水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編I

三原涼は大学二年生であったが、両親の死により家業を継ぐ決意を固め、副社長として働き始めた。十一カ月の努力の末、社員から認められつつあったが、帰宅途中に事故で命を落とす。死後の白い世界で彼は金髪の存在ミカエルと出会い、剣と魔法の異世界「ファイ」へと転生する。水属性の魔法適性を授かった涼は、森に建つ家と最低限の物資を与えられ、新しい生活を始めることになった。
彼は魔法の訓練を重ね、水や氷を自在に操る力を少しずつ習得していった。狩りや調理、保存などを通して生活基盤を築くが、魔物との戦闘は常に危険を伴った。特にアサシンホークやカイトスネークとの戦闘では死を覚悟する場面もあったが、工夫と魔法制御によって生き延び、成長を重ねた。さらにデュラハンとの剣稽古やドラゴン・ルウィンとの邂逅を経て、彼は剣技と魔法を両立する稀有な存在へと進化していった。
二十年後も外見が変わらぬままスローライフを送っていた涼は、難破船から流れ着いた剣士アベルを救出する。二人は協力して魔物を討伐しながら旅を続け、巨大な壁や山脈を越え、ワイバーンやハーピーといった強敵を撃退する。やがて中央諸国の街ルンへ到達し、涼は冒険者ギルドに登録。アベルの仲間との再会に立ち会い、新たな人間関係を築き始めた。ギルド宿舎での生活や講座を経て仲間と共にダンジョンに挑み、そこで初めて悪魔レオノールと遭遇する。圧倒的な力を持つ存在に翻弄されつつも辛くも生還し、再戦を予告される。
涼は異世界での生活において、食や技術の探求と同時に命懸けの戦いを続けていた。スローライフを望みながらも、強大な魔物や悪魔との遭遇により否応なく成長を迫られる。その歩みは、やがて世界の行方を左右する存在へと繋がっていく。
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 2

涼は仲間のニルス、エト、アモンと共に冒険者生活を送りながら、錬金術や水属性魔法の研究に打ち込み、氷のゴーレムによる開拓という夢を秘めていた。仲間がダンジョン探索に励む一方、彼は独自の訓練に専念し、魔法の応用を模索していた。その頃、ダンジョンではゴブリンアーチャーの異常な出現が確認され、やがて「大海嘯」と呼ばれる魔物の爆発的増加現象が発生する。ギルドマスターのヒューは迎撃体制を敷き、B級パーティー「赤き剣」と「白の旅団」が参戦。冒険者と騎士団が連携して防壁を死守し、激闘の末にゴブリンキングを討伐した。
戦後、涼は錬金術の初挑戦で解毒剤を生成し、力を認められる機会を増やしていった。やがて王都から学術調査団が到来し、冒険者と摩擦を生む中、涼は宮廷魔法団所属のナタリーや北図書館の冒険者セーラと出会い、知識の探求を深めた。その最中、赤き剣らは謎の転移により結界内に閉じ込められ、魔王子を率いる「デビル」と交戦し窮地に陥る。そこへ駆けつけた涼が圧倒的な魔法で魔王子を討伐し、仲間を救出したことで、彼の規格外の実力が明らかとなった。
その後、涼は十号室の仲間と共に初の護衛依頼を成功させ、港町ウィットナッシュの開港祭に参加する。祭りでは帝国の皇族が来訪し華やかな雰囲気に包まれるが、園遊会で結界が破壊され賊の襲撃が発生した。涼は仲間と共に皇女フィオナを救出するも、帝国副長オスカーと衝突し、一時戦争の危機にまで発展する。しかしアベルの仲裁により事態は収束し、十号室の面々は皇女から感謝を受けた。
続いて涼はニルスの故郷アバリー村の依頼に同行し、ゴブリンとスケルトンを討伐。守護獣との出会いや祠の調査を経て、村人の信頼を勝ち得た。依頼を終えた彼らは帰還し、それぞれの未来について語り合った。一方で、帝国や連合の動き、紫髪の間諜の暗躍など、大陸全体に不穏な影が広がっていた。涼は新たな家を購入し、研究と鍛錬を続けながら、迫る大戦の予兆と自身の運命に備えて歩みを進めていった。
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 3

涼とアベルはルンで捕物に協力し、帝国影軍の諜報員を拘束。現場に介入した紫髪の女が認識阻害で逃れ、不穏が漂った。帝都では勇者ローマン一行が皇帝と対面し、師団長フィオナ主導の模擬戦を重ね、復帰した副長オスカーに完敗して己を知る。赤き剣はウイングストンで公爵急死に遭遇し、因縁の紫髪の男と交戦。ランシャス将軍は西部抑制を誓う。
涼は商人ゲッコー護衛で旧街道を進み、盗賊と黒衣の暗殺者を退ける。双頭の鷲の刺青や橋崩落を巡る策謀が露見し、スランゼウイでも襲撃を氷魔法で無力化した。赤き剣と再会して呪いの刺青を除去し、協力関係を得る。国境封鎖下ではジマリーノへ潜入し、義賊〈暁の国境団〉と接触。腐敗官吏と商人の陰謀を暴き、太守に自浄を促したが、炎帝フラムとの再戦で辛勝し脱出する。
封鎖解除後、涼はウィリー殿下の影武者護衛を請負うも拉致が発生。暗殺教団本部アバン村を凍てつかせて殿下を奪還し、首領の最期から錬金術の遺産を受け継いだ。帝国は「凍結した村」の報告を受け水の魔法使いの捜索を開始。一方、ルンのギルドマスター・ヒューは指南役セーラと鍛錬を再開し、街の力を底上げした。終章では管理者が、涼と勇者の王都集結を大事変の前触れと示唆した。
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 4

王国第二街道を進む涼ら一行は、暗殺教団の襲撃後に信用を失い、涼の負担で旅を続けていた。ウィリー殿下は魔法練習に熱心で、仲間たちはその努力を支えていた。並行して、アベルは王太子と密会し「英雄の間」の新たな鍵の登録者となり、王宮の腐敗や財務卿フーカらの権勢を探る調査に着手した。王都に到着した『赤き剣』は筆頭宮廷魔法使いイラリオンと接触し、黒い粉による陰謀や財務卿の弟シーカの関与を突き止めた。さらに、ハンダルー諸国連合の影響も浮かび、国境を超えた陰謀の広がりが示唆された。
一方で涼は王都に到着し、セーラと再会して彼女の同行を得る。勇者パーティーとの誤解からアベルが戦闘に巻き込まれるが、涼の仲裁で収束し、錬金術師ケネスを紹介される。さらに浮遊大陸「バビロン」の伝承や、紫髪の存在に関する不安が語られた。やがて王都は黒い球を発端とするアンデッドと魔物の氾濫に襲われ、騎士団は壊滅状態となる。中央神殿や自治庁は戦場と化し、セーラはアークデビルを討ち果たすが力尽きる。そこへ涼が氷魔法で駆け付け、数百の魔物を瞬時に葬り去り、自治庁を救った。王都は浮遊島の墜落によって更なる混乱に陥り、涼とアベルは王城へ急行するも紫髪の強敵と交戦する。戦いの末、島は消失し事態は一時収束するが、魔物の脅威は残されていた。
騒乱後、涼とアベルはルンへ帰還の途に就く途中、盗賊や悪魔レオノールと遭遇し激戦を繰り広げ、涼は重傷を負いながらも再起を果たす。最終的にルンへ帰還を果たし、物語は一段落を迎えるが、浮遊大陸や連合の策略など新たな火種が明確に残された。エピローグでは、異世界を監視する存在が涼の特異性と今後の戦乱の兆候を見守る姿が描かれた。
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 5

涼は仲間たちと共に模擬戦や錬金術の研究を続け、冒険者としての力量を磨いていた。やがてコナ村からの依頼を受け、虫害と失踪事件の調査に赴く。村では「竜のアギト」と競合する形で活動するが、代官ゴローの采配により、涼たちは虫害調査を担当し、魔人復活の兆しを示す「魔人虫」を発見した。伝承官ラーシャータの鑑定により事態は王都に報告され、調査は続行された。
やがてヴァンパイアの眷属ストラゴイが現れ、村は危機に陥る。ルンのギルドマスター・ヒューや勇者ローマンも加わり、漁村で伯爵級ヴァンパイア・カリニコスと激戦を繰り広げた。涼は氷魔法を駆使して後衛を支援し、最終的にヒューの聖剣によりカリニコスは滅ぼされた。しかし直後に洞窟から封印が解かれ、紫髪の魔人が覚醒。圧倒的な力を前に涼たちは撤退を余儀なくされた。
その後、勇者一行と別れた涼は、仲間と模擬戦や剣術教室を通じて冒険者の成長を促す。一方、情勢は中央諸国から西方へ拡大し、ナイトレイ王国やインベリー公国を巡る戦乱へと発展する。公国は連合軍の侵攻に追い詰められ、焦土戦略に転じるが失敗し、公都アバディーンは陥落した。公ロリスは家族と共に脱出し、最終的に帝国へ亡命する。帝国の介入により連合は公国を併合し、戦局は一層複雑化した。
涼は弟子や仲間を救うために戦場へ身を投じ、炎帝フラムや魔法使いファウストらとの死闘を重ねた。圧倒的な氷魔法で敵軍を退けつつ、自らの力不足を痛感し、さらなる成長を誓う。戦場では人工ゴーレムなど新兵器も登場し、戦争は激化していった。最終的に公国は滅び、ロリスは帝国に庇護されることで存続を得たが、その裏で帝国は次なる大戦への布石を着実に進めていた。
一方、涼はエルフの救助を通じて悪魔レオノールと関わりを持ち、自身が「特別な人間」である可能性を示唆される。仲間たちとの絆や剣士アベルの成長を見守りつつ、中央諸国から西方へと舞台は移り、さらなる試練が待ち受けることが暗示されたのである。
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 6

冒険者ギルドにグランドマスター、フィンレー・フォーサイスが来訪し、消息不明となったA級パーティー「五竜」に代わり「赤き剣」を使節団に加える計画を示した。だが、リーダーのアベルが国王の次男であるため帝国国境行きは不可能となり、代役として涼が招聘された。涼は当初難色を示したが、壊れたゴーレムの調査報酬に惹かれ参加を承諾した。
涼とアベルは王都へ向かい、錬金工房でケネスと再会し、天才錬金術師フランクの技術やゴーレム研究に触れる。ウィリー殿下との再会も果たし、研究を通じて錬金術の奥深さを学んだ。王太子はアベルに帝国との戦争の危機を説き、覚悟を促した。やがて使節団八十余名が編成され、トワイライトランドへの旅が始まった。
道中、暗殺教団の襲撃を受けるが、涼の水魔法により撃退し、幹部ナターリアを捕縛する。さらに冒険者ミューがトワイライトランド大公の孫であることが判明し、彼女が暗殺の標的であったと知れる。使節団はカルナック、首都テーベと進み、謁見や冒険者ギルドでの交流を経る中で内戦の兆候が顕在化した。
アベルは模擬戦でヴァンパイアに包囲されるが真祖の介入で救われ、第三勢力として参戦を決断する。迎賓館や貴族邸を巡る戦闘で勝利を重ね、大公サイラスを奪還し、反乱貴族を退けた。一方、涼はアルバ公爵邸で魔法無効空間下の剣戟に挑み、剣士グリフィン卿を撃破する。
その後、帝国は捕虜奪還のため新型空中戦艦を投入し、フィオナ皇女やオスカーが侵攻した。ルンの別館で激戦が展開され、涼はオスカーと死闘を繰り広げ、互いに重傷を負いながらも帝国軍は撤退した。涼とアベルは敗北を認めつつ学びを得て、次なる必殺技の開発を誓う。ケネスは帝国艦に対抗し得る手段の存在を示唆し、未来への希望が芽生えた。
一方、白い世界の管理者ミカエルは涼の活躍を観察し、転生者とヴァンパイアの関係に疑念を抱きつつ、人間の争いが世界の理であると結論付けた。
水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編 7

涼とアベルは新技術開発や針技術の修練を通じて実力を高めつつ、冒険者ギルドや白の旅団の協力を得て成長していた。フェルプスやシェナとの交流で戦術的知識を蓄え、アベルは次期王位を意識する心情を吐露した。だが同時に、浮遊大陸では元老の強硬思想に基づき帝国への大規模作戦が進行し、リウィアは副司令官として従軍を命じられ、地上と空の対立が深まっていた。
ナイトレイ王国では帝国軍が侵攻を開始し、王太子カインディッシュの死と王都陥落によって混乱が広がった。北部貴族の裏切りによりデスボロー平原の戦いは王国軍の惨敗に終わり、アベルは王都奪還を掲げて南部で即位した。一方、王弟レイモンドも即位を強行し、王国は二分された。王都は帝国に占領され、英雄の間の封印を巡る謎が浮上した。
西の森では帝国軍が侵攻したが、セーラの圧倒的な力で撃退され、ランシャス将軍が敗北した。涼はアベルの護衛を託され、友人としての役割を果たしつつ工房で巨大飛行船に関心を寄せた。やがて新戦艦ゴールデン・ハインド号が完成し、初陣で帝国艦隊を撃破。だが伝説の浮遊大陸艦隊が現れ、ゾラ司令官やリウィア副司令官と交戦する事態に至った。涼とリウィアの激戦は未知の力を伴い、最終的には停戦が成立した。
帝国は皇帝親征の裏で反皇帝派を粛清しつつ、黒い粉を巡る戦略を展開。王国では「五竜」による暗殺未遂が涼の奮戦で阻止され、アベルは出陣式を行い国民と冒険者を糾合した。ゴールド・ヒル会戦でレイモンド軍を退けた後、王都奪還作戦が実行され、涼はレイモンドの自決を目撃し、スタッフォード四世の承認を経てアベルが正式に国王となった。
王都解放後の祭では民衆と貴族の支持が集まり、ジュー王国の協力も得られた。だが帝国との決戦は避けられず、ビシー平野で大軍が激突。涼とオスカーの戦いは物理学理論を応用した魔力運用で涼が勝利し、王国は戦術的勝利を収めた。戦争は終結し、帝国は反皇帝派を壊滅させ戦略的成果を得たが、王国も侮れぬ存在として認識された。最終的にアベルは王国再建に臨み、涼は筆頭公爵に任じられ、新たな冒険への意欲を胸に未来を見据えたのであった。
水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編1(8)

ロンド公爵領で涼は水田管理ゴーレムを改良し、稲作を効率化していた。錬金術研究に励む中、通信タブレットから王都召喚の指示を受け、師デュラハンに別れを告げて旅立った。贈られたブーツと召喚したグリフォンの協力で王都に到着すると、病床のアベルを診察し、絶対安静を命じた。執務を再開しようとする彼を制止し、代わりにバイオリン演奏を聴き、王家の芸術教育や転生者の可能性に思いを巡らせた。
その後、未返却の錬金術書を取りにルンを訪れるが、大海嘯が発生。涼は水魔法で数千のオーガを殲滅し、残るオーガキングはギルドマスター・ラーが打倒した。功績を評価され王都へ戻り、返却を果たした。アベルから感謝を受けた涼は「月一ケーキ特権」を得て喜んだ。
一方、帝国使節団の到来により王国は交渉に臨む。涼は公爵として堂々と姿を現し、病気と噂されたアベル王が若々しい姿で登場したことで王国優位に交渉は終結した。その後、西方諸国への使節派遣が決定され、王国はグランドマスター・ヒューを団長に、涼も護衛として同行することになった。
旅の途上、漆黒の森で悪魔レオノールと戦い、「生贄」「天使」「ヴァンパイア」の警告を受ける。さらにアイテケ・ボでは世界樹消失を調査し、国主の暴挙が森の怒りを招いたと判明したが、直後にキャタピラーの襲撃で都市が崩壊し交渉は中止された。続いて訪れたシュルツ国では騎馬民族の襲撃で王城が壊滅、アーン王が新王に即位した。
次の都市ボードレンは既に滅びており、黒神官と名乗る存在に遭遇。堕天の概念を示され、西方に潜む脅威の影が浮かび上がった。さらにキューシー公国ではヴァンパイア公爵レアンドラが現れ、ゴーレム兵団を操り襲撃を仕掛ける。涼は激闘の末に撃退し、重傷を負いながらもルスラン公子を守り抜いた。
その後、各国使節団はスフォー王国に集結。帝国先帝ルパート、連合先王ロベルト・ピルロら三巨頭が揃い、使節団は次なる交渉の場ファンデビー法国を目指す。涼は友情と軽口を交えつつアベルと連携を取り、西方の未知と脅威に挑む決意を固めた。
水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編2(9)

ハンダルー連合では魔人虫の出現が問題視され、オーブリー卿は情報管理の不備を認めつつ、西部での直接調査を許可した。一方、ナイトレイ王国のアベル王は魔人復活との関連や魔石異常を憂慮し、さらに空の民ロマネスクとの会談に臨むことを決断した。ワルキューレ騎士団は会談警備を任され、騎士団改革と成長の過程が描かれた。会談では空の民上層部の地上侵攻決定が伝えられ、アベル王は交渉よりも力による抑止の必要を痛感した。
同時期、王国使節団は聖都マーローマーに到着し、教皇庁の不穏な動きを知る。勇者ローマンの行方不明やヴァンパイアの覚醒が明らかとなり、さらに「魔王の血」が相次いで失われたことで、冒険者一行は魔王探索を命じられる。彼らは魔王山地やケンタウロスの集落で戦いと対話を重ね、魔王の正体や存在の多様性を知った。西ダンジョン攻略では管理人マーリンと遭遇し、ついに魔王ナディアと勇者ローマンに辿り着き、霊呪の解呪に成功する。両者はナイトレイ王国への移住を決意し、戦乱を避ける道を選んだ。
一方、マファルダ共和国では隣国連合王国との戦争が勃発し、法国や教会勢力の暗躍も絡む中、涼は特務庁襲撃で暗殺部隊を退け、錬金術師ニール・アンダーセンと共にゴーレム兵団を修復した。共和国軍はダッコンの森で奇策とエルフの助力により侵攻を阻止し、法国のゴーレム部隊との激戦も制した。涼は「赤の魔王」としても暗躍し、エルフを救いながら教会の陰謀を阻止する。
終盤、涼はエルフや共和国との絆を深め、ナイトレイ王国への帰還を経て新たな使節任務を託される。エピローグでは、白い世界の管理者が涼とアベルの運命を見守り、教皇庁を巡る新たな波乱を示唆した。物語は魔王と悪魔、教会と国家の複雑な対立を背景に、涼の錬金術と人脈が世界を繋ぐ重要な役割を担う姿で結ばれたのである。
水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編3(10)

ナイトレイ王国使節団はグラハム枢機卿を訪ね、涼はその洞察力によって枢機卿の信頼を得た。彼は教皇庁との書類運びを担い、内部事情の把握を進める中で、監視の視線の主が「教皇の四司教」の一人チェーザレであると察した。グラハムから四司教の暗殺部隊としての脅威を聞かされつつ、涼は監視班を逆に拘束し、背後にアドルフィトやカミロら枢機卿が関与していることを突き止めた。さらに、ヴァンパイアの活動活発化も示唆され、緊張が高まった。
一方、王国ではアベル国王が涼と権力の危険性を議論し、信頼を深めた。アシュリーは交渉官グラディスの副官に抜擢され、監視の対象が広がっていることを涼から知らされた。使節団間で情報を共有するも監視の目的は依然不明であった。やがて涼は四司教の三人と対峙し、敵意を示さずに退いたが、同時期に連合護衛隊長グロウンが襲撃され、形見の聖剣を狙われる事件が発生した。
その後、異端審問庁長官ステファニアが涼の引き渡しを要求したが、彼は〈パーマフロスト〉で聖都を凍らせ得る力を示し、審問庁を退けた。グラハムはステファニアの焦りを見抜き、サカリアス枢機卿の影響を警戒した。涼はルスラン公子と再会し、ゴーレム研究の進展や暗殺兵団の謎を共有した。
一方、アベル王は北部視察で新設貴族たちと交流し、盗賊団「黒狼」の襲撃に直面するも撃退に成功した。続く東部視察では連合の将軍や炎帝フラムと接触し、帝国との三大国均衡を巡る駆け引きを展開した。帝国では新皇帝ヘルムートの失政により反乱が頻発し、エルベ公爵コンラートやアラント公爵ジギスムントが動乱を広げた。やがてヘルムートは騎馬の王アーンに討たれ、帝国は混乱に陥った。
涼は王国使節団から長距離船調達を託され、マファルダ共和国で建造中のクリッパー船〈スキーズブラズニル〉を改良して入手することに成功した。その帰途、ヴァンパイア公爵レアンドラと再会し、食を通じた平和の可能性を語り合った。しかし、教皇庁四司教の襲撃を受け、魔法無効化道具を奪取する戦いを強いられた。
同時期、『十号室』と『十一号室』は西ダンジョンで悪魔ジャン・ジャックと遭遇し、魔人マーリンの助力を得て死闘を繰り広げた。悪魔は「神のかけら」の存在を語り、聖都就任式を前にさらなる脅威が迫ることを暗示した。涼は失った左腕を治療しつつ戦いを振り返り、仲間と共に次なる局面に備える決意を固めた。
水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編4(11)

涼は聖都マーローマーにて、キューシー公国のルスラン公子とヴァンパイア公爵レアンドラの会談を仲介した。当初は沈黙が支配したが、菓子をきっかけに緊張が和らぎ、両者は相互理解を深めた。レアンドラはヴァンパイアの実態を語り、ルスランも父の助言を胸に対話を進めた。彼女は兄キリルを救う薬を託し、両者は平和の必要性を確認したが、同時に他派ヴァンパイアの脅威も明かされた。
一方、涼は教皇庁を訪れ、グラハム枢機卿より魔法無効化道具や暗躍する枢機卿たちの情報を得た。勇者一行の魔法使い失踪も判明し、涼は仲間と共に調査を開始した。複数の保管庫を巡る過程で、サカリアスやカミロの関与が浮かび上がり、さらに地下に隠された巨大魔法陣の存在を発見した。魔法陣は生贄儀式に用いられるもので、涼は改変して起動を阻止した。
やがて失踪者の一部救出に成功し、聖剣の存在も判明した。パダワン伯爵家潜入で聖剣四本を確保し、伯爵の悔恨と再生の兆しを導いた。だが帰路で教皇と激突し、その異様な力と消失に「堕天した存在」の影を感じ取った。常夜の国の探索では捕らわれた魔法使いたちを救出し、涼は教皇を討ち滅ぼすことに成功する。だが背後に天使レグナの関与が示唆され、サカリアスは就任式で涼の力を利用する計画を抱いていた。
第百代教皇就任式当日、観客席から魔力吸収が行われ、地下魔法陣の起動が狙われていた。涼は装置を破壊し妨害に成功したが、会場は混乱に陥り、教皇は暗殺される。サカリアスも追及を受け自害し、その遺体から異形が顕現、さらに空から『霊煙』が降下し戦場は阿鼻叫喚と化した。涼たちとグラハムらは聖剣を用いて霊煙を討ち払い、最後には化物クモを撃破した。
しかし、戦いの最中に堕天使が顕現し、圧倒的な力で人々を圧した。涼は仲間の援護を受け「村雨」を振るい、一騎打ちの末に封印へと追い込むことに成功した。戦いは収束したが、涼は王国からの通信でアベル王が「王国は滅んだ」と告げるのを聞き、帰還の道を失ったことを知る。絶望に包まれる中、中央諸国の未来は混迷の淵に立たされていたのである。
水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編5(12)

ハンダルー連合西部のクルチョの街は、王国旗を掲げた一万騎の軍勢に三十分で陥落した。だが執政オーブリー卿は、王国の関与は不自然であり、別勢力の謀略を疑った。同時期に王国東部のバン・レーンも陥落し、国王アベルは宰相ハインライン侯と共に連合との会談を急いだ。両者は互いの無実を確認し、住民虐殺と物資略奪のない異常性から、魔人軍の影を認識した。錬金術師フランクは伝承を想起し、虚影兵と実体兵の出現が魔人復活の兆候であると指摘した。
その頃、封印を逃れた魔人ガーウィンは眷属と共に人間を屠り「神のかけら」を収集していた。やがて赤鎧の実体兵が連合と王国領を襲撃し、ゲッコー商会やハフリーナ子爵領は壊滅の危機に瀕した。だが商人エヴァンスと弟子ルーチェ、騎士団長ザックの奮戦、さらにシルバーデール騎士団の突撃により撃退に成功し、人類側は初勝利を収めた。しかしオレンジュら眷属は戦を誘発し、さらなる犠牲を企図していた。
一方、暗殺者上がりの配達人シャーフィーは巡察使アッサーと行動を共にし、赤鎧の隊長格を撃破した。ウイングストン領内に魔人封印の地がある疑念は確信へと変わり、公爵アーウィンが眷属と行動を共にしている事実も発覚した。王国と連合はついに戦争状態に突入し、スキヴィト砦での決戦に挑む。人工ゴーレムと『暁の国境団』の奮戦によって黒鎧ヴィム・ローを討伐し、連合は辛勝したが、魔人本体討伐の必要が確立された。
王国は五万の軍を集結させ、アベル王とリーヒャ王妃自らが出陣した。虚影兵と実体兵の大軍を前に、錬金術師ケネスと神官団が新装置を駆使して全軍を癒やし、戦局を立て直した。ザックやカーライル伯爵ウォーレンら騎士団の奮戦も加わり、劣勢を覆したが、ガーウィンの本体が降臨し、圧倒的な力で王国軍を蹂躙した。勇者ローマンと魔王ナディアも参戦するが劣勢に追い込まれる。
絶望が広がる中、涼が帰還し、氷の魔法でガーウィンを切り裂いた。心臓を貫かれてもなお立ち上がる彼の姿は仲間を鼓舞し、セーラやアベルと共に死闘を繰り広げた。最終局面、アーウィンの体を巡る魔力の暴走が起こり、力はリチャード王の剣へと引き寄せられる。次の瞬間、ガーウィンと眷属、そしてアベルと涼が戦場から消失した。これが「魔人大戦」と呼ばれる激闘の結末であり、後世に長く語り継がれる戦いであった。
水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編1(13)

涼とアベルは魔人ガーウィンの暴走による転移で見知らぬ海岸に漂着した。状況確認ののち、涼は海の魔物、特にクラーケンの脅威を想定し、氷製潜水艦「ニール・アンダーセン」を錬成して海中探索に挑んだ。艦は魔物避けを備えたが強敵には効果が薄く、実際に出現したクラーケンとの戦闘では水属性魔法が封じられた。涼は錬金術による外装と魚雷を駆使し、捕獲装置で魔石を奪い勝利した。二人は戦果を喜ぶ一方、クラーケンの群れという新たな脅威を懸念する。
探索の果てに彼らは沈没した空の艦を発見する。内部には会議室や砲弾庫があり、最下層では四属性魔石が稼働する動力炉が見つかった。さらに戦闘ゴーレムが起動し、アベルは戦闘を通じてその能力を解析したが、機体は自壊して機密保持の徹底が示された。脱出時には大ダコの群れに襲撃されるが、涼の操艦と魔法で突破し砂浜へ帰還した。
その後、森を抜け街に到達した二人は、現地少年バンヒューの案内で宿に泊まり、地図や翻訳機を得て帰還の困難さを知る。涼は『魂の響』を改良し王都へ伝言を送り、無事が確認された。やがて墜落した飛行船から亡命中のスージェー王国第六王女イリアジャと遭遇し、彼女の移送任務に護衛として加わる。艦隊はスージェー王国軍に襲撃されるが、涼の氷魔法とアベルの剣技により敵旗艦を制圧し、提督ロックディを降伏させた。姫一行は無事都ワンニャへ到着し、二人は報酬を得て滞在する。
しかし護国卿カブイ・ソマルが現れ、姫を女王に擁立する勅命を明かす。姫は帰国を決意し、涼とアベルも戦友として同行した。国境突破の戦闘で涼は防御魔法を駆使してレインシューター号を守り抜き、王都ピューリへ到着した姫は熱狂の歓迎を受け即位式に臨む。だが呪法使いの暗殺が仕掛けられ、涼の防御と奮闘で阻止される。式は成功し姫は女王となったが、背後に大公国の謀略と呪法の脅威が潜んでいた。
やがて二人は自由都市クベバサを目指し旅立つ。女王は彼らの正体をナイトレイ王国の王と筆頭公爵と見抜きつつ、再会の希望を胸に見送った。物語は、新たな地平と陰謀を予兆しつつ幕を閉じたのである。
水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編2(14)

スージェー王国巡洋艦ローンダーク号は、魔法使い涼と剣士アベルという民間客を乗せ、自由都市クベバサへ向かった。語学訓練や寄港地バンラでの出来事を経て、海上で幽霊船ルリと遭遇し、二人は亡霊の首魁を討って船を解放した。黒い『門』から悪魔レオノールとジャン・ジャックが一時的に来訪し、不穏を残して去ったのち、一行はクベバサに到着する。
クベバサではアティンジョ大公国の大艦隊が出現し、新任大使ヘルブ公が威圧的な外交で各国を抑え込んだ。園遊会でも彼は言葉少なに場を掌握し、自由都市艦隊主力壊滅の可能性を示唆した。スージェー大使の要請でローンダーク号は調査に出て、黒い海域と幽霊化した旗艦を確認しつつ離脱に成功した。
同時に大公国は食料買い占めで市中を混乱させ、涼とアベルは大使館に乗り込み交渉と小競り合いを経て買い占め撤回を引き出した。続いて二人は冒険者互助会の若手「虎の牙」とともに内戦下の連邦首都モスへ公文書を届ける任務に同行し、野営での襲撃を退けたうえ、氷の潜水艦で港湾封鎖を潜入突破して元首に書簡を届けた。白仮面の呪法使いを制圧して連行し、帰還を果たした。
やがて自由都市は大公国の保護下入りを政府通達で公表したが、背後には大臣層の傀儡化が疑われた。商会会頭スクウェイは現実的目標として自治権獲得を掲げ、二人に協力を要請する。艦隊壊滅の鍵と目される「青い島」の調査が合意され、ヘルブ公の分艦隊と協同で出航した。
海上では黒いワイバーン群を撃退し、島では死竜の存在が確認された。ヘルブ公は呪符陣で死竜を滅し、涼は魔法を奪う術〈強奪〉を操る悪魔研究者パストラに苦戦しつつも、分析と連携戦術で拘束に至った。こうして死竜と島の脅威の輪郭が示され、自治を賭けた次局面へと物語は進む。

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