小説「俺は全てを【パリイ】する 5」感想・ネタバレ

小説「俺は全てを【パリイ】する 5」感想・ネタバレ

どんな本?

俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~ は、鍋敷 氏が小説家になろうで連載しているライトノベルです。
アース・スターノベルから単行本が発売されており、現在第7巻まで出ている。
また、KRSG氏がコミカライズを担当しており、コミック アース・スターで連載中。

この物語は、才能なしの少年と呼ばれて職業養成所を去った男・ノールが、ひたすら防御技【パリイ】の修行に明け暮れた結果、世界最強クラスの力を手にしているのに、一切気がつかないまま強敵を打ち倒していく英雄ファンタジー。

ノールは、魔物に襲われた王女を助けたことから、王国の危機に巻き込まれていく。

しかし、彼は自分の能力に全く自覚がなく、常に謙虚で真面目に振る舞う。
そのギャップが面白く、読者の共感を呼んでいるらしい。

この作品は、TVアニメ化も決定している。

読んだ本のタイトル

俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~ 5巻
著者:鍋敷 氏
イラスト:カワグチ  氏

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あらすじ・内容

「……ダメだ。あれは私では倒せない……」

悪魔の心臓デモンズハートを貪り食い、凶悪な変異を遂げた聖ミスラ。

その凄まじい力にはイネスの『光の剣』も【厄災の魔竜】のブレスも通用しない。

暴走する怪物をノールは止めることができるのか?

俺は全てを【パリイ】する 5 ~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~
【公式】アース・スター エンターテイメント

感想

本作は、前巻からの続きで、舞台はミスラ。
主人公のノールが壮大なバトルを繰り広げる物語である。

ノールは邪神によって高度上空へと打ち上げられ、空中での生死をかけた戦いが繰り広げられる。
ノールは自らの持つ「黒い剣」で邪神の放つ黒雷を何度もパリイし、そのすさまじい戦いの中で、仲間のロロが召喚した黒竜に飛び乗り、更なる高度な戦術で邪神に挑む。
共に黒竜に乗るイネスは、邪神の攻撃を弾く(パリイ)ノールの守りを背にして覚醒し、邪神の身体を次々と切り裂くが、邪神は形態を変化させ、ノールの剣にのみ効果がある形へと進化する。

物語のクライマックスでは、リーンが強力な魔法を放ち、邪神の動きを一時的に止める。

その隙にノールが邪神の骨を黒剣で粉砕するが、リーンはその代償として両腕を失い、目も失明してしまうという壮絶な結果になってしまうが、青い石から復帰したアスティラによって治療されて完治。

この激しい戦いを通じて、彼らの絆と互いの信頼が深まるが、その道のりは極めて困難であった。
若干一名を除いて。

感想としては、本巻の物語のテンポや展開のバランスに対して多少違和感があるが、総じてスケールの大きさやエピソードの深さは面白く感じている。

特に、バトルシーンの迫力やキャラクターたちの内面描写が詳細にわたって書かれており。
ロロ、イネスの成長は、今後の展開への期待を大きくしている。

次巻に向けての展望もあり、物語の深まりとともにキャラクターたちがどのように成長し、どのような冒険を遂げるのかが、これからの大きな見どころとなると予想する。

彼らの旅路を引き続き見守りたいと思う。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

90 雲の上

主人公はある時、自分が雲の上にいることに気づく。彼は重さを感じずに浮かんでいるような感覚を味わっており、その光景が幼い頃に父から聞かされた「死んだ後の世界」のように感じた。しかし、右手に重さを感じると、そこには彼の愛用している「黒い剣」があった。彼は体が痛むことに気づき、死んでいるにもかかわらず、呼吸が苦しく感じる。

主人公は身体が白い雲に引き寄せられていくが、その雲を突き抜けてしまう。次に彼が気づいたとき、見慣れたミスラの街が目の下に広がっていた。彼は自分が地下から空高く打ち上げられ、そのまま落下していることに気がつく。この状況にも関わらず、彼は「黒い剣」が空気を切り裂き、異常な速度で落下していることを理解する。そして、彼は街が迫る中で、目の前に現れた巨大な骸骨の化け物に向かって剣を振るうことで何とか生き延びることを決意する。

91 二万年の飢え

主人公とロロは「嘆きの迷宮」の奥で無尽蔵に現れる魔物を薙ぎ払っていた。彼らはレイン王子の命で「悪魔の心臓」が山積みにされた場所に到達し、目的を達成したが、魔物が湧き出す異常な状況と、突如起こった大きな揺れにより脱出が難しくなっていた。ロロは地面に踞り、動けなくなっていた。主人公は魔物の群れと戦いながらロロを護ろうとし、さらに迷宮全体を鳴らす轟音と共に天井が崩れ、巨大な骸骨の化け物が現れた。この怪物は異様な姿をしており、かつての聖者の装束を纏っていた。主人公はこの怪物を倒す決心を固め、「光の剣」で攻撃を試みたが、怪物はダメージを受けていないように見えた。その後、怪物は自らの肉体を破壊し続ける異常行動を取り始めた。ロロはこの行動を静観し、怪物に話しかけた。その結果、怪物は自己破壊を繰り返し、魔物との戦いはますます激しさを増していった。最終的にロロと主人公は迷宮から脱出を試み、地上へと向かうことを決めた。

92  再会

主人公は、巨大な骸骨の助けで地上に降り立ち、崩れた聖堂の内部で混乱している人々を目撃した。その時、鎧姿の男が主人公に声をかけた。男は主人公に何故上から落ちてきたのかと尋ねたが、主人公も自身が空の上にいた理由を理解していなかった。その後、アスティラという女性が現れ、混乱していた彼女も主人公に話しかけた。アスティラがティレンス皇子の母であり、聖ミスラ教国の教皇であることが明かされたが、彼女自身はその事実に戸惑っていた。

ティレンス皇子はアスティラに状況に合わせるよう依頼し、アスティラはそれに応じた。その後、皇子は聖騎士に指示を出し、街の外に避難するよう命じた。建物が更に揺れ始め、下から不気味な音が響いていたため、状況はさらに緊迫していった。

突然、イネスとロロという人物が現れ、地下から上がってきたことを報告し、大量の魔物が湧いていると伝えた。イネスは自分の「光の剣」が効かなかったこと、ロロが何かを魔物に食べさせたことを明かした。その後、巨大な何かが地下から登ってくる音が聞こえ、状況はさらに危険になった。皇子はリーンに友人としての助力を求め、リーンはそれを受け入れた。最終的に、巨大な怪物が現れ、その圧倒的な力の前で建物が崩壊した。

93 共感

怪物が現れたために大聖堂が崩壊し、登場人物たちは瓦礫と共に宙を舞った。アスティラの作った空気の壁のおかげで彼らは無事に地面に降りることができた。しかし、その安堵もつかの間、浮遊する化け物が黒い雷を放ち、主人公が黒い剣で受け止めたものの、その重さと威力に圧倒された。イネスが光の盾で雷を防ぎ、上空で爆発させたが、それにより空は漆黒の闇に覆われた。

その後、地下から無数の魔物が湧き出る中、リーンとイネスは彼らを斬り払いつつ、更に大きな炎の魔法と黒い雷が放たれた。イネスは再び光の盾でこれらを抑え、主人公たちは一時的に安堵するが、化け物の攻撃は止まらなかった。

ロロは落ち着いた態度で化け物と対話を始め、化け物がロロの声に反応して攻撃を止めた。ロロは化け物が内心で葛藤しており、完全に攻撃を止めることを願っていると語りかけた。化け物はロロの話に耳を傾け、攻撃を控える様子を見せた。この交流により、場は一時的な静けさを取り戻したが、依然として緊張は続いている。

94  ロロの友達

主人公は怪物に挑み、敢えて自分を餌として挑発する行動を取った。怪物は主人公に向かって黒い雷を放つが、主人公はそれを避け、怪物は雷で遠くの山を攻撃してしまった。これにより、主人公は怪物が自分を殺す意図を持たないことを確信し、怪物にさらに接近する。

怪物は主人公が自分にとってただの食べ物に過ぎないと認識しており、彼の無力さを嘲笑する。しかし、主人公は自分の弱さを自覚しつつも、それを逆手にとって怪物を引きつけ、仲間に有利な状況を作り出すために時間を稼ぐ役目を果たす。

主人公は最終的に「魔術師の指輪」を使って巨大な力を発揮し、指輪に封じ込められていた巨竜ララを召喚する。ララは怪物と激しく戦い、主人公はララに支えられながら、地上の仲間たちと合流する。彼らは地上の戦いに備えつつ、空中での戦いにも参加する準備を整える。主人公はこの状況で自分の存在が多くの人々の役に立つことを実感し、自己の価値と生きる意味を確認する。

95  石の棺

ノールと魔竜ララは空中で怪物と激しく戦闘を繰り広げた。ララはその巨体を活かして怪物を攻撃し、ノールは黒い剣で怪物の攻撃を弾いていた。一方、地上ではイネスが力強く魔物の群れを制圧しており、リンネブルグが指揮を執り、イネスを空中戦に送り込むことに決めた。地上の戦いは、イネスの去った後も続き、リンネブルグと他の戦士たちは限られた数で魔物と対峙した。彼らは石の壁を作り出し、それに囲まれながら戦いを続ける決意を固めた。この壮絶な戦いは、神話の神々が戦うような光景としてリンネブルグには映った。彼らは魔物の渦に飲み込まれながらも、勝利を目指して戦い抜く覚悟を決めていた。

96 訓練の成果

彼は、何の準備もなく竜に乗せられて空に打ち上げられ、凄まじい圧力で気を失いかけたが、目の前の怪物の脅威で気を取り直した。竜は勢いよく空を飛び、怪物からの強烈な攻撃を受け続けたが、彼は「黒い剣」でそれを次々と受け止めた。一瞬の油断も許されない緊迫した状況の中で、彼は以前の訓練を思い出し、最小限の動きで雷を逸らす技術を駆使した。

彼らは怪物の肉が炭になるまで焼き尽くし、イネスが加わってからはさらに効率的に戦うことができた。イネスは光の盾を生成し、安全な「床」を形成して彼とララを守り、怪物の攻撃から彼らを護った。戦いが進むにつれ、怪物の攻撃はより激しくなったが、彼は雷を一つずつ確実に弾いていった。彼とイネスの協力により、怪物は最終的には元の骨の形に戻りつつあった。

97 光の舞踊

ある女性は、自らが持つ異常な「力」について熟考している。幼少期から人とは異なる強大な力を持っており、それが原因で人々から避けられ、「化け物」と呼ばれることがあった。彼女の力はどんな物も断ち切ることができる「光の膜」で、その使い方を誤れば大きな災いを引き起こす可能性がある。そのため、彼女はこの力を「盾」として使うことに専念し、感情を抑えつつ慎重に力を扱ってきた。しかし、戦場で彼女は自身が護られる立場にいることに戸惑い、また、自分が他人から恐れられること、孤独になることに対する恐怖を感じている。

この状況で彼女は「神盾」として敵を攻撃し、強大な敵と対等に戦う異常な人物の姿を目の当たりにする。彼女は自分が何を恐れていたのかを問い直し、徐々にその恐怖が不合理であると感じ始める。彼女は自分の本来の「盾」の役目を離れ、自らを護ることから解放されることを受け入れる。彼女は自らの力を存分に発揮し、それによって内心の重荷を解放することができた。

98 シギルの双剣

上空でノール、ララ、イネスが戦っている中、地上では魔物との戦いが絶え間なく続いている。雷鳴が轟き、地割れが生じ、戦場は非常に不安定である。魔物は「嘆きの迷宮」から絶えず湧き出し、その数は減ることがなく、戦況は逼迫している。彼らが戦っているにもかかわらず、魔物の湧く速度は速まり、彼らはますます苦戦を強いられている。魔物は容赦なく攻撃を繰り返し、彼らは生存をかけて必死に抵抗している。

99 疾る黒雷

怪物は自分が最高の力を発揮しても、黒い剣を持つ男に一撃も与えられずに困惑していた。何度攻撃しても簡単に弾かれ、その上、別の存在にも攻撃を上回られる始末であった。自分は神に匹敵する超越者であると自認しつつも、自分の攻撃が通用しない現状に直面し、深い戸惑いと屈辱を感じていた。この敵に対抗するため、怪物は新たな戦術を模索し始めた。ある決意のもと、自らの体組織を変貌させ、全ての力を一点に集中させる覚悟を固めた。自分が変化していく過程で痛みを伴いながらも、その苦痛を心地よく感じ、今までの戦い方を見直すことにした。そして、怪物は自身の成長と変化に歓喜し、これまでの敵に感謝するまでに至った。

100 王女の賭け

彼女は魔物の群れに大火球を打ち込んだ後、空に変異する怪物を目撃する。怪物は自身の身体を高速移動に適した形へと変化させており、その主な脅威はノールの「黒い剣」だった。彼女はイネスとララを用いて、怪物の膨大な肉を削ぎ取る作戦を実行に移す。一方で、彼女は「神の雷」という魔導具を用い、怪物に対する最終的な一撃を準備する。彼女の目的は、怪物を地上に建造された石の指標の上に誘導し、そこで全力を注ぎ込んだ攻撃を放つことだった。この計画は彼女がこれまでの戦いで学んだ経験と直感に基づいており、彼女自身がこの一撃に全てを賭ける決意を固めている。彼女は状況が整った瞬間に攻撃を放ち、成功を信じて最終的な勝利を目指す。この賭けが成功すれば、彼女と彼女の仲間たちにとって画期的な勝利となる。

101 再会

彼らは魔竜で地上に戻ると、廃墟と化したミスラの街を目の当たりにする。彼らは地上でリーンとアスティラに再会し、リーンが軽い負傷を負っていたことを知る。リーンはアスティラの治療により回復している。イネスとシギルは、瓦礫の下に人が埋まっている可能性を考慮し、救助活動を進めるよう提案する。ティレンス皇子は、国の混乱を懸念し、アスティラにミスラ教国に残るよう依頼する。アスティラはこれを受け入れ、彼女の役割は主に国民に顔を見せることになる。彼女はこの提案に同意し、自分の役割を受け入れる。

102  帰路

彼らはミスラの街を出発し、クレイス王国へ向かっていた。ロロは別行動で魔竜に乗って帰ることになり、他の三人は馬車で移動している。ミスラの街は荒廃しており、人々が野営の準備をしているのが見えた。ティレンスとその部下たちは、アスティラに振り回されながらも、彼女の行動を支えていた。アスティラとティレンスは、互いに支え合いながら良いチームワークを発揮しているようだった。また、アスティラは今後も偽の「教皇」として振る舞い続ける予定である。彼女とティレンスの関係は表面上は親子であるが、実際には血のつながりはない。ミスラへの旅から、彼らは多くを学び、互いに成長していた。

103  王都への帰還

彼らは王都に無事帰還し、その門をくぐるとき、彼は自宅に戻るような懐かしさを感じた。リーンからの依頼は王都までの同行であり、それにより彼の仕事は終了した。旅の疲れと達成感、そして新鮮な安堵感を味わう中、リーンは彼に改めて感謝を表し、さらに報酬を提供することを提案したが、彼はそれを断った。その後、彼の旧友との再会があり、彼はその友人の子供たちに話をする約束を思い出した。その話の内容として、最近遭遇したスケルトンの戦いが選ばれた。彼はこれからその子供たちのもとへ行くことにし、リーンとの別れを選んだ。

104  王子の決意

レイン王子は、ミスラから帰還したリンネブルグ王女からの報告を受けた後、執務室で考え事をしていた。彼が発注した聖銀のドレスは、考えうる最高の素材を使い、高品質の魔法金属を織り込むことで、世界最強クラスの防具として製作されていた。しかし、そのドレスはボロ切れのようになってしまっていた。リンネブルグがどれほどの無茶をして帰ってきたかがこのドレスを見ればわかると王子は感じていた。彼女が命がけで放った魔法「神の雷」が、彼女自身をも危険にさらしたのだった。王子は妹の無茶に苦笑いをしながらも、そのリスクを理解し、計算済みの行動だったと信じていた。​

105  王の思惑

王は、王女からの報告を聞いた後、笑いが止まらなかった。教皇に騙され続け、魔物を相手に喜劇を演じていたことについては重大であると理解していたが、報告された内容は喜劇としてしか捉えられなかった。特に、ノールという男が「嘆きの迷宮」の中に落ち、「青い石」の中に幽閉されていた本物の「アスティラ」を助け出し、権威を振るっていた魔物を討伐したことに対し、王は躍る心を抑えきれずにいた。王はこの男の活躍を痛快に思い、その行動が世界に変化をもたらすことに笑いを隠せなかった。そして、ミスラから帰還した魔族の少年ロロが古い世界の知識を得たことも、王にとっては重要な意味を持っていた。これらの出来事が今後の世界に大きな影響を与えることを理解しつつ、王はこれを可笑しく感じていた。

106  賢者の盃   4

オーケンは、リンネブルグ王女からの報告とアスティラからの手紙を受け取り、全ての予定を放り出してクレイス王国からミスラの首都へと急行した。彼が夜遅くにアスティラの寝室のバルコニーに降り立つと、二百数十年ぶりの再会を果たした。アスティラはオーケンを見てすぐに笑顔を見せ、彼もまた、久しぶりに再会した彼女の姿に謝罪を口にした。アスティラはオーケンが覚えていてくれたことに感謝し、ノールの存在も認めつつ、彼女自身も時間が経ったことを感じさせる発言を交わした。彼らは古くからの友情を再確認し、ロイの死と彼の遺品である赤い石について話し合い、過去を振り返った。そして、冒険者パーティ「賢者の盃」のメンバーとしての絆を称えるために、過去の口上を述べるなど、懐かしい時間を共有した。

【アスティラとティレンス】

アスティラは清潔で快適なベッドで目覚め、初めは自分がどこにいるのか混乱する。しかし、すぐに自分がミスラ教国の「教皇」としてここにいることを思い出す。彼女は教皇としての役割を演じる一方で、宮廷の人々との日常的な交流を楽しんでおり、彼女の人懐っこい性格が宮廷内での人気を集めている。アスティラはティレンス皇子と共に生活しており、二人は契約上の親子としての役割を演じているが、実際には深い信頼関係で結ばれている。アスティラは市民と直接交流し、そのカリスマで人々の心を掴んでいる。彼女は自然と人々に親しみやすく、教皇としての権威だけでなく、一人の人間としても尊敬を集めている。

聖都の中心市街地で大規模な騒動があり、石造建物の瓦礫が散乱していた。聖騎士を含む市民たちが協力して片付けを進めていたが、作業はまだ完了していなかった。その中で「教皇」が現れると、市民たちは一時作業を中断し、敬意を示した。教皇は浮遊魔法を用いて巨大な瓦礫を素早く片付け、市民たちは残りの清掃作業を行った。教皇の圧倒的な力により、街の復興は迅速に進み、短期間で多くの街区の瓦礫が撤去された。災害前は国民の前にほとんど姿を現すことがなかった教皇が、災害後は直接市民と交流し、共感を得ていた。教皇の姿勢は市民から深く信頼され、絶大な尊敬を集めていた。

ミランダとシギルの間で行われた会話は、彼らの間の親しさとともに、それぞれの変化への認識を示している。ミランダはシギルが最近明るく振る舞っていることに気づき、それを指摘する。シギルは自身の変化を認めつつ、その原因を「猊下」との関係の変化に見出している。彼は猊下が以前よりも親しみやすく、優雅な存在に変わったことを語り、その変化を深く尊敬している。また、ミランダも猊下の変化を肯定的に捉えており、以前の厳格な姿よりも現在の柔和な姿勢を好んでいる。

一方で、彼らは猊下に対する忠誠心を語りながらも、彼らの発言が時に不適切であることを自覚している。シギルはミランダに対して、彼女が直接猊下から絵の依頼を受けたことを特技として高く評価している。ミランダはその依頼を重大な使命と捉え、自らの才能を生かして臨む決意を新たにしている。

最後に、ミランダはティレンス殿下の過重労働について心配を表明し、シギルはそれに同意するが、殿下自身に深い考えがあるとして、彼らがただ支持し、待つべきだと結論づける。この会話から、彼らがどれほど猊下とその周囲の人々を尊敬し、支持しているかが明らかになる。

ティレンス皇子が長時間執務室に閉じこもり、『教皇アスティラ』が全信徒に語りかける演説の原稿を書いていたが、なかなか満足のいくものができずにいる。彼は原稿を何度も書き直し、不満なものは没にしている。『神聖ミスラ教国』の中枢で起きた異変は、多くの権力者の注目を集めており、ティレンスはそれに応える必要があると考えている。彼はこの演説を、国が新たに生まれ変わる重要な機会と見なしているが、適切な言葉を見つけるのに苦労している。彼は『神託の玉』という魔導具を使い、大陸全土に広がる信徒に直接メッセージを伝える計画を立てているが、その演説の内容には自信を持てずにいる。それでも彼は、自分の役割を果たすために、これからも努力を続ける覚悟を新たにしている。

王女への書簡

レイン王子がリンネブルグ王女の部屋を訪ね、彼女宛の多数の手紙を持参した。それらの手紙は彼女個人に対するファンレターや恋文で、中には求婚を始めるものも含まれていた。王子はこれらの手紙が外交案件として扱うべきものと考えていたが、リンネブルグ王女は全て読むことを決めた。その中には知り合いからのものも含まれており、王女は個人的な範囲で対応することを決定。最終的に、これらの手紙から始まった関係が将来的に重要な外交のきっかけとなる場面もあった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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