物語の概要
本作は、異世界転生と国家運営をテーマとしたダークファンタジー小説である。主人公・伊良拓斗は、死後に自身が熱中していた戦略級SLG『Eternal Nations』に酷似した異世界へと転生し、邪悪属性文明「マイノグーラ」の王として新たな国家を築く。第3巻では、突如現れたRPG『ブレイブクエスタス』からの魔王軍との戦闘が描かれ、マイノグーラは同盟都市ドラゴンタンと大呪界に戦力を二分し、苦戦を強いられる。魔王軍四天王の一人を迎撃するため、《全ての蟲の女王イスラ》が出撃する 。
主要キャラクター
- 伊良拓斗(イラ=タクト):主人公。異世界に転生し、邪悪属性文明「マイノグーラ」の王として国家を運営する。
- アトゥ:タクトの忠実な部下であり、マイノグーラの英雄ユニット「汚泥の魔女」。戦闘能力に優れ、タクトを支える。
- メアリア・エルフール:ダークエルフの双子姉妹の姉。タクトの世話係を務める。
- キャリア・エルフール:メアリアの妹。気弱だが真面目な性格で、タクトの世話係を務める。
- イスラ:マイノグーラの英雄ユニット「全ての蟲の女王」。魔王軍四天王の一人を迎撃するため出撃する 。
物語の特徴
本作は、異世界転生と国家運営を組み合わせた独自の世界観を持つ。邪悪属性文明「マイノグーラ」を舞台に、主人公が内政や外交、戦争を通じて国家を発展させていく様子が描かれる。特に、ゲームのシステムを活用した戦略的な展開や、個性豊かなキャラクターたちとの関係性が魅力である。また、RPGからの侵略者との戦闘や、異なる理(ルール)で動く敵との対峙など、他の異世界転生作品とは一線を画す要素が含まれている。
書籍情報
異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 3
英語名:Apocalypse Bringer Mynoghra
著者 : 鹿角フェフ 氏
イラスト: じゅん 氏
出版社:マイクロマガジン社(GCノベルズ)
発売日2021年01月30日
ISBN:9784867161074
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あらすじ・内容
タクトたちの前に突如現れた謎の勢力。RPGからやってきたという敵を前にマイノグーラは――?風雲急を告げる第3巻!
タクトたちの前に突如出現した謎の勢力は――RPG「ブレイブクエスタス」から現れた魔王軍だった。
自分たちとは全く違う理(ルール)で行動する魔王軍との戦闘状態に突入するマイノグーラ。しかしその戦力は同盟都市ドラゴンタンと大呪界に二分されており、思わぬ苦戦を強いられる。
そして大呪界へ侵攻する魔王軍四天王の一人を迎撃するため、《全ての蟲の女王イスラ》が出撃するのだが――?
感想
第三巻は、タクトたちの前に他の異世界から現れた謎の勢力との戦いが発生。
前巻の終盤に示唆された新たな敵、「ブレイブクエスタス」勢力の襲来により、物語は予想を超える方向へと加速していった。
特に、英雄ユニットである”全ての蟲の女王イスラ”が強制イベントによって退場する展開には「え?もう退場?」と驚きを禁じ得なかった。
イスラの退場は単なる戦力喪失に留まらず、物語の重厚さを一層際立たせていた。
イスラはただの戦闘要員ではなく、マイノグーラの成長と希望を象徴する存在であったため、その喪失感は計り知れない。
しかも、その退場方法が不可避の「強制イベント」によるものであった点に、作者の周到な構成力を感じた。
同時に、狂気へと堕ちた英雄を新たに手に入れたマイノグーラは、単純な戦力増減では語れない複雑な成長を遂げた。
英雄を失い、英雄を得るという非情な世界の掟に、タクトたちもまた少しずつ壊れていく様が丁寧に描かれていた。
今巻では、戦いだけでなく他勢力の進捗も少しずつ明かされ、世界の広がりがより具体的に感じられるようになった。特にサキュバス勢の登場は強い印象を残した。挿絵の登場タイミングも巧みであり、読者の期待を良い意味で裏切ってくれた。エラキノよりもサキュバスたちが先に挿絵化されるという意外な展開は、次巻以降の物語への興味を強く掻き立てた。
また、WEB版との差異も程よく加えられており、先の展開を知っていても新鮮な驚きを持って読み進めることができた点は特筆に値する。読者にとっては既知の物語であっても、違った味わいを楽しめる仕掛けが随所に施されていた。
この巻を通して最も強く感じたのは、タクトが世界征服へ向かう旅路が単なる勝利の連続ではないということである。敵もまた癖の強い者たちばかりであり、今後も一筋縄ではいかない戦いが続くことは間違いない。誰もが「予想していなかった」展開に次々と直面するマイノグーラの歩みから、ますます目が離せなくなった。
続巻では、悲しみと狂気を乗り越えた彼らがどのように再起し、さらにどのような世界征服を成し遂げていくのか、期待が高まるばかりである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
イラ=タクト
異世界マイノグーラの指導者であり、元日本人の転生者。マイノグーラの建国と発展を主導し、配下たちから絶対的な信頼を得ている。
・所属組織:マイノグーラ、指導者
・施設建設、国力増強、イスラ召喚など国家運営を遂行した。
・英雄イスラ喪失の責任を自覚し、自己改革を誓った。
・失われた英雄復活を宣言し、民に再起の覚悟を示した。
アトゥ
イラ=タクトの第一腹心にして、マイノグーラ最強の英雄。拓斗への絶対的な忠誠を誓い、国家運営にも積極的に関与する。
・所属組織:マイノグーラ、英雄
・人肉の木問題の発覚、拓斗への報告を行った。
・イスラ喪失後、双子の救出任務を受けて南下した。
・王命に絶対服従する姿勢を貫き、任務遂行に奔走した。
全ての蟲の女王イスラ
マイノグーラに仕える英雄であり、蟲たちを統べる存在である。冷静沈着ながら、主に絶対的な忠誠を誓っていた。
・所属組織:マイノグーラ、英雄
・フレマインとの戦闘で命を落とした。
・死の直前、王位継承スキルを用いてエルフール姉妹に力を託した。
モルタール老
マイノグーラの長老格であり、経験豊富な助言者。冷静沈着な態度で事態を分析し、対策を講じた。
・所属組織:マイノグーラ、軍事顧問、長老
・人肉の木による謎肉問題の危険性を試算し警鐘を鳴らした。
・アトゥの暴走時に制止を試み、冷静な対応を見せた。
メアリア・エルフール
マイノグーラに仕えるダークエルフの少女であり、キャリアの双子の姉。イスラの死をきっかけに英雄へと覚醒した。
・所属組織:マイノグーラ、勇者種
・フレマインの襲撃から生還し、英雄級能力を得た。
・魔王軍拠点に単身侵攻し、敵を無力化させた。
キャリア・エルフール
メアリアの妹であり、同じくマイノグーラのダークエルフ。イスラから力を受け継ぎ、覚醒を遂げた。
・所属組織:マイノグーラ、勇者種
・魔王軍拠点を単独で壊滅させる力を発揮した。
・姉メアリアと共に魔王を討伐する戦いに参加した。
エムル
マイノグーラの一般市民であり、国家運営に積極的に関わる若者である。アトゥに人肉の木の異常成長を相談した。
・所属組織:マイノグーラ、内政担当副官
・人肉の木の異常成長を最初に発見し、報告した。
・問題解決に間接的ながら貢献した。
魔王
イドラギィア大陸南部に存在した、かつて『ブレイブクエスタス』で最終試練として存在した存在。絶対的な力を持ちながらも孤独を抱えていた。
・所属組織:魔王軍、指導者
・未開領域で軍勢を率いて侵攻を開始した。
・エルフール姉妹に敗北し、金貨へと変じて消滅した。
アイスロック
魔王軍四天王の一人であり、氷塊の将軍と称される存在。魔王の命令に忠実な性格を持つ。
・所属組織:魔王軍、四天王
・ドラゴンタン攻略を目指して進軍したが、異常現象により敗北した。
・かつて勇者に敗れた過去を持ち、勇者への恐怖心を抱いていた。
フレマイン
魔王軍四天王の一人であり、炎の魔人と呼ばれる存在。嗜虐的な支配欲を持つ。
・所属組織:魔王軍、四天王
・ドラゴンタン以外への侵攻を企図し、大呪界へ進軍した。
・イスラとの戦闘で敗北し、異常な復活を遂げた後に自爆した。
レディウィンド
魔王軍四天王の一人であり、風を操る魔族。知略に長けた指揮官であった。
・所属組織:魔王軍、四天王
・キャリア・エルフールに一方的に敗北し、金貨へと変じて死亡した。
オルドメカニク
魔王軍四天王の一人であり、土を司る魔族。機械と大地の力を融合させた戦術を得意とした。
・所属組織:魔王軍、四天王
・メアリア・エルフールに敗北し、精神を消失した。
サキュバスクイーン・ヴァギア
サキュバスたちを率いる女王であり、快楽による支配を志向する存在。
・所属組織:サキュバス軍団
・エルフたちを圧倒し、世界征服の野望を宣言した。
ザイス=ティースロイ
エル=ナー精霊契約連合のエルフ戦士であり、エトロクワル防衛を担った指揮官。
・所属組織:エル=ナー精霊契約連合
・サキュバス軍団の侵攻に対抗したが、敗北した。
ソアリーナ
聖王国クオリアの聖女であり、聖なる力を操る存在。過去に幾度も魔女エラキノと戦った。
・所属組織:聖王国クオリア
・エラキノとの戦いで初めて敗北を喫した。
エラキノ
魔女であり、独自の奇跡《啜り》を操る存在。かつてはソアリーナに敗れ続けていた。
・所属組織:不明
・クリティカル発動によりソアリーナに勝利し、マイノグーラへの進軍を開始した。
展開まとめ
プロローグ
フォーンカヴンとの同盟締結と防衛依頼
異世界においてマイノグーラは、多種族国家フォーンカヴンと危うい接触を重ねた末、同盟締結に成功した。邪悪属性の国家にしては異例の成果であったが、フォーンカヴンからは防衛協力という難題も持ちかけられた。
《龍脈穴》の使用権獲得と国力増強
交渉において拓斗は一枚上手であり、ドラゴンタンに存在する重要資源《龍脈穴》の使用権を引き出すことに成功した。これによりマイノグーラは施設建設、兵力強化、双子姉妹の成長、英雄イスラ召喚といった急速な国力増強を果たした。
蛮族の消滅と謎の金貨の出現
順調な発展が続く中、撃破した蛮族の死体が消失し、代わりに謎の金貨が残される異常事態が発生した。視界共有により金貨の意匠を確認した拓斗は、その原因に思い至った。
異なるゲーム世界からの勢力の襲来
無数の蛮族出現が報告され、拓斗は生前親しんでいた別のゲーム『ブレイブクエスタス』に関連する存在であることを確信した。『Eternal Nations』とは異なる概念を持つ勢力が、ドラゴンタンを脅かそうとしていた。
未知の脅威に対する決意
自らの記憶を手繰り寄せた拓斗は、懐かしさを覚えつつも迅速に腹心アトゥへ指示を出した。攻略法を共有し、世界を超えて現れた邪悪なる存在との邂逅に備え、マイノグーラは新たな戦いに向け動き出した。
第一話 侵略
蛮族軍の指揮官たち
ドラゴンタンの街を狙う蛮族たちの中には、氷の将軍アイスロックと炎の魔人フレマインが存在していた。両者はかつて別世界にて魔王軍四天王として名を馳せた存在であり、突如この異世界に召喚されて以来、魔王の命に従い新たな世界征服を開始していた。
過去世界での勇者との戦いと召喚の経緯
二人はかつて、自らの世界で勇者と対峙していた。決戦の最中、仲間たちが斬り伏せられ、アイスロックもまた致命傷を負った。意識を失う間際に魔王が勇者に敗北する様を目にしたが、その後、彼らは異世界に召喚され、荒廃した地に立たされていた。
異世界での軍備と再編成
混乱する魔物たちは魔王により再びまとめられ、召喚技能による兵力補充、魔王城の建築が進められた。周辺の土着魔物も魔王軍への恭順を申し出たことで軍勢は拡大し、速やかに新たな侵略計画が始動した。
アイスロックの疑念と忠誠心
アイスロックはわずかな違和感を抱きつつも、魔王の命令に従うことに疑念を挟まず、自らを征服の猟犬と認識した。フォーンカヴンという街を最初の標的に定め、疑念を振り払うように進軍を開始した。
フレマインの陰謀と別行動
一方、フレマインはアイスロックとは異なる行動を選択した。ドラゴンタン攻撃をアイスロックに任せ、自らは別の街──大呪界への侵攻を目論んでいた。彼の心には支配と破壊への嗜虐的な喜びが渦巻いていた。
第二話 決して混じらぬ悪性
氷塊の四天王アイスロックの侵攻
氷塊の四天王アイスロックは、五千の魔物軍を率いてドラゴンタンの街へ進軍した。抵抗はほとんどなく、わずかな矢が放たれるに留まった。アイスロックはこれを順調な攻略と判断し、都市門を破壊するためヒルジャイアントとオークによる混合部隊を前線に配置した。
進軍直前に発生した異常現象
進軍命令とともに、空は暗転し紫色の雲が広がり、大地は腐敗し始めた。軍勢は未知の現象に混乱し、魔物たちは恐慌に陥った。魔族であるアイスロックは驚きを隠せず、部下の魔道士も事態を把握できなかった。魔物同士の同士討ちが始まり、軍の統制は著しく乱れた。
異常現象への分析と焦燥感
アイスロックはこの現象を敵対者による魔法と推測したが、その正体を掴めなかった。魔界に似たこの環境下では魔族の力が高まる一方、ゴブリンやオークなどは疲弊していた。属性の違いによる影響であったが、アイスロックには理解できなかった。戦力低下による街攻略の失敗を恐れ、強い焦燥感を抱いた。
「勇者」への恐れと軍の士気低下
配下から「勇者」ではないかとの言葉が漏れ、アイスロックはこれを強く叱責した。かつて勇者に敗北した記憶が蘇り、彼の心を苛んだ。混乱はようやく収束しつつあったが、軍の士気は著しく低下していた。アイスロックはこのままでは作戦に支障を来すと認識し、事態の打開を模索し続けたのである。
第三話 奇手
マイノグーラへの脅威とイスラの疑念
フォーンカヴンを襲う蛮族の勢力が突如として激化し、マイノグーラ本拠地も脅威に晒された。拓斗は慎重な性格にもかかわらず、敵軍に対して早期に攻撃を仕掛けた。イスラはその性急な判断に疑念を抱き、敵の首魁がプレイヤーである可能性を指摘したが、拓斗は即座に否定した。
和睦を否定し、全面戦争へ
拓斗は敵がプレイヤーであろうと和睦は不可能と断じた。軍事的余裕がない現状では、全力で敵勢力を排除する方針を固め、イスラもそれに従った。戦略を練る拓斗は、戦争の興奮を抑えきれぬまま指揮を開始した。
敵軍侵攻と迎撃準備
ダークエルフの伝令により敵軍の接近が知らされたが、拓斗は既に状況を把握していた。指導者権能を用い、戦士団を迅速に動かし、市民の避難誘導と防御陣地の構築を進めた。状況は危機的であったが、土地と種族の特性が守勢に有利に働くことから、突破可能と判断された。
現有戦力とイスラの存在
戦士団百名とブレインイーター三体、イスラの補正を受けた二百体の労働用子蟲が戦力として整っていた。イスラという英雄の存在が何よりも心強く、拓斗はこの戦力を最大限に活用する作戦を立案した。
敵軍の規模と作戦方針
敵軍は千を超え、しかも未知のRPGモンスターを擁していた。通常ならば撤退を選択すべき状況であったが、拓斗は敢えて撃退を選択し、アトゥには引き続き敵将討伐を命じた。彼は勝利を確信しており、そのための切り札を用意していた。
魔力による英雄強化作戦
拓斗は緊急生産による数の勝負ではなく、保有する全魔力をイスラに注ぎ、彼女を最大限に強化する作戦を決断した。イスラは《捕食》と《寄生産卵》という極めて強力な能力を授かり、戦場の支配者としての力を得た。
蟲ラッシュの再現とイスラの覚醒
かつてゲーム『Eternal Nations』で恐れられた「蟲ラッシュ」戦法を、現実世界で再現することとなった。レベルアップしたイスラはさらなる進化を遂げ、圧倒的な存在感を放った。拓斗はその成長を静かに見守り、イスラは歓喜に震えながら王の命令に応える覚悟を固めた。
閑話 はるか遠き地より来たりし者
魔王の登場と暗黒大陸の描写
イドラギィア大陸南部、未開領域と呼ばれる不毛の地に、一人の男が現れた。黒衣を纏い鋭い眼光を宿す男は、かつて『ブレイブクエスタス』において最終試練として君臨した存在──魔王であった。彼は虚無のような大地を静かに見下ろしていた。
四天王との対話と魔王の感動
魔王は配下の四天王の一人である女の呼びかけを受けた。初めて外界に触れた彼は、草木の香り、鳥の羽音、風の息吹といった自然の息づかいに感動していた。魔王城の中だけで存在を完結させられていた彼にとって、外の世界の体験は初めてのことであり、深い喜びを覚えていた。
世界征服への誘いと魔王の沈黙
女は魔王の気に入った土地を献上しようと進言し、さらには世界征服を提案した。しかし、魔王はその提案に強く興味を抱かなかった。配下の言葉に飽き、空を仰ぎ見ながら、彼は「どうすればよいか」と女に問いかけた。女は困惑しつつも、魔王の望むままにすべきと答えたが、魔王は沈黙を選んだ。
四天王の退場と魔王の独白
やがて魔王は、女に退去を命じた。女は安堵しつつも仰々しい口上でその場を後にした。独り残った魔王は、静かに思索に沈んだ。彼はかつて「ここにこそ平穏がある」と語ったことを思い出し、悲しげにその言葉を反芻した。
世界征服の始動と魔王の孤独
遠くから魔物たちの雄叫びが聞こえ、世界征服の始まりを告げた。しかし魔王は歓喜することなく、静かに大地を見つめ続けた。彼にとってこの世界は、征服すべき対象であると同時に、初めて得た自由と平穏の地でもあった。孤独の中、魔王は長い旅路へと歩みを進めるのであった。
第四話 潜むモノ
魔物たちの緩慢な進軍
マイノグーラを破壊すべく集結した魔物たちは、統率が取れず緩慢な進軍を続けていた。フレマイン配下の魔族たちは、混乱する魔物を必死に統率しようと奮闘していた。
進軍における火炎騎士と火炎魔導士の不満
火炎騎士と火炎魔導士は、森を焼くことを禁じられた命令に不満を漏らしつつも、遅滞する進軍を支えていた。彼らはフレマインの狡猾さと苛烈な性格に日々心労を募らせていた。
マイノグーラの瘴気に侵された森
魔族たちは気づかぬうちに、マイノグーラの影響下にある呪われた大地へと侵入していた。異様な景観にさえ魔族たちは違和感を覚え、警戒を強めた。
フレマインの裏切り疑惑
火炎騎士は火炎魔導士に対し、フレマインが魔王を裏切ろうとしている可能性を示唆した。二人は、フレマインがこの世界に来る前に遭遇したという謎の存在について情報を交換した。
奇襲を受ける先遣隊
先遣隊として派遣されたオークが異形の姿で戻り、寄生生物に侵された異常な状態を晒した。異常を察知した二人は警戒を強めたが、突如として蟲の襲撃を受け部隊は混乱に陥った。
混戦と不利な戦況
瘴気による能力低下、視界不良、森を燃やせない制約など、状況は魔族たちに不利であった。そこへマイノグーラの衛生兵ユニット《ブレインイーター》が出現し、更なる混戦を引き起こした。
ブレインイーターの脅威
《ブレインイーター》は高い回復能力を持ち、魔族たちに対して効果的に戦闘を仕掛けた。火炎騎士と火炎魔導士は消耗戦に陥ることを恐れ、一時撤退を決断した。
撤退とさらなる脅威の出現
撤退中、二人はさらに強大な存在――《全ての蟲の女王イスラ》に遭遇した。異次元的な恐怖を放つ女王の前に、魔族たちは絶望的な状況へと追い込まれていった。
第五話 防衛
蟲の女王イスラと炎魔人フレマインの遭遇
イスラは副腕を使い、火炎騎士の死体を食して評価したのち、その場を制圧していた。地獄さながらの光景の中、炎魔人フレマインが登場し、両者は互いに力量を探り合う沈黙を挟んだ末、名乗り合った。イスラはマイノグーラの女王、フレマインは魔王軍四天王の一人であった。
四天王最弱の敗北とフレマインの自信
イスラの言葉により、かつて四天王アイスロックがマイノグーラ側に敗北した事実が判明した。フレマインは仲間の敗北に苛立ちを覚えながらも、彼自身は異なると自信を示し、個の力で敵を打ち破れると確信していた。
挑発と戦闘開始
フレマインはイラ=タクトを侮辱する発言を行い、それに激怒したイスラは子蟲を総動員して攻撃を開始した。しかしフレマインは強力な火炎魔法により子蟲を焼き払い、双方は改めて直接対決に突入することとなった。
マイノグーラ本拠地における拓斗の不安
その頃、マイノグーラ本拠地では、イラ=タクトこと拓斗が配下のエルフール姉妹メアリアとキャリアと共に戦況を整理していた。作戦は順調に進み、戦力差も圧倒的であると分析されていたが、拓斗は漠然とした違和感を拭えずにいた。
戦力分析と見落としへの懸念
拓斗はフレマインについて、強力な火炎魔法以外に特別な能力は存在しないと認識していたものの、アイスロックの例もあり、不確定要素に不安を感じていた。慎重を期して作戦を練り直そうとするも、具体的な問題点は浮かび上がらず、虫の知らせのような不安感に苛まれていた。
第七話 罪と罰
異様な気配と通信不能の異常事態
戦闘後の静寂の中、イスラはこの世ならぬ腐敗の気配を感じ取っていた。子蟲やブレインイーターへの指令も届かず、主であるイラ=タクトとの通信も断絶していた。不可視の力によって行動を封じられ、イスラはかつてない焦燥に陥った。
エルフール姉妹の出現と守護の誓い
本来都市に避難しているはずのエルフール姉妹が突然現れた。イスラは直ちに二人を守る決意を固めたが、召喚も防衛行動も機能せず、状況は悪化していった。
フレマインの死と異常な復活
かつて討ち果たしたはずのフレマインが、頭蓋を砕かれ胴体を断たれながらも蘇生し、嘲笑いながら語りかけた。イスラは何度も止めを刺そうとしたが、不可視の力に阻まれ、無力を思い知らされた。
双子への強制的な誘導
フレマインは狂ったような笑い声と共に、双子を自身のもとへと引き寄せた。二人は自らの意思に反して前進し、イスラは制止しようと試みたが、拘束を破ることができなかった。
フレマインの語る「強制イベント」
フレマインは、世界にはどうあがいても覆せない「強制イベント」が存在すると告げた。彼はこの理不尽な運命を呪いながらも、イスラたちを道連れにする決意を固めていた。
イスラの必死の抵抗と双子への想い
イスラは全身全霊で不可視の拘束に抗ったが、運命の力は圧倒的であった。双子の姉妹は恐怖に震えながら、フレマインのもとへ歩みを進めるしかなかった。
運命の爆発と絶望的な結末
イスラの叫びも虚しく、フレマインは双子を巻き込み、自爆の光とともに凄絶な爆発を引き起こした。辺り一帯は灰燼と化し、夜のような闇に包まれ、誰も勝者とならないまま、物語は予定通りの破滅を迎えた。
第八話 決して戻らぬもの
アトゥの苛立ちとモルタール老の同行
アトゥはモルタール老たちを従え、魔物を次々と蹴散らしながら荒野を進軍していた。彼女の怒りは激しく、周囲にいるだけで圧迫感を感じさせるほどであり、兵たちは慎重に距離を保ちながら彼女に従った。
拓斗への忠誠心と作戦への葛藤
アトゥは本心ではマイノグーラ本拠地への帰還を望んでいたが、拓斗から命じられたのは南下して魔王軍を討伐する任務であった。拓斗への絶対的な忠誠ゆえに命令には従ったものの、彼女の内心には深い葛藤と怒りが渦巻いていた。
異変の発生とアトゥの激昂
行軍中、アトゥは突如として震えだし、異変に気づいたモルタール老が部隊に退避を指示した。アトゥは激昂し、触腕を振るって周囲を破壊し始めた。モルタール老はイラ=タクトの名を叫び、アトゥを正気に戻すことに成功した。
イスラの死と動揺
落ち着きを取り戻したアトゥは、イスラの死を告げた。英雄イスラの死という事実は、同行していたダークエルフたちに大きな衝撃を与えた。モルタール老もまた、この重大な損失に言葉を失った。
拓斗への悲報と絶望
一方、マイノグーラ本拠地では、拓斗がイスラや双子との通信を試みていた。しかしすべての通信は失敗し、最終的に「ユニットが存在しない」という結果が突きつけられた。彼は世界の理不尽な現実に直面し、愛する存在を一度に喪った絶望に沈んだ。
第九話 慟哭
月を眺める双子の平穏な日常
マイノグーラの森で、ダークエルフの双子メアリアとキャリアは巨木に登り、夜空に輝く月を見上げていた。二人はイスラに叱られることを覚悟しつつ、久々の自由な時間を楽しんでいた。
王との記憶と月に託す想い
メアリアはかつてイラ=タクトから教えられた「月が綺麗ですね」という言葉の意味を思い出し、キャリアに伝えた。二人は王との特別な思い出を共有し、未来への希望と幸福を静かに誓い合った。
過去の傷と癒えた心
二人はかつて、生き延びるために母の犠牲を受け入れざるを得なかった過去を抱えていた。だが今では、マイノグーラの仲間たちやイスラの愛に支えられ、少しずつその傷を癒していた。
イスラへの親愛と未来への希望
キャリアは次の満月に、イスラも連れて月を眺めたいと提案した。メアリアも賛同し、三人で幸せな時間を過ごす未来を思い描いた。彼女たちは、世界に愛されていると信じ、微笑み合った。
血の海と破滅の光景
だが次の瞬間、二人の目に映ったのは血の海だった。フレマインの自爆による破壊で、森一帯は地獄と化していた。イスラは重傷を負い、瀕死の状態で双子を守り抜いていた。
母の愛と最後の選択
イスラは最後の力を振り絞り、二人に「生きろ」と伝えた。イスラは己の心臓を抉り取り、スキル《王位継承》によって自らの力を双子に託そうとした。それは彼女の命を犠牲にする行為であった。
イスラの死と双子の覚醒
イスラの死をもって、双子は英雄として覚醒した。だがその代償は重く、再び母を食らって生き延びなければならないという、耐え難い痛みを伴っていた。
世界の異常と二人の変容
『ブレイブクエスタス』におけるイベントの異常発生により、双子は本来ならあり得ない覚醒を遂げた。彼女たちは世界に絶望し、純粋な憎しみを抱く存在へと変貌していった。
再誕と闇への旅立ち
すべてが破壊された世界で、二人は静かに立ち上がった。かつて守られるだけの存在だった少女たちは、憎しみと哀しみをその身に宿し、新たな存在へと生まれ変わった。夜空には巨大な月だけが、静かに光を放っていた。
第十話 混乱
イスラ喪失後の拓斗の覚醒
イスラの撃破を受け、拓斗は一時茫然自失となった。しかし数秒後には感情を制御し、覚悟を固めた瞳で現実と向き合った。彼はプレイヤーとしての本能を呼び覚まし、状況を冷静に整理し始めた。
アトゥとの連絡と双子の存在確認
アトゥからの念話に対し、拓斗はイスラの死と双子の生存を報告した。イスラのスキル《王位継承》により、双子が英雄級ユニットへと変貌していることを伝え、彼女たちの確保を最優先事項と位置付けた。
王都防衛の脆弱性とアトゥの提案
アトゥは王都の兵力不足を危惧し、拓斗に対して一旦双子を呼び戻し態勢を立て直すべきと進言した。しかし、双子への命令が届かない現状により、この案は実現不可能であった。
アトゥの必死の進言と拓斗の決断
アトゥは自身の失態と英雄たちの無力さを認めた上で、撤退の再考を必死に訴えた。しかし拓斗は冷静にこれを却下し、双子の救出作戦を強行する決意を示した。
主命への覚悟とアトゥの奮起
拓斗の命令を受けたアトゥは一瞬の葛藤の末、王への絶対の信頼を思い出し、使命を遂行する覚悟を決めた。彼女は全力で南方へと駆け、双子との合流を目指した。
予想外の警告と双子の異常
進軍中、拓斗から双子が狂気に陥っているという警告が届いた。アトゥはさらなる混乱を覚えながらも、すでに決意を固めた心で進撃を続けた。
第十一話 後悔の魔女
キャリアの登場と防衛陣地への侵入
深夜の荒野に、半身を焼かれた少女キャリア・エルフールが現れた。風の四天王レディウィンド率いる魔王軍の主力防衛陣地にふらりと現れた彼女は、ただならぬ魔気を纏っていた。
四天王レディウィンドとの対峙
キャリアは無言のまま歩み寄り、レディウィンドは不気味な異様さに警戒心を強めた。少女を囲んだ魔物たちは、最初は圧倒的優位に立っていたが、キャリアの異常な存在感に違和感を抱いた。
魔物たちの腐敗とレディウィンドの動揺
キャリアに攻撃を仕掛けた魔物たちは、次々と腐敗し崩れ落ちていった。異常な疫病のような現象により、魔王軍の精鋭たちは成す術もなく金貨と化していった。
レディウィンドの必殺技の無力化
レディウィンドは必殺の《黒き呪いの風》を放ったが、キャリアに完全無効化された。彼女が勇者種に覚醒していたため、あらゆる呪いが通じなかったのである。
恐怖による逃走と無残な最期
絶望したレディウィンドは逃走を試みたが、ボスモンスターとしてのシステム制約により逃げられず、キャリアに捕捉され、最後は顔を爛れさせられ金貨と化した。
メアリアによる第二の侵攻
同時刻、別の魔王軍拠点ではメアリア・エルフールが現れ、踊りながら魔物たちを無力化していた。彼女の存在により、すべての魔物たちは行動を忘れ、思考停止に陥っていた。
土の四天王オルドメカニクの敗北
土の四天王オルドメカニクは、抵抗を試みたがすべての行動を忘却させられた。自動攻撃機構も魔法陣も無力化され、最後は自我すら喪失し、生きていることすら忘れる存在となった。
第十二話 幕切れ
魔王との邂逅と最終決戦の開始
大地に佇む魔王は、配下を打ち倒したエルフール姉妹に興味を示した。建築跡の残る異様な空間で、運命に翻弄された少女たちとの戦いが静かに幕を開けた。
勇者の力と魔王の困惑
エルフール姉妹は勇者の力を覚醒させ、魔王の絶対防御である闇の障壁を打ち砕いた。存在しないはずの勇者の力に、魔王は生まれて初めて困惑し、世界の法則が崩れたことに戦慄した。
魔王の真なる姿と本気の戦闘
魔王は意識を切り替え、本来の姿へと変身した。無数の死体と武器で構成された獣のような姿となり、全力で少女たちを討つべく動き出した。
双子の連携と魔王への接近
姉妹は魔王の猛攻を《白痴感染》《疫病感染》で無効化し、武器を忘れさせることで間合いを詰めた。メアリアとキャリアは魔王の武器を拾い、接近戦へと持ち込んだ。
戦況の膠着と魔王の焦り
魔王は持てる全力で抵抗したが、少女たちの能力により攻撃を忘れさせられ、再生も追いつかず、戦況はじりじりと不利に傾いていった。彼は必死に神への信仰と希望にすがった。
世界の残酷さと信仰の否定
エルフール姉妹は「神など存在しない」と断言した。彼女たちは世界の理不尽さを受け入れ、過去の死者のみを信じる存在となっていた。魔王の祈りは少女たちに侮蔑され、届くことはなかった。
魔王の敗北と最後の抵抗
双子の圧倒的な力により、魔王は戦闘能力を喪失した。だが強い意志により奇跡的に覚醒し、再起を図った。神の存在を信じ、勝利を宣言しようとしたその瞬間、空から第三者が現れた。
第三者による魔王討伐
銀光をまとった謎の男が現れ、魔王を一瞬で切断した。魔王は金貨の山と化し、ブレイブクエスタス魔王軍は完全に滅亡した。エルフール姉妹は状況を受け止め、警戒心を募らせた。
怒りに燃える双子と謎の男の出現
双子は魔王討伐という復讐を邪魔された怒りに震え、異様な魔気を放った。現れた男は若く軽薄な様子を見せつつも、双子の敵意を受け止めながら、場違いな態度で答えた。
第十三話 落月
謎の男との遭遇と緊張の高まり
エルフール姉妹は、突如現れた謎の男に警戒を強めた。男は魔王を一撃で葬った実力を持ちながらも、軽薄な態度で助けに来たと述べたため、双子は怒りと猜疑心を募らせた。問い詰めに対して男が動揺する様子を見て、姉妹は武器を構え戦闘態勢に入った。
姉妹の怒りと戦闘開始寸前の事態
男は説得を試みたが、姉妹の怒りは収まらなかった。男も剣に手をかけ応戦の構えを取るが、その行動には芝居じみた違和感があった。姉妹は過去を穢された怒りに飲み込まれ、世界が静まり返る中、ついに戦いが始まろうとしていた。
アトゥの介入と戦闘の強制停止
戦闘寸前、アトゥが氷の必殺技《氷河撃破斬》を用い、双子の動きを強制停止させた。彼女は即座に状況を把握し、拓斗からの指示に基づき、双子の保護と男への警戒を続けた。
王の命令と双子の反発
アトゥは双子に帰還命令を伝えたが、姉妹は男への怒りを理由に従うことを拒否した。アトゥは王の命令に絶対服従を求めたが、姉妹は過去の痛みに突き動かされ、激しく抵抗した。緊張は最高潮に達し、アトゥも戦闘を辞さない覚悟を固めた。
月の沈みと双子の心変わり
夜明けとともに月が沈み、姉妹の心も静まった。メアリアとキャリアは怒りを収め、アトゥに謝罪した。アトゥは二人の変化を受け入れ、過去の暴言を水に流すことを決めた。
謎の男の撤退とアトゥの警戒
男は空気を察して撤退を決断し、高速で地平線の彼方へと消えた。アトゥは彼の存在に不安を抱きながらも、王からの帰還命令を優先し、男を追うことを諦めた。
魔王撃破後の金貨とイスラへの想い
双子は倒された魔王が残した金貨の山を見つめ、イスラの死を改めて実感した。アトゥはイスラの死を静かに告げ、双子は深い悲しみの中で涙を流した。
帰還の決意と喪失の痛み
大声で泣き叫ぶ双子を前に、アトゥは王に帰還が遅れる旨を報告した。夜空に輝いていた月はすでに沈み、彼女たちを照らすものは何も残っていなかった。
第十四話 そして神々の遊戯が始まる
荒野に降り立った青年と神への憤り
青年は異世界イドラギィア大陸南部の未開の地に降り立った。神の導きにより魔王討伐を遂げたが、助けたはずの少女たちに冷たくあしらわれたことで、自らの行動と神の無責任さに激しい怒りを覚えた。現実と理想の乖離に落胆しつつも、彼は奴隷の少女と共に新たな旅立ちを決意した。
奴隷の少女との出会いと神速の剣技
神から与えられた奴隷の少女と再会した青年は、ヒルジャイアントの襲撃を受けるも、超常の剣技で瞬時にこれを退けた。少女の無邪気な賞賛を受け、彼の心には安堵が広がった。神への不満を抱えながらも、少女との旅を続けることに前向きな気持ちを取り戻した。
エルフ要塞エトロクワルへの脅威
同時期、エル=ナー精霊契約連合では絶対防衛地点エトロクワルがサキュバスの集団による侵略の危機に瀕していた。美と淫靡さを兼ね備えたサキュバスたちは、エルフ戦士たちの精神を巧みに侵食し、戦闘不能に追い込んだ。指揮官ザイス=ティースロイは精霊の力を結集して応戦するも、サキュバスクイーン・ヴァギアの圧倒的な戦闘力の前に敗北を喫した。
サキュバスたちの世界征服宣言
サキュバスクイーン・ヴァギアは、仲間たちとともにエルフたちを圧倒し、世界征服の意志を高らかに宣言した。彼女たちは戦争や憎しみを否定し、快楽による支配を掲げ、拡大の神の名のもとに行動を開始した。
聖女ソアリーナと魔女エラキノの戦い
一方、聖王国クオリアでは聖女ソアリーナが魔女エラキノと対峙していた。過去に何度も勝利してきたソアリーナだったが、二十二回目の戦いでエラキノの《啜り》能力が奇跡的なクリティカル判定を引き起こし、逆に敗北を喫した。エラキノは歓喜し、新たな使命を受けてマイノグーラを目指して進軍を開始した。
王イラ=タクトの葛藤と覚醒
マイノグーラでは指導者イラ=タクトが戦後の疲弊と自己嫌悪に苦しんでいた。英雄イスラの喪失に責任を感じ自責の念に苛まれるが、偶然にも自らの中に秘められた破滅の王としての本当の力に気づいた。これにより心機一転、再起を決意した。
緊急会議と新たなる誓い
王宮で開かれた緊急会議において、イラ=タクトは配下たちに自らの失策を認めて謝罪した。さらに、失われた英雄イスラを復活させることを高らかに宣言した。この言葉に民たちは驚きつつも深い感動を覚え、マイノグーラは新たな覚悟を胸に再び歩み始めた。
挿話 人肉の木
アトゥへの相談と異常な人肉の木
イスラ召喚直前、マイノグーラでは国家運営の一環として、アトゥが日常的に問題解決に奔走していた。エムルからの相談に応じて視察した先で、人肉の木が異常な巨大化を続けていることを発見した。アトゥは内心で動揺しつつも英雄らしく振る舞い、エムルにはごまかして対応した。
問題発覚と拓斗への泣きつき
事態を重く見たアトゥは、宮殿に戻り拓斗に泣きついた。拓斗自身も人肉の木の巨大化を視界共有で把握していたが、ゲーム設定にも存在しない現象に困惑していた。彼は未知の土地・大呪界の影響によるものと仮説を立て、皆を召集する決断を下した。
会議と国民たちの認識
緊急招集により集まったダークエルフたちや英雄たちは、実は人肉の木の異常成長に気づいていたことを明かした。だが誰もが日々の業務に追われ放置していたため、問題がここまで拡大したのであった。
人肉の木の危険性と謎肉問題
モルタール老の試算により、今後人肉の木が生産する謎肉が国の食糧需要を数十倍超過することが判明した。過剰な生産は倉庫の破裂や衛生問題を引き起こし、最悪の場合は国を謎肉で埋め尽くしかねない事態に発展すると指摘された。
対応策の模索と伐採の問題
イスラが間引き案を提案したが、人肉の木を切断するとマンドラゴラのように絶叫する特性が発覚したため、伐採は不可能であると判明した。結果、人肉の木から生産される謎肉は処理ではなく消費によって対応する必要が生じた。
苦肉の策と将来的展望
イスラの提案により、子蟲ユニットを大量生産して食糧を消費させる作戦が採用された。また、将来的には市場建設により余剰資源の換金を目指す腹案も用意された。これにより当面の危機は回避される見込みとなった。
問題の本質とマイノグーラの行く末
現状では人肉の木が特定区域内に限定されているため、適切な管理と監視で対応可能であった。マイノグーラが成長し支配地域が拡大すれば需要も増加し、いずれは問題が自然に解消されるだろうとの見通しも立てられた。
終わらぬ懸念と未来への予感
一件落着したかに見えたが、マイノグーラには未だ未知の要素や予想外の事態が潜んでいた。拓斗は、火薬庫のような国家運営にこれからも翻弄される未来を予感しながら、その日の業務を締めくくった。
同シリーズ





その他フィクション

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