「サイレント・ウィッチ IV(4) 沈黙の魔女の隠しごと」感想文・ネタバレ

「サイレント・ウィッチ IV(4) 沈黙の魔女の隠しごと」感想文・ネタバレ

どんな本?

〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレット。
無詠唱魔術を使える世界唯一の魔術師で、伝説の黒竜を一人で退けた若き英雄。
 だがその本性は――超がつく人見知り!? 無詠唱魔術を練習したのも人前で喋らなくて良いようにするためだった。
 才能に無自覚なまま“七賢人”に選ばれてしまったモニカは、第二王子を護衛する極秘任務を押しつけられ……?
 気弱で臆病だけど最強。引きこもり天才魔女が正体を隠し、王子に迫る悪をこっそり裁く痛快ファンタジー!

1巻のあらすじより引用

読んだ本のタイトル

#サイレント・ウィッチ  IV 沈黙の魔女の隠しごと
著者:依空まつり 氏
イラスト:藤実なんな  氏

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 「サイレント・ウィッチ IV(4) 沈黙の魔女の隠しごと」感想文・ネタバレBookliveで購入 gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 「サイレント・ウィッチ IV(4) 沈黙の魔女の隠しごと」感想文・ネタバレBOOK☆WALKERで購入 gifbanner?sid=3589474&pid=890540720 「サイレント・ウィッチ IV(4) 沈黙の魔女の隠しごと」感想文・ネタバレ

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あらすじ・内容

チェス大会での侵入者騒ぎをよそに、第二王子のお披露目のため学園祭は強行……そんな状況を不審に思いつつ、モニカは悪役令嬢や〈結界の魔術師〉と護衛計画を詰めていく。
 しかし準備は万端かに思われた当日の朝、七賢人〈深淵の呪術師〉から学園に呪具が紛れ込んだと報せが舞い込む!
 殿下の護衛、呪具の回収、正体の秘匿――モニカにとって最初で最後の学園祭を無事に乗り切ることはできるのか!? 
 魔女最大の危機に協力者が集結する、極秘任務・第四幕!

サイレント・ウィッチ IV 沈黙の魔女の隠しごと

前巻からのあらすじ

自身に優しくしてくれた女子が実は王子暗殺を企てる暗殺者だった。

そんな精神的ショックを抱えながらも彼女と共に学ぼうと約束した乗馬を続けるが、、

運動神経が無いためか落馬してばかり。

そこに護衛対象の王子が沈黙の魔女殿をエスコートする。

そして、もう一つの授業のチェスで強さを見せてしまいモニカは学園代表になってしまう。

そんなチェスの会場に、かつてモニカに親切にしていたミネルヴァの男子生徒バーニーが現れる。

それにテンパるモニカだったが、そんな彼女に今の友達が立ち塞がる。

そして、現れる帝国から来た王子を狙う暗殺者。

そして男子生徒は彼女の任務に気が付いて咄嗟にサポートしてしまう。

感想

学園祭が開催されて沈黙の魔女は生徒会として学園祭の実行員達と奔走する。

そんな彼女の前に不審者が、、

紫色の髪にピンク色の目。
七賢人の1人の呪術師レイ・オルブライト。

10年前、オルブライト家に呪術師の弟子として師事しながら裏切り呪術具を盗んで出奔。
家の力をかけて捜索をしていたが全く尻尾を掴めなかったが、最近金に困ったらしく呪術具を売りに出したことがわかった。

その一つが学園に送られたと分かり、レイ自身が呪術具の回収に出向いたまでは良かったのだが、、、

キラキラしている学園の陽の気に、陰気の塊のレイはシオシオにされて苦しんでいるところにモニカが話しかけて来た、、

学園の生徒であるモニカに呪術具の捜索を頼んできた。
そして見付けたのだが、、
呪術具を身に付けていたのが、学園祭のメインとなる演劇のヒロインのエリアーヌだった。

そんなヒロインの衣装のアクセサリーを如何にして回収するかで、人見知りのモニカは苦悩する。

其処に颯爽と助けに入るのがノートン家の悪役令嬢イザベル!

モニカをイジメるフリをしながらも、しっかりサポートして呪術具を回収したが。

呪術は演劇のヒロイン、エリアーヌにしっかり残っており主役の代役になったグレンに攻撃魔法をぶち込む。

グレンピンチ!と思ったら、、

演劇を観ていたモニカが無詠唱魔法で攻撃魔法を抑え小さな事故として処理して何とかなったが、、

エリアーヌがグレンに魔法を撃った事は事実であり、生徒会長の第二王子フェリックスが捜査をする。

そんな時に帝国からの暗殺者が再度フェリックス暗殺をして来たが、、

モニカの機転で暗殺者が副会長シリルに変装している事に気が付き戦闘に突入。

ほぼ不意打ちで暗殺者を制圧したが、それでも相手は帝国の一流の暗殺者。

数々の仕掛けを発動して、モニカ1人では荷が勝ちすぎて形勢が不利となり敗戦濃厚になってしまう。

そんな時に、学園祭を楽しんでいた呪術師のレイ・オルブライトが助けに入り。

暗殺者に呪いを付けて人生で1番苦痛に感じた事を再現する呪いをかける。

普通ならそこで崩れ落ちて捕縛になるのだが、、

帝国の暗殺者は逃亡してしまう。

そんな事が有りながらもモニカは第二皇子を守り切った。

でも、相手は再度第二王子を狙って来るだろう、、
今度こそモニカは暗殺者を捕らえる事が出来るのだろうか?

最後までお読み頂きありがとうございます。

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 「サイレント・ウィッチ IV(4) 沈黙の魔女の隠しごと」感想文・ネタバレBookliveで購入 gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 「サイレント・ウィッチ IV(4) 沈黙の魔女の隠しごと」感想文・ネタバレBOOK☆WALKERで購入 gifbanner?sid=3589474&pid=890540720 「サイレント・ウィッチ IV(4) 沈黙の魔女の隠しごと」感想文・ネタバレ

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展開まとめ

プロローグ
数字の世界に逃げた少女

父の処刑と叔父による虐待

モニカ・レインは十歳の時に実父ヴェネディクト・レインを禁術研究罪により処刑で失い、母親も不在のまま父方の叔父に引き取られた。叔父は兄の行いにより自身の人生が狂ったとモニカに怒りを向け、罵倒と暴力、食事の剥奪を繰り返した。街の人々もモニカに冷たく、父の悪評を囁いたため、彼女は心身を蝕まれていった。

現実逃避としての数字の世界

モニカは父の書斎で見た数式や魔術式を心の拠り所とし、痛みや寒さを忘れるために頭の中で数式を反復するようになった。やがて、彼女の認識は歪み、人間を数字の集合体としてしか見られず、言葉の意味すら理解できなくなった。言葉を音としか捉えられず、反応として数字を口にするようになった頃には、彼女は現実から完全に乖離していた。

ヒルダとの出会いと救済

ある日、モニカが壁にもたれて数字を呟いていたところ、声をかけてきた女性がいた。彼女は父ヴェネディクトの助手であったヒルダ・エヴァレットであり、モニカの名を正しく呼び、父の名を忌避せずに語った。ヒルダの言葉がモニカの心に届き、彼女は徐々に現実感覚を取り戻し、涙を流して感情を表した。ヒルダはモニカを抱きしめ、父の死を共に悼み、彼女の存在を肯定した。

養女としての生活と回復の兆し

ヒルダは王立魔法研究所に所属する研究者でありながらモニカを養女とし、世話を焼いた。台所を焦がすほど家事が苦手であったためハウスメイドを雇うが、モニカは穏やかな生活を送り、言葉も徐々に回復した。彼女はヒルダの蔵書から魔術を独学し、紙に魔術式を書き記すようになった。

魔術式による成長と才能の発見

ある日モニカが描いた魔術式を見たヒルダは驚いた。それは座標軸を固定した極小火炎魔術であり、モニカはヒルダがクッキーを焼く際に使った魔術を応用して考案していた。モニカは火炎魔術と防御結界を組み合わせ、熱効率を高める方法を考案していた。ヒルダはその才能を賞賛し、モニカの成長に感動した。

ミネルヴァ受験への決意

ヒルダはモニカに、最高峰の魔術師養成機関ミネルヴァへの受験を勧めた。モニカは人との関わりに恐怖を抱いていたが、ヒルダへの恩返しと将来の自立のため、受験を決意した。こうして、ヒルダの支援のもとモニカは再び歩み出すこととなった。

再挑戦の火炎魔術実験

その後、モニカの複合魔術を用いたクッキー焼き実験が再び行われた。ヒルダは実践の機会としてこの魔術式を使用したが、結果としてクッキーは全体的にムラなく加熱されたものの、完全な消し炭となった。それでもモニカは確かに前へ進み始めていた。

一章  私の王子様

魔法史研究クラブとの交渉任務

学園祭を目前に控え、生徒会会計のモニカ・ノートンは、魔法史研究クラブの予算と展示場所に関する不満を受けて交渉に出向いた。人見知りの彼女にとって対人交渉は苦手分野であったが、恐怖を押し殺してクラブ室を訪ねた。予想に反してクラブ長コンラッドは礼儀正しく、モニカを厚遇した。さらに室内にはなぜかクローディア・アシュリーの姿もあった。

展示場所と予算を巡る要望

コンラッドは研究展示を第一展示室ではなく研究室で行うよう命じられたことに不満を抱いていた。モニカは警備上の制約を理由にその要求を却下したが、クラブ側は屋外展示を提案し、そのための追加予算を求めた。さらにクローディアを解説者として招く案を示したが、当人は不快感をあらわにした。モニカは交渉の難航に悩みつつも、クラブの研究内容に感銘を受けた。

シリルとフェリクスの介入

生徒会副会長シリルは、モニカの交渉の長期化に不安を覚えて研究室を訪問した。モニカの様子を見て安堵するが、展示と予算の話は滞っていた。クラブの熱意ある資料にモニカと共に感心する中、生徒会長フェリクスが現れた。彼は資料の質を評価しながらも、展示場所と予算の変更は認めなかった。その代わり、生徒誘導のための工夫として〈調停者の家系〉ニール・クレイ・メイウッドの支援を約束した。

ニールによる現実的な調整案

呼び出されたニールは、展示場所の変更が不可能であることを前提に、自由展示コーナーと研究室を連動させた展示方法を提案した。案内カードの配布や展示棚の再配置、必要資材の手配まで迅速に提示し、クラブの納得を得た。その交渉術にモニカは感銘を受け、ニールは父譲りの調停技術が基になっていると明かした。こうしてクラブとの問題は円満に解決した。

クローディアの過去と婚約の経緯

クローディアは幼い頃から博識であったが、それを理由に人々から便利な知識源として扱われることに嫌悪感を抱いていた。十二歳の時、調停者の家系であるニールと出会い、自ら調べようとする姿勢に感銘を受けたことから婚約を申し出た。彼女の父ハイオーン侯爵はその申し出を受け入れ、跡継ぎとして別の養子を迎えることを決断し、シリルが引き取られることとなった。

兄妹の密談と舞踏会への想い

学園祭直前、クローディアは義兄シリルからの茶会の招待を受けた。そこでシリルはモニカの舞踏会衣装について懸念を示し、クローディアに支援を頼んだ。クローディアはすでにモニカがクラスメイトからドレスを借りると知っており、その件は解決済みであった。また、花飾りの習慣に対する想いから、自身が婚約者ニールから昨年花飾りを受け取れなかったことを話した。

シリルの葛藤とモニカへの思い

クローディアとの会話を通じて、シリルはモニカが花飾りをほしがるかもしれないという疑念に駆られた。彼はそれを否定しようとする一方で、自分の中に生まれた小さな懸念を打ち消しきれずにいた。そうした微妙な感情を抱えながら、彼はあくまで「生徒会役員としての責任」としてモニカを気にかける姿勢を見せ続けた。

二章  紫色の愛されたがり

陰気な男の出現と学園祭の前夜

秋晴れの空の下、セレンディア学園を目指していたのは、フードを被った青白い顔の男であった。彼は杖を手にナメクジのような動きで進み、学園の華やかさに強い嫌悪と嫉妬を抱いていた。その一方、学園ではモニカとケルベック伯爵令嬢イザベルが極秘任務に向けた打ち合わせを行っていた。モニカの正体を隠しながら第二王子フェリクスを守る計画であり、イザベルの母と使用人も中等科校舎付近で警戒にあたる予定であった。イザベルは合図や役割分担を定め、モニカと「相棒」として協力する意志を見せた。

警備体制とリンとの対話

学園祭当日の早朝、モニカは目覚め、風の上位精霊リンと会話した。ネロが朝の見回りに出たことを聞かされたモニカは、リンがネロの人型化について触れると緊張するが、リンはそれを「切り札」と認識し、口外しないと断言した。ルイスからの呼びかけを受けたリンは、黄色い小鳥の姿となって屋根裏部屋を後にした。モニカは父の形見の品々を確認し、失いたくない存在が増えたことを実感しながら、護衛任務への決意を新たにした。

不審者の正体と七賢人の邂逅

ネロの報告を受けたモニカは、不審者の特徴から〈深淵の呪術師〉レイ・オルブライトだと気づいた。森で彼と対峙すると、レイはモニカが自分の名前を知っていたことに感激し、愛されたい願望を爆発させた。モニカは任務の秘密を打ち明けて協力を求めたが、逆にレイからも呪具回収の極秘任務を依頼される。彼の説明によれば、十年前にオルブライト家から呪具と知識を盗んで逃亡した裏切り者がいたという。最近になってその呪具が流通し、セレンディア学園に流れ着いたため、レイは回収に動いていた。

呪具の脅威とレイの苦悩

セレンディア学園の中に紛れた呪具は〈真紅の憤怒〉という首飾り型であり、所有者の精神に悪影響を与える。レイは制服の眩しさや学園の華やかさに圧倒され、内部への潜入すら困難だと嘆いた。モニカは彼から偽物の首飾りを受け取り、本物とすり替えるよう託された。

飛行魔術と監視の目

モニカは飛行魔術で女子寮へ戻るが、未熟さゆえに危うい飛行となる。その姿を生徒会書記ブリジット・グレイアムが密かに観察していた。彼女はまだ動く時ではないと判断し、内心で静かな決意を固めた。

学園祭当日の朝と生徒会の動き

副会長シリル・アシュリーは誰よりも早く生徒会室に到着し、全体の予定を確認した。フェリクスやモニカたちが登室する中、ブリジットは朝早く外にいたモニカを詮索する。モニカは苦し紛れに舞踏会の練習をしていたと答え、下手なステップを披露した。シリルは彼女の努力に心を打たれ、先輩として手を差し伸べる決意を新たにした。

白い薔薇の選定と贈り物の意味

その後、シリルは園芸クラブを訪ね、モニカのために純白の薔薇を選ぶ。多くの品種の中から直感で選んだその薔薇は、彼女の印象に最もふさわしいと判断された。クラブの少女たちはこの行動の意味を察し、静かに見守った。シリルは内に秘めた感情に向き合いながらも、行動に責任を持ち続けようとしていた。

三章  だから貴女は永遠のライバル

学園祭の開幕とフェリクスの決意

生徒会長フェリクスは、祖父クロックフォード公爵の威光が反映された学園の美しさを眺めつつ、学園祭を外交の場と捉えていた。限られた時間内で有力者と交流を深め、第二王子としての存在を広く印象づけようと心に誓い、生徒会室を後にした。

護衛任務への意識と呪具回収の準備

学園祭が始まり、モニカは呪具の回収とフェリクスの護衛という任務を再確認した。ネロとリンは警戒体制に入り、ルイスとの合流のため裏庭へ向かう段取りを整えた。モニカはリンと連携しつつ、呪具のすり替え方法に思案を巡らせていた。

ロベルトの再登場と婚約の申し出

移動中のモニカは、以前チェス大会で出会ったロベルトと再会した。ロベルトは教員の付き添いとして学園祭に来ており、再び婚約を申し出た。モニカは個人的な問題で他者を頼れないと判断し、動揺しながらも自身の意思で婚約を断った。

シリルからの救援と白薔薇の贈呈

モニカの窮地に副会長シリルが現れ、ロベルトを冷静に退けた。続けてモニカへ白薔薇の花飾りを手渡し、それが「恥をかかないまじない」であると告げた。モニカはその花を嬉しそうに受け取り、心の支えとして学園祭への意欲を高めた。

バーニーとの再会と不意の警告

白薔薇を胸に裏庭へ向かう途中、モニカはバーニーに呼び止められた。彼の助言で恩師ラザフォード教授との接触を避けることができ、二人は一階の空き教室で改めて話を交わすこととなった。

決別の確認と胸の内の告白

バーニーはチェス大会後の行動の理由を、自身の貴族としての義務と説明した。モニカはそれを受け止めつつ、なぜ彼がチェス大会に出場したのかを問うた。バーニーは兄の事故死によってアンバード伯爵家を継ぐことになり、七賢人になる夢を諦めたと明かした。

ライバルとしての執着と未来への宣言

バーニーはモニカの才能に劣等感を抱き、努力を重ねても届かない現実に挫折していたと語った。かつて友人ではなく対等なライバルでありたかったと明かし、自らが将来有能な伯爵となり、モニカに頼られる存在になると宣言した。

感謝の言葉と新たな関係の兆し

モニカは丁重に任務への協力に感謝し、バーニーもまた軽く微笑んで応じた。かつての友情は失われたが、二人は新たな立場で、かつてとは異なる形の関係を築き始めていた。

四章  華麗なる悪役ファミリー

騎士団の出迎えと第二王子の立場

学園祭に訪れたケルベック公爵家の騎士団は、騎士団長ケネスを先頭に規律正しく入場し、周囲の生徒の注目を集めた。フェリクスはその中に、幼少期からの忠臣であり、貴族の範を示すケネスの姿を認めた。彼は尊敬とともに、同時に期待を寄せられる側としての重圧を感じていた。

モニカとフェリクスの共闘

警戒区域を巡回していたモニカとフェリクスは、学園の外れで呪具の気配を感じた。モニカはリンを通じて上位精霊の加護を得て結界を展開し、異変の拡大を防いだ。フェリクスはモニカの魔術に信頼を寄せ、共に内部を探索する。異臭の漂う部屋には〈真紅の憤怒〉と推定される呪具があったが、それはフェリクスの手により破壊された。モニカはすり替えを試みたが失敗し、フェリクスの行動が呪具を無力化する結果となった。

ネロとの連携と誤解

その後、ネロと合流した二人は、魔力の逆流によるフェリクスの消耗に気づく。ネロはフェリクスの無鉄砲さを非難し、モニカにもきつく当たったが、フェリクスは護衛の責務を守るよう冷静に諭した。ネロは渋々ながらその指示を受け入れ、モニカと共に対応にあたる姿勢を見せた。

イザベルの役割と暗躍する刺客

その頃、イザベルとその母は、別の脅威への備えとして警戒を強めていた。イザベルはフェリクスに仕える者として任務に忠実であり、使用人たちとも連携して情報を収集していた。一方、敵対勢力の刺客は、学園内での暗殺を試みるため、霧の中に潜んでいた。

ブリジットの暗躍と孤独な選択

生徒会書記のブリジット・グレイアムは、全てを監視する冷徹な観察者として動いていた。彼女は自身の正義の名のもと、情報操作や人心掌握を行い、フェリクスの周囲にいる者たちを排除すべき存在と見なしていた。彼女はモニカを危険視しつつ、独断で行動を開始していた。

学園祭の終幕と新たな誓い

事件が収束し、学園祭は無事終了した。モニカは、フェリクスが庶民と親しく接する姿に安心しながらも、その理想主義に胸を打たれた。フェリクスは、自らを信じてくれる人々の存在を再認識し、王子としての責務を果たす決意を新たにした。モニカもまた、自分が「護るべき王子」を見失わぬよう、心を強く保とうとしていた。

五章  英雄の代役

潜入者たちの動きと警戒の高まり

セレンディア学園の森に潜むハイディは、偵察を終えユアンに報告した。彼女は七賢人〈結界の魔術師〉ルイス・ミラーの存在を確認し、学園内の警備が強化されていることを伝えた。ユアンはこの状況を受け、予定通り作戦を実行する方針を決定した。

モニカの準備と劇場の様子

モニカは〈深淵の呪術師〉に呪具を引き渡した後、劇に使用する偽の首飾りを舞台側に届け、観客として会場へ向かった。席ではラナと合流し、ラナの父であるコレット男爵と対面した。彼は舞踏会用に娘の古いドレスをモニカ向けに仕立て直しており、愛情深い父親としての姿を見せた。やがて、劇の前半が始まる鐘が鳴り、観客たちは期待に胸を膨らませた。

劇の前半と配役への失望

劇は建国神話を題材とし、アメーリア妃役はエリアーヌ、ラルフ役は金髪の男子生徒が務めた。舞台装置や演出は一流であったが、両役者の演技力や存在感は期待に及ばず、観客の反応は形式的な拍手に留まった。フェリクスとブリジットであればより理想的だったとの声が囁かれる中、前半が終了し観客は休憩に入った。

エリアーヌの暴走と事故の発生

舞台裏に戻ったエリアーヌは、フェリクスの視線が自分に注がれていなかったことに不満を抱き、精神的に不安定となった。その情緒不安定さと呪いの影響が重なり、舞台装置に小さな破壊工作を仕掛け、意図的に事故を誘発した。その結果、ラルフ役の男子生徒が舞台セットから転落し、腕を骨折する事態となった。

代役探しとフェリクスの策略

事故によってラルフ役が不在となり、舞台続行のため代役が必要となった。舞台関係者たちはフェリクスに出演を懇願したが、彼は当初難色を示した。だが、条件に合う人物として肉屋の息子グレンに白羽の矢を立て、彼を推薦した。グレンは状況を理解しないまま快諾し、舞台の主役に抜擢された。

グレンの起用と不安の幕開け

グレンは明るく快活で、背丈も声も条件を満たしていたが、訛りや舞台経験には不安が残った。周囲の不安をよそに本人はやる気に満ちており、フェリクスの思惑により舞台の後半は予想外の展開を迎えることとなった。

六章  真紅に濁るブルーグレイ

代役発表とエリアーヌの動揺

ラルフ役の代役としてグレン・ダドリーが紹介されたことに、エリアーヌは強い動揺を覚えた。彼女は当初、フェリクスが演じると信じており、グレンが推薦された事実に納得できなかった。グレンの不用意な一言はエリアーヌの自尊心を傷つけ、怒りを内に抱えたまま表面上は令嬢として振る舞った。

フェリクスとの会話とモニカの心情

フェリクスはモニカを特等席に案内し、花飾りについて話題を振った。モニカは護衛任務を意識しつつ、かつての夜祭の記憶やフェリクスの素顔を思い出していた。フェリクスの魔術に関心を隠そうとする態度に、モニカは違和感を抱きつつもそれを表に出さなかった。

舞台後半の開始とグレンの躍動

劇の後半が始まり、グレンは観客の予想を裏切る力強い演技で舞台を引き締めた。粗野ながらも舞台映えする剣術とよく通る声で、観客を惹きつけた。暗黒竜との戦いが進行する中、エリアーヌが防御結界を張る場面に差しかかったが、彼女の詠唱内容にモニカは違和感を覚えた。

攻撃魔術の発動と舞台の危機

モニカはエリアーヌが防御ではなく攻撃魔術を唱えていることに気づき、グレンを守るために防御結界を展開した。結果として火薬の爆発が起きたが、観客はこれを演出と受け取った。モニカは鎮火のために魔術を用いたが、舞台セットは炎により崩壊寸前に陥った。

グレンの飛行魔術による救出

煙の中、グレンはエリアーヌを抱えて飛行魔術で舞台から救出し、観客席を守った。その後、グレンは舞台に戻り剣を拾い、ラルフとして暗黒竜を討ち果たす演出を完遂した。観客は熱狂し、前半の劇と比べ物にならない拍手を送った。

エリアーヌの失態と屈辱

エリアーヌはグレンとのキス寸前で拒まれたことに怒りを募らせた。舞台での恥を忘れられず、呪具の影響が消えた今も純粋な怒りが彼女を支配していた。彼女はグレンに対し強い憎しみを抱き、その名を心に刻んだ。

舞台後の混乱とルイスの登場

舞台終了後、グレンは飛行魔術の使用を咎められることを恐れてフェリクスに助けを求めた。そこへ師匠である〈結界の魔術師〉ルイス・ミラーが現れ、制裁を加えた。フェリクスとルイスは互いの立場を探るかのような静かな対話を交わした。

魔術の探り合いとフェリクスの秘密

フェリクスとルイスの会話は表向き穏やかだったが、水面下では追跡魔術や立場に関する牽制が交わされた。モニカはフェリクスが魔術への関心を隠す理由に疑問を抱いたが、過去の夜祭で彼が語った秘密は胸の内に留めた。

リンによる解説とモニカの安堵

リンはグレンが護衛任務を知らないままカモフラージュとして編入されたことを説明した。モニカは自分の正体を知らずに接してくれるグレンに安心し、この生活を守りたいと改めて思い直した。

職員室での会話と伏線の提示

職員室では〈水咬の魔術師〉と〈紫煙の魔術師〉がエヴァレットという人物について言及し、過去の話題に花を咲かせていた。彼の将来について楽観的な予測が語られつつ、セレンディア学園の日常は続いていた。

七章  彼は毎年、招待状を送り続けていた

モニカとエリオットの再会

モニカは学園祭の最中に舞台から離れ、校舎を見回っていた。そこにエリオットとベンジャミンが現れ、シリルの行方を尋ねてきた。モニカは朝と劇の前半にしかシリルを見ていないと伝えると、エリオットは彼女とシリルが行動を共にしていると思っていたと話した。モニカが二人の方が親しいと思っていたことに驚いたエリオットは、不本意ながらその誤解を解こうとした。

エリオットとシリルの過去

ベンジャミンの補足により、エリオットがシリルに対し一方的に反感を抱いていた過去が明らかになった。貴族であることに強い誇りを持つエリオットは、平民出身のシリルが貴族社会に迎えられることに強い嫌悪感を抱いていた。筆記試験で劣ったことを機にチェスで挑戦し勝利したものの、後にシリルは猛勉強の末に対等の勝負を挑み、体調を崩すほどだった。結果的に会長が間に入り二人は和解し、エリオットもシリルの努力を認めるようになった。

花飾りの意味とおまじない

エリオットはモニカの胸元の花飾りがシリルから贈られたものであると見抜いた。花飾りの色は贈り主の髪や目の色に合わせることが多く、シリルの銀髪と青い瞳に合わせたデザインであると指摘した。モニカはそれを聞き、南東部の地方で信じられている「髪や遺品を身につけることで力を借りるおまじない」に通じるものだと理解した。花飾りはシリルのように振る舞うための勇気を与えるお守りだった。

エリオットの変化

モニカの素直な発想と行動に、エリオットは思わず笑い転げた。シリルを探していると伝えるようモニカに頼み、彼女を送り出した後も、その様子を面白がりつつも、周囲の人物に対する自らの感情の揺らぎを感じていた。かつては拒絶していた存在に対しても、完全には否定しきれなくなっていた。

不審な女性との遭遇

モニカは人目の少ない場所でネロと再合流し、シリルを探していた。ネロの情報により大ホールに向かおうとしたところ、場違いな服装の女性に気づいた。その挙動や雰囲気は、かつての自分に重なるものがあり、モニカは声をかけることを決意した。人見知りの彼女にとっては勇気のいる行動であったが、成長を示す一歩でもあった。

女性の素性とシリルへの想い

女性はシリルの居場所を尋ねたが、大ホールを前にして会うことを思い留まった。モニカは女性の言葉から、彼女がシリルの過去を知る人物であると察し、シリルの優しさや行動を伝えた。話を聞いた女性は涙ぐみながら安堵の表情を浮かべ、名乗らぬまま学園を後にした。

シリルとの再会と動揺

モニカは大ホールで準備を進めていたシリルにエリオットが探していることを伝えた。さらに、先程の女性がシリルを訪ねてきたことを報告すると、シリルは驚きと動揺を隠せなかった。女性の特徴を聞いた彼は、それが誰であるかを即座に理解し、感謝の意を込めて深々と頭を下げた。

母マイラの葛藤

学園を去った女性の正体は、シリルの実母マイラ・ウェインであった。彼女は侯爵家の馬車に乗りながら、息子から届いた手紙を繰り返し読んでいた。過去の夫との記憶や、自分の不安からシリルを遠ざけてきたことを後悔していた。息子の努力と気遣いに気づいた今、マイラは自らの誤りを認め、手紙を書き直そうと心に決めた。

ハイオーン侯爵の理解

マイラに同行していたハイオーン侯爵は、彼女が学園祭に来たことに驚きながらも、それを歓迎していた。彼はシリルの努力と性格を認め、将来の跡継ぎとして考えていると明かした。シリルが実母と距離を置いている理由も侯爵は理解しており、関係修復のために手紙を出すよう助言した。

母の決意

マイラは侯爵の言葉に背中を押され、封も開けていなかったシリルからのチョコレートを試し、改めて手紙を書くことを決意した。冬休みに帰ってくるよう誘うことで、これまでのすれ違いを埋めたいと願った。母としての後悔と、これからの償いの第一歩が静かに始まろうとしていた。

八章  無慈悲な魔女

舞台事故の真相とエリアーヌの接近

フェリクスは学園祭の舞台事故の調査を進め、突風による火薬装置の転倒が原因と報告を受けた。火事は避けられたが、危険な状況であった。フェリクスは演者の一人であるエリアーヌに声をかけられたが、彼女の媚びた態度から事故への関与を察知した。代役を務めたグレンの力量と忠誠心に改めて信頼を置きつつ、エリアーヌの執拗な花飾りの要求には応じず、感情を表に出さずにその場を離れた。

フェリクスとモニカを巡る感情の揺らぎ

フェリクスはエリアーヌとのやり取りの中でモニカを思い出していた。彼女の素朴さと誠実さを花飾りに重ね、もしモニカに贈ったならどんな反応を示すのかと想像した。だが自らの立場上、自由に花を贈ることすらできない現実に葛藤し、内心の揺れを押し隠して表面上は王子としての役割を貫いた。

モニカの異変とシリルの偽者

舞踏会前の確認に向かったフェリクスの前に、モニカが現れた。彼女は普段と異なる緊張感を纏い、フェリクスではなくシリルにだけ視線を向けて別室での対話を求めた。モニカは冷静に分析を進め、シリルに扮した人物の不自然さを指摘していった。言動の細部、リボンタイやブローチの違い、観客席での目撃証言、そして魔術の違和感から、目の前の人物が偽者であることを突き止めた。

偽者の正体と対峙

モニカの追及により、偽者はチェス大会に現れた侵入者と同一人物、帝国の魔術師ユアンであると判明した。彼は肉体操作魔術によって容姿を自在に変え、シリルに成り済ましていた。ユアンは挑発的な態度を見せつつ、力ずくでの解決を望むかのように警告したが、モニカは冷静に対処し、彼を雷の檻に封じ込めた。

二重攻撃と蜘蛛の巣の防御術式

ユアンの投擲した毒と、それに連動して放たれたハイディの雷の矢による二重攻撃は、モニカの迅速な解析と展開した雷の蜘蛛の巣によって無力化された。この蜘蛛の巣は敵の魔術を取り込み無効化する特異な術式であり、彼女の術式理解と解析能力の高さを示していた。

蜘蛛の巣による制圧と竜化への対処

ハイディを容易に制圧した後、モニカはユアンの竜化に対しても冷静に対応した。結界に閉じ込め、氷の魔術で内部温度を下げて彼の行動を封じ、完全に無力化した。その過程でモニカは自身の無慈悲な性質を自覚しつつも、大切な人々を守るためには容赦は無用であると認識していた。

ルイスの到着と脅迫の始まり

窓から現れたルイスは戦況を確認し、残る脅威への対処をモニカに任せたまま、男子寮付近に仕掛けられたとされる〈螺炎〉の確認に向かった。その間、ユアンはシリルの命を盾にモニカを揺さぶり、精神的動揺を引き起こした。実際には〈螺炎〉はダミーであり、ルイスは敵の意図に気づきつつあった。

毒による反撃とモニカの錯乱

ユアンの仲間である女が小声で詠唱し、揮発性の毒を室内に放ったことで、モニカの意識は混濁した。判断力が鈍る中、彼女は敵の言葉に翻弄され、シリルの命の危機に恐怖し、冷静さを失った。侵入者たちはその隙を突いて氷の拘束を破り、モニカを無力化する寸前にまで迫った。

目的の明示と絶体絶命の局面

意識が朦朧とするモニカを前に、ユアンは第二王子フェリクスと〈沈黙の魔女〉モニカの両方を標的とする計画の存在を明かした。彼はモニカの前髪を掴み、彼女の目の前でその残酷な目的を囁き、己の勝利を確信していた。状況は極めて緊迫し、モニカは最悪の局面に直面していた。

九章  引き出しいっぱいの宝物

モニカの捕縛とユアンの目的

モニカは意識を失いかけながら、男たちの会話から自分が確保されようとしている理由を知ろうとした。ユアンと呼ばれた男は、無詠唱魔術を奇跡として主のために献上しようとし、また第二王子に関するもう一つの目的も果たしたと語った。彼の真意はフェリクスの暗殺ではなく、何らかの痕跡の確認にあった。同行していた女ハイディとの会話から、アルトゥールという裏切り者の存在も浮かび上がった。

薬による支配の試みとネロの介入

モニカが中毒性の薬を投与されそうになった直前、ネロが登場し、ユアンを殴り飛ばして救出に入った。ハイディが薬液をネロにかけるが効果はなく、ネロは怒りのあまり変化を始めた。ユアンはシリルの命を盾に取ろうとするが、ネロはそれを意に介さなかった。ユアンの肉体は粘土のように変形し、正体を偽っていたことが明らかになった。モニカの助言により、ネロはユアンの魔術が肉体操作であると理解し、警戒を強めた。

交渉と毒煙による逃走劇

ユアンは中和剤を盾にネロと交渉を試みるが失敗し、白煙とともに毒を散布して逃走を図った。モニカは毒の影響を受けて苦しみ、ネロは彼女を連れて窓から逃げた。その直後、ユアンが呪いを受けて苦悶する声が教室内に響き、紫色の蔓に絡め取られる事態となった。現れたのは〈深淵の呪術師〉レイ・オルブライトであり、異形化した呪いの植物でユアンとハイディを捕らえた。

ユアンの呪詛と脱出

ユアンは激痛に叫び、ハイディの詠唱で飛行魔術によって脱出を試みた。だがその飛行は不安定であり、レイやモニカには攻撃の余力がなかった。モニカの頼みにより、ネロはユアンたちの追跡に向かい、レイが残って彼女を守ることとなった。レイは花の苗が枯れたことに落胆しながらも、彼なりに学園祭を楽しんでいた様子を見せた。

ルイスの到着とモニカの後悔

やがてルイスが到着し、防毒結界を展開してモニカを保護した。モニカは刺客を逃したことを悔やみ、自身の非を詫びたが、ルイスは作戦ミスとしてそれを受け止めた。数字で人間を判断するのではなく、モニカが人間性を見たことが、今回の助けを得た理由だとルイスは語った。会話の中で、ケイシーからの贈り物である刺繍入りのハンカチがモニカの手に渡り、彼女は涙を流してそれを握りしめた。

モニカの決意と「我儘」

モニカは自分がもう人々を数字としては見られないことを自覚し、ルイスの命令で休息を取るため部屋に戻った。夜、ネロが報告に戻り、ユアンとハイディは馬車で逃げたと語った。モニカは既に回復しており、舞踏会の支度をするためラナの部屋に向かおうとした。それは護衛の任務ではなく、自分の「我儘」としての決意であった。

引き出しの中の宝物たち

モニカは机の引き出しを開け、学園で得た数々の贈り物に目を落とした。それらは〈沈黙の魔女〉としてではなく、モニカ・ノートンという少女に贈られた宝物であった。彼女は祈るような気持ちで、それらを一つひとつ大切に見つめながら、自分がこの身分にしがみついている理由を静かに見つめ直した。そして、もう少しだけモニカ・ノートンでいたいと願った。

十章  私は貴方のもの

舞踏会への支度と友情の気遣い

モニカはネロを説得し、ラナの部屋で舞踏会の支度を整えた。ラナが貸してくれた緑のドレスと花を模した髪型は、モニカにも似合っていた。ラナは終始笑顔で支度を手伝い、モニカの胸元には白薔薇の花飾りが飾られた。彼女はラナの意味深な応援に首を傾げつつも、感謝の気持ちを抱いて会場に向かった。

注目の舞踏会と三大美人の存在感

会場では、エリアーヌが新調の桃色ドレスで登場したが、視線の大半はブリジットやクローディアに向けられていた。エリアーヌは自身の家柄と立ち振る舞いに自信を持ちながらも、三大美人としての立場に対し微かな焦燥を抱いていた。

グレンへの関心と誤解された好意

演劇で注目を浴びたグレンには多くの令嬢が集まり、彼が〈結界の魔術師〉の弟子であることが話題となった。グレンは自身の理想像を語る中で「アメーリア」の名を挙げ、エリアーヌはそれを自身への好意と誤解した。しかしグレンの語る理想像はエリアーヌとは正反対の女性像であり、彼女は内心動揺しながらも表向きの笑顔を崩さなかった。

グレンの関心とモニカの存在

エリアーヌが期待した矢先、グレンは彼女の隣を素通りし、モニカに声をかけた。この出来事はエリアーヌに大きな衝撃を与え、彼女はフェリクスのもとへ向かうことを決意した。

モニカの礼と舞踏会での会話

モニカとグレンはラナの計らいについて話す中で、モニカがグレンの礼服を褒め、グレンがそれを師匠ルイスの贈り物だと語った。二人の穏やかなやりとりの中、シリルが現れ、迷子の指揮者を探すため協力を求めた。モニカは遠視の魔術で該当人物を特定し、シリルに案内した。

舞踏会の裏方とシリルの配慮

モニカは指揮者の手配を終えた後、シリルから厨房の連絡役を依頼された。対人業務に不安を抱きながらも、彼女はシリルの気遣いに感謝しつつ、自分も役に立ちたいという思いで引き受けた。胸元の白薔薇は、彼から贈られた「おまじない」として、モニカの勇気の源になっていた。

公爵家の対話とエリアーヌの誘い

舞踏会では、フェリクスが祖父クロックフォード公爵と対話し、グレンの活躍が高く評価されていた。そこにエリアーヌが現れ、巧みに礼を交わしてダンスの誘いを受ける。二人の美貌と立場が注目され、視線を集める中で、それぞれが別の人物に思いを馳せていた。

視線の交錯と届かぬ思い

ダンス中、エリアーヌはグレンを、フェリクスはモニカを目で追っていた。しかし両者とも相手はそれに気づいておらず、それぞれ別の関心に意識を向けていた。フェリクスは花飾りの意味を伝えていなかったことを悔やみ、エリアーヌは自分の存在が無視されたことに憤りを感じていた。

クローディアの花飾りとニールの告白

一方、クローディアは舞踏会の端で複数の求愛を冷たくあしらっていた。そこに婚約者であるニールが現れ、自作の花飾りを贈って彼女をダンスに誘った。クローディアは嬉しさを抑えきれず、それを誇らしげに身につけた。ニールの無自覚な優しさと、控えめな気遣いに対し、クローディアはより一層の愛着を抱いていた。

恋心と返すべき借り

ニールがクローディアのために仕事を一部シリルに任せていた事実を、彼はうっかり漏らしてしまった。クローディアはシリルの行動を理解し、感謝しながらも、その礼をいつか「嫌がる形」で返すことを密かに決意していた。彼女の中で、それは義理ではなく個人的な誇りに基づく誓いであった。

十一章  数式よりも、魔術式よりも……

厨房への連絡役と氷の依頼

モニカは舞踏会の裏方として連絡役を任され、厨房へと向かった。厨房では料理人から魔術による氷の生成を依頼され、モニカは自力でそれを引き受けた。無詠唱魔術で純度の高い氷を作り出し、それをタライに満たしたが、氷の重さを考慮しておらず持ち上げられなかった。魔術の使用も避けたため、モニカは一人でタライを押して運ぼうとした。

体調不良による倒れと発見

過労と毒の影響が残る中、無理をしていたモニカは廊下で倒れてしまった。彼女の意識は朦朧としており、役目を果たせていないことへの悔しさが残された。ほどなくしてシリルが厨房へ向かい、倒れたモニカを発見し、抱き上げて休憩室へと運んだ。

控え室での目覚めと自己嫌悪

控え室で目覚めたモニカは、自らの不調に気づかず周囲に迷惑をかけたことを悔やみ、涙を流した。シリルは彼女の仕事ぶりを評価しつつも、今後の成長に向けた課題を指摘した。さらに、ニールが次期生徒会長になった場合、モニカも引き続き役員に指名されるだろうと述べたが、モニカは自らの任期がこの一年で終わることを思い出して心を沈ませた。

ダンスの誘いとささやかな思い出

モニカが倒れる前にダンスの練習をしていたという言い訳をシリルが覚えており、彼はそれを気にかけていた。モニカの花飾りを見たシリルは、控え室で誰にも見られない形でダンスを申し出た。モニカはその誘いを受け入れ、二人は短いワルツを踊った。

思い出と別れの予感

ダンスを終えたモニカは、ぎこちない自分を責めるよりも、今この瞬間を思い出として心に刻みたいと願った。来年にはこの場にいない自分を知りつつ、数式や魔術式よりもかけがえのない人々との記憶を大切にしようと心に誓った。

エピローグ  星になった英雄の幸福

控え室での静かなやりとりとシリルの気遣い

モニカは舞踏会の疲れから控え室で休んでいた。シリルは彼女に毛布をかけ、体調が戻るまで休むよう促した。モニカは自身の非力さと助けられたことへの申し訳なさに胸を痛めたが、シリルは変わらぬ態度で彼女を気遣い、去っていった。モニカは毛布にくるまり、彼の優しさをかみしめながら、静かに夜空を見上げた。

〈星詠みの魔女〉の予知不能な運命と疑問

モニカは〈星詠みの魔女〉がフェリクスの運命を予知できなくなったという過去の言葉を思い返した。フェリクスの周囲では重大事件が続発していたが、いずれも予知されなかった事実に不安を抱いた。また、舞踏会で再登場したユアンが語っていた「痕跡」や「裏切り者アルトゥール」、そして「その方」の存在など、謎は深まる一方であった。

木の上のフェリクスとの再会とダンス

窓の外にフェリクスの姿を見つけたモニカは、彼が木に登っていることに驚き、急いで現場へ向かった。フェリクスは木の上から降りてモニカと対面し、舞踏会から抜け出して夜空を眺めに来たと語った。星について語る彼は、かつてアイクとしての表情を交えながら、モニカに即興のダンスを申し出た。二人は会場の外で静かに踊り始めた。

フェリクスの心の奥とモニカの困惑

ダンス中、フェリクスはモニカのドレスや髪型を褒め、ペリドットの首飾りを身に着けていないことに嫉妬の感情をのぞかせた。モニカはその態度に戸惑いを覚えつつも、科学的な説明で気を紛らわせようとした。フェリクスは彼女の興味や将来について尋ね、モニカは自分の進路について明言できなかったが、研究者として既に一歩を踏み出している自覚は持っていた。

託された願いと静かな執着の兆し

フェリクスは、自らの友人から贈られた「夢中になれるものを見つけてほしい」という言葉をモニカに伝え、その願いを託したいと語った。しかし、彼にはその願いを捨ててでも叶えたい別の願望があることを明かし、英雄ラルフの神話を引き合いに出して、死してなお残る輝きへの憧れを吐露した。モニカはその言葉に潜む妄執を感じ取り、彼の穏やかな笑顔の裏にある真意を察したが、それ以上を追及することはできなかった。

第三者の視線と新たな対立の予感

フェリクスとモニカが会場に戻る様子を、バルコニーからブリジット・グレイアムが見つめていた。彼女は激情を抑えながら、フェリクスに対する執着を示し、静かに宣言を口にした。舞踏会の終わりに、新たな波乱の兆しが忍び寄っていた。

【シークレット・エピソード】
裏切りの呪術師の行方

舞踏会警護と〈沈黙の魔女〉への警戒

ルイス・ミラーは冬の寒空の下、大ホールの屋根の上で舞踏会の警護に就いていた。クロックフォード公爵主催の夜の舞踏会には招待状が必要であり、第一王子派の彼が正規に出入りすることはできなかったためである。ルイスは遠視の魔術を使い、第二王子と〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレットが庭園で会話する様子を監視していた。モニカの行動には忠誠心以上の思い入れがあると感じ、今後の戦略において彼女の感情を考慮する必要があると判断した。

リンからの報告と刺客の痕跡

ルイスのもとへメイド服姿のリンが現れ、〈深淵の呪術師〉からの伝言を伝えた。報告の大半は無価値な内容であったが、学園周辺に不審者がいなかったとの情報は有益であった。ルイスは先の刺客の行動に疑念を抱いており、第二王子の暗殺が目的であったならばもっと効率的な手段が取られていたはずだと考えていた。刺客は変装して第二王子に接近しただけで、魔導具の痕跡も〈螺炎〉もどき以外には確認されなかった。

裏切り者アルトゥールと帝国の影

リンは刺客とモニカの会話を再現し、裏切り者アルトゥールの痕跡が確認されたこと、そして〈その方〉の読みが正しかったことが語られたと伝えた。ルイスはアルトゥールという名が帝国系であることに着目し、刺客が帝国の関係者である可能性を示唆した。そして、自らの頭に浮かんだ一つの仮説が、〈星詠みの魔女〉が第二王子の運命を読めなくなったという事実とも整合すると気づき、王がこの仮説を見越して自分を学園に送った可能性に思い至った。しかし、それを直接確かめるには危険が伴い、軽々に口にすべきではない重大な内容であった。

クロックフォード公爵と第二王子の破滅計画

ルイスは、自らの仮説が正しければ、クロックフォード公爵も第二王子も破滅すると確信した。両者に対して好意を持っていない彼にとって、それは歓迎すべき展開であり、思わず笑みを漏らした。ただし、モニカにはこの件を伏せると決めた。彼女は情に流されやすく、第二王子の破滅を知れば行動を誤る可能性があると考えたためである。ルイスは、事の推移を見極める構えを取りながら、不敵に笑みを浮かべた。

逃亡した呪術師の潜伏と焦燥

セレンディア学園の学園祭の翌日、南東部の街道を走る馬車には、レーンブルグ公爵夫妻と旅装の男バルトロメウスが乗っていた。バルトロメウスは道中で公爵の馬車を修理し、その功績で屋敷へ招かれることになった。しかし、その正体はオルブライト家から呪具を盗んで逃亡した呪術師であり、三代目〈深淵の呪術師〉の姿を学園で目撃して焦りを募らせていた。

研究継続への執念と過去の因縁

呪術師は自らの身を守るには研究成果が必要だと考え、傀儡呪の完成を急いでいた。過去には精神干渉魔術の研究をしていたヴィクター・ソーンリーが失脚し、投獄されたことから、成果を出せない者は切り捨てられるという現実を痛感していた。レーンブルグ公爵の褒め言葉に笑って応じた呪術師は、魔導具の仕組みを数字に例えたバルトロメウスの言葉に動揺した。数字に支配された世界観は、かつて彼を苦しめた人物──火刑に処されたヴェネディクトの言葉そのものであり、その存在は呪いのように彼の心を苛んでいた。

呪術への執着と破滅への進行

自らの過去を省みることなく、呪術師は呪術に縋り続けた。毒のように精神を蝕む呪術であっても、それしか自分には残されていないと悟っていた。破滅した先人たちを思い出しながら、彼は決意を新たにし、二度と同じ道をたどらぬようにと内心で誓った。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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