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物語の概要
本作はサッカードラマを描く青年漫画である。最終節を迎えた東東京ユナイテッド(ETU)がホームスタジアムでのセレモニーを経て、シーズンを締めくくる“アウォーズ”(表彰式イベント)へと挑む。達海監督によるスピーチとチームの余韻が静かに描かれる一方、リーグ戦最後の祭典に向けて新たな展開が予感される内容である。
主要キャラクター
- 達海猛(たつみ たけし):ETUの監督。最終節のセレモニーにてサポーターの前で熱い言葉を語るチームの精神的支柱。
物語の特徴
本巻は試合描写よりも、シーズンの終わりと“祭典”への余韻に焦点を当てている点が特徴である。サッカー漫画ながら、表彰式ならではの静謐な雰囲気、選手と監督がファンとともに迎える区切りの瞬間が丁寧に描かれる。スポ根の緊張感とは異なる、温かさと懐かしさを伴う“シーズンの終焉”が感情的に揺さぶる。
書籍情報
GIANT KILLING(67)
著: ツジトモ 氏
その他: 綱本 将也 氏
出版社:講談社(モーニング KC)
発売日:2025年07月23日
ISBN:9784065400791
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あらすじ・内容
最終節を終えたETU。ホーム最終戦セレモニーにて達海がサポの前で語る言葉とは…!?そして余韻冷めやらぬ中、リーグ戦を締めくくる祭典・アウォーズが開幕!!
感想
読み終えて、まず感じたのは、やはり達海監督の退任という現実だった。最終節を終えたETU。ホーム最終戦のセレモニーで、達海がサポーターの前でどんな言葉を語るのか、固唾をのんで見守った。彼の言葉は、いつも予想を裏切るからだ。
退任という事実は受け止めなければならないけれど、彼の次がどうなるのか、どうしても気になってしまう。達海のことだから、きっと何も決まっていないんだろうな、と妙に納得してしまう自分もいる。それが彼らしいと言えば、それまでなのだけれど。そして、リーグ戦を締めくくる祭典、アウォーズが開幕する。達海は最優秀監督に選ばれる。彼のインタビューは、案の定、他のチームのサポーターを挑発するような内容で、盛大なブーイングを浴びていた。それでも彼は涼しい顔をしているのだろう。そんな光景が目に浮かぶ。
一方で、椿はサイヤング賞を受賞する。若き才能が認められた瞬間だ。しかし、喜びも束の間、退場する時にまさかの転倒。赤面してしまう椿の姿を想像すると、思わず笑みがこぼれてしまう。彼のひたむきさと、どこか抜けているところが、愛おしく感じられる。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
#658
集められたチームメンバー
達海猛が声をかけ、ETUの選手・スタッフ全員がロッカールームに集まった。選手たちは真剣な面持ちで達海を見つめ、監督やコーチ陣、フロントの面々も緊張をにじませながら立ち会っていた。達海は笑いながら現れ、窮屈な部屋に集まる様子を面白がるが、周囲からはすぐさまたしなめられた。
発言の場を求める達海
達海は、冗談混じりに謝罪しつつ、短時間だけ話す時間を欲しいと告げた。周囲は黙ってその言葉を受け止め、彼の言葉を待つ体勢に入った。彼は皆の視線を集めながら、静かに口を開こうとした。
丁度良いタイミングでの再会
場面は試合前の屋外へ移り、達海は後藤と対話する。後藤は、契約の返答について尋ね、達海がようやく返事をする気になったことに安堵する様子を見せた。だが、達海はまだ結論を述べず、表情だけで応じた。
チームへの影響と達海の存在
後藤は、今季のETUが歴代最高の成績を収めており、その原動力が達海の存在であったと強調した。そして、もし達海がいなくなれば、かつてのように彼の幻影を追い求めるクラブに戻ってしまうと懸念を述べた。
達海の帰還理由
GM笠野も加わり、達海に対して「GMのお前がそんなこと言っては駄目だ」と苦言を呈したうえで、彼がこのクラブに戻ってきたのは「選手時代にやり残したことを果たすため」だと語った。笠野は、これまで達海とくだらない話ばかりしてきたが、今後のことを真剣に話す必要があることを認めつつ、今の達海がこのクラブに必要な存在であると暗に示した。
ETUと達海の軌跡と覚悟
GM笠野は、達海がこの1年でETUをタイトル争いができるチームにまで押し上げたことを称賛し、元々ヨーロッパへ戻るつもりだったことを見抜いていた。後藤もその成果を改めて評価し、彼の存在が今シーズンの希望であったことを実感する。一方で、それを希望として未来につなげるか呪いとして残すかは、残された人々に委ねられる問題であると述べた。
達海の影響力と今後への期待
笠野は、GMである後藤に対し「覚悟が足りない」と皮肉交じりに諭しつつも、達海を連れてきたことを肯定的に語った。後藤は達海への謝罪とともに、自身の動揺を明かした。笠野は、達海がクラブ、選手、サポーター、さらには日本代表まで変えた存在であると認め、今度こそ選手時代の借りを返してほしいと期待を託した。
達海への激励と再出発
笠野は「世界の舞台で暴れてこい」と激励し、「お前はETUの星であり、太陽だ」と最大限の賛辞を送った。かつて達海に「俺たちを照らせ」と言った言葉を再び伝え、笑顔で送り出した。達海は無言でそれを受け止め、静かに頷いた。
別れの挨拶
場面は再びロッカールームへ戻り、達海が全員の前で「以上。つーわけで、お別れだ、みんな」と明るく告げた。その言葉を聞いたチームメンバーは驚きと動揺を見せるが、達海は最後まで笑顔を絶やさず、別れの挨拶を締めくくった。
#659
リーグ優勝セレモニーの開始
リーグジャパン・ディビジョン1のシーズン終了後、鹿島ワンダラーズが優勝を果たし、スタジアムでは優勝セレモニーが始まった。観客席のサポーターたちは歓喜に沸き、全18クラブの選手・スタッフ・ファンが夢見た光景が実現された。
優勝シャーレの授与と喜びの瞬間
チェアマン・野々浦より、当日キャプテンを務めた葛城に優勝シャーレが手渡された。選手たちは歓声を上げ、シャーレを掲げて喜びを爆発させた。チーム全員での「シャーレアップ」が行われ、選手・スタッフ・観客が一体となって祝福ムードに包まれた。
受け継がれる勝利の喜び
次々に選手たちがシャーレを手に取り掲げていく様子が描かれ、観客席からも大きな声援が送られた。選手たちはこの瞬間を全身で喜び、勝利の実感を分かち合った。
タイトルの価値と戦いの重み
ピッチサイドでは、元選手やスタッフたちがセレモニーの様子を見守りながら、それぞれの想いを語った。アイルトンは一年間戦い抜いた体を労い、優勝の喜びをかみしめた。一方で、五味が本来シャーレを掲げるべきだったという話題も挙がり、彼の貢献が称えられた。
クラブに託された想いと願い
五味は、途中からの参加であっても葛城がチームを引っ張ってきたことを認め、クラブへの深い愛着を語った。クラブ関係者からは、五味が鹿島ワンダラーズ出身であり、ヨーロッパで戦ってきた存在として、改めて誇りを持って見ていたことが語られた。
残された天宮杯への期待
クラブ関係者は、五味に対して天宮杯への出場と活躍を改めて期待していることを述べ、彼の存在が今後もチームにとって重要であることを示した。
優勝の実感とチームの絆
クラブ関係者の頼みにより、選手は改めてカップを掲げる場面を見せ、感極まって涙を流す姿が描かれた。周囲のスタッフや関係者たちは、彼の感情に共感しながらも温かく受け入れ、称賛の言葉を交わした。
鹿島ワンダラーズの内部のやり取り
猪瀬や早乙女をはじめとするクラブ関係者たちは、互いに労をねぎらい合いながら、今回の優勝が個人の力だけでなくチーム全体の努力の成果であることを確認し合った。早乙女はシャーレを掲げるように促され、葛藤しつつもその場に歩み寄った。
ETUへの対抗心と来季への展望
早乙女はETUが新潟相手に6-0で勝利したことを知り、再戦への意欲を見せた。一方、達海はその反応を見て「早く監督をやれ」と促すなど、再び火がついた様子を感じ取った。
チャンスの不確かさと心の中の闘志
早乙女は、再戦のチャンスが来シーズンもあるかはわからないと冷静に語りながらも、その眼差しは闘志に燃えていた。競争の厳しさと、一瞬一瞬を大切にする覚悟がにじみ出ていた。
ETUホーム最終戦セレモニー
場面はETUスタジアムに切り替わり、ホーム最終戦セレモニーが始まった。スタジアムは歓声に包まれ、選手やスタッフが入場して拍手で迎えられた。観客たちは惜しみない声援を送り、盛り上がりを見せた。
セレモニーへの思いとファンの感慨
セレモニーの形式や雰囲気に驚くファンもいたが、優勝を逃した悔しさを共有しながら、今日という日を前向きに終えたいという思いが語られた。退団・引退する選手たちへの思いも交錯しつつ、静かに次の展開を迎える気配が漂っていた。
達海の背中と余韻
達海はスタジアムを後にするように静かに歩き出した。
#660
永田会長のスピーチ
イースト・トーキョー・ユナイテッドの会長・永田は、今シーズンのファンの声援に感謝を述べた後、自身の感情を素直に吐露した。クラブ史上最高成績を収めながら、リーグ優勝をわずか1ポイント差で逃したことへの無念を叫び、観衆の心を打った。しかしその悔しさ以上に、選手や監督陣への誇りを強く表明し、達海監督を始めとするスタッフへ大きな拍手を求めた。
シーズンの変革と成果の振り返り
永田はこの一年を「変革の年」と総括し、10年ぶりのダービー勝利やジャパンカップベスト8、リーグ2位といった結果は、変化を恐れず挑戦した証であると語った。これからもチームが継続的に前進していく存在であることを強調し、未来の変化もポジティブに受け止めてほしいと訴えた。
会長交代の発表
永田は自身の会長職を辞することを明かし、後任に元GMで現スカウト部所属の笠野が就任することを発表した。観衆とチームメンバーは驚きの表情を見せつつも、笠野の就任に静かに耳を傾けた。
達海猛監督の登場
永田の指名により、監督・達海猛がステージへ登場。場内から大歓声が巻き起こる中、達海は満面の笑みでマイクに立った。彼の人気の高さは観客の反応からも明らかであった。
達海監督の振り返りとジョーク
達海は1ポイント差でのリーグ2位という結果に悔しさを見せつつも、それを笑いで包み込むような口調で振り返った。序盤の失速や選手との衝突もあったことを笑い話として語り、会場の雰囲気を和ませた。東京Vとの成績を自慢しつつ、冗談交じりにシーズンダブル達成を宣言した。
チームへの想いとクラブ愛
達海は、自身がETUに戻ってきた理由を「クラブを強くするため」と明言し、ファンの胸を打った。そして、リーグ戦で19勝9敗6分けという成績を誇りに思い、チームが強くなったことを実感していると語った。
衝撃の発表:監督辞任と海外挑戦
会場が高揚する中、達海は突如「今シーズンをもって監督を辞める」と宣言した。そして、もう一度海外へ行く決意を明かし、観衆を驚愕させた。スタジアムは騒然となり、「やめないで」「絶対嫌だ」といった声が飛び交った。
感情の爆発と別れの予感
ファンやスタッフ、選手たちは達海の決断に対し、涙ながらに叫び声を上げた。誰もがこれからも達海がETUに居続けるものと信じていたからこそ、その別れに強い衝撃を受けた。
第661話
試合後のスタジアムに響く達海の名
試合後のスタジアムでは、観客席から「達海」の名を叫ぶ声が鳴り響いた。サポーターたちは突然の出来事に驚きと混乱を見せながらも、監督・達海猛の登壇に熱い視線を送っていた。
達海の登壇と笑顔の挨拶
マイクの前に立った達海は、観客の反応に両手を挙げて応え、余裕の笑顔で「ビックリするくらい人気者だね」と語った。彼は急な話に戸惑いがあることを認めつつ、自身の決断が最近のことであると明かした。
選手たちとサポーターへの説明
達海は、この件を事前に共有していたのは笠さんと後藤のみであり、選手たちへは直前のロッカールームで伝えたと説明した。彼は、自分がいなくてもETUが成長していくことを信じており、選手たちが愛されていることも知っていたと述べた。
達海への想いと怒りの声
サポーターたちは「ふざけるな」「調子に乗るな」と怒りをあらわにしつつも、「大好きだ」と叫ぶ者もいた。達海はその気持ちを理解しており、この決断が簡単なものではなかったことを明言した。
達海の愛情と自覚
達海は「この町とみんなのことが大好き」と語り、自分が周囲からワガママと思われていたことも理解していた。そして、クラブのことを大事に思うファンやフロントがいるからこそ、このクラブは大丈夫だと語った。
自分の存在に左右されないクラブへ
達海は、今季のチームが大きな自信をつけたことを挙げ、自分がいなくなってもETUは止まらないと断言した。その言葉に涙を浮かべるサポーターも現れ、強い絆と信頼がにじみ出ていた。
達海のETUをもっと見たいという声
サポーターたちは「達海のETUをもっと見たい」と叫び、その熱い想いがスタジアムを包んだ。達海自身も、今シーズンにおいて一定の成果を残せたと認めつつ、まだやるべきことがあるような思いを口にし、物語は続いた。
試合後のスタジアムに響く達海の名
試合後のスタジアムでは、観客席から「達海」の名を叫ぶ声が鳴り響いた。サポーターたちは突然の出来事に驚きと混乱を見せながらも、監督・達海猛の登壇に熱い視線を送っていた。
達海の登壇と笑顔の挨拶
マイクの前に立った達海は、観客の反応に両手を挙げて応え、余裕の笑顔で「ビックリするくらい人気者だね」と語った。彼は急な話に戸惑いがあることを認めつつ、自身の決断が最近のことであると明かした。
選手たちとサポーターへの説明
達海は、この件を事前に共有していたのは笠さんと後藤のみであり、選手たちへは直前のロッカールームで伝えたと説明した。彼は、自分がいなくてもETUが成長していくことを信じており、選手たちが愛されていることも知っていたと述べた。
達海への想いと怒りの声
サポーターたちは「ふざけるな」「調子に乗るな」と怒りをあらわにしつつも、「大好きだ」と叫ぶ者もいた。達海はその気持ちを理解しており、この決断が簡単なものではなかったことを明言した。
達海の愛情と自覚
達海は「この町とみんなのことが大好き」と語り、自分が周囲からワガママと思われていたことも理解していた。そして、クラブのことを大事に思うファンやフロントがいるからこそ、このクラブは大丈夫だと語った。
自分の存在に左右されないクラブへ
達海は、今季のチームが大きな自信をつけたことを挙げ、自分がいなくなってもETUは止まらないと断言した。その言葉に涙を浮かべるサポーターも現れ、強い絆と信頼がにじみ出ていた。
達海のETUをもっと見たいという声
サポーターたちは「達海のETUをもっと見たい」と叫び、その熱い想いがスタジアムを包んだ。達海自身も、今シーズンにおいて一定の成果を残せたと認めつつ、まだやるべきことがあるような思いを口にし、物語は続いた。
天宮杯への挑戦表明
達海は、自身の今後について「また海外でやってくために、もう一つ箔をつけたい」と述べ、国内での最後の挑戦として「天宮杯」があることを示した。そして、あと5試合勝ち抜けば、クラブとしての初タイトルを獲得できると語り、選手たちにリベンジのチャンスがあることを訴えた。
観客と選手の共鳴
達海は「天宮杯のタイトルをぶん獲りにいこう」と呼びかけ、スタジアム全体から歓声と拍手が巻き起こった。サポーターは「タツミ」コールを響かせ、選手たちも静かにその声を受け止めていた。
ロッカールームでの余韻と戸惑い
選手たちは試合後のロッカールームで、「疲れた」と言葉を交わしながらも、達海の退任発表に対して複雑な感情を抱いていた。誰もが「悲しい」と口にしながらも、すでに来シーズンへの不安が広がっていた。
新監督の選定とクラブの方針
笠野はスタジアムでファンに向けて、達海のスタイルを引き継ぐ新監督の選定を進めていると発表した。できるだけ早期に発表する意向も示され、選手やサポーターに一定の安心を与えた。
杉江の決意とチームの団結
選手たちはこの先の見えない不安に揺れつつも、杉江は「このチームで1日でも長くサッカーをしたい」と語り、「このメンバーでのラストゲームは、カップを掲げて終わるものにしよう」とチームを鼓舞した。
椿の覚悟と最終目標
椿は混乱する感情を抱えつつも、「達海さんと一緒にリーグ戦の悔しさを天宮杯で晴らす」と決意を固めた。その強い思いが周囲にも伝播し、チーム全体が再び一つにまとまり始めたが、そこに赤崎が水を差した。
#662
羽田宅に集まるサポーター仲間
物語は羽田の自宅に仲間たちが訪れる場面から始まった。彼らは前日に続いて酒を手に集まり、試合後の反省と雑談を交わしていた。羽田は普段の生活が多忙であることを述べつつも、仲間たちは彼に恋愛の話題を振ってからかっていた。
リーグ戦の最終節を振り返る
テレビ番組ではリーグ戦の最終節が報じられていた。優勝争いの行方は、鹿島ワンダラーズとETUによる激しいデッドヒートであり、ETUは新潟戦でゴールラッシュを見せてリードを奪っていた。一方、首位の鹿島は、盤田とのスコアレスで前半を終えていた。
鹿島の猛攻と逆転優勝
後半に入り、鹿島は日本代表コンビの連携から得点を重ね、岩淵と安藤のゴールで2点を奪取。試合終了までこのリードを守り抜き、鹿島ワンダラーズがリーグ優勝を果たした。一方、ETUは勝利するも勝ち点差で及ばず、2位でシーズンを終えることとなった。
達海監督の退任とメディア報道
その後のセレモニーにて、達海猛監督の退任が発表され、スタジアムは悲鳴に包まれた。羽田の仲間たちはその様子をテレビで見ながら、達海の発表を予感していたと語り合った。達海は海外で本格的に監督を務める前に、かつて決別したETUに恩返しをしたかったと述べていた。
達海の影響と仲間たちの誇り
サポーター仲間は、達海が発表とともに各メディアで大きく取り上げられている様子を確認し、彼が日本サッカー界のスーパースターであることを改めて実感していた。鹿島の優勝にも負けないほど、達海の退任は注目を集めていたのである。
惜敗を振り返るサポーターたち
羽田の部屋に集まったサポーター仲間たちは、1ポイント差でリーグ優勝を逃したETUの今シーズンを振り返っていた。彼らは迷惑をかけた過去も含め、悔しさと感謝の入り混じった思いで達海監督の退任とチームの健闘を受け止めていた。
リーグ最終順位と現実
テレビではリーグジャパン・ディビジョン1の最終順位が発表され、ETUは鹿島ワンダラーズに次ぐ2位となった。1ポイント差という事実にショックを受けつつも、仲間の一人は「見方を変えれば十分に優勝に近いチームだった」と前向きな意見を述べた。
天宮杯への再起と決意
石橋は「天宮杯で達海を優勝監督にする」と宣言し、サポーターの声でチームを勝たせようと仲間たちを鼓舞した。チームはU-22に招集された椿と赤崎を欠く厳しい状況で、一発勝負の戦いに臨む覚悟を固めた。
サポーターの団結と士気
「今回は絶対に同じ轍は踏まねぇぞ」と語り、仲間たちはサポーターの役割と責任を改めて意識した。それぞれがテンションを高める中、一部は興奮しすぎて吐き気を催す場面もあり、緊張と期待が入り混じった様子が描かれた。
翌日の表彰式と代表選出
話題はリーグジャパンアウォーズへと移り、選手たちは大きな舞台に立つことへの実感を語った。また、椿がU-22代表に選ばれたことも報じられ、改めてチームの成長と注目度の高さを確認した。
達海の寝坊と締めくくり
一方その頃、達海は寝坊しており、スタッフに怒られる場面で話は締めくくられる。リーグを締めくくる祭典「リーグジャパンアウォーズ」がいよいよ始まろうとしていた。
#663
ハマハマアリーナへの到着
赤崎と椿はハマハマアリーナに車で到着した。建物の規模と迫力に圧倒された椿は驚きの表情を見せた。赤崎は今回の会場が特別な場であり、選ばれた選手のみが呼ばれる栄誉であることを強調した。
イベントの意義とプレッシャー
椿は、試合にも出場せずに大勢の前に出ることへ抵抗感を示すが、赤崎は「誇りに思えばいい」と励まし、これは気楽なオフのイベントだと説明した。また、U-22の活動が明日から始まるため、その前の息抜きでもあると語った。
同僚たちとの再会
会場では綿谷と小室が正装姿で登場し、椿は驚きつつも喜びを見せた。綿谷は椿に親しげに話しかけ、写真を撮りたいという椿のリクエストにも応じた。さらに夏木も登場し、独特な髪型に対して椿がツッコミを入れる一幕もあった。
控室と準備の開始
イベントスタッフが登場し、選手たちに準備を促した。椿たちはスーツに着替えるよう指示され、控室へと向かった。中ではすでに着替えを終えた他の選手たちがいて、椿はその姿に見とれる様子を見せた。
再会する因縁の相手
控室で椿は、過去に因縁のあったと思われる選手と再会する。その相手が姿を現した瞬間、椿は驚愕し、相手もまた椿に声をかけたことで再会が明らかとなった。
越後の登場と衝撃
椿は越後の姿に圧倒され、一瞬恋に落ちそうになったと語った。会場にいた女性スタッフたちも彼の魅力に感嘆していた。一方で、プロデューサーである永田は越後に負けじとETUの存在感を示すべく、椿たちの演出に全力を注ぐことを宣言した。
椿の決意と変身
永田の指示のもと、椿は着替えとヘアメイクに向かった。ユニフォーム姿からフォーマルな服装へ変身し、普段とは違う自分を見せるチャンスに内心緊張しながらも、「カッコよくなってみたい」と決意を口にした。しかし永田は、椿には素朴な魅力を押し出したいと語り、結局ほぼそのままの姿でステージに立つこととなった。
会場の華やかさと観客の驚き
巨大なイベントホールに足を踏み入れた観客たちは、まるでアイドルコンサートのような演出に驚嘆した。中には当選して訪れた家族連れや、ETUファンである山さんとマーちゃんの姿もあった。彼らは「晴れ舞台を自分の目で見ておきたい」と語り、観客席の熱気を体感していた。
アワードの概要と注目の賞
観客の中にはアワードの流れを詳しく解説する人物もおり、リーグ優勝チームや個人表彰、ベストイレブン、最優秀監督賞など多様な賞が紹介された。イベントの終盤には、最も注目される「最優秀選手賞(MVP)」の発表が予定されており、観客や関係者の期待は最高潮に達していた。
最優秀選手賞のトロフィー
ラストシーンでは「PLAYER OF THE YEAR」と刻まれた最優秀選手賞のトロフィーが大きく描かれ、アワードの頂点がどの選手に授与されるのだろうか?
#664
シーズンMVPへの疑問
ETUのサポーターたちはリーグアウォーズの会場に入場し、MVPの事を話し合っていた。MVP候補に鹿島の選手が選ばれたことで、彼らは「やっぱり優勝クラブからしか選ばれないのでは」と不満を述べた。だが、そこにいたサポーターの少年が「違う」と反論し、この賞は「今シーズン1年間活躍した選手」が対象であると説明した。
MVPの選考基準
アウォーズでは「33節終了時点で17試合以上出場した選手」が選考対象となっており、シーズン途中に加入した選手は対象外であることが明かされた。実際に活躍していても、試合数が基準に達していない場合はノミネートすらされない。選手たちは、自分たちの仲間が選ばれなかった理由に納得しつつも、残念さをにじませた。
投票のタイミングと意義
投票は33節終了時点で行われ、最終節を待たずして決定される。そのため、鹿島の優勝が確定する前に票は投じられていた。少年はその点を強調し、「ETUが優勝する可能性があった時期に投票が行われた」と主張した。それにより、ETUの選手が高く評価されていた可能性があると指摘した。
優勝クラブ以外からの選出の可能性
優勝クラブ以外からもMVPが選ばれる可能性があるという説明に、ETUのメンバーたちは希望を抱いた。だが、最終的な決定は選考委員会に委ねられるため、票の圧倒的な集中が必要であるとも説明された。彼らはETUからMVPが出る可能性に盛り上がりながらも、冷静な現実も受け止めた。
和やかな授賞式の裏側
一方、授賞式の会場では選手たちが華やかなスーツ姿で集まり、互いに軽口を叩き合っていた。髪型や服装をからかう者や、自分の人気について語る者もいたが、中には本気でMVPにかけていた者もいた。ハウアーはMVPでなければ参加しなかったと内心で明言し、周囲との温度差を見せた。
緊張と戸惑い
会場の一部では、慣れない場に戸惑う関係者たちの姿もあった。ETUの関係者たちは、長くアウォーズとは無縁だったことを思い出しながら、情報量の多さと緊張に疲れを感じていた。それでも、クラブがこの舞台に関わっている事実に誇りと驚きを抱いていた。
チーム関係者の困惑と達海の不在
授賞式会場では、クラブ関係者たちがETUから多数の受賞者が出たことに戸惑いを見せていた。中でも監督の蓮海の退団により、関係者や選手たちが混乱している様子が描かれた。一方で、そのショックを振り払うように有里が奮闘していることも示された。
達海の姿と所在不明
達海は、用意された衣装を着ることなく会場から姿を消していた。控室では、用意された衣装を無視して私服のまま立ち去ってしまったことが語られた。関係者の間では、達海がどこかに隠れているのではという推測が飛び交った。
会場内を彷徨う達海
達海は人と関わることを避けるように、会場の外を一人で歩き回っていた。明確な目的もなく徘徊しているうちに迷子になり、自分でも出口がどこかわからなくなっていた。そんな中で偶然にも、鹿島の控室にたどり着いてしまう。
五味との再会と対面
鹿島の控室で五味と鉢合わせた達海は、互いに軽く挨拶を交わす。その場の選手たちも達海の姿に驚き、一時的な静寂のあと、次々と達海に話しかけるようになった。達海は五味に対し、前回のやりとりに対する感謝を伝えた。
鹿島関係者との舌戦
鹿島の控室にいた早乙女から、達海が「ケンカを売りにきたのか」と問われる。達海はそれに対し軽口を返しつつも、「コーチみたいな中途半端なことをしていたらこうなる」と言い返した。言葉は挑発的だったが、態度には後悔の色が見えた。
達海の退任発言に対する反応
達海が退任を示唆したことに対し、鹿島の若手選手たちは動揺と敬意をもって応えた。彼らは達海に憧れてきたことや、技術面で高く評価していたことを次々に告白した。その様子を見た関係者は、達海の影響力の大きさに驚きを隠せなかった。
スーパースターの影響力
達海の登場により、鹿島の選手たちは彼に心を開き、場の空気も和やかになった。これを見たベテラン関係者は、「スーパースターの魔力」と称し、達海の存在の大きさを再認識した。
アイルトンとの再会と幕引き
アイルトンが達海の姿を見つけ、彼を大声で呼びかけた。達海はそれに応じて軽口を返し、場を和ませた。だがその一方で、達海の不在に気づいたETUスタッフたちは焦りを見せ、移動の時間を迫っていた。
#665
華やかなレッドカーペットの到着
会場となるハマハマアリーナ前には多くのファンが集まり、警備体制の中、招待選手たちが次々に到着した。REDSTARの越後と秋森がリムジンから登場すると、ファンは大歓声で迎えた。スター選手の登場は、まるで映画祭のような熱狂に包まれていた。
セレモニーの華やかさに驚く取材者
多くの選手たちがスーツ姿で登場し、フラッシュが絶えず焚かれる中、取材に来た女性記者・桃田は、場の華やかさに圧倒されていた。彼女は当初、映画祭の取材と間違えていたほどで、サッカーアウォーズのスケールの大きさに驚きを隠せなかった。
フットボーラーのスター性とイベントの変化
他の記者たちは、サッカー選手たちがカメラ慣れしていることや、スポーツ選手がエンタメ化してきた時代背景を語った。また、アウォーズがこれまでよりも派手なショーとして進化してきた点にも言及され、イベントそのものの性質変化が描かれた。
チェアマンによる演出強化とその影響
桃田は、今回のアウォーズが例年以上にド派手だという噂について、総合プロデューサーとして腕利き演出家が起用されていることを聞かされる。取材陣はその狙いや意図を推察しつつ、ETUのような個性的なクラブがこの舞台でどう振る舞うかを懸念した。
達海への勧誘と揺れる人間関係
ワンダラーズの関係者は、達海に対し「海外に行く前にうちで働かないか」と誘いをかける。達海に対する評価は高く、将来的な監督就任まで示唆される。だが、その場に居合わせた鹿島関係者たちは、その影響力に対し複雑な感情を抱いていた。
フロント内での緊張と対立の兆し
アウォーズの場において、達海とアイルトンのやりとりを見守っていた関係者の間に、不穏な空気が漂い始める。アイルトンは自身の正しさを主張する一方で、周囲からは独裁的な印象を持たれていることを示唆され、心中穏やかではなかった。
クーデターの予感とクラブの論理
会場の一角では、「クーデターでも起こればいい」といった発言が飛び出すなど、チーム内の権力構造や今後の人事への不満が現れていた。アイルトンは、自らが切られる可能性があるならそれも受け入れると語り、「勝利のために戦うクラブ」こそが理想だと語っていた。
達海の応酬と鹿島への評価
ワンダラーズ関係者からの勧誘に対し、達海は「面白いクラブだ」と応じつつも、自身のフロント陣にもその考えを聞かせたいと返答した。鹿島のチーム力やスタッフの結束に感心し、安心感を覚えたことを率直に述べた。
天宮杯での再戦に向けた挑発
達海は来シーズン不在となることを前提に、天宮杯で鹿島と当たった際には「容赦なく叩き潰す」と挑発的な発言を放った。自身の去就は未定ながらも、鹿島の強さと精神的耐性を信頼していることが伺える場面であった。
クライトンとの遭遇と混乱の拡大
その後、達海はクライトンと顔を合わせ、軽口を交わすが、会場では彼の存在が想定外であることから混乱が広がっていた。運営スタッフは急ぎアリーナ入場を促し、裏方の混乱が徐々に表面化しつつあった。
レッドカーペットの注目と観客の反応
鹿島ワンダラーズの選手たちがレッドカーペットに登場し、観客から歓声が沸き起こった。その中に紛れて歩く達海の姿に、ファンは驚きと憶測を広げ、「ひょっとして来シーズンは鹿島?」と混乱を助長していた。
華やかな演出とショータイムの開始
会場の統括プロデューサーである菊島は、「最高のステージを用意した」と宣言し、ショータイムの開始を告げた。華やかな演出のもと、ファンや関係者が見守る中、リーグ・ジャパン・アウォーズが本格的に幕を開けた。
表彰セレモニーと鹿島ワンダラーズの栄光
シーズンを通じて激戦を制した鹿島ワンダラーズが「2冠王者」として表彰され、壇上に立った五味がインタビューを受けた。司会者は、五味がMVP級の活躍を見せたことに触れ、その強さの秘密を問うた。
五味の回答とチームの本質
五味は「みんなが負けず嫌いなところ」と鹿島の強さの根源を語り、それに加えて「信念」という言葉を力強く付け加えた。場の空気が一瞬静まり返る中、五味の発言はチームの精神を象徴する一言として印象を残した。
#666
表彰式で語られたクラブの精神
Jリーグ年間表彰式にて、授賞理由の紹介として「信念」「常に高いレベルを求め合うクラブ精神」が語られた。壇上に立ったETUの選手たちは、堂々たる姿で並んでいた。観客の注目が集まり、クラブに対する敬意が溢れていた。
タツミ監督の偉業と賛辞
表彰された達海猛監督に対し、観客や関係者から称賛の声が送られた。彼は今季、悩める古巣ETUに戻り、攻撃的なスタイルでチームをクラブ史上最高の2位に導いた。また、ダントンがリーグ最多得点王となるなど、個人の成績も際立っていた。
他クラブサポーターの称賛と驚き
表彰式の場では、他クラブのサポーターたちからも温かい拍手が送られ、異例の光景に驚きと感動が広がった。司会者たちも、達海の平服姿に苦笑しつつ、注目度の高さを認めていた。
司会者からの質問と達海の返答
達海は来季以降の抱負を問われると、明確な展望は語らず、「先のことは分からない」と冗談交じりに返答。会場を沸かせる一方、記者たちには困惑が広がった。
達海のユーモアと挑発的なエール
達海は続けて、「俺がETUに残っていたら、他のクラブにチャンスがない」と述べ、来季は他クラブにとってのチャンスであると発言。さらに、「俺のいないETUを倒せ」と挑発的なエールを送った。
サポーターからのブーイングと達海の対応
達海の発言は会場にいた多くのファンからブーイングを浴びる結果となったが、彼は笑顔で受け流し、「もっと吠えろ負け犬ども」とさらに煽った。
周囲の反応と幕引き
永田ら関係者は達海の発言に仰天しつつも、彼のエンターテイナー性を認めた。表彰式はブーイングに包まれて終幕を迎え、「サポーターの平和の祭典が」と皮肉めいたナレーションで締め括られた。
#667
ETUのスターが叱責される場面
表彰式の舞台裏にて、達海がスタッフに真剣に叱られる様子が描かれた。彼の軽率な言動により、後に登壇するETUの選手が周囲から奇異の目で見られる可能性があると指摘された。スタッフは「退任するからといって無責任な発言は困る」と強く抗議した。達海は気にも留めない様子で応じ、「過保護にならなくても問題ない」と主張したが、周囲のスタッフや関係者はその態度に困惑していた。
達海の持論と反発
達海は、たとえ会場が微妙な空気になったとしても、自分のスピーチで盛り上げようとした意図を語った。また、引退した元選手が登壇すれば、ファンも喜んで拍手を送ると楽観的に語った。しかし、スタッフからは「他クラブの選手をネタにした発言は慎むべきだ」と注意され、達海に対する評価は分かれた。彼の仲間たちはスピーチを面白がったが、本人はまったく反省していなかった。
ベストヤングプレイヤー賞の発表
場面は切り替わり、LEAGUE JAPAN AWARDSの授賞式が始まった。司会が功労選手賞の発表を終え、続けて「ベストヤングプレイヤー賞」が発表された。この賞は、当シーズンにディビジョン1で17試合以上出場し、21歳以下の選手に贈られるものである。選出されたのは、イースト・トーキョー・ユナイテッドの椿大介であり、スタジアムは歓喜に包まれた。
日本代表としての評価
司会は椿の今シーズンの活躍を称えた。椿はU-22およびA代表の両方で主力としてプレーし、日本サッカー界に大きな貢献を見せたと評価された。また、受賞者としてもう一人、大阪Gの窪田選手の名前が挙げられた。観客からは椿に向けて祝福の声が飛び交い、彼自身も壇上で感無量の様子を見せていた。
椿のプレーの評価
表彰式では、シーズン終盤に怪我で離脱したにもかかわらず、椿のプレーがチームを勝利に導く起爆剤となったことが評価されていた。解説者は、椿が受賞にふさわしい選手であると断言した。
スピーチの緊張と決意
壇上に上がった椿は、緊張しながらも受賞の喜びを素直に語った。彼は、過去の自分がミスを恐れ、思い切ったプレーができなかったことを振り返りながら、達海監督の言葉によって自信を得たと明かした。
反省と成長の告白
椿は、今シーズンも多くのミスを繰り返したが、周囲の支えによってプレーを続けられたと語った。そして、自分のような若手選手がミスをしても許される存在から卒業し、支える側の存在になりたいと決意を述べた。
覚悟と目標の明示
彼は、これからもミスをするかもしれないが、それでもすぐに立ち上がり、頼られるプレーヤーになりたいと力強く宣言した。観客席ではチーム関係者がその成長に感動していた。
感謝の言葉とスピーチの締め
最後に椿は、支えてくれた家族、代表やクラブのスタッフ・チームメイトへの感謝を述べた。また、同賞を競った大阪ガンナーズの窪田選手にも言及し、敬意と感謝を伝えた。司会者からもそのスピーチが称賛され、椿の成長が強調された。
椿の失敗と達海の一言
スピーチ終了後、壇上から退く途中、椿は転倒してしまう。観客や関係者が驚く中、彼は照れ笑いを浮かべて謝罪した。達海はそれを見て「早速失敗して下向いたな」と笑いながらコメントし、場を和ませた。
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