「戦国小町苦労譚 6 崩落、背徳の延暦寺」【感想・ネタバレ】

「戦国小町苦労譚 6 崩落、背徳の延暦寺」【感想・ネタバレ】

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どんな本?

戦国小町苦労譚は、夾竹桃氏によるライトノベル。
農業高校で学ぶ歴史好きな女子高生が戦国の時代へとタイムスリップし、織田信長の元で仕えるという展開が特徴。
元々は「小説家になろう」での連載がスタートし、後にアース・スターノベルから書籍としても登場。

その上、コミックアース・スターでも漫画の連載されている。

このシリーズは発行部数が200万部を突破している。

この作品は、主人公の静子が現代の知識や技術を用いて戦国時代の農業や内政を改革し、信長の天下統一を助けるという物語。
静子は信長の相談役として様々な問題に対処し、信長の家臣や他のタイムスリップ者と共に信長の無茶ブリに応える。

この物語には、歴史の事実や知識が散りばめられており、読者は戦国の時代の世界観を楽しむことができる。

戦国小町苦労譚

2016年に小説家になろうで、パクリ騒動があったらしいが、、、
利用規約違反、引用の問題だったらしい

前巻からのあらすじ

第一次信長包囲網で静子は遂に自らの手で人を殺める。

多勢に無勢の状態の中、ゲリラ戦術で相手の大軍を足止め。

それに戦慄する相手の雑兵達。。

でも、大軍が来る事は止められなかったせいで合戦が始まってしまう。

本来は討ち死するはずだった森可成を何とか救出。

読んだ本のタイトル

戦国小町苦労譚  6 崩落、背徳の延暦寺
著者:#夾竹桃 氏
イラスト:#平沢下戸 氏

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あらすじ・内容

1571(元亀2)年正月——宇佐山城で死闘を繰り広げた翌年、戦力として森可成を失うなど、信長軍の損失は激しかった。パワーバランスにも変化の兆しが見える中、静子は鏡、磁石、六分儀、測距儀、日時計コンパス、各種円形計算尺、機械式の海洋クロノメーター、スターリングエンジンの開発を今年の目標に据える。ついでにウルフドッグ交配や、カカオ栽培にまで!

一方、激化してゆく戦局に本気の戦いを見せることになった静子軍は・・・・・・

史実との相違が生じ始め、大注目の戦国ファンタジー、待望の第6巻!!

戦国小町苦労譚 六、 崩落、背徳の延暦寺

感想

織田包囲網に敗戦して大人しいと思われた織田家は衣食住を充実させて経済を回す。
敗戦とはいえ、主要な武将には犠牲者は無く。
兵卒も敗北とはいえ死者は少ない方だった。

ただ負けて自領に引き篭もったといったイメージが周辺に蔓延していたが、、

実際は戦略的に織田家の経済基盤は強固になり兵站は充実。

長島攻略

長島一揆が立て篭もる城には、補給線を遮断して、付城で相手の城を情報でも孤立させそこに新兵器のプラスティック爆弾で城門を破壊。


トドメに内紛の種も撒きまくって城内を混乱させる撤退ぶり。

あっという間に城が落ちてしまう。

そんな新戦術を信長がお気に入りの部下達(静子)にやらせたら大混乱が起きて長島から撤退。

長島から撤退した事で、世間的には織田軍は連敗を喫したという事になる。

でも、次の戦いは近い。

武田軍対策に火縄銃にライフリングして命中率を引き上げ、織田軍はさらに強固になる。

そんな織田家の全てに静子あり。

護る馬廻の慶次はハルバート、長可はバルディッシュとか傾奇いてる。

動物達も多種多様に増えてきた。

宣教師達から絶滅する動物を確保してもらい保護する事も忘れない。

サラッと梅毒の特効薬も開発。

地味に静子がチートだ。

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備忘録

元亀二年  比叡山延暦寺

千五百七十一年一月上旬

正月、信長の酒宴は年々豪華になっていた。祝い魚の三種に加え、様々な縁起を担ぐ料理が用意され、貴重な清酒が振る舞われた。信長は昨年、外交や合戦で大敗し、織田軍は指揮官不足に陥り、宿将の森可成の引退で軍内部の力関係が変わっていた。五大将の間で頂点を巡る牽制が始まり、静子も織田軍内で直接的な影響力を持ち始めた。静子軍は築城能力が高く、犠牲を最小限に抑える戦略を基本としていた。

静子は正月の加礼祗候のため出仕し、信長へ年頭の挨拶を行った。信長への挨拶が終われば酒宴に参加し、その後は織田家家臣への挨拶回りが続いた。武功を上げたことで静子は予算の獲得が容易になり、今年の開発計画として様々な技術の規格統一や量産を計画していた。特にスターリングエンジンの開発に期待を寄せていた。

スクリュープロペラの進捗については、九鬼水軍に問い合わせたが、開発が佳境であるため返事は期待できなかった。静子は無難な返事を送り、胡椒のハウス栽培の進捗を確認した。胡椒の生産量が増えれば、日本国内での需要も満たせると考えていたが、唐辛子の消費量が急増していた。

果樹園の様子を確認した後、静子は弓道場で訓練を行ったが、一人ではやる気が出ず、訓練を切り上げた。帰宅後、彩が出迎え、彼女の家庭事情を聞いた。彩は両親や兄弟を合戦で失い、信長に拾われた孤児であった。静子は彼女の過去を気にせず、態度を変えないことを伝えた。静子は彩の存在を通じて、彼女が大人びた子である理由を理解し、過去を気にしないよう促した。

静子の住む場所には温泉が湧いており、川へ排水されても枯渇の兆しがなかった。非火山性温泉であるが、その熱源は不明であった。川の近くには多くの動物が集まっていたが、ターキッシュアンゴラの「ハナ」は独自の暖かい場所を見つけ、そこで子猫を出産した。長可は水風呂に入り、子猫を見守っていた。

シェパードたちは発情期を迎え、静子はジャーマン・シェパード・ウルフドッグの育成計画を始めた。狼と犬の交配は難しく、初めは失敗が続いたが、徐々に成功した。静子は彼らの子孫が警備犬として活躍することを願っていた。

また、静子はオウギワシのつがいを揃えようとしていたが、困難に直面していた。静子はフロイスを通じて、カカオの苗木を入手し、温泉の湯気を利用したビニールハウスでの栽培を試みた。カカオの種は多くが腐っていたが、いくつかは無事に植えることができた。

静子は温泉の湯気を利用してビニールハウスを作り、そこで胡椒やカカオなどの熱帯植物を栽培することを計画していた。岡部の協力を得て、木製のビニールハウスを建設し、温泉の湯を使って熱帯雨林の気候を再現した。静子はコーヒーや南国果実の栽培も行い、日本唯一の南国果実の生産地を目指していた。

静子はチョコレートを作るためにカカオの栽培を進めたが、発酵や乾燥が難しく、すぐには現代のようなチョコレートを作ることができなかった。しかし、甘いものを好む信長のために、新しいお菓子を作ることを目指していた。

作業を終えた静子はビニールハウスを出て、外の寒さを感じながら、だらけた男たちに対してあきれた様子を見せていた。

千五百七十一年三月上旬

静子の住む場所には温泉が湧いており、その暖かさを求めて動物たちが集まっていた。慶次や長可、才蔵、奇妙丸らも暖を取るために集まっており、それぞれの時間を過ごしていた。慶次は翻訳をし、才蔵と爺は将棋を指し、奇妙丸は昼寝をし、長可は外でストレッチや筋トレをしていた。

奇妙丸は静子にビニールハウスについて尋ね、静子は飴サブと呼ばれるファクチスを使ったものであることを説明した。ビニールハウスの素材は安価で量産でき、ガラスを使用しなかったのは耐久性やコストの問題からであった。

一方で、子猫たちは長可の猫じゃらしに夢中で遊んでいた。長可は猫たちと戯れながら、ターキッシュアンゴラの去勢について静子に相談された。静子は去勢手術の技術が限られている中、二人の猫医者がいるが、彼らは猫好きでありながら仲が悪く、決定に悩んでいた。

その後、信長の命により、静子はまつの娘である蕭を侍女として受け入れることになった。蕭は静子に憧れており、侍女となることを喜んでいた。静子は侍女を与えられることに戸惑いながらも、必要な人材は自分で集める考えを持っていた。

さらに、静子はホップの栽培を始め、ビールの原材料を確保する計画を立てていた。静子軍は自由な生活を送っていたが、新たな任務を通じて様々な変化が訪れることを感じていた。

蕭はお市、茶々、初、お市の侍女、茶々の乳母、初の乳母を連れてきた。静子の広い部屋で彼らが集まると少し窮屈に感じた。静子は自己紹介をし、彼らに自由に呼んでほしいと伝えた。お市も自己紹介し、信長の指示でここに来たことを語った。

静子はお市に浅井長政と離れて暮らすことについて尋ねたが、お市は夫を励ますために来たと話した。信長は彼らを静子のもとに住まわせる計画を立て、茶々と初も侍女とする話にした。お市はこの計画に同意し、静子と協力して生活することを約束した。

その後、長可が突然現れ、ある人物を連れてきた。彼はその人物と争いを起こしたため、静子に処罰され、果樹園までの往復を命じられた。長可は砂時計が落ちきるまでの間に8周を完了し、その後、膝が震えていた。

昼食後、お市たちは帰宅し、静子の家に蕭と藤堂与吉(高虎)だけが残った。静子は自己紹介し、俸禄や物資の管理について説明した。また、彼女は動物たちについても注意を促した。

高虎は静子に対し、自分の以前の考えが誤っていたことを認め、反省した。彼は静子のもとで学びたいと誓い、静子は彼の覚悟を受け入れた。

静子軍に藤堂高虎が加わり、静子にまつの次女・蕭とお市の長女・茶々が侍女として与えられた。茶々が侍女になることは、お市を静子のもとに住まわせるための口実に過ぎなかった。高虎の基礎訓練は長可が担当し、槍や礼儀作法は才蔵が教え、慶次が補佐した。高虎は己の未熟を悟り、3人の厳しい訓練に耐えた。静子は高虎に築城の知識を教え、黒鍬衆からも学ばせた。

蕭は元気が良く、負けず嫌いな娘であり、薙刀を得意としていたが、才蔵には勝てなかった。彼女は侍女の仕事を忘れ、才蔵に勝負を挑んでいた。

三月になると静子が依頼した品々が次々と届き、彼女は生産者として利益を上げた。農作物や工芸品、海産物の収益で莫大な利益を得ていた。静子はその利益を活用して技術街に発注をかけ、技術や文化を進歩させるために努力した。

静子は潤沢な利益を慶次や才蔵、長可、兵士たちに分配し、さまざまなイベントを企画して人々に報奨金を提供した。金が人々に行き渡ることで、争い事が起きにくくなると静子は考えた。彼女は人々に快適な生活を提供し、寺社勢力の影響を排除することを目指した。

静子のもとには大量の経理書類が届き、彩がそれを処理していた。静子は彩を事務・経理担当、蕭を身の回りやスケジュール管理担当に分けた。彩の方を信用していたため、彼女を裏方に据えた。

静子は間者対策として意図的に情報を流し、嘘と真実を織り交ぜて間者を混乱させた。信長の動向を予測し、周辺国の状況を把握しつつ、静子は次の展開を考えていた。

玄朗が静子のもとに駆け寄ってきたところで、静子の思考は中断された。

千五百七十一年四月上旬

静子は伝令の報告を受けて信長の居館に向かうこととなった。信長からの呼び出しに応じ、護衛の兵や慶次、才蔵、長可、蕭を連れて出発した。信長の居館では信長を始め、森可成、竹中半兵衛、滝川、明智、足満が集まっていた。信長は周辺国との敵対関係を打破するために策を講じようとしていた。

信長は静子に対し、猿(豊臣秀吉)や竹中と共に浅井・朝倉を抑えるよう命じ、足満には信長と共に行動するよう指示した。静子はこの指示に基づき、兵の損害を最小限に抑える方法を考え、長島一向一揆に対する作戦を練った。

信長は静子の家を新調し、武家屋敷にする計画を持っていた。これにより、静子の身分に相応しい住まいを提供し、次の世代を育てるための環境を整えることを目的としていた。信長の計画により、静子の住む周辺も拡張され、隔離施設に近い状態となる予定であった。

静子は信長の話を受け入れつつ、尾張に到着後、軍を解散させた。家に帰ると、彼女は紅白の鯉や金魚の池で餌を与え、マヌルネコの丸太を抱えながら帰宅した。室内ではヴィットマンファミリーが雑魚寝しており、静子は丸太を床に下ろし、ビーチチェアでくつろいだ。室内は快適な環境が整えられており、静子は静かに過ごす時間を楽しんでいた。

四月に入ると、静子は京への定期的な巡回のために軍を率いて出発した。京は信長にとって重要な拠点であり、異常がないか監視する必要があったためである。静子の軍は、彼女を筆頭に慶次、才蔵、長可の三武将と兵500名で構成されていた。高虎はまだ時期尚早として留守番を命じられ、彩と蕭も留守番を務めた。

京への巡回は重要な仕事であるため、軍事行動と同様の装備で行われた。永楽銭紋旗を掲げた静子たちは、見た目には軍事行動を行っているように見えるが、実際には巡回であった。静子と慶次、才蔵、長可はそれぞれ特徴的な武器を持ち、その中でも静子の持つ儀礼用グレイヴ、クーゼが際立っていた。慶次はハルバード、長可はバルディッシュを持ち、才蔵はダマスカス鋼製の大身槍を手にしていた。

彼らは新しい武器に惚れ込み、合戦場で活躍した結果、それぞれの武器に由来する異名を得た。京に到着後、静子は軍を適切に配置し、兵たちに休息を与えた。また、金子を使わせることで京の経済を活性化させることも考慮していた。厳しい規律のもとで兵たちを管理しつつ、静子は慶次や長可を派手に遊ばせることで、兵たちの息抜きを図った。

静子は才蔵に対して、京での任務を期待し、彼の頼りにすることを伝えた。そして、才蔵の誠実な返事に満足し、静子は机に向かい仕事を始めた。

謙信は春日山城で織田領の情報、特に静子に関心を寄せていた。彼は、静子がただの近衛家の者ではなく、特別な能力を持つと確信していた。景綱は、静子が織田家を繁栄させ、民に安定した生活を提供していることに驚き、静子の強さがそこにあると謙信は説明した。静子の影響で織田軍の士気が高まり、民が織田軍に協力していると彼は語った。静子が宇佐山城を守ったことも織田軍の強さを示していた。

謙信は、織田と対峙する際には、静子軍の調査を命じた。彼は静子を重要視し、もし戦うことになったら、自分が敗れることで新しい世の中が到来することを受け入れる覚悟を持っていた。静子は、信長の試し合戦への参加命令に頭を抱えながらも、やむを得ず参加した。織田軍は明智、柴田、静子の軍を派遣し、試し合戦が始まった。

静子は自身の軍を率いて、規則に従い兵を選抜した。才蔵、慶次、長可がそれぞれ異なる役割を持ち、戦いに臨んだ。才蔵は突撃を担当し、戦場での活躍で和田軍を圧倒した。慶次も突撃し、静子の計画に従って合戦を進めた。戦闘は才蔵の活躍で織田軍の勝利に終わり、静子は才蔵の冷静さを取り戻させた。

静子軍の統制された動きは、周囲に強烈な印象を与えた。試し合戦を通じて、織田軍の規律と強さを見せつけ、信長の目的を果たすことができたのである。

千五百七十一年四月下旬

織田家の試し合戦では、静子軍、明智軍、柴田軍がそれぞれの強さを示し、観戦者を驚かせた。柴田軍は圧倒的な破壊力で相手を蹴散らし、明智軍は変幻自在の戦術で相手を翻弄した。結果的に、試し合戦は織田軍の強さを見せつける場となり、最終的に柴田軍が明智軍を破って優勝した。静子軍は3位となり、信長はこの結果をもって織田軍の威信を示すことに成功した。

試し合戦後、静子は和田惟政とルイス・フロイスらとの会談に臨んだ。和田からの文を受け取った静子は、その内容に賛同できずに拒絶した。この後、フロイスが突然倒れ、静子は彼が麻疹にかかっていることを確認した。京で麻疹が流行する可能性を察知した静子は、早急に対策を講じ、隔離病棟の準備を命じた。静子は、感染の拡大を防ぐために迅速に行動し、衛生兵たちと協力して病の封じ込めに努めた。

京で麻疹の流行が懸念されると静子が報告したことにより、明智をはじめとする織田家の面々は驚きを隠せなかった。信長もこの事態に衝撃を受け、即座に光秀や畿内の国人たちに静子の指示に従うよう命じた。流行病の抑制は織田家の力を示す絶好の機会と捉えられたためである。

静子は、感染が疑われる者を隔離し、適切な食事を提供するよう指示した。また、病と闘う衛生兵を配置し、迅速な対応を行った。麻疹は非常に感染力が強く、フロイスの感染発覚後、一週間で三千人以上の感染者が出た。

幸いにも、信長の指示に従い、畿内では適切な対応がなされたため、流行病の隙を突くような不届き者は現れなかった。静子は、麻疹が完治した患者に対しビタミンAを摂取させ、死亡率の低下を図った。結果として、畿内では死亡者数が抑えられ、織田家の影響力がない地域と比較して明らかな違いを示した。

間者の動きにも注意を払った静子は、ヴィットマンたちを呼び寄せ、屋敷の警護を強化した。その結果、間者が静子の屋敷に近づくのは困難となり、情報漏洩を防ぐことができた。間者の多くは静子軍の隊長たちにより始末され、生き残った間者は危険を察知し、京から撤退していった。

千五百七十一年五月中旬

麻疹の流行が収束し、感染者数が著しく減少した四月末、京の街は普段の静けさを取り戻した。織田家の影響力の及ばない地域では依然として麻疹が猛威を振るっていたが、京では再流行の可能性が低かった。これを受けて、静子は尾張への帰還を決断した。

静子は、疫病の防疫が完了したことに満足しつつも、書類整理や対応に追われる日々に疲れていた。長可や才蔵との会話では、彼らが書類仕事をサボっていたことも判明したが、静子は特に咎めることなく、京での政治的な誘いを避けるためにも早期の帰還を決めた。

京での静子の活躍は、多くの勢力から注目を集め、引き抜きの話が絶えなかった。流行病を防いだ功績が評価されたが、静子は信長以外に仕える気はなく、織田家の一員としての責務を果たすことを決意していた。

静子は帰還の準備を進め、翌日には尾張へ向かう計画を立てた。彼女は、自身の疲労を自覚しつつ、ヴィットマンたちを護衛に加えて警戒を強化した。最終的に、静子は疲れを癒すために早めの休息を取り、尾張での新たな展開に備えた。

静子は翌日、各勢力からの勧誘に断りの返事を出し、尾張へ帰還した。帰還後、信長からの朱印状を受け取り、長島一向一揆に関する内容を確認した。強行軍を必要としない内容であったため、静子は従軍した随員に二日間の休養を命じた。

二日後、静子は長島一向一揆の件を話し合うため、軍の幹部を招集した。招集されたのは、慶次、才蔵、長可、足満、弓騎兵隊の隊長である仁助と四吉の6人である。静子は、朱印状に「好きにしろ」と書かれていたため、独自の判断で動くことを決めた。

静子は作戦の主目的を雑賀衆の撃破とし、雑賀衆が本願寺に協力していることから、桑名方面からの補給を海路で妨害する計画を立てた。弓騎兵隊が船上で遠距離攻撃を行うことで補給隊を壊滅させる作戦を提案し、攻撃の準備を進めた。

また、静子は付城戦術を採用し、敵の拠点周囲に付城を築いて孤立させる計画を立てた。これにより、敵の援軍を防ぎ、降伏を促すことを目指した。

軍は三つに分けられた。第一軍は足満が指揮し、九鬼水軍と弓騎兵隊による海上封鎖と補給隊の壊滅を担当する。第二軍は慶次と長可が鯏浦砦を攻め、第三軍は静子と才蔵が一ノ江砦を攻めることとした。静子は資金を提供することを約束し、各自に準備を命じて会議を解散した。

1571年5月12日、信長は5万の兵を率いて伊勢に出陣し、第一次長島侵攻が開始された。信長の軍団は四つに分かれて攻め込み、静子隊は一ノ江砦方面から攻めた。静子は付城を建築し、一ノ江砦を攻撃するために全力を尽くした。付城はプレハブ工法を用い、一夜にして完成させられた。静子は棒火矢を用いて一ノ江砦を攻撃し、砦内部で火災を引き起こした。

一ノ江砦の一向衆は抵抗し、鯏浦砦側へ逃げた者もいたが、多くは静子の付城に攻め寄せ、命を落とした。静子は一ノ江砦を攻略し、堤防を切って輪中を水浸しにしたが、増水時ではなかったため効果は薄かった。静子隊は小木江城へ撤退し、休憩を取った。

信長は付城戦術の有効性に気付き、他の軍団に対して付城で砦を囲むよう指示した。しかし、準備不足のため、攻略は遅々として進まず、軍は混乱をきたした。結局、信長は一ノ江砦、鯏浦砦、加路戸砦を落とした後、付城に兵を配置し、軍を撤退させた。

長島一向一揆衆は警戒し、織田軍を襲撃しなかったため、第一次長島侵攻は終結した。静子たちは士気が緩んでおり、味方の行動による混乱があったため、勝利と感じられなかった。静子は堤防を破壊し、塩害を仕込むことで一向衆の動きを封じようとした。次の戦に向けて、反省点を洗い出すことが必要であると考えた。

足満は長島侵攻から戻った後、神社の業務に専念していた。彼は織田軍の行動に呆れ、しばらく従軍を控えることに決めたが、静子の頼みなら戦場に出るつもりであった。彼の戦果は良くなかった。雑賀衆の輸送隊を探すのは困難で、ようやく発見した際には一方的に攻撃し、輸送隊を撃退したが、その後は再び発見できなかった。

そんな折、足満の元を訪れた前久は、静子を養子として近衛家に迎える考えを持ち出した。足満は驚きと怒りを見せたが、前久は静子を猶子にするという話もあった。前久は、静子が独身のままでいることで政略結婚を企む者が増えるだろうと警告した。

足満は、静子が家を持たないため、政略結婚が問題になると考えていた。前久は静子の権力を守るため、近衛家を利用する考えを示したが、足満はこれに反対し、静子に危害を加える者には容赦しないと宣言した。足満は静子を必要としてくれる存在として彼女を大切に思っていた。

このような会話の後、足満は心の中で静子を守ることを誓った。彼は空を見上げ、静子の存在を失うことを恐れている自分の気持ちを確認した。

千五百七十一年八月中旬

七月上旬、静子は2000の精鋭兵を率いて上洛した。信長がターキッシュアンゴラの子を帝に献上するための従軍であり、彩とお市たちを尾張に残し、侍女の蕭、武将の慶次、才蔵、長可、見習いの高虎が同行した。アラブ種の馬を使用し、特に静子とその動物たちは京の民から注目を集めた。

京に到着後、静子はターキッシュアンゴラの健康状態を確認し、猫を信長に届けた。静子の仕事はこれでほぼ終了し、暇を持て余して京の街を散策した。才蔵が人集りに気づき、問題を察知すると静子は迅速に指示を出し、騒動を鎮めるための手配をした。

騒動は、山賊風の男が夫婦の養子を奴隷だと主張し揉めていたものであった。静子は話を整理し、養子引取証文を確認することで夫婦の言い分が正しいことを証明した。山賊たちは警ら隊に連行され、少年たちは厳重注意を受けた。

年下の少年の怪我の治療を渋る彼らに対し、静子は説得し、少年たちは静子の屋敷で治療を受けることとなった。玄朗は静子の無防備さを心配しつつも、彼女を護衛することを決めた。兵士たちは静子を護衛するために配置につき、彼女を無事に屋敷へと送り届けた。

少年の怪我は想定以上に酷く、抜糸できるまでに二週間を要した。静子は金瘡医衆を残して岐阜に帰還する可能性を考慮していたが、信長の方も手続きに時間がかかっているため、もう少し京に滞在することとなった。暇を持て余した静子は、屋敷にある石窯でカステラを焼いていた。

賊が屋敷に侵入する事件が起きた際、ヴィットマンたちが賊を撃退し、その後、兵が見回りを強化した。静子は動物たちと遊ぶ時間を増やし、彼らの気分を高揚させた。カステラが焼き上がると、静子は来客を迎える準備をしたが、訪れる予定だった少年たちは急用で来られず、代わりに徳川家康が突然訪れた。

家康は護衛と共に縁側で静子のカステラを楽しみ、後に静子に対して、忠勝と半蔵を預かってほしいというお願いをした。信長からの許可が記された朱印状を確認した静子は、予想外の依頼に驚きを隠せなかった。

一方、静子の元に訪れるはずだった少年たちは、御実城と呼ばれる人物の元に戻り、「只今戻りました」と報告した。

静子に頼まれてから一年が経ち、足満はついにライフリングを施した火縄銃の製造に成功した。ライフリングの施し方には、ライフリングブローチで切削加工する方法と、冷間鍛造法の二種類があり、足満は前者を採用せざるを得なかった。加工には非常に長い時間を要し、一日数時間しか作業できなかったため、製造には六日かかった。足満は完成した銃の形をウィンチェスターM1873カービンの形に近づけようと研究し続けた。

彼は完成した銃を見ながら、銃身のチェックを行っていた。静子が喜ぶ姿を想像すると、彼の気力は蘇った。作業が終わると、報告を受けるために座り直し、延暦寺が織田家に対して敵意を抱いていることを知った。延暦寺は武田家の庇護を受けているため、足満はその攻撃が武田家を敵に回すことになると考えていた。

足満は最終的に、自分たちが滅ぶことはないと考えつつ、話を終え、部屋を後にした。彼は火縄銃を担いで、目の前の障害を排除しようと決意していた。

千五百七十一年九月中旬  一

静子は、政治の世界の不可解さを感じながら、京から岐阜、そして尾張へと帰還し、軍を解散させた。一ヶ月ぶりに戻った静子の家には、変わったこととして、新たに徳川家の服部半蔵と本多忠勝が加わっていた。彼らは信長と家康の間で何らかの取引が行われ、静子に預けられる形となったが、静子はそれ以上の詳細を知らなかった。

静子は、彼らに対して山へ入らないよう注意を促し、飼育されている動物たちへの接触を避けるよう依頼した。特に貴重な動物たちを殺めてしまうと大変な損失になると警告した。静子の住むエリアではなく、外縁部にある屋敷で忠勝と半蔵は寝泊まりすることになった。

日常の中で静子は、新たに生まれたジャーマン・シェパード・ウルフドッグの躾に忙しく、カイザーやケーニッヒ、リッターの子犬たちの性格や特性を把握し、彼らを教育していた。彼女の周囲では、足軽たちが静子を「殿」と慕い、家臣たちは忠誠を誓っていた。

ある日、静子がウルフドッグの躾をしている最中に、半蔵が殺気を放ったが、静子は全く反応せず、ウルフドッグたちだけが反応した。これに驚いた忠勝は静子を守ろうとして半蔵にぶつかり、誤解から取っ組み合いが始まった。そこに足満も巻き込まれ、彼らは相撲で勝負をつけようとした。

相撲が始まると、周囲の者たちも次々に参加し、最終的には忠勝隊の者たちや静子の家臣たちも巻き込んで大騒ぎとなった。静子は危険を感じて少し離れた場所から見守りつつ、男たちの単純さに羨ましさを感じていた。

戦国時代、織田家と徳川家は同盟関係にあったが、裏切りを警戒して家臣同士の交流はあまり行われていなかった。家康の命令がない限り、積極的に関係を持とうとする者は少なかったが、静子という一人の人物だけがその常識に囚われず、徳川家の本多忠勝にしばしば接触されていた。忠勝は、与力を抱える旗本部隊の将として、静子に声をかけることが多かった。

忠勝とともに行動する半蔵は、彼の暴走を止める役目を果たしていた。静子が巡回視察を行う際、忠勝が同行を求め、半蔵は憔悴した様子でそれに付き従った。巡回視察の目的は、信長が不在中に悪事を企てる者たちへの警告であった。静子は、巡回を通じて地域の安全を確保する役割を担っていた。

慶次が先導する巡回は、ランダムなルートを取ることで悪事を企む者たちを撹乱し、静子たちは的確に問題を察知して回った。途中で立ち寄った港街では、琴という花街の顔役から、織田家の城が空いている間に悪事を企む者が増えているという情報を得た。静子は、これを解決するための策として、悪事を企む者たちを花街に誘導し、酔わせてお金を巻き上げるという方法を考案した。琴もその策に賛同し、協力することとなった。

視察の途中、静子は徳川家の家臣である忠勝や半蔵をも巻き込んだ行動に苦慮していたが、忠勝や足満との関係をうまく扱うことが求められた。静子は彼らをうまく転がすようにして、状況を収めようと心の中で考えていた。

静子が港街の見回りを終えた後、兵士の訓練をしている長可のもとへ向かった。長可はインターバルトレーニングという高負荷と低負荷の運動を交互に行う訓練を実施しており、兵士たちは休憩中であった。静子は兵士たちに、視察のために特別に気を入れる必要はなく、普段通りの訓練を行うように指示した。

長可はインターバルトレーニングを用いて、心肺機能や足腰の強化を図っていた。坂道での訓練は厳しく、兵士たちは次第に疲労の色を見せ始めたが、長可の檄によって気力を振り絞って訓練に励んでいた。

訓練を見ていた半蔵は、その厳しさに驚きを隠せなかった。静子は訓練の目的について、撤退戦における速度向上を挙げ、部隊全員が速く撤退するための訓練であると説明した。忠勝と半蔵は、撤退を考慮した訓練の重要性に気づき、静子の考え方の先進性を理解した。

半蔵は、静子の異質な考えが兵士たちに理解されていることが、彼らの強さの理由であると気づいた。そして、非常識な考えが乱世を終わらせるかもしれないと考え、静子の行動を見守ることの重要性を理解した。忠勝は静子の思いやりに感動していたが、特に深く考えている様子はなかった。

兵士訓練の視察を終えた静子たちは帰宅し、夕餉を共にした。その後、慶次が酒を持って月見に出かけると、それぞれが好きな場所へ向かった。静子はこのだらっとした解散が自分たちらしいと感じた。

半蔵は疲れを癒すために徳利を持って入浴しており、今日の出来事を振り返っていた。そこへ忠勝が現れ、共に酒を楽しみながら入浴することになった。忠勝は静子の優しさに感動しており、兵のことを大切に考える静子を褒め称えた。

半蔵は忠勝の言葉に諦めつつも、静子の訓練について考えていた。その訓練は長い時間が必要だが、有益であると感じ、三河に戻ったら取り組んでみようと考えていた。二人は難しい話をやめて、酒を楽しむことにした。杯を交わしながら、彼らは共に酒を堪能した。

千五百七十一年九月中旬  二

忠勝たちが静子の街に滞在して一週間後、信長から朱印状が届いた。その内容によれば、静子が彼らを預かったのは、徳川領土を調査するための準備であった。家康がこの調査を受け入れたのは、強がりを見せるためであったが、信長はその意図を気にせず、余裕を見せて家康の要求を受け入れた。

静子が多くの事業を手掛ける中で、足満とみつおとの分業体制が整っていたことも影響していた。軍事情報を管理するのは足満であり、静子が関与する技術情報は陳腐化するまでに機密性が失われるため、徳川家臣を側に置いても大きな問題にはならなかった。これにより、静子が徳川領地での地形調査を実施できることとなった。

静子は家臣たちを集め、三方ヶ原台地の地形調査の許可が下りたことを知らせた。調査には黒鍬衆からの2000人を動員する予定であったが、実際には半数以下の人員になると見込んでいた。調査隊には静子、足満、才蔵、与吉が参加し、慶次と勝蔵は軍を率いて同行することになった。静子はこの計画を通じて、与吉に土木技術を学ばせ、築城能力を開花させることを期待していた。

会議では、調査の詳細や参加者について話し合われ、静子は高虎の成長に期待を寄せていた。全員が静子の会議終了宣言に元気よく応え、計画が進められることとなった。

八月二十八日、日本のイエズス会の宣教師たちは、和田惟政の戦死という重大な事件に直面した。和田は宣教師たちの庇護者であり、その死は彼らにとって大きな打撃であった。摂津国では、和田惟政、茨木重朝、荒木村重、中川清秀が権力闘争を繰り広げており、信長が上洛して以降も安定していなかった。

信長が調停に乗り出すも、両軍はこれを拒否し、戦闘は九月末まで続いた。その間、信長は比叡山延暦寺を攻撃し、坂本の街を封鎖した。この攻撃は、坂本の僧兵たちを日吉大社に追い込み、彼らを徹底的に排除することを目的としていた。信長は延暦寺の腐敗を理由に、この行動を正当化し、情報戦での優位性を確保した。

坂本侵攻に際して、信長は足満に敵味方の監視を命じ、命令に背く者を厳しく処罰した。これにより、信長は自身の権力を維持し、敵対勢力を排除することに成功した。信長の政策は、坂本の僧兵たちの堕落を非難し、彼らを根絶することを正当化するものであった。結果として、織田軍は坂本を完全に支配し、信長の権威を示すことになった。

千五百七十一年九月中旬  三

八月二十八日、信長が坂本を焼き払っている最中、静子は勅命を受け、秀吉と共に小谷城を攻め、浅井久政を釘付けにしていた。両軍はそれぞれ独立した指揮系統を持ちながら、大手口を攻撃していた。静子は、敵に繰り返し規則的な攻撃を仕掛けることで、夜間の攻撃を警戒しないように仕向けていた。

そして静子は、事前に計画していた作戦を実行するため、指定の兵士を集めた。彼女は大手門を破壊することを宣言し、弓で特定の地点を狙って矢を放った。その瞬間、大手門は爆発し、破壊された。浅井兵は驚愕し、降伏を申し出た。静子は彼らに武装解除を命じ、無抵抗の浅井兵を帰した。

静子の戦術は、敵に不安を植え付けることを狙っていた。彼女は爆薬を用いて大手門を破壊し、その威力を見せつけることで、敵の精神的な耐性を崩したのである。彼女はまた、竹中半兵衛らにこの戦術を説明し、敵を消耗させずに自軍に降伏させることが目的であったと語った。

秀吉らは静子の戦術に驚きを隠せなかったが、その効果を認めざるを得なかった。結果として、静子の戦略は成功し、敵を効果的に追い詰めることができた。

秀吉、竹中半兵衛、秀長は、静子の戦術について話し合っていた。静子は心理戦で城を落とす方法を考え、敵を恐怖に陥れ、降伏を促す計画を立てていた。竹中半兵衛は、この戦術が武力に頼らず、心理的な不安を利用するものであることを理解した。彼らは静子の戦術が他の城にも効果をもたらすことを予感した。

静子と秀吉の連合軍が小谷城を攻略している間、別動隊は月ヶ瀬城を攻めていた。付城を利用し、城を孤立させることで、月ヶ瀬城の守備兵たちは次第に戦意を失い、降伏した。この戦法により、静子は無駄な犠牲を出さずに城を陥落させた。

静子は月ヶ瀬城陥落後、山本山城に偽の内通文を送る計画を立てた。この文により、浅井家は疑心暗鬼に陥り、内部で不和が生じることを狙ったのである。これにより、浅井家の団結は脆くなり、静子の策略により、自滅する可能性が高まった。秀吉たちは静子の策略の巧妙さに驚愕し、その効果を認めざるを得なかった。

静子の策は成功し、浅井久政は家臣の裏切りを疑い始めた。彼は山本山城の城主・阿閉貞征を疑い、二人の間には溝が生まれた。この溝は時間とともに広がり、ついに阿閉は信長に内通する決意を固めた。このように、静子の戦術は浅井家に大きな影響を与え、その後の戦況を有利に進める要因となった。

千五百七十一年十月上旬

延暦寺は、日吉大社の門前町である坂本が信長に滅ぼされたことで降伏を余儀なくされ、その権威は地に落ちた。延暦寺の天台座主である覚恕法親王は比叡山を追われ、朝廷も信長を咎めることはなかった。領地は信長に没収され、明智光秀らに分配された。

信長は近江で一揆を鎮圧しつつ上洛し、政務を片付けた後に岐阜へ帰還した。京滞在中、信長は松永軍が戦線を離脱した噂を耳にし、足満を問いただしたが、足満は脅しただけと答えた。

静子軍は浅井久政への工作を終え、尾張へ戻った。報賞として長政に兵を与え、彼の家臣である遠藤と三田村も合流した。静子は胡椒の収穫を行い、今年は収穫量が少なく損失を出したが、わずかに収穫できたことに喜びを感じた。

静子は胡椒を使った料理を楽しみ、デストリアの到着を喜んだ。フロイスとの会談で、静子は胡椒を使った料理を振る舞い、フロイスとその仲間たちを歓待した。オルガンティノは、静子に対して友好を深めるための会談を続けたが、静子は自分の身元を明かさずに信長の命令に従った。オルガンティノは終始にこやかに接し、会談は和やかに進んだ。

静子とオルガンティノの会談は数時間続き、オルガンティノは日本での驚きや感動をユーモアを交えて語った。静子も西洋や東南アジアについての知識を披露し、オルガンティノを驚かせた。二人の話は尽きず、別れ際も名残惜しい様子であった。

オルガンティノは静子の博識と偏見のない態度に感銘を受け、静子が特定の教えに偏らないことを理解した。彼は静子を信徒にしようと考えることに反対し、友好関係を築く方が良いと述べた。フロイスも静子との関係を重視し、今後の布教における協力を期待していた。

数日後、静子はデストリアを尾張に運んだ。デストリアは大きく威圧感があるが、慶次はその一頭に挑み続け、ようやく馬に認められた。デストリアと共に走る慶次は生き生きとしており、馬を「松風」と名付けた。

十月の初めに、家康から三方ヶ原台地の地形調査の許可が下りた。静子たちは忠勝隊の監視のもと、準備万端で調査を開始した。三方ヶ原台地は広大で、静子たちはまず地形を把握し、標高を測定することにした。適切な地点に天幕を設置し、食事を摂りながら調査を進めた。彼らは竹中半兵衛と考案した即席味噌汁を楽しんだ。

調査は順調に進んでいたが、信長からの朱印状と家康からの文が届き、静子と忠勝はそれぞれの場所へ戻ることになった。信長の文には、静子の住む家の近くに街を繁栄させるようにとの命令が含まれていた。静子はこの命令に頭を悩ませながらも、黒鍬衆の報告書を読み、調査が順調であることを確認した。

一方、尾張に戻った静子はヴィットマンたち動物とスキンシップを取ることでリラックスしていた。しかし、奇妙丸が静子を訪ね、彼女の料理を求めた。静子は鶏の塩釜焼きがすぐには用意できないことを説明し、彼をなだめた。部屋に置かれた木箱の中身を尋ねられた静子は、新型火縄銃が入っていると明かした。

千五百七十一年十一月下旬

静子が奇妙丸に新型火縄銃の存在を明かした頃、神社の神主である足満は、彼の弟が政務能力を失ったことに対する思いを述べていた。足満は静子の安全を心配し、神社にて独り考え込んでいた。そこに前久が訪れ、酒を酌み交わした。前久は静子の動向について尋ね、足満は最近の武田軍の動向と、静子の周囲への間者の増加について懸念を示した。

一方、信長と家臣たちは秘密の会合を開いていた。静子の策略が当初の敗北を意図したものであることが明らかになり、彼女は織田家の勝利のための計画を説明した。静子は武田軍との対決を見据え、3万の武田軍を打ち破るための新型火縄銃の性能を実演した。信長は新型火縄銃の量産を指示し、静子に全幅の信頼を寄せた。

静子は、武田戦に備えて計画を進める中で、信長からの信頼と重責を感じていた。また、竹中半兵衛や光秀、森可成と共に策を練り、訓練を行った。静子は疲労を感じつつも、織田家の未来を左右する戦いに向けて準備を進めた。

足満は静子との会話の中で、秘密兵器として折りたたみ傘の存在を持ち出した。足満は静子に真実を隠していることに苦悩しつつ、彼女に再び悲しませたくないとの思いを抱えていた。

十一月下旬、寒さが一層厳しくなり、三方ヶ原台地の地形調査で体調を崩す者が増えたため、静子は調査を中止することを余儀なくされた。高虎、慶次、長可が戻ったが、静子の家は大改修中で、皆は静子の仮住まいで寝泊まりしていた。

静子は信長から予算を無制限に与えられ、対武田戦に向けて大量の部品生産を指示した。この時点で、静子の計画通りに全勢力が動いていた。静子は文の返信をこなす一方で、多くの有名武将から文が届き、年々増える手紙の数に悩んでいた。

お市は勝手に散歩し、静子は信長に注意を依頼したが、返事は短く困惑させる内容であった。静子は開発計画の検証を進めるが、たい焼き器などの開発に手を出したことに後悔した。あんこの好みが家中で議論を巻き起こし、派閥争いが発生した。

また、信長の指示で大量の小豆と砂糖が静子の元に届けられ、信長や一族が味見に参加することが決まった。さらに、濃姫が静子の家を訪れ、鳥の品種改良に関心を示した。静子は、様々な鶏やダチョウ、ドードーを仕入れて品種改良を進めた。

濃姫は静子に対して、食事会に参加しなかったことを指摘し、次回は忘れないようにと念を押した。静子は濃姫の要求に応えつつ、品種改良に専念する日々を送った。

千五百七十一年十二月下旬  一

静子はたこ焼きやたい焼きの試食会の前に、自身が権益を持つ港街を訪れていた。彼女は牡蠣や海苔の養殖、係留施設の管理権を持ち、船舶から税を徴収できたが、その税収を養殖場の拡張に再投資していた。養殖は牡蠣だけでなく、アサリ、ホタテ、アワビ、サザエなど多岐にわたり、真珠の養殖も行っていた。

真珠は8ミリ以上の大粒を甲、7ミリを乙、6ミリ以下を丙とランク付けし、甲乙は宝飾品に、乙以下は薬用や化粧品に利用された。養殖が軌道に乗るまでは全てを静子が買い上げ、安定した生産実績を持つ者のみが独自の販路を得られるようになっていた。

ある日、親方が臭う石を拾ったという話を持ち出し、静子はそれが龍涎香であることを確認した。龍涎香は非常に希少な香料であり、静子は700グラムのそれを60貫(現代の価値で約600万円)で買い取った。龍涎香は単体では悪臭を放つが、他の香料と混ぜて焚くと重厚な香りを加える特性があった。

静子は、この珍しい品を手に入れたことを喜びつつ、居館へと戻ることにした。

静子は真珠が入った木箱を持ち帰り、真珠を照り、傷、形状、色味でさらに細かく選別していた。最高品質の真珠は宝飾品として用いられ、その他は加工品に回された。静子は8ミリの真珠を使ったネックレスや簪を紹介したが、戦国時代の美意識には合わないものだった。

試食大会に向けて食材と道具類は全て準備されており、静子は昆布の養殖に関しては長島一向一揆衆の排除が必要と考えていた。織田と武田、徳川の関係についても言及し、戦略的に動くことの重要性を確認した。

足満が訪れ、静子は現代の技術を使って開発したバイオコークスを確認した。バイオコークスは燃料としての問題を解決し、高炉の建設が可能となった。石炭コークスも輸入し、副産物として硫酸やアンモニアを得る計画だった。

兵站に関して静子は足満を頼りにし、戦いは事前の準備で勝利を得るものだと考えていた。足満は補給ルートの管理を任され、食料の現地調達や瓶詰での保存を進めていた。

静子は兵站の全権を足満に委ね、彼の判断に任せることとした。この方針は戦国時代には異例であり、敵にとって静子の存在は脅威となった。静子の指揮の下で軍は強化され、武田軍に対抗できる力を蓄えていた。

たこ焼きやたい焼きの試食会の日、信長の庭園は主要な家臣やその家族が招待され、賑わっていた。信長の祭り好きが伺えた。静子は、大々的な催しになったことに戸惑いつつも、招待客の重鎮を思い出し、過剰な警備が妥当だと考え直した。彼女は光忠作の刀を下賜されると聞いて参加したが、試食会ではつぶあん派とこしあん派の議論が繰り広げられていた。

試食会ではたこ焼きやたい焼きが振る舞われ、ソースがないため、醬油出汁やポン酢、マヨネーズで食べられていた。静子は信長に呼び出され、彼のコレクションから光忠作の刀を選ぶことになった。彼女は実休光忠を選び、その知識に信長は動揺したが、最終的に静子は光忠作と他の2口の刀を得ることとなった。

信長は静子を側に留め、話を続けた。静子はその後、燭台切光忠とへし切長谷部を背負い、大俱利伽羅広光を手に持って帰路に着いた。信長は自らのコレクションを見せつけることで、静子との関係をより深めようとした。

千五百七十一年十二月下旬  二

信長と静子が歓談している間、慶次たちは暇を持て余し談笑していた。蘭丸は信長と静子が消えた襖を気にして落ち着きがなかったが、長可に諫められた。

信長と静子は天下統一後の海外政策について議論していた。静子は、唐攻めは不要であるとし、オーストラリアへの進出を提案した。オーストラリアには豊富な地下資源があり、農業にも適していると説明した。また、先住民とは友好的に接することが得策であると述べた。

信長は静子の意見に興味を示し、豪州での国家樹立に向けての意欲を見せた。まずは武田を打ち倒すことが優先であるとし、武田を織田の名を轟かせるための生け贄とする意向を示した。信長は静子に充分な準備を命じ、彼女の策に期待を寄せた。

静子軍の中で試食会に参加しなかった足満は、神社近くの竹林で竹を集めていた。バイオコークスの原料として竹が有用であるため、時間を見つけては竹を伐採し乾燥させていた。最も適した原料はそば殻であり、それが理想的な素材であると考えていたが、竹も研究対象としていた。

足満は竹を切る作業を進めていたが、その時、突然矢文が飛んできた。矢文の内容を確認した後、足満は竹を担ぎ神社へ戻った。神社ではみつおと五郎が料理の準備を進めており、足満も調理を手伝った。料理が終わると、みつおは鶴姫の元へ向かった。

みつおは鶴姫を労わりつつ、彼女と心を通わせた。彼は鶴姫を一個人として尊重し、彼女の存在を大切にしていた。鶴姫もまた、みつおに対して深い愛情を抱いており、彼のそばにいることに幸せを感じていた。

その様子を見ていた足満と五郎は、二人の仲睦まじさを茶化しつつも、心から祝福していた。みつおは、二人の茶化しを軽く受け流しつつ、鶴姫との穏やかな時間を楽しんでいた。

武田信玄は、本願寺の要請に応じて織田家を潰す計画を進めていたが、静子の存在が気にかかっていた。彼は静子の動向が読めず、彼女が自分の思惑を越えて先回りしているように感じた。信玄は静子の情報を集めようとしたが、決定的な情報は得られなかった。彼は静子の配下である異色の武将たちをどのように御するのか理解できず、苛立っていた。織田家の経済的な戦略もまた、信玄にとっては理解しがたいものであった。

一方で、上杉謙信は信長の勢力拡大を警戒していた。織田包囲網を切り崩しつつある信長に対し、謙信は武田が動けば織田軍は圧倒されると考えていた。しかし、彼は静子の存在が予測不能な要因となる可能性を示唆し、静子の動向に注視する必要があると考えていた。

試食会の後、静子は久治郎から南蛮人から購入した動物を受け取った。それらは、絶滅したオオウミガラスやウミベミンク、リョコウバトなどであった。静子はそれらの動物たちを丁寧に世話し、その生態を観察することにした。彼女は絶滅の危機に瀕した動物たちを大切に扱い、彼らの存在を守ることに努めた。

一番は譲らない

静子はウルフドッグの訓練に熱心であり、犬たちに基本的な指示を従わせることに成功していた。彼女はオペラント訓練技法を用いて犬たちに上下関係を教え込み、適切な行動にはご褒美を与えていた。犬の訓練は仔犬の頃から始めることが重要であり、ウルフドッグのような品種には特に厳しい訓練が必要であると考えていた。訓練後には食事を与え、その際にもリーダーシップを示すことを心掛けていた。

また、静子は犬との関係性を保つために一緒に遊ぶことも重要視しており、仔犬たちには縄を使った遊びをさせていた。遊びを通じて仔犬たちは社会性を獲得し、適切な行動を学んでいた。遊びの後、静子はウルフドッグたちと楽しく交流し、犬たちとの絆を深めていた。

ヴィットマンたちも静子に甘えたがり、彼女は犬たちを一頭ずつ撫でて彼らの信頼を得ていた。遊びの時間を通じて、静子は犬たちが喜びと信頼を示す様子を楽しんでいた。彼女は犬たちと共に過ごす時間を大切にし、愛情をもって接することを忘れなかった。

密命

静子のもとに一時的に滞在することになった徳川家の武将たちと、忍者の服部半蔵。彼らの中で、半蔵だけは家康から静かに命じられた密命を抱えていた。それは長芋の栽培方法ととろろ麦飯の調理方法の調査である。家康は自身の健康に細心の注意を払っており、長芋の栽培方法を知ることが重要だと考えていた。

半蔵は静子から情報を得ようと、彼女の収穫作業を手伝うことにした。静子は快く長芋の栽培方法を教え、半蔵はその内容を書いてもらうことにも成功した。これにより、密命の半分は達成されたと半蔵は安堵した。

その後、静子が長芋の収穫中に本多忠勝の行動を不思議に思い声をかけたところ、忠勝は慌てて姿を現し、彼女の手伝いを申し出た。土を掘り返す忠勝の勢いに巻き込まれた半蔵は、怒りを露わにしたが、結局は大きなトラブルにはならなかった。

最終的に、半蔵は長芋の栽培方法ととろろ麦飯の調理方法を家康に報告し、任務を果たした。しかし、長芋に関する一連の出来事に疲れ果てた半蔵は、しばらく長芋を見たくないと漏らしていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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