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フィクション(Novel)ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。読書感想

小説「ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。5」感想・ネタバレ

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ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。5の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

ブチ切れ令嬢4巻レビュー
ブチ切れ令嬢6巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 商会経営とブランド戦略
    2. 帝国祝祭と経済効果
    3. 通行税と領地運営
    4. 貴族と商人の業務提携
    5. 魔法武器の解析と修復
    6. 帝都祝祭と闘技大会
    7. ハルドリア王国との謀略戦
  6. 登場キャラクター
    1. トレートル商会(エリザベート陣営)
      1. エリザベート・レイストン
      2. ルノア・カールトン
      3. ミーシャ
      4. アリス・レイス
      5. ミレイ・カタリア
      6. バアル
      7. キャロル
    2. ハルドリア王国
      1. ブラート・ハルドリア
      2. アデル・ハルドリア
      3. マオラン
      4. エイワス・レイストン
      5. ロゼリア・ファドガル
      6. フリード・ハルドリア
      7. シルビア・ロックイート
      8. ギョクリョウ妃
      9. アリア
    3. ユーティア帝国
      1. ゴドウィン・ユーティア
      2. オーキスト・ユーティア
      3. マティアス・ロードストス
    4. 帝国商業ギルド・その他の商会
      1. アルバート・グイード
      2. エドワード・グイード
      3. ドラゴニュートのメイド
      4. ダルク・ホーキンス
      5. ホーキンスの部下
      6. アルテ・ヒルガディエ
      7. ネスタルト・ヒルガディエ
      8. エンバース
      9. クリス
      10. ロットン・フライウォーク
    5. バーチ商会(ナイル王国)
      1. イーグレット・バーチ
      2. オウル
    6. 冒険者・闘技大会関係者
      1. リリ・アマリス
      2. モモ
      3. マルティ
      4. ネッド
      5. ランズ
      6. カイン
      7. システィア
      8. ユウカ・クスノキ
      9. エルザ
      10. リサ
      11. サリナ
      12. シシリー
    7. 謎の組織
      1. カラス
      2. クモ
      3. ナナフシ
    8. イブリス教
      1. ティーダ
      2. 聖職者
    9. その他
      1. リンダ
      2. 黒いイヌ
      3. ウサギ
      4. ネコ
      5. トラ
      6. 白銀のオオカミ
  7. 展開まとめ
    1. 序章
    2. 一章《前夜祭》
    3. 二章《祝祭》
    4. 三章《凶行》
    5. 特典ショートストーリー『アリスとキャロルの不思議な本棚』
  8. ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。一覧
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

『ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。5 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~』は、理不尽な婚約破棄と幽閉をきっかけに、強力な魔導書と才覚を武器にして祖国への復讐に挑む悪役令嬢風の異世界ファンタジー小説である。 物語の舞台は、個人の武力や魔法だけでなく、経済や国家間の外交・策謀が複雑に絡み合う世界である。第5巻では、獣王連合国から無事に帰還した主人公のエリーが、滞在先の帝国で5日間にわたる華やかな祝祭シーズンを迎える。しかし、お祭り騒ぎに沸く帝都の裏では、彼女の居場所を突き止めた兄の来訪や、かつてのライバルとの再会など、国家を揺るがす新たな策謀が渦巻いていく。

■ 主要キャラクター

エリー(エリザベート): 本作の主人公。オルセン王国の元公爵令嬢であったが、不当な婚約破棄を機に神器「七つの魔導書」を解放し、祖国への報復を開始した天才令嬢。非常に聡明かつ冷徹な一面を持ち、ビジネスの才能にも長けている。第5巻では祝祭を楽しみつつも、迫りくる危機へ向けて裏で巧みに立ち回る。

エイワス: エリーの実の兄。どこからかエリーの居場所を突き止め、さらには彼女の「父殺し」という事実さえも把握した上で、交渉のためにエリーのもとを訪れる。エリーにとって、油断のならない極めて危機的な状況をもたらす存在である。

アリス: エリーと行動を共にする仲間の一人。帝都の祝祭において、エリーたちと一緒に屋台や大道芸、武術大会などのお祭り騒ぎを楽しむ姿が描かれている。

ロゼリア: エリーのかつてのライバル。祝祭の夜、エリーとの再会を果たすことになり、渦巻く策謀の中で物語に新たな波乱を巻き起こす。

■ 物語の特徴

本作の大きな魅力は、昼のお祭り騒ぎという華やかな「動」の描写と、夜に繰り広げられる冷徹な心理戦や復讐劇という「静」の描写が織りなす、鮮やかなコントラストにある。単なる武力による無双ではなく、お仕事モノとしての経済活動や、血縁者である兄とのスリリングな政治的交渉が描かれる点が、一般的な追放・悪役令嬢ものとの大きな差別化要素となっている。 特に第5巻では、これまで積み上げてきた復讐劇の成果を背景にしつつ、実の兄やかつてのライバルといった因縁深いキャラクターたちが一堂に会することで、物語の緊張感がさらに高まっていく。読者にとって、張り巡らされた策謀をエリーがどのように切り崩し、「大逆転復讐ざまぁ」へと繋げていくのかが最大の興味深いポイントである。

書籍情報

ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。 5~魔導書の力で祖国を叩き潰します~
著者:はぐれメタボ 氏
イラスト:昌未  氏
出版社:ホビージャパン(HJノベルス)
発売日:2024年1月19日
ISBN:9784798633695

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あらすじ・内容

さぁ、祖国を潰す取引を致しましょうか? 祝祭ムードを楽しみながら、天才令嬢は裏でも動く!!
「せっかくの祝祭、楽しみましょう」 獣王連合国から無事に帰還したエリーのもとに、どこからか居場所を突きとめた兄・エイワスが交渉のために訪れる。自身の居場所はおろか父殺しさえ知るエイワスを相手に、エリーは油断できない危機的状況を迎えるが、折あしく帝国は5日間にわたる祝祭シーズンに!! 兄の動きは警戒しつつも、屋台に大道芸人、武術大会とお祭り騒ぎの昼の帝都を、アリスたちと楽しむエリー。 しかし、夜になれば、かつてのライバル・ロゼリアとの再会も待っていて…… 策謀渦巻く祝祭を娘と楽しむ天才令嬢による大逆転復讐ざまぁファンタジー、第5弾!!

ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。5 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~

感想

理不尽に虐げられた令嬢による王道の復讐劇でありながら、そのスケールと理知的な戦略が極めて高いレベルで描かれた傑作である。とりわけ心に残ったのは、主人公・エリザベートを取り巻くハルドリア王国の権力構造の変化と、それに伴う極限の心理戦だ。かつて彼女が「ざまぁ」の対象としていた裏切り者たちが失脚し、新たに第一王女・アデルを中心とする優秀な陣営が国政を司るようになった展開は、物語の格を一段引き上げている。アデルの代理人として現れた兄・エイワスやかつてのライバル・ロゼリアから「これ以上国民に犠牲を出さないでほしい」と打診されても、それを冷酷に突っぱねるご令嬢の容容赦ない姿勢には、復讐者としての凄絶な覚悟が漂い圧倒された。感情に任せた破壊ではなく、敵の失策や慢心を最大限に利用し、合法的な罠や民意の扇動を用いて国家そのものを追い詰める理知的な復讐劇だからこそ、単なる「ざまぁ展開」の枠を超えたスリリングな緊張感と極上のカタルシスが全編に満ちあふれている。

物語のもう一つの軸である商会経営のパートでも、彼女の底知れない才覚が光る。顧客心理を巧妙に突いたブランドの棲み分けから、リスク管理を徹底した大貴族との提携、さらには将来の顧客育成を見据えた孤児院への発注といった社会事業に至るまで、その手腕は単なる利益追求の領域を遥かに凌駕していた。まるで国家運営レベルの視座へと進化を遂げているかのようであり、彼女の圧倒的なカリスマ性に読者として惚れ惚れしてしまう。この商売の舞台となる帝都の祝祭自体も、単なる国を挙げたお祭り騒ぎにとどまってはいない。新市場の開拓やエンターテインメントを利用した相乗効果、異文化商品の流通、そして将来に向けた社会的投資などが緻密に組み込まれており、帝国経済を大きく循環させ活性化させる重要な経済イベントとして機能している描写が見事である。

戦闘や商売といった激動の合間に描かれる、日常の中でのキャラクターたちの成長も見逃せない。ミーシャが格安で購入したガラクタ同然の短剣をエリザベートが解析・修復するプロセスは、彼女の持つ古王国時代の魔法技術に対する深い知識と技術力を示すと同時に、現代と古代の魔法付与技術の違いを明らかにする興味深いエピソードであった。失われた古代技術を難なく修理してしまう底知れない才能に驚かされると同時に、この修復された《守護者の短剣》が強力な魔法武器としてミーシャの戦力を着実に底上げしていく流れには、育成モノとしての確かなカタルシスがある。この帝都祝祭と並行して開催された闘技大会は、ダルクによる冷飲販売ビジネスへの鮮やかな転換劇、ルノアとミーシャの実践を通じた精神的・肉体的な成長、そしてエリザベートとの接触を図るハルドリア王国側の暗躍の舞台として、物語を大いに盛り上げる極めて重要なエピソードとして機能していた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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ブチ切れ令嬢4巻レビュー
ブチ切れ令嬢6巻レビュー

考察・解説

商会経営とブランド戦略

第5巻におけるエリザベート(エリー)の商会経営とブランド戦略は、既存の高級ブランドとしての地位を盤石なものにしながら、新たな市場への進出や大資本との業務提携、さらには長期的な顧客育成を見据えた社会的な投資へと、その規模と視座を大きく広げている。主な展開と特徴は以下の通りである。

1. ブランドイメージの保護とターゲットの棲み分け(アンフェール商会の設立)
祝祭に合わせて、エリザベートは平民の上位層をターゲットにした新商会「アンフェール商会」を立ち上げる。これは、貴族を主な顧客とする高級志向の「トレートル商会」と明確に窓口を分けるためである。
・貴族は商品の品質以上に特別感や希少性に価値を見出すため、平民と同じ窓口で安価な商品を販売すると、ブランドの価値が低下したと受け取られるリスクがある
・このブランドイメージを厳格に守りつつ、衣服や別大陸からの輸入品など幅広く扱う新商会を別組織とすることで、万が一のトラブル時にトレートル商会との共倒れを防ぐリスク分散の役割も持たせている

2. 冷徹な交渉術と継続的な利益構造の構築(グイード伯爵家との提携)
巨大な富を持つグイード伯爵家の子息・エドワードから、化粧品のシェアを狙った総合的な業務提携を持ちかけられた際、エリザベートは相手の提案の甘さを指摘し、言葉だけの信頼では動かない商人のシビアさを見せている。
・交渉の末、担保として商船5隻分の名義譲渡、積荷への意見権、交易利益の0.05%の配分といった自商会に圧倒的に有利な条件を引き出した
・同時に、アンフェール商会の店舗を相場の7割で貸し出すことで相手の事業失敗時のリスクを軽減し、お互いに継続的な利益を生み出す強固な提携関係を構築する手腕を発揮した

3. 将来の市場を見据えた社会的投資(孤児院への仕事発注)
帝都の広場で孤児院の子供たちが作った刺繍入りのハンカチを見たエリザベートは、彼らに仕事を発注する構想を思いつく。
・これは単に安価な労働力を確保するだけでなく、孤児たちが技術を身につけて将来経済的に自立すれば、自商会の商品を買う顧客になるという超長期的な視点に基づくものである
・同行していたイーグレットからは「商人というよりも国を動かす側の考え方」と評されるほどのマクロな経営戦略を見せている

4. 人材の発掘とアイデアの収益化
露店巡りの中で、本物だけを直感で仕入れる優れた目利き能力を持つ行商人エンバースを発見し、組織拡大に必要な人材を的確に発掘している。
・商品を全買い取りした上で自身の商会へ勧誘した
・闘技大会の主催者ダルクから氷の提供を依頼された際には、対価として完売していた高価なボックス席を要求した
・試合の待ち時間に芸人を呼んで客を会場に釘付けにし、飲食の売上を伸ばすというアイデアを提案し、利益の3パーセントをアイデア料として要求する抜け目なさも描かれている

まとめ
第5巻の商会経営は、顧客心理を突いたブランドの棲み分けから、リスク管理を徹底した大貴族との提携、さらには将来の顧客育成を見据えた社会事業まで、単なる利益追求を超えた国家運営レベルの視座へと進化しているのである。

帝国祝祭と経済効果

第5巻に描かれる「帝国祝祭」は、5年に1度開催されるユーティア帝国最大のイベントであり、平民にとっては屋台や旅芸人が集まる娯楽の場であると同時に、商人にとっては莫大な利益を生み出す巨大な商機として描かれている。作品内で描かれた祝祭における経済効果とビジネス戦略の展開は以下の通りである。

新規事業の立ち上げとターゲット市場の拡大
祝祭という消費意欲が高まる絶好のタイミングに合わせて、エリザベートは平民の上位層をターゲットとした新商会「アンフェール商会」を稼働させた。
・これまでは貴族向けの高級品を主力としていた
・祝祭の集客力と熱気を利用して新たな客層を取り込み、商会の規模と利益をさらに拡大する戦略を立てている

闘技大会におけるエンターテインメントと飲食販売の相乗効果
祝祭のイベントの一つである闘技大会(タッグトーナメント)において、主催者であるダルク・ホーキンスは酷暑を見越して冷たい飲料の販売を計画する。
・氷の提供を求められたエリザベートは、単に氷を提供するだけでなく、試合の待ち時間に芸人や吟遊詩人を呼んでパフォーマンスをさせ、客を会場に釘付けにするというアイデアを提案した
・これにより観客の離席を防いで飲食物の売上を飛躍的に伸ばすことに成功した
・エリザベート自身もアイデア料として利益の3%を要求するなど、エンターテインメントと物販を組み合わせた高い経済効果が生み出されている

異文化交流による消費の活性化と人材発掘
祝祭には大陸各地から多くの商人が集まるため、西大陸の守護獣人形や、北大陸のスパイスの効いた料理、ヘリウムを利用したスライムバルーンなど、珍しい商品や文化が流入し、活発に消費されている。
・エリザベートはこの混沌とした市場の中で、本物のアンティークを直感で仕入れる優れた目利き能力を持つ行商人エンバースを発見した
・彼の商品をすべて買い取った上で自商会へスカウトしている
・祝祭は単なるモノの売買だけでなく、優秀な人材を発掘・獲得する場としても機能している

慈善事業と将来の顧客育成を見据えた社会的投資
祝祭の広場では、孤児院の子供たちが刺繍入りのハンカチを販売していた。
・裕福な平民やお忍びの貴族が集まるエリアに孤児院の出店を割り当てるという、行政側の慈善事業的な経済効果も描かれている
・これを見たエリザベートは、安価な労働力として孤児たちに仕事を発注する構想を思いつく
・孤児たちが技術を身につけ将来経済的に自立すれば、やがて自商会の商品を買う顧客になるという、数年〜十数年先を見据えた超長期的な経済効果(社会的投資)を見出している

まとめ
帝国祝祭は、単なる国を挙げたお祭り騒ぎにとどまらず、新市場の開拓、エンターテインメントを利用した相乗効果、異文化商品の流通、そして将来に向けた社会的投資など、帝国経済を大きく循環させ活性化させる重要な経済イベントとして機能しているのである。

通行税と領地運営

作品における「通行税と領地運営」は、領主の政策や法的な権限が経済にどのような影響を及ぼすかをリアルに描き、同時にエリザベートの合理的かつ冷徹な商人としての判断力を示すエピソードとなっている。

街道整備と領地経済のメカニズム
帝国では街道の整備は領地を所有する貴族の仕事である。エリザベートは弟子のルノアに対し、領地運営の基本と経済の繋がりを以下のように説明している。
・街道を整備すれば物流がスムーズになり、市民の生活水準や購買意欲が上がり、他所から商人や冒険者を呼び込むことで税収が増えて領地が潤う
・逆に整備を怠れば、物流が滞って食料や薬などの生活必需品が高騰し、民衆の財布の紐が固くなって嗜好品の需要が下がる
・さらに、食い詰めた農民が野盗化して街道の危険性が上がると、護衛費用が嵩んでさらに物価が高騰する悪循環に陥る
エリザベートは、目先の整備費を惜しんでこのような悪循環を招く領主を「目先のお金しか見ていない」愚か者と酷評している。

領主の権限を利用した標的型通行税
第5巻において、トレートル商会はディルク男爵領から不自然な通行税の引き上げを受けた。
・帝国法では、領主は自領を通行する商人に対して「品目と規模」を基準にして通行税を設定する権限が認められている
・ディルク男爵はこの法を悪用し、「大規模商会が取り扱う化粧品やその素材」に限定して通行税を大幅に引き上げた
・現在、その通商ルートで該当する条件を満たすのは実質的にトレートル商会のみであり、法的な範囲内で特定の商会を狙い撃ちにした課税を行っていることが発覚した

商人としての冷徹な判断と人材育成
自商会を狙った理不尽な通行税の引き上げに対し、エリザベートは感情的にならず冷静な判断を下している。
・ディルク男爵の税率引き上げは領主の権限内に収まっているため、抗議による解決は難しいと判断した
・別ルートを通ることも検討したが、遠回りによる輸送費の増加を考慮すると、高くなった通行税を支払ってでも今まで通りのルートを利用する方がコストが抑えられると分析した
・その上で、より安く運べる新ルートを探したいというルノアの提案を受け入れ、通商ルート開拓の勉強として快く任せるなど、理不尽な状況を部下の成長の機会へと転換している

まとめ
作品における「通行税と領地運営」は、領主の裁量や法的権限が経済活動に与える影響の大きさを描き出している。同時に、自らを狙い撃ちにした不当な課税に対しても、抗議や報復といった感情的な行動に出るのではなく、輸送コストと税額を天秤にかけて最も利益が出る選択を導き出す、エリザベートの徹底した商人としての合理性が強調されているのである。

貴族と商人の業務提携

第5巻における貴族と商人の業務提携は、帝国商業ギルドのグランドマスターを務める先見伯アルバート・グイード伯爵の子息、エドワードとの交渉を通じて、単なる主従関係ではない、互いの利益とリスクを縛り合う先進的なビジネスパートナーシップの構築として描かれている。

提携の背景と商人としてのシビアな視点
エドワードは、グイード伯爵家が保有する輸入商材を利用し、輸送から販売までを一貫して行う総合展開を目指し、女性向け化粧品市場で圧倒的なシェアを持つトレートル商会に業務提携を持ちかけた。
・しかしエリザベートは、ノウハウだけを吸収された後に商会が切り捨てられるリスクを即座に見抜いた
・エドワードが信頼してほしいと訴えても、エリザベートは言葉だけの信頼では従業員とその家族の生活を背負う商会主として動けないと突き放した
・商人としての冷徹でシビアなリスク管理の姿勢を見せつけた

担保の提示と先進的なビジネスモデル
交渉を成立させるため、エドワードは担保として自商会が保有する商船5隻分の名義をトレートル商会へ譲渡するという条件を提示した。
・船の運用自体はグイード伯爵家が行い、トレートル商会は船を貸し出す形で定期的な利益を得るという仕組みである
・父であるアルバートは、このエドワードの提案を、他者へ運営費の一部を負担させる代わりに配当や経営に関わる権利を与えるという、北大陸で見られる株式に近い先進的な考え方であると高く評価している

エリザベートの巧妙な条件交渉
エリザベートはエドワードの提案をただ受け入れるだけでなく、さらに自商会に有利な条件を引き出していった。
・商船の名義譲渡に加え、積荷内容への意見権と交易利益の0.05%の配分を要求した
・さらに、新商会であるアンフェール商会が確保済みの店舗を適正価格の7割で貸し出すことを提案した
・これにより、グイード伯爵家側は初期投資や事業失敗時のリスクを軽減できる一方、エリザベート側は確実な賃料収入と交易利益を継続的に得られるという、強固なWin-Winの利益構造を作り上げた

魔法契約による確実な履行
交渉の最後には、取り決めた条件を確実に履行させるため、高位の魔法契約書が用いられた。
・エリザベートは契約内容に矛盾や綻びが生じないようエドワードにアドバイスをしながら契約書を仕上げた
・自らの血と魔力を用いて署名した

まとめ
このエピソードにおける貴族と商人の業務提携は、身分や権力に依存するものではなく、明確な担保と利益配分に基づく対等な契約として描かれている。相手の提案の甘さを指摘しつつ、リスクを分散し、最終的に自商会へ最大の利益をもたらすエリザベートの圧倒的な交渉手腕と経営者としての器の大きさが強調されているのである。

魔法武器の解析と修復

第5巻において「魔法武器の解析と修復」のプロセスは、エリザベートの持つ古王国時代の魔法技術に対する深い知識と技術力を示すと同時に、現代と古代の魔法付与技術の違いを明らかにする興味深いエピソードとして描かれている。

【物品鑑定】の限界と本物の看破
帝都の自由市場で、ミーシャは奇妙な飾りがついた短剣を露店で購入した。
・露天商は綺麗な状態からレプリカだと思っており、ルノアの固有魔法【物品鑑定】でも「良い素材で作られている」程度しか分からなかった
・しかしエリザベートは、一目でそれがレプリカではなく、古王国の騎士が使っていた本物の魔法武器であると見抜いた
・ルノアの鑑定が不完全だったのは、未知のものを鑑定するには自身の幅広い知識が必要であり、古代の魔法武器に関する知識が不足していたためである
・短剣は状態保存の魔法がかかっていたため綺麗な外観を保っていたが、内包されている古王国後期の魔法陣が損傷していたため、魔法が発動しない状態になっていた

現代と古王国の魔法付与技術の違い
エリザベートは短剣の修復を行いながら、ルノアたちに魔法付与の技術について解説している。
・現代の主流技術:素材に直接魔法陣を刻む方法。魔法使いによる最終的な付与作業以外は高度な技術を必要としないため、大量生産に向いている。しかし、魔法陣が少しでも損傷すると効果が失われ壊れやすいという、戦闘用の武器としては致命的な欠点がある
・古王国の技術:素材に対して「魔法的に」魔法陣を刻み込む高度な技術。現代では一部の職人しか扱えず、エリザベート自身も一から付与することはできないが、修理であれば可能である

修復作業の手順と守護者の短剣の真価
エリザベートは神器【強欲の魔導書】から道具を取り出し、以下の手順で修復を行った。
・短剣を魔法を遮断する作業用の布に載せ、魔法陣を浮き上がらせる特殊な魔法薬をかける
・柄に嵌め込まれた魔物素材の装飾から魔法陣が浮かび上がり、輪の一部が欠損しているのを発見する
・魔鳥の羽ペンと魔石を混ぜ込んだインクを使用し、欠けた魔法陣を引き直して再び付与する
修復された短剣は「守護者の短剣」と呼ばれるもので、下級魔法を一つだけ込めておくことができる魔法武器であった。
・装飾に触れながら魔力を流すことで込められた魔法を発動できるため、魔法が使えない騎士などに重宝された品である
・ミーシャはこの短剣に、小さな傷の回復と解毒効果を持つ水属性の下級治癒魔法【癒しの水】を込めてもらい、自らの装備とした

まとめ
この魔法武器の解析と修復のエピソードは、失われた古代技術を難なく修理してしまうエリザベートの底知れない才覚を読者に提示している。また、格安で購入したガラクタ同然の品が、強力な魔法武器としてミーシャの戦力を底上げする結果となり、商売や戦闘の合間の日常の中でキャラクターたちが着実に成長していく過程を描き出しているのである。

帝都祝祭と闘技大会

第5巻における「帝都祝祭と闘技大会」は、ユーティア帝国の熱気と活発な経済活動を描きつつ、キャラクターたちの成長や暗躍が交錯する華やかなイベントとして描かれている。

帝都祝祭の熱気と異文化交流
5年に1度開催される帝都祝祭は、旧ユーティア王国の建国伝承を起源とする帝国最大のイベントである。
・初日にはゴドウィン皇帝ら皇族による豪華なパレードと演説が行われ、祭りが幕を開ける
・商人にとっては莫大な利益を生む商機であり、平民にとっては大道芸人のパフォーマンスや数々の露店を楽しむ娯楽の場となっている
・広場では北大陸の珍しい料理(ロロの実の蒸し焼きや火酒蒸し)や、化学の産物であるヘリウムを使ったスライムバルーンなどが販売され、多民族・多文化を受け入れる帝国ならではの交流の場として描かれている

闘技大会のエンターテインメント化
祝祭の目玉の一つである闘技大会は、今回から帝国商業ギルド評議会議員であり裏社会の支配者でもある頭目ダルク・ホーキンス(ホーキンス金融)が運営権を買い取った。
・これにより、従来の堅苦しい国事から、風魔法の拡声器を使った軽快な実況や大々的な賭けが行われる完全なエンターテインメントへと変化している
・また、本大会の前座として、個人の技巧だけでなくチームワークが試される二対二のタッグトーナメントが新たに開催された

ルノアとミーシャの成長と奮闘
ルノアとミーシャは、自らの実力を試すためタッグトーナメントに出場する。
・予選では、前衛と後衛の役割を徹底した堅実な連携で格上の相手を打ち破り、見事本戦進出を果たした
・本戦ではユウの弟子リリと従魔のバードランナーのペアと激突し、苦戦しながらも咄嗟の機転とコンビネーションで勝利を収めた
・その後、Aランク冒険者のマルティらの徹底した対策の前に敗れてしまうが、二人はショックを受けるどころか、この敗北を糧にさらなる修練を積むことを誓い合い、精神的な逞しさを見せた

決勝戦とロゼリアの暗躍
タッグトーナメントの決勝後に行われた一対一の本大会決勝戦では、優勝候補のAランク冒険者である泥のシスティアに、仮面の鞭使いローゼが挑んだ。
・このローゼの正体は、ハルドリア王国の使節団として帝都を訪れていたロゼリア・ファドガルである
・彼女は圧倒的な炎魔法と鞭術でシスティアの泥人形を粉砕し、難なく優勝を果たした
・本来、見世物になることを好まないロゼリアが出場したのは、エリザベートが大会を観戦しに来る可能性を見越し、彼女と接触する機会を作るためのエイワスの策略によるものであった

まとめ
帝都祝祭と闘技大会は、単なるお祭り騒ぎにとどまらず、ダルクによるビジネスの転換、ルノアとミーシャの実践を通じた成長、そしてエリザベートとの接触を図るハルドリア王国(エイワスやロゼリア)の暗躍の舞台として、物語を大いに盛り上げる重要なエピソードとなっているのである。

ハルドリア王国との謀略戦

作品全体を通じて描かれる「ハルドリア王国との謀略戦」は、エリザベートが単なる個人の怨恨による武力行使にとどまらず、経済、外交、情報、そして内部工作を駆使して国家の基盤を徹底的に削り落としていく、冷徹かつ高度な戦略として描かれている。

経済攻撃の逆利用による致命的打撃(偽金貨事件)
ハルドリア王国の王太子フリードは、帝国の経済を混乱させるために帝国金貨の偽造を企てた。
・エリザベートはこれを即座に看破し、ダミー商会を使って偽金製造の実行拠点となっていたファンネル商会から資金を吸い上げる罠を仕掛けた
・さらに、帝国大使ルーカスと結託し、王国側に偽造硬貨が発見された場合、相手国内でも自国と同様の捜査権・逮捕権を行使できるという通商条約を結ばせた
・結果として、フリードの取り巻きであるコルトを合法的に帝国へ引き渡し、王国に対して多額の賠償金と領土の割譲を強いるという大打撃を与えた

属国の離反工作と情報戦(プロパガンダ)
フリードの暴走によって引き起こされたサージャス王国と帝国との紛争において、ハルドリア王国が属国であるサージャスを見捨てた事実を利用し、エリザベートは大規模な情報戦を展開している。
・王国の属国に対して王国は属国を使い捨てにするという噂や、帝国領での略奪などを誇張したプロパガンダを流布し、民衆に反ハルドリア感情を植え付けた
・政治中枢への工作から民意の操作へと的確に方針を切り替えることで、王国の外堀をじわじわと埋めて国力を削ぐ戦略を見せている

民衆の不満を煽る内部崩壊の誘発(ロックイート男爵領の反乱)
フリードの婚約者シルビアの実家であるロックイート男爵領に対し、エリザベートは配下のバアルを潜入させて直接的な内部崩壊を仕掛けた。
・重税などに苦しむ領内に武器を横流しし、さらに増税や横領の噂を流して領民の不満を限界まで高めた
・レジスタンスの集会を領主の弾圧に見せかけて急襲することで大規模な反乱を爆発させ、混乱に乗じて男爵一家を惨殺して一族を崩壊させた

次期女王アデル陣営との高度な心理戦と魔法契約
フリードの度重なる失態により、ハルドリア王国では有能な第一王女アデルとロゼリアが実権を握る。エリザベートは彼女たちと、互いを利用し合う複雑な謀略戦を繰り広げている。
・ロゼリアとの交渉において、エリザベートは故意に民を巻き込む行動はしないという魔法契約を受け入れた
・その見返りとして、王国最強の戦力である国王である雷神ブラートを倒すための切り札となる超希少素材の雷龍の角を手に入れた
・アデル陣営もまた、エリザベートの力を利用して邪魔なブラート王やフリードを排除し、王位を簒奪しようと目論んでおり、単純な敵対関係を超えた知略のぶつかり合いへと発展している

まとめ
エリザベートによるハルドリア王国との謀略戦は、感情に任せた破壊ではなく、敵の失策や慢心を最大限に利用し、合法的な罠や民意の扇動を用いて国家そのものを追い詰める理知的な復讐劇である。そして、同じく国のために冷酷な決断を下すアデル陣営との駆け引きは、単なるざまぁ展開の枠を超え、物語にスリリングな緊張感とカタルシスをもたらしているのである。

ブチ切れ令嬢4巻レビュー
ブチ切れ令嬢6巻レビュー

登場キャラクター

トレートル商会(エリザベート陣営)

エリザベート・レイストン

ハルドリア王国の元公爵令嬢であり、アリスの養母である。帝国に拠点を移し、トレートル商会の商会長として多角的なビジネスを展開している。

・所属組織、地位や役職
 トレートル商会・商会長。特別認可商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝祭に合わせて新商会アンフェール商会を設立し、グイード伯爵家との業務提携を成功させた。アリスにカーバンクルを買い与え、契約魔法で魔力パスを繋いだ。祝祭最終日に発生したアンデッド襲撃事件では、クモと交戦し、氷精化の魔法を用いてクモの糸のドラゴンを撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ロゼリアと魔法契約を結び、民衆を巻き込まないことを約束する代わりに雷龍の角を手に入れた。

ルノア・カールトン

トレートル商会で働く商人見習いであり、冒険者としても活動している。

・所属組織、地位や役職
 トレートル商会・商会員。冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ディルク男爵領の不自然な通行税値上げに気付き、通商ルート開拓の調査を申し出た。ミーシャと共にタッグトーナメントに出場し、見事本戦への進出を果たした。本戦ではマルティとネッドのペアに敗北したが、それを糧に修練を積むことを決意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 固有魔法である物品鑑定は感覚強化系の魔法であり、エリザベートから身体強化系の修練を勧められている。

ミーシャ

トレートル商会で働く少女であり、戦闘においては前衛を務める。

・所属組織、地位や役職
 トレートル商会・商会員。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝都の露店で古王国の魔法武器である短剣を見つけ、エリザベートに修復してもらった。闘技大会のタッグトーナメントにルノアとともに出場し、予選を突破した。祝祭最終日のアンデッド襲撃時には、ミレイ達とともにアリスを護衛しながら避難した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 種族特有の俊敏性と柔軟性を活かした戦闘スタイルを持ち、順調に成長していると評価されている。

アリス・レイス

エリザベートの養女である。

・所属組織、地位や役職
 エリザベートの養女。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝祭の露店でエリザベートに氷の結晶のヘアピンを贈った。露店で見つけたカーバンクルを気に入り、キャロルと名付けて従魔にした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 水属性と火属性の二つの魔力適性を持つ。ファイアドレイクの魔力結晶実験に用いられた人造精霊の実験体である可能性が高いとされている。

ミレイ・カタリア

エリザベートに仕える従者である。

・所属組織、地位や役職
 トレートル商会・従者。
・物語内での具体的な行動や成果
 エリザベートのグイード伯爵家訪問に同行した。祝祭最終日のアンデッド襲撃時には、アリスやルノア達を連れて避難行動をとった。事件後は被害者の遺族への見舞金手配や情報収集を命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 光の矢を放つ魔法を使用し、アンデッドを倒している。

バアル

エリザベートの配下であり、高い戦闘能力を持つ男である。

・所属組織、地位や役職
 トレートル商会・護衛。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝祭のパレードの際にアリスを肩車して見物させた。祝祭最終日のアンデッド襲撃では、エリザベートと共にクモと交戦し、魔力を纏った糸によって腕に深手を負った。その後、ロットンに代わってアリスを護衛した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 帝国最強の騎士マティアス・ロードストスを、Sランク冒険者に匹敵する格上であると評している。

キャロル

アリスが露店で見つけた小型の魔物である。魔力のみを食べる性質を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アリスの従魔。カーバンクル。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリスの魔力を気に入り、エリザベートに買い取られた。アリスによってキャロルと名付けられた。エリザベートと召喚や支配を伴わない魔力パスを繋ぐ契約を結んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 カーバンクルは精霊に近い存在であり、成獣は隠蔽や幻惑の魔法を使える。

ハルドリア王国

ブラート・ハルドリア

ハルドリア王国の国王であり、雷属性の魔力を持つ武人である。

・所属組織、地位や役職
 ハルドリア王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果
 獣王連合国で行方不明となった宰相ジークの捜索を命じた。フリードが提出した完璧な政務報告書を見て、彼が心を入れ替えたと解釈した。過去にランポーサ砦へ現れた魔物の大軍を一人で討伐している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 《雷神》と恐れられる存在であり、実力はSランク冒険者に匹敵するとされている。

アデル・ハルドリア

ハルドリア王国の第一王女であり、実質的に王国の政務を取り仕切っている。

・所属組織、地位や役職
 ハルドリア王国・第一王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 フリード名義で提出されたナイル王国の継承権回復申請書類を見て、裏で別勢力が動いている可能性を疑った。ジークの死亡をブラートに伏せ、水面下で優秀な貴族や文官を自勢力へ引き込んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 無能なフリードや甘いブラートを見限り、自身が女王として戴冠して国を立て直す決意を固めている。

マオラン

アデルに仕える従者である。

・所属組織、地位や役職
 ハルドリア王国・アデルの従者。
・物語内での具体的な行動や成果
 アデルの執務室で報告書の確認や意見交換を行っている。アデルの行儀の悪さを真面目な顔で注意している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

エイワス・レイストン

ハルドリア王国使節団の団長であり、エリザベートの実兄である。

・所属組織、地位や役職
 ハルドリア王国使節団・団長。アデル派の貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝国との会談において、エリザベートが帝国にいることを知りながら探りを入れた。エリザベートと面会し、ジークの首を渡してアデル陣営へ加わるよう勧誘したが断られた。祝祭最終日の早朝に予定を早めて帝国を出発した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エリザベートの情報を王国側から隠す情報操作を行っていた。

ロゼリア・ファドガル

ハルドリア王国使節団の副長であり、王太子妃候補の一人である。

・所属組織、地位や役職
 ハルドリア王国使節団・副長。アデル派の貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
 《仮面の鞭使いローゼ》として闘技大会に出場し、システィアを破って優勝した。深夜の公園でエリザベートと面会し、これ以上王国の民を巻き込まないよう説得した。エリザベートと魔法契約を結び、雷龍の角を譲渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ブラートを見限り、アデルを女王として戴冠させる決意を固めている。

フリード・ハルドリア

ハルドリア王国の王太子であり、かつてエリザベートの婚約者であった。

・所属組織、地位や役職
 ハルドリア王国・王太子。
・物語内での具体的な行動や成果
 謎の秘書官カラスの指示に従い、ナイル王国への支援物資輸送や街道整備などの政務を行っている。カラスに完全に依存し、自分で考えることなく署名のみを行う状態になっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 帝都襲撃事件の依頼人であることを示す書類が発見されたが、エリザベートからはフェイクだと疑われている。

シルビア・ロックイート

フリードの現在の婚約者である。

・所属組織、地位や役職
 ハルドリア王国・王太子の婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果
 突然現れた秘書官カラスの存在に危機感を抱き、フリードに訴えかけた。アデルへの保護要請を考えたが、カラスに精神干渉を受け、記憶と警戒心を曖昧にされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 実家のロックイート男爵家は内乱によって滅亡している。幻惑や暗示に対して高い耐性を持っていた。

ギョクリョウ妃

ハルドリア王国の第二王妃であり、アデルの母親である。

・所属組織、地位や役職
 ハルドリア王国・第二王妃。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去に王太子妃候補の素質を見るため、ロゼリアとエリザベートを小裁判室に呼び出した。貴族を刺した平民の少女アリアに対し、証拠不十分として死罪を言い渡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レキ帝国の帝室に連なる生まれである。

アリア

リエンタール子爵家で雇われていた平民の少女である。

・所属組織、地位や役職
 元リエンタール子爵家下女。
・物語内での具体的な行動や成果
 姉を殺害したリエンタール子爵に復讐するため刃を向けたが、未遂に終わり拘束された。ギョクリョウ妃の裁判で死罪を言い渡され、地下牢の近くの部屋で毒杯を飲んで処刑された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 死後、エリザベートによって事件関係者の首が墓前に供えられた。

ユーティア帝国

ゴドウィン・ユーティア

ユーティア帝国の皇帝である。

・所属組織、地位や役職
 ユーティア帝国・皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝祭初日に豪華な馬車でパレードを行い、バルコニーから民衆に向けて演説を行った。ハルドリア王国の使節団との会談に応じた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 民衆からは名君として人気があるが、本人は先帝から受け継いだものを守るだけで精一杯の凡人だと語っている。

オーキスト・ユーティア

ユーティア帝国の皇太子である。

・所属組織、地位や役職
 ユーティア帝国・皇太子。
・物語内での具体的な行動や成果
 ハルドリア王国使節団との会談に同席し、エリザベートの引き渡し要求を牽制した。祝祭最終日のアンデッド襲撃時には、自ら聖属性の鎧を纏って前線に立ち、兵士たちを鼓舞した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 父である皇帝ゴドウィンからは、自身よりも賢帝の名に相応しいと評価されている。

マティアス・ロードストス

ユーティア帝国騎士団総長である。

・所属組織、地位や役職
 ユーティア帝国騎士団・総長。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝祭のパレードで皇帝の馬車を護衛した。祝祭最終日にシスティアの案内で広場に現れ、一瞬でクモの足を斬り飛ばし、逃走を図ったクモを討ち取った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 《剣帝》の称号を持ち、Sランク冒険者に匹敵する実力を持つ帝国最強の騎士である。

帝国商業ギルド・その他の商会

アルバート・グイード

帝国商業ギルドのグランドマスターであり、グイード伯爵家の当主である。

・所属組織、地位や役職
 帝国商業ギルド・グランドマスター。《先見伯》。
・物語内での具体的な行動や成果
 息子のエドワードにトレートル商会との業務提携交渉を任せ、自身は同席するも静観を貫いた。エドワードの提案を、株式制度に近い考え方であると高く評価した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 港湾整備と大陸外交易によって巨万の富を築き上げた名門貴族である。

エドワード・グイード

アルバート・グイードの息子である。

・所属組織、地位や役職
 グイード伯爵家・子息。
・物語内での具体的な行動や成果
 輸入商材を利用した総合展開を目指し、エリザベートに業務提携を持ち掛けた。自商会の商船五隻分の名義を譲渡するという担保を提示し、エリザベートの追加条件を受け入れて魔法契約を締結した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 貴族としての作法は未熟だが、商人としての企画力や運営能力はエリザベートから高く評価されている。

ドラゴニュートのメイド

グイード伯爵家の使用人である。

・所属組織、地位や役職
 グイード伯爵家・メイド。
・物語内での具体的な行動や成果
 エリザベートたちを屋敷の部屋まで案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 背中に立派な翼が生えている。

ダルク・ホーキンス

帝国商業ギルド評議会議員であり、ホーキンス金融を率いる裏社会の人物である。

・所属組織、地位や役職
 ホーキンス金融・《頭目》。帝国商業ギルド評議会議員。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝都祝祭の闘技大会の運営権を取得し、エンターテインメント色の強い興行へと変化させた。エリザベートに大会中の氷の提供を依頼し、対価としてボックス席を提供した。エリザベートの提案を受け入れ、試合待ち時間に芸人を呼ぶ企画を即座に実行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

ホーキンスの部下

ダルク・ホーキンスに仕える者である。

・所属組織、地位や役職
 ホーキンス金融・部下。
・物語内での具体的な行動や成果
 ダルクから、試合の待ち時間に芸人や吟遊詩人を手配するよう命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

アルテ・ヒルガディエ

帝国商業ギルド法務部の執行官である。

・所属組織、地位や役職
 帝国商業ギルド法務部・執行官。ヒルガディエ男爵家後見人。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝祭中の帝都でエリザベートと再会し、新当主となった弟ネスタルトを紹介した。弟の成人まで後見人を務めるための手続きを行っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 元々は家を出て平民となっていたが、父の急死により実家の後見人となった。

ネスタルト・ヒルガディエ

ヒルガディエ男爵家の新当主である。

・所属組織、地位や役職
 ヒルガディエ男爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝都でエリザベートやイーグレットと挨拶を交わし、今後の助力を願った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 父の急死により、若年ながら男爵家の家督を継いだ。

エンバース

帝都の露店で骨董品などを扱う行商人である。

・所属組織、地位や役職
 行商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 商品知識は乏しいものの本物だけを直感で仕入れており、適正な価格で販売していた。エリザベートに露店の商品を全て買い取られ、トレートル商会へ勧誘された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 優れた目利きの才能を持つ。

クリス

小さな属国出身の異国の女商人である。

・所属組織、地位や役職
 商人。
・物語内での具体的な行動や成果
 フリードからナイル王国への支援物資と孤児院支援物資の輸送を依頼され、複数回に分けて納品することを承諾した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 行商中に魔物に襲われて右腕を失い、魔導義肢を装着している。

ロットン・フライウォーク

帝国商業ギルド評議会議員の一人である。

・所属組織、地位や役職
 帝国商業ギルド評議会・議員。《千里眼》。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝祭最終日のアンデッド襲撃時、グールからアリスを救出し、膝の傷を精霊魔法で治療した。その際、アリスの血を拭ったハンカチを密かに小瓶に保存した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エリザベートから最重要警戒対象に指定されている。正体はナナフシが変装した姿である。

バーチ商会(ナイル王国)

イーグレット・バーチ

ナイル王国を拠点とするバーチ商会の商会長である。

・所属組織、地位や役職
 バーチ商会・商会長。
・物語内での具体的な行動や成果
 エリザベートに希少な【転移】のスクロールを三枚納品した。祝祭の屋台巡りにおいて、優雅な振る舞いでエリザベートをエスコートした。アンデッド襲撃事件では、エリザベート達とともにクモと交戦し、砂魔法でクモの動きを拘束した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 高位貴族向け教育を受けたような立ち居振る舞いをする。

オウル

バーチ商会に所属する少女である。

・所属組織、地位や役職
 バーチ商会・商会員。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝都の宿でイーグレットの帰りを待っており、トレートル商会からの追加注文書を受け取っていた。アンデッド襲撃時には、ククリナイフを用いてスケルトンを撃退しながら避難した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔族や獣人など複数種族の特徴を持つ。

冒険者・闘技大会関係者

リリ・アマリス

薬師ユウの弟子であり、従魔を連れた少女である。

・所属組織、地位や役職
 ユウの弟子。タッグトーナメント出場者。
・物語内での具体的な行動や成果
 祝祭前にアリスたちと一緒に露店を巡った。闘技大会のタッグトーナメントに従魔のモモとペアで出場し、本戦二回戦でルノア・ミーシャのペアと対戦して敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 従魔のバードランナーに騎乗して戦うスタイルを持つ。

モモ

リリの従魔である。

・所属組織、地位や役職
 リリの従魔。バードランナー。
・物語内での具体的な行動や成果
 リリとともにタッグトーナメントに出場し、高い機動力と強力な蹴りを用いて戦った。試合の終盤では、吹き飛ばされたリリをリング内に蹴り戻した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 飛行能力を持たない代わりに、高い脚力と走破能力を持つ鳥形の魔物である。

マルティ

Aランクパーティ《鋭き切先》のスカウトを務める女性である。

・所属組織、地位や役職
 《鋭き切先》・スカウト。Cランク冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ネッドとペアを組み、タッグトーナメントに出場した。本戦でルノア・ミーシャのペアと対戦し、二人を分断する戦術を用いて勝利した。アンデッド襲撃時には、エルザの指示で索敵を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 短弓やナイフを用いて戦闘を行う。

ネッド

マルティとペアを組むドラゴニュートの青年である。

・所属組織、地位や役職
 タッグトーナメント出場者。Cランク冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 タッグトーナメントに出場し、素手による格闘戦でルノアを圧倒して勝利に貢献した。決勝戦ではカイン・ランズのペアに敗北した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力を纏った拳や蹴りを用いる。

ランズ

大盾を扱う傭兵の男である。

・所属組織、地位や役職
 傭兵。タッグトーナメント出場者。
・物語内での具体的な行動や成果
 カインとペアを組み、タッグトーナメントに出場した。決勝戦でネッドの攻撃を大盾で防ぎ、優勝を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 相方と死角をカバーし合う高度な連携を見せた。

カイン

双剣を扱う傭兵の男である。

・所属組織、地位や役職
 傭兵。タッグトーナメント出場者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ランズとペアを組み、タッグトーナメントに出場した。決勝戦でマルティの攻撃をいなし、優勝を果たした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

システィア

優勝候補筆頭の女性冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 Aランク冒険者。《泥のシスティア》。
・物語内での具体的な行動や成果
 闘技大会の一対一の決勝戦でローゼと対戦し、敗北した。アンデッド襲撃事件では、泥人形を使役してアンデッドを粉砕し、エリー達と共闘してクモを追い詰めた。エリーの依頼でマティアスを戦場へ案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 水属性と土属性の複合属性を持ち、泥人形を生成して操る魔法を得意とする。

ユウカ・クスノキ

リリの師匠である薬師の女性である。

・所属組織、地位や役職
 薬師。
・物語内での具体的な行動や成果
 タッグトーナメントに出場する弟子を応援するため会場を訪れ、エリザベート達とともに観戦した。アンデッド襲撃事件では、巨大な戦斧を用いてジャイアントスケルトンやスケルトンドラゴンを単独で討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

エルザ

Aランクパーティ《鋭き切先》のリーダーである。

・所属組織、地位や役職
 《鋭き切先》・リーダー。Aランク冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンデッド襲撃事件において、長剣を用いて騎士団を包囲するアンデッドの群れを薙ぎ払った。パーティメンバーと合流し、上位アンデッドの掃討を指揮した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 窮地に陥るほど使用者の身体能力を上げる神器【不死鳥の剣】を所持している。

リサ

Aランクパーティ《鋭き切先》のメンバーである。

・所属組織、地位や役職
 《鋭き切先》・治癒魔導師。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンデッド襲撃事件において、エルザの指示で治癒魔法と浄化魔法を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

サリナ

Aランクパーティ《鋭き切先》のメンバーである。

・所属組織、地位や役職
 《鋭き切先》・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンデッド襲撃事件において、エルザの指示でリサの護衛を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

シシリー

Aランクパーティ《鋭き切先》のメンバーである。

・所属組織、地位や役職
 《鋭き切先》・メンバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンデッド襲撃事件において、エルザとともに敵を叩く役割を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

謎の組織

カラス

フリードの秘書官として振る舞う女である。

・所属組織、地位や役職
 謎の組織・構成員。フリードの秘書官。
・物語内での具体的な行動や成果
 フリードに取り入り、内政による支持獲得を目的とした政治工作を指示している。シルビアの精神へ干渉し、記憶と警戒心を曖昧にした。アリスの血液を持ち帰ったナナフシとともに、若に報告を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 娼婦のような薄布を重ねた服装をしている。他者の精神に干渉する能力を持つ。

クモ

糸を操る暗殺者の男である。

・所属組織、地位や役職
 謎の組織・構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝都のスラムでチンピラ達を糸で惨殺し、ナナフシから新たな指令と《死者の宝玉》を受け取った。祝祭最終日に帝都の広場で無差別テロを起こし、大量のアンデッドを使役してエリザベート達と死闘を繰り広げた。最後はマティアスによって討ち取られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 Aクラス上位に匹敵する実力を持ち、魔力から強力な糸を生成して操る能力を持つ。

ナナフシ

姿を変える能力を持つエルフの男である。

・所属組織、地位や役職
 謎の組織・構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
 拘束した情報屋の心臓を使い、新たな姿を獲得した。クモに指令と宝玉を届けた。《千里眼》ロットンに変装し、アンデッド騒動の隙にアリスの血液を採取して若へ報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 殺した相手の姿や記憶をコピーする神器【無貌の祭壇】を所持している。現在は元の姿や口調を思い出せなくなっている。

イブリス教

ティーダ

ギャンブル好きのシスターである。

・所属組織、地位や役職
 イブリス教・シスター。《代行者》。
・物語内での具体的な行動や成果
 闘技大会を観戦して賭けに参加していた。アンデッド襲撃時には、浄化魔法で下級アンデッドを一掃した。その後、冒険者や騎士の武器に聖属性を付与し、大鎌を用いて上位アンデッドを撃破した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔力を吸収する大鎌の神器【神の恵みを刈り取る刃】を所持している。

聖職者

イブリス教に所属する者たちである。

・所属組織、地位や役職
 イブリス教・聖職者。
・物語内での具体的な行動や成果
 アンデッド襲撃事件に際し、オーキストからの要請を受けて軍の兵士たちに聖水を提供した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

その他

リンダ

帝国出版編集部に所属する人物である。

・所属組織、地位や役職
 帝国出版編集部。
・物語内での具体的な行動や成果
 帝国の歴史を探る企画の第一弾として、帝都中央広場の慰霊碑に関する原稿を執筆した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

黒いイヌ

アリスが本棚の奥の森で出会った存在である。

・所属組織、地位や役職
 教師。
・物語内での具体的な行動や成果
 メイド服を着用し、森の広場で授業を行おうとしていた。トラからの報告を受け、授業を中止して森の奥へ向かった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

ウサギ

アリスが本棚の奥の森で出会った存在である。

・所属組織、地位や役職
 生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 二本のおさげにリボンを結んで机に座っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

ネコ

アリスが本棚の奥の森で出会った存在である。

・所属組織、地位や役職
 生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 尻尾にリボンを結んで机に座っていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

トラ

アリスが本棚の奥の森で出会った存在である。

・所属組織、地位や役職
 生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 顔に傷を持ち、広場に駆け込んで黒いイヌを呼び出した。白銀のオオカミとともにキャロルを捕まえていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき事項の記載はない。

白銀のオオカミ

アリスが本棚の奥の森で出会った存在である。

・所属組織、地位や役職
 森の住人。
・物語内での具体的な行動や成果
 自分のおやつを食べたキャロルを捕まえ、庇おうとしたアリスにも同罪だと言い放った。魔法【巨大化】を発動し、大きくなったキャロルをアリスに投げつけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白銀の毛並みを持つ美しいオオカミである。

ブチ切れ令嬢4巻レビュー
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展開まとめ

序章

帝都祝祭への準備

エリザベートは、帝都の屋敷で近づく祝祭へ向けた商会準備に追われていた。

祝祭は庶民にとって楽しい祭りだったが、商人にとっては大きな商機でもあった。トレートル商会でも複数の企画が進められており、ルノアはレブリック辺境伯領ガナ村から届いた商材の納品書を持ち込んだ。

ガナ村は化粧品の生産拠点であり、今回届いた品は通常より少し品質を落として価格を抑えた商品だった。

それは、新商会アンフェール商会で扱うための商品だった。

アンフェール商会の狙い

アンフェール商会は、祝祭に合わせて稼働予定の新商会だった。

貴族を主な顧客とする高級志向のトレートル商会とは異なり、アンフェール商会は平民上位層でも手が届く価格帯の商品を扱う予定だった。

化粧品だけでなく、衣服や装飾品、雑貨まで幅広く取り扱う方針である。

ミーシャは、なぜトレートル商会内に別部門を作らないのか疑問を示す。

ルノアは、安価な商品を平民向けに売ることで、トレートル商会の高級ブランドイメージが損なわれるためだと答えた。

エリザベートはその答えを認め、さらにリスク分散も理由だと説明した。

輸入品や雑貨まで扱う以上、想定外の問題が起きた時にトレートル商会本体を守れるよう、経営を分けているのである。

通行税の変化

書類確認中、ミーシャは以前より通行税が上がっていることに気付いた。

調査すると、ディルク男爵領で大規模商会が扱う化粧品や素材に対する通行税だけが大きく引き上げられていた。

現在、レブリック辺境伯領内で化粧品を扱う大規模商会の大半はトレートル商会傘下にあるため、実質的にはトレートル商会を狙った措置だった。

しかし税率自体は領主権限の範囲内に収まっており、正式な抗議は難しかった。

別ルートも検討されたが、遠回りによる輸送費を考えると、現状では従来通りディルク男爵領を通る方が得策と見られていた。

それでもルノアは、安く運べる別ルートがないか探すと申し出る。

エリザベートは、商人として積極的に学ぼうとするルノアを止めず、通商ルート開拓の勉強として任せることにした。

祝祭を楽しむ予定

休憩に入ると、ミーシャが紅茶を淹れた。

紅茶の出来はかなり良く、エリザベートはミーシャの成長を感じていた。

その後、エリザベートは二人へ、明日から通常業務に戻るため祝祭を見て回っても良いと伝える。

ルノアは、アリスやリリと一緒に露店を回る約束をしていると話した。

リリは薬師ユウの弟子であり、ルノアは冒険者活動を始めてから、よく彼女の薬を購入しているのだった。

帝都祝祭の由来

ミーシャは、帝都の祝祭では何が行われるのか尋ねた。

エリザベートは、初日に皇族のパレードが行われ、その後に宮廷の一部が開放され、皇帝の演説によって祝祭が始まると説明した。

貴族にはパーティーや儀式があり忙しいが、平民にとっては屋台や露店、旅芸人が集まる大規模な祭りだった。

この祝祭は五年に一度の帝国最大の祭りであり、帝国各地でも大小の祭りが行われる。

また、その起源は旧ユーティア王国の建国伝承にあった。

猫人族など、帝国拡大後に臣民となった部族には馴染みが薄いこともあるが、現在では帝国全土の祝祭として広まっていた。

エリザベートは、商会運営を従業員に任せ、今回は自分たちも祝祭を楽しもうと告げた。

一章《前夜祭》

祝祭前の外出準備

エリザベートは、祝祭へ出掛けるアリスへ小銀貨と銅貨を入れた革袋を首から掛けてやっていた。

外では必ずルノアかミーシャと一緒に行動するよう言い聞かせ、さらに秘密裏にバアル配下の隠密数名を護衛として配置していた。

一方、エリザベート自身は取引の予定があり、ミレイと共に馬車で外出する。

馬車は装飾こそ控えめだったが、上質な素材で作られた高級品であり、見る者には価値が分かる代物だった。

道中、エリザベートは、以前の自分なら祝い事では主催側として忙しく立ち回っていたと振り返る。

今回は商会運営を従業員へ任せ、自分もアリスと祝祭を楽しもうと考えていた。

グイード伯爵家との取引

エリザベートたちが向かった先は、商業ギルドのグランドマスターであり、《先見伯》の異名を持つアルバート・グイード伯爵の屋敷だった。

今回の商談は、伯爵本人ではなく、その子息エドワード・グイードから持ち掛けられたものである。

グイード伯爵家は港湾整備と大陸外交易によって巨万の富を築いた名門であり、エドワードは輸送から販売まで一貫して行う事業展開を目指していた。

屋敷へ案内されたエリザベートは、貴族としての作法をまだ理解しきれていないエドワードの未熟さを見抜く。

本来、今回のような場では貴族側が先に挨拶するのは不自然であり、紹介前に交渉相手へ直接挨拶するのも礼儀に欠けていた。

エリザベートはそれを咎めず、アルバートへの正式な挨拶を優先することで自然に流した。

業務提携交渉

エドワードは、グイード伯爵家が保有する輸入商材を利用し、輸送から販売まで総合展開を行いたいと説明した。

そのため、女性向け化粧品市場で大きなシェアを持つトレートル商会へ業務提携を求めていたのである。

エリザベートは事業計画書を確認し、輸送費や管理費などが細かく計算されていることから、エドワード自身の能力は高く評価した。

しかし、グイード伯爵家側がノウハウを吸収した後、トレートル商会との関係を維持する理由が薄いと指摘する。

エドワードは信頼して欲しいと訴えるが、エリザベートは、それだけでは従業員とその家族の生活を背負う商会主として動けないと断言した。

商船名義による担保提案

追い詰められたエドワードは、魔法契約に加え、自家保有の商船五隻分の名義をトレートル商会へ譲渡すると提案する。

運用はグイード伯爵家側が行い、トレートル商会は船を貸し出す形で利益を得る構造だった。

これは、互いの信頼が積み重なるまでの担保として機能する仕組みだった。

さらにエリザベートは、船数を増やす代わりに、積荷内容への意見権と交易利益の一部配分を要求する。

加えて、アンフェール商会が確保済みの店舗を相場の七割で貸し出す条件も提示した。

この条件によって、グイード伯爵家側は事業失敗時の損失を抑えられる一方、エリザベート側も継続的利益を得られる構図が成立する。

エドワードは悩みながらも最終的に条件を受諾した。

アルバートの評価

エドワードが魔法契約書の準備に出た後、アルバートはエリザベートへ息子の評価を尋ねた。

エリザベートは、貴族としての振る舞いは未熟だが、商人としての企画力や運営能力には優れた才能があると評価する。

特に、他者へ運営利益や権利を分配する発想は、北大陸で見られる株式制度に近い考え方だった。

アルバートは、その評価に満足そうな様子を見せていた。

魔法契約締結

戻ってきたエドワードは、高位の魔法契約書を用意していた。

エリザベートは契約内容へ適宜修正を加えながら、魔法契約特有の矛盾や綻びを防ぐ方法を教えていく。

その過程で自然に自分側の利益も増やしていたが、アルバートは最後まで静観を貫いた。

契約内容が固まると、両者は短剣で指先を切り、自らの血で署名する。

同時に魔力を流し込むことで契約は成立し、文字が光となって二人の身体へ吸い込まれていった。

こうして、トレートル商会とグイード伯爵家による新たな提携が成立したのである。

ブラートの違和感

ハルドリア王国では、獣王連合国へ向かった宰相ジークとの連絡が途絶えていた。

獣王連合国側はダンジョンスタンピードによる混乱を理由に確認中と回答しており、ブラートはレオン獣王が裏切るとは考えず、ジークも簡単にやられる男ではないと判断して捜索継続を命じる。

その一方で、ブラートはフリードが処理した政務の報告書に強い違和感を抱いていた。

これまで数々の失態を重ねていたフリードだったが、最近の仕事は一部の隙もなく完璧に仕上げられていたのである。

ブラートは、ようやくフリードが己の立場を理解して真面目に働き始めたのだと前向きに解釈し、依然として実権はアデルに任せるつもりではあるものの、今後の立場を多少考慮しても良いと語った。

しかし文官たちは、その楽観的な見方へ呆れを隠せずにいた。

アデルの警戒

一方、アデルもまた、フリードの変化へ強い警戒心を抱いていた。

属国ナイル王国では王位継承問題による内乱が発生していた。

第二王子が第一王子を謀殺し王城を武装占拠したが、その第二王子も第三王子によって討たれ、内乱は三日で終結していた。

第三王子は既に継承権を放棄していたため、貴族議会から継承権回復の申請が送られてきたが、その書類はフリード名義で完璧に処理されていた。

アデルは、取り立てて優秀というわけではないものの、あのフリードが不自然なほど問題なく政務をこなしている点を不気味に感じる。

さらに、帝都から届いた報告では、エリザベートに殺害されたと思われるジークの遺体が発見・埋葬されていた。

しかしアデルは、エリザベート単独ではなく、別勢力が背後で動いている可能性を疑う。

そしてブラートにはジーク死亡を伏せ、宰相不在状態を維持することで、自分に有利な状況を作ろうとしていた。

また、水面下では優秀な貴族や文官を自勢力へ引き込み、着実に影響力を拡大していた。

ブラートへの失望

アデルは、文官からブラートの反応を聞かされ、深いため息を吐く。

ブラートは雷属性の魔力を持つフリードへ強い情を抱いており、数々の問題を起こしたフリードをなお見捨てきれていなかった。

アデルは、既にフリードには全責任を押し付けて処分する程度の価値しかないと冷徹に判断しており、父王の甘さへ苛立ちを募らせていた。

第三王子の帰還

その頃、ナイル王国では第三王子が暑さに文句を言いながら着替えをしていた。

彼はハルドリア王国からの継承権回復承認が問題なく進むとの報告を受けていた。

文官が山積みの問題を指摘するが、第三王子は聞き流しながら転移用スクロールを使用して姿を消す。

転移先は帝都の宿だった。

そこには魔族や獣人など複数種族の特徴を持つ少女オウルが待っており、彼女はイーグレットを迎える。

イーグレットはトレートル商会から届いた封書を確認するが、中身は祝祭への誘いではなく追加注文書だった。

それを知ったオウルは、イーグレットへ同情の視線を向けるのだった。

アリスからの贈り物

グイード伯爵家との交渉を終えたエリザベートが帰宅すると、アリスが真っ先に駆け寄ってきた。

アリスは大道芸や露店の話を嬉しそうに語り、さらにエリザベートへの土産として氷の結晶を模したヘアピンを渡す。

エリザベートはその場で髪へ付け、アリスの選んだ贈り物を喜んだ。

ルノアやミーシャも露店巡りを楽しんでおり、その中でミーシャは古王国時代の短剣を格安で購入していた。

エリザベートが確認すると、それは単なるレプリカではなく、本物の古代魔法武器だった。

古王国の魔法武器

短剣には古王国後期の高度な魔法技術が使われており、魔法陣が一部損傷していたことで価値を見抜かれていなかった。

エリザベートはその場で修復作業を行いながら、ルノアたちへ魔法武器の仕組みを教える。

現代では素材へ直接魔法陣を刻む方式が主流だが、古王国では素材そのものへ魔法的に魔法陣を刻み込む高度技術が存在していた。

修復後、短剣は《守護者の短剣》として機能を取り戻す。

この短剣は下級魔法を一つだけ保存でき、騎士など魔法が使えない者でも発動可能な補助武器だった。

ミーシャは短剣へ《癒しの水》を込め、実際に発動させることに成功する。

闘技大会への出場希望

その後、ミーシャはエリザベートへ闘技大会への出場許可を願い出た。

今回の祝祭では、《頭目》ダルク・ホーキンス率いるホーキンス金融が大会運営権を取得しており、新たに二対二形式のタッグトーナメントが追加されていた。

ミーシャは本大会ではなく、このタッグ戦への参加を希望していた。

ペアはルノアであり、二人は冒険者としての実力試しと対人戦経験を積む目的で参加したいと語る。

エリザベートは、対人戦経験としては悪くないと判断し、無茶をしないことを条件に二人の参加を許可した。

ダルクからの依頼

エリザベートの屋敷を訪れたダルク・ホーキンスは、今度の闘技大会で大量の氷を用意して欲しいと依頼した。

大会当日は酷暑が予想されており、冷たい飲み物を販売する計画だったのである。

通常の氷生成は雇った魔法使いたちでも可能だったが、彼らはVIP席周辺の温度管理に回される予定であり、一般販売用まで手が回らなかった。

そこでダルクは、観戦へ来るエリザベートへ協力を求めたのである。

報酬として、既に完売していた貴族向けボックス席を提供すると持ち掛ける。

アリスを快適に観戦させられる利点を考え、エリザベートは依頼を承諾した。

さらにエリザベートは、試合待ち時間に芸人や吟遊詩人を呼び、客を会場へ留めて飲食販売へ繋げる案を提案する。

ダルクは即座に採用を決定したが、エリザベートも利益の三パーセントを要求し、商売人同士の駆け引きを見せていた。

使節団会議

ハルドリア王国使節団の宿舎では、ロゼリアが中心となり今後の外交予定を整理していた。

祝祭開始前に帝国側との会談や視察を集中的に終わらせる必要があり、各員へ役割分担が割り振られる。

今回の使節団はアデル派の人材で固められており、開戦派や反帝国派は排除されていた。

会議終了後、エイワスはロゼリアへ個別に頼み事を持ち掛ける。

それは祝祭中のある催しへ参加し、そこへ現れる可能性があるエリザベートと接触して欲しいという内容だった。

ロゼリアは非常に嫌そうな顔をしながらも了承する。

転移スクロールの購入

翌日、エリザベートはイーグレットから【転移】のスクロール三枚を受け取った。

本来は五枚希望していたが、極めて希少な品のため今回は三枚のみだった。

【転移】のスクロールは、一瞬で安全地帯へ退避できる貴重な切り札であり、エリザベートはアリスへ持たせる可能性まで考えていた。

また、追加注文としてナイル王国産サボテン果肉の確保も依頼していた。

それは薬品や美容品材料として高い効能を持つ希少素材だった。

その後、二人は祝祭について話し合い、エリザベートはタッグトーナメント後に共に祝祭を回る約束を交わす。

祝祭パレード

祝祭当日、帝都では皇族による盛大なパレードが行われた。

貴族街の一部は平民へも開放され、エリザベートたちはその中から観覧していた。

バアルへ肩車されたアリスは、騎士や軍馬の姿へ大興奮していた。

エリザベートは、かつて自分が馬車側で手を振る立場だったことを思い返し、民衆側から眺める初めての経験を楽しんでいた。

やがて皇帝ゴドウィンの馬車が姿を見せる。

その護衛騎士の中でも、特にバアルの目を引いたのが《剣帝》マティアス・ロードストスだった。

《剣帝》マティアス

マティアスは、かつて《雷神》ブラートと互角に戦った帝国最強の騎士であり、《剣帝》の称号を与えられた英雄だった。

バアルは、自分では命を懸けても足止め程度しか出来ないと断言する。

現在世界に存在するSランク級の超越者の一人であり、人間の領域を超えた怪物と評していた。

エリザベートもまた、将来的に報復対象であるブラートと向き合う以上、真正面からでは勝ち目がないことを再認識していた。

ゴドウィンの本音

パレード後、ゴドウィンは急いで演説用衣装へ着替え、バルコニーへ向かう。

民衆からは名君として高い人気を誇っていたが、本人は毎回の演説へ強いプレッシャーを感じていた。

演説では、多様な文化と人々を受け入れてきた帝国の歴史を称え、変化へ柔軟に適応することこそ繁栄へ繋がると臣民へ語りかける。

大歓声を受けて退場した後、ゴドウィンは息子オーキストへ、自分は世間で言われるような賢帝ではなく、先帝から受け継いだものを守るだけで精一杯の凡人だと弱音を漏らしていた。

帝国とハルドリアの会談

その後、ゴドウィンとオーキストはハルドリア王国使節団との会談へ臨む。

出席したのはエイワスとロゼリアだった。

会談中、エイワスは突然エリザベートの話題を持ち出す。

彼は、エリザベートがエリー・レイスとして帝国で商会を経営している事実を指摘し、帝国側へ反応を探った。

しかしオーキストは、仮にエリー・レイスがエリザベート本人だったとしても、正式な移民手続きを経た帝国臣民なら他国へ引き渡すことは出来ないと断言する。

エイワスは、あくまで妹を心配する兄として尋ねただけだと装いながら探りを入れていたのである。

その後は外交案件を無難にまとめ、オーキストとアデル間の友好確認や親書交換が行われ、会談は終了した。

ロゼリアの疲労

会談後、ロゼリアはエイワスへ強く抗議する。

エリザベートの件は事前予定になく、帝国皇帝と皇太子を相手に危険な挑発を行ったからである。

しかしエイワスは、帝国側もエリザベートを匿っている弱みがあるため、問題化できないと平然と説明した。

そんな危険な綱渡りを平然と行うエイワスへ、ロゼリアは呆れながらも、だからこそエリザベートが王国へ戻りたがらないのだろうと感じるのだった。

エイワスとの再会

エリザベートは屋敷へ現れたエイワスと対面し、その来訪目的を問い質した。

エイワスは冗談めかして妹を心配して来たと語ったが、エリザベートはブラート王や宰相の差し金ではないかと警戒する。

しかしエイワスは、老害たちのために動くつもりはないと断言し、革袋を差し出した。

中に収められていたのは、獣王連合国でエリザベートが殺したジーク・レイストンの首だった。

父殺しの告白

エイワスは、獣王連合国で行方不明となっていたジークの遺体を回収した経緯を語る。

そして遺体の傷跡が、エリザベートの愛剣フリューゲルによるものと酷似していたこと、胸へ刻まれていた高等魔法【氷結の断罪剣】からも犯人が分かったと説明した。

エリザベートも隠すつもりはなく、自分がジーク・レイストンを殺したとあっさり認める。

それでも父の首程度では自分は動揺しないと冷たく返した。

一方エイワスは、これは単に妹へ父の死を確認させるための土産だと平然と言い放つ。

情報操作の真実

エイワスは、自分がエリザベートの情報を王国側から隠していたことを明かした。

紛争後に目立った活動をしていたにもかかわらず、王国側へ情報が届かなかったのはそのためだった。

しかしエリザベートは、兄が自分を守っていたわけではなく、利用価値があるから王国へ取られないようにしていただけだと見抜く。

その言葉を受けたエイワスは雰囲気を変え、本題を切り出した。

アデルへの忠誠

エイワスは、王国へ戻って欲しいとエリザベートへ頼み込む。

ただし、それはブラート王やフリードの元へ戻れという意味ではなかった。

彼が仕えている主の元へ来て欲しいという提案だったのである。

その人物こそ、ハルドリア王国第一王女アデル・ハルドリアだった。

エリザベートは驚きながらも、最近の王国改革の動きから薄々察していた。

偽金騒ぎ以降、王国の政策は急速に合理性と秩序を取り戻しており、無能なフリードに不可能な政治運営が行われていたのである。

さらに腐敗貴族の排除と有能な後任配置も進められていた。

それら全てが、アデルの存在によって説明できると理解した。

誘いへの拒絶

エイワスは、アデルがいずれ王国の頂点へ立つ存在だと語り、自分と共に彼女を支えて欲しいと頼み込む。

さらにアデルなら、エリザベートが望む報復相手の身柄を引き渡すことも可能だと告げた。

エリザベートは迷いを見せる。

アデルとは敵対したくなく、彼女が王国を変えられる力を持つことも理解していたからである。

しかし最終的に、アデルと自分では目指す場所は同じでも、そこへ至る道が違うと語り、誘いを断った。

エイワスはせめて民を巻き込む策は控えて欲しいと求めたが、エリザベートは有用なら利用すると即答する。

その返答を受けたエイワスは、祝祭期間中は帝国へ滞在すると告げ、考えが変わることを期待しながら去って行った。

アリスとの夜

その夜、エリザベートは自室でアリスと共に過ごしていた。

パレードで興奮したアリスはまだ眠れず、翌日のタッグトーナメントを楽しみにしている。

エリザベートは、ルノアとミーシャは年齢の割に強いが、本戦進出できれば十分だろうと分析していた。

それでもアリスと共に応援しようと優しく語りかける。

そしてアリスを寝かしつけながら、静かな夜を過ごしていた。

白銀の魔女の噂

一方、公国では雪の結晶を模したヘアピンが、子供から母親への定番プレゼントとして流行していた。

週刊誌『公国女性時代』は、この流行の発端へ《白銀の魔女》が関わっているのではないかと特集を組む。

しかし《白銀の魔女》に伴侶や子供が居た記録は残っておらず、雑誌側は彼女が商売として流行を作り出したのではないかと推測していた。

取材を受けたトレートル財団代表リンカーネット・カールトンは、《白銀の魔女》についての質問には回答を拒否していた。

二章《祝祭》

タッグトーナメント予選開始

タッグトーナメントは、帝都騎士団訓練所を使用して開催された。

獣王連合国のような巨大コロシアム建設計画も存在していたが、行政との調整がつかず、今回も例年通りの会場利用となっていた。

予選は複数リングで同時進行される形式であり、ミーシャとルノアはCブロックへ出場していた。

本戦進出条件は三勝である。

エリザベートはミレイとアリスを連れてボックス席から観戦していた。

会場ではダルク・ホーキンスの提案による冷飲販売や大道芸、吟遊詩人による余興も行われており、純粋な商人としてのダルクの手腕をエリザベートは高く評価していた。

実況形式への変化

試合開始と共に、風魔法を応用した拡声用マジックアイテムを利用した実況が会場全体へ響き渡る。

従来の大会は国主催の堅苦しい進行だったが、今回はホーキンス金融主導となったことで、完全に娯楽興行へ変化していた。

一部の軍人貴族は不快感を露わにしていたが、エリザベートは、ダルクにはそれを押し切るだけの財力と権力があると見抜いていた。

同時に、自身も今後は権力獲得へ動く必要性を感じ始めていた。

一回戦勝利

一回戦の相手は、盾使いと槍使いの冒険者ペアだった。

個々の技量では相手が上回っていたが、防御寄りの戦術に偏っており、四、五人編成を前提とした立ち回りだった。

対するルノアとミーシャは、二人用の連携を徹底的に鍛えていた。

ミーシャが高速接近で槍使いへ圧力を掛け、ルノアが風魔法で援護する。

最終的に槍使いを戦闘不能へ追い込み、ルノアの中級魔法で盾使いも撃破した。

エリザベートは、相手側がタッグ戦用へ戦術を調整しなかったことが敗因だと分析していた。

二回戦突破

二回戦は拳士の少女二人組との対戦だった。

ルノアは後衛へ徹し、ミーシャが二対一で時間を稼ぐ構成を取る。

ミーシャは押され気味だったが、敵がルノアへ向かおうとする瞬間だけ強引に引き止め、役割を果たしていた。

その間にルノアが中級魔法【一条の旋風】を発動し、一人をリングアウトさせる。

残った一人もミーシャが短剣を突き付けて勝利した。

ミレイは、ミーシャが以前より柔軟な立ち回りを覚えたことを評価していた。

三回戦と本戦進出

三回戦の相手は剣士と魔導師のペアだった。

魔導師は防御用マジックアイテムを装備し、短剣も扱う中衛型だった。

相手は即席ペアながら、一対一を二つ作る戦法で対応しようとする。

しかしルノアとミーシャは、常に互いを援護できる位置を維持し続けた。

最後は剣士をリングアウトさせ、二対一へ持ち込んで魔導師も撃破する。

こうして二人は本戦トーナメント出場を決めた。

本戦前の祝福

その夜、エリザベートたちはレストラン個室で祝勝会を開いた。

エリザベートは、ルノアの魔法技術が冒険者活動によって大きく成長したことを褒める。

またミーシャについても、柔軟性と一撃の重さが向上していると評価した。

二人は本戦へ向け、十分な食事と休息を取るよう命じられる。

ユウとの合流

翌日、会場へ向かう途中でエリザベートたちは薬師ユウと弟子リリに遭遇した。

リリもタッグトーナメント参加者であり、従魔のバードランナー《モモ》とペアを組んでいた。

エリザベートはユウたちをボックス席へ招待する。

その途中、露店では従魔用魔物の販売も行われていた。

カーバンクル購入

アリスは露店で子猫ほどの小型魔物カーバンクルへ強く惹かれる。

カーバンクルは魔物というより精霊に近い存在であり、飼育には魔力供給が必要だった。

エリザベートは、アリスの魔力を気に入れば飼って良いと条件を出す。

ユウの補助でアリスが魔力を放出すると、カーバンクルは即座に反応し、嬉しそうに魔力を舐め始めた。

エリザベートは金貨十二枚でカーバンクルを購入し、アリスは大喜びする。

カーバンクルはその後、アリスの頭上へ丸くなって落ち着いていた。

リリ対ミーシャ&ルノア

午後、本戦二回戦でリリ&モモ対ミーシャ&ルノアの対戦が始まった。

実況は、従魔と一体化したリリの戦法と、ルノア&ミーシャの堅実な前後衛連携を高く評価していた。

開幕直後、ルノアは【風壁】を展開してモモの突進を止める。

しかしリリは水魔法で身体強化し、風壁を突破してミーシャへ接近した。

リリとモモの高速連携により、ミーシャは防戦一方となる。

さらに【水鞭】で脚を絡め取られ、リリとモモの同時攻撃を受けかける。

しかしルノアは咄嗟に防御魔法を構築し、攻撃を受け止めていた。

そこから連携魔法【反逆の風】を発動。

ミーシャへ込められていた【風弾】と突風を合わせ、リリとモモをリング外へ吹き飛ばした。

モモはリリだけをリングへ蹴り戻し、試合は継続する。

決着

最終局面では、ルノアが風による妨害を展開し、ミーシャが前衛へ出る。

リリは手斧を投げ、その軌道へ身を隠して接近した。

しかしルノアの風で斧道は逸らされ、ミーシャは接近したリリへ対応する。

リリの鉈を左腕で払い、勢いを利用して守護者の短剣の柄で強打した。

リリはそのままリングを転がり、審判から戦闘不能判定を受ける。

こうしてルノア&ミーシャペアは勝利し、観客席から大歓声を浴びながら退場していった。

祝祭の街とイーグレットとの散策

試合後、エリザベートはイーグレットと共に祝祭で賑わう帝都へ繰り出した。

街では至る所で音楽が演奏され、素人から宮廷演奏家級まで様々な芸人が集っていた。

エリザベートは下調べをしていなかったため、イーグレットに案内を任せることにする。

イーグレットは芝居がかった優雅な振る舞いでエリザベートをエスコートし、その立ち居振る舞いから高位貴族向け教育を受けた背景が感じられた。

アルテとネスタルトとの再会

道中、帝国商業ギルド法務部執行官アルテ・ヒルガディエと再会する。

アルテは元々帝都所属の人間であり、レブリック領には欠員補充と新人教育のため派遣されていたことが明かされた。

さらに弟ネスタルト・ヒルガディエも紹介される。

父の急死により、まだ幼いネスタルトがヒルガディエ男爵家当主となり、アルテが後見人を務めていた。

ヒルガディエ家は偽金事件後に帝国から新領地を下賜された家であり、急な家督継承による苦労をエリザベートは察していた。

ネスタルトは若年ながら非常に礼儀正しく、エリザベートとイーグレットへ今後の助力を願う。

二人はそれに丁寧に応じた。

フリードとカラスの政治工作

一方、ハルドリア王国ではフリードがカラスの補佐を受けながら執務を進めていた。

フリードは地味な街道整備仕事に不満を漏らすが、カラスは戦争より内政による支持獲得が重要だと説く。

特にデッケンハウワー子爵領で発見された金鉱脈へ繋がる街道整備は、将来的に大きな利益と政治的成果を生む計画だった。

フリードは完全にカラスへ依存し始めており、自分で考えることなく署名だけを行う状態となっていた。

クリスへの支援依頼

フリードは異国商人クリスへ、ナイル王国向け支援物資と孤児院支援物資の輸送を依頼した。

複数回に分けた継続的支援という形を取ることで、民衆向け支持獲得を狙っていた。

カラスの指示による政治工作だったが、フリード自身は自らの政策だと思い込んでいた。

シルビアの危機感

その後、シルビアはフリードへカラスの異常性を訴える。

突然現れた素性不明の女が秘書官となり、周囲が誰も疑問を抱かないことに強い恐怖を感じていたのである。

しかしフリードは完全に暗示されており、カラスを不自然だと認識できなくなっていた。

さらにカラスは、シルビアが幻惑や暗示へ高い耐性を持っていることを察知していた。

シルビアはアデルへの保護要請を考え始めるが、カラスはその寸前で接触し、再び精神へ干渉を行う。

結果、シルビアの記憶と警戒心は曖昧にぼかされてしまった。

糸飴と祝祭の芸術区画

帝都へ戻ると、エリザベートはイーグレットから糸飴を勧められる。

砂糖を糸状に加工した不思議な食感を気に入り、後でアリスにも食べさせたいと考えていた。

さらに二人は芸術家たちが集まる広場へ移動し、絵画や即興演奏を楽しむ。

その中で、孤児院の子供たちが販売していた刺繍入りハンカチへエリザベートは目を留めた。

孤児支援への着想

刺繍は子供とは思えないほど丁寧であり、エリザベートは複数枚購入する。

話を聞くと、その孤児院はトレートル商会が寄付を行っている施設だった。

エリザベートは孤児院へ仕事を発注する構想を語る。

安価な労働力確保だけでなく、将来的な顧客育成にも繋がるという長期的視点だった。

イーグレットは、その考え方は商人より国家運営者の発想だと評した。

行商人エンバースの発見

その後、骨董露店を巡る中で、エリザベートは優秀な目利きの行商人エンバースを発見する。

彼は商品知識こそ乏しかったが、本物だけを直感で仕入れており、価格設定も適正だった。

エリザベートはその才能を高く評価し、露店の商品を全て買い取った上でトレートル商会へ勧誘した。

イーグレットもまた、帝都で有望な商人たちを見つけ、自商会への勧誘を始めていた。

キャロルの命名

その夜、アリスは悩み続けた末、カーバンクルへ「キャロル」という名前を与える。

キャロル自身も名前を気に入った様子を見せ、正式に従魔登録されることになった。

キャロルとの契約

その後、エリザベートは密かにキャロルとの契約を試みる。

【怠惰の魔導書】を用いて完全支配契約を行おうとしたが拒絶される。

そこで条件を変更し、召喚や支配を伴わない単純な魔力パス契約へ切り替えた。

今度は成功し、キャロルへエリザベートの魔力経路が繋がる。

これによってキャロルの能力強化と、アリス防衛力の向上が期待できるようになった。

最後にエリザベートはキャロルへ、アリスを守るよう優しく頼み込むのだった。

ルノアとミーシャの敗北

祝祭四日目、エリザベート達はタッグトーナメント観戦のため騎士団訓練場を訪れていた。

ティーダも同行しており、優勝候補システィアへ賭け札を購入して勝負に臨んでいた。

一方、控室ではルノアが強敵との対戦を前に緊張していた。

対戦相手は《鋭き切先》所属のCランク冒険者マルティとネッドであり、実力差は明白だった。

しかしミーシャは、本戦進出だけでも十分な成果だと前向きに考え、二人はやれるだけやろうと気持ちを切り替える。

試合開始直後、マルティとネッドはルノアとミーシャを分断する戦術を取った。

ミーシャはマルティの高速連撃に拘束され、ルノアはネッドと一対一へ追い込まれる。

ルノアは風属性魔力を纏わせた長杖で応戦し、エリザベートも未習得だった技術を使っていることへ驚いていた。

しかし未熟さから魔力制御が長続きせず、最終的にネッドの一撃で場外へ吹き飛ばされる。

残されたミーシャも二人がかりで追い詰められ敗北した。

エリザベートは、対戦相手が事前研究と対策を徹底していた点を高く評価していた。

敗北を糧にする二人

敗北後、ルノアとミーシャは落ち込む様子を見せなかった。

二人はこの敗北を糧にさらに修練を積もうと話し合っていたのである。

エリザベートはルノアへ、身体強化系魔法への適性が高いと説明した。

ルノアの固有魔法【物品鑑定】も本質的には感覚強化系統であり、今後はそちらを伸ばすべきだと助言する。

ミーシャについても、種族特性を活かした俊敏性と柔軟性が順調に成長していると評価した。

北大陸文化との触れ合い

試合後、エリザベート達は東広場へ移動し、北大陸商人達の屋台を巡った。

道中では西大陸由来の守護獣人形を購入する。

守護獣にはそれぞれ意味があり、エリザベートは商売繁盛の猫、ルノアは知識の狼、アリスは純真を意味するカーバンクルを選んだ。

東広場では北大陸料理を味わう。

ロロの実を使った蒸し焼き料理や、生姜入り炭酸飲料、鳥肉串焼きなど、普段触れることのない文化を楽しんでいた。

また、北大陸の化学技術で作られた「スライムバルーン」にも興味を示す。

ヘリウムという気体によって浮遊する仕組みだと説明され、魔法に頼らない技術の発展へ感心していた。

タッグトーナメント決勝

祝祭最終日、タッグトーナメント決勝が始まる。

決勝戦ではマルティとネッドが善戦するものの、傭兵コンビのカインとランズが優勝を果たした。

二人は互いの死角を完全に補完する高度な連携を見せ、エリザベートもその熟練ぶりを高く評価していた。

ロゼリアの正体

続く一対一決勝戦では、優勝候補Aランク冒険者《泥のシスティア》が登場する。

対戦相手は仮面の鞭使いローゼだった。

しかし、その姿を見たエリザベートは激しく動揺する。

仮面越しでも、その正体がロゼリアであると即座に見抜いたのである。

ロゼリアは、泥人形を操るシスティアを相手に圧倒的な実力を見せつける。

高速の鞭術と火炎魔法を組み合わせ、システィアの泥人形を次々と破壊。

さらに巨大火炎魔法【火炎陣】によって自身を包み込み、拘束を突破する。

最後は【地を這う炎蛇】でシスティアを戦闘不能へ追い込み勝利した。

エリザベートは、見世物を嫌うはずのロゼリアが大会へ参加している理由に疑問を抱く。

そして余計な騒動へ巻き込まれる前に、その場を早々に離れることを決めるのだった。

ロゼリアによる説得

夜、自室でワインを飲もうとしていたエリザベートは、窓の外に浮かぶ小さな炎の鳥を発見した。

それはロゼリアが作り出した魔法生物であり、エリザベートはその導きに従って深夜の公園へ向かう。

公園で待っていたロゼリアは、武術大会優勝への祝辞を受け流しつつ、本題を切り出した。

ロゼリアは、エリザベートが抱く復讐心と国への絶望を理解していると語った上で、これ以上王国の民を巻き込むことを止めるよう求める。

しかしエリザベートは、正攻法では《雷神》ブラートを倒せない以上、国そのものを潰す戦略は正しいと反論した。

さらに、民が先に自分を裏切ったのだと吐き捨てる。

ロゼリアは、その考えこそ弱者の理屈であり、生まれも能力も強者であるエリザベートが弱者の振りをするべきではないと厳しく指摘した。

また、アリスの存在を引き合いに出し、罪のない子供達が犠牲になっている現実を突きつける。

ロベルト・アーティ事件やロックイート男爵領内乱による子供達の死者数を挙げられたエリザベートは、反論できず沈黙した。

ロゼリアは、エリザベート自身もその矛盾に気付いており、報復後に自ら命で償うつもりなのだろうと見抜いていた。

最後にロゼリアは、エリザベートは悪人になるには優しすぎるのだと語る。

エリザベートは否定も肯定もできず、その言葉を受け止めるしかなかった。

過去の王太子妃候補選定

ロゼリアは過去を思い返していた。

当時、彼女は王宮でエリザベートと共にギョクリョウ妃へ呼び出されていた。

ロゼリアは、常に完璧な笑みを浮かべるエリザベートを苦手としていた。

自分の意思で淑女の頂点を目指して努力してきたロゼリアに対し、エリザベートは王家のためだけに作られた人形のように見えていたのである。

二人が案内されたのは、貴族裁判を行う小裁判室だった。

ギョクリョウ妃は、これから行う裁判を通して王太子妃としての資質を見ると告げる。

そこへ連行されてきたのは、リエンタール子爵を刺した平民の少女アリアだった。

アリアは、姉がリエンタール子爵に弄ばれ殺されたため復讐したのだと涙ながらに訴える。

ロゼリアは情状酌量を求め、十年の投獄後に修道院奉仕とする案を出した。

しかしエリザベートは、法に照らせば死罪が妥当だと断言し、代わりに家族との離縁を認めるよう進言する。

ギョクリョウ妃も、証拠がない以上リエンタール子爵を裁けないと判断し、アリアへ死罪を宣告した。

ロゼリアはその判決に強い無力感を覚える。

アリア処刑とエリザベートの本性

数日後、ロゼリアとエリザベートはアリアの処刑へ立ち会う。

通常なら晒し首となる罪だったが、今回は地下牢近くの部屋で秘密裏に毒杯による処刑が行われた。

ロゼリアは、せめてもの情けとしてアリアの待遇改善へ働きかけていた。

アリアはエリザベートへ視線を送り、エリザベートが小さく頷くと毒を飲み干す。

そして静かに息を引き取った。

その後もロゼリアは、リエンタール子爵が裁かれない現実に納得できなかった。

墓地で明かされた真実

アリアの埋葬後、ロゼリアは夜の墓地を訪れる。

そこで遭遇したのは、フードを被ったエリザベート達だった。

墓前には、リエンタール子爵を含む複数の生首が並べられていた。

エリザベートは、生前アリアへ事件関係者の首を墓前へ供えると約束していたのだと明かす。

ロゼリアが、法では裁けないと言っていたではないかと問うと、エリザベートは「法では」と言っただけだと返した。

同行していたバアルは、リエンタール子爵達は帰路で盗賊に襲われただけだと平然と語る。

ロゼリアは、法と礼儀を重んじるだけの人形だと思っていたエリザベートが、裏では自ら手を汚して報われない者のために復讐している事実を知る。

完璧な淑女でありながら、陰では罪人の無念を晴らすため血を流している。

その覚悟を目の当たりにしたロゼリアは、自分はエリザベートに完敗しているわけではないと呟きつつも、彼女の不器用さへ複雑な感情を抱くのだった。

ロゼリアの取引提案

ロゼリアは、エリザベートへ自分が折れる理由を与えると言い、小さなポーチから長大なケースを取り出した。

中に収められていたのは、本物の雷龍の角だった。

竜種ではなく、莫大な魔力と知性を持つ真の龍の素材であり、雷属性の極めて強い魔力を宿していた。

ロゼリアは、この雷龍の角を譲る代わりに、今後の報復において故意に民を傷付けないという内容を魔法契約で制約するよう要求する。

エリザベートは、この素材を用いれば【雷精化】したブラートにも届く武器を作れる可能性を即座に理解した。

ロゼリアは、アデルへの敵対禁止まで盛り込みたかったものの、複雑な条件は契約に綻びを生むため断念したと明かす。

さらに、ブラートがフリードを完全に切り捨てられず、飼い殺し程度で済ませようとしている事実を聞き、ロゼリアは現王を見限ったのだと語った。

国を守るには王を挿げ替える必要があり、そのためにアデルを女王として戴冠させる決意を固めたのである。

エリザベートは、ロゼリアと敵対するのは得策ではないと判断し、契約を受け入れる。

エイワスへの報告

ロゼリアは、ハルドリア王国使節団の談話室でエイワスへ魔法契約書を提出した。

内容を読んだエイワスは、頑なだったエリザベートから契約を取り付けたことへ珍しく本心から驚く。

ロゼリアは詳細な交渉手段を明かさなかったが、この契約によってエリザベートは民を巻き込まなくなると説明する。

ただし、その代わり今後は王族そのものを直接狙うようになるだろうと分析していた。

エイワスは、ロゼリアが随分と強かになったと笑う。

ロゼリアは逆に、エイワスこそ誰が勝とうと最終的に漁夫の利を狙っていたのだろうと見抜いていた。

エイワスはそれを軽く受け流しつつ、予定を変更して翌朝には帝都を離れると告げる。

ロゼリアは呆れながらも準備のため退室する。

ロゼリアの本音

自室へ戻ったロゼリアは、厳重に契約書を保管しながら、久々に再会したエリザベートを思い返していた。

以前のような完璧な作り笑いではなく、感情を露わにするようになった現在のエリザベートを、ロゼリアは好ましく感じていた。

そして、せっかく王国から逃れたのだから穏やかに生きれば良いのにと、かつてのライバルへ複雑な感情を抱く。

エリザベートの新たな計画

一方、エリザベートは屋敷へ戻り、雷龍の角を改めて確認していた。

天龍素材から作られた愛剣フリューゲルと同格級の素材であり、この角を加工すればブラートへ届く武器が作れると確信する。

ただし問題は、この超級素材を加工可能な職人の確保だった。

ロゼリアとの契約によって計画修正は必要となったが、ブラートへ対抗できる可能性を得た価値は極めて大きかった。

エリザベートは、アデルも事前に雷龍の角の存在を把握していたはずだと推測する。

つまりアデル側も、自分を利用してブラート排除を狙っているのだと理解していた。

これは共闘ではなく、互いを利用し合う謀略戦である。

エリザベートは、自分もまたアデル達を利用すると決意し、対王国戦略を練り直し始めるのだった。

公国博物館と白銀の魔女伝説

その頃、公国の博物館では《白銀の魔女》関連展示が人気を集めていた。

展示されているのは、《翼を持つ者》と《雷神殺し》と呼ばれる二振りの細剣である。

しかし世間では、それらはレプリカであり、本物は後継者が所有している、あるいは王城地下へ封印されているなど様々な噂が流れていた。

雑誌『月刊ハルドリア公国都市伝説』は、その真相へ迫ろうと取材を行う。

しかし博物館側は、本物であると主張しつつ鑑定は拒否した。

記事では、その拒否理由に何らかの秘密があるのではないかと煽り立て、《白銀の魔女》や初代大公ルーカスに関する数々の都市伝説を掲載していた。

三章《凶行》

クモの潜伏とナナフシの訪問

帝都のスラム地帯に潜伏していた組織員《クモ》は、廃墟へ踏み込んできたチンピラ達を糸で瞬く間に惨殺した。

そこへ、帝国商業ギルド評議会の《千里眼》ロットン・フライウォークの姿をした男が現れる。

クモは即座に攻撃を仕掛けるが、精霊魔法によって糸を焼き切られ、相手がナナフシであることを知る。

ナナフシは、自らの神器【無貌の祭壇】によって殺した相手の姿や記憶をコピーできる能力を持っていた。

彼は拘束していた情報屋を殺し、その心臓を祭壇へ捧げることで新たな姿を獲得する。

しかし、この能力には制限も存在していた。

保存できる姿は二人分のみであり、変身時間にも制限があり、一度使用すれば本来の自分へ戻れなくなる危険すらあるのだった。

その後、ナナフシは若からの新たな指令をクモへ渡す。

クモは内容を確認すると、命を賭ける仕事であっても若の命令なら問題ないと受け入れる。

さらに、ナナフシが残した黒い靄を宿した宝玉を懐へ収めた。

王国使節団の帰還

祝祭最終日の早朝、エイワス率いるハルドリア王国使節団は帝都を出発した。

オーキスト皇太子は自ら見送りへ現れ、ロゼリアとの対談を惜しむ。

馬車へ乗り込んだ後、ロゼリアはエイワスへ、エリザベートとの交渉成功だけで帝国との交流を後回しにするのは危険だと苦言を呈した。

しかしエイワスは、現在アデルにとって真に脅威なのは帝国ではなくエリザベートだと断言する。

さらに、アデル達への土産として大量のチョコレートを購入していたことも明かした。

ロゼリアは呆れながらも、エイワスの掴みどころの無さへ改めて頭を悩ませていた。

祝祭最終日の異変

一方、帝都では祝祭最終日を迎えていた。

広場には多くの屋台や大道芸人が集まり、アリスはイーグレットの肩へ乗せられながら楽しそうにしていた。

しかし突然、人々の悲鳴と濃い血の臭いが広場から広がる。

エリー達が屋根の上から確認すると、黒尽くめの男が無差別に人々を殺害していた。

駆けつけた騎士達も、男の謎の遠距離攻撃によって瞬く間に殺される。

さらに近衛騎士団が投入され、男は追い詰められるが、その瞬間、男は宝玉を掲げた。

エリーは、その危険物の正体を知っていた。

それは、王国禁書庫の文献に記された禁忌の魔導具《死者の宝玉》だった。

死者の宝玉の発動

死者の宝玉から放たれた魔力に触れた騎士達は、肉体を腐敗させながら骸骨へ変貌する。

さらに殺された近衛騎士までもがゾンビとなって蘇り始めた。

エリーは、このまま放置すれば帝都そのものが壊滅すると判断する。

彼女は【強欲の魔導書】から細剣フリューゲルを取り出し、イーグレットやバアルと共に黒衣の男へ突撃した。

男はアンデッドを大量に使役し、さらに糸による斬撃で迎撃する。

イーグレットの砂魔法やバアルの圧倒的な近接戦闘によって道は切り開かれるものの、男の戦闘能力は極めて高かった。

エリーの斬撃も寸前で回避され、逆に魔力を込めた糸によってバアルが深手を負う。

そこへ《泥のシスティア》をはじめ、多数の高ランク冒険者や傭兵達も参戦した。

帝都全体へ広がりつつあるアンデッド被害を前に、近衛騎士団や冒険者達は連携して包囲網を形成する。

さらにティーダ、エルザ、ユウまでもが駆けつけ、黒衣の男を完全包囲した。

しかし男は追い詰められながらも不敵に笑い、《白銀の魔女》《漆黒》《不死鳥》《代行者》とエリー達の異名を口にする。

この襲撃が偶発的な暴走ではなく、最初から計算された事件であることを示していた。

オーキストの出陣

帝都でアンデッド災害が発生した報告を受けたオーキストは、宮廷内を駆け回りながら即座に対応を指示した。

騎士や兵士には民衆の避難を優先させ、さらにイブリス教へ聖水の提供を要請する。

アンデッドへの対抗策を整えた後、オーキストは自ら聖属性の鎧を身に纏い、兵士達の前へ立った。

彼は帝国臣民を守るために戦うことを宣言し、自ら先陣を切ると兵士達へ告げる。

その演説によって混乱していた兵達の士気は大きく高揚した。

クモの正体

一方、広場ではクモとの激戦が続いていた。

クモは高速移動でエリーへ肉薄し、魔力を纏った糸で斬り裂こうとするが、イーグレットが間一髪で防ぐ。

その戦闘の中で、イーグレットはクモが中央大陸で暗躍する組織の構成員であることを見抜いた。

その組織は国家転覆や誘拐、人体実験など数々の事件へ関与していると噂される危険な集団だった。

クモ自身も、人間からの依頼で行動していると認める。

つまり、今回の襲撃も何者かの依頼による計画的犯行だった。

アンデッドの増殖

クモは両腕を振り上げ、大量のアンデッドを一斉にけしかけた。

さらに、死者の宝玉によって魔力そのものから新たなアンデッドを生成していた。

エリーとティーダは同時に【浄化】を発動し、周囲の下級アンデッドを一掃する。

しかしクモはさらに瘴気を集め、エルダーリッチやジャイアントスケルトン、スケルトンドラゴンといった上位アンデッドを生み出した。

エリーは神器【怠惰の魔導書】を展開し、セイントバードを召喚する。

さらに【視覚同調】によって帝都全域の戦況把握を開始した。

帝都各地で上位アンデッドが発生していることを確認したエリーは、ユウ、エルザ、ティーダへそれぞれ別方向の制圧を命じる。

ティーダ達の奮戦

ティーダはエルダーリッチと交戦中だった冒険者達へ合流した。

神器【神の恵みを刈り取る刃】によってアンデッドの魔力を吸収しながら、次々と上位アンデッドを撃破していく。

さらに冒険者や近衛騎士達へ聖属性付与を施し、戦力を強化した。

ユウは黒いジャイアントスケルトンと激突する。

通常個体を遥かに超える巨大変異種だったが、神器【終末の戦斧】による圧倒的な破壊力で粉砕した。

続けてスケルトンドラゴンも、魔力核ごと完全に消滅させる。

エルザもまた騎士団へ加勢し、神器【不死鳥の剣】によってアンデッドの大群を薙ぎ払った。

さらに《鋭き切先》の仲間達と合流し、組織的に上位アンデッド掃討へ向かう。

ミレイ達の避難

その頃、ミレイ達はアリスを連れて避難していた。

しかし広場から離れた場所でもアンデッドは次々と出現し、グールがアリスへ襲い掛かる。

そこへ現れたのはロットン・フライウォークだった。

ロットンは精霊魔法でグールを焼き払い、アリスを救出する。

さらに膝の傷を光の精霊魔法で治療した後、ミレイ達へ避難を促した。

その後、ロットンはアリスの血を拭ったハンカチを密かに小瓶へ保存する。

そして、アリスに特別な価値があることを示唆する独白を漏らした。

しかし、キャロルへ攻撃することは避け、疑念を持たれないよう行動していた。

クモとの死闘

広場ではシスティアも合流し、エリー達と共にクモを追い詰めていた。

泥魔法による拘束や、イーグレットの砂魔法、エリーのフリューゲルによる斬撃によってクモへ攻撃を重ねる。

しかしクモは痛みを感じる様子もなく、自身の身体を糸で切断しながら戦い続ける。

やがてアンデッド軍勢は広場から溢れ始め、人々の士気も崩れかけていた。

その時、オーキストが自ら前線へ現れる。

彼は騎士、兵士、冒険者、傭兵達へ向けて演説を行い、帝国の歴史へ名を刻む英雄となれと鼓舞した。

その言葉により崩れかけていた士気は再び立ち直る。

エリーとクモの攻防

戦況が持ち直した中、クモは新たなスキル【操糸】を発動した。

強化された糸の斬撃によってイーグレットは吹き飛ばされる。

さらにエリーを【傀儡糸】で拘束し、糸で形成した獅子を襲い掛からせた。

エリーは自らの体ごと糸を凍結破壊して辛うじて回避する。

傷を負ったエリーを庇うように、イーグレットが前へ立った。

その後、エリーは氷塊を展開しクモの動きを読むが、クモは糸の鎧を囮に利用して突撃していた。

エリーが読み違えた瞬間、クモの斬撃がイーグレットの胸を深く抉った。

イーグレットの決死の拘束

胸を貫かれながらも、イーグレットはクモの腕を掴み【砂に閉ざされた】を発動した。

砂が幾重にもクモへ絡み付き、その動きを拘束する。

その隙を逃さず、エリーは氷の剣を放ちクモの身体を貫いた。

さらにシスティアが【泥の軍団】を展開し、泥人形達でクモへ追撃を加える。

エリーはその間にイーグレットへ【癒しの水球】を施し、傷の治療を急いだ。

しかしクモは氷の剣も泥人形も容易く破壊し、何事もなかったかのように立ち上がる。

糸のドラゴン

クモは【操糸:散】による強力な斬撃を放ち、システィアは泥魔法で対抗する。

さらに【泥波】による津波のような攻撃でクモを押し潰そうとするが、クモは糸を球状に固めて耐え切った。

そして次の瞬間、クモは膨大な魔力を込めて【傀儡糸:龍】を発動する。

大量の糸が重なり合い、巨大なドラゴンへ変貌した。

その魔力量はエリーの想定を超えており、クモがAクラス上位級の実力者であることを示していた。

糸のドラゴンはイーグレットへ巨大な腕を振り下ろす。

エリーは回避すればイーグレットが死ぬ状況へ追い込まれた。

氷精化の発動

死の危機の中で、エリーは以前から構想していた魔法へ到達する。

それは雷神ブラートの【雷精化】を模倣しようとしていた精霊化魔法だった。

エリーは【氷精化】を発動し、自身の右腕を氷の精霊へ変貌させる。

完全な精霊化には至らなかったものの、その右腕は凍結そのものの概念となっていた。

エリーは氷の精霊化した右腕で糸のドラゴンを一撃で凍結粉砕する。

クモは人間の領域を超えた魔法だと驚愕し、エリーを危険視した。

しかし【氷精化】の代償は大きく、エリーの右腕は酷い凍傷を負ってしまう。

マティアスの参戦

クモは再び糸のドラゴンを作り出そうとするが、その直後、巨大な泥蛇の上から老騎士が飛び降りて来る。

現れたのはユーティア帝国騎士団総長マティアス・ロードストスだった。

システィアがエリーの依頼を受け、彼をこの場へ連れて来ていたのである。

マティアスはクモを前にして圧倒的な威圧感を放つ。

その実力はSランク冒険者級と評される帝国最強の騎士だった。

クモは距離を取ろうとするが、マティアスがわずかに動いた瞬間、その足を斬り飛ばされる。

さらに大量の糸を放ちながら逃走を図るが、マティアスは既に剣を振り終えていた。

軽い鍔鳴りと共に、クモの身体は血霧となって消滅した。

クモの死と共に死者の宝玉も消え、帝都を埋め尽くしていたアンデッド達も消滅を始める。

マティアスは帝都襲撃の首謀者討伐を宣言し、兵士達は勝鬨を上げた。

ナナフシ達の目的

数日後、とある部屋でナナフシは“若”と呼ばれる男へ報告を行っていた。

彼は混乱に紛れて宮廷や軍内部へ配下を潜入させたことを伝える。

さらに、小瓶に保存したアリスの血液を差し出した。

調査の結果、アリスはファイアドレイクの魔力結晶実験に用いられた人造精霊の実験体である可能性が高いと判明する。

しかもアリスは火属性だけでなく、水属性も併せ持つ二属性適性を示していた。

若はそれを非常に興味深いと評価した。

事件後の調査

事件から十日後、エリーは療養を終え、今回の騒動の報告を確認していた。

右腕の凍傷は後遺症こそ残らなかったが、完治には数ヶ月を要する状態だった。

帝都ではなお混乱が続いており、犠牲者確認も終わっていなかった。

さらにクモの潜伏先から、フリードが今回の事件を依頼したと示す証拠が発見される。

帝国はそれをもって王国へ正式抗議を行う構えを見せていた。

しかしエリーは、その証拠があまりにも露骨すぎると疑念を抱く。

死者の宝玉の存在をフリードが知っているとは考え難く、背後には別の組織の思惑があると判断した。

ロットンへの警戒

エリーはさらに、ロットン・フライウォークを最重要警戒対象へ指定する。

【視覚同調】によってキャロルの視界も共有していたエリーは、ロットンがアリスの血液を採取していた事実を把握していた。

アリスの出自を考えれば、その行動は極めて危険だった。

ロットンがクモ達と通じ、今回の騒動そのものへ関与していた可能性すら浮上する。

エリーはミレイへ慎重な調査を命じた。

アデル陣営の動き

王都ではアデルが執務を進めながら、エイワス達の帰還を待っていた。

フリードは依然として監視下に置かれており、シルビアも状況の悪化を理解し始めていた。

一方、エリーは帝国と王国の開戦機運についても分析していた。

ミレイは帝国貴族を煽って戦争へ持ち込む案を提示するが、エリーは拒否する。

それはロゼリアとの魔法契約により、民間人へ犠牲を出す策を使えなくなったためだった。

ただし契約には抜け道も存在しており、自分が直接干渉しない形で戦争が起きた場合には違反にならないことも理解していた。

そしてエリーは、契約とは双方を縛る物であると笑みを浮かべるのだった。

特典ショートストーリー『アリスとキャロルの不思議な本棚』

アリスと不思議な森

アリスは屋敷の庭で、カーバンクルのキャロルと遊んでいた。

エリー達は事件後の後始末で忙しく、アリスは屋敷から出ずに過ごしていたのである。

アリスは【水操作】で小さな水の輪を作り、キャロルは楽しそうにその輪を潜って遊んだ。

しかし次第に魔力が減ってきたため、アリスはキャロルを抱えて自室へ戻る。

部屋ではキャロルがアリスの横で丸くなって眠り、アリスは祝祭で買ってもらった新しい絵本を静かに読み始めた。

本棚の奥の秘密

しばらくすると目を覚ましたキャロルが、本棚の端に置かれていた絵本を掻き出してしまう。

アリスが追いかけると、本棚の奥に見覚えのない空間が存在していた。

そこには身をかがめて進めるほどの通路が続いており、キャロルはその奥へ進んで行く。

アリスも後を追うと、通路の先には見知らぬ森が広がっていた。

木のうろが通路へ繋がっており、アリスは驚きながら森へ足を踏み入れる。

動物達の授業

森を進むと広場へ辿り着き、そこには黒板や机が置かれていた。

さらに教壇にはメイド服を着た黒い犬が立ち、机にはウサギとネコが座っていた。

混乱するアリスだったが、黒い犬に促されるまま席へ座る。

しかし授業が始まろうとした瞬間、傷だらけのトラが現れ、犬を呼び出した。

犬とトラは慌てて森の奥へ走って行き、アリスもキャロルを追って後を追う。

白銀のオオカミ

森の先にはレンガ造りの家があり、その庭では白銀の毛並みを持つ美しいオオカミがキャロルを捕まえていた。

オオカミはキャロルが自分のおやつを食べたと怒っており、犬とトラも同調していた。

アリスがキャロルの主人だと名乗ると、オオカミはアリスも同罪だと言い放つ。

アリスがキャロルは魔力しか食べないと説明しても、オオカミは聞き入れなかった。

そして【巨大化】を発動し、巨大化したキャロルをアリスへ投げつける。

押し潰されたアリスは苦しそうにもがくのだった。

夢から覚めたアリス

場面は変わり、ミーシャが夕食の時間を知らせるためアリスの部屋を訪れる。

返事がないため部屋へ入ると、アリスはベッドで眠っていた。

その顔の上にはキャロルが乗っており、アリスは苦しそうにうなっていた。

ミーシャに起こされたアリスは、不思議そうに部屋を見回した後、ミーシャに連れられて食堂へ向かう。

ベッドの上には『もりのどうぶつさん』という絵本が置かれていた。

そしてアリスは、寝ぼけた様子でミーシャへ、エリーは【巨大化】の魔法を使えるのかと尋ねるのだった。

ブチ切れ令嬢4巻レビュー
ブチ切れ令嬢6巻レビュー

ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。一覧

ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。 1の表紙画像(レビュー記事導入用)
ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。1 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~
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ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。2 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~
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ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。3 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~
ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。 4の表紙画像(レビュー記事導入用)
ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。4 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~
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ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。5 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~
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ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。6 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~

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