物語の概要
ジャンル:ダークファンタジー・異世界リベンジファンタジーである。本作は四聖勇者の一人に召喚されながらも裏切りに遭った主人公が、仲間・世界・自身の信念を取り戻していく物語である。28巻は特に、散り散りとなった四勇者が新たな試練に直面する転換点の巻である。
内容紹介:
第28巻では、剣の勇者・天木錬が“カース”を発動し、槍の勇者・北村元康(エクレール)との決闘が繰り広げられる。また、異世界からの刺客によって四聖勇者が狙われる中、主人公・岩谷尚文たちは重大な選択を迫られる。激しいバトルとキャラクター同士の葛藤が描かれる章である。
主要キャラクター
- 岩谷尚文:盾の勇者。本来の正義感と復讐の狭間で揺れるが、仲間を守るために新たな策を講じる存在である。
- 天木錬:剣の勇者。28巻では“カース”を発動し、槍の勇者との決闘に挑む鍵を握る人物である。
- 北村元康(エクレール):槍の勇者。錬との決闘相手であり、激突により尚文たちの運命を左右する存在でもある。
- ラフタリア:尚文の最初の仲間であり、愛と信頼の象徴。尚文を支えつつ、新たな脅威に立ち向かう主要メンバーである。
物語の特徴
本巻は物語の大きな転機として位置付けられ、剣と槍の勇者による“カース発動”というハイライトが中心である。バトルシーンの迫力と同時に、呪われた力を扱う者たちの葛藤と成長が描かれる点が魅力である。他巻とは異なり、勇者同士の直接衝突が物語の主軸となっているため、アクションと心理描写の両面で読み応えがある構成となっている。カラーページ収録などファンサービス面も充実している。
書籍情報
盾の勇者の成り上がり 28
著者 藍屋球 氏
原作 アネコ ユサギ 氏
キャラクター原案 弥南 せいら 氏
出版社:KADOKAWA
発売日:2025年07月23日
ISBN:9784046849168
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あらすじ・内容
カースを発動した剣の勇者・錬と、エクレールが決闘!?
大人気異世界リベンジファンタジー!!
散り散りになった四聖勇者を狙う、異世界からの刺客。
さらには剣の勇者と槍の勇者が決闘をしていて…!?
カースを発動した剣の勇者を前に、尚文たちの選択は――。
感想
読み終えて、まず感じたのは、物語が着実に進んでいるということである。今回は、カースに侵された剣の勇者・錬と、テンプテーションを振り撒く槍の勇者・元康という、問題児たちの騒動が中心に描かれていた。
錬については、エクレールが身を挺して抑え込んだことで、無事に解決へと向かった。エクレールの献身的な姿には、胸を打たれるものがあった。しかし、問題は元康である。彼は尚文のためだと言いながら、色々と暴走し、周囲を食い散らかしていく。その様は、もはやファンタジスタとしか言いようがなく、読んでいて腹筋が崩壊しそうになった。特に、フィーロの馬車で颯爽と去っていくシーンは、忘れられない名場面である。
異世界からの侵略者については、ラフタリアの刀によって魂を斬られ、完全に退治された。ラフタリアの成長は目覚ましく、頼もしい限りである。
そして、ようやく剣の勇者・錬がまともになったのは、喜ばしいことだ。彼はこれまで、色々な問題を起こしてきたが、今回の騒動を経て、成長したように感じられる。
ただ、物語の展開としては、アニメ版にだいぶ先を越されている。しかし、焦らずじっくりと物語を進めていってほしい。それぞれのキャラクターの心情や、異世界との戦い、そして尚文たちの成長を、丁寧に描いていくことを期待したい。
全体を通して、今巻も『盾の勇者の成り上がり』らしい、波乱万丈な展開が楽しめた。特に、元康の暴走っぷりは、予想を遥かに超えており、笑いなしには読めなかった。今後の展開にも、大いに期待したい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
第一一三話「テンプテーション」
不審な戦いを目撃する一行
森の中を進んでいた尚文たちは、戦闘の気配を察知し、その現場を確認した。そこでは剣の勇者・錬が黒い鎧姿で敵と交戦していた。尚文はその姿を認識し、驚きを隠せなかった。
元康の登場と視覚的誘惑
突如として現れた金髪の美形戦士は、尚文の視界に魅惑的に映った。これは、槍の勇者・元康が放っているスキル「テンプテーション」による影響であり、尚文たちは彼の外見に幻惑された様子を見せた。
警戒を強める尚文たち
尚文とラフタリアは状況を分析し、フィーロの異変にも注意を払っていた。ラフタリアは、今いる場所の敵がこれまでよりも強力であることを指摘し、尚文に警戒を促した。フィーロは「槍のひと」と叫び、元康のもとへと突進していった。
元康との再会と混乱
元康は明るく尚文に「お義父さん」と呼びかけ、馴れ馴れしい態度を取った。尚文は困惑と苛立ちを見せながらも、状況の収拾に努めた。そこへ錬が再登場し、再び剣を構えていた。
錬の挑発と戦意
剣の勇者・錬は、複数人を相手にしても臆せず立ち向かいながら、「群れなきゃ何もできない臆病者どもが」と発言し、他者を挑発した。元康はそれに反応し、挑発を交わしながら戦闘態勢を維持した。
騒然とする戦場
戦場には突如として衝撃が走り、尚文たちは吹き飛ばされる事態に陥った。その場にいた女性たちは状況に動揺し、混乱が広がった。
尚文の参戦
尚文は覚悟を決めて盾を構え、「やろう」とつぶやきながら前線に立った。元康はなおも笑みを浮かべつつ尚文に接近し、「殺しますかな?」と発言しながら攻撃に転じた。
誤解から生じる衝突
元康は、尚文が殺すことを望んでいると信じ込み、「お義父さんが望むなら」と言いながら攻撃を継続した。尚文は即座に「殺すな」と叫び、暴走を止めようとした。
動機のすれ違い
尚文は、元康がなぜ錬と戦っていたのかを問いただした。元康は「お義父さんが望んだから」と答え、尚文はその言動に驚きを隠せなかった。元康はその理由を当然のように語ったが、尚文にとっては理解し難い発言であった。
元康の誤解とテンプテーションの使用理由
元康は、尚文が錬を連れ戻そうとしていると誤解し、自分はその手助けとして盗賊討伐の体裁で来たと説明した。錬がスキルで逃げようとしたため、自身のスキル「テンプテーション」を使って足止めしていたことを明かした。
テンプテーションの影響と周囲の反応
元康の説明を受け、ラフタリアたちは魅了で足止めするという手法に驚愕した。尚文も、元康がいつの間にかそんなスキルを習得していたことに疑問を抱いた。一方で、元康の槍には「カース」が発動していることが確認され、錬もその影響下にあると推察された。
錬の認識と精神状態
錬は、自らの速度と力に強い自負を抱き、周囲が見えなくなっていた。尚文はその姿にかつての自分を重ね、カースによる思い込みが視野を狭めることを理解した。ラフタリアとエクレールも錬の言動の異常さを認識していた。
錬の暴走と尚文の対応
錬は「戦いの中で最強になる」と宣言し、攻撃的な姿勢を露わにして尚文たちに突進した。尚文は、元康に「手を出すな」と命じ、自身の盾で錬の攻撃を真正面から受け止めた。だが錬は戦場を離脱し、周囲は困惑した。
錬の逃走と再襲撃
錬は猛スピードで離脱し、尚文たちはその行動に驚きを隠せなかった。その後、錬は再び空中から襲撃に転じ、その矛先はリーシアに向けられていた。尚文が警告を発し、リーシアは咄嗟に身を守った。
リーシアの回避と周囲の称賛
錬の攻撃を間一髪で回避したリーシアは驚きを見せつつも、自力で立ち直った。ラフタリアや仲間たちはその様子を見て、彼女が本当に一人前の冒険者に成長したことを実感していた。
ラフタリアの迎撃宣言
錬が再び攻撃態勢を取る中、ラフタリアが前に出て「お相手します」と宣言した。他の仲間たちも援護に動き、戦況は次の段階へと進展した。
尚文の説得と錬の静止
尚文は錬に「落ち着け」と呼びかけ、今の状態ではここにいる誰にも勝てないと冷静に諭した。錬は動揺しながらも、尚文の言葉に耳を傾け始めた。
錬の挑発と尚文の内心
錬は「正々堂々と戦え」と剣を構えたが、尚文はその姿を見て、錬がリーシアのような弱者を狙っていたことや姑息な手段を選んでいたことから、すでにカースの影響を受けていると確信した。
尚文の内省とカースへの理解
尚文は、かつての自分も正しさを証明するために力を求め、周囲が敵に見えていたことを思い出した。それが「カース」であり、錬も同じように染まりつつあると感じた。
尚文の説得と過去の撤回
尚文は錬に「俺たちは敵じゃない」と伝え、以前に言ったことを撤回すると宣言した。その上で撤退を促し、場の緊張を和らげようとした。
尚文の謝罪と周囲の反応
尚文は過去に錬へ向けた発言を振り返り、「悪かった」と自ら謝罪した。錬はその言葉に驚きの表情を見せ、周囲の仲間たちはその場面を静かに見守った。
尚文の回想とラフタリアの存在
尚文は自らの過去を回想し、かつて自分も世界中が敵に思え、すべてに責められているように感じていたことを思い出した。しかし、ラフタリアの存在があったことで、自分は踏みとどまることができたのだと再認識していた。
尚文の説得と錬の拒絶
尚文は錬に向かって、「今度こそ一緒に来い」と手を差し伸べ、共に歩むよう強く訴えた。しかし錬は、尚文の言葉を信じようとせず、全てが偽りだと叫び返した。
錬の欲望と暴走
錬は「すべてを手に入れる」と叫び、金や名声、居場所、力、世界すらも求めていると明かした。さらに尚文の村や仲間までも奪おうとし、「あの女(マイン)」のことも見つけ出すと語った。
尚文の真実と錬の崩壊
尚文は、錬がマインと同じ陣営だと誤解していることに気づき、それが誤りであると説明した。これにより錬は激しく動揺し、「俺はまだ強くなる」と錯乱状態に陥っていった。
カースによる召喚:ゴールド・リベリオン
錬は「すべてを犠牲にしても」と叫び、巨大なカース召喚獣「ゴールド・リベリオン」を呼び出した。尚文たちはその異様な姿に驚愕し、戦闘態勢を整えた。
説得の断念と戦闘開始
尚文は戦闘回避を試みたが、ラフタリアは「説得は無理だ」と判断し、応戦を決意した。ゴールド・リベリオンの攻撃が始まり、尚文は防御に入りつつ、セインにスキル封じの支援を要請した。
緊張高まる戦場とエクレールの介入
尚文たちは、錬の暴走を前に「やるしかない」と結論づけた。一方で錬はなおも葛藤を抱えていたが、そこへエクレールが登場し、錬に「アマキ殿」と呼びかけた。彼女は錬と一度剣を交えた過去があることを告げ、戦局に新たな展開をもたらそうとしていた。
エクレールの決闘宣言
騒然とした戦場にて、女騎士エクレールが名乗りを上げ、「剣の勇者よ、あなたに決闘を申し込む」と錬に対して宣言した。尚文が戸惑う中、エクレールは「ここは私に任せてほしい」と申し出た。
女王の命を受けた戦い
エクレールは「我慢の限界」と言い切り、錬の甘さを正すために、女王から授かった剣を抜いた。そして毅然とした態度で、「正々堂々、かかってこい!」と錬に決闘を挑み、場面は締めくくられた。
第一一四話 閃光
決闘の始まり
エクレールは剣を抜き、「決闘を申し込む」と錬に宣言した。錬は最初は挑発的な態度を見せ、「自分が相手では不服か」と余裕を見せたが、エクレールの気迫に圧される形で剣を構えた。
エクレールの挑発と攻撃
エクレールは「剣によって敗れるのが怖いのか」と鋭く言い放ち、先制攻撃を仕掛けた。鋭い一撃が錬に届き、尚文たちはその一瞬の隙を驚きをもって見守った。
カースの瘴気と戦闘の加熱
錬の身からはカースの瘴気が噴き出し、明らかに異常な状態であることが確認された。尚文はエクレールに「相手は仮にも四聖勇者」と警告するも、エクレールは「わかっている」と冷静に返答し、戦闘を続行した。
錬の猛攻と交錯する刃
錬は怒りに任せて大剣を振り回し、エクレールと激しく斬り結んだ。一時はエクレールの剣が錬に命中したかに見えたが、致命傷には至らず、戦いは継続された。
攻撃が通らない現実
尚文たちは戦況を観察し、錬の攻撃がまるで当たっていないことに気づいた。ラフタリアは「単調すぎる」と分析し、リーシアは「太刀筋が読みやすい」と評価した。
錬の動揺と焦燥
錬は自身の攻撃が当たらないことに動揺し、「なぜ当たらない」と苛立ちを募らせながら、「当たれ」と何度も叫びつつ剣を振るった。
技量の差と戦術の破綻
エクレールは錬の攻撃を冷静に回避しつつ、「力任せの攻撃では当たるはずがない」と断じた。彼女は錬の剣から迷いを見抜き、「工夫のない攻撃に意味はない」と容赦ない言葉を浴びせた。
錬の暴走とスキル発動
錬は怒りを募らせ、「四聖の剣が泣いているぞ」と叫びながら、スキル「レッド・ソード」を発動させた。大量の剣型エネルギーがエクレールを襲うが、彼女は全てを華麗に回避した。
見切りと回避の連続
ラフタリアや尚文たちはその様子に驚愕し、エクレールの卓越した身のこなしに感嘆した。彼女は変幻無双流の使い手であり、スキル攻撃をほぼ完全に避け続けた。
錬の焦りと打開策の欠如
錬はなおも力押しの戦法に固執するが、エクレールは「その程度のスキルでは当たらない」と指摘し、圧倒的な技術で錬を翻弄し続けた。尚文は「このままでは勝ち目はない」と状況を見極めていた。
武器の異常と代償への警告
錬の剣は禍々しく変化し続けており、尚文たちは「この武器は何かおかしい」と危機感を抱いていた。その代償は錬自身にも及ぶと推測され、尚文は「俺はそれをよく知っている」と自らの経験を重ねていた。
尚文の決断と制止
尚文はラフタリアに命じてエクレールを止めさせようとしたが、リーシアが「もう少しだけ任せてください」と懇願した。尚文はその申し出に戸惑いながらも、戦況を見守る選択をした。
錬の反撃と成長の兆し
錬は「狙いを定めろ」「ちゃんと狙えば…当たりさえすれば…」と自分に言い聞かせるように呟き、ついにエクレールの一太刀を真正面から受け止めた。エクレールは「今のは良い大刀筋だった」と認めたが、同時に錬の様子が異常であると察した。
覚醒と危険の兆候
尚文たちは、武器のクロウアップとともに錬の様子がさらに危うくなっていることに気づいた。カースの瘴気は強まり、「そのままでは命に関わる」と危惧されていた。
剣を通じた対話と錬の変化
尚文たちは、錬がエクレールの剣に反応し始めていることに気づいた。リーシアは「少しずつ剣に応えている」と分析し、尚文は「剣で語り合うとはこういうことか」と呟いた。
錬の暴走とカースの侵食
錬は力に固執し、「力さえあれば…」と暴走を強めた。カースの瘴気が彼の身体をさらに侵食し、エクレールに対して「お前の強さを喰らってやる」と襲いかかった。尚文はその様子を見て、「脳筋すぎるだろ」と呆れたように突っ込んだ。
歪んだ欲望の露呈
錬は「最強は俺だ」と叫び、強さへの執着と暴走が頂点に達した。尚文はその様子に「強欲どころか暴食じみてきた」と戦慄を覚えた。
エクレールの問いと錬の沈黙
エクレールは錬に対し、「なぜ強さを欲する?」「お前の望む強さとは何だ?」と問いかけた。彼女は「目的を持たずに力を求めても、空虚さが増すだけ」と説いたが、錬はその問いに答えられず動揺した。
錬の葛藤と力の喪失
エクレールは「お前は力を求めていない」「私を倒しても欲しいものは手に入らない」と言い切り、錬の心の空洞を指摘した。錬はその言葉に衝撃を受けるが、なおも「俺は勇者だ、世界を救う」と叫び続けた。
エクレールの叱責と戦闘継続
エクレールは「ならばさっさと救ってもらおう」と言い放ち、「手始めにここで暴れた奴を止めてくれ」と斬りかかる。彼女は「罪から逃げるな、己の弱さを受け入れろ」と厳しく叱責し、なおも暴走する錬に対し、力ではなく心での再起を促した。
剣技による決着
エクレールは「変幻無双流剣技・多層崩撃」による猛攻でアマキを圧倒し、勝利を収めた。剣を取り落とし倒れ込んだアマキに対し、エクレールは「お前は強くなれる」と語りかけ、再起を促した。
精神的打撃と反省
尚文は戦いを傍観していたが、精神的ダメージまで与えたエクレールの言動に「なかなかにエグい」と感想を述べた。ラフタリアはその言い方をたしなめるが、エクレール自身も「私もつい重ねてしまった」と語り、自身の未熟さを自覚していた。
弱さの共有と励まし
エクレールはかつて自分が守れなかったもの、直視できなかったものに想いを馳せ、アマキに「共に強くなろう」と語りかける。剣を差し出しながら、自分もまた弱さを抱えていたことを認めた。
元康の登場と侵略者の処理
戦いが終わった直後、悲鳴が森の奥から響き、尚文たちは現場へ駆けつけた。そこでは槍の勇者・元康が異世界から来た侵略者を殺害しており、「お義父さんの敵が様子をうかがっていたので、殺しておきました」と告げていた。これにより、尚文たちは戦いの裏に別の脅威が存在していたことを知るに至った。
第一一五話 剣の勇者との和解
異世界の侵略者の死体を発見
尚文たちは森で悲鳴を聞きつけ現場に駆けつけた。そこでは2人の異世界から来た侵略者が倒れており、元康がそのうちの1人の頭部を踏み付けていた。尚文は元康に対し、「お前がやったのか」と確認した。
強化の成果に驚愕
尚文は、かつて自分たちも手を焼いた侵略者を元康が1人で倒したことに驚く。元康は尚文の強化方法を忠実に実践していたことが明らかとなり、それにより大きく成長していた。本人は「お義父さんの言葉は絶対に正しいからです」と笑顔で答えた。
元康の変化に対する尚文の思い
尚文は、四聖勇者の情報交換時に自分の話を信用しなかった他の勇者たちを思い出しつつ、唯一話を聞いていた元康の変化に対し、「やっぱりちゃんと強くなるんじゃないか」と納得する。一方で、それを今さら思い出して腹立たしさも感じていた。
侵略者の死体が消えない異常
倒された侵略者の死体が通常のように消滅せず、セインが「消えない」と口にした。尚文はその言葉に驚きを見せ、異常な状況に警戒心を強めた。
突然の馬車の襲来
突如、フィロリアルに引かれた馬車が森に突っ込んでくる。尚文たちは咄嗟にそれを避け、「フィロリアル!?」と驚愕する。ラフタリアが、それが自分たちが以前乗っていた馬車であることに気づき、声を上げた。
元康の一方的な退場と尚文の苛立ち
元康のフィロリアル3羽が馬車を引いて尚文たちの元へ到着した。元康はその場で「さらばですぞ!」と叫び、馬車に乗り込むとそのまま立ち去った。尚文は「どこへ行く」と問いかけるが、元康は「ヒーローは解決と同時に現場を立ち去るもの」と言い放ち、尚文たちに見送られながら去っていった。尚文はその勝手な振る舞いに対し、「最後まで責任持て」と怒りを露わにした。
魂の残留と異常な状態
地面に倒れた侵略者の身体からは、なおも魂が残留しており、消える気配がなかった。尚文は「戻れねぇぞ」とつぶやき、元康のスキルによる影響を疑う。侵略者たちの魂は浮かび上がり、尚文たちの前に姿を現した。
侵略者の脅しと再戦の予告
魂となった侵略者たちは、尚文に自分たちの存在が視認されていることに驚きながらも、「魔の香が消えたら次は仲間を連れて戻る」と警告を発した。彼らは「必ず報いを受けさせる」と尚文に再戦を予告した。
ラフタリアの一閃と魂の消滅
尚文は「次はない」と断言し、ラフタリアが魂を剣で一閃。侵略者の魂は断ち切られ、完全に消滅した。その様子を見た尚文は、「斬れないと思ったか? 俺たちを見下すからそうなる」と言い放った。尚文は「ざまぁ…」と吐き捨てた。
事態の終息と尚文の診断
騒動が収まった後、尚文は侵略者の死体を確認し、「もうこいつらは復活しない」と断定した。セインはその言葉を裏付けるように、魂を斬ったにもかかわらず光を発しなかった事実を述べ、侵略者が完全に無力化されたことを認めた。
セインの動揺と勝利の実感
魂を断ち切った直後、セインはその場に膝をつき、安堵と混乱を露わにした。ラフタリアやリーシアらが心配して駆け寄る中、「本当に勝ったのか」と半信半疑のままつぶやく姿が描かれた。彼女は「こんな方法で…」と、戦い方への葛藤を滲ませた。
勝利の報告と次なる依頼
場面は切り替わり、かつて練の部下で元康のテンプテーションに囚われていた盗賊たちが尚文に助けを求めている様子が描かれる。尚文たちは勝利を確認しつつ、新たな救出行動へ向かう体勢を整えていた。
アトラの異変と尚文の動揺
アトラの様子に異変が見られ、彼女は苦しげに呻きながら地面に倒れた。ウォルフは「俺は何を…」と自責の念に駆られる。一方で、騒動が収まりフィーロが馬車を盗まれたと嘆ている光景を確認しつつ、戦場に一旦の静けさが戻った。
気絶している剣の勇者
森の一角ではエクレールが、剣の勇者、練に寄り添い。尚文たちと合流する場面が描かれる。
剣の勇者の意識と目覚め
シーンは切り替わり、剣の勇者がベッドの上で静かに目を開ける描写が描かれる。彼は自問しつつ、「正直…期待していた」と本心を吐露し、誰かの手を思い出していた。
マインとの対話
場面は再び変わり、マインと鎧の男が廊下で対話する。1人は「もう少し変わると思ったのに」と漏らし、「使えないわ」と言い捨てて立ち去る様子が描かれた。
剣の勇者の目覚めと村の様子
剣の勇者、練はルロロナ村のベッドで目覚め、外の様子を窓から見下ろす。子どもたちが元気に働いており、村が秩序を保っていることに気づく。
村と奴隷制度に対する考え方の違い
エクレールは「私は奴隷制度には反対だが、この村に来ると信念が揺らぐ」と告白する。この村では衣食住が保障され、子どもたちも役割を持って生活している様子が語られた。
ルロロナ村への歓迎と感謝の言葉
練は彼女の独白に驚きながらも、エクレールから歓迎の言葉と感謝を受ける。彼は「俺のほうこそ」と返し、握手を交わして感謝の意を示した。
剣の勇者を巡る回想と整理
練が目を覚ました後、エクレールや尚文たちと会話を交わす。尚文は剣の勇者が盗賊団の頭領になっていたことに驚きを見せるが、結果的に自分に依頼が来てよかったと語った。一方、エクレールは姉上の行方について言葉を濁す。
練の回想とマイン(ヴィッチ)の記憶
練はマイン(ヴィッチ)に利用され、尚文を追い出すよう誘導されていたことを思い出す。彼は「頼られていると感じること」に弱く、その誘導に乗ってしまったと自嘲した。
手紙と剣を残していた記憶
練は自身の手元に残された剣と置き手紙を見て、曖昧な記憶を辿る。その手紙は尚文の元にも残っており、2人は過去の出来事をすり合わせる形で、誤解や過去のすれ違いに向き合い始める。
練の謝罪と尚文の返答
練は「今までのことを許してほしい」と頭を下げて謝罪した。尚文はすぐに許すとは言わず、「最初からお前の保護が目的だった」と本心を吐露し、今度は勝手に逃げないよう釘を刺した。
自分の過ちと仲間への想い
練は、ウェルト、バクター、テルシア、ファリーといった仲間たちが目指した平和な世界を想いながら、「自分のしたことに向き合う」と決意を新たにした。
尚文の励ましと次なる目標
尚文は練に「いい心がけだ」と笑顔で告げつつも、「思いつめるな。また闇落ちされても面倒は見ない」と念を押した。そして、「目標はもっと手の届くあたりにしておけ」と助言した。
新たな目標の提示と決意
ラストシーンでは尚文が「打倒ヴィッチだ!」と叫び、それぞれが自分なりの目標を掲げて口にした。練も無言でその輪に加わり、第115話は幕を閉じた。
第一一六話 盾の勇者の朝
練の早朝訓練と尚文の発見
ルロロナ村の朝、空が明るみ始める中、旗がなびく村の建物では練が一人で早朝訓練に励んでいた。剣を振るうその姿に尚文が気づき、声をかけた。練は気配を察しながらも構えを解かず、軽く微笑んだ。
自嘲と前向きな決意
尚文が「夢でも見ているのか」と言いつつ近づくと、練は「見つかってしまったな」と応じた。練は、自身が遠回りしてしまったと語りながら、「早く戦力になれるように」「強くならないと」と前向きな意志を示した。
カースの影響と身体への代償
尚文は練の体調を気遣い、自身がカーススキルを使った際に受けた代償――ステータスダウンや長期的な影響――を思い返していた。一方、練の身にも同様の異常が現れており、かつて守ったはずの装備が腐食し、触れたものの品質が劣化するという症状が報告された。
練の異常とカースの本質
練はレベルも著しく下がっており、その原因はおそらく「強欲」と「暴食」のカースによる代償であると見られた。尚文とエクレールは、それが単なる一時的な呪いではなく、長期的・継続的な影響であることを確認し合った。
練と尚文の努力
練は剣を振り続けながら、自分も尚文のように努力したいという意志を言葉にした。尚文は、最近は「稽古らしい稽古をしていない」としながらも、日課である「魔物の餌やり」をこなすために朝早くから活動していることを説明した。
生活の実態と奴隷制度の現実
尚文は飼っている魔物たちに餌を与えており、世話の多くは奴隷たちに任せていると語った。練は驚きを見せるが、尚文は「きちんと卵から育てている」と主張し、「息抜き」だと開き直った。
食事当番と奴隷たちの朝食風景
尚文は「さて次だ」と移動し、食堂で奴隷たちの食事を準備していた。大鍋には大量のスープが用意され、子どもたちは元気に列を成して配膳を待ち、賑やかに食事を楽しんでいた。
練の唖然と子どもたちの反応
練は尚文の振る舞いに唖然としながら食堂の様子を見守っていた。一方、子どもたちは「エサやりって奴隷の食事じゃないか!」と騒ぎつつも、「ナオフミ様の料理はうまい」と口々に賞賛した。その中の1人が「めっちゃうめ〜!」と叫び、食堂はさらに賑やかさを増した。
尚文の激励と練の一歩
尚文は練にスープの皿を差し出し、「強くなりたいんだろ?」と声をかけた。練は一瞬戸惑いを見せたが、意を決して一口食べ、「うまっ!」と素直に感動した表情を浮かべた。尚文の料理は村の子どもたちにも好評で、食堂は和やかな雰囲気に包まれていた。
食堂の朝と遅れてきた客人
朝食が進む中、寝坊したセインがぬいぐるみとともに姿を現した。眠そうな顔で「おはようございます」と挨拶するセインに、尚文やラフタリアは呆れつつも対応した。
ぬいぐるみとペンダントの正体
喋るぬいぐるみに驚く尚文に対し、セインは「倒した刺客のペンダントを利用している」と説明した。そのペンダントは勇者武器に似た性質を持ち、セイン自身は直接使用できないため、ぬいぐるみに装着して代用しているとのことであった。
村の朝の一コマと尚文の嘆き
尚文の食事はあっという間に空になり、子どもたちは元気に「ごちそうさま!」と叫んで業務へと向かっていった。尚文はその姿を見て「これじゃ本当にメシしか作れないじゃないか!」と若干の嘆きを漏らした。
子どもたちの信頼と練の願い
食堂を後にして駆け出していく子どもたちは「やったー!今日の昼も勇者様のゴハンだー!」と喜んでいた。練はその光景を見て、「俺ももっと仲間と……」と心の中で目標を新たにした。
修行再開の提案と尚文の反応
尚文は村の広場で変幻無双流の師匠と再会し、「修行を再開したいか?」と問われる。尚文は「なんだかんだで止まっていたからな」と応じ、再び稽古を始める決意を示した。
山籠もり修行と子どもたちの同行案
本来は山に籠るのが最適とされる修行だが、今回は村の子どもたちも同行し、まずは1カ月の合宿のような形で山に入る計画が提示された。尚文はやや戸惑いつつも受け入れる姿勢を見せた。
アトラの提案とフォウルの激昂
セインは、尚文の回復のためにはアトラとの気功修行も効果的だと提案した。しかし、それを聞いたアトラの兄・フォウルは激しく拒絶し、「ダメだダメだダメだダメだ!」と叫び、猛反対の意志を示した。
修行への決意と賑やかな日常
練は昼食を楽しみにしていると叫びながら駆け出し、尚文はその姿を見て「どいつもこいつも……」と苦笑混じりに呟いた。にぎやかな日常とともに、尚文の静かな決意が描かれ、場面は次の章へと移っていく。
アトラによる“気”の荒療治
アトラは尚文の気の乱れを正すため、強い“気”をぶつけてリセットする方法を提案した。尚文は荒療治だと苦笑しながらも了承し、アトラに相手を依頼した。アトラは快く引き受け、即座に気を込めた打撃を繰り出した。
尚文の肉体に起きた異変
アトラの渾身の打撃を受けた尚文は、体内に何かが入り、それが弾けたような感覚に襲われ、「これは……」と驚愕した。ラフタリアやセインが見守る中、尚文は呼吸を荒げつつも「結構疲れるな、これ……」と漏らした。
修行の申し出とラフタリアの参戦
訓練後、ラフタリアは尚文の体調を心配し「今日はもうお休みを」と提案したが、尚文は「少し休めば平気だ」と返答した。そして、ラフタリアにも同様の“気”修行を勧めた。ラフタリアは一瞬戸惑いながらも「ぜひお手合わせお願いいたします」と申し出た。
ラフタリアの才能の発現
アトラはラフタリアの気の流れを見る才能を見抜いており、尚文との立ち会いの様子を通してそれを確認した。尚文は「おぼろげながら……」と反応したラフタリアの様子に感心し、視えていることを確信した。
アトラの評価と尚文の指示
アトラは「視えている方には荒療治は必要ありません」と断言し、別の修行を提案した。尚文は「もっと上の修行を受けたいならババアに」と勧め、ラフタリアは素直に受け入れた。
ラフタリアの意志と新たな訓練開始
ラフタリアは剣を構え、「私たちのやりとりがナオフミ様の気づきになるやもしれませんから…」と語り、訓練への決意を示した。アトラは静かに微笑み了承し、尚文はその様子を見守る形となった。
模擬戦の開始と尚文の警戒
アトラとラフタリアが模擬戦を始めることとなり、尚文は傍らでその様子を見守った。表面上は軽い稽古に見えるものの、発せられる気の圧に緊張感が走っていた。
高密度の気と鋭い攻防
戦いが始まると、アトラは見えないはずの目で気の流れを読み、俊敏かつ的確に攻撃を仕掛けた。ラフタリアはその動きを読み切り、力強く応戦した。両者は剣と拳を交えながら、気の操作を体得している様子を見せた。
圧倒的な気の打撃
アトラは「尚文様と修行ざんまい」と叫びながら、気を込めた拳で決定打を放った。しかしラフタリアはその一撃を耐え抜き、衝撃を外へ流す術を体得していた。アトラは驚きつつも、それが答えだと認めた。
気の流れを実感するラフタリア
戦闘を通じて、ラフタリアは「攻撃の衝撃が外へ流れる」気の流れを明確に感じ取るようになっていた。その技術はアトラの狙い通りであり、尚文もその成果を目の当たりにする。
気づきの共有と変化の実感
戦いを終えたラフタリアは、尚文とアトラのやり取りを見て得た学びを語り、実際に見ることが重要であると再認識した。尚文はその変化に驚き、傍らで唖然としていた。
気づきの芽生えと称賛の交換
戦いを通じて互いの成長を認め合い、ラフタリアとアトラは静かに視線を交わし、「やりますわね」「あなたこそ」と称賛を交わした。
尚文の困惑と修行希望の申し出
気の流れが見えない尚文は、何が起こったのか理解できず説明を求めた。アトラは尚文に抱きつき、「これからは私が手取り足取りで教える」と申し出る。それを見たラフタリアも「私も一緒にお願いしますっ」と申し出るが、アトラはやや消極的な反応を見せた。
修行の場の混乱と尚文の嘆願
二人に迫られる形となった尚文は混乱しつつも、「どうでもいいから修行させてくれ」と本音を吐露する。なお、この場面で地面に倒れているのは尚文ではなく、気の修行に反対していたフォウルであった。
同シリーズ
盾の勇者の成り上がり
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