる。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家。
・物語内での具体的な行動や成果
 先代の葬儀で騒ぎを起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王都へ送られ、軟禁されることになった。

クリストフの妻

クリストフの妻である。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家。
・物語内での具体的な行動や成果
 先代の葬儀で騒ぎを起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 王都へ送られ、軟禁されることになった。

門を警備していた兵士

ゲルトの屋敷を警備している兵士である。
・所属組織、地位や役職
 ゲルトの屋敷・警備兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 カルラの顔を認識し、執事を呼びに行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

館に残っていた家臣たち

ブロワ辺境伯の領主館で留守番をしていた家臣たちである。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・家臣。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンによって王城へ連行され、ゲルトの襲爵の儀に立ち会った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 新体制の重臣として再編された。

ブロワ辺境伯軍側の貴族たち

ブロワ辺境伯の寄子である貴族たちである。
・所属組織、地位や役職
 東部の貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 無責任なブロワ辺境伯家に見切りをつけ、ブライヒレーダー辺境伯の寄子へ鞍替えした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 所属を南部へと移した。

ブロワ辺境伯家諸侯軍

ブロワ辺境伯家が編成した軍勢である。
・所属組織、地位や役職
 ブロワ辺境伯家・諸侯軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブライヒレーダー辺境伯軍に夜襲を仕掛けたが、広域エリアスタンによって全滅し、捕虜となった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

陣借りの傭兵たち

ブロワ辺境伯軍に参加していた傭兵たちである。
・所属組織、地位や役職
 傭兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 バウマイスター伯爵家の採用試験に応募し、軍勢から離脱した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブライヒレーダー辺境伯家・南部貴族

ブライヒレーダー辺境伯

南部を治める有力貴族である。ヴェンデリンの寄親にあたる。
・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 エチャゴ草原でブロワ辺境伯軍と対峙した。裁定交渉を主導し、東部の貴族たちを自らの寄子に取り込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブランターク・リングスタット

ブライヒレーダー辺境伯家の筆頭魔法使いである。経験豊富な人物である。
・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・魔法使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 夜襲の際、広域エリアスタンを提案し実行した。ヘルタニア渓谷の突入作戦に参加し、風ボールを用いて多数のゴーレムを破壊した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブリュア

ブライヒレーダー辺境伯家の紋章官である。
・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・軍監。
・物語内での具体的な行動や成果
 各紛争地を巡り、戦果の認定や協定の締結を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ランセル準男爵

ブライヒレーダー辺境伯の寄子である。
・所属組織、地位や役職
 ランセル準男爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンの協力を得て、占拠されていた銅山を奪還した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フリックス

ランセル準男爵家の従士長である。
・所属組織、地位や役職
 ランセル準男爵家・従士長。
・物語内での具体的な行動や成果
 奪還した銅山の守備に就いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベッカー騎士爵

ブライヒレーダー辺境伯の寄子である。
・所属組織、地位や役職
 ベッカー騎士爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 奪還した河の中州の占領と捕虜の管理を引き継いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クリーガー子爵

諸侯軍に参加している南部貴族である。
・所属組織、地位や役職
 クリーガー子爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 裁定交渉の休憩中、ヴェンデリンとお菓子の商談を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クメッチュ男爵

諸侯軍に参加している南部貴族である。
・所属組織、地位や役職
 クメッチュ男爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 裁定交渉の休憩中、ヴェンデリンにお菓子の商談を持ちかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

年配の子爵

諸侯軍に参加している南部貴族である。
・所属組織、地位や役職
 子爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 ブロワ辺境伯家側の動向が掴めないことに対して愚痴をこぼした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

従兵の少年

ランセル準男爵に仕える少年である。
・所属組織、地位や役職
 ランセル準男爵家・従兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ランセル準男爵からお土産の菓子を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブライヒレーダー辺境伯家側の貴族たち

ブライヒレーダー辺境伯の寄子である貴族たちである。
・所属組織、地位や役職
 南部の貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 奪われた利権を取り戻すため、軍を出して対峙した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ブライヒレーダー辺境伯家諸侯軍

ブライヒレーダー辺境伯が編成した軍勢である。
・所属組織、地位や役職
 ブライヒレーダー辺境伯家・諸侯軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 エチャゴ草原に陣を敷き、ブロワ辺境伯軍の夜襲を迎撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘルムート王国政府・中央貴族

ヘルムート三十七世

ヘルムート王国の国王である。
・所属組織、地位や役職
 ヘルムート王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゲルトに第三位辺境伯位とマントを下賜し、新当主として認めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング

王宮筆頭魔導師である。強力な戦闘力を持つ。
・所属組織、地位や役職
 王宮筆頭魔導師。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルタニア渓谷の作戦に参加し、上空で多数のゴーレムを破壊した。ゲルトを王城へ連れて行く際、警備兵を脅して黙らせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

エドガー軍務卿

王国の軍務を司る重鎮である。
・所属組織、地位や役職
 軍務卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルタニア渓谷の陽動部隊として、王国軍を派遣した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

トリスタン

エドガー軍務卿の息子である。
・所属組織、地位や役職
 エドガー軍務卿の息子。
・物語内での具体的な行動や成果
 バウマイスター伯爵軍のために、訓練用の武器を魔導飛行船に積んで手配した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シュティーリケ侯爵

王国の外務卿を務める貴族である。
・所属組織、地位や役職
 外務卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンからの通信に応じ、マーラー子爵の行動が独断であることを認めて解任した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ベッカー内務卿

王国の内務を司る貴族である。
・所属組織、地位や役職
 内務卿。
・物語内での具体的な行動や成果
 クナップシュタイン子爵を王宮特使として紛争の裁定に派遣した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

マーラー子爵

外務委員を務める法衣貴族である。ブロワ辺境伯の妹を妻に持つ。
・所属組織、地位や役職
 外務委員。
・物語内での具体的な行動や成果
 王宮の意向を騙って裁定交渉に介入し、ブロワ辺境伯家を擁護した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 外務委員の職を解任された。

マテュー・オスカー・フォン・クナップシュタイン子爵

内務卿配下の法衣貴族である。真面目な人物である。
・所属組織、地位や役職
 王宮特使。
・物語内での具体的な行動や成果
 裁定交渉において中立の立場から指標となる裁定案を提示した。ブロワ辺境伯側の非と代理権の不備を指摘し、フィリップとクリストフを拘束させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アロイス・フォン・ヴィリ・アヒレス子爵

王国軍の司令官を務める法衣貴族である。
・所属組織、地位や役職
 王国軍・司令官。後にヘルタニア渓谷守備隊隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルタニア渓谷にて陽動部隊を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ヘルタニア渓谷守備隊の隊長に就任する予定である。

アームストロング伯爵

導師の兄である。王都の重鎮である。
・所属組織、地位や役職
 アームストロング伯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 三男フェリクスがヘルタニア渓谷の代官となるため、援助を行うと目されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

イシュルバーク伯爵

古代魔法文明時代の天才魔道具職人である。
・所属組織、地位や役職
 古代の魔道具職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 自身の作品目録を記し、ヘルタニア渓谷の防衛システムに関する情報を残した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

侍従

国王に仕える者である。
・所属組織、地位や役職
 王城・侍従。
・物語内での具体的な行動や成果
 国王の命に従い、ゲルトに授けるマントを持ってきた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

王城の正門を警備する兵士たち

王城を警備する兵士たちである。
・所属組織、地位や役職
 王城・警備兵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヴェンデリンたちを王城の中へ通した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

魔道具ギルドの職人たち

王都の魔道具職人たちである。
・所属組織、地位や役職
 魔道具ギルド・職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 破壊されたゴーレムや装置の残骸を高額で買い取り、魔導飛行船に積み込んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

王国軍

王国が保有する正規軍である。
・所属組織、地位や役職
 ヘルムート王国・正規軍。
・物語内での具体的な行動や成果
 ヘルタニア渓谷の解放作戦において、地上のゴーレムを引きつける陽動を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

商人・その他

アルテリオ

大商人である。ヴェンデリンと取引がある。
・所属組織、地位や役職
 商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 チョコレート菓子などを提供した。シュティーリケ外務卿へのお礼の品を手配するよう依頼された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ヘンリック

アームストロング導師の次男である。商人として魔導飛行船を運用している。
・所属組織、地位や役職
 商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 小型魔導飛行船を貸し出し、ヴェンデリンたちを各地へ輸送した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

魔物

ロックギガントゴーレム

ヘルタニア渓谷の中心に鎮座する巨大な岩竜である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 八つの口から岩弾を放ってヴェンデリンたちを攻撃した。ルイーゼのビッグバンアタックによって破壊された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

岩狼

ヘルタニア渓谷に生息する狼型の魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 境界線を越えたエルに襲いかかったが、斬り捨てられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

岩でできた猪

ヘルタニア渓谷に生息する猪型の魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

岩でできた熊

ヘルタニア渓谷に生息する熊型の魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 本文内に具体的な行動の記載はない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

大鷹型のゴーレム

ヘルタニア渓谷上空を飛ぶ大鷹型の魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 断裂内でヴェンデリンたちに攻撃を仕掛けたが、ブランタークの魔法で破壊された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ワイバーン型のゴーレム

ヘルタニア渓谷上空を飛ぶワイバーン型の魔物である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 上空でヴェンデリンの魔法や導師の攻撃によって破壊された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

岩の魔物たち

ヘルタニア渓谷全域に生息するゴーレムの総称である。
・所属組織、地位や役職
 魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
 陽動作戦において王国軍や諸侯軍の攻撃を受けた。ロックギガントゴーレムの破壊に伴い、すべて岩塊へと戻った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

八男6巻レビュー
八男まとめ
八男8巻レビュー

展開まとめ

第一話 カルラ・フォン・ブロワという女 

紛争への不参加

ブライヒレーダー辺境伯家とブロワ辺境伯家は、南部と東部の境にあるエチャゴ草原で軍勢を対峙させていた。実戦ではなく、兵力を背景に利権や譲歩を引き出す紛争であった。

バウマイスター伯爵家は寄子であったが、王家とブライヒレーダー辺境伯は領地開発を優先させる方針であり、ヴェンデリンたちが参戦する予定はなかった。後方攪乱を企てた者たちも被害を出さずに捕らえられたため、ローデリヒは報復に費用をかける必要はないと考えていた。

捕虜を使うクラウス

反乱未遂で捕らえたブロワ家の関係者たちは、パウルブルクで労働に従事していた。その管理を任されたクラウスは、彼らが捨て駒として送られ、命を懸けた作戦にも意味がなかったと教えて戦意を失わせた。

捕虜たちはブロワ家から存在を否定され、帰る場所も失っていた。クラウスは気力を失った彼らを新村落の建設に利用し、村の運営や行政にも豊富な経験を発揮した。その冷徹な手腕に、ヴェンデリンたちは改めて警戒を強めた。

開発資材の不足

紛争によって両軍が大量の食料、水、建設資材を消費し、補給用の魔導飛行船も前線へ回された。その影響でバウルブルクへの輸送量が減り、領地開発に必要な資材の不足が見込まれた。

別地域から物資を調達すればよいように見えたが、寄親であるブライヒレーダー辺境伯を差し置いて西部や東部と直接取引すれば、不義理と受け取られる恐れがあった。特にブロワ家との取引は、敵方の紛争を支援する形になるため不可能であった。

ヴェンデリンは工事が減ると期待したが、ローデリヒは資材不足が深刻になる前に、領内の資材だけで進められる工事を前倒しすると決めた。ヴェンデリンはカタリーナを口説くように協力させたものの、二人の仕事量はさらに増えることになった。

カルラの来訪

久しぶりに魔の森で狩りを楽しんだヴェンデリンたちが屋敷へ戻ると、ブロワ辺境伯の娘カルラが訪れていた。彼女は大貴族の令嬢らしい美しい少女であり、雰囲気がヴェンデリンの前世の恋人に似ていたため、彼は必要以上に意識してしまった。

カルラは父の代理として伯爵領を視察し、ブロワ家が起こした問題の解決にも努めたいと申し出た。さらに、資材不足を補うために東部の商人を紹介すると提案し、未開地開発の利益に食い込む意図を隠さなかった。

外交上の権限を持つ彼女を拒めば無礼となるため、ヴェンデリンたちは賓客として屋敷に滞在させることになった。

認知された娘

カルラはブロワ辺境伯と、王都の貧しい騎士爵家の娘との間に生まれた子であった。父は妻を恐れて長年認知せず、最低限の援助だけを続けていたが、今回になって急に娘として迎えていた。

ヴェンデリンたちは、ブロワ辺境伯が美しいカルラをヴェンデリンへ近づけ、婚姻を通じて開発利権を得ようとしていると推測した。ヴェンデリンは妙な噂や感情を避けるため、なるべく直接関わらず、専任の世話役を置こうとした。

エルの立候補

イーナ、ルイーゼ、ヴィルマはカルラの複雑な立場を理由に世話役を断り、エリーゼは正妻となる身であるため任せられなかった。カタリーナも名誉準男爵であり、世話役には不向きであった。

そこでエルが、外出時の護衛も必要だとして自ら立候補した。普段とは異なる丁寧な態度に仲間たちは不審を抱いたが、ヴェンデリンは彼へ任せることにした。

しかし、誰の目にも明らかなほど喜ぶエルの姿から、ヴェンデリンは彼がカルラに一目で惹かれたと悟った。紛争と外交問題に加え、身分差のある恋まで抱え込むことになり、ヴェンデリンは新たな厄介事の始まりを感じた。

幕間一 エルの想い人 

カルラへの一目惚れ

カルラの護衛役となったエルは、彼女を見た瞬間に強く惹かれ、初恋だと確信した。辺境伯家の娘との身分差に不安を抱きつつも、後悔しないために距離を縮めようと決意した。

弓の稽古

翌朝、カルラは狩猟用の服装で弓の稽古に向かった。認知される以前は貧しい騎士爵家で暮らし、食料を得るために狩猟をしていたため、弓の腕はエルを上回っていた。

エルも稽古に加わり、カルラから弓を教えてもらう約束を取りつけた。共通の趣味を見つけたことで、エルは二人の相性のよさをさらに意識した。

バウルブルクでの時間

エルは護衛としてカルラに付き添い、町の菓子店へ案内した。カルラは、父の命令で伯爵領へ来たものの、長年放置したブロワ家のために働く気はなく、ヴェンデリンとの婚姻も望んでいないと打ち明けた。

カルラは、窮屈なブロワ家を離れられたことを喜び、エリーゼたちと親しく暮らすヴェンデリンを羨ましく感じていた。エルには話しやすいと語り、二人はそのまま町を見て回った。

カルラが高級品ではなく庶民向けの商品に親しみを示したため、エルは自分たちの生活感覚にも大きな違いがないと感じた。カルラも久しぶりに本来の自分へ戻れたと喜んだ。

カルラの本心

エルはカルラから聞いた話をヴェンデリンたちへ報告した。ローデリヒは油断させるための演技を疑ったが、クラウスはカルラの境遇から、ブロワ家の役に立たず見捨てられることを望んでいる可能性が高いと見抜いた。

ヴェンデリンはカルラと接触を避けたまま滞在を認め、ブロワ家の策を封じる方針を維持した。エルはカルラがヴェンデリンを狙っていないことに安堵したが、身分差という問題は残った。

クラウスの助言

悩むエルに、クラウスは自らの結婚について語った。クラウスは兄の死で名主を継いだ際、周囲から身分に相応しい女性との再婚約を求められたが、元からの婚約者マルタを妻に選んでいた。

マルタは周囲からの重圧を受けながら若くして病死したが、最期に幸せだったとクラウスへ伝えていた。クラウスはその経験から、後悔しない選択をするようエルに助言した。

エルはいつかカルラへ思いを告げ、妻に迎えられる立場を得ようと決意した。

第二話 バウマイスター伯爵家諸侯軍出陣 

クラウスの参戦策

紛争による資材不足と結婚式の延期を懸念するヴェンデリンに、クラウスは少数の兵を率いて参戦するよう進言した。最大戦力であるヴェンデリンが加われば大軍は不要であり、ブロワ辺境伯家を敗北させて紛争を早期に終わらせられると考えたのである。

さらに、後方攪乱への報復を行わなければバウマイスター伯爵家が軽視される恐れがあり、勝利すればヴェンデリンは貴族としての武勲も得られた。領地開発と結婚式を早めるためにも、戦況を動かす必要があった。

エルとカルラの将来

クラウスは、参戦がエルとカルラの身分差を解消する契機にもなり得ると示唆した。エルがカルラへ真剣な思いを抱いていることは周囲にも明らかであったが、辺境伯家の娘との婚姻は現状では困難であった。

クラウスは具体策を明かさず、まずカルラ本人に出陣を伝えるよう勧めた。その楽しげな様子から、ヴェンデリンは別の思惑も用意されていると感じた。

カルラの同行

ヴェンデリンがブロワ辺境伯家を破るために出陣すると告げると、カルラは敵方の娘でありながら武運を祈った。彼女は貧しくてもベンカー家の娘でいたかったと語り、長年放置したブロワ家が敗北しても構わないと明言した。

カルラは自ら同行を願い、救護や炊事などで働くと申し出た。クラウスは、交渉役である彼女がヴェンデリンの傍にいることは不自然ではなく、ブロワ家に裏切りを疑わせて指揮系統を混乱させる効果もあると判断した。

伯爵軍の出陣

ヴェンデリンは参戦を決断し、ローデリヒに留守を任せてエチャゴ草原へ向かった。領内の魔導飛行船は開発に使用中だったため、導師の次男ヘンリックから小型魔導飛行船を借りた。

軍勢はヴェンデリンたち、クラウス、カルラ、モーリッツ配下の兵を合わせても約五十名にすぎなかった。しかし、少数でもヴェンデリンの魔法を中心に戦うため、十分な戦力と見なされていた。

旧ブロワ組の登用

兵の中には、以前に反乱を企てて捕らえられた旧ブロワ家の者たちも加わっていた。彼らはブロワ家から存在を否定され、帰る場所を失っていたため、クラウスは功績を立てればバウマイスター伯爵家へ正式に仕官できると説得した。

旧ブロワ組は下級騎士家の次男以下が多く、捨て駒として扱われてきた者たちであった。クラウスは元の指揮官トーマスに統率を任せ、自らは背後から支えることで、彼らと既存家臣との摩擦を抑えていた。

仕官と結婚への希望

クラウスは、バウマイスター伯爵家には代々の家臣が存在せず、誰にでも出世の可能性があると旧ブロワ組へ説いた。さらに、正式に仕官できれば、延期されている大規模なお見合い会にも参加できると伝えた。

家族を持てる収入も地位もなかった彼らは、仕官と結婚の可能性を知って意欲を高めた。クラウスは彼らが最も望むものを示し、戦力として完全に取り込んでいた。

紛争への旅立ち

エルはカルラの傍で、過去の出陣経験について楽しそうに話していた。バウマイスター伯爵軍は、敵方の娘であるカルラと、かつてブロワ家に仕えていた兵たちを抱えたまま戦場へ向かった。

ヴェンデリンは、クラウスの策が紛争とエルの恋をどのような結末へ導くのか見通せないまま、エチャゴ草原への移動を続けた。

第三話 紛争以上? 戦争未満? 

エチャゴ草原への到着

ヴェンデリンたちは小型魔導飛行船でエチャゴ草原へ到着し、ブライヒレーダー辺境伯の出迎えを受けた。南部側は七家で約四千人、東部側は約五千人を集めていたが、双方とも決戦を避けて睨み合いを続けていた。

さらに境界線各地では、銅山や森林、水源、中州などの利権を巡り、八十を超える貴族家が四十箇所ほどで対峙していた。多くはブロワ辺境伯家側の奇襲によって南部側の土地や権利が奪われたものであり、このまま裁定に入ればブライヒレーダー側が不利になる状況であった。

紛争の作法

紛争では死者を抑えるため、双方が刃を丸めた訓練用の武器を使用していた。敵兵を殺すのではなく捕虜にし、身代金や和解金を取ることが目的であった。

争いも対象となる利権の範囲に限定され、相手領内への侵攻や略奪は禁止に近い扱いであった。争いが拡大すれば王家に利権そのものを没収される恐れがあるため、貴族たちは一定の不文律を守っていた。

各地の奪還作戦

ヴェンデリンは、ヘンリックの小型魔導飛行船で各紛争地を巡り、奪われた利権を取り戻すことを提案した。ブライヒレーダー辺境伯はこれを受け入れ、戦果と分配を記録する軍監としてブリュアを同行させた。

最初の目的地は、ヘンケル準男爵家に占拠された銅山であった。ヴェンデリンはランセル準男爵と協定を結び、銅山の権利には関与しない代わりに、捕虜の身代金と敵軍の物資をバウマイスター伯爵家が得る条件を取りつけた。

銅山の制圧

ヴェンデリンは広範囲のエリアスタンを放ち、銅山にいたヘンケル準男爵軍を一人も殺さず麻痺させた。ランセル軍とバウマイスター伯爵軍は兵士たちを捕縛し、銅山を奪還した。

捕虜の中にはヘンケル準男爵本人も含まれており、大量の食料、武器、現金、宝石なども押収された。ヘンケル家は兵力の八割以上と主要家臣を失い、銅山を奪い返す余力を失った。

中州の奪還

次に一行は、河の中州を占拠したイェーリング騎士爵家の軍勢へ向かった。中州は小規模ながら魚が多く獲れるため、周辺領民の生活に関わる争いとなっていた。

今度はカタリーナがエリアスタンを使用し、中州の兵士たちを一瞬で行動不能にした。ベッカー騎士爵軍が捕虜と中州の管理を引き継ぎ、一行は次の紛争地へ移動した。

連続する制圧

ヴェンデリン、カタリーナ、ブランタークは交代でエリアスタンを使い、各地のブロワ側軍勢を麻痺させて捕らえていった。抵抗した魔法使いもいたが、実力差は大きく、ヴェンデリンの電撃の鞭によって容易に制圧された。

カルラによると、東部では十年ほど中級以上の新人魔法使いがほとんど現れず、ブロワ辺境伯家は人材不足に悩んでいた。対して南部にはヴェンデリンという圧倒的な戦力が加わったため、ブロワ辺境伯は強い焦りを抱いていた。

南部側への傾斜

半月ほどで、各地の紛争はすべてブライヒレーダー辺境伯家側の勝利に終わった。ブロワ側の貴族や兵士は大量に捕らえられ、奪われていた利権や土地も南部側が確保した。

死者を一人も出さず、多数の捕虜と身代金を得たことで、バウマイスター伯爵家も十分な利益を確保した。ヴェンデリンたちの参戦によって、紛争の戦況は一気にブライヒレーダー辺境伯家側へ傾いた。

第四話 無意味な長対陣とその生活 

本陣での待機

各地の紛争地帯を制圧したバウマイスター伯爵軍は、ブライヒレーダー辺境伯軍の本陣内に陣を構えた。総勢五十三名と少数であり、敵軍も動かなかったため、兵士たちは暇を持て余していた。

エリーゼたちは治療の機会がほとんどなかったため、炊事や洗濯に加わった。カルラも家事を手伝い、イーナやルイーゼと打ち解けた。エルは家庭的なカルラへの思いをさらに強め、彼女の料理を過剰に褒めていた。

騎士たちの腕比べ

ブロワ辺境伯軍は劣勢を挽回するため、騎士や傭兵による一騎打ちを申し込んだ。双方は刃を丸めた武器を使い、敗者を捕虜として身代金を得る腕比べを始めた。

勝者は感状と褒美を受け、仕官や昇進の実績を得られた。ブライヒレーダー辺境伯家側がやや優勢となり、ブロワ側は一騎打ちでも望んだ成果を得られなかった。

トーマスと兄の対決

旧ブロワ組を率いるトーマスは、因縁のある相手との一騎打ちを志願した。相手は、彼を捨て駒として存在ごと抹消した実家レッチェルト家の兄クリストハルトであった。

トーマスは兄を破って捕虜とし、ヴェンデリンから新たな家名トイファーで感状、高価な剣、金貨を与えられた。クリストハルトはトーマスを弟と認めかけたものの、実家の都合から発言を撤回したため、トーマスは故郷へ戻れない現実を改めて受け入れた。

エルの無断出陣

エルも許可を得ず一騎打ちに参加し、敵騎士を捕らえた。ヴェンデリンは功績を認めて感状と褒美を与えたが、独断で出たことを叱責した。

エルは手柄以上にカルラへ良いところを見せたかったため、勝利を得意げに報告した。しかし、カルラの反応は彼が期待したほど大きなものではなかった。

カタリーナの魔法勝負

翌日、カタリーナはブロワ辺境伯家の魔法使いへ勝負を挑んだ。女性は通常の一騎打ちに参加できなかったが、希少な魔法使い同士の戦いでは例外として認められていた。

カタリーナは筆頭魔法使いの突風が放つ竜巻を自らの風魔法で打ち消し、魔力切れに追い込んで降伏させた。続いて火鞭の巧妙な攻撃も水壁で完全に防ぎ、逆に包囲して捕虜とした。

ブロワ家の魔法使いたちは技量を持っていたが、魔力量では上級のカタリーナに及ばなかった。正面から戦う腕比べでは奇襲や弱点を突くこともできず、勝敗は明白であった。

ヴァイゲル家の戦果

カタリーナは二人の魔法使いを捕らえた功績への褒美を求めたが、ヴァイゲル準男爵家当主として参戦しているため、捕虜の身代金や戦利品自体が家の利益になると説明された。

カタリーナは自分が独立した当主であることを失念していたが、新領地の開発資金が増えると知って機嫌を直した。彼女の勝利により、魔法使い同士の腕比べでも南部側の優位が決定的となった。

動かないブロワ軍

寄子たちの争いも騎士や魔法使いの腕比べも敗北したブロワ軍は、陣地に閉じ籠もった。軍を率いていたのは従士長ゴドウィンであり、後継者候補のフィリップとクリストフは、病床の父が亡くなった際の相続を警戒して領地を離れていなかった。

ゴドウィンは長男フィリップを支持し、軍政を担う者たちは次男クリストフを支持していた。複数の命令系統を抱えるブロワ軍は、劣勢になっても明確な決断を下せずにいた。

陣借り者の採用試験

ブロワ家をさらに追い込むため、ヴェンデリンは敵味方双方の陣借り者を対象に、バウマイスター伯爵家の採用試験を行った。募集は武官、文官、警備隊で、紹介状がなくても能力と人格を満たせば採用する条件であった。

長期化した紛争で功績を得られず、別の戦場へ移ろうとしていた陣借り者たちは募集に殺到した。武芸、計算、文章作成、面接による試験が行われ、モーリッツとクラウスが人選を担当した。

伯爵軍の拡大

採用基準を満たした者は広く受け入れられ、バウマイスター伯爵軍の人数は大幅に増加した。新規採用者には半年の試用期間が設けられ、モーリッツとトーマスが再編成と訓練を進めた。

ブライヒレーダー辺境伯側の陣借り者は伯爵軍へ移り、ブロワ側の者も採用試験を受けたため、敵陣からは陣借り者がほぼ消えた。結果として南部側の兵力と士気は保たれ、ブロワ辺境伯家はさらに不利な立場へ追い込まれた。

第五話 推定勝利ながらも、紛争はまだ続く 

指揮官となったトーマス

新たな人員の加入で指揮官が不足したため、ヴェンデリンは旧ブロワ組のトーマスたちを抜擢した。トーマスは元敵方であることを気にしたが、ヴェンデリンは歴史の浅い伯爵家では半月の先任でも中堅であり、能力を重視すると説明した。

トーマスは出世の機会を受け入れ、バウマイスター伯爵家で働く決意を強めた。一方、最古参の家臣であるエルは、敵方の娘カルラの料理を褒めながら彼女との時間を楽しんでいた。

機能不全のブロワ軍

ブロワ辺境伯軍は敗北が続いても陣地に閉じ籠もり、戦況を変える動きを見せなかった。カルラは、後継者候補のフィリップとクリストフが父の死後の相続を警戒して領地を離れず、軍内でも両派が牽制し合っているため、指揮系統が機能していないと説明した。

やがてブロワ側は裁定を申し入れたが、差出人は従士長ゴドウィンであり、正式な当主や後継者からの文書ではなかった。ブライヒレーダー辺境伯は交渉権限の弱さを懸念しつつも、紛争を終結させるため裁定に応じた。

草原での裁定

双方は草原中央の大型テントに二十名ずつ集まり、裁定交渉を始めた。ブライヒレーダー側にはヴェンデリン、エリーゼ、ヴィルマ、ブランタークらが加わり、ブロワ側はゴドウィンが総大将代理として出席した。

ゴドウィンはフィリップの代理人を名乗り、クリストフには後継者の資格がないと主張した。しかしフィリップ自身も正式な後継者ではなく、ゴドウィンに十分な交渉権限があるとは言い難かった。

平行線の交渉

ブライヒレーダー辺境伯は、紛争前の状態に戻す代わりに多額の和解金と捕虜の身代金を要求した。ブロワ側は本軍が無傷であることを理由に譲歩を拒み、引き分けに近い条件を求めた。

ヴェンデリンも、相手が退かないなら再び戦うと強硬な態度を示した。ブロワ側は再戦によって捕虜と身代金がさらに増える危険を理解していたが、フィリップの立場を守るため敗北を認められず、初日の交渉はまとまらなかった。

マーラー外務委員

二日目、ブロワ側はマーラー外務委員を突然同席させた。マーラーは王宮の意向を持ち出しながら、戦前の状態への復帰と相場どおりの身代金を主張し、一方的にブロワ家を擁護した。

しかしマーラーはブロワ辺境伯の妹婿であり、裁定を管轄する権限もなかった。ヴェンデリンが魔導携帯通信機でシュティーリケ外務卿へ確認すると、マーラーの行動は独断であり、公職を私的に利用したとして解任されることになった。

王宮特使の介入

マーラーに代わり、内務卿配下で貴族籍を管理するクナップシュタイン子爵が王宮特使として派遣された。彼は中立を宣言し、紛争の経緯と過去の裁定例を調べたうえで交渉を見守った。

双方の主張が平行線を辿ったため、ヴェンデリンは特使に指標となる裁定案を求めた。クナップシュタインは、奇襲や後方攪乱などブロワ側の慣習破りを考慮し、戦前の状態へ戻すための和解金を四億セントと算定した。

ブロワ家の責任

ブロワ側は金額が高すぎると反発したが、クナップシュタインは、既にすべての争点で敗北し、利権を取り戻すには相応の補償が必要だと説明した。捕虜の身代金については別途交渉とし、王宮は関与しない方針を示した。

さらにクナップシュタインは、裁定案に誰が署名するのかを問いただした。ゴドウィンはフィリップの代理を名乗ったが、フィリップは正式な後継者ではなく、辺境伯からの委任状も存在しなかったため、代理権そのものを否定された。

カルラの代理権

ヴェンデリンは、ブロワ辺境伯の娘であるカルラを代理人にできないかと提案した。クナップシュタインは、委任状がない点は同じでも、辺境伯へ直接裁定案を届けられるカルラの方がゴドウィンより適任だと認めた。

ゴドウィンは強く反発したが、正式な当主も後継者も交渉に出ず、委任状すら用意していないブロワ家側に反論の余地はなかった。クナップシュタインは、病床の辺境伯が統制を取れないなら先に後継者を決めるべきだと厳しく指摘し、この日の交渉も結論を出せないまま終わった。

第六話 突然の夜襲 

夜襲の兆候

裁定交渉を終えた夜、ブロワ辺境伯軍が戦闘態勢に入ったとの報告が届いた。後方に隠していた予備兵力を加え、敵軍は約一万人に膨れ上がっていた。

クナップシュタイン子爵の指摘で窮地に立たされたゴドウィンは、王宮へ不手際を報告される前に状況を混乱させようとしていると見られた。ブライヒレーダー辺境伯は撤退すれば統制を失って一方的に蹂躙されると判断し、迎撃を命じた。

残留を選ぶ婚約者たち

ヴェンデリンは女性陣を退避させようとしたが、エリーゼたちは彼の傍にいる方が安全だとして拒否した。カタリーナも魔法戦力として残り、エルは最悪の場合にヴェンデリンとカルラを逃がす役目を引き受けた。

ヴェンデリンはエリーゼとエルを後方へ置き、イーナ、ルイーゼ、ヴィルマには自分たち魔法使いの護衛を任せた。

広域エリアスタン

大量殺戮を避けるため、ヴェンデリンはブランタークとカタリーナに広域エリアスタンを提案した。三人は大量の魔晶石を用い、突撃してくる敵軍全体を一度に麻痺させる作戦を立てた。

ブランタークとカタリーナが約二千人、ヴェンデリンが残る約八千人を担当した。敵の矢が降る中、イーナたちは槍、拳、蹴り、斧で矢を防ぎ、三人は魔法へ集中した。

敵軍が目前まで迫った瞬間、三人は広域エリアスタンを発動した。一万人近い兵士と騎馬が一斉に倒れ、作戦は成功したが、三人とも魔力を使い果たして意識を失った。

夜襲軍の壊滅

ヴェンデリンが目覚めた時、敵軍はほぼ全滅していた。後方に残った兵士や本陣の守備兵も抵抗せず降伏し、エルは兵を率いて敵本陣や食料備蓄所の接収を進めていた。

ただし、突撃中の落馬や両軍の矢によって多数の死傷者が出た。ブライヒレーダー辺境伯軍では十三名、全体では二百名近い死者が発生し、エリーゼは敵味方を問わず負傷者の治療に追われていた。

カタリーナへの口移し

魔力切れで空腹になったヴェンデリンはチョコレートを食べて回復した。カタリーナにも食べさせようとしたが、彼女が拒んだため、ヴェンデリンは口移しでチョコレートを与えた。

突然の行為にカタリーナは顔を真っ赤にして放心した。ヴェンデリンは平等を理由にイーナにも同じことを行い、彼女から強く叱られた。その一部始終は、呼びに来たブランタークにも目撃されていた。

紛争から戦争へ

会議では、ブロワ辺境伯軍の攻撃が従来の紛争ではなく、通常武器と大軍を用いた明確な戦争であったと確認された。王国特使のクナップシュタイン子爵も、ブロワ側が戦争を仕掛けた事実を証言すると明言した。

捕虜は各地を合わせて約二万人に達し、敵本陣や食料備蓄所も押さえられていた。しかし、ブロワ辺境伯家で誰が正式に交渉権を持つのかは依然として不明であった。

後継者不在の混乱

ブロワ辺境伯本人は死亡または意思表示ができない状態と見られたが、後継者は決まっていなかった。フィリップとクリストフは印綬を巡る相続争いのため病床から離れず、現場では双方の支持者が勝手に命令を出していた。

正式な当主や委任を受けた後継者がいなければ、裁定案に署名しても履行される保証がなかった。カルラを代理人にする案も、最終的に誰が印綬を持つか決まらない限り解決には繋がらなかった。

占領地と捕虜の維持

ブライヒレーダー辺境伯は、略奪や新たな争いを避けるため町への侵攻を見送った。一方で、敵本陣や補給拠点とともにエチャゴ草原の大部分を占領し、裁定を有利に進める材料とした。

会議では、ブロワ辺境伯家から正式な使者が来るまで、占領地の確保と捕虜の管理を続けることだけが決まった。ヴェンデリンたちは大勝していながら、交渉相手すら定まらないため紛争を終わらせられずにいた。

第七話 早く責任者は出てこいよ! 

陣地に馴染むカルラ

裁定交渉が再開されない中、カルラはエリーゼたちと料理や洗濯をこなし、庶民的な境遇を持つルイーゼとも打ち解けていた。エルの服も繕い、彼との距離を縮めているように見えたため、エルはカルラとの結婚生活まで思い描いていた。

保証占領の拡大

ブロワ辺境伯家から正式な交渉相手が現れないため、ブライヒレーダー辺境伯は東部の町や村を保証占領した。ただし住民との衝突を避けるため、現地統治は従来の責任者に任せ、軍政官を置く程度に留めていた。

捕虜となった東部の貴族たちは、領地の荒廃を防ぐため誓約書を提出して解放された。彼らは寄子を放置したブロワ辺境伯家に失望し、開発利権への参加も見込んで、次々とブライヒレーダー辺境伯の寄子へ鞍替えした。

二人の後継者

父ブロワ辺境伯の死後、長男フィリップと次男クリストフが揃って交渉に現れた。しかし両者はどちらが代表になるかを巡って言い争い、随員の人数すら決められなかった。

クナップシュタイン子爵の勧告により、二人は十名ずつの随員を連れて交渉に臨んだ。父が五日前に亡くなっていたため、裁定書には二人が連署することになった。

十億セントの請求

状況は以前の裁定案から大きく変化していた。四十家以上の元ブロワ側貴族がブライヒレーダー辺境伯の寄子となり、彼らへの和解金はブロワ辺境伯家が負担する契約になっていた。

さらに、ヴェンデリンが得た捕虜の身代金、一万を超える本軍捕虜、占領された領地や町の返還費用も加わり、請求額は十億セントに達した。フィリップとクリストフは高額すぎると反発したが、クナップシュタイン子爵は、慣習を破った奇襲と夜襲の責任を考えれば当然だと退けた。

寄子たちの離脱も覆らず、ブロワ辺境伯家は金銭だけでなく統括領域まで失うことになった。

晩餐への招待

ブライヒレーダー辺境伯は、ブロワ側が若いヴェンデリンへ個別に接触し、身代金の減額やカルラとの婚姻を持ちかける可能性を警告した。その日のうちに、フィリップから晩餐への招待状が届いた。

ヴェンデリンはエル、ルイーゼ、モーリッツ配下の護衛を伴って出席した。フィリップは軍人としては有能と評されていたが、領主としての適性には疑問があり、外戚のゴドウィンが起こした失態の責任も負っていた。

晩餐の終盤、フィリップはカルラを妻に迎えるようヴェンデリンへ求めた。ヴェンデリンは、ブライヒレーダー辺境伯との関係や開発利権への影響を理由に、実現は困難だと答えた。

クリストフの晩餐

翌日、今度はクリストフから晩餐へ招かれた。ヴェンデリンは出席を熱望していたカタリーナを伴うことにしたが、彼女は野営地には不釣り合いな豪華な正装で現れた。

クリストフはヴェンデリンにカルラとの婚姻を持ちかけるつもりであったが、初めての大貴族の晩餐に浮かれたカタリーナが、自身の魔法や暴風と呼ばれるようになった経緯を延々と語り続けた。

クリストフは話題を切り出せないまま晩餐を終えた。ヴェンデリンは意図せず交渉を阻止したカタリーナに感謝し、二日続いた晩餐を無事に乗り切った。

第八話 俺は先に抜けさせてもらうから! 

停滞する裁定交渉

交渉開始から一週間が過ぎても、ブロワ辺境伯家はクナップシュタイン子爵の裁定案を高すぎるとして拒み続けた。フィリップとクリストフは現実的な条件を示さず、カルラをヴェンデリンに嫁がせて未開地開発の利権へ食い込もうとしていた。

カルラは、ゴドウィンが自分を邪魔者と見なし、代わりに自分の娘やフィリップの娘をヴェンデリンの側室にして勢力を広げようとしていたと説明した。ブロワ家では複数の思惑が交錯し、統一した方針を持てない状態であった。

身代金の物納

ヴェンデリンとカタリーナが得る身代金は、合わせて四億五千万セントに達していた。しかし全額を求めれば交渉が長引き、領地開発がさらに遅れる恐れがあった。

そこでカタリーナは、身代金の一部を減額する代わりに、ブロワ辺境伯領内のヘルタニア渓谷を物納させる案を出した。そこは豊富な鉱脈を持ちながら、岩でできた魔物が大量に生息するため、開発不能と見なされていた魔物の領域であった。

ヘルタニア渓谷

ヘルタニア渓谷には鉄、銅、金、銀、ミスリル、オリハルコン、宝石などが眠っていると伝えられていた。しかし岩製の狼、猪、熊、鷲、ワイバーンが群れをなし、過去には一万の兵や複数の高位魔法使いも攻略に失敗していた。

ヴェンデリンは、岩の魔物が古代魔法文明時代のゴーレムであり、領域のボスを倒せば活動を停止する可能性があると思い出した。ヴェンデリン、ブランターク、カタリーナ、導師、ルイーゼを主力とすれば攻略できると判断された。

渓谷の譲渡

翌日の裁定で、ヴェンデリンはヘルタニア渓谷の譲渡と引き換えに身代金を減額すると提案した。フィリップとクリストフは攻略不能な土地だと考え、珍しく反対せず条件を受け入れた。

クナップシュタイン子爵が公式記録に残したことで、ヘルタニア渓谷は正式にバウマイスター伯爵家の領地となった。身代金は三億五千万セントへ減額され、十年間の分割払いに決まった。

裁定交渉からの離脱

ヴェンデリンは身代金だけでも十分な利益を確保し、渓谷を解放できれば莫大な鉱山利権も得られると考えた。採掘や警備には周辺勢力の協力が必要なため、ブライヒレーダー辺境伯にも一部の利益を分ける約束をした。

ヴェンデリンは長引く裁定交渉から離れ、ブロワ辺境伯家が価値を見出さなかったヘルタニア渓谷を攻略するため、再び冒険者として行動を開始した。

第九話 ヘルタニア渓谷解放作戦 

ヘルタニア渓谷の調査

ヴェンデリンたちは、身代金の減額と引き換えに得たヘルタニア渓谷を訪れた。広大な荒野には豊富な鉱床が眠っていたが、境界線を越えると岩でできた獣型のゴーレムが現れた。

エルが岩狼を倒すと低品質の魔石と鉄鉱石が得られたものの、高価な剣の刃が欠けた。倒しても利益が少ない一方、侵入を続ければ敵の数が急増するため、過去の軍勢や冒険者は攻略に失敗していた。

渓谷解放の狙い

ヘルタニア渓谷には大規模なミスリル鉱床があるとされ、解放できれば莫大な利益が見込めた。ヴェンデリンは渓谷を攻略してブロワ辺境伯家の威信を失墜させ、エルとカルラの婚姻を認めさせる材料にしようと考えた。

クラウスも、新興貴族である今なら強引な要求も許容されるとして、その方針を支持した。ヴェンデリンたちは援軍を待つ間、領有権を示す岩の塀を渓谷の外周に築いた。

岩の魔物の正体

導師が王国から持参したイシュルバーク伯爵の作品目録により、岩の魔物は渓谷への侵入者を排除する防衛ゴーレムだと判明した。

渓谷中央の断裂には、全長百メートルを超えるロックギガントゴーレムが存在していた。その内部には最大十万体の岩ゴーレムを操る巨大な人工人格の結晶と、一日に五千個の魔石を製造する装置が内蔵されていた。

岩ゴーレムは製造された魔石を核として分裂し、周囲の岩を取り込んで成長していた。ロックギガントゴーレムの結晶を破壊すれば、すべてのゴーレムが停止すると考えられた。

陽動作戦の準備

ヴェンデリン、ブランターク、カタリーナ、導師、ルイーゼが空からロックギガントゴーレムへ突入し、地上部隊が外縁部で八万体のゴーレムを引きつける作戦が立てられた。

エルたちは訓練を兼ねて境界線付近のゴーレムと戦った。エルはカルラの声援を受けてオリハルコン製の剣を振るい、イーナは槍術、ヴィルマは鉄弓と戦斧で多数を破壊した。

しかし一日に約二千体を倒しても敵の回復量には及ばず、正面からの殲滅が不可能であることが確認された。

王国軍と諸侯軍

ヴェンデリンは王国軍三千人と、周辺五十家以上の諸侯軍を援軍として集めた。各軍は十の部隊に分かれ、境界線を出入りしてゴーレムを引きつける訓練を重ねた。

一週間後、地上のゴーレムが外縁部へ集まったところで、五人の突入部隊は高速飛翔によって渓谷中央を目指した。

空中ゴーレムの包囲

突入直後は敵が少なかったが、中央の断裂上空には一万を超える飛行型ゴーレムが待ち構えていた。ヴェンデリンは極大竜巻魔法で数千体を破壊し、カタリーナも竜巻を連発して進路を開いた。

しかしゴーレムは保存されていた魔石を使って急速に補充され、数を回復させた。ヴェンデリンたちは長期戦を避け、導師に上空の敵を任せて断裂へ突入した。

ロックギガントゴーレム

断裂の奥には、八つの頭と八本の尾を持つロックギガントゴーレムが鎮座していた。八つの口から岩弾を放ち、周囲の飛行型ゴーレムとともに侵入者を攻撃した。

ヴェンデリンたちは頭部を破壊して胴体へ接近したが、頭は短時間で再生した。設計図がなかったため、ルイーゼが胴体を手当たり次第に砕き、人工人格の結晶を探すことになった。

ビッグバンアタック

頭部と尾、飛行型ゴーレム、上空から落ちる岩に包囲される中、ルイーゼは自身と魔晶石の魔力を拳へ集中させた。そして魔闘流究極の極意ビッグバンアタックを放ち、ロックギガントゴーレムの胴体を粉砕した。

巨大な人工人格の結晶も破壊され、頭部や尾、渓谷全域の岩ゴーレムはすべて岩塊へ戻った。ルイーゼは反動で動けなくなり、ヴェンデリンに抱えられた。

降り注ぐ岩塊

停止した飛行型ゴーレムが一斉に落下し、断裂には大量の岩が降り注いだ。ヴェンデリンたちは魔法障壁を張りながら上空へ退避し、崩落と地震を辛うじて逃れた。

導師も無傷で合流し、ヘルタニア渓谷の解放は成功した。導師はルイーゼのビッグバンアタック習得を望んだが、周囲はその破壊力を恐れ、実現しなかった。

第十話 結局、後始末をする羽目になる 

解放後のヘルタニア渓谷

ロックギガントゴーレムの破壊から三日後、ルイーゼは秘奥義の反動から回復した。ヘルタニア渓谷では鉱石泥棒への警戒が始まり、王都から来た魔道具職人たちは、破壊されたゴーレムや魔石生成装置の残骸を高額で買い取った。

鉱山開発の分担

ヴェンデリンは、鉱山技師や鉱夫を王国直轄地や他領から集め、伯爵家は管理と不正防止に専念する方針を立てた。外部の人材へ雇用と利益を分けることで、周囲の嫉妬を抑えながら開発を早めようとしたのである。

王国には外縁部の土地を売却し、千人規模の守備隊を置かせることになった。王国軍は鉱山を他家から守り、代わりに警備委託料と鉱石の安定供給を得ることになった。

インフラ整備

ヴェンデリンはミスリル鉱石の早期搬出に向け、町の敷地、道路、魔導飛行船の発着場を魔法で整備した。食料の自給は困難であったため、周辺貴族から購入し、彼らをブロワ辺境伯家への抑止力として取り込む方針も決めた。

初代代官にはアームストロング伯爵の三男フェリクスが選ばれた。彼の実家の力を利用して王国軍や周辺勢力を牽制し、鉱山運営を安定させる狙いがあった。

残された婚姻問題

戦争と鉱山開発では大きな利益を得たが、エルとカルラの婚姻問題は進展していなかった。フィリップとクリストフは依然としてカルラをヴェンデリンへ嫁がせ、開発利権に食い込もうとしていた。

クラウスは、解決策を最も知るのはカルラ本人だと指摘した。カルラは、父の死後に兄たちから政略結婚の道具として利用されるのを避けるため、特使として領外へ逃れたと明かした。そして望みは、ブロワ辺境伯家の籍から外れることであった。

父の隠された意図

クラウスは、ブロワ辺境伯がカルラをヴェンデリンのもとへ送ったのは、娘を後継者争いから守るためだったと推測した。ヴェンデリンの妻になれば安全であり、そうならなくても自力で将来を切り開けるよう、随伴もつけずに逃がしたと考えたのである。

さらに、フィリップとクリストフのどちらを後継者にしても家中が割れるため、ブロワ辺境伯は第三の候補を立てるつもりで、あえて後継者を指名しなかった可能性があった。

第三の後継者

第三の候補が当主となれば、カルラをブロワ家から除籍することも可能であった。ヴェンデリンたちは、その人物の擁立を支援し、カルラの除籍を条件として紛争と婚姻問題を同時に解決する方針を決めた。

フィリップとクリストフが支持者を連れて前線にいる今が好機であると判断し、ヴェンデリンたちは第三の後継者を探すため、ブロワ辺境伯領へ向かう準備を始めた。

第十一話 第三の男 

第三の後継者

ヴェンデリンたちは、ブロワ辺境伯家の第三の後継者候補を探すため、カルラの叔父ゲルトを訪ねた。同行したのはエル、ブランターク、導師、ヴィルマ、カルラ、道案内のニコラウスであった。

ゲルトは亡き辺境伯の年の離れた弟であり、継承争いから距離を置き、息子リーンハイトと穏やかに暮らしていた。領主館ではフィリップ派とクリストフ派が辺境伯の遺体を挟んで対立し、葬儀も政務も滞っていた。

印綬官ハイモ

カルラは、失踪した印綬官ハイモをゲルトが匿っていると見抜いた。ハイモはフィリップとクリストフから、辺境伯が自分を後継者に指名したと偽証し、印綬を渡すよう迫られていたため、ゲルトの屋敷へ逃れていた。

辺境伯は後継者を明言せず、二人には領主として大切なものが欠けているとだけ語っていた。ハイモも命を狙った二人を当主にすることを拒み、ゲルトの襲爵を支持した。

ゲルトの擁立

ゲルトは支持者がいないとして当主就任を拒んだが、ヴェンデリンは、フィリップとクリストフが重臣や兵を連れて前線にいる今こそ好機だと説得した。留守を任された家臣たちも、ゲルトを支えれば新体制で出世できるため、取り込めると考えたのである。

ゲルトが覚悟を決めると、ヴェンデリンたちは領主館へ押し入り、警備兵を導師とヴィルマが制圧した。ヴェンデリンはゲルトと数名の家臣を瞬間移動で王都へ運んだ。

新ブロワ辺境伯

王城では国王が待機しており、ゲルトは正式に第三位辺境伯位を授けられた。新しいマントも下賜され、同行した家臣たちは国王の前でゲルトへの忠誠を誓わざるを得なくなった。

ブロートリッヒへ戻ったゲルトは、家臣団の再編と領内掌握を開始した。同行した家臣たちは両派から裏切り者と見なされるため、ゲルトを支えて新たな重臣となる道を選んだ。

先代辺境伯の葬儀

ゲルトは先代辺境伯の葬儀を主宰し、正式な後継者としての立場を示した。王家から下賜されたマントと印綬官ハイモの存在を見た家臣たちは抵抗を諦め、ゲルトへ忠誠を誓った。

先代の妻やフィリップとクリストフの妻たちは激しく反発し、ヴェンデリンやカルラへ暴言を浴びせた。ゲルトは彼女たちを王都の邸宅や教会へ移し、反対派の旗頭となる可能性を排除した。

カルラは父の棺へ祈りを捧げ、自分を後継者争いから守ろうとしていた父の意図を受け止めた。エルは、その傍で彼女を支えた。

裁定への帰還

ゲルトはカルラをブロワ辺境伯家の籍から外すことを認め、エルとの身分差は解消された。ヴェンデリンたちは新当主を連れて裁定交渉の場へ戻った。

ゲルトの姿を見たフィリップとクリストフは反乱だと騒いだが、国王から正式に襲爵を認められた事実を覆すことはできなかった。二人は交渉権を失い、クナップシュタイン子爵の判断で拘束された。

紛争の終結

正式な交渉相手が現れたことで、裁定は急速に進んだ。ブライヒレーダー辺境伯は東部の安定を優先し、新当主への配慮から和解金を一部減額した。

捕虜は解放され、新ブロワ辺境伯家の諸侯軍へ再編された。失態を重ねた重臣たちは処罰対象となり、夜襲を主導したゴドウィンらは処刑と家の取り潰しが決まった。

ゲルトは家臣団と財政の立て直しを始め、長く続いた紛争はようやく終結した。ヴェンデリンは多くの利益を得ながらも、大貴族の後継者争いと統治の難しさを痛感してバウルブルクへ帰還した。

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