小説「フルメタル・パニック! 2 疾るワン・ナイト・スタンド」感想・ネタバレ

小説「フルメタル・パニック! 2 疾るワン・ナイト・スタンド」感想・ネタバレ

フルメタル・パニック! 2巻の表紙画像(レビュー記事導入用)

フルメタル・パニック! 1巻
フルメタル・パニック! 3巻

物語の概要

本作はSFミリタリーアクション・ライトノベルである。第1巻で日常と戦闘の両極を往復した《ミスリル》所属の兵士・相良宗介と護衛対象の高校生・千鳥かなめの物語はそのまま本巻へと続く。第2巻では《ミスリル》がテロ組織「A21」および巨大兵器「ベヒーモス」と対峙することとなり、宗介たちはテロ活動の阻止と住民・かなめの安全を同時に守るという極限状況に身を投じる。宗介は軍人としての能力を発揮しつつ、かなめを巡る戦闘と非日常の嵐に立ち向かう。

主要キャラクター

  • 相良宗介
    《ミスリル》に所属する特殊兵士。戦闘技能・戦術理解力に優れ、非日常的状況でも迅速かつ的確に対応する戦士である。同時に“軍人脳”を高校生活へ持ち込む不器用さも併せ持つ。
  • 千鳥かなめ
    宗介の護衛対象たる高校生の少女。明るく活発だが、《ウィスパード》として何らかの特殊能力を持ち、複数の勢力から狙われる存在である。また宗介の世界と日常の狭間で大きな影響力を持つ人物である。
  • テレサ・“テッサ”・テスタロッサ
    《ミスリル》の指揮官の一角。冷静沈着かつ柔軟な判断力を持ち、宗介の作戦遂行を支える存在として機能する。

物語の特徴

本作の魅力は、戦争描写と学園生活という相反する要素を同時進行させる点にある。宗介が《ミスリル》の兵士としてテロ活動阻止に挑む一方、高校生活という“普通の日常”も進行するという緊張感が作品全体を引き締める。また、テロ組織との戦闘は単なる戦闘描写に留まらず、兵器・戦術・人間ドラマを絡ませることで重厚なリアリティを生む。武装組織のミッション、軍用技術、特殊能力《ウィスパード》といったSF要素と、護衛対象としてのヒロインの存在が絡むヒューマンドラマが本作の差別化された魅力である。書籍情報

フルメタル・パニック! 2 疾るワン・ナイト・スタンド
Full Metal Panic
著者:賀東 招二 氏
イラスト:四季童子  氏
出版社:KADOKAWA
レーベル:ファンタジア文庫
発売日:1999年3月18日
ISBN:9784040711157

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あらすじ・内容

『このライトノベルがすごい! 2008』作品部門1位! 本格ミリタリーアクション!
雨雲を貫く爆発音! 千鳥かなめ誘拐事件から2か月――平穏を取り戻した相良宗介は、ごく日常的な爆破活動にいそしんでいた。狙撃、罠、そして爆破。だが、宗介が宗介なりの平和を享受していたそのとき、新たなる強敵は密やかに彼の背後に忍び寄っていた『ミスリル』の美少女艦長テッサを追って、東京壊滅を謀るテログループが宗介たちに襲いかかったのだ! 邪悪な計画を阻止するため、宗介とかなめは共に夜の東京を疾り抜ける!! 最先端技術を搭載した敵機――「悪魔」と恐れられる超兵器がその全貌を明らかにするとき、この街は炎に包まれてしまうのか!? ノンストップ・アクション・コメディ、早くも第3弾!! 

フルメタル・パニック! 2 疾るワン・ナイト・スタンド

感想

本巻は、シリーズにおける「巨大ロボット戦争もの」としての側面が、本格的に前面へ出てきた一冊である。
ラムダ・ドライバを巡る戦闘が本格化するが、主人公の宗介はまだそれを自在に扱える段階には至っておらず、その不利さが戦闘全体に緊張感を与えている点が印象的であった。

とりわけ、ラムダ・ドライバを駆使した超巨大なロボットが都市を破壊していく描写は、どこか怪獣映画を思わせる迫力を持っていた。
ただし本作が面白いのは、それが単なる「強いロボット」ではなく、超常的な技術【ラムダ・ドライバ】で無理やり動かしている存在として描かれている点であった。
理屈が破綻しているからこそ生まれるロマンがあり、兵器でありながら怪物としての立ち位置が心に残った。

全体の構成面では、序盤に短めのギャグパート【銃刀法違反】が置かれるものの、そこを過ぎると終始シリアスな展開が続く。
前巻のような学園ドタバタは若干控えめであり、物語は一気に戦闘へと舵を切っていく。
この切り替えの早さは好みが分かれるところだが、シリーズが単なる学園コメディでは終わらないことを示す意味では、非常に分かりやすい方向転換であったと感じる。その好みの不満は短編集で充分補填されてるのも面白い。

舞台が日本国内であることも、本巻のリアリティを支える大きな要素である。
「日本で傭兵やテロリストが活動すればどうなるか」「日本で巨大ロボットを使った戦闘が起きたらどうなるか」という前提が丁寧に書かれており、無茶な展開でありながら地に足がついている。
この感覚は、フルメタル・パニック!という作品が長く支持されてきた理由の一つだろう多分。

また、本巻から本格的に登場するテレサ・テスタロッサの存在感も非常に強い。
優秀な指揮官でありながら、どこか抜けたところのある「ドジっ子」かつ年相応の乙女という属性は、千鳥かなめとは異なる方向のヒロイン力を持っている。
ダブルヒロイン構造の片翼として、すでに完成度の高いキャラクターであり、主役級の輝きを放っていると感じた。

総じて本巻は、フルメタが「学園ラブコメ+ロボットもの」から、「国家と都市を巻き込む軍事SF」へと明確に踏み出した巻である。ハチャメチャさはやや後退したが、その分、世界観と戦闘描写の重みが増している。
学園ギャグを求める読者は短編集に任せ、本編では本気で殴り合う。その割り切りの良さこそが、本巻の最大の魅力であると感じた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

フルメタル・パニック! 1巻
フルメタル・パニック! 3巻

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登場キャラクター

陣代高校

千鳥かなめ

生徒会の副会長であり、相良宗介の異常行動に対して止め役として動く立場である。相良宗介の本業を知る少数の同級生でもある。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校、生徒会副会長である。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋上の試射をやめさせるため、相良宗介をしかりつけた。
 黒色火薬の事故では、消火器で火を消した。
 二塁ベースを投げて、相良宗介にぶつけた。
 発信機の破壊案として、電子レンジの方法を出した。
 終盤では、背中の冷却装置らしき場所を相良宗介へ伝えた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 護衛の事情を知る立場のため、事件対応に巻きこまれやすくなった。

相良宗介

〈ミスリル〉の兵士であり、陣代高校では生徒として二重生活をしている立場である。合理を優先しがちで、千鳥かなめと衝突しやすい関係である。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、ウルズ7である。
 陣代高校、生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋上でライフルの試射を行った。
 訓練キャンプ制圧では、M9側として作戦を進めた。
 千鳥かなめとの約束を忘れ、関係がこじれた。
 テロ側の襲撃を自室で迎えうち、侵入者を排除した。
 〈アーバレスト〉で〈ベヘモス〉と交戦し、弱点を突いて崩壊へつなげた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 護衛任務の失敗で、千鳥かなめとテレサの連れ去りを許した。
 戦後に〈アーバレスト〉を自分の機体だと告げられた。

風間信二

同級生として相良宗介にからみ、状況を軽口でほぐす立場である。生徒会室では行事側の役も持つ。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校、文化祭実行委員会の副委員長である。
・物語内での具体的な行動や成果
 昼休みに相良宗介へ声をかけ、千鳥かなめとの関係をからかった。
 生徒会室の空気を読まずに話を広げ、火に油を注いだ。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 試験前で会議が中止となり、動きの場が消えた。

常盤恭子

千鳥かなめの近くにいる同級生であり、日常側の視点で異変を見つける立場である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校、生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 ソフトボール授業で、千鳥かなめの不機嫌を指摘した。
 終盤の教室で、千鳥かなめに話しかけて様子をうかがった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 日常の場面で、事件後の異常さを示す役割を担った。

神楽坂恵里

授業中の秩序を守ろうとする教員であり、相良宗介の反射行動に巻きこまれる立場である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校、教員である。
・物語内での具体的な行動や成果
 授業で相良宗介を注意し、状況をただそうとした。
 相良宗介の覚醒反応で制圧されかけた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 教室が戦場の延長であることを示すきっかけになった。

ノリコ

屋上での言い争いにいた当事者であり、恋人関係の話題で揺れる立場である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校、生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 ミキオと関係の進め方で言い争った。
 事故後は千鳥かなめに保健室への同行をうながされた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 銃声と事故で、場の中心から外れた。

ミキオ

屋上で相良宗介へ抗議し、事故の当事者になった生徒である。軽率な行動が被害につながった立場である。
・所属組織、地位や役職
 陣代高校、生徒である。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋上で相良宗介に発砲をやめろと抗議した。
 落下した黒色火薬に、火のついたタバコで引火させた。
 背中を燃やしたが、消火器で火を消された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 軽い火傷で済み、致命的な被害は出なかった。

〈ミスリル〉

テレサ・テスタロッサ

作戦の判断を下す指揮官であり、完璧を求めて揺れやすい立場である。相良宗介に対して上官として関与する。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、強襲揚陸潜水艦〈トゥアハー・デ・ダナン〉の艦長であり大佐である。
・物語内での具体的な行動や成果
 訓練キャンプの空振り報告を受け、次の対応を決めた。
 タクマ確保のため、日本の研究所へ向かった。
 相良宗介の部屋へ逃げこみ、タクマをかくまった。
 〈ベヘモス〉出現後、〈アーバレスト〉投入を受け入れた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 嫉妬や焦りで判断がぶれたと自覚し、千鳥かなめに打ち明けた。

メリッサ・マオ

現場で指揮と実務を回す兵士であり、相良宗介を現実に引き戻す立場である。戦闘と判断の両方を担う。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、曹長である。
・物語内での具体的な行動や成果
 訓練キャンプの追跡結果を報告した。
 増援が少ない状況を説明し、三人での対処を決めた。
 M9で救助に向かったが、〈ベヘモス〉に破壊された。
 赤海埠頭でカリーニンと合流した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 戦力不足の中で、現場のまとめ役として影響力が強まった。

クルツ・ウェーバー

狙撃の技能を持つ兵士であり、軽口で緊張をほどく立場である。相良宗介の判断に踏みこむ役でもある。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、軍曹である。
・物語内での具体的な行動や成果
 訓練キャンプで名乗り出るよう呼びかけ、選別を助けた。
 走行中に〈ベヘモス〉の火器を狙撃し、誘爆させた。
 終盤で背中の穴の観察に協力し、情報をまとめた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 感情優先の考えを示し、相良宗介の迷いを揺さぶった。

アンドレイ・カリーニン

作戦の要点を押さえる指揮官であり、日本側の状況をつなぐ立場である。テレサの判断にも影響する存在である。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、少佐である。
・物語内での具体的な行動や成果
 成田の事件を伝え、テレサを呼び出した。
 研究所で移送の判断をめぐり、慎重論を述べた。
 拘束下で敵をだまし、拳銃で逆転して脱出した。
 沈没する船から生還し、セイナの最期に立ち会った。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 不在が続き、〈ミスリル〉の戦力運用に穴が開いた。

リチャード・マデューカス

艦の運用を支える副長であり、柔軟さを説く立場である。テレサの完璧主義と対立する関係である。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、〈トゥアハー・デ・ダナン〉副長であり中佐である。
・物語内での具体的な行動や成果
 空振りの報告を受け、現実を受け止めるよう助言した。
 終盤では、〈アーバレスト〉投射投入の案が採用された。
・地位の変化, 昇進, 影響力, 特筆事項
 指揮官の判断を支える補佐役としての重みが示された。

ヤン

テレサの護衛として同行し、負傷して搬送された兵士である。現場で身をていして守る立場である。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、伍長である。
・物語内での具体的な行動や成果
 崩落の場面でテレサをかばい、負傷した。
 救急搬送の手配が行われた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その後の行動は本文では確定していない。

フライデー

M9に搭載されたAIであり、追跡情報を提供する立場である。人間の判断を補助する存在である。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、M9〈ガーンズバック〉搭載AIである。
・物語内での具体的な行動や成果
 監視システム経由で、拉致に使われた車両の位置を報告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 追跡開始の根拠となり、作戦の方向を決める助けになった。

アル

〈アーバレスト〉側のAIとして言及され、対抗手段の不足が示された存在である。
・所属組織、地位や役職
 〈ミスリル〉、〈アーバレスト〉搭載AIである。
・物語内での具体的な行動や成果
 ラムダ・ドライバへの対抗手段を即答できない状況が描かれた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 情報不足が、相良宗介の工夫を促す形になった。

テロ側〈A21/A22〉と関係者

クガヤマ・タクマ

暴力衝動と記憶のゆがみを抱え、ラムダ・ドライバ適性を疑われる少年である。敵側に利用される立場である。
・所属組織、地位や役職
 テロ側の構成員として扱われている。
 「〈A21〉の一員」という情報が示されている。
・物語内での具体的な行動や成果
 成田空港で税関係官に襲いかかり、首をしめた。
 伏見台学園でPHSを使い、居場所を敵へ流した。
 〈ベヘモス〉を操縦し、ラムダ・ドライバを起動した。
 終盤で敗北し、テレサの言葉の後に動かなくなった。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 「Ti77」の反応が出ており、矯正の影響が示唆された。

セイナ

襲撃部隊を率い、タクマ奪還を目的に動く操縦者である。冷淡に命令を出す立場である。
・所属組織、地位や役職
 テロ側、ソ連製AS〈サベージ〉の操縦者である。
・物語内での具体的な行動や成果
 巡査長を射殺し、襲撃を開始した。
 研究所を攻撃し、タクマ奪還を指揮した。
 赤海埠頭でカリーニンに目的を語り、情報を引き出そうとした。
 終盤で重傷となり、カリーニンの前で死亡した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 〈ベヘモス〉計画の内情を語り、脅威の構図を明らかにした。

中佐

フィリピン側の訓練キャンプで訓練生をしごく教官である。殺しの訓練を教えこむ立場である。
・所属組織、地位や役職
 訓練キャンプの教官であり中佐である。
・物語内での具体的な行動や成果
 訓練生に「一撃で仕留めろ」と説教した。
 基地が安全だと誇示した直後に、奇襲を受けた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 その後の安否は本文では確定していない。

日本側の公的機関と周辺

シマムラ

研究所側の説明役として登場し、警備の過信を示す立場である。テレサと会話を交わす。
・所属組織、地位や役職
 運輸省の人間として記載されている。
・物語内での具体的な行動や成果
 テレサの年齢を誤認した。
 研究所の警備が万全だと主張した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 襲撃の発生で、見立ての甘さが浮きぼりになった。

その他の場面関係者

伏見台学園の用務員

潜伏者を見つけ、深追いせずに帰るよう促す人物である。現場の空気を変える立場である。
・所属組織、地位や役職
 伏見台学園高校、用務員である。
・物語内での具体的な行動や成果
 生徒会室で一同を見つけ、一階の用務員室へ連れていった。
 学校側へ言わないと告げ、電車のあるうちに帰れと諭した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 潜伏が甘かったことを示す要因になった。

丸眼鏡の男

戦闘の観測者として登場し、結果と費用を冷静に評価する立場である。
・所属組織、地位や役職
 所属は本文では示されていない。
・物語内での具体的な行動や成果
 屋上から戦いの結末を見届けた。
 〈ベヘモス〉計画を期待外れだと評した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 〈アマルガム〉という言葉が会話内で共有された。

義足の男

観測者の一人として登場し、成果と次の行動を語る立場である。強い敵意をにおわせる。
・所属組織、地位や役職
 所属は本文では示されていない。
・物語内での具体的な行動や成果
 戦闘データ回収を成果として認めた。
 相良宗介と千鳥かなめに再会したと語った。
 近いうちに挨拶に行くと予告した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 今後の対立を示す存在として残った。

展開まとめ

プロローグ

屋上での痴話喧嘩

昼休みの屋上で、ノリコとミキオは恋人関係について言い争っていた。ミキオは関係を進めることを求め、ノリコは恐怖心から踏み出せずにいた。二人の会話は緊張感をはらみつつ続いていた。

銃声による中断

会話の最中、突然の銃声が屋上に響いた。給水塔の上では相良宗介がライフルを構え、校庭に向けて試射を行っていた。宗介は二人の存在を気にも留めず、銃の精度確認を淡々と続けたため、屋上は断続的な発砲音に包まれた。

抗議と説明

騒音に耐えかねたミキオが宗介に抗議すると、宗介は新しく入手したライフルと弾薬の試射であり、距離が必要だと冷静に説明した。その理屈はミキオには理解できず、混乱は収まらなかった。

千鳥かなめの介入

そこへ生徒会副会長の千鳥かなめが現れ、試射を即座にやめるよう宗介を強く叱責した。宗介が正当性を主張する中、かなめは上履きを投げつけ、その拍子に黒色火薬の缶が落下した。

事故と消火

落下した黒色火薬は、ミキオの火のついたタバコに引火し、爆発を起こした。ミキオの背中が燃え上がり混乱が生じたが、かなめが消火器を使って迅速に鎮火し、被害は軽度の火傷で済んだ。

衝突と急用

宗介は処置を評価したものの、かなめは校内への爆発物持ち込みを厳しく非難し、消火器で殴打した。その直後、宗介は通信を受け、急用を理由に屋上を去った。

残された者たち

宗介が立ち去った後、かなめは呆れながらも倒れたミキオとノリコに向き直り、保健室まで付き添うかどうかを申し訳程度に申し出た。

1: 異邦の流儀

帰国と混乱した自己認識

六月二四日、日本標準時一四〇一時。成田市の新東京国際空港に到着した少年は、入国審査の列を進みながら、自分がなぜこの国に戻ってきたのかを一時的に思い出せず、強い違和感と混乱に襲われていた。長期間の訓練と調整を経て帰国した事実と、破壊を目的とする使命の記憶が断片的に浮かび上がる一方で、自身の正体すら曖昧になっていた。

タクマという存在

少年は自分をクガヤマ・タクマと認識していたが、それは表向きの名前であり、本当はタテカワ・タクマという〈A2〉の特別な存在であるという自覚を取り戻した。強い嫌悪感と苛立ちを抱えつつも、薬を飲まずにその衝動を抑え込もうとしていた。

税関での違和感と衝動

税関係官と対面したタクマは、相手のネクタイの歪みといった些細な点に強烈な不快感を覚え、暴力衝動を必死に抑えながら形式的な受け答えを行った。短期留学からの帰国であると穏やかに説明する一方、内心では他者を傷つけたいという欲求が渦巻いていた。

姉への依存と思考の逸脱

タクマは先に帰国している姉の存在を思い浮かべ、姉が自分のために「悪魔の機体」を動かす準備をしていると信じていた。姉に認められたいという思考が、彼の暴力的な衝動を正当化する支えとなっていった。

暴発

入国を許可された後も係官への嫌悪を抑えきれなくなったタクマは、突如として錯乱し、絶叫とともにカウンターを飛び越えて係官に襲いかかった。馬乗りになって首を絞め続け、周囲の制止にも応じず、強烈な快感と歪んだ高揚に浸りながら暴力を振るい続けた。彼の意識は最後まで姉の存在に向けられていた。

密林の模擬市街地と訓練の実態

六月二五日二二五五時、フィリピン北部ルソン島の密林に、市街戦用の模擬演習場が存在していた。中佐は訓練生たちに、敵を一撃で仕留めること、容赦なく殺すことを叩き込み、訓練生は銃撃と爆発が飛び交う中でも疲労を見せずに制圧を完了させた。中佐は整列させた訓練生に、脱走や死亡者が出た事実を挙げつつも、彼らが殺し屋として形になりつつあると評し、憎悪を燃料にせよと説教した。

〈ミスリル〉の噂と中佐の激昂

訓練生の一人が、軍や警察ではなく〈ミスリル〉と戦う場合を問うと、中佐はその名を知らず、噂話だとして一蹴した。しかし訓練生たちの間には〈ミスリル〉が革命家の活動を妨害し、訓練キャンプを襲撃するという不安が広がっていた。中佐は基地が難攻不落であると誇示し、周囲二〇キロの警戒網と重装備、さらにアーム・スレイブ二機の存在を示して、奇襲など不可能だと断言した。

電磁迷彩の奇襲と基地の崩壊

その直後、夜空から炎の矢のような攻撃が降り注ぎ、戦車が撃ち抜かれて爆発し、アーム・スレイブも破壊された。夜空の星の歪みから、電磁迷彩によるステルス装置が解除され、三機の正体不明の灰色のアーム・スレイブが出現した。三機は基地上空で降下し、着地と同時に装甲車やヘリを破壊し、兵士と訓練生を圧倒した。外部スピーカーで投降を命じる声は若い女のもので、電気銃によって逃走者は次々に気絶させられた。

相良宗介の任務と捕虜の選別

灰色の機体は〈ミスリル〉の主力機M9〈ガーンズバック〉であり、相良宗介はコックピット内で索敵モードの切り替えを命じつつ、基地制圧の終盤を監視していた。捕虜は模擬市街地の中央広場に集められ、宗介らは逃亡者を電気銃で制止しながら、目標である日本人の訓練生グループを選別しようとした。クルツ・ウェーバー軍曹が外部スピーカーで名乗り出るよう促したが、手配書と一致する日本人は見つからず、メリッサ・マオ曹長の追跡結果も同様であった。

約束の失念と二重生活の露呈

作戦が外れに終わった報告と引き渡し準備が進む中、宗介は突然、別の重大な失念に気づいた。それは日本で千鳥かなめと一九〇〇時に会い、期末テスト範囲を教わる約束であった。戦闘任務を終えた直後にもかかわらず宗介は狼狽し、クルツやマオに呆れられながらも、極秘部隊〈ミスリル〉の兵士であると同時に東京の高校生でもある現実が浮き彫りとなった。

六月二五日 一五一八時

訓練キャンプの空振り報告

ルソン海峡の強襲揚陸潜水艦〈トゥアハー・デ・ダナン〉中央発令所で、テレサ・テスタロッサはメリッサ・マオ曹長から、訓練キャンプが空振りだったと報告を受けた。マオは指導者を追及し、日本人グループが一〇日前に見学に来たこと、マニラからゴールドコーストへ向かう話があったことを述べたが、確証は得られず、情報が誤りだったと結論づけた。テッサは作戦が空振りに終わったことを認め、マオに予定通り帰艦するよう指示した。

完璧主義と柔軟性の衝突

報告後、テッサは情報の誤りを軽視できないと考え、テログループがソ連製ASを入手している可能性を挙げ、街中での暴走を懸念した。副長リチャード・マデューカス中佐は、全能ではない以上、こうした事態を受け止める習慣が必要だと述べ、柔軟性を強調した。テッサはそれを怠惰と断じ、完璧な情報と作戦を追い求める理想を崩さなかった。

カリーニン少佐からの新情報

艦のマザーAIが回線をつなぎ、別任務で日本にいた作戦指揮官アンドレイ・カリーニン少佐が通信してきた。カリーニンは、問題のテログループの構成員の一人が成田空港で逮捕されたと伝えたが、その少年に例の反応が出ていると続けた。

ラムダ・ドライバの兆候と出動決定

テッサはその報告を受け、逮捕された少年がラムダ・ドライバを駆動させる能力を持つ可能性が高いと理解した。ラムダ・ドライバは精神を糧にし、使い方を誤れば極めて危険な未知の装置であり、それを扱える人間をテロリスト側が握っている状況は深刻であった。身柄は日本政府が押さえており精密検査ができないため、カリーニンはテッサの直接の対応を要請した。テッサは了承し、手筈を整える方針を示して通信を切り、危険な能力者を誰が利用しているのかという疑念を抱いた。

六月二六日 一〇〇一時(日本標準時)

ソフトボールでの苛立ち

都立陣代高校の校庭で、体育のソフトボール授業が進行していた。千鳥かなめは投手として三者三振を奪い、常盤恭子に本気すぎると指摘されつつも強気に取り繕った。恭子はかなめの機嫌の悪さを見抜き、その原因が相良宗介にあると察した。

約束の反故と不機嫌の理由

かなめは前日に、相良宗介へ期末テスト勉強を教える約束をしていたが、宗介は指定時刻に現れなかった。連絡も繋がらず、かなめが用意していた手料理は食卓に残されたままであった。宗介は当日も欠席しており、かなめは状況を知らないまま苛立ちを抱えていた。

見えない壁と突風の異変

打順が回ったかなめは、ヘリコプターのような音を聞きながらも打席に立ち、宗介への怒りをぶつけるようにフルスイングして大きな打球を放った。しかし打球は上空で突然停止し、見えない壁に当たったかのように真下へ落下した。直後、ローター音が激しくなり、強風と粉塵が校庭を覆って視界が奪われ、かなめは二塁ベースにしがみついて耐えた。やがて轟音と風は収まり、空には何も残らなかった。

宗介の帰還とすれ違い

静けさが戻ると、夏服姿の相良宗介が校庭に現れた。宗介は周囲を警戒しつつかなめを呼び、二時間目には遅刻で済むと確認して、南シナ海から直通で到着したと告げた。かなめは不可解な異変でホームランが潰されたことを宗介のせいだと皮肉ったが、宗介は注意を促しただけで男子の授業へ向かおうとした。

約束の確認と怒りの爆発

宗介は立ち止まり、前日の約束についてかなめが怒っているかを尋ねた。かなめは大げさに否定したが、宗介はその言葉を真に受け、約束を思い出した時に怒られているかと案じていたと淡々と述べた。さらに宗介は、重大な用件があって約束を忘れていたと認め、軽い足取りで去ろうとした。

二塁ベース投擲とタッチアウト

かなめは怒りを抑えきれず、二塁ベースをフリスビーのように投げつけ、宗介の後頭部に命中させた。宗介は悲鳴も上げずに荷物を放り出して崩れ落ち、かなめは罵声を浴びせた直後、内野手にタッチされてアウトとなった。

六月二六日 一〇二八時(日本標準時)

ヘリ移動と研究所への到着

テレサ・テスタロッサは〈トゥアハー・デ・ダナン〉からヘリで六時間移動し、埼玉県狭山市郊外の防衛庁管轄・技術研究所へ向かった。機密度の高い施設で、問題の少年タクマが収容されていると聞かされていた。着陸後、アンドレイ・カリーニン少佐が出迎え、テッサは必要だから呼んだのだと釘を刺しつつ同行した。

シマムラとの面会と年齢誤認

カリーニンの後ろには運輸省のシマムラが待っており、英語で挨拶した。シマムラはテッサの年齢を三〇歳前後と誤認していたが、それはカリーニンが普通の天才だと説明し、年齢を曖昧にした結果であった。テッサは困惑し、自分が老けて見えるのかと不安を覚えた。

テログループの襲撃準備と目的

場面は別地点に移り、テロ側の一団が、目的は収容されているタクマの奪還であり、邪魔者は排除すると確認していた。セイナと呼ばれる女は、タクマは計画に絶対必要であり、タクマがいなければ〈ベヘモス〉が動かないと淡々と述べた。一団は〈ベヘモス〉が動けば自衛隊も蹴散らせ、街を灰にできると語り、襲撃準備を開始した。

警官殺害と〈サベージ〉の点検

巡回中のパトカーがトレーラー付近で停止し、巡査長が職務質問を行った。セイナはサイレンサー付き自動拳銃で巡査長を射殺し、別の男たちも運転席の巡査をサブマシンガンで撃って止めを刺した。その後セイナは死体処理と移動を命じ、自身はトレーラーに収めたソ連製第二世代AS〈サベージ〉の点検に移った。コートを脱いで操縦服を露わにし、破壊の前奏曲と呟いた。

六月二六日 一二三三時(日本標準時)

昼休みの悶々とした宗介

陣代高校南校舎の昼休み、風間信二は相良宗介の頭の怪我を心配しつつ、千鳥かなめが宗介の死を嘆いて自傷するかもしれないと冗談めかして語った。宗介はそれを否定し、むしろ朝の一件以来かなめに完全に無視され、話しかける糸口も作れずに悶々としていると認めた。宗介は自分が嫌われていると結論づけ、信二はその弱さをからかった。

生徒会室とかなめの当てこすり

二人は生徒会室へ向かった。宗介は「安全保障問題担当・生徒会長補佐官」という怪しい役職で雑用係扱いされ、信二は文化祭実行委員会の副委員長として会議参加の予定だった。しかし会議は試験前で中止となっており、信二が不満を漏らして出ようとしたところへ、千鳥かなめが入室した。かなめは信二には愛想よく謝り、約束を忘れたことを自分で最低だと責める形で、約束を破る男は許せないと強く言い放ち、宗介に聞こえるよう当てこすった。

花束の提示と逆効果の説明

信二が退室すると、かなめは宗介に冷たく接し、生徒会室で勉強を始めた。宗介は意を決して白い花束を差し出し、昨夜摘んだものだと受け取ってほしいと頼んだ。かなめは一瞬心を緩め、花の名を尋ねたが、宗介はそれがケシであり、阿片からヘロインの原料が取れるため売れば金になると淡々と説明した。かなめの機嫌は即座に逆戻りし、宗介の常識外れが改めて露呈した。

廊下での事情説明と護衛関係の確認

かなめは宗介を廊下へ引っ張り出し、昨夜来なかった理由が〈ミスリル〉の緊急呼集による任務だったのかを小声で確認した。宗介はフィリピンへ行ってとんぼ返りしたと認め、かなめが宗介の本業を知る唯一のクラスメートであることが示された。二か月前、かなめがテロリストに拉致されかけた事件があり、宗介と〈ミスリル〉が救出した経緯があった。かなめが〈ウィスパード〉という特殊な存在らしいこと、宗介が生活圏に常駐する護衛であることは共有されていたが、狙われた理由や組織の真意は不明のままであった。

かなめの怒りと宗介の致命的な勘違い

かなめは誠意とデリカシーの問題だと激昂し、上履きで宗介の頭を連打した。宗介は理解したと止めに入ったが、誠意とは高く売れる麻薬を持ってくることだと本気で解釈し、次はコカのペーストを取ってこいという意味だろうと述べた。かなめはその発言に対し、首筋へ上段回し蹴りを叩き込み、怒りを爆発させた。

六月二六日 一三一〇時 (日本標準時)

取調室の少年と矯正の疑い

防衛庁技術研究所で、テッサはマジック・ミラー越しに少年クガヤマ・タクマを観察した。平凡に見えるが異質さを漂わせる小柄な少年で、数年前の爆弾テロ組織〈A21〉の一員という情報には違和感があった。カリーニンは、成田空港で少年が税関係官を殴打し絞殺しかけた事件を説明し、取り押さえ後の異常興奮から薬物検査を行った結果、血中に追跡中の薬物「Ti77」反応が出たと報告した。これは「ラムダ・ドライバ」適性者を矯正する訓練と薬物投与の副作用として、凶暴性や記憶障害が出る可能性を示していた。

テッサの判断と面接延期

テッサは検査書類を確認し、少年がクロなら「ラムダ・ドライバ搭載型兵器」が用意されているはずだと推測した。仲間の帰国状況や背後関係も聞き出したいが、少年は黙秘しており、非人道的手段は使えない。テッサがそれを許さないと釘を刺した直後、少年が突然ミラーに突進し狂暴化した。警備員が押さえ込み、テッサは動揺しつつも「多分クロ」と勘で結論を傾けた。面接は行う意志を示したが、少年に鎮静剤が打たれ、夕方以降へ延期となった。

襲撃の予兆とシマムラの過信

廊下でシマムラは、少年をただの薬物中毒と見なし、研究所の警備は二個小隊規模で万全だと豪語した。テッサは侵入者襲来の可能性を示し、タクマの重要性を説明しようとしたが遮られた。直後、敷地外れの病院棟方面で爆発と銃声が連続し、炎と黒煙が上がった。襲撃者が研究所を攻撃し、タクマ奪還に来た可能性が現実となった。

タクマ移送を巡る対立

テッサは「目的はタクマだ」と直感し、すぐに移送しようとした。しかしカリーニンは、彼らは部外者であり、隠れてやり過ごして奪還されるのを待つべきだと慎重論を述べた。テッサはそれを拒否し、タクマが渡れば恐ろしい機体に乗せられ、甚大な危険が起きると断じた。そこへシマムラが割り込み、勝手な連れ出しを禁じ、装備充実の警備隊なら返り討ちにできると強弁した。

装甲車の撃破と〈サベージ〉出現

警備側の装甲車が通過した直後、それは白い火線に貫かれて爆発し、破片が窓を割った。病院棟の陰から姿を現したのは、ソ連製第二世代AS K-22〈サベージ〉であった。灰色塗装の機体は重機関銃で警備員を掃射し、40ミリ・ライフルで建物を撃ち抜きながら進み、赤い二つ目をこちらへ向けた。テッサには、その無機的な視線が笑っているようにすら感じられた。

崩落と衝撃

〈サベージ〉がこちらを狙った瞬間、カリーニンとヤンがテッサに飛びつき、伏せさせようとした。次の瞬間、凄まじい衝撃で天井が崩落し、ガラスや鉄筋やコンクリート片が舞った。音が遠のく中、ヤンが破片を受けながらも身を挺してかばおうとする姿が見え、テッサは落下しながら「そこまでしなくても」と思ったところで、さらに別の衝撃が彼女を殴りつけた。

〈サベージ〉による制圧

灰色の〈サベージ〉は目標のビルと周辺を完全に制圧した。警備隊の姿は消え、逃走・死亡・瀕死のいずれかであった。白煙と粉塵の中、機体は半壊したビルへ接近し、瓦礫を踏み砕いて内部に手を伸ばすと、全関節をロックして停止した。

セイナの侵入

頭部ハッチが開き、オレンジ色の耐Gスーツを着た操縦者セイナが姿を現した。自らがもたらした破壊に感情を示すことなく、超然とした視線でサブマシンガンを手に取る。〈サベージ〉の腕を渡ってビル内へ入り、建材と血肉の残骸が散らばる廊下を進んだ。

空の取調室

タクマがいるはずの取調室に到達したが、室内は無人で、倒れた椅子と簡素なテーブルだけが残されていた。入口には血痕が点在し、負傷した警備兵がタクマを連れ出した可能性が示唆された。短時間で、襲撃側に見つからず移送された事実に、セイナは険しい表情を見せた。

追跡の指示

襲撃チームの覆面男が合流し、発信機の反応があったはずだと報告するが、現在は受信範囲外であった。セイナは即時の捜索を命じ、「あの悪魔を動かすには、絶対にタクマが必要だ」と断言した。

負傷者の発見

近くで負傷者が一人発見されたとの報告に、セイナは警備兵なら殺害を指示した。しかし運ばれてきたのは研究所の人間ではない白人の男で、ブラウンのスーツは破損し、背中にガラス片が刺さる重傷だった。意識は辛うじて保たれていた。

対峙と断絶

セイナは銃口で男の顔を上げさせ、その強い意志の光から、戦いを生業とする者だと直感した。かつて心を許しかけた人物の面影が一瞬よぎる。正体を問うと、男は「おまえの敵だ」とだけ答え、そのまま意識を失った。

2: ウルズ7にバトンが渡る

六月二六日 一八三一時(日本標準時)

夕刻の同行と護衛の齟齬

夕暮れの調布市多摩川町。千鳥かなめは帰宅途中、相良宗介に付けられていると感じ、苛立ちを露わにした。宗介は後を追っているわけではなく、住まいが近所で同じ方向なだけだと説明するが、かなめは素直に受け取れず、気まずい同行が続いた。

宗介の理屈とかなめの拒絶

宗介は関係修復を提案し、約束を破った理由の説明や謝罪、贈り物までしたと述べる。しかしその言い回しは任務優先の論理に終始しており、かなめの感情に寄り添うものではなかった。かなめは二人の関係を「ただの同級生」と切り捨て、守る義務など押し付けだと激しく反発した。

衝突する価値観

宗介は護衛としての責任を主張するが、かなめはそれを保護者面と断じ、任務第一の戦争屋だと辛辣に非難した。自分が狙われる存在であっても、それは宗介の仕事上の都合にすぎないと突き放し、彼が死んでも線香一本で済ませるとまで言い切った。

別れ際の後悔

感情を爆発させたまま、かなめは宗介を残してマンションへ駆け込み、エレベーターに乗り込んだ。扉が閉まった後、彼なりに謝っていることを理解していながら素直になれない自分に気づき、壁に額を打ちつけて自己嫌悪に沈んだ。

六月二六日 一八四〇時(日本標準時)

宗介の自室への帰還と違和感の発見
宗介はかなめの言動の矛盾に悩みながら帰宅したが、廊下で部屋の中に人の気配を察知した。鍵が開いている状況から侵入を疑い、拳銃を抜いて突入すると、そこには見知らぬ少年と、拳銃を構えたテレサ・テスタロッサがいた。少年はタクマであり、テッサは彼を確保したうえで宗介の到着に安堵した。

タクマの暴走と一時的な確保
タクマは鎮静剤が切れたのか突然暴れ、宗介に飛びかかった。宗介は銃を使わず制圧し、失神させて手錠で寝室に拘束した。テッサは研究所襲撃からの逃走経緯を説明し、護衛のヤン伍長を救急搬送の手配後に置き去りにし、複数回タクシーを乗り継いで宗介の部屋へ辿り着いたと語った。

かなめの謝罪と最悪の鉢合わせ
チャイムで訪ねてきたかなめは、先ほどの暴言を謝り、重箱の料理を持ってきた。宗介はテッサとタクマの存在を隠しきれず立ち塞がるが、ちょうど浴室からバスタオル姿のテッサが現れ、かなめと目が合った。かなめは状況を誤解し、料理を押し付けて立ち去り、宗介の説明も冷えた声で遮った。

偵察任務の方針と、敵の襲撃
テッサはマデューカス中佐らに連絡し、メリッサ・マオとクルツ・ウェーバーの応援、さらにM9の投入を手配した。宗介は敵戦力や情報網を推し量るが、直後にチャイムが鳴り、ベランダから催涙弾と武装侵入が発生した。宗介は即応して照明を落とし、侵入者を射殺し、ベランダ側の侵入も射撃で阻止した。玄関からも配達員を装った襲撃者が突入したが、宗介は躊躇なく撃って排除し、計三名の襲撃を退けた。

テッサの動揺とタクマの挑発
襲撃者が若い日本人である点や装備の高度さから、敵〈A22〉の実力と情報力が示唆された。テッサは冷静に状況分析しようとするが、直前まで気を緩めていた反動もあり、宗介にすがって感情を抑えきれなくなる。そこへタクマが「逃げても無駄」と挑発し、宗介は銃口を突きつけて最短の解決を提示するが、テッサは「同じになってはいけない」と制止した。

撤収の決断と暗号の伝言
宗介は銃を下ろし、遺体処理と移動準備を進める一方、テッサに〈デ・ダナン〉への連絡を依頼した。移動先の合図として、宗介は「日本史を習いに行く」と伝えるよう指示し、それがクルツに通じる符丁であると示した。

六月二六日 二〇三一時(日本標準時)

メゾンK

かなめの独り相撲と自己嫌悪
かなめは帰宅後、宗介とテッサを目撃した衝撃を引きずり、嫉妬と自己否定の妄想に沈んだ。宗介が約束を破った理由まで勝手に「恋人と一晩中一緒だった」に結びつけ、根拠のない物語を積み上げて消耗していった。

宗介一行の来訪と“匿え”要求
夜にチャイムが鳴り、かなめが開けると宗介、テッサ、タクマの三人が立っていた。宗介は「困っている。かくまってくれ」と直球で頼み、かなめは不機嫌を爆発させつつも、結局ほうじ茶を出して状況を聞く流れになる。

テッサの“悪ふざけ”と三角疑惑の泥沼化
かなめは「16歳の女の子が潜水艦の艦長で大佐」など信じ難い点を突き、宗介の説明もタクマの同席で細部を語れず説得力を欠いた。さらにテッサはわざと歯切れの悪い言い方をし、「ソウスケ」と呼ぶなど、宗介にだけ刺さる含みのある態度を見せ、かなめの疑念を加速させた。

かなめの挑発でタクマが発作を起こす
かなめは礼節を盾にタクマへ圧をかけ、家庭環境まで踏み込む挑発を重ねた。タクマは「母はいない」と吐露し、かなめも自分も同じだと返すが、追撃の煽りでタクマは錯乱し、かなめに飛びかかろうとする。宗介が押さえ込み、手刀で失神させて事態を収めた。

発信機の発見と“電子レンジ作戦”
暴れるタクマを制圧した際、宗介は上腕部に硬い棒状の異物を触知し、テッサがそれを「発信機」と断定した。位置を知らせる電波を出す監視用機材で、材質も非金属中心のため発見が困難だった。かなめは発信機破壊の手段として電子レンジを提案し、扉の安全スイッチを箸で騙して開扉状態で稼働させ、発信機部位だけ露出して数秒照射し破壊した。テッサは乱暴さに驚きつつも、結果的に助かったことを認めた。

即時撤収の判断と三人同行の確定
宗介は発信機が止まったと敵が知れば即襲撃が来ると判断し、かなめにも同行を命じた。かなめは「恋の逃避行」だと拒絶するが、テッサが悪ふざけを謝罪し、自分が上官であり組織としてかなめの保護が必要だと凛と説得したことで、かなめは渋々受け入れた。

ベランダの非常口で階下へ潜行脱出
三人はベランダ床の非常口から下階へ降り、タクマも穴に押し込んで受け渡しながら移動した。途中、野球中継の音が大きい部屋や留守の部屋を利用し、留守宅は窓を破って侵入して玄関側の様子を確認する。道路には黒塗りのライトバンが停車しており、宗介は敵と断定せずとも警戒しつつ、ナンバーを記憶して非常階段から裏手の植え込みへ抜けた。

逃走先の検討と“別の高校”の提案
テッサが手すり越えで転倒する小トラブルはあったが、負傷はなかった。宗介は「人を巻き込まず、目立たず、よく知った場所」を条件に逃走先を考える。かなめは学校を提案するが陣代高校は露呈すると却下され、かなめは「もっと近くに別の高校がある」と切り札を示した。

六月二六日 二一〇七時(日本標準時)

赤海埠頭

カリーニンの覚醒と拘束状況の把握
アンドレイ・カリーニンは意識を取り戻すと、まず自身の損傷を点検した。肋骨のひびと肝臓へのダメージ、背中と両腕の裂傷があり大量出血の痕跡もあったが、致命傷ではなかった。周囲の波音と反響から停泊中の船内と判断し、鉄扉で閉じられた船室で足首を手錠で繋がれていることを確認した。応急処置は未熟で、敵に医師がいないと見抜いた。

セイナの来訪と“ミスリル”の逃走確認
鉄扉が開き、研究所で会話した女セイナが現れた。彼女は追手が三人倒され、テッサとタクマが逃走した事実を告げ、さらに逃げ先が「相良宗介」であることまで把握していた。カリーニンは宗介がテッサの受け皿になったと察し、敵の情報網の鋭さを再認識した。

Aの正体を匂わせる昔話
セイナは〈A〉が単なる武装テロではないことを示すため、武知征爾という日本人傭兵の話を始めた。彼は凶悪事件を起こした非行少年を無人島に集め、サバイバルと戦闘技術を叩き込み、更生させる福祉事業〈AA〉を運営していた。しかしメディア侵入による事故で死者が出ると、訓練内容は歪められ、組織は“テロ養成所”扱いで解体され、生徒の過去も暴露された。セイナはその過程で自身の家庭の傷まで晒されたと示唆し、怒りの根を露わにした。

カリーニンへの試しと“同類”認定
セイナはカリーニンに「武知に似ている」と告げ、さらに「ペテン師呼ばわりで殺された時、部下が仇討ちに走ったらどう思う」と問うた。カリーニンは死者は何も思わないと答え、セイナは冷淡に「つまらない、やっぱり殺す」と銃を抜くが、目的が会話そのものではなく次の行動にあると匂わせた。

目的の告白と宗介への宣戦布告
セイナは「平和ぼけした街を自分たちの色に染める」と語り、破壊と恐怖で東京を焼き尽くす意志を明確にした。そして宗介と連れを必ず殺し、タクマを奪還すると宣言する。カリーニンは賭けとして「ラムダ・ドライバ」の名を出し、セイナの反応で核心に触れたことを確認した。セイナは興味を示して銃を収め、立ち去る際、武知征爾は留置所で首を吊って死んだと告げた。

3 : 二兎を追うもの・・・・・・

六月二六日 二一四〇時 (日本標準時)

潜伏先の選定と“待てば助かる”空気
宗介一行は伏見台学園高校の生徒会室に侵入し、かなめの土地勘を頼りに一時休息を取った。宗介は衛星通信で増援を要請済みで、マオとクルツ、M9を載せた輸送ヘリが二時間以内に到着する見込みであった。かなめは発信機を電子レンジで壊したと明かし、タクマも動揺を見せたため、宗介は当面ここが安全だと判断した。

PHSと嫉妬と地雷原みたいな三角関係
かなめはドラマ録画のためPHSで連絡しようとし、宗介は居場所漏洩を警戒して制止した。かなめは「非常時に偉くなる癖」を刺し、宗介は反論できず黙り込んだ。テッサは宗介がかなめの言葉を優先して聞くように見えることに不満を募らせ、宗介は義務を果たしているだけなのに責められる状況に消耗していった。

用務員の巡回と、雑すぎる隠れ方
怪談話で場をつないでいたところ、用務員の巡回が近づき、一同は机の下に潜んだ。しかしテッサの身体がはみ出し即座に発見され、年老いた用務員に一階の用務員室へ連行された。老人は事情を深追いせず茶を淹れ、学校側には黙っておくから電車のあるうちに帰れと諭した。そこでテッサは家族の話を持ち出し、タクマも姉への崇拝と劣等感を覗かせたが、核心は語られなかった。

女子トイレでの急襲と、人質化の始まり
しばらく平穏が続いた後、かなめとテッサがトイレへ向かった。かなめはPHSが無いことに気づくが、捜索に戻る前に黒装束の男に制圧され、声を出せないまま拘束される。もう一人の男がトイレ出口で待ち、個室から出てきたテッサを襲撃し、二人は同時に掌握された。

タクマの露骨な種明かしと居場所の暴露
宗介が二人の遅れを訝って動こうとした瞬間、かなめのPHSの着信音がタクマのポケットから鳴った。タクマは机の下での混乱に紛れPHSをすり取り、伏見台学園という校名を意図的に口にさせて回線を開きっぱなしにし、敵へ現在地を通知していた。宗介は状況を悟り、電話口の男から「女二人を預かった。タクマを連れて一分以内に校庭へ出ろ」と命じられる。

交渉の場と“どちらを先に助けるか”の選択
校庭では狙撃配置が完成しており、宗介は手榴弾を握ったままタクマと手錠で繋ぎ「撃てばタクマも死ぬ」と牽制して交渉に入った。敵は女を一人解放する提案をし、宗介は二人が同時に助かる確率を優先してテッサを先に解放するよう要求した。テッサは自分が“守られる側”と決めつけられたことに激しく反発し、宗介との関係は決定的に冷え込んだ。

照明点灯の賭けと、戦闘の崩壊
交換を進める中で宗介は用務員に依頼していた「銃声や爆発音でグラウンド照明を点ける」策を発動し、手榴弾で攪乱して狙撃手の一人を撃破した。だが、かなめは逃げずにタクマへ組み付き盾にしようとし、さらにテッサも飛び出して二人を助けに走ったため、宗介の計算は破綻した。体育館側の狙撃手は宗介の頭を抑えることに徹し、宗介は流し台に退避するが、敵は対戦車ロケットを持ち出し水飲み場ごと吹き飛ばした。

宗介消失と再拘束
爆発で宗介の姿は見えなくなり、かなめとテッサの背後には自動拳銃を持つ敵が迫った。タクマは「まだ殺すな」と口走るが理由は言えず、無線の指示で敵は二人を殺さず手錠を投げ渡して自分で付けさせ、従わせた。宗介の生死は不明のまま、かなめとテッサは敵に連行される状況となった。

六月二六日 二三二七時(日本標準時)

赤海埠頭の“音”が示すもの
アンドレイ・カリーニンは船室で耳を澄まし、工作機械やクレーン、ジェネレーターの駆動音から、船内の貨物室で大掛かりな組立と最終テストが進んでいると推測した。目的は特殊なASであり、それを使って都市で破壊行動を行う算段だと見抜いた。

セイナの接近と、痛みで測る“答え”
セイナは再び現れ、カリーニンの包帯越しに傷口を押し込み、痛みで反応を引き出そうとした。武知征爾を卑怯者と呼ぶのかと詰めるセイナに対し、カリーニンは「師は君の中にしかいない」と返し、セイナの信仰と不安の核心を突いた。セイナは一度感情を緩め、カリーニンを戦士ではなく聖職者のようだと評し、僧服が似合うとまで微笑したが、決定的な言葉を飲み込み、すぐに氷の声へ戻った。

敵対の宣言と“ラムダ・ドライバ”の使い道
セイナは最初からカリーニンが敵であり、殺さなかったのは気まぐれだと言い切った。ラムダ・ドライバの知識を吐かせたら用はないと通告し、宗介は死んだと伝えたうえで、かなめとテッサをタクマと一緒にこちらへ連行中だと告げた。さらにセイナは、二人をカリーニンの目の前で拷問にかけて情報を引き出す意図を示し、タクマを“あれ”に乗せて、武知征爾を否定した世界へ反逆させると宣言した。

六月二六日 二三三四時(日本標準時)

保健室での覚醒と失態の自覚
相良宗介は伏見台学園高校の保健室で意識を取り戻した。戦闘服の防弾繊維のおかげで致命傷は免れたものの、ロケット弾による爆風で気絶するという結果は明確な失態であった。グラウンドを確認した宗介は、千鳥かなめとタクマ、そしてテレサの姿が消えていることを悟り、連れ去られたと判断した。死体が残っていなかった点に安堵しつつも、自身がウルズ7として果たすべき役割を完全に失敗した事実を重く受け止めた。

伏見台学園に降り立つ〈ミスリル〉の切り札
老用務員との気まずいやり取りの最中、不可視モードで透明化したCH-0輸送ヘリが校庭に降下した。宗介は無線でゲーボ9から連絡を受け、遅すぎた到着に歯噛みしながらも外へ出る。ヘリが去った後、夜の校庭に姿を現したのは、〈ミスリル〉最新鋭AS・M9〈ガーンズバック〉であった。複雑な装甲構成と高出力兵装を備えたその機体は、状況が「学園の騒ぎ」などという生ぬるい段階をとっくに過ぎていることを雄弁に物語っていた。

マオとクルツ、いつも通りの最悪な再会
M9の足元には、メリッサ・マオ曹長とクルツ・ウェーバー軍曹が待機していた。宗介と頻繁に組む三人一組の編成であり、黒と極彩色を基調としたAS操縦服に身を包む二人は、状況の深刻さとは裏腹に、いつも通りの空気を持ち込む。クルツは開口一番、かなめとテッサの行方を軽口混じりに尋ね、即座にマオから無言の蹴りを受けた。事態は最悪、だがウルズ7のチームは揃った。ここから先は、もう言い訳の余地はない。

六月二七日 ○○二一時(日本標準時)

多摩川河川敷での再編成
相良宗介、メリッサ・マオ、クルツ・ウェーバーの三人は、伏見台学園高校を離れ、多摩川河川敷で態勢を立て直した。敵狙撃手の一人は姿を消しており、生死は不明であった。M9〈ガーンズバック〉は不可視モードのECSによって市街地を隠密移動してきたが、電線切断や酔客に遭遇しかけるなど、相変わらず平和な日本に巨大兵器は不向きであった。

戦力不足という現実
宗介が経緯を説明すると、マオは〈トゥアハー・デ・ダナン〉が多忙を極め、増援が期待できない現状を明かした。カリーニン不在、総司令官テレサも危機的状況という、組織としては最悪のタイミングである。宗介は自責の念を口にしたが、マオは個人でどうにかなる状況ではないと断じ、組織的に動く重武装の敵を三人で相手取る無謀さを指摘した。

マオという指揮官
マオは戦闘技能、電子戦、AS運用のいずれにも精通し、現場判断に長けたリーダーであった。宗介に対しても必要以上に責めることはなく、冷静に現実を見据えている。その態度は慰めではなく、事実の提示に近かった。

タクマの正体と宗介の直感
クルツは軽口を叩きつつ、タクマが千鳥かなめと同種の〈ウィスパード〉なのかを確認した。宗介は、大佐がそれを知っていたと述べつつも、タクマはかなめとは異質だという直感を示した。その根拠は勘に過ぎなかったが、マオとクルツはその異例さを逆に重く受け取った。

追跡開始の合図
M9のAI〈フライデー〉から通信が入り、警視庁の監視システム経由で、拉致に使われた黒塗りのライトバンが首都高速1号線、江東区方面で確認されたことが報告された。千鳥かなめが身につけている超小型発信機の存在もあり、行き先は臨海地区、すなわち港湾部である可能性が高まった。

反撃開始
マオはM9で先行し、宗介とクルツは車両で追従することを決定した。合流地点は後ほど指定される。限られた戦力、限られた時間、そして最悪の相手。それでもマオは淡々と宣言する。反撃開始。
やれやれ、人質救出作戦にしては、随分と人手が足りない。だが文句を言っても敵は待ってくれない。

六月二七日 ○一一〇時 (日本標準時)

首都高速での車内会話
首都高速都心環状線を走行する軽トラックの車内で、運転するクルツ・ウェーバーは軽口を叩きつつ、宗介の判断について踏み込んだ。宗介はテレサ・テスタロッサを先に救出した選択を振り返り、自身の判断を疑っていたが、クルツはあっさりと「馬鹿だ」と断じたうえで、好きな相手を優先すると豪語した。効率と任務を重んじる宗介に対し、クルツは直感と感情を重視する姿勢を示し、理詰めで全てを選べる状況ではなかったと語った。

クルツという存在
軽薄な言動とは裏腹に、クルツは宗介と互角の戦闘能力を持ち、特に狙撃においては常軌を逸した才能を誇る。正規軍の経歴を持たない傭兵であり、その過去については多くを語らない。冗談めいた態度の裏に、語られない経験と影があることを、宗介は理解していた。

判断の是非と直感
宗介は選択の合理性を主張したが、クルツは「どちらを選んでも結果は同じだった」と断じ、こういう局面では直感に従うしかないと述べた。宗介は反論を試みるも、軽口に流され、会話は平行線のまま終わった。

緊急連絡
その最中、メリッサ・マオから無線連絡が入った。自衛隊と警察が敵の位置を把握し、赤色灯を点けたパトカーが埠頭へ向かっているという。公式部隊の介入により、奇襲の余地は失われ、千鳥かなめとテレサの身が危険にさらされる状況となった。

時間との競争
マオは警察・自衛隊の動きを妨害するため、システムへの侵入を試みるが、時間稼ぎにしかならないと判断した。宗介とクルツは状況の悪化を悟り、救出を急ぐ必要性を共有する。クルツは緑茶の缶を放り投げ、アクセルを踏み込んだ。
やれやれ、善意で動く組織が入るほど、現場は混乱する。だが愚痴っている暇はない。生き残るのは、速い方だ。

4: 破壊の導火線

六月二七日 ○一一〇時(日本標準時)

船室での対話と相互理解
貨物船〈ジョージ・クリントン〉の使われていない船室で、テレサ・テスタロッサはタクマが敵に渡った事実と、ラムダ・ドライバ搭載兵器が動き出す恐怖に押し潰されかけていた。千鳥かなめの行動力に「普通ではない」と揺さぶられ、自分が嫉妬や焦りで判断を誤ったことを吐露する。かなめは日常の「敵」と戦ってきた経験を語り、過去の陰湿な迫害を越えた経緯を明かした。二人は宗介の不器用さを笑い合う瞬間を共有し、ぎこちないながら距離を縮めた。

カリーニン救出と逆転劇
会話の最中、武装した男が現れ、二人はカリーニンのいる部屋へ連行された。敵は「拷問は無駄」と見て、テッサやかなめを人質に情報を引き出そうとする。銃口を突きつけられたカリーニンは〈ミスリル〉の存在を口にしつつ、最後の瞬間に演技を捨て、奪った拳銃で至近距離から敵を射殺した。さらに速射で残る二人も沈め、拘束を自力で破壊して復帰する。かなめは、テッサが〈ミスリル〉の総指揮官で「大佐殿」である事実を突き付けられ、状況の異常さを噛みしめた。

貨物船内部の追跡と異臭の退避
三人は船内を移動中、追手をやり過ごすため悪臭漂う狭いトイレに潜む。テッサは貨物船内で稼働する大型発電機らしき音に着目し、AS用としては規模が過大である点から、ラムダ・ドライバ絡みの異常兵器を疑う。推量では止められないとして、貨物室の偵察を決断し、かなめを巻き込んで行動を開始する。

ベヘモスの正体と包囲
貨物室で三人が目撃したのは、ASをはるかに超える巨大機械〈ベヘモス〉であった。暗赤色の装甲と巨大アームを持ち、貨物室そのものを占拠する規模で、動けば大量殺戮が避けられないとテッサは理解する。照明点灯と同時に敵に完全包囲され、操縦服姿のタクマが現れる。タクマは破壊を「主張」として語り、武知征爾を否定した社会への復讐と、セイナを喜ばせたい欲求を淡々と明かした。

爆発による混戦とかなめの孤立
警察・自衛隊接近の中、銃撃が始まる直前に船底付近で爆発が起き、船体が大きく傾いて貨物室は大混乱となる。かなめは転倒し、カリーニンとテッサとは分断されたまま、銃撃を避けて逃げ回る羽目になる。恐怖の中で「声」のようなものを耳奥で感じつつ、追ってきた敵にレンチとバールで反撃し、執念で相手をねじ伏せた。

宗介との再会と脱出開始
覆面の敵は相良宗介であり、かなめは安堵と恐怖の反動で宗介に抱きついてしまう。宗介は頭上の敵を射撃で排除し、船を沈めるため爆薬を起爆した事実を告げる。マオとクルツも合流していると明かし、四人で脱出へ動き出す。

タクマの崩壊とセイナの死
揺れで計画が崩れ、起動を諦めかけたタクマをセイナは力で引きずり、〈ベヘモス〉を動かせと迫る。タクマは「価値」を否定され、虚無に沈みつつ操縦席へ向かう。途中、急き立てた仲間を拳銃で撃ち落とし、注射器で薬剤を注入して儀式を終える。カリーニンが制止に現れるが、セイナが狙撃し、船の崩壊でカリーニンは落下、セイナも落下物に潰されて姿を消す。タクマは「姉は死んだ」と受け入れ、激痛を抱えたままコックピットへ滑り込む。

甲板への合流と警察接近
宗介はかなめとテッサを護りながら通路を進み、クルツとも合流して上部甲板へ到達する。船は急速に沈み、四人は埠頭へ跳び移って離脱に成功した。しかしカリーニンが船内に残ったことが判明し、宗介はマオへ救助を要請する。赤色灯とサイレンが近づき、警察が到着しつつあることが示される。

M9突入と“腕”の出現
ECS透明化して待機していたマオのM9〈ガーンズバック〉が姿を現し、沈みかけた貨物船へ突入して救助に向かう。だが直後、貨物船側から金属が裂ける異音が響き、甲板上のM9が何者かに持ち上げられる。現れたのはASを凌ぐ巨大な腕であり、貨物室から〈ベヘモス〉が立ち上がろうとしていた。破壊は、準備段階から実行段階へ移った。

5: ベヘモス

六月二七日 〇○二三六時 (日本標準時)

巨人の出現と絶望の現実
六月二七日深夜、赤海埠頭に現れたのは、常識的なAS設計を踏み潰す規格外の人型機であった。宗介たちは距離があってもそれを「人型」と認識するのに時間を要し、濡れた赤い装甲と古めかしい板金鎧のような外観に、機械というより怪物めいた気配を感じ取った。

マオ機の瞬殺と嘲笑
巨人はマオのM9を鷲づかみにし、状況を把握できないままの機体を力任せに引き裂いた。胴体から衝撃吸収剤が飛び散り、残骸は海へ投げ捨てられた。低音スピーカー越しの笑い声が埠頭に響き、宗介たちは恐怖を現実として飲み込むしかなかった。

警官隊・自衛隊の無力化
駆けつけた警官隊と自衛隊は停止命令と一斉射撃で対抗したが、小火器も九六式の火力も装甲を貫通できなかった。巨人は弾雨を霧雨のように受け流し、次の段階へ移った。

タクマの高揚とラムダ・ドライバ
搭乗者タクマは巨体の操作感に酔い、〈ベヘモス〉のAI報告を受けてラムダ・ドライバを起動した。自衛隊機のロケット弾は命中直前に不可視の壁で無力化され、反撃の三〇ミリ機関砲が破壊の雨となって車両群と部隊を蹂躙した。

迎撃不能の制圧と刀による掃討
残存する九六式三機に対し、タクマは背部の「太刀」を抜き、歩くように接近して粉砕した。抵抗は成立せず、タクマは自分を世界の王と錯覚するほどの万能感に浸った。

テッサの自責と決断
テッサは惨状を前に、過去にタクマを止められなかった選択を悔いたが、指揮官としてやるべきことに立ち戻った。〈デ・ダナン〉へ衛星回線を開き、マデューカス中佐の独断で〈アーバレスト〉を弾道ミサイル投射で投入する案を受け入れ、投下地点として東京ビッグサイト周辺を選定した。

追跡開始とビッグサイトへの誘導
タクマはセンサーで宗介たち四人の熱源を捉え、狩りの対象として追跡を開始した。宗介たちは中古の軽トラックで逃走し、テッサの指示でモノレール高架を盾にしつつビッグサイトへ巨人を引き付ける方針を固めた。

走行中の狙撃と一時的な突破口
追撃の機関砲掃射で道路が抉られる中、宗介は針路を保ち、クルツは走行中の車上から一発で機関砲の砲口へ弾を通し誘爆させた。火力の一部を潰すことには成功したが、巨人はすぐ立ち直り、なお執拗に追いすがった。

六月二七日 ○二四一時(日本標準時)

東京都 江東区 赤海埠頭

カリーニンの生還と限界
埠頭のはずれの傾斜路に、アンドレイ・カリーニンは海中から引きずり上げられた。背中から受けた弾丸は肩を削る程度で致命傷ではなかったが、海水に血液と体温を奪われ、消耗し尽くして身動きが困難な状態であった。

セイナの救助と最期
カリーニンをここまで泳がせたのはセイナであった。彼女が致命傷を避けた射撃をしていたことから、彼を本気で殺す意図が薄かったことも示唆された。しかしセイナは背中から大量に出血しており、手当てが無意味と分かるほど深刻で、横たわったまま弱々しく言葉を紡いだ末に沈黙した。

〈ベヘモス〉の設計意図と脅威の核心
セイナは〈ベヘモス〉が本来、対AS用の「狩る側」として設計されたガンポートであり、さらに多くの火器を積む構想だったと明かした。一方で機体が鈍重である欠点を補うため、直撃兵器への脆弱性を克服する手段としてラムダ・ドライバが搭載され、その運用要員としてタクマが利用されたという構図が語られた。燃料は四十時間分であり、その間は誰も止められないとセイナは断じたが、最終的にはタクマ次第であるとも示された。

タクマの記憶改変とセイナの孤独
セイナはタクマの記憶が歪み、自分を「自分が殺した姉」と思い込むようになったことへの負い目を口にしつつ、彼をそのまま利用したと認めた。肉親もなく、ずっと独りであったという告白が、彼女の選択と破滅を静かに裏打ちしていた。

名を問う瞬間と看取り
セイナは助けた理由を問うが、カリーニンは察しがつくとして深くは語らず、彼女に嫌悪をぶつけられても謝罪した。セイナは一度だけ微笑み、最後に名前を求めたため、カリーニンはフルネームを名乗った。直後にセイナは息絶え、カリーニンは彼女のまぶたを閉じて最期を看取った。

マオの合流
背後で水を叩く音がして、メリッサ・マオが泳ぎ着いた。彼女は死にかけたと吐き捨てつつ、傍らの遺体を見下ろして関係を問い、カリーニンは曖昧に肯定するに留めた。

六月二七日 ○二四四時(日本標準時)

かなめの冷静と「戦場の心」
千鳥かなめは、恐怖で心臓が暴れていた直前とは打って変わって、妙に冷静になっている自分に気づいた。恐れてばかりでは必要な行動が取れないという、人間の心の切り替えを実感し、相良宗介が常にこうした場所で生きているのだと腑に落ちた。

軽トラックの逃走と国際展示場への誘導
〈ベヘモス〉の機関砲で高架が破壊され、落下するコンクリートの下を軽トラックは辛うじてくぐり抜けた。クルツは興奮し、宗介は苛立ちながらも逃走を継続した。周囲では車両の横転や街路樹の倒壊、ビルのガラス破損など被害が拡大し、軽トラック自体も損傷を重ねたまま国際展示場付近へ突入した。

AS降下カプセルの撃墜と宗介の離脱
展示場上空にAS降下用のカプセルが見え、かなめは過去の事件を思い出したが、〈ベヘモス〉は即座に機関砲でパラシュートを破壊し、カプセルを展示場へ落下させた。テッサは「まだ終わっていない」と断言し、宗介はかなめに運転を託して車外へ飛び降り、カプセル回収へ向かった。

かなめの強行運転と展示場突入
運転経験のないかなめはクルツとテッサに煽られ、赤信号無視の右折や植え込みへの突入、フェンス破壊を重ねて逃走を続けた。〈ベヘモス〉の足が車体をかすめ、ナンバープレートが剥がれるほど追い詰められた末、展示場のシャッターに激突しながらも内部へ突入した。だが車は限界に達して停止し、テッサは負傷して気絶状態となった。

宗介のカプセル奪取失敗と手榴弾
宗介は複雑な展示場内を銃撃と手榴弾で強引に突破し、落下したカプセルを発見した。しかし手動の分割レバーが床側に向いており、外板を開けられない。手榴弾でカプセルを動かそうとするが僅かに揺れただけで戻り、決定的な打開にはならなかった。

タクマの執念と〈ベヘモス〉の暴走
〈ベヘモス〉の操縦者タクマは負傷と錯乱の中で宗介への執着を燃やし、かなめを嘲弄しながら処刑しようとした。だがその直前、横合いから頭部が被弾し、屋根上に純白のAS〈アーバレスト〉が姿を現す。宗介は挑発し、タクマは激昂して突進した。

ラムダ・ドライバ対決と突破の兆し
宗介はショット・キャノンと対戦車ダガーで攻撃するが、〈ベヘモス〉の「見えない壁」にことごとく弾かれた。AI〈アル〉も対抗手段を知らず、宗介は以前の経験を頼りに「砲弾に意志を注ぐ」イメージでラムダ・ドライバを作動させ、弾を障壁越しに押し込むことに成功する。しかし巨体へのダメージは決定打にならず、戦況はなお不利であった。

かなめの“声”と冷却装置の情報
かなめは戦場の只中で、断続的に訪れる異常な浮遊感と「自分の声のようなささやき」に襲われた。さらに別の声が割り込み、「ラムダ・ドライバで敵背中の冷却装置を狙え」と断片的に告げて消える。正気に戻ったかなめは、その情報が重要だと直感し、危険を承知で通信機を求めて戦場へ向かった。

背中のスリット特定と最終攻撃
かなめとクルツは外壁沿いに接近し、背中の穴の配置を観察して「細長いスリット」を冷却装置候補として宗介へ伝達した。宗介は〈ベヘモス〉に掴まれ左腕を切り離して脱出し、股下をくぐる奇策で背中のスリットに照準を合わせ、ラムダ・ドライバを込めた徹甲弾を押し込み命中させた。

〈ベヘモス〉の崩壊と理由の回収
命中直後、〈ベヘモス〉は自重を支えていた力を失ったかのように沈み、関節と装甲が次々に崩壊して地面に激突した。後にテッサは、巨体の自重をラムダ・ドライバの斥力場で支えつつ障壁も展開していたため、冷却装置を潰して機能停止させれば自壊する理屈だと整理した。

タクマの最期とテッサの処置
宗介は残骸からコックピット・シェルを回収し、クルツが強制開放するとタクマは生存していた。錯乱したタクマはテッサを姉と呼び、敗北と喪失を訴える。テッサは泣かずに寄り添う言葉を与え、眠りを促し、タクマはそのまま動かなくなった。

戦後のやり取りとテッサの宣言
テッサはクルツと宗介を労い、〈アーバレスト〉を宗介のものだと告げた上で、かなめにも感謝を示した。さらに宗介の聴覚センサーを止めさせたうえで、かなめに「宗介を好きになった」と小声で宣言し、年相応の笑みを残して撤収を指示した。カリーニンたちの無事も伝えられ、一同は現場を離れる流れとなった。

国際展示場崩壊の遠景と観測者
半壊した国際展示場から約一キロ離れたビル屋上で、双眼鏡を持つ二人の男が戦いの結末を見届けていた。初夏の夜にもかかわらず、一人は「寒い」とこぼし、もう一人は丸眼鏡をかけた冷静な口調で状況を評した。

〈ベヘモス〉計画への失望と損失評価
丸眼鏡の男は、〈ベヘモス〉が「もう少し頑張る」と見込んでいたが、結果は期待外れだったと述べた。もう一人は、そもそも「ボーイスカウトにオモチャを与えた」程度で、期待する方が間違いだと嘲った。さらに丸眼鏡の男は、巡洋艦二隻分の費用がわずか十五分で失われたことを「馬鹿げている」と切り捨て、上層部の判断を疑った。

成果の確認と〈アマルガム〉の結論
義足の男は損失を認めつつも、戦闘データや映像を回収でき、社会不安も増大した点を成果として挙げた。欠陥も明確になった以上、〈アマルガム〉には〈ベヘモス〉は不要だという結論が二人の間で共有された。

“再会”の予告と敵意の露出
義足の男は「ほかにもいろいろ」と含みを持たせ、特に自分の「マイ・ダーリン」とその「ガール・フレンド」と再会できたことを喜ぶ様子を見せた。そして、近いうちに挨拶に行く、それも「とびきりの挨拶」をしに行くのだと不穏な予告を残し、にんまり笑いながら義足を引きずって屋上を去っていった。

エピローグ

有明の市街戦と日常への回帰
有明で発生した市街戦と、謎の巨大ASの暴走、自爆、そして東京ビッグサイトの甚大な被害は、朝のニュースを埋め尽くしていた。自衛隊関与の噂も飛び交ったが、真相は曖昧なままであった。それでも学校では試験前という現実が優先され、教室は世間話よりも試験対策の熱気に包まれていた。

千鳥かなめの疲弊と常盤恭子の苛立ち
常盤恭子は、いつも通り千鳥かなめと勉強をするつもりで声をかけたが、かなめは机に突っ伏して反応が鈍かった。徹夜同然で、しかも勉強ではなく「戦争」をしていたと語るかなめに、恭子は呆れつつも助けを求める相手を変える。

相良宗介の異変
恭子が声をかけた相良宗介は、教室の隅で腕を組み、身じろぎもせず前方を見つめていた。呼びかけにも反応せず、目を開けたまま規則的な呼吸をしており、完全に眠っている状態であった。

神楽坂恵里との衝突
授業開始とともに教室に入った神楽坂恵里は、宗介だけが教科書も出さず虚空を見つめていることに気付く。注意を重ね、感情的になりながら問いただした瞬間、宗介は戦場の反射行動のまま覚醒し、拳銃を抜いて恵里を制圧しようとした。

日常を守った一撃
その刹那、千鳥かなめの飛び蹴りが宗介に命中し、宗介は昏倒した。恭子の必死のフォローがなければ、神楽坂恵里は泣きながら教室を飛び出していた可能性が高かった。

静かな余韻
世界を揺るがす戦いの直後であっても、教室ではテスト前の授業が続いていく。その落差こそが、相良宗介と千鳥かなめの日常が、依然として戦場と隣り合わせであることを皮肉に物語っていた。

フルメタル・パニック! 1巻
フルメタル・パニック! 3巻

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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