のんびり農家 4巻レビュー
のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 6巻レビュー
どんな本?
異世界のんびり農家とは、内藤騎之介氏による日本のライトノベル。
小説家になろうにて連載されており、書籍版はKADOKAWAから刊行されている。
また、剣康之氏が作画をしている漫画版もあり。
月刊ドラゴンエイジにて連載されており、現在は11巻まで発売されている。
また、異世界のんびり農家の日常というスピンオフ作品もあり。
こちらの作画はユウズィ氏が担当している。
アニメ版もあり。
アニメ版は全12話。
2023年1月6日から3月24日まで放送された。
各話のタイトルやあらすじは[こちら]。
物語は、闘病の末に死んだ男性・火楽が、神によって異世界に転移し、農業生活を送るというもの。
彼は神から「万能農具」という特別な道具を授かり、死の森と呼ばれる危険な場所で農地を開拓していく。
そこで出会った吸血鬼や天使、エルフや竜などの様々な種族と交流し、やがて「大樹の村」というコミュニティを作り上げていく。
作品の特徴は、タイトル通りの「のんびり」とした作風であり、戦争や陰謀などのトラブルに巻き込まれるような展開は少なく、主人公が農業や料理を楽しんだり、仲間や家族と触れ合ったりする日常が描かれている。
また、主人公が前世で得た知識や技術を活かして異世界の文化や産業に革新をもたらす場面もある。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2019年04月05日
• 判型:B6判/432ページ
• 定価:1,430円(本体1,300円+税)
• ISBN:9784047355903
読んだ本のタイトル
#異世界のんびり農家 05
著者:#内藤騎之介 氏
イラスト:#やすも 氏
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あらすじ・内容
大樹の村の上空に突然現れた空飛ぶ城、”太陽城”
異世界のんびり農家 05
コウモリの羽を背につけた男が村を占拠したと宣戦布告を始めた…
火楽(ヒラク)はいつも通りに『万能農具』で攻撃、
トラブルを収める。
しかし、本当のトラブルはここからだった!?
この”太陽城”を制圧するため、
大樹の村の精鋭を集めて総攻撃を開始!!
シリーズ累計50万部突破の
スローライフ・農業ファンタジー 第5弾!
感想
大樹の村の上空に突然現れた空飛ぶ城、その名も太陽城!!!
その城に中に閉じ込められて数世代の魔族達が、いきなりのアクシデントにテンパっていきなり村に宣戦布告。
それに軽くキレた村長が万能農具を本来の姿の槍で、軽く攻撃したらアッサリと降伏。
その後、村人達(ドラゴン、天使族、吸血鬼、ハイエルフ、エルダードワーフ)と犬は翼のあるドラゴンのピストン輸送。
蜘蛛達は自力で城に乗り込んで城中に蔓延る魔獣を討伐して完全制圧してしまう。
それに喜ぶ城の魔族達、、
え?
魔獣は身内じゃ無いの?
むしろ敵だった??
そして、枯渇しそうになっていた城の動力源も補充して機能を回復させて村の周りを周回させる事で決着。
また新たな領地が増えた、、
もう国と言ってもいいのに名乗るのは大樹『村』!
そして村を4つ所有していても呼び方は村長。
あ、魔族の住民も増えた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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のんびり農家 4巻レビュー
のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 6巻レビュー
考察・解説
太陽城の制圧と移住
大樹の村の上空に巨大な飛行要塞「太陽城」が接近し、最終的に「四ノ村」として村の傘下に入るまでの過程を整理する。
1. 太陽城の接近と即時降伏
ある日、大樹の村の上空に太陽城が接近し、占拠していた悪魔族のクズデンが宣戦布告を行った。しかし、村長であるヒラクが万能農具の槍を投擲して城の岩盤下部を破壊すると、圧倒的な戦力差を悟ったクズデンは即座に全面降伏した。
この接近は、竜の巫女が神代竜族を10頭以上集めた場所へ向かい人間の味方をするという古い契約に基づく自動航行によるものであった。悪魔族側は戦闘を回避するための苦肉の策として、形式的な宣戦布告を行っていたのが実態である。
2. 城内の制圧と魔物の殲滅
降伏後も城内には魔物や魔獣が蔓延しており、住人である悪魔族や夢魔族は籠城状態を強いられていた。村長は城を破壊せず、危険を排除するための制圧作戦を決行した。
- ハクレン、ラスティ、クロの子供たちからなる制圧部隊が突入し魔物を掃討
- 村長の追加の槍投げにより、下部の不要な岩盤を排除
- 城は本来の半円球の姿を取り戻し、飛行状態が安定
3. 内部管理と所有権問題の解決
制圧後、城の制御を司る水晶石のゴウは当初、神人族(天使族)にしか仕えないと主張していた。しかし、天使族のティアたちの説得により方針を転換し、クズデンを新城主として登録した。
また、所有権についても議論されたが、かつての持ち主である神人族が既に滅びていることや、占領者としての責任を果たすという方針から、大樹の村が受け入れることが決定した。深部に隔離されていた人工生命体のベルも、予言の束縛となっていた太陽の剣を村長が処分したことで解放された。
4. 深刻な自立困難要因の判明
調査の結果、太陽城の住人(悪魔族約60人、夢魔族約200人)は以下の致命的な問題を抱えていることが判明した。
- 資金と価値ある物品の欠如:長年の隔離により経済的に困窮
- 深刻な食料難:日光を必要としない不味いダンジョンイモのみで生活
- 燃料の枯渇:城を浮遊させるエネルギー源が尽きかけており、墜落の危機に直面
5. 燃料問題の解決と保温石の採掘
燃料となる希少鉱石「太陽石」が、現代で広く普及している「保温石」と同じものであることが判明した。これにより、以下の手順で問題が解決された。
- 温泉地の上空へ城を移動させ、採掘現場を確保
- 現場にいた魔獣(翼を持つライオン一家)を移動させ、万能農具で大量の保温石を採掘
- 採掘した石をハクレンとラスティが太陽城へ運搬し、ゴウが精製して燃料化
この保温石は、火を使わずに安全に暖を取れる性質から、大樹の村でもコタツや温室の熱源として重宝されている。
6. 四ノ村の成立と新たな役割
単独での生存が不可能と判断した住人たちは、大樹の村への臣従を申し出た。村長はこれを受け入れ、太陽城を「四ノ村(太陽村)」として管轄下に置くことを宣言した。
- 城内の廃墟を更地にし、住宅地や農地を再整備
- 悪魔族に対し、鬼人族のメイドたちが生活技術や料理を指導
- 南国の果実や、カレー屋向けの調味料などの生産拠点として運用
- 城自体は1年をかけて死の森の外周を反時計回りに周回するコースを航行
まとめ
大樹の村の空に現れた太陽城は、圧倒的な武力による制圧を経て、深刻な食料・燃料問題を解決することで村の重要な拠点へと生まれ変わった。現在は「四ノ村」として独自の生産活動を行いながら、死の森の上空を巡回する新たな生活基盤を確立している。
シャシャートの街の出店
大樹の村が魔王国の商業都市シャシャートの街へ進出したエピソードは、村の経済活動が外部へ大きく広がった重要な転換点である。単なる飲食店経営に留まらず、街全体の経済や住民の生活に多大な影響を及ぼす巨大プロジェクトへと発展した経緯を以下に記す。
1. 出店の経緯と代表者の選出
シャシャートの街を拠点とするゴロウン商会の会頭マイケルからの打診を受け、村長のヒラクは街への出店を決定した。
- 責任者の選出:一ノ村の移住者の中からマルコスとポーラの夫婦がくじ引きで選ばれた。
- 事前教育:二人は路地裏出身であったが、読み書きや計算を習得していた。出店前に村長から一ヶ月間にわたり、経営ノウハウと提供料理であるカレーの調理法を直接伝授された。
2. 現地での準備と孤児たちの雇用
転移魔法で街に到着した二人は、マイケルや街の代官イフルスらから手厚い支援を受けた。これには魔王や四天王による事前の根回しも影響している。
- 従業員の採用:ヒラクの現地雇用を優先する指示に基づき、路地裏で生活していたポッテらの子供たちを大量に雇用した。
- 教育と福利厚生:子供たちに身なりを整えさせ、文字や計算、接客技術を教え込むとともに、専用の寮を完備した。
- 警備体制:路地裏の顔役であるゴールディと交渉し、彼とその部下たちを混雑整理や警備担当として採用した。
3. 巨大店舗の出現とカレーの衝撃
ヒラクは小規模な店舗を想定していたが、マイケルが用意したのは南商区の広大な敷地に建つ、天井が高く壁のない巨大な平屋であった。
- メニューの選定:提供メニューはカレー一品に絞られた。
- 付け合わせ:ライスの代わりに、周辺の店舗から仕入れたパンを添えて提供した。
- 反響:このカレーは街の住民に衝撃を与え、またたく間に大人気となった。
4. 開店直後の混乱と村長の介入
連日客が殺到したことで食材が底をつき、激昂した客による暴動寸前のパニックが発生した。視察に訪れていたヒラクはこの事態を受け、直ちに介入を行った。
- 鎮圧と宣言:始祖の魔法による大音響で場を鎮め、その日のカレーを全て無料にすると宣言した。
- 援軍の到着:大樹の村から鬼人族メイドやドワーフらを呼び寄せ、人員を強化した。
- システム再構築:ヒラク自らが陣頭指揮を執り、効率的な店舗運営システムを構築した。
5. 共存共栄を図るフードコート形式への転換
カレーの無料配布は近隣の飲食店から客を奪う形となり、苦情が殺到した。これに対しヒラクは、マイケルの息子マーロンと協力して新たな策を講じた。
- 提案:巨大な店内の空きスペースを周辺の屋台に貸し出すフードコート形式を導入した。
- 条件:初回一ヶ月の場所代を無料とし、屋台を施設内に取り込んだ。
- 相乗効果:客がカレーと共に他店の料理を楽しむ流れが生まれ、近隣店舗との共存共栄を実現した。
6. ビッグルーフ・シャシャートの誕生と娯楽エリア
複数の店舗を内包するこの巨大施設は、後にビッグルーフ・シャシャートと命名された。マルコスとポーラのカレー店にはマルーラという正式名称が付けられている。
- 娯楽の導入:飲食エリアに加え、山エルフ製のミニボウリング(後にフルサイズへ拡張)、輪投げ、射的などの遊戯エリアを設置した。
- 多目的利用:設置された舞台では演劇やボウリング大会が開催され、娯楽の拠点となった。
- 特産品の販売:大樹の村の特産品であるカラアゲや酒の販売も開始され、街への影響力をさらに強めている。
まとめ
シャシャートの街における出店プロジェクトは、混乱を乗り越えて巨大な複合施設ビッグルーフ・シャシャートへと結実した。これは大樹の村の技術と食文化が外部に受け入れられた象徴であり、現在は街の経済と娯楽を支える中心地として欠かせない存在となっている。
大樹の村の祭り
大樹の村で開催される祭りは、単なる村内の行事にとどまらず、世界の要人たちが一堂に会して熱狂する一大イベントとなっている。その発足の経緯から具体的な内容、運営の仕組みについて以下に記述する。
祭りの発足と内容の決定
当初、村長の街尾火楽は褒賞メダルを用いた運動会を企画していた。しかし、種族間における身体能力や体格の差が著しく、公平な競技運営が困難であるという問題に直面した。これを受け、競争よりもレクリエーションや交流を重視した祭り形式へと方針が転換された。
祭りの具体的な内容は、毎回様々な競技案を記した紙によるクジ引きで決定されるのが通例となっている。
歴代における主な祭りの内容
これまでに開催された主な催しは以下の通りである。
- 武闘会:最初のクジで選出された。一般の部、戦士の部、騎士の部の3部門に分かれ、実力に応じた戦いが行われた。竜族やザブトンによる模範試合も披露され、後に独立した恒例行事となるほどの人気を博した。
- 滑走ボード:クジで滑走が選ばれた際に行われた。村長が万能農具で造成した巨大な山からボードで滑り降り、飛距離やパフォーマンスの精度を競った。
- 山崩し:当初はタワーというクジであったが、種族差を考慮して巨大な木材を用いたバランスゲームに変更された。チーム戦で行われ、戦略的な駆け引きが繰り広げられた。
- クイズ大会と騎馬戦:多種族が気軽に参加できるよう、村や世界に関するジャンル別のクイズ大会が実施された。また、体格差に配慮して細分化された部門別の騎馬戦も行われ、白熱した展開となった。
祭りを彩る超要人の来賓たち
大樹の村の祭りには、魔王や魔王国四天王、竜王ドースの一族、吸血鬼の始祖であるコーリン教宗主、同教の大司祭、大商会の会頭など、世界的な影響力を持つVIPたちが多数集結する。
彼らは来賓席で観戦するだけでなく、自ら競技に飛び入り参加したり、宴会を通じて他の種族と交流したりするなど、一人の参加者として心から行事を楽しんでいる。
屋台の出店と余興および反省会の実施
会場周辺には鬼人族メイドや文官娘衆らによる屋台が立ち並び、普段の食事を祭り風にアレンジした料理や酒、甘味などが振る舞われる。競技の合間には各種族による合唱、演奏、ダンス、演劇、組体操などの余興が披露され、会場を盛り上げる。
また、祭りの翌日には村長や各種族の代表者による反省会が必ず実施される。進行の遅れやルールの不備、食事の提供方法といった細かな改善点が真面目に議論され、翌年以降の運営に活かされている。
まとめ
大樹の村の祭りは、徹底した公平性の追求と不断の改善努力によって、多種族が共生する村の象徴的な行事となっている。世界各地の要人を惹きつけるその魅力は、緻密な準備と参加者全員の熱意によって支えられているのである。
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キャラクター紹介
ヒラク
大樹の村の村長である。
物語の主人公を務める。
神から授かった万能農具を使う。
死の森を切り拓いて村を発展させている。
彼は多くの種族をまとめ上げる指導者の立場にある。
村の住人の安全と食生活の充実を常に重視した。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・村長。
・物語内での具体的な行動や成果
村に接近した太陽城に対し、万能農具の槍を投げて岩盤を破壊した。悪魔族を降伏させた実績を持つ。城の燃料不足を解決するため、温泉地で保温石を採掘している。巨大な飲食店「ビッグルーフ・シャシャート」を設立し、混乱を鎮めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
太陽城を「四ノ村」として受け入れ、その領主のような立場となった。商業都市にまで強い影響を及ぼしている。各国の実力者と対等な関係を築いた。
クズデン
太陽城で生まれ育った悪魔族の男である。
部隊長として悪魔族と夢魔族をまとめていた。
彼は真面目な性格だ。
非を認めるとすぐに謝罪する。
村長に対しては深い敬意と感謝の念を持っている。
・所属組織、地位や役職
四ノ村(太陽城)・村長代行。悪魔族の部隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
古い契約に従い、形式的に大樹の村へ宣戦布告を行った。村長の攻撃を受けると即座に降伏し、謝罪している。太陽城の新たな城主として水晶石に登録された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
城に閉じ込められた部隊長から、四ノ村の村長代行へと立場が変わった。村長への忠誠を誓っている。太陽城の復興に尽力した。
ベル=フォーグマ
太陽城の運航を管理する責任者である。
白髪の女性の姿をした人工生命体だ。
城主を補佐する役割を持つ。
彼女は予言に従い、城の奥深くで隔離されていた。
生真面目な性格だが、隔離生活の影響で世間知らずな面がある。
・所属組織、地位や役職
太陽城・城主補佐筆頭。人工生命体マーキュリー種。
・物語内での具体的な行動や成果
仕掛けを解いて現れた村長を勇者として迎えた。魔王を倒すための「太陽の剣」を村長に手渡している。村長が剣を破壊して役目から解放されると、満足そうな様子を見せた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
予言の束縛から解放され、外の世界へ出る決意をした。現在は四ノ村でクズデンを補佐している。農作業も手伝った。
ゴウ=フォーグマ
太陽城の制御を司る巨大な水晶石である。
城の城主補佐を務める人工生命体だ。
彼は城の機能を維持することを優先している。
住人である悪魔族や夢魔族を守る姿勢を持つ。
褒められると機嫌を良くした。
・所属組織、地位や役職
太陽城・城主補佐。人工生命体マーキュリー種。
・物語内での具体的な行動や成果
燃料不足による城の航行不能の危機を察知していた。悪魔族を守るために宣戦布告を提案したが、失敗すると即座に降伏を決める。クズデンを城主として認め、城の操縦権を与えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大樹の村に所属することを選択し、移動を開始した。燃料が補充されたことで、将来的に人間の姿で活動する可能性が示されている。拠点の維持に貢献した。
マルコス
一ノ村に移住した人間の一人である。
かつては街の路和裏で暮らしていた。
現在は妻のポーラと共に生活している。
彼は村長を恩人として慕っている。
与えられた仕事に全力で取り組んだ。
・所属組織、地位や役職
一ノ村住人。カレー屋「マルーラ」店長代理。
・物語内での具体的な行動や成果
シャシャートの街での出店責任者に立候補し、くじで選ばれた。現地で巨大店舗の管理を任され、不慣れな中で営業を開始している。店内で村長の指示に従い、無料提供などの対応を行った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村の農民から、商業都市にある施設の店長代理へと抜擢された。店は街の話題となっている。多くの客を集めている。
ポーラ
一ノ村に移住した女性である。
マルコスの妻だ。
彼女も路地裏の出身である。
村で読み書きや計算、作法を学んだ。
夫を支える役割を担う。
・所属組織、地位や役職
一ノ村住人。カレー屋「マルーラ」副責任者。
・物語内での具体的な行動や成果
シャシャートの街で路地裏の少女たちを雇用した。彼女は従業員の衛生管理や教育を担当している。混乱時には従業員たちの安否を確認した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
店の中核を担っている。夫と共に派遣された。彼女が教育した従業員は店の戦力となった。
マイケル
商業都市シャシャートの街を拠点とする。
商人である。
大樹の村との取引を引き受けている。
利益を重視する。
誠実に対応した。
・所属組織、地位や役職
ゴロウン商会・会頭。
・物語内での具体的な行動や成果
巨大施設の建設を全面的に支援した。店が混乱に陥った際には、物資の調達や人員の手配を迅速に行っている。商業ギルドとの交渉を代行し、村長の立場を守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村長からの信頼が厚い。商会の規模をさらに拡大させた。重要な助言者となっている。
魔王
魔王国を統治する王である。
本名はガルガルドだ。
村の酒や料理を気に入っている。
お忍びで村を訪れる。
一人の客として振る舞った。
・所属組織、地位や役職
魔王国・魔王。
・物語内での具体的な行動や成果
シャシャートの街で不正を働こうとした貴族の息子を処罰した。村で行われた祭りに参加し、行事を楽しんでいる。村長に対し、ダンジョンイモについての知識を共有した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大樹の村の有力な味方となっている。彼の介入によりトラブルは解決された。村に良い影響をもたらした。
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展開まとめ
【序章】 魔力
神々による平穏な世界監視
火神は自身が担当する世界において、無差別に物を燃やす存在ではなく、冷静に見守る役割を担っていた。対照的に水神は気性が荒く、甘味を与えて大人しくさせる必要のある性質であった。神々は直接干渉を避け、分神を派遣して世界を監視しており、生命が死滅するような過度な戦争のみを誘導によって未然に防いだ。当時の世界は竜も大人しく、魔法神が魔力管理を堅実にこなしていたため極めて安定しており、火神は長く続く退屈な時間に憂鬱を感じていた。
魔力の流入と世界の混乱
魔法神が管理に失敗し、創造神の力の残滓である魔力が予定外に世界へと流れ込んだことで、平穏は突如として崩れ去った。この影響で竜が暴走し、七つほどの大きな国が滅亡した。さらに、流入した魔力は世界で最も繁栄していた種に変質をもたらし、多数の亜種を生み出した。新たな種は秩序を知らずに暴れ回り、世界は混沌の時代へと陥った。
魔族の神の誕生と神々の宴会
魔法神は自らの失敗を反省して亜種の管理を引き受け、やがて世界で魔族の神と呼ばれるようになった。火神はその働きを少し羨むも、自身の不真面目な性格を自覚して静観した。その後、世界が混沌から抜け出そうとしていた時期に、水神が神々の宴会を提案した。水神の嬉しそうな様子から世界に甘味が増えたと推測した火神は、宴会への参加を決め、あわせて魔法神をも誘い出した。
再び訪れた混沌の時代
火神はただ同僚を誘っただけであり、自身に悪いところはないと考えていた。しかし、魔法神が宴会のために魔力管理から少し目を離した隙に、再び予定外の魔力が世界へと流入した。この出来事により、平穏を取り戻しかけていた世界は、二度目の混沌の時代へと突入していった。
【一章】 太陽城
1 トラブルの来訪
空飛ぶ城の接近と宣戦布告
大樹の村の南東上空に、岩盤の上に建つ空飛ぶ城が接近してきた。村の住人たちが偵察を検討している最中、城から悪魔族の男クズデンの立体映像が現れた。クズデンは自分たちが城を占拠していると名乗り、人間に絶望を与えるという宣戦布告を行った。
村長の一撃による即時降伏
宣戦布告を受けた大樹の村は城を敵と判断し、早期撃墜を決定した。村長が万能農具の槍を投擲して城の岩盤下部を破壊すると、クズデンは即座に降伏の意思を示した。立体映像の中で謝罪と命乞いを始めたため、村長は詳しい事情を聞くことにした。
太陽城の歴史と悪魔族の孤立
クズデンによれば、空飛ぶ城は太陽城と呼ばれ、かつては人間側に立つ神人族が住んでいた。五百年前に悪魔族が城を奪ったものの、逃亡した神人族によって自動操縦状態にされたため、悪魔族は城を完全に制御できず上空に閉じ込められていた。今回の宣戦布告は、城が人間の味方をするために移動するというアナウンスが流れたため、古い契約に従って形式的に行ったものであった。
戦意なき悪魔族と制圧作戦の決定
城内の悪魔族の大半は戦意を持っておらず、クズデンも村長の攻撃を受けて完全に降伏していた。しかし大樹の村の住人たちは依然として戦意が高く、村長はクズデンに直接出向いての謝罪を求めた。城内には魔物や魔獣がはびこり悪魔族が外に出られない状態であることが判明したため、村長は城の撃墜を取りやめ、危険を排除するための制圧作戦の決行を決定した。
制圧部隊の編成と出撃
制圧作戦の参加者はくじ引きなどで決められ、村長は家族の無言の圧力により参加を辞退した。飛行可能な者を優先して二つの部隊が編成された。ハクレンらが率いる第一部隊は城の上部から侵入して制御を掌握する役割を持ち、ラスティらが率いる第二部隊は下部から侵入して魔物たちを討伐する計画となった。太陽城を作った神人族が天使族であることを明かしたティアや、制御の知識を持つルーらを含む部隊は、村人たちの声援を受けて太陽城へと出撃した。
2 太陽城制圧待ち
太陽城制圧作戦中の村の警戒
太陽城の制圧作戦が進行する中、大樹の村では魔物や魔獣の襲撃に備えて留守番組が警戒を続けていた。クロの子供たちが周辺の警戒を強め、スアルリウとスアルコウが上空の監視を担当した。村長は冬眠中のザブトンを休ませるためにも自分たちが頑張らねばと考えたが、特にやることはなく、屋敷の前に出て太陽城の様子を見守ることにした。ラスティの報告では制圧は順調であったが、八千メートルの上空にある城が揺れたり爆発したりする様子を見て、村長は心配を募らせた。
槍作りと投擲訓練の開始
村長が待機していると、ウルザが木材を持ってきて槍の作成を求めた。村長は人や動物に向けないよう注意しつつ、安全のために先を丸めた槍を作って与えた。ウルザや獣人族の男の子たちが槍投げを楽しむ中、村長自身も試したが遠くへ飛ばなかったため、槍投げ器を作って工夫を凝らした。ウルザがその道具を使って槍を百メートル近く飛ばしたことで他の子供たちも欲しがり、村長は全員に道具を作ってやった。やがてハイエルフたちも加わり、藁束を的とした命中精度の訓練へと発展したため、村長は指導者がいれば安全だと判断し、槍先を尖らせたものを量産した。
アンの驚異的な槍投げの実力
村長が百本ほどの槍を完成させた頃、ハイエルフたちは的を貫く威力を見せ、ウルザは精度を重視して威力が落ち、獣人族の男の子たちは飛距離は出るものの精度が低い状態であった。そこへアンが温かいお茶を持って現れ、自身も槍投げに挑戦した。アンが投げた槍は五十メートル先の藁束を粉砕し、そのまま遥か先まで飛んでいった。アンはその威力を評価して屋敷に常備する案を出したが、村長は泥棒が入った際の危険を想像して不安を覚えた。
降下する太陽城と子供たちとのおやつ
気付けば太陽城の高度は五千メートルほどまで下がり、ハクレンのものと思われる炎の攻撃が見えた。戦いに参加したがるグラルに対し、村長は預かっている子供であることを理由に許可せず、代わりに槍投げを勧めた。しかしグラルが空腹を訴えたため、村長は夕食前のおやつとして小さなパンケーキを焼き、蜂蜜をかけて子供たちに振る舞った。その間にも、太陽城は傾きながら高度四千メートルほどまで降下を続けていた。
第一制圧部隊の帰還とクズデンの土下座
夕暮れ時、城内で戦うクロの子供たちを残し、第一制圧部隊とラスティが途中報告と夕食のためにクズデンを伴って帰還した。食事の前、寒空の下でクズデンが下着姿で村長に土下座をして謝罪する儀式が行われた。ルーたちは全裸での土下座を提案していたが村長が止めたため下着姿となり、子供たちは事前に屋敷へ遠ざけられていた。村長は寒さに震えるクズデンを見て服を着せるべきだと提案したが、薬や治癒魔法があるため問題ないと退けられ、早く食事に移るための別の口実を考えることになった。
3 鍋と報告
鍋料理の夕食と報告の開始
第一制圧部隊が作戦途中で帰還し、屋敷の食堂で鍋料理を食べながら状況の報告が行われた。村長は城に残ったクロの子供たちの食事を心配したが、ラスティが現地で魔物などを調達しているため問題ないと説明した。巨大なエビや野菜を入れた鍋は非常に美味であり、謝罪を終えたクズデンも客として同席して食事を楽しんだ。
太陽城の住人と魔物による障壁
食事の中で、城にはクズデンを含む約六十人の悪魔族と約二百人の夢魔族が住んでいることが説明された。村長はクロの子供たちが悪魔族を誤って襲撃しないか懸念したが、クズデンが村長の服を配置し、賢いインフェルノウルフに匂いで味方だと識別させていると答えた。また、城内には接触すると魔力を奪う厄介な魔物がおり、それが悪魔族の脱出を阻む原因であった。
制圧の進捗と食料取引の成立
ティアは太陽城が広大な立体構造であり、危険な魔物が多く全域の制圧には時間がかかると報告した。第二制圧部隊は一方的に魔物を討伐している状態であった。村長が二百六十人の住人の食料事情を気にかけると、クズデンは冬場の厳しい状況を明かし、アイテムとの交換で余剰食料を売ってほしいと懇願したため、村長はこの取引を受け入れて準備を進めることにした。
悪魔族の実力と村長の展望
雑談の中で、太陽城の悪魔族は竜に仕える上位の悪魔族とは異なり、戦闘力は村の武闘会における戦士の部クラスであることが判明した。さらに城内で長く暮らしていたため実戦経験も乏しい状態であった。これを聞いた村長は、城を村の上空から退かすという目的の達成後について考えを巡らせた。住人たちが温厚であるため見捨てることはできず、場合によっては村の豊富な備蓄食料を用いて当面の間彼らの面倒を見ることも視野に入れた。
和やかな夕食の終わり
食事が進み、うどんや雑炊が振る舞われる頃には、ウルザやグラルといった子供たちは眠気を見せ始めた。最後に村長がデザートとして切り分けたフルーツを提供すると、クズデンはそれに感激した様子で味わった。
4 太陽城制圧
二日目の制圧作戦開始と待機
太陽城制圧の二日目が始まり、制圧部隊とクズデンが再び出発した。クズデンの前日の訪問は謝罪が目的であったため、城の今後に関する具体的な話し合いはまだできない状況であった。村長は屋敷の前に待機場所を設けて遠くに見える太陽城を観察し、そこへウルザや子供たちが集まって前日同様に槍投げ遊びを始めた。
槍投げ教室と木斧への挑戦
鬼人族メイドたちが屋敷に常備するために持ち出したことで槍が減っていたため、村長は不足分を補充した。ハイエルフたちが指導する槍投げ教室には多種族が参加し始めた。斧投げが得意なドワーフのために村長が木斧を作ると、彼らは両手で投げて見事に的に命中させた。ウルザや他の子供たちも木斧に挑戦したがうまくいかず、結局は元の槍投げへと戻っていった。
おやつ作りと降下する太陽城
昼食後、村長は温かい苺ジャムと生クリームを添えたパンケーキを作り、子供たちや鬼人族メイドたちに振る舞った。運動後の子供たちは旺盛な食欲を見せた。その頃、高度を回復していた太陽城が一気に降下し、ハクレンとラスティが土台の下方を旋回しながら攻撃して崩している様子が確認できた。
来訪者との情報共有
そこへビーゼルが確認に訪れ、太陽城の悪魔族全員が魔王国所属ではなく、城自体が魔王国にとって敵に近い存在であると説明した。村長はその点を確認して改めて連絡すると伝えた。また、ハウリン村からは希少金属の取引を希望する通信が入り、村長はその件をガットに一任することにした。
村長の投擲による土台崩壊と城の安定
太陽城の方向からハクレンの炎の光が走り、彼女とラスティが土台の中腹に円を描いて的を示していることに村長は気付いた。村長が万能農具の槍をその的に命中させると、土台が崩壊して地上へ落下し、村にも巨大な衝撃が伝わった。土台を失った太陽城の底には半円球の構造が現れ、村長はそれが本来の姿であると推測した。その後、城は高度五千メートルで安定し、村への接近を止めた。
制圧完了の報告と無傷の帰還
夕食前に制圧部隊の一部が帰還し、太陽城制圧完了を報告した。クズデンは方針をまとめるために城に残り、第二部隊も魔物の確認を継続した。翌日は村長自身が城へ赴いて成果を確認することになり、ハクレンが面倒を見る条件でウルザたちの同行も許可された。夕食の席では激しい戦いの様子が語られ、魔力を吸収する魔物には炎と武力で対応したことが説明された。村長は全員が無傷で帰還したことを何よりも喜んだ。
5 城主
太陽城への到着と魔物の子供を巡る騒動
ヒラクたちはハクレンの背に乗って、魔法的な力により穏やかな気候に保たれた太陽城へ到着した。着地した中庭では、悪魔族の少女が隠れて飼っていた魔物の子供を庇い、大人たちがそれを止めるという、ヒラクの到着に合わせたような騒動が起きていた。これまで異常な環境下で見逃されていた魔物の子供であったが、クロの子供たちが城内の魔物を殲滅したことで、その扱いが問題となっていた。
城主登録の必要性と太陽城の制御システム
ヒラクは代表者のクズデンに魔物の飼育許可を求めたが、クズデンは城の効率的な制御には城主登録が必要だと説明した。謁見の間に案内されると、制御を司る巨大な水晶石が存在した。水晶石は神人族にしか仕えないと主張していたため、悪魔族たちは城を本格的に制御できていなかった。ヒラクは神人族に該当する天使族のティアやキアービットに城主登録を頼んだが、二人はヒラクを差し置いて城主にはなれないと辞退し、ヒラクに城主になるよう促した。
太陽城との応酬と天使族の反発
ヒラクが水晶石に名を尋ねると、水晶石は礼儀を求めた上で自らを太陽城と名乗った。ヒラクは天使族が神人族という呼称を嫌うため配慮を求めたが、太陽城はそれを取り合わなかった。その態度に対し、ティアとキアービットが太陽城に打撃を与え、神人族は死滅しており自分たちは天使族だと明言した。太陽城は自己修復しながら謝罪したが、二人は依然としてヒラクを城主に推して太陽城を脅したため、ヒラクが仲裁に入ることになった。
クズデンの城主就任と飼育の許可
ヒラクが太陽城に城主として許容できる者を尋ねると、太陽城はヒラクたちが城内の魔物を駆逐し、土台の大岩を破壊した事実を確認した。太陽城は種族にこだわるのは愚かだったと態度を改め、突然クズデンを新しい城主として宣言し、その場で登録を完了させた。その後、全員で謁見の間に椅子を運んで着席し、ヒラクが城主となったクズデンに魔物の子供の飼育許可を求めると、クズデンがあっさりと認めたため最初の騒動は解決した。
太陽城が大樹の村へ向かった理由
ヒラクは急に卑屈な態度へ変わった太陽城に対し、古い契約によって大樹の村へ向かった理由を問い質した。太陽城の説明をルーが要約したところによると、その契約とは、竜の巫女が神代竜族を十頭以上集めた場所へ向かい、その中心にいる人間の味方をするという内容であった。大樹の村には神代竜族にあたる竜たちと竜の巫女が存在していたため、太陽城は契約の条件を満たしたと判断して移動してきたことが判明した。
6 太陽城観光
太陽城の構造と食料事情
ヒラクは九つのブロックに分かれた太陽城の内部を見学した。中央の城は豪華な内装であったが、多くの場所が畑に変えられており、日光を必要としないダンジョンイモが栽培されていた。城に閉じ込められた悪魔族と夢魔族は水源こそ確保していたが食料難に苦しんでおり、夢魔族が普通の食事を必要としないことで辛うじて生活が成り立っていた。
食材の提供と種族の観察
ヒラクたちは持参した豚肉や卵などを調理して悪魔族たちへ振る舞い、彼らの痩せ細った姿を見て今後はより栄養のある食材を用意しようと考えた。また、下着のような服装の夢魔族に対しては、同行していたウルザやグラルに見せないよう気を配った。悪魔族の中には年配に見える者もいたが、ヒラクは種族が混在する世界では見た目だけで年齢は判断できないと認識を新たにした。
廃墟と化した市街区と工房区
城の周囲にある市街区は魔物や魔獣に占拠されて廃墟と化しており、工房区も頑丈な建物が原形をとどめているものの激しい戦闘の痕跡が残っていた。ヒラクは、魔物を討伐したクロの子供たちが誇らしげな様子を見せているのを確認し、その働きを認めて丁寧に頭を撫でた。
荒れ果てた森林区と水源の維持
森林区も大半の木が枯れて魔物の巣となっており、ヒラクは実用ではなく天使族の鑑賞用であったと推測した。北西ブロックにはかつての土台へと続く危険な大穴が存在したため、ヒラクは近づかないよう判断した。西ブロックの貯水区では水が浄化されて城内へ循環する機構が機能しており、水系の魔物が棲み着かなかった幸運も重なって、住人たちの水源が維持されていた。
悪魔族の侵略経緯と籠城生活
かつて悪魔族は、魔物の卵と土を飛ばして太陽城の行動を阻害する計画を立てたが失敗し、それが巨大な土台となって城に付着していた。その後、悪魔族は荷物に紛れて城内へ侵入し占領に成功したものの、残存する天使族に制御を封じられ、さらに土台で孵化した魔物の脅威により籠城生活を余儀なくされた。結果として、嫌がらせの目的で運び込んでいた大量のダンジョンイモが彼らの命を繋ぐことになった。
夢魔族の経緯と城の維持
太陽城に残っていた夢魔族は、もともと天使族の従者であったが、戦闘力が低かったため悪魔族に降伏し、魔物に追い詰められたことで彼らと共同生活を送るようになった。ヒラクが城の大部分が廃墟であることに寂しさを覚える中、クズデンは、悪魔族たちが機嫌を取ることで城の制御を司る水晶石が協力し、城全体が維持されてきたと説明した。
花瓶の仕掛けと隠し通路の発見
視察を終えようとしたヒラクは、行き止まりの通路に置かれた不自然な花瓶の存在を思い出した。ヒラクが違和感を覚えてその花瓶を手前に倒すと、壁の一部が開いて隠し通路が出現した。クズデンが驚愕する間もなく、待機していたクロの子供たちがその新たな通路へと一斉に突撃していった。
7 隠し扉の先
隠し通路の先の書斎と逃走経路
ヒラクたちは仲間たちと別行動を取り、隠し通路を進んで本が散乱する荒れた書斎に到着した。書斎の壁から続く通路の先には牢屋があり、その中の一つだけが最近まで使われた痕跡を残していた。通路をさらに進むと中庭へと繋がり、ヒラクの予想通り、少女がその牢屋でカメレオン型の魔物を飼っていたことが判明した。ヒラクは一連の構造が逃走や退避のための経路であると推測した。
本命の仕掛けと認識阻害の壁
牢屋への経路はダミーだと判断したヒラクが書斎の置物を操作すると、部屋全体が下降して新たな通路が出現した。しかしその通路は人間であるヒラクとウルザにしか見えず、他の種族には認識阻害がかかって壁に弾かれてしまった。ヒラクは通路の先が太陽城の動力部だと予想しつつも、二人だけで進むのは危険だと判断して引き返すことを決めた。
結界の解除と動力部での邂逅
その時、見知らぬ女性の声が響いて結界が解除され、全員が通路を認識して進めるようになった。通路の先には巨大な水晶石と機械が鎮座する動力部が存在し、太陽城城主補佐筆頭のベル=フォーグマと名乗る白髪の女性が待っていた。彼女は太陽城の運航責任者であり、予言を完遂するためにヒラクたちの到着を待っていたと語った。
予言による太陽の剣の譲渡
ベルは予言に従ってヒラクを勇者と呼び、魔王の弱点である背中の鱗を突いて倒すための赤い太陽の剣を差し出した。ヒラクは自身が勇者ではなく知り合いの魔王を倒す気もないと明言したが、ベルは予言通りに剣と情報を渡す役目を終えること自体が重要であり、剣の扱いや破棄は自由だと説明した。
万能農具による太陽の剣の処分
ベルが役目を終えて晴れやかな表情を見せる中、ヒラクは受け取った重い太陽の剣を床に置いた。知り合いを殺すための剣は不要だと判断したヒラクは、万能農具のクワを取り出して剣を耕し、土へと変えて処分した。ベルはその行動に怒ることはなく、満足そうに親指を立ててヒラクの行いを肯定した。
8 太陽城の燃料問題
ベルが知った太陽城の現状と燃料枯渇の経緯
長く隔離されていた太陽城城主補佐筆頭のベルは、城が占領され荒廃していることや燃料が尽きかけている現状を知らず、自身への相談なしに新城主が決まったことに不満を示した。ヒラクの指摘を受けたベルがもう一体の稼働中の人工生命体であるゴウに事情を問いただすと、太陽城はかつての持ち主である道楽貴族によって備蓄燃料を売り払われ、その後に城を買い取った天使族の戦闘や魔物の襲撃によって燃料を失ったことが判明した。事情を知ったベルは道楽貴族に対して激しい怒りを露わにした。
食事を通じた交流と悪魔族たちの定住希望
ヒラクたちは持参した食材を調理し、城内で栽培されていた不味いダンジョンイモをカレーに入れて消費する工夫を試した。食事の席でヒラクがクズデンたちに今後の希望を尋ねると、クズデンは五百年にわたる生活の積み重ねと夢魔族との共同生活の基盤があるため、できればこのまま太陽城に留まりたいと答えた。
航行不能の危機と保温石による燃料問題の解決
その矢先、ベルの計算によって太陽城があと三年ほどで航行不能に陥ることが判明し、クズデンは地上で魔物に蹂躙される危険を想像して激しく動揺した。ベルは燃料として希少鉱物の太陽石が大量に必要だと説明したが、ルーの指摘とヒラクの所持品により、それが現在では手に入りやすい保温石であることが確認された。長年の隔離で常識が更新されていなかったベルは驚いたが、当面必要な十キロ程度ならば温泉地で採掘した方が早いと判断され、太陽城は自力で温泉地を目指すことになった。
大樹の村への臣従申し出と太陽城の再始動
自力での復旧が困難であり所属先を求めていたクズデンとベルは、燃料問題の解決策が見えたことを機に、城の技術やアイテムを差し出す代わりに大樹の村への臣従を申し出た。ヒラクは保温石の代金の問題も考慮して即答を避け、村へ持ち帰って住人たちと相談することにした。その後、ベルが床に地上の映像を映し出して城の操縦が可能であることを証明し、自身の無知に落ち込む彼女をヒラクが受け入れる中、太陽城は燃料補給のために温泉地へ向かう準備を整えた。
閑話 太陽城の事情 クズデン
閉ざされた太陽城での生活
クズデンは太陽城を占領した英雄を曽祖父に持ち、悪魔族と夢魔族を束ねる部隊長であった。城内に閉じ込められた環境で育った彼にとってそれは当たり前の生活であり、不安を抱える年配者たちは夢魔族の力で夢の世界へ逃避していた。クズデンの日常は外壁の見回りと主食であるダンジョンイモの栽培、そして機嫌を取る必要がある指導者的な水晶石である太陽城さまとの夜の会議によって成り立っていた。
古の契約による進路変更と宣告
平穏な日常が続くと思われた矢先、太陽城さまは古の契約によって人間の味方をするため進路が変わったと告げた。八十七日後に悲劇の地に到着して全滅する可能性が高いと宣告され、戦闘訓練を命じられた。クズデンはこの事実を全員に共有し、連日会議を重ねたものの解決策は見つからず、城内には絶望が広がっていった。
宣戦布告の失敗と即座の降伏
武器の扱いや適切な訓練方法も分からないまま走り回る程度の準備しかできず、到着直前には目的地の村の圧倒的な戦力を見せつけられてさらに絶望した。そこで戦闘を回避する可能性に懸け、太陽城さまの提案に従って宣戦布告を行ったが、直後に城全体を揺るがす攻撃を受けた。この事態に太陽城さまは即座に全面降伏を決断し、戦意を喪失したクズデンもそれに同意した。
来訪者への謝罪と城主への就任
その後、目的地の村から竜とインフェルノウルフが訪れ、クズデンたちはその恐ろしい姿を見た瞬間に気絶した。目を覚ますと城内の魔物や魔獣はすべて駆除されており、彼らは長年の脅威から解放されていた。来訪者たちが話の通じる相手だと理解したクズデンは、村の代表である村長に宣戦布告の件を謝罪し、村長はこれを寛大に受け入れた。これら激動の経緯を経た後、気付けばクズデンは理由も分からないまま太陽城の城主となっていた。
閑話 太陽城の事情 ゴウ
自動航行の開始とゴウの危機感
太陽城の城主補佐であるゴウは、悪魔族に容赦しない人間の性質を危惧していた。太陽城は古の契約によって竜族と人間のいる場所へ向かう自動航行を開始しており、ゴウの権限では停止できなかった。隔離任務中の補佐筆頭ベルとも連絡がつかず、目的地に到着すれば城に住むクズデンたち悪魔族や夢魔族が殺害される可能性が高いとゴウは強い危機感を抱いた。
燃料不足下における逃走策と牽制
深刻な燃料不足の状況下で、ゴウは独立した燃料系統を持つ五枚の魔法防壁と城内の魔物を防衛手段とし、自動航行が解除される到着と同時に全速力で逃走する計画を立てた。しかし、古の契約を知る竜族が味方だと誤認して乗り込んでくる危険性があったため、人間と竜を牽制して時間を稼ぐ目的で宣戦布告を行う策を講じた。
宣戦布告の失敗と防衛手段の喪失
宣戦布告を実行した結果、強固であるはずの五枚の魔法防壁は容易に突破された。さらに、直後に新たな防壁を展開しようとした負荷によって発生装置自体も故障してしまった。最初の攻撃で防御の要を完全に失い、ゴウは相手の力量を大きく見誤っていたことを激しく後悔した。
完全降伏の決断とクズデンの城主就任
防衛手段を喪失したゴウは、自身の子のように思えるクズデンたちの命を守ることを最優先とし、全責任を負って完全降伏を決断した。その後の交渉の場において、村の代表者の周囲に吸血鬼や神人族、竜などが控える異常な状況を察知したゴウは、クズデンたちの存在価値を高めて生存させるため、彼を太陽城の城主に据えることに決めた。
閑話 太陽城の事情 ベル
長い隔離生活と予言への疑念
ベルは予言の書によって太陽城の奥深くに縛り付けられ、十年と七か月後の解放を待ち続ける役目を負っていた。長きにわたる拘束は彼女の心に暗い感情や恨みを募らせており、過去の侵入者が仕掛けに気付かず去るたびに落胆させられてきた。予言の絶対性に疑問を抱き始めていたベルは、もし予言が外れた場合には自らを縛る太陽の剣を砕こうと決意していた。
侵入者の到達と結界の解除
ある時、書斎に現れた侵入者が仕掛けに気付いたのを見て、ベルはついに予言の時が訪れたと歓喜した。しかし侵入者が慎重になって引き返そうとしたため、ベルはこの絶好の機会を逃すまいと、二度と再展開できないことを承知のうえで結界を解除した。そして、自身の役目を終わらせるために不可欠な太陽の剣を確実に受け取ってもらうべく、穏やかな態度で彼らを迎え入れる準備を整えた。
太陽の剣の破壊と精神的な解放
ベルの前に現れた人物は特別な存在ではなかったが、彼が太陽の剣を受け取り、さらにそれを破壊したことで、ベルにとっての恩人となった。役目に縛り付ける象徴であった剣が破壊されたことで、ベルは長年の束縛から解放され、心に渦巻いていた暗い感情も晴れ渡って清々しい気持ちに包まれた。
予言の終焉と外の世界への決意
予言が外れて十年と七か月という期限が意味を持たなくなったことも、ベルにとっては大きな喜びであった。予言そのものから完全に解き放たれて役目を終えたベルは、長く閉じ込められていた太陽城の外の世界へ向かうことを思い描きながら、美しい太陽城へと戻ろうとしていた。
【二章】 研究
1 太陽村
太陽城受け入れを巡る会議
ヒラクたちは太陽城から戻ると種族代表者を集めて会議を開き、太陽城を受け入れるかどうかを議題にした。もともとクズデンたちは太陽城を維持しながら大樹の村と交易し、細々と生活することを考えていた。しかしベルとゴウを交えて現状を確認した結果、太陽城だけで自立するのは難しいという結論に至った。最大の理由は資金の欠如であり、現金も価値ある品もほとんど残っていなかった。太陽城のアイテムや技術を売る方法もあったが有限であり、すでに一部は食料と交換されていた。さらに太陽城の燃料は尽きかけており、補充できなければ地上に降りることになる。飛行を前提に設計された城は地上での防御力が低く、燃料が尽きればベルやゴウの活動にも影響が出るため、クズデンたちだけでの生活は難しいと判断された。
そのためクズデンは悪魔族と夢魔族、さらにベルとゴウの同意を得たうえで大樹の村への臣従を申し出た。悪魔族と夢魔族は燃料切れによってゴウが停止する事態を避けたいと考え、ゴウは彼らを守りたいと願い、ベルは太陽城を飛ばし続けたいと望んでいた。それぞれの理由が重なり臣従の申し出に至ったのである。
太陽城の所有権を巡る議論
臣従の申し出を受け、ヒラクは太陽城の所有権について疑問を示した。ゴウの記録によれば太陽城はかつて天使族に売却されており、所有権が天使族に残っている可能性があった。クズデンたちの祖先が戦争で占領したとしても、その軍の所有物になる可能性もあり、ヒラクは後から争いになることを懸念した。
ヒラクが率直に疑念を話すと、その場は一度静まり返った。やがてルーが立ち上がり、難しく考える必要はないと断言した。ルーは自分たちが城を占領したのだから住んでいる者の面倒を見る、それで十分だと述べた。仮に文句を言う者が現れても、これまで放置されていた城について誰が主張するのかという考えであった。さらにティアが神人族はすでに滅びていると補足し、この話題はそれ以上触れないようにと述べた。もし誰かが文句を言うなら受けて立てばよいというルーの言葉で、太陽城を受け入れる方針が決定された。
四ノ村の成立と臣従の儀式
太陽城の謁見の間でヒラクはクズデンに臣従の受け入れを宣言した。太陽城は四ノ村と改名されたが、長い歴史を考慮して太陽城や太陽村という呼び名の使用も特別に認められた。名称変更の決定はルーやティアの助言によるものであったが、ベルが強く落胆したため例外が加えられた。
文官娘衆が用意した書類がクズデンに渡され、彼が代表者であることを示す証明書とされた。クズデンは四ノ村村長代行の地位を受け、ヒラクへの忠誠を誓った。会場には大樹の村の種族代表者が集まり、クズデンの背後には悪魔族や夢魔族、そしてベルが並んでいた。儀式の後は宴会となり、同行していた鬼人族メイドが料理を担当し、食材や人員の移動ではハクレンとラスティが協力した。
四ノ村ではクズデンが村長代行となり、ベルとゴウが補佐を務めることになった。ベルは人間に近い姿だが本質はゴウに近く、太陽城からエネルギー供給を受けて活動していた。燃料問題が解決すればゴウも人間の姿で活動できるようになると説明された。
太陽城での生活準備
太陽城は保温石採掘のため温泉地へ向かっていたが、移動速度は遅かった。もともと別荘として建てられた城であり、浮遊能力が重要視され移動力は重視されていなかったためである。
ヒラクは太陽城の生活環境を整えるため作業を始めた。城には家がなく食料や産物も不足しており、主な食材はダンジョンイモだけであった。まず住居を整える必要があり、市街区の廃墟を更地にして家を建てる計画を立てた。万能農具を使い建設用の土地を整備したが、建材の確保は簡単ではなかった。悪魔族や夢魔族が飛べるため高度を下げて資材を運ぶ方法も考えられたが、冬の強風と寒さのため作業は難しく、木を育てて建材にする案も検討された。
畑の移設と城の整備
ベルは城内の畑を外へ移すことを望んでいた。城内に入るとすぐ畑が広がる状況は不自然であり、謁見の間へ向かう通路が畑の中という状態だったからである。ヒラクはクズデンと相談し、市街区の南に住宅を建て、その左右の南西と南東の区域を畑にすることを決めた。廃墟や残骸は万能農具で耕され、新しい農地が作られた。
作業中、ベルはヒラクを神ではないかと尋ねたが、ヒラクは自分はただの農民だと答えた。また創造神と農業神の像を城に置く許可を求めると問題はなく、城内でも最も良い部屋に置くことが認められた。クズデンもそれに異議はなかった。
温泉地到着と新しい計画
ヒラクは大樹の村へ連絡を取り、飛行できる者の派遣を求めた。やって来たのはグランマリアであり、太陽城と村の間では通信も可能であった。やがてベルから温泉地に到着したとの連絡があり、ベルはカレーを食べて感激していた。
ヒラクは食料事情を改善するため森林区に果実の木を植える計画を立てた。枯れている木を整理し、生き残った木は残しながら新しい果樹を育てることで、将来的に収穫が可能になれば食料事情は大きく改善されると考えられた。寒さの中でも作業は続けられ、四ノ村の整備は進められていった。
2 保温石採掘
温泉地への到着と死霊騎士の案内
ヒラクはグランマリアに抱えられて高度五千メートルの太陽城から温泉地へと降下した。到着後、出迎えた三人の死霊騎士に太陽城を支配下に置いたことと、保温石の採掘で騒がしくなることを伝えた。死霊騎士たちは素直に驚いて戦勝の舞を披露し、その後目に見えて動揺しながらヒラクたちを採掘現場へと案内した。道中、ヒラクは先導する死霊騎士が道に迷う様子から拠点防衛向きであることを察しつつ、以前渡した盾が好評であると聞いて新たな盾の作成を考えた。
翼を持つライオン一家との遭遇
冬でも暖かい採掘現場には保温石が露出しており、そこに大きなライオンの魔獣一家が滞在していた。死霊騎士が一家を宥めて庇う姿勢を見せたため、ヒラクは飼育に反対せず温泉地の警備への参加を期待して子ライオンと触れ合った。採掘の邪魔になるためヒラクが温泉地への移動を提案すると、父ライオンの背中に大きなコウモリの翼が生え、一家はヒラクに一礼して空へ飛び去っていった。これにより、彼らが普通のライオンではないことが明らかになった。
保温石の採掘と運搬計画
ライオン一家が去った後、ヒラクは露出分だけでもトン単位に達する十分な保温石の埋蔵量を確認した。ヒラクが万能農具で掘り出し、他の者たちが削るという従来の方法で採掘を行うことにした。しかし太陽城の移動手段はかつての持ち主に売り払われて存在しなかったため、ハクレンとラスティに一気に運搬を頼む計画を立てた。応援を待つ間、くじ引きで同行者に選ばれたグランマリアに周辺警戒を任せ、ヒラクは彼女が希望する甘い菓子を作る約束をして単独で採掘を進めた。
太陽城への保温石搬入とベルの反応
太陽城へ大量の保温石が運び込まれると、長らく燃料不足に悩まされていたベルは気分を高揚させ、建造当初にこの量があれば世界を取れたと歓喜した。保温石はゴウが精製して燃料にする必要があり、燃料が満たされればゴウや他の活動停止中の者たちも人間の姿で活動できるようになると説明されたため、ヒラクは彼らがクズデンを支えるようになることを期待した。一方で武装の改修や増設を目論むベルに対し、ヒラクは物騒だと制止し、現在育成中の作物を維持しつつ畑作業を手伝うよう命じた。
3 太陽城の技術力
ダンジョンイモの植え替え
太陽城内で育てられていたダンジョンイモは、外の環境に適応できるかを見極めつつ全滅の危険を避けるため、一部だけが外の畑へ植え替えられた。ヒラクは地下洞を作ることも考えたが、城の地下空間を考慮して深く掘ることは控えるよう伝えられたため、当面は植え替えた作物の様子を見ることにした。
魔法技術の解析断念と納豆研究
ヒラクは太陽城の高度な魔法動力技術を複製しようと試みたが、ベルとゴウは技術の使用法を知るのみであり、一から説明することは不可能であった。ルーの聞き取り調査でも実用化には多大な時間を要すると判明し、答えの決まった研究に興味がないルーと、発酵食品の研究で忙しいフローラは参加を拒んだ。そのフローラは納豆の発酵速度の調整に苦労しながらも低温熟成を見出して試作品を完成させており、ヒラクは独特の匂いがあるその食品を美味しく食べる方法を探る必要があると考えた。
残存文献の収集と保管
口頭での技術習得を諦めたヒラクは資料に期待したが、長い歴史の中で多くの文献が失われており、残存する書物も内容は極めて雑多であった。実用に結びつく魔法技術の文献は少なかったものの、貴重な資料であると判断して譲り受けたヒラクは、屋敷に本棚を設置して保管した。住人たちはその中にある物語と思われる本を楽しそうに読んでいた。
死の森上空の周回運航計画
大量の保温石を補充した太陽城は、運航担当であるゴウが自身の役割を果たすために移動を再開することになった。死の森の外で問題を起こさないようにというヒラクの配慮と、反時計回りが無難だとするゴウの強い主張により、太陽城は一年をかけて死の森の外周上空を反時計回りに周回するコースを取ることに決まった。
移動手段の検討と気球開発の先送り
周回する太陽城への移動手段としてヒラクは転送装置の有無を確認したが、建造当時は転移魔法が違法であったため存在しなかった。ヒラクが気球や飛行船を提案すると山エルフたちが興味を示して試作に乗り気になったが、丈夫な布を作るザブトンの冬眠明けを待つ必要があった。まずは小型気球と熱供給装置の開発から始めることになり、当面は飛行可能な者に運んでもらう従来の方法を継続した。
有用な缶詰技術の発見
太陽城の技術を調べる中で、ヒラクは悪魔族と夢魔族がダンジョンイモの保存に用いていた缶詰技術を発見した。装置が固定されていて日産十個という少なさは欠点であったが、密封して長期保存できる点は極めて重要であった。ヒラクはこの技術の価値を高く評価してマイケルも喜ぶと考え、活動停止中の人工生命体たちが目覚めることで将来的に生産量が増加する可能性にも期待を寄せた。
4 新たな春
冬の終わりとザブトンの太陽城訪問
ヒラクは冬を太陽城の対応で費やし、自力での移動手段の必要性を感じて気球の制作を急ぐべきだと考えた。春を迎えて目覚めたザブトンと子供たちに、太陽城が味方の城であることを説明し、ヒラクはハクレンに頼んでザブトンと共に太陽城を訪問した。しかし太陽城のベルたちはザブトンに慣れておらず激しく怯え、ベルは腰を抜かして泣き出したためヒラクが背負って私室へ運んだ。ゴウも水晶石のふりをしてやり過ごそうとしたが失敗し、ヒラクは全盛期の防御力を失った太陽城の現状をベルから聞かされた。その後、ヒラクはザブトンに被服関連の情報提供を依頼した。
太陽城の建設事情と夢魔族の服装
太陽城では住宅建設が始まっていたが、建材の輸送や木の成長に時間がかかるため難航しており、魔法で大量の資材を運ぶことも現実的ではなかった。一方、ザブトンは太陽城の構造よりも夢魔族の下着のような服装に強い関心を示し、ヒラクはそれを水着のデザインに活かしてほしいと要望した。
春の畑仕事と外部への報告
大樹の村に戻ったヒラクは一か月ほどかけて春の畑仕事をこなしながら、外部への報告も行った。ラミア族や巨人族は太陽城の件に鈍い反応を示したが、ハウリン村からは祝辞が届き、魔王国は管轄化を承認し、ドライムは見学を終えて施設の整備を望んでいた。一ノ村から三ノ村への農業支援も行い、成長の早い太陽城の畑が季節を問わず通常の農業に適しているかが今後の課題となった。
太陽城の土台調査と始祖さんの来訪
ガットの提言により、森に落下した太陽城の土台に希少鉱物が含まれている可能性を探るため、ダガとガルフを中心とする調査隊が徒歩で出発した。畑仕事で同行できないヒラクは、悲壮感を漂わせながらも頑張る意志を見せたガットを護衛のクロの子供たちに託した。その後、大樹の村を訪れた始祖さんは太陽城を懐かしんだ後、温泉地でライオン一家と出会って驚きつつも一緒に入浴し、ヒラクは子ライオンたちの成長の早さを実感した。
小型気球の完成と移動手段の確立
山エルフたちが保温石を用いた魔道具とザブトンの丈夫な布を組み合わせて小型気球を完成させ、酒スライムが試乗して試験飛行は成功した。ウルザたちの要望と、天使族や竜に頼りきりの移動手段を確立する必要性から正規サイズの制作が始まり、ヒラクも材料の伐採に駆り出された。
クロたちとの時間とザブトンの子供たちの旅立ち
忙しい日々の中、クロの子供たちが遊び道具を咥えて待っているのを見たヒラクは、彼らと遊ぶ時間を作った。拾われた子犬はフェンリルに成長してクロたちに溶け込んでおり、専用の大きなボールの制作が急がれた。また、今年もザブトンの子供たちが糸を使って空へ旅立ち、風下に位置していた太陽城へ十匹ほどが着地してそのまま生活を始めた。ヒラクは再会を喜んだが、太陽城の住人たちは激しく怯えて連絡を寄こし、ヒラクはいずれ慣れるだろうと楽観視した。
5 ダンジョンイモ
日光下でのダンジョンイモ栽培の失敗
ヒラクは味の悪いダンジョンイモの改良計画として、太陽城の畑において日光を当てる栽培実験を行った。しかし、日光下のダンジョンイモはイモを実らせることなく爆発的に生長し、畑を埋め尽くして柵を乗り越え、他の畑へも侵食し始めた。異常な生長とイモができないという報告を受けたヒラクは、栽培していたダンジョンイモをすべて伐採して排除することを決断した。
魔王から明かされたダンジョンイモの正体
ダンジョンイモの知識を持つ魔王によれば、それは日光に当たると激しく生長して枯れる災害植物であり、処分するには光に反応しない夜間に作業するのがよいとされた。日陰で育てても味は良くないが収穫量には優れており、かつての領主たちは飢饉対策や、魔物が好む性質を利用した罠や時間稼ぎの防衛策として栽培していた。
ダンジョンイモ消滅とフェアリー小麦の普及
約二百年前、特有の疫病によってダンジョンイモは隔離されていた太陽城を除いて全滅し、エサを失った魔物が暴れ回る事態となった。その後、魔王国で育てられ始めたのがフェアリー小麦であり、日光下や荒地でも育つ性質と味の良さから人気を集め、広い土地を持つ人間の国で爆発的に普及した。
フェアリー小麦の疫病と戦争の継続
約十五年前、今度はフェアリー小麦特有の疫病が流行して人間の国は大飢饉に陥り、これを魔王国の陰謀と見なして戦争が勃発した。ヒラクは戦争よりも農業を優先すべきだと感じたが、魔王は人間の国の多くの畑が荒地化して他の作物が育たないため、戦争に目を向けざるを得ない事情を説明した。
ダンジョンイモによる畑再生案
ヒラクは、原因不明で他の作物が育ちにくくなったフェアリー小麦の荒地で、あえて日光下でダンジョンイモを育てることを魔王に提案した。イモの収穫を目的とするのではなく、激しく生長して枯れるダンジョンイモを肥料として土壌を改良し、連作障害のような状態を改善する畑の再生案であった。失敗しても放置されている荒地ならば問題ないため、魔王はこの提案を受け入れて日陰での栽培実験も希望し、ヒラクから種イモを受け取った。
各種族によるダンジョンイモの利用
大樹の村の各所でダンジョンイモの嗜好は分かれ、ザブトンたち以外にはあまり好まれなかった。ラミア族と巨人族も味自体は評価しなかったが、飼っている蛇やブラッディバイパーといった魔物のエサとして利用価値を見出し、ヒラクから魔物が好む性質と日光下での栽培を避ける注意書きと共に種イモを受け取って栽培を始めた。
魔物の反応を調べる実験
ヒラクは森の中でダンジョンイモを入れた網袋を放置する実験を行い、数時間で虫系の魔物が群がることを確認した。次に地中へ埋める実験を行うと掘り返された形跡はなく、ダンジョンイモは地中にある間は魔物に狙われない性質であることが判明した。
酒と料理への加工実験
ダンジョンイモを酒にする実験も行われたが、味は他のイモの酒に及ばず、ドワーフたちを残念がらせてアルコール抽出用に回された。一方で鬼人族メイドたちが粉にしたり蒸したりする加工実験を進めた結果、茹でると格段に美味しくなる、こんにゃくに似た無味系で弾力のある食品が完成した。美味しい食べ方が見つかったことに満足したヒラクは、成果を挙げた鬼人族メイドに褒賞メダルを贈呈した。
6 褒賞メダルとミニトロフィー
太陽城の土台からの鉱物発見と分配
地上に落ちた太陽城の土台を調査したダガ、ガルフ、ガットたちは、星輝石、魔鉄粉、黒塵という非常に価値の高い三種の珍しい鉱物を発見して戻ってきた。これらは悪魔族が太陽城を攻撃した際の粘着性の土や魔物の抜け殻が石化したものであった。ガットは十キロほど採取して値崩れを懸念したが、ルーと始祖さんが強い執着を見せて要求したため、ヒラクは分配することにした。道中で鉄や銅も見つかったが埋蔵量が少なく、ハウリン村から購入できるため本格的な採掘は見送られた。当面の研究材料は確保できたものの、ルーたちの要望とガットの武具製作の希望を受け、ヒラクは採掘隊を編成して継続的に採掘する方針を決定した。
褒賞メダル制度の問題点と運用方法の改定
ヒラクは貴重な鉱石を発見した採掘隊へ褒賞メダルを贈ることにしたが、これには文官娘衆から配布不足を注意された背景があった。ヒラクが毎年個人用に確保している百枚のメダルが祭りや武闘会以外で配られなかったため、価値が上がり過ぎて住民が使わなくなり、通貨の前段階という本来の目的に反していたのである。この反省から、今年からは行事用と個人の功績評価用を明確に区別し、ヒラクは一人で把握しきれない功績者の推薦を各種族の代表や各村の村長代行に依頼した。
ミニトロフィーの導入と最初の授与
文官娘衆は褒賞メダルが勲章として扱われて交換に使われない現状に対し、新たな表彰の形として武闘会のものを小型化したミニトロフィーの導入を提案した。クロをモデルにしたサンプルが屋敷のホールに展示されると、受賞者の種族の姿に変えたいという期待が寄せられた。最初の受賞者は大樹の村の旗を作ったザブトンであり、緑地に金の大樹が描かれた意匠は住民の賛同を得て採用された。ザブトンが受け取ったミニトロフィーをホールのサンプルの横に飾ったことでそこが展示場所として定着し、クロも本物の受賞を目指して奮闘し始めた。
価値の高騰を防ぐための授与方針と旗の配布
ヒラクはミニトロフィーの価値が上がり過ぎて住民が過剰に熱中する事態を防ぐため、簡単な功績でも渡していく方針を固めた。その一環として、気球を作った山エルフや食品開発をした鬼人族メイド、採掘隊のガットたちなど、個人だけでなく集団に対しても積極的にミニトロフィーを授与することを決めた。その後、屋敷のホールに飾られた大樹の村の旗と同様に、ヒラクは他の村へもすでに用意されている旗を配りに行くことにした。
7 一ノ村の豚たち
一ノ村における豚の扱いを巡る対立
一ノ村において、豚を食べるか否かを巡る対立が発生した。男性陣が豚に名前を付けて家族のように扱い食べることに反対したのに対し、女性陣は食料として屠るべきだと主張した。ヒラクは心情的には食べない立場であったが、簡単に決断できる問題ではないと理解し、男性たちと共に時間をかけて受け入れていく方針をとった。同時に、彼らが豚を家畜として大切に扱う姿勢を頼もしくも感じていた。
他村からの指摘と子豚の譲渡
可愛がるだけでは生きていけないという二ノ村と三ノ村からの指摘を受け、食料は重要であるという判断から、生まれた子豚の大半は両村へ譲られることになった。その後、豚小屋増築の話が持ち上がったが、覚悟を決める時間が必要だったヒラクは決断を先送りし、食料に困るまでは豚を食べないという方針を示した。
高い繁殖力に伴う飼育の懸念
ヒラクの判断に対し、マムは険しい表情を見せた。豚は年に何度も出産するため数年で数が増え過ぎる恐れがあり、馬や牛、鶏のように労働力や乳、卵といった明確な役割を持たない豚は、食べなければ飼料を消費するだけの存在になってしまうからであった。マムは食料が豊富な現状で無理に屠らなくてもよいという考えに理解を示しつつも、こうした問題が残ることを説明した。
食卓の豚肉とヒラクの複雑な思い
その日の夕食には、マイケルから仕入れた豚肉を用いた揚げ料理が並んだ。料理は美味しかったが、ヒラクは自身の身勝手さを自覚しながら食後のお茶を飲んだ。
6 気球
各村の家畜飼育の進展と四ノ村の課題
一ノ村から三ノ村では家畜が成長して飼育スペースが拡張された。四ノ村でも飼育計画があったが知識を持つ者がいないため、悪魔族や夢魔族を大樹の村へ移住させて学ばせる方針がとられた。また、獣人族の少女たちからは、頭数が少ない牛や馬は外部から種をもらう必要があるという事情が説明された。
気球の完成と方向操作の限界
ザブトンが作った袋を用いて大人四人が乗れる気球が完成し、魔道具による加熱で上下の操作は可能となった。しかし方向は風任せであり、ロープで繋がなければどこへ飛ぶか分からない状態であった。ヒラクはこれを太陽城への移動手段としては不十分だと判断し、動力と舵を備えた飛行船が必要だと考えた。
プロペラの試作と魔法世界の常識
ヒラクは推進力としてプロペラを回す仕組みを考案し、ルーが風を起こす試作品を作り上げた。これをワゴンに載せて動かす実験を見せたところ、ルーやフローラたちはどの魔法によるものかと驚愕した。ヒラクはこの反応から、魔法が発達した世界では物理的な飛行原理があまり意識されていない事実を悟った。
方向制御の試作と試験飛行の失敗
ルーがプロペラの魔道具を制作し、ヒラクは重量を抑えた二人乗りのカゴに左右のプロペラを取り付けて旋回する仕組みを組み込んだ。安全対策を施したうえで山エルフたちを乗せて試験飛行を行ったが、カゴ部分だけが横へ進もうとして大きく傾く結果を招いた。加熱用の炎が風船部分に近づき危険であったため、試験は直ちに中止された。
飛行船開発の中断と気球の活用
試験の失敗から、ヒラクはプロペラを風船部分に取り付けるフレームの必要性に気付いたものの、重量増加により現在の加熱魔道具では浮力が足りないと判断した。ヘリウムの製法が不明で水素も危険であるため、軽量フレームか代替ガスが見つかるまで飛行船の開発は中断され、気球は四人乗りに戻して空を楽しむ用途で運用されることになった。
ゴウの提案による太陽城への移動実現
太陽城との往復は飛行能力者に頼るしかないと思われていたが、ゴウがある程度の高さまで気球が飛べば太陽城側から誘導できると提案した。実際に試したところ気球での往復に成功したため、ヒラクと山エルフたちは将来的な飛行船完成への決意を新たにしつつ、当面は気球を量産して運用する方針を固めた。
【三章】 店を作る
閑話 出張
イフルスの経歴と息子の変化
魔王国の小さな貴族の家に生まれたイフルスは、文官としての才を認められて国に仕え、四十年の勤続の間に家庭を築いた。力と魔力に恵まれた息子はかつて反体制的な活動をしてイフルスを悩ませていたが、ある時から急に活動をやめて明るくなったため、イフルスは息子に何か良い出来事があったのだろうと推測していた。
シャシャートの街の代官としての姿勢
イフルスは五年ほど前から、魔王国の直轄地であり有数の商業都市であるシャシャートの街で代官を務めていた。彼は失敗を避けて安全に職務をこなすことを信条とし、判断に迷えば前例に従い、どうしても必要な場合は王城へ伺いを立てることを徹底していた。出世を望まず責任を負わないよう慎重に立ち回ることで、彼は大きな問題を起こすことなく職務を続けてきた。
四天王と魔王の来訪による動揺と指示
ある日、財務担当のレグをはじめ、グラッツ将軍や内政統括のランダンといった四天王が次々とイフルスの元を訪れ、彼は戦火や自身の解任を疑って激しく動揺した。さらに最後には魔王本人が現れてイフルスを極度に緊張させたが、彼らの用件は共通していた。それは、ゴロウン商会に訪れる客に対して失礼のないように応対し、陰から護衛をつけて便宜を図り、決して邪魔をしないようにという指示であった。
ゴロウン商会の来客と土地の要求
ゴロウン商会から到着の連絡を受けたイフルスが馬車で向かうと、マルコスとポーラと名乗る若い人間の夫婦が待っていた。彼らの洗練された服装や印象から身分を隠した重要人物ではないかと考えつつ、イフルスは丁寧に応対した。すると同席したゴロウン商会の会頭から、二人がこの街で商売を始める予定であることが告げられた。会頭が南商区の資材置き場となっている土地の利用を求めると、イフルスは即座に資材を移動させて土地を譲ることを約束した。
相場以上の土地代の支払い
翌日、イフルスの机にはゴロウン商会から届けられた大量の金袋が置かれていた。秘書の説明によればそれは約束した土地の代金であったが、相場の倍以上という膨大な金額であった。その金額の大きさに驚愕しつつも、イフルスは深く考えないように努めた。
閑話 一ノ村の女性 ポーラ
路地裏での生活と移住の誘い
ポーラは夫であるマルコスと共に、かつて街の路地裏で苦しい生活を送っていた。二人の転機となったのは、コーリン教の立場ある人物フーシュとの出会いであった。子供をさらっているという噂に最初は絶望したが、集められた中に路地裏のリーダー格であるジャックがいたことで安心を得た。フーシュから家を与えるという移住の話を持ちかけられ、あまりの好条件に疑念を抱きつつも、完全には話を切り捨てられなかった。
移住へ向けた学びと一ノ村での適応
ポーラたちは移住の話が嘘であっても、移住までに教わる文字や計算、礼儀作法は将来の財産になると考えて話を受けた。半年後、移住の話が真実であることが判明し、彼らは大樹の村の近くにある一ノ村で家や仕事、食料を与えられた。ポーラは与えられた仕事で失敗を繰り返したが、大樹の村の村長から自分に合った仕事をゆっくり見つけるよう励まされた。その言葉に救われたポーラたちは、農作業や紙作りなど少しずつできる仕事を増やし、一ノ村の生活に慣れていった。
村での成長とインフェルノウルフとの交流
移住当初は森に入れなかった男性陣も成長し、ジャックは単独で牙の生えた兎を倒せるほどになっていた。ポーラは夫のマルコスにも無理をしないよう願っていた。また、村を守り獲物をもたらすインフェルノウルフにも親しみを抱くようになり、ヒラクに頼んで群れを見せてもらった。ポーラはその中の一頭にクリッキーと名付け、挨拶を交わす特別な関係を築いていった。
一年後の生活と空を巡る太陽城
移住から一年が経過し、十分な薪と見回りのおかげで冬の寒さや食料の心配もなく過ごすことができた。ポーラたちは家にこもるだけでなく竹を加工して籠などの小物を作り、最も立派なものを村長に献上しようと考えていた。春が過ぎる頃には、大樹の村を中心に一年をかけて空を巡る太陽城が季節の指標となっており、ポーラはその巨大な城が村長の所有物であることに改めて驚いていた。
シャシャートの街への出店話と代表者の選出
そんな折、ヒラクから一ノ村の移住者たちへ、魔王国の商業都市であるシャシャートの街に店を出さないかという誘いがあった。読み書きや計算ができる移住者たちに声が掛かったことを知ったポーラは、自分たちの学びをヒラクが評価してくれたことを喜び、頼みに全力で応えたいと決意した。大勢で行くことはできないため、リーダーのジャックを除いた九組の夫婦の中から一組が選ばれることになり、ポーラは選出を強く願った。
出店準備とカレー屋への決意
代表に選ばれたポーラとマルコスはクリッキーや村の人々に挨拶をし、大樹の村で一か月にわたる開店準備とヒラク直々の指導を受けた。勉強期間を終えた二人は、魔王国の偉い人物の転移魔法でシャシャートの街へ出発し、ヒラクの権力の大きさを実感した。ヒラクが出店するのはカレー一品のみを出す飲食店であり、ポーラは渡された大量の資金と食材に圧倒されながらも、誰もが虜になるカレーを全て料理してみせると意気込んだ。
閑話 一ノ村の男性 マルコス
一ノ村での自覚とシャシャート行きの決意
マルコスはかつて路地裏で万能と呼ばれていたが、一ノ村では器用貧乏以下だと感じていた。それでも村長であるヒラクが誰よりも働く姿に感服し、大樹の村の発展を当然のことと受け止め、一ノ村もいつか負けないようにしたいと願っていた。ある日、ヒラクからシャシャートの街へ店を出すための責任者を募られ、まだ不慣れな自分たちに頼むことを申し訳なさそうにするヒラクに対し、マルコスは妻のポーラと共に立候補し、くじで選ばれて出発の準備を始めた。
大樹の村での事前学習とシャシャートへの到着
マルコスたちはまず大樹の村で店を切り盛りする知識を学び、出す料理が一品だけのカレーであると知って、トッピングで変化をつけられるため自分たちでもやっていけると手応えを感じた。転移魔法で大量の荷物と共にシャシャートへ到着すると、マイケルの部下たちが素早く倉庫へ荷物を運び込んだ。そこへ非常に腰の低い代官が来訪し、マルコスは良好な関係を築くために後で挨拶用の生地を渡そうと考えた。
観光による市場調査と店舗予定地の確認
最初の二日間は客の目線と適正価格を知るための観光と価格調査に充てられたが、マイケルの案内人が先払いした高級店ばかりであったため具体的な値段は分からなかった。それでもカレーがこの街で通用するという確信は得られた。その後、マイケルから案内された店舗の予定地は人通りのある広大な更地であり、建物の建設や水路の確保はマイケル側が引き受けることになったため、マルコスは開店準備に集中することにした。
従業員の確保と路地裏組織との穏便な交渉
ヒラクからの指示で現地の人間を雇うことになり、ポーラが昔の自分たちのような路地裏生活者と思われる少女たちを十人ほど連れてきた。マルコスはヒラクの教えに従って彼女たちの体を洗わせ、新しい服や専用の宿を用意した。さらに、シャシャートで路地裏生活者を管理している組織へ話を通しに行くと、想像していたような悪逆非道な暴力組織ではなく、交渉は驚くほど穏便にまとまった。
カレーの試作と巨大な店舗の完成
宿の厨房を借りてヒラクの課題であるシーフードカレーなどの試作を始めると、周囲の客が注目して人が集まり、試食相手には困らないことが分かった。十日後、マイケルに呼ばれて現地の更地へ向かうと、そこには屋根が非常に高く壁のない開放的な巨大店舗が完成していた。巨大なカウンターや厨房、従業員用設備が整っており、通りを挟んでマルコスたちの住居や従業員用の宿も用意されていると説明を受けた。
予想外の規模への対応と店長代理としての決意
ヒラクから聞いていた小さな店という印象とあまりにも異なる規模に戸惑ったマルコスだったが、預かっていたミニボウリングの存在を思い出し、この広い空間を活かすための準備だったのだと理解した。マルコスは店を四つの区画に分け、飲食エリアと遊戯エリアの二つから営業を始める構想を立てて内装を指示し、ポーラに従業員の増員を頼んだ。土地代や建築費がすでにヒラクから支払われていることを知ったマルコスは、間もなく開店する巨大店舗の店長代理として、ヒラクの名を汚さないよう全力で取り組む決意を固めた。
閑話 シャシャートの街のゴールディ
路地裏組を束ねるゴールディの警戒と見張りの失敗
シャシャートの街の裏社会でそれなりに名を知られ、下請けの下請けとして五十人を超える部下を持つゴールディのもとに、庇護下の路地裏組の少女たちが大量に雇われたという連絡が入った。雇用自体は歓迎すべきことであったが、仕事を回すのは自分の役目であり、暗黙の規則を破るよそ者の扱いを確認する必要があると考えた。そこで、高い宿に泊まる相手が街へ出る時を狙って見張りを付けたが、部下たちは怖い人物に脅されたとすぐに戻ってきたため、ゴールディは相手が相当危険だと察してその件を忘れようとした。
不穏な来訪と最初の対面
しかし翌日、その相手であるマルコスがゴールディの元を訪れた。緊急招集で部下が不在であり、番犬代わりの魔犬も散歩中だったため居留守も使えず、ゴールディは正面から応対せざるを得なくなった。マルコスは雇った少女たちについての挨拶と雇用条件の確認を穏やかに求め、ゴールディが脅しを利かせようとしても全く怯えなかった。
ガルフの名による評価の一変
相手の力量を見極めようとしたゴールディの質問に対し、マルコスが武闘会を知らず魔物と一人で戦わないよう注意されていると答えたため、ゴールディは彼を未熟な一般人だと判断しかけた。しかし、その注意した人物が街の威張る者たちを蹴散らした生きる武神であるガルフだと名指しされたことで評価は一変した。ガルフの練習相手として平然とボロボロにされると語るマルコスを、ゴールディは決して敵に回してはならない危険人物だと認識した。さらに、帰還した魔犬がマルコスに媚びる姿を見たことで、ゴールディの中で彼の危険度は一位となった。
再会と巨大店舗での新たな仕事
もう関わることはないと思っていたが、十日ほどでマルコスと再会した。マルコスは再びゴールディを通さずに路地裏の少女たちを雇っていたが、挨拶に訪れたためゴールディはそれを容認し、さらに余っていた男の子たちの仕事も斡旋した。マルコスが巨大な建物の店舗の責任者だと知ったゴールディは、リップサービスのつもりだった「頼ってほしい」という言葉を真に受けられ、店の混雑整理や喧嘩の仲裁という仕事を任されることになった。
巨大店の賑わいと人手の追加依頼
マルコスの巨大な店では、綺麗な服装で働く少女たちの間を縫うように大勢の客が押しかけ、出されるカレーという食べ物に街の人々は夢中になっていた。店はシャシャートの街で一番の話題となっており、ゴールディは逆らう気もなく与えられた役目をこなした。そこへマルコスからさらに男の子たちも雇いたいという追加の人手依頼があり、ゴールディは自身の抱える路地裏組が減りすぎると感じつつも必要人数を確認した。
閑話 路地裏の娘 ポッテ
マルコスの自己認識と村長への敬意
マルコスは自らをそれなりに物事をこなせる男だと自負していたが、一ノ村へ移住してからは自身の力量不足を痛感した。しかし村長のヒラクは、適性が見つかっていないだけだと彼を励まし続けた。マルコスは誰よりも熱心に働くヒラクの姿に感服し、いつか大樹の村に負けないほど一ノ村を発展させたいという志を抱いていた。
シャシャート行きへの立候補と選抜
ある日、ヒラクがシャシャートの街に出す店の責任者を募った。交代制の打診であったが、一ノ村の住人たちはまだ生活に不慣れであった。マルコスは妻のポーラと相談しようとしたが、彼女が迷わず手を挙げたのを見て自身も即座に追随した。最終的にくじ引きで当たりを引いたマルコスとポーラの夫婦が、街への出店を任されることになった。
大樹の村での事前学習と経営方針
出発前、二人は大樹の村で経営に関する知識を学ぶことになった。店で出す料理が一品のみのカレーであると聞かされた際、マルコスは当初驚いたものの、自分たちでも調理が可能でトッピングによる変化も付けられる利点に気付いた。工夫次第で客を飽きさせずに商売ができるという確信を得て、マルコスは準備を進めた。
シャシャート到着と代官との対面
転移魔法によって瞬時にシャシャートの街へ到着した一行は、マイケルの部下たちの出迎えを受けた。そこへ街の最高責任者である代官が訪れたが、その態度は非常に謙虚であり、マルコスたちを下に見ることはなかった。マルコスはヒラクから預かっていた高級な生地を贈ることを決め、代官と良好な関係を築くための配慮を怠らなかった。
観光を兼ねた市場調査と確信
ヒラクの教えに従い、最初の二日間は客の目線を知るための観光と価格調査に費やされた。案内された店が高級店ばかりであったため具体的な価格設定の参考にはしづらかったが、外食の経験を通じて、カレーはこの街でも十分に通用する料理であるという手応えを掴んだ。
店舗予定地の確認と建設計画
マイケルに案内された場所は、人通りが盛んな四つ角にある広大な更地であった。飲食店として重要な火と水の設備、さらには飲料用の水路までマイケル側が用意することになっていた。建物についての詳細は専門家に任せ、マルコスは自身に課せられた開店準備の業務に集中することにした。
従業員の確保と衛生管理の徹底
現地人を雇用すべきというヒラクの指示に従い、マルコスはポーラが連れてきた路地裏の少女たち十数人を雇い入れた。彼女たちの身なりを整えるため、ヒラクからの手当を用いて体を洗わせ、新しい服やタオル、専用の宿を用意した。マルコスは従業員の生活環境を整えることを優先し、彼女たちが店に出られる状態を作った。
路地裏組織との交渉とカレーの試作
路地裏の子供たちを管理する組織との交渉に臨んだマルコスであったが、その場は予想に反して穏便に収まった。その後、宿の厨房を借りて味の安定と現地食材の活用を目指した試作を開始した。シーフードカレーの可能性を探る中で、宿の客からも高い関心を集め、試食を通じて街の人々の反応を確認した。
巨大店舗の完成と予想外の規模
十日後、店舗予定地に平屋ながら極めて天井が高く開放的な巨大な店が完成した。設備は最新で、通りを挟んだ向かいには自分たちの住居と従業員用の宿まで完備されていた。当初想定していた屋台規模とは大きく異なる店舗の姿にマルコスは圧倒されたが、ヒラクから託されたミニボウリングの存在を思い出し、この広さの意図を察した。
店長代行としての決意と構想
マルコスは広い店内を飲食と遊戯の区画に分ける構想を練り、さらなる従業員の増員をポーラに依頼した。店長代行としての重責に不安を抱きつつも、土地代や建築費をすべて工面してくれたヒラクの恩義に応えるため、そしてその名を汚さぬよう全力で店を盛り立てることを誓った。
1 大樹の村の村長
ヒラクの来訪と街の案内
ヒラクは、マルコスとポーラの店の様子を確認し食材を届けるため、ガルフを伴ってシャシャートの街へ到着した。当初訪ねたゴロウン商会では店員の誤解によりマイケルが不在だとされたため、ヒラクはガルフの案内で街を巡り、港町の活気や住環境について知見を深めた。屋台での市場調査を行い、既存の食事事情を確認したことで、自村の料理が支持される理由を再確認した。
マイケルとの合流と店の惨状
街中でマイケルと合流したヒラクは、彼らと共にマルコスの店へと向かったが、そこは食材切れに激高した客たちによるパニック状態で、怒号と悲鳴が渦巻いていた。先に潜入していた始祖から、追加食材の到着を告げたことがかえって客の興奮を煽ったという経緯を聞き、ヒラクは早急な鎮圧が必要だと判断した。
始祖の魔法による沈静化
ヒラクは始祖に大音響を発生させ、自らの声を増幅する魔法を依頼した。轟音に驚き沈黙した客たちにしゃがんで待機するよう命じ、ガルフに通路を確保させて混乱の渦中にあったカウンター内へとたどり着いた。そこで防衛にあたっていたミノタウロス族たちの背後に、無事だったマルコスやポーラ、そして怯える幼い従業員たちの姿を見出した。
無料提供の宣言と再開の準備
始祖の魔法で声を大きくしたマルコスを通じ、ヒラクは謝罪と混乱への補填を公表させた。当日のカレーをすべて無料とし、一時間の準備期間を置いて営業を再開する方針を伝えて客を整然と退店させた。負傷者の治療や店内の清掃を各員に分担させ、ヒラクは未曾有の混乱を乗り越えて店を立て直すための陣頭指揮を執り始めた。
2 緊急対応
現状の把握と自身の判断への反省
ヒラクは手際よく進む清掃を眺めながら、混乱を収めるためにカレーの無料提供を宣言したことを深く反省した。この建物全体がマルコスとポーラの店であることをようやく理解したヒラクは、店の間取りや従業員の若さ、そして小規模な運営を想定していたことが混乱の原因だと把握した。無料提供の撤回はもはや不可能であり、今日一日を乗り切るための覚悟を決めた。
援軍の要請と物資調達の依頼
事態を乗り切るため、ヒラクは始祖に大樹の村から援軍を連れてくるよう依頼した。自身は現地で指揮を執ることとし、始祖に必要な人員の招集を託した。同時に、ゴロウン商会のマイケルに対して、交渉や物資調達に長けた人員の貸し出しを求めた。マイケルとその息子マーロンらが直接協力することになり、ヒラクは彼らに食器や建材、追加の食材といった大量の物資調達を任せた。
混雑対応体制の再構築
マルコスから紹介されたゴールディに対し、ヒラクは混雑対応の不備は人員数よりも配置と意識の問題だと指摘した。広大な店内をブロックごとに分け、責任者を配置することで人の流れを制御する方針を固めた。清掃を終えた従業員たちには、無料提供を求めてさらに集まるであろう客への対応策として、列の整理方法を具体的に指示した。
到着した援軍の配置と役割分担
始祖が連れてきた鬼人族メイドやドワーフ、山エルフなどの援軍に対し、ヒラクは詳細な役割を与えた。調理の補助だけでなく、無料のカレー以外に酒や別料理を販売させることで、客の視線を一箇所に集中させず分散させる狙いがあった。ハイエルフたちには店内の各エリアを視覚的に区切るための仕切りを作らせ、物資の置き場や客の動線を物理的に整理させた。
遊戯エリアの充実と景品の準備
山エルフたちは、既存のミニボウリングに加え、輪投げや射的といった新たな遊具を設置した。今後の集客も見据え、新しいことをしている店だという印象を植え付けるために遊戯エリアを強化した。この景品を確保するため、ヒラクはガルフに指示して街から適切な品を買い集めさせた。資金はマイケルから借りて対応した。
客の協力による再開準備の完了
清掃を手伝った客たちが列整理用のポール作りを志願し、ヒラクの見本をもとに量産が行われた。ロープを用いた客の導線が完成し、飲食エリアと遊戯エリアを主軸とした会場構成が整った。ヒラクはミノタウロスやリザードマンを配置して客の移動を制限し、混乱を未然に防ぐ体制を敷いた。
最終確認と営業の再開
営業再開の直前、ヒラクはマルコスとポーラに調理と接客の最終指示を出した。混雑回避を優先してメニューを絞り、効率的な給水や皿の回収方法を徹底させた。仕切りと誘導ポールが完成すると、ヒラクは始祖の魔法で声を響かせ、客に秩序ある入店を呼びかけた。しかし、予想を超えて押し寄せた膨大な客の数を見て、ヒラクは自身の無料提供という決断の重さを改めて痛感した。
閑話 魔王国のホウ=レグ
大樹の村の出現と酒の取引
ホウは魔王国四天王としての地位や資産を持ちながら、伴侶に恵まれない現実に不満を募らせていた。死の森に村が誕生したという報告を当初は冗談だと笑い飛ばしたが、強力な魔物や実力者が集う異様な現実を知り、認識を改めた。その後、村の美味な酒を巡る騒動を経て直接取引を開始し、自ら考案した酒造法を提案するなど交流を深めていった。
シャシャートへの出店と情報収集
大樹の村が商業都市シャシャートに店を構えると聞き、ホウはトラブル回避と情報収集のために護衛を派遣した。報告書にはカレーの繁盛や遊戯の流行が記されていたが、護衛たちが任務よりもボウリングに熱中している様子にホウは呆れを隠せなかった。それでも店が周辺店舗と良好な関係を築いていることを知り、ひとまず安堵の意を示した。
混乱の収束と村長の底知れぬ影響力
品切れによる店舗の混乱に際し、現地に現れた村長がカレーの無料提供を宣言したことで、事態は祭りのような熱狂へと収束した。ホウは、街の有力組織であるゴロウン商会を村長が側近のように従えている実態を知り、その異様な影響力に強い衝撃を受けた。また、近隣からの苦情を店の中に街を作るという独特な手法で解決したことにも驚愕した。
酒の販売開始と急報による出発
最新の報告書には、店内のボウリング大会で優勝した護衛が賞品の酒を受け取り、大いに喜ぶ姿が記されていた。店で酒の販売が始まったことを確信したホウは、すぐに報告を読むのをやめ、自らも酒を求めてシャシャートの街へ向かうことを即座に決めた。
閑話 近所の屋台の激動
母マリサの心配と新店舗への視察
シャシャートの街で飲食店を営むマリサは、屋台で修業を積む息子のマルクと娘のサンの顔色が悪いことを心配していた。二人は、新しくできた大きな店のせいで客の流れが変わり、商売が立ち行かなくなっている現状を語った。マリサは自ら買い出しに出た際にその大店を目の当たりにし、漂ってくるカレーの香りに惹かれ、敵情視察の名目で店へと入った。
マルクの目論見と予想外の展開
マルクは羊肉の屋台で評判を得ていたが、さらなる利益を狙って建設現場の近くへ場所を移動させた。最初は労働者たちを相手に売り上げを伸ばしたが、建設が予想より早く終わり、跡地に壁のない巨大な店舗が出現したことで状況は一変した。客はすべてそのカレー店に吸い寄せられ、マルクたちの屋台の前を素通りするようになった。マルクはいずれ客も飽きるはずだと自分に言い聞かせて耐えていた。
サンの敗北感とカレーの衝撃
サンは商業ギルドの忠告を無視して場所を移動したことを深く悔やんでいた。次の更新日までの活動資金を稼ぐ手段に窮していた際、目の前のカレー店で騒動が起き、お詫びとしてカレーが無料配布される事態となった。サンは店番を放り出してカレーを口にし、その圧倒的な美味しさに完全な敗北を認めた。マルクが絶望する一方で、母のマリサは味に感動しておかわりを求めて再び列に並んでいた。
マーロンの提案と店内への招待
無料配布の終了後、売り上げが落ちた近隣の店主たちが不満を訴えに集まった。そこへゴロウン商会の次期会頭であるマーロンが現れ、大店の中にある広いスペースを各屋台に貸し出すという驚くべき提案を行った。初回一か月は無料という条件を聞いたサンは、真っ先にこれに参加することを申し出た。他の店主たちもこれに続き、カレー店と近隣店舗が共存する新しい形が模索された。
屋内への移転と売り上げの回復
マルクとサンの屋台はカレー店の内部へと移動し、煙が抜ける設備の整った環境で商売を再開した。村長と呼ばれている店長が、カレーに羊肉を浸して食べる方法を客に示したことで人気に火がついた。カレーとは違う味を求める客の流れも重なり、サンたちの屋台は息を吹き返した。十分な利益を上げたサンとマルクは、今後もこの場所で商売を続けることを強く決意した。
閑話 ゴロウン商会の次期会頭 マーロン
大樹の村の実在と認識の転換
ゴロウン商会の次期会頭であるマーロンは、商会の急成長の影にある大樹の村を、当初は架空の存在や取引のための符丁であると疑っていた。しかし、父によって門番竜の巣へ連れて行かれ、恐るべき竜から直接お茶を出されるという異様な体験をしたことで、その村が実在することを確信した。それ以来、マーロンは大樹の村を現実の重要勢力として扱うようになった。
ヒラクの捜索とガルフを手掛かりにした合流
ある日、マーロンは父から村長であるヒラクが街に来ていると知らされ、迷子の可能性を考慮して急ぎ捜索に当たった。武闘会優勝者のガルフが赤いマントを着けて同行しているという情報を頼りに、マーロンは従兄弟らと共に街を駆け、無事にヒラクを発見した。ヒラクの外見はどこにでもいそうな平凡な人間に見えたが、強者であるガルフが完全に従っている姿を見て、マーロンは彼がただならぬ人物であることを理解した。
ビッグルーフ・シャシャートでの鮮やかな指揮
ヒラクは到着したばかりのビッグルーフ・シャシャートで起きていたパニック状態の混乱を、瞬く間に収拾していった。的確な指示で多様な種族の人員を動かし、短時間で営業再開までこぎつける様子は、村の長というより熟練した商会人のようであった。マーロンは、ヒラクが自らの不足を他者で補い、適材適所で人員を使いこなす計算高さと人望に深い感銘を受けた。
革新的な商売手法と発想の転換
ヒラクはトラブル解決のために打ち出したカレーの無料提供を、周辺店舗を説得し店内に取り込むための撒き餌として利用した。マーロンは、店の中に別の店を囲い込むという手法や、大きな布を使って即座に出店スペースを視覚化する柔軟な発想に驚かされた。競合するはずの同業種を一箇所に集めることで、祭りの屋台と同じ相乗効果を生み出すという知見は、マーロンにとって金銭以上の価値がある教えとなった。
客を呼び込む細かな工夫と知見
店内に導入された絵付きのメニューや計算早見表、無料の水、さらには注文せずとも使える椅子やテーブルといった細かな工夫が、すべて客を呼び込むための機能的な仕掛けであることをマーロンは学んだ。これらは客の利便性を高めつつ、滞在時間を延ばして店全体の活気を生み出すための極めて合理的な手段であった。
舞台の活用とボウリング大会の意義
ヒラクが設置した舞台は、完成された演目を見せる場ではなく、誰にでも発表の機会を与える交流の場として開放されていた。マーロンは、素人による劇であっても場が盛り上がる様子を見て、発表の場そのものを用意する価値を認めた。また、魔王や代官までが参加したボウリング大会を通じて、競技を目標に店へ通う常連客を育成する仕組みに気づき、商売の奥深さを知るとともにさらなる精進を誓った。
3 村長は日帰り
騒動の反省とフードコート形式の導入
ヒラクは、騒動鎮圧のために安易にカレーの無料配布を宣言したことを自らの失策として深く反省した。一方で、店内に近隣の飲食店を誘致する案はマーロンたちの尽力によって円滑に進み、結果として理想的なフードコートの形が整えられた。ヒラクは日帰り帰村の約束を守るため、ガルフを現地に残して一度大樹の村へと戻った。
帰村後の交流とシャシャートへの再訪
村に戻ったヒラクたちは遅い夕食を取りながら、店で評判となった鬼人族メイドのカラアゲについて語り合った。カラアゲはドワーフのビールと共に客から高い支持を得ており、十分な手応えを感じさせていた。翌日、ヒラクは再び始祖の転移魔法を利用し、ミノタウロスやリザードマンを連れてシャシャートの店を再訪した。
店舗経営の実態と収支の確認
ヒラクはマイケルと共に店の収支を確認し、一日二千食のカレーを売り上げる現状を把握した。従業員二百七人への給与や仕入れ値を差し引いても一日五千枚以上の中銅貨が利益として残る計算であったが、初期投資が巨額であるため依然として赤字の状態であった。しかしヒラクは、一分間に数杯を売りさばく現場で奮闘するマルコスとポーラの働きを高く評価した。
従業員の生活環境と労働体制の把握
従業員たちは店に隣接する三階建ての寮で共同生活を送っており、個室風の仕切りがある環境に満足していた。また、清潔を保つために専用の風呂場も建設された。全従業員が同時に接客に当たるわけではなく、仕込みや管理に回る人員も含まれていたが、ヒラクは今後のさらなる多忙を見越して増員の必要性を検討した。
娯楽エリアの拡充とボウリングの設置
ヒラクは遊戯エリアをさらに充実させるため、フルサイズのボウリングレーンを十本新設することを決めた。ハイエルフたちの手によって短時間でレーンが完成し、ヒラクは人力での運営を補助するためのボール戻し器やピン立て用の器具を考案して追加した。整備が人力頼みで進行が緩やかであったため、当面は無料で開放することとした。
輪投げと射的の試験運用と改善
山エルフたちが制作した輪投げと射的の試遊が行われ、マイケルたちが難易度の調整や安全面での助言を行った。射的では玩具の弓矢で不規則に動く的を狙う形式が採用されたが、ヒラク自身がことごとく外して悔しさを覚える場面もあった。遊具の整備に注力していたヒラクは、その様子をマーロンと商業ギルドの者が注視していることに気づいた。
4 税とトラブル
シャシャートの街における税と負担金の仕組み
シャシャートの街では人頭税、土地税、入港税が主な税収となっていたが、識字率の低さから正確な利益の把握が難しいため、商売そのものへの課税は行われていなかった。その代わり、住民は水道やゴミ処理、下水などの維持管理費を利用者負担金として支払うことで、街のインフラを支えていた。これらの支払いや寄付の多寡は、商業ギルドにおける運営への関与度を左右する要素ともなっていた。
商業ギルドとの交渉と不当な寄付要求の発生
商業ギルドの職員が店を訪れ、店内に複数の店舗を構えたことに伴う各種負担金の整理が行われた。ヒラクは現地の慣習に疎い自覚から詳細な交渉を専門家に委ね、不当な金額でなければ支払う方針を示した。しかし、話し合いの終わりに職員が慣例を無視した多額の寄付を要求したため、マイケルが反論し、マーロンは職員が密かに助けを求める合図を送っていることに気づいた。
アルバトロス家嫡男の不祥事と魔王の介入
ガルフが店内で職員を脅していた人物を捕らえると、その正体はアルバトロス子爵家の嫡男であった。青年は身分を背景に不当な金を搾取しようとしたが、そこへ魔王が姿を現した。魔王は、店への干渉を禁じる通達を無視した青年の身勝手な振る舞いを断罪し、本人だけでなくその父である子爵にも責任を問う厳しい姿勢を打ち出した。
始祖の提案による罰の決定と騒動の終結
苛烈な罰が議論される中、始祖が進み出て、青年をシャシャートの神殿に預けて長く奉仕させる刑を提案した。魔王はこの案を採用し、騒動は決着を見た。ヒラクは魔王の威厳ある振る舞いや始祖の演技めいた動作を眺め、一連の出来事が示威行為のような側面を持っていたと感じつつ、職員の処分や神殿の苦労を案じながら事後の推移を見守った。
5 ビッグルーフ・シャシャート
カレー専門店の名称決定と看板の設置
ビッグルーフ・シャシャート内に複数の店舗が入ったことで、マルコスとポーラの店に正式な名称が必要となった。ヒラクは二人の名前を合わせたマルーラという店名を考案した。この案に感動した二人の承諾を得て、店名を採用した。従業員たちからも好評を得たため、店内外に大きな看板を設置することが決定された。
エリアの区分けと施設看板の設置
施設全体の看板は安全面を考慮して屋根上ではなく地上に設置され、各エリアには番号と名称が割り振られた。南東は飲食、北東は遊戯、南西は出店エリアと定義された。屋根のある環境に惹かれた多くの屋台が集まったことで、施設内の活気は一層高まっていった。
イラスト付き地図の制作と専属絵描きの採用
店舗数が増加して目的地が分かりにくくなったため、ヒラクはイラスト付きの地図を自ら制作した。作業の負担を軽減するため、地面に絵を描くのが好きだった従業員を専属の描き手として採用した。これにより地図の更新や各店舗の有料看板制作が円滑に進む体制が整えられた。
看板導入の効果と景観の維持
看板を掲げた店舗では客の誘導に明らかな効果が現れ、注文も入り始めた。ヒラクは看板のサイズ規制を設けることで、乱立による景観の悪化や安全面での問題を未然に防ぐ措置を講じた。美観のコントロールも施設運営の重要な一部であると認識し、のぼりの設置などは火災のリスクを考慮して見送られた。
警備隊の組織と運営の委託
トラブル防止のため、マイケルと相談して案内業務を兼ねる警備隊が組織された。ゴールディが推薦した若者が隊長となり、場所代を原資とした運営が開始された。また、施設全体の管理はゴロウン商会へ委託され、マルーラも公平性の観点から場所代を支払うことが決定された。
舞台の設置と遊戯エリアの活性化
飲食エリアの隣に半円形の舞台が設置され、ガルフの演武などが披露された。遊戯エリアでは輪投げや射的が完成し、ボウリングも初心者が常連からマナーを教わるほど定着した。ヒラクはボウリング大会の開催を予告し、大会の賞品を奮発することを伝えてさらなる集客を図った。
カラアゲと酒の正式販売と人員確保
客の強い要望を受けてカラアゲと大樹の村の酒が正式に販売された。鶏肉確保のための大規模養鶏場計画が浮上し、ヒラクは調味料の提供を通じてゴロウン商会への協力と感謝を示した。また、酒の販売担当として近所の主婦たちが採用され、急な休みにも対応しやすい交代制の勤務体系が歓迎された。
シャシャート滞在の成果と新たな拡張計画
ヒラクは十日間にわたりシャシャートへ通い、自身の課題や四ノ村での調味料増産案を検討した。滞在の終盤、マイケルから周囲の土地購入が完了しており、さらに三つの大規模店舗を建設する計画があることを知らされた。ヒラクはかつての自身の指示が予想以上の規模を招いたことに困惑しつつも、詳細な検討を祭りの後へと先送りした。
閑話 観察者
マイケルの失態と村長の来訪発覚
マイケルは土地買収の難航に頭を悩ませていたが、秘書からの報告によって大樹の村の村長が本店を訪れていた事実を知った。先触れのない普通の客として扱われ、門前払い同然の形になった事態を察したマイケルは、自身の迂闊さを痛感して急ぎ合流を試みようとした。しかし、その場にルールーシーが突如として姿を現したため、マイケルは驚愕のあまり固まってしまった。
ミルフォードの異変と護衛の記憶
元貴族護衛のミルフォードは、ゴロウン商会での刺激的な任務に従事していたが、背後に殲滅天使ティアらしき気配を感じた直後、記憶を失って屋根の梁の上で目覚めた。周囲の仲間も同様に眠らされており、デススパイダーの目撃を主張する者もいたが、ミルフォードは頭をよぎる痛みを覚えつつも、護衛対象に異常がないことを確認した。彼は不可解な出来事を夢として片付け、再び職務へと戻った。
魔犬ゴーロが察知した女たちの動向
魔犬のゴーロは、散歩中にルールーシーたちがヒラクの状況や店内の護衛体制を密かに確認している様子を察知した。彼女たちが始祖やザブトンの子供と共に組織的に動いている気配を感じ取ったが、ボスであるヒラクに対して悪意を持っていないと判断したため、ゴーロは特に行動を起こさず静観することに決めた。
ルーとティアの秘密と村の平穏
ルーとティアは、ヒラクが不適切な店に通っていないかを確認するために尾行を行っていたが、結果として彼を信じる気持ちを深め、自分たちの隠密行動を極秘にすることを約束し合った。インフェルノウルフは彼女たちが何かを隠していることに気づきつつも、村の女性たちの仲が深まったことを好意的に受け止めた。こうして大樹の村は、表向きは平和な日常を保ち続けていた。
【終章】 祭りと語らい
1 祭りの準備と来客
始祖の転移終了と祭りの競技決定
始祖の本業が多忙になったことで、シャシャートの街への定期的な往復が終了した。ヒラクは最後の機会に大量の調味料や食料を店へ運び込み、今後の運営についてはマイケルを頼るよう指示した。村では祭りの準備が始まり、クイズ大会と体格差を考慮した騎馬戦が主な競技として選ばれた。ミノタウロス族の圧倒的な迫力に配慮し、ケンタウロス族の参加条件を制限するなど、全員が安全に楽しめるようルールが整えられた。
マルコスとポーラの店への熱意と祭りの不参加
ヒラクは、マルコスとポーラが店を休まずに営業を続けることを選んだため、今回の祭りには不参加であることを確認した。二人が今の仕事に大きな喜びを見出している様子を受け、ヒラクは今後も彼らに店を任せ続ける可能性を検討し始めた。同時に、店を運営する二人に対して適度な休息を取るよう改めて促す必要性を感じていた。
他種族の来訪と模倣店の失敗分析
祭りが近づくとラミア族や巨人族に加え、死霊騎士に伴われた温泉地のライオンも到着した。続いて魔王一行も現れ、各地でビッグルーフ・シャシャートの模倣が試みられているものの、客が集まらず失敗している現状が報告された。ヒラクは、その土地に合った工夫や核となる魅力的な店が欠けていることが原因だと分析し、安易な模倣による混乱を避けるためにマイケルたちへも助言を伝えることにした。
アルバトロス家嫡男の更生と家族への思い
魔王たちとの会話の中で、教会に預けられたアルバトロス家嫡男が、悪友であった代官の息子の影響で真面目に働き始めたことが明かされた。ヒラクは、優秀な代官が息子の更生にも関わった結果であると感心しつつ、自身の子供たちとも将来に向けてしっかりとコミュニケーションを取っていこうと決意した。
着ぐるみ姿のユーリと情報開示
ユーリはシャシャートの情報を得るため、文官娘衆の入れ知恵に従ってオオカミの着ぐるみパジャマを着用してヒラクの前に現れた。ヒラクはその可愛らしい姿を好ましく思い、求められるままに情報を提供した。ユーリ自身もその格好を気に入り、和やかな雰囲気の中で交流が行われた。
竜族の到着と競馬場での祭り開幕
ドースやライメイレンをはじめとする竜族も合流し、村の賑わいは最高潮に達した。太陽城の件を警戒して例年より少人数での参加となったが、競馬場を会場とした新しい形式の祭りに期待が寄せられた。四ノ村の住人たちも初参加し、ヒラクによる開会の挨拶を経て、クイズ大会を皮切りに祭りが華やかに幕を開けた。申し付けください。
2 祭り クイズ大会と騎馬戦
クイズ大会の開催と各部門の勝者
祭りの冒頭では、多種多様な種族が気軽に参加できる○×形式のクイズ大会が催された。ヒラクは村の知識や魔物、作物など五つのジャンルを用意し、優勝者を増やすことで多くの者に褒賞を渡せるよう配慮した。結果は、村全般でルー、世界で魔王、作物でフラウ、魔物でザブトン、そして竜の部門ではヒイチロウがそれぞれ優勝を飾った。順当な実力者が勝利を収める形となったため、ヒラクは次回の難易度調整を反省会の議題とすることにした。
小さい部門の騎馬戦と魔王チームの敗退
続いて、競馬場のトラック内側を舞台に小さい部門の騎馬戦が開始された。騎手は麦わら帽子を被り、それが頭から離れれば失格となるルールであった。注目を集めた魔王のチームは、ガルフやビーゼルらを騎馬に従えて包囲網の突破を試みたが、フラウ率いるチームの巧みな連携によって崩された。乱戦の末、積極的に帽子を奪い続けたリザードマンのチームが栄冠を勝ち取り、誇らしげにウイニングランを披露した。
大きい部門における死霊騎士の躍進
ミノタウロス族や巨人族が激突する大きい部門では、死霊騎士がライオンに騎乗して参戦した。ルーやティアのチームが共闘して対抗したものの、ライオンの機動力に翻弄されることとなった。ラミア族と巨人族の戦いでは、下半身を活かした動きを封じた巨人族が勝利したが、その後の決勝戦ではライオンの見事な跳躍が決め手となった。死霊騎士とライオンのコンビが強敵を次々と撃破し、この部門の優勝をさらった。
特殊部門の障害競走とコローネの勝利
特殊部門ではトラックを一周する速さと帽子の奪い合いが同時に競われた。ハーピー族による上空からの強襲という障害が設けられる中、参加者たちはゴールを急ぐ組と迎撃に回る組に分かれた。先頭を走る者が次々と脱落し、後方でアンや死霊騎士による激しい争奪戦が繰り広げられるなか、その猛攻を間一髪でかわし続けたコローネが、そのまま一着でゴールして優勝を決めた。
子供部門の活気と大人たちの自主参加戦
ウルザやアルフレートら子供たちがクロの子供に跨る子供部門が披露された。ザブトンが不測の事態に備えて糸を張り巡らせるなか、子供たちは大人顔負けの気迫でぶつかり合った。その後の自主参加戦では、ドースやギラルといった強者たちに混ざってヒラクも騎馬戦を体験した。ヒラクは観戦する分には楽しい競技であったが、実際に参加するとその恐ろしさを実感することになると感じた。
祭りの閉幕とベルとの語らい
相撲や腕相撲で賑わう祭りの後、ヒラクはお茶を飲んで休息するベルと言葉を交わした。ベルは祭りを心から楽しみ、特に子供たちの活躍に感銘を受けたと語った。彼女は来年以降の参加と、太陽城で眠る仲間たちの目覚めについても期待を寄せた。二人は今後の太陽城での調味料生産についても話し合い、ベルや魔王たちは祭りの記念として使用された麦わら帽子を譲り受けて喜んだ。ヒラクは祭りの余韻を感じながら、翌日以降の片付けや店舗運営に思いを馳せた。
3 祭りの夜の語り
一ノ村の現状と黒トリュフ栽培の計画
ヒラクは祭りの夜に一ノ村の状況を確認した。一ノ村はニュニュダフネと人間が共生しており、農業や竹製品の生産が順調に進んでいた。空き家の解消という課題はあったが、黒トリュフを豚を使って探しながら育てたいという新たな希望が出されたため、ヒラクはキノコ畑を作ることを決めた。
二ノ村の自給自足への歩みと農具の更新
ミノタウロス族が暮らす二ノ村では、農村出身者の多さを活かして多彩な穀物や果実の栽培が極めて順調に行われていた。村の目標である完全な自給自足に向けて着実に歩んでいたが、使用している農具の劣化が判明したため、ヒラクは直ちに新しい道具を用意することを約束した。
三ノ村の安定と将来の出産への備え
ケンタウロス族の三ノ村では、懸念されていた派閥争いも起きず、農業も器用にこなされていた。男性の移住に伴い来年は出産が相次ぐ見込みとなり、ヒラクはそれを祝うとともに、住人の希望に応じて家の増築と村を囲む走行コースの建設を引き受けた。
四ノ村の生活技術指導と今後の役割
太陽城である四ノ村は、南国の果実を中心に農業を始めており、来年はシャシャートの街の店を支えるための調味料生産が計画されていた。しかし、長年の籠城生活の影響で悪魔族の家事能力が著しく欠如していたため、夢魔族やメイドたちが教育にあたっていた。光を恐れる者への配慮を含め、生活基盤の立て直しが続けられた。
祭りの夜の交流と温泉地の施設拡充
ヒラクは酒スライムやグノーシスビーなどの多様な住人と交流し、それぞれの要望に耳を傾けた。土人形とは育児の苦労を分かち合い、死霊騎士には酒の扱いについて注意を促した。また、ライオンたちのために雨を避けるための退避場所を作ることを決め、温泉地の環境改善を約束した。
竜たちの酔いと孫への愛情の理由
酔い潰れたギラルやドースを横目に、ヒラクはドライムとライメイレンの孫に対する接し方について語り合った。過去の制約が多かった時期に比べ、現在はハクレンが実の娘であることや周囲の環境が自由であることから、ライメイレンが際立ってヒイチロウを可愛がっている実情が明かされた。
深まる夜とルーたちの誘い
夜が更ける中、ヒラクはルーに声をかけられ、彼女たちが待つテーブルへと案内された。そこにはティアやアンたちが集まっており、ヒラクは祭りの喧騒が周囲の迷惑にならないよう配慮しつつ、彼女たちの輪に加わることになった。
閑話 夢魔族
太陽城の陥落と夢魔族の不安
ウィナウォルナら夢魔族は、悪魔族と共に五百年もの間、太陽城で閉鎖的な生活を送っていた。しかし、圧倒的な力を持つ一本の槍の投擲によって城は陥落し、城を封じていた魔物たちも、新たな支配者の部下である竜やインフェルノウルフによって瞬く間に掃討された。戦意を喪失して全面降伏した夢魔族たちは、種族特有の性質ゆえに次の支配者から拒絶されるのではないかと強い不安を抱いた。
支配者の寛容と生じた誤解
新たな支配者であるヒラクは、予想に反して極めて温厚な人物であった。彼はそれまで認められていなかった悪魔族のクズデンを城主に据え、夢魔族たちの居住もこれまで通り認めると宣言した。ウィナウォルナたちはその寛大さに感謝し、得意とする夢を見せる能力で報いようとしたが、その行為が攻撃と誤認されて一時的に拘束される事態を招いた。その後、誤解が解けて解放された彼女たちは、露出の多い服装を改めるよう求められ、それに従った。
夢の拒絶と現実への感服
拘束から解放されたウィナウォルナは、感謝の印として夢を提供しようと申し出たが、ヒラクはその必要はないと告げた。処刑を覚悟してまで食い下がった彼女に対し、ヒラクは夢を許可する代わりに自身の傍らで様子をうかがうことを許した。隣室でヒラクの過ごし方を目にしたウィナウォルナは、現実が夢よりも遥かに満ち足りていることを悟った。彼女は自らの不遜を詫び、ヒラクに最上位の敬意を捧げるとともに、彼が安らかに休息することを願った。
閑話 射的コーナー
ボウイの生活環境と乏しい小遣い事情
十歳の少年ボウイは、商人見習いの父と宿屋で働く母を持つ次男であった。家庭の事情で小遣いを得る機会はなく、近所の店で十日間ほど水汲みや子守の手伝いをして、ようやく中銅貨一枚を手に入れる生活を送っていた。
射的コーナーの出現と景品の現金化
街の大店に設置された射的コーナーは、玩具の弓矢で的を狙い、得点に応じて景品が得られる仕組みであった。ボウイは獲得したカレー無料券を自ら食べずに売却したり、トッピング無料券を列に並ぶ客に売ったりして、効率よく中銅貨を稼いでいた。
装置の観察による攻略と魔道具への変更
回転する的の装置を観察し続けたボウイは、装置を動かす者のリズムに癖があることを見抜いて景品を得ていた。しかし、駆動部が人力から魔道具に変更されたことでその法則性は失われ、純粋な弓の技術が必要となったため、ボウイは現実的な得点を狙う方針へと切り替えた。
家族の喜びとボウイの決意
ボウイが持ち帰るロウソクや薪といった実用的な景品は、家計を支える両親に深く喜ばれていた。かつて挑戦料の五倍となる現金を得た経験を思い返しながら、ボウイは再び家族の役に立つ景品を手に入れることを心に決めていた。
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