どんなラノベ?
『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する』は、ファンタジー世界を舞台にした暗躍型の異世界宮廷ファンタジーである。
物語の舞台は、周辺国との軍事的な緊張感や、深刻な内憂外患を抱える強大なアードラー帝国である。主人公のアルノルト・レークス・アードラーは、双子の弟であるレオナルトを帝位につけるため、自らは「出涸らし皇子」と呼ばれる無能な皇子を演じつつ、裏では大陸最高峰の冒険者「シルバー」として驚異的な能力を振るい、壮絶な帝位継承戦を影から支配していく。
基本的な世界観は、魔法や魔導具、古代魔法、禁術が存在する中世風ファンタジーである。大国間での外交政略、領主の腐敗、宮廷内の暗殺疑惑といった複雑な陰謀が絡み合い、武力闘争のみならず、経済戦や高度な知略戦が展開される点が物語の大きな特徴である。
■ 物語の特徴
霊亀討伐後、アルノルトはゴードンの元軍師ソニアとその家族を解放した。その際、彼女の養父から「今回の帝位争いは何かがおかしい」と警告を受け、異常事態の調査に乗り出す。
一方、帝都ではフィーネに群がる若手貴族たちが「白鴎連合」を結成し、アルノルトの排除を企む。これに対しアルノルトは自ら暴走を演じて皇帝たちを巻き込み、彼らを徹底的に叩き潰す事態へと発展させる。和解の場として設けられた決闘において、彼はレオナルトを装って盟主ラウレンツを圧倒し、見事騒動を鎮圧。しかし、無理な魔法を使用した代償により、深刻な副作用で倒れ込んでしまう。
同じ頃、捕虜クリューガーの口封じに現れた暗殺者の正体が、新たに召喚された悪魔であることが判明。さらに、各国の要人が集う記念式典が迫る中、失脚したはずのザンドラとゴードンが密かに結託し、次なる陰謀を巡らせていくのである。
読んだ本のタイトル
#最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 6 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する
著者:タンバ 氏
イラスト:夕薙 氏
出版社:KADOKAWA(スニーカー文庫)
発売日 :2021年2月27日
ISBN : 9784041109519
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あらすじ・内容
フィーネに殺到する若手貴族からの結婚の申し込み。歯止めの利かない状況を打破すべく、皇族の力を存分に使うアルに貴族たちは為す術もなく……。そして、ついに開かれる記念式典の来賓にはレオの初恋の相手が!?
最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い6 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する
感想
この巻は大規模な戦闘は無し。
その代わりに青鴎連合の貴族が皇族のアルにフィーネから離れろと鞘当てをしてきた。
双子の弟、帝位を狙っているレオの妻になるなら納得できるが出涸らしと呼ばれているアルの妻になるなら自分が、、と言うことらしい。
本来なら逆らってはいけない皇族を「出涸らし」と馬鹿にして喧嘩を売る愚かさ、、
今迄の愚業は、アルに相手にされず見逃してもらっといてたとは気づかずに、さらに増長してお前の女を寄越せと言う。
普段ならバカがバカを言っているで終わっていたが、、
今回は皇帝の在位25周年の祭典の準備中で、皇族の権威を下げるワケにも行かない。
しかも、首謀者が公爵家を継いだばかりの将来を期待されていたホルツヴァート公爵家のラヴレンツという大物だから質が悪い。
アルは普段絶対にやらない、皇族の権威を盾にしてアルを馬鹿にしている貴族達を不敬罪として誘導して拘束して行く。
それに動揺する青鴎連合の貴族達。
さらにアルはお付き合いで連合に参加した貴族達を切り崩し、本当にアルに不敬を働いている連中の絞込みも裏から行うエゲツなさ。
拘束された貴族達の親が皇帝に泣き付いて、穏便に事を進めようしたのだが、、
首謀者のラヴレンツが皇帝の前でその提案を蹴ってしまった、、
それでも事を荒げたく無いアルが、皇族が出来るギリギリの妥協案を出しやすくしているのに。
頭に血が登っているラヴレンツはアルを見下しているせいで、アルの意図を汲めずに地位を剥奪されて死亡とは後味悪い、、
そのせいで、ラヴレンツの姉である元皇太子の妃と、元皇太子を溺愛していた正妃とも関係が悪化する。
最後の方はレオにも春が来たか?
レオの初恋の相手、隣国の聖女が登場。
聖女と呼ばれてるけど何気に、、
ヤンチャ??ww
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考察・解説
帝位争いの異変
アードラシア帝国における今回の帝位争いは、過去の歴史と比べても明らかに異常であることが、複数の人物によって指摘されている。その異変の正体と背後に潜む脅威について以下に解説する。
天才軍師と老執事が指摘する異常性
ソニアの養父であり天才軍師と称されたケヴィン・ラスペードや、前回の帝位争いを知る歴戦の暗殺者であった老執事セバスは、今回の帝位争いがおかしいとアルノルトに警告している。過去の帝位争いでも凄惨な身内の殺し合いはあったが、今回は以下の点で異常性が際立っている。
・候補者である皇子や皇女たちの人格変化が顕著すぎる点。
・過去に得た教訓を不自然なまでに完全に捨て去っている点。
皇子と皇女たちの不自然な変貌と忘却
亡き皇太子ヴィルヘルムが健在だった頃、第二皇子エリク、第三皇子ゴードン、第二皇女ザンドラは、誰もが時代が違えば皇帝になれたと高く評価するほど優秀な人物であった。しかし現在、彼らは見る影もなく変貌している。
・ゴードンは、初陣での無謀な突撃による大敗から教訓を得て、参謀の声に耳を傾ける将軍へと成長したはずであった。しかし今回の騒動では過去の教訓を完全に捨て去り、軍師ソニアの献策を無視して暴虐な振る舞いに走った。
・皇帝になれば帝国は自分のものになるにもかかわらず、ザンドラやゴードンは勢力を維持している状態で国益を損なう内乱を引き起こした。
・最大勢力のエリクはそれを冷徹に静観しており、国を治める者として極めて不自然な行動をとっている。
異変の背後に潜む悪魔の影
この異常事態の裏には、人間社会に紛れ込んだ悪魔が関係していた。帝位争いの異変を調査し始めたアルノルトが、反乱を起こした元南部公爵クリューガーを尋問しようとした際、口封じのためにマルコシアスと名乗る悪魔が現れた。
・マルコシアスは五百年前の大戦に参加した魔王軍の残党ではなく、現代に新たに召喚された悪魔であることを明かした。
・この事実から、悪魔を召喚して暗躍している何者かが帝国内に存在し、それが皇族たちを狂わせている元凶ではないかとアルノルトは推測している。
ゴードンとザンドラの狂気の共闘
帝位争いのバランスがレオナルトの台頭によって崩れた結果、本来なら絶対に手を組むはずのないゴードンとザンドラが密かに結託した。彼らは自らの目的のために以下の狂気の計画を進めている。
・ペルラン王国の第一王子を利用すること。
・式典のために訪れた聖女レティシアの暗殺を企てること。
かつての彼らからは想像もつかない行動であり、その目にはもはや本来の彼らの面影は残っていない。
まとめ
今回の帝位争いは、単なる権力闘争の枠を超え、何者かによって新たに召喚された悪魔が背後で暗躍する国家規模の危機へと発展している。かつて優秀であった皇族たちを狂気に駆り立てるこの見えない脅威に対し、いかに対抗していくかが今後の帝国を左右する最大の鍵となるのである。
SS級冒険者シルバー
アードラシア帝国の第七皇子アルノルトの裏の顔である「SS級冒険者シルバー」は、類まれな頭脳と圧倒的な魔法の力を駆使し、帝位争いの裏側で国家規模の危機に立ち向かう存在である。作中における彼の特筆すべき行動と実力は以下の通りである。
圧倒的な武力と威圧感(ゴードンの砦への侵入)
シルバーの常軌を逸した実力は、第三皇子ゴードンが駐留する北部国境の砦へ単身で侵入した際にいかんなく発揮された。
・放つ濃密な魔力だけで一般兵を膝をつかせた。
・一斉射撃の矢や、帝国軍の試作兵器「試製回転式魔導連弩」による連射を魔法で容易く無効化した。
・突撃してきた騎兵隊や百人以上の兵士も手玉に取り、誰一人として彼を止めることはできなかった。
この強行突破は、迷子の剣聖エゴールに貸しを作るため、ゴードンの元軍師ソニアとその家族を解放させるための交渉の場を強引に設ける目的があった。シルバーはゴードンに対し、剣を抜くことすらためらわせるほどの絶対的な実力差を見せつけ、無血で人質の居場所を吐かせることに成功している。
規格外の古代魔法(悪魔マルコシアスとの死闘)
反乱を起こした元南部公爵クリューガーの口封じに現れた「悪魔マルコシアス」との戦闘では、シルバーの卓越した戦闘センスと強力な古代魔法が描かれている。
・被害を抑えるためにマルコシアスを山間部へ強制転移させた。
・魔力で作られた糸を操り、腕を切り落とされても瞬時に再生する悪魔に対し、冷静に立ち回った。
・マルコシアスを罠にかけるため、幻術で無数の分身を作り出して大魔法の詠唱を行い、本物に向かってきたマルコシアスを上空へ転移させた。
・触れたものをすべて消滅させる黒の古代魔法《インフィニティ・ダークネス》を放ち、悪魔を完全に消滅させた。
帝国の真の危機に対する洞察力
シルバーの真骨頂は、武力だけでなく事態の本質を見抜く洞察力にある。
・マルコシアスを消滅させる直前の会話から、彼が五百年前の魔王軍の残党ではなく、現代において新たに召喚された悪魔であることを引き出した。
・これにより、人間社会に溶け込める悪魔を召喚し、暗躍させている未知の組織が帝国内に存在することを確信した。
・近々開催される「皇帝即位二十五周年記念式典」に各国の要人が集まるタイミングこそが、悪魔たちの真の標的になると推測した。
まとめ
表舞台での帝位争いが混沌とする中、シルバーは裏側から迫り来る大陸規模の脅威を防ぐため、真の守護者として防衛の決意を固めている。彼の圧倒的な実力と深い洞察力は、帝国の未来を左右する極めて重要な鍵となっているのである。
ソニアの救出
アードラシア帝国の帝位争いにおいて、第三皇子ゴードンの軍師を務めていたハーフエルフの少女ソニアの救出劇は、SS級冒険者シルバー(第七皇子アルノルト)と最古のSS級冒険者「迷子の剣聖」エゴールによって成し遂げられた。その背景と経緯は以下の通りである。
救出の経緯とエゴールの依頼
ソニアはゴードンによって育ての親である天才軍師ケヴィン・ラスペードやその両親を人質に取られ、不本意ながらゴードンのために軍略を練っていた。
・霊亀討伐戦の後、アルノルトは避難先の都市でエゴールと再会する。
・エゴールは、ソニアが霊亀討伐後も助けを求めているように見えたため、この街に留まっていた。
・ソニアは他人を巻き込むことを恐れて事情を話していなかったが、アルノルトがエゴールに彼女の背景を説明した。
・エゴールは自分では力ずくで人質を奪うことしかできず根本的な解決にならないと考え、穏便に彼女を救って自由にしてほしいとアルノルトに依頼した。
・さらに自分に貸しを作る気はないかと持ちかけられたアルノルトは、もし断ればエゴールが強硬手段に出て帝位争いに大きな混乱をもたらすと考え、この依頼を承諾した。
シルバーの砦侵入とゴードンとの交渉
アルノルトはシルバーとして、ゴードンが駐留する北部国境の砦に単身で転移した。
・圧倒的な魔力を放って一般兵を無力化し、無数の矢や帝国軍の試作兵器である試製回転式魔導連弩、さらには騎兵隊の突撃すらも魔法で容易く退け、誰一人彼を止めることはできなかった。
・無血でゴードンの元にたどり着いたシルバーは、霊亀討伐戦の最中にゴードンの部隊が避難民の子供を森へ向かわせ、結果的に戦局を危険に晒した事実を突きつけた。
・この件を皇帝に報告されたくなければ、ソニアの育ての親を解放し、彼女に二度と関わらないと誓えと要求した。
・ゴードンは偽の場所を教えようと謀ったが、シルバーに嘘をついて二人のSS級冒険者を敵に回すなと脅され、観念して本当の監禁場所を白状した。
救出の実行とその後
監禁場所の情報を得たシルバーは、すぐにエゴールとソニアを連れて転移した。
・エゴールが瞬時に護衛たちを無力化し、ソニアは無事に養父ケヴィンや義理の祖父母と再会を果たした。
・シルバーはソニアに対し、第七皇子アルノルトが君を助けられなかったことを悔やんでいたため代わりに自分が助けたと語り、自身がアルノルトの意を受けて動いたかのように振る舞った。
・その後、ソニアとその家族の安全はエゴールが保障することになった。
・ソニアは極度の方向音痴であるエゴールを放っておけず、彼の補佐役として行動を共にすることになった。
まとめ
この救出劇により、ゴードンは優秀な軍師であるソニアを完全に失い、陣営の大きな戦力ダウンとなった。一方のアルノルト(レオナルト陣営)は、ソニアを無事に解放して心の重荷を下ろしただけでなく、大陸に五人しかいないSS級冒険者の一人であるエゴールに大きな貸しを作るという、政治的にも極めて有利な成果を得ることになったのである。
白鷗連合との対立
アードラシア帝国における白鷗連合との対立は、絶世の美女として知られるフィーネを巡る若手貴族たちの嫉妬と暴走から始まり、皇族たるアルノルトの徹底的な反撃によって終結した事件である。その経緯と結末は以下の通りである。
白鷗連合結成の背景とアルノルトの決意
フィーネへ手を出さないという若手貴族間の不可侵条約である鴎の盟約が崩壊し、ラウレンツ・フォン・ヴァイトリング侯爵を盟主とする白鷗連合が秘密裏に結成された。彼らの目的は、フィーネの傍にいる出涸らし皇子アルノルトを排除することであった。
皇帝は事態を重く見てアルノルトにフィーネと距離を置くよう提案したが、アルノルトはこれを拒否した。彼は、フィーネを自分の価値を高める道具として扱う若手貴族たちのやり方に強い怒りを覚えていた。そして、フィーネの傍にいるにふさわしいか自分が試金石になると決意し、彼らを徹底的に返り討ちにすることを決めたのである。
帝都視察を装った徹底的な摘発と反撃
アルノルトは皇帝から代理を示す黄金の鷲の指輪を借り、フィーネを連れて帝都の視察へ向かった。白鷗連合の貴族たちは様々な嫌がらせを仕掛けてきたが、アルノルトはそれを皇帝権限に対する反逆として容赦なく摘発した。
・高級宿屋では、女性専用だと偽って視察を妨害したファーナー伯爵と店主を拘束した。
・料理店では、故意に不味い料理を出させたゼッフェルン伯爵とシェフを拘束し、伯爵家そのものを潰すほどの圧力をかけた。
・帝都最外層の道場では、金で最外層の民を買収して嫌がらせを企んだ男爵を拘束した。
親世代の介入と和解交渉
アルノルトがあえて暴走しているように見せかけたのは、白鷗連合の実権を握る親世代である現役や隠居の大物貴族に危機感を抱かせ、和解のテーブルに引きずり出すためであった。
・目論見通り、エトムント・フォン・ヴァイトリング翁ら老貴族たちは息子たちの愚行に頭を抱え、事態の収拾に動いた。
・アルノルトが事前に手配していたクライネルト公爵とラインフェルト公爵の仲介により、和解交渉が進められた。
・和解条件は主要貴族の家門からの追放や平民への降格、高額な賠償金、皇族尊重の誓約文書提出という厳しいものであったが、家を守るため親世代はこれを受け入れた。
決闘と騒動の結末
皇帝や両公爵が立ち会う審判の間で和解文書への署名が行われる中、嫉妬に駆られたラウレンツがアルノルトに決闘を申し込み、和解を自らぶち壊してしまった。
そこでアルノルトは、自分はレオナルトでありアルノルトのふりをしていたと宣言する演技を打った。そして、ラウレンツが負けた場合は白鷗連合の主要貴族全員が最強最悪の毒である帝毒酒を飲むという恐ろしい条件を突きつけ、決闘に応じた。
決闘では、アルノルトが禁じ手である古代魔法エピゴーネンを用いてレオナルトの身体能力と剣術を完璧に模倣し、ラウレンツに圧勝した。死の恐怖に怯え我を忘れたラウレンツの姿に皇帝は激怒し、ヴァイトリング翁が身代わりになろうとするのも却下して、この騒動は幕引きとなった。
まとめ
アルノルトが意図的に、レオナルトがアルノルトのふりをして暴走や摘発を行っていたという疑惑を残したことは、帝位争いにおいて大きな意味を持った。これまで優秀だが優しすぎると見られていたレオナルトに、非情な決断も下せる冷酷さと怖さがあるという印象が加わり、帝位争いを静観していた貴族たちに危機感を与え、彼らを陣営に動かすきっかけとなったのである。
軍師ヴィンの勧誘
アードラシア帝国の帝位争いにおいて、レオナルト陣営の決定的なターニングポイントとなった軍師ヴィンの勧誘について、その背景と経緯を解説する。
ヴィンフリートの背景と失踪
ヴィンフリート・トラレスは平民出身でありながら、亡き皇太子ヴィルヘルムに才能を見出され、将来の宰相候補として育てられていた天才軍師である。
・レオナルトとアルノルトよりも三歳年上である。
・皇太子からは二人を弟のように思って接するよう頼まれていた。
しかし三年前、理想の主君であった皇太子の死によって生きる意味を見失い、すべての人間関係を断ち切って失踪してしまった。
故郷での発見とレオナルトの勧誘
白鷗連合との騒動が帝都で起きている最中、自身の勢力に知恵袋となる軍師が必要だと痛感したレオナルトは、エルナと共にヴィンの故郷の村を訪れた。
ヴィンは白髪と付け髭で老人に変装し、祖父のふりをして隠れていたが、レオナルトに以下の読みから正体を暴かれた。
・家が綺麗すぎること。
・これだけ探して見つからないなら逆に見えやすい場所にいるはずだということ。
正体を見破ったレオナルトは、彼に自身の軍師になってほしいと懇願した。
ヴィンの葛藤とエルナの提案
ヴィンはレオナルトの誘いを断った。その理由は以下の通りである。
・堅実に勝てる戦いを確実に勝つことを得意とする軍師であるため。
・本人も臣下も一流であった皇太子の下では機能したが、まだ未熟なレオナルトの筆頭軍師となれば、帝位争いを勝ち抜くための奇抜な発想が自分には足りないと考えていたため。
自分が軍師になればレオナルトを敗北させてしまうと、自身の能力を冷静にかつ低く見積もっていたのである。
そんな彼に対し、エルナが奇抜な発想が必要ならアルノルトに頼ればいいと提案した。アルノルトをただの放蕩皇子だと思っていたヴィンは信用しなかったが、現在アルノルトが帝都で貴族たちと争っている成果を見てから決めるという条件で、帝都への同行を承諾した。
アルノルトの評価と正式な臣従
帝都に戻ったヴィンは、白鷗連合との騒動におけるアルノルトの対応を分析した。
・最初はフィーネを囮にして相手の自滅を待つべきだったと、アルノルトのやり方を悪手だと酷評した。
・しかし、アルノルトがフィーネを危険に晒さないという大事なものを守るためにあえて困難な道を選んだことを理解した。
そして、皇后までもが介入した最悪の盤面において、アドリブで状況を立て直し、周囲が納得する着地点(決闘と帝毒酒の条件)を生み出したアルノルトの機転と対応力を、自分にはできない手腕だと高く評価した。
アルノルトが自分の欠点を補える存在だと認めたヴィンは、アルノルトに今後レオの評判を上げる役目は自分が請け負うと宣言した。そしてレオナルトに対し、かつての皇太子のような王になれるかと問い、レオナルトが努力を誓ったことで、正式に膝をついて忠誠を誓い、レオナルト陣営の筆頭軍師となった。
まとめ
ヴィンの加入により、これまでアルノルトが無能を演じたり裏で暴走したりして担っていたレオナルトの評判調整を、ヴィンが軍師の立場で効果的に行うことができるようになった。これによりアルノルトは裏での暗躍(悪魔の調査や他国の動向調査など)に専念できるようになり、レオナルト陣営は盤石な体制を築くことになったのである。
聖女レティシア来訪
皇帝の即位二十五周年式典に向け、王国代表として聖女レティシアが帝都を訪れた。彼女の来訪はレオナルトとの微笑ましい交流をもたらす一方で、水面下では彼女の命を狙う陰謀が動き出している。
聖女レティシアの正体と来訪の背景
レティシアは、四宝聖具の一つである聖杖を持ち、希少な白い鷲獅子を乗りこなす王国の英雄である。十一年前の戦争で劣勢に陥った王国を救った救国の聖女として大陸中に名を轟かせており、帝国内でも高い人気を誇っている。彼女の来訪の背景は以下の通りである。
・帝国との新たな条約締結を目的としている。
・ザンドラ皇女に求婚している王国第一王子と共に帝国を訪れた。
レオナルトの初恋とアルノルトの援護
五年前、大使として帝国を訪れたレティシア(当時十四歳)と双子(当時十三歳)は二日間を共に過ごしており、彼女はレオナルトにとって初恋の相手であった。
・接待役に選ばれたレオナルトは、成長し美しくなった彼女を前に極度に緊張してしまう。
・一方、気さくでマイペースなレティシアはもっと親しく接してほしいと望んでいたが、不器用で善意に弱い性格ゆえに自分からは言い出せずにいた。
その様子を見かねたアルノルトは、仙姫オリヒメやレティシアの夕飯を賭けた盤上遊戯でレオナルトと対戦した。アルノルトは全力で挑みつつもイカサマなどの本気は出さずにわざとレオナルトに負け、彼を夕飯を救った英雄に仕立て上げることで、二人の距離を縮めるきっかけを作った。
夜の語らいと二人の接近
アルノルトの思惑通り、二人は徐々に打ち解けていった。ある夜、一人で帝都の街を眺めていたレオナルトのもとにレティシアが現れた。
・レオナルトはアルノルトへの劣等感や、生真面目で不器用な自身の弱さを吐露した。
・しかしレティシアは、その不器用さは真面目さという良い側面であると優しく肯定し、アルノルトよりもあなたのほうが好ましく思えると真っ直ぐに伝えた。
その言葉に救われたレオナルトは無意識に彼女の手を取り、二人は静かに心を通わせた。
最後という言葉と暗躍する陰謀
このように二人の距離が縮まる裏で、不穏な影が忍び寄っていた。
・レティシアはアルノルトとの会話の中で「最後くらいは楽しみたい」と意味深な言葉を漏らしていた。
・彼女らしくないその発言から、アルノルトは彼女が命の危機を抱えているのではないかと直感した。
帝国内で聖女が死亡すれば国際的な大問題になるため、アルノルトは悪魔の調査を後回しにしてセバスに極秘の調査を命じた。
まとめ
実際にアルノルトの嫌な予感は的中しており、帝都に極秘帰還したゴードンと軟禁中のザンドラの密会において、同行している王国第一王子とその協力者が聖女を始末する計画を進めていることが明かされている。レティシアの来訪は、帝位争いの混沌にさらなる火種を投下しようとしているのである。
悪魔マルコシアスの影
アードラシア帝国の帝位争いの裏で暗躍する謎の組織の先兵として現れたのが、悪魔マルコシアスである。元南部公爵クリューガーの口封じに現れ、SS級冒険者シルバーと激闘を繰り広げた彼の特徴と、その存在が示唆する帝国の危機について以下にまとめる。
マルコシアスの登場と能力
マルコシアスは、帝国東部の砦に監禁されていたクリューガーがとある組織について口を滑らせた際、契約違反の罰として彼を窒息死させるために現れた。彼には以下の特徴と能力がある。
・白いフードを被った長身の男の姿をしており、魔力でできた糸を操って戦う。
・人間相手の奇襲を恥として正面から挑む傲慢な一面を持つ。
・戦闘中に拘束された自らの腕を躊躇なく切り落とし、後から瞬時にくっつけて再生させるという異常な能力を見せた。
この能力により、シルバーから人間の体を依り代とした悪魔であると看破された。
シルバーとの激闘と最期
砦での戦闘が帝国に被害を及ぼすことを避けるため、マルコシアスはシルバーによって山間部へ強制転移させられた。戦闘の経緯は以下の通りである。
・空を飛び、糸を槍のように変化させてシルバーを串刺しにするなど彼を追い詰めるほどの実力を見せた。
・しかし、それはシルバーの幻術であった。
・無数の分身を作り出して大魔法の詠唱を行うシルバーに対し、本物を見抜いたと確信して最大威力の攻撃を仕掛けようとしたが、直前に上空へ強制転移させられて罠に嵌まった。
・最後は、触れたものをすべて消滅させる黒の古代魔法インフィニティ・ダークネスに飲み込まれ、完全に消滅した。
まとめ
消滅の直前、マルコシアスはシルバーの問いに対し、自分は五百年前の魔王軍の残党ではなく、新たに召喚された悪魔であるという重要な事実を明かした。
この言葉により、シルバーは悪魔を召喚し暗躍させている未知の組織が現在の帝国内に存在していることを確信した。また、人間社会に溶け込める悪魔が他にも存在している可能性が高く、この問題は帝国内部の権力闘争を超えた大陸規模の危機へと発展している。
シルバーは、間近に迫り各国の要人が集まる皇帝即位二十五周年記念式典こそが悪魔やその協力者たちの標的になると推測し、裏側から迫る脅威に対する警戒をさらに強めることになったのである。
登場キャラクター
アードラシア帝国(皇族・後宮)
ヨハネス・レークス・アードラー
アードラシア帝国の皇帝である。皇太子を失った後、残る子供たちによる帝位争いを静観している。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
白鴎連合の貴族たちとの和解の場に立ち会った。ラウレンツが決闘を申し込んだ際、アルノルトの提案を受け入れて彼らを平民へ降格させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
帝国において絶対的な権力を持つ。
ブリュンヒルト・レークス・アードラー
アードラシア帝国の皇后である。皇帝とは不仲な状態にある。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・皇后。
・物語内での具体的な行動や成果
ラウレンツらの斬首を防ぐため、玉座の間へ現れて皇帝へ直訴した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
各国の王族と親密に連絡を取っており、外交において重要な影響力を持つ。
グスタフ
アードラシア帝国の前皇帝である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・元皇帝。
・物語内での具体的な行動や成果
本人は直接登場していない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
所有していた古代魔法の魔導符をアルノルトに消費された。
ミツバ
アルノルトとレオナルトの母親である。後宮の妃の一人である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・妃。
・物語内での具体的な行動や成果
玉座の間へ現れ、皇帝と皇后の対立を和らげるため「なかったことにしてしまえばいい」と提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
息子であるアルノルトの意図を察して行動を支援した。
ヴィルヘルム・レークス・アードラー
亡き皇太子である。三年前に北部国境で戦死した。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・皇太子(故人)。
・物語内での具体的な行動や成果
本人は直接登場していない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
生前は理想の後継者として誰もが認める存在であった。
テレーゼ・レークス・アードラー
ヴィルヘルムの妻であった女性である。ヴァイトリング侯爵家の出身である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・元皇太子妃。
・物語内での具体的な行動や成果
弟ラウレンツを救うため、アルノルトへ許しを乞うた。皇后へ助力を求めて玉座の間へ同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇太子の死後は東宮に引きこもり、世捨て人のように暮らしている。
エリク・レークス・アードラー
第二皇子である。帝位争いにおける最大勢力である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第二皇子。外務大臣。
・物語内での具体的な行動や成果
式典での接待役を決める会議に出席し、皇国の担当を希望した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
静観を続けることで勢力を拡大し、皇帝からの評価も高い。
ゴードン・レークス・アードラー
第三皇子である。北部国境へ左遷されている。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第三皇子。将軍。
・物語内での具体的な行動や成果
砦へ侵入したアルノルトの脅しに屈し、ソニアの育ての親の監禁場所を白状した。その後、極秘に帝都へ帰還しザンドラと密会した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ザンドラと手を組み、式典に向けて共闘関係を築いた。
ザンドラ・レークス・アードラー
第二皇女である。現在は城内で軟禁されている。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第二皇女。
・物語内での具体的な行動や成果
極秘帰還したゴードンと密会し、計画が順調であることを報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつての敵であったゴードンと打算的な同盟を結んだ。
カルロス・レークス・アードラー
第五皇子である。東部での反乱に失敗し、軟禁状態にある。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第五皇子。
・物語内での具体的な行動や成果
別荘を訪れたアルノルトへ、自分を裏で操っていたのはエリクであるという推測を語った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
右腕を失い下半身が動かない状態であるが、自らの行いを悔いて穏やかに過ごしている。
アルノルト・レークス・アードラー
第七皇子である。裏ではSS級冒険者シルバーとして活動している。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第七皇子。SS級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
白鴎連合の貴族たちを摘発し、レオナルトのふりをして決闘に応じた。悪魔マルコシアスと交戦し、消滅魔法で討伐した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
フィーネを守るために自ら矢面に立ち、多くの敵を作りながらも彼女を護り抜いた。
レオナルト・レークス・アードラー
第八皇子である。帝位争いにおいて第二位の勢力へ成長している。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第八皇子。帝都守備隊の名誉将軍。
・物語内での具体的な行動や成果
ヴィンフリートを説得して自らの軍師へ迎えた。聖女レティシアの接待役を務め、彼女と心を通わせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
民を助ける英雄皇子として諸外国にも名声が轟いている。
ヘンリック・レークス・アードラー
第九皇子である。カルロスの会話にのみ登場する。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・第九皇子。
・物語内での具体的な行動や成果
本人は直接登場していない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
カルロスから自分より優秀だと評されている。
クリスタ・レークス・アードラー
幼い皇女である。アルノルトによく懐いている。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・皇女。
・物語内での具体的な行動や成果
ジークを引っ張って遊んだり、オリヒメと親しく交流したりした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
アードラシア帝国(臣下・貴族・関係者)
フランツ
アードラシア帝国の宰相である。皇帝の右腕として国政を支える。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・宰相。
・物語内での具体的な行動や成果
フィーネへの求婚が相次いでいる問題を皇帝に報告した。決闘騒ぎの際には、ラウレンツたちを厳しく叱責した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アルノルトの行動の意図を正確に読み取り、事態の収拾に協力した。
セバス
アルノルトに仕える執事である。情報収集や資金運用を担う。
・所属組織、地位や役職
第七皇子付き執事。
・物語内での具体的な行動や成果
白鴎連合の若手貴族たちの借金を肩代わりし、彼らをアルノルトの支配下に置いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつては暗殺者であり、前回の帝位争いの惨状を知っている。
マリー
レオナルトに仕えるメイドである。秘書的な役割もこなす。
・所属組織、地位や役職
第八皇子付きメイド。
・物語内での具体的な行動や成果
レオナルトの指示を受け、アルノルトの補佐として白鴎連合の調略に従事した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
当初はアルノルトのやり方に疑問を抱いていたが、指示通りに職務を遂行した。
エルナ・フォン・アムスベルグ
近衛騎士団の隊長である。アルノルトの幼馴染である。
・所属組織、地位や役職
近衛騎士団・第三騎士隊隊長。
・物語内での具体的な行動や成果
オリヒメの護衛を務め、挑発に乗って彼女と追いかけっこを繰り広げた。ヴィンフリートの勧誘にも同行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
正式に近衛騎士隊長へ復帰した。
ヴィンフリート・トラレス
レオナルトの幼馴染であり、天才的な軍師である。
・所属組織、地位や役職
第八皇子陣営・筆頭軍師。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトの機転と対応力を認め、レオナルトの軍師となることを決意した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇太子ヴィルヘルムの死後失踪していたが、レオナルトの下で表舞台へ復帰した。
フィーネ・フォン・クライネルト
「蒼鷗姫」と呼ばれる美しい令嬢である。アルノルトを深く慕っている。
・所属組織、地位や役職
クライネルト公爵家・長女。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトの帝都視察に同行し、彼が不利益を被ることに心を痛めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
彼女の美貌が若手貴族たちの嫉妬を招き、白鴎連合結成の原因となった。
クライネルト公爵
フィーネの父親である。帝国における大物貴族である。
・所属組織、地位や役職
クライネルト公爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトの要請で帝都を訪れ、白鴎連合との和解交渉の仲介役を務めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
中立的な立場から事態の収拾に尽力した。
ユルゲン
ラインフェルト公爵である。クライネルト公爵と共に仲介役を務める。
・所属組織、地位や役職
ラインフェルト公爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
審判の間で和解交渉の司会進行役を担った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
ソニア・ラスペード
ハーフエルフの少女である。かつてゴードンの軍師を務めていた。
・所属組織、地位や役職
元第三皇子陣営・軍師。
・物語内での具体的な行動や成果
エゴールの滞在先で食事の世話をしていた。シルバーによって家族と共に救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
エゴールの補佐役として彼に同行することになった。
ケヴィン・ラスペード
ソニアの養父であり、天才軍師と称された人物である。
・所属組織、地位や役職
ラスペード家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
ソニアと共にシルバーに救出され、彼に帝位争いの異変について警告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
病弱な体質であり、現在は第一線を退いている。
エトムント・フォン・ヴァイトリング
隠居した元ヴァイトリング侯爵である。ラウレンツの父親である。
・所属組織、地位や役職
元ヴァイトリング侯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
息子の暴走を止めるため、老貴族たちをまとめてアルノルトとの和解交渉に動いた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
息子に代わって自ら毒を仰ごうとしたが、皇帝に制止された。
ラウレンツ・フォン・ヴァイトリング
白鴎連合の盟主である。フィーネへの恋心から暴走する。
・所属組織、地位や役職
ヴァイトリング侯爵家・当主(のち平民へ降格)。
・物語内での具体的な行動や成果
和解の場でアルノルトへ決闘を申し込み、敗北して拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
和解文書の改訂により、貴族の身分を剥奪された。
ロルフ・フォン・ホルツヴァート
ホルツヴァート公爵である。エトムントたちから警戒されている。
・所属組織、地位や役職
ホルツヴァート公爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
老貴族たちの会議に現れ、アルノルトの母であるミツバを通じた和解の仲介を提案した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
クライネルト公爵の登場により、その目論見は失敗に終わった。
ライナー・フォン・ホルツヴァート
ロルフの息子である。白鴎連合の騒動には参加していない。
・所属組織、地位や役職
ホルツヴァート公爵家・関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
本人は直接登場していない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
鴎の盟約には参加していたが、白鴎連合には加わらなかった。
ファーナー伯爵
白鴎連合の急進派である。アルノルトへの嫌悪を隠さない。
・所属組織、地位や役職
ファーナー伯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
女性専用だと偽った宿でアルノルトの視察を妨害しようとし、拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
投獄され、爵位を剥奪される見込みとなった。
ゼッフェルン伯爵
白鴎連合に参加する貴族である。金を使って手広く事業を行っている。
・所属組織、地位や役職
ゼッフェルン伯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトへ故意に不味い料理を提供させ、その場で拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
関連する店をすべてアルノルトに買収された。
ダミアン・フォン・ベッカー
ベッカー男爵の息子である。フィーネに憧れを抱いている。
・所属組織、地位や役職
ベッカー男爵家・関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
借金を肩代わりされ、白鴎連合から離反してアルノルトに謝罪文を提出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
ベッカー男爵
ダミアンの父親である。
・所属組織、地位や役職
ベッカー男爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
本人は直接登場していない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ダミアンの所属を示す際に名前が言及された。
アロイス・フォン・ジンメル
ジンメル伯爵である。内乱で民を守った若き領主である。
・所属組織、地位や役職
ジンメル伯爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトからの依頼を受け、彼が恐ろしい人物であるという噂を若手貴族の間に広めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇帝の意向でクリスタの婿候補として城に留まっている。
スヴェン・フォン・クリューガー
元南部公爵である。東部の砦に監禁されている。
・所属組織、地位や役職
元クリューガー公爵家・当主。
・物語内での具体的な行動や成果
シルバーの尋問中に謎の組織の存在を口走り、マルコシアスの呪いによって窒息しかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
一命を取り留めたものの意識不明となり、情報源としての価値を失った。
ロホス
北部国境守備軍を束ねる将軍である。穏やかな人格者である。
・所属組織、地位や役職
北部国境守備軍・将軍(砦将)。
・物語内での具体的な行動や成果
砦へ侵入したシルバーを穏便に迎え入れ、ゴードンとの面会の場を設けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
リタ
クリスタの遊び相手を務める少女である。
・所属組織、地位や役職
騎士見習い。
・物語内での具体的な行動や成果
クリスタと共にジークを引っ張って遊んでいた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
クリスタの護衛という建前で彼女と行動を共にしている。
ガイ
帝都最外層の道場の先生である。アルノルトの幼馴染である。
・所属組織、地位や役職
B級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトへの嫌がらせを強要してきた男爵を殴り飛ばした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
最外層の民として、金で仲間を売らない強い信念を持っている。
眼鏡の男爵
白鴎連合に参加する貴族である。
・所属組織、地位や役職
男爵。
・物語内での具体的な行動や成果
金で最外層の人間を買収しようとし、ガイに殴られて鼻血を出した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
アルノルトの命令によって騎士たちに拘束された。
ソニアの義理の祖父母
ソニアの育ての親の両親である。
・所属組織、地位や役職
ラスペード家・関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
ゴードンによって人里離れた小屋に監禁されていたが、シルバーたちに救出された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
白鴎連合の貴族たち
ラウレンツを盟主とする若手貴族の集団である。
・所属組織、地位や役職
白鴎連合。
・物語内での具体的な行動や成果
フィーネの傍にいるアルノルトを排除するため、様々な嫌がらせを実行した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
和解文書の改訂により、主要な貴族は平民へ降格された。
若手貴族たち
帝都にいる若い世代の貴族たちである。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
アロイスからアルノルトの恐ろしさを聞き、今後の帝位争いの見方を変え始めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
白鴎連合には参加せず、事態を静観していた者が多い。
老貴族たち
白鴎連合に参加した若手貴族の親世代である。
・所属組織、地位や役職
アードラシア帝国・貴族。
・物語内での具体的な行動や成果
エトムントの呼びかけで集まり、息子たちの愚行を謝罪して和解交渉の準備を進めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
多くはすでに隠居しており、子供へ爵位を譲っている。
帝国軍・騎士団
近衛騎士団第三騎士隊
エルナが隊長を務める精鋭部隊である。
・所属組織、地位や役職
近衛騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
式典期間中、オリヒメとアルノルトの護衛を担当した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
近衛騎士たち
城や帝都の警備を担う騎士たちである。
・所属組織、地位や役職
近衛騎士団。
・物語内での具体的な行動や成果
アルノルトの指示で宿屋や料理店を捜索し、問題を起こした貴族たちを拘束した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
皇帝代理人であるアルノルトの命令に忠実に従った。
帝都守備隊
帝都の治安を維持する軍事組織である。
・所属組織、地位や役職
帝国軍。
・物語内での具体的な行動や成果
組織としての具体的な行動は描写されていない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レオナルトが名誉将軍を務め、式典中の守備に目を光らせている。
北部国境守備軍
帝国北部の国境を防衛する軍事組織である。
・所属組織、地位や役職
帝国軍。
・物語内での具体的な行動や成果
砦へ侵入したシルバーに対し、矢の斉射や試作兵器による攻撃を行ったが全く通用しなかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ゴードンが副将として左遷されている。
冒険者ギルド・冒険者
エゴール
「迷子の剣聖」と呼ばれる最古のSS級冒険者である。極度の方向音痴である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・SS級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ソニアの家族を救出するため、シルバーと共に監禁場所へ乗り込んで護衛たちを無力化した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ソニアを自身の補佐役として雇い入れた。
ジークムント・アイスラー
S級冒険者である。呪いによって子熊の姿になっている。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・S級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
レティシアの部屋へ近づいて迎撃結界に引っかかり、黒焦げになってクリスタに運ばれてきた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
元の姿に戻ることを強く望んでいる。
リンフィア
ジークムントと行動を共にする冒険者である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・A級冒険者。
・物語内での具体的な行動や成果
ジークムントが迎撃結界に引っかかったことをクリスタたちに伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
クライド
冒険者ギルドの幹部である。
・所属組織、地位や役職
冒険者ギルド・関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
本人は直接登場していない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
もしソニアを見たらスカウトするだろうとアルノルトから評された。
ペルラン王国
レティシア
「救国の聖女」と呼ばれる王国の英雄である。四宝聖具の一つ「聖杖」を持つ。
・所属組織、地位や役職
ペルラン王国・聖女。
・物語内での具体的な行動や成果
王国代表として帝国を訪れ、接待役のレオナルトと交流を深めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
命の危機を感じさせるような意味深な言葉をアルノルトに漏らした。
第一王子
ペルラン王国の王子である。ザンドラへ求婚している。
・所属組織、地位や役職
ペルラン王国・第一王子。
・物語内での具体的な行動や成果
レティシアと共に帝国を訪れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レティシアを暗殺する計画に関与していることが示唆された。
鷲獅子騎士たち
レティシアの護衛を務める騎士たちである。
・所属組織、地位や役職
ペルラン王国・騎士。
・物語内での具体的な行動や成果
レティシアと共に鷲獅子に乗って帝都へ飛来した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
ミヅホ仙国
オリヒメ・クオン
「仙姫」と呼ばれる少女である。自由奔放でマイペースな性格をしている。
・所属組織、地位や役職
ミヅホ仙国・仙姫。
・物語内での具体的な行動や成果
帝国内を勝手に遊覧した後、帝都へ戻りアルノルトと盤上遊戯で対決した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
付き人の老人たちをギルド本部に置いて一人で行動している。
悪魔・魔物
マルコシアス
人間の体を依り代とした悪魔である。魔力でできた糸を操って戦う。
・所属組織、地位や役職
謎の組織・先兵。
・物語内での具体的な行動や成果
クリューガーの口封じに現れ、シルバーと空中戦を繰り広げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
古代魔法によって完全に消滅させられた。
吸血鬼たち
東部で反乱を起こした吸血鬼の兄弟である。
・所属組織、地位や役職
魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
カルロスと手を組んで東部を混乱させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
シルバーやエルナに討伐され、最後まで黒幕の情報を漏らさなかった。
霊亀
北部に出現した超巨大な魔物である。
・所属組織、地位や役職
魔物。
・物語内での具体的な行動や成果
本人は直接登場していない。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
すでに討伐されており、その後の事後処理が作中で描かれている。
動物・その他
エンタ
オリヒメのペットである。
・所属組織、地位や役職
ペット。
・物語内での具体的な行動や成果
クリスタたちに連れられてアルノルトの部屋へやってきた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
鷲獅子
ペルラン王国の騎士たちが乗る飛行生物である。
・所属組織、地位や役職
動物。
・物語内での具体的な行動や成果
レティシアや護衛の騎士たちを乗せて空から帝都へ現れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆すべき地位の変化はない。
展開まとめ
第一章 白鷗連合
エゴールの滞在理由とソニア救出依頼
霊亀討伐後、アルノルトはシルバーとして避難都市を再訪した。
そこには大陸を放浪するはずのエゴールが残っており、アルノルトはその理由を探る。
エゴールは、ソニアが助けを求めているように見えたため残ったのだと語った。
ソニアはかつてより成長し、自ら責任を背負おうとしていたのである。
その後、エゴールはソニアの育ての親を助けてほしいと依頼した。
ゴードンに囚われている彼らを救うには、アルノルトの交渉力が必要だったからである。
アルノルトは帝位争いへの悪影響を考慮しつつも、ソニアを見捨てられず、依頼を引き受けた。
シルバーによるゴードンへの圧力
アルノルトは北部国境の砦へ転移し、シルバーとして強引に侵入した。
圧倒的な魔力を前に兵士たちは成すすべもなく、試作兵器や騎兵隊ですらシルバーを止められなかった。
やがてゴードンが現れると、シルバーは霊亀討伐時に民を見捨てた件を追及する。
さらに、その件を皇帝へ報告されたくなければ条件を飲めと迫った。
提示された条件は、ソニアの育ての親を解放し、二度と彼女へ関わらないことだった。
ゴードンは当初虚偽の監禁場所を渡そうとしたが、SS級冒険者二人を敵に回すと警告され、本当の場所を差し出すしかなかった。
ソニア一家の救出
シルバーはエゴールとソニアを連れ、即座に監禁場所へ向かった。
ソニアの義理の祖父母や養父ケヴィンは無事だったが、隔離された小屋へ閉じ込められていた。
ソニアは養父へ泣きながら謝罪するが、ケヴィンは逆に自分が娘を犠牲にしてしまったと悔いていた。
エゴールは一家の安全を保障すると宣言し、今後は自分が守ると約束する。
その後、シルバーはソニア救出に動いた理由が、アルノルト自身の後悔を晴らすためだったと明かした。
アルノルトは、帝位争いへ巻き込まれた被害者であるソニアが平穏に暮らすべきだと考えていたのである。
帝位争いへの違和感
別れ際、ケヴィンは「今回の帝位争いは何か変だ」と警告した。
皇太子ヴィルヘルムの死後、ザンドラは残虐に、ゴードンは暴虐に、エリクは冷徹になりすぎているというのである。
特にゴードンは、かつては参謀の意見を尊重する人物だったにもかかわらず、今ではソニアの助言を完全に拒絶していた。
シルバーはその話を聞き、勇爵や自分も同じ違和感を抱いていたことを思い出す。
過去の帝位争い以上に、今回の争いには異常な変質が起きていたのである。
即位二十五周年式典と各陣営の思惑
帝都へ戻ったアルノルトは、即位二十五周年式典が今後の帝位争いの重要局面になると考えていた。
各国の要人接待は皇子たちの格付けそのものであり、レオナルトを正式な第二位候補として印象づける必要があったのである。
一方でエリクは依然として最大勢力を保ち、静観しながら支持を集めていた。
アルノルトは、エリクには焦りがなく、自らが皇帝になることを当然と考えていると分析する。
そんな中、ケヴィンの「帝位争いがおかしい」という言葉が強く印象に残っていた。
フィーネを巡る騒動
その後、皇帝はアルノルトへ、若手貴族たちによるフィーネへの求婚が急増していると告げた。
長年維持されていた「鴎の盟約」が崩壊し、若手貴族たちは蒼鴎姫フィーネを狙い始めていたのである。
皇帝は、アルノルトが距離を取れば騒動が収まるのではないかと考える。
しかしアルノルトは、自分が退けば今度はフィーネ本人へ圧力が向くだけだと拒否した。
さらに、フィーネを自らの価値を高める道具のように扱う若手貴族たちへ強い怒りを抱いていた。
彼らが本気なら、自分を排除する覚悟を見せるべきだと考えていたのである。
白鴎連合との対立
若手貴族たちは「白鴎連合」を結成し、アルノルト排除へ動き始める。
しかしアルノルトは、すでに借金を抱えた若手貴族たちを資金力で切り崩していた。
さらに悪評すら利用し、自らが恐ろしい人物だという噂を広めさせることで、白鴎連合へ恐怖を植え付けようとしていた。
アルノルトの怒りは、自分への敵意ではなく、フィーネの自由を奪おうとする姿勢へ向けられていた。
自由に空を飛ぶからこそ鳥は美しい。
そう考えるアルノルトは、フィーネの日常を守るため、敵対する若手貴族たちを徹底的に叩き潰す決意を固めるのだった。
第二章 処断
レオによるヴィンフリート勧誘
白鴎連合への対応をアルノルトへ任せたレオは、エルナを伴い帝都を離れていた。
目的は、かつて皇太子ヴィルヘルムに才能を認められた天才軍師ヴィンフリート・トラレスを探し出すことだった。
ヴィンフリートは三年前、皇太子の死をきっかけに失踪していた。
レオは彼が故郷へ戻っていると推測し、帝国中央部外れの村を訪れる。
そこで白髪の老人へ変装していたヴィンフリートを見抜き、再会を果たした。
レオは軍師になってほしいと頼むが、ヴィンフリートは自分にはレオを支えきる力がないと拒絶する。
しかしエルナからアルノルトの存在を聞き、最終的に帝都同行を決めた。
アルノルトが自分の欠点を補える存在か見極めるためだった。
アルノルトによる白鴎連合への反撃
一方アルノルトは、皇帝から黄金の鷲の指輪を受け取り、皇帝代理として帝都視察を開始した。
その真の目的は、白鴎連合への徹底的な反撃だった。
宿屋では女性専用を理由に入店拒否されるが、アルノルトは皇帝代理人として捜索を命じ、背後にいたファーナー伯爵を拘束する。
料理店でも自分だけ不味い料理を出される嫌がらせを受けたが、同じく皇帝権限を用いてゼッフェルン伯爵を摘発した。
アルノルトは、皇族へ敵対することがどれほど危険かを骨の髄まで理解させるつもりだったのである。
その一方でフィーネへは、最終的に泣くような結末には絶対にしないと約束していた。
騒動の真意とガイの理解
アルノルトは、今回の騒動そのものが計算であることをフィーネへ明かした。
わざと大規模な摘発を行い、自分が暴走しているように見せることで、若手貴族ではなくその親世代を動かす狙いがあったのである。
最後に訪れたガイの道場では、白鴎連合から嫌がらせ協力を持ちかけられた男爵が拘束された。
ガイは、金で友を売るほど最外層の人間は落ちぶれていないと激怒する。
さらに、フィーネはアルノルトの傍にいる時が一番幸せそうだと語り、もし傷つければ自分が地獄へ送ると警告した。
アルノルトは苦笑しつつ、それだけは心配いらないと返した。
城内の混乱と入れ替わり疑惑
大量逮捕によって城内は大混乱に陥る。
そんな中、元ヴァイトリング侯爵エトムントは、アルノルトの変貌へ強い違和感を抱いていた。
普段なら飄々と受け流すはずのアルノルトが、感情を露わにしているからである。
そしてエトムントは、実際にはレオナルトがアルノルトを演じているのではないかと推測する。
その疑念はアルノルトの狙い通りだった。
もしレオナルトだと思われれば、優しすぎるという評価を覆し、帝位争いを静観していた貴族たちへ危機感を与えられるからである。
和解交渉とラウレンツの暴走
やがて白鴎連合側は正式な和解交渉を申し込む。
最終的に主要貴族の当主辞任や高額賠償金など厳しい条件で話はまとまりかけていた。
しかしその場で、ラウレンツ・フォン・ヴァイトリングが突如アルノルトへ決闘を申し込む。
皇帝の面前での暴挙に場は凍りついた。
そこでレオは自ら正体を明かし、これまでアルノルトと入れ替わっていたことを説明する。
さらに宰相フランツは、皇族と貴族の間に対等な決闘は成立しないと断言した。
ヨハネスはラウレンツたちへ斬首を命じようとするが、皇后ブリュンヒルトとミツバが介入する。
最終的に、ラウレンツたちは貴族身分を剥奪された平民として扱われ、決闘は個人間のものとして成立する形へ変更された。
ただし敗北した場合、白鴎連合主要貴族へ「帝毒酒」が与えられるという条件が加えられた。
禁じ手『エピゴーネン』
決闘を前にしたアルは、本来なら正体を明かせば誰も死なずに済むと理解していた。
しかし、それをすればフィーネの傍を離れなければならない。
そのためアルは、自分のわがままを貫く道を選ぶ。
そして古代魔法『エピゴーネン』を発動した。
それは記憶内の対象を完全模倣する禁じ手であり、アルはレオの戦闘能力を再現する。
圧倒的な実力差の前にラウレンツは敗北し、恐怖から命乞いまで始めた。
さらに帝毒酒を恐れ、自ら剣へ飛び込もうとするが、アルはそれすら阻止する。
ヨハネスは決闘終了を宣言し、ラウレンツたちは拘束された。
副作用とフィーネの支え
決闘後、アルは部屋へ戻ると激しい頭痛に襲われる。
『エピゴーネン』によって本来不可能な動きを再現した代償だった。
フィーネに支えられながら、アルは本当ならラウレンツたちを助ける道もあったと打ち明ける。
それでもフィーネの傍を離れたくなくて、その選択をしなかったのである。
するとフィーネは、自分は望んでここにいるのだと答えた。
誰に何を言われても、アルの傍こそが自分の居場所なのだと告げる。
その言葉に救われたアルは、フィーネの温もりを感じながら静かに眠りへ落ちていった。
第三章 捜査
副作用に苦しむアル
決闘から五日後、アルは『エピゴーネン』の副作用に苦しみ続けていた。
感覚のずれはいまだ残っており、物を掴み損ねるほど後遺症が長引いていたのである。
セバスは古代魔法時代の身体強化用魔導符を渡すが、それはすでに使用済みの状態だった。
アルは、自分がレオのように戦えた理由を誤魔化すためには必要な工作だったと語る。
さらに今回の騒動で、金銭だけでなく入れ替わりという切り札まで晒したことを苦々しく振り返っていた。
ヴィンフリートとの再会
アルは帝都正門へ向かい、帰還したレオたちを迎える。
そこにはエルナと共に、皇太子ヴィルヘルムが見出した秀才ヴィンフリート・トラレスもいた。
ヴィンは、今回の貴族騒動におけるアルの手腕を見てから正式に仕えるか判断すると宣言する。
さらに決闘の噂や帝毒酒の件も耳にしており、アルが魔導符だけでレオ並みに戦えたはずがないと疑念を抱いていた。
アルは追及を受け流しつつも、入れ替わりの秘密がいずれ露見するかもしれないと感じていた。
ヴィンによる酷評と忠誠
セバスから事情を聞いたヴィンは、アルのやり方を「全然駄目だ」と酷評する。
フィーネを囮として利用し、貴族たちを内部崩壊させるべきだったと語ったのである。
しかしアルは、フィーネを危険へ晒す方法だけは選べなかったと否定する。
レオもまた、大切なものを捨ててまで玉座を得ても意味はないと語り、アルへ同意した。
ヴィンはそんな二人を「甘ちゃんども」と評しつつも、皇后介入後の混乱をまとめ上げたアルの対応力は認めていた。
そして最終的に、ヴィルヘルムのような王になれるのかとレオへ問いかけた後、正式に膝をついて忠誠を誓う。
こうしてヴィンフリート・トラレスは、レオナルトの軍師となったのである。
接待役選定と聖女レティシア
ヴィンが評判操作を始めた頃、アルとレオたちは皇帝ヨハネスから式典の接待役について呼び出される。
そこで王国側が、レオかアルを接待役として希望していることが判明した。
その相手こそ、五年前に知り合った聖女レティシアだった。
レティシアは七年前に伝説の杖を手にし、戦乱状態だったペルラン王国を救った英雄である。
さらに王国第一王子も同行していると聞き、アルはザンドラとの縁談交渉も含まれていると推測した。
一方レオは、初恋相手だったレティシアとの再会を前に明らかに動揺していた。
カルロスへの調査
帝位争いの異常さを気にしていたアルは、その発端となった第五皇子カルロスを調査するため、シルバーとして皇帝別荘へ潜入した。
そこにいたカルロスは右腕と下半身の自由を失っていたものの、穏やかに読書を続けていた。
カルロスは、自分が英雄になりたいという焦りから吸血鬼と手を組んだことを認める。
さらに、その背後には常に顔を隠した仲介者がいたと明かした。
カルロスは吸血鬼たちが最後まで沈黙を守ったことから、背後にはさらに恐ろしい存在がいると推測していた。
そして、自分を利用した黒幕は兄エリクではないかという疑念をアルへ伝える。
アルはその推論を完全には否定できず、新たな脅威を意識することになる。
クリューガーへの接触
続いてアルは、反乱を起こした元南部公爵クリューガーの元を訪れる。
クリューガーは片腕を失いながらも厚遇されており、自分が簡単には殺されないことを理解していた。
アルは、南部反乱で使われた“吸血鬼の血”の出所について問い質す。
その中でクリューガーは、血は「とある組織」から手に入れたものだと口を滑らせる。
しかし直後、クリューガーは呼吸困難を起こし始めた。
そこへ白いフードを被った男が現れ、契約違反を犯したため死ぬはずだったと告げる。
アルは男を帝国東部の山中へ転移させ、戦闘へ持ち込んだ。
悪魔マルコシアスとの死闘
白フードの男は、自らを悪魔マルコシアスと名乗った。
糸を自在に操る能力を持ち、契約違反者を遠隔で殺害できる存在だった。
アルは、マルコシアスが人間社会へ完全に溶け込んでいることへ強い危機感を抱く。
もし悪魔が人間を依り代として潜伏できるなら、帝国内部は疑心暗鬼へ陥るからである。
激しい空中戦の末、アルは古代魔法《インフィニティ・ダークネス》を発動する。
触れた存在を完全消滅させる黒球は、マルコシアスの最大攻撃すら飲み込み、そのまま悪魔を消滅させた。
しかし消滅直前、マルコシアスは自分が五百年前の魔王軍ではなく、新たに召喚された悪魔だと告げる。
それを聞いたアルは、同格の悪魔が他にも存在している可能性を察し、大陸全体の危機だと認識した。
迫る式典への不安
帝都へ戻ったアルは、クリューガーが暗殺されかけたことを知る。
一命は取り留めたものの、意識不明となり情報源としての価値を失っていた。
アルは、悪魔という存在を想定し切れていなかった自分の失態を悔やむ。
さらに、悪魔を召喚し暗躍させている勢力が帝国内に存在すると確信する。
そして近づく皇帝即位二十五周年式典には、多くの賓客が集まる予定だった。
帝都が祭りムードへ包まれていく裏側で、黒い陰謀が確実に動き始めていた。
アルは、この戦いこそ自分の役目だと覚悟を固め、迫る危機へ備えるのだった。
第四章 聖女レティシア
夜景を眺めるレオ
夜、レオは城から帝都の灯りが消えていく光景を静かに眺めていた。
人々が眠りにつき、街の明かりが少しずつ減っていく時間は、レオにとって昔から大切な癒しの時間だった。
帝位争いへの対応、帝都守備隊の任務、自己研鑽、そしてレティシアの接待役と、最近のレオは極めて多忙だった。
それでも充実感があったため苦には感じていなかったが、張り詰め続ければ限界が来ることも理解していた。
だからこそ、何も考えず夜景を眺める時間を大切にしていたのである。
レティシアの言葉
そこへ現れたのはレティシアだった。
彼女はレオが静かな時間を過ごしていることを察し、わざと声をかけず見守っていたと明かす。
レオはその気遣いへ感謝し、自分が合理的な人間に見えていることへ苦笑した。
さらに、自分は兄アルノルトほど器用ではなく、一度緩めば元へ戻れなくなる不器用な人間だと語る。
しかしレティシアは、人には様々な側面があり、それをどう受け取るかは相手次第だと静かに諭した。
そして、アルノルトに魅力があることを認めながらも、自分はレオのほうが好ましく思えると告げる。
その言葉は、常にアルノルトへ劣等感を抱いていたレオにとって初めて向けられた特別な評価だった。
レオとレティシアの距離
レオは嬉しさをうまく言葉にできず、無意識にレティシアの手を取っていた。
レティシアも拒絶することなく、その手を優しく握り返す。
二人はそのまま無言で夜景を眺め続け、静かな時間を共有した。
それはレオにとって、これまでにない穏やかな幸福の時間だった。
ゴードンとザンドラの密会
同じ頃、北部へ左遷されていたゴードンが極秘裏に帝都へ戻っていた。
彼は影武者と入れ替わった後、軟禁状態にあるザンドラの元を訪れる。
ザンドラは、聖女レティシアについては王国第一王子側が処理すると語り、自分たちは別の計画を進めるだけだと告げた。
ゴードンも北部で軍を掌握済みだと答え、二人は利害一致による共闘関係を確認する。
かつてなら決して手を組まなかった二人だったが、帝位争いの均衡が崩れたことで、互いを利用し合う形で結託していたのである。
そこには、かつて皇帝候補と評された面影はなく、冷酷な打算だけが残されていた。
エピローグ
レオとレティシアの夜の会話
夜になり、レオは城から帝都の街を眺めていた。
少しずつ街の明かりが消え、人々が眠りについていく光景は、昔からレオが好んでいたものだった。
最近のレオは、帝位争いの関係者との会談や帝都守備隊の監督、自己鍛錬、さらにレティシアの接待まで抱えており、休む暇もないほど忙しかった。
それでも充実感があったため苦ではなく、だからこそ今の静かな時間を大切にしていた。
レティシアによる理解と肯定
静かな時間を過ごしていたレオのもとへ、レティシアが現れる。
彼女は、わざと声をかけずにレオの時間を邪魔しなかったのだった。
レオは、自分がこうして街を眺めるのは民を意識するためではなく、単純に光景が好きだからだと説明する。
それを聞いたレティシアは、レオが合理的な人間だと思っていたため、意味のない行動をすることへ少し驚いたと語った。
レオは、自分は兄アルノルトと違って不器用であり、一度気を抜けば戻れなくなるような弱い人間だと打ち明ける。
しかしレティシアは、人には様々な側面があり、不器用さも人によっては真面目さとして受け取られると優しく諭した。
さらに、アルノルトの魅力を理解した上で、それでも自分はレオのほうが好ましいと感じていると告げる。
その言葉は、長年アルノルトへの劣等感を抱えていたレオにとって、初めて与えられた特別な言葉だった。
二人の距離の変化
レティシアの言葉に強く心を動かされたレオは、無意識に彼女の手を取っていた。
レオは、自分をそう評価してくれたことが言葉にできないほど嬉しいと伝える。
レティシアもまた、レオが喜んでくれたことを嬉しく思うと返し、嫌がることなくその手を握り返した。
その後、二人はしばらく無言のまま手を取り合い、静かな夜の時間を共有するのだった。
ゴードンとザンドラの密会
その深夜、北部へ左遷されていたゴードンが密かに帝都へ帰還した。
ゴードンは影武者と入れ替わった後、城内の隔離区域へ向かう。
そこは、反乱者クリューガーの血縁という理由でザンドラが軟禁されている場所だった。
ゴードンが訪れると、ザンドラは計画が順調に進んでいると報告する。
聖女レティシアについては、ペルラン王国第一王子とその協力者が処理する予定であり、自分たちは別の計画を進めるだけだと語った。
ゴードンも、北部で軍を掌握していると告げ、計画への自信を見せる。
こうして、本来なら決して手を組むはずのなかったゴードンとザンドラは、レオという第四勢力の台頭によって崩れた勢力均衡の中で、利害一致による共闘関係を築いていた。
しかしそこに信頼はなく、互いに利用し合うだけの危険な同盟だった。
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