小説「皇帝の薬膳妃 白虎の后と桜の恋慕」感想・ネタバレ

小説「皇帝の薬膳妃 白虎の后と桜の恋慕」感想・ネタバレ

どんな本?

本作は、薬膳師と妃という二重生活を送る主人公・董胡が、王宮内外の陰謀に巻き込まれながらも、自身の信じる道を貫く姿を描いたアジアンファンタジーである。前巻で高原の民・ロー族に攫われるも、危機を乗り越え王宮に戻った董胡は、白虎の姫・雪白から病の診察を依頼される。雪白は、白虎の侍女頭・帰莎と皇帝の侍女頭・奏優が結託して自分を呪っていると疑いを抱いていた。さらに、董胡に対する悪い噂が白虎から流れていることが判明し、董胡は否応なく一連の騒動に巻き込まれていく。一方、皇帝・黎司は董胡の秘密に迫ろうとしていた。本作は、董胡と黎司が新たな一歩を踏み出す、シリーズ第7弾である。

主要キャラクター
董胡(とうこ):薬膳師と妃の二重生活を送る主人公。
雪白(せっぱく):白虎の姫。病の診察を董胡に依頼する。
帰莎(きさ):白虎の侍女頭。雪白から疑いをかけられる。
奏優(そうゆう):皇帝の侍女頭。帰莎と共に雪白を呪っていると疑われる。
黎司(れいし):皇帝。董胡の秘密に迫ろうとする。

物語の特徴
本作は、王宮内の複雑な人間関係と陰謀を描きながら、主人公・董胡の成長と信念を描いた作品である。薬膳師としての知識と妃としての立場を活かし、困難に立ち向かう董胡の姿が魅力的である。また、黎司との関係性の変化や、白虎の后宮での出来事が物語に深みを与えている。

出版情報
• 著者:尾道 理子
• イラスト:名司生
• 出版社:KADOKAWA
• レーベル:角川文庫
• 発売日:2024年5月24日
• 判型:文庫判
• ページ数:256ページ
• 定価:748円(本体680円+税)
• ISBN:9784041149317

読んだ本のタイトル

皇帝の薬膳妃 白虎の后と桜の恋慕
著者:尾道 理子

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あらすじ・内容

もう少しだけ、このままで――。大人気王宮ファンタジー第7弾!

薬膳師と妃の二重生活を送る董胡は、青龍の東に住む高原の民・ロー族に攫われるも、なんとか危機を乗り越え再び王宮での日常が戻ってきていた。
ある日、董胡は白虎の姫である雪白に、病を診てほしいと呼び出される。陰気な雰囲気が漂う白虎の后宮に気後れする董胡だったが、雪白から打ち明けられたのは、白虎の侍女頭の帰莎と皇帝の侍女頭である奏優が結託して雪白を呪っているという疑惑だった。さらには鼓濤に対する悪い噂が白虎から流れていることがわかり、帰莎と奏優への疑いが増すも、どこか釈然としない一連の騒動に董胡は否応なく巻き込まれていく。そんな中、雪白懐妊の知らせが!?
一方、黎司は董胡の秘密に迫ろうとしていた――。

もう少しだけ、このままでいたい。自分の信じる道を生きると決めた董胡と、彼女を見守る黎司が新たな一歩を踏み出す、アジアンファンタジー第7弾!

皇帝の薬膳妃 白虎の后と桜の恋慕

感想

危機を越えた董胡と揺れる王宮

青龍の東に住むロー族に攫われるという危機を乗り越えた董胡は、再び王宮での日常へと戻った。
だが、白虎后宮を巡る一連の騒動に巻き込まれたことで、安息には程遠い現実が浮き彫りになった。
董胡自身の強さと優しさがにじむ場面も多く、彼女の成長をあらためて実感した巻であった。

白虎后宮の陰謀と違和感

白虎の姫・雪白を中心に、また新たな騒動が巻き起こった。主人公である鼓濤が糾弾される展開には胸がざわついたが、后・朱璃が毅然と反論してくれた場面には大きな安堵を覚えた。
ただし、しっかりとした処分が下されなかったことにはモヤモヤしたものが残った。火種が燻り続けるような不穏な空気があり、安心して見守れない感覚があった。

嘘と疑惑の連鎖

雪白から持ちかけられた、白虎の侍女頭・帰莎と皇帝の侍女頭・奏優による呪詛疑惑。
それに加えて、鼓濤への悪い噂が白虎から広まっているという事実が重なり、疑念はますます深まっていった。
しかし、雪白自身が嘘に嘘を重ねる姿には、どこまでが現実でどこからが妄想なのか、その境界すら見失っているような怖さを感じた。
このあたり、物語に漂う空恐ろしい雰囲気が非常に印象的であった。

黎司の思惑と今後への不安

物語終盤、皇帝・黎司が董胡の秘密に近づきつつある描写があり、さらに、彼が楊庵を縛り付けようとする動きが示された。
この展開には素直に喜べず、今後の彼らの関係に暗い影を落とすような不安を感じた。
黎司の心情の揺れが伝わってきただけに、次巻以降の展開から目が離せない。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

二重生活を送る董胡の日々
薬膳料理を愛する平民育ちの董胡は、成り行きから皇帝・黎司の一の后・鼓濤と、男装の后付き専属薬膳師の二役を務めながら王宮で暮らしていた。董胡は、五年前に出会った黎司に男子だと誤解され、自身の素性を明かせぬまま日々を送っていた。

青龍への派遣と尊武との確執
董胡の秘密に気付いた異母兄・尊武に半ば脅される形で、特使団の一員として青龍の地に赴くこととなった。董胡は得意の料理で使部として尊武に接近し、彼の弱みを探ろうとしたが、冷酷で捉えどころのない尊武に翻弄され続けた。

高原の民・ロー族による拉致と試練
董胡は、青龍の東に住む高原の民・ロー族に攫われるという失態を犯した。彼女は、族長の息子が患う未知の病の治療を命じられ、見たことのない症例に困惑しながらも、シャーマンとしての力を覚醒させた少年・カザルの助力を得て解決への道を模索した。

失われた育ての親・卜殷との再会
山奥で董胡は、行方不明となっていた育ての親・卜殷と再会を果たした。卜殷から自身の生い立ちに関わる秘密を知らされ、さらに詳しい事情を知る存在として「白龍」と呼ばれる麒麟の医官の存在を教えられた。

尊武の救出と王宮への帰還
尊武は腹を立てながらも董胡を救出に現れ、二人はともに無事に王宮へ戻ることができた。董胡は、幾多の危機を乗り越えた安堵の中にあったが、平穏は長くは続かなかった。

白虎の后宮での新たな騒動の兆し
董胡が危機を脱した直後、今度は白虎の后宮において新たな騒動の火種が持ち上がろうとしていた。董胡は再び巻き込まれ、さらなる波乱の運命に立ち向かうことを余儀なくされるのであった。

一、厩舎の青鬣馬

黎司の夢と動揺
黎司は妓楼に迷い込んだかのような夢を見ていた。そこで彼は艶やかな装いの妓女に扮した董胡と出会い、戸惑いながらも惹かれていった。夢から覚めた黎司は、現実に戻りながらも、董胡を抱きしめた際に得た不思議な安堵感に思いを巡らせた。

翠明とのやりとりと黎司の自覚
黎司は側近の翠明に抱きつかせ、董胡を抱いたときの感触との違いを確かめようとした。翠明は黎司の行動に狼狽しつつも、黎司の心情を理解しようとした。黎司は自らの中に芽生えた董胡への特別な感情に気付き始めた。

董胡と青鬣馬・蒼天との再会
董胡は青鬣馬を見に黄軍の厩舎を訪れた。黎司に誘われ、仔馬「蒼天」との再会を果たし、成長した姿に感動した。黎司は董胡の手に自らの手を重ね、董胡の華奢な体格を気にかけた。董胡は黎司の視線に戸惑いながらも、再会を喜んだ。

黎司と董胡の思い出の確認
董胡は高原で黎司に救われた出来事が夢ではなく現実であったと証言した。黎司は董胡に渡した髪を返されそうになったが、それを董胡に持ち続けて欲しいと頼み、彼女との絆を大切に思う気持ちを示した。

董胡の報告と尊武の評価
董胡は青龍での出来事を黎司に報告し、尊武の冷酷さと危険性を訴えた。しかし黎司は、尊武の行動を厳しくも正しいものと評価した。青龍の医術界の腐敗を断つためには必要な犠牲であったと説明した。

黎司の思想と平等な世への願い
黎司は、法や社会の不平等に疑問を持ち、変革を望む思いを董胡に語った。黎司は董胡や尊武のように、自分の心に正直に生きる者たちこそが理想の未来を築く存在であると考えていた。董胡もまた、自らの生き方を肯定され、黎司を支えたいという思いを新たにした。

蒼天への命名と尊武の出現
黎司と董胡は青鬣馬に「蒼天」という名を付けた。そこへ尊武が現れ、蒼天に触れようとしたが馬は怯えた。黎司は尊武に感謝を述べつつも、彼に残るよう命じ、董胡を尊武との気まずい場から解放した。

二、白虎の后

桜の塩漬け作りと静かな日常
董胡は王宮に戻り、春の訪れを感じながら后宮の八重桜の花を摘み、桜の花の塩漬け作りに励んでいた。茶民と壇々も塩漬け作りに興味を持ち、和やかな空気の中で日々を過ごしていた。

白虎の后からの文と診察依頼
そんな日常を破るように、侍女頭の王琳が白虎の后からの文を持参して現れた。文には董胡に診察を依頼したい旨が記されており、董胡は躊躇しながらも、病人を見捨てることができず白虎の后宮へ向かう決意を固めた。

白虎の后宮の陰気な雰囲気
董胡は白虎の后宮を訪れると、冷えた空気と疲弊した侍女たちの姿に違和感を覚えた。侍女たちは痩せ細り、鞭打たれた痕跡も見え、支配的な雰囲気が后宮全体を覆っていた。

后雪白との出会いと問診
后雪白は董胡を迎え、問診を求めた。雪白は侍女頭・帰莎を恐れ、侍女たちを退出させた後、自らが呪われていると告げた。董胡は驚きつつも、雪白の訴えに耳を傾けた。

帰莎と奏優への疑念
雪白は、侍女頭・帰莎と帝の侍女頭・奏優が共謀し、自分を呪って陥れようとしていると語った。奏優は黎司に一目惚れした過去を持ち、雪白が后になったことに強い嫉妬を抱いていたという。

奏優の脅威と董胡の不安
奏優が玄武の后に対しても敵意を向け、董胡の正体を暴こうと企んでいることを雪白から知らされた。董胡は鼓濤としての立場を守るため、奏優への警戒を強めざるを得なかった。

雪白の孤独と懇願
雪白は周囲に味方がいない孤独を訴え、董胡に黎司への口添えを求めた。しかし董胡は慎重に断り、医官としてできる範囲で気鬱を和らげる処方箋だけを渡すことに留めた。

雪白との友好関係の芽生え
雪白は董胡に対し、玄武の后との友好を深めたいと願いを伝えた。董胡はこれを受け入れ、将来的には奏優の動向を探るためにも雪白との連携を検討することにした。

三、花宴の節

花宴の節と董胡と朱璃の対話
王宮の大庭園では、満開の桜の下で帝主催の花宴の節が開かれ、四公や后たち、重臣たちが雅楽と舞を楽しんでいた。その中、御簾の内に招かれた董胡は、朱璃から角宿行きについて無断で行動したことを叱責された。朱璃は董胡を案じ、亡き濤麗への思いも重ねながら、彼女を守りたいと強く訴えた。

董胡の生い立ちと濤麗の死の真相
董胡は、角宿で得た情報を朱璃に打ち明けた。育ての親・卜殷と再会し、自身が濤麗の娘であること、母が逃亡中に何者かに斬られて命を落としたこと、そして濤麗の死の真相を知る唯一の存在が盲目の専属医師・白龍であることを語った。

白龍探しへの決意と朱璃の計画
董胡は白龍を探し出すことに意欲を示したが、簡単に出向ける場所ではなかった。朱璃は、自らも董胡と共に白虎へ向かう策を思いつき、董胡に旅支度を命じた。朱璃は王宮を離れる計画に胸を躍らせ、不敵な笑みを浮かべた。

宴の最中に寄せられた不穏な噂
その後、朱璃と董胡は桜の塩漬けで花茶を楽しもうとしていたが、青龍の侍女頭・鱗々が訪れ、玄武の后にまつわる不穏な噂を伝えた。玄武の后は偽者であるという根も葉もない噂が下働きたちの間で広まっており、特に白虎の后宮から発信されている疑いがあった。

白虎后宮の策略と雪白への疑念
董胡は、先日訪れた白虎の后・雪白の様子や、侍女頭・奏優の動向を朱璃に報告した。雪白が董胡に、黎司の寵愛を得るための口添えを求めたことに対し、朱璃は強い不快感を示した。朱璃は、雪白が無邪気を装いながら策略を巡らしている可能性を指摘し、董胡に今後関わらぬよう厳命した。

朱璃の方針と今後の警戒態勢
朱璃は董胡に、雪白や奏優にはこれ以上関わらないよう命じ、大朝会で禰古を通じて奏優の動向を探ることを決めた。董胡は不安を覚えつつも朱璃の指示に従い、宴の終わりを迎えた。

四、動き出す雪白

黎司の葛藤と董胡への疑念
花宴が終わり、日常を取り戻した王宮で、黎司は貴人回廊を渡りながら、過去に董胡と出会った日のことを思い返していた。再会した董胡が五年経っても少年のようであることに疑問を抱き、心の中で疑念を深め続けていた。

白虎の后宮への訪問
黎司は本来玄武の后宮へ向かう予定だったが、奏優に促され白虎の后宮を訪れることになった。白虎の后・雪白は黎司を歓迎し、真っ白な部屋に黎司を迎えた。黎司は、后宮の陰気な空気と雪白の卑下するような態度に重苦しさを感じていた。

雪白の懇願と孤独の告白
雪白は黎司に人払いを求め、二人きりとなった中で自らの孤独を語った。義父にも見捨てられ、侍女にも冷たくされ、后宮で孤立している現状を涙ながらに訴えた。黎司は慰めつつも、どう対処すべきか迷いを覚えた。

帰莎と奏優への疑念
雪白は侍女頭・帰莎から鞭打たれた傷を見せ、さらに奏優が自分を裏切ったと告白した。奏優が帰莎と結託して自分を虐げていると信じており、黎司に助けを求めた。黎司は半信半疑ながら、鞭打ちの痕に心を痛めた。

呪具の発見と雪白の恐怖
雪白は寝所の床下から見つけた呪具の存在を明かした。藁人形に自らの髪が使われており、帰莎が自分を呪い殺そうとしていると怯えていた。黎司は呪具を専門の神官に依頼して処理することを約束し、雪白を安心させた。

不意の接触と誤解の発生
帰ろうとした黎司を雪白が引き止め、足をもつれさせて転倒しかけたところを黎司が支えた。その際、雪白の衣装が大きく乱れ、偶然にも侍女や近従たちに見られてしまった。侍女たちは慌てて退出し、誤解を招く結果となった。

黎司の後悔と雪白の微笑み
黎司は弁明せず、雪白の体面を守るため静かに場を収めた。雪白は黎司に支えられたことを感謝し、うっとりと微笑んだ。黎司は重い心を抱えたまま皇宮へと帰還した。

五、久しぶりの薬庫

薬庫での再会と万寿とのやり取り
董胡は青龍での任務を終え、久しぶりに薬庫を訪れ、万寿に挨拶を交わした。万寿は董胡の旅立ち前に貸した薬籠について話し、使用後の傷や生薬の減り具合に驚きを見せた。董胡は薬籠を買い取りたいと申し出、万寿は新たな生薬を準備することを引き受けた。

楊庵との再会と偵徳・卜殷の話題
万寿が奥に引っ込んだ後、董胡は楊庵と二人きりとなり、偵徳のその後について尋ねた。偵徳は董胡の処方した生薬のおかげで回復し、現在は尊武の弱みを探ろうとしていることが明かされた。楊庵もまた、卜殷の過去や失踪について疑問を抱いており、董胡は断片的に卜殷の事情を説明した。

楊庵の過去と卜殷への思い
楊庵は幼少期、道端に捨てられ瀕死だったところを卜殷に救われた過去を語った。卜殷は彼に「この子を守るように」と託し、楊庵はその約束を胸に董胡を守り続けてきたことが明かされた。董胡は楊庵を自由にさせたいと願うが、楊庵は反発し、怒りを見せた。

喧嘩と万寿の仲裁
楊庵と董胡の間に微妙な空気が流れる中、万寿が生薬を持って戻り、軽く二人を仲裁した。楊庵はそのままむっつりとしたまま薬庫を去り、董胡は自らの言葉が楊庵を傷つけたことに後悔の念を抱いた。

広がる悪意ある噂と董胡の不安
生薬の確認中、万寿は玄武の后についての悪意ある噂を耳にしたことを董胡に伝えた。それは白虎から来た処方箋に関連し、玄武の后が「平民上がりの偽者」であるというものであった。董胡はそれが奏優によるものと察し、不安を募らせたまま薬庫を後にした。

六、帝の桜御膳

黎司の訪問と董胡の給仕
黎司は久しぶりに玄武の后宮を訪れ、董胡に給仕を願い出た。董胡は黎司のために桜の花をあしらった春の料理「桜御膳」を用意し、二人きりの静かな時間を過ごした。黎司は桜鯛や菜の花の料理を楽しみながら董胡の心遣いに感謝した。

董胡と黎司の交流と心の距離
食事を終えた後、黎司は董胡の手に触れ、その小ささと努力を称えた。董胡が医師として生きるために重ねた苦労に思いを馳せ、黎司は彼女を労った。董胡は黎司の優しさに胸を打たれつつ、楊庵の自由を願う自身の思いを伝えた。

楊庵の自由と董胡の選択
董胡は、もし楊庵が密偵を辞めたがった際には自由にしてほしいと黎司に頼み、黎司はこれを快く受け入れた。一方で黎司は董胡にも未来の選択肢を示し、翠明の養子となり専属薬膳師になる道を提案したが、董胡は今のまま玄武の后宮で医師として生きることを選んだ。

黎司の改革と董胡の希望
黎司は董胡との約束を胸に、女性医師育成のための麒麟寮設立を目指すと語った。これまで叶わなかった女性医師への道を切り開こうとする黎司の決意は、董胡にとっても大きな希望となった。

白虎の后宮の問題と奏優への疑念
黎司は白虎の后・雪白の後宮で呪具騒動が起きたことを打ち明けた。呪具が発見されながらも証拠が消され、雪白は不安定な状態に陥っていた。董胡は雪白の診察時の様子や奏優の関与の可能性について報告し、黎司は奏優への注意を決意した。

董胡の不安と黎司の信頼
董胡は、奏優が広めた玄武の后に関する悪意ある噂を黎司に伝えた。黎司はそれを信じず、鼓濤への詮索をしないと明言した。董胡は黎司の優しさに感謝しつつも、いずれ自らの正体を告白すべき時が来ることを思い、恐れを抱きながらも心を決めた。

七、雪白懐妊?

大朝会での異変と奏優の動き
黎司との面会の翌日、大朝会が開かれた。王琳は序列の変動に驚き、初めて白虎が筆頭となったことに違和感を抱いた。奏優は帝が白虎の后宮に頻繁に通っていることを誇らしげに話し、王琳に対しても厳しい態度を取った。董胡は奏優への警戒心を強め、事態の背後にある不穏な動きを感じ取った。

桜餅作りと白虎の后宮の贅沢
董胡は茶民と壇々と共に桜餅作りに励んでいたが、その中で白虎の后宮が贅沢な注文を繰り返しているという噂を耳にした。衣装や宝飾品、雅楽の演者まで呼んでお茶会を開く雪白の様子に、董胡は不安を覚えた。侍女たちは董胡に帝の寵愛を取り戻すよう急かしたが、董胡は冷静さを保ちつつ、今は状況を見守るしかないと考えた。

万寿への桜餅の贈り物と意外な報告
董胡は薬庫の万寿に桜餅を届け、さらに楊庵への土産も託した。万寿は董胡に、妻の懐妊と悪阻の症状を告げ、さらに気になる噂を漏らした。最近、小半夏加茯苓湯という悪阻用の薬を頻繁に処方する貴族医官がいること、しかもそれが白虎の后宮に関係しているらしいという情報であった。

白虎后宮での懐妊疑惑
万寿の話によれば、夜間に処方箋を受け取りに来たのは白虎の后宮の使いであり、隠す様子もなかったことから、懐妊は確実視されていた。董胡は雪白の懐妊を疑い、衝撃を受けながら后宮へ戻った。

八、尊武の来訪

雪白懐妊の噂と董胡の動揺
万寿から白虎の后・雪白の懐妊疑惑を聞いた董胡は、落ち着かない日々を過ごしていた。噂は雑仕を通じて各宮中に広まり、侍女たちも動揺を隠せず、鼓濤である董胡に不安を訴えた。董胡は帝が雪白に心を許した可能性を受け入れきれず、複雑な感情に苛まれていた。

董胡と侍女たちの葛藤
侍女たちは、帝の寵愛が白虎の后に移ることを嘆き、朱璃や翠蓮の方がふさわしいと口々に訴えた。董胡自身も、雪白の后宮の陰気な雰囲気や不穏な動きを思い返しながら、心から雪白を受け入れられずにいた。帝が雪白に惹かれた理由を理解しようと努めるものの、内心では納得できずにいた。

尊武からの使者と新たな提案
そんな中、侍女頭・王琳から尊武の文が届けられた。文には、翌日董胡を訪ねるので饅頭を用意せよと一方的な命令が書かれていた。董胡は憤りつつも、王琳の助言に従い、尊武を懐柔するために饅頭を準備することを決めた。

尊武との再会と饅頭のもてなし
翌日、尊武が董胡を訪ねてきた。董胡は一口饅頭を用意して歓待し、尊武は無言のまま大量の饅頭を平らげた。饅頭に満足した尊武は、董胡に対して、青龍での出来事を蒸し返しつつも、微妙な牽制を加えた。

尊武による問い詰めと董胡の動揺
尊武は、董胡が黎司と寝所を共にしたかのような示唆をし、董胡を激しく動揺させた。さらに、董胡が帝にとってただ料理目当ての存在であり、本当の后として認められていないと突き放す言葉を投げかけた。董胡は否定もできず、苦しみを深めた。

白虎の后懐妊疑惑の真相
尊武は、白虎の后の懐妊疑惑について、確証はないものの玄武公から調査を命じられていることを明かした。そして翌日、宮内局の局頭である自らが直接白虎の后の診察に赴く予定であると告げた。

董胡への誘いと葛藤
尊武は董胡に、自らの使部として診察に同行するよう誘った。董胡は王琳から反対されるも、白虎の后の懐妊が本当か確かめたいという思いに抗えず、同行を決意した。

九、雪白の診断

白虎の后宮への往診と尊武の指揮
董胡は王琳ら侍女たちの反対を押し切り、尊武率いる典医寮の医師団とともに白虎の后宮へ赴いた。感染症対策のため顔を覆った一団は、緊張感の中、雪白の御座所に案内された。雪白は男性医師に診察されることを嫌がったが、尊武の説得により診察を受け入れた。

産巫女・犀爬の登場と診察開始
診察には女性の産巫女・犀爬も同行しており、雪白の診察を担当することとなった。犀爬は麒麟の社に仕える産巫女であり、貴族の姫君の出産にも立ち会う経験豊かな存在であった。董胡は彼女に同志のような親近感を抱いたが、相手は董胡を男性と思い込み、敵意を示した。

懐妊診断と薬湯の調合
尊武は雪白に脈診と舌診を行い、悪阻のような症状を確認した。董胡は薬草の選別を担当し、毒物が混入していないことを確かめたうえで、悪阻緩和の薬湯を用意した。診察の結果、懐妊の確証は得られず、帰莎をはじめ后宮側の者たちは動揺した。

診察後の局頭室での真実の告白
診察終了後、董胡は尊武と犀爬に呼び出され、犀爬から「雪白は懐妊していない」という衝撃の事実を聞かされた。雪白の症状は偽りであり、帝の関心を引くための虚偽であった。さらに、雪白には皇帝に嫁ぐ以前から複数の男性との関係があった可能性が指摘された。

尊武の策略と董胡の困惑
尊武はこの事実を楽しげに語り、董胡に対しても、帝の寵愛を巡る宮廷の厳しさを警告した。董胡は尊武の冷酷な策略に怒りと憤りを覚えながらも、黎司への影響を心から案じていた。尊武は董胡をからかい、帝に対して何もできない無力さを突きつけた。

十、朱璃の企み

雪白の噂と董胡の葛藤
雪白の懐妊疑惑がいまだに広まる中、董胡は噂が自然と収束するのを待ちつつ、もやもやした日々を送っていた。黎司は玄武の后宮を訪れず、白虎の后宮ばかりに通っていると聞かされ、董胡は複雑な思いを抱えていた。雪白の言動に対しては、噓と真実の境界が曖昧で、董胡は黎司が振り回されるのではないかと案じていた。

朱璃との后同士の茶会
董胡は玄武の后宮に朱璃を招き、正式な后同士のお茶会を開いた。朱璃とその侍女・禰古は、帝の白虎贔屓に怒りを露わにし、董胡に積極的な行動を求めた。董胡は雪白の懐妊が誤報であったこと、呪具事件への対応のため帝が白虎に通っていることを説明し、二人を安心させた。

雪白への警戒と朱璃の見解
朱璃は雪白を「厄介な存在」と評し、被害者意識が強く噓を自覚せずにつくタイプだと指摘した。このような人物は周囲を疑心暗鬼にし、人間関係を崩壊させる危険性があると語った。朱璃は、もし雪白が皇后となれば国を揺るがす恐れがあると警告した。

皇后となる覚悟を促す朱璃
朱璃は董胡に皇后となる覚悟を迫り、自らも董胡の補佐役として王宮に留まる決意を表明した。董胡は戸惑いながらも、朱璃の真剣な思いに心を動かされ、黎司に真実を打ち明ける決意を固めた。

白龍探しと子宝祈願計画
董胡は白龍に会うことができれば心の迷いを晴らせると感じ、朱璃は白虎にある麒麟の大社への子宝祈願を口実に、董胡を外出させる計画を立てた。朱璃は自らの一番弟子・綺羅の興行を兼ねて大規模な外出を企画し、帝を説得するつもりであった。

和やかな茶会と突然の乱入
朱璃と董胡、禰古は蓬団子を楽しみながら和やかに談笑していたが、突如として奏優が御座所に乱入した。奏優は薬膳師・董胡を名指しで呼び出し、場の空気を一変させた。

十一、奏優乱入

奏優の乱入と董胡への糾弾
朱璃と董胡が開いていた后同士の茶会に、奏優が無礼にも乱入した。奏優は朱璃や禰古にも面識があり、場の空気を乱したが、朱璃の威圧により一時的に従った。その後、奏優は白虎の后・雪白が流産したと告げ、董胡に責任があると主張した。

雪白の流産疑惑と奏優の告発
奏優は、玄武の医師団が雪白の懐妊を認めなかったのは偏見によるものであり、実際には懐妊していたと訴えた。さらに、董胡が毒を盛ったと断定し、奏優は董胡と鼓濤を共謀者として糾弾した。奏優の言葉は噂や誤解に基づくものであったが、彼女は信念を持って董胡を罪人として扱おうとした。

朱璃の反論と奏優の矛盾
朱璃は奏優の主張に対して冷静に反論し、奏優自身が噂を拡散したことを指摘した。奏優は雪白を励ますために董胡への中傷を語っただけと弁明したが、その軽率な言動が王宮全体に悪影響を与えていることを理解していなかった。

奏優の真意と董胡の対応
奏優は董胡を追い詰めることで、黎司を守りたいという純粋な動機から行動していた。董胡は奏優の敵意を理解しつつも、対立を避けるため、奏優に頭を下げ、黎司の回復まで自身の存在を許すよう懇願した。奏優はこの譲歩に満足し、一時的に騒ぎを収める姿勢を見せた。

雪白の虚言と奏優の盲信
朱璃は雪白が嘘をついている可能性を指摘したが、奏優は高貴な姫君は嘘をつかないと信じて疑わなかった。雪白の高貴な出自への盲目的な信頼が、奏優の偏った判断を助長していた。

奏優の要求と董胡への危機
奏優は再び態度を硬化させ、董胡を捕らえようと役人を呼びに行こうとした。しかしその直前、帝・黎司が現れたとの報せが届き、場の空気が一変した。奏優は顔面蒼白となり、事態は新たな局面を迎えた。

十二、雪白の噓

黎司の登場と奏優の狼狽
奏優が玄武の后宮で騒動を起こしていたところへ黎司が現れ、奏優を厳しく問いただした。奏優は、雪白から届いた手紙に従ったと主張し、董胡が雪白を害したと訴えたが、黎司は冷静に否定した。

帰莎の捕縛と真実の告白
黎司は白虎の后宮から侍女頭・帰莎を連行させ、彼女から事情を聞き出した。帰莎は雪白の懐妊が虚偽であり、董胡の無実も証言した。さらに、雪白が奏優と帰莎に呪具を仕掛けたと嘘を吹き込み、黎司を欺こうとしていたことも明らかになった。

奏優の動揺と盲信の崩壊
奏優は雪白を盲信していたため真実を受け入れられず混乱した。しかし帰莎や黎司の説明により、雪白が嘘を重ねていた事実にようやく気付き、董胡に対して深く謝罪した。

白虎后宮の問題と雪白の策略
帰莎は、白虎后宮では下働きに対して鞭打ちが横行していたことも告白した。さらに、雪白が自らの腕に鞭傷をつけ同情を誘ったことも明かされた。董胡は、侍女頭である帰莎が不正を見過ごしてきた責任を指摘した。

鼓濤の正直な告白と人々の信念
董胡は、白虎后宮の診察に自らの薬膳師を送り込んでいたことを自ら明かした。目的は毒を盛るためではなく、悪意ある者から胎児を守るためであった。董胡は信じる自由について語り、帰莎と奏優に各々の判断を委ねた。

奏優と帰莎の処分と復帰
奏優と帰莎は三日間の謹慎を命じられたが、鼓濤の助けもあり、謹慎後は復帰を許された。雪白については大事にせず、彼女の贅沢品は没収し、帰莎に監視を命じる形で決着した。

奏優の改心と黎司への誓い
謹慎後、奏優は黎司に謝罪し、今後は公平な侍女頭であると誓った。奏優は改めて鼓濤の聡明さと寛容さに感服し、自身の浅慮を恥じた。

董胡と朱璃の後宮計画
董胡と朱璃は雪白騒動の後、改めて朱雀の后宮で茶会を開いた。朱璃は白虎への子宝祈願の旅を華やかな后行列で行う計画を立て、董胡を中心に進めるべく着々と準備を整えていた。董胡は不安を抱きつつも、朱璃の勢いに押され準備を進めることとなった。

十三、黎司の決意

楊庵の呼び出しと黎司の登場
董胡と朱璃が白虎行きを企てていたころ、楊庵は皇宮の隠し部屋に呼び出された。いつもとは異なり、今回楊庵の前に現れたのは皇帝・黎司本人であった。黎司は楊庵の青龍での働きを賞賛し、直々に褒美を授けようと現れたのであった。

黎司との再会と過去の告白
黎司は、五年前に斗宿で楊庵と出会ったことを明かし、楊庵を驚かせた。楊庵は黎司がかつての高慢な貴人であったことを思い出し、動揺した。さらに、黎司がこれまで密かに楊庵に指示を出していたこと、董胡にも身分を明かしたことを告げた。

董胡の秘密と黎司の意図
黎司は、董胡が女性である可能性を楊庵に確認したかったが、楊庵は必死に董胡が男であると主張した。黎司は董胡の正体を問い詰める意図はなく、むしろ董胡を守りたいと考えていた。

尊武の脅威と黎司の危機感
黎司は、董胡が青龍に赴いた背景に尊武の脅迫があった可能性を示唆した。董胡が女性であることが露見すれば、薬膳師の地位を失い、重い処罰を受ける危険があることを楊庵に伝えた。

女性医師制度の構想と未来への希望
黎司は、女性でも正式に医師免状を得られるよう新たな麒麟寮を設立する計画を明かした。董胡が女性医師として堂々と生きられる未来を目指すことが、黎司の償いであり恩返しであると語った。

楊庵への密命と木札の授与
黎司は楊庵に董胡専属の密偵となるよう命じ、いざという時には董胡を王宮から逃がして麒麟の社に匿う役目を託した。楊庵には特別な木札が与えられ、自由に伍尭國を移動できる権利も与えられた。

黎司の葛藤と楊庵の決意
黎司は、自身が皇帝であるために董胡を女性として受け入れることができず、后たちの嫉妬や権力闘争から董胡を守れない現実を嘆いた。そして楊庵に、董胡が望む未来を選べるよう守り抜くことを改めて頼んだ。楊庵は、自身の存在意義を見出し、董胡を守る決意を新たにした。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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