小説【水属性】「水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編1(8)」感想・ネタバレ

小説【水属性】「水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編1(8)」感想・ネタバレ

どんな本?

本作は、最強の水魔法使いである涼が繰り広げる冒険譚の第二部である。王国解放戦から3年後、筆頭公爵となった涼は、王都とロンドの森を行き来しながら錬金術や農業に勤しむ日々を送っていた。しかし、遠く西方諸国へ向かう外交使節団に加わることとなり、かつての敵であった帝国の先代皇帝・ルパート6世と再会する。旅の途中で遭遇する数々の事件や謎に立ち向かいながら、涼は使節団を守り抜くため奮闘する。

主要キャラクター

  • :最強の水魔法使いであり、筆頭公爵。錬金術や農業を嗜む自由奔放な性格。
  • アベル:王国の国王であり、涼の友人。多忙な日々を送る中、涼との友情を大切にしている。
  • ルパート6世:帝国の先代皇帝。涼とは過去に敵対したが、現在は共に旅をする仲間となる。

物語の特徴

本作は、前作から3年後の世界を舞台に、涼の新たな冒険と人間関係の深化が描かれている。かつての敵との共闘や、西方諸国での未知なる脅威との対峙など、スリリングな展開が魅力である。また、涼とアベルの遠距離での掛け合いも健在であり、ユーモラスなやり取りが物語に彩りを添えている。
出版情報
出版社TOブックス
書籍版発売日:2023年10月20日
ISBN:978-4866999791
コミカライズ:墨天業による漫画版が『comicコロナ』にて2021年9月より連載中
アニメ化:2025年7月よりテレビアニメ放送予定

読んだ本のタイトル

水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編1
著者:久宝忠 氏
イラスト:めばる  氏

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あらすじ・内容

王国解放戦から3年が経った。筆頭公爵に叙せられた涼は、王都とロンドの森を行き来しつつ悠々自適の錬金術&農業三昧の日々を楽しんでいた。しかし貴族となれば厄介事と無縁ではいられない。遠く西方諸国へと向かう外交使節団に加わることに。しかも帝国の代表は先代皇帝・ルパート6世――つい3年前に敵として戦った男だった! お互いに腹の内を探りつつの旅路。いくつもの国を越えて、ようやく西方諸国最東端の街・ロプノールに辿り着いたが、街は真紅に染まり、住民は一人残らず消え去ってしまっていて……? 眠りから醒めたヴァンパイア達、”堕天”の謎、新たな悪魔の存在。かつての敵とともに、西方諸国にうごめく魑魅魍魎から使節団を守り抜け! 最強水魔法使いの気ままな冒険譚、第二部開幕!

水属性の魔法使い 第二部 西方諸国編1

感想

箇条書きによる要約

プロローグと日常

  • 水田管理ゴーレムの導入と成果:涼はゴーレムを活用して稲作の効率化を進め、生活を支えていた。
  • 通信タブレットの起動:未使用のタブレットが起動し、王都への急な召喚を受けた。

師匠との別れ

  • デュラハンとの模擬戦:涼は模擬戦を経てブーツを贈られ、旅の準備を整えた。
  • 長期留守の準備:ゴーレムを稼働状態に設定し、管理を委ねた。

王都への移動

  • グリフォンでの超音速移動:涼は氷魔法で安全に王都までの移動を成功させた。
  • 王都到着:精密な着地後、ロンド公爵邸で休息を取った。

王都での活動

  • アベルの診察:涼はアベルの健康を確認し、執務の再開を断固拒否した。
  • 図書館の未返却本問題:本の回収を決意し、苦悩する場面があった。

冒険者ギルドと再会

  • 馬車交渉:ギルドで馬車の相乗りを手配し、旧仲間たちと再会した。
  • 大海嘯と戦い:涼は魔法で大量の魔物を一掃し、街を救った。

帝国使節との交渉

  • 涼の堂々たる交渉:ロンド公爵としての立場を示し、帝国側の動揺を誘った。
  • 交渉の成功:アベル王の登場により、交渉は王国優位で終結した。

西方使節団派遣の準備

  • 派遣団の議論:規模や団長選定について慎重に議論が行われた。
  • 冒険者たちの参加:涼やヒューが使節団の要として参加を決意した。

使節団の旅路

  • 漆黒の森の通過:涼の氷魔法で危険な渡河を成功させた。
  • 悪魔との戦闘:封廊内で悪魔と戦い、不穏な警告を受け取った。

アイテケ・ボ到着

  • 準備と情報収集:国主ズラーンスー公との交渉に向け、状況把握が進められた。

アイテケ・ボ到着と宿泊地調整

  • 使節団の到着と宿泊分散:王国使節団はアイテケ・ボに到着し、14軒中13軒を占拠し他国使節団を街外れに追いやった。
  • 護衛の配置:『コーヒーメーカー』と『十号室』が護衛を担当し、重要施設は『コーヒーメーカー』が管理した。

世界樹の謎と交渉

  • 国主との謁見:ズラーンスー公との謁見で交渉が難航する兆しが見られた。
  • 世界樹消失の報告:世界樹が消失し調査隊が戻らない事態が発生した。

世界樹調査と魔物の脅威

  • 調査依頼の決定:『十号室』が世界樹の調査を命じられ漆黒の森へ向かった。
  • 魔物との遭遇:漆黒の森で魔物の大群やキャタピラーに遭遇しつつ前進した。
  • 世界樹の異変:世界樹にラフレシアもどきが張り付いていることが判明し、シャドーストーカーと交戦した。

森の怒りと調査結果

  • 森との対話:世界樹の怒りの原因がズラーンスー公による枝の切り取りであると判明した。
  • 調査の完了:情報を持ち帰ることで森の承認を得た。

アイテケ・ボの崩壊

  • キャタピラーの襲撃:キャタピラーが街を破壊し国主館を壊滅させた。
  • 国主の最期:ズラーンスー公が世界樹の枝を奪われ死亡した。

交渉の中断と次の旅路

  • 通商条約の中止:アイテケ・ボの混乱により交渉が打ち切られた。
  • 次の目的地へ:使節団はシュルツ国を次の目的地として出発した。

新たな目的地と危機

  • ヴァンパイアの脅威:ロプノールでヴァンパイアの魔法が発動し、住民が犠牲となった。
  • 怪異の調査:使節団は街の調査を行い、異常事態の報告を受けた。

西方諸国への進行

  • キューシー公国到着:ゴーレム兵団を見学し、その運用や開発の詳細に触れた。
  • ヴァンパイアの陰謀:公太子キリルがヴァンパイア公爵に支配され、ゴーレムの襲撃が計画された。

公宮騒乱と戦いの余波

  • ゴーレム暴走:使節団がゴーレムと交戦し、最終的に制圧に成功した。
  • ヴァンパイア公爵との対峙:涼がレアンドラと交戦し、負傷しつつも戦いを生き延びた。

キューシー公国と政治的動き

  • ゴーレムの改良:涼の助言でゴーレム開発が進む見込みとなった。
  • 新たな計画:公子ルスランがファンデビー法国での研究に派遣されることが決定した。

回廊諸国の緊張

  • シュルツ国の拡張:アーン王がアイテケ・ボを陥落させ、回廊諸国の情勢が変化した。
  • ヴァンパイアの目覚め:チェテア公爵の一派が活動を開始し、西方教会との対立が予測された。

エピローグと展望

  • 白い世界の観察者:ミカエルが各世界の状況を観察し、涼の活躍と中央諸国への影響を予測した。

総括

衝撃的な冒頭と涼の成長
物語はアベルの病(ガン)という衝撃的な事件から始まり、一気に引き込む展開である。
主人公涼は冷静かつ大胆な行動を見せ、医術や魔法を駆使して次々と困難を乗り越える姿が描かれていた。
特に手術シーンでは、涼の緻密な計画と勇気が印象深かった。

西方諸国での新たな展開
第二部では、西方諸国という新たな舞台が設定され、異なる文化や脅威が次々と明らかになった。
ゴーレム兵団やヴァンパイア公爵といったファンタジー要素が物語に深みを与え、飽きさせない工夫がされていた。
涼が異なる立場のキャラクターたちと交流していく様子も魅力的であった。

涼の性格と対人関係
一方で、涼の軽口やアベルをからかう癖が際立つ場面もあり、好感を持つ一方で不快に感じる読者もいただろう。
ただし、彼の性格は作中での和やかな雰囲気を作り出しており、コミカルな要素として機能していと思っている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

プロローグ

ゴールデン・ハインド号初航行と涼の日常

水田管理ゴーレムの導入と成果

ロンド公爵領では涼が水田管理ゴーレムを製造し、稲の栽培を効率化していた。ゴーレムたちは除草や収穫作業を担当し、涼の生活を支える存在となっていた。特に、涼が手を加えた技術は転倒防止機能にも及び、泥濘の中でも安定した作業が可能であった。

涼の錬金術と通信タブレットの発動

涼は日々錬金術の研究に励み、『黒ノート』を読み進めていた。ある日、これまで未使用だった通信タブレットが突然起動し、「正装して登城せよ」との指示を受けた。王都からの急な召喚に、涼は状況を整理し行動を開始した。

師匠デュラハンとの別れ

模擬戦とブーツの贈呈

通信を受けた涼は、剣の師匠である水の妖精王デュラハンに別れを告げるため北の湿地を訪れた。模擬戦で二勝三敗を喫した後、デュラハンからぴったりのサイズのレースアップブーツを贈られた。この贈り物は涼の旅を支える重要な装備となった。

師匠との別れと予感

デュラハンから贈り物を受け取った涼は、長期の留守を察した。ゴーレムたちを年中稼働に設定し、水田の管理が滞らないよう準備を整えた。

グリフォンでの移動と王都への到着

グリフォンの召喚と移動

涼は氷の魔法でグリフォンを召喚し、交渉の末に王都までの移動を依頼した。超音速飛行の際には、涼が氷のロングコーンを生成し、ソニックブームの発生を防止した。この工夫により、地上への被害を抑えつつ迅速な移動を実現した。

王都近郊への着陸と潜入

王都到着後、涼はグリフォンを人目につかない場所に降ろし、自らはウォータージェットを使った精密な着地を成功させた。その後、ロンド公爵邸に戻り、眠りについた。

今後の展開への布石

通信タブレットの目的

王都召喚の理由は明らかではなかったが、涼は新たな指示に従い行動を開始する準備を整えていた。デュラハンの贈り物とグリフォンの協力を得た涼は、次なる展開に備えて体力を回復させた。

アベルの回復と主治医涼の指導

手術翌日の診察

涼は翌朝、アベルの寝室を訪ね、術後の体調を確認した。アベルは数カ月ぶりに体調が良くなり、血色も改善されていた。涼は「絶対安静」と「食事を摂ること」を指示し、主治医のように振る舞った。

王国宰相の負担と涼の断固拒否

涼がアベルに病床期間の執務状況を尋ねると、宰相ハインライン侯爵が全てを担っていると明かされた。アベルが宰相の負担を憂い、涼に執務を頼もうとしたが、涼は即座に断った。涼は名誉職の立場を強調し、役割を引き受ける気は全く無かった。

書類作業への固執と涼の対処

侍従が持ち込んだ書類の山に手を伸ばそうとするアベルを、涼は厳しく制止した。涼は書類を宰相に送るよう指示し、アベルには休養を続けるよう命じた。執務への執着を見せるアベルに対し、涼は主治医としての責務を果たした。

アベルの演奏と王家の芸術教育

アベルのバイオリン演奏

ある日の午後、アベルは涼の前でバイオリンを演奏した。演奏された曲は地球でも有名なパガニーニ作曲の『二十四の奇想曲』第二十四番であった。涼はその技巧と完成度に驚き、熱烈に称賛した。

王族としての芸術修養

アベルは王族として芸術を修めることが義務付けられていたと語った。リチャード王がバイオリンを愛した影響で、王家ではバイオリンが重要視されていた。涼はリチャード王が地球からの転生者である可能性を確信した。

図書館の返却問題と涼の苦悩

借りた本の未返却

涼は図書館司書長から、借りたままの錬金術書について指摘された。返却期限が無いとはいえ、涼は責任を感じ、すぐに本を捜す決意をした。

ルンの家での発見

涼は本がルンの家に置き忘れられていることを思い出し、絶望した。遠方の家に本を取りに行く必要があると気付き、落胆したまま邸内で考え込むのであった。

冒険者ギルドでの馬車交渉

ギルド馬車の貸し出し依頼

涼は冒険者ギルドのグランドマスター、ヒューにギルド馬車の貸し出しを懇願したが、馬車が全て出払っており断られた。ヒューの機転で、涼はルン行きのギルド馬車に相乗りさせてもらえることになった。

再会した仲間たち

馬車にはかつての仲間『十号室』のメンバー、ニルス、エト、アモンが乗っていた。涼は彼らとの再会を喜び、彼らがワイバーン討伐の援軍として派遣されたことを知る。

ルン到着と大海嘯発生

大海嘯の発生と街の危機

涼がルンに到着したその日、ダンジョンで大海嘯が発生した。現地の騎士団と冒険者たちは迎撃態勢を整えたが、出現した魔物が強力なオーガであったため、苦戦を強いられていた。

涼の魔法による迎撃

涼は水属性魔法〈アイシクルランスシャワー〉を使い、数千体のオーガを一掃した。しかし、オーガキング一体が生き残り、さらなる対応が必要となった。

オーガキングとの戦い

ラーの挑戦

ルン冒険者ギルドのギルドマスター、ラーが自らオーガキングと戦うことを決意した。ラーの圧倒的なパワーと剣技による戦いは数時間に及んだ。

勝利と大海嘯の終息

長時間の激闘の末、ラーはオーガキングを打ち倒し、街の危機を救った。涼はその間、冷静に状況を見守りつつ、適切な支援を行った。大海嘯は無事終息し、ルンの街は平穏を取り戻した。

大海嘯後の王都への帰還

ギルド馬車で王都へ

涼は大海嘯での功績が評価され、ルンの冒険者ギルドのギルド馬車を貸し切り、王都に向かった。道中は馬車内で眠り続け、昼過ぎに無事王都へ到着した。

図書館への返却

王都到着後、涼は長期間借りていた『錬金術 その未来と展望』を図書館に返却した。司書長のガスパルニーニは泣きながら感謝し、涼は借りた物を返す大切さを改めて心に刻んだ。

王城での出来事

アベルとの再会

涼は王城を訪れ、病み上がりにも関わらず剣を振るアベルを発見した。涼は一カ月の安静を命じたにも関わらず、わずか十日で動き回るアベルに呆れつつ注意を促した。

宰相からの報告

宰相ハインライン侯爵がアベルに大海嘯の報告を行った。アベルはオーガ五千体の発生に驚愕し、被害ゼロで終わった理由を尋ねた。侯爵から、涼が魔法でオーガたちを一掃したことが伝えられた。

涼への評価と特権要求

アベルの感謝

アベルは涼の働きを評価し感謝を述べたが、涼はそれに応じて「月一のケーキ特権」を要求した。アベルはこれを即座に許可し、涼は満面の笑みで喜んだ。

ハインライン侯爵の困惑

侯爵は、筆頭公爵が国王に特権を要求し、ケーキの話で盛り上がる光景に困惑した。しかし、王国の中枢が平和であることを感じさせる一幕であった。

帝国使節

帝国使節団と王国の交渉

ハインライン侯爵との邂逅

涼は王城図書館で借りた本を携えて歩いていた際、宰相ハインライン侯爵と出会った。侯爵から帝国使節団来訪の背景を問われ、事情を探るべく王城離れを訪ねた。そこではアベル王が涼を迎え入れ、帝国の動向について説明した。涼は帝国の正使がかつて敵対したフィオナ女公爵であることを知り、驚きを隠せなかった。

帝国使節団の目的と謀略

帝国側はアベル王の病状確認と、外交交渉を進めるための使節団派遣を提案していた。フィオナは謎めいた新公爵、ロンド公爵の存在に興味を抱き、涼を探る姿勢を見せた。一方、涼は帝国の意図を見抜きつつも交渉に協力する意志を示した。

交渉の始まり

ロンド公爵としての涼の登場

交渉の場に現れた涼は、ロンド公爵としての立場を堂々と示し、帝国側の不安を煽った。フィオナとオスカーは、戦場で相対した涼の正体に驚愕しつつも冷静を装い、交渉に挑んだ。

帝国の提案と王国の対応

帝国は西方諸国への大規模な使節団派遣を提案した。この提案に王国側は情報不足を懸念しつつも前向きに検討する姿勢を見せた。涼は西方諸国の未知なる要素に興味を抱きつつ、交渉を進めた。

交渉の結末

アベル王の登場

交渉最終日、涼の計らいでアベル王が交渉の場に姿を現した。病気と噂されていた王が若々しい姿で現れたことで、帝国側は完全に動揺した。アベル王は帝国使節団を歓迎しつつ、余裕ある態度で交渉を締めくくった。

王国の勝利

アベル王の登場によって交渉は王国の優位で終結した。帝国側は王国の底力を改めて認識し、涼とアベルの見事な連携が際立った形で幕を閉じた。

西方使節団派遣の議論と決定

アベル王の勝利宣言と議論の開始

交渉を終え王城執務室に戻ったアベル王と涼は、西方諸国への使節団派遣について話し合いを始めた。ハインライン侯爵はこの提案を検討せざるを得ないと語り、涼も西方諸国の危険性について説明を受けた。アベル王が涼に西方の冒険者たちの話をし、涼は西方の環境や歴史に興味を抱いた。

使節団の規模と人選

使節団の規模や団長の選定が問題として浮上した。ハインライン侯爵は西方諸国への道程が険しいことを指摘し、アベル王も帝国側の出方次第で団長を決める必要があると述べた。涼は、西方のゴーレム兵団について興味を示しつつも、団長としての役割には不安を感じていた。

ハンダルー連合の動向

オーブリー卿の決断

ハンダルー諸国連合では執政オーブリー卿が帝国からの提案を受け、西方使節団派遣の責任者を模索していた。彼は隠棲中のロベルト・ピルロ元国王を訪ね、連合の代表として派遣団を率いるよう依頼した。ロベルトは当初拒否する素振りを見せたものの、最終的には引き受ける意志を示した。

ナイトレイ王国での準備

冒険者ギルドでの対話

涼は王都の冒険者ギルドを訪れ、ギルド内での小競り合いを経てグランドマスターのヒューと会談した。そこではアベル王も登場し、涼や十号室の冒険者たちとともに、西方使節団派遣について話し合いが進められた。アベル王は使節団の団長としてヒューを指名し、彼の了承を得た。

涼の参加決定

涼も使節団への参加を強く希望し、アベル王に半ば強引に了承させた。彼は護衛として使節団に加わることになり、西方諸国の未知なるゴーレム兵団への期待を胸に旅立つ準備を整えた。

帝国との交渉の影響

交渉後の余波

帝国の動きと使節団派遣の影響はナイトレイ王国だけでなく、連合や他国にも波及していた。各国が自国の威信を懸けて派遣団を組織する中、ナイトレイ王国の決定は、帝国や連合に対する一歩先を行くものであった。

西方諸国への使節団と帝国の動き

前皇帝ルパートの隠居生活とチェスの楽しみ

退位したルパート六世は帝国北西部ギルスバッハで隠居生活を送っていた。日課の一つであるチェスでは、右腕のハンス・キルヒホフ伯爵と数百戦目の対局を楽しみ、今回も引き分けに持ち込むことに成功した。ルパートは健康を保ちながら、悠々自適な日々を満喫していた。

西方使節団への懐疑と決断

ルパートは西方教会からの招待状をきっかけに派遣される使節団に疑念を抱いていた。三男のコンラート公爵が団長に選ばれたことを知ると、ヘルムート皇帝が策を弄しすぎていると判断し、自らが団長を務めると宣言した。息子である皇帝との議論を経て、帝国はルパート六世が使節団団長を務めることを発表した。

ナイトレイ王国での対応

団長選定と王国の決意

王国ではアベル王が使節団団長にグランドマスターのヒューを指名していたが、帝国のルパート六世や連合のロベルト・ピルロが団長を務めると知り、重圧を感じる状況であった。アベル王はヒューに対し、王国最強の筆頭公爵涼も同行することを伝え、涼が持つ戦力に期待を寄せた。

魔法団の老魔法使いとの議論

魔法団のアーサーとイラリオンが使節団の話題に加わり、ロベルト・ピルロの実力について語った。彼らは過去の戦いでロベルトと対峙した経験から、その強さと知略に警戒心を示していた。涼もまた、この話を聞き、西方への同行を決意した。

冒険者ギルド付属学校の視察

学園見学とジーク神官との出会い

涼はギルドの付属学校を見学し、そこで美しい神官ジークと出会った。ジークは若くしてC級冒険者であり、指揮能力や判断力を備えた優れた人材であったが、貴族絡みの問題でパーティーのリーダーとの軋轢を抱えていた。ヒューは彼を講師として招くことを望んでいたが、ジークはまだその提案を受け入れていなかった。

涼の学園編への期待

涼は学園の雰囲気に興奮し、憧れの学園編を妄想していた。しかし、学園編が実現しないことを知ると落胆したものの、施設や教育の重要性について理解を深めた。見学中にジークの大願について話を聞き、その意志の強さに感銘を受けた。

西方への旅立ちに向けて

準備と不安

王国、帝国、連合それぞれの使節団が異なる目的を持ちながらも、西方諸国へ向かう準備を進めていた。涼は自らの役割を認識しつつも、旅路の困難さと未知なる出会いに期待を膨らませていた。

公爵位に就く男

ジークの葛藤とドタマ伯爵との関係

白水亭での再会とジークの直言

ジークはパーティーの定宿である『白水亭』に戻り、ドタマ伯爵の馬車とすれ違う。部屋に入ると、剣士ハロルドと双剣士ゴワンが迎えた。ジークはドタマ伯爵との関係を断つべきだと進言したが、ハロルドは伯爵を利用する姿勢を崩さなかった。ジークはその態度に危機感を覚えつつも、自身の無力さに悩んでいた。

ハロルドの変化とジークの不安

ハロルドは元々穏やかで慈愛に満ちた性格であったが、ドタマ伯爵の影響により、心に毒が広がっているとジークは感じていた。公爵という地位に相応しい器を持つためには、協力者との関係構築が必須であり、ジークはハロルドに何度も助言をしてきた。しかし、その毒を完全に取り除く術を見つけられず、ジークの悩みは深まるばかりであった。

カフェでの涼のひととき

学園編の余韻とケーキの楽しみ

学園(見学)編を終えた涼は、王城図書館で錬金術の本を借り、『カフェ・ド・ショコラ 王都店』を訪れた。モンブランと季節限定のミルクレープを堪能し、至福の時間を過ごす涼。彼の無邪気な食事風景は、店員やパティシエたちからも密かに人気を集めていた。

騒動とジークの登場

涼がケーキを楽しんでいる最中、店内で若い冒険者三人組が騒ぎを起こした。その中には、ジークの姿があった。彼は騒動を鎮めようと努めていたが、剣士の傲慢な態度や発言が場を混乱させた。涼は、ジークの苦労に同情しつつ、剣士の未熟さに呆れを感じた。

公爵家に関する調査

涼の疑問と宰相への相談

カフェでの騒動から、剣士が「将来公爵位に就く」と発言したことに興味を抱いた涼は、ナイトレイ王国の公爵家について宰相ハインライン侯爵に相談した。ハインライン侯爵は、王国内の公爵家について詳しく説明し、該当者を探る手助けを行った。

シルバーデール公爵家の訪問

相談中にシルバーデール公爵ローソンが訪れ、涼と対面した。ローソンはその堂々とした佇まいと実力で、かつて王国解放戦で大きな活躍をした人物であることが明かされた。彼は涼を一目で恐ろしい人物と評し、筆頭公爵としての器を認めた。

ジークの目的と涼の結論

涼は、シルバーデール公爵家の情報を得たが、ジークが担ごうとしている剣士が該当しないことを確認した。最終的に、ジークの大願を叶えるための道のりの困難さを改めて理解し、その手助けをする決意を新たにした。

ハロルドの謁見と公爵位の要求

謁見の間での一行の姿

涼は王城を歩いている最中、偶然にもジークとその仲間、いわゆる「モンブラン小僧」ことハロルドたちが謁見の間に入る姿を目撃した。謁見の間では、国王アベルが玉座に座り、少数の廷臣が控えていた。涼は廷臣の一人であるヒュー・マクグラスの隣にこっそりと移動し、その場の様子を伺った。

ハロルドの驚きの発言

謁見が始まると、ハロルドはアベルに対し、自分を公爵に任じてほしいと要求した。その唐突な発言に周囲は動揺しなかったものの、涼だけが驚いていた。さらに、ハロルドはアベルを剣で倒せば公爵位を与えるという過去の約束を持ち出し、挑戦を申し出た。

涼の介入と決闘の開始

涼の意見とハロルドへの挑発

ハロルドとアベルの争いを避けるため、涼は自ら謁見の場に介入した。涼は、ハロルドが過去にカフェで起こした騒動を持ち出し、彼の未熟さを公然と指摘した。その挑発に怒り狂ったハロルドは、涼に決闘を申し込み、涼はそれを受け入れた。

決闘の展開

決闘は、涼が魔法を駆使して優位に進めた。まず、ハロルドの仲間である双剣士と神官ジークを分断し、個別に対応した。ハロルドと双剣士は短時間で無力化され、ジークとの直接対決が始まった。ジークは防御魔法や近接戦闘技術を駆使して健闘したが、最終的には涼の巧妙な戦術に敗れた。

決闘の余波とハロルドの将来

ハロルドの敗北と問題点の浮上

決闘の末、涼はハロルドを完全に打ち負かした。これにより、ハロルドの未熟さや貴族としての資質の欠如が改めて浮き彫りになった。涼はアベルに対し、ハロルドが他者に利用されないよう適切な指導が必要であると進言した。

ジークの能力と背景の評価

涼は、ジークの戦闘能力や戦術の高さを認め、その潜在能力に感心していた。また、ヒュー・マクグラスからジークが帝国出身であることや、幼少期から剣術の訓練を受けていた背景が語られた。

アベルの葛藤と今後の課題

ハロルドへの対応を巡る葛藤

アベルはハロルドを公爵として育成する必要性を認識しながらも、彼の未熟さや問題行動に頭を悩ませていた。涼の助言を受け、アベルはハロルドに対する指導方針を再考することを決意した。結論を出せないまま、アベルは深いため息をつき、謁見の場を閉じた。

謎の霊呪と救援の兆し

森での危機とオークの襲撃

ジークたちのパーティーは、危険な森でオークの大群に遭遇した。負傷したハロルドを背負う双剣士ゴワン、退路を切り開く神官ジーク、それぞれが力を尽くしていたが、森を抜けた先に待ち構えていた百体以上のオークに包囲された。退路も策もない中、ジークは杖を武器として戦い続け、ゴワンも奮闘したが、状況は悪化の一途を辿った。

騎士団の救援

限界が近づく中、シルバーデール騎士団が到着し、遠距離攻撃と突撃で魔物を制圧した。指揮官フェイス嬢の指示のもと、騎士団付き神官がハロルドらの治療を行った。しかし、ハロルドの異常状態――心臓付近に浮かぶ青い炎のような現象――には手が出せず、王都中央神殿での治療が提案された。

中央神殿での治療と霊呪の発見

解呪の試み

ハロルドは王都中央神殿に搬送され、大神官ガブリエルやリーヒャ王妃を含む高位神官たちによる〈解呪〉が行われた。しかし、霊呪の正体が不明な上、解呪も失敗した。中央神殿の神官たちは全力で霊呪の手掛かりを探し始めたが、即座の解決には至らなかった。

神殿での動揺と王への報告

ハロルドにかけられた霊呪が中央神殿でも解けなかった事実は、国王アベルに報告された。アベルは亡き兄の忘れ形見であるハロルドに複雑な感情を抱きながらも、その事態に言葉を失い、ただ「分かった」と答えるに留まった。

図書館での手がかり

涼と司書長の会話

その頃、涼は王城図書館を訪れていた。そこで司書長ガスパルニーニから声を掛けられ、ハロルドが二週間前に図書館で読んでいた一冊の本が示される。ハロルドが一部を〈転写〉して持ち帰ったその本が、霊呪の謎を解く鍵となる可能性が浮上した。

魔王の血と破裂の霊呪

司書長の発見

涼がアベルに話を持ちかけようとすると、先客であるラーシャータがいた。涼は司書長ガスパルニーニを紹介し、ハロルドに関する情報提供があることを伝えた。司書長は、ハロルドが二週間前に王城図書館で読んだ『力を求めた者たち ~天使から魔人まで』という本の存在を明かした。ハロルドはその本の一部を〈転写〉して持ち帰っていた。

霊呪の特定と解呪法

本に記載された「破裂の霊呪」がハロルドの状態に一致するとラーシャータは断定した。この霊呪は西方諸国で知られた存在であり、最終的に体が破裂する運命を持つ。解呪方法は「魔王の血を額に垂らすこと」であると示されたが、その現実味に全員が絶句した。

会議での決定と冒険者たち

ハロルドの申し出

五日後、王城で特別会議が開かれた。ハロルドの現状が説明された後、神官ジークが使節団への参加を強く希望した。グランドマスターのヒューは、ハロルドの性格的な問題を指摘しつつも、最終的に彼の参加を認めた。ハロルドの行動が『十号室』の評判を左右することを念押しし、責任感を促した。

涼の役割

さらにヒューは、涼がかつて『十号室』の四人目として行動していたことを明かし、使節団への参加を要請した。驚きつつも、涼は承諾し、ハロルドたちへの助言や監督を任される形となった。

エルフとの交流とデートの予感

セーラとの再会

使節団の準備が進む中、涼は偶然エルフのセーラと再会した。セーラは「親書を届ける」という名目で王都に訪れており、美味しい料理を楽しむため涼を誘った。二人は楽しげに会話しながら王都を歩き回った。

自治庁での防衛強化

その頃、エルフ自治庁では、おババ様が施設の拡張や防衛設備の強化状況を確認していた。自治庁長官カーソンは王都内要塞化を目指して進行中の計画を報告し、おババ様から満足の言葉を得た。

魂の響

角帽と新発明

王立錬金工房への訪問

涼は黒い角帽を被り、王立錬金工房を訪れた。これは錬金術師としての証であり、涼が愛用しているものだった。守衛や職員に案内され、研究者ケネスの元を訪れた涼は、新たな発明について聞く。ケネスは「魂の響」という名の超長距離通信装置を披露し、小型化と機能性を強調した。

青い魔石と発明の詳細

ケネスは青い魔石を用いたイヤリング型通信装置を紹介した。これは使用者の魔力によって再利用可能であり、ロザリアの協力も得て開発されたものであった。涼はこの装置の機能性とデザインに感嘆しながらも、自分が初期の試用者であることを理解し、装着を試みた。

西方諸国への出発準備

準備の最終段階

涼はアベルの執務室で出発前の時間を過ごしていた。出発準備は整っていると語りつつも、「カフェ・ド・ショコラ」でケーキを食べ忘れていたことを思い出し、アベルを呆れさせた。さらに、新たな発明品を試しながら、西方諸国への同行者として自分の重要性を再確認した。

アベルとのやり取り

涼はアベルに「信頼しているなら、魂を西方諸国に連れていける」と謎めいた提案をした。これにはアベルも驚きつつ、涼の魔力と発明品の可能性に期待を寄せていた。

グランドマスター代理の到着

新たな代理人の登場

冒険者ギルドのヒューは、使節団出発中の代理としてフィンレー・フォーサイスが派遣されることを知った。フィンレーは前グランドマスターであり、ヒューの義父でもあった。彼の経験と実績により、ヒューは代理業務に安心感を覚えた。

ショーケンへの期待

フィンレーはサブマスターのショーケンも支援役として選定し、その堅実な仕事ぶりを評価した。一方でヒューは、ショーケンが過酷な業務に耐えられるか密かに心配し、彼の無事を祈った。

出発

王国使節団の出発

歴史的な使節団の出発式

王国は西方諸国への使節団派遣のため、大規模な出発式を行った。今回の使節団は文官百人と護衛二百人から成り、護衛全員が冒険者で構成されている点が特徴的であった。他国の使節団と比べ、王国が冒険者国家であることを強調する形となった。護衛には主にC級冒険者が選ばれ、一部にはD級も含まれる形で調整された。

移動中の会話と構成

『十号室』と『十一号室』は使節団の最後尾に配置され、先頭にはB級冒険者のパーティー『コーヒーメーカー』が配されていた。移動中、涼は『十号室』のメンバーと軽妙なやり取りを交わしつつ、『十一号室』のハロルドが持つ複雑な感情を察した。一方で、神官ジークと『十号室』のエトの間では、涼の人物像について語られる場面もあった。

魂の響と意識の共有

魔法道具による会話

移動中、涼は自らの耳に装着した魔法道具『魂の響』を用いてアベルと会話を試みた。この道具は意識を共有し、遠隔で会話が可能となる発明品であった。アベルはこの新しい体験を楽しみつつも、自らが西方諸国へ行けるような感覚を得たことを興奮気味に語った。

ケーキ特権の保留

『魂の響』を通じた会話の中で、涼はアベルに対する「ケーキ特権」を維持しようと試みたが、最終的に保留されることとなった。涼は悔しさをにじませつつも、道具の性能に満足している様子であった。

帝国との緊張感

帝国軍の護衛

使節団が帝国領内に入ると、帝国軍による厳重な護衛が行われた。これに対し、冒険者たちは緊張感を抱きつつも、涼の冗談が場を和ませた。ジークは帝国出身という背景もあり、不安を抱えつつ移動を続けていた。

模擬戦と驚愕の剣技

アモンの挑戦

宿泊地に到着後、アモンが涼に模擬戦を申し込んだ。涼は当初戸惑いながらも応じ、氷の剣を用いて対戦した。アモンの連続突きは非常に速く、涼もその技量に驚いたが、隙を突くことで応戦した。

戦闘の終結

模擬戦は1合のみで終了したが、観戦していた冒険者たちはその高度な戦いぶりに感嘆した。夕食の準備が告げられたことで、戦闘は和やかな雰囲気の中で締めくくられた。

封廊の異変と悪魔との対峙

封廊への引き込み

王国使節団がブランシュハの街に到着した時、日食のような現象が起きた。涼は不穏な気配を感じる中、突如として世界が反転し、悪魔レオノールが現れた。レオノールは涼を挑発し、「西方諸国の情報を教える代わりに戦おう」と提案した。涼は渋々ながらもこの戦いを受け入れ、再び悪魔との激闘が始まった。

激しい攻防戦

レオノールは強力な魔法〈石筍炎装〉や〈風塵連環〉を駆使して涼を追い詰めた。一方、涼も〈積層アイスウォール〉や〈アイシクルランス〉で応戦し、見えない攻撃をも認識する能力を発揮した。両者の攻防は激しさを増し、レオノールの再生能力と剣技が涼を苦しめたが、涼もまた、戦いの中で隙を突いて反撃を試みた。

分身による膠着状態

戦闘の終盤、レオノールは七体の分身を作り出して涼を圧倒しようとしたが、涼も同数の分身を生成して対抗した。この均衡により戦闘は膠着状態となり、時間切れにより封廊が解ける直前、レオノールは「生贄」「天使」「ヴァンパイア」という警告の言葉を残して姿を消した。

悪魔の警告と仲間たちとの議論

西方諸国に関する不穏な情報

封廊から解放された後、涼はアベルに報告を行い、悪魔レオノールから得た「生贄」「天使」「ヴァンパイア」という単語を伝えた。アベルはこれを神殿や伝承官に相談するよう提案し、涼も仲間たちと情報を共有した。

仲間たちとの考察

涼が『十号室』と『十一号室』のメンバーに警告の内容を伝えると、エトとジークは神官としての視点から解釈を試みた。特に「天使」と「ヴァンパイア」については過去の伝承や事件を引き合いに出しながら議論が行われたが、具体的な答えは得られなかった。涼は「西方諸国がよりファンタジーな領域である可能性」に興奮を見せたが、他の仲間たちはその発言に困惑していた。

使節団の旅路と中央諸国の交渉

帝国の威圧的な護衛

使節団は帝国領内に入ると、帝国軍による厳重な護衛を受けた。この護衛は、涼たちに「捕虜のようだ」と感じさせるほどであったが、危険な状況ではなかった。ジークは帝国に対する個人的な複雑な感情を抱えながら旅を続けた。

集合地点での各国の駆け引き

ギルスバッハに到着した使節団は、大規模な宿泊施設に案内された。この施設は今回の使節団のために新たに建てられたものであり、帝国の計画性と力を示していた。一方で、各国の使節団長が集まる場では、帝国先帝ルパートと連合先王ロベルト・ピルロが王国代表のヒューに対し、揶揄とも取れる言葉を投げかけた。ヒューはこれに冷静に対処し、交渉の場を進めていった。

アイテケ・ボへの道と魔物との遭遇

宿泊施設での騒動と涼の行動

王国使節団は、宿泊施設の食堂で夕食を楽しんでいたが、涼が姿を消していたことに気付いた神官ジークが周囲を探し始めた。程なくして涼は現れ、近くのクレープ屋で購入したクレープを仲間たちに配った。全員がクレープを受け取る中、涼とニルスは軽口を交わしつつ和やかな雰囲気を楽しんでいた。その後、エトが回廊諸国最初の国「アイテケ・ボ」の情報を共有し、涼は森やトレントに関する考察を述べ、仲間たちは笑いながら話題を深めた。

使節団の出発と漆黒の森の通過

使節団は、アイテケ・ボへ向かう街道を進む中、漆黒の森を通過した。この森では、トレントの群れが街道を横切る場面も見られたが、魔物が穏やかな性格であることから大きな危険にはならなかった。涼はトレントの生態に興味を示しつつ、冗談を交えて仲間たちと会話を続けた。

渡河と魔物の脅威

街道の途切れと氷の橋の構築

使節団が進む街道は、増水した川により途切れていた。ヒュー団長の指示で『十号室』と『十一号室』が渡河地点を探しに向かったが、涼は氷の橋を作ることを提案し、巨大な氷の橋を構築して使節団を無事に川の対岸へ渡らせた。橋を渡り終えた後、涼はヒューの指示で橋を解体し、他国の使節団を足止めする形となった。

麻痺毒を操る魔物との遭遇

渡河後、涼は迂回路探索中の仲間たちが麻痺毒に侵されていることを察知し、現場へ急行した。現場にはラフレシアに似た植物型の魔物が潜んでおり、涼は魔法〈氷棺〉でこれらを封じた。仲間たちは涼が用意した解毒ポーションで回復し、再び移動を再開したが、漆黒の森の危険性を改めて認識する結果となった。

アイテケ・ボ到着前の準備

世界樹の探索と冒険者たちの期待

移動中、使節団は「世界樹」が見えるはずの場所を通過していたが、その姿を確認できなかった。涼を含む冒険者たちは世界樹を探したものの、森の木々に遮られたのか、姿を捉えることはできなかった。この状況に、涼は世界樹に関する伝承や神話を思い起こし、考察を巡らせていた。

アイテケ・ボへの備えと交渉の課題

使節団の先頭では、ヒューが首席交渉官イグニスから、アイテケ・ボの国主ズラーンスー公が交渉において難敵であると報告を受けた。ヒューは王国に有利な条約を締結すべく奮闘する決意を固めたが、他国との交渉が激化する可能性も示唆された。

アイテケ・ボ

アイテケ・ボへの到着と宿泊地の調整

王国使節団のアイテケ・ボ到着

王国使節団は、特別な検査を受けることなくアイテケ・ボに到着した。この都市国家は、高い城壁に囲まれた一つの街から構成され、川が街を東西に分けていた。西岸には国主館を中心とした貴族街が、東岸には市街地が広がっていた。宿泊施設はすべて東岸地区にあり、最大規模の宿でも四十人しか収容できなかったため、王国使節団は十三カ所に分散して宿泊することとなった。

宿泊地を巡る駆け引き

王国使節団の団長ヒュー・マクグラスは、王国の宿泊施設を他国に譲らない方針を取り、十四軒中十三軒を占拠した。この措置により、帝国や連合など他国の使節団は、街外れでの宿泊を余儀なくされる状況となった。護衛任務は『コーヒーメーカー』と『十号室』が分担し、特に重要な施設はデロング率いる『コーヒーメーカー』が担当することとなった。

交渉と世界樹の謎

国主との謁見

アイテケ・ボ国主ズラーンスー公との謁見で、王国使節団は開口一番に要求を突き付けられた。首席交渉官イグニスは冷静に応じ、交渉の具体的な内容は翌日以降に明らかにすると述べ、謁見を無事に終了させた。しかし、国主の高圧的な態度は交渉の難航を予感させた。

世界樹消失の報告

神官エトとジークから、世界樹が一夜にして姿を消したとの報告が上がった。調査に向かった冒険者や兵士が戻らないことも判明し、王国使節団内ではこの事態の背後に重大な危険が潜んでいると認識された。涼は深刻な表情を見せながらも、仲間たちからはいつもの軽口を交わされていた。

世界樹調査への派遣

調査依頼の決定

ズラーンスー公は、交渉再開の条件として王国冒険者による世界樹の調査を要求した。団長ヒューは困惑しながらも、涼を含む『十号室』にこの任務を託すことを決定した。翌朝、四人は調査に向けて漆黒の森へと出発した。

森での異変と魔物の襲来

漆黒の森では、通常では考えられない魔物の大群が涌き出していた。涼は〈アイスウォール〉を用いて仲間を守りつつ、群れを回避しながら前進した。途中でキャタピラーと呼ばれる巨大なイモムシの群れが現れ、その通過によって木々がなぎ倒され道が形成された。

世界樹での新たな脅威

世界樹の異変とシャドーストーカー

調査を進める中、涼は世界樹が見えない原因が、無数のラフレシアもどきが表面に張り付いていることにあると発見した。その直後、シャドーストーカーと呼ばれる人型魔物が現れ、『十号室』は交戦を余儀なくされた。激戦の末、彼らはこれを撃退した。

森の声との対話

戦闘後、漆黒の森そのものと思われる存在から問いかけを受けた。神官エトが代表して対話し、森が怒りを抱えている原因が、三カ月前にズラーンスー公が世界樹の枝を切り取らせたことにあると判明した。エトは調査の目的を説明し、報告内容を持ち帰ることで森の承認を得た。

結論と帰還

森からの撤退

世界樹調査の目的を果たした『十号室』は、漆黒の森を抜けてアイテケ・ボへ戻る準備を整えた。今回の調査で得られた情報は、交渉再開の鍵となることが期待されている。

キャタピラーの帰還と会話

キャタピラーの移動を目撃

帰り道、涼たちはキャタピラーの大群がアイテケ・ボ方面から世界樹に向かう様子を目撃した。巨体で木々を押し倒しながら進む光景は、暴力的でありながら整然とした行進であった。涼はその様子をそう表現したが、ニルスから冗談交じりの指摘を受け、二人の間で軽い言い争いが展開された。一方で、エトとアモンはキャタピラーが目的を達成したように見える、と冷静に話し合った。

アイテケ・ボの崩壊

城壁の崩壊と国主館の破壊

午後二時、森を抜けた四人が目にしたのは、崩壊したアイテケ・ボの光景であった。城壁の西側半分が完全に破壊され、西岸地区は荒廃していた。中でも国主館は跡形もなく消失していた。ヒュー団長と無事合流した四人は、使節団全員が安全であることを確認し、安堵した。

襲撃の原因と交渉の中断

キャタピラーによる襲撃とその目的

ヒュー団長からの報告によれば、キャタピラーや他の魔物たちが西岸地区を蹂躙し、最終的に国主館にあった世界樹の枝を持ち去ったという。この襲撃によりズラーンスー公とその側近が巻き込まれ、死亡したとされた。

交渉の打ち切り

アイテケ・ボ側の混乱により、通商条約の締結は中止となった。イグニス首席交渉官は王国使節団に謝罪し、今後新政府が発足した際に改めて条約交渉を行う意向を示した。この話を聞いた涼は、条約交渉が再開される場合の迂回路や手段について空想を膨らませていた。

次の目的地シュルツ国へ

新たな旅路の始まり

その後、帝国、連合、小国の使節団がアイテケ・ボに到着し、使節団一行は次の目的地であるシュルツ国へ向けて五日後に出発した。アイテケ・ボでの事件を乗り越えた涼たちは、新たな旅路に向けて準備を整えていた。

ズラーンスー公の最期

アイテケ・ボの崩壊とズラーンスー公の最期

城壁崩壊と住民の混乱

アイテケ・ボの巨大な城壁が崩れる轟音が響き渡った。住民たちはその光景に恐怖し、逃げ出す者、呆然と立ち尽くす者、叫ぶ者が入り混じっていた。しかし、東岸の住民たちは幸運であり、命を奪われることはなかった。崩壊は西岸に集中し、魔物たちは一直線に国主館へと突き進んでいった。

魔物の襲撃とズラーンスー公の絶望

国主館ではズラーンスー公が突如発生した事態に恐慌をきたしていた。護衛隊長グジャも魔物の侵入に対処できず、次々と押し寄せる魔物に命を奪われた。魔物たちの狙いは、ズラーンスー公が手に持つ世界樹の枝で作られた槍であった。ズラーンスー公は全ての原因が自身の命令にあることに気づいたが、時すでに遅く、槍を奪われ命を落とした。その瞬間、魔物たちは攻撃性を失い、撤退を始めた。

アベルへの直言と涼の考察

王の責務と部下の支え

『魂の響』を通じて、涼はアベルにズラーンスー公の最期を伝えた。彼は、王が孤立することの危険性を説き、部下や民の支持があってこそ王が成り立つと強調した。アベルも涼の意見に同意し、立場の重みに支えが必要であることを改めて認識していた。

孤独な立場への提案

涼はアベルに対し、ハロルドのような孤独な立場の人物に友人を与える重要性を提案した。具体的にはジークを侯爵に叙するという大胆な案を述べたが、現実的ではないとアベルに否定された。それでも涼は、ハロルドに対等な友人を持たせるべきだと強調し、将来的な計画を期待した。

涼とアベルの軽口

雑談と友情の形

最後に、涼はアベルに対して軽い口調で相談の重要性を述べ、ケーキで報酬を求めるという冗談を交えた。アベルもそれに応じ、二人の間に信頼と友情があることを示していた。涼は、雑談を通してアベルを支えることが自分の役割だと理解しており、引き続き友人としてアベルを助ける決意を新たにしていた。

シュルツ国

シュルツ国の謁見と突如の襲撃

騎馬民族の団結とアーン王の決意

騎馬民族の代表たちは回廊諸国の北で会合を開き、アーン王を王に選出した。シュルツ国の「子供狩り」による被害を受け、百日後に王城へ突入する計画を立てた。アーン王は、民族全体の存続をかけ、扉が開く機会を逃さないと誓った。妹ソイも計画の一翼を担う重要な役割を任され、兄への忠誠を示した。

シュルツ国での異変

ナイトレイ王国、帝国、連合の使節団はシュルツ国へ到着した。クレープ屋が各地で同じ味を提供していることに涼は驚き、街の経済や騎馬民族との不穏な関係に疑問を抱いた。一方で、中央諸国と西方教会の教義に共通点があることを確認し、天使や地獄の概念について議論が交わされた。

謁見の間の炎と戦い

謁見の開始と突如の炎

使節団がシュルツ国国王ゴンの前に集う中、突如謁見の間の壁が開き、魔法〈ゲヘナ〉が発動した。謁見の間は炎に包まれ、緊急防御のため、各国代表が〈障壁〉を展開した。ヒューは、謎の少女が炎を操っていることに気づき、対処に向かう決断をした。

赤橙色の剣士との対峙

ヒューは少女に向かう途中、赤橙色の髪の剣士に阻まれた。剣戟を交わす中、相手の信念と強さを感じ取り、一時的に膠着状態となった。その間に少女の魔法が謁見の間をさらに荒廃させ、多くの者が命の危機に晒された。

先帝ルパートの突撃

先帝ルパートは防御を突破し、直接少女に迫った。その背後では、護衛隊長グロウンや他の使節団が次々と妨害に挑んだが、赤橙色の剣士や片目の剣士によって計画は阻まれていた。混乱の中、ルパートが放つ一撃が、戦局を変える鍵となろうとしていた。

シュルツ国の崩壊と新王の誕生

騎馬の民による総攻撃

シュルツ国王城周辺では、数万の騎馬の民が襲撃を開始した。潜伏していた部族が城門を開け、騎士団詰め所や政府施設を攻撃した。騎馬の民は民間人には目を向けず、目的を政府施設に限定した戦術を取っていた。

各使節団の防衛戦

帝国、連合、王国の使節団はそれぞれ異なる防衛戦を展開した。帝国は緻密な戦線を維持し、連合は割り切った防衛で対応した。一方、王国使節団は涼の〈アイスウォール〉による堅固な防御で、無傷の状態を保っていた。ニルスを中心とする王国護衛冒険者たちは、王城内の救出作戦に向かった。

王城内の攻防と因縁の始まり

王城内では、謁見の間が襲撃を受け、中央諸国の代表たちは窮地に立たされていた。『十号室』と『十一号室』のメンバーが突入し、ヒュー・マクグラスやイグニスを含む使節団首脳陣を救出することに成功した。一方、アーン王とその部下ジュッダは撤収を決断。アーン王の妹ソイが負傷したことで、先帝ルパートとの間に深い因縁が生まれた。

騎馬の民の勝利とシュルツ国の再編

騎馬の民は戦闘後に撤収し、王城とシュルツ国政府は壊滅した。国王と側近の多くが死亡したことで、中央諸国使節団は交渉を断念し、シュルツ国を去った。一週間後、アーン王が新たなシュルツ国王として即位を宣言した。この出来事は、中央諸国と回廊諸国の間に新たな因縁を生む契機となった。

都市国家ボードレン

地獄の使節団と謎の黒神官

地獄の使節団という異名

中央諸国の使節団は、訪れた国で政府が崩壊するという現象から「地獄の使節団」と呼ばれていた。ニルスはその呼び名を受けつつも、状況による偶然であると冷静に返答していた。一方、涼は国王アベルに、戦線拡大を避けるべきという助言を送った。シュルツ国での出来事や、騎馬の民が中央諸国の敵対者となった背景を語り、涼は不適切な方法が敵を増やす結果を招くと警鐘を鳴らした。

滅びた都市国家ボードレン

次に向かうボードレン国が滅亡しているとの報告が帝国使節団から届いた。ヒュー・マクグラスは、王国使節団に対し城壁内に入らず通過するよう指示を出した。しかし、前方を進んでいた小国の使節団が行方不明であることが判明し、夜営の中で緊張が高まった。そんな中、一人の男が城壁から逃げ帰り、小国使節団が霊に襲われていると訴えた。

救援作戦と異常な戦場

ニルス率いる『十号室』と『十一号室』のメンバーが小国使節団救出に向かった。街の中心でレイスに襲われていた使節団を発見し、神官エトの〈ターンアンデッド〉で浄化を試みたが、レイスが次々と再生する異常事態が発生した。混乱の中、小国使節団の生き残りであると思われた男が突然巨大な魔法陣を発動し、六人は転移させられた。

黒神官の正体と謎の提案

転移先で現れた黒い神官服の男は禍々しい雰囲気を纏い、自身が「魔王」ではないと語った。さらに、かつて聖なるものであったが堕落した存在であることを示唆し、中央諸国では忘れられた「堕天」の概念を口にするエトに興味を示した。黒神官は、彼らを殺す代わりに西方諸国への渡航を許可し、その行動の結果を見届けると宣言した。

元の場所への帰還と再会

六人は元のボードレンの街に戻され、王国使節団の仲間たちと再会を果たした。涼が涙ぐむような表情を見せる中、彼らは異常な出来事の全貌に思いを巡らせた。黒神官が残した言葉と行動が、新たな不穏な展開を予感させるものであった。

六人の救出と黒神官の謎

突然の消失と再会

ボードレンで六人が忽然と消えた報告を受け、涼はヒューと共に救援に向かった。彼らの消失地点で捜索を始めた矢先、六人は突如現れ無事が確認された。涼の安堵の言葉に六人は照れながら応えたが、小国使節団の全滅が報告され、涼やヒューたちの表情は曇った。

魔人を超える存在の出現

六人からの報告を受け、ヒューは自身の判断を悔やんだ。しかし、ニルスは黒神官服の男を「魔人を超える存在」と評し、誰が同行しても勝ち目はなかったと述べた。『十号室』の三人は以前の魔人との遭遇を思い出し、『十一号室』のハロルドは、自身が魔人の呪いを受けていることから複雑な表情を浮かべた。

コーヒーパーティーと堕天の概念

救出成功を祝うため、涼は氷製の道具を用いてコーヒーパーティーを準備した。エトは堕天という概念について詳しく知りたいと尋ね、涼は天使が神を離れて堕落する可能性を説明した。神官エトとジークはその考えに驚愕しつつも、黒神官服の異様さを再認識した。

西方諸国への不安

涼は黒神官服が堕天という言葉に強い反応を示した点や、西方諸国への誘導を試みたことを指摘し、「西方に堕天した存在がいる可能性」を示唆した。エトとジークは驚きつつも同意を示したが、涼は心中で悪魔との関わりを懸念した。この場ではその単語を出すことを避け、胸の内に留めた。

氷の鎖による安全策

六人の消失を再び防ぐため、涼は全員の腰を氷の鎖で繋げるという策を実施した。しかし、ニルスはその方法が逆に危険を招く可能性を指摘し、涼の提案を撤回させた。それでも涼は、使節団全体に同様の対策を施すことを検討し始めた。

スフォー王国への進行

使節団は回廊諸国最後の国『スフォー王国』を目指して進軍を続けた。涼たちは黒神官服との再会や未知の敵との遭遇を想定しつつ、緊張感を保ちながら道を進んでいった。

スフォー王国

スフォー王国への到達と三巨頭会談

危険地帯を越えた使節団

涼は冗談交じりに「壊滅的な旅路」を語ったが、実際にはランシ峡谷やフンスン山脈という危険地帯を無事に越えた。水属性魔法の助力もあり、大きな被害を受けることなく『スフォー王国』に到達した一行は、その城壁を目の当たりにし歓喜した。

歓迎される使節団

スフォー王国は、帝国・連合・王国の使節団を揃って城内に迎え入れた。これまでの国々と違い、王国民の歓迎を受けた一行は驚きを隠せなかった。謁見の間では、スフォー王国国王ビュラード九世が「天使のお告げ」に基づき使節団を歓待したと語り、さらに驚きをもたらした。

涼と二人の元首の邂逅

夜、涼は外で『魂の響』を通じてアベルと会話し、ハーゲン・ベンダ男爵が帝国使節団に加わっている可能性を知った。その後、涼のコーヒーの香りに誘われて現れたのは、連合使節団団長・先王ロベルト・ピルロであった。彼はシュルツ国での助力に対する礼を述べ、涼を連合に誘うが即座に断られた。

さらに、帝国使節団団長・先帝ルパートも現れ、同様の礼とともに帝国領の半分を与える誘いをしたが、これもまた拒否された。二人の元首は涼の絶対的な忠誠心と能力を称賛し、笑い合いながらその場を後にした。

帝国の陰謀と使節団の目的

翌日、帝国使節団内では、先帝ルパートとその片腕ハンス・キルヒホフ伯爵がハーゲン・ベンダ男爵の参加に関する会話を交わした。ハーゲンは時空魔法を扱う男爵であり、帝国軍の補給を支える要であるが、現皇帝の命令で使節団に同行していた。その背景には、使節団の目的に絡む帝国の思惑が隠されている可能性が示唆された。

三巨頭の影響力

三巨頭が揃ったこの使節団には、それぞれが異なる思惑を抱えていた。先帝ルパートと先王ロベルト・ピルロの智謀と洞察力は、涼に深い印象を与えた。彼は二人を目標として、さらなる成長を心に誓い、使節団は次の目的地へと進むのであった。

ロプノールの街への到達

スフォー王国からの出発と道中の会話

使節団はスフォー王国を出発し、西方諸国への最初の目的地であるキューシー公国ロプノールを目指して進んでいた。道中、涼は『魂の響』を通じてアベル国王と会話し、ハーゲン・ベンダ男爵が使節団内にいることを確認した。錬金術の可能性について軽妙なやり取りを交わした後、国王との連絡を終えた。

昼食と使節団の安堵

使節団は道中で昼食を取り、スフォー王国からの補給により豪華なシチューを楽しんだ。団長ヒュー・マクグラスは、充実した食事が使節団員の士気向上につながることを実感していた。交渉官イグニスとの会話では、西方諸国の中心であるファンデビー法国での交渉が重要であることが再確認された。

キューシー公国への期待と不安

イグニスは西方諸国の中でも特に影響力を持つファンデビー法国への期待と緊張を語った。言語体系がほぼ同じであることが交渉の負担を軽減する一方、未知の文化や状況への対応が求められると述べた。ヒューも冒険者として、未知の土地を見る期待感を共有していた。

ロプノールの街の異変

二時間後、使節団は丘を越え、キューシー公国ロプノールの街を視界に捉えた。しかし、その街は炎に包まれ燃え盛っていた。この予想外の事態に、使節団は新たな緊張感を抱えながら状況の確認に向かうこととなった。

キューシー公国

ヴァンパイアの目覚めと使節団の危機

トワイライトランドの真祖とチェテア公爵の動向

トワイライトランドの真祖は、ヴァンパイアの目覚めに関する報告を受けた。西方諸国のキューシー公国で眠っていたチェテア公爵一派が活動を再開したとのことであった。この事実は、西方教会の活発な動きが原因である可能性が高いとされた。真祖は中央諸国の使節団への影響を懸念し、特に涼の存在を考慮してナイトレイ王国のアベル国王に情報を伝えることを決意した。

真祖とアベルの私的会談

真祖はアルバ公爵を伴い、ナイトレイ王国を訪問し、アベル国王と会談を行った。チェテア公爵はヴァンパイアの中でも特に強大な公爵であり、伯爵以下のヴァンパイアを自在に操る能力を持つと説明された。また、この目覚めがただの偶然ではなく、西方教会の動きや未知の要因が関わっている可能性が示唆された。使節団がヴァンパイアに襲われる可能性も高まる中、真祖はアベルに警戒を呼び掛けた。

中央諸国と西方教会の行方

真祖は、西方教会の活動が単に西方諸国だけの問題に留まらない可能性を示し、中央諸国にも波及する可能性を懸念した。特に、中央諸国使節団が西方教会の力を強化する形で利用されるならば、ヴァンパイアがそれを妨害する可能性が高いと考えられた。この警告を受け、アベルとハインライン侯爵は状況の把握と対策を進めることを確認した。

涼との通信と使節団への思い

アベルは涼に『魂の響』を通じて連絡を取り、ヴァンパイアの目覚めについて伝えた。涼は驚きながらも、西方諸国の状況が予想以上に危険であることを受け入れ、慎重な対応を約束した。二人の軽妙なやり取りの中にも、互いを案じる友情が垣間見えた。

最後の備えと決意

真祖との会談を終えたアベルとハインライン侯爵は、ナイトレイ王国を取り巻く複雑な状況を再確認し、周辺国との関係維持と国内の安定に向けてさらなる努力が必要であると認識した。平和を守るための準備を整えつつ、使節団の無事を祈りながら、それぞれの課題に立ち向かう決意を新たにした。

キューシー公国での危機の兆し

北部地域とノルヴィヤ男爵家の実態

キューシー公国北部地域は、極寒と貧困の地であり、中央からの監視も緩やかであった。そこに四百年以上続くノルヴィヤ男爵家が存在したが、領主は体が弱く、民と直接接することはなかった。実際の統治は老執事が担い、民からの信頼を得ていたが、その館の地下には百人を超えるヴァンパイアが眠っていた。

チェテア公爵の目覚め

チェテア公爵レアンドラとその一派が目覚め、彼らはマーローマー教皇庁と不明な存在が繋がったことを知った。これは四千年前にも一度だけ記録された現象であり、当時の西方教会の開祖ニューに関係していると推測された。チェテアは人とヴァンパイア、悪魔が交えた三つ巴の戦いを懐かしみつつ、今回の出来事を大きな混乱の始まりと捉えた。

キューシー公国への攻撃計画

チェテア公爵一派は、中央諸国使節団を阻止するため、彼らが通過するキューシー公国の壊滅を決定した。ルーベン侯爵は〈ブラッディ・ボルケーノ〉を使い、公国内の血を吸い上げることで力を得ることを提案したが、ノルヴィヤ男爵オゼロは自らの領地を標的から外すよう懇願した。最終的に標的はロプノールの街に変更され、攻撃計画が進められることとなった。

ロプノールの壊滅

二週間後、中央諸国使節団がキューシー公国に到達した時、最初に目にしたのはロプノールの街が赤い光で染まる異様な光景であった。エトとジークはこれをヴァンパイアの大魔法〈ブラッディ・ボルケーノ〉と推測し、街の住民が血を吸い上げられている可能性を示唆した。涼は事態の深刻さを認識し、アベルからの情報を仲間と団長ヒューに伝えた。

使節団の決意

涼からの報告を受けたヒューは、使節団の行く先に待ち受ける困難を覚悟し、慎重な行動を決意した。使節団は、ヴァンパイアの脅威を前にしつつも、キューシー公国の混乱の中で前進せざるを得ない状況に立たされていた。

使節団の直面する街の怪異

赤い光の街と指揮者たちの議論

帝国、連合、王国の使節団が赤い光に覆われた街を目撃し、各団長が集結した。帝国の先帝ルパートが王国のヒュー・マクグラスに意見を求め、ヒューは本隊を待機させつつ、騎馬と魔法の素養を持つ偵察隊の派遣を提案した。これにより、偵察任務は帝国と連合が担うこととなり、ルパートと連合先王ロベルト・ピルロはヒューの交渉術を称賛した。

偵察隊の出発と緊張感

街へ向かった偵察隊は、丘に留まる使節団本隊を背後に出発した。街に近づくにつれ、住民が避難した様子がないことに気付き、門が開いているにもかかわらず外に誰もいない異様な状況を確認した。彼らは異常を感じつつも街に突入した。

偵察結果と空虚な街

四時間後、偵察隊は報告を持ち帰った。街の建物は燃え尽き、死体すら見当たらなかった。偵察結果を受け、ルパートとロベルト・ピルロは街を放棄し、丘で待機する方針を決定した。キューシー公国の他部隊との接触を想定し、旗を掲げて存在を示すことが決定された。

涼の尾行とヒューへの提案

涼はヒューを尾行し、ルパートやロベルト・ピルロに気付かれるも、意に介さず行動を続けた。彼はヒューに「自らの存在を示すべき」と提案するも、ヒューは二人の指示が妥当であることを理由に発言を控えた。

街の解明への期待

怪異の調査に訪れたキューシー公国の駐留部隊との接触が実現し、使節団はようやく公都ディーアールへの道を進むことができた。公都到着までの十日間、街の異様な現象と失踪した住民の謎が使節団の緊張を高めた。

キューシー公国のゴーレム見学と涼の交流

キューシー公国とゴーレム兵団の概要

キューシー公国の都ディーアールは、その規模の大きさで使節団のメンバーを驚かせた。特にゴーレム兵団の存在が話題に上り、西方諸国でも屈指の戦力とされていた。涼はその情報に大きな興味を示し、整列したゴーレムを見て歓喜の表情を浮かべたが、周囲に制止されつつ見学を続けた。

涼とアベルの遠隔対話

公宮内で涼がゴーレムへの熱意を燃やしていると、中央諸国にいるアベルが『魂の響』を通じて涼の暴走を未然に防いだ。アベルは「教皇のゴーレム兵団を見るためにもトラブルを起こすな」と忠告し、涼は観察の機会を確保するために正式な手続きを取ることを決めた。

ゴーレム兵団見学の開始

ヒューを含む各国使節団の代表者六名が、キューシー公国の第二公子ルスランの案内でゴーレム兵団の整備室を訪れた。そこには圧倒的な存在感を放つ三メートルのゴーレムが並んでおり、涼は感動のあまり頬ずりまでしようとするほどの熱意を見せた。ルスラン公子は、ゴーレム開発責任者としての誇りを持ちながらも、師匠を失った孤独を語った。

ゴーレム開発と運用の分担

涼は、ゴーレムの魔法式を見たいと希望したが、それは「隠蔽」と「干渉阻害」の仕組みにより不可能とされた。ルスランは、ゴーレムの運用権限がキューシー公とその家族に限定されていることを説明し、涼はその合理性を理解した。

涼とルスランの友情

ルスランと涼は錬金術の話題で意気投合し、互いに相談相手となることを誓った。涼はルスランの悩みに共感し、自身の師匠ケネスとの関係を例に励ました。

涼の提案と各国の思惑

涼はゴーレムとの模擬戦を提案したが即座に却下された。その後、帝国や連合のゴーレム開発について各国代表者たちの間で意見が交わされ、ゴーレム製造が持つ戦略的な意味が再確認された。涼は帝国がケネスを攫う可能性を冗談交じりにけん制し、先帝ルパートと静かな応酬を繰り広げた。

ゴーレム見学会の終了と新たな交流

見学会は無事に終了し、涼はルスランとのさらなる錬金術談義を楽しむことになった。二人は夜遅くまで語り合い、それぞれにとって充実した時間を過ごした。

キューシー公国における錬金術施設の見学と雷帝の実験

錬金術開発施設への招待

涼はルスラン公子から特別な金プレートを受け取り、公宮内の錬金術開発施設を見学することとなった。付き添いとして選ばれた剣士ニルスは、興味がないと言いつつも同行することになった。涼は自分の研究への熱意を語り、ルスラン公子の案内で施設内を進んだ。

政務会議でのキューシー公の懸念

同時刻、公宮の政務会議室ではキューシー公ユーリー十世が、使節団のもてなしや公太子キリルの体調不良、さらにはロプノールの「赤い滝」事件に関する報告を受けていた。ヴァンパイアの脅威が浮上し、公国軍の派遣を決定する中、ゴーレム兵団の重要性が改めて確認された。

ルスラン公子の開発室での発見

涼とニルスは、施設内の研究室を通り抜けた後、ルスラン専用の開発室に案内された。そこで出迎えたのは、全高1.5メートルのゴーレム「雷帝」であった。涼はそのスリムな体型や設計に驚き、戦闘用ではなく生活支援にも適した未来的なビジョンに感銘を受けた。

雷帝の起動と剣術訓練

ルスラン公子の指示で雷帝が起動し、音声操作やリモートコントロールのデモンストレーションが行われた。さらに、雷帝は騎士団から剣術を学んでいることが判明した。剣士であるニルスは、雷帝との模擬戦に大いに興味を持ち、実際に剣を交える機会を得た。

錬金術と剣術の交流

涼とルスラン公子は錬金術について深く語り合い、錬金術とゴーレム開発に関する知識を共有した。一方で、ニルスは雷帝との模擬戦を楽しみ、満足そうな表情を浮かべていた。錬金術と剣術、それぞれの交流がこの日の見学を充実したものにしたと言えよう。

ヴァンパイアの陰謀とゴーレムの支配

キリル公太子の支配

第一公子キリルは寝室に閉じこもり、面会謝絶の状態であった。しかし、彼の元にはヴァンパイア公爵レアンドラと侯爵ルーベンが密かに潜入していた。ルーベンの闇属性魔法〈スレイブ〉により、キリルは完全に彼らの支配下に置かれていた。

ゴーレム命令権の確認

キリルの支配を確認したレアンドラは、公太子が持つゴーレムへの命令権について質問した。キリルは、命令権によって味方と認識される者たちに対して攻撃を命じることが可能であるが、公国の家族には命令ができないことを答えた。レアンドラはこの制約を理解した上で、使節団と公国をゴーレムによって滅ぼす計画を立てた。

レアンドラの決意

ルーベンがゴーレムの制約について確認すると、レアンドラは「キューシー公とその家族は自らの手で殺す」と断言した。その姿に、ルーベンは深い尊敬の念を抱いた。レアンドラは、人の脆弱性を嘲笑い、命令者が敵に落ちれば最強の力も無意味になると述べた。

襲撃の計画

レアンドラは襲撃時間と場所を議論した。ゴーレムがその力を最大限に発揮する開けた場所として、公宮の中央庭や専用港が候補に挙げられた。キリル公太子は、使節団が専用港を利用する時間が午前十時であると告げた。レアンドラは、その時間にゴーレムを使節団に向けて襲撃させ、自らは同時に公宮を襲撃してキューシー公一家を抹殺する計画を決定した。

公宮騒乱

ゴーレムの暴走とヴァンパイアの襲撃

王国使節団の出発準備

三日目の朝、迎賓館の食堂で、王国使節団が出発することが告げられた。水属性魔法使いの涼は錬金術開発施設見学の延長を望んでいたが、神官エトの説得により気持ちを切り替えた。オース川専用港では巨大な二層甲板の船が接岸し、使節団が乗船準備を進める中、異常事態が発生した。

ゴーレムの襲来

公宮から響いた悲鳴と共に、城壁が崩れ、十体のゴーレムが出現した。冒険者たちは即座に戦闘態勢に入り、王国の護衛として対峙したが、ゴーレムの物理的硬度と魔法耐性に苦戦した。戦いの最中、ゴーレムの目が赤く輝き動きが変化したことで、冒険者側にさらなる負傷者が出始めた。

涼の戦術と十一体目の制圧

涼は〈アイスウォール〉で船を守りつつ、十一体目のゴーレムに立ち向かった。見事な動きで背後に回り込み、ゴーレムを転倒させて首の隙間を狙い、一撃で制圧した。これをきっかけに、他の冒険者たちもゴーレムへの対処法を見出し、十体全てを制圧することに成功した。

公宮内の混乱とヴァンパイアの正体

一方、公宮では政務会議室でキューシー公ユーリーが近衛隊と共に待機していた。そこに現れたのはヴァンパイア公爵レアンドラであった。彼女はゴーレム兵団を操り、公太子キリルを支配下に置いたと明かした。圧倒的な力で近衛隊を打ち破り、ユーリーを追い詰める。

雷帝の奮闘と犠牲

その時、第二公子ルスランと開発機ゴーレム『雷帝』が駆けつけた。雷帝はレアンドラと剣戟を繰り広げ、奮戦したが、最終的に両目の魔石を破壊され動かなくなった。それでも、雷帝は最後の力を振り絞り、ユーリーとルスランを守るために身を挺した。

涼の到着と復讐への決意

雷帝の犠牲によって時間が稼がれた中、涼が現れた。冷気を伴う怒りをたたえた涼は、犠牲を無駄にしないと決意し、ヴァンパイア公爵レアンドラに立ち向かう準備を整えた。

妖精王のローブとヴァンパイア公爵の対峙

レアンドラの挑発と涼の挑戦

ヴァンパイア公爵レアンドラは、涼が纏う妖精王のローブに目を留めた。挑発するレアンドラに対し、涼は筆頭公爵として自らを名乗り、戦いを挑んだ。戦闘は始まり、炎と氷の魔法が激しく衝突した。

挑発の効果と冷静さの回復

涼の挑発により、レアンドラは一時的に冷静さを失った。しかし深呼吸によって落ち着きを取り戻し、剣を構えて本格的な剣戟が始まった。涼は守勢に回りつつも、技術的に完璧な防御で対抗した。

剣戟の均衡と戦闘の激化

剣戟は激しさを増し、涼は守りに徹することでレアンドラの焦りを誘った。レアンドラは持久戦に持ち込むことを決意し、二人の戦いは異常なまでの高水準に達した。ルスラン公子とユーリー公は、この戦いの凄まじさに圧倒された。

ルーベンの乱入と涼の負傷

戦闘中、レアンドラの部下ルーベンが闇属性魔法〈スレイブ〉でルスラン公子を操り、ユーリー公を攻撃させた。涼は身を挺してユーリーを守ったが、自らが深い傷を負った。それでも涼は戦意を失わず、再び立ち上がった。

決着の一撃と戦闘の結末

レアンドラとの剣戟は最高潮に達し、涼は魔法と剣を駆使して反撃した。最終的にレアンドラの首を狙ったが、完全に仕留めることはできなかった。深手を負ったレアンドラはルーベンによって救出され、戦場を去った。涼は満身創痍ながらも、戦いを生き延びた。

ヴァンパイアとの戦いの余波

戦いの後の回復

涼はヴァンパイア公爵との戦いで負った重傷により眠りにつき、傷は癒えたが失血の影響でしばらく安静を余儀なくされた。アベル王との会話で、涼が戦闘中に「皮膚の内側に氷の膜を張る」という奇抜な策を用いたことが明らかになった。この方法は、剣の滑りを誘発して被害を最小限に抑えるものだった。

涼の戦いの意義

涼は、自身の技量では剣で勝てなかったことを認めながらも、ルスラン公子を守るため勝負には勝たねばならなかったと語った。ルスランの心に傷を残さないよう、涼は全力を尽くし、最終的にはその努力がルスランの謝罪と感謝を得る形で報われた。

ゴーレム開発の議論

ルスラン公子は涼を訪ね、ゴーレムの設計上の弱点について質問した。涼は「ゼロモーメントポイント(ZMP)」という概念を説明し、ゴーレムが転倒しにくくなる方法を伝えた。この知識は、ルスランが今後のゴーレム開発に活かすための重要な一歩となった。

新たな政治的動き

ファンデビー法国への派遣

キューシー公ユーリー十世は、ルスラン公子にファンデビー法国でのゴーレム共同研究への派遣を命じた。同時に、教皇庁での調査を命じることで、ヴァンパイアや教会の動向を探る意図があった。

アイテケ・ボの陥落

回廊諸国では、シュルツ国のアーン王がアイテケ・ボを一日で陥落させた。騎馬の民を率いたアーン王の迅速な行動は、デブヒ帝国との戦いに向けた布石とされる。この動きはナイトレイ王国の使節団にも影響を及ぼす可能性があるとされた。

回廊諸国の情報網の課題

アベル王は回廊諸国の情勢を把握する重要性を認識し、諜報網の強化を指示した。特に騎馬の民の戦力が想定以上であることが明らかになり、今後の外交や防衛戦略に新たな課題を突き付けた。

エピローグ

白い世界における観察

世界の管理と観察

ミカエル(仮名)は白い世界でいくつかの世界を管理していた。彼の手元には石板があり、そこに映し出される情報を基に各世界の状況を確認していた。「三原涼が西方諸国に向かい、早速大変な戦いに巻き込まれた」ことに気付き、さらにその背後に「奇妙な繋がり」が存在していることを見出した。

天使と認識される存在

西方諸国の住民の視点から見れば、「天使」とも思える存在が関与しているらしいとミカエルは推測した。違いを認識する困難さを示唆しながら、その状況を興味深く眺めていた。

三原涼の運命と中央諸国への影響

ミカエルは、「三原涼がトラブルに愛されているのか、それともトラブルを愛しているのか」と苦笑しながらも、彼がいない中央諸国でも大変な事態が起こりそうであると予測した。その発言には、未来への一抹の憂慮が含まれていた。

フンスン山脈

フンスン山脈での旅路

ワイバーン山脈の概要と仲間たちの会話

一行はフンスン山脈の連なりを見上げ、その地が「ワイバーン山脈」とも呼ばれる危険な地域であると再認識した。涼はニルスに仕事を振り、冗談交じりに彼を「ワイバーンの生贄」にしようと提案した。これにニルスは強く反発したが、仲間たちは笑いながらその場を和ませた。

ノーマルボアの襲撃とニルスの活躍

山脈の麓に近づいた途端、後方からノーマルボアが迫った。ニルスは一人で立ち向かい、闘技「サイドステップ」でかわした後に剣で仕留めるという見事な戦いを見せた。その華麗な動きは仲間たちを驚嘆させ、涼はその成長ぶりを称賛した。

ワイバーンとの遭遇と迅速な対応

ノーマルボア討伐後、今度はワイバーンが二頭迫ってきた。涼は「アイシクルランス 4」でワイバーンを地面に縫い付け、その後ニルスとアモンがそれぞれ闘技でとどめを刺した。彼らの連携によって、危機は迅速に解決された。

王国使節団の旅路

使節団最後尾の様子

討伐されたノーマルボアとワイバーンは涼の魔法による〈台車〉で運ばれ、使節団は平穏を保ちながら進行を続けた。一方、ニルスはワイバーン討伐が容易すぎたことにぼやき、涼にからかわれながらも旅路は和やかな雰囲気に包まれていた。

アベルとの会話と象徴的な存在

涼はアベルと「魂の響」を通じて会話し、ニルスたちが成長したのはアベルの背中を見てきたからだと感謝を伝えた。また、涼はアベルを「冒険者の象徴」や「国の象徴」と称し、彼の存在の重要性を強調した。

アベルの未来と王妃リーヒャの影響

涼はアベルが国王をクビにされる可能性を冗談交じりに語り、それを王妃リーヒャの意志として結論付けた。最終的に、アベルは「冒険者に戻るため剣を鍛えておく」という提案を受け入れ、旅路の会話は和やかに幕を閉じた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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