物語の概要
本作は和風ファンタジー×恋愛少女漫画である。妖怪に傷を刻まれたことで「傷モノ」として差別されてきた少女・白蓮寺菜々緒と、吸血体質を持つ陰陽宗家・紅椿夜行の結婚を軸に、帝都を舞台に綴られる葛藤と愛情の物語である。第6巻では、かつて菜々緒に傷を刻んだあやかし「猩猩」が再び現れ、陰陽寮関係者や黒幕・武井の動向を巡る陰謀が浮かび上がる。最後に「隊長会議」が開かれ、新たな局面へと突入する展開。
主要キャラクター
- 白蓮寺 菜々緒:幼少期に猩猩によって呪詛の傷を刻まれ、それ以後「猿臭い」と差別されてきたヒロイン。自身の過去と向き合いながら、夜行への信頼を深めていく。
- 紅椿 夜行:陰陽寮の紅椿家当主であり吸血体質の青年。百鬼を駆使して菜々緒を守り、その義を貫く強さと優しさを持つ。
- 斎園寺 しのぶ:民衆の前で笛を吹き妖怪を呼び寄せたとされ、陰陽寮からの調査を受ける人物。菜々緒と夜行の軋轢の引き金となる存在。
物語の特徴
本巻の魅力は、和風幻想的な設定と重厚な恋愛ドラマが融合している点である。呪われた過去を持つ菜々緒と、彼女を守り抜く夜行の関係性は深い共感と緊張感を伴う。また、「猩猩」という妖怪の再登場、陰陽寮や隊長会議の描写、陰謀の核心に迫る展開は、単なるラブストーリーを超えた社会的・政治的スリルを読者に提供する。登場人物の心理や和風世界観の精緻な描写も他作品とは一線を画す特色である。
書籍情報
傷モノの花嫁(6)
原作: 友麻 碧 氏
著: 藤丸 豆ノ介 氏
発売日:2025年01月30日
ISBN:9784065381144
出版社:講談社
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あらすじ・内容
籠目玉から押し出された菜々緒の前に現れたのは、かつて彼女に「傷」を刻んだあやかし――猩猩だった。現場に駆け付けた夜行は、紅椿家の百鬼をもって応戦する。一方、笛を吹き、あやかしを呼び寄せる姿を多くの民衆から目撃された斎園寺しのぶは、陰陽寮の調査を受けることに。
猩猩に妖印を刻まれたことで傷モノとなり、「猿臭い」と虐げられ続けた菜々緒。あの日、彼女の身に何があったのか。黒幕・武井の目的はいったいなんなのか。一連の謎を残したまま、年に一度の陰陽寮退魔部隊「隊長会議」が開かれる―――。
完全描き下ろし「菜々緒、夜行の愛情深いところについて。」を収録した小冊子付き特装版!
感想
読み終えて、まず感じたのは、物語が大きく動き出したという高揚感である。籠目玉の結界を破り、菜々緒を突き飛ばしたしのぶの行動には、正直、呆れてしまった。自己中心的な行動が、物語を大きく動かすきっかけになるとは。しかし、夜行が間一髪で菜々緒を助け出す場面は、胸が熱くなる展開だった。
しのぶの実家である斎園寺家のお取り潰しは、溜飲が下がる思いだった。殺し屋の武井が集めた悪事の証拠が明るみに出たことで、当然の報いを受けたと言えるだろう。これまで積み重ねられてきた因果が、ここで一つの区切りを迎えたのだと感じた。
そして、新章の始まり。一成という友人キャラの登場は、今後の展開に新たな風を吹き込んでくれそうで楽しみだ。菜々緒を取り巻く人間関係が、どのように変化していくのか、目が離せない。
特に印象的だったのは、しのぶの母親の存在である。既に四人の子供がいるにも関わらず、しのぶと瓜二つという設定には驚愕した。鷹夜さんが結婚していたら、まさに地獄だっただろう。同情してはいけないタイプの人間だと、強く感じた。
武井と母親の取引は、お互いに目的があってのことだったようだ。自分で原因を作りながら守られたがる姿と、やるべきことをやった上で助けを求める姿の違いは大きい。菜々緒には、護身術を覚えて、自分の身を守ってほしいと強く願う。
鷹夜の寝ぼけた姿は、思わず笑ってしまった。しかし、その後の母親との出来事を考えると、笑っている場合ではない。鷹夜が誰かに助けを求められるのか、今後の展開が非常に気になるところだ。
全体を通して、『傷モノの花嫁(6)』は、戦い、日常、人間関係、様々な要素が絡み合い、物語を深くしていると感じた。菜々緒が過去の傷を乗り越え、幸せを掴むことができるのか。今後の展開に期待したい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
【第21話】欲しいものがある
菜々緒は、しのぶに突き飛ばされて籠目玉の結界から追い出され、猩猩という巨大な猿の姿をしたあやかしに襲われた。恐怖で体が動かず、絶望的な状況に陥ったが、そこへ夜行が現れ、猩猩を一瞬で倒した。夜行の指揮の下、紅椿家の式神たちは悪妖たちと戦い、陰陽寮の隊員たちも加勢した。
夜行と菜々緒の再会と謝罪
夜行は菜々緒に深く謝罪し、彼女が何度も危険に晒されていることに責任を感じていた。菜々緒はそれに対して夜行を責めることなく、冷静に否定しようとしたが、精神的ショックにより体調を崩した。
戦闘の終息と被害状況の確認
戦闘は鎮圧され、菜々緒は無事に保護された。夜行たちは彼女の状態を確認し、震える彼女に安心を与えようとした。
現場の収拾としのぶへの追及
夜行は菜々緒を担いで移動しようとするが、しのぶが彼に取りすがり、自分も被害者であると主張した。夜行は冷静に彼女の行動を問いただし、彼女の手にある笛に注目した。
笛の正体と証言の矛盾
しのぶが持っていた笛は「あやかしを呼び寄せる霊具」と判明した。しのぶはそれが「武井」に渡されたものであり、指示された通り吹いただけだと弁明したが、その動機に関しては動揺を見せた。
新たな証言としのぶの嘘の発覚
隊員が駆け込んできて、複数の証言により、しのぶが「菜々緒を囮にして妖を呼んだ」と語ったことが報告された。しのぶはその場でさらに嘘を重ねて弁解しようとしたが、状況は不利となっていた。
しのぶへのさらなる糾弾と証言の集中
しのぶは泣きながら「庶民の妬みで証言が捏造された」と主張したが、複数の目撃者が彼女が笛を吹く姿を見たと証言した。「橋の上であやかしを喰わせていた女」がしのぶだったことも明らかになり、状況はさらに不利となった。
夜行による決定的な否定
夜行はしのぶに対し、「誓った相手は菜々緒であり、お前ではない」と断言し、彼女が自分の正妻であるという主張を真っ向から否定した。しのぶが菜々緒の立場を奪おうとしたこと、そしてその傷を負わせたことに対し、「絶対に許さない」と明言した。
しのぶの崩壊と陰陽寮の介入
しのぶは精神的に追い詰められ、「なぜ自分が」と混乱しながら崩れ落ちた。陰陽寮の者が現場を制圧し、しのぶを連行する旨を伝える。彼女は抵抗するが、力は及ばなかった。
菜々緒の異変と蠱毒の影響
菜々緒の体に異常が現れ、倒れ込んで意識を失った。夜行はすぐに駆け寄り、原因が妖気によるものであると察した。菜々緒のそばには「蠱毒」と記された壺が落ちており、直接的な影響が示唆された。
蠱毒の仕組みと禁呪の暴露
場面は変わり、蠱毒を用いた武井がその仕組みを語った。複数の低級あやかしを壺に閉じ込め共食いさせ、生き残った個体が力を増すという術式であることが判明する。これは禁呪であり、強力な力を得る代償として極めて危険な方法であった。
黒幕の目的と結界の外
武井は「紅椿夜行を殺すため」に蠱毒を用いたと語り、その力でも夜行を倒すのは困難だと認識していた。そこで「五行結界の外に存在する大妖怪」と呼ばれる存在に頼る可能性を示唆した。菜々緒は夜行を結界の外に誘い出すための囮だったと明言した。
武井の誤算と「籠目玉」の存在
武井は、自身の計画が「籠目玉」によって狂わされたことを認めた。夜行が予想よりも早く現れたのは、この装置の影響によるものであった。「籠目玉」は紅椿夜行の兄、紅椿鷹夜の発明であると明かされ、武井はその技術力に舌を巻いた。
菜々緒への執着と継続する野望
武井は菜々緒を「逸材」と評し、手に入れたい存在であることを隠さなかった。今回の失敗にもかかわらず、これで終わりではないと語り、次なる手段を匂わせた。
大妖怪と五行結界の外
武井と朱鷺子は、「五行結界の外」に存在する特異なあやかしについて会話を交わす。その地には人の理が通用せず、妖気に満ちた世界が広がっているとされ、そこに住まうのが「大妖怪」と呼ばれる高位種族であると語られた。
紅椿夜行に唯一対抗しうる存在
武井は、蠱毒のような手段では紅椿夜行を倒すことは不可能だと断言した。夜行と互角に渡り合える可能性があるのは、「大妖怪」だけであるとし、その強大さと異質さを強調した。
猩猩の供給元と朱鷺子の役割
武井はあくまで商売として動いている立場であると述べた。武井は、今回使用した猩猩の大半が「ある方たちの飼い」だと明かし、背後にさらなる勢力の存在を仄めかした。
天狗の存在と過去の因縁
話題はさらに「天狗」へと及び、朱鷺子はその存在を確認した。かつて神とあがめられていた天狗は、人との対立と共に五行結界の外へ追いやられた存在であり、今では陰陽寮ですら避けるあやかしとなっていた。
武井と朱鷺子の協力関係の継続
武井は朱鷺子に「まだ捕まるわけにはいかない」と告げ、今後も計画を進める意思を示した。一方の朱鷺子も「私には守りがある」と余裕を見せ、協力関係の継続に応じる構えを見せた。
武井の執念と朱鷺子の正体
武井は「俺にも欲しいものがある」と語り、朱鷺子の力添えを引き続き求めた。最後に、朱鷺子が「自分の息子を殺そうとする母親」と評される中でその素顔が明かされた。
第22話 凜然と咲く野花
異界の記憶と目覚め
菜々緒は闇に沈む冷たい空間の中で、無数の異形に囲まれ、痛みと恐怖に苛まれる夢を見る。その中で、額に何かを刻まれるような強い痛みを感じ、苦しみの中で叫び声とともに目を覚ました。目覚めた場所は病床であり、そばには夜行がいた。
目覚めた菜々緒と夜行の介抱
夜行は安堵しつつも、菜々緒に落ち着いて呼吸を整えるよう諭す。菜々緒は水を受け取り、震える手で必死に口に運ぶ。夜行は彼女が高熱で意識を失っていたと説明し、その間に何があったのかを尋ねた。
断片的な記憶の回復
菜々緒は猩猩に襲われそうになった場面を思い出すが、それが夢だったのか現実だったのか定かでない。夜行は、その猩猩が彼女を直接襲ったわけではないと推測し、猩猩のような低級なあやかしではあり得ないと語る。菜々緒はあの時、何もできずに泣き叫んでいた14歳の自分の姿を思い出していた。
深く残る恐怖と痛みの痕跡
菜々緒は自らの記憶を探りながらも、無数のあやかしの目に見下ろされていた恐怖や痛みが、今も身体に染みついていると訴える。そして、どれほど時間が経ってもその感情が拭えず、記憶は曖昧なままでも、苦しみだけが鮮明であることに涙を流す。
夜行の抱擁と肯定
菜々緒が何をされたのかも思い出せず、自分を責める姿を見て、夜行は彼女を強く抱きしめる。過去に何があったとしても、「お前はお前だ」と語りかけ、記憶を無理に思い出す必要はないと断言する。
自責と揺れる決意
菜々緒は、自分の過去が夜行の花嫁としてふさわしくないのではないかと苦悩する。過去に受けた恐怖と屈辱により、自身の身体を「穢れている」と感じていた。夜行を想いながらも、「自分が彼の隣に立ってよいのか」と疑念にかられ、涙を流しながらそう口にした。
夜行の告白と強い意志
菜々緒の涙を見た夜行は、彼女の全てを受け止める覚悟を語った。自身の心からの想いをぶつけ、「俺はお前に惚れているんだ」と明言する。さらに「勝手に自分を否定して俺から離れようとするな」「お前に惚れ込んだ俺を信じてくれ」と強く訴えた。
寄り添いと安堵
その言葉に菜々緒は涙を流し、夜行の胸に身を預けた。夜行の抱擁の中で、彼女は過去のすべてを忘れて、ただ弱い自分のままで甘えていたいと願うが、「それではいけない」とも理解していた。
決意と心の変化
菜々緒は、自身が夜行の「お務め」を支えられる存在ではないと認識していた。しかしその一方で、守られるばかりの存在でいることを恥じるようになっていた。戦いや困難の中で、確かに自分は少しだけ強くなったと実感していた。
後鬼との対話と成長の自覚
後鬼に対し、菜々緒はあの場で「結界の中に戻ればよかった」と語るも、恐怖で体が動かなかったことを悔いる。そして、自分が心のどこかで夜行に助けてもらえると信じてしまっていたことを告白し、それを恥じる。
後鬼はその言葉に耳を傾けながら、何かを伝えようとする様子を見せた。
後鬼の謝罪と菜々緒の反応
後鬼は菜々緒に対して深々と頭を下げ、今回の事態を招いたことについて謝罪した。菜々緒もまた、自らが無理を言ったことで後鬼を巻き込んでしまったと返し、お互いに責任を感じていた。一方、後鬼は事件で用いられた術が「式縛り」と呼ばれる高位の陰陽術であり、人間による犯行の可能性が高いと指摘した。
陰陽寮の反省と決意
陰陽寮の人間は、敵を「あやかし」と断定していた自身らの固定観念が今回の事態を招いたと反省の言葉を述べた。そして必ずこの失態を挽回すると誓い、菜々緒にも「前を向いてほしい」と語りかける。その言葉に、菜々緒は深く耳を傾けていた。
夜行の手料理と菜々緒の感動
菜々緒が療養しているところに、夜行が食事を持って現れる。彼が作ったのは「卵と邪払柚子の雑炊」であり、菜々緒はそのことに大きく驚きながらも、やさしい気遣いに胸を打たれる。夜行は「焦らずゆっくり食べろ」と優しく声をかけ、菜々緒は笑顔で「いただきます」と口にした。
雑炊の効果とあたたかな食卓
邪払柚子は強い厄除け・浄化作用があるとされ、妖気の影響を受けた身体を整える効果がある。その効能と、夜行の思いやりにより、菜々緒の心身はじんわりと温まっていく。味には多少の苦味もあるものの、それを含めて「とてもおいしい」と菜々緒は微笑む。
支えがある幸せと前を向く決意
雑炊を口にしながら、菜々緒は「痛みに寄り添い、支えてくれる人がいる」ことに感謝し、「自分は幸せ者だ」と心から感じていた。そしてその思いが、彼女に再び前を向かせる力となっていた。
夜明けと新たな一日
翌朝、菜々緒は布団で眠る夜行のもとに元気な笑顔で「おはようございます!」と声をかけた。その様子は、過去の苦しみを乗り越えたように見えた。
朝餉のひとときと菜々緒の悔しさ
菜々緒は朝の支度を終え、夜行に朝餉を振る舞ったことを誇りに感じながらも、二日も寝込んでしまった自分に悔しさをにじませていた。夜行は彼女の回復を心から喜び、「やはりお前の朝餉に勝るものはない」と微笑む。
「幸せ者」の実感
菜々緒は夜行の支えや、仲間たちの優しさに触れることで、自分がどれほど恵まれているかをあらためて実感し、「自分は幸せ者だ」と口にする。体調はまだ万全ではないが、それでも「夜行の力になりたい」という強い思いが彼女を突き動かしていた。
事件の真相としのぶの自首
夜行は菜々緒の回復を見届けた後、事件の経緯を語り始めた。しのぶは陰陽寮に出頭し、今回の罪を自ら告白したという。使用人・武井によってあの事件に加担させられたことを明かし、しのぶ自身も制裁を受けることになった。
斎園寺家の失墜
事件現場の調査により、斎園寺家の病室にはもぬけの殻のベッドとともに、証拠となる書類や写真が残されていた。それらは、斎園寺が現在の地位を築くために犯してきた数々の罪の記録であった。裏取りの結果、それはすべて事実であり、同家は剥位のうえで白蓮寺以上の処罰を受ける見込みとなった。
武井の正体と夜行の怒り
武井は斎園寺が雇った殺し屋であり、「蠱毒」という禁術を操り、連続して女性を狙った事件を起こしていたと判明する。夜行は、そのような危険な存在が菜々緒に手を出したことに激しい怒りを燃やし、「どんな手を使ってでも見つけ出し、償わせる」と決意を口にした。
菜々緒の不安と願い
夜行の強い覚悟を前に、菜々緒は「自分のせいで夜行が傷つくことが一番怖い」と本音を明かす。だが夜行はそれすらも受け止め、「だからこそその傷を癒してやりたい」と静かに語りかける。
陰陽寮への通いと決意
夜行は、今後の菜々緒の安全を守るため、「護身の術を身につけてほしい」と告げ、陰陽寮への通いを提案する。当初はただ穏やかに生きてほしいと願っていた夜行だが、菜々緒が再び狙われる可能性を考慮し、力を持たせる決断に至った。
感謝と成長の涙
菜々緒はその言葉に感激し、涙ながらに「嬉しいです」と微笑んだ。自分が力を持つことが、守られる存在から「共に歩む者」へと変わっていくことを実感する場面であった。
目覚めた自立の意志
菜々緒は、自分にもできることがあると気づき、喜びを爆発させた。夜行もまた、彼女の無垢な覚悟に驚きつつ、彼女の強さを改めて実感した。
永遠の味方としての告白
菜々緒は「夜行様は私にとって大切な宝物です」と告白し、彼の絶対の味方でありたいと誓った。その想いは花のように柔らかく、しかし力強く、夜行に届けられた。
一緒に生きる未来へ
菜々緒は「夜行様の側にいたい」「私自身が思える“私”になりたい」と願いを語り、彼と生きていく決意を明かした。最後には、夜行に「大好きです」と伝えて想いを共有した。
五行結界動乱編
第23話 紅椿家の傷
異形との共存と分断された国
極東の島国・大和皇國では、人とあやかしが共存してきたが、約五十年前の開国を契機に争いが続くようになった。現在では皇國国内で人が住めるのは結界で守られた一部地域に限られており、特に五行結界に囲まれた皇都では人々が西洋文化に浸りながら生活していた。その裏で、皇國の英雄たちは日夜悪鬼や妖と戦い続けていた。
菜々緒の体調と過去の傷
夜行は菜々緒の体調を気遣い、無理であれば予定を変更しようと申し出たが、菜々緒はそれを断った。菜々緒は前髪を少し切って印象が明るくなったと周囲から言われていたが、額の傷はあの事件以来時折痛む様子だった。しかし、彼女はその時の記憶を未だに思い出せずにいた。
陰陽寮第一研究室の訪問
菜々緒は夜行と共に、鷹夜が室長を務める陰陽寮の第一研究室を訪れた。研究室では眼鏡をかけた人物が出迎え、菜々緒を噂の若奥様かと盛り上がり、歓迎ムードで迎えた。研究室内にはさらに複数の人物がいたが、鷹夜の姿は見当たらなかった。
室長の衝撃的な登場と一二三の脱走
室長と見られる人物が突如倒れている状態で発見され、一同に衝撃が走ったが、周囲は慣れた様子で「いつものこと」と受け流した。直後、部屋の片隅から丸くて小さな生き物「一二三」が現れた。一二三は「天笠鼠」という低級あやかしであり、よく脱走する癖があった。
一二三と菜々緒のふれあい
一二三を見た菜々緒は可愛らしさに見とれ、夜行も動揺しながら一二三を抱き上げた。一二三は震えていたが、室員は「寂しがり屋なだけ」と説明した。菜々緒は夜行に一二三を撫でてあげるよう促し、彼も渋々応じた。菜々緒はその様子を見て微笑み、夜行も次第に落ち着きを取り戻していった。
一二三の研究用途と籠目玉の関連
一二三が「天笠鼠」と呼ばれるあやかしであり、仲間に位置を知らせる信号を発する性質を持つことが説明された。この特性を応用して、籠目玉の霊力信号が開発されたことが判明し、その発案者が鷹夜であることが語られた。菜々緒はその事実に驚き、感謝の意を示した。
鷹夜の覚醒と反応
倒れていた鷹夜が突然目を覚まし、混乱しながらも一二三を抱きしめた。一二三の存在が彼を安心させた様子が描かれた。周囲の者は鷹夜の行動を「いつものこと」として受け止めていた。
感謝と気遣いの言葉
菜々緒は、先日の件での鷹夜の助けに感謝し、どうしても直接礼を伝えたくて訪れたと述べた。鷹夜は籠目玉は研究室全体で開発したものであり、自分一人の功績ではないと謙遜したが、夜行もまた籠目玉の有効性と重要性を認め、感謝を示した。
若奥様の差し入れと研究室の雰囲気
菜々緒はぼた餅を差し入れとして持参し、研究室の面々に配った。研究員たちは菜々緒の存在と差し入れに喜び、和やかな雰囲気に包まれた。菜々緒の手作りであることが知れ渡ると、さらに好評を得た。
今後の防衛と鷹夜への労り
鷹夜は籠目玉が役立ったことを受け、結界内にいても安全ではないと認識し、新たな対策を考える必要があると述べた。夜行は、鷹夜が無理をしすぎて倒れることを危惧し、陰陽寮全体のためにも自愛を促した。また、夜行は鷹夜がいつでも戻れるよう部屋を残していることを伝えた。
鷹夜と夜行の関係性と菜々緒の観察
鷹夜は研究のために本邸よりも研究室の方が都合が良いと述べたが、夜行は菜々緒の件について釘を刺しに来たことを明かした。菜々緒は、二人のやりとりを見て「想像していたよりも仲が良い」と感じ、同じ表情をしていることを指摘した。鷹夜と夜行はその言葉に一瞬沈黙し、場が和んだ。
別れの挨拶と新たな出会い
夜行と菜々緒は鷹夜に別れを告げ、研究室を後にした。帰り際、夜一郎が現れ、夜行たちとすれ違う。彼は研究室を訪れた理由として、鷹夜に話があったと述べ、少し時間をもらうよう頼んだ。
菜々緒の笑顔と突如の襲撃
菜々緒は別れ際に「ここに来られて本当に良かった」と感謝を伝え、夜行も笑顔で応じた。しかしその直後、何者かによって夜行が突然攻撃を受けた。刀を構えた男が夜行を狙って突撃し、夜行は即座に応戦した。
正体不明の襲撃者と混乱
襲撃者は「一成」と名乗り、陰陽寮の隊長である可能性が示唆された。菜々緒は彼の制服からその正体に気づき、周囲は混乱する中、彼が「なぜ夜行様を攻撃するのか」と問いかけた。
一成の憤りと皮肉な会話
戦闘後、一成は夜行に対し、「お前が俺より先に結婚したのか」と尋ね、自身の見合いが失敗続きであることに苛立ちを見せた。夜行は「ああ結婚した幸せだが?」と答え、一成の嫉妬には「知らない」と素っ気なく返し、二人のやり取りは皮肉を交えた軽口に終始した。
菊大路一成の動揺と宗佑の登場
夜行への突発的な襲撃を仕掛けた人物は、陰陽寮第六番隊隊長・菊大路一成であった。一成は夜行が先に結婚していたことに腹を立て、「離婚して不幸になれ」と罵倒するなど、子供じみた言動を見せた。その場に現れたのは第六番隊隊員・白蓮寺宗佑であり、菜々緒の親戚筋にあたる人物であった。
白蓮寺宗佑の立場と誤解の解消
夜行が白蓮寺出身である宗佑と菜々緒の関係を疑ったことで場が一時緊張するが、一成が宗佑の白蓮寺離脱が五年前であり、今回の件とは無関係であると明言した。宗佑は地元嫌いで里帰りもしない性格であり、夜行と菜々緒の関係にも介入していなかった。
一成の暴走と菜々緒の冷静な弁明
一成は菜々緒の正体を知って驚き、「嫁を連れて出勤するとは何事か」と非難したが、菜々緒は自ら夜行に同行を願い出たものであると説明した。夜行も特に否定せず、一成は動揺しつつも収まりを見せた。
会議の準備と再集結の兆し
夜行は改めてその場を締め直し、急な召集にも関わらず出席率が高いことを確認した。明日、退魔部隊の隊長たちによる「隊長会議」が一堂に会して行われる予定であることが語られた。
鷹夜と朱鷺子の再会と縁談問題
場面は鷹夜の帰宅へと移り、母・朱鷺子との夕食の場面が描かれる。朱鷺子は陰陽寮の勤務が過酷すぎることを心配し、縁談話を持ちかけるが、鷹夜は菜々緒こそが紅椿家の使命に耐えうる相応しい人物であると真剣に訴えたが、鷹夜の真意が伝わってようには見えなかった。
鷹夜の母との縁談をめぐる会話
鷹夜は紅椿家の使命を支えるに足る人物として菜々緒の名を挙げたが、朱鷺子は「傷モノの女に惹かれているのか」と暗に非難し、感情的な態度を見せた。鷹夜は「違います」と否定しつつも、夜行と菜々緒のように支え合える関係に憧れているだけだと説明した。
歪んだ愛情と母の執着
朱鷺子は鷹夜に対し「もう結婚なんてしなくていい」と述べ、自分とずっと一緒にいれば良いと微笑んだ。また、彼を「宝物」と表現し、「格下の女に奪われるくらいならそれでいい」とまで言い放った。さらに、子供が欲しければ「母上が産んであげます」と発言し、鷹夜を激しく動揺させた。
価値観の衝突と決別の宣言
鷹夜は朱鷺子の言葉に強い不快感を覚え、ついに「気持ち悪い」と拒絶した。母の価値観を「身分で他者を判断し、見下すもの」と批判し、「昔から嫌いだった」と明言した。自分がずっと朱鷺子に合わせてきたこと、自分の弱さゆえに逃げ続けていたことを認め、「一番悪いのは自分だ」と告白した。
過去への後悔と母への決別
鷹夜は自分が夢見ていた場所ややりたかったこと、そして母・朱鷺子を支えられなかったことを回想し、「もし自分がもっと上手くできていれば違う未来もあったかもしれない」と語った。しかし最後には「無理です」と言い残し、涙を浮かべながらその場を立ち去った。
鷹夜の退場と母の呼びかけ
立ち去ろうとする鷹夜に対し、朱鷺子は「待って」と叫び、彼を引き止めようとした。しかし鷹夜はそのまま背を向けて去っていき、朱鷺子は困惑しながらも、その後ろ姿を見つめることしかできなかった。
鷹夜の動揺と嘔吐
紅椿邸を飛び出した鷹夜は、夜の外気のなかで突然嘔吐し、水場にうずくまりながら動悸と咳き込みに苦しんだ。精神的にも肉体的にも限界寸前である様子が露わとなる。その直後、背後から誰かが「鷹夜さん……っ」と駆け寄ってくる描写が挿入される。
孤独と頼れなさ
鷹夜は「夜行には相談できない」と内心で呟き、母への怒りや恨みが夜行や菜々緒に向けられることを恐れていた。また、「父にも言えない」とし、助けを求められる相手すらいない現実に絶望していた。
母・朱鷺子の言葉のフラッシュバック
脳裏には母の「あなたの子は母上が産んであげますから」という異常な発言が蘇り、鷹夜は強い吐き気と精神的ショックに見舞われる。洗面台に突っ伏しながら深く呼吸を乱し、過呼吸のような状態に陥った。
一二三(ひふみ)との対話と涙
その場にいたのは天笠鼠の一二三であった。ぬいぐるみのような姿の一二三は、そっと鷹夜の手元に現れ、無言で寄り添う。鷹夜は震える手で一二三を抱きしめ、涙をこぼしながら膝をつき、「僕は……どうしたらよかったんだ……っ」と嗚咽混じりに呟いた。
第24話 隊長会議
吸血による回復と出立前のひととき
紅椿夜行は、病み上がりの菜々緒に吸血を行い、その体調を確認した。菜々緒は回復を強調し、もう少し吸っても問題ないと申し出たが、夜行は精神的な負担を案じてそれを制した。菜々緒は夜行の制服姿を見つめ、どのような格好でも似合うと感じていた。
隊長会議への出発と別れの言葉
夜行は、面倒だとしながらも武井に関する情報が得られる可能性を見込み、隊長会議への参加を決意した。名残を惜しみつつも出発を告げ、菜々緒に無理をしないよう言葉を残してその場を後にした。菜々緒は彼の背を見送りながら感慨を抱いていた。
陰陽寮十三部隊の配置と役割
現在の皇国において人の居住が許される場所は限られており、卓都と五行結界を中心に各地に小規模な結界都市が点在している。陰陽寮の退魔部隊である十三部隊はそれぞれ異なる任務を担い、壱番隊から参番隊は皇都防衛、四番隊は情報収集と防衛戦略、五番隊から九番隊は地方防衛、十番隊から十三番隊は極秘任務を遂行している。
隊長会議の開催と進行
隊長たちが年に一度集まり開催されるのが隊長会議である。今回は情勢の変化により、開催時期が早まり、十番隊以降の隊長は招集されなかった。会議の進行は四番隊隊長・桃ノ井亜門が担当し、出席者に感謝の意を伝えて開始を宣言した。
診察を終えた菜々緒と後鬼の報告
診察を終えた菜々緒に、後鬼が付き添っていた。後鬼は、事件が解決したことであやかしによる被害が減少したと報告し、菜々緒に本日の予定を確認した。
外出中の呼び止めと任務伝達
診察を終えた菜々緒は後鬼とともに外出し、買い出しのついでに夜行の誕生日に関連した品を見に行くつもりであった。そこに陰陽寮の一団が現れ、四番隊隊長・桃ノ井亜門の命を受けた翠天宮幸臣が、菜々緒に対して隊長会議への協力を要請した。夜行には未通知である旨を説明したうえで、同行を求めた。
会議本題:武井の素性と毒の使用
会議では、皇都で起こったあやかしによる襲撃事件が議題となった。首謀者とされる武井は、斎園寺家の元使用人であり、その前歴は不明であった。名前も偽名の可能性があるとされた。武井が毒を使用したという点から、かつて毒術に長けていた陰陽五家のひとつ、橙院家との関係が指摘された。
五番隊所属・橙院士郎の証言
五番隊隊長・翠天宮沙羅の許可のもと、五番隊隊員で橙院家出身の士郎が証言を行った。士郎は写真から武井を認識し、かつて一緒に遊んだ記憶があると語った。また、幼少期の記憶で曖昧な点もあるが、橙院家の者で間違いないと断言した。
武井の過去と離脱の経緯
証言によれば、武井は人並外れた才能を持つ優秀な少年であり、術を一目で覚える能力を持っていた。先代当主の隠し子として秘匿されていたが、ある日突然里から姿を消した。その後、跡目争いの混乱に乗じて追われた、あるいは天狗に攫われたという複数の噂が存在する。
天狗との関係と今後の注目点
過去の記憶や発言から、天狗と関係を持っている可能性が高いことが浮上した。特に、橙院の里が天狗の縄張りに近い性質を持っていたことが議論の材料となった。さらに、武井があやかしを使い娘を攫っていた目的が議題となり、「売った女で金儲けをしていたのでは」との推測が六番隊隊長・菊大路一成および七番隊隊長・青樹玄龍から語られた。
女攫いの動機の喪失と武井の狙い
会議では、武井による女攫いが事件後に止んでいることが確認された。各隊長は目的の達成や新たな狙いが生じた可能性を議論した。黒条夏彦は、菜々緒が斎園寺しのぶに調査されていたことを根拠に、武井の標的が菜々緒であったと指摘した。
菜々緒の霊力と監視対象化の提案
紅椿夜行は、菜々緒が極めて高い霊力を持つことを明言し、武井が彼女を狙った可能性を認めた。桃ノ井亜門は、猩猩に攫われた菜々緒を調査対象とする必要があると述べ、夜行はこれ以上の干渉を拒絶したが、菜々緒はすでに会議場に連れられていた。
菜々緒の登場と事情聴取の強行
菜々緒の登場に会議場は騒然となった。桃ノ井亜門は菜々緒に対し、猩猩に攫われた際に何を見て何をされたかを包み隠さず話すよう要求した。夜行はその問い質し方に激怒し、桃ノ井に殴りかかろうとしたが、菊大路一成がこれを制止し、「桃ノ井隊長は正しい」と発言した。
記憶の欠落と額の痕跡
菜々緒は、猩猩に攫われる瞬間までの記憶はあるが、それ以降の出来事は覚えていないと述べた。ただし、額に激しい痛みを感じた記憶は残っていた。彼女の証言により、精神的外傷または術的干渉の可能性が示唆された。
巣穴での目覚めと証言の限界
菜々緒は、気がついたときには猩猩の巣穴に一人でいたことを語った。彼女は役に立てなかったことを謝罪したが、その言葉に対し、周囲は責めることなく受け止める様子を見せた。一方、証言の曖昧さが今後の捜査に影響する可能性も暗示された。
菜々緒の決意と霊力測定への同意
桃ノ井亜門は菜々緒に霊力値の測定を提案し、夜行は反対の意志を示したが、菜々緒自身が「逃げてばかりではいられない」と述べてこれを受け入れた。菜々緒は、夜行の側にいるためには自らのことを知る必要があると自覚していた。
測定機材の搬入と場の緩和
第一研究室の関係者が現れ、新型の霊力測定器を会議場に搬入した。彼らの賑やかな登場によって張りつめた空気が一時和らいだ。菜々緒は彼らとの再会に驚きつつも応じ、測定準備が進められた。
新型測定器の説明と夜行の測定
新型の霊力測定器は、旧式と異なり血液を必要とせず、手をかざすだけで測定が可能となっていた。夜行が先に試した結果、190万という高い霊力値を記録し、隊長内でも随一であることが示された。
菜々緒の測定と異常反応の発生
菜々緒が新型霊力測定器に手をかざして測定を開始すると、額の傷が激しく反応し、測定器を中心に強烈な霊力の波動が発生した。場内には突風のような力が巻き起こり、空間に緊張が走った。
霊力の異変に対する隊長たちの警戒
異常な気配を察知した隊長たちは即座に抜刀し、臨戦体制に入った。夜行は異変の正体を問おうとするが、それに対して菊大路一成は、「なんだそのエグい気配は、ここにいる奴らなら全員知っているな!」と発言し、場に広がる気配が誰もが認識する何かであることを強調した。
渦巻く霊力の正体と大妖怪の気配
菜々緒の霊力測定に伴い発生した異常な気配に対し、菊大路一成がそれを「大妖怪の気配」と明言した。菜々緒の身に何か得体の知れない力が宿っている可能性が浮上し、隊長たちの警戒はより一層強まった。
菊大路の問いと不穏な結末
菊大路一成は、夜行に向かって「お前の嫁は一体なんだ?」と問いかけた。その言葉は、菜々緒の存在が陰陽寮全体にとって重大な意味を持ち得ることを暗示していた。隊長会議は混乱と緊張を抱えたまま、次巻へ続く幕引きとなった。
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