小説「極東救世主伝説 ―九州大規模攻勢編―」感想・ネタバレ

小説「極東救世主伝説 ―九州大規模攻勢編―」感想・ネタバレ

どんな本?

それは西暦1943年。第二次大戦中のこと。
敗戦が濃厚となった欧州のとある国の国家元首が起死回生の策として用いたのは、敵国だけでなく自国の人間までも生贄とした悪魔召喚の儀式であった。

周囲があきれる中敢行された悪魔召喚の儀式は、周囲の予想とは裏腹に成功してしまう。
召喚された悪魔は超常の力を振るい敵国の軍勢を撃破した。

契約を果たしたことでそのまま帰還するかと思われた悪魔は、自らが斃した兵士を生贄として他の悪魔を召喚する。
悪魔によって呼び出されたため、最初に悪魔を召喚した国家元首と繋がりをもたない悪魔は、最初の悪魔を召喚した国家元首を含むすべての関係者を殺害する。これにより悪魔は契約から解き放たれた。

この瞬間から、人類と悪魔の戦争は幕を開けたのである。

――それからおよそ100年。人類は未だに悪魔と戦い続けていた。

極東救世主伝説

読んだ本のタイトル

極東救世主伝説 少年、異形の機体で無双する。 ―九州大規模攻勢編―
著者:仏ょも 氏
イラスト:黒銀  氏

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あらすじ・内容

少年がその異形を駆るとき――人類が世界を取り戻す戦いが始まる。

第二次世界大戦末期に行われた悪魔召喚の儀によって、世界の在り様は一変した。それから一〇〇年。世界の支配者となった悪魔に対し、人類は魔装機体を生み出し抗っていた。

そんな中、「異なる現代」の記憶を持つ少年・川上啓太は入学した軍学校で、誰も起動すらさせられなかった試作機との適合に成功する。いきなり戦場に派遣された彼は、前世の知識を活かして、今までの常識を覆す戦果を示してしまう。

――それは、人類が世界を取り戻す戦いの始まりだった。

極東救世主伝説

感想

2024年上半期で何度も読み返したこの物語。

この物語は戦争と魔物(悪魔)の戦いを描いた点で非常に斬新である。
特に、啓太が操る蜘蛛の上に人の上半身が乗ってるアラクネのような機体の描写は独特であり、その蜘蛛ようでGのような動きや、砲撃戦の戦い方に魅了される。
ロボット戦記としての魅力はもちろん、転生要素や周囲との勘違いもののエッセンスが加わり、コメディ寄りの物語進行が面白い。

また、敗戦国の国家元首が始めた悪魔召喚から、新たな戦争へと繋がる背景の設定は深く、考えさせるものがある。
作者さん曰く、アーマードコアのリスペクトが多分に含まれてもいるらしい。

人類が巨大ロボットを駆使して魔物に立ち向かうシーンは、一昔前のロボットアニメを彷彿とさせるが、そこに魔物、悪魔といった有機物の要素が加わることで、現代のライトノベルファンにも訴える内容となっていると感じる。

この物語を通じて、人間とは何か、技術の進歩がもたらすものは何かといった深いテーマにも触れられている。
川上啓太の成長と彼が直面する数々の課題、それに対する彼の決断や行動が、今後の物語に大な影響を与えるだろう。

全体として『極東救世主伝説』は、ただのアクションに留まらない、深いメッセージと独自の世界観を持つ作品であった。
そのため、ロボット戦記を楽しむと同時に、量産型の開発や敵である悪魔の思惑など今後の物語の展開が楽しみである。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

極東救世主伝説

川上啓太は作戦開始時刻にコックピット内で待機しており、機械音声による通信を受ける。
川上は試験小隊の一員として、専属のナビゲーターなしで作戦を進行し、通信も限られた相手としか行えない状態である。
司令部や整備班の最上さんからの連絡がなければ、問題なく作戦が開始される。
そして、作戦開始時刻になり連絡がなかったため、川上は作戦を開始する。

作戦は浜辺での戦闘であり、川上は多種多様な魔物が上陸を始める場所を狙撃する。
彼は疲れた魔物を先制攻撃し、自身の機体の能力を活かして敵の反撃をかわす。
この戦いでは川上が高い機動力と火力を持つ機体を操り、魔物の主力を狙撃していく。
魔物たちは狙撃されたことに気づき反撃を試みるが、川上はその攻撃を巧みに避けながら反撃を続ける。
川上は戦場での経験を生かしつつ、自分の行動を冷静に評価し、引き続き戦闘を進行する。

ガイダンス

第二次救世主計画の解説を行う。数十年前、共生派と呼ばれる集団の間に生まれた子供が、悪魔召喚の儀式により魔晶を体内に植え付けられた。この子供は儀式中に襲撃を受けたが、助けられ、魔晶を逆に取り込むことに成功した。この結果、国防軍が子供の持つ特殊な力を研究し、人造魔晶の開発に成功した。現在、この魔晶を用いた人々が国防の主力となっている。

人造魔晶の効果には主に二つある。一つは疑似的なアイテムボックス機能で、魔晶は搭乗者の機体から必要な物品を取り出すことが可能であるが、食糧や水は魔晶の魔力を帯び、他の機体では使用できない。また、物品を収納する際の重量には注意が必要である。もう一つは機体のデバイスキー機能で、搭乗者の魔晶がないと機体は適切に動作しない。魔晶は機体を制御するために必須であり、これがないと機体は無秩序に動く。

これらの情報を基に、所属する組織からさらなる指導を受けることが推奨されている。

一章  入学前夜

川上啓太は、人事担当官との面談前に必要なガイダンスを閲覧し、両親の暴挙によって自身も戦うことができると感謝している。
彼は現在15歳で、特別な才能はないが、前世の記憶があり、一時期天才扱いされていた。
両親は亡くなり、少額の補償金と共に家と土地が自称親戚によって売り払われたが、補償金は妹の学費に使うと決めている。
大学進学には多額の資金が必要であり、彼は進学ではなく、国防軍への就職を選択した。
彼の魔晶との高い適合性が発見され、これが彼の入隊後の待遇にも影響を与えることになる。

さらに、担当官は彼に軍学校への進学を勧める。これにより、彼は給料を受け取りながら教育を受けることができ、卒業と同時に尉官としての地位を得ることができる。
学校指定の寮に移ることが可能で、妹の教育環境も整う。
担当官の甘い提案に対し、啓太は軍学校への進学を決めるが、担当官が何かを隠しているかのようなほくそ笑む様子を見逃してしまう。

川上啓太は、軍学校入学の意思を表す書類にサインし、給料が出る理由を確認した後帰宅した。
軍学校に入る生徒はテストパイロットとしても機能し、機体のデバッグ作業も行うため、給料が支払われることが判明した。
彼は、家を売られたことにより移り住んだアパートに帰り、今後の変化について妹の優菜と話し合った。
優菜は当初、啓太の軍入隊に反対していたが、軍学校に進むことで安全に関する不安が解消され、啓太が尉官としての教育を受けることになるため安心した。
また、引っ越しについても理解を示し、啓太の学校卒業後にアパートから移動する準備をすることになった。
その後、兄妹は久しぶりに外食を楽しんだ。

幕間  妹の視点から  一

優菜と彼女の兄は、養親が他国へのデータ売却を試みたために軍に処刑された後、親戚を名乗る人たちからの脅威にさらされた。
これらの親戚は養親の研究を引き継ごうとし、彼らの居場所を奪うことで、彼らに選択肢を与えないようにしようとした。
優菜と兄はこの状況から逃れるために保護が必要であり、葬儀の場で兄は軍の関係者に接触して保護を求めた。
軍はこの保護を通じて、第三次救世主計画の成功例である彼らを確保し、同時に計画の詳細や彼らの能力を活用することが可能となった。

二章  入学とあれこれ

川上啓太は入学試験に合格し、軍学校に入学した。学校は青梅市にある分校で、設備が整っており、機体の整備や実験が行われる場所である。
一学年の生徒数は100人で、三年制の学校である。
各クラスは成績に応じてAクラス、Bクラス、Cクラス、Dクラスに分かれており、上位クラスの生徒は魔晶の適合率が非常に高い。しかし、全校生徒に足りる機体はなく、主にAクラスの生徒のために年10体の機体が用意されている。
その他の生徒はシミュレーターで訓練を受ける。
啓太は前世の記憶を持つために試験で高い成績を収め、Aクラスに配属されたが、実際には第3位だったため、自分の限界を感じている。

藤田一成は軍学校の入学試験で第二位に入ったが、彼が最も注目しているのは実質的な主席である川上啓太である。
藤田は家の立場を考えながら、啓太とどのように関わるかを慎重に検討している。
彼は啓太が第二師団の推薦を受けて入学したことを知り、その後の接触が難しいと考えている。
また、藤田は自分の家が所属する第七師団と第二師団との関係を考慮しながら、啓太と友好関係を築くか、競争相手として見るかを決めかねている。
彼は家の許可を得た後に行動を起こすことを決めており、それまでは適度な距離を保つつもりである。

川上啓太は軍学校の入学式を終えてAクラスへ向かう途中、一人の少女と交流する。
この少女は赤毛でショートカット、身長約150センチという特徴を持っている。
啓太が入学式の挨拶には特に関心を持たず、他の生徒たちとの反応の違いを感じていた最中、少女から話しかけられるが、啓太は反応しなかった。
少女は啓太の無関心に怒り、声を荒げるが、啓太は彼女の攻撃を軽くかわし、少女を地面に倒してしまう。
これには前世の記憶を持つ啓太の特別な訓練が影響している。
最終的に、少女の状況を把握できずに困惑する中、啓太はその場を去ることを選ぶ。

入学式の後、藤田一成と福原巡嗣は同級生である川上啓太の様子を遠くから観察していた。
彼らは啓太が少女のバランスを崩す様子を見たが、明確な行動は捉えられなかった。
この少女、五十谷翔子は今年の第四席で、啓太に対して競争心を持っていることが伺える。
五十谷は第六師団閥出身で、彼女の派閥は啓太が関連する第二師団の動向に興味を持っている。
一成と巡嗣は啓太が使ったかもしれない技術について推測し、彼に近づくことのリスクを懸念して接触を避けることを決めた。

川上啓太は新鮮な沙羅双樹の花(五十谷翔子のアレ)を至近距離で見ることになったが、紳士的な態度を保ちながら教室に辿り着くことに成功した。
これから始まる初めてのHR(ホームルーム)では、自己紹介が行われる予定で、これによって今後三年間の学生生活が大きく左右されると考えられている。
しかし、川上は軍人としての訓練に重点を置くべきと考えつつ、同期との交流の重要性も感じていた。

担任の教師である久我静香少佐が入室し、自己紹介を促す。教師は簡潔に自己紹介を行い、生徒たちにも同様に名前のみの紹介を求めた。
このプロセスは、生徒同士の不要な情報を削除し、必要最低限の情報交換を促す目的があると考えられる。

川上啓太の番になった時、彼は名前だけを述べたが、久我少佐によって彼の個人情報が詳しく語られることになる。
彼の両親は魔晶の研究員であり、タイで魔族の攻撃により亡くなっていること、川上が生活費を稼ぐために軍に志願したことが明かされた。
この情報公開は、川上が第三師団の壊滅による被害者であることを示し、他の生徒たちに対して、軍人としての責任感を持つよう促す意図があった。

久我少佐は、自己紹介の後にすぐに機体の受領のため格納庫へ移動するよう指示を出し、HRは終了する。
川上は、他の生徒たちとの距離感を考えながらも、まずは機体の受領を優先することを決める。

川上啓太は「魔装機体」と呼ばれる装備を受け取るためにガレージに足を踏み入れた。
彼は通常この装備を「機体」と呼んでいるが、これは一般的に「魔物の死体」を用いるイメージを避けるための略称である。
現代の機体は魔物の死体の基幹部分のみを使用し、人工筋肉や機械で補強されているため、実際に死体が使われている部分は少ない。

彼がガレージに入ったときの反応は「何だ、これ」というものだった。
目の前には、彼が予想もしなかった形状の機体があった。
この機体は新たに採用された「混合型」と呼ばれるもので、川上がこれまでに聞いたことのない種類だった。
この機体は人間と魔物の特徴を融合したような姿をしており、彼はこの事実を受け入れるのに苦労していた。

機体の整備士としての挨拶を交わした川上は、与えられた機体がいかに奇妙であっても、自身の命を守るためには整備士と良好な関係を保つことが重要であると認識している。
彼は新しい機体との付き合い方や、それをどう受け入れるかについて慎重に考えながら前に進むことを決めた。

最上重工業社長の最上隆文は、新入生である川上啓太の礼儀正しい挨拶に対して好印象を持った。
通常、機士となる者は自己主張が強く、我儘であるとされがちであるが、啓太はその例に漏れず、礼儀を重んじる態度を示した。
隆文の会社は機体の武装開発には長けているが、機体製造に関しては評価が低く、新型機体のテストには苦労していた。
そのため、新入生の態度に一定の期待と懸念を抱いていたが、啓太の挨拶はこれを好意的に変え、隆文は少々の誤解を許し、彼の要望に柔軟に対応しようと決意した。

啓太は整備士から自分の専用機である混合型機体の説明を受けた。
この混合型機体は、標準型の武器装備可能性と獣型の機動力を兼ね備えているが、その特異な設計に啓太は疑問を持つ。
機体の特徴としては、重い砲を装備可能であり、遠距離狙撃に特化しているが、それに伴い全体の重さが30トンにもなるという問題がある。
しかし、啓太はこの重さを背負う責任として捉え、使い方を学ぶことを決意する。
さらに、シミュレーターでの試験運用とマニュアルの確認を整備士に依頼し、この新型機体のポテンシャルに挑戦することになった。

三章  シミュレーションからの実戦

啓太はシミュレーターを使用して機体の挙動をテストし、その操作性について検討した。
特に、彼の機体は標準型の武器を装備しつつ獣型の機動力を持ち、これにより狙撃と同時に機動的な動きが可能であることが判明した。
しかし、その独特の動きは周囲から見ると奇妙に映る可能性がある。
さらに、この機体は重火器を装備可能であり、遠距離からの狙撃に特化しているが、接近戦には不向きであり、その点が潜在的な弱点である。
このテストを通じて、啓太は機体の強みと弱みを理解し、それに基づいて今後の改良点や調整が必要であると感じた。

シミュレーター内で非常に高度な操作を行い、報告書の内容を構成していた啓太を見て、隆文は内心で驚愕していた。
啓太の行動は、隆文たちが理想として書いた説明書の内容を実際に体現しており、通常は不可能とされる動作を容易にこなしていた。
これは製作者たちの想像を超えた動きで、啓太からのフィードバックには一回の試行で得られるであろう重要な情報が含まれていた。
隆文はその内容を確認し、啓太が提出した改善案や問題点の指摘を真摯に受け止めた。
これにより、隆文は自社の製品が実際の戦場で求められる可能性を新たに認識し、技術者としての情熱を新たにしたのであった。

授業後に五十谷さんが川上啓太に近づき、軽快なジョークを交えながら彼の配属された新型機体について言及した。
五十谷さんは入試で啓太に敗れたものの、後に彼が戦争の被害者であることを知り、彼に謝罪していた。
彼女は自身の実家が所属する第六師団が啓太が配属される第二師団と連携しているため、啓太とのコミュニケーションを重視していた。
啓太は彼女の進言に乗り、お互いに情報交換を行う間柄となった。

啓太が操る新型機体について、五十谷さんはそれを「ゲテモノ」と表現しながらも、啓太が機体をうまく操れるかどうかを問いかけた。
啓太はシミュレーターでの成績が良好であったことを説明し、五十谷さんはそれを聞いて父親に自慢することを楽しみにしている様子だった。
(それを愛娘から聞かされた父親の心労は、、)

二人は軽い会話を交わした後、それぞれの訓練に向かった。

福岡県糸島市の海岸近くで行われた新型機の実戦テストにおいて、川上啓太は複数の砲撃を実施した。
啓太はターゲットを中心に設定して一方的に攻撃を加えた。
反撃がある場合、彼は蜘蛛のように迅速に避けつつ、続けて攻撃を行った。
この実戦テストでは、啓太が敵との距離を効果的に管理しながら戦場を機動的に移動する様子が見られた。
焼夷弾を使用しての群集攻撃や、各種の砲弾を使った実戦的な応用も確認された。

実際の戦闘をしたため、啓太は訓練として福岡に行ったはずなのに、過剰な状況に置かれたと感じていた。
彼は状況をコントロールしつつ、魔物の上陸阻止という軍事行動に参加する事になっていた。
戦闘後、彼は後方に退避する際に全力疾走を行い、四脚の機動性の調整が必要であることを自覚し、それに関する報告を準備した。

福岡県糸島市で行われた新型機【御影】の実戦テストでは、川上啓太がその操縦者として異常な戦果を挙げた。
テストでは大型の魔物四体、中型六体、小型二十体以上を短時間で撃破し、最終的には焼夷弾を用いて大量の敵に損害を与えた。
これにより第二師団の関係者からは驚きと評価が寄せられ、啓太の動きについて様々な議論が交わされた。

新型機の製造元である最上隆文は、テストの成功に内心で喜びながらも、示された戦果が特異な状況下で得られたものであることを理解していた。
機体の準備としては、予め砲弾を装填した状態で配備され、実際の運用ではあり得ない条件下での運用が行われていたため、通常の戦場での運用とは異なる可能性があった。
そのため、今回のテスト結果が通常の戦場で再現可能であるかどうかは未知数であった。

啓太が示した特異な戦闘スタイルは、視覚情報を基にした独自の操作方法によるものであり、実際には彼独自の能力に依存する部分が大きかった。
それにもかかわらず、第二師団からは新型機の二号機製造の提案があり、実戦テストへの協力の申し出もあった。
これにより、新型機はさらに評価を高めることが期待されている。

最上隆文としては、新型機の成功が企業の存続にも直結しており、彼の管理下での更なる試験と改善が計画されていた。
しかし、啓太自身は戦闘よりも安全な職務を望んでいることに隆文は気づいていない。
これからも新型機【御影】の試験と運用は続けられることになるが、その結果がどのようなものになるかは未だ不透明である。

幕間  それぞれの反応

①藤田一成
藤田一成と巡嗣は、啓太が入学一ヶ月余りで特務少尉として戦場に出たことを聞き、彼の昇進の速さに驚いている。
通常、軍学校を卒業した者は准尉として配属され、一年の実務を経て少尉に昇進するが、啓太はその一年を省略している。
彼が戦場で示した功績は異例であり、公式に認められているため、彼の扱いについてクラスメートたちからは羨望と疑念の目が向けられている。

一成と巡嗣は、啓太が戦争被害者であること、無力な人材と見なされていたこと、彼の機体が特殊な新型であることを知っており、彼を単なる被害者としてではなく、共に戦場に立つふさわしい同胞として扱うことを決める。
二人は啓太との間に適切な関係を築くことを誓い、彼の使う機体についても学びつつ、相互に有益な情報を提供する協力関係を目指すことになった。

②武藤沙織
武藤沙織は、主席として第三師団閥に所属しており、同師団の笠原辰巳と小畑健次郎が啓太が戦場に出た背景について議論していた。
彼らは啓太が派閥に属していないことを利用され、他の生徒たちの実習の機会を遮断する口実として使われたと主張している。
特に健次郎は、家族が戦場で多くを失っており、牟呂口家の再興を目指しているが、彼の周りには重要な支援者や家族が死亡しており、彼には大きな期待がかかっている。

この議論に対して、沙織は健次郎と辰巳の意見に懐疑的である。
彼女は啓太が持つ機体の特殊性と彼の能力を理解しており、彼を同胞として認め、彼らとの距離を置くことを優先している。
沙織自身は、政治的な権謀術数よりも師団の再建を重視し、彼女の家族は彼女に健次郎を支えるような命令をしていない。
彼女は健次郎と辰巳の計画が将来的に問題を引き起こす可能性があると感じており、適切な距離を保つことを選んでいる。

武藤沙織は啓太との距離を縮めるために五十谷翔子との仲良くなることを決意している。
五十谷が選ばれた理由は、彼女の所属する第六師団閥と沙織の第三師団閥との間に過度の敵対関係がなく、彼女の性格が努力を重んじるタイプであること、そして啓太との良好な関係を持っているからである。
沙織は自身の立場を利用し、戦略的に五十谷と接触を図る。
この計画は、五十谷がどう反応するかによって左右されるが、通常は彼女の家族との関係を良好に保つことを選ぶだろう。
沙織はこの接触を通じて啓太に近づく計画を練っており、その過程で彼女の洗練された外見とは裏腹に、戦略的かつ計算高い一面を見せている。

③五十谷翔子
周囲が啓太とどう接するか頭を悩ませる中、五十谷翔子は非常に上機嫌であった。
彼女が喜んでいる理由は、彼女が以前から目をかけていた啓太が実戦で功を成し、昇進したからである。
翔子は自身も昇進できなかったことには少し悔しいものの、友人の成功を素直に祝福する性格の持ち主であった。

翔子はクラスメイトの中で唯一、啓太と親しく接していたため、他のクラスメイトよりも多くの情報を持っていた。
啓太の昇進により他のクラスメイトも彼との距離を詰めようとするだろうが、翔子はこれまでと同じ距離感を保つだけで良いと考えていた。
これにより、啓太が昇進後に擦り寄ってきた人々と、態度が変わらなかった翔子とを比較し、翔子により好感を持つことになるだろう。

五十谷家としては、他派閥との交渉においても主導権を握っている翔子の決定に大きな異を唱えることはないと思われる。
翔子は自身の主導権と友人としての位置を巧みに利用して、今後も啓太を含めたクラスメイトたちとの関係を上手く築いていくであろう。

四章  次に向けて

啓太が魔物に対して焼夷弾を使用し、様々な機体の負担や装備についての調査を行い、無事に任務を終えた後、次回の試験日程が既に決められていたことに不満を持った。
彼は、機体のアップデートや新規装備の開発、再装填の訓練が必要だと主張し、最終的には自らの意見が受け入れられた。
彼の周囲は、彼がいきなり昇進したことに対して戸惑いと好奇心を持ち、彼はその視線に困惑していた。
学校では唯一の友人である五十谷さんが彼に声をかけ、彼が「少尉」に昇進したことが彼自身にも理解された。

啓太は、自分の経験を自慢する気はなく、昇進した事実を他人に自慢することにも興味がなかった。
しかし、五十谷さんは啓太の情報を求め、彼が提示した情報料金五十万円をあっさりと受け入れた。
啓太は、五十谷さんの経済力を過小評価していたことに気づき、彼女の前での情報価値の交渉を進めることになった。
これにより、彼は自らの情報の扱い方について新たな認識を持つことになり、その後の学校生活に影響を与えることとなった。

五十谷翔子とそのクラスメイトたちは、啓太との接点を持つことについて話し合っていた。
彼らは、五十谷が啓太と良好な関係を築いているため、彼女を通じて自然と啓太との距離を縮めることができると考えている。
五十谷は直接紹介することには消極的であり、自分の近くにいることで他のクラスメイトたちが啓太と接する機会が増えるだろうと述べている。
この対話から、五十谷とその友人たちが啓太との関係をどう管理するかについて慎重に考えていることが明らかである。

川上啓太が戦場に出ることになった背景は、彼が唯一のテストパイロットであったため、新型機のデータ収集を目的として軍と最上さんが利害を一致させたためである。
彼が特務少尉に任命されたのは、学生身分で戦場に出ることが許されないためであり、彼の昇進は形式上のものだった。
また、彼が挙げた戦果は、機体の高い性能と事前準備が整っていたために可能だった。
現在は機体の継戦能力を高めるためのテストが予定されている。

五十谷さんに渡した情報には、魔物のデータや使用した兵器の効果が含まれており、これらの情報は第二師団が本来公開したいと考えていたが、忙しさから公開が遅れているだけであった。
このため、五十谷さんは情報の提供を受け、その価値が50万円以上あると評価している。
啓太はこの取引から意外な副収入を得ており、今後もこのような収入があれば戦場に出ることに抵抗がないと考えている。

川上啓太が戦場に出たのは、新型機のテストパイロットであったため、軍と製造者の最上さんがデータ収集を目的として利害が一致したからである。
特務少尉に任命されたのは、学生を戦場に出すためには身分が必要だったためである。
彼が挙げた戦果は、機体の性能と事前準備が完璧だったためであり、彼の継戦能力は現在低いと判断されている。
今後は継戦能力向上のためのテストが行われる予定である。
また、彼の機体に関する情報は、公開が計画されており、最上さんはこれを宣伝の機会と見ている。
五十谷さんはこの情報を重要視しており、彼女の所属する第六師団では魔物との戦闘データが少ないため、提供された情報に大きな価値があるとしている。

川上啓太が特殊な成長を遂げた機体を使用しているため、その機体は量産には向かないと評価されている。
これは機体が一度の戦闘で大きく進化したため、量産モデルの基準には適さないからである。
本来ならばすぐに再び最前線に送られるところだったが、最上さんがこれを止め、機体のさらなる成長を観察するために時間を与えた。
その代わりに川上は、成長する前の混合型機体のシミュレーターを利用して訓練を行っている。
このシミュレーターは非常に人気があり、多くの生徒が使用を望んでいる。
川上は通常の学校生活を送りつつ、シミュレーターで訓練を続けており、平穏な日々を過ごしているが、その平和が続くかは未知数である。

川上啓太は試作二号機が接収されたことを最上さんから聞かされる。
この機体は乗り手が決まっていない試作機であり、量産には向かない評価を受けているため、川上自身は直接関係なく、最上さんも機体が不当に使われることを懸念していた。
最上さんは、試作機が分解されて量産される可能性を不快に思いながらも、軍からは試作機を接収され、それが量産化に向けて活用されることになると説明された。
川上はこれを聞いて、軍が試作機を接収することは合理的な判断だと理解するが、最上さんは技術者としての誇りからその事実を楽しむことができなかった。
最終的に、川上は自身の安全を確保するためにこの情報を信頼できる人々に伝えることを決めた。

五章  それから少しして

川上啓太は、最上から試作二号機が接収された後、わずか二か月で量産型の試作機が完成したと聞かされる。
量産化のプロセスには最上重工業が関与せず、軍が独自に進めたことを最上は不満に思っている。
量産型機体は小型化され、重量が減らされたものの、大型砲の使用が困難になり、実用性が低下している。
この結果、動かせる機士が見つからず、機体はほとんど機能しなかった。
しかし、最上は軍の技術者たちが劣化品を造り、苦労している様子を楽しんでいるように見える。
量産計画が失敗に終わり、第三師団閥の面子が損なわれたことで、川上は第三師団閥からの嫌がらせを受ける可能性があると警告される。
この状況下で、川上は夏季休業期間中の安全対策を考え、家族の安全を確保するための計画を練ることになる。

川上啓太は、自分や妹が学生であり、社会的地位が低いにもかかわらず、第三師団閥からの嫌がらせを受ける可能性が高いことに気づく。第三師団閥は、過去の影響力を失い、資産を食いつぶすしかなくなっており、その焦りから川上に対する攻撃が予想される。彼は、罠を仕掛けて自衛することを考えるが、そのような対応が引き起こす社会的なリスクも理解している。特に、社会的手段で攻撃された場合の対応が難しいと感じている。

川上は、第三師団閥の内部に友人がおり、彼女の協力を得ることで、師団内の攻撃を抑えることを試みる。
このクラスメイトは第三師団閥出身であるが、彼女の家族は師団内の政治闘争には関わらず、純粋に武功を追求する方針を持っている。
彼は彼女に機体の操作方法を教えることで、彼女の家族が他の師団閥との競争に集中し、川上に対する嫌がらせが減ることを期待している。
この取引は、第三師団閥の他のメンバーにも彼が協力的であることを示し、将来的な彼の立場を改善することにも寄与する。

最上隆文は啓太からの報告を受け、彼の計略に感心する。
啓太は、第三師団閥が技術を求めていたため、彼らに技術を提供し、最上重工業にも試験データを提供させることで両方の利益を確保したのである。
隆文は初めは無料で技術を提供することに難色を示したが、最終的には啓太の提案に同意し、技術提供を許可する。
この技術提供により、量産型機体が動かせるようになり、軍は量産型に組み込まれた技術を使った試験データを最上重工業に提供することを承諾する。
一方、啓太は第三師団閥の一部のクラスメイトが量産型の機体を動かす機士に立候補したことに対して懸念を抱く。
彼らが訓練不足で戦場に出てしまうことを懸念し、隆文もその可能性を認める。
このような状況下で啓太は、将来的に戦場での実地訓練が避けられないことを痛感し、シミュレーターでの訓練を繰り返すことになる。

幕間  魔族や魔物についてのあれこれ

啓太が提案したコマンドシステムの導入により、量産型が戦闘動作を行えるようになったため、軍はOSの開発に着手することとなった。
これにより、量産型はさらに複雑な動作が可能となる見込みである。
現状、日本の防衛が限界に達しているため、啓太の活躍の場が減るわけではなく、彼にはさらなる出撃要請が来ている。
隆文も戦場での試験を期待しており、啓太は夏休みに九州での軍事行動に参加することになる。
一方、第三師団閥の連中も訓練に忙殺されるため、啓太の妹優菜に対する襲撃のリスクは低下する。これを啓太は救いと受け止めている。
彼は半月の軍事行動後、残りの期間を妹と過ごすことを心の支えにしているが、無自覚に死亡フラグを立てつつ九州へと出発するのであった。

魔物と魔族についての情報が明らかにされている。
魔族は悪魔から特定の因子を受け継ぎ、その因子に呑み込まれなかった人間が変化した存在で、人間とは異なる特徴を持つが知性や記憶は保持している。
彼らは残忍で、支配地域の人間を虐待している。
一方、魔物は魔族に比べ知性がなく、命令にのみ従う生物である。
魔物の行動は魔族や悪魔からの命令によるもので、その主な目的は人類に圧力を加え、技術開発を促進させることにある。
悪魔は人類が苦境に立たされることを望んでおり、魔族は戦いを好む悪魔とは異なり、一方的な攻撃を好む。
日本に対しては、魔族が悪魔の命令に従いつつも、日本を潰す機会を伺っている。
その一環として、継続的な襲撃を行い、日本を精神的、物質的に追い詰めようとしている。
また、日本が強いと見せかけても、内部の裏切り者がいるため、その危険性を魔族は利用しようとしている。
しかし、日本は新兵器を投入し、その意外性によって魔族や悪魔を驚かせることになる。

六章  予期せぬ大攻勢

魔物が日本を襲う主な理由の一つは「口減らし」である。魔物は魔族によって操られ、食料の消費者でもあるため、食料となる人間や農作物を消費する。
しかし、彼らは自身も繁殖し、消費者としての数を増やすため、食料の供給が追いつかなくなることがある。
魔族はこの問題を解決するため、弱い魔物や食事量と働きが見合わない魔物を選んで日本に送り込む。これにより、食料消費を抑えつつ、日本の国防軍に圧力を加える。

魔物自体は魔族の計画を知らず、ただ命令に従って戦う。
彼らは海を渡り、日本に上陸し、ほとんどが戦闘で全滅するため、戦訓がフィードバックされることはない。
これは魔物の宿命であり、彼らの行動に変化はなかったが、新たに生まれた魔族が魔物の泳ぎ方に疑問を呈し、それによって大型魔物が小型や中型魔物を引っ張るなどの効率的な移動方法が取り入れられることになる。
この新しい戦術により、魔物はより効果的に任務を遂行するようになり、その結果が日本の防衛ラインにどのような影響を与えるかは、すぐに明らかになるであろう。

司令部の一角から声が発せられたのは、啓太が九州に到着してから三日後のことである。
魔物の進軍によって確認レーダーが破壊された時点で、魔物が上陸すると思われる地点に迎撃部隊は移動を開始し、魔物が来る前に展開を終わらせて迎撃の準備を整えていた。
魔物の数の確認が遅れることは仕方のないこととされていたが、実際には敵の数が予想を上回っており、司令部は動揺を隠せなかった。

監視は主に監視船と地上に設置された大型レーダーによって行われており、レーダーの索敵範囲は約300キロで、この範囲内の魔物の動きを追跡していた。
魔物が海を泳いでいる間に一定数が溺死することを軍は想定しており、そのため予測数と実際の数に齟齬が生じることがあった。
観測された魔物の数は大型15体、中型62体、小型約200体で、これまでに観測された中で最大の規模であった。

迎撃部隊の指揮官である芝野雄平大佐は、魔物の数が予想よりも多いことに対して強い動揺を示していた。
通常、魔物の数に多少の増減があることは理解しているが、観測された数は通常をはるかに超えていた。
肉眼で確認した結果、大型が10体、中型が133体、小型が500体以上と、予想を大幅に上回る数であったため、芝野は激怒し、なぜこのような齟齬が生じたのかを疑問視していた。

結局、増えた魔物の数は、大型の上に乗っていた中型や小型が、一体の魔物として数えられていなかったためであり、これまで見られなかった大型も、体力の損耗を抑えて泳いできたため、無事に辿り着けた個体だった。
芝野はどのような理由があろうと、魔物が目の前にいる以上、戦うか退くかの決断を迫られていた。

芝野は脳内でシミュレーションを行い、自身の部隊が一斉砲撃後に大多数の砲兵が魔物の反撃で消し飛ぶ様を想像した。
彼は、敵の数が多過ぎるために反撃を避けられない状況にあると判断し、通常の砲撃でも生き延びることが難しいと認識していた。
そのため、撤退することを検討するが、敵前逃亡の罪を問われるリスクを考慮しながらも、撤退が最善の戦術だと結論付けた。
しかし、孫子の教えにもあるように、撤退は戦場で最も難しい戦術の一つであり、特に敵に捕捉されている状況での撤退は困難である。
芝野は、状況を理解し、戦うことなく撤退することに非常に懸念を抱いていた。

この状況の中、啓太が特務小隊を率いて意外な戦果を挙げる。
彼は大型魔物を狙撃し、瞬く間に多数の魔物を討伐した。
啓太の行動により、第二師団の士気は一変し、全軍が攻撃準備に移ることとなった。
芝野と第二師団は、啓太の活躍を見て、全面攻勢を選択する覚悟を固めた。
これにより、撤退することなく戦闘を継続する道を選んだのであった。

時は少し遡り、芝野中心の指揮所が混乱している中、前線で戦う機士たちは恐怖に歪んでいた。
直接戦闘を行う彼らは、大型よりも数が多い中型の魔物の方が恐ろしいと感じており、参謀部の戦力比に基づく理論値と実戦経験のギャップを痛感していた。
現状、中型の魔物が一三三体おり、標準型が二〇機、獣型が四〇機の迎撃部隊では撃破可能な中型魔物の数が六〇体に過ぎなかった。
この数字だけで戦力が不足していることが明らかであり、ランチェスターの二次法則に則れば、一方的に潰される可能性が高かった。

このため、撤退を検討する中で、佐藤泰明少佐は状況の深刻さを理解し、全機士と機体を無事に撤退させるためのタイミングを計っていた。
撤退計画は、通常の戦車隊を殿とし、芝野大佐も含めて撤退することで、後の戦いへの準備を保つことを目指していた。

しかし、この計画は一学生である特務少尉が単独で魔物を撃破し始めるという予期せぬ事態によって変更を迫られる。
この学生が操る新型機は驚異的な戦果を上げ、指揮所でもその行動に注目が集まった。
最終的には、学生の活躍を目の当たりにした佐藤や他の部隊は撤退ではなく全面的な攻撃を選択することになり、新たな展開を迎えた。
佐藤は、撤退するのではなく、共に戦うことを決意し、その戦闘準備を進めた。

七章   BOY OF DESTINY

啓太は軍学校に入学したばかりで、通常魔物の攻勢の規模を把握しておらず、大型が多数いることに対しても動じなかった。
予定通りの時間に出撃し、敵を排除する任務を遂行した。彼には中途半端に知識があるため、「一度に襲い掛かる敵の数は少ない」と考え、恐れることもなかった。
そのため、もし不当な命令が出たら反抗するほどの意志を持っていたが、彼の周りには多くの機士と兵士がおり、数的にも有利であるため、特に問題は感じていなかった。

啓太は機体の性能を最大限に活かし、大型の魔物を優先的に攻撃した。
彼の機体は前回の戦闘からさらに成長し、射撃や機動性が強化されていたため、魔物の反撃を容易にかわすことができた。
その結果、大型を含む魔物を効率良く討伐し、司令部は彼の活躍に驚愕した。

司令部からは戦闘の続行命令が出されたが、すでに啓太は必要な戦果を挙げており、追加の出撃は必要なかった。
彼はそれを「ラッキー」と捉え、余裕を持って戦場を後にした。
このように啓太の戦闘は、彼の冷静さと機体の性能向上が大きく貢献し、僅かな時間での圧倒的な成果をもたらした。

啓太が出撃する少し前、隆文は整備ハンガー内で驚愕していた。
司令部から響く声は防衛戦の緊迫を物語っており、予想されていた魔物の数の倍以上が侵攻している現状に直面していた。
これにより、隆文は彼らの防衛戦がこれまでの想定を大きく超えるものであることを悟った。
魔物は大型が十体、中型が百三十三体、小型が五百体以上という圧倒的な数であり、第二師団の戦力はそれに対抗しうるものではないと考えていた。
隆文は、この規模の戦闘が初めてであり、過去の自分の決断を疑い始めた。
彼は、川上啓太が試験的に使用している魔装機体の試験が終わる前に、戦場に投入してしまったことに対する後悔を感じていた。
隆文は自分の行動が間違っていたと認識し、大型を一体か二体撃破できれば魔装機体の採用が確実だったと振り返ったが、今後の展望は極めて暗いものとなっていた。
しかし、川上啓太が予想以上の活躍を見せた結果、状況は一変し、第二師団は全面攻勢に出ることを決断した。
これにより、最上重工業の製造した魔装機体は大勝利を収め、隆文の未来に希望がもたらされた。

啓太がハンガーに帰投した際、整備士たちが非常にハイテンションで彼を迎えた。

絶望的な戦況で、啓太が操縦する機体が実戦で顕著な活躍をしたからであった。
整備士たちは、以前は動かないと言われていた機体が成功を収めたことに興奮を隠せず、啓太に対して感謝の意を表していた。
しかし、啓太はその場の興奮に水を差すように、砲弾の補給や砲身の確認を優先するよう指示を出し、戦闘がまだ終わっていないことを強調した。
彼の指摘により、最上を含む整備士たちは現実に戻り、必要な確認作業に取り掛かることとなった。

戦闘後、啓太は帰宅の途中で妹へのお土産を選ぶことを思い出す。
前回の試験でお土産を買うのを忘れてしまった経験から、今回は様々なお土産を選び、最上の支援を受けて購入した。
帰宅後、啓太は妹にお土産を渡し、彼女の喜ぶ顔を見て兄としての責任を果たしたことに安堵する。
家族の笑顔を前に、啓太はこれからも戦い続ける決意を新たにした。

幕間  リザルト的なお話

緒方勝利大将は九州から東京の国防軍本部へ報告のために訪れ、皇族で統括本部長の浅香涼子大将と会談した。
啓太の戦果が大型一〇体、中型五〇弱、小型一〇〇以上と報告されたが、焼夷榴弾の効果確認より魔物の殲滅が優先された。
緒方は啓太を正式な少尉とし、特務中尉への昇進を提案し、浅香もこれを支持したが、啓太がこの昇進をどう受け取るかは未知数である。
軍人の家系ではない啓太自身は、戦功よりも金銭と平穏な生活を望んでいるが、これを直ちに与えることはできない。
また、浅香と緒方は、国防軍が啓太に過度に依存する状況を避けるために他師団からの人員派遣を決定した。
後に、浅香は啓太の戦闘映像について、その異常な挙動について話し合う予定であるが、すぐには結論が出ない様子であった。

エピローグ

久我少佐から呼び出された啓太は、防衛戦での功績が評価され、正式な少尉への任官と勲章の授与が決定し、特別賞与が支給されることを告げられた。
啓太はこれに対し、昇進や叙勲には素直に喜びつつも、正式な少尉としての任官には複雑な感情を抱いていた。
自身がまだ完全に教育を受けていない学生であるため、その責任ある立場に対して自問自答している。
さらに、自分が昇進する理由として上層部の総意に疑問を感じ、ただのテストパイロットである自分が昇進することに不自然さを感じた。
彼は勲章と特別賞与の支給のみで済ませることを提案し、機体が優れていたから成し遂げられた戦果であると強調した。
最終的に、久我少佐は啓太の考えを理解し、彼の立場に配慮するよう上層部に進言することを約束した。

職員室での会話を通じて、川上少尉が機体の性能による戦果を自己の功績として認めず、謙虚な態度をとっていることが明らかになる。
しかし、機体【御影】を操作できるのは現時点で川上少尉しかおらず、その点が評価されている。
上層部は川上少尉にさらに機体に乗りデータを集めてほしいと考えているが、川上少尉はそのことに対して否定的な意見を持っている。
また、試作二号機が接収され、ダウングレードされた量産型が多数生産されている現状についても触れられており、その結果として中途半端な機体が大量に出来上がっていることが指摘されている。
さらに、第一師団や第二師団から新たな機体の納入先として期待されているが、素材の確保が課題となっている。
その解決策として、必要な素材を軍から提供してもらうことが提案されている。
最終的に、素材の調達に成功すれば、川上少尉と最上重工業が作った機体がさらなる評価を得る可能性があり、これをもって新たな機体の製造につながる展望が示されている。

幕間  妹の視点から  二

川上優菜は、兄しか家族がおらず、二人で暮らしている。
兄は軍学校に通い、夏休みに九州への出張から帰ってきて昇進した。
兄の活躍により、多くの魔物を倒し、昇進するに至ったが、その報酬として得た金額に優菜は少し不満を感じている。
兄が機体のおかげで成果を上げたことを理解しつつも、その功績をもっと評価されても良いと考えている。
優菜は兄を支え、一緒に時間を過ごすことを楽しみにしており、夏休み中は兄と共に過ごす計画を立てている。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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