いせれべ 9巻レビュー
いせれべ 全巻まとめ
いせれべ 11巻レビュー
どんな本?
作家の名前で予備知識無しで買った記憶がある。
「小説家になろう」で「進化の実」を知ったのは作者さんは高校生だったからな・・
文章の書き方が凄く面白くて進化の実を読んでいたが、このタイトルは知らなかった。
この作品の作者さん、美紅さん。
私の印象ではストライクゾーンでは勝負しないタイプだと思ってる。
でもネタのキレは良いので食い付いてしまうw
そう感じている進化の実がアニメ化して、、、
そしてこの「#いせれべ」がアニメ化している。
進化の実の作画と比べると期待出来そう。
というより段違いじゃないか?
モフモフなナイトとアカツキ、ウサギさんが出て来るまで楽しみに待とう。
PVにはしっかり出ている。
シエルまでは行かないかな、、
ウサギ師匠!!!声が渋い!
動くナイトがカワイイ!!
アカツキもキュート!
読んだ本のタイトル
異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する10 ~レベルアップは人生を変えた~
著者:美紅 氏
イラスト:桑島黎音 氏
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あらすじ・内容
宇宙戦争を終結させた少年――次は……ついに《賢者》と邂逅する。
激動の星間戦争を無双し、大宇宙に平和をもたらした天上優夜。久し振りに平穏な日常が到来した――かと思いきや、生ける伝説と化した優夜を、全世界が放っておくはずもなく……。
異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する10 ~レベルアップは人生を変えた~
優夜に母星の危機を救われた異星人の少女・メルルが、王星学園にまさかの転入! 彼女が背負うとある任務の存在も知らぬまま、優夜は学園のビッグイベント・体育祭に挑むが……!?
その頃、異世界では優夜を敵視する邪教団が暗躍していた。彼らの謀略によって時空を飛ばされた優夜が出会ったのは――
「なぜ、お前もその剣を持っている?」「それは……【全剣】!?」
自身に全遺産を授けた《賢者》!? すべてが繋がる過去世界編!!
前巻からのあらすじ
地球を侵略して来た宇宙人ドラゴニアを撃退した優夜達を見て、メルルは自分の星を救って欲しいとお願いして来た。
それに応えるために優夜は、新たな仲間の魔聖オーディスとその弟子のルリとリルの2人を加え。
メルルの宇宙船で宇宙へと旅立つ。
なんかよく分からないジェルに包まれながら、ワープを使用していたら。
侵略しているドラゴニアの船に攻撃される。
それを船外に出て剣でアッサリと撃退、、、、
さらに宇宙に賢者の遺産がありそれを優夜が受け取り、、
ドラゴニアの本隊がメルルの星を侵略している場に遭遇して、優夜達は加勢するが多勢に無勢で劣勢。
ナイトが覚醒して部隊長クラスを撃退して盛り返すかと思ったら、、
その後、無理しすぎたナイトはダウン。
さらにドラゴニアの皇帝が出て来て、声だけで優夜達を圧倒したのだが、、
賢者さんの遺産が、、
あの宇宙で回収した遺産が巨大ロボットとなり出て来てドラゴニアの皇帝を圧倒してドラゴニア軍を壊滅してしまった。
そうして優夜はメルルの母星を救った
感想
宇宙での騒動も終わり。
異世界に召喚されていた神楽坂を連れ帰って。
優夜に日常が戻って来たと思ったら、、
宇宙人のメルルが優夜のクラスに転校して来た。
目的は優夜と結婚して彼の遺伝子を持ち帰る事。
何度か優夜が地球に来たのかと聞いたが、メルルははぐらかしてばかりだった。
だが、優夜と遊園地に行ったりとしっかりと楽しんだりしていた。
そんな優夜達は体育祭が開催される事となる。
出場種目は:
- 障害物競争
- 騎馬戦
- 綱引き
- 凛とペアを組んで二人三脚
結果は、、、
出れば圧勝。
そんな日常を謳歌していた優夜が、ユティの修行と、神楽坂が魔獣を間引くために異世界に行くという理由で邪神教団に襲われた。
優夜は賢者に討伐された過去の邪神と入れ替えられてしまった。
そしたら、優夜の目の前に賢者のゼノヴィスさんが突然攻撃して来た。
最初は邪神と同じ存在と思って斬りつけて来たが、その攻撃に対応するために優夜も “全剣” を出したら、、
その全剣を見た賢者さんの攻撃が止まり、自身と同じ唯一無二の全剣を持つ優夜の話を聞いた賢者さん。
そんな彼との交流は、天使ラナエルを交えて現代に帰れないかと聞くと、上役が大丈夫と言えば元の時間に戻してくれると言う。
未来に自身の家や魔法の回路を受け継いだ優夜に興味を持ち、修行を付けてくれるようになった。
その賢者さんの抑える剣技は、、
木刀で全剣と同じ効果を出せという。
そして、優夜は賢者さんの指導の下、剣技を磨いて力みなく相手を斬れるようになる。
そんな優夜と賢者の前に、天使ラナエルは虚神の力を取り込んだ創世竜を討伐してくれと言ってくる。
そんな創世竜との戦闘は、、
賢者さんから剣技を習った優夜が “無為の一撃” を放って圧勝してしまう。
まだすぐに無為の一撃の状態にはならないが、放つ事は出来るようになっていた。
そして、優夜が賢者の後継者になれたのか判明する。
賢者が観測者から断り続けていた虚神との戦闘。
それを弟子で後継者である優夜が行う事となる。
その前払いに、優夜は賢者さんの物を受け取って人生が変わってしまう。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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いせれべ 全巻まとめ
いせれべ 11巻レビュー
展開まとめ
プロローグ
ゼノヴィスの異常な才能の発露
ゼノヴィスはアルジェーナのごく普通の農家に生まれ、両親の愛情を受けて育ったが、その本質は普通から最も遠い存在であった。五歳の時、ゼノヴィスは突然木の棒で素振りを始め、それをやめることなく続けた末に、ついには木の棒で森の木を切り倒した。さらに村の大人たちが様子を確かめると、ゼノヴィスは木を切ることにも飽き、木の棒で山を一刀両断していた。この常識外れの光景により、村ではゼノヴィスが不気味な存在として扱われるようになった。
両親の支えと魔法の習得
村人たちがゼノヴィスを恐れる中でも、両親だけは変わらず深い愛情を注ぎ続けた。そのため両親は、ゼノヴィスの異常な才能を否定するのではなく、彼の望みをできる限り叶えようと考えた。やがてゼノヴィスが魔法に興味を示すと、両親は苦労して金を貯め、魔法について書かれた古びた本を買い与えた。その本は粗末で子供向けでもなかったが、ゼノヴィスは独自の解釈と研究によって内容をものにし、気づけば立派な魔法使いになっていた。
魔法学校での孤高と万能の成長
このまま村で人生を終えるのは惜しいと考えた両親は、ゼノヴィスを有名な魔法学校へ入学させた。学費は払えなかったが、学園には特待生制度があり、ゼノヴィスは当然のように優秀な成績でそれを勝ち取った。入学後も彼は学年首位を維持し、戦闘力でもすぐに学校一となった。しかし幼少期の出来事により両親以外からまともに扱われてこなかったことと、感情を表に出さない性格のため、学校でも孤高の存在として見られ続けた。それでもゼノヴィスは人付き合いを嘆かず、好奇心の赴くまま剣術以外の武術、武器や防具、さらに歌や絵画といった芸術分野にまで手を伸ばしていった。
賢者と呼ばれた伝説の生涯
普通の人間なら一つを極めるだけで一生を費やすところを、ゼノヴィスは青年になるころにはあらゆる分野を極めていた。剣術も魔法も鍛冶も芸術も、未知のものですら瞬時に習得して己の技に昇華した。魔法学校卒業後は世界を旅し、暴れまわる創世竜を殴り飛ばし、すべての聖の称号を得て一人で邪の王を倒し、亡国の姫を救い、とある子供の願いのために一国を相手に戦うなど、数々の伝説を積み重ねた。やがて人々は彼を賢者と呼ぶようになったが、その晩年を知る者はいなかった。最期については様々な憶測が飛び交ったものの、誰も真実には辿り着けなかった。ゼノヴィスは誰よりも異常であったからこそ、誰よりも普通の人間として死ぬことを望んでいた。
竜谷に潜む竜の憎悪
賢者が生きていた時代、竜谷と呼ばれる危険な土地では、竜たちが縄張り争いを繰り広げながら生息していた。その竜たちが谷の外へ出ないのは、ただ一体の竜がそれを禁じていたからであった。谷の最深部にいた夕焼け色の巨大な竜は、人類こそが星の均衡を崩す害悪であると断じ、この世界アルジェーナを救うためには人類を滅ぼさねばならないと考えていた。しかし自分の力では賢者を倒せず、邪と手を組んでも不可能だと理解していたため、上の次元に住む連中の力を取り込んで自らを強化しようとしていた。竜はその力を体に馴染ませ、いずれ賢者を倒すために、竜谷で静かに力を蓄え続けていた。
邪教団の大魔境侵入
遥かな時が流れ、優夜たちの時代になると、邪教団の教祖は信徒たちを率いて大魔境を訪れていた。目的は、そこに住むという優夜を捜すことであった。しかし大魔境は強大な気配に満ちており、教祖ですら踏み込むことをためらった。にもかかわらず、一部の信徒たちは教祖の制止を聞かずに足を踏み入れ、その瞬間、アサシン・ツリーによって何が起きたのかも理解できないまま次々と殺された。教祖は大魔境の魔物たちがこの土地に適応した独自の進化を遂げ、凶暴性と戦闘欲に特化した化け物であると説明した。それでも教祖は神の復活と神敵である優夜を討つために進むべきだと信徒たちを鼓舞し、狂信を取り戻した一行はついに大魔境へと進軍した。
地球での休息と神楽坂真依のことを思い出す優夜
一方地球では、宇宙での激闘から数日が過ぎ、天上優夜はようやく休日を満喫していた。本来なら異世界に残る邪獣の討伐に向かうべきであったが、イリスたちから休むよう命じられていたため、家でナイトたちと共にのんびり過ごしていた。そんな中で優夜は、異世界に残ったままの神楽坂真依のことを思い出し、夏休みが終わる前に声をかけなければならないと気づいた。ユティは友人の家に遊びに行っていたため、優夜はナイトたちを連れて異世界への扉をくぐり、転移魔法でレガル国へ向かった。
レガル国での再会と街の案内
レガル国に到着した優夜は、神楽坂真依が王城にいると見当をつけながらも、どう接触すればよいか分からず困っていた。王城の近くで考え込んでいると、本人である神楽坂真依から声をかけられた。優夜が夏休みの終わりと学校の再開を伝えると、真依は学校のことを忘れていたと気づき、ひとまず事情を理解したうえで、最後にレガル国を観光しないかと提案した。優夜はそれを受け入れ、真依の案内で街を巡った。街には復興途中の傷跡が残っていたが、人々は活気にあふれ、魔法を生活の中に自然に取り入れていた。鮮魚店では水の球の中を魚が泳ぎ、買い物客も魔法で魚を持ち帰っており、この国ならではの生活と魔法の密接な関係が描かれていた。また、真依は街の人々から聖女として親しまれており、レガル国で良い関係を築いていることがうかがえた。
オルギスへの報告と邪教団の気配
観光を終えた優夜と神楽坂真依は王城へ向かい、真依の案内でオルギスに面会した。オルギスは優夜たちを恩人として歓迎し、レクシアたちがすでにアルセリア王国へ戻ったことや、イリスたちの働きによって邪獣の被害が減っていることを伝えた。そのうえで、真依が元の世界へしばらく戻りたいと申し出ると、オルギスは自分たちの都合で召喚した立場である以上、それを拒む理由はないとして快く承諾した。さらに別れ際、オルギスは邪を信仰する邪教団という存在がきな臭い動きをしていると優夜に警告し、何かあれば心に留めておくよう伝えた。
地球への帰還
王都を出た後、神楽坂真依は優夜に家までどれほどかかるのかを尋ねた。優夜は転移魔法で賢者の家まで一瞬で戻り、そこから異世界への扉をくぐって地球へ帰還した。転移魔法が地球だけでなく異世界でも伝説級の魔法であるため、優夜はその存在を秘密にしてほしいと真依に頼み、真依もそれを了承した。優夜が神社の前まで送ろうかと申し出ても、真依は帰り道に買い物をしたいとして断り、これまで気にかけてくれたことに礼を述べながら、自宅である神社へ向かって帰っていった。
第一章 久しぶりの日常
メルルが地球の制服と任務に向き合ったこと
メルルは宇宙船内で、翌日から着ることになる王星学園の制服を手に取り、不思議な思いを抱いていた。地球の文化については事前に調べており、学生服の存在も知っていたが、自らが実際にそれを身に着ける立場になるとは想像していなかった。普段のスーツは宇宙空間にも対応し、地球の服飾データを反映させることも可能であったが、今回の制服は正真正銘地球で作られたものであり、その感触や脚部の露出に新鮮さと恥ずかしさを覚えていた。
その一方で、メルルが学園に通うことになった理由は、父から下された命令にあった。それは優夜の遺伝子を手に入れることであり、単なる体組織の採取ではなく、優夜との間に子をなすことを意味していた。メルルはその命令を改めて認識し、動揺したうえで地球人類と自分の身体を比較検証した結果、優夜との間に子供を作ることが可能だと知った。だが、これまで恋愛を経験したことのなかったメルルにとって、優夜との距離の縮め方は大きな問題であった。
メルルが恋愛の情報を集めたこと
メルルは、優夜に対して好ましい感情を抱いていることは自覚していたが、それが恋と呼べるものかまでは分からなかった。自分を襲撃した相手であったにもかかわらず優夜は彼女を許し、さらに危険を承知で助け、アルジェーナでも身を挺して守ってくれた。その体験は、これまで一人で戦い続けてきたメルルにとって非常に新鮮なものであった。
しかし、いきなり遺伝子を求めることは地球の価値観から見ても不自然であり、自分にとっても困難であったため、まずは恋愛によって自然に関係を深めるべきだと考えた。そこでメルルは、地球の学生の恋人たちがどのように過ごしているかを調べ、遊園地や水族館などのデートスポットの存在を知った。特に遊園地には興味を抱き、優夜とそうした場所へ行くことを一つの目標として準備を整えていった。
夏休み明けに優夜が日常へ戻ったこと
神楽坂真依を迎えに行ってから数日後、夏休みが終わり、優夜は久しぶりに王星学園へ登校した。以前の学校では長期休暇明けを憂鬱に感じていたが、今では逆に皆に会えないことの方が寂しく感じられるようになっていた。教室に着くと楓や慎吾らクラスメイトが明るく声をかけ、優夜は改めて自分がこの学校で居場所を得ていることを実感した。
その後、担任の沢田が教室に入り、このクラスにまた転校生が来るというビッグニュースを告げた。優夜をはじめ、転校生が続いていることにクラス中が驚く中、呼び込まれて現れたのはメルルであった。優夜はその姿に衝撃を受けたが、メルルは地球の制服を自然に着こなし、しかもクラスメイトたちは彼女の青く光る髪すら不自然に感じていなかった。メルルが認識操作によって周囲に違和感を抱かせないようにしていたためであり、優夜は改めて宇宙の技術のすさまじさを思い知った。
メルルの転入と佳織との情報共有
メルルは転入生として自己紹介を済ませ、沢田に優夜の後ろの席を指定された。優夜のそばを通り過ぎる際には、また会えたと小声で告げており、優夜は乾いた笑みを浮かべるしかなかった。その後、放課後までメルルのもとには他クラスの生徒たちまで押し寄せ、質問攻めにされていたが、認識操作のおかげで地球社会に無理なく溶け込んでいた。
その様子を見ていた優夜は、教室の入り口で佳織に呼び止められた。佳織は以前、優夜とメルルが一緒にいるところを見ていたため、認識操作の影響を受けず、メルルが宇宙人であることを覚えていた。優夜はメルルの認識操作の仕組みを説明し、佳織はその技術の凄さと同時に恐ろしさも感じていた。さらに二人は、異世界人のユティに続いて宇宙人のメルルまで学園に通うことになった状況を異常だと共有しつつ、メルルの正体は秘密にしておくことを確認した。
優夜がメルルの目的を尋ねたこと
放課後になってようやくメルルが一人になったところを見つけた優夜は、なぜこの学校に来たのかを尋ねた。ドラゴニア星人との騒動が終わったあとも、エイメル星でやるべきことがあるのではないかと考えていたからである。するとメルルは明らかに動揺しつつも、地球の文化を勉強してくるように言われたのだと説明した。
その直後、メルルは文化研究の一環として、今度一緒に遊園地などへ行かないかと言いかけたが、言い終える前に慌てて話を打ち切り、そのまま立ち去ってしまった。優夜は詳しい事情までは分からなかったものの、少なくとも大きな問題ではなさそうだと受け止め、一安心した。
体育祭の説明が始まったこと
メルルが転入してきた翌日、優夜は再び彼女に地球での用事を尋ねたが、はぐらかされてしまった。ただ、授業中に後ろの席から妙に視線を感じており、何かを気にされていることだけは伝わっていた。そんな中、沢田はホームルームで体育祭について決めると告げた。
王星学園の体育祭は全学年を赤組と白組に分けて競い合う大規模な行事であり、高等部だけでなく中等部も含めた全校規模で行われるうえ、クラス対抗戦としての側面も持っていた。競技に勝てば学園祭で使える予算が増え、副賞として学食一ヶ月無料券や学園祭に好きなアーティストを呼べる権利なども与えられるという豪華な内容であった。沢田は赤組である自分たちが勝てば自身のボーナスも増えると露骨に発言し、生徒たちに全力を求めた。
影野が種目決めを進めたこと
種目決めの進行は学級委員の影野統が担当した。影野は体育祭の基本的な仕組みを説明しつつ、種目ごとに得点や予算への反映が異なるため、誰をどの競技に出すか慎重に選ぶ必要があると語った。一人で複数種目に参加することも可能であったが、全員が最低一種目には出場しなければならず、無理に多く出るよりも自信のある競技を選ぶのが望ましいとされた。
優夜は異世界での経験によって身体能力は大きく向上していたが、もともと運動が得意だったわけではなかったため、前の学校でも経験のある障害物競走を希望した。さらに周囲から推薦を受け、騎馬戦と綱引きにも参加することになった。一方でメルルは、まだ地球の文化に不慣れであることを踏まえ、玉入れや綱引きなど、皆と協力する種目に出ることになった。
優夜と凜が二人三脚の組み合わせになったこと
最後まで残った種目は、男女混合の二人三脚であった。この競技は足の速さだけでなく、身長差や相性も重要であるため、影野も人選に悩んでいた。立候補した中には凜もいたが、彼女と釣り合う男子が見つからず、参加枠が埋まりきらない状態になっていた。凜自身は自分が辞退して別の人に譲ってもいいと考えていたが、せっかく手を挙げた以上、それは惜しい状況であった。
そこで優夜が、自分でよければ一緒に走ると申し出た。凜は驚きつつもそれを喜び、影野も身長差や優夜の身体能力を考えて適任だと判断した。優夜は二人三脚の経験こそなかったが、凜と共に頑張ることを決め、こうして体育祭の出場種目がすべて確定したのであった。
メルルが遊園地への同行を願い出たこと
放課後、部活へ向かう楓たちと別れた優夜は、メルルから声をかけられた。メルルは地球の文化を学ぶために学園へ来たことを改めて説明し、その一環として遊園地に行きたいので案内してほしいと頼んだ。エイメル星には学校という制度自体が存在せず、必要な知識は電波送信で脳へ直接入力されることや、現在は学園上空に待機させた宇宙船で生活していることも明かされた。優夜はその宇宙技術に驚きつつも、悲しげな表情を見せるメルルに押される形で、今度の休暇に一緒に遊園地へ行くことを了承した。
メルルが優夜との距離を縮めようとしたこと
遊園地の約束が決まった後、メルルはクラスメイトに部活見学へ誘われていると話し、優夜が部活に入っていないことを知った。さらに、同じクラスメイトになったのだから、もう少し砕けた口調で接してほしいと控えめに願い出た。優夜はその提案を受け入れ、今後はメルルと呼ぶことにし、逆に彼女にも敬語を使わなくてよいと伝えた。しかしメルルは、自分にとっては今の話し方が普通だとして、そのまま去っていった。優夜は久しぶりにしっかり話したメルルの様子が以前よりどこかよそよそしく感じられ、自分が何か気に障ることをしたのではないかと考え込んだ。
佳織と体育祭の組分けを確認したこと
その後、下駄箱へ向かった優夜は佳織と出会い、途中まで一緒に帰ることになった。二人の話題は、ちょうどその日に決まった体育祭の組分けに移った。優夜のクラスは赤組、佳織は白組であり、今回は敵同士であると佳織はいたずらっぽく笑った。しかし同時に、優夜が相手では勝てなさそうだとも不安を漏らした。優夜は自分一人で勝敗が決まるわけではないと返したが、佳織もまた自分が運動が苦手であることを気にしており、出場種目は玉入れと綱引きだと説明した。優夜はそれを聞き、佳織なりに無理のない競技を選んでいることを理解した。
ユティも白組だったこと
佳織と別れて帰宅すると、家にはすでにユティが帰っていた。今日は部活が休みで早く帰ってきたのだと答えたユティは、すぐに優夜へ体育祭の組を尋ねた。優夜が赤組だと答えると、ユティは自分が白組であると明かし、敵同士だと強い闘志を見せた。佳織に続き、ユティまでもが白組であることが分かり、優夜は白組の戦力の強さを意識して、改めて体育祭へ向けて気を引き締めた。
大魔境で邪教団が進軍を続けたこと
一方その頃、異世界の大魔境では邪教団が奥地を目指して進軍を続けていた。彼らは魔物の襲撃を何度も受けて満身創痍になりながらも、教祖の檄によって足を止めることなく前進していた。休息の最中、信徒の一人が、今回呼び寄せようとしている神がどの時代の邪なのかを教祖に尋ねた。教祖は、今回呼ぶのは歴代でも最強と呼ばれた邪であり、かつて賢者がいた時代にはその力を存分に振るえず敗れた存在だと説明した。
邪教団が賢者の魔法を触媒にしようとしたこと
教祖は、今回はその最強の邪をこの時代へ呼び寄せることで、もはや自分たちの神を阻む者はいなくなると断言した。そして、その際には神敵である天上優夜を生贄として利用し、自分たちの神と入れ替える形で葬り去るつもりであると語った。信徒が、狙った存在を過去から呼び寄せるには触媒が必要ではないのかと確認すると、教祖は今回用いる賢者の魔法こそがその触媒になるのだと明かした。賢者に倒された神であるがゆえに賢者の魔法が触媒として成立し、さらに自分たちに残るわずかな邪の力も組み合わせることで、確実に歴代最強の神を呼び寄せられると教祖は確信していた。こうして優夜の知らぬところで、邪教団の企みは着実に進行していた。
第二章 体育祭
体育祭の準備と優夜と凜の二人三脚の練習
体育祭本番を前に、優夜たちは競技や入退場の練習に加え、男子は応援団、女子はチアリーディングの練習にも取り組んでいた。優夜が出場する障害物競走、騎馬戦、綱引きは簡単なルール説明とコース確認だけで、詳細は本番で初めて分かる形であったが、男女混合二人三脚だけは凜と繰り返し練習していた。最初は息を合わせて歩くのがやっとだったものの、練習を重ねたことでかなりの速度で走れるようになっていた。
練習の最中、凜は冗談めかして自分のような相手で悪いとからかい、楓ならもっと抱き心地がよかっただろうと口にした。その言葉に動揺した優夜は、凜も綺麗であり、今も意識してしまっていると正直に漏らしてしまった。すると場の空気は一気に気まずくなり、二人は互いに謝ることになった。そこで凜は話題を変え、メルルの運動能力の高さや体育祭当日にテレビ局が取材に来ることを話し、優夜は王星学園の体育祭の規模の大きさを改めて実感した。
遊園地でメルルと休日を過ごしたこと
休日になり、優夜は以前約束していた通り、メルルと遊園地へ出かけた。待ち合わせに現れたメルルは地球に合わせた私服姿で、優夜はその装いがよく似合っていると伝えた。遊園地は休日ということもあって大勢の人で賑わっており、メルルはその人混みを見て彼らも皆JKなのかと尋ねたが、優夜は遊園地がJKだけの施設ではないと説明した。メルルは自分の集めた情報の偏りを認識し、データを修正していた。
入園後、二人は非日常的な空間に感心しつつ、まずは遊園地の花形とされるジェットコースターへ向かった。長い列に並ぶ間、メルルの髪や容姿は周囲の客の注目を集めていたが、認識操作が乱発されるのもどうかと考えた優夜は、そのまま様子を見ることにした。やがて順番が来て二人はジェットコースターに乗り込み、激しい起伏や回転を伴うコースを体験したが、優夜もメルルもそれ以上の刺激や戦いを経験していたため、ほとんどスリルを感じられなかった。周囲が興奮して感想を語り合う中、二人だけが困惑した表情を浮かべ、すぐに次のアトラクションへ移ることにした。
お化け屋敷で本物の幽霊に遭遇したこと
次に選んだのは、メルルがカップルの定番だと知っていたお化け屋敷であった。病院を模した建物に入り、薄暗く朽ちた内部を進み始めたが、宇宙の闇を知るメルルにとって単なる暗さは恐怖の対象にはならなかった。さらに優夜の気配察知やメルルの技術により、待ち構えるお化け役のスタッフや仕掛けの位置まで察知できてしまい、脅かしの演出はまったく効果を持たなかった。飛び出してくるスタッフを見ても二人は驚けず、何とも言えない反応のまま進むことになった。
しかし出口が近づいたところで事態は一変した。突然メルルが青ざめて足を止め、その先を見た優夜もまた、足のない子供の姿を目にした。しかもその存在には優夜の気配察知がまったく反応しておらず、作り物ではなく本物の幽霊であることが分かった。非科学的存在を否定しようとしたメルルは、背後から子供の声を聞いた瞬間に気を失い、優夜は彼女を抱きかかえてそのまま出口まで全力で逃げた。無事に外へ出るとメルルはすぐに目を覚まし、自分が優夜に抱えられていたことに気づいて赤面した。優夜も慌てて彼女を下ろし、微妙な空気を変えるために次のアトラクションへ向かうことを提案した。
遊園地を楽しみ直し、観覧車で気持ちを交わしたこと
その後、二人はメリーゴーラウンドやゴーカート、ミニゲームなどを回り、ジェットコースターやお化け屋敷とは異なり、これらは素直に楽しむことができた。ゴーカートは宇宙船とは違う感覚があり、メルルにとっても新鮮であったし、メリーゴーラウンドの穏やかな雰囲気も十分に味わえた。昼食をとりながら優夜が改めて遊園地を楽しめているか尋ねると、メルルは予想外の出来事もあったが楽しめていると笑みを見せた。
最後に二人は遊園地の象徴である観覧車へ乗ることにした。宇宙船に乗っているメルルにとって高さそのものは特別ではないはずだったが、外からも見えていた観覧車に乗ってみたいと望んだためである。観覧車の中で二人きりになると、ゆっくりと高くなっていく景色を眺めながら、優夜は急速に地球が遠ざかった宇宙船とは違う楽しさを感じていた。そこでメルルは、エイメル星で父たちが口にした発言について改めて謝罪し、優夜にエイメル星をどう思うか尋ねた。優夜は、前回は騒動の最中で落ち着いて見られなかったが、地球とは全く異なる星であり、技術も大きく先を行っていて興味深いと答えた。
その返答を受けたメルルは、今度はエイメル星に住む気はないかと踏み込んで尋ねた。優夜は面白い星だとは思ったものの、住むとなるとすぐに答えは出せないと返し、メルルは少し落胆した。だが続けて、恋人はまだ早いとしても、まずは友達になってほしいと申し出た。優夜はそれを快く受け入れ、もともと友達だと思っていた気持ちをそのまま示した。やがて観覧車が頂上に達し、きらめく街の景色が二人の前に広がった。優夜はメルルに誘ってくれたことへの感謝を伝え、メルルもそれを嬉しそうに受け止めた。二人は笑い合いながら、最後まで観覧車の時間を満喫した。
邪教団の信徒が捕まり、邪復活の計画が明らかになったこと
優夜たちが遊園地を楽しんでいた頃、異世界ではオルギスが執務中に兵士から報告を受けていた。大魔境を進む邪教団の信徒の一人を捕らえることに成功したというのである。オルギスはすぐに尋問室へ向かい、拘束された男に対して邪教団の信徒かどうかを問いただした。男は平然と応じ、自分たちが何をしたのかと逆に問い返した。邪教団は危険な思想を持ってはいるものの、直接被害を与えていたわけではないため、オルギスはその点を完全には言い返せなかった。それでも、邪によって国が甚大な被害を受けた以上、その思想を放置するわけにはいかないと告げた。
すると男は、すでに自分たちの計画は動き始めていると笑いながら語り、神敵を捧げることで自分たちの神を呼び寄せるのだと明かした。その発言にオルギスたちは衝撃を受けたが、さらに問い質そうとした瞬間、男は舌を噛み切って自害してしまった。回復魔法も間に合わず、男はそのまま息絶えた。オルギスは邪教徒の狂信ぶりを見誤ったことを認めつつも、得られた情報の重さを理解していた。邪を呼び戻す儀式が実在する可能性、そして神敵を生贄に捧げるという言葉から、聖を生贄にして邪を復活させる術式の存在まで推測したのである。ただし、その対象が優夜であることにはまだ気づいていなかった。オルギスは再び各国へ警戒を促す親書を送ることを決め、平穏が戻ったと思われた世界に再び迫る邪の脅威に、重い危機感を抱くのだった。
体育祭当日の熱気と派手な開幕
メルルと遊園地で休日を過ごした後も、学校では通常授業と並行して体育祭の練習が続き、ついに本番当日の朝を迎えた。優夜はナイトたちを連れて来られなかったことを気にしつつも、学園へ向かった。会場には凜の言っていた通り、多くのテレビ局のカメラマンが集まっており、グラウンドに全校生徒が集まると、放送委員の白瀬による実況調の進行が始まった。さらに体育教師の大木が解説役として加わり、競技ごとのポイント制度や学園祭予算、副賞の存在まで改めて説明されたことで、生徒たちの闘志は一気に高まった。観客席の保護者たちもまた、この異様な熱気を当然のものとして受け入れており、王星学園の体育祭が特別な催しであることが示されていた。
パン食い競走で晶が激辛パンの餌食になったこと
最初の競技はパン食い競走であり、焼きたて堂のパンが使用されることや、一枚だけ激辛パンが混じっていることまで白瀬によって軽快に紹介された。優夜のクラスからは晶らが出場し、晶は自らをパン食いの貴公子と称して自信満々に競技へ臨んだ。運動能力の高さもあって晶は誰よりも早くパンの場所に到達したが、勢いよくかじりついたパンが運悪く激辛パンであったため、顔を真っ赤にして口から火を噴き、そのままコースを外れて水を求めて走り去った。その間に他の選手たちは何事もなくゴールし、晶は大きく順位を落とした。競技後、テントに戻った晶の唇は真っ赤に腫れあがっており、優夜はその惨状を見ていたわるしかなかった。
借り物競走で楓が優夜を連れてゴールしたこと
続いて始まった借り物競走には楓が出場した。優夜の応援を受けた楓は、その言葉を思い返して顔を赤くしつつも、競技に集中しようと気持ちを切り替えた。スタートと同時に楓は足の速さを生かして最初にお題の紙へたどり着いたが、そこに書かれていた内容を見て固まってしまった。他の選手たちもまた、伝説の剣や教頭先生のカツラなど、容易には達成できない無茶なお題を引き当てて立ち尽くし、競技場は阿鼻叫喚の様相を呈した。
そんな中、優夜が楓に声をかけると、楓は覚悟を決めて優夜のもとへ駆け寄り、一緒に来てほしいと頼んだ。優夜は即座に自分がお題に合致しているのだと察し、その手を取って一緒に走り出した。二人は他の選手が借り物を見つけられずにいる隙にそのまま一位でゴールし、実況や解説からも意味深な反応を向けられた。優夜は転入生などのお題だったのかと何気なく尋ねたが、楓は本当のお題が今気になっている人であったことを隠し、曖昧にごまかしたまま赤面していた。二人の様子はテレビカメラにも収められていたが、当人たちはそれに気づいていなかった。
玉入れでユティと佳織が白組を圧倒的優勢にしたこと
次の競技は玉入れであり、赤組には慎吾らが、白組にはユティと佳織が参加した。競技が始まると、ユティは地面の玉を一気に蹴り上げて空中に散らし、それを次々と正確に籠へ投げ入れる離れ業を見せた。その身体能力と投擲技術は実況と解説を驚かせ、中等部の実力者ぶりを強く印象づけた。
一方の佳織は、狙いとはまったく異なる方向へ玉を飛ばし続け、その暴投は白組の敵である赤組の生徒たちに次々と襲いかかった。赤組は玉入れどころではなく、飛来する玉を避けながら競技を続ける羽目になり、晶までもが直撃を受けて倒れた。佳織は謝りながらも真剣に投げ続け、その結果、玉入れはもはや別競技のような様相を呈した。最終的に白組は三百個、赤組は五十個という大差で白組が勝利し、ユティは当然のように勝利を宣言して優夜へVサインを送った。
優夜が本格障害物競走で圧倒したこと
その後、優夜の出番となる障害物競走が始まった。コースは普通の学校の競技とは比較にならない本格的なもので、高さ約五メートルの急勾配の壁、回転する平均台と振り子、水の張られたプール、幅広で間隔の広い雲梯、成人男性ほどの重さがある巨大鉄球、有刺鉄線の下の匍匐前進、バレーボール部によるスパイクの嵐、ロープで登る垂直の壁など、常人なら途中で力尽きかねない障害が連続していた。
だが優夜は、異世界での修行と戦闘経験によって鍛えられた身体能力と体力を生かし、最初の壁を一瞬で越え、回転する平均台と振り子も見事に突破し、その後の障害も次々と攻略していった。実況と解説はその走りに驚嘆し、大木はここまで綺麗に突破する選手は見たことがないとまで評した。優夜は最後の綱渡りに至っても動じず、後続の選手たちが迫る中、しなる綱の反動を利用して十メートル以上先の向こう岸へ一気に跳び越え、そのままゴールへ駆け込んだ。結果は大会新記録であり、実況席もプロ選手並みどころかそれ以上だと騒然となった。
優夜が次の綱引きに備えたこと
圧倒的な走りで障害物競走を制した優夜がテントへ戻ると、亮や楓、雪音らが興奮気味に迎えた。慎吾は次の綱引きを心配したが、優夜自身にはまだ余力があった。しかし他の出場者たちは疲労困憊で、テントへ戻るなり倒れ込む者ばかりであった。凜はそんな光景と比べ、これくらいなら大丈夫だと平然としている優夜を化け物じみていると評した。優夜は異世界でのレベルアップや修行の成果を説明できないまま曖昧に笑ってごまかしつつ、続く綱引きへ向かうことになった。
綱引きでユティが女子戦を制したこと
綱引きは男女別で行われ、男子では赤組が勝利したものの、女子では白組が優勢となっていた。その中心にいたのはユティであり、赤組側で参加していたメルルは対抗するためにエイメル星の技術を使おうとしたが、ユティはそれを察知し、それより先に網を強く引いて赤組の女子たち全員を一気に宙へ釣り上げた。危険な状況ではあったが、ユティはすぐに飛び出して一人ずつ丁寧に受け止め、安全に下ろしたため、大きな事故にはならなかった。
競技後、メルルは本気で勝ちにいったにもかかわらず、ユティの方が一枚上手だったと悔しさをにじませた。優夜は、初めての体育祭にもかかわらずメルルが十分に活躍していることを認め、実際に玉入れでも赤組の得点の大半がメルルによるものだったと振り返った。メルルは、白組から予想外に強力な攻撃が飛んできたことを玉入れ敗北の原因として語ったが、それが佳織の暴投によるものであることを知る優夜は苦笑するしかなかった。その後メルルは、次のチアリーディングも頑張って覚えたので楽しみにしてほしいと告げ、少し頬を赤らめながらその場を去っていった。
昼休憩と応援団・チアリーディングの披露
綱引きの後は昼休憩となり、優夜は佳織に誘われて一緒に弁当を食べることになった。ユティの弁当も優夜が用意していたため、ユティも一緒に佳織たちの輪へ加わり、優夜はこれまでの体育祭では味わえなかった賑やかな昼食の時間を過ごした。
休憩後、男子は応援団、女子はチアリーディングを披露した。優夜たちは学ランに赤い鉢巻きを身につけ、通常の応援だけでなく、練習を重ねてきたダンスも披露した。優夜にとっては、このダンスこそ体育祭の練習で最も苦労したものだったが、無事にやり切ることができ、保護者たちから拍手を受けた。続いて始まった女子のチアリーディングでは、佳織や楓たちが普段とは違う衣装と雰囲気で本格的なチアダンスを披露し、男子たちは大いに沸き立った。優夜も見慣れない皆の姿に動揺しつつ、その完成度の高さとテレビ映えする華やかさを強く感じていた。
午後の部で白組がなおも優勢だったこと
応援団とチアリーディングが終わると、午後の部が始まった。白瀬と大木の解説によれば、赤組は一種目ごとの派手な勝利は多いものの、白組は着実にポイントを積み重ねており、総合では白組がリードしている状況であった。沢田は自分のボーナスのためにも頑張れと露骨な檄を飛ばし、亮がすかさず突っ込んだが、競技が進んでも赤組はなかなか白組から主導権を奪い返せなかった。
二人三脚で凜が負傷し棄権することになったこと
午後の種目の一つとして、優夜と凜が出場する男女混合二人三脚が始まった。凜は白組に陸上部の生徒が多いことから厳しい勝負になると見ていたが、優夜は練習してきた成果を信じて全力を出そうと励ました。競技が始まると、二人は呼吸を合わせて順調に走り出したものの、白組の陸上部ペアは想像以上に速く、凜は焦ってペースを上げようとした。その変化に優夜はすぐ対応したが、練習では出したことのない速度だったため足がもつれ、凜は転びかけた。
優夜がとっさに腰に手を回して支えたことで転倒は防げたが、その際に凜は足を捻ってしまっていた。凜は情けないと自嘲したが、優夜は無理に続けさせず、その場で棄権を申し出た。そして歩こうとする凜を制して抱きかかえ、そのまま養護テントまで運んだ。凜は恥ずかしさから顔を赤くしながらも何も言えず、結果として赤組はここでも白組との差を縮めることができなかった。
最後の種目が騎馬戦となり優勝の行方が懸かったこと
その後も競技は進み、ついに最後の種目である騎馬戦を迎えた。この時点で得点は大接戦であり、騎馬戦に勝った組がそのまま優勝する情勢となっていた。優夜たちの騎馬は、亮、慎吾、晶の三人が下を支え、優夜が上に乗る構成であり、三人は優夜こそ上に立つべきだと強く認めていた。競技は先生たちのサポートのもと、安全に配慮しながら行われることになっていた。
開始と同時に各騎馬が激しくぶつかり合い、白組は赤組大将を狙うように見せつつ周囲の戦力を着実に削る巧みな戦法をとった。そのため、制限時間が迫る頃には赤組には優夜の騎馬と大将騎馬を含めてわずか三騎しか残っていなかったのに対し、白組は十騎以上を保っていた。この大差により、白組優勢の空気が強まったが、ここから一騎打ち形式へ移行することになった。
優夜たちが一騎打ちで白組をなぎ倒したこと
一騎打ちが始まると、赤組の残る一騎がすぐに敗れ、優夜たちと大将騎馬だけが最後の希望となった。白組には余裕が見えたが、赤組テントから飛ぶ必死の声援が優夜たちを奮い立たせた。亮、慎吾、晶もその声に応え、優夜の騎馬は玉砕覚悟で白組へ突っ込んでいった。
その勢いのまま、優夜は次々と白組の騎馬を倒していった。だが勝ち抜き方式で戦い続けるうちに、下で支える三人の腕や体力は限界に近づいていった。それでも優夜は皆の負担を減らすために素早く相手を倒し続け、ついには白組の大将騎馬だけを残すところまで追い詰めた。この展開に赤組からは歓声が上がり、白組もまた大将に絶対に負けるなと声援を送った。
白組大将との相打ちで赤組が優勝したこと
最後に残った白組の大将騎馬は、騎馬を支える生徒たちも大将自身も屈強であり、連戦で疲労した亮たちはその勢いに押されてバランスを崩していった。優夜は何とか相手の大将を掴もうとし、大将騎馬は巧みに距離を取って優夜たちの体勢を崩そうとしたが、ついに相手の突撃の瞬間、優夜は崩れかけた自分の体勢を体幹で支えながら、白組の大将を掴むことに成功した。
その直後、亮たちのスタミナが尽きて優夜の騎馬は瓦解した。しかし優夜はその崩れる勢いを利用し、掴んだ相手の大将をそのまま一緒に地面まで引きずり下ろした。結果として両者は同時に地面へ着地し、白瀬の判定により騎馬戦は赤組の勝利、そして今年の体育祭全体の優勝も赤組に決まった。亮たちは歓喜し、晶や慎吾も優夜の働きを称えた。さらに白組の大将を務めていた先輩も、敵ながら見事だったと優夜へ手を差し出し、優夜はその健闘を称える握手を交わした。
フォークダンスで佳織と言葉を交わし、体育祭が締めくくられたこと
全種目が終わった後、締めくくりとして全員参加のフォークダンスが行われた。優夜は赤組白組を問わず、楓をはじめとする女子たちや中等部のユティとも順に踊った。異性とダンスをする経験がない優夜は、そのたびに気恥ずかしさを覚えていたが、やがて佳織と向かい合う順番が来た。
佳織は赤組の優勝を祝い、騎馬戦での優夜が本当にかっこよかったと素直に伝えた。優夜は面と向かってそう言われたことで照れながら礼を述べた。佳織は本来なら白組を応援しなければならない立場でありながら、つい優夜を応援してしまったと悪戯が見つかった子供のように笑った。優夜もそれを受けて、本当に楽しかったと応じ、二人は顔を見合わせて笑い合った。こうして、優夜にとって王星学園で初めてとなる体育祭は、濃密な思い出とともに幕を閉じたのであった。
第三章 新たなトラブル
神楽坂真依が再び異世界行きを望んだこと
体育祭から数日が過ぎ、優夜はようやく訪れた平穏な日々を穏やかに過ごしていた。そんなある休日、神楽坂真依が優夜の家を訪ねてきた。真依は、地球側の状況も少し落ち着いたことから、再び異世界へ連れていってほしいと頼んだのである。その理由は、オルギスとの約束や自分が召喚された意味をきちんと考えた結果、異世界に蔓延る邪獣を倒すために向こうの世界へ行く必要があると判断したからであった。
この話を聞いたオーマは、最近何も起こらず退屈していたこともあり、久しぶりに異世界へ行くことを面白がるように賛成した。さらに優夜に対して、最近は修行をしていないため体が鈍っているのではないかと指摘し、再び鍛え直される可能性まで口にした。優夜は戦いそのものを望んでいるわけではなかったが、これまでの戦いで力の必要性を痛感していたため、異世界で修行を兼ねて動くことを受け入れた。こうして、ナイトたちに加え、最近全力で体を動かしていなかったユティも同行することになった。
大魔境を歩いて進み、神楽坂真依が急成長したこと
異世界へ渡った優夜は、いつものように転移魔法でレガル国まで送るつもりでいたが、オーマはせっかく久しぶりにこちらの世界へ来たのだから、体を慣らすためにも森を通って行けと提案した。大魔境の危険性を知る真依は強く驚いたが、優夜も戦闘感覚を取り戻すにはちょうどよいと考え、最終的に真依も渋々それを受け入れた。
大魔境の入口へ向かう道中、優夜たちは襲い来る魔物を次々と倒していった。最初こそ真依は魔物との力量差に苦しみ、まともに戦えなかったが、優夜が補助しながら共闘することで急速にレベルを上げていった。その結果、入口付近の魔物であれば一人でも相手にできるほどに成長し、自分も優夜と同じように人間離れしてきたのではないかと半ば呆れながら口にするほどになっていた。
賢者の気配をまとった集団が現れたこと
そうして進む中、優夜はこれまで感じたことのない集団の気配がこちらへ向かってくるのを察知し、足を止めた。するとオーマもまた、その気配の中に微かに賢者のものが混じっていると訝しんだ。ナイトが唸り声を上げたことからも、相手が敵である可能性が高いと判断した優夜は、すぐに武器を構えて備えた。
やがて姿を現したのは、黒いローブをまとった人間たちの集団であった。その中でも特に豪華なローブを着た男は、優夜を見つけるなり名前を呼び、明確に彼を標的としていた。突然見知らぬ集団に名指しされた優夜が戸惑う中、男はすぐに呪文を唱え始めた。危険を察したユティとナイトは即座に襲いかかったが、後ろに控えていた集団が自ら盾となって攻撃を防ぎ、男の詠唱を完遂させた。
邪教団が賢者の魔法で優夜を拘束したこと
男の呪文が完成すると、優夜の足元に禍々しい気配を放つ魔法陣が展開され、優夜はその場からまったく動けなくなった。神楽坂真依たちが手を伸ばしても、魔法陣から放たれる力によって物理的な干渉すら弾かれてしまい、誰も優夜を救い出すことができなかった。普段はそう簡単に手を貸さないオーマでさえ、この事態には即座に反応して魔法を放ったが、その一撃ですら拘束を破壊することはできなかった。
それを見た男は、これは忌々しい賢者が発明した魔法であり、一度発動すればもはや逃れることはできないと勝ち誇ったように告げた。オーマが先に感じていた賢者の気配とは、この魔法によるものであったのだと優夜は理解した。そして男は、自分たちの神が復活する時だと恍惚とした表情で叫び、魔法陣が激しく輝くと、優夜の視界はそのまま暗転した。
目覚めた先で謎の青年に襲われたこと
暗転した視界が再び光を取り戻した時、優夜の目の前には凄まじい速度の斬撃が迫っていた。優夜は訳も分からぬまま必死に攻撃を避けたが、斬撃は次から次へと飛来し、まともに状況を把握する余裕すらなかった。やがて攻撃が一瞬止み、優夜が周囲を見渡すと、そこには透き通るような白髪と青い瞳を持つ、神々しいまでに完成された雰囲気の青年が立っていた。青年は一切動揺を見せず、お前は誰だと淡々と問いかけた。
しかし優夜が答える間もなく、青年は、先ほどまでそこにいた何者かが消え、代わりに優夜が現れた以上、優夜も同じ類の存在なのだろうと断じ、再び剣を振るった。その一撃は優夜がこれまで見てきたどの剣技よりも鋭く美しく、剣聖であるイリスの技さえ霞むほどの完成度であった。優夜は見惚れそうになるのを必死にこらえて応戦しようとしたが、攻撃を避けた先にすでに別の斬撃が置かれているような、常識外れの剣技に追い詰められていった。
全剣をめぐる矛盾が生じたこと
空中へ追い込まれた優夜は、もはや避けきれないと判断し、全剣を取り出して青年の斬撃を受け止めようとした。だが、剣同士がぶつかるより前に、まるで磁石同士が反発するような不可視の力が働き、優夜は青年の斬撃ごと弾き飛ばされてしまった。威力の強さにも驚かされたが、それ以上に、自分の全剣が防御に使えなかったことが異常であった。
さらに体勢を立て直した直後、青年は一瞬で優夜の背後に回り込み、腕を掴んで地面へ叩きつけ、首元に剣を突きつけた。そして、なぜお前もその剣を持っているのかと問い詰めた。そこで優夜は、青年の手にしている武器が自分の持つ全剣とまったく同じものであることに気づき、愕然とした。全剣が同時に二本存在するはずはなく、もし両者が正面からぶつかれば世界の矛盾が生じるため、それを防ぐ力が働いたのではないかと優夜は推測した。
世界の廃棄場とゼノヴィスの正体が明かされたこと
青年はしばらく優夜を見つめた後、確証はないが優夜は自分の敵ではないようだと判断し、静かに手を離した。優夜はようやく命の危機から解放され、そこで初めて、自分が先ほどまでいた大魔境とはまったく異なる場所にいることをはっきり認識した。そこに広がっていたのは、生命の息吹が一切感じられない荒涼とした大地だけであった。青年は、ここは世界の廃棄場であり、世界中の負の感情が集まる場所だと説明した。
その言葉に対し、久しく沈黙していたクロが、そこは自分たちの故郷だと語ったため、優夜はここが邪の本拠地なのだと理解した。さらにクロは、目の前の青年には絶対に手を出すなと、アヴィスの時以上に怯えた様子で忠告した。青年はクロの声さえ聞き取っており、自分にはどうこうするつもりはないと静かに告げた。その異常さに優夜が呆然とする中、青年は自らの名をゼノヴィスだと名乗った。優夜の前に現れたこの圧倒的な青年こそ、伝説として語られてきた賢者その人であった。
第四章 賢者ゼノヴィス
邪教団の儀式によって歴代最強の邪が復活したこと
邪教団の魔法によって優夜が消えた直後、ユティが急いでその場へ駆け寄ろうとしたが、優夜のいた場所にはすでに別の存在が現れていた。それは以前ナイトたちが倒した邪の王アヴィスを思わせる禍々しい気配を纏いながらも、その威圧感はアヴィスを遥かに超えていた。その場に立つだけでユティ、ナイト、さらにはアヴィスを倒したシエルでさえまともに動けなくなるほどであった。
邪教団の教祖は、その存在こそ自分たちが呼び寄せた歴代最強の邪であると語った。未来の時代に存在していた邪がある男によって滅ぼされたため、賢者が発明した究極の魔法を使い、その男と過去の最強の邪を入れ替えたのだと説明したのである。その邪は、自分を滅ぼそうとした賢者の魔法が、結果として未来世界の首を絞めることになったと高笑いし、自らを邪の王イヴィルと名乗った。
オーマがイヴィルに対峙したこと
圧倒的な気配を放つイヴィルを前に、ユティたちは身動きが取れずにいたが、オーマだけは冷静であった。友である賢者の魔法を悪用され、優夜を奪われたことで、オーマは静かに怒りを燃やしていた。イヴィルはオーマを、かつて賢者に情けなく敗れた創世竜と嘲ったが、オーマは動じなかった。
さらにオーマは、優夜たちが倒したこの時代の邪は遥かに弱く、目の前のイヴィルは別格の存在であるとユティたちに説明した。敗れたとはいえ賢者と戦った相手である以上、その格は明らかに違うと認めたのである。イヴィルもまたその言葉を受けて愉快そうに笑い、自らの放つ邪のオーラをさらに強めた。
優夜が賢者ゼノヴィスの正体に衝撃を受けたこと
一方その頃、世界の廃棄場で謎の青年と対峙していた優夜は、その青年がゼノヴィスであると名乗ったことで強い衝撃を受けていた。ゼノヴィスは本来、遥か昔に死んでいるはずの伝説の賢者であり、しかもその手には優夜の持つ全剣と同じ武器が握られていたからである。さらに先ほどまでの剣技は、優夜が見てきたあらゆる達人たちの技を遥かに上回る至高の領域に達していた。
ゼノヴィスは、自分がちょうど邪の王に止めを刺そうとしていたところへ優夜が現れたため困っているのだと説明した。そこで優夜は、自分が邪教団による賢者の魔法でこの時代に飛ばされ、しかもこの時代の邪と入れ替えられたのだろうと推測した。つまり、優夜は過去へタイムスリップし、邪教団の思惑によって未来の邪の代わりにこの時代へ送られたことになる。
ゼノヴィスが優夜の状況を見抜いたこと
ゼノヴィスは優夜に状況の説明を求め、優夜は推測を交えながら自分の置かれた状況を語った。するとゼノヴィスは、自分もほぼ同じ推測に辿り着いていたと述べた。その理由は、全剣が二つ存在している時点で優夜がこの時代の人間ではないことが分かり、さらに自分が戦っていた邪が消えて優夜が現れた以上、二つの対象を入れ替える魔法が使われたと考えれば筋が通るからであった。
ただし、なぜ未来の人間がわざわざ優夜と邪を入れ替えたのかは分からなかったため、優夜は未来にも邪が現れ、それを自分や家族、聖たちと協力して倒したこと、そのため自分を消せば邪魔者が減ると考えられたのではないかと説明した。するとゼノヴィスは、未来では邪の一人も簡単に倒せないのかと驚き、優夜は申し訳なさそうにするしかなかった。
ゼノヴィスでも元の時代へ返せなかったこと
優夜にとって唯一の希望は、魔法の発明者であるゼノヴィスなら元の時代へ戻す方法を知っているのではないかという点であった。しかしゼノヴィスは、優夜の身体に残っていた魔法の残滓を簡単に解析した結果、これはあまりにも完成度の高い魔法理論で構築されており、今の自分では理解できない要素が含まれていると断言した。いずれ自分が完成させる魔法なのだろうが、今この時点の自分には解析も再現も不可能であり、優夜を送り返すことはできないというのである。
その言葉に、優夜は完全に手詰まりであることを悟り、途方に暮れた。だがその直後、ゼノヴィスは空を見上げてまたかと面倒そうに呟いた。優夜もつられて空を見ると、そこには一人の少女が凄まじい速度で落下してきていた。
天使ラナエルが現れたこと
空から落ちてきたのは、天使の輪と純白の羽を持つ、神々しさを備えた金髪の少女であった。少女はゼノヴィスに向かって一直線に突っ込んできたが、ゼノヴィスは顔色一つ変えず、その顔を片手で掴んで受け止めた。少女は暴れたもののゼノヴィスにはまったく通じず、最終的には大人しくなった。ゼノヴィスが普通に来いと呆れて告げると、少女は普通に来ても相手をしてくれないから直接攻撃したのだと悪びれずに返した。
やがて少女は優夜の存在に気づき、彼がこの時代の人間ではなく、しかも別世界の人間であることまで一目で見抜いた。驚く優夜に対し、少女は自らを観測者の使いである天使ラナエルだと名乗った。ゼノヴィスは、観測者とはこの世界より一つ上の次元にいる存在であり、優夜にとって馴染み深い言葉で言えば神にあたると説明した。さらにラナエルは、ゼノヴィスがその神となることを何度も勧められているにもかかわらず、本人が神になることにまったく興味を示していないことも明らかにした。
虚神の力が創世竜に流れたことが明かされたこと
ラナエルが今回ここへ来た理由を問われると、その口から出たのは虚神の力がこの世界へ流れてしまったという重大な報告であった。ゼノヴィスはその言葉で初めて明確に表情を変え、観測者たちは何をしているのかと厳しく問い詰めた。ラナエルによれば、観測者たちは今、虚神本体との戦いで手一杯であり、この世界へ漏れ出た虚神の力にまで手が回らないのだという。
ゼノヴィスは優夜に対し、観測者たちが戦っている相手こそ虚神であり、その力がこの世界へ流れることがあると説明した。その力には意思があり、力を求める者へ流れ込むことで、その者は虚神の尖兵へと変貌するのである。そして今回、その虚神の力を受けたのが創世竜であることがラナエルの口から明らかにされた。優夜は最初、谷で眠っているオーマのことかと思ったが、ゼノヴィスはそれを即座に否定した。ゼノヴィスによれば、その創世竜は自分の力に強い誇りを持っており、誰かから力を借りて強くなろうとするような存在ではないからである。
創世竜が二体いることとゼノヴィスの条件が示されたこと
優夜が驚きながら創世竜は何体いるのかと尋ねると、ゼノヴィスは二体いると平然と答えた。優夜は今までオーマしか知らなかったため唖然としたが、どうやら彼らの知らないもう一体の創世竜がこの時代にも存在しているらしかった。その創世竜が虚神の力を受けてしまった以上、本来なら観測者側が処理すべき事態であるが、ラナエルの力では到底対抗できず、ゼノヴィスの助けが必要なのであった。
最初は乗り気ではなかったゼノヴィスだったが、やがてその件を手伝ってもよいと口にした。ただし条件があると告げ、その条件とは、この件を手伝う報酬として優夜を元の時代へ返すことであった。優夜は、自分の帰還を条件にしてくれることに驚いたが、ゼノヴィスはその報酬を受け取るのは自分ではなく、虚神の尖兵と戦う優夜自身だと当然のように告げた。優夜が到底無理だと拒絶すると、ゼノヴィスは安心しろ、自分も手伝うと笑みを浮かべたうえで、早速修行をつけてやると宣言した。こうして優夜は、自分の帰還を懸けて、ゼノヴィスによる過酷な修行へと巻き込まれていくことになった。
第五章 賢者式修行
ゼノヴィスが修行の前に優夜を休ませたこと
虚神の尖兵との戦いに向けた修行が決まったものの、ゼノヴィスはすぐには修行を始めなかった。先ほどまでの攻防で優夜が体力を消耗していると見抜き、まずは休憩を取るよう命じたのである。優夜は平気だと言いかけたが、緊張が解けた途端に疲労が一気に押し寄せ、自分の消耗を実感することになった。ゼノヴィスは、これから嫌でも修行を続けることになるのだから今は大人しく休めと静かに告げた。
その後、ゼノヴィスが魔法を発動すると、二人は一瞬で別の場所へ転移した。そこは大魔境にある賢者の家であり、優夜が未来で使っている家とほとんど変わらない造りであった。庭には完治草のような希少な植物が育っており、家の中にも見覚えのある景色が広がっていた。しかし一方で、未来の家にはなかった武器や防具が無造作に転がっており、優夜がそれについて尋ねると、ゼノヴィスはそれらを失敗作だと説明した。装着すると外せない籠手や、使うたびに生命力を消費する剣など、危険な品ばかりであり、ゼノヴィス自身には効かないため問題ないと平然と答える姿に、優夜は改めてその規格外ぶりを思い知った。
創世竜と聖邪の仕組みが語られたこと
休憩を終えると、優夜は再び世界の廃棄場へ連れて行かれ、本格的な修行の前に虚神の尖兵となった創世竜について説明を受けた。ラナエルは、優夜を元の時代へ戻すために観測者へ許可を求めに上の次元へ戻っており、その場にはゼノヴィスと優夜だけが残っていた。ゼノヴィスはまず、この世界アルジェーナには聖と邪という二つの概念があり、二体の創世竜がそれぞれを司っているのだと語った。
優夜は、谷で眠っているオーマが聖を司るのだろうと考えたが、ゼノヴィスはそれを否定し、オーマが司っているのは邪であると明言した。ただし、世界の廃棄場に集まる負の結晶としての邪と、創世竜が司る世界運営に必要な根源的な邪とは意味合いが異なると説明した。世界は聖だけでは成立せず、邪の側面も併せ持つことで初めて成り立つため、二体の創世竜は属性こそ異なれど、実際にはどちらも聖と邪の両方を内包しているのだという。さらにゼノヴィスは、行きすぎた聖もまた世界にとって毒であり、正義を極限まで推し進めた果てには無の世界しか残らないと述べ、今回聖を司る創世竜が虚神の力に取り込まれた理由もそこにあると示した。
観測者と虚神の関係が説明されたこと
優夜が、観測者が神のような存在でありながら虚神への対処に苦戦していることに疑問を抱くと、ゼノヴィスは観測者の立場をさらに詳しく説明した。観測者は上位次元の存在であり、下位の世界を生み出したり滅ぼしたりできる力を持つものの、このアルジェーナは彼らの手によって作られた世界ではなく、無から自然に生まれ、生命と共に発展してきた世界であるという。そのため、観測者であっても自分たちの手が及ばない存在を一方的に消すことはできないのだと語った。
そのうえでゼノヴィスは、観測者と敵対する存在こそ虚神であり、虚神は観測者と同格であるため簡単には対処できない相手だと説明した。優夜は、宇宙へ出てドラゴニア星人と戦った経験すら小さく思えるほどに、さらに巨大な規模の争いが存在することを知り、話の大きさにただ圧倒されるしかなかった。
ゼノヴィスが賢者式修行を始めたこと
説明を終えたゼノヴィスは、いよいよ修行に移るとして優夜へ一本の木剣を渡した。そして今回の修行では、それ以外の武器の使用を禁じると告げた。ウサギ師匠やイリスとの修行では、常に全剣など実戦用の武器を使っていたため、優夜は最初こそ拍子抜けしたが、その考えはすぐに覆されることになった。ゼノヴィスが示した目標は、その木剣で全剣と同じことをする、すなわち木剣一本で何でも斬れるようになることであった。
優夜が呆然とする中、ゼノヴィスは、技というものが存在する以上、普段の斬り合いでもその技と同等の威力を自然に出せなければ意味がないと説いた。そして、自ら木剣を持って何気なく剣を振り下ろしてみせた。優夜はその動作に何の異常も感じ取れなかったが、ゼノヴィスに、なぜ武器を向けられても避けなかったのかと問われて初めて、その一連の動作があまりにも自然で、当たり前のこととして自分に受け入れられてしまっていたのだと気づかされた。もし本気で斬られていれば、優夜はそのまま死を受け入れていたはずであり、ゼノヴィスが求める剣の境地とは、まさにそのような極致であった。
さらにゼノヴィスは、無造作に振るった一撃から優夜の天聖斬を遥かに超える斬撃を放ち、まずは考え方を変え、その何気ない一振り一振りを今まで身につけた技と同じものにしなさいと指導した。優夜はその圧倒的な実演を前に、頷くことしかできなかった。
メルルが父との通信で葛藤を深めたこと
その頃、地球ではメルルがエイメル星の父マルルと通信していた。マルルは改めて、メルルの行動次第でエイメル星の未来が決まると告げ、優夜と交わって子をなすことの重要性を強調した。大いなる巨人をはじめとする賢者の遺産は優夜本人にしか扱えず、その力を自国に取り込むには、優夜との間に生まれた子へ遺産を継承させるしかないと考えていたのである。
さらにマルルは、もしメルルが優夜と番になれば、優夜自身もエイメル星へ移住する可能性があると期待していた。かつてドラゴニア星人に虐げられてきた反動から、エイメル星は今やさらなる武力を求めるようになっており、その姿勢がかつての支配者と同じ道を辿っていることに、多くのエイメル星人は気づいていなかった。通信を終えた後、メルルはこれで本当にいいのかと小さく呟いたが、その迷いに答える者はいなかった。
虚神の尖兵となった創世竜が力を蓄えていたこと
過去の時代では、竜谷にてもう一体の創世竜が身を潜めていた。そこはオーマとは別の創世竜が眠る場所であり、その周囲には強大な魔力の影響で凶暴な魔物が溢れていた。この創世竜は、己の魔力に加え、虚神から借り受けた力をその身に宿しており、あと少しで人類を完全に滅ぼせるだけの力を安定させられると考えていた。
賢者が何やら動き始めていることにも気づいていたが、今の自分には関係ないと切り捨て、賢者ごとすべてを滅ぼすだけだと静かに呟いた。そして再び目を閉じ、決戦の時に向けて力を蓄え続けるのだった。
優夜が極限の修行で木剣の境地に触れたこと
こうして始まったゼノヴィス式修行は、優夜にとって過去最大級に苛烈なものとなった。聖や邪の力、魔力の使用を一切禁じられた状態で、ただひたすら木剣を振るい続ける日々が続いた。ラナエルの協力により、観測者の力で優夜個人に対してのみ時間操作が施されていたため、本来ならあり得ない長さの修行時間が確保されていたが、それも世界への干渉としてぎりぎりの線で成り立っていた。
ゼノヴィスは、何の強化もしていない優夜に対し、容赦なくSS級の魔物タイラント・ウルフをぶつけた。しかもその魔物は特殊な魔力を纏っており、物理攻撃が一切通じないという無茶な相手であった。優夜がどう倒せばいいのかと悲鳴を上げると、ゼノヴィスは魔法だって斬れる、物理が効かないならその原因となる魔力を斬ればいいのだと教えた。そして、魔法は斬れないと思っているから斬れないのだ、強く思い込むことが大切だと告げたうえで、君は自分が思っている以上に強いと静かに言い聞かせた。
その言葉を受けた優夜は、ひたすら自分に斬れると念じ続け、目の前の敵だけを認識し、思考も景色も色を失っていくような極限状態へ入っていった。やがて意識を取り戻した時、目の前には首を斬られて倒れたタイラント・ウルフが転がっており、自分が何をしたのか分からないまま呆然とすることになった。だがゼノヴィスは、それを倒したのは優夜自身だと断言し、ひとまず手は届いたと評価した。
修行の終わりと世界の限界が明かされたこと
優夜が状況を理解できずにいるところへ、ラナエルが申し訳なさそうに現れた。彼女によれば、これ以上の時間操作はさすがに限界であり、過剰な干渉を続ければアルジェーナそのものが抵抗を始め、最悪の場合、異物である優夜を世界から排除してしまうというのである。ラナエル自身は観測者の使者であり、ゼノヴィスもこの時代の住人であるため、世界にとって最も排除しやすい対象は未来から来た優夜となるのだと説明された。
ゼノヴィスは、もっと時間があれば丁寧に教えられたが、それができなかったからこそ厳しい修行になったのだと謝罪した。優夜は、結局最後までゼノヴィスの求める剣の極致には至れなかったのではないか、自分の今の実力で虚神の尖兵となった創世竜に対抗できるのかと不安を漏らした。するとゼノヴィスは、確かに極致には到達していないが、優夜は確実にその境地へ足を踏み入れたのだと優しく微笑み、大丈夫だと断言した。優夜は実感こそ持てなかったものの、信じることの大切さを思い出し、ひとまず自分の力を信じることにした。
ゼノヴィスが竜谷の創世竜を引きずり出したこと
ラナエルが、虚神の尖兵となった創世竜は変わらず竜谷で力を蓄えていると報告すると、ゼノヴィスは、あの場所は狭くて戦いにくいから、ここまで引きずり出すと当然のように告げた。何をするつもりか理解できない優夜が慌てる中、ラナエルはその場を離れ、上の次元へ戻っていった。ゼノヴィスはそこで、優夜が自分の魔力回路まで受け継いでいることに気づき、自分は本当にすべてを優夜へ託したのだと納得した様子を見せた。
そして優夜に対し、自分の魔法の力をよく見ておくよう告げると、虚空へ右手を突き出し、とてつもない量の魔力を一気に集め始めた。やがて空間は大きく歪み、漆黒の渦が上空に現れて、世界の廃棄場一帯を覆うほどの規模にまで膨れ上がった。ゼノヴィスは、その渦の中にいる何かに向けて逃げられると思うなと獰猛に笑い、右手を握り込むようにしてその存在を力ずくで引きずり出した。現れたのは、オーマの本来の姿と同じ規模を持つ、夕焼け色の鱗に覆われた巨大な竜であった。
日帝学園が優夜に目をつけたこと
その頃、遠く離れた未来の日本では、日帝学園の生徒会長である神山美麗が、王星学園体育祭の映像を悔しげに見つめていた。日帝学園は王星学園を一方的にライバル視しており、近年は名家の子弟まで王星学園へ流れるようになったことで危機感を深めていた。設備面では最新鋭を誇るものの、体育祭の話題性や視聴率では王星学園に大きく差をつけられていた。
神山は映像の中で圧倒的な活躍を見せる優夜に強い関心を抱き、その過去を記した資料を読み返していた。そこには、優夜が以前の学校や家庭で不当な扱いを受けていたこと、宝城佳織に誘われて王星学園へ転入したことなどが記されていたが、現在テレビで活躍する優夜の姿とはどうしても一致せず、神山はその情報の正確さに疑問を抱いていた。それでも、学園祭でこのまま王星学園に負けるわけにはいかないと考え、何とか現状を打開する策を探り始めていた。
イヴィル復活の気配を聖たちが察知したこと
またその同じ頃、優夜がイヴィルと入れ替わる形で過去へ飛ばされたことを知らないまま、ウサギ、イリス、オーディスの三人は邪が倒されたことを他の聖たちへ伝えるために行動していた。だがその途中で、これまで感じたことのない禍々しい気配が突如として立ち上るのを察知し、三人は一斉にその方向を振り向いた。
オーディスは、邪の王は確かに倒されたはずなのに、なぜ今になってこれほど強大な邪の気配が現れるのかと困惑した。とりわけアヴィスと直接対峙したことのあるイリスとウサギは、その気配がアヴィス以上であることまで感じ取っていた。そしてその方向が優夜の家のある大魔境の方角であると気づいた三人は、事態の異常さを悟り、すぐに進路を変えて優夜の家がある方へ向かって駆け出した。
第六章 虚神の尖兵
ゼノヴィスが虚竜を世界の廃棄場へ引きずり出したこと
ゼノヴィスは、竜谷にいた創世竜を強引に世界の廃棄場へ引きずり出した。現れたのはオーマと同等の巨体を持つ夕焼け色の竜であり、虚神の力を得たことで、もはや創世竜ではなく虚竜と呼ぶべき存在であった。虚竜はゼノヴィスへの強い敵意をむき出しにし、出現直後から巨大なブレスを放って二人を消し飛ばそうとしたが、ゼノヴィスは薄い膜状の防御魔法を展開し、その一撃を難なく防いだ。
そのうえでゼノヴィスは、虚竜を完全に滅ぼすには自分では力が強すぎ、この星ごと壊してしまうため不都合だと説明した。だからこそ、この戦いは優夜が担うべきものであり、自分はあくまで補助に回るのだと告げた。圧倒的な力を見せつけながらも自ら決着をつけない理由を示したことで、優夜は改めて自分がこの戦いの中心に立たされていることを理解した。
虚竜が人類への憎悪を語ったこと
虚竜は、なぜそれほどの力を持ちながら世界の均衡を守るために使わないのかとゼノヴィスを糾弾した。ゼノヴィスは、均衡が一人の存在によって保たれるようではいずれ崩れるため、人間たち自身が力で均衡を保つ必要があるのだと応じた。しかし虚竜は、人間たちがアルジェーナに境界線を引き、星を自らの所有物のように扱ったことこそが害悪であると断じた。
さらに虚竜は、自分が司る聖とは人間のための聖ではなく、あくまで星アルジェーナにとっての聖であると語った。そして、人間を葬り去って星を原初の姿へ戻すために、虚神の尖兵となる道を選んだのだと明かした。ゼノヴィスは、その目的であれば虚神の力など借りずとも可能だったはずだと返したが、虚竜はゼノヴィスを倒すにはその力が必要だったのだと認め、ついに本格的な殺意をもって戦闘に移った。
優夜が修行の成果を試されることになったこと
ゼノヴィスは、ここからが本番だとして優夜に戦うよう促した。修行では特殊な力の使用を禁じていたが、この戦いでは聖王威、聖邪開闢、魔装といった力も存分に使ってよいと認めた。ただし、武器はあくまで木剣のままであることが条件であった。優夜は戸惑いながらも全力で自らを強化したが、その瞬間、いつもとは異なる感覚を覚えた。これまでは力を解放すると体が強化された実感が強くあったのに、今はその力が自然に馴染み、まるで強化された状態こそが本来の姿であるかのように感じられたのである。
ゼノヴィスは、それこそが正しい状態だと説明した。強化された感覚が強いということは、それだけ本来の自分と乖離しており、力に振り回されているということである。今の優夜は、強化された状態がすでに自然体になっているからこそ、思い描いた通りに動けるのだと告げた。その言葉を受けた優夜は、修行の成果が確かに自分の内側へ根づいていることを知った。
優夜が虚竜のブレスを斬り裂いたこと
虚竜は、虚神の力を融合させた滅びのブレスを放ち、それは先ほどの攻撃とは比較にならないほど危険な一撃となっていた。ゼノヴィスは、その一撃を斬ってみせろと優夜に命じた。優夜は、今の自分なら斬れると強く信じ、木剣を構えた。そして目の前に迫るブレスを見据え、ただまっすぐに剣を振り下ろした。
すると、ブレスには一本の線が走り、そのまま縦に裂けて消滅した。虚竜は、ゼノヴィスでもないただの人間が自分の攻撃を斬ったことに激しく動揺した。だが優夜はすでに次の一歩を踏み出しており、ゼノヴィスの作った足場となる魔法陣を使って虚竜へ迫っていった。
優夜が虚竜に接近し、木剣で傷を負わせたこと
虚竜は優夜を近づけまいと、巨体からは想像もできない速度で飛び回りながら無数の魔法を放った。ゼノヴィスはその一部を払って援護したが、残りは優夜自身が対処するよう求めた。優夜は飛来する魔法を避け、あるいは木剣で斬り裂きながら着実に距離を詰めていった。そしてついに虚竜の懐へ飛び込み、ためらいなく木剣を振るった。
その一撃は、硬い鱗に覆われた虚竜の肉体を確かに斬り裂き、血を噴き出させた。虚竜は、何の変哲もない木剣で自分の体が傷つけられたことを信じられずにいた。ゼノヴィスは、全剣がすべてを斬れるのは特別な武器だからではなく、極めた技術があれば本来それは可能なことなのだと静かに語った。優夜はその言葉どおり、木剣一本で虚竜と渡り合える段階に達していたのである。
優夜が無為の一撃に至ったこと
虚竜は一度接近を許したことで苛烈さを増し、魔法やブレスをさらに激しく放ってきた。優夜はそれらを一つずつ確実に斬り裂きながら応戦していたが、戦いの最中、タイラント・ウルフとの戦いで経験したのと同じ感覚に再び包まれた。周囲の景色や音が薄れ、意識が研ぎ澄まされ、ただ目の前の敵だけを認識する状態に入っていったのである。
その中で虚竜は、ゼノヴィスを確実に葬るため温存していた最強の一撃を解放した。それは聖と邪、さらに虚神の力まで融合した、星そのものを破壊しかねない力の塊であった。しかし、ほとんど感情を失っていた優夜は、それを前にしても絶望せず、ただ斬るという一点だけに意識を集中させた。そして極めて自然に放った一閃が、その巨大な力の塊を一刀両断した。さらに返す一閃で虚竜の首を薙ぎ、虚竜は何が起きたのかも理解できないまま絶命し、光となって消えていった。
ゼノヴィスが優夜の到達した境地を示したこと
虚竜を斬り伏せた直後、優夜の意識は現実へ引き戻され、前回と同じように溺れたように激しく息を求めた。だが今回は、何が起きたのかをはっきり覚えていた。ゼノヴィスは、今の一撃こそが優夜の目指すべき境地の一つであると告げ、それを無為の一撃と呼んだ。
ただし、今の優夜は一瞬でその境地へ入れるわけではなく、時間をかけてようやく至れる段階にすぎなかった。今後の課題は、その感覚を長く維持し、今回のように戦闘後に疲労困憊しないようにすることだとゼノヴィスは説明した。それでも、よくやったと優しく微笑みかけられたことで、優夜はようやくすべての緊張から解放され、修行と戦いの成果を実感するのだった。
エピローグ
ラナエルが戻り、優夜の帰還が決まったこと
虚竜を倒してしばらくすると、ラナエルが世界の廃棄場へ戻ってきた。上の次元ではちょうど虚神本体にも動きがあり、呼び戻されていたため手伝えなかったのだと謝罪したが、ゼノヴィスは観測者たちがしっかりしていれば今回のような事態にはならなかったと淡々と指摘した。そのうえで、虚竜も倒した以上、自分にもう用はないだろうから、約束通り優夜を元の時代へ返すよう求めた。
しかしラナエルは、観測者たちが依然としてゼノヴィスの協力を望んでいることを告げた。虚神との戦いは観測者側が不利になっており、虚神は多くの尖兵を使って上の次元へ侵攻しているため、観測者と同等の力を持つ存在の助力が必要だというのである。ゼノヴィスは事情を理解したうえで、それでもなお上の次元の問題は上の次元で解決すべきだとして、協力を断った。
ゼノヴィスが優夜を推薦したこと
協力を拒否したゼノヴィスだったが、その代わりに優夜を推薦すると口にした。あまりにも予想外の提案に優夜は強く動揺し、自分では到底務まらないと訴えた。だがゼノヴィスは、今はまだ無理でも、優夜には自分を超える可能性が十分にあると断言し、だからこそ推薦するのだと語った。
優夜がなおも、自分は元の時代へ戻るのだから虚神との戦いには参加できないはずだと反論すると、ゼノヴィスは上の次元と下の世界では時間の流れが異なるため、優夜が元の時代へ帰っても、上の次元では数日程度しか経過しないと説明した。そしてそこで何かを悟ったように、優夜へ自らのすべての財産を譲る代わりに、虚神との戦いへ行くよう求めた。優夜がこれまで受け継いできた魔力回路や武具のすべては、まさにこの瞬間に結ばれる契約へ繋がっていたのだとゼノヴィスは見抜いたのである。
虚神に関する歴史が消されることが明かされたこと
優夜は、未来のアルジェーナが自分のことを知らなかった理由について疑問を口にした。するとラナエルは、今回の虚神に関する情報はすべてこの星から消去されるのだと明かした。観測者にとって、虚神の尖兵を下の次元に生み出してしまった事実は隠蔽したいものであり、そのため優夜がこの時代に来たことも、虚神の尖兵となった創世竜の存在も、すべて歴史から抹消されるというのである。
ただし、情報が消されるのはあくまで世界の記録の上であり、優夜自身の記憶は残るとされた。また、ゼノヴィスと優夜が交わす契約は魂に刻まれるため、たとえゼノヴィスが未来で優夜の存在を覚えていなくても、その契約に従って後継者のための遺産を残すよう動くはずだと説明された。優夜はその理屈に納得しきれない部分も抱えつつも、自分が初めて異世界を訪れたときに賢者の遺産を問題なく受け継げた理由が、ここでの契約によってすべて繋がるのだと理解した。
優夜がゼノヴィスの後継者となったこと
ゼノヴィスは、改めて優夜へ手を差し出し、自分の願いを引き受けてくれるかと問いかけた。優夜は、自分がこれまで賢者の遺産によって多くの大切な出会いや居場所を得てきたことを思い返した。レクシアやルナ、ユティ、クロ、ウサギ師匠、イリス、オーディス、そしてナイトやアカツキ、オーマ、シエルとの絆は、ゼノヴィスの遺したものがなければ得られなかったはずである。その恩義に報いるためにも、自分にできる範囲で力になりたいと決意し、優夜はゼノヴィスの手を握った。
すると二人の間に温かな力が流れ込み、それは優夜の胸の奥に留まったのち、体へと染み込んでいった。こうして魂の契約は無事に成立し、優夜は正式にゼノヴィスの後継者となった。ラナエルは、その契約は本来成功率が極めて低く、失敗すれば双方の精神が崩壊しかねない危険なものだったと明かし、優夜は最後の最後でその事実に驚愕したが、ゼノヴィスは珍しく大声で笑って受け流した。
優夜が元の時代へ送り返されたこと
契約が終わると、優夜の体は徐々に光に包まれ始めた。ラナエルによれば、それは観測者たちが元の時代へ送り返す準備を整えたためであり、危険はないという。体が光の粒子へ変わっていく感覚は、魔物を倒したときに似ていたが、不思議と恐怖はなかった。目の前にゼノヴィスがいるという安心感があったからである。
別れ際、ゼノヴィスは、自分は優夜のことを忘れてしまうだろうが、魂はきちんと覚えていると告げ、優夜の未来に幸多からんことを願った。優夜も、自分も同じ気持ちだと返した。だがその直後、ラナエルは、優夜を送り返す先はちょうどイヴィルの目の前であり、抵抗されても面倒だから深く考えずに剣で斬ってほしいと軽く言い放った。優夜は慌てて詳細を聞こうとしたが、その前に光に包まれたまま元の時代へ飛ばされてしまった。
優夜が帰還直後にイヴィルを斬り裂いたこと
元の時代では、優夜と入れ替わったイヴィルが殺戮を始めようとしていた。オーマは本来の巨大な姿へ戻り、全力の魔力を収束させて対抗しようとしたが、ユティやナイト、シエルが先に飛びかかっても、イヴィルは軽く腕を振るうだけで彼らを吹き飛ばした。シエルに対しては、その純粋な邪の力によって再生すら封じて見せ、自らが究極の邪であることを誇示した。
そこへ、空間が歪み、光の渦から優夜が帰還した。ラナエルの言葉通り、優夜は転移が完了した瞬間に全剣を振り下ろし、イヴィルの体を大きく斬り裂いた。突然現れた優夜にイヴィルは激昂し、どこから現れたのかと叫んだが、優夜はユティやナイトたちの無事を確認しつつ、この世を滅ぼすという言葉を聞き流すことはできないと判断した。
優夜がイヴィルの攻撃を斬り返し、イヴィルが過去へ戻されたこと
イヴィルは怒りのまま右腕に邪の力と魔力を集中させ、大魔境そのものを吹き飛ばしかねない光線を優夜へ放った。かつての優夜なら、オーマの攻撃すら受け止めた相手を前に恐れを抱いたはずである。だが今の優夜は、ゼノヴィスとの修行と虚竜との戦いを経て、その段階を越えていた。冷静にその光線を見据えた優夜は、ただ斬るという意志のもとに全剣を振り下ろした。
その一撃はイヴィルの光線を斬り裂き、そのままイヴィル本体の残った半身にも深い傷を負わせた。イヴィルは膝をつきながら、自分が元の時代へ引き戻されることに気づき、こんな重傷のままではゼノヴィスに勝てないと取り乱した。邪教団もすでにその場から消えており、誰にも助けられないまま、イヴィルはそのまま過去の時代へ戻されていった。優夜はようやくすべてが終わったと実感し、再会した仲間たちに抱きつかれながら、ただいまと穏やかに告げた。
ラナエルが再び現れ、新たな動きが始まったこと
優夜が戻ってきた直後、事情を尋ねようとしたユティたちの前へ、今度はラナエル自身がすさまじい勢いで空から降ってきた。迎えに来たと叫ぶその姿に、一同は再び驚かされることになった。
その一方、地球では日帝学園の神山美麗が、優夜に関する資料を読み返していた。王星学園の体育祭での活躍を見た神山は、このままでは学園祭でも王星学園に後れを取ると危機感を強めていた。そして、優夜を日帝学園へ転入させられれば、王星学園を恐れる必要はなくなると判断し、側近の白井に命じて優夜をスカウトしに行くことを決めた。こうして地球でもまた、優夜を巡る新たな動きが始まった。
過去でゼノヴィスがイヴィルに止めを刺したこと
一方、重傷を負ったまま過去へ戻されたイヴィルは、その傷が大きく開き、吐血しながらも何とかその場を離れて治療しようとしていた。だがその前に立ちはだかったのは、まさに最も会いたくなかった相手、ゼノヴィス本人であった。ゼノヴィスは、なぜか死にかけているイヴィルの傷口を見て、そこに自分へ届きうる剣の使い手の存在を感じ取った。
イヴィルは残る体力のすべてを振り絞ってゼノヴィスへ最後の一撃を放ったが、ゼノヴィスはそれをただの一閃で容易く斬り裂いた。イヴィルは何が起きたのか理解する間もなく首に線が走り、頭は胴体から転がり落ち、そのまま光の粒子となって消滅した。ゼノヴィスは、ただ邪を倒しただけなのに妙な満足感があることに首を傾げつつ、それを面白い体験の余韻のように感じ取っていた。そしてその感覚のまま、また新たな魔法、たとえば異なる世界へ渡る魔法を研究してみるのもいいかもしれないと呟き、静かにその場を後にした。
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