物語の概要
ジャンルおよび内容
本作は、ゲーム的知識を携えて異世界に転生した重騎士が、前世で培った“攻略データ”を武器に活躍する異世界転生/ファンタジーコミックである。主人公である重騎士が、弱者と見なされた職業ながらも「圧倒的強者」へと変貌を遂げていく物語である。第14巻では、B級クラン〈魔銀の笛〉との共闘依頼〈交易路の間引き〉に挑み、無限湧きする虫・存在進化体〈ルストクイーン〉との激戦に突入する。
主要キャラクター
- エルマ・エドヴァン:本作の主人公。剣聖の血筋に生まれながら「重騎士」というハズレクラスを発現し追放されたが、前世のゲーム知識を活かして最強を目指す。第14巻では即席パーティを率いて総力戦に臨む。
- ルーチェ・ルービス:エルマのパーティ仲間で、道化師クラスを担当する少女。エルマとともにB級クランとの共闘に参加し、成長を重ねている。
物語の特徴
本作の魅力は、「ゲーム知識」を異世界のリアルな戦場に応用するというメタ的なコンセプトにある。職業・スキル・装備・クランの関係といったRPG的要素が、異世界という舞台で活き活きと描かれている。第14巻では「即席パーティ」「共闘」「無限湧きモンスター」といったスケールの大きい戦闘構成が展開されており、読者にとって“手応えある攻略”“練られた戦略”を感じさせる体験となっている。
他作品との差別化要素として、「追放された重騎士がゲーム知識で立ち上がる」「パーティ編成・クラン協力・即席戦術の描写」「弱職・地味職からの無双」という逆転構造が挙げられる。また、アニメ化決定・累計300万部突破といった商業的な話題性も、注目すべき点である。
書籍情報
追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(14)
著者:武六甲理衣 氏
原作:猫子 氏
イラスト:じゃいあん 氏
出版社:講談社
レーベル:ヤンマガKCスペシャル
連載:ヤンマガWeb
発売日:2025年6月6日
ISBN:9784065399408
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あらすじ・内容
B級クランとの共闘! 無限沸きする敵を倒せ!! 覇権作品堂々漫画化第14巻!!
B級クラン〈魔銀の笛〉とともに大規模依頼〈交易路の間引き〉に挑戦するエルマとルーチェ。
ボーナスモンスターを追う2人の前に、配下の虫を無限に産み出す存在進化体〈ルストクイーン〉が立ちはだかる。
エルマの知識にもない強敵に対し、即席パーティで総力戦を仕掛ける!!
感想
今巻も期待を裏切らない面白さであった。特に踊り子アイネの名セリフ──「あのパワハラビルドエラー野郎! 一人で逃げやがったわね!」──が痛快だった。
混乱する前線と“外科的”介入
〈魔銀の笛〉は《パニッカ》で統制を失い、指揮官フラングは面子優先で混迷を拡大。ここでエルマとルーチェが“即席司令部”として介入し、誘導・拘束・必殺の三拍子で《天運のスカラベ》を沈める。連携は端的で、盾射出→位置取り→挟撃の導線が美しい。討伐後の〈ヘルメスのコイン〉確保とレベルアップは、実利とカタルシスを同時に満たす良い節目であった。
想定外の乱入者と“女王戦”開幕
無尽蔵に湧く幼体、馬車粉砕、そして存在進化体〈ルストクイーン〉の顕現。「遭遇したら逃げ推奨」級を、エルマは“分析→仮説→即応”で受け止めるが、護衛量産&《狂化の共鳴》により前線は摩耗。広域ブレス《悪疫の暴風》の初見殺しも含め、序盤は徹頭徹尾“女王ペース”。ここでのエルマは、無茶ではなく“必要最小限の無茶”を選ぶのがゲーマーの鑑である。
指揮の崩壊と痛罵の名台詞
最悪は内側から来る。フラングの逃走で士気は崩壊し、ここでアイネの“喝”が飛ぶ。「あのパワハラビルドエラー野郎!」は怒りと現実認識の同時提示で、フラングへの溜飲を下げつつ戦線を繋ぎ直すトリガーとなった。支援曲《慈悲の静夜曲》で全体を立て直し、「まず生き残る」を共通目標に再収束していく過程が良い。
虚勢を含む統率と反攻の設計
エルマは“知っている体”で戦術基盤を提示し、ターゲット集中特性を逆手に取る総攻勢へ移行。ここで指揮権がエルマに一本化され、MP温存を切り捨てた短期決戦プランに切り替わる。戦況の“読み替え”と“意思統一”が噛み合い、ようやく盤面がエルマ側に傾き始める。
HP管理の極致と挟撃フィニッシュ
《ライフシールド》で生存線を維持しつつ、意図的にHPを割って《死線の暴竜》を起動──「ただのHP管理だ」の一言が痺れる。
ブレス潰しの《シールドバッシュ》→不惜身命から、背後のルーチェ《竜殺突き》が決めてエルマの斬撃で決める“暴竜と死神の挟撃”。
戦術・見せ場・台詞、三点が綺麗に収束したシーンであった。
戦後処理と次巻の火種
約4億弱のドロップという“勝ちすぎた報酬”が、逆に火種になる怖さを提示。
だがアイネは恩義を忘れず、配分で揉めずに合意。
ここでエルマは銀面卿への接触を打診し、エバンズの案内で“地下の紋章の扉”へ──対面の直前で幕。銀面卿の統治思想と人心掌握が、フラングの対極としてどう描かれるかが次巻の肝となる。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
エルマ
冷静な戦術眼を持つ重騎士であり、現場指揮と盾役を両立する存在である。〈魔銀の笛〉と利害が交錯する中で実務的な協調を選ぶ調停者でもある。
・所属組織、地位や役職
所属不明の実力者。戦場では実質的な指揮を担う。
・物語内での具体的な行動や成果
《シールドバッシュ》《影踏み》《マジックガード》《プロテクト》《ライフシールド》を用い、天運のスカラベ討伐を主導した。ルストクイーン戦でブレスを看破し封じ、最終撃破を達成した。総額約3億9460万Gのドロップ回収をまとめた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
〈魔銀の笛〉から実力と指揮能力を認められ、戦闘中に主導権の委譲を受けた。銀面卿との面会交渉の糸口を得た。
ルーチェ
高機動と一点突破に秀でた道化の戦士であり、連携の要として働く相棒である。
・所属組織、地位や役職
エルマの同行者。前衛支援と決定打担当。
・物語内での具体的な行動や成果
《竜殺突き》《ドッペル・イリュージョン》で敵注意を引き、スカラベに致命打を与えた。ルストクイーン戦で連携の一撃を叩き込み討伐に寄与した。レベル79に到達した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
〈魔銀の笛〉前衛から信頼を獲得した。高額ドロップ回収に貢献した。
フラング
〈魔銀の笛〉の現場指揮者だが、功名心が強く判断が粗い人物である。
・所属組織、地位や役職
クラン〈魔銀の笛〉幹部。レイドリーダー。
・物語内での具体的な行動や成果
混乱下で無謀な突撃命令を連発し、配分を巡ってエルマらを恫喝した。ルストクイーン戦で離脱命令とともに真っ先に撤退した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
現場の信頼を失墜させた。クラン内不正の暴露を示唆される立場となった。
アイネ
〈魔銀の笛〉の踊り子であり、回復と統率の両面を担う実務家である。
・所属組織、地位や役職
クラン〈魔銀の笛〉。支援職。
・物語内での具体的な行動や成果
〈慈悲の静夜曲〉で全体回復と状態異常短縮を実行した。フラング離脱後に指揮権をエルマへ委譲し再編を主導した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
実質的な意思決定者として評価を高めた。銀面卿への取次ぎを検討した。
エバンズ
礼節を重んじる〈魔銀の笛〉の使者であり、連絡役として動く人物である。
・所属組織、地位や役職
クラン〈魔銀の笛〉。渉外担当。
・物語内での具体的な行動や成果
エルマとルーチェへ銀面卿からの謝意と招待を伝達した。地下経路へ案内した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
恩人に対する礼節ある対応でクランの面目を保った。
銀面卿
〈魔銀の笛〉の背後にいる首脳であり、表舞台を避ける人嫌いとして語られる人物である。
・所属組織、地位や役職
クラン〈魔銀の笛〉の実権者。錬金術師との関係が示唆される。
・物語内での具体的な行動や成果
直接行動は未描写であるが、恩人への面会を指示した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
希少素材の取引先として交渉価値を持つ存在と見なされた。
展開まとめ
118話
スカラベの混乱魔法による崩壊
〈魔銀の笛〉の前衛たちは、天運のスカラベが放つ混乱魔法《パニッカ》の影響で統制を失っていた。ヒーラーは前線への回復魔法《ヒール》を放つが、混乱状態の仲間が乱れ、回復が追い付かない状況に陥った。スカラベはその隙を狙って追撃を加え、戦線は混迷を深めていった。
フラングの暴走と隊の混乱
部下から「回復が追い付かない」と報告を受けたフラングは、苛立ちを露わにして「混乱している者は下がれ」と怒鳴った。しかし、命令を受けた隊員は孤立を恐れ、さらに動揺した。踊り子が距離を取って戦況の立て直しを進言するも、フラングはそれを拒否し、全責任を彼女に押し付けた。彼は「自分の面子が潰れる」と発言し、撤退よりも名誉維持を優先していた。
無謀な指揮と戦果への執着
フラングはなおも強硬姿勢を崩さず、「なんとしても戦果を上げる」と命令を出した。魔虫銀が得られない場合はレアドロップを狙えとし、「とにかくスカラベを叩け」と隊を再び前線に突き出した。彼の発言には、仲間の安全よりも上層部への成果報告と派閥内での地位向上を優先する意図が見えていた。
エルマの静観と危惧
戦況を遠巻きに観察していたエルマは、〈魔銀の笛〉の無秩序な動きを見て「このままでは死人が出る」と冷静に判断した。彼はフラングの指揮が理性を欠いたものであると察し、事態の悪化を予見していた。戦場は混乱の極みに達し、スカラベの脅威と無能な指揮官の判断が、さらなる惨事を招こうとしていた。
エルマの指示と作戦開始
エルマはルーチェに対し、スカラベの注意を引きつけるよう指示した。攻撃には出ず、混乱魔法《パニッカ》だけは回避するよう念を押した。ルーチェは即座に応じ、エルマの盾を踏み台にして高く跳躍し、戦場へと突入した。
一方、フラングは指揮を続け、「誰でもいいからスカラベを仕留めろ」と命令するが、エルマがそれを遮り「俺たちに任せろ」と宣言。盾の衝撃技《シールドバッシュ》でルーチェを射出し、敵の前線へ送り込んだ。
連携の構築と戦場の再掌握
ルーチェは混乱状態の仲間の前に着地し、敵オレアントの注意を自らに向けることで戦線を立て直した。エルマはその隙に位置取りを完了し、「俺の対面に立ってくれ」と指示を飛ばす。ルーチェは応じて移動し、エルマとの挟撃体勢を形成した。
彼女は敵の速度を懸念したが、エルマは「天運のスカラベは素早いが動きは単調」と冷静に分析。障害物にぶつかれば直進方向を反転させる性質を利用して、迎撃の角度を計算していた。
計算通りの迎撃と反撃の始動
スカラベが再び《パニッカ》を放つが、エルマはそれを予測して回避。「無論、それもな」と言い放ち、盾の一撃《シールドバッシュ》でスカラベを叩きつけて軌道を誘導した。続けて《影踏み》を発動し、敵の動きを拘束。
スカラベの飛行速度が低下した瞬間、ルーチェは「この速度なら当てられます」と確信し、全身を躍動させて《竜殺突き》を放つ。黒いエネルギーが迸り、スカラベの胴体を貫いた。
勝利の一撃と周囲の驚愕
ルーチェの渾身の突きが命中し、スカラベは光の中で粉砕された。これを見たフラングら〈魔銀の笛〉の面々は一様に驚愕し、絶叫する。エルマは静かに笑みを浮かべ、ルーチェは誇らしげに構えを解いた。
二人の連携による天運のスカラベ討伐は成功し、混乱していた戦況はようやく収束へと向かうのだった。
119話
討伐の成果とレベルアップ
天運のスカラベを撃破した結果、ルーチェはレベル79へ、エルマはレベル82へと成長した。討伐後、地面に転がったドロップアイテム〈ヘルメスのコイン〉を発見する。攻撃力+7、市場価値5500万Gという高額装備であり、エルマは「これ1枚で元を取れたも同然だ」と内心で喜んだ。
安堵と称賛の言葉
ルーチェが笑顔で「やりましたよ、エルマさん!」と報告すると、エルマは「さすがルーチェだ」と応じた。戦闘を終えた彼は「死人も出ずに済んだ」と胸を撫で下ろし、無事に任務を終えられたことに安堵していた。
フラングの激怒と対立の兆し
〈魔銀の笛〉の部下たちは安堵の表情を浮かべ、「虫を仕留めたのか」「よかった、一時はどうなることかと」と口々に語った。しかし、フラングだけは怒りを露わにし、「小娘が手柄を横取りしやがったな」と壁を殴りつけ激昂した。その様子をエルマは冷静な目で観察し、内心で警戒を強めていた。
連携による援護戦闘
その後、オレアントの残党と戦うフラング隊をルーチェが援護に入る。彼女は《竜殺突き》を放ち、敵を貫いて戦線を助けた。同時にエルマも《影踏み》を発動し、別の敵の動きを封じて撃退を支援した。
部下との信頼の芽生え
救援を受けたフラング隊の前衛は笑顔で「ナイスタンクです、エルマさん!」と親指を立て、エルマも笑みで応えた。こうして〈魔銀の笛〉の隊員たちとの信頼が芽生え、戦場に一時の連帯感が生まれていた。
戦闘の終息と収穫の確認
戦闘が終息し、エルマは「大分片付いてきたな」と戦場を見渡した。ルーチェも同意し、戦場の静けさを確認した。彼は今回の成果が過去最高額であることを報告し、ドロップアイテムの合計額は2億3250万Gに達していた。ルーチェは金額の規模を理解できず呆然としていたが、エルマは冷静に「ほとんどは鍛冶工程で消えるが、狩りやすい魔物だったのは幸いだ」と総括した。
フラングの敵意と剣の突き付け
そこへフラングの部下が残敵掃討を呼びかけるが、直後にフラング本人が現れ、エルマたちの背後に剣を突き付けた。彼は「何を馴染んでやがる」と怒号し、「どいつの差し金だ?銀面卿の奴か?」と詰問する。エルマは内心で「銀面卿……?」と反応し、彼が〈魔銀の笛〉を裏から操る人物であることを思い出した。
フラングの要求と駆け引き
エルマは「ギルドのルールに従って報酬を得ただけだ」と答えるが、フラングは「シラを切るか」と吐き捨て、「魔虫銀の鉱石塊三つとヘルメスのコインを渡せ。それが穏便に街へ帰る唯一の方法だ」と脅迫した。エルマは内心で、これが派閥争いに起因するものであり、フラングが体面を保とうとしていると分析し、むしろ錬金術師の情報を引き出す好機と見た。
交渉と対立の激化
エルマは「条件次第で鉱石塊を二つ譲ってもいい。それが最大譲歩だ」と提案したが、フラングは「偉そうに。条件を出す立場か」と一蹴し、「スカラベに先にダメージを与えたのはうちのアイネだ」と主張した。だがアイネ自身は、自分の攻撃が一切効いていなかったことを思い出し、表情を曇らせた。フラングは苛立ちを募らせ、「やっぱりお前ら、今死ぬか?」と抜刀した。
決闘の提案と不穏な気配
エルマは冷静に「どうしてもと言うなら決闘を受けてやってもいい」と返し、交渉を継続しようとする。だがフラングは怒りを抑えきれず、剣を構えたまま対峙した。エルマは「他のクランに顔が立たないんだろう」と見抜き、「鉱石塊を二つ譲る代わりに俺の頼みを聞け」と持ちかけるが、その直後、戦場に異形の影が現れる。
未知の魔物ルストベビーの出現
突如、地中から新たな魔物が姿を現した。部下たちは「どこから現れやがった!?」と叫び、ルーチェも驚愕する。エルマはステータスを確認し、その魔物が「ルストベビー(Lv57)」という未知の存在であることを知る。エルマは即座に異常を察知し、「フラング、何かがおかしい」と警告するが、フラングは理解せず「はあ?」と不機嫌に返した。新たな脅威の出現によって、交渉は突如中断され、緊張が再び戦場を支配した。
突発事態の発生とレイド中止の宣言
エルマは異常を察知し、緊迫した表情で「レイドは中止だ!」と叫んだ。さらに「感知スキルを持つ者は今すぐ周囲を確認してくれ!」と命じる。即座にフラングの部下の一人が「俺が持っている」と応じ、エルマは「頼む!」と指示を送った。
フラングの反発と部下の行動
フラングは「ふざけるな、こいつの話など聞く必要はない!」と怒鳴り、エルマの指揮を妨害しようとする。しかし、部下は命令を無視して感知魔法《サーチ》を発動した。フラングは激昂しながらも制止できず、緊張が戦場を支配した。
恐るべき発見と戦慄
《サーチ》の結果、部下の視界には信じがたい数の魔物が映し出された。地中と天井の両方から無数の影が動き出し、彼は絶望の声で「嘘だろ……なんだこの数……」と呟いた。戦場全体を包囲するように群がる魔物の群れが迫り、第119話はその不穏な光景で幕を閉じた。
120話
地中からの異変と未知の魔物
感知スキルを使ったフラングの部下が「地面の下に魔物の群れがいる」と報告する。直後に無数の魔物が地中から現れ、戦闘が始まった。部下たちは次々と魔物を倒していくが、エルマはその姿に違和感を覚え、「あの魔物は知らない。だが存在進化体とも思えない」と分析していた。
増殖する群れと襲撃の予兆
倒しても倒しても湧き続ける魔物の数に、兵たちは「なんだよこの数!」と悲鳴を上げる。エルマは「俺たちが疲弊したタイミングを狙っていたのか」と状況を察し、焦燥感を募らせた。やがて後方の馬車の方角から悲鳴が上がり、エルマは「まさか馬車の方に……」と振り返る。
馬車破壊とルストクイーン出現
次の瞬間、馬車が地中からの衝撃で真っ二つに裂かれ、瓦礫とともに吹き飛ばされる。仲間たちは言葉を失い、恐怖に凍りつく。その中心から現れたのは異様な巨大魔物――「ルストクイーン」。
表示には「Lv.84/HP666/MP212」と記され、異様な威圧感を放っていた。
存在進化体の脅威
ルーチェは「なんですか、あの不気味な化け物!」と絶叫し、エルマは冷静に「存在進化した魔物のようだ」と推測した。これまでの群れとは明らかに格が異なる強敵の登場により、戦場は一気に緊迫した。
ルストクイーンの正体と脅威の分析
エルマは戦闘中に冷静に状況を分析し、「レベル84、不意打ちで遭遇するには重すぎる相手だ」と判断する。彼はルストクイーンが“デスサイズ”というカマキリ型鉱虫の存在進化体であり、パッチワーク同様に本来は「遭遇したら逃げることを前提とされた魔物」だと見抜いた。ステータス自体は極端に高くないが、配下を量産する特性を持つことが最大の問題であった。
戦闘開始と援護行動
地面から次々と孵化する配下の幼体に対し、エルマは「厄介だな」と呟きながら即座に行動した。馬車の御者が「助けてくれ!」と悲鳴を上げる中、エルマは《影踏み》で援護を試みるが、ルストクイーンには効果がなかった。
その隙にルーチェがナイフを構えて突撃し、女王の体を狙って切りかかる。だがルストクイーンは動じず、反撃としてスキル《狂化の共鳴》を発動。周囲の魔物たちが一斉に活性化し、怒涛の勢いでエルマとルーチェへ殺到した。
乱戦と戦術の見直し
エルマは「ターゲットを集中させるスキルか」と推測しながら迎撃。ルーチェは「キリがありません!隙を見て本体を叩くしか!」と提案するが、エルマは「駄目だ。手数で劣る今、群れの隙を突くのは困難だ」と即座に否定した。内心ではルーチェの弱点――“クリティカルでなければ火力を出せない”点を把握しており、「今は幼体を減らし、行動パターンを見極める」と戦略を切り替えた。
フラング隊の介入と分断
フラングの部下たちが合流し、「馬車を壊しやがった化け物め!」「ギルドの評価が下がる!」と叫びながら援護に加わる。ヒーラーが負傷者を救助する間、エルマは本体撃破に向けて突撃する。後方ではアイネが「フラング様、私たちも助太刀に向かいましょう!」と進言するが、フラングは冷たく「いや……待て、アイネ」と制止。「あの生意気なガキがくたばるまで、もう少し様子を見る」と嘲るように言い放った。
フラングの本性と冷徹な態度
戦場の最前線で命懸けの戦闘を続けるエルマたちを尻目に、フラングは後方で不気味な笑みを浮かべ、「あのガキが潰れるまで見物させてもらおう」と語る。アイネはその発言に困惑しながらも従うしかなかった。
第120話は、エルマが孤立無援のままルストクイーンとの死闘に挑む緊迫した状況で幕を閉じる。
121話
ルストクイーンとの交戦開始
エルマは地面を蹴ってルストクイーンに突撃した。幼体の群れを切り伏せながら接近し、振り下ろされた巨大な爪を剣で受け止める。だが、もう一方の爪が襲いかかり、エルマは即座に盾を構えて《マジックガード》を発動。衝撃を防いだが、「想定以上の攻撃力だ」と内心で警戒を強めた。ルストクイーンの一撃は魔法的干渉を伴う高威力であり、正面からの防御にも限界があった。
フラング陣営の対立と暗黒な企図
一方、後方ではアイネがフラングの態度に動揺していた。
「フラング様、何を言っているのです? レイド中の利敵行為は冒険者証の剝奪処分に繋がります。まして命まで落としたら……」と訴えるが、フラングは冷笑しながら「それを誰が証明する?」と返す。
その発言にアイネは言葉を失う。
フラングの私怨と利欲
フラングは戦場を見つめながら、「あのガキは俺を散々コケにした上に、譲歩してやった和解案まで無下にした。これは当然の報いだ」と吐き捨てる。そして「奴らがくたばれば、魔虫銀もすべて我々のものだ。俺たちの狙っていたレイドに手を出した奴らが悪い」と語り、復讐と利益のために他者を犠牲にする姿勢を明確にした。
従属の強要
それでもなおアイネは「うちのメンバーも余裕がない状態なのに……」とためらうが、フラングは剣を突き付けて怒鳴る。「この俺の命令が聞けんか?」
恐怖と疑念に揺れるアイネの前で、フラングはもはや指揮官ではなく冷酷な支配者のような態度を見せた。
ルストクイーンの異変とブレスの予兆
エルマは戦闘の最中、ルストクイーンの動きに違和感を覚えていた。「本体を引きつける隙がない」と分析しつつも、その挙動が攻撃準備に見えることに気付く。直後に「ブレス攻撃だ、全員下がれ!」と叫び、仲間へ警告した。
悪疫の暴風と被害拡大
ルストクイーンは顎を大きく開き、ブレス《悪疫の暴風》を放つ。毒を含んだ強風が戦場全体を薙ぎ払い、前衛二人は回避しきれず毒状態に陥った。想定以上の範囲に驚くエルマとルーチェ、そして御者を守るヒーラーたちは緊迫した状況に追い詰められた。
フラングの暴言と指揮の崩壊
その様子を遠くから見ていたフラングは苛立ち、「役立たず共め、どこまでも俺の足を引っぱりやがって」と吐き捨てる。アイネが「一刻も早く応援に向かう必要がある」と進言するが、フラングは「わかっている! それを踏まえた上でどう動くか考えているのだ!」と怒鳴りつけ、「女が口答えするな!」と暴言を浴びせた。
毒の影響と反撃の兆し
戦場ではベビーと呼ばれる小型個体の数が半減しており、エルマは「奴らは毒への完全耐性を持たない」と見抜く。そこから相手の次の行動を予測したエルマは、フラングに向かって「下だ!」と警告を発するが遅く、フラングは地中からの奇襲を受け、右肩を貫かれて悲鳴を上げた。
戦線の混乱とルーチェの支援
毒に侵されながらも前衛二人は立ち上がり、ルーチェは即座に魔法《ドッペル・イリュージョン》を発動し、幻影で敵を撹乱する。戦況は依然不利であったが、少なくとも仲間の防御態勢を立て直す時間が稼がれた。
決戦への覚悟
エルマはルストクイーンの動きを見据え、「待てよ、女王……お前の相手は俺だ」と言い放つ。仲間たちを守るため、自ら単独でルストクイーンと対峙する覚悟を固めたところで、第121話は幕を閉じた。
122話
フラングの逆襲と苦戦
地中からの奇襲を受けたフラングは怒りを爆発させ、「鉄屑虫共が!」と叫びながら反撃した。斬撃で数体を仕留めるも、自身の負傷は深く、腕を押さえながら「クソが」と吐き捨てた。戦場全体では敵の数が減らず、前衛が次々に倒れていく。
エルマの戦況分析
エルマは全体を見渡し、「負傷者だらけで陣形はバラバラだ。戦況は好ましくない」と判断した。毒に侵された前衛二人は戦闘不能、ヒーラーと御者も動けず、唯一の支援役ルーチェが撹乱に奔走している。エルマは「彼らが体勢を立て直すことを信じ、自分はルストクイーンを引き付け続けるしかない」と覚悟を固めた。
ルストクイーンの〈産卵〉と脅威の増加
ルストクイーンは突如、スキル〈産卵〉を発動。腹部から無数の卵を吐き出し、新たな魔虫を生み出した。その光景を目にしたエルマは「実際に見ると相違いのないおぞましさだ」と戦慄した。増殖した魔虫を相手に、彼は単独での防衛を強いられる。
エルマの防御と消耗
ルストクイーンの連続攻撃に対し、エルマは盾を構えて応戦するが、攻撃の手数に押される。咄嗟にスキル〈プロテクト〉を発動し、30%のダメージ軽減バリアで防ぐも、残り少ないMPを消費し尽くした。「くそっ、残り少ないMPを使わされた…」と焦燥を隠せなかった。
ルーチェの奮闘と後衛の限界
ルーチェは疲弊しながらも敵の注意を引きつけていたが、体力は限界に近づいていた。「このままだとルーチェが先にバテる」とエルマは懸念する。頼みの綱は後方のフラング達三人組であったが、彼らもすでに消耗戦に突入していた。
フラング隊の危機
後方では、フラングが敵を焼き払いつつもHPが半分以下まで減少していた。アイネは「消耗する一方で相手を削れていない…フラング様、このままでは!」と警告を発する。フラングは険しい表情で剣を握りしめ、限界が近い中でなお戦い続けていた。
撤退命令と混乱
戦況が悪化する中、フラングは「撤退だ」と判断を下す。しかしアイネは「前衛の二人は毒で速度が落ちている。〈ポイズンヒール〉持ちがいない以上、安全に逃げるには虫の数を減らす必要がある」と反論した。フラングは苛立ち、「毒対策をしていないのか!?六人もいて何故誰も覚えていない!」と怒鳴り散らした。
責任転嫁と決裂
アイネは冷静に「銀面卿を出し抜くために、彼の息がかかっていないメンバーを選んだのはフラング様ご自身です」と指摘する。だがフラングは動揺しながらも聞き入れず、アイネは「とにかく私達が強引に前線を上げないと」と仲間を鼓舞しようとした。
フラングの暴走
その直後、フラングはスキル〈フレアブースター〉を発動。全身を炎で包みながら高熱を纏い、単身で離脱行動を開始した。その姿を見たエルマは「まさかアイツが……いや、そんなはずはない」と信じようとしなかった。フラングはクラン内で地位ある人物であり、「この土壇場で逃げ出すような真似だけはしない」と思われていたからである。
逃亡と裏切り
しかしフラングは「レイドリーダー命令だ! 各自、各々逃げるように!」と叫び、真っ先に戦場から離脱した。仲間たちは呆然とし、アイネは「フラング様……嘘でしょ?」と声を失った後、怒りに震えながら「あのパワハラビルドエラー野郎! 一人で逃げやがったわね!」と叫んだ。
崩壊する士気
リーダーの逃亡により隊の士気は崩壊。戦線は維持不能となり、残されたメンバーの間に絶望が広がった。地獄のような戦場に混乱が渦巻く中、「状況は輪を掛けて最悪になっていった」と締めくくられ、第122話は幕を閉じた。
123話
戦況悪化とフラングの逃走
フラングの離脱によって戦況は急激に悪化した。前衛の二人は毒によって動きが鈍り、援護に回ったルーチェも〈竜殺突き〉で応戦しつつも体力の限界に近づいていた。その最中、孵化したルストベイビーが新たに出現し、いくら倒しても終わりが見えない状況にルーチェは焦燥を募らせた。
ルストクイーンの猛攻とエルマの苦戦
ルストクイーンが〈死線の暴竜〉を発動しようとする中、エルマはその詠唱を阻止しようと試みたが、ルストベイビーの不意打ちを受けて負傷した。エルマは劣勢を悟りながらも、「このままでは〈死線の暴竜〉を防ぎ切れない」「長引けば〈悪疫の暴風〉のクールタイムが終わる」と分析し、冷静に打開策を模索した。しかし、脳裏には「敗北」の文字がよぎり、限界が近づいていた。
回復と再起の兆し
絶望が迫る中、アイネが踊り子の回復スキル〈慈悲の静夜曲〉を発動し、仲間全員の傷を癒した。前衛二人はその効果に安堵し、戦線維持が可能となった。
怒りの宣言と戦意の鼓舞
回復を終えたアイネは、仲間を見渡して声を荒らげた。
「あのバカは一人で逃げやがったわ!死にたくなければ全力で戦いなさい!」と叫び、続けて「生きて戻ったら、アイツのクラン不正を暴露してやる!」と宣言した。彼女の檄は戦場の士気を再び奮い立たせ、混乱した戦線に再起の意志をもたらしたのである。
指揮権を巡る対立
アイネの支援により態勢を立て直した直後、エルマは「〈慈悲の静夜曲〉を続けてくれ!」と要請した。だがアイネは「少しでも前衛がいた方がいいでしょう!」と反発する。エルマは「一部の回復スキルには状態異常の持続を短縮する副次効果がある」と説明したが、アイネは「あのバカがいない今、指揮官は私よ!」と一蹴した。
信頼の言葉と判断の転換
このやり取りに、前衛の一人がアイネへ呼びかけた。「アイネの姉御、アイツずっと親玉相手に単騎でタンクをやってました! ブレス攻撃も見抜いて動いてた!」と、エルマの実力を証言する。さらに「フラング様のビルドミスを一目で見抜いてたじゃないですか!」と続け、彼への信頼を示した。
決断と再始動
仲間の言葉にアイネは沈黙し、ため息をついたのち、「確かに……」と認めた。そして再び〈慈悲の静夜曲〉を歌い始める。戦場に響く旋律が再び仲間を包み込み、エルマは心中で「勝機は見えた」と確信を得た。
124話
虚構の情報と統率の回復
エルマは仲間たちに「聞いてくれ!」と声を上げ、ルストクイーンに関する知識があると主張した。彼は「特徴も戦い方も一致している」と断言しつつも、内心では「この話は大嘘だ」と自覚していた。実際には、そのような魔物を見聞きしたことはなかったが、士気を保つための虚勢であった。
アイネの決意と協力の表明
エルマの覚悟を見て、アイネは小さく舌打ちをしながらも「生きて帰らなければ、あのバカに一泡吹かせられないものね」と呟き、リーダーとして決断する。そして、「〈魔銀の笛〉はあなたの指揮に従います!」と全員に呼びかけ、エルマに主導権を委ねた。
指揮による戦術転換
エルマは「虫共は〈狂化の共鳴〉でターゲットを集中させやすくなっている」と分析し、その性質を逆手に取る作戦を立案した。「MP温存はやめだ。全員で一気に仕掛けて数を減らせ!」との指示に、仲間たちは即座に反応。連携攻撃によって戦況は徐々に好転した。
戦況の好転と反撃の号令
エルマは戦いの中で「状況は大分改善された、あとは女王の護衛の隙を突けば」と見極める。そこへルーチェが〈竜殺突き〉で加勢し、「こちらのカバーに来ました!」と報告した。エルマは「よく来てくれた!このまま一気に鋼鉄の女王を討伐するぞ!」と号令をかけ、ルーチェも「はいっ!」と応じて突撃を開始した。
女王への突撃と回避行動
エルマとルーチェは連携してルストクイーンへ突撃した。女王は甲高い咆哮を上げながら大鎌のような腕を振るい、鋭い爪でルーチェを狙う。だがルーチェは軽やかな跳躍で攻撃を回避し、空中から反撃の機会を窺った。
戦況分析と判断
ルーチェの俊敏な動きを見たエルマは、「あの身軽さならクイーンの攻撃を捌くのは難しくない」と判断する。そして「今のうちに護衛を削る」と決意し、クイーンの側近である魔蟲たちと交戦を開始した。
防御魔法と反撃準備
戦闘の中でエルマは敵の一撃を受けて体勢を崩すも、即座に防御スキル〈ライフシールド〉を発動して耐え切る。HPの残量は大きく減少したが、彼の表情は冷静であり、それは次の強化発動のための「HP管理」であった。
死線の暴竜の発動
HPが閾値を下回った瞬間、エルマの体を黒雷のような魔力が包み込む。スキル〈死線の暴竜〉が発動し、攻撃力と速度が100%上昇。剣を構えたエルマは静かに言い放った。「ただのHP管理だ」。戦局は、彼の一撃に委ねられた。
125話
ルストクイーン戦の終盤
ルーチェは羽化した護衛を見て動揺するが、エルマは冷静に「護衛の強引な補充は追い詰められている証拠だ」と分析し、反撃を指示した。二人は一気に決着をつけるべく突撃を開始する。
連携攻撃とブレス阻止
ルーチェの“ダイススラスト”が護衛を貫き、形勢は優位に傾く。だが、ルストクイーンがブレスの構えを取ったため、ルーチェは全員に「悪疫の暴風が来ます!」と警告を発した。エルマはクールタイムを完全に把握しており、ブレスの発動タイミングを見切る。
反撃の策とスキル発動
エルマはシールドバッシュで護衛を弾き飛ばし、そのまま女王の開いた口に叩き込むことでブレスを封じる。さらにスキル“不惜身命”を発動し、自らの身を賭して突撃を敢行した。
連携の極致
エルマの攻撃に気を取られた女王の背後に、ルーチェが現れ“竜殺突き”を叩き込む。ルーチェの叫びに応じ、エルマも全力の一撃を放ち、二人の攻撃が女王を貫いた。
決着と象徴的な一言
圧倒的な連携の末にルストクイーンは崩れ落ち、戦いは終結する。エルマは静かに剣を振り下ろしながら言った。「これが――暴竜と死神の挟撃だ」。
女王討伐と勝利の確認
ルストクイーンの死骸が地面に崩れ落ち、〈経験値8336取得〉の表示が現れたことで討伐完了が確定した。アイネは呆然と立ち尽くし、エルマは「女王は討ち取った!」と高らかに宣言。続けて「ベビーもこの勢いで滅ぼしてくれ」と指示を出し、仲間たちは歓声を上げて士気を高めた。
戦闘の総括と成果の確認
エルマは「思わぬ強敵だったが〈魔銀の笛〉の信頼を得られたことが大きい」と分析し、ルーチェの立ち回りを高く評価した。ルーチェは、ベビーからも〈魔虫銀の鉱石塊〉がドロップすることを報告し、「これだけあれば十分ですね」と笑顔を見せる。
ドロップ報酬と冗談交じりの会話
エルマは「もう少し女王を泳がせて繁殖させてもよかったな」と冗談を言い、ルーチェが慌てて突っ込む中、女王のドロップ〈碧き女王の鉱石塊〉を発見。市場価値5500万Gという希少鉱石で、さらに複数の魔石が確認された。
報酬総額の集計と驚愕の結果
ルーチェは「女王からもドロップしたんですね!」と歓喜するが、エルマが提示した総額に凍り付く。
今回のドロップ総額は以下の通りであった。
〈碧き女王の鉱石塊〉5500万G
〈ヘルメスのコイン〉5500万G
〈魔虫銀の鉱石塊〉2600万G×8
〈ルストベビーの魔石〉180万G×9
〈オレアントの魔石〉350万G×13
〈天運のスカラベの魔石〉700万G
〈ルストクイーンの魔石〉790万G
合計:3億9460万G
ルーチェは絶句し、「よん……おく……」と声を失った。
戦いの総括と余韻
エルマは「災い転じて福となす。強敵襲撃の不運を差し引いても、余りある幸運だ」と心中で総括する。ルーチェは感激しつつ、「黄金のラーナさんの剣が何本分ですか?」と尋ね、エルマが「23本分だな」と答えて締めくくった。
126話
報酬の現実と懸念
ルーチェは「よよ4億……」と震えながらも、金額の実感が持てずに怯えていた。エルマは冷静に「このドロップ総額を持ち帰れるかは別問題だ」と指摘し、ルーチェも同意する。エルマは「レイドには報酬分配での揉め事が付き物だ」と続け、特に今回、〈魔銀の笛〉の面子を潰したことで摩擦が避けられないと見ていた。
〈魔銀の笛〉との交渉開始
そこへクランの代表アイネが現れ、「お休みのところ失礼するわね、重騎士と道化師」と声をかける。エルマは内心で「早速交渉に来たか」と警戒するが、アイネらは深々と頭を下げ、「アンタがいなかったら全滅してた」と感謝を伝えた。想定外の対応にエルマは動揺しながらも「当然のことをしたまでだ」と返す。
配分交渉と信頼の形成
エルマが「曖昧になる前に配分の話を」と切り出すが、アイネは「警戒しなくていいわ」と微笑み、「配分で揉めるつもりはない。私たちも恩知らずじゃない」と明言した。クラン内での功績争いが本来の問題だったが、今回の戦闘でそれどころではなくなったと打ち明けた。
銀面卿への接触依頼
ルーチェが「揉めずに済んで良かったですね」と安堵する中、エルマは「アイネ、頼みがある。銀面卿に会わせてもらえないか」と切り出す。アイネは一瞬驚きつつも「クランでも接触できるのはフラングを含めて3人だけ」と答え、「一応当たってみるけど期待しないで」と念を押した。エルマは「それで構わない」と礼を述べた。
取引の意図と裏の思惑
エルマは心中で「銀面卿が優秀な錬金術師を抱えているなら、今回のドロップ品を欲しがるはず。交渉の余地はある」と確信していた。アイネは「今回は本当に助けられたわ。銀面卿に会えるといいわね」と言葉を残し去る。
出発と懐疑
壊れた馬車の代わりにエルマの車両へ乗り込む者が相次ぎ、道化のルーチェを含む一行は笑い合いながら移動を開始した。だが別の馬車に残ったアイネは、夜空を見上げながら呟いた。「でも……銀面卿なんて本当にいるのかどうか……」。
報酬受領と帰還
エルマとルーチェは無事にレイドの報酬を受け取り、ラコリナへ帰還した。二人は今回の戦果を報告し、安堵の笑みを交わした。
銀面卿からの招待
翌日、彼らのもとに「魔銀の笛」所属のエバンズが現れた。彼は銀面卿が直接礼を述べたいと伝え、二人を案内する。エルマはその申し出に警戒を抱きつつも同行を決めた。
地下への案内
エバンズの案内で一行は町外れの地下水路へ向かった。エルマは「随分と辺鄙なところだ」と呟き、ルーチェは罠を疑って不安を口にしたが、エバンズは「銀面卿は人嫌いだが、今回は信頼の証だ」と説明した。
隠された通路
人気のない場所にある扉を開け、彼らはさらに奥へと進む。エルマとルーチェは緊張を隠せず、ルーチェは「討たれたりしませんか」と冗談交じりに漏らす。エバンズは「ご安心を。恩人相手に無礼はいたしません」と微笑み、奥の部屋の扉を指した。
邂逅の予兆
扉の先には銀面卿の紋章が刻まれており、エルマはついにその人物と対面する覚悟を決めた。エバンズは「銀面卿は恩人相手に恥知らずな真似はいたしません」と告げ、重々しい扉を開ける場面で幕を閉じた。
同シリーズ














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