物語の概要
本作は、異世界転移×国家運営をテーマとしたファンタジー小説である。現代日本から異世界へと転移した主人公が、自らが操る「破滅の文明マイノグーラ」と共に新たな世界で生き延び、支配を目指す姿を描く。国家経営、外交交渉、戦争といった多様な要素が絡み合いながら、主人公は滅びの力を武器に世界征服への道を歩み始める。
主要キャラクター
• 伊良拓人(タクト):「マイノグーラ」の支配者であり、異世界に転移した元人間。知略とカリスマを武器に国家を運営する。
• アトゥ:タクトに絶対の忠誠を誓う精霊。明るく無邪気だが、戦闘では恐るべき力を発揮する。
• セフィロト:マイノグーラに従属する存在で、情報収集や工作活動を担当する。冷静沈着な性格を持つ。
• カルラ・リラニア:周辺勢力の有力者であり、タクトとの交渉や対立を通じて物語に深く関わる。
物語の特徴
本作の最大の特徴は、単なる異世界冒険譚ではなく、「国家運営」と「文明発展」を中心に据えている点にある。主人公が操る文明が「破滅」や「堕落」をテーマとすることで、一般的な善性の国家ものとは一線を画す。また、外交・軍事・経済をバランスよく描写し、時に敵対国との交渉や戦争も冷酷に進める展開が、読者に独特の緊張感と没入感を与える。ターン制戦略ゲーム的な要素を取り入れた描写も特徴的である。
書籍情報
異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ 2
英語名:Apocalypse Bringer Mynoghra
著者 : 鹿角フェフ 氏
イラスト: じゅん 氏
出版社:マイクロマガジン社(GCノベルズ)
発売日:2020年11月30日
ISBN:9784896379985
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あらすじ・内容
ダークエルフ達の尽力で発展を続けるマイノグーラ。雌伏の時は終わり、いよいよ最寄りの街・ドラゴンタンとの接触に乗り出す!
邪神として戦略SLG『Eternal Nations』に似た異世界に転生してしまった拓斗。
彼が率いるマイノグーラは、ダークエルフたちの尽力もあって発展を続けていたが、今の孤立状態ではその限界も近いことは明白であった。そこで拓斗は、国家のさらなる繁栄を求めてもっとも近くに位置する街・ドラゴンタンとの接触を図ることになるのだが……?
雌伏の時は終わり、“世界の終焉”が始まる――
感想
本巻では、マイノグーラのさらなる発展と、隣国ドラゴンタンとの外交を中心に物語が展開された。タクトの孤独と壊れた内面をにじませつつも、国家運営は着実に前進し、読者に独特の緊張感と期待感を抱かせた。
まず印象深かったのは、タクトのコミュニケーション能力を鍛えるために双子のダークエルフ姉妹キャリアとメアリアが側に控える展開である。表向きは幹部候補育成であったが、実際はタクト自身のリハビリも兼ねていた。この微妙なバランスが非常に興味深かった。彼の根本にあるぼっち体質とコミュ障ぶりが、国家を率いる者として致命的な欠点であると同時に、彼の人間味を際立たせる要素にもなっていた。
また、隣国フォーンカヴンからやってきたペペの存在も強く印象に残った。彼は場の空気を読まない無頓着な性格で、異様な存在感を放つタクトとも友人になってしまうファンタジスタであった。このペペとの出会いがきっかけとなり、マイノグーラとフォーンカヴンは友好関係を築くことに成功する。無邪気さがもたらした外交的成果は、重苦しい展開が多い本作において貴重な清涼剤であった。
さらに、双子姉妹の純粋さにも注目したい。彼女たちは表面上は可憐な少女たちだが、邪悪国家に仕える者としての危うさも持ち合わせている。特に、ドラゴンタン訪問エピソードで描かれた彼女たちの異質さは、読者に強い印象を残す。純粋ゆえに恐ろしい、そんな二人の存在が物語に深みを与えていた。
ペペ達のマイノグーラ来訪後、ドラゴンタンを訪れる双子たちと衛生兵たちによる視察エピソードも秀逸であった。新たに登場したキャラクターたちは、奇妙な陽気さと不安定さを併せ持ち、マイノグーラという国家の異常性をより際立たせていた。衛生兵たちの妙なテンションと、双子の戸惑いが織りなすコメディ的な場面は、緊張感の中に適度なユーモアをもたらしていた。
また、フォーンカヴン側の視点で描かれるマイノグーラの異様さも印象深かった。中立属性のキャラクターたちから見た時、タクトやその配下の存在は明らかに異常であり、その違和感が物語全体に不穏な影を落としていた。この視点の切り替えが、単なる異世界国家運営物に留まらない奥行きを生み出していると感じた。
個人的には、挿絵に登場したサキュバス勢にも注目したいところである。エラキノよりもサキュバスたちの挿絵が先に出たのは意外だったが、これが後の展開への布石となっていることを考えると、作者の構成力の巧みさを改めて実感させられる。
総じて、本巻はマイノグーラの勢力拡大と外交の芽生えを描きつつ、タクトという人物の内面の歪みと、それに巻き込まれる周囲の人々の変容を丹念に描写していた。国家運営という枠を超え、個々のキャラクターの成長と葛藤に焦点を当てることで、読者に強い没入感を与える構成となっていた。先の展開を知っている読者にも新鮮な驚きを与える工夫が随所に盛り込まれており、続巻への期待がますます高まる一冊であった。
登場キャラクター
イラ=タクト
異世界に転生し、邪悪国家マイノグーラの指導者となった青年である。外見は優しげだが、その本質は異質な存在と評される。
・マイノグーラ・指導者
・国家運営を推進し、外交交渉も主導した
・ペペと友人関係を築き、フォーンカヴンとの同盟を成立させた
アトゥ
マイノグーラ創世時からイラ=タクトに従う最初の英雄であり、彼に深い忠誠心を抱いている少女である。
・マイノグーラ所属、英雄ユニット
・ドラゴンタン防衛を担当し、蛮族撃退に尽力した
・イスラとの確執を見せながらも戦力増強を目指した
モルタール老
マイノグーラの重鎮の一人であり、軍事魔術の専門家として国家の防衛力強化に貢献している。
・マイノグーラ所属、軍事顧問
・軍事魔術の研究開発を指導した
・蛮族討伐やアトゥ支援に従事した
ギア
マイノグーラの軍備担当者であり、蟲系ユニットの管理と生産を担っている存在である。
・マイノグーラ所属、戦士団指導者
・足長蟲の生産と哨戒任務を統括した
・国家防衛の後方支援を担った
エムル
建築と内政を担当するマイノグーラの若き副官であり、拓斗やイスラを支援して国家発展に尽力している。
・マイノグーラ所属、内政担当副官
・施設建設計画を立案し、学習施設の建設を提案した
・衛生兵たちの管理と育成にも関与した
メアリア・エルフール
マイノグーラで侍女として仕えるダークエルフの少女であり、キャリアの双子の姉にあたる。
・マイノグーラ所属、侍女
・外交視察においてドラゴンタンへ派遣された
・護衛衛生兵たちをまとめる役目を担った
キャリア・エルフール
メアリアの双子の妹であり、拓斗から厚い信頼を受ける侍女である。責任感が強く、国を背負う使命感を抱いている。
・マイノグーラ所属、侍女
・ドラゴンタン派遣団の代表を務めた
・ヴェスタらとの交渉拒否と都市防衛指揮を担当した
フォーンカヴンのペペ
フォーンカヴン所属の若き司祭であり、無邪気で外交交渉を打ち壊す天才的な楽観主義者である。
・フォーンカヴン所属、司祭
・マイノグーラとの外交交渉を友好ムードに導いた
・ドラゴンタン救援や大呪界調査に従事した
トヌカポリ
フォーンカヴンの古参女性であり、ペペを支える補佐役として慎重な外交姿勢を見せた存在である。
・フォーンカヴン所属、補佐官
・外交交渉を主導し、マイノグーラとの友好関係を築いた
・杖持ちたちとの議論で国益優先の決断を促した
アンテリーゼ
ドラゴンタンの都市長であり、蛮族襲撃や内政問題に悩みつつ都市を守ろうとする女性である。
・ドラゴンタン所属、都市長
・双子姉妹との交流を通じてマイノグーラへの理解を深めた
・ヴェスタの反乱に立ち向かい、都市防衛に尽力した
イチロウ
マイノグーラの衛生兵であり、ドラゴンタン視察団の護衛役を務めた青年である。
・マイノグーラ所属、衛生兵
・キャリアとメアリアの護衛を担当した
・護衛任務中に現地情報収集も行った
ジロウ
イチロウと同様に、視察団護衛を担当する衛生兵であり、明るい性格で場の空気を和らげる存在である。
・マイノグーラ所属、衛生兵
・双子たちの護衛任務に従事した
・ドラゴンタン市民との交流に貢献した
サブロウ
イチロウ、ジロウと行動を共にする衛生兵であり、慎重な一面を持ちながら仲間たちを支えた。
・マイノグーラ所属、衛生兵
・護衛任務中、仲間と連携して都市調査を補佐した
・突発的な事態にも冷静に対応した
ヴェスタ
クルクレイン商会の会長であり、ドラゴンタンを支配しようと企む商人である。
・クルクレイン商会所属、会長
・ポピル草による都市支配を目論んだ
・キャリア率いる護衛団により制圧された
ソアリーナ
クオリアの聖女であり、無垢なる民を守るために魔女エラキノと戦い続ける存在である。
・聖王国クオリア所属、聖女
・滅びた都市で啜りの魔女エラキノと対峙した
・啜られた民を浄化し、平和を守る誓いを新たにした
エラキノ
啜りの魔女と呼ばれる存在であり、幾度の討伐にも復活を繰り返す不死性を持つ災厄である。
・啜りの魔女
・滅びた都市に現れ、ソアリーナと戦闘を繰り広げた
・人々の死体を操る力を持ち、恐怖を撒き散らした
展開まとめ
第二章:生まれ芽吹く絶望の鼓動
プロローグ
異世界での目覚めと国家運営の開始
伊良拓斗は死後、異世界で目を覚ました。彼は『Eternal Nations』というゲーム内の邪悪国家マイノグーラの指導者となっており、最強でありながら初期能力が最弱の英雄アトゥと共に、平和で穏やかな国家運営を目指し活動を始めた。
新たな仲間と順調な発展
ダークエルフの加入を経て、マイノグーラは国家運営を順調に進めた。しかし、運命は静寂を許さず、次々と新たな問題を引き起こした。
聖王国クオリアとの対立
マイノグーラは、邪悪属性の国家であるがゆえに、聖なる国家クオリアと相性最悪であった。クオリアから派遣された聖騎士たちとの遭遇や戦闘が発生し、さらに「魔女厄災」や「聖女」といった存在が物語に深く関わり始めた。
戦闘後の違和感と相互理解
戦闘を経た後、アトゥは拓斗に対して微かな違和感を覚えた。拓斗が人を殺すことに対して平然とした態度を取ったため、彼女は拓斗が異質な存在に思え、不安を抱いた。しかし、その後の拓斗の様子を見て、彼女はそれが自らの思い過ごしであったと判断し、気に留めなくなった。
互いの懸念を超えて
拓斗もまた、アトゥの態度に一時的な違和感を覚えたが、彼女の明るい様子を見て安心した。互いに抱いた小さな不安は互いに確認されることなく消え去り、二人は再び協力して国家運営に専念することとなった。
マイノグーラのターンの継続
平和で穏やかな邪悪国家を築くため、マイノグーラはその歩みを続けた。世界には聖なる勢力、中庸の勢力、邪悪なる勢力が存在し、様々な思惑が交錯する中で、ゲームのようでいてゲームとは異なる現実の中、マイノグーラのターンは進行し続けた。
第一話 双子
宮殿完成と国家運営の地盤固め
聖王国クオリアの調査隊を撃破したマイノグーラは、国家運営のための施設建設を進め、ついに象徴である宮殿を完成させた。建設された宮殿は中流貴族の屋敷程度の規模であったが、維持管理を考慮すれば現状には十分であり、拓斗とアトゥは満足していた。
軍事魔術と破滅のマナの確保
軍事魔術の試験段階に入り、宮殿の完成により破滅のマナと魔力の供給も可能となった。通常の国家とは異なり、初期弱小の課題を克服しつつあったマイノグーラは、戦略的優位性を徐々に築きつつあった。
人口問題と人材確保の課題
国家運営が本格化するにあたり、知的労働層の不足が深刻化した。ダークエルフの流浪氏族の迎え入れを検討するも数は足りず、拓斗とアトゥは人材確保の新たな方策を模索していた。
侍女問題と誤解からの展開
宮殿に侍女が不在であることに気づいたアトゥは、拓斗の世話係を確保すべく奔走した。しかし幼い少女たちを集めた結果、拓斗への恐怖から全員が泣き出すという事態となり、深刻なコミュニケーション問題が浮き彫りになった。
双子の少女キャリアとメアリアとの出会い
新たに現れた双子の少女、キャリアとメアリアは、見た目や精神に大きな傷を抱えていた。彼女たちは過去に母親を失い、生き延びたことへの罪悪感に苦しんでいたが、拓斗はその心を救うべく言葉を尽くし、侍女として迎え入れることを決断した。
少女たちとの信頼関係構築
メアリアとキャリアは当初、拓斗に対して恐れと疑念を抱いていたが、拓斗の温かな言葉と接し方によって次第に心を開いていった。拓斗もまた、少女たちとの交流を通じて、自らのコミュニケーション能力の改善を目指し努力を重ねた。
国家外交の新たな課題とドラゴンタンの存在
一方、マイノグーラに隣接する街ドラゴンタンの調査が進められた。この街はフォーンカヴンという中立多種族国家に属しており、合議制によって運営され、科学技術よりも自然霊信仰を重視していた。さらに、ドラゴンタンには《龍脈穴》が存在し、これが将来の外交や戦略に大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。
第二話 会議
国家会議と新たな施設建設の決定
マイノグーラの国家会議が開かれ、拓斗を中心にアトゥ、モルタール老、ギア、エムルらが出席した。建築担当のエムルから、労働力と資材に余裕があるとの報告があり、次の建築物として《診療所》を建設する方針が決定された。これは国民の安全確保を最優先する判断であった。
資源状況と物質召喚の恩恵
エムルから資源状況の報告がなされ、食糧や木材は順調である一方、魔力の収支が悪化していることが指摘された。これは拓斗の物質召喚によって現代世界の物資を供給していることに起因していたが、人口規模を考慮すれば現状では問題ないと判断された。
軍事魔術研究の成果と今後の方針
モルタール老の手により《軍事魔術》の研究が完了し、破滅のマナによる強力な攻撃魔法が使用可能となった。しかし内政重視の方針により積極的使用は控えられた。次なる研究は魔法系の《六大元素》とすることが決定された。
軍事状況と哨戒体制の強化
ギアから新たな兵力として足長蟲五体の生産と、その運用状況が報告された。未開地域の調査には危険が伴うため、足長蟲は哨戒任務に転用されることとなった。またギアから《先進狩猟》の研究提案があったが、魔法研究優先のため却下された。
人口問題と今後の懸念
ダークエルフ同胞の迎え入れによる人口増強案が出されたが、その数は千から二千と推定され、国家運営には不十分であった。拓斗も解決策を即答できず、人口問題は引き続き保留とされた。
フォーンカヴンへの対応方針
隣接する中立国家フォーンカヴンの状況について報告があり、都市が蛮族の襲撃に苦しみ厳戒態勢にあることが判明した。援軍が来ない事情や飛び地である地理的状況が指摘され、難民発生の可能性が示唆された。マイノグーラでは難民受け入れによる人口増加案が検討され、最終的に外交使節を派遣して友好関係の構築を目指す方針が確認された。
第三話 遭遇
フォーンカヴンの現状と危機
フォーンカヴンは、独特の精霊信仰を持つ多種族国家であり、文明レベルは低いが平和に繁栄していた。しかし、ゴブリンやオークなどの蛮族による襲撃が続き、都市防衛が困難な状況に陥った。クレセントムーンの街も、修復途上の外壁を狙われ、ヒルジャイアントによる大規模な攻撃を受けた。
ペペとトヌカポリの奮闘
司祭である少年ペペが魔術でヒルジャイアントの動きを封じ、一時は防衛に成功した。しかし慢心からとどめを刺さず、危うく大惨事になりかけたところを、牛頭の老女トヌカポリの助力によって再び巨人を討伐することに成功した。ペペはそのお馬鹿な振る舞いにより叱責を受けつつも、兵士たちから信頼を集めた。
ドラゴンタン救援と大呪界の調査命令
フォーンカヴンの指導層は、蛮族襲撃が激化するドラゴンタン救援を決定した。同時に、大呪界に潜む災厄の調査も命じ、ペペとトヌカポリを派遣した。これは国家の存続をかけた大きな賭けであった。
マイノグーラとの邂逅
調査の途上、二人はマイノグーラのアトゥとその配下に遭遇した。異様な瘴気と闇の気配にトヌカポリは即座に危険を察知したが、両軍ともに衝突を避けるために静かに対応を模索した。その緊張を打ち破ったのは、空気を読まず無邪気に挨拶をするペペであった。
和平への進展
ペペの無邪気な行動により、緊張は一気に和らいだ。両軍は互いに敵意を解き、マイノグーラの首都へ向かうこととなった。道中でもペペは陽気に振る舞い、アトゥやダークエルフたちを戸惑わせつつも和やかな雰囲気を作り出した。
イラ=タクト王との謁見
フォーンカヴンの代表としてトヌカポリとペペは、マイノグーラの王イラ=タクトと謁見した。トヌカポリはその圧倒的な闇の存在感に圧倒されつつも、必死に平静を保った。しかし、ペペは場の空気を読まず「友達になろう」と呼びかけ、意外にもイラ=タクトはそれを快く受け入れた。この突飛な展開により、重苦しい雰囲気は一気に打ち消された。
交渉の行方
予期せぬ友好ムードの中、フォーンカヴンとマイノグーラは外交交渉を開始した。トヌカポリは、イラ=タクトという存在がもはや自らの理解を超えた存在であることを痛感しつつ、国家の命運を懸けた対話へと臨んだ。
第四話 歓待
宴の開催と料理への驚愕
トヌカポリはペペと拓斗の友情を祝う宴に招かれ、マイノグーラ特産の料理に驚愕した。提供された食材は非現実的な美味であり、トヌカポリは「堕落の食物」を疑ったが、アトゥによってその懸念は否定された。料理の豊かさから、マイノグーラの国家としての力を改めて認識した。
交易交渉と意外な合意
ペペが料理を売ることを提案し、マイノグーラ側はこれを即座に了承した。トヌカポリは当初慎重な態度を取ったが、日用品や雑貨を対価とする好条件に交渉は順調に進んだ。マイノグーラ側の対応は異様なほどに寛容であり、トヌカポリは違和感を覚えつつも合意に至った。
フォーンカヴンの調査目的と戦力不足の露見
トヌカポリは大呪界調査の名目で訪問した理由を説明し、蛮族の脅威に対する懸念を強調した。しかしペペが不用意に国家の戦力不足を漏らしてしまい、フォーンカヴンの弱体化が明らかになった。それにもかかわらず、マイノグーラ側は敵意を見せず、逆に支援を申し出た。
マイノグーラの平和志向の確認
アトゥと拓斗は、マイノグーラが外部への侵略意思を持たず、平穏を望んでいることを強調した。トヌカポリは半信半疑ながらも、彼らの態度と行動から嘘ではないと判断し、交渉を続行した。
支援と対価の提示
ドラゴンタン防衛支援の話が進み、トヌカポリはマイノグーラに対して改めて条件を確認した。するとアトゥは龍脈穴の共同管理を要求し、フォーンカヴンの重大な資源への関与を求めた。トヌカポリはその要求に驚愕したが、相手の技術力を前にして受け入れるしかなかった。
フォーンカヴンの決断と同盟成立
トヌカポリは最終的にペペの判断に託し、ペペもマイノグーラとの友好を選択した。これにより、フォーンカヴンとマイノグーラの正式な同盟が成立した。国家の未来を賭けた大胆な決断でありながら、彼らは確かな希望を感じ取っていた。
第五話 検討
会合後のマイノグーラ重鎮たちの対応策検討
フォーンカヴンとの会談を終えた拓斗たちは、交易品や防衛戦力の選定、大地のマナを得るための龍脈穴確保について早急に対応策を練り始めた。重鎮たちは急な交渉成立を受け、後追いで方針を固める必要に迫られていた。
ペペの迂闊な失言とその意図への疑念
ペペの稚拙な交渉態度が話題に上がり、モルタール老らはその迂闊さを懸念した。拓斗もペペの失言によってマイノグーラ側が有利な条件で交渉を進められたことを認めつつ、彼の本心について疑念を抱きつつも保留と判断した。
初めての友人との友情と国家の平和
拓斗はペペとの友情を素直に喜び、初めて得た平穏な外交関係に感動していた。しかしながら、国家間の友好は永続しないという現実も認識し、油断せずに情勢を見守る覚悟を固めた。
フォーンカヴンとの協定内容と課題の確認
マイノグーラではフォーンカヴンとの国交樹立、相互貿易、防衛協定を交渉結果として確認した。しかし、そもそもフォーンカヴンの実態についての情報が乏しいという基本的な問題に直面し、まずは現地調査が必要との結論に至った。
ドラゴンタン視察計画と人員選定
蛮族の脅威が高まる状況下で、防衛力を削るわけにはいかず、視察人員は小規模に留める方針となった。観光名目での訪問案が出され、双子のキャリアとメアリアを代表として派遣する案が採用された。
双子の派遣に対する懸念と説得
幼い少女たちの派遣に拓斗は強い懸念を抱いたが、双子の熱意と真摯な訴えに心を動かされた。さらにメアリアの助言を受けた拓斗がアトゥへの感謝と謝罪を表明したことで、アトゥの機嫌も回復し、派遣計画は正式に承認された。
護衛役の選定と意外な人材起用
双子の護衛兼サポートには、以前生産した特殊ユニットを起用することが拓斗によって決定された。万全の体制を整え、視察任務に臨む準備が整えられた。
第六話 護衛
診療所の完成と護衛選定
マイノグーラに新たに建設された診療所にて、拓斗は双子のキャリアとメアリアの護衛役を選定するため、診療所に赴いた。建物は巨木を利用した白色の施設であり、衛生兵たちが配置されていた。
衛生兵たちとの対面
施設内では、ペストマスクをかぶった衛生兵たちが登場し、拓斗に対して過剰な礼儀と歓喜を示した。見た目とは裏腹に元気な彼らの態度に、拓斗と同行者たちは困惑しつつも護衛役としての適性を確認した。
衛生兵たちへの指示と双子への指揮権付与
拓斗は衛生兵たちに、双子の護衛とドラゴンタンの街の視察を命じた。しかし、衛生兵たちの過剰な興奮に不安を抱き、急遽指揮権をキャリアとメアリアに委ねることを決定した。
衛生兵たちへの名付けと歓喜
衛生兵たちにはイチロウ、ジロウ、サブロウと名付けが行われ、彼らはそのことに異常なまでに歓喜した。特にメアリアが彼らの盛り上がりに同調してしまい、現場の混沌はさらに増した。
キャリアへの責任と葛藤
混沌とする護衛隊に対し、キャリアは必死に指導を試みたが、その返答には確信が持てず、初めての任務に対する不安から胃痛を覚える事態となった。拓斗はキャリアに全幅の信頼を寄せ、最終的な責任を託した。
不安を抱えたままの準備完了
衛生兵たちとメアリアの騒々しさに頭を抱えながらも、キャリアは与えられた役目を果たす決意を新たにした。出発までのわずかな時間に、さらなる準備と覚悟を固める必要に迫られていた。
第七話 都市長
アンテリーゼ都市長の苦悩と焦燥
ドラゴンタンの都市長アンテリーゼは、蛮族による襲撃や国家間の緊張によって、精神的にも肉体的にも疲弊していた。破滅の国家マイノグーラと国交を結んだ知らせを受けた彼女は、その重圧に絶望し、日々の業務を酒で紛らわしていた。
マイノグーラ使節との緊迫した初対面
マイノグーラからの使節、キャリアとメアリア姉妹、および護衛の衛生兵たちとの面会に臨んだアンテリーゼは、幼い少女たちが重要人物であることに驚愕した。彼女は、相手を国主に寵愛される存在と認識し、最大限の配慮を払う決意を固めた。
緊張の中の誤解と和解
護衛役のジロウが今回の訪問は単なる顔見せであり、公式交渉ではないと説明したことで、アンテリーゼは安堵した。緊張が和らいだことで、和やかな雰囲気が訪れ、互いに友好的な関係を築き始めた。
ドラゴンタン市内視察と交流の深化
案内役を買って出たアンテリーゼは、双子の少女たちを街へ案内した。食糧事情の悪さや特産品に関する話を交えながら交流を深め、双子たちはアンテリーゼに親しみを抱くようになった。
都市の治安悪化と新たな懸念
視察の中でメアリアがポピル草という麻薬性植物を発見し、都市にそれが流通している事実を把握した。都市の疲弊と治安悪化を受け、護衛たちは警戒を強める必要を認識した。
商人ヴェスタとの接触と不穏な提案
双子はヴェスタという胡散臭い商人から、ポピル草の栽培拡大とマイノグーラとの独自取引を持ちかけられた。しかし、キャリアは提案を即座に無視する決断を下し、王命に忠実に行動する姿勢を貫いた。
龍脈穴の発見と双子の成長
調査の中で、双子は龍脈穴と呼ばれる神秘的な場所を発見した。これにより、都市に秘められた資源の存在が明らかになった。双子は王への報告の重要性を自覚し、自らの使命を再確認した。
都市の混乱と新たな危機
蛮族による襲撃が発生し、ドラゴンタンは緊急事態に陥った。アンテリーゼは都市防衛のため職務に戻り、双子たちは自衛と調査の任務を継続する覚悟を固めた。
第八話 真なる邪悪
都市長アンテリーゼとの別れと交流の深まり
ドラゴンタン滞在の最終日、キャリアとメアリアは都市長アンテリーゼと土産物を買い、遅れていた約束を果たす形で街の名物を味わった。応接室で別れを惜しむ中、双子がマイノグーラ内で六番目と七番目の地位にあることが明かされ、アンテリーゼは驚きながらも二人との友情に価値を見出した。
ヴェスタの乱入と都市庁舎の占拠
別れの直前、クルクレイン商会の商会長ヴェスタが部下を引き連れて乱入した。ヴェスタは都市庁舎をすでに掌握しており、ポピル草の栽培を目論んでドラゴンタンを支配下に置く計画を明かした。アンテリーゼはこの裏切りに衝撃を受けながらも、キャリアたちを守る決意を固めた。
キャリアの宣戦布告とマイノグーラの意志
キャリアはヴェスタの提案を一蹴し、護衛たちに反撃を指示した。マイノグーラの王イラ=タクトの承認を得ていることを明かし、ドラゴンタン支配を狙うヴェスタ一味への徹底抗戦を宣言した。
ブレインイーターたちの狂気と戦闘の開始
護衛であるブレインイーターたちは正体を現し、かつて人間だった皮をまとって歓喜した。ヴェスタとその配下は圧倒的な恐怖に包まれ、必死に命乞いをするが、キャリアの命令により交渉は一切拒否され、戦闘が開始された。
血塗られた応接室と双子の純粋な謝罪
戦闘は圧倒的な結果に終わり、応接室は血で染まった。キャリアは「部屋を汚した」ことを純粋に謝罪し、アンテリーゼに対して上目遣いで許しを請うた。その姿にアンテリーゼは善意と悪意が無邪気に同居する双子の本質を悟った。
真なる邪悪との対峙とアンテリーゼの覚悟
キャリアたちの純真さに隠された邪悪さを理解したアンテリーゼは、現実を受け入れる覚悟を固めた。護衛たちのデリカシーのない発言により恥をかかされたものの、キャリアの配慮と明るさに救われ、再び友情を確認し合った。
混乱と笑いに包まれる結末
護衛たちへの制裁を行ったキャリアの一幕により、応接室は一時的な笑いに包まれた。しかし、飛び散る血の中でアンテリーゼはこの非現実的な光景を受け止めながら、乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
第九話 反省会
双子の帰還と拓斗の叱責
ドラゴンタンから帰還したキャリアとメアリアは、帰国後、応接室の惨状を隠蔽しようとしたことが発覚し、拓斗はアトゥから厳しく叱責された。双子のやりすぎた行動に対し、アトゥは深い怒りを示し、関係者全員に説教を行ったことで、一連の騒動は一旦収束した。
ドラゴンタンへの対応会議の開始
拓斗、アトゥ、ダークエルフ幹部たちはドラゴンタン問題に関する対応会議を開催した。双子も出席したが、冒頭でアトゥから厳しい注意を受け、反省の態度を見せた。
ドラゴンタンの現状分析と移民計画
双子の報告により、ドラゴンタン内部の荒廃と住民の不安が明らかとなった。移民受け入れを視野に入れ、フォーンカヴン本国のダークエルフ同胞の救出と、ドラゴンタン住民の受け入れが議論された。
蛮族襲撃問題への対応検討
連日のゴブリン、オーク、ヒルジャイアントによる襲撃により、ドラゴンタンは疲弊していた。防衛力不足が深刻であり、マイノグーラからの支援部隊派遣が必要と判断された。
派遣部隊の編成と人選
防衛部隊にはアトゥとモルタール老、さらにモルタールの弟子たちが参加することが決定された。ギア率いる戦士団はマイノグーラ本国防衛に残留し、都市の安全を確保する方針が採られた。
英雄イスラの登場と防衛体制の強化
新たに生産された英雄イスラがマイノグーラ防衛の要となることが決まり、足長蟲など昆虫ユニットを強化する計画が発表された。これにより、都市防衛能力は大幅に向上する見通しとなった。
最終承認と派遣決定
拓斗が提案された作戦を承認し、ドラゴンタン派遣計画は正式に決定された。アトゥは蛮族との戦いで新たなスキルを奪取し、自身と国家の強化を目指す意欲を見せた。
第十話 全ての蟲の女王
新たな英雄召喚への準備と緊張
マイノグーラでは拓斗とアトゥを中心に新たな英雄「イスラ」の召喚準備が進められた。双子のキャリアとメアリアも興味を示し、住民たちの努力によって資源が集められ、儀式のための準備が整えられた。
イスラ召喚に対する不安と対策
召喚されるイスラが従順かどうかを拓斗とアトゥは懸念していた。場合によっては謀反の危険もあるため、アトゥが対処する覚悟を固め、儀式の場にはダークエルフたちも控え、万が一に備えていた。
英雄イスラの降臨と忠誠の確認
召喚儀式によって現れたイスラは異形の姿ながら、イラ=タクトへの忠誠を示した。イスラは過去のゲームでの記憶を保持しており、拓斗を主として認識し、再び仕えることを喜びとした。
イスラとアトゥの微妙な関係
イスラはアトゥに対して好意的に接したが、アトゥは警戒心を露わにし、互いに軽い衝突を繰り返した。イスラは余裕をもって対応し、アトゥの忠誠心を可愛らしく受け止めた。
イスラへの国家防衛任務の付与
拓斗はイスラにマイノグーラの防衛を任せることを正式に命じた。イスラの特性である蟲ユニットの強化能力は、国家防衛において大きな力となるためであった。
アトゥの派遣と二人の別れ
一方、アトゥは攻勢担当としてドラゴンタンへの派兵を命じられた。拓斗とアトゥは一時的な別れに不安を覚えつつも、互いの信頼を胸に抱き、役割を全うすることを誓い合った。
イスラの覚悟とマイノグーラへの忠誠
イスラは新たな命を得た奇跡に感謝し、主である拓斗のために全力を尽くす覚悟を固めた。マイノグーラの防衛と繁栄を誓い、彼女は静かにその役目を受け入れた。
閑話 杖持ちたちの決断
アンテリーゼからの報告とトヌカポリの苦悩
フォーンカヴンへ帰還したトヌカポリは、ドラゴンタン都市長アンテリーゼからの手紙を受け取り、マイノグーラ訪問団との交流と、それに続く騒動の顛末を知った。混乱した内容にトヌカポリは苦笑しつつも、必要な部分を抽出し、後に励ましの言葉と酒を送る手配を心に留めた。
双子への印象とマイノグーラへの警戒
かつて孫のように感じた双子が、実際には邪悪な存在であった事実に、トヌカポリは改めて驚かされた。見た目に騙された自らを戒めると同時に、マイノグーラとの友好関係を築けた幸運に胸を撫で下ろした。
杖持ちたちの招集と状況説明
街の中心に集まった杖持ちたちは、トヌカポリからマイノグーラとの一件について報告を受けた。超常の存在に対する警戒感を抱きつつも、事実に即した対処が必要であることを理解していた。
マイノグーラとの対応方針を巡る議論
トヌカポリが提供した情報に基づき、杖持ちたちは長時間にわたり議論を重ねた。破滅の王の異質さに戸惑いながらも、現実的な利害を優先し、国家の安定を考えた末に結論を導き出した。
フォーンカヴンとマイノグーラの友好関係の追認
議論の末、フォーンカヴンはマイノグーラとの友好関係を正式に追認することを決定した。ペペとトヌカポリが先行して築いた関係を覆すことは信義にもとる行為であり、国益にも反するためであった。
ペペへの苦言と決意の共有
会議後、杖持ちたちはペペの軽率さを愚痴りつつも、最終的には彼の選択を受け入れた。不安と矛盾を抱えながらも、彼らの心には不可思議な納得感が芽生え、マイノグーラとの道を歩む覚悟を固めた。
第十一話 国母
アトゥ出立後の拓斗とイスラの新体制
アトゥがドラゴンタンへ出立した後、マイノグーラ宮殿ではイスラが拓斗の身の回りを管理する役割を担うこととなった。自堕落な生活を送っていた拓斗は、真面目で潔癖なイスラによる厳しい指導を受け、次第に王としての自覚を促されていった。
イスラによる内政支援と国民からの信頼
イスラは国母のような存在となり、城内外で広く信頼を得ていた。彼女は戦士団の副官エムルの悩みにも応じ、軍備品損壊問題や人材育成面で積極的に支援し、国政の安定に貢献していた。
内政計画の議論と施設建設の選定
イスラとエムルは今後の国家発展に向け、施設建設の方針について議論を重ねた。当初、防衛強化のため《生きている葦》の建設が有力視されたが、エムルの提案によって教育基盤拡充の重要性が再認識され、《学習施設》の建設案が浮上した。
キャリアの助言と決断への影響
双子のキャリアの意見を聞いたイスラは、彼女の「もっと王のために勉強したい」という素直な願いに心を打たれた。これを受け、イスラたちは最終的に《学習施設》建設を優先する案を拓斗に上申し、正式に承認された。
アトゥの戦果と蛮族対策の進展
一方、ドラゴンタンに派遣されていたアトゥは、予想以上の成果を挙げていた。拓斗とイスラは、蛮族からの能力収奪が順調に進んでいることに満足し、今後の国家拡張と防衛強化への自信を深めた。
第十二話 異変
アトゥのドラゴンタン防衛任務
拓斗がイスラに生活態度を矯正されていた頃、アトゥはドラゴンタンにて蛮族駆除の任務に従事していた。ゴブリンの集団を次々と排除する彼女の姿は、もはや防衛というより狩猟であった。
都市長アンテリーゼとのやりとり
アトゥは臨時天幕にて都市長アンテリーゼから報告を受け、彼女の極度の怯えと小物ぶりに半ば呆れつつも気遣いを見せた。ドラゴンタン市民の多くがアトゥを「タコの亜人」と誤認していることにより、摩擦が起きていない状況にアトゥは安堵した。
モルタール老との会話と能力収奪の成果
モルタール老との対話により、アトゥはこれまでに収奪した蛮族の能力《野外活動》《体力増強》《怪力》《再生》などを整理した。これにより彼女の戦闘力は飛躍的に向上していた。
ヒルジャイアントとの戦闘と異変の発生
アトゥは新たに出現したヒルジャイアントと交戦し、モルタール老の支援魔法《破滅の大地》の恩恵を受けながら圧倒的な力で撃破した。しかし、討伐後ヒルジャイアントの死体は突如消失し、代わりに見知らぬ金貨が残された。
モルタール老との協議と謎の深まり
アトゥはモルタール老と共にこの金貨を調査したが、大陸のいずれの国家にも属さない未知の貨幣であることが判明した。蛮族の出現と消失現象に関連する新たな脅威の存在が疑われた。
突如現れた蛮族の大群
緊急報告により、地平線を埋め尽くす蛮族の大群が現れたことが判明した。アトゥとモルタール老はこの異常事態に直面し、対応を迫られることとなった。
第十三話 胎動
突如発生した異常事態
マイノグーラ宮殿で日常を過ごしていた拓斗は、突如ドラゴンタン南方に大量の蛮族が出現したとの報告を受けた。足長蟲からもたらされた映像により、敵軍の規模は一万を超えることが判明し、拓斗は急ぎ対応を開始した。
イスラの合流と迅速な初動対応
街の視察中であったイスラも異変を察知し、宮殿に帰還した。拓斗は彼女と情報を共有し、敵勢力の正体が不明である以上、迅速な情報収集と初動行動の重要性を再認識した。
アトゥからの緊急報告
ドラゴンタン防衛任務中のアトゥから、ヒルジャイアント撃破後に死体が消失し、未知の金貨が出現したとの報告が届いた。これにより、単なる蛮族の増加ではなく、異質な存在の介入が疑われる事態へと発展した。
新たな敵の存在への気づき
拓斗は自身の失念に悔やみを覚えながらも、同様に異世界から召喚された敵対的勢力の可能性を直感した。かつてプレイした『Eternal Nations』や異世界ゲームに関連する文明ではない、未知の敵勢力の介入を強く疑った。
金貨の正体と推測
アトゥから共有された金貨の映像を観察した拓斗は、そこに刻まれた太陽の紋章と文字から、かつてプレイしたロールプレイングゲームに由来する存在であることを突き止めた。これにより、新たな敵がRPG世界から現れた勢力であるとの推測に至った。
危機への覚悟と対策開始
拓斗はイスラに現状を説明し、対話の余地がない敵であることを確認した。マイノグーラは新たな脅威に直面し、これまでにない規模と性質を持つ戦いに備え、即座に防衛と情報収集体制を整える必要に迫られた。
閑話 啜りの魔女
死の街に佇む聖女ソアリーナ
クオリア北方州の滅びた鉱山都市にて、聖女ソアリーナは静かに荒廃を見つめていた。すべてを失った地で、彼女は生者の存在しない銀世界を前に、かつての人々の営みを思い起こしていた。
啜りの魔女エラキノとの再会
突如、無邪気な歌声と共にエラキノが姿を現した。桃色を基調とした奇抜な衣装をまとい、無邪気さと残酷さを併せ持つその存在に、ソアリーナは目の前の少女こそ災厄であると確信した。
神罰執行とエラキノの不死性
ソアリーナはエラキノに対し、過去に十七回もの神罰を執行してきた事実を告げた。神罰とは確実な死を意味するはずであったが、エラキノは何度殺されても同じ存在として復活を繰り返していた。
エラキノの挑発とソアリーナの覚悟
エラキノは無邪気に死を笑い飛ばし、ソアリーナに対して不満を漏らした。ソアリーナは無垢なる民を守る聖女として、邪悪な存在に容赦しない覚悟を改めて示した。
戦闘の開始と啜られた民たち
エラキノの呼びかけに応じ、かつて街に住んでいた人々の死体が操られ、ソアリーナを取り囲んだ。彼らは脳を啜られた痕跡を残しつつも、なお敵意を宿してソアリーナに迫った。
かつての民への哀悼と殲滅
ソアリーナは神に祝詞を捧げ、かつての民を業火によって安らかに葬った。雪原は炎に包まれ、彼らの無念を浄化するかのようにすべてを焼き払った。
ソアリーナとエラキノの直接対決
混乱の中、ソアリーナはエラキノへと突進し、聖杖によって彼女の身体を貫いた。十八回目の討伐が達成され、魔女は再び血を流して倒れた。
絶えぬ脅威と決意の深化
今回もエラキノの力の本質を解明することはできず、ソアリーナは現状が膠着していることを自覚した。いずれ現れる十九人目のエラキノに備え、彼女は復活の秘密を突き止めねばならないと心に誓った。
平和を守る聖女の誓い
無邪気な悪意に晒される民を守るため、ソアリーナは正義と平和のための戦いを続ける覚悟を新たにした。その決意を胸に、彼女は再び聖杖を握りしめた。
同シリーズ





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