Dジェネシス10巻レビュー
Dジェネシスまとめ
Dジェネシス12巻レビュー
- 物語の概要
- 書籍情報
- あらすじ・内容
- 感想
- 考察・解説
- 登場キャラクター
- 展開まとめ
- 第14章 ミサキサマ
- 終 章 EPILOGUE
物語の概要
■ 作品概要
本作は、地球上に突如ダンジョンが出現してから3年が経過した現代社会を舞台とする、現代ダンジョンファンタジー(新文芸)である。 第11巻では、ダンジョンの意志である少女(ダンつくちゃん)とタイラー博士が引き起こした渋谷騒動の余波により、日本国民全員に強制的に「Dカード」が配布されるという未曾有の事態が発生する。政府や各国の諜報機関がその対応と謎の解明に追われる中、街中の至る所に謎の鳥居が出現する。鳥居をくぐった先の異空間で「ミサキサマ」に願いをすれば一度だけ何でも叶うという都市伝説が現実となり、日本中にさらなる混乱が巻き起こる。主人公の芳村圭吾と三好梓は、知人の窮地を救うためにミサキサマの領域へ挑むとともに、そこで得た空間転移アイテム「ゲートストーン」の開発と実用化に向けて動き出していく。
■ 主要キャラクター
- 芳村圭吾:合同会社Dパワーズに所属する探索者。規格外の能力と超希少スキル〈メイキング〉を持ち、ダンジョンの常識を次々と覆す。本作ではミサキサマの空間に赴き、神話的モンスターであるウロボロスと対峙するほか、「祈り」という非科学的な手段でゲートストーンの生成に成功する。
- 三好梓:Dパワーズの代表社員であり、世界唯一の〈鑑定〉スキル保持者。情報収集や分析に長けた頭脳派。ミサキサマへの願いを通じてダンジョン内を自由に移動できるインフラ「ゲートストーン」の仕組みを入手し、その普及とビジネス化を画策する。
- 鳴瀬美晴:JDA(日本ダンジョン協会)ダンジョン管理課の専任管理監。Dパワーズが持ち込む常識外のアイテムや情報に常に振り回されており、本作でも突然の「転移」実験に巻き込まれる苦労人である。
- 斎賀:JDAダンジョン管理課の課長。国民全員へのDカード配布や、ミサキサマという管理不可能なマイクロダンジョンの出現など、次々と起こるダンジョン行政崩壊の危機に対し、現実的な対応策を模索し奔走する。
- サイモン=ガーシュウィン:アメリカ(DAD)のトップ探索者。Dパワーズと独自に情報交換を行っており、自身とチームメンバーもミサキサマの鳥居をくぐり、未知のシステムに挑む。
■ 物語の特徴
本作の最大の魅力は、単なるモンスター討伐や迷宮探索にとどまらず、ダンジョンという未知のシステムが現代の政治、経済、法律、そして社会常識に与える影響を極めて緻密にシミュレーションしている点にある。 本巻では、「国民全員が超常的なシステム(Dカードや念話)に接続される」「宝くじの当選を願う者が殺到し、確率が崩壊する」といったシステム側からの強烈な干渉に対し、日本政府や大国がどう政治的に立ち回るかというポリティカル・フィクションの要素が色濃く描かれている。また、どこへでも転移できるチートアイテム「ゲートストーン」を手に入れながらも、それを即座に乱用するのではなく、「既存の流通や経済、法律を破壊せずにどう安全な社会インフラとして実装するか」という地に足の着いた考察や実証実験が行われるプロセスが、他のファンタジー作品と一線を画す興味深いポイントとなっている。
書籍情報
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 11
著者:之 貫紀 氏
イラスト:ttl 氏
出版社:KADOKAWA
発売日:2026年6月30
ISBN:9784045001437
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あらすじ・内容
そこは魔界か神域か。 願いを叶える「ミサキサマ」の正体は!?
突然渋谷に現れたダンつくちゃんとタイラー博士が巻き起こした大事件は、
日本国民、すべてにDカードが配られるという予期せぬ事態に発展した。
突然の事態に日本政府が振り回される中、ネットでは奇妙な噂がまことしやかに囁かれ始める。
鳥居をくぐれば、そこは異世界。「ミサキサマ」にお願いすれば、なんでも願いを叶えてもらえるという。
神の御業か悪魔の罠か。今、新たなる都市伝説が始まる!?
感想
読んでまず驚いたのは、日本国民全員に「Dカード」が強制配布されるという、とんでもない事態から物語が始まることだ。これまでダンジョンは一部の探索者だけの問題という印象があったが、この出来事によって社会全体が否応なく巻き込まれていく。物語のスケールがまた一段階広がったように感じた。
さらに、どんな願いでも叶えるというマイクロダンジョン「ミサキサマ」の登場も衝撃的だった。
宝くじの当選確率が崩壊するなど、社会の仕組みそのものが揺らぎ始める展開には、「ここまで世界が変わってしまうのか」とワクワクしながら読んでいた。ダンジョンが社会へ与える影響を、ここまで現実的に描く作品はやはり面白い。
一方で、重い展開ばかりでは終わらないのが本作らしい。
個人的に思わず笑ってしまったのは、「ダンつくちゃん」が芳村圭吾に懐いている姿を見て、D交流準備室の杉田が嫉妬する場面である。
付き合いの長さを考えれば当然なのだが、少し大人気ない反応もどこか微笑ましかった。シリアスな状況の中でも、こうした何気ない掛け合いがあるからこそ、作品全体の空気が重くなりすぎない。
また、ミサキサマの空間で三好梓がしっかりと「ゲートストーン」の製法を持ち帰ってくるところも印象的だった。
危機的な状況でも、きっちり成果を持ち帰るあたりは本当に彼女らしい。芳村とのコンビの安定感も改めて感じられた。
後半では、いじめの加害者が存在そのものを消されるという恐ろしい事件が起こる。
この展開はかなり衝撃的だった。
単純な勧善懲悪では済まされず、「人が存在ごと消える」という異常さに、ミサキサマの危険性を改めて実感した。
だからこそ、芳村が消えた生徒を救うため、自ら危険を承知でミサキサマへ向かう姿には強く惹かれた。
神話級モンスター・ウロボロスとの戦いも迫力があり、久しぶりに探索者としての芳村の格好良さを存分に味わえた。
そして、今回一番興味深かったのは、ゲートストーンの生成方法である。
「祈り」によって未知のアイテムが生み出されるという、これまでの科学的な考察とは少し違うアプローチには驚かされた。
ただ、それを「便利だから使おう」で終わらせず、安全性や社会への影響まで細かく検証しようとする姿勢は、この作品らしい魅力だと感じる。
普通の作品なら万能アイテムとして終わるところを、「社会へどう導入するか」まで考えるからこそ、『Dジェネシス』は読んでいて面白い。
今回も派手な戦闘だけでなく、ダンジョンが社会に与える影響や、新技術をどう受け入れていくのかという考察が存分に楽しめた。
ゲートストーンが実用化されれば、ダンジョン探索だけでなく世界そのものが大きく変わるはずだ。その未来を芳村たちがどう切り開いていくのか、次巻がますます楽しみになる一冊だった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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Dジェネシス10巻レビュー
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Dジェネシス12巻レビュー
考察・解説
Dカードの全件配布
本作における「Dカードの全件配布」は、ダンジョンの意志である「ダンつくちゃん」との接触をきっかけに、日本国籍を持つすべての未所持者へ強制的にDカードが与えられた未曾有の異常事態として描かれている。
発端となった奉仕の準備と魔物消失現象、意識へのアクセスによる国籍の視覚化、念話の解放がもたらした人間関係破壊の危機、政治家の言い訳崩壊とステータス隠蔽の失敗、そしてミサキサマへの接続に伴う経済崩壊にいたる全容は以下の通りである。
ダンつくちゃんへの発言を発端とする配布と日本全国の魔物消失現象
渋谷での大混乱の際、D交流準備室のメンバーがダンつくちゃんに対し、国民に奉仕する準備をすることを認める、と伝えたことが引き金となった。
・ダンつくちゃんが想定する人類への奉仕(奇跡の提供)は、Dカードを所持していることが前提条件であった。
・そのため、その準備段階として一億人を超える日本国民へ一斉にDカードが配布された。
・この際、膨大な数のカードを生成するためのDファクターが消費されたとみられる。
・結果として、日本全国のダンジョンからモンスターと魔結晶が一時的に消失する現象が起きた。
住基ネットではなく意識へのアクセスが示唆する厳密な国籍限定
配布対象は日本国土にいる人間ではなく、日本国籍を有する者に正確に限定されており、外国人は対象外であった。
・さらに、重国籍を認めていない日本のルール(国籍留保者には配布されないなど)が反映されている。
・その一方で、戸籍情報がデジタル化されていない自治体(加茂市や御蔵島村)でも配布された。
・このことから、物理的なネットワーク(住基ネットなど)へのハッキングではないことが判明する。
・ダンジョン側が対象者の、自分が日本人であるという意識、そのものにアクセスし、国籍を視覚化してしまった可能性が示唆された。
一般人の念話使用に伴う本音の漏洩とAC広告による異例の呼びかけ
国民全員がDカードを得たことで、誰もがパーティを組んで念話(テレパシー)を使える状態になった。
・訓練を受けていない一般人が不用意に念話を使えば、隠すべき本音や悪意が漏れ伝わる。
・これにより、親子や友人などの人間関係が取り返しがつかないほど破壊される危険性があった。
・事態を重く見た政府は、AC広告を通じてDカードの使用や未成年者の所持を控えるよう異例の呼びかけを行った。
高齢を理由とした開示拒否の破綻とステータス保護法制定への動き
Dカードの全件配布は、政界にも大きな打撃を与えた。
・以前からステータス計測デバイスによる政治家の能力可視化が問題となっていた。
・高齢の政治家たちは、高齢でモンスターを倒せないためDカードを持てない、という理由でステータス開示を拒否する戦術をとろうとしていた。
・しかし、全員にカードが配られたことでその言い訳が通用しなくなる。
・与党内ではステータス保護法の制定や、自身の能力を底上げするファンタジー金属製の指輪の確保が急務となった。
鳥居型マイクロダンジョンの出現と数万人規模の宝くじ一等当選
この全件配布により、国民はDカード所持を条件とする超常的なインフラに接続されることになった。
・その代表例が、日本各地の路上や空き地に突如出現した、ミサキサマ、と呼ばれる鳥居型のマイクロダンジョンである。
・Dカードを持つ者はパーティを組んでこの鳥居をくぐり、生涯に一度だけ願いを叶えることが可能となった。
・結果として、宝くじの一等当選者が数万人規模で発生するなど、社会常識や経済ルールを根本から破壊するさらなる混乱の引き金となった。
まとめ
Dカードの全件配布は、ダンジョンの圧倒的なテクノロジーが人類の既存システムを強制的に上書きした象徴的な大事件である。デジタルネットワークを超越して厳密な国籍を識別した配布プロセスや、不用意な念話解放による精神的インフラの崩壊危機、そして政治家たちの能力可視化という権威の失墜を招いた。さらに、ミサキサマという超常的な願望成就システムの出現が経済秩序を根本から揺るがすなど、単なるファンタジー能力の付与に留まらず、法律、政治、人間関係にいたる現代社会の骨組みそのものを根底から変貌させた決定的な転換点として描かれている。
モンスターの消失
本作における「モンスターの消失」は、ダンジョンが「さまよえる館」の生成や、人類に対する大規模な干渉(奇跡)を行う際に、莫大なエネルギー源である「Dファクター」を捻出するために引き起こされる現象として描かれている。
さまよえる館出現時の還元プロセス、横浜ダンジョンでの核爆発エネルギーの吸収と転送への利用、そしてDカード全件配布に伴う全国規模の消滅現象にいたる全容は以下の通りである。
同一種373体の討伐を契機とする隠しエリア出現と周辺領域の還元
代々木ダンジョン十層などで確認された現象である。
・一日のうちに同一モンスターを373体討伐することで隠しエリアである、さまよえる館、が出現する。
・その出現する瞬間、周辺のかなり広範囲にわたる領域からモンスターが完全に消失する。
・これは、館という巨大な建造物と空間を出現させるために必要な大量のDファクターを、周囲に存在するモンスターを還元することで賄っているためだと推測されている。
小型核爆弾の無効化と芳村らの代々木三十一層への空間転送
横浜ダンジョン二層でマルチヘッデッドクリーナーとスライムが異常増殖した際、事態の収拾を図るアメリカのファルコン・インダストリーによって極秘裏に小型核爆弾が持ち込まれた。
・しかし、起爆時刻を過ぎても爆発は起きなかった。
・地下二階からは溢れかえっていたはずのモンスターが完全に消滅し、放射線も爆発の痕跡も一切残されていなかった。
・その真相は、ダンジョンの意志が核爆発のエネルギーや放射性物質、そして大量のモンスターをすべてDファクターへと還元したためである。
・その膨大なエネルギーを利用して、芳村たちを代々木ダンジョン三十一層へ転送(分解、再構成)した。
一億人超へのシステム干渉に伴う保管済み魔結晶の同時消滅
渋谷でダンジョンの意志(ダンつくちゃん)が日本政府関係者と接触し、国民に奉仕する準備、として日本国籍を持つすべての未所持者へ強制的にDカードを配布した際にも、最大規模の消失が起きた。
・1億人を超える国民へ一斉にカードを生成、配布するためには天文学的なDファクターが必要であった。
・そのリソースとして、日本全国のダンジョンからモンスターが一斉に消失した。
・さらに、各研究機関等に保管されていた魔結晶も同時に消滅するという、一種の、ダンジョンリセット、現象が引き起こされた。
まとめ
モンスターの消失は、ダンジョンが通常ではあり得ない超常的な事象を実行する際、そのリソースとなるDファクターを既存のオブジェクトから強制的に徴収した痕跡である。さまよえる館の空間生成や、核爆破エネルギーまでをも取り込んだ超長距離の空間転送、さらには一億人規模へのDカード強制付与と魔結晶の消滅にいたるまで、システム側が上位の目的を果たすためにダンジョン内の全リソースを一瞬で再配置する機構の強力さと冷徹さを物語っている。
渋谷のタイラー博士
本作における「渋谷のタイラー博士」の騒動は、D交流準備室の軽率な行動をきっかけとして、未知の存在が白昼の東京に顕現し、各国の諜報機関を巻き込んだ激しい争奪戦と国際政治の混乱を引き起こした重大な事件として描かれている。
独断でのデート提案が生んだスクランブル交差点での銃撃戦、自衛隊による確保と走行中の車内からのテレポート消失、SNS拡散に伴うアメリカ大統領の安全保障上の懸念、日本政府による苦しい隠蔽工作、そしてDファクター密度に基づいた顕現理由の考察にいたる全容は以下の通りである。
ダンつくちゃん質問箱への独断提案とスクランブル交差点での各国諜報戦
事の発端は、国家安全保障局のD交流準備室のメンバーである杉田が、未知の存在との交渉窓口であるダンつくちゃん質問箱を通じて、独断で渋谷での日曜デートを提案してしまったことであった。
・その結果、日曜日の渋谷スクランブル交差点に空間の裂け目が生じる。
・少女(ダンつくちゃん)と共に、かつてネバダの事故で死亡したはずのセオドア=ナナセ=タイラー博士の姿をした存在が顕現した。
・しかし、この情報を事前に嗅ぎつけていたアメリカ、フランスなどの各国諜報機関や、デヴィッド率いるカルト教団などが現場に集結していた。
・これにより、白昼の渋谷でスモークグレネードや銃弾が飛び交う激しい争奪戦へと発展してしまった。
自衛隊車両による車中への押し込みと車載カメラ直後の不可解なテレポート
混乱の中、日本人と思しき護衛らがタイラー博士を守るべく行動した。
・最終的に日本側(自衛隊)が彼を車に押し込んで確保することに成功する。
・しかし、車載カメラには直前まで彼の姿が映っていたにもかかわらず、走行中の車内から幻のように忽然と姿を消してしまった。
・このテレポートとも言うべき現象は物理的な法則を無視しており、関係者に大きな衝撃を与えた。
SNSによる世界的な映像拡散とネバダ実験事故の秘密露見への恐れ
現場が東京有数の繁華街であったため、タイラー博士や銃撃戦の様子は数多くの一般人によって撮影され、SNSを通じて世界中へ大量に拡散された。
・アメリカのハンドラー大統領やCIAは、映像の男がタイラー博士であることに気づく。
・かつてダンジョン発生の引き金となったネバダでの実験事故の秘密が露見することを恐れた。
・さらに大統領は、タイラー博士の姿を真似てどこにでも現れたり消えたりできる存在に対し、安全保障上の極めて深刻な脅威を抱くことになった。
他人のそら似とする首相答弁と事実のみを押し通す公式回答の真相
この事件を受け、中国やアメリカをはじめとする各国は日本政府に激しい説明を求めた。
・しかし、井部首相は、地球人がいきなり消えるはずはなく他人のそら似である、とする。
・日本政府の公式回答として、確保した男は消えてしまったため話ができない、という事実のみを押し通し、真相の隠蔽を図った。
・日本政府としても、ダンジョンの向こう側の存在との接触という事実を公式に認めるわけにはいかなかったのである。
地球上のDファクター密度の変化と未知の存在側の焦りや限界の考察
一方で、芳村と三好は、なぜタイラー博士が今まで現実世界に姿を現さず、今回急に現れたのかについて考察している。
・三好は、ダンジョン発生初期には地球上のDファクター密度が低く、外部に実体を顕現させることが物理的に不可能だったのではないかと推測した。
・また芳村は、近ごろダンジョン側の動きが積極的になっていることから、未知の存在側に何らかの焦りがあるか、あるいは限界が近づいている可能性があると考えている。
まとめ
渋谷のタイラー博士騒動は、安易なアプローチが引き金となり、現実世界の物理法則や国際秩序を根底から揺るがす事態へと発展した象徴的な事件である。白昼の渋谷で勃発した各国の激しい争奪戦や、自衛隊の追跡を逃れた超常的な消失現象は、現代科学の常識を遙かに超越している。ネバダの過去を隠蔽したいアメリカの動揺や、事実の隠蔽を余儀なくされた日本政府の外交的窮地は、ダンジョンがすでに一国の安全保障の枠組みを崩壊させつつある現実を物語る。Dファクターの密度上昇による現実世界への干渉強化という分析を含め、この顕現はダンジョン側の変化や限界を示唆する極めて重要な転換点となっている。
外交と情報戦
本作における「外交と情報戦」および「ダンジョン資源の政治的利用」は、未知の存在や規格外の資源を巡って、世界のパワーバランスを維持・拡大しようとする国家間の駆け引きや、水面下の諜報活動として描かれている。
渋谷騒動を発端とする隠し外交から、Dカード配布が突きつけた情報安全保障の敗北、政治家のステータス隠蔽工作、超常的な資源の政治的利用、そして兵器転用による核抑止体制の崩壊にいたる全容は以下の通りである。
渋谷スクランブル交差点での銃撃戦とテレポート消失に伴う日本政府の事実答弁
D交流準備室のメンバーがダンつくちゃん質問箱を通じて軽率なメッセージを送った結果、渋谷にダンジョンの向こう側の存在であるタイラー博士が顕現した。
・このコンタクト情報は事前に漏洩しており、フランスの特殊部隊やカルト教団の教祖デヴィッド、各国の諜報機関が現場に集結して白昼の銃撃戦を引き起こし、日本の機密管理の甘さが露呈する。
・日本側はタイラー博士を確保したものの、彼は走行中の車内からテレポートで消失してしまう。
・この事態に対し、中国の程大使やアメリカのヤング公使から激しい説明要求を受けた井部首相は、確保した男は消えてしまったため話ができない、という事実のみを押し通した。
・カバーストーリーを用いて他国からの追及をかわす徹底した隠蔽外交を行った。
戸籍未デジタル化地域の識別が示す意識アクセスと閉鎖系ネットワークへの侵入
ダンジョンの意志によって引き起こされたDカードの全国民配布は、日本の国土にいる人間ではなく、日本国籍を有する者のみを対象に正確に行われた。
・戸籍のデジタル化が済んでいない自治体の住民や、重国籍に関する複雑な事情を持つ者まで判別されていた。
・このことから、ダンジョン側が住基ネットなどの閉鎖系ネットワークへ侵入したか、あるいは人間の意識そのものに直接アクセスしている可能性が浮上した。
・これは、地球側のあらゆる機密情報や国家戦略がダンジョン側に筒抜けであることを意味している。
・万が一戦争になれば絶対に勝ち目がないという、情報戦における決定的な脅威を日本政府に突きつけた。
ステータス保護法による法的な隠蔽と官房報償費を投じた指輪の全力入札
Dカードの全件配布やステータス計測デバイスの登場は、国内の政治基盤にも深刻な情報戦と政治利用を引き起こした。
・国民全員がDカードを得たことで、高齢の政治家が、Dカードを取得できないから、という理由でステータス開示を避ける戦術が通用しなくなった。
・能力の低さが数値として可視化されれば致命的なイメージダウンに直結するため、与党内では急遽、個人情報保護法とは別枠のステータス保護法の制定による法的な情報隠蔽に奔走する。
・さらに、装備するだけでINTなどのステータスが上昇するファンタジー金属製の指輪に政治家たちが群がった。
・首相官邸すらも、選挙対策や体面維持のために官房報償費を投じてオークションで全力入札を行うなど、個人的な権力維持のための政治利用が常態化している。
オカルトサイトを用いた情報公開と探索者ルートを迂回する非公式な情報戦
井部首相は、アメリカと中国の特命全権公使・大使との秘密会談において、日本がダンジョンの向こう側の存在から人類への奉仕を目的としているとの情報を得ていたことを明かした。
・さらに、誰も本物だと信じないオカルトサイトであるダンつくちゃん質問箱が、実は未知の存在へリーチできる唯一の外交窓口であることを提示する。
・国家がサイトを検閲・閉鎖すれば逆に陰謀論を招くという大衆リテラシーの逆手を取ったこの方法は、現代のネット社会の特性を利用した新たな外交と情報公開のあり方を示している。
・また、アメリカのトップ探索者であるサイモンは、CIAやNSAの分析報告書およびエコテロリスト(ELF)の名簿が入ったUSBメモリを、正式な外交ルートを通さずに直接芳村へと手渡した。
・芳村や三好は、この背後にアメリカの諜報機関の釣り針(探り)の意図を感じ取り、国家間の駆け引きに巻き込まれることを避けるため、受け取った情報をそのまま内閣情報調査室の某田中へ丸投げする判断を下した。
ウケモチ・システムを巡る穀物メジャーの暗躍と二十四層ドロップ品の独占要求
ダンジョンで発見された無限にリポップする小麦を利用したウケモチ・システムは、FAO(国連食糧農業機関)の高官らによって、世界の飢餓を解決する手段として注目された。
・これは途上国への支援を通じて国際社会における発言力を高める政治的な武器となる一方で、既存の穀物メジャーにとってはビジネスモデルを破壊する致命的な脅威であった。
・そのため、穀物メジャーのCEOなどは背後で過激な活動家に資金を提供し、ダンジョン産作物の危険性を煽るネガティブキャンペーン(排斥運動)を仕掛けることで、その普及を阻止しようと暗躍した。
・また、マイニングスキルによって特定の鉱物が無尽蔵に得られることが判明すると、国家間で激しい資源獲得競争が起きた。
・とくに二十四層でファンタジー金属がドロップすることが確認されると、防衛省関係者はこれを日本だけが独占可能な軍事戦略物資と位置づけ、他国に対する戦略的優位性を守るためにJDAに対して情報公開の中中止を強く要請した。
・さらに、アメリカのダンジョン攻略局(DAD)は、三十二層における発電設備用の燃料(LNG)輸送を極秘裏にDパワーズへ依頼することで、現地の電力インフラを事実上支配し、日本のJDAに対して発言力を高めようと画策した。
プルトニウムガリウム合金の採取と核中核物質の強制消去による相互確証破壊の崩壊
ダンジョン資源は兵器開発やテロにも直接的に悪用された。
・防衛装備庁はファンタジー金属を用いた試作銃弾を開発し、これまでのダンジョン戦術の常識を覆す攻撃力を確認した。
・さらに、テロリストがマイニングの特性を悪用してプルトニウムガリウム合金をドロップさせ、小型核爆弾を製造する事件が発生した。
・この危機を防ぐための代償として地球上の核中核物質が強制消去された結果、核抑止体制(MAD)は崩壊し、世界は新たな軍実に伴うパワーバランスへの移行を余儀なくされた。
まとめ
本作における外交、情報戦、およびダンジョン資源の政治的利用は、未知のシステムと超常的な富が既存の地球秩序を根底から解体していく過程を冷徹に描き出している。渋谷の銃撃戦やテレポート消失といった物理法則の無視に対して、日本政府は隠蔽と事実のみを押し通す答弁で応じ、ダンジョン側による意識アクセスという圧倒的な情報優位の前に国家の安全保障は事実上の敗北を喫した。さらに、政治家たちが自己のステータス可視化を防ぐために法案や能力向上アイテムの確保に奔走する一方で、無限の食糧資源を巡る穀物メジャーの暗躍や、ファンタジー金属の独占を巡る防衛省の暗闘が繰り広げられた。最終的に、マイニングの悪用によるプルトニウムドロップと、それに続く地球上の核物質消去という奇跡が相互確証破壊の抑止体制を完全に崩壊させたことは、ダンジョンという超常の存在が人類の権益や欲望を燃料としながら、世界のパワーバランスを強制的に再編している現実を強烈に物語っている。
ミサキサマと願いの成就
本作における「ミサキサマ」は、日本中の至る所に突如出現した赤い鳥居型のマイクロダンジョンであり、一生に一度だけ願いを叶えてくれるという超常的なシステムとして描かれている。
木札の生成と試練の発生条件、確率崩壊と通貨創造による経済の破壊、存在の抹消と記憶の書き換え、そして芳村や各国探索者による挑戦とウロボロス戦にいたる全容は以下の通りである。
Dカード所持者を対象とする異空間の参道と過剰な願望に対する試練
Dカードを持つ者が鳥居をくぐると、無数の鳥居が続く異空間の参道へ移動し、その先の境内で願いを記した木札が現れる。
・願いが成就すると元の世界へ帰還できる仕組みであるが、どんな願いでも無条件で叶うわけではない。
・過剰な願いの失敗:例えば、百億円欲しい、といった現実離れした願いの場合、木札が真っ黒に塗りつぶされて願いは叶わず、強制的に元の場所へ戻される。
・試練の発生:アイテムボックスのような希少スキルや、世界ランク一位になれる力、を願った場合、それをドロップする強力なモンスターが目の前に現れる。
・モンスターを倒せなければ、一瞬でバラバラにされたり溶かされたりして死を経験し、失敗に終わる。ただし、ミサキサマの空間での死は現実の死ではなく、元の場所へ戻されるだけである。
ロト6の二万口同時当選と滞納額に応じた紙幣の創造に伴う通貨偽造
ミサキサマの噂が広まると、多くの人々が欲望のままに鳥居をくぐり、社会に深刻な影響を及ぼした。
・ロト6の確率崩壊:数万人規模の人間が宝くじの当選を願った結果、ロト6の一等が二万口以上も出現し、配当がわずか三万七千円にまで下落するという数学的にあり得ない異常事態が発生した。
・通貨の創造:携帯料金の支払いを願った女子高生には、滞納額と全く同じ三万二千円が入った封筒が与えられた。
・これはダンジョンによる事実上の通貨偽造であり、本物の紙幣と区別がつかないため経済の根本を揺るがす現象であった。
加害者の物理的失踪と周囲の人々の記憶からの完全な消去
最も恐るべき願いの成就は、女子高生間のいじめ問題に端を発した存在の消滅である。
・いじめの被害者が、加害者である吉本樹がいなくなってほしい、と願った。
・その結果、加害者は物理的に失踪しただけでなく、周囲の人々の記憶からも完全に消し去られた。
・ダンジョンが人一人の存在を世界から消し、人々の記憶すら書き換える力を持つことが示され、芳村と三好に強い危機感を抱かせた。
巨大蛇ウロボロスとの激闘による奪還とゲートストーン製法碑文の入手
この事態に対し、トップ探索者たちもそれぞれの目的でミサキサマに挑んでいる。
・芳村と三好の介入:芳村たちは消された吉本を取り戻すため鳥居をくぐった。巨大な蛇の怪物ウロボロスと対峙した芳村は、激闘の末に運命の輪を断ち切ることに成功し、吉本を現実世界へ帰還させた。
・また三好は、攻略インフラとしてダンジョン内を自由に移動できるゲートストーンを願い、そのサンプルと製法を記した碑文を入手した。
・サイモンチームの挑戦:アメリカのサイモンチームも各々の願いを胸に挑んだ。
・ジョシュアが、自衛隊が隠しているものを知りたい、と願いダイアウルフを倒してファンタジー金属を得た。
・その一方で、タイラー博士との面会を願ったサイモンは時間切れとなり、他のメンバーも強敵の前に敗北して願いを叶えることはできなかった。
まとめ
ミサキサマの存在は、人類に奇跡を提供するという名目でありながら、結果として経済ルールや人間関係、さらには人の命と記憶という世界の基盤までをも無差別に破壊しかねない、ダンジョンの恐るべき干渉である。過剰な願望に対する容赦のない試練や、宝くじの確率崩壊、通貨創造による経済インフラへの打撃に留まらず、人間の存在と記憶を丸ごと消去する書き換え能力は現代社会に最大の脅威を突きつけた。芳村らによるウロボロス討伐と吉本の奪還、ゲートストーン技術の確保、そして米国チームの死闘が示す通り、この鳥居型ダンジョンは個人の欲望を反映した奇跡と試練の場であり、地球の秩序を揺るがす強力なシステムとして君臨している。
ゲートストーンの開発と運用
本作における「ゲートストーンの開発と運用」は、三好がミサキサマへの願いによって得たインフラ構想を起点に、芳村の規格外な能力による非科学的な開発プロセスを経て、ダンジョン探索の前提を根本から覆す転移アイテムが実用化されていく過程として描かれている。
ミサキサマへの願いと製法碑文の入手、メイキングスキルに依存する属人的な祈りの開発プロセス、機能特性と維持に必要なフィボナッチ数列の魔力、そして悪用懸念に対する銀行方式やバス方式による慎重な運用案にいたる全容は以下の通りである。
誰もが移動できる攻略用インフラの願望と使い捨てサンプルの入手
三好は、ダンジョンの至る所に現れたマイクロダンジョンであるミサキサマにおいて、個人に従属する転移スキルではなく、誰もがダンジョン内を自由に移動できる攻略用インフラを願った。
・その結果、使い捨てのゲートストーンのサンプルと、その作り方が記された碑文を入手することに成功する。
・鳴瀬美晴が翻訳した碑文には、水晶のフラスコやプラチナの触媒を用いるといった、中世の錬金術めいた製法が記されていた。
魔結晶と石への気楽な語りかけによる変化とメイキングスキルへの依存
芳村は、製法の本質が、ダンジョンの石にDファクター(魔結晶)を込め、強く祈ること、だと仮説を立てた。
・実際に代々木ダンジョン一層で、芳村が魔結晶と石に向かって、友達へ頼むように、気楽に語りかけた結果、魔結晶が消滅し、石がゲートストーンへと変化した。
・ただし、この現象は三好が同じ言葉を唱えても発生しなかった。
・そのため、芳村のメイキングスキルに依存する属人的な能力である可能性が高いことが判明する。
割れた碁石状の形状とフィボナッチ数列に従う維持魔力の増加仕様
生成されたゲートストーンは割れた碁石のような形状をしており、魔力を込めることで芳村のみに設定メニューが表示される。
・移動先の相対、絶対座標、距離、階層などを設定し、魔力と時間を指定することで、二つの空間を距離ゼロで繋ぐ紫色の光の幕(ゲート)を開くことができる。
・ゲートの縦横比は黄金比であり、短辺の長さがフィボナッチ数列に従って大きくなるほど、維持に必要な魔力も増加する仕組みとなっている。
・一度使用すると砂のように崩れ去る、使い捨てのアイテムである。
銀行の金庫破りなどの悪用警戒とJDAによる帰還用管理および定期便案
ゲートストーンはダンジョン外でも使用できる可能性があり、銀行の金庫から金を持ち出すなど、社会の前提を崩壊させる悪用の危険性が懸念された。そのため、DパワーズとJDAは既存の流通や経済、法律を破壊しないための慎重な運用方針を模索する。
・固定ゲートと銀行方式:あらかじめ移動先を一層の入り口付近などに固定設定した帰還ゲートとして運用し、探索者IDと個数を記録してJDAが一括管理する銀行方式を採用することで、悪用を防ぎつつ探索者の死亡事故を減らすことを目指す。
・バス方式(定期便):二十一層や三十二層などの特殊な階層へ向かうゲートは、JDA管理のもとで時刻表に従って開く定期便であるバス方式として運用する案が浮上した。
・価格設定による既存経済への配慮:帰還ゲートは安価に設定する一方、階層移動用ゲートを安くしすぎると既存の護衛探索者の仕事を奪ってしまうため、移動コストの倍以上の高価格に設定することが検討された。
・実証実験の必要性:同時に複数人が同じゲートをくぐった際の接触事故や、乗り物が通行する際の衝突、妨害対策など、インフラとして安全に運用するための実証実験が不可欠であるとされた。
まとめ
ゲートストーンの開発と運用は、一個人の異常な能力によって生み出された奇跡の産物を、社会や経済システムに致命的な混乱を与えずにどう安全なインフラとして実装していくかという、地に足の着いたプロセスとして描かれている。三好の先見性と芳村のメイキングスキルによって誕生した転移石は、フィボナッチ数列に基づく厳密な仕様を持つ使い捨てアイテムでありながら、犯罪への悪用や既存の探索者経済を破壊しかねない諸刃の剣でもある。これをJDA主導の銀行方式やバス方式といった緻密な管理体制に落とし込み、安全対策の実証実験を重ねながら社会へ適応させようとするアプローチは、超常の力を現実的な制度設計で制御する重要性を物語っている。
Dパワーズによる基金設立
本作における「Dパワーズによる基金設立」は、規格外の利益を得た芳村圭吾と三好梓が、ダンジョン関連コミュニティへの利益還元や未知の技術の普及を目的に立ち上げた大規模な支援事業として描かれている。
基金設立の目的と背景にある研究投資、オープンイノベーション促進税制に合わせた100億円規模の原資、国際機関への4500万ドルの即決資金提供、そしてJDAの斎賀課長による後援対応にいたる全容は以下の通りである。
ウケモチ・システムの普及と作物のダンジョニング研究への投資
三好梓が主導して設立を構想したこの基金は、ダンジョン関係者への利益還元を主な目的としている。
・具体的な支援先としては、WDAのDFA(食品管理局)代々木支部の立ち上げ資金が挙げられる。
・また、無限の食糧供給を可能にするウケモチ・システムの普及も目指している。
・さらには、作物のダンジョニング(ダンジョン環境への適応)に関する研究への投資などが想定されている。
スキルオーブ落札のバイヤーズプレミアムと研究開発税制を狙ったタイミング
基金の規模は、一介の探索者パーティの事業部が扱うには常軌を逸した当面100億円規模に設定された。
・この莫大な資金の原資には、超巨額で落札された異界言語理解のスキルオーブから得たバイヤーズプレミアム(約10パーセント)などが充てられている。
・また、設立のタイミングは4月1日から施行される研究開発税制の優遇拡充(オープンイノベーション促進)に合わせられている。
・これにより税制上の控除枠を最大限に活用する近江商人である三好らしい計算が働いている。
FAO高官への4500万ドル提供による貧困解決プロジェクトの後押し
この基金の最初の大きな動きとして、FAO(国連食糧農業機関)の高官アンブローズ・メイガス博士への資金提供が挙げられる。
・アンブローズ博士は、ウケモチ・システムを世界に普及させるため、IFAD(国際農業開発基金)の民間セクター投資を利用したプロジェクト承認を狙っていた。
・しかし、資金の保証がないことがネックであった。
・そこで三好は、この基金から当面4500万ドル(約50億円)まで自由に使ってよいと即決で資金提供を約束した。
・これにより、世界規模の貧困解決プロジェクトを直接的に後押しすることとなった。
JDA斎賀課長への仁義切りと主導権を放棄した現実的後援対応
Dパワーズはこの基金設立にあたり、JDAに許可を求めるのではなく、単に筋を通して連絡するという形をとった。
・報告を受けたダンジョン管理課の斎賀課長は、その規模がJDAの既存の支援制度とは桁違いであることに苦笑する。
・JDAとして下手にイニシアチブを取りに行けば面倒な事態を招くと判断した。
・そのため、JDAは後援程度にとどめるのが妥当であるという現実的な対応をとることになった。
まとめ
Dパワーズによる基金設立は、彼らが単なるダンジョン探索者にとどまらず、莫大な資金力をもって世界の食糧問題や研究開発を直接的に牽引するパトロンへと変貌していく過程を象徴する出来事である。異界言語理解のスキルオーブから得た巨額の利益を原資とし、税制優遇のタイミングを見計らって立ち上げられた100億円規模の基金は、すでにFAOやIFADといった国際機関の貧困解決プロジェクトを動かすほどの機能を発揮している。JDAへの報告が単なる事後連絡に近い形で処理され、管理側が後援に回らざるを得なかった事実が示す通り、彼らの経済的・政治的影響力は既存の国内インフラの枠組みを遙かに超越しており、ダンジョン資源を用いた世界規模のイノベーションを主導する絶対的な足掛かりとなっている。
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Dジェネシス10巻レビュー
Dジェネシスまとめ
Dジェネシス12巻レビュー
登場キャラクター
合同会社Dパワーズ
芳村圭吾
元ブラック企業の社員であり、三好梓とともに合同会社Dパワーズを設立した探索者である。ダンジョンの常識を覆す規格外の能力を持っている。
・所属組織、地位や役職
合同会社Dパワーズ・探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
深深度ダンジョンの縦穴に鉄筋を落としてボスを倒し、超希少スキル〈メイキング〉を獲得した。ミサキサマの空間に赴き、神話的モンスターのウロボロスと対峙している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界ランク1位の探索者として広く認知されている。
三好梓
合同会社Dパワーズの代表社員を務める女性である。情報収集や分析に長けており、芳村のサポートを行っている。
・所属組織、地位や役職
合同会社Dパワーズ・代表社員。
・物語内での具体的な行動や成果
世界唯一の〈鑑定〉スキルを用いてステータス計測デバイスの開発を行った。ミサキサマへの願いを通じてゲートストーンの仕組みを入手している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ダンジョン資源のオークションを通じて巨万の富を築いた。
日本ダンジョン協会(JDA)
斎賀
JDAダンジョン管理課の課長である。現実的な対応策を模索する実務家としての側面を持つ。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会・ダンジョン管理課課長。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズが持ち込む事案の処理やセーフエリアの区画割り当ての調整を行った。核物質持ち出しの危機に際して公安や自衛隊と連携している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
Dパワーズの行動に振り回されつつも、組織の窓口として重要な役割を果たしている。
鳴瀬美晴
JDAダンジョン管理課の専任管理監である。Dパワーズが関わる規格外の事象に頻繁に巻き込まれる。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会・ダンジョン管理課課長補佐待遇・専任管理監。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズが持ち込んだ〈異界言語理解〉を使用し、碑文翻訳サイト「ヒブンリークス」の翻訳を担当した。ゲートストーンの転移実験にも同行している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
Dパワーズの専任管理監に就任し、歩合制により莫大な賞与を得る見込みとなる。
九条紗香
JDAダンジョン管理課に所属する職員である。斎賀の秘書的な役割を担っている。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会・ダンジョン管理課職員。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョンにおけるモンスターの突然の消失をまとめて斎賀に報告した。他部署や外部からの連絡を斎賀に取り次いでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
坂井
JDAダンジョン管理課の主任である。斎賀の部下として多忙な実務をこなしている。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会・ダンジョン管理課主任。
・物語内での具体的な行動や成果
大学入試対策委員会に出席し、ステータス計測デバイスの調達実務を担った。セーフエリアの区画割り振り作業にも従事している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
橘
JDAダンジョン管理部の部長である。斎賀の上司にあたる。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会・ダンジョン管理部部長。
・物語内での具体的な行動や成果
巨額の資金が動いた〈収納庫〉オーブの取引詳細を斎賀に確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
吉田
JDA振興課の課長である。
・所属組織、地位や役職
日本ダンジョン協会・振興課課長。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズによる基金設立の報告を受けた斎賀が、連絡先として名前を挙げている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
D交流準備室
成宮
国家安全保障局のD交流準備室に所属する若手官僚である。
・所属組織、地位や役職
国家安全保障局・D交流準備室。
・物語内での具体的な行動や成果
渋谷での騒動後、各省庁からの問い合わせ対応やカバーストーリーの作成を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
杉田
国家安全保障局のD交流準備室に所属する官僚である。奇矯な行動をとることがある。
・所属組織、地位や役職
国家安全保障局・D交流準備室。
・物語内での具体的な行動や成果
「ダンつくちゃん質問箱」で独断でデートを提案するメッセージを送信した。Dカードの配布対象が日本国籍者に限定されている点に着目している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
村越
国家安全保障局のD交流準備室に所属する女性官僚である。
・所属組織、地位や役職
国家安全保障局・D交流準備室。
・物語内での具体的な行動や成果
杉田の突拍子もない言動にツッコミを入れつつ、問い合わせ対応の業務をこなしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
三井
国家安全保障局のD交流準備室に所属する常識的な性格の官僚である。
・所属組織、地位や役職
国家安全保障局・D交流準備室。
・物語内での具体的な行動や成果
渋谷事件の分析や関係省庁からの問い合わせ対応を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
日本政府・政治家
井部
日本国の総理大臣である。
・所属組織、地位や役職
日本政府・内閣総理大臣。
・物語内での具体的な行動や成果
アメリカのハンドラー大統領から横浜ダンジョンにおける核使用の可能性を通告された。米中代表との秘密会合において、日本が未知の存在から情報を得ていたことを明かしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
甘利明
自民党の選挙対策委員長である。
・所属組織、地位や役職
与党・選挙対策委員長。
・物語内での具体的な行動や成果
Dカードの全件配布に伴い、政治家のステータス開示に関する問題について井部首相と協議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
村北
内閣情報調査室の内閣情報官である。政府の諜報や情報収集を統括する。
・所属組織、地位や役職
内閣情報調査室・内閣情報官。
・物語内での具体的な行動や成果
井部首相に対し、今後の日本外交の基盤となる資料を提出した。横浜ダンジョンでの危機においては、不発弾処理を名目とした避難計画の立案に関与している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
葉山
文部科学省出身の参議院議員である。
・所属組織、地位や役職
参議院議員。
・物語内での具体的な行動や成果
陸連の浦辺からダンジョンブートキャンプの枠確保の要請を受けていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
内谷
国家安全保障局長である。
・所属組織、地位や役職
国家安全保障局・局長。
・物語内での具体的な行動や成果
D交流準備室の設立を主導した。深夜に井部首相から官邸に呼び出され、横浜ダンジョンでの危機対応を協議している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
道槌
防衛政策局長である。
・所属組織、地位や役職
防衛省・防衛政策局長。
・物語内での具体的な行動や成果
村北内閣情報官から特別会談のためのブリーフィングを受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
野河
統合幕僚長である。
・所属組織、地位や役職
防衛省・統合幕僚長。
・物語内での具体的な行動や成果
村北内閣情報官からのブリーフィングに参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
田中
内閣情報調査室に所属する諜報員である。
・所属組織、地位や役職
内閣情報調査室・諜報員。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村と三好に対して海外渡航の自粛要請を伝達した。日比谷での核テロ未遂事件においては、現場の指揮を執りテロリストとの交渉を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
山柴
文部科学大臣である。
・所属組織、地位や役職
日本政府・文部科学大臣。
・物語内での具体的な行動や成果
井部首相が米中代表と密会する際、表向きの理由として随行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
耕世
経済産業大臣である。
・所属組織、地位や役職
日本政府・経済産業大臣。
・物語内での具体的な行動や成果
井部首相の密会時、表向きの随行員として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
藤衛
総理大臣補佐官である。
・所属組織、地位や役職
日本政府・総理大臣補佐官。
・物語内での具体的な行動や成果
井部首相の密会に表向きの理由として同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
生田萩
幹事長代行である。
・所属組織、地位や役職
与党・幹事長代行。
・物語内での具体的な行動や成果
井部首相の密会時に同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
藤新
政務調査会長代理である。
・所属組織、地位や役職
与党・政務調査会長代理。
・物語内での具体的な行動や成果
井部首相の密会に同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
佐山
元農研機構の研究員であり、後にJDAへ転職する人物である。
・所属組織、地位や役職
農研機構・研究員から日本ダンジョン協会・職員へ転職。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョン二十一層でエリアボスを討伐し、〈森の王〉のスキルを獲得した。Dパワーズから〈収納庫〉を与えられている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
その能力を評価され、破格の待遇でJDAへ迎え入れられた。
常磐医療機器研究所・関連研究者
翠
常磐医療機器研究所の所長であり、鳴瀬美晴の姉である。
・所属組織、地位や役職
常磐医療機器研究所・所長。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズからの依頼でステータス計測デバイスの開発と製造を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
中島
常磐医療機器研究所の技術者である。
・所属組織、地位や役職
常磐医療機器研究所・技術者。
・物語内での具体的な行動や成果
ステータス計測デバイスのハードウェア開発や量産化の実務を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
縁
常磐医療機器研究所のスタッフである。
・所属組織、地位や役職
常磐医療機器研究所・スタッフ。
・物語内での具体的な行動や成果
ニューヨークで開催されたイベントに同行し、スキルコマンド調査セミナーを訪れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アメリカ合衆国政府・情報機関
アルバート・ハンドラー
アメリカ合衆国の大統領である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国政府・大統領。
・物語内での具体的な行動や成果
横浜ダンジョンでのスライム増殖に対し、超小型戦術核の使用を許可した。Dパワーズと親交を結ぶために自身のカルトワインを報酬として提示している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジーン・カスペル
アメリカのCIA長官である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ中央情報局(CIA)・長官。
・物語内での具体的な行動や成果
日本にタイラー博士が現れたことをハンドラー大統領に報告した。WDAが独立国家として振る舞い始める可能性を指摘している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジョー・ボルトン
国家安全保障問題担当大統領補佐官である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国国家安全保障会議・大統領補佐官。
・物語内での具体的な行動や成果
タイラー博士出現の事態に対し、ハンドラー大統領から連絡を受けるよう指示された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ダニー・レイ・コーツ
アメリカの国家情報長官である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国政府・国家情報長官。
・物語内での具体的な行動や成果
国家安全保障会議に参加する情報関係のアドバイザーとして情報を引き継がれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ハガティ
アメリカの駐日大使である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国政府・駐日大使。
・物語内での具体的な行動や成果
日本武道館で井部首相と極秘会談を行い、異世界との接触に関するアメリカの憂慮を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジョナス・ヤング
アメリカの特命全権公使である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国政府・特命全権公使。
・物語内での具体的な行動や成果
井部首相との秘密会談に参加し、Dカード一斉配布に関する説明を求めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
監視チーム
アメリカの監視部隊である。
・所属組織、地位や役職
アメリカ合衆国政府・監視チーム。
・物語内での具体的な行動や成果
タイラー博士の姿を撮影し、本国への報告を行った。Dパワーズ事務所の周辺で監視活動を実施している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
サイモンチーム(DAD)
サイモン・ガーシュウィン
アメリカのダンジョン攻略局(DAD)に所属する探索者である。
・所属組織、地位や役職
ダンジョン攻略局(DAD)・探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズのオークションでオーブを落札した。横浜ダンジョンでの危機に対応するため招集されている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
世界ランク3位の探索者として活躍している。
ナタリー・スチュワート
サイモンチームの紅一点であり、日本語に堪能である。
・所属組織、地位や役職
ダンジョン攻略局(DAD)・探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
日本での活動において、ジョシュアとともに襲撃者の処理を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジョシュア
サイモンチームに所属する優秀な斥候である。
・所属組織、地位や役職
ダンジョン攻略局(DAD)・探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
ミサキサマの空間でダイアウルフを倒し、ファンタジー金属を獲得した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
メイソン
サイモンチームのメンバーで、大柄な体格を持っている。
・所属組織、地位や役職
ダンジョン攻略局(DAD)・探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
代々木ダンジョンの攻略や拠点構築に参加している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
キャシー
サイモンチームのバックアップメンバーである。
・所属組織、地位や役職
ダンジョン攻略局(DAD)・探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズが主催するブートキャンプの教官を務めた。自身のステータス向上に熱中し、芳村を頻繁に訓練に連れ出している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
在日米軍・アメリカ大使館
大使館職員
在日アメリカ大使館で働く職員である。
・所属組織、地位や役職
在日アメリカ大使館・職員。
・物語内での具体的な行動や成果
Dパワーズ事務所へ外交官ナンバーの車で報酬のワインを輸送した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
中国
程華永
駐日中国大使である。
・所属組織、地位や役職
中国政府・駐日大使。
・物語内での具体的な行動や成果
井部首相との秘密会談に出席し、Dカード一斉配布や渋谷での騒動について説明を要求した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
国際機関(FAO・IFAD)
アンブローズ・メイガス
国連食糧農業機関(FAO)の高官である。
・所属組織、地位や役職
国連食糧農業機関(FAO)・高官。
・物語内での具体的な行動や成果
無限の食糧供給を可能にするウケモチ・システムに注目し、Dパワーズから資金提供の約束を取り付けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マリ・ナカヤマ
ネイサンのアシスタントである。
・所属組織、地位や役職
国連食糧農業機関(FAO)・アシスタント。
・物語内での具体的な行動や成果
アンブローズとともにDパワーズの事務所を訪問した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ネイサン
世界ダンジョン協会(WDA)食品管理局(DFA)の主席研究員である。
・所属組織、地位や役職
世界ダンジョン協会(WDA)食品管理局・主席研究員。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョン産作物の安全性を確認するため来日した。ニューヨークのイベント会場で自動小銃を持った乱入者を説得しようとしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
シルクリー
ネイサンのアシスタントである。
・所属組織、地位や役職
世界ダンジョン協会(WDA)食品管理局・アシスタント。
・物語内での具体的な行動や成果
ネイサンとともに来日し、彼の奔放な行動に苦言を呈しながらもサポートを行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
日本陸上競技連盟・アスリート
吉田
日本陸上競技連盟の幹部である。
・所属組織、地位や役職
日本陸上競技連盟・幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
ブートキャンプによってアスリートが急激な成長を遂げた事実に直面し、その共通点を探っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
浦辺
日本陸上競技連盟の幹部である。
・所属組織、地位や役職
日本陸上競技連盟・幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
政治家に働きかけてブートキャンプの参加枠を確保しようと試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
三塚
日本陸上競技連盟の幹部である。
・所属組織、地位や役職
日本陸上競技連盟・幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
ブートキャンプの一般枠が拡大しているという噂を会議で報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
三輪
アスリートの一人である。
・所属組織、地位や役職
アスリート。
・物語内での具体的な行動や成果
ブートキャンプで大きな成果を得た人物として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
菅谷
JADAの専門委員である。
・所属組織、地位や役職
日本アンチドーピング機構(JADA)・専門委員。
・物語内での具体的な行動や成果
探索者の運動能力を調べるため、代々木ダンジョンで渋チーのメンバーをスカウトした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
不破
男子マラソン選手である。
・所属組織、地位や役職
アスリート。
・物語内での具体的な行動や成果
ブートキャンプを受講した後、マラソン大会で世界記録を樹立した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
高田
女子陸上競技選手である。
・所属組織、地位や役職
アスリート。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョントレーニングを取り入れ、急激な記録の向上を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
成田
箱根駅伝で活躍した選手である。
・所属組織、地位や役職
アスリート。
・物語内での具体的な行動や成果
ブートキャンプで成果を得た人物として名前が挙がった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
斎藤
女優であり、探索者としても活動している。
・所属組織、地位や役職
女優・探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村からダンジョンでの戦い方を教わり、ステータスを大きく伸ばした。ミサキサマの空間からゲートストーンの製法を示す碑文を持ち帰るきっかけに関わった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マサチューセッツ工科大学
リチャード・ファインドマン
マサチューセッツ工科大学の研究者である。
・所属組織、地位や役職
マサチューセッツ工科大学・研究者。
・物語内での具体的な行動や成果
スキル破棄コマンドを発見した代償としてスキルを失い、Dパワーズからオーブの提供を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルトゥム・フォラミニス・サクリ・エッセ(カルト教団)
デヴィッド・ジャン・ピエール・ガルシア
フランスのカルト教団の教祖である。
・所属組織、地位や役職
カルト教団・教祖。
・物語内での具体的な行動や成果
プルトニウムのドロップと核テロを企て、傭兵部隊を雇って暗躍した。渋谷でのタイラー博士顕現の際にも現場に姿を現している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
フランス軍
フランス軍人二人
フランス軍に所属する軍人である。
・所属組織、地位や役職
フランス軍・特殊作戦司令部。
・物語内での具体的な行動や成果
渋谷での騒動の際、カルト教祖のデヴィッドを追って現場に居合わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
学生・一般人
千歳環菜
折原志緒里の従姉妹である。
・所属組織、地位や役職
学生。
・物語内での具体的な行動や成果
友人のいじめ問題に関わり、ミサキサマへの願いに関する相談を志緒里に持ちかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
香奈恵
千歳環菜の友人である。
・所属組織、地位や役職
学生。
・物語内での具体的な行動や成果
いじめの被害に遭っていたことが作中で語られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
吉本樹
いじめの加害者である。
・所属組織、地位や役職
学生。
・物語内での具体的な行動や成果
ミサキサマへの願いによって、物理的に失踪し人々の記憶からも消え去った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
芳村の介入によって現実世界へ帰還した。
折原志緒里
三好の友人で、コスプレ衣装の制作者である。
・所属組織、地位や役職
会社員。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村が変装に用いるファントムの衣装を制作した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
雅
三好の大学時代の友人である。
・所属組織、地位や役職
一般人。
・物語内での具体的な行動や成果
同人誌即売会で三好たちと合流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
三代
弓使いの探索者である。
・所属組織、地位や役職
探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
芳村たちのブートキャンプに参加し、代々木ダンジョンの下層を目指した。チェッカーの組み立て作業にも協力している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ダンジョン関連
セオドア・ナナセ・タイラー
かつてネバダの実験事故で行方不明になった科学者である。
・所属組織、地位や役職
元グルーム・レイク素粒子原子核研究機構・所長。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョンの向こう側の存在として再構成され、渋谷の街に顕現した。芳村たちにダンジョン発生の真相を語っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ダンつくちゃん
ダンジョンの意志とされる謎の存在である。
・所属組織、地位や役職
未知の存在。
・物語内での具体的な行動や成果
「ダンつくちゃん質問箱」を通じてD交流準備室とコンタクトを取り、日本国民全員にDカードを配布した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
Dジェネシス10巻レビュー
Dジェネシスまとめ
Dジェネシス12巻レビュー
展開まとめ
序章 プロローグ
イタリア ローマ パオロ・ディ・ドーノ通り 44番地
穏やかなローマと荒れる世界
二月のローマはバレンタインデーらしい温暖な空気に包まれていたが、IFADの地下会議室から出てきたアンブローズは険しい表情をしていた。彼は、穏やかな街にいると世界の危機が遠いおとぎ話のように扱われると感じ、午前中の会議で得られた手応えのなさに苛立っていた。
ウケモチ・システムへの慎重論
アンブローズは、IFADが周縁に置かれた人々への投資を掲げながら、ウケモチ・システムを受け入れようとしないことに不満を示した。ジルベールは、IFAD11の計画は二年前に策定済みであり、今から大きく変更する余地は乏しいと説明した。さらに、アンブローズのレポートは画期的に見える一方で保証がなく、WDAの誇張やブラフと見る者もいると伝えた。
資金調達の壁
ジルベールは、IFADの資金源には加盟国の拠出金、借入、共同資金、受益国の自己負担、民間セクター投資があるものの、どれも簡単には動かせないと説明した。突然割り込んできた上に予算も不明瞭で、リターンも机上の空論と見なされかねない計画に、誰が資金を出すのかと問いかけた。アンブローズは民間セクター投資を使えると考えたが、ジルベールは元になる保証や信用が必要だと指摘した。
十年で資産二・五倍の話
アンブローズはジルベールを柱の陰へ引き寄せ、送ったレポートには書かなかった情報として、十年で資産が二・五倍になる可能性を囁いた。ジルベールは冗談ではなさそうだと受け止めた。アンブローズは、資金よりもまずIFADの承認が必要だと語り、FAOは主導できないが、IFAD承認のプロジェクトになら協力できると説明した。
サヘルとロメ港
アンブローズは第一弾の対象をサヘルとし、ダンジョン小麦の特異性を考えると、地産地消だけでなく輸出して食料を輸入する方が経済的に有利かもしれないと話した。輸出港としては、ラゴスやアビジャンではなくロメが第一候補になるとした。ジルベールはそれが賄賂のように聞こえると警戒したが、アンブローズはロメ港の地理的・物流的条件から妥当な選択だと主張した。
悪魔に売る魂
ジルベールは議題に滑り込ませることまでは約束したが、承認の保証はできないと答えた。アンブローズは来月東京へ行き、資金の目途をつける交渉をすると語った。ジルベールがそこまでやる理由を問うと、アンブローズは直接答えず、悪魔に魂を売ることで世界から貧困がなくなるならいくらでも売ると述べた。ジルベールには、その言葉の奥に、誰かの分まで背負うような響きが聞こえた気がした。
二〇一九年三月二十五日 (月)
SECTION: 渋谷区神山町
屋上の二人組
D交流準備室は、昨日の事件を受けて関係省庁からの問い合わせ対応に追われていた。杉田が屋上にいた二人の正体を尋ねると、成宮はJDAに問い合わせたものの、プライバシーを理由に回答を拒まれたと説明した。だが村北は写真を見ただけで女性が三好梓だと察し、藪をつつくなと苦言を呈していた。杉田は、もう一人の男を芳村圭吾だと見なし、Dパワーズとダンつくちゃんの関係に関心を深めた。
フランス軍人とカルト教祖
成宮は、現場にいたフランス軍人二人が実在し、身分証も本物だったと報告した。彼らは探していた男を追っていただけで事件とは無関係だと説明していたが、その男デヴィッドはフランスのカルト教団の教祖であった。教団名はダンジョンを連想させるものであり、デヴィッドが顕現の時間と場所に現れていたことから、情報漏洩の可能性が浮上した。準備室の面々は、日本の機密管理に不安を抱いた。
日本中のDカード
ニュース番組で、日本中のDカード未所持者に突然Dカードが出現したことが報じられた。成宮は村北からの電話で、Dカードが日本中の未所持者へ配られたらしいと確認した。杉田は、以前こちらが彼女に対して、国民に奉仕する準備を認めると伝えたことを思い出し、彼女の言う奉仕はDカード所持を前提にしたものではないかと考えた。
三好梓への接触案
Dカードの意味を調べる必要が生じ、成宮はJDAやダンジョン庁、学術会議への問い合わせを考えた。だが杉田は、学術会議には実質的なダンジョン専門家がいないと指摘し、鑑定持ちの三好梓に聞くべきだと提案した。成宮は村北から藪をつつくなと言われているため慎重だったが、杉田はむしろ何が出るのか興味を示し、Dパワーズへの接触にも前向きだった。
こちら側の構造とルール
杉田は、Dカードが日本にいる人間ではなく日本国籍者に配られた点に注目した。彼女たちは国という地球社会の構造を理解し、日本人だけを正確に切り分けていたのである。そのため、住基ネットや戸籍情報のような閉鎖系の情報にアクセスした可能性が浮上した。成宮たちは、相手が地球側のネットワークや機密を自由に見られるなら極めて危険だと考えた。
奉仕前の社会危機
成宮たちは、なぜ日本だけでこの現象が起きたのか、ダンつくちゃんが代々木にしかいないのかを考えたが、結論は出なかった。杉田は、考察よりも今後の対応を急ぐべきだと話し、国民全員がDカードを取得した前提で動く必要があると言った。その直後、彼は何かに気づいて激しく動揺し、文科省、法務省、ダンジョン庁、総務省へ連絡するよう成宮に求めた。訓練も教育も受けていない国民全員がDカードを持つことは、社会を揺るがす危機になり得ると叫んだ。
SECTION: 市ヶ谷 JDA本部
モンスターの消失
その日、ダンジョン管理課には問い合わせが殺到していた。九条紗香は、代々木ダンジョンの複数階層からモンスターが突然消えたという報告をまとめ、斎賀へ伝えた。斎賀は十八層のゲノーモスの状況確認を指示し、代々木全体で異変が起きている可能性を疑った。
日本中の魔結晶
坂井は、魔結晶が日本中で消失したらしいと報告した。発端は東海の研究所で、実験中に魔結晶が同時に消えたことだった。各研究機関でも同じ現象が確認され、斎賀は渋谷やつくばの騒動と同種の現象でありながら、規模が日本全域に及んでいることに困惑した。
全国のダンジョン調査
斎賀は、モンスターの消失と魔結晶の消失が偶然同時に起きたとは考えにくいと判断した。彼は坂井に、代々木以外のダンジョンでもモンスターの状況を確認するよう命じた。調査の結果、日本中のダンジョンからモンスターが消え、日本中の魔結晶も失われていたことが見え始めた。
気づかれなかった奇跡
斎賀は異変の原因を探るため、鳴瀬美晴へ連絡しようとした。その頃、日本中ではDカードの出現騒ぎが起きていたが、JDA職員は研修でDカードを取得していたため、管理課の面々はその異変に気づかなかった。探索者からの問い合わせに追われていたこともあり、橘部長が斎賀のもとを訪れるまで、誰もその奇跡を把握していなかった。
SECTION: アメリカ合衆国 ワシントンDC
深夜の執務室
ハンドラーは、プルトニウム消失の影響が続く中、夜遅くまで執務を続けていた。そこへCIA長官のジーンが駆け込み、日本にタイラー博士が現れたと報告した。タイラー博士は、ダンジョン発生時に行方不明になった人物であり、ハンドラーはその名を聞いて強い衝撃を受けた。
渋谷に現れたタイラー博士
ジーンは、日本のD交流準備室がダンジョンの向こう側の何かを誘い出し、それが渋谷に現れた結果、タイラー博士らしき男だったと説明した。ハンドラーは内容を理解しきれず困惑したが、監視チームの写真には確かにタイラー博士に見える男が写っていた。
争奪戦と消えた男
アメリカ側は警備依頼を不審に思い、監視だけの任務を立ち上げていたため、各国のエージェントらしき者たちによる争奪戦を傍観するしかなかった。日本側はタイラー博士らしき男を確保したが、その男は車内から幻のように消えたと説明していた。車載カメラにも、消える直前まで男が映っていたため、ハンドラーはテレポートの可能性を考えた。
拡散された映像
ハンドラーは、タイラー博士らしき男を認識した国があるかをジーンに尋ねた。ジーンは、現場が渋谷の駅前で監視カメラも多く、SNSにも多くの映像が投稿されていると説明した。ハンドラーは、映像削除が容易ではない現実を前に、各国への説明をどうするか考え、国家安全保障問題担当大統領補佐官へ連絡を取るよう指示した。
ダンジョン発生の秘密
ハンドラーは、ステイツがダンジョン生成の引き金を引いた可能性を知られていることを重く見ていた。世界がその説明を受け入れるかは別問題であり、初期混乱の賠償問題に発展すれば大問題になると考えた。彼は、タイラー博士の出現そのものよりも、現れたり消えたりできる存在の脅威に注意を向けた。
安全保障上の脅威
ハンドラーは、ダンジョンの向こう側の存在がどこにでも現れ、誰かの姿を取れる可能性を危険視した。大統領本人の姿を真似ることもあり得ると考え、ジーンは合言葉でも決めるかと冗談めかして返した。結局、対抗手段はなく、友好的な関係を築くしかないという結論に至った。
日本への注視
ハンドラーは、日本が未知の存在との接触に先鞭をつけたことを受け、同盟国としてその行方を見守るべきだと考えた。武力による強引な交渉が通用しない相手である以上、時代の流れに取り残されないよう慎重に振る舞い、得られる利益を逃さないことが現実的な方針であると判断した。
二〇一九年三月二十六日 (火)一
SECTION: 代々木八幡 事務所
消えたモンスター
芳村は、一日経てば代々木ダンジョンのモンスターが戻っていることを期待し、初心者装備にブルゾンを羽織って出かけようとしていた。昨日は〈超回復〉のクールタイム明けだったが、モンスターは姿を消しており、三好は日本人全員にDカードを配った影響でDファクターが使われたのではないかと考えていた。
ファインドマン来日
三好は、リチャード・ファインドマンが翌日に来日することを芳村へ確認した。ファインドマンはスキル破棄コマンドを発見した代償としてスキルを失っており、三好がオーブを提供することになっていた。芳村は歓迎会の準備を三好に任せ、代々木へ向かおうとした。
斎藤の選考会報告
芳村が外へ出ると、斎藤が訪ねてきた。彼女は選考会の報告に来たのだが、渋谷事件やDカード出現騒ぎのため遅れていた。斎藤は芳村にもらった弓で優勝したと告げ、スポンサーの申し入れが殺到したものの、契約や道具の縛りが面倒だったため、すべて断ったと話した。
女優とアスリート
斎藤は、アスリートとしての活動と女優としての活動の線引きが難しく、事務所とのギャラ配分も面倒になるため、スポンサー契約を断ることにしたと説明した。四月のワールドカップ、六月の世界選手権、翌年四月の最終選考会という流れでオリンピック出場も見えていたが、彼女は女優として進むつもりだと語った。
突然の才能への不安
斎藤は、アーチェリーやピアノの才能が二十歳を過ぎて急に伸びたことを不自然に感じ、芳村たちの影響ではないかと疑っていた。感謝しつつも不安があるため、何かあったら責任を取ってほしいと芳村に迫った。芳村はからかわれていると感じながらも、彼女たちが深く関わっていることを認め、何かあればフォローすると答えた。
嬬恋土産の宇治茶
斎藤は報告の目的として、嬬恋のお土産だと言って芳村に茶を渡した。芳村は日本茶好きとして喜んだが、包装を見ると掛川で買ったはずの土産は京都の宇治田原茶だった。芳村は静岡土産に宇治茶を買うことに呆れたが、斎藤は売っていた場所から地元のお茶だと思っただけだと反論した。
玄関先の茶会
芳村が礼を言うと、三好が玄関から顔を出し、斎藤をお茶に誘った。芳村は斎藤からもらった嬬恋土産を三好に渡したが、三好は京都の茶であることに気づいて笑った。斎藤は開き直るように返し、芳村を代々木へ送り出して家の中へ入っていった。
SECTION: 渋谷区神山町
AC広告と過密業務
D交流準備室では、突然現れたDカードを使用しないよう呼びかけるAC広告が流れていた。村越は昨日の今日で広告が用意されたことに驚いたが、杉田は総務省や政財界の圧力があれば放送局や企業はすぐ動くと冷めた見方をしていた。室内では、渋谷騒動までのカバーストーリー作成や各省庁からの問い合わせ対応が重なり、四人だけの準備室は限界に近づいていた。
ステータス保護法
村越は、ステータス保護法制定のための基礎資料提出依頼まで回ってきたことに憤慨した。成宮たちは、ステータスは現行の個人情報保護法では扱いにくく、民法や法務省の領域に近いと考えた。杉田は、政治家のステータス一覧が公開されたため、参院選を前に法制化を急いでいるのだろうと見ていた。
丸投げされた基礎資料
杉田は、ステータス保護法の資料依頼には、基礎資料が出ないことを理由に立案できないと言い訳する意図が透けていると指摘した。成宮は休憩を提案し、疲れ切った一同は出前を取ることにした。外務省などからの遠慮ない問い合わせが続き、準備室は本来の交流準備を越えた雑務に追われていた。
国籍判定の謎
杉田は、Dカードの出現が住基ネットへの侵入によるものではなさそうだと話した。国籍留保者にはDカードが出現しなかった一方、戸籍がまだデジタル化されていなかった加茂市や御蔵島村でもDカードは出現していたため、電子情報以外の手段があることが示された。成宮たちは、ダンジョン側が日本の国籍制度や重国籍の扱いまで把握している可能性に不気味さを覚えた。
意識へのアクセス
杉田は、本人の意識にアクセスしているなら多くの事例を説明できると考えたが、国籍留保の学生が自分の立場を知らなかった場合は説明が難しくなるとも述べた。彼は、JDAがデミウルゴスという名称を与えた時点で、人間の意識へのアクセスを疑っていたはずだと推測した。だが確証がない以上、正式な書類には残しにくい話でもあった。
国籍の視覚化
杉田は、Dカード出現が日本国籍を視覚化する現象になってしまったと説明した。参議院の審議中継でもカード出現が起こり、光に包まれなかった議員についてネット上で検証が始まっていた。彼は、国籍留保者や未成年者が不当に差別される危険があるため、その点を報告書に入れるべきだと考えた。
外務省への説明資料
外務省からは、Dカード配布現象をどう引き起こしたのかという問い合わせが続いていた。杉田は、現場が今考えるべきなのは原因究明より事態への対処だと苛立ったが、成宮は官邸向けの説明資料がまさにその問いに答えるものだと指摘した。杉田は、各国首脳への説明で日本の責任を回避するため、事実を切り貼りしたベースストーリーを作っていた。
真実にできない真実
成宮は、渋谷の件について、ダンつくちゃんをデートに誘ったらこうなったなどと正式発表できるはずがないと語った。杉田は冗談めかして自分とダンつくちゃんの恋物語を資料に入れようとしたが、周囲に止められた。最終的に成宮は、社会の動きの予測、諸外国との折衝用のベースストーリー、今後のダンつくちゃんとの関わりのシミュレーションを急ぐ必要があると整理した。
増員できない限界
村越は、問い合わせ対応だけで限界なのに、どこに作業する余力があるのかと訴えた。しかし成宮と杉田は、この状況で増員しても説明や調整の負担が増え、かえって仕事が増えるだけだと理解していた。四人は疲弊しながらも、期限のない炎上案件に増員する危険性を共有し、終わりの見えない作業へ戻るしかなかった。
SECTION: 千代田区 麴町一丁目
ステータス開示の頓挫
甘利明は井部総理と車中で向かい合い、Dカードが全国民に配られたことで、高齢議員はDカードを取得できないためステータス開示を避けるという戦術が使えなくなったと報告した。今後は、ステータスを開示できない政治家が、能力の低さや国籍への疑念を招き、大きなイメージダウンにつながる恐れがあった。
指輪と事前計測
井部はステータスを高める指輪のオークションや、全議員の事前計測について確認した。甘利は、大手選挙コンサルが指輪を入手していることや、計測デバイスは抽選で入手できていないことを説明した。全議員を秘密裏に計測しなければ、外部に数値を公表された際に真偽を判断できず、噂だけで政治的打撃を受ける危険があった。
秘密裏の計測困難
甘利はダンジョン庁へ計測デバイスのサンプル提出を働きかけようとしていたが、法的根拠は弱く、連絡も取れない状態だった。代々木で計測サービスを利用する案もあったが、多数の議員が押しかければ記者に嗅ぎつけられる可能性が高かった。与党だけが先に数値を公開されれば、選挙戦略にも悪用される恐れがあった。
数値化される社会
井部は、人間の能力が客観的な数値で見られる社会が突然訪れたことに困惑していた。一般成人のステータスは限られた範囲に収まるとされ、小さな差は見えにくい一方で、一段階の差が大きな能力差として扱われる可能性もあった。数値を知ることで、根拠のある劣等感や新たなカーストが生まれる危険があった。
ステータス保護法
甘利は、ステータス公開を規制するため各省庁に基礎資料提出を求めたと説明した。しかし、ステータスは個人情報保護法の枠組みでは扱いにくく、民法改正も時間がかかりすぎるため、新規立法や時限立法が現実的な案として浮上した。ただし、議員の中にも数値を利用したい者と隠したい者がいるため、足並みが揃うかは不透明だった。
能力指標の政治利用
井部と甘利は、ステータスが民間人事や政治の世界で強力な指標になることを懸念した。能力が曖昧だからこそ成立していた学閥や人事評価も、いずれはステータスに置き換わる可能性があった。同じ実績の人物が並べば、数値の高い者を選びたくなる流れは避けがたかった。
客観評価の未来
甘利は、夜の食事会で問題意識を共有すると井部に伝えた。井部も根回しを進めると答えた。車を降りた甘利は、飯田橋駅の工事現場を眺めながら、能力が数値で客観的に評価される社会の行く末を思い、ため息をついた。
SECTION: 代々木八幡 事務所
モンスター不在の代々木
芳村は代々木から戻り、モンスターがまだほとんどいなかったと三好に報告した。〈超回復〉の取得はモンスター復活後に持ち越しとなったが、ファインドマン用のスキルオーブは先に確保してあったため、翌日の来日には間に合う状況だった。
リセットされたダンジョン
三好は、Dカード出現事件の影響でダンジョン管理課が問い合わせ対応に追われていると話した。芳村は、全国民へのDカード配布に必要なDファクターのため、日本中のダンジョンからモンスターが消えたのだろうと考えた。三好によれば、各地のダンジョンはリセットされたような状態で、前夜から少しずつモンスターが戻り始めていた。
奉仕の準備
三好は、D交流準備室が国民に奉仕する準備を認めたことが発端らしいと芳村に伝えた。芳村はその情報共有に不安を覚えたが、三好は掲示板でのやり取りなら漏れることが前提だと受け止めていた。二人は、ダンつくちゃんが囲われることを嫌がり、不特定多数との対話を望んでいるのではないかと考えた。
渋谷事件の映像
テレビでは渋谷事件の報道が続いていた。三好は、Dカード出現よりも渋谷事件の方が映像として派手だったため、SNSで大量に拡散されていると話した。芳村は、タイラー博士の姿が各国に知られることを懸念したが、それはアメリカが考えることだと三好は割り切っていた。
タイラー博士の出現理由
芳村と三好は、タイラー博士がなぜ今まで姿を現さず、今回急に現れたのかを考えた。三好は、初期には地球上のDファクター密度が低く、外部に顕現できなかった可能性を挙げた。芳村は、近ごろダンジョン側の動きが積極的になっていることから、何らかの焦りや限界が近づいている可能性を考えた。
奉仕が変える世界
二人は、奉仕が始まれば、別空間の生成、物質や食料の創出、移動手段の変革などが可能になり、経済や貨幣の意味まで変わるかもしれないと話した。芳村は、通貨の大量生成による暴落、人手不足、コミュニティの細分化、武器や薬物の増加など、制限のない奇跡が社会を崩す危険を想像した。三好は楽観的に見ていたが、変化が速すぎれば既存社会を破壊しかねないという不安も共有していた。
ダンジョンへの依存
三好は、奇跡の流入は侵略とは呼ばれないかもしれないが、奉仕が始まればダンジョンが必須の社会になると考えた。芳村は、人が楽な方へ流れる以上、依存は避けられないと見ていた。三好は、主体的な行動が保証されるなら利用する立場だと語り、芳村はその軽さが洒落にならなくなってきたと感じていた。
奉仕の信頼性
芳村は、ダンジョンが人類へ奉仕したがっているという説明を疑っていたが、三好はこれまでの恩恵がその説明と矛盾しないと考えていた。芳村は、それが詐欺の手口のようにも見えると警戒した。三好は、もし人類の隷属や地球そのものが目的なら、これほど迂遠なやり方をする必要はないと述べた。
謎の碑文
三好は、意味不明な碑文の一部が寓話の断片のようだと話した。そこには、望まれたことを叶えた結果、主体が滅ぶような話が多く含まれているらしかった。芳村は、寓話をそのまま現実の説明にするのは危険だと見たが、三好はダンジョンの向こう側の世界がどこか不穏に感じられると考えていた。
Dカードの危険性
テレビで、Dカードを使用しないよう呼びかけるAC広告が流れた。三好は、全国民が突然Dカードを持たされた以上、多くの人が使い方を調べ、念話を試したくなると指摘した。芳村たちは、親子や友人同士で本音が伝われば人間関係を壊しかねず、安全な講習なしに使うのは危険だと考えた。
Dカードチェッカー
三好は、全国民がDカードを持ったことで、増産中のDカードチェッカーが不要になるのではないかと焦った。芳村は、新型はパーティの有無や本人確認にも使えるため需要は残ると説明した。二人は、ステータスが誰でも確認できるようになれば、能力値による遊びや序列化が広がる恐れがあると気づいたが、結局は社会の良識に期待するしかなかった。
SECTION: 千葉県横芝光町
田んぼの畦の鳥居
横芝光町の山柄荘で春合宿をしていた高校生は、小雨で午後練習が早く終わったため、宿へ戻る道を走っていた。スクールライン沿いの田んぼの畦に、去年はなかったはずの赤い鳥居がぽつんと立っているのを見つけ、違和感を覚えてスマホで撮影しながら近づいた。
鳥居の先の別世界
高校生が鳥居をくぐると、周囲の田んぼは消え、無数の鳥居が続く坂道に変わっていた。振り返っても同じように鳥居の道が続くだけで、スマホは圏外になり、録画や写真も黒一色になっていた。彼は混乱しながらも、戻る手がかりを求めて鳥居の道を上り始めた。
首のない地蔵の境内
十分ほど歩くと、鳥居が途切れた先に境内のような場所が現れた。入り口には首のない地蔵が並び、周囲にも石仏が立っていたため、高校生は恐怖を覚えた。それでも戻る方法を探すため、引き返す前に境内を確認しようと決めた。
帰りたいの板切れ
高校生が強く帰りたいと願いながら境内へ足を踏み出すと、和太鼓の音とともに輝くものが現れ、小さな板切れになって落ちた。そこには帰りたいと書かれており、彼が拾うと文字が動き出し、宙に消えた。次に気づいたとき、彼の目の前には元の田んぼが広がっていた。
ネットへの投稿
高校生は恐る恐る鳥居を確認したが、もう何も起こらなかった。しかしスマホには黒一色の写真が残っており、体験が夢ではなかったことを示していた。その夜、彼はサッカー日本代表戦の観戦中に席を外し、不思議な体験をネットへ投稿した。それがすべての始まりとなった。
二〇一九年三月二十七日 (水)
SECTION: 代々木八幡 事務所
ファインドマンの来訪
代々木の事務所に、スキル削除コマンドを発見したリチャード・ファインドマンがボストンから訪れた。彼は三好をワイズマンと呼んで握手し、芳村にはヨッシーという愛称をつけた。ファインドマンはMITの研究室でスマートシティや下水調査用ロボットの研究に関わっており、そのロボットの名前がヨッシーだったため、芳村もその話に巻き込まれた。
止まらない研究話
ファインドマンはスマートシティやセンサー技術、AIを活用した都市サービスの変革について熱心に語り始めた。芳村と三好は、中島や清美と同じ研究者気質を感じて話の長さに圧倒された。三好は流れを切るため、代々木ダンジョンで作成している深度センサーの3Dマップを見せ、ダンジョン内通信によってリアルタイムで外部処理できることを説明した。
選ぶべきスキルオーブ
三好はファインドマンに、希望するスキルオーブを改めて確認した。ファインドマンは、自分が失ったのは〈生命探知〉なのに、高額なオーブを選んでよいのかと遠慮した。三好は、彼がスキル削除コマンドを試した勇気にはそれ以上の価値があると伝えた。ファインドマンは研究費のため〈マイニング〉も考えたが、帰国後の環境では活用しにくいため、最終的に〈火魔法〉を選んだ。
ナタリーへの憧れ
ファインドマンが〈火魔法〉を選んだ理由は、炎の魔法で知られるナタリー・スチュワートのファンだったからである。芳村は彼女の姓を知らず、三好に呆れられた。ファインドマンはナタリーに会えるかもしれないと期待し、芳村と三好は、一般の探索者にとってサイモンたちが憧れの存在であることを改めて実感した。
歓迎会の手配
三好は、ファインドマンをもてなすため、サイモンに連絡してナタリーを呼ぶよう芳村に促した。芳村はサイモンを都合よく使うことに苦笑しながらも電話をかけた。サイモンは快く応じ、午後六時に事務所へ来ることになった。三好がナタリーを呼んで歓迎会を開くと伝えると、ファインドマンは驚きながら喜んだ。
〈火魔法〉の手配
三好は芳村に、歓迎会に合わせて〈火魔法〉のオーブを用意するよう頼んだ。芳村は十八時過ぎに届くよう手配すると応じ、ファインドマンと三好を事務所に残して出ていった。
SECTION: 西新宿 小田急第一生命ビル
陸連の焦燥
陸連では、吉田がダンジョンブートキャンプの影響について深刻に考えていた。東洋大学の三輪は、代々木のブートキャンプ受講後に非公認ながら九秒八六を記録していた。かつては十秒二九の普通の選手だったため、関係者は突然の飛躍に驚いていた。
独自訓練の惨状
陸連が代々木二層で独自に始めた訓練は、期待に反して成果が出ていなかった。参加選手の記録は伸びるどころか落ち込んでおり、吉田は惨憺たる結果に頭を抱えた。探索者から転向した選手を集めた菅谷の陣営だけが、異常な記録を出して存在感を示していた。
浦辺への責任追及
吉田は、独自にダンジョントレーニングを導入した浦辺に結果の悪さを問いただした。浦辺は、何もしなければ選手が不安になると反論したが、護衛費用や受講補助金による支出は陸連の予算を圧迫していた。効果がないと認めれば、他競技団体にも紹介した手前、責任問題に発展しかねなかった。
確保できない受講枠
吉田は、政治家への働きかけでブートキャンプ枠を確保する話がどうなったのか確認した。浦辺は再三要請していると答えたが、動きは鈍かった。三塚は、一般枠が三倍になる噂や、火曜・水曜にもブートキャンプが開催され、外国人やアメリカのDADが枠を使っているらしいと伝えた。
見落とされた本来の目的
浦辺は貴重な枠が外国人に使われていることに憤ったが、そもそもダンジョンブートキャンプは探索のためのものだった。陸連側は、選手が受講した後に一年間どう活動するのかを考えていなかった。実際、独自に受講した選手たちは、コーチの警告を聞かず休日に代々木へ潜っていた。
選ばれた若者たち
吉田は、不破、高田、三輪、箱根駅伝で活躍した成田、さらに別業界の斎藤の例を思い浮かべた。ブートキャンプで大きな成果を得た者たちは、いずれも二十歳前後に偏っていた。宣伝目的でもランダム選考でも、この偏りは不自然であり、吉田は彼らの共通点を真剣に考え始めた。
春季オープン競技会
その日の会合は結論を出せずに迷走した。最終的に陸連は、翌日から駒沢で開催される関東学連の春季オープン競技会で様子を見ることにした。
SECTION: 代々木八幡 事務所
歓迎会前の準備
芳村は〈火魔法〉のオーブをバイク便で手配し、歓迎会の最中に届くよう時間指定して事務所へ戻った。三好はワイズマン姿に変装しており、リックの記念撮影に備えていた。芳村はスキルオーブが配送禁止品に明記されていないことを理由に、ルールの穴を突いた形で手続きを済ませていた。
サイモンの警告
サイモンたちは歓迎会のために事務所へ来たが、サイモンは芳村に別件の話があると告げた。彼は、NYイベントの乱入事件に関わった地球解放戦線が、全国民にDカードが配られた日本を攻撃対象にする可能性があると伝えた。日本はダンジョン側との利益を独占しているように見られており、諸外国も積極的には介入しないだろうと分析されていた。
ELF名簿
サイモンは、CIAとNSAの分析報告書と、判明している範囲のELF名簿が入ったUSBメモリを芳村に渡した。芳村は、外交ルートを通さない情報提供に戸惑い、釣り針のような意図を感じた。三好は、無視できない情報である以上、某田中さんへ丸ごと投げるしかないと判断して連絡を取った。
ステイツの基地
サイモンは、代々木ダンジョン下層に突然できたステイツの基地の話題にも触れた。LNGを燃料とする発電機の輸送をJDAが共用条件で引き受けたことから、アメリカ側が佐山の能力を把握していたことが示唆された。芳村は、情報を入手する速度と精度にアメリカの底力を感じた。
三つの質問
サイモンは芳村に、渋谷で確保された男が館にいたタイラー博士なのか、Dカードが全国民に配られた理由は何か、そして指輪のオークションは何なのかを尋ねた。芳村はタイラー博士については遠目に見ただけだと答え、Dカード配布についても政府絡みの噂としてかわした。指輪についてはJDAに報告済みだと述べ、詳細を避けた。
指輪と政治家のステータス
サイモンは、ステータス計測デバイスと指輪の登場により、アメリカやEUなどの政治家も日本と同じ苦境に陥ると指摘した。日本で政治家のステータス一覧が公開されたことで、海外の政治家や選挙コンサルも強い関心を持ち始めていた。芳村は指輪やステータス一覧との関係を否定したが、サイモンには完全には信じられていなかった。
スキルオーブの到着
歓迎会が始まり、バイク便で〈火魔法〉のオーブが届いた。三好はそれをリックへの報酬として大げさに贈呈し、リックは照れながら受け取った。彼はケースにサイモンチーム全員と三好のサインをもらい、集合写真を撮影してSNSへ投稿した。
日本の異常な日常
懇親会では、リックやサイモンたちが渋谷事件やDカード出現について話した。サイモンは、非常識な事件が続いても多くの日本人が日常生活を続けていることに驚いていた。芳村たちは、平和慣れやオタク文化への耐性もあり、目の前で直接被害が出ない限り、日本人は超常現象にも意外と平静でいられるのではないかと話した。
牛丼と東京調査
メイソンは、ホテル近くの牛丼屋を気に入っていると話した。彼にとって日本の牛丼屋は、アメリカのビーフボウルとは別物であり、食事に特化した空間も魅力だった。リックは仲間たちから今の東京と代々木ダンジョンの様子を見てくるよう頼まれており、休暇中に周辺を調査するつもりだった。
歓迎会の終わり
リックはナタリーとのツーショットを撮り、感激しながら帰っていった。ナタリーも、敬愛されることは嬉しいが、相手によっては複雑な場合もあると苦笑した。皆を見送った後、芳村と三好はホームパーティーの大変さを実感しながら後片付けに戻ろうとしたが、その直前に三好の携帯へ翠先輩から電話がかかってきた。
二〇一九年三月二十八日(木)
SECTION: 千代田区永田町 内閣総理大臣官邸
井部首相と村北の面談
分厚い雲に覆われた午後、井部首相は村北内閣情報官と面談し、今後の日本外交の基盤となる資料を受け取った。井部は資料の非常識な内容に困惑し、裏を取られても問題ないのかと確認した。村北は、嘘は書かれておらず、推測部分以外は解釈の違いとして突っぱねられる構成になっていると説明した。
DAへの責任転嫁
井部は、資料の内容ではDAが悪者扱いされないかと懸念した。村北は、DAへ権限を委譲したのは各国家であるため、この程度なら許容範囲だと見ていた。しかし、ダンジョン側との接触が明らかになった以上、今後はDAを野放しにするなという意見が出る可能性もあった。
世界の矢面に立つ日本
井部は、この資料によって日本が世界の矢面に立たされると理解した。村北は腕の見せ所だと返したが、井部は重圧を嫌がるように総裁選のやり直しを口にした。村北は、三期目を決めてから半年しか経っていないため無理だと答え、不祥事でも起こすかと軽く返した。その後、井部は資料の内容について詳しい質疑を始めた。
SECTION: 代々木八幡 事務所
FAOからの訪問者
芳村は、佐山に案内されてDパワーズの事務所へやって来たアンブローズ・メイガス博士たちを見た。三好は、彼がネイサン博士から聞いていたFAOの人物だと気づいた。アンブローズは、三好が開発したウケモチ・システムと、Dパワーズが借りていたダンジョン内の畑について確認した。
FAOへの畑の委託
三好は、畑はJDAから借りていたもので、不要になったため返還しようとしたところ、ネイサン博士からFAOに管理を任せてほしいと言われたと説明した。アンブローズは、その畑を新時代の福音だと評価し、ウケモチ・システムを使ったプロジェクトに強い期待を示した。
IFADへの割り込み
アンブローズは、数日後にIFADの会合があり、五月の執行理事会に向けた議題整理が行われると話した。彼は、二年前に作られたIFAD11の計画には新規プロジェクトを割り込ませる余地がないため、民間セクター投資を利用して承認に持ち込みたいと説明した。
四千五百万ドルの基金
アンブローズは率直に資金提供を求めたが、三好はそれが循環取引や名義貸しに見えないかと懸念した。そのうえで、以前から予定していた基金の話を持ち出し、当面四千五百万ドルまで自由に使ってよいと伝えた。アンブローズは驚きながらも喜び、報告書を用意すると約束した。
佐山の窓口役
三好は、実務のやり取りは佐山を窓口にすると決めた。突然役割を振られた佐山は困惑したが、三好はJDAを対外的な防波堤にするつもりだった。アンブローズはその対応に感心し、佐山たちも大変だと笑った。
SECTION: 新宿区 新宿一丁目
秘密会談の準備
村北は、井部首相との面談後、国家安全保障局長、防衛政策局長、統合幕僚長に対して特別会談のためのブリーフィングを行った。日本は善意の第三者という立場を貫く方針で一致し、井部はNSCの四大臣会合を終えた後、新宿一丁目のビルへ向かった。
米中代表との接触
井部は、台湾独立運動に関わってきた女性の事務所で、中国大使の程華永とアメリカ特命全権公使のジョナス・ヤングに会った。程は呼び出された場所に不快感を示し、ヤングとは互いに皮肉を交えながら牽制し合った。二人は、日本国民へのDカード一斉配布の秘密を求めていた。
奉仕準備の許可
井部は、渋谷騒動の際に政府関係者がダンジョンの向こう側の少女へ、日本国民に奉仕する準備を許可したことが発端だと説明した。程はそれだけでDカードが配られたことに懐疑的だったが、井部はカード所有が奉仕の前提条件だった可能性を示した。
JDAからの報告
井部は、以前JDA経由で、ダンジョンの向こう側にいる何かの目的が人類への奉仕であるという報告があったと明かした。報告の大元は、代々木三十一層で偶然接触した探索者の証言だった。程は日本が隠蔽していたと責めたが、井部は証拠もない証言だけでは政府としてまともに扱えなかったと返した。
消えた部屋
程とヤングは、三十一層の部屋へ行けば向こう側と接触できるのではないかと期待した。だが井部は、その部屋はすでに存在せず、自衛隊の確認でも扉は見つからなかったと説明した。それでも渋谷事件とDカード配布が起きた以上、報告が完全な虚偽とは言い切れない状況になっていた。
消えた男
程は、渋谷で日本が確保した男について追及した。井部は、すでに伝えた通り、その男は自衛隊の車内から消えたと答えた。程は怪談めいた説明を疑ったが、井部は映像も送付済みであり、分析結果を待つべきだと述べ、日本政府の公式回答は消えたため話せないというものだと押し通した。
ダンつくちゃん質問箱
井部は、向こう側と接触できる可能性として、JDAが開設したダンつくちゃん質問箱の資料を二人に渡した。そこに書き込めば向こうから返事が来るという説明に、程は一般大衆と接触させたのかと激昂した。井部は、誰も本物だと信じないサイトを国家が検閲すれば、かえって陰謀論を招くと説明した。
渋谷で実証された接触手段
ヤングは、数分だけ投稿されてすぐ消えた内容が日本政府と向こう側のやり取りだったと気づいた。井部は、その手段で向こう側へ届くことは渋谷で実証されたと述べた。会談後、ヤングは消えた男がタイラー博士に似ていた件を確認したが、井部は地球人が突然消えるはずはなく、他人のそら似だと答えた。
SECTION: 江戸川区 常磐ラボ
パーティチェッカーの放置
芳村と三好がラボを訪れると、翠はパーティチェッカー増産の判断を放置していた三好を叱りつけた。三好はプルトニウム事件や渋谷事件などが続いたため忘れていたと認めた。翠は呆れながらも、常磐医療機器研究所側で進められる準備は済ませていた。
市販センサーへの再設計
翠は、パーティチェッカーの部品調達をEMSに任せるターンキー方式にしたと説明した。中島は、SMDでは不可欠だった独自センサーを、パーティチェッカーでは必要な機能だけに絞り、市販センサーで置き換えられるよう再設計していた。その結果、量産の道筋が立ち始めていた。
月産二十万台
中島は、現時点で月産二十万台ほどが見込めると説明した。三好は、学校や試験機関での需要を考えると一千万台を超える規模が必要だと話した。部品を一般化したことで、大手EMSとの調整次第では一年ほどで大量生産に対応できる可能性があった。
常磐医療機器研究所の変質
翠は、常磐医療機器研究所が医療機器メーカーであるにもかかわらず、周囲からステータス計測デバイスの会社として認識され始めたことに不満を漏らした。EMSとの契約も常磐医療機器研究所名義で進んでおり、対外的にはパーティチェッカーの製造元として見られていた。翠は、投資家や周囲からの嫉妬や買収の気配に疲弊していた。
基金構想
三好は、ダンジョン関係者への利益還元を目的とした基金を設立する考えを翠に説明した。主な出資先として、WDAのDFA代々木支部やIFADプロジェクトを想定していた。翠は、一人合同会社の事業部で扱うには規模がおかしいと呆れ、三好から担当ディレクターを打診されると即座に拒否した。
基金の原資
帰りの電車で、芳村は三好に基金を本当に始めるのか尋ねた。三好は、ネイサン博士やFAO関係者からも連絡が来ているため、動き出す必要があると考えていた。Dパワーズの資産は税理士事務所に管理を任せており、原資には〈異界言語理解〉のバイヤーズプレミアムを充て、当面百億円規模を想定していた。
税制改革と研究支援
三好は、四月一日から研究開発税制の優遇が拡充されるため、このタイミングで基金を動かす意味があると説明した。基金はDパワーズの事業部として設け、研究機関への支援やウケモチ・システム普及、作物のダンジョニング研究に使う方針だった。芳村は、規模の大きさに不安を覚えつつも、ネイサン博士なら本当に大きな支出をしかねないと考えていた。
第14章 ミサキサマ
二〇一九年三月三十日(土)
SECTION: 渋谷区 渋谷四丁目
緊急登校日の教室
どんよりとした天気の中、環菜たちは緊急登校日に学校へ集められていた。保護者説明会がPS講堂で行われていたため、生徒たちは教室で待機していた。政府からの急な連絡による登校であり、春休み中の予定を崩された者も多かったが、スマホで連絡が回る時代では知らなかったふりも難しかった。
消えた吉本
香奈恵は、窓際の中央の席にいた吉本を覚えているかと環菜に尋ねた。環菜はその名前にも席の主にも心当たりがなく、最初から空席だったのではないかと答えた。香奈恵はその反応に泣きそうになり、自分が耐えられなくなったせいで何かが起きたと取り乱した。
ミサキサマ
環菜は香奈恵を廊下へ連れ出し、事情を聞こうとした。香奈恵はミサキサマを知っているかと尋ね、学校の裏サイトを見せた。そこでは、ミサキと書かれた小さな鳥居をくぐると別の場所へ移動し、鳥居に囲まれた階段や境内のような場所に迷い込むという噂が広がっていた。
願いが叶う鳥居
裏サイトには、鳥居をくぐった者の多くは境内に入ると元の場所へ戻るが、一部では願いが叶ったという書き込みもあった。一度戻ると、同じ鳥居をくぐっても二度とその場所へは行けないらしかった。未体験の者は幻覚だと見なしていたが、体験者が多く、噂は収まっていなかった。
香奈恵の告白
香奈恵は、自分もミサキサマへ行ったのだと泣きながら語った。その話は到底信じがたいものだったが、環菜には嘘をついているようにも見えなかった。環菜は、今では信じられない現象が現実に起こる場所があることを思い出し、志緒姉の友人にダンジョンに詳しい人物がいたことを考えた。
二〇一九年 四月一日 (月)
SECTION: 渋谷区 一丁目
渋谷の喫茶店
三好は、志緒里に呼び出され、大学時代に使っていた渋谷の喫茶店を訪れた。店は昔と変わらない雰囲気で、志緒里の前には人気メニューのプリンが置かれていた。最後の一個を偶然食べられたことに三好は羨ましがったが、志緒里はその幸運そのものを問題だと感じていた。
ミサキサマの相談
志緒里は、従姉妹の千歳環菜からミサキサマについて相談されたと話した。ミサキサマは、小さな鳥居を通じて別の場所へ連れていき、機嫌が良ければ願いを叶える精霊や神様のような存在だと噂されていた。三好は最初、都市伝説のように受け止めた。
消えた吉本
環菜の友人である香奈恵は陰湿ないじめを受け、環菜がかばったことで被害は環菜にも及んでいた。香奈恵は耐えきれず、ミサキサマにいじめの中心人物である吉本がいなくなるよう願った。すると緊急登校日に吉本は姿を見せず、環菜自身は吉本というクラスメイトを最初から覚えていなかった。
一〇三だけの欠員
三好は偶然や虚言の可能性を考えたが、志緒里は不自然な点を挙げた。高等部は基本的に一学年四百人で、均等にホームルームが編成されるはずだったが、一〇三だけが三十九人だった。三百九十九人なら最後の一一〇が三十九人になるはずで、なぜ一〇三だけが欠けているのかを説明できる教師はいなかった。
記憶からの消失
三好は、吉本が実在し、香奈恵の願いによって物理的にも周囲の記憶からも消された可能性を考えた。ダンジョンが関わっているなら、既存のルールに違反しない限り、非常識な現象でも起こせるかもしれなかった。ただし、人一人を世界から消し、記憶まで消す力は、三好にも恐ろしいものに感じられた。
志緒里の体験
志緒里は、自分でも信じがたい話だと分かりながら、実際にミサキサマへ行ってみたと明かした。そしてポケットから小さな木片のようなものを取り出し、テーブルの上に置いた。
SECTION: 代々木八幡 事務所
事務所に戻った三好
三好が外出していたため、芳村は事務所で一人カップ麺を食べようとしていた。そこへ三好が戻り、小さな木片をテーブルに置いた。彼女はミサキサマという都市伝説について切り出し、芳村は民俗学におけるミサキの話を思い出した。
消えた吉本樹
三好は、志緒里の従姉妹の友人がいじめに遭い、加害者である吉本樹がいなくなるようミサキサマに願った結果、その人物が存在ごと消えたらしいと説明した。吉本のことを覚えているのは願った本人だけで、クラスの人数や空席の位置だけが不自然な痕跡として残っていた。
志緒里のミサキサマ体験
志緒里は半信半疑で鳥居をくぐり、鳥居が続く坂道に入り込んだ。境内へ進んだ彼女は、喫茶店のプリンを食べたいと願い、その願いが書かれた木片を手にして元の場所へ戻った。その後、売り切れていたはずのプリンが一つ見つかり、木片の文字が動いて消えたことで、志緒里は従姉妹の話を信じるようになった。
ダンジョンとの関係
芳村と三好は、現代日本で人一人の存在と記憶が消えるような現象が起こるなら、ダンジョンが関わっている可能性が高いと考えた。ミサキが神の先触れを意味するなら、ダンジョンの向こう側の何かを神に見立て、その先触れとしてミサキサマが存在していてもおかしくなかった。
吉本樹の奪還
三好は、志緒里が吉本樹を取り戻してほしいと望んでいると伝えた。芳村は方法に困惑したが、三好は鳥居をくぐって吉本の奪還を願う案を出した。死んでいれば取り戻せない可能性が高いが、いなくなっただけなら戻せる余地があるかもしれないと考えた。
芳村への願い役
三好は、芳村の方がスキル的に願いが通りやすそうだとして、彼に願ってもらうつもりだった。芳村は自分の願いを一つ失うことになると考えたが、金銭や健康など差し迫った願いは特になく、世界平和のような曖昧な願いも現実的ではなかった。三好は、まず情報を集めるため席へ戻った。
二〇一九年四月二日 (火)
SECTION: 東京メトロ千代田線 代々木公園駅
ミサキサマの発端
芳村と三好は、雪が降るほど寒さの戻った日に、青菱近くで見つかったという鳥居へ向かっていた。三好はSNSを調べ、ミサキサマの発端が、三月二十六日の午後に千葉の合宿先で高校生が畑の畦に立つ奇妙な鳥居をくぐった出来事らしいと説明した。
鳥居の先の参道
高校生は鳥居をくぐった瞬間、稲荷社の千本鳥居のような道に入り込んだ。道は緩やかに曲がりながら続き、奥には境内のような場所があった。そこには鳥居と地蔵が混在する異様な風景が広がっていたが、三好はダンジョン由来なら神社と寺の違いを正確に区別していない可能性があると考えた。
帰りたい木札
高校生が境内に足を踏み入れると、小さな木札のようなものが現れ、そこには帰りたいと書かれていた。文字はやがて木札から離れて宙に消え、高校生は元の畦道に戻っていた。鳥居の向こう側は写真や動画で撮影できず、映像は黒くつぶれていたため、当初は作り話として扱われた。
広がる鳥居の目撃談
翌日以降、同じ場所へ行ったと主張する者や、各地に現れた鳥居の写真を投稿する者が相次いだ。その数や場所のばらつきは個人の捏造とは思えない規模になり、噂は徐々に信じられるようになった。鳥居は見つけてもすぐ消えるため、SNSでは位置情報が活発に共有され始めていた。
一人ずつの異世界
鳥居をくぐると、同行者がいても一人だけになることが分かり、多くの人は恐怖から試すのをやめた。芳村は、それを一人ずつ別のインスタンスに入る仕組みのようだと捉えた。三好は、願いが人によって異なるため、他人同士の干渉を避けるためではないかと考えた。
パーティでの再燃
その後、Dカードでパーティを組んでいれば一緒の場所へ行けることが判明し、異世界体験ツアーのような動きが再燃した。政府がDカード使用の抑制を呼びかけている最中にもかかわらず、人々は興味を抑えられなかった。三好は、ある女子高校生がその状況にブレイクスルーをもたらしたと話した。
SECTION: 数日前
鳥居へ向かう三人
志乃は、英那と美絵に連れられて話題の鳥居へ向かった。模試のためにDカードを持っていた三人は、パーティを組めば一緒に鳥居の先へ入れると知っていた。志乃は携帯料金の滞納を抱えており、その不安を二人に悟られないようにしていた。
初めての念話
三人はDカードを触れ合わせてパーティを組み、念話が使えることを確認した。英那と美絵は新しい感覚にはしゃいでいたが、志乃は滞納の悩みが伝わらないよう慎重に意識していた。やがて三人は手を繋ぎ、空き地の端に立つ鳥居をくぐった。
鳥居の下り道
鳥居の先には、前後に続く鳥居のトンネルが広がっていた。英那は上りの先に広場があると説明したが、美絵は未知への冒険だとして下り道へ進むことを選んだ。英那は入ってきた場所の目印として菓子のパッケージを置き、三人は下り方向へ歩き始めた。
下りの先の広場
十五分ほど歩いた後、三人は鳥居の道が終わる場所にたどり着いた。そこには小さな地蔵が並ぶ広場のような空間が広がっていた。三人は木札が落ちるか確かめるため、手を繋いで一斉に広場へ踏み込んだ。
条件付きの木札
太鼓の音とともに、三人の足元へ木札が落ちた。美絵と英那の木札には、戻りたいともう一度願った時に元の世界へ戻りたいという、事前に相談していた条件付きの願いが書かれていた。二人は成功したと喜んだが、志乃の木札には携帯料金を支払うお金が欲しいと書かれていた。
志乃の願い
志乃は、自分だけ帰還の願いではなく金銭の願いが木札に出たことに動揺した。英那たちは周囲を楽しげに見回していたが、志乃は戻れなくなる可能性を恐れ、事情を話すべきか迷った。その時、木札の文字が震えながら宙に浮かび、空気に溶けて消えた。
茶色の長封筒
文字が消えると、志乃の目の前に光る何かが現れた。それは何の変哲もない茶色の長封筒だった。
SECTION: 東京メトロ千代田線 明治神宮前
携帯料金の願い
三好は、志乃の願いによって現れた封筒に三万二千円が入っていたと説明した。それは彼女が滞納していた携帯料金の額であり、願いが叶った瞬間に志乃は元の世界へ戻れたらしかった。芳村は通貨偽造を疑ったが、三好はダンジョンが作ったものなら本物と区別できないだろうと考えた。
願いの成立条件
志乃の例によって、戻りたい以外の願いでも叶えば帰還できることが分かり、鳥居への関心は再燃していた。百億円を願った者もいたが、その木札は真っ黒に塗りつぶされ、願いは叶わず元の場所へ戻されたらしかった。芳村と三好は、叶えられない願いには失敗の演出があると見た。
失踪と保護
芳村は、吉本樹が消えた件を誘拐に近いと考えたが、三好はダンジョン側が保護や隔離として処理した可能性を挙げた。人間の殺害は禁忌でも、失踪や隔離なら地球の制度上の知識に照らして可能と判断されたかもしれなかった。三好は、その解釈なら吉本を取り戻せる可能性は五分五分だと考えていた。
ロト6の異常
三好は、前日に抽選されたロト6の結果を芳村に見せた。一等の当選口数が二万口を超え、配当が三万七千四百円にまで下がっていた。芳村は数学的にあり得ない数だと驚き、三好は多くの人が鳥居の向こうで宝くじ当選を願った結果ではないかと考えた。
願いの書き方
芳村は、宝くじの当選を願う場合、当選番号を直接指定するのは他人の願いと衝突するため悪手だと考えた。むしろ、一等に当選するための番号を教えてほしいと願えば、他人の願いも含めた時点で最も実現しやすい番号に乗れる可能性があった。三好は、相反する願いには願いの強さや功利主義的な優先順位が関わるのではないかと受け止めた。
願いの雪崩
三好は、当選者以上に多くの人間が願いを試した可能性を示した。鳥居は全国各地に多数存在していると見られ、短期間でも二万人規模の願いが発生しても不思議ではなかった。さらに、スポーツくじや競馬にも願いの影響らしき現象があるかもしれないと話したが、芳村は競馬については偶然の可能性もあると考えた。
SECTION: 港区 表参道
表参道から青菱へ
芳村と三好は表参道で下車し、青菱へ向かって歩き始めた。芳村は、奉仕の準備という段階でミサキサマのように実利を与える仕組みが動いていることを疑問に思った。三好は、既存のダンジョンと同じように、出先に作られた支所のようなものではないかと考えた。
アイビー通り
二人は青菱の近くにあるアイビー通りへ入った。芳村は名前の響きに反して狭い生活道路であることに驚いたが、三好はアイビーホール青菱会館や併設レストランについて説明した。学生が普段使いするには高いため、青菱の学生は安い学食を利用していたという話になった。
節約と趣味
芳村は、三好が高い店に通っていたわりに学食の安さに詳しいことを意外に思った。三好は、限られた給料で高い店に行くため、日頃は節約していたのだと説明した。芳村はその金銭感覚に呆れたが、三好は趣味とはそういうものだと返した。
願いとガチャ
話題は、ミサキサマでソーシャルゲームのガチャ結果を願う人間もいるのではないかという方向へ移った。芳村は、ギャンブルやガチャは課金して追い詰められ、当たりが出る過程に快感があるのではないかと考えた。三好は、鳥居は一度しかくぐれないため、その一回の願い自体が強い緊張と達成感を生むのだと受け止めた。
快楽物質の願い
芳村は、いっそ脳内快楽物質が出るよう願った方が早いのではないかと冗談めかして言った。三好は、それでは危ない薬のようだと返した。二人は、願いが叶う仕組みの危うさを意識しながら、青菱近くの鳥居へ向かっていた。
SECTION: 渋谷区 常盤松御用邸
常盤松の鳥居
芳村と三好は六本木通りに出て、常盤松交番近くの小さな赤い鳥居を見つけた。鳥居は公道の不自然な場所に立っており、前年のストリートビューには存在していなかった。扁額にはミサキと読める文字があり、二人は吉本樹の帰還を願うため鳥居をくぐることにした。
鳥居の先の参道
鳥居をくぐった瞬間、二人は代々木ダンジョンに入った時のような違和感を覚えた。目の前には奉納鳥居が延々と続く参道が広がっていた。電波は通じず、三好はアルスルズの反応がないことから、三十一層の花園に近い精神世界のような場所だと考えた。
抜け道のない鳥居道
芳村は鳥居の横から外へ出ようとしたが、反対側の鳥居から戻ってくるだけだった。三好は足元や鳥居にペイントで印を残し、迷わないようにした。二人は、迷い込んだ者が自然に帰りたいと願うよう仕向けられていると考えながら、鳥居の道を進んだ。
首なし石仏の境内
十分ほど歩くと鳥居の道が尽き、首のない石仏が並ぶ境内の入口に着いた。芳村は趣味の悪い演出だと感じたが、三好は境界を守る道祖神のようなものではないかと考えた。芳村は吉本樹の帰還を念じ、三好とともに広場へ踏み込んだ。
現れたウロボロス
和太鼓の音とともに木札が現れた直後、境内に巨大な蛇の胴体のようなものが出現し、地蔵を吹き飛ばした。三好はそれをウロボロスだと鑑定した。吉本を取り戻すには運命の輪を断ち切る必要があるのではないかと考えられたが、三好の木札の文字が消え、彼女はその場から離脱した。
芳村とウロボロス
残された芳村は、ウロボロスの攻撃で腕を折りながらもポーションで回復し、剣や鉄球で応戦した。しかし巨体には小さな傷しか与えられなかった。芳村は三好の助言をもとに、熱感知を乱すためメタトロニオス・ピラーで境内に複数の炎の柱を立てた。
運命の輪の断絶
炎の熱で芳村を見失ったウロボロスは怒り、身悶えして世界そのものを揺るがした。巨大な頭部が空へ突き出され、運命の糸がちぎれるような現象が起こった。芳村の胸元から黒いものがにじみ出て宙に溶けたため、芳村は吉本奪還の条件が満たされたと感じた。
木漏れ日の帰還
ウロボロスが強大なブレスを放とうとした瞬間、世界は闇に包まれた。気づくと芳村は木漏れ日の降る元の場所へ戻っており、三好の声が聞こえた。芳村の木札は何も書かれていないただの木片になっていた。三好は、上りでも下りでも同じような境内に着くと話し、芳村はミッションが終わったと受け止めた。
SECTION: 代々木八幡 事務所
死地からの帰還
芳村は、ウロボロスの黒いブレスを受けていれば死んでいたと三好に文句を言った。三好は、自分が残っても邪魔になるだけだったと軽く流し、願いが成就したのだからよかったと返した。芳村は結果を完全には確認できないものの、やれるだけのことはやったと受け止めた。
死んでも戻る可能性
三好は、ミサキサマの空間で死んでも元の場所へ戻るだけらしい情報があると明かした。芳村は、それを知っていたから三好が軽かったのかと呆れた。三好は誤報の可能性もあると答えたが、芳村は戦闘中の苦労を思い返して納得しきれなかった。
三好の碑文
芳村が三好の願いを尋ねると、三好は石版を取り出した。碑文の最後には、さまよえるものたちの書の最後にあったものと同じ文字が記されていた。三好が斎藤に確認したところ、それはクリンゴン語で別れ際の挨拶を意味する言葉であり、ダンジョン側が遊び心を込めたものだと分かった。
ゲートストーン
三好はさらに、割れた碁石のような石を取り出した。芳村が触れると、それはゲートストーンという名のアイテムだった。三好が願ったのは、ダンジョン内を自由に移動するためのインフラであり、深層へ向かう負担を減らすためのものだった。
攻略用インフラの願い
三好は、個人に従属する転移スキルを願えば、それを持つモンスターが現れる危険があると考えていた。そのため、ダンジョン攻略に必要なインフラとして階層移動用のアイテムを願った。芳村も、ダンジョンが攻略やDファクター拡散につながるものなら力を貸す可能性があると考えた。
代々木での確認
ゲートストーンの使い方はまだ分からなかった。三好は実際に確かめるため、鳴瀬に碑文のことを連絡し、芳村を連れて代々木へ向かった。
SECTION: 代々木ダンジョン 一層
ゲートストーンの起動実験
芳村と三好は、代々木ダンジョン一層の奥でゲートストーンの使い方を試した。三好の〈鑑定〉では、あらかじめ移動先を設定する方法と、使用時に指定する方法があると分かったが、具体的な操作は不明だった。芳村が魔力を込めると、〈メイキング〉のようなメニューが表示された。
設定メニュー
ゲートストーンには魔力、時間、相対、方向、距離、階層、IDなどの項目があり、芳村は相対座標や階層指定による移動設定ではないかと推測した。三好は魔力を込められたがメニューは見えず、芳村だけが設定操作を行えた。二人は、〈メイキング〉がダンジョンシステムのUIのような役割を持っている可能性を考えた。
短距離ゲート
芳村は魔力と時間、相対距離を設定し、三好が使えるか確認するためにゲートストーンへ設定を固定した。石を地面に置くと二つに分かれ、その間に紫色の光の幕が生まれた。さらに二メートル先にも対応する幕が現れ、二つの空間が距離のない通路のようにつながった。
安全性の確認
芳村は棒や自分の手を幕に差し入れ、二メートル先の幕から出てくることを確認した。ゲートの裏側は黒い平面になっており、逆側からは通過できないようだった。時間切れでゲートが消えると、途中にあった棒は元の側へ押し戻され、切断などは起こらなかった。
実用化の可能性
二人は、ゲートストーンが実用化すればダンジョン探索が大きく変わると考えた。階層移動や緊急回避に使えるだけでなく、ダンジョン外でも使えれば流通や国境の概念すら変わりかねなかった。芳村はさらに、移動体の前方に連続してゲートを開けば、見かけ上の超光速移動に近い応用も考えられると話した。
崩れたゲートストーン
三好は鳴瀬の前で実演しようとしたが、ゲートストーンは使い終わった後に砂のように崩れてしまった。二人は、それが使い捨てであることを知り、新たなゲートストーンをどう手に入れるのか分からず困惑した。残された手がかりは、鳴瀬が翻訳しているはずの碑文だけだった。
SECTION: 代々木八幡 事務所
事務所の鳴瀬
芳村と三好が事務所に戻ると、鳴瀬が三好の持ち帰った石版を手にして待っていた。石版には、ダンジョン内を移動するゲートを開く石の作り方が書かれていた。芳村たちは、すでにサンプルのゲートストーンで実験を終えていたため、鳴瀬はその軽さに驚いた。
ミサキサマの説明
三好は、ゲートストーンと碑文をミサキサマから得たと説明した。芳村たちは、ミサキサマが都市伝説ではなく、特殊な形式のダンジョンではないかと鳴瀬に伝えた。さらに、異常なロト6の結果もミサキサマの願いによるものだと説明した。
管理できない鳥居
鳴瀬は、ミサキサマがダンジョンならJDAの管轄になると考えたが、鳥居の数や移動性を考えると管理はほぼ不可能だった。WDAカードなしでの入ダンは本来問題になるが、知らずに入った場合は故意がないため罪に問うのは難しかった。芳村たちは、集めた資料を参考として鳴瀬に渡すことにした。
ゲートストーンの公開問題
芳村たちは、ゲートストーンが実際にゲートを開いたこと、ただし使い捨てで崩れてしまったことを説明した。鳴瀬は、新たに作ってみるまで証拠がないと理解しつつも、公開すれば大きな混乱を招くと考えた。彼女は草稿とメモを残し、公開の時期について上と相談するため事務所を出ていった。
錬金術めいた製法
芳村と三好は、鳴瀬の訳したゲートストーン作成手順を見直した。そこには水晶の球形フラスコや特殊な炉、プラチナや金の触媒など、錬金術めいた記述が並んでいた。二人は、タイラー博士の悪ふざけのようにも見えるが、ダンジョンの石を使う部分だけは実際に重要なのではないかと考えた。
Dファクターと賢者の石
三好は、Dファクターが何にでも変化する賢者の石のようなものではないかと考えた。芳村も、魔結晶やDファクターを使えば、ダンジョン内アイテムが別の何かへ変化する可能性を思いついた。つくばの黄金の木も、佐山の祈りが魔結晶と反応した結果ではないかと考えた。
科学と祈り
芳村は、ゲートストーンの製法の本質が、ダンジョンの石にDファクターを込め、強く祈ることにあるのではないかと仮説を立てた。三好は非科学的だと呆れながらも、研究者の直感は侮れないと受け止めた。二人は、議論より実験を優先することにし、疲れていたにもかかわらず再び代々木ダンジョンへ向かった。
SECTION: 代々木ダンジョン 一層
祈りの実験
芳村と三好は疲れていながらも、ゲートストーン作成の仮説を確かめるため、代々木ダンジョン一層の奥へ向かった。三好はテーブルと椅子、ろうそくを用意し、怪しい儀式のような雰囲気の中で実験を始めた。芳村は、ダンジョンの石と魔結晶に祈りを捧げることで、Dファクターへ意思を伝えられるのではないかと考えていた。
祈りの難しさ
芳村と三好は、祈りが願いとは異なり、捧げる行為に近いものだと考えた。しかし祈りは個人的で再現性に乏しく、科学に落とし込むのが難しかった。三好は銀行口座に祈るなどと冗談を交えたが、芳村がDファクターに友達へ頼むように語りかけた瞬間、魔結晶が消え、石が淡く光って割れた。
ゲートストーンの生成
三好が鑑定すると、机の上の石はゲートストーンになっていた。芳村は条件を変えて再試行し、自分が同じようにDファクターへ語りかけると、再び魔結晶が消えてゲートストーンが生成された。一方、三好が同じ言葉を唱えても何も起こらず、現象は芳村の〈メイキング〉に関係する個人的能力である可能性が高まった。
公開への懸念
芳村は、この技術が広まれば、ダンジョン素材と祈りによって危険なものまで作られる可能性があると懸念した。過激な思想を持つ者が簡単に手段を得れば、社会への影響は大きくなる。三好は、誰もが何でも手に入れられる世界なら争いの理由が減るかもしれないと考えたが、芳村は技術の影響の大きさに悩んだ。
祈りと科学の保留
三好は、祈りによって同じことができるかは自分が試すべきだと判断した。芳村では、成功しても〈メイキング〉の影響か祈りの影響か分からないためである。公開の是非は後回しにし、二人はまず実験を続けて詳細を調べることにした。
帰還ゲートの可能性
生成されたゲートストーンは、探索者の帰還手段として大きな価値を持つ可能性があった。絶対座標を一層のゲート付近に設定できれば、帰還ゲートとして事故を減らせるかもしれなかった。芳村と三好は、原点や石の距離の限界などを調べたうえで、最終的には鳴瀬に体験してもらい、JDAに扱いを任せる必要があると考えた。
二〇一九年四月三日 (水)
SECTION: 代々木ダンジョン YDカフェ
YDカフェの鳴瀬
季節外れの寒さの朝、芳村と三好はYDカフェで鳴瀬と会った。鳴瀬はこの後JDAで前日の件を話し合う予定だったが、芳村たちはその前に体験してほしいことがあると告げた。二人が昨夜の出来事を説明すると、鳴瀬は次第に表情を失っていった。
ゲートストーンの説明
芳村は、テーブルの上にただの石ころのようなゲートストーンを置いた。鳴瀬は転移する門という説明を理解できず、冗談のように別の意味を挙げながら混乱した。芳村は、鳴瀬の翻訳を見た結果、ゲートストーンを作れたのだと説明した。
信じられない体験前
三好は、信じられないのも当然だとして、鳴瀬に実際に体験してもらうため来てもらったのだと告げた。鳴瀬はその意図に気づいて血の気を引かせた。徹夜明けで妙に勢いのある芳村と三好は、声を揃えてダンジョンへ向かうと宣言した。
SECTION: 代々木ダンジョン 一層
鳴瀬の転移体験
芳村と三好は、鳴瀬を代々木ダンジョン一層へ連れていった。鳴瀬は絶叫系が苦手だと不安を見せたが、芳村は世界で初めてに近い転移体験だと説明した。三好は転移先で待機し、芳村は鳴瀬に設定済みのゲートストーンを渡した。
紫のゲート
鳴瀬が魔力を石に流し込み、割れた石を地面に置くと、二つの石の間に紫の光が走った。やがて光の面が立ち上がり、その向こうに三好の姿が見えた。鳴瀬は信じられない様子でゲートを観察した後、意を決して通り抜けた。
転移の感覚
鳴瀬は、転移の感覚を輝くエアカーテンを通り抜けただけのようだったと表現した。短距離で背景の違いも少なかったため、体験してなお手品のように感じていた。芳村は、慣れたところで本番に移ると告げ、新しいゲートストーンを取り出した。
帰還ゲートの座標
芳村たちは前夜、絶対座標の原点を探す実験をしていた。原点には必ず移動できる空間があるようだったが、場所の特定には手間がかかった。その後、相対座標で設定した石を絶対座標へ切り替える方法を見つけ、帰還ゲートを作れるようになっていた。
深層への準備
芳村たちは、一層以外に二十一層と三十二層の座標も調べていた。三好は、空間をまたぐゲートでは影の中のアルスルズが置き去りになる問題があるため、カヴァス、アイスレム、グラスを影から出した。連れて行くには、アルスルズ自身がゲートをくぐる必要があった。
イグルー一号前
三好が置いたゲートストーンはすぐにゲートを作り出した。鳴瀬はSF映画のようだと感じながら、三好に続いてそのゲートをくぐった。移動先は三十二層のイグルー一号前だった。
SECTION: 代々木ダンジョン 二十一層
二十一層の景色
鳴瀬は、ゲートの先に広がる二十一層の湖とオレンジの森を見て呆然としていた。芳村はイグルー一号を示し、ここが本当に二十一層であることを説明した。鳴瀬は、目の前の光景がアニメや映画の世界のようだと感じていた。
イグルー一号の中
三好は補給を済ませ、芳村と鳴瀬をイグルー一号の中へ促した。二十一層には飛行するモンスターもいるため、外でぼうっとしているのは危険だった。鳴瀬はコーヒーを飲みながら落ち着きを取り戻し、ゲートストーンが探索やセーフエリアの活動に極めて有用であることを理解した。
ゲートの規模と魔力
芳村は、前夜の実験でゲートの大きさと魔力、持続時間の関係を調べていた。ゲートの縦横比は黄金比で、短辺の長さがフィボナッチ数列に従って大きくなるほど、必要な魔力も増えていた。これにより、戦車が通れるほどの大きなゲートも理論上は作れる可能性があった。
便利さと危険性
鳴瀬は、湖底にゲートを開けば水を得られるのではないか、外でも使えれば銀行の金庫から金を持ち出せるのではないかと懸念した。芳村たちも、ゲートストーンが社会の前提を崩す危険を理解していた。一方で、探索者の死亡事故を減らせる可能性も大きく、死蔵すべきかどうかは簡単には決められなかった。
固定ゲートの運用案
三好は、設定済みのゲートストーンなら移動先が固定されるため、悪用の危険は抑えられると説明した。帰還ゲートはJDAに預ける銀行方式で管理し、探索者IDと個数を記録すれば運用できる可能性があった。特殊な階層へのゲートはJDA管理の定期便として使う案も出た。
実証実験の必要性
芳村たちは、ゲートが同じ場所に開いた場合や、複数人が同時に通過する場合の接触事故などを鳴瀬に説明した。乗り物が通る場合には、衝突や妨害への対策も必要だった。鳴瀬は運用上の問題を一つずつ潰すため、実証実験が必要だと理解した。
数と材料の問題
ゲートストーンの原価は低いが、作れるのが実質的に芳村であるため、大量供給は難しかった。さらに魔結晶が必要であり、渋谷事件とDカード配布の影響で市場から魔結晶が消えていた。芳村は帰還ゲートを安価に、階層移動ゲートを高価にする案を示し、鳴瀬は上と相談することにした。
二十一層の土産
三好は、二十一層のオレンジと記念写真を土産にすると言った。芳村たちはイグルー一号と湖を背景に写真を撮り、JDAの始業時間に合わせて、一層の入口近くへ戻るゲートを開いた。
SECTION: 市ヶ谷 JDA本部
鳴瀬の朝一報告
鳴瀬は朝一番に斎賀の課長ブースを訪れ、部屋が盗聴されていないか確認したうえで、ダンジョン界の大問題だと切り出した。斎賀は嫌な予感を覚えながらも、まず彼女が差し出した資料を確認した。
Dパワーズの基金
資料には、ダンジョン関連研究を支援する基金の設立について書かれていた。斎賀は、その規模がJDAの支援制度とは桁違いであることに苦笑した。DパワーズはJDAに許可を求めたのではなく、筋を通して連絡してきただけであり、斎賀はJDAとしては後援程度にとどめるのが妥当だと考えた。
帰還ゲート
鳴瀬は本題として、見た目はただの石ころにしか見えない帰還ゲートを斎賀に示した。斎賀が触れるとゲートストーンと表示され、鳴瀬はそれを使えばダンジョン内のどこからでも入口付近へ戻れると説明した。さらに、任意の場所へ設定することも可能であり、自分も実際に二十一層への移動を体験してきたと明かした。
人体実験への懸念
斎賀は、鳴瀬が転移を体験したと聞いて、体への影響を確認するため指定病院で人間ドックを受けるよう命じた。ゲートストーンは空間を接続するアイテムであり、常識を大きく覆すものだった。斎賀は信じがたい思いを抱えながらも、それが本物である前提で対応を考え始めた。
導入計画の検討
鳴瀬は、ゲートストーンの公開と運用に関する案を斎賀へ示した。斎賀は、帰還ゲートが普及すればダンジョン内の死亡事故を大きく減らせると認めたが、急な導入は混乱や奪い合いを招くと判断した。利用には訓練やマニュアルが必要であり、販売側にも習熟が必要だった。
価格と既存経済
鳴瀬は、帰還ゲートは安く、階層移動用のゲートは高くする案を伝えた。斎賀は、階層移動用ゲートを安くしすぎると護衛探索者の仕事に影響が出るため、移動コストの倍以上でもよいと考えた。既存の経済や探索者の活動に急激な変化を与えない価格設定が必要だった。
碑文の公開方針
ゲートストーンの作成方法は碑文に書かれていたが、実際に作成や設定を行うのは困難だった。斎賀は、この技術が使われ始めれば存在を隠すことはできず、製法を秘匿していたと知られればDAの信用を損なうと考えた。そのため、碑文自体は公開すべきだと判断した。
ミサキサマ問題
鳴瀬はさらに、ミサキサマについてまとめた資料を斎賀に渡した。そこには、一生に一度だけ願いを叶える場所とされる鳥居が、日本中に現れている可能性が示されていた。斎賀は、それがマイクロダンジョンであり、WDAライセンスを持たない人々が押し寄せているなら、ダンジョン行政そのものが崩壊しかねないと途方に暮れた。
二〇一九年四月四日(木)
SECTION: 港区元赤坂二丁目
住宅街の鳥居
サイモンたちは偵察衛星で見つけた鳥居を訪れた。鳥居は住宅街の児童公園の隅にあり、フェンスに塞がれているように見えたが、五人が並んでくぐると資料通りの鳥居道へ入った。キャシーは、日本人でもDカード所持者でもない者が入れることに驚いた。
Dカードを持たない突入者
大使館職員と在日米軍の若者は、Dカードなしで鳥居をくぐる実験に参加していた。職員の前にはゴブリンらしきモンスターが現れ、軍人の前にはスノーウルフが現れていた。ジョシュアは、入った者の装備や力量に応じて、ぎりぎり対応できるモンスターが出るのではないかと考えた。
願いと危険
サイモンたちは、願いを叶える場所で何を願うべきか話し合った。スキルや強大な力を願えば、それを得るためのモンスターが現れて死ぬ可能性があった。サイモンはタイラー博士に会うことを願うつもりだと話し、ジョシュアは自衛隊が次世代装備研究所に隠しているものを知りたいと願った。
ジョシュアのダイアウルフ戦
ジョシュアが境内に入ると、願いの木札が現れた後、ダイアウルフが姿を現した。ジョシュアは高速の一撃でそれを倒し、赤く輝く銅のようなインゴットを手に入れた。その直後、願いが成就したためか、彼は元の場所へ戻された。
メイソンの失敗
メイソンは自分の願いを告げずに境内へ進んだが、願いの木札を手にした直後、透明なゼリー状の存在に包み込まれた。彼は抵抗しながらも徐々に溶かされるように消え、残った木札は黒く染まっていた。戻ってから、彼はアイテムボックスを願ったため、それを落とすモンスターに敗れたのだと分かった。
キャシーの敗北
キャシーは世界ランク一位になれる力を願った。だが彼女の前に現れた何かはサイモンにも見えず、キャシーは一瞬でバラバラにされて戻された。彼女自身も何が起きたか分からず、認識すらできない相手を倒さなければ、その願いは叶わないのだと示された。
サイモンの時間切れ
サイモンはタイラー博士に会うため、ゴブリンを倒し続けることになった。彼は危なげなく戦ったが、途中で時間切れとなり、元の鳥居の前へ戻された。ナタリーは自分の順番を使えず、若返りを願うつもりだったと不満をこぼした。
ファンタジー金属
ジョシュアが得た赤いインゴットは、触れるとファンタジー金属と表示された。ダイアウルフが現れる代々木二十四層でドロップする金属だと推測され、自衛隊が次世代装備研究所へ通っている理由にも関係すると考えられた。サイモンたちは、それがステータスリング以外にも何かの用途を持つのではないかと見た。
終 章 EPILOGUE
後日譚
SECTION: 渋谷区 渋谷四丁目
吉本樹の帰還
新学期の教室で、香奈恵は窓際に立つ吉本樹の姿を見つけた。吉本樹は以前と同じように存在しており、周囲も彼が消えていたことを覚えていなかった。香奈恵は、吉本樹が戻ってきたことで重苦しい呪縛から解放されたように感じた。
香奈恵と環菜の拳
香奈恵が環菜に覚えているのかと尋ねると、環菜は小さく頷いた。香奈恵は笑顔で環菜と拳を合わせ、灰色だった世界が色付いていくように感じた。香奈恵は、自分が一人ではなく、孤独でもないと受け止めた。
変わらない吉本樹
吉本樹は以前と同じ傲慢な態度で香奈恵に近づき、見下すような言葉を投げた。かつて恐怖だったその振る舞いは、香奈恵には懐かしく感じられた。彼がどうでもいい存在に見えたとしても、存在そのものを否定されてよいわけではないと香奈恵は感じていた。
安堵の涙
吉本樹がいつものように横暴な態度を見せた瞬間、香奈恵の目から涙がこぼれた。香奈恵は、戻ってきた吉本樹に向かってよかったと繰り返した。吉本樹はその反応にひるみ、以前のような勢いを失っていった。
春の教室
香奈恵は吉本樹に駆け寄り、力いっぱい抱きついた。吉本樹は戸惑い、顔を赤くしながらも彼女を強く引き離せなかった。環菜は窓の外を見ながら志緒里に感謝し、その日の教室は新しい春の空気に包まれていた。
Dジェネシス10巻レビュー
Dジェネシスまとめ
Dジェネシス12巻レビュー
同シリーズ
Dジェネシス ダンジョンができて3年












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