小説「とある魔術の禁書目録 1」感想・ネタバレ

小説「とある魔術の禁書目録 1」感想・ネタバレ

物語の概要

ジャンルおよび内容

本作は、超能力(エスパー)と魔術(マジック)が交錯する未来都市“学園都市”を舞台としたライトノベルである。科学的に培われた能力者が多数存在する学園都市に,ひとりの無能力者少年と,魔術結社出身の少女が出会い,そこから「科学」と「魔術」の衝突,そして「奇跡」と呼ばれる戦いが始まる。主人公の少年が右手に宿す“幻想殺し(イマジンブレイカー)”という異能を契機に、都市の闇・魔術の陰謀・そして超能力者たちの抗争へと巻き込まれていった。

主要キャラクター

  • 上条当麻:学園都市に暮らす高校生。右手に「幻想殺し」という,他者の超能力・魔術を打ち消す能力を宿しており,自らを「無能力者」と称しながらも数多の強敵と対峙してきた。
  • インデックス:原典(魔道書)を一万三千五百冊以上所蔵するシスター。魔術結社から追われており,上条当麻との出会いを契機に物語に深く関わる。
  • 御坂美琴:学園都市におけるレベル5(最高位)超能力者のひとり。「電撃使(エレクトロ・マスター)」の異名を持ち,学園都市でもトップクラスの能力者。物語では科学サイドの強力なヒロインとしても活躍する。

物語の特徴

本作の魅力は,「科学」と「魔術」という一見相反する力の対立を軸に,それぞれの立場・価値観・信念が交錯する点である。その中で「無能力者」という立場の上条当麻が巻き込まれていくことで,能力者・魔術師・組織・都市の暗部といった多層的な構造が描かれており,他のライトノベル作品と比して「能力バトル+宗教・魔術的な設定+学園都市のハイテク背景」という異色の組み合わせを有している。また,主人公が万能ではなくむしろ弱点を抱えつつも他者を守ろうとする姿勢や,「能力を使えば使うほど代償が発生する」という設定も読者の興味を惹く要素である。さらに,アニメ化・漫画化・ゲーム化といったメディアミックス展開が極めて盛んである点も特徴である。

書籍情報

とある魔術の禁書目録
著者:鎌池 和馬 氏
イラスト:はいむらきよたか 氏
出版社:株式会社KADOKAWA電撃文庫
発売日:2004年4月10日
ISBN:9784048663045

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あらすじ・内容

超能力は当たり前の学園アクションストーリー!
「超能力」が“一般科学”として認知された世界――。東京西部に位置する人口230万人弱の巨大都市。人口の約8割を学生が占めることから、「学園都市」と呼ばれていた。落第寸前の高校生・当麻は、ある日「魔術(オカルト)」の世界から逃げてきたというシスター姿の少女・インデックスに遭遇。最初は半信半疑だったが、二人の前に本当に魔術師が現れて――!?

とある魔術の禁書目録

感想

『とある魔術の禁書目録』は、超能力が科学として認められた学園都市を舞台にした、アクション満載の物語である。一人暮らしの男子高校生、上条当麻のベランダに、シスター姿の美少女、インデックスが突然現れるという、まさにボーイ・ミーツ・ガールな展開から物語は始まる。

アニメは全て視聴済みだったため、大まかなストーリーは把握していた。それでも、改めて小説として触れてみると、また違った面白さがある。特に、当麻がインデックスを守るために、自らの記憶を失ってしまうという衝撃的な展開は、何度見ても胸を締め付けられる。ハッピーエンドとは言い難いラストだが、きっとこの先には希望があると信じさせてくれる。

ただ、正直なところ、ラノベ特有のフリガナの多さには苦労した。特に戦闘シーンにおける英語のフリガナは、老眼気味の目には少々厳しい。まるで「受けて立てよ」に「レイズしろ」とルビが振られているようなもので、どちらかに統一してほしいと感じた。もし続きを読むなら、電子書籍でフォントサイズを大きくして読もうと思う。

物語は、ビリビリ娘こと御坂美琴に苛められる、異能の力を持つダメ高校生、当麻の日常から始まる。そんな彼の家に、白い布団のような姿の美少女、インデックスが空から降ってくる。そして、焰の魔術師や長剣を持った女性に追い回されるという、怒涛の展開に巻き込まれていく。

この作品の魅力は、やはり個性豊かなキャラクターたちだろう。当麻の正義感の強さ、インデックスの可愛らしさ、美琴のツンデレっぷりなど、それぞれが強烈な個性を放っている。彼らの織りなす人間関係も、物語を彩る重要な要素だ。

また、科学と魔術が入り混じる世界観も魅力的だ。超能力が科学として認められている一方で、魔術というオカルト的な力も存在するという設定は、非常に興味深い。それぞれの力がぶつかり合う戦闘シーンは、迫力満点で見応えがある。

『とある魔術の禁書目録』は、アクション、日常、人間関係、そして少しの切なさが詰まった、魅力的な作品である。アニメを視聴済みの人も、ぜひ小説版にも触れてみてほしい。きっと新たな発見があるはずだ。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

上条当麻

学園都市の高校生であり、右手に「幻想殺し」を持つ存在である。異能そのものを右手で打ち消すが、物理的被害は防げない制約を抱える。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の学生。高校生。

・物語内での具体的な行動や成果
 不良に絡まれた少女を助けるために走って逃走した。
 鉄橋で御坂美琴の雷撃を右手で無効化した。
 寮でステイルの炎剣と『魔女狩りの王』を打ち消し、スプリンクラーでルーン術式を崩した。
 小萌の部屋でインデックスの治療を支え、最後に“首輪”の術を右手で破壊した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 最終局面の負傷で記憶を失ったが、行動原理は揺らがないと示した。

インデックス

イギリス清教の修道女であり、「禁書目録」として一〇万三〇〇〇冊の魔道書を記憶する存在である。自動書記や自動迎撃の機構を内包する。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教・第零聖堂区に関わる修道女。禁書目録の担い手。

・物語内での具体的な行動や成果
 上条の部屋に転落同然で来訪し、追跡者の存在を告げた。
 治療儀式で小萌を導き、自身の致命傷を封じた。
 終盤に自動迎撃を発動し、空間破壊級の術を展開した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 口腔内の術式“首輪”が破壊され、定期的記憶消去の前提が崩れた。

御坂美琴

学園都市の特待生であり、電撃と磁力を操る超能力者である。音速超のコイン射出「超電磁砲」を用いる。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の中学生。特待生。

・物語内での具体的な行動や成果
 鉄橋で超電磁砲を実演し、路面と構造物を破壊した。
 商店街での再会時に電磁干渉を起こし、騒ぎの火種となった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条の右手に攻撃が通らず、態度と距離感に揺れが生じた。

月詠小萌

上条の担任教師であり、外見は幼いが判断は的確である。非常時にも生徒を守る姿勢を貫く。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校教員。担任。

・物語内での具体的な行動や成果
 自室を即席の“神殿”に見立てる治療儀式を実施した。
 インデックスの生命力を回復させ、危機を脱した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 魔術反復の危険を理解し、以後の介入を抑制した。

ステイル=マグヌス

イギリス清教の魔術師であり、炎剣とルーン術式を主力とする。任務と感情の板挟みにある。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教・必要悪の教会の実働。

・物語内での具体的な行動や成果
 寮で炎剣と『魔女狩りの王』を展開して上条を追い詰めた。
 ルーンを紙媒体で網状に配置し、広域制圧を試みた。
 終盤は上条の突破を援護し、時間を稼いだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 感情を隠して任務を演じる姿勢が示され、内心の葛藤が明らかになった。

神裂火織

巨大な長刀と七本の鋼糸を用いる剣士である。必要悪の教会に属し、インデックスの親友でもある。

・所属組織、地位や役職
 イギリス清教・必要悪の教会の剣士。

・物語内での具体的な行動や成果
 「七閃」で上条を圧倒しつつ、致命を避ける配慮を続けた。
 一年周期の記憶消去の事情を明かし、回収を宣言した。
 終盤で援護に回り、上条の接近を成立させた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 “首輪”の前提崩壊を前に、行動指針の再考を迫られた。

カエル顔の医者(冥土帰し)

学園都市の大学病院に勤める医師である。冷静な診断と説明を行う。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の大学病院・医師。

・物語内での具体的な行動や成果
 インデックスの身体に異常がないことを告げた。
 上条の脳ダメージと右手による治癒阻害の可能性を示唆した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 上条との対話で「記憶」と「心」の問題を整理する役を担った。

青髪ピアス

上条のクラスメイトである。軽口で場をかき回す存在である。

・所属組織、地位や役職
 学園都市の高校生。クラスメイト。

・物語内での具体的な行動や成果
 補習の教室で冗談を連発し、場の緊張を生んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 学内の日常描写の一部として機能した。

展開まとめ

序章幻想殺しの少年のお話 The_Imagine-Breaker.

不良からの逃走と人助けの意図
上条当麻は七月十九日の夜、ファミレスで不良に絡まれていた中学生ほどの少女を目にし、介入した結果として不良八人に追われ続けた。上条は殴り合いを避け、長距離走で相手の体力を削ぐ方針を取り、表通りと裏路地を織り交ぜながら逃走を継続した。目的はあくまで人助けであり、誰も傷つけずに諦めさせることで事態の収束を図るものであった。

鉄橋での再会と少女の正体
都市部を離れた大きな鉄橋で、上条は追手がいなくなったことを確認したが、先に立つ少女と対面した。少女は肩までの茶髪を揺らし、髪から電撃を散らす超能力者であった。彼女は不良を自ら追い払ったと告げ、学園都市で選抜された強力な能力者としての自負を示した。

能力観と価値観の衝突
少女は特待生としての優越を前提に、無能力者を見下す発言を重ね、上条はそれを危うい態度だと戒めた。学園都市における能力開発や無能力者の多数派という現実が語られる中、少女は自身のDNAを利用した軍用の妹達の開発に触れ、副産物が目的化している現状を示唆した。対して上条は、自身の評価がゼロである事実を掲げつつも、価値の上下を能力数値で断じる姿勢を認めなかった。

超電磁砲の実演と破壊
少女は超電磁砲を実演し、メダルゲームのコインを音速の三倍で射出して鉄橋の路面を一直線に破壊した。雷鳴のような衝撃とともに橋は大きく揺れ、金属ボルトが弾け飛ぶなど、能力の破壊力が明確に示された。少女は相手を選んで用いるとしつつ、無能力者の追い払いには電撃で十分だと述べた。

右手が打ち消した雷撃
少女が放った雷撃の槍は、上条が反射的に突き出した右手に命中したが、上条の右手は電撃を拡散させ、本人は火傷すら負わなかった。周囲の鉄骨を焦がす高圧電流が効かない異常に、少女は天災と評して苛立ちを深め、攻撃の出力を引き上げて連続的に雷撃を放つも、結果は同様であった。

虚勢と恐怖の同居
上条は余裕を装いながらも内心では極度の恐怖に駆られていた。右手で異能を打ち消せても、破片や衝撃など物理的被害は防げないという現実を理解し、わずかな判断の誤りが致命傷になり得る状況で、外面の平静と内心の動揺が乖離していた。

幻想殺しの特性と限界
上条の右手に宿る力は幻想殺しであり、超能力などの異能そのものを打ち消す性質を持っていた。ただし効果範囲は右手の手首から先に限定され、異能の結果として生じる物理的影響は防げないという厳しい制約があった。上条はこの力により少女の雷撃を無効化し続けたが、同時に自らの脆さと危うさを強く自覚する結末となった。

第一章 魔術師は塔に降り立つ FAIR,_Occasionally_GIRL.

不幸な朝と夏休み初日
七月二〇日、夏休み初日の朝。上条当麻は、前夜の落雷で家電の大半が壊れ、冷蔵庫の中身も絶滅するという悲惨な状況にあった。カップ焼きそばを流しにぶちまけ、キャッシュカードを踏み砕き、担任から補習の電話まで受けるなど、不幸続きの一日が幕を開けた。運勢番組の最強運を信じた自分を呪いながらも、彼は自力で切り抜けようと気持ちを切り替える。

白き修道服の少女との出会い
ベランダに布団を干そうとした上条は、そこで思わぬ光景を目撃する。白い修道服をまとい、銀髪の少女が逆さに手すりへ引っかかっていたのだ。歳は十四、五ほど。少女は流暢な日本語で「おなかへった」と告げ、明らかに異様な状況ながらも助けを求めてきた。上条が差し出した腐った焼きそばパンを、少女はラップごと食べてしまうという常識外れの行動を取った。

名乗りと不可思議な来訪理由
少女は自らを「インデックス」と名乗り、イギリス清教に属する修道女であると語った。理由を問う上条に対し、彼女は「追われている」と明かす。屋上から屋上へ飛び移ろうとした際に背中を撃たれ、逃走の途中で七階のベランダに引っかかったという。服には「防御結界」の機能があると説明し、銃撃を防いだと述べたが、その言葉は上条にとって荒唐無稽なものだった。

魔術と科学の相克
インデックスは「魔術結社に追われている」と語り、学園都市の外に存在する“魔術”の世界の現実を主張する。科学万能の都市で育った上条はそれを信じず、非現実とは「偶然を必然と誤解する人の心が生む幻想」であると説く。互いの信念はすれ違い、インデックスは拗ねながらも、自身の信仰と使命を否定されたくないという意地を見せた。

禁書目録の真実
上条の問いに、インデックスは静かに答える。自分は「禁書目録(インデックス)」であり、体内に一〇万三〇〇〇〇冊もの魔道書の内容を記憶している存在だと。ゆえに、彼女を狙う魔術結社が絶えないのだと説明する。しかし上条はその説明を到底信じられず、現実離れした発言に呆れるばかりだった。

異能の証明と衝突
互いに譲らぬまま、上条は自身の右手に宿る「幻想殺し」を提示する。それはあらゆる異能の力を打ち消す力であった。一方、インデックスは自分の修道服「歩く教会」が物理・魔術を問わずあらゆる攻撃を防ぐ結界であると主張し、対抗心から「包丁で刺しても傷一つつかない」と豪語する。
怒った上条がその服に触れると、次の瞬間、糸という糸が解け、修道服は形を失って崩れ落ちた。上条の右手が、確かに“異能”を打ち消した瞬間であった。

科学と魔術の交差点
互いの世界が衝突し、現実が静かに軋む。上条の手は確かに“幻想”を殺す力を持ち、インデックスはその力に驚愕した。学園都市の理屈を超える出来事が、科学と魔術を繋ぐ幕開けとなった。上条当麻とインデックス――科学の少年と魔術の少女。二人の出会いが、以後の運命を決定的に変える最初の一歩となったのである。

噛み付き癖と修道服の再生騒動
インデックスは怒ると噛み付く癖を見せ、上条当麻は被害を受けつつも応対した。裸に毛布を巻いたインデックスは、安全ピンで解けた修道服を無理やり縫い直し、見た目が針のむしろのような“即席アイアンメイデン”を完成させたのである。

動揺と気まずさ、そして補習の現実
上条当麻は騒動をおさめつつ、夏休みの補習を思い出して外出の準備に入った。インデックスは毛布の中で着替え、上条当麻は平静を装うも内心は動揺していた。やり取りは噛み合わず、緊張と気まずさが漂った。

ここに残るか出ていくかの選択
上条当麻は部屋に残る提案を示したが、インデックスは「敵」を招く危険を理由に出立を選んだ。彼女は「歩く教会」が魔力を発する“要塞”であり、破壊情報が伝われば敵は行動を強めると推測した。上条当麻は彼女の状況が虚言ではないと理解しつつ、踏み込めずにいた。

不幸の理屈と“右手”の代償
玄関先で上条当麻は足の小指をぶつけ、携帯を落として破損させるなど不運を連発した。インデックスは“幻想殺し”が神の加護や幸運といった見えない力まで打ち消す可能性を指摘し、右手の存在が統計的幸運すら遠ざけると解釈した。上条当麻は反発しつつも、自身の不運を前に言葉を失った。

逃避先としての教会と宗派の制約
インデックスは教会へ逃げ込む方針を示し、所属はイギリス清教であると明言した。日本国内で同宗派の支部は稀であり、ローマ正教やロシア成教では門前払いになる可能性が高いと説明した。この制約により、逃避行は難航必至と判明した。

別れ際の約束と脆い笑顔
上条当麻は「困ったら戻って来い」と申し出た。インデックスはひまわりのような笑顔で応じたが、その笑顔には「一緒に地獄へは来るな」という遠回しの拒絶が滲んでいた。二人の距離感は埋まらぬまま、小さな約束だけが残った。

清掃ロボットの誤解と追走
通路に現れた清掃ロボットを、インデックスは“使い魔”と誤解して怯えた。頭を打って転倒しつつも、落としたフードを探す過程でロボットを追走し、角の向こうへ消えた。上条当麻は取り残され、彼女の逞しさと危なっかしさを同時に思い知らされたのである。

補習と幼女教師の授業
七月二〇日、夏休み初日の学園都市。上条当麻は補習授業に出席していた。担任の月詠小萌は一三五センチの小柄な女性で、外見はランドセルを背負う小学生そのものだった。生徒達はその幼さに呆れながらも逆らえず、上条は念動力の実習課題や小テストに苦しめられていた。隣の青髪ピアスがふざけた冗談を飛ばすたびに小萌の笑顔が引きつり、教室は妙な緊張感に包まれた。

授業中の空白と思考
蒸し暑い教室で上条は窓の外を眺め、インデックスのことを考えていた。忘れ物の白いフードを思い出し、引き止めなかった後悔が胸を刺す。彼女が語った「一〇万三〇〇〇〇冊の魔道書」の真偽は依然として不明で、信じるには現実味が薄かった。だが修道服「歩く教会」が自分の右手に反応した事実だけは否定できない。小萌の声を背に、上条は無意識に机上のノートを閉じた。

日暮れの街と再会
補習を終えて校舎を出た上条は、終バスを逃し、夕焼けの商店街を歩いていた。そこへ中学生ほどの少女が駆け寄ってくる。肩までの茶髪を持つ彼女――御坂美琴である。昨日、鉄橋で戦った“超電磁砲”だった。制服姿のまま怒鳴りつける美琴に、上条は疲れ切った調子で応じる。挑発に怒った美琴が足を踏み鳴らすと、周囲の携帯電話が一斉に火花を散らし、警備ロボットが警報を発した。上条は反射的に美琴の口を塞ぎ、二人で裏路地へ逃げ込んだ。

再び交錯する力
人気のない空き地に辿り着いた二人は、息を切らせて言い合いになる。美琴は雷撃や磁力を自在に操るが、上条の右手の前では全て無効化される。以前と同じように攻撃が通じず、怒りと恐れを入り混ぜた表情で睨み合う。上条が右手を軽く握るだけで、美琴は無意識に身をすくめた。彼の力の正体を知らないまま、その“無敵”を前に立ち尽くす。

残るもの
短いやり取りの中で、上条は思わず「魔術師」という言葉を口にする。自分でも可笑しいと思いながら、その響きがなぜか胸に残った。インデックスと過ごした時間が、ただの夢や偶然ではなかったように思えてならなかった。部屋に残された白いフードが、まだ彼女との繋がりを主張するかのように心を刺し続けていた。

牛丼後の帰寮
上条当麻は御坂美琴を振り切って牛丼を食べ、残金三十円で男子寮へ戻ってきた。寮は人の気配が薄く、蒸し暑さだけが残っていたのである。

清掃ロボットの異常と発見
上条は自室前で清掃ロボット三台が同一地点を往復している異常に気づいた。不安を覚えつつ接近すると、インデックスがうつ伏せで倒れている光景を確認したのである。

負傷したインデックス
インデックスの背には定規で切り裂いたような一直線の深い傷が刻まれ、流血が床を染めていた。清掃ロボットは床の血液を汚れとして処理し続け、上条はそれを排除しようと悪戦苦闘したが、即座の制止は叶わなかったのである。

魔術師ステイルの出現と目的
非常階段から現れた長身の白人少年ステイル=マグヌスが自らを魔術師と示し、インデックスの追跡・回収に来た旨を告げた。神裂が斬ったと語り、インデックスが途中で血痕を残しながら逃れてきたこと、清掃ロボットが痕跡を拭い去ったことを指摘したのである。

禁書目録の正体の説明
ステイルはインデックスが完全記憶能力を有し、一〇万三〇〇〇冊の魔道書を記憶する禁書目録であると説明した。魔力を練れない安全装置を持つが、中身が危険であるため先に保護する必要があると主張したのである。

幻想殺しで炎剣を無効化
上条は憤激し、接近して殴打を試みた。ステイルは炎の剣を顕現させ摂氏三〇〇〇度の爆炎で薙いだが、上条は右手で爆炎を打ち消し、無傷で立っていた。右手は魔術の炎を触れただけで消し飛ばし、ステイルは予想外の現象に動揺したのである。

切り札『魔女狩りの王』の顕現
追い詰められたステイルは修道服の内から『魔女狩りの王』を顕現させた。上条はこれも右手で一度は弾き飛ばしたが、飛散した黒い核が瞬時に再集合して人型へ復帰し、右手を十字架で拘束するように圧してきたのである。

インデックスの機械的覚醒と攻略示唆
瀕死のインデックスは感情を排した口調で覚醒し、ルーン魔術の機構を説明した。『魔女狩りの王』は本体ではなく、周囲の壁・床・天井に刻まれたルーン刻印が再生の源であり、刻印を消さねば何度でも蘇ると示唆したのである。

ステイルの再攻撃と爆発
上条が右手を押し留められ身動きの限られる中、ステイルは左右に炎剣を形成して『魔女狩りの王』ごと挟撃する術式を起動した。炎剣と巨神が干渉して巨大な爆発を生じ、場面は混迷を極めたのである。

爆炎後の追走
爆発が収まると現場は地獄絵図と化しており、ステイル=マグヌスは階下へ走る足音から上条当麻の生存を察知した。上条は爆発の刹那に手すりへ飛び、下階へ強引に退避していたのである。

ルーン刻印の遍在
上条は通路・ドア前・消火器など寮内の至る所に貼られたコピー用紙のルーン刻印を確認し、数万枚規模の「刻印網」によって『魔女狩りの王』が維持されている現実を理解した。全消去は現実的でなく、体勢立て直しを優先して逃走したのである。

外部脱出と術式の限界
上条は非常階段から二階へ降り、さらに手すりを越えて地上へ飛び降りた。足首を痛めつつも寮外へ出た結果、『魔女狩りの王』は建物境界を越えられず動きを止めた。術式の有効範囲が寮内に限定される特性を掴んだのである。

決意の転換
一時は警察への通報も脳裏をよぎったが、インデックスが自ら危険を冒して戻ってきた事実を想起し、上条は「救出のための逆侵入」を決意した。魔術の仕組みの詳細は不要で、行動で覆すという方針へ切り替えたのである。

スプリンクラー作動
上条は寮内に戻り火災報知器を起動、スプリンクラーを稼働させた。ルーンが「紙媒体」で貼られている現実に着目し、個別破壊ではなく建物全域を一斉に濡らすことで刻印群の機能を奪う狙いであった。

逆転:インク消失による術式崩壊
雨水を浴びた『魔女狩りの王』は右手の一撃で四散した後、再生不能に陥った。コピー用紙自体は残存しても、印字インクが流出すれば術式が成立しないという弱点が露呈し、肉片は雨に溶けるように消滅していったのである。

ステイルの無力化と接近
術式を喪失したステイルは再詠唱を試みたが、一切発動しなかった。上条は間合いを詰め、右拳でステイルの顔面を打ち抜き、金属手すりへ叩きつけた。『魔女狩りの王』の消滅により主導権は完全に上条へ移り、局面は決着へ向けて動き出したのである。

第二章 奇術師は終焉を与える The_7th-Egde.

サイレンと逃避
消防・救急のサイレンが通り過ぎ、寮周辺は人だかりに。上条当麻は発信器を壊して持ち出し、重傷のインデックスを抱え路地裏へ。学園都市の管理体制と敵の存在を考え、病院搬送は断念する。

治療手段の模索
上条は魔術での回復を求めるが、インデックスは「超能力者(能力開発済み)の脳回路では魔術は使えない」と説明。上条の右手(幻想殺し)も回復術を打ち消す恐れがあるため、彼自身が術者になる案は不可。そこで「能力開発されていない一般人=教師」に望みを託す発想へ。

月詠小萌の部屋へ
公衆電話経由で住所を聞き出し、上条はインデックスを背負って月詠小萌のボロアパートへ。応急処置の限界を悟った上条は、小萌に「この子の話を聞き続けて意識を保たせる」名目で協力を仰ぎ、自分は部屋を離れる(右手の干渉を避けるため)。

自動書記の覚醒とタイムリミット
インデックスが「自動書記」に切り替わり、国際標準時換算で約15分後に致死量に達すると宣言。小萌に儀式の指示を開始する。

即席の“神殿”構築
ちゃぶ台上に血で円と五芒星、周囲に言語列。メモリーカードや文庫本、フィギュア、ビーズなど部屋のガラクタを“縮尺モデル”として配置し、部屋とテーブルをリンク。守護者の固定化は一度失敗するが、水属性で最低限のガードを確保し、儀式続行。

リンクの成立と回復
「テーブルで起きた事は部屋でも起きる」状態が確立。小萌が詠唱をトレースし、インデックスのフィギュアの背が溶けて整うのと同期して、実体の背中も癒着・封止。生命力の補填を確認し、「自動書記」を休眠。部屋の空気は一変し、インデックスの瞳に人間味が戻る。

余韻と本音
神殿を解体して儀式終了。インデックスは体力欠乏で倒れつつも「傷は塞がった、あとは体力の問題」と説明。小萌が恐る恐る心情を問うと、インデックスは目を閉じたまま「わからない」としつつも、上条当麻に振り回される予想外が“楽しくて嬉しい”と零し、安堵して眠りに落ちる。

発熱と看病
儀式の反動でインデックスは高熱と頭痛でダウン。ウイルス性ではなく“体力の再構築”による疑似風邪で、解熱剤では根本解決にならない。月詠小萌のパジャマに着替え、上条当麻と小萌が交代で看病する中、軽口を交えつつも部屋は気まずくも温かい空気に。

小萌の“教師”宣言
月詠小萌は「子供の責任を取るのが大人の義務」として、警察や理事会への報告も辞さない覚悟を明言。ただし即時通報は保留し、上条に説明の整理時間を与えると買い出しへ。上条は「巻き込みたくない」と本音を返し、互いの信頼が形になる。

魔術の危険と制約
インデックスは、小萌にこれ以上魔術を使わせるのは危険と警告。魔道書に含まれる“異常識”は一般人の脳を汚染するため、反復使用は破滅的だと語る。錬金術などの話題も出るが、代用品で再現するには天文学的コスト(七兆円級)と現実離れした資材が必要と判明。

禁書目録の背景告白
宗派分裂の経緯から各勢力の“役割”に触れ、イギリス清教は対魔術師の技術が突出していると説明。そこで「必要悪の教会(ネセサリウス)」が“敵を知るために汚れを背負う”部署として成立し、インデックスは世界に封印された一〇万三〇〇〇冊を記憶して、あらゆる術式の“中和法”を提示する役目だと明かす。原典焼却が無意味な理由(知識は人から人へ変異して伝播する)や、結社が無闇に人員拡大しない力学も語られる。すべてを使いこなせば“魔神”級――世界法則の例外化すら可能だという危険性も。

上条の怒りと支え
インデックスが「信じてもらえないと思った」「怖がらせたくなかった」と秘密を抱えていた理由を漏らすと、上条は「人を勝手に値踏みするな」と一喝。自分は逃げない、守る、と明言する。インデックスは堰を切ったように涙し、空気は和らぐ(締めは恒例の“がぶっ”)。

遠望する二人の魔術師
雑居ビル屋上でステイル=マグヌスと神裂火織が二人を監視。上条の正体不明の右手と機転を前提に、「学園都市内の別組織が保護しているのでは」という誤読に至る。ステイルはルーンの弱点を補うため刻印をラミネート加工し、半径2km・16万4千枚・約60時間の大結界準備を宣言。魔術戦は準備と先読みの知能戦であることが強調され、二人は次局面に向けて動き出す。

外風呂遠征と“元気復帰”
儀式の反動熱が落ち着き、インデックスは安全ピンだらけの修道服に着替えて外出可に。風呂のない月詠小萌のアパートから、洗面器を抱えて銭湯へ向かう。洗濯済みの白修道服は(どうやったのか不明だが)血痕ゼロ。

名前を呼べる喜び
道すがら、インデックスは「用がなくても名前を呼べるのが嬉しい」と無邪気に連呼。三日前のやり取り以降の強い懐きが描かれ、上条当麻は嬉しさよりも、彼女がこれまで“当たり前の言葉”さえもらえなかった境遇を思って複雑になる。

銭湯カルチャーショック予告
コーヒー牛乳や広い浴場の話題で盛り上がる一方、小萌の教えた“銭湯システム”にインデックスはワクワク。軽口の応酬(噛み癖つき)で空気は穏やか。

一年分の欠落記憶
インデックスは「生まれはロンドン、聖ジョージ大聖堂育ちだが、日本に来た“約一年前”からの記憶が抜けている」と告白。路地裏で目覚め、自己も分からないまま“禁書目録”“必要悪の教会”“魔術師”といった危険語だけが頭を巡り、恐怖のまま逃げ続けてきたと語る。

上条の苛立ちの正体
“最初に出会えた知り合いがたまたま上条だっただけ”という現実に、上条は無力感と理不尽さへ苛立つ。だがそれを悟らせまいとギャグで誤魔化すほど、感情は未整理のまま。

すれ違いと恒例の“がぶっ”
思春期ネタや幼児体型いじりが地雷になり、インデックスは上目遣いで「だいっきらい」と宣言→お約束の頭頂丸かじり。二人の距離感は相変わらず騒がしく、しかし確かに近づいていく。

人払いの静寂と“もう一人の脅威”
インデックスを猫みたいに追いかけっこ→はぐれた上条当麻の前に、人気の消えた大通り。これはステイルのルーン「人払い」の効果。そこへ神裂火織が出現し、「魔法名を名乗る前に彼女(インデックス)を保護したい」と通告。

七天七刀と“見えない刃”の正体
神裂は超長刀を抜かずに、居合いの“音”とともに空間を断ち割る七連の斬撃「七閃」を展開。地面も街路樹も風車のプロペラも紙同然。上条の右手は通じない――攻撃の実体は“魔術そのもの”ではなく、血で可視化された七本の鋼糸(ワイヤー)。物理攻撃ゆえイマジンブレイカーが無効化できない。

圧倒的実力差と、それでも前へ
距離10m。四歩で懐へ、の賭けに出る上条当麻だが、神裂の“ゼロ距離七閃”で右手は裂傷、さらに「セブンフラッシュ」で周囲ごと粉砕され劣勢。神裂はなお「名乗らせないでください」と殺意を抑え、致命打を避ける手加減を続ける。

上条当麻の叱咤と、揺らぐ神裂火織
ボロボロになりながらも上条当麻は食い下がる。「その力で誰でも救えるはずなのに、なぜ女の子を追い詰めることに使うんだ」と真正面からぶつける言葉に、神裂の足が止まる。
神裂はついに本音を漏らす――インデックスの背中を斬ったのは、本来なら絶対防御の修道服『歩く教会』が守るはずだったからで、傷つける意図はなかった。むしろ「こうしないと彼女は生きていけない。死んでしまう」と苦悩を吐露。

告白:必要悪の教会と“親友”
神裂火織は所属を明かす。イギリス清教・第零聖堂区「必要悪の教会(ネセサリウス)」。そして――インデックスは“同僚”であり“大切な親友”。
敵として現れた剣士の口から語られたのは、奪うためではなく「生かすため」の行動理由だった。

第三章 魔道書は静かに微笑む “Forget_me_not.”

完全記憶能力の真実
上条は血まみれのまま神裂火織の説明を聞き、インデックスが一〇万三〇〇〇冊を完全記憶している事実を受け止めた。神裂は彼女の脳の八五%が禁書の記憶で占められており、残る十五%だけで常人と同等に振る舞っていると示した。完全記憶能力は忘却ができない性質であり、不要な記憶の蓄積が致命的であると明かしたのである。

必要悪の教会の目的
神裂は、インデックスが追われている相手が魔術結社ではなく必要悪の教会である理由を説明した。教会は彼女を保護しつつ管理する立場にあり、インデックスが自力で判断した結果として教会を敵と誤認していると述べた。

一年周期の記憶消去
神裂は、インデックスの脳を守るために記憶消去を一年周期で実施してきたと告白した。時期を外すと消去は不可能であり、目前の三日後が限界であると示した。上条はこれを聞き、回復魔法の反動と考えていた頭痛が予兆であった可能性に戦慄した。

神裂の告白と葛藤
神裂は記憶を失っている理由が自分の手による消去であると明言した。日記や写真を用いて思い出を積み重ねても、インデックスは何度でもゼロに還る現実を語り、仲間としての情と救済の措置の間で疲弊してきた心情を吐露した。

上条の否と決意
上条はインデックスが人間であると強調し、道具扱いを拒絶した。記憶を失っても関係は続くという信念を示し、誤解を解けばよいはずだという違和感を起点に、見限ったかのような教会の姿勢を激しく非難した。

激昂と応酬
神裂は上条の言葉に激昂し、ステイルを含む自分たちの苦渋と決意を叫んだうえで容赦なく打撃を加えた。上条は全身を痛打されながらも反論をやめず、インデックスの不幸を軽減するために敵を名乗るという彼女たちの選択を臆病の結果だと断じた。

選べなかった幸福
神裂は四季を共に過ごし約束や記録で思い出を支えようとしても崩れ去った経緯を語り、これ以上笑顔を見続けられない限界を明かした。彼女たちは別れの痛みを最小化するため、初めから思い出を作らせない道を選んだと述べた。

力の意味を問う拳
上条は満身創痍のまま立ち上がり、守りたいものがあるから力を手に入れるのだと神裂に突きつけた。七天七刀の鞘を掴み、血にまみれた拳で神裂を打ち据え、力を持ちながら何も守れていない無能さを問い質した。

崩れ落ちる体と止む反撃
上条はついに崩れ落ち、出血で視界も閉ざされつつ反撃に備えようとした。しかし神裂の追撃は訪れず、緊張だけが残る形で場面は静止していたのである。

目覚めと三日の空白
上条当麻は小萌先生のアパートで目を覚まし、自身が神裂火織との戦闘後に三日間も昏睡していた事実を知ったのである。インデックスはその間に小萌先生が上条を運び介抱したと伝え、上条は生存に安堵しつつも事態の不自然さに戸惑った。

自責と告白
インデックスは自らの不明と判断ミスを厳しく悔い、上条を助けられなかったと震える声で告白した。彼女は追跡者を撒くことに集中して上条の危機を見落としたと述べ、涙を堪えつつも自己憐憫を拒む態度を貫いたのである。

制限時間の再認識
上条は「三日」という語から、一年周期の記憶消去が迫る制限時間を即座に想起した。インデックスが上条を認識している現状は未消去を示すが、残り時間を無為に費やした事実に上条は内心で焦燥を募らせた。

損傷と治療の限界
上条の全身は包帯で固められ、痛覚が麻痺するほどの重傷状態であった。小萌先生はすでに回復魔法を使えず、学園都市の超能力者と魔術の回路差ゆえに魔術治療も頼れないという制約が確認された。

「禁書目録」と「少女」の乖離
上条は、ルーン解説時に見た機械的な語り口のインデックスを思い出し、目の前の人間的な表情との落差に戸惑った。インデックスは「覚醒めていた」間の自分を寝言のようで恥ずかしいと語り、冷たい機械になっていくようで恐いと本心を漏らした。上条は一瞬の偏見を恥じ、彼女の人間性を改めて認めた。

看病の気配と安堵
インデックスは看病役として上条に寄り添い、善意のみで世話を続けた。上条は彼女の仕草に本物のシスターの面影を見て、内心で安堵と気恥ずかしさを覚えたのである。

軽口と日常の回復兆候
上条は照れ隠しに軽口を叩き、互いに応酬する中でわずかな日常感が戻った。最終的に彼の不用意な一言が引き金となり、看病食のお粥が頭上へ落下するという喜劇的な顛末で場面は締めくくられた。

小結
本節では、三日の空白がもたらす緊迫(記憶消去の制限時間)と、人間としてのインデックスの脆さ・温かさが対置された。重傷の上条と自責のインデックスは、切迫した状況の中でささやかな笑いを交わし、次の決断へ向けた関係の結び直しに至ったのである。

不意の来訪と違和感
上条当麻とインデックスは小萌宅で後片付けに追われていたが、来訪者の知らせで場が一変した。戻ってきた月詠小萌の背後にはステイルと神裂火織が立っており、上条は三日前に回収されなかった理由に不審を覚えたのである。

足枷としての上条当麻
ステイルの一言で意図が明確になった。インデックスは単独なら逃走できるが、重傷の上条という“怪我人”を抱えれば逃げにくい。二人は上条を殺さず彼女の側へ返すことで、より確実に「保護」へ導く足枷として機能させたのである。

インデックスの拒絶と懇願
インデックスは上条の前に立ち塞がり、両手を広げて二人に「帰って」と叫んだ。さらに「上条を傷つけないで」と涙声で懇願し、上条を守るために自らを差し出す姿勢を示した。これは二人にとって痛烈な一撃であり、わずかに揺らいだ表情がのちに凍る視線へと戻った。

演技としての“魔術師”とリミット告知
ステイルは感情を封じた口調でリミット「残り十二時間三十八分」を告げ、足枷の効果を“試した”と冷酷に言い放った。インデックスを貶める物言いは徹底した演技であり、真意では彼女の無事を喜び抱きしめたい衝動を抑え込む自己犠牲であった。二人はそれ以上の言葉を残さず退出した。

「取り引き」の決意と内なる逡巡
残されたインデックスは、上条の日常を守るため自分が「取り引き」になると静かに告げた。上条はその覚悟を前に言葉を失い、暗闇の中で「思い出を手放してでも彼女を救うのか」という自問に沈んだのである。

夜の静寂と焦燥
夜更け、小萌の部屋には電灯も点かず、上条当麻は布団の脇で眠り込むインデックスを見守っていた。制限時間の刻限を思い出し、胸中に冷たい焦りが広がっていたのである。

黒電話の呼び出し
沈黙を破ったのは黒電話のベルであった。上条が受話器を取ると、神裂火織が名乗らずに要件のみを告げ、今夜の刻限に合わせて回収を実行する旨を冷徹に通達した。

別れの強要と反発
神裂は「別れの時間」を与えるとしつつ、上条にその場から離脱するよう命じた。上条はこれを「諦めの強要」と断じ、何度倒れても立ち上がると宣言して反発したのである。

魔術の限界と“首輪”の論理
神裂は完全記憶能力が体質であり、魔術でも超能力でもないと明言したうえで、禁書目録に対する“首輪”としての一年周期の記憶消去を説明した。加えて、禁書の選別に偏りがあり、記憶操作系の知識は意図的に除外されている可能性を示した。

科学への橋渡しを巡る溝
上条は学園都市の科学——脳医学や精神系能力による打開を提案した。これに対し神裂は、科学に渡すことへの本能的な拒否感を吐露し、実績のある“延命策”を選ぶ立場を主張した。両者の溝は埋まらず、上条は“敵”として神裂を打倒する決意を固めた。

方針転換と即応の段取り
通話を切った上条は、小萌へ連絡して研究機関と精神感応系の伝手を当たる段取りを急いだ。さらに全身麻酔による深い睡眠で一時的に記憶の流入を止め、時間を稼ぐ仮説を立てたのである。

零時の宣告
小萌と通話して時刻が“すでに零時”であると判明した瞬間、インデックスは病者のように反応を失い、部屋の扉が外から蹴破られた。月光を背に、ステイルと神裂が出現した。

リミット到来
日本中の時計が午前零時を告げる中、二人の魔術師は「回収」の遂行に姿を現した。インデックスの制限時間は尽き、上条の悪あがきは刻限と正面衝突する局面へと突入したのである。

第四章 退魔師は終わりを選ぶ (N) Ever_Say_Good_bye.

刻限、到来
午前零時、月光の中でステイルと神裂火織が乱入。インデックスは高熱と激痛で意識朦朧、回収と記憶消去の儀式が宣言される。

上条当麻の抵抗と言葉
上条当麻は“科学”による打開を訴えるが、ステイルは「目の前の病人に実験を容認できるのか」と迫り、記憶消去具の十字架を挑発的に示す。上条当麻は奪えず、儀式は零時十五分開始へ。

神裂火織の一言と猶予
神裂火織がステイルを制し、上条当麻に“別れの10分”を与える。上条当麻はインデックスに嘘をついて安心させ、「必ず完璧に助ける」と誓うが、無力感に打ちのめされる。

“85%”の矛盾と真相の閃き
「脳の85%が禁書で埋まる」説への違和感から小萌に確認。完全記憶は容量圧迫の原因ではない、記憶の種別(意味記憶/手続記憶/エピソード記憶)は別容器だと判明。
→ 結論:教会は“首輪”として術式で容量制限を偽装していた可能性。インデックスの苦痛は体質でなく“外付けの拘束具”によるものだと気づく。

右手の本懐
上条当麻は包帯を解き、右手で“首輪”を打ち消すべくインデックスに触れる。変化なし――口腔内に刻まれた紋章を発見し、喉奥へ指を入れて接触。直後、インデックスの“自動迎撃”が起動、瞳に真紅の魔法陣が灯る。

禁書目録、覚醒
インデックスは自動防衛を宣言し、特定魔術『聖ジョージの聖域』を発動。空間を割く黒い亀裂と“光の柱(竜王の吐息)”が部屋を蹂躙する。上条当麻は右手で受け止めるが、質の異なる多重魔術の奔流に押される。

二人の魔術師の動き
神裂火織は「Salvare000=…」の魔法名とともに七閃で足場を切り、照準を逸らす。ステイルは『魔女狩りの王(イノケンティウス)』を展開し、盾となって上条当麻に「一秒でも稼ぐな、走れ」と背を押す。

説得と選択
上条当麻は二人に真相(教会の嘘、首輪の術)を叩きつけ、「お前たちも本当は救いたいはずだ」と叫ぶ。逡巡の末、二人は黙して援護に徹する。

幻想殺し、核心へ
降り注ぐ“光の羽”の致命を承知で、上条当麻は黒い亀裂の核――魔法陣そのものを右手で叩き割る。
→ “首輪”は致命的破壊、光の柱も声も消失。

代償
安堵の瞬間、光の羽が上条当麻に降り積もる。身体の力が一撃で奪われ、インデックスを庇う姿勢のまま崩れ落ちる。
上条当麻は笑みを残し――“死んだ”。

終章 禁書目録の少女の結末 Index-Librorum-Prohibitorum.

病院での「何もない」
学園都市の大学病院で、カエル顔の医者はインデックスの身体に異常はないと告げる。一方で、アパートの惨事で負った上条当麻の「脳のダメージ」は深く、回復魔法も右手に打ち消されるため効かないと示唆される。

ステイルの手紙と“今後”
ステイル=マグヌスからの長文の手紙には、首輪(自動書記)が破壊された後のインデックスの監視・再奪還方針、そして「あの夜、君(上条)への個人的な本音」はあえて伏せたままの説明が記されていた。最後は小爆発の悪趣味なオチ付き。

再会――揺れる笑顔
インデックスは上条当麻の病室へ。彼は丁寧で他人行儀、まるで初対面のように振る舞う。インデックスが必死に“思い出”を手繰り寄せても、返ってくるのは空白。極限に達した瞬間、上条当麻は「引っかかった」と悪戯めかして記憶アリを装い、あの夜の光の羽も右手で“相殺した”と豪語して彼女を安心させる。直後、インデックスは怒りの“丸かじり”で応える。

真相――色のない笑み
カエル顔の医者は廊下でインデックスとすれ違い、病室で上条当麻に問う。「本当は覚えていないだろう?」――上条当麻は沈黙で肯定する。あの夜の出来事は他人の日記のようで、顔も名も心に結びつかない。ただ、それでも「彼女にだけは泣いてほしくない」と今の自分は確かに思えた、と語る。

結び――記憶か、心か
医者が「脳に残っていないなら、どこに“思い出”が残るのか」と理屈で試すと、上条当麻は色のない笑顔で答える。「心に、じゃないですか?」――失われた記憶の代わりに、確かに残った“選び方”と“願い”。インデックスの未来はまだ不穏だが、二人の関係は記憶の外にまで延びていく。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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