結界師の一輪華
結界師の一輪華 1

柱石と一瀬家の双子
日本は五つの柱石で支えられ、五家が災厄から国を護っていた。一ノ宮の分家・一瀬家には双子の姉・葉月と妹・華がいたが、家の期待は才能ある葉月へ偏っていた。
華の覚醒と「落ちこぼれ」の仮面
十五歳の誕生日、華は体内から力が剥がれ落ちるような異変を感じ、芽生えた力を秘密にすると決めた。以後、華は黒曜学校であえて落ちこぼれを演じCクラスに留まり、術者ではなく普通の就職を目指していた。友人の鈴と、華が生み出した人型の式神・葵と雅だけが支えとなった。
朔との出会いと妖魔騒ぎ
一ノ宮の当主交代に伴う披露の席で、華は一ノ宮朔と遭遇した。結界の移行で妖魔が活発化し、Cクラスも出動する事態となり、華は鈴を救うため力を振るいかけたが、朔が強力な式神で場を制圧した。朔は華に関心を向け始めていた。
突然の求婚と契約婚
帰路、朔は車内で華に結婚を申し込み、華は拒否して逃げたものの、後に契約書と婚姻届を渡され署名した。成功報酬や住居、就職斡旋などの条件に揺れつつ、華は法的に朔の妻となった。
一ノ宮家での祝言と対立
朔の本家で華は朔の母・美桜らと対面し、祝言が結界強化に必要だと告げられた。祝言後、朔の弟・望が華を侮辱し決闘となるが、華の式神が勝利し、周囲の態度は一変した。
犬の惨殺事件と新たな式神
近隣で動物の殺傷や不可解な殺人が続き、朔は華に捜査協力を求めた。条件に別荘を提示され、華は承諾する。調査の末、黒い狼のような存在は恨みでたたり神と化した犬神であり、華は怨念を解いて鎮めた。関与していた雄大は裁かれ、犬神は華の式神「嵐」として仕える道を選んだ。事件後、契約は終息に向かうが、朔は離婚を拒み、華は朔の本気に戸惑いを深めていた。
結界師の一輪華 2

呪具盗難事件の発生
術者協会本部において、厳重な警備を突破した侵入者により危険な呪具が盗まれた。犯人は保管配置を熟知していたかのように標的を選別しており、事件は五家の当主へ即座に共有される。内部関与の可能性も示唆され、緊張が高まった。
華の結婚がもたらした一瀬家の歪み
華が一ノ宮当主・朔の妻となったことで、一瀬家の空気は悪化した。両親は華を逆恨みし、家の利益を優先して葉月に望まぬ結婚を強要する。葉月は反発しながらも、華との溝が決定的になった現実を受け止めきれずにいた。
別荘と夫婦関係の変化
犬神事件後、朔は海辺の別荘を華に譲り、妖魔の掃除を任せる。華は実力を発揮する一方、閉ざされた環境に退屈を覚える。温泉街への外出を通じ、朔の不器用な優しさに触れ、二人の距離はわずかに縮まっていく。
二条院双子の介入と学園の波紋
二条院当主候補の桔梗と桐矢が華に接触し、桔梗は三十億円と引き換えに離婚を迫る。朔はこれを断固拒否し、双子は転校生として黒曜学校に現れる。桔梗の執着は対決騒動へ発展し、最終的に望と桐矢の式神戦となり、望が勝利を収めた。
劣等感と向き合う者たち
華は望の抱える兄への劣等感を見抜き、朔は比較で人を測る存在ではないと語って彼を支える。自身もまた見下されてきた過去を省み、華は誰かを支える立場を自覚していく。
葉月との再会と呪具事件の真相
紗江の訪問をきっかけに、華は葉月の犠牲を知り対面を決意する。再会の最中、学校が妖魔に襲撃され、盗まれた呪具が使用されていたことが判明する。華は結界を展開して校内を守り抜き、その力は周囲に知れ渡った。
選択と決別
華はAクラス編入を拒否し、Cクラスに留まる意思を貫く。事件終結後、葉月と共に一瀬家を訪れ、両親に決別を告げる。葉月も結婚を拒否し、自らの人生を選ぶと宣言する。
新たな一歩
二人は一瀬家を去り、一ノ宮の屋敷で朔に迎えられる。束縛から解放された姉妹は、それぞれの意思で未来へ進む決意を固めた。
結界師の一輪華 3

昇級試験と雪笹の登場
国内の山で術者協会主催の昇級試験が行われ、三光楼雪笹が四色から五色への昇級を果たした。試験後、雪笹は一ノ宮当主となった朔が結婚し、柱石の継承を終えていた事実を知り、その相手が一瀬家の落ちこぼれとされた華であることに衝撃を受ける。
一瀬家の崩壊と葉月の保護
一瀬家では、葉月が家を出たことで両親の怒りが募っていた。彼らは原因を華に押し付けるが、使用人や兄の柳は両親の非を理解していた。葉月は一ノ宮家で保護され、華や朔、美桜の配慮のもと新生活を始める。
学園生活と力の露呈
華は試験結果や授業変更に翻弄されつつも、実戦形式の訓練で圧倒的な実力を示す。桔梗や桐矢、鈴との関係も安定し、Cクラスの中で一定の信頼を得ていった。一方、雪笹は華に接触し、挑発的な態度を取るようになる。
雪笹の介入と陰謀
雪笹は一瀬家の両親と接触し、葉月奪還と華の排除を焚きつける。両親はその提案に乗り、裏で行動を開始する。華は葉月を守るため警戒を強め、望や桔梗たちにも協力を求めていた。
鈴の誘拐と廃工場の罠
雪笹の指示により、鈴は葉月を廃工場へ誘導する役を強要され、拒否した末に拉致される。雪笹はその様子を監視し、華をおびき出すための道具として利用していた。
廃工場での対峙と真相
廃工場に現れたのは葉月ではなく華であり、両親と雪笹は動揺する。華は両親の身勝手さを糾弾し、父の式神の過去にも言及して完全に決別する。雪笹は華を閉じ込め妖魔を放つが、華は結界と式神で応戦する。
策略の裏側と決着
一連の事件は、朔と雪笹が協力して一瀬家の両親を失脚させるための策略でもあった。鈴の無事が確認され、両親は表舞台から退かされる。華は雪笹に一撃を加え、事件は収束する。
朔の怒りと関係の深化
後日、朔は雪笹のもとを訪れ、華に傷を負わせたことを理由に激怒し、二度と手を出すなと警告する。朔が華を深く愛していることを雪笹は初めて理解する。
余波と新たな日常
一瀬家の両親は隔離同然の生活に移され、葉月は柳と共に距離を置く選択をした。華は怪我の回復を待ちながら学校を休むが、朔との関係はより強固なものとなる。衝突を繰り返しながらも、二人は夫婦として前に進み続けるのであった。
結界師の一輪華 4

囚人の異変
術者協会本部への侵入事件は収束したが、地下で監禁されていたテロ集団「彼岸の髑髏」が、ある日一斉に苦しみ始める。監視員が異常を察知し、協会内部に不穏が広がる。
一瀬家の再編と華の揺れ
一瀬家では両親が失脚し、柳が当主となる。葉月は抑圧から解放され、柳も関係改善を図って学祭準備を支える。一方、華は朔や式神と日常へ戻るが、朔のフレンチ同伴で雪笹や第四学校の牡丹・星蘭と遭遇し、疎外感と嫉妬を抱く。朔は華を妻として明確に扱い、華の力も公に評価される。
学祭と交流戦の火種
学校では学祭と交流戦が告知され、望や生徒会は第四学校への雪辱を掲げる。桔梗の強い推薦で華は選抜入りし、本人は渋るが葉月の懇願もあって承諾する。朔は華の変化を肯定し、自由に振る舞うよう背中を押す。裏では朔が、彼岸の髑髏全員の死亡が呪いによる可能性を掴み、柳や四道葛に調査を命じる。
葛の接近と呪いの兆候
朔は夜ごと華の隣に入り込む関係が常態化し、美桜は華に一ノ宮家を担う教育を示す。朔は「彼岸の髑髏は呪いで死んだ」と告げ、華と望へ介入禁止を命令する。学祭準備の最中、漆黒最強とされる四道葛が現れ、華へ関心を向ける。帰宅後、華は呪いで傷ついた嵐を密かに解呪して救い、葛の底知れなさも警戒する。
学祭の襲撃と対抗戦
学祭は盛況で、華たちは屋台巡り中に牡丹・星蘭と衝突し、華が牡丹を退ける。交流戦では桔梗や桐矢が勝利を重ね、華は最終種目で虫の式神あずはを用い牡丹を圧倒し、虫の式神の価値を証明する。だが校内で呪いを含む呪具が見つかり、柳の負傷とともに、葛が五家への反逆として妖魔封じの呪具を仕掛けた事実が露見する。
葛の拘束と余波
妖魔騒動で学祭は中止となり、優勝の喜びは失われる。朔は混乱の中で葛を追い詰め、特殊な呪具で力を封じて拘束する。葛は華への執着を匂わせ連行され、華は解呪の力を問われても否定する。屋敷で静養する華は、朔の責任感と自分の自立を見つめ直し、互いの存在の重さを再確認するのであった。
結界師の一輪華5

独房の再会と葛の執念
独房の葛を五葉木槐が訪れ、呪いで封じた拘束を誇示しつつ対話する。槐はかつて葛の師であり、葛は槐を超えたと思ったことがないと語る。槐は反逆を止めるよう忠告するが、葛は五家の体制と運命の縛りを嫌悪しつつも、槐だけは国より大切だと言い切り、覚悟を固める。
審議会と「華」の影
漆黒最強の四道葛の反乱は五家を揺らし、当主らの審議会が開かれる。奇人として知られる槐も出席し、朔へ研究協力を迫るなど場を乱しながら議論に加わる。拘束された葛は飄々と挑発し、動機を「三年前」に結びつけて華の覚醒時期を問い、朔を動揺させる。さらに「国と華のどちらかを選ぶ時が来る」と警告し、真意不明のまま審議会は曖昧に終わる。
契約の重さと呪いの増殖
学祭被害は急速に修復され、葛の反乱は表向き「彼岸の髑髏残党のテロ」と秘匿される。朔は千守家が関わる当主交代の経緯を探り、華との婚姻が“本家として迎え入れる契約”で離婚困難だと明かし、華は驚き怒る。直後、嵐が動物を守るため呪いを抱え込んで帰還し、華が解呪する。呪いの発生現場が増えていると判明し、朔は調査を決断する。加えて朔は新式神ユズリハを作り、椿の「浮気」騒動を可愛い鳥で鎮圧する。
一瀬家の祝宴と術者襲撃の連鎖
柳の当主就任祝いで一瀬家を訪れた華と朔は、屋敷と使用人が一新された現実に柳の覚悟を見る。祝宴中に術者が妖魔に襲われた報が入り、朔と柳が対応へ向かう。事件は偶発ではなく、妖魔が意図的にけしかけられた疑いが濃くなる。以後、術者の失踪と強化妖魔の出現が続き、被害は上位色の術者にも及ぶ。
廃墟の呪陣と槐の介入
学校再開後も事件は秘匿され、警備だけが強化される。帰路の事故をきっかけに華は廃墟の気配を察知し、呪いの陣で動物が吸われる現場を力業で破壊する。さらに行方不明の術者と、人を取り込みかけた妖魔に遭遇し、槐が術で一瞬に処理する。槐は朔が華を騙している可能性を示唆するが、華は朔への信頼を言い切り挑発を退ける。朔は華へ本気の想いを告げかけるも、ユズリハ乱入で中断する。
星蘭の暴走、首謀者の断罪、そして解放
華は桔梗・桐矢・牡丹と外出中に妖魔戦へ巻き込まれ、星蘭が妖魔を操り「華以外を糧にする」と宣言する。華は結界と浄化で制圧し、背後の計画が葛派によるものと浮上する。朔は亜蔓を首謀者と断じ、召喚妖魔すら一言で霧散させて決着させる。星蘭は捕縛され、葛も隔離されるが、千守当主の判断で両名は異例の解放となる。朔は「運命は変わらない」と告げられ苦悩し、国と華の選択を突きつけられる。華は自分を犠牲にする覚悟を口にしつつ、朔に“すべてを守る道”を求め、朔は決意を新たにする。最後はユズリハの乱入で空気が緩み、日常へ戻っていくのであった。
結界師の一輪華6

千守椎那と夕顔の終わりの気配
千守家当主・千守椎那は地下の主柱へ向かい、透明な柱石に封じられた十四歳の少女を前に、五百年続く後悔を噛みしめる。周囲では漆黒の術者たちが六芒星の結界を維持するが、少女の力は尽きかけ限界が迫っていた。精神体として現れた二条院夕顔は、妖魔の活発化と自分の役目の終焉を示し、葛に候補者情報を渡した件を椎那に問い返さず、笑みだけ残して消える。
進路面談と華の孤立
卒業を控えた華は一ノ宮グループ就職を望むが、面談で雪笹に学力不足を突きつけられ用紙を捨てられる。柳は庇いつつも現実を諭し、華は味方を得られぬまま結論を出せない。柳は朔に側近として引き抜かれた過去を語り、朔が華を手放さないと告げる。さらに離婚には千守家の許可が絡むと聞いた華は、契約の重さに不安を深める一方、朔への感情が契約以上へ変質している自覚も芽生える。
相談会と「実技試験」の暴露
術者協会の進路相談会で華の前に雪笹と瑠璃色の五葉木芙蓉・空木が現れ、芙蓉が朔の元恋人だった事実が露呈する。現在の朔が華だけに甘さを見せると聞き、華は混乱する。華は式神あずはの力を示すが、協会入りは拒否する。さらに廃工場での妖魔戦が実技試験だったと判明し、華は雪笹を叩き、朔の関与まで疑って怒りを爆発させる。朔は「力を使った以上、術者世界から逃げられない」と冷静に諭し、華は反論できず現実を飲み込む。
友人たちの選択と朔の逼迫
鈴は「術者として危険」と告げられ落ち込む。昼食の席では葉月は協会入りを決め、望は漆黒を目指すと言い張り、華だけが企業就職を主張するが、周囲は華の漆黒適性を口にする。帰宅後、朔は漆黒の減少と任務集中を語り、離婚は双方同意がなければ不可能と釘を刺す。華は反発しつつも、当主夫人として鈴に道を示し、友情を守る方向へ動く。
朧の拉致と五家の核心
華は朔の父・一ノ宮朧に遭遇し、半ば強引に協会本部へ連れられる。同時刻、五家会議で朔は「おひい様」の承認こそ当主の条件と知り、苛立ちを募らせる。そこへ朧が華を連れて乱入し、「おひい様が朔と華を呼ぶ」と告げ、槐の同行まで決める。
主柱の真実:夕顔と生贄制度の露出
山奥の社の奥で、六本目の「主柱」と柱石に封じられた二条院夕顔の真実が明かされる。主柱維持には新たな生贄が必要で、三年前に千守の力で候補が選ばれ、華もその一人だと告げられる。華は犠牲を拒み、簡単に屈しないと宣言する。
葛の再来と離婚届の破棄
社を出た朔と華の前に葛が現れ、「国と華のどちらを選ぶか」と再び迫る。朔は答えられず沈黙する。帰宅後、朔は華を逃がすため離婚届を差し出すが、華は拒絶して破り捨て、国も自分も守る道を探せと突きつける。朔は葛とは違うと宣言し、華と国の両方を救う決意を固め、物語は生贄制度への反撃へ向かうのであった。
その他

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