小説「異世界黙示録マイノグーラ 6」感想・ネタバレ

小説「異世界黙示録マイノグーラ 6」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は、異世界を舞台にしたダークファンタジーである。主人公・伊良拓斗は、かつて熱中していた戦略級ファンタジーSLG「Eternal Nations」に似た異世界に転生し、邪悪属性文明「マイノグーラ」を率いる邪神として生きることとなる。第6巻では、拓斗が意識を失い、指導者不在という最悪の状況に陥る。これを打破すべく、アトゥはある英雄の召喚を決意する。

主要キャラクター

  • 伊良拓斗:異世界に転生した主人公であり、邪悪属性国家「マイノグーラ」の王。意識を失うという危機に直面する。
  • アトゥ:拓斗の忠実な部下であり、英雄ユニット《汚泥の魔女》。拓斗の不在を補うため、ある英雄の召喚を決意する。
  • ヴィットーリオ:アトゥが召喚を決意した英雄。《幸福なる舌禍ヴィットーリオ》として知られ、マイノグーラ史上最悪の英雄とされる。

物語の特徴

本作は、異世界転生と国家運営を組み合わせたダークファンタジーである。邪悪属性国家でありながら、内政特化で戦争が苦手という特徴を持つ「マイノグーラ」を舞台に、戦略的な国家運営と戦闘が描かれる。第6巻では、主人公の不在という危機的状況を乗り越えるための新たな展開が描かれ、物語はさらに深みを増している。

書籍情報

異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 6
著者:鹿角フェフ 氏
イラスト:じゅん 氏
出版社:マイクロマガジン社GCノベルズ
発売日:2023年4月28日
ISBN:9784867164204

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あらすじ・内容

異世界を舞台に探検!拡張!開発!殲滅!大人気ダークファンタジー!
レネア神光国を率いる聖女たちへの斬首作戦は成功した。
拓斗は裏から事態を操っていたテーブルトークRPG「エレメンタルワード」のプレイヤーである操腹慶次(くはら・けいじ)を打倒し、奪われていた《汚泥のアトゥ》を取り戻すことに成功するが、その代償は大きなものとなった。
意識を失ってしまった拓斗……指導者不在という最悪の状況を打破すべく、アトゥはある英雄の召喚を決意する。
《幸福なる舌禍ヴィットーリオ》――それはマイノグーラ史上最悪の英雄。

異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 6

感想

アトゥの奪還とヴィットーリオの敗北

イラ=タクトは、アトゥが彼を再び召喚するか、あるいはヴィットーリオに助けを求めるかを含めた複数の展開を予測し、全てに対して勝利を収める算段を整えていた。
結果としてアトゥは意識を取り戻し、ヴィットーリオの策を見抜いたタクトに感動しきりであった。
アトゥはタクトに抱きつき、勝利の喜びをあらわにしたが、彼女の反応はやや過剰で、タクトを戸惑わせた。一方、ヴィットーリオは敗北に打ちひしがれ、「寝取られた」と錯乱状態に陥った。

主従関係の再確認とヴィットーリオの暴走

アトゥはタクトへの忠誠を強く再表明し、ヴィットーリオを恋愛面でも蹴落としたと勝ち誇った。
ヴィットーリオはそれに反発し、自身もヒロインとしての地位を主張したが、二人に完全に無視された。
タクトはこの騒動を通じて国家運営の再編を進めつつ、次元上昇勝利という最終目的を見据え、歩みを進めていた。
ヴィットーリオは今後も忠誠を尽くすと誓ったが、同時にまたも暗躍を始めようとした。

世界の新たな動きと魔女ヴァギアの宣言

タクトのもとに、突如巨大な声が響き渡る。
それは「サキュバスのヴァギア」による全プレイヤー・国家への宣言であった。
彼女は「争いはナンセンス」として停戦と会合を提案し、そのための使者を各勢力に派遣すると告げた。
この予想外の動きにより、タクトは慎重な対応を迫られた。
ヴァギアの存在と魔女軍勢はこれまで不明であり、完全に後手に回った情報状況にタクトは警戒を強めた。

世界情勢の加速と次なる波乱の兆し

ヴァギアの登場は、アトゥとヴィットーリオにも驚きを与えたが、特にヴィットーリオは演出面での敗北を感じ取り、対抗心を燃やすそぶりを見せた。
タクトは彼の行動を制御するため釘を刺し、ヨナヨナやエルフール姉妹などへの連絡を怠った件についても処罰を予告した。
こうして再び動き出した世界の中で、タクトは《次元上昇勝利》を目指し、拡大した国土と混迷する状況に立ち向かう決意を新たにした。
最後に、システムメッセージが神の名を伴って通達され、物語は次なる局面へと動き始めた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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展開まとめ

プロローグ

記憶喪失という代償

拓斗は、テーブルトークRPGの力を用いた敵・レネア神光国の聖女と魔女の連携を破り、秘められた力《名も無き邪神》を発動することで一方的な勝利を収めた。首都を壊滅させ、敵の計略を打ち砕くという大戦果を挙げたが、その代償は大きく、彼自身の意識を失うという事態を引き起こした。記憶喪失という形で心身を崩壊させた拓斗は、治療の効果も及ばぬまま床に伏すこととなった。

英雄アトゥの苦悩と決断

奪われ、そして取り戻された英雄アトゥは、拓斗のために全力を尽くして尽力するも、その想いも届かず状況は好転しなかった。国家の象徴を喪失しかけたマイノグーラには動揺が走り、終焉の気配すら漂い始めていた。そのような中でアトゥは重大な決断を下す。それは新たな英雄の召喚という最後の手段であった。

新たなる脅威「幸福なる舌禍」

召喚される英雄は、ゲーム『Eternal Nations』においても悪名高い人物──《幸福なる舌禍ヴィットーリオ》。彼の存在は英雄でありながら同時に災厄でもあり、アトゥの胸中には不安が渦巻いていた。マイノグーラにとって救いとなるか、さらなる混乱の引き金となるか。物語は新たな段階へと突入したのである。

第一話    廃都

レネア神光国での異常発生と聖王国の反応

聖王国クオリアは、緑黄の月第13日にレネア神光国で発生した強力な魔の気配に関して警戒を開始した。三法王は準聖戦状態への移行を宣言し、聖女たちを招集した。続いて、《破滅の王イラ=タクト》の顕現が確認され、聖戦が正式に宣言された。レネアでは大規模な火災が発生し、混乱が広がった。翌朝、レネアは封鎖され、禁域とされた。

廃都アムリタでの調査開始

旧アムリタ大教会跡地には《日記の聖女リトレイン=ネリム=クオーツ》が派遣され、調査が開始された。彼女は聖王国の威信を背負い、廃墟と化したアムリタに立った。地表の損壊のみならず、住民の記憶障害や疫病の拡大など、人的被害も深刻であった。

異端審問官の介入と調査報告

調査の指揮は実質的に《異端審問官クレーエ=イムレイス》が担った。彼女は聖女フェンネとソアリーナの所在不明について報告を受け、信仰への疑義を表明した。二人がレネアを放棄して離脱した行動が、クレーエにとっては裏切りと映り、異端認定も視野に入れていた。

クオリア上層部の動揺と責任回避

クオリアは事態の重大さに対応しきれず、当初の判断が二転三転した。その結果、被害の正確な把握が困難となり、事実上責任放棄に近い対応がとられた。レネアの禁域指定はその象徴であり、破滅の王による蹂躙を隠蔽する動きとも受け取られた。

リトレインとクレーエの対話

リトレインは、自らが背負う聖女の責務と父ヴェルデルの行方不明という個人的な苦悩の狭間で苦しんでいた。クレーエはそんな彼女に対して冷静かつ温かく接し、日記の力を使う代償の重さを説いた。また、彼女がこれまで神に捧げてきた代償が、父の安否に報いるものであると信じ、静かに励ました。

総括と今後の展望

廃都アムリタの調査を経て、聖王国はようやく事態の深刻さを理解し始めた。破滅の王の爪痕は、物理的被害以上に人心に深い傷を刻んだ。この戦いは終わったわけではなく、今後の脅威とどう向き合うかが問われている。その最前線には、未熟なまま重責を負わされ続けるリトレインがいるのである。

第二話    方針決定

会議と王不在の危機

大呪界の宮殿では、先の戦いによる被害と今後の方針が議論された。主導を担ったのは、英雄《汚泥のアトゥ》である。マイノグーラの王たるイラ=タクトは記憶を失っており、国家の統治が困難な状況にあった。アトゥはその責任を自認しつつも、王の不在を補うべく国家運営にあたった。

記憶喪失の実態と限界

イラ=タクトは自己の記憶を完全に失い、日がな一日椅子に座り窓の外を見つめるだけの存在となっていた。わずかに会話可能な瞬間もあるが、それは断続的であり、統治者として機能するには程遠い。アトゥはメアリアに依頼し診察させたが、記憶喪失というより「初めからそこに存在しない」かのような状態であるとの所見が示された。

英雄ヴィットーリオの召喚決定

現状を打破するため、アトゥは《幸福なる舌禍ヴィットーリオ》という英雄を召喚することを決断した。彼は戦闘能力こそ皆無だが、知略に長け、複雑な局面において力を発揮する人物である。アトゥ自身は彼との相性が最悪と断じており、召喚に強い抵抗感を示したが、王の回復と国家の存続のためには避けられない選択であった。

英雄に対する期待と不安

ヴィットーリオ召喚の決定により、会議の空気は一変した。各臣下は期待を抱き、アトゥの提案を支持した。ただしアトゥはヴィットーリオの性格を「不快な存在」と断じ、自身の感情を抑えきれない可能性について警告した。それほどまでに嫌悪しつつも、彼の能力を信頼せざるを得なかった。

静謐な夜とアトゥの想い

召喚を翌日に控えた夜、アトゥは記憶を失ったタクトの隣に寄り添い、静かに言葉をかけ続けた。彼女はかつて病床にいた拓斗と交わした夜の記憶を重ね、今度は自分が語りかける番だと感じていた。王が再び目覚めるその時まで、想いは絶えることなく注がれ続けた。

第三話    舌禍

英雄召喚とヴィットーリオの登場

アトゥは王の快復と国家の命運をかけ、黄金の山を用いた召喚儀式を実行した。現れたのは、かつてのゲームでも厄介な存在であった英雄ヴィットーリオであった。奇矯な態度と口調は健在であり、アトゥは最大限の警戒をもって応対した。彼は拓斗の主認定を行い、協力を受け入れたが、その発言の大半は煽りと皮肉で構成されていた。

マイノグーラ内部での混乱

ヴィットーリオはマイノグーラの面々と顔を合わせた後、その奇抜な性格を遺憾なく発揮した。エムルの事務能力を否定し、ギアの戦士団に煽りを繰り返すなど、各方面に混乱と摩擦をもたらした。更に、エルフール姉妹の大切な品を奪うなど、精神的打撃も与えていた。

英雄の逸脱行動とアトゥの絶叫

ヴィットーリオはマイノグーラから無断で離脱し、アトゥたちに大混乱をもたらした。彼の能力は『Eternal Nations』内でも特異で、指示を受けず自律的に国家行動を起こせる存在である。彼の離脱は国家にとって致命的であり、アトゥは極度の焦燥に陥った。残された置き手紙は、自らを「いじめの被害者」と称するふざけた内容で、アトゥの怒りを爆発させた。

絶望と混沌の中の希望の模索

ヴィットーリオの行動が引き起こした混乱の中で、マイノグーラの主要メンバーは再び立て直しを余儀なくされた。アトゥは英雄としての無力さを痛感しつつ、失われた秩序と信頼の回復、そして拓斗の快復という希望を捨てずに、新たな対応策を模索し始めた。

日常の描写と都市の現状

ドラゴンタンの街では、表面上は平穏が保たれていた。住民には国家の深刻な状況は知らされておらず、表向きには活気が戻っていた。都市長アンテリーゼの手腕により、住民たちは街の再建に励んでいた。

怪しい訪問者の出現

ある日、猫獣人の親子のもとに怪しげな男ヴィットーリオが訪れた。詐欺師のような言動と異様な雰囲気をまといながら家に入り込み、「幸せか」と問いかけるなど、明らかに不審な行動をとっていた。

新興宗教の発足

ヴィットーリオは突如として「イラ=タクト神」を讃える宗教的な集団を形成し、街頭で布教活動を開始した。その様子は異様であり、民衆は熱狂的に応じていた。この集団は狂気じみた忠誠を見せ、信仰の名のもとに奇行を繰り返していた。

街の反応と都市長の懸念

都市長アンテリーゼはこの騒動を憂慮しつつも、なぜかヴィットーリオに押し切られる形で布教活動を黙認していた。本国のアトゥからも「様子見」とされ、事実上、都市として制御不能な状況が進行していた。

宗教の広がりと危険性の認識

アンテリーゼは、宗教の導入が本来マイノグーラでは不要であるにもかかわらず、ヴィットーリオがそれを強行した意図を測りかねていた。特に、他国における信仰との摩擦や禁教の危険性を鑑みると、事態は極めて危険と判断していた。

拓斗の不在と懸念の拡大

マイノグーラの王であるイラ=タクトが記憶喪失に陥り臥せっていることも、アンテリーゼの不安を強めた。上層部の混乱、本国からの明確な指針の欠如など、国家全体が危機的状況にある中での宗教問題であった。

決断と行動の開始

アンテリーゼはこのままではマイノグーラの秩序が崩壊しかねないと判断し、本国への出立を決意した。都市を離れてアトゥと直接会談し、対応を協議する必要性を感じたためである。

宗教の拡大と不安の確信

新たに発足した宗教は、「誰も名前を知らない宗教」と呼ばれ、急速に信者を獲得していた。アンテリーゼはこのままでは宗教が他国に広がり、大陸規模の混乱を招くと確信するに至った。

第四話    復帰

拓斗とアトゥの再会

拓斗は意識を取り戻し、マイノグーラの王宮で目を覚ました。アトゥは長く拓斗の帰還を待ち望み、彼の匂いや存在に癒やしを求めながら日々を過ごしていた。ヴィットーリオの宗教活動や国家の行方に頭を悩ませつつも、彼女は拓斗の復活に全てを懸けていた。ついにその願いが叶い、喜びのあまり幼児退行とも言える感情を爆発させた。

ヴィットーリオの計略と拓斗の予見

拓斗はアトゥとの会話を通じて、自身の不在中に起こった出来事を詳細に聞き出した。アトゥが召喚したヴィットーリオについても、彼の召喚はあらかじめ拓斗の予想に織り込まれていたことが明かされた。感謝の言葉を受けたアトゥは、今までの苦労が報われたと感じ、拓斗の策略と洞察に感嘆した。

「邪教イラ」としての問題視

アトゥは、ヴィットーリオが勝手に始めた宗教活動について「邪教イラ」と仮称して報告した。その狂気的とも言える行動は拓斗の策略ではなく、彼の想定外であったことが判明する。両者はヴィットーリオの真意と行動の異常性に不安を募らせることとなった。

共通の危機意識と新たな不安

再会を果たした主従は、喜びに浸る暇もなく、ヴィットーリオが独断で始めた宗教活動や国家運営への影響を懸念し始めた。拓斗の戦略において唯一の誤算とも言えるこの状況に対し、彼とアトゥは慎重に思考を巡らせた。

戦略の修正と次なる局面

拓斗は、状況を掌握すべく身体を起こし、今後の対応策を検討し始めた。アトゥもまたその横で、彼の一手を信じ、あらゆる混乱に備える構えを見せた。両者はこの混迷の情勢においても揺るがぬ連携を確認し、次の動きに向けて意志を固めた。拓斗とアトゥの再会

拓斗は意識を取り戻し、マイノグーラの王宮で目を覚ました。アトゥは長く拓斗の帰還を待ち望み、彼の匂いや存在に癒やしを求めながら日々を過ごしていた。ヴィットーリオの宗教活動や国家の行方に頭を悩ませつつも、彼女は拓斗の復活に全てを懸けていた。ついにその願いが叶い、喜びのあまり幼児退行とも言える感情を爆発させた。

ヴィットーリオの計略と拓斗の予見

拓斗はアトゥとの会話を通じて、自身の不在中に起こった出来事を詳細に聞き出した。アトゥが召喚したヴィットーリオについても、彼の召喚はあらかじめ拓斗の予想に織り込まれていたことが明かされた。感謝の言葉を受けたアトゥは、今までの苦労が報われたと感じ、拓斗の策略と洞察に感嘆した。

「邪教イラ」としての問題視

アトゥは、ヴィットーリオが勝手に始めた宗教活動について「邪教イラ」と仮称して報告した。その狂気的とも言える行動は拓斗の策略ではなく、彼の想定外であったことが判明する。両者はヴィットーリオの真意と行動の異常性に不安を募らせることとなった。

共通の危機意識と新たな不安

再会を果たした主従は、喜びに浸る暇もなく、ヴィットーリオが独断で始めた宗教活動や国家運営への影響を懸念し始めた。拓斗の戦略において唯一の誤算とも言えるこの状況に対し、彼とアトゥは慎重に思考を巡らせた。

戦略の修正と次なる局面

拓斗は、状況を掌握すべく身体を起こし、今後の対応策を検討し始めた。アトゥもまたその横で、彼の一手を信じ、あらゆる混乱に備える構えを見せた。両者はこの混迷の情勢においても揺るがぬ連携を確認し、次の動きに向けて意志を固めた。

第五話    采配

拓斗の復活とマイノグーラ再始動

拓斗の復活はマイノグーラにとって奇跡であり、王の帰還に配下たちは歓喜した。ダークエルフたちやアトゥ、エムル、エルフール姉妹らが集い、喜びの声を上げた。拓斗はまだ完全な回復には至っていなかったが、内政の再開を宣言し、指導者としての復職を保留しつつも政務を主導する意思を示した。

技術不足の現状と驚愕の解決策

マイノグーラは技術不足により建設と生産に制約を受けていたが、拓斗は聖女になりすまし潜入していたレネア神光国から技術情報を奪取していた。これにより、複数の新施設建設が可能となり、国の成長を大きく加速させる方針が決定された。

国家計画と新方針の発表

拓斗は、【酒池肉林】や【異形動物園】などの特殊施設建設を指示し、研究は《医学》を選択した。また、国庫が底をつくことを承知の上で金貨をすべて投入し、発展を優先させる姿勢を示した。これにより、マイノグーラはさらに進化の道を歩み始めた。

対外戦略と同盟国フォーンカヴンへの配慮

レネア神光国の戦後処理において、フォーンカヴンを防波堤とする戦略が展開された。フォーンカヴンには《破滅の精霊》による土地改良の支援が提供され、これが大きな恩恵となることが見込まれた。また、レネア神光国の残党やサキュバス勢力の動向も警戒されたが、聖王国クオリアの介入により当面の猶予が確保された。

正統大陸への対策と戦略的判断

北方に位置する正統大陸の問題についても拓斗は情報整理を行い、特に《日記の聖女》や《依代の聖女》の動向に注目した。現在はマイノグーラに直接の脅威は及んでいないと判断し、国家成長に集中することを決定した。

ヴィットーリオ問題の本格始動

内政と外交の整理が一段落すると、拓斗は最大の問題としてヴィットーリオの件に取りかかった。配下たちからの不満が噴出し、彼の行動の真意を探る必要が生じた。拓斗は《邪教イラ》の教典の存在に興味を示し、それが彼の復調や記憶回復に関係する可能性も示唆された。

教典への関心と新たな布石

教典の内容は単純であったが、拓斗はその裏に潜む意図を探ろうとしていた。明確な説明は避けられたものの、配下のアトゥだけは拓斗の中に不安の影を感じ取り、ヴィットーリオの行動に何らかの懸念を抱いていることを察していた。拓斗は静かに次なる一手を打つ準備を進めていた。

第六話    夢

ヴィットーリオの策謀と教団イラの拡大

教団イラの発展と代理教祖ヨナヨナの苦悩

拓斗が休息を取る中、教団イラはドラゴンタンにおいて拠点作りを進め、かつての有力者の邸宅を集会所として改装し、組織化を着実に進めていた。表向きの指導者であるヴィットーリオは活動を控えていたが、代理教祖であるヨナヨナは日々の雑務に追われていた。ヴィットーリオの怠慢により、実質的な指導と運営はヨナヨナが担っており、彼女の負担は増していた。

信仰心と忠誠心に支えられた代理教祖

ヨナヨナは、親に捨てられた過去を持ち、荒んだ生活を経てきたが、教団への信仰心は強く、イラ=タクトへの忠誠心によって代理教祖としての役割を果たしていた。彼女はヴィットーリオの皮肉や無責任な態度に屈せず、神の意志に忠実であろうとした。彼女の存在は教団の精神的支柱となっており、信徒たちの信頼も厚かった。

国家からの召喚とヴィットーリオの思惑

ヴィットーリオは本国からの召喚状を受け取ったが、それを重要視する様子は見せなかった。むしろ、ヨナヨナを含めた信徒たちの信仰と行動を利用し、自身は裏で策を巡らす立場に甘んじていた。ヨナヨナは教団と信徒を守るために召喚状を確認させ、教団が巻き添えを食うことを防ごうと尽力していた。

教団の自立と狂信者たちの拡大

ヴィットーリオがほとんど姿を見せなくなっても、教団イラは拡大を続けた。猫族の親子などを含む有力な信徒が集い、フォーンカヴン領域にまで活動範囲を広げつつあった。ヴィットーリオはその様子を見て満足しており、あくまで表に立つべきはヨナヨナだと考えていた。

策謀の完成とヴィットーリオの夢

ヴィットーリオはすべてが計画通りであることに満足し、自室で微睡みながら思索にふけった。『Eternal Nations』の元プレイヤーとしての彼の頭脳は、他の誰にも理解できない水準で策を張り巡らせており、それすらも神であるイラ=タクトを欺くほどのものであった。彼の策は誰にも否定されることがなく、最終的には自身の夢──イラ=タクトの栄光のために全てが費やされていた。

ヴィットーリオは、愚かで狂おしいほどの夢に恋い焦がれ、神すらも欺いてその夢を叶えることに歓喜した。そして、ただひたすら笑い続けた。祝祭の時は近づいており、すべては偉大なるプレイヤー、イラ=タクトのために成されたのである。

第七話    日記

日記の聖女の決意

アムリタの現状と異端審問官の苦悩

旧レネア神光国の首都アムリタは、《破滅の王》の襲撃によって壊滅した後、聖王国クオリアの臨時指揮所として再生されつつあった。異端審問官クレーエ=イムレイスは、信仰を失った住民や広がる疫病への対処、そして復興のために尽力していた。だが支援や人員は不十分で、施策の多くが焼け石に水の状態であった。特に深刻なのは、人々が神への信仰を失ってしまっていることで、宗教国家としての根幹が揺らいでいた。

信仰の忘却とケイマン医療司祭

疫病と並行して、人々が信仰の記憶を喪失するという現象が発生していた。クレーエは以前協力を得たケイマン医療司祭と再会するが、かつて敬虔であった彼は信仰を失い、自己を見失っていた。神への信仰なしに聖職者としての力を行使することはできず、クレーエはその変貌に戸惑いながらも、どうにか再建の糸口を探していた。

日記の聖女の覚悟

そのような状況下、日記の聖女リトレイン=ネリム=クオーツが現れた。彼女は神への奇跡を行使することで、失われた信仰を人々に取り戻す力を持っていた。しかしその代償として、自身の大切な記憶を捧げなければならなかった。リトレインは父との思い出を守るため、これまで奇跡の使用を控えてきたが、アムリタの状況に胸を痛め、ケイマンの信仰を回復させるために自らの記憶を差し出す決意を固めた。

奇跡の代償と少女の祈り

リトレインの祈りは光となり、ケイマンは信仰を取り戻したが、それと引き換えに彼女の大切な思い出の一部が失われた。それは彼女にとって非常に重い代償であり、クレーエは少女の自己犠牲に心を痛めた。今後、彼女が奇跡を使い続ければ、やがて自らの存在の核である父との記憶までも失うことになる危険があった。

聖女と審問官の誓い

それでも、リトレインは人々を救うために奇跡を使い続ける意志を示した。クレーエは、その健気さと献身に心を打たれつつも、彼女の身を案じ、終わりの時までその傍にいることを誓った。少女の信仰と祈りは、厳しい現実の中で唯一の希望の光として、彼女自身と周囲の人々を導いていた。

セルドーチの異変と警戒態勢

クオリア南方州の商業都市セルドーチは、暗黒大陸との非公式な交易で栄えていたが、疫病の流行と国の管理強化によって封鎖され、静けさに包まれていた。警備兵たちも職務を持て余す中、都市の門前に不審な人物が突如現れ、騒然とする事態となった。

ヴィットーリオの出現と異様な雰囲気

突如として現れた男・ヴィットーリオは、マイノグーラから来たと名乗り、怪しげな笑みを浮かべつつ名乗りを上げた。その態度は終始軽薄でありながら不気味さを伴い、警備兵の警戒心を煽った。彼の背後には同様に不気味な笑みを浮かべた集団が続き、その異様さは際立っていた。

新たなる混乱の予兆

警備兵が慌てて問い質すも、ヴィットーリオは取り合わずに「幸せか」と問いかけるなど、奇妙な言動を続けた。彼の目的は不明ながら、都市の封鎖を無視して現れた行動は、明らかに混乱の幕開けを意味していた。策謀の英雄と称されるヴィットーリオの暗躍が、クオリアとマイノグーラを巡る戦乱に新たな局面をもたらそうとしていた。

結末と次巻への導線

本巻は、静かなる都市への不穏な侵入というかたちで幕を閉じた。ヴィットーリオの登場は物語を新たな混迷へと導く予兆となり、今後の展開への関心を高める構成となっていた。読者にとっては、破滅の文明が新たな動きを見せる次巻への期待感が募る締めくくりであった。

第八話    護衛

拓斗の護衛体制の刷新

拓斗は宰相モルタール老の進言に従い、護衛体制の強化に着手した。過去の戦いで明らかとなった敵の非合理かつ異能的な手段に対抗するため、従来の経験則は通用しないと判断したのである。そこで新たな戦力として《異形動物園》で生産された《出来損ない》を導入し、異常な容姿ながら英雄級の力を持つそれらを自身の護衛に任じた。モルタール老ら配下もその能力に驚愕しつつ、王の判断に感服した。

会議での布陣発表とその裏

《出来損ない》二体に加え、エルフール姉妹であるキャリアとメアリアを王の近衛として配置し、拓斗は大会議にて護衛体制を正式に発表した。その中で、《出来損ない》の能力として《看破》《擬態》《不意打ち》などが紹介され、実戦における有効性が説明された。見た目の異質さはあるものの、戦力としては最高峰であり、王の安全確保という点では申し分のない体制であると配下も認識した。

エルフール姉妹による暗躍と作戦の布石

拓斗はすでにレネア神光国との戦いの最中から、キャリアとメアリアに疫病と忘却の工作を命じていた。これらの効果は今なお継続中であり、南方州に混乱をもたらすことで聖教の行動を制限する狙いがあった。しかし姉妹はそれが時間稼ぎだけでないことを見抜き、拓斗の意図を問い質した。拓斗はそれを認め、次なる作戦が水面下で進行していることを示唆した。

不安の兆候と新たなる訪問者

拓斗が新たな一手を明かす前、会議中に緊急伝令が入り、突如《出来損ない》を通して報告がもたらされた。それは舌禍の英雄ヴィットーリオが、ついに主である拓斗との会談を求めて現れたという知らせであった。拓斗は楽しげにそれを受け入れ、配下たちは緊張を隠しきれなかった。ヴィットーリオの出現は、ただの使者ではなく、彼自身の策が完了した証でもあった。

締めくくりと次巻への導入

拓斗は護衛体制の確立により一つの課題を克服し、次なる戦略へと歩みを進めていた。しかし、ヴィットーリオとの会談という新たな局面がその道を大きく揺るがすこととなる。果たしてこの対峙がもたらすのは友好か、それとも破滅か。すべては拓斗の次なる手に委ねられる状況となった。

第九話    献身

舌禍の英雄との謁見

拓斗は、復帰後初となるヴィットーリオとの謁見に臨んだ。宮殿の玉座の間にて、周囲を配下と《出来損ない》が囲む中、ヴィットーリオは副官の少女を伴い、臣下として忠誠を誓った。だが表面的な穏やかさの裏では、言葉の応酬による緊張感あふれる情報戦が展開されていた。

セカンドプランと代理教祖の紹介

ヴィットーリオは「イラ教」と称される宗教を創設し、その代理教祖にヨナヨナを据えていた。拓斗は彼女の正体を《看破》によって検証したが、異能の兆候は認められなかった。一方でヴィットーリオがダークエルフたちを代替する策を講じていたことが発覚し、信頼に対する疑念が生じた。

知の応酬と主従の対決

アトゥが謁見に姿を見せていない理由について話が及び、拓斗はヴィットーリオとの衝突を避けるための配慮であると説明した。二人の会話は冗談めかしつつも、高度な読み合いに満ちており、互いの裏を読み合う様相を呈していた。両者はあくまで礼儀を保ちつつも、内心では策略を巡らせていた。

南方州への派遣と新たな任務

ヴィットーリオは新たな行動の許可を得て、エルフール姉妹の同行を要請した。目的地は南方州。そこには信仰勢力の聖女がいるとされており、勢力拡大のための重要拠点と見なされていた。拓斗は姉妹の同行を許可し、彼女たちの無事を強く願った。

主従の信頼と次なる一手

会話の終盤、ヴィットーリオは拓斗に全幅の信頼を寄せる言葉を告げ、南方への行動を開始した。拓斗もまた、彼に期待を寄せつつも油断はせず、次なる一手に備えていた。二人の奇妙な主従関係は、互いに策をめぐらせつつも確かな信頼を基盤としていた。

世界征服に向けた決起

最後に、拓斗は改めて世界征服に向けての意志を宣言し、必要な支援を惜しまないと告げた。舌禍の英雄ヴィットーリオはその言葉に応え、奇妙かつ強力な連携が確立された。配下たちやヨナヨナを巻き込みながら、マイノグーラは新たな戦略の第一歩を踏み出したのである。

南方州攻略作戦の開始

ヴィットーリオは新たな作戦として南方州攻略を提案し、イラ=タクトの命令のもとに行動を開始した。彼の背後には、同行を強制されたエルフール姉妹の強い拒否反応があったが、それもまたタクトの遠謀の一環として描かれていた。作戦は重大な意味を持ち、登場人物たちにとってその意味を理解する必要があった。

ヴィットーリオの特異性と制御

ヴィットーリオは《幸福なる舌禍》の異名を持ち、『Eternal Nations』内でも特殊な能力を持つ英雄であった。イラ=タクトだけが彼をコントロール可能であり、その力が今まさに試されようとしていた。彼の存在に対して周囲は警戒を強め、特にその影響力と戦略性を再評価する必要性が浮き彫りとなった。

イラ=タクトの戦略的意図

イラ=タクトは自身の叡智をもってヴィットーリオを動かし、新たな戦局を切り開こうとしていた。全ては次元上昇勝利という目標のために仕組まれた計画の一部であり、南方州攻略もその重要な布石であった。彼は仲間たちの反応すらも戦略に組み込みつつ、慎重かつ大胆に次の一手を準備していたのである。

第十話    調略

疫病と混乱の拡大

商業都市セルドーチでは、キャリア・エルフールの放った疫病が蔓延していた。風邪のように軽度ながら潜伏期間と空気感染によって広がり、人々は長期間苦しめられていた。感染は南方州全体へと拡大し、各都市では医療崩壊が進行していた。

ヴィットーリオによる宗教支配の開始

セルドーチの第一教区教会にて、ヴィットーリオは《イラ教》の代理教祖ヨナヨナと共に活動していた。疫病の苦しみの中で奇跡を演出し、人々に神イラ=タクトへの信仰を強要した。キャリアの病とメアリアの忘却能力によって聖教の信仰は消し去られ、代わってイラ=タクトへの信仰が植え付けられた。

偽りの奇跡と民衆の洗脳

ヨナヨナが祈りを捧げると同時にキャリアが疫病を消し去ることで、神の奇跡が演出された。人々は歓喜し、《イラ教》への帰依を深めた。この一連の流れにより、街全体がマイノグーラの支配下に入る兆しを見せた。

忘却による聖騎士の懐柔

聖教の騎士である男がヴィットーリオの作戦によって信仰を忘却させられ、《イラの騎士》として再誕した。信仰心をすり替えることに成功したことで、マイノグーラは有能な戦力を確保した。

計画の全貌と拡張

ヴィットーリオは疫病と混乱を利用し、マイノグーラによる地域支配の最終段階へと突入した。配下の文官が派遣され、セルドーチ以外の都市や村にも同様の宗教支配が進行中であった。マイノグーラは土地、資源、信仰のすべてを掌握しつつあった。

支配の正当化と偽装

ヨナヨナは表向き教祖代理として表に立ち、ヴィットーリオは裏から支配を行った。信者の数が増えるたびに、神イラ=タクトの奇跡が演出され、民意はますますマイノグーラに傾いた。これにより、他勢力との交渉や戦闘を経ずに都市単位での転覆が可能となった。

南方州への野望と終盤の動向

セルドーチの次なる目標は、南方州の中心都市であるアムリタであった。日記の聖女リトレインや異端審問官イムレイスが防衛にあたっているが、マイノグーラの支配の手はそこにまで及ぶことが予見される。ヨナヨナとエルフール姉妹の冷静な分析により、ヴィットーリオの暴走を止める手段はもはや存在せず、計画は着実に進行していた。

支配の確実化と最終戦略

最終的に、疫病と奇跡による支配が完了すれば、マイノグーラの手に落ちた都市はイラ=タクトを神と仰ぎ、完全なる帰順が成立する。ヴィットーリオはさらなる都市への拡張を予告し、レネア神光国を内部から崩壊させる策略が着実に進んでいた。

第十一話    愚行

アムリタの疫病終息と再侵攻の兆候

クオリアの南方州では、疫病に苦しむアムリタの都市の復旧が進められていた。異端審問官クレーエ=イムレイスは、ようやく事態の収束に安堵しかけた矢先、マイノグーラによる再侵攻の報がもたらされた。南部各地で連絡が断絶し、伝令も追い返される異常事態が発生していた。

各地での連絡断絶と予兆

この異変はアムリタのみにとどまらず、かつて魔の手に落ちたエル=ナー精霊契約連合の様相に酷似していた。神の加護を受ける国家ですら有効な対策が見いだせない中、聖女二名の離反による影響でクオリアの力は著しく弱体化していた。

クレーエの苦悩と判断

異常事態への対応を協議する聖騎士たちの会議は、対策を見出せぬまま停滞した。責任感に苛まれるクレーエは、思考を切り替えるため街の視察に出向いた。撤退を選択肢として考えつつも、住民を見捨てることができないという矛盾に葛藤していた。

ヴィットーリオとの邂逅と衝撃

その視察中、暴行事件に出くわしたクレーエは加害者に警告するが、現場には異様な光景が広がっていた。虚ろな瞳の暴漢たちと、奇妙な装束の大道芸人風の男。その男、ヴィットーリオは自らをマイノグーラの使者であると名乗った。

交戦と違和感

クレーエは即座に抜剣し、神の敵を打ち払わんと攻撃を仕掛けた。しかしヴィットーリオは常識を逸脱した動きで攻撃を回避し、「非暴力主義」を主張しながら突然土下座で降伏を表明した。その予想外の行動にクレーエは混乱し、反応を鈍らせてしまった。

信仰と規範の板挟み

神の教義により、降伏した者を害することは禁じられている。ヴィットーリオはその法を逆用し、対話の場を要求した。クレーエの理性と信仰は「邪悪を斬れ」と命じるが、神の言葉を根拠に理屈を通す敵に、簡単に刃を振るうこともできなかった。

闇の到来

ヴィットーリオは冷笑的に、クレーエの名前と立場を呼びながら、聖なる秩序への侵食を宣言した。すでにマイノグーラの影は、クオリアの中心部にまで及びつつあった。神に仕える者の目前に、邪悪の象徴が明確な姿をもって現れた瞬間であった。

第十二話    脅迫

ヴィットーリオの拘束と交渉の舞台

ヴィットーリオとヨナヨナは旧クオリア南方州騎士団本部にて拘束され、聖騎士たちの監視下に置かれていた。捕虜であるにもかかわらず、ヴィットーリオは終始ふざけた態度を取り続けたが、その裏には聖神アーロスの教義を逆手に取った戦略的意図が隠されていた。降伏者に対する暴力を禁ずる聖典の教えにより、彼は実質的な安全圏に身を置きつつ交渉の機会をうかがっていた。

クレーエとの論戦と布教合戦の提案

異端審問官クレーエは、ヴィットーリオの無礼な態度と挑発に対し冷静に応じた。ヴィットーリオは「布教合戦」という名目で、非暴力かつ非洗脳を条件とした宗教対決を提案し、クオリアの聖騎士団に揺さぶりをかけた。クレーエは一度はその提案を拒絶するも、現地の人々を守る手段が限られていることから、最終的に条件付きで承諾するに至った。

イラ教の目的と聖教との価値観の対立

ヨナヨナは、マイノグーラの真の目的は「人と土地」であると明言し、争いを避けるために譲歩していると訴えた。その上で、イラ=タクトが直接出てこない間は状況に猶予があると示唆した。一方でクオリア側は、破滅の王の存在が引き起こす災厄と聖典の遵守という原則に葛藤しながらも、現実的な妥協を迫られていった。

ヴィットーリオの脱出とクレーエの決断

交渉成立直後、ヴィットーリオは突風と共に拘束を解いて脱出した。彼は初めから逃走の機会を持ちながら、計画的に交渉を進めていたことが明らかとなる。残されたクレーエは、自身の選択が市民を守る唯一の手段だったと自らに言い聞かせつつ、信徒や聖騎士への説明という新たな課題に直面した。

苦渋の妥協と今後の不安

クレーエの決断は、イラ教という異端勢力に譲歩した形となり、クオリアの信仰秩序にとって重大な一線を越えるものであった。聖騎士団内部にも動揺が走り、説明責任と信頼の再構築が急務となった。クレーエは未曾有の選択をした自覚とともに、これからの展開に対する深い不安を抱きながら、その場を静かに収めるための言葉を探し続けていた。

第十三話    嘲笑

哀しみと誘惑の対話

聖騎士団との不和とクレーエの孤立

クレーエは、邪悪なる者ヴィットーリオと取引をしたことにより、聖騎士団からの信頼を失いつつあった。リトレインの代理人としての立場や異端審問官としての権威も揺らぎ始め、職務に対する自信を失っていた。聖騎士たちは彼女の独断に納得していたが、心の奥底ではしこりが残っていた。

ネリムへの想いと葛藤

クレーエは、戦えない少女であるリトレインの脆さを理解しつつも、彼女を犠牲にすることなどできなかった。友人としての情と職務との狭間で揺れ動く中、ネリムとの対話でその思いを確かめていた。リトレインは「善き行いをすれば善きことがある」と語るが、その純粋さがクレーエの心を一層締めつけた。

ヴィットーリオの出現と悪意の提案

邪悪なる者ヴィットーリオが現れ、ネリムの父ヴェルデルが死亡した事実を告げ、ネリムを誘拐する代わりに蘇生を提案した。この提案はクレーエの怒りを買い、聖剣を手にしようとするが、体が動かず、その場での対話を強いられた。

言葉による破壊とネリムの絶望

ヴィットーリオは巧みにネリムを追い込み、父親との再会が偽物だったこと、善き行いに意味はないことを暴露した。ネリムは現実を受け入れられず、涙を流して崩れ落ちた。クレーエもまた精神的に追い詰められ、抵抗する力を失った。

最終提案と誘惑の本質

ヴィットーリオは、破滅の神イラ=タクトに従えば永遠の幸福が与えられると語り、その甘言によって二人を揺さぶった。「死者の蘇生」「平穏な日々」「安寧と幸福」が現実のものとして語られ、聖なる信念が揺らぐ危機が訪れた。

絶望の静寂と涙

提案を拒絶したクレーエは、リトレインと抱き合い、悲しみを分かち合った。邪悪なる者の去った後に残されたのは、救いようのない絶望と冷たい静寂だけであった。

第十四話    屈服

闇の調略とアムリタの崩壊

ヴィットーリオによる調略工作により、アムリタの住民の大半がイラ教へ改宗した。聖女リトレインを中心とした聖教側は説法や治療に尽力したが、敵の進行には及ばず、実力ある人材の離脱も続出した。状況の悪化に対し、聖騎士団はリトレインに奇跡の行使を求め、少女に過度な犠牲を強いようとする姿勢を見せた。

クレーエの葛藤と孤立

異端審問官クレーエは、リトレインの犠牲に強く反発し会議を離脱したが、その行動により完全に組織から排除された。失意と怒りの中で孤独に沈む彼女は、もはや聖教の内部で少女を救う手立てがないことを痛感した。

ヴィットーリオの登場と新たな選択

イラ教陣営に囚われていたヴィットーリオは、道化のような言動で折檻を受けながらも、クレーエに接触し信仰の転向を持ちかけた。エルフール姉妹やヨナヨナの言葉にも後押しされ、クレーエは神を捨てイラ教へと転向する決断を下した。その選択によって、彼女の心に安堵と希望が芽生えた。

奇跡の代償とリトレインの行動

クレーエの決意が固まり、事態が収束へ向かうと思われた矢先、奇跡を行使したリトレインが現れる。彼女はもはや人の手の届かぬ存在となっており、ヴィットーリオすらその行動を止めようとした。聖なる少女が進もうとする先に、救いか破滅かは示されぬまま物語は幕を下ろした。

第十五話    極光

クレーエとの別れとネリムの決断

ネリムはクレーエとの最後の対話を通じ、過去の後悔と感謝を告げたうえで、自身の祈りを捧げた。彼女は思い出を力に変え、クレーエを救うという意志を神に捧げた。祈りは神に届き、ネリムは強大な聖なる力を得た。

記憶喪失と日記による再起動

祈りの代償としてネリムは全記憶を喪失した。結果、幼児のような無垢さで再び目覚めるが、日記の記述を読み返すことで目的を再認識した。神はその行動を奇跡と認め、彼女にさらなる力を与えた。

神の設計ミスとネリムの進化

本来なら記憶を失った聖女は無力な人形になるはずであったが、ネリムは日記を読むという習慣によって目的を補完した。この設計の不備により、彼女は無限に奇跡を引き出す存在と化し、圧倒的な力を得た。

聖女ネリムの暴走とマイノグーラ側の苦境

ネリムは記憶を喪失しつつも日記の指示に従い、悪を討つ力を求め続けた。その力はキャリアとメアリアの攻撃すらも通用しないほどであり、次第にマイノグーラ側は圧倒されていった。信徒は失われ、戦力も削られていく。

クレーエへの攻撃とさらなる記憶の混乱

クレーエを助けるという指示と、邪悪を討つという指示が衝突し、ネリムの判断に矛盾が生じた。彼女は再び記憶を喪失し、次々に目標を切り替えながら暴走を続けた。やがて彼女の興味は人々を助ける方向へと移る。

ヴィットーリオの最後と聖女の暴走終結

ヴィットーリオは戦局を覆す策を打てず、ネリムの圧倒的な力の前に敗北した。彼はタクトへの忠義を貫きながら最期を迎えた。一方、ネリムは血塗れの日記を読み返しながら、次なる行動を考え始めた。

結末の静寂と少女の空虚

戦場に残されたのは、血に染まった日記と、空虚な少女の姿だけであった。記憶を失いながらも、日記に導かれるままに彼女は新たな道を歩み出す兆しを見せた。それは希望か、さらなる破滅の始まりであるかは、誰にも分からなかった。

第十六話    再演

アムリタからの脱出と信徒の行方

マイノグーラ陣営はヴィットーリオの献身によって聖女の追撃を回避し、アムリタの街を脱出した。信徒の大半は奪還されたものの、旧来の仲間たちは無事であった。逃亡中、代理教祖ヨナヨナは異端審問官クレーエ=イムレイスを保護し、信仰を失った彼女に休息と再起の道を示した。

ヴィットーリオの死と一行の悲哀

脱出の代償として、ヴィットーリオが殿を務め命を落とした可能性が濃厚となる。一行はその犠牲に沈痛な思いを抱きつつ、支配下の都市セルドーチへの撤退を開始した。だが情勢は厳しく、セルドーチの放棄も検討される状況となっていた。

死からの復活とヴィットーリオの演説

ヴィットーリオは死後、マイノグーラの宮殿で復活し、玉座の前で勝利を宣言した。彼は《名も無き邪神》であるイラ=タクトの再定義を行い、信徒たちの認識によって新たな神格を定着させたと語った。これにより拓斗の意識回復が実現したと信じていた。

邪書による神格化の構図とその矛盾

邪書にはイラ=タクトを神格化する記述がなされており、ヴィットーリオはそれに従って「理想の神」としての拓斗像を構築していた。しかし、拓斗はその再定義を否定し、ヴィットーリオの信仰が個人の信念に基づいた幻想に過ぎないと断じた。

拓斗の真の意図とヴィットーリオの敗北

ヴィットーリオの策は緻密であり、イラ教の創設や信徒の認識操作、聖女との対決を通じて拓斗の復活を成し遂げたように見えた。だが、拓斗はそれを全て見抜いており、予備策として擬態能力を持つ赤子を用いて自身の影武者を用意していた。

信仰の崩壊と存在階層の真実

ヴィットーリオが信仰の中心に据えたイラ=タクトは、実際にはゲーム世界『Eternal Nations』における人格に過ぎず、拓斗の本質はその上位にある存在「伊良拓斗」であった。そのため、《名も無き邪神》の影響を受けても、本体たる拓斗には影響がなかったという構造が明かされた。

信仰と忠誠のすれ違い

ヴィットーリオは、自らの理想に合致しない拓斗の姿を受け入れられず、神を再定義しようとした。しかしそれは、主を侮辱する行為であり、結果として自らの信仰を破綻させる愚行となった。拓斗はその狂信的忠誠を理解しながらも、「君はセカンドプランだった」と告げて退けた。

狂信の昇華と敗北の受容

敗北したヴィットーリオは、自らの作戦が全て看破されていたこと、そして拓斗が常に自分の上を行っていたことに気づき、涙を流した。だがその敗北すら、彼にとっては主に認められた証であり、心の底からの満足をもたらすものとなった。

第十七話    流転

アトゥの奪還とヴィットーリオの敗北

イラ=タクトは、アトゥが彼を再び召喚するか、あるいはヴィットーリオに助けを求めるかを含めた複数の展開を予測し、全てに対して勝利を収める算段を整えていた。結果としてアトゥは意識を取り戻し、ヴィットーリオの策を見抜いたタクトに感動しきりであった。アトゥはタクトに抱きつき、勝利の喜びをあらわにしたが、彼女の反応はやや過剰で、タクトを戸惑わせた。一方、ヴィットーリオは敗北に打ちひしがれ、「寝取られた」と錯乱状態に陥った。

主従関係の再確認とヴィットーリオの暴走

アトゥはタクトへの忠誠を強く再表明し、ヴィットーリオを恋愛面でも蹴落としたと勝ち誇った。ヴィットーリオはそれに反発し、自身もヒロインとしての地位を主張したが、二人に完全に無視された。タクトはこの騒動を通じて国家運営の再編を進めつつ、次元上昇勝利という最終目的を見据え、歩みを進めていた。ヴィットーリオは今後も忠誠を尽くすと誓ったが、同時にまたも暗躍を始めようとした。

世界の新たな動きと魔女ヴァギアの宣言

タクトのもとに、突如巨大な声が響き渡る。それは「サキュバスのヴァギア」による全プレイヤー・国家への宣言であった。彼女は「争いはナンセンス」として停戦と会合を提案し、そのための使者を各勢力に派遣すると告げた。この予想外の動きにより、タクトは慎重な対応を迫られた。ヴァギアの存在と魔女軍勢はこれまで不明であり、完全に後手に回った情報状況にタクトは警戒を強めた。

世界情勢の加速と次なる波乱の兆し

ヴァギアの登場は、アトゥとヴィットーリオにも驚きを与えたが、特にヴィットーリオは演出面での敗北を感じ取り、対抗心を燃やすそぶりを見せた。タクトは彼の行動を制御するため釘を刺し、ヨナヨナやエルフール姉妹などへの連絡を怠った件についても処罰を予告した。こうして再び動き出した世界の中で、タクトは《次元上昇勝利》を目指し、拡大した国土と混迷する状況に立ち向かう決意を新たにした。最後に、システムメッセージが神の名を伴って通達され、物語は次なる局面へと動き始めた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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