物語の概要
ジャンルおよび内容
本作は、地下迷宮(ダンジョン)を舞台に、冒険者ファミリア(眷族)たちが戦い、成長し、絆を深めていくファンタジーライトノベルである。外伝シリーズとして、本編とは別の視点から描かれる本作は、強剣士ヒロインと彼女を取り巻く仲間たちの活躍を中心に据えている。第6巻では、〈ロキ・ファミリア〉の女性陣が遠征任務を終え、都市外の港街メレンを訪れたことにより“束の間の休息”と“外部からの脅威”という二重構造の展開が描かれている。
主要キャラクター
- アイズ・ヴァレンシュタイン:本作の主人公格。〈ロキ・ファミリア〉所属の剣姫であり、高い剣技と“強さへの探求”を持つ。第6巻では都市外遠征および港街での任務において、戦士としてだけでなく仲間と共に過ごす時間を通じて内面の揺れも見せる。
- レフィーヤ・ウィリディス:エルフ族の魔導士で、アイズを慕いつつ共に冒険する若き仲間。港街での滞在において“束の間の安らぎ”を得るが、それと同時に外部からの暗い影に気づく役割を果たす。
- ティオネ/ティオナ:港街メレンに出現した〈カーリー・ファミリア〉の双子姉妹。闘争と殺戮の女神を主とするファミリア所属であり、二人の忌まわしき過去が今巻の一つの鍵となる。
物語の特徴
本作の魅力は、「遠征任務の成功直後」という比較的“平常からの逸脱”を起点に、冒険者たちが束の間の安息を享受しつつも、異邦からの影響・過去の因縁・ファミリア間の対立という“緊張”を同時に描く構造にある。特に第6巻では、女性キャラクター主体による視点が強まり、戦場だけではない“日常のひととき”と“脅威の間”を往還することで、読者にとって“休息編”と思わせておいて強烈な展開が待つというギャップが興味深い。他作品との差別化要素として、「女性剣士を主軸に置く」「ファミリアという組織視点を重視」「冒険だけでなく調査・因縁・外部勢力の絡みを併せ描く」という点が挙げられる。さらに、本編と並行する時間軸で進行するスピンオフであるため、本編読者に対して「裏側から世界を覗く楽しみ」を提供する点も大きな魅力である。
書籍情報
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝ソード・オラトリア6
(Is It Wrong to Try to Pick Up Girls in a Dungeon? On the Side: Sword Oratoria)
著者:大森藤ノ 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:SBクリエイティブ(GA文庫)
発売日:2016年6月15日
ISBN:978-4-7973-8846-6
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あらすじ・内容
「戦う乙女達の束の間の休息! 海水浴ならぬ湖水浴やー!」
【ロキ・ファミリア】都市外へ!
遠征を終えたアイズ達は迷宮(ダンジョン)第二の出入り口を探すため、港街メレンを訪れていた。
下心丸出しの主神に振り回されながらも青い湖に癒される少女達。
しかし異邦より現れた船が波乱をもたらす。
闘争と殺戮の女神が統べる【カーリー・ファミリア】。
ティオネとティオナの悪しき因縁。不穏な影が暗躍する港街で、双子の姉妹は忌々しき過去と対峙する。
「闘争の行く末──それが見たいのじゃ」
これは、もう一つの眷族の物語、
──【剣姫の神聖譚(ソード・オラトリア)】──
感想
遠征帰還直後の【ロキ・ファミリア】が港街メレンを訪れ、慰安のはずが【カーリー・ファミリア】との遭遇でティオネ/ティオナの過去と因縁に踏み込んでいく巻であった。
ステイタス更新でアマゾネス姉妹、ベートがLv.6へ到達し、街は祝賀ムードとなり。休息を兼ねてメレンへ向かうが、そこで不穏な気配が漂い始める。
ロキの“慰安”計画で湖へ。ここでアイズが泳げない(顔を水につけると沈む)という意外な弱点が露見w
ギャップとして微笑ましいが、水中戦への影響が少し心配である。
そんな時に、港に女神カーリー率いる一団が上陸。ティオネ/ティオナと明確な因縁が示され、緊張が一気に高まる。ここで都市最大派閥としてのロキ・ファミリアの連携と度量が垣間見えた。
ティオネの悪夢や回想から、幼少期の“儀式”(同胞同士の殺し合い)というアマゾネス一族の狂気が明かされる。明るく見えるティオナの笑顔の裏にある理由、そして二人の強い絆が胸に迫る。
レフィーヤが拉致され、姉妹は造船所での“儀式”に誘い出され。
ティオネは海上でアルガナ、ティオナは海蝕洞で師バーチェと激突。猛毒を“我慢”で押し切るティオナの闘いは凄烈で、思わず笑ってしまうほどの無茶も“彼女らしい”と思ってしまった。
姉は「妹の笑顔を守る」覚悟で臨界突破する。
食人花の攪乱を突破して本隊が突入。アイズの電光の救援、ガレスの無双、そしてフィンの一撃で戦況は決する。ここでの男性陣は本当に颯爽として格好良い。
特にフィンは“惚れさせに来ている”レベルでカッコいい。さすが勇者!
メレンの公表は“カーリーによる騒擾、食人花は偶発”で幕引き。真相には大人の事情がにじむが、読後は姉妹が過去を乗り越えて前へ進む感触が残った。
本巻はティオネ/ティオナという“凸凹姉妹”の因縁を濃密に描き、彼女たちが互いを守ってきた事実に強く心を揺さぶられた。ロキ・ファミリアの絆の強さも再確認できる良巻である。アイズの“弱点”が見えたのも収穫で、戦術面がやや不安な一方、次巻でのアイズやティオナとの特訓(ベル復帰も含めて)が楽しみ。
結論
アマゾネス姉妹が表紙どおり主役を張り、後半バトルはどちらも熱く。笑いどころもあり、最後はロキ組の男性陣が良いところを攫っていく締めも痛快であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
ティオネ・ヒリュテ
過酷な闘国育ちであり、過去の「儀式」が心に残る戦士である。妹ティオナを守る意志が核であり、因縁のアルガナに挑む決断を下した。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
湖上でアルガナと決闘。レフィーヤ拉致への対処に動き、最後はフィンの介入で生還。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ステイタス更新でLv.6到達。姉妹の「相互守護」を自覚。
ティオナ・ヒリュテ
闘国の出自を持つ拳闘型の戦士である。笑顔と軽やかさで場を変える資質を持つ。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
海蝕洞で師バーチェを撃破。とどめを拒み「冒険者」の選択を示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ステイタス更新でLv.6到達。レアスキル【大熱闘】を発現。
アイズ・ヴァレンシュタイン
寡言の剣士である。仲間救援と市民保護を優先する判断を下した。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
食人花群の殲滅と海蝕洞突入でティオナ救援。フリュネ戦で時間を稼いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
深層遠征で能力値が上昇。泳力不足が露見し訓練課題が明確化。
レフィーヤ・ウィリディス
成長途上の魔導士である。期待に応える意思を選び昇格保留を受け入れた。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・魔導士。
・物語内での具体的な行動や成果
拉致下で光信号により位置を通報。救出後は合流して後衛を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
Lv.4昇格資格を得る。魔力の伸びを優先し昇格延期を選択。
ロキ
軽妙な神である。全体の糸を捌き状況を統御した。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア主神。
・物語内での具体的な行動や成果
メレンでの調査分担を指示。ニョルズらの隠蔽を暴露し本隊出撃を号令。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
関係三者の共犯を立証。現地の主導権を確保。
リヴェリア・リヨス・アールヴ
理性的な大魔導士である。後衛統制と戦場機動を担った。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア幹部。エルフ。
・物語内での具体的な行動や成果
氷の長橋を展開し海上救援を実現。支部長対応と情報整理を実施。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
幹部として戦略面の影響力を維持。
フィン・ディムナ
小柄な団長である。決断と一撃で局面を収める指揮官である。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア団長。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
氷橋経由で海上へ介入し決闘を停止。アルガナを制圧しティオネを保護。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦線統帥の信頼を再確認。
ガレス・ランドロック
剛腕の重戦士である。肉体のみで戦場を切り開く。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア幹部。第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
海蝕洞へ落着し徒手で敵集団を制圧。レフィーヤを救出。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
近接制圧で救援線を確立。
ベート・ローガ
迅速な狼人である。月下での突破力が高い。
・所属組織、地位や役職
ロキ・ファミリア・第一級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
フリュネを撃破し港正面を安定化。アイズを救援に向かわせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
市街戦の要として機能。
ニョルズ
漁の神である。湖の治安維持を名目に禁じ手へ踏み込んだ。
・所属組織、地位や役職
ニョルズ・ファミリア主神。
・物語内での具体的な行動や成果
魔石粉混合の「粉」を配布し食人花を利用。ロキにより関与が露見。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ギルド処分対象外となり、労役転用で落とし前。
ロッド
漁師団の頭である。現場の実務を担った。
・所属組織、地位や役職
ニョルズ・ファミリア・ロッド漁師団頭目。
・物語内での具体的な行動や成果
海蝕洞を偵察。ニョルズの意図を補助。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
以後の暴走抑止を誓約。
ルバート
支部の責任者である。情報隠しと私腹肥やしが露見した。
・所属組織、地位や役職
ギルド・メレン支部長。
・物語内での具体的な行動や成果
議題を逸らし調査を妨害。証拠とともに拘束。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
公式処断の対象。
ボルグ(マードック家当主)
街側権力の代表である。外部勢力に強硬であった。
・所属組織、地位や役職
メレン街長。マードック家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
「粉」の製造と流通に関与。面談を拒否。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
隠蔽の実行役として露見。
カーリー
闘争を価値とする童女神である。殺し合いの「儀式」を推進した。
・所属組織、地位や役職
カーリー・ファミリア主神。
・物語内での具体的な行動や成果
姉妹決闘の場を用意しレフィーヤを拘束。敗北後に不干渉を迫られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
主力損耗により派閥の勢いが低下。
アルガナ
冷酷な剣闘型の指導者である。血吸収の呪詛で力を高める。
・所属組織、地位や役職
カーリー・ファミリア幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
湖上でティオネと決闘。フィンにより一撃で制圧。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
【カーリマー】の使用が露見。
バーチェ
毒付与の至近戦使いである。師としてティオナを鍛えた過去を持つ。
・所属組織、地位や役職
カーリー・ファミリア幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
全身毒膜【ヴェルグス】で圧殺を図るも、ティオナに敗北。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
近年Lv.6到達の風聞。戦線離脱。
イシュタル
歓楽街を支配する美神である。挟撃計画で混乱を拡大した。
・所属組織、地位や役職
イシュタル・ファミリア主神。
・物語内での具体的な行動や成果
カーリーと同盟し前哨戦を主導。食人花搬出線の仲介に関与。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
強化術と「隠し玉」の存在を示唆。
フリュネ・ジャミール
重装の戦闘娼婦である。剛力と装甲で前線を押す。
・所属組織、地位や役職
イシュタル・ファミリア幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
アイズと交戦し、後にベートに撃破され撤退。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
等級超過の強化痕跡が指摘。
春姫
加護の詠唱を担う巫女である。戦場全体を底上げした。
・所属組織、地位や役職
イシュタル・ファミリア所属。
・物語内での具体的な行動や成果
金色の光で味方を強化。食人花殲滅の下支え。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
行動に葛藤を抱えつつ支援を継続。
アミッド・テオサルティス
医療を司る治療師である。遠征の生還に寄与した。
・所属組織、地位や役職
ディアンケヒト・ファミリア治療院の医師。
・物語内での具体的な行動や成果
薬剤供給と経過確認を実施。ティオネに安眠用の天使草を手渡し。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
医療面の要として機能。
展開まとめ
プロローグ 真春の夜のユメ
揺れる視界と闘技場の幻影
ティオネは、激しい揺れと耳鳴りの中で夢を見ていた。牢獄のような石の部屋、鉄格子の奥の青空、そして闘技場の喧騒が交錯する光景であった。仮面をつけた自分が次々と現れる敵と戦い、白狼、牛人、竜、同族の少女までもを斬り伏せ、最後に立つのは常に己であった。観衆の歓声と異国の言葉が響く中、ティオネの両手は血に染まり、赤い空を見上げていた。
繰り返される戦いと虚無
女神の笑み、女戦士の嘲笑、歓呼と悲鳴が混じる中で、ティオネは同じ時を繰り返す夢に囚われていた。武器に映る自分の瞳が日に日に掠れていき、戦う意味を見失うような錯覚に包まれていた。そして視線を落とした時、血に染まった両手を見て恐怖と嫌悪を覚え、そこで夢が終わった。
覚醒と苛立ち
ティオネは悪夢から目を覚まし、暗い自室の天井を見上げて「最悪」と呟いた。まだ夜明け前であり、遠征を終えたばかりの身体には倦怠感が残っていた。静けさの中、突然枕が飛んできて彼女は素早く受け止めた。隣では妹ティオナが無邪気に寝息を立て、寝惚けながら放ったものだった。
姉妹の対比と微かな羨望
ティオネは苛立ちながら枕を投げ返すが、ティオナは眠ったまま反射的に弾き返した。その姿に呆れと羨望を覚え、彼女は妹を見つめて小さく溜息をついた。変わらぬ妹に対し、過去から抜け出せぬ自分を感じながら、ティオネは身支度を整え、静かにシャワーを浴びに部屋を出た。数分後、ティオナも同じ夢を見ながら寝言を漏らし、寝返りを打っていた。
一章 Quest Result & Next Quest
遠征帰還と安堵の朝
ロキ・ファミリアの冒険者たちは遠征を終えて本拠「黄昏の館」へ帰還した。全員が疲労困憊で寝台に倒れ込み、翌朝ようやく地上の光を浴びて帰還の実感を得た。エルフのレフィーヤは朝焼けを見つめ、アイズは剣の素振りを再開するまで静かな時間を過ごした。朝食では久々の温かな食事に笑顔が広がり、館は再び活気を取り戻した。
ステイタス更新とランクアップ
翌日、ロキの号令で眷族たちのステイタス更新が始まった。三十名以上の更新作業の中、ティオナとベートがLv.6へランクアップし歓喜した。ティオネも昇格を果たし、姉妹揃って成長を喜んだ。アイズは深層域での戦いを経て能力値が大幅に上昇していたが、レベルは据え置かれたままであった。ティオナの祝福を受け、アイズは微笑みながらその結果を共有した。
レフィーヤの成長と葛藤
一方、レフィーヤもまたランクアップの兆候を示し、Lv.4への昇格資格を得た。彼女は喜びと共に、これまでの戦いを思い返して自信を深めた。白兎ベル・クラネルに対する対抗心も燃え上がり、自らの努力を誇りに感じた。しかしロキは昇格を延期する提案をする。理由は、レフィーヤの魔力成長がまだ限界に達していないためであった。リヴェリアに次ぐ魔導士としての素質を活かすため、能力をさらに磨くべきと説いたのである。
選択と決意
ロキの助言を受け、レフィーヤは迷いながらも昇格を見送る決断をした。かつては重圧に怯えていたが、今はその期待に応えたいと願っていた。最強魔導士の後継者として、仲間たちを支える存在になるという目標が彼女を前へと押し出していた。ロキは次の遠征までは時間があると告げ、彼女は鍛錬を誓って部屋を後にした。
首脳陣の更新と現状分析
更新の最後にはフィン、ガレス、リヴェリアら首脳陣もステイタスを確認した。いずれもLv.6のままで、オッタルらLv.7の存在との差に歯がゆさを覚えた。ロキは彼らを見ながら、上級冒険者としての成長が容易でない現実を認識していた。深層での戦闘経験が分散したこともあり、効率的な成長は難しいと判断していた。
収支報告と神々の思惑
フィンたちは遠征の収支を確認し、魔剣や特効薬などの費用により大赤字となったことを共有した。ロキは宴会で労をねぎらうと告げ、話題は上層に出現したミノタウロスへ移った。フィンはフレイヤの関与を報告し、オッタルが姿を見せたと述べたが、ロキは追及を避けて無視を決めた。実際には彼女がフレイヤに弱みを握られており、密約の存在を隠していた。ロキの軽い態度を見送るフィンたちは、長年の付き合いからその嘘を見抜いていたのである。
遠征後処理と都市への展開
ステイタス更新を終えたロキ・ファミリアは街へ繰り出し、魔石換金と報告を実施した。フィンはギルドに深層域の未確認モンスター情報と昇格状況を提出し、50階層以下の遠征に警告を発した。換金と同時に戦利品や資材の精算、装備整備の段取りが進行した。
商談と価格交渉の攻勢
ラウル、アキ、ナルヴィ、リーネらは商会相手にドロップ品の買い取り価格を引き上げさせ、深層素材は鍛冶派閥へ契約通り引き渡した。ベートはフロスヴィルト製の銀靴代の返済を進め、リヴェリアは破損した杖を修理に出した。資金繰りの立て直しが各所で同時並行した。
治療院での補給とティオネの不調
アイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤはディアンケヒト・ファミリア治療院を訪れ、アミッドと再会した。提供された各種薬剤の効果で生還できた経緯を確認しつつ、今後の補充を依頼した。アミッドはティオネの不調を察知し、安眠用の天使草を密かに渡した。
神々の密談と敵計画の推定
ロキは高級酒場でディオニュソス、フィルヴィス、ヘルメス眷族らと会合した。闇派閥残党と極彩色のモンスター、怪人が関与する地下勢力の目的を整理し、穢れた精霊の地上召喚と第二のダンジョン出入口の存在に着目した。ロキは遠征先の実情から精霊の分身と宝玉の関係を説明し、都市破壊の危険性を共有した。都市内捜索は同盟側が担い、ロキにはヘルメスから別任務の伝言が託されることになった。
都市の熱狂と派閥の祝宴
ベート、ティオナ、ティオネのLv.6到達は神々の口伝で瞬時に広まり、オラリオは祝宴ムードに包まれた。豊穣の女主人ではロキ・ファミリアが打ち上げを行い、フィンら首脳陣は収支の悪化を承知で功労を労った。アイズはベルの無事帰還を聞いて安堵し、見舞いを思案した。
外出通達と次任務の示唆
宴席でロキは翌日の市外行きを宣言した。慰安旅行と称しつつ、フィンは真意を察し、団員は警戒を保った。行き先は都市近郊の港街であると示され、ヘルメス経由の依頼と第二出入口探索に連なる動きであることが示唆された。
二章 港街メレン
港街の概要と到着
メレンはオラリオ南西のロログ湖畔に位置し、海と通じる巨大汽水湖を玄関口とする交易拠点であった。海路で集まる輸入品がいったん滞留し、魔石製品などの輸出品もここから海へ出ていた。【ロキ・ファミリア】は予告通りメレンに到着し、ティオナやティオネは懐かしさを、アイズは港と湖の景観に静かな感嘆を覚えていた。
通りと市場の活況
大通りは異国の商人や漁師で賑わい、新鮮な海産物や工芸品が並んでいた。巨黒魚をはじめ港町ならではの食材が目を引き、少女たちは頬を上気させて歩を進めた。潮の香りと湖風は、アイズに微かな記憶の手触りを呼び起こしていた。
潮風と記憶、リヴェリアの旅志向
リヴェリアは潮の匂いを好み、里では得られない青い景色に心を動かされてきた過去を述懐していた。未知への探求心が冒険者としての資質を開いた経緯が示され、アイズはその背を追う未来を一瞬想像し、己の感情を自覚していた。
捜査方針決定の経緯
前夜の協議では、闇派閥や怪人の動向から「第二の出入り口」の存在が推定され、まず港街の調査が決まった。湖底にはかつて下層と繋がる穴があり、十五年前に塞がれていたが、近海で長大な黄緑色のモンスター目撃情報が上がり、食人花の線が浮上した。団長フィンは不審情報の確認を優先事項と定め、全会一致で調査行が成立した。
ギルド許可と女性限定編成
外出にはギルド許可が必要であったが、ロキは主神宛の申請で即日承認を得ていた。都市防衛の観点から戦力を全て外へ出さない取り決めがなされ、フィンらは残留、現地調査は女性構成員で実施する方針が一存で確定した。ベートらの反発をよそに、女性のみの編成で出立した。
港での光景と装備補給の意識
港は白帆が風に揺れ、水夫が積荷を運ぶ活況を見せていた。湖面は紺碧に輝き、水鳥の声と港風が穏やかな情景を形作った。一行は出航や荷下ろしの動線を観察しつつ、補給や整備の必要性を念頭に動いた。
ニョルズとの再会と漁業派閥
一行は漁網を担ぐ男神ニョルズと再会した。彼の【ニョルズ・ファミリア】はロログ湖から外洋まで漁を担い、メレンとオラリオに海産物を供給する派閥であった。リヴェリアは以前からの縁を示し、港運営と食料供給での重要性が確認された。
主神の耳打ちと不穏な予感
ロキはニョルズに小声で地理案内を求め、誰も知らない穴場を強調して情報提供を受けた。背負った大荷物の目的は明かされず、慰安を口実にした別意図の存在が示唆された。声の調子が上がるにつれ、アイズたちの嫌な予感も最高潮に達していった。
秘密の入り江の発見
ニョルズの案内情報に従い、一行は街外れの巨岩と樹木に隠れた白砂の入り江へ到達した。人目皆無の穴場であり、穏やかな波音と広い砂浜が広がっていた。
ロキの真意と水着強要
ロキは背負ってきた荷を広げ、用意していた水着を全員に着用させた。名目は「慰安と湖調査」であったが、実質は水着鑑賞であり、下心が露見していた。
団員たちの羞恥と応酬
猫人アキや多くの少女は羞恥に頬を染め、エルフ陣はロキを制止した。リヴェリアは岩陰で硬直し、ロキは押さえ込まれても懲りずに歓喜していた。
アイズの水着姿と周囲の賞賛
アイズは白のツーピースにパレオを巻き、控えめに頬を染めた。均整の取れた肢体に団員たちの称賛が集まり、当人は視線に戸惑い俯きがちであった。
湖水浴開始とアイズの弱点露見
湖水浴が始まる中、アイズは隅で所在なく立ち、ロキの指摘により「泳げない(カナヅチ)」事実が発覚した。仰向けの浮きは可能だが、顔を水につけた瞬間に沈む反射が確認された。
沈没と救出、原因推察
実地確認でアイズは即座に沈み、ティオナとレフィーヤが救出した。過去の水辺訓練の影響による条件反射と過緊張が要因と推測され、リヴェリア特訓の“トラウマ”が示唆された。
即席の泳法矯正訓練
ティオナ主導で手つなぎ練習を開始したが、手を離した途端にアイズは再び恐慌沈没した。力の抜き方と呼吸のリズムが課題であり、継続訓練の必要が明確となった。
仲間の支援と“ギャップ”
ティオネとレフィーヤは励まし、ティオナは密着支援で不安を軽減した。孤高の【剣姫】の“可憐な弱点”は一同に新鮮な驚きと保護欲を生み、場の空気は和やかな連帯に変わった。
調査準備と戦力配分
湖水浴後、【ロキ・ファミリア】は本来目的である湖底調査に移行した。ロキは事前調査済みとして湖峡寄りの地点を指示し、潜水と水中戦に長けるティオナ・ティオネに主任務を一任した。アイズは泳力の問題から後衛待機となり、レフィーヤらも地上支援に回った。
水中装備と能力の優位
ティオナとティオネは『精霊の護布』であるウンディーネ・クロスを水着型で装備し、発展アビリティ『潜水』と相まって水抵抗・水圧耐性・機動性を獲得した。ロキは迷宮珊瑚と怪海象の牙製の水中用短剣《コーベル・エッジ》を支給し、食人花出現時の即応体制を整えた。
湖底への進入とモンスター遭遇
視界の良いロログ湖を潜航中、レイダーフィッシュ等の襲撃を受けるも、姉妹は水中でも地上同等の機動で制圧した。護布の効果により長時間の潜水継続も可能であった。
湖底大穴の実態と封印
最深部付近で全長十M超の白亜の大蓋を確認した。素材は白聖石または白剛石と推定され、その内部には『海の覇王』リヴァイアサンの黒骨が組み込まれていた。これは過去の討伐戦利品を転用した『海竜の封印(リヴァイアサン・シール)』であり、怪物忌避の効果により封印周辺にモンスターの気配は皆無で、損傷や抜け道も認められなかった。
方針転換と新たな反応
封印の健在を受け、広域の別経路探索が議題となる中、ティオネが上方域に黄緑色の長大な体躯を二体視認。食人花と断定し急行した。上層には複数の船が航行中で、戦闘は湖面直下に移った。
湖上危機と“未知の斬撃”
食人花は進路上のガレオン船に触手を撃ち込み船体を傾けたが、直後に船上から跳躍した黒影が曲刀で頭部を一閃し、瞬殺した。ティオナ・ティオネは唖然とし、岸のアイズらも支援詠唱を開始する寸前の出来事であった。
異邦勢力の出現
斬撃者は漁船へ軽やかに着地し、アマゾネスの言語で発声。ティオナがその女戦士を「バーチェ」と認識した。続けてガレオン船の甲板には褐色の女戦士団と、幼げながら威圧的な気配を纏う幼女神が現れた。ティオネはその女神を「カーリー」と呼称し、異邦の神とアマゾネス勢力の関与が明確となった。
三章 女戦士の国
上陸と緊張の対峙
女戦士の意匠を纏う巨大ガレオン船が入港し、幼い仮面の女神カーリーに率いられたアマゾネス達が上陸した。ティオネとティオナは急行し、港で一触即発の対峙となった。カーリーは入港許可証を示し「観光」と主張したが、ティオネは強く否定した。
未知の強者の気配
アイズはカーリーの近侍たる砂色の髪の姉妹に第一級冒険者級の圧を感知した。彼女らは食人花を瞬殺した実力者であり、都市外でLV.6相当へ到達した可能性が示唆された。
挑発と応酬
カーリーはティオネ姉妹の容姿に軽口を叩き、ロキとも舌戦を交えた。最後に「また会おう」と言い残し、一団は港を去った。ティオネは強い嫌悪を露わにし、過去の因縁の深さが明確となった。
女戦士の国テルスキュラ
夜、宿の広間でロキとリヴェリアが説明した。カーリー・ファミリアは半島国家テルスキュラの派閥であり、男子禁制に近い女戦士の国である。外界への情報は限定的だが、国力は突出し、闘争と修練が日常であると語られた。
力の源泉と“儀式”
ダンジョンなき外界での昇格理由として、闘技場での“儀式”――モンスターのみならずアマゾネス同士の命懸けの闘争――が挙げられた。また頭領姉妹アルガナとバーチェが近年LV.6に到達したとの風聞も示された。
ティオナ・ティオネの過去
ロキはティオナとティオネが五年前、カーリー派から改宗し加入した経緯を明かした。勧誘時、ティオネは「同胞を数え切れぬほど殺してきた」と語っており、姉妹の明るさの裏に過酷な出自が横たわっていることが示された。
バルコニーの口論
港街を望むバルコニーで、ティオネは「戦いのない場所にカーリーが来るはずがない」と怒りを露わにし、楽天的に振る舞うティオナと激しく口論した。最終的にティオネは広間を飛び出し、姉妹は実質的に喧嘩別れとなった。
アイズとティオネのすれ違い
追ってきたアイズは不器用ながら寄り添おうとしたが、ティオネは「自分のことを話さずに詮索するのはずるい」と突き放した。アイズは謝罪し、ティオネは自己嫌悪を抱えたまま空き部屋に身を投げ出し、疲労と共に眠りへ沈んだ。
テルスキュラの出自
ティオネとティオナは陸の孤島テルスキュラで生誕し、女神の『恩恵』を受けた眷属として育った。喋る前に怪物の殺し方を教え込まれ、稚児の頃から闘技場での『儀式』=殺し合いに放り込まれる環境であった。
戦闘の日常と心の綻び
当初ティオネは生存本能と種族性に従い戦いを疑わなかったが、同胞アマゾネスとの殺し合いが常態化すると違和感が芽生えた。返り血の感覚と断末魔が手と耳に残り、冷水で身を洗う夜が増えた。石部屋の「姉代わり」の年長少女の存在が唯一の温もりであり、同室同士は戦わないという暗黙の法則に安堵していたが、五歳の誕生日にその信頼が崩れる兆しを迎えた。
姉妹の現在地と内面
メレン滞在の夜、ティオネは過去の悪夢に苛まれ、無言で寄り添って眠るティオナの気配にかつての二人だけの時間を重ねた。翌朝は会話を避けて部屋を出るなど、姉妹の心は揺れていた。
情報収集(住民サイド)
アイズとレフィーヤらはメレン市中で聞き込みを行い、湖と近海は近年おおむね平穏で、食人花は住民にとって未知の存在である事実を得た。通常なら甚大被害をもたらすはずの怪物出没と「治安の良さ」に矛盾が生じていた。
情報収集(排水路の経路検証)
アキとリーネはオラリオ側排出口を調査し、精製金属の柵が厳重で破壊痕もないことを確認した。よって「都市側から流下して湖に達した」線は近時点では否定された。
情報収集(ニョルズ側の見立て)
ロキは【ニョルズ・ファミリア】本拠でニョルズから聴取した。近年メレンは平穏だったが、食人花襲撃で久々に冷気が走ったこと、支部ギルドとは税や介入を巡る対立が続いていることが示された。
情報収集(ギルド支部の態度と構造)
リヴェリアは支部長ルバートと面談したが、食人花の新種情報共有は「なし」と突っぱねられ、対応優先は「異国アマゾネスの統制」とされた。背景として、メレンはギルドと街側で自治権が二分され、港の中立性と利害複雑化により強権行使が難しい構造であった。かつて海洋神の大派閥が封印点検と海上治安を担い、今は撤収済みであることも整理された。
情報収集(街当主マードック家)
アリシアとナルヴィはマードック家当主ボルグに接触したが、ギルド寄りと見なされ面談は拒否された。街側と支部の不和は根深く、街当主も強硬姿勢であった。
漁港への合流と昼食
アイズとレフィーヤの班は聞き込みを中断し漁港へ向かい、ティオナ・ティオネら休憩中の団員と合流した。漁港は多種族の漁師で活気に満ち、魚介の調理音と匂いが満ちていた。
ティオネの苛立ちとティオナの平静
ティオネは前夜からの苛立ちを引きずり食事で紛らわせていた。ティオナは終始明るく振る舞い、姉の同行監視を続けていたが、その無邪気さに無理が滲む場面もあった。
ニョルズ・ファミリアの代表ロッド
漁師団の頭目ロッドが応対し、彼らが漁専業の派閥で都市救援を仰ぐ前に多くの荒事を自力で処理してきた経緯を語った。ロッド自身はLv.2に到達しており、一部漁師も下級冒険者相当の戦力を備えていた。
“魔法の粉”の存在と供給系統
漁師の腰袋に入る“魔法の粉”が水面に撒くとモンスター避けになると説明された。強烈な悪臭を放つ粉末で、生物由来の混合粉に見えた。供給元は街当主マードック家で、都市から買い付け無償配布しているという。完全ではないがレイダー級以外の被害は大幅に減少した。
治安良好と食人花出現の矛盾への仮説
湖・近海の被害低下は“魔法の粉”の広範運用が一因と推測された。一方で【カーリー・ファミリア】は初入港のため粉を所持せず、前日の食人花襲撃を受けた可能性が高いと整理された。
住民の不安とカーリー派
漁師からも【カーリー・ファミリア】への恐怖と統制要請が挙がった。彼女らの圧倒的武力が市中緊張を高めており、ギルド支部の懸念と符合した。
緊急報せ:市中騒擾
獣人の漁師が駆け込み、大通りでアマゾネスらが騒ぎを起こし漁師マークらが拘束されたと通報。場は騒然となった。
ティオネ不在の発覚と即応
混乱の最中、ティオネが姿を消していることが判明。アイズとティオナは即時出動、レフィーヤには隣館のロキ召集を指示し、第一級二名は市街へ急行した。
漁港の情景
聞き込みを進めていた一行は港へ移動し、貿易港を抜けて【ニョルズ・ファミリア】の漁港に到着した。多種族の漁師が巨魚や海老を並べ、焼き音と塩の香りが漂う活気の中で、ティオナとティオネは食事休憩中であった。
姉妹の心理と振る舞い
ティオネは苛立ちを抱えたまま食で気を紛らわせていたが、圧の強さで漁師を怯えさせる場面が見られた。一方ティオナは明るく平静を装い姉を監視し続けていたが、無理の片鱗が覗いた。
ニョルズ・ファミリアとロッド
頭目ロッドは漁専業の派閥である実情を説明し、日々の修羅場で自らLv.2に達していること、漁師の一部も下級冒険者相当の戦力を持つと述べた。外洋や湖での荒事は原則自力で処理しており、都市からの救援は稀であると語った。
“魔法の粉”の存在と供給系
漁師の腰袋には水面に撒くとモンスターを寄せ付けないとされる悪臭の粉が常備されていた。供給元は街長ボルグ率いるマードック家で、都市から買い取り無償配布していると判明した。完全ではないが被害は顕著に減少していた。
食人花出現との整合性と仮説
湖・近海の治安が良好である事実と、食人花の出現情報には齟齬があった。アイズは18階層で聞いた“臭い袋”と同様の効果を想起し、【カーリー・ファミリア】が初入港で粉を所持していなかったことが襲撃要因になり得ると推測した。
住民の不安と統制要請
漁師は【カーリー・ファミリア】の圧倒的武力に恐怖を示し、市中秩序への配慮を【ロキ・ファミリア】に求めた。姉妹の過去因縁も相まって場の緊張は高まっていた。
緊急報と即応
大通りでアマゾネス側が騒擾を起こし漁師が拘束されたとの報が入り、ティオネの不在が同時に発覚した。アイズとティオナはレフィーヤにロキ招集を指示し、先行して市街へ急行した。
闘技場の儀式と「真の戦士」
灼熱の闘技場で、幼いティオネは同胞を討ち倒し、観客席から「ゼ・ウィーガ(汝こそ真の戦士)」の斉唱を浴びた。仮面を剥いだ相手は、いつも傷の手当てをしてくれた姉代わりのセルダスだった。ティオネはこの瞬間、喪失の痛みと倫理観を初めて自分の内に持った。
儀式の実相と国家の意図
石部屋の同胞同士が戦わないという「法則」は、愛着と絆を育てたのち、互いを殺し合わせるための段取りだった。怒りと悲しみを越えた者を「真の戦士」とする価値観が、国家と主神によって制度化され、感情を枯らす仕組みとして機能していた。
ティオネの覚醒と汚濁
五歳の誕生日、ティオネは愛する者を手にかけてLV.2に到達した。以後、彼女の瞳は濁り、国・主神・風習・同胞そのものへの憎悪と傷が根を下ろしていく。
メレンの夜と情報整理
夜のメレンで、ロキとリヴェリアは酒場で情報を突き合わせた。湖底封印は健在で、食人花は地上経由で汽水湖に潜伏したと推定される。オラリオ地下水路から箱や檻で運ばれた可能性が高く、黒幕の存在が濃くなった。
ギルド支部長ルバートの不自然さ
リヴェリアは、支部長ルバートが話題を食人花から【カーリー・ファミリア】へ逸らそうとした点を指摘した。組織内の不和を口実に、調査の軸をずらす意図が見て取れた。
街長ボルグの拒絶と警戒
街長ボルグは【ロキ・ファミリア】を門前払いし、外部勢力への強い警戒を示した。自治権をめぐる対立が、情報遮断の背景にあると見られる。
ニョルズへの微疑と「隠し事」
ロキは神としての勘から、ニョルズが何かを隠していると感じ取った。食人花と直結するかは不明だが、メレン全体に横たわる矛盾の一端を担っている可能性がある。
関係者マッピングと糸の錯綜
疑いの対象は、ギルド支部長ルバート、街長ボルグ、主神ニョルズの三者。ロキは三者のあいだに細い「糸」が絡む感触を抱き、【カーリー・ファミリア】は白寄りだが完全に無関係とも言い切れないと結論づけた。
市井の証言:アマゾネスの増加
酒場店主の証言から、【カーリー・ファミリア】来訪以前から市中で見慣れないアマゾネスが増えていた事実が浮かんだ。港という通過点の性質を踏まえても、事前潜入や別派閥の流入を示す重要な兆候と判断できる。
場面設定
魔石灯の光を落とした地下広間に【カーリー・ファミリア】が集まり、臙脂色の調度が淫靡な空気を漂わせていた。退屈そうにしていたカーリーの前に、女神イシュタルが姿を現す。彼女の放つ色香は同族すら惑わせ、場を一瞬で支配した。
同盟の目的と動機
イシュタルは【フレイヤ・ファミリア】打倒を明言し、嫉妬と対抗心を露わにした。カーリー側は「強者との闘争」を求める本能から利害が一致し、依頼を受け入れる方向へ傾いた。
戦略骨子(挟撃と奇襲)
都市南東の歓楽街を拠点とするイシュタルは、メレン経由でカーリー勢を市壁内に潜入させ、フレイヤ本拠(南繁華街)への正面攻勢と背面急襲による挟撃を提示した。検問突破は支配下の商会や魅了による開門で処理し、準備が整い次第、短期決戦で決着を狙う構想だった。
戦力補完と「切り札」
【イシュタル・ファミリア】の最高位はLV.5で、フレイヤ側のLV.7「猛者」への対処には不安があった。カーリーの指摘に対し、イシュタルは「必勝の策」を運び屋に託していると答える。被衣をまとった獣人の少女が、その鍵を握る存在として示唆された。
報酬交渉と前哨戦の提案
カーリーは金銭ではなく、先払いとして「【ロキ・ファミリア】との交戦機会」を求めた。標的は組織全体ではなく、アマゾネスの双子姉妹ティオナとティオネであり、自派のアルガナとバーチェとの「姉妹対決」を望んだ。目的は闘争そのものの観測と、“器”の昇華の見極めだった。
内部合意形成(フリュネの進言)
フリュネ・ジャミール(LV.5)は【剣姫】を自ら抑えると申し出て、港街での小競り合いを「開戦偽装」として利用し、ギルドとフレイヤ側の警戒を分散させる策を提案した。イシュタルは条件付きでこれを容認し、戦況が不利になれば即座に撤退する方針を定め、以後の責任はカーリー側に委ねることで合意した。
イシュタル側の潜入実績
最近メレンで目撃されていた不明なアマゾネス達は、イシュタルの眷族であり、計画準備のために都市と港街を往復していた。宿や入港手続きもイシュタル側の手配によるものであった。
カーリーの本質と場の収束
カーリーは「闘争と殺戮」を至上の価値とする戦神としての本性を露わにし、血と死線を渇望する姿勢を明確にした。イシュタルは性愛を本質とする神として反論を避け、実利を優先して同盟を進める決断を下した。最後にカーリーは「闘争の行く末」を見届けると宣言し、前哨戦の火蓋が落ちる予兆を残した。
四章 姉と妹 夜と朝闇と光
ティオネの変質と幼少期の「儀式」
ティオネがセルダスを殺して生還した後、言動は荒み、瞳は淀んでいった。ティオナも同日に昇格し、同室の同年代の少女を殺したが、実感は希薄であった。部屋の住人達は「儀式」の仕組みを悟って互いに距離を取り、情や会話は失われ、闘争の日常が加速したのである。
姉妹の断絶の兆し
セルダスの死を受けてティオナが生存を喜ぶ言葉を口にした瞬間、ティオネは殺意を帯びた拳を振るい、直後に涙をこぼして崩れ落ちた。以後、ティオネは暴言と攻撃性を強め、ティオナにも近寄らせなくなった。姉妹の心理的断絶が明確化したのである。
師弟の契りと苛烈な鍛錬
生還した少女達に年長のアマゾネスが付けられ、ティオナはバーチェ、ティオネはアルガナと師弟関係を結んだ。訓練は血反吐と骨折が常の苛烈さで、技は命懸けで盗むしかなかった。ティオナは冷たい眼差しのバーチェに初めて恐怖を覚え、ティオネはより過酷な鍛錬にさらされていた。
英雄譚との邂逅
昇格から一年ほど、ティオナは人気のない通路で紙屑となった英雄譚の欠片を見つけ、バーチェに読解を求めた。バーチェは動揺しつつも後日持ち帰り、鍛錬後に読み聞かせを始めた。女神の助力で共通語の下に女戦士語の翻訳が綴られ、物語の内容が明らかになっていった。
読書がもたらした変化
ティオナは共通語を学び、褒美として次々と本を与えられるようになった。闘争以外の興奮を知った彼女はよく笑うようになり、能天気さに拍車がかかった。一方でティオネの苛立ちは増し、姉妹の明暗は物語との出会いを契機に広がった。周囲はティオナの笑みを狂気と囁いたが、彼女は英雄譚に救われた実感から笑い続けたのである。
ロキの捜査方針と分担
現在時制に戻り、ロキは朝食の場で調査対象をニョルズ・ファミリア、ギルド支部、街長の家の三つに絞る方針を示した。神への直接探りはロキが担当し、他は眷族に任せることとした。カーリー・ファミリアへの対応は原則無視だが必ず集団で動くよう指示した。ティオナとティオネにはアイズとリヴェリアをそれぞれ同行させ、挑発への備えを徹底させた。
路地での邂逅と記憶の連鎖
ティオナはアイズと共に隠密のため二人で街長ボルグの屋敷へ忍び込む計画を進めていた。道中、転んだ獣人の少女を助けた際、少女が抱える『アルゴノゥト』の本を目にし、故郷に置いてきた英雄譚の記憶が蘇った。幼少期に紙屑の物語へ救われた体験と、今朝見た夢の続きが重なっていった。
アイズとの短い対話
過去を思い返したティオナは、いつも笑う自分は気持ち悪いかとアイズに問いかけた。アイズは首を振り、ティオナのおかげで今が楽しいと簡潔に答えた。ティオナは礼を述べ、抱きつくことなく歩き出し、アイズがその背を追ったのである。
レフィーヤの聞き込みと不穏な手掛かり
レフィーヤは小隊とともに住民への聞き込みを続け、不安を抱えつつも外面は平静を装っていた。褐色ではないヒューマンの少女チャンディから、遊び場で「湖に出た長いモンスター」に似た鳴き声が続いているとの証言を得て、路地奥の案内を受けたのである。
伏兵の急襲と正体の露見
進行中、レフィーヤは視線を感知した直後、頭上からの奇襲を受けて頸部を打たれ失神寸前に陥った。同行の団員は即座に交戦したが、チャンディは神威をゼロに抑える神であることを明かし、紅髪と鬼面を示して正体を露見させた。バーチェが無傷で合流し、レフィーヤは連れ去られた。
アルガナの伝言と挑発
別動の隊列前にアルガナが単身で現れ、ティオネにアマゾネス語で通告した。内容は「人質を預かった。夜、造船所へ姉妹のみで来い」という挑発であった。通告直後にアルガナは姿を消し、その場には【ロキ・ファミリア】のエンブレムが四条で切り刻まれた状態で残されていた。印は闘国の「繰り返す」を意味し、姉妹が応じぬ限り挑発と襲撃を継続する意志表示であった。
港区の被害とロキの判断
漁港区画には重傷の団員が次々と運び込まれ、ラクタのみが覚醒して状況を報告した。加害は【カーリー・ファミリア】であり、レフィーヤが拉致された。ロキは激怒しつつも状況を整理し、団員の手当てを優先しつつティオナとティオネの行動制限を指示した。
姉妹の密議と決断
騒ぎを聞き駆けつける途上で、ティオネはティオナを路地へ引き込み、アルガナの言葉と刻まれたエンブレムを示した。ティオネは因縁を自ら断つと宣言し、アイズやリヴェリアには頼らない方針を明言した。ティオナは逡巡の末に同意し、姉妹は情報を伏せたまま造船所へ向かう決断を固めた。二人は「二人ぼっち」に戻る覚悟で行動を開始したのである。
宿での対策会議
アイズは宿へ戻り、ロキとリヴェリアに状況を報告した。ラクタ達の治療は完了しつつあり、【カーリー・ファミリア】の所在は不明であった。アキとアリシアの探索でも手掛かりは得られなかったため、ロキは街内に協力者がいると推定した。
敵勢評価と作戦方針
敵の狙いはティオネとティオナとの『儀式』であると整理された。人質レフィーヤの即時危害は低いと判断しつつ、発見次第で敵を制圧する方針を確認した。アイズは実戦所感として敵中堅がLV.3〜4相当で体術と決死の踏み込みが厄介であると述べ、武器整備中という自軍の痛手も共有された。
証拠の提出と指示出し
アイズは街長邸で得た収穫をロキへ手渡し、ロキは即時の伝令指示を作成してアキに託した。全体はティオネ達の追跡を継続しつつ、敵の動線遮断と情報掘り下げへ移行した。
ティオネの回想:アルガナの地獄
叙述は回想に遷り、ティオネがアルガナの苛烈な鍛錬で心身を削られた経緯が示された。アルガナは闘争至上の価値観を体現し、同胞殺しを強さの糧と断言した。ティオネは怒りを源とする二種のスキルを発現する一方、心は荒廃した。他方でティオナは英雄譚に触れて笑みを取り戻し、姉妹の明暗が際立った。やがてティオナの願いで国外許可が下り、ティオネは羨望と自己嫌悪を抱えたまま闘国を出た。
廃工場での姉妹の組手
現在に戻り、ティオネとティオナは廃工場で合流し、夜までの待機前に本気の組手を開始した。応酬は激しく、感情と言葉がぶつかり合ったが、次第に闘いは噛み合い、互いの頬に同時打撃を入れて引き分けに終わった。笑いが戻り、幼少の記憶が呼び起こされた。
姉妹の確認と覚悟
ティオナが「姉妹同士で戦えと言われたら」と問うと、ティオネは「そのつもりで行く」と即答したうえで、アルガナとバーチェがそれぞれ自分達を自手で仕留めたがっていると分析した。高等回復薬で体を整え、夜の決戦に備える合意を形成した。
小休止と同衾
緊張を解いた二人は布切れにくるまり、英気を養うため一緒に眠る選択を取った。ティオネは再び同じ夢を見る予感を抱きつつ、夜の造船所での決着に備えて瞼を閉じた。
外界への旅立ちと再生の兆し
ティオネとティオナは闘国を出て、海・山・森・谷・丘・花畑が広がる外界に触れた。石の闘技場しか知らなかった二人にとって世界は圧倒的に広く、青空は初めて美しいものとして認識された。荒んでいたティオネの瞳と心は次第に色を取り戻し、ティオナの無邪気な笑顔に誘われ、わずかに笑えるようになったのである。
契約の猶予と放浪の条件
カーリーは出国を許しつつ『恩恵』を完全には解かず、再契約待ちの状態で二人を放した。これにより二人は強化能力を保持したまま旅を継続できた。もっともティオネは他神や団員に心を開かず、各地のファミリアには一年限定加入・契約解除を前提とする条件を徹底し、用心棒として働きながら次へ移った。初訪の漁村では怪魚退治の末に臨時加入で能力を更新し、ティオナと共にLV.3へ昇格している。
二人ぼっちの世界と依存のかたち
ティオネは闘国の記憶から他者を排し、許したのはティオナのみであった。ティオナは太陽のごとく笑い、苛立ちを溶かし、ティオネの拳を下ろさせた。喧嘩しては飯を食い、笑い合う反復の中で、二人は「二人ぼっち」を受け入れていった。目的なき旅路は続き、出会いを求めずに居場所を探すという矛盾を抱えたまま、五年前、無断密航で迷宮都市オラリオに達したのである。
レフィーヤ拘束と童女神の尋問
一方、レフィーヤは童女に偽装したカーリーとバーチェに拉致され、海辺近くの岩窟で目覚めた。鎖は粗末で力ずくなら千切れるが、詠唱潰しに長けたアマゾネス達が四名つき、軽挙は自殺行為であった。カーリーは「危害は加えぬ」としつつ、二人の近況を「親心」で聞き出そうとし、レフィーヤはティオナとアイズの親密、ティオネのフィンへの恋慕など取るに足らぬ日常を語った。
慈悲の否定と価値観の断絶
レフィーヤの「戦いを止めてほしい」という嘆願に、カーリーは即断で「できぬ」と拒絶した。闘国の殺し合いは神の来訪以前からの文化であり、神が恣意でねじ曲げるのは冒瀆である、と。来る者は拒まず去る者は追わず――出たいと願ったのは歴史上ティオネ達のみで、他は自ら望んで闘争に身を置いている、と論じた。カーリーは自らを「未知と興奮を求める快楽主義の神」と規定し、救済は炉の女神に任せると断じたのである。
童女神が求めるもの
去り際のカーリーは「闘争の行く末、殺戮の果てに生まれる『最強の戦士』を見たい」と目的を明言した。レフィーヤは慈悲の可能性が断たれた事実を直視し、夜の造船所で姉妹に迫る『儀式』の不可避性を悟るに至った。
夜の到来と出立の決意
メレンの港街に夜が訪れ、ティオネとティオナは廃工場で刻限に備えた。ティオネは港への動線確認を口実に外へ出て、昨夜ロキにかけられた言葉を思い返し、揺らぐ心を叱咤した。ティオナはそれを察しつつ気付かぬふりをして準備を整えた。二人は因縁を断つべく出発したのである。
昨夜の回想とロキの示唆
アルガナに敗れ荒ぶるティオネに対し、ロキは酒を勧めつつ「初対面の頃を思い出せ」「フィンと出会った時のことを思い出せ」と示唆した。ティオネは言い返せず去ったが、その言葉は胸に残り、現在の迷いと向き合う契機となった。
オラリオ到着以前の二人と門前の騒動
無所属のLV.3としてオラリオ入市に時間を要し、入団必須の条件を示された。多数の派閥が勧誘に殺到する中、ティオナの提案で勝負形式を採り、挑戦者を次々撃退した。この武勇は後年まで語られる騒動となった。
ロキ・ファミリアとの邂逅と価値転倒
勧誘に現れたロキ一行に対し、ティオネは挑発してフィン本人との対戦を要求したが瞬時に完敗した。ティオナもガレスに敗北した。この敗北がティオネの価値観を転じ、フィンへの恋慕と敬意を生み、入団の決断へと繋がった。
変化の始動と絆の形成
ティオネは言動や所作を改め、髪を伸ばすなどフィンの好みに合わせて自らを矯正した。遠征と冒険で両名は短期にLV.4へ至り、仲間との連帯を得た。アイズとはティオナの働きかけで親しくなり、のちにレフィーヤも加わった。二人は“二人ぼっち”から“居場所のある日常”へ移行したのである。
現在への反照と姉妹の選択
ティオナの「二人ぼっちに戻ったみたい」という言葉がティオネの胸中に残りつつも、姉妹は迷いを封じ、過去を清算するため夜の港へ向かった。
アイズ側の探索体制
アイズは港周辺でのアマゾネス目撃情報を受け、第二級冒険者達に「発見しても交戦禁止、発見信号で通知」と指示し、リヴェリア合流までの自制を徹底させた。
ロキとリヴェリアの状況整理
リヴェリアは城壁監視からの報告を共有し、潜伏先を「市内か汽水湖方面」と推定した。ロキは港方面へ向かう決断を示しつつ、食人花事件の“絡繰り”の大枠を把握した旨を述べ、残る“糸”の所在に警戒を向けた。
イシュタルの高みの観戦と差配
高級宿最上階のイシュタルは、ロキ側の幹部削減を“得”としつつ計画の予備線も用意していた。配下アイシャは命を受け、フリュネは武装を整えアイズへの私怨を滾らせ、春姫は沈痛に従った。イシュタルは外部勢力と“あれ”で繋がる布石を保有していた。
決戦前夜:敵側の布陣
港陰でアルガナはティオネを待ち、別の岩窟ではバーチェが瞑目して気を満たした。カーリーは二人の戦意を確かめ、「宴の開始」を宣言した。汽水湖は震え、波が岸を打ち、長い夜の幕が上がろうとしていた。
五章 太陽と月のデュオ
港の構造と夜の静寂
ロログ湖に沿うメレンの港は、東側に貿易港と漁港、西側に巨大船用の船着場と造船所が配されていた。夜間、造船所は魔石灯が落ち不気味な静寂に包まれていたのである。
再会の段取りと意図的な分断
造船所の一角に現れたティオネとティオナを、アルガナが待ち受けた。彼女は船大工を眠らせた上でレフィーヤの所在を「別の空洞」と明かし、ティオナをバーチェの待つ方面へ、ティオネを自らの側へと分断誘導したのである。
海上決闘の舞台設定
ティオネはアマゾネス達に伴われ大型船へ乗せられ、櫂で湖峡を抜け海へと出た。第三者の介入を断つ「即席闘技場」を用意し、決着が付くまで戦闘を継続できる布陣であった。
アイズの選択と食人花の攪乱
屋根上から動向を捕捉したアイズは追撃に移ろうとしたが、港中央で七体の食人花が爆発的に出現し、民間人の避難が急務となった。アイズは苦渋の決断で人命救助と殲滅を優先し、船上のティオネ追尾を断念した。アルガナは食人花を「足止め」と評し、関与の核心は伏せたままであった。
ロキの「詰め」とリヴェリアの分派
漁港側ではロキが食人花群の“でき過ぎた”出現を足止めと看破し、黒幕追及を優先すると宣言した。リヴェリアは魔法組を率いて別動し、ロキは治療組の一部を伴い「現場を押さえる」ために動いたのである。
ティオナの導きと海蝕洞の到達
ティオナは血の臭いを“導”として雑木林を抜け、海蝕洞に到達した。自然洞を拡張した複雑な隧道の奥、石棺のように高い天井を持つ空洞が“儀式”の舞台であり、周囲にはアマゾネス達、上段にはカーリーが構えていた。
女神の観戦体制と開戦宣言
カーリーはレフィーヤを別空間に拘束し、「決着後に解放」と通告したうえで、師弟が成長して相まみえる“儀式”に愉悦を示した。揶揄を交えつつも最上段から開戦を見届ける体制であった。
バーチェの正体と魔法の性質
ティオナは殺し合いの拒否を明言したが、バーチェは過去を切り捨て、かつての頭領候補エルネアらを屠ってLV.6に至った事実を告げた。彼女は極短詠唱「【食い殺せ】」→付与魔法【ヴェルグス】を右腕に展開し、猛毒属性の“触れれば死”の毒牙を露わにした。アルガナが“蛇”なら、バーチェは“毒蟲”として蠱毒の王たる戦型を体現していたのである。
開戦と章の締め
周囲のアマゾネスが足を踏み鳴らし熱狂が渦巻く中、ティオナは必毒の一撃に抗うべく拳を構え、バーチェと正面衝突した。海上ではティオネ対アルガナ、洞窟ではティオナ対バーチェがそれぞれ始動し、太陽と月のデュオは“過去の清算”へと踏み込んだのである。
春姫の詠唱と金光
春姫は月を覆う厚雲の下で「【――大きくなれ】」の詠唱を開始し、金色の光雲を発生させた。彼女はこの歌が他者を救わぬことを自覚しつつも、いつか誰かの希望となることを希求して力を解き放ったのである。
食人花の迅速殲滅
春姫の加護下で戦力が底上げされ、アイズの一閃が花頭を断ち、食人花は短時間で全滅した。市民は避難済みで、被害は抑制された。
灯の消失と奇襲の兆し
貿易港一帯の魔石灯が不自然に消え、アイズが追撃へ移ろうとした矢先、覆面のアマゾネス集団が一斉に跳躍し強襲した。敵勢は【カーリー】ではなく【イシュタル・ファミリア】であった。
フリュネとの第四戦
全身赤鎧・双大戦斧のフリュネ・ジャミールが出現。過去三戦の因縁を背負い、今回はLV.6級の速度と剛力でアイズに拮抗した。アイズは仲間を庇い投擲斧を弾き返すが、そこを詰められ受けに回った。
呪詛による『魔法封じ』
屋上の術者「シャレイ」により高周波の術が展開され、アイズの付与魔法【エアリエル】が沈黙した。これは発動者に代償を課す類の『呪詛』で、『耐異常』を貫通する“魔法封じ”である。魔法を持たないフリュネには無効のため、戦況はアイズ不利に転じた。
戦況の固定化と時間制約
術者は離脱し解呪の直撃手段は失われた。アイズはティオナ救援の時間制約を抱えつつも、純剣士能力のみでフリュネと交戦を継続した。
観測者としての春姫
倉庫陰では被衣の下に金髪と翠眼を隠す春姫が、護衛に囲まれつつアイズの奮戦を見つめていた。彼女の光は確かに力となったが、当人はなお葛藤を抱え続けていたのである。
船上の状況と戦場の分断
ティオネとアルガナらを乗せた大型船は沖へ出航し、甲板はアマゾネス達の熱狂に包まれていた。陸側の海蝕洞では同時にティオナとバーチェが交戦しており、救援の介入が困難な状況が意図的に作られていたのである。
ティオネの調整完了と互角の立ち上がり
ティオネは直前の組み手でLV.6への昇格ギャップを埋め、初動からアルガナと互角に渡り合った。第一級同士の攻防は「技」と「駆け引き」の勝負へ移行したのである。
アルガナの『呪詛』【カーリマー】の正体
戦闘中、アルガナは相手の血を啜ることで能力値を上昇させる『呪詛』【カーリマー】(血潮吸収)の存在を自白した。副作用として『耐久』のみ激減するが、直接大量に吸えば一時的に跳ね上がる性質であり、稀少呪詛として脅威であった。アルガナは共食いと吸血を「敗者の力を取り込み最強へ到る救済」と位置付け、狂喜していた。
ティオナ対バーチェ:毒の付与魔法【ヴェルグス】の強化
海蝕洞ではバーチェが付与魔法【ヴェルグス】(猛毒)を発動。LV.6昇格により右腕限定から全身展開へ強化され、接触=損耗の盤面を作った。ティオナは『耐異常』で粘りつつ被毒を受けながらも、頭突きと回し蹴りで突破を図ったが、全身毒膜の前に有効打は相殺された。
バーチェの動機と内面
バーチェは幼少から化物的資質を持つ姉アルガナへの恐怖を内在化し、「強さのみが生存の条件」として感情を封じた戦士であった。ティオナを鍛え上げた真意は、強くなった彼女を自らの『餌』として打倒し、偉業によって更なる高みに至るためであると告白した。
ティオナの危機と心折れ
全身毒膜による連撃でティオナは骨の罅や広範な熱傷・中毒症状に陥り、顔面を掴まれ焼かれる屈辱と激痛の中で意識が揺らいだ。過去の恐怖が再燃し、戦意は臨界まで低下した。
ティオネの臨界突破と“守護”の自覚
船上ではアルガナの嘲りと「ティオナも殺す」との発言が引き金となり、ティオネの憤激が爆発した。瀕死からの瞬発で渾身の拳を叩き込み、形勢を押し返した。ティオネは「妹の笑顔を守る」という核に気付き、己が“半身”を守る者である自覚を明確化したのである。
姉妹の特異性と示唆
アルガナは姉妹の絆を「闘国では異端」と評しつつ、「お前は、ティオナに守られていた」と示唆した。これは過去の具体的事実の存在を匂わせ、今後の姉妹史の掘り下げとティオネの内面変化に繋がる伏線となった。
状況の分断と舞台
大型船上ではティオネ対アルガナ、海蝕洞ではティオナ対バーチェの『儀式』が同時進行となり、救援が介入しにくい布陣が成立したのである。
ティオネ側:互角の立ち上がりと敵能力の露見
ティオネはLV.6昇格直後の調整を済ませ、アルガナと互角に渡り合った。やがてアルガナは稀少な『呪詛』【カーリマー】(血潮吸収)の正体を明かす。これは「恩恵を持つ者の血を吸うほど能力値が上昇する」代わりに『耐久』のみ激減する性質で、直接大量吸血で瞬間的に跳ね上がる危険な力である。アルガナは敗者の血肉を糧とする救済観を宣し、狂喜したのである。
ティオナ側:毒の全身付与と圧殺の展開
バーチェは付与魔法【ヴェルグス】(猛毒)を発動。LV.6到達により右手限定から全身展開へ強化され、接触=損耗の盤面を作った。ティオナは『耐異常』で粘るが被毒は深刻で、顔面を掴まれ焼かれるまで追い込まれる。バーチェは「強くなったティオナを自らの『餌』として打倒し偉業へ至る」という動機と、化物たる姉への生存恐怖を吐露した。
内面回想:姉妹の役割と“笑顔”の由来
ティオナは幼少期を回想し、ティオネを守るため自ら『儀式』への参加や同胞鏖殺を引き受け、石部屋の入替えまで女神に直訴していた事実を自覚する。月のように道を示すティオネに対し、自身は太陽として「笑い」で闇を払ってきたという自己定義に至る。バーチェが読んでくれた『英雄譚(アルゴノゥト)』はその源泉であり、痛みの中でも笑う決意を形作ったのである。
再起と“やせ我慢”の戦術
瀕死のティオナは立ち上がり、「全然痛くない/苦しくない」と宣言して笑顔で構える。対抗策は“全面無視(やせ我慢)”。痛みを笑いで塗り替える単純明快な闘志が場の空気を反転させ、カーリーさえ哄笑させた。
姉妹の相互守護の顕在化
船上では、アルガナの「ティオナも殺す」発言を契機にティオネの憤激が爆発。渾身の拳で形勢を押し返し、「妹の笑顔を守る」核が鮮明化した。ここでティオネは、陰で笑って支えてくれた意味を理解し、二人が背中合わせで互いを守ってきた事実が収斂したのである。
スキル覚醒と決戦突入
ティオナはレアスキル【大熱闘(テンスヒート)】を発現。これは【狂化招乱】の先で瀕死時に全能力が大幅増幅される効果で、姉の【大反攻】と同条件・相補関係にある。追い詰められるほど強まるヒリュテ姉妹の資質が同時に点火し、船上と海蝕洞の両戦場で『儀式』は佳境へ。アマゾネスの足踏みと歓呼が轟く中、闘争の行方は決戦局面へ突入したのである。
暗躍の発覚
港に現れた食人花を追って海蝕洞に潜入した影は、【ニョルズ・ファミリア】団長ロッドであった。彼の尾行をさらにロキが重ね、女神自らその正体を暴いた。ロッドは主神を庇って罪を被ろうとするが、やがて物陰からニョルズ本人が現れる。ロキは証拠として『魔法の粉』を突きつけ、ギルド支部や街長にも手を回していたことを明かす。すでに裏は取れており、彼らの隠蔽は崩れ去った。
三者の共犯関係
ニョルズはついに自白した。『魔法の粉』は粉砕した魔石と魚粉を混ぜたもので、食人花を“撒き餌”として利用するための道具であった。食人花は人よりも魔石を好むため、湖や海に撒けば他のモンスターを食い荒らしてくれる。その結果、近海は平穏となり漁が可能になった。
しかしそれは、粉を持たぬ船や他派閥を犠牲にした危険な博打でもあった。ニョルズは海の恵みを守るため、ギルド支部長ルバートと街長ボルグを共犯に巻き込み、粉を製造・流通させていたのである。ロキとリヴェリアの調査により、信号器を隠していたギルド、地下室で粉を作っていたボルグも露見した。
ニョルズの動機
漁の神ニョルズは、海洋モンスターの激増による漁師たちの死を止めたかった。海の生態系の崩壊と子供たちの犠牲を前に、「モンスターを駆除できる存在」として食人花に手を出したのだ。六年前、オラリオの排水路に流れ着いた個体を発見し、そこで不気味な白い男と取引を交わす。以後、密輸と引き換えに食人花の放流を続けたという。
ロキはその行為を「アホやなぁ」と評しつつも、彼の善意と愚行を等しく理解し、ギルドへの報告と労役を宣告した。
黒幕の線とイシュタルの名
ロキが核心を突くと、ニョルズは下水道側の仲介者として【イシュタル・ファミリア】の名を挙げた。彼らが食人花をオラリオから運び出し、港で暴走させた張本人である可能性が高い。ロキはこの証言で大筋を把握し、現場の主導権を掌握する。
救援要請と反撃の号令
ロキは仲間に指示を出し、海蝕洞に捕らわれているレフィーヤとティオナの救出を命じる。「みんなを連れてこい」との言葉と共に、全戦力召集が発令された。
ロキ・ファミリアの出陣
その頃オラリオの市壁上。港の灯が消えたメレンを見据え、フィン率いるロキ・ファミリアが結集する。団旗“道化師の紋章”が風に翻り、ベートが先陣を切る。「女どもに任せておけねぇ」と吠える男達、装備を整えたフィン・ガレス・ベートらが総員出撃を宣言した。
ロキの書簡によってギルドの停滞も打破され、伝令アキがすべてを繋ぐ。フィンは静かに告げた。「お騒がせな姉妹を迎えに行く。――焼きを入れるぞ」。
次の瞬間、道化師の団旗の下、第一級冒険者たちは迷いなく市壁から飛び降り、闇に沈むメレンへ突入した。
六章 闘争の果て
倉庫での処断と“幽霊”の介入
ギルド裏手の倉庫で縛られたルバートは、隠匿していた発信器や着服の証拠を残したまま追い詰められた。そこへ黒衣の魔術師フェルズ(通称“幽霊”)が現れ、私腹を肥やした罪を確認して睡眠魔術で無力化した。ギルド本部の処分が下る段取りが整えられたのである。
ロキ・ファミリア総進撃
メレンの歓声が喚声へと変わる中、【ロキ・ファミリア】本隊が団旗を掲げて港へ突入した。見張りのアマゾネスは瞬時に掃討され、屋根上で合流したフィンとリヴェリアは隊を分け、西方の海蝕洞へ救援隊(ガレス・ラウルら)を回し、港正面はベートに委ねる方針を即断した。
アイズ対フリュネ――“技”で押すも刃不足
アイズは剛斧のフリュネを『技と駆け引き』で圧倒し始めたが、代剣ゆえの攻撃力不足と相手の全身甲冑によって決定打を欠いた。剣身は損耗し、長引くほど不利という状況であった。
ベートへの場託しと“月”の加護
援軍到着と同時に、ベートは「ティオナ達のもとへ行け」とアイズを送り出し、自らフリュネを受け持った。やがて雲間から月光が差し、ベートの気配は凶狼のそれへと研ぎ澄まされた。アイズは《デスペレート》を託され、海蝕洞の救援に走った。
レフィーヤの“光”信号と救出
海蝕洞で拘束中のレフィーヤは、岩の割れ目から漏れる月光に着目し、あえて大声で詠唱して魔法陣の光を外へ抜けさせ“位置通報”を敢行した。襲いかかる見張りを鎖で凌ぎながら光を維持した結果、上方岩盤が破砕され、降着したのはガレスであった。
ガレスの徒手無双
レフィーヤの落胆(アイズ不在)はさておき、ガレスは斧すら捨てて拳で応戦し、体術自慢のアマゾネスらを次々と叩き伏せた。五年前の“教育”を想起させる一撃必倒で空洞の制圧にかかり、救出戦は優勢に転じた。
月下の凶狼、フリュネ撃破
月光下でベートが『獣化』し、フリュネの第一等級全身甲冑と大戦斧を次々と粉砕した。光粒の加護が切れたフリュネは蹴撃で湖へ吹き飛ばされ、戦闘娼婦らは撤退した。ベートは巫女風の少女の怯えを見て追撃を止め、「覚悟のない者は戦場に来るな」と吐き捨てたのである。
海蝕洞:ティオナ対バーチェ、命を燃やす「大熱闘」
ティオナは毒装甲【ヴェルグス】に正面から殴り合いを選び、被弾で能力が上昇する【大熱闘】を極限まで重ねた。速度・威力が加速度的に上がり、ついに毒拳をいなして渾身の一撃を胸部に直撃させ、バーチェを撃破した。ティオナは瀕死同然まで自らを追い込みながら笑みを崩さなかった。
勝利と拒絶――“戦士”ではなく“冒険者”
カーリーは『儀式』完遂のため勝者に止めを命じたが、ティオナは「もう殺さない。自分達は冒険者だ」と即答して拒絶した。女神はティオネ不在を突いて包囲・拉致を指示し、消耗し切ったティオナは抵抗不能の窮地に陥った。
風の救援と総力戦への転換
微かな風を合図にアイズが神速の斬閃で突入し、ティオナの周囲のアマゾネスを一掃した。続けて【ロキ・ファミリア】本隊が雪崩れ込み、【イシュタル・ファミリア】撤退で呪詛が解けた戦場は一気に冒険者側優勢となった。上方に現れたロキはカーリーを嘲笑し、形勢逆転を宣言した。
海上の決戦へ――救援の“騎士”
ロキの背後からレフィーヤとガレスが合流し、ガレスは「一番強い騎士様(=フィン)が助けに向かった」と報告した。カーリーが「遠く沖での決着」を目論んだティオネ対アルガナの死闘に対し、救援が差し向けられ、決戦の焦点は海上へ移行したのである。
儀式終盤の緊迫
メレン南西の沖合にて、ティオネとアルガナの『儀式』は決着目前まで激化していた。双方は互いのみを視界に捉え、殺意を極限まで高めていた。
フィンの介入と氷橋の到来
最後の一撃の直前、フィン・ディムナが黄金の槍で両者の間に割って入り、戦闘を停止させた。これはリヴェリアが凍結魔法で海上に伸ばした「氷の長橋」を用い、灯台側から船へ到達させたものである。
叱責と支え――ティオネの心変わり
フィンはティオネの独断と執着を厳しく指摘したのち、「無事でよかった」と労い、後での説教を予告して保護を宣言した。ティオネは緊張の糸が切れて座り込み、怒りは和らいだ。
闘争の代行――フィン対アルガナ
闘争続行を叫ぶアルガナに対し、フィンは自身が相手になると宣言。血槍の加護【ヘル・フィネガス】を発動し、正面から一撃でアルガナを海へ吹き飛ばして制圧した。
帰還と合流
ティオネはフィンに抱きついて号泣し、リヴェリアが再構築した氷橋を渡って夜明け前に帰港した。港では【ロキ・ファミリア】が合流し、ティオナは「バーチェに勝利し誰も殺していない」旨を報告した。
姉妹の和解と朝焼け
ティオネはティオナに感謝を述べ、二人は笑顔を交わした。騒がしい仲間達に囲まれながら、姉妹は光の差す場所へ歩み、二人だけの世界は終わり、新たな仲間との関係が確かなものとなった。
エピローグ Disturbing Elements
ギルド発表と隠蔽
メレンの事件は収束したとされ、港中枢での衝突は【カーリー・ファミリア】の仕業、食人花の上陸は偶発とギルドは公表した。ニョルズや街長家の関与、さらに幹部の密輸容疑が露見すれば都市基盤が揺らぐため、組織的失点を覆い隠す判断であった。
糸の警告と追及回避
暗躍組織の情報を得たにもかかわらず、ギルドは過去の報復と共倒れを恐れ追及を控えた。事件の各点を結ぶ「糸」は、相互破滅を示唆する抑止となったのである。
処分と落とし前
公式な処断は支部長ルバートのみであった。ニョルズは背に『恩恵』を刻んで自家の漁へ編入し、実務への転用で落とし前を付けた。ロッドらは以後の暴走抑止を誓い、食人花不使用の方針が確認された。
捕縛された童女神
カーリーは捕縛され、ティオネらへの不干渉を迫られた。アルガナを含む主力が戦闘不能化し、闘国の存立は陰りを見せる。殺し合いの『儀式』撤廃要求には応じず、価値観の断絶が露わとなった。
イシュタルの影と“隠し玉”
食人花の搬入線はイシュタル経由の取引網と判明した。フリュネに見られた等級超過の強化は、術式・呪詛系の支援の存在を示唆する。カーリーはイシュタルの狡智と“隠し玉”を警戒し、別系統の脅威の存在を匂わせた。
残された手掛かり
手元に残ったのは【イシュタル・ファミリア】の徽章情報と、地下水路で接触した隈の濃い謎のヒューマンの素描である。密輸品は金目・酒・生体らしき箱が混在し、大量資金需要がうかがえた。
盤上の実感
ロキは下界の不確実性と可能性が交錯する局面を“最高の盤上遊戯”と捉え、同時に強化術が広範に流通すれば手が付けられぬ事態となる危険を認識した。
美神の奥の間
イシュタルは失策を苦々しく語りつつも、最終手段として“コレ”の投入を示唆した。地下施設には、無数の鎖で拘束された巨大な怪物が鎮座し、まるで『天の雄牛』のごとき巨角を戴き、額で『魔石』を貪っていた。次なる擾乱の種は、既に備えられていたのである。
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