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フィクション(Novel)最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い読書感想

小説【出涸らし】「最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 5」感想・ネタバレ

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フィクション(Novel)

出涸らし4巻 レビュー
出涸らし6巻 レビュー

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  1. どんなラノベ?
    1. ■ 物語の特徴
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 帝位争いの一時休戦
    2. 双黒の皇子の誕生
    3. 義賊ジークムントの正体
    4. 皇子たちの温泉旅行
    5. 賓客オリヒメの来訪
    6. 霊亀討伐戦
  6. 登場キャラクター
    1. アードラシア帝国(皇族・後宮)
      1. ヨハネス・レークス・アードラー
      2. 皇太子
      3. エリク・レークス・アードラー
      4. リーゼ・レークス・アードラー
      5. ゴードン・レークス・アードラー
      6. トラウゴット・レークス・アードラー
      7. ザンドラ・レークス・アードラー
      8. アルノルト・レークス・アードラー
      9. レオナルト・レークス・アードラー
      10. クリスタ・レークス・アードラー
      11. ミツバ
    2. アードラシア帝国(臣下・貴族・関係者)
      1. フランツ・ゼーベック
      2. セバス
      3. マリー・ヴィルケ
      4. ソニア
      5. フィーネ・フォン・クライネルト
      6. エルナ・フォン・アムスベルグ
      7. アロイス・フォン・ジンメル
      8. アロイスの母親
      9. アロイスの叔父
      10. ロルフ・フォン・ホルツヴァート
      11. ギード・フォン・ホルツヴァート
      12. ライナー・フォン・ホルツヴァート
      13. ロルフの妻
      14. ラウレンツ・フォン・ヴァイトリング
      15. ラウレンツの姉たち
      16. クリューガー公爵
      17. リタ
    3. 帝国軍・騎士団
      1. ネルベ・リッター
      2. 第二近衛騎士隊
    4. 冒険者ギルド・冒険者
      1. クライド・シャウアー
      2. エマ
      3. ギルドの職員たち
      4. ブルース・ターラント
      5. イグナート
      6. シドニー
      7. オーギュスト
      8. エゴール
      9. ジークムント・アイスラー
      10. ガイ
      11. リンフィア
    5. ミヅホ仙国
      1. オリヒメ・クオン
    6. 亜人商会
      1. 虎人の男
    7. 魔物・動物
      1. エンタ
      2. 霊亀
      3. 古竜
      4. タイガーレックス
      5. レッドレイヴン
      6. 狼型のモンスター
      7. 魔王
  7. 展開まとめ
    1. 第一章 休戦命令
    2. 第二章 矛と盾
    3. 第三章 代理討伐
    4. 第四章 霊亀討伐
    5. エピローグ
  8. 最強出涸らし皇子 シリーズ
  9. その他フィクション

どんなラノベ?

『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する』は、ファンタジー世界を舞台にした暗躍型の異世界宮廷ファンタジーである。

物語の舞台は、周辺国との軍事的な緊張感や、深刻な内憂外患を抱える強大なアードラー帝国である。主人公のアルノルト・レークス・アードラーは、双子の弟であるレオナルトを帝位につけるため、自らは「出涸らし皇子」と呼ばれる無能な皇子を演じつつ、裏では大陸最高峰の冒険者「シルバー」として驚異的な能力を振るい、壮絶な帝位継承戦を影から支配していく。

基本的な世界観は、魔法や魔導具、古代魔法、禁術が存在する中世風ファンタジーである。大国間での外交政略、領主の腐敗、宮廷内の暗殺疑惑といった複雑な陰謀が絡み合い、武力闘争のみならず、経済戦や高度な知略戦が展開される点が物語の大きな特徴である。

■ 物語の特徴

皇帝の即位二十五周年式典を控え、帝位争いは一時休戦となる。アルノルトは皇帝から第一皇女リーゼロッテとラインフェルト公爵ユルゲンの縁談を命じられ、奔走することになった。一方、帝都ではザンドラの陰謀により、未来予知の力を持つ皇女クリスタが誘拐される事件が発生する。近衛騎士エルナの奮闘で無事救出されたものの、彼女は護衛の責任を問われ謹慎処分を受けてしまう。

そんな中、北部で二百年の眠りから超巨大モンスター「霊亀」が覚醒し、帝国全土に危機が迫った。事態を重く見た帝国は、冒険者ギルドや極東から招いた「仙姫」オリヒメと協力し討伐に乗り出す。シルバーとして出陣したアルノルトは、エルナ、オリヒメ、剣聖エゴールと共に霊亀へ立ち向かった。激闘の末、アルノルトと封印を解いたエルナの合体攻撃によって霊亀を見事打ち破る。

国家の脅威は去り、帝都に平和が訪れたが、次なる権力闘争の火種は静かに燻り続けているのである。

読んだ本のタイトル

#最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い  5 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する
著者:タンバ 氏
イラスト:夕薙 氏
出版社:KADOKAWAスニーカー文庫
発売日 :2020年12月26日
ISBN : 9784041109502

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

200年ぶりに目覚めた強力モンスター討伐のため招かれた最強の結界使い“仙姫”オリヒメ。彼女に気に入られたアルは護衛(接待)役に任命されてしまい!? シルバー不在の状況で大規模討戦が開始されてしまう!

最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い5 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する

感想

200年前にSSランク冒険者エゴール翁が仕損じて長い休眠に入っていた霊亀が、吸血鬼達が起こした魔獣の暴走の余波で目覚めてしまった。

霊亀が暴れるのを防ぐためにミズホ仙国から守りのエキスパートの仙姫が秘密裏に来て結界を張って時間を稼いでいたが、、

本来ならSSランク冒険者のシルバーに依頼を出すのだが、シルバーに功績が集中するのを危惧して冒険者ギルドは複数人のS級冒険者に依頼を出すが、、

彼等は現地に来るのに時間をかけ過ぎて帝国に被害が出ている。

だがシルバーは出るなと言われるので帝都の冒険者達が何故シルバーを出さないと受付に圧力をかけていたが、、
そんな時に、シルバーが騒いでいた冒険者達を現地に送って魔獣達の暴走を抑えてしまう。

それに余計な事をしたと帝国に噛み付くS級冒険者達だったが、、

まだ来ないS級冒険者が抜け駆けして霊亀を目覚めさせてしまった。

現地に行けるのはシルバーのみ。
S級冒険者は戦力外のため連れて行かない。
代わりに勇侯のエルナと仙姫のオリヒメを現場に連れて行き。

さらに森を彷徨っていたドワーフ、エゴール翁が合流して霊亀を討伐する。

あれ?コイツらだけで国を潰せるんじゃね?

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出涸らし4巻 レビュー
出涸らし6巻 レビュー

考察・解説

帝位争いの一時休戦

アードラシア帝国における「帝位争いの一時休戦」は、南部での騒乱が一段落した後、皇帝ヨハネスの勅命によってもたらされた表向きの平和な期間である。この休戦がもたらした背景、影響、そして水面下で続く暗闘についての解説は以下の通りである。

一時休戦の背景と皇帝の命令

一時休戦の直接的な理由は、皇帝ヨハネスの誕生日および即位二十五周年の記念式典が近づいていたためである。

  • 皇帝は諸外国から多くの賓客を招いて盛大な祭りを開く予定であり、この重要な時期に国内で血みどろの権力闘争を繰り広げることは帝国の国益を損なうと判断した。
  • 皇帝はアルノルト、レオナルト、エリクらに対し、式典が終わるまでは帝位争いを控え、諸外国の要人の歓待役を務めるよう命じた。
  • さらに「自分の評判を落とすことは国の利益を軽んじることと見なす」と強く釘を刺し、皇族としての品位を保つことを厳命した。

帝都の民への影響とレオナルト陣営の停滞

この休戦により、クリューガー公爵の反乱以降停滞していた帝都の街には活気が戻り、流通網も回復して民の生活は安定し始めた。
しかし、帝位争いの観点から見れば、南部騒乱を見事に解決し、飛ぶ鳥を落とす勢いで名声と支持を集めていたレオナルト陣営にとっては、その快進撃の勢いが削がれる結果となった。

双黒の皇子アルノルトの苦悩

この休戦命令で最も頭を抱えることになったのはアルノルトである。

  • 皇帝が事前にアルノルトとレオナルトを「双黒の皇子」と大々的に称賛し、アルノルトの格を引き上げたのは、彼を出涸らし皇子ではなく立派な「接待役」として諸外国の要人の前に立たせるための布石であった。
  • 無能を演じて周囲の目を欺き、暗躍の機会を作ってきたアルノルトにとって、評判を下げることを禁じられる(=出涸らし皇子として振る舞えない)ことは、今後の裏工作を極めて困難にする縛りである。
  • 彼はこの皇帝の老獪な采配に深い絶望を味わうことになった。

エリクの不気味な静観と水面下の暗闘

アルノルトは、この休戦期間中に無理に動くことは非常に危険だと分析している。

  • 最大勢力である第二皇子エリクは、常に「帝国第一」の姿勢を崩さず、他陣営が失態を犯すのを冷徹に待っている。
  • もしアルノルトたちが強引に動けば、エリクから「帝位争いが民を苦しめている」と責任を押し付けられ、一方的に悪者にされるリスクがあった。
  • 優しすぎるレオナルトが民の困窮を見れば足を止めてしまうため、アルノルトはエリクの罠を警戒し、表立った行動を控える決断を下した。

まとめ

表向きは皇帝の権威によって平和な休戦期間が訪れたが、その裏では、アルノルトの台頭にint嫉妬した若手貴族たちによる「鴎の盟約」の崩壊や、皇帝と冒険者ギルドが秘密裏に進めるモンスター討伐計画(霊亀討伐)など、次なる波乱の火種が静かに、そして確実に燻り続けている。

双黒の皇子の誕生

アードラシア帝国における「双黒の皇子」という呼び名は、南部での反乱や悪魔騒動が解決した後に開催された祝賀パーティーにおいて、皇帝ヨハネスが第七皇子アルノルトと第八皇子レオナルトを称賛したことで誕生した。この命名の裏には、単なる功績の評価にとどまらない皇帝の老獪な政治的思惑と、それに翻弄されるアルノルトの苦悩が隠されている。

「双黒の皇子」命名の経緯

南部騒乱の事後処理が一段落した頃、皇帝は功労者たちを招いて盛大なパーティーを城で開催した。

  • 勅使として危険な任務を果たしたフィーネや、少数での奇襲を成功させたネルベ・リッターに対して順に杯を捧げた。
  • 彼らを率いて戦い、事態を収拾したレオナルトにも大きな称賛が送られた。
  • 皇帝の称賛はそれだけにとどまらず、気難しいネルベ・リッターを説得して志願させたアルノルトの陰の働きを、レオナルトに勝るとも劣らぬ功績として高く評価した。
  • 結果として皇帝は、同じ黒髪と黒目を持つ二人の皇子を「双黒の皇子」と大々的に名付け、帝国中にその名を広めるよう宣言した。

皇帝の真の思惑

皇帝がアルノルトの格を急激に引き上げたのには、明確な理由が存在していた。

  • 皇帝の誕生日および即位二十五周年の記念式典が近づいており、諸外国から多くの賓客が帝国を訪れる予定であった。
  • 皇帝は皇子たちにその歓待役(接待役)を任せるつもりであったが、出涸らし皇子と悪評が立っているアルノルトをそのまま接待役にすれば、他国から国を軽んじられていると見なされる危険があった。
  • レオナルトと並び立つ「双黒の皇子」という名声があれば、問題なく接待の表舞台に立たせることができるため、この命名はアルノルトを接待役として利用するための見事な布石であった。

アルノルトへの影響と苦悩

表向きは無能を演じ、裏でSS級冒険者シルバーとして暗躍することで弟を支えてきたアルノルトにとって、この不本意な名声は致命的な枷となった。

  • パーティー会場でいきなり注目を浴びたアルノルトは、居心地の悪さからレオナルトを囮にして逃げ出す羽目になった。
  • さらに皇帝からは、「自分の評判を落とすことは国の利益を軽んじることと見なす」と強く釘を刺され、皇族としての品位を保つことを厳命された。
  • これにより、これまでのように適当に生きて評判を下げる(=無能を演じて他者の警戒を解き、暗躍しやすくする)という最大の隠れ蓑を禁じられてしまい、アルノルトはこれまでにない深い絶望を味わうことになった。

まとめ

皇帝ヨハネスが放った「双黒の皇子」という命名は、式典を控えた帝国が諸外国に見せるための高度な政治的演出であった。この老獪な采配により、レオナルト陣営の威信が高まった一方で、無能の仮面を最大の武器としてきたアルノルトにとっては、今後の裏工作や暗躍を大きく制限される深刻な事態を招く結果となった。

義賊ジークムントの正体

帝都市外層の民から「義賊」として英雄視されていた人物の正体は、半年ほど前から音信不通になっていたS級冒険者「ジークムント・アイスラー」である。彼は大陸最強の槍使いと評されるほどの武人であるが、同時に大の女好きとしても知られていた。彼の正体や、義賊として活動していた背景は以下の通りである。

義賊としての活動とアルノルトの罠

帝都では、悪徳商人が不当に巻き上げた金品を奪い返し、貧しい外層の民に配る義賊が噂になっていた。

  • 子供のような体格でありながら、帝都守備隊や警邏隊の捜索を掻い潜るその手練れにアルノルトが目をつけた。
  • アルノルトは彼を陣営に引き入れるべく、エルナと共に悪徳商人に扮して罠を張った。
  • 襲撃してきた義賊は短いリーチを槍でカバーし、帝国最強の騎士であるエルナと互角に打ち合うほどの神速の槍捌きを見せた。
  • しかし戦闘の最中に上げ底の靴とフードが外れ、その正体が「喋る茶色い子熊」であることが露見した。

子熊の姿になった理由

後日、潜伏先の空き家でアルノルトたちに追い詰められた彼は、自らをジークムントと名乗る。彼が子熊の姿になってしまった経緯は以下の通りである。

  • 半年ほど前に依頼で訪れた森の奥で一人の女性に出会い、手を出そうとしたことが原因であった。
  • その女性の妹によって変な秘薬を飲まされた。
  • 人間の姿よりこっちのほうが可愛いと思う、という理不尽な理由で子熊の姿に変えられてしまった。

義賊活動の真の目的と陣営への加入

彼が義賊として活動していたのは、単なる善意からだけではなかった。奪った金の一部を外層民に配る一方で、大量の資金を隠し持っていた。

その目的は、禁術研究で知られる第二皇女ザンドラに依頼して、自身の呪いである子熊の姿を解いてもらうための資金を貯めることであった。
しかし、アルノルトからザンドラを頼れば実験体にされるだけだ、と忠告を受ける。代わりにSS級冒険者シルバーに呪い解除の相談をすることを条件に、アルノルト陣営に加わることとなった。

陣営内での扱いと活躍

陣営に加わってからは、アルノルトによって重さを調整できる魔導具の首輪をつけられ、女好きの性分や脱走を防ぐための枷とされている。

  • 愛らしい外見からクリスタやリタには「喋るぬいぐるみ」としてすっかり気に入られ、玩具のように扱われている。
  • 姿は子熊でも中身はS級冒険者であるため戦闘力は非常に高く、北部でのモンスター討伐の際にはリンフィアと連携した。
  • 連携によって厄介な鳥型モンスターであるレッドレイヴンを華麗に討伐するなど、確かな実力を発揮している。

まとめ

伝説のS級冒険者ジークムントは、理不尽な呪いによって子熊の姿へと変えられ、ザンドラを頼ろうと義賊活動に手を染めていた。しかし、アルノルトの知略とシルバーとの繋がりを提示されたことでレオナルト陣営へと組み込まれることとなった。普段はマスコットのように扱われながらも、大陸最強の槍使いとしての実力は健在であり、今後の帝位争いにおける貴重な高火力要員として陣営の大きな力となっている。

皇子たちの温泉旅行

アードラシア帝国の帝位争いが一時休戦に入った直後、連日の騒動で疲労が溜まっていたアルノルトたちは、帝都近くの老舗温泉旅館「ハイルング」へ慰安旅行へ向かうこととなった。その経緯と旅行先でのハプニングは以下の通りである。

温泉旅行の提案と参加者

旅行の発端は、近衛騎士への復帰を控えるエルナからの提案であった。

  • アルノルトを休ませたいという母アンナの勧めもあり、急遽計画が進められた。
  • 面倒くさがって断ろうとするアルノルトに対し、話を聞いたレオナルトが賛同した。
  • レオナルトはフィーネ、リンフィア、クリスタ、リタまで誘い、大所帯の旅行となった。

レオナルトにとっては、休戦中に派手な動きを控えて温泉で休むことが、皇帝の意向に素直に従っているという政治的なアピールにもなるという計算があった。さらに、執事のセバスが「アルノルトが行かなければ、レオナルトと女性陣のお忍び旅行という変な噂が立ってしまう」と言いくるめたため、アルノルトも渋々同行することとなった。なお、一緒に行って女湯を覗こうと目論んだ子熊姿の義賊ジークムントは、アルノルトにエルナに斬られると一蹴され、留守番を命じられた。

ハイルングでの休息

一行が向かった温泉旅館「ハイルング」は、古くから皇帝や戦士たちも利用する名湯で、傷や疲労を癒すだけでなく魔力回復効果もあった。当日は勇爵家の名で貸し切りにされており、レオナルトとアルノルトは男湯でゆっくりと日頃の疲れを癒した。

謎のペンギンと女湯への濁流

レオナルトが先に上がった後、アルノルトが一人で湯に浸かっていると、黒いペンギンのような謎の小動物であるエンタが現れる。

  • この動物が源泉の湯量調整用の魔導具を引き抜いてしまう。
  • これにより、男湯に大量の熱湯が流れ込む暴走事故が発生した。
  • 濁流に飲み込まれたアルノルトは、男女の湯を隔てる木の仕切りを突き破り、そのまま女湯へと流されてしまった。

女湯での惨劇と制裁

流れ着いた先には、何も身に着けていないエルナ、フィーネ、リンフィア、クリスタ、リタがいた。激怒したエルナからなにか言い残すことはあるかしらと問われたアルノルトは、見苦しい言い訳を諦め、エルナ、リンフィア、フィーネのプロポーションに対する率直な感想と評価を並べ立てた。そして眼福でした、ごちそうさまと言い残した。直後にエルナの強烈な一撃を頭に受け、アルノルトは温泉に沈められて気絶した。

別館に潜む国賓

実はこの時、勇爵家の貸し切りであったはずのハイルングの別館には、極秘裏に帝国に招かれていた国賓・ミヅホ仙国の仙姫オリヒメが第二近衛騎士隊の護衛のもと滞在していた。温泉を暴走させたペンギンのエンタは彼女のペットであり、このハプニングがのちにアルノルトとオリヒメが深く関わっていく伏線となっている。

まとめ

一時休戦中の息抜きとして計画された温泉旅行は、謎の小動物エンタの引き起こしたトラブルによって、アルノルトが女湯へ流されるという大騒動に発展した。アルノルトはエルナの制裁によって気絶する結末を迎えたが、このハプニングの裏にはミヅホ仙国の仙姫オリヒメの存在が隠されていた。この偶然の遭遇は、今後の帝位争いや外交情勢に新たな波乱をもたらす重要な布石となっている。

賓客オリヒメの来訪

アードラシア帝国を極秘裏に訪れた賓客「オリヒメ」の来訪は、帝国の危機管理とアルノルトの日常に大きな波乱をもたらした。彼女の正体や来訪の目的、そして帝都での滞在中の騒動について以下にまとめる。

オリヒメの正体と来訪の背景
オリヒメ・クオンは、極東の小国「ミヅホ仙国」を守護する「仙姫」と呼ばれる存在である。狐耳と尻尾を持つ「仙狐族」の少女であり、天真爛漫で傍若無人な性格をしているが、「大陸最硬」と称されるほどの強力な結界術の使い手である。
彼女が帝国に極秘の国賓として招かれた背景には以下の理由がある。

  • 魔笛「ハーメルン」の影響で活動を始めた超巨大な不死のモンスター「霊亀」の動きを、その強力な結界で封じるため。
  • 帝国と冒険者ギルドの共同討伐計画の要として招聘されたため。
  • オリヒメ本人にとっては、外の世界や帝都を見てみたいという好奇心も大きな理由であった。

温泉地でのハプニングとアルノルトとの出会い
来訪当初、オリヒメは近衛第二騎士隊の厳重な護衛のもと、老舗温泉旅館「ハイルング」の別館に滞在していた。しかし、彼女のペットである黒いペンギン(本人は太った燕と主張)の「エンタ」が脱走し、源泉の魔導具を引き抜いたことで、男湯にいたアルノルトが女湯へと押し流されるという大惨事の原因を作った。
その後、帝都の城下町でアルノルトがエンタを捕まえていたところにオリヒメが遭遇する。

  • エンタをペンギン扱いするアルノルトと、燕だと言い張るオリヒメは口論となった。
  • オリヒメは結界を使ってアルノルトを転ばせるというイタズラをして逃走した。
  • その際、アルノルトが住んでいる場所(帝剣城)を教えたことで、二人の奇妙な縁が始まった。

アルノルトの接待役就任
後日、オリヒメは結界を駆使して城内のアルノルトの部屋へ入り浸るようになった。

  • 仙国では神のように崇められ、気安く接してくれる友人がいなかった。
  • そのため、自分の身分を知っても態度を変えずに適当に接してくれるアルノルトは心地よい存在であった。
  • 寂しさからアルノルトを自らの接待役に指名して懐くようになった。
    宰相フランツも、万が一の際に強力な仙姫を頼れるパイプになると判断し、アルノルトに接待役を引き受けるよう依頼した。

勇者と仙姫の激突
ある日、オリヒメがアルノルトの部屋で球遊びをして彼に馬乗りになっていたところへ、不審に思って結界を壊して突入してきたエルナと鉢合わせになる。
帝国最強の勇爵家の次期当主であるエルナと、ミヅホ仙国の守護神であるオリヒメは、互いの存在を知るやいなや強烈なライバル心を燃やして激突した。しかし、その対決は互いの胸の大きさや可愛さを自慢し合うという、アルノルトが頭を抱えるほど低レベルで子供っぽい口論であった。

霊亀討伐における共闘
予定よりも早く霊亀の封印結界が破られ、討伐作戦が前倒しになった際、オリヒメは霊亀封印の報酬として受け取っていた虹貨3枚をポンと支払い、SS級冒険者シルバー(アルノルト)を個人的に雇い入れた。
北部での決戦において、オリヒメは以下の重要な役割を果たした。

  • 最硬の盾として霊亀の広域ブレスや鱗の迎撃を巨大な結界で防ぎ切った。
  • シルバーやエルナ、剣聖エゴールたちが全力で攻撃するための活路を開いた。
    討伐後も、自分が何重にも張った結界をシルバーたちの全力攻撃が10枚も破壊したことに対して不満を漏らすなど、負けず嫌いな一面を見せていた。

まとめ
オリヒメの来訪は、極秘の任務と本人の好奇心から始まり、アルノルトとの奇妙な交流を経て、帝国にとって欠かせない結界の要としての共闘へと発展した。彼女の天真爛漫な振る舞いは周囲を振り回しつつも、強大な霊亀討伐において決定的な役割を果たし、帝国の危機を救う大きな力となったのである。

霊亀討伐戦

アードラシア帝国の北部で繰り広げられた「霊亀討伐戦」は、二百年の眠りから覚めた不死の超巨大モンスターに対し、大陸屈指の規格外の強者たちが共闘して討伐を成し遂げた激戦である。その経緯と詳細は以下の通りである。

霊亀出現の背景と討伐計画の露見
東部で吸血鬼兄弟が使用した魔笛「ハーメルン」には、休眠中のモンスターを活性化させる効果があった。その影響により、北部国境付近で二百年前から休眠していた不死の超巨大モンスター「霊亀」が目を覚ます危険性が高まった。
二百年前、霊亀はSS級冒険者エゴールによって討伐寸前まで追い詰められたが、古竜の妨害によって取り逃がされ、力を蓄えるために長い休眠に入っていた。
事態に対処するため、以下の討伐計画が進められていた。
・帝国と冒険者ギルドは、極秘に複数のS級冒険者や極東のミヅホ仙国の「仙姫」オリヒメ・クオンを招集した。
・しかし、シルバーの突出を嫌うギルド上層部の思惑により、シルバーはこの作戦から意図的に外されていた。

討伐計画の破綻とシルバーの参戦
しかし、招集されていたS級パーティー「雷の勇兵団」が功を焦って独断で霊亀を刺激してしまったことで、オリヒメが時間稼ぎのために張っていた結界が崩壊し、霊亀が本格的に活動を開始してしまう。
・結界崩壊を知ったオリヒメは、アルノルトへの個人的な誠意として、虹貨三枚を支払ってシルバーへ直接討伐を依頼した。
・これによりシルバーの参戦が正式に決まり、皇帝の名代としてのレオナルトや勇者エルナらと共に、転移門を通って北部へと急行した。

レオナルトたちによる民の避難と露払い
霊亀の動きに触発されて周辺のモンスターも活性化しており、逃げ遅れた村の民が危険に晒されていた。レオナルトは、シルバーたちが全力で戦える環境を作るため、騎士たちやジーク、リンフィアと共に自ら露払いとしてモンスターの群れへ突撃し、民の救出と護衛に当たった。
その最中、以下の人物たちと合流を果たす。
・軍の損耗を恐れて民を見捨てる判断を下したゴードン皇子に反発し、独自の部隊を率いて民の救出に向かっていた軍師ソニア。
・森で迷子になっていたSS級冒険者「迷子の剣聖」エゴール(二百年前に霊亀を取り逃がした張本人)。

四人の規格外による共闘
霊亀の下には、シルバー、エルナ、オリヒメ、そしてエゴールが集結した。彼らは以下の陣形で強大な敵に挑んだ。
・シルバーが指揮を執る。
・オリヒメが結界による防御を担当する。
・エルナとエゴールが主攻を担う。
・シルバーが遊撃と転移によるサポートを行う。
しかし、霊亀が放つ自律する無数の鱗や、重力魔法、空から隕石のように降り注ぐ広域ブレス攻撃に苦戦を強いられる。その激戦の中、逃げ遅れた子供たちを庇ったエルナがブレスの直撃を受け、重傷を負ってしまった。

決着:銀と黄金の光の奔流
大切な幼馴染であるエルナを傷つけられたことに激怒したシルバーは、全力の銀滅魔法シルヴァリー・ライトニングを放ち、霊亀の巨大なブレスを真正面から押し返した。その隙を突き、エゴールが神速の抜刀術で霊亀の絶対防御である甲羅を一閃し、深い亀裂を入れた。
最後は、シルバーが戦場に残留した銀属性の魔力をかき集めた奥義シルヴァリー・エンド・セイバーを放ち、同時にエルナが封印を第二段階まで解放した聖剣・極光による黄金の光剣を放った。銀と黄金の光の奔流は霊亀を完全に飲み込み、オリヒメが被害を抑えるために展開した十二重の防御結界を十枚破壊しながら、霊亀を完全に消滅させて討伐を成功へと導いた。

まとめ
霊亀討伐戦は、皇帝と冒険者ギルドの思惑から始まった極秘計画が破綻したことで生じた国家規模の危機であった。しかし、大陸最強の矛であるエルナとエゴール、盾であるオリヒメ、そしてSS級冒険者シルバーの共闘によって無事に終息を迎えた。この戦いでレオナルトが自らを囮にして民を救うために示した将としての勇姿は、帝国外での信頼と彼の名声をさらに高める結果となったのである。

出涸らし4巻 レビュー
出涸らし6巻 レビュー

登場キャラクター

アードラシア帝国(皇族・後宮)

ヨハネス・レークス・アードラー

アードラシア帝国の皇帝であり、アルノルトたちの父親である。皇太子を失った後、残る子供たちによる帝位争いを容認している。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・皇帝。

・物語内での具体的な行動や成果
 南部の騒乱を解決したレオナルトらを祝うパーティーを開催した。霊亀討伐の計画を冒険者ギルドと秘密裏に進めた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 即位二十五周年の記念式典を控えており、皇子たちに休戦と歓待役を命じた。

皇太子

ヨハネスの長男であり、亡くなった長兄である。聡明で人望があり、誰もが理想の皇帝になると信じていた。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・皇太子(故人)。

・物語内での具体的な行動や成果
 三年前に戦場で命を落とした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼の死が現在の過酷な帝位争いの発端となっている。

エリク・レークス・アードラー

第二皇子であり、外務大臣を務める知能派である。冷静な判断力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第二皇子。外務大臣。

・物語内での具体的な行動や成果
 他国への牽制を行い、帝国の不利益を防いだ。ザンドラへのペルラン王国からの縁談について皇帝に報告した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 帝位争いの最有力候補であり、他陣営の潰し合いを静観している。

リーゼ・レークス・アードラー

第一皇女であり、東部国境守備軍を預かる元帥である。戦場を恋人とする生粋の軍人である。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第一皇女。元帥。

・物語内での具体的な行動や成果
 レオナルトの狼煙に応じ、東部国境軍の精鋭を率いて南部の悪魔騒動に駆け付けた。悪魔バラムの腕を斬り飛ばした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 南部の功績により、東部国境軍の増員と予算の拡大を認められた。

ゴードン・レークス・アードラー

第三皇子であり、軍内で最大勢力を持つ武闘派である。自らが活躍する戦場を求めている。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第三皇子。将軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 ソニアの献策を利用して南部での内乱を引き起こそうと企てた。隠密部隊を動かしてレベッカの告発状を奪取した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 南部の騒乱を引き起こしかけた罪により、北部国境守備軍への赴任を命じられた。

トラウゴット・レークス・アードラー

第四皇子であり、大柄で太った体型をしている。文才はないが傑作の執筆を目指している。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第四皇子。

・物語内での具体的な行動や成果
 フィーネの説得に応じ、皇帝の名代として海竜討伐のために南部へ赴いた。エルナに聖剣の使用を許可する号令をかけた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 帝位争いには加わっておらず、マイペースに行動している。

ザンドラ・レークス・アードラー

第二皇女であり、残忍な性格を持つ。魔導師の支持を集め、禁術の研究を進めている。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第二皇女。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトやレベッカに向けて暗殺者を派遣した。自身の侍女シャオメイにクリスタの誘拐と実験体としての確保を命じた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 南部貴族の不正発覚に伴い、無期限の謹慎を命じられ帝位争いから脱落寸前となった。

アルノルト・レークス・アードラー

第七皇子であり、双子の弟であるレオナルトを皇帝にするために暗躍している。裏ではSS級冒険者シルバーとして活動している。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第七皇子。SS級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 シルバーとして霊亀討伐に参加し、エルナやエゴールたちと共闘して霊亀を消滅させた。ソニアに活を入れ、軍師としての道を示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 皇帝から「双黒の皇子」として称賛され、接待役を命じられたことで表立った暗躍が困難になった。

レオナルト・レークス・アードラー

第八皇子であり、アルノルトの双子の弟である。武勇や頭脳、人格に優れている。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第八皇子。帝都守備隊の名誉将軍。

・物語内での具体的な行動や成果
 南部の悪魔騒動において、民を守るために前線で戦い続けた。重臣会議で南部貴族の不正を追及する巡察使に任命された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 南部の功績により名誉将軍となり、重臣会議への参列も許可されたことで、有力な帝位候補者へと成長した。

クリスタ・レークス・アードラー

第三皇女であり、感情をあまり表に出さない少女である。未来予知に類する先天魔法を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第三皇女。

・物語内での具体的な行動や成果
 ザンドラの指示を受けた奴隷商人によって誘拐されたが、リタやエルナの活躍で救出された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 未来予知の能力をザンドラ陣営に狙われた。

ミツバ

皇帝の第六妃であり、アルノルトとレオナルトの母親である。東方出身の元踊り子である。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・第六妃。

・物語内での具体的な行動や成果
 実母を亡くしたクリスタを引き取って育てている。皇帝が過労で倒れた際は、迅速に介護態勢を整えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 子供の自主性を尊重する教育方針を貫いている。

アードラシア帝国(臣下・貴族・関係者)

フランツ・ゼーベック

アードラシア帝国の宰相であり、皇帝の右腕として国政を支えている。

・所属組織、地位や役職
 アードラシア帝国・宰相。

・物語内での具体的な行動や成果
 レオナルトが提出した嘆願書を受け取り、皇帝を説得することを約束した。アルノルトの暗躍により暴走した馬車に取り残された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトの行動に疑念を抱き、彼に忠告を与えた。

セバス

アルノルトに仕える金髪の老執事である。かつては「死神」と呼ばれた伝説の暗殺者である。

・所属組織、地位や役職
 第七皇子付き執事。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトの護衛や情報収集を行い、ザンドラ配下の暗殺者を撃退した。ザイフリート伯爵の工作を逆手に取り、彼を失脚させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトの暗躍を裏から支える不可欠な存在である。

マリー・ヴィルケ

レオナルトに仕えるメイドであり、秘書的な役割もこなす。

・所属組織、地位や役職
 第八皇子付きメイド。

・物語内での具体的な行動や成果
 ベルツ伯爵の屋敷を訪れ、東部と帝都を結ぶ道の建設案を提示した。レオナルトの陣営拡大のために貴族からの報告を取りまとめている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 常に無表情で仕事に生きがいを感じており、ガイからの好意には気付いていない。

ソニア

ハーフエルフの少女であり、かつて天才参謀と呼ばれた軍人の養女である。

・所属組織、地位や役職
 ゴードン陣営・軍師(のち離反)。

・物語内での具体的な行動や成果
 祖父母を人質に取られ、ゴードンの軍師として献策を行った。ゴードンが民を見捨てたことに反発し、志願兵を率いて民の救出に向かった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ゲルスでの敗北後、グラウ(アルノルト)から軍師としての心構えを説かれ、ゴードンと決別した。

フィーネ・フォン・クライネルト

クライネルト公爵の長女であり、「蒼鷗姫」と呼ばれる絶世の美女である。

・所属組織、地位や役職
 クライネルト公爵家・長女。

・物語内での具体的な行動や成果
 皇帝の勅使としてヴュンメ城に赴き、クリューガー公爵に最後通告を突きつけた。亜人商会との交渉を成功させ、陣営に資金援助をもたらした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトが帰る場所となることを誓い、彼を精神的に支えている。

エルナ・フォン・アムスベルグ

アムスベルグ勇爵家の次期当主であり、「神童」と呼ばれる帝国最強の騎士である。

・所属組織、地位や役職
 近衛騎士団・第三騎士隊隊長。

・物語内での具体的な行動や成果
 誘拐されたクリスタを救出するため、地下オークション会場に突入し暗殺者を退けた。霊亀討伐戦では聖剣を召喚し、霊亀に致命傷を与えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 クリスタ誘拐を防げなかった責任を問われ、一時的な自宅謹慎処分を受けた。

アロイス・フォン・ジンメル

ゲルスの街を治める若き領主である。

・所属組織、地位や役職
 ジンメル伯爵家・当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 母親を人質に取られながらも、領民を守るために帝国軍との抗戦を決意した。グラウ(アルノルト)の助言を受け、一万の軍勢を退けた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 南部の騒乱後、皇帝から罪を不問とされ、城に留まって学ぶことを命じられた。

アロイスの母親

アロイスの母であり、ジンメル伯爵夫人である。

・所属組織、地位や役職
 ジンメル伯爵家・夫人。

・物語内での具体的な行動や成果
 クリューガー公爵によってヴュンメの城に人質として捕らえられていた。トラウト侯爵に刃を向けられた際も、息子のために死を覚悟した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 フィーネたちによって救出され、無事に領地へと帰還した。

アロイスの叔父

アロイスの叔父である。

・所属組織、地位や役職
 ジンメル伯爵家・関係者。

・物語内での具体的な行動や成果
 軍部からの要請を受け、帝国軍のガルバー将軍を狙撃して暗殺した。アロイスを捕らえようとしたが、シルバーの魔法によって眠らされた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼の行動がゲルス攻防戦の引き金となった。

ロルフ・フォン・ホルツヴァート

歴史あるホルツヴァート公爵家の当主である。

・所属組織、地位や役職
 ホルツヴァート公爵家・当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 長男ギードがアルノルトを怒らせたことを知り、彼を厳しく叱責した。次男ライナーと共にギードを見限る算段を立てた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 帝位争いにおいて各陣営に恩を売るため、息子たちを利用している。

ギード・フォン・ホルツヴァート

ホルツヴァート公爵家の長男であり、アルノルトを見下している。

・所属組織、地位や役職
 ホルツヴァート公爵家・長男。

・物語内での具体的な行動や成果
 街中でアルノルトを侮辱し、エルナを中傷したことでアルノルトの逆鱗に触れた。アルノルトの睨みを受けて恐怖し、謝罪した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 失態を重ねたことで父親から見限られそうになっている。

ライナー・フォン・ホルツヴァート

ホルツヴァート公爵家の次男であり、次期当主と目されている。

・所属組織、地位や役職
 ホルツヴァート公爵家・次男。

・物語内での具体的な行動や成果
 エリクの陣営に送り込まれている。父ロルフと共に、兄ギードを勘当する計画を練った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 兄とは異なり、冷静で合理的な思考を持っている。

ロルフの妻

ロルフの妻であり、ギードとライナーの母親である。

・所属組織、地位や役職
 ホルツヴァート公爵家・夫人。

・物語内での具体的な行動や成果
 長男のギードを溺愛し、彼の教育を一任されていた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき昇進や影響力の変化はない。

ラウレンツ・フォン・ヴァイトリング

若き宮廷貴族であり、ヴァイトリング侯爵家の当主である。

・所属組織、地位や役職
 ヴァイトリング侯爵家・当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 フィーネに対する「鴎の盟約」からの脱退を表明した。街中でアルノルトに接触し、彼にフィーネを任せることはできないと告げた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 二人の有力な姉を持っており、皇帝も彼の行動を止めにくい立場にある。

ラウレンツの姉たち

ラウレンツの二人の姉である。

・所属組織、地位や役職
 長姉は亡き皇太子の妻。次姉は近衛騎士団長兼第一近衛騎士隊隊長。

・物語内での具体的な行動や成果
 物語内での直接的な行動の描写はない。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 彼女たちの存在がラウレンツの強大な影響力の背景となっている。

クリューガー公爵

第五妃の兄であり、帝国南部を裏で牛耳る有力貴族である。

・所属組織、地位や役職
 クリューガー公爵家・当主。

・物語内での具体的な行動や成果
 南部諸侯の親族を人質に取り、南部連合を設立して反乱を起こした。追い詰められた末に悪魔の血を打ち込み、周囲の騎士を悪鬼に変えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 レオナルトによって捕縛され、南部の騒乱を引き起こした罪に問われた。

リタ

貧困層出身の快活な騎士見習いの少女である。

・所属組織、地位や役職
 騎士見習い。

・物語内での具体的な行動や成果
 誘拐されたクリスタを追って馬車に乗り込み、地下で暗殺者から彼女を守ろうとして重傷を負った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 エルナやソニアの治療を受け、一命を取り留めた。

帝国軍・騎士団

ネルベ・リッター

主君を裏切った過去を持つ元騎士たちで構成された独立部隊である。「傷跡の騎士たち」と呼ばれる。

・所属組織、地位や役職
 帝国軍・独立部隊。

・物語内での具体的な行動や成果
 アルノルトの覚悟に応えて奇襲作戦に志願した。ヴュンメ城に潜入し、レオナルトの護衛としてクリューガー公爵の捕縛に貢献した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 作戦の成功により、ただの兵士ではなく真の騎士団として帝国中から認識されるようになった。

第二近衛騎士隊

近衛騎士団の中でも上位の実力を持つ精鋭部隊である。

・所属組織、地位や役職
 近衛騎士団・第二隊。

・物語内での具体的な行動や成果
 ハイルングの別館に滞在していた国賓であるオリヒメの護衛を担当した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき昇進や影響力の変化はない。

冒険者ギルド・冒険者

クライド・シャウアー

冒険者ギルド本部の副ギルド長を務める男性である。かつてはS級冒険者として活躍した。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド本部・副ギルド長。

・物語内での具体的な行動や成果
 帝国と協力し、国境付近のモンスター討伐計画を進めた。シルバーに対して霊亀に関する情報を提供した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトからギルド本部のトップに立つことを期待されている。

エマ

冒険者ギルド帝都支部に勤める受付嬢である。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド帝都支部・受付嬢。

・物語内での具体的な行動や成果
 イェーナのギルド支部で冒険者に絡まれていたアルノルトを助け、彼の正体を周囲に明かした。レベッカを匿い、帝都への逃走に協力した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 シルバーの担当受付嬢として、地方支部でも強い発言力を持っている。

ギルドの職員たち

冒険者ギルドの各地の支部に勤務する職員たちである。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド。

・物語内での具体的な行動や成果
 緊急警報で流れるエヴァの懇願を聞き、無力感に苛まれた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき昇進や影響力の変化はない。

ブルース・ターラント

「氷結の貴公子」と呼ばれる若き氷の魔導師である。

・所属組織、地位や役職
 イーグレット連合王国・S級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 霊亀討伐計画のために招集された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 トントン拍子でS級に昇格した出世頭である。

イグナート

皇国を拠点とする炎の魔剣士である。

・所属組織、地位や役職
 皇国・S級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 霊亀討伐の計画に参加し、シルバーの介入に反発した。オリヒメの結界を突破できず、討伐への同行を断念した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 周囲への被害を顧みず暴れ回るため、問題児として扱われている。

シドニー

王国で活動する夫婦のS級冒険者の片割れである。攻撃を担当する。

・所属組織、地位や役職
 王国・S級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 霊亀討伐計画のために招集された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 安定感のあるベテラン冒険者として評価されている。

オーギュスト

王国で活動する夫婦のS級冒険者の片割れである。防御を担当する。

・所属組織、地位や役職
 王国・S級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 霊亀討伐計画のために招集された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 安定感のあるベテラン冒険者として評価されている。

エゴール

齢三百を超えるドワーフの長老であり、「迷子の剣聖」と呼ばれる最古のSS級冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 SS級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 森で迷子になっていたところをソニアに保護された。霊亀討伐戦に参加し、神速の抜刀術で霊亀の甲羅に亀裂を入れた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 二百年前に霊亀を討伐し損ねた張本人である。

ジークムント・アイスラー

S級冒険者であり、大陸最強の槍使いと評される武人である。大の女好きである。

・所属組織、地位や役職
 S級冒険者(現在は子熊の姿)。

・物語内での具体的な行動や成果
 帝都で義賊として活動していたが、アルノルトに捕獲された。その後はレオナルトの護衛として南部へ赴き、モンスター討伐で活躍した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 呪いで子熊の姿に変えられており、アルノルト陣営の高火力要員として働いている。

ガイ

帝都の最外層で剣術道場を開いているB級冒険者である。アルノルトやエルナの幼馴染である。

・所属組織、地位や役職
 B級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 シルバーの呼びかけに応じ、ソルブ村の民を救出するレイドクエストに参加した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 マリーに一目惚れし、アルノルトの仲介で彼女と接触した。

リンフィア

辺境の流民の村出身の女性冒険者である。

・所属組織、地位や役職
 A級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 フィーネの護衛としてヴュンメ城に赴き、魔槍の音色で敵を眠らせて人質の救出に貢献した。南部の悪魔騒動では妹のシンファを救い出した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 情報戦や交渉でも優れた能力を発揮し、レオナルト陣営の重要な頭脳となっている。

ミヅホ仙国

オリヒメ・クオン

極東の小国「ミヅホ仙国」を守護する「仙姫」である。天真爛漫で傍若無人な性格をしている。

・所属組織、地位や役職
 ミヅホ仙国・仙姫。

・物語内での具体的な行動や成果
 霊亀の動きを封じるために帝国へ招かれた。アルノルトを気に入り、彼を自身の接待役に指名した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「大陸最硬」と称されるほどの強力な結界術の使い手である。

亜人商会

虎人の男

亜人商会に所属する、虎の耳と尻尾を持つ大柄な獣人である。

・所属組織、地位や役職
 亜人商会・従業員。

・物語内での具体的な行動や成果
 最外層での炊き出しで物資の運搬を行い、疲労したアルノルトを気遣った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アルノルトを侮辱したゴロツキたちを捕らえ、重労働を科した。

魔物・動物

エンタ

オリヒメのペットである黒い小動物である。本人は燕だと主張している。

・所属組織、地位や役職
 オリヒメのペット。

・物語内での具体的な行動や成果
 温泉旅館で脱走し、源泉の魔導具を引き抜いて騒動の原因を作った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 見た目はペンギンに似ている。

霊亀

北部国境付近で二百年前から休眠していた不死の超巨大モンスターである。

・所属組織、地位や役職
 魔物・SSランク指定。

・物語内での具体的な行動や成果
 結界の崩壊に伴い活動を再開し、巨大なブレスで周囲を破壊した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 シルバー、エルナ、オリヒメ、エゴールの共闘によって完全に消滅した。

古竜

かつてシルバーによって討伐された強大な竜である。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 二百年前にSS級冒険者と霊亀の戦いに介入し、霊亀を休眠状態へ逃がした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 すでにシルバーによって討伐されている。

タイガーレックス

虎の頭と竜の体を持つAAA級のレアモンスターである。

・所属組織、地位や役職
 魔物・AAA級。

・物語内での具体的な行動や成果
 ソルブ村の民を襲おうとして現れたが、シルバーの強化魔法を受けた冒険者たちに討伐された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき昇進や影響力の変化はない。

レッドレイヴン

Aランクの鳥型モンスターである。

・所属組織、地位や役職
 魔物・Aランク。

・物語内での具体的な行動や成果
 南部の戦闘で上空から現れたが、ジークとリンフィアの連携によって討伐された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき昇進や影響力の変化はない。

狼型のモンスター

群れで行動するモンスターである。

・所属組織、地位や役職
 魔物。

・物語内での具体的な行動や成果
 ソルブ村から逃げる避難民を追跡したが、駆けつけた冒険者たちによって討伐された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆すべき昇進や影響力の変化はない。

魔王

五百年前に大陸を震撼させた強大な存在である。

・所属組織、地位や役職
 悪魔。

・物語内での具体的な行動や成果
 初代勇者によって討伐された。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 悪魔であったと伝えられている。

出涸らし4巻 レビュー
出涸らし6巻 レビュー

展開まとめ

第一章 休戦命令

皇帝主催の祝賀パーティー

クリューガー公爵の反乱終結から約一か月後、皇帝は騒乱解決を祝う大規模な祝賀パーティーを開催した。功労者たちが招かれる中、アルは壁際で静かに時間を潰していた。

皇帝はまずフィーネへ乾杯を捧げ、危険を承知で南部へ赴いた蒼鴎姫として会場中から称賛を集めさせた。続いてネルベ・リッターも、少数による奇襲任務を成功させた功績によって帝国最精鋭として讃えられた。

そして皇帝はレオだけでなくアルの名も呼び上げる。ネルベ・リッターたちが、アルのために戦ったと語ったことを明かし、弟を想うアルの心が彼らを動かしたのだと評価した。さらに皇帝は、レオとアルを“双黒の皇子”と呼び、帝国中へ広めるよう宣言する。

突然注目を浴びたアルは居心地の悪さを感じ、貴族令嬢たちに囲まれる前にレオの髪をぐしゃぐしゃに乱して囮にし、そのまま会場から逃げ出したのだった。

アロイスの帝都訪問

南部が落ち着きを取り戻した頃、アロイスたちは皇帝へ謝罪するため帝都を訪れた。命を狙われる危険を考慮し、一行は目立たない姿を取っていた。

グラウの姿となったアルはアロイスへ接触し、母親との再会はレオたちの功績だと告げる。そのうえで、今回の件によってアロイスが政治利用される可能性を説明した。

それでもアロイスは、南部と領地を守れた以上、これ以上は望まないと語る。アルはその覚悟を認め、すべては自分らしく行動するかどうか次第だと助言した。

その後アルは、宰相フランツをアロイスへ接触させるため、馬車暴走を演出する。周囲に被害が出ないよう結界で制御したうえで、アロイスへ救出劇を行わせたのである。

アロイスは暴走する馬車を止め、宰相を救出した。アルはその姿を見て、アロイスが将来レオを支える優秀な臣下になると確信する。

さらにアルは、皇帝や宰相に評価されれば、アロイスは城で学ぶ機会を得て、将来的な基盤も築けると考えていた。

皇帝からの警告

翌日、アル、レオ、エリクは皇帝に呼び出された。

道中でフランツは、アロイスと自分を接触させた件がアルの仕業だと見抜いていた。さらに、グラウが帝国軍戦術を熟知していることから、帝国内部の人物ではないかと疑念を抱いていた。

皇帝の前でアロイスは、ジンメル伯爵家が帝国軍へ敵対したのは人質のためだったと説明し、クリューガー公爵側へ責任を寄せながら釈明する。皇帝はその説明を受け入れ、アロイスへ城で学ぶよう命じた。

その後、皇帝は帝位争いが内乱寸前にまで発展したことを厳しく非難した。帝位争いは国益のために行うべきであり、帝国を損なってはならないと説く。

さらに皇帝は、即位二十五周年を控えているため、しばらく帝位争いを休止し、諸外国の要人を迎える歓待役を皇子たちへ命じた。

アルは、自分が“双黒の皇子”として祭り上げられた理由を悟り、自由に振る舞えなくなったことへ強い不満を覚えた。

帝位争いの休戦とフィーネの活動

帝位争いが一時休戦となり、アルはフィーネへその事情を説明した。

フィーネは穏やかな時間を喜び、亜人商会から届いた茶葉で紅茶を淹れる。セバスは、フィーネとアルを二人きりにするため護衛役をアルへ押し付けた。

フィーネの外出先は帝都最外層で行われている炊き出しだった。フィーネは子供たちへ笑顔で食事を配り、アルも荷運びを手伝う。

しかし炊き出し後、ゴロツキたちがアルを役立たずだと嘲笑した。フィーネは怒るが、アルは民に十分な利益を与えられていない以上、不満を向けられるのも当然だと受け止める。

そこへ亜人商会の獣人たちが現れ、何もしていない者に笑う資格はないとゴロツキたちを叱責した。

アルは、小さな善意でも巡り巡って返ってくるのだとフィーネへ語る。

その後フィーネは、ユリヤに教わった店で食事をしたいと申し出た。アルは疲労を感じながらも、その願いを受け入れ、フィーネと食事へ向かった。

ガイとの再会

アルはフィーネを連れ、帝都最外層にあるガイの剣術道場を訪れた。

ガイは貧しい子供たちへ無料で剣術を教えており、子供たちに翻弄されながらも賑やかに過ごしていた。

ガイは、子供たちにはまず痛みを知ることが必要だと語る。痛みを知らずに育った者はギードのようになると指摘し、アルもそれに同意した。

ガイはフィーネの正体に驚きつつも、子供たちと自然に打ち解ける彼女を見て感心する。

アルは、皇子という立場を気にせず昔と変わらず接してくれるガイの存在を貴重に感じていた。

さらにガイが育てている教え子がリタだと知り、アルはリタの真っ直ぐな性格へ納得するのだった。

ホルツヴァート公爵家の決断

ホルツヴァート公爵ロルフは、息子ギードを厳しく叱責していた。

アルノルトとの関係改善を命じていたにもかかわらず、ギードが失言で完全に関係を悪化させたためである。

ロルフは、アルノルトが反撃しなかったせいでギードが痛みを学ばず、幼稚なまま成長したと分析する。

さらに次男ライナーと共に、アルノルトは単なる出涸らし皇子ではなく、力を隠していた知恵者だと認識していた。

二人は、必要ならギードを切り捨てることまで視野に入れ、彼を利用する方針を固めていく。

義賊の調査

アルは、悪徳商人から金品を奪い外層へばら撒いている義賊に興味を抱いた。

クリスタ誘拐事件で人手不足を痛感していたアルは、隠密行動も可能な実力者として義賊を勧誘しようと考える。

そのため、謹慎明けのエルナを連れ、悪徳商人を装って義賊を誘い出した。

現れた小柄な槍使いは、自分は盗まれた物を取り返しているだけだと語り、アルへ襲いかかる。

エルナと義賊は激しい戦闘を繰り広げるが、最終的にエルナが優勢となる。そこで男の正体が、人間ではなく熊系の亜人であることが判明した。

男は逃走したが、アルは正体を暴いた時点で目的は達成したと判断する。

エルナは決着をつけられなかったことを不満に思い、再戦を望むのだった。

ガイの道場での聞き込み

アルはフィーネと共にガイの道場を訪れ、義賊について調査を進めていた。ガイは、最近は義賊が配る品を狙って素行の悪い者たちが外層をうろついているため、子供たちを早めに帰していると説明する。

アルは、悪徳商人たちは既に摘発段階にあり、自分は義賊を保護するつもりで来たのだと明かした。するとガイは、義賊が外層民から奪われた金品を取り戻してくれた英雄のような存在だと語り、最近子供たちが食事を運んでいる空き家の存在を教える。

一方フィーネは、亜人商会と共に配給活動を行っていた。アルは、悪徳商人たちによって搾取された外層民への埋め合わせと、フィーネを前面に出して民の意識を配給へ向ける目的を持っていた。ガイもそれを、レオの評判向上へ繋がる合理的な行動だと評価した。

義賊ジークとの対面

アルとガイは空き家へ向かい、義賊の潜伏先を調べる。そこには生活感が残されていたが、人影はなかった。しかし棚の上に置かれた子熊のぬいぐるみを見たアルは、それこそ義賊本人だと見抜く。

アルが話しかけると、子熊は反応を示した。ガイはアルがぬいぐるみに話しかけていると思い込み困惑するが、そこへフィーネが現れると、子熊は突然動き出して自己紹介する。

その正体は、行方不明になっていたS級冒険者ジークムント・アイスラーだった。

ジークはフィーネへ抱きつこうとしたため、アルは祖父の秘蔵品だった重力制御の首輪を装着する。逃亡を試みたジークだったが、離れるほど身体が重くなる首輪の効果で動けなくなり、最終的に観念した。

さらにアルは、ジークが盗んだ金の一部を隠していたことを見抜く。問い詰められたジークは、呪いを解いてもらう資金として隠していたと白状した。

子熊へ変えられた経緯

城へ連れて来られたジークは、自分が子熊姿になった経緯を語った。

半年ほど前、森で出会った女性の妹から妙な秘薬を飲まされ、現在の姿へ変えられたのである。しかも妹は、人間姿より今の子熊姿のほうが可愛いと言い放ったらしく、ジークは深く不満を抱いていた。

アルは呆れつつも、高ランク冒険者として依頼先を守るため、ジークが場所を明かさないことには一定の理解を示す。

その後フィーネが紅茶を持ってくると、ジークは子熊姿のまま普通に飲食できることを見せた。ただし身体は熊寄りになっているらしく、熱い紅茶には慌てて息を吹きかけていた。

アルはシルバーへ相談すると告げ、呪い解除の可能性を探る。その代わり、自分たちへ協力するようジークへ要求した。

ジークは即座に了承したが、直後にフィーネへ飛びつこうとして首輪の重力を強化され、床へ叩き落とされる。

さらに鍵を奪おうと何度も抵抗したが、そのたびに重力を増加されて潰され、最後は素直に謝罪して大人しくすることを約束した。

新たな問題児

アルは、ジークへ子守役を任せていた。

リタとクリスタは喋る子熊へ大喜びし、耳や身体を好き放題触って遊び続ける。ジークは自分は元は人間だと抗議するが、二人はまったく聞いていなかった。

ジークは、アルが「出涸らし皇子」と呼ばれている件へ触れ、本当に無能無気力なのかと尋ねる。

アルは噂自体は間違っていないと認めつつ、今は弟を皇帝にするため最低限動いているだけだと語った。そして守るべき存在が増えたため、もはや逃げる選択肢は取れなくなったと本音を漏らす。

ジークはそんなアルを甘いと評しながらも、その考え方を嫌いではないと認めた。

その後リタは鬼ごっこを提案し、当然のように鬼役はジークとなる。やる気を見せたジークだったが、アルは首輪の重力を強化して床へ縫い付け、そのままクリスタたちを連れて逃げ出した。

温泉旅行への誘い

疲労が蓄積していたアルへ、エルナは老舗温泉旅館『ハイルング』への旅行を提案した。

アルは面倒がって拒否するが、レオは既にフィーネやクリスタたちまで誘っていた。さらにセバスも予定調整を終えており、アルだけが拒否できない状況になっていた。

セバスは、レオだけが女性陣を連れて旅行へ行けば妙な噂になるが、アルも同行すれば幼馴染同士の家族旅行として自然に見えると説明する。

結局アルは折れ、旅行参加を了承した。

そこへジークが乱入し、自分も温泉へ行くと主張する。温泉は男の夢であり、覗きは男の度胸試しだと熱弁したが、アルは即座に却下した。

さらにフィーネのスカートを覗こうとしたことでリンフィアに吹き飛ばされ、最終的にジークだけが留守番となった。

温泉での休息

ハイルングへ到着したアルたちは、貸し切り状態の温泉へ入った。

レオは南部で受けた傷へ湯をかけながら、来て正解だったと語る。アルも疲労が溶けていく感覚を味わい、温泉の魔力回復効果によって身体が軽くなっていくのを感じていた。

女湯からはリタやエルナたちの賑やかな声が聞こえ、アルはそれを聞きながら穏やかな時間を過ごしていた。

しかしそこへ、黒いペンギンらしき奇妙な生物が現れる。その生物は温泉の湯量調整装置らしき魔導具を持ち出しており、直後に山側から大量のお湯が流れ込んできた。

アルは濁流へ飲み込まれ、気づけば女湯へ流れ着いていた。

そこには裸姿のエルナ、フィーネ、リンフィア、クリスタ、リタがいた。

エルナに言い残すことはあるかと問い詰められたアルは、女性陣それぞれの体型について率直な感想を述べたうえで「眼福だった」と礼まで言い放つ。

その瞬間、エルナの一撃によってアルは再び温泉へ沈められ、元凶のペンギンを丸焼きにすると決意しながら意識を失った。

謎の国賓

一方その頃、ハイルング別館には大量の近衛騎士が配置されていた。

彼らが護衛していたのは、帝国が極秘に招いていた国賓だった。

近衛騎士は、逃げ出していた黒いペンギンを連れ戻し、ある部屋へ戻る。そこにいた人物は、自らを「妾」と呼び、明るく豪快な性格を見せていた。

近衛騎士は、ペンギンが温泉を暴走させ、第七皇子アルノルトを溺れさせた件を気にしていたが、その人物は怒るどころか、無事戻ったことを喜んでいた。

さらに、その人物は皇族たちへ興味を示しながらも、自分は心が広いから何もしないと笑う。

部屋を出た近衛騎士たちは、その国賓が“大陸が誇る『矛盾』の盾”であることを語り合い、このまま大人しくしていてくれることを願うのだった。

第二章 矛と盾

帝都の平穏とアルノルトの警戒

温泉旅行から数日後、アルノルトは久々に穏やかな日々を過ごしていた。女湯へ流される騒動の影響も徐々に薄れ、エルナやフィーネたちとの関係も元へ戻りつつあった。

帝都では流通網が回復し、停滞していた街にも再び活気が戻り始めていた。帝位争いの休戦は、少なくとも民にとっては良い影響を与えていたのである。

しかしアルノルトは、その平穏が長く続かないことを理解していた。レオナルト陣営の勢いは休戦によって鈍り、一方でエリクは動かずに優位を保ち続けている。

アルノルトは、こちらが不用意に動けば「帝位争いが民を苦しめている」という責任を押し付けられると警戒していた。

さらにセバスの調査によって、ハイルングの別館へ第二近衛騎士隊が配置されていた事実が判明する。そこには極秘の要人が滞在しており、現在帝都へ向かっているという。

アルノルトは、その存在に強い不穏さを感じ取っていた。

“鴎の盟約”の崩壊

セバスは、帝国貴族たちの間で結ばれていた“鴎の盟約”について説明した。

それは、蒼鴎姫フィーネへ抜け駆けして求婚しないという紳士協定だった。しかし最近、アルノルトの評判が上がり始めたことで、その盟約が崩れ始めていた。

レオナルトならまだしも、“出涸らし皇子”と呼ばれていたアルノルトへフィーネを奪われることを許せない貴族たちが現れたのである。

最初に脱退を表明したのは、若き名門貴族ラウレンツ・フォン・ヴァイトリング侯爵だった。

アルノルトは、それが単なる恋愛感情ではなく、ホルツヴァート公爵家を含めた政治的動きでもあると察していた。

ラウレンツとの対立

アルノルトとフィーネが城内を歩いていると、ラウレンツが蒼色の花束を持って現れた。

ラウレンツはアルノルトを完全に無視し、フィーネへ花束を差し出す。しかしフィーネは、アルノルトへ無礼を働く相手から贈り物は受け取れないと断言し、その場を立ち去った。

拒絶されたラウレンツは愕然とし、その後アルノルトへ、フィーネへ拒絶するよう命じたのかと問い詰める。

さらに、自分は皇帝へ仕えているのであって、アルノルトへ敬意を払う必要はないと言い放った。

アルノルトは、フィーネにも意思があることを忘れるなと返し、その場を後にする。

フィーネは自分のせいで不快な思いをさせたことを謝罪したが、アルノルトはそれを否定した。

そのうえで、ラウレンツは実力も名声もあり、さらに嫉妬に突き動かされている以上、ギード以上に厄介な存在だと警戒を強めるのだった。

フィーネへの執着

その後、“鴎の盟約”から脱退する若手貴族が続出し始める。

セバスは、アルノルトがフィーネの傍にいる理由を「レオナルトの代理」とでも説明しておけば、敵意を減らせたはずだと助言した。

しかしアルノルトは、それを口にすれば、自分は今後フィーネへ近づく資格そのものを失うと理解していた。

アルノルトは、自分がフィーネの傍にいる現在の環境を気に入っていると認める。

そして、それを壊そうとするなら、たとえ帝位争いで不利になろうと排除すると決意していた。

セバスは、その覚悟を聞いて追及を打ち切った。

冒険者ギルドの異変

アルノルトはシルバーとして冒険者ギルドを訪れるが、いつもなら提示されるはずの依頼が存在しなかった。

受付嬢エマをはじめ、職員たちも明らかに何かを隠しており、シルバーを避けるような態度を取っていた。

数日後、アルノルトはギルド本部副ギルド長クライド・シャウアーへ直接接触し、事情を問いただす。

クライドは、皇帝即位二十五周年へ向け、帝国と冒険者ギルドが協力して国境周辺のモンスター討伐を進めていると説明した。

さらに東部で使用された魔笛“ハーメルン”の影響で、休眠していた強力なモンスターたちが活動を始めているという。

しかしギルド上層部は、シルバー一人へ実績が集中しすぎることを危険視しており、意図的に彼を計画から外していた。

代わりに複数のS級冒険者を帝国へ派遣し、新たなSS級冒険者を誕生させようとしていたのである。

アルノルトは、民を守ることより組織の都合を優先するギルド上層部へ強い不快感を抱いた。

最強の盾・仙姫

クライドは最後に、特に危険なモンスターが存在すると語る。

現在は“ある人物”によって活動を封じられているが、それも長くは持たないという。

その人物とは、極東の半島国家ミヅホ仙国に存在する“仙姫”だった。

仙姫は強大な結界を維持し続ける存在であり、“最強の盾”として知られている。

つまり現在の帝国には、“最強の矛”である勇者エルナと、“最強の盾”である仙姫が揃っていることになる。

アルノルトは、負けず嫌いなエルナがその状況へ刺激され、問題を起こさないことを願いながらその場を後にした。

ガイの一目惚れ

休戦によって暇を持て余していたアルノルトは、城下町でガイを半ば強引に連れ回していた。

魔剣を買ってやるという条件で同行させたところ、ガイは突然店先で立ち止まり、遠くを凝視し始める。

その視線の先にいたのは、レオに仕えるメイドのマリーだった。

ガイは完全に一目惚れしており、癒しの天使だとまで言い出す。

アルノルトは呆れながらも、マリーへガイを紹介する。

ガイは顔を真っ赤にしながら挨拶し、アルノルトは二人へ剣選びを任せてその場を離れた。

黒いペンギンとの再会

帝都を散策していたアルノルトは、温泉で騒動を引き起こした黒いペンギンらしき生物を発見した。

アルノルトは即座に捕獲し、今度こそ食べてやろうと考える。

そこへ黒いフードを被った少女が現れ、その生物は“エンタ”という名の燕だと主張した。

アルノルトはどう見てもペンギンだと反論するが、少女は昔は飛べたから燕だと言い張る。

さらに少女は結界を展開し、アルノルトを壁へ叩きつけてエンタを奪い返した。

アルノルトは少女の正体を、ミヅホ仙国から来た仙姫だとほぼ確信する。

去り際、少女は帝城を指差したアルノルトへ、必ず仕返しすると宣言して立ち去っていった。

アルノルトはセバスへ、少女の居場所を調べるよう命じる。

ただし、勇者エルナと仙姫だけは絶対に会わせてはいけないと強く警戒していた。

仙姫オリヒメとの再会

セバスは黒いフードの少女を追跡したが、途中で方向感覚を失い、周囲が迷路のように見える異常へ陥ったため撤退していた。

アルノルトは、その結界術から少女がミヅホ仙国の仙姫であると確信する。

翌日、母ミツバから呼び出されたアルノルトは、部屋の前に張られていたロープへ引っかかって転倒した。仕掛けていたのは、前日に遭遇した少女と黒いペンギンのようなエンタだった。

腹を立てたアルノルトはエンタを窓から投げ捨てようとするが、少女は必死に止める。二人は燕かペンギンかで激しく言い争いながら揉み合いになった。

やがてミツバが茶を用意し、少女は自らをミヅホ仙国の仙姫オリヒメ・クオンだと名乗った。

フードを脱いだオリヒメは、黒髪と金色の瞳、狐耳と尻尾を持つ少女だったが、アルノルトは既に正体へ気付いていたため驚かなかった。

その後、オリヒメは前日の仕返しとしてアルノルトを接待役へ任命すると宣言した。

オリヒメの孤独

オリヒメは後宮外れの別館へ滞在し、近衛第二騎士隊による厳重な警護を受けていた。

ある日、オリヒメは眠るエンタを撫でながらアルノルトを隣へ呼び寄せ、その膝を枕代わりにして横になる。

アルノルトが外交問題を理由に抗議しても、オリヒメは自分が非公式の存在だから問題ないと返した。

さらにミヅホでは、自分へ気安く接する者がおらず、友と呼べる存在はエンタだけだと明かす。

仙姫は国に必要不可欠な存在であり、常に孤独な立場へ置かれていたのである。

アルノルトが寂しいのかと尋ねると、オリヒメは素直に寂しいと認めた。

そして、仙姫だと知っても態度を変えないアルノルトといる時間は悪くないと語った。

アルノルトは、自分も身分差によって友人たちが離れていった経験があるため、相手の立場で態度を変えないようにしているのだと答える。

その後、オリヒメは頭を撫でるよう求め、アルノルトは仕方なく応じた。

オリヒメは満足そうに耳と尻尾を動かしながら眠りにつき、アルノルトは手を止めるたびに不満そうな反応をされるため、撫で続けるしかなかった。

シルバーに関する情報操作

そこへ宰相フランツが現れ、オリヒメがアルノルトを気に入っている以上、正式に接待役を引き受けてほしいと依頼した。

アルノルトは面倒に感じながらも了承する。

その後フランツは、アルノルトが事前に仙姫の存在を知っていた理由を問い質した。

アルノルトは、シルバーから情報を得たと説明する。

さらに、シルバーが帝国と冒険者ギルドの計画から外されたことへ不満を抱いているのだろうと語った。

フランツは、帝国がシルバーだけへ依存する状況を脱却するため、意図的に外していると説明する。

アルノルトは、その考えを理解しつつも、シルバーとの信頼関係を壊すべきではないと忠告した。

また、シルバーはレオナルトを気に入っているようだとも伝えたため、フランツは最悪の場合、レオナルトを通じて依頼する道筋を確保することとなった。

オリヒメとの球遊び

後日、オリヒメはアルノルトの部屋へ押しかけ、エンタと共に球遊びを始めた。

オリヒメはフランツから許可を得ており、人避けと防御の結界も張っていると説明するが、アルノルトは皇子の部屋が結界で封鎖されていること自体を問題視した。

その後、オリヒメはアルノルトへ球遊びを強引に付き合わせる。

アルノルトが本気で投げた球さえ、オリヒメは軽々と捕まえた。

さらにフェイントにも反応し、その勢いのままアルノルトへ突っ込んで二人は床へ倒れ込む。

オリヒメはアルノルトへ褒めるよう求め、頭を撫でられると満足そうに笑っていた。

しかしその直後、人避けと防御の結界が破壊される音が響く。

現れたのは剣を持ったエルナだった。

そしてエルナは、オリヒメがアルノルトへ馬乗りになっている光景を見て表情を険しくする。

こうして勇者エルナと仙姫オリヒメは最悪の形で遭遇した。

勇者と仙姫の衝突

エルナはオリヒメを曲者扱いし、オリヒメもまたエルナを挑発したことで、二人は即座に対立する。

エルナは勇爵家次期当主エルナ・フォン・アムスベルグと名乗り、オリヒメも仙姫オリヒメ・クオンだと名乗り返した。

勇者と仙姫は大陸でも並び称される存在であり、勇爵家は仙姫へ強い対抗意識を抱いていた。

二人は聖剣や結界を互いに侮辱し始め、次第に言い争いは幼稚な方向へ進んでいく。

オリヒメはエルナの胸を貧相だと笑い、エルナはそれを脂肪だと言い返した。

さらにオリヒメは、自分のほうが可愛いのだからアルノルトに好かれるのは当然だと宣言する。

アルノルトは、このままでは本当に勇者と仙姫が戦い始めると危機感を抱くが、仲裁しようにも火に油を注ぐ未来しか見えなかった。

そんな中、近衛騎士が現れ、皇帝がアルノルトとオリヒメを呼んでいると告げる。

アルノルトは、計画が動き始めたのだと察し、エルナも連れて行くことを決めた。

霊亀討伐計画の説明

玉座の間で皇帝は、東部の事件以降、帝国周辺で休眠期モンスターが活性化していることを説明した。

その中でも最も危険なのが“霊亀”と呼ばれる超巨大モンスターだった。

霊亀は自然発生する不死のモンスターであり、歩くだけで災害を撒き散らす存在である。

かつて二百年前、SS級冒険者が討伐寸前まで追い詰めたが、古竜の介入によって休眠状態へ入ってしまった。

その二百年の休眠によって、霊亀はSS級冒険者へ対抗できるほど強化されている可能性があった。

皇帝は、そのために勇者エルナと仙姫オリヒメの力を必要としていた。

しかしオリヒメは、自分は討伐ではなく封印役として呼ばれたのであり、帝国の利益のために戦うつもりはないと断言する。

皇帝は無理強いを諦め、冒険者ギルドによる援護を頼る方針を示した。

シルバーを巡る思惑

エルナは、なぜシルバーへ頼らないのか不満を示した。

皇帝は、冒険者ギルドがシルバーへ功績が集中することを避けたがっているためだと説明する。

しかしエルナは、帝国を守ってきたのはシルバーだと反論した。

皇帝は、シルバーとの関係も考慮していると述べ、アルノルトへ、シルバーへ会談の意思を伝えるよう命じる。

アルノルトは、皇帝自らシルバーとの関係維持へ動いたことを意外に感じていた。

皇帝とシルバーの会談

シルバーは、帝国との関係悪化を避けるため会談へ応じた。

帝剣城の広場で待っていた皇帝は、最低限の護衛しか置かず、シルバーへの信頼を示していた。

シルバーは、自分が守っているのは帝国ではなく民だと語る。

しかし皇帝は、民を守ることは結果的に帝国を守ることでもあると返した。

その後、皇帝はシルバーへ皇女との縁談や爵位授与まで提案し、皇家へ取り込もうとする。

しかしシルバーは、古代魔法使いの血を後世へ残す危険性を理由に拒絶した。

さらにフィーネやエルナとの縁談案まで出されたが、シルバーは余計な敵を増やすだけだと切り捨てる。

やがて皇帝は条件交渉へ切り替え、シルバーへ帝国へ留まる条件を尋ねた。

シルバーは、冒険者ギルド副ギルド長クライドへの後ろ盾を求めようとしていたが、皇帝は先回りしてその意図を見抜く。

皇帝は、現場を知らぬギルド上層部を快く思っておらず、クライドを支援すると約束した。

シルバーはその条件を受け入れ、今後も帝国へ留まることを決める。

会談の最後、皇帝はシルバーへ古代魔法を誰から学んだのか問いかける。

シルバーは明言を避けたが、皇帝は、自分の祖父かその弟子が生き延びていたのではないかと推測した。

シルバーはそれを物語として悪くないと笑って受け流し、転移でその場を去っていった。

第三章 代理討伐

S級冒険者たちの招集

アルノルトは、セバスが集めたS級冒険者たちの情報を確認していた。

シルバーとして皇帝と密約を結んだことで、計画が順調なら静観し、危険なら介入できる立場を確保していた。そのため、計画が一度失敗し、クライドの発言力が強まる展開すら望ましいと考えていた。

今回招集されたS級冒険者の中で、単独認定されている者は二人だった。

一人目は、イーグレット連合王国所属の氷の魔導師ブルース・ターラントである。若くしてS級へ昇格した実力者であり、紳士的な振る舞いと整った容姿から「氷結の貴公子」と呼ばれていた。しかしアルノルトは、現代魔法だけではSS級には届かないと冷静に分析していた。

もう一人は、皇国所属の炎の魔剣士イグナートだった。実力は本物だが、周囲への被害を顧みない危険人物であり、アルノルトは今回最大の火種になると警戒していた。

さらに夫婦でS級認定されているシドニーとオーギュストは、経験豊富なベテランであり、安定感では最も信頼できると評価されていた。

一方で、五人組パーティー「雷の勇兵団」に対しては強い不安を抱いていた。彼らは既知モンスター討伐で実績を積み上げてきた集団であり、休眠級モンスターと戦える実力があるか疑問視していたのである。

そしてセバスから、雷の勇兵団が二週間前を最後に消息不明となっている事実が報告される。

最後の連絡は北部から帝国へ入ったという内容だったが、皇国から帝国へ来るのに北部経由は不自然だった。

アルノルトは、皇国が帝国を混乱させるため裏で動いている可能性を疑うのであった。

近衛騎士団出動の提案

数日後、玉座の間でレオは皇帝へ強く進言していた。

各地でモンスターが活性化したことで、招集されたS級冒険者たちは道中で討伐へ駆り出され、本来対処予定だった高ランクモンスターまで活動を始めていたのである。

レオは、第八皇子レオナルト、第七皇子アルノルト、そしてフィーネ・フォン・クライネルトの連名で、近衛騎士団による事態収拾を提案した。

しかし皇帝は、今朝エリクからも同じ提案を受けたと返し、帝国単独では動けない立場を示す。

今回の作戦は冒険者ギルドとの共同計画であり、帝国だけで勝手に行動することはできなかったのである。

アルノルトはそれ以上の議論を無意味と判断し、フィーネを連れて退出した。

その後、自室へ戻ったアルノルトは、帝都支部へ傷だらけの少年が駆け込み、シルバーへ助けを求めていることを知る。

セバスは会わないほうが良いと進言した。会えば結局動いてしまうと理解していたからである。

アルノルトはフィーネへ意見を求める。

動けば魔力を消耗し、帝位争いでも不利になる可能性があった。

しかしフィーネは、先ほどアルノルト自身が皇帝へ言った言葉を返した。

答えが決まっていることを議論する必要がありますか。

その言葉で、アルノルトは自分の心が既に決まっていたことを悟る。

そしてフィーネへ、秘密を知られたことは僥倖だったと笑った。

その後、アルノルトは仮面を取り出し、シルバーの姿へ変わって帝都支部へ向かった。

帝都支部の混乱

帝都支部へ転移したシルバーを待っていたのは、大混乱状態の冒険者ギルドだった。

冒険者たちは受付へ押しかけ、シルバーを呼べと怒号を飛ばしていた。

先頭に立っていたのはガイであり、その隣には全身傷だらけの少年が立っていた。

シルバーは、帝国とギルド本部の共同計画により、自分は動くなと命じられていることを説明する。

しかし冒険者たちは、現場を知らない本部の連中が民を見捨てていると激怒した。

そんな中、少年が震える声で依頼を告げる。

東部のソルブ村へ巨大なモンスターが迫っており、両親や妹、村人たちが取り残されているという。

村人たちは、村中からかき集めた金を少年へ託し、シルバーへ助けを求めていた。

ガイは即座に助太刀を宣言し、多くの冒険者たちも同調した。

シルバーは、自分が動けば帝国やギルド本部、S級冒険者たちの面子を潰すことになると警告する。

それでもガイは、民を守ることこそ冒険者の役目だと言い切った。

その言葉を聞いたシルバーは巨大な転移門を展開し、自分は討伐禁止を命じられているため、直接討伐するのは冒険者たちだと宣言する。

そして少年から依頼金を受け取ると、帝国領のモンスターは帝国の冒険者が片付けるべきだと言い放った。

これからは冒険者の時間だ。

そう告げたシルバーは、少年の手を引いて転移門へ踏み込んだ。

ソルブ村の救援

ソルブ村へ到着したシルバーたちは、荒れ果てた村の姿を目にする。

少年は絶望するが、ガイは死体や血痕がないことから、村人たちは避難済みだと見抜いた。

その後、街近くで避難民が狼型モンスターへ追われていることを発見する。

シルバーは結界で道を作り、ガイたちは迎撃へ向かった。

シルバーは街へ到着すると、逃げる住民一人一人へ結界を張り、安全を確保する。

狼型モンスターは数で押してきたが、帝都支部の冒険者たちは連携して討伐していった。

その最中、少年は無事だった家族と再会を果たす。

やがて森が震え、AAAランクのレアモンスター「タイガーレックス」が姿を現した。

虎の頭と竜の肉体を持つ巨大モンスターであり、本来なら大規模討伐隊が必要な危険種だった。

しかし時間はなかった。

シルバーは《ブレイブ・ホルン》を発動し、冒険者たち全体を強化する。

さらに結界でタイガーレックスの動きを拘束し、前衛たちが接近しやすい状況を作り出した。

タイガーレックスは炎のブレスを放ったが、ガイはシルバーの結界を信頼して突破し、そのまま渾身の一撃を頭部へ叩き込む。

こうしてタイガーレックスは討伐された。

その後もシルバーたちは残る三体の高ランクモンスターを、その日のうちに討伐したのであった。

帰還後の疲労

討伐を終えて戻ったアルノルトは、精神的疲労を強く感じていた。

そこへ勢いよく扉を開けてオリヒメが現れ、遊ぼうと言いながら抱きついてくる。

しかしオリヒメは、すぐにアルノルトの疲労へ気付いた。

アルノルトは最近問題が多く、疲れているだけだと説明する。

だがオリヒメは、遊び相手が疲れている重大事態だと勘違いし、自分が解決すると言い出した。

アルノルトは面倒を避けるため、シルバーが身動きできず困っているらしいと曖昧に説明する。

するとオリヒメは即座に反応し、自分へ任せろと満面の笑みを浮かべた。

そして話は終わりだと言わんばかりにボールを取り出し、アルノルトへ遊べと迫る。

アルノルトは呆れながらもボールを投げ、オリヒメは嬉しそうに追いかけていった。

レオの嘆願活動

アルノルトがシルバーとして動いていた頃、レオもまた独自に行動していた。

レオは帝都中の貴族たちを回り、近衛騎士団を動かすための嘆願書へ署名を集めていたのである。

民を救うためには、冒険者ギルドだけではなく帝国自らが動くべきだと考えていたからだった。

マリーは、皇帝や宰相の心証を悪くしかねない危険な行動だと懸念を示す。

しかしレオは、自分は皇子として恥じることをしていないと断言した。

その後、レオはエリクと遭遇する。

エリクは、今回の問題は冒険者ギルドの失態であり、帝国が動かなければ逆に貸しを作れると説明した。

さらに、シルバーも皇帝が説得済みだと語る。

しかしレオは、苦しむ民を見捨てるべきではないと反論し、自分の兄は何もしない人間ではないと言い切った。

その後、レオは宰相フランツへ嘆願書を提出する。

フランツは、短期間で大量の署名を集めたレオの行動力へ驚いていた。

レオは、今こそ民へ寄り添うべきだと真っ直ぐに訴える。

その姿に、フランツは亡き皇太子の面影を見出していた。

しかし同時に、レオは単なる写しではないとも感じていた。

そこへ近衛騎士が駆け込み、各地で暴れていた高ランクモンスターが帝都支部の冒険者たちによって討伐されたと報告する。

フランツは、実際にはシルバーが動いたのだろうと察する。

レオは、自分が動いたことでシルバーを失望させずに済んだなら意味があったと語った。

フランツもその言葉へ同意し、今回の件がレオの不利益にならないよう自分が動くと約束した。

そして、どうせまた真っ直ぐに突き進むのだろうと笑いながら、レオを見送ったのであった。

第四章 霊亀討伐

霊亀復活の報告

数日後、帝都には雷の勇兵団を除くS級冒険者たちが到着していた。

しかし彼らが本来討伐する予定だった高ランクモンスターは、既に帝都支部の冒険者たちによって討伐済みとなっていたため、シルバーへ事情説明を求める声が上がっていた。

そんな中、アルノルトの部屋へ血相を変えたオリヒメが飛び込んでくる。

オリヒメは、自身が張っていた結界が破壊されたと告げた。

それは霊亀が動き出したことを意味していた。

本来ならあと三日は持つはずだった結界が想定より早く破壊されたことで、避難が終わっていない民たちが危険へ晒されることになる。

オリヒメは自分の力不足を悔やみ、申し訳なさそうに謝罪した。

しかしアルノルトは、帝国には頼れる者たちがいると告げ、不安げなオリヒメの頭を軽く撫でる。

そして自分も動かざるをえないと判断し、セバスと共に玉座の間へ向かった。

シルバーの決断

出発前、アルノルトはセバスへ、自分の正体をエルナへ明かすべきか迷っていることを打ち明けた。

しかしセバスは、それを厳しく否定する。

秘密を守ると決めた以上、中途半端に明かすべきではなく、最後まで覚悟を貫くべきだと説いたのである。

アルノルトはその言葉を受け、自分の甘さを認め、改めて秘密を守り抜く決意を固めた。

その後、シルバーへ変装したアルノルトは玉座の間へ向かう。

そこでは霊亀討伐を巡り、激しい議論が交わされていた。

炎の魔剣士イグナートは、勇爵家を動かせば外交問題になると主張し、エルナの派遣へ反対していた。

一方で宰相フランツは、霊亀へ対抗するには帝国最強戦力が必要だと訴える。

そこへ現れたシルバーは、自分こそ適任だと宣言した。

しかしクライドは、冒険者ギルドとの約束を理由にシルバーの参戦を拒否する。

そんな中、オリヒメが自分の依頼としてシルバーを雇うと宣言した。

結界を破壊した霊亀を討伐してほしいと頼み、報酬として虹貨三枚を提示したのである。

その結果、正式な依頼として成立し、シルバーの参戦が認められた。

さらにシルバーは、民を避難させるための人員が必要だと告げ、同行者を募る。

イグナートも参加を希望したが、オリヒメは自分の結界を突破できた者だけを認めると宣言したことで場は収まり、霊亀討伐へ向けた準備が進み始めた。

帝都支部への集合

集合場所となった冒険者ギルド帝都支部では、既にオリヒメが好き放題に暴れていた。

飾られていた竜の牙を折り、冒険者のつまみを勝手に食べるたび、シルバーが謝罪と弁償対応をする羽目になっていたのである。

そこへエルナが合流する。

エルナはオリヒメの結界を斬り裂いて侵入し、イグナートですら歯が立たなかった結界を突破してみせた。

さらにオリヒメが自ら仙姫だと名乗ったことで、支部内は大混乱となる。

大陸最強の勇者、大陸最硬の仙姫、そしてSS級冒険者シルバー。

常識外れの存在が一堂に会したことで、冒険者たちは帝都支部の崩壊すら覚悟していた。

そんな中、オリヒメとエルナはどちらが上かをシルバーへ問いただす。

シルバーは優劣を判断できないと答えつつ、自分も負ける気はないと告げた。

その発言によって、場の空気はさらに凍り付くのだった。

レオ率いる騎馬団の到着

やがてレオが騎馬団を率いて到着した。

同行していたのはジーク、リンフィア、そして精鋭の近衛騎士たちだった。

レオは、国外で聖剣を使用する可能性を考慮し、皇族としての許可権限と外交対応のため自ら同行すると説明する。

役割は戦闘ではなく、避難の間に合わなかった民の救出だった。

帝都支部の冒険者たちも協力を申し出たが、シルバーは彼らが疲弊していることを考慮し、今回は帝国へ手柄を譲ると断った。

その後、一行は転移門を通って北部へ向かった。

ロストック到着と霊亀復活の真相

一行が到着したロストックは既にもぬけの殻となっていた。

住民は避難を終えており、そこへ現れた騎士団から霊亀封印崩壊の真相が語られる。

監視を担当していた冒険者たちの一部が、霊亀を先に討伐しようとして刺激を与えた結果、結界が崩壊したのである。

霊亀の反撃によって監視部隊は壊滅し、生き残った冒険者の報告を受けて領主は即座に避難を決断していた。

レオは、まず周辺の村々の避難を優先すると決断する。

一方シルバーは、霊亀だけでなく周囲のモンスターも危険化していることを指摘し、自分が霊亀へ対処すると断言した。

レオもまた、自分たちは命を懸けて民を救う覚悟で来ていると告げ、騎士団を率いて避難救助へ向かう。

その後、シルバーとエルナが飛び立とうとするが、飛行できないオリヒメが不満を漏らす。

結局、シルバーはオリヒメを背負って飛行することになり、エルナから散々にからかわれるのであった。

村人救出へ向かうレオたち

レオたちは休むことなく村々へ急行していた。

到着した先では、既に狼型モンスターへ追われながら村人たちが逃げ出していた。

レオは遠距離から剣を投擲し、親子を守るように地面へ突き刺す。

そのまま突撃したレオは、威圧によって怯んだモンスターたちを一気に斬り伏せた。

さらに近衛騎士団も突撃し、精鋭たちは瞬く間に周囲のモンスターを殲滅する。

助けられた母親へ、レオは自分が偉いのではなく父が偉いだけだと柔らかく答えた。

そして、自分の価値はこれからの振る舞いで決まると語る。

さらに東にも村があると聞いたレオは、危険を承知で森への進軍を決断した。

自分たちはシルバーたちが全力で戦える環境を整えるための露払いなのだと語り、自ら先頭に立ってモンスターの群れへ突撃する。

ジークとリンフィアもまた奮戦していた。

そこへAランクモンスター「レッドレイヴン」が三体襲来する。

ジークはリンフィアの槍を踏み台にして空へ飛び、一体目の首を斬り落とす。

さらに二体目の羽を切断し、最後の一体も空中で仕留めた。

しかし着地方法を考えていなかったため、そのまま墜落する。

リンフィアは呆れながら騎士へ回収を命じ、半泣き状態のジークが回収されるのだった。

ゴードンの決断とソニアの覚悟

北部国境守備軍を率いていたゴードンは、霊亀監視と民間人救助を任されていた。

しかし、森へ取り残された村人たちを救助する提案に対し、ゴードンは兵士の損耗を避けるべきだとして拒否する。

それに対しソニアは、民を守ることこそ軍人の役目だと激しく反発した。

しかしゴードンは、価値のない戦いはしないと切り捨てる。

その姿を見たソニアは、自ら志願兵だけを率いて救助へ向かう提案を行った。

最終的に彼女へ付き従ったのは三十七名だけだった。

ソニアはこれまで、自らの保身を優先した曖昧な策ばかりを選んでいた。

しかしグラウから「できることをやれ」と叱責されたことで、自分も民のために戦うべきだと覚悟を決める。

森へ突入したソニアたちは、モンスターの襲撃を受けながらも村人救助を続けていた。

その途中、ドワーフの老人と出会う。

老人は、ソニアへ種族で一括りにするのは安直だと語り、さらにソニアの優しさを称賛した。

その言葉は、ハーフエルフとして差別され続けてきたソニアの心へ深く残る。

やがてソニアたちはレオ率いる騎士団と合流する。

ソニアは即座に状況を分析し、自軍を横展開させて援護射撃を開始した。

さらに自ら囮となってモンスターを引き付けることで、レオたちが民間人保護へ集中できる状況を作り出した。

そんな中、避難民の中にいたドワーフの老人を見て、リンフィアは驚愕する。

その老人は、かつて南部で出会った迷子の老人だったからである。

老人は白杖から仕込み刀を抜き放つと、放たれた斬撃で周囲のモンスターを一瞬で両断した。

そして自らをSS級冒険者エゴール、「迷子の剣聖」だと名乗り、霊亀を討伐しに来たと愉快そうに笑うのであった。

霊亀との対峙

霊亀を目の当たりにしたオリヒメは、もはや山ではないかと驚愕した。

長い首と巨大な甲羅を持つ霊亀は数百メートル級の巨体を誇り、甲羅の上には二百年の間に形成された本物の山まで存在していた。

アルノルトは、亀というより甲羅を背負った竜のようだと感じる。

しかし霊亀は、接近してきたアルノルトたち三人へまったく反応を示さなかった。

オリヒメは寝起きで眠いのではないかと真剣に推測するが、アルノルトとエルナは呆れる。

アルノルトは、霊亀はこちらに敵意がないことを察しているのだろうと推測した。

そんな中、霊亀は突然レオたちのいる森の方向へ首を向ける。

異常を察知したアルノルトは探知結界を展開し、レオたちや帝国軍がモンスターに囲まれていることを確認した。

さらにその直後、レオたちの傍で爆発的な魔力反応が発生する。

霊亀はまるで好敵手を見つけたかのような表情を浮かべ、膨大なエネルギーを口へ集束させ始めた。

アルノルトは即座にブレス攻撃だと判断し、エルナを連れて転移でレオたちの元へ移動する。

エゴールとの再会

転移先にはレオたちや避難民、そしてドワーフの老人エゴールがいた。

アルノルトは、二百年前に霊亀討伐へ失敗したのはエゴールだったのかと問いかける。

エゴールは悪びれる様子もなく、自分がしくじったと認めた。

その直後、オリヒメは前方へ強力な結界を展開する。

霊亀が放った巨大な黒いエネルギー弾は森を消滅させながら迫り、オリヒメの結界と激突した。

凄まじい轟音と衝撃が周囲を揺るがし、攻撃が終わった頃には森そのものが完全に消滅していた。

アルノルトは霊亀を、ギルド想定のSランクではなく、確実にSSランク級の超危険モンスターだと断定する。

本来なら複数のSS級冒険者が必要な相手だったが、今この場にはエゴールとシルバー、そしてエルナとオリヒメという規格外戦力が揃っていた。

アルノルトは単独では帝国北部が壊滅しかねないと判断し、四人で協力して戦うことを提案する。

しかしエルナ、オリヒメ、エゴールはそれぞれ自分が指揮を取るべきだと主張し始めた。

アルノルトはそれを制止し、自分が指揮を執ると宣言する。

オリヒメは結界役、エルナとエゴールは前線役、自分は遊撃役を担当する形で役割を定めた。

そして自分は今まで誰にも負けたことがないと豪語しながら前へ進み出る。

その瞬間、霊亀は応えるように凄まじい咆哮を放った。

霊亀への初撃

シルバーは《エクスキューション・プロミネンス》を放ち、霊亀の耐久力を測った。

炎の閃光は直撃したものの、甲羅の上にあった山を吹き飛ばしただけで、本体にはほとんど効いていなかった。

シルバーは、高火力魔法を連発しなければ突破できないと判断する。

エゴールは霊亀の顔を狙って突撃するが、霊亀は無数の鱗を飛ばして迎撃した。

エゴールはその攻撃をすべて弾き返したものの、さらに大量の鱗が展開され、単独突破は困難だと判明する。

シルバーはエゴールを転移で回収し、オリヒメは全方位結界で飛来する鱗を防いだ。

シルバーは、顔、特に目や口を弱点と見定め、エルナとエゴールを主攻とする作戦を立てる。

エルナは聖剣《極光》を召喚した。

五百年前に魔王を討った伝説の聖剣であり、万物を切り裂く最強の武器だった。

エゴールはエルナの若さで聖剣を扱えることを称賛し、エルナも剣聖であるエゴールへ敬意を示す。

しかしオリヒメは、自分への態度との差へ不満を漏らし、再びエルナと口論を始めた。

その後、シルバーはエルナの前に転移門を開き、エルナは霊亀の真上へ転移する。

同時にエゴールも地上から突撃を開始した。

オリヒメは小さな結界で鱗一枚一枚を封じ、エゴールの進路を作る。

空ではエルナが鱗へ包囲されかけるが、シルバーが隣へ転移し、転移門でエルナを脱出させた。

シルバーは風の弾で鱗を迎撃し、自分へ攻撃を引き付けることで、エルナとエゴールの攻撃機会を作り出す。

霊亀の重力能力

エルナとエゴールは鱗を掻い潜り、霊亀の目へ渾身の突きを放とうとした。

しかし直前で二人の動きが止まる。

霊亀は重力を操り、二人を地面へ叩き落としていたのである。

さらに霊亀は鱗を集めて巨大な槍を形成し、動けない二人へ落とそうとした。

シルバーは呪鎖でエルナ側の槍を止め、転移門でエルナを救出する。

エゴールはオリヒメの結界に守られ、同じく脱出した。

シルバーは、近づいて弱点を突く方法では霊亀の防御を突破できないと判断する。

外側から全力で仕掛ける必要があると結論づけ、エルナへ聖剣の封印をさらに解放できるかを問いかけた。

エルナは、地形が変わるほどの被害が出ると理解しながらも覚悟を決める。

そんな中、霊亀は空へ向けてブレスを放った。

ブレスは空中で無数の黒い球体へ分裂し、隕石のように降り注ぐ。

さらに霊亀は鱗を盾のように変化させ、球体を反射して不規則な軌道を作り出していた。

オリヒメは全方位結界では耐え切れないと判断し、シルバーも回避を指示する。

四人は左右へ分かれて球体を避け始めた。

エルナの負傷

その最中、エルナは取り残された二人の子供を発見する。

親とはぐれたらしい男の子と女の子は、降り注ぐ黒い球体を前に茫然としていた。

エルナは危険を承知で駆け出し、子供たちの前へ滑り込む。

そして黒い球体を弾き飛ばし、二人を守った。

しかし、そのせいでエルナの動きは止まり、複数の黒い球体を受けて吹き飛ばされる。

シルバーは怒りのまま大魔法を放とうとするが、オリヒメに制止された。

オリヒメは既に結界で子供たちを守っていたのである。

シルバーは冷静さを取り戻し、子供たちを転移門で避難させた。

その後、吹き飛ばされたエルナへ駆け寄る。

エルナは意識を失っていたが、それでも聖剣だけは手放していなかった。

そこへ霊亀が再び重力を発動し、シルバーごと押し潰そうとする。

さらに霊亀は最大級のブレスを溜め始めた。

シルバーは、幼い頃から何度も自分を守ってくれたエルナを傷つけられたことへ激怒する。

そして銀滅魔法《シルヴァリー・ライトニング》を発動した。

巨大な銀雷と霊亀の黒いブレスは中間地点で激突し、周囲の地形を変えるほどの衝撃を生み出す。

霊亀はさらに重力を強め、シルバーを押し潰そうとした。

それでもシルバーは、自分の大切なものだけは絶対に守るという意志で立ち上がる。

その執念によって銀雷は黒いブレスを押し返し、霊亀へ到達した。

しかし、致命傷には至らない。

だがその隙に、エゴールが霊亀の甲羅へ到達していた。

エゴールは居合の構えから神速の抜刀を放ち、霊亀の甲羅を一閃する。

絶対防御だった甲羅へ巨大な傷が刻まれ、霊亀は絶叫を上げた。

エルナの覚悟と奥の手

意識を取り戻したエルナは、シルバーの声をアルノルトのものだと錯覚していた。

アルの今を守るために戦うと口にするエルナを前に、シルバーは正体を明かしたい衝動へ駆られる。

しかし、それは自分の感情を優先する身勝手だと理解し、シルバーとして振る舞い続けることを選んだ。

やがて正気を取り戻したエルナは、アルノルトが無茶をしないうちに霊亀を倒すのが自分の役目だと語り、再び立ち上がる。

甲羅へ傷を負った霊亀は、迎撃をエゴールへ集中させていた。

その隙を見て、シルバーは今こそ決着の時だと判断する。

エルナもまた、ここで確実に霊亀を仕留める覚悟を決めていた。

シルバーは銀滅魔法《シルヴァリー・エンド・セイバー》を発動する。

それは戦場へ散らばっていた銀属性魔力を集束し、一振りの剣へ変える一点集中型の奥義だった。

一方エルナも、聖剣《極光》の封印を一つ解除する。

黄金の光が溢れ出し、聖剣は五百年前に魔王を討った姿へ近づいていった。

エルナは、ここは勇者と銀の魔導師がいる帝国だと宣言する。

シルバーもまた、霊亀は手を出す場所を間違えたと断言した。

そして二人は同時に剣を振るう。

銀と黄金の光剣が交差しながら、霊亀へ放たれた。

霊亀討伐

銀と黄金の光の奔流は霊亀のブレスを一瞬で飲み込み、そのまま霊亀本体を包み込んだ。

霊亀は耐えようとするが、エゴールによって甲羅へ傷を入れられていたことで、防御は完全ではなかった。

断末魔を響かせながら、霊亀は光の中へ消滅していく。

さらに光の奔流はそのまま奥へ進み、オリヒメが展開した巨大結界群と衝突した。

結界は次々と破壊されるが、光の勢いも徐々に弱まっていく。

そして十二重の結界のうち十枚を破壊したところで、ようやく攻撃は停止した。

シルバーは安堵しつつ、全力攻撃を放ったことを内心反省する。

一方エルナは、十二枚すべてを破壊できなかったことへ不満を抱いていた。

戦闘後、エルナは疲労困憊で座り込む。

オリヒメは自分の結界こそ最上だと得意げに胸を張った。

そこへエゴールが現れ、エルナの肋骨が五本折れていることを見抜く。

エゴールは骨を元へ戻し、あとは治癒魔法で治ると告げた。

しかしシルバーは、魔力消費を理由に治癒魔法を拒否する。

その後、一行は都市へ戻った。

霊亀討伐の報告により街は歓喜へ包まれる。

その中でシルバーは、保護した二人の子供について確認した。

するとソニアが、子供たちはゴードン皇子率いる監視部隊へ助けを求めたが、森へ行けと追い返されたと説明する。

レオは激しい怒りを露わにするが、シルバーは軍人としての判断ミス扱いになる可能性が高いと冷静に分析した。

そのうえで、この件は自分へ任せてほしいと告げる。

レオも了承し、シルバーは冒険者として抗議を行うつもりだと語った。

エルナの安息

帝都へ戻ったアルノルトは、シルバーの装束を脱ぎ、自室でようやく一息ついていた。

そこへ突然エルナが訪ねてくる。

エルナは疲れたから会いに来たと告げ、そのままソファーへ腰を下ろした。

さらにアルノルトへ隣へ来るよう命じ、自分の頭を彼の膝へ乗せる。

アルノルトは呆れながらも、その願いを受け入れた。

エルナは、勇爵家へ戻れば皆に心配されて休めないが、ここなら落ち着くと語る。

アルノルトはため息を吐きながらも、頑張った騎士だから我儘の一つくらいは許そうと考え、エルナの頭を優しく撫でた。

エルナは頑張ったと呟きながら、そのまま安心したように眠りへ落ちていく。

その寝顔は、激戦の直後とは思えないほど穏やかだった。

エピローグ

戦いの終結と新たな忙しさ

霊亀討伐によって、帝国周辺に存在していたモンスターの脅威はひとまず解消された。

これにより、皇帝即位二十五周年式典へ各国の賓客を安全に招く準備が本格化することとなる。

アルノルトはようやく一息つきながらも、今後は別の意味で忙しくなるだろうと考えていた。

フィーネの後悔

フィーネは、自分がアルノルトを煽るような発言をしたせいで無理をさせてしまったと落ち込んでいた。

しかしアルノルトは、あれは煽りではなく、自分の背中を押してくれたのだと語る。

確かに帝位争いは進展しなかった。だが、あの場で民を見捨てれば、自分たちはエリクたちと同じになっていたと断言する。

フィーネがいたからこそ、自分は道を踏み外さずに済んだのだとアルノルトは感謝していた。

フィーネという旗印

フィーネは、自分には力がなく、戦場で見ていることしかできないと無力感を口にした。

それに対しアルノルトは、自分たちは誰かを倒したくて戦っているのではなく、後ろにいる人々を守るために戦っているのだと説明する。

戦場には必ず旗が掲げられる。

兵士たちはその旗を見て、自分たちが何のために戦うのかを思い出し、再び立ち上がる。

アルノルトにとってフィーネは、まさにその旗印だった。

フィーネが自分らしく在り続けてくれることで、自分もまた自分らしく戦い続けられるのだと語る。

レオが希望の旗印ならば、フィーネは守るべき民の象徴だった。

だからこそ、そこにいてくれるだけで意味があるのだとアルノルトは伝えた。

互いを支える約束

フィーネはアルノルトの言葉を受け入れ、自分らしく在ると約束する。

その代わり、アルノルトにも無茶をしないでほしいと願った。

肩の力を抜いているアルノルトを見ると、自分は安心できるのだと素直な気持ちを伝える。

アルノルトは、それが簡単なことではないと理解しながらも、その願いに頷いた。

帝位争いへの覚悟

帝位争いは今後さらに激化する。

エリクも本格的に動き始め、ゴードンやザンドラも一発逆転を狙って仕掛けてくるだろう。

それでもアルノルトは、それらをすべて凌ぎ切り、レオを皇帝にすると決めていた。

最も面倒な皇帝という役目をレオへ押し付けるためにも、自分は最後まで戦い抜くつもりだった。

そんなことを考えながら、アルノルトはフィーネが淹れた紅茶を静かに口にしたのだった。

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