小説「転生陰陽師・賀茂一樹2 」感想・ネタバレ

小説「転生陰陽師・賀茂一樹2 」感想・ネタバレ

物語の概要

本作は、現代日本を舞台にした陰陽ファンタジー作品である。主人公・賀茂一樹は、閻魔大王の手違いにより地獄に堕とされ、長きにわたり業火で魂を焼かれ続けた。その後、魂の浄化を目的として妖怪が蔓延る世界に転生し、閻魔大王から授かった膨大な神気を活かして陰陽師として活動を開始する。第2巻では、瀬戸内海を占拠する村上海賊の大規模怨霊集団の調伏という国家規模の依頼を受け、前代未聞の海戦に挑む姿が描かれる。

主要キャラクター

• 賀茂一樹:主人公。閻魔大王の手違いで地獄に堕とされ、転生後は陰陽師として活動。膨大な神気を持ち、数多くの式神を従える。
• 蒼依:一樹の式神であり、彼を献身的に支える少女。
• 紫苑:五鬼童家の出身で、一樹の仲間。
• 凪紗:五鬼童家の天才。
• 赤城山の龍神:一樹の戦いを支援する存在。

物語の特徴

本作は、閻魔大王の神気を得た主人公が、妖怪や怨霊を相手に無双する陰陽ファンタジーである。地獄からの返り咲きを果たした一樹が、個性豊かな仲間や式神たちと共に、国家規模の依頼や神話級の敵に挑む姿が描かれる。また、主人公と式神たちとの絆や、日常の中でのユーモラスなやり取りも魅力の一つである。

書籍情報

転生陰陽師・賀茂一樹 2~二度と地獄はご免なので、閻魔大王の神気で無双します~
著者:赤野用介 氏
イラスト:hakusai
出版社:TOブックス
発売日:2023年11月10日
ISBN:9784866999975

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あらすじ・内容

自らの陰陽師事務所の開業から一月、一樹は満足顔だった。
紫苑の実家・五鬼童家から恩返しとして持ち掛けられた依頼により懐も潤い、A級陰陽師への昇格も果たしてまさに順風満帆なのだ。
だが、その規格外の力に目を付けた政府から、無理難題が舞い込んできた。その内容は――瀬戸内海を占拠する村上海賊の大規模怨霊集団の調伏!?
おまけに最上位の陰陽師全員が見に来るという。
“国から睨まれて、魂の浄化に支障が出ては堪らない”と、面倒な権力者たちに溜息をつきつつも、妖怪退治に手抜かりなし!
仲間を従え、強者揃いの式神を手に、いざ前代未聞の海戦へ!
「幽霊船退治【デート】、楽しみましょう?」
陰陽師少年が地獄から返り咲く無双萬屋、第二弾!

転生陰陽師・賀茂一樹2~二度と地獄はご免なので、閻魔大王の神気で無双します~

感想

本作第二巻では、賀茂一樹の陰陽師としての地位が目に見えて向上し、彼を取り巻く人間関係や社会的立場も一段と賑やかさを増していた。国家からの要請、旧知の同期との因縁、霊的問題を抱えた依頼人たちとの対話、果てはA級陰陽師昇格試験や神々との交渉まで、濃密なエピソードが連続して描かれている。

まず印象に残ったのは、同期の安倍家の青年・晴也との再会と一連の依頼である。大鳶の霊鬼退治では、電波塔の上空で八咫烏が飛び交う戦闘がスピード感に満ちており、空間を生かした構成が実に爽快だった。ただし、後始末の大変さまで言及されるあたり、現代社会で陰陽師が活動するリアリティが丁寧に表現されていたのも見逃せない。

一方で、氷柱女一家に関するエピソードは、恋愛感情と陰陽術的問題が絡み合う、やや苦味を帯びた話であった。霊符の提供が不可能になった現実に対し、一樹が提示した「気を集める陣の上にメイド喫茶を開店する」という解決策には思わず笑ってしまった。荒唐無稽に見えて実に合理的で、しかも当事者の尊厳にも配慮がなされている。このように、彼の提案はいつも柔軟かつ本質的である。

だが、その次に控えていた晴也の暴走と清姫の登場は、さらに一段と驚かされた。清姫といえば某スマホゲームのイメージが強かったが、本作の彼女は真面目でおとなしく、むしろ好感が持てる存在として描かれていた。このあたりで読者の「予想」と「現実」をずらす描写が、作者の巧みさとして光っていた。

また、物語後半では国家と陰陽師の関係が焦点となり、幽霊船の式神化や瀬戸内海での怨霊討伐が描かれる。特に、幽霊捕鯨船と幽霊巡視船が登場するくだりは、スケール感が圧倒的でありながら、同時に人間ドラマとしてもよく練られていた。霊的存在との戦闘だけでなく、式神化された船に国家的意味合いが付与される構造も非常に興味深い。

その後のムカデ神戦では、一樹と式神たちの連携、そして龍神との協力により、まさに神話規模の戦いが繰り広げられた。式神に神気を宿し階級を引き上げるなど、陰陽術のシステム的な描写もわかりやすく、一種の育成ゲーム的な快感すら覚えた。

総じて、今巻は戦闘・日常・制度・感情が絶妙に絡み合い、全編を通じて厚みのある物語が展開された。キャラクター同士の掛け合いが増えたことで会話にも彩りが生まれ、シリーズとしての世界観が着実に深まっていることを実感できた一冊である。読後には、陰陽師としても人としても成長し続ける一樹の姿が、ますます頼もしく思えてならなかった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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登場キャラクター

賀茂一樹陣営

賀茂一樹

地獄から蘇った陰陽師であり、現代の日本にて陰陽師として活動を開始した青年である。合理的で冷静な判断力を持ち、家族や仲間への配慮も欠かさない。過去の贖罪を抱えながら、自らの信念に従って行動し、式神や協力者との信頼関係を築いている。

・所属組織、地位や役職
 陰陽師協会に登録されたA級陰陽師。自らの陰陽事務所を開業している。

・物語内での具体的な行動や成果
 安倍家からの補助要請を受け、氷柱女の霊とその子孫に関する問題に対応した。半妖との接触や失恋事件の収拾、暴走した陰陽師の保護を行った。また、捕鯨船事件において龍神の子を守るため神霊との交渉を主導した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 A級陰陽師に昇格後、複数の家系との関係を築き、国家規模の依頼や神仏との交渉にも関与するようになった。複数の式神を従え、民間人からの依頼にも柔軟に対応している。

蒼依

蒼依は山姥の孫でありながら、人間社会での生活を望んだ存在である。一樹の式神となることで人としての在り方を模索し続けている。穏やかな性格でありつつも、必要な場面では冷静かつ的確な判断を下す。
・所属:賀茂家、一樹の式神
・料理や家事を担当し、事務所の生活基盤を支えた。
・山姥化を防ぐため、定期的に気を供給されている。
・猫又とも契約し、式神の管理や交渉面でも活躍した。

五鬼童沙羅

五鬼童沙羅は五鬼童家に属する実戦派の陰陽師である。冷静で論理的な判断力を持ち、戦場での的確な対応が評価されている。一樹との接触を通じて信頼関係を築き、後に彼の事務所に加わった。
・所属:五鬼童家 → 賀茂一樹陰陽師事務所、陰陽師
・国家試験にて一樹と対戦し敗北した経験を持つ。
・母蜘蛛戦にて重傷を負うも、一樹の治療によって回復した。
・以後、実務支援や対話能力を活かし事務所の一員として活動した。

水仙

元は人間を襲っていた絡新婦の妖怪であるが、一樹との戦闘を経て式神となった存在である。
・所属:妖怪 → 賀茂家(式神)
・高い知性を持ち、情報収集や心理戦に長けた補佐役として活動している。
・一樹との主従関係を明示的に結び、以降は忠実に行動し続けている。

巡視船PL200(式神)

賀茂一樹の式神の一体であり、形態は海上保安庁の巡視船に擬した霊的存在である。自律制御と対霊戦闘能力を持つ。
・所属:賀茂家、一樹の式神
・瀬戸内海での村上海賊討伐に際し、移動・戦闘支援を行った。
・機能としては遠距離砲撃や霊的障壁展開が可能であり、兵器級の戦力を有していた。
・高度な演算処理と命令遵守により、一樹の指揮下で海上作戦を完遂した。

牛鬼(うしたろう)

本来は祟り神とされる神霊であるが、一樹により善性を見抜かれ、式神として使役されることとなった。
・所属:賀茂家、一樹の式神
・八咫烏の捕獲や鉄鼠討伐において、物理戦闘での主力として活躍した。
・「うしたろう」と命名され、家族の一員として扱われている。

八咫烏五羽(青龍・朱雀・白虎・玄武・黄竜)

一樹が自ら孵化させた三本足の霊鳥であり、式神としての素質を持つ。五行思想に基づき、それぞれ異なる気の属性を持つ。
・所属:賀茂家、一樹の式神
・国家試験や実戦において、索敵・追跡・戦闘など多様な任務に従事した。
・名付けにより性格と特性が強化され、個性を発揮する存在となった。
・YouTube出演経験もあり、視聴者から注目を集めた。

水仙

元は人を襲う妖怪・絡新婦であったが、一樹との戦いの末に式神化された。
・所属:賀茂家、一樹の式神
・情報収集や心理操作に長け、学術・実務の両面で支援している。
・高い知性と忠誠心を持ち、学力でも一樹を支えた。蒼依とは力関係で劣るが協力関係にある。

鎌鼬(三柱のうち一柱)

岐阜県に出現した三柱の神霊のうち、一樹が契約を交わしたのは治癒能力を持つ存在である。
・所属:賀茂家、一樹の式神
・沙羅の四肢再生や一樹自身の身体修復に用いられ、回復支援役として重要な地位を担った。

陰陽同好会

花咲小太郎

花咲高校の生徒であり、賀茂一樹の同級生。花咲グループの会長である理事長の息子であり、陰陽師国家試験の受験者である。
・所属:花咲家、花咲高校生徒、陰陽同好会メンバー
・陰陽同好会設立に際して顧問や活動場所の手配を担当した
・犬神の憑依を受ける可能性がある家系であり、当主候補の一人とされる

赤堀柚葉

賀茂一樹の同級生で、蛇神の娘にして眷属。人間界での自由を得るため、身請けという形式で一樹の管理下に入った。
・所属:蛇神陣営出身、一樹の同好会メンバー
・赤城山の神域にて蛇神と契約を交わした賀茂一樹によって、ムカデ三百体分の討伐という条件で身請けされた
・花咲高校に進学し、一樹の同好会に加わるために花咲市へ転入した

補足情報:
赤堀柚葉の出自については、赤城山の蛇神の娘であり、呪力や命令系統を一樹に移す契約が成立している。

祈理香苗

妖狐の血を引くクォーターであり、一般人として生きてきたが陰陽師の道に挑む。初めは知識も経験も乏しかったが、努力と機転で周囲を驚かせた。
・所属:高校の陰陽同好会、陰陽師候補
・気を集める陣を考案し、メイド喫茶を利用した霊力補充を成功させた。
・雪女との式神契約を巡る問題では、白狐としての血筋を認めさせた。
・国家試験に合格し、見事D級陰陽師となった。

花咲高校

花咲理事長

花咲高校を運営する法人の理事長であり、小太郎の父親。教育と陰陽の関係を重視し、制度改革にも関心を持つ実務家である。
・所属:花咲学園、理事長
・同好会の活動を半ば黙認しつつ、外部指導者としての一樹を受け入れた。
・陰陽師国家試験に生徒が合格すれば正式な部に昇格させる条件を提示した。
・一樹の活動を監視しつつも、教育面での成果を期待していた。

佐竹先生

花咲高校の教師であり、陰陽同好会の顧問を務める存在である。生徒たちの活動に理解を示し、陰陽師試験への挑戦も支援した。
・所属:花咲高校、教員
・香苗と柚葉の国家試験受験にあたり、学校側の調整を担った。
・一樹が外部指導者として関与することを容認し、同好会の存続に協力した。
・陰陽の素養こそ持たないが、教育者として生徒の可能性を尊重する姿勢を見せた。

五鬼童家

五鬼童義一郎

五鬼童家の家長であり、陰陽師協会の中核を担う人物である。沙羅・紫苑・風花の父にあたる。
・所属:五鬼童家、A級陰陽師
・国家試験の統括や討伐任務の指揮を行う高位の実力者であり、一樹や子らに試練と経験の機会を与えている。
・妖怪討伐や試験制度運営において判断力と実行力を発揮した。

五鬼童紫苑

五鬼童家の者として登場する。陰陽師としては高い能力を持ち、沙羅と並ぶ実力者として描かれている。
・所属:五鬼童家
・エキシビションマッチで沙羅と共に実力を発揮した

五鬼童風花

五鬼童家の末娘であり、沙羅・紫苑の妹にあたる存在である。まだ陰陽師としての正式な活動は始まっていないが、高い霊的素質を秘めている様子が描写されている。
・所属:五鬼童家、学生
・国家試験の見学に同行し、姉たちや一樹の活動を目にした。
・将来の進路として陰陽師を志望する可能性が示唆されている。
・表立った活躍はないが、一族内での期待を受ける立場にある。

五鬼童義友

五鬼童家の一員であり、義一郎の弟にあたる人物である。兄とは異なり実務に対する厳格な態度を見せ、内部規律の維持と式神運用における安全性に重点を置いていた。
・所属:五鬼童家、陰陽師
・国家試験に際し、柚葉や香苗の資質を疑問視し、式神契約を制限しようとした。
・蛇神の加護を受けた柚葉の適性を見誤ったことにより、一時的に方針を修正した。
・判断は保守的であったが、最終的には結果を重視した立場を取った。

その他・陰陽師

安倍晴也

陰陽師国家試験で一樹と対戦した青年であり、後に正式なD級陰陽師として活動している。氷柱女の娘・夕氷に強く惹かれ、式神契約を申し出たが失敗し、その後、白蛇の娘・清姫との協力関係を得た。
・所属:D級陰陽師(陰陽師協会所属)
・陰陽師国家試験に合格し、当初はE級、後にD級へ昇格
・夕氷との式神契約に失敗後、清姫(キヨ)の協力を得た
・妖怪調伏の実績を積みつつあり、今後の昇級が期待される

春日結月

秋田県における春日家の現当主であり、春日家の伝統と権勢を背負う統括陰陽師である。
・所属:春日家、秋田県統括陰陽師(B級)
・秋田県高清水丘陵に拠点を構える名家の継承者で、沙羅の従姉にあたる。
・陰陽師としての技量はB級下位であるが、千年以上の家系とその地位を背景に広範な情報と権限を有している。

秋田県

佐々木

秋田県湯沢市で温泉旅館を営む男性であり、妖怪との共存に悩みながらも家族を守ろうとする姿勢を示した人物である。
・所属:無所属(民間人)
・氷柱女である妻およびその血を引く娘たちと家族を形成し、家内の霊的問題を一樹に依頼した。
・妻との結婚は一目惚れが契機であり、自発的な契約により霊的危険を受け入れていた。

佐々木の妻

氷柱女でありながら、人間である佐々木との間に家族を築いた霊的存在である。
・所属:無所属(妖怪)
・温泉旅館の女将でありながら湯に入れないという特徴から、妖怪としての出自が明らかになった。
・佐々木からの求婚により夫婦関係を築き、霊的な暴走を抑制する契約を交わした。

佐々木夕氷

氷柱女と人間の間に生まれた半妖の長女であり、晴也の求愛対象となる。美しい容姿と落ち着いた性格を持つが、契約の申し出には失望し、それを拒否した。
・所属:秋田県湯沢市の温泉旅館の家族
・母親が氷柱女であり、父・佐々木との間に生まれた半妖
・晴也からの式神契約および求婚を受けたが、過信と失敗により拒絶した
・最終的に一樹らの助力で、応急的な対処を受けた

佐々木の娘(次女)

氷柱女の娘として生まれたが、外見も性格も一般人と変わらない少女である。姉の夕氷とは対照的に表立った活躍は少ないが、家族内の調和を保つ存在となっていた。
・所属:佐々木家
・氷柱女の影響を受けつつも、妖力の顕現は限定的であった
・事件解決後は特段の異変なく、通常の生活を送る状態に落ち着いた

清姫(キヨ)

白蛇の娘であり、晴也との式神契約に近い関係を持つ霊的存在である。落ち着いた性格で、晴也の精神的支柱となる。
・所属:白蛇神系統の霊族
・式神としての契約ではないが、晴也に力を貸す形で同行する。
・氷柱女の件で衰弱した晴也を支え、儀礼的な婚姻によって霊的負担を軽減した。
・神格を帯びた存在として、陰陽師側との協調に積極的であった。

赤城山・蛇神

赤堀柚葉の母にして、赤城山を神域とする強大な蛇神である。理性的かつ合理的な判断を下す神格存在であり、人間社会と霊域の調和を模索している。
・所属:赤城山神域、蛇神
・娘・柚葉の人間社会進出にあたり、一樹との契約を条件として身請けを許可した。
・一樹の資質を見抜いた上で、討伐数を条件とした取引を成立させた。
・直接戦闘には関与しないが、存在自体が地域の霊的秩序に影響を与える格を持つ。

男体山のムカデ神

男体山を根城とする強大な妖怪であり、数百体もの子を従える巨大百足の霊的存在である。霊災を引き起こす元凶として、地域の霊的均衡を乱していた。
・所属:関東山地、妖怪勢力
・赤堀柚葉が所属していた神域の浄化対象として出現した。
・一樹との契約条件として、柚葉の身請けに必要な三百体の討伐対象とされた。
・軍団型の妖怪であり、討伐に大規模な式神戦力が投入された。

卿華女学院中等部

伏原綾華

賀茂一樹の実妹であり、卿華女学院中等部に通う中学二年生である。母親と京都で暮らしているが、兄に対して強い信頼と依存を抱いている。
・所属:卿華女学院中等部、伏原家(母方)
・霊体となった陽鞠の影響を受け、一樹に相談と支援を求めた。
・事件後も兄との絆を大切にし、精神的な安定を保っている。
・クラスでは芹那や姚音らと親しく、学校生活を共にしている。

南原陽鞠(北川楓の身体)

中学生の少女であり、交通事故で死亡した後に霊体として綾華に取り憑いた。のちに北川楓の身体に憑依し、自我を保ったまま生活を再開した。
・所属:霊体 → 卿華女学院中等部(北川楓の身体を使用)
・霊体として綾華に寄り添い、社会復帰の手段として楓の肉体を得た。
・両家の同意により、新たな人格として法的にも受け入れられた。
・楓の外見のまま通学を続け、周囲には表向き楓として扱われている。

北川楓

交通事故により死亡した少女であり、肉体だけが残された状態となった。陽鞠の霊に肉体を貸す形で、本人の魂は還らなかった。
・所属:卿華女学院中等部(名義上)
・肉体は陽鞠に使用されており、社会的には楓の姿のまま生活が続いている。
・家族は陽鞠の人格を受け入れ、新たな娘として受容する道を選んだ。
・楓自身の意思や意識は物語中に現れていない。

槇村芹那

綾華および楓(陽鞠)と同じ中学校に通うクラスメイトであり、活発でリーダーシップのある性格を持つ女子学生である。陽鞠(楓)が賀茂一樹への恋愛感情を表明した際には、もう一人の友人である若槻姚音と共に懸念を抱き、デートへの同行を申し出るなど、楓を真剣に守ろうとする姿勢を見せた。

・所属:卿華女学院中等部
・一樹と陽鞠の関係に関心を抱き、琵琶湖での妖怪退治の名目で実施されたクルーズに同行した。
・一樹に事情を説明されたことで、楓の霊的状況を理解し、陽鞠の恋愛感情にも一定の理解を示した。
・橋姫との対決においては囮役を自ら申し出る場面もあったが、他の仲間たちに即座に却下された。

展開まとめ

第二章  山の女神

第一話  共同依頼

陰陽師事務所の開所と昇格の経緯

賀茂一樹は、花咲高校への合格後、自身の陰陽師事務所を開所した。開所時のメンバーは、山姫で式神の蒼依とC級陰陽師の五鬼童沙羅である。彼自身は過去の共同作戦の戦果によりB級陰陽師へと昇格していた。鉄鼠の単独撃破や水仙の使役などの実績が昇格の決め手であった。沙羅もまた神気を投与されたことで呪力が爆発的に増し、将来的なB級昇格が確実視された。

初依頼と安倍晴也との再会

事務所の初仕事は、陰陽師協会経由での共同調伏依頼であった。依頼主は過去に陰陽師国家試験で一樹と対戦し敗北した安倍晴也であり、彼もその後D級へ昇格していた。晴也は安倍晴明の子孫というネームバリューもあって依頼を得やすい立場であり、短期間で成果を積み重ねていた。

電波塔に巣食う怪鳥への対応

依頼内容の一つは、東京都の第二電波塔「東京天空櫓」に巣食う大鳶の霊鬼の調伏であった。雷雨を操るこの怪鳥は、千葉県に記録が残る室町時代の妖怪であり、長く霊体化していた。通常の物理攻撃が効かないため、霊体に干渉可能な式神を持つ晴也と、神気を宿す八咫烏を従えた一樹に白羽の矢が立った。

八咫烏と霊鬼の空戦

一樹は五羽の八咫烏を駆使し、東京都上空で大鳶の霊鬼との戦闘を開始した。八咫烏達は火行や水行など五行の術を用いて連携攻撃を展開し、最終的に霊鬼を追い詰めて捕縛した。霊鬼を滅する前に依頼元を呼ぶことで、目撃者と証拠の整合性を確保しようとする配慮も描かれた。

紫苑の受験事情と姉妹の思惑

移動の合間には、沙羅の双子の妹・紫苑の進学先に関する話題も交わされた。紫苑は花咲高校を受験していたが、最終的には内部進学で卿華女学院へと進むこととなった。沙羅は仮に自分が落ちた場合、紫苑の名を借りて通学する計画を立てていたという。姉妹間での密な信頼関係と一樹への恩義がそこに表れていた。

妖怪調伏の現実と陰陽師の責務

霊鬼との戦闘を通じて、一樹は妖怪を倒すことが人間社会を守るための「自然の摂理」であると認識していた。捕食者である妖怪に対抗することは、陰陽師の使命であり責任でもあるという倫理観が強調された

第二話  戸籍を持つ氷柱女

大鳶の霊鬼調伏後の事後処理

賀茂一樹は東京天空櫓に巣食う大鳶の霊鬼を調伏した翌日、報告や説明の名目で多くの関係者に対応しなければならなかった。妖怪出現の報告から調伏まで手続きは整っていたが、実際の対応者が一樹であったため、依頼主の晴也が一任できず、対応を繰り返すこととなった。

秋田県の温泉旅館での新たな依頼

次の依頼は、秋田県湯沢市の老舗温泉旅館からであり、依頼人の妻と娘二人が氷柱女もしくはその半妖であった。彼女らは人の気を吸って生きるため、亭主の佐々木は著しく老け込み、家庭における負担が深刻化していた。かつては地元陰陽師の作成した霊符で対処していたが、供給元の引退により危機的状況に陥っていた。

霊符の作成条件と沙羅の対応

過去に霊符を提供していた春日家が、絡新婦との戦いにより主力二名を喪失し、現存するB級陰陽師・結月も即応体制の維持を理由に霊符作成を継続できなくなっていた。代替可能な条件として、妖気を持つB級女性陰陽師による作成が挙げられた。これに該当する沙羅が応急的な霊符提供を引き受けるが、恒常的な対応は困難と説明した。

式神契約による根本解決案

霊符に代わる恒久的な対策として、晴也は氷柱女の長女・夕氷との式神契約を望んでいた。式神契約により気の提供が可能となることで、霊符不要かつ安定した生活が見込まれる。だがこの申し出は、恋愛感情を交えた不器用な求婚という形を取り、夕氷の期待を裏切る形となった。

式神契約の失敗と結末

晴也は夕氷・母・妹の3人分の気を賄うと豪語して契約を試みるが、過信により気の供給に耐え切れず倒れてしまった。晴也の無謀さに失望した夕氷は、交際の申し出を拒否し、依頼は応急処置のみで終了となった。

社会制度との折衝と妖怪との共生の現実

氷柱女は業務用冷凍庫で本体を保存することで存在し続け、娘たちもDNA鑑定によって戸籍を得ていた。制度の隙間を突いた柔軟な対応がなされていたが、人妖の共存には多大な工夫と代償が伴っていた。今回の件では、陰陽師の支援体制と家族の絆が重要な要素として描かれた。

霊符作成のための準備と蒼依の不安

一樹は旅館で晴也を介抱した後、蒼依と沙羅と共に特別室で休息を取った。霊符作成には沙羅の気の補充が必要であり、手を繋いで気を送る方法が提案された。蒼依は夕氷に対する一樹の態度に不安を抱くが、一樹は「依頼人に不義理はしない」として夕氷との契約を明確に否定した。

温泉での蒼依との一幕

入浴中の一樹のもとに蒼依が再入浴して現れ、混浴文化を口実に隣に座った。一樹は状況の裏に沙羅の意図を感じ取るが、蒼依と沙羅の思いを汲み取り、蒼依を拒まず寄り添った。水仙の乱入によって寸前のところで行動は中断され、結果として一線は越えなかった。

霊符以外の気の供給手段の検討

翌朝、一樹は晴也の悔恨を受けつつ、霊符に頼らない新たな気の供給手段として、旅館の喫茶店に設置する陣の活用を提案した。客から無意識に向けられる「気」を回収し、母娘三人の生活を支える仕組みであった。注目を集めるため、夕氷らがメイド服を着て給仕する案も出された。

提案の効果と合理性の説明

一樹は、気の総量を時間で稼ぐ理論を提示し、夕氷も実現可能性を認識した。また、女将にはメイド服を着せず、バーでの接客という代案も提示された。最終的に沙羅の霊符と併用する形で、氷柱女の一家の救命問題は一時的に解決へと向かった。

第四話  二隻の幽霊船

事務所への帰還と水仙の処遇

二件の仕事と式神探しを終えた一樹は、蒼依の家に戻った。沙羅の引っ越しはすでに完了しており、一階に二部屋を与えられていた。一方、水仙には個室は与えられず、事務所用の机や椅子、物置スペースが提供された。一樹は事務所の拡大に消極的で、殉職者を出さぬよう自らすべての依頼を担当する方針を取っていた。

陰陽師と国家との関係

一樹は、民間人である陰陽師が国家から指示を受ける義務はないと考えていた。近代化に伴って陰陽寮は廃止され、現在の陰陽師は国家の統制下にない。陰陽師への報酬が高額であるのは、従軍義務がない代わりに国の要請に応じる動機付けとしての措置である。

晴也の昇格とキヨとの契約

晴也はA級妖怪の清姫ことキヨと夫婦関係を結び、その協力を得た。使役ではなく任意の協力であるため、呪力消費が発生せず、実質的にA級相当の戦力を獲得した。一樹は、晴也が今後実績を重ねればB級陰陽師への昇格は確実であると判断した。

一樹の昇格と五鬼童家の依頼

五鬼童家は、過去に助けられた恩義から、一樹に実績が得られるA級相当の安全な依頼を紹介した。その内容は幽霊船の除霊であり、海上保安庁との協力任務であった。義一郎ら五鬼童家の面々と共に、鹿児島へ赴くこととなった。

幽霊船の成因と霊的脅威

幽霊船となったのは、クジラと誤って海竜の子供に銛を打ち込んだ捕鯨船と、それを救助しようとして沈められた巡視船であった。母竜の怒りと怨念により、両船は幽霊船と化し、幽霊捕鯨船員たちは狂気に満ちた悪霊となった。

陰陽師への階級付与と準備

除霊作戦に際し、海上保安庁から一時的な階級が陰陽師に与えられた。一樹には二等海上保安監、義一郎には一等海上保安監(乙)が付与された。これは幽霊船の指揮系統を乱さず作戦を円滑に進めるための措置であった。

沙羅と紫苑の立場と感情

沙羅は五鬼童家を離れ、一樹の事務所に所属し同居生活を始めていた。風花はこの事実に驚愕し、紫苑は内心の複雑な感情を抱えていた。沙羅は、自身が一樹に救われたことを理由に、その恩を返すために事務所に来たと主張し、紫苑の不満を的確に指摘した。紫苑は否定しきれない気持ちに戸惑いながらも、沙羅の行動を受け入れざるを得なかった。

幽霊捕鯨船への接舷と戦闘の勃発

海上保安庁から出向した五鬼童義一郎率いる陰陽師たちは、幽霊巡視船から幽霊捕鯨船へと接舷し、乗り込んだ。生者の侵入に反応した幽霊捕鯨船員たちは敵意を剥き出しにし、襲撃を開始した。義一郎はこの攻撃を逆手に取り、幽霊巡視船員の援護を得て戦闘を正当化し、調伏を命じた。

幽霊捕鯨船長との戦闘と一樹の活躍

義一郎は幽霊船長を蹴り飛ばして海に叩き落とし、一樹は式神・カヤと青龍の力を用いて霊体を貫き、船長を消し飛ばした。幽霊捕鯨船の妖気で復活するたびに攻撃を加えつつ、最終的には義一郎と一樹の連携で霊力を削ぎ、戦意を削いでいった。

各陰陽師の除霊戦闘

義友は圧倒的な力で次々と幽霊船員を倒し、風花は金剛杖で怨霊を祓いながら妄想に耽る一幕もあった。沙羅は一樹の安全を最優先に控えめな攻撃を行い、紫苑は沙羅に対抗心を燃やして無理を重ねた。五鬼童家の面々はそれぞれの立場で戦い、幽霊捕鯨船の呪力に対抗した。

一樹による幽霊巡視船の式神化

一樹は式神術によって幽霊巡視船を式神化し、A級中位の力を持つ新たな戦力とした。この巡視船は強力な機関砲を備え、従える42名の船員も強化された。海での任務が限られる中でも、この式神の価値を見出した一樹は、自らの膨大な呪力を割いて契約を成立させた。

幽霊捕鯨船の制圧と子竜の解放

式神化した幽霊巡視船とその船員たちは幽霊捕鯨船に突入し、圧倒的戦力差で制圧に成功した。続いて一樹は牛鬼に命じて捕鯨砲を破壊させ、霊体と化した子竜を解放した。解放された子竜は海へと逃げ去り、母竜の怒りもこれにより鎮まる兆しを見せた。

第五話  政府からの依頼

捕鯨船沈没事件に伴う政府の緊急会議

国会中に幽霊捕鯨船の除霊成功の一報を受けた総理は、即座に関係閣僚を召集して緊急会議を開いた。五鬼童家を含む陰陽師によって、幽霊捕鯨船と幽霊巡視船の無害化が実行されたことが報告され、一樹による幽霊巡視船の式神化も伝えられた。

陰陽師の等級と能力に関する議論

会議では、総務大臣がB級陰陽師である一樹がA級の式神を使役した点について質した。陰陽庁の長官は、資格と実力の乖離を説明し、賀茂一樹の呪力が実質A級に達していることを認めた。さらに、陰陽長官の実績と見識が評価され、政府の信頼が厚いことも明示された。

法的整合性と式神化の正当性

国土交通大臣からは、式神化された巡視船の法的位置付けに疑義が呈された。陰陽長官は、滅失処理済みの船体と幽霊の無所有性を根拠に、法的問題はないと断言した。また、一樹は正式に海上保安官の立場で式神化を行っており、国家の制御下にあると強調された。

式神巡視船の戦力活用と瀬戸内海への派遣案

経済産業大臣は、式神化された巡視船の実用性を問うた。陰陽長官は、村上海賊の怨霊が蔓延る瀬戸内海の除霊に活用する案を検討すると表明した。村上海賊は史実でも凶悪な海賊であり、怨霊化後も極めて危険な存在であった。

紫苑の勧誘と少女漫画的展開

鹿児島滞在中、沙羅が双子の妹・紫苑の事務所加入を一樹に提案した。沙羅が紫苑の役を演じる形で誘導的なやりとりが始まり、最終的に一樹は少女漫画のような展開で紫苑を強引に勧誘した。沙羅の演技により一樹は翻弄され、最終的には紫苑の加入を見送る判断となった。

陰陽長官との報酬と成果の確認

陰陽長官とのテレビ電話により、今回の任務の成果と報酬が正式に確認された。報酬総額は126億円であり、一樹の取り分は60億円に上った。五鬼童家はこれによって絡新婦の借りも清算し、陰陽師間の義理が整理された。

財産の分配と社会的保険

一樹は報酬から沙羅に6億円を分配し、さらに父親の和則にアドバイザー料として4億円を贈ることで名誉と立場を保つ措置を講じた。これにより社会的な批判や嫉妬から身を守る意図が込められていた。

式神運用の実力証明と次なる任務

式神制御における呪力余力を問われた一樹は、完全復活が可能な程度の呪力を保有していることを明言した。政府側は式神運用への懸念を解消し、次なる任務として、瀬戸内海に蔓延る村上海賊の怨霊船団の除霊を一樹に正式に依頼した。一樹はこれを快諾し、新たな戦いへと踏み出すこととなった。

A級陰陽師昇格と「やんごとなき御方」からの審査

瀬戸内海の海賊退治を控え、一樹は陰陽長官から「やんごとなき御方」の前で能力評価を受けると告げられた。A級陰陽師は現在8名で、うち6名が実力者、2名は形式上のB級上位であった。一樹の格付けはこの高位者によって定められる予定であり、その場に蒼依を連れていくことはリスクが高いと判断して同行を見送った。

村上海賊による幽霊被害の実態

依頼に関連する資料には、瀬戸内海の村上海賊に襲われた被害者の証言映像が含まれていた。漁師や一般市民が霧の中で幽霊船に襲撃され、霊的攻撃によって肉体に後遺症を残す例も報告されていた。こうした証言は、海賊怨霊の凶悪性を如実に示していた。

幽霊巡視船PL200の実体化と公開

3月下旬、広島港にて一樹は式神PL200(幽霊巡視船)を実体化させた。立会人には陰陽長官、海保長官、A級陰陽師7名、「やんごとなき御方」が含まれていた。みやこ型巡視船は最新鋭の設備と武装を備え、実体化時には機能を再現できるが、一樹の呪力が薄れれば全てが霧散するという条件付きであった。

村上海賊との戦闘と一方的な砲撃戦

幽霊巡視船は自動操縦で発進し、村上海賊の怨霊船団と遭遇。100隻を超える木造船団に対して一樹は即座に砲撃を開始した。40ミリ機関砲の火力は凄まじく、小早船や関船は瞬時に破壊され、海賊たちは霊弾の前に次々と消滅した。最終的には敵の大型船・安宅船にも砲撃が及び、船団は全滅した。

式神PL200の能力とA級陰陽師たちの評価

PL200の圧倒的な戦力を目の当たりにしたA級陰陽師たちは、その有用性に驚嘆した。「やんごとなき御方」はこの巡視船に神気を感じ取り、食材にまで神饌の性質があると評した。御方は神的存在と推察され、その判断はA級陰陽師たちの序列にも直結する重みを持っていた。

一樹の評価と序列六位への昇格

最終的に御方は、一樹をA級中位と認定し、A級六位の席を与えた。水上では中位、陸上では下位相当という実力を鑑み、総合的判断により昇格が決定された。前任のA級八位陰陽師は自ら引退を表明し、粛々と席を譲った。

A級昇格後の事務手続きと対応方針

一樹は陰陽師協会からA級陰陽師として正式に登録され、今後の常任理事会にも出席義務が課せられることとなった。記者会見等の表立った広報活動はなく、必要以上の情報公開は避ける方針である。

幽霊海賊船殲滅の速報とネット掲示板の反応

陰陽庁と海上保安庁は、瀬戸内海の幽霊海賊船団を殲滅したと発表した。村上海賊の怨念が由来のこの怨霊集団は、江戸時代より海域に出現していた。式神化した巡視船「PL200」を使役した上級陰陽師の活躍により、破壊された船数は小型船505隻、中型船101隻、大型船29隻に達し、被害は一切出なかった。掲示板ではその戦果が即座に共有され、驚きと賞賛の声が広がった。

陰陽師による式神の格付けと巡視船の破格の性能

掲示板ではPL200をS級海竜の呪詛由来のA級式神と評価し、ほかの幽霊船はB級からF級までに格付けされた。また、PL200の戦力を「D級のリザードマンがE級のオークを射程外から一方的に殴る」ようだと喩える投稿も見られた。

花咲家の式神運用と伝統

花咲家の式神、犬神についての議論では、その力の使い方や蓄積型の呪力制御が解説された。掲示板の住人たちは、こうした伝統式神の育成の困難さを語り、単なる拾い犬では育たないと断言していた。

怨霊の再発と調伏効果の継続性

殲滅された海賊怨霊について、今後の再発可能性に関する議論も交わされた。周囲の妖気を再収束させるには数百年かかるとの意見がある一方で、一年以内に数隻が復活する可能性を指摘する声もあり、その場合はC級陰陽師で対応可能だと見なされた。

報酬制度と依頼料の推定

村上海賊船団の殲滅に対する報酬について、B級妖怪1体で10億円、C級で1億円などの報酬目安が示された。一体ずつ換算すれば総額290億円に及ぶが、実際は一括依頼で難易度補正を加えて20億円程度に設定されたと推測されていた。

式神使役の政治的意義と社会的受容

巡視船と幽霊海上保安官の使役に関しては、国民の理解と政府の承認を得るためのパフォーマンス的意図があったとされる。支払額の過小評価は問題視されたが、瀬戸内海の安全確保といった実利を優先する意見も目立った。

賀茂一樹の昇格確定と影響

式神PL200の使役能力を有する者として、掲示板上では賀茂一樹の名が事実上確定された。既存のA級陰陽師が9人に増える可能性が示唆され、最下位の陰陽師の引退が既定路線と見なされた。

第六話  高校入学

高校生活の開始と通学環境

四月、一樹は蒼依や沙羅と共に花咲高校に進学した。蒼依の家から高校までは片道40分、自転車通学で海沿いの道を通る。新生活に伴い、家事負担の見直しも進み、一樹は自らの式神である幽霊船員に、掃除や炊事、留守番を任せるようになった。これは、政府により瀬戸内海除霊任務の継続と見なされ、問題視されなかった。

花咲高校の校風とクラス編成

花咲高校は約50万平方メートルの広大な校地を持ち、高校・大学・専門学校が一体化していた。一樹たちは進学コースの一年三組に所属し、入学式後の自己紹介では、花咲家当主の息子である花咲小太郎が陰陽師部活の創設を宣言した。これに対し一樹もA級陰陽師として参加の意向を示したことで、周囲に大きな衝撃を与えた。

陰陽同好会設立の準備

同好会設立には生徒5名と顧問1名が必要であり、一樹と小太郎は協力してメンバーを集めることにした。呪力判定を行い、高い呪力を持つ赤堀柚葉と祈理香苗を勧誘。柚葉は非人間と推察されたが一樹の提案に感激し入会。香苗は音楽活動の夢と同好会活動の両立を約束されて参加を決めた。これにより6人が集まり、設立条件を満たした。

顧問・施設の確保と理事長の承認

小太郎は学園理事長である父に直接連絡し、同好会設立の支援を要請。理事長は一樹の事情と活動目的を確認の上、設立を認可し、必要な資金を個人的に負担することを了承した。顧問には担任の佐竹が任命され、活動場所として大学棟R棟の七階多目的会議室Dが提供された。

高校施設と大学施設の利便性

花咲学園では大学施設の利用が可能であり、食堂やカフェも高校生に開放されていた。一樹たちは大学棟R棟を拠点とし、専用IDカードを発行され出入りの権限を得た。七階の会議室には机や椅子、スクリーンが備えられ、別室には霊符作成のための設備を配置予定であった。

初期活動の展望と実務の調整

陰陽同好会の活動として、霊符作成や国家試験への挑戦が予定され、夏休みには瀬戸内海での活動を兼ねたクルージングも計画された。予算や施設の手配は理事長の支援で問題なく進行し、同好会は正式に校長からも承認された。プロモーション動画の作成では一時派手な演出が提案されたが、校長からの注意により一般生徒に配慮した内容に修正された。

入学二日目の抜き打ちテストと水仙の支援

花咲高校に入学して二日目、一樹たちは担任教師から抜き打ちの学力テストを課された。入試直後で授業も始まっていない状況に、生徒たちは不満を漏らしたが、教師の命令で五教科のテストが強行された。一樹は式神・水仙の補助を受けて試験をこなし、陰陽師としての技能を生かす形で対応した。

昼食と学食の経済性に関する考察

四限終了後、一樹たちは学食で昼食を取ることにした。中庭のオープンテラスで食事をしながら、学食の価格設定と花咲グループからの補助金について考察が交わされた。カツ丼が380円、カレーや定食も格安で提供されており、その背景には学園経営陣の投資意図が存在すると推測された。

柚葉の素性と目的の開示

食事中、柚葉が群馬県からの越境入学であり一人暮らしであることを明かした。柚葉の正体が妖怪であることは一樹と蒼依、沙羅の間で共有されており、敵意は抱かれていなかった。柚葉は、一樹に助けを求めたいという動機から花咲高校への進学を選び、陰陽同好会への参加もその延長線上にあると語った。

香苗との距離と家庭環境の共有

香苗は市内在住で学校から10分ほどの距離に住んでおり、通学の便の良さから昼食を家で取ることも可能であった。蒼依や沙羅との距離感も縮まり、名前で呼び合うなど関係性が深まった。

部活動紹介と陰陽同好会の映像

午後には教室内のテレビで全26の部活動・同好会紹介動画が上映された。陰陽同好会はその最後に登場し、実際の霊符や式神、小鬼との戦闘を映像化した内容が他の動画を圧倒した。編集にはフリー素材も活用されたが、実際の陰陽術が含まれていたため迫力があった。

動画の反響と小太郎の問い

映像を見た小太郎は、一樹にどれだけの会員を集めるつもりなのかと問いかけた。一樹は自身のプロモーション効果を自覚しつつも、少し凝り過ぎたかもしれないと反省した様子であった。

第七話  山の女神

入会希望者の対応と同好会室の整備

陰陽同好会の紹介動画が好評を博した結果、入会希望者が続出したが、一樹は先輩や呪力不足の同級生の入会を断った。実績作りを優先し、来年度以降の入会を見越していた。一樹はその後、R棟の同好会室に逃げ込んだ。校長から提供された中古パソコンとプリンタが設置され、同好会メンバーたちは部屋の寸法を測定し、レイアウトと物品選定を進めた。香苗はエクセルで詳細な配置図を作成し、全員がその提案に賛同した。

ゲーミングチェア導入案と費用対効果の考察

一樹はゲーミングチェア導入の提案を行ったが、小太郎に却下された。だが一樹は、陰陽師国家試験の合格実績を上げれば、それに見合う設備投資が認められるとの考えに至った。特に柚葉や香苗のような一般学生が合格すれば、学校の評価向上に繋がると判断した。

柚葉の正体と依頼内容の開示

柚葉は、赤城山の蛇神の娘であり、人間の姿を取って花咲高校に通っていた。彼女は赤城山の蛇神と男体山のムカデ神による縄張り争いに巻き込まれており、戦いを補助させられていた。一樹は、柚葉の解放条件を明確にするため、母である蛇神と交渉することを決意した。

蛇神との邂逅と「身請け」交渉

群馬県に赴いた一樹は、赤城山の神域で蛇神と面会した。彼は、柚葉の戦力に相当するムカデ300体分を倒すことを条件に、彼女を「身請け」する形で解放を申し出た。蛇神はこの提案に応じ、条件を明示した。一樹はその契約を受け入れ、七日後の決戦を約束した。

柚葉の誤解と同好会内での理解

柚葉は「身請け」の意味を誤解し、困惑を見せたが、一樹は彼女の安全確保のために行った方便であると内心で自認していた。この件について蒼依や他の同好会メンバーには個別に説明がなされ、全員から理解を得た。

最終準備と出陣への決意

蛇神の了承を得た一樹は、柚葉の姉妹の安全確保のために一週間の猶予を設け、花咲市に帰還した。その間、同好会室の整備が完了し、準備が整った。金曜日の放課後、一樹は蒼依らを伴い、八咫烏の式神を引き連れて栃木県日光市へと向かった。

中禅寺湖への出陣と戦闘準備

賀茂一樹は蛇神との約定を果たすべく、蒼依・沙羅・柚葉と共に日光・中禅寺湖へ向かった。空中移動には大鳩の式神を用い、護衛に八咫烏も従えた。湖上では式神PL200(幽霊巡視船)を召喚し、甲板上で索敵と砲撃体制を整えた。一樹はムカデ神の眷属に対し、呪力12万相当の殲滅を目標に設定し、戦闘を開始した。

ムカデ眷属の殲滅と戦果の拡大

巡視船は毎分330発の四〇ミリ霊弾を用いて、湖畔に集うムカデ達を次々に殲滅した。呪力の国際基準に基づく換算で、目標値を確実に超過すべく、20万、最終的には30万相当まで目標値を引き上げた。湖岸や山肌に逃げ込んだムカデ達も砲撃の対象とされ、戦場は一方的な制圧下に置かれた。

ムカデ神の出現と巡視船の限界

男体山よりS級のムカデ神が姿を現すと、一樹は巡視船の全砲門による集中砲火を指示した。しかし砲弾による呪力効率が低いため、巡視船の戦力ではS級の敵には決定打となり得なかった。一樹は火力支援として鳩型式神を召喚し、体内に爆炎を送り込む戦法をとったが、ムカデ神の進行を止めきれなかった。

式神戦力の全展開と神気の活用

八咫烏、鎌鼬、水仙、牛鬼などの式神を全面展開させ、湖畔や湖上、船上での戦闘を多角的に展開した。S級のムカデ神に対抗すべく、一樹は自身の限界まで呪力を注ぎ込んだが、燃費の悪い巡視船の運用で疲弊が進んだ。最終手段として、封じられた「陽気」の使用を試みたものの、強い穢れの反動により断念した。

蛇神の到着と戦局の逆転

北方から現れた蛇神は、ムカデ神に側面から攻撃を仕掛け、戦局を一変させた。一樹と蛇神の連携により、二対一の体制が成立し、劣勢に立たされたムカデ神は力を削がれた。さらに一樹は、式神達と共に周囲のムカデを殲滅し、神域の制圧に成功した。

決着と蛇神の昇神

牛鬼がムカデ神の目を潰し、水仙が脚を斬り落とす中、蛇神がとどめを刺した。蛇神はムカデ神の力を取り込み、白蛇から白龍へと昇神し、新たな龍神となった。一樹は戦果に応じて龍神より加護を受け、50万の神気を得ることで使用可能な呪力量が150万に達した。これにより、式神たちの階級も一斉に上昇し、全体の戦力が強化された。

中禅寺湖会戦の翌日と残党狩りの開始

ムカデ神討伐の翌日、一樹は巡視船の船上にて、龍神へと昇神した元蛇神と会談した。討伐により多数のムカデを始末したものの、一部は戦闘中に逃走したか、決着後に山中へ潜伏していた。龍神は周辺を支配するため、残党狩りを開始し、柚葉ら娘たちを動員して領域の確立を目指す方針を示した。

蒼依の将来と神域創造の提案

一樹は龍神に社の建立資金を支援することを申し出、その対価として蒼依の将来について知恵を求めた。蒼依は一樹の死後に気の供給を失えば山姥化する可能性があり、一樹はその回避策を求めた。龍神は蒼依に神気を与え、小規模な神域を築くことで自立的に気を得られるよう導いた。これにより蒼依は山の女神としての神格を確立し、人の気に頼らずとも生きる術を得た。

柚葉に対する龍神の評価と皮肉

柚葉について龍神は、「身請けされた立場でありながら夫を危険に晒すような娘は早すぎる」と厳しく批判した。柚葉は自らの行動を正当化しようとしたが、龍神は他の賢く従順な娘を紹介できると提案した。一樹は同好会の都合上、柚葉を必要としていると返答し、丁重にその申し出を断った。

龍神の代替提案と柚葉の動揺

龍神は、人化の術を使って別の娘を柚葉に偽装させる案まで提示したが、柚葉は必死に一樹に縋り付き、自分を捨てないよう懇願した。柚葉は過激な言動に走りながらも、自身の居場所を守ろうと全力を尽くした。一樹は困惑しながらも、あくまで同好会員としての立場で柚葉を必要としている旨を保ち続けた。

不良のお兄ちゃん

クラス替えの事情と霊障のリスク

中学二年に進級した伏原綾華は、卿華女学院のクラス表で北川楓と同じクラスになることを確認した。これは陰陽師協会から送られた内容証明によって、安全のための措置として事前に決定されたものである。楓は過去に枕返しによって魂を奪われ、現在は南原陽鞠の魂が身体に宿っている。この状況において、綾華と同じクラスにすることが、霊障発生の抑止に資すると判断された。

楓=陽鞠の恋心と綾華の兄・一樹の過去

楓の身体に宿る陽鞠は、綾華の兄・賀茂一樹に強い想いを抱いていた。かつて霊体であった陽鞠は綾華に取り憑き、綾華を通して一樹と親しくなった。一樹は陽鞠の存在を見逃し、神気を浴びせることで霊体の安定を図っていた。この過程で陽鞠は一樹に対して感謝と恋慕を募らせ、今もその気持ちを抱き続けていた。

恋の暴走とクラスメイトの反応

陽鞠は楓の身体で堂々と一樹への恋心を表明し、「同棲も辞さない」と発言するなど、暴走気味の言動を取った。それを聞いたクラスメイトの槇村芹那と若槻姚音は強い懸念を抱き、デートへの付き添いを申し出た。恋愛経験に乏しい女子校生たちは、真剣に楓を守ろうと奮闘し始めた。

一樹の事情説明と巡視船での対面

一樹は蒼依と沙羅に楓=陽鞠の状況を説明し、京都での対面を決意した。大津港で芹那と姚音を含めた一行と合流し、式神・巡視船PL200にて琵琶湖をクルーズする中で自己紹介を行った。一樹は自身が陰陽師であり、楓の霊障対応の延長として出会ったことを説明し、芹那と姚音もそれを理解した。

妖怪との関係と今後の名目づくり

クルーズの名目として、一樹は琵琶湖に出現する妖怪「化の火」の調伏を計画した。これは式神を使役するための名目としても有効であった。楓はあくまで恋愛の意志を変えず、芹那と姚音はそれを尊重しつつも、見守る立場を取ることにした。

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