小説「煤まみれの騎士 VII(7)」感想・ネタバレ

小説「煤まみれの騎士 VII(7)」感想・ネタバレ

どんな本?

本作は、戦乱と陰謀に揺れる王国を舞台に、騎士たちと魔族、反体制派が織りなすダークファンタジーである。和平交渉を目前にして発生した大爆発と、その混乱の中で繰り広げられる戦いを描く。ロルフたちは謎の勢力の暗躍に直面し、失われた剣を取り戻すべく死闘を繰り広げる。

主要キャラクター
ロルフ・バックマン:かつて王国を追放された元騎士。今は魔族と手を取り合い、新たな未来を目指す。
リーゼ:ロルフと共に戦う剣士。冷静沈着な判断力と高い戦闘能力を持つ。
エミリー・ヴァレニウス:第五騎士団団長。王国のために戦うが、ロルフとの因縁に葛藤を抱える。
王女セラフィーナ:王国の王女。和平を模索するが、王国内部の闇に苦しむ。
アルフレッド・イスフェルト(アル):ロルフたちの仲間。雷の魔法を操る優秀な魔導士。
ビョルン:王女の近衛兵。ロルフに敵意を抱きながらも、やむを得ず共闘する。
マレーナ:魔族と人間の血を引く少女。孤児たちを支える存在。
ラケル・ニーホルム:第五騎士団の幹部騎士。復讐心を抱えながら戦場に身を置く。

物語の特徴
本作は、戦場の緊張感と登場人物たちの内面描写が緻密に描かれている点が特徴である。単なるバトルものに留まらず、国家の衰退、宗教組織の陰謀、人と魔族の共存など、重厚なテーマが物語を彩る。また、主人公ロルフが「煤まみれの剣」と共鳴し、絶望の中で希望を見出そうとする姿が、読者の心を強く打つ。

出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• レーベル:電撃の新文芸
• 著者:美浜ヨシヒコ
• イラスト:エシュアル
• 発売日:2025年5月17日予定

読んだ本のタイトル

煤まみれの騎士 VII
著者:美浜ヨシヒコ 氏
イラスト:エシュアル  氏

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あらすじ・内容

怒涛の2ヶ月連続刊行! 圧倒的人気Webファンタジー第7巻!

陰謀に揺れるメルクロフ学術院。
ロンドシウス王国の王女・セラフィーナの申し出により開かれた講和会談は、王国側に紛れていた急進派により混乱へ陥れられた。
ロルフはリーゼ達と散り散りになり、敵対すべき王国の老兵・ビョルンと成り行きで行動を共にする。
彼らは衝突しながらも、教会に潜む首謀者を追い詰めていく。しかし、その末でロルフの前に現れたのは……。

「よう、でくの坊。お前を殺しに来たぜ」

かつて第五騎士団で共に戦った女戦士、ラケル・二―ホルム。
彼女の戦鎚と、ロルフの煤の剣がいま激しい火花を散らす。
そこに、戦いを止めんとするエミリーも参戦してーー。

戻らない時間。曲げられない覚悟。
矜持と共にぶつかり合うその一騎打ちの果てに待つ結末はーー。


ーーそして、ついに邂逅する。

「お前さ、こう考えてるんだろ? 世界を争いで満たしたのは、目の前の男なのではないか、と」

真なる邪悪が、いま姿を現す。
圧倒的世界観で描かれる戦記ファンタジー、急展開の第7巻。

煤まみれの騎士 VII

感想

第三勢力の陰謀と講和会談の混乱

物語は講和会談の場に爆破という衝撃が走り、根深い陰謀の存在を浮き彫りにした。
表面上は和平を模索する舞台でありながら、その裏で激しい対立と策謀が渦巻いていたことに、自身は驚きと恐怖を覚えた。
特に教会勢力の執念深さが強烈に描かれ、理不尽な現実が胸に迫った。

ミアやシグたちの奮闘と日常の強さ

一方その頃、ヘンセンの街ではミアが知恵を絞り、デニスやフリーダと共に陰謀を未然に防いだ。
無力さに葛藤しながらも懸命に行動するミアの姿は、戦場とは異なる日常の中の戦いを象徴していた。
また、シグやフォルカーといったキャラクターたちの戦いも描かれ、彼らの誠実な戦いぶりに心を打たれた。
特にシグへの好感は高まる一方であり、彼の存在感が際立っていた。

ビョルンとロルフの複雑な関係

ビョルンという存在は、単なる敵ではなく、師にも友にもなり得た人物として描かれた。
だが、彼は国の腐敗と個人の忠義の狭間で苦悩し、結果としてロルフと刃を交える運命を辿った。
その悲劇的な展開に、涙を禁じ得なかった。敵であることを理解しながらも、かつて交わされた信頼の残滓が、読後に深い余韻を残した。

ラケル・ニーホルムとの一騎打ち

物語終盤、かつての第五騎士団の同志であったラケルとの戦いは、物語全体の象徴であり、圧巻であった。
ラケルが抱える怒りと悲しみ、そしてロルフの覚悟がぶつかり合うその激闘は、ただの力の衝突ではなく、心の叫びの応酬であった。
エミリーが戦いを止めようと叫ぶ姿も胸を打ち、何一つ救えないまま迎える結末が、深い痛みを与えた。

世界の真なる邪悪との邂逅

ラクリアメレクという存在が姿を現し、世界を争いに染めた真実が明かされた瞬間は衝撃であった。
これまで積み上げられてきた戦いと苦しみの意味が一変し、世界そのものに対する絶望と、なおも抗おうとするロルフの意思が鮮烈に刻まれた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

ヘンセンの街の変化と危機感
ロルフたちが講和会談へ向かい不在となったヘンセンの街では、デニスとフリーダが街の警護について話し合っていた。デニスは街の雰囲気の変化に肯定的な感想を述べたが、フリーダは警戒を怠らなかった。ヘンセンは人間と魔族が混在しつつある活気ある街へと変わりつつあったが、未だ潜在的な危険が存在していた。

デニスの来訪と警護強化
フリーダの要請で、反乱軍トップであるデニスが自ら増援に駆け付けた。彼の本来の立場を考えれば異例の行動であったが、ロルフの危惧を共有し、敵の襲撃の可能性に備えていた。ヘンセンの重要施設や議会が狙われる恐れを念頭に、デニスとフリーダは警護プランの見直しを進めた。

ミアの警告と済生軍の動き
街に買い物に出たミアは、ロルフから教わった「怪しい動き」をする集団を発見した。彼女は即座に駐在武官事務所へ赴き、フリーダとデニスに報告した。ミアの観察により、敵が「蔦と蘭の模様」を剣に持つ済生軍の一派であることが判明した。彼らの動きから貯水池への攻撃が予測され、急ぎ対応に乗り出すこととなった。

貯水池での待ち伏せと作戦
フリーダとデニスは貯水池周辺へ急行し、先着して迎撃態勢を整えた。少数ながらも手勢を配置し、敵を待ち受けた。敵の狙いは生活用水の汚染であり、被害が出れば甚大となる恐れがあった。ミアの観察をもとに敵の接近を把握し、フリーダは兵たちに迅速な指示を出した。

敵勢力との接触と戦闘開始
敵は十四人で行動しており、散策を装って貯水池に近づいた。フリーダは巧みに会話を仕掛け、敵の水筒に毒物が入っている可能性を見抜く。問い詰められた敵は剣を抜き、戦闘に突入した。待ち伏せしていた味方兵士が敵の背後を塞ぎ、挟撃態勢を整えたことで、有利に戦闘を進めることができた。

指導者捕縛への動き
フリーダは敵の中でも最も年かさの男を指し示し、捕縛を指示した。指揮官を押さえることで、敵の行動を封じる狙いであった。兵たちは発奮し、戦況は優位に傾いていった。

戦いとミアの暗闇
戦闘が始まると、ミアはデニスによって目を塞がれ、戦いを見ることを許されなかった。ミアは自身の招いた戦いに対して無責任に感じたが、デニスはロルフを怒らせないためにそれを貫いた。その間に戦いは終息し、フリーダたちが敵を一人も逃さず制圧していた。

敵の捕縛と事態の把握
フリーダたちは無事に駐在武官事務所へ帰還し、戦った者たちと言葉を交わした後、デニスが戻った。デニスは敵の尋問から、今回の破壊工作はヘンセンへの侵入ではなく、会談場の攪乱が本命であったことを突き止めた。すでに会談は始まっていたため、伝令は形ばかりのものとなった。

都市防衛とデニスの助力
デニスは今回の事例を都市防衛のモデルケースとすべきと提案し、資料作成をフリーダに託した。フリーダはデニスの有能さに感謝しながらも、ミアを戦いに同行させたことに対して葛藤を抱き続けた。

夕焼けとデニスの想い
事務所を後にしたデニスは、赤く染まった空を見上げながら、半年前には想像できなかった変化を思い起こしていた。霊峰の戦いでヴァルターが語った「関係の変化」は、確かに今、現実になりつつあった。

ミアの帰宅と葛藤
一方、ミアは姉のもとへ帰宅した。遅くなった理由を説明しようと悩みながら、その日の冒険を振り返っていた。

ロルフとビョルンの共闘
メルクロフ学術院に潜む陰謀を追うため、ロルフとビョルンは西棟へ向かって行動を共にした。だが、ビョルンにとってロルフは依然として敵であり、険しい視線を向け続けていた。ビョルンは王女セラフィーナへの忠義からロルフに協力していたが、心中には葛藤が渦巻いていた。

遠方の敵を察知するビョルン
進軍の途中、ビョルンは書庫の三階から監視している弓兵を発見した。敵の待ち伏せを認識した彼は、過去に部下たちへ説いてきた戦場の心得を思い返し、時間をかけず突破するべきだと即断した。王女の捜索を急ぐ中、待機する余裕はなかった。

二正面作戦の決断
ビョルンとロルフは敵の注意を分散させるため、二正面作戦を実行することにした。ロルフが書庫側面から、ビョルンが正面から突入する形を取り、敵を攪乱して突入を図った。ロルフは側面の死角を巧みに利用して接近し、奇襲を仕掛ける準備を整えた。

書庫一階での戦闘
突入と同時にロルフは矢の雨をかいくぐりながら、書庫一階へ到達した。二人の敵兵と交戦し、超重量の煤の剣で圧倒し、敵を倒した。速やかに一階を制圧したロルフは、上階にいる敵に備えて次の行動に移った。

書庫二階での戦闘
梯子を駆け上がり、ロルフは敵を奇襲した。槍兵や戦棍兵との激しい戦闘の末、ロルフは幾度となく攻撃をかわし、正確な一撃で敵を倒していった。途中、負傷し動きが鈍ったロルフをビョルンが救援し、二階の制圧を完了させた。

書庫三階での戦闘と敵の逃亡者
三階への突入に際して、ビョルンは短剣を投げて待ち伏せしていた敵を撃破した。ロルフは続いて三階に到達し、弓兵たちを近接戦闘で撃破していった。しかし、敵のうち一人が戦闘中に脱出し、一階から再侵入していた。

脱走兵との決着
ロルフは煤の剣で床を破壊し、二階に降下して敵と対峙した。敵は弓兵でありながら長剣を手に高い戦闘技術を見せたが、最終的にはロルフの一撃によって倒れた。これにより、書庫の完全制圧を果たした。

蛾と蜘蛛の巣の象徴
戦闘後、ロルフは蜘蛛の巣にかかった蛾を助け、自由へと放った。ビョルンはそれを非難するが、ロルフは「ただ蛾が飛ぶ姿を見たかった」と返した。二人の間には少しずつ信頼とも呼べる変化が芽生え、彼らは次なる目的地へと歩を進めた。

平和を実感するアンドレの述懐
ホーカンソン男爵家四男アンドレは、かつて味わった戦場での恐怖体験を思い返しながら、平和の貴重さを改めて実感していた。現在、彼は済生軍をクビになった過去を持ちながらも、講和会談の警護任務に就いていた。会場であるメルクロフ学術院を巡回し、平穏な日常に安堵する中、突如として尖塔が爆発し、戦場へと一変する事態に巻き込まれることとなった。

突如発生した爆発と混乱

突如として講和会談の行われていた尖塔が爆発し、瓦礫が講堂を直撃した。アンドレは爆発を目撃し、恐怖に凍りつきながら絶叫した。周囲には武装した敵が出現し、警護隊が次々と倒される様子を目撃するが、身を隠すことを選択し、初代学院長(実際は二代目出納長)の彫像の陰に潜んだ。

絶望的な状況からの逃走
複合研究棟内でも戦闘が発生し、アンドレは物陰を伝って必死に逃走を図った。研究棟最上階には大穴が開き、そこで起こる戦闘を遠目に目撃する。そこでは、かつて霊峰で遭遇した悪夢のような存在──黒い剣を操る恐怖の将軍が、敵を次々と倒していた。アンドレはかつての恐怖を思い出し、無我夢中で逃走を続けた。

荷車への潜伏と陰謀の発覚
逃走の途中、敵に見つかりそうになったアンドレは、武器を満載した荷車に身を隠した。敵兵たちの会話から、講和会談を破壊するための組織的な陰謀が進行中であることを知る。彼らは講和を「世界への冒瀆」と見なし、王女と連合側要人たちの抹殺を狙っていた。アンドレは絶望しながらも、荷車に隠れたまま運ばれていった。

機転による小さな抵抗
荷車を降りた後、敵の武器輸送を妨害するため、アンドレは荷車を植栽の隙間に隠す行動に出た。慎重に荷車を押し込み、敵の武器供給を少しでも妨害することに成功した。隠れる場所を探したアンドレは、さらに植栽の中に潜む決意を固めた。かつてよりも成長した自らに微かな誇りを感じつつ、新たな危機に備えて身を隠した。

植栽に潜伏し恐怖を耐える主人公
主人公は書庫を監視する敵兵たちから身を隠し、植栽の中でやり過ごそうとしていた。だが、かつての恐怖の象徴である悪魔が再び現れ、至近距離に迫る。主人公は震えながらも存在感を消し、石となることで気配を隠しきった。悪魔たちは書庫へ突入し、わずか数分で制圧して去っていった。主人公は自らを植栽と同一視し、ここで生き延びる決意を固めた。

学術院西棟における戦闘の開始
舞台はメルクロフ学術院西棟へ移る。講和を阻止しようとする勢力が拠点としたその場所では、主人公ロルフとビョルンが潜入し、敵を各個撃破していった。兵力差はあったが、二人は老獪な戦術で敵を消耗させていた。

敵からの投降勧告と戦術的判断
敵は銅管を用いた音響設備で投降を呼びかけるが、ロルフとビョルンはこれを焦りの現れと見抜いた。二人は時間をかけるより、敵陣へ飛び込む決断を下す。ビョルンは王女から返還された長剣を持たず、短剣のみで戦っていた。

敵司祭ヴィルマルとの対峙
二人は敵リーダーのヴィルマルと対面する。ヴィルマルは王女の命の保障と引き換えに武装解除を要求したが、その言葉には真意がなく、王女への殺意が隠されていた。敵中には王女を害することをためらう若い兵士も居たが、多勢には逆らえなかった。

武装解除を巡る駆け引きと戦闘開始
ロルフとビョルンは策略を巡らし、敵へ短剣と煤の剣を引き渡すふりをして戦闘を仕掛けた。ヴィルマルは煤の剣に触れた際に火傷し、指揮官不在となった敵軍は動揺する。ロルフとビョルンは敵を撃破しながら、若い兵士レオンを救おうと試みた。

若き兵士レオンの最期と敵の壊滅
レオンは仲間に説得を試みたが、敵に刺され重傷を負った。さらに魔法による雷撃を受け、命を落とした。ロルフとビョルンは怒りを燃やし、残った敵兵たちを打ち倒す。最後の敵を討った後、ロルフはレオンの名前を聞き出し、その死を王女に伝えることを誓った。

ヴィルマルの自害と陰謀の核心への接近
戦闘後、ヴィルマルは自害した。彼は陰謀の全容を知る者ではなかったため、尋問の機会を失った損失は小さかった。ロルフは、敵勢力の背後にさらに大きな黒幕が存在すると確信し、次なる行動へ備えた。

王女護衛隊の待機とリンデルの指揮
メルクロフ学術院近辺で戦いが繰り広げられる中、王女の護衛隊は規定により学術院から離れた地点に待機していた。護衛隊を率いるのは第三騎士団の新団長エーリク・リンデルであり、彼は先の戦で戦死したマティアス・ユーホルトの後任であった。リンデルは慎重に動静を見守っていたが、会談場爆破の報告を受け、特定の部隊が独断で進発したことを把握しても動じなかった。

会談場爆破とリンデルの推測
リンデルは、講和会談の破綻を予見していた。王国と連合それぞれが提示する条件が到底受け入れがたいものであるため、講和成立は不可能と判断していた。ゆえに、会談を妨害する陰謀が仕組まれたことにも冷静に対応し、敵意のある部隊の暴走も、団の再編成の好機と見なしていた。

ビョルンとの装備確認と傷の共有
戦いを終えた後、ロルフとビョルンは互いに装備と傷の確認を行った。ビョルンは戦闘後すぐに装備点検をする習慣を持ち、ロルフにその重要性を無言で教えた。ビョルンはロルフの隠れた脇腹の負傷にも気づき、共有の重要性を指摘した。ロルフは孤独な戦いの中で生き延びてきた自負を持つが、他者と共に戦う上での意識変革の必要性を実感していた。

敵軍接近と連合軍の期待
遠方から一個大隊規模の敵軍が接近してくることをロルフとビョルンは確認した。これに対し、連合側からも救援軍が急行しているとロルフは推測した。寡兵ながら練度の高い連合軍が間に合えば、敵軍を抑えることが可能であると彼は確信していた。

要人救出と陰謀の核心を求めて
ロルフとビョルンは、王女や連合盟主ら要人の救出を最優先課題としつつも、敵の首魁の存在にも注意を向けた。現在の戦況からして敵の組織的指揮系統は崩壊していると考えられたが、陰謀の真の黒幕は未だ掴めていなかった。

過去への思いと静かな共感
ロルフが口にした「憂いは足に絡む蔦のようなもの」という言葉に、ビョルンは動揺を見せた。それはかつて彼の息子が発した言葉でもあった。無言のまま歩みを進める二人には、戦場を超えた静かな共感が流れていた。

地下への誘いと不可解な失踪
歩を進める中、ロルフは通常存在しないはずの地下への階段を発見した。しかし、隣にいたはずのビョルンは忽然と姿を消していた。迷いながらもロルフは意を決し、未知なる地下へと足を踏み入れたのであった。

地下空間への侵入と不穏な気配
ロルフは肌寒く暗い石造りの地下に辿り着いた。壁に点在するランプの明かりと、人の通った痕跡から、ここが敵の本拠であることを確信した。迷わせる罠を警戒しつつ進んだロルフは、広大で高い天井を持つ空間へと到達した。

男との遭遇と対話の始まり
広間の奥に一人の中年男が待ち構えていた。彼はロルフの名を呼び、友好的に振る舞いながら、自身と地下空間について語り始めた。この地下は魔力に反応する認識阻害魔法によって隠されており、ロルフのような魔力を持たない者だけが侵入できたと明かされた。

神疏の秘奥の正体についての問答
男は、神疏の秘奥の仕組みにロルフが気づいていることを見抜き、意図的に問いかけた。ロルフはそれを契約魔法と推測し、男は即座に肯定した。秘奥は人の精神を操作するものではなく、元々の気質を引き出すだけのものだと説明されたが、ロルフはその説明を受け入れなかった。

男の正体とラクリアメレクの告白
ロルフは男の正体を探る中、王女セラフィーナの叫びを思い出し、目の前の男が伝説の聖者ラクリアメレク本人であると確信した。ラクリアメレクはそれをあっさりと認め、自己紹介した。彼は秘奥の誕生の経緯と、女神ヨナが実在しないこと、そして「ヨナ」が飼っていたカエルの名前であったことを告げた。

神の役割と人間の本質についての議論
ラクリアメレクは、人類が獣から進化する過程で、原始宗教による結束が不可欠だったと語った。そして、人間の精神に神という概念が根付いている以上、人は神から自由になれないと主張した。ロルフはこれに反発し、人は選び取る自由を持つと信じる立場を貫いた。

世界への影響と崩壊の始まり
ラクリアメレクは世界を争いに満たした張本人であることを認めた。そしてロルフに興味を示しつつも、世界自体に価値を見出していないと吐露した。その間にも、上階から爆発が連続して発生し、地下空間も崩落を始めた。ラクリアメレクは最後まで飄々とした態度を崩さず、ロルフに別れを告げた。

脱出への決意
ロルフはなおも笑みを浮かべるラクリアメレクを一瞥し、無言で背を向けた。燃え落ちる瓦礫の中を、出口へ向かって走り出したのである。

西棟の炎上と新たな対峙
西棟は爆破によって炎上し、階段にも火が回り始めた。主人公は脇腹に傷を負いながら一階へ戻り、脱出経路を探したが、廊下は炎に阻まれていた。迂回するために広間へ入った彼は、そこで戦鎚を構えたラケル・ニーホルムと遭遇し、戦闘の火蓋が切られた。

連合軍の急行とフォルカーの焦燥
一方、連合軍を率いるフォルカーは、爆発と学術院封鎖の報を受け、急行していた。王国軍が不穏な動きを見せる中、学術院到着の遅延を危惧したフォルカーは、近道である林道を進む決断を迫られた。敵の待ち伏せを警戒しつつも、彼は覚悟を決め、進軍を選択した。

罠を突破する連合軍
林道では敵兵による待ち伏せが仕掛けられていたが、フォルカーの予測とアルの雷撃魔法によってこれを先制し、左右両側からの奇襲も撃退した。続いて、シグらが前方の敵集団へ突撃し、連合軍は罠を破って進路を確保した。

ビョルン隊長との合流と情報の共有
西棟前ではヴァレニウス団長らが近衛隊長ビョルンと合流し、情報交換を行った。ビョルンはロルフ将軍と協力して戦い、敵指揮官を討ち取ったが、真の首謀者は別にいると推測していた。さらに、大規模な敵増援が接近していることが判明し、緊張が高まった。

ラケルの失踪と西棟爆発の余波
ラケル・ニーホルムが突如姿を消し、直後に西棟が爆発した。ヴァレニウス団長はラケルの所在を確かめるため、自ら燃える学舎へ向かう決意を固めた。王女殿下の護衛はビョルン隊長に託し、彼女は単独で行動を開始した。

連合軍の遭遇と少女の暗殺未遂
進軍中、連合軍は幌馬車を発見し、捕らわれた母娘と遭遇した。怯える少女はフォルカー将軍を暗殺しようとナイフを突き出したが、未遂に終わった。母娘には過酷な背景があり、事情を察したフォルカーは彼女たちを保護することにした。

敵の伏兵と少年の救出
母娘の存在は敵の監視下にあり、シグが機転を利かせて高台に潜む敵兵を急襲、少年を救出した。少年は母娘の家族であり、再会を果たした三人は涙ながらに抱き合った。

敵の執念と今後への警戒
敵は成功率の低い策まで打ってきており、その執念深さが浮き彫りとなった。フォルカーたちは、敵のあらゆる策を警戒しつつ、急ぎ学術院への進軍を続けた。

家族の温かい夕食会
ステンマルク子爵の邸宅に、久しぶりに兄弟たちが集まった。三男ヴィッレの婚約者ラケルを迎え、皆で祝福の夕食を囲んでいた。長兄アラン、次兄グレーゲル、四男ラーシュも同席し、和やかな雰囲気のなか、家族の絆を確かめ合った。庶子であるヴィッレにも、兄弟や父子爵は変わらぬ愛情を注いでいた。

ラケルの内心と将来への展望
ラケルは家族の温かい空気に若干の居心地の悪さを覚えつつも、ヴィッレへの愛情と結婚に満足していた。ニーホルム男爵家の出自と小規模な貴族社会から離れ、自由な市井での暮らしを選べることも、彼女にとって望ましいものであった。

豪華な馬車での送迎と道中の賑わい
夕食後、ラケルを送るため、アラン、グレーゲル、ヴィッレ、ラーシュは豪華な馬車に乗り込み街へ向かった。馬車内では和やかな会話が弾み、兄弟たちはラケルへの親しみを隠さなかった。ラーシュは騎士団への志を熱く語ったが、ラケルは戦う意志を共有できず、静かにそれを受け止めていた。

突然の落石と野盗の襲撃
道中、山の斜面から倒木と落石が襲い、馬車は大破した。ヴィッレは負傷しながらも意識を取り戻し、ラケルや兄たちの安否を確認した。そこへ野盗たちが現れ、金品目当てに彼らを襲撃した。ヴィッレは交渉を試みたが、野盗たちの怒りは収まらず、戦闘に突入した。

ヴィッレの奮闘と致命的な傷
ヴィッレは剣を奪い取り、野盗たちを次々と倒した。しかし、敵の一人に短剣で刺され負傷した。なおも敵を討ち果たすものの、ヴィッレ自身も力尽き、倒れてしまった。

ラーシュの動揺と無力感
助けを求めるラケルの叫びにも、ラーシュは恐怖に打ち震え動けなかった。剣が足元に落ちていたにもかかわらず、彼は兄たちを救う行動を起こせずにいた。

無残な結末とラケルの抵抗
野盗の一人である小男は、瀕死の状態でアランとグレーゲルに致命傷を与えた。ラケルは絶望しながらも、倒木の破片を手に取り、襲いかかる小男を一撃で倒した。

子爵家での再会と別離
ラケルは再びヴィッレを訪ねたが、彼の父であるステンマルク子爵は心身共に衰弱していた。子爵はラケルに冷淡であり、ヴィッレにも厳しく接した。ヴィッレはラケルとの結婚を断念せざるを得ず、二人は涙ながらに別れを選んだ。

ラケルの騎士団入団と怒りの戦い
ラケルは騎士団への入団を決意した。失望ではなく怒りを胸に、彼女は戦鎚を武器に戦い続けた。自らを痛めつけるように無謀な突撃を繰り返しながら、着実に敵を討ち倒していった。

野盗掃討作戦への参加
ラケルは野盗掃討作戦への参加を積極的に望んだ。彼女は魔族のみならず、弱い人間も憎み、徹底して叩き潰すことに意義を見出していた。周囲の騎士たちは人間同士の戦いを嫌ったが、ラケルは怯まず戦場に向かった。

野盗との対決と怒りの爆発
野盗との戦闘では、ラケルは圧倒的な力で敵を粉砕した。最後に残った野盗に対しても容赦なく戦鎚を振るい、即死させた。彼女は弱者を憎み、力による支配を志向していたが、その先に何があるのかは未だ分からなかった。

ラケルとの対峙
ロルフは炎を背にしたラケルと対峙した。彼女は命を奪う覚悟で戦いを挑み、ロルフも黒い剣を構え応じた。激しい戦鎚の一撃をかわしながら防戦し、ラケルの力を封じるために隙を突いて応戦した。

エミリーの介入
エミリーが戦いを止めようと割って入ったが、ラケルは聞き入れず、戦いは続いた。エミリーは雷の魔法を発動して二人の戦いを制止しようとしたが、ロルフには届かなかった。

神器の力
ラケルは教会の神器「魔環フリストフォル」を使用し、五感を飛躍的に高めた。ロルフの動きすらスローモーションに感じ取る彼女に対し、ロルフは機をうかがいながら攻撃を試みたが、超感覚による防御に阻まれた。

消耗と脆さ
神器の代償としてラケルの身体は徐々に限界を迎えた。血管が浮き、鼻血を流しながらも彼女は戦いを続けた。ロルフも傷を負いながら、隙を作るために必死に耐えた。

エミリーの苦悩と叫び
大穴を隔てた場所から、エミリーは二人に戦いを止めるよう懇願した。彼女の涙ながらの叫びにも関わらず、ロルフとラケルは矛を収めることができなかった。

ラケルの心情
ラケルは自らの弱さと向き合えず、かつての弱さに怒りを向けていた。ロルフは彼女の根底にある痛みと逃避を見抜き、言葉で突くが、ラケルは感情を爆発させた。

最終局面
ラケルは最後の力を振り絞り、超感覚を更に強化してロルフに襲い掛かった。互いに致命傷を狙う激しい攻防の末、ロルフは一瞬の隙を突き、ラケルを深く斬り裂いた。

ラケルの敗北と死
ラケルは敗北を認めざるを得ず、負傷して後退した。彼女は腹から腸がこぼれ出る重傷を負いながらも、最後まで敵意を失わず、怒りと屈辱の涙を流した。よろめきながら大穴へと落下し、燃え盛る地下空間で命を落とした。

指環の破壊とエミリーとの対峙
主人公はラケルの遺した神器・魔環フリストフォルを踏み潰した。対岸のエミリーと無言で見つめ合い、旧知を挟んで沈黙を共有した。エミリーは戸惑いと悲しみを胸に、なぜ戦いを止められなかったのかと問いかけたが、主人公は答えを見出せなかった。

幼き日の記憶と現在の距離
かつてはエミリーの考えを理解できていた主人公も、今では言葉を失い、心の距離を痛感した。それでもなお、エミリーとの過去を共有していることを伝えようとした。

聖者ラクリアメレクの真実の告白
主人公は、聖者ラクリアメレクが生存しており、思想誘導の契約魔法を用いて人類の歴史を書き換えた邪悪な存在であることを告げた。しかしエミリーはこれを妄言と捉え、信じることができなかった。主人公は、それでよいと受け入れた。

別れと脱出
主人公はエミリーに逃げるよう促し、自らも燃え落ちる建物を後にした。ラケルとの戦闘で崩壊した壁を通り、外へ向かった。仲間たちや王女の安否を案じつつも、エミリーが王国内で旗印として利用される未来を憂いた。最後に、ラクリアメレクの存在に怒りを覚えながら、燃える建物から退却したのである。

ビョルンの息子との思い出
ビョルンは燃え上がる西棟を前に、息子との過去を思い出していた。騎士の叙任を控えた息子との会話を振り返り、彼の成長と危険な道を選んだ覚悟に誇りを抱いていた。

戦闘の始まり
正門の向こうから剣戟音と怒号が響き、連合軍の援軍到着をビョルンは察知した。第三騎士団の司令官は、敵軍の寡兵を侮り攻撃命令を下したが、思わぬ抵抗に直面した。

連合軍の反撃
連合軍のシグは暴力的な戦闘スタイルで敵を圧倒し、アルは巨大な『炎壁』で敵陣を乱した。フォルカーの指揮により連合軍は突撃し、敵陣に突破口を開いた。

マレーナの奮闘
敵の弓兵隊の集中攻撃に晒された連合軍であったが、マレーナが前に出て盾となり、敵の攻勢を防いだ。彼女の戦いぶりは味方を鼓舞し、アルもその高潔な精神に感嘆していた。

アルの内省と決意
アルは自らの過去の誤りを省みつつ、今度こそ信じる道を進むと決意した。戦場で戦いながらも、マレーナを食事に誘うことを考え、前向きな未来を思い描いていた。

連合軍の優勢と王女との別れ
西門側でも戦闘が始まり、学術院の封鎖解除が近づく中、アルバンは王女セラフィーナに別れを告げた。互いに講和は成立しなかったが、対話の意味を認め合い別れた。

マレーナの突破と連合軍の進軍
門外では、マレーナが圧倒的な力を発揮して敵を押し込み、連合軍の士気を高めた。彼女の強さと勇気が、戦況を有利に進める大きな力となっていた。

戦況の悪化とシグの登場
王国側司令官は、戦場の混乱に直面していた。敵軍に数的優位を活かして包囲を試みようとするも、強力な魔導士の出現により戦況は悪化した。司令官は敵兵の士気と練度の高さに驚き、戦略の見直しを迫られた。そこへシグが敵陣の只中に現れ、怒りに満ちた眼差しで司令官を睨みつけた。

正門前の雨中での邂逅

雨が降りしきる中、主人公は正門へ向かっていた。そこで近衛騎士隊長ビョルンと出会う。ビョルンは息子ニルスを亡くした過去を語り、自らの手で剣を握った理由を明かした。彼は親としての苦しみを胸に、主人公との戦いを決意した。

ビョルンとの激闘の始まり
ビョルンは老練な剣技を駆使して主人公に襲い掛かった。主人公は防戦一方であったが、戦う理由を改めて自覚し、反撃を開始した。互いに技量と覚悟をぶつけ合い、激しい剣戟が繰り広げられた。

信頼と戦いの矛盾
戦いの最中、主人公は敵対するビョルンに対し、王国の陰謀とエーリク・リンデルの裏切りを告げた。ビョルンはそれを受け止めつつも、自らの忠誠と信念を曲げなかった。信頼を交わしながらも、二人は戦わざるを得ない運命にあった。

戦いの激化と決着への道
互いに満身創痍となりながらも、戦いは続いた。主人公は冷静な判断と持久戦に持ち込むことで、徐々にビョルンを追い詰めた。ついに煤の剣がビョルンの剣を折り、勝負は決定的となった。

最後の一撃と別れ
剣を失ったビョルンは短剣で最後の抵抗を試みた。主人公は彼を討たねばならず、胸中に激しい後悔と痛みを抱えながらも剣を振り下ろした。雨の中、ビョルンは膝をつき、短剣を落とした。戦いの幕は静かに下ろされた。

ビョルンとの別れ
静かな雨の中、ビョルンは主人公に世界を変えるための旅立ちを促し、優しい笑みを見せたのち、再びうなだれた。主人公は涙とも雨ともつかぬ感情を胸に抱き、彼の言葉を胸に刻んだ。

第三騎士団の到着と王女救出
西門付近では、王女セラフィーナ一行が第三騎士団の到着を喜んだ。団長エーリク・リンデルは王女に毛布を手配し、ビョルンの捜索を命じた。王国内残留者や連合軍との接触も慎重に行うよう指示が出された。

ラケルの死とエミリーの悲嘆
リンデルはエミリー・ヴァレニウス団長に再会し、戦死したラケルの報告を受けた。リンデルはその死を悼み、エミリーの悲痛な様子に沈痛な面持ちを見せた。

ロルフたちの再会と退却
主人公ロルフは正門付近でリーゼやアルバンら仲間と再会した。彼らは軽傷であり、非戦闘員も守り抜かれていた。情報共有を後回しにし、一行は正門からの撤退を進めた。

雨中での心情と未来への決意
ロルフは肉体的・精神的疲弊を感じつつも、リーゼらの支えに癒されながら歩を進めた。メルクロフ学術院を振り返り、未完に終わった講和を悔やみつつも、邪悪に抗う覚悟を新たにした。

ステンマルク子爵邸での報告

ヴィッレ・ステンマルク子爵は、ラケルの死を伝えられ、かつての婚約者の最期を静かに受け止めた。弟ラーシュとのやり取りを経て、彼は平静を装いつつも内心で思いを馳せた。

謎の対話者たちによる分析
ある場所では、主人公の資質を評価する謎の人物とその部下が対話していた。主人公が神疏の秘奥に近づいていること、また剣を通してグウェイルオルの影響を受けていることを指摘した。二人は乾杯し、変わらぬ結末を迎えることを暗示した。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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