- 高校卒業の翌日、鏡に引き込まれる。導入からいきなりおかしい
- 火憐が150センチ未満に。月火は左前の浴衣。妹たちまで裏返る
- 斧乃木余接のパンツスタイルとキメ顔。まさかの黒歴史復活
- 21歳の八九寺真宵。大人になった姿を見ると少し不思議な気持ちになる
- ブラック羽川の再登場。普通の羽川より話が早いのでは?
- 明るい老倉育に驚く。こういう未来もあったのだろうか
- クチナワ姿の千石撫子。かわいらしさの裏にあったもの
- 人間だった頃のキスショット。美しすぎることが危険という理不尽
- 悪魔化した神原駿河が怖すぎる。檜風呂を目指すだけなのに無理ゲー
- 相棒は斧乃木余接。自分一人で戦わない選択が印象的
- 鏡の世界は単なる反転ではない。過去に置いてきたものが現れる
- 「読んでも読まなくてもいい」という言葉が、何となくわかる
- まとめ|無茶苦茶な鏡の世界で、暦の青春の続きを楽しめた
物語の概要
■ 作品概要
高校の卒業式を終え(式は欠席し職員室で土下座)、志望大学の合否結果待ちの状態で「何者でもない」肩書きのない不確かさに違和感を抱く阿良々木暦は、卒業翌朝に洗面所の鏡へ触れたことで、左右反転・精神的裏返しの世界へと引き込まれる。
そこでは妹の火憐が150cm未満に縮み、月火は浴衣を死人の着方である左前に着ており、斧乃木余接はパンツスタイルでキメ顔を見せる異変が生じていた。
さらに暦は、成長して21歳となった八九寺真宵、凶暴なレイニー・デヴィル、救出に現れたブラック羽川、阿良々木家で同居する明るい老倉育、荒々しいクチナワ姿の千石撫子らと遭遇する。
この世界が人物の隠された「裏面」を表出させた構造であることを理解した暦は、西洋風のお城に隠棲する人間姿のキスショットから、自身の存在が世界を破壊する災害であると告げられる。
元の世界へ帰還するため、暦は本来の無表情・棒読みに復元した斧乃木余接を相棒に据え、神原邸の檜風呂を目指す。
■ 主要キャラクター
阿良々木 暦
- 立場・所属 : 直江津高校を卒業したばかりの青年(大学合否結果待ち)。
- 主人公との関係 : 本人(語り手)。
- この巻での主な役割 : 鏡面世界に迷い込み、元の世界へ帰還する方法を探して町を巡る。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : 洗面所の鏡に吸い込まれて異世界へ入り、変質した知人たちと接触しながら「裏返し」の構造を解明し、帰還への手掛かりを追う。
阿良々木 火憐
- 立場・所属 : 暦の上の妹。来月から高校生(16歳)。
- 主人公との関係 : 妹。
- この巻での主な役割 : 異変の最初の目撃対象。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : 身長が極端に縮み、150cm未満(月火や千石よりも小型)になっている。
阿良々木 月火
- 立場・所属 : 暦の下の妹。
- 主人公との関係 : 妹。
- この巻での主な役割 : 暦の日常生活の同居者。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : 身長や外見に大きな変化はないが、浴衣を左前(死人の着方)に着ている。翌朝、泡立てた石鹸で暦の顔を洗う。
斧乃木 余接
- 立場・所属 : 死体人形の怪異。
- 主人公との関係 : 監視役・協力者。
- この巻での主な役割 : 暦を人間姿のキスショットのもとへ案内し、帰還に向けた行動をサポートする。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : 初期はパンツスタイルでキメ顔・大袈裟な口調に変貌していたが、セルフチェックにより本来の無表情・棒読みのキャラクターに復元。「例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)」で暦を連れて移動し、帰還を諦めて定住するコペルニクス的転回を提案する。
八九寺 真宵
- 立場・所属 : 北白蛇神社の現・神様。
- 主人公との関係 : 知人・かつて助けた幽霊。
- この巻での主な役割 : 神社を訪れた暦に異世界の現状と帰還の方針を提示する。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : 事故を回避して成長した21歳の大人の女性(おねーさん)の姿で登場する。
レイニー・デヴィル(神原 駿河)
- 立場・所属 : 猿の悪魔の怪異(神原駿河の裏面)。
- 主人公との関係 : 後輩(怪異化した姿)。
- この巻での主な役割 : 神原邸の門破りから出現し、暦を猛攻撃する。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : レインコートと長靴姿で出現。左手の猿の手を振るい、壁走りやジャンプで暦を追い詰める。
ブラック羽川
- 立場・所属 : 障り猫の怪異(羽川翼の裏面)。
- 主人公との関係 : 知人(怪異化した姿)。
- この巻での主な役割 : レイニー・デヴィルに襲われていた暦を救出し、浪白公園へ退避させる。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : 上下不揃いの下着姿で登場。暦のエナジーを一時的に吸い取りつつ、「あの家へ一人で行くな」「相棒を連れていけ」と忠告して去る。
老倉 育
- 立場・所属 : 暦の幼なじみ。
- 主人公との関係 : 阿良々木家の同居人(約8年前から預けられている設定)。
- この巻での主な役割 : 阿良々木家で暦と同居し、明るく数学パズルを楽しむ。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : 露出度の高い服で陽気に接するが、本心では「こんなの全部嘘だと思っている」と吐露し、世界の歪みの影響を受ける。一般の鏡の反射率(約80%)と像の曖昧さについて語る。
クチナワさん(千石 撫子)
- 立場・所属 : 北白蛇神社の元・蛇神(千石撫子の裏面)。
- 主人公との関係 : 妹の友人(怪異・神様としての側面)。
- この巻での主な役割 : 真宵に呼び出され、鏡の本質(裏返し)について暦に解説する。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : ベリーショートの白髪に荒々しい口調(「俺様」)で登場し、鏡の語源(蛇目・カカメ)や、紙を裏返す構造としての「裏面」を教える。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(忍野 忍)
- 立場・所属 : 600年前の元・人間のお姫様。
- 主人公との関係 : パートナー(この世界では人間として別個に存在)。
- この巻での主な役割 : 廃墟跡の城の寝室で暦と謁見し、世界の歪みと帰還の必要性を伝える。
- この巻で起きた重要な変化や行動 : 吸血鬼ではなく高貴な人間の姫として城に隠棲。圧倒的な高貴さの威光により対面者に自殺衝動を引き起こすため、カーテン越しに会話して暦の存在を災害と定義する。
書籍情報
<物語>続・終物語
著者:西尾維新 氏
イラスト:VOFAN(ヴォーファン) 氏
出版社:講談社
発売日:2016年8月12日
JDCN:0628387800100011000H

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あらすじ・内容
“私、とっても幸せなのに――こんなの、全部嘘だって思ってる”
忍野扇との戦いを終え、直江津高校をとうとう卒業した翌朝。妹達の力を借りずに目覚め、「何者でもなくなった」阿良々木暦が向かいあう、新しい世界とは……?
彼ら彼女らの物語の――続き。これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異!
僕達と、育ち続ける物語。
初回出荷限定付録『西尾通信』にて、2014年10月発売の新シリーズ『掟上今日子の備忘録』第一話を特別収録!
感想
作者公認の「読んでも読まなくてもいい物語」は、想像以上に無茶苦茶だった
作者自身が「読んでも読まなくてもいい」という趣旨のことを語っている作品だけあって、今回はかなり自由な内容だった。
高校を卒業した阿良々木暦が、鏡の中に引き込まれてしまう。
そこは、左右だけでなく、登場人物の性格や立場、隠れていた一面まで裏返ったような世界。
火憐は小さくなり、月火は妙に礼儀正しくなり、斧乃木余接はパンツスタイルでキメ顔を披露する。
さらに、21歳になった八九寺真宵、ブラック羽川、明るい老倉育、悪魔化した神原駿河、人間だった頃のキスショットまで登場する。
もう、何でもありである。
特に印象に残ったのは、元の世界へ帰るために、凶暴なレイニー・デヴィルがいる神原家の檜風呂を目指すことになる展開だ。
いや、無理ゲーだろう。
ただでさえ普通の人間に戻った暦が、悪魔化した神原のいる屋敷へ侵入しなければならない。
どう考えても危険すぎる。
それでも、こうした無茶苦茶な状況を会話と屁理屈で何とかしようとするのが、いかにも〈物語〉シリーズらしい。
一方で、単なるお祭り騒ぎとして片づけられない部分もあった。
鏡の世界で出会うのは、見慣れたキャラクターたちの別の可能性である。
普段とは違う姿を見ることで、これまで彼女たちが抱えてきたものを思い出す。
卒業して一つの区切りを迎えた暦が、過去に置いてきたものと向き合う。
そんな意味も感じられる作品だった。
※以下、『続・終物語』のネタバレを含む。
高校卒業の翌日、鏡に引き込まれる。導入からいきなりおかしい
物語は、直江津高校を卒業した翌日の三月十六日から始まる。
阿良々木暦は高校を卒業したものの、大学の合格発表はまだ出ていない。
高校生ではなくなった。
しかし、大学生になれるかどうかも決まっていない。
何とも中途半端な状態である。
卒業というのは、もっとすっきりしたものかと思っていたが、実際にはそうでもないのだろう。
学校を卒業したからといって、翌日から突然、立派な大人になれるわけではない。
昨日まで当たり前だった肩書きがなくなり、これからどうなるのかもわからない。
そんな落ち着かない時期に、暦は久しぶりに鏡に映る自分の姿を眺める。
吸血鬼の影響が薄れ、普通に鏡へ映るようになった自分。
ところが、鏡の中の自分が、こちらの動きに従わない。
そして、鏡に触れた暦は、そのまま中へ引き込まれてしまう。
いや、卒業翌日に何をやっているのか。
これまで散々怪異に巻き込まれてきたのだから、少しくらい警戒してもよさそうなものである。
もっとも、鏡の中の自分が勝手に動き出したら、気になってしまうのもわかる。
こうして暦は、奇妙な鏡の世界へ迷い込むことになる。
高校生活が終わったと思ったら、今度は異世界探索である。
阿良々木暦に平穏な日常は訪れないらしい。
火憐が150センチ未満に。月火は左前の浴衣。妹たちまで裏返る
鏡の世界に入った暦が最初に違和感を覚えるのは、家族の変化だ。
まず、火憐の身長が150センチ未満になっている。
あの火憐が小さくなっているのだ。
普段の火憐といえば、長身で活発、勢いのある性格が印象的である。
その火憐が小柄になっているだけでも、かなり奇妙だ。
身長が変わっただけなのに、受ける印象が大きく違う。
さらに月火は、普段より礼儀正しい。
しかも浴衣を左前に着ている。
左前は、一般的に死者の着付けとして知られる形である。
これは何とも不気味だ。
火憐の変化は笑えるが、月火の変化には少し引っかかるものがある。
もともと月火は、普通の人間とは異なる存在だ。
だからこそ、鏡の世界での姿にも、単なる性格の反転では済まない意味があるように感じられた。
それにしても、家族までこれほど変わってしまうとは。
鏡の世界は、見慣れた場所なのに、知っている日常とは何かが違う。
その微妙な気持ち悪さが面白かった。
斧乃木余接のパンツスタイルとキメ顔。まさかの黒歴史復活
今回、思わず笑ってしまったのが斧乃木余接である。
普段の余接といえば、無表情で淡々と話す人形のような少女だ。
しかし、鏡の世界ではパンツスタイルで登場し、キメ顔まで披露する。
あのキメ顔である。
余接にとっては、できれば触れられたくない過去なのではないだろうか。
それが鏡の世界では堂々と表に出ている。
本人からすれば、かなり迷惑な話だろう。
こちらとしては面白いのだが。
〈物語〉シリーズは、こうしたキャラクターの過去の言動を後から拾ってくるところが楽しい。
以前の余接を知っているからこそ、今回の姿が余計におかしく見える。
しかも、余接は単なるギャグ要員では終わらない。
暦が元の世界へ戻るために、重要な協力者となる。
普段は何を考えているのかわかりにくい彼女だが、いざというときには頼りになる。
今回の余接は、笑える部分と頼もしい部分の両方が印象に残った。
21歳の八九寺真宵。大人になった姿を見ると少し不思議な気持ちになる
鏡の世界で出会う人物の中でも、特に興味深かったのが八九寺真宵である。
なんと、21歳の大人になっている。
いつもの小学生の姿ではない。
成長した八九寺が、暦の前に現れるのだ。
これまでの八九寺は、見た目こそ幼いものの、会話では暦を振り回すことも多かった。
年齢に似合わない落ち着きや、独特の言葉遊びも魅力だった。
そんな彼女が大人の姿になっている。
考えてみれば、八九寺にも、普通に成長していればこうなっていたかもしれない未来がある。
そう思うと、少し複雑な気持ちになった。
もちろん、鏡の世界の八九寺は、暦が知っている八九寺とは違う。
しかし、まったくの別人とも言い切れない。
知っている人物の、別の可能性を見せられているような感覚である。
今回の鏡の世界は、単純に性格を反対にしただけではない。
本来なら表に出なかった姿や、別の人生を歩んでいた場合の姿まで現れている。
八九寺の存在は、そのことを強く感じさせた。
ブラック羽川の再登場。普通の羽川より話が早いのでは?
羽川翼の変化も印象的だった。
鏡の世界に現れるのは、普段の羽川ではない。
白髪と猫耳を持つブラック羽川である。
久しぶりにこの姿を見ると、懐かしさもある。
ただ、暦にとっては簡単に喜べる相手ではないだろう。
ブラック羽川は、羽川が抱えていた問題と深く関わる存在だからだ。
これまでの物語では、羽川が自分の感情や苦しさと向き合う過程が描かれてきた。
そのことを思い出すと、今回の再登場にも少し考えさせられる。
一方で、ブラック羽川は暦の状況を理解し、助言を与えてくれる。
元の世界へ帰るには、協力者が必要だと教えるのだ。
ここが面白かった。
暦は何か問題が起きると、自分で解決しようとするところがある。
人を助けようとして、自分が危険な目に遭うことも珍しくない。
しかし、今回は一人でどうにかできる状況ではない。
普通の人間に戻った暦が、怪異だらけの世界を単独で突破するのは難しい。
だからこそ、誰かの助けを借りる必要がある。
ブラック羽川の助言は、今回の物語の大切な部分につながっていると感じた。
明るい老倉育に驚く。こういう未来もあったのだろうか
個人的に、少し複雑な気持ちになったのが老倉育である。
鏡の世界の老倉は、阿良々木家に同居している。
しかも、明るく親しげに振る舞っているのだ。
これまでの老倉を知っていると、この変化には驚く。
彼女は家庭環境や過去の出来事によって、深い苦しみを抱えていた人物である。
暦との関係も、決して単純なものではなかった。
そんな老倉が、阿良々木家で自然に生活している。
これは、ある意味で理想的な光景なのかもしれない。
もしも彼女が、もっと早く誰かに助けられていたら。
もしも、暦との関係が違う形で続いていたら。
そんな可能性を考えてしまった。
ただ、鏡の世界の老倉が明るいからといって、元の世界の老倉が間違っていたわけではない。
人の性格や生き方は、それまで経験してきた出来事に大きく左右される。
苦しい経験をした人間が、簡単に明るく振る舞えるとは限らない。
だからこそ、今回の老倉の姿は印象に残った。
別の可能性を見せられると、元の世界で彼女が背負ってきたものの重さも、改めて感じられる。
単なる反転キャラクターとして笑うには、少し切ない存在だった。
クチナワ姿の千石撫子。かわいらしさの裏にあったもの
千石撫子も、鏡の世界では普段と違う姿を見せる。
登場するのは、荒々しいクチナワの姿である。
撫子といえば、以前はおとなしく、控えめな少女という印象が強かった。
しかし、物語が進むにつれて、その印象だけでは説明できない一面が描かれてきた。
かわいらしく見えること。
周囲から守られる立場にいること。
自分の本音を隠してしまうこと。
そうしたものが積み重なり、彼女は大きな問題を引き起こした。
今回のクチナワ姿を見ると、あの頃の撫子を思い出す。
普段は隠れていた感情が、鏡の世界ではむき出しになっているように感じられた。
それにしても、今回の世界は本当に容赦がない。
過去に怪異として現れた姿や、本人が隠したかった部分まで表に出てくる。
キャラクターたちの黒歴史展示会のようでもある。
余接のキメ顔といい、撫子のクチナワ姿といい、本人たちがこの世界を見たらどう思うのだろう。
人間だった頃のキスショット。美しすぎることが危険という理不尽
暦が帰還方法を探す中で出会うのが、人間だった頃のキスショットである。
普段の忍野忍とは違う、美しい姫君の姿をしている。
ここも、鏡の世界らしい変化だ。
吸血鬼としてのキスショットではなく、人間だった頃の姿。
しかし、人間だから安全というわけではない。
むしろ、別の意味で危険な存在だった。
その美しさと威光は、人間の精神に強烈な影響を与える。
長く接していると、死を望むほどになってしまうという。
いや、どういうことなのか。
美しすぎて危険。
しかも、命に関わるほど危険。
怪異になっていない人間の姿なのに、普通の怪異以上に恐ろしい。
何とも理不尽である。
暦もその影響を受け、余接に助けられることになる。
ここで印象的だったのは、姫が暦に助力を求めることの大切さを伝える点だ。
暦は、これまで何度も誰かを助けようとしてきた。
しかし、自分自身が助けられることには、どこか不器用なところがある。
今回の状況では、そんな姿勢を変えなければならない。
自分だけで何とかしようとするのではなく、頼れる相手に協力してもらう。
この考え方が、後の余接との行動につながっていく。
悪魔化した神原駿河が怖すぎる。檜風呂を目指すだけなのに無理ゲー
今回、最も無茶苦茶だと思ったのが、神原駿河の変化である。
鏡の世界の神原は、レイニー・デヴィルの姿になっている。
しかも、かなり凶暴だ。
暦が神原を訪ねると、容赦なく襲いかかってくる。
これまでの神原といえば、暦に対して遠慮のない言動を見せることはあっても、基本的には親しい後輩である。
しかし、今回は違う。
普通に命の危険がある。
暦はブラック羽川の助けで逃げ延びるものの、元の世界へ戻るためには神原家の檜風呂を調べなければならない。
ここで思わず笑ってしまった。
帰還のために必要なのが、神原家の檜風呂。
その檜風呂へ行くには、凶暴なレイニー・デヴィルを突破しなければならない。
いや、無理ゲーだろう。
目的だけ聞けば、ただ風呂場へ行くだけである。
しかし、そこへたどり着く難易度が異常に高い。
しかも、暦は以前のような吸血鬼の力を持っていない。
相手は怪異。
こちらは普通の人間。
正面から戦えば、どう考えても勝ち目がない。
この状況でどうするのか。
普通なら、別の帰還方法を探したくなる。
しかし、そう簡単に諦められないのが暦である。
そして、今回の解決策は、やはり仲間の協力だった。
相棒は斧乃木余接。自分一人で戦わない選択が印象的
レイニー・デヴィルをどうにかするため、暦は協力者を探す。
そこで頼ることになるのが、斧乃木余接である。
余接は強大な戦闘能力を持ち、怪異との戦いにも対応できる。
暦が神原家の檜風呂へ向かうためには、彼女の力が必要だった。
序盤ではキメ顔を披露していた余接が、今度は頼もしい相棒になる。
この変化が面白い。
ただのギャグキャラクターでは終わらないのが、余接の魅力だと思う。
そして、今回の暦は、自分一人で無理に戦おうとはしない。
ここが印象に残った。
これまでの暦なら、危険だとわかっていても自分から飛び込んでいたかもしれない。
もちろん、今回も危険な場所へ向かうことに変わりはない。
しかし、無謀な突撃をするのではなく、協力者を得て突破しようとしている。
この違いは大きい。
高校を卒業したからといって、突然人間が変わるわけではない。
それでも、今までの経験を通じて、少しずつ考え方が変わっているのかもしれない。
自分が傷つけば解決するという考え方だけでは、どうにもならない問題がある。
誰かに頼ることも、問題を解決するための大切な選択である。
鏡の世界という奇妙な舞台の中で、そんな当たり前のことを改めて感じた。
鏡の世界は単なる反転ではない。過去に置いてきたものが現れる
今回の世界は、最初こそ左右が逆になった場所として描かれる。
しかし、読み進めると、それだけでは説明できない変化が多い。
火憐は小さくなり、月火は礼儀正しくなる。
余接は過去のキメ顔を披露する。
八九寺は大人になり、ブラック羽川やクチナワ姿の撫子が現れる。
老倉は明るくなり、神原は悪魔化している。
これらを単純に「元の姿と反対」と考えるのは難しい。
むしろ、普段は表に出ていないものや、過去に置いてきたものが現れているように感じた。
人間には、他人に見せている姿だけでなく、さまざまな側面がある。
明るく振る舞っている人にも、暗い部分はある。
おとなしく見える人にも、強い怒りや欲望がある。
過去の自分を恥ずかしく思い、忘れたいと考えることもある。
しかし、そうしたものが完全になくなるわけではない。
今回の鏡の世界は、そんな隠れた部分を表に出しているようだった。
だからこそ、懐かしいキャラクターたちの変化が面白い。
単に外見や性格が変わっただけではなく、これまでの物語を思い出すきっかけにもなっている。
これまで長く〈物語〉シリーズを読んできたからこそ楽しめる部分だろう。
「読んでも読まなくてもいい」という言葉が、何となくわかる
『続・終物語』について、作者自身が読んでも読まなくてもいいという趣旨のことを語っている。
実際に読んでみると、その言葉も何となく理解できた。
『終物語』までで、暦の高校生活には一つの区切りがついている。
大きな問題を乗り越え、卒業を迎えた。
そこで物語が終わっても、おかしくはなかった。
しかし、本作ではその翌日が描かれる。
卒業したからといって、人生がそこで終わるわけではない。
むしろ、卒業した翌日からも普通に日常は続いていく。
ただ、阿良々木暦の場合は、その日常がまったく普通ではない。
鏡に引き込まれ、知り合いたちの裏返った姿を見せられ、凶暴な神原がいる屋敷へ侵入しなければならなくなる。
やっぱり無茶苦茶である。
しかし、この自由さが『続・終物語』の面白さなのだと思う。
本編の大きな流れを進めるというより、これまで登場した人物たちを別の角度から見せてくれる。
八九寺の成長した姿。
老倉の明るい姿。
ブラック羽川やクチナワ姿の撫子。
余接のキメ顔。
どれも、これまでの物語を知らなければ面白さが伝わりにくい。
逆に、長く読んできた人間にとっては、思い出を振り返るような楽しさがある。
読まなくても本編の区切りは成立する。
しかし、読めばキャラクターたちの別の一面を知ることができる。
そういう意味で、「読んでも読まなくてもいい」という表現は、なかなか的確なのかもしれない。
まとめ|無茶苦茶な鏡の世界で、暦の青春の続きを楽しめた
『続・終物語』は、想像していた以上に自由で、無茶苦茶な作品だった。
高校を卒業した暦が、鏡の中に引き込まれる。
そこでは、これまで見慣れていた人物たちが、まったく違う姿で生活している。
小さくなった火憐。
左前の浴衣を着た月火。
パンツスタイルでキメ顔を披露する余接。
21歳の八九寺。
ブラック羽川。
明るい老倉。
クチナワ姿の撫子。
人間だった頃のキスショット。
そして、凶暴なレイニー・デヴィルとなった神原。
これだけでも、かなり賑やかである。
しかも、元の世界へ帰るために目指すのが神原家の檜風呂なのだから、最後まで何が起こるかわからない。
普通の人間に戻った暦に、あの神原を突破しろというのは、さすがに無理がある。
無理ゲーである。
それでも、余接の協力を得て何とかしようとする姿には、これまでの暦とは少し違う成長も感じられた。
また、鏡の世界で現れる人物たちは、単に元の世界の反対というだけではない。
過去に抱えていたものや、別の可能性を見せてくれる存在でもある。
特に、明るい老倉や大人になった八九寺には、少し考えさせられるものがあった。
一方で、余接のキメ顔のように、深く考えるより笑ってしまう場面もある。
この真面目さとふざけた雰囲気が混ざっているところが、〈物語〉シリーズらしい。
『終物語』で一つの区切りを迎えた後だからこそ、こうした自由な後日談も楽しめるのだろう。
本筋に必須とは言えないかもしれないが、ここまで付き合ってきたキャラクターたちの別の姿を見られるという意味では、読んでよかった。
ただし、展開は本当に無茶苦茶である。
作者の言葉どおり、読んでも読まなくてもいいのかもしれない。
しかし、〈物語〉シリーズの登場人物たちが好きなら、この奇妙な鏡の世界を一度のぞいてみるのも悪くない。
何しろ、斧乃木余接のあのキメ顔が、また見られるのだから。
最後までお読み頂きありがとうございます。

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考察・解説
ストーリー・プロット
第1幕:洗面台の鏡と鏡面世界への迷い込み
高校卒業の翌朝、暦は妹たちに起こされず一人で目覚め、高校生でも受験生でもない肩書きのない不確かな状態に強い違和感を抱く。洗面台で顔を洗った際、正面の鏡に映る自画像が自身の動きに連動せず自分を凝視している異変に気づく。怪しんで鏡に触れると指が沈み、空間が紫色に染まって洗面所の床へ転倒する。起き上がると、身長が150cm未満に縮んだ妹の火憐、浴衣を左前(死人の着方)に着た月火、そしてパンツルックでキメ顔・大裟裟な口調に変貌した斧乃木余接と遭遇する。自身の影の中に忍野忍の反応がないことを確認した暦は、影からの呼びかけに頼れず、街に生じた異変の解決と情報収集を求め、扇から借りたBMXで北白蛇神社へと向かう。
第2幕:北白蛇神社での再会と檜風呂の計画
左右反転した地理や、左右逆となったブレーキ(左前輪・右後輪)に苦戦しつつ北白蛇神社に到着した暦は、境内で21歳の大人の姿となった八九寺真宵に突如押し倒され関節技を決められる。鳥居の文字表記や硬貨の凹凸、水道蛇口の冷温配置の反転から、ここが「鏡の中の世界」であり、吸血鬼が存在できない法則の世界であることを確認する。八九寺真宵から元の世界へ帰る唯一の方法として、向こう側の全盛期に戻った忍にゲートを開けてもらう案を提示された暦は、過去に臥煙遠江のヴィジョンを水面に映した伝承を持つ神原邸の檜風呂(水面)を利用し、別世界の忍へメッセージを伝える計画を立案する。方針を固めた暦は山を下り、BMXで神原邸へと向かう。
第3幕:神原邸での襲撃とブラック羽川による救出
神原邸に到着した暦がインターホンを押そうとした瞬間、内側からの超絶的な圧力で門柱と門扉が破壊され、雨の降っていない晴天の下、フード付きレインコートと長靴を着用したレイニー・デヴィルが出現する。吸血鬼性を失い「ただの人間」状態の暦はBMXで逃走するが、神原邸の白塀を直角に走る壁走りや強烈な跳躍力で先回りするレイニー・デヴィルに追い詰められ絶体絶命に陥る。直前でブラック羽川が乱入し、暦を掬い上げて浪白公園へと退避させる。接触によりエナジードレインを受けた暦に対し、上下不揃いな下着姿のブラック羽川は「あの家へ一人で行くな」「相棒を連れていけ」と助言を残して去っていく。
第4幕:同居人・老倉育と「裏返し」の真相
調査のため大型書店へ向かうも、書籍がすべて鏡文字で解読に消耗し断念する。自宅に戻ると、約8年前から阿良々木家に預けられている設定の明るい老倉育が出現する。露出度の高い服を着た老倉と数学パズルを解く暦だが、彼女から「こんなの全部嘘だと思っている」という吐露を聞く。さらに老倉は一般的な鏡の反射率が約80%であり、像がぼやけて不正確にしか映らない性質を語る。再び北白蛇神社を訪れると、真宵の呼び出しで荒々しい口調のクチナワ(千石撫子)が登場する。クチナワは「鏡」の語源が蛇目(カカメ)であることを明かし、紙に書いた文字を裏から透かす構造を例に、この世界が単なる「左右逆」ではなく、登場人物の秘めた内面や可能性が露呈した「裏返しの世界」であることを解説する。
第5幕:斧乃木余接の復元とお城の人間キスショット
自宅へ戻った暦のもとへ、自身のパフォーマンス低下を察知してセルフチェックを行い、本来の無表情・棒読みへとキャラクターを復元させた斧乃木余接が現れる。余接の案内で学習塾跡に向かうと、そこには焼失したビルではなく巨大な西洋風の城がそびえ立っていた。城の寝室で薄手のカーテン越しに、吸血鬼ではなく高貴な人間の姫であるキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと謁見する。吸血鬼の力ではなく、高貴な人間の姫が放つ過剰な威光と求心力による自殺衝動に耐えながら、暦は自身の存在自体がこの世界を崩壊させる災害であると告げられ、一人で為さず「助勢」を募って一刻も早く元の世界へ帰るよう促される。
第6幕:水鏡の異変と神原邸への再挑戦
余接のアンリミテッド・ルールブックで脱出した暦は、自宅の二段ベッドで老倉と同室の朝を迎える。洗面所で月火に背後から両腕を回されて顔を洗われた際、洗面台の溜まり水(水鏡)に映った自身の顔が、意識と連動せずにニタリと笑うのを目撃する。水面も界線となる可能性を捉えた暦は、姫の指示とブラック羽川のアドバイスに従い、復元した余接を相棒に指名する。余接を肩車に乗せてBMXにまたがり神原邸を目指す道中、余接から帰還を諦めてこの世界に定住し環境を安定させる「コペルニクス的転回」を提案されるも、暦は元の世界への帰還を賭けてペダルを漕ぎ続ける。
主要な転換点
1:洗面台の鏡への落ち込み
- それ以前の状況 : 高校卒業翌朝、自身の肩書き喪失に違和感を抱きつつ、洗面所で顔を洗っていた。
- 出来事 : 鏡の中の自画像が自分の動きをトレースせず見つめ返し、触れた指が沈み紫色の世界へ引き込まれた。
- 変化 : 左右反転および登場人物の隠された裏面が表出した異世界へと足を踏み入れ、影の中の忍とのペアリングが途切れた。
- 次への影響 : 妹たちの変貌や異変に気づき、ブレーキの左右が逆になったBMXで真相解明のため北白蛇神社の八九寺真宵のもとへ向かう動機となった。
2:レイニー・デヴィルの襲撃とブラック羽川の救出
- それ以前の状況 : 忍と連絡を取るため、神原邸の檜風呂(水面)を借りようと門前に立った。
- 出来事 : 門扉を破壊してレイニー・デヴィルが現れて襲われ、壁走りと跳躍で追い詰められるも直前でブラック羽川に救出された。
- 変化 : 吸血鬼性を失った単身での神原邸侵入が不可能であると悟り、ブラック羽川から「相棒を連れていけ」との助言を得た。
- 次への影響 : 強行突破を諦め、調査のために本屋や自宅、そして再び神社へと移動することになった。
転換点:クチナワ(千石撫子)による「裏返し」の解説
- それ以前の状況 : 登場人物たちの変貌を単なる「左右反転」や「パラレルワールド」として捉えていた。
- 出来事 : 神社でクチナワと対話し、鏡の語源(蛇目・カカメ)や紙に書いた文字を裏から透かす構造についての講義を受けた。
- 変化 : この世界が「左右逆」ではなく、人物の秘めた内面や可能性が表出した「裏返しの世界」であることを理解した。
- 次への影響 : 各人物の変貌(火憐の体格、老倉の態度、余接の状態)の根底にある理由を正しく把握し、暦という異物の存在が引き起こす世界崩壊の危険性を意識し始めた。
3:人間の姫キスショットとの謁見
- それ以前の状況 : 異世界でゆるやかに過ごす選択肢や情報収集を模索していた。
- 出来事 : 復元した余接に案内され、お城に隠棲する人間のキスショットから過度の高貴さによる自殺衝動を受けつつ告げられた。
- 変化 : 異物である暦の存在が周囲(老倉や余接)を変質させ世界を壊す「災害」であることを知った。
- 次への影響 : 一刻も早く帰還する必要性を痛感し、一人ではなく「助勢(相棒)」を得て作戦を再開する決意を固めた。
4:洗面台の水鏡での自画像の独立動作
- それ以前の状況 : 神原邸の檜風呂だけが帰還のルート候補であると考えていた。
- 出来事 : 月火に顔を洗ってもらった際、洗面台に溜まった石鹸水に映る自分の顔が独立して笑うのを目撃した。
- 変化 : 鏡だけでなく「水面(水鏡)」や洗顔という行為自体が異次元との境界線になっている可能性を直接確認した。
- 次への影響 : 余接を足止め役の相棒として肩車に乗せ、定住を勧めるコペルニクス的転回の提案を退けつつ神原邸の檜風呂への再挑戦を決意した。
阿良々木暦を中心とした人物関係の変化
阿良々木火憐
- 開始時 : 兄を叩き起こすのをやめ、「一人で起きろ」と宣告した長身の妹。
- 主な出来事 : 異世界にて、極端に身長が縮んだ(150cm未満)状態で風呂場や廊下で遭遇。
- 巻末時 : 身長に対する葛藤という裏面が顕在化した姿として認識しつつも、妹としての接し方は維持されている。
斧乃木余接
- 開始時 : 阿良々木家に居座るぬいぐるみ(パンツスタイルでキメ顔・饒舌な状態)。
- 主な出来事 : 自らセルフチェックを行い無表情・棒読みに復元。暦を忍の城へ案内し、帰還を諦めて定住する「コペルニクス的転回」を提案する。
- 巻末時 : 暦の帰還作戦における足止め役・共闘者(相棒)として、BMXの上で肩車に乗って神原邸へ同行する関係。
八九寺真宵
- 開始時 : 北白蛇神社の新しい神様(元の世界では十歳の少女姿)。
- 主な出来事 : 21歳の成長した大人の姿で暦を押し倒し、異世界の法則を教え、クチナワを引き合わせる。
- 巻末時 : 頼れる「新神様(おねーさん)」であり、異世界の構造を共に整理し助言を与える相談相手。
老倉育
- 開始時 : 元の世界では高校1年時に憎悪をぶつけ合って別れた幼なじみ。
- 主な出来事 : 約8年前から阿良々木家に同居している設定で登場。露出度の高い服で明るく数学パズルを解くが、暦の存在(異物感)の影響を受け「こんなの全部嘘だと思っている」と葛藤する。一般の鏡の反射率(約80%)と像の曖昧さを語る。
- 巻末時 : 表面上は仲の良い家族同然の同居人だが、世界の歪みを受けて情緒不安定となっており、一刻も早く救出すべき対象。
キスショット(忍野忍)
- 開始時 : 暦の影に潜む吸血鬼のなれの果て(影からの応答なし)。
- 主な出来事 : この世界では吸血鬼ではなく高貴な人間の姫として城に隠棲。圧倒的な高貴さの威光により暦にひざまずきと自殺衝動を与える。
- 巻末時 : 影のパートナーではなく、圧倒的な威光を持つ「雲上の姫」として、暦を世界を脅かす災害と定義し、一刻も早い帰還と助勢の確保を命じる関係。
主人公の認識と周囲の評価
主人公自身の認識
- 高校を卒業し、大学の合格発表を待つ「何者でもない無印の阿良々木暦」。
- 自分は異世界に偶然迷い込んだ被害者であり、事態を穏便に収束させて元の日常に戻りたいと考えている。
- 吸血鬼の力を失った「ただの人間」であり、戦闘能力や異界移動のスキルを持たない無力な存在だと自認している。
周囲からの評価
- 八九寺真宵・クチナワ : この世界の秩序になじむ一人の「阿良々木くん」「暦お兄ちゃん」として受け入れているが、考えすぎであると見なしている。
- 斧乃木余接 : 暦の思考や癖(パンツを脱がそうとする等)を把握しているとしつつ、引いたリアクションからパフォーマンス不足を察知し、セルフチェックを行って元に戻った。帰還を諦めて定住するコペルニクス的転回を提示する。
- 人間姿のキスショット : 暦を「この世界に来襲した災害・異物」と明確に定義。彼が存在し続けるだけで世界のバランスを根底から壊し、老倉や余接を変質させる危険存在として評価している。
認識の差が現れた場面
- 人間キスショットとの謁見場面 : 自分を災害の被害者だと思っていた暦に対し、姫から「あなた自身がこの世界を脅かす災害である」と直接告げられ、意識の転換を迫られた場面。
- 老倉育の情緒不安 : 暦が同居する「幸せな日常」を過ごしているはずの老倉が、暦の存在(異物感)によって「こんなの全部嘘だと思っている」と泣きそうになり、無意識に世界の矛盾を感じ取っていた場面。
- 斧乃木余接のキャラクター修正と提案 : 暦の自分に対する引いたリアクション(ドン引き)を受け、余接が自身のパフォーマンス不足を察知してセルフメンテナンスを行い、本来の棒読み・無表情に戻った場面。また、巻末で帰還を諦めて定住するコペルニクス的転回を提案した場面。
登場キャラクター
私立直江津高校
阿良々木暦
高校を卒業して肩書きを失い大学の合格発表を待つ身となる。洗面所の鏡に触れて左右反転および裏返しの世界へ引き込まれた。周囲の人物たちの隠された側面と直面しながら元の世界への帰還を目指す。
・所属組織、地位や役職 私立直江津高校の卒業生。
・物語内での具体的な行動や成果 洗面所の鏡から異世界へ侵入する。変質した妹たちや友人たちと遭遇を果たす。北白蛇神社で成長した八九寺真宵やクチナワと相談を重ねた。神原家でレイニー・デヴィルに襲われブラック羽川や斧乃木余接に救出される。神原家の檜風呂で臥煙遠江の幻影から助言を受け取った。直江津高校の旧一年三組の教室で忍野扇と対話して真相に到達する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 自身が他者の心残りを集めて裏返しの世界を作り出した事に気づく。黒鏡を八九寺真宵へ奉納して元の日常へ帰還を遂げた。
戦場ヶ原ひたぎ
阿良々木暦の恋人として関係を維持している。卒業後に大学への進学を控えた状態にある。髪型や服装を以前と大きく変更して暦の前に姿を現す。
・所属組織、地位や役職 私立直江津高校の卒業生。
・物語内での具体的な行動や成果 ツインテールと短めのスカート姿でイメージチェンジを図る。進学先の大学へ向かう途中で阿良々木暦と合流を果たした。暦から異世界での体験談を聞く。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 高校卒業後も阿良々木暦との交際を継続する。両足を揃えてジャンプし共に前進を見せた。
神原駿河
阿良々木暦の後輩でありバスケットボール部に所属していた。異世界では内面の憎悪が表出してレイニー・デヴィルの姿へ変貌を遂げる。雨合羽を着用して凶暴な行動を起こした。
・所属組織、地位や役職 私立直江津高校・3年生。
・物語内での具体的な行動や成果 レインコートと長靴を着用して現れる。自宅の門扉や塀を破壊しながら阿良々木暦を追撃した。空中で左手の拳を振るって襲いかかる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 斧乃木余接との戦闘により足止めを受ける。阿良々木暦が元の世界へ戻ると元の日常へ復帰した。
羽川翼
阿良々木暦の友人であり海外放浪へ旅立った元委員長を務めた。裏返しの世界ではブラック羽川や6歳の姿となって現れる。
・所属組織、地位や役職 私立直江津高校の卒業生。
・物語内での具体的な行動や成果 浪白公園でレイニー・デヴィルに追われる阿良々木暦を救出する。暦へ相棒と共に行動するよう助言を与えた。北白蛇神社で幼女の姿となり八九寺真宵たちと酒を汲み交わす。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 離別に対する未練や寂しさが異世界の形成に影響を及ぼした。事件解決後は旅を継続する。
忍野扇
阿良々木暦の自己批判精神から生まれた存在に該当する。阿良々木暦のダブル(分身)として機能していた。異世界において真相を握る鍵を担う。
・所属組織、地位や役職 私立直江津高校・1年生。
・物語内での具体的な行動や成果 阿良々木暦の制服を女子用にすり替える。洗面台の水面に映る顔を笑わせる工作を行った。直江津高校の旧一年三組の教室で学ランを着て待機する。阿良々木暦へ世界の真相や裏返しの構造を解説した。黒板から反射率ゼロの黒鏡を作成して阿良々木暦へ手渡す。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 阿良々木暦の安全弁として機能する。存在の無害性が証明された。
公立宍倉崎高校
老倉育
公立宍倉崎高校に通う3年生に位置する。阿良々木家に居候して長年家族のように暮らしていた。かつての鋭い態度が消えて明るく親しい様子を見せる。
・所属組織、地位や役職 公立宍倉崎高校・3年生。
・物語内での具体的な行動や成果 朝に阿良々木暦を陽気に叩き起こす。リビングで阿良々木暦と共に数学パズルを解いた。火憐や月火と一緒に買い物へ出かける。自分の幸せな環境に対して全部嘘だと漏らした。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 阿良々木暦との良好な同居生活を送る。本人が町へ戻る前に世界が元通りに修復された。
栂の木第二中学校
阿良々木火憐
栂の木第二中学校に通う阿良々木暦の上の妹にあたる。背が高かった以前と異なり身長が150cm未満まで極端に縮んだ。自身の変化を気にする様子を見せずに日常を過ごす。
・所属組織、地位や役職 栂の木第二中学校・3年生。ファイヤーシスターズ。
・物語内での具体的な行動や成果 朝風呂から上がって低い頭部を見せる。棚の上のバスタオルを阿良々木暦に取らせた。老倉育や月火と買い物へ出かける。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 自身の変化に気づかないまま過ごす。事件解決後は元の背丈へ戻った。
阿良々木月火
栂の木第二中学校に通う阿良々木暦の下の妹にあたる。外見や身長に変化はないが浴衣を死人の着方である左前で着用していた。裏表のない性格ゆえに内面の劇的な変化を見せない。
・所属組織、地位や役職 栂の木第二中学校・2年生。ファイヤーシスターズ。
・物語内での具体的な行動や成果 帯を解きながら階段を降りる。阿良々木暦の洗顔を手伝って二人羽織のように泡を塗った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 着付けの間違いのみで異世界の変質を表現する。元の世界へ戻った後も日常を維持した。
公立七百一中学校
千石撫子
公立七百一中学校に通う女子生徒として在籍する。かつて蛇神となった過去を抱える。裏返しの世界ではクチナワを名乗り荒々しい言動を見せた。
・所属組織、地位や役職 公立七百一中学校生徒。元・北白蛇神社の蛇神。
・物語内での具体的な行動や成果 ベリーショートの髪型と短めの制服姿で登場する。北白蛇神社で八九寺真宵と共に酒を飲んだ。阿良々木暦へ鏡は真実を映す事実や裏返しの構造を教える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 先代の神として八九寺真宵へ助言を与えた。野性的な性格を表出させる。
怪異の専門家
斧乃木余接
影縫余弦に仕える死体の憑喪神に該当する。異世界ではパンツルックを着用しキメ顔と饒舌な口調を見せた。自身の不完全さに気づいて本来の無感情なキャラクターへ修正を図る。
・所属組織、地位や役職 影縫余弦の式神。死体の憑喪神。
・物語内での具体的な行動や成果 キメ顔で阿良々木暦に話しかける。自身の性格を作り替えて元の無感情な棒読み状態へ戻した。阿良々木暦を忍野忍のもとへ案内する。神原家の敷地でレイニー・デヴィルと交戦して時間を稼いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 周囲の環境に合わせてキャラクターを自在に変質させる。阿良々木暦のサポート役を務めた。
臥煙遠江
神原駿河の故人となった母親であり臥煙伊豆湖の姉にあたる。神原家の檜風呂に幻影あるいは幽霊として姿を見せた。豪放磊落な態度で阿良々木暦と混浴を行う。
・所属組織、地位や役職 故人(神原駿河の母)。
・物語内での具体的な行動や成果 全裸のまま檜風呂に浸かり阿良々木暦と会話する。阿良々木暦の背中を強烈に擦って洗った。背中にミミズ腫れでナオエツコウコウの鏡文字を刻み込む。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 鏡に姿が映らない状態で存在する。阿良々木暦へ次に向かうべき場所を指し示した。
怪異・神
八九寺真宵
北白蛇神社に祀られる新しい神を務める。事故を回避して健やかに成長した21歳の大人の姿で現れた。神事や境内での対応に威厳をのぞかせる。
・所属組織、地位や役職 北白蛇神社の神。
・物語内での具体的な行動や成果 境内で阿良々木暦を押し倒して関節技を決める。阿良々木暦へ世界の法則や帰還のアイデアを提示した。クチナワや6歳の羽川翼を神社に招いて酒盛りを行う。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 新神として神社の平定に務めた。阿良々木暦から黒鏡の奉納を受ける。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
かつて伝説と呼ばれた吸血鬼として知られる。異世界では吸血鬼ではなく人間のお姫様としてお城に隠棲していた。高貴な雰囲気を漂わせて阿良々木暦を迎える。
・所属組織、地位や役職 元・王国の姫。人間。
・物語内での具体的な行動や成果 西洋風の巨大なお城の寝室で暮らす。カーテン越しに阿良々木暦へ高貴な言葉遣いで語りかけた。阿良々木暦へ一刻も早く元の世界へ帰るよう忠告を与える。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項 人間の身でありながら強い威光を放つ。阿良々木暦へ一人で解決せず助力を求めるよう諭した。

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展開まとめ
最終話こよみリバース
卒業翌日の異変
三月十六日、高校を卒業した阿良々木暦は、大学の合否を待ちながら、学生という肩書きを失った自分に戸惑っていた。久しぶりに鏡へ映るようになった自分の姿を眺めていると、鏡像が暦の動きに従わず、睨み返してきた。驚いて鏡に触れた暦は、その中へ引き込まれた。
裏返った家族と幼馴染
鏡から戻った暦は、家族の様子が変わっていることに気づいた。火憐は背が低くなり、月火は礼儀正しい性格になっていた。さらに、家を出たはずの老倉育が阿良々木家に同居し、明るく親しげに振る舞っていた。
暦は、鏡を通じて元の世界とは異なる場所へ来てしまったと考えた。しかし周囲の人々にとっては現在の状態が当然であり、暦だけが違和感を抱いていた。
成長した八九寺真宵
暦は街で、大人の女性となった八九寺真宵に出会った。彼女は北白蛇神社に関わる存在となっており、暦が知る幼い八九寺とは姿も立場も異なっていた。
暦は元の世界へ帰る手掛かりを求め、八九寺から話を聞いた。彼女との出会いによって、この世界では単に左右が逆転しただけではなく、人々の別の側面が表に現れている可能性が浮かび上がった。
ブラック羽川との再会
暦は、海外へ旅立ったはずの羽川翼とも再会した。しかし現れたのは、白髪と猫耳を持つブラック羽川だった。彼女は通常の羽川とは異なる立場で行動しながらも、暦の事情を理解していた。
ブラック羽川は、暦が元の世界へ帰るためには協力者が必要だと助言した。暦は彼女の言葉を受け、自分一人で問題を解決しようとする姿勢を見直すことになった。
レイニー・デヴィルの襲撃
神原駿河を訪ねた暦は、彼女がレイニー・デヴィルの姿になっていることを知った。凶暴な怪異となった神原は暦に襲いかかり、暦は命の危険にさらされた。
ブラック羽川の助けで逃れた暦は、神原家の檜風呂が元の世界へ戻るための手掛かりになるのではないかと考えた。しかし、再び神原の家へ入るにはレイニー・デヴィルへの対策が必要だった。
人間の姫となった忍
暦は斧乃木余接の案内で、忍野忍に相当する存在を訪ねた。そこにいたのは吸血鬼ではなく、人間だった頃の美しい姫君であった。
姫の美しさと威光は人間の精神に強烈な影響を及ぼし、長く接すれば死を望むほど危険なものだった。暦もその影響を受け、余接に救出された。
姫は暦の進もうとしている道を否定せず、一人で解決しようとせずに助力を求めるよう忠告した。暦はその言葉から、神原家へ再び向かう方法を考えた。
余接との協力
暦はレイニー・デヴィルを足止めできる協力者を探した。その条件を満たすのは、強大な戦闘能力を持ち、事情も理解している斧乃木余接自身であった。
余接の協力を得た暦は、神原家の檜風呂を調べるための準備を進めた。一方、暦と接する時間が長くなるにつれ、この世界の老倉にも変化が現れ始めた。暦は自分の存在が周囲へ影響していることを危惧し、早急に帰還する必要を感じていた。
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