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フィクション(Novel)出会ってひと突きで絶頂除霊!

小説「出会ってひと突きで絶頂除霊! 8」感想・ネタバレ

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フィクション(Novel)

絶頂除霊 ! 7巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 9巻レビュー

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  1. 物語の概要
    1. ■ 作品概要
    2. ■ 主要キャラクター
    3. ■ 物語の特徴
  2. 読んだ本のタイトル
  3. あらすじ・内容
  4. 感想
  5. 考察・解説
    1. 世界規模の霊能テロ
    2. シーラ姫の護衛任務
    3. 獣化現象と満月の戦い
    4. 悪魔憑きジェーンの襲撃
    5. 幸運と予言の封印
  6. 登場キャラクター
    1. 都立退魔学園
      1. 古屋晴久
      2. 文鳥桜
      3. 宗谷美咲
      4. 童戸槐
      5. 男子生徒たち
      6. 烏丸葵
    2. 退魔師協会・監査部・十二師天
      1. 世話役の緑
      2. 葛乃葉菊乃
      3. ナギサ
    3. 葛乃葉家
      1. 葛乃葉楓
    4. 相馬家
      1. 相馬千鶴
      2. 相馬礼
      3. 巫女たち
    5. 童戸家
      1. 童戸手鞠
    6. 皇樹家
      1. 皇樹夏樹
    7. アルメリア王国・欧州祓魔連合
      1. シーラ・マリアフォールド
      2. 第三聖人
    8. 霊能犯罪組織・テロリスト
      1. オッドアイの国際霊能テロリスト
      2. 逆神忍
      3. 複数の西洋術者
      4. アーネスト・ワイルドファング
      5. アーネストの部下
      6. 複数の特級霊能テロリスト
      7. ジェーン・ラヴェイ
      8. ジェーンの信奉者
      9. 共謀者や懸賞金付きの犯罪者
    9. 怪異・式神
      1. 浮遊霊や動物霊
      2. 三体の巨大なガーゴイル
      3. 飛行する式神
      4. 巨大な狼
      5. 虎女
      6. 獣化人間
      7. ミホト
      8. 巨大な女性
      9. 巨大な四神式神
      10. 百体を超える式神
      11. 巨大な青龍
      12. 三体の巨大式神
      13. レヴィアタン
  7. 展開まとめ
    1. プロローグ 
    2. 第一章 パーツ集めの夏休み 
    3. 第二章 護衛任務 
    4. 第三章 懸賞首たちの宴
    5. 第四章 殺したいほど愛してる 
    6. エピローグ 
    7. エピローグ2 
  8. 同シリーズ
    1. 出会ってひと突きで絶頂除霊! シリーズ
  9. 赤城大空 氏の著作の別シリーズ
  10. 下ネタという概念が存在しない退屈な世界 シリーズ
  11. 淫魔追放
    1. その他フィクション

物語の概要

■ 作品概要

本作は、対象を強制的に絶頂させて除霊する能力「絶頂除霊」を両手に宿す主人公・古屋晴久たちが活躍する退魔活劇シリーズの第8巻である。 夏休みの後半、サキュバスパーツ探しを進めようとしていた晴久たちの前に、欧州から来日予定だったアルメリア王国の要人・シーラ姫が追っ手から逃れて現れる。晴久たちは退魔師協会から彼女の四日間の護衛を命じられるが、そこに強大な力を持つ国際霊能テロリストのアーネスト・ワイルドファングが襲来する。アーネストの放つ「人間を獣化させ欲望を解放する能力」により、街の人々のみならず、美咲、桜、楓といった仲間たちまでもが半獣化し、晴久へ強烈な欲望を向けて襲い掛かる事態となってしまう。晴久はシーラ姫を守りながら、暴走する仲間たちの欲望を躱し、アーネストを撃退するために奮闘する。

■ 主要キャラクター

古屋晴久:絶頂除霊の呪いを両手に宿す少年である。偶然シーラ姫を救出し、退魔師協会からの命令で彼女の護衛を務めることになる。獣化した仲間たちからの求愛と敵の猛攻から姫を守り抜くため奔走する。

シーラ・マリアフォールド:アルメリア王国の王女である。他者の能力を永続的に増幅させる希少な能力を持つため、テロリストに狙われる。晴久たちに護衛されながら、日本の街歩きやゲームなど、普通の少女としての自由な時間を楽しむ。

アーネスト・ワイルドファング:国際霊能テロリストである。人間を獣化させて欲望を解放させる能力を持ち、シーラ姫の増幅能力を利用して自身の獣化能力をさらに強化しようと目論む。

ジェーン・ラヴェイ:悪魔憑きの西洋人少女である。水と嫉妬を司る上級魔族レヴィアタンを宿しており、本物のシーラ姫に成り代わって晴久に異常な執着と愛情を向ける。

葛乃葉菊乃:退魔師協会会長であり十二師天の一人である。一連のテロ事件の裏を読み、晴久たちを囮にしてジェーンを誘い出し、童戸手鞠とともに強力な連携でジェーンを追い詰める凄腕の退魔師である。

■ 物語の特徴

本作は、過激なエロコメディ要素と本格的な異能バトルが融合した作風が特徴である。 第8巻では、敵の能力によってヒロインたちが「獣化(ケモ耳化)」し、理性を失って主人公へ強烈な欲望を向けるという、フェティッシュでドタバタな展開が大きな魅力となっている。外敵から要人を護衛するというシリアスな任務と、獣化した仲間たちから貞操を守るというコミカルな危機が同時に進行する点が読者の興味を強く惹きつける。 また、物語の裏側では日本最強の退魔師たちによる高度な頭脳戦やバトルが展開されるほか、エピローグにかけて童戸手鞠や相馬千鶴といった日本側の切り札が敵に封印されるなど、サキュバスパーツを巡る世界規模の同時多発テロが本格化しており、シリーズ全体の新章の幕開けとなる緊迫感も兼ね備えている。

読んだ本のタイトル

出会ってひと突きで絶頂除霊 ! 8
著者:赤城大空
イラスト: 魔太郎
出版社:小学館ガガガ文庫

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あらすじ・内容

ケモ耳大発生! 獣と化した仲間たち。

セックスアルカディア
それは、かつてサキュバス王が作り上げたという、あらゆる性的欲望が満たされる淫都。

ビーチにて、ひと時のアツい罰則懲罰を終えた晴久たち。
夏休みも後半にさしかかり、彼らは再びサキュバスパーツ探しに本腰を入れようとしていた。
だが突如、世間は訪日が予定されていた欧州の要人・シーラ姫の行方不明というニュースに騒然となる。

偶然、追っ手から逃げるシーラ姫と遭遇した晴久たちは、協会から姫の護衛を命じられる。
そして現れる国際霊能テロリスト--アーネスト・ワイルドファング。

人間を獣化させ、欲望を解放させるその能力は、街の人間たち、ひいては頼りになるはずの美咲、桜、楓までにも及んでしまう。
シーラ姫を守る。晴久への想いを秘める彼女たちの欲望から身を守る。
そしてアーネストを撃退する。

この不可能ミッションを晴久を、絶頂除霊の能力で打開できるのか!?

ウグウウウウウウウウウウ!?!?

それは獣の叫びか、聖女の嘆きか。

そして、この事件の裏で、サキュバスパーツを巡る戦端が開かれていることを、彼らはまだ知らない。
絶頂退魔シリーズ第8弾!

出会ってひと突きで絶頂除霊!8

感想

いつもの破天荒なコメディに加え、シリーズでも屈指の緊張感を味わえるバトルが描かれた一冊だった。下ネタ全開の作品であることは変わらないものの、今回は世界観そのものが大きく動き始めた印象を受ける。

今巻でまず感じたのは、これまでよりも下ネタ描写が少し落ち着いたことだ。

以前のような突き抜けた展開に比べると控えめに見えたが、それでも本作の基準での話である。ヒロインたちがケダモノのようになって晴久へ襲いかかる展開は十分にぶっ飛んでいて、「これで大人しい扱いなのか」と思わず笑ってしまった。

犬のように匂いを嗅いで体調を確かめたり、不意打ちで暗がりへ連れ込もうとしたりと、冷静に考えればかなり危険な状況なのだが、不思議とギャグとして成立してしまう空気は、この作品ならではだと感じる。

一方で、今回は戦闘パートの印象が非常に強かった。

全国各地で同時多発的に事件が発生し、日本側の戦力が分散したことで、晴久たちが姫の護衛という重い役目を担うことになる。

これまでの敵とは違い、相手は国際的な霊能テロリストばかりで、一気に物語のスケールが広がったように感じた。

どの敵も一筋縄ではいかず、「いつものギャグで何とかなる」という安心感が薄れていたこともあり、最後まで緊張感を持って読めた。

特に終盤に現れる強敵は圧倒的な存在感だった。

作者があとがきなどで思い入れを語っていることもあり、その強さや異質さには妙な説得力がある。主人公たちが苦戦を強いられる展開が続き、「今回は本当に危ないかもしれない」と感じながらページをめくっていた。

激戦の末に危機はひとまず乗り越えたものの、物語はここで終わらない。

欧州側の価値観や思想も少しずつ描かれ始め、単純な勧善懲悪では片付けられない空気が漂っていた。価値観の違いが大きな対立へ発展していきそうな雰囲気があり、今後は日本だけでなく世界規模の戦いになっていくのだろうと期待が膨らむ。

今巻は、シリーズらしい笑える場面を残しつつも、物語全体が大きく動き始めた転換点のような一冊だった。コミカルな雰囲気とシリアスな戦いのバランスも良く、読み終えた後には「この先はどうなるのだろう」と続きが気になって仕方がなくなった。

ちなみに

この作品の作者さんの別作品は映画になってます。

二度めの夏、二度と会えない君

嘘じゃありません。
本当の事です。

もう一つはアニメ化にしております。
下ネタという概念が存在しない退屈な世界

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絶頂除霊 ! 7巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 9巻レビュー

考察・解説

世界規模の霊能テロ

本作の第8巻において発生する「世界規模の霊能テロ(同時多発霊能テロ)」は、日本に集まるサキュバス王の性遺物を奪取するため、国際的な特級霊能犯罪者たちが一斉に引き起こした未曾有の事件である。その詳細な背景と物語における展開を構成する要素は以下の通りである。

淫都ソドムとゴモラ復活目的の東京湾沖襲撃と欧州祓魔連合弩級護衛艦隊壊滅

この大規模テロの首謀者であるオッドアイの国際霊能テロリストや、アーネスト・ワイルドファングらの真の目的は、かつてサキュバス王が作り上げたという、あらゆる性的欲望が満たされる淫都・ソドムとゴモラを復活させることであった。

・そのために必要なサキュバス王の性遺物を奪うべく、彼らはパーツが集中する日本を大規模に破壊し、混乱に乗じて奪い取る計画を立てる。

・事件の発端として、来日が予定されていたアルメリア王国のシーラ姫を乗せた欧州祓魔連合の弩級護衛艦隊が東京湾沖で襲撃された。

・第三聖人を含む約二百名の精鋭が倒され、艦隊が壊滅するという衝撃的な事件が引き起こされた。

相馬千鶴予知の日本各地同時多発暴走とダム爆破および戦力分散孤立護衛

相馬家当主の相馬千鶴が「予言しきれないほど多数の事件が日本へ迫る」と予知した通り、テロリストたちは一斉に日本各地で行動を開始した。

・彼らは綿密な連携というよりも、それぞれが己の欲望を満たすために勝手に暴れ回っていた。

・アーネストによる広域の獣化感染現象のほかにも、紅富士の園周辺のダム爆破、巨大な女性による街の破壊、沖縄の霊能部隊駐屯地襲撃など、致命的な事件が同時に発生する。

・これにより退魔師協会の戦力は完全に分散させられ、晴久たちは孤立無援の状態でシーラ姫の護衛や強敵の迎撃を強いられることになった。

特級霊能テロリストの侵入と元十二師天逆神忍らの金銭雇用協力者化

日本へ侵入した敵は、いずれも単独で国家や艦隊を脅かす特級霊能テロリストたちであった。

・艦隊を単独で沈めたアーネストや、上級魔族レヴィアタンを宿す悪魔憑きであるジェーン・ラヴェイなどがその筆頭である。

・さらに恐ろしいことに、オッドアイのテロリストは、祖国への愛着を捨てた元十二師天の女性である逆神忍などを金で雇い入れる。

・日本の内情を知る強力な霊能者を協力者として引き入れていた。

菊乃手鞠救援によるジェーン撃退と二大切り札の異相空間封印に伴う状況完成

晴久たちの決死の奮闘や、葛乃葉菊乃と童戸手鞠の救援によってジェーンは撃退され、アーネストの捕縛にも成功する。

・その他の共謀者や手配犯も多数拘束されたことで、同時多発テロは退魔師協会側の大きな勝利で収束したかに見えた。

・しかし、一連の派手なテロの裏側で、テロリストたちは日本側の最大の強みである相馬家の予言能力と童戸家の幸運能力の無力化という真の目的を遂行していた。

・事後処理で疲弊した隙を突かれ、童戸手鞠は逆神忍の奇襲によって、相馬千鶴はオッドアイの女性の襲撃によって、それぞれ現世から干渉できない異相空間へと封じ込められてしまう。

・これにより日本側は未来予知と絶対的な幸運という二つの切り札を失い、テロリストたちは対等にパーツを奪い合える状況を完成させた。

まとめ

世界規模の霊能テロを巡る一連の顛末は、淫都の復活を目指す凶悪な国際犯罪者たちの圧倒的な暴力によって日本全土が未曾有の混乱に陥れられ、戦術的な勝利の裏で国家防衛の根幹たる予言と幸運の力を封殺された絶望的な抗争の記録である。各地で多発したダム爆破や広域獣化などの猛威によって協会戦力を分散させ、その隙に相馬千鶴と童戸手鞠を異相空間へパージしたプロセスは、テロリストたちの冷徹かつ極めて高度な戦略的知略を示している。最終的に、ジェーンやアーネストといった特級の脅威を退けながらも、最大の切り札を失ったことで敵味方の均衡が完全に崩壊し、サキュバス王の性遺物を巡る次なる激戦に対して日本側が圧倒的に不利な状況での戦いを強いられることとなった顛末は、この同時多発テロが単なる破壊活動にとどまらず、防衛網を内側から完全に解体し、終わりのない争奪戦の地獄へと引きずり込むための絶対的な布石であったことを厳密に証明している。

シーラ姫の護衛任務

本作の第8巻において展開される「シーラ姫の護衛任務」は、世界規模の霊能テロというシリアスな危機と、ヒロインたちの獣化や密着生活というドタバタ劇が入り交じる本作の中核となる出来事である。任務の経緯と詳細を構成する要素は以下の通りである。

護衛艦隊壊滅に伴うシーラ姫救出と呪具による晴久密着呪い発生

アルメリア王国のシーラ姫は、日本との友好関係構築のために来日を予定していた。

・東京湾沖で欧州祓魔連合の護衛艦隊が国際霊能テロリストの襲撃を受けて壊滅する。

・一人で逃走し、横浜で巨大なガーゴイルに追われていたシーラ姫は、偶然居合わせた古屋晴久たちに救出された。

・しかし、追っ手の西洋術者が残した呪具により、晴久とシーラ姫の手は強力に接着され、離れなくなってしまった。

戦力分散に伴う四日間限定少数護衛命令と春ヶ原散策および同室監視混迷

退魔師協会会長の葛乃葉菊乃は、欧州からの増援が到着するまでの四日間、晴久たちだけでシーラ姫を護衛するよう命じた。

・菊乃は、日本国内に迫る無数の霊能テロへ戦力を回すため、あえて晴久たちを少数で護衛させ、強敵を誘い出す餌にするという裏の狙いを持っていた。

・手が離れないため、晴久はトイレや入浴などもシーラ姫と行動を共にせざるを得なくなる。

・同室で監視する文鳥桜や葛乃葉楓、別室待機を命じられた宗谷美咲の嫉妬を巻き込んで大混乱となった。

・一方で、王族として不自由な生活を送ってきたシーラ姫から「友人のように接してほしい」と頼まれた晴久たちは、変身術で密着状態を隠しながら、春ヶ原での買い物や動物園の散策など、普通の学生のような自由な時間を共に楽しんだ。

増幅能力目的のアーネスト襲撃と満月獣化共鳴遠吠えに伴うヒロイン理失暴走

シーラ姫を狙っていたのは、護衛艦隊を単独で沈めたアーネスト・ワイルドファングであった。

・彼女の目的は、マリアフォールド王家の女性が持つ、他者の能力を数倍に高める増幅能力を利用し、自身の獣化能力をさらに強化することであった。

・護衛最終日、ホテルでの記者会見後にアーネストが襲撃を仕掛ける。

・アーネストが至近距離から満月で強化された獣化共鳴の遠吠えを放ったことで、護衛である美咲、桜、楓までもが完全に理性を失って獣化し、敵の目前で晴久へ強烈な欲望を向けて襲い掛かるという絶望的な状況に陥った。

ジェーン自作自演成り代わり露呈と記憶共有目覚めシーラ姫責任要求帰国

晴久たちは獣化した仲間たちの暴走を凌ぎつつ、激戦の末に絶頂除霊でアーネストを撃退することに成功した。

・しかし直後、護衛していたシーラ姫の正体が、悪魔憑きのテロリストであるジェーン・ラヴェイが成り代わった偽物であったことが発覚する。

・ジェーンは晴久に異常な愛情を抱き、本物の姫を隠してこの四日間の出会いを自作自演していた。

・その後、ジェーンは菊乃と童戸手鞠の介入によって退けられ、本物のシーラ姫は都内の高級ホテルで昏睡しているところを無事に保護されて欧州側へ引き渡された。

・しかし、ジェーンの成り代わり術式の影響で、本物の姫には、ジェーンがシーラ姫として晴久と過ごした四日間の記憶や口づけの記憶がすべて共有されたまま残ってしまった。

・目覚めた姫が晴久に責任を取るよう求めたまま帰国するという、新たな火種を残す結末となった。

まとめ

シーラ姫の護衛任務を巡る一連の顛末は、国家的な要人警護という重責が、密着呪いや敵の電撃的な急襲、そしてヒロインたちの獣化暴走によって前代未聞の混迷を極めながらも、最終的に敵の欺瞞を暴いて事件の収束を見た波乱に満ちた防衛の記録である。アーネストの遠吠えによって美咲たちが理性を失って襲いかかる絶望的な包囲網を突破したプロセスは、晴久たちの高い戦闘対応力と状況の過酷さを示している。最終的に、ジェーンの成り代わりという自作自演の罠を見抜いて本物のシーラ姫の救出に成功したものの、術式の副作用によって四日間の密着記憶が本物の姫に完全共有され、晴久への責任要求という国際的な火種を残したまま幕を閉じた顛末は、この護衛任務が単なる局地的なテロリスト撃退にとどまらず、晴久とヒロインたちの関係に新たな波紋を広げ、世界規模の勢力と結びつく絶対的な契機となったことを厳密に証明している。

獣化現象と満月の戦い

本作の第8巻において発生した「獣化現象」と、それを引き起こした国際霊能テロリストであるアーネスト・ワイルドファングとの「満月の戦い」は、護衛任務を極限の混乱へ陥れた最大の危機である。その詳細な展開を構成する要素は以下の通りである。

強制変身理性喪失の獣化遠吠え霊障と動物園槐猫化甘え寄りパニック

獣化現象は、アーネストの能力である遠吠えの獣化感染によって引き起こされる。

・この霊力が込められた遠吠えを聞いた人間は強制的に獣の姿へと変化し、理性を失って抑圧されていた欲望を解放してしまう。

・これは直接的な凶暴化を促すわけではなく、暴力や食欲、あるいはただ甘えたいといった個人の隠された欲望を剥き出しにする霊障である。

・動物園での初回の襲撃では、一般人だけでなく童戸槐までもが影響を受けて猫化し、晴久へ甘え寄るという事態が発生した。

・発症率は2〜3割程度であり、1〜2日で自然に鎮静化するものの、感染力が強いため大規模なパニックを引き起こす。

満月テロ実行に伴う会場全体巨大遠吠えと至近距離共鳴四人半獣化

アーネストは、自身の能力を最大限に高めるため満月の夜を狙って大規模なテロを実行に移した。

・シーラ姫の護衛最終日、厳重な警備が敷かれたホテルでの記者会見中に、アーネストは会場全体を揺るがす巨大な遠吠えを放つ。

・彼女の真の狙いは、マリアフォールド王家の女性が持つ、他者の能力を永続的に高める増幅能力を利用し、自身の獣化能力をさらに強化することであった。

・突入してきたアーネストは至近距離からの獣化共鳴を放ち、会場の精鋭退魔師たちだけでなく、晴久の仲間である宗谷美咲、葛乃葉楓、文鳥桜、烏丸葵までも半獣化させてしまう。

トラック投擲霊装車横転の満月怪力と再度共鳴に伴うヒロイン三名完全暴走

晴久たちは霊装車でホテルからの脱出を図るが、アーネストは満月によって強化された異常な身体能力で追撃し、投げつけた大型トラックで車両を横転させた。

・アーネストは、自身の欲望を永続的に満たすためにあらゆる性的欲望が叶う淫都ソドムとゴモラの復活、すなわちサキュバス王の性遺物の収集を目論んでいると動機を語る。

・晴久たちは速攻で決着をつけようとするが、アーネストの満月の怪力によって反撃を吹き飛ばされてしまった。

・さらに、再び至近距離から獣会共鳴を浴びたことで、美咲、桜、楓の三人は完全に理性を失う。

・彼女たちは晴久だけへ強い執着を向けるようになり、晴久は敵と味方の両方から襲われるという絶望的な状況に追い込まれた。

独占本能のアーネスト猛反撃と葵光縄拘束に伴う晴久絶頂除霊直撃無力化

しかし、理性を失った美咲たちは晴久を独占したいという強い執着ゆえに、晴久を奪おうとするアーネストに対して三人揃って猛反撃を開始した。

・理性が飛んでいても晴久を守るという本能だけは一致しており、弱体化したアーネストと互角の攻防を繰り広げる。

・その乱戦の中、激しい刺激を受けた美咲が膨大な霊力を放出し、巨大な四神式神や百体を超える式神の軍団を召喚して形勢を一気に逆転させた。

・最後は、普段から欲望を隠していないため獣化の影響が薄かった烏丸葵が、光の縄でアーネストを拘束する。

・その隙を突き、シーラ姫を守るために怒りを爆発させた晴久が、敵の攻撃をすべて回避して絶頂除霊を直撃させた。

・アーネストが激しい快感に耐えきれず完全に無力化されたことで、獣化していた人々も元の姿へと戻り、過酷な獣化現象の脅威は去ることとなった。

まとめ

アーネスト・ワイルドファングの襲撃とそれをもたらした獣化現象は、個人の秘められた欲望を強制的に暴き出す精神汚染と、満月の怪力による物理的破壊が融合した、第8巻における最大級の霊的災害の記録である。記者会見場への遠吠え強襲から、大型トラックを投げつけて霊装車を大破させ、ヒロインたちの理性を完全に奪って晴久へと向けさせたプロセスは、アーネストの圧倒的な戦闘能力と作戦の非道さを示している。最終的に、理性を失いながらも晴久を守り独占せんとするヒロインたちの本能的な反撃と美咲の大量式神召喚、そして葵の拘束に支えられた晴久の決死の絶頂除霊によってアーネストを完全無力化に追い込んだ顛末は、敵味方の識別すら崩壊する極限のパニックであっても、強固な執着と本能の連携、そして確実な除霊技術の執行によって打破され、失われた理性と都市の平穏が瀬戸際で奪還されることを厳密に証明している。

悪魔憑きジェーンの襲撃

本作の第8巻における最大の絶望的展開である悪魔憑きジェーンの襲撃は、護衛任務の根底を覆す衝撃的な事実とともに、主人公たちをかつてない危機へと追いやった。その詳細な展開と結末は以下の通りである。

シーラ姫の真実とジェーンの異常な執着

アーネスト・ワイルドファングを絶頂除霊で撃退した直後、晴久たちが四日間命がけで護衛してきたシーラ姫の正体が、悪魔憑きの西洋人少女ジェーン・ラヴェイであったことが発覚する。

・彼女は事前に資料で晴久を知って運命の相手と思い込んでおり、アーネストが狙っていた本物の姫を先に奪い、成り代わり術式でなりすましていた。

・晴久と手が離れなくなる呪いを仕掛けたのも彼女の自作自演である。

・一連のテロ事件の混乱に乗じて晴久を連れ去り、二人だけで暮らすという極めて身勝手で異常な愛情がすべての動機であった。

上級魔族レヴィアタンの圧倒的な力

ジェーンは、水と嫉妬を司る上級魔族レヴィアタンを宿す危険な悪魔憑きであり、その戦闘力、持続力、回復力は通常の悪魔憑きや天人降ろしをも凌駕するものであった。

・正体を現した彼女は愛の鳥籠と呼ばれる五十枚以上の巨大な遮断結界を展開して晴久たちの退路を完全に塞ぐ。

・無数の魔力弾で楓や美咲の結界や式神をたやすく粉砕した。

・最後は街全体を覆うほどの巨大な濁流を引き起こして晴久たちを瓦礫ごと飲み込み、一行を瞬く間に壊滅状態へと追い込んだ。

日本最強の退魔師たちの介入と反撃

絶体絶命の窮地に陥った晴久たちを救ったのは、密かに事態を監視していた十二師天の葛乃葉菊乃と童戸手鞠であった。

・相馬家の予言に基づき、強敵を誘い出す餌として晴久たちをあえて少数で配置していた菊乃は、ジェーンの登場に合わせて反撃を開始する。

・菊乃の完全幻術によってジェーンの認識を支配し、手鞠の幸運能力をジェーンへの不幸、すなわち地盤沈下や爆発などの事故として作用させることで、彼女の大規模な水攻撃を無力化していった。

・さらに、菊乃の幻術で恐怖を消された烏丸が強力な光の拘束術をかけ続け、美咲と楓が作り出した精鋭の影武者部隊とともに、晴久が決死の突撃を仕掛けるという高度な連携が展開された。

決着と残された火種

晴久はミホトの怪力と五感強化を駆使してジェーンへ突進するが、ジェーンの胸元から現れたレヴィアタンが直接防御を行い、日本最強クラスの援護があってもなお埋めがたい力量差を見せつける。

・しかし、晴久が正面から注意を引いた隙を突き、背後に回り込んだ菊乃が神界の懲罰具をジェーンに打ち込むことに成功した。

・これによりジェーンと魔族の接続が阻害されて大幅に弱体化し、不利を悟ったジェーンは自らを巻き込む大爆発を起こして黒い霧とともに逃走した。

・ジェーンは撃退されたものの、彼女が使用した成り代わり術式の性質により、後日無事に救出された本物のシーラ姫には、ジェーンが晴久と過ごし、強引に口づけまで交わした四日間の記憶がすべて共有されてしまうという、後の国際問題にも発展しかねない厄激な余波を残す結果となった。

まとめ

悪魔憑きジェーンの襲撃を巡る一連の顛末は、これまでの護衛任務が敵の自作自演による欺瞞であったという衝撃的な事実から、上級魔族レヴィアタンによる圧倒的な破壊、そして日本最強クラスの退魔師の介入による決死の迎撃にいたる大騒乱の記録である。街全体を濁流で流し去る圧倒的な猛威に対し、菊乃の完全幻術や手鞠の幸運能力の反転作用、そして晴久たちの高度な連携によってジェーンを撤退へ追い込んだプロセスは、彼らの底力と状況の緊迫性を示している。最終的に、ジェーンの撃退には成功したものの、成り代わり術式の副作用によって四日間の密着や口づけの記憶が本物のシーラ姫に完全共有され、国際的な火種を残したまま幕を閉じた顛末は、この襲撃が単なる局地的な悪魔憑きとの戦闘にとどまらず、晴久たちの運命を世界規模の混沌と新たな人間関係の波乱へと引きずり込むための絶対的な転換点となったことを厳密に証明している。

幸運と予言の封印

本作の第8巻のエピローグにおいて描かれる「幸運と予言の封印」は、退魔師協会側の勝利で終わったかに見えた同時多発テロの裏で進行していた、テロリストたちの真の目的であり、次章への絶望的な転換点となる事件である。その詳細と物語における重大な意味を構成する要素は以下の通りである。

童戸手鞠の封印(幸運の反転と無力化)

悪魔憑きジェーンを撃退した後、消耗した状態で東北の本家へ戻ろうとしていた童戸手鞠は、道中で想定外の襲撃を受ける。

・普段なら幸運によって赤信号に止まることすらない彼女の車が停止させられ、道路が崩落して転落してしまう。

・これは手鞠の幸運が無効化されたのではなく、不運へ反転させられた結果であった。

・襲撃者は、天邪鬼の怪異家系に生まれた元十二師天の霊能犯罪者・逆神忍である。

・忍は手鞠の体勢が崩れた隙を突いて魔族から渡された魔具を使用し、彼女を異相空間へと封じ込めた。

・これにより、手鞠の姿は現世に残りながらも誰も触れることができず、本人も現世に対して一切の干渉ができない状態となってしまった。

相馬千鶴の封印(未来予知の封殺)

手鞠が襲撃されたのと同じころ、武装した巫女たちによる厳重な防衛を誇る相馬家本家も襲撃を受けていた。

・屋敷を制圧したのは、今回のテロの首謀者の一人であるオッドアイの国際霊能テロリストである。

・彼女は気絶した当主・相馬千鶴へ魔具を押し当て、手鞠と同じく異相空間へ封印してしまう。

・千鶴は会話こそできるものの、現世の未来を予言することがほぼ不可能な状態に陥った。

・魔族が作ったこの呪具を解除するには長い時間が必要であり、テロリストたちがサキュバス王の性遺物を奪うには十分すぎる猶予を与える結果となった。

テロリストの真の狙いと今後の絶望的な影響

第8巻のジェーンとの決戦において、手鞠の幸運能力と千鶴の予言能力は、圧倒的な力を持つ悪魔憑きを追い詰めるための決定的な連携の要(切り札)として機能していた。

・オッドアイのテロリストは、日本側の最大の強みであるこれら二つの能力を失わせることで、これで対等にパーツを奪い合える、と確信して崩壊した相馬家をあとにした。

・一連の派手な同時多発テロは、退魔師協会の戦力を分散させてこの切り札の無力化を完遂させるための環境作りという側面を持っていた。

・絶対的な幸運と未来予知という強力な盾を同時に失ったことで、晴久たち日本側は、次巻以降、世界中から集まる特級の犯罪者たちと極めて不利で過酷なパーツ争奪戦を強いられることになる。

まとめ

幸運と予言の封印を巡る一連の歩みは、派手な同時多発テロによる戦力分散を隠れ蓑にし、日本側の防衛基盤を支えていた絶対的な二大切り札を完璧に無力化したテロリストたちの狡知に満ちた勝利の記録である。逆神忍の不運反転による強襲とオッドアイのテロリストによる本家制圧を経て、手鞠と千鶴を干渉不能な異相空間へパージしたプロセスは、敵側の戦略的冷徹さを示している。最終的に、解除に長い時間を要する魔族の呪具によって未来予知と絶対的幸運を封じられ、敵と対等にパーツを奪い合わざるを得ない不利な盤面を強制された顛末は、この封印劇が単なる個別の隠密襲撃にとどまらず、晴久たち日本側を盾のない丸裸の状態で特級の霊能犯罪者たちとの凄惨な消耗戦へと引きずり込んでいく絶対的な引き金となったことを厳密に証明している。

絶頂除霊 ! 7巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 9巻レビュー

登場キャラクター

都立退魔学園

古屋晴久

サキュバスの角由来の五感強化を持つ少年である。シーラ姫を助け、彼女の護衛を担う。

・所属組織、地位や役職
 都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 西洋術者からシーラ姫を救出し、退魔師協会から四日間の護衛を命じられた。アーネストを絶頂除霊で撃退している。ジェーンの正体が発覚した後は、仲間たちとともに決死の戦いを繰り広げた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 西洋術者の呪具によって、シーラ姫と手が離れなくなる呪いを受けた。

文鳥桜

晴久の護衛兼監視役を務める少女である。晴久へ好意を抱き、美咲やシーラ姫へ嫉妬心を隠さない。

・所属組織、地位や役職
 都立退魔学園の生徒。監査部所属。
・物語内での具体的な行動や成果
 晴久のシーラ姫護衛に同行し、結界や攻撃術式で戦闘を支援した。アーネストの能力で獣化し、理性を失って晴久へ執着している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 獣化中の記憶が残っており、事後に激しい羞恥を味わった。

宗谷美咲

淫魔眼の宿主である少女である。呪いを解くためにパーツ集めへ焦りを見せている。

・所属組織、地位や役職
 都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 式神を用いて晴久の戦闘や逃走を支援した。アーネストの能力で獣化し、晴久へ強い欲望を向けている。戦いの最中に膨大な霊力を放出し、百体以上の式神を召喚して形勢を逆転させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 淫魔眼の性質から、シーラ姫の護衛中は別室待機を命じられていた。

童戸槐

不幸体質が緩和され、明るさを取り戻した少年である。晴久を慕っている。

・所属組織、地位や役職
 都立退魔学園の昇天サポートセンターの手伝い。
・物語内での具体的な行動や成果
 動物園で遠吠えの影響を受け、猫耳と尻尾を生やして晴久へ甘えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 サキュバスの角由来の五感強化がわずかに残っている。

男子生徒たち

槐を深く慕っている者たちである。晴久へ強い敵意を向けた。

・所属組織、地位や役職
 都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 槐が昇天サポートセンターで働いていると知り、自主的に手伝いへ集まっていた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 槐の頼みには即座に従う。

烏丸葵

欲望を隠さない性格の少女である。巫女たちへの期待を裏切られ、街へ遊びに出ようとした。

・所属組織、地位や役職
 都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 シーラ姫の護衛に同行し、霊装車の補助運転を担当した。ジェーンとの戦いでは菊乃の幻術によって恐怖を消され、強力な光の拘束術を何度もかけ直している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 普段から欲望を隠していないため、アーネストの獣化能力の影響が薄かった。

退魔師協会・監査部・十二師天

世話役の緑

槐に付き添う世話役である。

・所属組織、地位や役職
 退魔師協会あるいは童戸家の関係者。
・物語内での具体的な行動や成果
 槐の五感強化について晴久たちへ説明した。動物園で猫化した槐を保護している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

葛乃葉菊乃

退魔師協会の会長であり、十二師天の一人である。晴久たちを囮にして強敵を誘い出す計画を立てた。

・所属組織、地位や役職
 退魔師協会会長。十二師天。
・物語内での具体的な行動や成果
 晴久たちへ四日間のシーラ姫護衛を命じた。ジェーンの襲撃時に完全幻術を用いて援護し、神界の懲罰具を打ち込んで敵を弱体化させている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 変身術で周囲に紛れ、護衛開始時から密かに監視を行っていた。

ナギサ

広域テロ対策本部で指示を出す退魔師である。

・所属組織、地位や役職
 退魔師協会・広域テロ対策本部。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーネストの正体と能力を把握した。同時多発テロの発生を受け、晴久たちへの増援を拒否して都内の広域結界を展開している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

葛乃葉家

葛乃葉楓

変身術を得意とする少女である。晴久へ想いを寄せている。

・所属組織、地位や役職
 葛乃葉家。都立退魔学園の生徒。
・物語内での具体的な行動や成果
 シーラ姫の護衛に同行し、変身術で晴久と姫の密着状態を隠した。アーネストの能力で獣化し、理性を失っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 獣化中の出来事を覚えており、事後に激しく取り乱した。

相馬家

相馬千鶴

占い嫌いで知られ、偽の予言で依頼者を混乱させる悪癖を持つ当主である。

・所属組織、地位や役職
 相馬家当主。
・物語内での具体的な行動や成果
 晴久へ美咲と結婚するなどの偽りの未来を告げた。その後、無数の事件が日本へ迫る未来を予知し、協会へ報告している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オッドアイの女性によって異相空間へ封印され、予言能力を無力化された。

相馬礼

相馬千鶴を守る巫女たちのリーダーである。占いへの依存を危惧している。

・所属組織、地位や役職
 相馬家の巫女頭。
・物語内での具体的な行動や成果
 占いを強要する企業経営者たちを叩きのめした。晴久たちの占い依頼を明確に拒絶している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 相馬家が襲撃された際、満身創痍の状態で意識を保っていた。

巫女たち

霊視と先読みを得意とし、荒事に長けた集団である。

・所属組織、地位や役職
 相馬家の武装巫女。
・物語内での具体的な行動や成果
 美咲の交渉に揺らいだが、当主の護衛を続けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 オッドアイの女性による襲撃で全員が倒された。

童戸家

童戸手鞠

自身に都合よく働く幸運能力を持つ女性である。

・所属組織、地位や役職
 童戸家。
・物語内での具体的な行動や成果
 菊乃とともにジェーンの襲撃を待ち構え、幸運能力で敵の攻撃を不幸な事故へ変換して援護した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 逆神忍によって幸運を不運へ反転させられ、異相空間へ封印された。

皇樹家

皇樹夏樹

晴久たちに協力する人物である。

・所属組織、地位や役職
 皇樹家。
・物語内での具体的な行動や成果
 相馬家当主と晴久たちが面会できるよう手配した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 見返りとして、晴久に紅富士の園へ遊びに来るよう求めた。

アルメリア王国・欧州祓魔連合

シーラ・マリアフォールド

アルメリア王国の王女である。他者の能力を永続的に増幅させる希少な能力を持つ。

・所属組織、地位や役職
 アルメリア王国・王女。
・物語内での具体的な行動や成果
 日本との友好関係構築のために来日予定であった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ジェーンによって成り代わり術式を受け、都内の高級ホテルで昏睡していたところを発見された。成り代わりの影響で、ジェーンが晴久と過ごした四日間の記憶を共有してしまった。

第三聖人

欧州祓魔連合の精鋭である。

・所属組織、地位や役職
 欧州祓魔連合。
・物語内での具体的な行動や成果
 護衛艦隊が襲撃された際、シーラ姫を脱出用ボートで逃がした。神族の力を限界まで引き出して襲撃者を食い止めようとしている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アーネストの襲撃により犠牲となった。

霊能犯罪組織・テロリスト

オッドアイの国際霊能テロリスト

日本を混乱させ、パーツを奪おうと企む異国の女性である。

・所属組織、地位や役職
 国際霊能テロリスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 元十二師天の女性と契約を結び、日本破壊の計画を立てた。相馬家本家を襲撃し、相馬千鶴を異相空間へ封印している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 童戸家の幸運と相馬家の予言を失わせることに成功した。

逆神忍

天邪鬼の怪異家系に生まれた人物である。祖国への愛着を否定している。

・所属組織、地位や役職
 元十二師天の霊能犯罪者。
・物語内での具体的な行動や成果
 オッドアイの女性と契約を結んだ。童戸手鞠を奇襲して能力を反転させ、異相空間へ封印した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 雇い主へ任務完了を報告している。

複数の西洋術者

シーラ姫を追跡していた者たちである。

・所属組織、地位や役職
 ジェーンの信奉者。
・物語内での具体的な行動や成果
 横浜でシーラ姫を追い詰めた。晴久たちに敗れて逃走する際、二人の手を離れなくする呪具を作動させている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

アーネスト・ワイルドファング

人間を獣化させる能力を持つ国際霊能テロリストである。淫都復活を目指している。

・所属組織、地位や役職
 国際霊能テロリスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 欧州の護衛艦隊を単独で壊滅させた。記者会見場を襲撃し、満月で強化された獣化共鳴を放って晴久たちを追い詰めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 晴久の絶頂除霊を受けて無力化され、捕縛された。

アーネストの部下

アーネストの指示で動く者たちである。

・所属組織、地位や役職
 アーネストの部下。
・物語内での具体的な行動や成果
 行方が途切れたシーラ姫を追跡するために放たれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

複数の特級霊能テロリスト

アンドロマリウスから声を聞き、欲望のためにパーツを狙う者たちである。

・所属組織、地位や役職
 特級霊能テロリスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 日本各地で同時多発テロを引き起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

ジェーン・ラヴェイ

晴久を運命の相手と思い込み、異常な執着を向ける悪魔憑きの少女である。

・所属組織、地位や役職
 霊能テロリスト。悪魔憑き。
・物語内での具体的な行動や成果
 本物のシーラ姫に成り代わり、晴久と四日間を過ごした。正体を現した後、レヴィアタンの力で巨大な遮断結界を展開し、晴久たちを壊滅状態へ追い込んでいる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 菊乃の神界の懲罰具によって魔族との接続を阻害され、弱体化して逃走した。

ジェーンの信奉者

ジェーンの計画に協力する者たちである。

・所属組織、地位や役職
 ジェーンの協力者。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジェーンが晴久と出会うための演出に利用された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

共謀者や懸賞金付きの犯罪者

同時多発テロに関与した者たちである。

・所属組織、地位や役職
 犯罪者。
・物語内での具体的な行動や成果
 一連の事件の収束に伴い、多数が拘束された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

怪異・式神

浮遊霊や動物霊

昇天サポートセンターで保護されている霊体である。

・所属組織、地位や役職
 怪異。
・物語内での具体的な行動や成果
 槐から親身に接してもらっている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

三体の巨大なガーゴイル

西洋術者たちに使役される存在である。

・所属組織、地位や役職
 式神。
・物語内での具体的な行動や成果
 横浜の脇道でシーラ姫を追い回した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 晴久の絶頂除霊などによって倒された。

飛行する式神

西洋術者たちに使役される存在である。

・所属組織、地位や役職
 式神。
・物語内での具体的な行動や成果
 逃走する晴久たちへ物量で襲いかかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

巨大な狼

アーネストの遠吠えによって変化した人間である。

・所属組織、地位や役職
 獣化人間。
・物語内での具体的な行動や成果
 動物園で晴久たちへ襲いかかった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

虎女

獣化した一般人の一人である。

・所属組織、地位や役職
 獣化人間。
・物語内での具体的な行動や成果
 晴久へ異様な執着を向けたが、快楽媚孔を突かれて無力化された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

獣化人間

理性を失い、動物の姿と身体能力を得た人々である。

・所属組織、地位や役職
 一般人や退魔師。
・物語内での具体的な行動や成果
 抑えていた欲望に従って勝手に行動した。ホテル周辺では包囲網を形成して晴久たちを追撃している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アーネストが無力化されたことで元の姿へ戻った。

ミホト

晴久の両手に宿る少女霊である。

・所属組織、地位や役職
 晴久の力。
・物語内での具体的な行動や成果
 動物園で晴久の両腕の主導権を握り、獣化人間を無力化した。アーネストやジェーンとの戦いでも怪力を発揮して晴久を援護している。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 美咲の霊力補充に協力しない場面があった。

巨大な女性

同時多発テロの最中に出現した存在である。

・所属組織、地位や役職
 怪異あるいはテロリスト。
・物語内での具体的な行動や成果
 街を破壊する事件を起こした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

巨大な四神式神

美咲が召喚した強力な術式である。

・所属組織、地位や役職
 美咲の式神。
・物語内での具体的な行動や成果
 獣化人間を傷つけずに捕らえ、戦況を一気に逆転させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

百体を超える式神

美咲が膨大な霊力を用いて一斉に出現させた存在である。

・所属組織、地位や役職
 美咲の式神。
・物語内での具体的な行動や成果
 周囲の敵を次々と捕らえ、数の不利を覆した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

巨大な青龍

四神式神の一つである。

・所属組織、地位や役職
 美咲の式神。
・物語内での具体的な行動や成果
 獣化人間を飲み込み、体内で拘束した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

三体の巨大式神

美咲が召喚した戦力である。

・所属組織、地位や役職
 美咲の式神。
・物語内での具体的な行動や成果
 アーネストへ襲いかかり、彼女の体勢を崩した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特になし。

レヴィアタン

水と嫉妬を司る上級魔族である。

・所属組織、地位や役職
 魔族。
・物語内での具体的な行動や成果
 ジェーンに宿り、巨大な遮断結界や濁流を展開した。晴久たちの同時攻撃を指先で受け止めている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 菊乃の神界の懲罰具によってジェーンとの接続を阻害された。

絶頂除霊 ! 7巻レビュー
絶頂除霊 ! まとめ
絶頂除霊 ! 9巻レビュー

展開まとめ

プロローグ 

東京湾への侵入

世界三大霊能圏

世界三大霊能圏には、仙術界域、西欧国家群、日本が数えられていた。

日本は強力な怪異家系を複数抱え、霊能業界の中枢にも怪異家系が深く関与していた。その特殊性から、単一国家でありながら世界有数の霊能国家とされていた。

炎上する護衛艦隊

東京湾沖では、欧州祓魔連合の弩級護衛艦隊が何者かの襲撃を受けて炎上していた。

巨大船舶は激しい戦闘によって破壊され、沈没寸前となっていた。その混乱の中、一隻のモーターボートが艦隊から離脱した。

銀髪の少女の逃走

ボートに乗っていた銀髪碧眼の少女は、自分を逃がすために倒れた戦士たちと祖国のため、敵に捕まるわけにはいかないと決意した。

少女は日本の退魔師へ助けを求めるため、燃え上がる艦隊を背に東京湾を進んだ。

元十二師天との契約

東京郊外の屋敷では、オッドアイの国際霊能テロリストと元十二師天の女性が契約を結んでいた。

元十二師天は祖国への愛着を否定し、報酬さえ支払われるなら魔族や犯罪者にも協力すると言い放った。

日本破壊の計画

国際霊能テロリストは、パーツを強奪するには、まず日本を混乱させる必要があると告げた。

二人は日本を大規模に破壊し、その隙に《サキュバス王の性遺物》を奪う計画を具体化し始めていた。

第一章 パーツ集めの夏休み 

夏休みのパーツ捜索

男子寮での休息

穂照ビーチから戻った古屋晴久は、罰則労働の疲れから男子寮で寝続けていた。

文鳥桜は疲れを見せず、晴久を起こして朝食を用意した。夢の内容は忘れていたものの、晴久に甘やかされた満足感が残っており、以前より機嫌よく接していた。

シーラ姫の来日

朝のニュースでは、アルメリア王国のシーラ姫が日本との友好関係構築のため来日すると報じられていた。

欧州祓魔連合が重視する王国の王女であるため、東京では大きな注目を集め、監査部も警備対応に追われていた。

桜の組み手

桜は部屋で怠け続ける晴久へ、気分転換と戦闘訓練を兼ねて組み手を提案した。

サキュバスの角による感覚強化を調整し、接近戦の経験を積むことには晴久も賛成した。しかし桜は晴久へ触れる機会や洗濯物を得ることも期待しており、別の思惑を隠していた。

美咲の訪問

宗谷美咲が連絡もなく男子寮を訪れ、パーツ集めについて晴久と相談したいと申し出た。

美咲は夏休みの自由な時間を利用し、晴久と一緒に行動しながら呪いを解く準備を進めようとしていた。桜は二人きりの時間を邪魔されたと反発し、美咲と組み手の予定を巡って言い争った。

美咲の焦り

晴久は、集積怪異の事件以降、美咲がパーツ集めへ異常なほど熱心になった理由を尋ねた。

美咲は淫魔眼によって桜や楓の夢、晴久が楓との口づけを思い返す様子まで見えてしまい、そのたびに苦しんでいると漏らした。また、夏休み中に晴久と会う口実が少ないことも本音として表れたが、最後は魔族への警戒を理由に呪いの解除を急ぐべきだと主張した。

童戸家と相馬家

美咲は、童戸手鞠の幸運能力と相馬家当主の予言能力を組み合わせ、パーツの出現地点や入手可能な場所を探る案を示した。

相馬家の占いは高精度である一方、任意の内容を占えないという欠点があった。そこへ童戸家の幸運を重ね、都合のよい予言を引き当てようという作戦であり、晴久も現状で最も可能性のある方法だと認めた。

昇天サポートセンター

晴久、美咲、桜は童戸家へ話を通すため、退魔学園の昇天サポートセンターを訪れた。

そこで手伝いをしていた童戸槐は、不幸体質が大きく緩和され、以前より明るく健康的な様子を見せた。退魔学園への編入も予定され、外出や人との交流を楽しむようになっていた。

槐との再会

槐は晴久との再会を喜び、動物園などへ一緒に出かけたいと誘った。

晴久が快諾すると、槐は嬉しそうに抱きついた。その様子を見た美咲と桜は不満を示し、センターへ集まっていた男子生徒たちも晴久へ強い敵意を向けた。

槐を慕う男子たち

男子生徒たちは、槐がセンターで働いていると知って自主的に手伝いへ集まっていた。

槐が浮遊霊や動物霊へ親身に接する姿を見て深く慕っており、晴久が親しく触れ合うことを許せず詰め寄った。しかし槐が晴久をいじめないよう頼むと、全員が即座に従った。

残された感覚強化

世話役の緑は、槐にサキュバスの角由来の五感強化がわずかに残っていると説明した。

能力は完全に制御され、身体への悪影響もなかった。もともとの優しさと読書で培った理解力に感覚強化が加わり、槐は相手の心情を正確に察して支援できるようになっていた。

手鞠への依頼

晴久は槐と緑へ、パーツ探索のため童戸手鞠の幸運能力を借りたいと事情を説明した。

槐が連絡すると、手鞠はすぐに協力を承諾した。ただし童戸家の幸運は術者本人に都合よく働く性質が強く、望みを直接かなえる力ではないため、相馬家と組んでも成果が出る保証はないと警告した。

相馬家への難題

手鞠はさらに、相馬家へ占いを依頼すること自体が非常に難しく、作戦の実現には長い時間がかかると伝えた。

晴久たちは有力な方針を得た一方、相馬家の協力を取り付けるという最大の課題に直面した。

相馬家の予言

皇樹家の仲介

童戸家の協力を得た晴久たちは、占い嫌いで知られる相馬家当主への依頼に取りかかった。

皇樹夏樹は二度目の口添えは難しいとしながらも、当主と面会できるよう手配した。その見返りとして、晴久へ紅富士の園へ遊びに来るよう求めた。

相馬家への訪問

翌日、晴久、美咲、桜に楓と烏丸を加えた一行は、横浜の相馬本家へ向かった。

相馬家は高い塀や監視設備に囲まれた要塞のような屋敷であり、武装した巫女たちが当主を守っていた。霊視と先読みを得意とする彼女たちは、旧家の中でも屈指の戦闘力を持っていた。

武闘派の巫女たち

門前では、占いを強要した企業経営者と護衛たちが巫女頭の相馬礼たちに叩きのめされていた。

晴久たちはその光景に圧倒されながら屋敷へ招かれ、相馬家が当主を狙う勢力から身を守るため、荒事に長けた集団となった事情を聞いた。

占いの拒絶

礼は、未来視を多用すれば人が占いへ依存し、大災害の予兆を見逃す危険もあるとして、依頼を明確に拒絶した。

晴久たちは当主との面会さえ断られ、説得の難しさを思い知らされた。

美咲の交渉

美咲は淫魔眼で巫女たちの秘密や好みを見抜き、情報の暴露を仄めかして交渉を始めた。

脅しが通じないと見ると、理想の相手を探す手助けを条件に協力を求めた。巫女たちは大きく揺らいだが、礼は側近としての責任を優先し、要求を退けた。

相馬千鶴の登場

交渉が行き詰まる中、相馬家当主の相馬千鶴が姿を現し、内容を選べなくてもよければ占うと申し出た。

千鶴は晴久の手を取り、神がかった気配を放ちながら占いを行った。

偽りの未来

千鶴は晴久が美咲と結婚し、桜との間に八人の子をもうけると告げた。

さらに南雲、静香、槐とも関係を持つ未来が見えると続けたため、美咲と桜は激怒し、晴久へ制裁を加えようとした。

千鶴の悪癖

楓は、千鶴が事前に集めた情報を使い、偽の占いで依頼者を混乱させる悪癖を持つと明かした。

美咲と桜は自分たちがからかわれたと知ってさらに怒り、千鶴は楓にも想い人から相手にされない未来を告げて挑発した。

決裂した交渉

千鶴は最後まで偽の予言を重ね、相馬家の巫女たちも武器を抜いたため、全面衝突寸前となった。

晴久は美咲たちを必死に抑え、占いの依頼を果たせないまま相馬家をあとにした。千鶴は、パーツが世界の危機に直結するなら協力するが、今は占いに頼らず努力するよう告げた。

予言しきれない災厄

晴久たちが去ったあと、千鶴の予言能力が本人の意思に反して突然発動した。

千鶴は顔色を失って倒れ込み、協会へ連絡するよう命じた。彼女が見たのは一つの災害ではなく、予言しきれないほど多数の事件が日本へ迫る未来であった。

シーラ姫との遭遇

横浜での憂さ晴らし

相馬家との交渉に失敗した晴久たちは、退魔学園へ戻らず横浜の街で食べ歩きをしていた。

美咲、桜、楓は偽の占いへの怒りを引きずり、次回の交渉方法を話し合いながら激しく愚痴をこぼしていた。

烏丸の離脱

烏丸葵は巫女への期待を裏切られた反動から、街の女子学生を調べると宣言して人混みへ消えた。

問題を起こされれば連帯責任になるため、晴久は一人で追跡した。しかし繁華街の混雑に紛れた烏丸を見失い、捜索を諦めて引き返した。

シーラ姫行方不明の速報

街頭テレビでは、来日予定だったシーラ姫の護衛艦隊が東京湾沖で襲撃され、乗組員が全員重体になったと報じられた。

第三聖人を含む祓魔師約二百名も倒れ、シーラ姫は行方不明となっていた。晴久の端末にも、姫を発見した場合は全力で保護するよう退魔師協会から緊急通達が届いた。

繁華街のガーゴイル

直後、近くの脇道で爆発が起こり、三体の巨大なガーゴイルが一人の少女を追い回していた。

少女は周囲の被害を避けるよう逃げていたが、転倒して追い詰められた。晴久は大地絶頂で敵の体勢を崩し、二体を絶頂除霊して少女を救出した。

シーラ姫の正体

助けた少女は、霊級格四の西洋式神を倒した晴久の制服と能力を見て、退魔師協会まで護送してほしいと頼んだ。

走る途中でフードが外れ、その正体が行方不明となっていたシーラ・マリアフォールド姫であることが判明した。姫は自分を逃がすために倒れた者たちのため、敵に捕まるわけにはいかないと訴えた。

西洋術者の追撃

建物の屋上には複数の西洋術者が待ち構え、姫を渡せば晴久を見逃すと迫った。

晴久は要求を拒み、姫の手を引いて逃走した。土壁や多数のガーゴイルに追われながら、絶頂除霊と五感強化で応戦したが、飛行する式神の物量に苦戦した。

仲間たちの援護

騒ぎを察知した桜、楓、美咲の式神が駆けつけた。

美咲は避難誘導を担い、桜は西洋術式を解析して反射し、楓は九本の獣尾でガーゴイルを一掃した。晴久も快楽媚孔を突いて姫への攻撃を防ぎ、戦況は大きく逆転した。

逃走用の呪具

追い詰められた西洋術者たちは、ガーゴイルの残骸を光らせて目を眩ませ、その隙に逃走した。

残された鎖付きの十字架には強大な霊力が集まり、シーラ姫へ光が放たれた。晴久は姫を庇い、人外化した腕で攻撃を受け止めた。

異常のない光

桜と楓が晴久を霊視したが、身体には目立った異常が見つからなかった。

晴久も痛みを感じなかったため、光は不発か攪乱目的だったと考えられた。

離れない手

晴久は姫の無事を確認しようとしたが、桜から手を握り続けていることを指摘された。

晴久と姫は慌てて手を離そうとしたものの、掌は強固に接着したまま離れなかった。美咲の式神で引き剥がそうとしても効果はなく、西洋術者の呪具によって二人の手が離れなくなる呪いを受けたことが判明した。

第二章 護衛任務 

シーラ姫襲撃の真相

炎上する護衛艦隊

シーラ・マリアフォールド姫を乗せた欧州祓魔連合の護衛艦隊は、東京湾へ向かう途中で襲撃を受けた。

二百人を超える精鋭祓魔師と第三聖人が護衛していたが、たった一人の国際霊能テロリストによって艦隊は壊滅した。

第三聖人の決死行

第三聖人は勝ち目がないと悟り、シーラ姫を脱出用ボートで逃がした。

自身は神族の力を限界まで引き出して襲撃者を食い止めようとしたが、護衛艦隊の乗組員は全員倒された。

アーネストの追跡

海岸へ上陸した国際霊能テロリスト、アーネスト・ワイルドファングは、シーラ姫の匂いを追った。

しかし脱出用ボートは追跡を攪乱するため無人で移動しており、姫の行方は途切れていた。アーネストは部下を放ち、満月の夜に向けて日本で能力を仕込むことにした。

淫都再興の目的

アーネストは、《サキュバス王の性遺物》を集め、《淫都・ソドムとゴモラ》を復活させようとしていた。

シーラ姫の能力を利用すればパーツを容易に奪えると考え、彼女を捕らえることを優先していた。

横浜支部の混乱

西洋術者を撃退した晴久たちは、シーラ姫を退魔師協会横浜支部へ連れていった。

相馬家の巫女による霊視で姫が本物だと確認されると、支部内は責任の重さから大混乱となった。美咲は淫魔眼対策として目隠しをされ、晴久の肩につかまって行動した。

シーラ姫の感謝

応接室でシーラ姫は、危険を顧みず助けた晴久たちへ正式に礼を述べた。

特に最初に救出へ動いた晴久へ強い感謝を示し、その勇気がなければ自分は助からなかったと伝えた。

襲撃からの逃亡

シーラ姫は、護衛艦隊が襲撃され、第三聖人の犠牲によって脱出できた経緯を説明した。

日本へ上陸したあとも連絡手段がなく、信頼できる退魔師を探して一晩中逃げ続け、追い詰められたところで晴久と出会っていた。

王家の増幅能力

襲撃者の狙いは、マリアフォールド王家の女性が持つ増幅能力だと考えられた。

その力は祭壇術式を介して他者の能力を数倍に高め、天人降ろしが宿せる神族の力まで永続的に増幅できるものであった。欧州祓魔連合はこの能力によって強力な戦力を維持していた。

一人だけの襲撃者

楓が敵の人数や能力を尋ねると、シーラ姫は護衛艦隊を襲った者として確認できたのは一人だけだったと答えた。

野性的な女性が単独で乗り込み、第三聖人を含む護衛部隊を壊滅させたという証言に、晴久たちは敵の異常な強さを思い知らされた。

四日間の密着

西洋術者が残した呪具によって、晴久とシーラ姫の手は離れなくなっていた。

呪いには直接的な害がなく、効果も四日間に限定されていたため、異常に強固で解呪できなかった。二人は手をずらして体勢を変えることはできたが、晴久は片手を封じられた状態で姫を護衛しなければならなかった。

葛乃葉菊乃の介入

楓が十二師天級の増援を求めようとすると、狐のぬいぐるみを介して葛乃葉菊乃が現れた。

菊乃は退魔師協会会長としてシーラ姫へ名乗り、通信式神を通して会話へ加わった。

シーラ姫の護衛任務

菊乃からの指令

シーラ姫は葛乃葉菊乃へ丁寧に礼を述べ、護衛たちの救助と治療への感謝を伝えた。

菊乃は護衛たちが助かったのは敵が悪霊化を避けた結果だと述べ、詳しい話は翌日の会談に回した。そのうえで、欧州から迎えが到着する四日後まで、晴久たちだけでシーラ姫を守るよう命じた。

国内へ迫る多数の事件

菊乃は、護衛艦襲撃とは別に、国内へ複数の強大な力が侵入した気配があると明かした。

さらに相馬千鶴から、予言しきれないほど多数の事件が日本へ迫っているとの連絡が入り、協会はそちらへ人員を割かなければならなかった。

遅れる欧州の増援

欧州祓魔連合は複数国家の思惑が絡む組織であり、今回の壊滅によってシーラ姫を支持する勢力も弱まっていた。

天人降ろしを国外へ出したくない事情も重なり、増援の派遣には四日を要する見込みであった。

晴久たちへの信頼

菊乃は、霊級格七や十二師天と渡り合った晴久たちなら十分な護衛力があると評価した。

晴久の五感強化や楓の変身術も護衛に適しており、敵も艦隊襲撃で消耗している可能性が高いとして任務を託した。晴久は菊乃に別の狙いがあると察しながらも、護衛を引き受けた。

セーフハウスへの移動

晴久たちは目立たない車で都内へ移動し、退魔師協会本部近くのセーフハウスへ入った。

建物は幾重もの隠蔽結界で守られており、シーラ姫を匿うための安全な拠点となっていた。

美咲への恐怖

シーラ姫はセーフハウス到着後も顔を隠し、宗谷美咲の存在を強く警戒していた。

美咲が《淫魔眼》の宿主だと確認すると、姫は寝具へ潜り込んで姿を隠した。晴久も手が離れないため巻き込まれ、二人でもみ合う状態となった。

欧州の清廉主義

楓は、欧州では神族の教義の影響が強く、指導者層には過剰な清廉潔白さが求められると説明した。

道義的な問題がなくても性的な情報の流出は国家機密に等しく、淫魔眼でシーラ姫の情報を見ることは国際問題へ発展しかねなかった。

美咲の別室待機

桜と楓は、美咲をシーラ姫から離し、式神による周辺警戒を担当させる方針を決めた。

美咲は自分だけ晴久と同じ部屋にいられないことへ反発し、霊力補充の問題を指摘した。しかし晴久は姫の休息を優先し、美咲を別室へ向かわせた。

霊力補充の課題

晴久は、美咲の霊力補充ができなくなることを新たな問題として認識した。

桜や楓へ秘密の補充方法を説明する必要が生じる可能性もあり、姫の前で行うことが別の国際問題にならないかと頭を抱えた。

不自然に静かな烏丸

晴久は、普段なら騒ぐはずの烏丸葵が異様に大人しいことに気づいた。

烏丸はシーラ姫の前では理性を保てないと主張し、美咲とともに別室待機を申し出た。晴久は違和感を覚えたものの、姫の安全を優先して追及しなかった。

シーラ姫の記憶

別室へ向かう烏丸を見たシーラ姫は、以前どこかで会ったような感覚を抱いた。

しかしその小さな呟きは、感覚強化を休めていた晴久には届かなかった。

密着生活と外出計画

トイレの難題

手が離れない晴久とシーラ姫は、トイレでも行動を共にせざるを得なかった。

晴久は桜によって目、耳、鼻を厳重に封じられたが、片手では処理が難しい場面があり、姫の指示を受けながら最低限の手助けを行った。終了後、目隠しの位置がずれていることに気づいた桜が激怒したものの、二人は事情を説明して誤解を解いた。

浴室の混乱

一晩中逃げ続けたシーラ姫は、国の代表として身なりを整えるため入浴を求めた。

晴久は目隠しをして浴室へ入り、桜と楓も介助と護衛を理由に同行した。しかし二人の不自然な手つきで晴久が転倒し、全員が絡み合う騒ぎとなった。

さらに美咲が式神を通して状況を知り、桜と楓が晴久と入浴していることへ激怒したため、浴室は混乱に陥った。晴久たちは落ち着きを取り戻すまで長い時間を要した。

シーラ姫の孤独

就寝時には晴久とシーラ姫の間へバリケードが築かれ、桜と楓が同室で監視した。

晴久が一日の騒動を謝罪すると、シーラ姫は不快ではなく、同年代の者たちと騒ぐ経験を新鮮で楽しいと感じたと明かした。王女として不自由なく育った一方、気軽な友人を作る自由はなかったのである。

友人としての頼み

シーラ姫は晴久へ、王女としてではなく友人のような砕けた口調で接してほしいと頼んだ。

晴久は戸惑いながらも、その願いが切実なものだと理解し、努力すると約束した。安心した姫はほどなく眠りについた。

朝食の介助

翌朝、晴久とシーラ姫は片手が塞がっているため、桜と楓に食事を口元まで運んでもらった。

そこへ別室待機中の美咲が現れ、桜と楓だけが晴久のそばで世話をしていることへ不満を爆発させた。淫魔眼による国際問題を避けるため、美咲は再び部屋から連れ出された。

会談決行の理由

当初予定されていた神社訪問と商業施設の視察は中止されたが、日本とアルメリア王国による会談は予定どおり行われることになった。

日本と欧州の霊能界は長年関係が悪く、術式開発や犯罪者情報の共有にも支障が出ていた。暴力によって会談を中止すれば、テロに屈したとの印象を与えるため、危険を承知で実施する必要があった。

変身術による偽装

公の場で晴久と姫が手をつないでいるように見えないよう、楓は変身術で二人の接触を隠した。

実際には手が離れていなかったが、外見上は晴久が姫の後方に立つ護衛に見える状態となった。姫は霊力の質や肉体情報まで変える葛乃葉家の技術に感嘆した。

移動し続ける護衛

晴久は、情報漏洩の可能性を考えれば、セーフハウスに留まるより変身した姿で外出し続けるほうが安全ではないかと提案した。

桜と楓も同意し、毎晩拠点を移す方針と合わせて、昼間も一カ所に留まらない護衛計画を立てた。

シーラ姫の希望

自由に街を歩ける可能性を知ったシーラ姫は、驚きと期待を露わにした。

変身術を維持したまま外出できると確認すると、姫は頬を染めながら、以前から見てみたかった街があると晴久へ打ち明けた。

春ヶ原散策と動物園の異変

春ヶ原への外出

晴久たちは変身術と電車を利用し、シーラ姫が希望した春ヶ原へ向かった。

アニメや漫画、家電、コスプレ文化が集まる街並みに、シーラ姫は子供のように目を輝かせた。しかし護衛中に楽しむことへ罪悪感も抱いており、晴久は落ち込む姫へ、遊べるときに楽しめばよいと声をかけた。

初めての街歩き

シーラ姫は家電店や専門店を巡り、初めての自由な買い物を楽しんだ。

晴久と姫は片手が使えないため、クレープを互いに食べさせ合った。その様子を離れて警戒していた桜と楓は、二人が完全にデートをしているように見えると強い不満を募らせた。

大人向け売り場への迷入

晴久が桜たちの様子へ気を取られている間に、シーラ姫は書店内の大人向け売り場へ迷い込んだ。

姫は並ぶ商品を恋人同士の贈り物や生活用品だと誤解し、興味津々で手に取った。晴久は国際問題を恐れ、姫へ正体を悟られないまま退店しようと必死になった。

美咲からの追及

位置確認用の式神によって二人の居場所を知った美咲は、晴久へ電話をかけて事情を問い詰めた。

その最中、シーラ姫が店内の商品を作動させたため、美咲の疑念はさらに強まった。晴久は自分の責任を認め、美咲たちへ説明と誤魔化しへの協力を求め、姫を連れて売り場から脱出した。

意見交換会の終了

その後は大きな問題もなく、葛乃葉菊乃や政府関係者との意見交換会も予定どおり終了した。

シーラ姫が行方不明後初めて公の場へ姿を現したため、多数の報道関係者が集まったが、会場で襲撃は起きなかった。

下野公園への訪問

翌日、晴久たちは新たなセーフハウスから下野公園へ出かけた。

前日の失敗を踏まえ、桜と楓が交代で近くに付き添うことになった。シーラ姫は博物館や美術館、動物園へ強い関心を示し、最初に動物園を選んだ。

美咲の霊力回復実験

別行動中の美咲は、晴久へ小型のスイッチを渡し、任意のタイミングで操作するよう頼んだ。

晴久が動物園でスイッチを入れると、離れた場所にいる美咲へ刺激が伝わり、わずかながら霊力が回復した。美咲は直接触れられなくても、晴久が操作することで契約相手から快感を与えられたと判定されるのではないかと考えていた。

五感強化による露見

晴久は五感強化によって、美咲の声を遠くから聞き取ってしまった。

事情を確認するため電話をかけると、美咲は秘密が筒抜けだったことを知って激しく動揺した。さらに晴久がシーラ姫と親しくしていることへの不満も爆発させ、すべて晴久のせいだと責め立てた。

不自然な遠吠え

混乱の最中、動物園内で狼の遠吠えが連続して響いた。

シーラ姫は狼を見に行こうと喜んだが、晴久はその鳴き声が人間の真似に近いことへ違和感を抱いた。

人間から変じた狼

直後、園内で悲鳴が上がり、複数の巨大な狼が人混みから現れた。

桜が即座に晴久とシーラ姫を守る位置へ入り、晴久も警戒した。狼たちは檻から逃げた動物ではなく、獣の姿へ変化した人間であり、殺意を叫びながら一行へ襲いかかった。

第三章 懸賞首たちの宴

獣化騒動と最後の護衛日

獣化人間の襲撃

人混みから現れた狼人間たちは、高い身体能力と明確な敵意を示しながら晴久たちへ襲いかかった。

桜と楓は即座に結界を展開し、美咲も式神で援護と避難誘導を始めた。しかし襲撃者たちはシーラ姫ではなく、晴久への嫉妬や欲望を口にしながら狙っていた。

虎女の執着

一般人の中に紛れていた虎女も獣化し、晴久へ異様な執着を向けた。

晴久は過去の恐怖から一瞬反応が遅れたものの、シーラ姫を守りながら快楽媚孔を突いて無力化した。楓たちもほかの獣化人間を制圧し、戦闘は短時間で終わった。

一般人への感染

獣化が解けた者たちは、霊的素養も戦闘経験もない普通の一般人であった。

桜は、何者かが理性と引き換えに霊力回路を暴走させ、強引に動物の姿と身体能力を与えていると分析した。さらに遠吠えには獣化を感染させる霊力が込められており、周囲の人々が次々と発症していった。

解放された欲望

獣化した人々は一斉に晴久たちを襲うのではなく、それぞれの抑えていた欲望に従って勝手に行動していた。

暴力的になる者もいれば、食欲や破壊衝動を露わにする者、ただ甘える者もいた。獣化は凶暴化を直接引き起こすものではなく、理性を失わせる霊障であることが判明した。

猫化した槐

動物園を訪れていた童戸槐も遠吠えの影響を受け、猫耳と尻尾を生やして晴久へ甘え始めた。

槐は一般人ほど強く獣化していなかったが、その鳴き声には精神へ働きかける力があり、晴久は動けなくなった。桜と楓が槐を引き離し、付き人の緑が保護した。

シーラ姫の命令

晴久はシーラ姫を連れて撤退すべきか、一般人を助けるべきか迷った。

シーラ姫は自分の安全を最優先する義務を認めながらも、友好を結ぼうとする国の人々を見捨てられないとして、晴久へ騒動を鎮めるよう命じた。

ミホトとの制圧

晴久はミホトを顕現させ、両腕の主導権を渡した。

シーラ姫の目と耳を隠して抱きかかえたまま、ミホトの怪力と絶頂除霊で獣化人間を次々と無力化した。桜、楓、美咲も加勢し、動物園内の騒動は収束した。

関東各地の獣化現象

協会からの通知により、獣化感染は二日前から関東各地で発生していたことが判明した。

発症率は二、三割程度で、相性や霊的抵抗力によって差があった。放置しても一、二日で鎮静化するため、通常の怪異である可能性も残されていたが、元凶も収束時期も不明であった。

外出の中止

桜たちは、獣化がテロの陽動である可能性やシーラ姫自身が感染する危険を考え、以後の外出を中止すると決めた。

シーラ姫も自身の立場を理解し、外出自粛を受け入れた。しかし晴久には、自由な街歩きを失った姫が落ち込んでいることが伝わっていた。

アルメリア王国の事情

シーラ姫は、王家の増幅能力によってアルメリア王国が欧州内の均衡を保ってきたと説明した。

最上位の天人降ろしである第一聖人が長く不在となったことで、その均衡は崩れつつあり、日本との関係改善には新たな後ろ盾を求める意図もあった。姫は自分の身が国民や王家全体に関わるため、個人的な楽しみを優先できないと語った。

セーフハウスの遊び

晴久は外出できなくても友人と遊ぶことはできると考え、ボードゲームやテレビゲームを用意した。

シーラ姫は日本のゲームへ強い興味を示し、桜、楓、美咲、烏丸も警戒を続けながら参加した。一行は菓子や飲み物を囲み、王族への正式な歓待とはほど遠い賑やかな時間を過ごした。

護衛最終日の夕方

晴久たちはシーラ姫とゲームを重ね、久しぶりに心から楽しい時間を過ごした。

セーフハウスへの襲撃も起こらないまま時間は過ぎ、シーラ姫の護衛最終日となる四日目の夕方を迎えた。

満月の夜の襲撃

護衛最終日の会談

シーラ姫の滞在最終日、晴久たちは楓の術で偽装した護送車を使い、厳重な警備が敷かれたホテルへ到着した。

会談後は欧州から来る護衛艦隊へ姫を引き渡す予定であり、手を離せない呪いも同じころに解ける見込みであった。別れを意識したシーラ姫は寂しさを見せたが、晴久たちは再会を約束して励ました。

ホテルの厳戒態勢

ホテル内外には精鋭退魔師と多重結界が配置され、周辺一帯も封鎖されていた。

相馬家による来場者の霊視も実施され、晴久たちは姫の周囲を固めながら警戒を続けた。警備主任は十分な戦力が集まっているため、この後の護送に備えて力を温存するよう忠告した。

記者会見の遠吠え

会談と懇親会は問題なく進み、最後の記者会見が始まった。

晴久は遠方から微かな遠吠えを察知した直後、封鎖区域の外から響く巨大な遠吠えに襲われた。その音は会場全体を揺らし、集まっていた報道関係者を一斉に獣化させた。

姫を狙う獣化人間

獣化した者たちは、直後に響いた笛の音を合図として一斉にシーラ姫へ襲いかかった。

桜と楓が結界を張り、美咲の式神も敵を押さえた。警備主任たちも拘束術を発動し、会場内の獣化人間を一時的に制圧した。

多重結界の崩壊

ホテル周辺を守っていた結界が外部から破壊され、四方から大量の獣化人間が押し寄せた。

それまで無秩序だった獣化現象が明確にシーラ姫を狙っていたため、一連の事件が怪異ではなく計画的なテロ攻撃であることが判明した。

アーネストの突入

晴久がミホトを召喚した直後、超高速で接近した何者かがホテル上階の壁を体当たりで破壊した。

衝撃によって退魔師や拘束結界が吹き飛ばされ、会場は再び混戦となった。粉塵の中から現れたのは、護衛艦隊を単独で壊滅させた国際霊能テロリスト、アーネスト・ワイルドファングであった。

シーラ姫の要求

アーネストは膨大な霊力を放ちながら、命が惜しければシーラ姫を引き渡せと要求した。

満月によって強化された身体能力と獣化感染を利用し、アーネストはホテル内外の混乱を作り出して姫へ直接迫っていた。

対策本部の決断

退魔師協会の広域テロ対策本部では、ナギサがアーネストの正体と能力を把握した。

遠吠えによる獣化感染は満月によって異常な規模へ強化されており、アーネスト自身の霊力と身体能力も増幅されている可能性が高かった。ナギサは十二師天を含む予備戦力を姫の救援へ回そうとした。

相馬の予言の的中

増援命令を出そうとしたナギサのもとへ、各地から新たな事件の報告が相次いだ。

モニターに映し出された複数の異変を見たナギサは、相馬千鶴が予言した無数の事件が同時に始まったことを悟った。そして菊乃がシーラ姫の護衛へ戦力を集中させなかった判断が、ほかの災厄へ備えるために必要だったと理解した。

同時多発霊能テロ

テロリストたちの始動

オッドアイの国際霊能テロリストは、仲間たちが独断でパーツ所持者へ向かったことに呆れながらも、潜伏を終えて自由に暴れるよう使い魔を通じて命じた。

しかし協調性のない者たちはすでに各地で行動を開始しており、彼女自身も計画上の役割を果たすため夜の街へ消えた。

アーネストとの対峙

会見会場では獣化した一般人と退魔師たちの乱戦が続く中、アーネスト・ワイルドファングがシーラ姫を要求した。

シーラ姫は彼女こそ護衛艦隊を壊滅させた襲撃者だと証言した。アーネストは王家の増幅能力を利用し、自身の獣化能力を強化するために姫を狙っていた。

パーツ所持者の発見

アーネストは晴久と美咲がパーツを宿していると見抜き、シーラ姫とともに奪うと宣言した。

彼女はアンドロマリウスから声をかけられた複数の特級霊能テロリストが、欲望を満たすためパーツを狙っていると明かした。晴久たちは、国内に複数の強大な悪意が侵入したという菊乃の警告が事実だったと理解した。

影武者による脱出

アーネストが襲いかかると、晴久は五感強化とミホトの腕でシーラ姫を抱え、攻撃を回避した。

その隙に美咲が大量の式神を出し、楓が一行と同じ姿へ変身させた。警備主任たちもアーネストを包囲し、晴久たちへ会場から脱出するよう命じた。

零距離の遠吠え

アーネストは至近距離から獣化共鳴を放ち、会場にいた精鋭退魔師たちまで半獣化させた。

理性は保たれていたものの、術式の精度や集中力が低下した。美咲、楓、桜、烏丸にもそれぞれ獣耳が現れ、影武者との違いを見抜かれたため、楓は変身術で再び姿を隠した。

ホテルからの逃走

半獣化した仲間たちは不調を抱えながらも、獣化人間を蹴散らして地下へ向かった。

晴久の五感強化による索敵と、美咲の式神、桜と楓の術によって道を切り開き、一行は地下に用意された霊装車へ到達した。

霊装車の影武者

烏丸が霊装車の補助運転を担当し、美咲と楓は複数の影武者を別の車両へ乗せて発進させた。

本物の一行もホテルを脱出し、欧州の護衛部隊が到着する港を目指した。進路を塞ぐ獣化人間の群れは、桜の結界、美咲の式神、楓の狐尾で突破した。

広がる包囲網

アーネストが事前に感染を広げていたため、各地の無症状者が遠吠えに反応して獣化し、何重もの包囲網を形成していた。

晴久は自分たちだけで護衛を続けるのは困難だと判断し、広域テロ対策本部へ増援を要請した。

拒まれた増援

ナギサはシーラ姫の無事を確認したものの、ほかの事件への対応で戦力を回せないとして増援を拒否した。

都内の広域結界で獣化人間の一部を食い止めると約束したが、それ以上は晴久たち自身で切り抜けるよう命じた。

各地で始まった災厄

車内のテレビでは、紅富士の園周辺のダム爆破、巨大な女性による街の破壊、沖縄の霊能部隊駐屯地襲撃、獣化現象の劇症化など、複数の事件が同時に報じられていた。

晴久は、国際霊能テロリストたちがパーツを狙って一斉に動き、シーラ姫への増援を妨害していると悟った。

港への疾走

晴久は美咲とシーラ姫を敵へ渡さないと決意し、同時多発テロの情報を対策本部へ伝えた。

一行は護衛部隊との合流を目指して霊装車を加速させた。一方、半獣化した桜、楓、美咲は理性を保ちながらも晴久への欲望を強め、車内にも新たな危険が生まれつつあった。

第四章 殺したいほど愛してる 

追撃する満月の獣

霊装車内の半獣化

ナギサが発動した広域結界によって獣化人間の包囲は分断され、晴久たちは霊装車で逃走を続けていた。

しかし遠吠えを浴び続けた楓、桜、美咲の半獣化は悪化していた。三人は戦闘能力を保ちながらも理性が緩み、晴久へ甘えたり執着したりするようになった。

正気を保つ烏丸

晴久は運転中の烏丸まで半獣化していることに気づき、任務を放棄するのではないかと警戒した。

しかし烏丸は普段から欲望を隠していないためか影響が薄く、むしろ責任感を持って運転を続けていた。

投げつけられた大型トラック

晴久は接近する危険を五感強化で察知し、烏丸へ急回避を指示した。

直後、投げつけられた大型トラックが霊装車の脇へ激突し、車両は横転して停止した。晴久たちは大きな負傷を免れたものの、逃走手段を失った。

アーネストの追撃

高架上には、獣化人間を従えたアーネスト・ワイルドファングが待ち構えていた。

彼女は会見会場の退魔師たちを振り切り、建物ごと破壊して晴久たちへ追いついていた。獣化した者たちとの感覚共有によって影武者を見破り、本物の一行を追跡してきたのである。

アーネストの渇望

晴久がパーツを求める理由を問いただすと、アーネストは獣化した人間へ強い欲望を抱くようになった過去を語った。

自らの能力では獣化を数日しか維持できず、同じ相手には耐性も生じるため、欲望を永続的に満たせなかった。その渇きを癒やすため、《ソドムとゴモラ》を復活させようとしていた。

速攻の連携

長期戦を避けるため、晴久たちはアーネストが話している間に攻撃態勢を整えた。

烏丸が光の縄で拘束し、美咲の式神と桜の結界が獣化人間を抑え、楓は狐火でアーネストを包んだ。晴久はシーラ姫を抱え、快楽媚孔を狙って一気に接近した。

満月の怪力

アーネストは拘束されたまま地面を蹴り砕き、爆発的な衝撃で狐火と周囲の攻撃を吹き飛ばした。

砕けた地面が無数の破片となって襲いかかり、晴久はシーラ姫を守るため攻撃を中断した。烏丸も負傷して集中を失い、拘束術が緩んだ。

獣化共鳴の直撃

自由を取り戻したアーネストは、至近距離から獣化共鳴を放った。

晴久の警告は間に合わず、強烈な遠吠えが美咲、桜、楓を直撃した。三人の獣耳はさらに悪化し、尻尾まで現れた。

理性を失った三人

完全に獣化した美咲、桜、楓はアーネストへの警戒を失い、晴久だけへ強い執着を向けた。

穂照ビーチでの騒動を思い出した晴久は、敵だけでなく仲間からも狙われる絶望的な状況に追い込まれた。

アーネストとの決着

崩れた連携

アーネストは、理性を失った美咲、桜、楓を見て勝利を確信した。

三人は晴久への執着を露わにし、互いに争い始めたため、晴久は戦力として期待できないと考えた。烏丸も霊装車の陰で怯えており、晴久はミホトとともに追い詰められた。

三人の反撃

アーネストが晴久たちへ突進した瞬間、桜が酩酊術式を打ち込み、美咲の式神と楓の獣尾が追撃した。

三人は理性を失いながらも、晴久を奪おうとするアーネストへの敵意だけは一致していた。半獣化による身体能力の上昇も加わり、弱体化したアーネストと互角に渡り合った。

本能の衝突

美咲、桜、楓は晴久を守った直後、彼を巡って再び争い始めた。

しかしアーネストが立ち上がると即座に喧嘩を中断し、三人そろって迎撃した。理性が失われても、晴久を守るという本能は揺らいでいなかった。

酩酊状態の攻防

晴久とミホトもシーラ姫を守りながら戦闘へ加わり、美咲と楓は影武者を展開した。

桜は結界と攻撃術式でアーネストの動きを制限したが、敵は酩酊状態でも圧倒的な怪力を発揮した。さらに獣化人間を呼び寄せ、姫を巻き込む無差別攻撃で晴久たちを消耗させた。

美咲の霊力不足

乱戦の中、美咲の式神が晴久とシーラ姫を戦場の陰へ運んだ。

美咲は霊力が尽きかけており、補充が必要だと訴えた。しかし半獣化の影響で行動が暴走し、晴久は止めようとしたものの、ミホトは協力しなかった。

膨大な霊力の回復

混乱の末、美咲は強烈な刺激を受け、全身から凄まじい霊力を放出した。

その力は満月で強化されたアーネストを上回るほどであり、巨大な四神式神と百体を超える式神が一斉に出現した。

式神軍団の猛攻

巨大な青龍は獣化人間を傷つけずに飲み込み、体内で拘束した。

ほかの式神も周囲の敵を次々と捕らえ、数の不利を覆した。さらに三体の巨大式神がアーネストへ襲いかかり、戦況は一気に晴久たちへ傾いた。

烏丸の拘束術

優勢を察した烏丸は戦線へ復帰し、光の縄でアーネストを拘束した。

巨大式神への対応に追われていたアーネストは体勢を崩し、その隙を突いて晴久が影武者の中から接近した。

晴久の一撃

晴久はミホトの怪力でアーネストを殴り飛ばし、建物の壁へ叩きつけた。

アーネストは予想外の連続に動揺しながらも、最後の腹いせとしてシーラ姫を道連れにしようと突進した。

シーラ姫を守る怒り

晴久は、国のために自分を抑えて努力してきたシーラ姫が、身勝手な犯罪者に脅かされることへ怒りを爆発させた。

ミホトから両腕の主導権を取り戻し、五感強化と快楽点ブーストを重ねた晴久は、アーネストの動きを完全に見切った。

絶頂除霊の直撃

晴久はシーラ姫を抱きしめて守りながら、捨て身で迫るアーネストの攻撃をすべて回避した。

そして痛みでは止まらない敵へ絶頂除霊を叩き込み、アーネストを制圧した。その姿を、シーラ姫は熱を帯びた瞳で見つめていた。

シーラ姫の正体

アーネストの無力化

晴久の絶頂除霊を受けたアーネストは激しい快感に耐えきれず、その場に倒れて完全に無力化された。

同時に、彼女の能力で獣化していた人々は元の姿へ戻った。晴久とシーラ姫の手を結んでいた呪いも期限を迎えて解けたが、姫は離れた手を見て寂しそうな反応を示した。

三人の羞恥

正気を取り戻した美咲、桜、楓には、半獣化中の記憶が残っていた。

三人は晴久へ行った数々の奇行を思い出して激しく取り乱した。晴久は泥酔時の失敗と同じだと慰めたが、三人は逆に晴久の記憶を消そうと本気で術式を検討し始めた。

アーネストの失言

晴久たちはアーネストを強力な術で拘束した。

意識が朦朧としたアーネストは、自分とは別の者が護衛艦隊を襲い、シーラ姫を取り逃がしたと口走った。その言葉から、晴久は目の前の姫と襲撃事件に矛盾があることへ気づいた。

崩れた王女の姿

晴久が本物のシーラ姫について考えようとすると、目の前の少女は突然彼の両手を握り、熱烈な感謝と好意を一方的に伝えた。

美咲が淫魔眼でその正体を見抜いた直後、シーラ姫の姿は崩れ、くすんだ金髪の西洋人少女へと変わった。彼女は自らをジェーン・ラヴェイと名乗った。

ジェーンの計画

ジェーンは資料で晴久を知った時点から運命の相手だと思い込み、本物のシーラ姫に成り代わっていた。

アーネストが狙っていた姫を先に奪い、信奉者を利用して晴久との出会いを演出し、二人の手が離れない呪いも仕掛けていた。四日間の交流すべてを両想いの証拠だと解釈し、晴久を連れ去って共に暮らそうとしていた。

本物の姫への嫉妬

晴久が本物のシーラ姫の居場所を尋ねると、ジェーンは他の女性の名前を出したことに激怒した。

晴久は人外化した腕で防御したものの、圧倒的な力で吹き飛ばされた。ジェーンは晴久が自分を愛していると決めつけ、ミホトを排除したあと二人だけで暮らす計画まで語った。

悪魔憑きの正体

楓は、ジェーンが成り代わり術式を使用していたことから、本物のシーラ姫は生きている可能性が高いと説明した。

さらにジェーンは、魔族を身に宿す悪魔憑きであり、通常の悪魔憑きや天人降ろしを上回る持続力と回復力を持つ危険人物であった。その身に宿していたのは、水と嫉妬を司る上級魔族レヴィアタンだった。

愛の鳥籠

ジェーンはレヴィアタンの力を取り込み、周囲一帯へ五十枚を超える巨大な遮断結界を展開した。

晴久たちの退路は完全に封じられ、楓たちの防御結界もジェーンの一撃で容易に破壊された。

強引な口づけ

ジェーンは晴久を捕らえ、仲間たちへ愛情を見せつけるため強引に口づけした。

晴久は拘束が緩んだ隙に逃れたが、美咲、桜、楓は激しい怒りを露わにした。三人は逃走を諦め、ジェーンを倒す方針で一致した。

悪魔憑きとの激突

晴久は本物のシーラ姫の居場所を聞き出すため、快楽点ブーストと五感強化を発動して戦闘へ加わった。

美咲と楓は大量の影武者を作り、桜は爆破術式を仕込んだ。しかしジェーンは無数の魔力弾で式神を次々と消滅させ、晴久たちの攻撃を圧倒した。

レヴィアタンの濁流

晴久は降り注ぐ魔力弾を避けながら接近を試みたが、攻撃の余波だけで全身に重傷を負った。

最後にジェーンは街全体を覆うほどの水を出現させ、晴久たちを瓦礫混じりの濁流へ飲み込んだ。美咲、桜、楓も倒れ、一行は壊滅状態に追い込まれた。

決死の賭け

無傷のジェーンは晴久と美咲を連れ去ろうとした。

晴久は命を賭けてジェーンの隙を作り、ミホトに快楽媚孔を突かせようと考えた。しかし悪魔憑きであるジェーンには魔族が常に警戒しており、成功の可能性は極めて低かった。

菊乃と手鞠の救援

晴久が決死の作戦へ踏み出そうとした瞬間、周囲の建物や下水管が偶然を装うように次々と爆発した。

攻撃はすべてジェーンだけへ集中し、彼女を遠方へ吹き飛ばした。直後、葛乃葉菊乃と童戸手鞠が現れ、狐尾で晴久たちを保護した。

日本最強クラスの退魔師二人は、ジェーンの襲撃を予測して付近に待機していたのである。

菊乃と手鞠の反撃

最上級秘薬の治療

葛乃葉菊乃は《癒やしの白丘尼》から預かった最上級の秘薬を晴久、美咲、楓、桜へ使い、重傷を瞬く間に治療した。

突然現れた菊乃と童戸手鞠に一行が驚くと、菊乃は護衛開始時から変身術で周囲へ紛れ、密かに監視していたと明かした。

パーツ所持者を餌にした計画

相馬家は無数の事件だけでなく、パーツ所持者が攫われて重大な事態になる未来も予言していた。

菊乃は敵の正体と襲撃時期が不明だったため、晴久たちをあえて少数で護衛させ、強敵を誘い出す餌にしていた。ジェーンがシーラ姫へ成り代わっていたことは想定外だったが、それに備え菊乃と手鞠が待機していたのである。

菊乃の完全幻術

復活したジェーンは晴久を奪い返そうと、再び無数の魔力弾を放った。

しかし菊乃の完全幻術によって認識を支配され、ジェーンは誰もいない方向へ攻撃を続けた。レヴィアタンの力で幻術を強引に破ったものの、完全には認識を取り戻せず、晴久たちの正確な位置を捉えられなかった。

烏丸の潜在能力

菊乃は烏丸へ特殊な幻覚を見せ、恐怖を消して拘束術の力を最大限に引き出した。

烏丸はジェーンの殺気にも怯まず、強力な光の拘束術を何度もかけ直した。さらに手鞠の幸運がジェーンへ不幸として作用し、爆発や地盤沈下、建物の崩落が次々と彼女を襲った。

少数精鋭の影武者

菊乃の指示で美咲は速度重視の式神を作り、楓が晴久とミホトの姿へ変身させた。

菊乃は幻術によって影武者の動きまで補い、晴久本人と見分けのつかない少数精鋭の囮を完成させた。

幸運に守られた突撃

晴久はミホトの怪力と五感強化を使い、影武者とともにジェーンへ突進した。

ジェーンは全方位へ大量の魔力弾を放ったが、手鞠の幸運によって攻撃は晴久へほとんど当たらなかった。大規模な水攻撃も不幸な事故に妨げられ、発動に失敗した。

レヴィアタンの防御

晴久は烏丸の拘束術と菊乃の認識阻害を利用し、ジェーンの快楽媚孔へ左右から同時攻撃を仕掛けた。

しかしジェーンの胸元から現れたレヴィアタンが指先を受け止め、魔力の衝撃で晴久とミホトを吹き飛ばした。日本最強級の二人による援護を受けても、悪魔憑きとの力量差はなお大きかった。

神界の懲罰具

晴久が再び正面から注意を引いた隙に、菊乃は手鞠たちを獣尾で運び、ジェーンの背後へ回り込んだ。

菊乃が光の杭に偽装して打ち込んだのは、霊力回路を乱す神界の懲罰具であった。その効果によってジェーンとレヴィアタンの接続が阻害され、魔力回復速度と継戦能力が低下した。

ジェーンの撤退

不利を悟ったジェーンは自らを巻き込む大爆発を起こし、黒い霧に包まれて逃走した。

晴久は追撃しようとしたが、菊乃と手鞠も限界近くまで消耗していた。菊乃は神具によってジェーンの今後の活動を大きく制限できたとして、深追いを止めた。

本物のシーラ姫の捜索

戦いが終わると、晴久は本物のシーラ姫の居場所が不明なままだと思い出した。

菊乃は成り代わり術式の性質から、姫は丁重に扱われ、近い場所で生存している可能性が高いと推測した。成り代わりが解けたことで霊力の痕跡も追跡できるようになり、一行は直ちに捜索を開始した。

菊乃の評価

晴久は疲労を押してシーラ姫の救出を優先し、美咲や楓たちとともに動き始めた。

その姿を見た菊乃は、危険な相手に狙われても他人を優先する晴久へ呆れながらも、以前パーツごと処分しなかった判断は正しかったと満足そうに語った。

エピローグ 

同時多発霊能テロの終息

三人のジェーン対策

ジェーン・ラヴェイを撃退した翌日、晴久たちは白丘尼家の秘薬によって身体を回復させ、事後処理に追われながら日常を取り戻しつつあった。

しかし桜、宗谷、楓は敗北への悔しさと獣化中の醜態への羞恥から、毒や爆撃まで含めた過激なジェーン対策を練り続けた。晴久が宥めようとしても、三人は顔を赤らめて威嚇し、近づくことさえ拒んだ。

本物のシーラ姫の救出

本物のシーラ姫は、菊乃たちの霊視と手鞠の幸運によって、都内の高級ホテルで昏睡しているところを発見された。

ジェーンは色恋以外への関心が薄く、ほかのテロリストとも連携していなかったため、姫の増幅能力は悪用されていなかった。シーラ姫は健康な状態で欧州の護送船団へ引き渡された。

共有された四日間の記憶

成り代わり術式では術者と対象の魂が半ば同化するため、シーラ姫にはジェーンが姫として過ごした四日間の記憶がすべて残っていた。

そのため今回の訪日は本人の公式来日として扱われ、日本とアルメリア王国の友好関係構築も達成されたことになった。後日、改めて電話会談や慰問も行われる予定となった。

口づけの記憶

成り代わりが解けた直後もしばらく接続が残っていたため、シーラ姫はジェーンの身体を通じて晴久と口づけした記憶まで共有していた。

目覚めた姫は晴久を見るなり顔を赤くし、責任を取るよう求めたまま冷静さを取り戻さず帰国した。晴久は国際問題へ発展しないか不安を抱いた。

テロ事件の戦果

全国で起きた同時多発霊能テロは、多くの首謀者を逃したものの、共謀者や懸賞金付きの犯罪者を多数拘束して収束へ向かった。

アーネストの捕縛とジェーンの弱体化にも成功したため、退魔師協会側の大きな勝利といえる結果であった。

パーツ捜索の決意

晴久は、敵の勢力が急速に拡大している現状を受け、相馬家や童戸家にも協力を求めてパーツ捜索を急ぐ必要があると考えた。

危険な犯罪者たちに狙われ続ける状況を終わらせ、同じ騒動を繰り返さないため、晴久は宗谷へ再び相馬家を訪ねようと連絡した。

協会を揺るがす事件

晴久たちは一連の騒動が収束したと考えていた。

しかしその裏では、退魔師協会全体を震撼させる新たな大事件がすでに起きており、晴久たちはまだその事実を知らなかった。

エピローグ2 

童戸手鞠と相馬千鶴の封印

手鞠への奇襲

ジェーン撃退後、童戸手鞠は消耗した身体で東北の本家へ戻っていた。

普段なら幸運によって信号に止まることすらない手鞠の車が赤信号で停車し、直後に多数の呪術弾が襲来した。手鞠は結界で防いだが、道路が崩落して車は転落し、運転手も意識を失った。

反転した幸運

手鞠は、自身の幸運が無効化されたのではなく、不運へ反転させられていると気づいた。

そこへ現れたのは、天邪鬼の怪異家系に生まれた元十二師天の霊能犯罪者、逆神忍であった。忍は消耗した手鞠の能力を反転させ、体勢を崩した隙に掌打を叩き込んだ。

異相空間への封印

忍は魔族から渡された魔具を使い、手鞠を異相空間へ封じた。

手鞠の姿は現世に残っていたが、誰もその身体へ触れられず、本人もこちらへ干渉できない状態となった。忍は幸運能力も絶頂除霊も届かない封印の成功を確認し、雇い主へ任務完了を報告した。

崩壊した相馬家

同じころ、厳重な防衛を誇る相馬家本家も襲撃を受けていた。

屋敷は各所が破壊され、武装巫女たちは全員倒れていた。巫女頭の相馬礼だけが意識を保っていたが、満身創痍で抵抗できる状態ではなかった。

オッドアイの襲撃者

相馬家を制圧したのは、オッドアイを持つ異国の女性であった。

彼女は相馬家の戦力を称賛しながら、気絶した当主の相馬千鶴へ魔具を押し当てた。千鶴も手鞠と同じく異相空間へ封印され、現世への物理的、霊的な干渉を失った。

予言能力の封殺

封印された千鶴は会話こそ可能であるものの、現世の未来を予言することがほぼできなくなった。

魔族が作った呪具の解除には長い時間が必要であり、その間にパーツを奪うには十分であった。

日本側の切り札

逆神忍から手鞠封印の成功報告を受けたオッドアイの女性は、日本側の切り札を封じたと確信した。

童戸家の幸運と相馬家の予言を失わせた彼女は、これで対等にパーツを奪い合えると告げ、崩壊した相馬家をあとにした。

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