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尾道理子皇帝の薬膳妃

小説「皇帝の薬膳妃 白銀の奇跡と明かされる真実」感想・ネタバレ

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皇帝の薬膳妃9の表紙画像(レビュー記事導入用) 尾道理子

薬膳妃 8巻レビュー
薬膳妃 まとめ
薬膳妃 10巻レビュー

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物語の概要

■ 作品概要

本作は、男装の薬膳師と皇帝の后「鼓濤」という二重生活を送る少女・董胡が、己の出生の謎に迫る王宮アジアンファンタジーシリーズの第9弾である。
自身の生い立ちの鍵を握る盲目の医師「白龍」を捜すため、白虎の百滝の大社を訪れていた董胡は、ついにその正体がかつて麒麟寮の天才医師と呼ばれた「旻儒」であることを突き止める。
山房で白龍と再会した彼女は、自身が正真正銘の玄武の一の姫(濤麗と樊武の娘)であることや、白龍が先々代皇帝とマゴイの姫君の間に生まれた「禁忌の子」であるという壮絶な過去の真実を知らされる。
一方、隣国・其那国の政変を主導した「マゴイの一族」のユラ・マゴイが、麒麟の血を引くお后様としての董胡の正体を知り、人心を操る魔の手を伸ばす。
正体の露見、マゴイによる精神支配、そして激流への落下という、シリーズ史上最も緊迫した運命の転換期を描く激動の物語である。

■ 主要キャラクター

  • 董胡(とうこ) / 鼓濤(ことう): 本作の主人公。平民育ちの医官でありながら、皇帝の后・鼓濤として暮らす少女。白龍との再会により自身の本当の出生を知るが、マゴイの一族の精神操作によって自己否定の闇に落とされ、大社を抜け出して濁流へと身を投じてしまう。
  • 黎司(れいじ): 伍尭国の若き皇帝。禁書庫の先々代皇帝日誌からマゴイの秘密に迫る。董胡が鼓濤と同一人物であることに気づき、彼女が男装や替え玉という大罪を犯していても「皇帝の権力で守り抜く」と不退転の決意を固める。
  • 白龍(はくりゅう) / 旻儒(びんじゅ): 董胡が捜し続けていた盲目の医師。先々代皇帝とマゴイの姫君の間に生まれた混血児であり、激しい執着(嫉妬)に狂った代償として視力を失い、銀髪となった。董胡の母・濤麗を愛し、幼い董胡を守るため卜殷へ託した過去を持つ。
  • 尊武(そんぶ): 玄武公の嫡男で黒軍を率いる将。董胡の料理や存在に強く執着している。ユラ・マゴイの企みを以前から知っていたが隠していた。ラストでは、崖から落ちた董胡を救うために自らも濁流へと身を投じる。
  • ユラ・マゴイ: 其那国の政変を主導したマゴイの一族の冷酷な男。黎司の天術で傷を負うが生き延び、人心を操る「香」や大社の祭主・泰全を介して董胡を精神支配し、麒麟の血を奪うため拉致しようと企む。
  • ルカ: 其那国の13歳の王女で、姉を捜して不法移民に紛れ込んできた少女。ユラに優越感と未熟な恋慕を抱いており、大社で盗み聞きした「董胡=皇帝の后・鼓濤」という最大の秘密をユラに漏らしてしまう。
  • ナティア: ルカの姉で其那国の王女。マゴイの子(十五カ月児)を身ごもり逃れてきたが、白龍(旻儒)の治療を受けるため、出産まで老師の山房に留まることになる。

■ 物語の特徴

  • 明かされる「董胡の血筋」と白龍の壮絶な過去 長年謎に包まれていた董胡の出生が「正真正銘の樊武と濤麗の娘」であることがついに証明される。同時に、白龍が宿していた「マゴイと麒麟の血」や、かつて抱いた愛憎の嵐など、物語のすべての起点となった重厚な過去が白龍の口から赤裸々に語られる。
  • 己の核を揺るがす「料理への恐怖」と精神の支配 自身の持つ「味覚を光として視る麒麟の力」が、料理を通じて黎司や楊庵、尊武に異常な執着(呪い)を植え付けていたのではないかという恐怖に董胡は直面する。生き甲斐である料理を奪われ、さらにマゴイの香によって罪悪感を肥大化させられた董胡が、かつてないほど自己否定に陥り、自滅の道へ誘導されていく描写は極めて痛切である。
  • 皇帝の「天術」覚醒と、すべてを懸けた愛の告白 黎司が神器の剣の魂名「風神」を呼び覚まし、ついに強大な天術(突風)を発動してユラを撃退する。董胡の正体が「后・鼓濤」であると知った後も、彼女を罰するどころか「その罪をすべて私が請け負い、独裁者になってでも守る」という、黎司のどこまでも深く揺るぎない覚意が描かれている。
  • 尊武の「本能の選択」が引き起こす衝撃のラスト 己を「何にも執着しない合理主義者」と任じていた尊武が、崖から落ちていく董胡を目にした瞬間、考えるよりも早く激流へと身を投じる。二人が濁流へ呑まれていく最悪の形での終幕は、次巻への強烈な引きとなっている。

書籍情報

皇帝の薬膳妃 白銀の奇跡と明かされる真実
著者:尾道 理子 氏
出版社:KADOKAWA角川文庫
発売日:2025年3月22日
ISBN:9784041160466

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

ついに董胡の過去が明かされる! 大人気王宮アジアンファンタジー第9弾!
自身の出生の秘密を探るため、“子宝祈願”を口実に白虎の地へ赴いた董胡。彼女はついにその核心を知る人物・白龍への手がかりをつかむ。かつてひどい難産だった妊婦をひとりの医師が不思議な力で救ったことがあると耳にした董胡は、彼こそ白龍なのではないかと確信し、彼がたまに現れるという近くの山房で暮らす老師のもとを訪ねることに。変装した朱璃に加え、其那國のルカとナティアの姉妹とともに老師のもとへ向かうが……。
一方、白虎の隣の地・其那國で起こっている不穏な政変を知り、黎司は董胡たちを守るため、尊武率いる黒軍らを白虎へ派遣する。董胡を失うことを恐れる黎司と、董胡の不在に苛立ちを募らせる尊武。各々が董胡への想いを交差させる中、ついに董胡のもとにマゴイの魔の手が――!?

秘められた董胡の過去――そこに隠された壮絶な”愛”の物語が今明かされる! 
大人気アジアン王宮ファンタジー、激動の第9弾!

皇帝の薬膳妃 白銀の奇跡と明かされる真実

感想

シリーズ第9巻となる本作では、董胡が長く追い求めてきた出生の秘密が、ついに明らかになる。

盲目の医師・白龍との再会。

母・濤麗が玄武へ嫁いだ後に起きた悲劇。

そして、董胡自身に受け継がれた麒麟の力。

これまで積み重ねられてきた謎が次々とつながっていく一方で、董胡は自分の存在そのものを疑うほど深い苦しみへ落ちていく。

出生の真実が判明する巻でありながら、安心よりも新たな恐怖の方が強く残る一冊であった。

董胡は本物の鼓濤だった

最も安心したのは、董胡が濤麗と玄武公の嫡男・樊武の間に生まれた、本物の鼓濤だったことである。

白龍が濤麗を愛していたと告白した時には、董胡も自分が二人の間に生まれた不義の子ではないかと疑う。

もし玄武の血を引いていなければ、一の后としての立場を失うかもしれない。

黎司へ真実を話せば、また彼を苦しめてしまう。

短い時間の中で、自分の身分と将来を考え続ける董胡の姿が切なかった。

しかし白龍は、濤麗と樊武が穏やかな愛情を育んでいたことを明かす。

樊武は父へ逆らってまで濤麗との結婚を望んでおり、董胡は間違いなく二人の娘だった。

身代わりとして偶然后になった少女ではない。

董胡こそが、本来その場所へ迎えられるはずだった玄武の一の姫なのである。

長く続いた出生の謎へ、ようやく一つの答えが示されたことには大きな安堵を覚えた。

濤麗を追い詰めた嫉妬と呪詛

一方で、母・濤麗を巡る過去はあまりにも重い。

濤麗は人を強く惹きつける麒麟の力を持っていた。

多くの者に愛された反面、周囲から向けられる悪意や嫉妬にも敏感で、その念によって体調を崩していたという。

玄武へ嫁いだ後、彼女を特に苦しめたのが、尊武の母から向けられた激しい嫉妬と呪詛だった。

白龍が結界を張っても悪意は濤麗の体へ入り込み、樊武が尊武の母を訪ねた後には、彼の体に残った念まで濤麗を襲う。

濤麗が夫を避け、白龍と過ごす時間が増えたことで、不義の噂まで広がってしまう。

その結果、樊武は鼓濤さえ白龍の子ではないかと疑い、母子を処刑しようとする。

愛される力が、嫉妬や疑念を呼び込み、本人を追い詰めていく。

濤麗の力は祝福ではなく、本人を逃れられない人間関係へ縛る呪いでもあったように感じた。

白龍が抱えていた後悔

白龍の過去も印象に残った。

彼は幼い頃から濤麗を慈しみ、彼女の体を救うために医師となった。

しかし、濤麗が樊武へ嫁ぐと知ったことで、自分の感情が兄妹のような愛情ではなく、激しい恋慕と執着だったと気づく。

嫉妬に支配された白龍は、濤麗を殺して自分も死のうとするところまで追い詰められた。

その狂気の背景には、白龍自身がマゴイと麒麟の血を引いていた事実がある。

彼は先々代皇帝とマゴイの姫君の間に生まれ、朱雀の后宮で密かに育てられた子だった。

つまり、白龍の中には、人を癒やす麒麟の力と、嫉妬や執着を増幅させるマゴイの血が同居していたのである。

濤麗を守るため玄武へ戻った後も、彼は自分の感情が再び暴走することを恐れていた。

濤麗から一緒に逃げようと誘われながら、決断をためらってしまう。

その遅れが濤麗の死へつながったと、白龍は長年後悔し続けていた。

董胡が彼を責めず、母子を守ろうとしてくれた人物として受け止めた場面には、静かな救いを感じた。

薬膳が人を縛る呪いかもしれない

本巻で最も胸が苦しくなったのは、董胡が自分の料理を恐れるようになる展開である。

董胡には、人が求めている味を五色の光として見る力がある。

これまで彼女は、その力を使って相手の体調や好みに合わせた薬膳を作り、多くの人を救ってきた。

料理は董胡の誇りであり、生き甲斐であり、自分にできることを証明する手段でもあった。

しかし白龍から、濤麗の麒麟の力が人の愛情と結びつき、強すぎる執着を生んでいたと聞かされる。

そこで董胡は、楊庵、黎司、尊武の態度を思い返す。

三人は董胡の料理を繰り返し食べ、彼女へ強い執着を見せている。

その感情は本人たちの心から生まれたものなのか。

それとも董胡の力によって植え付けられたものなのか。

この疑問に董胡自身が取りつかれてしまう。

ただし、この巻では料理が実際に三人の感情を操ったとは確定していない。

白龍へ詳しく相談する前に話が中断され、董胡が最悪の可能性を一人で考え続けてしまったのである。

それでも、本人にとっては疑惑だけで十分に残酷だった。

人を救っていると思っていた料理が、相手の心を縛る呪いだったかもしれない。

これまで積み上げてきたものを根底から否定された董胡が、料理を作ることも楊庵に会うことも怖くなる姿には胸が締め付けられた。

人の中にある光と闇

白龍が語った、人間の中には光と闇の両方があるという言葉も印象深い。

怒りや悲しみ、嫉妬や憎しみを完全に消すことはできない。

それらも人間を形作る一部であり、存在を否定するのではなく、どう向き合い、どう癒やすかを考える必要がある。

白龍自身も、濤麗への愛と嫉妬に狂った過去を持っている。

だからこそ、きれいな感情だけを正しいものとして語らない。

自分の中の闇を知ったうえで、伍尭國への復讐ではなく、人を救う道を選び続けている。

董胡もまた、自分の力が誰かを傷つける可能性から逃げるのではなく、向き合わなければならないのだろう。

しかし、彼女は白龍の答えを最後まで聞けなかった。

翌日に再び会うつもりだったものの、暴風雨によって山房へ戻れなくなってしまう。

このわずかなすれ違いが、董胡をさらに深い闇へ落としていく展開がもどかしかった。

董胡の罪悪感につけ込むマゴイの香

董胡を精神的に追い詰めたのが、ユラ・マゴイの香である。

香は眠気や悪夢を引き起こすだけでなく、董胡が抱えていた罪悪感を増幅させる。

夢の中では、正体を知った黎司が絶望し、董胡の料理によって破滅させられたと告げる。

さらに尊武が黎司を斬り、すべての原因が董胡にあるかのように見せられる。

これは董胡が心の奥で恐れていた未来そのものだった。

男と偽って医師になったこと。

后でありながら薬膳師として行動したこと。

黎司へ正体を隠し続けたこと。

そして料理で人を縛ったかもしれないこと。

もともと抱えていた不安を香によって拡大され、董胡は自分が周囲を不幸にする存在だと思い込んでしまう。

明確な嘘を信じ込ませるのではなく、本人の中にある罪悪感を利用して自滅へ導く。

マゴイの力の恐ろしさがよく表れた心理戦だった。

風神を呼ぶ黎司の覚醒

絶望の中で董胡を救ったのが、式神として現れた黎司である。

黎司は祈禱殿から自らの髪を頼りに式神を飛ばし、董胡を連れ去ろうとするユラの前へ現れる。

そして神器の剣の魂名である「風神」を呼び、激しい風でユラを吹き飛ばす。

これまで先読みを中心に使ってきた黎司が、剣の天術を発動する場面には大きな高揚感があった。

何より印象に残ったのは、黎司が董胡を自分の后だと言い切ったことである。

彼は董胡が鼓濤の姿をしていることに気づいても、彼女を拒絶しない。

真実をすべて理解できていなくても、董胡が苦しみながら正体を隠してきたことを察し、守ろうとする。

式神が消えた後も、黎司は董胡の罪を自分が引き受け、皇帝の権力で守り抜く覚悟を固める。

董胡に自分を不幸にする力などない。

彼女を失うことこそ、自分にとって最大の不幸である。

董胡が最も恐れていた答えとは正反対の思いを、黎司はすでに持っている。

それが本人へ届かない展開が、あまりにも切なかった。

理性より先に董胡を追った尊武

本巻の最後を飾るのは、董胡と尊武の転落である。

ユラに操られた董胡は大社を抜け出し、増水した滝の近くまで進んでしまう。

そこで董胡を見つけた尊武は、彼女を安心させるため、后として丁寧に接し、危害を加えないと伝えて手を差し出す。

しかし董胡は怯えて後退し、足を踏み外して滝壺へ落ちる。

尊武の手は届かなかった。

その直後、彼は考えるより早く崖から飛び込む。

何ものにも執着しないと語り、董胡本人ではなく料理が必要なだけだと言い聞かせてきた尊武。

その理屈が、この瞬間に完全に崩れる。

助ければ自分も死ぬかもしれない。

それでも体は董胡を追っていた。

理性や計算では説明できない、本能的な選択だったのだと思う。

それが恋愛感情なのか、料理による力の影響なのかは、まだ分からない。

しかし少なくとも、董胡が尊武にとって失いたくない存在になっていることだけは明らかである。

読後の感想

『皇帝の薬膳妃 白銀の奇跡と明かされる真実』は、董胡の出生の謎へ答えを示しながら、彼女の心をこれまで以上に追い詰める一冊だった。

董胡が本物の鼓濤だと分かったことには安心した。

白龍と再会し、濤麗が命を懸けて娘を守った過去を知れたことも大きい。

しかし同時に、董胡は自分の麒麟の力によって、大切な人々の心を操ったかもしれないという疑惑を抱く。

人を救うための薬膳が、人を縛る呪いへ反転する。

その恐怖によって董胡が自信と生き甲斐を失っていく姿は、出生の真実以上に印象へ残った。

それでも、黎司は董胡を守るために天術を使い、尊武は自分の命を考えず濁流へ飛び込んだ。

二人の行動が力によるものなのか、本物の情なのかはまだ分からない。

だからこそ、董胡がこの先どのような答えへ辿り着くのかが気になる。

愛と呪い。

善意と執着。

人を救う力と、人を縛る力。

その境界が分からなくなった中で、董胡はもう一度料理を作れるようになるのだろうか。

濁流へ呑まれた董胡と尊武の行方だけでなく、黎司へすべての真実を話せる日が来るのか。

シリーズの核心へ踏み込みながら、最大級の危機で幕を閉じる、続きが気になって仕方のない一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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薬膳妃 8巻レビュー
薬膳妃 まとめ
薬膳妃 10巻レビュー

考察・解説

白龍の正体

白龍の正体と過去の真相の全貌

『皇帝の薬膳妃』第9巻において、長らく董胡が追い求めていた盲目の医師である白龍の正体について、皇帝とマゴイの姫君の間に生まれた禁忌の子、濤麗への激しい愛と盲目になった経緯、覚醒した麒麟の力と銀髪の隠蔽、および董胡(鼓濤)との血縁関係と託された想いの各点から解説する。

皇帝とマゴイの姫君の間に生まれた「禁忌の子」

白龍(旻儒)は、第十五代皇帝(先々代皇帝)と、隣国・其那国から秘密裏に輿入れした銀髪のマゴイの姫君との間に生まれた実子である。

・マゴイの一族の特質である十五カ月の妊娠期間を経て生まれたが、母である姫君は難産により命を落とした。
・先々代皇帝からは不義の子と疑われ始末を命じられたものの、赤子を手にかけることができなかった大叔父の孔曹によって密かに助けられ、朱雀の后宮で隠されるようにして育てられた。

濤麗への激しい愛と「盲目」になった経緯

白龍は、朱雀の后宮で共に育った三歳下の皇女濤麗を心から愛していた。

・彼女が玄武公の嫡男である樊武へ輿入れすることを知り、激しい嫉妬と執着に狂ってしまった。
・その執着のあまり、かつて一度は濤麗の首へ手をかけるまでに追い詰めた彼は、自らの忌まわしい感情に恐怖して逃亡し、老師の山房で高熱を出して死線を彷徨った。
・一命を取り留めたものの、代償として視力のほとんどを失うこととなった。

覚醒した「麒麟の力」と銀髪の隠蔽

視力を失うのと引き換えに、白龍はマゴイの血によって眠っていた麒麟の力を覚醒させ、その後は濤麗を陰から見守るために玄武へと向かった。

・激しい執着が火種となってマゴイの血が目覚めた結果、元の黒髪は銀髪へと変化していた。
・濤麗は病気で白くなったのだと思い、彼を白龍と呼んだが、本来の髪は金属的な輝きを持つ銀色であった。
・彼は周囲に正体が露見するのを防ぐため、磁性を持つ銀髪に付着する自然鉄の白い粉を用いて髪を白く染め、強力な磁石を使って元の銀髪に戻すという特殊な方法でカモフラージュしていた。

董胡(鼓濤)との血縁関係と託された想い

董胡は、白龍の子ではなく、濤麗と樊武の間に生まれた正真正銘の娘(玄武の一の姫)である。

・白龍は、樊武のもう一人の妻である尊武の母が放つ恐ろしい呪詛や悪意から、濤麗と幼い鼓濤を命懸けで守り続けていた。
・濤麗が裏山で何者かに斬殺された際、血を浴びた赤子の鼓濤を抱いて逃げ延び、ト殷へと託したのが彼であった。
・白龍は、自分がかつて逃げる決断をためらわなければ濤麗を死なせずに済んだという深い後悔を抱えながら、鼓濤との再会と、自分が最も望む道を選ぶようにという教えを伝えるために、この白虎の霊山で生き続けていた。

まとめ

白龍の正体と過去の真相を巡る一連の全貌は、皇室とマゴイの血を引く出自から始まり、濤麗への執着と視力喪失に伴う能力覚醒、髪色の隠蔽工作、そして鼓濤の救出と託された宿命に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血脈の呪縛や過酷な執着という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確確たる意志によって完璧に確立するに至る、真実の慈愛と選択の記録である。
出産の悲劇から、失明の試練、能力の覚醒、陰の護衛、そして次世代への意思継承へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

マゴイの一族

マゴイの一族の生態と血脈の真相の全貌

『皇帝の薬膳妃』シリーズにおいて描かれるマゴイの一族について、マゴイの生態と十五カ月児を巡る凄惨な歴史、人の心の闇を支配する恐るべき神通力、伍尭国麒麟の血への執着とユラ・マゴイの野望、秘められた混血白龍とマゴイの血の性質、および白龍が語るマゴイの闇と人間の光の各点から解説する。

マゴイの生態と「十五カ月児」を巡る凄惨な歴史

マゴイの一族は、生まれながらにして一族の印である銀の髪を持って生まれてくる。

・金茶色の髪と紺碧の瞳を持つ其那国の一般の民とは異なり、銀の長い髪、石灰を練り込んだような白い肌、深い紺碧の瞳という秀麗な容姿が特徴である。
・元々は極めて子が生まれにくい性質であり、さらにマゴイの女性は頭の大きい十五カ月児を身ごもるため、お産のたびに骨盤を通過できず母体が犠牲になるという過酷な生態を有していた。
・そのため、一世代に最少で1人しか生存できない非常に希少な一族であった。
・約50前に一人のマゴイの男が妊婦の腹を切り裂く切開術を行い、その後に傷口を縫って母体を生かす切開術が完成したことで、生存率が飛躍的に向上し、一族は100人を超える規模へと急増した。
・5年前には、マゴイの娘が其那国の王子との間に王家の血を引く男児を初めて出産している。

人の「心の闇」を支配する恐るべき神通力

マゴイの一族が持つ最大の武器は、人の心の闇を支配する強力な精神操作の力である。

・健全で平安な心を持つ人間を操ることはできないが、人が抱く恐怖、哀しみ、絶望、妬み、強欲、罪悪感といった負の感情に付け入り、その心を完全に占領して思い通りに動かしてしまう。
・この力を用いて、マゴイの一族は其那国の王宮を完全に掌握した。
・王妃を亡くした深い悲しみに沈んでいた父王や、父と貴族たちの板挟みになって苦悩していた兄王子の心の闇に入り込んで意のままに操り、王宮の重臣たちを次々と銀の髪の男たちへ入れ替えることで実質的な政変を完了させた。
・マゴイの支配下となった其那国では、若い女性たちがマゴイの子を強制的に妊娠させられ、出産のために腹を切り裂かれて命を落とす凄惨な悲劇が相次ぐようになった。
・この運命から逃れるため、王女姉妹であるルカやナティアをはじめとする多くの若い女性たちが、不法移民として伍尭国へ逃れる事態を招いた。

伍尭国「麒麟の血」への執着とユラ・マゴイの野望

マゴイの一族が何より強く執着しているのが、伍尭国の皇帝一族が持つ特別な麒麟の血である。

・彼らは、マゴイの魔性の力と高貴な麒麟の血を掛け合わせることで、世界の覇者となる子を得られると信じており、その血筋の娘を拉致しようと画策している。
・一族の冷酷な男ユラ・マゴイらが昴宿の港町へ潜入し、后詣での行列を狙って、色濃く麒麟の血を引くお后様を拉致しようと牙を剥いている。
・ユラは百滝の大社の祭主・泰全の心を操って少女たちの人身売買を手引きさせつつ、后宮を狙って侵入を試みたが、最後には天術を覚醒させた皇帝・黎司の風神の力によって撃退された。

秘められた混血「白龍(旻儒)」とマゴイの血の性質

約50年前にもマゴイの娘を皇帝に輿入れさせる試みがあった。

・先々代皇帝は、皇宮地下の籠りの宮でマゴイの姫君と一夜を共にした際、その魔性の美しさと甘い香りに狂わされ、縄で縛られるほどの激しい執着に陥った。
・マゴイの姫君は十五カ月の妊娠期間を経て美しい男児を産み落とし、難産によって死亡した。
・この男児こそが、のちに盲目の医師となる白龍である。
・彼は先々代皇帝とマゴイの姫君の間に生まれた禁忌の混血児であり、孔曹によって密かに生かされ朱雀の后宮で育てられた。
・彼が成長したのち、濤麗への激しい嫉妬と狂気を自覚した際、眠っていた魔物の血が呼び覚まされ、その黒髪は金属的な輝きを持つ銀髪へと変化した。
・白龍によれば、マゴイの銀髪は磁性を帯びており、その磁力が頭の中でぞわぞわとした錯乱を引き起こし、いらいらとした感情を生み出す要因になっていると示唆されている。
・白龍は、自然鉄の白い粉を髪にまぶして磁石の力でカモフラージュすることで、この磁力による狂気を抑え、髪を白髪へと偽装していた。

白龍が語る「マゴイの闇と人間の光」

白龍は、マゴイの一族について非常に深い洞察を残している。

・善だけの人間などいない、マゴイの血は人の内にある闇を炙り出すが、それは最初から人間の中にあるものだと語っている。
・肉体を持って存在している限り、彼らもまた矛盾する善の心を持っている、そうでなければ彼らはすでに悪神となって死を迎えているはずだと指摘している。
・一族が決して単なる記号的な絶対悪ではなく、肉体を持つ人間としての葛藤や矛盾を孕んだ存在であることを明らかにしている。

まとめ

マゴイの一族の生態と血脈の真相を巡る一連の全貌は、銀髪と十五カ月児の特殊な生態から始まり、人の心の闇に入り込む精神操作による其那国支配、伍尭国麒麟の血を狙うユラ・マゴイの野望と皇帝黎司による撃退、先々代皇帝とマゴイの姫君の間に生まれた混血・白龍の真実と髪の磁性、そして人間としての葛藤を含む精神的本質に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血族の宿命や過酷な支配という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、悪性の真相と精神的解脱の記録である。
惨劇の歴史から、王宮の掌握、野望の阻止、混血の解露、そして本質の洞察へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

董胡の血筋

董胡の血筋と秘められた能力の全貌

『皇帝の薬膳妃』の主人公・董胡の血筋と秘められた能力について、皇族と玄武公の間に生まれた正統な姫としての全貌、母・濤麗から受け継いだ魅了の力、董胡に発現した能力の正体、および隣国マゴイの一族から狙われる宿命の各点から解説する。

血筋の全容:皇族と玄武公の間に生まれた正統な姫

董胡は、自身の素性について長らく人違いや不義の子ではないかと疑い、葛藤を抱いていた。第9巻において、盲目の医師・白龍(旻儒)の口から、彼女の真の出自が明かされた。

・董胡は不義の子などではなく、母方に麒麟(皇族)の血、父方に玄武公の血を引く、正真正銘の玄武の一の姫(本物の鼓濤)である。
・母(濤麗):先々帝(第十五代皇帝)が朱雀の一の后の侍女との間に儲けた、由緒正しき麒麟の皇女である。身分が低かったため、王宮内では三の后宮を与えられて隠されるように育った。
・父(樊武):若い頃の樊武は、周囲からの猛烈な反対を押し切ってまで、心から濤麗を愛して妻として娶った。
・したがって、董胡は王宮の権力闘争のために都合よく仕立て上げられた替え玉ではなく、まぎれもなく本物の鼓濤であった。

母・濤麗から受け継いだ「魅了の力(麒麟の力)」

董胡の母・濤麗は、麒麟の血筋の中でも際立って強力な魅了の力(愛の波動)を有していた。

・彼女が庭を歩けば、本人の意思にかかわらず小鳥や獣、虫、池の魚までが周りに集まり、出会った人間も一瞬で彼女に魅了されて心奪われてしまうという不思議な天術であった。
・この魅了の力はあまりにも強大であったため、愛と同時に周囲の者に狂気的な執着や激しい嫉妬を創り出してしまうという、呪いのような側面も孕んでいた。
・白龍が濤麗への嫉妬で狂い、自らの黒髪が銀髪へと変貌したのも、そして玄武公(樊武)が後年、嫉妬の鬼と化して我が子(董胡)の命まで狙うようになったのも、すべてはこの魅了の力がもたらした闇によるものであった。

董胡に発現した能力の正体

董胡自身、人の体調や欲している味覚が五色の光として視える特殊な能力を持っている。

・これは、白龍との対話を通じて、母・濤麗から色濃く受け継いだ麒麟の力(お産や食、体調の不調を察知する力)の一部であることが示唆されている。
・さらに、董胡は自身を巡る恐ろしい事実に気づくこととなる。
・董胡の作る薬膳料理を食べた人々が、なぜこれほどまでに董胡に対して異常なまでの強い執着を示すのか。
・それは、董胡自身が知らず知らずのうちに、母から継承した人を惹きつける魅力(麒麟の力)を料理を通じて相手に植え付け、狂わせていたのではないかという、身を切られるような恐怖と罪悪感を抱くようになる。

隣国「マゴイの一族」から狙われる宿命

この色濃い麒麟の血を宿す血筋ゆえに、董胡は隣国・其那国を掌握する邪悪な精神操作の集団であるマゴイの一族から執拗に狙われることとなる。

・マゴイの一族は、自らの魔性の力と高貴な麒麟の血を掛け合わせることで、世界の覇者となる子を得られると妄信している。
・そのため、彼らは后詣でのために王宮の外へと出てくる董胡(鼓濤)を拉致しようと、白虎の港町へ潜入して牙を剥いていた。
・董胡の血筋は、彼女に五色の光を視るという優しい癒しの力を与えた一方で、周囲の男たちを狂わせる執着の種を宿し、国を揺るがす国際的な陰謀に巻き込まれていくという、過酷な宿命の源泉でもあった。

まとめ

董胡の血筋と秘められた能力を巡る一連の全貌は、高貴な正統の姫としての真実の発掘から始まり、母・濤麗が放つ魅了の力の光と陰、五色の光を感知する天術と薬膳に寄与する執着の恐怖、そして世界の覇者を狙うマゴイの一族による標的化に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血脈の呪いや周囲の不条理な執着という檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、宿命の解明と覚醒の記録である。
自身の疑念から、真実の覚醒、能力の認識、試練の受容、そして運命の打破へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

皇帝の天術

皇帝の天術と覚醒の全貌

『皇帝の薬膳妃』シリーズにおいて、皇帝一族が司る天術について、天術の定義と血の衰退、董胡の薬膳による急速な覚醒、発現した具体的な能力、および天術の不完全性と三種の神器の謎の各点から解説する。

皇帝の天術の定義と「血の衰退」

伍尭國は五行思想に基づき、医術の玄武、武術の青龍、芸術の朱雀、商術の白虎が四方を治め、その四術の均衡を保つ役割を皇帝の天術が担ってきた。

・天の御力を授かった皇帝一族は、様々な奇跡を起こして民の崇敬を集めていた。
・しかし、血の純度を保つために近親婚を重ねた結果、皇族は世代を経るごとに病弱となり、天術の力も著しく衰退していった。
・先代皇帝(孝司帝)にいたっては生涯一度も天術を使えず、皇帝は四公の傀儡に成り下がっていた。
・現皇帝・黎司も即位当初はわずかな力しか発現しておらず、即位式の「的当て」も事前に的を射貫かせる捏造された茶番劇に頼らざるを得ない状況であった。

董胡の薬膳による「天術の急速な覚醒」

黎司の天術が劇的に覚醒した背景には、主人公・董胡が作る薬膳料理がある。

・暗殺の恐怖から極度の拒食症に陥っていた黎司は、通常の食事を体が拒絶して衰弱し、天術の力を発揮できなかった。
・しかし、董胡が作った滋養あふれる薬膳(唐芋の甘辛い饅頭や、冬の腎臓を補う寒菊の花湯豆腐など)を食べることで、黎司の気血水と味覚が整い、生命力が劇的にみなぎるようになった。
・これに伴い、眠っていた本来の強大な天術が急速に目覚め始めた。

発現した具体的な能力

黎司の覚醒によって、主に以下の3つの天術が作中で描かれている。

・未来を視通す「先読み(先触れ)」の力:皇帝の最も代表的な天術である。黎司が皇宮の祈禱殿で瞑想を重ねると、赤髪で右目を隠した黒衣の謎の存在「魔毘」が暗がりに現れるようになり、魔毘の名(言霊)を唱えて祈ることで、神器である銅鏡に未来の破滅的な光景が映し出される。先読みで視える未来は固定された運命ではなく、皇帝が警告(詔)を発し、それを受けて人々の意識や行動が変わることで、刻一刻と変化(回避・縮小)していく性質を持っている。
・風を操る力(風神):初代・創司帝が剣で風を起こし千里先の敵をなぎ倒したと語り継がれる天術である。黎司が白虎の百滝の大社で、董胡を襲おうとしたマゴイの一族の男ユラと対峙した際、神器の剣の魂名である風神を唱えることで発動した。剣から凄まじい螺旋の突風を巻き起こし、敵を一瞬で建物の外の斜面へと吹き飛ばす驚異的な威力を示しているが、非常に体力を消耗し一振りが限度である。
・意識と実体を遠方に飛ばす「実体転送」:創司帝が用いたとされる天術で、皇宮にいながらにして、自分の意識と実体を遥か遠方の地へと瞬時に転送する能力である。黎司は、董胡に持たせた自身の髪束(仮魂)と気を頼りに、彼女の危機を先読みで察知した際、この術を発動して瞬時に彼女の目の前へ現れ、その命を救った。ただし、この術は極めて不安定かつ危険であり、長時間実体を保つことは命を削るほどの過酷な負担を黎司の体に強いることとなる。

天術の不完全性と「三種の神器」の謎

黎司の天術は覚醒したものの、依然として不完全なものとして描かれている。

・その原因は、創司帝の時代に存在した三種の神器のうち、十代皇帝の時代に一つが失われ、現在は剣と鏡(銅鏡)の二種しか残されていないためである。
・黎司は、失われた三つ目の神器を見つけ出さなければ完全な天術を取り戻すことはできず、いずれ五行の均衡が崩れて国が戦乱の時代に突入してしまうという強い焦燥感と危機感を抱き、その捜索を決意している。

まとめ

皇帝の天術と覚醒を巡る一連の全貌は、皇族の血の衰退に伴う天術の消失から始まり、董胡の薬膳による気血の改善と急速な覚醒、先読み・風神・実体転送といった具体的権能の発現、そして失われた三つ目の神器の捜索と国家平定への決意に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
血脈の弱体化や政治的傀儡化という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、真実の君主権限の発揮と国家救済の記録である。
傀儡の脱却から、生命力の回復、奇跡の行使、不完全性の自覚、そして真の完全性追及へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

尊武の執着

尊武の董胡に対する屈折した執着の全貌

『皇帝の薬膳妃』シリーズに登場する玄武公の嫡男・尊武について、董胡の料理に対する異常な固執と麒麟の血の呪縛、退屈を嫌う尊武にとっての最高の余興、危機において露呈する本能的な執着と激流への身投げ、および父・玄武公の亡霊への執着に対する反発と皮肉な反復の各点から解説する。

董胡の「料理」に対する異常な固執と、麒麟の血の呪縛

尊武の執着が最も分かりやすく、かつ彼自身を苛立たせる形で現れるのが、董胡の作る薬膳料理への固執である。

・旅先での飢えと執着:青龍や白虎への道中、尊武は出される野蛮で大雑把な料理を嫌悪し、董胡の料理(特に肉饅頭や特製沙茶醤を用いた炒め物)を激しく恋しがった。
・自己嫌悪を伴う固執:誰にも束縛されないはずの自分が、たかが子猿(董胡)の料理にこれほど依存している事実に、尊武は強い苛立ちと屈辱感を覚えた。彼はあの子猿本人などどうでもいい、料理に固執しているだけだと必死に自分に言い訳を繰り返すが、彼女なしではその料理を得られないがゆえに、必然的に董胡という存在そのものに執着せざるを得なくなっている。
・麒麟の魅了の力による影響:盲目の医師・白龍は、董胡の母・濤麗が放つ魅了の力(愛の波動)が、出会う者を狂わせるほどの激しい執着を生み出していた事実を明かしている。董胡自身も、その料理を食べた尊武や黎司が異常なまでの執着を示すのは、無意識のうちに己に宿る麒麟の魅了の力を料理を通じて植え付け、彼らを狂わせているのではないかと恐れるようになった。

退屈を嫌う尊武にとっての「最高の余興」

尊武は董胡が男装の医官と皇帝の后・鼓濤という一人二役の綱渡り生活を送っている秘密をいち早く見抜いたが、それを皇帝や玄武公に密告することはしなかった。

・秘密を人質にした取引:彼は、お后様が男装して医官姿で動き回っているなど、これほど面白いことはないと、董胡の絶体絶命の境遇を自らの退屈を紛らわせるための最高の余興として面白がった。
・彼は彼女に対し、自分が楽しめ、退屈しない限りはこの秘密を黙認してやると取引を持ちかけ、彼女を専属薬膳師として手元に置いておく大義名分にした。他人の生死に関わる危機すら余興として楽しもうとする彼の姿勢は、非常に不気味で執拗な執着の形と言える。

危機において露呈する「本能的な執着」と、激流への身投げ

普段は平民一人のために軍を動かすなど不合理だと冷酷に言い放つ尊武であるが、董胡が危機に陥った際には、彼の行動は完全に論理性を失い、強烈な執着を露呈させた。

・雪山での口実と本音:董胡が東の高原の民・ロー族に攫われたと知った際、尊武は一度は彼女を見捨てようと判断した。しかし、彼女を失うことへの不快感や政治的な不利益を天秤にかけた結果、自ら軍を率いて過酷な雪山を登る決断をした。彼はその登山の原動力を、あいつを見つけ出して全力で尻を蹴っ飛ばしてやるためだと不機嫌に語り、己の行動の矛盾を必死に誤魔化そうとした。
・激流への身投げ:彼の執着が最も劇的に示されたのが、白虎の百滝の大社での出来事である。精神をマゴイの香に惑わされた董胡が、尊武の手を拒んで増水した滝壺へ落下した際、汚れや面倒なことを何より嫌う尊武が、考えるよりも早く自らも崖から激流へと飛び込み、彼女を必死に追いかけた。この無謀な救出劇は、彼がどれほど口先で利用価値のある使部や余興と試みようとも、本能の部分で彼女を失うことを何よりも恐れ、強く執着していることの紛れもない証明であった。

父・玄武公の「亡霊への執着」に対する反発と、皮肉な反復

尊武が抱く執着を語るうえで外せないのが、父・玄武公に対する冷ややかな軽蔑である。

・父親への冷酷な評価:尊武は、かつて董胡の母・濤麗に魅入られ、彼女が亡くなった後もしばらく麗の亡霊を追いかけるちっぽけな男だと、情念に狂わされた父親の器の小ささを激しく嫌悪し、見下していた。自分は決してあのような情けない男にはならないと豪語していた。
・皮肉な運命の反復:しかし、どれほど己を冷徹な悪と任じていても、気がつけば濤麗の娘である董胡の料理に胃袋を掴まれ、彼女の身を案じて雪山に挑み、激流に身を投じるほどに彼女を追いかけてしまっている。かつて濤麗に魅了されて破滅していった男たち(玄武公や白龍)と同じように、尊武もまた、麒麟の血筋の娘が放つ不可抗力な執着の引力に囚われつつあるという、極めて皮肉な運命の構図が描かれている。

まとめ

尊武の董胡に対する屈折した執着を巡る一連の全貌は、冷徹な野心家の仮面の下に隠された料理への固執と精神的依存から始まり、弱みを握る駆け引きに見る歪んだ余興の構築、雪山捜索や激流への飛び込みに露呈した本能的救出の行動、そして父親への軽蔑を抱きつつも同じ魅了の力へ囚われていく皮肉な反復に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
合理主義や冷酷さという不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、歪んだ執着の発露と本能の解放の記録である。
自己欺瞞の固執から、駆け引きの成立、本能の爆発、宿命の重複、そして不可抗力な愛執の受容へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

薬膳妃 8巻レビュー
薬膳妃 まとめ
薬膳妃 10巻レビュー

登場キャラクター

伍尭国朝廷・后宮

董胡(とうこ) / 鼓濤(ことう)

男装の薬膳師として育った少女である。
玄武の一の后として後宮へ輿入れした。
皇帝である黎司を陰ながら支えている。

・所属組織、地位や役職
 玄武の一の后。男装の医官。

・物語内での具体的な行動や成果
 患者の体調を五色の光として読み取る。
 その力を使い相手が求める味の薬膳を作る。
 大朝会に侍女頭代理として出席した。
 その際に「董麗」という偽名を用いる。
 白虎の地で生い立ちを知る白龍を捜した。
 ユラ・マゴイに操られて崖から転落する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 平民の醫生から后になった。
 母の濤麗と玄武公の間に生まれた実娘である。
 自らの料理が周囲に執着を植え付けるのではないかと恐れる。

黎司(れいじ)

伍尭国の第十七代皇帝である。
天術による先読みの力を持つ。
后となった董胡を人として深く信頼している。

・所属組織、地位や役職
 第十七代皇帝。

・物語内での具体的な行動や成果
 董胡が女性であることに確信を抱く。
 女性医師を育成する麒麟寮の設立を宣言した。
 董胡に危険が迫った際のために楊庵と密約を交わす。
 白虎の大社で風を操る天術を発動した。
 その天術によりユラ・マゴイを撃退する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 当初は天術の力が弱まっていた。
 董胡の薬膳を食べて本来の天術が覚醒する。
 失われた三つ目の神器の捜索を決意した。

朱璃(しゅり)

朱雀の一の后である。
優れた直感と鋭い観察力を持つ。
董胡の正体を知りよき理解者となった。

・所属組織、地位や役職
 朱雀の一の后。

・物語内での具体的な行動や成果
 后と医官と侍女頭代理が同一人物であることを見抜いた。
 董胡に危害を加える意図がないと確信して秘密を守る。
 白虎への子宝祈願の旅を計画した。
 男装の薬膳師「光」を名乗って同行する。
 白虎の地で其那国の少女であるルカを助けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 元々は舞妓を母に持ち妓楼で育った。
 いずれは后宮を出て紅拍子に戻るつもりである。
 幼い頃に三の后宮で董胡の母である濤麗と出会っていた。

尊武(そんぶ)

玄武公の嫡男である。
宮内局長を務めている。
董胡の秘密を握り自身の専属薬膳師として同行させた。
他者への情を排し合理的に動く冷徹な性格である。

・所属組織、地位や役職
 宮内局長。玄武公の嫡男。特使団の団長。

・物語内での具体的な行動や成果
 董胡の正体を見抜いて取引を持ちかける。
 自ら黒軍を率いて白虎へ向かった。
 白虎の大社で董胡の秘密を指摘する。
 崖から落ちた董胡を救うために激流へ身を投じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 他国へ長く外遊していた。
 其那国に滞在した経験を持つ。
 董胡に対して本能的な強い執着を露呈させる。

空丞(くうじょう)

近衛軍である黄軍の将軍である。
大柄な体格で気持ちの良い笑顔を持つ。
青龍の后である翠蓮の兄である。

・所属組織、地位や役職
 近衛軍・黄軍の将軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 青龍への特使団の護衛を務める。
 董胡が攫われた際に救出へ向かった。
 后たちの帰途を守るために昴宿へ派遣される。
 白虎の地で尊武とともに行動した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 父は同じく黄軍将軍の月丞である。
 忠誠心が非常に厚い武官である。

翠明(すいめい)

皇帝の側近神官である。
病気や怪生を癒す力を持つ。
実体に近い強力な式神を操ることができる。

・所属組織、地位や役職
 皇宮の神官。

・物語内での具体的な行動や成果
 董胡を王宮の医官として召し出す手配をした。
 自身の髪の毛を人柱とした式神を使用する。
 白虎の大社への后行列を護衛させた。
 后宮の寝所に侵入する楊庵を式神で援護する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 祖父は麒麟寮の元寮長であった。
 式神の術により皇帝や董胡をサポートしている。

孔曹(こうそう)

太政大臣を務める重臣である。
皇帝の治世を支える立場にある。
黎司の大叔父に当たる。

・所属組織、地位や役職
 太政大臣。

・物語内での具体的な行動や成果
 臨時殿上会議の進行を務める。
 内医司の殉死制度の不備を報告した。
 先々代皇帝の時代にマゴイの輿入れに関わっていた。
 白龍が生まれた際に不義の子と疑う皇帝から命を救う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 黎司の父である孝司帝の叔父に当たる。
 唯一玄武公が逆らうことの出来ない相手である。

王琳(おうりん)

玄武公から派遣されてきた后宮の侍女頭である。
仕事に非常に有能な女性である。
最初は厳しく接したが董胡のよき協力者となった。

・所属組織、地位や役職
 后宮の侍女頭。

・物語内での具体的な行動や成果
 お后様らしい装いやお茶会を整える。
 最初は玄武公や皇太后への内通者として動いた。
 のちに事情を知って董胡の味方となる。
 后宮で寝込んでいる茶民と壇々の世話を担った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 夫は先帝の内医助であった吐伯である。
 夫は内医司の殉死制度により死亡した。
 董胡が舞台に立っている事実に眩暈を起こす。

茶民(ちゃみん)

董胡付きの侍女である。
少し色黒で痩せている。
お金を貯めることが趣味である。

・所属組織、地位や役職
 玄武の一の后宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果
 后に成り代わる大朝会の留守番を務めた。
 白虎への旅路では后の身代わりとなる。
 董胡を守るために自らの髪を差し出す。
 その髪から翠明によって式神が作られた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 元々は華蘭の侍女であった。
 董胡へ忠誠を誓うようになる。

壇々(だんだん)

董胡付きの侍女である。
色白でふっくらしている。
食べることを何より好むおっとりした性格である。

・所属組織、地位や役職
 玄武の一の后宮の侍女。

・物語内での具体的な行動や成果
 董胡の作る饅頭を好んで食べる。
 一度知恵熱を出して寝込んだ。
 身代わりの人柱になることを快諾する。
 董胡の護衛となるため式神の人柱となった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 元々は華蘭の侍女であった。
 美味しい食べ物に非常に弱い。

禰古(ねこ)

朱雀の一の后である朱璃の侍女頭である。
朱璃のことを深く慕っている。
規律に厳しくおしゃべりな性格である。

・所属組織、地位や役職
 朱雀の后宮の侍女頭。

・物語内での具体的な行動や成果
 大朝会で他宮の噂話を収集した。
 后行列の旅路では規律を正そうとする。
 白虎への后行列に同行した。
 王琳と協力して旅の部屋を整える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 朱璃のわがままに日々手を焼いている。
 王琳と道中で親密になった。

白虎・百滝の大社 / 霊山・山房 / 隠れ庵

旻儒(びんじゅ) / 白龍(はくりゅう)

長らく董胡が追い求めていた盲目の医師である。
先々代皇帝とマゴイの姫君の間に生まれた実子である。
董胡の母である濤麗を心から愛していた。

・所属組織、地位や役職
 麒麟の医官。盲目の医師。

・物語内での具体的な行動や成果
 濤麗への嫉妬のあまり高熱を出して視力を失う。
 その引き換えに癒しの天術を覚醒させた。
 幼い董胡を抱いて逃げ延びト殷へ託す。
 白虎の山房で董胡と再会を果たした。
 ナティアの治療のために協力する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつては麒麟寮で天才医師と呼ばれていた。
 髪を自然鉄の白い粉で染めて白髪に偽装していた。
 本来はマゴイの血を引く銀髪である。

宝庵(ほうあん)

隠れ庵の宮司である。
清廉で温和な風貌を持つ。
行き場のない女性たちを保護している。

・所属組織、地位や役職
 隠れ庵の宮司。元大宮司。

・物語内での具体的な行動や成果
 私財を投じて隠れ庵を建設した。
 其那国の政変の事実を董胡に伝える。
 マゴイの一族の性質を説明した。
 ナティアとルカの姉妹の再会を喜ぶ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 かつては百滝の大社の大宮司を務めていた。
 王宮の医官を務めていた経験も持つ。

泰全(たいぜん)

百滝の大社の祭主である。
人当たりのよい好相な人物である。
その裏で邪悪な内情を隠し持つ。

・所属組織、地位や役職
 百滝の大社の祭主。

・物語内での具体的な行動や成果
 不法移民の件を皇帝に知らせなかった。
 其那国の少女たちを不当に選別する。
 少女たちを眠らせて妓楼へ売却した。
 マゴイの一族に心を操られていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大社の祭主として大きな影響力を持つ。
 不法移民の情報を意図的に遮断した。

老師(ろうし)

白虎の霊山で暮らす高齢の老人である。
旻儒と宝庵が学んだ麒麟寮の元教師である。
山房で小坊主とともに暮らしている。

・所属組織、地位や役職
 麒麟寮の元教師。

・物語内での具体的な行動や成果
 重い病を患い衰弱していた。
 董胡の処方した薬湯を飲み干す。
 それにより活力を取り戻した。
 旻儒が近くにいることを宝庵たちに伝える。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 すでに今生での役割を終えたと死を待っていた。
 かつて旻儒が山房へ身を寄せた際に世話をした。

小坊主(こぼうず)

老師の世話をしている少年である。
山房で老師の看病をしていた。
訪れた宝庵たちを不審に思う。

・所属組織、地位や役職
 山房の給仕。

・物語内での具体的な行動や成果
 山房を訪れた宝庵たちを出迎える。
 老師の具合が悪いことを伝えた。
 董胡が王宮の医官だと知って安心する。
 老師への薬湯の処方を董胡に懇願した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 老師の身の回りの世話を一人でこなしている。

其那国

ルカ

其那国の王女である。
金茶色の髪と紺碧の瞳を持つ。
不法移民に紛れて伍尭国へ逃れてきた。

・所属組織、地位や役職
 其那国の王女。不法移民。

・物語内での具体的な行動や成果
 選別されて妓楼に売られそうになる。
 董胡たちに救われて后の部屋に匿われた。
 姉であるナティアと再会を果たす。
 大社で丸薬作りの手伝いを始めた。
 大社で盗み聞きした董胡の正体をユラに漏らしてしまう。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ユラ・マゴイに未熟な恋慕を抱く。
 ユラに選ばれた者としての特別感に満たされていた。

ナティア

其那国の王女である。
ルカの姉に当たる。
マゴイの一族に心を操られてしまった。

・所属組織、地位や役職
 其那国の王女。不法移民。

・物語内での具体的な行動や成果
 マゴイの子を身ごもる。
 隠れ庵に保護されて暮らしていた。
 ルカと再会を果たす。
 マゴイの一族の脅威を董胡たちに教えた。
 治療を受けるため老師の山房に留まる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 妊娠十五カ月目の過酷なお産を恐れる。
 かつては王家の中で一目置かれる賢い姫であった。

ユラ・マゴイ

其那国から侵入した冷酷な男である。
銀の長い髪に紺碧の瞳を持つ。
マゴイの一族の主導者である。

・所属組織、地位や役職
 マゴイの一族の指導者。

・物語内での具体的な行動や成果
 其那国の政変を主導した。
 祭主の泰全の心を操って少女を誘拐させる。
 麒麟の血筋の娘を捕らえようとした。
 黎司の天術である突風を受けて撃退される。
 再び大社へ侵入して董胡を精神支配した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 高貴な麒麟の血とマゴイの血を掛け合わせようと企む。
 それにより世界の覇者となる子を得ようと執念を燃やす。
 黎司の天術で左腕を骨折しながらも生き延びた。

薬膳妃 8巻レビュー
薬膳妃 まとめ
薬膳妃 10巻レビュー

展開まとめ

鼓濤としての生

平民育ちの董胡は、伍尭國の皇帝の后・鼓濤として暮らしながら、后付き薬膳師の身分を使って自身の出生を調べていた。

白龍を捜す后詣で

董胡は生い立ちの核心を知る盲目の医師・白龍を捜すため、朱璃と共に子宝祈願を名目として白虎の百滝の大社へ向かった。

其那国の政変

白虎では其那国から逃れてきた者が増えていた。董胡は少女ルカと出会い、姉を捜して隠れ庵を訪れたことで、銀髪のマゴイの一族が其那国を掌握した政変を知った。

麒麟の姫への脅威

マゴイの一族は伍尭國の皇帝を恐れる一方、麒麟の血を持つ高貴な姫君を求めていた。董胡は后一行への危険を悟って帰還を決めたが、犀爬から白龍らしき盲目の医師の手がかりを得た。

白虎へ向かう援軍

黎司も其那国の異変を知り、董胡と后たちを守るため、空丞率いる黄軍と尊武率いる黒軍を白虎へ派遣した。白虎ではマゴイの魔の手が迫り、新たな事件が起ころうとしていた。

一、マゴイの花嫁

『第十五代 伍尭園皇帝日誌』

先々代皇帝の不満

黎司は皇宮の禁書庫で、祖父にあたる第十五代皇帝の日誌を読んだ。そこには玄武公から后宮へ通うよう圧力をかけられ、玄武の后に皇太子を産ませようとする思惑へ反発していた様子が率直に記されていた。

先々代皇帝は天術を得られない自分に失望し、四公の傀儡となる皇帝の立場へ苛立っていた。黎司はその苦悩を自身と重ね、もっと早く祖父の日誌を読むべきだったと感じた。

マゴイの姫君

即位から半年ほど後、其那国は友好の印として神官の血を引く姫君を送りたいと申し出た。白虎公の要請で受け入れが決まり、姫君は人目を避けて皇宮地下の籠りの宮へ入った。

姫君は銀髪と紺碧の瞳を持つマゴイの一族であり、日の光に弱いため姿を隠して暮らすと説明されていた。其那国は后や側室の地位を求めず、子が生まれた時だけ一族で祝いに訪れたいと申し出ていた。

地下宮の一夜

先々代皇帝は白虎公に促され、籠りの宮を訪れた。そこで銀髪の姫君の人間離れした美貌と甘い香りに魅了され、記憶も曖昧なまま一夜を過ごした。

その後、先々代皇帝は姫君への激しい執着に襲われ、何度も地下宮へ向かおうとした。側近神官だった弟の孔曹に止められると、彼を遠ざけようとするほど心を乱したが、やがて正気を取り戻し、二度と宮へ近づかないと約束した。

十五カ月の懐妊

一年以上が過ぎた後、マゴイの姫君が身ごもっていることが判明した。先々代皇帝は自分が訪ねた時期と合わないため不義の子だと考えたが、侍女は皇帝の子だと主張し続けた。

姫君の腹は異常に大きくなり、長期間出産しないまま衰弱していった。侍女は子の誕生を其那国へ知らせるよう求めたが、孔曹は秘密が漏れることを防いだ。

銀髪の男児

マゴイの姫君は十五カ月に及ぶ妊娠の末、普通より大きな美しい男児を産み、難産によって死亡した。

先々代皇帝は男児を身に覚えのない不義の子と決めつけ、皇位継承者として認めなかった。男児は孔曹が密かに処理したと記されていたが、殺されたのか、血筋を隠して養子に出されたのかは明記されていなかった。

消えた皇子の行方

男児が生きていれば現在は四十歳ほどになる計算だったが、黎司には該当する人物が思い浮かばなかった。

黎司はマゴイの姫君が人心を操り、十五カ月児を産んだ事実から、その男児が先々代皇帝の実子である可能性を疑った。真相と男児の行方を確かめるため、当時すべてを処理した孔曹から話を聞くことを決めた。

二、雨の降らない大社

降らない雨

百滝の大社に到着して六日が過ぎても雨は降らず、子宝祈願は完了していなかった。赤軍は其那国の政変とマゴイの動きを警戒し、雨が降り次第帰還する方針を決めていた。

董胡は残された時間で白龍らしき人物を捜すため、朱璃と共に再び隠れ庵へ向かうことにした。

祭主の異変

大宮司たちは、祭主・泰全が体調を崩して臥せっていると説明した。泰全は最近たびたび転倒して打ち身を負い、ぼんやりしたり突然怒鳴ったりすることが増えていた。

董胡は病による運動機能や思考の低下を疑ったが、泰全は医師の診察を拒んでいた。大宮司たちは其那国の政変もマゴイの一族も詳しく知らず、其那国からの使者には泰全だけが対応していた。

盲目の医師の消息

隠れ庵を訪れた董胡たちに、宝庵は盲目の医師への連絡が難しいと告げた。その医師は宝庵と共に学んだ老師の山房へ時折現れていたが、三年ほど姿を見せていなかった。

董胡は生存も居場所も不明だと知りながら、残された時間は今日しかないとして、老師の山房へ案内してほしいと強く頼んだ。

旻儒という医師

宝庵が知る盲目の医師は白龍ではなく、旻儒という名であった。麒麟寮で学んでいた頃は長い黒髪を持ち、目も見えていた。

旻儒は後に原因不明の奇病を患い、生死の境をさまよった末に失明した。病から回復すると、宝庵へ何も告げず老師の山房を去っていた。

異例の才能

宝庵は三十歳で麒麟寮へ入り、五年かけて実習生となった頃に旻儒と出会った。旻儒は入寮直後から研修生となり、ひと月で実習生、さらに半年で医師免状を取得した異例の秀才であった。

気品ある容姿と強い後見から、高貴な人物の落胤ではないかと噂されていた。旻儒は帝の側近や大社の祭主にもなれる才能を持ちながら、免状取得後は育った宮へ戻って仕える道を選んだ。

奇病による変貌

旻儒は宮へ戻って半年もせず、心身を蝕む奇病を発症して老師の山房へ身を寄せた。宝庵が見舞った時には、穏やかだった以前と異なり、何かを憎むような険しい人物へ変わっていた。

老師にも治療法は分からず、宝庵は病名も詳しい症状も知らされなかった。董胡は旻儒が白龍である可能性を捨て切れず、真相を確かめるため山房へ向かう決意を固めた。

老師の山房

宝庵は、老師が旻儒の事情を話す可能性は低いと忠告した。それでも董胡と朱璃が必死に願ったため、渋々ながら二人を山房へ案内することを承諾した。

三、尊武の黒軍と空丞の黄軍

密やかな出陣

胡たちが老師を訪ねる二日前、黎司は民を不安にさせないよう、夜陰に紛れて黄軍と黒軍を白虎へ送り出した。空丞と尊武は、それぞれ后たちを無事に連れ帰ると誓った。

黎司は自ら白虎へ向かえない皇帝の立場を歯がゆく思いながら、二人へ任せるしかなかった。

マゴイの輿入れ

出発前、黎司は翠明、空丞、尊武と情報を共有した。先々代皇帝の時代にマゴイの姫君が密かに輿入れし、孔曹がその件へ深く関わっていたことを明かした。

孔曹は遠方の社へ出ており、詳しい事情を聞くことはできなかった。尊武も玄武公から詳細を聞いていなかったと答えた。

尊武の其那滞在

尊武は西方の未開国へ向かうため、白虎の商人を通じて其那国の大貴族を頼ったと説明した。天候不良で足止めされる間に言葉を学び、其那国の王宮へ招かれてマゴイの者と面会していた。

尊武が帰国後にその話をしなかったのは、先帝がマゴイを嫌っていると聞き、黎司も同じ反応を示すことを恐れたためであった。

麒麟への関心

マゴイの者は尊武へ、麒麟の力や暮らし、皇帝の統治について詳しく尋ねていた。尊武は先帝の時代には目立った神通力を知らなかったため、答えられることはないと伝えていた。

その後、医術の話から其那国の切開術を見学し、角宿で医師を助けた際にその技術を用いていた。

神官が治める国

尊武は、マゴイの者が伍尭國を褒め、神官が治める国こそ正しいと繰り返していたことを思い出した。

五年前にマゴイの血を引く王子が生まれたことを喜んでいたため、マゴイは其那国の王家を支えるのではなく、自ら麒麟のような支配者となろうとしていた可能性があった。

尊武への信頼

尊武は其那国との取引に関わった白虎の商人を百滝の大社へ呼ぶ手配まで済ませていた。黎司はその用意周到さと国を思う姿勢を認め、白虎への派遣を任せる決意を固めた。

それでも董胡へ近付けたくないという警戒は消えなかったが、現状では尊武以上の適任者はいなかった。

董胡を返す約束

出発直前、黎司は尊武を呼び止め、董胡を必ず自分のもとへ返してほしいと告げた。

二人は互いの本心を探るように見つめ合ったが、空丞の号令で言葉を交わさないまま別れた。尊武は返答せず、黒軍を率いて出発した。

黎司の本心

軍を見送った黎司は、自分が最も恐れているのは后や民の危機以上に、董胡を失うことなのだと自覚した。

その感情は董胡を苦しめるだけだと考え、黎司は胸の奥へ封じ込めようとした。

四、老師の山房

霊山への山道

董胡、朱璃、宝庵は、ナティアとルカを伴って老師の山房へ向かった。道は岩や木の根が続く急勾配で、妊婦のナティアには厳しかったが、姉妹は医師へ直接助けを求めるため同行を譲らなかった。

董胡は疲れながらもコゴミやウド、ハリギリなどの山菜を見つけると夢中で摘み始めた。朱璃はそんな董胡を楽しそうに見守り、体力の落ちた彼女や姉妹の後ろを歩いて支えた。

老師の衰弱

一行が山房へ到着すると、老師は重い衰弱状態で臥せっていた。宝庵は知らせなかったことを責めたが、老師は十分に生きたため、誰にも迷惑をかけず死を迎えるつもりだったと答えた。

董胡が診察すると、老師は老衰による気血両虚で、五臓六腑が弱り、食事もほとんど取れない状態だった。

旻儒への追及

董胡は老師へ、旻儒が白龍と呼ばれていたのではないかと尋ねた。しかし老師は、旻儒は黒髪で、病後も白髪にはなっていないと答えた。

それでも董胡が朱雀の皇女・濤麗が後見人だったのではないかと問い詰めると、老師は明らかに動揺した。董胡は旻儒が濤麗と関わっていたことを確信したが、老師は何も知らないと拒絶し、激しく咳き込んだ。

人参養栄湯

董胡は追及をやめて老師の治療を優先し、人参養栄湯を煎じることにした。山房には必要な生薬が揃い、さらに修験者が届けた上質な人参が大量に保管されていた。

董胡は小坊主へ、人参をすり潰して粥に混ぜれば老師の気力を支えられると教えた。老師は薬湯を一口で見抜き、その出来栄えを認めながら飲み干した。

ナティアを見届ける決意

ナティアから其那国の政変と異常な懐妊を聞いた老師は、彼女の出産を見届けるまで生きると決めた。

老師の顔には活力が戻り、董胡は薬効だけでなく、人を救おうとする意志が生きる力を呼び戻したのだと感じた。

旻儒の気配

老師は、三年前に死の淵をさまよった際も、霊山の奥にいる旻儒が異変を察して現れたと明かした。旻儒は山房に暮らす老師の衰弱を遠くから感じ取れる人物だった。

老師は今回も死を覚悟した自分の気配を旻儒が感じているはずだと告げ、その存在がすでに近くまで来ていると語った。

光の中の旻儒

老師が戸口へ目を向けると、扉が音もなく開いた。差し込む昼の光の中に、後光を背負ったような人影が立っていた。

そこに現れたのは、董胡たちが探し続けていた旻儒であった。

五、尊武の行軍

尊武の苛立ち

黄軍と黒軍は王宮を出発して二日後、昴宿近くの森で夜を待っていた。尊武は粗末な野営食に不満を抱き、同じ食材でも美味しく仕上げる董胡の料理を思い出した。

尊武は董胡本人ではなく料理に執着しているだけだと否定したが、黎司と同じく彼女を失うことへの恐れが心に芽生えていると自覚していた。

密偵からの報告

空丞は昴宿の密偵から、董胡が其那国の姉妹を通じてマゴイの歴史、人心を操る力、十五カ月児について調べたと報告した。

尊武は董胡が再び危険な場所を動き回っていることに呆れたが、短期間で多くの情報を得た手際には関心を示した。

其那国の王女姉妹

尊武は、其那国の姉妹が伍尭國の言葉を話せると聞き、商人や外交官でもない女性が外国語を学んでいることに疑問を抱いた。

詳しい推測は口にしなかったが、姉妹が普通の身分ではないことに気付いた様子を見せた。

鼓濤の血筋

空丞は后一行に麒麟の血を持つ姫君がいるか確認した。尊武は偽物の鼓濤なら該当しないと考えたが、本物であれば皇女・濤麗の娘として濃い麒麟の血を引いていることを思い出した。

それでも董胡が本物の鼓濤である可能性を否定し、妹は麒麟の姫君ではないと答えた。

ユラ・マゴイとの面会

空丞が去った後、尊武はユラ・マゴイが動き出したと呟いた。

尊武が黎司へ語った其那国滞在の話は大筋で事実だったが、王宮で会った相手がユラであり、其那国の言葉も十分理解していたことを隠していた。

尊武の隠し事

尊武はユラの性質や目的、人心を操る力を含むマゴイの実態を以前から知っていた。

それを知りながら報告しなかった事実を隠すため、言葉が分からず政情を理解できなかったと装っていた。尊武は予想より早く動き始めたユラに対し、何かを企むような笑みを浮かべた。

六、山房の薬膳料理

山房に現れた旻儒

山房に現れた旻儒は白装束と頭巾を身につけ、盲目とは思えないほど自然に振る舞っていた。清潔で気品があり、存在が薄れて光へ溶けそうな不思議な雰囲気をまとっていた。

旻儒は老師の衰弱を察して山を下りてきたが、まだ果たすべき使命があると語った。そしてナティアの事情を見抜いたように視線を向ける一方、まず地上へ体をなじませるため食事を求めた。

董胡の山菜料理

董胡は米や芋に、道中で採ったウド、コゴミ、ハリギリを使い、雑炊や芋和え、お浸しを作った。

旻儒はウドの雑炊を今までで一番美味しいと称え、董胡の薬膳の話にも興味深く耳を傾けた。さらにコゴミの芋和えや、董胡の養父・卜殷も好んだハリギリのお浸しも喜んで味わった。

料理を褒められた董胡は喜び、旻儒への好感を強めた。残った料理は小坊主やナティアたちにも分けられ、山房の空気は明るくなった。

ナティアの出産

旻儒はナティアの異常な懐妊について聞き終えると、長く医術から離れていたため確実な自信はないものの、可能な限り治療すると約束した。

ナティアは険しい山道を行き来せず、出産まで山房に滞在することになった。老師も彼女の出産を見届けることを人生最後の仕事として引き受けたため、ナティアには僅かな希望が生まれた。

肉体をつなぐ執着

食事を終えた旻儒の五色の光は濃くなり、存在感も増していた。旻儒は、人が肉体を持って生きるには、食事や眠り、子孫を残すことへの欲と執着が必要だと語った。

欲を失えば魂は肉体を離れ、体も土へ還るのだと説明し、董胡の料理によって自分の体が地上へなじんだと告げた。

二人だけの話

旻儒は董胡が自分へ聞きたいことを抱えていると見抜き、二人きりで話すよう求めた。

朱璃は同席を願ったが、旻儒はきっぱりと断った。宝庵と老師も二人の関係を訝しんだが、旻儒は答えず、董胡を山房の奥の部屋へ連れていった。

七、旻儒の正体

白龍との再会

旻儒は、董胡を鼓濤と呼び、彼女の正体を初めから見抜いていた。旻儒こそ濤麗から白龍と名付けられ、幼い鼓濤を卜殷へ託した人物であった。

白龍は卜殷が董胡を立派に育てたことを喜び、董胡も卜殷のもとで医術を学んだからこそ白龍へ辿り着けたのだと感じた。

濤麗への思慕

白龍は朱雀の三の后宮で育ち、三歳下の濤麗を幼い頃から妹のように慈しんでいた。濤麗は美しく聡明で多くの者に愛された一方、周囲の悪意や重い念を敏感に受け取り、体調を崩しやすかった。

白龍は濤麗を救う医師になるため白虎の麒麟寮へ入り、短期間で医師免状を取得した。しかし三の后宮へ戻った後、濤麗が玄武公の嫡男・樊武へ嫁ぐと知り、自分の想いが激しい恋と執着であったことに気付いた。

嫉妬による変貌

白龍は樊武への嫉妬に狂い、濤麗を殺して自分も死のうと考えるまで追い詰められた。実際に濤麗の首へ手をかけたが、濤麗から望むなら殺してほしいと言われ、自分の恐ろしさに気付いて逃げ出した。

白龍は老師の山房へ身を寄せ、感情の暴走によって心身を病み、高熱の末に視力を失った。しかし同時に魂を遠くへ飛ばし、玄武で苦しむ濤麗の姿を感じ取る力を得た。

玄武公との夫婦関係

白龍は濤麗を救うため玄武へ向かい、専属医師として仕えた。董胡は自分が白龍と濤麗の子ではないかと疑ったが、白龍は濤麗と樊武が互いに穏やかな愛情を育んでいたと明かした。

樊武は父へ初めて逆らってまで濤麗との結婚を望んでおり、董胡は間違いなく二人の娘であった。

尊武の母の呪詛

濤麗を苦しめていたのは、樊武の別の妻が放つ強い嫉妬と呪詛であった。特に尊武の母の部屋からは黒い念が渦巻き、白龍が結界を張っても濤麗の体へ入り込み、さまざまな不調を引き起こしていた。

樊武が尊武の母を訪ねた後は、彼の体に付いた悪意まで濤麗を襲った。そのため濤麗は産後に樊武の訪問を断り、白龍から気を受けながら回復を図っていた。

不義の疑惑

濤麗が樊武を避け、白龍と過ごす時間が増えたことで、二人の不義を疑う噂が流れた。樊武は嫉妬に支配され、やがて鼓濤まで白龍の子だと疑い、母子を処刑しようと考えるようになった。

濤麗は鼓濤を守るため、白龍と共に黒水晶の宮から逃れ、三人で暮らすことを提案した。

遅れた決断

白龍は濤麗と暮らせる喜びを感じる一方、再び恋の執着に狂うことを恐れて決断をためらった。

その迷いによって逃亡の好機を失い、白龍は濤麗の死を招いたのは自分だと後悔し続けていた。董胡へひれ伏して謝罪したが、董胡は白龍が母子を守ろうとしていたとして顔を上げるよう求めた。

黒水晶の宮からの逃亡

濤麗は鼓濤を抱いて黒水晶の宮から逃げ、裏山を登る途中で何者かに斬られた。白龍は視力が衰えていたため姿を確認できなかったが、襲撃者を包む黒い念が、濤麗を長年呪っていた尊武の母のものだと確信していた。

董胡はその時の血を浴びた記憶を思い出し、大量の血や人の肌を傷つけることへの恐怖が、この事件によって刻まれたのだと理解した。

魔物の血

白龍は、自分の異常な嫉妬や執着が普通ではなかった理由として、呪われた血を持っていると告げた。

濤麗は病によって白くなった髪だと思い、彼を白龍と呼んでいた。しかし白龍が頭巾を外すと、現れた長い髪は白ではなく、硬質な輝きを放つ銀色であった。

八、黎司の見た夢

孔曹の帰還

尊武たちの出発翌日、孔曹が王宮へ戻った。黎司は二人きりの場を設け、先々代皇帝の日誌に記されていたマゴイの姫君と、その子の行方を尋ねた。

孔曹は、姫君が産んだ男児は銀髪ではなく、黒髪と黒に近い瞳を持つ色白で大柄な美しい子だったと証言した。

先々代皇帝の異変

孔曹によれば、先々代皇帝はマゴイの姫君を恐れながらも、夜になると籠りの宮へ向かおうとした。孔曹たちを蹴り倒してまで行こうとするため、縄で御座所へ縛りつけたこともあった。

異常な執着は十日ほどで収まったが、孔曹は目を盗んで姫君のもとへ通っていた可能性を否定できなかった。

記憶を失った侍女

孔曹は最近、マゴイの姫君に仕えていた侍女を訪ねていた。侍女は麒麟の社で保護されていたが、姫君の出産直後から記憶を失い、先々代皇帝の子だと主張していたことも覚えていなかった。

黎司は密偵から届いた十五カ月児の情報を伝え、姫君が産んだ男児は、一度だけ籠りの宮を訪ねた先々代皇帝の実子だった可能性が高いと告げた。

三の后宮の男児

孔曹は男児を殺すよう命じられたものの、赤子を手にかけることができなかった。当時の朱雀の皇后へ相談し、三の后宮で密かに育ててもらっていた。

二年後、孔曹は先々代皇帝へ真実を告白した。先々代皇帝は男児を気にかけて三の后宮へ通い、その世話をしていた侍女を見初めた。

濤麗の誕生

先々代皇帝と侍女の間に生まれた姫が濤麗であった。先々代皇帝は晩年に得た濤麗を溺愛し、日誌には彼女の成長を喜ぶ記述が続いていた。

一方、マゴイの男児は朱雀の后宮を襲った流行り病の混乱で姿を消していた。孔曹は死んだと思っていたが、確かな行方は分からなかった。

先々代皇帝の死神

黎司が日誌を読み進めると、晩年の先々代皇帝が祈禱殿で赤髪と青白い顔を持つ黒衣の少年を見ていたことが分かった。

それは黎司に先読みを示す魔毘と同じ姿であった。先々代皇帝は名を知らなかったため天術を発動できず、死神の迎えだと思ったまま亡くなっていた。

書き残せない名

黎司は魔毘の名を日誌へ残せば、後世の皇帝も天術を使えると考えた。しかし文字にしようとすると手が止まり、名を書き記すことはできなかった。

黎司は、天術を使う資格を得た皇帝だけが自ら魔毘の名へ辿り着く仕組みなのだと考えた。

泣き続ける董胡

黎司が祈禱殿で魔毘を呼ぶと、銅鏡に泣きじゃくる董胡が映った。董胡は黎司へ何度も謝り、もう彼のそばにはいられないと告げた。

黎司は董胡が女である秘密を謝っていると思い、女性が薬膳師となる道を作るから心配はいらないと伝えた。しかし董胡は謝罪を繰り返した。

尊武に連れ去られる姿

董胡の背後には武官姿の尊武が現れ、彼女の肩を抱いて連れ去った。黎司は自分のもとへ連れ帰れと命じたはずだと叫んだが、二人には届かなかった。

目覚めた黎司は、年始と同じ夢を再び見たことに気付いた。尊武に董胡を奪われる恐怖が生んだ夢なのか、未来を示す暗示なのか分からず、董胡を失う予感に怯えた。

九、マゴイの子

白龍の正体

白龍は、自身も銀髪になるまでマゴイの血を引いているとは知らなかったと明かした。朱雀の后宮では両親が亡くなったと聞かされて育ち、自らの出生には何か忌まわしい事情があると察していた。

濤麗への恋と激しい嫉妬を自覚したことでマゴイの血が目覚め、黒髪は徐々に銀色へ変わった。白龍は髪を墨で隠しながら山房へ籠ったが、やがて老師に見つかってしまった。

マゴイの姫君の子

老師は二十年ほど前、白虎公に呼ばれ、其那国から伍尭國の皇帝へ輿入れする銀髪の姫君を診察していた。

白龍は、その姫君こそ自分の母であり、自身は先々代皇帝とマゴイの姫君の間に生まれた子だと考えていた。つまり白龍は、マゴイと麒麟の血を併せ持つ存在であった。

魔物の血との戦い

白龍はマゴイの血が生み出す嫉妬と憎悪に苦しみ、自分の中の善と悪が肉体を奪い合うような状態へ陥った。

死を覚悟した時、魂だけが玄武にいる濤麗のもとへ飛び、彼女の放つ温かな光へ触れたことで闇から救われた。目覚めた白龍は視力を失う一方、麒麟の力を覚醒させ、病を癒やす不思議な力を得ていた。

選択に伴う責任

白龍は、自分の力や出生を知ったことで、一つの選択が世界を変える責任を意識するようになったと語った。

濤麗を殺された憎しみからマゴイと手を組み、伍尭國への復讐を選ぶ可能性もあった。しかし白龍はその道を拒み、霊山で自身の闇と向き合い続けていた。

人の中の光と闇

白龍は、善だけの人間も悪だけの人間も存在せず、悲しみや怒り、嫉妬や憎しみも人間に必要な一部だと説いた。

闇を消そうとするのではなく、その存在を認めて癒やす方法を考え続けることが、人として生きることだと董胡へ伝えた。

伍尭國の二つの未来

白龍は鼓濤が生まれた時、伍尭國が内乱と侵略によって崩壊する未来と、五つの領地が麒麟を中心に結ばれて繁栄する未来を見ていた。

分岐点となるのは黎司だが、どちらの未来へ進むかを決定づけるのは鼓濤であると告げた。濤麗が命を懸けて娘を守り、白龍が彼女を卜殷へ託したのも、その啓示を信じたためであった。

自ら選ぶ道

董胡は王宮へ戻ってすべてを黎司に話すべきか尋ねたが、白龍には正解を示せなかった。未来は人々の選択によって変化し、董胡は白龍が見た範囲を超える道を歩んでいた。

白龍は、間違いを恐れず、自分が最も望む道を選ぶよう告げた。失敗と思える選択も、その先の正解へ続く過程に変えられると励ました。

自然鉄の小物入れ

白龍は銀髪を隠すため、磁性を持つ髪へ付着する白い自然鉄の粉を使っていた。粉をまぶすと銀髪は白く覆われ、強い磁石を近づければ小物入れへ戻った。

白龍はこの自然鉄がマゴイの磁力や狂気を抑える可能性を考え、今後役立つかもしれないとして董胡へ託した。

董胡の麒麟の力

白龍は濤麗が人を強く惹きつける麒麟の力を持ち、その愛が恋慕と結びつくことで異常な執着を生んでいたと説明した。

董胡は、自分の料理を繰り返し食べた楊庵、黎司、尊武が強い執着を示していることを思い出した。味覚の好みを色として見る力も、母とは異なる形で人を惹きつける麒麟の力ではないかと疑った。

ルカの立ち聞き

董胡が自身の力を白龍へ相談しようとした時、白龍は襖の外にいるルカへ気付いた。

ルカは呼びに来ただけで話の内容は聞いていないと謝罪した。董胡が取りなしたものの、ナティアと朱璃も現れ、二人だけの話は中断された。

山房からの帰路

白龍はナティアの出産が終わるまで山房に留まり、董胡とも再び会うと約束した。ナティアは山房に残り、ルカは身の回りの物を取りに一度隠れ庵へ戻ることになった。

董胡は翌日もう一度白龍を訪ね、自身の麒麟の力について相談するつもりで山を下りた。

激しい暴風雨

その夜から昴宿は激しい大雨と暴風に見舞われ、董胡は山房へ戻れなくなった。

白龍との話は肝心なところで途切れたままとなり、その中断が後の運命を大きく変えることになった。

十、裏切り者

豪雨による足止め

百滝の大社を目前にした黄軍と黒軍は、激しい豪雨によって森の洞窟へ避難した。尊武は昼のうちに進まなかった判断を悔やみ、目前で足止めされたことに苛立った。

空丞は全軍の避難を確認し、尊武へ夕食として鹿の丸焼きを用意したと報告した。尊武は青龍風の大雑把な料理に落胆し、董胡がいれば鹿肉を美味しく仕上げただろうと思い浮かべた。

空丞の勘違い

尊武が鹿肉を少量でよいと告げると、空丞は部下へ食事を譲る思いやりだと勘違いした。

空丞は尊武を部下思いの人物として称賛し、その言葉を全軍へ伝えようとした。尊武は否定しきれないまま追い払い、董胡の周囲には自分の思惑を乱す者ばかり集まると苛立った。

地下邸宅のルカ

同じ豪雨の夜、ルカは大社を抜け出し、昴宿にある異国風の邸宅を訪れた。地下の大広間にはユラ・マゴイが待っており、ルカは集めた情報を報告した。

ルカは后一行へ潜り込む予定だったが、芸団へ連れていかれたため、先にナティアの居場所を探したと説明した。

ユラへの忠誠

ルカはナティアが反マゴイの貴族に騙されたと信じ、父や兄と同じくユラを正しい支配者だと思っていた。

ユラから特別に扱われる喜びと優越感に満たされ、姉を救うことこそ自分の使命だと考えていた。ナティアへの愛情は本物だったが、姉を哀れな存在として導いてやる立場になったことにも満足していた。

ナティアの出産計画

ルカはナティアがマゴイの子を身ごもっていると報告した。ユラは其那国へ連れ戻して切開術を行うつもりだったが、母体が死亡する危険は高かった。

そこでルカは、麒麟の力を持つ旻儒なら腹を切らずに母子を救える可能性があると伝えた。ユラはその力を見極めるため、ナティアを山房へ残し、ルカに監視と報告を命じた。

后に扮した薬膳師

ルカはさらに、董胡がただの薬膳師ではなく、皇帝の后である可能性を報告した。

侍女たちが董胡へ目上の者として接していたこと、女装が自然だったこと、旻儒が皇帝の后に選ばれたと話していたことから、后が薬膳師に扮して行動していると見抜いていた。

鼓濤の正体

ルカは董胡の母が麒麟の力を持ち、董胡自身も麒麟の血筋であると伝えた。さらに彼女が玄武の后・鼓濤と呼ばれていたことを明かした。

ユラは最も求めていた麒麟の血を持つ姫君を見つけたとしてルカを絶賛した。ルカはその称賛に陶酔し、ユラのために働くことへ強い喜びを感じた。

未熟な恋慕

ルカがユラへ抱く感情は、選ばれた者でありたいという欲望と幼い恋心が混じったものであった。

十三歳のルカは、その未熟な愛と執着によってユラへの忠誠を深め、董胡の正体を敵へ渡してしまった。

十一、昴宿最後の夜

止まない雨

暴風は弱まったものの、百滝の大社では二日後も雨が降り続いていた。董胡は白龍へ再び会いたいと焦っていたが、王琳たちは出生が明らかになった以上、もう心配はないと考えていた。

董胡は白龍がマゴイの血を引くことや尊武の母が濤麗を殺した可能性を伏せ、濤麗と玄武公の実子であることだけを侍女たちへ伝えていた。

料理への恐怖

董胡は、自身の麒麟の力が料理を通じて人へ執着を植え付けている可能性を恐れていた。特に楊庵へ呪いをかけたのではないかと考え、会うことも料理を作ることも怖くなっていた。

料理は董胡の生き甲斐であり、自信と行動力の根幹であった。それを失った董胡は、皇帝の后として何を支えに生きればよいのか分からなくなり、急速に不安定になっていた。

迎えの軍勢

朱璃は、黎司が其那国の政変を知り、空丞の黄軍と尊武の黒軍を護衛として派遣したと伝えた。雨は夜のうちに止む見込みであり、翌朝に子宝祈願を終え、軍の到着後すぐ王宮へ戻る手配が整えられていた。

董胡は出発を一日延ばして白龍へ会いたいと願ったが、皇帝の命で動く軍を待たせる理由を示せなかったため、文で相談することにした。

拒まれた楊庵

董胡が白龍への文面に悩んでいると、楊庵が訪ねてきた。董胡は麒麟の力による影響を恐れ、今は会えないと断り、用件を紙へ書くよう伝えた。

楊庵は直接でなければ意味がないとして去り、自分は董胡に騙されていたと寂しげに漏らした。董胡はこの時に会わなかったことを、後に深く悔やむことになった。

悪夢の中の告発

夜半、白龍からの返事を待ちながら眠った董胡は、武装した黎司と尊武が剣を交える夢を見た。

尊武は董胡が女性であり、玄武の后・鼓濤であることを暴露した。黎司は裏切られたと絶望し、董胡の料理が自分へ破滅の呪いを植え付けたと告げた。

さらに黎司は生きる意味を失い、尊武へ自分を斬るよう求めた。尊武は董胡が皇帝を破滅へ導いたと嘲笑し、黎司を斬り捨てた。

香による支配

目覚めた董胡は、部屋に漂う見覚えのある香りと、異常な体の重さに気付いた。香は眠気と悪夢を引き起こすだけでなく、董胡の罪悪感を増幅させ、頭の中へ自責の言葉を響かせていた。

董胡は自分が周囲を不幸にする存在だと思い込まされ、ここから立ち去ることだけが皆を救う道だと受け入れ始めた。

ユラの侵入

董胡の前にユラ・マゴイが現れ、自分と共に行けば黎司は幸せになれると囁いた。

董胡は朦朧としたまま差し出された手を取ろうとしたが、その直前に何者かがユラの手首を掴んだ。

式神となった黎司

董胡を守るように現れたのは黎司であった。黎司は董胡を自分の后と呼び、伍尭国へ手を出すことは許さないとユラを威圧した。

黎司は神器の剣の魂名・風神を告げ、天術で激しい風を起こした。ユラは明障子と欄干を突き破り、二階から斜面へ吹き飛ばされた。

明かされた正体

黎司は祈禱殿から式神を飛ばし、董胡が持つ自分の髪を頼りに現れたと説明した。

しかし鼓濤の装束を着た人物が董胡であると気付き、身代わりをしているのだと考えた。董胡は否定できず、泣きながら謝罪した。

董胡がもう黎司のそばにはいられないと告げると、黎司は真実を知りたいだけだと訴えた。しかし式神の力が尽き、董胡へ手を伸ばしたまま消えてしまった。

深まる自己否定

董胡は香の影響によって、黎司の言葉を拒絶や軽蔑として受け取るようになった。

男と偽って医師免状を取り、后であることを隠し、料理によって人へ呪いをかけた自分は悪人だと思い込み、生き続けることさえ苦しいと感じるまで追い詰められた。

眠らされた警護

王琳たちが駆け付けると、赤軍の衛兵や侍女たちは全員深い眠りに落ちていたことが判明した。董胡はマゴイが侵入し、黎司が障子を壊したと説明したが、うまく言葉にできなかった。

朱璃は届いた白龍の返書を渡そうとしたが、董胡は読む気力もなく、そのまま眠り込んだ。

黎司の決意

祈禱殿へ戻った黎司は、董胡が鼓濤である事実に混乱しながらも、玄武公に脅されて身代わりを強いられたのだと考えた。

董胡が正体を隠してきた苦しみと、裁かれる覚悟で真実を話そうとしていたことを理解し、自分には彼女を裁くことなどできないと確信した。

黎司は董胡を失わないためなら、その罪をすべて引き受け、皇帝の権力で守り抜くと決意した。董胡に自分を不幸にする力などなく、彼女を失うことこそ最大の不幸だと悟り、約束通り戻ってくるよう祈った。

十二、操られた董胡

消えない眠気

翌朝になっても董胡は眠り続けていた。部屋の香炉には王琳の知らない燃えかすが残り、赤軍が斜面に人の転落跡を見つけたため、朱璃たちはマゴイの侵入と黎司による撃退が事実だった可能性を考えた。

侵入経路は神官棟から続く地下回廊と疑われ、鼓濤の血筋を知る者の中にマゴイへ操られた人物がいる可能性も浮上した。朱璃たちは黄軍と黒軍の到着を頼りに、速やかに昴宿を離れることを決めた。

茶民の身代わり

董胡は医官服へ着替えさせられ、茶民が鼓濤の装束を着て身代わりを務めることになった。朱璃は一人で大社へ別れを告げ、祭主から子宝祈願の水を受け取った。

祭主は大社内で飲まなければ効力がないと伝えており、朦朧とする董胡は朱璃に支えられながら水を最後まで飲み干した。

ユラの復讐

黎司の天術で斜面へ吹き飛ばされたユラは、左腕を骨折しながらも生き延びていた。ユラは祭主を操るマゴイを通じて大社を支配し、董胡へ祈願の水を飲ませるよう仕組んでいた。

皇帝が守ろうとする董胡を奪うことで黎司へ復讐しようと考え、虎威大山の洞窟から董胡の心へ呼びかけていた。

歪められた記憶

董胡は眠りの中で再び黎司が尊武に斬られる悪夢を見た。黎司が式神として助けに現れた現実は抜け落ち、正体を知られて拒絶されたという負の記憶だけが強く残っていた。

ユラの声は、黎司が董胡を捨て、彼女がそばにいる限り不幸になると繰り返した。董胡はその言葉を信じ込み、ユラのもとへ行けば黎司を救えると思わされた。

地下道への誘導

董胡は医官服のまま寝所を抜け出し、侍女たちにも赤軍の衛兵にも気付かれず大社の地下へ進んだ。

頭の中の指示に従って神官棟を通り、虎威大山へ続く地下道から外へ出ると、ユラの待つ山を登り始めた。

出立前の尊武

麓では、黄軍と黒軍がマゴイの捕縛よりも后たちの帰還を優先する方針を決めていた。尊武は泥まみれの行軍と休息のない再出発に苛立ち、危険に陥った董胡へ八つ当たりしていた。

一方で、自分より先に馬を洗い世話をした空丞を気に入り、高い待遇で側近へ誘った。しかし空丞は黎司と黄軍へ身を捧げる使命を理由に断った。

滝際の董胡

尊武は滝の近くで董胡を見つけ、危険な崖から離れるよう呼びかけた。董胡を安心させるため、后として丁寧に扱い、尻を蹴ることもしないと約束して手を差し出した。

しかし董胡は怯えて後退し、足を踏み外して滝壺へ落下した。尊武の手は僅かに届かず、董胡は増水した濁流へ流された。

尊武の飛び込み

尊武は董胡に二度と関わりたくないと思いながらも、考えるより早く崖から飛び込んでいた。

尊武は滝壺から濁流へ流される董胡を追い、二人はユラの思惑から外れたまま激流にのみ込まれていった。

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