3巻 index 5巻
物語の概要
女子高生配信者カリンが、自作自演疑惑を払拭すべく奥多摩渓谷ダンジョンの深層ソロ攻略に挑む姿を生配信する。視聴者からの助言を基に製作した武器や、新装備を駆使し、規格外の敵を圧倒する姿は視聴者を魅了し、世界記録を達成する。ダンジョン情報を独占していたクランの情報資産価値を暴落させ、世間を騒がせるも、その野生のカンを頼りに、更なる未知の領域・深淵へと突き進んでいく。
主要キャラクター
山田カリン:16歳のお嬢様系ダンジョン配信者。本作では、自作自演疑惑を晴らすため、全て自分の力で奥多摩渓谷ダンジョンの深層をソロ攻略しようとする。
物語の特徴
無双感+リアルタイム攻略:深層にしかない“初見殺し”ギミックへの挑戦と、150万人以上の同時接続を誇るライブ配信という異例の演出で、シリーズ最大のスリルと爽快感をもたらす。
近さチョイス+ギャグ演出:奥多摩渓谷を攻略地に選んだのは“自宅近さ”というシンプルな理由だが、真冬のカンペによる説明を入れるなど遊び心を忘れないユーモラスな演出が光る。
疑惑払拭の勝負配信:自作自演を否定し、圧倒的な実力でダンジョンを攻略するという“潔白なるお優雅”をテーマにし、シリーズ中でも屈指の“証明”の物語である。
書籍情報
【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう 4~けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホ程バズって伝説になってますわ!?~
著者:赤城大空 氏
イラスト:福きつね 氏
発売日:2025年6月18日
ISBN:9784094532463
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あらすじ・内容
各アワード席巻の大人気無双バズ第4弾!
自作自演の疑惑を払拭するため、深層ソロ攻略にのりだしたカリン。
選んだのは、ブラックタイガーが苦戦中の奥多摩渓谷ダンジョンだった。
(当てつけではなく自宅からの近さが理由と説明するカリン氏、思いっきり真冬のカンペで言わされているのだった……)。
どんな実力者も命を落とす数々の“初見殺し”に、カリンはいかに対応するのか。
友も敵もファンも野次馬も、数百万人が固唾を呑んで見守るなか。
人類未踏破の魔境への挑戦が幕を開ける!
いざ、潔白なる「お優雅」へ――
大人気ダンジョン無双バズ、第4弾!【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう 4~けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホ程バズって伝説になってますわ!?~
感想
今回の物語は、自作自演疑惑を払拭するために、カリンお嬢様が奥多摩渓谷ダンジョンの深層ソロ攻略に挑むという、まさに「証明」の物語。
ただ奥多摩渓谷ダンジョンはブラックタイガーのホームダンジョンであり。
ブラックタイガーが血税をドブに捨てるように垂れ流すデマ。
その汚らしく卑怯な策謀を、相手のホームにカチコミ、怒りの鉄拳で粉砕してくれるカリンお嬢様の姿は、痛快そのものだった。
上層も中層も、モンゴリアンデスワームでぶった斬るという豪快さ。
そして、お紅茶をお優雅に嗜みながら(表紙)強化種ミノタウロスにまさかの19発も叩き込むという展開には、訓練された視聴者ならわかる、あのミノタウロスの異常なタフネス! ”これは本当にありえない! ”と叫びたくなるほどの衝撃だった。
霧となって攻撃を無効化するミストを、脳筋全開の科学知識で強引に突破するも、華麗なる間違い指摘が入るという展開も、この作品ならではのユーモアだった。
そんな展開だから緊張感はどこへやら、思わず笑ってしまう。
しかし、この展開によって、ブラックタイガーの情報資産が音を立てて崩れていく様は、私自身も溜飲が下がる思いだった。
“ざまあみろ!”と心の中で叫んでしまったのは、きっと私だけではないだろう。
クランマスター・黒井が脂汗をダラダラ流しながら見守る姿は、哀れなピエロそのもの。
黒井が頼りにしていたソロ殺しのヒュプノシスバットは、お嬢様のクソデカボイスで墜落し、コピー能力持ちのダブルシャドウは、容量オーバーで自爆するという予想外すぎる展開には、笑いが止まらなかった。
いや、カリンお嬢様も覚悟決めて挑もうとしてた目の前でパーンだよ?
笑うわ!
しかし、その裏には、彼自身の焦りや、クランの崩壊への恐怖が隠されているように感じられ、少しばかりの同情の念も抱いてしまった。
まぁ、自業自得だけどね。
絶体絶命のピンチが、まさかの爆笑コントに転換するというジェットコースターのような落差は、この作品の大きな魅力だと思う。
心臓がドキドキしっぱなしで、アドレナリンが止まらない。
次はいったい何が起こるんだ!? と、目が離せない展開に、完全に心を奪われてしまった。
カリンお嬢様の挑戦は、単なるゲームの攻略ではなく、彼女自身の生き様を映し出す鏡のようだった。
そして、その生き様は、読者である私に、勇気と希望を与えてくれる。
この物語を読み終えて、私は、明日への一歩を踏み出す勇気をもらった気がする。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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3巻 index 5巻
登場キャラクター
山田カリン
自作自演の疑惑を払拭するため、深層ダンジョンをソロで攻略し続ける十六歳の女子高生配信者である。
・所属:無所属(個人配信者)
・行動:奥多摩渓谷ダンジョンを選定し、深層ソロ攻略配信を実施した
・成果:視聴者数を最大八百万人以上に増加させ、世界タイ記録を達成
・特筆点:ミストやケルベロスなどの高難度モンスターを素手や魔法兵装で撃破し、ブラックタイガーの情報資産に甚大な損害を与えた
真冬
カリンの活動を裏から支える存在であり、助言や技術支援を通じて彼女の配信活動を後方支援している。
・所属:不明(支援者)
・行動:カリンに雑談配信の必要性を提案し、奥多摩ダンジョン選定のカンペを提供した
・成果:魔力隠蔽技術の練度向上や新装備の準備など、実質的な攻略準備を支えた
・特筆点:視聴者の存在を意識したカリンの行動様式の確立に大きく寄与している
もちもちたまご
著名な漫画家であり、カリンの配信に感銘を受けた支援者として即興イラストを通じて応援活動を展開した。
・所属:漫画家・クリエイター(個人)
・行動:カリンがミストを討伐した場面の応援イラストを配信直後に作成・公開した
・成果:そのイラストがSNSで爆発的に拡散し、新規視聴者流入の導線となった
・特筆点:装備〈魔龍鎧装・嵐式〉の命名に関与し、視聴者の注目と熱狂をさらに高めた
光姫
カリンの親友かつ同時実況者であり、感情的な実況で配信の盛り上がりに貢献した。
・所属:ホワイトナイツ
・行動:ホテルから実況解説配信を行い、視聴者の熱量を高めた
・成果:カリンの実力証明を後押しする役割を果たした
・特筆点:熱狂的なリアクションとスパチャ連投により、視聴者からも愛される存在として認知された
黒井
ブラックタイガーのクランマスターであり、カリンの配信によって情報資産が暴露されていく状況に苦悶していた。
・所属:ブラックタイガー(クラン)・マスター
・行動:配信中のカリンを監視し、情報漏洩の拡大に対応しようとした
・成果:ギガント・フォートレスなどの戦力で対応を試みたが、すべて失敗
・特筆点:スキル〈事前危機察知〉の発動によって敗北を悟る描写がある
鬼久保王虎
ブラックタイガーの最高戦力を担う人物であり、深層ソロ攻略の困難さを冷静に語った。
・所属:ブラックタイガー(クラン)・戦力担当
・行動:深層攻略の可能性について質問に答えた
・成果:深層は準備と情報があれば攻略可能という見解を示した
・特筆点:現実的な難易度を提示し、カリンの挑戦の非常識さを強調した
百々目木遠子
ブラックタイガーの幹部であり、経済的な損失試算を行ってクランの危機を数値で提示した。
・所属:ブラックタイガー(クラン)・幹部
・行動:情報資産の損失額を報告し、素材価格暴落の可能性を警告した
・成果:最大四十億円以上の損失試算を示し、危機意識を組織内に拡散させた
・特筆点:情報操作や報道機関との連携も含めた損失管理を担当
登場モンスター
ミノタウロス
強化種として下層に登場し、通常個体を遥かに超える耐久力と筋力を持つ近接系モンスターである。
・登場階層:下層
・特徴:強化個体として登場し、紅茶を持ったままのカリンに素手で撃破された
・戦闘結果:〈無反動砲〉スキルによる20発の打撃で撃破された

ヴェノクラゲ
猛毒と再生能力を持つクラゲ型モンスターであり、複数の下層ボスの一体として現れた。
・登場階層:下層
・特徴:毒耐性・再生特性を持ち、持久戦に強い性質を有する
・戦闘結果:紅茶を持ったまま素手で制圧され、視聴者に衝撃を与えた

ミスト
霧状の魔法生物であり、物理・魔法攻撃を無効化する特性を持つ高難度モンスターである。
・登場階層:深層第一層
・特徴:腐食能力と打撃・魔法無効化を備える“初見殺し”の代表格
・戦闘結果:熱に弱い特性を見抜かれ、カリンが摩擦熱により撃破した

インセクトウォーリアー
四本の腕に武器を持ち、衝撃吸収・蓄積・放出を行う昆虫型モンスターである。
・登場階層:深層第一層~第三層
・特徴:近接攻撃無効、エネルギー砲の放出、衝撃の蓄積による自壊特性を持つ
・戦闘結果:吸収の限界を超えて自壊、群れも誘導戦術により制圧された

ドラゴンカノン
広間に固定された超遠距離砲撃型モンスターであり、魔力を吸収して火山弾を放つ。
・登場階層:深層第一層
・特徴:移動不能だが、飛竜の援護と極大砲撃を備える高火力型
・戦闘結果:カリンのハンマーで砲弾を打ち返され、砲撃を受けて即死した

飛竜
ドラゴンカノンを護衛する空中モンスター群である。
・登場階層:深層第一層
・特徴:爆発属性のブレスによる制空と妨害を行う
・戦闘結果:跳躍連携と壁打ち付けによってすべて撃墜された

暴風龍
過去に討伐されたモンスターで、〈魔龍鎧装・嵐式〉の素材元となった存在である。
・登場階層:記録上は過去、実体は未登場(装備素材として登場)
・特徴:風を操る能力を持つ強大な龍種
・戦闘結果:討伐済。嵐式装備の能力として再登場

ヒュプノシスバット
音波によって探索者を幻覚錯乱状態に陥れる催眠型モンスターである。
・登場階層:深層第二層
・特徴:音を媒介とし、ソロ探索者を最も危険な状態異常に追い込む
・戦闘結果:カリンの爆音(クソデカボイス)で音波を打ち消され、自滅した

ケルベロス(セパレーションケルベロス)
三つの首を持つ巨大犬で、分裂・再生能力を備えた高難度ボスモンスターである。
・登場階層:深層第二層
・特徴:近接・遠距離・魔法干渉の三役分担と不死性を持つ
・戦闘結果:名刀モンゴリアンデスワームによる飛ぶ斬撃で三体同時に撃破された

ダブルシャドウ
対象の姿と能力を模倣する複製型モンスターである。
・登場階層:深層第三層
・特徴:対象の魔力と身体能力を完全再現するが、模倣対象が強すぎると自壊する
・戦闘結果:カリンの能力を模倣したことで容量を超えてしまい自壊、戦闘不能

雷獅子
雷を纏った巨大な獅子型モンスターであり、第三層ボスとして登場した。
・登場階層:深層第三層
・特徴:高出力の電撃と速度を併せ持つ強敵
・戦闘結果:即席ハンマーによる遠距離砲撃で撃破された

ギガント・フォートレス
第四層そのものを兼ねる巨大ヤドカリ型モンスターであり、火力と防御の暴力的権化である。
・登場階層:深層第四層
・特徴:超長距離砲撃、濃密な弾幕、防御殻、自爆機能を持つ
・戦闘結果:〈魔龍鎧装・雷式〉を纏ったカリンにより砲門を破壊され、中枢を斬られて撃破

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展開まとめ
▼第 1話 決意表明
深層ソロ攻略配信の宣言と周囲の動揺
山田カリンは、自身にかけられた自作自演疑惑を晴らすため、「深層ソロ攻略を配信する」と公言した。この突飛な宣言は、視聴者や工作員、さらには彼女のファンまでも驚愕させ、コメント欄には否定的な意見が相次いだ。未成年の個人が配信しながら深層を単独攻略するなど、これまで前例がなく、過去に成功した者は世界でも極わずかであった。しかも彼女はレベル獲得から二年ほどしか経っておらず、十六歳の少女であったため、ヤケを起こしたのではないかという憶測も飛び交った。
過去の惨劇と警告
配信中、五万円の高額スパチャと共に投稿された「荒川ダンジョンの悲劇」のリンクが話題となった。それは、レベル2000超の最強探索者十八名が壊滅した事件を伝えるニュース記事であった。相性の悪い魔法生物やイレギュラーな状況が原因とされるが、詳細は不明であり、日本がダンジョン後進国と呼ばれる一因となった事件でもある。この過去の惨劇を踏まえ、視聴者たちは改めて深層の危険性を痛感し、カリンに配信の中止を求めた。
カリンの真意と揺るぎない決意
カリンは、視聴者からの心配の声に感謝しつつも、「たったレベル2000台の者たちの話ですわよね」と言い放った。そして、無実の証明や信頼してくれる者たちのために、深層ソロ攻略は譲れないと語り、週末に配信を実行する旨を改めて宣言した。その様子からは、表面上の笑顔とは裏腹に、強い覚悟がにじみ出ており、視聴者たちの多くがもはや止められないと諦観を抱いた。
黒井の衝撃と冷静な分析
カリンの宣言を受け、彼女の動向を注視していたブラックタイガーの黒井は衝撃を受けた。黒井は、深層ソロ攻略など知性のない怪物のすることだと高を括っていたが、その宣言に動揺を隠せなかった。仮に配信中に攻略されれば、ブラックタイガーによる疑惑の捏造も無意味になるため、焦りを感じた。しかし彼は、自身の直感がまだ警鐘を鳴らしていないことを理由に、カリンが深層で命を落とすか途中で逃げ出すと予想した。
深層の現実と無謀な挑戦
ブラックタイガー最高戦力・鬼久保王虎は、深層ソロ攻略が可能かと問われ、完璧な情報収集と周到な準備、命懸けの覚悟があれば不可能ではないと応えた。しかし、深層の情報は数千万円単位で取引され、命懸けで得た情報を他者に渡すクランはほぼ存在しないため、カリンが数日で準備を整えることは事実上不可能であった。さらに、配信しながらの攻略は集中力の低下を招くため、常識的には自殺行為に等しかった。
世間の騒動と注目の高まり
カリンの宣言は、配信終了直後からメディアやSNSで瞬く間に拡散され、関連するニュース記事が各所に掲載された。否定的な意見も目立ったが、カリンの無謀を止めたいというアンチとファンの奇妙な一致も見られた。有名女子高生配信者による世界的偉業への挑戦というセンセーショナルな構図は、TVマスコミすら動かし、週末の配信へと世間の注目が一気に集中していった。
配信当日の決行と始動
週末、カリンは東京西部の山岳地帯にある高難度ダンジョン「奥多摩渓谷ダンジョン」に姿を現した。このダンジョンはブラックタイガーが総力を挙げてようやく第三層まで切り開いた危険区域である。電話越しの真冬と連絡を取り合いながら、カリンは準備した装備を確認し、いつものドレス姿で深呼吸を数回。そして「よし、やりますわよ」と宣言し、後に「日本のクラン勢力図をばちぼこに一変させた」と語られる伝説の配信を開始した。
▼第 2話 深層攻略配信開始
配信開始と膨大な視聴者数の反響
山田カリンは週末の午前、深層ソロ攻略配信を開始した。配信開始と同時に視聴者数は爆発的に増加し、同接数は数十万、瞬く間に百万人を超えた。コメント欄は熱狂的な応援や驚きに満ちており、否定的な声はほとんど埋もれていた。カリンのドレス姿や挑戦内容に対するツッコミも多数寄せられたが、視聴者の多くは彼女の挑戦を見守る立場を取っていた。
奥多摩渓谷ダンジョンの選択と騒然とする視聴者
カリンが選んだダンジョンが、未踏破の「奥多摩渓谷ダンジョン」であることが判明すると、コメント欄は騒然とした。このダンジョンは深層どころか深淵まで存在し、国内最強クランであるブラックタイガーですら第三層までしか攻略できていない高難度ダンジョンであった。カリンの配信が進行することで、ブラックタイガーの持つ貴重な攻略情報が無料で世界に公開される可能性があり、彼女の選択は敵対勢力への間接的な打撃とも見なされた。
選択理由の説明と視聴者の反応
カリンは選定理由について、「野次馬が集まりにくく、自宅から日帰り可能な立地だったため」と説明した。視聴者はこの説明が真冬の入れ知恵によるカンペであると見抜き、腹芸が苦手なカリンに苦笑しつつも納得した。一方で、未踏破ダンジョンへの挑戦は情報ゼロの階層が含まれることを意味しており、視聴者の間には本気で彼女の無事を案ずる声も多く見られた。
配信の注目度とカリンの方針決定
カリンの配信はすでに同接百五十万を超え、光姫の実況解説配信の影響もあり、異常な注目度を集めていた。この状況で序盤の階層に時間をかけるのは避けたいと判断したカリンは、上層中層を強引にショートカットすることを決意した。配信の評価が今後の展開に大きく影響する中、彼女は下層で実行したい計画も視野に入れていた。
無茶なショートカットとさらなる注目の集中
カリンは〈神匠〉で作り上げた刀〈モンゴリアンデスワーム〉を抜き、光姫直伝の剣術を用いてダンジョンの地面を次々と切り裂きながら、縦に自由落下する形で上層を突破していった。この無茶な攻略法により視聴者は騒然とし、コメント欄には驚きと呆れが交錯した反応が殺到した。この行動は即座に切り抜かれ、各種SNSで拡散されることでさらなる注目を呼び、同接数はついに二百万を突破した。
各方面の動揺と情報戦の激化
カリンの行動はダンジョン破壊という問題行動でありながら、視聴者には彼女が知性による弁明ではなく、暴力的な実力で疑惑を覆そうとする姿勢と受け取られた。一部ではそれすらも戦略として評価されるなど、配信は混沌とした状況の中で急速に拡散し続けた。カリンはそのまま加速を続け、前人未踏のダンジョンの深奥へと突き進んでいった。
▼第 3話 実況解説と魔境の洗礼
光姫の実況配信と暴走
深層ソロ攻略当日、カリンの親友であり支持者の光姫はホテルから実況解説配信を開始した。カリンの無実を証明するには登録者数の増加が不可欠であり、海外ファンをも引き込める彼女がその役目を担った。光姫は冷静な解説で視聴者を引きつけつつも、カリンの無茶な行動に感極まり、実況というよりただのファンの絶叫配信へと変貌していった。視聴者の多くはこの混乱を予期していたが、それでも彼女の壊れっぷりには驚きを隠せなかった。
紅茶を手に下層攻略を開始
カリンは中層ボスを蹴り飛ばした直後、紅茶を手に下層攻略を開始した。過去に失敗した「お紅茶攻略」のリベンジを今ここで果たすと宣言し、視聴者の困惑をよそに堂々と進んでいった。上層中層をショートカットした目的は体力温存だと思われていたが、彼女にとっては「お優雅なダンジョン攻略」こそが本懐であり、タイミング的に今しかないと判断した結果であった。
強化ミノタウロスとの遭遇と圧倒
下層に出現した強化種ミノタウロスは、通常種を遥かに超える耐久と筋力を持つ強敵であったが、カリンは紅茶をこぼさぬまま素手で打ち倒した。〈無反動砲〉のスキルを駆使して20発の打撃を叩き込み、敵を完全に撃破。コメント欄はその異常さに戦慄し、カリンの強さと行動の非常識さが視聴者の度肝を抜いた。
下層ボス連続撃破と同接数の爆発
カリンはその後、下層ボスを次々に撃破。猛毒や再生能力を持つヴェノクラゲを含め、全てを紅茶を持ったまま素手で制圧してみせた。この異様な光景がSNSで爆発的に拡散され、同時視聴者数は三百万人を突破した。光姫の熱狂的な実況も一因となり、国内外の注目を一身に集めた。配信の注目度は、カリンにとって疑惑を払拭する絶好の追い風となっていた。
深層突入への決意と視聴者の不安
下層攻略を終えたカリンは、ドレス姿のまま深層へと進むことを宣言した。ダンジョンアライブのセツナに憧れて始めた配信活動において、ドレスは彼女の象徴であり、深層挑戦であっても脱ぐ理由がなかった。視聴者からは常識を外れた判断への悲鳴が上がったが、カリンの信念は揺るがなかった。
深層への第一歩と初見の災害級モンスター
深層へ足を踏み入れたカリンの前に、突如として水流のような咆哮と共に現れたのは、水で構成された巨大な竜型モンスターであった。あまりにも規格外の存在に、コメント欄は半狂乱に陥ったが、カリンはその脅威を前にしてもなお笑顔を浮かべ、配信映えを喜んだ。そして、ワイアームとの戦闘時と同じように、圧倒的な魔境を前に拳を握りしめ、挑戦の構えを見せた。
▼第 4話 カリンお嬢様の脳筋クイズ
水の竜の襲撃と初撃突破
深層へ足を踏み入れたカリンの前に出現したのは、河川の氾濫のような意志ある水の奔流だった。巨大な水流が彼女を押し潰そうと迫るが、カリンは逃げることなく拳を叩き込み、水竜を押し返すことに成功した。この異常な力業により視聴者は衝撃を受けたが、モンスターの真の脅威はここからであった。
霧型モンスター「ミスト」の出現と無効化特性
押し返された水流は分裂し、女の顔を浮かべた霧状の魔法生物「ミスト」へと変貌した。霧の体には打撃も魔弾も一切通用せず、触れたものを腐食する性質を有していた。物理攻撃も魔法兵器も通じないこのミストに、視聴者は絶望と恐怖を抱いた。
対応困難なギミック型モンスターとの対峙
カリンは〈お優雅トリング〉と呼ばれる魔弾連射兵器を用いて反撃したが、ミストは再び再構成されてダメージを無効化した。明確な核も存在せず、対処法のないままでは倒す術がないことが明らかとなり、コメント欄には撤退を促す声が高まった。
ティータイムによる突破口の発見
一度落ち着くため、カリンはお紅茶を取り出しティータイムに入った。その際、暴風で霧を吹き飛ばしていたカリンのもとにミストが接近し、熱に反応して悲鳴を上げた。これにより、ミストの弱点が熱や火であることが判明したが、カリンは火炎系武器を所持しておらず、その場での戦闘継続を決断した。
摩擦熱という仰天の攻略手段
新たな打開策としてカリンが選んだのは、拳を超高速で回転させて空気との摩擦熱を発生させ、直接的な熱ダメージを与えるという方法であった。この発想に視聴者は驚愕したが、実際に拳がミストを削り取り、体積を減少させる様子が確認された。物理法則に則りながらも超越するこの手段により、ミストは次第に追い詰められていった。
常識外の勝利と視聴者の動揺
カリンは拳圧でミストを粉砕し、最終的には断末魔と共にその存在を完全に消滅させた。事前情報がなければ詰むとまで言われる霧型モンスターを、素手で、しかも即興の熱攻撃で撃破したことは視聴者の想像を遥かに超えていた。この一戦により、ブラックタイガーが蓄積していた情報資産すら意味をなさなくなるほどの衝撃が広がった。
更なる進撃への意気込み
ミストを討伐し、新技まで習得したカリンは満面の笑みでさらなる深層攻略を宣言した。奇想天外な発想と圧倒的な力をもって常識を覆した彼女は、そのままダンジョンの奥へと進撃を続けていった。
▼第 5話 近接殺し
ミスト撃破後の異常な視聴者数増加
カリンがミストを素手で撃破した情報は瞬く間に拡散され、同時接続視聴者数は異次元の四百万に到達した。これは彼女の無実を証明するため、光姫の支援を受けたファンの宣伝活動の成果であり、視聴者の注目が過熱していた。カリン本人もその数に驚愕しつつ、視聴者への感謝を述べながら攻略を続行した。
新たな敵「インセクトウォーリアー」との遭遇
深層の通路を進むカリンの前に、二足歩行の虫型モンスター「インセクトウォーリアー」が出現した。この個体は四本の腕に剣や棍棒を装備し、極めて高い瞬発力と手数を備えていた。カリンはその連撃を舞うように全て回避し、ドレスや髪を乱すことなく攻撃を凌ぎ切った。
拳が通用しない異常な防御特性
カリンは反撃に出て拳を叩き込んだが、インセクトウォーリアーはそれを一切通さず、まるで無効化したかのように攻撃を受け流した。その甲殻にはヒビひとつ入らず、視聴者はその防御性能に動揺した。さらに、モンスターは衝撃を吸収・蓄積して放出する特性を持ち、強大なエネルギー砲を口から放って通路を破壊した。
衝撃の吸収・放出構造の見抜きと反撃
カリンは衝撃波の発動タイミングと、モンスターが放出時に距離を取る挙動を観察し、衝撃の吸収と放出が同時に行えない構造を看破した。その上で、放出動作に入った瞬間を狙って拳を叩き込み、放出を阻害し続けた。攻撃は無効化され続けたが、カリンは衝撃を蓄積させ続けるという逆転の発想で殴打を続けた。
吸収限界の突破と自壊による撃破
やがてインセクトウォーリアーは衝撃を処理しきれなくなり、逃走を試みて武器を投げつけながら距離を取ろうとした。カリンはそれをすべて回避しつつ距離を保ち、強烈なアッパーで追撃した。直後、蓄積された衝撃が限界を超えて体内で暴発し、モンスターは爆発四散して消滅した。
冷静な攻略と視聴者の沈黙
カリンはその爆散を見上げながら平然と振り返り、素材利用の可能性に言及した。配信としての有用性を語りながらも、視聴者のコメントは一時的に停止した。彼女が深層モンスターの特性を分析し、最終的には力技でねじ伏せた様子に、視聴者はただ沈黙するしかなかった。ようやく流れたコメントも、冷静さと狂気が入り混じったその戦いぶりに対する困惑を滲ませていた。
▼第 6話 束の間の休息と大砲撃
視聴者の驚愕とコメント欄の熱狂
カリンが物理攻撃無効の敵を拳で打ち倒した事実に、視聴者たちはようやく現実として受け止め、コメント欄は爆発的な反応で埋め尽くされた。その内容は、彼女の行動の非常識さや恐るべき度胸を称える声から、深層配信における異常さを指摘するものまで多岐にわたっていた。コメントは過去の行動を引き合いに出し、彼女の実力だけでなく精神構造の異常性にまで言及するものも見受けられた。
光姫配信の反響と相乗効果
一方、光姫の同時実況配信も視聴者の間で話題となり、彼女のリアクション芸がカリンの配信と相乗的に注目を集めていた。コメント欄には光姫の様子を伝える報告が多数寄せられ、実況中に感極まって反応できなくなっている光姫の姿は視聴者の笑いと共感を誘っていた。カリンもその報告を受けて光姫の活躍に感謝し、配信終了後にはお茶会を開きたいという意向を語った。
スパチャと応援イラストによる支援
その直後、視聴者からの高額スパチャとともに、漫画家・もちもちたまごによる応援イラストが紹介された。内容は、カリンがミストを倒す場面を描いたものに、ダンジョンアライブの人気キャラ・セツナが静かに見守る構図であり、リアルタイムで描かれた速筆ぶりが視聴者を驚愕させた。たまごは戦闘後すぐに線画へと着手しており、その過程の配信は作業のみであったにもかかわらず同接四十万を超える異常な人気を博していた。
SNSでの拡散とたまごの影響力
このイラストはSNSでも瞬く間に拡散され、数分で一万リポスト、百万インプレッションを記録する勢いを見せた。さらに投稿にはカリンの配信リンクも添えられており、新規視聴者の導線として大きな役割を果たした。たまごは配信前からも一貫してカリンを支持していた人物であり、その支援の継続性と影響力にカリンは感極まり、配信成功を誓った。
超遠距離からの砲撃と視聴者の混乱
その矢先、カリンは突如として危険を察知し、即座にその場から跳躍して回避行動を取った。直後、かつて彼女がいた場所が凄まじい爆炎に包まれ、ダンジョン全体を揺るがすほどの衝撃が発生した。その正体は、複数のダンジョン壁を貫通して到達した超長距離砲撃であり、視聴者は想像を絶する威力と正体不明の攻撃源に騒然となった。
モンスターによる狙撃型砲撃の可能性とカリンの対応
この攻撃はスナイパーライフル並みの精度を持ち、視聴者はモンスターによる遠隔砲撃ではないかと推測した。普通の探索者であれば即死していたであろう状況において、カリンが即座に反応していた事実により、彼女の感覚と判断力の異常さが再び浮き彫りとなった。視聴者が恐怖を覚える中、カリンは余裕の態度を崩さず、さらなる攻略の意欲を示して前進を開始した。
攻撃元への突撃と次の戦闘への構え
カリンはダンジョン壁に空いた砲撃跡をくぐり抜け、躊躇なく攻撃の発信源へ向かって駆け出していった。視聴者が息を呑むなか、彼女は今回も配信を盛り上げる決意を胸に、次なる強敵との戦いへと臨もうとしていた。
▼第 7話 視聴者の入れ知恵
超遠距離砲撃への突撃とコメント欄の混乱
カリンは、連続して放たれる三メートル級の火山弾による超長距離砲撃の只中を、事前感知能力を駆使して回避しつつ、発射源へ向けて突き進んでいた。視聴者たちはこの常軌を逸した行動に悲鳴を上げ続け、コメント欄は恐怖と混乱に満ちていた。だがカリンは動画映えを理由に、遠距離からの迎撃を否定し、敵の姿を視聴者に見せることを優先して接近戦を選択した。
巨大広間での砲台型モンスターとの邂逅
砲撃の射線を走り抜けたカリンの視界に現れたのは、ダンジョンから魔力を吸収して超長距離砲撃を放つ巨大なドラゴンの首、通称「ドラゴンカノン」であった。このモンスターは巨大な広間の中央に固定されており、動けない代償に強大な攻撃力を誇っていた。カリンは魔力感知によりその仕組みを見抜いたが、ドラゴンカノンは再び砲撃を放ち、カリンはこれを回避した。
飛竜群による護衛と包囲
ドラゴンカノンを守るように、広間上空には多数の飛竜が展開していた。飛竜たちは爆発属性のブレスを一斉に吐き、着弾と同時に広範囲に爆炎を発生させ、カリンの接近を阻んだ。この援護により、ドラゴンカノンは安全に魔力を再充填して砲撃を行える布陣を確保していた。
お優雅トリングの使用を見送り、新武器の投入
カリンは飛竜の妨害を前にして遠距離武器の使用を決意し、アイテムボックスから装備を取り出そうとしたが、直前で選択を変更した。視聴者の過去のコメントを思い出し、ダンジョン壁を素材にして製作した新たな魔法兵装──巨大な近接用ハンマーを試すことを決断した。
火山弾の打ち返しとドラゴンカノンの撃破
カリンは魔力を注いだ大ハンマーを構え、砲撃のタイミングを正確に見極めたうえで回避し、その直後にフルスイングで火山弾を打ち返した。この打撃により、砲弾は発射元のドラゴンカノンへと跳ね返り、直撃によってドラゴンカノンの頭部は吹き飛び、即死した。返された砲弾は飛竜のブレスをも貫き、広間の壁を突き破りながら遥か彼方まで飛翔していった。
武器開発の経緯と視聴者の騒然
カリンは、今回使用したハンマーが視聴者からのコメントをヒントに製作されたものであることを明かした。下層のダンジョン壁を切り出して神匠加工し、魔力によって強度が増すよう設計されたこの武器は、予想以上の性能を発揮した。視聴者たちはその製作背景と成果に驚愕し、冗談のつもりで与えたアイデアが具現化されたことに動揺を隠せなかった。
飛竜群の殲滅と高速空間戦闘
ドラゴンカノンを撃破したカリンは、なおも宙を舞う飛竜たちを次々と撃破した。壁を蹴って跳躍し、飛竜を足場に再跳躍して壁へと叩きつけて絶命させるという一連の動作を連続で行い、数十体に及ぶ飛竜をすべて撃墜した。最後は無傷で高高度から着地し、完全勝利を収めた。
配信映えと実利を兼ねた打ち返し戦法
打ち返した砲弾により、ダンジョンの壁が貫通され、先へと進む直通ルートが形成された。カリンは、動画的にもこの演出は最適であり、今後このモンスターを「ショートカット開通手段」として推奨できると述べた。視聴者はその発想に再び困惑しつつ、彼女の無軌道な行動に翻弄されていった。
次なる戦場への前進
視聴者の理解を超えた戦闘と発言の数々を残しつつ、カリンは砲撃によって開かれた通路を進み、深層第一層のボス部屋へと向かっていった。
▼第 8話 大暴れお嬢様!(深層版)
深層の異常な脅威と視聴者の動揺
カリンが深層ダンジョンをドレス姿で進撃するなか、視聴者たちはその常軌を逸した行動と深層の高難度に驚愕していた。通常モンスターが下層ボス以上の脅威を持ち、彼女の行動が動画映えを優先しながらも無傷であることにコメント欄は騒然とした。同接視聴者数は急増し、配信は五百万人を突破。新規視聴者も多く流入し、世界中で話題となっていた。
世界記録タイの情報と拡散
カリンが進撃を続けるなか、有志による調査により、深層第一層ソロ踏破が十六歳における世界記録タイであることが判明し、情報が急速に拡散した。配信中に深層第一層を踏破するのは世界初であり、これがさらなる注目を集める要因となった。カリン自身は真冬からの不明瞭な説明しか受けておらず意識していなかったが、記録が配信の信頼性向上や疑惑払拭に繫がると理解し、歩みを加速させた。
深層モンスターの大群との遭遇
ボス部屋を目前にしたタイミングで、各ルートの接続によって発生したと思われる深層モンスターの大群が進路を遮った。飛竜やインセクトウォーリアーに加え、魔法反射能力を持つ未知の虫型モンスターなどが押し寄せ、視聴者からは退避を勧める声も上がった。
魔弾掃射とピンポイント狙撃による迎撃
カリンは迎撃を開始し、魔力充塡済みのお優雅トリングで魔弾を連射。多数のモンスターを撃破したが、魔法反射能力を持つ虫型モンスターには通用せず、魔弾が跳ね返された。しかし彼女はそれを回避しつつ、魔法反射を持たない個体だけを狙い撃ちする精密狙撃を実施。さらには大群の中央に跳び込み、全方位へ魔弾を放ち、反射された弾を利用して同士討ちを誘発した。
衝撃波の誘導と物理攻撃の活用
カリンはインセクトウォーリアーの衝撃吸収能力を利用し、殴打によって攻撃を蓄積させたうえで、意図的に別方向へ衝撃波を放たせ、モンスター同士を巻き込む戦法を実行した。これにより反射虫や飛竜、他のインセクトウォーリアーが次々に撃破された。カリンはさらにインセクトウォーリアーを捕らえ、繰り返し攻撃と誘導を行って群れを制圧していった。
戦闘の終結とドロップ素材の損失
深層通路を埋め尽くすほどのモンスターを全滅させたにもかかわらず、カリンは一切の負傷なく戦闘を終えた。倒したモンスターからは希少な素材が多数ドロップしたが、未成年であるカリンには持ち帰る資格がなく、素材は放置されダンジョン壁に吸収された。これに対し、視聴者たちは莫大な損失に絶叫し、コメント欄は混乱と悲鳴で溢れた。
深層ボス部屋への到達と挑戦開始
戦闘を終えたカリンは、砲撃で形成された直線ルートを通って最奥部に到達し、深層第一層のボス部屋の前に立った。視聴者たちはその到達に感嘆しつつ、次なる戦いを固唾を呑んで見守った。扉を開けると現れたのは、巨大な黒い鱗と血色の瞳を持つ暴風龍であった。風のブレスと膨大な魔力を纏うその姿は、圧倒的な殺意を伴っていたが、視聴者たちは逆にカリンの勝利を確信していた。
暴風龍との決戦と即座の勝利
カリンは見知った相手である暴風龍に対し、配信映えの面で物足りなさを感じながらも、超重量級魔法兵装を即座に装備し突撃。渋谷での戦闘と同様、真正面から風のブレスを打ち破り、二撃で暴風龍を撃破した。こうして彼女は五百万人を超える視聴者の目前で深層第一層を踏破し、世界記録タイを確実なものとした。
▼第 9話 深層第二層へ
世界記録達成による祝福と熱狂
カリンが暴風龍を無傷で撃破し深層第一層を踏破した直後、コメント欄は熱狂の声で埋め尽くされた。視聴者からは称賛と驚愕のコメントが殺到し、続々と高額スパチャが寄せられた。著名視聴者であるもちもちたまごや光姫までもが祝福のスパチャを送信し、配信はかつてない盛り上がりを見せた。カリン自身もその反響に驚愕し、内心で動揺を隠せなかった。
世界タイ記録の確認と視聴者の説明
カリンは自分の達成が本当に世界タイ記録に相当するのか疑念を抱き、視聴者に確認を求めた。視聴者たちはアメリカに存在する十六歳の深層第一層ソロ踏破者の情報を挙げ、ダンジョン難易度の違いを考慮しても間違いなくタイ記録であると回答した。加えて、配信しながらの深層踏破は世界初であると断言され、カリンの実績は世界的偉業であると認知された。
視聴者数の異常な増加と報道機関の介入
配信の同時視聴者数は短時間で六百万人を突破し、カリンはその数字の跳ね上がりに再度驚愕した。増加の背景には、テレビ各局による速報報道があった。ニュース速報は全国的に流れ、カリンの深層挑戦が大々的に報道される事態となった。その結果、国内外からの注目が一気に集まり、同接数と注目度はさらに加速した。
ブラックタイガーの情報資産損失
視聴者はSNS上で「ブラックタイガーの情報資産損失試算」なるハッシュタグを拡散させ、カリンの行動によってブラックタイガーが保有していた深層モンスター情報の価値が暴落している事実を指摘した。ミストやインセクトウォーリアー、ドラゴンカノンなどの攻略法が全世界に無料公開されたことで、莫大な情報資産が無価値になったとされ、有志の試算によると損失は約十億円に達するとされた。
将来的な収益損失と視聴者の嘲笑
情報資産のみならず、今後の素材供給による独占的な収益機会も失われる可能性が高く、長期的な損失はさらに膨らむと視聴者は推測した。ブラックタイガーが配信妨害のために投入した資金や人員の効果が皆無となり、逆に被害拡大へと繫がったことに対して視聴者は嘲笑を交えたコメントを連発した。カリンとともに奥多摩ダンジョンを選定した親友の行動にも称賛が集まった。
配信継続の決意と次なる挑戦
配信の影響力が国内外に波及するなか、カリンはフリーズ状態から回復し、視聴者からの支援に感謝を述べた。そして、真の世界記録である深層全踏破を達成すべく、決意を新たにして深層第二層への進行を開始した。
▼第 10話 ブラックタイガーの当惑
カリンの配信開始とブラックタイガーの混乱
山田カリンが奥多摩ダンジョンでの深層ソロ攻略配信を開始したことで、ブラックタイガー幹部たちは動揺に包まれた。彼らは彼女の配信を目の当たりにし、蓄積してきたモンスターの攻略情報が次々と暴露されていく様に絶望した。ミストの素手討伐、虫人間の妨害タイミングの解明、ドラゴンカノンの狙撃回避といった映像により、幹部たちは怒号を上げ、内部情報の漏洩を疑った。
情報資産の崩壊と今後の危機
幹部の百々目木遠子は、カリンによって既に十億円相当の情報資産が失われたと報告し、他のクランが奥多摩に進出することで素材価格の暴落と更なる損害の可能性を警告した。また、情報操作を請け負ったマスコミや工作員からも、今後の身の安全を懸念する連絡が相次いだ。カリンの深層攻略によって世論が形成されることへの危機感が拡大した。
黒井の冷静な判断と第二層の罠
クランマスター黒井は状況を制御するために冷静さを装い、奥多摩第二層の強敵であるヒュプノシスバットの存在を指摘した。このモンスターは音を媒介とする催眠能力で、探索者を幻覚錯乱状態に陥れることで知られ、特にソロでは対処困難とされていた。黒井はカリンの消耗を確信し、第二層の地獄が彼女を阻むと踏んだ。
ヒュプノシスバットの襲来と催眠状態
カリンは第二層に突入後、突如として幻覚錯乱状態に陥ったかのような行動を見せ、視聴者からも懸念が広がった。ヒュプノシスバットによる音波が洞窟内に反響し、配信にもその異音が記録された。さらに、催眠状態にあるカリンに対してモンスターが連携して急襲し、致命的な状況が迫っていた。
異常な行動と自力解除の衝撃
視聴者の予想に反して、カリンは幻覚状態を自覚し、頭突きによって自ら催眠を解除した。さらに、催眠解除に必要な強い衝撃を自ら作り出す戦法を採り、続けて襲ってきたモンスターも瞬時に排除した。彼女は幻覚下でも感知スキルと五感の不一致から状況を正しく把握しており、常識を逸脱した対応力を見せつけた。
催眠音波の無効化と第二層突破
催眠音波を無力化するため、カリンは浮遊カメラのマイクを遮断し、腹の底から放つ爆音で洞窟全体に共鳴する声を発した。その結果、音波はすべてかき消され、ヒュプノシスバットたちは錯乱して次々に落下、踏み潰されて絶命した。視聴者はこの異常行動に呆然とし、ブラックタイガーの黒井も言葉を失った。
深層第二層ボス部屋への到達と損失の拡大
カリンは爆音によって催眠を完封しつつ、出現するモンスターを片端から討伐しながら、第二層のボス部屋まで短時間で到達した。これにより、ブラックタイガーの情報資産損失額は十五億円に達し、彼女の行動がもたらす経済的打撃はさらに深刻さを増していた。
▼第 11話 第二のソロ殺し
催眠ピンチと予想外の突破
配信中、光姫はカリンの催眠状態に狼狽し、絶叫しながら画面にかぶりついていた。ソロでの遭遇は死を意味する強力な状態異常であり、彼女は敗北を確信していた。しかし、カリンは自力で催眠を解除し、声量で音波を粉砕して進撃を続行した。この異常な展開はSNSでも「爆音リサイタル」などと形容され、視聴者たちは笑いや安堵のコメントを寄せた。実況に戻った光姫はうっかり「催眠効くんですね」と発言し、視聴者から通報コメントの集中砲火を浴びた。
最奥到達と深層ボスの出現
騒動の最中、カリンはすでに深層第二層の最奥に到達しており、ボス戦の開始を宣言した。この階層は通常、複数のモンスターとの同時戦闘を想定した難所であるにもかかわらず、カリンはその全てを爆音で突破していた。やがて登場したボスは、三つ首の巨大犬ケルベロスであり、本来は下層の最強格とされるモンスターであった。
分裂するケルベロスと理不尽な性質
出現したケルベロスは三体に分裂し、それぞれ異なる特性を持っていた。近接特化、遠距離砲撃、魔法威力の減退という役割を担いながら連携して戦うため、極めて高い戦闘難度を誇っていた。しかも、三つの首を同時に潰さなければ無限に再生する不死性も有していた。視聴者はこの「ソロ殺し」に絶望し、コメント欄は嘆きと怨嗟に満ちた。
カリンの反撃と無謀な挑発
カリンはパイルバンカーやガトリングによる攻撃を試みるも、ケルベロスの能力により有効打を与えられず、攻撃は回復で帳消しにされた。視聴者の多くは撤退を勧めるが、カリンは攻撃を続行し、三体を殴りつけながら戦場を縦横無尽に移動し続けた。しかしその攻撃も通用せず、むしろケルベロスたちの攻勢が激化していた。
一瞬の誘導と決着の抜刀
突如、カリンが飛び上がり、モンゴリアンデスワームを抜刀。その鍔鳴りが響くと同時に、三体のケルベロスの首が一直線に飛び、地面に転がった。視聴者も光姫も状況を理解できず絶句したが、光姫は敵の誘導と抜刀による飛ぶ斬撃によって三体を同時に仕留めたことに気づく。カリンはその戦法が光姫の助言と刀の存在によって可能となったものであると語り、画面越しに礼を述べた。その言葉に光姫は悶絶し、再び気絶した。
勝利の余韻と余談
ケルベロスの討伐により、コメント欄は騒然となったが、その多くは理解不能な展開への驚愕と、常識外れなカリンへの賛美で埋め尽くされた。戦闘の衝撃と共に、ブラックタイガーの情報資産は二十億の損失となり、光姫の復帰には十分を要することとなった。
▼第 12話 山田カリンの増殖
深層第二層踏破の余波と爆発的な反響
山田カリンが深層第二層を無傷で突破し、セパレーションケルベロスを瞬時に討伐した映像は、視聴者に衝撃を与えた。コメント欄は当初こそ困惑と驚愕に満ちていたが、やがて称賛と笑い声に変わり、切り抜きやファンによる拡散も相まって同時視聴者数は七百万に達した。高額スーパーチャットが飛び交い、SNSやニュースでも取り上げられ、カリンの名は世界的な話題となった。
ブラックタイガー陣営の絶望と希望
一方、奥多摩拠点でカリンの配信を監視していたブラックタイガーの幹部たちは沈黙し、あまりに常識外れな彼女の行動に呆然としていた。セパレーションケルベロスは通常十人以上の精鋭で挑むモンスターであり、ソロ討伐は不可能とされていた。それを短時間で無傷で討伐した事実は、幹部たちに戦慄を与えた。だがクランマスター黒井は、第三層に出現する別のソロ殺しモンスターの存在を引き合いに出し、なおもカリンの進撃に希望を託した。
不気味な影との遭遇と観察
第三層に踏み入ったカリンは、微弱な魔力反応を持つ二体の影と遭遇した。その正体不明の存在は、下層以下の気配を放っており、視聴者も含め油断を見せていた。カリンは得体の知れない相手には観察を優先するという姿勢から、戦闘を急がず観察を続けた。
ドッペルゲンガーの正体と暴走
黒い影は突如としてカリンそっくりの姿へと変化し、さらに本人の気配を再現するほどの魔力を発し始めた。それは正式名称「ダブルシャドウ」と呼ばれるモンスターであり、対象の姿と能力を完全に模倣する存在であった。通常は感知役に模倣させて戦闘職が討伐するのが定石であるが、ソロの場合はコピー対象がその探索者一人になるため、極めて危険な相手であった。
配信視聴者とカリンの反応
視聴者たちは二体の「黒ギャルカリン」の登場に絶望し、同等スペックを持つ二体の敵に成す術がないと判断した。カリン自身もこの状況を深刻に受け止め、力を込めて対峙の構えを見せた。しかし、ダブルシャドウは魔力の発動直後、苦悶に満ちた声を上げ、そのまま内部から破裂するように爆散した。
ダブルシャドウの敗北と戦わずしての勝利
ダブルシャドウはカリンの能力を模倣したことで、内部に宿した膨大な力に肉体が耐えきれず自壊したと分析される。視聴者やカリン自身もこれを理解し、彼女は「お優雅な魂に耐えきれなかった」と総括した。この異常事態により、ブラックタイガーが最も期待していた第三層のソロ殺しモンスターは、実戦に入ることなく排除された。
ブラックタイガーの情報資産損失と敗北
カリンが第三層においてもノーダメージで進撃を続けた結果、ブラックタイガーの保有する情報資産損失額は二十七億に達した。クランマスター黒井が絶望と共に画面を見つめるなか、彼らの戦略は一つずつ崩壊していった。
▼第 13話 レベル〝深層〟オーバー
ダブルシャドウの無力化と第三層の突破
第三層に現れるダブルシャドウは、カリンの能力を模倣するたびに内側から爆発し、逆に他のモンスターに隙を与える存在となっていた。その結果、カリンの進撃は阻まれることなく続き、ほぼ第二層と同様の速度で第三層を踏破した。ボス部屋では、全身に雷を纏った巨大な獅子が立ちはだかったが、カリンはダンジョンの壁から巨大な岩塊を作り、即席のハンマーによって遠距離から砲撃を繰り返し、雷獅子を粉砕した。これによりカリンは第三層を無傷で踏破し、視聴者の祝福と共に奥多摩ダンジョンにおけるブラックタイガーの到達記録に並んだ。
視聴者数の爆増と情報資産の損失
第三層突破により配信視聴者数は八百万を突破し、配信画面には新規視聴者のコメントがあふれた。カリンが進行中のルートは、ブラックタイガーが苦労して切り開いた正規ルートと一致しており、その情報が公開されたことで同クランの情報資産損失は四十億に到達したと算出された。視聴者の間では今後数年にわたる百億規模の損失に発展する可能性が指摘された。
第四層への突入と異様な構造の発見
第三層突破後、カリンはお紅茶で一息入れたのち、第四層を目指して進行した。しかし、第四層に至る通路は異様に長く、最終的にたどり着いたのは、全階層の壁をぶち抜いたかのような広大な一室であった。視認が困難なほど巨大なその空間は、従来の階層構造とは明らかに異なる様相を呈していた。
突如始まる砲撃と異形のボスの出現
静寂を破って始まったのは、地下空間を揺るがすほどの凄まじい砲撃だった。カリンを襲ったのは、地下の太陽と見紛う光線と、濃密な弾幕による一斉攻撃であり、その発生源は巨大なヤドカリ型モンスター──ギガント・フォートレスであった。山のような巨体に多数の火器を備えたこのモンスターは、第四層そのものを兼ねる存在であり、ただのボスではなく、純粋な暴力と破壊の権化として君臨していた。
攻略不能な戦況と追い詰められるカリン
ギガント・フォートレスの圧倒的な火力と無尽の追尾弾により、カリンは〈お優雅トリング〉を使用しても接近すら叶わず、完全に防戦一方に追い込まれていた。視聴者の間では、このボスが通常の深層を超える「深淵」クラスの存在である可能性が示唆され、撤退すら困難と見做された。
爆炎に包まれたカリンと変身装備の起動
ギガント・フォートレスの主砲による爆撃がカリンに命中し、追撃の弾幕がさらに彼女を飲み込んだ。視聴者の間に絶望が広がるなか、カリンは無傷で再出現した。これは、アイテムボックスに改造を施し、変身用に設計された魔法装備「魔龍鎧装・嵐式」によるものであった。この装備は、深層ボスの素材から〈神匠〉によって生み出された風の鎧であり、爆炎と弾幕を吹き飛ばす暴風と共に自動装着された。
鎧の装着と再起動への決意
魔力の暴風を纏い、ドレスの上から漆黒の軽装鎧を装着したカリンは、ふたたび戦場に立った。この装備は三種ある魔法兵装のうちの第二装備であり、風を操る異能を持つ。カリンはこの戦局を切り開くために装備を展開し、今まさに、かつてない強敵に挑もうとしていた。
▼第 14話 救世主
魔龍鎧装・嵐式による空中戦の開始
爆撃に飲み込まれた直後、カリンは新装備〈魔龍鎧装・嵐式〉によって無傷で姿を現した。この装備は風の操作を可能とし、高速機動能力を飛躍的に高める特級魔法装備であった。暴風を纏い、重力を無視して飛翔するカリンは、ギガント・フォートレスの凄まじい弾幕をものともせず、空中を自在に駆け回った。あらゆる基礎能力の応用として装備を完璧に制御する彼女は、追尾魔弾による包囲網さえも、出力強化した風の障壁によって完全に無効化した。
装備の正体と視聴者の反応
この嵐式の防御能力は、かつてカリンが倒したボスモンスター・暴風龍の能力と酷似していた。視聴者の推察により、この装備が深層攻略時に密かに得られた暴風龍の素材によって製造されたものであることが発覚した。さらに装備名のネーミングには人気作家・もちもちたまごが関与しており、その事実により視聴者の興奮は一層高まった。一方、カリン自身の命名候補は極めて残念なものであり、そのネーミングセンスを巡るコメント欄は混沌と化した。
攻勢への転換と暴風による強打
機動性能と防御能力を誇る嵐式で弾幕を突破したカリンは、巨大なハンマーを創出し、暴風を利用して高回転を加えた打撃をギガント・フォートレスに叩き込んだ。その一撃は要塞の殻を大きく凹ませ、砲撃を封じるとともに大広間全体に衝撃を走らせた。この攻撃は視聴者をも圧倒し、コメント欄には混乱と驚嘆が満ち溢れた。
雷式への換装と攻撃力の飛躍的向上
ギガント・フォートレスがなおも砲撃を続けるなか、カリンは装備を〈魔龍鎧装・雷式〉へと換装した。この装備は雷を操作し、電気刺激による肉体活性化と打撃時の電撃付加を可能とするものであった。強化された瞬発力により、カリンは連続的に巨大ハンマーを振るい、敵の砲門を次々に粉砕。同時に雷撃が敵内部へと浸透し、内部爆発が連鎖的に広がった。
ギガント・フォートレスの機能崩壊と戦局の優勢
攻撃の制御を失ったギガント・フォートレスは、砲門の再生を試みたが、カリンの容赦ない連撃により防戦すら叶わなかった。雷撃の干渉により火器の統制は完全に崩壊し、モンスターはその巨体にふさわしくない混乱に陥った。視聴者はその光景に現実感を失い、映像作品のようだと錯覚するほどであった。
モンスターの自爆と雷式による止めの一撃
ついにギガント・フォートレスは、全火器と魔力を巻き込んだ自爆を図った。だが、すでに弱点の射程内にいたカリンは、紫電を纏う手で〈モンゴリアンデスワーム〉を構え、空間ごと中核を切断した。その一閃により自爆は未遂に終わり、モンスターの中枢は無音で細断された。
深層ボス撃破と記録の達成
崩壊の音と共に、超巨大モンスターは轟沈し、戦場には静寂が訪れた。カリンは第四層ボス・ギガント・フォートレスの討伐完了を高らかに宣言した。これにより、彼女は未成年による高難度ダンジョン深層のソロ攻略という、かつて例を見ない公式記録を達成したのである。
▼第 15話 もう一声
世界記録達成による爆発的な反響
十六歳による深層ソロ攻略の成功は、日本国内を中心にネット上で圧倒的な注目を集めた。SNSや掲示板はこの話題一色となり、チャンネル『ナチュラルボーンお嬢様・山田カリンのお優雅なダンジョン攻略』には熱狂的なコメントとスーパーチャットが殺到した。五万円単位の高額投げ銭が連発され、なかでも常連視聴者・光姫によるスパチャの連投は象徴的な現象となった。カリンの討伐対象が規格外のモンスターであったこと、及び死亡疑惑がトレンド入りした直後の劇的な生還が拍車をかけ、登録者数は配信中に一千三百万を突破した。これを受け、報道特別番組まで組まれ、ニュース速報も流れるなど社会的影響は拡大し続けた。
疑惑払拭とカリンの内面の葛藤
ネットではカリンへの自作自演疑惑がほぼ完全に否定され、ブラックタイガーをはじめとする敵対勢力の主張は沈黙に追い込まれた。視聴者は偉業の達成を称え、カリンは感謝の意を述べつつも、疑惑の「ほぼ」という文脈に心を残していた。関係者への迷惑や真冬の尽力を思い、カリンは自らの潔白を百%証明する必要を感じていた。登録者数や反響という数字の大きさとは裏腹に、彼女はなおも完全無欠の解決を求めて思索を続けていた。
黒井の強引な世論操作の継続意志
一方、ブラックタイガーの黒井は敗北を認めることなく、わずかな論理の綻びに縋って情報戦の継続を主張した。彼は、カリンが得た名声は偉業としての人気ではなく、ヒーローとしての人心掌握によるものであり、それが自作自演の動機となり得ると強弁した。たとえ暴論であっても、情報操作により社会的影響力を削ぐ可能性があると信じ、資産の全投入や外部からの支援を宣言して徹底抗戦の構えを見せた。〈事前危機察知〉スキルに異常がないことを根拠に、自らの方針が正しいと確信していた。
突如訪れた直感の警鐘と絶望
黒井が勝利への執念を燃やし続けるなか、彼のユニークスキル〈事前危機察知〉が突如として激しい警鐘を鳴らした。その直後、カリンの配信画面では彼女自身が、今回の記録では疑惑の完全払拭には至らないと断言し、視聴者や支援者の信頼に応えるため、さらなる潔白の証明を志す旨を発言した。そして、深層踏破という世界記録を成し遂げた直後でありながら、さらなる先──人類未踏の「深淵」への挑戦を宣言した。黒井はこの発言を理解できず、言葉を失いながらその様子を見つめていた。
▼書き下ろしその 1 プリンセスお嬢様
雑談配信によるトークスキルの向上
カリンは、真冬の助言に従い、ダンジョン配信だけでなく雑談配信も行っていた。これは、トーク力を高めて配信にメリハリをつけるための試みであり、自宅から行う日常的な雑談がその一環であった。この日は犬と遊んだという平和な内容の話を披露し、同接数に緊張しつつも、徐々に大勢の前で話すことに慣れ始めていた。
動物との交流に対する視聴者の疑念
カリンが道中で犬に懐かれたというエピソードを語ったことに対し、コメント欄がざわつき始めた。高レベル探索者は動物から本能的に忌避される例が多く、動物園や猫カフェへの立ち入りも制限されるほどであった。ゆえにカリンほどの存在が動物に好かれたという事実は、視聴者に強い違和感を与えた。
魔力隠蔽による実演と証明
視聴者の疑念に対し、カリンは探索者としての魔力を隠す技術によって動物に懐かれるようになったと説明した。疑念を払拭するため、配信中に自室の窓を開け、頭の上に米を載せてスズメを呼び寄せる実演を開始した。数分後には実際にスズメが集まり、頭上や肩、腕に止まる光景が映し出された。これはかつて真冬を欺いた際よりもさらに高精度な魔力隠蔽による成果であり、視聴者の間に驚愕と動揺が広がった。
配信者としての成長と視聴者の錯綜した反応
スズメたちが逃げることなく集まったことで、カリンは誤解が晴れたと安堵し、自信を取り戻した。一方、コメント欄では、その能力の異常さに対する驚きと絵面のギャップへの笑いが交錯していた。魔力どころか気配そのものを隠せる可能性に言及する声や、すれ違いに気づけないレベルの存在として畏怖される反応もあった。これらに対し、カリンはネット特有の盛り上がりとして納得し、スズメたちとの別れを丁寧に済ませた後、いつものように配信を再開した。
▼書き下ろしその 2 深層配信前日譚 ※本編ネタバレを多く含みますわ!
深層配信に向けた準備の決意と装備方針の検討
カリンは、深層ソロ攻略配信を前にして準備に着手した。ただしその準備とは鍛錬や情報収集ではなく、新たな魔法装備の作成であった。攻略対象のダンジョンはブラックタイガーが前線開拓しており、情報の入手は不可能であった。また、普段から過剰なほどの鍛錬を積んでいるため、実力面での準備も不要とされていた。カリンは、視聴者への映えと自身のドレスを傷つけずにすむ戦い方を両立させるべく、風や雷の能力を持つモンスターをもとに、速度向上と戦闘性能を兼ね備えた新装備の構想を練った。
遠方ダンジョンへの移動と新装備素材の獲得
カリンは学校が休みであることを利用し、都心から遠く離れたダンジョンへ向かった。移動手段は節約のため、常人の全力疾走と同程度の速度での自走であったが、息切れも休憩もせず直進することで実質的には高速移動となっていた。現地では雷を操る龍を撃破し、運よく素材を一度で入手。そのままダンジョン内で〈神匠〉の技術を用い、黄金の軽装鎧を完成させた。
渋谷ダンジョンでの再訪と守衛との再会
続けて訪れたのは、過去に崩壊騒ぎを起こした渋谷ダンジョンであった。変装は完璧であったものの、探索者ライセンスの提示で守衛には正体が判明することは避けられなかった。カリンは疑惑による過敏さから警戒したが、守衛からは感謝と激励の言葉を受けた。これに応えたカリンは、さらなる士気を得て渋谷ダンジョン深層を一気に攻略し、暴風龍を討伐して必要素材を入手。その素材を用いた新装備の試運転にも成功し、準備を着実に進めた。
真冬の訪問と装備命名騒動
準備が進んだころ、公安との裏方調整を担う真冬がカリン宅を訪問した。カリンは素材の迅速な入手によって新装備が順調に完成していると報告し、真冬にその性能を一部披露した。だが、装備名が「ビュービュー」および「ゴロゴロ」であると知った真冬は言葉を失い、命名の再考を決意した。話題性と説得力のある名称を求め、真冬はある人物を介してたまご先生に命名を依頼。その結果、装備には正統かつ広く受け入れられる新たな名称が与えられた。
新装備の完成と精神的準備の整備
たまご先生に装備名を授けられたことに感激したカリンは、動揺しながらも完成した新装備に自信を持っていた。速度向上とドレスの保護、そして攻撃力の底上げを実現するこの装備により、ドレス姿のまま完全回避を狙う戦術の幅が広がった。さらに、視聴者のコメントから得た発想をもとに作成した巨大ハンマー〈破常鉄槌・塊打〉も加わり、攻撃力と演出の両立に貢献していた。こうして準備を万端に整えたカリンは、緊張と不安を抱えつつも、深層攻略と疑惑払拭を両立させる配信へと踏み出していく決意を固めた。
3巻 index 5巻
同シリーズ




赤城大空 氏の著作の別シリーズ
下ネタという概念が存在しない退屈な世界 シリーズ

出会ってひと突きで絶頂除霊!
おバカで下ネタ全壊な除霊モノ。
サキュバスの性異物と呼ばれる腕に取り憑かれている古屋晴久は、人、霊どちらも絶頂させる事の出来る快楽媚孔が見え。
それを突くと相手を絶頂させる事が出来る絶頂除霊能力(本人は呪いと呼んでる)を持ってしまった。
そんな古屋晴久の将来の夢は除霊師になる事だったが、絶頂除霊を隠しているために彼の除霊師学校での成績は万年最下位。
それでも何とか除霊師になりたい古屋は、同じ性異物に取り憑かれてる宗谷美咲、同性愛者をサディスティックに緊縛するのが大好きな烏丸蒼とチームを組んで除霊依頼を解決して行く。

淫魔追放

その他フィクション

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