漫画「追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(15)」感想・ネタバレ

漫画「追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(15)」感想・ネタバレ

転生重騎士15の表紙画像(レビュー記事導入用)

重騎士 14巻
重騎士 まとめ
重騎士 16巻

物語の概要

本作は異世界転生ファンタジー系作品である。重騎士という「欠陥」とされる職に転生した貴族令息・エルマは、前世で遊び尽くしたゲームの知識を活かし、最強クラスの戦術として重騎士を極めていく。第15巻では、凄腕錬金術師・銀面卿の助力で規格外の防具〈碧き女王の鎧〉を装備したエルマが、「特別昇級試験」に挑む。準A級冒険者への昇級を目指す過程で、ゲームでは“開発者の悪意の権化”と呼ばれた祟り神アナクと対峙する展開が描かれる。

主要キャラクター

  • エルマ・エドヴァン
    本作の主人公である重騎士。転生先で重騎士という評価の低い職を得たが、ゲーム知識を駆使して最強へと昇華させる。

物語の特徴

本作の魅力は、前世のゲーム知識を活かし「欠陥職」とされる重騎士を最強クラスへと昇華させる逆転の戦術性にある。主人公が知識で戦局を有利に導き、伝統的なバトルファンタジーとは異なる“戦略的無双”を見せる構成が特徴である。また、第15巻では準A級への昇級試験や祟り神との戦いなど、単なるレベル上げや装備強化だけでない、シナリオ的緊張感のある強敵との対峙が描かれる点も読者の興味を引く。

書籍情報

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(15)
著者:武六甲理衣 氏
原作:猫子 氏
イラスト:じゃいあん  氏
出版社:講談社
レーベル:ヤンマガKCスペシャル
連載:ヤンマガWeb
発売日:2025年10月6日
ISBN:9784065411360

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あらすじ・内容

VS.祟り神アナク!! 「開発者の悪意の権化」と呼ばれた裏ボスを討伐せよ!! 覇権作品堂々漫画化第15巻!!

凄腕錬金術師「銀面卿」の助力により、規格外の防具〈碧き女王の鎧〉を手に入れたエルマ。
新装備で挑むのは、準A級冒険者になるための「特別昇級試験」!
試験を順調に攻略するエルマだが、ゲームでは「開発者の悪意の権化」と称された祟り神アナクと会敵してしまう‥‥!!

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(15)

感想

まず触れざるを得ないのが、前巻で仲間を見捨てて逃亡したフラングの存在だ。 第15巻で盛大に「ザマァ」される展開を予想していたが、そこは流石と言うべきか。すでに逃走済みという判断の早さを見せつけられた。

ある意味、羨ましいほどの有能さである。 「そう簡単に逃がさない」という読者の期待(ストリート的な溜飲を下げる展開)をあえて外してくるあたり、妙に現実味がある。この冷徹なまでの判断力には、正直なところ少し悔しさすら覚えてしまった。

だが、この「逃げ切れる悪役」が残す独特の質感は、物語に絶妙な余白を与えていて悪くない。再登場の可能性に含みを持たせる幕引きであった。

衝撃的だったのは、「銀面卿」と呼ばれた凄腕錬金術師の正体だ。 「小人の竈」の店主カリスであり、さらにヒーツ伯爵家の令嬢であったという事実。ここでようやく表紙の意味が腑に落ちる構成になっており、後出しながらも納得感がある。

単なる便利キャラに留まらず、明確な立場と背景を持つ人物として再定義されたことで、彼女は今後、重要な準レギュラーとなっていくのだろう。

物語の構成は、前半がエルマの新装備〈碧き女王の鎧〉のエピソード、後半が特別昇級試験という二部構成だ。 新鎧の描写は、単なる性能紹介に終わらず、運用方法や相性まで丁寧に掘り下げられていたのが好印象だ。「装備更新=単なるパワーアップ」で終わらせない。ゲーム知識をベースにしつつ、現実の戦闘として再構築する筆致こそ、この作品独自の強みと言える。

後半の昇級試験では、パーティ制の制約により再びメアベル、ケルトと組むことになる。 「またこの2人か」と思わせつつも、ケルトの抱える事情を匂わせることで、単なる再集合以上の意味を持たせていた。特にケルトに関しては、今後の掘り下げ次第で物語の主軸に食い込んでくる気配があり、次巻への興味が素直に膨らむ。

重騎士 14巻
重騎士 まとめ
重騎士 16巻

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

エルマ

本作の主人公であり、重騎士のクラスを持つ冒険者である。元貴族の立場から冷静な状況判断力を備え、ゲームの知識を活かして効率的に行動する。仲間を思いやる一方で、戦いにおいては自身の防御力を最大限に活用する戦術を取る。

・所属組織、地位や役職  冒険者、パーティーのリーダー格。

・物語内での具体的な行動や成果  銀面卿の正体がゴーレムであり、カリスがクランの真の支配者であることを見抜いた。碧き女王の素材を用いた強力な鎧を入手し、防御性能を飛躍的に向上させた。準A級冒険者の昇級試験に参加し、格上の魔物である祟り神アナクを相手に前線を維持した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  レベルは38に到達している。優秀な錬金術師であるカリスや鍛冶師ベルガと強力な協力関係を築いた。

ルーチェ

エルマの相棒として行動する、素早さと幸運に長けた冒険者である。明るく素直な性格で、エルマに対して全幅の信頼を寄せている。戦闘ではクリティカル攻撃を主体とし、格上の魔物も一撃で仕留める爆発力を持つ。

・所属組織、地位や役職  冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  銀面卿の正体が判明した際に激しく混乱したが、カリスとは話し相手として打ち解けた。試験中のスライム大水道エリアにおいて、ウォースライムを瞬時に撃破した。カリスから譲り受けた希少な「ヘルメスの幸運薬」を預かり、パーティーの切り札を管理する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  エルマと共に準A級昇級試験に挑み、厳しい条件の達成を目指している。

カリス

錬金工房「小人の竈」の店主であり、クラン「魔銀の笛」を実質的に支配する錬金術師である。ヒーツ伯爵家の第五子という出自を持つが、家を離れて独自の地位を築いた。慎重で計画的な性格を装っているが、実際には強い承認欲求を隠しきれない一面がある。

・所属組織、地位や役職  錬金工房「小人の竈」店主。クラン「魔銀の笛」真のクラン長。

・物語内での具体的な行動や成果  ゴーレムである銀面卿を身代わりとして立て、クランを裏から操っていた。エルマたちが持ち込んだ魔虫銀や碧き女王の鉱石の精錬を無償で引き受けた。ヘルメスのコインを用いて希少な幸運薬を製作し、一行に提供した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  エバンスから自身の失言癖を指摘され、精神的に打ちのめされる場面があった。錬金術師としての腕前は極めて高く、市場価値の非常に高い品を扱う。

エバンス

カリスに仕える従業員であり、彼女の不手際を冷静に補佐する管理人的な存在である。主人の性格を熟知しており、必要であれば厳しい言葉で是正を求める。カリスの承認欲求による秘密漏洩を常に懸念している。

・所属組織、地位や役職  錬金工房「小人の竈」従業員、カリスの補佐役。

・物語内での具体的な行動や成果  エルマたちが拠点に現れた際、冷静に案内を務めた。カリスが自らクランの秘密を周囲に漏らしている事実を、客人の前で淡々と暴露した。クラン運営の実務を一手に担い、組織の破綻を防いでいる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  実務家としての能力が非常に高く、カリスからも一定の信頼と畏怖を向けられている。

ケルト

弓を武器とする狩人の冒険者であり、他人や組織を容易に信用しない頑固な性格である。過去に師匠と仰いだダーレンに裏切られた経験があり、それが深い不信感の原因となっている。冒険者としての技術は確かであり、危険を察知する鋭い感覚を持つ。

・所属組織、地位や役職  冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果  当初は貴族が絡む特別昇級試験を拒絶していたが、仇敵ダーレンの噂を聞き参加を決意した。試験会場である選定の森において、自身の「第六感」により異常な静けさと祟り神の気配を察知した。過去の因縁を整理し、パーティーの一員として役割を果たすことをエルマに誓った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  復讐心に駆られて独走しないよう、エルマと特定の取り決めを結んだ上で試験に臨んでいる。

メアベル

エルマのパーティーに一時的に加わった、落ち着いた雰囲気の女性冒険者である。回復魔術を専門とし、冷静に戦況を見極めるバランス感覚に優れている。昇級試験に対しては、将来的な実益を見据えて参加する現実的な視点を持つ。

・所属組織、地位や役職  冒険者、回復役。

・物語内での具体的な行動や成果  ケルトとエルマの間で起きる対立をなだめ、パーティーの調和を保とうとした。試験中、エルマとルーチェの圧倒的な戦闘能力を高く評価した。祟り神アナクとの遭遇時には、エルマの指示に従って速やかに後退し、態勢を整えた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  A級相当の実力を持つエルマたちの戦いを間近で見て、感銘を受けている。

ベルガ

ラコリナの街で工房を構える熟練の鍛冶師である。エルマとは旧知の仲であり、彼の成長と武勇伝を楽しみにしている。非常に高い技術を持ち、希少な素材の特性を最大限に引き出すことができる。

・所属組織、地位や役職  鍛冶師、工房主。

・物語内での具体的な行動や成果  碧き女王の金属という極めて扱いの難しい素材を用い、生涯の最高傑作となる鎧を作り上げた。装備重量や適性レベルの差を懸念しつつも、エルマの覚悟を認めて武具を託した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  自身の仕事が冒険者の命を支えることを誇りとしており、一行の門出を力強く見送った。

ダーレン

かつてケルトに弓術を教えた元冒険者であり、仲間を殺害して逃亡した犯罪者である。利己的な性格で、ケルトの父親の形見を質に入れさせるなど、執拗に搾取を行っていた。八年前にラコリナから姿を消したが、最近になって再び目撃情報が浮上した。

・所属組織、地位や役職  元冒険者、逃亡犯。

・物語内での具体的な行動や成果  過去にケルトから金を搾り取った末に、飲み仲間を殺して逃亡した事実が語られた。今回の特別昇級試験の裏で動いている可能性が示唆され、ケルトを強く動揺させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  教団「夢神の尖兵」との関連性が疑われており、物語の不穏な要因となっている。

祟り神アナク

忘却の寺院エリアに潜む、Lv92という圧倒的な強さを誇る魔物である。巨大な大鎌を武器とし、生命を選択的に奪い去る特殊な能力を持つ。一度狙いを定めた相手を逃がさない執拗な攻撃性が特徴である。

・所属組織、地位や役職  魔物、忘却の寺院の裏ボス的存在。

・物語内での具体的な行動や成果  周辺の小動物を黒ずんだ死骸に変え、森に異常な静けさをもたらした。エルマの防御を貫くほどの連撃を加え、レベル差を見せつけた。エルマが投じた聖属性の魔石に反応し、激しい敵意を示した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項  「神隠れ」による瞬間的な接近能力を有し、試験参加者にとって絶望的な脅威として立ちはだかる。

展開まとめ

127話

魔銀の笛の紋章と拠点への到達
エバンスは返答を待たずに階段を下り、扉へと向かった。扉には〈魔銀の笛〉の紋章が刻まれており、埃もなく、現在も使用されている拠点であることが示されていた。この場所が銀面卿の実際の拠点であると判断され、交渉の場であることが明確となった。

手入れされた内部と銀面卿の出迎え
扉の先は廃墟とは対照的に整えられた室内であり、武具や美術品が並ぶ格式ある空間であった。中央には豪奢な椅子が置かれ、その前に魔銀のフルプレート鎧を纏った巨体の存在が立っていた。銀面卿は無言のまま接近し、三歩進んだところで跪き、忠誠を示すような行動を取った。

銀面卿の異様な振る舞いとルーチェの混乱
威圧的な外見とは裏腹に、銀面卿は敵意を示さず、主に仕える騎士のような態度を貫いた。この予想外の行動により、ルーチェは強い動揺を見せ、状況を理解できないまま混乱した反応を示していた。

カリスの登場と正体の露見
部屋の奥から、錬金工房〈小人の竈〉の店主であるカリスが現れ、銀面卿の背後にある椅子へと腰掛けた。彼女は以前に〈魔銀の笛〉の噂を語った人物であり、ここでの再会により、銀面卿とクランの関係性に決定的な違和感が生じた。

銀面卿の正体と支配構造の解明
観察の結果、銀面卿は人間ではなく、錬金術によって動かされるゴーレムであると判断された。銀面卿が表に出る機会が限られていたのは、その正体が露見することを避けるためであり、実際にクランを掌握していたのは錬金術師であるカリス自身であった。彼女は正体を隠しつつ、銀面卿を象徴として利用していたのである。

カリスの余裕と一方的な種明かし
カリスは真相を見抜かれたことに大きな動揺を見せず、むしろ楽しむような態度を取った。十分に驚かなかった相手に対する軽い不満を口にしつつ、状況を把握できていないルーチェの反応をもって帳尻が合ったと評した。場の主導権は完全にカリス側にあり、交渉の前提条件が明確になった場面であった。

クラン長としての謝意と密談の理由
カリスはクラン長として、部下たちが撤退ではなく討伐を選び、最後まで踏みとどまったことへの感謝を述べた。同時に、直接呼び出した理由として、話の内容が外部に漏れることを避けるため、自身が管理できる場所を選んだと説明した。

信頼の根拠と身元の把握
カリスは事前にエバンスを通じて調査を行っており、一行が貴族家から追い出された立場であることを把握していた。その境遇から、軽率に情報を漏らすことはないと判断し、信頼に足る相手として接していた。

カリスの出自と伯爵家からの離脱
カリスはヒーツ伯爵家当主ヒルマンの第五子であり、第三夫人の子であることを明かした。優秀であったがゆえに本妻側から疎まれ、領地の分割継承権を放棄して家を出た結果、別領地で冒険者として活動する道を選んだと語った。

ヒーツ伯爵家の性質と対立する価値観
ヒーツ伯爵家は交易で財を成した商人系の家柄であり、歴史は浅いが大商人として力を持つ一族であった。一方で、武闘と伝統を重んじる家系とは価値観が大きく異なり、貴族間では問題視されやすい家でもあったことが示唆された。

魔銀の笛設立の経緯と置物の存在
目立つことで錬金術の情報漏洩や実家からの干渉を招くことを恐れたカリスは、冒険者を束ねる能力に長けたフラングと手を組み、〈魔銀の笛〉を設立した。自身は表に出られない立場であったため、クランの表向きのトップとして象徴的な存在を据える形を取った。

フラングの失脚と離脱
レイド後、フラングが部下を見捨てたこと、さらにクラン乗っ取りを画策していたことが露呈した結果、彼はクランを追い出される形で姿を消した。自らの計画で部下を危険に晒し、責任を取らず逃げた行動は決定的であった。

権力集中の危険性と現状の問題
カリスは、フラングが最終的には自身から権限を奪い、便利な道具として扱おうとしていたと分析していた。近頃の独断専行と暴走はその兆候であり、人望を失った末の自滅であったと結論づけた。一方で、後任をどうするかという新たな問題が残され、カリスはその点に疲労と懸念を滲ませていた。

128話

隠蔽体制への評価と違和感の指摘
エルマは、〈小人の竈〉と〈魔銀の笛〉を使い分けて自身を目立たせない体制を敷いている点を評価した。一方で、廃嫡後に実家の影響圏で派手に動いたエルマ自身の行動が、実家から警告を受ける結果となったことを指摘し、立場上の振る舞いの違いを示した。

カリスの立場と性格の説明
カリスは、錬金術師という後方支援向きのクラス特性と、自身が目立つことを好まない性格を理由に、表に出ない体制を選んだと説明した。また、恩があり境遇の似た相手だからこそ事情を明かしたと述べ、計画性と慎重さを強調した。

踊らされた可能性への言及
エルマは、〈魔銀の笛〉が錬金術師を抱えていると明かした行為自体が計算されたものであり、自分たちは意図的に誘導されたのではないかと指摘した。カリスは沈黙の後、その推測を肯定する反応を見せた。

エバンスによる訂正と爆弾発言
ここでエバンスが介入し、カリスが功名心を抑えきれなくなると、銀面卿の存在を誰彼構わず仄めかしてしまう悪癖があると指摘した。これにより、カリスは激しく動揺し、紅茶を噴き出して転倒する事態となった。

秘密漏洩の実態と周囲の困惑
エバンスは、カリスが意図的な戦略ではなく、単に褒められたい欲求からクランの秘密を漏らしていると淡々と説明した。ルーチェは、必死に隠している正体を自ら口にしている状況の不合理さを指摘するが、エバンスは事実であると断言した。

誤解されていた人物像の崩壊
エルマは、深謀遠慮に長けた冷静な人物像を想定していたが、それが完全な誤解であったことを悟った。カリスは羞恥のあまり言葉を失い、精神的に追い詰められていった。

幼少期の背景と噂の拡散理由
エバンスは、カリスが幼少期に父親から十分に構われなかった影響で、強い承認欲求を抱く性分であることを明かした。そのため、彼女が〈魔銀の笛〉の幹部格であることは、親交のある者には自然と伝わっており、商人間の噂も彼女自身が広めていた可能性が示唆された。

管理者としての不満と是正要求
エバンスは、銀面卿に関連する複雑なクラン運営を一手に担わされている立場として、カリスの優越感のために問題が拡大している現状への不満を表明した。また、実家を刺激する危険性を避けるためにも、今回を機に行動を改める必要があると告げた。

精神的崩壊と周囲の反応
エバンスの正論により、カリスは完全に打ちのめされ床に突っ伏した。ルーチェは慌てて慰めに向かい、話し相手になることを申し出たが、カリスは力なく生きる気力を失ったような言葉を漏らした。

魔虫銀精錬の依頼と価格提示
カリスは、主人公たちが求めているものが鎧素材となる魔虫銀の精錬であると理解していた。精錬の相場として一つあたり三百五十万ゴルドを示しつつ、上級冒険者であり対抗する錬金術師もいない状況から、価格を吊り上げる余地がある取引であると説明した。数石盤を用いて計算を行い、主人公側が金額を惜しめない立場であることを見越した態度を見せていた。

高額提示からの無償精錬の宣言
カリスは一転して、一つ三千万ゴルドという極端な金額を提示し、ルーチェと主人公を動揺させた。しかし直後、それが冗談であると明かし、今回のレイドで得た魔虫銀については諸経費込みで全て無償で精錬すると宣言した。これは恩人に対する配慮であり、同時に今後の関係性を見据えた判断であった。

魔虫銀鉱石塊の大量提示と追加交渉
主人公は魔法袋から九つの魔虫銀鉱石塊を取り出した。カリスは予想以上の数量に驚きつつ、全てを精錬すれば二日程度かかると見積もった。主人公は鎧に必要な分だけ精錬し、残りは買い取ってほしいと提案した。カリスはこれを了承し、精錬対象と買取分を分けて取引することで合意した。

碧き女王の鉱石塊の提示
主人公は続けて、碧き女王の鉱石塊を取り出した。これは非常に高価で希少な素材であり、カリスは錬金術師として強い関心を示した。この鉱石から極めて高品質な鎧が完成することを確信し、精錬後の仕上がりを楽しみにする様子を見せた。魔虫銀と同様に、この鉱石も精錬対象として引き受けることが決定した。

取引内容の確定と今後の展望
最終的に、九つの魔虫銀のうち二つを精錬、残り七つを市場価値と同額で買取、碧き女王の鉱石塊も精錬するという内容で合意した。主人公はこれにより鎧問題が解決する見通しが立ち、優秀な錬金術師との関係を築けたことを大きな成果として受け止めた。今後、素材さえ集めれば高品質な装備を製作できる環境が整ったことが示された。

追加依頼の提示
精錬と鋳造に二日かかると告げられた後、主人公はさらに別の依頼があると切り出した。魔法袋からヘルメスのコインを取り出し、これを素材として新たなアイテムの製作を依頼した。カリスはその高価さと希少性に感心しつつ、自身にできる範囲であれば引き受ける姿勢を示したところで場面は締めくくられた。

129話

ベルガとの再会と依頼の提示
エルマとルーチェは、久々に鍛冶師ベルガの工房を訪れた。ベルガは二人の近況を把握しており、これまでの活躍を評価していた。エルマはカリスによって精錬された素材を示し、新たな鎧の製作を正式に依頼した。

魔虫銀と碧き女王の素材説明
ベルガは素材を確認し、魔虫銀に加えて碧き女王由来の金属が含まれていることを理解した。これほど高品質かつ希少な素材を扱うのは容易ではないが、全力で応える意思を示した。

鍛冶期間と街での待機
鎧の製作には数日を要するため、エルマとルーチェは街で待機することとなった。その間、二人は情報収集や軽い準備を行い、完成を待った。

鎧の完成報告
数日後、ベルガから鎧完成の知らせが入った。工房に呼び戻された二人は、完成品を前にすることとなる。

碧き女王の鎧の披露
工房の奥に置かれていたのは、碧く鈍い光沢を放つ鎧であった。碧き女王の素材特有の上品な輝きがあり、ベルガ自身も生涯最高傑作であると断言した。

性能確認と圧倒的数値
エルマが性能を確認すると、防御力は従来装備を大きく上回る数値であった。市場価値も桁違いであり、装備性能の次元が一段階上がったことが明確となった。

装備変更による戦闘方針の変化
この鎧によって、これまで回避や受け流しを重視していた戦い方から、防御力を活かして正面から受け止める戦法も選択肢に入るようになった。エルマ自身も対応可能な魔物の幅が広がると判断した。

適性レベル差への指摘
ベルガは鎧の適性レベルが高く、重量や扱いにくさが懸念される点を指摘した。特に鎧は全身に負荷がかかるため、武器以上に影響が大きいと忠告した。

エルマの判断と覚悟
エルマは現状でも問題なく扱えると判断し、技術と経験で差を補うと断言した。さらに、この程度のレベル差はすぐに埋めると自信を見せた。

ルーチェの反応と信頼
ルーチェは新しい鎧を身に着けたエルマの姿に強く感動し、その変化を素直に称賛した。ベルガも二人の関係性を見て、支え合うことを条件に送り出す姿勢を取った。

鍛冶師ベルガの評価
ベルガはエルマの覚悟と成長を認め、新たな武勇伝を期待すると告げた。自身の仕事が次の戦いに繋がることを誇りとして受け止めていた。

130話

時間の遡行と場面の切り替え
時は一週間前に遡る。エルマとルーチェは仮面卿との面談を行っており、この時点ではラコリナ冒険者ギルドには登場していない。物語の視点は、彼らとは別の場所へと移る。

ラコリナ冒険者ギルドの騒然
ラコリナ冒険者ギルドの内部では、多くの冒険者が集まり、通常とは異なる緊張感が漂っていた。上階からの呼びかけにより、場が静まっていく様子が描かれる。

ギルドマスターの演説
ギルドマスターが姿を現し、B級冒険者たちに向けて言葉を投げかけた。現在の地位や成果に満足しているかを問い、さらなる力や名声を求める意思があるかを確認する内容であった。

実績への評価と方針表明
ギルドマスターは、日々の活動と実績を積み重ねている冒険者の存在を認め、その才能を埋もれさせるつもりはないと明言した。組織として冒険者の成長を促す姿勢が示される。

準A級昇級試験の宣言
特例措置として、B級冒険者を対象とした「準A級冒険者」への昇級試験を開催することが正式に宣言された。この発表により、ギルド内は驚きと高揚に包まれた。

時系列の切り戻しと現在への復帰
場面は「時は巻き戻り 現在」と明示され、エルマとルーチェが拠点付近で会話している場面から始まる。新装備の重さを気にするルーチェに対し、エルマは数日間ギルドに行けていなかったため、状況確認のため立ち寄る意思を示す。また〈夢神の尖兵〉に関する調査が進展している可能性にも言及され、二人の関心が依然として教団側にあることが描かれる。

教団と貴族の動きへの不穏な感触
ルーチェはカロスの属していた教団について触れ、エルマも何かが進行している可能性を否定しない。さらに、他領の貴族が動いているという情報が示され、教団・貴族・最近の異変が無関係ではないという空気が強調される。

ラコリナ冒険者ギルドの異様な賑わい
ギルド内部は昼間にも関わらず異様な人だかりを見せていた。普段より明らかに人数が多く、酒を飲む者、談笑する者、興奮気味に話す者が入り乱れている。この異常な混雑に対し、エルマは違和感を覚える。

特別昇級試験の噂
ギルド内で耳に入ってきたのは「ギルド長サマからの布告」「特別昇級試験」という言葉であった。すでに一週間ほど前から告知されていたらしく、知らなかったエルマは出遅れた事実を突きつけられる。試験はパーティー単位での参加が前提であることも語られ、今からの参加は簡単ではない状況が示される。

準A級という新たな等級
特別昇級試験の目的は、B級冒険者の中から優秀な人材を発掘し、「準A級」という新設等級を与えることであった。これは王国公式ではないが、侯爵家のお墨付きという強い意味を持つ立場であると説明される。

禁断の大森林と大討伐計画
準A級に昇級した冒険者を中心に、「〈禁断の大森林〉の大討伐」に参加する部隊を編成する計画が示される。〈禁断の大森林〉は危険度が極めて高く、通常は十年周期でしか行われない大規模討伐対象であることが強調される。

異常なタイミングへの疑念
エルマは、前回の大討伐が三年前に行われたばかりである点に注目し、今回の前倒しが異常であると指摘する。この短期間での再実施は、単なる偶然とは考えにくく、背後に大きな要因が存在する可能性を示唆する。

教団事件との関連性の示唆
大討伐と〈夢神の尖兵〉、そしてカロスの教団との間に何らかの接点がある可能性が語られる。エルマは、世界の仕組みに異常なほど精通した存在が背後にいる可能性を示し、この事件が単なる局地的問題では済まないことを内心で確信していく。

参加への葛藤と判断
エルマは、大討伐も特別昇級試験も危険度が高く、安易に首を突っ込むべきではないと理性では理解していた。しかし同時に、見知った者が利用され、命を落とす未来を看過できないという感情も抱いている。

ルーチェの決意と後押し
迷うエルマに対し、ルーチェは特別昇級試験への挑戦を提案する。使命感や大義ではなく、「見知った人が犠牲になるのが嫌だ」という率直な感情を語り、エルマと共に進む意思を明確に示す。その言葉により、エルマは彼女の覚悟を受け止める。

仲間集めという現実的課題
試験がパーティー単位である以上、二人きりでの参加は不利であることが確認される。ルーチェはケルトやメアベルの名を挙げるが、エルマはケルトが貴族絡みの案件を嫌う性格である点を懸念する。それでも、話を持ちかけてみる価値はあると判断され、物語は次の行動へと繋がるところで締めくくられる。

131話

特別昇級試験の噂と酒場の空気
ラコリナの酒場では、特別昇級試験の話題で冒険者たちがざわついていた。準A級という肩書きを求め、他領からも冒険者が集まっており、店内は普段より混み合っている。浮ついた期待と打算が入り混じる空気の中、ケルトは露骨に不機嫌な態度を見せる。

ケルトの拒絶と強い警戒心
ケルトは特別昇級試験への参加を即座に拒否し、机を叩いて強く反発する。こんな話に首を突っ込めば、大討伐に組み込まれるのは目に見えていると断じ、直前の事件を引き合いに出して胡散臭さを強調する。その言葉には、過去の経験に裏打ちされた切実な危機感がにじんでいる。

メアベルの介入と温度差
場の空気を和らげるように、メアベルは軽い調子でケルトを引き止め、二人分の力を貸す程度ならいいのではないかと持ちかける。しかしケルトは首を振り続け、軽口では済まされない問題だと突き放す。ここで、試験を好機と見る者と、罠と見る者の温度差がはっきりする。

正面からの対立と本音の衝突
主人公が口を挟もうとすると、ケルトは手で制して話を遮り、聞こえのいい言葉では誤魔化されないと強く拒絶する。主人公が大討伐と危険な存在の関与を確信していることを示すと、ケルトは怒鳴り返し、そんなものに命を賭ける価値はないと言い切る。互いに引かず、正論同士が正面衝突する形となる。

冒険者と貴族の立場の断絶
ケルトは、貴族は冒険者を使い潰せる駒としか見ていないと吐き捨てる。どれほど領地に貢献しても、冒険者には自分を守る権力がないという現実を突きつけ、これ以上命を賭ける義理はないと語る。その言葉に、主人公は反論しきれず、説得の難しさを痛感する。

決裂と静かな区切り
議論の末、ケルトはこれ以上の話し合いを打ち切り、席を立つ。最後に酒代を置き、「ここは俺が持つ」と告げて去っていく。その背中は頑なでありながら、仲間を思うがゆえの決断でもあった。

ケルトの離脱と酒場の異変
酒場での話し合いは決裂し、ケルトは特別昇級試験への参加を拒み、紙幣を机に置いて席を立った。協力を断る以上、借りを作らないという意思表示であり、これ以上話す気がない態度であった。エルマたちはその背中を見送り、ケルト不在での人員探しを考え始める。

「ダーレン」の噂による激変
その直後、酔客たちの雑談から「ダーレンがラコリナに戻ってきた」という話題が漏れた。その名を聞いた瞬間、立ち去りかけていたケルトは豹変し、酔客の一人を掴み上げて詰め寄った。周囲が制止に入るほどの剣幕であり、ケルトの内面に強い動揺と怒りが湧き上がっていることが明白であった。

ダーレンという存在の正体
落ち着いた後、ケルトはダーレンの正体を語り始めた。ダーレンはかつてケルトに冒険者の基礎と弓を教えた男であり、同じ狩人として接近してきた人物である。しかしその実態は、利己的で危険視されていた冒険者であり、〈夢の穴〉において仲間を殺し、パーティー強盗を働いた犯罪者であった。八年前に事件を起こし、ラコリナから逃亡した過去を持つ。

歪んだ師弟関係と搾取の日々
回想では、若き日のケルトがダーレンに利用されていた様子が描かれた。雑用や危険な仕事を押し付けられ、得た金は巻き上げられ、機嫌次第では修行と称して暴力を受けていた。一方で、弓術や体術、ナイフ捌きといった実戦的な技術は確かに叩き込まれており、冒険者として生き延びる術を身につけたのも事実であった。

形見の弓と裏切りの決定打
決定的だったのは、ダーレンが金に困り、頭を下げてきた出来事である。ケルトは亡き父の形見である高価な弓を質に入れ、金を用立てた。しかしその直後、ダーレンは仲間殺しが露見する直前でラコリナから姿を消し、最後にケルトからも金を搾り取って逃亡していた。その際に殺されたのは、ダーレンの飲み仲間であった。

再会の予兆とケルトの決意
噂により、ダーレンが再びラコリナに現れた可能性が浮上したことで、ケルトの中に封じていた怒りと憎悪が蘇った。時間が経っても風化することはなく、ダーレンだけは自分の手で決着をつけるという強い殺意を抱いている様子が描かれ、物語は個人的因縁を孕んだ新たな局面へと踏み込んでいった。

132話

割れた酒瓶と沈黙
路地に出た一行の前で、割れた酒瓶が地面に散乱していた。ケルトは木箱に腰掛け、俯いたまま黙り込んでいた。その背中からは、酒場で見せていた強硬な拒絶ではなく、深い逡巡と後悔が滲んでいた。エルマは、彼が他人を信じない理由を、ようやく理解し始めていた。

特別昇級試験への参加表明
沈黙の末、ケルトは「特別昇級試験」という言葉を口にし、自らパーティーに加えてほしいと申し出た。その申し出は唐突でありながらも、迷いを振り切った決断として描かれていた。エルマは即答せず、その真意を確かめようとする。

過去の事件と不信の根
ケルトは、かつて起きた殺人事件について語り始める。犯人が冒険者であることは周囲に知れ渡っていたにもかかわらず、ギルドや衛兵は積極的に動かず、事件は事実上放置された。証拠がダンジョン内にあり、面倒を嫌った対応であったことが、ケルトの中に「冒険者も組織も信用できない」という確信を刻み込んでいた。

試験と因縁の結び付き
ケルトは、その因縁の人物が今回の特別昇級試験と無関係とは思えないと断じた。各地から冒険者が集められている状況自体が不自然であり、過去にパーティー強盗を起こした人間が姿を現す場として、これ以上ない条件だと見抜いていた。

復讐心の露出
語るうちに、ケルトの感情は抑えきれず噴き出す。もし相手が現れたなら、自分の手で捕らえ、すべてを白状させ、首を取るとまで言い切った。その激しい言葉に、エルマ、ルーチェ、メアベルは言葉を失い、場の空気は一気に張り詰める。

不穏な同行の決定
こうしてケルトは、私怨と覚悟を抱えたまま特別昇級試験への参加を決めた。彼の加入は戦力としては心強いが、その動機はあまりに危うく、試験そのものが単なる昇級の場では終わらないことを強く予感させて、場面は締めくくられる。

特別昇級試験への準備と訪問
エルマはルーチェ、ケルト、メアベルと四人で、ハウルロッド侯爵家の特別昇級試験を受ける段取りを整えた。申請が通ったのち、試験準備のためカリスの錬金工房〈小人の竈〉を訪れ、事前に依頼していた錬金アイテムの受け取りを目的に動いた。

カリスの忠告と軽口の応酬
カリスは特別昇級試験の話を聞くと呆れ、エルマの実家が良い顔をしない可能性や、大討伐で身内と鉢合わせする危うさを指摘した。エルマは実家側との接触機会は少ないと理屈を述べたが、カリスは「追い出された人間が悪目立ちすべきではない」と釘を刺した。ルーチェはカリスの過去の派手な立ち回りを引き合いに出して擁護し、場は言い合い混じりの騒がしさを帯びた。

回復手段の確保と〈ラーナの活力酒〉
エルマは、試験がラコリナの外で一日がかりになる見込みを踏まえ、回復アイテムの確保を優先した。カリスは薄水色の液体に肉片が浮くポーションを並べ、〈ラーナの活力酒〉(市場価値二百万ゴルド)として提示した。これは一定時間HP・MPの自動回復速度を上げる品であり、戦闘中回復がスキル中心となる事情の中で、移動時間の回復効率を底上げする狙いがあった。

〈ヘルメスの幸運薬〉の受領と保険の意義
続けてカリスは、天使の装飾が施された瓶の〈ヘルメスの幸運薬〉(市場価値七千万ゴルド)を出し、ルーチェに託した。これは遺失文明のコインを用いた霊薬で、幸運力を大幅に上げる効果を持つ品であった。エルマは切り札としてルーチェが保管し、窮地の判断で使用するよう依頼した。ルーチェは「使った瞬間赤字」と動揺したが、命の保険としての価値を説かれ、最終的に受け取って決意を固めた。

ステータス確認とスキルポイントの温存
準備が整ったところでエルマは自身のステータスを確認し、クラス重騎士・レベル38である現状を把握した。スキルポイントが10残っており、攻撃寄りの〈燻り狂う牙〉系統と、防御の要となる〈重鎧の誓い〉系統のどちらへ進めるかが選択肢となった。いずれも癖や過剰性能の側面があり、想定外の強敵に備えて、必要が明確になるまで振り分けを保留する判断を取った。

ケルトへの懸念と取り決め
ルーチェは、ケルトがダーレンの話題で普段と違う様子を見せていた点を気にかけ、試験中の不安を口にした。エルマは、ケルトと「試験に意欲的に取り組むこと」「一方的にダーレンを襲撃しないこと」「条件が守られる限り、衝突時は加勢すること」という取り決めを結んでいた。ダーレンは状況的に黒に見えても公的には犯罪者ではなく、先制攻撃はケルト自身を犯罪者にしかねないため、対話で罪を認めさせ投降を促し、相手が攻撃に出た場合に戦う名目を得る方針が確認された。

拭えない違和感
エルマはケルトの怒りに理解を示しつつも、ダーレンを語る際のケルトに引っ掛かりを覚えていた。ルーチェの問いかけで我に返り、思考をいったん切り替えたが、試験が穏便に終わる保証は薄いままであった。

133話

特別昇級試験当日の移動
特別昇級試験当日、エルマ、ルーチェ、ケルト、メアベルの四人は、ハウルロッド侯爵家が手配した馬車に同乗し、侯爵領の僻地へ向かっていた。車内では互いに向かい合って腰掛け、移動の最中も緊張と雑談が入り混じった空気が漂っている。

〈選定の森〉の外観と性質
馬車の窓から、厚い壁と巨大な門に囲まれた森が姿を現す。そこが試験会場である〈選定の森〉であった。森の周囲は侯爵家の兵によって厳重に警備され、魔物が外へ出ないよう管理されている。貴族の訓練場として使われる場所であり、一般冒険者が立ち入る機会はほとんどない。

メアベルの打算と場の和み
メアベルは、準A級に昇格できればレイドで面倒な冒険者に絡まれにくくなると語り、今回の試験参加に現実的な価値を見出していた。その発言には、過去に問題を起こしたケルトへの軽い当て擦りも含まれており、エルマとルーチェはそれを察して苦笑する。

沈黙するケルトと違和感
一方、ケルトは会話に加わらず、肘をついて窓の外を見つめ続けていた。メアベルに不機嫌さを指摘されても応じず、やがてエルマに対して、唐突にカロスの過去について問いかける。

ダーレンと教団への疑念
ケルトは、かつて強盗殺人の疑惑を持たれたダーレンが、教団に取り込まれた可能性を示唆する。罪が表沙汰になった人間が、貴族主導の大討伐に顔を出すのは不自然であり、今回の討伐自体が教団調査を兼ねているなら、刺客が紛れ込んでいてもおかしくないと主張した。感情は次第に高ぶり、語気も荒くなる。

エルマの冷静な指摘
エルマはケルトの推理に一定の理解を示しつつも、「ダーレンを見た」という情報そのものが見間違いである可能性を指摘する。実際、その後の目撃情報は全て裏取りできておらず、その仮説の方が現実的だと諭した。

役割を果たすという決意
ケルトはその指摘を受け入れ、自身も最も可能性が高いのは見間違いだと理解していると認める。そして感情を抑え、「試験では自分の役割をきっちり果たす」と宣言し、ひとまず場は落ち着きを取り戻した。

特別昇級試験の開始宣言
〈選定の森〉の門前に集められた冒険者たちを前に、試験監督役が特別昇級試験の趣旨を告げる。本試験は例外中の例外であり、本来は長い実績と審査を要するA級への道を、特例として一気に跳躍できる機会であると強調される。ただし、それは甘い話ではなく、実力不足の者は命を落とす可能性があると明言され、怖気づいた者は今から立ち去るよう警告がなされる。

試験内容の提示と緊張の広がり
試験は〈選定の森〉内部で行われ、条件は二つ示される。一つ目は、各パーティーに配布された地図に従って森の最奥にある石碑へ到達し、そこに置かれた侯爵家の紋章入りの飾盾を持ち帰ること。二つ目は、Lv75以上の魔物を討伐し、その魔石を保持することである。Lv75という数字が示された瞬間、冒険者たちの間に動揺と不満が広がり、死者が出かねない危険な試験であることが改めて浮き彫りになる。

参加者たちの反応と力量の差
周囲では条件の厳しさに声を荒げる者もいれば、冷静に受け止める者もいる。エルマたちの一行は、この条件が容易ではないことを理解しつつも、これまでの戦いを踏まえれば不可能ではないと認識している様子を見せる。一方で、森の構造や合流ポイント、監視役の存在を意識する発言もあり、単純な力比べでは終わらない試験であることが示唆される。

不穏な冒険者ラザルの存在
移動を開始する直前、周囲の冒険者の中に不穏な雰囲気を漂わせる一団が描かれる。その中心人物は、外部の都市を拠点とする冒険者ラザルであり、素行の悪さと黒い噂で知られる存在であることが示される。実力は確かだが問題行動が多く、昇級できずにいる人物であり、今回の試験を好機と見ている様子が暗に伝えられる。

試験開始と探索への移行
門が開かれ、冒険者たちはそれぞれ地図を手に〈選定の森〉へと踏み込んでいく。参加者は一斉に散開し、集団行動は自然と崩れていく形となる。エルマたちも地図に従い行動を開始するが、人の多さと分散行動のため、特定の人物を探し出すことは困難な状況であることが示される。

切り替えと覚悟
探索の途中、ケルトは目当ての人物を見つけられなかったことに内心の落胆をにじませる。しかし、試験が始まった以上、目的は切り替えるべきだと自らを納得させ、役割を果たす覚悟を口にする。その言葉には軽さを装いながらも、緊張と警戒を抱えたまま前へ進もうとする意志が感じられ、特別昇級試験の本番が本格的に動き出したことを印象づけて物語は締めくくられる。

134話

試験開始と分散行動
特別昇級試験の開始が宣言され、門が開かれる。参加者たちは一斉に〈選定の森〉へ突入し、各パーティーは配布された地図に従って、それぞれのゴール地点である石碑を目指して散開していく。試験開始直後から、集団行動は自然に崩れ、森の中には多数の冒険者が分断された形で進入していく状況となる。

ゴール地点の共有と狙いの整理
エルマたちの一行は、全参加者が最終的に石碑へ向かうという条件を再確認する。ゴールで待てば、ダーレンが参加していた場合に接触できる可能性があるという判断である。ただし、無暗に森の中で他の冒険者と接触するのは危険であり、目的はあくまで効率よく試験を終えることだと意識が共有される。

監督役の正体と情報入手の可能性
会話の中で、今回の試験監督役が顔見知りであることが明かされる。監督役はラコリナ冒険者ギルドのギルド長であり、試験後に事情を説明すれば、ダーレンが参加しているかどうか程度の情報は聞き出せる可能性があると示唆される。この発言に対し、ケルトはエルマの人脈の広さに率直な驚きを見せる。

時間制限と不確定要素への警戒
一行は、急ぐ必要性を再確認する。仮にダーレンが試験に参加していたとしても、目的を果たせば即座にラコリナを離れる可能性が高く、発見が遅れれば意味がない。また、飾盾の数がパーティー分用意されている保証はなく、Lv75以上の魔物が森に何体存在するかも不明であるため、試験は早い者勝ちの様相を帯びている。

スピード重視の方針決定
不確定要素の多さを踏まえ、ケルトはスピード勝負で一気に終わらせる方針を口にする。Lv75以上の魔物討伐という条件もあるが、エルマがいれば問題にならないという認識が共有され、試験を短期決着で終わらせる覚悟が固まる。こうして一行は、無駄な衝突を避けつつ、最短で条件達成を目指して行動を開始する。

試験エリアへの進入と進路の確認
一行は試験開始後、森の内部でも複数のエリアに分岐していることを確認していた。地図を見ながら現在地と進行ルートを把握し、他の参加者もそれぞれ別方向へ散っている様子が描かれる。彼らは自分たちのルート上に、鉱山を含む危険地帯があることを認識した上で前進を選択した。

コボルト銅鉱エリアへの到達
進行の途中で、洞窟状の鉱山地帯に到達する。ここが「コボルト銅鉱エリア」であることが明示され、魔物の出現を警戒しながら内部へ踏み込む。空間は狭く、遮蔽物も多いため、集団戦になりやすい地形であった。

コボルトとの交戦開始
コボルトが出現し、戦闘が始まる。前衛に立ったエルマが攻撃を引き受け、仲間が後方から対応する形を取る。コボルトの攻撃は単調で、石の棍棒による近接攻撃が中心であることが描写から読み取れる。

エルマの戦闘対応と余裕
エルマはコボルトの攻撃を正面から受け止め、動きを見切って対処していく。その立ち回りは安定しており、仲間からは「慣れている」「危なげがない」と受け取られる。戦況は終始エルマ側が主導していた。

疾風殴への対応と無防備な構え
最後の一体となったコボルトがスキル「疾風殴」を使用し、突進してくる。エルマはあえて防御姿勢を取らず、無防備に見える態勢で攻撃を受けようとする。その様子に仲間が動揺し、危険を訴える場面が描かれる。

城壁返しの発動と決着
コボルトの攻撃が直撃した瞬間、エルマの鎧が反応し、「城壁返し」が発動する。攻撃は無効化され、反動でコボルトは吹き飛ばされ撃破される。戦闘は一瞬で決着し、仲間たちは何が起きたのか理解できず呆然とする。エルマ自身は淡々と状況を受け止め、条件が揃った結果だと示唆する形で場面は締めくくられる。

スライム大水道エリアでの進行と戦闘

一行は地図に従って森を抜け、〈スライム大水道〉エリアへと進入した。道中で遭遇する魔物はいずれも【W:55】以下であり、特別昇級試験の条件である【W:75】以上には達していなかった。数を狩っても昇級条件を満たせない状況が続き、効率の悪さが意識される展開であった。

ウォースライムの強襲

移動中、一行は真紅の巨大スライムによる奇襲を受けた。魔物は人型の上半身を思わせる輪郭を持つ〈ウォースライム〉であり、押し潰しを主体とした近接攻撃を得意とする個体であった。素早さは低いものの、HPと攻撃力に優れる典型的な耐久型魔物である。

ルーチェの迎撃と瞬殺

エルマの盾を足場に跳躍したルーチェは、迫り来る腕を軽々と回避し、空中から背後へと回り込んだ。着地と同時に〈竜殺突き〉を叩き込み、〈奈落の凶刃〉のエフェクトと共にウォースライムの身体を内部から破裂させた。粘液が雨のように降り注ぎ、戦闘は一瞬で終結した。

昇級条件への焦り

ルーチェは魔物の討伐結果に満足する様子もなく、【W:75】以上の魔物が現れない現状を憂慮した。HPが高いだけの魔物では彼女にクリティカルを強いることすらできず、昇級条件を満たすには不十分であることが改めて示された。

実力評価とパーティーの認識

一連の戦闘を見届けたメアベルは、エルマとルーチェの戦闘能力が名目上のランクを大きく超えており、実質的にはA級相当であると率直に評価した。一方で、条件達成のためにはより強力な魔物との遭遇が不可欠であるという現実も、パーティー全体で共有されることとなった。

135話

森の奥への進行
一行は森の中を順調に進み、石碑があるとされる目的地へ向かっている。戦闘や消耗はほとんどなく、回復役であるメアベルのMPやポーションにも余裕がある状態である。緊張感は薄いが、淡々とした行軍が続いていることが描写される。

忘却の寺院エリアへの到達
一行は朽ちた石柱と建造物が残る「忘却の寺院エリア」に足を踏み入れる。石造りの遺構が広がる一方で、周囲の森は静まり返っており、不自然なほど魔物の気配がないことが共有される。Lv75以上の魔物が出現する条件を満たすべき場所にもかかわらず、狩れる対象が見当たらない点が問題として浮上する。

幸運薬を巡るやり取り
ルーチェは例の薬、幸運を引き寄せるポーションの使用を提案するが、エルマはそれを保険として温存すべきだと判断する。ここでは、軽い掛け合いとともに、エルマが無闇にリスクを取らない思考を持っていることが示される。

黒ずんだ蜥蜴の死骸の発見
ケルトが黒く干からびた蜥蜴の死骸を拾い上げる。魔物ではなく、ただの小動物であるにもかかわらず、異常な死に方をしている点が強調される。周囲に戦闘痕や破壊の跡はなく、生命だけが選択的に失われているかのような状況が不気味さを増す。

第六感の異変と違和感の共有
ケルトは自身の〈第六感〉が強く反応していることを明かし、腕に蕁麻疹が出ていることを示す。過去に同じ感覚を覚えた際、酷い目に遭った経験があるとも語られ、場の空気が一気に引き締まる。森の暗さだけでは説明できない異常事態であることが示唆される。

ゲーム世界とのズレの自覚
エルマは、この世界がかつてのゲームとは異なり、スキルや能力が拡大解釈された形で現実に影響している可能性を考える。幸運や第六感といった要素が、想定外の現象を引き起こしているという認識が語られる。

祟り神という仮説の浮上
黒ずんだ死骸と異様な静けさを前に、エルマは「祟り神」という存在の可能性に思い至る。その言葉が口に出された瞬間で場面は切れ、得体の知れない存在が近くにいるのではないかという不安を残して章が締められる。

祟り神アナクの猛攻と戦線崩壊寸前
祟り神アナクの大鎌による連撃が続き、エルマは〈マジックガード〉で受けながらも押し切られ、完全に防ぎ切れない状況に陥る。衝撃で弾き飛ばされ、レベル差による不利が視覚的にも明確になる。

敵データの可視化と絶望的数値
アナクのステータスが表示され、Lv92という異常な数値が示される。〈忘却の寺院〉における裏ボス的存在であり、初見殺しの性質を持つ魔物であることが明示され、場の緊張が一気に跳ね上がる。

聖属性魔石による挑発行動
エルマは高価な聖属性の魔石を投擲する。ダメージ目的ではなく、弱点属性によってアナクの注意を自分へ引き付ける狙いであった。実際にアナクは魔石を弾き飛ばし、エルマへと攻撃を集中させる。

逃走案の否定と戦闘継続の判断
ケルトは撤退を叫ぶが、エルマは即座に否定する。アナクは〈神隠れ〉による瞬間接近能力を持ち、逃走は成立しないこと、さらに石碑付近である以上、他の冒険者を危険に晒すことを理由として挙げる。

囮役の固定と前線維持
エルマは完全に囮役を引き受け、アナクの攻撃を自身に集中させる。ケルトとメアベルは離脱し態勢を立て直し、ルーチェも反撃の機会を窺う構図が固まる。

ルーチェの攻撃機会と制止
背後ががら空きとなり、ルーチェが一気に攻撃を叩き込める状況が生まれる。周囲も好機と判断するが、エルマは即座に「攻撃するな」と強く制止する。

不可解な指示と緊張の固定
理由を告げないままの制止に、ルーチェは動揺し、仲間も困惑する。明らかに攻め時であるにもかかわらず、攻撃が封じられたことで、戦闘は膠着状態へと突入する。

決定的な認識での締め
エルマは、この戦いにおいて「ルーチェは攻撃できない」と断言する。その意味が明かされぬまま、祟り神アナクとの死闘は次の局面へ持ち越され、第135話は幕を閉じる。

重騎士 14巻
重騎士 まとめ
重騎士 16巻

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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