小説「サイレント・ウィッチ IV(4) -after-」感想文・ネタバレ

小説「サイレント・ウィッチ IV(4) -after-」感想文・ネタバレ

どんな本?

サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと」は、モニカ・エヴァレットという無詠唱魔術を使える世界唯一の魔術師を主人公にしたファンタジー小説。
彼女は伝説の黒竜を一人で退けた英雄であり、極度の人見知りの天才魔女でもある。
しかし、彼女は無詠唱魔術を練習しているのは、人前で喋らなくて良いようにするためで。

無自覚なまま「七賢人」に選ばれてしまい、第二王子を護衛する極秘任務を同僚の七賢人に押しつけられることになり、気弱で臆病ながらも最強の力を持つ彼女が、王子に迫る悪をこっそり裁く痛快な物語が展開している。

KADOKAWAanime

読んだ本のタイトル

サイレント・ウィッチ IV -after-
著者:依空まつり 氏
イラスト:藤実なんな  氏

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あらすじ・内容

学園祭を終えて一段落……かと思いきや、冬休み前の学園には不思議な難事件(?)がいっぱい!
盗み食いの容疑者としてグレンが捕まったり、学園なのに迷子の少女が見つかったり、正体不明の火の玉が目撃されたり――第二王子が怪しいおまじないに巻き込まれたり。
「多分だけど……止めないと、大変なことになる」
名探偵モニカと探偵小説にハマり中の黒猫が、数々の事件の謎を解き明かす、オール書き下ろしの極秘任務・番外編!

サイレント・ウィッチ IV -after- 沈黙の魔女の事件簿

前巻からのあらすじ

学園祭が開催されて沈黙の魔女は実行員として奔走する。

そんな彼女の前に不審者が、、

紫色の髪にピンク色の目。

七賢人の1人の呪術師レイ・オルブライト。

キラキラしている学園の陽の気にシオシオにされて苦しんでいるところにモニカが話しかけて、、

そしたらレイはモニカに呪術具が学園に紛れていると教える。

その呪術具を身に付けていたのが演劇のヒロインだった。
でも、陰キャのモニカにも入るのが難しい。

其処に助けに入るのがノートン家の悪役令嬢!

モニカをイジメるフリをしながらしっかりサポートして呪術具を回収したが。

呪術はヒロインにしっかり残っており主役の代役になったグレンに攻撃魔法をぶち込む。

グレンピンチ!
でも、直撃してもピンピンしてそう。

感想

七賢人のルイス、モニカ、レイが図書館で魔法書の修繕をする話から入るのだが、、
メンバーが悪すぎな気がする。

最後は、ルイスの後々の妻とのデートに間に合わせるため急いで帰ろうと風精霊のリンを呼び出したら、、

「人間には休暇があると学びました故。現在、休暇を実践中です。」と書かれた紙がヒラヒラと落ちて来た。

それでもデートしたいルイスは飛行魔法で待ち合わせに行くが、、
魔力切れでダウンしてしまうww

事件簿:Ⅱ

探偵小説にハマっている黒猫のネロと風精霊のリン。

彼等は探偵ごっこをしていたのだが、、
迷推理が冴え渡る!
モニカが七賢人の1人ルイスを暗殺するために、アッチコッチ動き回っていると推理していたのだが、、
その実態は、ドライフラワーを作ろとしていただけ。

そして、モニカの悪友のフェリックス(第二王子)が、沈黙の魔女の著作を立ち読みするために奮闘する。

いや、モニカが自身の著作がだと言えば良いのに言えないモニカ。

結果は、、

事件Ⅱ

いつもグレンがフリーダム過ぎるw

1番ウケたのが食堂のコックが作った骨つき肉の話。

調理場で調理されていた骨つき肉のグリルをグレンが盗み食いしたという容疑だったが、、

証拠を挙げてみるとネロが食べていた。
それに気が付いてるのはモニカだけ。

で、冤罪だったグレンは自作の燻煙器でハムを作っていたら、リンとは別のウサギの形をした精霊がハムを食べ散らかす。そのウサギの主人はウサギを探していたら迷子になってしまう。

それをモニカとシリル、グレンが見つけるが、、

事情を知らない彼等は大混乱、その後のウサギとの捕物も笑えた。

何故にモニカを襲う!?
魔力的にはモニカが最強?
確かに、、

でも、彼女はザコだぞ?

そんなエピソードがあと2つもある。

話は面白く、ネロ、リン、グレンがフリーダム過ぎるw

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

【プロローグ】七賢人と図書館の秘密

ヘイムズ=ナリア図書館への訪問と七賢人の来館

リディル王国北西部にあるヘイムズ=ナリア図書館は、歴史ある由緒正しい施設であったが、交通の便が悪く、利用者は減少の一途を辿っていた。管理する司書一族も途絶え、図書館は廃館が懸念される状況にあった。そんな中、図書館の蔵書修復と封印強化のため、〈結界の魔術師〉ルイス・ミラー、〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレット、〈深淵の呪術師〉レイ・オルブライトの三名の七賢人が訪れることとなった。

図書館到着と三人の様子

ルイスは夏の暑さに体調を崩したモニカとレイを、無理やり借りた台車に乗せて図書館へ運び込んだ。到着早々、干物のように弱っていた二人を前に、ルイスは図書館職員から水の提供を求めるなど、紳士的な態度と苛烈な言動を使い分けながら事務的に対応した。

一年前の誘拐まがいの連行と図書館での作業開始

ヘイムズ=ナリア図書館への訪問の発端は、ルイスがモニカを仕事のために山小屋から連れ出したことであった。無詠唱魔術の使い手であるモニカの協力を得て、膨大な封印作業を効率化する意図があった。目的地に到着後、封印作業はモニカが軽微なものを、ルイスが高度な封印を担当し、レイは呪術書の修復に取り組んだ。

呪術に対する偏見とレイの工夫

作業中、レイは呪術に対する印象を和らげようと呪術書の表紙を可愛らしく修飾した。しかし、内容との乖離や図書館の管理上の問題から、ルイスとモニカの冷ややかな反応を受けた。レイはさらに、自己肯定感を高める呪いの例として、靴下に穴を空ける呪いなどを披露したが、共感は得られなかった。

不自然な本棚の構造と隠し空間の発見

作業の合間にモニカは本棚の構造に違和感を覚え、隠し板を開けると奥に暗い空間が存在することに気づいた。その探索中、モニカは何かに引きずられ空間内へ落下し、飛行魔術を使ったルイスに救助された。空間内では魔力を帯びて巨大化した植物の蔓や根が蠢き、異常な状況が広がっていた。

隠し部屋での戦闘と魔導書の回収

空間の探索中、蔓に捕らえられたレイが呪術を用いて拘束を解除し、植物を枯らした。その隙にルイスとモニカは魔力の発信源を突き止め、モニカの精密な魔術で木の根を除去。ルイスは隠されていた黒い魔導書を回収し、簡易封印を施して状況を収束させた。

魔導書の正体と事件の経緯

回収した魔導書は、初代〈茨の魔女〉レベッカ・ローズバーグによる植物操作の魔術が記されたものであった。管理者を失った図書館で封印が劣化し、魔力が漏れ出した結果、周囲の植物が異常発達し、土砂災害を引き起こしていた。ルイスは現状に対し苦言を呈しつつも、封印と報告作業を担う決意を見せた。

デートへの執念と飛行魔術での出発

作業後、疲弊した三人は図書館で一夜を明かした。翌朝、ルイスは予定された正午のデートに間に合わせるため、契約している風の上位精霊を召喚しようとしたが、精霊は休暇中で不在だった。それにもかかわらず、ルイスは魔力の限界を承知で飛行魔術により王都へ飛び立ち、結果的に噴水に墜落して魔力切れとなるも、婚約者の寛容な対応により看病された。

幕間  朝露が運ぶ幸運を貴女に

魔力切れ後の帰宅と恋人の対応

婚約者とのデートに飛行魔術で向かい、王都の噴水に墜落したルイス・ミラーは、魔力切れの状態で帰宅した。彼は濡れた服を脱がされ、婚約者である医師ロザリーに厳しく看病された。ロザリーは医療者として冷静かつ機敏にルイスを処置し、彼の体調を優先して行動した。

誕生日の期待と現実の落差

ルイスは誕生日にデートができることから甘い雰囲気を期待していたが、ロザリーからは治療を優先され、プレゼントには使用済みのハンカチを提示された。ルイスは病人扱いされる現実に落胆しつつも、恋人の気を惹こうと静かに策を練った。

控えめな好意と過去の記憶

ロザリーは頑なに医師としての態度を崩さなかったが、やがて「膝を提供するのも吝かではない」と控えめな好意を示した。ルイスはその提案を受け入れ、彼女の膝を枕にして休むこととなった。その際、ロザリーの髪には花を飾った小さなヘアピンが留められていた。それはルイスが学生時代に贈った品であり、彼はかつておまじないに懐疑的ながらも、朝露を探して花の小物に込めて贈ったことを思い出した。

幸運を願った記憶と現在の安らぎ

ルイスはヘアピンを通して、青いインクや朝露に込めた淡い願いを回想しながら、ロザリーの手を軽く取り微笑んだ。彼はその瞬間、今もなお彼女が当時の思い出を身につけていることに静かな喜びを抱いた。

【事件 Ⅰ】黒猫探偵の迷推理 ~不良達の立ち読み大作戦 ~

学園祭後の処理と生徒会の働き

学園祭を終えたフェリクスは、休校期間中も男子寮の自室で大量の書類整理に追われていた。各種報告やお礼状の確認、経費の見直しといった業務を、生徒会役員の協力を得て進めていた。エリオットとブリジットによるお礼状の作成、シリルによる報告の整理、ニールの細やかなトラブル管理により、フェリクスは大いに助けられていた。

モニカと図書寄贈の発見

モニカによる会計報告書は、提出期限より遥かに早く完了しており、フェリクスはその能力に感嘆していた。ケルベック伯爵家に冷遇されているモニカを支援したいという思いも抱きつつ、寄贈書籍の中に〈沈黙の魔女〉による短縮詠唱論文を見つけたことで興奮を抑えきれなくなった。しかし魔術書を読むことを禁じられている彼は、それを読む方法に頭を悩ませていた。

立ち読み計画と不良仲間への依頼

魔術書を読む手段として、図書室での立ち読みを思いついたフェリクスは、精霊ウィルディアヌの助けを得られないことに気づく。そこで彼は、ある少女──モニカに協力を仰ぐことを決意した。

屋根裏部屋の非合理と探偵ごっこ

モニカの部屋では、彼女の使い魔ネロと精霊リンが推理小説に感化され、探偵ごっこを始めていた。モニカの部屋に活けられた白薔薇と吊るされた野の花が、彼女らしからぬ非合理として二人の興味を引いた。ネロとリンはその変化を「事件」と見なし、真相を探るべく部屋を出て行った。

乗馬訓練と魔法戦の観戦

モニカは選択授業の乗馬訓練にて、フェリクスに支えられながら上達を見せていた。練習後、フェリクスに連れられて魔法戦クラブの見学に赴き、バイロンとシリルの対戦を目の当たりにした。バイロンの拙い短縮詠唱に対し、シリルは堅実な魔力操作で完封し、モニカはその実力に感心した。

論文を読むための依頼

フェリクスはモニカを人気のない場所へ導き、彼女に〈沈黙の魔女〉の論文を読むための見張り役を依頼した。モニカは当初その無茶な計画に困惑したが、アイクという仮名で自分に本心を見せるフェリクスの熱意に動かされ、協力を申し出た。二人は放課後、密かにその立ち読み作戦を決行する運びとなった。

シリル・アシュリーへの対抗心と過去の因縁

バイロン・ギャレットは、生徒会副会長シリル・アシュリーに再び敗北した悔しさを抱え、魔法史研究クラブのコンラッド・アスカムのもとを訪れて愚痴をこぼしていた。中等科時代、バイロンはシリルを少女と勘違いして親切に接しようとした過去があり、その誤解と失敗が彼の劣等感の起点であった。さらに、自分の婚約者がシリルを好みのタイプとして挙げていたことから、彼は魔法戦での勝利を目指すようになった。短縮詠唱を習得しようとするが技術は未熟で、魔術の精度は安定せず成果を上げられなかった。

旧学生寮での調査と新たな推理

黒猫探偵ネロと助手リンは、モニカの花への関心と行動の変化に疑問を持ち、秘密基地として利用している旧学生寮にて情報共有を行った。モニカが屋根裏部屋で魔術式を書き続けていたこと、そして植物に関心を示していたことから、彼女が毒を作ろうとしていると早合点した二人は、さらなる調査を決意した。

モニカとフェリクスの作戦行動

モニカはフェリクスの立ち読みを支援するため、図書室での照合作業を装って行動した。フェリクスは図書館棟で魔術書を立ち読みするため、事前に図書委員に根回しをして準備を整えていた。しかし、現場に居合わせたクローディア・アシュリーが鋭い観察眼でモニカの行動を見抜き、計画は窮地に追い込まれた。モニカは咄嗟の機転でクローディアの注意を逸らし、フェリクスに立ち読みの機会を与えようと尽力した。

作戦の失敗と互いの信頼

フェリクスが第二図書室に到着すると、既にバイロンとコンラッドが〈沈黙の魔女〉の論文を含む本を借りており、予約者も多数いたため、立ち読みの試みは失敗に終わった。フェリクスは落胆しながらも笑顔を崩さず、照合作業を進めようとする。その姿にモニカも協力を申し出た。彼女の申し出にフェリクスは感謝し、自分の話を聞いてくれる友人の存在の大切さを語った。二人は照合作業を共に行い、ささやかな連帯感を深めていった。

誤解と真実のドライフラワー作り

モニカが植物の本を借りた理由を誤解していたネロとリンは、毒づくりを疑って問い詰めたが、真相はドライフラワーを作るためであった。モニカは魔術で水分を抜く方法を試行錯誤しながら、美しい白薔薇のドライフラワーを完成させた。その花をガラス瓶に入れ、魔術で保護してから自身の宝物と共に引き出しに納めた。それは彼女にとって「少しだけ強くなれるおまじない」として、大切な意味を持つものであった。誤解が解けたネロは悔しがりつつも納得し、静かにその光景を見守った。

幕間  初恋泥棒と俺

叔父の教えと初対面の印象

バイロン・ギャレットは少年時代、魔法兵団に所属する叔父から「相手をよく観察せよ」と教えられていた。その教えの正しさを痛感したのは十四歳の時である。選択授業「魔術入門」の教室で、彼は見慣れない美しい銀髪の生徒を見かけ、少女だと勘違いして声をかけた。

シリルとの出会いと誤解の発覚

バイロンは、見覚えのない転入生が教材を持っていないのではと考え、親切心から声をかけた。礼儀正しい応答に好感を持ちつつも、彼はその転入生が名乗った「シリル・アシュリー」という名前と、着ている制服から初めて彼が男子であることに気づき、驚愕した。彼は自らの観察力の欠如を痛感し、叔父の忠告の重みを思い知らされた。

シリルの側の印象

一方、シリル・アシュリーは、養子という立場から孤立しがちな中で、バイロンが率先して声をかけてくれたことに感謝し、彼と友人になれるかもしれないという希望を抱いていた。授業後に再び話しかけようと、筆記用具を整えながら上機嫌で準備を進めていた。

【事件 Ⅱ】氷の貴公子と肉屋の倅の奮闘 ~肉泥棒と迷子の少女 ~

シリルの体質と日常

シリル・アシュリーは魔力過剰吸収体質であり、魔力を冷気として排出するための魔導具を常に携帯していた。通常授業が再開した日、彼は魔術訓練により魔力を適度に消費していたため、冷気の放出が少なく、穏やかな気分で紅茶を用意しようとしていた。紅茶の準備に向かった先の準備室では、モニカ・ノートンが手伝いを申し出た。モニカは加熱用魔導具に興味を示し、かつてそれを見たことがあると口にした。二人が談笑する中、エリオットが現れ、厨房でトラブルを起こした人物がグレン・ダドリーであると告げた。

肉泥棒事件の発覚

厨房では、グレンが料理人達に囲まれて無実を訴えていた。骨つき肉が20個も短時間で食べられたという異常な事件に、シリルは飛行魔術による侵入の可能性を指摘した。厨房の高い窓が出入り口になり得ることや、唯一飛行魔術を使えるのがグレンである点から、彼に疑いが向けられた。しかし、シリルは証拠が不十分であるとし、犯行時のアリバイ確認に動こうとした。だがグレンは燻製器の様子を見るために授業を抜け出しており、結果的にアリバイは崩れてしまった。

足跡の発見と調査の拡大

グレンの無実を信じたシリルは現場検証を決意し、燻製器の位置や痕跡から小型の肉食動物の関与を推測した。その後、モニカとグレンを伴って敷地内の森へ調査に向かった。魔法戦クラブのバイロン・ギャレットとも言葉を交わし、森で怪しい動物の目撃がないかを確認したが、有力な情報は得られなかった。

魔術に向き合う心の違い

道中、グレンはシリルに魔術を学ぶ目的を尋ねた。シリルは父のためと即答し、努力によって身につけた飛行魔術を誇るべきだと諭した。その言葉はグレンだけでなく、モニカの心にも響いた。目標がなくとも、努力はいつか助けになるというシリルの姿勢は、二人にとって心を動かすものであった。

急展開と少女の出現

調査中、シリルが足を滑らせて坂を転げ落ち、足を捻ってしまった。グレンが飛行魔術で彼を救助した直後、茂みの中から幼い少女が現れた。少女は泣きじゃくりながら「えいあー」を繰り返し、明らかに迷子である様子を見せた。グレンの手によって少女は徐々に落ち着き、シリル達は少女を連れて職員室へ向かうことを決めた。

生徒会室での子守り騒動

職員室が会議中のため、少女は生徒会室で保護されることになった。シリルが問いかけても少女は黙り込み、エリオットが皮肉を言いながらもモニカに子守りを促した。モニカは数学の証明を用いた歌の解説を試みたが失敗し、少女は泣きかける。緊迫した空気の中、フェリクスが即席のウサギ人形を披露し、クッキーを与えることで少女の心を掴んだ。シリルはその機転に感激し、エリオットとの言い争いを中断させられた。

小さな者たちの誇りと絆

迷子の少女の世話を通して、グレンとモニカは自分の未熟さを認識しながらも、シリルの言葉や行動に影響を受けて成長の兆しを見せていた。シリルの背中は決して大きくはないが、その信念と責任感は周囲に強く頼もしく映っていた。一方、モニカの内心では、肉泥棒の正体についてある推測が芽生えていたが、それを確証にすることは避けようとしていた。

かくして、肉泥棒と迷子騒動を巡る一連の事件は、事件解決に至る前に、登場人物たちの心の在り様を照らし出すことになったのである。

子守の終息と来客の正体

フェリクスとグレンのあやしによって少女は眠りにつき、生徒会室内は一時の静寂を取り戻した。エリオットやシリルは安堵しながらも役には立っておらず、実質的に少女の世話をしたのはグレンとフェリクスであった。そこへブリジットが職員への連絡と書類提出のために席を立ち、フェリクスも打ち合わせに向かって退室した。

不審なウサギと精霊の正体

残された面々が小動物の気配を察知し、机の下にいた白いウサギを発見した。ウサギは突如シリルの足に体当たりをし、彼の負傷を再び悪化させた。動物好きなシリルは一瞬心を許したが、グレンがそれを調理しようと発言したため慌てて解放し、ウサギは廊下へ逃走した。その直後、来訪したマクレガン教諭が少女を孫のルシールと認識し、同伴していたウサギが中位精霊イストレイアであることを明かした。過去の騒動の原因がその精霊であると判明し、シリルは責任を取って捕獲を申し出たが、足の怪我により行動不能であった。

捕獲作戦と囮の魔導具

シリルに代わり、グレンとモニカが精霊の追跡に向かった。モニカは途中でネロと遭遇し、彼が肉の一部しか食べていないと知る。残りはイストレイアによるものであった。精霊は肉に加えて魔力の塊である魔導具に引き寄せられる性質を持ち、モニカは加熱用魔導具を囮として用いる作戦を立てた。計画通り精霊は囮に引き寄せられ、モニカの合図でグレンが上着を使って捕獲に成功した。

精霊の抵抗とモニカの魔術

精霊は地霊として砂を操って逃げようとしたが、モニカが詠唱なしで風の魔術を発動し封じた。イストレイアは本能でモニカが最も強力な魔術師であると悟り、抵抗を諦めた。この間、生徒会室ではシリルが自責の念に沈んでいたが、マクレガンの問いに対しグレンを信頼していると明言した。

精霊と迷子の少女の再会

やがてグレンとモニカがイストレイアを連れて帰還し、肉泥棒の正体も明らかになった。しかしイストレイアは再び脱走し、モニカに噛みついて抵抗。精霊の特攻によりモニカは手傷を負い、最終的にグレンと共に再度捕獲され、医務室に送られることとなった。

後日談と氷の貴公子の動揺

翌日、シリルは足を庇いながら裏庭を散策していた。猫に餌をやろうと小魚を取り出した瞬間、グレンが現れ燻製肉を差し出した。シリルは遠慮したが、小魚を見られたことで魚好きを誤解され、次回の献立に魚の燻製を提案されてしまう。怒声で応じたシリルの姿は、疲労の中にも威厳を宿していた。

以上により、肉泥棒騒動と迷子事件は収束し、それぞれの成長と関係の深化を残して幕を閉じたのである。

幕間  理不尽に抗う力

火竜討伐の実戦訓練

グレン・ダドリーは師である〈結界の魔術師〉ルイス・ミラーに同行し、火竜討伐任務に参加していた。火竜は下位種ながらも人間にとって危険な存在であり、若干十五歳の見習い魔術師であるグレンにとっては明らかに過酷な相手であった。にもかかわらず、ルイスは訓練の一環として、実戦での攻撃魔術の行使を命じた。

詠唱と結界の連携

火竜に気圧されて詠唱が乱れるグレンを尻目に、ルイスは結界魔術を発動し、火竜の動きを封じた。グレンは師の言葉に後押しされながらも、遠隔術式を用いずに攻撃魔術を使用する危険性を理解していたが、ルイスは攻撃の瞬間に結界を解除することで対応することを明言した。グレンは火球を発動し、火竜の眉間に直撃させた。倒れた火竜に対し、ルイスが氷の槍でとどめを刺し、討伐は完了した。

師からの教訓と理不尽の示唆

任務を終えて力尽きるグレンに対し、ルイスは困難に直面した際の指針として「金と暴力が解決手段となる」と言い放った。冗談めいた発言であったが、それは幾多の理不尽と戦ってきた者の実感に裏打ちされた言葉であった。理不尽を乗り越えるには力が必要であり、交渉の余地もない局面では実力こそが唯一の拠り所であると諭した。

師弟の関係と理不尽への反発

理不尽に振り回される日々に不満を抱きつつも、グレンはルイスの弟子としてその教えを受け入れ、独自に解釈しながら成長していた。グレンは冗談交じりに、理不尽な師に対抗するには金銭か武力での対応が必要だと結論づけたが、その発言に怒ったルイスが杖を振り上げ、グレンは逃走することで場を収めた。

この一幕は、グレンが直面する現実と成長、そして力を持つ者の責任と理不尽への姿勢を示す訓練の一日として描かれていた。

【事件 Ⅲ】皮肉家の憂鬱 ~恋多き音楽家と旧学生寮の噂 ~

ベンジャミンの演奏とクローディアの辛辣な反応

ベンジャミン・モールディングは高等科の教室で愛を讃える曲をバイオリンで演奏し、その美しい旋律は教室中を魅了した。演奏の対象であるクローディア・アシュリーは本を閉じ、興味なさげに音楽を一蹴した。

雨の朝とエリオットの目覚め

雨の朝、男子寮で眠るエリオット・ハワードは使用人に無理やり起こされ、日常の煩わしさに不満をこぼしつつも、授業の支度を整えた。食堂ではチェス部のグレンによる騒動も耳に入り、平民とのギャップに呆れた様子を見せた。

ベンジャミンのスランプと恋愛騒動

旧友ベンジャミンがスランプを嘆き、エリオットは彼の恋愛が原因であることを察した。ベンジャミンはクローディアへの恋慕を明かし、その演奏を酷評されたことでスランプに陥っていた。彼は恋をしている美しい女性に惹かれる性質であり、クローディアの魅力に抗えなかった。

チェスの授業とモニカの戸惑い

モニカはベンジャミンとチェスで対局し、彼の精彩を欠いた指し手に違和感を抱いた。エリオットの説明によりベンジャミンのスランプを知り、ベンジャミンから演奏会成功のための協力を求められた。具体的な手立てはなく、ベンジャミン自身は「恋こそがスランプ脱却の鍵」と断言した。

ベンジャミンの恋とエリオットの危機感

ベンジャミンはクローディアへの恋情を隠さず、モニカとエリオットはその無謀さに呆れた。エリオットは、シリル・アシュリーがこの事実を知れば問題になると警戒し、モニカに秘密保持を命じた。

バザールでの提案と新たな目標

モニカはベンジャミンの興味を恋愛以外に向ける方法として、放課後のバザールを提案した。ベンジャミンは乗り気になり、モニカとエリオットを同行させた。エリオットは渋々ながら了承した。

バザールでの探索と新たな発見

三人はバザールを巡り、ベンジャミンは服飾品や本、宝飾品に夢中になった。途中、青いインクに関する恋文のおまじないが話題となり、ベンジャミンはクローディアへの手紙を書く決意を新たにした。

シリル登場と即席の連携

ベンジャミンが不用意にシリルを「お義兄さん」と呼び、危機が訪れた。エリオットとモニカは即座に対応し、モニカがシリルを見回りに誘導し、エリオットがベンジャミンを連れ去ることで場を収めた。こうして二人はベンジャミンの無謀な恋による波紋を回避した。

シリルとの見回りと負傷の会話

モニカはシリルと共に自主的な見回りに同行し、彼の足の負傷の回復状況や自分の怪我の経過について会話した。途中で出会った魔法戦クラブ長バイロンがハンカチを探していたため、モニカは彼の落とし物を返却し、バザールの案内役も引き受けた。

バイロンの買い物と決闘への執着

バイロンは冬招月のカード選びに迷いながらも、最終的に無地の白いカードを選び、シリルとの再決闘を希望した。彼は形式にこだわり「正式な決闘」に意味を見出していたが、シリルは困惑しつつも応じる姿勢を見せた。

ベンジャミンとエリオットの会話と心情の吐露

バザールの喧騒の中でエリオットは、自分の身分意識の強さの理由と叔父の死の記憶を思い出し、平民であるベンジャミンとの関係に葛藤していた。ベンジャミンは音楽で友を支えようとし、スランプ脱却のため旧学生寮の幽霊話を語り始めた。

幽霊の噂と旧学生寮への探索

ベンジャミンの提案で、モニカ、エリオットと共に旧学生寮へ赴くことになった。雨上がりの森を抜け、寮に着いた彼らは幽霊の正体を探る中、光の目撃に反応してベンジャミンが暴走した。モニカはその場に残り、こっそり火球を仕込んでいたリンとネロに遭遇した。

幽霊騒動の真相とバイロンの訓練

幽霊の正体はリンの存在とバイロンの魔術訓練による火球が原因であった。魔力濃度の高い場所で訓練する危険性をモニカが諭すと、バイロンは婚約者への想いからシリルに勝ちたい一心で訓練していたことを明かした。モニカは彼の気持ちを理解しつつ、刺繍ハンカチの青い糸に込められた暗喩に気づきながらも、それを伝えることを控えた。

幽霊の誤認と噂の拡大

エリオットとベンジャミンが再びモニカと合流する中、エリオットがリンを幽霊と誤認して悲鳴を上げたことで、ベンジャミンは創作意欲を爆発させた。バイロンの存在はモニカの機転でうまく隠蔽され、ベンジャミンはスランプから完全に脱却した。

翌朝の登校と新たな情熱の標的


翌日、エリオットは昨日の惨状を思い出しながら登校していたが、ベンジャミンに再び捕まり、演奏構想の話をされる。クローディアへの恋心は再燃しそうになるも、彼女の婚約者であるニールが決闘も辞さないと宣言し、ベンジャミンはそれを静かに受け止めた。その直後、彼は新たな恋の対象としてブリジット・グレイアムを見つけ、再び情熱の矛先を変えていった。

音楽家と貴族の思想の対比

エリオットはベンジャミンの節操の無さに呆れながらも、自身の貴族としての思想を再確認し、「身分の壁を越える者は不幸を招く」と心中で再び断じた。ベンジャミンの奔放な恋と創作意欲は止まらず、エリオットの懸念とは裏腹に新たな楽章の始まりを告げていた。

幕間  晴れた日にバイオリンを

少年たちの交流とバイオリンへの思い

エリオット・ハワードは七歳にして才気に恵まれ、王子フェリクス・アーク・リディルの遊び相手に選ばれていた。彼は定期的にクロックフォード公爵邸を訪れ、フェリクスにチェスやバイオリンを教えつつ、交流を深めていた。その日は雨であり、エリオットは濡れることや楽器の音がくぐもることから、外出にもバイオリンにも気が進まなかった。だが父の命に逆らえず、渋々ながら公爵邸に向かった。

雨の日の申し出とチェスの勝負

到着後、エリオットはバイオリンの練習を命じられるが、フェリクスが控えめにチェスを希望したことで、練習は回避された。エリオットはチェスの実力を発揮して容易に勝利し、フェリクスは落胆した。勝負の直後、有能な従者の少年が絶妙なタイミングで紅茶と菓子を用意し、フェリクスがバイオリンの練習に励んでいたことを示唆した。

優しさと晴れの日の約束

フェリクスはエリオットの気持ちに配慮し、バイオリンは晴れた日に弾きたいと控えめに伝えた。彼は気弱で臆病な性格ながら、思いやりに満ちた少年であり、エリオットもその優しさを理解していた。二人は次に晴れた日に共にバイオリンを弾く約束を交わし、さらに密かに木登りの練習も計画した。従者の少年は二人の秘密に気づきながらも、それを静かに見守った。

【事件 Ⅳ】悪役令嬢の暗躍 ~おまじないが見せる夢 ~

生徒会室を取り巻く異様な光景

学園祭から二週間後、生徒会室の落ち着きを破ったのは廊下を埋め尽くす生徒と使用人の群れであった。彼らは床に落ちた何かを必死に探しており、その異様な様子にニールとモニカは動揺した。事態を静めたのは書記のブリジットであり、毅然とした口調で人々を撤退させた。

流行する「おまじない」と髪の毛騒動

今回の騒動の原因は、「好きな相手の髪の毛を紙に包み、枕の下に入れて寝ると夢に現れる」というおまじないの流行であった。対象は第二王子フェリクスであり、彼を敬愛するシリルはこの行為を不敬として激怒した。だが、フェリクス自身は寛容で、騒動を穏やかに収めた。

魔導書破損事件の発覚


その後、フェリクスから重大な通達があった。第二図書室に保管されていた魔導書のページが破られたという報告があり、魔導書の性質からすれば危険な行為であるとされた。幸い、マクレガン教師の封印により暴走は免れたが、フェリクスは怒りをにじませ、犯人への調査を指示した。

呪術の兆候とイザベルの協力

モニカはイザベルに体調不良の理由を打ち明けた。人混みの増加による精神的疲労である。イザベルは刺繡クラブの勉強会でおまじないが語られていたという情報を提供し、その記号を紙に描く方法も伝えた。記号は呪術に用いられる印に酷似しており、モニカはその危険性を察知した。

調査のための刺繡クラブへの潜入

モニカはイザベルの助言に従い、刺繡クラブの勉強会に潜入した。イザベルは上級貴族グループ、モニカは副クラブ長シーラのテーブルに分かれて調査を行うこととなった。モニカはクラブ初参加ながらも親切なシーラの支援を得て、基礎的な刺繡を学びながら情報収集を開始した。

噂の出どころと「寄贈本」の正体

シーラの話から、おまじないの出どころが「最近寄贈された本」であることが判明した。モニカはかつて魔導書封印のため訪れたヘイムズ=ナリア図書館で、『呪術入門』がピンク色の表紙で『初めてのおまじない』に偽装されていたことを思い出し、今回の騒動との関連を確信した。

モニカの確信と急行

呪術が一般生徒に無自覚に流布されている可能性を危惧したモニカは、調査のため急ぎ図書室へと向かった。調査の起点は、呪術書が偽装された寄贈本にあると確信したからである。

グレンの登場と刺繡クラブの混乱

その直後、学園祭で英雄役を演じたグレン・ダドリーが刺繡クラブに現れた。彼の不用意な一言がモニカの記憶を呼び起こしたが、同時に刺繡クラブの秩序をも乱した。グレンに憧れを抱く令嬢エリアーヌは、彼に名を覚えられていないことに苛立ちつつも、態度を取り繕おうとした。

呪術と知らぬまま拡がる「おまじない」

モニカの観察により、おまじないに関心を持つ者たちは、自覚のないまま呪術を広めている可能性が示唆された。既に記号を描いた紙が刺繡クラブでやり取りされており、その危険性は生徒たちに認識されていなかった。モニカは事態の深刻さを認識し、行動を開始した。

呪術書発見とフェリクスの安否確認

モニカは図書室で寄贈本のリストを確認し、問題の本『初めてのおまじない』が〈深淵の呪術師〉レイ・オルブライト著であることを突き止めた。本来は『呪術入門』という呪術書であり、可愛らしい装丁によって誤って一般書として流通していた。貸出中のため閲覧できず、フェリクスに異常がないか確認するために生徒会室へ駆けつけたモニカは、彼の身体に呪印がないことを確認し、安堵した。

魔導書破損事件の犯人と呪術の関連

フェリクスの話により、破られた魔導書の犯人が高等科三年のワンダ・ウィルモットであることが判明した。彼女は刺繡クラブに所属しており、流行中のおまじないとの関連が示唆された。モニカは、ワンダが呪術を行使するために魔導書のページを破った可能性を考察し、事態の深刻さを改めて認識した。

レイの証言と呪術の本質


モニカは精霊リンの協力を得て、〈深淵の呪術師〉レイ・オルブライトに直接会い、状況を説明した。レイによれば、話題となっている「夢で会えるおまじない」は本来、術者が自分の髪の毛を使って対象の夢に干渉し嫌がらせを行う呪術であった。現在流行している形式とは正反対の構造であり、呪術の誤用または意図的な改変が疑われた。

犯人の目的と危険性の検討

レイの説明により、呪術を用いた対象が王族であるフェリクスである場合、術者は極刑対象となる可能性が浮上した。モニカは犯人が呪術の正しい知識を持たず、それを「おまじない」として広めたと判断し、穏便かつ秘密裏に解決する方法を模索した。

イザベルによる追及と真相の引き出し

イザベルは刺繡クラブのクラブ長セシリー・スタンレイを個別の茶会に招き、巧みに言葉を操りながら真相を引き出した。セシリーが呪術書の内容をおまじないとして捉え、従姉妹のワンダに教えたこと、そして流行の発端がセシリーの善意から始まったことが明らかとなった。イザベルはセシリーに対し、呪術書の返却と情報封鎖を指示し、事態の収束に成功した。

呪術書の回収と事件の収束

セシリーは指示通り図書室に本を返却し、レイの手により呪術書は回収された。フェリクスの周囲から不審な動きも消え、生徒会室前の混雑も解消された。事件は表沙汰になることなく収束し、イザベルの交渉と情報操作の手腕が光った。

刺繡クラブの新たな流行とモニカの誕生日

事件解決後、刺繡クラブでは新たにレース刺繡が流行し、旧来のおまじないは自然と廃れていった。イザベルが流行らせようとした〈沈黙の魔女〉の偉業をまとめた書籍は流行しなかったが、フェリクスがその本を気に入り、嬉々として内容を語る場面が描かれた。モニカはその反応に動揺しつつも、自身の誕生日にラナとイザベルから贈り物を受け取り、友情と温かさに触れる一日を過ごした。

心温まる贈り物と新たな宝物

ラナは手作りの刺繡入り巾着袋を贈り、イザベルは羽根ペンを贈った。さらに、かつて立ち読みに協力した相手からも焼き菓子の贈り物が届き、モニカはそれらを屋根裏の宝物として大切に仕舞った。事件は終息し、モニカにとってかけがえのない思い出と信頼が刻まれた。

幕間  華麗なる悪役ファミリー会議

夢の中の〈沈黙の魔女〉とイザベルの憧憬

イザベルは、自室で目覚めるまでの間、〈沈黙の魔女〉が翼竜の群れを無詠唱魔術で撃退する夢を見ていた。その中で、魔術の威力だけでなく、落下する竜の亡骸まで周囲に配慮して着地させる彼女の力量に深く感動し、興奮を覚えていた。目覚めた後もその余韻は消えず、イザベルは幸福感を噛み締めていた。

家族との朝食と〈沈黙の魔女〉への期待

朝食の席では、弟のヘンリーが姉の機嫌の良さに気づき、〈沈黙の魔女〉の夢を見たのではないかと察した。彼もまた〈沈黙の魔女〉に強い憧れを抱いており、自分もその任務に関わりたかったと悔しがっていた。秋には〈沈黙の魔女〉が第二王子の護衛としてセレンディア学園に編入予定であり、イザベルは〈結界の魔術師〉から彼女のサポート役を依頼されていた。

〈沈黙の魔女〉を苛める任務の背景とノートン家の決定

〈結界の魔術師〉は、〈沈黙の魔女〉が注目を集めすぎないようにするため、イザベルに彼女を苛める役を依頼していた。ノートン家ではこの意図を汲み、家族会議の結果として、イザベルが悪役令嬢として〈沈黙の魔女〉に接することを正式に任務として受け入れた。イザベルはその役割を果たすべく、日々悪役令嬢の所作を研究していた。

モニカの設定とケルベック伯爵家の立場整理


〈沈黙の魔女〉ことモニカ・エヴァレットは、設定上、先代ケルベック伯爵夫人に引き取られた娘という扱いとなっており、ケルベック伯爵の義妹にあたる。この設定により、学園内での立場や関係性が定められていた。

モニカの呼び方とノートン家の家族会議

ケルベック伯爵は〈沈黙の魔女〉を自宅に招く際、設定に従い「妹よ」と出迎えるべきかを問いかけた。しかし、イザベルは「お姉様」と呼びたいと主張し、ヘンリーもこれに賛同した。さらに、妻からも不自然な兄呼びは相手に困惑を与えるとの意見が出たため、伯爵はこの冗談を封印することを宣言した。その後、家族会議は「悪の伯爵として相応しい笑い方」を次の議題として継続された。

【エピローグ】沈黙の魔女のささやかな謎解き

学園決闘の開催と応援者たち

セレンディア学園の魔法戦クラブの練習場で、シリル・アシュリーとバイロン・ギャレットによる魔法戦の決闘が行われた。見物に集まった生徒たちの中には、フェリクス王子をはじめとする生徒会役員の姿もあった。モニカの隣でグレンが大声で応援し、クローディアはニールに寄り添っていた。試合序盤は牽制が続き、バイロンは中距離から火球を放ったが、シリルは氷の壁で対処した。

決着と魔力切れによる勝敗

中盤、バイロンが火球による陽動と短縮詠唱の炎の矢でシリルの左肩を貫いたが、シリルは氷の柱による多重強化魔術で反撃した。冷気による足止めにより、バイロンは詠唱できず魔力切れとなったため、審判マクレガンによりシリルの勝利が宣言された。

バイロンとシーラの対話

試合後、バイロンは落ち込みながら立ち去ろうとし、婚約者であるシーラ・アシュバートンがそれを追った。彼は自らの敗北を詫び、卒業までにシリルに勝つと誓って寮へ向かった。シーラはその背に言葉をかけられず、モニカと出会う。二人の会話の中で、シーラがバイロンの持つスズランの刺繡入りハンカチの刺繡主であり、青い糸に気持ちを込めたことが明かされた。

モニカの推理とバイロンの意図

シーラが受け取った冬招月のカードに描かれた謎の黄色い記号について、モニカはそれが黄色い薔薇であると見抜いた。カードとリボンの色が、バイロン自身の髪と目の色に対応しており、学園祭の花飾りの慣習になぞらえていたことが判明した。モニカは、それがバイロンなりの小さな勇気の表れであると解釈した。

気持ちの揺らぎと決意

モニカの言葉を受け、シーラは卒業パーティのダンスを楽しみに思い始めた。そして、自らの気持ちを伝えられるようになりたいと決意した。感謝の気持ちを込め、モニカに頭を下げた。

モニカの日常と感謝のカード

屋根裏部屋に戻ったモニカは、ネロに感謝の気持ちを伝えた後、冬招月のカードを書き始めた。これまでの出会いや出来事を振り返り、言葉に思いを込めて文面を完成させた。ネロは自らの肉球スタンプを押し、カードに独特のアクセントを加えた。モニカはそれを封筒に収め、静かな満足感を覚えていた。

【シークレット・エピソード】沈黙の魔女より感謝を込めて

氷塊事故とヒルダの実験失敗

王立魔法研究所の研究員ヒルダ・エヴァレットは、アイロンの代替として魔術を応用しようとし、熱を付与した結界で白衣をプレスしようと試みた。しかし、試みは小火を引き起こし、消火に使用した氷の魔術によってアイロン台と白衣が巨大な氷塊に閉じ込められる結果となった。メイドのマティルダは、事態を呆れながらも冷静に指摘し、ヒルダに後始末を命じた。

モニカからの冬招月カード

氷塊の処理方法を思案していた最中、マティルダがモニカ・エヴァレットから届いた冬招月のカードをヒルダに手渡した。カードにはモニカの近況と、季節の挨拶が素朴な筆致で綴られており、余白には猫の足跡が押されていた。ヒルダはそれを何度も読み返し、カードを額に入れて飾ることを決意した。

養母の温もりと小さな幸せ

モニカからの心遣いに触れたヒルダは、マティルダへの感謝を口にしながら、冬至にモニカが帰省することを期待した。愛情をこめた明るい言葉と共に、ヒルダはアイロン台とカード用の額縁を求めて街へと出かけていっ

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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