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フィクション(Novel)世界最強の後衛読書感想

小説「世界最強の後衛 ~迷宮国の新人探索者~6」感想・ネタバレ

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世界最強の後衛6の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

世界最強の後衛5レビュー
世界最強の後衛まとめ
世界最強の後衛7レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 書籍情報
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 白夜旅団の選別
    2. 怜憫の幻翅蝶
    3. 咎人の檻
    4. シロネの救助
    5. 五番区への要請
    6. 女王蠍の討伐
    7. 赫灼たる猿侯
  6. 登場キャラクター
    1. アリヒトのパーティ
      1. アリヒト=アトベ
      2. テレジア
      3. 五十嵐キョウカ
      4. エリーティア
      5. シオン
      6. メリッサ
      7. スズナ
      8. ミサキ
      9. スノー
      10. ペンタ
      11. ルピー
      12. アリアドネ
      13. アルフェッカ
      14. ムラクモ
    2. 白夜旅団
      1. ヨハン=セントレイル
      2. アニエス=フィーエ
      3. シロネ=クズノハ
      4. ルウリィ
      5. ソウガ
    3. ギルドセイバー
      1. クーゼルカ
      2. ホスロウ
      3. セラフィナ=エーデルベルト
      4. アデリーヌ
      5. ナユタ=ホウジョウ
      6. ディラン
      7. マーカス
    4. フォーシーズンズ
      1. リョーコ
      2. カエデ
      3. イブキ
      4. アンナ
    5. ギルド職員・職人・料理人
      1. ルイーザ
      2. マドカ
      3. マリア=ミラーズ
      4. セレス
      5. シュタイナー
    6. その他探索者
      1. ガルフ
      2. カザン
      3. ギド
      4. リーガン
      5. ゲンジ
      6. リィズ
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ 黄昏の部屋
    2. 第一章 原色の台地 その深部
    3. 一 止水
    4. 二 水精
    5. 三 青い蝶
    6. 四 孤独
    7. 第二章 月下の蝶
    8. 一 罪業
    9. 二 幻惑
    10. 三 要請
    11. 第三章 ひとりからパーティへ
    12. 一 報告
    13. 二 迷い
    14. 三 砂海の魔物
    15. 第四章 五番区の試練
    16. 一 災禍
    17. 二 迎撃兵器
    18. 第五章 猿侯の悪意
    19. 一 白夜旅団副団長
    20. 二 料理人
    21. 三 五番区司令官
    22. 四 魔物と眷属
    23. 五 燃える森
    24. 六 血路
    25. 書き下ろし番外編 七番区スパの夜
  8. 世界最強の後衛 一覧
  9. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、不慮の事故で命を落とし、異世界である迷宮国へ転生した元サラリーマンの主人公アリヒトが、支援職である後衛の極意を追求しながら、信頼する仲間たちとともに迷宮の深淵を目指す異世界ファンタジー小説の第6巻である。 本作では、アリヒトたちの圧倒的な活躍がギルド最高層から認められ、特別に五番区でのスタンピード鎮圧支援要請を受ける。エリーティアの親友であるルウリィを救出するための千載一遇の好機と捉えたアリヒトは、本来の昇格順序を飛ばして五番区へ進む過酷な戦いを決意する。白夜旅団の刺客による卑劣な罠、そして迷宮を支配する魔王「赫灼たる猿侯」との激突など、絶望的な戦況のなかで、アリヒトは卓越した後衛スキルと仲間との強い絆を武器に立ち向かう。

■ 主要キャラクター

  • 後部アリヒト: 本作の主人公。元社畜サラリーマンのマネジメント経験を活かし、仲間の能力を限界突破させる支援職「後衛」として活躍する。直接戦う武力は持たないが、優れた観察眼と判断力で強敵の弱点を見抜き、パーティを死地から救う知略のリーダーである。
  • エリーティア=セントレイル: パーティの前衛を担う凄腕の剣士。かつて兄が率いる白夜旅団に所属していたが、組織の冷酷な変貌に耐えかねて離脱した。旅団に取り残された親友ルウリィの救出を悲願としており、今巻では彼女を救うために多大な覚悟を胸に魔王へと挑む。
  • テレジア: 亜人の少女であり、パーティの中衛スカウト(ローグ)として罠解除や近接戦闘を担う。アリヒトから絶大な信頼を寄せられており、彼を支え続ける。今巻の終盤において、魔王の「隷属印」による精神支配の危機に直面する。
  • シロネ: 白夜旅団に属する「呪符使い」の少女。呪いの武器に選ばれず見捨てられかけた焦りから、アリヒトたちや他パーティを陥れる卑劣な罠を実行する。しかし、自滅的な暴走の果てにアリヒトたちに救われ、ギルドセイバーへと引き渡されることとなる。
  • クーゼルカ=オルフェス: 治安維持組織ギルドセイバーの「三等竜尉」を務める実力者。アリヒトたちの実力を正当に評価し、五番区のスタンピード鎮圧任務を託す。戦闘では最前線で強固な防壁となり、アリヒトの指揮のもとで卓越した連携を見せる。

■ 物語の特徴

本作の魅力は、主人公が単身で無双するのではなく、仲間の個性を引き出す「組織マネジメント」によって圧倒的な格上の強敵を打破する頭脳戦にある。今巻では、敵対してくるサソリ型の群勢によるスタンピードや、カルマシステムを歪曲させる理不尽な魔物に対し、ルールの裏をかくような冷静な戦術分析で勝利を掴み取るプロセスが緻密に描かれている。 さらに、白夜旅団の冷徹な実力至上主義と、アリヒトたちの「誰も切り捨てない」相互信頼の対比が人間ドラマとしての深みを増させている。過酷な死闘だけでなく、スパでの休息など日常パートの描写も豊富であり、キャラクター同士の絆の強さを実感できる点が読者を惹きつける。

書籍情報

世界最強の後衛 ~迷宮国の新人探索者~ 6
著者:とーわ 氏
イラスト:風花風花  氏
出版社:KADOKAWA(カドカワBOOKS)
発売日:2020年1月10日
ISBN:9784040732411

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

最強の支援職、危険と隣り合わせの「飛び級」のチャンス!?
新たな秘神の力を手に入れ『白夜旅団』の刺客の罠を切り抜けたアリヒト。そんな中、アリヒトたちのもとにギルドセイバーから五番区での支援要請が届き……。エリーティアの悲願達成のためにアリヒトが選んだ道とは?

世界最強の後衛 ~迷宮国の新人探索者~ 6

感想

主人公アリヒトたちの戦いがさらに苛烈さを増す一冊である。しかし、率直に言って、物語の展開にやや単調さを覚えた。出会うことすら非常に稀であるはずのボスモンスターに、この一巻だけで3回も遭遇しているからだ。これだけイベントを詰め込まれると、どこで最も盛り上がるべきなのかが分からなくなる。それでも、戦いの中で描かれる知略や、登場人物たちの人間関係には、魅力が詰まっていた。

白夜旅団の非情な選別とシロネへの対応

エリーティアの過去に直結する「白夜旅団」の歪んだ実態が明かされ、人間ドラマとしての緊迫感が一気に高まった。
・旅団が推し進める選別は、死への恐怖と焦りから生まれた、呪いの武器への依存体制にほかならない。
・目的のために初期からの仲間や肉親の感情すら切り捨てる冷徹なシステムは、結果として多くの悲劇を生み出している。
・敵対行為を働いたシロネに対しても見捨てることなく、命を救って法の下で罪を償わせるアリヒトたちの信念が素晴らしい。
シロネ救助から一転、スパの夜のような日常パートで見せる和やかなやり取りは、緊迫した戦いが続くだけに、一行の絆の深さと温かさを改めて実感させる魅力的な描写であった。

怜憫 幻翅蝶戦と咎人の檻の攻略

「原色の台地」で立ち塞がった強敵との戦闘は、アリヒトたちの知略が最も輝いた戦いである。
・怜憫の幻翅蝶は、迷宮国のカルマシステムを歪曲して逆手に取るという、極めて異質な敵であった。
・正当な攻撃ですらカルマが上昇する咎人の檻に対し、能動的な攻撃を避け、相手の攻撃を反射して攻略する知策が光った。
・ルールの裏をかく冷静な戦術分析こそが、彼らが格上の強敵を打破できた最大の要因である。
理不尽なルールを逆手に取って打破し、貴重な素材である青蝶の琥珀や新たな資格を手に入れた展開は、これまでにない爽快感をもたらしてくれた。

スタンピード鎮圧と五番区での足がかり

五番区で発生したサソリ型の魔物によるスタンピードは、物語の規模をさらに大きく広げる契機となった。
・圧倒的な脅威として出現したレベル12の名前つき魔物、ザ・カラミティ(女王蠍)に対し、ギルドセイバーとの決死の連携で見事鎮圧に成功した。
・この常識外れの戦果により、アリヒトたちは最功労者としてギルドから高く評価された。
・特別選抜探索者の称号と五番区への滞在許可は、ルウリィ救出を前倒しで進める上で、極めて重要な意味を持つ。
危険と隣り合わせの飛び級ではあるが、仲間を救うために迷わず過酷な任務を引き受けるアリヒトの決断には、強いリーダーシップを感じた。

悪辣な魔王「赫灼たる猿侯」への挑戦

五番区の五つ星迷宮である炎天の紅楼を支配する赫灼たる猿侯は、これまでにない悪意に満ちた宿敵として描かれている。
・知略と武力を兼ね備え、隷属印を用いて探索者を従属させる悪辣な支配には強い憤りを覚える。
・死角からの弱点攻撃に対抗して呪詛侵蝕を放ち、テレジアを支配しようとする執念深さが恐ろしい。
・テレジアへの隷属印上書きやルウリィの囚われという絶望的な状況に直面しながらも、七日以内の討伐を誓う一行の姿には胸が熱くなった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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世界最強の後衛5レビュー
世界最強の後衛まとめ
世界最強の後衛7レビュー

考察・解説

白夜旅団の選別

白夜旅団の団長ヨハン=セントレイルは、最速で上位区へ進むために、メンバーに対して極めて非情な選別を行っている。

呪いの武器による選別

ヨハンは、強大な力を持つ呪いの武器を装備しても完全に正気を失わない者、あるいは武器の選定者として選ばれた者だけを旅団に残す方針をとっている。彼自身が「呪いが僕らを選別する」と語るように、呪いの武器に選ばれずその力を扱えない者は、上位の魔物たちに割って入るための力がないとして容赦なく切り捨てられる。

選別の背景にある死への恐怖と焦り

このような極端な実力至上主義の根底には、ヨハン自身の迷宮での理不尽な死に対する強い恐怖が存在する。彼は、どんなにレベルを上げて防具を集めても、強敵の即死攻撃などを運良く避け続けることはできず、死ぬときは死ぬという悲観的な考えを抱いている。そのため、迷宮の死神を打ち払う絶対的な手段として色銘の装備に執着している。
また、探索者としての全盛期に一番区まで行けなければ後は下がる一方だと考えており、段階を踏んで安全に攻略していくための時間を惜しんでいることも、強引な選別を推し進める要因となっている。

選別された者と切り捨てられた者

この選別により、旅団のメンバーは過酷な運命を辿っている。主な事例は以下の通りである。

・シロネ:初期から旅団を支えたメンバーであったが、双剣型の色銘の装備に選ばれなかったため、ヨハンにこの区に置いていくしかない、与えられる役割はないと判断された。旅団に残る最後の猶予としてエリーティアから剣を回収するよう命じられたが、実質的には見捨てられた状態であった。
・ルウリィ:治癒師であり、赫灼たる猿侯の奇襲で捕らわれた際、ヨハンは彼女がスキルの取得でミスをしていたことを理由に挙げた。旅団に最適化された治癒師がこれから見つかることもあると打算的に計算し、彼女の救助を切り捨てた。
・エリーティア:ヨハンは妹であるエリーティアに呪われた緋の帝剣を与えた。彼女が剣に選ばれ、仲間を失って生き延びていることを武器を自分の力として利用していると解釈し、いずれより強くなって旅団の力として戻ってくると見込んでいる。

まとめ

白夜旅団の選別は、迷宮の死への恐怖と上位区到達への焦りから生まれた、呪いの武器への依存体制である。目的のためには初期からの仲間や肉親の感情すら切り捨てるこの冷徹なシステムは、結果としてシロネの暴走やエリーティアの離脱といった多くの悲劇を生み出している。

怜憫の幻翅蝶

原色の台地の三層に出現する憐憫の幻翅蝶は、レベル8の空星に属する名前つきの魔物である。通常はレベル3の中立魔物である青い蝶として無数に飛び回っているが、これらが集まって群体形成を発動することにより、一体の巨大な幻蝶へと姿を変える。

カルマシステムを悪用する法の歪曲

この魔物の最大の特徴は、迷宮国のルールであるカルマシステムに干渉し、探索者を自滅に追い込む理不尽な特殊能力を持っている点である。

・ギルティフィール:青い蝶が発動する精神攻撃である。対象が一番聞きたくない言葉を幻聴として聞かせ、罪悪感を刺激して錯乱させる。
・咎人の檻:幻翅蝶の鱗粉によって形成される地形効果である。この範囲内では、魔物に対するあらゆる敵対行為で探索者のカルマが強制的に上昇させられる。
・贖罪の痛覚:上昇したカルマの量に応じた絶大なダメージを対象に与え、同時にカルマを減少させる。
・幽閉の繭:身動きが取れなくなった対象を白い糸で絡め取り、隔離空間へと転送して幽閉する。作中では、罪を犯した探索者を生まれ変わらせようとしていると推察されている。

白夜旅団のシロネはこの罠に嵌まって隔離され、過去の罪悪感を抱えるエリーティアやアリヒトも同様に心を抉られて窮地に陥った。

その他の厄介な戦闘能力

カルマ干渉以外にも、この魔物は非常に厄介な戦闘能力を有している。

・物理攻撃の威力を低減する特殊耐性を持つ。
・視認が極めて困難な上空からの透明な触腕や禁断の触腕による無差別攻撃を行う。
・こちらの攻撃対象を別の青い蝶へそらすフレアディビジョンなどを駆使する。
・これらの能力を組み合わせるため、通常の手段ではダメージを与えることすら困難である。

アリヒトたちによる討伐

アリヒトたちはこの理不尽な魔物に対し、蝶は低温に弱いという生態的な弱点を突いて対抗した。

・召喚獣スノーたちが作り出した凍土の地形効果により、極低温の環境を作り出して鱗粉の拡散と蝶の動きを封じた。
・五十嵐とテレジアの連携で囮人形に敵の大技を誘導し、フロストアーマーで氷属性の反射ダメージを与えて凍結させることに成功した。
・地上に落下したところを、全員の連携技とエリーティアのブロッサムブレードで粉砕し、見事討伐を果たした。

この魔物のような空星と呼ばれる名前つきを討伐することは、探索者に特殊な資格を与える結果につながるとされている。また、討伐後には特殊な素材である青蝶の琥珀を入手した。

まとめ

憐憫の幻翅蝶は、迷宮国の根幹ルールであるカルマシステムを逆手に取るという、極めて異質な強敵であった。しかし、アリヒトたちは魔物の弱点を冷静に見抜き、地形効果や連携技能を駆使することでこの難敵を打ち破った。この戦いは彼らに新たな資格と貴重な素材をもたらし、次なる探索への大きな飛躍点となった。

咎人の檻

咎人の檻は、レベル8の名前つき魔物である憐憫の幻翅蝶が使用する、極めて理不尽で凶悪な地形効果である。

技能の効果と法の歪曲

スズナの技能である月読によって看破されたこの技能は、幻翅蝶の鱗粉が届く範囲内に地形効果である咎人を発生させる。その特徴は以下の通りである。

・檻の中では、魔物に対する探索者のすべての敵対行為においてカルマが強制的に上昇させられる。
・通常は中立魔物を攻撃するなどのルール違反時に上昇するカルマが、敵対してくる魔物への正当な攻撃や反撃であっても上昇対象となる。
・ライセンスが探索者の行為を判定してカルマを上昇させるシステムに対し、魔物が干渉して迷宮国のルールそのものを捻じ曲げている状態であり、アリヒトはこれを法の歪曲であると理解した。

逃亡の封殺

さらに、この地形効果が発動している間は、使用者が戦闘不能になるまで檻からの脱出が封じられる。これにより探索者は、以下のような絶望的な状況に追い込まれる。

・攻撃を行えばカルマが上昇し、贖罪の痛覚による大ダメージを受ける。
・脱出が不可能なため逃げることもできず、一方的に心を抉られるような攻撃に晒され続ける。

アリヒトたちによる攻略法

敵対行為をすればカルマが上がるという理不尽なルールに対し、アリヒトたちは、こちらから能動的に攻撃せず、相手に攻撃させて反射するという手段で対抗した。

・五十嵐が取得したフロストアーマーを囮人形に付与し、敵の大技を誘導した。
・幻翅蝶の弱点である氷属性の反射ダメージを敵に与えた。
・この方法により、自身のカルマを上げることなく敵に大打撃を与え、見事に地形効果である咎人を解除することに成功した。

まとめ

咎人の檻は迷宮国のシステムを逆手に取った強力な技能であるが、アリヒトたちは能動的な敵対行為を避けて反射ダメージを利用するという知略によって攻略した。ルールの裏をかく冷静な戦術分析こそが、彼らが格上の強敵を打破できた最大の要因である。

シロネの救助

迷宮国の三層「原色の台地」において、アリヒトのパーティを罠に嵌めたシロネの救助は、アリヒトたちの強い意志と決死の行動によって成し遂げられた。

シロネの孤立と隔離空間への幽閉

フォーシーズンズを罠に嵌め、自身も傷ついたシロネは、逃げ込んだ迷宮の奥深くで青い蝶と遭遇した。
・青い蝶が発動したギルティフィールにより、シロネは一番聞きたくない言葉である白夜旅団の団長や副団長の声を幻聴として聞かされた。
・激昂した彼女は、中立の魔物である青い蝶を多数攻撃し、自身のカルマを急激に上昇させた。
・その結果、出現したレベル8の名前つき魔物、怜憫の幻翅蝶による贖罪の痛覚で激痛を受け、幽閉の繭の白い糸に絡め取られて隔離空間へ転送された。

アリヒトの決意と霧への突入

シロネの痕跡を追っていたアリヒトたちは、青い蝶の群れと迫り来る霧に遭遇した。
・エリーティアも蝶の能力で罪悪感を刺激されかけるが、アリヒトたちの機転により踏みとどまった。
・アリヒトはシロネがこの霧に呑まれたと推測し、帰還の巻物での脱出を選択せず、彼女を連れ戻すために霧の中へ立ち向かう決意を固めた。

異空間からの引き剥がし(救助の瞬間)

戦闘中、アリヒト自身もカルマが上昇したことで幻翅蝶の標的になり、幽閉の繭の糸に絡め取られそうになった。
・その際、空間の切れ目の向こうに、糸に巻き取られたシロネの姿を発見した。
・アリヒトはパーティ全員に強化技能を共有する大技、全体相互支援を発動した。
・アルフェッカの持つ技能中断阻止の特性である傲慢なる戴冠によって糸の束縛に打ち勝った。
・空間の裂け目が閉じる寸前にバインシュートを発動し、蔓草でシロネを巻き取って強引に現実空間へと引きずり出し、アルフェッカに保護させた。

救助後の措置とギルドセイバーへの引き渡し

怜憫の幻翅蝶の討伐後、駆けつけたギルドセイバーのクーゼルカとホスロウによって、規定カルマを超えたシロネは強制拘束され、ギルドセイバー本部へ連行された。
・彼女がフォーシーズンズに対して行った悪質な行為の罰として、刑罰と再教育が課せられることとなった。
・シロネが所持していた双剣はアリヒトたちが迷宮で拾得した。
・拘束者の装備品に関する規定がないため、アリヒトたちがそのまま保管し、必要があれば後日直接交渉することとなった。

アリヒトたちの思い

・シロネはアリヒトたちの親しいパーティを窮地に陥れた敵対者であるが、アリヒトは命の危険があること以外で償ってもらわなければならないと考え、彼女を見捨てることはしなかった。
・この敵意を向けてきた相手であっても命を救い、真っ当に罪を償わせるという甘くも勇敢な決断は、ホスロウやクーゼルカといったギルドセイバーたちからも高く評価されることとなった。

まとめ

迷宮国の過酷なルールやシロネの敵対行為に対しても、アリヒトたちは冷徹に見捨てるのではなく、命を救い法の下で罪を償わせる道を選んだ。この揺るぎない信念と行動力は、難敵の討伐だけでなく、周囲の信頼をもさらに深める契機となった。

五番区への要請

五番区におけるスタンピード発生に伴い、アリヒトのパーティに対して行われたギルドセイバーからの救援要請は、彼らが本来の昇格順序を飛ばして五番区へと足を踏み入れる大きな転機となった。

要請の背景と奨励探索者の特権

五番区の五つ星迷宮である凪の砂海において、サソリ型の魔物であるデスストーカーがギルドの想定を超えて異常増殖し、スタンピードが発生した。

・より上位の区からは人手を借りられない状況の中、ギルドセイバーの部隊長クーゼルカは、七番区で抜きん出た実力を持つアリヒトたちに助力を打診した。
・これは、アリヒトたちが以前授与された奨励探索者の特権に基づいている。現在いる区より二つ上の区の任務に招集される可能性があるという特別な権利である。

アリヒトたちの決断

五番区の魔物は平均レベル10のパーティでも一体を倒すのがやっとというほど強力であり、まだ七番区にいるアリヒトたちにとっては非常にリスクの高い任務であった。

・しかし、五番区にはエリーティアの親友であるルウリィを捕らえた魔物である赫灼たる猿侯が潜む迷宮が存在する。
・ルウリィを一日でも早く助け出すチャンスを得るため、アリヒトと仲間たちはこの要請を受け、全員で五番区での戦闘に臨む決意を固めた。

スタンピードの鎮圧とザ・カラミティ討伐

五番区へ転移したアリヒトたちは、猛毒と高い防御力を持つ巨大サソリであるデスストーカーの群れと交戦した。

・激戦の最中、倒された同族の魂を吸収してレベル12の名前つきである★ザ・カラミティ(女王蠍)が出現し、圧倒的な力で街を破壊し始めた。
・アリヒトたちはクーゼルカやホスロウが操縦する衝角車と連携して敵を回廊の奥へと誘導した。
・テレジアが起動した街の迎撃兵器である対魔獣縛鎖砲を用い、敵を拘束した。
・ムラクモの天地刃やエリーティアのブロッサムブレードをはじめとするパーティの総攻撃によって、見事にザ・カラミティを氷牢に閉じ込めて討伐し、スタンピードを鎮圧することに成功した。

鎮圧の成果と五番区への滞在許可

この常識外れの戦果により、アリヒトたちはスタンピード鎮圧の最功労者としてギルドから極めて高く評価された。

・五番区司令官ディランから直接労いの言葉を受けるとともに、奨励探索者のさらに上位の称号である特別選抜探索者に認定され、その証となるマギスタイトのメダリオンを授与された。
・さらに、特例として五番区への七日間の滞在許可が下りた。
・これにより、アリヒトたちは本来の六番区攻略を待たずに、五番区の迷宮に挑みルウリィを救出するための足がかりを掴むことになった。

まとめ

サソリ型の魔物によるスタンピードの発生は五番区に甚大な危機をもたらしたが、アリヒトたちの参戦によって無事に鎮圧された。この戦いを通じて彼らは特別選抜探索者の称号と五番区への滞在許可を獲得した。この特例措置は、エリーティアの目的であるルウリィ救出を前倒しで進めるための極めて重要な転換点となった。

女王蠍の討伐

五番区の五つ星迷宮である凪の砂海で発生したスタンピードにおいて、圧倒的な脅威として出現したのがレベル12の名前つき魔物であるザ・カラミティ(女王蠍)である。その討伐は、アリヒトのパーティとギルドセイバーの決死の連携によって成し遂げられた。

女王蠍の降臨と圧倒的な能力

市街地での激戦の末、追い詰められた8体のデスストーカーがサクリファイスを発動し、同族の魂を捧げたことでザ・カラミティが召喚された。この魔物は、以下のような理不尽とも言える特殊能力や耐性を備えていた。

・全属性耐性と即死耐性を有する。
・九本に分かれた尾から全方位へ強力な熱線を放つスティングレイという大技を持つ。
・近接戦闘形態へ移行する殲滅の死装を使用する。
・受けるダメージを半減しつつ体力と魔力を回復し続ける不滅なる高貴を発動する。

市街地での防衛戦

初撃のスティングレイに対し、アリヒトは瞬時に支援防御2を取得した。盾役であるセラフィナのディフェンスフォースとオーラシールドの能力を複製して二重の防壁を展開することで、かろうじて全滅を防いだ。

その後、エリーティアがレッドアイとベルセルクを発動して猛攻を仕掛けたが、敵の不滅なる高貴による回復力の前には決定打とはならなかった。絶体絶命の危機の中、以下の連携で被害を最小限に抑え込んだ。

・ミサキが道化師の鬼札を用いて敵に氷属性の弱点を付与した。
・アリヒトがフォースシュート・フリーズで敵の足を凍らせた。
・これにより強烈な突進の軌道を逸らすことに成功した。

回廊への決死の誘導と反撃

そこへホスロウやクーゼルカたちが乗る衝角車が駆けつけ、街に仕掛けられた迎撃兵器が存在する回廊の奥へ敵を誘導する作戦が取られた。

・アリヒトたちは囮役となり、アルフェッカとシオンの機動力を最大限に活かして逃走した。
・その最中、敵が放った二発目のスティングレイに直面した。
・アリヒトは殿軍の将とアリアドネの加護を重ねた強固な防壁であるオーラスクトゥムを展開し、九発の熱線をすべて反射して敵自身に大打撃を与えた。

迎撃兵器による拘束と天地刃

反射攻撃と衝角車の激突で体勢を崩した敵を、クーゼルカがレバーを操作して落とし穴へと落下させた。

・ナユタと、危険を顧みず側壁に張り付いたテレジアが、それぞれ対魔獣縛鎖砲を起動した。
・鎖のついた巨大な槍で敵を完全に拘束することに成功した。
・そこへアリヒトの支援を受けたムラクモが天地刃を六連続で打ち込み、これまで傷一つ付かなかった強固な装甲に亀裂を入れた。

総力戦での決着と氷牢への封印

装甲を砕いた隙を逃さず、アリヒトはアリアドネの力で信仰値を魔力に変換し、パーティ全員での総攻撃として支援連携や挟撃連携を仕掛けた。

・キョウカ、クーゼルカ、ナユタによる激しい連撃が繰り出された。
・メリッサによる尻尾の切断で部位破壊を達成した。
・エリーティアがブロッサムブレードによる斬花乱舞・五月雨を叩き込んだ。
・装甲の亀裂から氷結属性が内部に作用し、限界突破したアリヒトのフォースシュート・フリーズの追い打ちが重なった。
・これにより、女王蠍は巨大な氷塊に閉じ込められる氷牢状態となり、完全に討伐された。

まとめ

この常識外れの戦果により、他のデスストーカーも戦意を喪失してスタンピードは鎮圧された。アリヒトたちは最功労者としてギルドから高く評価され、五番区の迷宮へ挑むための大きな足がかりを得ることとなった。

赫灼たる猿侯

赫灼たる猿侯は、迷宮国五番区にある五つ星迷宮「炎天の紅楼」の二層以降を支配する、レベル12の極めて強力な名前つきの魔物である。その強さと生存期間の長さから、五番区の探索者たちの間では魔猿侯や魔王とも呼ばれ、恐れられている。

探索者を従属させる悪辣な支配

この魔物の最大の特徴にして最も恐ろしい点は、探索者の首元に隷属印を刻み込んで従属させ、自らの眷属として使役することである。
・魔物に操られた探索者は、一定期間が経過すると迷宮のルール上、魔物として認定されてしまう。
・探索者同士を戦わせるというこの性質のため、ギルドセイバーや高レベルの探索者パーティでさえも、スタンピードが起きない限りは干渉を避け、放置しているのが現状である。

エリーティアの過去と因縁

・エリーティアがかつて所属していた白夜旅団の第三パーティは、本来この魔物の幹部を引きつける陽動役であった。
・しかし、狡猾な猿侯に逆に出し抜かれ、奇襲を受ける結果となった。
・その際、エリーティアの親友である治癒師のルウリィが、仲間を逃がすための技能である救いの手を使って捕らえられ、猿侯に従属させられてしまった。

極めて高い知能と戦闘能力

猿侯は力押しだけでなく、迷宮内に独自の砦を築き、自らの影武者である★獄卒の魔猿を囮に使って敵を欺くなど、極めて高い知能を有している。戦闘においては、以下のような理不尽な能力を行使する。
・煉獄の障壁:周囲を炎の壁で囲み、高熱かつ脱出不能な空間を作り出す。
・眷属の強化と妨害:ウォードラムで従属させた探索者たちの攻撃力と速度を上げ、ホライズンロアで敵を混乱やスタンに陥れる。
・圧倒的な膂力と技能:アルフェッカの車体ごと引きずり寄せるほどの力を持ち、鎖付きの鉄球を投げる暗器投擲や、魔力を纏った手で攻撃を弾くデモンズハンドといった凶悪な技を繰り出す。

アリヒトたちとの激突

・ルウリィを救うために単独で迷宮に乗り込んだエリーティアを追い、アリヒトたちは猿侯の砦に突入して総力戦を繰り広げた。
・死角から弱点である氷結属性の攻撃を叩き込んだテレジアに対し、猿侯は反撃として呪詛侵蝕を放ち、彼女の首元に隷属印を上書きしようとした。
・テレジアが完全に支配される前に、アリヒトたちはアルフェッカの限界突破によって炎の障壁を破り、撤退を余儀なくされた。
・しかし、ルウリィの生存を確認したアリヒトたちは、五番区に滞在できる七日間という限られた時間の中で、必ず猿侯を討伐し、ルウリィとテレジアを救い出すという強い決意を固めている。

まとめ

赫灼たる猿侯は、知略と武力を兼ね備え、探索者の絆すら引き裂く悪辣な支配者である。テレジアへの呪詛侵蝕やルウリィの囚われといった絶望的な状況に直面しながらも、アリヒトたちは滞在期間である七日以内の討伐を誓った。この魔猿侯との死闘は、五番区の命運と彼らの目的を懸けた、極めて過酷な試練となる。

世界最強の後衛5レビュー
世界最強の後衛7レビュー

登場キャラクター

アリヒトのパーティ

アリヒト=アトベ

アリヒトのパーティのリーダーであり後衛を務める。仲間の安全を最優先に考え、他者のために危険を顧みずに行動できる。冷静な状況分析と的確な支援でパーティを導く。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ・リーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
 シロネを救助するため原色の台地の深部へ進んだ。憐憫の幻翅蝶との戦闘では弱点を見抜いて勝利に貢献する。五番区のスタンピード鎮圧では迎撃兵器を活用し、ザ・カラミティを討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 スタンピード鎮圧の最功労者として特別選抜探索者の称号を授与された。特例で五番区への七日間の滞在許可を得る。

テレジア

アリヒトのパーティの前衛を担う。蜥蜴のマスクを被り、素早い動きと盾による防御で敵の攻撃を引きつける。アリヒトに対して強い好意と信頼を寄せている。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ・前衛。ローグ。
・物語内での具体的な行動や成果
 アクアエレメンタルの攻撃を回避し、撃破に貢献した。五番区では対魔獣縛鎖砲を起動してザ・カラミティの拘束を成功させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ザ・カラミティとの戦闘で負傷した。赫灼たる猿侯から呪詛侵蝕を受け、隷属印を上書きされかける。

五十嵐キョウカ

アリヒトのパーティに所属する前衛である。雷や氷属性の技能を駆使して戦う。アリヒトを気にかけ、パーティの雰囲気を和ませる役割も果たす。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ・前衛。ヴァルキリー。
・物語内での具体的な行動や成果
 囮人形とフロストアーマーを組み合わせ、憐憫の幻翅蝶の攻撃を反射して凍結させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘を通じてレベルが上がった。

エリーティア

アリヒトのパーティの主力アタッカーである。白夜旅団の元メンバーであり、団長ヨハンの妹という立場にある。親友のルウリィを救うことに強い執着を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ。カースブレード。
・物語内での具体的な行動や成果
 憐憫の幻翅蝶の精神攻撃を受け、罪悪感を刺激されて苦しむ。五番区の戦いではブロッサムブレードを発動し、ザ・カラミティを氷牢状態に追い込んだ。単独で赫灼たる猿侯の砦に突入した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘を通じてレベルが上昇した。

シオン

アリヒトのパーティの護衛犬である。仲間を庇う勇敢さを持ち、高い機動力で前線と後方を駆け回る。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ・護衛犬。シルバーハウンド。
・物語内での具体的な行動や成果
 憐憫の幻翅蝶の攻撃からエリーティアを庇い、ダメージを負った。スタンピードではテレジアや逃げ遅れた親子を救出する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レベルが上がり、戦闘により防具の一部が破損した。

メリッサ

アリヒトのパーティに所属している。戦闘では部位破壊を狙い、戦闘外では料理などを担当する。淡々とした性格だが仲間想いな一面を見せる。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ。解体屋。
・物語内での具体的な行動や成果
 ザ・カラミティの尻尾を切り落とし、素材を回収した。凍結したザ・カラミティを貯蔵庫へ転送する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レベルが7に上がった。

スズナ

アリヒトのパーティの後衛を担う。巫女としての技能や角笛を用いて仲間を支援する。エリーティアを深く慕っている。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ。巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 月読を用いて憐憫の幻翅蝶の秘匿技能を看破した。スタンピードでは魔物を低速化させ、敵の足止めを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 職人の加工により、装備している牧神の角笛が強化された。

ミサキ

アリヒトのパーティに所属する。明るい性格でパーティのムードメーカーとして振る舞う。特殊な効果を持つカードを用いて戦闘を支援する。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ。
・物語内での具体的な行動や成果
 ザ・カラミティに対してジョーカーオブアイスを使用し、氷属性の弱点を付与した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

スノー

アリヒトが召喚する鳥型の召喚獣である。氷や雪に関連する能力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ・召喚獣。
・物語内での具体的な行動や成果
 銀世界を発動して周囲の地形を極低温の凍土へ変化させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ペンタ

アリヒトが召喚する召喚獣である。スノーと連携して能力を発揮する。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ・召喚獣。
・物語内での具体的な行動や成果
 ルピーと共にアイスダンスを発動し、銀世界の凍結効果を強化した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ルピー

アリヒトが召喚する召喚獣である。他の召喚獣と協力して環境を変化させる。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティ・召喚獣。
・物語内での具体的な行動や成果
 ペンタと共にアイスダンスを発動し、凍土の形成を補助した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アリアドネ

アリヒトと契約を結んでいる秘神である。彼に加護を与え、機械の腕を具現化して戦闘を支援する。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティを支援する秘神。星機神。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリヒトの一時支援要請を受け、ガードアームやガードヴァリアントで敵の強力な攻撃を防いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アルフェッカ

アリアドネのパーツの一部であり、銀の車輪の化身である。アリヒトたちを乗せて高速で移動する能力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトのパーティの移動手段。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリヒトたちを乗せて回廊を駆け抜け、ザ・カラミティの追撃を振り切った。猿侯の鎖によって車体を拘束される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ムラクモ

アリヒトが装備する星機剣である。意思を持ち、アリヒトの魔力を受けて強力な技を繰り出す。

・所属組織、地位や役職
 アリヒトの装備品。
・物語内での具体的な行動や成果
 北天六星衝や天地刃を発動して敵の装甲を破壊した。天地刃・斬鉄を用いてアルフェッカを縛る鎖を切断する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

白夜旅団

ヨハン=セントレイル

白夜旅団の団長であり、エリーティアの兄である。迷宮での死を極度に恐れており、目的のためには冷徹な判断を下す。

・所属組織、地位や役職
 白夜旅団・団長。
・物語内での具体的な行動や成果
 シロネに対して最後通告を突きつけた。ルウリィが魔物に捕らわれた際、救助を行わない決定を下す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アニエス=フィーエ

白夜旅団の副団長を務める。ヨハンとは異なる理念を持ち、エリーティアやシロネのことを気にかけている。

・所属組織、地位や役職
 白夜旅団・副団長。第二パーティリーダー。神官戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
 シロネを追い込んだ理由についてヨハンを問い詰めた。アリヒトに対し、炎天の紅楼の地図データを提供する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シロネ=クズノハ

白夜旅団の元メンバーである。呪いの武器に選ばれず、旅団での居場所を失う恐怖から暴走する。

・所属組織、地位や役職
 白夜旅団(元メンバー)。呪符使い。
・物語内での具体的な行動や成果
 フォーシーズンズに泥巨人をけしかけた。青い蝶を攻撃してカルマを上昇させ、幻翅蝶の隔離空間へ幽閉される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アリヒトに救出された後、規定カルマを超過したためギルドセイバーに強制拘束された。

ルウリィ

白夜旅団の元メンバーであり、治癒師である。エリーティアの親友で、自己犠牲の精神を持つ。

・所属組織、地位や役職
 白夜旅団・第三パーティ(元)。猿侯の眷属。
・物語内での具体的な行動や成果
 過去の戦闘で士気解放の技能を使い、エリーティアたちを逃がした。猿侯の砦では治癒師として魔物を回復させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 赫灼たる猿侯に従属させられ、魔物側に立たされている。

ソウガ

白夜旅団のメンバーである。粗暴な口調だが、他者の覚悟を認める一面も持つ。

・所属組織、地位や役職
 白夜旅団。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリヒトたちに対し、赫灼たる猿侯が魔王のような存在であることを説明し、忠告を与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ギルドセイバー

クーゼルカ

ギルドセイバーの隊員である。実力主義でありながら、アリヒトたちを高く評価して協力を求める。

・所属組織、地位や役職
 ギルドセイバー・三等竜尉。
・物語内での具体的な行動や成果
 五番区のスタンピード鎮圧へアリヒトたちを招集した。回廊のレバーを操作し、ザ・カラミティを落とし穴に落とす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ホスロウ

ギルドセイバーの隊員である。本名はジョシュで、クーゼルカの補佐を務める。豪快な性格である。

・所属組織、地位や役職
 ギルドセイバー・竜曹。
・物語内での具体的な行動や成果
 シロネを拘束し、本部へ連行した。衝角車を操縦し、ザ・カラミティを回廊の奥へと押し込む。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

セラフィナ=エーデルベルト

ギルドセイバーの隊員である。大盾による防御を得意とし、アリヒトのパーティと深い信頼関係を築いている。

・所属組織、地位や役職
 ギルドセイバー・中尉。
・物語内での具体的な行動や成果
 特命を受けてアリヒトのパーティに同行する。ザ・カラミティの強力な熱線攻撃をアリヒトと共に防ぎ切った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アデリーヌ

ギルドセイバーの隊員であり、セラフィナの部下である。上官をからかう軽口を叩きつつも慕っている。

・所属組織、地位や役職
 ギルドセイバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 後方支援としてスタンピードの掃討に参加した。戦闘を終えたアリヒトたちを宿舎へ案内する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ナユタ=ホウジョウ

ギルドセイバーの五番区部隊に所属する隊員である。元サーカス団員で、身軽な動きを見せる。

・所属組織、地位や役職
 ギルドセイバー・三等竜佐。
・物語内での具体的な行動や成果
 衝角車に同乗して作戦を補佐する。対魔獣縛鎖砲を射出し、ザ・カラミティの拘束を試みた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ディラン

ギルドセイバーの五番区司令官である。元探索者であり、規則に従いながらも功労者には敬意を払う。

・所属組織、地位や役職
 ギルドセイバー・五番区司令官(三等竜佐)。
・物語内での具体的な行動や成果
 スタンピード鎮圧の功績を認め、アリヒトたちに謝罪と賛辞の言葉を贈った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アリヒトたちに特別選抜探索者の称号を授与し、七日間の五番区滞在を許可した。

マーカス

五番区で活動するギルドセイバーの隊員である。スキンヘッドで戦槌を武器とする。

・所属組織、地位や役職
 ギルドセイバー。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリヒトの支援を受け、ハンマースイングでデスストーカーをスタン状態にした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

フォーシーズンズ

リョーコ

フォーシーズンズのメンバーである。シロネの罠に嵌まり危機に陥る。

・所属組織、地位や役職
 フォーシーズンズ。
・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で行動不能になっていたところをアリヒトたちに救助された。スパで再会した際にアリヒトへ感謝を伝える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アリヒトとの信頼度が上がった。

カエデ

フォーシーズンズのメンバーである。感情豊かでアリヒトへ懐いている。

・所属組織、地位や役職
 フォーシーズンズ。
・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で救助され、スパでアリヒトと再会した際に感極まって抱きつこうとする。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アリヒトとの信頼度が上がった。

イブキ

フォーシーズンズのメンバーである。アリヒトを指導者のように尊敬している。

・所属組織、地位や役職
 フォーシーズンズ。
・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で救助された後、スパでアリヒトを「先生」と呼び、成長した姿を見せると誓う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アリヒトとの信頼度が上がった。

アンナ

フォーシーズンズのメンバーである。仲間とともに迷宮で危機に陥った。

・所属組織、地位や役職
 フォーシーズンズ。
・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮で魔物に捕まっていたところをアリヒトたちに救助された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アリヒトとの信頼度が上がった。

ギルド職員・職人・料理人

ルイーザ

ギルド職員であり、アリヒトたちの専属受付を務める。真面目で献身的な性格である。

・所属組織、地位や役職
 ギルド職員。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリヒトから探索の成果報告を受けた。五番区での戦闘を見守るため、専属として同行を宣言する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

マドカ

ギルド職員であり、アリヒトたちをサポートする。明るく健気な性格である。

・所属組織、地位や役職
 ギルド職員。
・物語内での具体的な行動や成果
 迷宮から帰還したアリヒトたちを出迎えた。宿舎での食事の手配などを手伝う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

マリア=ミラーズ

五番区の中位ギルドで働く料理人である。丁寧な言葉遣で探索者をもてなす。

・所属組織、地位や役職
 ギルド・料理人。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリヒトたちに五番区名産の岩塩蒸しや、能力値を上げるデザートを振る舞った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

セレス

熟練の職人である。少女のような姿をしているが、弟子を持つ親方である。

・所属組織、地位や役職
 職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 スズナの装備に停滞石やルーンを装着し、強化する加工を施した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

シュタイナー

セレスの弟子である。リビングアーマーの姿をしており、親方を気遣っている。

・所属組織、地位や役職
 職人。
・物語内での具体的な行動や成果
 セレスとともにアリヒトたちの元を訪れ、装備品の加工を引き受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

その他探索者

ガルフ

炎天の紅楼に侵入した探索者パーティのリーダー格である。曲剣を武器とする。

・所属組織、地位や役職
 探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 装備を奪う目的で猿侯の砦に侵入するが、ホライズンロアを受けてスタン状態に陥った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘不能になる。

カザン

炎天の紅楼に侵入した探索者パーティのメンバーである。

・所属組織、地位や役職
 探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 猿侯の砦に侵入し、踊り子の技能によって魅了状態にされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘不能になる。

ギド

炎天の紅楼に侵入した探索者パーティのメンバーである。

・所属組織、地位や役職
 探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 猿侯の砦内で格闘家の攻撃を受け、大きくノックバックした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘不能になる。

リーガン

炎天の紅楼に侵入した探索者パーティのメンバーである。

・所属組織、地位や役職
 探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 地形士の技能である部分崩落を受け、行動を封じられた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦闘不能になる。

ゲンジ

五番区で活動する剣士の探索者である。

・所属組織、地位や役職
 探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリヒトの支援を受け、デスストーカーに連続攻撃を放った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

リィズ

五番区で活動する探索者である。クロスボウを使用する。

・所属組織、地位や役職
 探索者。
・物語内での具体的な行動や成果
 アリヒトの支援を受け、デスストーカーにディレイスナイプを命中させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

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世界最強の後衛まとめ
世界最強の後衛7レビュー

展開まとめ

プロローグ 黄昏の部屋

白夜旅団の方針とヨハンの冷徹な姿勢

五番区にある『白夜旅団』所有宿舎『トリルハイム』で、ヨハン・セントレイルは第二パーティのリーダーであるアニエスから報告を受けていた。迷宮国では、多くの探索者が最初こそ成功と生活向上に希望を見出すものの、やがて上の区へ進めなくなり、諦めながら探索を日課にしていく者が増えていた。ヨハンは、自身が統率する『白夜旅団』にそのような者は一人もいないし、いるべきではないと考えていた。

シロネを追い込んだ理由への追及

アニエスは、第二パーティ全員が無事帰還したことを報告したうえで、ヨハンがなぜシロネを行かせたのかを問いただした。シロネは旅団に尽くしてきた初期メンバーであり、アニエスは彼女を追い込むような形にしたヨハンの判断を受け入れられずにいた。ヨハンは、シロネには悪いことをしたと認めながらも、『呪符使い』は貴重な職業ではあるが条件が揃えば転職可能であり、シロネである必然性はないと語った。

呪いの武器による選別

ヨハンは、呪いの武器を装備しても完全に正気を失わない者だけを残す方針を示していた。アニエスは、そこまでして上の区を目指す必要があるのかと疑問を呈したが、ヨハンは探索者としての全盛期に一番区まで到達できなければ、後は下がるだけだと答えた。さらに、段階を踏んで進んでも低確率の不幸を避けきることはできず、即死攻撃や罠、強敵との遭遇によって誰かが死んでいた可能性は常にあったと述べた。

色銘の装備を求める恐怖

アニエスは、ヨハンが『色銘の装備』を求めるようになった理由をまだ話さないのかと尋ねた。ヨハンは黒い鞘の剣を手にしながら、呪いが自分たちを選別し、迷宮で死神に出会ったときにそれを打ち払う手段が必要だと語った。彼は、自分は死ぬことが何より怖いだけで、皆と何も変わらないのだと笑顔で述べた。その姿に、アニエスは無情な采配を振るう旅団のリーダーと、目の前にいる青年が同じ人物なのか分からなくなることがあった。

エリーティアと緋の帝剣

アニエスは、『緋の帝剣』がヨハンの剣と対になるものであり、それをエリーティアに与えた理由を問いかけた。ヨハンは、『色銘の装備』は選定者が持たなければ力を発揮せず、探索者は初めから公平ではないと答えた。アニエスは、ヨハンが家族を案じる気持ちを持っているのではないかと問い、ルウリィのことも忘れていないはずだと訴えた。

ルウリィ救出をめぐる断絶

ルウリィはエリーティアの親友であり、『赫灼たる猿侯』に捕らわれた少女だった。白夜旅団では彼女の話題が出なくなっていたが、アニエスは最後まで救出を諦めなかった一人だった。ヨハンは、ルウリィは五番区に上がる実力もなく、パーティの一員として経験値を得て強くなっただけだと評した。アニエスは、ヨハンに兄としてエリーティアを想う心が残っているのではないかと期待していたが、ヨハンはそれを薄い笑みとともに否定した。

エリーティアの生存とヨハンの計算

ヨハンは、『死の剣』という名が聞こえていることで、エリーティアが生きていると確認できたと語った。彼女は仲間を失って手に入れた『緋の帝剣』の力を使い、生き延びているのだと述べた。アニエスはその言い方がエリーティアに対してあまりにも酷いと反発したが、ヨハンは『赫灼たる猿侯』が作り上げた王国を、迷宮から猿たちが出てこないように調整された完成度の高いシステムとして見ていた。

救助しない組織原則

ヨハンは、入団時に全メンバーへ、迷宮で脱落してもリスクが大きければ救助は行わないと説明していた。それは組織を維持するため、迷宮国で採用されることの多いルールだった。アニエスは、初めにそう決めていても割り切れる者ばかりではないと訴えた。ヨハンも迷いはしたと認めたが、ルウリィについては貴重な『治癒師』を失うことが惜しかっただけで、スキル取得にミスがあり、旅団に最適化された治癒師は今後見つかる可能性があると判断していた。

アニエスの不安と沈黙

アニエスは、いつか自分も同じように切り捨てられるのではないかと感じたが、それを明確には口にしなかった。ヨハンに届けば、この旅団に残る資格を失うと理解していたためだった。ヨハンは、エリーティアはいずれより強くなって戻り、旅団の力になってくれるだろうと笑っていた。しかし彼は、エリーティアがどのような言葉を残して旅団を去ったのかを知らなかった。アニエスはその事実を胸に留めた。

シロネの行方を案じるアニエス

アニエスは自室に戻り、次の指示を待つことを告げたうえで、シロネの足跡を可能な範囲で調べたいと申し出た。ヨハンは、アニエスまで五番区を離れるのは困るとしながらも、使えるものを使って調査することを許した。部屋を出たアニエスは、魔道具の明かりに照らされた廊下を歩きながら、エリーティアとシロネの無事を願う言葉をこぼした。

第一章 原色の台地 その深部

一 止水

泥巨人召喚の仕組みとシロネの行動

アリヒトたちは、道中で目にした『泥人形』が『泥巨人』を出現させるために倒されたものだと知った。『泥人形』を動かす『呪魂石』を集めることで特殊条件が満たされ、『泥巨人』が呼び出される仕組みだった。シロネはその条件を満たし、『操魔の呪符』で『泥巨人』を操って『フォーシーズンズ』にけしかけたようだった。

泥巨人との戦闘によるレベル上昇

アリヒトは戦闘後の状態を確認し、自分とテレジア、五十嵐のレベルが上がっていることを把握した。『泥巨人』は『名前つき』であったため経験値が大きく、他のメンバーもレベルアップに近づいていた。エリーティアは探索中にもレベルは上がるが、スキル選択は落ち着いて考えるべきだと助言した。

シロネを追う一行

アリヒトは、シロネが使った『マジックマーキング』の影響により、彼女が向かった方向を何となく感じ取れるようになっていた。効果がいつまで続くのかは分からなかったが、アリヒトはシロネを放置できないと判断し、彼女を追うことに集中した。『原色の台地』の二層は広大で、似た地形が続くため進行状況を把握しにくい場所だった。

スロウサラマンダーとの遭遇

アリヒトたちは、水たまりの多い地形で『スロウサラマンダー』と遭遇した。見た目には愛嬌のある魔物だったが、エリーティアは外部から刺激されたり雨が降ったりすると活発化して攻撃してくると説明した。やがて進路上にいる敵対状態の個体が、シロネの双剣を一本ずつ所持していることが判明した。

シロネの危険な逃走状況

シロネは『泥巨人』を操っていたものの、撃破時の反射ダメージを受けて大きく傷ついていた。その状態で武器まで失いながら奥へ進もうとしており、アリヒトたちは彼女の行動が自殺行為に近いものだと見ていた。エリーティアは、シロネがなお進もうとする姿に複雑な感情を抱いていた。

止水の呼吸による低速化

敵対状態の『スロウサラマンダー』二体は、『止水の呼吸』を発動した。その攻撃は不可視に近く、アリヒトが『鷹の眼』を使ってもかろうじて捉えられる程度だった。攻撃を受けたアルフェッカ、メリッサ、エリーティア、シオン、五十嵐は低速化し、二体分の効果が共鳴したことで状態異常はさらに強化された。

テレジアの耐性とアリヒトの反撃

アリヒトとテレジアは低速化を免れた。アリヒトは慣性で投げ出されながらも『八艘飛び』でテレジアを抱え、何とか着地した。五十嵐の『サンダーボルト』は低速化の影響で発動が遅れたが、アリヒトの『フォースシュート・フリーズ』は命中し、片方の『スロウサラマンダー』の頭部を凍結させた。

戦闘継続の決断

『止水の呼吸』は移動速度だけでなく技能の発動にも影響する厄介な技だった。アリヒトは、シロネがこの範囲から逃れるために双剣を投げて逃げるしかなかったのだろうと推測した。アルフェッカは『泥巨人』戦で魔力を使い果たしており、回避も難しかったため、アリヒトは戦うしかないと判断した。

テレジアとの連携準備

アリヒトは、低速化を防ぐためにテレジアへ自分の近くにいるよう頼んだ。テレジアは頷き、『レイザーソード』と『円盾』を構えた。アリヒトは仲間たちの状態異常が時間経過で解除されることを期待しつつ、テレジアと二人で『スロウサラマンダー』を撃破しようと、迫り来る敵へ向けてスリングを構えた。

二 水精

アクアエレメンタルの出現

『スロウサラマンダー』は口を開き、低速化攻撃ではなく周囲の水溜まりから水の球を浮かび上がらせた。技は『アクアエレメンタル』であり、水の球は自動攻撃を開始した。アリヒトは『フォースシュート・フリーズ』で『スロウサラマンダー』を凍結させたが、技の発動そのものは止められなかった。

テレジアによる水流回避

まともに動けるのがアリヒトとテレジアだけである中、テレジアは『アクアエレメンタル』へ突進した。『アクアエレメンタル』は水流を噴き出して攻撃したが、テレジアは『蜃気楼』と『シャドウステップ』を使い、残像で攻撃を回避した。さらに彼女は、水流が後方のアリヒトへ向かわない位置取りをしていた。

連携による水精の撃破

アリヒトとテレジアの信頼度ボーナスにより、『回避連動』が発動した。アリヒトはその隙を逃さず、『フォースシュート・フリーズ』で『アクアエレメンタル』を凍結させた。続けてテレジアが『アズールスラッシュ』を放ち、凍結状態への特攻によって『アクアエレメンタル』を一撃で消滅させた。

蔓草によるサラマンダー拘束

凍結が解除された『スロウサラマンダー』が迫る中、アリヒトは倒すのではなく拘束する方針を取った。テレジアに『峰打ち』を頼み、『支援攻撃2』で『バインシュート』を付与した。テレジアが攻撃を当てると蔓草が発生し、一体目の『スロウサラマンダー』を拘束した。さらにもう一体にも回り込み、柄の部分で叩いて同じように拘束した。

低速化の解除と仲間たちの合流

『スロウサラマンダー』二体を拘束したことで、アルフェッカ、メリッサ、エリーティア、シオン、五十嵐の低速化が解除された。五十嵐たちは普通に動けるようになったことに安堵した。エリーティアは、速度を重視する職業にとって『スロウサラマンダー』は最も戦いたくない魔物だと語った。

討伐ではなく使役する判断

アルフェッカは討伐を支持したが、アリヒトは『スロウサラマンダー』の能力が今後役に立つ可能性を考え、倒さずに利用できないかと判断した。エリーティアは、尻尾が食用として出回ることや、皮を防具にすると水属性耐性がつくことなどを説明した。一方で、捕らえられた『スロウサラマンダー』はテレジアを警戒して震えていた。

スロウサラマンダーの使役成功

アリヒトは『スロウサラマンダー』に対し、食べたりせず、安全な住処を提供するから一緒に来てほしいと語りかけた。すると二体の敵対度は消失し、使役に成功した。蔓草を解除しても二体は逃げず、静かにアリヒトたちを見ていた。

戦利品の回収と再出発

テレジアが倒した『アクアエレメンタル』からは、水色の結晶のようなものが残された。また『スロウサラマンダー』の尻尾には『停滞石』が付いており、シロネの双剣である『ヘブンスティレット+4』と『★ブラッドサッカー+3』も回収された。武器は粘液で汚れていたが破損していなかった。アリヒトたちは、シロネを見つけた後に美味しいものを食べようと話し、再び先へ進む態勢を整えた。

三 青い蝶

三層への転移と夜の峡谷

アリヒトたちはアルフェッカに乗って進む途中、周囲の風景が変化し、三層へ転移した。二層は昼だったが、三層には夜の帳が降りていた。そこは広大な荒れ地に奇妙な大岩が並ぶ峡谷のような地形であり、南米の秘境を思わせる非現実的な光景だった。

シロネの痕跡の消失

シオンは匂いを追って進んでいたが、ある地点で足を止め、困ったように動かなくなった。メリッサも地面を調べたが、かすかに残っていたシロネの足跡はそこで途切れていた。跳躍の痕跡もなく、シロネはその場で忽然と姿を消したように見えた。

神隠しの可能性

五十嵐は、空を飛ぶ魔物に捕まったのではないかと推測した。アリヒトも、シロネほどの探索者が成す術なく捕まるとは考えにくいものの、状況から見てその可能性を否定できなかった。一方で、シロネ自身が追跡を避けるために姿をくらました可能性も考えられた。

青い蝶との遭遇

アリヒトたちの前に、一匹の青い蝶が現れた。ライセンス上では『?青い蝶』と表示され、レベル3の中立魔物だった。周辺には同じ蝶が多数存在していたが、攻撃してくる様子はなかった。メリッサは手がかりを得るために倒すことを提案したが、エリーティアは中立の魔物を攻撃すればカルマが上昇すると制止した。

エリーティアへの異常干渉

青い蝶は数を増やし、なぜかエリーティアの周囲に集まり始めた。アリアドネが警告を発しようとした直後、エリーティアは自分は人殺しではないと叫び、錯乱したように『緋の帝剣』で蝶に斬りかかった。青い蝶は『ギルティフィール』を発動しており、エリーティアは中立魔物への攻撃によってカルマを上昇させてしまった。

迫る霧と撤退不能の判断

エリーティアは苦しげに頭を抱え、青い蝶は彼女を責め立てるように増え続けた。さらに霧が迫り、アルフェッカは全力で離脱すれば逃げ切れる可能性を示した。しかしエリーティアは自失状態で動けず、五十嵐も彼女を置いていくことはできないと判断した。

霧の先へ向かう覚悟

アリヒトは、シロネもおそらくこの霧に呑まれたのだと考えた。連れ戻すには自分たちも同じ場所へ行くしかないと判断し、『帰還の巻物』で脱出する選択を捨てた。五十嵐はエリーティアに駆け寄り、彼女を抱きかかえてアルフェッカの陰へ飛び込んだ。

巨大な幻蝶の出現

霧が一行を覆い尽くす中、無数の青い蝶は空へと舞い上がった。アリヒトはアルフェッカの陰から、蝶たちが集まり巨大な影絵を作る様子を見ていた。やがてそれらは、一つの生命体であったかのように巨大な蝶へ変わった。その魔物は『憐憫の幻翅蝶』と表示され、レベル8の警戒状態として現れた。

四 孤独

孤独な逃走と絶望

シロネは迷宮三層まで逃げ続け、峡谷のような地形の岩に背を預けていた。『泥巨人』との戦いで傷つき、魔物にも追われたことで、自分一人では何もできない現実を痛感していた。かつて所属していたパーティが壊滅し、捨て石にされた経験を持つ彼女にとって、迷宮国とは仲間を利用し切り捨てながら上を目指す世界だった。

旅団への執着と失われた居場所

シロネは、『白夜旅団』に所属している間だけは自分の居場所があったと感じていた。しかし、旅団が目指す高みへ進むには、自分は不要だと理解していた。双剣型の『色銘の装備』にも選ばれず、役割を失った自分に価値はないと考えていた。団長ヨハンから告げられた最後通告は、エリーティアの剣を回収することだった。

エリーティアへの嫉妬

シロネは、エリーティアが『緋の帝剣』に選ばれ、見たこともない職業となって強さを手にしたことを理不尽だと感じていた。自分は努力しても何も得られなかったのに、エリーティアはそれを手放そうとしているように見えたからだった。さらに、エリーティアがアリヒトたちと行動していることを知り、自分だけが孤独で取り残されているように感じていた。

アリヒトへの敗北感

シロネは、アリヒトを罠にかけ、『フォーシーズンズ』を壊滅させることでエリーティアを孤立させようとしていた。しかしアリヒトは戻ってきて、壊滅しかけたパーティを救い、誰一人死なせなかった。支援職でありながら冷静さと勇敢さを兼ね備え、仲間を鼓舞し続ける彼の姿に、シロネは強い敗北感を抱いていた。

カルマ上昇と転落

シロネは、自分が魔物をけしかけたことでカルマを大きく上げ、ギルドセイバーに拘束される立場になったことを理解していた。旅団を離れれば五番区に入ることすらできなくなる。それでも、自ら出頭する勇気は持てなかった。自業自得だと分かっていながら、彼女は失われた未来に縋っていた。

青い蝶の出現

そんなシロネの前に、一匹の青い蝶が現れた。レベル3の中立魔物であり、未識別の存在だった。シロネは最初こそ興味を示さなかったが、やがて団長ヨハンの声が聞こえ始めた。それは、彼女が最も恐れていた言葉だった。ヨハンは、シロネは旅団に必要な力を持たず、置いていくしかない存在だと語っていた。

ギルティフィールによる精神攻撃

青い蝶は『ギルティフィール』を発動していた。その技能は、対象が最も聞きたくない言葉を、聞きたくない相手の声で聞かせるものだった。シロネは副団長アニエスの声まで聞かされ、感情を抑えきれなくなった。蝶を倒せばカルマが上昇すると理解していながら、彼女は『妖斬符』で蝶を切り裂いた。

感情の暴走と蝶の群体形成

蝶は倒しても増え続けた。シロネは、自分こそが一番愚かだったと理解しながらも、怒りと自己嫌悪を抑えられなかった。さらに『殲光符』で大量の蝶を攻撃し、カルマを上昇させた結果、蝶たちは『群体形成』を発動し、一体の巨大な『憐憫の幻翅蝶』へ変貌した。

贖罪の痛覚による裁き

『憐憫の幻翅蝶』は『贖罪の痛覚』を発動し、シロネにカルマ量に応じた激痛を与えた。シロネは地面を転げ回るほどの苦痛に襲われ、一気にカルマを削り取られた。続けて『無辜の静謐』による地形効果でカルマを減少させながら、『幽閉の繭』でシロネの身体を糸で拘束した。

隔離空間への転送

シロネは、罪を犯した探索者の前に現れるという噂の魔物を思い出していた。人間に代わって罪を裁く存在などありえないと否定されていたが、今まさに自分がその裁きを受けていた。糸に包まれて視界を失う中、最後に脳裏をよぎったのはアリヒトの姿だった。仲間を救うため現れた彼の姿は、自分が長い間憧れていたものそのものだった。やがて『幽閉の繭』の効果によって、シロネは隔離空間へ転送された。

第二章 月下の蝶

一 罪業

エリーティアを蝕む恐怖

エリーティアはアルフェッカの陰に留まれず、青い蝶へ斬りかかろうとしていた。五十嵐とメリッサが必死に止める中、アリヒトは彼女の表情に怯えを見出した。『ギルティフィール』によって、エリーティアは仲間たちが本当は自分を恐れているという幻聴を聞かされていた。

アリヒトの説得と支援

アリヒトは、自分たちは決してエリーティアを恐れていないと真っ直ぐに伝えた。しかしエリーティアは、言葉では信じ切れず苦しんでいた。アリヒトは『支援高揚1』を発動してエリーティアを『混迷』状態から回復させ、さらに『支援回復1』で体力を全快させた。エリーティアは涙混じりに、もう二度と仲間を疑わないと答えた。

カルマに関わる蝶の能力

アリヒトは、青い蝶が罪悪感を刺激して探索者へ中立魔物への攻撃を誘発させる存在だと推測した。シロネも同じようにカルマを上昇させた末に姿を消したのだと考えられた。アルフェッカは、この霧の中からは何らかの方法で霧を解除しなければ脱出できないと警告した。

幻翅蝶の遠距離攻撃

『憐憫の幻翅蝶』は『透明な触腕』を発動し、エリーティアを狙った。アリヒトが叫んだ直後、シオンが『カバーリング』で割って入り、『支援防御1』の補助を受けながら攻撃を受け止めた。しかしシオンは大きなダメージを負い、防具まで破損してしまった。

敵にも存在するカルマ

アリヒトはライセンス表示から、『幻翅蝶』自身もシオンへの攻撃でカルマを上昇させていることに気づいた。さらに『無辜の静謐』によって自らカルマを低下させていた。つまり敵側にもカルマは存在し、それを上げれば行動を制限できる可能性があった。

アリヒトの決死の反撃

エリーティアへの『ギルティフィール』は続いていたが、アリヒトは状況打開のため『バックスタンド』を発動し、空中に浮かぶ『幻翅蝶』の背後を取った。ムラクモは大打撃には大きなリスクが伴うと警告したため、アリヒトは『フォースシュート・フリーズ』で高度を下げさせようとした。

フレアディビジョンによる誘導

しかし『幻翅蝶』は『フレアディビジョン』を発動し、アリヒトの攻撃対象を青い蝶へ変更した。攻撃は三体の青い蝶を討伐し、アリヒトのカルマが上昇してしまった。アリヒトは、敵が徹底して探索者側のカルマを上げようとしていると理解した。

贖罪の痛覚による瀕死

空中から離脱しようとした瞬間、『幻翅蝶』は『贖罪の痛覚』を発動した。アリヒトとエリーティアはカルマ量に応じた激痛を受け、カルマを減少させられた。アリヒトは空中で意識を失いかけたが、シオンが飛び込んで受け止めたことで墜落を免れた。さらに『★修道士のアンク』が発動し、致命傷を回避した。

新たな標的となるアリヒト

ポーションで回復しながらも、アリヒトはあと一撃で致命的になると理解していた。カルマ上昇量がエリーティアより大きかったため、今度はアリヒト自身が青い蝶の標的となった。『ギルティフィール』が発動し、耳元では誰かの声に似た羽音が響き始めていた。

二 幻惑

アリヒトへ向けられた幻惑

『ギルティフィール』を受けたアリヒトは、幼少期の記憶を呼び起こされていた。両親を事故で失い、施設で育った過去の中で、自分が生まれなければ両親は死ななかったのではないかという罪悪感を刺激される。誰も実際には言わなかったはずの言葉を聞かされながら、アリヒトは強い精神的圧迫を受けていた。

幽閉の繭による拘束

『憐憫の幻翅蝶』は『幽閉の繭』を発動し、アリヒトを白い糸で拘束した。アリヒトは仲間を巻き込まないよう飛び退いたが、そのまま繭へ取り込まれ始めた。糸の向こうには、同じように拘束されたシロネの姿が存在していた。

罪悪感への抵抗

幻翅蝶は、迷宮に飲み込まれ生まれ変われば楽になれると囁きかけてきた。しかしアリヒトは、罪悪感や償いは他人に決められるものではないと拒絶した。その瞬間、パーティとの信頼度ボーナスによって『ギルティフィール』は無効化された。

全体相互支援の発動

窮地に追い込まれたアリヒトは、『オールラウンド・レインフォース――全体相互支援』を発動した。これによりパーティ全員へ各種強化技能が共有され、『群狼の構え』『剣の極意2』『包丁捌き』『傲慢なる戴冠』などの効果が全体へ拡張された。アルフェッカの力によって拘束に抗い、アリヒトは『バインシュート』でシロネを異空間から引きずり出すことに成功した。

咎人の檻の正体

アリヒトがエリーティアへ手を差し伸べた直後、スズナが『月読』を発動し、『幻翅蝶』の秘匿技能『咎人の檻』を看破した。霧と鱗粉によって形成された地形効果の中では、探索者による全ての敵対行為でカルマが上昇するよう改変されていた。アリヒトは、敵がルールの外にいるのではなく、法そのものを捻じ曲げていたのだと理解した。

氷属性による攻略作戦

アリヒトは、カルマを上げずに敵を封じる方法として、環境そのものを利用することを選んだ。五十嵐へ『フロストアーマー』の取得を指示し、自分はスノー、ペンタ、ルピーを召喚した。三体は『銀世界』と『アイスダンス』を発動し、周囲一帯を極低温の『凍土』へ変化させた。その結果、青い蝶たちは休眠し、『憐憫の幻翅蝶』も能力低下を起こした。

触腕との攻防

『憐憫の幻翅蝶』は『禁断の触腕』による無差別攻撃を開始した。テレジアと五十嵐は回避技能を駆使して攻撃を避け続け、アリアドネの『ガードアーム』が透明な触腕を受け止めた。アリヒトは、シオンが庇った攻撃の重さを改めて実感していた。

囮人形と凍結反射

五十嵐は『囮人形』へ『デコイ』を付与し、さらに『フロストアーマー』を重ねた。魔力切れ寸前だったが、アリヒトの『アシストチャージー』で回復し、発動に成功した。テレジアは『モードチェンジ:サンドクラッド』と『砂塵影』で敵の大技『デッドグラスパー』を誘導し、囮人形へ命中させた。その反射効果によって、『憐憫の幻翅蝶』は氷属性ダメージを受けて凍結し、『咎人』の地形効果も解除された。

連携技による総攻撃

高度を下げた『憐憫の幻翅蝶』へ、パーティ全員による連携攻撃が始まった。五十嵐の『ライトニングレイジ』、テレジアの『アズールスラッシュ』、メリッサの『切り落とし』とシオンの『ヒートクロー』が次々に叩き込まれた。メリッサは触角を切断し、『無辜の静謐』も解除された。最後にエリーティアが『ブロッサムブレード』を発動し、『胡蝶の夢』を中断させながら連携技『蒼雷斬閃花』で『憐憫の幻翅蝶』を撃破した。

霧の消滅と仲間たちの合流

戦闘が終わると霧は晴れ、スズナとミサキが駆け寄ってきた。スノーたちも『凍土』を解除し、疲れた様子を見せていた。アリヒトは今回の戦いで、敵の弱点を見極める重要性を再認識していた。そしてミサキは、倒れているシロネの姿を見つけて驚いていた。

三 要請

ギルドセイバーの到着

戦闘後、アリヒトたちの前にクーゼルカとホスロウが現れた。二人は、迷宮へ入ろうとしていたミサキとスズナに同行する形でここまで来ていた。ホスロウは、『名前つき』には『黒星』と『空星』という種類があり、今回の『憐憫の幻翅蝶』は『空星』に属すると説明した。『空星』の討伐は探索者に特殊な資格を与えるとされていた。

シロネの拘束と装備の扱い

クーゼルカは、カルマが規定値を超えたシロネはギルドセイバーによる強制拘束の対象になると告げた。アリヒトは、迷宮で回収したシロネの双剣を返却したいと申し出たが、拘束者の装備返還には規定が存在せず、拾得物は回収者側が保持できると説明された。そのため、アリヒトたちはシロネの武器を自分たちで保管することにした。

シロネを救った理由

クーゼルカは、シロネが『フォーシーズンズ』を窮地に陥れた張本人でありながら、アリヒトたちが彼女を救った理由を尋ねた。アリヒトは、彼女の行為は許されるものではないが、迷宮の奥へ向かった姿を見て見捨てられなかったと答えた。ホスロウは、敵意を向けた相手の命を案じるのは普通ではできないことだと半ば呆れながら評価した。

仲間たちの共感

五十嵐は、シロネに対して思うところはあっても、命を失わせる形ではなく償わせるべきだと語った。仲間たちも同意し、アリヒトは皆の厚意に救われていた。メリッサは、『刃斬石』で強化した『スティールナイフ』を使って、シロネを拘束していた糸を素材として剥ぎ取ろうとしていた。

五番区への協力要請

クーゼルカは本題として、アリヒトたちへ五番区で発生しつつあるスタンピードへの協力を要請した。ある魔物が想定以上に増殖し、翌日には防衛線を越える危険があるという。上位区から人手を借りられないため、七番区で突出した実力を持つ『フォーシーズンズ』にも助力を求めたのだった。

五番区行きへの葛藤

五番区へ行くことは、エリーティアの仲間を救う道へ近づくことを意味していた。しかし同時に、危険度が大きく上昇することも意味していた。ホスロウは、本来なら徐々に強い敵へ慣れていくべきだと助言したが、クーゼルカはアリヒトたちが迷宮国初級区を歴代最速で突破していることを指摘した。アリヒトは、『全員で』先へ進むことを何より大切にしたいと答えた。

シロネの搬送

糸を外され、ホスロウの外套を掛けられたシロネは、そのままホスロウに担がれて運ばれていった。メリッサは、マドカが不在の今は自分が役割を代行すると語り、淡々としながらも仲間意識を見せていた。

エリーティアの迷い

エリーティアは、クーゼルカの要請を聞いてから俯いたままだった。スズナに声をかけられ、ようやく顔を上げる。アリヒトは、まず宿舎へ戻って全員の意志を確認し、その上で五番区へ向かうか決めようと提案した。エリーティアの仲間を捕らえているのは五番区の『名前つき』であり、そこへ挑むには本来さらに力をつける必要があった。

青蝶の琥珀の発見

『憐憫の幻翅蝶』が倒された後、青い蝶たちは再び飛び始めたが、もはや魔物とは判定されなくなっていた。テレジアはその中から、青い蝶が透明な石に閉じ込められたような物体を拾い上げた。それは『青蝶の琥珀』という素材であり、アリヒトはそれもまた大きな収穫だと感じていた。

第三章 ひとりからパーティへ

一 報告

迷宮からの帰還

アリヒトたちは『スロウサラマンダー』二頭を連れて二層を通過し、『帰還の巻物』で迷宮から脱出した。シロネはギルドセイバー本部へ連行され、クーゼルカとホスロウは敬礼を残して立ち去っていった。待機していたマドカは、全員の無事を確認して涙ぐみながら駆け寄った。

宿舎での食事会の準備

一行は宿舎で食事を取ることに決め、マドカが『運び屋』を通じて複数の店へ料理を注文した。メリッサはパスタとピザを自作すると申し出て、キョウカやスズナも手伝いに加わった。ミサキは相変わらず場を盛り上げ、スズナとのやり取りで皆を笑わせていた。

信頼度と士気の話題

会話の中で、士気や信頼度の話題が持ち上がった。スズナはアリヒトとの関係を意識して照れ、テレジアも顔を赤くしていた。五十嵐は、アリヒトが信頼度について深く考え始めると皆が大変になると意味深に忠告し、アリヒトはその真意を理解できないままだった。

ルイーザへの探索報告

アリヒトは宿舎へ戻った後、ルイーザへ探索結果を報告した。まず『幻想の小島』での成果として、未踏領域への侵入や『雪原に舞う宝翼』の捕獲、合同探索などで合計545ポイントの探索者貢献度を獲得していた。信頼度上昇によるポイントも加算されていたが、ルイーザ自身の名前が含まれていないことに少し寂しさを見せていた。

『原色の台地』での大戦果

続いて『原色の台地』での成果が報告された。『三面の呪われし泥巨人』と『憐憫の幻翅蝶』という二体の『名前つき』を討伐し、『スロウサラマンダー』二頭を捕獲したことで、合計8375ポイントもの貢献度を獲得していた。これにより、七番区歴代貢献度ランキング一位、六番区ランキングでも1180位という異例の成績となった。

五番区救援要請への決意

アリヒトはルイーザへ、五番区からスタンピード対策の救援要請が来ていることを打ち明けた。ルイーザは驚きつつも、アリヒトたちが八番区の頃から五番区を目指していた気持ちを理解していた。そして、自分も専属受付として五番区まで同行すると宣言した。仲間たちもまた、危険を理解しながら五番区行きへ前向きな意思を示していた。

『フォーシーズンズ』との再会

その夜、『涼天楼食堂』などの料理が届く中、セレスやシュタイナー、そして治療を終えた『フォーシーズンズ』の四人が宿舎へやってきた。四人はアリヒトへ感謝を伝えようと駆け寄り、抱きつきそうな勢いで再会を喜んだ。和やかな空気の中、キョウカやルイーザも交えて交流が深まっていった。

セラフィナの同行表明

セラフィナは、クーゼルカからの特命として五番区への同行を申し出た。アリヒトは、五番区の敵に対しては初撃をどう凌ぐかが課題になると考えていたため、その申し出を歓迎した。アデリーヌはそんなセラフィナをからかいながらも、アリヒトたちへ彼女をよろしく頼むと託していた。

装備加工と新装備の完成

食事後、アリヒトはセレスとシュタイナーへ装備加工を依頼した。『停滞石』と『響のルーン』を組み合わせた結果、スズナの『牧神の角笛』は『★牧神の響声+1』へ強化された。また、『スノードロップ』『雪水晶』『水精晶』『青蝶の琥珀』などの素材を用いたアクセサリーも作成された。キョウカは『スノードロップのイヤリング』、スズナは『雪水晶のペンダント』、エリーティアは『水精晶のペンダント』、テレジアは『バタフライリング』を手に入れた。

二 迷い

新たな技能の検討

アリヒトたちはスパのロビーに集まり、それぞれ新たに取得可能となった技能について相談した。アリヒトは『支援前線1』や『エスケープアンカー』などを確認し、テレジアは『受け流し』を取得した。メリッサは『キャットウォーク』と『キャットステップ』を習得し、回避能力を強化した。一方で、高位技能には多くのスキルポイントが必要であり、必要な場面を見極めて取得を保留する判断も行われた。

深夜の宿舎

その夜、『フォーシーズンズ』が宿泊することになり、寝袋まで持ち込まれたことで二階は簡易キャンプのような状態になっていた。賑やかな声を聞きながらアリヒトはソファで眠っていたが、深夜に目を覚ますと、毛布も掛けずに眠るテレジアを見つけ、静かに寝かせ直して毛布を掛けた。寝息すらほとんど感じられない彼女の様子を見守りながら、アリヒトはしばらく不安を覚えていた。

五十嵐からの相談

居間を出たアリヒトは、寝間着姿の五十嵐と出会った。彼女は、エリーティアとスズナが外へ出ていることを心配しており、アリヒトへ様子を見に行ってほしいと頼んだ。アリヒトは五十嵐のカーディガンを借り、公園へ向かった。

エリーティアの迷い

公園では、エリーティアとスズナが五番区へ向かうことについて話していた。エリーティアは、五番区の魔物とまともに戦った経験がないこと、自分たちの実力ではまだ危険が大きいことを語る。『赫灼たる猿侯』に襲われた当時、自分は本来五番区へ行けるほどの実力ではなく、旅団の団長である兄や父の立場によって在籍を許されていただけだったと打ち明けた。

『猿侯』襲撃の真相

エリーティアは、第三パーティが陽動役として迷宮へ入った際、本来別方面へ向かうはずだった『赫灼たる猿侯』が奇襲してきた経緯を語った。旅団は呪いの武器を回収することを優先し、撤退命令を出したが、エリーティアたちへの救援は行われなかった。ルウリィは『士気解放』である『救いの手』を発動し、自身を犠牲にして仲間たちを脱出させたが、そのまま行方不明となった。エリーティアは、自分がもっと強ければルウリィを失わずに済んだと涙ながらに悔やんでいた。

アリヒトの決意

アリヒトは途中から話を聞いていたことを明かし、エリーティアへ声をかけた。確かに五番区へ行くのは危険だが、自分たちは『葬送者』や『泥巨人』といったレベル9の『名前つき』を倒してきた実績がある以上、五番区の通常魔物とも戦えないわけではないと語る。そして、エリーティアを助けることは、自分たちにとって既に当然の目的になっていると改めて示した。

仲間たちの後押し

そこへ五十嵐、ミサキ、メリッサ、テレジア、シオン、マドカ、さらにはセラフィナまで現れた。皆はエリーティアへ、自分たちも一緒に五番区へ行くと伝える。危険を理解したうえで、それでも共に戦う意思を示されたことで、エリーティアは再び前を向く決意を固めた。彼女は涙を堪えながら、皆で五番区へ行けることが一番嬉しいと語った。

新たな覚悟

メリッサは、泣くのは友達を助けてからにするべきだとエリーティアへ告げた。エリーティアはその言葉を受け止め、まずは五番区で与えられる任務を全力で果たす必要があると気持ちを切り替える。アリヒトたちは宿舎へ戻り、明日に備えて休息を取ることにした。

セレスたちからの激励

帰り際、公園にはセレスとシュタイナーも現れた。二人は装備加工が完了したことを報告し、五番区で滞在許可が下りた際には自分たちも協力に向かえると伝えた。そして、無理をせず生き残ることを最優先にするようアリヒトへ助言した。アリヒトはその言葉に頷き、生還こそが全ての前提であると改めて胸に刻んでいた。

三 砂海の魔物

五番区スタンピード発生

早朝、アリヒトたちが出発準備をしていたところへ、五番区でスタンピードが想定より早く発生したという連絡が入った。一行は『緑の館』からギルドセイバー本部へ向かい、クーゼルカとホスロウから説明を受ける。発生源は『凪の砂海』であり、年単位で魔物が増殖する危険な迷宮だった。平均レベル10のパーティでも一体討伐がやっとという魔物が、街へ大量流出していた。

スタンピードへの対応方針

クーゼルカは、『名前つき』を倒せばスタンピードは止まるものの、取り巻きと共に行動しているため苦戦は必至だと説明した。アリヒトたちは、魔物を分断し、苦戦しているパーティがいれば支援するよう求められる。さらに、五番区には魔物を追い込む『回廊』や、街に仕掛けられた特殊兵器が存在することも知らされた。

毒耐性チャームの支給

今回のスタンピードでは、毒を持つサソリ型魔物への対策として『毒耐性3』付きのチャームが二つ支給された。アリヒトは一つをセラフィナへ、もう一つをシオンへ装備させた。ホスロウは、砂海の魔物は巨大なサソリであり、強力な毒を使ってくると警告した。

五番区への転移

クーゼルカたちは転移扉を用い、一行を五番区ギルドセイバー本部へ移動させた。到着直後、戦況報告が届けられる。すでに百三十四体もの魔物が出現していたが、討伐できたのは十三体のみであり、戦線は五番区全域へ広がりつつあった。さらに東部地区へ高速移動する魔物の報告が入り、アリヒトたちは急行することになった。

デスストーカーとの初遭遇

地上へ出ようとした瞬間、巨大サソリ『デスストーカー』の『ポイズンブラスター』が廊下を貫いた。毒液は猛毒であるだけでなく装備すら溶かす危険な攻撃だった。クーゼルカとホスロウは高速技能を用いて前へ出て、アリヒトも『支援防御1』と『支援攻撃2』で援護した。ホスロウの体当たりによって『デスストーカー』は建物外へ吹き飛ばされた。

五番区の戦場

外へ出たアリヒトたちは、探索者とギルドセイバーが入り乱れて戦う五番区の惨状を目にする。一体一体の『デスストーカー』が高い防御力と突破力を持ち、通常パーティでは簡単に倒せない。アリヒトは通りすがりに『アザーアシスト』を使い、別パーティの連携を補助して『デスストーカー』を足止めした。

親子救出作戦

東部地区へ向かう途中、テレジアが瓦礫に閉じ込められた親子を発見した。壁面に張り付いていた『デスストーカー』が攻撃を狙っていたため、アリヒトはスズナへ『牧神の響声』を吹かせ、『揺蕩う時の音』で敵を低速化した。その隙にシオンが『緊急搬出』で親子を救出する。しかし低速化は短時間しか持続せず、スズナは大きく魔力を消耗した。

テレジアの拘束

低速化が解除された『デスストーカー』は、『三角飛び』でテレジアへ急襲した。アリアドネの『ガードアーム・ツイン』で一部は防げたものの、完全には止めきれず、テレジアは鋏に拘束されて負傷した。アリヒトは『バックスタンド』を発動し、ムラクモが『北天六星衝』で敵を攻撃する。しかし『デスストーカー』の反撃は極めて速く、セラフィナが『プロヴォーク』で敵意を引きつけ、『オーラシールド』と『ガードヴァリアント』で尾針を防ぎ切った。

テレジア救出と反撃

アリヒトは『支援攻撃2』でムラクモへ『フォースシュート・スタン』を付与し、『流星突き』で『デスストーカー』をスタンさせた。拘束が解けた瞬間、シオンがテレジアを救出する。続いてメリッサが『切り落とし』でサソリの尾を切断し、エリーティアとキョウカが連撃を叩き込んだ。しかし『デスストーカー』は『ニトロブラッド』で瀕死状態から回復し、『死力の遁走』で逃走を図った。

女王蠍『ザ・カラミティ』の出現

スズナの必中技能『皆中』による『ストームアロー』で逃走を止められた直後、周囲の『デスストーカー』八体が『サクリファイス』を発動した。光となった魔物たちの魂を吸収し、巨大な白い蠍『★ザ・カラミティ』が召喚される。レベル12、全属性耐性と即死耐性を備えた『名前つき』であり、九本へ分裂した尾へ膨大な力を集め始めた。

迫る大技と決断

アリアドネは、可能な限り距離を取って遮蔽物へ隠れるよう警告した。アリヒトは仲間たちへ退避を命じるが、セラフィナだけは逃げなかった。彼女の背後には、まだ避難できていない住民たちがいたためだった。『ザ・カラミティ』が放とうとしている広範囲攻撃を前に、アリヒトは全員を守るため、一つの可能性へ賭ける決意を固めた。

第四章 五番区の試練

一 災禍

『スティングレイ』への防御

アリヒトは『バックスタンド』でセラフィナを支援対象に指定し、新たに『支援防御2』を取得した。セラフィナの『ディフェンスフォース』と『オーラシールド』を複製する形で防御壁を展開し、『★ザ・カラミティ』の放った全方位熱線『スティングレイ』を防ぎ切る。熱線は建物すら爆砕する威力だったが、二重の盾によって辛うじて耐え抜いた。

近接戦闘形態への変化

『ザ・カラミティ』は『スティングレイ』使用後にオーバーヒート状態へ移行し、『殲滅の死装』を発動して近接戦闘形態へ変化した。白い装甲は黒く染まり、鋏は槍のような形状へ変貌する。さらに地形効果『士気減衰』が発生し、場の空気そのものが圧迫感を帯び始めた。

エリーティアの決死の突撃

エリーティアは、これ以上仲間が傷つくのを見たくないと叫び、『ソニックレイド』と『エアレイド』を発動して単身『ザ・カラミティ』へ突撃した。しかし敵は技能ですらない純粋な速度で彼女を捉え、攻撃を命中させる。自身の血によって『ベルセルク』と『レッドアイ』が発動したエリーティアは、暴走寸前の状態でなお攻撃を続けた。

『不滅なる高貴』

アリヒトの支援を受けたエリーティアは『ブロッサムブレード』と追加攻撃を合わせて四十段もの斬撃を叩き込む。しかし『ザ・カラミティ』は『不滅なる高貴』を発動し、ダメージを半減しながら体力と魔力を徐々に回復していた。装甲についた傷さえ再生していく姿を前に、エリーティアの猛攻も決定打にはならなかった。

テレジアの救援

『ザ・カラミティ』は『ジャベリンディガー』で建物ごとエリーティアを押し潰そうとした。その瞬間、負傷していたはずのテレジアが飛び出し、『アクセルダッシュ』と『アクティブステルス』を発動してエリーティアを突き飛ばし、自身も高速移動で回避した。敵はそのまま建物へ突撃し、周囲へ大きな被害を与えた。

ミサキの切り札

ミサキは『道化師の鬼札』の特殊能力『ジョーカーオブアイス』を発動し、『ザ・カラミティ』へ怒り状態と氷属性弱点を付与した。アリヒトは即座に『フォースシュート・フリーズ』を撃ち込み、敵の足を凍結させる。しかし『ザ・カラミティ』は『スチームミスト』で熱蒸気を放出し、自力で凍結を解除したうえ、『絶対領域』によって接近者への先制攻撃能力まで獲得した。

撤退か抗戦か

アリヒトは、『不滅なる高貴』による回復能力を考慮すると、自分たちだけでは討伐し切れない可能性を悟る。撤退の考えが脳裏をよぎる一方で、『ザ・カラミティ』を放置すれば街への被害は拡大する状況だった。そんな中、セラフィナのライセンスへ、西からの増援と『回廊』への誘導命令が届いた。

衝角車の到着

西方から、巨大な衝角を備えた車両『衝角車』が現れた。ホスロウが操縦し、クーゼルカとギルドセイバーのナユタが同乗していた。彼らは『ザ・カラミティ』を『回廊』奥へ誘導し、街に設置された特殊兵器によって迎撃する作戦を提示する。しかし『衝角車』だけでは敵を誘導できず、現在交戦中のアリヒトたちが囮役を担う必要があった。

全員での誘導作戦

アリヒトは、誰か一人だけを囮にするのではなく、『全員で』逃げながら誘導する決断を下した。仲間たちはアルフェッカへ乗り込み、アリヒトとセラフィナはシオンへ騎乗する。セラフィナは『ライドオンウルフ』を発動し、『ザ・カラミティ』へ『プロヴォーク』を仕掛け、敵意を自分へ固定した。

回廊での逃走劇

『ザ・カラミティ』は猛烈な速度で追撃し、シオンへ何度も槍腕を叩きつける。さらに『回廊』は直角に折れ曲がる構造となっており、減速した瞬間を狙われれば致命的だった。しかしアルフェッカは『バニシングバースト』で限界突破の加速を発動し、シオンも『群狼の追走』で追随する。キョウカの『群狼の構え』も加速効果を発揮し、一行は辛うじて『ザ・カラミティ』の猛攻を回避しながら『回廊』を駆け抜けた。

再び迫る『スティングレイ』

逃走中、『ザ・カラミティ』の『スティングレイ』再使用可能が表示される。アリヒトは再びセラフィナへ盾を借りたいと頼み、セラフィナも迷いなく応じた。彼女は、自分が守りたいものはアリヒトの守りたいものでもあると語り、共に攻撃を受け止める覚悟を示した。

二 迎撃兵器

『スティングレイ』の迎撃

アリヒトたちは『回廊』を直角に曲がりながら逃走を続け、その先に迎撃兵器が備えられていることを察していた。『ザ・カラミティ』は再び『スティングレイ』を発動し、九本の尾すべてをアリヒトへ向ける。アリヒトは『殿軍の将』を発動して仲間の人数分だけ能力を上昇させ、さらにアリアドネへ一時支援を要請した。セラフィナの『ディフェンスフォース』と『オーラシールド』を『支援防御2』で複製し、『殿軍の将』によって強化された防壁『オーラスクトゥム』を展開する。九発の光弾は防壁によって弾き返され、威力を増した反射弾となって『ザ・カラミティ』自身を貫いた。

衝角車による押し込み

『スティングレイ』を受けた直後、『衝角車』が『ザ・カラミティ』へ激突した。巨馬の体当たりと衝角車の衝撃によって、『ザ・カラミティ』は前方へ押し込まれる。さらにホスロウがクーゼルカを投げ飛ばし、クーゼルカは壁面に設置されたレバーへ到達した。そして彼女が仕掛けを作動させると、『ザ・カラミティ』の足元が崩落し、巨大な落とし穴へと落下した。

対魔獣縛鎖砲

落とし穴へ落ちた『ザ・カラミティ』に対し、ナユタが『リリーストラップ』を発動し、『対魔獣縛鎖砲』を射出した。鎖付きの巨大槍が命中するものの、拘束には至らない。さらに『ザ・カラミティ』は落とし穴の中から『ホーミングニードル』でクーゼルカを牽制し、二つ目の兵器の発動を阻止しようとした。

テレジアの決断

その状況を見たテレジアは、自ら左側の壁へ向かう。アリヒトは『バックスタンド』で彼女を支援対象に指定し、『支援攻撃2』を発動した。テレジアは『リリーストラップ』を使って二基目の『対魔獣縛鎖砲』を起動する。魔力不足に陥ったアリヒトは『修道士のアンク』で体力を魔力へ変換しながら支援を継続した。

『天地刃』による装甲破壊

二基目の縛鎖砲によって放たれた六本の槍は、『ザ・カラミティ』を完全拘束する。さらにムラクモの力による『天地刃』が六連続で発生し、これまで傷一つ付かなかった装甲に亀裂を刻み込んだ。『ザ・カラミティ』は明確な苦鳴を上げ、ついに防御を破られた。

総攻撃開始

アリヒトはアリアドネの力で信仰値を魔力へ変換し、最後の総攻撃を開始する。キョウカの『ダブルアタック』、クーゼルカの『ソードレイン』、ナユタの『ダンシングウィップ』、メリッサの『包丁捌き』と『切り落とし』が連携して叩き込まれた。メリッサは部位破壊によって素材を剥ぎ取り、『闘鬼の小手』による追加打撃まで発生させる。

エリーティアの決着

最後に飛び出したのはエリーティアだった。『レッドアイ』を再発動した彼女は、『ブロッサムブレード』を連続で叩き込み、『スカーレットダンス』による強化も重なって圧倒的な火力を発揮する。さらに『支援攻撃2』が限界突破し、『フォースシュート・フリーズ』が四度発生したことで、『ザ・カラミティ』の装甲は完全に凍結していった。連携技『斬花乱舞・五月雨』によって破壊箇所が増え、ついに『ザ・カラミティ』は巨大な氷塊へ閉じ込められる。

『ザ・カラミティ』討伐

『ザ・カラミティ』は『氷牢』状態へ移行し、完全に戦闘不能となった。統率されていた『デスストーカー』たちも戦意を喪失し、街中の戦闘音が止む。アリヒトたちは、誰一人欠けることなく『名前つき』を討伐したことを実感する。しかし全員が深く傷ついており、決して無傷の勝利ではなかった。

エリーティアとテレジア

戦闘後、『ベルセルク』と『レッドアイ』が解除されたエリーティアは力尽きそうになるが、五十嵐とメリッサに支えられる。そこへテレジアが歩み寄り、肩を軽く叩いた。エリーティアは、テレジアこそ自分より強く、いつも仲間を守っていたと涙ながらに語る。テレジアは何も言わず、ただ彼女の手を両手で握り返した。

五番区での功績

クーゼルカとホスロウ、ナユタたちはアリヒトたちの功績を高く評価した。『奨励探索者』として前例のない成果だと認め、『ザ・カラミティ』の素材や黒い箱についてもアリヒトたちが受け取るべきだと判断する。メリッサは凍結した『ザ・カラミティ』を貯蔵庫へ転送し、ギルドセイバーたちは残る『デスストーカー』討伐へ向かった。

五番区滞在許可

帰路の途中、マドカから連絡が届き、アリヒトたちが五番区へしばらく滞在できる許可を得たことが判明した。他区から職人を呼ぶことも可能となり、テレジアの破損した装備の修理にも希望が見える。そしてそれは同時に、エリーティアの友人ルウリィを救出するため、五番区の迷宮へ挑む機会を得たことも意味していた。

第五章 猿侯の悪意

一 白夜旅団副団長

スタンピード鎮圧後の医療所

アリヒトたちはナユタの案内で医療所へ移動し、治療を受けていた。その最中、五つ星迷宮『凪の砂海』におけるスタンピード鎮圧の報告が届く。後方支援として掃討に参加していたアデリーヌは、アリヒトたちこそ今回の最高功績者だと興奮気味に伝えた。『デスストーカー』の反撃が弱まったことで、最終的には五百人規模の探索者が鎮圧へ加わったという。

五番区滞在の準備

クーゼルカたちは掃討後の巡回へ向かっており、アデリーヌは『奨励探索者』向けの独立宿舎へアリヒトたちを案内する役目を任されていた。テレジアとエリーティアの傷は無事に治療され、スズナも魔力回復によってかなり回復していた。セレスとシュタイナーも合流し、五番区滞在中に貸し工房を利用して装備修理を行うことになる。アリヒトは、『赫灼たる猿侯』のいる迷宮へ挑む意思を改めて固めていた。

テレジアの想い

治療後、テレジアはアリヒトから借りたジャケットを返そうとせず、じっと彼を見つめていた。ミサキやキョウカは、その態度がテレジアなりの好意であると指摘する。アリヒトはようやくその意図に気づき、照れながらも宿舎へ戻るまで貸しておくと伝えた。テレジアは小さく頷き、満足そうにジャケットへ触れていた。

『白夜旅団』との遭遇

その直後、白を基調とした外套を纏う集団が医療所へ現れる。エリーティアは彼らを見て動揺し、それが『白夜旅団』の第二・第三パーティであることを明かした。第二パーティを率いるのは、亜麻色の三つ編みをした女性アニエスだった。エリーティアは、アニエスは団長とは異なる理念で動いている人物だと説明する。

エリーティアへの反応

旅団の一員ソウガは、エリーティアが戻ってきたことに驚き、アリヒトたちを値踏みするような態度を見せた。しかしアニエスは、彼らも五番区へ来る資格を持った探索者であり、驕るべきではないとたしなめた。エリーティアはアニエスへ小さく頭を下げるだけで、そのまま立ち去ろうとした。

アニエスとの対話

アリヒトはその場に残り、アニエスと話を交わした。アニエスは、自分もまたルウリィを見捨てた一人であり、何も言う資格はないと語る。アリヒトは、エリーティアの話を聞き、彼女の親友を助けたいと思ったからここまで来たのだと率直に伝えた。

『赫灼たる猿侯』の正体

ソウガは、『赫灼たる猿侯』は五番区最強かつ最古の『名前つき』であり、『炎天の紅楼』の二層以降を支配する『魔王』のような存在だと説明した。迷宮内に自らの領土を築き、眷属を従えているため、五番区の探索者たちですら討伐を避けているという。ソウガは、アリヒトたちでは勝てず、また仲間を失うだけだと忠告した。

旅団との違い

アリヒトは、旅団の全員が仲間を切り捨てる思想で一致しているわけではないと知り、少し安心したと語った。自分たちはエリーティアを信じ、ルウリィがまだ生きていることを前提に動いていると伝える。ソウガは反発しながらも、アリヒトたちの覚悟を認め始めていた。

副団長アニエス

アニエスは、自らを『白夜旅団』副団長アニエス=フィーエと名乗った。そして、『炎天の紅楼』二層途中までの地図データをアリヒトへ提供する。旅団として許される行為ではないかもしれないが、これくらいはしたいと語る彼女には、ルウリィを救えなかったことへの負い目が残っていた。

シロネの現状

アリヒトは、シロネがカルマ上昇によって七番区で拘束されていることを告げた。さらに、シロネは旅団について思い詰めている様子だったため、いずれ団長と直接話したいと考えていることも明かした。旅団の面々はその言葉を軽視せず、静かに受け止めていた。

新たな決意

ソウガは最後に、やりたいことを通すには相応の力が必要だと告げる。アリヒトもまた、自分たちにはまだ力が足りず、さらに強くならなければならないと認めた。旅団がなお攻略を断念している『赫灼たる猿侯』の迷宮へ挑むには、ただ理想を語るだけでは足りない。アリヒトは、ルウリィが生きていることを信じ、その前提で必要な準備を進めていく決意を新たにしていた。

二 料理人

中位ギルド『フォレストダイナー』

アリヒトたちは医療所を出たあと、ルイーザと合流するため中位ギルドへ戻った。彼女は専属案内役として五番区への移動許可を得ており、後から合流していた。中位ギルドは『フォレストダイナー』とも呼ばれ、大食堂を兼ねている施設だった。スタンピードによる被害を受けたため、多くの料理人たちが集まり、探索者たちへ料理を振る舞っていた。アリヒトたちはスタンピード鎮圧の『最功労者』として、食堂ではなく個室へ案内される。

料理人マリア

個室へ現れたのは、『料理人』マリア=ミラーズだった。彼女は淡々とした態度ながらも深々と頭を下げ、スタンピード鎮圧を労った。そして巨大な岩塩蒸し料理を運び込む。塩のドームを崩すと、中から海藻に包まれた貝や肉、野菜が現れた。テレジアが真っ先に口へ運び、その味に驚愕する。塩加減は絶妙で、肉は口の中でほどけるような食感だった。さらに料理には回復効果もあり、スズナの魔力回復速度が上昇していた。

料理がもたらした安らぎ

キョウカや五十嵐は料理の質へ感嘆し、メリッサは調理技術に強い興味を示した。エリーティアも料理を口にし、美味しさを認めながらも、ルウリィのことを考えて気持ちが晴れない様子を見せる。それでも彼女は、自分が焦ってはいけないと理解していると語った。アリヒトたちは、戦い続きだった状況の中で、久しぶりに落ち着いた時間を過ごしていた。

五つ星迷宮への許可問題

食事の最中、アリヒトはルイーザへ五番区迷宮への進入許可について尋ねた。しかし現状では、四つ星迷宮の正式許可を取得していない段階で五つ星迷宮へ入るのは難しいと説明される。それでもルイーザは、彼らがここまで努力してきたことを知っているため、一時的な許可が下りるよう要請すると約束した。

五番区ギルドセイバーの反発

ルイーザはさらに、今回のスタンピード鎮圧について、五番区ギルドセイバー本部が快く思っていないことを明かした。六番区常駐部隊と七番区出身の『奨励探索者』が大きな成果を挙げたことで、五番区部隊の立場が揺らいでいるためだった。その影響で、アリヒトたちへ『奨励探索者』より上位の称号を与える話も浮上しているという。

豪華な料理の数々

岩塩蒸しの後には、白身魚のパイ包み焼き、スープ、サラダ、果物などが次々と運ばれた。テレジアは怪我をした腕を庇っていたため、アリヒトが食事を補助する。最後には三種類のデザートが提示され、その中には能力値上昇効果を持つ『堅牢の白桃ミルフィーユ』も含まれていた。戦闘メンバーの多くは、防御力向上を期待してそのデザートを選択する。

『熱情』を巡る会話

一方、『熱情のシュトゥルーデル』には酒が使われていると説明され、ルイーザと五十嵐はそちらを選ぶ流れとなった。ミサキは冗談めかしてマドカを『大人の階段』へ誘い、周囲を慌てさせる。セレスやシュタイナーも酒入りデザートで上機嫌になり、場は和やかな空気に包まれていた。

果実利用の提案

食事の終盤、セレスはアリヒトへ、能力上昇効果を持つ果実をマリアへ料理してもらえば、調薬師を探すよりも早く効果を高められるのではないかと提案した。アリヒトもその案に可能性を感じ、後日マリアへ相談しようと考える。五番区での戦いに備え、彼らは少しずつ次の準備を進め始めていた。

三 五番区司令官

スタンピードの分析

アリヒトたちは宿舎へ向かう途中、アデリーヌからスタンピード鎮圧後の情報共有を受けた。『ザ・カラミティ』は同族の魂を吸収することで強化される女王型の『名前つき』であり、もしさらに多くの魂を取り込んでいれば手がつけられない存在になっていた可能性が高いという。結果的に、戦線が五番区全域へ早期に拡散し、『デスストーカー』の討伐数が少ないまま『ザ・カラミティ』を撃破できたことが功を奏していた。

前回スタンピードの記録

アデリーヌは五番区ギルドセイバーの記録を見せながら、一年前にも同じスタンピードが発生していたことを説明した。当時の五番区司令官は『ザ・カラミティ』との戦闘で重傷を負い、上位区から救援が来るまで三日間も鎮圧できなかったという。その責任によって司令官は交代となっていた。今回、一日で鎮圧できたにもかかわらず、五番区部隊が主導権を握れなかったことに現司令官たちは強い責任を感じているらしかった。

ディラン司令官との遭遇

そんな話をしている最中、ナユタと一人の男性ギルドセイバーが現れる。セラフィナとアデリーヌは即座に姿勢を正し、その男がディラン三等竜佐、すなわち五番区司令官であることが判明した。ディランは堅苦しさの少ない人物で、ホスロウを本名のジョシュと呼ぶなど、クーゼルカやホスロウとは旧知の仲である様子を見せていた。

五番区部隊からの謝罪

ディランは、アリヒトたちへまず謝罪を述べた。『ザ・カラミティ』討伐に対し、独断専行だったと批判する声が五番区部隊内部に存在していたためだった。しかしディラン自身は、『名前つき』討伐を成し遂げた探索者へまず賛辞を送るべきだと考えており、そのような反応を深く恥じていた。ナユタもまた、討伐の主導はアリヒトたちだったと明言した。

『特別選抜探索者』

ディランは、アリヒトたちへ新たな称号を授与すると告げる。それは『奨励探索者』の上位称号である『特別選抜探索者』だった。証として渡された『マギスタイトのメダリオン』は、魔力上限値を上昇させる効果を持つ装備品でもあった。ディランは、それをお守り代わりに持っていてほしいと語った。

七日間の滞在許可

さらにディランは、アリヒトたちへ特例として七日間の五番区滞在許可を与えると説明した。しかしそれはあくまでスタンピード鎮圧への要請に伴う一時的措置であり、正式な探索資格とは別問題だった。アリヒトは『炎天の紅楼』探索許可について直接頼み込もうとするが、ディランは規則は規則であるとして首を振る。

許可への条件

ディランは、今回得た特別貢献度と五番区での実績を合算すれば、数日以内には五つ星迷宮への許可が下りるだろうと説明した。『名前つき』討伐という条件自体は既に達成済みであり、あとは制度上の基準を満たすだけだった。しかしアリヒトは、一日でも早くルウリィを助けたいという思いから、焦りを隠せずにいた。

エリーティアの制止

そんなアリヒトを、エリーティアが袖を引いて制止する。彼女は、『赫灼たる猿侯』の恐ろしさを知っているからこそ、無理をすれば再び誰かを失うと理解していた。テレジアもエリーティアへ寄り添うように近づくが、エリーティアは、仲間全員が無事でなければ意味がないと静かに語った。

五番区での成長方針

アリヒトは、自分たちは既に『デスストーカー』を倒しており、五番区の通常魔物と戦えないわけではないと主張した。五番区内の比較的低難易度な迷宮で経験を積み、貢献度を上げながら力を伸ばすという方針を提案する。五十嵐もそれに賛同し、七日間を無駄にしたくないと後押しした。エリーティアは葛藤しながらも、最終的には五番区でレベルを上げるための迷宮情報を集めることを決意する。

エリーティアの単独行動

エリーティアは、そのまま情報収集へ向かおうとし、宿舎へ戻ろうとしなかった。アリヒトは怪我を心配して引き留めようとするが、彼女はまだ気持ちが高ぶっており、宿舎へ戻っても休めないと笑顔で答える。そして、遅くならないうちに戻ると告げ、人通りの多い通りへ消えていった。アリヒトは彼女を案じながらも、今はその判断を信じるしかなかった。

四 魔物と眷属

『神秘の湖畔』での日々

エリーティアは、『白夜旅団』第三パーティの一員として初めて五番区へ来たときのことを思い返していた。『神秘の湖畔』という迷宮では、当時レベル7だった彼女も戦闘へ参加し、レベル8へ到達した。そのとき常に傍にいたのが、治癒師ルウリィだった。ルウリィは『ヒールウィンド』によって傷を癒やし、エリーティアを支え続けていた。

兄ヨハンの変化

しかし旅団の団長である兄ヨハンは、ルウリィの治癒技能を頼ろうとせず、自らポーションで回復することも多かった。エリーティアにはその理由が理解できなかった。かつての兄はここまで独善的ではなかったが、迷宮攻略を進めるにつれ、周囲を自分の思い通りに動かそうとするようになっていた。父も当初は諫めていたものの、負傷して以降は口を挟まなくなっていた。

『緋の帝剣』との出会い

パーティ内で足手まといになっていたエリーティアへ、ヨハンは『緋の帝剣』を渡した。それを使えればレベル差を覆して貢献できるかもしれないと告げられ、エリーティアは旅団へ居場所を得るため、その力へ縋った。剣を装備できた瞬間、ヨハンは少年のように喜んでいたが、エリーティア自身は兄へ媚びた自分を恥じていた。それでも、ルウリィと共にいられることだけは嬉しかった。

シロネへの共感

エリーティアは、自分もまたシロネと同じだったと自覚していた。『緋の帝剣』の危険性を理解しながら頼り続け、スズナが止めてくれなければ仲間を傷つけていたかもしれない。だからこそ、シロネを責める資格はないと思っていた。今こうして五番区まで辿り着けたこと自体が奇跡であり、この仲間たちを絶対に失いたくなかった。

仲間を危険へ巻き込む恐怖

エリーティアは、ルウリィを助けたいという願いが、仲間たちへ危険を強いることを恐れていた。このパーティならもっと先へ進めるはずなのに、自分の願いが皆の未来を断ち切ってしまうかもしれないと考えていた。一方で、アリヒトが最も望んでいるのはテレジアを人間へ戻すことであり、それを叶えたいとも強く思っていた。

単独潜入の決意

エリーティアは、旅団時代に得た資格によって、個人探索者として五つ星迷宮へ潜入可能であることを仲間たちへ隠していた。カルマを上げることなく単独で潜れる以上、自分だけでルウリィを探しに行くべきではないかと考えていたのである。もしルウリィが既に命を落としていたなら、その現実をまず自分一人で受け止めなければならないとも思っていた。

『炎天の紅楼』へ

エリーティアは『炎天の紅楼』入口へ向かう。そこは赤い柱に囲まれた不気味な迷宮であり、ギルドセイバーすら近づかない場所だった。そこで彼女は、探索者が魔物へ従属させられ、一定期間後には魔物認定されるという噂を耳にする。さらに、操られた探索者を討伐し、その装備を奪おうとする者たちの存在まで知ってしまった。

ルウリィへの危機感

『治癒師』であるルウリィは、高価な後衛装備を身に着けていた。もし魔物扱いされれば、装備目当てに命を狙われる危険があった。エリーティアはそれを聞いた瞬間、居ても立ってもいられなくなる。彼女は探索者たちの制止も振り切り、『炎天の紅楼』へ飛び込んだ。

『猿侯』の迷宮

迷宮内には、赤い葉を揺らす森が広がっていた。この迷宮には『赫灼たる猿侯』の眷属以外の魔物は存在せず、スタンピードも発生しないため、ギルドセイバーは積極介入していない。しかし『猿侯』は従属させた探索者を戦力として抱えており、それこそが長年討伐されない最大の理由だった。

一人で戦う覚悟

エリーティアは、『レッドアイ』を発動すれば『猿侯』にも対抗できるかもしれないと考えていた。仲間を危険へ巻き込みたくない以上、自分一人でルウリィを探し出し、連れ帰るしかないと決意していた。そして、二度と後悔しないために、『ソニックレイド』を発動しながら迷宮奥地へ駆け出していった。

五 燃える森

『炎天の紅楼』第二層

エリーティアは赤い列柱を抜け、『炎天の紅楼』二層へ転移した。そこは夜の迷宮でありながら、燃えるような赤い森と橙色の灯りによって異様に明るかった。以前よりも遥かに巨大化した『猿侯』の砦が、転移直後から見える位置に存在していた。エリーティアは、探索者たちが砦へ侵入する様子を木陰から追跡する。

探索者たちの思惑

侵入していた探索者たちは、『猿侯』に従属させられた探索者を討伐し、その装備を奪おうと企んでいた。彼らは、魔物に操られた探索者を始末することは正当防衛だと笑い合っていた。エリーティアは、その対象がルウリィかもしれないと考え、怒りと焦燥を募らせる。

『猿侯』の砦

探索者たちは、巧妙に隠された門の仕掛けを発見し、砦内部へ侵入する。エリーティアも門が閉まる寸前に滑り込み、広場の石像の陰へ身を潜めた。しかし直後、広場に異変が起こる。地面へ赤い紋様が浮かび上がり、『赫灼たる猿侯』が『煉獄の障壁』を発動したことで、周囲は高熱の脱出不能空間へ変貌した。

『赫灼たる猿侯』の眷属

砦内には、『猿侯』に従属した探索者たちが待ち構えていた。格闘家、踊り子、地形士といった高レベル探索者たちは、猿の面と黒い外套を纏い、『猿侯』の命令で行動していた。さらに『猿侯』自身は『ウォードラム』によって眷属たちを強化し、『ホライズンロア』によって探索者たちを混乱へ陥れる。

探索者パーティの壊滅

侵入していた探索者パーティは、一瞬で崩壊した。『踊り子』の魅了技能によって仲間同士の連携が乱され、『格闘家』と『地形士』の攻撃によって次々と行動不能へ追い込まれる。エリーティアは彼らを助ける余裕もなく、その光景を目の当たりにするしかなかった。『猿侯』が探索者たちを従属させ続けてきた理由と、この迷宮へ誰も近づきたがらない理由を、彼女は改めて理解する。

エリーティアの決死戦

エリーティアは、『ベルセルク』と『レッドアイ』を発動した。彼女は仲間を巻き込まず、自分一人で『猿侯』を倒す覚悟を固めていた。『スカーレットダンス』による残像『紅影』を纏い、眷属たちの攻撃を全て回避しながら、『ブロッサムブレード』を連続で叩き込む。高速連撃によって『猿侯』を追い詰め、あと一撃で倒せるところまで追い込んだ。

『影武者』の正体

しかしその瞬間、『猿侯』の姿が変化する。エリーティアが戦っていた相手は、本物ではなく『影武者』だった。正体を現したのは『★獄卒の魔猿』であり、本物の『赫灼たる猿侯』は炎の壁を背にして新たに姿を現す。そしてその傍らには、一人の『治癒師』が立っていた。

ルウリィとの再会

その『治癒師』こそ、ルウリィだった。猿の面と黒い外套に身を包みながらも、彼女はかつてと同じワンドを持っていた。ルウリィは『オープンウーンズ』を発動し、『ザ・カラミティ』戦で負ったエリーティアの傷を強制的に開かせる。さらに『ヒールウィンド』によって『獄卒の魔猿』を回復し、『猿侯』へ従っていることを見せつけた。

絶望と後悔

エリーティアは、親友が敵として立っている現実に絶望する。『レッドアイ』と『ベルセルク』の効果が切れたことで力も失われ、全身は限界へ達していた。彼女は、もし自分が従属させられるなら、最後に自ら命を絶たなければならないと考える。しかし身体はもう動かなかった。

仲間たちの到着

そのとき、砦の後方から轟音が響く。アルフェッカの車輪の音と共に、アリヒトたちが駆けつけてきた。キョウカは倒れかけたエリーティアを支え、アリヒトは後方から回復技能を発動する。エリーティアは意識を失いかけながらも、皆へ逃げてほしいと懇願した。しかし彼らは撤退せず、『赫灼たる猿侯』とその眷属へ立ち向かおうとしていた。

六 血路

エリーティア追跡

アリヒトたちは、エリーティアが単独で『炎天の紅楼』へ向かう可能性を予測していた。クーゼルカとホスロウの協力によって、一時的な五つ星迷宮侵入許可を得ていたため、エリーティアの単独潜入も規則上は認められる範囲だった。二層へ侵入したアリヒトたちは、アデリーヌの『使い魔の矢』による索敵でエリーティアの位置を把握し、アルフェッカの力で急行する。閉ざされた砦の門は『支援攻撃1』の固定ダメージで破壊し、さらに『銀の軌跡』によって『煉獄の障壁』を突破した。

砦内部への突入

砦内部へ突入できたのは、アルフェッカへ搭乗していたアリヒト、五十嵐、テレジア、セラフィナの四人だけだった。そこではエリーティアが一人、『赫灼たる猿侯』と眷属たちへ追い詰められていた。五十嵐はすぐにエリーティアを抱え上げて後退を図るが、『猿侯の眷属』たちが妨害へ動く。

眷属との交戦

『格闘家』の『震空波』を、セラフィナは『オーラシールド』とアリアドネの加護で防ぎ切った。さらにアリヒトの『支援攻撃2』による『フォースシュート・スタン』が発動し、セラフィナの『シールドスラム』とキョウカの『サンダーボルト』によって、『格闘家』と『踊り子』を足止めする。『地形士』が地形変化技能を発動しかけるが、アリヒトの『フォースシュート・フリーズ』が命中し、行動を封じた。

『獄卒の魔猿』の投擲

撤退を開始しようとした瞬間、『獄卒の魔猿』が巨大な金棒を投擲する。狙いはアルフェッカだった。もし『銀の車輪』が破壊されれば、脱出手段を失う。セラフィナは『防御態勢』『ディフェンスフォース』『オーラシールド』を重ね、アリヒトも『支援防御2』とアリアドネの『ガードヴァリアント』で防御を支援した。その結果、巨大な金棒は完全防御され、反射ダメージが『獄卒の魔猿』へ返される。

『赫灼たる猿侯』の本命

しかしそれは陽動に過ぎなかった。本命は『赫灼たる猿侯』自身の『暗器投擲』だった。鎖付き鉄球がアルフェッカへ命中し、『拘束』と『技能封印』を付与する。アルフェッカは実体化解除すらできなくなり、『猿侯』は圧倒的な膂力で車体ごと引き寄せ始めた。

『天地刃・斬鉄』

アリヒトはムラクモを抜き放ち、アリアドネへ支援を要請する。『ガードアーム』によって召喚された巨大な機神の腕が、巨大化したムラクモを握り、『天地刃・斬鉄』を発動した。その一撃は『煉獄の鎖』を両断し、アルフェッカの拘束を解除する。

テレジアの奇襲

その間にテレジアは『猿侯』の死角へ回り込み、『アサルトヒット』と『蝶の舞い』を発動して四連続攻撃を叩き込む。さらにアリヒトの『フリーズバレット』支援によって氷結効果が重なり、『猿侯』は初めて明確な苦鳴を上げた。レベル差があっても、不意打ちと属性相性によって攻撃は通用することが証明される。

『隷属印』への干渉

しかし、『赫灼たる猿侯』は最後に凶悪な反撃を行った。テレジアへ『呪詛侵蝕』を命中させ、『隷属印』への上書きを開始したのである。テレジアの首筋には痣のような紋様が浮かび上がり、アリヒトは『猿侯』が探索者たちを従属させる仕組みを理解する。このままでは、テレジアもまた『猿侯』の支配下へ置かれてしまう危険があった。

砦からの離脱

アリヒトは苦渋の決断として撤退を命じる。アルフェッカは『バニシングバースト』によって限界突破状態へ入り、『銀の軌跡』で再び『煉獄の障壁』を突破した。燃え盛る炎の砦から脱出する寸前、ライセンス表示には、ルウリィが『ヒールウィンド』と『ピュリフィケーション』で『赫灼たる猿侯』を治癒している姿が映し出されていた。

再戦への決意

エリーティアは五十嵐の腕の中で意識を取り戻し、自分の軽率さを涙ながらに謝罪する。しかしアリヒトは、ルウリィが生存していることが確認できただけでも意味があったと告げた。そして、『赫灼たる猿侯』には必ず借りを返すと宣言する。テレジアの『隷属印』が完全に上書きされる前に、『猿侯』を倒し、全てを取り戻さなければならない。七日間という限られた滞在期間の中で、彼らは再び砦へ挑む決意を固めていた。

書き下ろし番外編 七番区スパの夜

七番区の人気施設

七番区では、ギルドが経営するスパが探索者たちの人気を集めていた。娯楽の少ない迷宮国において、他パーティとの交流の場でもあるスパは貴重な存在であり、常に混雑していた。アリヒトは男湯で静かに過ごすつもりだったが、定員超過により、仲間たちが予約した家族風呂を利用するよう案内される。女性陣はすでに同意済みであり、アリヒトは戸惑いながらも家族風呂へ向かうことになった。

家族風呂での再会

家族風呂では、ミサキやルイーザたちが湯浴み着姿でくつろいでいた。そんな中、テレジアだけは蜥蜴のマスク以外を身につけず、裸のままアリヒトを迎えに現れる。あまりにも無防備な姿に、アリヒトは完全に動揺してしまう。キョウカやルイーザも慌てるが、当のテレジアは全く気にしておらず、アリヒトの頬へ触れて下を向かせようとした。

背中流しの申し出

ミサキは冗談めかして、皆でアリヒトの背中を流そうと言い出す。スズナもまた、以前アリアドネの信仰値上昇に協力した件への感謝を込めて、背中を流したいと申し出た。ルイーザも加わり、アリヒトは女性陣に囲まれながら洗い場へ座らされることになる。柔らかな感触や耳元で囁かれる声に、アリヒトは平静を保とうとするほど意識してしまい、自分でも知らなかった感情が大きくなっていることを自覚していた。

『フォーシーズンズ』の登場

そこへ、サウナから『フォーシーズンズ』の四人が現れる。汗で上気した姿の彼女たちは、ミサキの流れに乗るように、アリヒトへ背中流しや世話役を申し出た。キョウカやルイーザも冗談交じりに耳かきやマッサージを提案し、さらにメリッサは毛づくろいまで申し出るなど、場は賑やかな空気に包まれる。

『フォーシーズンズ』からの感謝

やがて『フォーシーズンズ』の四人は、改めてアリヒトへ感謝を伝え始める。カエデは、五番区へ向かう前に今のうちに礼を言いたかったと語り、イブキはアリヒトを本当の意味で『先生』だと認めていた。リョーコもまた、アリヒトから多くを学んだと語り、いつか成長した姿を見せたいと約束する。最初は頼りなく見えたと打ち明けた女性も、今ではその認識を恥じていた。

賑やかな夜

カエデは冗談めかして、次に会ったときにはアリヒトを奪うかもしれないと口にし、その場は笑いに包まれる。しかしアリヒト本人だけは、その言葉を本気とは受け取っていなかった。一方でテレジアだけは、アリヒトの身体を流す役目は自分のものだと言わんばかりに、桶を抱えたまま静かに待っていた。

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