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フィクション(Novel)読書感想陰の実力者になりたくて!

漫画「陰の実力者になりたくて! (18)」【最新刊】感想・ネタバレ

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陰の実力者に なりたくて !18の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

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物語の概要

■ 作品概要

『陰の実力者になりたくて! (18)』は、主人公が「物語の黒幕」として暗躍する理想を追求する、勘違い系シリアス風コメディのライトノベルである。

本作は、普段は目立たない凡人を装う少年シド・カゲノーが、裏の世界では最強の組織「シャドウガーデン」の長「シャドウ」として、世界を牛耳る「ディアボロス教団」と戦う物語である。第18巻では、王都を恐怖に陥れる怪人「ジャック・ザ・リッパー」の暗躍と、それに巻き込まれる貴族たちの政争、そして国家の命運を左右する新たな戦乱の予兆が描かれる。

■ 主要キャラクター

  • シド・カゲノー/シャドウ/ジャック・ザ・リッパー: 普段は魔剣士学園のパッとしない生徒を装っているが、裏では最強の組織を率いる少年。本作では、ふざけたピエロ姿の殺人鬼「ジャック・ザ・リッパー」に扮し、独自の美学に基づいて「十三の夜剣」の壊滅に動く。
  • クリスティーナ・ホープ: シドの学園の同級生であり、由緒あるホープ家の令嬢。夜剣の脅威に晒されながらも正義の心を失わずにいたが、ジャック・ザ・リッパーの圧倒的な力を目の当たりにし、次第に「悪を断つための覚悟」を固めていく。
  • カナデ: シドやクリスティーナの友人である女子生徒。非常に感情が表に出やすく臆病な性格で、襲撃事件の際には常に混乱してシドを盾にしようとするが、どこか憎めないムードメーカーである。
  • アレクシア・ミドガル: ミドガル王国の第二王女。正義感が強く、独自に教団や夜剣の悪事を追っている。ジャック・ザ・リッパーの残した暗号の解読を試みるなど、探偵ごっこのように首を突っ込んでくる。
  • アルファ: シャドウガーデンの実質的な統括者である最初の部下。シャドウの全ての行動に深遠な意図があると思い込んでおり、今回も自分たちのミスを完璧にフォローしてくれた主への忠誠と感謝をさらに深める。

■ 物語の特徴

本作の最大の魅力は、主人公の「圧倒的な実力に基づく圧倒的な勘違い」が織りなす極上のコメディ感と、周囲が勝手にシリアスな大河ドラマとして解釈していく温度差である。

シド本人は単に「歴史に残るスタイリッシュな怪人」のロールプレイを楽しんでいるに過ぎないが、その圧倒的な武力と、気まぐれな言動から生み出される「縦読み暗号」や「レプリカの壺」といった要素が、周囲の人間(アレクシアやクリスティーナ)にとっては国家を揺るがす天才的な知略として完璧に噛み合っていく。このすれ違いの妙に加え、後半でクリスティーナがシャドウの「血濡れの道」を誤解したまま継承し、新たなジャック・ザ・リッパーとして覚醒するダークなカタルシスは、本作ならではの差別化要素である。

書籍情報

陰の実力者になりたくて! 18
(英語名:The Eminence in Shadow)
漫画 坂野 杏梨 氏
原作 逢沢 大介 氏
キャラクター原案 東西 氏
発売日:2026年5月25日
ISBN:9784041173879

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あらすじ・内容

我が名はジャック・ザ・リッパー 悪の刃で悪を断つ者――…
異世界に転生し、あらゆる物事に陰から介入し
実力を示す「陰の実力者」設定をエンジョイしているシド。
『十三の夜剣』のメンバーは、
連続殺人鬼『ジャック・ザ・リッパー』により一人ずつ粛清されていく――。
夜剣達は殺人鬼への報復として、地下闘技場へ誘い込むが…
そこにアレクシアやクリスティーナ達も…!!
血濡れの道を征く、驚愕の第18巻!!

陰の実力者になりたくて! (18)

感想

ついに原作6巻分のエピソードが終わってしまった。残すところあと1巻となり、最新の展開に追いついてしまうという嬉しさと少しの寂しさが入り混じっている。

今回のエピソードでは、緊迫した死闘の合間に挟まれる日常や人間関係の描写も非常に魅力的であった。特にカナデは本当に良いキャラクターをしていると感じる。シドに「内緒にする」と約束していたにもかかわらず、堂々と言いふらしてしまうお調子者なところには思わず笑ってしまった。シド自身も「絶対言うだろうな」と最初から予想していた節があり、二人の絶妙なやり取りが作品のコメディ要素をしっかりと支えている。

本編の核となる戦闘や暗躍のシーンは、まさに圧倒的の一言に尽きる。ミドガル王都を震撼させた連続殺人鬼であり、ピエロの仮面を被って「血濡れのピエロ」と恐れられた存在。その真の正体が主人公のシド(シャドウ)であることは読者には周知の事実だが、トランプカードを凶器に使い、血で暗号を残すという劇場型の暗殺劇は、読んでいて非常に痛快であった。何より面白いのは、彼が腐敗した貴族集団「十三の夜剣」を標的としているにもかかわらず、その目的が正義のためではないという点だ。「ジャック・ザ・リッパーの名を歴史に刻み付ける」という、自身の思い描く伝説の殺人鬼のロールプレイを完璧に完遂しようとするシドのブレない姿勢には、毎度のことながら感心させられる。

襲撃や戦闘のスケールも桁違いであった。目障りなクリスティーナたちを暗殺するため、オヤノ・ボウ伯爵らが精鋭部隊やワコクの武芸者「剣鬼」を雇って別邸を包囲した際も、ジャック・ザ・リッパーは一切の容赦を見せなかった。オヤノ・ボウとその息子デクノ・ボウをはじめ、包囲網を敷いていたシノビ子爵やジェット侯爵までをも生首にして全滅させた場面は、彼の異常な強さを際立たせていた。 さらに見どころだったのが、地下闘技場での戦いである。追い詰められた上位メンバーのホワイト伯爵が結界を張り、「挽肉のブッチャー」や伝説の傭兵団「白狼」など百人以上の凄腕の魔剣士を集めて待ち受けていたが、結果は一方的な惨殺劇となった。次元の違う実力を見せつけられ、恐怖のあまり戦わずして逃亡する者まで現れる展開には、極上のカタルシスを感じた。

そして、物語の裏で動くディアボロス教団の陰謀も見逃せない要素となっている。これまで十三の夜剣の支援団体であった教団内の「フェンリル派」が壊滅状態に陥った後、新たにダクアイカン侯爵が「ロキ派」と交渉し、強力な関係を結んでいた。教団はジャック・ザ・リッパーを抹殺するため、本来交わるはずのないフェンリル派とロキ派の技術を統合し、かつての十倍以上に強化された最強の人体兵器「実験体227番 ミリア」を闘技場に投入してくる。しかし、真の姿を現したシャドウが、自身の魔力によってミリアの異形の力を削ぎ落とし無力化(救済)していく姿には、圧倒的な力を見せつけるだけではない彼の底知れなさを感じた。最終的に、結界を完全に無視して観客席に現れ、ホワイト伯爵や命乞いをするダクアイカン侯爵らをことごとくトランプで仕留めた場面は、まさに完璧な幕引きであったと言えるだろう。 同時に、騎士団の捜査課課長であるグレイが裏で教団の「ロキ」と呼ばれる人物と通じており、密かに「陰を狩る顎」という計画を進めていることなど、教団との戦いがさらに激化していくことを予感させる不穏な伏線にも大いに期待が高まる。

最後に深く心に残ったのは、シャドウの介入がクリスティーナの運命に与えた決定的な影響である。彼女は、シャドウが自ら血濡れの道を歩みながらもその途中で人々を救っていく姿を目の当たりにした。この腐敗した国では正義の刃だけでは悪を裁けないという過酷な現実を悟り、「悪を断つには更なる悪が必要である」と確信した彼女が、自ら二代目のジャック・ザ・リッパーを継承する決意を固めた結末には、鳥肌が立つほどの衝撃を受けた。

シドの狂気的なロールプレイと、それに巻き込まれて運命を変えていく人々のシリアスなドラマが完璧に交差した、まさに驚愕の一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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陰実17巻レビュー
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陰実19巻レビュー

考察・解説

ジャック・ザ・リッパー

作中における「ジャック・ザ・リッパー(血濡れのピエロ)」の正体や目的、そしてその名が引き継がれるに至った経緯は以下の通りである。

ジャック・ザ・リッパーの概要と正体

  • ミドガル王都を震撼させた連続殺人鬼であり、ピエロの仮面を被った「血濡れのピエロ」として恐れられた存在である。
  • その真の正体は主人公のシド・カゲノー(シャドウ)であった。
  • シドは、腐敗した貴族集団「十三の夜剣」を標的とし、トランプカードを凶器として使用したり、現場に血でメッセージや暗号を残したりといった劇場型の暗殺を遂行した。
  • 彼の真の目的は、正義のためなどではなく「ジャック・ザ・リッパーの名を歴史に刻み付ける」という、自身の思い描く伝説の殺人鬼のロールプレイを完璧に完遂することであった。

圧倒的な戦闘力と暗殺劇

  • ジャック・ザ・リッパーは、夜剣が用意した最高峰の戦力を全く相手にしない規格外の実力を見せつけた。
  • クリスティーナたちが滞在するホープ家別邸が襲撃された際は、ワコクの凄腕である「剣鬼」を一瞬で斬首し、包囲部隊を単独で壊滅させた。
  • さらにホワイト伯爵が地下闘技場に結界を張り、百人以上の魔剣士を集めて待ち受けた際にも、「挽肉のブッチャー」や数々の一流暗殺者たちを瞬く間に蹂躙した。
  • あまりの次元の違う強さと異常性に、伝説の傭兵団「白狼」などが戦わずして逃亡するほどの恐怖を与え、最終的には結界の仕様を完全に無視して標的である夜剣の貴族たちを闘技場内でことごとく惨殺した。

シャドウとしての顕現とミリアの救済

  • 闘技場での殺戮の最終局面において、ダクアイカン侯爵がディアボロス教団の人体兵器「実験体227番 ミリア」を投入する。
  • ジャック・ザ・リッパーがミリアの無数の棘に貫かれたかに見えた瞬間、彼は膨大な青紫の魔力と共に本来の姿である「シャドウ」として顕現した。
  • シャドウは暴走するミリアをただ倒すのではなく、斬撃によって肉体を削ぎつつ自身の魔力を傷口に流し込むことで、彼女の異形の力を削ぎ落とし、本来の少女の姿へと戻す救済を行った。
  • この姿を見たアルファたちは、シャドウが最初から部下の失敗(教団によるミリアの誘拐)の後始末をつけるために動いていたのだと深く感銘を受けている。

まとめ
シドがジャック・ザ・リッパーとしての出番を終え、その正体が伝説となっていく裏で、彼から強い影響を受けた人物がいた。それがホープ家の令嬢クリスティーナである。彼女は、シャドウが自ら血濡れの道を歩みながらも人々を救っていく姿を目の当たりにし、この腐った国で正義の刃は役に立たないこと、そして悪を断つには更なる悪が必要であるという過酷な使命を悟る。そして、没落しながらもなお夜剣の再結成を企むエライザ・ダクアイカンの前に、血濡れのピエロ姿で現れて彼女を刺殺した。「我が名はジャック・ザ・リッパー。悪の刃で悪を断つ者」と名乗り、自らが二代目のジャック・ザ・リッパーを継承する決意を固めたのである。

十三の夜剣

「十三の夜剣」は、ミドガル王国の権力を握る腐敗した貴族の集団である。彼らは自分たちの権力を行使して都合の悪い事件(エライザ・ダクアイカンの悪行など)の証拠を隠蔽し、裏社会の暗殺者を雇うなど、国を裏から牛耳っていた。さらにディアボロス教団とも深く繋がっており、ミドガル国王すらも彼らの背後にある教団の報復を恐れて、うかつに手を出せないほどの影響力を持っていた。物語において、彼らは連続殺人鬼「ジャック・ザ・リッパー(正体はシャドウ)」の標的となり、次々と暗殺されて壊滅へと追い込まれる。

主なメンバーと最期

  • ゲーテ・モーノ伯爵:エライザの事件の隠蔽工作を行っていたところ、自身の書斎でトランプを凶器に殺害された。
  • クザヤ伯爵・グレハン男爵:モーノ伯爵の死を受け、隠し部屋で証拠捏造などの対策を練っていたが襲撃され、遺体は王都の大通りの噴水に見せしめとして吊るされた。
  • オヤノ・ボウ伯爵・シノビ子爵・ジェット侯爵:目障りなクリスティーナ・ホープたちを暗殺するため、精鋭部隊やワコクの武芸者「剣鬼」などを雇って別邸を包囲・襲撃した。しかし、そこに現れたジャック・ザ・リッパーにより、オヤノ・ボウとその息子デクノ・ボウ、さらには包囲網を敷いていた子爵と侯爵も生首にされ、全滅した。

地下闘技場での壊滅

  • 追い詰められた上位メンバーのホワイト伯爵は、自身が所有する「白の邸宅」の地下闘技場に結界を張り、百人以上の凄腕の魔剣士や暗殺者(「挽肉のブッチャー」や伝説の傭兵団「白狼」など)を大金で集めてジャック・ザ・リッパーを葬ろうと目論んだ。
  • しかし、ジャック・ザ・リッパーの実力は次元が違っており、集められた魔剣士たちは一方的に惨殺されるか、恐怖のあまり戦わずして逃亡した。
  • さらに、ダクアイカン侯爵が教団(ロキ派)と交渉して借り受けた最強の人体兵器「実験体227番 ミリア」を投入するが、シャドウとしての真の姿を現した彼によってミリアは無力化された。
  • 最終的に、結界を無視して観客席に現れたジャック・ザ・リッパーにより、ホワイト伯爵や命乞いをするダクアイカン侯爵を含む夜剣メンバーはことごとくトランプで殺害された。

まとめ
厳戒態勢の中で7人の夜剣が死亡したこの一夜の事件により、組織は実質的に壊滅した。生き残ったダクアイカン家の令嬢エライザは、周囲の貴族に見捨てられ没落しながらも、次期当主たちを集めて「十三の夜剣」を再結成しようと企てていた。しかし、シャドウの姿から悪を断つには更なる悪が必要であるという使命を悟って二代目のジャック・ザ・リッパーとなったクリスティーナの手により、エライザも暗殺されたことで、その目論見は完全に絶たれたのである。

ディアボロス教団

作中における「ディアボロス教団」の組織力、各勢力との関係、および物語内での暗躍についての詳細は以下の通りである。

国家を凌駕する強大な戦力と支配力

  • ディアボロス教団は、千年の時を越えて生き続ける最高幹部「ナイツ・オブ・ラウンズ」と、強化された戦闘集団「チルドレン」を擁し、世界の闇を支配する巨大な秘密結社である。
  • 過去に教団に対抗しようとした組織はことごとく潰されてきた歴史がある。
  • ミドガル王国のような一国家ですら、敵対すれば国が甚大な犠牲を払うことになるため迂闊に手を出せず、その悪行を見逃さざるを得ないほど圧倒的な力を持っている。

十三の夜剣との癒着とロキ派の台頭

  • 教団はミドガル王国の腐敗貴族集団「十三の夜剣」の背後盾となり、国を裏から牛耳っていた。
  • 十三の夜剣の支援団体であった教団内の「フェンリル派」が壊滅状態に陥った後、夜剣のダクアイカン侯爵は新たに「ロキ派」と交渉し関係を結んだ。
  • 教団はジャック・ザ・リッパー(シャドウ)を抹殺するため、最強の人体兵器「実験体227番 ミリア」を助っ人として闘技場に投入した。
  • ミリアは、本来交わることのないフェンリル派とロキ派の技術を統合して生み出された存在であり、かつての十倍以上に強化されていたが、シャドウの魔力によって異形の力を削ぎ落とされ無力化された。
  • また、騎士団の捜査課課長であるグレイは裏で教団の「ロキ」と呼ばれる人物と通じており、シャドウの実力を警戒しつつも「陰を狩る顎」という計画を密かに進めている。

シャドウガーデンの台頭による教団の焦り

  • これまで絶対的な支配者であった教団であるが、シャドウガーデンの登場によってその状況は一変している。
  • ミドガル国王の分析によれば、シャドウガーデンは教団の攻撃を受けても潰れる気配がなく、逆に教団の戦力を削ぎながら急速に勢力を拡大している。
  • そのため、現在の教団の動きには明らかな焦りが見え始めているという。

オリアナ王国への侵攻計画と戦争の扇動

  • 教団はシャドウガーデン側についたオリアナ王国を潰すため、隣国のベガルタ帝国側につき、「聖教の異端討伐」という名目で近々オリアナへ侵攻する計画を立てている。
  • 季節が変わる頃には戦争が始まるとされており、この巨大な二大組織の衝突により、これまで中立を保ってきたミドガル王国も教団かシャドウガーデンのどちらを選ぶかという国家としての重大な選択を迫られている。

まとめ
これまで世界の闇を支配してきたディアボロス教団であるが、シャドウガーデンの台頭によりその絶対的な地位は脅かされつつある。ミドガル王国の裏社会を牛耳り、隣国を巻き込んだ戦争を扇動するなど強大な影響力を誇る一方で、教団内部には明らかな焦りが見え始めている。今後の教団とシャドウガーデンの衝突は、世界各国の勢力図を巻き込んだ巨大な戦いへと発展していくのである。

シャドウの介入

十三の夜剣とディアボロス教団の暗躍に対するシャドウの介入について、その目的や周囲に与えた影響を以下にまとめる。

シャドウ自身の真の目的

  • シャドウ(シド・カゲノー)がミドガル王国の腐敗貴族集団である「十三の夜剣」の粛清に介入した真の目的は、正義の執行や組織的な作戦ではない。
  • 「ジャック・ザ・リッパー」という伝説の殺人鬼のロールプレイを完遂し、その名を歴史に刻み付けることであった。
  • 彼は自身の暗躍が伝説となり、将来「ジャック・ザ・リッパー 驚愕の正体」のような映画が作られて世界的大ヒットになるに違いないと妄想し、目的が完璧に達成されたことに深い満足感に浸っている。

ミリアの救済

  • 闘技場での殺戮の最終局面において、ダクアイカン侯爵がディアボロス教団から借り受けた最強の人体兵器「実験体227番 ミリア」を投入する。
  • ジャック・ザ・リッパーがミリアの触手に貫かれたかに見えた瞬間、彼は青紫の膨大な魔力と共に本来の姿であるシャドウとして顕現した。
  • シャドウは暴走するミリアを単に討伐するのではなく、無数の触手を斬り裂きながら傷口に自身の魔力を流し込んでいった。
  • それはミリアを怪物化させている異形の力を削ぎ落とし、本来の少女の姿へと引き戻すための救済であった。
  • 最終的に人間の姿を取り戻したミリアは、父から贈られた形見の短剣を構えて力尽き、シャドウは彼女へ見事だと称賛の言葉を贈っている。

シャドウガーデンの解釈

  • ミリアが倒れた後、現場に現れたアルファが彼女を抱き留めた。
  • ミリアはかつて、シャドウガーデンが教団関連の事態処理に気を取られた一瞬の隙を突かれ、教団に連れ去られてしまった存在であった。
  • アルファは、シャドウが最初から自分たち部下のミスの後始末をつけるために動いていたのだと察した。
  • 言葉で叱責することなく黙って救いに来てくれた彼を本当に優しい人だと解釈し、深く感銘を受けている。

まとめ
シャドウの介入は、ホープ家の令嬢クリスティーナの運命にも決定的な影響を与えた。彼女は、シャドウが自ら血濡れの道を歩みながらも人々を救っていく姿を目の当たりにし、この腐敗した国では正義の刃だけでは悪を裁けないという過酷な現実を悟る。悪を断つには更なる悪が必要であると確信した彼女は、自らが二代目のジャック・ザ・リッパーを継承する決意を固めるに至ったのである。

クリスティーナの覚悟

クリスティーナ・ホープが作中で見せた「覚悟」は、腐敗した国家に対する絶望と、シャドウ(ジャック・ザ・リッパー)の生き様を目の当たりにしたことで形成された。彼女の覚悟に至る経緯とその本質は以下の通りである。

正義の無力さへの絶望

  • 当初、クリスティーナはエライザ・ダクアイカンをはじめとする「十三の夜剣」の悪行や隠蔽工作を告発しようと自ら証拠を集めていた。
  • しかし、相手の巨大な権力の前には正攻法が全く通用せず、自身の行動が自身や家族を危険に晒すだけだという無力感と絶望に苦しんでいた。

シャドウが示す「血濡れの道」への感銘

  • そんな中、連続殺人鬼「ジャック・ザ・リッパー」として暗躍するシャドウが、自分たちを窮地から救い、強大な夜剣の貴族たちを容赦なく虐殺していく姿を目撃する。
  • さらに地下闘技場での戦いの最終局面において、彼がただの殺人鬼ではなく、教団の人体兵器にされていた少女ミリアを救済する場面を目の当たりにした。
  • 自ら血濡れの道を歩みながらも、その道の途中で人々を救っていく彼の姿を見たクリスティーナは、その血濡れの道は私には輝いて見えると深く感銘を受けた。

二代目「ジャック・ザ・リッパー」の継承と覚悟

  • 闘技場での惨劇を経て夜剣が実質的に壊滅した後も、生き残ったエライザは次期当主たちを集め、「十三の夜剣」を再結成しようと企てていた。
  • そこへ、血濡れのピエロの衣装を身に纏ったクリスティーナが現れる。
  • 彼女はシャドウの行動から、この腐った国で正義の刃は役に立たないこと、悪を断つには更なる悪が必要であるという過酷な使命を悟り、自らが彼の後を継ぐ決意を固めていた。

まとめ
命乞いをするエライザの言葉に一切耳を貸さず、躊躇なく彼女を刺殺したクリスティーナは、「我が名はジャック・ザ・リッパー。悪の刃で悪を断つ者」と宣言する。無力な正義を捨て、自らが更なる悪となってこの国の根深い腐敗を断ち切るという、彼女の壮絶な覚悟がここに完了したのである。

陰実17巻レビュー
陰実 全巻まとめ
陰実19巻レビュー

登場キャラクター

シャドウガーデン

シド・カゲノー

シャドウガーデンのボスであり、ジャック・ザ・リッパーやシャドウとしての裏の顔を持つ人物である。ミドガル学園の生徒としてカナデやクリスティーナと交流している。デルタやアルファからは主として絶対の忠誠を受けている。

・所属組織、地位や役職
 シャドウガーデンのボス。ミドガル学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 ホープ家別邸の襲撃時に窓から逃亡したように見せかけ、ジャック・ザ・リッパーとして襲撃者を皆殺しにした。残されたカードの暗号を解読し、ホワイト伯爵が次の標的であることをアレクシアたちに提示した。地下闘技場ではミリアの異形の力を削ぎ落として彼女を元の姿に戻した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーとして十三の夜剣を壊滅させ、その行動は伝説として語られるようになった。自身の行動が後世に映画化されると妄想して満足している。

デルタ

シャドウガーデンの七陰の一人であり、獣人の少女である。シド(ボス)に強く懐いており、命令よりも自身の本能や直感に従って行動する傾向がある。

・所属組織、地位や役職
 シャドウガーデン。七陰。
・物語内での具体的な行動や成果
 アルファの命令でゼータを探すため、白の邸宅周辺にいたシドの前に現れた。シドに飛びつこうとしたが、学園関係者の前では控えるよう注意を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 パイという部下を連れて行動している。シドとの間に一万人の子供を作る計画を企てている。

パイ

デルタの部下として行動する獣人の少女である。猫アレルギーを持つが、嗅覚はデルタよりも優れている。デルタとシドに対して強い服従の姿勢を見せる。

・所属組織、地位や役職
 シャドウガーデン。デルタの部下。
・物語内での具体的な行動や成果
 ゼータ捜索の過程で謎の地下水道を発見し、ショートカットとして利用した。シドの前で服従のポーズをとって挨拶した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 デルタと共に世界征服の計画を立てている。

アルファ

シャドウガーデンのメンバーであり、シド(シャドウ)の部下である。ミリアが教団に奪われたことに責任を感じている。

・所属組織、地位や役職
 シャドウガーデン。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下闘技場で倒れたミリアを受け止めた。シャドウに対して事後処理を任せるよう返答した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 シャドウが部下のミスの後始末をするために動いていたと解釈し、彼の行動を優しさとして受け止めている。

ミドガル王国・ホープ家

カナデ

ミドガル学園の生徒であり、クリスティーナやシドの友人である。感情が顔に出やすく、危機的状況でも騒がしい振る舞いを見せる。

・所属組織、地位や役職
 ミドガル学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 エライザの側近に関する噂を聞いて自分が狙われると怯え、ホープ家別邸に宿泊した。襲撃時に逃亡したシドを裏切り者と罵り、彼が戻ってきた際に叩き続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 無意識のうちに敵を倒したと錯覚したが、実際にはジャック・ザ・リッパーの仕業であった。額にカードが貼り付いた際、自分が死ぬと思い込んで遺言を残そうとした。

クリスティーナ・ホープ

ホープ家の令嬢であり、ミドガル学園の生徒である。正義感から夜剣の悪行を告発しようとしていたが、権力の前に無力感を抱いている。

・所属組織、地位や役職
 ホープ家の令嬢。ミドガル学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 別邸への襲撃時にカナデを守るため剣を取って戦った。ジャック・ザ・リッパーが残したカードの暗号に気づき、シドと共にその意味を推測した。エライザの屋敷に現れて彼女を刺殺した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 正義の無力さを悟り、悪を断つには更なる悪が必要だと確信した。自ら二代目のジャック・ザ・リッパーを名乗り、新たな殺人鬼として行動を開始した。

アレクシア王女

ミドガル王国の王女であり、ミドガル王の娘である。クリスティーナの友人であり、教団や夜剣の悪行に対して強い警戒心を持っている。

・所属組織、地位や役職
 ミドガル王国・王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 父王に教団の裏事情を問い質し、独自の判断で行動する許可を得た。ジャック・ザ・リッパーの事件を追ってホープ家別邸に宿泊し、その後クリスティーナたちと共に白の邸宅の地下通路へ侵入した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 闘技場での戦いを通じてジャック・ザ・リッパーの異常な戦闘力を目撃した。彼の正体がシャドウであることに気づき、自分たちではシャドウガーデンに敵わないと判断して撤退した。

ミドガル王

ミドガル王国の国王であり、アレクシアの父親である。教団の強大な力を恐れ、表立った対立を避けている。

・所属組織、地位や役職
 ミドガル王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 アレクシアの問いに対して、国が教団に対抗できない現状を説明した。シャドウガーデンの台頭によって教団が焦っている状況を指摘した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 教団とシャドウガーデンのどちらを選ぶか、国家としての選択を迫られている状況にある。

十三の夜剣・ダクアイカン家

デクノ・ボウ

オヤノ・ボウ伯爵の息子であり、エライザの側近である。シドを殴った過去がある。

・所属組織、地位や役職
 十三の夜剣の関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
 父親と共にホープ家別邸を襲撃したが、ジャック・ザ・リッパーの圧倒的な力に戦意を喪失した。父親に見捨てられたため、ジャック・ザ・リッパーに見逃しを求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーの拳を受けて吹き飛ばされ、壁に激突して死亡した。

オヤノ・ボウ伯爵

デクノ・ボウの父親であり、十三の夜剣のメンバーである。目的のためには自身の息子すら犠牲にする冷酷な性格の持ち主である。

・所属組織、地位や役職
 十三の夜剣。伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 暗殺者や精鋭部隊を率いてクリスティーナたちを襲撃した。ジャック・ザ・リッパーに対して報酬の増額による交渉を試み、さらに自身の背後にある強大な組織の存在を口にして脅迫した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 脅迫の途中でジャック・ザ・リッパーが放ったトランプが突き刺さり、死亡した。

シノビ子爵

十三の夜剣のメンバーである。ホープ家襲撃の際、包囲部隊の一部を率いていた。

・所属組織、地位や役職
 十三の夜剣。子爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ホープ家別邸の襲撃に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーによって殺害され、生首の状態でオヤノ・ボウたちの前に提示された。

ジェット侯爵

十三の夜剣のメンバーである。ホープ家別邸の包囲を担当していた。

・所属組織、地位や役職
 十三の夜剣。侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 ホープ家別邸を包囲する精鋭部隊を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーによって部隊ごと全滅させられ、自身も生首にされた。

ホワイト伯爵

十三の夜剣の上位メンバーであり、白の邸宅の主である。財力と権力に強い自信を持ち、他者を見下す傾向がある。

・所属組織、地位や役職
 十三の夜剣・上位メンバー。伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下闘技場に結界を張り、多数の魔剣士を雇ってジャック・ザ・リッパーを抹殺しようと目論んだ。雇った魔剣士たちが次々と殺されるのを見て狼狽し、結界の解除を叫んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 結界を無視して現れたジャック・ザ・リッパーのトランプによって殺害された。

十三の夜剣

ミドガル王国の権力を握る腐敗した貴族の集団である。ディアボロス教団と結託して王国を裏から支配している。

・所属組織、地位や役職
 ミドガル王国の貴族集団。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジャック・ザ・リッパーを地下闘技場に誘い込み、結界と多数の魔剣士を用いて抹殺を試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーの襲撃によって一夜にして七人が死亡し、組織として壊滅状態に陥った。

バトラー伯爵

十三の夜剣のメンバーであり、自身も魔剣士としての見識を持つ人物である。

・所属組織、地位や役職
 十三の夜剣。伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 闘技場で白狼が逃亡した際、彼らがジャック・ザ・リッパーの異常性に気づいたからだと分析した。魔剣士を一人ずつ出さずに一斉に戦わせるべきだとホワイト伯爵に忠告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーによって額にトランプを突き刺され、死亡した。

ダクアイカン侯爵

十三の夜剣のメンバーであり、エライザの父親である。教団内のロキ派と交渉し、助っ人を手配した。

・所属組織、地位や役職
 十三の夜剣。侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
 実験体227番ミリアを教団から借り受け、闘技場に投入した。他の夜剣メンバーが殺害された後、地面に這いつくばって命乞いをした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーが放ったトランプによって殺害された。

エライザ・ダクアイカン

ダクアイカン侯爵の娘であり、ミドガル学園の生徒である。カナデを敵視している。

・所属組織、地位や役職
 ダクアイカン侯爵の娘。
・物語内での具体的な行動や成果
 父親の死後、離れていく貴族たちや使用人に対して激怒した。次期当主たちを集めて十三の夜剣を再結成しようと企てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 二代目のジャック・ザ・リッパーを名乗ったクリスティーナによって胸を剣で刺され、殺害された。

雇われた魔剣士・暗殺者・武芸者

剣鬼

東方の鎖国国家ワコクから来た武芸者である。極限まで研ぎ澄まされた反射神経と集中力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ワコクの武芸者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ホープ家別邸にて、最後の切り札としてオヤノ・ボウに呼び出された。ジャック・ザ・リッパーの魔力弾を回避して勝負を挑んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 勝負を宣言した直後、ジャック・ザ・リッパーによって一撃で首を吹き飛ばされ、死亡した。

挽肉のブッチャー

都市国家スパルタンのコロッセウムで二百戦無敗を誇る魔剣闘士である。剛剣で相手を両断する戦い方を得意とする。

・所属組織、地位や役職
 魔剣闘士。
・物語内での具体的な行動や成果
 第一の刺客として地下闘技場に送り込まれた。観客を沸かせるために床を粉砕するデモンストレーションを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーの蹴り一発で結界に叩きつけられ、瞬殺された。

伝説の傭兵団「白狼」の隊長格

ベガルタ内乱で名を上げた傭兵団の隊長格である。ブッチャー以上の実力を持つとされる。

・所属組織、地位や役職
 傭兵団「白狼」の隊長格。
・物語内での具体的な行動や成果
 第二の刺客として闘技場に呼ばれたが、ジャック・ザ・リッパーの危険性を察知して試合を放棄した。金持ちの見世物になって死ぬ気はないと言い放ち、撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 夜剣たちに対して、生きて帰れると思っている方が哀れだと警告を残した。

傭兵団「白狼」

ベガルタ内乱で活躍した伝説の三人組傭兵団である。

・所属組織、地位や役職
 傭兵団。
・物語内での具体的な行動や成果
 隊長格の判断に従い、ジャック・ザ・リッパーとの戦闘を回避した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘を行わずに地下闘技場から撤退した。

毒針の貴公子

毒を塗った短刀を扱う暗殺者である。

・所属組織、地位や役職
 暗殺者。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下闘技場に刺客として投入された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーによって一瞬で倒された。

混沌の暴虐

ブシン祭で残虐に相手を殺し、会場をパニックに陥れた経歴を持つ男である。

・所属組織、地位や役職
 魔剣士。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下闘技場に刺客として投入された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーによって一瞬で倒された。

都市国家群の悪鬼

かつては最強の兵として名を馳せたが、味方もろとも全滅させた過去を持つ戦士である。

・所属組織、地位や役職
 魔剣士。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下闘技場に刺客として投入された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーによって一方的に嬲り殺しにされた。

無法都市の伝説

証拠を残さず一瞬でターゲットを消す暗殺者である。

・所属組織、地位や役職
 暗殺者。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下闘技場に刺客として投入された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジャック・ザ・リッパーによって一方的に嬲り殺しにされた。

魔剣士たち

ホワイト伯爵によって大金で集められた百人以上の戦士や暗殺者たちである。

・所属組織、地位や役職
 雇われた戦闘員。
・物語内での具体的な行動や成果
 地下闘技場に集められ、ジャック・ザ・リッパーの抹殺を命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 次々とジャック・ザ・リッパーに虐殺され、残った者たちも恐怖のあまり戦わずに逃亡した。

ディアボロス教団

実験体227番 ミリア

ディアボロス教団によって生み出された人体兵器である。かつてシャドウガーデンの隙を突かれて教団に連れ去られた過去を持つ。

・所属組織、地位や役職
 ディアボロス教団。実験体。
・物語内での具体的な行動や成果
 ダクアイカン侯爵によって地下闘技場に投入され、ジャック・ザ・リッパーに襲い掛かった。無数の棘を伸ばして攻撃を仕掛けたが、シャドウの魔力を流し込まれて異形の力を削ぎ落とされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 シャドウによって本来の少女の姿に戻された。父親の形見である短剣を握りしめ、言葉を残して力尽きた。

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展開まとめ

Episode.70

夜のカードゲームとカナデの怯え

カナデは、シドがデクノ・ボウに殴られたという噂を聞き、相手がエライザの側近であることから大騒ぎしていた。さらに、デクノ・ボウの父であるオヤノ・ボウ伯爵が犯罪組織と関係しているという噂まで口にし、自分も狙われるのではないかと怯えていた。

クリスティーナは、屋敷の警備は万全であり、危険は低いと冷静に説明したうえで、いざとなれば自分とシドが守ると告げた。しかしカナデは、それを「シドを盾にする」という意味に受け取り、シドから即座に否定されていた。

その後も三人はババ抜きを続けていたが、カナデは表情に感情が出やすく、連敗を重ねていた。シドは三人だけでババ抜きをして楽しめるのか疑問を口にしたものの、カナデは非常に盛り上がっていた。

就寝直後の異変

夜更けになり、クリスティーナは就寝を提案した。しかしカナデはまだ遊ぶ気満々で、恋愛話まで始めようとしていたものの、結局は真っ先に眠り込んでしまった。

その後、激しい寝息に悩まされていたクリスティーナは、護衛がノックもなく扉を開けたことに違和感を覚えた。さらにシドがベッドにいることを確認した直後、覆面姿の襲撃者たちが部屋へ突入した。

クリスティーナは即座に二人へ警告し、斬りかかってきた襲撃者の一人を剣で負傷させた。襲撃者たちは動揺しつつも襲撃を継続した。

シドの離脱と襲撃者の正体

寝起きのカナデは混乱しながらも、自身が危険な状況に置かれていることを理解していた。一方シドは、盾にされるのは御免だと言い残し、窓から外へ飛び降りて離脱した。

カナデは逃げたシドを裏切り者呼ばわりして叫んでいたが、クリスティーナは敵が分散したことで状況が有利になったと判断し、内心ではシドの行動を評価していた。

さらにクリスティーナは、襲撃者たちの声や特徴から、デクノ・ボウおよびオヤノ・ボウ伯爵の関係者である可能性を指摘した。しかし襲撃者側は正体を認めず、まずカナデを殺害するよう指示を出した。

カナデの反撃

襲撃者に狙われたカナデは激しく取り乱していたが、接近してきた敵を無意識のうちに斬り伏せた。複数の襲撃者が一瞬で倒されたことで、その場にいた者たちは驚愕していた。

カナデ自身も、自分が敵を倒した事実を理解できず、呆然としていた。

血濡れのピエロの出現

襲撃者たちを倒した直後、カナデは自分こそ最強だと得意げになっていた。しかしクリスティーナは、カナデの剣に血が付着していないことへ気付き、実際に敵を斬ったのは別人だと指摘した。

その直後、ベッドのシーツの中から不気味なピエロ姿の人物が現れた。襲撃者たちは、その存在を「血濡れのピエロ」ジャック・ザ・リッパーだと認識し、狙い澄ましたような登場に動揺していた。

さらに襲撃者側は、ホープ家が暗殺者を雇ったのではないかと疑いを向けたが、クリスティーナはそれを即座に否定した。

交渉を試みる襲撃者たち

襲撃者たちは、ジャック・ザ・リッパーの実力を見て正面戦闘は不利と判断し、交渉へ切り替えた。ホープ家から受け取った報酬の三倍を支払う代わりに、この場から手を引くよう提案したのである。

また、館の外にはシノビ子爵とジェット侯爵が率いる精鋭部隊が包囲しているとも語り、多勢に無勢であることを強調していた。

しかしジャック・ザ・リッパーは、その会話の最中に立ち上がり、シノビ子爵とジェット侯爵の生首を持って姿を現した。包囲部隊が既に壊滅している事実を知った襲撃者たちは恐怖に包まれ、逃亡を考え始めていた。

剣鬼の登場

追い詰められた襲撃者側は、最後の切り札として「剣鬼」を呼び出した。

現れた剣鬼は、遥か東方の鎖国国家ワコクから来た武芸者であり、超一流の実力者として語られていた。さらに九人の門弟を斬殺して破門された危険人物でもあった。

剣鬼は、ジャック・ザ・リッパーへ背を向けて逃げることを恥と断じ、戦いを挑んだ。一方オヤノ・ボウは、剣鬼が極限まで研ぎ澄まされた反射神経と集中力を持ち、「ゾーン」に入れば無敵だと説明していた。

ジャック・ザ・リッパーとの激突

ジャック・ザ・リッパーは、剣鬼へ向けて高速の魔力弾を放った。しかし剣鬼は、それを容易く回避し、自分にはあらゆる攻撃の気配が読めると豪語した。

そして剣鬼は「尋常に勝負」と宣言し、自ら攻勢へ移ろうとした。しかし次の瞬間、剣鬼の首は一撃で吹き飛ばされた。

あまりにも一方的な結末に、クリスティーナや襲撃者たちは言葉を失い、戦慄していた。

剣鬼敗北後の混乱

剣鬼が一瞬で討たれたことで、デクノ・ボウは完全に戦意を失い、オヤノ・ボウへ逃亡を訴えていた。しかしオヤノ・ボウは、息子すら盾として利用しようとし、ジャック・ザ・リッパーへ向けて「血を見たければこいつを殺せ」と言い放った。

さらに、自分たちの背後にはまだ巨大な勢力が控えていると脅迫し、自分を殺せば一生追われることになると語った。しかしその途中で、ジャック・ザ・リッパーが放ったトランプがオヤノ・ボウへ突き刺さり、オヤノ・ボウはそのまま倒れた。

デクノ・ボウの最期

父親を見捨てられたデクノ・ボウは、逆にジャック・ザ・リッパーへ親近感を抱き始めていた。「酷い親父だ」という言葉に同意し、自分は見逃してもらえるのではないかと期待していたのである。

しかし次の瞬間、ジャック・ザ・リッパーの拳がデクノ・ボウの顔面へ直撃した。デクノ・ボウは前回シドを殴った時と同様の軌道で吹き飛ばされ、天井や床へ叩きつけられながら壁へ激突し、大量の血を吐いて絶命した。

クリスティーナは、その光景を見て呆然としていた。

ジャック・ザ・リッパーへの問い

戦闘後、立ち去ろうとするジャック・ザ・リッパーへ、クリスティーナは呼び止めた。自分たちを助けた理由や、以前ゲーテの資料を届けた人物ではないのかを問い掛け、自分に何をさせたいのかを尋ねたのである。

しかしジャック・ザ・リッパーは答える代わりにトランプを投擲し、それがカナデの額へ刺さったように見えた。カナデはその場で倒れ込み、クリスティーナは慌てて抱き起こしながら必死に呼び掛けていた。

その間に、ジャック・ザ・リッパーは静かに姿を消した。

死を覚悟したカナデ

倒れたカナデは、自分はもう助からないと思い込み、クリスティーナへ謝罪していた。もっと皆で泊まり会をしたかったと弱々しく語り、死ぬ前にどうしても伝えたいことがあると言い出した。

そしてカナデは、逃げ出したシドを「裏切り者」と罵倒し、化けて出てでも「ボッコボコの刑」にすると絶叫した。

その直後、額のトランプが落下したことで、実際には刺さっておらず、髪に血糊付きのカードが貼り付いていただけだったことが判明した。クリスティーナも、それに気付き安堵していた。

戻ってきたシドとカナデの怒り

その後、窓からシドが何事もなかったかのように戻ってきた。シドは物陰に隠れていたため無事だったと軽く説明したが、カナデは激怒していた。

カナデは、こちらは地獄のような状況だったのだと叫びながら、シドへ馬乗りになって抗議した。さらに、自分たちはジャック・ザ・リッパーが現れなければ死んでいたと訴えていた。

一方シドは、逆にジャック・ザ・リッパーへ会ってみたかったと呑気な感想を口にしており、それを聞いたカナデは「ボッコボコの刑」を執行すると宣言し、シドを叩き続けていた。

カードに残された文字

クリスティーナは、カナデの額へ貼り付いていたカードを拾い上げ、そこに文字が書かれていることを二人へ見せた。

クリスティーナは、ジャック・ザ・リッパーがわざわざカードを残していった以上、自分たちへ何らかの伝言を伝えようとしていたのだと考えていた。そして、その内容には重要な意味が込められているはずだと推測しながら、カードに記された文章を見つめていた。

Episode.71

王族による教団への認識

アレクシアは、ダクアイカン家の裁判資料を確認した父王へ、夜剣とディアボロス教団の関与を問い質した。そして、自分も教団の存在を追っている以上、何か知っているなら教えてほしいと迫った。

ミドガル王は、アレクシアが既に教団の裏を知っていたことへ驚きつつも、王国側も近年の教団の動向を警戒していると認めた。しかし現在の国力では、千年以上生き続ける「ナイツ・オブ・ラウンズ」や、強化戦闘集団「チルドレン」を擁する教団へ正面から対抗できないと説明する。

さらに、これまで教団へ反抗した組織は全て潰されてきたと語り、国家ですら容易には逆らえない現状を明かした。

シャドウガーデンへの警戒

父王は、シャドウガーデン出現以降、教団側が焦りを見せているように感じると分析していた。シャドウガーデンは教団の戦力を削りながら急速に勢力を拡大しており、教団を終わらせる可能性を秘めているという。

だが同時に、シャドウが世界を支配する存在になる危険性もあるため、敵か味方か慎重に見極めている段階だと語った。

また、オリアナ王国がシャドウガーデン側へ付いた件についても触れ、ローズ・オリアナの行動の裏には常にシャドウが存在していたと指摘する。アレクシアも、ブシン祭でローズを逃がしたのがシャドウだったことを思い出し、オリアナが国を守るためシャドウ側へ付いたのだろうと推測した。

迫る戦争と国家の選択

父王は、教団側がベガルタ帝国を利用し、「聖教の異端討伐」を名目にオリアナへ侵攻しようとしていると説明した。季節が変わる頃には戦争が始まり、ミドガル王国も中立ではいられなくなるという。

そのため王国は、教団かシャドウガーデンか、どちらに付くのかを選ばねばならない状況へ追い込まれていた。

アレクシアのお泊まり会

場面は変わり、アレクシアは父王から外泊許可を得て、クリスティーナたちの元へ泊まりに来ていた。お菓子や新しいパジャマまで持参しており、カナデからはお泊まり会を楽しみにしていたのだろうとからかわれる。

一方シドは、朝までババ抜きをしようとはしゃぐカナデたちを見ながら、「地獄の始まりだ」と内心で絶望していた。

アレクシアは、昨夜の襲撃事件を理由に安全確保のためこの部屋へ来たと説明し、シドのベッドまで勝手に使用しようとする。シドは抵抗するが、アレクシアは床で寝るよう命じ、ハンカチを投げ渡した。

襲撃事件の真相とカードの写し

アレクシアは事件についてグレイ課長の見解を尋ねる。クリスティーナは、グレイがジャック・ザ・リッパーをホープ家の雇った暗殺者だと疑い、オヤノ・ボウたちは被害者扱いしていると説明した。

しかしカナデは、武装して襲ってきたのは相手側だったと不満を漏らす。クリスティーナも、ジャック・ザ・リッパーの正体が不明な以上、強く反論できないと苦い表情を見せた。

そんな中、シドはジャック・ザ・リッパーが残したカードの存在を思い出す。現物は押収されていたものの、クリスティーナは写しを保管しており、そこには幼い子供の落書きのような文字で、

「ほらふきのやけんたち
わるいひとはみなごろし
いつもかぞえるだけだけど
ときどきこうしてあそぶんだ」

と記されていた。

カードに隠された暗号

ジャック・ザ・リッパーが残したカードの意味を巡り、アレクシアたちは頭を悩ませていた。カナデは独自解釈で「夜剣を皆殺しにして遊ぶのが楽しい」という内容だと暴走気味に読み解くが、アレクシアから即座に否定される。

クリスティーナは、「夜剣を皆殺しにする」という部分は間違っていないかもしれないが、それだけではない気がすると考え込んでいた。

するとシドが、文章を縦読みできると指摘する。そこから浮かび上がったのは、「オショク・ホワイト伯爵」という名前だった。

ホワイト伯爵暗殺予告

クリスティーナは、ホワイト伯爵が夜剣の上位メンバーであり、王都外れにある「白の邸宅」の主だと説明する。シドはさらに、カードに使われていた「スペードの10」に注目した。

彼は、スペードが「冬」、数字が「週」を意味すると推理し、明日が冬の十週目の十日目に当たると説明する。そしてそこから、ジャック・ザ・リッパーは翌日にホワイト伯爵を狙うつもりなのだと結論づけた。

アレクシアは事前に対策できると喜び、シドを「ポチ」と呼びながら手柄を認める。一方カナデは、わざわざ予告してしまえば不利になるのではないかと疑問を抱いた。

それに対しシドは、ジャック・ザ・リッパーは常人には理解できないほど高度な知能で最適解を導き出しているのだろうと、妙に熱く語り始める。カナデからは「オタク特有の早口」と呆れられていた。

ジャック・ザ・リッパーへの複雑な感情

シドは、この情報を夜剣や騎士団へ伝えれば、ホープ家への疑いも晴れるはずだと提案する。しかしクリスティーナは、そうなればジャック・ザ・リッパーが危険に晒されると心配していた。

シドは「流石に今度は勝てず、すぐ殺される」と冷静に言うが、クリスティーナは彼が自分たちの力を借りず、一人で敵を殲滅したことを思い返す。その戦いぶりは常人離れした鮮やかなものだったと語り、彼は単なる殺人鬼ではないのではないかと感じ始めていた。

そんな中、カナデはシドが戦闘中に逃げ出した件を蒸し返し、「裏切者の目をしていた」と怨念混じりに責め立てる。シドは平謝りしながら、その場を収めようとした。

盗まれた壺と新たな謎

クリスティーナは、事件現場から壺が盗まれていたことも明かす。それは「ダビンチィの壺」と呼ばれる二億ゼニー級の美術品だったが、実際にはレプリカだった。

金銭目的なら本物の美術品が他にも存在したため、なぜ価値のないレプリカだけが盗まれたのか理解できないという。

アレクシアは「見ればレプリカだと分かる」と断言し、見抜けないのは教養のない貧乏人くらいだと言い放つ。その言葉に、背後ではカナデとシドが地味に傷ついていた。

クリスティーナは、この壺にもジャック・ザ・リッパーからの隠されたメッセージがあるはずだと推測し、一行は調査へ向かうことになる。

白の邸宅への潜入作戦

翌日、一行はホワイト伯爵の住む高級住宅街へ向かう。巨大な邸宅群を見たカナデは、その規模と豪華さへ大興奮していた。

アレクシアは、ホワイト伯爵へ既に予告状が届いている以上、屋敷には大量の護衛が集まっているはずだと説明する。しかし彼女はむしろ好都合だと笑い、ジャック・ザ・リッパーを自分たちの手で捕まえると宣言した。

そして最後に、アレクシアは自信満々に「真実はいつもひとつ」と決め台詞を放つのであった。

シドの異変と苦しい言い訳

ホワイト伯爵邸の周辺を調査していたアレクシアは、ジャック・ザ・リッパーが新たな暗号を残している可能性を語り始める。鏡で太陽光を反射させ、影から暗号を浮かび上がらせるなど、本格的な探偵のような推理を披露していた。

その様子を見ながら、シドは「探偵ごっこをしたいだけでは」と内心で呆れていたが、その直後に強力な魔力の気配を察知する。

動揺したシドは、カナデに「うんこしてくる」と唐突に言い放ち、その場を離脱した。カナデは、高級住宅街で排泄するという発想に衝撃を受けつつも、学園で「うんこ野郎」と呼ばれていたシドの過去を思い出して妙に納得する。

デルタとの再会

人目のない場所へ移動したシドの前へ、七陰のデルタが飛び込んできた。デルタは「ボス」に再会できたことを全力で喜び、勢いよく抱き着こうとする。

シドは「待て」「おすわり」と犬のように制止するが、デルタは我慢できずに飛びついてしまう。シドは、学園関係者と一緒にいる時だけは飛びつかないよう注意するが、デルタは「学園の人間を全員倒してからならいいのか」と危険な発想を口にしていた。

その後、シドはデルタがなぜここにいるのかを尋ねる。デルタは「朝起きて日向ぼっこして狩りをしてここに来た」と、あまりにも自由な一日を説明し、さらに「メス猫」を探していると明かした。

ゼータ捜索とアルファの命令

デルタは、アルファからゼータを探して来るよう命令されたと語る。理由は、ゼータの報告書に空白が多いかららしい。

デルタ自身は細かい事情を理解しておらず、「ボコボコにして連れ帰ればいい」と非常に物騒な認識をしていた。

さらにデルタは、シドからも微かに「メス猫の匂い」がすると言い、ゼータが最近どこかへ移動したらしいと説明する。シドは、あの事件以来ゼータとは会っていないことを思い返していた。

デルタの部下・パイ登場

その時、茂みから「パイ」と名乗る獣人少女が現れる。デルタは彼女を自分の部下だと紹介するが、シドは「デルタに部下がいる」という事実へ内心で衝撃を受けていた。

パイはシドを「デルタ様のボス」と認識し、服従ポーズを取りながら挨拶する。デルタは、パイは猫アレルギーだが鼻は優秀だと説明した。

パイは「最強の群れを作って世界征服する計画」を語り始めるが、デルタは慌てて止める。そして、ボスとの子供を一万人作る計画までしか考えていないと真顔で話す。

それを聞いたシドは、昔近所で飼われていたシベリアンハスキーを思い出し、完全に大型犬扱いしていた。

謎の地下水道

デルタはパイから妙な臭いを感じ取り、その理由を尋ねる。するとパイは、ショートカットのために「謎の地下水道」を通ってきたのだと説明する。

その地下水道は植え込みの中に隠されており、風の流れと匂いで発見したらしい。既に水道としては使われていないようだった。

シドは、その地下水道を何かに利用できるかもしれないと考え始める。

野グソ扱いされるシド

その頃、シドを待たされていたアレクシアとカナデは苛立っていた。

アレクシアは「ポチがどこまで行ったのか」と怒り、カナデは「シド君は野グソが長い」と勝手な決めつけをしていた。

アレクシアの来訪とホワイト伯爵の対応

「白の邸宅」では、使用人からアレクシア王女が表玄関へ来ているとの報告が入っていた。

ホワイト伯爵は、ジャック・ザ・リッパー事件への協力を申し出たアレクシアを面倒がり、騎士団と同様に敷地へ入れず門の外で待たせるよう命じる。王女であることを気にする使用人に対しても、ジャック・ザ・リッパーを仕留めた後で晩餐会へ招待し機嫌を取ればよいと冷淡に返していた。

その様子を門の外から見ていたシドは、ジャック・ザ・リッパー事件へ積極的に関わろうとするアレクシアへ「面倒だな」と呆れていた。

「十三の夜剣」の集結

館の内部では、ホワイト伯爵が「十三の夜剣」の面々を前に演説を始めていた。

彼は、集まった仲間たちへ感謝を述べる。しかし夜剣の一人は、これは組織全体の問題であり、残るメンバーも既に六名とダクアイカン侯爵だけになったと重苦しく語った。

ホワイト伯爵はダクアイカン侯爵の所在を尋ねる。すると、侯爵は現在「例の組織」と交渉中であり、フェンリル派ではなくロキ派から強力な助っ人を呼び寄せようとしていることが明かされる。

ジャック・ザ・リッパーへの警戒

一部の夜剣は、たかが一人の暗殺者に対して過剰戦力ではないかと疑問を呈する。

しかしホワイト伯爵は、これは夜剣創設以来最大の危機であり、過剰なくらいで丁度いいと断言した。

彼は、ホープ家にあれほど高度な暗殺者を雇う伝手はなく、シャドウガーデンもこんな回りくどい真似をする組織ではないと分析する。そして、ジャック・ザ・リッパーは純粋に「夜剣を殺すこと」を楽しんでいる異常者だと断定していた。

その上で、「十三の夜剣を舐めた代償を思い知らせる」と宣言する。

地下闘技場への誘導

ホワイト伯爵は既に準備は整っていると語り、集まった夜剣たちをある場所へ案内しようとする。

彼が案内した先は、「今夜ジャック・ザ・リッパーの墓場となる」という地下闘技場だった。

Episode.72

地下通路への侵入

アレクシアたちは、ホワイト邸の地下に存在する秘密通路へ侵入していた。

ホワイト邸には地下空間があるという噂を以前から聞いていたアレクシアは、追い払われたことで逆に「知られたくない秘密がある」と確信し、「夜剣がゴタついている間にホワイト邸へ侵入し、悪事の証拠を集める大作戦」を開始する。

しかしクリスティーナからは「つまり不法侵入ですよね」と冷静に指摘されていた。

シドへの疑念と迷探偵談義

薄暗い地下道を進みながら、カナデは「シドがいれば盾にできたのに」と弱音を漏らす。

一方クリスティーナは、ジャック・ザ・リッパーからのメッセージ解読や地下道発見など、全てを見抜いたシドの洞察力へ強い疑問を抱いていた。

彼女は、シドは陰の組織に薬を飲まされ若返った名探偵なのではないかと真剣に推理し始める。

さらにアレクシアも「名探偵コニャン」の愛読者だったことが判明し、二人は好きなシリーズについて盛り上がり始める。カナデは、そのオタク談義が一生終わらなさそうだと呆れていた。

隠された通気口の発見

周囲を探索していたカナデは、壁の隙間から光が漏れていることに気付く。

ブロックを外した先には通気口が隠されており、アレクシアは「スリムな人なら通れそう」と言って内部へ侵入した。

その先で三人が辿り着いたのは、巨大な地下闘技場だった。

アレクシアは、ホワイト伯爵が奴隷同士を戦わせて賭博をしているという噂を思い出し、それが真実だった可能性に驚愕する。

夜剣たちの迎撃準備

闘技場では既に夜剣たちが集結していた。

ホワイト伯爵は、控室に集めた百人以上の魔剣士たちを紹介し、「ベガルタの剣豪」や「都市国家群の悪鬼」、「無法都市の伝説」など、各地の強者を大量に雇い集めたことを明かす。

そして、ジャック・ザ・リッパーが現れた瞬間に闘技場の扉を封鎖し、アーティファクトによる結界を展開すると説明した。

一度ステージへ閉じ込められれば、全ての魔剣士を倒さない限り脱出不可能だという、完全な消耗戦を用意していたのである。

ホワイト伯爵は、ジャック・ザ・リッパーがジワジワと追い詰められ、無様に死んでいく様子を楽しむつもりでいた。

ジャック・ザ・リッパーの登場

ホワイト伯爵が勝利を確信して高笑いしていたその時、突然闘技場の灯りが破壊される。

闇の中へ姿を現したのは、ピエロ姿のジャック・ザ・リッパーだった。

ホワイト伯爵は、「よくぞ来た」と歓喜しながら、既に勝負の舞台は整っていると宣言する。

そしてジャック・ザ・リッパーへ、「試合に勝ち切るまで、そのステージからは降りられない」と言い放った。

第一の刺客「挽肉のブッチャー」

ホワイト伯爵は、ジャック・ザ・リッパーを倒すため最初の刺客として「挽肉のブッチャー」を送り込む。

彼は都市国家スパルタンの過酷なコロッセウムで二百戦無敗を誇る魔剣闘士であり、剛剣によって相手を両断し続けたことでその異名を得ていた。

ブッチャー自身も、控室には危険人物ばかりいたため強敵を想定していたが、相手がふざけたピエロ姿だったことで失望する。

さらに、魔剣闘士は勝つだけでは二流であり、観客を楽しませてこそ一流だと語り、派手な演出を交えながら戦闘を開始した。

瞬殺されたブッチャー

ブッチャーは巨大な一撃で床を粉砕し、その威力へ夜剣たちも驚愕する。

しかし次の瞬間、ジャック・ザ・リッパーは信じられない速度で接近し、蹴り一発でブッチャーを吹き飛ばした。

ブッチャーは断末魔を上げながら結界へ叩き付けられ、完全に敗北する。

その速さは、魔剣士である観客ですら「かろうじて目で追えた程度」と評するほど異常なものだった。

それでもホワイト伯爵は、「最初はこんなものだ」と強気な態度を崩さなかった。

「白狼」の撤退

続いてホワイト伯爵は、ベガルタ内乱で名を上げた伝説の傭兵団「白狼」を投入する。

一人一人がブッチャー以上の実力者だと紹介され、夜剣たちも三人による連携戦闘へ期待を寄せていた。

しかし、戦いが始まる直前、「白狼」の隊長格は突然「この戦いは割に合わない」と宣言し、試合を拒否する。

ホワイト伯爵は契約違反だと激怒するが、彼らは「戦場で死ぬ覚悟はあるが、金持ちの見世物として死ぬ気はない」と言い残し、その場を去ろうとした。

さらに彼らは、「生きて帰れると思っている貴様らの方が哀れだ」と夜剣たちへ警告する。

強者だけが察した恐怖

ホワイト伯爵は「白狼」を臆病者呼ばわりするが、魔剣士でもあるバトラー伯爵だけは違った見解を示す。

彼は「強者だからこそ逃げたのだ」と語り、彼らがジャック・ザ・リッパーから得体の知れない危険を感じ取ったのだと分析した。

さらに、悪いことは言わないから一人ずつではなく、一斉に叩き潰した方が良いと忠告する。

しかしホワイト伯爵は、その意見を聞き入れず、まだ何十人もの魔剣士が残っていると豪語した。

次々と消えていく魔剣士たち

その後もホワイト伯爵は、「毒針の貴公子」「混沌の暴虐」「都市国家群の悪鬼」「無法都市の伝説」など、数々の凶悪な魔剣士や暗殺者たちを次々に投入していく。

しかし、どの強者もジャック・ザ・リッパーの前では一瞬で敗北していった。

観客を恐怖へ陥れた殺人鬼も、百戦錬磨の兵士も、暗殺者も、全てが圧倒的な力によって瞬時に処理されていく。

闘技場には、ジャック・ザ・リッパーだけが静かに立ち続けていた。

観客たちの違和感

観客席では、カナデがジャック・ザ・リッパーの強さへ素直に驚いていた。

しかし夜剣は、ジャック・ザ・リッパーが「殺意を感じる敵だけを殺している」と分析し、ただ暴れているわけではないと見抜く。

さらにアレクシアも、夜剣が無駄な消耗を避け、相手の消耗を待つような立ち回りをしている点に違和感を覚えていた。

ジャック・ザ・リッパー自身も、「まだ本気すら出していない」と余裕を見せていた。

圧倒的な蹂躙

その後もジャック・ザ・リッパーは次々と刺客を虐殺していく。

大量の死体を積み上げた姿は、もはや一人の戦士ではなく災害そのものだった。

観客席では「次元が違う」と恐怖混じりの声が上がり、ホワイト伯爵も顔面蒼白になる。

彼は名簿を確認しながら、雇っていた者たちが全員殺された事実に震え上がっていた。

さらに、魔剣士たちは賞金目当てで集めただけの存在であり、自分たちまで命を賭ける気はないとして逃亡を始める。

ホワイト伯爵も「このままでは自分が殺される」と理解し、完全に取り乱していた。

ダクアイカン侯爵の登場

そんな混乱の中、突如ダクアイカン侯爵が姿を現す。

彼は、教団から借り受けた助っ人によって交渉が無事終了したと淡々と語り、ホワイト伯爵へ「ステージを見るように」と促した。

そこへ現れたのは、教団の人体実験によって生み出された異形の怪物だった。

その存在は「実験体227番 ミリア」と呼ばれていた。

実験体227番ミリア

ダクアイカン侯爵は、ミリアが元々フェンリル派の実験体であり、シャドウガーデンによってデータを回収・改良された存在だと説明する。

さらにフェンリル派とロキ派、本来なら交わることのない二つの派閥の技術を統合した結果、最強の人体兵器が完成したと語った。

その力は、かつての十倍以上にまで強化されていた。

アレクシアは、以前遭遇した存在との共通点を感じ取りながらも、その異様な力に警戒を強める。

ジャック・ザ・リッパーへの襲撃

ミリアは「我が命に従い、ジャック・ザ・リッパーを葬れ」という命令を受け、即座に襲い掛かる。

凄まじい一撃によって闘技場の結界すら破壊しかねないほどの衝撃が発生し、観客席も大きく揺れた。

ホワイト伯爵は、その威力を見て再び余裕を取り戻す。

そして「終わってみれば呆気ない」「やはり教団の技術は素晴らしい」と歓喜し、ジャック・ザ・リッパーは跡形もなく消し飛んだと思い込む。

しかし次の瞬間、ジャック・ザ・リッパーの姿は忽然と消えていた。

闘技場には、異形の怪物ミリアだけが立っていた。

Episode.73

ジャック・ザ・リッパーの生存

ミリアの一撃によってジャック・ザ・リッパーは消滅したかに見えた。

ホワイト伯爵は「肉片も残さぬ威力で粉砕した」と歓喜し、結界からは誰も逃げられないため、姿が消えたこと自体が死の証拠だと断言する。

さらに彼は、教団の研究成果こそ絶対だと誇り、バトラー伯爵へ勝ち誇ってみせた。

しかし振り返った瞬間、バトラー伯爵の額にはトランプが突き刺さっていた。

バトラー伯爵は「全力で潰すべきだった」と最後の警告を残して絶命する。

観客席への殺戮

次の瞬間、ジャック・ザ・リッパーは既に観客席へ現れていた。

ホワイト伯爵は、結界からどうやって脱出したのか理解できず狼狽する。

だがジャック・ザ・リッパーは答えを返すことなく、次々とトランプを投げ放ち、周囲の人間を容赦なく殺害していく。

逃げ惑う者たちも次々と額を撃ち抜かれ、闘技場は悲鳴に包まれた。

ホワイト伯爵は、自分が次の標的になると悟り、「死にたくない」と完全に取り乱す。

彼は怪物ミリアを解き放てば助かるかもしれないと考え、誰かに結界解除を命じながら叫び続ける。

しかし、その願いが届くことはなかった。

ホワイト伯爵自身もトランプによって貫かれ、無惨に殺害された。

ダクアイカン侯爵の末路

その場に残ったダクアイカン侯爵は、一度は余裕を見せながらも、自分だけが生き残った状況を理解する。

直後、彼は態度を一変させ、地面へ這いつくばって命乞いを始めた。

金でも謝罪でも何でも差し出すと懇願し、「自分だけは助けてくれ」と涙ながらに叫ぶ。

しかしジャック・ザ・リッパーは冷酷にトランプを投げ放ち、ダクアイカン侯爵も殺害した。

結界を無視する異常性

その後、ジャック・ザ・リッパーは何事もないかのように結界を通過し、闘技場内部へ戻っていく。

カナデは、結界を普通に行き来している光景へ驚愕していた。

クリスティーナは、彼にとって結界など存在しないも同然なのだろうと冷静に分析する。

さらに夜剣たちの最期についても、「みっともないだけだった」と切り捨てた。

一方アレクシアは、問題はここからだと警戒を強める。

彼女は、ジャック・ザ・リッパーがミリアをどう扱うつもりなのか注視していた。

ミリアの暴走

ミリアはさらに異形化を進め、全身から無数の棘を伸ばし始める。

その棘は一斉にジャック・ザ・リッパーへ襲い掛かり、彼の身体を貫いた。

カナデは、なぜ避けなかったのかと悲鳴を上げ、ジャック・ザ・リッパーが潰されたと思い込む。

しかしクリスティーナは「まだだ」と断言し、アレクシアも同意する。

二人は、あの程度で終わる相手ではないと確信していた。

シャドウの登場

アレクシアは、闘技場に満ち始めた青紫色の膨大な魔力を感じ取り、その正体へ確信を抱いていた。

彼女は、この魔力を自分たちは知っていると告げ、「彼が来た」と断言する。

その直後、ジャック・ザ・リッパーの正体だった黒衣の男が、本来の姿を現した。

そして自らを「シャドウ」と名乗り、「陰に潜み、陰を狩る者」と静かに宣言する。

ミリアとの激突

ミリアは再び無数の棘や触手を放ち、シャドウを押し潰そうとする。

しかしシャドウは、その猛攻を紙一重で回避しながら、剣で触手を次々と斬り裂いていった。

カナデは、怪物じみたミリアを相手に一方的な戦いを見せるシャドウへ驚愕する。

だがアレクシアは違和感を覚えていた。

シャドウほどの実力者なら一瞬で殺せるはずなのに、あえてそうしていないからである。

彼女は、まるで相手をいたぶっているように見えると困惑していた。

シャドウの真意

しかしクリスティーナは、シャドウの行動を冷静に見抜いていた。

彼は無意味に肉体を削いでいるのではなく、傷口へ自身の魔力を流し込んでいるのだと説明する。

その目的は、ミリアを怪物化させている力を削ぎ落とし、本来の姿へ戻すことだった。

実際、斬撃が重なるたび、ミリアの異形の肉体は少しずつ剥がれ落ち、人間だった頃の姿が露わになっていく。

本来の姿へ戻るミリア

シャドウが触手を切断していく中で、ミリアの肉体はさらに崩れ、少女としての姿が徐々に戻り始める。

アレクシアたちは、その変化を呆然と見守っていた。

だがミリア自身は、正気を取り戻しかけながらも、なおシャドウへ強い憎悪を向け続けていた。

シャドウはミリアにとって父親の仇であり、彼女は苦悶の中で何度も「シャドウ」と叫びながら襲い掛かる。

ミリアの執念

ミリアは異形の身体を引きずりながら短剣を握り締め、憎悪を剥き出しにしてシャドウへ突撃する。

シャドウはその攻撃を受け止めつつ、なおも斬撃を加え続けた。

それは単なる怪物討伐ではなく、暴走したミリアを本来の姿へ引き戻そうとする戦いだったのである。

ミリアの解放

激しい衝撃と共に、闘技場を覆っていた異形の魔力が霧散していく。

カナデは何が起こったのか理解できず混乱し、クリスティーナも凄まじい魔力の奔流に息を呑んでいた。

その中で、ミリアは短剣をシャドウへ突き付けたまま立ち尽くしていた。

シャドウはそんな彼女へ「見事だ」と静かに告げる。

ミリアが握っていた短剣には、「最愛の娘 ミリアへ」と刻まれていた。

それは父親から贈られた形見だったのである。

父の想いを思い出したミリアは、「パパ……」と涙を流し、その場で力尽きた。

アルファへの後始末

倒れ込むミリアを、駆け寄ったアルファが優しく抱き留める。

シャドウは「後始末を任せる」とだけ告げ、その場を去ろうとした。

アルファは静かに頷き、自分たちの落ち度を悔やむ。

かつて教団絡みの事件処理に気を取られた隙に、ミリアは連れ去られてしまっていたのである。

アルファは、シャドウが最初から部下の失敗の後始末をするために動いていたのだと察していた。

そして、叱責ではなく黙って救いに来るシャドウを「本当に優しい人」だと感じていた。

アレクシアたちの撤退

一連の光景を見ていたカナデは、自分たちの存在がシャドウガーデン側に完全に把握されていると気付き慌て出す。

アレクシアは冷静に、ここは大人しく立ち去るべきだと判断した。

自分たちではシャドウガーデンに太刀打ちできないと理解していたからである。

カナデもその意見へ素直に従い、その場を離れていった。

クリスティーナの決意

クリスティーナは、学園で「スズーキ」を名乗っていた男が、自ら血濡れの道を歩むと言っていたことを思い返していた。

その道の途中で、多くの人々を救っていくのだとしたら、その血濡れの道すら自分には輝いて見えると感じる。

そして彼女は、それこそがシャドウの使命なのだと理解し、何かを決意するように彼の背中を見つめていた。

ジャック・ザ・リッパー伝説

こうして王都を震撼させた「ジャック・ザ・リッパー」は、予告通り十三の夜剣を殺害し、姿を消した。

その正体については、暗殺者、悪魔、怨霊など様々な噂が飛び交い、中にはシャドウ説まで存在した。

しかし騎士団はそれを否定し、結局「正体不明の怪人」という扱いで事件は幕を閉じる。

厳戒態勢下で七人もの夜剣が死んだあの夜の出来事は、人々の間で伝説となっていった。

一方シド本人は、百年後には「ジャック・ザ・リッパー ~驚愕の正体~」のような映画が作られ、世界的大ヒットになるに違いないと妄想して満足感に浸っていた。

彼にとっては、「ジャック・ザ・リッパー」の名を歴史へ刻み込むという目的が完璧に達成されたのである。

事情聴取を受けるシド

その後、シドは騎士団から事情聴取を受けていた。

騎士は、ホワイト邸へ侵入しなかったシドの証言を評価しつつ、アレクシア王女の証言には困惑していた。

暗闇の中で見た「ジャック・ザ・リッパー=シャドウ」という話も、王女の見間違いか虚言だろうと考えていたのである。

シドは怯えた一般人を装いながら、その場を無難に切り抜けていった。

だが騎士は内心で、夜剣壊滅だけでなくミリアまでも敗北した事実に警戒を強めていた。

そして、「陰を狩る顎」計画への影響を懸念しながら、“ロキ”へ思考を巡らせていた。

エライザの破滅

場面はダグアイカン侯爵邸へ移る。

エライザは、父親の死後、貴族たちが一斉に掌を返した現実へ激怒していた。

屋敷は捜査のため接収され、自身も追い出されることになっていたのである。

さらに、これまで媚びへつらっていた貴族たちも、侯爵が死んだ途端に距離を置き始めた。

エライザは、自分が裁判でも勝てなくなる現実に耐え切れず、ヒステリックに叫び続けていた。

夜剣再結成を企むエライザ

父を失い没落寸前となったエライザだったが、それでも諦めてはいなかった。

彼女は他の夜剣一族も同じ気持ちのはずだと考え、次期当主たちを集めて「十三の夜剣」を再結成しようと企んでいた。

そのため使用人を呼び付けるが、屋敷には既に誰も残っていなかった。

使用人たちすら自分を見捨てて逃げたのだと理解し、エライザは苛立ちを募らせる。

しかしその直後、廊下の奥に人影を見つけた彼女は、まだ誰か残っていたのだと安心した。

ジャック・ザ・リッパーの再来

エライザが近付いてきた人影へ声を掛けた瞬間、その胸へ剣が突き刺さる。

突然の出来事に混乱したエライザは、自分を襲った存在が「ジャック・ザ・リッパー」であると気付き絶叫した。

怒りと恐怖に駆られた彼女は、ジャック・ザ・リッパーへ殴り掛かる。

その衝撃で仮面が外れ、隠されていた素顔が露わになった。

そこにいたのは、クリスティーナだった。

クリスティーナの覚悟

エライザは、クリスティーナこそジャック・ザ・リッパーだったのかと震えながら問い掛ける。

しかしクリスティーナは、自分は彼の後を継いだだけだと静かに否定した。

彼女は、シャドウが自分へ何を望んでいたのか、ようやく理解できたと語る。

シャドウは「血濡れの道」を見せ、この腐敗した国では正義の刃だけでは悪を裁けないのだと示していたのである。

悪を断つには、更なる悪が必要――。

それこそが、クリスティーナが辿り着いた結論だった。

エライザの最期

胸へ刺さった剣を抜こうとするクリスティーナへ、エライザは命乞いを始める。

金なら払う、今までのことも謝るから助けてほしいと泣き叫ぶが、クリスティーナは一切動じなかった。

そして彼女は躊躇なく剣を引き抜き、「我が名はジャック・ザ・リッパー。悪の刃で悪を断つ者」と名乗る。

その言葉と共にエライザは絶命し、クリスティーナは死体へ象徴のようにトランプを突き刺した。

こうして、新たな“ジャック・ザ・リッパー”が誕生したのである。

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