小説【楠木邸】「神の庭付き楠木邸 3」感想・ネタバレ

小説【楠木邸】「神の庭付き楠木邸 3」感想・ネタバレ

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どんな本?

『神の庭付き楠木邸』とは、えんじゅ氏による小説である。
この物語の主人公は、悪霊を祓う力を無自覚に持つ楠木湊であり、彼が管理人として赴くことになった一軒家を舞台に、さまざまな神々や霊獣、時折陰陽師たちと穏やかに交流する内容である。

湊の無意識の祓いの力により、曰くつきの家が清められ、その居心地の良さに惹かれた個性的な神々が集まり始め、次第に庭が神域へと変貌していく展開である。
甘味を好む山神や、モフモフとした姿の眷属、酒好きの霊亀など、特徴的なキャラクターが多く登場し、湊とともに独特の世界観を築いている。

この作品はウェブ小説投稿サイト「小説家になろう」や「カクヨム」に連載され、書籍版もKADOKAWAから刊行されている。
また、電撃だいおうじでのコミカライズも進んでいる。
なお、神々や眷属たちは主に獣型であり、人化しない設定で描かれているのも特徴の一つである。

神々や霊獣たちとの穏やかな日常と、時折巻き込まれる厄介事にもマイペースに対処する湊の姿が、読者に和やかな読後感を与える作品である。

読んだ本のタイトル

神の庭付き楠木邸 
著者:えんじゅ
イラスト:ox

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あらすじ・内容

神域となった自宅で、隣神さんたちと田舎でのんびり暮らす楠木湊。またもや山神の気まぐれで、一足早めにお庭が夏仕様に。
 そこには大物神様までもがふらっと訪れてきて!?(もちろん、お土産持参で) 力を遣って縮んだ山神を戻そうと奮闘したり、加護で宝くじを当ててしまったり、相変わらず騒がしくも楽しい毎日です。
 さらに、山神のライバルーー隣町の稲荷神社の天狐までもがやってきて……!?
 お隣のモフモフ神様とのスローライフ、第三弾!

神の庭付き楠木邸3

感想

楠木湊は、神々とともにのどかな日々を送っているが、今回もまた新たな神との出会いが加わり、静かな楠木邸に新たな風が吹き込んだ。
特にスサノオやお稲荷さんといった大物神が訪れることで、湊の日常はさらに不思議で楽しいものになっている。
お稲荷さんと山神が取っ組み合いを始めると、まるで仔犬同士のじゃれ合いのようで、その微笑ましさに思わず笑みがこぼれる場面であった。
また、湊の持つ浄化の力が神々を引き寄せ、楠木邸が「神の集まる場所」としての意味を深めているのが実に興味深い。

一方で、神々との時間を過ごしながらも湊の日常は、あまりに独特で少し孤独さも漂う。
地元では「鳥遣い」として知られるようになり、小動物や鳳凰にまで頼られながらも、湊の周囲にいるのはほぼ神々だけだ。
そんな中で播磨や地元の人たちとのわずかな交流が、彼の心の支えになっていることが伺えた。
湊の暮らしは、見た目は穏やかでありながらも、一歩踏み入れれば異界のような神秘的な世界が広がっている。
木彫りを始めたり、神力を少しずつ扱えるようになる湊の成長も描かれ、物語はますます魅力を増している。

神とともに過ごす湊の生活は、彼にとっても自身にとってもどこかほっとする空間であり、時折巻き起こる賑やかな出来事がスパイスのように効いている。
神々の一癖ある交流や、少しずつ明かされる湊の力の秘密など、湊の物語がどう展開していくのか、次巻が待ち遠しい限りである。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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楠木邸 2巻レビュー
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楠木邸 4巻レビュー

備忘録

第 1章  庭の改装は山神の趣味である

『神の庭の改装と新たな四季の彩り』

庭の構成と改装

新緑の季節、楠木邸の庭は青々とした木々と共に、鮮やかな景色を見せていた。庭にはひょうたん型の御池や太鼓橋、石灯籠、飛び石などが配置されており、自然の趣にあふれていた。山神は庭の改装を思い立ち、庭木を周囲に集め、御池の形を崩して川に変え、さらには太鼓橋を川の中央に移動させるなど、庭の景観を一変させた。

四霊の回復と新たな変化

霊亀や応龍、麒麟といった神々の四霊は、湊の助けによって徐々に力を取り戻していた。霊亀や応龍は庭にある岩や水流の中でその力を見せ、麒麟は太鼓橋をお気に入りの場所としていた。唯一、鳳凰だけがまだ力を取り戻せず、石灯籠の中で眠り続けていた。山神の手による改装はこれらの四霊にとっても心地よい空間となり、庭は一層の神秘性を増した。

滝の設置と山神の縮小

山神は庭の音の変化を求め、川に滝を設置した。滝の音が庭に心地よいリズムを加え、神域全体にリラクゼーション効果をもたらした。しかし、神力を用いた影響で山神の姿は徐々に小さくなり、中型犬ほどの大きさから最後には小さな狼の姿へと縮んでしまった。湊は山神の体調を気にかけるも、山神自身はその変化を全く気にしていなかった。

麒麟の旅立ちと神霊の眠り

庭の改装が終わった後、麒麟は再び世界の探索に出かけた。旅立つ前に湊に戸締まりの注意を告げ、他の霊獣たちも麒麟を見送った。一方、庭の一角にある石灯籠には、湊がかつて助けた神霊が眠っており、今も目覚めずに静かにその力を蓄えていた。湊はその神霊がいつの日か庭に馴染んでくれることを望んでいた。

クスノキの復活と水やりの日課

庭の中心には、以前に風神の力を借りて湊が切り倒した神木クスノキが幼木として再び芽吹いていた。湊は毎朝欠かさずに水やりを行い、幼木の成長を見守った。クスノキは自らの意思を湊に伝えるように葉を揺らし、神域の中で生き生きと育っていた。湊は、この神木が神の庭で再び大樹となる日を心待ちにしていた。

変わらぬ神の庭の春の風景

楠木邸の庭は、外の世界が夏に向かう中、やわらかな春の陽気に包まれていた。神の庭の木々と神木クスノキは、春の風にそよぎ、静かにその時を刻んでいた。湊は庭を見渡し、改装された庭が見せる四季の彩りを心に焼きつけていた。

第 2章  ぞくぞくとおこしやす

『庭の改装と訪れる神々』

新たな川と庭の調和

御池は大きなS字を描く川へと変わり、急カーブの水流が異なる速さで流れる景観が広がっていた。湊は川底の石や水草が意図的に配置され、自然に似せて作られていることに感心していた。特に二箇所目の急カーブの先には朱と白を基調とした竜宮門が鎮座し、霊亀がその守り手となっていた。霊亀と応龍はこの新たな環境に満足し、それぞれの位置で落ち着いて過ごしていた。

滝と応龍の棲み処

滝の近辺に進むと、湊は水が塀から吹き出しているように見える構造に驚きつつ、冷気と霧が心地よい空間を作り出していることを感じ取った。滝壺には青みがかった真珠の光を放つ応龍がとぐろを巻き、まるでこの場所を自らの居住地と定めたかのように安らいでいた。湊は応龍のリラックスした様子から、この改装が成功していることを確信した。

迷い込む神の眷属と山神の対応

川の下流に、光をまとった鯉たちがひしめき合っていた。隣町の神の眷属と思われる鯉たちは、山神の許可を得て上流へ向かい、滝を力強く登り始めた。湊は鯉の滝登りを目の当たりにし、感動を覚えたが、山神から「鯉が龍になる伝説」は現実ではないと告げられた。応龍は小さな鯉たちが滝を登るのを助け、すべての鯉が無事に帰還するのを見届けた。

山神の呼びかけと眷属の試練

山神は庭に迷い込むモノたちを防ぐため、眷属であるセリ、トリカ、ウツギを呼び出し、庭の警護を強化するよう命じた。三匹の眷属は山神の力を無駄にしないよう忠告しつつ、主の指示に従って各自の役割を遂行することを誓った。湊は眷属たちの忠誠と、日々成長するその動きの速さに驚きを覚えていた。

龍神の来訪と手土産

突然、庭の上空に巨大な龍神が現れた。応龍の知り合いであるその龍神は、湊に手土産として次々と重ねられた菓子箱を渡し、庭に神々しい存在感を漂わせた。龍神は応龍と歓談しながら酒を嗜み、最後にはご機嫌に空へと戻っていった。湊が龍神から受け取った箱を開けると、中には月餅が入っており、甘い香りが庭全体に広がった。

山神の眠りと庭の静けさ

龍神が去り、湊が庭を見渡すと、いつも庭の賑やかな中心にいる山神は座布団の上で深い眠りについていた。神力の行使によって小さな狼の姿となり、静かにまどろんでいる山神の姿はまるで山そのもののように穏やかで、湊は静かな庭の中でその安らかな存在に感謝した。

第 3章  湊のひそかなる奮闘記

『山神の復活への道』

湊の決意と山神の危機

湊は、山神が元の巨躯に戻ることを強く望み、決意を固めた。もし神力がさらに衰えれば、湊との対話ができなくなるばかりか、眷属たちも消えてしまうという山神の言葉が、湊に大きな焦りを与えていた。そこで、山神を元の姿に戻すための奮闘が始まろうとしていた。

異国の菓子と山神への献上

数日ぶりに目覚めた山神に湊は、龍神からの土産である中国茶と月餅を供えた。山神は初めて味わう異国の菓子を気に入り、ゆっくりと味わいながら食した。しかし、湊は神力の回復を願いながら山神に月餅を食べさせる姿勢にこだわり、少々緊張した様子だった。

柏餅と異様な儀式のような朝の挨拶

次に湊は柏餅を差し出し、慎重な態度で山神に感謝の意を表した。さらに、朝食時には「いつも一緒にご飯を食べてくれてありがとう」と毎回のように感謝の言葉を述べ、拝むように山神を見つめた。山神はその度に応じていたが、湊の観察が少し過剰に思え、不思議に感じていた。

昼の宴と霊亀と応龍への相談

ある日、湊は霊亀と応龍とともに昼の宴を開き、酒を酌み交わしながら山神の復活について話し合った。湊はこの一週間で様々な試みを行ったが、目に見える効果は得られなかった。しかし、霊亀と応龍は内面には変化が現れており、徐々に回復していると述べ、湊を励ました。

霊亀と応龍の支えと湊の焦り

霊亀は、山神の回復は時間がかかるものの、焦らず待つべきだと湊に告げた。湊もまた、山神が強大な存在であることを思い出し、冷静さを取り戻した。彼は信頼の気持ちを持って今後の回復を見守る決意を新たにしたが、霊亀と応龍は湊の知らないところで密かな視線を交わしていた。

第 4章  黒き狐、再来す

『御山の庭と神々の邂逅』

楠木邸と整えられた庭の美観

クスノキの樹海に囲まれた御山の隣、静かに佇む楠木邸は、手入れの行き届いた庭とともに美しい景観を保っていた。御山が荒れたままである一方、楠木邸の庭は見栄えを重視して整えられ、露天風呂や滝、川などが絶妙に配置されていた。庭は自然の形を残しながらも、意図的に作り出された美しさが漂っていた。

鳳凰と野鳥たちの集い

ある日の朝、鳳凰が目を覚まし、庭に集まる野鳥たちと語らっていた。久方ぶりの鳳凰の起床に、珍しい野鳥も含め多くの鳥たちが喜んで集っていた。湊もこの光景を眺めながら、鳳凰が「アイドル」のようだとつぶやいた。山神はその言葉を理解しようとしたが、湊の説明に少し戸惑っている様子だった。

護符の作成と山神の評価

湊は護符の作成に取り組み、集中力を維持しながら作業を進めた。護符の完成後、山神に確認を求めたが、最後の一枚だけ祓いの力が閉じ込められていないと指摘された。湊は山神の視点から見える護符の力の光について興味を持ち、翡翠色の光が放射状に広がる様子を想像しながら、山神の評価を受け止めていた。

山神の神力と野鳥たちへの影響

山神がわざと力を示し、強い光を放つと、庭に集まっていた野鳥の一部が驚いて飛び去ってしまった。山神の力が回復しつつあることは喜ばしいが、突然の強い光は周囲に影響を及ぼし、湊も驚いていた。山神がさらに光を強めると、湊の苛立ちを察した山神の眷属たちが、山神に力の抑制を求める声を上げた。山神は不満げながらも光を抑え、眷属の忠告を聞き入れた。

ツムギの訪問と稲荷寿司

黒い狐であるツムギが訪れ、稲荷寿司の香りに引かれて庭にやって来た。湊はツムギと軽快なやり取りを交わしながら、稲荷寿司や蕎麦稲荷を勧めた。ツムギは温泉にも興味を示しつつ、少し照れながらも素直に湊の誘いに応じた。

天狐の登場と山神との対峙

ツムギが天狐の力を借りて顕現すると、その場の雰囲気は一変した。天狐は九本の尾を持つ威厳ある姿で湊と山神に語りかけ、湊を自分の神域に招待しようとした。これに対し、山神は天狐の無礼な態度を強く非難し、彼女に対抗する姿勢を示した。互いに意見を交わしつつ、山神と天狐の間には緊張感が漂い始めた。

山神と天狐の戦闘と湊の驚き

山神と天狐の対話は次第に激しい戦闘へと発展した。小さな狼と狐の姿でありながら、二柱の神は空中で激しくぶつかり合い、その力は風を巻き起こし、周囲の木々を揺らした。湊はその激闘を目の当たりにし、山神の力に対する信頼と共に、神々の力の差を改めて実感した。

第 5章  月に一度の祠掃除

『山道での湊と山神の冒険』

祠からの帰路と山道での山神の助け

深い緑に包まれた山道を、湊と山神が祠からの帰り道として歩んでいた。祠の清掃は月に一度の恒例行事で、今回は山神が付き添っていた。険しい崖沿いの道を慎重に進む湊に対し、山神は小柄な体ながらも岩から岩へと軽やかに飛び移り、その身の軽さを見せつけていた。途中、湊が小石に足を滑らせ、崖近くの岩で踏みとどまるも危うく転倒しそうになったが、山神が岩の上に乗り、その動きを止めてくれたため、湊は体勢を立て直すことができた。

荒れた山道と山神の案内

険しい崖沿いの道を抜けた後も、山は人の手が入っていないため荒れ果てており、湊は山神が進む足跡を頼りに慎重に下山していった。山神は山そのものであり、湊が安全に通れるルートを自然に案内していた。

古い林道とかずら橋の発見

湊がふと顔を上げると、山神が林道の一部で立ち止まり、そこがかつての人為的な道であると告げた。この道を辿る先に、つるで作られた古いかずら橋があることが山神から伝えられ、湊は興味を抱き、二人でその場所へと向かった。峠を越えると、切れかけたかずら橋が絶壁に架かっており、古びたつるで繋がれた危険な状態であることがわかった。湊は橋の下の渓流を見下ろし、その危険さに驚き、慎重に観察していた。

越後屋一族と橋での逸話

湊がかずら橋を観察していると、山神は越後屋一族との昔話を始めた。山神は初代から越後屋家との縁があり、特に三代目が十代の頃、この橋を渡ろうとして足を踏み外し、山神が彼を救ったエピソードを語った。また、五代目や八代目も橋で危険な目に遭ったものの、怪我はなく、その逞しさに山神も感心していた。湊は越後屋一族の災難ぶりに少し驚きつつも、そのような奇妙な縁に感心した。

カワセミと山の平和な風景

橋の観察を終えた湊がふと目を向けると、上流から美しいカワセミが飛来し、川面を滑るように渡っていった。湊はその鮮やかな姿に目を奪われ、山神もその光景を穏やかに見守っていた。二人はその後、家路に向かって再び林道を進み、山中の平和な風景を満喫した。

山神と猿からの贈り物と懐かしさ

道中、頭上に現れた猿の親子から、湊は赤いグミの実を手渡され、以前助けた礼だと山神から聞かされて嬉しそうに受け取った。湊は子供の頃を思い出し、懐かしさを覚えた。また、山神の提案で山中のグミを採ろうとしたものの、他の動物たちのために遠慮することにした。

キジの誘いと自然との共存

歩いていると、今度は鮮やかな色を持つキジが現れ、湊に「グミを一緒に食べに行かないか」と誘った。湊はその軽妙な誘いに驚きつつも、山神の通訳を受け入れ、山中の動物たちとの自然な共存を実感した。

第 6章  瑞獣の抜け殻の効果やいかに

『湊の外出と応龍の抜け殻の効果』

買い出し前の決意と緊張

湊は楠木邸の表門前に立ち、応龍からもらった抜け殻をボディバッグに忍ばせ、商店街への買い出しを前に緊張していた。瑞獣からの贈り物を初めて神域の外に持ち出すことに不安を覚えていたが、覚悟を決めて出発した。

予期せぬ雨と突風の恩恵

敷地外に一歩踏み出すと雨粒が降り始め、湊は驚いた。しかし、突風が吹き荒れ、上空の雨雲を一気に押し流してしまった。湊はその変化に気づかず、運良く雨の影響を受けずに出かけることができた。

動物たちとの出会いと猫による案内

バス停に向かう湊の周囲には、多くの動物たちが集まり、彼を見送った。商店街に到着すると、よく出会う三毛猫が現れ、湊を特売中の豆腐店へ案内した。湊はその案内に従い、特売の豆腐を購入することにした。

道中での特定外来生物との遭遇と危険回避

帰路に向かう途中、湊はアライグマに遭遇し、路地裏へと誘導された。その直後、湊が通っていた道で交通事故が発生し、湊は結果的に事故から逃れることができた。これもまた応龍の抜け殻の効果かもしれなかった。

謎の小男と湊に寄せられる視線

道中、湊はアウトドア風の服装をした小男と目が合い、彼の強い視線に少し不審を抱いた。周囲の人々が湊を親しみの目で見つめる一方で、この小男は無表情で湊を見つめていた。湊はそのことを気にしつつも歩を進めた。

落とし物の財布と高級ワインの贈呈

湊はバス停近くで落とし物の財布を拾い、その持ち主である男性に返そうとした。感謝した男性は、湊に「スクリーミング・イーグル」という高級ワインを強引に贈った。湊はそのワインが応龍に喜ばれることを思い、受け取ることにした。

穏やかな帰宅と神域からの無縁の日

昼過ぎにようやく帰宅した湊は、表門でふと、自分が一度も神域に引き寄せられることなく安全に帰れたことに気づいた。応龍の抜け殻が特別な効果を発揮したのだろうと考え、帰宅後にそのワインと共に報告しようと決意した。

『湊と鳳凰、奇跡の証明』

大当たりの幸運と湊の緊張

数日後、湊は銀行にて、スクラッチの当選金三百万円を受け取っていた。実家からの仕送りに紛れていたスクラッチが兄からの誕生日プレゼントで、湊は半ば強制的に削る羽目になり、見事に大当たりを引き当てたのだった。銀行員から大金を渡され、湊はその重みに驚き、緊張に包まれた。帰り道でも異様に周囲を警戒する湊を、肩に乗った鳳凰は不思議そうに見守っていた。

豪遊の決意と湊の小市民的な購入

現金の重さに耐えられず、湊は思い切って全額を使い切ることを決意した。高価なワインや焼酎を求め、行きつけの丹波酒屋へ向かい、思い切って購入した。湊は購入時、酒類の高額さに上ずったが、無事に大金を使い切ったことで肩の荷が下り、ほっとしていた。

少年との出会いと鳳凰の姿

帰り道で、湊と肩の鳳凰が注目を集める中、ひとりの少年が鳳凰を「ピンクのひよこ」として見ていると母親に話していた。母親は息子の言葉を信じず、たしなめていたが、湊は自分も鳳凰が見えていることを少年に伝え、慰めの言葉をかけた。その瞬間、鳳凰が姿を現し、周囲の野鳥たちが一斉に空で舞い踊り、町の人々はその光景に見とれた。

少年の喜びと母親の驚き

湊の言葉を聞いた少年は顔を輝かせ、母親も鳳凰の存在を目の当たりにして驚いた。鳳凰は彼女にもはっきり見えるように翼を広げ、母親の表情は次第に和らいだ。町の人々が野鳥の天体ショーに夢中になる中、湊と鳳凰は静かにその場を後にしたが、遠くから小男が湊をじっと見つめ続けていた。

『湊と山神、甘酒饅頭と眠気の顛末』

帰宅時の山神の無邪気な歓迎

湊が甘酒饅頭を持って帰宅すると、小さな狼の姿をした山神が、普段とは異なり活発に駆け寄ってきた。彼は甘酒饅頭の香りに惹かれ、湊の周囲をくるくると回り、待ちきれない様子を見せていた。湊は山神の子狼のような無邪気さを面白がりながらも、甘酒饅頭をちらつかせながら庭へと誘導していった。

甘酒饅頭の至福と山神の食事風景

湊が準備を整え、ようやく甘酒饅頭を差し出すと、山神はゆっくりと味わいながら食べ始めた。満足げな表情で尻尾を振り、まさに至福のひとときだった。その食べ方の丁寧さに湊も感心し、越後屋の和菓子職人への褒め言葉を口にしていたが、山神はひたすら饅頭の味に集中していた。

タウン誌と山神の由来

饅頭を食べ終えた後、湊が方丈町のタウン誌をめくると、毎月恒例の和菓子特集が目に留まった。表紙には山神に似た狼のロゴがあり、湊はその由来について山神に尋ねる。山神はこのタウン誌のロゴが自身をモデルにしていることを認め、先祖との古い縁を語った。山神の話を通じ、雑誌の贔屓の理由が、山神への配慮から生まれたものだと湊は知ることになった。

山神の眠気と突如の仮眠

しばらく庭で過ごす中で、山神は次第に眠気に襲われ、ついには薄目を開けたまま動かなくなってしまった。湊はその姿に苦笑しつつも、こうした状態に慣れているため特に気にせず、片付けを続けていた。山神は眠気の限界に達するとこのように「フリーズ」することがあるのだ。

寝言と越後屋への叱咤

湊が片付けを進めていると、山神が突然寝言を話し始めた。越後屋の次期当主を目指す若者への厳しい言葉であり、湊はその内容に驚いた。どうやら山神は甘酒饅頭の味に対する理想が高く、彼の中で越後屋の職人にはまだまだ成長を求めているようだった。湊は山神の素直でない一面を感じつつ、彼の姿を見守りながら笑みを浮かべて家の中に戻っていった。

『麒麟の鱗と播磨父との出会い』

麒麟の鱗の持ち出しと平穏な商店街

湊は麒麟から譲り受けた鱗をボディバッグに忍ばせ、商店街での買い出しに出かけた。これまでの瑞獣の抜け殻と違い、鱗の効果には目立った出来事が起きず、湊は心の平穏を保っていた。しかし、その鱗は湊が気づかない場所で大きな効果を発揮していた。

湊を追う小男への妨害

湊を狙って商店街に現れたサファリハットの小男、野鳥愛好家である彼は、湊を利用しようと執拗に後をつけていた。しかし、湊に近づこうとする度に、野生動物が妨害に入り、彼の計画はことごとく失敗に終わっていた。猫の群れやアライグマ、さらには鳥のフンまでが彼を阻むことで、鱗の力が発揮されていたのであった。

播磨才賀の父との遭遇

商店街で湊が自動販売機に立ち寄った瞬間、黒塗りの高級車から颯爽と降りた壮年の男性が、湊に向かって全力で駆け寄った。その男は播磨才賀の父であり、湊を「翡翠の君」と呼び、護符でお世話になっていると感謝を述べた。湊は驚きながらも応じ、彼が四霊に関わる鱗の存在を見通していることを知った。

鱗を巡る交渉と湊の決断

播磨父は湊に対し、鱗を売ってほしいと懇願し、強引に頭を下げ続けた。この状況に困惑する湊は、周囲の注目が集まる中で応じるべきか葛藤したが、最終的に彼の情熱に根負けし、鱗を一枚譲ることにした。播磨父の粘り強さと求道的な姿勢に触れた湊は、少しばかり気疲れしつつも、彼の誠実な思いに応えた形となった。

帰宅後の麒麟の反応と瑞獣の抜け殻の終焉

湊は帰宅後、麒麟に事情を説明し謝罪したが、麒麟は気にも留めず「あなたのお好きに」と湊を安心させた。こうして瑞獣の抜け殻の効果検証は終わりを迎え、湊は特別な出来事に対しての耐性を学んだ日となった。

第 7章  歓迎できぬお土産

『麒麟の帰還と神域の日常』

護符作成と神域の静けさ

湊は昼食後から護符の作成に取り組み、護符に力を込めながら集中して作業を進めていた。神域は静まり返り、野鳥も姿を見せず、穏やかな時間が流れていた。湊の対面には鳳凰が護符を見守っており、護符への熱い視線を絶やすことなく注いでいた。一方で、山神は座布団で仰向けになり鼻提灯を膨らませて熟睡し、霊亀や応龍もそれぞれ普段通りの動きを見せていた。

麒麟の帰還と異変の予兆

突如として、山神の鼻提灯が弾ける音をきっかけに、神域の空気が一変した。山神が跳ね起き、霊亀や応龍も警戒の様子を見せ、鳳凰も産毛を逆立てた。彼らが睨み据える空の一点には、黒い瘴気に包まれた麒麟の姿があった。麒麟は長い尾を引く黒い彗星のように見え、その姿は普段の鮮やかさを失っていた。山神はため息をつき、湊に向けて「また憑かれてきおって」と呟いた。

湊の護符による除霊と麒麟の救助

山神に見送られながら、湊は護符を手に裏門で麒麟を迎え撃つべく外へ出た。瘴気の塊が迫りくる中、湊は護符でそれを受け止め、一瞬にして瘴気を消し去った。今回の護符は新たな力で強化されており、必要時にのみ祓いの力を発揮できる仕様であった。湊は麒麟を抱きかかえ露天風呂へと向かい、湯に浸して回復を図った。麒麟は湯に沈められると、やがて意識を取り戻し、安堵する湊を横目に太鼓橋まで跳び去った。

仲間の叱責と麒麟の謝意

霊亀や応龍は麒麟に対し、無謀な行動を叱責し、その言葉に麒麟は肩を落としていた。湊は彼らの様子を見て、「お土産を持ち帰れずに、申し訳ありません」と麒麟が謝る気持ちを察し、命を最優先にして無理はしないよう伝えた。山神も「麒麟に出かけるなとは言えぬ」としみじみ呟いた。

祓いの力を込めた木材の試作

湊は麒麟のために祓いの力を宿したクスノキの木材で護符を作成しようと考え、山神の指示で保管していたクスノキ材を取り出した。木片に祓いの力を込めながら、湊は彫刻刀で模様を刻んでいった。途中、鳳凰が湊の彫刻作業を興味深そうに見守り、湊はクスノキの葉のマークをつけた護符を完成させた。

木彫りの挑戦と新たな計画

木彫りに挑戦することを勧められた湊は、翌日から鳳凰の姿を木材に彫り出すことを決意した。神域での日常を楽しむ中、湊は神木のクスノキを使って、お社を建てる夢を膨らませた。それを見守る山神は、意味深な笑みを浮かべていた。

第 8章  御守り大冒険

『麒麟の御守りと動物たちの連携』

麒麟への特製御守りの授与

湊は縁側に座り、しおらしげに近づいてきた麒麟に向け、籠目模様を彫り込んだ木札の御守りを差し出した。この木札は悪霊除けの力を持ち、山神の力でさらに強化された紐に通してあった。湊が差し出すと、麒麟は慎重に木札を首元にかけ、喜びと感謝を表す仕草を見せた。これで再び旅立てると意気込む麒麟に対し、霊亀と応龍は「懲りていない」と呆れつつも安心した様子であった。

リスの訪問と御守りの受け渡し

そこへ、馴染みのリスが桑の実を咥えて現れ、湊に果実を渡した。リスは湊が作った木札を欲しがっており、湊はクスノキの葉を彫った小さな木札を渡した。リスは木札を咥え、軽快に敷地を後にした。田んぼを駆け抜け、後ろ足で立ちながら、木札を次の相手へと渡す準備をしていた。

カラスと動物たちによる木札リレー

リスから木札を受け取ったカラスは、悪霊が巣食う民家の上空で木札を落とし、祓いの効果を発揮させた。木札はさらに別のカラスやイタチ、スズメなどへと手渡され、悪霊の影響を受けた地域を浄化するため、さまざまな動物たちが協力し合って次々とリレーした。

神の使い・ツムギの監視と浄化の広がり

その様子を遠巻きに観察していた黒狐・ツムギは、動物たちが団結して浄化のために木札を運ぶ姿を見届け、満足げに自らの住まいへと戻っていった。動物たちは種族を越えて協力し、楠木湊の作った御守りの力で悪霊の影響を祓い、かつての住みやすい環境を取り戻そうとしていた。

最後の木札と謎の男の登場

動物たちの手を渡り続け、夕刻に至り力が薄れた木札が地面に落ちた。それを拾い上げたのは、謎の細身の男であった。彼は木札を手に取り、くすのきの宿の名が入った木製キーホルダーを腰に下げ、湊の元を目指して動き出す。その不気味な笑みと挑発的な態度から、彼の意図には一抹の不安が漂っていた。

『湊と山神の帰路』

新緑の道と野良猫たちの奇妙な歓迎

湊はバスを降り、穏やかな青空のもと、甘酒饅頭を持って家へと帰路を歩んでいた。途中、彼の行く手を二匹の野良猫が遮る。彼らは普段は警戒心が強いものの、今日に限って湊にすり寄り、不慣れな鳴き声で甘えるような仕草を見せた。湊は彼らの変わった態度に戸惑い、無理をさせたくないと気遣いながらも、その場を後にした。

街路樹のスズメの大合唱

歩みを進める湊が街路樹の近くを通ると、大勢のスズメが枝に集まり、一斉に鳴き声を上げた。その数は普段の比ではなく、湊の行く道を盛大に歓迎するかのような光景であった。湊はこの異様な光景に少し驚きつつも、温かな雰囲気に包まれながら歩みを進めた。

祠と老女の祈り

家へ向かう途中、湊は道端の祠に立ち寄った。そこには、地蔵に生花を供える老女が佇んでいた。彼女は静かに地蔵に祈りを捧げ、その後、遠くにそびえる御山に向かっても長い祈りを捧げた。湊はその光景に心を打たれ、思わず自らも手を合わせ、老女が湊に微笑みかけて「大神さんがお喜びなさるといいね」と告げた。まるで山神を知っているような言葉に湊は驚きつつも、詳細を聞く間もなく、老女は迎えに来た家族の車で去っていった。

アオサギとの邂逅と帰宅

祠を後にした湊は、田んぼの端で一羽のアオサギと出会った。アオサギは長い首と優雅な姿で湊に近づき、まるで湊の帰宅を見届けるかのようにあとをついてきた。湊はその無骨な鳴き声に驚きながらも、アオサギと共に家へ向かって歩んだ。

元の姿に戻った山神

家に到着した湊は、縁側で丸くなって眠る大狼の姿の山神を見つけた。小さな狼から元の姿に戻っていた山神の健やかな寝息を確認し、湊は足音を忍ばせて縁側に近づいた。山神が戻ったきっかけに思いを巡らせる湊を、庭の塀の上からアオサギが静かに見守っていた。

第 9章  神が与えたもうた試練なり

『神庭の日常と播磨の試練』

神の庭での和やかな昼下がり

神庭には滝の音が響き、応龍が滝壺で眠り、霊亀や麒麟もまどろみ、眷属たちもくつろいでいた。山神が縁側で巨体を寝そべらせ、湊と眷属たちは座卓で昼食を共にし、和やかに過ごしていた。

チーズケーキを囲む眷属たちの成長

湊がチーズケーキを取り出すと、眷属たちはそれぞれ異なるケーキを選んだ。セリがスフレ、トリカがバスク、ウツギがレアチーズを選び、湊はニューヨークチーズを食べることとなった。眷属たちは成長し、湊を気遣うほどの成熟を見せていた。湊はその変化に感慨を覚えつつ、皆で楽しむひと時を過ごした。

播磨の来訪と神の試練

食後、播磨が訪れたが、山神は重圧を加えて彼の忍耐を試した。播磨はその試練に耐え、苦労しながらも慎重に楠木邸へと進んでいった。湊は山神の試練が厳しさを増していることに気づきながらも、山神が播磨を気に入っていることを感じていた。

播磨との護符の取引と山神の神託

播磨が座卓につくと、湊は護符の束を差し出したが、播磨はタダで受け取ることを拒んだ。湊と播磨は攻防を繰り広げたが、山神が「早う受け取らぬか」と神託を下したため、播磨はついに護符を受け取った。播磨は礼を述べ、湊からの贈り物を素直に受け入れた。

第 10章  新たなる迷い(?)神

『竜宮門とスサノオの訪問』

湊の清掃と竜宮門への興味

湊が庭の掃除をしている際、竜宮門が目に入った。湊は、以前えびす神が訪れたことを思い出し、竜宮門からの来客を警戒していた。しかし、山神は特に関心を示さず、湊が掃除を続けていると竜宮門の宝珠が光を放ち、川にドーム状の光が現れた。湊が警戒を強める中、若い男神スサノオが姿を現した。

スサノオと湊の対面、酒樽の贈呈

現れたスサノオは、湊と対面し、詫びの印として酒樽を贈った。湊は神の施しをありがたく受け取ったが、酒樽には八つの頭を持つヤマタノオロチが巻きつき、飲みたがっていた。スサノオがオロチを怒り、酒樽から引き離し、オロチを青空に投げ飛ばすという一幕があった。

スサノオの挑発と風の鍛錬

スサノオは湊の風神の力に気づき、彼を試すため風を操るよう挑発した。湊は風を操り、スサノオと風の戦闘を始めるが、スサノオの荒々しい風には苦戦を強いられた。スサノオは神らしい強引さで湊を鍛え、二人の戦闘により神域の風景が荒れ果てる結果となった。

戦闘後の和解と神の試練の終焉

戦いが一段落すると、スサノオは湊の成長を認め、称賛を交えつつも、風神にはまだ遠いと告げた。湊が疲れ果てている様子を見て、スサノオは食事を求め楠木邸に戻ることを提案した。ヤマタノオロチが山神の背に寄り添い、のどかな風景が広がる中、湊とスサノオの鍛錬の一日が幕を閉じた。

『楠木邸での昼食とスサノオの再訪問』

無事帰還と昼食準備

湊が楠木邸に戻ると、安堵のあまり倒れ込みそうになった。スサノオは縁側に腰を下ろし、腹を空かせて湊に食事を要求する。湊は疲労の中、愚痴をこぼしながらも迅速に昼食の準備を整え、大皿に料理を並べた。スサノオは湊の準備に感心しつつ、席に着いた。

食事中の会話とスサノオの味評価

食事が始まると、スサノオは筑前煮を気に入った様子で褒めたが、ナスの煮浸しには好みが合わないと遠慮なく評価した。湊は疲れた体を癒しながら、スサノオの飾らない性格に慣れ親しんだ地元の友人に対するような態度で応じていた。

神の力についての疑問と説明

湊が「神の力を貸す」という表現に疑問を抱き、スサノオにその意味を尋ねた。スサノオは、力は湊の死後に神のもとへ還るものであり、子孫には受け継がれないことを説明した。この返答に湊は安堵し、子孫に神の力が継承される心配がなくなったことを喜んだ。

天照大御神からの力の授与に驚愕

さらにスサノオから、湊が天照大御神からも力を受けていることを告げられた湊は驚愕した。天照が湊に力を貸したことは、スサノオによれば異例のことだった。湊は天照のイメージと実際の居住環境のギャップにさらに驚きを覚えた。

再戦の誘いと湊の怒り

食事の終わりに、スサノオは笑顔で「次の戦闘はいつか」と湊に再戦を提案した。これに対し、湊は理不尽さに怒りを露わにしたが、スサノオはその反応に大笑いし、場は和やかな雰囲気で締めくくられた。

第 11章  いざ尋常に勝負せよ

『楠木邸での将棋崩し対決』

将棋盤の登場と山神の初挑戦

楠木邸のクローゼットには、湊が祖父から引き継いだ立派な足付き将棋盤が保管されていた。掃除を終えた湊は、その盤を使って山神と将棋崩しを楽しもうと提案した。山神は将棋のルールを知らなかったが、湊の簡単な説明に興味を持ち、挑戦を開始した。湊が示したルールは「音を立てずに盤上の駒を運び、多くの駒を取った方が勝ち」というものだった。

山神の苦戦とリベンジの宣言

山神は自信満々に挑んだが、盤の目盛りに爪が引っかかり、駒を倒して音を立ててしまった。湊が交代すると、山神の悔しそうな様子が露わになり、彼は「次こそ必ず勝つ」と宣言して再挑戦を続けた。しかし、五度目の挑戦に至っても、山神は湊に勝てず、湊の箱には駒が満杯となり、山神は連敗を喫した。

風の力を利用したずると湊の応酬

負け続けて苛立つ山神は、風を使って湊の駒を倒すという反則技を使い、音を立てさせた。湊はこれに抗議したが、山神は「駒が行儀悪い音を立てただけだ」と知らぬ顔で返答し、自分の番を強引に続けた。

夕暮れまで続く異種の戦い

やがて湊も山神に対抗して風を使い始め、将棋崩しは風の撃ち合いに発展した。互いに負けじと風を放ちながら駒を動かし続け、勝負は日が暮れるまで白熱したまま続いた。

『実家からの贈り物と神々の反応』

重い荷物の到着と中身の確認

昼前、湊の実家から定期便のクール宅配が届いた。受け取ったダンボールはずっしりと重く、ダイニングテーブル近くに置かれた。湊が蓋を開けると、調味料や地元の名産品が詰まっており、特に醬油の一升瓶と自家製の麦味噌が湊の目を引いた。どれも湊にとって馴染み深い味であり、懐かしさを覚える品々だった。

座敷わらしからの天然石の贈り物

ダンボールの片隅には、座敷わらしからの贈り物である天然石が入っていた。河原で採れる緑色の石で、実家に菓子を送る湊に対する返礼として贈られていた。湊はその石を藤籠に収め、他の石とともに飾ることで実家とのつながりを感じた。

実家用の表札とキーホルダーの梱包作業

湊は、実家用の表札とキーホルダーを新たに梱包した。実家の温泉宿で使用される表札類は、ヒノキ製で香りが漂い、まさに温泉を連想させるものだった。湊はその香りに懐かしさを感じ、山神も鼻をひくつかせていた。また、余分なキーホルダーも一緒に梱包しつつ、実家の宿の規模に対する認識を再確認していた。

木彫りの置物の準備と山神の助力

湊は、木彫りの鳳凰の置物をわらし用の贈り物として用意していたが、作業中に失敗してしまい、仕上がりはひよこに似た形状になってしまった。山神がその置物に祓いの力を付与することで、贈り物としての価値を高め、湊は巾着袋に収めて感謝した。

大型犬用ガムの提供と山神の反応

梱包作業中、湊は偶然見つけた大型犬用ガムに気づき、試しに山神に提供してみた。山神は静かに湊を見つめた後、そのガムを受け取ると、満足そうに嚙み砕き始めた。湊は背筋が凍るような音を聞きながら、無事に山神も喜んでくれたことを確認した。

『座敷わらしへの贈り物と家族のやり取り』

実家への宅配便と木彫りの確認

湊の実家で、彼の母が宅配便を開封していた。巾着袋の中から木彫りの置物が現れ、それを手に取った母は「フクロウ」と判断して喜びながら神棚に供えた。湊の器用さに感心し、彼の活動の広がりに思いを馳せた。

座敷わらしの受け取りと父の反応

供えられた巾着袋が忽然と消え、母が夫に状況を説明した。夫は無人の廊下を見つめながら、座敷わらしの存在を感じ取っている様子であった。母はその姿に微笑み、わらしの喜びを湊に伝えようと考えた。

湊へのメール送信と夫婦のやり取り

母は早速スマホで湊に向けたメールを書き、「わらしが喜んでいた」旨を伝えた。その文面を見た夫は、やや古風な表現に軽くため息をつき、母はその様子に微笑を浮かべながらも満足げであった。

第 12章  祓いたまえ、清めたまえ

『神の庭での異能と日常』

護符の製作と湊の修練

湊は神の庭で護符作りに励んでいた。祓いの力を和紙に込めるための修練を積み、異能の強化を図っていた。山神の助言により護符作りを一時中断した湊は、持続時間が前回よりも少し延びたことに安堵した。努力の成果を感じ、日々の修練を続ける意欲を新たにした。

木彫りの上達と四霊の反応

木彫りもまた湊の日課であった。湊の技術が上達し、鳳凰の彫刻に失敗することも少なくなった。霊亀と応龍も自身の姿をモデルにすることを提案したが、湊はまだ自信が持てず、精進を続けていた。

クスノキへの配慮と水の供給

湊はクスノキの成長を見守り、毎日の水やりに配慮していた。応龍が水の提供を申し出たが、クスノキは自らの意思で急成長を拒んでいたため、湊は手動での水やりを続けることを決意した。

神の配慮による護符洗浄

筆と硯を川で洗うために木桶が必要となり、麒麟が素早く湊に木桶を提供した。霊亀も神水に関心を示し、温かな雰囲気が漂っていた。

穢れに覆われた鳥の飛来と祓いの施し

鳳凰の子たちである野鳥たちが、穢れをまとって飛来した。湊は次々と鳥に祓いの力を施し、穢れを取り除いた。疲れた鳥たちを癒すため、山神が温泉の回復効果を高め、野鳥たちは次々と入浴して回復を果たした。

温泉の掃除と山神の対応

鳥たちの入浴で温泉が濁ったが、山神が即座に清浄化し、温泉を元通りに戻した。湊は山神に感謝し、一同は穢れの影響を完全に払拭できたことに安堵して縁側へ戻った。山神は空を眺め、不快感を見せながらも、湊の平穏を守るため一歩引いた。

第 13章  海の幸をいただきます

『山の庭での食事と神々の会話』

サザエの壺焼きと昼食の準備

湊は風神と雷神からの土産であるサザエを縁側前のコンロで焼き始め、香ばしい醤油の香りが辺りに漂った。雷神は特に香りを気に入り、機嫌よくしていた。湊は、貝殻に日本酒を注いで飲む提案をし、雷神は驚きつつも興味を示した。

カツオのたたきと神々の反応

湊はサザエの他に、カツオのたたきを準備し、特に山神のお気に入りであるポン酢醤油で仕上げた。山神はゆっくりとカツオを味わい、サザエにも夢中であった。食事を進める中で、湊が早食いであることが神々の話題に上り、山神から注意を受けることとなった。

パエリアの調理と湊の料理の腕前

風神と雷神が喜ぶご飯物として、湊はパエリアを作ることにした。彼の実家が温泉宿を営んでおり、幼い頃から家事を教え込まれてきたことが湊の料理の腕を支えている。食材の準備から炊き上げまで手慣れた様子で行い、湊はその味を母の味には及ばないと感じつつも満足していた。

風神の御業での酒の冷却と雷神の温酒

湊は、風神と雷神に純米大吟醸酒を振る舞い、風神が冷酒を作るために御業を用いて酒を冷却した。雷神は自らの力で温酒にし、湊は二人の御業に感心するばかりであった。雷神は湊に自らの力を貸す提案をしたが、湊はそつなく話をかわしていた。

風の精の声と湊の耳を澄ませる練習

風神が湊に「風の声」を聞く方法について話し、湊は耳を澄ませる練習を始めた。風神の子たる風の精たちは湊の周囲に集まり、湊はかすかな音を感じるようになった。風神は、風の精がいずれ湊の声を遠くに届ける助けとなるかもしれないと告げ、湊は気まぐれな風の精と接する難しさを実感した。

神々と湊の歳月の違い

風神と雷神が過去の大陸の動きや自然の変遷について語り、湊は神々の存在の長さに圧倒された。雷神が若き頃のやんちゃを懐かしむ中、湊は途方もない時間の差にただ黙って聞くばかりであった。

第 14章  風の便りはよい便り?

『風の精との遊びと悪霊祓いの旅』

風の精との遊びと誘い

夕方、商店街のアーケード通りを歩く湊は突如風に包まれ、風の精たちと共に過ごすこととなった。温冷交じる風の塊が肩や髪に触れ、様々な音を湊に届けていた。やがて、風の精たちに背中を押されながら、彼は稲荷神社の方向へと誘われていく。

稲荷神社での神事とさらなる導き

神社に到着した湊は、神事が行われている様子を感じ取ったが、人混みを避け家路につこうとした。しかし再び風に背中を押され、知らない道へと導かれる。風の精たちが湖の方向へと湊を導いていることを悟り、彼はその導きに従った。

湖での悪霊祓いと天狐の協力

湊が湖に到着すると、悪霊に取り憑かれた鳥たちが湖周辺で暴れ回っていた。湊が祓いの護符を用いようとしたが、辺りは暗く視界が悪い。すると天狐が姿を現し、彼の視界を一時的に強化。湊は湖面や木々にまとわりつく悪霊の瘴気を視認し、護符を用いて祓い始めた。

悪霊との決着と湖の清浄化

湊は、瘴気が生まれる中心部や湖畔の小屋に護符を送り、悪霊を祓うことに成功する。湖面には平穏が戻り、瘴気に覆われていた湖は再び清らかな状態を取り戻した。天狐は湊の働きに満足げに微笑んで見守り、湊は彼女に感謝の意を示した。

『帰路における湊とツムギの対話と稲荷神社の光』

湖周辺の悪霊祓いと帰路

湊と黒い狐のツムギは、湖で悪霊を祓い終えた後、静かな田舎道を帰路についていた。ツムギは、湖に悪霊が巣食った理由が渡り鳥の増加によるものと説明し、数年間は湖が清浄さを保つであろうと告げた。湊は、清浄が保たれるのが山神の力によるものであると認識していた。

参拝者とお百度参り

湊が山頂の稲荷神社を見上げると、そこから若い男性がよろめきながら出てきた。ツムギは、彼が「お百度参り」を行っている途中であると説明した。青年は体調を崩しながらも、祈願成就のために続けざるを得ない状況にあることをツムギは淡々と語った。人間が定めた神への儀式について、湊はその厳しさに少し戸惑いを見せた。

ツムギとの別れと稲荷寿司の約束

湊は、稲荷神社へ向かうツムギに「稲荷寿司と蕎麦稲荷を用意する」と約束し、ツムギは弾む足取りで神社へと帰っていった。湊は脇道を通り、山沿いを歩きながら家路に向かった。

山の静寂と湊の想い

帰路の途中、湊はある民家でキャンプの準備をしている若者たちを目にした。彼らが、近くの御山には登れないと語っているのを聞き、湊は御山が人々にとって特別な存在であると感じ取った。稲荷神社の明るい灯火と対照的に、暗く寂しい印象を残す御山を眺め、湊は、もし御山が再び人々でにぎわうようになれば、山神の神力が増すのではないかと考えた。

第 15章  近所付き合いは難しい

『楠木邸での清掃、訪問者と稲荷寿司会』

湊の清掃と神々の庭の風景

楠木邸は湊の細やかな清掃によって清潔が保たれていた。庭では応龍が滝壺から湊に水を飛ばし、それを湊が風でミスト状にして落葉樹に散布する独特な水やりが行われていた。やがて昼近くとなり、昨日の天狐からの要望で準備した稲荷寿司と蕎麦稲荷の訪問時間が迫っていた。

隣町の神の眷属たる鯉の訪問

手洗いに向かった湊は、隣町から迷い込んできた神の眷属たる金の鯉と稚魚たちが滝登りの修行に訪れているのを見かけた。銀鯉も姿を現し、稚魚の登りを見守っていたが、あえて手助けはせず、独自の教育方針を貫いている様子であった。

四霊の外出と御守りの提供

霊亀、応龍、鳳凰、そして麒麟が外出の準備を始め、湊は彼らに強力な御守りを提供した。湊がそれぞれの神々に木片を渡すと、彼らは一列になり、川に飛び込み竜宮門をくぐって姿を消していった。

クスノキの変化と山神の覚醒

湊は庭のクスノキが枯れていることに気づき、急いで神水を与えた。しばらくすると、クスノキは再び若葉を広げ、湊はその成長を見守った。そこで久々に山神が目覚め、クスノキの成長を称賛し、庭の滝を元の池に戻すかどうか湊に問いかけたが、湊は景観を気に入っているため滝のままにすることを望んだ。

天狐と眷属の来訪と贈り物の藤

天狐の眷属であるツムギが、白いテンと共に楠木邸を訪れた。ツムギはお礼として小ぶりな鉢植えの藤を湊に贈った。湊は花の美しさを称賛し、男所帯の楠木邸には欠けている花の心の豊かさを感じ取った。

天狐の登場と山神との応酬

ツムギが天狐に切り替わり、山神との間で軽い応酬が交わされたが、食事の時間になると稲荷寿司と蕎麦稲荷が提供され、神々と眷属たちは黙々と食事を楽しんだ。

食事後の談話と今後のバーベキュー計画

食事の場で、湊はバーベキューの計画を持ちかけ、ツムギは果実の提供を申し出るが、湊は以前もらった不老不死の桃に驚き、果実は遠慮した。その代わり、ツムギは狩猟肉の準備を任せると豪語し、会話が和やかに進む中、次回の集まりへの期待が膨らんでいた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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