タの付く自由業 1巻レビュー
まとめ
タの付く自由業 3巻レビュー
物語の概要
■ 作品概要
未来の記憶を持つ主人公・松尾篤史は、探索者の間で囁かれる「35階層の壁」の正体が、ギルドによる「ハイポーション」の既得権益独占を企図した粛清ラインだと見抜いた。平均レベル44前後の「ギルドナイト」が、レベル差による100ポイント以上のステータス乖離を維持しつつ、安全に探索者を排除できる限界点こそが35階層だったのだ。ギルドは「忠告」と称して深層攻略を制限し、命令に背く者を「上忍」に抹殺させていた。
この支配構造を打破するため、篤史はジョブ昇華に伴い獲得したユニークスキル「結合」を使い、既存の法則を超越した軍備増強へと乗り出す。実家の工房がポーション2本分の価値に相当する4,000万円の負債を抱え、倒産の危機に瀕していた鍛冶師・切岸若葉を龍青会の傘下に収めて独自の生産拠点を確保した。続いて埼玉ダンジョン40階層のボス「大(だい)」を単独で撃破し、ギルドナイトが秘匿し続けていた「ソロ攻略時のみ出現する隠し部屋」の存在を白日の下に晒す。
篤史の急速な台頭を危惧したギルド役員・黒羽林太郎は、最強戦力の一角を占める「上忍」へ篤史らの「送迎(抹殺)」を命じた。しかし篤史は、「結合」で極限まで高めた圧倒的ステータスを駆使して立ち向かう。ギルドの索敵や遊撃を支える要たる上忍を返り討ちにし、石化させて排除してみせた。こうして篤史は、個人の身でありながらギルドの独占体制を打破するための資源、技術、そして強大な武力を完全に掌握するに至った。
■ 主要キャラクター
- 松尾篤史(まつお あつし)
- 立場:富士元興業・龍青会支部長。ジョブ「過客(かかく)」。
- 役割:未来の知識とスキル「結合」を用い、ギルドの支配から独立した勢力を構築。レベル39時点で平均ステータス860を誇る。
- 奥野せら(おくの せら)
- 立場:篤史の部下。ジョブ「武者(むしゃ)」。
- 役割:篤史の忠実な協力者。レベル30を超え、戦闘面で貢献。家族の治療と生活を篤史の資金力に依存している。
- 切岸若葉(きりぎし わかば)
- 立場:切岸工房の令嬢。ジョブ「鍛冶師」。
- 役割:4,000万円の負債肩代わりと引き換えに龍青会傘下に入り、独自の装備製造・加工ラインを担当。
- 上忍(じょうにん)
- 立場:ギルドナイトの一員。隠密・暗殺・索敵担当。
- 役割:ギルドの利益を守る粛清官。黒羽の依頼を受け、自身の正体を隠匿するために「弓聖(きゅうせい)」の外見を偽装して篤史らを急襲する。
書籍情報
二度目はタの付く自由業 2 ~逆行した社畜は、チートな装備&知識持ち越しで万能のアウトローになる~
著者:仏ょも 氏
イラスト:増田幹生 氏
レーベル/出版社:アース・スターノベル(アース・スター エンターテイメント)
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あらすじ・内容
1巻発売即重版!VS前世の極悪同僚!?逆行転生×現代無双×アウトロー社畜となる「未来の記憶」を思い出し、チート装備やユニークジョブ【旅人】によって、規格外の力を手に入れた松尾。上位ジョブ【過客】を活用し、世界トップクラスの体制をさらに強化! ダンジョンボスも一人でらくらく攻略してしまい……。【鍛冶師】の少女を部下に加え、組織の拡大をはかる中、前世のパーティメンバーが襲来!?【剣聖視点の後日談】等の書き下ろしエピソード収録!
感想
賠償金を素直に払ったと思ったら暗殺依頼。狙われた松尾の方が上手だった
2巻を読み終えて最初に思ったのは、
「あれ? もうWeb版で公開されているところの直前まで来たぞ?」
である。
1巻もかなりの速度で進んでいたが、2巻も展開が早い。
Web版から何周も読んでいるだけに、このままのペースで書籍化されると、思っていた以上に早くストックへ追いつきそうで少し心配になってきた。
もちろん書籍で改めて読むのは面白い。
【旅人】から【過客】への昇華、新スキル【結合】、切岸若葉との出会い、富士元興業の強化と、内容もかなり濃い。
ただ、今回最も印象に残ったのはそこではない。
1巻から続いていた黒羽家との問題である。
息子が奥野せらを「奴隷にしてやる」とまで言って決闘を仕掛け、敗北した結果として発生した4000万円。
父親は意外にも素直に支払った。
これで終わるのかと思った。
終わるわけがなかった。
4000万円を素直に払った。だからこそ何かあると思ってしまう
黒羽林太郎は、息子が正式な決闘で4000万円の支払いを約束したことを知ると、契約をひっくり返そうとはしなかった。
息子を叱り、期限内に全額を支払う。
ここだけを見ると、意外と話の分かる親である。
だが、もちろん善意だけではない。
契約を破れば自分自身やギルドの立場まで悪くなる。
ならばさっさと金を払って、
「学生同士の決闘で起きた問題」
として終わらせてしまえばいい。
松尾もその思惑を理解している。
本来なら支払いが滞ったことを利用して、黒羽家だけではなくギルドそのものへの不信へ話を広げることも考えていた。
しかし相手が素直に払った以上、その道は使えない。
ここで松尾が面白い。
相手の思惑に合わせて4000万円を大人しく抱えているのではなく、その金を別の形へ変えてしまう。
4000万円をポーションに変えるのか
松尾は4000万円をせらへ渡し、彼女の両親と一緒に戦って負傷した元仲間たちのため、ポーションを二本購入させる。
ここが好きだった。
金をそのまま持っていても、それは黒羽家から支払われた4000万円でしかない。
しかしポーションへ変えれば、人を救うことができる。
しかも松尾自身が未来から持ってきたポーションを直接放出するわけではない。
龍青会を通し、正規の流通で購入する。
自分の手持ちを不自然に減らさず、ギルドから入手経路を疑われる危険も抑え、そのうえでせらの家族に恩を返せる。
単純に、
「4000万円手に入った。ラッキー」
で終わらないのが松尾らしい。
本人も、せらへの援助を完全な善意だとは考えていない。
助ける。
その結果として信頼を得る。
信頼できる仲間が自分のそばに残る。
自分にも利益がある。
一方的に誰かを搾取するのではなく、相手にも自分にも利益が残る関係を作ろうとするところは、やはりギルドとは対照的だと感じた。
ところが黒羽父、金を使われたら今度は暗殺依頼
問題はここからである。
表向きには4000万円を支払い、話を終わらせた黒羽林太郎。
しかし内心では終わっていなかった。
ギルドの威光を軽く扱われた。
自分たちの面子を潰された。
そして松尾たちをそのまま放置するつもりはない。
そこで依頼を出す相手が【上忍】。
世界でもトップクラスの探索者パーティー【ギルドナイト】の一人である。
学生相手にそこまでやるのか。
1巻から散々描かれてきたが、この世界のギルド関係者は本当に面子と利権へかける執念がおかしい。
しかも上忍は、単なる強い探索者ではない。
2巻冒頭で何を仕事にしている人物なのかが先に描かれている。
ギルドが独占する利益を守るため、深い階層へ進もうとする探索者を秘密裏に処分する。
依頼があれば、それに個人的な恨みまで混ぜる。
かなり洒落にならない人物である。
そんな相手が松尾とせらを殺しに来る。
普通なら絶体絶命である。
弓聖が襲ってきた……でも松尾は最初から分かっている
ダンジョンへ向かう途中、突然矢が飛んでくる。
現れたのは【弓聖】。
せらからすれば、
「世界最強クラスの探索者に襲われた」
という状況である。
だが松尾の反応が違う。
こいつ、弓聖じゃない。
最初から分かっている。
正体は【上忍】。
未来で長くギルドナイトとして一緒に活動していたからこそ、本人たちの戦い方を知っている。
本物の弓聖なら、最初の狙撃を防がれた時点で情報の間違いを疑う。
無理に戦闘を続けない。
弓に対する扱い方も違う。
見た目を変えても、中身までは完全に真似できない。
未来知識が単純な、
「このダンジョンではこのアイテムが出る」
だけではなく、人間に対しても使われるのが面白かった。
暗殺しに来た上忍より、狙われた松尾の方が上手だった
そして戦闘が始まるのだが、ここが2巻最大の見どころだった。
松尾は最初から全力を出さない。
わざと速度を落とす。
威力も抑える。
相手に、
「この程度か」
と思わせる。
上忍は完全に松尾の実力を読み違えている。
黒羽林太郎自身が、松尾とせらを龍青会にパワーレベリングされた学生程度だと考えているので、依頼を受けた上忍もその情報を前提に動いている。
ところが実際の松尾は違う。
未来の経験がある。
【過客】へ昇華している。
【結合】によって装備まで強化している。
そして何より、相手のことを知っている。
十分に相手を油断させたところで本来の力を出す。
それまで受け止められていた攻撃が急激に重くなる。
ついには上忍が武器にしていた弓まで叩き折る。
狙った側と狙われた側が完全に逆転していくのが気持ちよかった。
閃光手榴弾まで通じないのは酷い
追い詰められた上忍は逃走のために閃光手榴弾まで使う。
強烈な光と音。
せらは転げ回る。
普通ならここで上忍が姿を消し、仕切り直しになりそうな場面である。
ところが松尾には効かない。
この世界では、こうした攻撃も相手の防御力を突破できなければ十分な効果を発揮しない。
そして現在の松尾は、装備による補正まで含めて能力値がおかしい。
上忍からすれば、
「目も耳も潰した。これで逃げられる」
と思ったはずなのに、普通に松尾が立っている。
これは絶望する。
搦手を得意とする上忍が、搦手ごと能力差で押し潰される。
未来の知識だけで勝っているのではなく、それまでに松尾が準備してきた装備やレベル上げが全部ここで効いてくるのが良かった。
ギルドナイトを一人潰した影響が思った以上に大きい
松尾にとって上忍を倒す意味は、単なる正当防衛だけではない。
上忍はギルドナイトの中で、索敵や罠解除、地図作成、遊撃などを担っている。
つまりダンジョン攻略に欠かせない。
ここで上忍が消えれば、ギルドナイトの攻略速度そのものが落ちる。
未来では松尾を「働きアリ」のように利用していた側の人間を、二度目ではギルドへ戻さない。
しかもギルド側は、
「学生二人の暗殺に失敗して返り討ちにされた」
とは考えない。
そんなことは想定外すぎる。
もっと別の理由で姿を消したのだと考える。
この認識のズレが、最後まで良い味を出していた。
上忍はどこへ行った? ギルドナイトの推理が全部外れている
終盤では、帰ってこない上忍について残ったギルドナイトたちが話し合う。
罠にかかったのか。
深層で何かあったのか。
逃亡したのか。
何かとんでもないアイテムを見つけ、それを独占するために姿を消したのではないか。
ついには、
「エリクサーを手に入れたのでは?」
という話まで出てくる。
そして上忍がいつ戻ってきても対応できるよう、何か月もかけて防御と迎撃の準備を始める。
しかし読んでいる側は知っている。
その上忍、もう戻ってこない。
必死に上忍対策を考えるギルドナイト。
存在しない襲撃に備えるギルド幹部。
真相を知っている松尾。
このすれ違いはかなり好きだった。
未来知識を持つ主人公が敵の計画を読む話はよくある。
本作では逆に、敵側が松尾について何も知らないため、全力で見当違いの方向へ走っていく。
そこが妙に面白い。
2巻は「自由になるためなら、狙ってくる相手も排除する」段階へ進んだ
1巻の松尾は、未来と同じようにギルドへ囲われないために動き始めた。
自分のジョブを隠す。
富士元興業へ入る。
せらを仲間にする。
龍青会を強化する。
どちらかといえば、自分の居場所を作る話だったと思う。
2巻ではそこから一段階進む。
自分たちの邪魔をする存在が、本格的に殺しに来る。
だったら排除する。
相手がギルドナイトであっても関係ない。
未来ではギルドナイトの中で一番弱く、言われた仕事をこなす側だった松尾が、二周目ではその一人を返り討ちにする。
かなり大きな変化である。
しかも力任せに勝っただけではない。
黒羽家の動きを予想する。
襲撃してくる可能性が高い人物まで絞る。
実際に襲われたら正体を見抜く。
相手に実力を誤認させる。
そして逃げ道まで潰す。
暗殺を依頼した側からすれば、相手を完全に間違えたとしか言いようがない。
狙われた方が上手だった。
2巻を読み終えて一番残ったのは、やはりこれである。
そして物語は、もうWeb版で読んでいた場面のすぐ近くまで来てしまった。
面白い。
面白いのだが、
「え、もうここまで来たの?」
という不安もある。
この勢いで3巻が出たら、本当に公開分へ追いつきそうである。
続刊が楽しみなのと、ストックが心許なく感じるのが同時に来る。
多分、メイビー。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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タの付く自由業 1巻レビュー
まとめ
タの付く自由業 3巻レビュー
考察・解説
ストーリー・プロット
本作における主人公・松尾篤史の行動は、探索者ギルドによる支配構造を打破し、完全な自立体制を確立するための戦略的な布石となっている。第2巻で描かれる各事象の推移と、その背後にある構造的な力関係の推移を以下に整理する。
35階層の壁の真実と粛清
- 35階層の壁の正体は、ハイポーションのドロップ権益を保護するためにギルドが定めた管理ラインに該当する。
- 平均レベル44前後のギルドナイトが標的となる探索者とステータス値で100以上の差を維持し、確実に排除できる限界が35階層付近に設定されている。
- ギルドは表向き忠告を行う一方、忠告を無視して40階層を目指す優秀な探索者を上忍によって事故を装い抹殺する。
- 篤史はこの腐敗した構造を把握し、独占体制を崩す準備を進める。
ジョブ昇華と新スキル「結合」の検証
- 篤史のジョブが旅人から過客へと昇華し、固有スキル「結合」を獲得する。
- 同時に結合できる対象は2つまで、同系統の魔石や装備のみ結合可能、エネルギー増幅率は約1.5倍という具体的な制約と特性を特定する。
- 低ランクの魔石を統合し、上位種相当のエネルギー源へ変換する実験に成功する。
- 既存の魔石加工市場を介さず、個人レベルで資源を開発する能力を確立する。
切岸若葉の接触と救済の条件
- 経営難によりギルド系列の金貸しに追い詰められた切岸若葉が篤史へ接触する。
- 鍛冶師としての希少性と器用特化のステータスを評価し、4,000万円の負債肩代わりを条件に切岸工房を龍青会の傘下に収める契約を結ぶ。
- ギルドによる装備の独占を回避し、下層素材を自社で高精度に加工および製造できる生産基盤の構築へ移行する。
40階層ソロ攻略と隠し部屋の発見
- 埼玉ダンジョン40階層のボスである水属性魔法生命体「大」を単独で攻略する。
- 物理攻撃を無効化しやすいスライム状の体躯に対し、雷撃を纏った打撃による論理的な戦闘推移で討伐を果たす。
- 討伐後、単独攻略時のみ出現する隠し部屋を発見する。
- ギルドナイトの主力部隊が単独攻略限定の仕様を把握しながら本部すら欺き、情報を独占していた事実が露呈する。
- 篤史は隠し部屋から希少なステータス強化装備を獲得する。
スキルの応用によるステータス指輪の強化
- 結合スキルを装備品へ応用する試みを開始する。
- 全ステータス+100の指輪を土台とし、隠し部屋で得た複数の指輪を統合する。
- 上昇値の半分を加算する法則に基づき、単体で全ステータス+250という異常な補正値を持つ指輪を自作する。
- レベル39時点の本体ステータスに指輪補正を加算し、合計値が1,100を超える圧倒的な戦闘基盤を完成させる。
黒羽林太郎の焦りと「送迎」の依頼
- 息子が決闘で負った4,000万円の負債と面子喪失に激怒したギルド役員・黒羽林太郎が、隠密裏に上忍へ篤史らの抹殺を依頼する。
- 上忍は弓聖の装備を纏って正体を偽装し、第三者への罪の擦り付けと組織的隠蔽を図る。
- ギルド側は篤史を育成支援で数値を底上げしただけの学生と過小評価し、高レベルの上忍による一方的な蹂躙を確信して作戦を始動する。
ダンジョン15階層における急襲と邂逅
- ダンジョン15階層において、弓聖を装った上忍が篤史らの前に姿を現す。
- 上忍は圧倒的な格上の立場から死を宣告し、弓術による狙撃を開始する。
- 篤史は記憶の知識から敵の正体が上忍である点を見抜き、周囲に目撃者が不在であることを確認する。
- 実力を隠す演技で敵の油断を誘いながら、自身のステータスがすでに敵を400以上凌駕している状況を踏まえ、反撃の機会を伺う。
ギルドによる一方的な搾取と暗殺体制に対し、篤史は隠蔽されたシステムの隙を突く形で対抗戦力を整えている。前世の知識と規格外の能力増幅を活用した迎撃態勢は、既存の権力構造を内側から破綻させる決定的な転機を形成する。
主要な転換点
主人公の松尾篤史が辿る歩みにおいて、探索者ギルドの支配から完全に脱却し、独自の勢力を築く契機となった重要な転換点を整理する。個人の戦力向上にとどまらず、生産拠点の獲得や組織間抗争への発展など、物語の展開を決定づけた各事象の推移と影響を以下にまとめる。
スキル「結合」の獲得
ジョブが「過客」へ昇華したことに伴い、固有スキル「結合」が発現する。
- 内容 既存の魔力法則から外れ、装備や魔石を掛け合わせて約1.5倍に強化する能力を獲得する。
- 影響 ギルドが独占してきた魔石加工技術や流通網に依存せず、個人で規格外の装備やエネルギー源を生成する基盤が整う。
切岸工房の傘下入り合意
経営危機に陥っていた切岸工房に対し、負債の肩代わりを条件とした救済措置を実施する。
- 内容 4,000万円に及ぶ負債を肩代わりし、工房を龍青会の傘下企業として迎え入れる契約を結ぶ。
- 影響 ギルドの既得権益を介さず、迷宮で採取した下層素材を高精度に加工できる独自の製造ラインを確保する。
40階層ソロ攻略の成功
埼玉ダンジョン40階層のボス討伐を果たし、単独攻略者のみに開かれる領域へ到達する。
- 内容 ボス「大」を単独で討伐した直後、通常は確認されない隠し部屋を発見する。
- 影響 国内最強部隊であるギルドナイトが情報を隠蔽していた事実が露見し、ソロ攻略限定の希少資源を独占するルートを確立する。
上忍による抹殺依頼の実行
面子を潰されたギルド役員の黒羽林太郎が、私設暗殺部隊を差し向ける暴挙に出る。
- 内容 黒羽の指示を受けた上忍が弓聖の姿に偽装し、ダンジョン15階層で篤史らの強襲を試みる。
- 影響 ギルド側との摩擦が表面的な管理関係を超え、物理的な排除を伴う生存競争の局面へと本格的に突入する。
まとめ
一連の転換点は、篤史がギルドによる搾取構造を打ち破るための決定打として機能する。独自の強化手段と生産拠点を確立したことで、組織の不当な圧力に対抗する体制が整い、水面下の暗闘から直接的な勢力争いへと局面が大きく移行していく。
5. 主人公を中心とした人物関係の変化
主人公の松尾篤史を取り巻く主要人物との関係性は、物語の進展に伴い単なる利害の一致を超えた複雑な力学へと変貌を遂げる。契約や恩義、敵対関係を軸に再構築された各人物との関係性の推移を以下に整理する。
松尾篤史と奥野せら
- 開始時 高額なポーション代を巡る債権と債務の関係から出発する。
- 終了時 将来の野望を共有し、実力差を前提としつつ背中を預け合う戦略的パートナーへと発展する。
松尾篤史と切岸若葉
- 開始時 倒産危機に瀕した零細工房の娘であり、初対面の交渉相手にとどまる。
- 終了時 龍青会傘下の専属技術職として迎え入れられ、契約と恩義に基づく強固な隷属的協力関係へと移行する。
松尾篤史とギルド(黒羽)
- 開始時 監視対象として扱われる生意気な学生探索者に過ぎない。
- 終了時 ギルドの既得権益を脅かす存在へと成長し、最優先で排除すべき極めて危険な不確定要素と認識される。
まとめ
各人物との関係性は、主人公の圧倒的な実力と戦略的な取引によって大きく再構築される。個人の従属や組織的な敵対関係を通じて、支配構造から脱却し自立した勢力を確立していく過程が鮮明に示される。
主人公の認識と周囲の評価
主人公である松尾篤史を巡る評価は、本人の自己認識と周囲の視線との間に著しい乖離を見せる。安全と自立を求めて慎重に行動する本人に対し、協力者や敵対者が抱く認識の相違について整理する。
篤史自身の認識
- 効率と安全の確保を最優先に据える。
- 過剰な名声を避け、ほどほどの生活を目指す過客または商人として自己を規定する。
周囲(奥野・切岸)の評価
- 圧倒的な武力と資金力を兼ね備えた存在として畏敬を集める。
- 既存の常識を無効化する手段を次々に提示する、底の知れない指導者として信頼を寄せる。
敵対者(上忍)の評価
- パワーレベリングによってステータス数値を底上げしただけの、分をわきまえない学生と見なす。
- 容易に排除可能な標的と断じ、油断を深める要因となる。
まとめ
本人が目指す平穏な商人像とは裏腹に、協力者からは絶対的な強者として仰がれ、敵対者からは過小評価を受ける構造が生じる。この認識のずれこそが敵の油断を誘い、主人公側が優位に立ち回る決定的な要因として機能する。
クライマックス:上忍との決戦
ダンジョン15階層において発生した上忍による急襲事案について、戦闘の推移および結果を整理する。
発生原因
- 黒羽林太郎による送迎依頼に基づき、弓聖に偽装した上忍が15階層で対象を捕捉。
当初の状況
- 弓聖を装い、射程外からの狙撃と推定レベル45の戦力差を過信する上忍に対し、篤史は苦戦を装う演技で実力を隠蔽。
転換要素
- 上忍が必殺の弓術「蛇咬」を繰り出すも、篤史は強化指輪の補正による反応速度で回避。
- 接近戦へ持ち込み、直接打撃によって敵の主兵装である弓を物理的に破壊。
決定打
- 武器を失った上忍が逃走用に強力な閃光手榴弾を起動。
- 篤史は規格外の防御力により閃光や音響効果を完全に無効化し、逃走の隙を与えず距離を詰める。
結末
- 正体と隠蔽工作を看破した上で、篤史が上忍を直接排除。
- 対象は石像へと変貌し、処理を完了。
- ギルド側はダンジョン攻略に不可欠な索敵、マッピング、遊撃の要を永久的に喪失。
まとめ
敵対者による暗殺計画は、主人公側の徹底した情報把握と圧倒的な防御性能によって完全に迎撃される結果に終わる。主力を失った組織側の戦力バランスは大きく崩れ、以後のパワーバランスに重大な影響を及ぼす。
巻末時点の状況
主人公・松尾篤史がダンジョン深層の攻略と組織基盤の強化を進める中、探索者ギルドとの対立は新たな局面を迎える。個人の圧倒的な戦力向上と独自の生産・流通ルートの確保により、これまでの従属的な立場から脱却しつつある現状の動向を整理する。
篤史の立場
- 龍青会支部長としての地位を固め、ハイポーションの供給ルートと独自の装備製造ラインを確立する。
- 個人ステータスは前世の最強部隊であるギルドナイトを凌駕する領域に達する。
解決した問題
- 黒羽の息子との決闘に起因する金銭トラブルを清算し、表面上の火種を処理する。
- ギルド側から差し向けられた直接的な暗殺者である上忍を返り討ちにし、物理的な脅威を排除する。
継続・発生した問題
- 上忍の突如たる失踪を受け、ギルド上層部や黒羽らによる保身を目的とした調査の開始が予測される。
- 40階層の隠し部屋から得た希少アイテムの独占により、いずれギルドナイト本隊との間で激しい生存競争への発展が避けられない情勢となる。
まとめ
眼前にある直接的な危機を退け、独自の勢力基盤を整えたものの、水面下では巨大組織との全面衝突に向けた緊張が着実に高まる。今後はギルド内部の動向を警戒しつつ、さらなる戦力基盤の拡充が求められる。
ジョブの昇華と結合
『二度目はタの付く自由業 2』において、主人公の松尾篤史がレベル30へ到達したことで得たジョブの昇華と、それに伴い発現した固有スキル「結合」は、個人の戦闘能力のみならず、経済や組織運営の戦略を根底から塗り替える極めて重要な転換点となる。作中で描写された具体的な法則や、既存の勢力図を揺るがす規格外の影響力について整理する。
ジョブの昇華による上位職への進化
レベル30到達時に発生する昇華は、既存の能力を順当に強化した上位スキルを得る形態と、従来とは異なる独立した新規スキルを獲得する形態の二系統に大別される。
- 松尾篤史における「過客」への昇華 前世の一五年後においてすら確認されていなかった上位職「過客」へと変化を遂げる。旅人が現在進行形で旅を続ける者を意味するのに対し、過客には時空や過ぎ去った時間を跨いで戻ってきた者というニュアンスが含まれる。篤史はこの職名の発現により、自身が時間を遡行した事実をダンジョンシステム側が正確に把握している可能性を察知し、警戒を強める。
- 奥野せらにおける「武者」への昇華 篤史の育成方針に従って急成長を遂げた奥野せらは、希少職の侍から上位職の武者へと昇華を果たす。攻撃力にプラス25、精神力にプラス15、体力にプラス10といった大幅なステータス成長補正が加わり、前衛アタッカーとしての地力が飛躍的に向上する。
新スキル「結合」の法則と魔石への応用
「過客」への昇華によって新たに獲得した固有スキル「結合」は、対象に内包された魔力的なエネルギーを重ね合わせて増幅・融合させる性質を持つ。専門の設備や巨額の資本を介さず、ギルドが独占してきた利権構造を脅かす効果を発揮する。
- 一度に処理できる魔石の数は二個までに制限される。
- 同系統の魔物がドロップした魔石同士でのみ結合が成立する。
- 同種の魔石を融合させた場合、容積および魔力量は元の約一・五倍に増幅する。
- 階級が異なる魔石同士を合わせた場合、下位種の魔石から上位種の魔石へと魔力が統合される。
- 上層で得られる安価な低級魔石を大量に調達し、深層産に匹敵する高価値の魔石へと精製する独自の資金獲得ルートが成立する。
装備品への適用とステータス補正の拡大
魔石での検証を経て、エネルギーを宿す指輪への結合実験が行われ、際限のない能力増強が可能と判明する。
- ベースとなる指輪に対し、素材となる指輪の数値の半分が永続的に加算される。
- 結合の実行回数に上限は設定されていない。
- 新宿ダンジョン40階層の隠し部屋で入手した全ステータスプラス五〇の指輪六個を、所持していた全ステータスプラス一〇〇の指輪へ順次結合させ、最終的に全ステータスを二五〇向上させる規格外の装備を完成させる。
防具への付与計画と技術者の囲い込み
指輪による補正を達成した篤史は、防具そのものへ効果を移行させる構想を立てる。
- 深層域で義務づけられる状態異常や過酷な環境への耐性指輪を装備しつつ、防具側の結合によってステータスを高水準に維持する運用を目指す。
- 新たに配下へ加わった鍛冶師の切岸若葉に対し、成長補正の指輪を提供して早期育成を施す。
- 将来的に彼女が製作する特注防具へスキルを適用させ、陣営の強化と同時に技術者を自組織へ不可欠な存在として繋ぎ止める体制を整える。
ジョブの昇華と結合スキルの獲得は、単なる能力値の向上にとどまらず、ギルドによる加工技術の独占を打破し、配下の技術者を強固に掌握するための不可欠な一手となる。
ギルドの不正と独占
本作に登場する探索者ギルド(日本探索者支援機構)は、中立の立場を標榜しながらも、国家権力や大企業と結託して利益を独占する不条理な組織として描かれる。前世の記憶を持つ松尾篤史がこの組織を激しく嫌悪し、独自の自立体制を急ぐ要因となった不正の実態について整理していく。
三十五階層の壁とギルドの粛清行為
一般の探索者の間では、新宿ダンジョン三十五階層に見えない壁が存在すると囁かれる。ギルドは優秀な人材の損失を防ぐ忠告と称して侵入を控えるよう促すが、その実態は人為的な抹殺行為に他ならない。
- 四十階層のボス討伐時に得られる超高額なハイポーションの横取りを防ぐため、防衛線として設定した三十五階層で侵入者を阻む。
- 警告を無視して深層へ潜った実力派の集団は、ギルドナイトの上忍による奇襲を受け、事故に見せかけて処理される。
- 地方の権力者からの私怨に基づく暗殺依頼を職員が小遣い稼ぎとして引き受け、粛清の機会に乗じて実行させる。
魔石とポーションにみる経済的既得権益の独占
ダンジョンから得られる重要資源に関して、情報操作と裏工作による市場独占を維持し続ける。
- 未加工の魔石は利用できないという虚偽の情報を流布し、提携企業と共に加工技術を長期にわたり抱え込む。
- 独自研究を試みる企業を強引に排除し、資料の強奪や関係者の拉致といった実力行使を辞さない。
- ボス討伐による確定入手ルールを隠蔽し、抱え込み部隊にボスを巡業させることで配分権を掌握する。
- 重傷を負った一般探索者には高額品を提供せず、役員親族の軽傷に対しては格安の優遇価格で処方する不平等を常態化させる。
石化した探索者を売買する第四貴重品室の闇
研究素材を保管するビル、通称第四貴重品室には、公にされない重大な人道上の問題が横たわる。
- 治療法を探すという名目で回収した石化被害者を、生きた人間から作られた芸術品として富裕層へ密売し、莫大な利益を得る。
- 治療に不可欠な超希少薬を一般探索者のために消費することはなく、収容された人員が社会復帰を果たした実例は皆無に等しい。
中小工房への強権的な支配と構造的搾取
ダンジョン内部にとどまらず、地上における生産現場に対しても強引な介入を繰り返す。
- 独立した職人を名ばかりの店長として拘束し、自由な製作や素材調達を禁じて系列店の丁稚奉公同然に扱う。
- 系列店舗の進出によって民間工房の売上を落とし、金融機関への根回しで融資を断ち切る。
- 経営難に陥った工房を悪質な資金源へ誘導し、破綻した段階で土地や設備を接収して息のかかった技術者を送り込む。
松尾篤史はこうした独占構造に対抗するため、過客としての結合能力を磨き、魔石技術の独占を崩す足がかりを模索する。同時に裏社会を背景に持つ富士元興業との連携を深め、自身や技術者を保護する社会的な防壁として機能させていく。
龍青会との協力関係
『二度目はタの付く自由業 2』において、主人公の松尾篤史と株式会社富士元興業(クラン【龍青会】)の結びつきは、単なる取引相手にとどまらず、互いの弱点を補完し合う強固な共生関係へと発展している。両者が築き上げた協力体制の実態と第2巻で描かれた進展について、4つの観点から整理を行う。
相互の実利に基づく盾と矛の共生関係
双方の利害が完全に一致した協力関係が構築されている。
- 篤史側の実利 個人でどれほど強大な戦闘力や装備を保持していても、国家権力を背景に持つ探索者ギルドの干渉は避けられない。貴重な物資を不当に没収され、再び搾取される事態を防ぐため、容易に手出しを許さない社会的立場と組織の看板を確保する必要があった。さらに、巨額の価値を持つハイポーションを個人で売却する際に伴う身の危険を避けるため、富士元興業の持つ信用と販売網を活用している。
- 龍青会側の実利 過度な安全志向により中層攻略にとどまり、組織の衰退に直面していた。篤史は能力向上や成長率を高める特殊な指輪を持ち込み、信頼できる精鋭へ配備させた。安全性を担保したまま下層攻略を可能とする体制を整え、上位ランクへの昇格を目指す育成計画を進めている。
独自の調達網確立と工房の傘下化
ギルドの流通網に頼らない独自の生産基盤を整えている。
- 搾取構造への対抗 ギルドによる素材の安価な買いたたきに対抗するため、鍛冶師の切岸若葉が所属する切岸工房の子会社化を推進した。迷宮で採取した素材を工房で加工し、完成品を自社クランで適正に流通させる循環体制を確立している。
- 経営権を巡る対応 経営難に陥りながら権利の維持を主張する工房側に対し、営業部長の美浦は篤史の意向を尊重して判断を仰いだ。篤史が下した冷徹な方針に基づき最後通牒を突きつけた結果、短期間で工房の完全な傘下入りを実現させた。
希少物資の提示による絶対的信用の確立
誤解を解消し、組織内における不動の地位を固めている。
- 専務による忠告 私情による物資の横領を危惧した専務の但馬明彦から、組織防衛の観点に基づく忠告を受けた。
- 莫大な資産の開示 疑念を晴らすため、合計数十億円に相当する3本のハイポーションを提示して売却を委ねた。
- 信頼関係の昇華 継続的な供給能力と利益を均等に分配する好条件を示したことで、但馬に認識の誤りを悟らせ、組織としての結束をより確かなものへと引き上げた。
ギルドの独占崩壊を狙う長期戦略
単なる自衛にとどまらず、市場の寡占体制を切り崩す布石を打っている。
- 偶発的事態の収束 決闘に伴う金銭要求を契機としてギルドへの不信感を煽る計画を立てていたものの、相手親族の迅速な支払処理により表面化は回避された。
- 次段階への移行 獲得した資金を味方陣営の支援へ充当し、外部からの追及をかわしながら影響力を拡大させている。上位クランを深層攻略へと巻き込み、隠蔽された迷宮の報酬規則を公表することで、支配体制を根本から揺るがす準備を整えている。
松尾篤史と龍青会の連携は、私情を排した利害の一致と合理的な役割分担によって強固に維持されている。双方の利点を最大限に引き出す戦略的な共生は、既存の権益に依存する支配体制を打破する強力な足がかりとなっている。
上忍の襲撃と排除
『二度目はタの付く自由業 2』において、主人公の松尾篤史が実行した上忍の襲撃と排除は、二周目特有の圧倒的な能力値、前世の記憶による情報の優位性、そして裏社会の法則を突いた冷徹な戦略が結実した重大な局面となる。この事件の背景から完全な隠滅に至るまでの全貌を整理する。
襲撃の背景とギルド側の誤算
事件の発端には、ギルド役員である黒羽林太郎の面子と組織特有の独占体制が関係する。
- 林太郎は息子の起こした不祥事に伴う4000万円の支払いを済ませたものの、篤史がその資金でポーションを購入して第三者の治療に充てた事実を知り激怒する。
- 面子を潰された報復として、お抱えの暗殺者である上忍へ篤史とせらの殺害を命じる。
- ギルド側は、新入生である二人が15階層付近へ進出した状況を、Bランククランによる強引な引率育成の結果と推測する。
- 引率育成に伴う能力低下を見越し、護衛の有無に関わらず上忍の戦力で容易に排除可能と判断する。
急襲の瞬間と擬態の看破
襲撃は金曜の放課後、新宿ダンジョン15階層の深部で発生する。上忍は弓聖へ偽装して奇襲を仕掛けるが、篤史は初撃の段階で正体を見抜く。
- 本物の弓聖であれば初撃を外した時点で即座に撤退するため、追撃を仕掛ける挙動に違和感が生じる。
- 実戦経験を重視する弓聖の性質上、単独での暗殺任務遂行は行動様式と矛盾する。
- 接近戦で繰り出された技の精度が中伝程度にとどまり、本物の技量と明確な隔たりを示す。
戦闘の推移と心理誘導
篤史は相手の偽装を把握した上で、命乞いを装いながらせらの心理的な迷いを断ち切る策を講じる。
- 巨額の報酬を提示して交渉を持ちかけ、上忍から明確な殺害の言質を引き出す。
- 相手の敵意を確定させたことで、せらの中に英雄を撃破することへの躊躇をなくし、正当防衛の意識を固めさせる。
- 速度と威力を意図的に抑えて苦戦を演じ、上忍を油断させる。
- 機を見計らって本来の実力を解放し、霊杖刀の一撃で相手の特注弓を叩き折る。
閃光手榴弾の無効化と近接戦闘の制圧
窮地に陥った上忍は深層用の閃光手榴弾を使用するが、篤史の規格外の能力値が効果を遮断する。
- 閃光や音響による攻撃は物理ダメージとして扱われるため、防御力を突破できない場合は無効化される。
- スキルの併用と指輪の重ね掛けにより、篤史の防御力は最強の盾役を大きく上回る数値を記録する。
- 閃光の影響を一切受けずに煙から現れ、反撃を試みた上忍の右腕を力任せに圧壊する。
- 確率発動の貫通スキルを警戒し、体幹を揺さぶり続けて姿勢を崩すことで発動条件を封じる。
石化兵器による捕獲と完全隠滅
無力化された上忍に対し、篤史は精神的な追い込みをかけつつ自作の拘束手段を投入する。
- 62階層の石化ガスを凝縮した投擲兵器を至近距離から浴びせ、全身を完全に石化させる。
- 石化した対象を固有スキルの隔離空間へ収容する。
- 解除手段や耐久性の検証材料として利用した後、肉体を完全に粉砕する。
- 破片を複数の異なる地方ダンジョンへ分散して投棄し、迷宮の吸収作用を利用して痕跡を抹消する。
事件の余波と生じた誤認
痕跡を残さない処理の結果、ギルドおよびギルドナイトの首脳陣は深刻な誤認に陥る。
- 最高の生存能力を持つ上忍が死亡した可能性を排除し、伝説の秘薬を入手して逐電したと結論づける。
- 過去の不正情報を盾に組織の乗っ取りや暗殺を仕掛けてくると予測する。
- 存在しない脅威に怯えた幹部陣は本部に立てこもり、対上忍用の防衛網構築に追われる。
綿密な情報戦と能力の隠蔽により、主人公側は何らの嫌疑も受けることなく活動基盤を維持する。相手組織が自滅的な警戒態勢へと追い込まれる結末は、情報の格差を巧みに突いた排除工作の成果を示す。
切岸工房の再建交渉
『二度目はタの付く自由業 2』において描かれる切岸工房の再建交渉は、主人公である松尾篤史の底知れない冷徹さと、彼が構築を進める脱ギルド体制の全貌を浮き彫りにする極めて重要な出来事となる。単なる人助けから冷酷な買収劇へと変貌し、最終的な合意へと至った一連のプロセスについて、段階ごとに詳細を整理する。
切岸工房の窮境と若葉の接触
新宿区の片隅に位置する切岸工房は、探索者向けの武具を製造する家族経営の零細工房として運営されていた。しかし、潤沢な資材や最新設備を誇るギルド系列店との価格競争に晒され、経営状況は深刻な悪化をたどる。
- 原材料費の削減を目的にダンジョンへ潜っていた工房の親方が深手を負い、製造ラインが完全に停止する。
- ギルド側の裏工作によって金融機関からの融資ルートを断たれ、2ヶ月後には不渡りを起こす危機に直面する。
- 娘である鍛冶師の切岸若葉は、父親の治療と工房の再建を果たすための打開策として松尾篤史への接触を図る。
松尾篤史が提示した再建構想
目先の負傷を治療するのみでは根本的な倒産を回避できないと判断した篤史は、流通独占を打破する足がかりとして、富士元興業を巻き込んだ独自のサプライチェーン構想を提示する。
- 素材調達:龍青会の探索者がダンジョンで得た希少素材を、ギルドへ安値で売却することなく切岸工房へ直接搬入する。
- 製造加工:切岸工房は提供される深層素材を優先的に加工し、技術と実績の蓄積を進める。
- 自社消費:完成した装備を富士元興業が適正価格で買い取り、所属メンバーへ支給する。余剰分はギルドより安価で市場へ流通させる。
この循環により、工房は安定した業務を確保し、龍青会は独自の調達網を築き、篤史自身も将来の特注武具製造拠点を手に入れる相互利益の基盤が整う。
交渉の難航と親方の認識のずれ
若葉個人とは雇用契約が成立したものの、工房本体の傘下入りを巡る富士元興業との交渉において予期せぬ停滞が発生する。
- 不渡り寸前という状況にもかかわらず、親方は資金援助のみを求め、経営権の譲渡や傘下入りを拒絶する姿勢を示す。
- 早期に救済提案を持ちかけられたことで、自らの技術価値を過大評価して相手の足元を見る態度をとる。
- 娘の雇用先が確保された事実を都合よく解釈し、経営者としての危機感を著しく鈍らせる事態に陥る。
篤史が下した冷徹な判断方針
営業部長の美浦から交渉難航の報告を受けた篤史は、相手へ歩み寄る意思を一切見せず、冷酷な方針を提示する。
- 妥協してまで再建を支援する義理はなく、対象の工房に固執する理由も存在しないと言い切る。
- 契約に基づいて若葉のみを自陣営に留め、最低限の訓練を施した後は外部から隔離し、単なる製造作業者として投下資本を回収する代替策を告げる。
- 経営破綻を静観して悪質な貸金業者に追い詰めさせ、誤った判断が招いた現実を自覚させる対応を促す。
最後通牒の提示と交渉の決着
篤史の方針を受けた美浦は従来の交渉態度を破棄し、実質的な最後通牒を突きつける。
- 傘下入りを拒否するならば一切の支援を打ち切り、破滅を静観すると通告する。
- 差し迫る倒産の恐怖と裏社会特有の交渉圧力を前に、親方はわずか数日で全面降伏を選択する。
- 親方は富士元興業側の提示条件を全面的に受け入れ、完全な傘下入りを承諾する。
- 週明けには合意済みの契約書と引き換えに治療用物資が引き渡され、工房の組み込みが完了する。
この一連の交渉を通じて、松尾篤史は将来有望な鍛冶技術者を自陣営へ依存させる体制を築き上げる。同時に富士元興業にとっても、ギルドの搾取を受けない独自の装備調達網を確保する極めて合理的な結果をもたらす。
タの付く自由業 1巻レビュー
まとめ
タの付く自由業 3巻レビュー
登場キャラクター
主要キャラクター紹介
探索者学校
松尾 篤史
松尾篤史は本作の主人公。
自身の安全と自由を守ることを最優先に考えている。
他者との適度な距離感を保つことを好む。
奥野せらや切岸若葉を自らの組織へ引き込み、計画を前に進める。
・所属組織、地位や役職
探索者学校の一年生。
株式会社富士元興業営業部特殊素材調達課の課長を務める。
クラン龍青会探索班学園支部の支部長も兼任する。
・物語内での具体的な行動や成果
レベル三十二に到達し、ジョブが【行商人】から【過客】へ昇華した。
新たに得た固有スキル【結合】を検証し、魔石や指輪を強化する手段を確立する。
一人で四十階層のボスを討伐し、隠し部屋から得た指輪を結合して全能力を三百五十上昇させた。
黒羽家から支払われた四千万円をせらに譲り、ギルドからポーションを購入させている。
せらを殺害すると宣言した上忍を、自作兵器の石化ガスで無力化した。
若葉の実家である切岸工房の買収を美浦に任せ、最後通牒を突きつけさせる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ギルドナイトに匹敵するステータスを手に入れた。
富士元興業との間で、ハイポーションの利益を折半する取引を取り決める。
周囲からは、せらを怪しい薬で従わせる商人だという噂を流されていた。
奥野 せら
奥野せらは松尾篤史のクラスメイト。
両親を救ってくれた篤史に深い恩義を抱いている。
篤史から見捨てられることに対して強い恐怖を覚える。
周囲の同級生よりも篤史との繋がりを優先する。
・所属組織、地位や役職
探索者学校の一年生。
クラン龍青会探索班学園支部に所属する。
・物語内での具体的な行動や成果
レベル三十に到達し、ジョブが【侍】から【武者】へ昇華した。
黒羽の取り巻きたちが決闘の無効を訴えてきた際、正式な契約であると主張して退ける。
週末に帰宅した際、両親から元仲間のためのポーションの融資を頼まれた。
篤史から譲られた四千万円を用いて、両親の元仲間のためにポーションを二つ購入する。
十五階層で上忍から急襲を受けた際、敵の殺意を確認して正当防衛の覚悟を決めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
篤史の英才教育と指輪の補正により、高い戦闘力を手に入れた。
上忍との戦闘以降、その性格に不穏な変化の兆しが現れ始める。
周囲の生徒からは、篤史に従う危険な存在として恐れられていた。
切岸 若葉
切岸若葉は探索者学校に通う女子生徒。
不渡り寸前の実家を守るために必死に行動している。
父親を治療して工房を再建させるため、篤史にポーションの提供を願い出た。
当初は警戒心の強さを見せていたが、最終的に篤史の提示した契約に合意する。
・所属組織、地位や役職
探索者学校の一年生。
実家の切岸工房の跡取り娘。
クラン龍青会へ技術者として加わった。
・物語内での具体的な行動や成果
ポーションの対価として、龍青会へ三年間所属する契約書に署名した。
父親が富士元興業の傘下入りを拒んだため、交渉が難航する事態となる。
龍青会側から交渉打ち切りの最後通牒を突きつけられ、父親と共に降伏した。
月曜日に青ざめた顔で登校し、篤史から父親治療用のポーションを受け取る。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レベル二の【鍛冶師】。
将来的に、篤史たちのパーティーの装備品をアップデートする役割を期待されている。
黒羽 輝夜
黒羽輝夜は、探索者学校の元生徒会長。
自身の地位や能力に高いプライドを持っている。
問題を引き起こした黒羽の姉にあたる。
弟の自爆に巻き込まれ、自身の失脚へと追い詰められた。
・所属組織、地位や役職
探索者学校の生徒会長を務めていた。
ギルド役員である黒羽林太郎の娘。
・物語内での具体的な行動や成果
弟の決闘騒動を解決するため、篤史とせらを校内放送で呼び出した。
しかし、その行動が不当な圧力であると見なされ、生徒会での不信任案に繋がる。
週末に帰宅し、父親へ事態の報告が遅れたことを厳しく叱責された。
父親からの指示を受け、関わりのない篤史たちに対して不干渉を貫く方針を決める。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
生徒会長を退任させられた。
失脚後も、周囲に舐められないよう敵を徹底的に潰す決意を固めている。
黒羽
黒羽は、探索者学校の一年生。
親の権力を盾にして横暴な行動を繰り返してきた。
篤史に決闘で完敗し、四千万円の負債を抱える。
不始末を父親に隠し続け、事態をより悪化させた。
・所属組織、地位や役職
探索者学校の一年生。
ギルド役員である黒羽林太郎の息子。
・物語内での具体的な行動や成果
篤史に決闘を挑み、四千万円の賠償金を支払う契約にサインした。
敗北後、自身のやらかした不祥事を父親に一切報告していなかった。
日曜日になり、姉の輝夜から事情を知った父親に激しく殴打される。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
自身の引き起こした不始末により、姉の生徒会長辞任を招いた。
林太郎が四千万円を支払ったことで、彼自身の不祥事は学生間の問題として幕を閉じた。
鈴木
鈴木は、黒羽の元取り巻きの一人。
かつては黒羽の威光を借りて、他の生徒に対して悪事を行っていた。
黒羽が失脚したことで、自身の立場を急速に失う。
せらのもとへ押しかけ、決闘の無効を必死に訴えかけた。
・所属組織、地位や役職
探索者学校の一年生。
黒羽派閥の取り巻き。
・物語内での具体的な行動や成果
せらに対して、黒羽との決闘をお遊びの無効として扱うよう求めた。
黒羽に脅されて従っていただけだと主張し、自身が無関係であることをアピールする。
しかし、せらから過去の悪行や決闘時の態度を追及され、言い返せなくなる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
せらに徹底的な追及を受け、顔を真っ青にして教室から立ち去った。
風紀委員会による調査や、社会からの厳しい制裁を受ける見込みとなっている。
株式会社富士元興業 / クラン龍青会
但馬 明彦
但馬明彦は、株式会社富士元興業の専務。
ヤクザから足を洗った過去を持ち、会社とクランの存続に全力を注いでいる。
篤史がもたらすチート級の装備や実績に、日々肝を冷やしていた。
組織を統率する者として、篤史に対して勇気ある忠告を行う。
・所属組織、地位や役職
株式会社富士元興業の専務。
探索者クラン【龍青会】の本部長。
・物語内での具体的な行動や成果
篤史がせらに対して高額なポーションを貢ぎすぎていると懸念した。
犯罪行為に走るのを止めるため、自身の身を顧みずに篤史へ警告する。
しかし、篤史から三本のハイポーションを提示され、自身の見識の甘さを認めた。
提示されたハイポーションを預かり、売却益を折半する条件で取引を快諾する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
篤史の底知れなさを再認識し、彼が動きやすい環境を整えることに同意した。
指輪やハイポーションの確保により、龍青会をAランクへと引き上げるための地盤を固める。
美浦
美浦は、富士元興業の幹部社員。
かつての裏社会での経験から、筋の通った行動を重んじている。
篤史の規格外な実力を恐れており、常に敬意を払って接する。
切岸工房の買収交渉を担当し、相手の不遜な態度に手を焼いていた。
・所属組織、地位や役職
株式会社富士元興業の部長。
クラン【龍青会】の幹部。
・物語内での具体的な行動や成果
切岸工房との交渉状況を会議室で篤史に報告した。
若葉の父親が経営権を拒んでいる件について、篤史の意向を確認する。
篤史から「面倒なら潰していい」との承諾を得て、最後通牒を突きつけた。
二日間のうちに交渉をまとめ上げ、週明けに工房の完全傘下入りを確定させる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
篤史が下した冷酷な判断に戦慄し、その冷徹さを深く刻み込まれた。
篤史との関係を守るため、自身の判断で強硬な手段を選択した。
富士元 紗希
富士元紗希は、会長である富士元隆の娘。
何事にも興味を抱きやすく、行動力に富んだ気性を持つ。
大人たちのしがらみを理解しつつも、反発を覚える。
前世においては、松尾篤史が最も贔屓にしていた女性だ。
・所属組織、地位や役職
富士元興業会長の一人娘。
篤史と同年代の少女。
・物語内での具体的な行動や成果
沙山サキから篤史が新たに三本のハイポーションを持ってきた件を聞いた。
お偉いさんへの賄賂としてハイポーションを利用することを提案する。
しかし、沙山からその無謀さを指摘され、提案を否定された。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
同年代の自分であれば篤史と直接対等に交渉できると考え、接触を画策する。
大人たちの介入を不満とし、独自に動き出す兆しを見せていた。
沙山 サキ
沙山サキは、富士元興業の受付嬢。
落ち着いた大人の視点を持ち、富士元紗希を妹のように可愛がっている。
権力者たちの恐ろしさを正しく理解していた。
紗希の不穏な思惑に対し、内心で強い嫌な予感を抱く。
・所属組織、地位や役職
富士元興業の受付嬢。
・物語内での具体的な行動や成果
篤史が持ってきたハイポーションの処理に会長たちが頭を悩ませていると伝えた。
紗希からの賄賂の提案に対し、権力者に奪われるだけだと論理的に説明して却下する。
紗希の行動が不測の事態を招くのではないかと警戒を強めた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
特筆事項なし。
探索者ギルド
黒羽 林太郎
黒羽林太郎は、探索者ギルド役員。
自身の面子とギルドの絶対的な既得権益を守ることを最優先に考えている。
正式に結ばれた契約を重視する、老獪な役人の気質を持つ。
自分の娘や息子が引き起こした不祥事に対し、非情な怒りを示した。
・所属組織、地位や役職
探索者ギルドの役員。
・物語内での具体的な行動や成果
息子の決闘騒動を輝夜から聞き、不始末を隠し通した息子を激しく殴打した。
契約を破ることのリスクを考え、龍青会へ謝罪して四千万円を即座に支払う。
自分の面子を潰した篤史とせらを殺害するため、お抱えの上忍に暗殺を依頼した。
生徒会を退任した輝夜に対し、篤史たちへ不干渉を貫くよう命じる。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ギルド内外に強い影響力を保持する。
篤史とせらの実力をパワーレベリングによる弱者と完全に見誤り、上忍を派遣して失脚の危機を招くことになった。
上忍
上忍は、ギルドナイトの一員である女性。
非常に残忍かつ嗜虐的な性格で、他人の絶望する顔を見ることを至上の喜びとしている。
報酬次第で暗殺などの汚れ仕事を平然と引き受けてきた。
前世においては、松尾篤史の顔を利用したなりすまし犯罪を繰り返し、彼から深く嫌悪されている。
・所属組織、地位や役職
世界最強の探索者パーティー【ギルドナイト】のメンバー。
世界で唯一の【上忍】。
・物語内での具体的な行動や成果
警告を無視した探索者パーティーを深層で襲撃し、執拗に追い詰めて惨殺した。
黒羽林太郎からの個人的な依頼を受け、十五階層で篤史とせらを急襲する。
弓聖に変装して二人を狙撃するが、篤史によってその擬態を完全に見破られた。
本来の力を解放した篤史に武器の和弓をへし折られ、閃光手榴弾も通用せずに右腕を粉砕される。
命乞いを試みるが拒絶され、自作兵器の石化ガスによって『慟哭』の石像へと変化した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
レベル四十三前後の実力を誇っていたが、篤史の手により完全に無力化された。
石化後、篤史に非人道的な実験の素材とされ、最後は粉々に砕かれて複数の地方ダンジョンにばら撒かれ、消滅した。
聖騎士
聖騎士は、前世における【ギルドナイト】のメンバー。
何事も安全確実に進めることを好み、後進の育成に尽力している。
ギルド上層部を警戒しつつ、常にギルドナイト全体の動向に気を配っていた。
上忍の失踪をいち早く察知し、強い危機感を覚える。
・所属組織、地位や役職
前世の【ギルドナイト】のメンバー。
レベル四十四の【聖騎士】。
・物語内での具体的な行動や成果
先月中旬にダンジョンへ入った上忍が十日以上も帰還していない事実を掴んだ。
剣聖へ直接電話をかけ、上忍の失踪とギルド本部への招集連絡を共有する。
上忍がエリクサーを独占するために逃亡し、ギルドナイトへ復讐を仕掛けてくる可能性を推測した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
日本最強の盾役。
上忍からの暗殺に怯え、ギルド本部に数か月拘束されながら、血の滲むような思いで「対上忍用」の完璧な迎撃・防御態勢を構築した。
剣聖
剣聖は、前世における【ギルドナイト】のメンバー。
力こそがすべてを解決するという、ひたすら純粋に暴力を振るう気質を持つ。
他者との馴れ合いを嫌い、自己の鍛錬を日々欠かさない。
前世においては、ソロ攻略での宝箱の初回特典を独占するため、他のメンバーやギルドに情報を隠蔽していた。
・所属組織、地位や役職
前世の【ギルドナイト】のリーダー。
レベル四十五の【剣聖】。
・物語内での具体的な行動や成果
聖騎士からの電話を受け、上忍が消息を絶ったことを知らされた。
上忍が死亡したのではなく、何らかの理由で逃亡または潜伏していると判断する。
上忍が逃亡先から自身の立場を利用して政治家らを支配し、復讐を企てることを危惧した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
日本最強の探索者。
自身に迫る上忍の魔手に対抗するため、ギルドのリソースを費やして迎撃態勢の構築を余儀なくされる。
登場集団
ギルドナイト
日本最強の探索者パーティー。メンバー全員が世界最高峰の実力を持つが、ギルドの役人たちを信用していない。
・所属組織、地位や役職
日本の探索者ギルドの最高戦力。
・物語内での具体的な行動や成果
前世で、入手した貴重なアイテムをギルドから隠蔽して私物化していた。
上忍の失踪事件を受け、彼女が国を巻き込んで復讐を仕掛けてくると判断する。
全員が長期間ギルド本部に拘束され、防御態勢の構築に忙殺された。
・地位の変化、影響力、特筆事項
上忍という重要な索敵役を失ったことで、ダンジョン深層の攻略スピードが著しく遅れる結果となる。
クラン龍青会
富士元興業が運営する探索者クラン。中層の安全な探索を主としていたが、現在はAランククランへの昇格を目指している。
・所属組織、地位や役職
株式会社富士元興業が母体。
Bランククラン。
・物語内での具体的な行動や成果
篤史から提供されたステータス上昇の指輪を用いて所属メンバーの底上げを図る。
切岸工房を傘下に置き、ギルドを介さない独自の装備生産ラインを確立した。
お抱えの探索者たちが下層の攻略を本格化させつつある。
・地位の変化、影響力、特筆事項
ギルドによるポーション・魔石の独占体制を崩すための、篤史のクラン連合シナリオの中核を担う。
黒羽の取り巻きたち
黒羽の威光を傘に着て、学校内で不遇職への暴力を繰り返していた一年生グループ。
・所属組織、地位や役職
探索者学校の一年生。
・物語内での具体的な行動や成果
黒羽の決闘敗北後にせらのもとへ押しかけ、決闘の無効を必死に求めた。
しかし、せらからこれまでの悪行や決闘時の態度を追及されて怯え、教室から逃げ出す。
・地位の変化、影響力、特筆事項
黒羽という後ろ盾を失い、風紀委員会による処分と社会からの激しい制裁によって破滅を待つ状況となった。
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タの付く自由業 1巻レビュー
まとめ
タの付く自由業 3巻レビュー
展開まとめ
幕間 上忍のお仕事
三十五階層の壁
新宿ダンジョンでは、ギルドナイトと一部のAランクパーティーを除き、三十五階層より先から帰還できないという噂が広まっていた。実際にはギルドが四十階層の初回攻略報酬であるハイポーションを独占するため、深層を目指す探索者へ警告し、それを無視した者を密かに排除していたのである。
秘密ダンジョンの惨劇
ギルドナイトの一人である上忍は、群馬県の秘密ダンジョンでレベル三十台のパーティーを襲撃した。彼女は仲間たちを殺害した後、女性の【妖術師】だけを傷つけて残し、魔物に襲わせた。この仕事にはギルドの秘密を守る目的に加え、女性から拒絶された会社社長の依頼も絡んでいた。上忍は対象の最期を記録し、任務を終えた。
プロローグ
【過客】への昇華
松尾篤史は【行商人】から【過客】へと昇華した自らのジョブを調べた。過客には旅人という意味だけでなく、過ぎ去った時間や二度と戻らない存在という意味もあり、篤史は過去から戻った自分を表している可能性を考えた。また、ジョブやスキルを与える何者かが自身を観測しているのではないかと警戒した。
謎のスキル【結合】
新たに得た【結合】は、最初に試した物品へ使っても反応しなかった。篤史は焦って答えを求めず、対象や条件を変えながら検証することにした。
二人の昇華
篤史と奥野せらは新宿ダンジョンでレベル上げを続けた。篤史はレベル三十二に到達し、せらもレベル三十となって【侍】から【武者】へ昇華した。せらは家族に会うため帰宅し、篤史は一人で【結合】の検証を進めた。その結果、同系統の魔石や装備品に宿る魔力的な効果を結びつけられることが判明した。
一章 学校でのあれこれ
決闘の後始末
登校したせらのもとへ、黒羽の取り巻きたちが押しかけた。彼らは黒羽との決闘を遊びとして無効にし、前生徒会長の輝夜にも誤解を解くよう求めた。しかしせらは、双方が契約書へ署名し、教師の立ち会いと記録のもとで行われた正式な決闘であると退けた。黒羽たちが勝利すれば篤史とせらを従わせるつもりだった以上、敗北後だけ遊びを主張することは許されなかった。
崩れる黒羽派
輝夜が篤史たちを校内放送で呼び出したことは、決闘の結果を圧力で覆そうとしたとの噂を生んでいた。生徒会内部では輝夜を失脚させようとする動きが始まり、黒羽の悪事も調査されていた。せらは、暴力や恐喝に加担してきた取り巻きたちも責任を免れないと告げた。彼らは顔色を失い、教室から立ち去った。
せらの忠誠
せらは篤史の能力値が【商人】系の成長では説明できないことから、彼が未知の希少なジョブを隠していると推測していた。それでも篤史によって両親を救われ、自身も急速に強くなれたため、同級生より篤史との関係を優先していた。
魔石の買い取り
篤史は【結合】の実験に使うため、せらが獲得した魔石をギルドより高値で買い取ると申し出た。【結合】では同じ魔物の魔石を合わせて力を増幅でき、同系統の上位種と下位種を組み合わせれば、弱い方の力を強い方へ移せた。篤史はクラスメイトからも魔石を集めようとしたが、学校内で能力の詳細を明かすことは避けた。
ポーションを求める少女
放課後、篤史はポーションを売ってほしいと懇願する切岸若葉と出会った。若葉は何でもすると訴えたが、篤史は軽率な約束の危険性を諭し、事情を順番に聞いた。
二章 新たな出会い
切岸家の窮境
若葉の実家は探索者向け装備を製造する家族経営の工房であった。ギルド系列店との競争で売り上げが落ちるなか、父親が材料採取中に負傷し、製造も滞っていた。融資を受けられず、工房は二か月ほどで不渡りを出す見込みとなり、怪しい金貸しへ頼る話まで持ち上がっていた。若葉は父親を治療するため、ポーションを求めていたのである。
三章 探索者としてのあれこれ
工房再建の条件
篤史は、ポーションで父親を治しても工房の経営難は解決しないと指摘した。そこで切岸工房を富士元興業の傘下に置き、龍青会が持ち帰った素材を加工させ、完成した装備を富士元興業や龍青会が買い取る構想を示した。工房は仕事と素材を確保でき、富士元興業はギルドを介さず装備を調達できる関係であった。
【鍛冶師】の契約
若葉のジョブはレベル二の【鍛冶師】であった。篤史は将来の装備製作を任せられると考え、ポーションの対価として龍青会へ三年間所属し、篤史と行動し、勧誘を断り、秘密を守る契約を提示した。工房の傘下入りとは別の契約であり、若葉は家族と相談したうえで署名することになった。
龍青会への加入
週明け、若葉は署名済みの契約書を持参し、篤史からポーションを受け取った。せらは新たに加わった若葉を警戒したが、篤史から将来自分の装備を作る技術者だと説明され、ひとまず受け入れた。若葉の父親は工房の傘下入りを拒み、独力で立て直そうとしていたため、そちらの交渉は継続となった。
せらの家族への援助
せらの両親は、今も入院している元仲間を救うため、追加のポーションを求めていた。篤史は在庫を持っていたが、短期間に大量のポーションを放出すればギルドから出所を疑われるため、すぐには渡せないと説明した。ただし将来売ることは約束し、せらはその返答を喜んだ。
四十階層の単独攻略
篤史は一人でダンジョン深部へ進み、雷を利用した攻撃で四十階層のボスを倒した。単独攻略だったため通常報酬のポーションは一つしか得られなかったが、隠された部屋と宝箱を発見した。篤史は、剣聖や上忍も単独攻略で出現する隠し部屋を知りながら、利益を独占するため他のギルドナイトにさえ伏せていたのだと理解した。
能力上昇の指輪
宝箱には全能力を五十上昇させる指輪が六つ入っていた。篤史が【結合】を試すと、一方の効果の半分をもう一方へ移せた。六つをまとめた結果、全能力を二百五十上昇させる指輪が完成し、以前の指輪と合わせて三百五十の補正を得た。後になって防具へ効果を集めれば指輪の装備枠を残せたと考えたものの、別のダンジョンでも報酬を集める方針を立てた。
四章 歴史は繰り返す
四千万円の決着
黒羽林太郎は、息子が決闘で四千万円の支払いを約束していたことを輝夜から知らされた。林太郎は報告を怠った息子を殴り、連絡が遅れた輝夜も叱責した。一方で、正式に結ばれた契約を破れば自らの立場まで悪化すると理解し、龍青会へ謝罪して期限内に全額を支払った。輝夜には生徒会の引き継ぎを終え、篤史たちへ関わらないよう命じた。
封じられた対立
篤史は、支払いが遅れれば黒羽家と龍青会の争いをギルド全体への不信へ発展させるつもりでいた。さらに龍青会と深層を攻略し、ギルドが秘匿してきたポーションやハイポーションの入手先を公表することで、ギルドの独占を崩そうとしていた。しかし林太郎が迅速に謝罪と支払いを済ませたため、問題は学生同士の決闘として収束し、篤史の計画は仕切り直しとなった。
二つのポーション
篤史は四千万円の全額をせらへ譲り、両親の元仲間のためにポーションを二つ購入させることにした。龍青会を通して正規に購入すれば、篤史の在庫を放出せず、ギルドから疑われる危険も避けられた。せらは感謝し、今後も篤史のために働くと誓った。
五章 龍青会での一幕
せらへの休暇
篤史はせらがポーションのために働き続ける状態へ戻ることを危惧し、家族と過ごすよう休暇を与えた。せらは探索を休むことに不満そうであり、篤史は彼女の労働への依存が進みつつあると感じた。せらにはポーションを二つ確保できたとの報告を任せ、自身は龍青会の社屋へ向かった。
但馬の忠告
篤史は但馬にポーション購入を依頼したが、但馬はせらへ多額の品を貢ぎすぎているのではないかと懸念した。龍青会は篤史の希少な品に頼る一方、彼の行動を制御できない立場にあり、組織を守る但馬は危険を承知で忠告したのである。
三本のハイポーション
篤史はせらへの援助が好意だけではなく、信頼と忠誠を得るための投資であると考えていた。誤解を解くため、最低でも一本十億円に相当するハイポーションを三本取り出し、龍青会へ販売を委ねた。継続的にハイポーションを供給できる組織となれば、龍青会は権力者とのつながりや莫大な利益を得られた。但馬は篤史が入手方法を知っていると悟り、売却益を折半する条件で預かった。
幕間 依頼
黒羽林太郎の依頼
上忍はギルド本部を訪れ、役員たちから表に出せない複数の依頼を受けた。最後に会った林太郎は、篤史とせらをダンジョン内で殺害するよう求めた。息子の決闘に端を発した騒動でギルドの威光を軽んじられたままでは面目が立たず、龍青会にも代償を支払わせるつもりであった。
誤った実力評価
林太郎は、入学直後の篤史とせらが十五階層付近まで進んでいることから、龍青会が二人をパワーレベリングしていると推測していた。せらを管理可能な強さに抑え、【行商人】の篤史を荷物持ちとして深層で使うためだと説明した。上忍もその推測を受け入れ、護衛がいてもBランククランの人員なら問題にならないと考えた。二人は標的の本当のレベルも、篤史が上忍を熟知していることも知らなかった。
六章 迫る悪意
新たな生徒会長
輝夜の退任後、白河が唯一の候補として生徒会長に信任された。白河は既存の役員を入れ替えず、波風を立てない運営を選んだ。篤史には輝夜を追い落とした者や、せらを怪しい薬で従わせる商人といった噂が立ったが、せらが敵意を振りまくため、周囲の生徒は二人へ近づかなくなった。
週末の鍛錬
せらは両親の元仲間にポーションを二つ用意したことで、家族への援助は十分だと考えるようになった。一方、篤史の足を引っ張らないためのレベル上げには意欲を示した。篤史は能力値だけでなく、それを活用する戦闘技術も必要だと説明した。彼には以前の人生で剣聖や弓聖たちから過酷な訓練を受け、複数の武術で高い技量を得た記憶があった。
弓聖の襲撃
十五階層へ向かう途中、篤史は突然放たれた矢を防いだ。姿を現したのは弓聖として知られる女性であり、せらは世界最強の一角から襲撃されたことに驚いた。篤史は依頼主が林太郎であると見抜き、見逃すなら報酬を倍額支払うと交渉した。龍青会へ渡したハイポーションの利益を提示したものの、相手は子供の嘘に付き合うつもりはないと拒絶し、せらも一緒に殺すと宣言した。
正当防衛の理由
篤史の交渉は、せらに事情を聞かせ、相手が二人を殺す意思を明言した事実を残すためのものであった。これにより、せらはギルドナイトを倒すことへの迷いを捨てられた。篤史はせらを後方へ下げ、一人で戦い始めた。
偽りの苦戦
篤史は棒状の武器で接近戦を挑み、意図的に速度と威力を抑えた。相手は弓を近接武器として使い、篤史の攻撃を防ぎながら、レベルも能力も足りないと嘲った。篤史の演技を知るせらには、相手が完全に実力を見誤っていることが分かっていた。
砕けた弓
篤史は十分に攻防を重ねた後、本来の力で連撃を浴びせた。相手は急変した威力へ対応できず、武器としていた弓を真ん中から折られた。逃走を促すような篤史の言葉を受け、相手は閃光手榴弾を取り出して地面へ叩きつけた。強烈な光と爆音が周囲を包み、せらは目を押さえて転げ回った。
七章 人を呪わば穴二つ
通じない閃光
閃光手榴弾は相手の身体へ損傷を与えることで視覚と聴覚を奪う武器であり、防御力を突破できなければ効果を発揮しなかった。全能力を上昇させる指輪を装備した篤史には通じず、離れていたせらも実際には傷を負っていなかった。相手は短刀や千本で追撃したが、篤史はすべて防ぎ、右腕をつかんで握り潰した。
上忍の正体
篤史は襲撃者が弓聖ではなく、その姿へ変装した上忍だと最初から見抜いていた。本物の弓聖なら最初の狙撃を防がれた時点で情報の誤りを疑って退き、単独行動もしないはずであった。弓術への姿勢や戦い方の違いも、正体を見抜く手掛かりとなっていた。
五十階層への妨害
上忍はギルドナイトで索敵、罠解除、遊撃、地図作成を担う存在であった。篤史は彼女を倒せばギルドナイトの五十階層攻略を大幅に遅らせられると考えていた。上忍が帰還しなくても、ギルドは子供の殺害に失敗したとは考えず、深層での素材採取中に死亡したと処理すると読んでいた。
上忍の石化
上忍は短剣や仕込み武器、毒、【致命の一撃】で抵抗したが、篤史との能力差を覆せなかった。篤史はその場で死ぬか、特殊な魔法を受けてギルドの貴重品室へ送られるかを選ばせた。貴重品室では石化した探索者が研究素材や美術品として扱われており、上忍はどちらも拒んで抵抗を続けた。篤史は彼女を石化させて収納し、実験に使った後で砕き、複数のダンジョンへ吸収させることにした。
中断された探索
命を狙われた直後であったため、篤史は予定していたレベル上げを中止し、せらと地上へ戻った。せらには休養を取らせ、自身は上忍の痕跡を処分する予定を立てた。せらは篤史の判断へ異議を唱えず、彼以外の者へ従うつもりもなかった。
切岸工房との交渉
龍青会へ戻ると、美浦から切岸工房との交渉が難航していると報告された。若葉の父親は融資を求めながら、傘下入りも経営権の譲渡も拒んでいた。富士元興業から早期に援助を申し出たことで、自らの工房に高い価値があると誤解したのである。
最後通牒
篤史は若葉が不可欠な存在ではなく、工房側へ譲歩する必要もないと考えた。交渉の結果、若葉が意欲を失ったり敵対したりするなら、相応の扱いに変えればよいと美浦へ伝え、必要なら工房を潰すことも認めた。美浦は最後通牒を出し、従わなければ交渉を打ち切ることにした。週明けには話がまとまり、青ざめた若葉が学校へ現れた。
エピローグ
上忍の失踪
六月上旬、聖騎士は剣聖へ電話をかけ、ギルド本部から招集されたことを伝えた。先月中旬に単独でダンジョンへ入った上忍が、十日以上たっても帰還していなかったのである。二人は罠や奇襲を見抜き、逃走にも長けた上忍が深層で簡単に死ぬとは考えられず、逃亡か潜伏の可能性を疑った。
幻のエリクサー
剣聖と聖騎士は、上忍が持っているだけで殺し合いになるほどの希少品を発見し、独占するために姿を消した可能性を考えた。その候補として、ポーションやハイポーションを上回る幻の秘薬エリクサーが挙げられた。上忍なら変装して追跡を逃れ、過去の依頼で得た秘密を使って政治家や官僚まで支配できた。
見当違いの迎撃態勢
ギルド役員たちは上忍が自分たちへ報復することを恐れ、剣聖や聖騎士たちを招集した。ギルドナイトは上忍の潜伏先や襲撃方法、国外逃亡の可能性まで検討し、数か月にわたって防御と迎撃の準備を進めた。しかし上忍はすでに篤史に倒されており、彼らの努力が報われる機会は訪れないままであった。
特別書き下ろし 富士元興業の人々(裏)
三本の販売先
富士元興業会長の娘である富士元紗希は、沙山サキから篤史が新たに三本のハイポーションを持ち込んだと聞いた。会長と但馬は買い手がいないのではなく、欲しがる富豪や権力者が多すぎるため、販売先を決められずにいた。選ばれなかった者の逆恨みや、流通を独占するギルドから敵視される危険があったためである。
紗希の思惑
篤史が継続的な入手方法を知っているなら、購入できなかった相手には順番を待つよう説明できた。しかし供給量が増えるほどギルドの警戒も強まった。紗希は権力者への賄賂を提案したが、沙山は入手方法も現物も奪われるだけだと否定した。子供の出る幕ではないと受け取った紗希は反発し、大人にはできない同年代同士の交渉を自分が担おうと考えた。沙山はその様子に嫌な予感を覚えた。
電子書籍特典 とある鍛冶師の日常
三十歳の切岸若葉
新宿の片隅にある古びた鍛冶屋で、三十歳になった若葉は客を待っていた。彼女は店長を名乗っていたが、店はギルドの所有であり、製造する品や使う素材、販売や買い取りの条件まで厳しく定められていた。自由に武器や防具を作ることも売ることもできず、自分は店長ではなくアルバイト同然だと自嘲していた。
父への恨み
若葉の父親は、彼女が高校一年生だった頃、怪我が治らないまま自らダンジョンへ入り、死亡していた。その死は自殺と扱われて保険金も支払われず、切岸家は崩壊し、工房も失われた。残った借金を返すため、若葉はギルドのもとで働き続けることになった。彼女は自分より過酷な境遇の探索者や娼婦を思い浮かべて慰めを得ようとしながら、父が生きていた場合や、自身が別の行動を取っていた場合の人生を空想し、来るかも分からない客を待ち続けた。
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