絶頂除霊 ! 3巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 5巻レビュー
物語の概要
■ 作品概要
本作は、落ちこぼれ退魔師の主人公・古屋晴久たちが、自身に宿る呪われた特殊能力と過酷な怪異事件に立ち向かう退魔活劇の第4巻である。 本巻では、晴久の両手から顕現した謎の少女霊「ミホト」の危険性が退魔師協会に問題視され、十二師天会議によって晴久の処遇が問われる。晴久と宗谷美咲は、ミホトを制御するための強大な霊力を引き出すべく、宗谷家に伝わる《人式神の儀式》――通称「特定の行為をしなければ出られない部屋」という異常な試練に挑むことになる。一方その裏では、魔族アンドロマリウスの陰謀によって復活した特級霊能犯罪者・鹿島霊子が暗躍を始めていた。彼女は大量の悪霊とラブドールの軍勢を率い、神族が守る聖域「紅富士」へ大規模な襲撃を仕掛け、晴久たちはかつてない激戦に巻き込まれていく。
■ 主要キャラクター
古屋晴久:主人公。対象を強制的に絶頂させて除霊する「絶頂除霊」の能力(呪い)を持つ。両手に強力な少女霊ミホトを宿しており、その存在を危惧されて幽閉の危機に立たされる。
宗谷美咲:晴久のチームメイト。他人の性情報が視える「淫魔眼」の呪いを抱える。晴久との《人式神の儀式》を通じて強大な霊力を発現し、ミホトの制御と再封印に挑む。
ミホト:晴久の腕から顕現した謎の銀髪少女霊。大魔族サキュバス王の成れの果てとも疑われる、魔族すら圧倒する危険な力を持った存在である。
皇樹夏樹:十二師天の一人であり、神族「紅葉姫」の依り代を務める皇樹家の当主。紅葉姫が男性にしか憑かないという伝承のため、女性であることを隠し、男性として振る舞い続けてきた孤独な戦士である。
鹿島霊子:特級霊能犯罪者のネクロマンサー。魔族の協力を得て完全復活を果たし、神族である紅葉姫を支配するために悪霊とラブドール(人形)の軍勢を操って紅富士を襲撃する。
■ 物語の特徴
本作は、過激なエロコメディ要素とシリアスで本格的な退魔バトルが融合している点が最大の特徴である。 第4巻では、美咲と晴久が閉じ込められる「セックスしないと出られない部屋」というコミカルかつ刺激的な試練から一転し、後半では無数の悪霊やラブドールの群れに包囲される絶望的な防衛戦へと突入する落差が読者を引き込む。また、過酷な状況下での美咲の霊力覚醒や、性別を偽り重圧に耐えてきた皇樹夏樹の秘密の解放など、キャラクターたちの抱えるトラウマや心理に焦点を当てた重厚なドラマも描かれている。さらに、ミホトの正体やサキュバス王の呪いの核心に迫る手がかりが次々と示され、シリーズ全体を通しても重要なターニングポイントとなる一冊である。
読んだ本のタイトル
出会ってひと突きで絶頂除霊 ! 4
著者:赤城大空 氏
イラスト: 魔太郎 氏
出版社:小学館(ガガガ文庫)
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あらすじ・内容
4巻電子特典「ヒロインたちの性癖プロフィール」、Kindl版は宗谷美咲&南雲睦美ver.!!
彼女たちのエッチな魅力が丸わかり!? 作者コメントもついてます~!
激突! 絶頂除霊VSラブドールの群れ!
――サキュバス王。
それは、かつて世界を滅ぼしかけたという大魔族。
晴久の腕から顕現した謎の少女霊ミホト。
魔族さえ圧倒するその力を危惧した退魔師協会は、十二師天に晴久の処遇を一任した。
そこで浮上する、宗谷美咲の覚醒によるミホトの制御の可能性。それができれば、サキュバス王の事を知るかもしれない「神族」を擁す、皇樹家に招致してもらえる事となる。
宗谷の血筋に秘められた力を美咲が解放できれば呪いを解く未来に近づく。
その報に期待する晴久だったが、その先に待つ《人式神の儀式》という試練の恐ろしさに気づいていなかった……。
……で、晴久と美咲が閉じ込められたのが「セックスしないと出られない部屋」。
何これ!? この一族、頭おかしいの!?
一方その裏で、謎の存在がラブドールの軍勢を動かし始める。
ゲリラ的に起こる、拠点への襲撃。退魔師協会を混乱に陥れる事件が多発するなか、自体は急激に悪化していく。
そしてぶつかる、絶頂除霊とラブドールの軍勢。
――あああああああああああっ!?
闇夜に響き渡るは、苦しみの怨嗟。
手に汗握る、退魔活劇第4弾!! ……で、結局セックスしちゃったの?
出会ってひと突きで絶頂除霊!4
感想
この巻も表現の自由への挑戦が散見出来る。
古屋の絶頂除霊の素、ミホトを制御出来るように宗谷美咲と古屋晴久が試練を受ける。
その名も宗谷家秘伝!
「S●Xしないと出れない部屋!」
アホかー!w
それでも暴れるミホトに、皇樹家秘伝のアイテム、睾●に付ける孫悟空の輪っか!
アホかーー!!ww
そんな、中でストーリーは絶頂除霊VSラブドールの群れ!
生命の危険なんだが、襲って来るのがラブドールというシュールさ。
やっつけるのが絶頂除霊というアホさが凄い。
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絶頂除霊 ! 3巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
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考察・解説
鹿島霊子の復活
『出会ってひと突きで絶頂除霊!』における特級霊能犯罪者のネクロマンサー「鹿島霊子」の復活と暗躍の経緯について解説する。
かつて退魔師協会監査部長のナギサが命懸けで封印した鹿島霊子が、魔族アンドロマリウスの手によって解放され、日本各地の封印地を破壊しながら神族の支配を目論むまでの全容は以下の通りである。
監査部長ナギサによる決死の封印解除と廃旅館での悪霊群取り込み支配による完全復活
鹿島霊子は、かつて退魔師協会監査部長のナギサが命懸けで能力を封印したほどの極めて危険な人物である。
・魔族アンドロマリウスの手によってその封印が解除されてしまう。
・力を取り戻した霊子は、廃旅館で自分を襲ってきた悪霊の群れをあえて迎え入れた。
・逆にそれらを自らの身体へ取り込んで支配下に置くことで、完全な復活を果たした。
魔族アンドロマリウスとの日本各地の封印地破壊契約と紅葉姫およびミホト情報の受領
封印を解いてくれたアンドロマリウスから、霊子は報酬の対価として日本各地の管理された封印地を手当たり次第に破るという仕事を依頼される。
・アンドロマリウスの真の目的は、国内に隠されているサキュバス王の遺物を探し出すことであった。
・霊子にとっては解放された怪異や強力な霊体を自らの支配下に置けるという魅力的な提案であった。
・さらにアンドロマリウスは、霊子の欲望を煽るため、皇樹家が守護する神族である紅葉姫や、古屋晴久の両手に宿る謎の少女霊ミホトの情報を受領させた。
術式人形を器とした悪霊軍勢の組織と協会戦力分散陽動および聖域紅富士への大規模侵攻
完全復活を遂げた霊子は、何百何千もの悪霊を自身の影に閉じ込め、アンドロマリウスから提供された術式人形を器として悪霊を操る軍勢を作り上げた。
・日本各地の封印地を次々と襲撃して退魔師協会の戦力を分散させるという陽動を行う。
・彼女の本命である神族・紅葉姫を支配するため、皇樹家の聖域である紅富士へと大規模な侵攻を開始した。
まとめ
鹿島霊子の復活と暗躍を巡る一連の動向は、魔族の戦略的解放によって蘇った最凶の死霊術師が、無数の悪霊と人形の軍勢を率いて退魔師協会および神聖なる領域へ壊滅的な打撃を与え始めた未曾有の危機の記録である。ナギサの施した絶対的封印を潜り抜け、悪霊を逆に肉体へ統合して力を増幅させたプロセスは、彼女の規格外の霊能特性を示している。サキュバス王の遺物捜索を目論む魔族と利害を一致させ、戦力分散の陽動を仕掛けながら本命である紅富士の紅葉姫強奪へと舵を切った顛末は、この侵攻が単なる犯罪者の暴走にとどまらず、晴久の内に眠るミホトをも標的とした数万規模の絶望的な包囲防衛戦の幕開けであることを厳密に証明している。
十二師天会議
『出会ってひと突きで絶頂除霊!』における「十二師天会議」は、第4巻で行われた退魔師協会の最高意思決定機関による重要な会議であり、主人公・古屋晴久の今後の処遇を決めるためのものである。この会議が開かれた背景と、そこでの議論・結論は以下の通りである。
ミホト顕現に伴うサキュバス王の遺物と天人降ろしの相反特性に関する処遇最終決定の必要性
退魔師協会は未知の呪いをどう扱うべきか判断できず、監査部長ナギサによって保留されていた晴久の処遇を最終決定するため、最高位の実力者である十二師天が集結して会議を開くこととなった。
・晴久は第3巻における事件において、両手に宿る呪いの真の姿である少女霊ミホトを顕現させ、強大な魔族であるアンドロマリウスを撃退した。
・しかし、ミホトは周囲に危害を加えかねない極めて危険な存在であった。
・さらに晴久の力は、サキュバス王の遺物と天人降ろしという相反する性質が同居しているように見えた。
本部待機室における晴久の術式拘束と隠された前提情報を巡る最高位術者たちの集結
会議には、退魔師協会会長である葛乃葉菊乃をはじめ、多々羅刃鈴鹿、白丘尼椿、土御門晴親、童戸手鞠、宗谷真由美ら十二師天と、次期当主として葛乃葉楓が出席した。
・当事者である晴久も本部へ呼ばれたが、会議室へは入れず待機室で術式によって拘束される。
・これは、呪いに関して晴久本人には聞かせられない隠された情報を前提として議論を行うためであった。
皇樹夏樹による即座処分要求と神族確認完了までの長期間幽閉案に対する他術者らの支持
会議が始まると、皇樹家の当主である十二師天・皇樹夏樹は、晴久の持つ力を穢らわしいものと断じ、即座に処分すべきだと強硬に主張した。
・他の十二師天たちも、神族との確認が済むまでは晴久を長期間幽閉する案を支持する。
・これにより、晴久は絶望的な状況に追い込まれていた。
宗谷真由美の介入に伴う美咲の制御力提示と人式神の儀式突破を条件とした幽閉回避の条件付き決定
この幽閉の流れを大きく覆したのが、宗谷美咲の母親であり十二師天の一人でもある宗谷真由美であった。
・真由美は、暴走したミホトを美咲が再封印した事実を挙げ、美咲の力が安定してミホトを制御できるのであれば問題は解決する、と主張した。
・晴久の処遇を、宗谷家の後継者にふさわしいパートナーを選ぶ試験である人式神の儀式の結果に委ねるよう提案し、会議の流れを変える。
・最終的な結論として、美咲が高い霊力を安定して発揮しミホトを制御できるなら、晴久は貴重な戦力として活動を続けられる。
・しかし、失敗すれば危険を防ぐため長期間幽閉される、という条件付きの決定が下された。
天人降ろし誤解清算に向けた夏樹の聖域紅富士招待提案と神族紅葉姫によるミホト正体霊視
会議の結論に不満を抱えつつも従った夏樹は、晴久が天人降ろしと誤解されている状況を清算するため、ある提案をした。
・もし晴久たちが宗谷家の儀式を乗り越えて力を制御できたなら、皇樹家の聖域である紅富士へ招く。
・神族である紅葉姫にミホトの正体を霊視してもらう、というものであった。
・十二師天会議は晴久に幽閉か宗谷家の儀式の突破かという二者択一を迫る。
・第4巻における宗谷家での過酷な試練や、紅富士での神族との謁見へと物語が大きく動く直接的なきっかけとなった。
まとめ
十二師天会議を巡る決定は、呪術界の秩序を揺るがす規格外の異能に対して、長期間の幽閉という排除措置から、後継者試験を通じた制御能力の実証へと道を開いた重大な政治的妥協の記録である。晴久を隔離した状態で夏樹による処分要求や他術者らの幽閉支持が進行したプロセスは、協会が抱く防衛本能の冷徹さを示している。最終的に、真由美が美咲の再封印実績を盾に人式神の儀式の成否へと処遇を連動させ、夏樹が妥協条件として紅富士での紅葉姫による霊視を提示した顛末は、この最高意思決定が単なる一学生の処分にとどまらず、晴久と美咲に名家の存亡と世界の命運を賭けた過酷な試練を強いるための絶対的な分水嶺となったことを厳密に証明している。
宗谷家の儀式
『出会ってひと突きで絶頂除霊!』における「宗谷家の儀式(人式神の儀式)」は、第4巻で行われる非常に重要な出来事である。十二師天会議において、主人公・古屋晴久の中に潜む危険な少女霊ミホトの処遇が問われた際、宗谷美咲の母親である宗谷真由美の提案により、美咲がミホトを制御できるほどの強大な霊力を安定して発揮できるかを証明する試験として実施された。この儀式の全貌と、明らかになる宗谷家の秘密は以下の通りである。
刺激映像が流れる結界密室試練の間への幽閉と婿入り既成事実化を狙う真由美の意図
晴久と美咲は、宗谷家の地下深くにある試練の間と呼ばれる高等結界の密室へ落とされる。
・長期間生活できる設備が整えられている一方で、壁の掛け軸には特定の行為をしなければ出られないという異常な条件が記されていた。
・判断力を乱すための刺激の強い映像が常に流され続けている。
・真由美は、晴久と美咲が結ばれて晴久が宗谷家に婿入りするための既成事実を作る目的も兼ねて、二人をこの部屋に閉じ込めた。
掛け軸の偽条件と親密接触の感覚を霊力変換する人式神の真実および淫魔眼による能力封印
実は、掛け軸の条件はフェイクであり、この部屋から脱出するための本当の条件は内部で一定以上の霊力を発生させることであった。
・ここで、宗谷家に代々伝わる人式神の真実が明かされる。
・宗谷家の女性は、心から信頼する相手との親密な接触から得た感覚を、膨大な霊力へ変換できるという特異な体質を持っている。
・人式神という言葉は、特別な契約術式があるかのように見せかけ、この性質を外部から隠すための単なる方便に過ぎなかった。
・美咲がこれまで落ちこぼれとされるほど霊力が低かったのは、他人の性情報が視えてしまう淫魔眼の呪いのせいで、親密な行為そのものを強く忌避し、無意識のうちに一族の能力を封じ込んでいたためである。
美咲の未来を尊重する晴久の自制と偶発的密着に伴う一線を越えない霊力発生突破
晴久は美咲の未来である普通の恋愛をして呪いを解くことを尊重し、試練を理由に一線を越えるべきではないと自制する。
・脱出口を探す中、美咲が足を踏み外し、それを晴久が受け止めたことで偶然二人は密着してしまう。
・このわずかな接触と過去の出来事への羞恥によって、美咲の感情が大きく揺さぶられる。
・結果的に一線を越えることなく膨大な霊力を生み出すことに成功し、試練の間の結界は解除された。
ミホトの遠隔再封印による幽閉回避と指先刺激を代替とする気まずい霊力補充関係への移行
試練を突破したことで、美咲は晴久への接触が鍵となって強大な霊力を引き出せるようになった。
・美咲はこの力を使って、再び顕現して逃亡しようとしたミホトを遠隔操作で晴久の両手に再封印し、十二師天から課された条件をクリアする。
・これにより晴久の幽閉は回避され、三人の本免許交付も決定した。
・ただし、美咲が霊力を消費するたびに晴久との接触による補充が必要になってしまう。
・直接的な行為は避けるため、烏丸葵の提案により、晴久が美咲の指先に丁寧な刺激を与えるという代替方法で霊力を生み出すことになる。
・これにより二人の関係はさらに複雑で気まずいものへと変化していく。
まとめ
宗谷家の儀式を巡る一連の顛末は、秘匿された一族の能力の解放条件を逆手にとり、晴久の徹底した自制と美咲の感情の揺らぎによって、一線を越えることなく未曾有の霊力増幅と試練突破を成し遂げた重要な局面の記録である。掛け軸の偽装条件や刺激映像による精神的揺さぶりを排し、淫魔眼の忌避感を乗り越えて結界を解除したプロセスは、二人の精神的結びつきの深さを示している。最終的に、獲得した強大な霊力を用いてミホトの逃亡を遠隔から封殺し、幽閉回避と本免許の権利を勝ち取りながらも、指先への丁寧な刺激を媒介とする気まずい補充関係へと移行した顛末は、この儀式が単なる家系の試練にとどまらず、晴久と美咲の距離を強制的に縮め、サキュバス王の呪いと世界の危機に立ち向かうための絶対的な基盤を構築したことを厳密に証明している。
皇樹夏樹の秘密
『出会ってひと突きで絶頂除霊!』における「皇樹夏樹の秘密」は、第4巻の中核をなす重要な要素であり、彼女が抱えていた孤独と重圧、そして真の力への覚醒に深く関わっている。最高位の十二師天でありながら性別を偽り続けてきた背景、重圧による能力の不安定化、主人公・古屋晴久への露見から鹿島霊子の襲撃を契機とした真の天人降ろしへの覚醒、そしてエピローグでの求婚にいたる全容は以下の通りである。
初代皇樹の面影を巡る男性限定伝承の呪縛と性別を偽ることを強要された若き当主の境遇
夏樹の最大の秘密は、男性として振る舞っているものの、実際の性別は女性であるということである。
・皇樹家が祀る紅葉姫は、天界での過去の経験から極端な男性偏愛であり、代々皇樹家の男性にしか力を貸さないという伝承があった。
・夏樹は幼い頃に両親を亡くしたため、紅富士の園と地域を富士の樹海の瘴気から守るため、皇樹家によって男性として育てられた。
・これにより、性別を偽ることを強要されてきた。
紅葉姫の見限りに伴う樹海守護力喪失の恐怖と霊的結びつき不安定化の因果関係
夏樹は両親の分まで立派な当主になろうと努力し、地域を支え続けていた。
・しかし、真実を知られれば紅葉姫に見限られ、町や樹海を守る力が失われてしまうのではないか、母の犠牲や父との約束が無意味になるのではないか、という強い恐怖を抱えていた。
・この誰にも明かせない悩みと恐怖による孤独が、紅葉姫との霊的な結びつきを不安定にさせていた。
・これが、天人降ろしとしての本来の力を発揮できない原因となっていた。
夜の境内における待ち伏せ問い詰めと着衣破損に伴う女性露見および抹殺の逃走劇
紅葉姫から夏樹の悩みを解決するよう頼まれていた晴久は、夜の境内で夏樹を待ち伏せして直接問い詰めた。
・その際のもみ合いで夏樹の服が破れ、晴久に女性であることが露見してしまう。
・長年の秘密を知られた夏樹はひどく取り乱し、皇樹家を守るために晴久を消そうと判断する。
・これにより、紅富士の園で命懸けの逃走劇が繰り広げられることとなった。
鹿島霊子悪霊軍の紅富士襲撃と服損壊による紅葉姫への露見および凜々しさの落差評価
その直後、ネクロマンサーの鹿島霊子が大規模な悪霊軍団を率いて紅富士を襲撃し、紅葉姫の結界を破って彼女を支配しようとする。
・夏樹は悪霊に呑み込まれそうになる紅葉姫を救うため、晴久の援護を受けて悪霊の壁を突破し、紅葉姫に接触した。
・しかしその瞬間、悪霊によって服が外れ、紅葉姫にも女性であることが露見してしまう。
・絶望しかけた夏樹であったが、紅葉姫は拒絶するどころか、凜々しい姿との落差を強く気に入り、以前以上に喜んだ。
・実は男性しか依り代にしないという伝承は、過去の事情が形骸化したものにすぎなかったのである。
隠蔽の必要性霧散による苦悩の解消と完全霊的接続による巨大神木悪霊一掃の無双
秘密を隠す必要がなくなり、ありのままの自分を紅葉姫に受け入れられたことで、夏樹の苦悩は消え去った。
・二人の霊的接続を不安定にしていた原因がなくなり、夏樹は完全な霊的接続を取り戻して本来の天人降ろしとして覚醒する。
・神力を解放した夏樹は巨大な神木で悪霊の群れを一掃し、紅富士の園を救う大活躍を見せた。
対外的男性存続に向けた配偶者選定と秘密共有および女装適性を踏まえた前向きな求婚
事件解決後、本来の調子を取り戻した夏樹は、なんと晴久に皇樹家の配偶者にならないかと申し出る。
・夏樹は今後も対外的には男性として皇樹家を存続させる必要があった。
・自分の秘密を知っており、紅葉姫からの信頼も厚く、いざという時は女装もできるため、男装する自分の配偶者として都合が良い晴久が理想的な相手だと考えたためである。
・晴久には断られてしまうが、夏樹は呪いの問題が解決すれば検討してもらえるのではないかと前向きに考え続けている。
まとめ
皇樹夏樹の秘密を巡る一連の顛末は、名家の存続と地域の守護という重圧から自らの性別を隠蔽してきた十二師天が、最大の危機においてその秘密を解放し、神族との真の接続を果たして聖域を死守した覚醒の記録である。伝承の誤解から生じた孤独と恐怖が能力を減退させていたプロセスは、彼女が背負っていた精神的負荷の深さを示している。鹿島霊子の侵攻という極限状態のなかで女性であることが露見しながらも、紅葉姫にその本質を受け入れられて神力を覚醒させ、巨大神木によって悪霊群を殲滅した上で、秘密の共有者である晴久へ対外的男装存続のための求婚に及んだ顛末は、この事件が単なる防衛戦の完遂にとどまらず、夏樹の宿命的な呪縛を打破し、晴久との間に新たな政治的・個人的絆を構築するための絶対的な転換点となったことを厳密に証明している。
紅葉姫の霊視
『出会ってひと突きで絶頂除霊!』における「紅葉姫の霊視」は、第4巻で行われる重要なイベントであり、主人公・古屋晴久の両手に宿る呪い(ミホト)の正体に迫るものである。同時に、晴久が神族をその身に宿す天人降ろしであるという誤解を解く目的もあった。霊視に至る経緯と、その結果明らかになった事実は以下の通りである。
十二師天会議の疑惑払拭に向けた皇樹夏樹の案内による女人禁制聖域本殿への入場
晴久の能力を巡る疑惑と呪いの詳細を解明するため、最高位の意思決定機関を経た確認作業が行われた。
・退魔師協会の十二師天会議を経て、晴久が神聖な天人降ろしを騙っているという疑惑を晴らし、かつ呪いの詳細を知る必要性が生じる。
・十二師天の一人である皇樹夏樹の案内で、皇樹家の聖域である紅富士の園を訪れた。
・女人禁制の聖域の奥深くにある本殿で、晴久と宗谷美咲は皇樹家が祀る神族である紅葉姫と謁見した。
・直接の霊視を受けることとなった。
かつて世界を滅ぼしかけた大魔族サキュバス王の成れの果てという指摘と神族の拒絶反応
紅葉姫は、二人の身体に宿る異能の根源について、即座にその性質を看破した。
・紅葉姫は晴久と美咲から漂う気配を感じ取り、それがかつて世界を滅ぼしかけた大魔族であるサキュバス王の成れの果てであると指摘する。
・紅葉姫が晴久の手に直接触れて深く霊視を行うと、晴久の手に宿るミホトは神族の力に強い不快感を示した。
・一方の紅葉姫も、ミホトから神族に似た気配を感じ取りながらも、その存在を禍々しいと評した。
通常の天人降ろしとは異なる邪悪な形での晴久の魂との完全融合という解呪不能の核心
霊視によって、これまで最高位の退魔師たちが解呪に失敗し続けてきた構造的理由が明示された。
・晴久の絶頂除霊の呪いは単に体に取り憑いているわけではないことが判明する。
・晴久の魂と完全に融合しており、通常の天人降ろしとは異なる邪悪な形で宿っていることが判明した。
・この魂との完全な融合こそが、高位の退魔師でも容易に呪いを除去できない最大の理由であった。
天人降ろし騙りの明確な否定と神族の理解を超える未知の異常存在としての暗礁
紅葉姫は、晴久に関する協会内の最大の懸念事項について明確な結論を出した。
・紅葉姫は、晴久が神族を宿す天人降ろしではないことを明確に否定した。
・これにより、夏樹が危惧していた皇樹家への風評被害は払拭される。
・しかし、肝心のミホトの正体については、神族である紅葉姫をもってしても結論を出せなかった。
・ミホトには神族の気配が濃く残っているものの、取り憑き方や性質が異質すぎるため、サキュバス王本人である可能性も低いと判断された。
・結果として、この霊視によって晴久が天人降ろしではないという証明は得られたものの、ミホトが神族の理解すら超える異常な存在であることが浮き彫りとなった。
・呪いの核心についてはさらなる謎を残すことになった。
まとめ
紅葉姫の霊視を巡る一連の顛末は、晴久が抱える能力が神聖な天人降ろしではないことを確定させて皇樹家の名誉を守った一方、その呪いの本質がサキュバス王の成れの果てであり、術者の魂そのものと融合しているという絶望的な事実を露呈させた重要な記録である。神族の霊力に不快感を示すミホトを直接探知し、その宿り方の邪悪さと解呪不能の構造を看破したプロセスは、上位存在である紅葉姫の高い識別能力を示している。最終的に、天人降ろしの疑惑を晴らしながらも、神族の理解すら超越した異質な性質ゆえにミホトの完全な正体を特定できず、さらなる謎を残して謁見を終えた顛末は、この霊視が単なる学園内の誤解の解消にとどまらず、晴久と美咲が世界を滅ぼしかねない特級の呪縛から解放されるために、より深層の禁忌へと踏み込まざるを得ない絶対的な契機となったことを厳密に証明している。
絶頂除霊 ! 3巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 5巻レビュー
登場キャラクター
都立退魔学園
古屋晴久
強力な呪いである絶頂除霊を両手に宿す学生である。小日向静香の治療のために女装を行うなど、他者のために無理をしやすい性格だ。宗谷美咲の力を引き出すための儀式に巻き込まれる。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
宗谷家で人式神の儀式に挑み、美咲の力を安定させることに貢献した。紅富士の防衛戦ではミホトの力を借りて蜘蛛女と蛇巫女を撃退し、皇樹夏樹を援護している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
十二師天会議によって幽閉を回避し、本免許が交付された。
葛乃葉楓
葛乃葉家の後継者であり、晴久の呪いを自らの責任だと思い詰めている。晴久と美咲の関係が進展することへ複雑な感情を抱く。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。葛乃葉家の後継者。
・物語内での具体的な行動や成果
太刀川芽依に変身して宗谷家の儀式を探ろうとした。封印地防衛戦では九本の狐尾と狐火を操り、大勢の悪霊や人形を焼き払って戦線を支えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
晴久の存在を隠していたため、十二師天会議での発言力を弱めている。
南雲睦美
残留怪異による怪力を持つ学生である。晴久へ絶頂除霊を使うよう執拗に求める。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
小日向静香の屋敷で晴久を待ち伏せし、怪力で押さえつけた。紅富士の防衛戦では枯れた巨木を振り回し、人形の集団を吹き飛ばして進路を開いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
宗谷美咲
他人の性情報が視える淫魔眼を持つ学生である。晴久との接触を通じて、宗谷家秘伝の強大な霊力を引き出す。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。宗谷家の跡取り娘。
・物語内での具体的な行動や成果
宗谷家の試練の間で膨大な霊力を生み出し、ミホトを遠隔から再封印した。紅富士の戦いでは六芒多重結界や式神を駆使し、悪霊の海から晴久を救出している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ミホトの制御が可能であると証明され、本免許が交付された。
烏丸葵
女性に強い興味を持つ学生である。学園の仲間とともに高級人形を購入するが、独自の目的のために単独行動を取る。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
サオリさんを持ち出し、晴久の部屋へ逃げ込んだ。紅富士の決戦後には光縄乱緊縛を発動し、逃走する鹿島霊子を空中で捕らえている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
本免許が交付された。
小林
ホテルラプンツェルの影響で現実に満足できなくなった学生の一人である。
・所属組織、地位や役職
都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
共同購入したサオリさんを晴久の所有物であるかのように装い、彼を見捨てた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
太刀川芽依
葛乃葉楓が変身術を用いて作り出した架空の後輩である。晴久と親密な様子を装い、美咲を挑発する。
・所属組織、地位や役職
宗谷家へ派遣された監視役。
・物語内での具体的な行動や成果
宗谷家へ向かう晴久たちに同行し、情報を聞き出すための交換条件を持ちかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
宗谷真由美に正体を見抜かれ、強力な式神に包囲されて別室へ連行された。
退魔師協会・監査部・十二師天
文鳥桜
晴久の監視役を務める少女である。晴久の身を案じ、強引な手段で彼を助けようとする。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会・監査部の構成員。
・物語内での具体的な行動や成果
鹿島霊子の復活と紅富士襲撃をナギサへ報告した。協力者たちを集めてスポーツカーで駆けつけ、退魔術返しを貫く法具で敵を退けている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
葛乃葉菊乃
退魔師協会のトップであり、楓の祖母である。楓の晴久への思いをからかう一面を持つ。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会会長。十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
十二師天会議を主催し、晴久の処遇に関する議論を進行させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ナギサ
監査部を束ねる生き霊の人物である。鹿島霊子とは能力の相性が悪く、前線には出られない。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会・監査部部長。
・物語内での具体的な行動や成果
封印地襲撃の犯人が鹿島霊子であると特定し、対策本部で部隊の指揮を執った。鹿島霊子の真の標的が紅富士であることを突き止めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
多々羅刃鈴鹿
退魔師協会の最高幹部の一人である。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会・十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
鹿島霊子が引き起こした封印地防衛戦において、敵軍を圧倒して戦線を維持した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
白丘尼椿
退魔師協会の最高幹部の一人である。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会・十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
十二師天会議に出席し、晴久の処遇について議論した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
土御門晴親
退魔師協会の最高幹部の一人である。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会・十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
人形の集団に襲撃された封印地での防衛戦に参加し、敵軍を圧倒した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
童戸手鞠
退魔師協会の最高幹部の一人である。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会・十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
十二師天会議に出席し、晴久の処遇について協議した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
他の十二師天
退魔師協会の最高幹部たちである。晴久の呪いを危険視している。
・所属組織、地位や役職
退魔師協会・十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
遠隔で十二師天会議に参加し、神族との確認が済むまで晴久を幽閉する案を支持した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
宗谷家
宗谷真由美
美咲の母親であり、穏やかな外見の裏に強かな思考を持つ。晴久を美咲のパートナーとして高く評価している。
・所属組織、地位や役職
宗谷家当主。十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
十二師天会議で晴久の処遇を宗谷家の試験に委ねるよう提案した。晴久と美咲を試練の間へ落とし、霊力を引き出させることに成功している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
宗谷修
美咲の父親であり、真由美の夫である。
・所属組織、地位や役職
宗谷家の者。人式神。
・物語内での具体的な行動や成果
真由美との対面時、密かに逃げるよう晴久へ訴えかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
皇樹家
皇樹夏樹
女性であることを隠し、男性として育てられた当主である。孤独と重圧を抱え、晴久を敵視していたが徐々に認識を改める。
・所属組織、地位や役職
皇樹家の若き当主。十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
女装した晴久の正体を見抜き、攻撃を仕掛けた。紅富士の防衛戦では悪霊の壁を突破し、紅葉姫との霊的接続を修復している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
女性であることを紅葉姫に受け入れられ、本来の天人降ろしとして完全に覚醒した。
同行していた皇樹家の者たち
皇樹夏樹に付き従う一団である。
・所属組織、地位や役職
皇樹家の者たち。
・物語内での具体的な行動や成果
学園で晴久と夏樹が衝突した際、夏樹を制止して撤退を促した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
神職たち
皇樹神社に仕える者たちである。
・所属組織、地位や役職
皇樹神社の神職。
・物語内での具体的な行動や成果
夏樹を出迎え、紅葉姫がアニメの展開に落ち込んで自室から出てこないと報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
紅葉姫
皇樹家が祀る神族であり、極端な男性偏愛を持つとされる。アニメに夢中になるなど自由奔放な性格だ。
・所属組織、地位や役職
皇樹家が祀る神族。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久を霊視し、天人降ろしではないと断言した。夏樹が女性だと知って歓喜し、美咲にはミホトを制御する神具を与えている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
皇樹家の者たち
皇樹神社の境内で活動する人々である。
・所属組織、地位や役職
皇樹家の者たち。
・物語内での具体的な行動や成果
鹿島霊子の襲撃を受け、境内で倒れていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
相馬家
相馬千鶴
相馬家の当主であり、占いを嫌っている人物である。
・所属組織、地位や役職
相馬家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久と美咲の写真から未来を視て、サキュバス王の性遺物が大惨事を引き起こすことを予言した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
側近の巫女
相馬千鶴に仕える巫女である。
・所属組織、地位や役職
相馬家の巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
皇樹夏樹からの占い依頼を千鶴へ伝え、退魔師協会へ対策を連絡するよう命じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
魔族・怪異・式神
鹿島霊子
特級霊能犯罪者のネクロマンサーである。悪霊を支配することに強い恍惚を感じる。
・所属組織、地位や役職
ネクロマンサー。
・物語内での具体的な行動や成果
魔族によって封印を解かれ、各地の封印地を襲撃した。紅富士へ悪霊と人形の大軍を差し向け、紅葉姫を支配しようと目論んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
拘束された後に自ら舌を噛み切り、肉体を捨てて魂の状態でサオリさんに憑依し逃走した。
悪霊の群れ
鹿島霊子に付き従う死者の魂である。
・所属組織、地位や役職
悪霊。
・物語内での具体的な行動や成果
廃旅館で霊子に取り込まれ、支配下に置かれた。その後、各地の封印地や紅富士を襲撃している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
霊子の使役対象となった。
アンドロマリウス
人間の欲望や正義感を煽る魔族である。晴久への復讐とサキュバス王の遺物捜索を企む。
・所属組織、地位や役職
魔族。
・物語内での具体的な行動や成果
鹿島霊子の封印を解き、術式人形や情報を提供して封印地を襲撃させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
晴久とミホトの攻撃による影響で、不完全な感覚と苦痛に苛まれている。
サオリさん
小林たちが共同購入した精巧な高級人形である。
・所属組織、地位や役職
人形。
・物語内での具体的な行動や成果
烏丸葵によって保管場所から持ち出され、晴久の部屋へ持ち込まれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
行方不明となった後、鹿島霊子の魂に憑依された。
真由美の式神
宗谷真由美が使役する式神である。
・所属組織、地位や役職
式神。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久と美咲に試練の間の説明を行った。太刀川芽依を取り囲んで動きを封じている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
巨大なマンタの姿をした移動用式神
宗谷家が所有する移動のための式神である。
・所属組織、地位や役職
宗谷家の式神。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久、美咲、烏丸を乗せて宗谷家の屋敷まで運んだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
小型式神
宗谷真由美が操る式神である。
・所属組織、地位や役職
式神。
・物語内での具体的な行動や成果
試練の間で、結界の性質と脱出の条件を晴久たちに説明した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
多数の強力な式神
宗谷真由美が呼び出した式神の集団である。
・所属組織、地位や役職
式神。
・物語内での具体的な行動や成果
太刀川芽依を包囲し、介入を防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
大量の霊力吸収用式神
宗谷真由美が使役する式神である。
・所属組織、地位や役職
式神。
・物語内での具体的な行動や成果
暴走した美咲から余分な霊力を取り除き、負荷を軽減させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
監視役の式神
美咲の霊力増加を監視する式神である。
・所属組織、地位や役職
式神。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久と美咲が霊力を引き出す試みを行う場に置かれた。晴久の行き過ぎた刺激を止めるため、二人の間へ割って入っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
ミホト
晴久の両手に宿る謎の存在である。力を得ることに固執し、隙あらば逃走しようとする。
・所属組織、地位や役職
晴久の両手に宿る存在。
・物語内での具体的な行動や成果
美咲の封印を破って逃走しようとしたが、遠隔から再封印された。紅富士では晴久に協力して怪異霊を撃退するも、直後に再び逃走を図っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
紅葉姫が授けた神具の痛みによって制御され、晴久の両手へ戻された。
人形の集団
鹿島霊子が操る人形たちである。退魔術を弾く術式が施されている。
・所属組織、地位や役職
人形。
・物語内での具体的な行動や成果
各地の封印地や紅富士を襲撃し、退魔師たちを攻撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
武器を持った人形の集団
紅富士へ襲来した人形たちである。
・所属組織、地位や役職
人形。
・物語内での具体的な行動や成果
刃物などの武器を持ち、晴久や夏樹を包囲して攻撃を繰り返した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
亡者たち
鹿島霊子によって操られる死者の魂である。
・所属組織、地位や役職
悪霊。
・物語内での具体的な行動や成果
紅富士の園を呑み込み、晴久を闇へ引きずり込もうとした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
四体の式神
宗谷美咲が使役する高位の式神である。
・所属組織、地位や役職
式神。
・物語内での具体的な行動や成果
紅富士の戦いで、悪霊や人形を次々と薙ぎ倒して晴久を援護した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
巨大な式神
宗谷美咲が使役する移動用の式神である。
・所属組織、地位や役職
式神。
・物語内での具体的な行動や成果
晴久を乗せ、悪霊の群れを越えて神社へ向けて飛行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
護衛の人形
鹿島霊子を守る役割を与えられた人形である。
・所属組織、地位や役職
人形。
・物語内での具体的な行動や成果
美咲が放った爆破魔札の攻撃を防ぎ、霊子を守った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
蜘蛛女
鹿島霊子に操られる、蜘蛛の異形を持つ花魁の怪異霊である。
・所属組織、地位や役職
怪異霊。
・物語内での具体的な行動や成果
美咲の結界を破壊し、無数の赤い糸で晴久を攻撃した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
晴久の絶頂除霊を受けて人間だった頃の姿に近づき、消滅した。
蛇巫女
鹿島霊子に操られる、大蛇の下半身を持つ巫女の怪異霊である。
・所属組織、地位や役職
怪異霊。
・物語内での具体的な行動や成果
夏樹と戦い、複雑な印を結んで晴久とミホトへ激痛を与える呪いを放った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
晴久の絶頂除霊を受けて怪異と霊子の支配から解放され、消滅した。
一般人
小日向静香
男性へ激痛を与える残留怪異を持つ少女である。晴久へ強い好意を抱き、策略を巡らせる。
・所属組織、地位や役職
一般人。
・物語内での具体的な行動や成果
睦美と結託して晴久を甘やかし、絶頂除霊を使わせようとした。紅富士の戦いでは残留怪異の力で男性の悪霊を無力化し、道を切り開いている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特になし。
絶頂除霊 ! 3巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 5巻レビュー
展開まとめ
プロローグ
鹿島霊子の復活
廃旅館の少女
退魔師協会に把握されていない廃旅館で、一人の少女が悪霊の群れに追われていた。悪霊たちは少女の恐怖を糧にしようと、すぐには襲わず、暗い場所へ追い詰めていた。
少女は恐怖に耐えられなくなったように崩れ落ち、悪霊たちは彼女へ一斉に取り憑こうとした。
偽りの恐怖
しかし少女は突然笑みを浮かべ、怯えた様子が悪霊を誘い寄せるための演技だったと明かした。
彼女が抱いていたのは恐怖ではなく、悪霊との接触を待ち望む強い高揚であった。悪霊たちは異常な気配に気づいたが、既に逃げるには遅かった。
悪霊の取り込み
少女は悪霊たちを自らの身体へ招き入れ、霊体とつながる感覚から大量のエネルギーを得た。
取り込まれた悪霊たちは逃げようとしたものの、少女の力によって支配され、自力で離れることができなくなった。周囲に残っていた悪霊も異常事態を恐れて逃走を試みたが、同じように引き寄せられた。
封印からの解放
少女は、ナギサによって能力を封じられてから長く力を使えずにいた。しかし何者かが封印を解除したことで、再び悪霊を取り込み、支配できるようになっていた。
封印を解いた相手からは、見返りとして仕事を頼まれていた。さらに強力な霊体に関する情報も示されており、少女はその依頼へ強い興味を抱いた。
悪霊の捜索
少女は取り込んだ悪霊たちを自分の配下とし、新たな心霊地を探すよう命じた。何十体もの悪霊は命令に従い、廃旅館から各地へ散っていった。
鹿島霊子は自らの力が完全に戻ったことを確信し、封印を解いたアンドロマリウスへ感謝していた。
第一章 襲来の十二師天
小日向静香の策略
十二師天の協議
古屋晴久は、十二師天が自分の今後を協議すると葛乃葉楓から知らされていた。晴久を快く思わない者もいるため、楓は問題行動を起こさないよう繰り返し警告していた。
宗谷家からの呼び出しも控えていたが、どちらも日程が決まらないまま時間が過ぎていた。
静香への定期訪問
晴久は小日向静香の男性恐怖症を軽減するため、退魔学園の女子制服を着て彼女の滞在先を訪れていた。
静香には、周囲で不適切な願望を抱いた男性へ激痛を与える残留怪異が残っていた。その威力と範囲は静香の恐怖心に左右されるため、晴久が少しずつ男性との接触に慣れさせることになっていた。
南雲睦美の待ち伏せ
屋敷の前では、南雲睦美が晴久を待ち伏せしていた。睦美は、自分の身体に残った異変には対応しない一方で、静香には女装までして世話をしていると晴久を責めた。
さらに宗谷美咲との噂を持ち出し、自分にも絶頂除霊を使うよう迫った。晴久は誤解だと説明したが、睦美は怪力で彼を塀へ押さえつけた。
静香の残留怪異
騒ぎを聞いて静香が屋敷から現れると、男性への恐怖に反応する残留怪異が発動した。睦美は静香の体格を意識したため激痛を受け、その場に倒れた。
晴久は睦美を放置しようとしたが、静香が屋敷で休ませるよう求めたため、三人で中へ入ることになった。
二人の企み
晴久は、絶頂除霊の危険性を睦美と静香へ説明する良い機会だと考えていた。しかし客間で待つ間、静香は睦美に協力を持ちかけていた。
静香は、強引に迫るのではなく晴久を優しく労われば、彼が自発的に能力を使う可能性が高まると考えていた。睦美は恥ずかしがりながらも、身体の悩みを解消するため作戦に従った。
再現された勝負部屋
晴久が部屋へ入ると、睦美はホテルラプンツェルで具現化した姿を再現するような状態で待っていた。さらに静香も、怪異の中で晴久を誘惑した偽者の葛乃葉楓と同じ服装をしていた。
晴久は二人が自分の無意識の願望を再現しようとしていると察し、強い警戒を抱いた。
静香の甘やかし
静香は晴久を優しく抱きしめ、怪異になった人々を助けながら周囲から誤解され、楓や美咲との関係にも苦しんできた彼を労わった。
晴久は策略だと理解しながらも、普段得られない優しさに心を揺さぶられた。静香はその隙に封印の腕輪を外し、晴久の両手と両目を人外化させた。
人助けという誘惑
静香は、睦美も能力を受けることを望んでおり、これは人助けなのだと晴久へ言い聞かせた。
さらに誰も彼を責めたり閉じ込めたりしないため、日頃頑張っている晴久が少しくらい自分の力を使っても構わないと甘く誘った。晴久は自制心が崩れかけ、このままでは二人の思惑に乗せられると強い危機感を抱いた。
解呪への決意と美咲への連絡
絶頂除霊の危険性
古屋晴久は、小日向静香と南雲睦美に絶頂除霊が生来の能力ではなく、除霊困難な呪いであると説明した。ホテルラプンツェル事件では、この呪いと宗谷美咲の淫魔眼が魔族に狙われ、静香や文鳥桜まで巻き込まれていた。
晴久は周囲への被害を防ぐため、本気で解呪を目指すと決意していた。そのため睦美を能力へ依存させるような使い方はできないと告げ、絶頂除霊を求めるのをやめるよう説得した。
静香の新たな提案
静香は、能力を使うことが問題なら、晴久が別の方法で睦美の望みを叶えればよいと提案した。睦美も最初は戸惑ったが、晴久が命を救った恩人であることを理由に、少しずつなら受け入れてもよいという態度を見せた。
晴久は事態がさらに過激な方向へ進んだことに慌て、二人を止めようとした。
甘やかしからの逃走
静香は晴久を背後から支え、自分が女性との接し方を教えると迫った。その接触は、かつてミホトに操られた晴久が美咲へ行った行為を思い出させるものであった。
睦美の普段とは異なる態度と静香の甘い言葉によって、晴久は冷静さを保てなくなった。これ以上その場にいれば自制できないと判断し、アフターケアを打ち切って屋敷から逃げ出した。
忘れた着替え
屋敷から離れた晴久は、次回から桜を監視役として同行させる必要があると考えた。静香と睦美の行動だけでなく、自分が優しく労わられることに弱いと判明したためである。
しかし晴久は着替えを屋敷へ置き忘れており、退魔学園の女子制服を着たまま住宅街に取り残されていた。学生寮へその姿で戻ることもできず、誰かに服を届けてもらう必要があった。
美咲との関係修復
晴久はこの窮地を、美咲との関係を修復する機会に利用しようと考えた。
ミホトに両手を操られた事件以来、美咲は晴久を避け続けていた。晴久自身も当時の出来事を思い出して気まずさを感じていたが、二人は同じチームの仲間であり、互いの呪いを解くための協力者でもあった。
魔族に狙われる危険が高まる中、恥ずかしさを理由に関係を壊したままにはできないと考え、晴久は美咲へ助けを求めることを決めた。
女装姿の晴久と角を持つ青年
美咲への連絡
古屋晴久は、魔族に狙われた呪いとミホトの存在、美咲が一時的に発揮した力について早急に話し合う必要を感じていた。しかし美咲は、宗谷家から命じられた試験の日程すら晴久へ伝えず、二人の意思疎通は完全に途絶えていた。
静香の屋敷へ着替えを忘れた晴久は、この窮地を美咲との関係修復に利用しようと考え、助けを求めるメールを送った。
美咲の拒絶
三十分後、美咲から届いた返信は、静香のもとへ通っていることへの不満と、晴久が女装を口実に自分を呼び出そうとしているのではないかという疑いに満ちていた。
晴久は式神だけでも送ってほしいと頼んだが返事はなく、電話も着信拒否された。美咲から強く避けられている事実に、晴久は着替えが届かないこと以上の衝撃を受けた。
紅髪の青年
晴久が桜へ助けを求めようとしたところ、紅い長髪と樹木のような角を持つ青年から声をかけられた。
華やかな狩衣をまとった青年は、退魔学園を目指す途中で同行者とはぐれたため、女子制服姿の晴久を学園の生徒だと思い、道案内を命じた。
見抜かれた女装
晴久は目立つ青年と女装姿で歩くことを嫌がり、裏声で断ろうとした。しかし青年は晴久が男性であることを即座に見抜き、人目を避けたいのだと理解した。
青年は自らの角から蔓や花を伸ばし、晴久の顔や身体の線を隠す衣装を作った。そして逃げられないよう女装男と呼び、退魔学園まで案内するよう改めて要求した。
晴久は完全には断り切れず、近くまでなら案内すると応じた。
角を持つ青年とサオリさん騒動
退魔学園への道案内
古屋晴久は角を持つ青年に押し切られ、退魔学園への道を教えることになった。しかし派手な姿の青年と女装したまま歩くことを避けるため、最寄り駅へ通じる路線だけを案内して別れた。
青年は、家の評判を落としかねない人物を確かめるため退魔学園へ向かっていると明かした。その表情には強い敵意があり、晴久は詳しく尋ねられなかった。
桜の追及
晴久は文鳥桜に着替えを届けてもらい、その礼として夕食の買い出しに同行した。
帰り道、桜は小日向静香のもとで何をしていたのかと問い詰め、美咲との間にも何かあったはずだと疑った。晴久は誤解だと繰り返したが、桜は食事を作らないと脅して白状させようとした。
学園内の騒ぎ
退魔学園へ戻ると、生徒たちが落ち着かない様子で集まり、学園全体が騒がしくなっていた。
晴久は先ほどの青年が原因ではないかと考えたが、桜は事件を疑って情報収集へ向かった。晴久は買った食材を持って一人で学生寮へ戻った。
烏丸葵の逃亡
部屋へ戻った晴久のもとへ、烏丸葵が見知らぬ女性を背負って駆け込んできた。晴久は負傷者だと思ったが、それは人間そっくりに作られた高級人形であった。
烏丸は、その人形が小林たちと共同購入したサオリさんだと説明した。
ホテルラプンツェルの後遺症
小林たちはホテルラプンツェルで理想を具現化された影響から現実に満足できなくなり、相談の末にサオリさんを購入していた。
しかし精巧すぎる姿に愛着が湧き、全員で大切に扱う方針を決めていた。烏丸だけは新たな捕縛技術へ利用しようと考え、その方針に反発してサオリさんを連れ出したのである。
押し付けられた人形
追跡されていた烏丸は、疑いが晴れるまでサオリさんを晴久の部屋へ隠してほしいと頼んだ。
晴久は、人形には霊的な存在が宿りやすく、退魔師たちが共同で強い感情を向けている状況も危険だと考え、拒否しようとした。しかし烏丸は一方的にサオリさんを残して逃げ去った。
桜の帰宅
晴久が処分方法に悩んでいると、桜が部屋へ戻ってきた。
人形を見られれば新たな誤解を招くと焦った晴久は、サオリさんをクローゼットへ隠そうとした。しかし人間に近い構造と素材のため予想以上に重く、すぐには持ち上げられなかった。
皇樹夏樹との対面
桜の誤解
古屋晴久は高級人形のサオリさんを隠そうとして体勢を崩し、その上に倒れ込んだところを文鳥桜に見られた。桜は事情を聞かずに晴久を見限り、部屋から去った。
晴久は誤解を解くため、サオリさんを本来の所有者である小林たちへ返そうと寮の外へ飛び出した。
樹木による拘束
その直後、古屋晴久を捜す怒声が学園内に響き、晴久はサオリさんごと樹木に拘束された。
晴久をグラウンドへ連れ出したのは、以前道案内をした紅髪と角を持つ青年であった。青年は自らを十二師天の皇樹夏樹と名乗り、本物の天人降ろしであると告げた。
天人降ろしの名誉
皇樹家は神族を身に宿す天人降ろしの名家であり、夏樹は若くして当主と十二師天の地位を継いでいた。
夏樹は、晴久がミホトを宿していることで天人降ろしと見なされていると知り、皇樹家の名誉を傷つける存在だと敵視していた。特に絶頂除霊の性質と晴久にまつわる悪評を問題視していた。
学園中の悪評
晴久は自分が変態ではないと否定したが、夏樹は学園の生徒たちから聞いた噂を突きつけた。
晴久が年少者へ不適切な関心を向けたことや、悪霊の前で異常な行動を取ったこと、美咲へ問題行動を強いたことなどが語られており、学園内では晴久を危険人物と見る認識が広がっていた。
サオリさんの正体
夏樹は晴久の隣で動かないサオリさんを本物の女性だと思い、重傷者ではないかと心配した。
晴久が止めるのも聞かずに容体を確認した夏樹は、ようやくサオリさんが人間ではなく高級人形だと気づいた。その結果、晴久が人形を連れ歩いていたという新たな誤解が生まれた。
小林たちの裏切り
晴久はサオリさんの所有者である小林たちへ助けを求めた。しかし周囲に女子生徒もいる中で所有を認める者はおらず、小林たちは人形趣味まで晴久のものだと装った。
晴久は見捨てられた怒りから、人形を売り払うと宣言した。
見覚えのある顔
夏樹は晴久の顔を近くで観察し、協会の資料とは別の場所で最近見た覚えがあると気づいた。
晴久は、自分が女装姿で夏樹と会ったことまで知られる可能性を察し、さらなる窮地に陥った。
皇樹夏樹との衝突と十二師天会議
女装の露見
皇樹夏樹は、古屋晴久が以前道案内をした女装姿の人物だと見抜いた。晴久が高級人形を連れていたことも重なり、夏樹は彼を救いようのない変質者だと決めつけ、大勢の生徒の前で激しく非難した。
晴久は事情を説明しようとしたが、夏樹は聞く耳を持たず、女装や人形にまつわる誤解を天人降ろしの品位を汚す行為だと断じた。
養父への侮辱
夏樹は、晴久を育てた養父についても、退魔師としての務めを果たさず問題行動を繰り返していたのだろうと決めつけた。
晴久は養父の死後の行動には呆れていたものの、生前に自分を引き取り、家族として育て、呪いを解くため奔走してくれた恩を忘れていなかった。そのため根拠のない中傷だけは許せず、夏樹の胸ぐらを掴んで反発した。
一触即発の対峙
夏樹は晴久の行動まで不適切な接触と受け取り、その場で処分すると宣言した。晴久も怒りから封印の腕輪を外し、絶頂除霊を発動させようとした。
夏樹の樹木と晴久の能力が衝突しかけ、周囲の生徒たちは危険を察して退避を始めた。
楓の介入
戦いが始まる直前、葛乃葉楓が九本の狐尾と結界を展開して二人の間へ割って入った。
楓は、晴久の処遇は十二師天会議で決められる予定であり、夏樹が独断で手を下すことは認められないと告げた。さらに、天人降ろしの力を十分に扱えていない焦りから先走っているのではないかと挑発し、夏樹の怒りを自分へ向けた。
皇樹家の撤退
夏樹は楓の言葉に激怒したが、同行していた皇樹家の者たちが制止した。目撃者が多く、旧家の後継者である楓に理がある以上、争いを続けるべきではないと説得されたためである。
夏樹は不満を露わにしながらも攻撃を取りやめ、十二師天会議で晴久を必ず処分へ追い込むと言い残して退魔学園を去った。
楓の制裁
晴久は助けてくれた楓へ礼を述べたが、楓は晴久のそばに転がる高級人形と、先ほど聞こえた女装の話を問題視した。
素行に気をつけるよう何度も忠告したにもかかわらず、再び誤解を招く状況を作った晴久へ怒りを向けた。事情を説明しようとする晴久を狐尾で捕らえ、厳しく叱りつけた。
十二師天会議への出席
騒動から二日後、晴久は楓に連れられ、十二師天会議が開かれる退魔師協会本部を訪れた。
今回は強制連行ではなく、意識を保ったまま正式な場へ向かっていた。多数の退魔師や関係者が行き交う協会本部を前に、晴久は自らの今後を決める会議が始まることを実感し、緊張を強めていた。
十二師天会議の開幕
会議前の待機
古屋晴久と葛乃葉楓は退魔師協会本部を訪れ、会議開始まで待機室で過ごしていた。楓は皇樹夏樹が会議前に独断で晴久へ接触したことを謝罪し、事前に事情を伝えていれば悪印象を避けられたかもしれないと悔やんだ。
晴久は自分や烏丸葵にも原因があると返し、楓の責任ではないと伝えた。
天人降ろしの疑惑
晴久が自分を天人降ろしと見られているのか尋ねると、楓はその可能性が疑われていると認めた。
晴久の両手からは神族に似た気配が感じられる一方、絶頂除霊は宗谷美咲の淫魔眼と同じく、サキュバス王の遺物と考えられていた。相反する性質が同居しているため、協会も晴久の呪いをどう扱うべきか判断できず、十二師天会議が開かれることになった。
葛乃葉菊乃の登場
重い空気の待機室へ、楓の祖母で退魔師協会会長でもある葛乃葉菊乃が現れた。
菊乃は晴久と楓の関係をからかい、二人が幼い頃に結婚を約束したかのような式神の寸劇まで披露した。楓は激怒して寸劇を焼き払い、晴久への思いを煽らないよう祖母へ強く抗議した。
楓の自責
菊乃は、楓が今も晴久の呪いを自分の責任だと思い詰めていることを指摘した。
晴久は楓を恨んでおらず、素直に頼れば受け入れるはずだと菊乃は諭したが、楓は確信を持てず、感情を抑え続けていた。
会議からの除外
会議開始の時間になると、菊乃は楓だけを連れて部屋を出ようとした。晴久は自分も参加するものと思っていたが、術式で拘束され、その場に残されることになった。
菊乃は、晴久を本部へ呼んだのは会議の結論をすぐ実行できるようにするためであり、議論にはナギサがまとめた資料を使うと説明した。
隠された情報
晴久は、自分を会議から外すのは呪いについて聞かせたくない話があるからではないかと疑った。
菊乃は明言を避けたまま退室し、晴久は処分や拘束という結論が出れば、美咲を守れなくなることを案じながら一人で結果を待った。
十二師天の集結
最上階の会議室には、葛乃葉菊乃をはじめ、多々羅刃鈴鹿、白丘尼椿、土御門晴親、童戸手鞠、宗谷真由美ら十二師天が集まっていた。ほかの十二師天も遠隔で参加し、会議室には強烈な緊張感が漂っていた。
楓も葛乃葉家の後継者として出席していたが、国防の要とされる退魔師たちの圧力に緊張していた。
晴久の処遇
菊乃は、サキュバス王の遺物を狙った魔族と、天人降ろしに似た力でそれを撃退した晴久の処遇を最初の議題に挙げた。
すると皇樹夏樹は即座に、晴久の力を穢らわしいものと断じ、彼を処分すべきだと強く主張した。
十二師天会議と鹿島霊子の契約
夏樹の処分要求
十二師天会議では、皇樹夏樹が古屋晴久を即座に処分すべきだと主張した。葛乃葉楓は皇樹へ強い反感を抱いたが、晴久の存在を隠してきた葛乃葉家は発言力を弱めており、祖母の葛乃葉菊乃が会議をどう導くか見守るしかなかった。
楓は晴久を擁護する十二師天が現れることを願いながら、緊迫した議論の行方を見守った。
鹿島霊子の完全復活
その頃、鹿島霊子は封印を解かれた能力で大量の悪霊を取り込み、完全に力を取り戻していた。
霊子は支配下に置いた悪霊を引き連れ、アンドロマリウスから指定された市民団体の施設を訪れた。彼女の影には何百何千もの魂が閉じ込められ、濃密な負の感情が渦巻いていた。
全国の封印地
アンドロマリウスは日本各地の封印地を示す地図を霊子に見せ、管理されている封印を手当たり次第に破るよう依頼した。
目的は、国内のどこかに隠されているサキュバス王の遺物を探し出すことであった。各地を襲撃し、退魔師協会が特に守りを固めた地域から、遺物の所在地を絞り込もうとしていたのである。
封印された霊体への期待
アンドロマリウスは、遺物以外の怪異や霊体が解放された場合、霊子が自由にしてよいと伝えた。
強力な霊体を自らの支配下へ置けると知った霊子は、封印破壊による被害を気にすることなく依頼を受け入れた。
アンドロマリウスへの執着
霊子はアンドロマリウスを霊的存在として強く気に入り、自分の仲間にしようと大量の悪霊で拘束した。さらに受肉した身体を壊し、本来の霊体へ戻そうとした。
しかしアンドロマリウスは周囲の負の感情を利用して瞬時に回復し、霊子の攻撃を容易に退けた。彼女は霊子が欲望のためなら他者を傷つけることに一切ためらわない性質を見抜き、利用価値を確信した。
神族と晴久の情報
落胆する霊子に対し、アンドロマリウスは天人降ろしとの接続が不安定になっている神族の存在を教えた。弱った状態なら、悪霊を使って支配下へ置ける可能性があると誘った。
さらに、特殊な能力を持つ珍しい霊体に関する手がかりとして、晴久の写真を見せた。仕事を果たせば詳しい情報を与えると約束され、霊子は期待を膨らませて依頼を引き受けた。
術式人形の提供
アンドロマリウスは、悪霊を器へ収めて退魔師から守るための術式人形を霊子へ提供した。
人形が足りなくなれば、支配した悪霊を使って同種の人形を集め、協力する呪術師に術式を施させる手筈も整えていた。霊子は新たな霊体との出会いを楽しみにしながら、封印地襲撃へ向かった。
消えない苦痛
霊子が去ると、アンドロマリウスはそれまで隠していた苦痛に耐えきれず崩れ落ちた。
晴久とミホトから弱点の一つだけを突かれた影響は残り続けており、何度力を逃がしても不完全な感覚が消えなかった。アンドロマリウスは晴久たちへの怒りを募らせながら、終わらない苦痛に苛まれていた。
宗谷家の儀式と楓の決断
アンドロマリウスの復讐心
アンドロマリウスは絶頂除霊によって魂に残された異常な疼きに苦しみ続けていた。何度身体を替えても消えない苦痛に怒りを募らせ、鹿島霊子を利用してミホトを支配させるだけでなく、日本全体へ大規模な報復を仕掛けようとしていた。
十二師天会議の結論
会議を終えた葛乃葉楓は、古屋晴久の処遇が宗谷美咲の霊力次第で決まると伝えた。
美咲が高い霊力を安定して発揮し、ミホトを制御できるなら、晴久は貴重な戦力として活動を続けられる。しかし再現できなければ、危険を防ぐため長期間幽閉されることになっていた。
幽閉を覆した宗谷真由美
会議では皇樹夏樹や一部の十二師天が晴久の処分を求め、ほかの者たちも神族との確認が済むまで幽閉する案を支持していた。
その流れを変えたのは、美咲の母親である宗谷真由美であった。真由美は、ミホトを封印した美咲の力が安定すれば問題は解決すると主張し、宗谷家の後継者にふさわしいパートナーを選ぶ試験の結果に晴久の処遇を委ねるよう提案した。
美咲との再会
真由美の式神は、晴久との対面を拒んで暴れる美咲を強引に連れてきた。美咲は事件以来の気まずさから晴久と顔を合わせようとしなかったうえ、宗谷家の儀式の日程も伝えていなかった。
真由美は翌日に試験を行うと告げ、晴久と烏丸葵に美咲の住むマンションで待機するよう命じた。そして晴久へ、今後も娘を末永くよろしく頼むと意味深な言葉を残した。
人式神の意味
晴久は、本免許取得と幽閉回避、さらに美咲との関係修復のため、宗谷家の儀式を必ず突破すると意気込んだ。
しかし楓は、晴久が人式神に選ばれる意味を知らないと気づいた。宗谷家の人式神とは後継者を支える特殊な存在であり、選ばれた者は高い確率で宗谷家へ婿入りする立場でもあった。
紅葉姫への道
そこへ夏樹が現れ、会議の決定には従うものの、晴久が天人降ろしと誤解されている状況を放置できないと告げた。
夏樹は、晴久が力を制御できたなら皇樹家の聖域である紅富士へ招き、神族の紅葉姫にミホトの正体を霊視してもらうと提案した。少なくとも晴久が天人降ろしではないと証明でき、呪いに関する新たな情報を得られる可能性もあった。
高まる儀式の重要性
晴久にとって宗谷家の儀式は、美咲の力の制御、幽閉の回避、本免許の取得、二人の関係修復に加え、紅葉姫から情報を得るためにも不可欠なものとなった。
晴久は前向きに儀式へ挑む決意を固めたが、楓は人式神の意味を知っていたため、その意欲を複雑な思いで受け止めた。
楓の焦り
晴久が協会本部を去った後、楓は別人の姿へ変身して喫茶店に入り、一人で考え込んだ。
晴久の幽閉が回避される可能性が生まれたことには安堵していたが、彼が人式神に選ばれれば美咲と結ばれる可能性が高かった。自分には晴久の将来へ口を出す権利がないと理解しながらも、楓はその結末を受け入れられなかった。
楓はついに金狐と銀狐へ連絡し、二人だけで対応できない仕事をすべて取りやめるよう命じた。そして何かを決意した様子で、喫茶店を後にした。
第二章 人式神の宗谷
宗谷家へ向かう三人
美咲のマンション
十二師天会議の翌日、古屋晴久と烏丸葵は、宗谷家の迎えと合流するため宗谷美咲の住むマンションへ向かった。
烏丸は晴久と美咲の間に起きたことを面白がり、執拗に詳細を聞き出そうとした。晴久は誤解だと否定したが、烏丸は美咲が長く晴久を避け続けていることから、何かあったと確信していた。
葛藤する美咲
マンションの入口では、美咲が一人で儀式への参加を迷っていた。
儀式を成功させなければ本免許を取得できず、晴久も幽閉される可能性があった。しかし晴久が人式神に選ばれれば、自分との関係が大きく変わるため、美咲は混乱していた。
晴久たちが現れると、美咲は烏丸の背後へ隠れ、晴久に近づかないよう命じた。
マンタの式神
やがて宗谷家から、巨大なマンタの姿をした移動用式神が迎えに現れた。
式神は晴久、美咲、烏丸を背中へ乗せたが、なぜか晴久と美咲だけを肩が触れそうなほど近い席へ座らせた。美咲は降りようと抵抗したものの、触手で固定され、そのまま宗谷家へ向けて飛び立った。
晴久の謝罪
晴久は二人きりで話せる機会を逃さず、ミホトに操られていたとはいえ、美咲へ嫌な思いをさせたことを真剣に謝罪した。
美咲は当初こそ晴久から顔を背けていたが、彼が自分の恐怖や不快感を理解していると知ると、暴れるのをやめて話を聞いた。
儀式への決意
晴久は、ミホトの暴走を抑え、美咲の力を安定させるためにも、宗谷家の儀式を必ず成功させようと呼びかけた。
儀式を突破すれば、晴久の幽閉を回避でき、本免許取得にも近づき、皇樹家の神族から二人の呪いについて情報を得られる可能性もあった。晴久は美咲を再び危険な目に遭わせないためにも、迷いなく儀式へ挑むつもりでいた。
人式神への無理解
しかし美咲は、晴久が儀式に積極的な理由を結婚への意思だと受け取り、激しく動揺した。
晴久が人式神という言葉の意味すら知らず、宗谷家秘伝の式神術程度にしか考えていないと判明すると、美咲は呆れと羞恥から彼を罵った。晴久は突然怒られた理由を理解できないまま、宗谷家へ向かうことになった。
宗谷家の儀式と太刀川芽依
宗谷家への到着
宗谷美咲は古屋晴久との会話後、再び顔を赤らめて距離を取り、関係修復は失敗に終わった。
三人を乗せた式神は山裾に広がる宗谷家の屋敷へ到着した。広大な敷地を前にした晴久は、人式神について烏丸葵へ尋ねた。
人式神の契約
烏丸によれば、人式神とは宗谷家の後継者に必要な存在であり、波長の合う人間と特殊な契約を結ぶことで霊波を同期させ、膨大な霊力を生み出す術式であった。
晴久は、美咲がミホトを封印した際に発揮した力が人式神に関係していると考えた。しかし契約前にもかかわらず力が現れた理由は分からなかった。
未知の儀式
晴久が儀式の内容を美咲へ尋ねると、美咲自身も知らないと答えた。
儀式は宗谷家の正式な後継者を決めるための秘事であり、内容は関係者にも明かされていなかった。晴久たちは事前情報のないまま試験へ挑むことになった。
太刀川芽依の出迎え
宗谷家の門が開くと、使用人として太刀川芽依が現れた。晴久は退魔学園中等部の後輩が宗谷家にいることに驚いた。
芽依は、宗谷家がサキュバス王の遺物を抱える家系であるため、儀式で不正が行われないよう第三者が派遣されていると説明した。自身は晴久たちを近くで監視する役目を任されていた。
美咲の霊視
芽依が晴久の腕に絡みつくと、美咲は二人の関係を問い詰めた。晴久は情報提供を受けてきただけの後輩だと説明したが、美咲は淫魔眼を使って芽依を詳しく視た。
その結果、芽依が中学生という外見や説明と一致しない長い年月を生きている可能性が浮かび、美咲は警戒を強めた。
誤解を招く挑発
芽依は晴久と何度も出かけた仲だと、わざと誤解を招くような言い方をした。晴久は情報の対価として食事を奢っただけだと弁明したが、烏丸の騒ぎに遮られた。
美咲は、自分へ問題行動をした一方で年下の少女とも親しくしていたのかと不機嫌になった。晴久は身に覚えのない罪悪感を抱きながら、芽依に刺激する発言を控えるよう頼んだ。
屋敷への案内
芽依は三人の混乱を楽しむように笑いながら、地上移動用の式神へ乗るよう促した。
さらに晴久へ、美咲が口にした過去の出来事について尋ね、儀式開始前から三人の関係をかき回しながら宗谷家の奥へ案内していった。
宗谷家の異常な試練
真由美との対面
宗谷家へ到着した古屋晴久たちは、現当主である宗谷真由美と対面した。真由美は若々しく穏やかな女性で、その隣には人式神でもある夫の宗谷修が座っていた。
真由美は、人式神と契約した当主は夫と霊波を同期させることで本来の力を発揮すると説明した。一方、修は晴久へ密かに逃げるよう訴えており、晴久は試練以外の思惑があると感じ取った。
男女関係への疑惑
真由美は儀式を始める前に、晴久と宗谷美咲が交際しているのかと尋ねた。二人が否定すると、真由美は学園での噂や美咲の態度から、交際前に深い関係へ進んだのだと決めつけた。
さらに太刀川芽依が晴久との過去を誤解させるように語ったため、真由美は晴久が複数の女性へ手を出していると疑い、責任を取らせる決意を固めた。
試練の間への落下
真由美は、美咲の力を引き出した晴久を逃がすつもりはないと告げ、二人の足元へ穴を開いた。
晴久と美咲は地下空間へ落とされ、柔らかな寝台のある密室へ閉じ込められた。壁には、特定の行為をしなければ外へ出られないと記された掛け軸が掲げられていた。
宗谷家に伝わる部屋
美咲は式神を使って脱出口を探したが、天井や壁には隙間がなく、出入口も完全に塞がれていた。
真由美の小型式神は、そこが宗谷家に代々伝わる試練の間であり、指定された条件を満たさない限り絶対に脱出できない高等結界だと説明した。二人が脱出できれば、人式神の契約に必要な秘伝を授けるというのである。
真由美への抗議
美咲は試練の異常さに激しく抗議し、宗谷家の伝統と人式神に何の関係があるのか問い詰めた。
しかし真由美は、何日でも何年でも過ごせる準備が整っていると告げるだけで、式神を通じた会話を打ち切った。晴久と美咲は、互いに宗谷家の常識を疑いながら途方に暮れた。
脱出口の捜索
室内では二人を動揺させる刺激の強い映像まで流され始めた。晴久と美咲は、それが判断力を乱すための仕掛けであり、本当の試練は別の出口を見つけることだと考えた。
二人は映像を無視して部屋を調べ尽くしたが、脱出口や仕掛けは一切発見できなかった。
宗谷家の試練と太刀川芽依の正体
閉ざされた地下室
古屋晴久と宗谷美咲は地下室を隅々まで調べたが、脱出口を発見できなかった。室内には長期間生活できる設備が整えられており、宗谷家が本気で二人を閉じ込めるつもりだと判明した。
晴久は絶頂除霊で結界を破ることも考えたが、地下深くで崩落すれば生き埋めになる危険があったため実行できなかった。
気まずい沈黙
探索する場所がなくなると、晴久と美咲は部屋の隅で距離を取り、流れ続ける刺激の強い映像に耐えていた。
晴久は美咲の呪いを解くためにも、望まない形で関係を進めるべきではないと考えた。美咲が普通の恋愛を望んで解呪を目指していた以上、試練を理由に一線を越えるのは本末転倒だと自制した。
偶然の接近
晴久が再び脱出口を探そうと立ち上がると、美咲は彼が試練を実行するつもりだと誤解して慌てた。
美咲は距離を取ろうとして寝台から足を踏み外し、晴久が受け止めたことで二人は密着する体勢になった。さらに美咲が逃れようと暴れたため、互いに強く動揺する事態へ発展した。
刺激の強い環境と過去の記憶も重なり、晴久は急速に冷静さを失っていった。
芽依への包囲
晴久と美咲が地下へ落とされた直後、太刀川芽依は二人を追おうとした。しかし宗谷真由美が召喚した多数の強力な式神に包囲され、動きを封じられた。
真由美は宗谷家の試練が秘伝であり、監視役にすぎない芽依が介入することは認められないと告げた。
見抜かれた変身
真由美は芽依を女狐と呼び、彼女の正体を既に見抜いていることを示した。
芽依は葛乃葉家の変身術なら正体を隠し通せると考えていたが、真由美は晴久を見る眼差しだけは偽装できていないと指摘した。太刀川芽依の姿は、葛乃葉楓が変身したものだったのである。
楓への牽制
真由美は、監査部でもない芽依が監視役に選ばれた不自然さを承知したうえで、あえて屋敷へ招き入れていた。
その目的は、試練を終えた晴久と美咲を楓に見せ、晴久への思いを諦めさせることであった。正体を明かして抵抗できない楓は、烏丸葵とともに別室へ連行され、試練の終了を待たされることになった。
宗谷家の真の能力
楓への牽制
宗谷真由美は、古屋晴久によって美咲の力が引き出された以上、葛乃葉楓へ彼を譲るつもりはなかった。
真由美は試練の部屋に隠しカメラを仕込み、晴久と美咲が関係を深めれば、その証拠をもとに晴久へ責任を取らせるつもりでいた。
想定外の試練突破
真由美が映像を監視する中、美咲が晴久へ覆い被さった直後、試練の部屋を封じていた結界が突然解除された。
部屋の本当の条件は、内部で一定以上の霊力を発生させることであった。美咲はわずかな刺激だけで膨大な霊力を生み出し、関係を深めることなく試練を突破したのである。
制御不能の霊力
美咲は強力な式神に運ばれて地下から脱出したが、自ら生み出した霊力を制御できず、身体も負荷に耐えられない状態だった。
真由美は大量の霊力吸収用式神を呼び出し、美咲から余分な力を取り除いた。淫魔眼を宿しながら平然としていることも含め、真由美は娘の身体に未知の性質があると感じた。
美咲の誤解
意識を取り戻した美咲は、晴久と顔を合わせた途端、自分が試練の条件を満たしたと勘違いした。晴久を殴って逃げ出したが、真由美の式神に捕らえられ、事情を説明されることになった。
淫魔眼で確認した結果、実際には一線を越えていないと理解したものの、美咲は直前の接触を思い出して強い羞恥に苦しんだ。
宗谷家の秘伝
真由美は晴久、美咲、烏丸葵を応接間へ集め、宗谷家の真の能力を明かした。
宗谷家の女性は、信頼する相手との親密な接触から得た感覚を霊力へ変換できた。人式神という名称は、この性質を外部から隠すための方便であり、実際には特別な契約術式を結ぶ必要はなかった。
美咲の低霊力
真由美によれば、美咲は淫魔眼の影響で親密な行為そのものを強く忌避していた。そのため宗谷家の能力を無意識に封じ込み、これまで最低水準の霊力しか発揮できなかった。
自分一人で力を引き出すことも難しく、美咲の拒否感を越えるほど信頼された晴久の協力が必要だと真由美は説明した。
晴久への期待
晴久は、美咲の力を安定させるには今後も親密な接触が必要なのかと困惑した。
真由美は、晴久こそ美咲の力を引き出せる相手だと断言したが、その理由を詳しくは語らなかった。晴久と美咲は真意を理解できないまま、宗谷家の能力と二人の関係に向き合うことになった。
宗谷家の能力と霊力制御
晴久の懸念
古屋晴久は、宗谷美咲の力を引き出すためとはいえ、本人の望まない親密な接触を続けるべきではないと考えた。
美咲が淫魔眼を解こうとした原点は、将来まともな恋愛をするためであった。晴久は、美咲の未来を損なわない別の方法がないかと宗谷真由美へ尋ねたが、その発言を聞いた美咲は理由の分からない苛立ちを覚え、式神で晴久を攻撃した。
直接的な接触の回避
真由美は、美咲が生み出す霊力は異常に強く、過度な刺激を与えれば身体が耐えられないと説明した。
美咲は長く低霊力の状態にあったため、急激な霊力増加へ身体が対応できていなかった。必要なのは、現在の二人の関係でも受け入れられる方法で、絶頂除霊を再封印できる程度の霊力を安定して生み出すことであった。
烏丸の提案
烏丸葵は、直接的な接触を避けながら霊力を引き出す方法として、晴久が美咲の指へ刺激を与える案を出した。
美咲は晴久の幽閉回避や本免許の取得、呪いの情報を得るためだと自分に言い聞かせ、その方法を受け入れた。
指先からの霊力
晴久と美咲は小さな和室へ移り、霊力の増加を監視する式神だけを置いて試みを始めた。
晴久が美咲の指先へ慎重に刺激を与えると、美咲は強く動揺しながらも徐々に反応を示した。晴久は美咲の様子を見ながら方法を調整し、やがて彼女の身体から濃い霊気が生まれ始めた。
安定した力の発現
美咲は意識を保ったまま霊力を生み出し、監視役の式神からも中止の指示は出なかった。
晴久は再封印に必要な量と限界を確かめるため、さらに霊力を引き出そうとした。しかし美咲が中止を求めても続けてしまい、真由美の式神が二人の間へ割って入った。
再封印の準備
その後、晴久たちは結界と多数の高位式神が配置された鍛錬場へ移動した。
美咲が生み出した霊力でミホトを再封印できるか確かめるため、晴久の封印を一度解く危険な実験が行われることになった。
晴久の自責
晴久は、美咲の同意があったとはいえ、止めてほしいという意思を無視して刺激を続けたことを強く後悔した。
一方の美咲は晴久を責めず、刺激を受けた指を握りながら、彼を見ては顔を赤らめていた。晴久はその反応の意味を理解できないまま、ミホトの封印解除に備えた。
ミホトの解放と再封印
美咲の追及
宗谷美咲は、古屋晴久が指への刺激に妙に慣れていた理由を淫魔眼で見抜いた。晴久は、文鳥桜に関する夢の記憶を参考にしていたことを認めざるを得ず、美咲から激しく非難された。
烏丸葵が美咲の反応を不用意に指摘すると、美咲は羞恥と怒りから式神で烏丸を制裁した。
封印術式の解析
宗谷真由美と宗谷修が鍛錬場へ現れ、ミホトを解放する前に再封印が可能か確認するよう美咲へ命じた。
美咲が晴久の両手に触れて術式を解析すると、絶頂除霊の封印が内外から構築された極めて複雑なものだと判明した。しかし封印は美咲自身の霊力を基盤としていたため、現在の力なら離れた場所からでも再構築できると判断した。
ミホトの顕現
晴久が腕輪を外し、美咲が封印を解除すると、晴久の両手から白い霧が噴き出し、銀髪と褐色の肌を持つミホトが再び姿を現した。
ミホトは解放されたことを喜び、周囲の者たちから力を得ようとした。しかし美咲が再封印を警告すると、渋々行動を止めた。
失われた記憶
晴久はミホトへ、自身の正体や絶頂除霊の由来、両手に宿った理由を尋ねた。
ミホトは記憶が曖昧で、自分でも詳しいことは分からないと答えた。ただし、多くの者から力を得て、本来の力を取り戻さなければならないという目的だけは覚えていた。
ミホトの逃走
ミホトは晴久たちの注意を逸らし、自らの腕を晴久の両手へ強引に同化させた。
晴久の身体を操ったミホトは、結界の弱点を突いて鍛錬場から脱出した。再封印される前に逃げ出し、多くの者から力を奪うつもりであった。
遠隔再封印
逃走の途中、ミホトと晴久の両腕の同化が突然解除された。
美咲は離れた場所から封印術式を発動し、ミホトを晴久の両手へ引き戻した。抵抗するミホトは完全に吸収され、再封印は成功した。
不完全な封印
美咲は、かつて最低水準の霊力しか持たなかった状態から大きく成長し、単独でミホトを封じる力を示した。
しかし封印は完全ではなく、晴久には内部からミホトの声が届き続けた。ミホトは再び解放されることを求め、晴久へ絶頂除霊を使うよう執拗に訴え始めた。
ミホトの再封印と幽霊の減少
残されたミホトの声
宗谷美咲による再封印は成功したものの、古屋晴久の頭にはミホトの声が届き続けた。ミホトは周囲の人間へ能力を使うよう執拗に勧めたが、晴久が拒み続けると、力を浪費したくないと拗ねて沈黙した。
封印自体は安定しており、美咲がミホトを制御できることは証明された。
幽閉回避と本免許
宗谷真由美は、今回の結果なら退魔師協会も晴久の幽閉を取りやめるだろうと判断した。美咲たちの本免許についても問題はなく、遅れていた発行手続きを進めると約束した。
美咲は晴久の幽閉回避と本免許取得を喜び、次は皇樹家を訪れて神族から呪いの情報を聞こうと意気込んだ。
ミホトへの警戒
真由美は、ミホトがナギサでさえ見抜けなかった未知の存在であり、ほかにも能力を隠している可能性があると警告した。
晴久もミホトの暴走を抑えられるようになったことには安堵したが、本人が協力より逃走を優先する以上、その強大な力を安全に利用するには課題が残っていると考えた。
霊力補充の必要
美咲は再封印によって霊力を消耗しており、真由美から忘れないうちに補充するよう命じられた。
その言葉で美咲と晴久は再び気まずくなった。晴久は、美咲が力を使うたびに親密な接触が必要になるなら、二人の関係がいつまでも改善しないのではないかと悩んだ。
真由美の忠告
真由美は美咲を離れた場所へ連れていき、晴久こそ美咲の人式神にふさわしい相手だと告げた。
試練の部屋を利用して既成事実を作る方法が使えなくなった以上、ほかの女性に奪われる前に、美咲自身の力で晴久を引き留めるよう忠告した。美咲は自分たちはそのような関係ではないと反発した。
サオリさんの失踪
その最中、烏丸葵のもとへ小林から緊急の連絡が入った。共同購入した高級人形のサオリさんが、保管場所から姿を消したというのである。
烏丸には晴久たちと行動していたという証拠があったため、持ち出した犯人ではなかった。小林たちはサオリさんを捜すため、霊視に長けた生徒を集めようとしていた。
消えた悪霊たち
小林は、最近になって学生向けの退魔依頼が急激に減っていることも明かした。
現場へ向かっても悪霊が既に消えている場合が多く、昇天サポートセンターへ来る浮遊霊まで減少していた。一方で、プロの退魔師たちは以前より忙しくしており、幽霊そのものが減ったわけではないようだった。
皇樹家への二人旅
サオリさんを捜すため、烏丸は皇樹家への同行を取りやめた。
その結果、晴久と美咲だけで皇樹家を訪れることになった。二人はこの奇妙な失踪と悪霊の減少が、後に大きな事件へ繋がるとはまだ気づいていなかった。
第三章 寵愛の皇樹
封印地襲撃と紅富士への到着
各地の封印崩壊
全国各地で封印地への襲撃が相次ぎ、強力な怪異や呪具が次々と解放されていた。守護を任されていた熟練の退魔師たちも軒並み倒され、退魔師協会は解放された存在への対処と残る封印地の警備に追われていた。
土御門家が守る森にも、退魔術を弾く術式を施された人形の集団が現れた。退魔師たちは包丁などを持つ人形に包囲され、さらに空を覆うほどの悪霊が封印へ殺到する中、救援を呼ぶため必死に時間を稼いだ。
鹿島霊子の復活
封印地の退魔師から届いた報告を、文鳥桜は監査部部長のナギサへ伝えた。
大量の悪霊を操り、退魔術返しを施した人形を利用する手口から、ナギサは鹿島霊子の仕業だと察した。かつて命懸けで能力を封じた特級霊能犯罪者が協力者を得て復活したと考え、封印地襲撃対策本部へ急行した。
皇樹家への同行者
宗谷家での試練とミホトの再封印から二日後、古屋晴久と宗谷美咲は皇樹家の総本山へ向かっていた。
二人だけで出発するはずだったが、太刀川芽依が駅で待ち構えており、宗谷家の儀式について執拗に尋ねながら同行した。芽依は宗谷家で監禁されていたと説明したが、晴久は秘伝を探ろうとしていたのではないかと疑った。
芽依の誘惑
芽依は情報を聞き出すため、晴久へ大胆な交換条件を持ちかけた。
美咲は晴久が誘惑に負けて宗谷家の秘密を漏らすと警戒し、式神で彼を妨害した。晴久は秘密を話すつもりはないと否定したが、美咲と芽依は互いを意識して険悪な空気を漂わせた。
晴久は関係がさらに悪化することを避けるため芽依に帰るよう求めたが、芽依は追及を控える代わりに同行すると譲らなかった。
紅富士の園
電車が皇樹家の領域へ入ると、季節外れの紅葉が富士山の五合目まで山肌を覆う幻想的な景色が広がった。
皇樹神社の門前町には木造の旅館や土産物店が並び、清浄な空気と多くの参拝客に満ちていた。芽依によれば、先代当主の頃は紅葉が八合目まで広がり、現在以上の参拝客を集めていた。
枝葉に覆われた出迎え
人混みの性情報にさらされた美咲が疲弊する中、晴久たちの前へ皇樹夏樹が現れた。
しかし夏樹は以前の姿ではなく、全身を枝葉で覆い隠した異様な格好をしていた。晴久たちは、その奇妙な姿で出迎えた十二師天を呆然と見上げた。
紅富士の聖域と紅葉姫
夏樹の植物鎧
古屋晴久たちを出迎えた皇樹夏樹は、宗谷美咲の淫魔眼を警戒し、全身を枝葉で覆っていた。
晴久が過剰な防御をからかうと、夏樹は強く反発しながら鎧を縮小し、美咲から顔だけを隠す形へ変えた。二人は再び口論を始めたが、その最中、地元の人々が次々と夏樹へ声をかけた。
皇樹家への信頼
夏樹は門前町の住民から深く慕われていた。
皇樹家が祀る紅葉姫は観光や農業を支え、富士の樹海から流れ込む瘴気も防いでいた。紅葉姫は代々皇樹家の男性にしか力を貸さないため、夏樹は地域全体を支える重要な役割を背負っていた。
晴久は夏樹の責任を理解したものの、互いの相性は変わらず、口喧嘩を続けながら皇樹神社へ向かった。
女人禁制の聖域
一般参拝区域を抜けた先には、皇樹家の本当の聖域が広がっていた。
しかしその場所は紅葉姫の嫉妬深い性格から女人禁制とされていた。夏樹は美咲と太刀川芽依が進むため、晴久と親密な関係にあると示すよう求めた。
晴久を挟む二人
芽依はすぐに晴久の腕へ抱きつき、親密さを示そうとした。
それを見た美咲も、今後の霊力補充へ慣れるためだと言い訳しながら反対側の腕を取った。美咲と芽依は互いに激しく牽制し、晴久は二人に挟まれたまま聖域へ入ることになった。
皇樹神社の本殿
聖域内の皇樹神社は、巨大な拝殿と日本家屋を思わせる本殿を備えていた。
神職たちは夏樹を出迎えたが、紅葉姫はアニメの展開に落ち込み、自室から出てこないと報告した。夏樹は晴久たちを連れ、紅葉姫のいる本殿へ向かった。
目隠しの美咲
本殿内では、淫魔眼で神族を視ないよう美咲に目隠しが施された。
美咲は前を見るため晴久の腕へ密着し、芽依も対抗するように反対側から身体を寄せた。晴久は落ち着かないまま、紅葉姫との謁見場所へ案内された。
紅葉姫との謁見
夏樹は晴久へ礼儀を厳守するよう警告し、厳かな空気の中で襖を開かせた。
そこからは圧倒的に神聖な霊力が溢れたが、紅葉姫は女児向けアニメへ夢中になっていた。紅髪と角を持つ成人女性の姿をした紅葉姫は、夏樹を見るなり甘えるように抱きつき、彼を可愛がり始めた。
夏樹は神社の威厳を保とうと必死に制止したが、紅葉姫はまるで意に介さなかった。
紅葉姫によるミホトの霊視
皇樹家の事情
紅葉姫は皇樹夏樹を抱きしめて甘やかし続け、夏樹は威厳を保とうと必死に抵抗した。
太刀川芽依によれば、紅葉姫は天界で心を病んで地上へ降り、初代皇樹に救われて以来、皇樹家の男性を強く偏愛していた。その嫉妬深さから歴代当主の結婚は難航し、家系の存続さえ危ぶまれることがあった。
サキュバス王の成れの果て
紅葉姫は古屋晴久と宗谷美咲から漂う気配に気づき、それが世界を滅ぼしかけた大魔族、サキュバス王の成れの果てだと指摘した。
しかしサキュバス王は紅葉姫が生まれる遥か以前の存在であり、詳しい情報は持っていなかった。紅葉姫は天界での過酷な経験を思い出して取り乱したが、夏樹になだめられて霊視を再開した。
魂と融合した呪い
紅葉姫が晴久の手へ触れると、ミホトは神族の力に強い不快感を示した。一方の紅葉姫も、ミホトから神族に似た気配を感じながら、その存在を禍々しいと評した。
絶頂除霊は晴久の魂と完全に融合しており、通常の天人降ろしとは異なる邪悪な形で宿っていた。この融合が、呪いを容易に除去できない理由の一つであった。
天人降ろしの否定
紅葉姫は、晴久が天人降ろしではないことを明言した。
夏樹は皇樹家への風評被害を否定できると喜んだが、晴久はミホトの正体を知ることを優先し、紅葉姫へさらに質問した。
神族にも不明なミホト
紅葉姫はミホトの正体を考えたものの、神族の気配が濃い一方で、取り憑き方や性質が異質すぎるため、結論を出せなかった。
サキュバス王本人である可能性も低く、紅葉姫にもミホトが何者なのか分からなかった。晴久たちは天人降ろしではないという証明を得たものの、呪いの核心については新たな謎を残した。
謁見の終了
夏樹は目的を果たしたとして謁見を打ち切り、晴久たちを退出させようとした。
晴久はミホトが神族の理解さえ超える存在だと知ったが、期待していたほど明確な手がかりを得られないまま、紅葉姫との面会を終えることになった。
紅葉姫の依頼と夏樹の秘密
紅葉姫からの密談
紅葉姫との謁見を終えた古屋晴久は、夏樹にも秘密で相談したいという声を頭の中で聞いた。
その夜、晴久は腹痛を装って夕食会を抜け出し、紅葉姫の私室を訪れた。紅葉姫は、皇樹夏樹が誰にも明かせない悩みを抱えているため、自分との霊的な結びつきが不安定になり、天人降ろしとして本来の力を発揮できていないと説明した。
夏樹の孤独
夏樹は幼い頃に母親を亡くし、父親も早世していた。そのため両親の分まで立派な当主になろうと努力し、紅葉姫や皇樹家を支え続けていた。
紅葉姫は、遠慮なく口論できる晴久を夏樹にとって初めての友人だと思い、彼の悩みを聞き出して解決するよう頼んだ。
神具との交換条件
晴久は夏樹と友人ではないと否定しかけたが、彼を心配する紅葉姫の真剣な様子を見て断れなくなった。
さらに紅葉姫は、夏樹を救えたならミホトを従わせる神具を与えると約束した。晴久は呪いの制御に役立つ報酬へ心を動かされ、依頼を引き受けた。
芽依への緊急連絡
紅葉姫の部屋を出た晴久は、暗い廊下で太刀川芽依が電話している場面に出くわした。
芽依は封印地襲撃犯が鹿島霊子だという緊急連絡を受け、紅富士を離れなければならなくなっていた。晴久が引き止めなかったため、芽依は彼の鈍感さへ苛立ちを見せ、早々に皇樹神社を去った。
夏樹への接近失敗
晴久は数日間、夏樹の悩みを探ろうとした。しかし夏樹は晴久の態度を不審に思い、まともに会話しようとしなかった。
夏樹自身も地元住民との交流や会議、霊災への対応に追われており、話を聞く機会はほとんどなかった。一方、美咲も芽依が去ると急に晴久を意識し、門前町の宿へ移って距離を置いた。
夜の待ち伏せ
遠回しな方法を諦めた晴久は、夜の境内で夏樹を待ち伏せし、紅葉姫へ隠している悩みがあるのではないかと直接尋ねた。
すると夏樹は突然表情を変え、晴久の首元を掴んで、何を知っているのか激しく問い詰めた。その反応から、晴久は夏樹が重大な秘密を抱えていると確信した。
破れた衣服
もみ合いになった二人は手水舎の横へ倒れ込み、その際に夏樹の服が大きく破れた。
晴久が夏樹を押しのけようとして身体へ触れると、男性とは思えない感触が伝わった。胸元を隠して悲鳴を上げる夏樹の姿を見て、晴久は皇樹夏樹が女性であるという秘密を知ってしまった。
夏樹の秘密と紅葉姫への襲撃計画
夏樹の正体
古屋晴久は、皇樹夏樹が実は女性であり、紅葉姫の依り代となるため男性として振る舞ってきたのだと悟った。
秘密を知られた夏樹は晴久を生かしておけないと判断し、紅葉姫へ不埒な行為を働いたため処分したと偽装するつもりで襲いかかった。晴久も絶頂除霊を発動し、紅富士の園で命懸けの逃走を始めた。
封印地防衛戦
その頃、関東北部の封印地では、数百人の退魔師が鹿島霊子の操る悪霊と術式人形の軍勢を迎え撃っていた。
退魔師たちは人形を物理的に制圧し、後衛が悪霊を迎撃する戦法で対抗した。しかし統率された大量の敵は死角を突き、各所で激しい攻防が続いていた。
楓の狐火
葛乃葉楓は九本の尾と狐火を操り、人形や悪霊を次々と焼き払った。さらに結界で負傷者を守り、周囲の退魔師を支援するなど圧倒的な働きを見せた。
一方で楓は、晴久と美咲の関係が進んでいるかもしれないことへの苛立ちを敵へぶつけていた。それでも敵の数が多すぎるため、戦線全体を一人で支えることはできなかった。
真由美の式神軍団
宗谷真由美が式神百鬼夜行を発動すると、巨大な鬼女や龍、鷹などの高位式神が戦場へ現れた。
式神たちは人形と悪霊を一気に蹴散らし、苦戦していた退魔師たちを立て直した。ほかの封印地でも土御門晴親や多々羅刃鈴鹿が敵軍を圧倒しており、防衛戦はいずれも退魔師側の勝利へ傾いていた。
不自然な快勝
真由美は、鹿島霊子が戦力を分散させたうえで、十二師天への対策もせず数だけを押しつけていることに違和感を覚えた。
各戦場があまりにも簡単に制圧されているため、封印地襲撃は別の目的を隠す陽動ではないかと判断し、退魔師協会本部のナギサへ報告した。
鹿島霊子の本命
ナギサも陽動の可能性を認めたが、鹿島霊子が大量の悪霊を捨て駒にしてまで狙う場所を特定できずにいた。
戦場とは反対方向の霊的施設を地図上で探る中、ナギサは皇樹家が守護する紅富士の園へ行き着いた。十二師天が管理する堅牢な聖域であるため候補から外しかけていたが、鹿島霊子の目的が神族である紅葉姫の支配だと気づいた。
紅富士を襲う死者の群れ
紅富士への警告
ナギサは陽動の裏にある本命を探る中、紅富士の隣に広がる富士の樹海へ思い至った。
樹海は皇樹家によって抑え込まれているものの、本来は大量の瘴気と悪霊が集まる危険地帯であった。鹿島霊子が一度に多数の悪霊を従えるには最適な場所であり、神族と友達になりたいという彼女の過去の発言から、標的が紅葉姫である可能性が高まった。
紅富士に晴久と美咲がいると知った文鳥桜は顔色を変え、晴久へ連絡を取ろうとした。ナギサも急行できる戦力を集めるよう指示を出した。
夏樹との逃走戦
その頃、古屋晴久は秘密を知られた皇樹夏樹に追われ、夜の門前町を逃げ続けていた。
夏樹は周囲の植物まで自在に操り、枝葉と槍で晴久を執拗に追い詰めた。晴久は絶頂除霊による身体強化を使い、屋根の上を逃げながら紅葉姫へ真実を打ち明けるよう説得した。
皇樹家の重圧
夏樹は、母の死後すぐに皇樹家によって男性として育てられた事情を明かした。紅葉姫が男性にしか憑かないため、皇樹家と地域を守るには性別を偽るしかなかったのである。
夏樹は、真実を知った紅葉姫が自分を見限れば、町や樹海を守る力が失われると恐れていた。さらに、母の犠牲や父との約束まで無意味になると考え、女性である自分には価値がないと思い詰めていた。
晴久の説得
晴久は、紅葉姫が夏樹を案じる姿を思い出し、性別に関係なく彼女が夏樹を見捨てることはないと断言した。
しかし夏樹はその言葉を信じられず、晴久を消そうと攻撃を強めた。晴久は建物の弱点を突いて包囲を破り、再び逃走した。
桜を装う声
追い詰められた晴久のスマートフォンへ桜から着信が入った。電源を切っても呼び出しが止まらず、やむなく応答すると、電話から聞こえたのは桜ではない無数の声であった。
声の主は紅葉姫と晴久の存在を喜び、夏樹を皇樹神社から引き離したことまで都合がよいと語った。
紅富士の停電
直後、門前町全体の明かりが消えた。
皇樹神社の向こうにある富士の樹海からは、目に見えるほど濃密な瘴気が立ち上った。夏樹も異変に気づき、紅葉姫か聖域に重大な危機が迫っていると察した。
闇から伸びる死者の手
樹海へ注意を向けた晴久の腕を、暗闇から伸びた冷たい手が掴んだ。
周囲には亡者の声とともに無数の手が現れ、晴久を闇へ引きずり込もうとした。鹿島霊子の死者の軍勢は、晴久だけでなく紅富士の聖域全体を呑み込み始めていた。
第四章 幽鬼” 鹿島霊子
紅富士への救援と悪霊軍団の襲来
途絶した通信
文鳥桜は古屋晴久へ何度も電話をかけたが、悪霊による断線現象に妨げられ、連絡を取れなかった。紅富士の園全体も外部との通信を遮断されており、紅葉姫の加護が弱まっていることが明らかになった。
桜は封印地襲撃対策本部へ戻り、紅富士への援軍を急ぐようナギサへ訴えた。
不足する救援戦力
退魔師協会では、各地の封印地や解放された怪異への対応によって戦力が分散していた。鹿島霊子が多数の悪霊や強力な人形を従えている以上、通常の退魔師を送っても被害を増やすだけであった。
ナギサ自身も援軍となる力を持っていたが、生き霊であるためネクロマンサーの鹿島霊子とは相性が悪く、支配される危険から現場へ向かえなかった。
桜の救援作戦
桜は、晴久を救うためなら協力する可能性のある、強力な残留怪異を宿した者たちを戦力として使う案を示した。
彼女たちは正式な退魔師ではなく、能力も扱いづらかったが、桜は自らが同行して補佐すると申し出た。ナギサは危険すぎるとして反対したが、桜は晴久を守るために修行してきたのだと涙ながらに訴えた。
師弟の決断
桜の覚悟に折れたナギサは作戦を許可し、自身の特殊なスポーツカーを貸し与えた。
桜は救援に間に合わせるため、協力者たちへ連絡を取り、全速力で紅富士へ向かう準備を始めた。ナギサも残る戦力を再編し、桜たちを支援する部隊の確保に動いた。
晴久と夏樹の共闘
紅富士では、晴久が絶頂除霊で自分を闇へ引き込もうとした悪霊を退けた。
ミホトは悪霊から力を得たことを喜んだため、晴久は能力を使うほどミホトが強くなる可能性を懸念した。しかし周囲には悪霊が次々と出現しており、今は力を惜しめる状況ではなかった。
術式人形の包囲
晴久と皇樹夏樹の周囲には、悪霊だけでなく、武器を持った人形の集団も迫っていた。
晴久は観光聖域が敵に侵入された事実に驚き、美咲や町の住民の安否を確かめようとした。しかし通信は完全に遮断され、美咲が宿泊している場所すら分からなかった。
樹海の異変
晴久が迫る亡者たちを迎撃しようとする一方、夏樹は富士の樹海の方向を見て愕然としていた。
紅葉姫が抑えていたはずの忌み地から強大な瘴気と悪霊が溢れ出しており、紅富士の園全体が鹿島霊子の軍勢に呑み込まれようとしていた。
紅富士への救援と美咲の登場
紅葉姫の結界
皇樹神社だけが強い光を放ち、紅葉姫の展開した結界が神社を包んでいた。しかし丘全体には無数の悪霊が群がり、結界を食い破ろうとしていた。
皇樹夏樹は紅葉姫の危機を察すると、古屋晴久との争いを中断し、単独で神社へ向かった。
晴久の追跡
晴久は夏樹の独断を止めようとしたが、彼女は周囲の悪霊や人形を蹴散らし、先へ進んでしまった。
晴久は再び身体能力を高め、絶頂除霊で敵を退けながら夏樹を追った。門前町では避難放送が流れ、住民たちは建物内に身を寄せていたため、目立った被害はまだ確認できなかった。
統率された死者たち
悪霊は空中や死角から襲いかかり、武器を持つ人形も容赦なく晴久を狙った。
敵は恐怖や羞恥で怯まず、統一された意思に従うように攻撃を続けた。晴久は身体強化が切れれば押し切られると理解しながらも、紅葉姫を救おうとする夏樹を放置できず、前進を続けた。
ミホトの制止
ミホトは状況が絶頂除霊と相性が悪すぎるとして、晴久へ逃げるよう訴えた。
晴久が夏樹を助けようとする理由を問われると、彼は神具のためではないと否定した。孤独に秘密を抱え、自分の価値を見失っていた夏樹の姿が、身近な誰かと重なって見えたためであった。
悪霊の挟撃
晴久は一度包囲を突破したが、皇樹神社方面からさらに大群が押し寄せた。
前後左右を悪霊に塞がれ、突破口を失った晴久は、強引に正面突破するしかないと覚悟した。
美咲の多重結界
その瞬間、空から投じられた護符が巨大な光壁を生み出し、前後から迫る悪霊をせき止めた。
強力な六芒多重結界を発動したのは宗谷美咲であった。美咲は周囲に響く異様な声から晴久の存在を察し、危機一髪で彼を救出した。
悪霊の海と美咲の霊力切れ
美咲との再合流
古屋晴久は、巨大な式神に乗って現れた宗谷美咲と合流した。美咲は門前町の異変後、晴久と連絡が取れないことに気づき、悪霊が集中する場所と絶頂除霊の反応を頼りに彼を探し当てていた。
晴久は皇樹夏樹が単独で皇樹神社へ向かったことを伝え、二人は紅葉姫を救うため彼女を追跡した。
空路からの撤退
美咲は強化された式神で晴久を乗せ、悪霊の群れを越えて神社へ向かった。
しかし神社へ近づくほど敵の密度が増し、全方位から包囲される危険が高まったため、二人は途中で地上へ降りた。
強化された式神
地上では、美咲の四体の式神が高位の怪異に匹敵する力を発揮し、悪霊や武器を持つ人形を次々と薙ぎ倒した。
美咲自身も結界術や攻撃術を連続して使用し、晴久は術式の効きにくい人形や取りこぼした敵を絶頂除霊で処理した。二人は互いの死角を補いながら、悪霊の海を進んでいった。
二人の連携
晴久は、美咲に敵の処理を任せ、自分が接近した敵を必ず止めると約束した。
美咲も晴久の能力使用を気にしないと応じ、二人は互いを支えながら夏樹を追った。かつて落ちこぼれと呼ばれた美咲の力は、晴久にとって大きな支えとなっていた。
霊力の枯渇
長時間の戦闘によって、美咲は紅葉のアーチ付近で突然倒れ込んだ。
強力な術を使い続けた結果、増大した霊力の限界を把握できないまま使い切ってしまったのである。式神の動きも鈍り、防御結界も崩壊寸前となった。
緊急の霊力補充
晴久は判断の遅れを謝り、美咲の霊力を回復させるため、以前試した指への刺激を始めた。
しかし焦って強引に進めたため、美咲は反応せず、晴久を殴って止めた。美咲は、ただ刺激するのではなく、最初のときのように丁寧に気持ちを込める必要があると訴えた。
崩れゆく結界
晴久は迫る悪霊と縮小していく結界を気にしながらも、美咲の指示に従って慎重に霊力補充を再開した。
やがて美咲は少しずつ反応を示し始めたが、周囲では無数の悪霊が結界を包囲しており、二人には時間が残されていなかった。
鹿島霊子との遭遇と紅葉姫の危機
美咲の霊力回復
宗谷美咲は古屋晴久から丁寧な刺激を受けたことで再び霊力を生み出し、弱まっていた結界と式神の力を回復させた。
晴久と美咲は気まずさを振り切り、皇樹夏樹を追って皇樹神社へ進もうとした。しかし晴久の身体は度重なる能力使用で疲弊しており、残された余力は少なかった。
鹿島霊子の出現
悪霊に運ばれて、異様な雰囲気をまとった女性が二人の前へ現れた。
美咲が淫魔眼で視ると、女性の情報は常識では理解できないほど異常であった。晴久は彼女が紅富士を襲撃したネクロマンサーであり、一人で大規模な悪霊軍団を操っている可能性に気づいた。
ミホトを狙う霊子
女性は鹿島霊子であり、アンドロマリウスから晴久の情報を受け取っていた。
霊子は晴久の両手に宿る銀髪の少女ミホトを解放するよう要求した。晴久が拒むと、肉体を破壊してでもミホトを引きずり出すと告げ、強い殺意を向けた。
歪められた悪霊たち
霊子の影から、人の形すら失うほど状態の悪化した悪霊が大量に現れ、晴久たちの結界を包囲した。
霊子は悪霊を可愛らしい友人だと語り、自らの身体へ取り込んで強い恍惚を得ていた。彼女は霊体との結びつきを純愛と信じ、紅葉姫やミホトとも同じ関係を築こうとしていた。
紅葉姫の結界崩壊
その最中、皇樹神社を守っていた紅葉姫の結界がついに破られた。
紅葉姫の悲鳴が紅富士一帯に響き、周囲の紅葉は次々と枯れ始めた。神力が急速に失われ、紅富士の園そのものが崩壊しかねない状況となった。
霊的接続の切断
霊子は、紅葉姫と夏樹を結ぶ霊的接続を断ち切るため、悪霊に乗って皇樹神社へ向かった。
晴久と美咲が追おうとすると、霊子はさらに大量の悪霊を呼び出し、神社への道を完全に封鎖した。背後からは武器を持つ人形の集団も迫り、二人は包囲された。
晴久の無力感
晴久と美咲には悪霊を少しずつ倒す力はあったが、それでは紅葉姫や夏樹の救出に間に合わなかった。
晴久はミホトも制御できず、自分の能力だけでは状況を覆せない現実に打ちのめされた。それでも突破口を探していたところ、激しいエンジン音とともに、聞き覚えのある声が響いた。
桜たちの救援と夏樹の発見
桜の突入
文鳥桜は損傷したスポーツカーで悪霊と人形の群れを突破し、古屋晴久と宗谷美咲のもとへ駆けつけた。
桜は退魔術返しを貫く法具と強力な護符を使い、周囲の敵を次々と退けた。その実力は学生の域を大きく超えており、晴久たちの危機を一気に覆した。
南雲睦美の怪力
桜は美咲へさらしを渡し、南雲睦美の能力を妨げないよう胸元を隠させた。
睦美は枯れた巨木を引き抜いて振り回し、迫る人形の集団をまとめて樹海の方角へ吹き飛ばした。人形を破壊せず遠ざけることで、内部の悪霊が解放される事態も防いだ。
小日向静香の残留怪異
続いて小日向静香が車から降りると、彼女に反応した男性の悪霊たちへ激痛を与える能力が発動した。
大量の悪霊が次々と墜落し、桜と美咲の退魔術も加わったことで、皇樹神社へ続く道が開かれた。
桜の安堵
桜は晴久の身体に怪我や霊障がないことを確かめ、間に合ったことへ心から安堵した。
晴久は、自分を救うため桜が危険な現場へ駆けつけ、睦美や静香まで連れてきたことを悟った。彼は桜の手を握って感謝を伝え、睦美と静香にも必ず礼をすると約束した。
鹿島霊子への警告
桜は晴久と美咲へ先を急ぐよう促し、自分たちは後方から来る悪霊を食い止めると告げた。
さらに鹿島霊子は怪異ではなく、生身のまま常軌を逸した能力を持つ人物であるため、絶頂除霊だけで無力化できるとは限らないと警告した。
神社への快進撃
晴久と美咲は桜たちと別れ、再び皇樹神社へ向かった。
静香の能力によって男性の悪霊が次々と動きを止め、晴久と美咲は残る敵を処理しながら石段を駆け上がった。援軍の支援により、それまでとは比べものにならない速度で進むことができた。
倒れた夏樹
皇樹神社へ続く石段の途中で、二人は皇樹夏樹を発見した。
夏樹は紅葉姫との霊的接続が容易く断ち切られたことに衝撃を受け、悪霊に包囲された結界の中で膝をついていた。晴久と美咲は、夏樹も既に限界へ追い込まれていることを知った。
怪異霊との戦いとミホトの協力
夏樹の救出
古屋晴久と宗谷美咲は、悪霊に囲まれていた皇樹夏樹を救出した。晴久は助ける理由などないと言い切り、美咲も治療用の護符で傷ついた夏樹を回復させた。
夏樹は戸惑いながらも礼を述べ、三人は紅葉姫のもとへ急いだ。
侵食される紅葉姫
皇樹神社の境内では、皇樹家の者たちが倒れ、紅葉姫は大量の悪霊に呑み込まれていた。
鹿島霊子は呪詛によって紅葉姫を弱らせ、夏樹との霊的接続を断ち切ろうとしていた。接続が失われれば紅葉姫は地上で存在を保てなくなり、霊子に支配される危険があった。
紅葉姫への突進
紅葉姫を救うには、夏樹が直接触れて霊的接続を修復する必要があった。
晴久と美咲は夏樹を紅葉姫のもとへ送り届けるため、迫る悪霊と人形を退けながら前進した。しかし霊子は、援軍が短時間で集まったことに苛立ち、さらに強力な戦力を呼び出した。
二体の怪異霊
鹿島霊子の影から、蜘蛛の異形を持つ花魁と、大蛇の下半身を持つ巫女が現れた。
二体は怪異化したまま死亡した怪異霊であり、強烈な未練と怨念によって通常の悪霊以上の脅威となっていた。夏樹は蛇巫女と戦い、晴久は蜘蛛女の攻撃を受けた。
蜘蛛女の猛攻
蜘蛛女は無数の赤い糸を操り、美咲の結界を容易く破壊して晴久へ迫った。
晴久は身体強化によって致命傷を避けたものの、側頭部を負傷した。美咲は周囲の悪霊への対応に追われ、二体の怪異霊へ十分な援護を送れなかった。
ミホトの解放
晴久は、このままでは押し切られると判断し、美咲へミホトの封印解除を求めた。
逃げられる危険はあったが、美咲は晴久の意図を信じて封印を解いた。晴久は蜘蛛女の糸へ自ら腕を絡ませ、逃げられない状況を作ることで、自分を守る必要があるミホトへ協力を迫った。
ミホトとの共闘
ミホトは晴久の無謀さに呆れながらも、彼の両腕へ同化して戦闘への協力を受け入れた。
ミホトの力を得た晴久は蜘蛛女を殴り飛ばし、糸をたぐり寄せて追撃しようとした。その圧倒的な力により、怪異霊を倒せる可能性が見え始めた。
霊子の執着
鹿島霊子は姿を現したミホトへ強い執着を示し、彼女を自分のものにしようとした。
霊子の命令で蛇巫女も晴久たちへ攻撃を集中させたため、蜘蛛女への追撃は阻まれた。
蛇巫女の呪い
蛇巫女が複雑な印を結ぶと、晴久とミホトの両腕に突然激痛が走った。
その力は晴久の特殊な腕の防御さえ無視して痛みを与える呪いであった。晴久とミホトは動きを乱され、再び蜘蛛女の猛攻へさらされることになった。
紅葉姫と夏樹の覚醒
怪異霊の足止め
古屋晴久は、皇樹夏樹を紅葉姫のもとへ向かわせるため、ミホトとともに二体の怪異霊を引き受けた。
鹿島霊子は既に手遅れだと嘲笑し、紅葉姫は悪霊の塊にほぼ呑み込まれていた。夏樹との霊的接続も消えかけており、紅葉姫を取り戻せる可能性は極めて低くなっていた。
夏樹の決意
夏樹は紅葉姫を最後の家族だと呼び、力を失いながらも救出を諦めなかった。
晴久も夏樹を進ませるため、自身の能力を繰り返し使ってミホトへ力を与えた。ミホトは強化された両腕を操り、怪異霊二体を押し返したため、夏樹は悪霊の壁を突破した。
露見した性別
夏樹が紅葉姫へ手を伸ばした瞬間、悪霊に憑かれた人形によって胸元を覆う樹木が外れ、女性であることが露見した。
幼い頃から性別を隠すよう教え込まれてきた夏樹は動きを止め、最後の機会を失いかけた。晴久は、家族が性別を理由に夏樹を見捨てるはずがないと叫び、彼女の背中を押した。
紅葉姫との接触
夏樹は晴久を罵りながらも、その言葉を受け入れて前へ進んだ。
光に包まれた夏樹は紅葉姫を呑み込む悪霊の塊へ入り、ついに彼女と接触した。紅葉姫は夏樹が女性だと知って叫び声を上げ、鹿島霊子は霊的接続の修復に失敗したと勝ち誇った。
完全な霊的接続
しかし悪霊の塊には亀裂が走り、内部から強烈な神聖な光が溢れ出した。
夏樹が隠していた秘密を紅葉姫に受け入れられたことで、二人の霊的接続を不安定にしていた原因が消えたのである。悪霊は光に弾き飛ばされ、倒れていた者たちは苦痛から解放され、枯れた紅葉も再び息を吹き返した。
紅葉姫の歓喜
紅葉姫は夏樹が女性であることを拒絶するどころか、その凜々しさとの落差を強く気に入り、以前以上に喜んだ。
紅葉姫が男性しか依り代にしないという伝承は、初代皇樹の面影を求めていた過去の事情が形骸化したものであった。夏樹は長年の苦悩が無意味だったと知り、力が抜けるほど安堵した。
天人降ろしの完成
秘密から解放された夏樹は紅葉姫との完全な霊的接続を取り戻し、本来の天人降ろしとして覚醒した。
夏樹の身体は神聖な光と紅葉姫の力に包まれ、富士山は山頂まで輝く紅葉で覆われた。紅葉姫と夏樹は、紅富士を襲った鹿島霊子へ反撃する姿勢を整えた。
鹿島霊子の激怒
紅葉姫を奪う寸前だった鹿島霊子は、計画を覆されたことで激しく取り乱した。
霊子は紅葉姫を返せと絶叫し、丘を占拠していた悪霊の軍勢を一斉に境内へ向かわせた。覚醒した夏樹と紅葉姫を中心に、紅富士を懸けた決戦が始まろうとしていた。
怪異霊の除霊と鹿島霊子の異変
覚醒した天人降ろし
鹿島霊子が操る怪異霊と悪霊は、覚醒した皇樹夏樹と紅葉姫へ一斉に襲いかかった。
しかし夏樹が神力を解放すると、巨大な神木が悪霊の群れを一掃し、二体の怪異霊すら容易に押し返した。怪異霊は異常な執念によって浄化を耐え続けたが、夏樹と紅葉姫の優位は揺るがなかった。
美咲の目くらまし
古屋晴久とミホトも戦線へ加わり、宗谷美咲は鹿島霊子へ爆破魔札を放った。
護衛の人形に攻撃は防がれたものの、強烈な閃光によって霊子の視界が一瞬奪われた。その隙に怪異霊二体は夏樹の神木に拘束され、動きを封じられた。
怪異霊の解放
晴久とミホトは拘束された蜘蛛女と蛇巫女の弱点を突き、絶頂除霊を発動した。
強烈な力を受けた二体からは異形の部位が次々と抜け落ち、人間だった頃の姿へ近づいていった。やがて怪異と霊子の支配から解放された二人は、穏やかな表情を残して消滅した。
霊子の逃走
切り札である怪異霊を失った鹿島霊子は、残った悪霊と人形を引き連れて富士の樹海へ逃げ出した。
しかし夏樹は覚醒した力の反動で動けず、美咲も消耗していた。ミホトも追跡より周囲の者から力を得ることへ興味を向けたため、晴久たちは霊子を取り逃がしかけた。
烏丸の拘束術
逃走する霊子を、烏丸葵の光縄乱緊縛が空中で捕らえた。
続いて文鳥桜と多数の退魔師が境内へ到着し、残る人形の制圧と霊子の移送準備を始めた。悪霊と怪異霊を失った霊子には、拘束を破る手段が残されていなかった。
ナギサの宣告
桜を通して現場を見ていたナギサは、鹿島霊子が生きた人間の力を軽視したことが敗因だと告げた。
霊子はナギサへの憎悪を露わにしたが、退魔師たちは桜を中心に残敵の殲滅と拘束術の構築を進めた。晴久たちはようやく戦いが終わったと安堵した。
晴久の限界
美咲は残った霊力でミホトを再封印しようとした。
その一方、晴久は身体強化の反動と長時間の戦闘によって限界を迎え、その場へ座り込んだ。全身を強い痛みと疲労が襲い、ほとんど動けない状態となっていた。
鹿島霊子の変貌
拘束された霊子は、生きた人間は自分を否定し、邪魔ばかりすると憎悪を吐き出した。
しかし自分自身も生きた人間であることを思い出した瞬間、霊子の顔から感情が消えた。直後、彼女の身に新たな異変が起こり、周囲から悲鳴が上がった。
鹿島霊子の逃亡と新たな神具
霊子の捨て身の逃走
拘束された鹿島霊子は自ら舌を噛み切り、肉体から魂を離脱させた。
霊子の魂は多数の人形の一体へ入り込み、人形たちは外見を崩して互いに入り乱れながら樹海へ逃走した。退魔師たちはどの人形に霊子が憑依したのか判別できず、追跡を断念して残された肉体の救命を優先した。
サオリさんへの憑依
烏丸葵は、霊子が入り込んだ人形が行方不明になっていたサオリさんではないかと気づいた。
しかし人形の集団は次々と樹海へ消え、霊子の魂を捕らえることはできなかった。ナギサは、霊子が死亡して強力な悪霊になることを防ぐため、肉体を救命するよう命じた。
ミホトの再逃走
現場の混乱に乗じ、ミホトは鹿島霊子を追跡すると偽って古屋晴久の身体を操り、門前町へ逃走した。
宗谷美咲が空中で再封印すれば晴久が墜落するため、すぐには術を使えなかった。ミホトは以前の失敗から遠隔再封印の弱点を学び、安全に封印できない状況を作りながら距離を稼いだ。
紅葉姫の仕掛け
逃走中、晴久の左手薬指に指輪のような紋様が浮かび、紅葉姫の声が響いた。
紅葉姫は以前の密談の際に紋様を刻んでおり、夏樹を救った報酬として、ミホトを制御する神具を美咲へ授けた。美咲が指輪へ霊力を流すと、晴久と感覚を共有するミホトへ強烈な痛みが与えられた。
神具による制圧
痛みは晴久にも伝わったが、地面へ安全に降りられるよう断続的に発動した。
逃走を続けようとするミホトへ痛みが繰り返し与えられ、ついには抵抗できなくなった。美咲が追いつくと、ミホトは再封印され、晴久の両手へ戻された。
美咲への指輪
紅葉姫が授けた神具は、かつて初代皇樹の浮気を戒めるために作られたものであった。
美咲は晴久へ治療を施し、暴走を止めるためとはいえ痛い思いをさせたことを謝った。晴久は美咲も限界まで追いかけてきたと知り、今回の件は仕方がなかったと受け入れた。
夏樹を巡る追及
美咲は安堵した直後、晴久が夏樹の秘密を知っていたことや、夜中に二人きりで町外れにいたことを問い詰めた。
晴久は神具を脅しに使われることを恐れ、すべて説明する代わりに、自分へ痛みを与えないと誓うよう必死に求めた。紅富士の園には平穏が戻りつつあったが、晴久と美咲の間には新たな騒動が始まっていた。
エピローグ
紅富士での療養と新たな手がかり
皇樹家の歓待
鹿島霊子の襲撃から三日後、古屋晴久と宗谷美咲は紅富士の園にある病院で療養していた。
晴久は能力を多用した反動で衰弱していたが、皇樹家を救った功績から専属の看護師や豪華な食事を用意され、過剰なほど手厚い待遇を受けていた。
活気を取り戻した紅富士
紅富士の園では、皇樹夏樹の覚醒によって富士山頂まで紅葉が広がり、町全体が祭りのような盛り上がりを見せていた。
一方で鹿島霊子の魂はサオリさんに憑依したまま逃走しており、行方は分からなかった。肉体は退魔師協会が確保していたものの、アンドロマリウスとの繋がりもあるため、捜索が容易に進む保証はなかった。
解放された怪異
文鳥桜によれば、鹿島霊子は各地の封印を破ったあと、気に入らない怨霊や呪具を放置していた。
そのため退魔師協会は、全国に散らばった危険な怪異への対応に追われていた。怪異霊を容易に除霊できる晴久も、帰京後は対処へ招集される可能性が高かった。
桜の心配
桜は、晴久が再びミホトに操られないよう、美咲と十分に対策を整えるよう強く忠告した。
晴久が心配しているのかと尋ねると、桜は監視役として危なっかしい行動を控えてほしいだけだと反発した。しかしその憔悴した様子から、晴久は彼女が本気で身を案じていたと理解した。
夏樹の謝罪
回復して病院を歩けるようになった晴久は、夏樹から庭園へ呼び出された。
夏樹は紅富士と紅葉姫を救ったことへ改めて礼を述べ、晴久の養父を侮辱したことも正式に謝罪した。晴久は何度も頭を下げる夏樹へ違和感を覚え、以前のように遠慮なく口論できる関係のほうが自然だと伝えた。
皇樹家への求婚
本来の調子を取り戻した夏樹は、晴久へ皇樹家の配偶者にならないかと申し出た。
夏樹は性別を偽したまま皇樹家を存続させる必要があり、その秘密を知り、紅葉姫からも信頼されている晴久は理想的な相手だと考えていた。さらに晴久が女装できることも、男装する夏樹の配偶者として都合がよいと判断していた。
晴久の拒絶
晴久は夏樹の申し出が真剣なものだと理解したうえで断った。
絶頂除霊を狙うアンドロマリウスや鹿島霊子の脅威が残る中、家庭を持てば周囲を危険へ巻き込む可能性があったためである。夏樹はその事情に納得したが、呪いの問題が解決すれば結婚を検討できるのではないかと考え続けた。
先見の相馬
夏樹は晴久たちの呪いについて情報を得るため、予言能力を持つ相馬家へ占いを依頼すると提案した。
相馬家当主は占いを嫌っていることで有名だったが、夏樹は皇樹家との関係を使えば応じてもらえると自信を見せた。晴久は新たな手がかりへの期待を抱き、その申し出を受け入れた。
夏樹との写真
占いには対象者の写真が必要だったため、夏樹は晴久と並んで写真を撮った。
依頼主が夏樹であることを示すためだと説明しながら何度も撮影を続けたが、美咲の声が聞こえると晴久を慌てて突き飛ばし、親密な様子を隠そうとした。
本免許の交付
美咲は晴久を探し出し、二人の本免許が正式に交付されたと知らせた。
これにより呪いに関する新たな情報へアクセスできるようになった。晴久は夏樹へ相馬家への依頼を任せ、美咲のもとへ急いだ。
呪いの正体はいまだ不明であったが、晴久たちは周囲の協力を得ながら、解決へ向けて少しずつ前進していた。
エピローグ2
相馬千鶴の予言
皇樹家からの依頼
相馬家当主の相馬千鶴は、側近の巫女から皇樹夏樹の占い依頼を伝えられた。
千鶴は予言に頼れば人が自ら考えなくなるとして占いを嫌っていたが、依頼対象が古屋晴久と宗谷美咲だと知り、二人の写真に霊感を刺激されて力を使った。
サキュバス王の性遺物
千鶴は二人がサキュバス王のパーツに憑かれながら生存していることを把握していた。
写真を通して未来を視た千鶴は、酷い悪夢を見たような顔で部屋を飛び出した。
大勢の犠牲
千鶴が視た未来では、近いうちにサキュバス王の性遺物が何者かへ取り憑き、大勢の犠牲を生む惨事が起こるとされていた。
千鶴は側近へ、至急対策を取るよう退魔師協会に連絡することを命じた。
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