ブチ切れ令嬢1巻レビュー
ブチ切れ令嬢まとめ
ブチ切れ令嬢3巻レビュー
物語の概要
■ 作品概要
本作は、婚約破棄を機に祖国への復讐を誓った天才令嬢による、痛快な「報復」ファンタジーの第2巻である。ジャンルは異世界転生(前世の知識活用)、商会経営、および魔導書による魔法無双に分類される。 物語は、隣国ユーティア帝国へと亡命した主人公エリザベート(エリー)が、立ち上げた「トレートル商会」を急速に発展させ、経済的な側面からも祖国ハルドリア王国を追い詰めていく過程を描く。圧倒的な魔力と前世の知識を用いた革新的な商品展開、そして彼女を裏切った者たちへの情け容赦ない追撃が物語の中核となっている。
■ 主要キャラクター
- エリザベート・レイストン(エリー・レイス): 本作の主人公。ハルドリア王国の元公爵令嬢であり、現在は帝国で「トレートル商会」を率いる。伝説的な「七つの魔導書」を使いこなし、規格外の魔力と前世の記憶を武器に持つ。裏切りに対しては一切の妥協を許さない苛烈な性格だが、身内や弱者に対しては深い慈悲を見せる。
- ミレイ: エリザベートに絶対の忠誠を誓う侍女。亡命後もエリーの右腕として商会運営や身辺警護を完璧にこなす。エリーの復讐心を肯定し、共に歩む最も信頼厚いパートナーである。
- ルーカス・レブリック: ユーティア帝国の若き子爵。エリーの亡命を助け、彼女の商売の足掛かりを支援した。エリーの圧倒的な力と美しさに畏怖と敬愛を抱き、帝国側での調整役として奔走する。
- ロゼッタ・ユーティア: ユーティア帝国の第3皇女。エリーの類まれな商才と魔導の知識に興味を持ち、彼女に接近する。高飛車な面もあるが、エリーの実力を正当に評価し、新たな協力関係を築こうとする。
- フリード・ハルドリア: ハルドリア王国の王太子でエリーの元婚約者。エリーを追放したことで国政が停滞し、さらに彼女の商会による経済的圧迫を受けて窮地に陥るが、自らの過ちを認めず責任転嫁を繰り返す。
■ 物語の特徴
本作の最大の特徴は、主人公による「徹底した報復」の姿勢にある。単なる武力行使に留まらず、商会を通じた経済封鎖や情報の操作、さらには国際的な孤立を狙うなど、多角的な戦略で祖国を崩壊へと導くカタルシスが魅力である。 また、他の「婚約破棄もの」と一線を画す点として、主人公が前世の知識(鏡や石鹸の製造技術など)を単なる便利な道具としてではなく、戦略的な「武器」として活用し、国家レベルのパワーバランスを書き換えていくスケールの大きさが挙げられる。
書籍情報
ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。 2 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~
著者:はぐれメタボ 氏
イラスト:昌未 氏
出版社:ホビージャパン(HJノベルス)
発売日:2022年9月20日
ISBN:9784798629292
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あらすじ・内容
復讐を誓った天才令嬢の次なる一手は、魔導書の知識と新たな商材での経済力強化!!!!
「王国は依然として強大。だからこそ国力を削る。裏から、少しずつね」 ロベルトを破滅させ、最初の復讐を果たしたエリー。 しかし、敵は腐っても大国であり、まだまだ彼女自身が力不足なのは明白だった。 そのため、祖国に情報戦を仕掛けながら、エリーは商会をより大きくするために、魔導書に収められた知識を用いて新商品開発へと乗り出す。 結果として新たな商材・人材を国内外から集めることに成功し、瞬く間に亡命先の帝国で地位を確立していくエリー。 そんな時、突如として謎の病が発生し、ミレイとレノアが倒れる事態になって―― 新商品の開発に迷宮探索など大忙しな天才令嬢による大逆転復讐ざまぁファンタジー、第2弾!!
感想
第1巻で見せた鮮烈な個人への復讐劇から、国家の基盤そのものを揺るがす壮大な「戦略的報復」へと進化を遂げた一冊である。
その苛烈かつ知的な展開に、読後の充足感は凄まじい。
■ 武力から知略へ:国家を枯渇させる静かなる宣戦布告
前作では直接的な武力行使によるカタルシスが印象的だったが、今作のエリザベート(エリー)が選んだ手段は、より巧妙で残酷な「情報戦」と「経済的搾取」だ。亡命先の帝国で「帝国特別認可商人」という確固たる地位を築き上げ、ハルドリア王国という巨木を内側から腐らせていく過程は、読んでいてゾクゾクするような高揚感がある。
■ 多角的な商品開発とグローバルな市場開拓
エリーの商才はとどまることを知らない。古代エルフの香水を再現した「エルミア」や、水棲魔物から生み出す幻の布「アクアシルク」など、魔導書の知識と現地での知見を融合させた新商品が次々と誕生する様子は非常にエキサイティングだ。 特に、ダンジョンで見つけたカカオと古文書の知識を結びつけて「チョコレート」を開発する下りは、読者の想像力を刺激してやまない。また、猫人族ミーシャの意見を取り入れた「獣人族向け化粧品」の開発には、彼女の経営者としての柔軟さと、他者への深い洞察力が光っている。
■ 地味ながらも「エグい」報復の真髄
本作で最も舌を巻いたのは、ハルドリア王国の納税基盤を奪い取る手法である。王太子の紹介状という、本来なら名誉であるはずの権威を逆手に取り、王都の大商会たちの本店機能を次々と帝国へ移転させてしまう。 「王都本店」を「王都支店」へ格下げし、納税先を他国へ変えさせてしまうこの工作は、派手な魔法戦以上に相手の喉元を締める「エグい」一手だ。さらには、属国を見捨てた王国の不義理を喧伝して周囲を離反させる工作など、外交面でも徹底的に逃げ道を塞ぐ冷徹さは、まさに「報復」の名にふさわしい。
■ 総評:真の賢者が成す「大逆転」の重み
一時の感情に任せるのではなく、時間をかけて相手の誇りも資産も味方もすべて奪い去る。そんなエリーの執念が、帝国での日常や新たな仲間との交流を交えて鮮やかに描かれている。 順調な事業拡大の裏で発生した謎の病など、次々と立ちはだかる困難を魔導書の力と知略でねじ伏せていく様は、まさに大逆転ファンタジーの醍醐味だ。祖国が崩壊へと向かう足音が、いよいよ現実味を帯びて聞こえてくるような、圧倒的なスケール感を楽しめる物語であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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ブチ切れ令嬢1巻レビュー
ブチ切れ令嬢まとめ
ブチ切れ令嬢3巻レビュー
考察・解説
トレートル商会の躍進
第2巻において、エリー(エリザベート)が率いるトレートル商会は、帝都進出後の基盤をさらに盤石なものとし、帝国経済に多大な影響力を持つ大商会へと圧倒的な躍進を遂げた。その過程は大きく以下の要素に分けられる。
1. 特別認可商人への昇格と香水事業
東部紛争で義勇軍を率いた功績から、エリーは帝国皇帝の推薦を受け、帝国商業ギルド評議会に出席することになった。そこで彼女は、古代エルフの香水を再現した新商品「エルミア」を提示した。
・帝国で問題となっていた既存産業の衰退や失業問題を緩和・活性化できると評価された
・帝国にわずかしかいない「特別認可商人」として正式に承認された
・これにより、土地購入や融資、所有制限の緩和などの強力な特権を得ることになった
2. 地方展開と大陸間交易の開始
特別認可商人の地位を得たエリーは、港湾都市を治めるハーミット伯爵領に支店を設立した。
・五年間の地税免除や土地取得支援の約束を取り付けた
・港を拠点とすることで、南大陸のレキ帝国など別大陸からの新素材の輸入を開始した
・商会の販路と事業の幅をさらに広げていった
3. 新素材「アクアシルク」による人材引き抜き
エリーは旧サージャス王国領のミリスタ村などを新たな生産拠点とし、西大陸の水棲魔物アクアクローラーから採れる幻の布「アクアシルク」の生産に着手した。
・アクアシルクは錬金術加工によって強力な防具やマジックアイテムの素材となるため、一流の職人や錬金術師が喉から手が出るほど欲しがる品であった
・これを餌に、ハルドリア王国の商会や職人を帝国側に大量に引き抜いた
・王都の大商会の多くが本店を他国へ移転するという事態を引き起こし、祖国に経済的・人材的な大打撃を与えた
4. チョコレート開発と喫茶事業への参入
ダンジョン探索の際に見つけた南方特産の果実「カカオ」と、王国の地下書庫にあった古文書の知識を結びつけ、エリーは「チョコレート」という新しい菓子を開発した。
・これに合わせて喫茶部門を立ち上げ、帝都に喫茶店《グリモアール》をオープンさせた
・このチョコレート菓子は貴族や若者の間で大流行した
・皇室への献上品が作られるほどの大成功を収め、新たな巨大市場を開拓することになった
5. 新たな市場の開拓(獣人族向け化粧品)
既存の化粧品が匂いに敏感な獣人族には合わないという猫人族のミーシャの意見から、獣人族向け化粧品の開発にも着手した。
・帝国貴族の約二割を占める獣人族を新たな市場と見据えた
・属国の獣人族国家も視野に入れ、潜在的な顧客層の開拓を進めている
まとめ
このように、トレートル商会は化粧品販売の枠を超え、特権の獲得、生産拠点の拡大、革新的な新商品の開発を通じて圧倒的な成長を遂げた。祖国ハルドリア王国への報復という真の目的を果たすための国力(人材と経済力)を着実に削ぎ落としているのである。
帝国特別認可商人
帝国特別認可商人は、ユーティア帝国内でも二十人といない特権的な立場であり、エリザベートが帝国経済の中枢に食い込み、祖国ハルドリア王国への報復に向けた事業を爆発的に拡大させるための重要な足がかりとして描かれている。
特別認可商人の特権と義務
特別認可商人に選ばれると、以下の多大な優遇措置を受けることができる。
・土地の購入
・国からの資金融資
・所有制限品の制限緩和
その発言力は弱小貴族など目ではないほど強力であり、事業の利益を何倍にも跳ね上げることが可能になる。一方で、特別認可商人に課せられる認可税の納税や、商業ギルドからの監査を受ける義務も生じる。
推薦の経緯と帝国の思惑
エリザベートが推薦を受けたのは、サージャス王国との東部紛争において私財で義勇軍を組織し、多大な戦果を挙げた功績によるものである。
・帝国は彼女に報酬を与えたかったものの、王国から亡命したばかりの彼女に爵位や勲章を与えることは他の貴族の手前憚られた
・その折衷案として、ゴドウィン・ユーティア皇帝からの推薦という形で特別認可商人の候補に挙げられた
帝国商業ギルド評議会での試練
特別認可商人になるには、皇帝の推薦だけでは不十分であり、帝国の経済界を牛耳る七人の怪物たちが集まる「帝国商業ギルド評議会」で過半数の支持を得る必要があった。評議会から「帝国経済に貢献できる実力を示せ」と課題を与えられた彼女は、新素材「タルクス」を用いた古代エルフの香水「エルミア」の事業計画を提示した。
・帝国で社会問題化していた「新素材発見に伴う既存産業の衰退と失業者問題」を、多様な素材を用いるこの香水事業で緩和・活性化できると論理的に説明した
・市場の独占を防ぐため最低価格の制限を設ける誓約書も提出し、帝国全体に利益を還元する姿勢をアピールした
評議会の決と厳しい監査
彼女の事業計画と姿勢は高く評価されたが、評議員の意見は割れた。
・グランドマスターであるアルバート・グイードをはじめとする三名が賛成した
・裏社会を牛耳るダルクなど二名は「元敵国の公爵家出身」という出自から反対に回った
・残る二名は棄権した
結果として賛成多数で特別認可商人に承認されたが、出自を危惧する声への妥協案として、通常の特別認可商人よりも「厳しい監査」を受けることが条件となった。エリザベートはこれを、事前の根回しによる警告込みの茶番だと見抜きつつも、妥当な落とし所として受け入れた。
まとめ
この正式認可により、エリザベートは帝国内で強固な特権を得て、港湾都市への支店展開や他大陸との交易、制限品の輸入などを可能にした。トレートル商会はこれを足がかりとして、圧倒的な規模へと成長させていくことになるのである。
王国への報復
第2巻におけるハルドリア王国への報復は、第1巻で見られたような直接的な武力行使や個人への凄惨な復讐から一転し、国家の基盤そのものを内側から崩壊させる「情報戦」と「経済・人材の搾取」へとシフトしている。
エリー(エリザベート)は「国力とは人材である」と定義し、自らを裏切った祖国から富と優秀な人材を根こそぎ奪い取る冷徹な戦略を展開した。その具体的な報復の進行は以下の通りである。
1. 属国への情報戦とプロパガンダ(民意の操作)
エリーは、ハルドリア王国が属国サージャス王国を見捨てて滅亡させた事実を利用し、他の属国を王国から離反させるための工作を仕掛けた。
・国境付近で軍需物資(小麦や鉄)を買い占めて危機感を煽るなどし、反乱の気運を高めようとした
・王太子フリードの補佐として政務を代行するロゼリア・ファドガルが、物資価格の正常化や上納金の免除、無料の治癒魔導師派遣といった懐柔策で対応してくると、政治的アプローチから民衆向けのプロパガンダへと方針を切り替えた
・「帝国領での略奪や虐殺の罪をサージャスに被せた」「無料の炊き出しの費用は民衆の税金であり、一部を王国貴族が着服している」「治癒魔導師の派遣は王国貴族に賄賂を送った街が優先される」といった悪評を時間をかけて流布した
・属国の民衆の間に根深い反王国感情と不信感を植え付けていった
2. 幻の素材「アクアシルク」を利用した経済・人材の引き抜き
エリーの報復の最大の決定打となったのが、新素材を用いた人材の引き抜きである。
・旧サージャス領のミリスタ村で、西大陸の水棲魔物から採れる幻の布「アクアシルク」の生産拠点を確立した
・アクアシルクは強力な防具やマジックアイテムの素材となるため、一流の職人や錬金術師が喉から手が出るほど欲しがる品であった
・エリーはこのアクアシルクの取引や研究の便宜を餌にして、王国の優秀な職人、錬金術師、そして大商会を帝国側へと大量に誘致した
3. 王太子の愚行を利用した王都の空洞化
この人材・企業引き抜きの際、エリーはハルドリア王国の元凶である王太子フリードの愚行を最大限に悪用した。
・フリードは小遣い稼ぎのために、自らの名義で「紹介状」を売り捌いていた
・エリーの息の掛かった仲介者は、このフリードの紹介状を利用して王国の商会に接触した
・結果として、王都にある大商会の約八割が、王太子のお墨付き(紹介状)という大義名分を得て、堂々と「王都本店」を「王都支店」へと格下げし、本店機能と納税先を他国(帝国)へと移転させてしまった
・これにより、ハルドリア王国は莫大な税収を失い、優秀な技術者が一斉に国外へ流出するという、国家存亡に関わるほどの経済的・人材的な大打撃を受けた
・合法かつ王太子の紹介状を通した手続きであるため、王国側(ロゼリア)は表立って非難することもできず、後手へと回らざるを得なくなった
・さらにエリーは、焦ったロゼリアが暗殺などの強硬手段を用いてでも紹介状を回収しようとすることを見越し、「払った値段の三倍の価格で紹介状を王国に売りつける」という屈辱的な取引まで指示している
まとめ
第2巻における王国への報復は、血を流すことなく国家の「信用」「税収」「人材」という最も重要な国力を削ぎ落とす、極めて高度で悪辣な戦略である。かつての婚約者であるフリードの浅はかな行動を逆利用し、彼に国を滅ぼす引き金を引かせるという、痛快かつ冷酷な復讐劇となっている。
アクアシルクの生産
第2巻における「アクアシルクの生産」は、トレートル商会の新たな目玉事業であると同時に、祖国ハルドリア王国から国力を根こそぎ奪い取るための極めて高度な経済的・人材的報復の要として描かれている。
幻の布「アクアシルク」と生産条件の解読
アクアシルクとは、西大陸に生息する水棲の魔物「アクアクローラー」から採れる糸で織られた幻の布である。
・通常の環境では薬草を食べ尽くす害虫とされているが、特定の厳しい条件を満たして飼育すると上質な糸を吐く
・これまで生産方法が不明で、ごく稀にダンジョンで見つかる程度の超高級品であった
・エリザベートはハルドリア王国の地下書庫にあった古文書からその育成条件を解読していた
・錬金術で加工することで強力な防具やマジックアイテムの素材となるため、一流の職人や錬金術師、研究者が喉から手が出るほど欲しがる極めて価値の高い素材である
真の目的:王国からの「人材」の引き抜き
エリザベートが自ら現地へ赴いてまでこの事業を立ち上げた真の目的は、単なる金儲けではない。
・「国力とは人材である」と定義する彼女は、この誰もが欲しがる幻の素材の取引や研究の便宜を餌にした
・王国から優秀な職人、錬金術師、そして大商会を丸ごと帝国側へと引き抜くことを計画したのである
生産拠点「ミリスタ村」の確立
生産拠点として選ばれたのは、かつて紛争で帝国に併合された旧サージャス王国領にある「ミリスタ村」である。大きく美しい湖のそばにあるこの村の環境が、アクアクローラーの生息条件に合致していた。
・エリザベートは南大陸のレキ帝国から手配したアクアクローラーの卵を村に運び込んだ
・その際、村を襲撃しようとしていた元サージャス王国兵の盗賊団を苛烈な戦闘で単独(とミーシャ)で壊滅させて村を救い、村人からの絶大な信頼を勝ち取った
・その後、村の周囲に防壁と見張り台を建設し、商会から護衛の人員を派遣した
・村人とともにアクアシルクの安全な生産体制を盤石なものにした
圧倒的な成果とハルドリア王国への大打撃
アクアシルクの生産がもたらした影響は絶大であった。
・ハルドリア王国の空洞化:エリザベートの目論見通り、アクアシルクを餌にした引き抜き工作は劇的な効果を上げた。王太子フリードが小遣い稼ぎで発行した「紹介状」を大義名分として利用され、王都に本店を置く大商会の約八割が、堂々と「王都本店」を「王都支店」に格下げし、本店機能と納税先を他国へと移転させてしまった。同時に、王国に所属していた優秀な職人や錬金術師の多くも配置変更として王都を出て帝国側へ流出した。これにより、王国は莫大な税収と技術者を一気に失い、国力の基盤を根底から削り取られることになった。
・ミリスタの街の大発展:一方、生産拠点となったミリスタ村は、後世において「大陸有数の工業都市」へと変貌を遂げる。白銀の魔女(エリザベート)が持ち込んだアクアシルクの希少性に惹かれ、大陸各地から数多くの職人や錬金術師、商人が集結し、至る所に工房や研究施設が立ち並ぶ大繁栄を享受することになる。
まとめ
アクアシルクの生産は、単なる新素材の開発にとどまらず、ハルドリア王国の国力を削ぐための緻密な報復計画であった。エリザベートは幻の素材を餌に王国の優秀な人材や大商会を帝国へと引き抜き、王国に莫大な税収と技術者の喪失という大打撃を与えた。一方で、生産拠点となったミリスタ村は大陸有数の工業都市へと発展することになり、彼女の事業がもたらした影響は計り知れないものであった。
属国への離反工作
第2巻におけるハルドリア王国への報復の一環として、エリザベートは王国の属国を離反させるための工作を仕掛けた。その手口は、初期の物理的な危機感の煽動から、民意を操作する情報戦(プロパガンダ)へと巧妙に変化していった。
離反工作の背景と初期の経済工作
サージャス王国との紛争において、宗主国であるハルドリア王国が属国のサージャスを見捨てて滅亡させた事実を利用し、エリザベートは他の属国に「次は我が身」という不信感を抱かせ、王国から離反させようと画策した。
・アフト王国などサージャスに近い国へ通じる王国の領地周辺で、小麦や鉄などの軍需物資を買い占めた
・戦争準備を偽装し、属国の危機感を煽って反乱の気運を高めようとした
王国側(ロゼリア)の迅速な対応
しかし、この工作はエリザベートに代わって王太子フリードの補佐となったロゼリア・ファドガルによって対処された。ロゼリアは以下の懐柔策を打ち出し、民衆の支持を集めようとした。
・物資価格の正常化を図るとともに、外交交渉で「王国が属国を見捨てることはない」と首脳陣を説得し、反乱派が主流だった上層部を落ち着かせた
・適当な理由をつけて王国への上納金を一時免除した
・フリード名義での貧民への炊き出しや、治癒魔導師の無料派遣を行った
民衆を狙ったプロパガンダへの方針転換
政治的アプローチや首脳陣への工作が困難になったと判断したエリザベートは、標的を「民衆」へと変更し、プロパガンダ(情報戦)へと方針を切り替えた。無理に話を作るのではなく、真実を誇張する方が通りが良いと考えた彼女は、以下の悪評を流布するようミレイに指示した。
・ハルドリア王国がサージャス王国を見捨てただけでなく、帝国領で行った虐殺や略奪の罪をサージャスに被せた
・無料の炊き出しの費用は民衆が払った税金であり、その一部を王国貴族が着服している
・治癒魔導師が派遣されるのは、王国貴族に賄賂を送った街が優先される
まとめ
エリザベートは、いくら施しをしようとそれで救えるのは一部に過ぎないことを見越し、これらの噂を流したからといってすぐに属国が反乱を起こすとは考えていなかった。しかし、焦らず時間をかけて噂を浸透させることで、属国の民衆の間に王国に対する根深い反王国感情と不信感を確実に植え付けていった。即効性はなくとも、将来的に王国を内側から崩壊させるための冷徹な戦略として機能しているのである。
異常化した迷宮探索
第2巻における「異常化した迷宮探索」は、帝都の危機を救うための行動から始まり、帝国を狙う巨大な陰謀の一端に触れる重要なエピソードとして描かれている。
探索の背景と目的
帝都で原因不明の疫病(実際には地下上水道に出現したキングポイズンスライムの変異種による毒)が蔓延し、エリー(エリザベート)の腹心であるミレイやルノアも倒れてしまった。
・エリーはユーティア帝国のオーキスト皇太子から、解毒薬の触媒となる「エマヤ鉱石」をダンジョンから大量に採取してくるよう実質的な徴用を受けた
・彼女はミレイたちを救うため、Aランク冒険者のエルザとユウカ、そして歩き神官のティーダと共にダンジョンへ足を踏み入れた
異様なダンジョン構造と魔物の異常発生
このダンジョンは、下層に進むにつれて道幅が広がり天井が高くなるなど、内部空間が現実空間と一致しない異常な構造をしていた。ユウカによると、これはダンジョン自体が「ダンジョン・ミミック」と呼ばれる巨大な魔物であり、一行は魔物の体内にいる状態であると説明されている。さらにダンジョン内では、明らかに通常とは異なる異常事態が次々と発生した。
・浅層での強力な魔物:6階層という浅い階層にもかかわらず、本来そこには出現しないはずの強力な魔物サイクロプスが現れた
・高位アンデッドの大量発生:14階層以降では、本来滅多に出現しない高位アンデッド(レイスやデュラハン)が通路を埋め尽くすほど大量発生し、一行を襲撃した
・種族を超えた連携:15階層では、コボルト、グレートマンティス、ジャイアントオークなど、本来連携しないはずの異なる種族の魔物たちが、まるで軍人のように統率の取れた連携で襲いかかってきた
変異ファイアドレイクと謎の少女
15階層での戦闘の最中、さらなる異常存在として、全身に水晶の突起を生やした異形のファイアドレイク(変異種)が出現した。
・放出される魔力が不自然に歪んでおり、高い防御力と再生力を持っていた
・周囲の魔物すら焼き尽くす強力な水晶の炎でエリーたちを苦しめた
・エリーは最上級の氷属性魔法を用いて空間ごと凍結・粉砕し、ようやく撃破した
すると、倒したファイアドレイクの崩れ去った場所から無傷の巨大な水晶球が現れた。それが砕けると中から金髪とオッドアイを持つ幼い少女(後のアリス)が現れ、エリーを「ママ」と呼んだのである。
まとめ
これらの一連の異常事態は偶然ではなく、一行を尾行していた死霊術師であり魔物使いでもある「サソリ」と名乗る女の工作であった。サソリはティーダの神器の前に敗れ、腕を斬り落とされながらも「転移のスクロール」を使用して逃亡した。この非常に希少なスクロールの所持は、サージャス紛争で暗躍した正体不明の傭兵団との繋がりを強く示唆している。帝都へのキングポイズンスライム投入やダンジョンの異常化は、帝国を狙った大規模なテロ工作である可能性が高く、エリーたちは背後にある陰謀への警戒を強めることになったのである。
ブチ切れ令嬢1巻レビュー
ブチ切れ令嬢まとめ
ブチ切れ令嬢3巻レビュー
登場キャラクター
トレートル商会
エリー・レイス(エリザベート・レイストン)
ハルドリア王国の元公爵令嬢である。婚約破棄と投獄を経て帝国へ亡命し、現在は商会長として王国への報復を計画している。
・所属組織、地位や役職
トレートル商会・商会長。帝国特別認可商人。
・物語内での具体的な行動や成果
香水「エルミア」などの新商品を開発し、特別認可商人の地位を獲得した。王国からの人材引き抜きや属国への離反工作を進めた。ダンジョン探索では最上級魔法を用いて変異ファイアドレイクを討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特別認可商人となったことで帝国内での特権を得た。ミリスタ村などを生産拠点として確保し、商会の影響力を拡大している。
ミレイ
没落貴族の出身である。幼い頃にエリザベートに拾われて以来、彼女が最も信頼する腹心として仕え続けている。
・所属組織、地位や役職
トレートル商会・侍女。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートの身の回りの世話や商会の事務作業を取り仕切っている。王国の属国に対する離反工作の実務も担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
帝都で発生した病に感染して倒れ、エリザベートがダンジョン探索へ向かう契機となった。
ルノア・カールトン
レブリック伯爵領の商会を任せている男の娘である。固有魔法を用いた鑑定能力を持ち、エリザベートの側で学んでいる。
・所属組織、地位や役職
トレートル商会・商人見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
商会の帳簿確認や商品開発の補佐を行っている。ハーミット伯爵との商談に同席して経験を積んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ミレイとともに帝都で病に感染して倒れた。
ミーシャ・テイル
猫人族の少女である。奴隷商から購入され、獣人族特有の嗅覚や身体能力を活かして行動する。
・所属組織、地位や役職
トレートル商会・侍女見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートとともにサージャス地方のミリスタ村へ向かった。村を襲撃した盗賊団との戦闘において、両親の仇である野盗を自らの手で討ち取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦闘技術を向上させ、単独で元兵士の盗賊を倒すほどに成長した。
アルノー・ラングレイ
ハルドリア王国から呼び寄せられた老紳士である。帝都にある屋敷の管理を任されている。
・所属組織、地位や役職
トレートル商会・執事。
・物語内での具体的な行動や成果
屋敷の管理や商業ギルドからの書状の受け取りなどを行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ハウエル
トレートル商会ハーミット伯爵領支店を任されている商会員である。実務能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
トレートル商会ハーミット伯爵領支店・責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートの到着を出迎え、ハーミット伯爵との面会に向けた事前の調整を手配した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ハルドリア王国(公国)
フリード・ハルドリア
ハルドリア王国の王太子である。エリザベートの元婚約者であり、政治的判断力が低く自己中心的な行動をとる。
・所属組織、地位や役職
ハルドリア王国・王太子。
・物語内での具体的な行動や成果
労働者の賃金を一律で引き上げる法案を出したがロゼリアに却下された。小遣い稼ぎのために大商会へ紹介状を売り捌いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼の売った紹介状が原因で、王都の大商会が帝国へ本店を移転する事態を招いた。
シルビア・ロックイート
ロックイート男爵の庶子である。フリードと親密な関係にある。
・所属組織、地位や役職
ハルドリア王国・男爵令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
フリードとともに王城内で行動しており、クリスを気に入って出入りさせている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブラート・ハルドリア
ハルドリア王国の国王である。属国問題や王都の治安悪化への対応に追われている。
・所属組織、地位や役職
ハルドリア王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
無能な政策を提案するフリードを執務室で叱責した。宰相ジークとともに、フリードの処遇について決断を下す話し合いを行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ジーク・レイストン
ハルドリア王国の宰相である。エリザベートの実父であり、国家運営を重視する立場を取る。
・所属組織、地位や役職
ハルドリア王国・宰相。
・物語内での具体的な行動や成果
ブラートに対して、フリードに国を任せるのは危険であると進言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ロゼリア・ファドガル
ファドガル侯爵家の令嬢である。フリードの補佐として政務を代行し、優秀な実務能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
ハルドリア王国・王太子補佐。
・物語内での具体的な行動や成果
フリードの現実離れした法案を即座に却下した。属国の反乱を防ぐための懐柔策を実行し、商会の本店移転問題の発覚時には対応を命じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
王国運営の実務を取り仕切り、エリザベートの離反工作にも対応している。
アーネスト
ハルドリア王国の関係者である。監視を受けていた。
・所属組織、地位や役職
ハルドリア王国・詳細不明。
・物語内での具体的な行動や成果
辺境に置かれていたが、監視の目を抜けて自刃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
既に死亡している。
ロベルト・アーティ
ハルドリア王国の元騎士団長である。王都で事件を引き起こした。
・所属組織、地位や役職
ハルドリア王国・元騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果
王都で問題を起こし、騎士としての名誉を失い大罪人として処刑された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
既に死亡している。
クリス
フリードの婚約者であるシルビアに気に入られ、王城に出入りしている女性である。
・所属組織、地位や役職
ハルドリア王国・不明。
・物語内での具体的な行動や成果
フリードとシルビアに挨拶をして退室した後、宿の部屋で差出人不明の手紙を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
手紙を燃やし、次は帝国へ向かうと呟いて旅の支度を始めた。
ガレット・マークソン
ハルドリア公国船籍の魔導動力船ルノア・カールトン号の船長である。
・所属組織、地位や役職
魔導動力船ルノア・カールトン号・船長。
・物語内での具体的な行動や成果
商会長からの親書をハーミット伯爵へ届ける仕事を請け負い、航海日誌を記している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アカリ
公国の公共放送でメインリポーターを務める新人アイドルである。
・所属組織、地位や役職
アイドル。
・物語内での具体的な行動や成果
歴史番組の撮影を成功させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
撮影後にマネージャーのマリーと喫茶店《グリモアール》へ向かった。
マリー
新人アイドルであるアカリのマネージャーである。
・所属組織、地位や役職
マネージャー。
・物語内での具体的な行動や成果
撮影を終えたアカリを労い、喫茶店《グリモアール》へ誘った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ユーティア帝国
ルーカス・レブリック
帝国の貴族である。諜報活動にも関わっており、エリザベートの亡命を支援した。
・所属組織、地位や役職
ユーティア帝国・伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートに特別認可商人への推薦状と商業ギルドからの手紙を渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
サージャス地方の半分を褒章として下賜され、子爵から伯爵へ陞爵した。
グリント・サージャス
元サージャス王国の国王である。
・所属組織、地位や役職
レブリック伯爵領サージャス地方・執政官。
・物語内での具体的な行動や成果
ルーカスの下で執政官として働くことになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実権はなくお飾りの統治者であり、家族を人質に取られて帝国の監視下に置かれている。
ゴドウィン・ユーティア
ユーティア帝国の皇帝である。
・所属組織、地位や役職
ユーティア帝国・皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートを特別認可商人の候補として推薦した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルゼウス・ハーミット
港湾都市を治める帝国の貴族である。領地経営に力を入れている。
・所属組織、地位や役職
ユーティア帝国・伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートと商談を行い、トレートル商会の支店設置を認めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
商会に五年間の地税免除や土地取得支援を約束した。
カレラ
アルゼウス・ハーミット伯爵の妻である。
・所属組織、地位や役職
ハーミット伯爵家・夫人。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートから香水《エルミア》を受け取り喜んだ。エリザベートたちを海水浴へ誘った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マニラ
アルゼウス・ハーミット伯爵の娘である。
・所属組織、地位や役職
ハーミット伯爵家・令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
ルノアやミーシャとともにプライベートビーチで海水浴を楽しんだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
オーキスト・ユーティア
ユーティア帝国の皇太子である。為政者としての冷徹な判断力を持つ。
・所属組織、地位や役職
ユーティア帝国・皇太子。
・物語内での具体的な行動や成果
帝都の病の原因がキングポイズンスライムの変異種であることを明かした。エリザベートへダンジョンでのエマヤ鉱石採取を依頼した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
帝国商業ギルド評議会・商業ギルド
セドリック・ルーインス
奴隷商会を経営する商人である。《教育者》のあだ名を持つ。
・所属組織、地位や役職
帝国商業ギルド評議会・評議員。
・物語内での具体的な行動や成果
商業ギルドを訪れたエリザベートを出迎え、評議会では彼女の特別認可商人への認定を支持した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルバート・グイード
帝国商業ギルドをまとめるドラゴニュートの貴族である。《先見伯》と呼ばれる。
・所属組織、地位や役職
帝国商業ギルド評議会・グランドマスター。伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果
評議会を進行し、エリザベートの事業計画を評価して特別認可商人として承認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ヒルデ・カラード
歓楽街の支配者である魔族の女性である。《銀蝶》と呼ばれる。
・所属組織、地位や役職
帝国商業ギルド評議会・評議員。
・物語内での具体的な行動や成果
トレートル商会の化粧品の質を評価し、エリザベートの特別認可商人への認定を支持した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ダルク・ホーキンス
裏社会を牛耳る男である。《頭目》と呼ばれる。
・所属組織、地位や役職
帝国商業ギルド評議会・評議員。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートの王国貴族という出自を理由に、特別認可商人への認定に反対した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ロットン・フライウォーク
宿屋の頂点に立つエルフ族の男である。《千里眼》と呼ばれ、広大な情報網を持つ。
・所属組織、地位や役職
帝国商業ギルド評議会・評議員。
・物語内での具体的な行動や成果
ダルクに追従し、エリザベートの特別認可商人への認定に反対した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ガイエン・ドラファン
帝国一の鍛冶職人であるドワーフの男である。《神工》と呼ばれる。
・所属組織、地位や役職
帝国商業ギルド評議会・評議員。
・物語内での具体的な行動や成果
面倒事を嫌い、エリザベートの認定に関する決議を棄権した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カルバン・マイン
帝都の商業ギルドをまとめる魔族の男である。
・所属組織、地位や役職
商業ギルド・ギルドマスター。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートに特別認可商人の証明書類と新しいギルドカードを手渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
冒険者ギルド・冒険者
エルザ・アーチフィールド
炎のように赤い髪を持つ女性である。《不死鳥》の異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・Aランク冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートとともにダンジョンへ向かい、リーダーとして探索の指揮を執った。変異ファイアドレイクとの戦闘では盾となりブレスを防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マルティ
狐人族の冒険者である。
・所属組織、地位や役職
パーティ《鋭き切先》・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
帝都で病に感染して倒れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
リサ(サリナ)
治癒魔導師である。
・所属組織、地位や役職
パーティ《鋭き切先》・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
帝都で病に感染して倒れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ユウカ・クスノキ
東の島国出身の薬師である。《漆黒》の異名を持つ。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・Aランク冒険者。帝国商業ギルド評議会・評議員。
・物語内での具体的な行動や成果
従魔のサンダーバードでエリザベートたちをドルドの町まで運んだ。ダンジョン内では変異ファイアドレイクを神器で攻撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブレン
ドルドの町で冒険者ギルドをまとめる男である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・ギルドマスター。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートたちにダンジョンの資料を提供し、宿屋「黄金色の小麦亭」を紹介した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
セルジオ
冒険者ギルドをまとめる男である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・ギルドマスター。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートたちにダンジョン探索の同行者としてユウカを紹介した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ティナ
ドルドの町の冒険者ギルドで働く女性である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・受付嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートたちの実力と身分を知り、他の冒険者に彼女たちへ手を出さないよう警告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
Cランクパーティ《光の道》
ドルドの町のダンジョンを探索する集団である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・Cランク冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョンの七階層でサイクロプスに遭遇して進めなくなっていたが、エリザベートたちに救われた。後にトレートル商会の専属冒険者として契約し、カカオの採取を行っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
イブリス教
ティルダニア・ノーチラス(ティーダ)
イブリス教大神殿所属の神官である。金や酒に弱いが、高い戦闘能力と強力な光属性魔法を持つ。
・所属組織、地位や役職
イブリス教・歩き神官。
・物語内での具体的な行動や成果
ユウカの薬酒と金貨につられてダンジョン探索に同行した。大量のアンデッドを魔法で消滅させ、死霊術師サソリを大鎌の神器で撃退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
レキ帝国
グェン
南大陸レキ帝国の船乗りである。
・所属組織、地位や役職
交易船・船長。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートに注文された素材を引き渡した。ザワークラウトによって船乗り病を防いだことを語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
彩暁
レキ帝国の少女である。知識を集め組み合わせて答えを導き出す知恵者として活動している。
・所属組織、地位や役職
レキ帝国・詳細不明。
・物語内での具体的な行動や成果
横領事件を解決し、グェン船長から中央大陸の書物を受け取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
猫蘭
彩暁に仕える女性である。
・所属組織、地位や役職
レキ帝国・侍女兼教育係。
・物語内での具体的な行動や成果
勝手に抜け出す彩暁を叱責しつつ付き従っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
玉涼
彩暁の母親である。
・所属組織、地位や役職
レキ帝国・詳細不明。
・物語内での具体的な行動や成果
彩暁に届いた手紙を手渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ルアン大尉
彩暁と顔見知りの人物である。
・所属組織、地位や役職
レキ帝国・大尉。
・物語内での具体的な行動や成果
彩暁に声を掛けられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
馬蓮
商店で働く男である。
・所属組織、地位や役職
商店・番頭。
・物語内での具体的な行動や成果
店のお金を横領していると彩暁に推理された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
裏社会・盗賊団・サージャス地方の住民
ミリオン
ハーミット伯爵領の港町で活動するエルフの男である。
・所属組織、地位や役職
裏組織・幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートから組織の背後にダルク・ホーキンスがいることを指摘され、トレートル商会を庇護下に加えることを了承した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
グレアム
顔に大きな傷がある大柄な男である。
・所属組織、地位や役職
詳細不明。
・物語内での具体的な行動や成果
男に女商人に関する報告を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
カラス
黒いドレスとベールを身に纏った女性である。
・所属組織、地位や役職
裏組織・詳細不明。
・物語内での具体的な行動や成果
サソリに帝国へ向かうよう伝え、女商人の情報を集めて揺さぶるよう指示を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ガナの村の村長
トレートル商会の生産拠点となっている村の長である。
・所属組織、地位や役職
ガナの村・村長。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートの訪問を受け、商会のおかげで村が安定したと感謝を伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミリスタの村の村長
湖のそばにある村の長である。
・所属組織、地位や役職
ミリスタの村・村長。
・物語内での具体的な行動や成果
盗賊団の襲撃についてエリザベートに説明し、彼女の防衛計画に協力した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アルド
ミリスタの村に住む男である。脚を引き摺っている。
・所属組織、地位や役職
ミリスタの村・住人。元Dランク冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
村の入り口でエリザベート達を案内し、戦闘後は捕虜となった盗賊の捕縛を手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
脱走兵の盗賊団
サージャス王国との紛争での脱走兵を中心に構成された集団である。
・所属組織、地位や役職
盗賊団。
・物語内での具体的な行動や成果
ミリスタの村を襲撃したが、エリザベートとミーシャによってアジトごと壊滅させられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
壊滅した。
ミリスタの村の村人たち
ミリスタの村に住む人々である。
・所属組織、地位や役職
ミリスタの村・村民。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートの指示に従い、笛で合図を送りながら村の防衛に参加した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
サソリ
「人形使いのサソリ」と名乗る女性である。死霊術と魔物使いの能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
裏組織・工作員。
・物語内での具体的な行動や成果
ダンジョンの魔物を操りエリザベートたちを尾行していた。ティーダに腕を斬り落とされながらも転移スクロールで逃亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
その他
ザングート・イルサリス
中央大陸を旅する冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者。旅行記作家。
・物語内での具体的な行動や成果
工業都市として発展したミリスタの街を訪れ、アクアシルクのハンカチーフを購入した経験を旅行記に記した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
アリス
ダンジョンの変異ファイアドレイクの体内にあった水晶球の中から現れた少女である。
・所属組織、地位や役職
詳細不明。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートを「ママ」と呼んで懐き、彼女に引き取られて屋敷で暮らすことになった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
マダム・マジュラー
ハーミット伯爵領の港町で働く女性である。
・所属組織、地位や役職
マダム・マジュラーの水着専門店・店主。
・物語内での具体的な行動や成果
エリザベートたちの水着選びを高い熱量で手伝った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ブチ切れ令嬢1巻レビュー
ブチ切れ令嬢まとめ
ブチ切れ令嬢3巻レビュー
展開まとめ
序章
王妃候補としての責務
ハルドリア王国の公爵令嬢エリザベート・レイストンは、学院終了後も王城で王妃教育に携わり、不在がちな王妃や執務を怠る王太子フリードの代わりに政務を処理していた。ある日、会議へ向かう途中で侍女ミレイと共に中庭を見下ろした彼女は、婚約者フリードと親密に寄り添うシルビア・ロックイートを目撃した。
シルビアは男爵家の庶子であり、市井育ちゆえに男性との距離感が近く、学院ではフリードとの関係が噂になっていた。エリザベートは貴族社会の秩序を守るため、彼女を茶会へ招き、王太子との関わり方を忠告する必要があると考えていた。愛人となる覚悟があるのか確認し、側妃として生きる危険性まで説明するつもりでいた。
エリザベートは幼少期から国母となるために己を律し、遊びや恋愛を遠ざけて王国へ尽くしてきた。そのため、こうした問題への対処も自らの責務だと割り切っていたのである。
裏切りと亡命
やがてフリードとシルビアの関係は公然のものとなり、エリザベートの忠告は意味を成さなかった。夢から覚めた彼女は過去を振り返りながら、現在の自分の立場を再認識していた。
かつて王太子妃候補だったエリザベートは、婚約破棄と地下牢への投獄を受け、さらにフリードによって流された虚偽の噂により、国を乗っ取ろうとした悪女として民衆から罵倒された。国王ブラートや父であり宰相のジークも彼女を救おうとはしなかった。
その結果、エリザベートは王国との決別を決意し、侍女ミレイと共にユーティア帝国へ亡命した。そして自分を陥れた婚約者、見捨てた国家、裏切った民への報復を誓ったのである。
帝国での新たな生活
現在のエリザベートは「エリー・レイス」と名を変え、帝国でトレートル商会を経営していた。高品質な化粧品を扱う商会は順調に成長しており、彼女は復讐のための力を着実に蓄えていた。
亡命を支えた侍女ミレイは、没落貴族の娘であり、幼い頃にエリザベートへ拾われて以来、彼女へ忠誠を尽くしてきた人物であった。身分を失った後も変わらず仕え続ける彼女は、エリザベートにとって最も信頼できる腹心となっていた。
また、商会には伯爵領出身で固有魔法【物品鑑定】を持つ商人見習いルノアや、奴隷商から買い取った猫人族の少女ミーシャも仕えていた。二人はエリザベートの素性と目的を知る数少ない側近であった。
商人としての才覚
エリザベートは市場を視察しながら物価の変動を観察し、弟子同然のルノアへ情勢分析を教えていた。サージャス王国との紛争によって高騰していた物価が一時的に落ち着いているものの、帝国による併合後は食料需要の増大によって再び価格が高騰すると予測していた。
彼女は将来的な不足を見越して小麦を大量購入し、孤児院へ寄付することで教会との関係強化も進めていた。復讐だけではなく、商人としても冷静かつ先を見据えた判断を行っていたのである。
その後、かつて共に戦ったAランク冒険者エルザたちと再会し、軽い会話を交わした後、自身の商館へ向かった。商館は帝都有数の高級区域に存在する大規模な建物であり、エリザベートは会長として着実に事業を拡大していた。
混迷するハルドリア王国
一方、ハルドリア王国では国王ブラートが王太子フリードを厳しく叱責していた。フリードの政策案は理想論ばかりで現実性に欠けており、王はその無能さに頭を抱えていた。
さらにフリードの補佐役となったロゼリア・ファドガルも、彼の提出した法案を即座に却下していた。労働者賃金を一律で三割引き上げるという法案は、結果的に大量解雇を招く危険な内容であり、ロゼリアはフリードを徹底的に論破した。
ブラートと宰相ジークは夜に酒を交わしながら、エリザベート不在によって王国運営が破綻寸前である現状を語り合った。属国との関係悪化、治安の悪化、貴族への不信感など問題は山積しており、王国は逼迫していた。
その中でジークは、フリードに国を任せれば取り返しのつかない事態になると断言し、王として決断を下すべきだとブラートへ進言した。ブラートもその言葉を受け入れ、何らかの決断を下す覚悟を固めるのであった。
一章《特別認可商人》
サージャス王国滅亡後の情勢
エリザベートは、帝国貴族ルーカス・レブリックの屋敷で、サージャス王国滅亡後の情勢について話を聞いていた。元婚約者フリードは、自身の支持率低下を挽回するため、属国サージャス王国を利用して帝国との紛争を引き起こした。しかし結果としてサージャス王国は滅亡し、フリードは逃亡、報復対象の一人であったロベルトも罪人として処刑された。
王国は事件の後始末や属国との関係悪化への対応に追われており、内部は混乱していた。エリザベートもまた、帝国側へ機密情報を提供することで状況を動かしていた。
一方、戦後処理によってルーカスは伯爵へ昇爵し、旧サージャス王国領の半分を与えられていた。旧国王グリントは名目上の執政官として残されたが、実権は帝国側に握られていた。
特別認可商人への推薦
今回ルーカスがエリザベートを呼び出した理由は、帝国からの褒賞を渡すためだった。それは帝国紋章入りの推薦状と、帝国商業ギルド評議会からの召喚状であった。
エリザベートは、紛争時に義勇軍を率いて戦果を挙げた功績により、「特別認可商人」への推薦を受けることとなった。特別認可商人は、帝国でもわずか二十人ほどしか存在しない特権的な商人であり、土地取得や融資、所有制限品の緩和など多くの優遇を受けられる立場であった。
しかし認定には帝国商業ギルド評議会で過半数の支持を得る必要があり、そのためには帝国経済へ更なる利益をもたらせる実力を示さなければならなかった。
新事業への着手
エリザベートは評議会へ向け、新たな事業を立ち上げる決断を下した。サージャス地方から送られてきた素材を調査していた彼女は、「タルクス」という花に注目する。
神器【傲慢の魔導書】による検索の結果、タルクスは古代エルフが「エルミア」と呼び、香水の原料として用いていた花であることを突き止めた。さらに加工法や触媒によって多様な性質を持ち、一種の魔法道具のような効果を発揮する可能性も判明した。
エリザベートは即座に、錬金術師たちへ香水再現の研究を命じると共に、サージャス地方の栽培者へ融資を行い、花の独占契約を進めるよう指示した。
帝国の社会問題への着目
エリザベートは、古エルフの香水事業を単なる高級品販売では終わらせるつもりはなかった。彼女は現在の帝国が、新素材の発見による既存産業の衰退と大量失業問題を抱えていることに着目していた。
古エルフの香水は多様な素材を使用するため、需要が減少していた素材産業を再活性化させ、多くの雇用を生み出せる可能性があった。エリザベートは、この事業を帝国経済全体への貢献として評議会へ提示する方針を固めたのである。
帝国商業ギルド評議会への出席
後日、エリザベートは帝国商業ギルドを訪れた。そこで彼女を迎えたのは、《教育者》の異名を持つ奴隷商人セドリック・ルーインスであった。
セドリックは穏やかに接しながらも、エリザベートを観察していた。エリザベート側も敵意がないことを示しつつ、利益をもたらす存在であると印象付けるよう会話を進めた。
やがて彼女は評議会の部屋へ案内される。そこには帝国経済界を支配する七人の評議員たちが待っていた。中でも中央に座るドラゴニュートの男、《先見伯》アルバート・グイードが事実上の中心人物であった。
香水事業の提示
評議会でエリザベートは、古代エルフの香水を再現した商品を提示した。香りだけでなく、魔物避けや日差し対策などの効果も確認されており、さらに衰退産業の再活性化や失業問題緩和にも繋がることを説明した。
加えて、利益独占による市場破壊を避けるため、自社商品の最低価格を定める誓約書まで提出した。既存市場と競合せず、帝国全体へ利益を還元する姿勢を示したのである。
この説明にグイードは一定の評価を示し、評議員たちへ意見を求めた。
評議員たちの反応
セドリックと歓楽街の支配者《銀蝶》ヒルデ・カラードは、エリザベートを特別認可商人へ推薦した。特にヒルデは、トレートル商会の化粧品品質を高く評価していた。
しかし、《頭目》ダルク・ホーキンスは、エリザベートが元ハルドリア王国貴族であることを理由に反対した。さらに広大な情報網を持つ《千里眼》ロットン・フライウォークも、現時点では信用し切れないとして慎重姿勢を見せた。
一方、《漆黒》ユウカ・クスノキは、元々政治的決定へ関与しない条件で評議員となっていたため、判断を保留したのであった。
特別認可商人への正式承認
評議会では、《神工》ガイエン・ドラファンもユウカ同様に判断を放棄し、面倒事には関わりたくないと表明した。その後、アルバート・グイードはエリザベート本人へ見解を求めた。
エリザベートは、自身が既にハルドリア王国へ見切りをつけており、これからは帝国で一商人として生きていくつもりであると明言した。アルバートはその言葉と彼女の実績を踏まえ、帝国を裏切る可能性は低いと判断し、支持を表明した。
結果、賛成三、反対二、棄権二となり、エリザベートは正式に特別認可商人として認定された。ただし、元敵国公爵家出身という事情から、通常以上に厳しい監査を受ける条件も付けられた。
エリザベートは、この議論自体が事前に調整された警告込みの茶番であったと見抜きながらも、妥当な落とし所として受け入れた。
戦闘訓練を受ける側近達
評議会後、エリザベートは屋敷へ戻ると、ルノアとミーシャへ戦闘訓練を施していた。
魔法主体で戦う予定のルノアには、最も扱いやすい長杖を選ばせ、武器の扱い方や立ち回りを叩き込んでいた。一方、ミーシャもミレイとの模擬戦で鍛えられていた。
訓練後、ルノアは商人に武力が必要なのか疑問を口にしたが、エリザベートは、一流になれば敵が生まれ、自分の命は最終的に自分で守るしかないと教えた。護衛がいても最後に頼れるのは己自身であり、そのため最低限の戦闘能力は必須だと考えていたのである。
ハーミット伯爵との商談準備
午後にはハーミット伯爵との商談が予定されていた。ミーシャは既に秘書役として予定管理を任されており、伯爵家より一段下の格を意識した馬車まで手配していた。
エリザベートは、貴族との交渉に緊張するルノアを励ましながら、今後は実際の商談の場にも同席させ、経験を積ませようとしていた。ルノアは商売や魔法の習得が早く、内気ながらも高い才能を見せていたためである。
獣人族向け化粧品の可能性
工房視察では、新製品の爪紅を試していた。しかし猫人族のミーシャは、化粧品の匂いに強い不快感を示した。
調査の結果、獣人族には人族向け化粧品の香りが刺激となる場合があり、自然素材中心の商品だけが比較的受け入れられることが判明した。
エリザベートはこの問題を欠点ではなく、新市場の発見として捉えた。帝国貴族の約二割は獣人族であり、さらに王国属国にも獣人族主体の国家が存在している。獣人族向け化粧品を開発できれば巨大な市場を獲得できるだけでなく、将来的には属国工作にも利用できると判断した。
そのため彼女は、人族以外を中心とした開発チームを編成し、獣人族向け化粧品の研究を開始させた。
ハーミット伯爵との会談
その後、エリザベートはルノアを伴い、港湾都市を治めるアルゼウス・ハーミット伯爵の屋敷を訪れた。
伯爵側は意図的に待たせることで格の違いを示しつつ、軽食を提供することで敵意がないことを確認するという、貴族社会特有の形式を踏んでいた。エリザベートはルノアへその意味を教えながら、冷静に対応していた。
正式な会談では、ハーミット伯爵がトレートル商会の支店設置を要請した。港を持つ伯爵領は交易拠点として非常に魅力的であり、エリザベート側にも大きな利益があったため、交渉は円滑に進んだ。
結果として、伯爵側は五年間の地税免除や土地取得支援を約束し、トレートル商会側は商品の優先販売や別大陸販路開拓への協力を認めた。
王国への離反工作
帰宅後、ミレイからハルドリア王国に対する工作活動の報告が行われた。
エリザベートは以前から、属国へ「王国は属国を使い捨てにする」という噂を流し、さらに軍需物資の買い占めによって戦争危機を演出するなど、離反工作を進めていた。しかし予想に反して反乱は発生せず、逆に王国と属国の関係は徐々に改善へ向かっていた。
エリザベートは、その原因がロゼリア・ファドガルにあると推測した。ロゼリアは現在、エリザベートの代わりにフリードの補佐役として王宮へ呼び戻されており、外交交渉や物資価格の正常化を通じて属国側の不安を抑え込んでいた。
彼女はロゼリアの優秀さを認めつつも、現在の立場は本人にとって屈辱であるとも理解していた。
新たな反王国工作への転換
政治工作だけでは属国離反が難しくなったと判断したエリザベートは、方針転換を決定した。
今後は貴族層ではなく民衆へ向けて、ハルドリア王国がサージャス王国を見捨て、さらに帝国領で虐殺や略奪を行ったという内容を誇張して流布する方針を定めた。
完全な虚偽ではなく、実際に起きた事実を拡大解釈する形であるため、民衆へ浸透しやすいと考えていた。エリザベートは、少なくとも属国民へ反王国感情を植え付けることは可能だと判断し、ミレイへ即座に実行を命じるのであった。
ロゼリアとの情報戦
エリザベートが属国への反王国工作を進めてから一ヶ月も経たない頃、ロゼリアは既に対抗策を講じていた。
王国側は属国への上納金を一時免除し、炊き出しや治癒魔導師による無料治療を行うことで民衆の支持を集めていた。表向きはフリード個人の善政として扱われていたが、エリザベートは、その背後にロゼリアがいると確信していた。
エリザベートは対抗策として、施しの資金は属国民から徴収した税金であり、その一部を王国貴族が着服しているという噂や、治癒魔導師派遣には賄賂が必要であるという話を流すようミレイへ指示した。短期的成果ではなく、時間をかけて不信感を植え付ける方針であった。
新事業と空き物件の活用
その頃、トレートル商会では吸収した商会から得た不動産整理が進められていた。帝都の一等地や商業区中心部など条件の良い物件が複数余っていたが、現状では店舗数は十分であり、即座に新店舗を増やす必要はなかった。
しかし研究中の香水《エルミア》や獣人族向け化粧品が完成すれば、専門店展開も視野に入る状況だった。
研究班からの報告では、《エルミア》は女性向け香水だけでなく、男性用コロンや芳香剤、さらには消臭効果まで確認されていた。エリザベートは、この成果を獣人族向け化粧品開発とも連携させるよう指示を出した。
特別認可商人としての正式登録
その後、商業ギルドから正式認可の通知が届き、エリザベートは帝都商業ギルドを訪れた。
ギルドマスターのカルバン・マインは、特別認可商人となることで得られる優遇措置と義務について説明した。土地購入、融資、所有制限緩和など多くの恩恵がある一方で、高額な認可税や厳格な監査も課される。
特にエリザベートは敵国出身という事情から、通常以上の監査対象になることを改めて告げられたが、彼女は問題ないと受け入れた。
その後、新たなギルドカードと認可証を受け取り、エリザベートは正式に帝国特別認可商人となった。
新たな商売計画
特別認可商人となったことで、エリザベートは更なる事業拡大を構想し始めていた。
港を持つハーミット伯爵領支店を利用し、別大陸から新素材を輸入する計画である。以前は許可や制限の問題で断念していた品も、今なら扱える立場となっていた。
高額な輸送費を払ってでも価値がある素材を確保するため、従魔を使える召喚士やテイマーへ依頼するつもりでいた。
ハーミット伯爵領への旅
後日、エリザベートはミレイ、ルノア、ミーシャを伴い、ハーミット伯爵領へ向かった。
目的は支店の状況確認と伯爵への正式挨拶、さらに今後の契約締結であった。道中は整備された石畳のおかげで快適な旅となり、途中では野営も行った。
翌日、森を抜けた先で海が見えると、初めて海を見るルノアは歓声を上げ、ミーシャも嬉しそうに反応していた。エリザベートは、用事を済ませた後で海を見物させる約束をした。
港町での歓迎
ハーミット伯爵領の領都は活気に満ちた港町であり、白い石造りの街並みが広がっていた。
到着後、支店長ハウエルの案内で支店へ入り、旅の疲れを落とした後、ハーミット伯爵邸へ向かった。
今回は待たされることもなく応接室へ通され、伯爵は妻カレラと娘マニラを紹介した。二人は社交界で話題となっているエリザベートへ強い興味を抱いていた。
エリザベートは新商品の香水《エルミア》を贈り、伯爵家の女性陣を喜ばせた。その後、契約調整を終えた伯爵は執務へ戻り、エリザベートたちは夫人達と歓談を楽しんだ。
港町の裏社会
伯爵邸を辞した後、エリザベート達は港町で海産物を味わいながら港へ向かった。
そこで彼女は、事前調査で目を付けていた裏社会の拠点へ向かうため、人気のない路地へ足を踏み入れた。明るい表通りとは異なり、そこは暴力と退廃が支配する危険地帯であった。
早速、チンピラ達が絡んできたが、エリザベートはミーシャへ命じて制圧させた。ミーシャは素早い動きで男達を次々に昏倒させ、最後の一人にはエリザベートが【威圧】を用いて恐怖を叩き込んだ。
完全に怯えた男を案内役にし、彼女達は裏社会のボスの元へ向かう。
裏社会の支配者との接触
案内された先は、外観こそ荒れていたものの、内部には高価な美術品が並ぶ豪華な建物だった。
最奥の部屋には三人の人物がおり、その中の下品な男がエリザベートへ無礼な挑発を行った。しかし彼女は即座に巨大な氷塊を放ち、男を壁へ叩きつけた。
すると本来の責任者であったエルフの男ミリオンが立ち上がり、非礼を詫びながら改めて自己紹介を行った。
エリザベートは、この港町の裏社会とも接触を始めるのであった
港町の裏組織との交渉
エリザベートは、裏組織の幹部ミリオンと正式に対面した。彼女はこの街で商売を行う以上、表の領主だけでなく、裏社会との関係構築も必要だと考えていた。
ミリオンは当初、領主の庇護があるなら自分達への挨拶は不要ではないかと探りを入れたが、エリザベートは、他国の船乗りや裏社会との問題にまで伯爵家が介入できるわけではないと指摘した。そして、街の秩序を乱さず商売を続けるため、自ら裏組織の庇護下へ入りたいと申し出た。
さらに彼女は、ミリオンの組織が《頭目》ダルク・ホーキンスの傘下組織であることまで把握していると明かした。自身へ手を出せばダルクとの対立に繋がると理解していたミリオンは、すぐに降参を認め、トレートル商会を保護対象に加えることを約束した。
エリザベートは見返りとして毎月の上納金を提示し、この街での商売上の不安要素を一つ取り除いたのである。
ルノアへの教育
交渉を終えた帰り道、ルノアは裏社会との交渉に大きく消耗していた。
しかしエリザベートは、アウトロー相手には舐められないための力の誇示が必要であり、今回は特にダルク配下との初接触だったため、こちらの実力を示す意味もあったと説明した。
相手の度量を測りながら攻める交渉術は今後も必要になるとして、今回の経験を忘れないようルノアへ教え込んだ。
海水浴文化との出会い
翌日、エリザベート達はハーミット伯爵夫人カミラと娘マニラに招かれ、伯爵家の私有海岸を訪れた。
中央大陸では海水浴文化はまだ一般的ではなかったが、ハーミット伯爵は観光資源として海水浴を広めようとしており、平民向け海水浴場の整備も進めていた。
ルノアやミーシャは水着姿で海へ入り楽しそうにはしゃぎ回り、エリザベートはカミラと共に日陰で会話を交わしていた。
その中でカミラは、トレートル商会製の日焼け止めによって、貴族女性達も日焼けを気にせず海水浴を楽しめるようになったと語った。
エリザベートはこれを好機と捉え、美容品や日焼け止めの試供品提供と宣伝協力をカミラへ提案した。ハーミット伯爵領は帝国の玄関口でもあり、将来的に王国との関係でも利用価値があると見ていたのである。
南大陸との交易
翌日、エリザベートとミレイは港へ向かい、南大陸レキ帝国の交易船と接触した。
船長グェンは細かな駆け引きを嫌う豪快な男であり、依頼されていた商品をすぐに引き渡した。厳重な封印魔法付き木箱の中には、真珠のような粒状素材が大量に保存されており、エリザベートはそれを新事業の重要素材として受け取った。
会話の中でエリザベートは、長距離航海につきものの「船乗り病」について尋ねた。するとグェンは、葉野菜の酢漬け「ザワークラウト」を常食することで病気を防げると説明した。
エリザベートは、その知識がレキ帝国にいる「頭の良い少女」から伝えられたものだと知る。彼女は単なる知識収集ではなく、複数の研究を結びつけて実用化している可能性があり、エリザベートは強い興味を抱いた。
また、グェンから依頼されていた専門書や論文、小説なども渡し、その知恵者が大量の知識を求めていることも知るのであった。
サージャス地方への出発準備
支店へ戻った後、エリザベートは今後の予定を共有した。
傷みやすい新素材を早急にサージャス地方へ運ぶ必要があるため、エリザベートとミーシャが現地へ向かい、ミレイとルノアは帝都へ戻ることとなった。
ルノアはミレイの補佐として商会運営を学び、ハーミット伯爵領支店はハウエルへ任されることとなった。
裏で動き始める勢力
その頃、裏社会ではエリザベートに関する報告が別の男へ届けられていた。
報告を受けた男は、彼女が単なる女商人ではなく、実力を備えた危険人物であると判断した。そして「サソリ」と呼ばれる工作員へ帝国行きを命じ、エリザベートの情報収集と揺さぶりを指示した。
一方、ハルドリア王城では、最近フリードとシルビアに取り入っていたクリスという女が、謎の手紙を受け取っていた。
手紙を焼却したクリスは、「次は帝国か」と呟きながら旅支度を始める。彼女もまた、エリザベートへ関わる新たな存在として動き始めていた。
航海日誌に記された商会の名
さらに別視点では、ハルドリア公国船籍の魔導動力船《ルノア・カールトン号》船長ガレット・マークソンの日誌が描かれた。
船長は、ハーミット伯爵へ届ける親書や、香水販売拠点として重要なハーミット伯爵領について記録していた。また、帝国滞在中に家族への土産をどうするか悩むなど、平和な日常も綴られていた。
この航海日誌は、トレートル商会の影響力が既に国際交易にまで広がり始めていることを示していた。
二章《ミリスタの攻防》
アクアシルク事業の始動
ハーミット伯爵領でミレイ達と別れたエリザベートは、ミーシャと共にサージャス地方へ向かっていた。
積み荷の木箱には、西大陸の水棲魔物アクアクローラーの卵が入っていた。アクアクローラーは通常は害虫扱いされる存在だったが、特定条件下で極めて希少な糸を生み出す。その糸から織られる布《アクアシルク》は、生産方法が失われた幻の素材として知られていた。
エリザベートは、ハルドリア王国地下書庫の古文書から生産条件を解読していたのである。
さらにアクアシルクは高級布に留まらず、錬金術加工によって強力な防具や魔道具の素材となるため、職人や研究者にとって垂涎の存在であった。
エリザベートは、この素材を利用して王国から優秀な人材を帝国側へ引き抜こうとしていた。人材こそ国力であり、疲弊した王国から技術者や商人を奪えば、後々大きな打撃になると考えていたのである。
ガナ村の生産拠点
道中、二人はトレートル商会の生産拠点となっているガナ村へ立ち寄った。
紛争後、村では物資補填と人材支援が進められ、既に化粧品生産も軌道に乗っていた。エリザベートは、村の防衛のために戦闘能力を持つ奴隷達も派遣しており、村人との関係も良好であった。
管理者からは、今後の生産拡大には人材不足が懸念されるとの報告を受ける。エリザベートは、この村をモデルケースとし、同様の生産拠点を増やす方針を固めた。
また、現地雇用と教育を更に強化するため追加予算を約束し、長期的な産業基盤作りを進めていた。
村人達との交流
夜、エリザベートとミーシャは村長宅へ招かれ、山菜やキノコを使った郷土料理を振る舞われた。
高級料理ではないものの、滋味深い味わいに二人は満足していた。特にミーシャは熱い鍋を美味しそうに頬張っていた。
翌日は、夜通し見回りをしていた警備責任者や派遣奴隷達と面談し、不足物資や警備状況の確認を行った後、再び旅へ出発した。
ブロッケン砦での通行検査
数日後、二人はサージャス地方の関所となっているブロッケン砦へ到着した。
現在のサージャス地方は帝国併合直後であり、脱走兵や反帝国ゲリラへの警戒から、検問は非常に厳重であった。
しかしエリザベートは、ルーカスの署名入り通行許可証と、特別認可商人のギルドカードを提示し、さらにアクアクローラー卵の所持・持ち込み許可証まで示したことで問題なく通過を認められた。
砦の兵士達は、彼女こそ紛争時に義勇軍を率い、多属性大魔法を操った《白銀の魔女》であると気付き、畏怖していた。
ミリスタ村の異変
その後、二人は湖畔の村ミリスタへ到着した。
ミリスタ村はアクアクローラー育成に最適な環境を持ち、トレートル商会傘下としてアクアシルク生産を担う予定の村であった。
しかし到着直後、槍を持った男達に行く手を塞がれる。彼らは盗賊襲撃を警戒しており、エリザベート達を盗賊団と思い込んでいたのである。
事情を聞いたエリザベートは、村へ案内され、村長から現状説明を受けた。
前日に盗賊団が襲撃し、門番を殺害した上で食料と酒を奪っていった。さらに翌日再訪し、若い娘まで差し出せと要求していた。
エリザベートは、この盗賊団が紛争で逃亡したサージャス兵を中心に構成されている可能性が高いと推測した。
もし帝国併合後に治安悪化が起きれば、村人の対帝国感情悪化にも繋がり、商会経営にも悪影響となる。そのため彼女は、この盗賊団を必ず壊滅させる必要があると判断した。
村の防衛準備
エリザベートは、自ら盗賊団を迎え撃つことを宣言した。
当初は信じられなかった村人達も、彼女が無詠唱で巨大な氷棘を発生させる姿を見て考えを改める。
彼女は村人達へ笛を配り、盗賊接近時の合図を決めるなど防衛体制を整えた。
ミーシャには、非戦闘員が避難する共同倉庫の防衛を命じ、盗賊が二手に分かれた場合には救援へ向かうよう指示した。
また、野盗によって両親を失った過去を持つミーシャへ、最優先は自分の命であると念押ししながらも、今回の戦いは帝国と村人の関係維持のためにも重要だと説明した。
盗賊団との激突
やがて昼頃、盗賊団が荷車を引いて現れた。
盗賊達は食料だけでなく、今朝到着した商人の積み荷まで差し出せと要求する。しかしエリザベートは一歩前へ出ると、接近してきた盗賊を瞬時に斬殺した。
さらに【縮地】を用いた高速移動と剣技、多属性魔法を組み合わせ、盗賊達を圧倒する。
剣ごと敵を両断し、氷棘で貫き、氷漬けにした敵を砕くなど、一方的な虐殺に近い戦闘となった。
短時間で大半の盗賊を殺害した後、エリザベートは情報収集用に数人を生け捕りにした。
しかしその直後、村の別方向から警戒用の笛が鳴り響く。
盗賊団が別働隊を投入していたと判断したエリザベートは、捕虜の処理をアルドへ任せ、自ら笛の鳴る方向へ駆け出すのであった。
ミーシャと盗賊別働隊の戦闘
中央倉庫で非戦闘員を守っていたミーシャは、村の入り口付近から響く戦闘音を聞きながらも、エリーが敗北することはないと信じていた。
やがて森側から警戒用の笛が鳴り響き、ミーシャは救援へ向かった。森の中では、即席の槍を持った村人達が三人の盗賊と対峙していた。
木陰に潜んだミーシャは、身体強化スキルによって脚力を高め、一気に盗賊へ奇襲を仕掛ける。しかし相手は元兵士であり、反射的に攻撃を受け止めた。
その直後、ミーシャは盗賊の一人の顔を見て凍り付く。目の前の男は、かつて両親を襲った野盗の一人だったのである。
過去との再会と怒り
盗賊の顔を見た瞬間、ミーシャの脳裏には両親を失った日の光景が蘇った。
瀕死になりながら娘を守ろうとした父、必死に逃がそうとした母、その二人を襲った野盗達。目の前の男は、まさにその時の野盗本人だった。
怒りで我を失いかけたミーシャだったが、エリーやミレイ、ルノア、商会の仲間達との日々を思い出し、徐々に冷静さを取り戻していく。
その中で思い返したのは、ミレイから教わった獣人族特有のスキル操作であった。
【虚歩】による反撃
ミーシャはミレイから教わったスキル【虚歩】を発動した。
不規則な動きと魔力の揺らぎによって相手の感覚を狂わせるこの技により、盗賊達はミーシャを正確に捉えられなくなる。
怒りに任せて襲い掛かる盗賊を翻弄し、股下を潜り抜けながら内腿を切り裂いて機動力を奪う。そして隙を見極めたミーシャは、スキル【剛閃】を発動し、盗賊の腹部を深く斬り裂いた。
ついにミーシャは、両親の仇を自らの手で討ち取ったのである。
村人達との共闘
しかし盗賊はまだ残っていた。
別の盗賊がミーシャへ襲い掛かろうとした瞬間、村人達が必死に槍を突き出して妨害する。技術では到底及ばなかったものの、彼らは恐怖に耐えながらミーシャを守ろうとしていた。
その時、突風のような衝撃と共に盗賊達が次々と斬り倒され、氷像となって崩れ落ちた。
現れたのはエリーであった。
エリーはミーシャの健闘を労いながら、盗賊のアジトを潰す必要があると告げる。
捕虜への尋問
村の入り口へ戻ったエリーは、捕らえた盗賊達への尋問を始めた。
彼女はミーシャへ、複数捕虜から情報を得る際の方法を実演する。まず一人を見せしめとして徹底的に痛め付け、他の捕虜へ容赦の無さを理解させるのである。
エリーは盗賊の片目を潰し、耳を切り落とし、爪を剥ぎながら淡々と拷問を続けた。情報を話しても一切反応せず、最後には首を掻き切る。
その結果、二人目以降の盗賊達は恐怖に屈し、アジトや残党の情報を次々と吐き出した。
尋問によって、森の洞窟に十七人規模の盗賊団本隊が潜伏していることが判明する。
盗賊団アジトへの襲撃
エリーは時間を置けば残党が逃亡すると判断し、即座にミーシャを連れて森へ向かった。
洞窟前の見張り二人を瞬時に始末した後、内部へ侵入する。暗闇に紛れながら盗賊達を一人ずつ暗殺し、更には部屋ごと凍結魔法で盗賊達を氷像に変えて粉砕していった。
牢には既に捕虜は存在しなかったものの、血痕や拘束具が残されており、過去に拉致された者達がいた痕跡だけが残っていた。
洞窟内の盗賊を次々と殺害したエリーは、最後まで残党を逃さず殲滅していく。
ミーシャの成長
洞窟外では、ミーシャもまた盗賊二人を始末していた。
エリーはその姿を見て、ミーシャが既に戦士として大きく成長していることを実感する。
その後、盗賊団の略奪品を全て回収し、討伐者として所有権を確保した。
さらにエリーは神器【暴食の魔導書】を発動し、魔法【地喰い】によって洞窟そのものを崩落させた。これにより、盗賊団のアジトは完全に消滅した。
ミリスタ村の発展
盗賊団壊滅後、エリーとミーシャは村人達から歓待を受けた。
その後エリーは、アクアクローラーの飼育方法を村人達へ教えながら、村周囲に魔法で防壁や見張り台を建設していく。
さらに追加の護衛人員派遣も決定し、ミリスタ村はトレートル商会の正式な生産拠点として整備されていった。
数ヶ月後、全ての準備を終えたエリー達は帝都へ帰還する。
未来のミリスタ
後年、ミリスタは大陸有数の工業都市へ発展していた。
白銀の魔女が持ち込んだアクアシルクによって、職人、錬金術師、商人達が世界中から集まり、街には工房と研究施設が立ち並ぶようになる。
露店では若い職人達がアクアシルク製品を販売し、多くの人々がその革新的素材に魅了されていた。
旅行記作家ザングート・イルサリスは、自身の著書の中で、アクアシルクのハンカチーフを手にしながら、この街が未来そのもののように見えたと記しているのであった。
三章《迷宮探索》
帝都帰還と異変の発覚
ミリスタ村を出発したエリザベートとミーシャは、帝都へ向けて街道を進んでいた。
旅の間、ミーシャは戦闘技術を大きく成長させており、既に護衛役として十分通用する実力へ到達していた。二人は途中でガナ村へ立ち寄り報告を済ませた後、帝都へ帰還する。
しかし帝都の目前まで来た時、二人は異変に気付く。本来なら多くの人々で混雑しているはずの帝都門が閉鎖され、周囲にはほとんど人影が無かったのである。
衛兵へ事情を尋ねた結果、帝都では原因不明の病が蔓延しており、疫病の可能性を考慮して出入り制限が行われていると知らされた。
エリザベートは危険を承知で帝都入りを決断し、ミーシャと共に屋敷へ戻った。
ミレイとルノアの感染
屋敷へ戻ったエリザベートは、すぐにミレイ達の安否確認へ向かった。
しかし部屋へ飛び込むと、そこには高熱に苦しみ荒い呼吸を繰り返すミレイとルノアの姿があった。
商会員やその家族にも感染者は多数発生しており、帝都では外出制限に加え、配給される食料と水以外の摂取禁止命令まで出されていた。
エリザベートは動揺しながらも執務室へ戻り、打開策を考え始める。しかし焦りから思考がまとまらず、平静を欠いている自分に気付くのであった。
商業ギルドからの緊急招集
そんな中、商業ギルドから使者が訪れ、グランドマスターであるアルバート・グイード名義の緊急招集命令書が届けられた。
災害時にのみ発動される特例措置であり、正当な理由なく拒否すれば罰則対象となる正式命令であった。
エリザベートはミーシャを伴い、招集先である臣民議会の会議室へ向かう。
そこにはグイードを始めとした各ギルド代表、帝国官僚、Aランク冒険者エルザ、そしてユーティア帝国皇太子オーキスト・ユーティアまで集まっていた。
疫病の正体
オーキスト皇太子は、帝都の病の真相を説明した。
原因は疫病ではなく、地下上水道に出現したキングポイズンスライム変異種であった。既に本体は討伐されていたものの、無数の分体へ分裂しており、汚染水を通じて毒が拡散していたのである。
現在は上級冒険者や水・光属性魔法使い総動員で浄化作業が行われていたが、解毒薬生成に必要な触媒「エマヤ鉱石」が不足していた。
そのためエリザベートには、危険なダンジョンへ入り、大量のエマヤ鉱石を回収してほしいという依頼が下されたのである。
エリザベートの条件
エリザベートは依頼受諾に当たり二つの条件を提示した。
一つ目は、現在帝都に存在する解毒薬をトレートル商会関係者へ優先配布すること。二つ目は、採取したエマヤ鉱石の所有権を一時的に自分へ帰属させる魔法契約を交わすことであった。
後者は神器【強欲の魔導書】の制限によるものであり、自身に所有権のある物しか収納できないためであった。
オーキストはその合理性を理解し、条件を受諾する。
こうしてエリザベートは、帝都救済とミレイ達を助けるため、ダンジョン探索へ赴くこととなった。
ミーシャの不満
屋敷へ戻った後、ミーシャは皇太子のやり方に強い不満を見せた。
ミレイやルノアの命を盾に、エリザベートへ危険な依頼を押し付けているように感じたのである。
しかしエリザベートは、国家運営とはそういうものであり、国を守るためなら利用できるものは全て利用するのが為政者だと冷静に語った。
さらに、拒否したとしても徴用権など別手段で強制された可能性が高いと説明し、今は協力して恩を売るべき局面だと判断していた。
その後、危険すぎるためミーシャは帝都待機を命じられ、エリザベートは単身でダンジョンへ向かう準備を整えた。
《漆黒》ユウカ・クスノキとの合流
帝都門では、エルザと合流したエリザベートが、もう一人の同行者を紹介される。
現れたのは巨大魔物サンダーバードに騎乗する少女、《漆黒》ユウカ・クスノキであった。
東方出身の薬師兼Aランク冒険者であり、数年で英雄候補と呼ばれるまで成長した実力者である。小柄な少女にしか見えない外見とは裏腹に、帝国でも高く評価される存在だった。
ユウカは既に周辺都市からエマヤ鉱石を回収しており、更に自身の従魔サンダーバード「オリオン」を移動手段として提供した。
空の旅
エリザベートとエルザは、オリオンの背へ乗り込み、空路でダンジョン近郊都市ドルドへ向かった。
高度を上げるにつれ、眼下には帝国領の大地、河川、遠方のハルドリア王国まで見渡せる壮大な景色が広がる。
森から逃げ惑う鳥達、川を泳ぐケルピーの群れ、遥か地平まで続く自然の光景は、まるで英雄譚の一場面のようであった。
帝都の逼迫した状況を一時忘れ、エリザベート達は空の旅の壮麗さへ心を奪われる。
ドルド到着
数時間後、一行はダンジョン最寄りの町ドルドへ到着した。
しかし巨大なサンダーバードが突如空から降下したことで、町の衛兵達は武器を構えて包囲態勢を取る。
エルザの説得によって誤解は解かれ、三人は無事町へ入ることができた。
その後、オリオンは森へ待機するため飛び去り、ユウカは専用の呼び出し笛を使って再召喚する仕組みを説明する。
こうしてエリザベート達は、帝都を救うための迷宮探索へ本格的に踏み込んでいくのであった。
冒険者ギルドでの情報収集
ドルドの町へ入ったエリザベート達は、まず冒険者ギルドへ向かった。
ユウは、サンダーバードの存在について町側へ正式に話を通す必要があると説明する。また、ダンジョン攻略には地図や魔物情報などの事前情報が不可欠であり、それらは冒険者ギルドで扱われているとエルザが補足した。
ダンジョンでは鉱脈や薬草群生地などの情報自体が高値で取引されており、多くの冒険者は有益な情報を独占する傾向があるため、一般公開されている情報は主に上層部の地図や出現魔物、安全地帯に限られていた。
エマヤ鉱石は人気の低い鉱石であるため、逆に鉱脈情報が残っている可能性が高いとユウは判断していた。
冒険者ギルドでの騒動
冒険者ギルド内部は、依頼を終えた冒険者達で賑わっていた。
そんな中、酒に酔った熊系獣人と人族の冒険者がエリザベート達へ絡み始める。ユウは軽くあしらおうとしたが、小柄な体格を馬鹿にされ完全に無視されてしまった。
エリザベートは、ルノアが読んでいた冒険小説と同じ展開に興味を示す。貴族社会なら後から徹底的に潰す場面だが、冒険者社会ではその場で叩き潰すのが正解だとエルザは説明した。
そこでエリザベートは、酔っ払い冒険者へ力不足だと告げて挑発する。
激昂した熊獣人が拳を振り上げた瞬間、エリザベートは身体強化魔法を用いた拳を叩き込み、鉄製胸鎧ごと相手を吹き飛ばした。
さらに仲間の人族冒険者が剣を構えたところで、ユウが剣ごと鞘を握り潰し、そのまま床へ叩きつける。
周囲の冒険者達は、目の前の少女達が尋常でない実力者であることを悟り、完全に沈黙したのであった。
皇室命令の提示
騒動後、三人は受付へ向かった。
受付嬢はエルザとユウのギルドカードを見て驚愕するが、更にユウが皇室紋章入りの紹介状を差し出したことで完全に態度を変えた。
エリザベート達は上級応接室へ案内され、しばらくしてドルド冒険者ギルド支部長ブレンが現れる。
彼はオーキスト皇太子からの書状を確認済みであり、すぐにダンジョン資料を机へ広げた。
ダンジョンの情報共有
ブレンの説明によれば、エマヤ鉱石の鉱床位置はある程度把握されていた。
エマヤ鉱石は価値が低く重いため、通常の冒険者はあまり採取しない。そのため、逆に採掘場所の情報は残っていたのである。
また、ダンジョン自体は極端な高難度ではないものの、最近になってアンデッド系魔物の出現数が増加していることも判明した。
エルザとユウは、地図や安全地帯、出現魔物情報を細かく確認しながら探索計画を練っていく。
エリザベートは本職である二人へ判断を任せ、自身は情報整理へ徹するのであった。
冒険者ギルド受付嬢の困惑
ドルドの冒険者ギルドでは、受付嬢ティナがいつも通りの業務をこなしていた。
そこへ現れたのは、黒髪黒目の少女ユウ、赤髪の冒険者エルザ、そして銀髪の女性エリザベートであった。田舎町には不釣り合いな華やかな三人組に、ティナは当初、護衛付きの依頼人だと考えていた。
しかし直後、酒癖の悪いBランク冒険者二人が三人へ絡み始める。
ティナが慌てて男性職員を呼びに向かった矢先、熊獣人の冒険者はエリザベートに吹き飛ばされ、もう一人の男はユウによって床へ叩き込まれた。強化済みのギルド床材すら砕くその威力に、ティナは完全に言葉を失う。
さらに提示されたギルドカードには、《漆黒》ユウカ・クスノキと《不死鳥》エルザ・アーチフィールドというAランク冒険者の名が刻まれていた。
加えてユウが差し出したのは、皇室紋章入りの封書であった。
ティナは即座に三人を最上級応接室へ案内し、ギルドマスターのブレンへ報告へ走った。
ギルド全体への警告
事情を知ったブレンは、三人への干渉を厳禁とするようティナへ指示した。
受付へ戻ったティナは、ギルドホール中へ聞こえる声で、エリザベート達が特別依頼を帯びたAランク冒険者であり、妨害行為は一切許されないと宣言する。
冒険者達は、《不死鳥》エルザと《漆黒》ユウカが現れた事実に騒然となり、銀髪の商人エリザベートについても強い警戒を抱く。
こうして三人は、ドルドの冒険者達から完全に危険人物として認識されることとなった。
宿屋《黄金色の小麦亭》
ギルドマスターから紹介された宿《黄金色の小麦亭》へ移動した三人は、宿泊と夕食を取ることにした。
食堂では冒険者や労働者達が賑やかに酒を飲んでおり、一角では飲み比べ大会まで開かれていた。
その中心にいたのは、修道服姿で酒瓶を抱えた少女ティーダであった。
ティーダは以前からの知人であり、エリザベート達と再会すると嬉しそうに駆け寄ってくる。
エリザベートが帝都の現状とダンジョン探索の目的を説明すると、ティーダは事態の深刻さに驚愕していた。
ティーダの勧誘
そこでユウは、ティーダが光属性の治癒魔法と退魔魔法を扱えることに着目し、ダンジョン同行を提案した。
最近ダンジョンではアンデッド系魔物が増加しており、光属性魔法使いの存在は極めて有効だったのである。
しかしティーダは、自分では足手纏いになると及び腰だった。
エリザベートは金貨袋を提示し、ユウは更に自作の薬酒を差し出す。
その薬酒は、米から作られた東方の酒をベースに、薬草を漬け込んだ極めて高品質な酒であり、ティーダは一口で魅了されてしまう。
最終的にユウが追加の薬酒を提示すると、ティーダは「神のお導き」と称して依頼を受諾した。
エリザベートは、金と酒へ極端に弱いティーダの性格に呆れつつも、嫌いではないと感じていた。
ダンジョン突入準備
翌朝、一行は簡単な朝食を済ませた後、ダンジョン入口へ向かう。
ティーダは特殊付与済みの修道服を装備しており、耐刃・耐熱・耐寒・魔法耐性まで備えた高級品であった。
ダンジョン入口は巨大な岩の裂け目となっており、その周囲は防壁と鋼鉄扉で厳重に封鎖されていた。衛兵達はダンジョンからの魔物氾濫を警戒して常駐しているのである。
一年前にもダンジョン暴走による被害が発生しており、国家にとってダンジョンは資源供給源であると同時に災害源でもあった。
探索方針の決定
今回の探索では、冒険者経験が最も豊富なエルザがリーダーを務めることとなった。
エリザベートは視界不良を考慮し、細剣と手甲を中心とした近接装備へ切り替えていた。エルザも取り回し重視の装備を選択している。
ユウは巨大戦斧と東方式戦装束を装備し、ティーダは鉄杖を携えていた。
エルザは地図を広げ、地下十六階層最南端に存在するエマヤ鉱石鉱床を目標地点に設定する。
道中の魔物は可能な限り無視し、最短ルートで七階層安全地帯を目指す方針が確認された。
全員の準備完了を確認した後、エルザの号令と共に、一行はダンジョン内部へ足を踏み入れるのであった。
ダンジョン内部の異常構造
エリザベート達は、地図を頼りにダンジョン内部を最短ルートで進んでいった。
一層から三層までは通常の洞窟に近い構造だったが、下層へ進むにつれて通路は広がり、天井も異常な高さを持つようになる。
休憩中、エリザベートが内部空間の不自然さへ疑問を抱くと、エルザはダンジョンの種類について説明した。古代遺跡型や単なる魔物の巣も存在するが、このダンジョンは巨大魔物《ダンジョン・ミミック》型であり、内部構造が現実空間と一致しない特徴を持っていた。
ユウは、宝箱が出現する理由について、人間を誘い込む餌ではないかという説を語る。魔物や死体が消滅するのも、ダンジョンそのものが吸収しているためだと考えられていた。
エリザベート達は、自分達が巨大生物の体内にいる事実に改めて異様さを感じるのであった。
コボルトの包囲突破
小休止を終えた直後、一行はコボルトの群れに包囲された。
エルザは全滅を狙わず、最小限の敵だけを排除して突破する方針を指示する。
エリザベートは細剣でコボルトの喉や脚を正確に断ち、ティーダも鉄杖で頭蓋を叩き割って応戦した。
戦闘中、エルザはティーダの実力を高く評価し、冒険者適性を認める。しかしティーダ本人は、自分を一般人だと言い張りながら必死に否定していた。
その後、一行は階段へ到達し、四階層へ進む。
森林階層への到達
四階層へ降りた瞬間、一行は洞窟とは全く異なる環境へ出た。
そこは太陽のような光に照らされた広大な森林地帯であり、ダンジョン内部とは思えない光景が広がっていた。
ただし魔物の危険性は増しており、ゴブリンの群れなども出現するようになる。
エルザは、七階層の安全地帯まで一気に進む方針を維持し、一行は戦闘を避けながら森林を進んでいった。
オークとの戦闘
五階層では、巨大なオークの群れと遭遇する。
オークは嗅覚が鋭く、一度見つかれば執拗に追跡してくる危険な魔物だった。
回避には大きく遠回りが必要となるため、ユウの提案により奇襲殲滅が決定される。
茂みから飛び出したエリザベートは、細剣による精密攻撃でオークの眼球や顎下を貫き、急所を次々と破壊した。
ユウは巨大戦斧でオークを真っ二つに両断し、エルザは的確な斬撃で膝を崩させた後に首を刎ねる。
ティーダも魔力強化による怪力で頭蓋骨を粉砕し、結果として六体のオークは短時間で全滅した。
カカオとの遭遇
六階層でも森林地帯は続き、一行は変化の少ない景色に疲労感を覚えていた。
そんな中、ユウは道中で様々な植物や果実を採取していく。
特に彼女が興味を示したのは《カカオ》と呼ばれる南方特産の果実であった。
ユウは、乾燥と発酵を経た種子が薬材料になると説明する。
エリザベートは、ハルドリア王国の古文書でこの名を見た記憶を思い出し、新たな事業の可能性を感じ始めていた。
サイクロプス出現
その直後、一行の前へ五メートルを超える単眼巨人《サイクロプス》が現れる。
本来この程度の浅い階層に出現する魔物ではなく、エルザやユウも異常事態だと判断した。
ティーダの閃光魔法で目を潰し、エルザが脚へ傷を与え、ユウが背後から巨大戦斧を叩き込む。
エリザベートは氷魔法《氷人形》を囮に使い、自身はサイクロプスの腕を駆け上がって顔面へ斬撃を加えた。
最後はエルザの一撃が胸を貫き、サイクロプスは崩れ落ちる。
しかし本来存在しないはずの強力魔物の出現に、一行は強い不安を抱くようになっていた。
安全地帯での遭遇
七階層へ到達した一行は、安全地帯で先客のCランク冒険者パーティ《光の道》と遭遇する。
彼らはサイクロプス出現によって下層へ進めなくなっており、精神的にも限界へ近付いていた。
エルザ達がサイクロプス討伐を伝えると、《光の道》の面々は涙を流して感謝した。
当初、謝礼を申し出られたティーダは金銭要求を正当化していたが、エルザは高ランク冒険者として下位冒険者から利益を搾るべきではないと説明し、謝礼を断る。
代わりにサイクロプス素材の解体と運搬を依頼し、売却益の一部を《光の道》へ渡す形で話をまとめた。
ティーダは追加報酬を得られると知ると、途端に怪我人治療へ積極的になっていた。
異常増殖する魔物達
翌日、一行は再び下層へ向かう。
《光の道》から得た情報によれば、最近のダンジョンでは異常なほど魔物の数が増加しており、サイクロプスのような本来存在しない強敵まで現れているという。
その不安を抱えたまま進んでいた矢先、一行は大規模な《アーミーモンキー》の群れに襲撃される。
本来十五匹前後で行動する魔物であるにもかかわらず、今回の群れは三十匹規模に達していた。
エルザは即座に陣形を整え、ユウとティーダを前衛突破役、自身とエリザベートを遊撃に配置する。
ユウの鉈が猿型魔物を切り裂き、ティーダの鉄杖が骨を砕き、エリザベートは氷魔法《氷鎚》で群れを押し潰していく。
一行は、明らかに異常化していくダンジョンの脅威を実感しながら、更に深層へ進んでいくのであった。
地底湖階層とアリゲータードレイク
森林地帯を抜けたエリザベート達は、巨大な地底湖が広がる階層へ到達した。
地図によれば、下層への階段は湖の底に存在しており、一行は潜水を覚悟する。しかしその直後、水柱と共に巨大なワニ型魔物が出現した。
その魔物は中央大陸では確認例のない竜種《アリゲータードレイク》であった。
ユウは巨大な尾を戦斧で切断し、ティーダは跳躍して鉄杖を頭部へ叩き込む。さらにエルザが口内で発動しかけたウォーターブレスを妨害し、最後はエリザベートの斬撃が首を深く断ち切った。
本来存在しないはずの魔物の出現に、一行はダンジョン異常を確信し始める。
水中移動と下層への突入
エリザベートは空気魔法で巨大な泡を作り、水中活動用の空間を確保した。
一行は魔力を抑えながら、水底に設置された鎖を辿って進んでいく。遠方には更なる巨大魔物の影も見えていたが、接触を避けながら階段代わりの縦穴へ到達した。
滑り台のような通路を滑り落ちた先は、草原と川が広がる新たな階層だった。
岸へ上がった後、エリザベートは魔法で全員の服を乾かしながら、ダンジョン構造の異常さを改めて実感していた。
ロゼリアによる王国運営
その頃、ハルドリア王国ではロゼリアがフリードの散財報告を受けていた。
フリードは王族の立場を利用し、紹介状を書いて報酬を得るような真似まで始めていたが、ロゼリアは現在それどころではないと判断する。
属国境界付近では再びダンジョン暴走による魔物氾濫が発生し、王国はその対応へ追われていた。
さらに帝都で流行している病が王国へ伝染する可能性もあり、ロゼリアは帝国側との連携と感染対策準備を急がせる。
彼女はフリードへの監視だけ残し、優先順位の低い問題として放置するのであった。
石造り階層への変化
十三階層へ到達した一行は、これまでの自然地帯とは全く異なる石造りの通路へ入った。
湿気に満ちた閉鎖空間であり、襲撃してくる魔物の頻度も明らかに増加していた。
そこへ撤退中の冒険者達と遭遇し、一行は重大な情報を得る。
十四階層以降では、本来稀少なはずの高位アンデッド《レイス》や《デュラハン》が大量発生しているというのである。
エルザ達は危険を理解しつつも、帝都を救うため探索継続を決断した。
レイスの大群との逃走戦
十四階層へ入った直後、一行はレイスの大群に追跡され始めた。
レイスは物理攻撃がほとんど効かず、接触だけで生命力を吸収する危険なアンデッドである。
ティーダは光属性高位魔法《浄化》を発動し、レイスを次々と消滅させていく。しかし数が異常に多く、倒してもすぐ新たな群れが現れた。
逃走中にはデュラハンまで出現し、一行は通路を疾走しながらアンデッドを蹴散らして進む。
しかし最終的に行き止まりへ追い詰められてしまう。
ティーダの結界魔法
追い詰められたティーダは、聖水を撒きながら魔法陣を構築し、高位結界魔法《聖域》を発動した。
光の結界が展開されると、レイスやアンデッド達は内部へ侵入できなくなる。
結界内部で一行は短時間の休息を取り、地図を確認しながら突破ルートを検討した。
ティーダは、結界が長く持たない代わりに、周囲一帯を浄化できる大規模魔法を準備していた。
大浄化《浄滅》
結界が限界を迎えた瞬間、ティーダは大規模光属性魔法《浄滅》を発動する。
眩い閃光が空間全体を包み込み、その場に存在していたアンデッド達は、一切の痕跡を残さず完全消滅した。
成功に浮かれるティーダを引きずるように、一行は十五階層へ向かって走り出す。
しかし広間では再び大量のアンデッドが待ち構えていた。
そこでティーダは、自ら殿を務めると宣言する。
エルザ達はティーダの実力を信頼し、彼女へ任せて先へ進む決断を下した。
十五階層の異常魔物
十五階層へ飛び込んだ瞬間、一行は本能的な危険を感じ取る。
ユウは神器《終結の戦斧》、エリザベートは《暴食の魔導書》、エルザは《不死鳥の剣》を同時に発動した。
直後、暗闇から巨大昆虫型魔物《グレートマンティス》が襲い掛かってくる。
さらに周囲にはジャイアントワーム、デススコルピオ、サンドバージャーなど、本来この浅層へ出現しないはずの強力魔物が大量に存在していた。
ギルド情報ではアンデッドしか出ないはずの階層であり、ダンジョン異変は既に決定的となっていた。
エリザベート達は、後から追って来るティーダのためにも、この異常魔物群を突破する覚悟を固めるのであった。
ティーダと死霊術師サソリの対峙
十五階層への階段へ向かったエリザベート達を見送った後、ティーダは一人でレイスの大群と対峙していた。
彼女は無詠唱で高位光属性魔法《浄滅》を発動し、広間を埋め尽くしていたアンデッド達を一瞬で消滅させる。
しかしその直後、柱の陰からフード姿の女が現れた。
ティーダは、女が十階層からずっと尾行していたことを見抜いていた。さらに、ダンジョン異常の黒幕であり、雇われ死霊術師だと推測する。
女は正体を隠そうとしたが、最終的に自らを《サソリ》と名乗った。
サソリは死霊術だけでなく魔物使いの能力も有しており、リビングデッドやレイス、更には武装したホブゴブリン部隊まで操っていた。
神器《神の恵みを刈り取る刃》
サソリ配下のホブゴブリン達は、高度な連携でティーダを包囲し、剣や槍で修道服ごと身体を貫いた。
しかし次の瞬間、ホブゴブリン達の上半身が切断され崩れ落ちる。
ティーダが発動した神器は、純白の大鎌《神の恵みを刈り取る刃》であった。
神器能力は魔力吸収であり、斬った相手から奪った魔力を自身の強化と治癒へ変換できる。
そのため、数で押す戦法を取るサソリとは最悪の相性となっていた。
ティーダはアンデッドを浄化しながら、大鎌でホブゴブリンを次々と両断していく。更に傷を受けても瞬時に治癒されるため、サソリは完全に押し込まれていった。
追い詰められたサソリは転移スクロールで逃亡を図るが、ティーダはその瞬間に腕を斬り落とす。
最終的にサソリ自身には逃げられたものの、ティーダは深手を負わせることに成功した。
十五階層の魔物軍団
一方その頃、十五階層へ到達したエリザベート達は、異常な統率を取る魔物軍団と交戦していた。
コボルト、グレートマンティス、ジャイアントオークなど、本来連携しない種族の魔物達が統率されて動いていたのである。
エルザは、これが十階層から尾行していた魔物使いの仕業だと判断した。
戦闘ではエリザベートが【炎槍】【雷雨】【光刃】など複数属性魔法を同時展開し、エルザは《不死鳥の剣》で魔物群を一閃のもとに両断していく。
ユウもまた《終結の戦斧》でグレートマンティスを圧倒していた。
しかしそこへ、更なる異常存在が現れる。
変異ファイアドレイクとの死闘
現れたのは、水晶のような突起を全身へ生やした異形のファイアドレイクであった。
通常種とは異なり、身体各部から放たれる魔力の性質が不統一であり、存在そのものが歪んでいた。
ファイアドレイクは他の魔物すら無差別に攻撃しながら、エリザベート達へ襲い掛かる。
エリザベートは氷魔法で牽制し、エルザは《不死鳥の剣》でブレスそのものを斬り裂く。ユウも《終結の戦斧》で脚部を大きく切断した。
しかし変異種は異常な再生能力まで備えていた。
更に水晶部分から放たれる特殊炎は通常の火属性を超える危険性を持ち、周囲の魔物達を一瞬で炭化させていく。
エリザベートは【氷牢】で動きを止め、ユウは神器技《断黒》で大きく切り裂いた。
さらにエルザが尾を切断し、最後はエリザベートがフリューゲルで止めを刺そうとする。
しかしフリューゲルの刃は途中で砕け散った。
その直後、変異ファイアドレイクは至近距離でブレスを放つが、エルザが身を挺して防御する。
エリザベートは治癒魔法でエルザを回復させた後、最上級魔法の詠唱を開始した。
そして完成した最上級氷属性魔法《永遠の氷獄》によって、ファイアドレイクは空間ごと完全凍結される。
続く《砕ける氷像》によって、変異種は完全破壊された。
水晶の少女
しかし戦闘後、ファイアドレイク内部から巨大な水晶球が現れる。
その中には、十歳にも満たない幼い少女が眠っていた。
最上級魔法でも傷一つ付かなかった水晶は自然に砕け散り、中から現れた少女は、金色の髪と、紅と蒼の異なる色を持つ瞳を備えていた。
少女は目を覚ますと、エリザベートを見上げて「ママ」と呟き、そのまま再び眠りにつく。
一行は困惑しながらも、少女を放置することはできず、保護して連れて行くことを決めた。
サソリと帝国襲撃の関連
その後、追いついてきたティーダからサソリとの戦闘内容を聞いたエリザベート達は、重大な共通点へ気付く。
サージャス紛争で暗躍した傭兵団も、今回のサソリも、どちらも極めて希少な転移スクロールを使用していたのである。
さらに、帝都へキングポイズンスライムを放った件も含めれば、今回のダンジョン異常は単なる事故ではなく、帝国を狙った大規模工作である可能性が高かった。
エリザベートは、帝都帰還後に本格的な調査を行う必要性を強く認識する。
エマヤ鉱石の採掘
休息後、一行は目的地であるエマヤ鉱石鉱床へ到達した。
価値が低く重いため、鉱脈はほぼ未採掘状態で残されていた。
ユウとエルザが大量採掘を行い、その間エリザベートとティーダが周囲警戒を担当する。
約一時間後、山のように積み上がったエマヤ鉱石を、エリザベートは神器《強欲の魔導書》へ全て収納した。
必要量の確保に成功した一行は、少女を連れて急ぎ帝都への帰還準備を進めるのであった。
南大陸の少女・彩暁
南大陸の礫帝国では、少女・彩暁が平民達の相談役のような活動を行っていた。
彼女は人々から話を聞き出し、商店の横領犯が番頭の馬蓮であると推理するなど、高い知性を見せていた。報酬として銀貨を受け取った後、侍女兼教育係の猫蘭に発見される。
猫蘭は、彩暁が護衛を付けず勝手に抜け出していたことを強く叱責した。しかし彩暁自身は、危険視される立場でありながらも、外の世界へ強い興味を抱いていた。
その後、二人は帰港した交易船を訪れる。
ザワークラウトと知識の価値
港では、阮船長が彩暁へ礼を述べていた。
彩暁が教えた「ザワークラウト」の知識によって、長距離航海で発生する船乗り病による死者が出なくなったのである。
さらに船長は、中央大陸から持ち帰った大量の書物を彩暁へ渡した。
彩暁は、自分が偉いのではなく、知識を発見した研究者達が凄いのだと語る。しかし実際には、断片知識を結び付けて実用化できる彩暁自身の能力こそ突出していた。
その後、彩暁と猫蘭は厳重警備された帝区へ戻り、帝国中枢に位置する宮へ入る。
途中で彩暁は母・玉涼と遭遇し、再び勝手な外出を叱られる。そして玉涼から、一通の手紙を受け取るのであった。
帝都毒事件の収束
一方、帝国ではキングポイズンスライム変異種による毒事件が収束へ向かっていた。
エリザベート達が持ち帰ったエマヤ鉱石によって解毒薬生産が進み、帝都の患者達へ薬が行き渡る。
帝国上層部は、今回の事件を他国によるテロではないかと疑い始めていた。エリザベート自身も、サソリという女が裏で関与している可能性を強く疑っていた。
しかし現時点では、決定的証拠は掴めていなかった。
ティーダは帝都へ戻ることを避け、報酬を受け取った後もドルドへ残留した。彼女は公の場へ出ることを極端に嫌がっていたのである。
アリスとの生活
変異ファイアドレイク内部から現れた少女は、現在エリザベートの屋敷で暮らしていた。
少女はエリザベートを「ママ」と呼び、離れると泣き出してしまうため、最終的にエリザベート自身が引き取ることとなった。
名前の無かった少女へ、エリザベートは「アリス」という名を与える。
アリスはミーシャとも懐いており、屋敷の庭で遊ぶなど、以前より屋敷全体が賑やかになっていた。
エリザベートもまた、こうした生活を悪くないと感じ始めていた。
カカオ研究とチョコレート開発
エリザベートは、ダンジョンで発見したカカオについて古文書を調査していた。
その結果、古王国ではカカオを乾燥・発酵させ、砂糖やバターと組み合わせることで菓子へ加工していた記録を発見する。
さらに、クッキー、ケーキなど多様な応用方法まで残されていた。
エリザベートは即座に研究と試作を開始し、冒険者パーティ《光の道》へカカオ採取依頼を出した。秘密保持のため魔法契約まで結ばせ、最終的にはトレートル商会専属冒険者として取り込む。
また、喫茶文化へ詳しい人材や料理人を集め、新事業準備を本格化させていった。
ロゼリアの危機感
その頃、ハルドリア王国ではロゼリアが異常な税収低下へ気付いていた。
調査の結果、多くの大商会が「王都本店」から「王都支店」へ変更され、本店機能を他国へ移転していたことが判明する。
さらに職人や錬金術師達まで国外へ移動していた。
原因は、アクアシルク研究と販売への便宜を条件にした商会誘致工作であった。
そしてその仲介者は、フリード王太子の紹介状を利用していたのである。
合法的な手続きであり、紹介状まで存在する以上、王国側は表立って非難しづらい。
ロゼリアは即座に、仲介者を見つけ出して紹介状を回収するよう命令した。
しかしエリザベート側は、既にそこまで計算して動いていた。
彼女はロゼリアなら暗殺すら検討しかねないと理解しており、最終的には三倍額で紹介状を売却するようミレイへ指示したのである。
チョコレートの完成
数ヶ月後、試作を重ねたチョコレート菓子が完成する。
ティーダ、アリス、ミレイ、ルノア、ミーシャ達による試食会では非常に高評価となった。
ティーダは、濃厚な甘味は酒とも相性が良いと指摘し、エリザベートも新たな商品展開の可能性を見出す。
その後、トレートル商会は喫茶部門を設立し、喫茶店《グリモアール》を開店した。
チョコレート菓子は貴族達の間で急速に話題となり、店は大盛況となる。
更に皇室献上用の商品開発まで進められ、トレートル商会は新たな巨大市場を切り開いていくのであった。
喫茶店《グリモアール》の広がり
時が流れ、《グリモアール》は若者達の人気店となっていた。
新人アイドルのアカリも、撮影帰りにマネージャーと共に《グリモアール》へ向かう。
彼女は新作チョコレートケーキを楽しみにしながら着替えを急いでいた。
こうしてエリザベート達が始めたチョコレート文化は、帝国社会へ急速に浸透していくのであった。
電子書籍版特典ショートストーリー《マダム・マジュラーの水着専門店》
海水浴への誘い
ハーミット伯爵領で予定が空いた日、エリザベート達はハーミット伯爵夫人と令嬢から海水浴へ誘われていた。
海水浴は北大陸や東方では一般的な娯楽である一方、中央大陸ではまだ新しい文化であり、エリザベート達も実際に体験したことはなかった。
そのため、一行は水着を購入する必要が生じ、伯爵夫人から紹介された《マダム・マジュラーの水着専門店》を訪れる。
高級店での接客
店は高級仕立て屋のような落ち着いた雰囲気であり、店主マダム・マジュラーは洗練された態度でエリザベート達を迎え入れた。
紹介状を確認したマダムは、応接室へ案内した後、多数の水着を用意し、更衣室へと一行を通す。
エリザベートは青いビキニタイプ、ミレイは赤い同系統の水着、ルノアとミーシャはセパレート型を試着した。
その姿を見たマダムは大興奮し、従業員達へ着心地確認やサイズ調整を次々指示していく。
ルノアとミーシャの水着選び
ルノアは露出の多さを恥ずかしがっていたが、ミーシャは旅商人時代の経験から、それほど違和感を覚えていなかった。
獣人族であるミーシャには尻尾部分の違和感があり、マダムはすぐに尻尾穴位置を調整した別デザインを提案する。
またルノアには、体型を隠しやすいフリル付き水着が薦められた。
マダムは二人を「キュート」と絶賛しながら、次々と新しい水着を持ち込んでいった。
ミレイへの説得
ミレイは、自分には派手すぎるとして、より落ち着いた色合いへの変更を希望した。
さらに従者として目立つ格好を避けたいと考え、最終的には普段通りのメイド服で済ませようとまで言い出す。
しかしエリザベートは、今回は私的な遊びなのだから遠慮せず楽しむべきだと説得した。
そこへマダムも加わり、ミレイの髪色にはシックなデザインも似合うと熱弁を振るう。
押し切られる形で、ミレイは別デザインの試着を了承するのであった。
マダム・マジュラーの情熱
エリザベート自身も、露出の多さに多少の羞恥を感じていた。
しかし今回訪れるのは伯爵家の私有海岸であり、多数の人目に晒されるわけではないため、大きな問題ではないと判断する。
その後もマダムは、パレオとの組み合わせや色彩の相性を熱心に語り続けた。
エリザベートは、マダムが単なる商売人ではなく、着飾らせること自体へ情熱を持つ職人気質の人物なのだと理解する。
苦笑しながらも、エリザベートはマダム推薦の新たな水着へ手を伸ばすのであった。
ブチ切れ令嬢1巻レビュー
ブチ切れ令嬢まとめ
ブチ切れ令嬢3巻レビュー
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