- 母マゴットの正体が明らかに!亡国再興を決意したバルドと、王女レイチェルの悲劇
- ※以下、『異世界転生騒動記7』のネタバレを含む感想。
- 母マゴットの本当の名前はマルグリット。滅亡した王国の王女だった
- 母親の過去を知ったバルド。家族を守るために王位を目指す
- シルクを縛っていた亡国再興の使命。その重荷がようやく下りる
- 亡命貴族たちの態度がひどい。国を取り戻したいなら自分で動いてほしい
- 官僚貴族にとっては大チャンス。目の上のこぶが勝手に出ていく
- サンファン王国の支持がうれしい。血筋よりもバルド本人を見ている
- ノルトランド帝国の獣人族も動き出す。バルドは希望の象徴になる
- ウェルキン国王との交渉。バルドが完全に主導権を握っている
- 獣人族の血が入ることを嫌う国王。レイチェルの恋が犠牲になる
- レイチェルが引きこもってしまう。あまりにもかわいそうな結末
- シルクは解放され、レイチェルは縛られる。この対比が切ない
- 「世界のほうを自分に合わせる」。バルドの覚悟が大きく変わった
- 国を取り戻すだけでは終わらない。各国の思惑が入り乱れる
- 第7巻の面白さは、母親の過去が大陸全体を動かし始めるところ
- 血筋ではなく、その人自身を見ることの難しさ
物語の概要
■ 作品概要
マウリシア王国アントリム辺境伯バルド・コルネリアスは、決闘を経て母マゴットから彼女の正体が滅亡したトリストヴィー王国の第八王女マルグリットであること、かつて母子を暗殺しようとした騎士を動かせたのはマウリシア国王ウェルキンしかあり得ないという事実が明かされる。
自身がトリストヴィー王国の第一王位継承者であり、獣人の血を引いているという宿命を知ったバルドは、放置すれば家族や弟妹に災厄が降りかかると悟り、自らの内に眠る前々世の老将・岡左内の叱咤を受けて、世界の偏見と戦い大切な者を守るためにトリストヴィーの王位を勝ち取る決意を固める。
バルドはアントリムの鉱山開発や新技術の導入を急ぎつつ、サンファン王国、トリストヴィー海運ギルド、ノルトランド帝国の獣人勢力との連携を取り付ける。
さらに、トリストヴィー王党派を率いるランドルフ侯爵アルフォードを説得して娘シルクと共に歩む合意を取り付け、最後はマウリシア国王ウェルキンとの直接交渉に臨む。
最終的に、アントリム領を王室直轄地として差し出す条件を提示してウェルキンを完全に屈服させ、トリストヴィー王位就任への支援を認めさせるところまで状況が進む。
■ 主要キャラクター
バルド・コルネリアス
- 立場・所属:マウリシア王国アントリム辺境伯、コルネリアス伯爵家嫡男、トリストヴィー王国第一王位継承者。
- 主人公との関係:主人公本人。
- この巻での主な役割:母の過去の受容、トリストヴィー王位を目指す決断、諸勢力(サンファン、海運ギルド、ランドルフ家、マウリシア王家)との政治交渉。
- この巻で起きた重要な変化や行動:母マゴットから過去の悲劇と暗殺未遂の背景を聞き、岡左内の叱咤を受けてトリストヴィー国王を目指す覚悟を決める。領内の鉱山再開発や人力トロッコ軌道敷設、鉱石ラジオの通信試験を進めつつ、テレサを通じてサンファン王国の支持を取り付ける。ランドルフ侯爵邸の手前で亡命貴族を威圧して退け、アルフォードとシルクを説得。ウェルキン国王との謁見では、自らに獣人の血が流れている事実を突きつけつつ、発展したアントリム領の返還を交換条件に提示して屈服させ、王位奪還への承認と協力を勝ち取った。
マゴット・コルネリアス(マルグリット・パザロフ・トリストヴィー)
- 立場・所属:コルネリアス伯爵夫人、元傭兵「銀光」、旧トリストヴィー王国第八王女。
- 主人公との関係:実母。
- この巻での主な役割:自らの正体と過去の悲劇(後宮の陰謀、影武者ナイジェルの死、リーシャの最期)の告白。
- この巻で起きた重要な変化や行動:バルドとの決闘を経て孤独の呪縛から解放され、家族の前で自らの本名と過去を明かす。かつてマウリシア領内で襲撃してきた騎士の剣技がマウリシア特有のものであった事実を証言し、バルドがトリストヴィーの王位継承問題に向き合うきっかけを作った。
ウェルキン・マウリシア
- 立場・所属:マウリシア王国国王。
- 主人公との関係:主君。
- この巻での主な役割:過去の暗殺計画の真相開示、バルドとの政治交渉と屈服。
- この巻で起きた重要な変化や行動:かつてトリストヴィーへ嫁いだ妹カタリナの執拗な要請によりマゴットの元へ騎士を派遣したものの、ボーフォート公の係累が独断で殺害報告を上げていた過去を明かす。ラミリーズに王女の所在を拒絶された後、単独で謁見に現れたバルドから獣人の血筋と四カ国連合の後ろ盾、さらにアントリム直轄地化の提案を突きつけられ、要求を全面的に受け入れざるを得なくなった。その後、娘レイチェルに対しバルドを諦めてリッチモンド公の家へ嫁ぐよう命じた。
シルク・ランドルフ
- 立場・所属:ランドルフ侯爵令嬢、旧トリストヴィー王家継承権保持者。
- 主人公との関係:学友、想い人、従姉妹。
- この巻での主な役割:バルドとの絆の再確認、トリストヴィー奪還とバルドへの恋心を両立する決意。
- この巻で起きた重要な変化や行動:バルドが従弟であり、正統な王位継承者である事実を知る。トリストヴィーの復興とバルドへの愛のどちらも捨てないと宣言し、父アルフォードの前でバルドの腕を取って共に歩む意志を貫いた。
アルフォード・ランドルフ
- 立場・所属:マウリシア王国十大貴族、ランドルフ侯爵、トリストヴィー王党派の庇護者。
- 主人公との関係:シルクの父、バルドの後援者。
- この巻での主な役割:トリストヴィー亡命貴族の後見、バルドとの政治会談。
- この巻で起きた重要な変化や行動:自邸を訪れたバルドから、マゴットの出自と獣人の血統、四カ国の支援を取り付けている事実を見せつけられる。バルドの覚悟と、娘シルクの揺るぎない決意を受け止め、バルドがトリストヴィーの王として立つことを容認した。
テレサ・フランコ
- 立場・所属:サンファン王国王太子妃、マウリシア国王養女、元ブラッドフォード子爵令嬢。
- 主人公との関係:幼馴染、親友。
- この巻での主な役割:サンファン王国の使者としてのアントリム来訪、国家支援の伝達。
- この巻で起きた重要な変化や行動:バルドから送られた密書を受け取り、単身アントリムを訪れる。バルドの獣人の血筋を気にすることなく友情を示し、真珠養殖や流下式塩田などの経済的利害や南洋航路の安全保障の観点から、サンファン王国としてバルドをトリストヴィーの正統な主権者として承認・支援する国王の言を伝えた。
アウグスト・ガリバルディ
- 立場・所属:トリストヴィー海運ギルド七元老、ガリバルディ商会会頭代行、獣人。
- 主人公との関係:裏でバルドの王位擁立を画策する実動者。
- この巻での主な役割:七元老会議での情報誘導、ノルトランドの獣人重鎮の抱き込み。
- この巻で起きた重要な変化や行動:父ヴァレリーの指示のもと、海運ギルド会議でマルグリット王女の生存情報を利用して王女擁立を提案。ノルトランドの伯父ギッツェら帝国軍重鎮や祖母ジーナと接触し、バルドが獣人の血を引く王として立つ見通しを伝え、全大陸の獣人勢力をバルド支援へと結束させた。
オスト伯ヴァレリー(ベネート・ガリバルディ)
- 立場・所属:トリストヴィー公国貴族、海運ギルド七元老(裏の顔)。
- 主人公との関係:かつての祖父ヴィクトールの親友、陰謀の黒幕。
- この巻での主な役割:トリストヴィー公国と海運ギルドの対立の操縦、バルドを王に据える謀略の推進。
- この巻で起きた重要な変化や行動:公国側の大公ジャックを誘導して時間を稼ぎつつ、息子アウグストを使って海運ギルドとノルトランドを動かし、旧弊な秩序を破壊してヴィクトールの理想を継ぐバルドを王に押し上げる絵図面を完成させた。
ラミリーズ
- 立場・所属:マウリシア王国騎士学校校長、元将軍。かつてのパザロフ家近衛騎士。
- 主人公との関係:騎士学校の恩師、母マゴットの師。
- この巻での主な役割:過去の護衛の経緯の証言、ウェルキン国王からの喚問への対峙。
- この巻で起きた重要な変化や行動:ウェルキンからマルグリット王女の居場所を問われるが、自らが剣を捧げた主はヴィクトール伯爵ただ一人であるとして証言を断固拒否する。王女たちが戦う道を選んだ際は地位を返上して駆けつける許可を取り付け、退出した。
レイチェル・マウリシア
- 立場・所属:マウリシア王国第二王女。
- 主人公との関係:想い人、恩人。
- この巻での主な役割:ウェルキン国王からの縁談拒絶の通告。
- この巻で起きた重要な変化や行動:バルドが王宮に来ていると知って喜ぶが、バルドの血筋を知って激怒・警戒した父ウェルキンから「獣人の男に嫁がせる娘はない」と告げられ、リッチモンド公の家へ嫁ぐよう命じられて私室に引きこもる。
書籍情報
異世界転生騒動記 7
著者:高見梁川 氏
イラスト:りりんら 氏
出版社:アルファポリス
発売日:2016年3月1日
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あらすじ・内容
三人の魂が合体!累計18万部突破の大人気ファンタジー戦記、第7巻!
累計18万部突破!辺境貴族の少年が成り上がる異世界ファンタジー戦記、待望の第7巻! 守銭奴戦国武将・岡左内と、オタク高校生・岡雅晴の魂を併せ持った少年――バルド・コルネリアス。母マゴットこそがトリストヴィーの王女マルグリットであると知ったバルドは、祖国再興の重責にさいなまれるシルクを救うためにも、自身がトリストヴィー内乱に介入する決意を固める。一方、バルドの出自を嗅ぎつけた獣人族やトリストヴィーの各勢力も、独自の思惑で動き始めていた……。
感想
母マゴットの正体が明らかに!亡国再興を決意したバルドと、王女レイチェルの悲劇
『異世界転生騒動記』第7巻を読んで、まず感じたのは、物語がいよいよ国家の枠を超えて動き始めたということだった。
前巻では、バルドが母マゴットの隠された力を知り、ついに彼女を超えるまでに成長した。
そして今回、その母親が抱えてきた過去のすべてが明らかになる。
マゴットの本名は、マルグリット・パザロフ・トリストヴィー。
滅亡したトリストヴィー王国の第八王女であり、獣人族の血も引いていたのだ。
つまり、息子であるバルドもまた、王家と獣人族の血を受け継いでいる。
これまでのバルドは、マウリシア王国の貴族として領地を発展させ、戦争では五万人の大軍を退ける活躍を見せてきた。
それだけでも十分に規格外である。
ところが今度は、滅亡した王国の正統な王位継承者として、トリストヴィー再興の旗頭になることを決意してしまう。
いや、領地経営から始まった話が、とうとう国を取り戻すところまで来たのか。
しかも、この決断によって各国の思惑が一気に動き始める。
マウリシア王国の官僚貴族たちは、目の上のこぶだったバルドが国外へ去ることを歓迎する。
一方、サンファン王国はバルド個人への恩義と信頼から、獣人族の血筋など気にせず支援を表明する。
そして、バルドを高く評価していたはずのマウリシア国王ウェルキンは、王家に獣人族の血が入ることを嫌い、娘レイチェルとの縁談を断ち切ってしまう。
その結果、レイチェルは絶望して部屋に引きこもる。
この展開が、何とも皮肉だった。
バルドの能力は誰もが認めている。
それなのに、血筋が明らかになった途端、人々の態度が変わってしまう。
人間として何を成し遂げたかよりも、どんな血が流れているかを重視する。
そんな世界の偏見に対し、バルドは正面から戦う道を選ぶ。
第7巻は、母親の過去を受け継いだ少年が、自分の意思で歴史を動かそうとする物語だった。
※以下、『異世界転生騒動記7』のネタバレを含む感想。
母マゴットの本当の名前はマルグリット。滅亡した王国の王女だった
前巻の最後で、バルドは母マゴットとの決闘に勝利した。
それまでマゴットは、自分が最強でなければ家族を守れないという思いに縛られていた。
しかし、成長した息子が自分を超えたことで、ようやくその重荷を下ろすことができた。
第7巻は、その続きから始まる。
マゴットは家族に、自分の本当の名前と過去を語り始める。
マルグリット・パザロフ・トリストヴィー。
滅亡したトリストヴィー王国の第八王女。
これまで強すぎる母親として描かれてきたマゴットが、実は亡国の王女だったというだけでも驚きである。
しかし、本当に重かったのは、その生い立ちだった。
王宮内の権力争いによって祖父を失い、母親も命を狙われる。
幼いマルグリットを生き延びさせるため、周囲の人々は命を懸けて彼女を守り続けた。
特に印象に残ったのが、身代わりとなったナイジェルの存在である。
マルグリットは、自分が守るべき相手だと思っていたナイジェルこそ、実は自分の身代わりだったことを後に知る。
彼女を生かすために、母ダリアもナイジェルも命を落としていた。
これはあまりにも重い。
守っていたつもりが、実際には自分が守られていた。
しかも、そのために大切な人たちが死んでいる。
マゴットが「誰よりも強くならなければならない」と考えるようになった理由も、これでよく分かった。
彼女の強さは、単なる才能や負けず嫌いから生まれたものではない。
二度と大切な人を失いたくない。
そんな後悔と恐怖から生まれたものだった。
第1巻からマゴットの暴力的な鍛錬には何度も笑わされてきた。
しかし、今回その過去を知ると、笑ってばかりもいられなくなる。
あの異常なまでの強さへの執着には、こんな理由があったのか。
そう思うと、マゴットという人物の見え方が大きく変わった。
母親の過去を知ったバルド。家族を守るために王位を目指す
マゴットの告白によって、バルド自身の立場も大きく変わる。
母がトリストヴィー王国の正統な王女である以上、その息子であるバルドにも王位継承権がある。
しかも、第一王位継承者という立場だ。
これは、ただ名誉な話ではない。
むしろ、危険な立場になってしまったといえる。
王位継承権を持つということは、政治的に利用される可能性があるということだ。
本人に王になる気がなくても、周囲が放っておくとは限らない。
そして、バルドが何もしなければ、今度は弟ナイジェルや妹マルグリットに危険が及ぶかもしれない。
自分の子供や、その先の世代まで巻き込まれる可能性もある。
ここでバルドは悩む。
平穏に暮らすため、何も知らないふりをするのか。
それとも、自ら危険な場所へ踏み込むのか。
この葛藤は、これまでのバルドとは少し違って見えた。
領地経営では、知識を使えば問題を解決できた。
戦争では、策を巡らせて敵軍を撃退した。
しかし、今回の問題は、敵を倒せば終わるようなものではない。
血筋と歴史が関わっている。
そして、逃げても問題が消えるわけではない。
そんなバルドの背中を押したのが、前々世の武将・岡左内だった。
戦うべきときに戦わなければならない。
窮地こそ好機である。
その言葉を受けて、バルドは決意する。
自らトリストヴィー王国の王位を勝ち取り、家族を守る。
いや、思い切りがよすぎる。
普通なら、王位継承権をどうやって放棄するか考えてもおかしくない。
しかし、バルドは逆に王になる道を選んでしまう。
それも、権力が欲しいからではない。
大切な人たちを守るためである。
このあたりに、バルドらしさを感じた。
シルクを縛っていた亡国再興の使命。その重荷がようやく下りる
今回、特に印象に残った人物の一人がシルクである。
シルクは、これまでトリストヴィー王国の再興という使命を背負ってきた。
祖国を取り戻さなければならない。
亡命した貴族たちの期待に応えなければならない。
そのためには、自分の結婚さえ政治的に利用される可能性がある。
彼女は、そんな重荷を抱えながら生きてきた。
ところが、マゴットが正統な王女であることが明らかになり、バルドが王位継承者として立つことになる。
これによって、シルクが一人で背負っていた使命は大きく変わる。
ここがよかった。
これまでシルクは、バルドに好意を抱きながらも、祖国再興という立場から自由になれなかった。
自分の気持ちだけで将来を選べない。
その窮屈さが、ずっと彼女について回っていた。
しかし、バルドが王位を目指すなら、彼女は自分の想いと祖国再興を対立させる必要がなくなる。
もちろん、これで問題がすべて解決するわけではない。
王国を再興するには、これから大きな戦いが待っている。
それでも、シルクにとっては大きな救いだったと思う。
そして、バルドは彼女に自分の血筋を明かし、共に歩んでほしいと伝える。
シルクは、その手を取る。
読んでいて、ようやく彼女が自分自身の意思で未来を選べるようになったと感じた。
これまでのシルクは、祖国のために生きることを求められていた。
しかし、これからはバルドと一緒に祖国を取り戻すことができる。
同じ再興でも、その意味はずいぶん違う。
義務として背負わされていた夢が、自分で選んだ未来へ変わる。
この変化が印象的だった。
亡命貴族たちの態度がひどい。国を取り戻したいなら自分で動いてほしい
一方で、トリストヴィーの亡命貴族たちの態度には、かなり腹が立った。
彼らは、シルクを祖国再興の象徴として扱っている。
しかし、自分たちが何かを成し遂げているかというと、そうでもない。
それなのに、シルクの結婚相手には口を出す。
バルドが彼女に近づくことも面白くないらしい。
いや、何を言っているんだ。
国を取り戻したいのなら、まず自分たちが動くべきではないのか。
もちろん、亡命した貴族たちにも事情はあるだろう。
故郷を失い、簡単には動けない立場なのかもしれない。
しかし、シルク一人に使命を押しつけ、自分たちの利権ばかり気にしているように見えるのは、どうにも納得できなかった。
バルドが彼らに激怒するのも理解できる。
彼は、圧倒的な殺気で亡命貴族たちを威圧し、その場から追い払う。
この場面は、少し痛快だった。
バルドは、ただ王位を欲しがっているわけではない。
シルクの重荷を軽くし、家族を守るために危険な道を選んでいる。
その覚悟もなく、立場や利権だけを主張する人々に腹を立てるのは当然だと思う。
そして、ここでもバルドの成長を感じた。
以前なら、政治的な問題を避けようとしたかもしれない。
しかし、今は自分の意思をはっきり示している。
王になる覚悟を決めたことで、周囲への態度まで変わってきたように感じた。
官僚貴族にとっては大チャンス。目の上のこぶが勝手に出ていく
バルドがトリストヴィー王国の再興を目指すと知って、喜ぶ人々もいる。
マウリシア王国の官僚貴族たちである。
これが、なかなか皮肉だった。
バルドは、マウリシア王国にとって非常に大きな功績を残している。
領地を発展させ、新しい技術を導入し、国の経済にも貢献してきた。
さらに、五万人の大軍を撃退して国を守った。
普通に考えれば、手放してはいけない人材である。
しかし、官僚貴族たちにとっては事情が違う。
バルドは若く、実力があり、国王からの評価も高い。
しかも、独自の経済力と軍事力まで持っている。
既存の権力を守りたい人々からすれば、これほど扱いにくい人物もいない。
だからこそ、バルドが国外へ出ていくのは願ってもない話なのだ。
いや、国を救った英雄がいなくなることを喜ぶのか。
そう思ってしまう。
しかし、政治の世界では、国全体の利益と自分たちの利益が一致するとは限らない。
優秀な人物がいること自体を脅威に感じる人もいる。
その人物が自分たちの地位を脅かすなら、いなくなってくれた方が都合がよい。
そんな身勝手さが見えてくる。
しかも、バルドは発展したアントリム領を王室直轄地として差し出すことまで提案する。
王国にとっては、大きな利益である。
有能なバルドを手放す代わりに、彼が育てた豊かな領地を手に入れる。
この条件を提示されたら、反対する理由も少なくなる。
バルドもまた、相手の欲しいものをよく理解している。
ただ理想を語るだけではなく、現実的な取引で道を切り開いていく。
このあたりは、これまで領地経営や商売で経験を積んできたバルドらしいと思った。
サンファン王国の支持がうれしい。血筋よりもバルド本人を見ている
今回、特に気持ちがよかったのがサンファン王国の対応である。
バルドが獣人族の血を引いていると知っても、彼らの態度は変わらない。
幼なじみのテレサを通じて、トリストヴィー王国再興への全面的な支援を伝えてくる。
これは素直にうれしかった。
もちろん、サンファン王国にも国益がある。
海洋国家であるトリストヴィーを味方につければ、海上交易や周辺国との勢力争いで大きな利益が期待できる。
バルドが持つ新技術も魅力的だ。
だから、友情だけで支援しているわけではないだろう。
しかし、それでも重要なのは、バルドに獣人族の血が流れていることを問題にしていない点である。
彼らが評価しているのは、バルドという人物そのものだ。
これまで何をしてきたのか。
どんな約束を守ってきたのか。
どれだけ信頼できるのか。
その積み重ねを見ている。
ここが、後に描かれるマウリシア国王の態度と対照的だった。
同じバルドを前にしても、血筋を知った途端に距離を置く者がいる。
一方で、血筋など関係ないと支援する者もいる。
この違いが、今回の大きなテーマの一つになっていたと思う。
人を判断するのは、血筋なのか。それとも、その人が積み重ねてきた行動なのか。
サンファン王国の対応は、後者を選んだものに見えた。
ノルトランド帝国の獣人族も動き出す。バルドは希望の象徴になる
サンファン王国だけでなく、ノルトランド帝国の獣人族もバルドを支援しようと動き始める。
ここで興味深かったのが、彼らにとってバルドが持つ意味である。
獣人族の血を引く人物が、正式な国王になる。
それは、獣人族にとって長年の悲願だった。
これまで獣人族は、種族の違いによる偏見や差別を受けてきた。
そのような世界で、獣人族の血を持つ国王が誕生する。
これは、単に一人の人物が王になるという話ではない。
獣人族の立場そのものを変える可能性がある。
バルド自身は、最初から獣人族の希望になろうと考えていたわけではない。
家族を守るために王位を目指した。
しかし、その決断が多くの人々にとって希望になっていく。
この広がり方が面白かった。
本人の思惑を超えて、周囲が大きく動き始める。
しかも、ジーナをはじめとする獣人族の重鎮たちは、バルドの意思を尊重しながら支援しようとする。
ここも好印象だった。
王家の血筋があるからといって、勝手に担ぎ上げるのではない。
本人の覚悟を確認したうえで、力を貸そうとする。
バルドが王位を目指す意味が、少しずつ大きくなっていく。
このあたりから、物語の規模が本当に大陸全体へ広がってきたと感じた。
ウェルキン国王との交渉。バルドが完全に主導権を握っている
今回の政治劇で見応えがあったのが、バルドとマウリシア国王ウェルキンの交渉である。
ウェルキンは、これまでバルドを高く評価してきた。
その能力を認め、王国のために働いてほしいと考えていた。
第二王女レイチェルを嫁がせることも、その一環だったのだろう。
しかし、バルドがトリストヴィー王国の正統な王位継承者だと判明したことで、状況は一変する。
さらに、母マゴットの過去にはマウリシア王国側の暗い事情も関わっていた。
ウェルキンにとっては、簡単に処理できる問題ではない。
ところが、バルドはすでに各国の支援を取りつけていた。
サンファン王国、マジョルカ王国、ノルトランド帝国、そして海運ギルド。
さらに、マウリシア国内の有力貴族とも取引を済ませている。
そのうえで、発展したアントリム領を王室に差し出すという提案まで用意していた。
いや、準備がよすぎる。
これまでバルドは、領地経営や戦争で知略を見せてきた。
しかし、今回はその能力を外交と政治に使っている。
相手が何を恐れているか。
何を欲しがっているか。
どこまで条件を整えれば反対できなくなるか。
それらを考えたうえで交渉に臨んでいる。
国王相手に、ここまで主導権を握れるようになったのか。
そう感心した。
一方で、少し寂しさも感じた。
バルドは、もともとマウリシア王国の貴族である。
その国を守るために命懸けで戦ったこともある。
しかし、今は自分の家族を守るため、国王と政治的に対決しなければならない。
これまでの関係が変わっていくことに、物語の大きな転換点を感じた。
獣人族の血が入ることを嫌う国王。レイチェルの恋が犠牲になる
そして、今回最も後味が悪かったのが、レイチェルの扱いである。
ウェルキン国王は、バルドの能力を誰よりも理解している人物の一人だった。
若くして領地を発展させ、戦争でも大きな功績を残している。
政治的な判断力もある。
将来性を考えれば、娘を嫁がせたいと思うのも自然だろう。
実際、国王は第二王女レイチェルとバルドの結婚を考えていた。
ところが、バルドに獣人族の血が流れていると知った途端、その考えを変えてしまう。
王家に獣人族の血を入れたくない。
その理由で、レイチェルに別の相手との結婚を命じるのだ。
これには、何とも言えない気持ちになった。
バルドの能力が変わったわけではない。
これまでの功績が消えたわけでもない。
人格が別人になったわけでもない。
ただ、血筋について新しい事実が明らかになっただけである。
それなのに、結婚相手として認められなくなる。
国王という立場上、王家の血筋を重視する事情はあるのだろう。
王族の結婚が、個人の恋愛だけでは決められないことも分かる。
しかし、それでも納得しにくい。
なぜなら、国王はバルドの価値を十分に知っていたからだ。
能力も実績も認めていた相手を、血筋だけで拒絶する。
この矛盾が、今回の政治劇の残酷さをよく表していた。
レイチェルが引きこもってしまう。あまりにもかわいそうな結末
国王の命令を受けたレイチェルは、深い絶望に沈む。
そして、その日から自室に引きこもってしまう。
この展開がつらかった。
レイチェルは、これまでバルドに積極的に好意を示してきた。
祝勝会でも、周囲に分かる形で気持ちを表していた。
もちろん、王女という立場があるため、簡単に恋愛できるわけではない。
それでも、父である国王がバルドを評価していたのだから、彼女にも希望があったはずだ。
ところが、その父親自身が結婚を否定してしまう。
しかも、理由はバルド本人の行動ではなく、獣人族の血筋である。
レイチェルからすれば、どうすることもできない。
自分がどれだけバルドを好きでも、父親は認めてくれない。
バルドがどれだけ功績を積んでも、血筋は変えられない。
努力で解決できる問題ではないのだ。
ここが、特につらい。
これまで『異世界転生騒動記』では、知識や努力、工夫によって困難を乗り越える場面が多かった。
しかし、今回のレイチェルは、自分の力ではどうにもならない壁にぶつかっている。
しかも、その壁を作ったのが実の父親である。
王女として生まれた以上、政略結婚の可能性は最初からあっただろう。
それでも、好きな相手との未来を期待していたのではないか。
そう考えると、引きこもってしまうのも無理はないと思った。
個人的には、今回最も救われてほしい人物がレイチェルだった。
シルクは解放され、レイチェルは縛られる。この対比が切ない
今回、特に興味深かったのが、シルクとレイチェルの対比である。
シルクは、祖国再興という使命に縛られていた。
自分の恋愛よりも、亡国の王族としての責任を優先しなければならなかった。
しかし、バルドが正統な王位継承者として立つことで、その重荷から解放される。
そして、自分の意思でバルドと共に歩む道を選ぶ。
一方、レイチェルは逆である。
彼女はバルドへの好意を素直に示していた。
国王もバルドを評価していたため、結婚の可能性もあった。
ところが、バルドの血筋が明らかになったことで、その未来を奪われてしまう。
シルクは、王家の血筋によって自由になる。
レイチェルは、王家の血筋によって自由を失う。
同じバルドを巡る恋愛なのに、まったく逆の結果になる。
この構図が印象的だった。
しかも、二人とも自分の気持ちを持っている。
ただ、政治的な立場が違うため、選べる未来が変わってしまう。
こういうところに、王族や貴族の恋愛の難しさを感じた。
単に好きだから結婚する、というわけにはいかない。
本人たちの気持ちとは別に、国の事情や血筋が絡んでくる。
ラブコメとして楽しんできたバルドを巡る女性関係が、ここに来てかなり重い話になってきた。
「世界のほうを自分に合わせる」。バルドの覚悟が大きく変わった
今回のバルドを見ていて、最も成長を感じたのは、世界の偏見に対する姿勢だった。
獣人族の血を引いていることが、政治的な不利益につながる。
その事実を知ったとき、普通なら自分の血筋を隠そうと考えるかもしれない。
実際、母マゴットは長年、自分の正体を隠して生きてきた。
家族を守るためには、それが最善だと思っていたのだろう。
しかし、バルドは違う道を選ぶ。
自分の血筋を隠して生きるのではなく、その血筋を持ったまま王になる。
そして、獣人族に対する偏見そのものを変えようとする。
これは、かなり大きな決断だと思う。
世界に合わせて自分を変えるのではない。
自分が生きられるように、世界のほうを変えていく。
言葉にすると簡単だが、実際には途方もない話である。
相手は一人の敵ではない。
長年積み重なってきた価値観や差別意識なのだ。
武力で国を奪い返すことができても、人々の考え方まで簡単に変えられるとは限らない。
それでも、バルドは挑戦する。
この覚悟が、これまでの主人公像を一段大きくしたように感じた。
領地を豊かにする少年から、国家のあり方そのものを変えようとする人物へ。
バルドの目指すものが、明らかに変わってきている。
国を取り戻すだけでは終わらない。各国の思惑が入り乱れる
もちろん、トリストヴィー王国の再興は簡単ではない。
現在のトリストヴィーは、公国と海運ギルドの勢力が対立している。
そこへ周辺国の思惑も絡んでくる。
アンサラー王国は、自国に有利な勢力を支援しようとしている。
サンファン王国は、海上の勢力均衡を考えてバルドを支援する。
ノルトランド帝国の獣人族は、獣人の血を引く国王の誕生に期待している。
そして、マウリシア王国は、バルドを手放すことによる利益と危険を天秤にかけている。
それぞれの国に、それぞれの事情がある。
ここが面白い。
バルドを支持する国々も、必ずしも善意だけで動いているわけではない。
自国の利益になるから支援する。
将来の外交関係を考えて味方につく。
その一方で、個人的な恩義や友情が判断を後押しすることもある。
現実的な損得と、人間関係による信頼が混ざり合っている。
この描き方がよかった。
単純に味方と敵が分かれているわけではない。
同じ国の中でも、バルドを歓迎する者と警戒する者がいる。
トリストヴィー国内にも、既得権を守りたい勢力と、国を変えたい勢力がいる。
だからこそ、バルドが王位を目指すという決断には大きな意味がある。
ただ戦争に勝てばよいという話ではない。
多くの勢力をまとめ、国として成立させなければならないのだ。
これまでの内政チートや戦争とは、また違った難しさが待っている。
第7巻の面白さは、母親の過去が大陸全体を動かし始めるところ
今回の物語で感心したのは、母マゴットの過去が、ここまで大きな話につながっていくことだった。
前巻では、マゴットの秘密が明かされ、バルドが母を超えるという親子の物語が描かれた。
その時点では、家族の問題が中心だった。
しかし、第7巻では、その秘密が政治的な意味を持ち始める。
マゴットが王女だった。
だから、バルドには王位継承権がある。
バルドが王位を目指す。
だから、各国が動き始める。
獣人族の血筋が明らかになる。
だから、支援する者と拒絶する者が現れる。
その結果、シルクは自由を得る一方、レイチェルは恋を奪われてしまう。
一つの秘密が、次々と別の人物の運命を変えていく。
この流れがうまい。
しかも、単に話の規模が大きくなっただけではない。
これまで登場してきた人物たちの立場や関係性まで変わっていく。
マゴットは、過去を隠して生きる母親から、自分の歴史を家族へ伝える人物になった。
シルクは、亡国再興の使命に縛られた少女から、自分の意思で未来を選ぶ女性になった。
バルドは、領地を守る貴族から、王国再興を目指す人物になった。
そして、レイチェルは、恋の成就を期待していた王女から、政治の都合で未来を奪われた少女になってしまった。
この変化が、それぞれ印象に残った。
血筋ではなく、その人自身を見ることの難しさ
『異世界転生騒動記』第7巻は、これまでの物語が大きく転換する一冊だった。
母マゴットの正体が明らかになり、バルドはトリストヴィー王国再興の旗頭になることを決意する。
その決断によって、シルクは長年背負ってきた使命から解放される。
一方、マウリシア王国の官僚貴族たちは、目の上のこぶだったバルドがいなくなることを歓迎する。
サンファン王国は、獣人族の血筋など気にせず、これまで築いてきた信頼からバルドを支援する。
そして、マウリシア国王ウェルキンは、バルドの能力を認めながらも、王家に獣人族の血が入ることを嫌ってレイチェルとの結婚を拒絶する。
この対比が、今回最も印象に残った。
バルドは何も変わっていない。
以前と同じ人物であり、これまでの功績も変わらない。
それなのに、血筋が分かった途端、周囲の評価や扱いが変わってしまう。
ここには、なかなか厄介な問題がある。
人は相手の能力や人格を評価しているつもりでも、実際には出自や立場によって判断を変えてしまうことがある。
今回のウェルキン国王は、その典型だったように思う。
国王としての事情があることは理解できる。
しかし、バルドを高く評価していたからこそ、なおさら残念だった。
そして、その決断の犠牲になったレイチェルがかわいそうだった。
一方で、サンファン王国の対応には救われた。
血筋ではなく、これまでのバルドを見ている。
もちろん、国益も関係しているだろう。
それでも、積み重ねてきた信頼が簡単には揺らがないというのは、気持ちのよいものだった。
また、シルクの変化もうれしかった。
祖国再興という重荷を一人で背負っていた彼女が、ようやく自分の意思でバルドと歩めるようになった。
これまでの苦労を考えると、少し肩の荷が下りたように感じる。
ただ、その分バルドの責任は大きくなった。
今度は一つの領地ではなく、国そのものを取り戻さなければならない。
しかも、単に王位に就くだけでは終わらない。
獣人族への偏見が残る世界で、獣人族の血を引く王として国を治める必要がある。
果たして、どれほどの困難が待っているのだろう。
それでも、バルドなら何とかしてしまいそうだと思える。
これまでの領地経営や戦争で、その実力を十分に見せてきたからだ。
ただし、今回の敵は軍隊だけではない。
人々の偏見や既得権、国家間の思惑まで相手にしなければならない。
武力や知識だけでは解決できない問題も多いだろう。
だからこそ、今後の展開が気になる。
母親の過去を知ったことで、バルドは家族を守るために王になる道を選んだ。
その決断は、シルクを救い、獣人族に希望を与えた。
しかし同時に、レイチェルの未来を奪う結果にもつながってしまった。
誰かが前へ進むことで、別の誰かが傷つくこともある。
そんな政治の難しさと人間関係の切なさが、今回は強く印象に残った。
第1巻では、三つの人格を持つ少年が、金儲けに目を輝かせながら領地を発展させていた。
それが第7巻では、世界の偏見を変えるために王位を目指している。
ずいぶん遠くまで来たものだ。
しかも、バルドの根本にあるものは変わっていない。
大切な人を守りたい。
そのために、自分にできることをする。
ただ、その「できること」の規模が、とうとう国を動かすところまで大きくなってしまった。
領地を豊かにする内政チートから、亡国再興と世界の価値観を変える戦いへ。
『異世界転生騒動記』が、いよいよ新しい段階に入ったと感じる第7巻だった。
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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:母の告白と三十余年前の陰謀
バルドとの決闘を終えて心身の呪縛を解かれたマゴットは、寝所で家族(イグニス、バルド、セイルーン、セリーナ、アガサ)に対し、自身の本名がマルグリット・パザロフ・トリストヴィーであり、滅亡したトリストヴィー王国の第八王女であった事実を打ち明ける。
三十余年前、祖父ヴィクトール・パザロフ伯爵は平民登用による国内改革を進めていたが、貴族至上主義を掲げるスフォルツァ公爵にアンサラー王国への内通という冤罪を着せられ処刑された。
後宮から粗末な離宮へ追放された母ダリアは、正妃ベルティーナの迫害から幼いマルグリットを救うため、侍女リーシャの息子ナイジェルを女装させて王女「マール」に仕立て、マルグリットには「お前はリーシャの子で、ナイジェル王子を守る騎士になれ」と偽りの立場を与えていた。
第2幕:後宮の毒殺劇とカーディフでの別れ
数年後、ベルティーナによる茶会への招待が届く。ダリアは娘の自由を勝ち取るため、あえて罠に飛び込み、女装した九歳のナイジェルと共に毒入りの紅茶を飲み干して命を落とした。
直後にオスト伯ヴァレリーが踏み込んでベルティーナを大逆罪で逮捕し、スフォルツァ公爵諸共処刑されたが、真実を知らぬマルグリットは二人を守れなかった己の弱さを呪った。
マルグリットはリーシャ、騎士ラミリーズと共に国境の宿場町カーディフへ逃れた。十二歳でラミリーズに一本を取るまで成長した後、ラミリーズは役目を終えて旅立ったが、直後にリーシャが高熱で倒れる。死の床のうわ言から、自分が守っていたはずのナイジェルが身代わりとなって死んだ真実を知らされたマルグリットは激しい罪悪感に打ちのめされる。
リーシャの死後、屋敷を包囲した刺客の騎士たちと獣人傭兵ベッティルを自力で王門を開いて返り討ちにし、ベッティルの遺言に従って祖母ジーナのいるノルトランドへ旅立った過去が明かされる。
第3幕:暗殺の黒幕と岡左内の叱咤
すべての告白を終えたマゴットに対し、バルドは当時マウリシア領内で統率された騎士を暗殺者として動かせたのはマウリシア国王ウェルキンしかいないと指摘する。
自らがトリストヴィー王国の第一王位継承者であり、獣人の血を引いている以上、傍観すれば弟妹や自身の子孫に災厄が降りかかることは明白であった。 自室で懊悩するバルドの脳裏に、前々世の老将・岡左内の意識が語りかける。左内は「男が戦うべきときに戦わぬは恥」「窮地こそ好機」と叱咤し、天が与えた運命を受け入れて戦えと背中を押す。
バルドは世界の偏見と戦い、大切な家族を守るために自らの力でトリストヴィーの王位を勝ち取る覚悟を決める。
第4幕:海運ギルドの策謀とウェルキンの喚問
トリストヴィー公国の沿岸部を牛耳る海運ギルドの七元老会議において、アウグスト・ガリバルディは公国とアンサラー王国の軍事的脅威を報告しつつ、ベルナルディが捜索しているマルグリット王女を先に擁立する方針を提案する。
アウグストの実父であるオスト伯ヴァレリーは、公国の重鎮と海運ギルド元老の二重生活を続けながら、内乱の混乱を利用してバルドを新たな王に据える布石を着々と整えていた。
一方、マウリシア王宮ではウェルキン国王が諜報組織の報告からマルグリット王女の生存と、その護衛がラミリーズであった事実を突き止める。
かつて妹カタリナの懇願を受けて騎士を派遣したが、ボーフォート公派閥の騎士が独断で暗殺を図った過去を悔やむウェルキンはラミリーズを喚問するが、ラミリーズは生涯の主はヴィクトール伯爵ただ一人であるとして王女の所在の開示を拒絶し、王女が戦うならば自らも退転して馳せ参じると告げて立ち去る。
第5幕:同盟国の支持と全大陸獣人族の結束
バルドがトリストヴィー王位を目指す密書を送った結果、サンファン王国王太子妃となったテレサが使者としてアントリムを訪れる。
テレサは変わらぬ友情を示し、真珠養殖や流下式塩田による経済的提携、南洋の安全保障上の利害から、サンファン王国としてバルドを正統な主権者と承認・支援することを伝達する。
時を同じくして、ノルトランドの帝都マジソンを訪れたアウグストは、伯父ギッツェら軍の重鎮たちに接触する。そこへ突如姿を現した司祭長ジーナが、バルドが自身をも凌ぐ力を持ち神殿の洗礼を受けた群れの子であると告げる。
獣人の血を引く王の誕生という悲願に歓喜したギッツェ、アーロン、イェフタスの帝国軍重鎮三人は、ノルトランドの獣人戦力を挙げてバルドを支援することを誓い、皇太子グスタフへの説得工作を開始する。
第6幕:アントリムの再開発と亡命貴族の放逐
バルドは海運ギルドからの資金を投入し、新アントリム辺境伯領の開発を急速に推進する。
鉱山に横坑排水やアマルガム法を導入して金銀の産出量を激増させ、人力トロッコの軌道敷設や鉱石ラジオを用いた無線通信網の構築を家臣テュロスと共に進める。
政治工作のためランドルフ侯爵領を訪れたバルドは、居城の手前でクヮルトゥーロ伯爵らトリストヴィー亡命貴族たちに進路を塞がれ、シルクへの求婚を牽制される。
安全な場所で他力本願の利権にすがる彼らの浅ましさに激怒したバルドは、数多の戦場で培った圧倒的な殺気を放って威圧し、恐怖に怯える亡命貴族たちをその場から逃走させた。
第7幕:ランドルフ侯爵との会談とシルクの誓い
ランドルフ侯爵邸にて、バルドはアルフォードおよびシルクと対談する。バルドはマゴットがマルグリット王女であり自身が正統な継承者であること、そして自身に獣人の血が流れている事実を明かす。
偏見に満ちた世界を変えて家族とシルクの夢を叶えるためにトリストヴィーの王になると宣言したバルドに対し、シルクはその腕を抱きしめて共に困難な道を歩む決意を固める。
すでにサンファン、マジョルカ、海運ギルド、ノルトランドの支持を取り付け、実力で自らを凌駕しているバルドの器量を認めたアルフォードは、要求を受け入れ協力を承諾した。
第8幕:ウェルキン国王の屈服とレイチェルの絶望
王都キャメロンへ乗り込んだバルドは、ウェルキン国王および宰相ハロルドと単独で謁見する。カタリナによる暗殺未遂の真相を突いたバルドは、自らが獣人の血を引く王位継承者として立つことを宣言する。
王家の血統の神聖さと他国からの批判を恐れて狼狽するウェルキンに対し、バルドは四カ国の支持と国内の政敵(リッチモンド公、ヘイドリアン侯)との取引を済ませている事実を突きつける。
さらに、王位就任に伴い発展したアントリム領を王室直轄地として差し出し、ウィリアム王子に管理を委ねるという破格の条件を提示した。
逃げ場を完全に塞がれたウェルキンはバルドの完全な勝利を認め、支援を約定した。
会談後、バルドの来訪を喜ぶ第二王女レイチェルの前に苦渋の表情のウェルキンが現れ、「獣人の男に嫁がせる娘はない」と言い放ってリッチモンド公の家へ嫁ぐよう宣告し、レイチェルは絶望して私室に引きこもる。
主要な転換点
転換点:マゴットによる正体の開示
- それ以前の状況:マゴットは出自の一切を隠し、家族を守るために最強であり続けようとする孤独の呪縛に囚われていた。
- 出来事:バルドとの決闘を経て憑き物が落ちたマゴットが、自身が亡命したトリストヴィー王女マルグリットであり、後宮の陰謀で身代わりのナイジェルや侍女リーシャを失った過去を家族に告白した。
- 変化:バルド自身がトリストヴィー王国の第一王位継承者であり、かつてマウリシアの刺客に命を狙われていた事実が白日の下に晒された。
- 次への影響:事態を座視すれば弟妹や子孫に災厄が降りかかると悟ったバルドが、問題の根本的解決に乗り出す発端となった。
転換点:岡左内の叱咤とバルドの覚悟完了
- それ以前の状況:獣人の血筋への偏見や他国・マウリシア王家との対立を恐れ、バルドは王位継承者として立つべきか深く苦悩し、思考の泥沼にはまっていた。
- 出来事:前々世の老将・岡左内が意識の底から現れ、「男が戦うべきときに戦わぬは恥」「窮地こそ好機」と天命を受け入れて戦うよう叱咤した。
- 変化:バルドの迷いが完全に吹っ切れ、世界の偏見と戦って世界の側を都合よく変えてやるという不退転の決意を固めた。
- 次への影響:サンファン王国や海運ギルドとの提携、ランドルフ家やマウリシア王家に対する主導的な政治交渉へと直結した。
転換点:ノルトランド獣人重鎮たちの全面支援の決定
- それ以前の状況:トリストヴィー公国はアンサラー王国の戦艦供与を受けて優勢に立ち、海運ギルドは孤立の危機にあった。
- 出来事:アウグストが持ち込んだ情報をもとに、司祭長ジーナがバルドを「神殿の洗礼を受けた群れの子」と認め、ギッツェ、アーロン、イェフタスの帝国軍重鎮三人が全力を挙げてバルドを王に擁立することを誓った。
- 変化:ノルトランド帝国の獣人部隊がバルドの強力な軍事・政治的後ろ盾となり、皇太子グスタフも巻き込んだ国際的な支援体制が構築された。
- 次への影響:バルドが大公派および背後のアンサラー王国に対抗する決定的な軍事バランスを確保し、マウリシア王家と対等に交渉する切り札となった。
転換点:シルクの決意とランドルフ侯爵の容認
- それ以前の状況:アルフォードはトリストヴィー亡命貴族を抱え込み、シルクを女王として担ぐ王党派の利権を維持していた。
- 出来事:バルドが自らの血筋と王位就任の意志を明かし、シルクがバルドへの愛と祖国復興の両方を決して諦めないと宣言した。
- 変化:アルフォードがバルドの実力と娘の揺るぎない意志に屈し、亡命貴族への執着を捨ててバルドをトリストヴィーの王として認めた。
- 次への影響:マウリシア国内最大の親トリストヴィー勢力であるランドルフ侯爵家がバルドの陣営に組み込まれ、国内における反対勢力がほぼ消滅した。
転換点:ウェルキン国王の屈服とアントリム領の返還密約
- それ以前の状況:ウェルキンはバルドをマウリシア国内の有力臣下(娘婿)として囲い込もうとしつつ、マゴット暗殺未遂の負い目に怯えていた。
- 出来事:単独会談に臨んだバルドが四カ国連合の後ろ盾を示し、王位就任に伴い発展著しいアントリム領を王室直轄地(ウィリアム王子の領地)として差し出す交換条件を提示した。
- 変化:ウェルキンは獣人の血筋による王家の神聖さの失墜を恐れつつも、国家の実利とバルドの圧倒的な政治力に屈し、トリストヴィー王位就任の支援を受け入れた。
- 次への影響:マウリシア王国からの公認と支援が確定した一方、ウェルキンが激怒してレイチェル王女との婚約話を完全に破談にさせ、レイチェルが絶望して幽閉状態となる悲劇を招いた。
バルドを中心とした人物関係の変化
マゴット・コルネリアス
- 開始時:決闘で打ち倒したものの、未だ母の隠す秘密の重さに踏み込めずにいた関係。
- 主な出来事:マゴットからマルグリット王女としての悲惨な過去と、かつてマウリシアの刺客に襲われた経緯を聞かされた。バルドはその重荷をすべて引き受け、家族を守るためにトリストヴィーの王になると誓った。
- 巻末時:母が諦めて捨てた故郷の因縁と未来を息子のバルドが背負い、互いに深い信頼と愛情で結ばれた自立した関係。
岡左内
- 開始時:前巻の戦闘終結以降、意識の底に沈んで呼びかけに応じなくなっていた前々世の人格。
- 主な出来事:自らの血筋と過酷な宿命に懊悩するバルドの前に現れ、「男が戦うべきときに戦わぬは恥」と叱咤し、天命を受け入れて戦を楽しむよう檄を飛ばした。
- 巻末時:再び精神的な支えとして通じ合い、天下を狙う武将としての覚悟を共有する関係。
テレサ・フランコ
- 開始時:サンファン王国王太子妃となり、遠く離れた幼馴染。
- 主な出来事:バルドの密書を受けてアントリムへ駆けつけ、変わらぬ友情を確認すると共に、サンファン王国としてバルドの王位就任を全面的に支持する国王の意向を伝えた。
- 巻末時:個人的な友情だけでなく、国家間の同盟・経済提携を直接結び合う強力な盟友関係。
シルク・ランドルフ
- 開始時:前巻末の戦場での口づけを経て想いを交わしながらも、立場やトリストヴィー問題ゆえに一線を引いていた関係。
- 主な出来事:バルドが従弟であり正統な継承者である事実を知り、バルドから「シルクの夢を叶えるために王になる」と告げられ、二つの望みを共に叶える決意を固めた。
- 巻末時:父の前でも堂々とバルドの腕を取り、共に世界の偏見を覆してトリストヴィーを奪還する誓いを交わした公然のパートナー。
アルフォード・ランドルフ
- 開始時:亡命貴族を束ね、トリストヴィー介入の主導権を握っていた気難しい十大貴族の重鎮。
- 主な出来事:バルドから正統な王位継承者としての名乗りと四カ国連合の後ろ盾を突きつけられ、亡命貴族の利権を奪われる現実に直面した。
- 巻末時:実力でも外交力でもバルドが自分を凌駕していることを認め、娘シルクの意志を受け入れてバルドの王位擁立を容認した関係。
ウェルキン・マウリシア
- 開始時:バルドを都合よく使役し、王家へ取り込もうと画策していた腹黒い主君。
- 主な出来事:単独謁見で過去の刺客派遣の負い目、獣人の血統、四カ国の包囲網、アントリム領返還の取引を突きつけられ、完全にやり込められた。
- 巻末時:バルドが臣下の器ではなく「一国の君主」であることを認めざるを得なくなったが、獣人の血筋への嫌悪からレイチェルとの婚姻を破談にし、感情的な断絶を生じさせた関係。
レイチェル・マウリシア
- 開始時:王都でバルドの来訪を心待ちにし、想いを寄せていた第二王女。
- 主な出来事:直接会うことすら叶わぬまま、父ウェルキンからバルドが獣人の血を引いていることを理由に縁談を破棄され、リッチモンド公の家へ嫁ぐよう命じられた。
- 巻末時:王権の都合と偏見によって引き裂かれ、絶望のあまり私室に引きこもる悲劇的な関係。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
バルド自身は、自分を「前世のオタク知識(雅晴)と戦国武将の知恵(左内)を借りているだけで、本来は家族や婚約者たちと平穏に暮らしたいだけの勝手な人間」と捉えている。 トリストヴィーの王位についても、権力欲から望んでいるわけではなく、「母や生まれたばかりの弟妹ナイジェルとマルグリットに災厄を及ぼさず、理不尽な獣人への偏見から家族を守り抜くためには、自分が王になって世界を変えるしかない」という防衛的かつ必然的な義務感から引き受けている。しかし左内の叱咤を受けてからは、降りかかる理不尽をただ避けるのではなく、「自分の都合に合わせて世界の側を変えてやる」という積極的な覇気と覚悟を抱くようになった。
周囲からの評価
- マゴット:自分を超えて神速の高みに達し、自らが背負いきれずに捨てた過酷な運命すらも一緒に背負ってくれる「頼もしく自立した最愛の息子」として全幅の信頼を置いている。
- 岡左内:死に場所を奪われた無念を抱えつつも、天下を動かす資質と天命を持ち、「天に愛された男」「大輪の華を咲かせるべき主君」として高く評価し背中を押している。
- サンファン王国首脳(テレサ、カルロス国王ら):画期的な新技術と経済的利益をもたらし、南洋の覇権を共に守るに足る「得難い英雄であり、トリストヴィーの正統な主権者として迎えるべき最良の盟友」とみている。
- ノルトランド獣人勢力(ジーナ、ギッツェ、イェフタスら):大陸最強の武の資質を受け継ぎ、獣神の加護を受けた「自慢の群れの子」であり、全大陸の獣人族の地位を向上させてくれる「待望の獣人の王」として熱烈に信奉している。
- トリストヴィー亡命貴族(クヮルトゥーロ伯ら):田舎者と見下していたが、殺気一つで平伏させられ、自分たちの利権を根こそぎ奪いかねない「手も足も出ない恐るべき化け物」と戦慄している。
- アルフォード・ランドルフ:若造と侮っていたが、国際的な四カ国連合をまとめ上げ、既得権を覆してシルクの心まで掴んだ「実力で自分をも凌駕する規格外の怪物」と認めざるを得なくなった。
- ウェルキン国王:もはや一臣下の器ではなく、国王である自分すらも完璧な取引条件でやり込めてしまう「生まれながらに君臨する君主の器」と恐れつつ、王家の神聖な血統を脅かす「危険な獣人の異端児」として警戒と拒絶を強めている。
認識の差が現れた場面
- 王位継承者としての名乗り:バルド自身は「母や幼い弟妹に降りかかる火の粉を払い、シルクの夢を叶えるために自分が引き受けるしかない厄介な泥被り」という認識であったが、ノルトランドのギッツェら獣人重鎮にとっては「数百年待ち望んだ獣人族の地位向上を果たすための奇跡の希望」として熱狂的に受け止められた。
- 亡命貴族への対応:クヮルトゥーロ伯爵らは「田舎貴族の若造がシルク様を我が物にしようとしているのを、格上の大貴族として躾けてやる」という認識で待ち伏せしたが、バルドにとっては「数万のハウレリア正規軍を屠ってきた自分に対し、自ら汗も流さず利権に群がるだけの無価値な白アリ」でしかなく、殺気による威圧だけで屈服させられた。
- ウェルキンとの会見:ウェルキンは「マゴット暗殺未遂の弱みがあるため、バルドが恨みから謀反を起こすか、あるいは王位就任を盾に無理難題を要求してくる」と身構えていたが、バルドは恨み言など一切口にせず、冷徹に「四カ国の後ろ盾」「官僚貴族との事前取引」「発展したアントリム領の返還」という国家戦略上断れない完璧な政策パッケージを提示し、ウェルキンの想像を遥かに超えた次元で王としての手腕を見せつけた。
家族の秘密と復讐
異世界転生騒動記第7巻において描かれる家族の秘密と復讐は、過去の陰謀と犠牲、そして主人公バルドが未来を切り拓くための決意に深く結びつく。母マゴットの出自を巡る過酷な歴史が明かされ、それぞれが抱く復讐の念が交錯する重要な局面を形成する。
明かされた家族の秘密
マゴットが語った過去により、彼女の過酷な血筋と幼少期における悲劇の全貌が表面化する。
・マルグリット王女の真の出自 マゴットの本名はマルグリット・パザロフ・トリストヴィーであり、滅亡したトリストヴィー王国の第8王女に位置づけられる。
・冤罪と後宮の迫害 改革派であった祖父ヴィクトールは政敵の冤罪によって処刑され、母ダリアは嫉妬を募らせる正妃によって離宮へ追放される。
・身代わりとなったナイジェルの犠牲 母ダリアは娘を逃がすため、侍女の息子ナイジェルを王子に仕立て上げ、マルグリットを侍女の子供とする偽りの構図を作り上げる。ナイジェルは事実を理解しながら主筋を守る生贄としての道を選び、母ダリアとともに毒殺の犠牲となって命を落とす。
・獣人族の血脈 ダリアの母はノルトランドの獣神殿司祭長ジーナであり、マゴットやバルドには強力な獣人族の血統と固有の力が継承されている。
交錯する復讐の形
過去の陰謀と犠牲を契機とし、関係者たちの異なる思惑と決意が交差する。
・オスト伯ヴァレリーの破壊工作 親友を冤罪で失い、母子を死に追いやった腐敗した国家体制や貴族勢力に絶望したオスト伯ヴァレリーは、既存秩序の完全な破壊を志す。公国の重鎮でありながら裏で海運組織を操り、内乱を泥沼化させて全てを瓦解させる復讐者として暗躍を続ける。
・マゴットの力への執着 守るべき肉親を奪われた少女マルグリットは、二人を救えなかった自身の無力さを強く憎悪する。国家や軍隊に屈しない絶対的な力を一人で手に入れると心に決め、過酷な鍛錬の末に強大な能力を開放し、誰にも屈しない最強の存在へと至る。
・負の連鎖を断つバルドの覚悟 母の過酷な過去や家族の犠牲に加え、かつてマウリシア王家が都合や偏見から母へ刺客を放っていた事実を知ったバルドは激しく苦悩する。しかし復讐の連鎖に囚われることを拒絶し、生まれたばかりの弟妹や愛する者たちを守り、世に満ちる偏見を打破するため、自らが旧公国の王となって秩序そのものを再構築する決断を下す。
まとめ
血塗られた過去の悲劇と私怨は、バルドの主体的な介入によって破壊的な復讐から新たな秩序形成の原動力へと昇華される。私情を越えて王位就任という過酷な責務を引き受ける覚悟を固めたことで、動乱に揺れる諸国の運命は大きく旋回を始める。
トリストヴィー王国の政争
異世界転生騒動記第7巻において語られるトリストヴィー王国の政争は、過去の陰謀と血塗られた悲劇を発端とし、周辺諸国や各勢力の利権が複雑に絡み合う大乱へと発展を見せる。
政争の発端と身分層の対立
かつてのトリストヴィー王国は貿易と強力な海軍で繁栄を誇っていたものの、金権主義の波に乗って台頭する商人や平民官僚に対し、既得権益を脅かされた大貴族層が強く反発する。
・改革派の動向 パザロフ伯ヴィクトールは、富裕な平民の登用による国内改革を推進する名将として存在感を示す。
・貴族至上主義派の専横 スフォルツァ公バティスタは王国最大の領主であり、正妃ベルティーナを通じて王宮に強大な権勢を誇示する。
危機感を募らせたスフォルツァ公は、ヴィクトール伯に対して敵国との癒着という無実の罪を着せ、逮捕および処刑へと追い込む。
後宮の悲劇と身代わりの王女
ヴィクトール伯の失脚に伴い、国王ウンベルトの側室であった娘ダリアと幼い娘マルグリットは、子宝に恵まれず嫉妬を抱く正妃ベルティーナから苛烈な迫害を受ける。
・運命の入れ替え ダリアは娘を生き延びさせるため、侍女の息子ナイジェルこそが男児の王子であり、マルグリットは侍女の娘であると装う虚偽の入れ替えを実行する。
・毒殺劇の結末 ベルティーナが供した毒入り紅茶により、ダリアと表面上のマルグリット王女であったナイジェルは命を落とす。しかし、復讐者となったオスト伯ヴァレリーの告発により、ベルティーナとスフォルツァ公も断罪を受けて処刑される。
・真の王女の逃亡 本物のマルグリットは忠臣や侍女に守られて国外へ脱出し、過酷な放浪の末に自力で資質を開花させ、屈指の実力者へと成長を遂げる。
トリストヴィー内乱における勢力図
国王ウンベルトの死去に伴い、王国は解体されて公国を名乗り、泥沼の内乱へと突入する。
・大公派の支配 前国王を排除して実権を掌握した弟のアントニオ大公と息子のベルナルディが率いる。隣国アンサラー王国から軍艦をはじめとする軍事支援を受ける一方、属国化への警戒も抱える。
・王党派の思惑 マウリシア王国へ逃れた亡命貴族集団であり、ランドルフ侯爵が庇護下に置く。実戦を避けて旧領回復の利権にすがる旧弊な貴族が多くを占める。
・海運ギルドの自治 沿岸部の要衝を支配する独自の自治勢力であり、最高意思決定機関である合議組織が統括を担う。
・黒幕の真意 公国の重鎮であるオスト伯ヴァレリーは、裏で海運ギルドの首領として二重生活を送る。腐敗した旧体制を完全に瓦解させ、親友の血を引くバルドを新たな王として擁立するため、水面下で勢力の均衡を操作し続ける。
打開策の展開と国際包囲網の形成
母の出自と自身が正統な王位継承者である事実を把握したバルドは、世界に根深い偏見や諸勢力の利権争いを打ち砕き、家族を守り抜くために自ら王位へ就く覚悟を定める。
・南洋諸国との連携 サンファン王国やマジョルカ王国に対し、製塩技術や養殖技術の提供を通じて強固な友好関係と承認を取り付ける。
・経済基盤の掌握 海運ギルドとの交渉を通じて莫大な資金調達を達成し、交易拡大の協定を結ぶ。
・北方勢力の動員 血縁関係にあたる首脳陣を通じ、ノルトランド帝国の獣人部隊による非公式な協力を確保する。
・本国内部の調停 ランドルフ侯爵や有力官僚層と綿密な取引を行い、発展著しいアントリム領を王室直轄地へ返還する条件を提示して国王の承認を獲得する。
まとめ
過去の謀略に端を発する長年の抗争は、主人公の参入によって新たな局面へと舵を切る。国内外の勢力を束ねた多角的な外交戦略が結実し、混迷を極めた国家の主権を巡る決戦の幕が静かに開く。
海運ギルドと外交
異世界転生騒動記第7巻において描かれる海運ギルドと外交工作は、バルドがトリストヴィー王国の正統な王位継承者として自立し、大国アンサラー王国や国内の敵対勢力を圧倒していくための戦略的な要衝を形成する。
海運ギルドの危機と七元老会議の決定
トリストヴィー公国の沿岸部2割を掌握する海運ギルドは、豊富な資本と強力な自衛艦隊を擁する海上勢力であったが、泥沼の内乱の中で厳しい情勢に追い詰められていた。
・アンサラー王国の介入 大公派へアンサラー王国から戦列艦10隻が引き渡され、決戦を迎えた場合の勝率は大幅に落ち込むという絶望的な戦力差に直面した。
・アウグストの提案 最高意思決定機関である七元老会議にて、対貴族融和派が妥協を主張する中、黒幕オスト伯ヴァレリーの息子であるアウグスト・ガリバルディは、既存の勢力に毒されていない正統な王位継承者の擁立を提示した。
・暗躍と合意 アウグストはマウリシアに潜伏する老将ラミリーズの動向からマルグリット王女とバルドの存在を察知し、ギルドの総力を挙げてバルドを王として擁立および支援する方針へと議決を誘導した。
サバラン商会を通じた莫大な資金援助
海運ギルドは、バルドの婚約者セリーナが率いるサバラン商会ならびにダウディング商会を通じ、大規模な資金援助と交易拡大を申し入れた。
・領地開発への資本投下 受け取った資金を新アントリム辺境伯領の開発へ集中させた。
・技術革新の推進 横坑排水やアマルガム法、人力トロッコ軌道を用いた鉱山再開発を進めたほか、風魔法を併用した鉱石ラジオ通信網の整備を一気に推し進めた。
・国力の増強 独自の経済基盤と技術力を確立し、半独立国に匹敵する勢力基盤を築き上げた。
四カ国同盟による国際包囲網の形成
海運ギルドとの提携にとどまらず、多角的な手腕を発揮して国際的な包囲網を完成させた。
・南洋諸国との連携 幼なじみの王太子妃テレサや摂政フランコに対し、流下式塩田や真珠養殖技術の提供、南洋における制海権確保という共通利益を提示し、サンファン王国およびマジョルカ王国から全面的な同盟と王位承認を獲得した。
・北方勢力の掌握 祖母ジーナの存在と洗礼を受けた者という立場を背景に、帝国軍の重鎮や皇太子グスタフを巻き込み、ノルトランド帝国の全獣人戦力と国家規模の全面支援を取り付けた。
マウリシア王国ウェルキンへの詰みと外交的勝利
各国の同盟と巨大組織の支援を固めたバルドは、マウリシア国王ウェルキンおよび宰相ハロルドとの単独謁見に臨んだ。
・国内政敵との取引 国内の政敵であった官僚貴族の重鎮たちと裏で接触し、目障りなバルドを国外へ送り出したいという相手側の利害関係を利用した。
・王室直轄地の提示 トリストヴィー王位就任に伴い、急速に発展したアントリム領を王室直轄地として差し出し、親しいウィリアム王子に管理を委ねる破格の条件を提示した。
・国王の承諾 母マゴットへ過去に刺客を放った負い目と、外部勢力によって完全に固められた盤面を突きつけられたウェルキンは要求を退けられず、トリストヴィー王位就任と支援を正式に承認した。
まとめ
海運ギルドの資本力と卓越した国際外交を連動させた戦略は、敵対する国内外の勢力を完封し、正統な王としての正当性を確立する決定打となった。四カ国を巻き込む大同盟の構築と本国との政治的決着を経て、旧王国の再興と大国との決戦に向けた盤石な体制が整った。
獣人族の支援
異世界転生騒動記第7巻において描かれる獣人族の支援は、バルドが一介の辺境伯からトリストヴィーの王位へ挑む国際的な包囲網を築く上で、中核をなす軍事および政治基盤を形成する。
曽祖母ジーナと群れの子としての誓約
バルドはノルトランド帝国の獣神殿において、曽祖母にあたる司祭長ジーナから正式に洗礼を受けた群れの子となる。
・同じ神殿で洗礼を受けた者を家族同様に助け合う慣習が存在する。 ・薄いながらも獣人の血統を引くバルドが洗礼を経た事実は、獣人族にとって彼を同胞として庇護し、全面支援に踏み切る明確な大義名分をもたらす。
ノルトランド軍重鎮の決起と悲願
帝都マジソンにてオスト伯の息子アウグストやジーナを交えた密談が行われ、帝国軍の重鎮であるギッツェ、アーロン、イェフタスの三将がバルドの素性と志を把握する。
・過去の王の時代以降、独自の統治者を戴かず、各国で不当な扱いや偏見に晒されてきた歴史を持つ。 ・獣人の血を引く王の誕生は積年の悲願に位置づけられる。 ・三将はジーナの意向を汲み取り、独自の掟と情熱に基づき水面下で全力支援を行う誓約を交わす。
国家指導層と周辺情勢への波及
軍部重鎮たちの働きかけを受け、ノルトランド帝国のグスタフ皇太子はバルドへの協力を承認する判断を下す。
・バルドの存在を起点とし、長年にわたり対立してきたノルトランドとガルトレイク王国の双方に属する獣人族が過去の遺恨を一時的に棚上げにする契機を見出す。 ・疲弊した国力の再建を図る好機と捉え、国家規模の関与へと発展する。
外交包囲網の確立
北方の獣人戦力が味方に加わったことにより、多角的な勢力基盤が統合される。
・サンファン王国およびマジョルカ王国による海軍力と経済連携 ・トリストヴィー海運ギルドが提供する莫大な資金と自衛艦隊 ・ノルトランド帝国の獣人部隊が誇る陸上精鋭戦力
強固な連合勢力を背景に確保したバルドは、マウリシア国王ウェルキンやランドルフ侯爵との難航が予想された交渉を優位に進め、王位就任に向けた政治的な布石を完結させる。
まとめ
血縁関係と洗礼の儀礼を起点とした獣人族との結束は、主人公へ比類なき軍事力を付与するのみならず、国家間の対立構造を再編する推進力として機能する。各国の利害を巧みに集約した多面的な連携体制が整ったことで、旧王国の主権奪還に向けた進軍は確固たる正当性を獲得する。
バルドの王位継承
異世界転生騒動記第7巻におけるバルドの王位継承劇は、母マゴットの秘匿された出自の判明を機に、家族の保全と世に根づく偏見の打破を目指して始動する物語上の重要な転換点に位置づく。
王位継承権の浮上と獣人族の血統
母マゴットが滅亡したトリストヴィー王国の第八王女マルグリットであった過去が明らかとなり、血統の連鎖が表面化する。
・正統な継承権の獲得 バルドは旧トリストヴィー王国の第一王位継承者となり、出生した弟ナイジェルが第二継承権を保持する立場に就く。
・秘匿された血脈と過去の謀略 母方を通じて曽祖母ジーナに連なる獣人族の血を引く事実が明示される。過去にマウリシア王家が王統への異種族の血の混入を忌避し、マゴットへ暗殺の刺客を放った冷酷な歴史を把握するに至る。
自己の意志と王位への決意
血統の隠蔽を選べば将来的に弟妹や子孫へ災厄が転嫁される危機感を抱き、葛藤を深める。
・前世の叱咤 内なる戦国武将の岡左内より戦うべき時に退く姿勢を咎められ、行動を起こす契機を得る。
・世界の改変への誓い 外界が血統を口実に拒絶を示すならば自己の都合に合わせて世界を動かす決意を固める。亡国再興の宿命を背負い続けてきたシルクを苦痛から解放する狙いも含め、自ら王位を継承する選択を確立する。
国際的大包囲網の構築
一地方領主の枠組みを脱し、知略や技術、既存の交友関係を総動員して大陸全土に及ぶ提携勢力を束ねる。
・海運ギルドとの連携 首領オスト伯やその息子の誘導を受け、商会組織を介した巨額の活動資金と強固な協力関係を取りつける。
・南洋諸国との同盟 製塩法や真珠養殖といった技術供与に加え、海上支配権の利害関係の一致を背景として、サンファン王国やマジョルカ王国の要人から全面承認を取りつける。
・北方獣人部隊の掌握 曽祖母から洗礼を受けた身分と、長年偏見に苦しんできた獣人統括層の宿願が合致し、ノルトランド帝国軍の要職から強大な戦力支援の確約を引き出す。
マウリシア国王との対決と政治的決着
各国の後ろ盾を固めた上で本国の首脳部との直接談判に臨む。
・国内対立勢力の利用 宮廷内で対立関係にあった有力貴族層と接触を図り、煙たい存在となった自己を体よく国外へ送り出したい相手方の思惑を逆用して抱き込む。
・領地返還の提示 王位就任に伴い、大幅に開発を進めた要衝アントリム領を王室直轄地として差し出し、信頼関係にあるウィリアム王子へ差配を委ねる条件を示す。
・国王の承認 偏見を抱く国王ウェルキンは動揺を示し、王女との婚約解消を宣告する対応を見せるが、完全な包囲網を敷いた政治的盤面を突きつけられ、要求を全面的に受諾せざるを得ない局面へ追い込まれる。
まとめ
血筋の発覚を契機とする王位継承への歩みは、過去の因縁や政治的陰謀を打ち破る強大な動力へと転化を果たす。各国の利害をまとめ上げた包括的な外交戦略と本国中枢への詰めの布石が結実し、新たな主権者として国家の再興と大国との決戦へ挑む確固たる基盤が整う。
登場キャラクター
コルネリアス伯爵家・アントリム辺境伯領
バルド・コルネリアス(バルド・セヴァーン・コルネリアス / バルド・アントリム・コルネリアス)
前世の記憶と武芸を保持して領地を治める。母マゴットの過去を知り家族を守るため王位を目指す。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領・領主。マウリシア王国・辺境伯。
・物語内での具体的な行動や成果 母マゴットとの決闘に勝利を収める。実家の真実と自身の血筋を把握する。四カ国規模の同盟をまとめ上げる。国王ウェルキンとの対談で優位に立つ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 トリストヴィーの第一王位継承者として立つ決意を固める。
マゴット・コルネリアス(マルグリット・パザロフ・トリストヴィー / 銀光マゴット)
バルドの母親を務める。かつて絶大な神速を誇る戦士として名を馳せる。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・伯爵夫人。トリストヴィー王国・元第八王女。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドとの決闘を経て孤独から解放される。隠してきた出自と過去を家族へ告白する。双子の育児に専念する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王門を開いた最強の武人として息子を見守る。
イグニス・コルネリアス
バルドの父親を務める。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・当主。伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果 マゴットの過去の告白を深く受け止める。妻への変わらぬ愛を示す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 息子の成長を誇りに思う。
セイルーン
バルドの幼馴染であり侍女を務める。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・侍女。バルドの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果 傷ついたバルドを介抱する。マゴットの過去を聞きもらい泣きを浮かべる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドへの好意を深める。
セリーナ・サバラン
サバラン商会の会頭を務める。
・所属組織、地位や役職 サバラン商会・会頭。バルドの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果 海運ギルドとの取引仲介に関与する。バルドの資金調達を後押しする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 商会の力で領内開発を支える。
アガサ・マイルトン
優れた行政能力を持つ才女を務める。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領・秘書長。バルドの婚約者。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドの身近で政務を補助する。マゴットの告白に涙を浮かべる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 行政実務の中核として機能する。
ナイジェル・コルネリアス
バルドの弟を務める。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・次男。
・物語内での具体的な行動や成果 マゴットから授乳を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 トリストヴィーの第二王位継承権を持つ。
マルグリット・コルネリアス
バルドの妹を務める。
・所属組織、地位や役職 コルネリアス伯爵家・長女。
・物語内での具体的な行動や成果 マゴットから授乳を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 母譲りの銀髪と菫色の瞳を持つ。
テュロス
バルドの幼馴染兼側近を務める。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領・行政責任者。
・物語内での具体的な行動や成果 領内の数々の開発事業を統括する。過密な業務を驚異的な体力でこなす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの最も信頼する家臣として働く。
ブルックス・アーバイン
バルドの家臣を務める。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領・騎士団長。
・物語内での具体的な行動や成果 辺境伯家騎士団の責任者として防衛に当たる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 騎士団長へ昇進を果たす。
マイクロフト
バルドの護衛を務める。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領・護衛騎士(獣人族)。
・物語内での具体的な行動や成果 ランドルフ領への同行でバルドを守る。亡命貴族に対して警戒態勢をとる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新人騎士として動く。
スティーブ
バルドの護衛を務める。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領・護衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドの巡察に随行する。亡命貴族の呆れた行動へ感想を漏らす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 護衛役をこなす。
ポルコ
バルドの幼馴染を務める。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領・侍従武官。
・物語内での具体的な行動や成果 セイルーンやアガサの身辺警護を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 成長して信頼を得る。
ブランドン・アンダーソン
アントリムの官僚を務める。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領・行政官。
・物語内での具体的な行動や成果 テュロスの驚異的な仕事ぶりに驚愕する。領内の開発実務を支える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 行政実務を担当する。
トリストヴィー王国・トリストヴィー公国
ウンベルト一世
トリストヴィー王国の元国王を務めた。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国・国王(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 後宮でダリアを寵愛する。弟ジャックによって討たれる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 日誌を王宮に残す。
ダリア・パザロフ
マルグリット(マゴット)の母親を務めた。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国・元側室(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 我が子を守るため子供の入れ替えを行う。毒入り紅茶を飲み干して最期を迎える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 娘の自由のために命を捧げる。
ヴィクトール・パザロフ(パザロフ伯爵ヴィクトール)
マゴットの祖父を務めた。
・所属組織、地位や役職 パザロフ伯爵家・当主。伯爵(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 平民登用による国内改革を推進する。スフォルツァ公の冤罪により逮捕・処刑される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 名将として多くの信望を集める。
リーシャ
ダリアの侍女を務めた。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国・侍女(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 マルグリットを庇護してカーディフへ移住する。病床の床で懺悔を口にして没する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ナイジェルの実母として生き抜く。
ナイジェル
リーシャの息子を務めた。
・所属組織、地位や役職 侍女の息子(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 マルグリットの身代わりとして女装する。毒入りお茶を拒まず飲んで息絶える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 真の王女を守り抜く。
ベルティーナ・スフォルツァ
トリストヴィー王国の正妃を務めた。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国・第一王妃(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 ダリアとナイジェルへ毒薬を投与する。大逆罪により捕縛されて処刑される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 嫉妬により身を滅ぼす。
バティスタ・スフォルツァ(スフォルツァ公爵バティスタ)
トリストヴィー貴族の首魁を務めた。
・所属組織、地位や役職 スフォルツァ公爵家・当主。公爵(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 ヴィクトールを陥れて処刑へ追い込む。ヴァレリーの策謀により処刑される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 貴族至上主義を推進する。
ラミリーズ
ヴィクトールに恩義を持つ騎士を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・騎士学校校長。元近衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果 離宮でダリア母子を守り抜く。マルグリットに武芸を教授する。国王ウェルキンからの詰問を跳ね返す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ヴィクトールへの忠誠を貫く。
オルテン
ラミリーズの親友を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国・近衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果 離宮のラミリーズへ軍復帰を促す。断られて親友の無事を祈る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 近衛の要として動く。
グンナール(宵闇の梟グンナール)
本職の暗殺者を務めた。
・所属組織、地位や役職 スフォルツァ公爵家雇い暗殺者(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 離宮へ潜入してラミリーズに挑む。強化魔力による一閃を受け撃破される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 無敗の暗殺者として散る。
ヴァレリー・オスト(オスト伯爵ヴァレリー)
トリストヴィー公国の重鎮を務める。
・所属組織、地位や役職 オスト伯爵家・当主。伯爵。海運ギルド元老(ベネート)。
・物語内での具体的な行動や成果 スフォルツァ公爵を処刑へ追い込む。裏で海運ギルドを操り内乱を誘導する。バルドを新たな王として担ぎ出す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 復讐のために旧体制を破滅へ導く。
ジャック・アマーディオ・トリストヴィー(アントニオ大公ジャック)
トリストヴィー公国の主権者を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー公国・大公。
・物語内での具体的な行動や成果 兄ウンベルトを殺害して実権を握る。アンサラー王国からの援助を受けて統一を焦る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 孤立と恐怖に苛まれながら治める。
ベルナルディ・アマーディオ・トリストヴィー(ベルナルディ)
ジャックの息子を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー公国・公太子。
・物語内での具体的な行動や成果 マルグリット王女の捜索を公表する。シルクへの求婚を画策する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 大公派の後継者として動く。
クワルトゥーロ伯爵
亡命貴族の指導者を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国・亡命伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドの訪問を待ち伏せて問詰を試みる。バルドの放つ強い殺気で失神状態へ陥る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 他力本願な姿勢を見せる。
バティスタ・カリメーロ
亡命貴族の若手を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国・亡命貴族。
・物語内での具体的な行動や成果 クワルトゥーロに付き従ってバルドを非難する。バルドの威力に恐れおののく。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 取り巻きとして行動する。
ファディーニ侯爵
トリストヴィーの大貴族を務めた。
・所属組織、地位や役職 ファディーニ侯爵家・前当主(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 マウリシアとの交渉窓口を担う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 息子の無能さに苦言を残す。
トリストヴィー海運ギルド・ガリバルディ商会
アウグスト・ガリバルディ
ガリバルディ商会の代行を務める。
・所属組織、地位や役職 ガリバルディ商会・当主代行。海運ギルド・七元老。
・物語内での具体的な行動や成果 七元老会議で正統な王位継承者の擁立を提案する。父ヴァレリーの指示を受けてノルトランドへ赴く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 獣人族の血を引き実務を取り仕切る。
ベネート・ガリバルディ
ガリバルディ商会の当主を務める。
・所属組織、地位や役職 ガリバルディ商会・当主。オスト伯爵ヴァレリー。
・物語内での具体的な行動や成果 裏からアウグストへ指示を出す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 幻の当主として陰で指揮を執る。
ピアージョ・デルベッキオ
海運ギルドの議長を務める。
・所属組織、地位や役職 デルベッキオ商会・会頭。海運ギルド・七元老議長。
・物語内での具体的な行動や成果 七元老会議でアウグストの提案に耳を傾ける。ギルドの利益のために決断を下す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ギルド最高峰の最高権力者として君臨する。
バルバリーノ提督
護衛艦隊の最高責任者を務める。
・所属組織、地位や役職 海運ギルド護衛艦隊・提督。七元老。
・物語内での具体的な行動や成果 アンサラー軍船の介入による戦力差を警戒する。和解派のガストーネを非難する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 海軍力の現場を指揮する。
ガストーネ・レベッキーニ
対貴族融和派を務める。
・所属組織、地位や役職 海運ギルド・七元老。
・物語内での具体的な行動や成果 公国側との和平交渉を繰り返し主張する。ピアージョから一蹴される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 融和派勢力をまとめる。
ピエトロ・ミラーノ
法務と保険業を営む。
・所属組織、地位や役職 海運ギルド・七元老。
・物語内での具体的な行動や成果 契約の信用性を強調してガストーネの安易な和解案を突く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 信用重んじる重鎮として機能する。
カトリーヌ
アウグストの愛妾を務める。
・所属組織、地位や役職 アウグストの愛人。
・物語内での具体的な行動や成果 ノルトランド遠征へ同行する。アンジェリカからの強い嫉妬を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 プロの愛人として伴侶役を務める。
ラウラ
アウグストの秘書を務める。
・所属組織、地位や役職 ガリバルディ商会・秘書。
・物語内での具体的な行動や成果 優れた記憶力でアウグストの予定を管理する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 幼い容姿ながら秘書能力を発揮する。
マウリシア王国
ウェルキン五世
マウリシア王国の国王を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果 ラミリーズを呼んで審問を行う。バルドの提案するアントリム直轄地化を受け入れる。娘レイチェルの婚約変更を命じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王権と血統の保持に苦心する。
ハロルド(ハロルド・エジンバラ)
マウリシア王国の宰相を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・宰相。公爵。
・物語内での具体的な行動や成果 アンサラー王国の動向に焦りを隠せない。バルドの政治的条件を冷静に分析する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 国政の補佐を担当する。
レイチェル
マウリシア王国の第二王女を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・第二王女。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドの来訪に胸を躍らせる。父からリッチモンド公への婚姻を命じられ部屋へ引きこもる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 絶望により心を痛める。
ウィリアム
マウリシア王国の第四王子を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・第四王子。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドからアントリムの管理者に指名される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの友人として信頼を得る。
カタリナ
マウリシア王国の元王女を務めた。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国・第一王妃(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 ボーフォート公に依頼してマゴットへ暗殺刺客を送る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 後宮での権力確立を図る。
アーベル・シンプソン(シンプソン男爵アーベル)
マウリシアの諜報責任者を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国・諜報機関長。男爵。
・物語内での具体的な行動や成果 カーディフの調査を行いマルグリットの足取りを追う。ラミリーズの存在を告げる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 陰の責任者として調査を執り行う。
アドルフ・リッチモンド(リッチモンド公爵)
官僚貴族の代表を務める。
・所属組織、地位や役職 リッチモンド公爵家・当主。公爵。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドを国外へ送り出すため資金を提供する。レイチェルとの縁談を得る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 官僚勢力のトップとして立ち回る。
ヘイドリアン侯爵
官僚貴族の重鎮を務める。
・所属組織、地位や役職 ヘイドリアン侯爵家・当主。侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドの退出を歓迎して支援を申し出る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの国外排除を企てる。
アーノルド・ボーフォート(ボーフォート公爵アーノルド)
守旧派貴族の頭領を務めた。
・所属組織、地位や役職 ボーフォート公爵家・元当主。公爵(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 過去にカタリナの依頼で刺客を手配する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 戦争派として暗躍した。
ランドルフ侯爵家
アルフォード・ランドルフ
ランドルフ侯爵家の当主を務める。
・所属組織、地位や役職 ランドルフ侯爵家・当主。侯爵。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドと単独で対談に臨む。四カ国規模の支援を提示するバルドの覚悟を受け入れる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王党派の庇護者としての立場を整理する。
シルク・ランドルフ
アルフォードの娘を務める。
・所属組織、地位や役職 ランドルフ侯爵家・令嬢。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドとの再会に胸を膨らませる。バルドとともにトリストヴィー復興へ向かう決意を固める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの婚約者として添い遂げる道を選ぶ。
サンファン王国・マジョルカ王国
カルロス五世
サンファン王国の国王を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・国王。
・物語内での具体的な行動や成果 異国の薬で小康状態を取り戻す。バルドの王位就任へ同盟承認を与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドへの恩義に応える。
フランコ
サンファン王国の摂政を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・王太子(摂政)。
・物語内での具体的な行動や成果 妻テレサを通じてバルド支援を決めて通達する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 実権を握り決断を下す。
テレサ(テレサ・ブラッドフォード)
フランコの妻を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国・王太子妃。
・物語内での具体的な行動や成果 使者としてアントリムのバルドを訪ねる。サンファン王国の全面支援を力強く伝える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 幼馴染としての変わらぬ友情を示す。
ウラカ・デ・パルマ
マジョルカ王国の海軍卿を務める。
・所属組織、地位や役職 マジョルカ王国・海軍卿。女伯爵。
・物語内での具体的な行動や成果 サンファン海軍を実質的に指揮する。バルドへの好意を変わらず持ち続ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 海上勢力の要として君臨する。
ノルトランド帝国・ビョルク家・マンネルハイム家
ジーナ(ジーナ・ビョルク / ヘルシングの雷鳴)
獣神殿の司祭長を務める。
・所属組織、地位や役職 エレブルー獣神殿・司祭長。
・物語内での具体的な行動や成果 マンネルハイム家へ出現してギッツェらを圧倒する。バルドが「群れの子」であることを明かす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 獣人族最強の英雄として睨みを利かせる。
ベッティル・オーグレーン
手練れの獣人傭兵を務めた。
・所属組織、地位や役職 傭兵(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 カーディフで少女マルグリットを追いつめる。王門を開いたマルグリットに敗北してジーナの名を遺して没する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ジーナの元弟子として果てる。
アンジェリカ・マンネルハイム
ギッツェの娘を務める。
・所属組織、地位や役職 マンネルハイム家・令嬢。帝国騎士。
・物語内での具体的な行動や成果 アウグストの到着を馬で出迎える。アウグストの連れた愛人に激しい対抗心を燃やす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 アウグストへの強い好意を保持する。
ギッツェ・マンネルハイム
ノルトランド帝国の騎兵総監を務める。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国・騎兵総監。マンネルハイム家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果 師匠ジーナの登場に冷や汗を流す。バルドの存在を知り水面下での全面支援を決意する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 軍の重鎮として決定を下す。
イズン
アウグストの母親を務める。
・所属組織、地位や役職 マンネルハイム家・出身。
・物語内での具体的な行動や成果 過去にヴァレリーと結ばれてアウグストを出産する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ギッツェの妹として言及される。
アーロン
ノルトランド帝国の国境防衛司令官を務める。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国・国境防衛司令官。
・物語内での具体的な行動や成果 ジーナの前で恐縮する。バルドの支援工作へ参画する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 防衛の要として機能する。
イェフタス・フランドホルム
ノルトランド帝国の大将軍を務める。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国・大将軍。
・物語内での具体的な行動や成果 実戦部隊のトップとして動く。バルドの王位就任を獣人族の悲願として歓迎する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 軍の中枢を統率する。
グスタフ
ノルトランド帝国の皇太子を務める。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国・皇太子。
・物語内での具体的な行動や成果 重鎮たちの説得を受けてバルド支援を即座に承認する。長年の対立解消の機運と捉える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 帝国の政治を主導する。
イヴァン一世
ノルトランドの初代皇帝を務めた。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国・初代皇帝(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 帝都マジソンの建築を開始する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 建国の始祖として銅像が立つ。
エリク一世
ノルトランドの第三代皇帝を務めた。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国・第三代皇帝(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 帝都マジソンの城壁を完成させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 歴史的業績を残す。
ボードウィット
建国の功臣を務めた。
・所属組織、地位や役職 初代皇帝側近(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 イヴァン一世とともに帝国を支える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 城門前に銅像が並び立つ。
エルンスト・バルトマン
近衛騎士を務める。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国・近衛騎士。
・物語内での具体的な行動や成果 過去にバルドと決闘を行い敗北を喫する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 精鋭の剣士として評価される。
クライト
ギッツェの息子を務める。
・所属組織、地位や役職 マンネルハイム家・嫡男(2歳)。
・物語内での具体的な行動や成果 アウグストの前で愛らしく振る舞う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 家の跡取りとして誕生する。
ナウシカ
ギッツェの妻を務める。
・所属組織、地位や役職 マンネルハイム家・当主夫人。
・物語内での具体的な行動や成果 アウグストを快く出迎える。アンジェリカとの婚姻を無言で後押しする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 若い後妻として屋敷を取り仕切る。
地球の人物・前世・歴史的言及人物
岡左内定俊
バルドの前々世である戦国武将を務める。
・所属組織、地位や役職 戦国武将・上杉家家臣(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 懊悩するバルドの精神へ語りかける。戦うべき時に戦うよう叱咤して背中を押す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの武芸と戦術思想の根底をなす。
岡雅晴
バルドの前世である高校生を務める。
・所属組織、地位や役職 現代日本の高校生(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 自作ラジオの知識をバルドへ提供する。アマルガム法やトロッコの知見の土台となる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 現代技術の着想源となる。
織田信長
日本の戦国時代の大名を務めた。
・所属組織、地位や役職 右近衛大将・右大臣(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 桶狭間の戦いで奇跡的な勝利を掴む。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内の講話の中で名が出る。
豊臣秀吉
日本の天下人を務めた。
・所属組織、地位や役職 関白・太閤(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 時機を見極めて天下を掌握する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 天の運を掴む手本として引き出される。
徳川家康
江戸幕府の開祖を務めた。
・所属組織、地位や役職 征夷大将軍・大御所(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 引くべき時に引いて最終的勝利を得る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 歴史的成功者として言及される。
石田三成
豊臣家の奉行を務めた。
・所属組織、地位や役職 治部少輔(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 関ヶ原で天の運を掴めず敗北する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 失敗の例として示される。
上杉景勝
左内の主君を務めた。
・所属組織、地位や役職 会津中納言(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 天下の運気を掴み損ねる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 左内の主君として引かれる。
大久保長安
江戸初期の技術官僚を務めた。
・所属組織、地位や役職 江戸幕府代官頭(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 横坑排水やアマルガム法で鉱山を復興させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 鉱山技術の功労者として挙げられる。
安部綱吉
上杉家の金山奉行を務めた。
・所属組織、地位や役職 上杉家家臣(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 鳴海金山や奥只見銀山を管理する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 上杉家の鉱山管理の例として出る。
藤原定家
平安・鎌倉初期の歌人を務めた。
・所属組織、地位や役職 公家・歌人(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果 「来ぬ人を待つほの浦の夕なぎに」の和歌を詠み上げる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 製塩技術の歴史的文脈で引かれる。
集団
アントリム辺境伯軍
バルドが率いる領地防衛軍を務める。
・所属組織、地位や役職 アントリム辺境伯領正規軍。
・物語内での具体的な行動や成果 凄まじい勝利を経て高い威信を保持する。領内の治安を維持する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 最強の軍事力として他国へ響き渡る。
トリストヴィー王党派(亡命貴族集団)
アルフォードの庇護を受ける貴族層を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国内亡命勢力。
・物語内での具体的な行動や成果 ベルナルディの提案を受けて動揺をみせる。バルドの殺気により威圧される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 実戦力を持たず困窮する。
トリストヴィー大公派
ジャック大公が率いる公国実権派を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー公国支配勢力。
・物語内での具体的な行動や成果 アンサラー軍船の提供を受けて決戦を図る。マルグリット王女の捜索を打ち出す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 統一へ向けて軍を進める。
トリストヴィー海運ギルド(七元老会議)
沿岸部二割を治める商人組織を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー海運自治組織。
・物語内での具体的な行動や成果 七元老会議で対応を協議する。バルドへの大規模支援と提携を取り決める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 最強の海上資本を誇る。
トリストヴィー公国海軍(公国艦隊)
公国が保有する水軍部隊を務める。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー公国正規海軍。
・物語内での具体的な行動や成果 アンサラーの戦列艦十隻を配備する。海運ギルドへ決戦を挑もうとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 軍事力を増強する。
海運ギルド護衛艦隊
海運ギルドが所有する自衛艦隊を務める。
・所属組織、地位や役職 海運ギルド専属海軍。
・物語内での具体的な行動や成果 商船の保護に当たる。全艦対決での劣勢を懸念する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 卓越した操船技術を持つ。
デルベッキオ商会
ピアージョが率いる大手商会を務める。
・所属組織、地位や役職 海運ギルド中核商会。
・物語内での具体的な行動や成果 最大の商船隊を動かして貿易を行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 ギルド最高峰の商会として君臨する。
ガリバルディ商会
ベネートおよびアウグストが率いる商会を務める。
・所属組織、地位や役職 海運ギルド老舗商会。
・物語内での具体的な行動や成果 ダウディング商会やサバラン商会と結ぶ。バルド擁立の主導権を握る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 国際的な連携力を発揮する。
サバラン商会
セリーナが率いる商会を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国大手商会。
・物語内での具体的な行動や成果 海運ギルドからの資本をバルドへ仲介する。領内開発の流通を担当する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 バルドの財政を後押しする。
ダウディング商会
マウリシアの有力商会を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国商業組織。
・物語内での具体的な行動や成果 サンファン王国で真珠養殖や塩田事業を展開する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新事業で急速に成長する。
スフォルツァ公爵派
バティスタが率いた大貴族派閥を務めた。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国貴族至上主義派(故人集団)。
・物語内での具体的な行動や成果 平民官僚の排除を狙い粛清を行う。当主の失脚により解体される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 歴史の闇へ消え去る。
パザロフ伯爵派
ヴィクトールが率いた改革派を務めた。
・所属組織、地位や役職 トリストヴィー王国改革派貴族(故人集団)。
・物語内での具体的な行動や成果 平民の選良化と国内改革を主張する。冤罪により一打撃を受ける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 志がヴァレリーへ引き継がれる。
官僚貴族(リッチモンド公・ヘイドリアン侯派)
マウリシアの中央貴族勢力を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国行政貴族派閥。
・物語内での具体的な行動や成果 バルドを国外へ送り出すため資金を提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 中央集権化を図る。
マウリシア王国諜報機関
シンプソン男爵が統括する諜報組織を務める。
・所属組織、地位や役職 マウリシア王国直属情報機関。
・物語内での具体的な行動や成果 カーディフの調査を行いマルグリットの足取りを追う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 王国の影として稼働する。
サンファン王国海軍(試験船乗組員)
サンファン王国の外洋試作船隊を務める。
・所属組織、地位や役職 サンファン王国海軍試作隊。
・物語内での具体的な行動や成果 羅針盤を備えて南洋へ試航する。国王の薬となる貴重な品を持ち帰る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新航海術の成果を示す。
ノルトランド帝国軍(獣人部隊 / 騎兵部隊)
ギッツェらが率いる精鋭部隊を務める。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国国防中核軍。
・物語内での具体的な行動や成果 バルド支援のために水面下で集結を開始する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 陸上最強の戦闘力を誇る。
マンネルハイム家
武の名門家格を務める。
・所属組織、地位や役職 ノルトランド帝国貴族家。
・物語内での具体的な行動や成果 アウグストの母方の実家として機能を果たす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 軍部に強い影響力を保持する。
サンパニラデオン
南洋の海賊集団を務める。
・所属組織、地位や役職 海洋非正規武装集団。
・物語内での具体的な行動や成果 ウラカの手で屈服させられる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 海運ギルドとの抗争を繰り広げる。
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展開まとめ
第一章 嘘と真実
コルネリアスでの母子決闘の終結と介抱
バルドとマゴットによる意地を懸けた決闘は、バルドの勝利で幕を閉じた。最強という孤独の呪縛から解放されたマゴットは、息子の胸で泣き崩れた。互いに激闘の負担から意識を失った二人をセイルーンが必死に介抱した。丸一日眠り続けたバルドが目覚めると、産後の母親に勝負を挑んだ落とし前として父イグニスから拳骨を落とされた。バルドの負傷の方が重く、マゴットは打撲程度で数刻後に目を覚まし、双子の弟妹ナイジェルとマルグリットへ授乳を果たしていた。
マゴットによる出自の告白
マゴットが双子を連れて入室し、ナイジェルに乳を飲ませる姿は慈愛に満ちていた。家族を守るための強迫観念から解き放たれたマゴットは、雰囲気を一変させて家族に自身の秘密を明かし始めた。マゴットの本名はマルグリット・パザロフ・トリストヴィーであり、滅亡したトリストヴィー王国の第八王女であった。家族を守るため秘密を墓まで持っていく覚悟であったが、バルドの言葉を受けて胸の内にある物語を家族へ語り継ぐ決意を固めた。
トリストヴィー王国の政争とヴィクトールの失脚
三十余年前のトリストヴィー王国では、金権主義の蔓延に伴い既得権を失いつつあった貴族層と、台頭する商人や平民官僚との間で対立が生じていた。貴族至上主義を掲げるスフォルツァ公爵バティスタに対し、マゴットの祖父であるパザロフ伯爵ヴィクトールは平民の登用による国内改革を推進していた。危機感を覚えたスフォルツァ公爵はヴィクトールを排除すべく、アンサラー王国との癒着という無実の罪を着せて屋敷を包囲させた。後宮にいる娘ダリアや孫マルグリットの身を案じたヴィクトールは抗戦を断念し、捕縛を受け入れた。
後宮の追放とラミリーズの着任
正妃ベルティーナ・スフォルツァは、子宝に恵まれない悋気から側室たちを迫害しており、父の失脚によって後ろ盾を失ったダリアの元へ現れて自害を迫った。ダリアが毅然として拒否したため取り巻きに取り押さえさせようとしたが、国王の勅命を受けた近衛騎士ラミリーズが介入した。ヴィクトールに命を救われた恩義を持つラミリーズは、ダリアと幼いマルグリットの護衛を引き受け、ベルティーナの脅迫を退けた。その後、父ヴィクトールは処刑され、ダリアは愛娘を守り抜くため修羅になる決意を固めた。
粗末な離宮への移住と子供たちの入れ替え
ダリアと幼いマルグリット、そして異母妹であり侍女のリーシャとその息子ナイジェルは、粗末な離宮へと移り住んだ。実子のないベルティーナが歴とした王族であるマルグリットを見逃すはずがないと確信したダリアは、我が子を生き延びさせるために策を巡らせた。ダリアはマルグリットに対し、実はナイジェルこそが命を狙われる王子であり、マルグリットはリーシャの子であるという嘘を告げた。マルグリットはその話を素直に信じ、女装した美貌のナイジェルをマールお姉様と呼び、自分が守ると誓った。一方、ナイジェルは真実を理解した上で、主筋であるマルグリットを守るための生贄となる運命を受け入れた。
深夜の襲撃とラミリーズの圧倒的な武勇
深夜、離宮に眠りの香を焚いた六人の黒装束の刺客が侵入した。目覚めたラミリーズに対し刺客たちが小刀で一斉に襲いかかったが、ラミリーズは座ったまま瞬時に斬撃を叩き落とし、刺客たちの手首を切り落とした。捨て身で迫る前衛の死体ごと後続の刺客を玄関の外まで弾き飛ばし、主人の眠りを妨げぬよう細心の注意を払いながら全員を軽々と始末した。翌朝、刺客たちの無惨な死体は城壁を越えた道端に打ち捨てられていた。
マルグリットの成長とオルテンの説得
半年が経過し、五歳半になったマルグリットはラミリーズから厳しい剣の稽古を受けて急速に武才を開花させていた。屋敷の前にはラミリーズの親友である近衛騎士オルテンが現れ、近衛隊長への復帰を促した。しかし、無実の恩人を罪に陥れた国に忠義を尽くす気になれないラミリーズは、背負うべき者を守る騎士の誓いを守り続けるとして復帰を断固拒否した。
二年後の刺客撃退と宵闇の梟の死
さらに二年近くが経過し、度重なる襲撃を警戒した黒幕はゴロツキ十数名と本職の刺客を送り込んだ。庭に侵入したゴロツキたちの背後から、成長したマルグリットが俊敏な動きで奇襲を仕掛け、次々と刺殺していった。命乞いをする者たちに対しても、家族を守るために情けをかけず全員を討ち取った。一方、屋敷に潜入した『宵闇の梟』グンナールはラミリーズと対峙したが、高度な魔力による身体の部分強化を見せたラミリーズの前に手も足も出ず一刀両断された。
オスト伯ヴァレリーの暗躍と復讐の決意
スフォルツァ公爵の専横が強まる中、親友ヴィクトールを失ったオスト伯爵ヴァレリーは、公爵に反発する王弟アントニオ大公ジャックに接近した。ヴァレリーはマウリシア王国の王女カタリナを国王ウンベルトに嫁がせる策を再燃させ、スフォルツァ公爵家の権勢を削ごうと画策した。心の中では親友を見殺しにした国王や旧弊な国家そのものへの復讐心を燃やし、全てを破壊して新たな理想国家を打ち立てる魔王となる覚悟を固めていた。
国王ウンベルトの苦悩と王妃の焦燥
国王ウンベルト一世は、子を成せず嫉妬に狂うベルティーナや専横を極めるスフォルツァ公爵家を疎ましく思いながらも、宮廷内の勢力均衡を保つために有効な手を打てずにいた。一方、マウリシア王女輿入れの噂と、ダリアが男子を産んで隠しているという風聞を耳にしたベルティーナは精神的に追い詰められ、ダリア親子を自らの手で確実に葬るため後宮の茶会へ招待した。
リーシャの密談とダリアの覚悟
街のカフェでリーシャと密会したヴァレリーは、ベルティーナからダリアとマルグリットへ茶会の招待状が届いたことを知らされた。毒殺の罠であることは明白であったが、ダリアは愛娘の自由を勝ち取るため、あえてその罠に飛び込んで自らの命を差し出す決意を固めていた。リーシャはヴァレリーに対し、奥様の死をスフォルツァ公爵家追い落としのために利用してほしいと求めた。ヴァレリーはその壮絶な覚悟を受け入れ、悪魔に魂を売る決意をした。
最後の別れと後宮の毒殺劇
茶会当日、女装した九歳のナイジェルは王女としての装いを整え、無邪気なマルグリットに口づけを交わして別れを告げた。後宮へ赴いたダリアとナイジェルは、美貌と気品で周囲を圧倒した。ベルティーナが出した即効性の毒入り紅茶をダリアとナイジェルは躊躇なく飲み干した。激痛に耐えるナイジェルと、動揺せず冷然と言葉を返すダリアに対し、激情に駆られたベルティーナは馬乗りになってダリアの首を絞めた。そこへ勅命を帯びたヴァレリーが騎士たちを率いて踏み込み、毒殺の証言と証拠を突きつけてベルティーナを大逆罪で逮捕した。ナイジェルは絶叫するベルティーナの声を聞きながら、マルグリットの自由を願い息絶えた。
仇討ちの暴走とラミリーズの制止
国王の名でマルグリット王女の国葬が布告され、二人の死を知らされたマルグリットは激昂して王宮へ乗り込もうとした。しかし背後からラミリーズに制止され、実力不足を叩き込まれる形で庭にて打ち倒され、意識を失った。
ベルティーナと公爵の処刑
一週間後、政治的影響力を恐れた王宮により、ベルティーナとスフォルツァ公爵バティスタの処刑が執行された。取り乱して命乞いをするベルティーナの首は刎ねられ、バティスタはヴァレリーの瞳にある底知れぬ狂気と虚無を悟って国を恨むなと懇願したが、容赦なく処刑された。その光景を群衆の中から見つめていたマルグリットは、二人を守れなかった己の弱さを激しく憎み、一人でも全てを守れる最強の存在になると誓った。
カーディフでの修業とラミリーズの退去
リーシャとマルグリットはラミリーズに護衛され、マウリシアとトリストヴィーの国境にある宿場町カーディフへ移住した。マルグリットが十二歳になったある日、激しい立ち合いの末についにラミリーズの剣を弾き飛ばして勝利した。一人前になったマルグリットの姿を見届けたリーシャは、これ以上立派な騎士であるラミリーズの人生を犠牲にさせないため、そしてマルグリットが自立して羽ばたくために役目を終えたとして退去を求めた。マルグリットからも背中を押されたラミリーズは、新たな戦場を求めて傭兵として旅立っていった。
リーシャの病死と明かされた真実
ラミリーズが去った直後、心身をすり減らしていたリーシャが高熱を発して倒れた。マルグリットは必死に看病を続けたが、三日目の深夜に容態が急変した。朦朧とした意識の中でリーシャは、主のために見捨てた実の息子ナイジェルへの懺悔とうわ言を漏らした。その言葉を聞いたマルグリットは、自分が守っていたはずのナイジェルこそがリーシャの実子であり、自分が王女として身代わりに守られていたという恐るべき真実を悟った。罪悪感に苛まれ泣き叫ぶマルグリットに対し、リーシャは生きるよう言い残して息を引き取った。
騎士たちの襲撃と獣人傭兵ベッティルの来襲
庭でリーシャの墓穴を掘っていたマルグリットを、十名ほどの統率された騎士たちが包囲して襲撃した。怒りに燃えるマルグリットは部分強化による神速の踏み込みで包囲を破り、奪った剣で騎士たちを次々と返り討ちにした。そこへ保険として雇われていた獣人の傭兵ベッティル・オーグレーンが現れた。手練れであるベッティルの変幻自在の剣術とフェイントの前に、マルグリットは手傷を負わされ追いつめられた。
王門の覚悟とジーナの名
死の淵に立たされたマルグリットは、命を懸けて自分を逃がしてくれた家族の想いを胸に死を拒絶した。内に眠る力を解放したマルグリットは自力で王門を開き、技量を超越した至高の一撃を放ってベッティルに致命傷を与えた。ベッティルはマルグリットの師匠筋にあたる祖母ジーナの面影を見出し、真に強くなりたいならノルトランドのエレブルーにいるジーナを訪ねるよう言い遺して絶命した。
告白の余波とバルドの懊悩
すべての過去を語り終えたマゴットを、イグニスは温かく抱きしめた。マゴットは涙を流して長年の重荷から解放された。しかしバルドは、当時マウリシア領内で統率された騎士を暗殺者として動かせたのはマウリシア国王ウェルキンしかあり得ないという冷酷な結論に至った。マゴットの血筋を受け継ぐ自分がトリストヴィーの第一王位継承者であり、弟ナイジェルが第二位である以上、座視すれば災厄は弟妹や自身の子孫へと引き継がれる。バルドは家族を守るために戦うべきか、平穏を装うべきか深く苦悩した。
岡左内の叱咤と決意
自室のベッドで一人懊悩していたバルドの胸中に、自らの内に眠る前々世の武将・岡左内の声が響いた。左内は男が戦うべきときに戦わぬは恥であり、窮地こそが好機であると叱咤した。天に愛された運命を受け入れ戦えという左内の言葉に背中を押されたバルドは、世界の偏見と戦い、大切な家族を守るために自らトリストヴィーの王位を勝ち取る決意を固めた。
第二章 運命の輪
海運ギルド七元老会議とマルグリット生存の報
トリストヴィー公国の沿岸部を掌握するトリストヴィー海運ギルドの最高意思決定機関・七元老会議にて、アウグスト・ガリバルディが戦況を報告した。アンサラー王国が公国側へ戦列艦十隻を引き渡し、艦隊決戦になれば勝率は四分に落ちるという危機的状況が共有された。対貴族融和派のガストーネが和平を主張する中、アウグストは公国のベルナルディがマウリシア国内でマルグリット王女を捜索しているという情報を開示した。アウグストは、手垢のついていない正統な王位継承者をギルドが先に擁立して大義名分を得る策を提示し、その手掛かりとしてマウリシアにいる騎士ラミリーズの名を挙げた。
オスト伯ヴァレリーの計略
会議後、自邸に戻ったアウグストは、七元老の一人ベネート・ガリバルディの正体である実父オスト伯爵ヴァレリーと密談した。ヴァレリーは公国の重鎮として振る舞いながら裏で海運ギルドを操り、内乱を維持して旧弊な秩序の破壊を推し進めていた。ヴァレリーはヴィクトールの曾孫にあたるバルドが各国の要人と結んでいる縁を見据え、彼を軸に歴史の歯車を回すべく、アウグストにダウディング商会の監視とノルトランドの親族への連絡を指示した。
ウェルキン国王の苦悩とラミリーズの喚問
マウリシア国王ウェルキンは、諜報担当のシンプソン男爵アーベルから、カーディフの調査結果としてマルグリット王女が生存してノルトランドへ渡った可能性と、護衛の騎士がラミリーズであるとの報告を受けた。かつて妹カタリナの執拗な要請により騎士を派遣したものの、ボーフォート公と結託した騎士が独断で母子を殺害したと虚偽の報告を上げていた過去が明らかになった。ウェルキンはラミリーズを王宮へ呼び出し詰問したが、ラミリーズは自分が忠誠を誓った主はヴィクトール伯爵ただ一人であると言い放ち、王女の居場所を明かすことを拒絶した。さらに、王女たちが戦うことを選んだ際には地位を返上して退転する許可を求め、退出した。
第三章 獣人族の夢
テレサの来訪とサンファン王国の全面支援
バルドがトリストヴィーの王位継承者として立つ決断をしてから二カ月後、サンファン王国王太子妃となった幼なじみのテレサが密使としてアントリムを訪れた。バルドから送られた密書を読んだテレサは、変わらぬ友情を示し、サンファン王国としてバルドをトリストヴィーの正統な主権者として全面的に支援することを伝えた。新技術の提供や真珠養殖、流下式塩田による経済的提携に加え、アンサラー王国による南洋の覇権掌握を阻止するためにも、海洋国家であるトリストヴィーの主権者にバルドが就くことはサンファン王国にとって極めて有益であった。
ジャック大公の焦慮とヴァレリーの誘導
トリストヴィー公国の主権者ジャック・アマーディオは、寿命を意識する中で自らの代で国家統一を果たすべく焦燥感を募らせていた。アンサラー王国からの支援を受ける一方で属国化を警戒するジャックに対し、ヴァレリーは巧みな弁舌で公国の対立構図を操作した。ヴァレリーは公国側にもギルド側にも決定的な勝敗をつけさせず、厭戦気分を醸成させた上で、新たな英雄を迎え入れる下地を着々と整えていた。
アウグストのノルトランド到着とマンネルハイム家
アウグストは愛妾カトリーヌや秘書ラウラを伴い、極寒のノルトランド帝都マジソンに到着した。出迎えた従妹のアンジェリカに案内されて伯父ギッツェ・マンネルハイムの屋敷へ向かった。アンジェリカはアウグストを自身の婚約者と信じ込んでいたが、アウグストは伯父が嫡男の誕生を隠して縁談を画策していたことを知り苦笑した。
ジーナの急襲と獣人重鎮たちの誓い
ギッツェ、アーロン、イェフタスの帝国軍重鎮三人が集まる場に、司祭服をまとった師匠ジーナが突如姿を現した。ジーナはアウグストの正体と背後にいるヴァレリーの気配を察知しており、バルドをどうするつもりかと鋭く追及した。ジーナからバルドが自身をも凌駕する強さを持ち、正式に洗礼を受けた群れの子であると告げられた三人は歓喜に震えた。獣人の血を引く国王を誕生させることは、全大陸の獣人族にとって長年の悲願であった。彼らはジーナの意向を汲み、バルドの意思を最優先とすることを確認した上で、ノルトランドの獣人戦力を挙げてバルドを支援する工作を水面下で開始した。
第四章 世界を変える力
アントリムの急速な開発と新技術の導入
バルドは海運ギルドからの資金援助を受け入れ、領内の開発を急速に進めた。旧アントリム領から旧フォルカーク領へ連なる鉱山を再開発し、横坑による排水やアマルガム法による精錬、人力トロッコ軌道の敷設を導入した。さらに鉱石ラジオの開発を進め、風魔法による音量増幅を併用した迅速な通信網の構築を急いだ。多忙を極める執事テュロスに支えられながら、バルドは近いうちに訪れる政治的決戦に向けて着々と実力を蓄えた。
ランドルフ領での対峙と亡命貴族の放逐
バルドはシルクとの面会および王党派への工作のため、ランドルフ侯爵領を訪れた。居城の手前でクヮルトゥーロ伯爵らトリストヴィーの亡命貴族たちに道を塞がれ、シルクへの求婚を牽制された。自らは何も成さず利権にすがる彼らの浅ましさに激怒したバルドは、圧倒的な殺気を放って威圧し、恐怖に震える亡命貴族たちをその場から追い払った。
アルフォードとの会談とシルクの決意
ランドルフ家の居城にて、バルドはアルフォードおよびシルクと対談した。バルドはマゴットがマルグリット王女であり自身が正統な王位継承者であること、そして自身に獣人の血が流れていることを明かした。偏見に満ちた世界を変えて家族とシルクの夢を叶えるためにトリストヴィーの王になると宣言したバルドに対し、シルクはその手を取り共に歩む決意を示した。すでに海運ギルド、サンファン王国、マジョルカ王国、ノルトランド帝国を味方につけているバルドの実力を認めたアルフォードは、その壮大な覚悟に圧倒され、娘の意志を受け入れた。
ウェルキン国王との謁見と完全な勝利
王都キャメロンに赴いたバルドは、ウェルキン国王および宰相ハロルドと単独で謁見した。カタリナが刺客を送った経緯と、マゴットや自身に獣人の血が流れている事実を突きつけられたウェルキンは激しく動揺した。しかし、バルドは四カ国の支援を取り付け、さらに国内の政敵であるリッチモンド公やヘイドリアン侯とも取引を済ませていた。バルドは王位就任に伴い発展著しいアントリム領を王室直轄地として差し出し、ウィリアム王子に管理を委ねるという破格の提案を行なった。退路を完全に断たれたウェルキンはバルドの手腕に屈服し、支援を認めざるを得なくなった。
レイチェルの失意
バルドの来訪を知って喜ぶレイチェル王女の前に、怒りと苦渋に満ちたウェルキンが現れた。ウェルキンはレイチェルに対し、獣人の男に嫁がせる娘はないと言い放ち、リッチモンド公への輿入れを命じた。バルドとの繋がりが断ち切られたことを察したレイチェルは深く絶望し、その日以来、私室に引きこもることとなった。
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