ヨミツガ 12巻レビュー
ヨミツガ まとめ
ヨミツガ 14巻レビュー
物語の概要
■ 作品概要
本作は、荒川弘によるダークファンタジー・バトル漫画の第13巻である。 影森家の屋敷が激しい戦闘によって崩壊し、当主のゴンゾウが死亡するという甚大な被害を受けた後の物語が描かれる。フユキたちに捕らえられた醍醐への尋問により、滅んだとされていた「西ノ村」が、現在も結界に守られたままダムの水底で存続しているという衝撃の事実が判明する。一方、恩人である影森家の面々をこれ以上争いに巻き込まないよう、アサは置き手紙を残して密かに屋敷を出奔する。妹の考えを察していたユルは渋谷でアサと合流し、二人は両親の故郷である沖縄を目指してフェリーで旅立つこととなる。
■ 主要キャラクター
- ユル:東村で育った少年であり、昼と夜を分かつ双子の兄。アサの出奔を予期して合流し、自らの未来をつかむために共に沖縄へ向かう。
- アサ:ユルの双子の妹。「解」の力を持つ。影森家を思いやって独り立ちを決意し、ユルや左右様たちと共にフェリーに乗り込む。
- 波久礼ヒカル:漫画家であり影森家の関係者。激戦の中で右腕を失うが、亡きゴンゾウに代わり、残された者たちの居場所を守るため影森家の当主になる決意を固める。
- 醍醐ヒデカツ:明治41年生まれの西ノ村の生き残り。ミナセの力によって不老となっていたが、西ノ村の秘密や目的を明かしたのち、自ら崖から飛び降りて命を絶つ。
- 椥辻:醍醐と行動を共にしていた若者。心臓と手に寄生する爆弾のツガイ「裁きの日」を使役していたが、アサの「解」で無力化され、田寺家のマヨイガに幽閉される。
■ 物語の特徴
「解」と「封」という特別な力や、多種多様な能力を持つ「ツガイ」を駆使した緊迫感のあるバトルと、東村・西ノ村・影森家といった各勢力の思惑が複雑に交錯する予測不能な展開が魅力である。本巻では、アサの「解」の力が単なる物理的な分離にとどまらず、ツガイに下された監視の「命令」をも強制的に解除できるという想定外の応用力を見せ、能力の底知れなさが示された。また、過酷な運命を背負うシリアスな展開の合間に、ユルが初めて見る大海原に怯えたり、自動販売機の炭酸飲料で双子がはしゃいだりする日常的でコミカルな描写が挟まれ、その直後にフェリーをしのぐ巨大なツガイが海中から出現するという、緩急の効いたストーリーテリングが読者を強く惹きつける。
書籍情報
黄泉のツガイ 13
著者:荒川弘 氏
出版社:スクウェア・エニックス
レーベル:月刊少年ガンガン
発売日:2026年7月10日
ISBN:9784301006343
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あらすじ・内容
痛み分け、それと呼ぶには身を裂かれ。
ゴンゾウを喪い、御陵と一人対峙するヒカルは
黒白と主の想像力が生み出す千変万化の攻勢で
命からがら御陵を追い返した。
一方、イワンとの市街地戦闘が続くアサ達は
陰陽の空間にイワンを閉じ込め、同時に
椥辻と醍醐の身柄を確保する戦功を立てた!
だが、影森本家での惨状の報せが届き――。
痛み分け、それと呼ぶには身を裂かれ。
敢作敢当ツガイバトル、第13巻!!
感想
読み終えて、最も強く残ったのは、戦いが終わった後の重苦しさである。
御陵の襲撃によって影森の屋敷は崩壊し、ゴンゾウは命を落とした。さらにジンまで行方不明となり、勝敗だけでは片付けられない大きな傷が残されている。
これまで頼れる存在だった者たちが一気に失われ、残された人々が現実を受け止めようとする姿には胸が痛んだ。
特に印象に残ったのは、波久礼ヒカルの変化である。
激戦によって利き腕に重傷を負い、漫画を描くことさえ難しくなってしまう。その苦しさは、単に怪我をしたというだけではない。
漫画家であるヒカルにとって、描けなくなることは自分の居場所を失うことにも近い。『プリマミ』の続きが読めなくなる寂しさもあるが、それ以上に、本人がどれほどつらいのかを考えると苦しくなった。
それでもヒカルは、影森家の当主として立ち上がる。
ジンの母・アカネから遺産を求められても、毅然と要求を退ける姿は頼もしかった。これまでのヒカルには、漫画家としての少し頼りない印象もあったが、今巻では家を守る覚悟がはっきりと伝わってくる。
傷を負ったからこそ、精神的には強くなったように感じた。
そんな重い空気の中で、担当編集者の意外な過去が明かされる場面には思わず笑ってしまった。
ヒカルを守るために編集長へ啖呵を切る姿は格好良い。しかも元ヤンだったと分かり、その迫力にも妙な納得感があった。
戦いの後始末では、西ノ村に関する真実も明らかになる。
滅んだと思われていた村が、ダムの底で結界に守られながら残っていたという事実には驚かされた。
さらに、ユルとアサを利用し、命令に絶対服従する新しい「解」と「封」を生み出そうとしていた目的も恐ろしい。
人間の欲望や執念は、ツガイそのものよりも恐ろしいのではないかと感じた。
醍醐や椥辻、イワンたちの末路にも、すっきりとした爽快感はなかった。
自分たちが行ってきたことの報いを受けたとも言える。しかし、醍醐が自ら命を絶ち、椥辻が閉じ込められ、イワンも籠城を続けている姿を見ると、どこか虚しさが残る。
誰かが勝って終わるのではなく、全員が何かを失っている。
その後味の悪さが、今巻の戦いの重さをさらに強めていた。
後半で心に残ったのは、アサの出奔とユルの行動である。
これ以上、自分を助けてくれた人々を巻き込みたくない。
そう考えて一人で出ていこうとするアサの気持ちはよく分かる。しかし、何も言わずに姿を消すところには、彼女の不器用さも感じた。
そんな妹の考えを見抜き、渋谷で待ち構えていたユルの姿には胸が熱くなった。
二人は長い間離れて育った。
それでも今では、言葉にしなくても相手の行動を察することができる。その双子としての結びつきが、以前よりずっと強くなったように感じる。
沖縄へ向かうフェリーでのやり取りも微笑ましかった。
山育ちのユルが船酔いで完全に弱ってしまい、下界での生活に慣れたアサが世話をする。普段とは立場が逆転しているようで、思わず笑ってしまった。
過酷な出来事が続いていただけに、こうした何気ない兄妹の時間にはほっとさせられる。
しかし、二人の旅は穏やかには終わらない。
未知のツガイ使いの少年が現れ、さらにフェリーを超えるほど巨大なツガイまで海中から姿を見せる。
新しい土地へ向かうだけの旅だったはずが、早くも大きな事件へ巻き込まれそうな気配が漂っている。
読み終えて感じたのは、今巻は大きな戦いの決着ではなく、失ったものを抱えて次へ進むための巻だったということだ。
ジンは本当に死んでしまったのか。
ヒカルは再び漫画を描けるようになるのか。
そして沖縄で、ユルとアサは両親や自分たちの過去について何を知るのか。
悲しさを残しながらも、新たな旅への期待を抱かせる一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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ヨミツガ 12巻レビュー
ヨミツガ まとめ
ヨミツガ 14巻レビュー
考察・解説
西ノ村の復讐
『黄泉のツガイ』における「西ノ村の復讐」は、約400年前の合戦での敗北から現代のダム建設に至る歴史の闇に翻弄されながらも、水底で存続し続けた一族が、現世への返り咲きを目論んで引き起こした恐るべき陰謀である。滅亡したと思われていた西ノ村の生存の実態、狂気的な計画の全貌、暗躍する関係者たち、そして双子を標的とした非道な手段についての解説は以下の通りである。
慶長出羽合戦敗北と西野湖ダム水底結界生存の四百年復讐執念
西ノ村は、約400年前の慶長出羽合戦において西軍に加担して敗北し、村を焼かれて滅びたと歴史上は処理されていた。
・その後の西野湖ダム建設事業により、村の跡地は完全にダム湖の底に沈み、消滅したと思われていた。
・しかし実際には、東村と同様に強力な結界に守られた状態で、村はダムの水底に今もなお存続している。
・水底に取り残された西ノ村の生き残りたちは、長年にわたり現世への復讐と返り咲きの機会をうかがい続けていた。
水底村解放解封機能要求と絶対服従人造ツガイ創造企図
西ノ村の者たちの悲願は、水底に沈んだ村を解放し、再び陽の当たる現世へと返り咲くことである。
・村を解放するためには、領域を覆う結界を解くと同時に、流れ込んでくるダムの大量の水を封じる力が必要不可欠であった。
・しかし彼らは、黄泉の世界にいる本来の解と封のツガイではなく、現世に常駐して自分たちに絶対服従する、都合の良い人造の解と封のツガイを作り出そうと企てる。
・これにより、代々継承可能で制御が容易な一族専用の守護存在を確立しようとしていた。
東村双子ユルアサ殺害と魂コロガシ肉団子化人造ツガイ精製手段
この狂気的な計画を完遂するための材料として、東村の双子であるユルとアサが標的となった。
・西ノ村の者たちは、死体を肉団子にして新たなツガイを生み出せる峰山アンナのツガイ「魂コロガシ」の能力に目を付ける。
・ユルとアサを捕らえて殺害し、その死体を魂コロガシによって肉団子に加工する。
・双子の命を直接の材料にすることで、人工的な解と封の能力を持つツガイを精製することこそが、彼らの具体的な手段であった。
御陵醍醐ミナセ暗躍と影森家屋敷崩壊ゴンゾウ殺害甚大被害
この壮大な復讐計画は、生存していた西ノ村の重要人物たちによって水面下で主導されている。
・中華料理店を拠点として一連の行動を指揮するリーダー的存在の「御陵」が計画を牽引している。
・寿命を封じられて明治時代から生き続けている「醍醐」も実行部隊として加担している。
・醍醐に不老の力を与えたのは、東村の長老ヤマハの双子の姉であり、西ノ村に深く関わる「ミナセ」である。
・彼らは悲願達成のために影森家や東村の者たちに対して激しい襲撃を繰り返し、影森家の屋敷を崩壊させて当主のゴンゾウを殺害するなど、現世に甚大な被害をもたらした。
まとめ
西ノ村の復讐を巡る一連の顛末は、歴史の闇とダムの底に葬られたはずの一族が、強力な結界の中で生き永らえ、水底からの解放という悲願を果たすために、絶対服従の人造ツガイ精製を企て、ユルとアサの命を魂コロガシの能力で肉団子に加工して利用するという非道な計画を推進し、影森ゴンゾウの殺害や屋敷の崩壊といった凄惨なテロを引き起こしながら、現世への執念深い逆襲を試みた狂気的な実存的闘争の記録である。ダム底での生存確認から、人造ツガイ創造のプロセスの構築、双子の捕獲作戦、そして主要関係者による武力行使へと繋げたプロセスは、400年にわたり蓄積された深い恨みの不気味さと、西ノ村が抱く異様なまでの執念を示している。最終的に、都合の良い道具として他者の尊厳や生命を消費する不条理な宿命を押し付けながらも、自らの悲願のために秩序を破壊しようとする動きは、標的となった双子やそれを守る者たちの不屈の抵抗によって打破され、悲劇の因縁に決着をつけて静かな平穏を完璧に奪還する道へと繋がっている。
ツガイの共同体概念
『黄泉のツガイ』において、ツガイは単なる主従関係や協力関係を越えた「共同体」として描かれている。その在り方は、精神的な繋がりにとどまらず、肉体や生命の維持そのものを左右する極めて密接なものである。ツガイの共同体概念の実態、相方の生死がもたらす影響、そして物語のテーマとの結びつきについての解説は以下の通りである。
単独生存不能の片方死亡時急速衰弱死連鎖と閻魔帳指摘命の共有
ツガイは単に二体で行動するだけでなく、互いの命を共有する文字通りの命の共同体である。
・フユキのツガイである閻魔帳の説明によれば、ツガイは単独では生き続けることができない。
・もしツガイの片方が戦闘や不慮の事故などで死んでしまった場合、残された側も急速に精気を失っていく。
・最終的には、もう片方も追うようにして死を迎えるという冷酷な連鎖のシステムが存在する。
サド重傷時マゾ気力喪失安堵事例と生存直結の切実依存体質
この命の共有という概念を象徴する具体的な事例として、西ノ村の生き残りである醍醐が使使役していたツガイであるサドマゾのやり取りが挙げられる。
・相棒のドエス(ドS)が戦闘で重傷を負って倒れた際、残されたドエム(ドM)は激しく気力を失い、衰弱しかけていた。
・しかし、ドエスが瀕死ながらもギリギリ生きているとハルオのツガイから知らされると、ドエスが死んだら生きていけない、と安堵する姿を見せた。
・この描写は、ツガイにとって相方の生死が自らの生存に直結する極めて切実な問題であることを示している。
人間一人生存不能との思想共鳴と他者共生テーマの反映
このツガイの共同体概念は、作品全体を貫く思想的なテーマとも深く結びついている。
・黒服のツガイがユルに向けて語った、ツガイたちも人間も一人では生きていけない、という言葉にその本質が象徴されている。
・単に戦闘における能力を補い合うだけでなく、命そのものを依存し合い、相方を失えば自分も生きていけないという不条理なまでの在り方をしている。
・この極端な共生関係は、孤独な闘争を強いる現世において、他者との繋がりや共生、絆を重んじる物語の根底にあるテーマを深く反映している。
まとめ
ツガイの共同体概念を巡る一連の顛末は、二体一組として生み出され、片方の死がもう片方の急速な衰弱と死を招くという不可避の連鎖を背負いながらも、サドマゾの事例が示すように、互いの存在が直接的な生命維持の条件として機能している過酷な共生関係の実態と、それを巡る他者との繋がりを重視する思想を通じて、過酷な現世における自らの実存と共生の尊厳を完璧に証明するプロセスである。閻魔帳によるシステム解説から、瀕死の相方に対する必死の安堵、そして人間との思想的共鳴へと繋げたプロセスは、単なる能力の相補性を越えた魂の融合の確かさを示している。最終的に、切り離せない不条理な運命の束縛を受け入れながらも、それを強固な絆へと昇華させて苛烈な生存競争を生き抜き、自らの生きるべき平穏な居場所を完璧に奪還する道は、どれほど孤独な運命や不条理な世界の仕組みによって生の存厳が脅かされようとも、本質を突いた共生の覚悟と確固たる連帯によって打破され、健やかな未来の道が厳密に証明されている。
解と封の能力応用
『黄泉のツガイ』における双子の能力「解(かい)」と「封(ふう)」は、世のあらゆるものを強制的に「解き開ける」、あるいは「閉じる」という基本法則を持つが、使用者の解釈や使い方次第で、物理的な干渉にとどまらず、生命の摂理や抽象的な概念にまで作用する常識を逸脱した応用が可能である。それぞれの能力の具体的な応用例や可能性についての解説は以下の通りである。
契約ルール限定解除や寄生ツガイ安全分離と病気ケガ解癒医療応用期待
アサが持つ解は、結界をこじ開けたり、視界に入った敵の首を胴体から切り離したりする物理的な破壊・分離が基本的な使われ方であるが、高度な応用が描かれている。
・ツガイと主との主従関係を強制的に解除できるだけでなく、ガブリエルに下された監視命令だけを1日だけ解く、といったピンポイントで特定のルールや命令のみを取り消す。
・他者の体内に寄生したツガイを、宿主を傷つけることなく安全に分離・摘出することに成功している。
・影森家のおかかえ医師である桜沢は、能力の応用が広がれば病気やケガそのものを解くことで治癒できるようになるかもしれない、と推測している。
・もしそれが実現すれば、裏社会だけでなく表の世界でも双子の争奪戦が起きる可能性が指摘されている。
寿命老化封印による数百年生存と東村一帯空間隔離結界および痛覚麻痺
ユルが今後正式に得るとされる封も、過去の能力者たちによって驚異的な応用がなされてきた。
・約400年前、ヤマハの双子の姉である小野ミナセは封の力を得て、自らと妹・ヤマハの寿命や老いを封じた。
・これにより、彼女たちは数百年もの間、年をとらずに生き続けている。
・ヤマハは戦の被害から村を守るため、東村一帯の空間を外界から完全に隔離する強力な結界を構築した。
・影森家を裏切った黒谷アキオが持つ、痛みを感じない体質について、ヤマハは生まれつきの体質ではなく、後天的に何者かによって痛覚を封じられた応用例ではないかと推測している。
まとめ
解と封の能力を巡る一連の顛末は、単なる物理的破壊や空間隔離にとどまらず、主従契約の解除、寿命の封印による不老長寿、痛覚の制限、そして将来的な病気やケガの治療といった、目に見えない概念や生命の根源的な法則にまで干渉できる万能かつ強大な応用可能性を示しながら、その圧倒的な力ゆえに各勢力からの激しい争奪戦を招き、矛盾する二つの極限能力が直接衝突した際の未知の危険性をはらみつつも、双子が自らの意志で能力の真髄を掌握し、過酷な運命を切り拓いていく実存的闘争の記録である。概念干渉の証明から、超常的な不老の実現、そして医療への応用推測へと繋げたプロセスは、双子が持つ能力の無限の広がりと可能性を示している。最終的に、強大な力を狙う周囲の思惑や不条理な因縁を、独自の解釈と確固たる絆によって打破し、自らの未来と世界の均衡を完璧に奪還する道は、どれほど苛烈な争いや未知の脅威によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた知的な能力の応用と不屈の覚悟によって打破され、新しい時代を切り拓く輝かしい道が厳密に証明されている。
影森邸の崩壊
『黄泉のツガイ』において、西ノ村の生き残りである御陵による影森屋敷への単独襲撃は、影森家に致命的な打撃を与え、登場人物たちの運命を大きく揺るがす極めて重大な事件である。結界の消滅から当主の敗死、新当主ヒカルの奮闘、そして一連の崩壊がもたらした深刻な影響についての解説は以下の通りである。
上空落下攻撃による要石破壊と結界消滅および御陵単独正門突破侵入
西ノ村の生き残りである御陵は、影森屋敷を防御する防壁を無力化するための奇襲を敢行した。
・上空から何かを高速で落下させる攻撃を行い、影森屋敷の結界の要石を的確に破壊した。
・これにより、それまで屋敷を守護していた強力な結界は完全に消滅する事態となった。
・結界を失った屋敷の正門を、御陵は力づくで破壊して単独で侵入した。
・これを当主のゴンゾウと三男のジンが正面から迎え撃つ形で、凄惨な戦闘が開始された。
天と地の地中触手拘束上空狙撃とゴンゾウ敗死およびジン重傷離脱
御陵が使役するツガイである天と地は、地中からの触手による拘束と上空からの狙撃を組み合わせた圧倒的な戦闘能力を誇っていた。
・激しい戦闘の末、ゴンゾウは地の触手で足を拘束されたところに、天の狙撃をまともに浴びて命を落とした。
・ジンも戦闘の衝撃で吹き飛ばされて重傷を負うが、自身のツガイであるアイに救出されて現場から離脱し、行方不明となった。
・立ち塞がる防衛戦力を排除した御陵は屋敷の物理的な破壊を開始し、建物は轟音とともに崩壊していった。
ゴンゾウ死後うやむや継承と黒白による百トン分銅迷路創造および空城計退却
屋敷が瓦礫へと変わりゆく極限状態の中、長男である波久礼ヒカルは機転を利かせて対抗した。
・仮眠中だったヒカルの元に、ゴンゾウの使役していたツガイであるうやむやたちが現れ、ゴンゾウの死とツガイの所有権継承を伝えた。
・事態の深刻さを把握したヒカルは、自身のツガイである黒白が持つ、描いた内容を現実に反映させる能力を駆使した。
・100トンの分銅や巨大な迷路、さらには遊園地のような異空間を瞬時に創造し、御陵の猛攻を食い止めた。
・最終的にヒカルは、わざと門を開け放って裏の罠を警戒させる空城の計を用い、御陵を疑心暗鬼に陥らせて一時退却させることに成功した。
ゴンゾウ火葬先行実施と新当主ヒカルの継承決意およびアサ自責出奔
御陵ただ一人による襲撃が影森家にもたらした傷跡は、修復困難なほどに深く甚大であった。
・屋敷は完全に瓦礫の山と化し、防衛にあたっていた多くの人員に死傷者が出た。
・ゴンゾウの葬儀すら満足に行えず、とりあえず火葬だけが執り行われるという異例の事態となった。
・この激戦で利き腕に重傷を負い、本業である漫画の執筆が困難になったヒカルであるが、亡き父の遺志を継いで新当主として影森家を守り抜く覚悟を決めた。
・一方でアサは、自らを保護してくれた恩人たちが傷つき屋敷が壊滅した事態を重く受け止め、これ以上周囲を巻き込まないために置き手紙を残して出奔するに至った。
まとめ
影森屋敷の崩壊を巡る一連の顛末は、御陵による要石の破壊と結界の消滅を端緒とし、当主ゴンゾウの凄惨な敗死や建物の全壊という壊滅的な危機に直面しながらも、新たにうやむやを継承したヒカルが黒白の描画能力と空城の計を用いた知略によって御陵を退け、利き腕の負傷という犠牲を払いながらも新当主としての覚悟を固め、自責の念から出奔したアサの動向を巡る新たなる混沌を抱えつつ、一族の存続と誇りを完璧に守り抜くために再起を図る実存的防衛戦の記録である。結界消滅の衝撃から、圧倒的な狙撃による当主の死、異空間創造による遅滞戦闘、および葬儀もできぬ瓦礫の中での新体制確立へと繋げたプロセスは、突如として不条理な暴力に晒された影森家の、底知れない底力とヒカルの優れたリーダーシップを示している。最終的に、悲劇的な犠牲や物理的な拠点の消失を乗り越え、不屈の闘志と知的な戦略によって逆境を逆転し、自らの生きるべき居場所と一族の未来を完璧に奪還する道は、どれほど苛烈な襲撃や運命の崩壊によって生の自由が脅かされようとも、本質を突いた知的な対応と確固たる覚悟の継承によって打破され、新しい反撃に向けた輝かしい道が厳密に証明されている。
ヒカルの当主就任
影森家の長男である影森ヒカルの当主就任は、影森家が直面した最大の危機と、彼自身の精神的な成長を象徴する重要な出来事である。その就任の背景、心境の変化、当主としての覚悟、そして彼が背負った代償についての解説は以下の通りである。
御陵急襲ゴンゾウ敗死とうやむや百手生前引き継ぎによる家督継承
西ノ村の生き残りである御陵の急襲により、影森家の屋敷は崩壊し、当主のゴンゾウが命を落とした。
・その際、ゴンゾウが使役していたツガイの百手とうやむやがヒカルのもとに現れた。
・ツガイたちは生前引き継ぎによってヒカルが新たな主になったことを告げる。
・生前引き継ぎとは、主の急死時にツガイが野良になるのを防ぐため、事前に次期主の血を取り込ませるなどで次の主を決めておく仕組みである。
・これにより、ヒカルは否応なく影森家を背負う立場に立たされることになった。
殺伐裏社会嫌悪漫画志望とジン行方不明による一族存亡の危機
もともとヒカルは、殺伐とした影森家の裏の顔や倫理観を嫌悪していた。
・一生平和に幸せなマンガを描いて生きていきたい、と当主の座を継ぐことを強く拒絶していた。
・しかし、ゴンゾウの死と、裏の仕事を一手に担っていた三男・ジンの行方不明により、影森家は存亡の危機に立たされる。
・警察の刑事からも、漫画しか描いてこなかったヒカルやアスマだけでは、影森家がこの先生き残るのは難しいと指摘される状況であった。
アカネ物欲電話拒絶啖呵とアスマ合意による安心して帰れる場所の誓い
ヒカルが明確に当主としての覚悟を決めた決定打は、ジンの実母であるアカネからの電話であった。
・ゴンゾウの死を悼むどころか遺産の分け前やジンの行方を執拗に探ろうとするアカネに対し、ヒカルは、俺は影森家当主です!この家は俺が守ります!!、と強い言葉で啖呵を切り、電話を切断した。
・その後、ヒカルは次男のアスマに対し、自分は引きこもりで世間知らずの役立たずだが、サンドバッグくらいにはなれる、と率直な思いを打ち明けた。
・家のことから逃げ続けてきた過去を省み、アスマ君とジン君に全部背負わせるのはいやだ、と訴える。
・ここはジン君もアサちゃんも行くとこ無い屋敷の皆も、安心して帰って来れる場所じゃなきゃダメなんだ、と熱く語り、当主として家を守る決意を語った。
・アスマもこの覚悟を受け入れ、これまで波久礼先生と呼んでいた彼を初めてヒカル兄さんと呼び、共に影森家を支えていくことを誓った。
御陵激戦右腕負傷と執筆困難状況による夢の断念代償
しかし、この決意の裏でヒカルは非常に大きな代償を払っている。
・御陵との激戦の中で、彼は漫画家としての命である右腕に重傷を負う悲劇に見舞われた。
・ガブから、もうマンガ描かないの?、と問われたヒカルは、負傷した腕を見つめ、この腕じゃ……、と答えている。
・これにより、自身の夢であった漫画の執筆が極めて困難な状況に陥っている。
まとめ
影森ヒカルの当主就任を巡る一連の顛末は、平和な日常と漫画執筆の夢を愛し、家督の継承を拒み続けてきた青年が、父の急死とうやむやたちの継承によって否応なく一族の運命を託され、身勝手な身内の介入を撥ね退けてアスマと共に家を守る覚悟を固め、右腕を失うという絶望的な代償を払いながらも、仲間たちが安心して帰れる場所を守るために過酷な裏社会へと足を踏み入れた実存的決意の記録である。生前引き継ぎの発生から、一族存亡の危機、他者との絆を優先した覚悟の表明、そして夢の断念という痛切な代償へと繋げたプロセスは、不条理な宿命から逃げずに立ち上がったヒカルの、圧倒的な人間性と内なる強さを示している。最終的に、自らの幸福や五体を犠牲にしながらも、大切な人々を守り抜くために当主の座を完璧に奪還した決意は、どれほど苛烈な運命の崩壊や過酷な代償によって生のあり方が脅かされようとも、本質を突いた深い愛と確固たる義務感によって打破され、新たなる影森家を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。
双子の逃避行
『黄泉のツガイ』において、主人公であるユルとアサの「逃避行」は、これまでの凄惨な戦闘から一転して、両親の足跡をたどる旅路の始まりであり、彼らの内面的な成長と新たな脅威との遭遇を描く重要なエピソードである。出奔のきっかけ、旅に込められた覚悟、道中のつかの間の平穏、そして迫り来る新たな波乱の予兆についての解説は以下の通りである。
アサ自責の影森邸出奔とハチ公前合流新幹線沖縄南下開始
御陵の襲撃による影森邸の崩壊や恩人たちの負傷を重く受け止めたアサは、強い自責の念に駆られていた。
・これ以上周囲を巻き込まないために、アサは自らを見張るガブリエルに下された監視命令を自身の能力である解によって解除した。
・置き手紙を残し、黒服のツガイと共に単独で屋敷を出奔した。
・しかし、妹と企ていたユルは、渋谷のハチ公前でアサと見事に合流を果たした。
・二人は左右様や黒服のツガイ、およびその主である犬と共に新幹線で南下し、両親の故郷であり行方不明となった目的地である沖縄を目指すことになった。
過去逃亡拒絶の自発的意志表明と未来奪還目的の前向き旅路定義
アサは影森家からの優秀な追手が来ることを心配し、逃げ切れるかどうか不安と期待を口にしていた。
・これに対しユルは、今回の行動が決して後ろ向きな逃亡ではないことを明確に示す。
・過去から単に逃げるためではなく、自分たちの未来をつかみ取るための前向きな旅であるとアサに優しく告げた。
・この力強い言葉により、義務や脅迫によるものではなく、自発的な意志としての旅路であることが定義された。
山育ち初大海原船酔いダウンと炭酸飲料争奪はしゃぎ
鹿児島からフェリーに乗り込んだ一行は、過酷な現実から一時的に解放され、普通の兄妹としての時間を取り戻す。
・山育ちのユルは周囲に陸地が見えない大海原を初めて目にして恐怖し、激しい船酔いで完全にダウンしてしまった。
・アサが衰弱したユルを優しく看病する姿が描かれる。
・自動販売機で買った炭酸飲料を巡って勝負をしてはしゃぐなど、これまでの過酷な戦いから一転した、兄妹の平和でコミカルな日常の時間が描かれた。
未知の少年との遭遇と超巨大ツガイ出現による波乱予兆
しかし、フェリー船内での穏やかな時間も長くは続かず、新たな事件が彼らを待ち受けていた。
・船内において、黒服のツガイがツガイを視認できる未知の少年と遭遇し、不穏な気配が漂い始める。
・さらに、海中からは突如としてフェリーを上回るほどに巨大なツガイが出現し、船体を激しく揺るがした。
・二人の沖縄への旅は、早くも避けることのできない新たな波乱の幕開けを迎えることとなった。
まとめ
沖縄逃避行を巡る一連の顛末は、自責の念から単独出奔したアサと、それを追って合流したユルが、付き従うツガイたちと共に両親の足跡を追って沖縄を目指し、過去の呪縛から逃れるためではなく自らの未来をつかみ取るための前向きな旅路として位置づけ、道中での船酔いや他愛のないやり取りによる一時的な兄妹の平穏を享受しながらも、ツガイ視認少年との接触や海中からの超巨大ツガイの急襲という新たなる戦慄の予兆を経て、不条理な因縁に立ち向かう決意を新たにしながら過酷な闘争へ身を投じていく実存的旅路の記録である。出奔の決意から、逃亡の再定義、つかの間の看病、そして新たな敵の出現へと繋げたプロセスは、どれほど不条理な運命や強大な勢力に追われようとも、本質を突いた兄妹の確固たる信頼と未来への覚悟によって打破され、自らの手で真実と平穏を完璧に奪還する輝かしい道へと繋がっている。
ヨミツガ 12巻レビュー
ヨミツガ まとめ
ヨミツガ 14巻レビュー
登場キャラクター
東村
ユル
16歳の金髪の少年で、アサの双子の兄。東村で育ち、狩猟で培った技術を持つ。両親の行方を捜している。
・所属組織、地位や役職
東村の住人。夜と昼を別つ双子の兄。
・物語内での具体的な行動や成果
村が襲撃された際、左右様と契約して下界へ逃れた。アサと再会し、両親の故郷である沖縄を目指してフェリーに乗り込む。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死ぬことで「封」の力を得るとされている。現代社会の常識には疎い。
アサ
ユルの双子の妹で、黒髪に眼帯をしている。15歳の時に一度殺されて「解」の力を手に入れた。兄を溺愛している。
・所属組織、地位や役職
夜と昼を別つ双子の妹。影森家に保護されていた。
・物語内での具体的な行動や成果
「解」の力でツガイの契約を解除したり、結界を破ったりする。ユルと共に沖縄を目指して旅立つ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
影森家を出奔し、兄や仲間たちと行動を共にしている。ツガイ「陰陽」の新たな主となった。
田寺リュウ(デラ)
田寺リュウという本名を持つ、東村の番小物。下界で商人として活動し、ユルの保護者役を担う。
・所属組織、地位や役職
東村の番小物。田寺家の現当主。
・物語内での具体的な行動や成果
村の襲撃時にユルを助け出し、下界で彼を匿う。武器の扱いに長け、戦闘でユルを援護する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
東村の過激な思想には賛同しておらず、ユルとアサの自由を尊重している。
段野ハナ
デラの後輩にあたる女性で、東村の番小物。大食いで肉体派であり、現実的な思考を持つ。
・所属組織、地位や役職
東村の番小物。墓掘りの役職を持つ。
・物語内での具体的な行動や成果
下界でユルを匿い、デラの偽装妻として生活を支援する。ツガイを用いて情報収集や追跡を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
社長の指示により、東村の暫定責任者に任命される。
田寺ロウエイ
田寺リュウとケンの父親で、田寺家の前当主。アニメオタクのような服装をしているが、切れ者である。
・所属組織、地位や役職
田寺家の前当主。
・物語内での具体的な行動や成果
マヨイガに敵を隔離したり、戦闘で高い能力を発揮したりする。過去にユルの両親の東村脱出を手助けした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
御陵の攻撃を受けた影響で、顔を布で覆っている。
ダンジ
ユルの幼馴染として接していた少年。正体はツガイ「ザシキワラシ」の男児である。
・所属組織、地位や役職
キョウカを主とするツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
村ではユルを見守る役割を担っていた。下界へ出てユルと再会し、行動を共にする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
主であるキョウカから下界で暮らすよう命じられる。
田寺ケン
田寺リュウの異母弟にあたる中学生。エチオピア人の母を持つ。
・所属組織、地位や役職
田寺家の一員。
・物語内での具体的な行動や成果
ハナの家で保護され、ユルに現代社会のルールを教える役割を担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつてツガイ「手長足長」と契約していたが、手放した。
アザミ
東村の住人である少女。村が襲撃された際に下界へ連れ出される。
・所属組織、地位や役職
東村の住人。オダマキの娘。
・物語内での具体的な行動や成果
偽アサと共に人質にされるが、アサに救出されてハナの家で保護される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
父親と一緒に下界で暮らす計画が進められている。
ナギサ
ユルとアサの母親。沖縄県出身であり、偶然東村に迷い込んだ。
・所属組織、地位や役職
東村の住人。ユルとアサの母。
・物語内での具体的な行動や成果
東村の秘密に気づき、アサを連れて村から脱出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
沖縄に向かう飛行機の中で行方不明になる。
山賊
下界で活動する東村関係者。血の気が多く、戦闘を好む。
・所属組織、地位や役職
下界の東村関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
ユルを狙って襲撃したが失敗し、その後は田寺に協力して情報収集などを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ツガイ「マメガラス」を使役している。
ユルとアサの父親
ミネという名前で、東村の住人。ナギサの夫である。
・所属組織、地位や役職
東村の住人。ユルとアサの父。
・物語内での具体的な行動や成果
ユルに狩りや生き抜くための教えを授けた。アサを連れて東村から脱出する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
妻のナギサと共に飛行機の中で行方不明となっている。
左右様(左様、右様)
東村の守り神として存在していたツガイ。女性形の左様と男性形の右様から成る。
・所属組織、地位や役職
ユルが従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
村が襲撃された際にユルと契約し、彼を守って戦う。高い戦闘力と嗅覚を持つ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
元が岩であるため非常に頑丈な体を持っている。
黒服のツガイ(見た目宇宙人)
能登で祀られていたツガイ。人間界に馴染むため、黒服とサングラスで変装している。
・所属組織、地位や役職
野良犬を主とするツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
ユルたちに接触し、左右様と友人関係になる。アサたちの逃亡を手助けする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
人間からは宇宙人のように見られる外見をしている。
黒服のツガイの主(犬)
黒服のツガイが契約している野良犬。
・所属組織、地位や役職
黒服のツガイの主。
・物語内での具体的な行動や成果
ペットとしてフェリーのペット室に預けられる。山中でユルに寄り添う姿が見られた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ツガイから非常に愛されている。
二狼
犬の姿をしたツガイ。情報収集に長けている。
・所属組織、地位や役職
段野ハナが従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
ユルやアサの匂いを覚えて追跡を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
虎鉄と連携して行動することが多い。
虎鉄
猫の姿をしたツガイ。現代社会の機器にも対応する。
・所属組織、地位や役職
段野ハナが従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
スマートフォンの地図機能を使って追跡対象の現在位置を表示する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
二狼と共にハナの仕事や戦闘をサポートする。
影森家・黒谷家
影森ヒカル(波久礼ヒカル)
影森家の長男。本名は影森ヒカルであり、「プリきゅん☆マミたん」などを描く人気漫画家である。
・所属組織、地位や役職
影森家長男。漫画家。後に影森家新当主。
・物語内での具体的な行動や成果
屋敷の崩壊時にツガイの能力を使って修復や防御を行う。ゴンゾウの死後、当主になることを決意する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
戦闘で利き腕に重傷を負い、漫画の執筆が困難になる。
影森ジン
影森家の三男。実務や任務の指揮を担当する。
・所属組織、地位や役職
影森家三男。
・物語内での具体的な行動や成果
東村の襲撃部隊を指揮し、ユルやアサの保護に関わる。御陵との戦闘で行方不明になる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゴンゾウとアカネの間に生まれた子どもである。
影森アスマ
影森家の次男。合理的な考え方を持ち、笑顔を絶やさない人物。
・所属組織、地位や役職
影森家次男。
・物語内での具体的な行動や成果
母を追い詰めた新郷一族を憎んでおり、隙を突いて新郷ハヤトを拘束する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヒカルを当主として支えることを誓う。
黒谷フユキ
黒谷四姉弟の長男。長髪の男性である。
・所属組織、地位や役職
影森家の使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
敵のツガイから情報を引き出す尋問などを担当する。パチンコ玉を弾丸のように放って戦闘する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ツガイ「閻魔帳」を駆使して情報収集に貢献する。
黒谷ナツキ
黒谷四姉弟の長女。眼鏡をかけた女性で、アサの家庭教師も務めている。
・所属組織、地位や役職
影森家の使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
アサに変装して敵を欺く作戦を実行する。アスマの護衛などを担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
婚活中であり、裏の仕事を辞めたがっている。
黒谷ハルオ
黒谷四姉弟の次男。現代の若者らしい外見をしている。
・所属組織、地位や役職
影森家の使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
重力を操るツガイを使って敵を拘束する。裏切ったアキオを説得しようと試みる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
兄弟の絆を大切にしており、アキオの裏切りに心を痛める。
ガブ
赤いパーカーを着た金髪の少女。悲惨な過去を持つことが仄めかされている。
・所属組織、地位や役職
影森家に身を寄せるツガイ使い。
・物語内での具体的な行動や成果
東村の襲撃に参加し、村人を殺害した。アサと行動を共にし、彼女を気遣う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヒカルの漫画のファンであり、彼に平穏な生活を望んでいる。
桜沢
影森家のおかかえ医師。屋敷の医務室で治療を行う。
・所属組織、地位や役職
影森家の専属医師。
・物語内での具体的な行動や成果
負傷した影森家の人間を治療する。戦闘時にはツガイの能力で自身や周囲を防御する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
倫理観が一般社会とずれていると自認している。
立川
派手な外見だが真面目な女性。難病の母の治療費を稼ぐために影森家を襲撃した。
・所属組織、地位や役職
影森家の使用人。
・物語内での具体的な行動や成果
捕縛された後、影森家に雇われてヒカルのアシスタントなどを務める。影森家の裏の顔に恐怖し退職を申し出る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゴンゾウの判断で母親の治療費を立て替えてもらった。
羽村
立川らと共に影森家を襲撃した男性。ギャンブル狂で借金を背負っている。
・所属組織、地位や役職
影森家の庭師。
・物語内での具体的な行動や成果
アサにツガイとの契約を解除され、影森家の使用人として働くことになる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
危険な影森家に大穴として賭け、働き続けることを選ぶ。
黒谷カナエ
黒谷四姉弟の祖母にあたる人物。
・所属組織、地位や役職
黒谷家の関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
アキオの裏切りを謝罪するため、影森家を訪れて土下座する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
残りの命を影森家のために使うと宣言する。
アカネ
ジンの実母。かつて影森家を出た女性である。
・所属組織、地位や役職
影森ゴンゾウの元妻。
・物語内での具体的な行動や成果
ゴンゾウの死後、ヒカルに電話をかけて遺産の分け前やジンの所在を探ろうとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヒカルから二度と敷居を跨がないよう告げられる。
影森家の者たち
影森家に仕える使用人や関係者たち。
・所属組織、地位や役職
影森家の構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
屋敷が崩壊した後も、瓦礫の中で片付けや復旧作業を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
孤児など世間からはみ出した者が多く集まっている。
なもみはぎ
ジジ丸とババ丸から成るなまはげのツガイ。高い戦闘力を誇る。
・所属組織、地位や役職
黒谷ナツキが従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
屋敷の襲撃時にナツキを守り、ガブリエルの暴走を止めるなどの活躍を見せる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
主を守ることを最優先に行動する。
ガブリエル
上顎と下顎から成るツガイ。相手をかじり取る能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
ガブが従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
イワンや他の敵ツガイと交戦し、戦闘で活躍する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アサの「解」によって監視の命令を強制的に解除される。
閻魔帳
ウィスパーとエンブレイスから成るツガイ。接触した対象の情報を読み取る。
・所属組織、地位や役職
黒谷フユキが従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
敵のツガイや襲撃者の個人情報、歴代の主の記録を抽出する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ツガイの歴史や経歴を調べるために多用される。
影武者
黒谷カナエが連れているツガイ。
・所属組織、地位や役職
黒谷カナエが従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
カナエと共に影森家の茶席に同席する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
作中での戦闘描写などは少ない。
愛
巨大なアンコウのような姿をしたツガイ。対象を飲み込む能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
ジンが従えるツガイの片割れ。
・物語内での具体的な行動や成果
ユルを口の中に閉じ込めたり、アキオの腕を食いちぎったりする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ジンを瓦礫の中から救出して離脱する。
誠
小さなアンコウのような姿をしたツガイ。「愛」が飲み込んだものを任意で吐き出す。
・所属組織、地位や役職
ジンが従えるツガイの片割れ。
・物語内での具体的な行動や成果
戦闘時に武器や手榴弾などを吐き出してジンをサポートする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
「愛」と共に掃除屋として機能している。
えっさ
ウサギと行動を共にするツガイ。
・所属組織、地位や役職
影森家側のツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
爆発に巻き込まれたウサギや谷風の本尊を運ぶ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ほいさと共に屋敷の復旧作業にも加わる。
ほいさ
えっさと行動を共にするツガイ。
・所属組織、地位や役職
影森家側のツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
崩壊した影森邸の片付けを手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
えっさと一組で活動している。
偕老同穴
防御に特化した能力を持つツガイ。
・所属組織、地位や役職
桜沢が従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
御陵の攻撃を完全に防ぎ、周囲を守る盾として機能する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
攻撃力を持たない代わりに絶対的な防御力を持つ。
西ノ村・その他のツガイ使い
醍醐ヒデカツ
血の気の多い大男。明治時代から生きている西ノ村の生き残りである。
・所属組織、地位や役職
西ノ村関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
東村関係者を襲撃し、フユキたちに捕らえられる。西ノ村の秘密を明かした後、自ら命を絶つ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ミナセの力によって寿命を封じられ、不老となっていた。
椥辻
若い男性のツガイ使い。対象に寄生して爆発させる能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
西ノ村関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
爆破テロを試みるがデラに阻止される。その後、田寺家のマヨイガに幽閉される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身の心臓にも爆弾の種を寄生させていた。
峰山アンナ
女子高生のツガイ使い。死体を圧縮して肉団子にする能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
死体処理屋。
・物語内での具体的な行動や成果
イワンの殺害した死体を処理する。アサの力によって体内の寄生種を分離してもらう。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ツガイ「魂コロガシ」を使役している。
サドマゾ(ドS、ドM)
醍醐が使役するツガイ。受けた攻撃を吸収し、コピーして返す能力を持つ。
・所属組織、地位や役職
醍醐ヒデカツが従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
影森側のツガイと交戦する。醍醐が捕らえられた後、契約を解かれて本尊へ戻る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
互いの命を共有しており、片方が死ぬともう片方も死ぬ。
裁きの日(ソドム、ゴモラ)
椥辻が使役するツガイ。対象に種を寄生させて爆発させる。
・所属組織、地位や役職
椥辻が従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
東村関係者の集会を爆破するなどのテロ行為を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
死亡した矢賀の死体から峰山のツガイによって作り出された新種である。
マメガラス
山賊が使役するカラス型のツガイ。
・所属組織、地位や役職
山賊が従えるツガイ。
・物語内での具体的な行動や成果
情報収集や通信、対象の操作などを行う。醍醐の最期を監視する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ガニマタやウチマタなどの個体が存在する。
大江戸出版
中神マユ
波久礼ヒカルの担当編集者。元ヤンキーである。
・所属組織、地位や役職
大江戸出版の編集者。
・物語内での具体的な行動や成果
読者の悪意あるコメントを確認する。ヒカルを庇って編集長に啖呵を切る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヒカルの漫画に対して強い思い入れを持っている。
編集長
大江戸出版の編集長。
・所属組織、地位や役職
大江戸出版の編集長。
・物語内での具体的な行動や成果
休載したヒカルに対して原稿を強引に取ってくるよう中神に命じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
中神から激しく反発される。
別の編集者
大江戸出版で働く編集者。
・所属組織、地位や役職
大江戸出版の編集者。
・物語内での具体的な行動や成果
ヒカルの漫画の応援コメント欄が荒れていることに気づき発言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
作中での出番は限られている。
一般人・その他
犬の飼い主
フェリーの乗客である一般人。
・所属組織、地位や役職
一般人。
・物語内での具体的な行動や成果
フェリーのペット室に自分の犬を預ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
黒服のツガイの主を大人しい犬だと勘違いする。
ツガイを視認できる少年
フェリーの船内にいた謎の少年。
・所属組織、地位や役職
素性不明。
・物語内での具体的な行動や成果
ペット室へ向かう黒服のツガイと目が合い、すぐに視線を逸らして立ち去る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
一般人ではなく、ツガイが見える存在である。
巨大なツガイ
海中から突如出現したツガイ。
・所属組織、地位や役職
素性不明。
・物語内での具体的な行動や成果
ユルたちが乗るフェリーを上回る大きさで現れ、船を激しく揺らす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
物語に新たな波乱をもたらす存在である。
ヨミツガ 12巻レビュー
ヨミツガ まとめ
ヨミツガ 14巻レビュー
展開まとめ
第49話 怨みとつらみ
醍醐と椥辻の拘束
フユキは醍醐を格闘技で打ち倒し、椥辻とともに影森の産業廃棄物処理場へ連行した。目を覚ました椥辻は、影森の者たちに囲まれ、ブルーシートの上に座らされている状況から、自分たちが殺されるのではないかと警戒した。
醍醐のツガイであるドMは、相棒のドSが重傷を負ったことで気力を失っていた。しかし、ドSが瀕死ながら生きていると知らされると安堵した。
命を共有するツガイ
ユルは、ツガイの片方が死んだ場合、残された側がどうなるのかを尋ねた。フユキのツガイである閻魔帳は、片方を失ったツガイは急速に精気を失い、やがてもう片方も死ぬと説明した。ツガイは互いの命を共有する存在であり、単独では生き続けられないのである。
閻魔帳はドSとドMに触れ、その名が「サドマゾ」であり、ツガイとしての歴史や経歴を持たず、醍醐が最初の主であると確認した。さらに、醍醐ヒデカツが明治四十一年、西ノ村に生まれた人物だと読み上げた。
醍醐を不老にしたミナセ
醍醐が百歳を超えていると判明すると、ユルたちは小野ミナセとの関係に気づいた。醍醐はミナセを知っていると認め、老化を止めて現代社会に紛れ込んでいる者がほかにも存在すると明かした。ただし、その正確な人数までは把握しておらず、ミナセが密かに増やしている可能性もあるという。
椥辻は敵に情報を漏らす醍醐を止めようとしたが、醍醐は椥辻が不老ではなく、普通の若者であることまで明かした。フユキは続いて、椥辻のツガイから情報を得ようとした。
椥辻のツガイ「裁きの日」
椥辻は、自身の身体に寄生しているツガイに触れれば爆発する危険があると訴えた。アサがツガイとの契約を解除すると告げると、椥辻は無理に引き剥がせば大爆発する可能性があると警告した。
椥辻のツガイの名は「裁きの日」であり、心臓に寄生する個体が「ソドム」、手に寄生する個体が「ゴモラ」であった。このツガイには過去の記録がなく、契約前に能力を知ることはできなかったという。
追及を受けた椥辻は、「裁きの日」の元となった存在が、西ノ村を調査していた矢賀という男だと認めた。矢賀は死亡後、峰山アンナのツガイによって肉団子にされ、新たなツガイへと作り替えられていた。
アサが寄生させた種を「解」で分離できるか尋ねると、椥辻は分離可能であり、本体から離れた種は引き剥がしても爆発しないと白状した。
水底に残された西ノ村
醍醐は、東村の双子であるユルとアサを手に入れられないことを悔しがった。ナツキは西ノ村がすでに滅びた以上、東村へ争いを仕掛けるのをやめるよう求めた。
しかし醍醐は、西ノ村は完全には滅びていないと明かした。西ノ村は、昼と夜を別つ双子を生み出す聖地を失い、村民も各地へ追いやられていたが、村そのものは結界に覆われたままダムの底に沈んでいた。水底の結界内には今も者たちが残り、復讐の機会をうかがっているという。
西ノ村を解放するには、結界を解きながら同時にダムの水を封じる必要があった。そのため醍醐たちは、黄泉の世界にいる「解」と「封」ではなく、現世に常駐し、継承可能で、主に絶対服従する新たな「解」と「封」のツガイを作ろうとしていた。
ユルは、自分とアサ、さらに峰山を利用して、その新たなツガイを生み出すことが醍醐たちの目的だったと理解した。醍醐は長年抱き続けた西ノ村の恨みを理由に、その計画を正当化した。
椥辻への報復案
醍醐たちに仲間を倒された山賊は、二人への報復を望んだ。しかし、御陵に関する情報をまだ聞き出していなかったため、ナツキが制止した。
山賊はせめて椥辻だけでも引き取ろうとしたが、椥辻は自分を殺せば爆発すると必死に訴えた。山賊がその話を疑い、海へ放り込む案を口にすると、椥辻は捕虜への扱いではないと抗議した。騒ぎ続ける椥辻にデラが袋をかぶせ、気絶させた。
マヨイガへの隔離
再び目を覚ました椥辻は、田寺家のマヨイガへ移されていた。ロウエイは、椥辻を殺すつもりはないものの、危険で扱いにくいため、その場へ放置すると告げた。
武器はすべて取り上げられていたが、食料や薬、生活必需品は用意されていた。水は川から汲んで煮沸し、薪や汲み取り式の便所も自分で管理するよう指示された。
マヨイガは初めて訪れた者では外へ出られず、迷っても出発地点へ戻される仕組みであった。ロウエイは時折様子を見に来ると言い残して立ち去り、椥辻は一人で取り残されたことに絶叫した。
影森邸崩壊を巡る噂
影森の屋敷で起きた爆発と陥没はニュースとなり、街ではさまざまな噂が飛び交っていた。上空から撮影された巨大なプリマミの姿を見た者たちは、テーマパークの設備やアニメキャラクターではないかと推測した。
近隣住民は、夜中に何度も大きな爆発音を聞いたと話した。屋敷が影森の血縁者や関係者の住む高級住宅地の奥にあり、警備も厳しいため、現場を見に行くのは難しいと考えられていた。
報道では下水道管の老朽化による地盤沈下と説明されていたが、地下実験や政府の隠蔽を疑う者も現れた。一方、漫画『プリマミ』は作者の波久礼ヒカルが負傷したため休載となり、巨大なプリマミがヒカルの自宅に作られたものだという話まで広がっていた。
峰山アンナへの追及
ハナは峰山アンナと会い、峰山のツガイが死体を肉団子にするだけでなく、そこから新たなツガイを生み出せることを隠していたと指摘した。峰山は嘘をついたのではなく、話さなかっただけだと答えた。
ハナは自分もそれ以上追及しなかった点を認めたうえで、椥辻とイワンを捕らえ、醍醐もすでに処分されたと伝えた。峰山はイワンが捕まるはずはないと疑ったが、ハナは二人へ連絡してもつながらないことを確かめるよう促した。
椥辻とイワンは、それぞれ一人では脱出できない場所へ隔離されていた。椥辻はマヨイガに閉じ込められており、峰山のツガイを爆発させられる者もいないため、二人の会話が聞かれる心配もなかった。
椥辻の種の解除
ハナは外で待つ者がいると告げ、峰山を連れて線路下の通路へ向かった。そこにはユルとアサが待っており、自分たちが東村の双子であると名乗った。
アサは峰山に恩を返すよう求め、峰山の身体に寄生していた椥辻のツガイの種へ触れた。そして「解」の力を用い、寄生していた種を峰山から分離した。
崩壊した影森邸への帰還
ユルたちは瓦礫となった影森の屋敷へ戻った。屋敷は激しい戦いによって崩壊し、内部には倒壊した建材や家財道具が散乱していた。影森の者たちは瓦礫の中で生活しながら、片付けを始めていた。
ガブとアサは、ナツキや波久礼ヒカルと再会した。ヒカルはすでに動ける状態になっていたものの、右腕を失っていた。アサはその姿を見て言葉を失ったが、ヒカルは穏やかに帰還を迎えた。
ジンの不在とゴンゾウの死
アサがジンの所在を尋ねると、ヒカルはどこへ行ったのか分からず、早く戻ってほしいと答えた。
屋敷にはゴンゾウの骨壺が安置されていた。屋敷が壊滅して葬儀を行える状況ではなかったため、ひとまず火葬だけを済ませており、落ち着いてから巻き込まれた者たちと一緒に葬儀を行う予定であった。
ガブは、屋敷が崩れたままではいつ落ち着くのか分からないと指摘した。ヒカルは、結界を張り直すまでは身元の確かな者以外を敷地へ入れられないため、ようやく本格的な片付けを始められる段階だと説明した。
ゴンゾウへの弔い
アサとナツキはゴンゾウの骨壺の前に座り、手を合わせた。アサは戦いを終えて帰還したことで、抑えていた悲しみがあふれ、涙を流した。
ナツキやヒカルたちは、泣き続けるアサを静かに見守った。崩壊した屋敷では、失われた者たちへの弔いと、生き残った者たちによる後始末が始まっていた。
瓦礫から残った茶道具
そこへアスマが現れ、ガブとアサの帰還を迎えた。アスマは箱を運んでおり、ガブから中身を尋ねられると、茶道具だと答えた。
その茶道具は、崩壊した屋敷の瓦礫の中から奇跡的に無傷で発見されたものであった。アスマは皆に茶を振る舞うため、茶道具を持って部屋へ入り、帰還した者たちを迎える準備を始めた。
第50話 後片付けと置き手紙
影森邸の復旧作業
ユルたちは、崩壊した影森邸の片付けを手伝った。庭では「えっさ」と「ほいさ」をはじめとするツガイたちも作業に加わり、重い瓦礫や車両を運んでいた。
無事だった資料庫
アサは、建て付けの悪くなった資料庫の引き戸を開け、ユルとともに中へ入った。そこには御館様とジンが使っていた書斎が残されており、大量の書物や資料も無事であった。
資料庫には、日本各地の民間伝承や古文書のほか、噂話や都市伝説に至るまで、ツガイに関する情報が集められていた。現在顕現しているツガイだけでなく、本尊のまま放置されている可能性のあるツガイについても、古文書から伝承を拾い出して整理していた。
必要に応じて現地へ赴き、人々への聞き取りを行い、忘れ去られそうな本尊を保護する活動も続けられていた。ガブリエルも、その調査によって山奥で発見され、消滅を免れたツガイであった。
沖縄のツガイへの関心
ガブリエルは、アサたちの話を聞きながらガブの頭上に乗った。アサは資料の中から沖縄の項目を見つけ、母親の生まれた土地にはどのようなツガイがいるのかと興味を示した。
そこへナツキが現れ、アスマがお茶を用意したと伝えた。ユルとアサは資料庫を離れ、庭へ向かった。
瓦礫の中で開かれた茶会
庭では、アスマが瓦礫に囲まれた場所に茶席を設けていた。フユキやヒカルは点てられた茶を味わい、穏やかな時間を過ごした。
アスマは周囲で働いていた影森家の者たちにも声をかけ、作法を気にせず自由に座って茶を楽しむよう勧めた。茶道を知らないデラも席へ加わり、ハナは正式な挨拶をして茶を受け取った。
ユルとアサも招かれたが、ガブは抹茶が嫌いだと率直に断った。茶碗が足りなくなると、アスマは丼やカフェオレボウルでも構わないため、瓦礫の中から使える器を探すよう指示した。
緊張がほどけた者たち
寄せ集めの器で茶を飲んだ者たちは、その味に安堵した。穏やかな時間が訪れたことで、張り詰めていた緊張が解け、何人かは涙を流した。
一同は静かになり、崩壊した屋敷の中で生き残った者たちが、失ったものを思いながら茶を味わった。
黒谷カナエの来訪
そこへ、瓦礫の山を眺めながら黒谷カナエが現れた。カナエは、ナツキ、フユキ、ハルオの祖母にあたる人物であり、自身のツガイである「影武者」を伴っていた。
ヒカルとアスマはカナエを茶席へ招いた。しかしカナエは茶を受け取る前に地面へ座り、深く頭を下げた。
黒谷家からの謝罪
カナエは、今回の事件が黒谷家の孫の裏切りから始まったとして謝罪した。ゴンゾウをはじめとする屋敷の者たちの命が失われ、ヒカルも利き腕に重傷を負ったことに対し、取り返しのつかない事態を招いたと詫びた。
黒谷姉弟もカナエとともに頭を下げた。カナエは、残された自分の命を影森家のために使うと申し出た。
影森家の今後
影森家の今後について問われたアスマは、まず所有する不動産を整理する方針を示した。不動産収入は影森家の主要な収入源であったが、ゴンゾウが事業を広げすぎていたため、アスマ一人では管理しきれない状態であった。
ジンの店は本人に無断で処分できないため残し、それ以外の土地や物件を一部売却して規模を縮小する予定であった。さらに、屋敷で働いていた者たちへ退職金を用意する必要もあった。
ユルは自分に関係のない話だとして、デラとともに片付けへ戻ろうとした。
ガブからユルへの頼み
ガブはユルだけを呼び止めた。喧嘩を売られたと勘違いしたユルが鉈を構えると、ガブは否定し、アサについて話があると告げた。
ガブは、アサが再び今回の出来事を自分の責任だと考えて落ち込んでいると説明した。ヒカルやアスマから帰還を迎えられたにもかかわらず、アサは「ただいま」と返せなかったのである。
ユルは、アサが自分にはここへ帰る資格がないと考えているのだと理解した。
アサを孤独にしないために
ガブは、長くアサと行動をともにし、多くの相談を受けてきたものの、自分には話せず、実の兄であるユルにしか話せないこともあるはずだと伝えた。
そのような時にはアサを抱き締め、独りにしないようユルへ頼んだ。ユルはガブを嫌っていると口にしながらも、アサの友人でいてくれたことには感謝した。
近くで話を聞いていた黒服のツガイたちは、子供たちに苦しみを背負わせた西ノ村を嘆き、アサを思って涙を流した。
アサからの相談
その後、アサがユルを探して現れた。アサはユルが一人でいることを確認し、ほかの者だけでなく、ガブにも聞かれたくない相談があると切り出した。
影森家を巡る新たな噂
街では、影森家が反社会的な組織ではないかという噂が広がっていた。波久礼ヒカルについても、影森家の力を利用して連載を獲得したのではないか、多数のメディア展開にも裏事情があるのではないかと憶測されていた。
さらに、影森家が所有する都内の産業廃棄物処分場では、夜中に十分ほど粉砕機が動くことがあると語られ、何を処分しているのかと不気味がられていた。ただし、いずれも確証のない噂話として扱われていた。
椥辻の引き取り先
時間は、椥辻が気絶させられた直後まで戻った。影森家所有の産業廃棄物処分場では、危険な椥辻を影森側で預かることにハルオが難色を示していた。
デラは引き取り先に心当たりがあるとして、自分たちで椥辻を預かると申し出た。ハルオは安堵したが、椥辻への報復を望んでいた山賊は不満そうな反応を見せた。
サドマゾとの契約解除
フユキは醍醐の処遇について尋ね、まずツガイを引き剥がす案を出した。しかし醍醐は、強制的に契約を解除する必要はないと答えた。
醍醐は「サドマゾ」に本尊へ戻るよう命じ、静かにしていれば負傷したドSもいずれ回復すると告げた。さらに、元気になった後は新たな主を見つけ、自由に生きるよう送り出した。
ドMはその言葉を受け入れ、ドSとともに本尊へ戻った。山賊はツガイを持たないデラへ譲ろうとしたが、デラは強く拒否した。
死を受け入れた醍醐
醍醐は、自分への用が済んだのなら早く殺すよう求めた。デラが不老の醍醐を殺せるのかと尋ねると、醍醐は不老であっても不死ではなく、重傷を負えば普通に死ぬと答えた。
ナツキは何か企んでいるのではないかと疑ったが、醍醐は仕事を果たせない者は死ぬだけだと語り、処分を急かした。
登山者に偽装された最期
その後、醍醐は登山道を一人で歩いていた。すれ違った登山者から挨拶されても反応は鈍く、顔色の悪さを心配された。
醍醐は崖の近くで靴を脱ぎ、自ら身を投げた。首筋には山賊のツガイであるマメガラスが付いており、その様子を監視していた。
現場を目撃した登山者たちは、醍醐が自ら飛び降りたと騒ぎ、救助や警察への通報を考えた。こうして醍醐の死は、身元不明の登山者による自殺として処理される形となった。
山賊による死体処理
麓へ戻ったマメガラスは、身元不明の自殺者が一人できたと山賊へ報告した。デラはそのやり方に引いたが、山賊は死体を隠すのは大変であり、自殺に見せかければ第三者が処理してくれるため都合がよいと説明した。
デラが自分も東村へ逆らったことで同じ目に遭うのかと尋ねると、山賊はそのつもりはないと否定した。
アザミ親子の今後
山賊は、イワンが東村から連れてきたアザミを今後どうするのかとデラへ尋ねた。アザミ本人は父親のもとへ帰りたがっていたが、下界について多くを知りすぎており、完全に口止めするのは難しい状況であった。
デラは、父親を山から下ろし、親子そろって下界で暮らさせる案を出した。山賊は、出稼ぎに出る者の面倒を見るのも自分たちの役目だとして、その手配を引き受けた。
一方で、東村は大きな損害を受けており、これまでの人口を保つのは困難になっていた。山賊は、ユルとアサが最後の希望だったとこぼしたが、デラは東村を少しずつ畳むしかないと考えていた。
ハナの家へ戻ったデラ
デラは山賊と別れ、ハナの家へ戻った。アザミに父親と会える段取りが整ったと伝えると、アザミは大喜びした。ケンも、その再会を喜んだ。
ロウエイは、自分たちにも新居の目処がついたため、近いうちにケンとともにハナの家を出る予定だと明かした。デラは、ケンが父親と二人で暮らせることを祝った。
ケンは、成り行きで押しかけたうえ、長く世話になったことをハナへ詫びたが、ハナは気にしていなかった。
ユルとアサの不在
デラがユルと左右様の居場所を尋ねると、ケンは朝から弓の練習へ出かけたまま戻っていないと答えた。
その直後、ハナのスマートフォンにナツキから連絡が入った。ナツキは、アサが明け方から姿を消しており、影森邸にも黒谷家にもいないと伝えた。
ハナは、アサには常に護衛が付いているはずだと確認したが、ユルもその場にはいなかった。
残されていたユルの手紙
ケンは、矢にくくり付けられた手紙を発見した。そこには、しばらく戻らないが心配するなというユルの伝言が書かれていた。
ハナ、デラ、ロウエイは、ユルとアサがそろって姿を消したことを知り、言葉を失った。電話の向こうでは、事情を知らないナツキが返事を求め続けていた。
第51話 家出と逃亡
瓦礫の中から見つかった宝物
影森邸の片付けが続く中、ガブは瓦礫の中からアサの探していた箪笥を見つけた。引き出しの中には、アサが大切に保管していた品がすべて残されていた。
アサは安堵し、見つかった品を今後は肌身離さず持ち歩くため、リュックへ移した。ガブは大事に持っておくよう勧めたが、自分には掘り起こしたい物はなく、アサが宝物を見つけて元気になっただけで十分だと答えた。
感激したアサはガブに抱きつき、その晩も一緒に寝ようと誘った。さらに風呂にも一緒に入ろうとしたが、ガブから一人で入るよう断られた。
ガブリエルにかけられた命令の解除
翌朝、アサは眠っているユルを残し、自分のスマートフォンを部屋に置いて外へ出た。
アサを見張っていたガブリエルに対し、アサはガブが眠っている間も監視を続けるよう命じられているのだと理解した。アサは自分を心配してくれたことへの礼を述べたうえで、ガブがガブリエルへ与えた監視命令を一日だけ「解」で解除した。
ガブリエルは動きを止め、アサはさらに屋敷の出入口を警護していた者たちにも「解」を使い、意識を失わせて外へ抜け出した。
黒服のツガイとの出発
屋敷の外では、黒服のツガイがアサを待っていた。黒服のツガイは迎えに来たと告げ、影森家の者たちに見つかる前に出発するよう促した。
アサは世話になることへの礼を述べ、屋敷に向かって一礼してからその場を離れた。
アサの失踪が発覚
アサがいなくなった後、ガブは動きを止めたままのガブリエルを発見した。アサの寝床が空になっていたため、ガブリエルに行き先を尋ねたが、監視命令を解除されたガブリエルは答えられなかった。
事態に気づいたガブは、ナツキを起こしてアサが消えたことを知らせた。影森家では、アサの捜索が始まった。
渋谷で合流した双子
アサは黒服のツガイとともに渋谷のハチ公前へ向かった。そこへユルが現れ、アサは兄が来てくれたことに安堵した。
ユルはアサの求めに応じるのは当然だと告げ、二狼に追いつかれる前に先を急ぐよう促した。こうしてユル、アサ、左右様、黒服のツガイたちは行動をともにした。
二狼による追跡
ハナはナツキと連絡を取り、二狼がユルと左右様のにおいを追った結果を報告した。二狼は渋谷で、ユルたちがアサや黒服のツガイと合流し、電車に乗るところまで追跡していた。
ハナはアサのスマートフォンに位置情報を確認できる機能がないか尋ねた。しかしアサはスマートフォンを置いており、そのケースには、世話になったことへの礼と、陰陽ちゃんをしばらく預かってほしいという書き置きだけが残されていた。
ハナは、ユルとアサが誰にも頼らず、自分たちだけで決着をつけようとしている可能性を考えた。
ユルが家を離れた理由
段野家では、ユルの不在についてダンジが考えを語った。ユルは崩壊した影森邸の惨状を見たため、自分がいることで段野家まで西ノ村の襲撃を受ける事態を避けようとしたのではないかと考えたのである。
ダンジは、ユルがまた誰にも相談せず狩りへ出たのだと嘆いた。ケンが行き先は西ノ村なのかと尋ねると、ロウエイは御陵と直接対峙することになれば危険すぎると懸念した。
追跡に動けない影森家
フユキはユルたちを追うべきかナツキへ尋ねた。しかしナツキは、影森邸の守りをこれ以上薄くできないと判断した。
再び本格的な襲撃を受けた場合、残った人数では波久礼ヒカルやアスマを守りきれないためであった。影森家はユルたちを追いたくても、屋敷を離れられない状況に置かれていた。
「解」が持つ想定外の力
なもみはぎは、アサがガブリエルへ下された命令そのものを「解」で解除したと知り、その応用力に驚いた。ガブも、「解」が単に物を分離するだけでなく、命令や契約にまで作用する可能性を理解した。
フユキは、その強大な力を持つアサが多くの者から狙われる理由に納得した。
なもみはぎは、四百年前の「解」が戦場で敵の首を刎ねるだけだったことが単純に思えるほどだと評し、何かあった際にツガイだけでアサを止められるのかと疑問を示した。
ナツキは、そのために左右様が存在していると聞いていると答え、今はユルとアサを左右様へ託すしかないと判断した。
鹿児島へ向かった一行
ユル、アサ、左右様、黒服のツガイ、犬を連れた一行は、東京駅から新幹線へ乗り込んだ。
移動中も騒がしい一行は周囲の注目を集めながら南へ進み、鹿児島へ到着した。その後、一行は鹿児島新港へ向かった。
初めて見る大海原
鹿児島新港からフェリーに乗った一行は、甲板から海を眺めた。左右様は景色の美しさを楽しんだが、周囲に陸地の見えない海を初めて見たユルは、その広さに恐怖した。
アサが海を見るのは初めてなのかと尋ねると、ユルはデラの社会勉強で入り江のような場所から船に乗ったことはあるものの、大海原を見るのは初めてだと答えた。黒服のツガイも、大型船に乗って遠方へ向かうのは初めてであった。
ユルは巨大な鉄の塊が水に浮いていることを理解できず、フェリーそのものがツガイではないかと疑った。黒服のツガイから意外に臆病だとからかわれたユルは、すぐに慣れると強がった。
ペット室に預けられた黒服の主
黒服のツガイの主は、フェリーのペット室へ預けられていた。別の乗客が犬を連れてくると、黒服の主を大人しい先客だと思い、隣の檻へ犬を入れた。
飼い主は客室へ連れていけないことを犬に詫び、後で様子を見に来ると言い残した。犬は黒服の主を恐れて鳴き続けたが、乗客は事情に気づかなかった。
旅費を用意していた者たち
ユルは人間社会に慣れている黒服のツガイたちに感心しつつ、本当に沖縄まで同行するのかと確認した。黒服のツガイは、左右様の友人として旅を案内すると答えた。
黒服のツガイたちはスーツを脱げば運賃を支払わずに移動できたが、主の分の旅費は必要であった。その費用は、影森邸の片付けを手伝って得た給金から用意していた。
アサも波久礼ヒカルの仕事を手伝って得た給料を貯めており、ユルの旅費を負担していた。その結果、ユルだけが路銀を持っていない状態であり、右様から妹に頭が上がらないと指摘された。
旅慣れていたアサ
ユルは、影森邸から出られない生活をしていたアサが妙に旅慣れていることを不思議に思った。アサは、東村を脱出して影森家に保護されるまで、両親とともに日本各地を逃げ回っていたと明かした。
その逃亡生活では、偽名を使って住み込みで働き、移動途中に農家の仕事を手伝って食料を分けてもらうこともあった。下界の事情を知っていたのはナギサだけであり、父親と幼いアサを連れて逃げ続けた母親は、一家を支え続けていた。
アサは、当時の母親が強く頼もしかったと振り返り、自分なら精神的な負担に耐えられなかっただろうと語った。
ナギサに露見した東村の秘密
ユルは、ナギサがロウエイを脅して村の出口を聞き出したことを思い出し、なぜロウエイが下界の人間だと見抜かれたのかを尋ねた。
発端は、ロウエイが落としたコンタクトレンズであった。ナギサは床を探していたロウエイに声をかけたが、誤ってレンズを踏み割ってしまった。弁償しようとしたところで、東村に存在しないはずのコンタクトレンズをロウエイが使用していることに気づいた。
さらに、ナギサはロウエイの口内から、歯の代わりに顎へ埋め込まれたインプラントが露出していることも発見した。ユルと左様は、目に物を入れたり骨へ金属を埋め込んだりする下界の治療を、拷問の一種のように受け止めた。
異世界を装っていた東村
東村では、下界が高度な文明を持つ現実の世界であることを、ユルを含む大半の住民に隠していた。外から東村へ来たナギサにも、東村と下界は地続きではなく、異世界同士であると信じ込ませていた。
閉鎖的な東村では近親婚が繰り返され、外部から新たな血が入ることを歓迎していた。そのため、貴重な外の人間であるナギサを元の世界へ帰さないよう、真実を知る一部の者たちが現代社会を知らないふりを続けていた。
コンタクトレンズとインプラントから疑念を抱いたナギサはロウエイを追及し、東村と下界が地続きである事実を白状させた。その際、結界を抜ける方法も聞き出したと考えられた。
両親とアサの逃亡
ナギサたちは東村から脱出する機会をうかがっていたが、ユルへ西ノ村の者たちの手が伸びたことで猶予がなくなった。
両親はユルも連れ出そうとしたものの、ヤマハおばぁに妨害され、アサだけを連れて脱出した。その後も東村の追手から逃げ続け、疲れ果てたところへゴンゾウとジンが現れ、保護を申し出た。
それは五年前の出来事であった。ユルは影森家を好いてはいないものの、アサを大切にしてくれたことには感謝した。
影森邸へ戻れないアサ
アサは、両親と自分を大切にしてくれた影森家の者たちを事件へ巻き込んでしまったと考え、もう屋敷には戻れないと語った。
ユルが黙って出てきてよかったのかと尋ねると、アサは行き先を伝えれば必ず止められたため仕方がなかったと答えた。反対にユルは、自分は心配するなと書き置きを残してきたため問題ないと主張した。
しかしアサから、デラたちがそれだけで心配しないと思うのかと問われると、ユルは自分を捜しに来るだろうと認めた。以前、一晩帰らなかっただけでも周囲は心配し、デラも武器を持たずに影森邸へ迎えに来ていた。
アサは、ユルも段野家の者たちから大切にされていると知り、安堵した。
迫り来る影森家の追跡
ユルは、影森家もすでにアサを捜し始め、追手まで出しているはずだと語った。アサは、ガブが恐ろしい形相で追ってくる姿を想像して笑った。
ユルは、自分がアサをそそのかして連れ出したとガブから逆恨みされそうだと嫌がった。アサは、長く屋敷で守られていたため、誰かから逃げ続けるのは久しぶりだと楽しげに語り、東村の追手より優秀な影森家から逃げ切れるかを気にした。
ユルは、今回の旅は逃亡ではないと否定した。二人は過去から逃げるためではなく、自分たちの未来をつかむため、沖縄へ向かっていた。
第52話 夜と海
続報のないユルとアサ
夜、ナツキはハナへ電話をかけ、ユルから新たな連絡が届いていないか尋ねた。しかし、ハナのもとにも連絡はなく、東村も深刻な人手不足に陥っているため、捜索へ人員を回せない状況であった。
ハナは、若い自分が責任者を任されるほど東村が弱っていると説明した。一方で、現在は影森家の方が大変だとナツキを気遣った。疲労と不安が重なったナツキは涙ぐみながら、今度一緒に酒を飲もうとハナを誘ったが、ハナは酒を飲まないとして断った。そばにいたフユキとハルオは、その会話を気まずそうに見守った。
影森家を去る立川
解体作業が続く影森邸へ、立川が訪れた。羽村は片付けを手伝いに来たのだと思ったが、立川は影森家へ暇をもらいに来たと明かした。これ以上、影森家のもとで働き続けることが怖くなり、波久礼ヒカルへ退職を申し出たのである。
ヒカルは、屋敷がこのような状態では仕方がないとして、ここで見聞きしたことを外部へ漏らさないことだけを条件に、立川の申し出を受け入れた。立川と契約しているツガイも取り上げなかった。
立川は、自分だけが逃げるようだと謝った。しかし、影森家では以前から働いていた者たちも次々と辞めており、残る者たちは立川を責めなかった。
残る者たちの事情
立川が今後も影森家で働くのかと尋ねると、一人はほかに行く場所がないため残ると答えた。羽村は、自分はギャンブラーであり、傷ついた影森家という大穴へ賭けると宣言した。
しかし、羽村の競馬成績は損失続きであったため、立川から影森家にとって縁起が悪いのではないかと指摘された。
ツガイ使いを監視する公安
影森家の者は、立川に対し、屋敷を出た後も注意するよう忠告した。影森家と関係を持ったツガイ使いは公安に監視される可能性があり、ツガイを使った犯罪へ手を染めず、真っ当に生きる必要があった。
ツガイは使い方次第で、要人暗殺をはじめとする大事件を起こし、世界の力関係まで変え得る存在であった。公安にも表に出ないツガイ使いがおり、日本の中枢を守っていると伝えられていた。
影森家は大量のツガイを所有していたため、公安との接触を避けられなかった。ゴンゾウは、その危うい関係を状況に応じて調整しながら維持していた。
立川は、その不安定な均衡の中へ「解」と「封」を持つ双子が現れたことを重く受け止め、「夜と昼を別つ男女の双子が生まれた時代は世が割れる」という言葉を口にした。
ツガイの管理を迫られるアスマ
アスマのもとには、ゴンゾウが所有していたツガイの状況を確認する電話が入っていた。相手は、消失したツガイと残存しているツガイの一覧が、いまだ提出されていないと追及した。
アスマは確認を進めているものの、実の息子である自分さえ、ゴンゾウが何組のツガイを所有していたのか把握できていないと説明した。
相手は対応の遅さを責め、影森家で管理できないなら、すべて引き取って処理してもよいと迫った。さらにジンと話すことを求めたが、アスマはジンが今も行方不明であり、生存を信じていると答えるしかなかった。
ジンの母・アカネからの電話
その頃、ヒカルのもとへアカネから電話が入った。アカネはジンの母親であり、かつて影森家を出た人物であった。
アカネは報道を見て心配になったものの、影森家が混乱していると考えて連絡を控えていたと話した。ゴンゾウへ線香を供えたいとも考えたが、自分は影森家を出た人間であり、ゴンゾウから嫌われていたのではないかとためらっていた。
ヒカルは、ゴンゾウがアカネを悪く言ったことは一度もなかったと伝えた。ヒカルは、アカネにも一度は夫婦だったゴンゾウの死を悼む気持ちがあるのだと受け止めた。
アカネが求めた遺産
アカネはゴンゾウの死を確認した後、自分には遺産がいくら入るのかと尋ねた。さらに、息子であるジンには確実に相続されるはずだと話し、ジンが影森家にいるのか確認しようとした。
ヒカルはその言葉を聞き、ガブが以前語っていた、人は簡単には改心しないという言葉を思い出した。
ヒカルは、離婚が成立しているため、法律上アカネにはゴンゾウの遺産が一円も入らないと告げた。アカネが自分への遺贈を記した遺言書の可能性を口にすると、ヒカルは、そのような書類が見つかった場合のみ法律に従って対処すると答えた。
さらに、線香を供えに来る必要もなく、二度と影森家の敷居をまたがないよう言い渡した。
影森家当主としての宣言
アカネは、せめてジンへ会いに行かせてほしいと求め、ヒカルに拒む権利があるのかと反発した。
それに対し、ヒカルは自分が影森家の当主であり、この家は自分が守ると宣言した。そして、アカネとの通話を一方的に切った。
ヒカルは感情を抑えきれず、涙を流した。ゴンゾウを失い、ジンも行方不明となった中で、影森家を守る責任を背負うことになったのである。
ジンと海辺のツガイ
ヒカルは、ジンがツガイと契約した時のことを思い出した。
ゴンゾウは、海辺の神社跡地で見つかった古いツガイをジンへ引き合わせた。そのツガイが過去に何と呼ばれていたのかは、記録にも残っていなかった。
ゴンゾウはジンに、二体へツガイ名と個別の名前を付けるよう求めた。ジンは、勝手に名付ければ怒られるのではないかと心配した。
名前が与える命
ヒカルは、ツガイにとって名前の巧拙は重要ではなく、愛情を持って名前を与え、一つの存在として尊ぶこと自体に意味があると説明した。
名を与えられた存在は世界に認識され、人々の口で語られ、愛され、畏れられ、敬われることで、その名が命になるのである。
ジンはツガイの能力を十分に理解してから正式なツガイ名を決めることにし、まず二体それぞれの名前を考えた。
大きな雌のツガイには「愛ちゃん」、小さなツガイには「誠くん」という名を与えた。
愛と誠という名前
ゴンゾウはジンが二体のツガイに付けた「愛」と「誠」という名前を聞き、愛情と誠実を表したものだと受け止めた。ヒカルも素敵な名前だと喜び、ジンは二体に向かって改めて挨拶した。
当主になる決意
現在、ヒカルはアスマの前で、自分が影森家の当主になると宣言した。これまで引きこもり、家のことも世間のことも知らずに逃げ続けてきたが、アスマとジンだけにすべてを背負わせることはできないと考えたのである。
影森家は、ジンやアサをはじめ、行き場のない者たちが安心して帰って来られる場所でなければならなかった。ヒカルは役立たずでも盾やサンドバッグにはなれると語り、当主としてできることを教えてほしいとアスマに頼んだ。
アスマはその決意を受け入れ、波久礼先生ではなく「ヒカル兄さん」と呼び、これから共に影森家を支えていく意思を示した。
描けなくなったヒカル
ガブはヒカルに、もう漫画を描かないのかと尋ねた。しかし、ヒカルは負傷した腕を見つめ、この腕では描けないと答えた。
ガブは「つまんない」とだけ言い残してその場を離れたが、内心ではヒカルが漫画を描けない現実に強い痛みを抱えていた。
医療系ツガイと双子の力
ガブの前に桜沢が現れ、けがや病気を治療できる医療系のツガイがいればよいと口にした。ガブは、そんなツガイがいれば桜沢の仕事がなくなると返した。
桜沢は、影森家の人間を治療する自分が死なないよう、ゴンゾウから「偕老同穴」を与えられたのだと説明した。さらに、応用の幅を広げているアサの「解」なら、病気やけがまで治せるようになる可能性があると考えた。
ガブは、桜沢も双子の力を利用しようとしているのかと警戒し、それはユルの死を受け入れることにもつながると責めた。
桜沢は、自分の倫理観が一般社会とはずれており、表の世界で医師を続けられないから影森家にいると認めた。そのうえで、アスマと同じく、双子の力は組織の管理下で利用すべきだという立場を示した。
双子が望んだ普通の暮らし
怒ったガブが桜沢を殴ろうとすると、「偕老同穴」が自動的に桜沢を守り、ガブの拳だけが痛んだ。
桜沢は、どんな病気やけがも治せる力が生まれれば、表の世界でも双子の争奪戦が始まると指摘した。そして、ユルとアサの家族は、ただ静かに普通の人々と同じ暮らしを望んでいただけだったと振り返った。
ガブは桜沢に仕事へ戻るよう怒鳴った後、かつて自分がヒカルに対し、安全な場所で幸せな漫画を描き続けてほしいと願ったことを思い出した。ヒカルを守れず、漫画まで奪われた現実に苛立ち、自分の頭を殴った。
荒れる応援コメント欄
大江戸出版では、波久礼ヒカルの担当編集である中神マユが、『プリマミ』の応援コメント欄を確認していた。
そこには、アニメ放送開始の時期に休載することへの非難、影森家との関係を理由にヒカルを反社会的な漫画家と決めつける声、負傷を嘲笑する書き込みなどが相次いでいた。読者を装いながら悪意をぶつける者や、作品と作者の事情を勝手に結び付ける者によって、コメント欄は荒れ果てていた。
担当編集の啖呵
編集長は中神に対し、いまだヒカルと連絡が取れないことを責めた。アニメが始まるのに漫画が掲載されなければ編集部の面子が潰れるとして、入院しているなら病室でも描かせ、一ページでも原稿を取って来るよう命じた。
中神はその要求に激怒した。漫画に対して誰よりも真面目なヒカルが休んでいる以上、よほどの事情があるのだと断言し、ヒカルは必ず戻って来るから黙って待てと編集長を怒鳴りつけた。
中神マユは、ハートフルで幸せな漫画を好む一方、かつては荒々しい性格であった。
船酔いに苦しむユル
フェリーでは、ユルが激しい船酔いに苦しんでいた。ユルは病気になったのかと不安がったが、アサは一時的な症状であり、陸へ上がれば元に戻ると説明した。
外の風に当たれば少し楽になると聞いた左様は、ユルを抱えて船の上空を飛び回った。しかし、激しく揺さぶられたユルの船酔いはさらに悪化した。
アサは濡れた布をユルの額に当て、結局は横になって休むのが一番だと判断した。自分がずっとそばにいるため、何かあれば呼ぶよう告げると、ユルは礼を言った。兄から頼られたことに、アサはうれしそうな表情を浮かべた。
ツガイを見る少年
黒服のツガイは、自分たちの主も船酔いしているかもしれないと考え、ペット室へ様子を見に向かった。
その途中、一人の少年が黒服のツガイを見つめていた。目が合うと少年はすぐに視線をそらして立ち去ったが、黒服のツガイは、少年が自分の姿を見ることのできる人間だと気付いた。
炭酸飲料を巡る勝負
体調が少し戻ったユルは、アサと自動販売機の前に立った。ユルは水でよいと言ったが、アサは下界の飲み物にも慣れた方がよいとして、炭酸飲料を勧めた。
ユルは口の中で刺激が弾ける飲み物を警戒し、金の無駄になると拒んだ。しかし、アサは自分が代金を払うのだから問題ないと押し切った。
二人は同時に好きなボタンを押し、出てきた方をユルが飲むという勝負をした。結果はアサの選んだ炭酸飲料となり、アサは勝利を喜び、ユルは悔しがった。
二人は、こうした穏やかな時間がいつまでも続けばよいと願っていた。
海に現れた巨大なツガイ
その直後、フェリーを上回るほど巨大なツガイが海中から姿を現した。
船は激しく横揺れし、乗客たちは混乱した。船内放送では、原因を確認しているため、乗客は自分の席へ戻って待機するよう繰り返し案内された。
ユルとアサの穏やかな船旅は、突如現れた巨大な存在によって中断された。
ヨミツガ 12巻レビュー
ヨミツガ まとめ
ヨミツガ 14巻レビュー
黄泉のツガイ 一覧













その他フィクション

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