のんびり農家 10巻レビュー
のんびり農家全巻まとめ
のんびり農家 12巻レビュー
どんな本?
異世界のんびり農家とは、内藤騎之介氏による日本のライトノベル。
小説家になろうにて連載されており、書籍版はKADOKAWAから刊行されている。
また、剣康之氏が作画をしている漫画版もあり。
月刊ドラゴンエイジにて連載されており、現在は11巻まで発売されている。
また、異世界のんびり農家の日常というスピンオフ作品もあり。
こちらの作画はユウズィ氏が担当している。
アニメ版もあり。
アニメ版は全12話。
2023年1月6日から3月24日まで放送された。
各話のタイトルやあらすじは[こちら]。
物語は、闘病の末に死んだ男性・火楽が、神によって異世界に転移し、農業生活を送るというもの。
彼は神から「万能農具」という特別な道具を授かり、死の森と呼ばれる危険な場所で農地を開拓していく。
そこで出会った吸血鬼や天使、エルフや竜などの様々な種族と交流し、やがて「大樹の村」というコミュニティを作り上げていく。
作品の特徴は、タイトル通りの「のんびり」とした作風であり、戦争や陰謀などのトラブルに巻き込まれるような展開は少なく、主人公が農業や料理を楽しんだり、仲間や家族と触れ合ったりする日常が描かれている。
また、主人公が前世で得た知識や技術を活かして異世界の文化や産業に革新をもたらす場面もある。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2021年09月30日
• 判型:B6判/392ページ
• 定価:1,430円(本体1,300円+税)
• ISBN:9784047367968
読んだ本のタイトル
#異世界のんびり農家 11
著者:#内藤騎之介 氏
イラスト:#やすも 氏
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あらすじ・内容
アルフレート・ウルザ・ティゼルも王都の学園に入学!
アルフレート一行の訪れで、魔王国の王都が震える!
村を順調に拡張していたある日、
やってきたのはギラルの奥さん、グーロンデ。
グーロンデは《神の敵》と呼ばれるほど、この世界の歴史に大きく絡む存在だという……。
彼女が村にやってきた理由はいったい!?
一方、ヒラクの元を離れ、
学園生活のスタートを切ったアルフレート、ウルザ、ティゼルの三人。
寂しがる父親とザブトンをよそに、三人は新しい生活に心を躍らせる!
シリーズ累計200万部突破の
スローライフファンタジー第11弾!!
前巻からのあらすじ
天使族から世界樹の苗を譲られて万能農具で世界樹に適した土を作ってそこに世界樹の苗木を植えたら、、
あっという間に大きくなった。
それに驚き過ぎて見なかった事にする天使族達。
なんせドラゴンに世界樹を焼かれて以来復活しなかった世界樹が大樹の村で復活した。
それに喜ぶ神々と様子を見にきた神の使徒達。その一つが不死鳥の雛にいつも一緒にいる鷲だったりする。
そんな騒動の後に、大樹の村の村長の息子達が第五の村の子供達と闘争を行ってしまった。
率先して攻めたのは長女のウルザで、最終的には街の衛兵まで襲って倒してしまう。
感想
天使族のタカ派の急先鋒のスアロウが遂に村長の軍門に降る!!
かつて天使族の集落にあった世界樹の葉を大きい蚕が食べてる処を目撃してしまい卒倒したのが初登場だった。
世界樹を再生させた村長のヒラクを主とみてスアロウは命令を欲するが、、
村長は農作業でそれどころじゃない。
そもそも、村長には世界をどうこうしようという欲も無い。
それに戸惑うスアロウだったが、娘2人に説得されて大人しくなる。
まぉ、その後に世界樹を焼いた張本人のグーロンデが登場してスアロウの影は薄くなる。
そのグーロンデは、天使族の武器供与の援助を受けた勇者達に襲われて勇者達を返り討ちにしたのだが、、
天使族の武器の呪いで苦痛を与えられ数百年苦しんでいた。
その呪いを解くには自身が焼いた世界樹の葉が必要で、自業自得と本竜も諦めていたのだが、、
村長が復活させた世界樹の葉っぱでグーロンデが復活。
完全に復活したグーロンデは村長にお礼を言うために急ぎ村へと訪問したのだが、、
永年呪いで身体を動かせなかったグーロンデは、身体の動かし方を忘れていた。
それでもグーロンデの外見は八岐大蛇のような外見で、その姿を見た子供達がキラキラした目でグーロンデに駆け寄る。
そんな子供達の大はしゃぎに他のドラゴン達が嫉妬するるのが何気にハートフルw
そして、温泉を警護しているウルザの元部下の骸骨騎士達にも仲間が増えた。
女性型の骸骨魔術師だったのだが、彼女は温泉に来るまで色々と巻き込まれており。
その騒動に始祖さんが大忙しになってしまう。
そして、最初期に移住して来た獣人族の子供達が学園に通ってたら教師にされて、遂には結婚か、、
村長達の外見が全く変わらないけど、年月が経つのが早い。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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のんびり農家 10巻レビュー
のんびり農家全巻まとめ
のんびり農家 12巻レビュー
展開まとめ
[序章]腐る体
呪いによる肉体の崩壊と復讐心
語り手は、自身の体が腐敗していく一方で治癒しようとしていること、その治癒を阻害する呪いの存在を認識していた。呪いは勇者たちの武具によるものであり、数が多すぎるため耐えきれず激しい苦痛に苛まれていた。かつてはその苦しみと怒りから、勇者や関係者すべてに対して復讐を誓っていたが、そのような激しい感情に囚われていた過去を振り返る余裕も生まれていた。
過去の行いへの自覚と心境の変化
現在の語り手は心穏やかに過ごしており、かつて討伐隊を差し向けられる原因を作ったのは自分自身であったと理解していた。過去の荒れた振る舞いを反抗期の延長として受け止め、深く反省していた。痛みと腐敗は続いているものの、それを受け入れ、冷静に現状と向き合う姿勢へと変化していた。
治療不能の原因と絶望の受容
語り手の夫は治療法を求めて世界中を奔走したが、必要とされる世界樹の葉が存在しないため治療は不可能であった。その原因がかつて自ら世界樹を破壊したことにあると知り、さらに荒れた時期もあったが、現在はその事実も受け入れていた。すべては自身の行いの結果であり、この体と共に生きるしかないと結論づけていた。
死期の自覚と残された想い
語り手は自身の治癒力が衰え、腐敗が進行していることから死期が近いことを自覚していた。その中での心残りは二つであった。一つは、ほとんど会うことができなかった娘の成長を一度でも見たいという願いであり、もう一つは夫のことであった。夫には自身の状態の悪化を知らせず、無理をさせないために元気なふりを続ける決意を固めていた。それは自らに課した罰として受け止めていた。
〔一章〕神の敵
1 畑の拡張と背の低い天使族
畑の拡張と安定した経営への意識
語り手は“五ノ村”の店で使用する原材料確保のため、村の畑を拡張していた。同時に、特定の場所に依存しない体制を整えるべく、ゴロウン商会を通じて外部からの仕入れルートの確保も進めていた。一人に依存した経営の危うさを認識し、安定した体制づくりを重視していた。
子供たちの外出と成長への期待
作業中、ウルザを先頭とする子供たちがダンジョン方面へ向かう様子を見送った。彼らは転移門を利用して“五ノ村”のイベント施設へ向かう予定であり、アルフレートの提案による外出であった。過去に問題を起こした経緯はあったが、外の世界を経験させることが重要であると考え、同行は控えつつも無事を信じて送り出していた。
イベント施設と新店舗の発展
子供たちの騒動への対応として建設されたイベント施設は、戦闘訓練や火災訓練の場として活用されるだけでなく、娯楽施設としても発展していた。その近隣に開店した《麺屋ブリトア》は、施設の集客効果もあり人気店になると見込まれていた。店名はグラッツとロナーナの結婚祝いを兼ねて家名から取られたものであり、周囲にも影響を与えていた。
巨大な蚕の発見と原因の自覚
休憩中、居住エリアでのトラブルの報告を受け現場へ向かうと、世界樹の葉を食べる巨大な蚕が発見された。それは“二ノ村”で飼育されていた個体であり、かつて語り手が世界樹の葉を与えた影響で脱走し、ここまで到達したものであった。世界樹自体への影響は軽微であったが、原因が自分にあることを認識し、蚕の処分を避けようと考えていた。
天使族の動揺と倒れる人物
その場に戻ってきたグランマリア、キアービット、そして見知らぬ背の低い天使族の三人は、世界樹の葉を食べる巨大な蚕を目の当たりにし困惑していた。特にその天使族は強い衝撃を受けた様子で、涙を流した直後に倒れてしまった。幸いにも近くにルーとティアがいたため、即座に治療が行われる状況であった。
2 蚕らしき生物の生態と糸の球
異世界の蚕の特殊な生態
語り手は、自身の知識にある蚕の生態と、この世界の蚕の違いを整理していた。この世界の蚕は蛹になるとき以外にも、脱皮のたびに繭を作り、その際に出入り口をあらかじめ用意するため繭を破壊しない特徴を持っていた。そのため繭を茹でる必要がなく、生産性が高い一方で、好みの餌を与えなければ繭を作らず、さらに餌によって糸の品質が変化するため管理が難しい存在であった。
巨大な蚕の特異性と共生関係
世界樹に現れた巨大な蚕は通常の蚕とは異なり、攻撃手段として糸を吐く性質を持っていた。その糸は金色に輝く美しいものであった。また、世界樹と巨大な蚕は共生関係にあり、蚕は葉を食べる代わりに害虫を排除していると判明した。語り手はその関係を理解し、蚕の存在を受け入れる判断を下した。
糸の球の受領と役割の付与
巨大な蚕は自ら糸を吐いて球状の塊を作り、それを語り手に差し出した。語り手はそれを対価として受け取り、蚕たちに世界樹の保護を任せることにした。周囲の者たちはその糸の神秘性に驚き、特別な存在である可能性を示唆したため、語り手はその糸を加工のために預けることにした。
村での穏やかな時間と子供たちの帰還
その後、語り手はザブトンの子供やクロの子供たちと遊び、穏やかな時間を過ごした。夜には“五ノ村”から戻った子供たちが興奮した様子で報告を行い、大きな問題がなかったことが確認された。語り手は安堵しつつ、施設での過ごし方について軽く気にかけていた。
スアルロウの来訪と天使族の特徴
倒れていた背の低い天使族はスアルロウと名乗り、スアルリウとスアルコウの母親であることが判明した。見た目が若く幼い印象であることから、天使族が老いにくい種族であると改めて認識していた。語り手は外見に惑わされないよう注意する必要性を感じていた。
ザブトンからの贈り物と返礼の決意
夜、ザブトンは黒い糸の球を語り手の部屋に持ち込み、飾るように示した。語り手はそれを受け取り、その価値を認識したルーとティアが驚く様子を見ていた。これまでの恩に報いるため、語り手はザブトンへの返礼として細工を施したボタンを作り始めており、感謝の気持ちを形にしようとしていた。
3 スアルロウの挨拶
スアルロウの仰々しい挨拶と危険な忠誠
昼、屋敷の食堂でスアルロウは語り手の前に片膝をつき、極めて仰々しい態度で挨拶を行った。語り手は気軽なやり取りを望んでいたが、その空気はまったく通じなかった。さらにスアルロウは、語り手のためにすべてを捧げると誓い、魔族や人間の殲滅まで口にしたため、語り手は危機感を抱き、ティアたちに助けを求めてその場を収めた。
スアルロウの過去と過激な思想
語り手はスアルリウとスアルコウから、スアルロウの人物像を聞き出した。スアルロウは、かつて神人族を名乗っていた時代の天使族の武闘派であり、ティア以前に最強を称していた存在であった。また、所属するロヒエール派は、天使族こそ神に認められた種族であると考える過激派であり、その筆頭であるスアルロウが語り手を神に等しい存在として崇めていることが明らかになった。
世界樹が生んだ神格化の誤解
スアルロウが語り手を神と見なした原因は、世界樹の存在にあった。これまで育たなかった世界樹が、語り手のもとで大きく育っている事実が、神に等しい力の証と受け止められていたのである。語り手は自分が普通の人間であると伝えようと考えたが、その前にティアたちによる説得が行われた。
再開後も残った危うい認識
いったん退室したスアルロウは、再び食堂に戻ってきたが、平穏を望むという方向では理解したものの、その実現のために敵対勢力を殲滅するという考え方は変わっていなかった。語り手は再び会話を中断し、彼女の危険性を改めて認識したうえで、暴走時に備えて戦力の確認を進めた。ティアたちだけでなく、クロの子供たちでも対処可能と知り、最低限の備えを整えた。
穏当な挨拶への修正と母としての満足
三度目のやり直しで、スアルロウはようやく落ち着いた挨拶を行い、普通の会話が成立した。語り手はスアルリウとスアルコウが村で堅実に働いていることを正直に伝え、スアルロウはそれに満足した。また、前日に気絶した理由が、育った世界樹とその葉を食べる巨大な蚕の存在に強い衝撃を受けたためであることも判明した。語り手は、その蚕が世界樹の敵ではないことを説明し、問題なく挨拶を終えた。
勘違いを利用した説得と語り手の不安
食事を再開した語り手は、ティア、キアービット、グランマリアにどのようにスアルロウを落ち着かせたのかを確認した。すると三人は、語り手が神であるという誤解を解かず、その前提を利用して戦ではなく村での役目や備えに意識を向けさせたことを明かした。語り手は、本来望んでいたのは誤解を解くことだったと不満を示したが、三人は死の森に村を築き、世界樹を育てた存在を人間だと言い張るほうが無理だと答えた。
人間であることへの執着
語り手は最後に、ティアたちが自分をきちんと人間だと思っているかを確認した。しかし三人の反応には微妙な含みがあり、語り手は強い不安を覚えた。そのため、自分は神ではなく人間であると周囲に示す活動をしばらく続けることにした。さらに、ビーゼルやマイケルたちが同じような誤解をしていないことを願っていた。
4 スアルロウがいる夏の日
畑仕事による気分転換と子供たちの遊びの観察
語り手は畑を耕しながら気持ちを落ち着けていたが、クロやザブトンの子供たちに促されて休憩を取った。少し離れた場所ではアルフレートたちが遊んでおり、その様子を見守った。子供たちは“五ノ村”のイベント施設で脱出ゲームに参加しており、子供向けの回をあっという間に攻略したうえ、大人向けの回にも挑戦していた。大人向けの回では五つのグループのうち一つだけが脱出に成功し、それが唯一の成功例であったことから、語り手は子供たちの優秀さに感心していた。
錠前への興味と新たな発想
現在の子供たちは、脱出できなかった者たちを鍛えるためか、錠前を使って遊んでいた。語り手が見せてもらうと、その錠前は複数の鍵穴や隠された仕掛けを持つ複雑なもので、自分の知っているものとは異なっていた。開け方も独特で、語り手には解けなかったが、ウルザは手際よく開けてみせた。その仕組みに強い興味を抱いた語り手は、“五ノ村”で同じ錠前を購入するよう山エルフたちに頼み、自分でも仕組みを研究することにした。
始祖とスアルロウの衝突から奇妙な意気投合へ
畑仕事を再開した語り手は、少し離れた森で始祖とスアルロウが殴り合っている場面を目にした。しかし周囲にルーやティアがいることから大事にはならないと判断し、あえて深入りしなかった。日暮れ頃には二人はすでに仲良くなっており、語り手を神とみなすか神の使いとみなすかで議論していた。語り手はその内容に関わらないよう聞かなかったことにした。
ゴウの来訪と太陽城を巡る確認
夕食時には“四ノ村”からゴウが訪れ、その目的がスアルロウへの挨拶であることが明らかになった。スアルロウはかつて太陽城で暮らしていたことがあり、現在その地が“四ノ村”として語り手の統治下にあることもすでに把握していた。太陽城を取り戻す意思はなく、むしろ語り手に従う立場を明言したことで、ゴウは安心した。さらに、太陽城の燃料不足についても話題に上がったが、語り手が長期間飛行可能な燃料を与えていたため問題は解消されており、そのことで二人は改めて語り手を称賛していた。
錠前研究と新たな活用法の着想
夜、語り手は山エルフたちと共に錠前を調べ、木製の模造品まで作って構造を学んでいった。その結果、内部で鉄球が移動する仕組みを理解したが、扉に付けるには不向きであることも判明した。その不便さを逆に活かし、扉用ではなく宝箱に応用する案を思いついた。語り手は、完成したら“五ノ村”のイベント施設で使える仕掛けになると考えていた。
スアルロウの滞在継続と語り手の警戒
その頃スアルロウは客間で猫を膝に乗せ、酒スライムと酒を楽しみながら村での暮らしに理解を深めていた。スアルリウに帰還時期を問われると、スアルロウは語り手から何らかの命令を受けるまでは側で仕えたいと答えた。その意向はすぐに語り手へ伝えられたが、語り手は不用意な命令が大事につながりかねないと感じ、慎重に対応しなければならないと考えていた。
5 酒を飲む環境
酒の味を左右する環境という発見
ドワーフたちは酒造りだけでなく、酒に合う食べ物の研究も続けていたが、語り手の提案によって「飲む環境が味に影響する」という新たな視点を得た。語り手は宴会や場所による雰囲気の違いが味覚に影響することを説明し、それを実践するための場を用意した。
万能船での空中宴会の準備
語り手は万能船のデッキに席を設け、夜空を眺めながら酒を楽しむ場を整えた。照明はルーの魔法で補い、酒はドワーフ、料理は鬼人族メイドに任せた。当初は大人限定の場とする予定であったが、子供たちやクロとザブトンの子供たちの参加も考慮し、船内にもスペースを設けた。さらに魔王やビーゼルらも加わり、大規模な宴席へと拡大していった。
宴会の開始と夜のひととき
夜の飛行が始まり、安全面の注意を促したうえで乾杯が行われた。子供たちはジュースを飲みながら遊び、大人たちは夜空を楽しみつつ酒を嗜んだ。ハーピー族は周囲を飛行して安全確保に努め、場の中央では芸が披露されるなど、賑やかな時間が流れていた。スアルリウとスアルコウの演出に対し、スアルロウが驚く場面もあり、宴席は盛り上がりを見せていた。
酒に流されて起きた想定外の展開
翌朝、語り手は酔いの影響で記憶が曖昧なまま目覚めたが、自身の行動を振り返る中で大きな問題はなかったと判断した。しかし気づけば“四ノ村”に到着しており、宴会の参加者たちもその場で酔い潰れていた。確認の結果、食料が尽きたため補給に立ち寄り、そのまま現地で宴会を継続する判断を語り手自身が下していたことが判明した。
反省と宴会の継続的な実施
語り手は関係者に謝罪しつつ、宴会自体が好評であったことを受け入れた。その後、未参加者を優先して数日間にわたり同様の夜間飛行の宴席が開催された。語り手自身は飲酒を控えながら参加した。
環境作りへの発展と調整
この経験をきっかけに、ドワーフたちは酒を飲む環境作りにも強い関心を持つようになった。しかし中には危険な発想も含まれていたため、語り手は安全面を考慮しつつ方向修正を行った。最終的には、店の内装など安全な形で環境を工夫する方向へ導いていった。
5 麦わら帽子とラズマリア
釣りによる気分転換と成果のなさ
語り手はため池で釣りを行い、気分転換を図っていた。魚の存在は確認されていたものの、長時間竿に反応はなく、釣果は得られなかった。ポンドタートルの協力の申し出も断り、自力での釣りを続けたが結果には結びつかなかった。それでもリフレッシュとして割り切り、新たな釣り道具の改良を考えるに至っていた。
麦わら帽子と周囲への広がり
釣りの際に用意した麦わら帽子は“一ノ村”の住人が作ったものであり、クロにも被せていた。使用後、クロ専用として玄関に飾ることにし、門番や子供たちからの要望を受けて追加制作を決めた。時間の制約から全員分は用意できないため、共同使用とすることで折り合いをつけたが、その後も周囲からの希望が続き、語り手は制作に取り組むこととなった。
建村祭の開催と像の問題
“五ノ村”では語り手を称える建村祭が企画され、像を神輿に乗せて担ぐ計画が進められていた。語り手は自身の像を避けようと創造神や農業神の像を提案したが、結果として両方が並ぶ形となり、神と同列に扱われることに不安を抱いた。ヨウコの像も制作されたが、大きさの問題で神輿に乗らず、別の場所に展示されることとなった。祭り当日、語り手は最後に挨拶を行い、無事に締めくくった。
ラズマリアの来訪と母同士の衝突
収穫期に天使族のラズマリアが訪れた。彼女は落ち着いた雰囲気を持つ存在であったが、挨拶直後にスアルロウと殴り合いを始め、その印象は一変した。事情を確認すると、スアルロウが祭事を途中で放棄して村に来たため、残されたラズマリアが対応を強いられた経緯が明らかになった。
責任追及と収穫作業への参加
ラズマリアはグランマリアとキアービットにも責任を問い、強い態度で叱責した。語り手はスアルロウの無事を確認しつつ、関係者に謝罪を促した。また、来訪者であるマルビットも含め、全員に収穫作業を手伝わせることで場を落ち着かせた。スアルロウも作業に参加しており、語り手はその様子を見て状況が収まったことを確認していた。
7 夏を振り返る
夏祭りの音楽祭と意外な優勝者
語り手は秋の収穫に向けて畑を耕しながら、今年の夏は“五ノ村”の店にかかりきりで、“大樹の村”の夏祭りを文官娘衆に任せきりにしてしまったことを少し反省していた。今年の祭りは音楽祭であり、歌や演奏など音を出せれば参加できる催しであった。優勝したのはフェニックスの雛のアイギスで、その鳴き声は生命そのものを感じさせるほど印象的であった。牛たちの合唱やザブトンの子供たちの演奏、クロの子供たちの遠吠え合唱も好評であったが、アイギスの存在感が際立っていた。
ガルフを巡る冒険者ギルドの対立
この夏にはガルフを巡る騒動も起きていた。冒険者ギルドが“五ノ村”にも設置されたことで、ガルフはそちらで活動報告を行うようになったが、それまで彼を宣伝材料にしていた“シャシャートの街”の冒険者ギルドがそれを快く思わず、呼び戻そうと動き出した。それに対し“五ノ村”側も対抗し、最終的には双方の代表による集団戦にまで発展した。しかし警備隊が乱入したことで勝負は曖昧になり、その場でガルフ自身が村長の護衛であるため“シャシャートの街”には行けないと明言したことで、“五ノ村”側の勝利という形で収束した。
孫娘の誕生と家庭内の騒動
ガルフの対応が遅れた背景には、初孫の誕生があった。息子夫婦に女の子が生まれ、ガルフは孫娘の世話に夢中になっていた。その際、息子が生まれたときの千倍嬉しいと口を滑らせてしまい、妻と大喧嘩になった。語り手はその仲裁に入ることになり、言葉の扱いには互いに気をつけるよう諭していた。
プールでの天使族のはしゃぎぶり
夏の恒例であるプールも開放されており、スアルロウやラズマリアはそれを珍しがって楽しんでいた。マルビットも夏場の訪問は初めてであったため、三人は大きな娘を持つ母親とは思えないほど盛り上がっていた。語り手はその水着姿に見入ってしまい、グランマリアたち娘世代に抓られることになったが、彼女たちにもきちんと魅力を伝えて場を収めようとしていた。
妖精女王の拗ねた事件
妖精女王を巡る事件も起きていた。子供たち用に作られたチーズ入りハンバーグに興味を持った妖精女王のため、鬼人族メイドが急いで別のハンバーグを用意したが、そちらにはチーズが入っていなかった。子供たちの言葉でその違いを知った妖精女王は、目の前でこれみよがしに拗ね始めたため、語り手は一日かけて甘味作りに付き合うことになった。その後、妖精女王には作ってくれた相手への感謝を忘れず、きちんと謝るよう言い聞かせていた。
平和な夏の終わりと新たな相談
語り手は夏を振り返り、出来事はいくつもあったが、全体としては平和だったと受け止めていた。そんな中、ギラルがグラルを妻に会わせたいと相談を持ち込んできた。しかしグラルはヒイチロウのそばを離れたがらず、ヒイチロウ自身もまだ幼いため簡単には連れて行けなかった。さらに事情を聞くと、ギラルの妻は五百年前の大怪我が原因で外出が困難となっており、人の姿にもなれない状態であることが判明した。
世界樹の葉が必要な重傷
ギラルの説明によれば、その怪我は命に関わるものではないものの、根本的な治療は不可能とされていた。そして、もし治せるものがあるとすれば世界樹の葉しかないと語られた。語り手はその言葉を受け、新たな問題が持ち上がったことを認識した。
8 《神の敵》グーロンデ
グーロンデの来訪と圧倒的な威容
ギラルの妻であるグーロンデは竜の姿で村を訪れた。その姿はドースよりさらに大きく、黒い巨大な鱗と八つの頭を持つ威圧的なもので、正義よりも悪を連想させるほどの迫力があった。村の上空を通過したのち、礼を尽くして村の外に着地したが、その際に森の木々を尻尾で折ってしまい、自ら失敗を気にする様子も見せた。その後、人の姿となった黒衣の美女として現れたが、歩き慣れていないため派手に転倒し、語り手は見なかったことにしてギラルに任せた。
《神の敵》と呼ばれた過去
グーロンデは《神の敵》の異名を持ち、この世界の歴史に必ず名が残る存在であった。会話が通じず、欲望のままに進路上のものを破壊していたため恐れられ、挑んできた軍勢をことごとく返り討ちにしていた。その中には宗教勢力も含まれていたため、《神の敵》と呼ばれるようになった。さらに、そこに生えていたという理由だけで世界樹を砕き燃やしたことが、その異名を決定的なものにしていた。
ギラルとの結婚と勇者たちの襲撃
かつて尖っていたギラルはグーロンデに勝負を挑んだが敗北した。しかしなぜかその後に二人は結婚し、グーロンデは巣に籠もるようになったため、世界を脅かす存在とは見なされなくなった。ところが五百年前、ギラルの不在時を狙って勇者十四人とその仲間二百六十人が襲撃し、七つの頭を潰し、翼と尾を切断した。それでもグーロンデは勝利したが、勇者たちの武器の影響で頭だけは再生しなかった。
治療不能の絶望と世界樹の葉の必要性
ギラルは各種の治療を試み、賢者と呼ばれる竜にまで助けを求めたが、失われた頭を戻すことはできなかった。最後に必要とされたのが、かつてグーロンデ自身が破壊した世界樹の葉であったため、彼女は自分の行いの報いとして受け入れていた。ところが村に育った世界樹の存在を知ったことで希望が生まれ、必要量として一つの頭につき三枚、計二十一枚と見積もられたが、語り手は余裕を見て百枚の葉を渡した。
頭の復活と周囲の動揺
世界樹の葉によってグーロンデの頭は無事に復活し、礼のため村を訪れることになった。その知らせに、ドースやドライム、ハクレン、ライメイレンは慌て、さらにマルビット、スアルロウ、ラズマリアも軽い混乱を起こした。彼女たちはかつて神人族時代にグーロンデへ挑んだことがあり、また勇者たちに武器を供給した側でもあったためである。語り手は村で揉め事を起こさせないため、必要なら和解の場を設けるよう勧めた。
礼儀正しいグーロンデと挨拶の品
到着したグーロンデは、まだ人の姿で歩くのに不慣れで、ギラルの助けも拒みながら苦労していた。そこへザブトンが現れ、背に乗せて語り手のもとまで運んだ。グーロンデは丁寧に挨拶し、手製の品として長い箱を差し出した。その中には神々しい剣が収められており、切断された自らの尻尾が変化したものだと説明された。語り手は反応に困りつつも受け取り、ギラルの妻として歓迎する意を示した。
各地の誤解と村への影響
グーロンデが村へ向かう途中、その姿を見た各地では大きな混乱が起きていた。長く生きる者の多い魔王国では特に彼女の脅威が知られていたためである。しかし語り手にとっては、挨拶に来るだけの訪問であり、ビーゼルもそれを聞いてすぐに納得して帰っていった。語り手は周囲が当然のように受け止める反応に戸惑いながらも、いつものこととして受け流すほかなかった。
9 グーロンデを迎えた数日
車椅子と温泉で進むグーロンデの適応
グーロンデを村に迎えて三日が経過し、当初の緊張はかなり和らいでいた。人の姿での歩行がまだ不安定なため、山エルフたちは室内用と野外用の車椅子を用意し、ギラルがそれを押して支えていた。二人で訪れた温泉も気に入ったようで、グーロンデは村での生活に少しずつ馴染んでいた。
食事と酒に見える竜夫婦の穏やかな時間
グーロンデは肉料理を好み、野菜はギラルに勧められて食べていた。酒も好物であったが、酔うと人の姿を維持できないため、野外に酒席が設けられ、酒スライムとドワーフたちが対応していた。明け方には竜の姿で酒樽を抱えて眠るグーロンデを、ギラルが優しく見守っており、長く苦しんできた時間を思えば穏やかな光景であった。
怪我の真相とドースの謝罪
ドースはグーロンデの怪我を知っていながら、世界樹の葉が必要であるとは知らなかったことをギラルに詫びた。ギラルもまた怪我の詳細を隠していたため、知らなくて当然だと受け止めていた。さらにグーロンデ自身も、潰された頭が腐敗していたため、ギラルやグラルにも姿を見せたくなかったと語った。その事情は重く、村の者たちにとっても簡単に返せる話ではなかった。
天使族との和解
マルビット、スアルロウ、ラズマリアは、かつて世界樹を燃やしたグーロンデを敵視し、さらに五百年前の勇者側に竜に有効な武器を供与した側でもあった。そのため、マルビットは天使族を代表して謝罪し、グーロンデもまた世界樹を燃やしたことを謝った。互いに賠償を求めないことは事前に確認されており、謝罪を通じて長年のわだかまりを和らげる一歩が踏み出された。双方とも、相手が冷静であったことに安堵していた。
子供たちの熱狂と思わぬ対立
村ではグーロンデの来訪を歓迎する空気が広がり、文官娘衆の一部は武勇伝に興奮し、子供たちは竜姿の迫力に夢中になっていた。特にヒイチロウは強く感動し、グーロンデを盛んに褒めたが、そのことがライメイレンとグラルの対抗心を刺激した。竜姿での争いに発展しかけたため、語り手は『万能農具』の槍を投げて間に入り、事態を鎮めた。最後には三人が並んで肩を組む形で収まり、語り手はヒイチロウに異性を褒める際の難しさを教える必要を感じていた。
八つの頭と人格の仕組み
語り手はグーロンデとの会話を通じて、八つの頭には八つの人格があることを知った。ただし中心となる人格は一つであり、他の七つは補助的な人格として統制されているという。これまで休んでいた人格が復活したことで、現在は体の扱いが上手くいかず、人の姿にも不慣れな状態になっていた。とはいえ、時間が経てばいずれ慣れる見通しであった。
魔王への助言と夫婦の在り方
グーロンデとの会話から最も大きな影響を受けたのは魔王であった。魔王は妻を政治に関わらせないと約束していたため、村に連れて来ていなかったが、グーロンデは言葉だけでなく実際に連れ出して共に景色や食を味わうことの大切さを伝えた。その助言を受け、魔王は妻を村へ連れてくる計画を考え始めた。一方で、ギラルも自分の行動が間違っていなかったと確認し、グーロンデとの仲の良さを改めて示していた。語り手は、夫婦仲が良いことを肯定しつつ、グラルにも遠慮せず両親のもとへ行くよう促していた。
10 グーロンデの鱗
滞在費として渡された大量の鱗
グーロンデの治療に使った世界樹の葉の代金を語り手が受け取らなかったため、代わりに滞在費という名目でグーロンデの鱗が二百枚渡された。鱗は一枚ごとに非常に大きく硬かったが、すでに村の倉庫には竜の鱗が溢れており、語り手はこれ以上保管するだけでは済まないと考え、活用法を模索することになった。
換金の難しさと寄付の試み
語り手はまず、ビーゼルやルーを通じて学園への寄付に充てようとした。しかし、グーロンデの鱗は高価すぎて買い取れる者が限られており、換金は容易ではなかった。“五ノ村”の運営資金に回す案も、換金手段の問題から実現が難しく、鱗そのものを素材として使う方向に切り替えることになった。
鱗をそのまま使った加工の失敗
語り手は『万能農具』でグーロンデの鱗を加工し、まず黒い包丁を作った。しかし切れ味が鋭すぎて、食材だけでなくまな板やテーブルまで切ってしまう危険な代物となり、封印されることになった。続いて剣や斧、鎌、槍なども作ったが、これらも禍々しさを帯び、使用者に異常な負担をかけるため実用には向かず、結局すべて封印された。
鱗の正しい扱い方の判明
加工に行き詰まったところで、ガットが竜の鱗は普通そのまま使うのではなく、砕いて粉にし、鉄に混ぜて使うものだと教えた。語り手は『万能農具』の小刀で鱗を削って粉を作り、それをガットに渡した。ガットがその粉を混ぜて短剣を打つと、見た目は普通でも切れ味が大きく向上し、刃こぼれもしにくい優れた武器が完成した。語り手はようやく鱗の適切な使い道を理解したが、削る作業には時間がかかり、大量の鱗を処理するには至らなかった。
鏡への加工と悪魔族の召喚
さらに語り手は、鱗の片面を磨いて鏡にすることを思いついた。綺麗に磨き上げた結果、非常によく映る大きな鏡ができあがったが、その鏡には執事のグッチが映り込み、やがて鏡の中から実体化して現れた。グッチは形式通り願いを尋ねたものの、その直後に鏡を徹底的に破壊した。グーロンデの鱗であの大きさの鏡を作ると悪魔族を召喚してしまうため、非常に危険であることが判明し、語り手は以後作らないよう忠告を受けた。
鱗の売却と新たな問題
鱗の処理に困っていた語り手に対し、グッチは買い取りを申し出た。語り手は百枚ほどを売却し、その代わりに銀の鏡も受け取った。鏡は専用の部屋に飾られることになり、一応の使い道は定まった。しかし、鱗の売却によって今度は大量の古い金貨が支払われ、倉庫五つ分にも及ぶ金貨の山が新たな問題として残った。語り手は、鱗のままのほうがまだ場所を取らなかったかもしれないと反省しつつ、その金貨を“五ノ村”の運営資金に回そうと動き出した。
〔二章〕落下した島
1 ハンバーグと再戦と武闘会
武闘会の開幕と不参加者たちの事情
武闘会が始まったが、魔王は妻を呼ぶことに失敗して落ち込んでいた。ビーゼルとユーリがその様子を慰めていた一方で、ゴール、シール、ブロン、リグネは学園の仕事のため不参加となった。語り手は教師不足の事情を知り、仕方がないと受け止めつつも、子供たちに無理をさせる環境には問題があると感じていた。
ハンバーグ作りと混代竜族の硬直
会場近くの屋台では、グーロンデとグラルが炭火でハンバーグを焼いていたが、焼きすぎて何度も焦がしていた。焦げた分はギラルが食べていたため、語り手は見かねて炭火との距離や焼き方を助言し、最終的には鉄板焼きへ切り替えさせた。その傍らでは、グーロンデとの対面に感動した混代竜族の三人が固まっており、戦士の部への参加を促されることになった。
アイギスと世界樹の蚕の再戦
特別試合として、フェニックスの雛のアイギスと世界樹の蚕の再戦が行われた。開始直後、アイギスは勢いよく攻め込んで蚕の糸をかわしたが、蚕は跳躍して体当たりを決め、その隙に糸で絡め取って勝利した。敗れたアイギスは悔しさを滲ませつつも再戦への意欲を失わず、その感情に呼応するように身体から火を纏ったため、語り手は成長の兆しを感じながらも制御の必要を認識していた。
各部門の勝敗と実力差
戦士の部では、ガルフの息子の妻が初出場で優勝を果たし、出産後の回復を証明する強さを見せた。騎士の部ではレッドアーマーが優勝し、強豪を次々と破った。一方でホワイトアーマーは一回戦敗退となり、ガルフとダガは二回戦で敗れたものの、一回戦突破を大いに喜んでいた。逆にガルフとダガに敗れたクーデルとコローネは、周囲から説教を受けることになった。
模範試合と注目の対決
模範試合では魔王の対戦相手がギラルに決まり、魔王は抵抗虚しく試合に臨むことになった。グーロンデの応援を受けたギラルは強く、さらにハンバーグを食べすぎて腹が出ていたため魔王には勝機もありそうに見えたが、魔王は善戦しつつも及ばなかった。また、グーロンデは人の姿では十分に動けず、竜の姿では舞台に収まらないため試合には出なかったが、顔見せとして竜姿を披露し、外部の参加者や子供たちに強い印象を与えていた。
マルビットとスアルロウの激戦
大きな盛り上がりを見せたのはマルビットとスアルロウの対戦であった。空中戦から始まった戦いは、最終的に舞台上での関節技による決着となり、勝者はマルビットであった。マルビットは天使族の長として負けられない立場が勝因だったと語り、スアルロウは敗因として太ももを抓られたことを訴えていたが、語り手は両者の健闘を称えるにとどめた。
宴会の夜と家族たちの距離
夜は恒例の宴会となり、ドワーフたちはグーロンデに酒での勝負を挑んでいた。子供たちも夜更かしを許されていたが限度があり、ヒイチロウは眠気に負けそうになっていた。語り手が寝室へ連れて行こうとしたところ、ヒイチロウはライメイレンを望み、ライメイレンは大いに喜んだ。そのやり取りから、ラスティやドースも祖父母としての立場を意識していることがうかがえ、語り手は家族ごとの距離や遠慮の違いを踏まえつつ、もっと自然に甘えてよいと促していた。武闘会の夜は、そのような賑わいの中で更けていった。
2 帰った人と残った人とやってきた人
武闘会後の帰還と残留者たち
武闘会の翌朝、魔王とビーゼルはグーロンデ来訪の余波による混乱への対応のため早々に帰っていった。その影響でランダンやグラッツ、ホウが武闘会に来られなかったことを知り、語り手は自分に直接の責任はないと思いつつも、まったく無関係とも言い切れず申し訳なく感じていた。一方で、始祖は到着が遅れて夜に来たもののそのまま滞在し、ひどく疲れた様子で温泉へ向かった。ドース、ドライム、ライメイレンも引き続き村に残り、最近は滞在頻度が高いことを語り手は気にしていた。
グーロンデの定住と新たな役割
ギラルはいずれ帰る予定であったが、グーロンデはグラルのそばにいたいという思いから、このまま“大樹の村”に定住する流れになっていた。語り手は、村に定住する以上は何らかの役割を持ってほしいと考えていたが、グーロンデが極めて優れた魔法使いであることが判明した。闇属性を得意としつつ全属性の魔法を扱え、しかもルーやティアを上回る技量を持ち、同時に八つの魔法を使うこともできたため、子供たちの魔法教師を任されることになった。子供たちは大喜びしたが、語り手はルーやティアが拗ねないよう気を配っていた。
出稼ぎ組の交代と別れの寂しさ
南のダンジョンのラミア族と北のダンジョンの巨人族は、半数が帰り、半数が滞在を続けた。もともと収穫や加工の手伝いのために来ていたが、それが常駐に変わっており、滞在者は村で働いて作物を受け取る出稼ぎの形を取っていた。武闘会のたびに交代する仕組みであるため、帰る者たちからの別れの挨拶が行われたが、語り手はその場面を少し苦手に感じていた。護衛としてクロの子供たちが同行し、帰路でも狩りをしながら戻ることになっていた。
天使族の居座りとルィンシァの制裁
マルビット、スアルロウ、ラズマリアの三人は当然のように滞在を続け、倉庫からコタツを持ち出して早々に冬支度まで始めていた。天使族用の別荘があるにもかかわらず屋敷の客室に泊まることを選び、別荘を整えていたスアルリウとスアルコウへの感謝も促された。そこへ遅れてルィンシァが到着し、仕事をさぼっていた三人を一方的に叩きのめした。マルビットとスアルロウだけでなく、孫に会いたかったラズマリアまで巻き込まれたが、語り手はその事情を汲んで多少の擁護を試みた。
グーロンデとの会談を巡る確認
ルィンシァは三人からグーロンデとの会談結果を聞いたあと、改めて語り手にも内容を確認した。それは三人を信用していないからではなく、片方の受け取り方だけで全体を理解したと思うのは危険だからであった。語り手はその考えに納得し、必要ならルィンシァとグーロンデの会談も用意しようとしたが、ルィンシァはそれを断り、そのまま春まで滞在することになった。
子供たちの武闘会ごっことウルザの失敗
一般の部が一対一形式に戻されたことで明確な優勝者が出なくなり、子供たちは物足りなさを感じたのか、自分たちで武闘会の真似事を始めていた。ガルフとダガが審判を務め、ウルザは指導役に回っていたが、それには理由があった。ウルザは先の武闘会で戦士の部どころか騎士の部にまで出場しようとし、しかもグーロンデから贈られた剣を無断で持ち出していたのである。止めに入った死霊騎士は手加減したこともあって負傷し、語り手たちが作った盾まで壊された。そのためウルザには武器携帯禁止の罰が与えられ、指導役に回らされていた。
死霊騎士の治療と新たな死霊魔導師
負傷した死霊騎士は“大樹の村”で治療を受けていたが、存在の性質上、治癒魔法ですぐ回復するわけにはいかなかった。その代わりに温泉地には獣人族の少女たちが派遣され、ライオン一家との交流を兼ねて働くことになった。語り手が温泉地に残る死霊騎士たちに事情を説明しに行った際、見知らぬ骸骨の存在に気づいた。それは新たに来た死霊魔導師であり、本来は大樹の村へ向かった死霊騎士が紹介する予定であったという。死霊魔導師も温泉地で働くことになったが、女性であるため語り手は最低限の衣服を用意しようと考え、ザブトンに魔導師らしい服の相談をすることにした。
3 “大樹の村”の様子
死霊騎士の新たな盾作り
語り手は負傷した死霊騎士のため、新しい盾を作ることにした。以前の可変式の盾は初見の相手には有効であったが、対人向けの仕掛けであり、武闘会以外では活躍の場が少なかった。それでも見た目の格好良さと子供たちの人気から継続採用が決まり、新たな仕掛けも検討されたが、危険すぎるため断念され、結局は前回と同じ型の盾に落ち着いた。
新しい鎧の構想と鍛冶場の活用
盾に続いて、死霊騎士の鎧も新しく作る案が持ち上がった。これまでは温泉地でも錆びない木製であったが、グーロンデの鱗の粉を混ぜた鉄なら錆びずに済むと判断された。ガットに依頼したところ、完成には数カ月かかると見込まれたが、『ハウリン村』から人手を借りて作業を進める話になった。語り手はそれを許可し、鍛冶場の活用がさらに進むことになった。
暇な時間と妖精女王への果物
秋の収穫まではまだ余裕があり、冬支度も語り手が積極的に動かなくてよい状況であったため、珍しく暇な時間が生まれていた。語り手はコタツに入っている妖精女王に果物を与え、ライチや凍らせたライチ、さらにはメロンやマンゴー、桃を用意して反応を楽しんでいた。子供たちもやって来る時間を見越し、鬼人族メイドたちにも手伝ってもらいながら準備を進めていた。
村で進む小さな変化
外ではフェニックスの雛のアイギスと鷲が飛んでいたが、飛行速度の差からアイギスは拗ねてしまい、語り手はそれを微笑ましく見守っていた。ため池ではポンドタートルが増えており、水を噴き上げる芸の練習までしていたため、冬前に披露の場を作ることが考えられた。村のあちこちで、住人たちや生き物たちの生活が少しずつ充実している様子がうかがえた。
天使族の仕事と騒動
居住エリアからはマルビットたちの悲鳴とルィンシァの怒声が聞こえ、語り手は仕事に励んでいる別荘のほうで何かあったのだと察した。逃げてきたマルビットをルィンシァに引き渡し、仕事が終わるまで屋敷に来ないよう言い渡した。食事だけは届けることにしつつ、語り手は彼女たちの仕事に余計な口出しをしないようにしていた。
妖精と蜂への気配り
北の花畑では妖精の数が増えており、語り手は短く切ったサトウキビを与えていた。その代わりとして蜂の巣にはちょっかいを出さないよう釘を刺した。果樹エリアの蜂たちも確認し、問題なく過ごしていることを確かめたが、女王蜂が太っている様子には少し気を配っていた。冬前には蜂小屋の傷みも確認する必要があると考えていた。
牧場の見回りと動物たちとの関係
牧場エリアでは馬に乗って見回りを行い、山羊や羊、牛、馬の数が増えていることを確認した。山羊たちは相変わらず馬に乗った語り手へ突撃してきたが、馬やクロの子供たちの助けで危険は避けられていた。子馬たちはまだ語り手に懐いていなかったが、以前畑を荒らした際に叱ったことが影響しているのではないかと考えていた。一方でユニコーンの雌は語り手に懐いており、食事でニンジンを増やす約束を交わしていた。
秋の気配と今後の予定
夜の食卓にはゴロウン商会から仕入れた海の魚が並び、秋刀魚や鮭が秋の味覚として楽しまれた。果樹エリアでは栗が収穫間近であり、キノコも収穫の時期を迎えていた。のんびりと過ごした一日ではあったが、改めて考えるとやるべきことは多く、語り手は翌日からまた頑張ろうと気持ちを新たにしていた。
ウルザの反省と語り手の考え
風呂までの時間は子供たちと遊び、その中でウルザが武器の携帯を禁じられて以降、おとなしく振る舞っていることを確認した。反省の様子は見えるものの、語り手はそれがウルザらしくないとも感じていた。秋の収穫が終わる頃には武器の携帯を許してもよいと考えつつも、少なくとも死霊騎士が完全回復するまでは認めないつもりであった。ウルザが大人として認められたくて無理をしたことも理解していたが、急いで大人になる必要はないと語り手は考えていた。
4 魚の頭と落下した島
魚の頭を巡る食事と躾
語り手は秋刀魚の頭を台車に積み、クロの子供たちに与えた。子供たちは問題なく食べ、目を輝かせておかわりを求めたため、以後は秋刀魚の頭を与えることが習慣となった。しかし、遊んだり埋めたりする行為には注意を促し、食べ物への敬意を教えた。その後、鬼人族メイドが鮭の頭を持って現れ、同様に与えたところ、子供たちは骨ごと噛み砕いて食べるほどの力を見せた。
水場での騒動と入浴
食後、語り手はクロの子供たちを水場へ連れて行き、魚臭さを洗い流そうとした。しかし山羊に突撃され、水場に落とされてしまう。子供たちが山羊を追い回す様子を見守りつつ洗浄を終え、自身も濡れたため風呂に入ることにした。獣人族の女の子たちが用意した風呂で体を温めながら、語り手は温泉地に新たに来た死霊魔導師について思いを巡らせた。
死霊魔導師と落下した島の経緯
死霊魔導師は、空に浮かぶ島で研究をしていたが、その島が突然落下し、大きな川を堰き止めてしまった。下流の街や村は混乱し、調査に来た冒険者たちは彼女を原因と断定したため、彼女は未熟な転移魔法で逃亡した。転移先は温泉地近くの山であり、身体の半分が地中に埋まった状態で発見され、死霊騎士たちに救助された。その後、恩返しとして温泉地で働くことになった経緯が語られた。
島破壊と水害の発生
語り手は、逃亡後の出来事も把握していた。冒険者たちは落下した島を調査する過程で大規模な魔法を使い、島を破壊した。その結果、堰き止められていた川の水が一気に流れ出し、下流の街や村に甚大な被害をもたらした。人的被害は事前の避難により抑えられたが、建物の損害は大きかった。この復旧対応に追われていたのがコーリン教であり、始祖が多忙であった理由もここにあった。
始祖の調査と今後の対応
始祖は温泉地で死霊魔導師を見かけ、事情を確認した。浮遊島は他にも存在するため、原因究明は不可欠であったが、島が破壊されたことで詳細な調査は困難となっていた。島を破壊した冒険者たちは逮捕され、被害の大きさから処罰を受けることになったが、悪意は認められず、一定期間後に釈放される見込みであった。釈放後はコーリン教と冒険者ギルドが責任を持つ体制となることも説明された。
支援と対応の決意
語り手は風呂を出た後、始祖のもとを訪れ、水害被災地への支援として寄付を申し出た。鱗ではなく現金での支援を求められ、それに応じることで、間接的ながら復旧に貢献することを決めた。
5 集団飛行とキノコ狩り
天使族の集団飛行と威厳の回復
空ではティアやマルビットたち天使族が横一列で整然と飛行し、見事なフォーメーションを披露していた。指揮を執るマルビットは普段と違い威厳ある姿を見せ、その様子は子供たちに強い印象を与えた。この集団飛行は、怠惰な印象を持たれていたマルビットの評価を改めるために行われたものであり、一定の効果を上げていた。クーデルが槍の使用を求める場面もあったが、語り手は子供たちの睡眠を優先して却下し、集団飛行は安全に終えられた。
父親としての役割を考える
天使族の姿を見て、語り手は自身が子供たちにどう見られているかを考えた。威厳のある存在ではないと自覚しつつも、何かしら良いところを見せる必要を感じ、子供たちと一緒にできることとしてキノコ狩りを思いついた。その日は時間が遅く実行できなかったため、翌日に行うことを決めた。
キノコ狩りの準備と出発
翌朝、多くの子供たちが集合し、森に入る準備を整えた。武器携帯が禁じられていたウルザにも例外的に許可が与えられ、安全を考慮した体制が整えられた。大人たちやリザードマンも同行し、さらにハイエルフのリアたちが先行して安全確認を行っていた。語り手は子供たちと共に歩くことを選び、移動中の会話を楽しみながら目的地へ向かった。
キノコの収穫とトリュフ探し
到着した場所では、『万能農具』で育てた食用キノコが豊富に生えており、子供たちは夢中で収穫した。その後、トリュフ採取に移り、クロの子供たちの協力を得て掘り進めた。しかし、既に魔物か魔獣によって半分ほど荒らされており、完全な収穫はできなかった。
魔獣の襲撃と戦闘
見張りの報告により魔獣の接近が判明し、語り手は子供たちを集合させ、ハクレンに避難を指示した。その直後、巨大な猪が突撃してきたため、『万能農具』で撃退した。さらにザブトンの子供たちの案内で他の猪のもとへ向かい、合計八頭の群れを討伐した。これらの猪がトリュフを荒らしていた原因であった。
帰還と成果
猪の搬送のため、キノコ狩りは中断となり、ドライムの協力で何度も往復して村へ運ばれた。子供たちはライメイレンに乗って帰還し、語り手も満足感を得ていた。巨大な猪を仕留めたことが子供たちから評価され、父親としての面目をある程度保つことができた。
新たな報告と日常への回帰
村に戻ると、フーシュが疲れた様子で現れ、落下した島に関する問題で忙しい状況が続いていることが伝えられた。脱獄した冒険者の再捕縛も済んでおり、大きな混乱は収まりつつあった。その夜は、子供たちが採取したキノコを使った鍋が用意され、日常へと戻っていった。
6 怨念炉
スイレン一家の来訪と竜の集団飛行計画
スイレン、マーク、ヘルゼの一家が久しぶりに村を訪れた。来訪の理由はライメイレンに呼ばれたためであり、竜による集団飛行の計画が進められていた。ヒイチロウの期待もあり、ライメイレンは帰ろうとしていたギラルを引き止めるほど気合を入れていた。語り手はスイレン一家にギラルとグーロンデを紹介したが、マークは過去にグーロンデに敗北した経験があり、緊張した様子を見せていた。
近況報告とイクラの話題
スイレン一家と語り手は食事を交えながら近況を語り合った。当初は軽いお茶の予定だったが、鮭ご飯やイクラ丼を希望され、それに応じた。一般には敬遠されがちなイクラであったが、村では少しずつ受け入れられており、ドースやライメイレンも食べるようになっていた。食文化の違いを踏まえつつ、無理に食べさせない方針が確認された。
浮遊島に関する違和感の発覚
会話の中で、空に浮かぶ島が一つ減ったという話題が出た。マークの記憶とスイレンの体験から、従来の浮遊島の数に不自然な増減があったことが判明した。さらにスイレンが飛行中に攻撃を受けた経験も語られ、始祖が強い関心を示した。これらの情報から、死霊魔導師が住んでいた島は自然な浮遊島ではない可能性が浮上した。
浮遊島の正体の推測
語り手はルーから浮遊島の性質を聞き、通常の浮遊島は落下することがないと理解した。そのため、落下した島は人工的な仕組みで浮いていたものと推測された。始祖も同様の結論に至り、さらなる調査のため死霊魔導師への聞き取りを行うことを決めた。
怨念炉の存在と過去の研究
温泉地での聞き取りにより、死霊魔導師は約千年前から島で生活し、「怨念炉」という装置の研究を行っていたことが判明した。怨念炉は人の怨念を力に変換する危険な装置であり、その名を聞いた始祖は強い嫌悪を示した。しかし死霊魔導師自身は数年前に恨みを失い、以後は穏やかな研究に移行していたため、怨念炉の暴走は否定された。
原因の判明と新たな問題
始祖が怨念炉の封印について確認した際、死霊魔導師は動揺し、重大な事実を思い出した。怨念炉は封印されておらず、放置されたままであった。この事実により、島落下の原因が怨念炉にある可能性が浮上し、問題は新たな局面へと進むことになった。
7 クエンタン
怨念炉調査の継続と死霊魔導師の不安
始祖とフーシュは、怨念炉の存在を前提として落下現場を再調査するため村を離れた。死霊魔導師は、怨念炉は島の動力ではなかったため落下原因ではないと考えていたが、それも含めて調査結果待ちとなった。同行を申し出たものの、落下現場周辺では指名手配されているためフーシュに止められ、温泉地で通常通り働くことになった。ただ、何かを忘れているような素振りを見せていた。
ウルザの料理修行と武器携帯禁止の条件
村に戻った語り手は、夕食に出されたウルザの野菜スープを味わった。ウルザが料理を学んでいるのは、武器携帯禁止を解除してもらうためであった。語り手は、料理を一つ覚えることを条件としており、その判定は語り手、ハクレン、アンの三人が行うことになっていた。実質的にはアンが納得する料理を作れるかどうかが鍵であり、ウルザは真剣に料理の勉強を続けていた。
鍛冶場で進む剣作りと創作活動
夜、語り手は鍛冶場へ向かい、ウルザのための剣作りを進めていた。語り手は柄を木で削って作り、鍛冶そのものはガットに任せていた。鍛冶場には『ハウリン村』から来た二十人ほどの獣人族鍛冶師もおり、二十四時間体制で稼働していた。その結果、死霊騎士用の鎧もすでに完成していた。彼らは生活のための注文仕事から離れ、自由に創作できること自体を楽しんでおり、村はその環境と引き換えに完成品を受け取る形になっていた。
クエンタンの存在の発覚
十日後、始祖とフーシュが戻り、落下した島には死霊魔導師以外にも生活していた存在がいたことが判明した。その名はクエンタンであり、人間でも死霊でもなく、自我を持つ魔法の剣であった。クエンタンはインテリジェンス・ソードとして怨念炉に直結し、その管理を任されていたが、死霊魔導師に放置されていたことが明らかになった。
意識乗っ取りの失敗と剣としての屈辱
フーシュが持ち帰ったクエンタンに語り手は不注意で触れてしまったが、クエンタンは語り手の意識を乗っ取ることができなかった。そのため始祖たちだけでなく、クエンタン自身も驚いていた。その後のクエンタンは非常によく喋ったが、語り手が屋敷の壁に飾ろうとすると急に黙り込んだ。そこにはすでにグーロンデの尻尾が変化した剣があり、格の違いを痛感したクエンタンは精神的にも物理的にも折れてしまった。
修理後の再会と新たな役割
語り手はクエンタンに無断で人の意識を乗っ取らないと約束させたうえで、ガットたちに修理を依頼した。修理を終えたクエンタンは、竜の鱗の粉によって強化されていた。死霊魔導師が手に取ると、クエンタンは以前との違いを語り、試し切りへの意欲まで見せた。死霊魔導師との会話では、クエンタンが代わりに声を出している形となっており、語り手はそれが死霊騎士たちの意思疎通にも使えるのではないかと考えた。
謝罪と主従の再確認
最後に語り手は、死霊魔導師にクエンタンへきちんと謝るよう促した。クエンタン自身は死霊魔導師のそばにいたい様子を見せており、長く放置されていた関係ではあっても、両者のつながりはまだ失われていなかった。
閑話 クエンタン、動く!
怨念炉管理に縛られた日々
クエンタンは自我を持つ剣として生まれながら、怨念炉の管理という役割を長年担っていた。本来は敵を斬るための存在であるにもかかわらず、ただの装置管理に使われる状況に不満を抱いていたが、道具である以上は従うしかなかった。怨念炉は常に稼働し続けており、膨大なエネルギーが蓄積されていったが、死霊魔導師は長期間姿を見せなくなっていた。
主の不在と暴走の引き金
死霊魔導師が現れないまま年月が経過し、クエンタンは異変を察した。貯蓄タンクが限界に達する中で、やむを得ずエネルギーを外へ放出し続けたが、次第に焦燥を募らせていった。動けない自身にできることは限られており、打開策としてエネルギーを自らに集めた結果、暴走を引き起こし爆発が発生した。その影響で島は落下し、クエンタンは無事であったものの新たな危機に直面した。
逃走の試みと捕縛
落下後、爆発寸前の状況の中で現れた人間に対し、クエンタンは意識を乗っ取って脱出を図った。危機を知らせつつ行動を誘導したものの、結果としてその人物は犯人と見なされ捕らえられてしまった。救出を試みたが、コーリン教の部隊によりすぐに制圧され、クエンタン自身も厳重に保管されることになった。
新たな場所と挫折
その後、クエンタンは“大樹の村”へと運ばれた。そこにいる者たちはいずれも強者であり、意識を乗っ取ることは不可能であった。唯一隙があると見た人物にも通用せず、初めて自らの能力の限界を思い知らされることとなった。さらに、村で壁に飾られようとした際、圧倒的な格を持つ別の剣と並べられる状況に直面し、精神的に耐えきれず自ら刀身を砕いてしまった。
再生と再会
砕けたクエンタンは、村長の提案により修理されることになった。腕の立つ鍛冶師たちの手によって再生され、さらに竜の鱗の粉によって強化も施された。これにより再び剣としての機能を取り戻したクエンタンは、死霊魔導師の生存を知り、大きな喜びを覚えた。
主のもとへの帰還と新たな意欲
クエンタンは再び死霊魔導師の手に戻り、長い別離を経て再会を果たした。かつての復讐心は薄れたものの、再び共に在ることに満足し、自身の強化された力を試したいという意欲を見せた。ただし、過去の経験から無謀な対象を避ける慎重さも身につけていた。
8 小さい事件
人工島の正体と過去の断片
クエンタンの補足により、死霊魔導師が住んでいた島は太陽城と同様の人工島であることが判明した。製作者は不明であり、未起動の状態で発見されたものを死霊魔導師が起動させたという。死霊魔導師はかつて強い恨みに支配されていたが、その対象は現在では完全に忘れており、深く追及されることはなかった。クエンタンの製作者や誕生時期も曖昧で、記憶が操作されている可能性が示された。
剣としての役割とクエンタンの限界
死霊魔導師は魔法使いでありながら剣術にも長けており、クエンタンはその戦闘を支える存在であった。ただし、クエンタンが意識を乗っ取らない場合は単なる会話可能な剣であり、その役割は限定的であった。本人は戦闘支援を主張したものの、実際には補助的な助言に留まる場面も多かった。
死霊騎士の代弁と利便性の向上
クエンタンは死霊騎士の意思を言語化することも可能であり、これまでジェスチャーに頼っていた意思疎通が格段に向上した。ただし、便利さに依存しすぎることを避けるため、あくまで補助的に利用する方針が取られた。死霊騎士自身の表現力もまた価値あるものと認識されていた。
竜の集団飛行と予期せぬ騒動
ある日、複数の竜が編隊を組んで空を飛行した。ドースやギラルを先頭に、多くの竜が続く壮観な光景であり、村の住人たちはそれを見上げていた。事前に周知されていたため混乱はなかったが、途中で竜たちが火球を放つという想定外の行動を取った。火球の大半は空中で消滅したものの、一部が森に落下して爆発し、語り手は急遽対応に追われることになった。
母親会議の開催とウルザの動機判明
村では定期的に母親会議が開かれており、子供の教育や生活に関する重要事項が話し合われていた。その中で、ウルザが早く大人になろうとする理由が問題となった。調査の結果、ウルザは語り手の部屋に入りたいという動機を持っていたことが判明し、周囲は大きく動揺した。
疑念の解消と新たな対応
語り手の行動に問題がないか徹底的に確認が行われたが、不審な点は見つからず疑念は晴れた。その後、ウルザの真意が「隠し通路の存在を知りたかったため」であると明らかになり、騒動は収束した。この結果を受けて、子供たちも利用可能な新たな部屋が用意され、隠し通路や仕掛けが備えられた空間が整備された。これにより、ウルザが無理に成長を急ぐ必要もなくなり、問題は解決へと向かった。
9 ウルザの料理
秋の収穫と各種族の協力
秋の収穫が始まり、村の住人たちが総出で作業にあたった。天使族や竜たち、ラミア族や巨人族も加わり、賑やかな収穫となった。中でもグラッファルーンは積極的に働いており、先日の集団飛行での失敗を挽回しようとしている様子であった。語り手はその事情に気づきながらもあえて触れず、努力を見守った。
収穫後の加工と冬への準備
収穫した作物は加工に回され、小麦は粉にされ、果物や野菜も保存食へと変えられていった。一部の野菜はため池のポンドタートルたちに与えられ、冬眠前の食事として消費された。蚕たちも越冬のための繭を作り始め、村全体が冬への備えを進めていた。
アイギスと鷲の関係の変化
フェニックスの雛アイギスは、勝負が先送りになったことに不満を抱いていたが、鷲が捕らえてきた兎を与えられることで機嫌を直した。鷲は普段の食事に困っていないにもかかわらず狩りを行い、村に貢献していた。アイギスは兎の毛を毟ることで満足し、その様子を周囲は温かく見守った。
ウルザの料理修行と剣の授与
ウルザは料理の修行を続け、ついにアンを満足させる料理を完成させた。語り手の助言により、強い火力でも扱いやすいチャーハンを習得し、その出来栄えは高く評価された。この成果により武器の携帯禁止が解除され、新たな剣がウルザに与えられた。以後、村ではしばらくチャーハンが続くこととなった。
竜たちの帰還と別れ
収穫が一段落すると、ギラルをはじめとする竜たちが帰路についた。グーロンデやグラルとの別れを惜しみつつ、土産を受け取って去っていった。スイレンや他の竜たちもそれぞれの事情で帰還し、村にはドースやライメイレンらが残ることとなった。
ライメイレンの役割と周囲の評価
ライメイレンは孫であるヒイチロウに対して深い愛情を見せつつも、必要な場面では厳しく指導していた。その姿勢は他の子供たちにも向けられており、子供たちからは畏れられる一方で、大人たちからは高く評価されていた。多くの子を育て上げた経験を持つ彼女は、村において重要な相談役として頼られる存在となっていた。
10 挨拶
冬眠前の別れ
ザブトンとザブトンの子供たちは、冬眠前の挨拶のため語り手のもとを訪れた。語り手は春の再会とパレード用衣装の完成を約束し、冬眠しない子供たちには保温石を忘れずに持つよう注意した。続いてポンドタートルたちも冬眠の挨拶に来て、語り手は名残を惜しみながら見送った。
冬の始まりとスライムの保護
本格的な冬が始まると、外を出歩くスライムの数は減り、寒さに強い個体だけが残っていた。語り手は寒さで動きが鈍くなったスライムを見つけると、屋敷の中へ運んで解放した。外に放置しても問題はなかったが、村の一員として助けたいと考えたためであった。
客間のコタツを囲む者たち
屋敷の客間には三つのコタツが設置されており、それぞれで異なる面々が冬の時間を過ごしていた。一つ目のコタツでは、マルビット、ルィンシア、スアルロウ、ラズマリアが酒と肉を楽しみながら双六をしていたが、内容に不満を持って途中で投げ出していた。二つ目のコタツでは、ドース、ライメイレン、ドライム、グーロンデが麻雀に熱中していた。三つ目のコタツでは、グッチ、ブルガ、スティファノが羊羹とお茶を囲み、甘味について語り合っていた。
語り手の部屋のコタツと子供たち
語り手の部屋のコタツはクロとユキに占領されていたが、少しだけ場所を空けてもらって入ることができた。そこでは妖精女王が仰向けで寝ており、その両脇にはヒトエとサマエルが寄り添って眠っていた。ヒトエはこぎつね猫たちと親しく、猫たちも姉のように振る舞っていたが、語り手はヒトエにもっと他の子供たちとも関わってほしいと感じていた。
ヒトエの成長とヨウコの変身
ヒトエの成長について気にする語り手に対し、ヨウコは子供期間が長いほど強くなると説明し、まったく焦っていなかった。さらにヨウコは、年齢を変化させた自分の姿を次々に見せ、大人になれば自由に姿を変えられることを示した。語り手はそれを見て納得したが、その夜、様子を見ていたルーから問い詰められることになり、誤解を解くために対応することとなった。
魔王の来訪と新たな予定
サマエルが目を覚まして部屋を出たことで、魔王が来たことを語り手は察した。語り手が立ち上がると、酒スライムが隠していた酒の場所を知っている様子を見せ、語り手を驚かせた。その後、魔王との話し合いで、三日後に魔王の妻を村へ連れて来ることが決定した。
結婚の挨拶を巡る確認
魔王の妻の来訪に合わせて、獣人族の三人とさらに十二人が“五ノ村”で語り手に会いたいと申し出ていることが伝えられた。その目的は結婚の挨拶であるらしく、語り手は獣人族の三人の結婚話を思い出しながらも、十二人全員が結婚相手なのか、それとも親族を含めた人数なのかを確認した。特にホウの名も含まれていたため、相手側の親族が来るのではないかと考えていた。
閑話 魔王の妻の来訪
魔王の妻アネの事情と葛藤
アネ=ロシュールはガルガルド貴族学園の学園長であり、魔王の妻でもあった。しかし、夫が後から魔王になっただけであり、魔王と結婚した意識はなかったため、その立場には複雑な思いを抱いていた。それでも夫を愛しており、支える決意を持っていた。夫とは話し合いの末、別居に近い生活となったが、頻繁に会えるため寂しさは感じていなかった。一方で娘ユーリの成長と独立には喜びと同時に寂しさを覚えていた。
旅の誘いと多忙による断念
魔王から日帰りの旅に誘われたが、学園は建国祭や突発的な卒業対応で多忙を極めており、三日間の休みを確保することが難しかった。特に急な卒業には人生を左右する事情が絡むため、軽々しく延期できず、アネは学園に残ることを選択した。その結果、友人の卒業や教師の問題対応なども重なり、残留の判断は正しかったと実感した。
休暇の確保と出発準備
冬になり、ようやく三日間の休暇を確保したアネは、万全の準備を整えた。魔王の妻という立場上、危険を想定しながら旅支度を進めたが、出発当日には夫が追加の着替えを持ってきたことや、獣人族の三人が同行することに不安を覚えたまま出発することとなった。
村への到着と異変の発覚
クローム伯の転移魔法により村の外へ到着したアネは、到着直後に所持していた七つの護符がすべて無効化される異常事態に直面した。さらに村の内外から常識外れの気配を感じ取り、状況への警戒を強めた。同行していた獣人族の三人は迷いなく村へ向かい、そこでユーリやフラウレムの姿を確認したことで、この地が“五ノ村”ではないかと推測するも、地形や環境の違いから確信を持てなかった。
理解不能な光景と疑念の増大
周囲には太陽城と思しき存在が空に浮かび、さらに遠方では竜同士が争う光景が見えていたにもかかわらず、誰もそれを問題視していなかった。クローム伯の裏切りではないと判断したアネは、状況の異常性を認識しつつ、魔王に対して説明を求める決意を固めた。
11 挨拶の順番待ち
出迎えの準備と正面入口の変更
魔王の妻の来訪に備え、語り手は居住エリア南側の出入り口へ向かった。この場所は新たに村の正面入口と定められたものであり、以前の入口が不適切と判断されたため変更されたものであった。語り手一人で向かう予定であったが、フラウ、ユーリ、アン、さらにレッドアーマーも同行した。
獣人族の三人との再会
現地にはすでに魔王一行が到着しており、獣人族の三人が語り手に駆け寄った。かつてのような無邪気な振る舞いは抑えられ、丁寧に帰還の挨拶を行った。語り手はその成長を感じつつ迎え入れた。
魔王の妻の挨拶と仕切り直し
魔王の妻アネは当初、威厳ある形式的な挨拶を試みたが、魔王とユーリによって制止され、改めて落ち着いた自己紹介を行った。語り手もそれに応じて簡潔に歓迎の言葉を返し、形式的な挨拶は無事に整えられた。
村内案内と夫婦の様子
アンの先導で村の案内が始まり、語り手は各施設の説明を行った。その最中、アネは魔王に抱えられながら移動しており、二人の親密さが際立っていた。途中、グラッファルーンとラスティの親子喧嘩なども見られたが、結界により被害は及ばないことが説明された。
屋敷到着と迎えの面々
屋敷前ではクロの子供たちが整列して出迎え、屋敷内ではルー、ティア、セナ、ガルフ、ガットが待機していた。ルーとティアは語り手の妻として、セナは獣人族代表として挨拶を行い、必要な紹介が進められた。
着替えと客間での騒動
アネは到着後すぐに着替えを希望し、魔王の案内で客室へ向かった。着替えを終えて客間に現れたアネは、コタツで酒を飲んでいたマルビットたちと再会し、強く叱責した。王国の要職にある者たちのだらけた姿に怒りを示し、さらにルィンシアやスアルロウにも厳しい言葉を投げかけた。
始祖との対面と驚愕
続いて始祖との対面が行われ、アネはその存在に強い衝撃を受け、再び大きく驚いた様子を見せた。村に存在する人物たちの異常な格の高さを実感する場面であった。
猫たちとの交流と安らぎ
その後、魔王による猫たちの紹介が行われ、アネは非常に喜び、これまでで最も柔らかな表情を見せた。猫たちも魔王に懐いて集まり、和やかな空気が広がった。
挨拶待ちの列と次の出迎え
一方でクロやユキ、ザブトンの子供たちは挨拶の順番を待っており、それぞれ準備を整えていた。語り手は順番に対応する必要を感じながら、次々と訪れる交流の機会に備えていた。
閑話 アネの滞在
若い姿に戻ったアネと魔王の動揺
魔王ガルガルドは、妻アネが本来の若い姿に戻っていることに気づき、村長が驚くから変身するよう促した。しかしアネは強い衝撃を受けていたためか、昔の調子に戻っており、魔王の旧名であるキブスリーと呼びながら拒絶した。魔王は正気を取り戻したときの反応を恐れつつも、今は逆らわず受け入れるしかないと判断した。
ザブトンの子供たちの踊りとアネの感動
その場ではザブトンの子供たちが一糸乱れぬ踊りを披露しており、アネは目を輝かせて感動していた。魔王もその見事さに感心し、惜しみなく拍手を送った。ソロの演技から集団での足音の揃った演技まで、ザブトンの子供たちの芸は魔王にとっても見応えのあるものであった。
ドースへの無遠慮な指摘
踊りの後には竜王ドースがアネへの挨拶に現れた。アネは形式通りに名乗り、ドースも簡潔に名乗り返したが、アネはその挨拶の短さを咎めた。魔王は肝を冷やしたが、ドースが笑って受け流したため事なきを得た。魔王はそれ以上余計なことを言わないよう、心の底から願っていた。
猫たちによる正気への回復
夕食前になると、アネは猫たちに癒された影響で正気を取り戻した。魔王は何度も猫たちに救われてきた経験から、その効果を実感していた。だが、正気に戻ったアネは自分の振る舞いをなんとなく覚えており、悶えた末にその怒りの矛先を魔王へ向けた。魔王はそれを受け止めることこそ愛だと信じ、謝罪すべき相手には二人で謝って回った。
鍋を囲む家族の時間
夕食は味噌仕立ての鍋料理であり、魔王はアネとユーリと同じ席についた。王城ではあり得なかった家族で鍋を囲む時間に、魔王は不思議な感慨を抱いていた。アネは若い姿のままで席につき、ユーリは幼い頃に姉と名乗って現れていた人物の正体が母であったことを理解した。魔王は細かいことを脇に置き、今は家族で鍋を楽しむことを優先した。
餅と将来の話題
鍋には餅も加えられ、ユーリは母にもその味を味わわせようと勧めた。魔王はそれを受け入れつつ、アネがユーリに結婚の話を振ろうとしたため、まだ早いと制した。孫を羨ましく思う気持ちは理解しながらも、ユーリにはまだその話題を急がせたくなかったのである。
竜たちの戦いと挨拶の保留
昼間に起きていた戦いは門番竜が体を張って止めたと聞き、魔王はその働きに感心した。また、台風竜ライメイレンや《神の敵》グーロンデへの挨拶も勧めたが、アネは遠慮したため無理には進めなかった。魔王は後で改めて機会を作ればよいと考えた。
アルフレートとウルザへの所感
村長が息子たちを連れて紹介に来ると、魔王はアルフレートを見て優秀そうな息子だと感じ、息子が欲しかった思いを改めて抱いた。一方でウルザについては活発で要注意の人物だと見抜き、来年アネの学園に入る予定であることに不安を覚えた。誰かを監視役として付けても焼け石に水だと悟り、せめて覚悟だけは決めておこうと考えた。
温泉地への移動と新たな不安
食後、家族で温泉地へ向かうことになった。魔王はその時間を楽しみにしていたが、死霊騎士や死霊魔導師、ライオン一家の存在をアネに伝え忘れていたことに気づいた。再びアネが混乱する可能性を感じた魔王は、猫のぬいぐるみで気を逸らしつつ、どうにか正気を保ってほしいと願っていた。
[三章]男の子たちの結婚
1 三人の結婚相手
魔王の妻の滞在と結婚報告の切り出し
魔王の妻は当初の日帰り予定を बदलえて一泊することになり、温泉や食事にも問題なく馴染んでいる様子であった。箸も自然に使いこなしており、獣人族の男の子三人が王都で箸を広めていると知って、語り手は意外に感じていた。そうした中で、語り手はゴール、シール、ブロンの三人に結婚の話を切り出した。
シールの逃走と三人の結婚確定
語り手の問いかけと同時に、シールは結婚したくないと叫びながら逃げ出した。しかしゴールとブロンに取り押さえられ、結婚はもはや避けられない状況であることが明らかになった。ゴールの説明によれば、三人ともそれぞれ縁があって結婚することになっており、遅ればせながらその報告をしに来たのであった。
ゴールと二人の令嬢の関係
ゴールの結婚相手は二人であった。一人はプギャル伯爵家の七女エンデリ嬢で、長く友人関係を築いた末に結婚を前提とした交際に進んでいた。そこへグリッチ伯爵家の五女キリサーナ嬢が割って入り、最初は純粋な嫉妬から妨害を始めた。しかしその騒動の中で、いつの間にかゴールはエンデリ嬢とキリサーナ嬢の二人と結婚する流れになっていた。今では二人が協力してゴールを逃がさないようにしている状態であり、ゴールはやや疲れた様子を見せつつも受け入れていた。
ブロンの穏当な結婚
ブロンの相手は学園の事務を務める年上の魔族女性であった。生徒時代から世話になり、教師になってからも関係が続く中で、最終的には相手側から求婚し、ブロンが受け入れたことで結婚が決まった。語り手は一時、年上好きになった原因が自分にあるのではないかと気にしたが、ブロンは好きになった相手がたまたま年上だっただけだと真っ直ぐに答えた。語り手はその返答に納得し、素直に祝福した。
シールを巡る九人の妻候補
最も複雑だったのはシールであった。最初はアイリーン嬢、ロビア嬢、コネギット嬢の三人と程よい距離で付き合っていたが、三人は結託して全員で嫁ぐ方向へ動き出した。そこへさらに、とある伯爵家の流行病を解決した礼としてやって来た女性、ダンジョンで保護した女性型人工生命体、山賊から守った交易商の娘、人間の国で解放した砂漠エルフの女性、潰した奴隷商から送られてきた刺客の獣人族の娘、そして人間の国でコンビを組んでいた魔法使いの冒険者が加わり、合計九人となった。
奴隷商の件と語り手の忠告
シールが人間の国で奴隷商を合法的に潰し、奴隷たちを解放していたことも明らかになった。語り手はその行為自体を否定はしなかったが、他国で自国の価値観だけを基準に動く危うさや、恨みを買う危険性については強く注意した。今回は合法的な手段であったことを確認しつつも、今後は自分に背負えない事態に手を出して潰れないよう釘を刺した。
九人の結託とシールの敗北
九人の女性たちはシールのいないところで争いを繰り返した末に結託し、最終的に包囲網を完成させた。危機を察したシールは本能的な恐怖から全力で逃げたが、ゴールとブロンまで捕まえる側に回ったことで逃げ切れず、結婚を受け入れざるを得なくなった。妻たち同士としても、今後を見据えて協力体制を築きたかったのであった。
語り手の助言と父としての言葉
打ちひしがれるシールに対し、語り手は自分は味方であると伝えたうえで、愛に限界はないこと、大切なのは心の中にそれぞれを思うための棚を作ること、そして平等を忘れないことを説いた。その日はシールと長く話し合い、これまでにないほど深く向き合った。血の繋がりはなくとも自分の息子であると語り、ゴールとブロンにも同じように父としての思いを向けていた。
2 顔合わせ
五ノ村での顔合わせの場
語り手は獣人族の男の子たちの結婚相手と会うため、“五ノ村”を訪れていた。本来は魔王の妻が来た当日に顔合わせを行う予定であったが、語り手の希望で一日ずらしており、事前連絡も済んでいたため問題はなかった。会場には甘味の店《クロトユキ》が選ばれ、相手を不必要に緊張させないよう配慮されていた。
同行者と貸し切りの店内
語り手にはルーとティア、セナ、文官娘衆の二人、ガルフとダガ、リザードマンたちが同行し、さらにヨウコ、フローラ、魔王、ビーゼルもその場にいた。魔王は獣人族の男の子たちが貴重な戦力であることから、その妻たちへの挨拶にも加わりたい意向を示していた。店内には常連客もいたが、語り手は完全に追い出すことはせず、店長代理のキネスタに任せて話を進めることにした。
全体への挨拶と語り手の苦手意識
店の奥にはゴール、シール、ブロンそれぞれのためのテーブルが用意されていた。語り手は全員を見渡せる位置で自己紹介と祝辞を述べ、セナも獣人族代表として挨拶を行った。語り手はこうした場を苦手としていたが、精一杯役目を果たそうとしていた。
ブロンとアレイシャの穏やかな顔合わせ
最初に語り手が向かったのはブロンのテーブルであった。そこには学園の事務員であるアレイシャが座っており、普段とは違う装いでブロンの隣にいた。語り手は互いに挨拶を交わし、ブロンのことをよろしく頼むと伝えた。今回の主目的は顔見せであったため、会話は簡潔にまとめられた。
ゴールと二人の令嬢の紹介
次に語り手はゴールのテーブルに移り、ルーと交代した。そこにはエンデリ嬢とキリサーナ嬢が並んで座っていた。二人はよく似た雰囲気を持っており、実際に親戚関係にあった。語り手は三人で仲良く暮らしてほしいと伝え、その後、文官娘衆の二人を呼んだ。彼女たちはエンデリ嬢とキリサーナ嬢の姉であり、妹たちは思いがけない再会に強く緊張していた。
シールと九人の女性たち
最後に語り手はシールの大きなテーブルへ向かい、ティアと交代した。そこにはシールと九人の女性たちが並んでおり、語り手はその多さと複雑さを改めて実感した。しかも九人全員が姉のような雰囲気を持っており、語り手は以前の自分の言動を思い出して心の中で謝罪していた。
ホウへの確認と結婚意思の承認
九人の中の一人であるコネギット嬢は、四天王のホウであった。語り手は前日にホウ本人や魔王たちと話し合っており、ホウが結婚に本気であること、結婚後も仕事を続ける条件で周囲が認めていることを確認していた。ただし語り手は、ホウがシールを策略で追い込んだのではないかと疑っており、その場で本人に問いただした。ホウははめたわけではなく、恋愛の駆け引きをしただけだと答え、語り手は双方の結婚意思を確かめたうえで承認した。
挨拶の締めと両親の登場
九人全員との挨拶を終えた語り手は、本来ならそのまま解散するところであったが、少し待つよう求めた。そこへ始祖に連れられて、年配の獣人族の男女六人が現れた。彼らはハウリン村の住人であり、ゴール、シール、ブロンの両親であった。今日の顔合わせを一日遅らせたのは、語り手が彼らを呼ぶための時間を必要としたからであった。
親たちの後悔と祝福の言葉
三人の両親は、かつて幼かった子供たちを移住させてしまったことへの後悔から、自分たちには結婚を祝う資格がないと考えていた。だが語り手はガルフやガットと共に説得を重ね、三人のことを忘れたわけではなく、祝いたい気持ちはあるのだと確認していた。三人にとってはサプライズであったが、両親からの祝福の言葉は短くとも確かなものであり、語り手は彼らを呼んでよかったと実感していた。
閑話 キリサーナ
結婚への決意と父の反対
キリサーナは、自ら望んで見つけた相手であるゴールとの結婚を控えていた。相手は男爵家当主相当という立場であり、伯爵家の娘である自分とは釣り合わないと父は判断し、さらにエンデリも同時に嫁ぐことが反対理由となっていた。キリサーナは本来なら一歩引くべき立場だと理解しつつも、父にも結婚を祝福してほしいと望んでいた。
父との決闘と家族の協力
父の反対を覆すため、キリサーナは父と決闘を行った。決闘は一度では終わらず、何度も繰り返されることとなり、その結果キリサーナは手を痛めたが、ゴールに癒やしてもらっていた。最終的にゴールは父に挨拶を果たし、その場では母が父を押さえ込む形で支えていた。家族は癖が強いながらも、結婚を受け入れる方向へ進んでいた。
村長への挨拶を前にした思案
次の課題は、ゴールの父とされる村長への挨拶であった。実父ではないと聞いていたが、ゴールが父と認めている以上、それが重要だとキリサーナは考えていた。ただし、男爵家当主相当の父親が爵位を持たない村長という点には疑問も抱き、爵位を受けてもらうべきかをエンデリと相談していた。しかし、爵位には守るべき義務も伴うため、事情を見極めてから判断すべきだと考え直していた。
王城での集合と違和感の始まり
挨拶当日、指定された集合場所が王城の会議室であったことにキリサーナは戸惑っていた。そこへ現れたクローム伯から、送迎を担うことを聞かされ、四天王がこの場に関わる異常さに内心では納得できないまま従うしかなかった。さらに、シールの結婚相手九人が揃った光景にも圧倒され、その中に四天王のレグ財務大臣がいるように見えて強い違和感を覚えた。
魔王の登場と混乱の拡大
そこへゴール、シール、ブロンと共に魔王まで現れたため、キリサーナは思わず叫んでしまった。三人が魔王の野球チームの一員であることは知っていたが、それでも王城で魔王と顔を合わせる意味はまったく違うと感じていた。キリサーナは必死に理由を整理し、魔王が気遣う相手はレグ財務大臣であり、その応援のために来たのだと考えてようやく納得しようとした。
誤解したまま進む認識
キリサーナは、魔王が応援しているのはレグ財務大臣であり、その結婚相手はシールであると認識していた。そのため、ゴールは自分とエンデリの夫であるという理解を改めて心の中で整理し、目の前で野球の話を始める魔王たちに内心で強く突っ込みを入れていた。
閑話 続・キリサーナ
出発前の覚悟と淑女協定
キリサーナは、ゴールの父との対面に備え、エンデリと視線を交わして互いに助け合うことを確認していた。相手は温厚だと聞いているものの、外には厳格な人物である可能性も考え、油断せず臨む覚悟を固めていた。
五ノ村の違和感と推測
到着した五ノ村は、危険地帯に築かれた大規模な街でありながら「村」と呼ばれている点など、多くの謎を抱えていた。キリサーナは、ここが挨拶の場である理由を考え、貴族である自分たちに配慮して整った場所を選んだのだと推測したが、その理解にも確信を持てず混乱していた。
移動と豪華すぎる準備への疑念
転移後、最新型の馬車が二十台も用意されている様子を見て、キリサーナはゴールの父の財力に疑問を抱いた。さらに会場が甘味店《クロトユキ》であると知り、貸し切り状態や常連客の存在、さらには関係者の異様な顔ぶれに違和感を募らせていった。
異常な人物関係への動揺
店内で紹介された人物たちは、吸血鬼や天使族など危険視される存在ばかりであり、それがゴールの父の妻であると知って混乱した。さらに、五ノ村の村長代行ヨウコの立場や振る舞いにも違和感を覚え、状況の理解を放棄しかけるほどであった。
姉たちとの再会と精神的動揺
キリサーナは、かつて行方不明とされていた自分とエンデリの姉たちと再会した。過去に権力を求めて過激な行動を繰り返していた姉たちの記憶が蘇り、驚きと恐怖が入り混じった感情に揺さぶられたが、それを感動による震えと誤魔化して受け止めた。
挨拶の終了と結束の強化
混乱の中でも挨拶は無事に終わり、キリサーナたちは再び円陣を組んで互いの無事を確認した。この一連の経験により、結婚相手たちの間に強い連帯感が生まれていた。
食事への移動と新たな展開
食事の誘いを受け、《酒肉ニーズ》へ向かうことになったキリサーナは、緊張から解放され期待を抱く。しかし外に出る際、順番が厳密に決められており、その意図を理解できないまま従うことになった。
予想外のパレードと試練の開始
外では大規模なパレードの準備が整っており、キリサーナたちは屋根のない馬車に乗せられて村を巡ることとなった。想定以上の規模と注目に戸惑いながらも、仲間と円陣を組んでこの試練を乗り越える決意を固めた。
村長の正体への疑念
最後に、ゴールの父が大樹の村だけでなく五ノ村の村長も兼ねていると知り、さらに複数の村を統括している可能性に思い至ったキリサーナは、その実態が単なる村長ではなく領主に近い存在ではないかと疑問を抱いていた。
3 “五ノ村”で祝福
五ノ村での祝福パレードの発生
ヒラクは獣人族の三人とその結婚相手との挨拶を終えた後、食事会を予定していたが、五ノ村の住人たちが結婚を祝うためのパレードを準備していたため延期となった。主導したのはルーやティア、フローラ、ヨウコ、ユーリ、セレスらであり、常連客は外との連絡役として配置されていたことも判明した。
パレードへの参加と違和感
ヒラクはサプライズとして計画されていたことを知りつつも協力を決め、オープン仕様の馬車に乗ることとなった。しかし主役であるはずのゴールたちよりも目立つ配置となり、さらに魔王がなぜかヒラクの秘書のような立場に見える状況に違和感を抱きながらも、パレードに参加した。
大規模な祝福とその意義
パレードは五ノ村を二周半も巡る大規模なものとなり、多くの住人が見物し、屋台も並んでいた。この規模には理由があり、結婚は周囲への周知と承認によって成立するという慣習に基づき、教会での祝福と住人への認知が重要視されていた。また、村長の子供としての結婚であるため、住人全体への周知が必要とされていた。
結婚希望者への機会提供
パレードの最後尾には、結婚を希望する住人たちも参加しており、この機会に教会で無料の祝福を受けられるようになっていた。これは費用面で結婚を躊躇していた者たちへの支援であり、ゴールたちの結婚をきっかけとした幸福の共有であった。
子供たちの登場と式の変化
パレードの終盤には、大樹の村の子供たちも登場し、ゴールたちを迎えた。これにより本来は挨拶のみの予定であったものが、実質的に結婚式のような様相を帯びることとなり、ヒラクは改めて正式な式を行うべきか考えるようになった。
食事会と交流の様子
その後、《酒肉ニーズ》での食事会が行われ、多様な料理が並ぶ賑やかな場となった。飲酒も許される年齢であったが、トラブルを避けるため控えめに楽しまれており、全体として落ち着いた雰囲気で進行した。
結婚後の生活と今後の課題
食事後、結婚相手たちは王都へ戻り、ゴールたちも引き続き王都で生活することとなった。本来は村へ戻る予定であったが、学園や仕事の都合もあり延期された。ヒラクはそれぞれの事情を尊重し、今後の生活については本人たちの判断に委ねる姿勢を取った。
祝宴の継続と村の賑わい
宴は夜まで続き、外からも人が集まり続けたことで祝賀は拡大していった。ヒラクはこの盛況を前向きに受け止めつつ、子供たちの安全や節度を保つよう配慮しながら、村全体の祝福の雰囲気を見守った。
4 祝いの品
祝いの品の到着と整理方針
ヒラクはパレード後、膨大な祝いの品が届けられたことに驚いた。ゴールたち本人への贈り物とは別に、村宛ての品も多数存在し、ヨウコから渡されたリストをもとに内容を確認した。美術品や工芸品、武器防具、農作物に加え、研究成果や情報まで含まれており、それぞれ用途に応じて配分する方針を決めた。
研究成果と情報の扱いへの困惑
献上された研究発表は雇用を求める意図を含んでおり、内容は多岐にわたっていたためヒラクは判断を放棄し、ルーたちに任せることにした。また、届けられた情報の中には国家レベルの機密も含まれており、文官娘衆や魔王たちへ委ねる判断を取った。
来訪者対応と人手不足
祝いに伴いヒラクへの挨拶希望者も多数訪れており、一人では対応しきれないためルィンシァを呼び、補助を依頼することとなった。大量の来客に対する対応が新たな負担となっていた。
子供たちのマナー講座と静かな村
冬の訪れとともに村が静かになった理由の一つは、子供たちが学園進学に備えたマナー講座に参加していたためであった。特に食事作法が重視され、ナイフとフォークの扱いなどが重点的に指導されていた。同行を希望する子供たちは許可条件としてマナー習得を課され、真剣に取り組んでいた。
竜たちの不在と討伐任務
もう一つの理由は、ドースの招集によって多くの竜が討伐任務に出ていたことであった。対象は空を飛ぶ巨大なクジラであり、放置すると災害を引き起こす危険な存在であった。討伐は竜たちの使命として行われており、ヒラクはその無事を願いつつ見送っていた。
日常の安らぎと残された者たち
村には一部の竜や住人のみが残り、ヒラクはコタツでクロや猫たちと穏やかな時間を過ごしていた。ザブトンの子供たちも含め、静かな日常が広がっていた。
天使族の警備と新たな命の兆し
さらに、天使族の一部は警備任務に出ており、その背景にはクーデルとコローネの妊娠があった。グランマリアは二人に対して厳しく指導を行い、安全を最優先にするよう促していた。ヒラクも特にクーデルの行動を危惧しつつ、無事を祈っていた。
5 ドライムの活躍
空飛ぶクジラ討伐と想定外の敵
ドースを先頭とした竜の大群は、空を飛ぶクジラの群れ討伐に向かった。通常であれば問題なく処理できる相手であったが、今回は護衛として空を飛ぶサメが存在していた。素早く攻撃力もあるサメは奇襲を仕掛け、戦況に変化をもたらした。
ドライムの防衛と重傷
サメは強者を避け、見学していたヒイチロウたちを狙ったが、それを防いだのがドライムであった。ドライムは代わりに攻撃を受け、深刻な傷を負う結果となったものの命に別状はなく、治療を受けて回復に向かった。
竜たちの怒りと処罰
今回の事態に対し、ライメイレンをはじめとした竜たちは強い怒りを示し、護衛の混代竜族に対して厳しい態度を取っていた。説得も難しく、緊張した空気が続いていた。
ドライムのための温泉建設
ヒラクはドライムへの感謝として、竜の姿でも入れる大型温泉の建設を開始した。混代竜族の協力も得て完成した温泉は、竜二頭が入れる広さを持つものであった。
温泉の試用と安全対策
完成後、ヒラク自身が試しに入った結果、深さと温度の高さから人間には危険であると判断し、柵や注意書きを設置した。ドライムが利用することを前提に調整が進められた。
ドライムの回復と温泉生活
ドライムは温泉に浸かりながら休養を取り、食事と睡眠を繰り返すことで三日ほどで完全に回復した。竜の高い回復力が改めて示された。
討伐結果と食材の活用
討伐は半数のクジラを撃破し、残りを別次元へ追い返す形で終了した。持ち帰られたクジラの肉は村で活用され、多くの住人や動物たちに消費された。
親子の姿と余韻
回復後、ドライムに続いてドースも温泉で休む姿を見せ、戦いを終えた竜たちの穏やかな時間が描かれた。ヒラクはその様子を見守りながら、安堵と余韻を感じていた。
6 クジラ肉と変わった患者
ギラルの帰還と村の日常
ギラルはグーロンデとグラルとの別れを惜しんだ後、混代竜族を連れて帰還した。村では子供たちが食堂で魚料理に挑戦しており、骨に苦戦する中、アイギスだけが見事に食べ終えていた。
ルーの不在と患者の来訪
ルーはシャシャートの街のイフルス学園へ向かっており、人間の国から訪れた重病患者の治療にあたっていた。患者は長い船旅で衰弱していたため移動ができず、ルーが現地で対応することとなった。
世界樹の葉の使用制限
治療において万能である世界樹の葉は、乱用による弊害を防ぐため厳格な使用制限が設けられていた。使用には条件があり、存在自体も秘匿されることとなった。ヒラクもその危険性を理解し、外部への情報漏洩を防ぐ方針を徹底していた。
クジラ肉の提供と輸送
患者の体力回復のため、ヒラクは空を飛ぶクジラの肉をルーのもとへ送ることを決めた。生肉だけでなく燻製や塩漬けも用意され、ゴロウン商会とリザードマンが輸送を担当した。輸送中には魔物による襲撃も発生したが、護衛によって防がれた。
患者の正体と騒動
治療を受けた患者は某国の王子であり、回復後にルーへ求婚したため殴られる事態となった。治療費は回収されたうえで各所に分配され、王子の軽薄な性格に関しては側近からも問題視されていた。
外交問題と裏事情
王子はその後、魔王国との極秘同盟のため帰国したが、魔王の妻への求婚が原因で問題が生じかけていた。ただし側近の調整により大事には至らず、王子は魔王夫妻からも制裁を受ける結果となった。
ヒラクの対応と警戒
ヒラクは一連の話を魔王から聞き、極秘情報の扱いに疑問を抱きつつも、ルーを再び巻き込ませないよう警戒した。王子の再来に対しても明確に拒否する意思を示し、事態の再発防止を図っていた。
7 冬のある日
冬の昼寝とコタツの騒動
ヒラクは昼食後にコタツで眠ってしまい、目を覚ました後に油断を反省した。コタツの中にはクロやユキ、ザブトンの子供たち、酒スライムなどが密集しており、順に外へ出すことになった。さらにヒトエがヨウコとのやり取りに拗ねていたため、ヒラクは事情を聞き、なだめることとなった。
ヒトエの機嫌直しと善哉の準備
ヒラクはヒトエを連れて食堂へ向かい、善哉を用意して機嫌を直させた。妖精女王やグランマリア、妊娠中のクーデルとコローネの分も準備され、甘味を通じて場は落ち着きを取り戻した。
来訪者の増加と賑やかな食堂
魔王やビーゼル、天使族の面々、さらに子供たちも集まり、食堂は一気に賑やかになった。子供たちはマナー講座を終えたばかりで、静かに振る舞おうとする様子が見られたが、ヒラクは普段からの習慣が大切であると諭した。
餅不足と今後の準備
善哉に使う餅が減っていた理由は、竜たちへの土産として配ったためであった。ヒラクは翌日に餅をつく準備をすることを決め、日常の補充作業の必要性を再認識した。
温泉地での確認とグーロンデの狩り
夕方、ヒラクは温泉地を訪れ、竜用温泉を利用しているグーロンデと対話した。グーロンデが仕留めた魔獣パニックカリブーの処理を行い、その力を評価しつつも過剰な破壊には注意を促した。
学園行きに向けた準備と不安
夜、ヒラクは客間で魔王やビーゼル、ルーと子供たちの学園行きについて話し合った。ウルザとアルフレートには複数のお目付け役が用意され、万全の体制が整えられていた。
保護者としての認識の違い
ヒラクは十分な準備が整っていると考えていたが、魔王たちからは見通しが甘いと指摘された。ヒラクは子供を信じたい気持ちと現実的な危機管理の差を認識しつつ、考えを改める必要を感じていた。
8 冬の暇潰し
冬の屋内生活と恒例の催し
冬になると村では外出の機会が大きく減り、見回りや定時連絡、狩りなど必要最低限の活動だけが続けられていた。吹雪の日はそれらも中止となり、住人たちは屋敷のホールに集まって過ごしていた。会話だけでは退屈しがちな空気を和らげるため、ヒラクは毎年恒例のように突発的な催しを開いており、この日もチェス大会を中心に、ボウリングや麻雀が同時進行する形で場を整えていた。
チェス大会と各会場の賑わい
チェス大会は参加者全員によるトーナメント形式で進行し、敗退者はそのまま隣のボウリング会場や麻雀会場へ移って楽しめるようになっていた。防音の魔法によって会場ごとに空気が切り分けられており、チェス会場の静けさと他会場の活気が共存していた。ボウリングにはリザードマンやハイエルフ、山エルフ、獣人族が多く参加し、麻雀会場ではドワーフたちが酒を楽しみながら卓を囲んでいた。
ザブトンの子供たちの麻雀と役満
麻雀会場では、魔王、ビーゼル、ドライムを相手にザブトンの子供たちが二十匹ほどで一つのチームを組み、見事に卓を回していた。糸を使った牌さばきは機械のように正確で、発声の代わりに板を叩いて鳴きを表現する工夫まで見せていた。そしてビーゼルが放銃した局では、ザブトンの子供たちが清老頭の役満を和了し、高得点を叩き出した。ヒラクは役満記録用のボードにチーム名を書こうとしたが、最終的に彼らの希望でチーム《ヤクマンズ》という名前を記すことになった。
チェス大会の進行と強豪たち
チェス大会ではクロヨンとマルビットが順調に勝ち上がり、クロの子供たち六頭、ティア、キアービット、ルィンシア、リアらも十六強に残っていた。ルーはクロヨンに敗れ、フローラもスアルロウに敗れて姿を消した。さらに鷲がアイギスの応援を受けて十六強入りしており、意外な健闘を見せていた。
子供たちの勉強終わりと新たな遊び場
その頃、勉強を終えた子供たちがやって来た。マナー講座の成果で走らずに移動できていたものの、並んで行進する様子はまだどこかぎこちなかった。ヒラクはオヤツを配ったあと、子供たち向けの新たな催しとして小型のビリヤード台を用意した。これまでの大人用の台では大きすぎて遊べなかったため、今回は棒も球もすべて子供サイズで作られており、山エルフたちが水平を丁寧に調整して完成させていた。
ビリヤード台の拡張と種族ごとの適性
子供たちは新しいビリヤード台で遊び始め、文官娘衆が見守る中で順番に楽しんでいた。一方でヒラクは、子供たちだけでなくミノタウロス族や巨人族にも既存の台が小さすぎたことを思い出し、大型のビリヤード台と棒の制作も進めることにした。球だけは歪みなく作る必要があるため、『万能農具』に頼りながら自ら担当することにした。
一日の締めと競技の結果
夜になると、チェス大会は決勝でクロヨンとマルビットが対戦していたが、三度引き分けたところで夕食の時間となり、決着は翌日に持ち越された。ボウリングではリザードマンのチームが三人全員パーフェクトを達成して優勝し、麻雀は夕食後も続いていた。子供たちのビリヤードは概ね好評であり、ウルザは待ち時間の長さに向かないと感じていたが、アルフレートは構え方まで様になっており、特に気に入った様子であった。ヒラクは子供用ビリヤード台を専用の部屋に常設することを決めた。
閑話 とある鬼人族メイドの役得?
廊下で動かないインフェルノウルフの事情
鬼人族メイドの一人である語り手は、廊下で朝から伏せたまま動かないインフェルノウルフを気にかけていた。表向きには心配している態度を取っていたが、実際にはその理由を知っていた。明け方まで仰向けで寝ていたインフェルノウルフは、額の角を床に深く刺してしまい、抜け出した際に床へ大きな傷を残していたのである。アンに怒られることを恐れたインフェルノウルフは、その傷を隠すように上に伏せていたのだった。
村長への助けを求めるまでの流れ
夜になると、インフェルノウルフは悲しげな声で村長に助けを求めた。村長はインフェルノウルフと共にアンへ謝りに行くことにしたが、その前に長時間我慢していたトイレへ向かわせた。語り手は夜の見回り中という体裁を取りつつ、その一連の流れを見守っていた。
コタツから動かないマルビットの理由
昼から動かない者はインフェルノウルフだけではなく、マルビットもまたコタツに入ったまま動かなかった。語り手がスアルロウに尋ねると、先日のチェス大会でキアービットが自分ではなくクロヨンを応援したことに拗ねているのだと明かされた。母親としてはどのような状況でも娘に応援されたいものだという説明に、語り手は納得した。
コタツ停止とルィンシァの介入
夜になると、村長の指示に従ってコタツの魔道具を停止させる時間となった。語り手は安全性に問題はないと理解しつつも、コタツで寝る者が多いため身体によくないという理由から停止しようとした。しかしマルビットに腕を掴まれ、魔道具を止められなかったため、語り手は無駄な抵抗を避けてルィンシァを呼んだ。結果として問題は解決し、スアルロウも一緒に追い出される形となった。
夜の見回りとドワーフたちの品評会
冬は屋敷に住人が泊まり込むことが多く、夜の見回り中にはさまざまな問題が起きていた。その中で語り手は、廊下で酒の品評会をしているドワーフたちを見つけた。本来なら叱るべき場面であったが、月と雪の景色の美しさに加え、勧められた酒と焼き魚の相性の良さに惹かれ、結局は一杯だけ付き合うことにした。
翌朝の叱責と後片付け
翌朝、ドワーフたちはアンに厳しく叱られていた。語り手は自分だけは飲んだ後も仕事を続けたつもりでいたが、見回り担当であった以上は見逃した責任を問われ、ドワーフたちと共に後片付けをすることになった。そこへ酒スライムやアイギス、子猫たちまで残り物を狙って集まってきたため、語り手は対応に追われた。
子猫たちと宝石猫の躾
子猫たちは焼き魚を咥えて逃げ出し、語り手が追いかけようとしたところ、母親である宝石猫が立ちはだかり、子猫たちから焼き魚を取り上げた。語り手はその対応を見事だと評価しつつ、子供の躾はしっかりするよう伝えた。焼き魚は返されても困るため、そのまま宝石猫に譲ったが、今度は姉猫たちが別の騒ぎを起こしていたらしく、そちらの対応も宝石猫に任せることとなった。
役満達成者表と小さな誇り
屋敷のホールには、麻雀の役満達成者表が飾られていた。新しく《ヤクマンズ》の名が並んでいたが、語り手は羨ましいとは思わなかった。なぜなら、一番古い場所には自分の名前が刻まれていたからである。その前でつい時間を忘れそうになりつつも、《ヤクマンズ》に声をかけて互いに仕事を頑張ろうと励まし合い、次は麻雀で負けないという意気込みも新たにしていた。
失敗役としての自覚と役得
語り手は、自分が鬼人族の中で失敗役やうっかり役を担っていることを自覚していた。完璧を求めすぎる鬼人族が村長に息苦しさを与えないよう、あえて話しやすい存在になる役目を果たしていたのである。その結果、少し失敗する人だと思われることはあっても、村長や住人たちからの評判は悪くなかった。仕事中に酒を飲んだり遊んだり、村長に優しくしてもらえたりと役得も多いため、語り手はその立場を前向きに受け入れ、今日も静かに自分の役目を果たそうとしていた。
閑話 ワトガング
ビリヤード台への執着と悔しさ
ワトガングは、ビーゼルの屋敷に置かれたビリヤード台に強い執着を抱いていた。自領でも再現できるか職人に確認した結果、台そのものは作れても、同じ精度の球を揃えるのは不可能だとわかり、悔しさを募らせていた。それでも諦めきれず、木工職人や魔法使いたちに球の研究を命じつつ、自身はビーゼルの屋敷でビリヤードを楽しむために通っていた。
自前のキューと貴族としての矜持
ワトガングは、領内の木工職人に作らせた装飾入りのキューを持参し、ビーゼルの実用重視の道具に対して貴族らしい美意識を示そうとしていた。道具だけで勝負が決まるわけではないと理解しながらも、自分に相応しいキューに誇りを持っており、それを使って勝負に臨んでいた。
ビリヤード勝負と王子の来訪の話題
二人はナインボールで勝負を始め、その合間に情報交換を行った。ワトガングは、ゴールゼン王国の王子が魔王国に来た件を話題にし、その目的が食料確保のための同盟締結であると知った。原因は空に浮かぶ島の落下による農地被害であり、コーリン教の支援はあるものの、食料事情は深刻であった。さらに、色ボケと噂される王子が実は後継者争いから身を引きたがっていたことや、危険を顧みず使者として来た人物であることも明かされた。
裏街の整理と魔王の事情
続いて、王都の裏街の整理についても話が及んだ。窃盗や暗殺などを取りまとめる裏の組織は、魔王の命令によって活動縮小を迫られており、抵抗した組織は軍や竜によって排除されていた。表向きには説明されなかったものの、その理由は国賓級の人物がガルガルド貴族学園に通う間、犯罪や接触の危険を徹底的に排除するためであった。ワトガングはその事情を理解しつつも、構えたまま頷いてしまい、自身のプレイを乱してしまった。
マッセの衝撃と娘の近況
三ゲーム目では、ビーゼルが通常では狙えない配置からマッセを決め、ワトガングを驚かせた。しかもその技を教えたのがワトガングの四女クラカッセであると知り、ワトガングは強く動揺した。娘は魔王の友人のもとで穏やかに暮らしていると説明され、さらにその友人がヨウコであり、彼女にはさらに上司がいることも示唆された。娘とホリーが同じ人物に仕えていると知ったワトガングは、その件に深入りしてはならないという代々の本能に従い、詳細を追うのをやめた。
勝敗よりも技への渇望
三ゲーム目はビーゼルの勝利で終わったが、ワトガングにとって重要だったのは勝敗よりもマッセという新たな技であった。彼は悔しさを抱きつつも、その技の格好良さに魅了され、四ゲーム目に入る前に必ず教えろと強く要求した。
閑話 決闘の様子
娘キリサーナへの不安と父の葛藤
カナリアクド=グリッチは、多くの娘を持つ父として、五番目の娘キリサーナの結婚に強い不安を抱いていた。これまで問題を起こさず優秀に成長したキリサーナを信頼しつつも、相手の男が本当に信用できる人物なのか疑いを捨てきれず、結婚に反対していた。特に、その男が厄介な貴族と揉めているという情報が決定打となり、娘を手放すことに強く抵抗していた。
決闘に至る経緯と父の覚悟
結婚に反対した結果、キリサーナとの決闘が中庭で行われることになった。カナリアクドは家臣たちが見守る中、父としての威厳を保つためにも勝利を目指した。武器の使用を拒み素手での勝負を選んだが、それは娘の実力を甘く見ていた判断であった。
圧倒的実力差による敗北
戦いは一方的であり、カナリアクドはキリサーナに何度も叩きのめされた。治療を受けながら再戦を繰り返したが、そのたびに容赦なく打ちのめされ、さらには急所を狙われるなど手加減もなくなっていった。それでも父として諦めずに立ち向かったが、実力差は埋まらなかった。
敗北の受け入れと結婚の承認
度重なる敗北の末、カナリアクドはついにキリサーナの結婚を認めた。娘の選んだ相手を信じる決意を示し、自らの反対が誤りであったことを受け入れたのである。しかし、戦いの最中に家臣たちがキリサーナを応援していたことには納得できず、内心では不満を残していた。
父としての未練と滑稽な結末
敗北後、カナリアクドは家臣たちを粛清しようと考えたが、キリサーナに諫められ、その場は収まった。家臣たちは結婚を祝福し、父としての立場を保とうとしたカナリアクドの威厳は崩れたままとなったが、最終的には娘の幸せを受け入れる形で事態は終息した。
閑話 ”大樹の村”の村長
ハウリン村の変化と大樹の村との関係
ニッケはハウリン村で採掘を生業とする獣人族であり、近年の村の発展を実感していた。仕事が増え、空を飛ぶ船による定期的な交易によって物資の入手も容易になり、生活は大きく改善されていた。この繁栄は“大樹の村”との取引によるものであり、死の森にあるその村が常識外れの力を持つ存在であることも認識していた。
突然の訪問と不安
ある日、“大樹の村”の村長がガットやガルフと共にハウリン村を訪れた。通常は事前連絡があるはずの訪問が突然であったため、村人たちは不吉な用件を疑い緊張した。しかし実際の用件は、かつてハウリン村から移住させた子供たちのうち三人、ゴール、シール、ブロンが結婚するため、その親を祝いの席に招きたいという穏やかなものであった。
親たちの葛藤と過去の罪悪感
ゴールたちの親は招待を拒んだ。かつてハウリン村が困窮していた際、彼らは生き延びるために幼い子供たちを“大樹の村”へ送り出しており、その行為を「捨てた」と認識していたためである。子供たちが幸せに暮らしていることは手紙で知っていたが、その過去が消えることはなく、自ら祝福の場に立つ資格はないと考えていた。
村長の説得と決断
“大樹の村”の村長は命令で強制することも可能であったが、それをせず、数日かけて親たちを説得した。親たちも本心では祝いたいという思いを抱えており、その葛藤に向き合い続けた結果、最終的に出席を受け入れた。強制では意味がないという村長の姿勢が、彼らの心を動かしたのであった。
村長の人柄とニッケの決意
ニッケはこの一件を通じて、“大樹の村”の村長の人柄を改めて理解した。特定の子供だけでなく、誰に対しても同じように向き合う人物であると感じたのである。これまで距離を置いていた“大樹の村”で暮らす妹の存在を思い出し、次に機会があれば両親と共に会いに行こうと決意した。妹の将来に同じような後悔を残さないためであった。
閑話 体調不良
仮病による休養とメイドの内心
鬼人族メイドの一人は、本来は休みであったが体調不良者の代わりに働くこととなり、内心では仕事ができることを喜んでいた。体調不良を訴えたラムリアスが実際には酒を持ち込んでいたことから仮病であると見抜いていたが、あえて指摘せず仕事に集中する姿勢を取っていた。
アンの不可解な対応と疑念
ラムリアスの仮病に気づいているはずのアンが何も言わないことに違和感を抱きつつも、騒ぎ立てることなく様子を見守った。夜になり、アンが見舞いに向かった際、その様子を気にしつつも表向きは掃除を続けていたが、魔法によって中の様子が探れないことに不満を感じていた。
村長との同行と状況の判明
そこへ現れた村長に誘われ、ラムリアスの部屋に入ることとなった。部屋の中ではラムリアスが酔っており、アンから事情の説明を受けた。ラムリアスが面倒を見ていた獣人族の男の子たちが結婚することになったが、結婚後は村に戻れないため、将来その子供たちの世話ができないことを寂しく思い、酒に逃げていたのであった。
理解と共感、そして宴
事情を理解したメイドはラムリアスの気持ちに納得し、アンと村長と共に酒と食事を囲むこととなった。ゴール、シール、ブロンの結婚を祝って杯を交わし、ラムリアスは酔いながらも複雑な感情を吐露していた。メイドはその場の出来事を他言無用と約束し、守る決意を固めた。
翌日の反動と教訓
翌日、ラムリアスは何事もなかったかのように回復していたが、代わりにメイド自身が二日酔いで体調を崩した。強い酒を飲んだ影響であり、村長やアン、ラムリアスが平然としている様子に不公平さを感じつつも、出来事を受け入れていた。
[終章]アルフレートの学園生活
1 春の準備
春の近さと見張りの役割分担
冬の終わりを感じさせる暖かい日が訪れたが、ヒラクはまた吹雪くと見て油断していなかった。クロの子供たちは世代ごとに過ごし方が分かれており、若い個体ほど外で雪を掻き分けて走り回り、年長の個体ほど屋敷や小屋の中で落ち着いていた。吹雪の際にクロたちが無理をしなくなったのは、危険な魔物や魔獣は屋内からでも察知できることと、フェンリル一家が冬場の見張りを担っているためであった。
フェンリル一家とクロの子供たちの関係
フェンリル一家は母親と十五頭の子供たちで構成されており、成長した十二頭の多くはクロの子供たちを伴侶にしていた。ヒラクは種族的にそれでよいのかと少し気にしたが、当人たちがそれで満足しているなら問題にしなかった。ただし、伴侶であるフェンリルたちが外で活動しているのに、クロの子供たちが屋内に残っていることには少し不思議さを覚えていた。
学園行きの三人と残る子供たち
春が近づくにつれ、アルフレートとウルザが王都の学園へ向かう日も迫っていた。同行者は最終的にティゼルに決まり、ほかの子供たちは学力面では問題がなくても、顔見知りばかりを大勢送り込むのは学園に通う意味が薄れるというマルビットの指摘により見送られた。ヒラクはほかの子供たちにも外の学園へ通わせたいと考えていたが、今回は見送り、来年以降を視野に母親たちと相談するつもりでいた。
トウの来訪と空飛ぶ船への執着
四ノ村からやって来たトウ=フォーグマは、かつて太陽城専属の飛行機の船長であった男で、現在は温泉地の転移門管理の後任候補として呼び出されていた。しかし大樹の村で万能船を目にしたことで心を奪われ、自分を船長かせめて船員として雇ってほしいと強く望むようになった。その代わりとして、彼は別の人物を後任に押しつける形で連れてきた。
ヨルの抵抗と兵装担当としての未練
トウが簀巻きにして連れてきたのは、太陽城で兵装管理を担当していたヨル=フォーグマであった。ヨルは自分には太陽城での仕事がまだあると抵抗したが、トウやアサから、すでに兵装は失われており仕事は残っていないと突きつけられた。それでもヨルは最終兵器の管理を理由に食い下がったが、その内容が人力投石であると暴露され、説得の流れはさらに厳しくなった。
アサによる説得と山エルフの介入
アサは温泉地の転移門管理が重要な仕事であると説明し、ヨルの適性を認めたうえで後任就任を促した。だがヨルは兵装に未練を残し続けたため、そこへ山エルフたちが介入した。彼らはいつの間にか投石機を組み立て、投石用の石や煙幕用の樽まで用意しており、それを見たヨルはたちまち心を動かされた。こうしてヒラクは、普段は分解保管することを条件に、温泉地への投石機設置を認めた。
ヨルの着任とトウの転身
ヨルは温泉地の転移門管理者として正式に決まり、アサから引き継ぎを受けることになった。一方のトウは念願かなって万能船で働くことを許され、やがて実力を認められて船長の座に就いた。前任の船長は副長に回り、船内では円満に体制が再編された。
新しい環境での適応
三日後、ヨルは魔法を使って一人で投石機を組み上げるほどの技量を見せ、温泉地での役割に順応していた。さらにトウとヨルの仲も悪化することなく、今では万能船への投石機搭載を相談するほどになっていた。ヒラクはそれを却下しつつも、二人がそれぞれの新しい居場所を見つけたことを確認していた。
転移門管理の意外な難しさ
ヨルへの引き継ぎでは、転移門利用者の種族欄に牛と書かれていることが話題となった。アサはそれが本当に普通の牛であり、冬場によく利用している個体であると説明したうえで、自分が個体識別のために名付けていることも明かした。アサにとって最も大変だった引き継ぎ事項は、馬や牛の見分け方であった。
2 十七年目の春
春の訪れと生き物たちの目覚め
春が訪れ、冷たい風は残るものの日差しは暖かくなっていた。ため池ではポンドタートルが氷を砕きながら活動を再開し、世界樹では蚕たちが繭から出て葉を食べ始めていた。葉が食べられてもすぐに再生する様子は不思議な光景であった。フェニックスの雛アイギスは蚕に勝負を挑んで敗北し、ヒラクから冬の運動不足と食べ過ぎを指摘されていた。
コタツ撤去と住人たちの反応
アンによってコタツが片付けられたことで、猫たちは不満を示しヒラクに訴えてきた。ヒラクは別の部屋に設置を頼むことを約束したが、実現するかは不明であった。一方でクロやユキはすでに外で元気に走り回っており、冬の生活から切り替わっていた。
天使族のコタツ攻防
客間では、まだ冬だと言い張るマルビットたちがコタツに籠もり、ルィンシァがそれを引きずり出そうとする争いが起きていた。ラズマリアはローゼマリアの登場によって離脱し、残るマルビットとスアルロウも機動力を封じられた状態で不利となっていた。最終的にミカンの汁による誤射で仲間割れが起き、ルィンシァが優勢となった。
ガルフと孫を巡る一幕
グランマリアとガルフはそれぞれ子供を抱えており、特にガルフは孫を溺愛していた。しかし外へ連れ出す許可は十分ではなく、義娘に見つかり叱責されそうになる場面もあった。ヒラクは仕方なく庇いながらも、その行動に注意を促していた。
学生服制作と制服案の採用
ザブトンと子供たちは、アルフレートたち三人のために学生服の制作に取り組んでいた。魔王から出身を示す目印を求められた当初は、紋章入りの派手なマント案が出ていたが、ヒラクが過度に目立つとして反対した。その代案として、共通デザインのブレザー型制服が提案され、採用された。なお、試作されたマントはパレード用としてヒラクが着用することになった。
3 三人の旅立ち
各村を巡る壮大なパレード
春のパレードは無事に終了し、主役はアルフレート、ウルザ、ティゼルの三人であった。三人はしばらく村を離れるため各村を巡り、特に“五ノ村”では盛大に行われた。しかし各地のパレードは祝福というより出陣式のような雰囲気となり、住人たちが武器を振り回しながら支援を誓う様子は物騒さすら漂っていた。魔王もその様子に表情を引きつらせていたが、最終的には三人を迎えて送り出す役目を果たした。
同行者の到着とメットーラの正体
出発前日、三人に同行する面々が揃った。土人形のアース、元転移門管理人のアサに加え、混代竜族からメットーラが到着した。彼女は実は「ダンダジィ」と呼ばれる混代竜族最強の存在であり、その名を避けて別名を用いていた。ヒラクはその実力者を子供たちの世話役として任せることに一瞬戸惑ったが、本人やドライムの説明により問題ないと理解した。メットーラも役目を受け入れており、三人の護衛と世話を担うことになった。
出発前の父としての言葉
ヒラクは三人それぞれと面談し、多くの注意を与えた。すべてを覚えなくてもよいが一つでも心に残してほしいと願い、同時に外の世界を楽しむこと、辛ければ戻ってきてもよいことを伝えた。子供たちを思う父としての言葉であったが、ルーやティアに止められ、話は途中で切り上げられた。その夜は送別会が開かれ、ヒラクは普段より多く酒を飲んだ。
あっさりとした出発と残された者の想い
翌日、三人と同行者たちはビーゼルの転移魔法で王都へ出発した。あまりにもあっさりとした別れであったが、ヒラクは不安から仕事が手につかず、自室でぼんやりと過ごした。一方でルーやティアは平静を保っており、その差に戸惑いを覚えた。ザブトンもまたウルザとの別れに落ち込んでいた。
ハクレンの涙と周囲の対応
最も強く反応したのはハクレンであり、表では平静を装っていた反動から部屋に籠もり泣き続けていた。ヒラクは励ましたが効果はなく、夕食時にドースとライメイレンがその様子について語った。ライメイレンはかつての自身の経験と重ねながらもハクレンを許すよう求め、最終的に様子を見ることとなった。
手紙による立ち直り
ハクレンは五日後、ウルザから届いた手紙をきっかけに立ち直った。ヒラクは自身の励ましも一因であったと信じつつ、子供たちの成長を受け入れることとなった。
4 牧場拡張とウルザたちからの手紙 30日目
各村を巡る壮大なパレード
春のパレードは無事に終了し、主役はアルフレート、ウルザ、ティゼルの三人であった。三人はしばらく村を離れるため各村を巡り、特に“五ノ村”では盛大に行われた。しかし各地のパレードは祝福というより出陣式のような雰囲気となり、住人たちが武器を振り回しながら支援を誓う様子は物騒さすら漂っていた。魔王もその様子に表情を引きつらせていたが、最終的には三人を迎えて送り出す役目を果たした。
同行者の到着とメットーラの正体
出発前日、三人に同行する面々が揃った。土人形のアース、元転移門管理人のアサに加え、混代竜族からメットーラが到着した。彼女は実は「ダンダジィ」と呼ばれる混代竜族最強の存在であり、その名を避けて別名を用いていた。ヒラクはその実力者を子供たちの世話役として任せることに一瞬戸惑ったが、本人やドライムの説明により問題ないと理解した。メットーラも役目を受け入れており、三人の護衛と世話を担うことになった。
出発前の父としての言葉
ヒラクは三人それぞれと面談し、多くの注意を与えた。すべてを覚えなくてもよいが一つでも心に残してほしいと願い、同時に外の世界を楽しむこと、辛ければ戻ってきてもよいことを伝えた。子供たちを思う父としての言葉であったが、ルーやティアに止められ、話は途中で切り上げられた。その夜は送別会が開かれ、ヒラクは普段より多く酒を飲んだ。
あっさりとした出発と残された者の想い
翌日、三人と同行者たちはビーゼルの転移魔法で王都へ出発した。あまりにもあっさりとした別れであったが、ヒラクは不安から仕事が手につかず、自室でぼんやりと過ごした。一方でルーやティアは平静を保っており、その差に戸惑いを覚えた。ザブトンもまたウルザとの別れに落ち込んでいた。
ハクレンの涙と周囲の対応
最も強く反応したのはハクレンであり、表では平静を装っていた反動から部屋に籠もり泣き続けていた。ヒラクは励ましたが効果はなく、夕食時にドースとライメイレンがその様子について語った。ライメイレンはかつての自身の経験と重ねながらもハクレンを許すよう求め、最終的に様子を見ることとなった。
手紙による立ち直り
ハクレンは五日後、ウルザから届いた手紙をきっかけに立ち直った。ヒラクは自身の励ましも一因であったと信じつつ、子供たちの成長を受け入れることとなった。
閑話 王都での生活 アルフレート編
村長の跡継ぎとしての自覚と迷い
アルフレートは“大樹の村”の長であるヒラクの最初の息子として、将来は村長を継ぐよう母たちから言われて育っていた。そのため村長になるための勉強と努力は続けていたが、畑を一日で耕し、細工を作り、強敵を一撃で倒し、城を崩すほどの槍を投げる父を思うと、自分には到底真似できないと感じていた。自分が父に勝てると確信しているのは釣りぐらいであり、それだけで村長は務まらないとも考えていた。
父の言葉による視野の広がり
ヒラクはアルフレートに、無理に跡を継ぐ必要はないと伝えていた。それは諦めではなく、多くの職を見て自分のやりたいことを探せという意味であった。また、村長になるとしても父の真似をする必要はなく、人の数だけ村長のあり方があるとも教えていた。この言葉によって、アルフレートは村長になるかどうかはまだ決めなくてよいのだと知り、大きく励まされていた。
学園生活の始まりと同行者たち
アルフレートは父の考えに従い、村の外を学ぶために魔王国の学園へ通っていた。同行したのはウルザ、ティゼル、土人形のアース、元温泉地の転移門管理人アサ、そして混代竜族のメットーラであった。しかし実際に三人の生活を支えているのはほぼメットーラ一人であり、アルフレートが自分でできることをやろうとしても、メットーラが寂しそうな顔をするため任せることにしていた。
歓迎会と穏やかな学園生活
学園生活そのものに大きな問題は起きていなかった。ゴールたちが事前に準備を整えていたため、彼らの授業を受ける生徒たちとも自然に馴染めていた。ただし歓迎会では、アルフレートが持ち込んだ日持ちする菓子シュトーレン三十本をすべて放出することになり、自分で少しずつ楽しむつもりだった分までなくなったことは残念に感じていた。
ウルザとティゼルの学園での様子
ウルザは新しい友人たちと穏やかに学園生活を楽しんでいた。一方でティゼルは、学園の派閥闘争に興味を持っていたが、入学直後から最大派閥の上位に組み込まれてしまったため、争う余地がなく不満を抱いていた。第二勢力が一度ウルザに絡んできたものの勝負にならず、ティゼルの出番もなかったため、さらに機嫌を悪くしていた。しかし後に商人の知り合いができたことで、少し機嫌を直していた。
第二勢力の再挑戦と公平化の工夫
ある日、第二勢力が助っ人を連れて再び絡んできたが、そのときティゼルは不在であった。助っ人はウルザに一騎打ちを挑み、ウルザは嬉々として応じようとしたが、アルフレートは死人を出さないために公平な条件調整を求めた。彼はウルザの右手や足を鎖で拘束し、武器も木の棒に変え、さらに岩に繋ぐなどして弱体化を図った。そこにグラッツとビーゼルも加わり、相手を魔法で強化したうえ、ウルザには藁一本しか持たせないという極端な調整まで行われた。
勝負流れによる不満と評判の低下
準備が整ったかに見えたが、対戦相手の男は自分の置かれた状況に泣き崩れ、勝負はそのまま流れてしまった。アルフレートとしては死人を出さないための配慮であったが、勝負をしたかったウルザの機嫌は悪くなり、さらにウルザを縛ったことで周囲からのアルフレートの評判も下がってしまった。
シュトーレンをきっかけにした学園の平和
後日、第二勢力が絡んできた本当の理由は、シュトーレンを食べたかっただけだと判明した。そのためアルフレートたちは皆でシュトーレンを作ることにし、味は今ひとつであったものの楽しい時間となった。この出来事を機に、最大派閥が第二勢力を吸収し、学園は平和になった。
閑話 王都での生活 ティゼル編 出発
跡継ぎではない立場と父への評価
ティゼルは“大樹の村”の長の娘の一人であり、跡継ぎにはアルフレートがいるため、自身は比較的気楽な立場にあった。ただし、気楽に過ごせば母たちに叱られるため、父を助けようと努力していた。しかし、その努力の多くは父に軽々と上回られ、ときには予想外の方向からも先回りされるため、到底敵わない存在だと感じていた。
学園生活への失望
ティゼルは魔王国の王都にある学園へ通っていたが、そこには期待していたものがなかった。友人作りもゴールたちによって事前に整えられており、さらに学園で起こるはずだと思っていた派閥闘争も存在しなかった。ゴールたちの授業を受ける生徒たちによる集団が最大派閥となっており、ティゼルたちは入学と同時にその派閥へ組み込まれていたからである。
第二勢力の敗北と不満
第二勢力に期待したものの、彼らは最初にウルザへ絡んで敗北したため、学園内で面白い展開は生まれなかった。ティゼルは、自分こそ一番弱そうに見えるのだから狙うなら自分にすべきだと不満を抱いた。さらに、学園に残っている有望株を探ろうとしたが、陰謀や裏工作に長けた有望な女性たちはすでに村へ引き抜かれるか囲い込まれており、残っている男性もゴールたちによって教育済みであると知って絶望した。
学園外への関心とアサの制止
学園内に求めるものがないと判断したティゼルは、学園の外で面白いものを探そうとした。しかし、同行していたアサに床へ押さえつけられ、関節技まで極められて止められた。理由を説明しても即座に却下され、ティゼルの普段の行いを理由に信用されなかった。村長の娘として命令するという禁じ手まで使ったが、アルフレートに逆手に取られ、結局すぐには自由になれなかった。
厳しい条件付きの外出許可
長い交渉の末、ティゼルはようやく学園の外へ出る許可を得たが、その条件は厳しかった。腰には紐を巻かれ、その端をアサが持ち、さらに自分で歩くことも飛ぶことも許されず、アサに抱えられて移動することとなった。加えて、アサの補助としてアースまで貸し出され、ティゼルは二人の執事を従えるお嬢さまのような格好で王都へ出ることになった。
王都での初接触と即時対応
王都へ出ると、ティゼルたちは早々に五人のチンピラに絡まれた。アースは即座に相手を殴り倒し、ティゼルが言い分を聞こうとする間もなく撤退させた。だが、逃げ際に覚えていろと言い残したことから、ティゼルは相手が復讐を企てると判断し、そのまま見逃すのは危険だと結論づけた。
追撃の決断と裏への期待
ティゼルは、復讐相手が自分たちに限らずウルザやアルフレート、さらには村の関係者に及ぶ可能性まで考え、追撃を命じた。アサは処理の方法を確認したが、ティゼルは殴り続ければ話せる相手が出ると考えていた。やがて、チンピラたちが怪しい建物へ逃げ込むのを確認し、ティゼルたちはその拠点らしき場所へ向かった。こうしてティゼルの王都での活動は、裏工作や陰謀への期待を抱きながら始まった。
閑話 王都での生活 アース編
ウルザへの忠誠と突然の役目変更
アースは死霊王によって生み出された土人形であり、現在はウルザを主として絶対の忠誠を捧げていた。ゆえにティゼルの補佐へ回るよう命じられたときには大きく動揺したが、主の命令である以上は従うしかなかった。こうしてアースは、ティゼルとアサに同行して王都を歩くことになった。
王都での初戦と敵認定の転換
王都では早々にチンピラ五人が絡んできた。アースは相手を厄介と判断し、近隣への迷惑を避けるため殺さずに制圧しただけで済ませた。しかし逃げ際に覚えていろと捨て台詞を吐かれたことで、ティゼルは彼らを明確な敵と認識した。その言葉によって、アースも自分の対応が甘かったことに気づき、相手を徹底的に排除すべき存在として見直した。
アジト突入と尋問
逃げたチンピラたちは怪しい建物へ逃げ込み、アースたちはそこへ突入した。中には二十人ほどの人間がいたが、アースの相手ではなく、短時間で制圧された。ティゼルの指示に従って一人だけ意識を保たせ、その男を尋問したところ、彼らは偶然絡んだのではなく、トニーと名乗る人物から金で依頼されて動いていたことが判明した。これにより、背後に別の敵がいることが明らかとなった。
怪しい男の追跡
ちょうどその場を外から覗き込んでいた人物が逃走したため、ティゼルはそれを手掛かりと見て追跡を決断した。アースは全力なら追いつけたが、一度見逃して泳がせるという方針が取られ、こっそり尾行する役を担った。怪しい男は建物をいくつか経由したのち、廃墟に入り、その地下へと降りていった。アースはアサとティゼルにだけ伝わる印を残し、自ら先行して地下へ向かった。
地下で待っていたリッチとの対峙
地下の広間では、怪しい男が待ち構えていた。彼はその場で正体を現し、自らをトニー=アルマージと名乗るリッチであり、死霊王の配下だと宣言した。そして五十体以上のスケルトンを召喚し、アースへ襲いかかった。だがアースは、死霊王の配下であるという名乗りに反応し、自分も同じく死霊王の配下であると名乗って同僚だと思い込んだ。しかし会話が噛み合わず、トニーがトンネル掘りの任務すら知らないとわかったことで、死霊王の名を騙る偽物であると判断した。
リッチの排除と手掛かり喪失
トニーが偽物だと判明したことで、アースは一気に敵認定を強め、廃墟の地下を制圧した。隠されていた魔法陣も破壊し、スケルトン召喚の手段も断った。しかし肝心の、なぜトニーが自分たちを狙っていたのかを聞き出す前に消滅させてしまい、重要な手掛かりを失ったことに気づいた。アサとティゼルが来る前に何か手掛かりを探さなければならないと焦りを覚えた。
新たな侵入者の到来
そんな中、廃墟にはさらに別の集団が侵入してきた。数は二十人を超え、統率は完璧ではないものの個々の動きは悪くなく、装備は不揃いながらも役割分担ができていたため、アースは彼らを冒険者と判断した。だが彼らはアースを見るなり、死霊王の配下めと叫んで敵視してきた。アース自身はたしかに死霊王の配下ではあるものの、彼らが狙っているのは本来別の相手であるはずであり、状況はさらにややこしいものとなった。
閑話 王都での生活 アサ編
アサの立場とアースへの失望
アサは太陽城の運航と運営のために生み出されたマーキュリー種であり、城主の私生活を補佐する執事としての役割に誇りを持っていた。そんなアサにとって、同じく執事的立場にあるアースは有能な同僚という評価であったが、廃墟の地下で大勢の冒険者を倒しながら荒ぶる姿を見たことで、その評価は揺らいだ。もっとも、アースが相手を殺さず気絶で留めていた点については高く評価していた。
事態収拾のための判断
地下で正座させられたアースから事情を聞いたアサは、ティゼルの提案に従い、ゴールたちを巻き込んで事態を収拾する方針を受け入れた。ティゼルは、このままでは自分たちが叱られると判断し、ゴール、シール、ブロンの三人を呼び寄せた。三人は短い説明だけで状況を理解し、すぐに対処へ動き出した。
冒険者たちへの試験という偽装
目を覚ました冒険者に対して、ゴールは今回の一件を実力試験だったと説明した。アースは自分が用意した試験官だと位置づけられ、冒険者は混乱しながらもその説明に納得していった。報酬も冒険者ギルドで受け取れるよう手配され、さらにほかの冒険者が目覚めた際の説明協力も頼まれたことで、その場は穏便に収められる形となった。
本当の報告と裏の調査
一方で、表向きの説明とは別に、ブロンは冒険者ギルドへ今回の件の本当の事情を報告しに向かった。王都に死霊王の配下を名乗るリッチが現れたこと自体が異常事態であり、下手な偽装で大きな陰謀を隠すのは避けるべきだと判断されたためである。シールは、ティゼルたちを襲わせた理由を探るため、最初に襲撃した拠点の調査へ向かった。
ダルフォン商会との関係判明
夜になって集まった場で、ゴールは冒険者たちを雇って死霊王の配下を攻撃させた黒幕がダルフォン商会であると報告した。直接ではないものの、商会の息がかかった者が冒険者に依頼をしていたという。さらにシールは、ティゼルたちを襲ったアリシッド団もダルフォン商会が裏で動かす組織の一つであり、ティゼルだけでなくアルフレートやウルザも狙われていたことを明らかにした。
ティゼルの招待と夜の訪問決定
ブロンは冒険者ギルドへの報告後、ダルフォン商会からティゼル宛ての招待状を受け取っていた。宛名がティゼルであったため周囲は苦い顔をしたが、ティゼル本人はむしろ好機と捉えた。インクの匂いから相手が焦って急いで書いたと見抜き、時間を置くほど相手に準備の余裕を与えると判断したためである。常識では夜の訪問は避けるべきだが、あえてすぐに乗り込むことを決めた。
役割分担と出発準備
ティゼルはゴールたち三人に護衛を依頼し、アースには顔を変えて隠密で護衛しつつ、必要なら悪役として乱入する役目を与えた。アサには自分の執事として同行するよう命じ、完璧な働きを期待した。腰の紐を外してほしいというティゼルの要求については、アルフレートとウルザから絶対に解くなと頼まれていたため拒否し、あくまで担当として縛り続ける姿勢を崩さなかった。こうして一行は、ダルフォン商会へ向かう準備を整えた。
閑話 王都での生活 ティゼル編 交渉
ダルフォン商会の成り立ちと現状
ティゼルは、ダルフォン商会が世界規模の食糧難を乗り切るために二十三の商会が連合して生まれ、魔王国の食糧生産と価格調整を担ってきた商会であることを把握していた。その運営は十七人の候補者による合議で行われ、代表者が最終決定権を持つ仕組みであった。今回ティゼルに招待状を出したのは、その候補者の一人であるリドリー=ベイカーマカであった。
謝罪の内容を問い詰めるティゼル
リドリーはティゼルに対して、この度の件を謝罪した。しかしティゼルは、謝罪の対象が多すぎるため、どの件を指しているのかわからないと聞き返した。王都の地下にリッチのトニーを囲い込んでいたこと、トニーを使ってティゼルたち三人を狙わせたこと、冒険者を使ってトニーを抹殺しようとしたこと、ダルフォン商会の建物に入った自分たちへ攻撃を仕掛けたこと、さらに紐で縛られた自分を見て爆笑したことまで、ダルフォン商会がやらかした内容を一つずつ並べ立てた。
責任の分散とリドリーの立場
リドリーは、自分は招待しただけであり、リッチを飼っていたのはギリング、ティゼルたちをさらおうとしたのはマスクンド、冒険者を使ってリッチを処分しようとしたのはライゼン、建物内で攻撃を仕掛けたのはルルサだと説明した。そして、自分が爆笑したことだけは素直に認めて謝罪した。さらに、ギリングとマスクンドはすでに捕らえてあり、ライゼンについてはティゼルたちの存在を知らず、ダルフォン商会にとって致命的な存在となるリッチを処分しようとしただけだと弁明した。
ルルサの反撃と雇われた三人の裏切り
話の途中で、先ほどまで倒れていたはずのルルサが立ち上がり、自分たちの最強戦力が到着したと叫んだ。そこに乱入してきたのは、猛虎魔王軍のオージェス、ハイフリーグータ、キハトロイの三人であった。しかし三人はティゼルの姿を見た瞬間にルルサを裏切り、金で雇われただけであり、全部ルルサが悪いと主張した。ティゼルはこの三人と縛られたルルサをゴールに任せ、自身は交渉を続けた。
リドリーへの代表就任の提案
ティゼルは今回の一件で候補者が減り、現代表も責任を取って辞任する流れになるだろうと見たうえで、その後をリドリーが継ぎ、自分たちに便宜を図ればよいと持ちかけた。だがリドリーは、今の代表は優秀であり、今回の件には関与していないため、責任を押しつけて追い落とすのは望ましくないと抵抗した。ティゼルは、候補者二人を切り捨てるだけでは商会全体への不信を招くので、代表辞任と新体制を打ち出したほうがよいと主張した。
代表不在の理由とゴロウン商会との対立
リドリーは、現代表が王都にいない理由を明かした。近年、シャシャートの街を拠点とするゴロウン商会の勢いが増し、ダルフォン商会が担ってきた魔王国全体の食糧生産と価格調整が不安定になってきたため、その協力を求めてシャシャートの街へ出向いているのだという。だが、ゴロウン商会に利益を捨てて協力しろと求める形である以上、交渉が難航するのは当然であり、現代表も戻れずにいた。
ティゼルによる解決策の提示
ティゼルは、それほど魔王国全体に関わる問題であるなら、ランダンに頼んだほうがよいと即座に提案した。ダルフォン商会の代表が直接頼むよりも、四天王の一人であるランダンが間に入って、さらにゴロウン商会の会頭マイケルへ話を通したほうが、プライドの衝突を避けつつ話が進むと考えたのである。リドリーは、代表でなければランダンとの面会予約すらできないと説明したが、ティゼルは明日の晩にランダンが自分の家へ入学祝いに来る予定だと明かし、自分から伝えておくと告げた。
功績を譲られて困惑するリドリー
こうしてティゼルは、ゴロウン商会との問題は解決できると断じたうえで、その功績をもってリドリーが代表になるのはどうかと再び勧めた。だがリドリーは、根回しもせずに代表になれば商会がばらばらになるだけだと青ざめ、どうか許してほしいと訴えた。ティゼルはなおも押そうとしたが、リドリーの困惑は深まるばかりであった。
閑話 治療
夫の帰還と発覚する衰弱
グーロンデは夫の帰還を感じ取り、平静を装う準備をしていたが、夫がいつもの位置で止まらず近づいてきたことで動揺した。衰弱した自身の体を見られることを恐れたが、対処できないままカーテンを開けられ、治癒能力の低下を知られてしまった。
世界樹の葉による治療の開始
夫は安心させるように世界樹の葉を持ってきたと告げた。グーロンデは、世界樹が失われた現状では葉は極めて貴重であり、少量では延命にしかならないため娘のために残すべきだと考えた。しかし夫は百枚あると告げ、その葉によって治療が行われた結果、失われていた七つの頭は再生し、腐敗していた体も完全に回復した。
入手経緯への疑念と確認
回復したグーロンデは、世界樹の葉の入手経緯を問いただした。夫は「もらった」と説明したが、あまりの量と希少性から信じられず、強引な手段で奪ったのではないかと疑った。しかし夫は一貫して対価も払っておらず、相手が受け取らなかったと主張し、乱暴な手段は取っていないと断言した。
大樹の村の村長ヒラクの存在
夫は、葉を譲った相手が“大樹の村”の村長ヒラクであると明かした。その人物は人間でありながら、夫自身が敵に回せば命を落とすと断言するほどの実力を持つ存在であった。さらに、娘の関係者であるヒイチロウの父でもあることが判明し、グーロンデはその存在に強い関心を抱いた。
恩義への決意と訪問の意志
グーロンデは、信じ難い話でありながらも自身の回復という結果から事実を受け入れ、恩義を返すためにヒラクへ挨拶に向かうことを決意した。同時に、娘にも会うために自ら飛び立つことを選んだ。
久々の飛翔と再出発
長年動けなかった影響で飛び方を忘れていたグーロンデは、飛び立った直後に墜落した。しかし不調ではなく単なる感覚の喪失であると判断し、練習によってすぐに飛行を取り戻そうとした。再び空を飛ぶための準備を整えながら、新たな行動へと踏み出した。
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