小説「異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 4」感想・ネタバレ

小説「異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 4」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は、戦略級ファンタジーSLG『Eternal Nations』に熱中していた青年・伊良拓斗が、邪悪属性文明「マイノグーラ」の指導者として異世界に転生し、国家運営と世界征服を目指す物語である。第4巻では、RPG勢力「ブレイブクエスタス魔王軍」との激戦を経て、多大な犠牲を払いつつも勝利を収めたマイノグーラが、喪われたものを取り戻すため、世界そのものを改変する勝利条件《次元上昇勝利》の達成を決意する。しかし、そんなタクトの前に新たなる敵――《啜りの魔女エラキノ》と《華葬の聖女ソアリーナ》が立ち塞がる。

主要キャラクター

• 伊良拓斗(イラ=タクト):本作の主人公であり、異世界に転生した青年。邪悪属性文明「マイノグーラ」の指導者として、国家運営と世界征服を目指す。
• アトゥ:マイノグーラの英雄ユニットであり、拓斗に忠誠を誓う少女。戦闘能力に優れ、国家の防衛を担う。
• イスラ:全ての蟲の女王と称される英雄ユニット。虫たちを自在に操り、マイノグーラの国母として慕われる。
• エムル:ダークエルフの女性であり、ギアの副官。内政を支え、古い伝承にも詳しい。
• ソアリーナ:華葬の聖女と呼ばれる存在。啜りの魔女エラキノと対峙する。
• エラキノ:啜りの魔女と称される存在。幾度の討伐にも復活を繰り返す不死性を持つ災厄。

物語の特徴

本作は、国家運営シミュレーションゲームの要素を取り入れた異世界ファンタジーであり、内政と戦略を重視した展開が特徴である。主人公が邪悪属性文明の指導者として、倫理観や価値観の異なる世界で国家を築き上げていく過程が描かれる。また、登場キャラクターたちの個性豊かな描写や、予測不能なストーリー展開が読者を惹きつける要素となっている

書籍情報

異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 4
英語名:Apocalypse Bringer Mynoghra
著者 : 鹿角フェフ 氏
イラスト: じゅん  氏
出版社:マイクロマガジン社GCノベルズ
発売日:2021年10月29日
ISBN:978-4-86716-204-0

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あらすじ・内容

異世界を舞台に探検!拡張!開発!殲滅!大人気ダークファンタジー!
多大な犠牲を払いつつも、RPG勢力「ブレイブクエスタス魔王軍」を撃破したマイノグーラ。
激戦の中で喪われたモノを取り戻すため、世界そのものを改変する勝利条件《次元上昇勝利》の達成を決意したタクトは、魔王軍との戦いで得た金貨を元手に自国のさらなる強化を開始する。
しかし、そんなタクトの前に新たなる敵――《啜りの魔女エラキノ》と《華葬の聖女ソアリーナ》が立ち塞がる!!

異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 4

感想

喪失の痛みと新たな試練

本巻では、前巻での激戦を経てマイノグーラがRPG勢力「ブレイブクエスタス魔王軍」を撃退した直後から物語が始まる。
イスラという重要な英雄ユニットを失ったことは、物語全体に大きな影を落とす出来事であり、その喪失感が読者にも重くのしかかる展開であった。
タクトはその痛手を抱えながらも、自国の再構築と軍事力の増強に取り組む姿勢を見せ、王としての覚悟がより明確に描かれていた。

異なるゲームシステムの脅威

TRPG出身の新勢力が登場したことで、世界観にさらなる広がりが生まれた。とりわけ《啜りの魔女エラキノ》と《華葬の聖女ソアリーナ》という異質な存在は、これまでの敵以上に規格外であり、物語に圧倒的な緊張感をもたらしている。
特にアトゥが洗脳され、敵側に連れ去られるという展開は、主人公勢力にとって最大級の危機であり、物語の転換点として強く印象に残る場面であった。

進化する戦力とタクトの孤独な決断

マイノグーラは金貨によって近代兵器を手にし、戦力を段階的に強化しつつあったが、それでも敵勢力との力の差は歴然であり、絶望的な状況は続いていた。
そのような中で、タクトが単身で敵地に赴くという決断を下す場面には、彼の信念とアトゥへの深い絆が込められていた。
この孤独な行動は、タクトの指導者としての進化を象徴する一幕でもある。

ゲーム勢力の多層構造と原住民の影

本シリーズでは多様なゲーム由来の勢力が次々と登場し、それぞれが異なる理で動くという構造が魅力の一つである。
しかし一方で、この異世界に元々存在するはずの原住民勢力の描写が相対的に薄く、世界の厚みに対する疑問も残る構成となっていた。
ゲーム的ルールで動くキャラクターたちが主役であるゆえの構造的限界とも言えるが、今後の展開においてこの点がどのように補完されるのか注目である。

次巻への期待と不確定要素

アトゥの奪還、そして敵勢力の殲滅という明確な目標が提示された今巻の結末は、次巻への興味を大いに高める内容であった。
GMの介入という「ゲームマスター」という設定の暴力性をどう乗り越えるのか、そしてタクトの策略が如何にして機能するのかが、今後の物語の焦点となるであろう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

イラ=タクト

異世界に転生した「破滅の王」。異質な存在であり、強大な威圧感を放ちながらも、必要に応じて配慮を見せる支配者である。
・マイノグーラ国家の創設者かつ最高権力者
・ダークエルフや魔女、異形の存在を従え、勢力を拡大
・他文明との外交、軍事侵攻、支配体制の構築を推進

アトゥ

イラ=タクトの忠実な腹心であり、彼に絶対の信頼を寄せる異形の少女。人外の力を持ち、兵士たちから恐れられている存在である。
・マイノグーラにおける主戦力として活躍
・都市防衛や戦闘において圧倒的な力を発揮
・タクトとの絆が深く、彼の意向を優先して行動

メアリア・エルフール

マイノグーラに仕える双子の姉妹の一人であり、優秀な文官として活動する少女。
・キャリアと共に行政や技術分野を担当
・銃器展示では装置を用いた示威行動に参加
・外見とは裏腹に、異質な存在として他者から警戒されている

キャリア・エルフール

メアリアの双子の妹であり、同様に文官として国家運営に関与する。
・配給所にて住民への制度説明を行い信頼を得た
・国家方針を代弁し、住民の忠誠心の醸成に貢献
・住民の価値観を変容させるような言動を見せた

モルタール老

かつてダークエルフの暗殺組織で名を馳せた《呪賢者》。現在はマイノグーラの政務と魔術組織を統括する重鎮である。
・国家の宰相的存在として政務全般を担当
・魔術研究と技術導入の指導を兼任
・常に朗らかだが、内に秘める危険性は計り知れない

ギア

元ダークエルフの戦士であり、現在はマイノグーラの軍事部門を統括する将軍的存在である。
・《暗殺者》の異名を持ち、容赦のない戦術を得意とする
・戦士団を率いて射撃訓練を実施し、銃の運用を指導
・忠誠心はタクトに向けられており、全てを捧げる姿勢を示す

エムル

文官であり、銃の試射を任された人物。冷静な判断力を持ち、技術面に強い。
・初の銃器使用者として試射に参加
・軍事デモンストレーションで重要な役割を果たす
・比較的穏やかな立場ながらも、対外的な演出に貢献

フォーンカヴンのペペ

突飛で陽気な性格を持つフォーンカヴンの代表的存在。外交場面では奔放な振る舞いを見せる。
・マイノグーラとの交渉に積極的に関与
・その場の空気を攪乱するような発言が多い
・都市長アンテリーゼの頭痛の種となる人物

トヌカポリ

杖を持つフォーンカヴンの高位者であり、冷静な観察眼を持つ。
・マイノグーラの異質性を早期に警告
・アンテリーゼに助言を与える役割を担う
・慎重かつ理知的な姿勢を崩さない

アンテリーゼ

都市フォーンカヴンの現職都市長であり、精霊契約連合の出身。
・都市外交を担い、マイノグーラとの交渉を主導
・巨大な責任と緊張の中で任務を遂行
・急速な変化に対応しようと懸命に立ち回る

ソアリーナ

中央政府側の人物であり、エラキノと共に南方州で活動する聖女的存在。
・混乱を避けるために報告を停止するなど独断的判断を行う
・罪や不正に目を伏せることで現実に向き合おうとする
・エラキノとは深い信頼関係を築いている

エラキノ

《啜りの魔女》と呼ばれ、洗脳能力を持つ存在。だがその力は自制されており、善意で政治に協力している。
・記憶操作によって他者を導いた経験を持つ
・ソアリーナと無二の友情を築き、共に改革に邁進
・敵対勢力にも寛容に接しつつ、国家改善を志向する

フィヨルド

聖騎士であり、エラキノの洗脳により忠誠心を再構成された人物。
・当初は警戒を抱いていたが、洗脳によって忠誠を示す
・行政再建のために資料を活用し、実務を遂行
・隠された財産情報によって希望を見出した

フェンネ

《顔伏せの聖女》の異名を持つ神聖な存在。冷徹な判断を下すが、その本心は読めない。
・ソアリーナやエラキノに対しても懐疑的
・作戦会議では慎重派として発言し、意見の調整を担う
・洗脳の可否や国家方針に関して深く関与

シゲル

《ブレインイーター》と呼ばれる異形の兵士でありながら、陽気で親しみやすい性格を持つ。
・配給所で住民を歓迎し、不安を和らげた
・親子への対応で、国家への信頼感醸成に貢献
・住民への処刑制度の説明を通じて価値観の変化を誘導

展開まとめ

プロローグ

魔王軍との戦いと英雄の喪失

マイノグーラは、突如現れたRPG勢力「ブレイブクエスタス魔王軍」との戦いに臨み、激戦の末に後塵を拝した。その結果、英雄《全ての蟲の女王イスラ》を失うという大きな犠牲を払うこととなった。

英雄の遺志と双子の覚醒

死の間際、イスラは己の力を双子の少女メアリアとキャリアに託した。二人はその力により《魔女》として目覚めたが、母と慕ったイスラの死により深い悲しみに陥った。やがて彼女たちはその悲しみを怒りへと変え、《後悔の魔女》として暴走し始めた。

異世界プレイヤーとの遭遇

敵を討たんとする双子の前に、未知の存在が現れた。それは拓斗たちと同様に、ゲームシステムの恩恵を受けてこの世界に降り立った“プレイヤー”であった。双子はその正体を知らずに対峙したが、これを機に拓斗は、同じ境遇の存在がこの世界に多数存在する事実を知るに至った。

拓斗の決意と次元上昇勝利

拓斗は、他のプレイヤーとの共存が不可能であることを悟り、世界全てを征服するという決意を固めた。彼の目指すものは、ゲームにおける特殊な勝利条件《次元上昇勝利》であった。それを成し遂げることで、失われた者たちを取り戻そうと誓ったのである。

闇に包まれた王の宣言

全てを取り戻すと宣言する彼の姿は、暗黒に包まれていた。その言葉と姿を目の当たりにした配下たちは、言葉では言い表せぬ恐怖と畏敬の念を抱いたのである。

第一話    妙策

アトゥの緊張と決意

《汚泥のアトゥ》は、イスラの死や主である拓斗の激変により強い緊張に包まれていた。以前のような穏やかな日々が戻らないことを悟り、過去の失態を繰り返さぬよう自らの役目を再確認した。

主の変化と英雄の動揺

玉座の間に進んだアトゥは、絶望感に打ちひしがれた拓斗の姿を目撃した。イスラを喪った心の痛みと、先日の過剰な宣言への自己嫌悪により、拓斗は精神的に追い詰められていた。

よしよし作戦と信頼の回復

アトゥは葛藤しながらも、キャリアの助言を受け入れ拓斗を慰めた。その行動が功を奏し、拓斗は少しずつ気力を取り戻した。アトゥは再び彼の信頼を感じ取り、己の使命を再確認した。

王の告白と臣下たちの反応

拓斗は、先日の高圧的な言動が周囲に恐怖を与えたことを悔いていた。自らの中にある中二病的な振る舞いを反省し、真摯な謝罪をアトゥと姉妹に向けて述べた。臣下たちはその姿に安堵した。

決意の再確認と双子の成長

落ち込みを経て立ち上がった拓斗は、世界征服の意思を再度明言した。姉妹もまた、かつての暴走の経験を経て、自らも守られるだけの存在ではないと強く自覚し始めていた。

主従の絆と侵入者の報告

アトゥと拓斗は、互いの信頼を確認しあう儀礼を交わしたが、そこへ足長蟲が報告に現れた。彼が持ち帰った『ブレイブクエスタス』の金貨により、戦後の利得がもたらされたことが明らかとなった。

拓斗の企図と不明な計画

大量の足長蟲を用いた秘密任務の存在が示唆され、アトゥはその意図を問うた。拓斗は詳細を語らなかったが、金貨と街の中心への同行を求め、何かを見せることで説明する構えを見せた。

安堵と前進

街へ向かう拓斗の後を追いながら、アトゥは主との関係が以前と変わらぬものであることに安堵した。そして彼のために尽くすという己の信念を再確認し、歩みを進めた。

第二話    黄金

街に集積された金貨とアトゥの疑念

足長蟲たちの働きにより、ブレイブクエスタスの魔物から回収された金貨が街の広場に山のように積み上げられていた。その壮観な光景にアトゥは驚愕し、この金貨が何に使われるのか疑問を抱いた。

経済システムの根幹とアトゥの無理解

拓斗はアトゥの疑問に対し、ゲーム『Eternal Nations』における通貨と魔力の概念を説明した。通貨は本来目立たない資源であったが、魔力との交換が可能であることが判明し、金貨の回収が重要な戦略となった。

緊急生産による市場の建造

拓斗は保有していた魔力を使い、緊急生産で《市場》を建造した。この建物は奇抜な外観を持ちつつも、マイノグーラにとって必要不可欠な機能を備えていた。市場の管理人には《ニンゲンモドキ》が据えられた。

金貨から魔力への変換とアトゥの理解

エルフール姉妹が運んだ金貨を市場に差し出すと、それは魔力へと変換された。アトゥはその光景を見て拓斗の狙いを理解し、ゲーム内の経済活動を応用したこの手法が、現実の制約を超越するものであると実感した。

緊急生産システムの裏仕様

拓斗は『Eternal Nations』の緊急生産ルールに基づき、異なるゲームの資源でも魔力に変換できることを活用していた。ブレイブクエスタスで流通していた金貨も、Eternal Nations内では戦略資源として機能し得ると判断した。

ゲームシステム間の融合とバグ的利用

この世界におけるSLGとRPGのルールはそれぞれ異なるが、拓斗はその境界を突き崩し、相互に作用する“システムの穴”を利用するに至った。魔王軍の無限召喚、呪われた大地、ユニット属性変更など、現実では不可能な現象はすべてその表れであった。

経済戦略の加速と国家の急成長

拓斗は大量の魔力を得ることで、今後の建造や国力の拡張において大幅な時間短縮が可能となることを確信した。このプレイスタイルは《経済プレイ》と呼ばれ、他勢力でも採用される強力な戦略であった。

富豪のような感覚と新たな展望

足長蟲たちは引き続き金貨を運搬しており、マイノグーラの市場は絶えず魔力を産出し続けた。拓斗はその様子を見ながら、自身の戦略が成功していることを実感し、富豪気分に浸りながら笑みを浮かべた。

第三話    戦力強化

急速な都市建設と技術的限界

イラ=タクトはマイノグーラの都市開発を急進させ、多数の建築物を一気に建設した。金と魔力を潤沢に使うことで施設の稼働は始まったが、技術研究の壁により新たな建築は一時停止された。ダークエルフたちは研究へと人員を割き、教育施設では子供たちへの教育も始まった。食料生産にはニンゲンモドキが投入され、知識層の負担は軽減された。

膨大な資源と周囲の懸念

マイノグーラには莫大な金貨が存在し、それが外部勢力の関心を引きかねない状況であった。魔力への変換には国家規模の制限があり、金貨は街に積まれたままとなっていた。モルタール老はこの資源がもたらす危機について懸念を示し、タクトもそれを理解したうえで戦力増強の必要性を訴えた。

精鋭戦力と種族特効の構成

マイノグーラではブレインイーターや首刈り蟲など、人類種に特効を持つ戦力が量産されていた。それらは魔力を消費して生産され、防衛戦力として都市に配備された。特に宗教国家クオリアや精霊契約連合を仮想敵とし、対人類戦を想定した構成となっていた。

軍事教本の導入と近代戦への布石

タクトは前世の知識をまとめた「戦争教本」を制作し、モルタール老らに配布した。これは近代戦の基礎を教える教材であり、未来技術の再現を目指した取り組みであった。技術の応用には時間が必要とされたが、マイノグーラの変革を担う重要な資料となった。

火器導入と暗殺戦術の構築

ダークエルフたちは狙撃銃や突撃銃の訓練を開始した。特にギアが率いる戦士団は銃器を使用した夜間戦術を学んでおり、拓斗はその成果に満足していた。メアリアとキャリアの双子姉妹は対物ライフルすら扱い、常識外れの才能を発揮した。ギアは彼女たちの実力に落胆しつつも、奮起を誓った。

弾薬コストの問題と回収体制

弾薬のコスト問題についても、拓斗は対策済みであった。訓練後に薬莢と弾丸を回収し、市場で魔力へと換金していた。これにより実質無料に近い形で銃火器の運用が成立しており、軍事維持の課題は大きく緩和された。

人員不足と解決の糸口

銃火器の導入は成功したが、兵員数が圧倒的に不足していた。ニンゲンモドキは銃器を扱えず、戦力として使えなかった。拓斗はその解決策として、ダークエルフの難民を招き入れる方針を示した。さらに、調査中の足長蟲の情報から追加の人員確保手段を検討していた。

同盟都市との交渉と未来への布石

ドラゴンタンからフォーンカヴンの使者が訪れたことで、拓斗は戦略会議を開くことを決定した。新たな交渉と人材確保への布石として、アトゥの召喚を命じた。状況が目まぐるしく変化する中、モルタール老とギアはその采配に深い感銘を受け、王への忠誠を改めて胸に刻むのであった。

第四話    作戦会議

ドラゴンタン譲渡提案と会議の混迷

マイノグーラに、同盟国フォーンカヴンから唐突に「ドラゴンタンの街を譲渡したい」との親書が届いた。内容は簡素で詳細が省かれており、タクトやアトゥ、モルタール老らもその真意を掴みかねていた。これまで順調であった政策会議はこの問題により初めて膠着し、議題は暗礁に乗り上げた。

ドラゴンタンの混乱と都市機能の崩壊

会議の中でエムルが最新情報を整理し報告した結果、ドラゴンタンでは住民の大量流出と治安悪化が起きていたことが判明した。支援の届かない僻地に位置するこの都市は、戦争の影響により実質的な統治機能を失いつつあり、マイノグーラへの庇護を求める可能性も浮上していた。

フォーンカヴンの思惑と戦力不足

フォーンカヴンが都市譲渡を選択した背景には、戦力の不足と内政不安があったと推察された。特にマイノグーラの援軍に依存した事実から見て、フォーンカヴンは自国の限界を自覚しており、譲渡の見返りとしてマイノグーラから戦力支援を引き出そうとしていると分析された。

拓斗の提案と武器輸出戦略

モルタール老が支援の余裕の無さを指摘する中、拓斗は戦力支援の代替策として「武器の輸出」を提案した。これによりフォーンカヴンの戦力強化に寄与しつつ、マイノグーラは弾薬供給を通じて主導権を握ることが可能になる。銃器技術はこの世界での再現が不可能なため、完全な依存関係が形成される構図であった。

武装の影響とフォーンカヴン軍の変化

フォーンカヴン軍は近接戦中心の低練度部隊で構成されていたが、近代兵器を装備することで質の向上が期待された。マイノグーラとしては、将来的な戦争において前衛をフォーンカヴンに任せる布陣が構築可能となり、戦略的価値は高かった。

武器供与の対価と人材確保

武器の対価として、拓斗は「人員の提供」を要求する方針を打ち出した。特にドラゴンタンの生活困窮者や犯罪者を対象とした移民受け入れにより、マイノグーラの慢性的な労働力不足を解消しようとした。これは住民側にも歓迎される可能性が高く、戦力と人口の両面を補強する策であった。

国家間交渉と支配構造の構築

この武器供与と人材交換の構図は、単なる援助を超えてフォーンカヴンを事実上従属させる手段でもあった。相互依存を偽装した支配関係の樹立は、拓斗にとって有利な展開であり、敵対勢力への抑止力ともなる構想であった。

拓斗の変化と内面的成長

会議終盤、拓斗は自身の成長を自覚し、以前よりも大胆な判断ができるようになったことに満足していた。配下たちの信頼も厚く、アトゥやエムルらも提案に賛意を示した。最終的に拓斗は武器の選定を命じ、交渉への準備を進めるとともに、今後の世界情勢の変動に備えて自らの能力を再確認する決意を固めた。

挿話    大呪界

闇の中の警邏訓練と特殊部隊の実戦投入

暗黒大陸の夜を舞台に、ギア率いるダークエルフ戦士団は、首刈り蟲および足長蟲との連携訓練を実施していた。高い夜間視認性と特殊銃器によって構成された即応部隊は、斥候型昆虫ユニットとの組み合わせで高い機動性と隠密性を誇っていた。この活動は蛮族侵攻による失態を教訓とし、国家防衛力の再建を目指す彼らの執念の表れであった。

実戦による知見と敵の探知手段

訓練中、敵オークが出現したことで実戦状況が発生した。ギアは即座に狙撃を実行し敵を排除したが、敵が匂いによってこちらの存在を察知していた可能性が浮上した。この発見は、今後の作戦行動における重要な示唆をもたらすこととなった。

軍事報告と宮殿内会議

同時刻、マイノグーラ宮殿ではアトゥがギアの活動報告を受けていた。暗黒大陸における継続的な巡回と訓練成果は、国家防衛上で最重要とされ、モルタール老もその意義に賛同していた。タクトが導入した魔力錬金術や、異世界の戦略理論の応用によって、マイノグーラの軍事力は著しく増大していた。

防衛ユニットの配備と軍事的圧力の強化

都市周辺には《巨大ハエトリ草》が大量に配備されており、防衛建築《生きている葦》の完成も相まって、拠点防衛力は飛躍的に高まった。ブレインイーターの回復支援、ダークエルフ戦士団の即応力も加わり、マイノグーラは他国すら手出しをためらう堅牢な要塞と化していた。

大呪界の変質と敵対者の排斥

かつて迷信の対象であった大呪界は、タクトの統治により真に呪われた地へと変貌した。森には瘴気が漂い、侵入者は植物やダークエルフの無音の攻撃により命を落とす。この地には聖なる者の居場所は無く、魔に染まった者たちだけが息づく場所となっていた。

防衛から攻勢への転換構想

アトゥとモルタール老は、防衛体制が整った今、次は攻勢への備えを整えるべきだと語り合った。モルタール老は「王道」として、英雄と配下による正面突破を想定したが、アトゥはタクトがそれよりも「詭道」に長けた人物であると指摘した。

タクトの采配と配下の信頼

アトゥはタクトが過去に行ってきた戦略は、すべてが奇抜かつ難解で、勝敗の意図が結果を見て初めて理解されるようなものであったと語った。配下である彼女すらその思考を完全には読み切れず、それゆえにタクトの次なる戦争は誰の予想をも超えるだろうという確信を持っていた。

次なる戦争への静かな胎動

タクトは依然として沈黙を保ちつつ、次なる一手を思案していた。配下たちが畏怖と期待を抱く中、彼だけが破滅と支配を見据えて思索を巡らせていたのである。

第五話    かつて彼女は……

ソアリーナの目覚めと異様な再会

《華葬の聖女ソアリーナ》は、本来ならば死を迎えていたはずの戦いから目覚め、なぜか南方州の議場にいた。目の前には踊る少女、《啜りの魔女エラキノ》が存在し、彼女の意思によりソアリーナは生かされ、精神の自由を奪われたまま拘束されていた。

精神拘束と禁止事項の強制

ソアリーナはエラキノの能力により、発言・行動・情報開示の制限を強いられていた。敵意の表明や救援要請すら禁じられ、聖神の加護さえ届かぬ力に支配されていた。彼女は、自身の意思では一切の行動を取ることができなかった。

議場に残された惨劇の痕跡

議場内には聖職者たちの死体が転がり、血と肉が床を覆っていた。エラキノはその場を「レッドカーペット」と表現し、残虐な光景を愉快げに語った。ソアリーナは静観を貫きつつ、エラキノの思惑を探ろうと試みた。

聖王国の腐敗と聖職者たちの罪

ソアリーナは、南方州上位聖職者たちが不正蓄財・権力乱用・児童虐待などに手を染めていた事実を口にした。それはエラキノの強制による発言であり、彼女自身が信じていた秩序が崩壊する瞬間であった。

善悪の混濁と怒りの矛先

自分が信じていた正義が役立たずであり、悪とされていた魔女が社会を浄化したという事実に、ソアリーナは混乱と怒りを覚えた。その怒りは魔女ではなく、自らの無力さに向けられたものであった。

理想の国と共同統治の提案

エラキノは、ソアリーナと共に「誰も苦しまない国」を作ろうと提案した。軍事は自分が担い、政治と福祉はソアリーナに委ねるという内容であった。その提案は不意打ちのような甘い誘惑であり、ソアリーナは動揺した。

内心の葛藤と現実への妥協

ソアリーナは、かつての信念が人を救えず、魔女の手法で人が救われているという逆転に思考を揺さぶられた。自らの信仰と現実の乖離に苦悩しながらも、自由を持たぬ現状では理想を選ぶ余地がないと感じた。

約束と決断の瞬間

ソアリーナは「無益な殺生を行わない」という約束をエラキノに求め、彼女は軽々と了承した。信頼できるかは不明であっても、その場の流れの中でソアリーナは提案を受け入れる決断を下した。

信頼なき協力と国家の再編構想

南方州は聖王国の中でも自治権が強く、ソアリーナは上位聖職者の粛清を隠蔽できる可能性があると理解した。エラキノの軍と自身の聖女としての地位を活かし、新たな理想国家の創出という幻想に賭ける道を選んだ。

緊迫する情勢と残された選択肢

聖騎士たちが異変に気づき議場に向かう中、ソアリーナは逃れられぬ状況の中で最終的に「この馬鹿げた提案に乗る」ことを選んだ。それは信念の敗北であると同時に、新たな現実への適応でもあった。

第六話    悪意は確かに人々を救う

ソアリーナによる不正調査と苦悩

南方州議会において、ソアリーナは多数の不正書類を前に苦戦していた。文書読解に不慣れな彼女にとって、膨大な証拠は民の苦しみの重みとしてのしかかり、焦燥感を募らせていた。

フィヨルドの報告と聖騎士団の憤怒

南方州聖騎士団長フィヨルドが、枢機卿たちの私財調査を報告した。結果は想像を超えるものであり、民からの喜捨が権力者の私腹に流れていたことが判明した。冷静なフィヨルドすら感情をあらわにするほどの深刻さであった。

行政再建の人材難とソアリーナの覚悟

行政再建のための人材登用は難航しており、ソアリーナは自らの名前を用いて説得にあたるよう命じた。これは彼女が聖女としての権威と覚悟を示したものであり、フィヨルドに強い印象を与えた。

中央報告の停止とフィヨルドの疑念

ソアリーナは中央への報告を一時停止する判断を下した。混乱の拡大を避けるためという名目であったが、フィヨルドは彼女の言葉に疑念を抱き、何らかの隠された事情があると推察した。

エラキノの再登場と記憶の操作

エラキノが突然姿を現し、フィヨルドは彼女が「啜りの魔女」であることを思い出しかけたが、《洗脳》によってその記憶を封じられた。直後、彼は正義感に燃える忠実な聖騎士としての意識に再構成され、書類を受け取り行政再建に意欲を見せた。

財産情報の提供と希望の兆し

エラキノはフィヨルドに枢機卿たちの隠し財産の情報を提供した。彼はその資料をもとに、混乱の収束と行政再建に希望を見出し、礼を述べてその場を去った。

エラキノとソアリーナの異なる思惑

エラキノは善意の行動に快感を覚えながら踊り、ソアリーナは罪と不正に目を背けるように書類に没頭していた。エラキノが本気でこの国を良くしたいと思っている様子に、ソアリーナは複雑な感情を抱いていた。

フェンネの来訪と不穏な空気

新たな来訪者、《顔伏せの聖女》フェンネが現れた。彼女の荘厳な声と威圧感にソアリーナは圧倒され、彼女とエラキノの関係性に疑念を抱いたが、具体的な情報を得ることはできなかった。

洗脳と真偽の交錯

フェンネは洗脳の可能性を否定しながらも、あらかじめ用意されたような言葉でソアリーナの疑念を打ち消した。彼女の瞳と声は、全てを見透かすかのようであり、ソアリーナは言葉を失った。

美辞麗句に包まれた暗部

「人々を救う」という共通の理念を掲げながら、フェンネとエラキノはそれぞれの方法でこの国を導こうとしていた。しかしその言葉の裏にある真実は、それぞれの心の内にしか存在していなかった。

第七話    二国会談

フォーンカヴンの動揺と市民の不安

ドラゴンタン市内では、マイノグーラとの会談を控えた状況が広まり、市民や兵士たちは不安と混乱に包まれていた。かつて蛮族の侵攻から街を救ったマイノグーラに対する感謝と恐怖が交錯し、同盟相手の真の姿について疑念が深まっていた。

アンテリーゼ都市長の視察と警告

エル=ナー精霊契約連合出身で、現在は都市長を務めるアンテリーゼが見張り台に現れ、兵士たちと会話を交わした。彼女は冗談交じりに街の見納めである可能性に言及しながら、間近に迫ったマイノグーラ王との会談に際して、兵士たちに冷静さと自制を求めた。

精霊の逃避と異常な前兆

アンテリーゼは、街の精霊たちがすでに逃げ出していると告げ、通常では考えられない異変を暗示した。精霊との感応能力を持つ彼女のこの発言は、街に迫る異常事態の兆候として兵士たちに強い衝撃を与えた。

兵士たちの忠誠と不安

兵士たちはこの街を愛しており、逃げ出すことなく最後まで守る決意を抱いていた。しかし、アンテリーゼの語る「破滅の王」イラ=タクトと、その従者であるアトゥ、さらにエルフール姉妹の異質さを聞かされ、彼らは自分たちの決意の重さに不安を覚えるようになった。

会談の到来と迫る脅威

アンテリーゼは、マイノグーラ王の異質性について、杖持ちのトヌカポリの証言を引用しながら警戒を促した。異なる理に属する存在との接触に際し、兵士たちの言動が街の運命を左右しかねないことが示唆された。そして、不安が頂点に達した中、ついに会談の日が静かに、だが確実に訪れることとなった。

第八話    応対

アンテリーゼの緊張と迎賓準備

都市長アンテリーゼは、マイノグーラとの重要な会談を控え、不安と緊張の中で準備を進めていた。破滅の王イラ=タクト率いる一団の来訪を前に、彼女は精霊に平穏を願いながらも、現実の重圧と責任に苛まれていた。マイノグーラとの交流経験はあれど、その王の存在は別格であった。

マイノグーラ一行の到着と威圧感

大呪界から現れたマイノグーラの一団は、その登場だけで周囲を圧倒し、兵士たちやアンテリーゼに恐怖を抱かせた。とりわけイラ=タクトの放つ気配は常軌を逸しており、アンテリーゼは死を幻視するほどの威圧感にさらされた。だが彼は意図的に恐怖を和らげる配慮を見せ、ローブに身を包み、自らの存在を抑えていた。

各勢力の顔ぶれと配慮

マイノグーラ側はモルタール老やギア、エルフール姉妹、アトゥといった重鎮たちが同行しており、その多くがフォーンカヴン側にとっては恐るべき存在であった。一方で、配慮に満ちた姿勢も見せており、訪問の際には都市の住民が避難する措置も事前に受け入れていた。

会談の開始とフォーンカヴンの譲歩

会談はぺぺの突飛な開口で始まり、ドラゴンタンの譲渡が話題となる。対価を巡っての交渉では、モルタール老が時間稼ぎを行いながらも、最終的にぺぺが提示したのは「人材」であった。タクトは人口不足に悩むマイノグーラの弱点を突かれた形となり、戦略的にも重要な提案と捉えた。

両国の利害一致と提携の深化

ぺぺはマイノグーラとの友好関係を軸に、「人」と「力」の交換を提案し、タクトもこれを受け入れる構えを見せた。交渉は互いの国力を補い合う形で進み、両国が深く結びつくこととなる。住民の帰化による問題も配慮され、双方にとって利益ある合意が形成された。

タクトの決意と力の提示

交渉の終盤、ぺぺの真摯な言葉に応え、タクトは予定を変更してマイノグーラの持つ力を全開で提示することを決断した。それは、両国の関係が信頼に足るものであると確信した結果であり、タクトなりの覚悟でもあった。

交渉の結末と予感される未来

会談は一応の成功を収めたが、その裏では破滅の王が持つ本質的な「力」に対する恐れと、それに続く未来の不確実性が残された。ぺぺの天真爛漫な振る舞いに対し、他の列席者たちは一様に怯えており、交渉がもたらす平穏と混沌が、今後の展開に深い影を落としていた。

第九話    未知なる力

マイノグーラからの新兵器提供の予兆

アンテリーゼは、マイノグーラの王イラ=タクトが用意した新兵器の実演を前に、不安と期待の入り混じった思いを抱えていた。舞台はスラム街跡地の廃墟地帯であり、訓練用の案山子に鉄製の鎧が装着されて並べられていた。この状況から、彼女は射撃武器の実演がなされると推測した。

過激な発明とその開示

モルタール老とエムルの手配により準備が整い、観覧席に王タクトが姿を現すと、実演が始まった。紹介されたのは、誰でも扱え、習得が容易で、敵に奪われにくく、殺傷能力に優れた「銃」と呼ばれる兵器であった。文官であるエムルが試射者に選ばれ、簡単な操作で鎧を貫く凄まじい威力を見せつけた。

威力の実証と衝撃

エムルの放った一撃により案山子は鉄屑と化し、周囲に硝煙と刺激臭が漂った。この現実離れした威力に、フォーンカヴンの面々は言葉を失った。わずか10時間程度の訓練でここまで扱えるという事実に、アンテリーゼは恐怖すら覚えた。加えて、モルタール老の号令でギア率いる戦士団による連携射撃が披露され、その破壊力はますます戦慄を誘った。

異常兵器とその象徴性

銃の真価は、量産性と平凡な兵でも戦力化できる点にあった。演目の終盤では、キャリアとメアリアの双子が巨大な装置を用いて、建造物ごと標的を吹き飛ばす演出を見せた。これは「銃」という武器の可能性を誇示するための示威行動であり、実際の提供対象には含まれなかったが、マイノグーラの底知れぬ技術力を示すには十分であった。

フォーンカヴンの動揺と未来への不安

一連の演目を通じて、フォーンカヴン側の出席者は衝撃に打ちのめされ、都市長アンテリーゼも思考停止に陥った。銃が導入されれば、防衛のみならず対外的な影響力も大きく変化することは確実であった。都市を統治する立場としての責任感と重圧に押され、アンテリーゼは休暇の延期を申し出られた際、皮肉混じりに笑いながらも承諾せざるを得なかった。フォーンカヴンはすでに、マイノグーラという劇薬に取り込まれ始めていたのである。

第十話    締結

フォーンカヴンとの都市移譲の締結

マイノグーラはフォーンカヴンとの会談で、ドラゴンタンの都市を正式に譲渡される条項を締結した。これにより、都市機能の回復と住民移籍の受け入れ、銃器の技術供与、街道の整備、龍脈穴の共同管理などが決定された。また、両国は引き続き世界の脅威に共闘することを確認した。

タクトとアトゥによる戦略相談

都市移譲に伴い、イラ=タクトとアトゥはゲーム『Eternal Nations』の知識を基に、移譲後の方針について密談を行った。都市の移譲は時間と労力を要したが、平和的な譲渡は費用対効果に優れていた。今後の国家運営に向けて多忙な準備が進められた。

ドラゴンタン住民の混乱と新生活への戸惑い

ドラゴンタンの住民にとって移譲の報せは突然であり、情報も乏しく混乱が広がった。特に貧困層の獣人親子は不安を抱えながらも、新たな配給制度に期待して列に並んだ。彼女たちはマイノグーラに対する恐怖と希望の間で揺れていた。

巨大昆虫の出現と街の活気

親子の前に突如現れた巨大な虫は、街を巡回しているようであった。この出来事に驚きながらも恐怖は薄れ、彼女たちは街の活気に心を動かされた。ダークエルフの文官らによって整然と指揮される街では、大量の資材と物資が投入されていた。

異様な存在との遭遇と親子の反応

街中では《人肉の木》という異形の植物が運ばれていた。それを目撃した親子は困惑しつつも、恐怖心よりも驚きが勝った。娘は木に手を振るなど、異常な状況に順応していく様子を見せた。

配給所での出会いと安心の提供

配給所ではブレインイーターのシゲルという異形の兵士が陽気に住民を迎えていた。彼の親しみやすさは娘の心を解き、母親も安心感を得た。働き口の相談に対しては、ダークエルフのキャリアが現れ、制度的な支援を丁寧に説明した。

慈悲と忠誠の形成

キャリアによる説明は、母親に国家の方針が弱者に配慮したものであることを理解させた。イラ=タクトへの感謝と忠誠心が芽生え、親子は自らの力で国家に貢献したいという意欲を抱くに至った。

処刑への関心と価値観の変容

その後、罪人を引きずる騒動が発生した。ブレインイーターとキャリアの説明によって、罪人には皮を剥ぐ処刑が待っていることが明かされた。娘は興味を示し、母親も当初は困惑しながらも、長年の貧困から解放されたことによる娯楽の一環として受け入れるようになった。親子は処刑会場へと足を運び、新たな生活と価値観に適応し始めていた。

第十一話    再建

都市長アンテリーゼの変化と職務

ドラゴンタンがマイノグーラの所属となってから約二週間が経過し、都市運営は混乱を抱えつつも軌道に乗り始めていた。都市長アンテリーゼは引き続き職務を任され、彼女の執務室も以前の雑然とした様子から一変し、整然とした空間へと変貌していた。王から酒の提供を受けることでモチベーションを高め、日々の業務に意欲的に取り組んでいた。

文官見習いの奮闘と人事改革

元衛兵の青年は、都市再編に伴う人事改革の一環として文官見習いに抜擢された。書類処理や情報収集といった新たな業務に戸惑いながらも、忠誠心を支えに懸命に業務にあたっていた。旧来の戦闘任務と異なり、知識と判断力を要する職務に四苦八苦していたが、彼のような人材が次第に新体制を形作っていた。

教育政策の意義と市民の戸惑い

マイノグーラが強く推し進めている教育政策は、市民の基礎学力向上を目指したものであり、一般労働者層にまで広く波及しつつあった。この施策は旧フォーンカヴンの価値観とは大きく異なり、市民の間には困惑が広がっていた。しかし、教育を通じて知識層を増やすことで新技術の研究や産業の拡大を図る姿勢は、国家の豊かさと強さの証とも言えた。

軍事力による安全確保と都市開発

マイノグーラより派遣された銃兵部隊が蛮族の排除に貢献し、都市周辺の安全は大きく向上していた。これにより、郊外への農地開発も現実味を帯びてきた。一方で、都市内では住宅や施設の整備、土地の強化工事が進められていた。旧スラム街の建物撤去や《魔法研究所》《練兵所》の建設など、多角的な都市開発が展開されていた。

情報戦略と国際的関係の構築

アンテリーゼは他国の動向を把握するため、行商人や傭兵を情報源としつつ、マイノグーラ本国からの命に基づき情報収集を指示していた。ドラゴンタンの現状が中途半端な移行期にあることが功を奏し、他国勢力の警戒心は比較的低かった。今後の展望として、聖王国や精霊契約連合といった仮想敵国に関する情報も重視されていた。

食糧事情と新たな文化の導入

都市の既存の食糧供給能力は不十分であり、当面は王による栄養価の高い食糧の支給が行われていた。併せて《人肉の実》を使った新たな料理文化の導入も試みられ、市民に対する受容促進が図られていた。

移譲式典と未来への期待

ドラゴンタンの完全なマイノグーラへの移譲を控え、アンテリーゼは準備に追われていた。街道整備や物流の円滑化、娯楽施設や防衛施設の計画も進行中である。混乱の渦中にあっても、彼女は王から与えられた酒を糧に、与えられた使命に全力を注いでいた。近づく移譲式典の成功に向け、彼女は覚悟を新たにしていた。

第十二話    懸念

ドラゴンタン再建と教育課題の発生

ダークエルフの文官たちは、拡大した行政業務に対応すべく新設の会議室で再建計画に従事していた。住民の協力により建築は順調に進んでいたが、教育水準の低さが判明し、行政対応の必要性が浮き彫りとなった。試験的に導入された肥料や農薬が誤用される事態も起こり、文官たちは自責と責任感を持って問題解決に取り組んでいた。

中央政庁の混乱と脅威への対処

マイノグーラ宮殿ではエムル、モルタール老、ギアら幹部が情報処理と指示に追われていた。ギアはエル=ナーの情報遮断と軍備強化を報告し、外部からの侵略や内部の変化の兆候を示唆した。一方、クオリアでも状況が異常であり、統治構造に変革が見られた。三者はその異常性と不透明な状況に懸念を深め、王への速やかな報告を決定した。

拓斗とアトゥの戦略的協議

王であるイラ=タクトと英雄アトゥは、戦力不足と情報収集体制の脆弱さに悩まされていた。クオリアとエル=ナーの異常な静けさや改革の動きに対し、二人は慎重な姿勢を崩さなかった。特に聖女ソアリーナとフェンネの活動には警戒心を強め、現状での軍事衝突は避けるべきと判断した。

新たな英雄の選定と躊躇

防衛力強化のため新たな英雄の召喚が検討されたが、有力候補とされた人物が問題児であるため、アトゥは激しく反対した。その英雄は忠誠心はあるが行動が予測不能で、戦術の根本的な変更が必要となる存在であった。最終的に拓斗はその召喚を保留し、緊急時の保険として位置付けることにした。

ドラゴンタン移譲式典とその前夜

一週間後に控える移譲式典に向けて、マイノグーラ内部では準備が進められていた。文官たちや指導者は脅威の存在に怯えながらも、式典を祝祭として迎えようとしていた。だがこの日が、国家にとって予想外の重大転換点となることを、まだ誰も知らなかったのであった。

第十三話    やがて少女は夢を見る

南方州における政治改革と人心掌握

ソアリーナは、南方州の指導者として人々の信頼を獲得し、教会の腐敗を正し民の支持を集めていた。祝日でない日でも多くの民が教会に集まる中、彼女は日課として人々に姿を見せていた。エラキノは相変わらず軽妙な態度で彼女に接し、両者はまるで長年の親友のように親しげであった。この関係性はかつての聖女と魔女の常識を覆すものであり、南方州に平和をもたらしていた。

聖女フェンネの介入と対立の兆候

そこへ現れたのが《顔伏せの聖女》フェンネである。彼女は常に冷静かつ批判的な視点で周囲を見ており、ソアリーナとエラキノの親密さにも懸念を抱いていた。フェンネは、中央政府や他州からの介入がない理由を問い詰めることで、ソアリーナが裏取引で干渉を封じた事実を暴露し、その行動を冷笑をもって受け入れた。

作戦会議と“破滅の王”の存在

フェンネはソアリーナが進める「マイノグーラ斬首作戦」の意図を問いただした。ソアリーナは、神託と情報網から得た“破滅の王”イラ=タクトの脅威に基づき、早期の殲滅を強く主張した。その動機の一つとして、エラキノの洗脳能力を応用して敵の魔女を確保するという計画が語られた。この提案は、善性の象徴である聖女にしては極めて過激なものであり、フェンネとエラキノを驚かせた。

エラキノとフェンネの懐疑

エラキノは当初、マイノグーラに警戒を示していたが、この時点では作戦に反対の立場を取っていた。彼女の反対の理由は「嫌な予感」であり、直感に従うべきだというものであった。一方で、フェンネも情報不足と準備不足を理由に慎重な姿勢を貫いていた。ソアリーナの焦りは明らかであり、彼女は繰り返し協力を懇願した。

作戦決定とゲームマスターの力

最終的に、ソアリーナの熱意と涙の懇願にエラキノも折れ、全会一致で作戦は承認された。ゲームマスターの力によって、未来すら書き換えられるという事実が明らかとなり、作戦の失敗は排除されると確信された。ダイスの結果を覆す“権能”を持つゲームマスターの存在が、この会議における最大の鍵であった。

覇権を巡る火種の点火

こうして、破滅の王イラ=タクトとマイノグーラに対する先制攻撃が正式に決定された。聖女、魔女、ゲームマスターの思惑が交差する中、物語は新たな戦いへと進もうとしていた。すべてが順調に見えるが、その背後には確実に次なる火種がくすぶっていた。運命の激動は、間もなく始まるのである。

第十四話    斬首

ドラゴンタン移譲式典とアトゥの悲劇

式典前の緊張と準備

式典当日、都市は晴れやかで祝賀ムードに包まれていたが、主役である拓斗とアトゥは極度の緊張に見舞われていた。拓斗は対人不安に悩み、アトゥも彼を支える立場でありながら不安を抱えていた。そんな中、アンテリーゼが落ち着いた態度で準備の進行を報告し、二人を安心させた。

式典の開催と政治的意義

式典は都市中央広場の壇上で執り行われ、多くの住民が参加し、フォーンカヴンからもぺぺとトヌカポリが列席した。この式典にはマイノグーラの存在を外部に明示するという国家的意義があり、都市の治安は最高レベルの警備で守られていた。形式はあくまで平穏に進行し、式典は問題なく終了した。

スピーチと誤認識

拓斗は緊張のあまりスピーチを行えず、調停書への署名と握手だけをこなした。それにもかかわらず、周囲は彼の威厳ある態度に感銘を受けたと誤認した。本人はその誤解を黙認しながら、式典後の安堵に浸った。

式典後の娯楽と行動制限

式典後はフォーンカヴンとの懇親会や花火が予定されていたが、拓斗は市中を自由に歩けないことに落胆した。王としての威圧感が強すぎるため、露店の見物すらできないのが現実であった。アトゥとともに祭りを楽しむという夢は叶わず、二人は内心で深く嘆いていた。

市場への使いと警備責任の板挟み

モルタール老は拓斗のために市場の買い出しを誰かに任せようとするが、警備責任の重さから人選に苦慮する。ギアが立候補するも却下され、代役を探す中で給仕に扮した三人のダークエルフが現れる。彼女たちは警戒心を抱かせることなく自然に場へ入り込んだ。

惨劇の発生とアトゥの異変

その正体に気づいたのは拓斗であったが、時すでに遅く、彼女たちは《啜り》という特殊能力でアトゥを操り、彼女に拓斗を襲わせた。アトゥの触手が拓斗の胸を貫き、配下たちは即座に反応したが、全てはゲームマスターによる確定成功によって意味をなさなかった。

操られたアトゥと崩れる防衛

システムの支配によって拓斗への攻撃は回避不能であり、彼は愛するアトゥに胸を刺されるという最悪の事態を迎えた。アトゥは虚ろな瞳で立ち尽くし、彼の呼びかけにも反応しなかった。最も信頼し、最も近くにいた存在が、最も予想外の形で敵となったのであった。

第十五話    無為

ドラゴンタン襲撃の開始と偽装の解除

モルタール老とダークエルフたちは、警備体制下にあるドラゴンタンで突如発生した騒動に遭遇した。仲間と見なしていた少女が《変装》を解除し、真の姿《啜りの魔女エラキノ》として姿を現したことで事態は急変した。三人の敵勢力が出現し、即座に銃撃が加えられたが、ゲームマスター権限の行使によりすべての攻撃が無効化された。

無効化される攻撃と敵の優位

マイノグーラの全戦力による総攻撃も一切通用せず、銃撃、ナイフ、精霊術、さらには魔物による肉弾戦までもが無効化された。さらに《足長蟲》や《ブレインイーター》といった戦闘ユニットすら消滅させられたことで、モルタール老は敵の異常な力に直面し、絶望を深めていった。

アトゥとタクトの危機と仲間の奮戦

敵の標的がイラ=タクトであることが明らかになり、ダークエルフたちは王を守るために命を賭して行動した。しかし、聖職者にして敵の一人であるフェンネによる視線を媒介とした不可視の攻撃により、多くの兵が倒れた。さらにその装いと能力から彼女が聖王国クオリアの聖女であると判明し、敵勢が魔女・聖女・ゲームマスターという最強布陣であることが明確となった。

圧倒的な戦力差と崩壊する戦線

マイノグーラ側のすべての攻撃と策はエラキノたちによって打ち消され、勝負はすでに決していた。王の存在に依存する国家マイノグーラは、タクトの倒伏によって急速に崩壊の危機へと傾いていた。敵側はすでに目標の達成――アトゥの確保とタクトの撃破――を終えており、残るは完全殲滅のみとなった。

ダークエルフへの抹殺命令と最後の抵抗

エラキノは自軍の勝利を確信し、ダークエルフたち全員の抹殺を宣言した。彼女はなお隠し持つ切り札を使い、アトゥを利用して仲間を殺させようと目論む。マイノグーラの住民たちはもはや成す術なく、絶望の中で王を呼び続けるしかなかった。

判定成功による洗脳解除の兆し

しかし、絶望が支配する中、突如として「判定申請、アトゥの洗脳解除」というかすかな声が響いた。その声により《信頼》値を参照した洗脳解除が発動し、確定成功のシステムメッセージが表示された。これが、戦況を変える唯一の希望の火種となった。

第十六話    不滅

戦況の急転と洗脳解除の奇跡

イラ=タクトは瀕死の状態にありながら、極限のタイミングで《洗脳解除》を試みた。その手法はテーブルトークRPGのシステムに基づき、「固定値の暴力」によって判定を強行するというものだった。結果として魔女アトゥの洗脳は解かれ、エラキノを殺害寸前にまで追い詰めたが、ゲームマスターの介入によってそれは寸前で阻止された。

魔女陣営の混乱と暴走

洗脳解除の成否に動揺するエラキノは、感情を爆発させて拓斗を蹴り飛ばし、壇上に打ち付けた。その行動は、これまで冷静を保っていた彼女にとって異例であり、精神的動揺が極まった結果である。続いて、華葬の聖女ソアリーナが放った業火が会場を包み、拓斗の身体は炎に包まれて消滅したように見えた。残された魔物たちは混乱に陥り、敵の撤退とともに場を離れることとなった。

戦後の混乱と喪失

モルタール老を始めとするマイノグーラの住民たちは、王の死とアトゥの裏切りに深い悲嘆と絶望を感じていた。都市ドラゴンタンは戒厳令下に置かれ、関係者は沈黙を強いられる状況となった。軍事的混乱と精神的打撃は計り知れず、誰もが王の死を確信し、復興の道を見失っていた。

疑念と確信、そして再会

灰燼の中を捜索していたモルタール老は、王の遺品すら見つからないことに不自然さを覚えた。装飾品すら残っていない状況に、彼は王が生きているという確信を強めていく。やがてその背後に現れたのは、まさしく無傷のイラ=タクトであった。その姿を見た老賢者は涙を流し、地に伏して歓喜の念を表した。

逆襲の幕開け

王の無事を確認したモルタール老は、これからの報復に全身全霊を捧げる決意を固める。終末を呼ぶ存在である破滅の王は静かに立ち上がり、復讐の計画を見据えた。伊良拓斗の復活は、彼を討ったと信じて疑わなかった敵にとって新たな恐怖の始まりであった。

第十七話    問い

モルタール老の懺悔と王の決断

都市が混乱と悲しみに包まれる中、モルタール老は王への謝罪と責任の所在を訴えたが、王はそれを退け、今なすべきは状況の打開であると示した。王は無事であったが、最愛の存在であるアトゥを奪われたことに強い怒りと焦りを抱いていた。王の静かな態度の裏に渦巻く感情は、モルタール老にとっては圧倒的であり、王の本質が人の理解を超える存在であることを再認識させるに至った。

秘密裏の指示とアトゥ奪還作戦

王はアトゥ奪還に向けての準備を秘密裏に進め、数名の側近にのみ現状と計画を伝えた。モルタール老は王の健在を早期に公表すべきと進言したが、王はそれを数日先延ばしにし、敵の混乱を利用する意図を示した。そして、エルフール姉妹に面会の意向を伝え、彼女たちとの間で特別な指令を共有した。

王の単独出撃と周囲の衝撃

翌朝、モルタール老は王が単身で聖王国クオリアへ向かったと知り激怒した。王はエルフール姉妹との相談のみで決行しており、護衛も同行していなかった。姉妹は必死に反対したが命令には逆らえず、他者への口外も禁じられていた。激昂するモルタール老に対し、姉妹は王からの伝言と称して一枚の紙を提示した。

不可能を突きつける「なぞなぞ」

その紙には、王が生き延びたことに関する矛盾を並べた謎解きが記されていた。どの条件も既存の理屈では説明不可能であり、読んだ者たちの思考を凍らせた。これは王が用意した時間稼ぎの策であり、姉妹はその間に次の指令の実行準備に取りかかるよう命じられていた。

エルフール姉妹の行動と決意

姉妹は王から多くの任務を託されており、今後の大規模な作戦に向けて準備を開始した。王がただの優しき指導者ではなく、真に世界の終焉をもたらす存在であることを、いずれ誰もが知ることになると姉妹は確信していた。王の死を否定した直感と信念に従い、彼女たちは奔走を始めたのである。

第十八話    破滅の王

聖女たちによるアトゥの奪取と尋問

エラキノとソアリーナはアトゥを捕らえ、彼女の能力「啜り」を用いて洗脳した。その結果、マイノグーラやタクトの情報、『Eternal Nations』の性質までもが彼女たちの手に渡ることとなった。アトゥは忠誠を捧げるタクトへの想いを残しつつも、完全に意識を封じられ、傀儡として扱われていた。

防衛と治安維持のための魔物配置

南方州とドラゴンタンの間に位置する暗黒大陸には、タクトによって複数の強力なモンスターが配置されていた。これにより残存するマイノグーラの勢力による暴走を抑止し、聖騎士団は新国家建設の中心戦力として温存されることとなった。

聖王国からの独立準備と内部体制の危機

南方州はこれまでの強権的な粛清によって中央政府から監査の対象となり、対応に追われていた。だが、エラキノたちは聖王国クオリアからの離脱と国家樹立を決意し、準備を進めていた。その中心には聖女ソアリーナとフェンネの意志と指導が存在していた。

ソアリーナによる国家樹立宣言

安息日、ソアリーナは教会のテラスから群衆に向け、破滅の王の討伐と「レネア神光国」建国を宣言した。その直後、神の奇跡と称される天の光が降り注ぎ、群衆は感動とともに彼女の宣言を熱狂的に受け入れた。

拓斗の生還と暗黒大陸での戦闘

その一方で、タクトは配置された怪物たちによって一時危機に陥ったが、最終的には全ての敵を殲滅し生還した。その場に残ったのは、無残に引き裂かれた怪物の残骸のみであった。彼は古きゲーム世界に登場する名を口にし、再び歩みを進めた。

建国の裏に潜む真実

新国家誕生の瞬間、神の奇跡とされた祝福は実際にはゲームマスター権限の行使によるものであった。この事実を知る者は少なく、群衆は純粋に神の意志を信じて熱狂していた。こうしてソアリーナたちは宗教と奇跡を武器に、新たな国の第一歩を踏み出した。

破滅の王に関する神託とその忘却

会議室に残された一枚の羊皮紙には、「破滅の王」に関する古き神託が記されていた。だがそれは曖昧で理解不能な詩文に過ぎず、ソアリーナたちに見向きもされずに忘れ去られた。この神託が将来に何をもたらすのかは、誰にも分からないままであった。

同シリーズ

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その他フィクション

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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