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フィクション(Novel)僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場読書感想

僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場(1)感想・ネタバレ

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僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場 1の表紙画像(レビュー記事導入用) フィクション(Novel)

最強女師匠まとめ
最強女師匠2巻レビュー

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物語の概要

■ 作品概要

本作は、才能の欠片もないレベル0の《無職》の少年が、世界最強クラスのS級女冒険者たちに拾われ、彼女たちの「理想の伴侶」となるべく鍛え上げられていく、適度に過保護な育成系バトルラブコメである。 伴侶となるべき理想の男がいないと悩んでいた三人の女傑たちは、「好みの男がいないなら、自分で育てればいい」という天啓を得て、バスクルビアの街を訪れる。そこで彼女たちは、ひょんなことから最弱の少年クロスに目を留めることとなる。クロスは三者三様の思惑と規格外の愛情を向けられながら、自身が憧れる「誰かを守れる冒険者」になるため、最強への道を駆け上がっていく。

■ 主要キャラクター

  • クロス・アラカルト:本作の主人公。レベル0、ステータスオール0の《無職》という最弱の少年である。冒険者学校を退学になるが、S級冒険者たちに拾われ弟子となる。お人好しでひたむきな性格であり、過酷な実戦の中で固有スキル《持たざる者の切望》を覚醒させる。
  • リオーネ・バーンエッジ:クロスを育てるS級冒険者の一人。《龍神族》の《崩壊級万能戦士》である。荒々しい性格だが面倒見が良く、近接戦闘の指導を中心にクロスの基礎を築く。
  • リュドミラ・ヘイルストーム:クロスを育てるS級冒険者の一人。《ハイエルフ》の《災害級魔導師》である。理知的な性格。魔力開発マッサージや高価な秘薬を用い、クロスの魔法スキルの習得と魔力の成長をサポートする。
  • テロメア・クレイブラッド:クロスを育てるS級冒険者の一人。《最上位吸血族》の《終末級邪法聖職者》である。退廃的な雰囲気でクロスを甘やかす。回復や魔力譲渡などのスキルを駆使し、クロスの無茶な修行を支える。
  • エリシア・ラファガリオン:勇者の末裔である白銀の髪の美少女。クロスが冒険者を志すきっかけとなった憧れの存在であり、伴侶を探すためバスクルビアの冒険者学校に入学する。

■ 物語の特徴

本作の最大の魅力は、圧倒的な実力を持つS級の女師匠たちが、最弱の主人公を未来の旦那にするため、過保護かつ規格外な育成(逆光源氏計画)を繰り広げる点にある。 また、単なる甘やかしの日常だけでなく、主人公がひたむきな努力と命がけの実戦を経て急成長し、格上の強敵を打ち倒していく本格的なバトルファンタジーとしての熱い展開も読者を強く惹きつける。ラブコメ要素と、底辺からの成り上がりによるカタルシスが見事に融合しているのが特徴である。

書籍情報

僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場(1)
著者:赤城大空 氏
イラスト:タジマ粒子  氏
出版社:小学館(ガガガ文庫)
発売日:2020年7月17日
ISBN:9784094518597

Audible(プレミアムプラン会員なら対象作品が聴き放題
無料体験後は月額¥1,500 で自動更新します。いつでも退会できます)
ナレーター/榊原優希 大久保瑠美 本泉莉奈 福緒唯 柴田芽衣 朝日奈丸佳 関山美沙紀 厚木那奈美 江田拓寛 櫻台遼己 

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

適度に過保護な育成系バトルラブコメ!
あるところに、世界最強クラスと称される三人の女傑がおりました。
しかしそんな三人にも手に入らないモノがありました。
それは――男。
しかしあるとき、そんな彼女らに天啓が舞い降ります。

「好みの男がいないなら、自分で育てりゃいいじゃない!」

そして三人はとある事件をきっかけに、クロスという才能の欠片もない少年に目をとめることになったのです。

その世界に数人しか存在しないと言われるS級冒険者。

《龍神族》の《崩壊級万能戦士》――リオーネ・バーンエッジ
《ハイエルフ》の《災害級魔導師》――リュドミラ・ヘィルストーム
《最上位吸血族》の《終末級邪法聖職者》――テロメア・クレイブラッド

の三人はクロスを最強の男に仕立てあげ、そして自分の伴侶にしようと目論みます。

でも、クロスはひとり。
三人は三者三様にクロスを育成しながら、ひそかに抜け駆けをすることを目論んでいるのです。

でもクロスはそんなことも知らず、次第に力をつけていく日々に喜んでいるのでした……。

これは、最弱の少年が最強の師匠たちと共に最強へと駆け上がっていく物語。
そして、最強女師匠たちのお婿さん育成計画のお話――。

僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場(1)

感想

読んでまず感じたのは、「年上のお姉さんに甘やかされたい」という願望を、とことん真っすぐ形にした作品だということである。タイトルから方向性は伝わってくるが、想像以上に全力でその路線を突き進んでおり、思わず笑ってしまった。

それと毎回思うのだが、この作者はあとがきまで含めて作品という印象がある。今回もあとがきの勢いは健在で、「やっぱりこの人らしいな」と最後まで楽しめた。

物語の序盤では、主人公クロスが数千万人に一人という不遇職《無職》を授かり、冒険者学校を退学になってしまう。

周囲から見放され、将来も閉ざされたような状況はかなり辛い。それでも、街を襲ったポイズンスライムヒュドラから勇者エリシアを助けようと命懸けで飛び込む姿には強く惹かれた。

力がないから諦めるのではなく、助けたいという気持ちだけで動ける主人公はやはり応援したくなる。

その勇気が世界最強のS級冒険者三人に認められ、「未来の旦那候補」として弟子入りする展開は、一気に物語が華やかになって面白かった。

本作で一番好きだったのは、三人の師匠との日常である。

修行で倒れればすぐ治癒魔法をかけてもらい、魔力開発という名目でマッサージまで受ける。

「それ修行なのか?」と思わずツッコミを入れたくなるが、この作品ではそれが正しい。

三人とも育成方針も性格も違うため、クロスを巡って張り合ったり、抜け駆けしようとしたりする様子が見ていて楽しかった。

こうしたラブコメ要素がありながら、バトルもしっかり熱いところは好印象だった。

師匠たちの常識外れな修行を受けたクロスが急成長し、自分を見下していたジゼルを復学試験で打ち破る場面は素直に気持ちが良かった。

努力が結果として返ってくる展開は、やはり王道の面白さがある。

そして、個人的に一番印象に残ったのは終盤の展開である。

ジゼルの策略によって森で私刑を受けながらも、強力な魔物が現れると、クロスは自分を傷つけた相手である彼女を見捨てようとはしなかった。

この場面を読んでいて、「この主人公は本当に根が優しいんだな」と感じた。

損得ではなく、自分が助けたいと思った相手を助ける。その愚直さがあったからこそ、固有スキルや不在スキルの覚醒にも説得力があったように思う。

読んでいて感じたのは、この作品は「最強のお姉さんに囲まれるラブコメ」というだけでは終わらないということだ。

主人公が少しずつ努力を重ね、周囲から認められていく王道ファンタジーとしての面白さもしっかり描かれている。

師匠たちとの賑やかなやり取りに笑い、クロスの真っすぐな生き方に胸が熱くなる。ラブコメと成長物語のバランスが心地よく、続きが楽しみになる第一巻だった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

Audible(プレミアムプラン会員なら対象作品が聴き放題)
ナレーター/榊原優希 大久保瑠美 本泉莉奈 福緒唯 柴田芽衣 朝日奈丸佳 関山美沙紀 厚木那奈美 江田拓寛 櫻台遼己 

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最強女師匠まとめ
最強女師匠2巻レビュー

考察・解説

世界最強の女師匠

「世界最強の女師匠」とは、主人公の少年クロス・アラカルトを「未来の旦那候補」として育成する3人のS級冒険者のことである。彼女たちは世界三大最強種であり、5段階ある職業の最上級職のさらに上である頂天職まで極めた、世界に9人しか存在しない規格外の実力者たちである。

3人の女師匠の驚異的なプロフィール、未来の旦那候補を探す旅とクロスとの出会い、そして財力と能力を惜しみなく注ぎ込む過保護な育成環境にいたる全容は以下の通りである。

世界三大最強種として頂天職を極めた3人の女師匠の能力と役割

クロスを指導する3人の師匠は、それぞれが世界最高峰の種族と固有の役割を持っている。

・リオーネ・バーンエッジ:龍神族の崩壊級万能戦士である。荒々しく勝ち気な性格であるが面倒見が良く、クロスの近接戦闘の指導を中心に基礎を築く。

・リュドミラ・ヘイルストーム:ハイエルフの災害級魔導師である。理知的なスレンダー美女で、薬液を用いた魔力開発マッサージや高価な秘薬を用いて、クロスの魔法スキルの習得と魔力成長をサポートする。

・テロメア・クレイブラッド:最上位吸血族の終末級邪法聖職者である。退廃的な雰囲気の美女で、回復や体力譲渡、気力譲渡、魔力譲渡などのスキルを駆使し、クロスの無茶な修行を支える。

理想の伴侶を育てるための弟子探しと要塞都市での運命的な出会い

彼女たちは絶世 of 美貌を持ちながらも、伴侶にするなら自分よりも強いか、せめて同格であってほしいという高すぎる理想を持っていたため、相手が見つからず欲求不満を募らせていた。

・そこで、好みの男がいないなら自分で一から育てればいい、という天啓を得て、未来の旦那候補(弟子)を探すために若き才能が集まる要塞都市バスクルビアを訪れる。

・バスクルビアに突如として国軍出動レベルの巨大な怪物ポイズンスライムヒュドラが出現した際、事件が起きる。

・クロスはレベル0の無職でありながら、勇者を助けるために自分の命を顧みず怪物へ立ち向かった。

・彼女たちはその姿に心を打たれ、彼を自分たちの弟子として迎え入れることにした。

S級冒険者の財力を用いた豪邸での生活と無限回復による限界反復練習

彼女たちの育成方針は、厳しく突き放すのではなく、至れり尽くせりの非常に過保護なものである。

・S級冒険者の財力で購入した豪邸を拠点とし、高級モンスターの肉を使った食事を与える。

・テロメアの無限に近い回復スキルを利用して限界まで反復練習を行わせるなど、世界一贅沢な環境でクロスを鍛え上げる。

・三人はクロスの異常な成長速度に驚きつつも、最終的に誰が彼を手に入れるか、でひそかに抜け駆けを牽制し合っている。

・純粋な好意と尊敬を向けてくる愛弟子を盛大に甘やかし、愛情を深めている。

まとめ

世界最強の女師匠たちによるクロスの育成は、規格外の実力と過保護な愛情が融合した究極の英才教育エピソードである。世界に9人しかいない頂天職の技術や、高級食材の提供、さらには死線を超えさせる無限の回復サポートといった贅沢な環境は、レベル0の少年を驚異的な速度で成長させている。伴侶を自ら育てるという一風変わった目的から始まった関係ではあるが、クロスのひたむきな姿勢は彼女たちの愛情をより深いものへと変えた。ひそかに互いを牽制し合いながらも愛弟子を全霊で甘やかす彼女たちの存在は、最強の旦那候補を作り上げるための最も心強く強烈な基盤となっている。

無職少年の覚醒

無職少年の覚醒は、駆け出し冒険者向けの西の森における危険度4モンスター「ロックリザード・ウォーリアー」との絶望的な死闘の中で引き起こされた。才能ゼロの最弱職である無職のクロスが、自らの限界を超えて真の力に目覚めるまでの過程、および世界最強クラスのS級女冒険者三人による弟子の育成計画の詳細は以下の通りである。

ジゼルの危機に立ち向かう決死の特攻と勝てない格上への挑戦

クロスたちを罠にはめようとしたジゼルと孤児院組であったが、そこに本来いるはずのない強大なモンスター「ロックリザード・ウォーリアー」が乱入した。

・ジゼルは仲間を逃がすために一人で囮となり、右足を折る重傷を負う。

・逃げる選択肢もあったクロスであるが、いつも誰かを守ってくれている人がピンチになったとき、それを助けられるくらい強い冒険者になりたい、という強い思いから死の恐怖をはねのけてジゼルの元へ戻る。

・絶対に勝てないはずの格上モンスターに真っ向から立ち向かった。

極限状態のスキル反復と持たざる者の切望による熟練度の急上昇

当初はクロスの攻撃が固い鱗にまったく通じず、武器も壊れるなど絶望的な状況であった。

・しかし彼は諦めず、S級の師匠たち(リオーネ、リュドミラ、テロメア)から教わった近接スキル(クロスカウンター、緊急回避など)や魔法スキル(ウィンドシュート)、邪法スキル(ガードアウト)をひたすら反復し続ける。

・極限の集中状態での死闘を通じて、クロスの中で眠っていた固有スキル「持たざる者の切望」が真価を発揮した。

・スキルの習得速度および習熟速度を異常に上昇させる、という力によって戦闘中にスキル熟練度を合計40以上も急上昇させる。

・これにより、次第にスキルの威力や速度、精度を飛躍的に高めていった。

三系統スキル同時発動が生んだ制限超越のカウンター不在スキル

戦いの最終局面、クロスは自分が持っているすべてのスキルを同時に叩き込もうと試み、戦士スキル、魔法スキル、邪法スキルを並行して発動させるという無茶苦茶な行為の中で、体内に異質な力を結実させた。

・それは、三つのスキルが統合されて生まれた、職業の制限上この世に存在するはずのない不在スキルである「イージスショット」であった。

・空気と防御力低下の黒い霧を圧縮して一瞬の弱点を作り出す反則的なカウンターの一撃が、ロックリザード・ウォーリアーの強固な鱗を切り裂く。

・見事に怪物の首を断ち切った。

危険度4討伐がもたらしたジゼルの動揺と師匠たちの独占欲の激化

レベル0の無職が危険度4のモンスターを討伐するという常識外れの偉業を成し遂げた。

・戦闘後、クロスはすぐに年相応の無邪気な笑顔に戻り、ジゼルと二人で勝てたことを喜んだ。

・ジゼルはお人好しな少年が見せた雄々しい冒険者の姿に心を動かされ、顔を赤くして動揺する。

・また、後日ステータスプレートを確認したS級の師匠たちは、たった一度の戦闘で異常な成長を遂げ、聞いたこともない不在スキルまで発現させたクロスの底知れぬ力に愕然とした。

・彼を確実に自分たちのものにするための独占欲をさらに強めることになった。

高すぎる理想が招いた欲求不満と見込みある男を一から育てる天啓

弟子の育成計画は、リオーネ、リュドミラ、テロメアの三人が、主人公の少年クロスを自分たちの理想の伴侶(旦那)として一から育て上げるための計画である。

・絶世の美貌と人外の強さを持つ三人の女師匠たちは、伴侶にするなら自分より強いか同格の男がいい、という高すぎる理想を掲げていたため、相手が見つからず欲求不満を抱えていた。

・そこで、好みの男がいないなら、見込みのある若い男を自分好みの戦闘スタイルや立ち振る舞いに一から育てて、良い塩梅になったら収穫すればいい、という天啓を得る。

・これにより、未来の旦那候補=弟子の育成を思い立った。

要塞都市バスクルビアでの出会いと勇者を助ける特攻の評価

才能があっても生意気な者ばかりで弟子探しは難航していたが、勇者エリシアが伴侶探しのために冒険者学校に入学すると聞き、世界中から若き才能が集まる要塞都市バスクルビアへと向かう。

・そこで、国軍出動レベルの超巨大モンスターを前に、自らの命を顧みず勇者を助けようと特攻した無職の少年クロスを見込む。

・彼を未来の旦那候補として弟子に迎えることになった。

最高級のオーク肉と三種の譲渡スキルによる限界なき徹底教育

彼女たちの育成方針は、無闇に厳しくするのではなく世界一贅沢な環境で徹底的に甘やかしながら能力を伸ばすという、非常に過保護なものであった。

・高級食材とマッサージ:危険度5のクイーンオークの肉など栄養価の高い食事を与え、リュドミラが特別な薬液を用いて疲労回復と魔力感度を高める「魔力開発マッサージ」を毎晩施す。

・無限のスキル反復:通常の冒険者を悩ませる魔力切れや疲労に対しては、テロメアが体力譲渡、気力譲渡、魔力譲渡を行うことで一瞬で全回復させ、一日に何百何千回というスキルの反復練習を可能にした。

・反則級アイテムの使用も辞さない覚悟:もしクロスの成長が遅ければ、各種族の秘宝(龍神族の秘宝、エルフの長寿化の秘薬、封印神器である暗黒聖杯など)を、世界中を敵に回してでも強引に使う構えを見せていた。

近接戦闘での自信獲得から魔法および防御低下邪法への段階的指導

段階的な指導によって、複数系統のスキルを並行して戦闘の組み立てに組み込めるように指導の幅を広げていった。

・まずはクロスの剣の基礎を活かし、リオーネの指導で近接戦を中心に鍛え上げる。

・怪我の心配がないリオーネを相手に全力で攻撃させ、殴り合いが楽しいと思える状態にして自信をつけさせた。

・近接戦闘に慣れた後は、リュドミラから風魔法「ウィンドシュート」、テロメアから敵の防御を下げる邪法スキル「ガードアウト」などを教えた。

お婿さん計画を知らない愛弟子の健気な成長と裏での牽制し合い

三人は協力してクロスを最強の男に仕立て上げつつも、最終的には誰が彼を手に入れるかで互いに抜け駆けを牽制し合っている。

・一方のクロス本人は、彼女たちの思惑(お婿さん育成計画)に全く気付いていない。

・純粋な好意と尊敬を師匠たちに向けながら過酷な実戦を乗り越え、最強への道を駆け上がっている。

まとめ

クロスの覚醒とS級師匠たちによる育成計画は、常識破りの才能と世界一贅沢な英才教育が噛み合った、最強の旦那候補誕生の軌跡である。高すぎる理想ゆえに欲求不満を抱えていた最強種三人によるお婿さん育成計画は、クイーンオークの肉や魔力マッサージ、各種譲渡スキルによる無限反復という規格外の過保護環境を生み出した。その環境下で鍛えられたクロスは、ジゼルの危機に際して固有スキル「持たざる者の切望」を真に覚醒させ、戦闘中に熟練度を爆発的に上昇させただけでなく、三系統を統合した不在スキル「イージスショット」を編み出し危険度4を撃破するに至った。本人がそのお婿さん計画に気づかぬまま純粋な尊敬を向ける一方で、想定を遙かに超える速度で進化し始めた愛弟子の底知れぬ力に対し、師匠たちの独占欲と抜け駆けへの牽制は今後さらに激化していく。

勇者の末裔

勇者の末裔は、数百年前に人族を滅ぼしかけた最強の魔王・魔神を討ち取ったとされる英雄の血脈である。復活するとされる魔神を完全に討ち滅ぼすため、強き血を残すことに執心しており、代々優秀な伴侶を探すために冒険者の聖地バスクルビアの冒険者学校に入学するという伝統を持っている。

今代の勇者の末裔であるエリシア・ラファガリオンを中心に、歴代最高の英雄血統としての実力や主人公クロスとの因縁、不自由な境遇が生んだ衝突、そしてヒュドラ戦での救出劇と和解にいたる全容は以下の通りである。

白銀の髪を持つ16歳の少女による早期授与と最上級職への登頂

今代の勇者エリシアは、一振りの宝剣のように美しい白銀の髪を持つ16歳の少女である。

・5歳という異例の早さで職業を早期授与され、すでに剣士系の最上級職に上り詰めている。

・その実力はアルメリア王国に十数人しかいないA級冒険者に匹敵する。

・歴代最高の英雄血統、人族の切り札、と称賛されるほどの規格外の強さを誇る。

4年前のモンスター襲撃からの村人救出と少年の強い決意の原点

クロスが冒険者を志した背景には、幼少期に体験したエリシアとの出会いがある。

・4年前、クロスが10歳の頃に彼の生まれ育った村がモンスターの群れに襲われた際、当時12歳だったエリシアが駆けつけて村人たちを救った。

・この出来事が、クロスに、いつも誰かを守ってくれている人がピンチになったとき、それを助けられるくらい強い冒険者になりたい、と強く決意させる原点となった。

伴侶探しの使命を巡る水面下の勢力争いと退学になったクロスへの辛辣な言葉

英雄としてもてはやされる一方で、エリシア自身には望むように生きていける自由がない。

・伴侶探しすらも血脈を残す使命として定められている。

・彼女の入学を機にバスクルビアには勇者の籠絡や勢力拡大を目論む貴族や強者が世界中から集結し、水面下で激しい勢力争いが起きている。

・この不自由な運命に対する抑圧から、クロスが無職を授かり退学になった直後、エリシアは彼に対して、無職が冒険者になれるわけがない、ワガママを望んだって周りに迷惑がかかるだけ、と冷たく突き放し、心を折るような言葉をぶづけてしまう。

倒壊する建物からの逃げ遅れ救出と瀕死の重傷を負った魔獣核の破壊

バスクルビアの街に国軍出動レベルの超巨大モンスター「ポイズンスライムヒュドラ」が出現した際、エリシアは窮地に陥る。

・エリシアは倒壊する建物から逃げ遅れた人々を守るために自ら盾となり、毒の触手に捕らわれてしまう。

・その絶体絶命の危機に、かつて自分から冷たい言葉をぶつけられた無職のクロスが死の恐怖を乗り越えて特攻した。

・クロスは瀕死の重傷を負いながらもヒュドラの核を破壊する。

・この一件を経て、エリシアは自らを顧みず助けてくれたクロスに涙ながらに謝罪した。

認識阻害アイテムを用いた護衛排除と気ままな街歩きによる心境の変化

ヒュドラ事件以降、エリシアはクロスへの負い目とお礼を兼ねて、彼がジゼルへ贈る謝罪の品を選ぶための街歩きに付き合う。

・認識阻害のマジックアイテムを使い、護衛の目も盗んでのお忍びの密会であった。

・屋台での買い食いや劇場街を回るなど、使命の修行に明け暮れていた彼女にとって、気ままに街を回る初めての自由な時間、となる。

・これにより、二人の距離は次第に縮まっていくことになる。

まとめ

勇者の末裔たるエリシアとクロスの関係性は、血脈の重圧が生んだすれ違いから、命懸けの救出劇を経て、互いの素顔を明かし合える深い信頼へと変貌を遂げている。人族の切り札と称される圧倒的な実力を持ちながらも、自由のない境遇に苦しむエリシアは一度はクロスを冷酷に突き放したが、ポイズンスライムヒュドラ戦でレベル0のクロスが見せた無謀なまでの献身によってその心を氷解させた。お忍びの街歩きという初めての自由な時間を通じて、使命に縛られた英雄ではなく一人の少女としてクロスと向き合い始めた彼女の歩みは、今後の二人の絆をより強固なものへと変えていく。

異常な成長速度

無職の少年クロスが見せた「異常な成長速度」は、本来ならスキルがまったく育たないとされる無職の常識を覆すものであり、作中で大きな驚きをもって描かれている。

熟練度の爆発的な上昇量、その驚異的な進化を引き起こした3つの要因、そして西の森で遭遇した危険度4のモンスター「ロックリザード・ウォーリアー」との命懸けの修行にいたる全容は以下の通りである。

復学試験での急成長と危険度4との一戦における熟練度40以上の急上昇

一般的に、スキルの熟練度がLv1上がるのには、各職業の補正やレベルアップ時のボーナスを含めても2週間ほどの訓練が必要とされている。

・しかしクロスは、スキル発現からわずか10日ほどで熟練度を大きく伸ばした。

・復学試験の1日だけで合計13または14も熟練度レベルを上昇させている。

・さらに、危険度4のロックリザード・ウォーリアーとの死闘においては、たった一戦の中でスキル熟練度を合計40以上も急上昇させるという、異常事態と言える成長を遂げた。

持たざる者の切望の覚醒とS級師匠による三種の譲渡および国宝級秘薬の投与

クロスの異常な成長は、以下の要素が完璧に噛み合った結果としてもたらされた。

・固有スキル「持たざる者の切望」の覚醒:最も大きな要因は、クロスのステータスプレートに隠蔽されていた固有スキルである。これはスキルの習得速度および習熟速度を上昇させる、という前代未聞の能力を持つスキルで、ポイズンスライムヒュドラ戦で命懸けの特攻をした際の極限状態をきっかけに後天的に覚醒したと推測されている。

・S級冒険者たちによる世界一贅沢な育成環境:三人の師匠が提供した規格外の環境も不可欠であった。テロメアによる魔力譲渡、体力譲渡、気力譲渡により、通常の冒険者を悩ませる魔力切れや疲労を即座に全回復させ、1日に何百何千回というスキルの反復練習を可能にした。さらにリュドミラによる薬液を用いた魔力開発マッサージや、ステータス補正スキルの成長幅を底上げする国宝級の秘薬(薬酒)の投与が行われ、リオーネによる近接戦闘の徹底指導など、各分野の頂点職による直接指導があった。

・クロス自身のひたむきな努力と実戦での集中力:クロスは師匠たちから教わったことを素直に吸収し、ロックリザード・ウォーリアーとの絶望的な死闘という極限状態の中で、教えを反芻しながら冷静にスキルを繰り出し続けた。この死線での極上の修行が、固有スキルと合わさって爆発的な成長を引き出した。

格上ジゼルの撃破と不在スキルの発現に伴う師匠たちの強烈な独占欲

この異常な成長により、クロスは復学試験で格上のジゼルを打ち破っただけでなく、ロックリザード・ウォーリアーとの戦いの中では戦士、魔法、邪法のスキルを統合させた不在スキル「イージスショット」を発現させ、見事怪物を討ち倒した。

・この成長速度に対し、自分たちを打ち破られまいと戦っていたジゼルは、戦闘中にクロスの威力がどんどん上がっていく様に愕然とした。

・また、三人の師匠たちも、高等鑑定アイテムでクロスの異常な成長と隠された固有スキル、および不在スキルの存在を知り言葉を失う。

・彼女たちはクロスの底知れぬ才能に驚愕し、この破格の旦那候補を確実に手に入れるために他の二人をここでぶちのめして攫おうか、と一瞬本気で考えるほど独占欲を募らせることになった。

骨折したジゼルを救うための決断と生死の狭間にのみ存在する極上の修行

作中における命懸けの修行とは、西の森でクロスが遭遇したロックリザード・ウォーリアーとの絶望的な死闘のことを指す。この極限の実戦は、クロスにとって自らの限界を突破する、生死の狭間にのみ存在する極上の修行、となった。

・孤児院のリーダーであるジゼルに罠にはめられ、西の森の奥深くに誘い込まれたクロスであったが、そこに本来出現するはずのない巨大モンスターが突如として現れる。

・足を骨折し、仲間を逃がすために自ら囮になろうとするジゼルを見捨てて逃げる選択肢もあった。

・しかし、誰かがピンチになったときそれを助けられるくらい強い冒険者になりたい、という強い思いを持つクロスは、勝てる見込みのない格上の怪物に真正面から立ち向かうことを決意した。

・ロックリザード・ウォーリアーの岩のような硬い鱗には、発現したばかりのクロスの攻撃や魔法はほとんど通用しなかった。

・一撃でも食らえば致命傷となる攻防の最中、クロスはリオーネ、リュドミラ、テロメアという師匠たちから教わったスキルの使い方や魔力の感覚を頭の中で必死に反芻する。

・身体能力強化や緊急回避で攻撃をしのぎ、ウィンドシュートで隙を作り、ガードアウトで防御を下げ、クロスカウンターを叩き込む。

・地面を転がり、血反吐を吐き、武器が壊れそうになっても、クロスは決して止まらなかった。

・より強く、より早く、より正確にと、限界を超えた一撃を目の前の怪物にぶつけ続けるその時間こそが、生死の狭間でしか得られない、極上の修行、であった。

・戦闘の中で絶え間なくスキルを放ち続けた結果、威力が上がり速度が増し、たった一戦でスキルの熟練度を合計40以上も急上昇させるという異常な成長を遂げた。

・そして最終局面、クロスは自身のすべてを込めて近接、魔法、邪法のすべてのスキルを同時に発動させようと極限の集中を見せる。

・その結果、この世に存在するはずのない不在スキル「イージスショット」を覚醒させ、怪物の硬い鱗と首を見事に切り裂き、この過酷な修行を勝利で終えることとなった。

まとめ

無職であるクロスの異常な成長と命懸けの修行は、隠された天賦の才と最高峰の環境、そして少年のひたむきな信念が結実した奇跡の軌跡である。レベル0の無職という絶望的な状況から、固有スキル「持たざる者の切望」の覚醒とS級師匠たちの至れり尽くせりの指導によって、わずか10日ほどで常識を超えた熟練度の上昇を成し遂げた。西の森でのロックリザード・ウォーリアーとの死闘は、単なる生存競争ではなく、生死の狭間で教えを反芻し限界を突破する極上の修行の場へと昇華された。三系統のスキルを同時発動させて不在スキル「イージスショット」を編み出し、危険度4を討ち果たした底知れぬ才能は、対峙したジゼルを愕然とさせ、愛弟子を巡る師匠たちの独占欲を本気で衝突しかねないレベルにまで激化させている。

最強女師匠まとめ
最強女師匠2巻レビュー

登場キャラクター

孤児院組

クロス・アラカルト

お人好しで真っ直ぐな性格を持つ14歳の少年である。エリシアに憧れて冒険者を志している。リオーネら3人のS級冒険者の弟子として修業を積む。

・所属組織、地位や役職
 孤児院出身。レベル0の《無職》。

・物語内での具体的な行動や成果
 巨大モンスターからエリシアを救おうと特攻し、瀕死の重傷を負った。S級冒険者の弟子となり、異常な速度で複数のスキルを習得する。復学試験で因縁のあるジゼルを打ち破った。西の森で格上のロックリザード・ウォーリアーを討伐する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 固有スキル《持たざる者の切望》を覚醒させる。戦闘の果てに不在スキル《イージスショット》を発現した。

ジゼル・ストリング

気が強く、孤児院を支配するリーダー格の少女である。クロスを毛嫌いし、辛く当たる。

・所属組織、地位や役職
 孤児院出身。レベル15の《撃滅戦士見習い》。

・物語内での具体的な行動や成果
 西の森で依頼を利用してクロスを襲撃した。ロックリザード・ウォーリアーの出現時、仲間を逃がすために自ら囮となって右足を骨折する。その後はクロスと共闘して怪物を倒した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 初期スキル10種という破格の才能を持つ。固有スキル《慢心の簒奪者》を所持している。

エリン

クロスの顔見知りである。ジゼルの指示に従って行動する。

・所属組織、地位や役職
 孤児院出身。《レンジャー》。

・物語内での具体的な行動や成果
 西の森の依頼でクロスとパーティを組む。モンスターの気配を探る役割を担った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

コリー

クロスの顔見知りである。

・所属組織、地位や役職
 孤児院出身。《水魔術師》。

・物語内での具体的な行動や成果
 西の森の依頼でクロスとパーティを組んだ。クロスを水魔法で攻撃する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

ダード

クロスの顔見知りである。

・所属組織、地位や役職
 孤児院出身。《重剣士見習い》。

・物語内での具体的な行動や成果
 西の森の依頼でクロスとパーティを組む。後衛の護衛を担当した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

孤児院組

身寄りを失い、ギルド併設の孤児院で暮らす子供たちである。ジゼルの統率下にある。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド併設の孤児院。

・物語内での具体的な行動や成果
 職業授与式に参加する。西の森でクロスを罠にかける作戦に加担した。ロックリザード・ウォーリアーの出現により逃走する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

年少組

孤児院で暮らす9歳の子供たちである。

・所属組織、地位や役職
 孤児院出身。

・物語内での具体的な行動や成果
 角ウサギを難なく仕留める。訓練で角ウサギに負けたクロスを馬鹿にした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 すでにレベル2に達している。

S級冒険者

リオーネ・バーンエッジ

荒々しい性格だが面倒見が良い。クロスの近接戦闘を中心に指導する。

・所属組織、地位や役職
 S級冒険者。龍神族の《崩壊級万能戦士》。

・物語内での具体的な行動や成果
 バスクルビアに現れたポイズンスライムヒュドラの首を押さえ込んだ。クロスを自らの弟子に勧誘する。クロスの復学試験を公開形式に仕組んだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

リュドミラ・ヘイルストーム

理知的で上品な雰囲気をまとう。クロスの魔法スキルの習得と魔力開発を指導する。

・所属組織、地位や役職
 S級冒険者。ハイエルフの《災害級魔導師》。

・物語内での具体的な行動や成果
 ポイズンスライムヒュドラを氷結魔法で食い止める。クロスに魔力開発マッサージや薬酒を施した。クロスの異常な成長に気づき、鑑定アイテムで調べる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

テロメア・クレイブラッド

退廃的な雰囲気をまとう。魔力や体力の譲渡でクロスの過酷な修行を支える。

・所属組織、地位や役職
 S級冒険者。最上位吸血族の《終末級邪法聖職者》。

・物語内での具体的な行動や成果
 ポイズンスライムヒュドラに邪法スキルを流し込んだ。クロスに魔力吸収や気力譲渡を行う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

アルメリア王立冒険者学校・冒険者ギルド

サリエラ・クックジョー

冒険者学校の学長として冷静に職務をこなす。S級冒険者たちの問題行動に頭を悩ませている。

・所属組織、地位や役職
 アルメリア王立冒険者学校の学長であり、バスクルビアの領主。A級冒険者。

・物語内での具体的な行動や成果
 職業授与式で式辞を述べる。クロスに退学の決定を伝えた。ポイズンスライムヒュドラや魔物暴走の対応を指揮する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

ギルド職員

学長やギルドの指示に従って行動する。

・所属組織、地位や役職
 冒険者ギルド。

・物語内での具体的な行動や成果
 サリエラにS級冒険者の来訪を知らせる。魔物暴走の発生を報告した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 特筆事項はない。

勇者一行

エリシア・ラファガリオン

使命による重圧を抱えている。自身を助けてくれたクロスに対しては誠実な態度をとる。

・所属組織、地位や役職
 勇者の末裔。剣士系の最上級職。

・物語内での具体的な行動や成果
 ポイズンスライムヒュドラの再生核を破壊しようとして触手に捕らわれる。自分を助けたクロスに謝罪し、お菓子選びに付き合った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 16歳でA級冒険者と同等の実力を持つ。

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ナレーター/榊原優希 大久保瑠美 本泉莉奈 福緒唯 柴田芽衣 朝日奈丸佳 関山美沙紀 厚木那奈美 江田拓寛 櫻台遼己 

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最強女師匠まとめ
最強女師匠2巻レビュー

展開まとめ

プロローグ 世界最強たちの悩み 

三人の女傑と弟子探し

世界最強の女傑たち

世界最強クラスと称される三人の女傑は、それぞれ拳、魔法、回復魔法と補助魔法で人外の力を振るう存在であった。絶世の美貌も備えていたが、つがいにする相手には自分以上か同格の強さを求めたため、理想に合う男は見つからず、三人は欲求不満を募らせていた。

理想の男の育成計画

三人は、好みの男がいないなら自分たちで育てればよいと考えた。見込みのある若い男に戦闘スタイルや立ち振る舞いを叩き込み、頃合いを見て旦那候補として収穫する計画であった。しかし、才能ある者は見つかっても生意気で自信過剰な者ばかりで、三人の目には育てる気になれない小物に映った。

難航する弟子探し

弟子探しを始めて数か月が過ぎても、三人は弟子候補にすら巡り会えなかった。次の行き先を巡って、指名手配されているウルカ帝国へ行き、襲ってくる者たちの中から見込みのある者を攫う案も出たが、相手は伸び代の少ないベテランばかりだろうと考えられ、行き先すら決まらない状態であった。

バスクルビアへの期待

そんな折、勇者の末裔が世界最高峰の冒険者学校に入学するという情報が三人に届いた。要塞都市バスクルビアには、勇者の末裔を目当てに世界中から若き才能が集まるため、三人は未来の英雄の見本市だと考えた。勇者の末裔本人や集まる若者たちを弟子候補にできると見込み、学長との面識もあることから、三人は凄まじい速度でバスクルビアへ向かった。

第一章 世界最弱の少年

勇者の末裔への憧れ

クロス・アラカルトは十歳の頃、生まれ育った村がモンスターに襲われた光景を脳裏に焼き付けていた。両親を早くに亡くしたクロスを村全体で育ててくれた暖かな場所は蹂躙され、大人たちも次々と倒れていった。誰もが絶望したその時、勇者の末裔と呼ばれる白銀の髪の人物が現れ、モンスターの群れを一瞬で切り捨てた。倒れた村人たちも護衛の治癒スキルで救われ、クロスはその人のように多くの人を守れる冒険者になりたいと強く憧れた。

冒険者の聖地バスクルビア

要塞都市バスクルビアは、かつて魔神と戦う前線基地として成立し、深淵樹海を管理するために冒険者ギルドが運営を取り仕切る大都市であった。そこにはアルメリア王立冒険者学校があり、実技や座学の講義、訓練施設、優れた講師陣がそろっていた。また、ギルド併設の孤児院で身寄りのない子供を養い、希望者を冒険者候補として育てる役割も持っていた。

角ウサギに敗れたクロス

十四歳になったクロスは、孤児院の少年少女とともに訓練を受けていたが、角ウサギとの実戦訓練で体当たりを受け、剣を落として悲鳴を上げた。ルームメイトに助けられたものの、九歳の年少組でも倒せる相手に負けたことで、周囲から笑われた。クロスはレベルもステータスもすべて0であり、年少組の女の子との腕力比べにも負けるほどだった。

ジゼルの罵倒

孤児院のボスであるジゼル・ストリングは、クロスを才能のない邪魔者と決めつけていた。ジゼルは十四歳にして職業スキルを早く発現し、固有スキルも持つと噂され、すでにレベル15に達していた。彼女は角ウサギにも勝てないクロスが訓練枠を無駄にしていると罵り、寮へ戻って掃除をしろと追い払った。先生も理不尽への対処も訓練のうちとして助けず、クロスは訓練場を去るしかなかった。

夜の自主練

夜、座学と雑用を終えたクロスは、誰もいない訓練場で一人自主練をしていた。訓練用ショートソードで木偶を打ちながら、どれだけ努力してもレベルが上がらない自分に悔しさを抱いていた。ステータスプレートを確認しても、職業は未授与、レベルも各能力も0のままであり、クロスは才能や適性がないのではないかと苦しんだ。

豊穣祭への望み

クロスは、それでも一週間後の豊穣祭で職業を授かれば、最低でもスキルが得られ、努力の方向性も見えるはずだと自分を励ました。職業は魂の形を決定し、ステータスの伸びやスキル習得に大きく関わるものであった。クロスは、職業さえ授かれば現状を抜け出せるかもしれないと考え、まだ腐るには早いと希望をつないでいた。

豊穣祭のバスクルビア

クロスは、職業授与時のスキル数には幼い頃からの努力も反映されると信じ、豊穣祭まで自主練を続けていた。一週間後、バスクルビアは勇者の末裔エリシア・ラファガリオンの入学と伴侶探しの噂もあって、例年以上の人出で賑わっていた。孤児院組も巨大円形闘技場へ向かい、そこで職業授与式に臨んだ。

エリシア・ラファガリオン

授与式では、サリエラ・クックジョー学長の挨拶に続いて、勇者の末裔エリシアが壇上に現れた。四年前に村を救った憧れの少女が美しく成長した姿を見て、クロスは呆然と見上げていた。エリシアは、強さを疑う者に向けた実演で上級剣士の大剣を一瞬で細切れにし、観客から畏怖と歓声を集めた。

ジゼルの撃滅戦士見習い

職業授与の儀式が始まり、子供たちは次々と適職を判定されていった。ジゼル・ストリングは撃滅戦士見習いを授かり、初期スキル十種という破格の結果を出した。その結果に観客や冒険者たちは色めき立ち、クロスも自分が望んでいた花形の近接戦闘職を得たジゼルを強く羨んだ。

クロスの無職

クロスは近接戦闘職や魔法職、せめて人助けに関わる職業を願いながら台座に上った。しかし表示された職業は無職で、スキル数も0だった。数千万人に一人の超レア職でありながら、レベルも上がらずスキルも習得しにくい最弱無能職だと周囲に受け止められ、闘技場は憐れみの沈黙に包まれた。

退学勧告

クロスは寮に戻った後、自分の寝床に退学勧告の用紙が置かれているのを見つけ、サリエラ学長に直談判した。クロスは無職でもどの職業のスキルも習得できる可能性があると訴えたが、サリエラはそれは理論上の話であり、実用レベルに至るには果てしない時間が必要だと説明した。彼女は、夜の自主練を知っていたからこそ、初期スキル0という結果がクロスの冒険者志望にとって致命的だと告げた。

S級三人の来訪

クロスがなおも食い下がる中、ギルド職員がサリエラに緊急の報告を伝えた。サリエラは、S級の三人が学長室で勝手に茶と菓子を食べていると知り、激しく動揺した。彼女は精神安定用のハーブや回復魔法の手配まで命じ、退学決定は覆らないとクロスに告げたまま、その場を立ち去った。

ジゼルの暴力

廊下に残されたクロスの前に、ジゼルが取り巻きを連れて現れた。ジゼルは、無職のクロスが冒険者を目指すことに苛立ち、身体能力強化や剣技を使ってクロスを痛めつけた。クロスはそれでもエリシアのような冒険者になる夢を捨てなかったため、ジゼルはさらにスキルの練習台にしようとした。

エリシアの冷たい言葉

そこへエリシアが現れ、ジゼルの暴力を止めた。クロスは再び憧れの少女に助けられたことに混乱し、四年前に助けられて以来、彼女のような冒険者を目指してきたと告げた。しかしエリシアは、無職が冒険者になれるはずがないと冷たく言い放った。努力で変えられるのは最初から変えられる範囲だけだと突きつけられ、クロスは初めて心が折れた。

再開発区の異変

クロスは学校から逃げ出すように街をさまよい、豊穣祭の喧騒を避けて再開発区近くの路地に座り込んだ。職業もレベルもない自分を雇う者などいないと考え、冒険者以外の道さえ閉ざされている現実に途方に暮れていた。そのとき街に地鳴りが起こり、石畳や建物が軋む中、再開発区の中央から本来現れるはずのない殺戮の権化が姿を現した。

学長室の三人

街に巨大な怪物が現れる少し前、サリエラは学長室の前で、S級冒険者の三人が帰っていることを祈っていた。しかし室内には、龍神族のリオーネ・バーンエッジ、ハイエルフのリュドミラ・ヘイルストーム、最上位吸血族のテロメア・クレイブラッドが勝手にくつろいでいた。三人は世界に九人しかいないS級冒険者であり、サリエラは彼女たちの問題行動に苦労させられてきたため、早く用件を済ませて帰らせようとした。

勇者への師事要求

リオーネたちは、バスクルビアに来た勇者の末裔を出せとサリエラに要求した。彼女たちは勇者に見込みがあれば誰かが師として面倒を見るつもりだと語ったが、サリエラはその善意をまったく信用しなかった。勇者が三人の人格に染まれば世界が終わると危惧し、会わせない方法を考えていたところ、街全体を揺るがす衝撃が起こった。

ポイズンスライムヒュドラ

サリエラが窓の外を見ると、再開発区に巨大なポイズンスライムヒュドラが出現していた。通常でもA級冒険者パーティによる討伐が推奨される危険度8の高位モンスターだったが、街に現れた個体は城壁を越えるほど巨大で、危険度9に相当する国軍出動レベルの怪物であった。S級の三人は、未来の旦那候補たちが死ぬと叫び、学長室を破壊する勢いで怪物のもとへ飛び出していった。

重なる異常事態

サリエラは三人にヒュドラを任せ、自分は住民の避難誘導に動こうとした。そこへギルド職員が駆け込み、深淵樹海方面から四千以上のモンスターがバスクルビアへ向かう魔物暴走を報告した。サリエラは偶然とは思えない異常の重なりを感じながらも、ポイズンスライムヒュドラはS級三人に任せ、B級以上の冒険者を北へ、C級以下を住民避難へ回すよう指示した。

毒液の壁

バスクルビアの人々は、あまりに非現実的な巨大モンスターの出現に理解が追いつかず、最初は呆然としていた。しかしヒュドラの毒液の身体が再開発区からあふれ、建物を飲み込みながら群衆へ迫ると、悲鳴と怒号が広がった。クロスも圧倒的な怪物を前に動けなくなり、迫る毒液の壁に飲み込まれかけた。

S級三人の足止め

リュドミラの氷結魔法が毒液の壁を凍らせ、リオーネが巨大な首を空中で押さえ込んだ。テロメアも邪法スキルを放ったが、ヒュドラは想定以上の魔法防御と回復力を持っていた。三人は街への被害を避けるために全力を出せず、毒の身体を砕くこともできなかったため、足止めしながら討伐方法を探るしかなかった。

再生核の露出

リュドミラはテロメアを火炎魔法でヒュドラの胴体へ撃ち込み、テロメアは体内へ邪法スキルを直接流し込んだ。ヒュドラは無数のブレスを放ったが、リュドミラが属性魔法で相殺し続けた。やがて邪法スキルの影響でヒュドラの再生核が体外へ露出したが、核は三人の攻撃が届きにくい地表近くの死角に現れた。

冒険者たちへの託し

三人はそれぞれの役割から動けず、核を直接破壊できなかった。そこでリオーネは地上の冒険者たちへ、露出した核を剣で叩けと叫んだ。冒険者たちは手柄を狙って一斉に核へ向かったが、追い詰められたヒュドラは毒液の触手で核を守り、さらに広範囲の全ステータス低下スキルを放った。

咆哮による恐慌

ヒュドラは続けて高レベルの咆哮を放ち、実力差のある街の人々や冒険者たちを恐怖と錯乱に陥れた。核を狙っていた戦闘職たちも武器を落として動けなくなり、避難すらままならない状態となった。S級三人には効果がなかったが、群衆が無力化されたことで核を破壊できる者がいなくなった。

エリシアの救援

そこへエリシア・ラファガリオンが駆けつけ、自分が核を破壊すると名乗り出た。エリシアは核へ一直線に迫ったが、ヒュドラの触手が建物を倒壊させ、錯乱した人々を巻き込みかけたため、救助を優先した。彼女は建物を細かく切り刻んで人々を守ったが、その硬直を狙われ、毒の触手に捕らえられてしまった。

勇者の危機

エリシアが毒の触手に締め上げられ、白煙を上げながら悲鳴をあげると、群衆の恐慌はさらに広がった。S級三人は勇者が女性だったことに驚いて一瞬やる気を失いかけたが、勇者が死ねば街に男が集まらなくなると気づき、本気で焦った。核破壊の手段が限られ、犠牲を覚悟して動くしかないかと思われたその時、混乱の中にクロスの情けない雄叫びが響いた。

恐怖を越えた一歩

クロスはステータス低下の影響こそ受けなかったが、ヒュドラの咆哮によって誰よりも強い恐怖に呑まれていた。逃げることしか考えられず、地面を這って助けを求めていたが、エリシアが核を破壊しに向かう姿を見て、再び自分の無力さを思い知らされた。さらにエリシアが触手に捕らわれたことで、故郷の村で守ってくれた人々が倒れていった記憶が蘇り、クロスは今度こそ助けられるだけではいたくないと、剣を拾って立ち上がった。

無職の突撃

クロスは恐怖に震えながらも、ヒュドラの核へ向かって走り出した。リオーネは、咆哮をはねのけて走る少年を見つけて鑑定し、クロスが無職でレベル0、ステータスもすべて0だと知って驚愕した。それでも彼女は即座にリュドミラとテロメアへ援護を命じ、三人はクロスを守るために触手を凍らせ、麻痺させながら道を開いた。

核への一撃

クロスは触手の咆哮を浴び、限界を超えた恐怖に理性を壊されながらも止まらなかった。大切な人を守れなかった後悔が恐怖より深く刻まれていたため、彼は毒の壁に開いた洞穴へ飛び込み、核へ剣を振り上げた。最後の触手が迫っても避けず、防御も捨てて剣を振り抜いたクロスは吹き飛ばされたが、その一撃は確かに核を砕き、ヒュドラは冷気に耐えきれず消失した。

瀕死のクロス

ヒュドラが消えると咆哮の効果も消え、人々は恐怖から解放されて倒れ込んだ。S級の三人はクロスのもとへ駆けつけ、テロメアが回復魔法で治療を始めた。下半身が消し飛ぶほどの重傷を負っていたクロスは、意識が朦朧とする中でもエリシアの無事を真っ先に尋ねた。エリシアが命に別状なく駆け寄ってくるのを見て、クロスは安堵し、自分にもっと力があればと願いながら意識を失った。

三人の弟子候補

エリシアは、ひどい言葉をぶつけたクロスが自分を助けるために瀕死となったことに涙ながらに謝罪した。その傍らで、三人のS級冒険者はクロスを見下ろし、自分の命を顧みずに飛び出した無職の少年を見つけたと呟いた。リオーネは、才能のないクロスを育てたくなってしまった自分に呆れながらも、彼を弟子にする意思を抱いた。

眠る異質な力

クロスの内側には、何か異質な存在が侵入していた。それはクロスの魂の奥へ入り込み、自らの力を発揮しようとしたが、彼には才能の欠片もなく、力の足がかりが存在しなかった。消滅を避けるため、その存在はクロスの強い願望を核に仮初めの才を作り、自らは深い眠りについた。

リオーネの勧誘

クロスが目覚めると、そこは孤児院ではなく、リオーネたちが拠点として買い上げていた家だった。リオーネは、ヒュドラによる被害が再開発区の崩壊だけで済み、魔物暴走もほぼ人的被害なく収まったと説明した。そして街の被害が少なかったのはクロスが飛び出したおかげだと認め、無職のくせにやると褒めた上で、自分の弟子になれと誘った。

三人の師匠

リュドミラとテロメアも部屋に乱入し、リオーネの抜け駆けを責めながら、それぞれ自分の弟子になるべきだとクロスを勧誘した。三人が争い始めたため、クロスは全員の弟子になるという折衷案を口にした。三人はそれぞれ思惑を抱きつつもその案を受け入れ、クロスは三人のS級冒険者全員に弟子入りすることになった。

不穏な育成方針

クロスは才能がない自分でも一生懸命頑張ると頭を下げた。すると三人は、育ちが悪ければ龍神族の秘宝やエルフの秘薬、暗黒聖杯まで使うと語り出した。クロスは冗談だと思い込んだが、三人はいざとなれば本当にそれを実行するような師匠たちであり、彼は三人をまとめて倒せるほど強くならなければ自由な恋愛もできない立場になったことをまだ知らなかった。

第二章 育成開始! 

三人の指導争い

クロスがS級冒険者三人の弟子となった翌日、早速修行が始まることになった。しかしその前に、リオーネ、リュドミラ、テロメアは誰が最初に指導するかで争い始めた。三人はクロスを引き寄せたり抱き寄せたりしながら睨み合い、クロスは年上の美女たちに囲まれて羞恥と緊張で倒れそうになった。

最初の師匠

三人は公平にクロスの状態を見極め、最初の指導役をリオーネに決めた。リオーネは、クロスの剣には雑ながら基礎があり、これまで積み重ねてきたものを伸ばすほうが成果につながりやすいと説明した。クロスは三人が真剣に自分のことを考えてくれていると感じ、修行への意欲を高めた。

隠された本邸

弟子入りの事実は秘密にする必要があったため、クロスは修行場所を疑問に思った。するとリュドミラがリビングの床に隠された扉を開き、地下通路へ案内した。その先には王の別荘のような広い庭付きの豪邸があり、クロスはS級冒険者三人の財力と規格外さに圧倒された。

打ち込みの診断

クロスは冒険者学校で使っていた装備に着替え、中庭でリオーネとの修行を始めた。リオーネは数回の打ち込みだけで、クロスが学校でいびられていたことを見抜いた。クロスの剣には、自分が弱いと思い知らされてきたために反撃を恐れて攻撃を躊躇する癖が染みついていた。

殴り合いの楽しさ

リオーネは、クロスが本番で力を発揮できるようにするため、まず人との殴り合いを楽しいと思えるようになることを目標にした。彼女はクロスに本物の剣を持たせ、自分を全力で攻撃しろと命じた。クロスは丸腰のリオーネを傷つけることを心配したが、リオーネはリュドミラの上級土石魔法を顔面で受けても無傷であり、クロスの心配が不要だと示した。

楽しい剣の修行

クロスは最初こそ戸惑ったが、リオーネの賞賛や助言に乗せられ、次第に無我夢中で剣を振るうようになった。これまでにないほど気持ちよく剣を振るえたクロスは、リオーネへの攻撃に躊躇しなくなっていった。体力の限界が近づくと、リオーネは休憩を入れ、テロメアが体力と気力を譲渡してクロスを回復させた。

修行への戸惑い

夕暮れまで続いた打ち込みは、クロスに心地よい疲労感を残して終わった。リオーネは剣筋が良くなっていると褒め、クロスの頭を撫でた。クロスは嬉しさを感じながらも、修行が楽しくていいのかと不安を口にした。リオーネは、厳しくするだけで強くなれるなら人族はとっくにモンスターを駆逐していると語り、修行はただ苦しければよいものではないと示した。

甘い育成方針

クロスは、楽しい修行で強くなれるのかと不安を抱いたが、リオーネは厳しくするだけでは強くならないと説明した。彼女は、いまのクロスには試練を越えるための地力を積む段階が必要だと語り、無職のクロスに合わせた方法で育てるのが当然だと励ました。

リュドミラの食事

修行後の食堂には、焼きたてのパンや具沢山のスープ、果物、大量の赤身肉が並んでいた。リュドミラは深淵樹海でクイーンオークを狩り、栄養価の高い部位を食事に使ったと説明した。クロスは高級すぎる食事に戸惑ったが、体を強くし、気力や体力にも関わる修行の一部だと聞き、空腹に従って食べ始めた。

魔力開発マッサージ

食後、リュドミラはクロスを浴室横の部屋へ連れていき、疲労回復と魔力開発のマッサージを始めた。彼女は薬液を使ってクロスの体に魔力を流し込み、魔力を扱う感覚を覚えさせようとした。クロスは年上の女性に触れられる刺激と、体内を魔力が巡る感覚に翻弄されながら、魔力感知のための指導を受けた。

テロメアの魔力吸収

夜、クロスが寝室で休もうとすると、ベッドに潜んでいたテロメアが現れた。彼女はクロスを抱きしめ、魔力吸収のスキルで魔力を空にすることで魔力総量を伸ばそうとした。クロスは柔らかな感触と甘い匂いに混乱し、魔力を吸い取られて抵抗できなくなったが、そこへリオーネが突入し、テロメアを引きずり出した。

初めてのスキル

三日ほど修行を続けた頃、クロスはリオーネとの模擬戦中に体が軽くなり、魔力が巡る感覚を覚えた。その直感に従って剣を振るうと、ステータスプレートに力補正、防御補正、俊敏補正、切り払いのスキルが刻まれていた。クロスは初めてスキルを得たことに震え、リオーネたちは彼自身の積み重ねがあったからこその成果だと褒めた。

秘薬への引け目

その夜、クロスは興奮したままリュドミラにスキル発現を報告した。リュドミラは喜びつつも、修行内容を気安く他言しないよう諭した後、魔力の伸びとステータス補正スキルの成長幅を高める薬酒を差し出した。クロスは分不相応な環境に引け目を感じたが、リュドミラはそれが育成に必要なものをそろえた結果であり、守れる冒険者になるためには贅沢な環境も受け入れる覚悟が必要だと語った。クロスはその言葉を受け止め、薬酒を飲む決意を固めた。

加速するスキル鍛錬

薬酒を飲んだ翌日から、クロスの修行はさらに本格化した。リオーネは発現した《切り払い》の熟練度を伸ばすため、身体の動きと魔力の流れを結びつけるよう指導した。テロメアは魔力、体力、気力を譲渡し、クロスは魔力切れを気にせず何度もスキルを反復できるようになった。

十日間の成果

スキル発現から十日ほどで、クロスは《切り払い》をLv3まで伸ばし、《身体能力強化》《緊急回避》《身体硬化》《体内魔力感知》《体内魔力操作》なども習得した。リオーネとテロメアは、無職でも想定以上に育つと判断し、反則級の指導とクロスの素直な吸収力が噛み合った成果だと見ていた。

復学への希望

リオーネは、成長が早いなら次の目標を本格的に目指せると告げた。その目標は、クロスが以前から望んでいたアルメリア王立冒険者学校への復学であった。クロスは、三人に拾われた今でも学校で正式に学びたいという憧れを捨てきれずにいた。リオーネは、幅広い職業の者と学ぶ環境は重要だとして、その希望を肯定した。

特殊スキルの習得

復学試験に向けて、リオーネはクロスに特殊スキルの習得を目指させた。特殊スキルは複数のスキルが統合して生まれる強力な技能であり、才能ある冒険者の代名詞でもあった。クロスは期待と緊張を抱きながら修行を受け入れ、リオーネとテロメアの導きで復学に向けた特訓を始めた。

復学試験の朝

復学に向けた修行から約二十日後、クロスはレザーアーマーと訓練用ショートソードを装備し、冒険者学校の前に立った。ステータスプレートには補正スキルや《切り払い》《緊急回避》などの成長に加え、特訓で身につけた特殊スキルも刻まれていた。クロスは緊張しながらも、リオーネに背中を押されて試験会場へ向かった。

公開された試験会場

本来は非公開のはずの復学試験だったが、会場の室内闘技場には何百人もの観客が集まっていた。街の人や冒険者、孤児院の仲間たちが驚きや嘲りの視線を向ける中、クロスの対戦相手として立っていたのはジゼル・ストリングだった。ジゼルは殺意をあらわにしてクロスを睨みつけていた。

リオーネの仕込み

観客席のさらに上にある関係者席では、リオーネとテロメアが試験を見守っていた。公開形式になったことも、クロスの受験が広まったことも、相手がジゼルであることも、すべてリオーネの仕込みであった。リオーネは、不測の事態に慣れさせることと、クロスの自尊心を奪ってきた相手に勝たせて自信を取り戻させることを狙っていた。

サリエラの懸念

サリエラは、リオーネたちに関係者席を開けさせられ、端で冷や汗を流していた。彼女は、ジゼルがすでに高いレベルと多くのスキルを持つ逸材であり、将来A級冒険者も狙える存在だと認識していた。そのため、無職のクロスを公開試験でジゼルと戦わせることを無茶だと感じつつも、三人がクロスの育成に夢中になって騒ぎを起こさないなら、彼に頑張ってもらうしかないとも考えていた。

復学試験の開幕

サリエラは、S級冒険者たちにクロスを捧げているような罪悪感を抱えながら復学試験を見守っていた。クロスは観客の嘲笑とジゼルの怒気に圧倒され、全身を震わせていた。ジゼルは、クロスが自分を試合相手に希望したと聞かされて激怒しており、クロスはそれがリオーネの仕込みだと察して内心で叫んだ。

ジゼルの猛攻

試合開始と同時に、ジゼルは《なぎ払い》を放って突進した。クロスは恐怖で萎縮しながらも《身体硬化【小】》を発動し、剣で受け止めて吹き飛ばされた。だが想像していたほどの痛みはなく、クロスは自分がジゼルの攻撃を目で追い、受けられていることに気づいた。

恐怖の克服

ジゼルはクロスが防御スキルだけで調子に乗っていると決めつけ、さらに速度を上げて攻め込んだ。しかしクロスは、リオーネの威圧やヒュドラの咆哮に比べればジゼルの怒気は耐えられると感じた。恐怖は消えきらなかったが身体は動き、クロスは殴り合いの世界へ集中していった。

攻守の反転

クロスはリオーネの教えを思い出し、《身体能力強化》を常時ではなく攻撃の瞬間だけ発動させた。瞬間的な速度変化でジゼルの意表を突き、《切り払い》と組み合わせて攻撃を仕掛けた。ジゼルは想定外の反撃に動揺したが、元のステータス差が大きく、クロスの攻撃は決定打には届かなかった。

クロスカウンター

ジゼルは苛立ちを募らせ、最大の一撃であるLv9《二連切り》を放った。クロスはリオーネに授けられた特殊スキルを信じ、真正面からその攻撃へ飛び込んだ。《緊急回避》と《切り払い》が統合した下級特殊スキル《クロスカウンター》により、クロスはジゼルの必殺を紙一重でかわし、相手の突進の力も乗せた一撃を鎧越しに叩き込んだ。

復学試験合格

ジゼルは吹き飛ばされ、闘技場は一瞬の静寂に包まれた後、爆発するような歓声に満ちた。審判はクロスの一本勝ちを宣言し、クロスは復学試験に合格した。クロスは子供のように喜び、ジゼルに勝って学校に戻れることを何度も確認した。

ジゼルの不意打ち

敗北を認められないジゼルは、イカサマだと叫びながら背後からクロスに斬りかかった。クロスは試合後にもかかわらず、練習の後遺症で反射的に《クロスカウンター》を発動し、ショートソードの柄をジゼルの顎へ叩き込んだ。ジゼルは気絶し、クロスは過剰防衛気味の一撃に動転してヒーラーを呼んだ。

師匠たちへの報告

ジゼルの怪我が回復魔法で治ったことを確認したクロスは、試験形式を仕組んだ張本人であるリオーネたちのことを忘れ、喜びのまま会場を飛び出した。出口で待っていたリオーネとテロメアに合格を報告し、二人はクロスを褒めて頭を撫でたり手を取って喜んだ。クロスは師匠たちへの尊敬と好意をさらに強めた。

異常な成長履歴

リオーネに促され、クロスはステータスプレートを確認した。試合後の成長履歴には、補正スキル、通常スキル、特殊スキルが大きく伸びたことが刻まれていた。特に育ちにくいはずの《クロスカウンター》やステータス補正スキルまで一気に上がっており、リオーネとテロメアは、贅沢な育成環境を差し引いてもクロスの成長速度が異常だと気づいた。

第三章 異常事態 

クロスの通学

復学試験の翌々日、正式に復学したクロスは、晴れやかな笑顔で屋敷を出て学校へ向かった。入れ替わるように帰宅したリュドミラは、クロスが復学試験に合格して学校へ通い始めたと聞き、まだ無理なはずだと怪訝に思った。

異常な成長速度

リオーネとテロメアは、クロスのステータスプレートの複製をリュドミラに見せた。そこに刻まれたスキル成長を見たリュドミラは、秘宝や封印神器を使ったのではないかと激怒した。しかし二人が何も使っていないと知ると、クロスの成長速度が通常ではあり得ない異常事態であると判断した。

隠されたスキル

リュドミラは上級鑑定スキルのマジックアイテムでクロスの複製プレートを調べ、スキル欄に妙な染みを見つけた。それはスキル隠蔽のようにも見えたが、クロス本人やステータスプレートに何らかの不具合が起きている可能性もあった。三人は、この件をクロス本人にも伏せたまま、自分たちだけで検証と解析を進めることにした。

学校生活の始まり

クロスは冒険者学校に復学し、午前は駆け出し冒険者向けの固定授業を受け、午後は自由に授業や依頼を選べる環境に胸を躍らせていた。学校で体系的に学べば、リオーネたちの指導もより吸収しやすくなると考えていた。しかし同じ講義室には、機嫌の悪いジゼルがいて、クロスの周囲だけ人が寄りつかない状況になっていた。

ジゼルへの謝罪

クロスは、復学試験後に反射でジゼルへ攻撃してしまったことを改めて謝ろうとした。しかしジゼルは凄まじい目つきで睨みつけ、取り巻きたちも刺激するなと合図するほどであった。結局クロスは近づくことさえできず、実技授業でも誰も模擬戦相手になってくれないため、復学した意味が薄れてしまうと悩んだ。

エリシアとの再会

学校の敷地を歩いていたクロスの前に、突然エリシア・ラファガリオンが現れた。エリシアは、ヒュドラ討伐後にクロスの安否を知らされず、彼が死んだのではないかと心配していた。無職が復学試験に合格したという噂を聞き、クロスを探していたのだった。人目が集まったため、エリシアはクロスを抱えて人気のない場所へ連れていった。

謝罪と感謝

エリシアは、以前クロスにひどい言葉をぶつけたことを謝り、ヒュドラから助けてくれた礼をしたいと告げた。クロスは恐縮して断ろうとしたが、エリシアは自分の気が収まらないと譲らなかった。そこでクロスは、ジゼルを怒らせてしまい、どう謝ればいいかわからないと相談した。

お菓子の謝罪案

エリシアは、謝罪と一緒に美味しいお菓子を持っていけばよいと提案した。クロスは、ジゼルが甘いものを好きだったことを思い出し、その案に納得した。ただ、どの菓子を選べばいいかわからず悩んだ。エリシアも店に詳しくなかったため、具体的な品を挙げるのは難しいと考え、別の方法を思いついた。

エリシアとの待ち合わせ

クロスはジゼルへの謝罪の品を選ぶため、教会前広場でエリシアと待ち合わせた。エリシアは認識阻害のマジックアイテムを使い、護衛や城の人には内緒で来ていた。クロスはそれを二人だけの秘密と言われ、密会のような状況に激しく動揺した。

お菓子選びの街歩き

クロスは知っている店を案内し、エリシアが女の子向けのお菓子を選ぶ予定だった。しかしエリシアは屋台やカフェ、劇場街にも興味を示し、お菓子選びは買い食いと街巡りに変わっていった。クロスは緊張しながらも、エリシアと並んで街を回る時間を楽しいものとして過ごした。

初めての自由な時間

夕暮れの教会前広場で、クロスは店には詳しいが利用したことはほとんどなかったと話した。エリシアも、修行で各地を回っていても気ままに街を歩く時間はなかったと語った。クロスはその硬い声に踏み込めなかったが、エリシアは今日が楽しかったと告げ、菓子の結果をまた教えてほしいと言って別れた。

失敗した謝罪作戦

翌日、エリシアはクロスを人気のない場所へ連れ出し、ジゼルとの結果を尋ねた。クロスは、元ルームメイトを通して菓子を渡そうとしたが失敗したと報告した。ジゼルは受け取らなかったが、周囲の孤児院組には好評だったため、エリシアは周りから少しずつ態度を軟化させる方針を思いついた。

続く密会と金銭問題

エリシアは、根気と誠意が必要だとして、また菓子選びに付き合うと申し出た。クロスは何度も付き合わせることを畏れ多く感じたが、エリシアに嫌なのかと問われると断れなかった。こうしてエリシアとの密会は続くことになったが、クロスは一度の街歩きで孤児院時代の蓄えをほとんど使ってしまい、今後の費用に途方に暮れた。

孤児院組の談話室

その頃、冒険者学校の談話室にはジゼルを中心とする孤児院組が集まっていた。ジゼルは、クロスを陥れるために使えそうなクエストや西の森の順路を確認させていた。西の森では獲物が減っており、危険度3程度のモンスターが迷い込んでいる可能性があったが、ジゼルは不測の事態を装えるため好都合だと判断した。

止まらない計画

取り巻きの一人は、クロスの菓子が美味しかったこともあり、計画はやりすぎではないかと口にした。しかしジゼルは激怒し、制裁を加えたうえで、クロスが自分の面子を潰した以上、手加減も中止もありえないと宣言した。孤児院組は誰も逆らえず、クロスを潰す計画は止まらないものとなった。

第四章 無職覚醒 

魔法修行への移行

エリシアとの密会や金銭問題に頭を悩ませるクロスは、修行に集中できるか不安を抱いていた。屋敷へ戻ると、中庭にはリオーネとテロメアだけでなくリュドミラも待っており、しばらくは魔法系スキルの習得も並行して行うと告げられた。リュドミラは、近接戦に慣れすぎる前に複数系統のスキルを戦闘に組み込めるようにした方がよいと説明した。

風属性の感覚

リュドミラはクロスの体に魔力を流し込み、体内と体外の魔力をつなげる感覚を教えた。魔法には基本四属性があり、応用が利き殺傷能力も比較的低い風属性を最初に勧められたため、クロスは風属性を選んだ。リュドミラは詠唱とともにクロスの手を介して魔法を発動させ、魔法を使う感覚を身体に覚えさせた。

半裸の属性訓練

リュドミラは、魔法習熟には属性を全身で感じることも重要だとして、クロスを中庭で下着姿にした。クロスは羞恥に耐えながら風を浴び、魔力と外の力をつなげる感覚を反復させられた。テロメアも自分のスキル指導に便乗しようとし、リオーネは赤面しながら監視役に回った。

新たな魔法スキル

魔法修行を始めて二日ほどで、クロスは風魔法《ウィンドシュート》を発現させた。さらにテロメアの指導によって防御低下の邪法スキル《ガードアウト》も習得し、攻撃魔力補正、特殊魔力補正、体外魔力感知、体外魔力操作も発現していた。リュドミラたちは、近接スキルだけでなく魔法系にも異常な成長を見せるクロスに違和感を深めた。

金欠問題

休養日明け、クロスは学校へ向かいながら、師匠たちのおかげで魔法系や僧侶系のスキルまで習得できたことに感激していた。しかし一方で、エリシアとの菓子選びとジゼルへの謝罪のために資金が必要となり、金欠に悩んでいた。クロスは依頼で稼ぐため、冒険者ギルドの掲示板へ向かった。

依頼と孤立

掲示板を確認したクロスは、まともに稼げる依頼の多くが街の外での活動を前提としており、駆け出し冒険者は四人以上のパーティが必要だと知った。ジゼルに睨まれて孤立しているため、クロスは誰と組めばよいのか悩んだ。そこへ孤児院時代の顔見知り四人が声をかけ、菓子のお礼も兼ねて一緒に依頼を受けようと誘ってくれた。

西の森の依頼

クロスは四人とパーティを組み、野生角ウサギと羽飛びシカを狩るため西の森へ向かった。西の森は駆け出し冒険者向けの初心者エリアであったが、最近は獲物が減り、強めのモンスターが入り込んでいる可能性もあった。クロスは順路から離れていくことを不安に思ったが、仲間たちは何度も森に入っているから大丈夫だと答えた。

仕組まれた依頼

森の奥で開けた場所に出ると、リーダーはそこで立ち止まった。クロスが獲物の気配がないことを不審に思った直後、仲間たちは道を塞ぎ、今回の依頼の狙いは角ウサギではなくクロスだと明かした。背後からはジゼルが十人以上の孤児院組を連れて現れ、クロスへバスタードソードを振り下ろした。

ジゼルの私刑

クロスはジゼルの奇襲を《緊急回避》でかわしたが、二十人近い孤児院組に取り囲まれた。ジゼルは復学試験で面子を潰されたことを理由に、依頼を利用してクロスを潰そうとしていた。クロスは反撃しようとしたが、多方面からの連携攻撃と《クロスカウンター》対策によって防戦一方に追い込まれた。

封じられた魔法

クロスは包囲を崩すため、戦闘中に長い詠唱を組み上げ、《ウィンドシュート》で近接職を吹き飛ばした。しかし二発目の魔法はジゼルの固有スキル《慢心の簒奪者》によって奪われ、逆にクロスへ撃ち返された。魔法も封じられたクロスは、一対一に持ち込むため、包囲の薄い場所を《緊急回避》で突破して森の中へ逃げ込んだ。

ロックリザード・ウォーリアー

ジゼルはクロスの各個撃破を警戒し、三人以上の班で包囲し直すよう指示した。だがその直後、森の奥から本来この初心者向けの森にいるはずのない危険度4モンスター、ロックリザード・ウォーリアーが現れた。巨体による突進に孤児院組は反応できず、ジゼルだけが咄嗟に取り巻きを突き飛ばして直撃を避けさせたが、自身は右足を折る重傷を負った。

ジゼルの時間稼ぎ

ジゼルは孤児院組に二、三人ずつで森の外へ逃げるよう怒鳴り、自分だけがその場に残った。足を折った状態では逃げきれないと悟り、怪物の足止め役になることで仲間たちを生かそうとしたのである。彼女は自分がここで死ねば孤児院組が舐められることを案じ、せめて格上のモンスターに一矢報いて、残る者たちの面子を守ろうとした。

クロスの帰還

ジゼルは守りを捨て、《二連切り》に全身全霊を込め、命と引き換えにロックリザード・ウォーリアーへ傷を残そうとした。しかし死を前に、孤児院のリーダーとしての仮面がひび割れ、一人で死ぬ恐怖がにじんだ。その瞬間、逃げたはずのクロスが戻り、ジゼルと怪物の間に立ちはだかった。

ジゼルの救出

クロスは森に潜み、待ち伏せで少しずつ戦力を削るつもりでいた。しかし木々をなぎ倒す音や咆哮、ジゼルの怒声を聞き、孤児院組が逃げ惑う様子から異常事態を察した。ジゼルの姿が逃げる集団にないことに嫌な予感を覚えたクロスは、詠唱をしながら元の場所へ戻り、ロックリザード・ウォーリアーの前で足を負傷したジゼルを発見した。クロスは迷わず飛び出し、《ウィンドシュート》で怪物を怯ませ、その隙にジゼルを抱えて距離を取った。

逃げられない状況

クロスはジゼルの右足がひどく折れていることを確認し、隠れるよう指示した。ジゼルは自分を助ける理由がないと叫んだが、クロスは今はそんなことを言っている場合ではないと怒鳴った。ロックリザード・ウォーリアーは本来なら中級職の冒険者パーティで対処すべき危険度4の怪物であり、クロスの魔法も目くらまし程度にしかならなかった。足を負傷したジゼルを連れて逃げることは難しく、クロスは戦う以外の選択肢を失った。

守る冒険者への意地

ジゼルは勝てるはずがないと逃げるよう叫んだが、クロスはそれを承知していた。それでも、ここでジゼルを見捨てれば、自分を拾ってくれた師匠たちや憧れたエリシアに顔向けできないと考えた。クロスは守る冒険者になりたいという願いを胸に、ロックリザード・ウォーリアーへ真正面から突撃した。

通じないクロスカウンター

クロスは怪物の突進を紙一重でいなし、《クロスカウンター》を首筋へ叩き込んだ。しかしロックリザード・ウォーリアーの鱗はあまりに硬く、安物の剣に亀裂が入るだけで有効打にはならなかった。クロスは落ちていた剣を拾い直し、《ウィンドシュート》で砂塵を巻き上げて目を潰し、《ガードアウト》で防御を下げようとしたが、それでもダメージはほとんど通らなかった。

折れない反復

クロスは絶望的な差を前に心が折れかけたが、それでも諦めなかった。《身体能力強化》《身体硬化》《緊急回避》で攻撃をしのぎ、《ウィンドシュート》で隙を作り、《ガードアウト》を重ね、《クロスカウンター》で反撃し続けた。勝機が見えなくても、守るべきものとなりたい姿があったため、クロスは何度もスキルを繰り返した。

戦闘中の成長

ロックリザード・ウォーリアーの攻撃はクロスを傷つけ、彼は次第にボロボロになっていった。ジゼルは、無茶なスキル乱発ではすぐに限界が来ると思っていたが、クロスの勢いは衰えなかった。それどころか、スキルを使うたびに威力や速度、精度が上がっていき、《ウィンドシュート》も怪物の姿勢を崩すほどに成長していた。ジゼルは目の前の異常な成長に言葉を失った。

持たざる者の切望

その頃、リオーネたちは学長室で高等鑑定アイテムを使い、クロスのステータスプレートに隠れていた黒い染みを解析していた。そこに浮かび上がったのは、固有スキル《持たざる者の切望Lv1》であり、効果はスキルの習得速度と習熟速度の上昇であった。三人は前代未聞の能力に驚き、クロスが以前は落ちこぼれだったことから、ヒュドラ戦での臨死体験が覚醒に関係した可能性を考えた。

西の森への急行

三人がクロスに固有スキルを伝えるべきか迷っていると、広場で駆け出し冒険者たちが西の森に危険度4が出たと叫んでいた。リオーネたちは最初こそ討伐に向かおうと軽く考えていたが、テロメアがクロスも今日から依頼を受け始めると言っていたことを思い出した。逃げ帰った冒険者が、ジゼルとクロスが森から戻らないと叫んだ瞬間、三人は顔色を変え、学長室を爆砕する勢いで西の森へ飛び出した。

極限の実戦修行

クロスはロックリザード・ウォーリアーとの死闘の中で、リオーネ、リュドミラ、テロメアから教わった感覚を反芻し続けた。《切り払い》《身体能力強化》《ウィンドシュート》《ガードアウト》などを何度も繰り出すたびに、スキルの威力や速度、精度は上がっていった。クロスは一人でパーティの連携を再現するように戦ったが、それでも危険度4の硬い鱗には有効打が届かなかった。

ジゼルの助力

ロックリザード・ウォーリアーが炎の吐息を放ち、クロスが死を覚悟した瞬間、ジゼルが固有スキル《慢心の簒奪者》でその魔法スキルを奪った。炎は怪物へ跳ね返され、クロスは命を救われた。ジゼルはさらにクロスの風魔法も奪って炎と合流させ、クロスの剣撃へ収束させた。二人の連携は初めて怪物に有効打を与えたが、そのことで怪物の狙いはジゼルへ向いた。

崩れた戦線

ロックリザード・ウォーリアーはジゼルを狙って突進を繰り返した。クロスは自分を狙えと叫んで追いすがったが、火力不足の攻撃は無視され、ジゼルは足の怪我と魔力消費で限界に追い込まれた。クロスはジゼルを抱えて逃げようとしたが、怪物の突進に二人とも吹き飛ばされ、敗北は避けられないように見えた。

イージスショット

ジゼルが自分だけでも逃げろと頼んだことで、クロスは逃げる選択肢など最初からないと再び立ち上がった。彼は近接スキル、風魔法、邪法スキルをすべて同時に叩き込もうとし、その極限状態の中で新たな不在スキル《イージスショット》を発現させた。黒い霧と風を圧縮して相手に一瞬の弱点を作り出すその一撃は、ロックリザード・ウォーリアーの硬い鱗を切り裂き、怪物の首を断って戦いを終わらせた。

ジゼルの動揺

ジゼルは、レベル0の無職であるクロスが危険度4の怪物を倒したことに呆然とした。死地を越えて守るべきものを守り抜いたクロスの横顔は、以前の半べそをかいていた少年とは別人の冒険者のものだった。しかしクロスはすぐに年相応の笑顔へ戻り、二人で勝てたのだとジゼルの手を取って喜んだ。ジゼルは助けられた事実とクロスの無邪気さに顔を赤くし、悪態でごまかした。

森からの脱出

ジゼルは照れを隠すように、ロックリザード・ウォーリアーの素材を雑魚避けにして森を出るよう指示した。クロスとジゼルは満身創痍のまま森を踏破し、ジゼルは肩を借りることを拒み、クロスは怪物の頭を背負って出口までたどり着いた。二人は森の入口で力尽き、助けを待つことになった。

師匠たちの到着

リオーネ、リュドミラ、テロメアはかつてないほど焦りながら西の森へ向かった。森の入口でボロボロのクロスとジゼルを発見すると、三人はクロスのもとへ駆け寄り、大騒ぎで治療を始めた。クロスは自分より先にジゼルを治してほしいと言い残し、安心したことで気を失った。

目覚めたクロス

クロスが目を覚ますと、屋敷の自室で三人の師匠が覗き込んでいた。彼は真っ先にジゼルの無事を尋ね、リオーネはその相変わらず他人を優先する姿に呆れながらも嬉しそうにした。クロスは危険度4に勝てたのは師匠たちの教えのおかげだと満面の笑みで感謝し、三人は固有スキルの説明をいったん保留し、慢心しないよう注意するだけに留めて彼を甘やかした。

エピローグ 世界最強たちの戸惑い 

最新ステータスの確認

クロスが目覚めた翌日、リオーネ、リュドミラ、テロメアは食堂でクロスの最新ステータスプレートを確認していた。そこには、ロックリザード・ウォーリアーとの一戦で合計40以上もスキル熟練度が伸びた履歴が刻まれていた。さらに、戦士系、魔法系、邪法系のスキルが統合された不在スキル《イージスショット》まで発現しており、三人はその異常な成長に言葉を失った。

底知れない無職の力

三人は、クロスの固有スキル《持たざる者の切望》による成長速度と、《無職》だからこそ発現したらしい不在スキルの可能性に圧倒された。クロスは有史以来初めての力を秘めているかもしれず、三人はその将来性を持つ旦那候補を確実に手に入れるため、互いを倒してでも攫うという危険な考えを抱き始めた。

クロスの無邪気な感謝

そこへ学校から帰ってきたクロスが現れ、今日から修行を再開できるかと明るく尋ねた。三人は殺気を隠して取り繕い、中庭へ向かうよう促した。クロスは、師匠たち三人に拾ってもらえて本当によかったと照れながら感謝し、また今日からよろしくお願いしますと無邪気に笑った。

変わらない育成

クロスのまっすぐな感謝と笑顔を前に、三人は先ほどまでの殺意をあっさり失った。考えるべきことは多くあったが、ひとまず今のままでよいと判断し、これまで通り三人でクロスの育成を続けることにした。

最強女師匠まとめ
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