のんびり農家 3巻レビュー
のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 5巻レビュー
どんな本?
異世界のんびり農家とは、内藤騎之介氏による日本のライトノベル。
小説家になろうにて連載されており、書籍版はKADOKAWAから刊行されている。
また、剣康之氏が作画をしている漫画版もあり。
月刊ドラゴンエイジにて連載されており、現在は11巻まで発売されている。
また、異世界のんびり農家の日常というスピンオフ作品もあり。
こちらの作画はユウズィ氏が担当している。
アニメ版もあり。
アニメ版は全12話。
2023年1月6日から3月24日まで放送された。
各話のタイトルやあらすじは[こちら]。
物語は、闘病の末に死んだ男性・火楽が、神によって異世界に転移し、農業生活を送るというもの。
彼は神から「万能農具」という特別な道具を授かり、死の森と呼ばれる危険な場所で農地を開拓していく。
そこで出会った吸血鬼や天使、エルフや竜などの様々な種族と交流し、やがて「大樹の村」というコミュニティを作り上げていく。
作品の特徴は、タイトル通りの「のんびり」とした作風であり、戦争や陰謀などのトラブルに巻き込まれるような展開は少なく、主人公が農業や料理を楽しんだり、仲間や家族と触れ合ったりする日常が描かれている。
また、主人公が前世で得た知識や技術を活かして異世界の文化や産業に革新をもたらす場面もある。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2018年11月05日
• 判型:B6判/440ページ
• 定価:1,430円(本体1,300円+税)
• ISBN:9784047353930
読んだ本のタイトル
#異世界のんびり農家 04
著者:#内藤騎之介 氏
イラスト:#やすも 氏
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あらすじ・内容
新たに村へやってきた男女十組二十人。
全員、農業の知識は素人レベル…
しかし彼らは一ノ村で、ニュニュダフネ族との共同生活を始め、
育てる楽しさ、そして収穫の楽しさを覚えて行く!
異世界で農業を切り拓く、スローライフ・ファンタジー第四弾!!
異世界のんびり農家 04
感想
人間の国から、新たに村へやってきた男女十組二十人。
全員、農業の知識は素人レベル。
しかし彼らは一ノ村で、ニュニュダフネ族との共同生活を始めるのだが、、
夫婦で家屋一つを配布され。
適性を見るために、様々な仕事をするが農作業は種族的に力が弱くて戦力にならない。
木こりも木が切れない。
でも細工には一定の能力を引き出せた。
そして発酵食品の加工にも適性が見られて彼等の仕事もあらかた決まる。
コレでやる事も定まって、他に興味のあるモノは言えばやらせてくれる。
かなり恵まれている事に戸惑う彼等だが裕福になるチャンスである事は変わり無い。
そして、人間の国では孤児達が突然20人行方不明になる事件に、孤児を世話役の男が動揺する、、
原因は村に20人を送った街の偉い司祭の連絡ミス。
そして、20人から世話役の男に手紙が送られてくるのだが、、
最高級な紙で来たのでビビって内容は半分も信じない。
きっと見栄を張ってるんだなとホッコリしてる世話役が面白い。
その手紙に書いてある内容は全て事実ですw
最後までお読み頂きありがとうございます。
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のんびり農家 3巻レビュー
のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 5巻レビュー
考察
新規移住者の受け入れ
大樹の村における新規移住者の受け入れと定着の経緯
大樹の村および周辺の村々への新規移住者の受け入れは、村の規模を拡大し多種族の共生を深める重要な過程である。村長である街尾火楽は、単に労働力を確保するだけでなく、移住者の生活基盤を整え、それぞれの適性に応じた役割を与えることで円滑な定着を支援している。以下に主な事例をまとめる。
1. 一ノ村への人間(孤児たち)の移住
- 移住の経緯:コーリン教の大司祭フーシュが、ルールーシーたちへの礼として、街の孤児20人を選抜した。事前に読み書きや礼儀作法の教育が施された上で村へ送り出された。
- 生活の保障:当初、移住者たちは巨大な魔物や魔獣の姿に動揺したが、火楽は彼らに無償の住宅と食事を提供し、まずは村の生活に慣れることを優先させた。
- 役割の確立:特定の仕事を強要せず、狩りや建築、酒造りなど様々な作業を試させた結果、彼らの器用さと知識を活かした小物作り(竹細工など)や、紙作り、活版印刷という産業が確立された。
2. 三ノ村へのケンタウロス族の追加移住と爵位問題
- 経緯:魔王国四天王ビーゼルの仲介により、戦火を逃れたケンタウロス族41名が移住を希望した。彼らは避難先で食料を浪費する存在として扱われる切実な事情を抱えていた。
- 爵位の壁:希望者の中に魔王国男爵の爵位を持つ少女フカが含まれていたため、平民である代表グルーワルドとの間で統制の乱れが懸念された。
- 政治的解決:魔王が自ら来訪し、グルーワルドに子爵の爵位を授与することで解決を図った。これにより、上位の爵位を持つ者が代表となる秩序を維持したまま、無事に受け入れを完了させた。
3. 個別の移住者による技術の導入と貢献
- ガルフ一家の移住:ハウリン村最強の戦士ガルフが、村の戦力と食文化に魅了され、家族を連れて移住した。その息子は石工として石畳を作る役割を担い、村のインフラ整備に貢献している。
- 天使族の合流:キアービットや双子のスアルリウ、スアルコウが、村の環境や果実の質に惹かれて移住した。彼女たちは上空警戒や火楽の補佐といった何でも屋として生活に馴染んでいる。
まとめ
火楽による移住者支援は、物質的な豊かさの提供に留まらない。種族や身分に起因する摩擦を事前に予測し、政治的な根回しや適性の見極めを行うことで、新たな住民が自立して村に貢献できる環境を構築している。この丁寧なコミュニティ形成こそが、大樹の村が安定した発展を遂げている要因である。
新しい村の構築
大樹の村周辺における新設村の構築と運営
大樹の村の周辺に設立された一ノ村、二ノ村、三ノ村の構築と運営は、村長である街尾火楽の万能農具に依存した状態から、それぞれの村の住人が自立していくための重要なプロセスである。各村における具体的な取り組みの経緯を以下にまとめる。
一ノ村の構築:人間とニュニュダフネ族の共同生活
一ノ村には、管理を担うニュニュダフネ族に加え、コーリン教の大司祭フーシュから送られた人間の孤児たち(夫婦10組計20人)が移住した。
- 生活様式の尊重と指導:野外生活を好むニュニュダフネ族と、家屋を必要とする人間という異なる種族が同居することとなった。世話役のマムは、異なる家畜を同じ牧場で放し飼いにするように、互いの習慣を尊重しながら暮らすよう指導した。
- 適性の模索と産業の確立:街暮らしだった人間たちは特定の職能を持っていなかったため、様々な作業を通じて適性を見極める期間が設けられた。狩りや建設、鍛冶などでは困難に直面したが、最終的に手先の器用さを活かした小物作り(竹細工)や、読み書きの知識を応用した紙作り、活版印刷が主な仕事として定着した。
- 食肉の確保:狩猟に依存しない安定した肉の確保を目的として、村で初めてとなる食用の豚の飼育が一ノ村に任されることになった。
- 心理的ケアの実施:移住当初、人間たちは村に貢献できていないことへの心苦しさから食事を控える問題が発生した。村長は保存のきかない食材を優先的に配分することで強制的に食事を摂らせ、仕事の定着とともに彼らの精神的な安定を図った。
二ノ村・三ノ村の構築:通常農業への挑戦と組織運営
二ノ村(ミノタウロス族)と三ノ村(ケンタウロス族)では、村長の能力に頼らない農業の自立が最大のテーマとなっている。
- 通常道具による農業の実践:万能農具に依存しすぎることへの危機感から、村の10年目の方針として通常の道具を用いた農業が主体となった。自分たちで苗作りや種まきを行い、自力での収穫を完了させている。
- 独立採算に向けた計画:現状では収穫量が十分ではなく村長に雇用されている形態だが、将来的には各村で自給自足を達成し、独立採算を実現するための畑の拡張が計画されている。
- 三ノ村の追加移住と秩序の維持:三ノ村には、食糧事情から口減らしの対象となりかけていたケンタウロス族41人が新たに移住した。
- 爵位問題の政治的解決:移住者の中に男爵の爵位を持つ少女が含まれていたため、庶民である村長代行のグルーワルドとの間で指揮系統の混乱が懸念された。この際、魔王が自ら出向き、グルーワルドに名目上の子爵(コール子爵)の位を授与することで、村の統制と秩序を守るための政治的根回しが行われた。
まとめ
大樹の村の周辺に広がる各村は、種族ごとの特性に応じた産業の創出や、魔法的な力に頼らない従来の手法による農業への挑戦を通じて、着実に自立への道を歩んでいる。移住者の心理的な不安や身分制度に起因する摩擦に対しても、丁寧な配慮と迅速な政治的介入が行われており、多種族が共存する強固な共同体が形成されつつある。
村の秋祭り
大樹の村における秋祭りの構成と内容
大樹の村の第4巻における秋祭りは、収穫を祝う収穫祭、村全体の娯楽であるお祭り、そして武闘会の三つの大きな行事で構成されている。それぞれの詳細について以下に記述する。
1. 小さな収穫祭
秋の収穫が一段落した際、村長が大樹の社に収穫物の一部を奉納する神事を中心に行われる。周辺の一ノ村から三ノ村にも食料が分配され、各村での開催が許可された。
- 天使族が上空からインフェルノウルフの角を投下し、地上の穴で爆発させる花火が披露された。
- 宴会では各種族によるダンスや組体操が行われ、特に子供たちによる英雄が竜に挑む演劇が盛況となった。
2. お祭り(クイズ大会と山崩し)
当初は木を積む高さを競うタワーが予定されていたが、種族間の体格や飛行能力の差による不公平を避けるため、木材を交互に抜くバランスゲームである山崩しに変更された。
- クイズ大会:村の生活に関する○×形式で行われた。新しく生まれた孫に関するサプライズ問題などで盛り上がり、ユキが優勝した。時間の都合により、メイン競技の山崩しは翌日に持ち越された。
- 山崩し:種族や村ごとに24チームが参加し、サイコロの目に従って木材を抜く駆け引きが展開された。決勝ではクロチームとザブトンチームが対戦し、クロチームが優勝を飾った。
3. 第三回武闘会
魔王や竜族、宗教指導者といった世界的な要人が来賓として集う一大行事である。今年は戦士の部、模範試合、騎士の部が行われた。
- 戦士の部:ラミア族らの強敵が参加する中、ドワーフのドノバンが順当に優勝した。
- 模範試合:魔王とザブトンの対決が急遽、綱引きに変更された。来賓たちが次々と参加して村対抗戦へと発展し、熱狂の渦に包まれた。
- 騎士の部:出産補助のために滞在していた悪魔族や死霊騎士を含む32名が参加した。決勝は悪魔族のスティファノと鬼人族のアンによるハイレベルな攻防となり、スティファノが優勝した。
まとめ
すべての日程終了後には、お祭り実行委員会による反省会が実施された。クイズ大会の時間配分や競技ルールの改善点について真面目な議論が行われ、その内容は次年度以降の円滑な運営に活かされることとなった。
のんびり農家 3巻レビュー
のんびり農家 全巻まとめ
のんびり農家 5巻レビュー
キャラクター紹介
街尾火楽(ヒラク)
大樹の村の村長を務める男性である。
神から授かった万能農具を駆使して農作業や工作に励んでいる。
性格は勤勉で穏やかだが、家族の安全を脅かす存在には容赦しない。
多くの種族をまとめ上げる実質的な領主の立場にある。
自給自足の生活を豊かにするため、常に新しい工夫を凝らしている。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・村長。
・物語内での具体的な行動や成果
複数の村の基盤整備や大規模な屋敷の改築を指揮した。
キャンピング馬車やサスペンション付き馬車などの便利な道具を考案した。
周辺勢力との交渉を担い、魔王国や竜族との友好関係を維持している。
武闘会や滑走ボード祭りなどの行事を主催し、住民の娯楽を充実させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ハクレン、リア、アンらとの間に新たな子供を授かり、父親としての責任がさらに増した。
名実ともに周辺地域で最も影響力のある人物として認知されている。
神の代行者として、意図せず魔神を救済するなどの奇跡を起こしている。
ハクレン
竜王ドースの娘であり、大樹の村で教師を務める古代竜の女性である。
自由奔放な性格だが、現在は一児の母として落ち着きを見せている。
村の子供たちに読み書きや計算を教える役割を担っている。
ヒラクに対しては非常に献身的で、甘える姿も多く見られる。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・住民。教師。古代竜。
・物語内での具体的な行動や成果
ヒラクとの間に長男ヒイチロウを無事に出産した。
武闘会では審判を務め、厳正な判定を行っている。
竜姿での飛行を通じて村の広域警戒や食料調達に貢献した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつては「暴れ竜」として恐れられていたが、現在は村の有力な一員として定着した。
ハクレンの妊娠と出産は、竜族一族の結束を強める大きな契機となった。
ウルザ
大樹の村で保護されている少女である。
ハクレンの隣の部屋で暮らし、彼女を姉のように慕っている。
子供たちの中心的なリーダーとして、強い自立心を持っている。
性格は活発で、正義感が強い。
ナートやリザードマンの子供たちをまとめるカリスマ性を発揮している。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・住民。
・物語内での具体的な行動や成果
グラルと共に森へ入り、巨大な猪を狩って誕生したヒイチロウへの贈り物とした。
冬のレースや滑走ボード祭りに積極的に参加し、高い身体能力を示した。
土の兵士を核とした自分専用の土人形を作り、大切に扱っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
かつての「死霊王」としての記憶はないが、その力の一端は受け継がれている。
周囲の大人たちからも、将来を有望視される存在として見守られている。
始祖(ヴァルグライフ)
ルーの祖父であり、コーリン教の最高位に位置する吸血鬼である。
四千年以上の時を生きる超越的な存在だ。
性格は飄々としており、興味を持ったことには熱心に取り組む。
村の生活を気に入り、頻繁に訪れては滞在を楽しんでいる。
・所属組織、地位や役職
コーリン教・始祖。
・物語内での具体的な行動や成果
ヒラクが彫った創造神像を教会の本殿に祀らせ、各地に村との敵対を禁じる通達を出した。
転移魔法を使い、村の物流や人員移動を陰ながら支援している。
神殿の建設を主導し、信仰の形を村に定着させた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
圧倒的な魔法技術と政治的影響力を持ち、村の安全保障において重要な役割を果たしている。
ヒラクの芸術的才能を高く評価し、数々の依頼を寄せている。
魔王(ガルガルド)
ガルガルド魔王国の統治者である。
娘のユーリを溺愛しており、彼女の安全と成長を常に案じている。
威厳ある立場だが、村の住人に対しては一人の客として接している。
大樹の村の圧倒的な戦力と食文化に、常に戦慄を覚えている。
・所属組織、地位や役職
魔王国・魔王。
・物語内での具体的な行動や成果
武闘会や滑走ボード祭りなどの行事に貴賓として出席した。
三ノ村のグルーワルドに爵位を授与し、組織の安定を図った。
魔王国から村へ吸い込まれる金貨の問題に対し、マイケルらと共に対策を練っている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
大樹の村を敵に回さないことを国是として掲げている。
自身の引退後の居場所として、密かに村への居住を検討している。
ガルフ
ハウリン村から移住してきた獣人族の戦士である。
圧倒的な剣技を持ち、村の最強戦力の一角として認められている。
性格は武人気質で、強者との手合わせを常に望んでいる。
大樹の村の食と環境に惚れ込み、家族を呼び寄せて定住した。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・住民。戦士。
・物語内での具体的な行動や成果
シャシャートの街で開催された武闘会に出場し、木剣一本で優勝を果たした。
村では後進の指導や戦闘訓練に積極的に参加している。
シャシャートの土産を村に持ち帰り、子供たちを喜ばせた。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
外部からは「武神」と呼ばれ、畏怖の対象となっている。
村内では信頼の厚い実力者として、ダガら他種族とも良好な関係を築いている。
グルーワルド
三ノ村の代表を務めるケンタウロス族の女性である。
真面目で責任感が強く、一族の生活向上に尽力している。
ヒラクに対して深い敬意を抱いており、移動時の騎乗も名誉と感じている。
・所属組織、地位や役職
三ノ村・代表。コール子爵。
・物語内での具体的な行動や成果
三ノ村の開拓を主導し、ケンタウロス族の生活基盤を確立させた。
冬のレースでは、持ち前の脚力を活かして馬との競走に勝利した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
移住してきた男爵位を持つ者を統制するため、魔王から子爵位を授与された。
名目上の爵位ながら、三ノ村の法的な地位を安定させる役割を果たしている。
黒猫
大樹の社の前でヒラクに拾われた猫である。
その正体は、かつて神に封印されていた魔神の化身である。
現在は村の屋敷で平和に暮らしており、コタツやスパイダーウォークを好んでいる。
・所属組織、地位や役職
大樹の村・住民。
・物語内での具体的な行動や成果
村の生活にすっかり馴染み、クロやザブトンの子供たちとも共存している。
ヒラクの膝の上で眠るなど、彼に深い信頼を寄せている。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
ヒラクによって「神罰」を再現した加工が施されたことで、魔神としての悪意が消滅した。
神の救済を受け、平穏な一生を村で送ることになった。
グライム(万能農具)
神からヒラクに授けられた、自在に形を変える神器である。
独自の意識を持っており、主であるヒラクに絶対的な忠誠を誓っている。
性格は非常に過保護で、戦いに向かない主を守ることを使命としている。
・所属組織、地位や役職
神具。ヒラクの専用道具。
・物語内での具体的な行動や成果
ヒラクの農作業や建築、工作のすべてを完璧な精度でサポートしている。
外敵襲来時には「神槍」となり、圧倒的な破壊力で脅威を排除する。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
主が万能農具の力に頼りすぎないよう配慮することに、時折不満を覚えている。
他の武器が使われることに嫉妬するなど、人間味のある感情を抱いている。
ジャック
一ノ村に入居した人間の移住者たちの代表である。
フーシュのもとで教育を受けた孤児たちのリーダー的存在だ。
性格は誠実で、新天地での生活に強い意欲を持っている。
・所属組織、地位や役職
一ノ村・代表。
・物語内での具体的な行動や成果
移住者たちの意見をまとめ、仕事の割り振りや生活ルールの確立に貢献した。
外部への近況報告として手紙を執筆し、村の平和な現状を伝えている。
祭りの際には、一族で協力して演劇を披露した。
・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
村長から表札を授与され、正式な住人として一ノ村の運営を任されている。
ニュニュダフネ族とも良好な共存関係を築いている。
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のんびり農家 5巻レビュー
展開まとめ
[序章]馬
牧場での誕生と期待
名のない馬は普通の牧場で生まれ、その年で最も期待される存在として育てられていた。食事と運動と睡眠に励んだ結果、体格に恵まれ、どんな荷物でも運べるという自信を持つまでになっていた。
商人に買われる
ある日、威張っていた牧場主の態度を変えさせるほどの商人が現れ、馬を買い取った。商人は牝馬も同時に購入し、繁殖相手かもしれないと馬は期待と不安を抱いた。しかし竜に縛られて空を飛ばされたため、自らが竜の餌にされるのだと絶望した。
村での新生活と繁殖
やがて村の牧場で解放されると、環境は快適であり、隣にいた牝馬が繁殖相手であることも判明した。馬は初対面で子供は何頭欲しいかと先走り、距離を置かれるが、関係を築こうと努めた。
主との関係と他者の騎乗
村の主が乗ろうとしたが、乗馬の腕は未熟であり、馬は失格だと判断した。耳の長い娘と獣のような耳の娘は上手に乗りこなし、気持ちよく走ることができた。さらにスライムも騎乗し、努力を重ねる姿に付き合ったが、狼に乗る姿を見て嫉妬した。
ケンタウロスとの対抗意識
ケンタウロスが現れ、主を乗せて走る姿に対抗心を抱いた。子供のケンタウロスが牝馬に近づくことにも警戒し、自らの立場を強く意識した。
出産と命名
春の発情期を経て牝馬は妊娠し、やがて息子が誕生した。耳の長い娘と獣耳の娘が世話をし、馬は父となった。主が付けた名はしっくりこなかったが、獣耳の娘が名付けたベルフォードという名を受け入れた。
最速を目指す決意
ベルフォードは村で最速の馬として生きる決意を新たにした。ケンタウロスとのレースに臨み、結果は思わしくなかったが、勝敗に拘るべきではないと自らを戒めつつ、拗ねて眠るのであった。
【一章】神と工作と春
1 創造神話
創造神話の語り
始祖が壇上で創造神話を語った。創造神は時の神を生み妻とし、太陽神、双子の月神、大地神を得て世界を創造したという。太陽神は光神と炎神を、月神は闇神と水神を生み、大地神の試行錯誤の末に生まれた存在が地上の生き物であり、成長を与えられたのだと説明された。
黒い大岩の発掘と疲労
宴会は不満解消のために開かれた。始祖の指示で黒い大岩を五日間発掘し、七体目の像を完成させた。二百メートルの掘削を魔法で続けたルー、フローラ、ティア、グランマリアは疲労困憊し、始祖への恨みを募らせたが敵わなかった。像を彫るたび黒が白へ変わり、不安が薄れる感覚があった。
宴会と神話への疑問
屋敷のホールで宴が催され、始祖は獣人族の娘たちの質問に答えた。竜は創造神の浮気に怒った時の神が生んだ神獣であると語られた。魔王国と教会の関係、魔王国の派閥争いと未遂の陰謀についてもビーゼルが説明し、冬の間の休息がその褒美だと明かされた。
里帰り組の騒動
ラスティ、ブルガ、スティファノが帰還したが、里では混乱が起きていた。暗黒竜ギラル一族が急に和解を求め、話題は俺へ及び、延々と相手をさせられたという。ギラルは七代目であり、神話の当人ではないと説明された。ブルガとスティファノの里でも神の声が聞こえなくなったとして騒動が起き、鎮圧に追われたと語られた。
黒猫との邂逅
宴の前、大樹の社の前で真っ黒な猫と出会った。状況を悟った顔で仰向けになったため村に招き、膝に乗せた。猫はやがてテーブルの下へ潜り込んだ。周囲に集まるルーたちの気配を感じ取り、猫と同じ悟った顔をしている自分を自覚した。
2 冬の工作
猫との冬の暮らし
春の気配を感じつつも寒さは残っていた。猫はすっかり村に馴染み、クロたちと共にコタツに入り、天井のスパイダーウォークではザブトンの子供たちと譲り合っていた。酒樽に落ちて溺れかける失敗はあったが大事には至らず、酒スライムに誘導されても巧みに避けていた。
馬車の改造とサスペンション
山エルフの協力でスプリングが届いたが、大きく硬いため用途に悩み、サスペンションとして活用することにした。木製ピストンと油で試作し、マイケルの馬車を借りて大改造を施した。車体軽量化や補強も行い、振動は大幅に軽減された。試乗した者たちは乗り心地の向上に驚き、量産を望んだ。馬車はケンタウロスが引き、子供たちも楽しんだ。
積み木の制作
馬車を任せた後、今年生まれた子供たちのために積み木を作った。角を削り、安全な大きさに仕上げ、四セット完成させた。丁寧な作業は夜まで及んだ。
ロッキングチェアの試作
翌日は揺れる椅子を製作し、ロッキングチェアと呼ばれることを知った。強度確認を行い、酒スライムや猫を乗せて試したが問題はなかった。
揺り籠への挑戦と空回り
本命として揺り籠を作った。転倒防止を考え試行錯誤の末に完成させたが、アンの息子やリアたちの子はすでに掴まり立ちをしており不要だった。これまで天井から吊るす揺り籠を使っていたと知り、自らの空回りを悟った。ロッキングチェアの上の猫が慰めるように鳴いていた。
3 春に近い冬
春を待つ村の様子
春の気配を感じつつも寒さは続き、農作業開始の判断はニュニュダフネに任せられていた。山エルフたちは余ったスプリングで肩叩き機能付きの椅子を改造していたが、水力では力不足で歯車による強化を試みていた。拷問道具のような威力になりつつあり、用途に疑問が残った。
ウルザの成長とハクレンの寂しさ
温泉行きを計画したのは、ウルザの自立が原因であった。獣人族の男の子たちの喧嘩を止め、ナートやリザードマンの子供たちをまとめたことで、ウルザは子供たちの中心となった。その結果ハクレン離れが進み、ハクレンは成長を喜びつつも寂しさを抱えていた。
温泉への遠足
ハクレンに荷物板を背負ってもらい、子供たちや護衛を伴って温泉へ向かった。死霊騎士は番人として魔物を退治しつつ入浴しており、施設は無事であった。男女を分けて入浴させ、猫には浅い専用風呂を作った。猫は怯えつつも浸かり、満足して眠った。
死骸処理と鎧への着目
退治された魔物の死骸を土に戻す作業中、パニックカリブーの角を確保した。着替え場に置かれた死霊騎士の錆びた全身鎧に気付き、温泉の影響を疑った。森で木材を得て木製鎧の制作を試みたが、完成前に帰還時間となった。
帰路と木製鎧の仕上げ
子供たちを連れて村へ戻り、転移魔法を使えばよかったと気付いたが、遠足のような一日を楽しんだ。持ち帰った木製鎧を仕上げる決意をし、山エルフたちが様々な仕掛けを提案する中、死霊騎士が喜ぶ姿を思い描いた。
閑話 神の代行者
神罰の発生と危機
農業神は地上で黒い大岩が創造神の姿へ彫られる様子を父に示した。それは神すら封印する岩と万能農具によって再現された神罰であり、本来二十年後に救済されるはずの魔神が滅びかねない事態であった。魔神は魔力を集め続けた結果悪となったが、救済のため封印される運命にあった。
救済の再現
父は時間を進め、魔神が滅びず救済されたことを示した。例の彼が七箇所の封印に的確に神罰を行い、同時に創造神の救済まで再現したためであった。人が神の救済を代行するという奇跡により、魔神は猫の姿で地上に生きることとなった。
残された懸念
魔神は救われたが、神性を帯びた猫となったことや寿命の問題が懸念された。また、本来予定されていた魔力回収計画や魔神の仕込んだ悪事が崩れ、地上には混乱が広がる可能性があった。しかし二十年後の世界崩壊の危機は消滅し、総合的には良い結果と判断された。
彼への評価
農業神は彼の偉業を神の代行者や真の勇者として讃えるべきかと問うたが、父は彼がただの農家であることを望むだろうと笑った。栄誉を辞退しかねない彼の性質を思い、農業神も同意した。
4 十年目の春
春の訪れと別れ
春が訪れ、ザブトンが目覚めた。猫は即座に降伏の姿勢を取り、問題なく共存が決まった。ビーゼルやグラッツは帰還し、ガルフもハウリン村へ戻り、村は少し寂しくなった。
代表者会議の開始
屋敷の会議室に各種族の代表が集まり、新年度の会議が始まった。大樹の村をはじめ、各村や種族の代表が出席し、世話役も傍聴した。議題は冬の問題確認、今年の活動方針、褒賞メダル関連であった。
冬の問題と防衛への配慮
冬の間に大きな問題はなかった。食料や燃料にも余裕があった。一ノ村、二ノ村、三ノ村からは、防衛に当たるクロの子供たちへの配慮が相談され、大樹の村に来た際に遊ばせる提案がなされた。ミノタウロス村では二人の子供が誕生したことも報告された。
今年の活動方針
二ノ村と三ノ村では通常農業を優先する方針が決まった。万能農具に依存しすぎない体制づくりが目的である。収穫減少分は大樹の村で補う。工業面ではサスペンション付き馬車の追加注文に対応するため、スプリングを追加発注することとなった。商業では冬の加工品の販売状況を確認し、次の生産計画を立てることとした。作付けは昨年を基本とし、調味料や薬草を一部増やす。
褒賞メダルの配分
褒賞メダルは例年通り配布されたが、今年は各村の個人にも一枚ずつ渡す方針に変更された。蜂、酒スライム、温泉地の死霊騎士にも特別に二枚ずつ与えられた。子供たちへの配布は限定的で、働きに応じた申告制とした。
新たな住人の受け入れ
会議中、始祖からの連絡で、夫婦十組二十人を一ノ村に受け入れる提案があった。受け入れ体制や生活準備、防衛確認などで会議は延長された。宴会の声が聞こえる中、最終的に会議は春らしく打ち切られた。
5 春の作業 牧場拡張と他
子供たちの暴走と連行
ウルザはクロの子供に乗って爆走し、獣人族の男の子たちも追走していた。鬼人族メイドがスカート姿で追い、さらにラムリアスも合流した。ウルザは逃げ続けたが、酒スライムに足止めされて失敗し、男の子たちと共に連行された。
耕作の進展と牧場拡張
村長は万能農具で畑を高速に耕し、予定より早く終わる見込みとなった。畑拡張より牧場拡張を選び、東側へ約四百メートル広げた。動物は新しい区域を警戒したため、ニンジン畑を作ると馬が先に寄り、続いて牛や山羊も集まった。山羊がニンジンを荒らすため、牧場外にも畑を作る対応となった。
水飲み場と塩の整備
牧場に水飲み場を増設する必要が生じた。斜め穴とトンネル方式は山羊と牛が詰まったため禁止となり、丸太を割ってくり抜いた水桶方式に戻した。竹で簡単な水路も作り、今後はポンプ設置などを山エルフに相談する考えを持った。さらに岩塩層から塊を切り出して置き、動物が塩分を摂れるようにした。
各村の通常農業と記録
二ノ村と三ノ村の通常農業は順調で、苗育成や播種も完了していた。水車のメンテナンス支援以外は独自に進められており、村長は頼もしさと同時に寂しさも感じた。将来の資産とするため、各村の代表には作業記録をつけるよう求めた。
蜂の動きと新女王の受け入れ
果樹園では巣が増え、村長は蜂の好む花を増やした。兵隊蜂が編隊を組んで北へ向かい、ザブトンの子供と村長が追跡すると、防衛ライン外で背の長いイタチが倒されていた。兵隊蜂は女王蜂を護送して戻り、村長は新たな女王蜂のために巣を設置する場所を整え、果樹園拡張も考えた。
工作 キックスケーターとワゴン
村長は取っ手付きの板を木製で試作し、木製タイヤの不具合をゴム使用で改善したが、地面との相性が悪く断念した。次に台車を作り、鬼人族メイドに渡したところワゴンと呼ばれることを知った。後日、ウルザはワゴンを乗り物のように扱い、保管していたキックスケーターも持ち出して逃走したため、夕食後のデザート抜きが決定された。
6 慶事とフーシュのお礼
父親としての悩みとウルザの成長
ルーは子供たちに顔を覚えてもらうため日中も大人の姿で過ごすようになっていた。村長は父親としての在り方に悩み、ドライムやビーゼル、ガルフに相談するも参考にならなかった。ウルザの活発さを見て不安を抱いていたが、ザブトンがウルザとナートに華やかなドレスを瞬時に仕立てたことで状況は一変した。ただしウルザの服は異様に重く、鬼人族メイドが抱えようとして倒れる事態となった。後日、重さを調整してもらうことになった。
ハクレンの妊娠と竜たちの来訪
ハクレンの妊娠が判明した。竜は姿によって卵生か胎生かが変わるとドライムから説明を受けた。妊娠中は姿が固定されるため発覚したのであった。ハクレンの母へは先に連絡し、父への報告は遅らせる配慮がなされた。その後、多くの竜が訪れ祝福した。妊娠中の竜は気が荒くなるため護衛が必要との話も出たが、ハクレンは断った。
フーシュからの移住者到着
フーシュからの薬の礼として、夫婦十組二十人が一ノ村へ移住することとなった。護衛十一人も同行したが、村の住人たちに驚き半数が気絶した。移住者は一般的な人間であり、村長は歓迎し宿で休ませた。村はさらに賑やかになる兆しを見せていた。
閑話 フーシュのお礼の準備
奇跡への感謝と移住者探しの決意
コーリン教大司祭フーシュは、吸血鬼ルールーシーとフローラの尽力により息子の病を治すことができた奇跡に深く感謝していた。立場上、自ら移住して尽くすことは叶わぬため、村が望む「新たな住人」を用意することで報いようと決意した。奴隷の提供という提案は退け、家族として生活できる者を探す方針を定めたが、「死の森」への移住という噂が障害となり、勧誘は難航した。
孤児たちの選抜と誤解の解消
最終的に、街の少年少女たち――孤児同然の若者から男女十組二十人を選抜した。だが彼らはフーシュが子供の肝を求めているという悪評を信じ、怯えていた。五日を費やして誤解を解き、移住話が本物であると納得させた後、読み書きや常識、職業訓練を施し、春までに自立できる水準へ育て上げた。
貴族の血筋問題と徹底した整理
教育の最中、数名が貴族や王族の血縁者であると判明した。フーシュは本人の意思を確認し、戻る意思のない者は一般人として扱うことを決断した。同時に、問題の元となる下級貴族や隣国王家に対し政治的手段を講じ、血統に関わる禍根を断ち切った。結果として二つの国が新体制へ移行する事態となったが、移住者に影響は残さなかった。
さらなる騒動と排除
盗賊団の襲撃、怪しい宗教団体の介入、新興貴族の横槍など、移住者に関わる騒動が続発した。フーシュはこれらを全て鎮圧し、関係者を処理または改宗させ、財宝は教会に寄付した。移住者に降りかかる可能性のある不安要素は徹底的に排除された。
春の出発と胸を張る宣言
春を迎え、十組二十人は正式に結婚の祝福を受けた。血縁や特異体質を持つ者もいたが、全員が問題を抱えない「一般人」として整理された。最後に残った何も持たぬ少年こそ最も怪しいと疑われたが、徹底的な調査の末、真に何もないと確認された。フーシュは彼らを新天地へ送り出す準備を整え、胸を張って出立を宣言したのであった。
閑話 オブライエン
神官戦士オブライエンと弱者の目
神官戦士オブライエンは三十歳の戦士であった。回復魔法は使えないが、戦闘能力は上位に位置すると自負していた。彼には「弱者の目」と呼ばれる力を見る特殊な目があり、それによって危機を回避してきた。色や数値ではなく感覚的に相手の力量を把握するその目を、彼は絶対に信頼していた。
断れぬ依頼と監視命令
休暇中、コーリン教の司祭から仕事を依頼された。内容は大司祭フーシュの任務補助と、周囲の戦力の監視であった。自らの能力を知られている事実に動揺しつつも、断れぬ状況により引き受けた。移動は転移魔法で行われ、護衛対象は二十人の一般人らしき集団であった。
死の森と異様な村
目隠しを外すと、そこは森の中の村であった。周囲の存在を「弱者の目」で見た瞬間、森そのものが危険と告げていた。村で出迎えた天使族はフーシュを遥かに上回る力量を持ち、さらにハイエルフ、鬼人族、リザードマン、ハーピー、ミノタウロスなど、いずれも天使族級の強者ばかりであった。ここが悪名高い死の森であると悟った。
規格外の存在たちと目の限界
吸血鬼ルールーシーや竜の女を目にしたが、それ以上に異常だったのは村長であった。力量が測れず、かすかに神性を感じるのみであった。さらに、ただの猫にさえ神を感じた瞬間、彼の目は限界を迎えた。理解を超えた存在に囲まれ、オブライエンは気を失った。
黄金の少女と新たな決意
意識を失う直前、漆黒の狼に乗る黄金に輝く少女を見た。彼はそれを大英雄の姿と直感した。任務後、依頼主には関わらぬ方がよいとだけ伝え、報酬も辞退した。しかし彼は剣を取り、鍛錬を再開した。いつかその少女が軍を率いる時、その一員として立てるようになるためであった。
【二章】移住組
1 移住者とドース
移住者の受け入れと歓迎会の開始
新たに男女十組二十人が村に到着した。すでに相手が決まっているため色恋沙汰の揉め事は起きにくいと見込まれ、まずは全員を宿へ案内した。移動疲れや恐怖で気を失う者が多く、クロの子供やザブトンの子供を怖がる者もいたが、移住する以上は慣れる必要があると判断された。フーシュ一行は急ぎ帰還する必要があり、気絶者の送迎は始祖が担うことになった。夜は宿の一階広間で歓迎会が開かれ、護衛に目隠しをさせた事情や、それぞれへの土産の配慮も行われた。
料理と噂による動揺、リアの火消し
歓迎会は、並んだ料理を見た移住者が過度に怯えたため、その誤解を解くところから始まった。自分たちが食材にされるのではないか、クロやザブトンが危険ではないかといった不安が噴出し、さらに恐れている対象がハイエルフだと判明する。リアは同族由来の噂だと説明し「誤解」と説得したが、余計な一言で逆に怯えを増やす場面もあった。それでも食事が始まると移住者は美味を連呼し、作法も整っていて、緊張が主因だったと見られた。
ルーの治療とウルザの同伴
宴の最中、ルーが移住者の娘を別室に連れ出した。内容は男である村長には言い難い症状で、命に関わらないが早めに治療した方がよいという判断であった。パートナーの男は心配したが、治療は一分も経たずに終わり、娘は明るさを取り戻した様子となった。なぜかウルザも同行しており、その後ウルザが高そうな剣を持っていたことが村長の気掛かりとして残った。
土人形との会話と主役の移住者の現状確認
村長は土人形と会話しているうちに、主役である移住者を放置しかけた自覚を持つ。しかし移住者側は各所で会話が成立していた。獣人族と人間の両親を持つ者はガット夫妻が相手をし、高貴な雰囲気の者はフラウや文官娘衆が受け持ち、ドワーフは酒、鬼人族メイドは料理の話題で対応していた。
竜の気配に反応する娘とドースの説明
移住者の中に、宴に集中できず特定方向を気にする娘がいた。村長は屋敷や牧場方面を疑うが、そこに現れたドースが「娘が気にしているのは竜だ」と指摘した。ドースは来訪中の竜たちと直接会わず遠くから見守っていると述べ、娘が「竜の巫女」であると説明する。竜の血を飲んだ一族の末裔で、人と竜の間を取り持つ役目を担った存在だという。ただし役目は過去の話で、現在は竜の存在に戸惑っているだけだとし、気配遮断を解いた瞬間に娘がドースへ反応することで、その感知の仕組みが示された。
巫女の性質と「慣れ」の見通し
ドースは竜の巫女の伝承について、自身でも詳しくはないと認めつつ、歌声が竜の怒りを静める効果があるという話を挙げた。巫女側の具体的な負担としては、身体に人間サイズの竜の鱗が出る程度だと説明し、防御力が増すと割り切る姿勢を見せた。村長は女の子への負担を案じたが、ドースは「放置でよい」「すぐ慣れる」と結論づけた。
懐妊祝いと義父としての挨拶、ライメイレンの介入
ドースは咳払いの後、ハクレンの懐妊に対して村長へ礼を述べ、今後も娘をよろしく頼むと父親として頼み込んだ。村長も笑顔で応じたが、続けてドースは自分自身の扱いも頼みたいと弱気を見せる。その背後には人間姿のライメイレンが立っており、気配遮断を解いたことで気付かれたと推測された。村長は義母も大事だと判断し、ライメイレンに引き摺られていくドースを見送った。
交流会としての成功と村長の小さな不満
歓迎会は交流会として機能し、移住者は食事をしっかり摂りつつ酒を控えめにし、生活上の不安解消のため人間関係の情報を探った。村側も情報提供に留まらず、移住者の素性や関係性を探る動きを見せた。竜が気になっていた娘は酒に逃げたのか酔い潰れるほどになったが、慣れる必要があると村長は考えた。
一方で移住者の「頼りにする相手」に村長自身の名が挙がらず、村長は内心複雑さを抱えた。聞き耳を立て続けた結果、酒量だけが増え、土人形が気を遣って慰める形で場が収まった。
2 確認と移動
世話役とニュニュダフネの扱いの整理
移住組は一ノ村に住む方針であり、世話役の選定と、従来一ノ村を管理してきたニュニュダフネ族の今後が課題となった。移住組到着前に村長・イグ・マム・酒スライムで事前協議を行い、想定パターンごとに要望を整理した(酒スライムは途中で寝た)。到着後は宿の広間で正式に方針を伝達し、移住組二十人全員参加で質疑を受けた。
一ノ村への入村方針と「共同生活」の説明
司会進行はマムが担当し、移住組は村の西にある一ノ村へ住むこと、空き家が多く一組に一軒ずつ家を与えられることが告げられた。ニュニュダフネ族は住人数がまだ少ないため引き続き一ノ村で生活し続ける方針となり、移住組から「共同生活か」と質問が出る。マムは、ニュニュダフネ族は屋内より野外生活を好むなど生活様式が異なると説明し、理解補助として「同じ牧場に鶏と牛を放すように、同じ場所で各々が各々の生活をする」と例えた。移住組は概ね納得し、互いに頭を下げて受け入れた。
窓口の決定と当面の生活支援
要望・不満の窓口となる世話役はマムが立候補し、同じ一ノ村に住む立場として担当を希望したため承認された。食料は当面供給されるが、移住組は料理自体はできても未知の食材が多く調理法が分からないと述べたため、鬼人族メイドやハイエルフなど料理ができる者を一定期間借りることになった。運営面は「当面は共同生活」「代表は現リーダーのまま」で確認された。
仕事の考え方と追放不安の払拭
移住組リーダーは仕事内容を質問し、村側の希望は農業だが全員に適性があるとは考えていないと説明された。来年春までを猶予に、様々なことを試しつつ個々の役割を定める方針で、やりたいこと次第で追い出すことはしないと村長が明言した。一方で「働かない」状態は望ましくない含みは残しつつ、今年は生活に慣れることを優先する方針で連絡質問会は締められた。
移動手段の設計と距離感の共有
一ノ村までは距離があり、徒歩は負担が大きい。村長はラスティによる輸送も考えたが、マムが「距離感を教えるため」と却下し、馬車移動を採用した。冬に作られた改造馬車は納品物のため使用せず、山エルフが自作した高性能馬車(板バネ採用)を使用した。ただし一台で八人までのため、後部にサスペンションなしのリヤカーを連結し、さらにケンタウロスと馬を動員して分乗した。配分は馬車八人、リヤカー十人、ケンタウロス二人となり、席決めはジャンケンで決着した。村長はグルーワルドに騎乗し、マムと切り株姿のイグは馬に同乗、周囲はクロの子供たちが護衛する隊形で出発した。
一ノ村到着と生活ルールの徹底
到着した一ノ村は家が整然と並び、移住組は家の広さに高揚するが、ニュニュダフネと並ぶクロの子供・ザブトンの子供を見て萎縮した。マムが互いを紹介し、家は自由に選ぶが喧嘩は話し合いで解決すること、広場・井戸・トイレの位置、井戸とトイレの使い方を説明した。特に「排泄は必ずトイレ」「後は必ず手洗い」は最重要事項として強調され、感染症リスクを避ける意図が示された。さらに村のシンボルである大木への悪戯禁止、社(創造神と農業神の祈りの場)の説明も行われた。
補給と体制整備、ニュニュダフネの生活事情
移住組はペアで家選びを開始し、即決と熟考で性格差が出た。グルーワルドたちは馬車を切り離し、リヤカーだけで大樹の村へ戻って当面の食料、料理指導役、スライムを運搬した。戻ってきた際、料理指導のハイエルフ二人が揺れで疲弊しており、リヤカーにも板バネ等の導入を検討する課題が生じた。
一ノ村にはニュニュダフネの共同家があり、野外生活を好む一方で物品保管(褒賞メダルや交換品、衣服)が必要なため家が要ると整理された。ニュニュダフネは人型だと全裸になりがちなため着衣を求められており、結果として木形態や切り株形態でいる者が多い事情も共有された。
「客」から「住人」への切り替え
夜は一ノ村で歓迎会を行う予定となり、移住組は「昨日は客、今日から住人」という段階に入った。村長は事前に用意していた表札を、家を決めたペアへ順次手渡す。表札の受領をもって一ノ村の住人として正式に迎え入れられ、今後は生活に慣れることを当面の目標として歩み出すことになった。
3 色々やってみた
移住組の現状把握のための試行
一ノ村の移住者は元々街暮らしで、特定の職能が揃っている集団ではない。何ができて何ができないかを把握する目的で、各種作業を一通り試させた。
狩りの壊滅と防衛体制の増強
狩りでは、全員が完全武装しても牙の生えた兎一匹に勝てず、村長だけでなく防衛担当のクロの子供たちが強い衝撃を受けた。結果として、一ノ村の護衛としてクロの子供たちの配置数が倍に増員され、同時にザブトンの子供たちも増員された。マクラ級に育った四体が村の四方に寝床を作って警戒に就き、さらに防御強化としてリザードマン二人が常駐する体制になった。
建設の停滞と初建築の倒壊
建設関連は素人で、力も突出していないため進捗が悪い。料理指導のハイエルフが建設も教え、村長が加工済み建材を用意しても時間がかかった。初の建築物は半日で倒壊し、基礎的な施工力不足が露呈した。
酒造り・搾油・搾糖の壁
酒造りはドワーフの指導が厳格で、全員が早期にギブアップした。砂糖や油搾りもパワー不足が顕著で、獣人族の男の子たちに負けるレベルだったため、搾り機の改良で補う方針になった。
小物作り・発酵食品で適性が見える
小物作りでは数名が器用さを示し、鍛えれば戦力化できる手応えがあった。発酵食品作りは全員が作業でき、臭い耐性もあり、完成品を味わった経験が継続意欲を支えた可能性が示唆された。
鍛冶の失敗と窯の転用
鍛冶には鉄を融かす窯が必要だが、窯作りはハイエルフと獣人族のガットが嬉々として完成させ、移住者の成長機会を奪う形になった。肝心の鍛冶も移住者は早々に脱落し、ハイエルフとガットが占有状態となる。夜間作業の騒音問題もあり、大樹の村の離れに大きな鍛冶場を新設することで決着した。一ノ村の窯は移住者の焼き物作りに回され、焼き物では小物作り同様、数名が才能を見せた。
農業の基礎からの導入
農業知識は「種を撒けば勝手に育つ」程度で、当面は村長が万能農具で作った畑の世話を担当させた。畑は無理のない規模に抑え、各戸の裏に家庭菜園を作って希望作物を優先し、「育てる楽しさ」と「収穫の楽しさ」を先に覚えさせる方針とした。
目的の再確認と生活の安定
試行の目的は成果ではなく、適性把握と本人の希望探索である。移住組は全体として真面目に取り組むが経験不足は当然であり、過度に考え込まないよう村長が料理を作って労った。代表は、元リーダーだった男ジャックが正式に選出され、生活は安定し、ニュニュダフネとも概ね良好に共存している。トラブルは、ニュニュダフネが全裸で歩いたのを見た男が妻に責められる程度の小規模で、マムが処理できている。二ノ村ミノタウロス族、三ノ村ケンタウロス族とも交流が始まり、移住組側から話しかけるまでに改善した。
村長側の作業と鍛冶場建設の進展
村長は一ノ村に付ききりになれず大樹の村へ戻り、まずリヤカーへの板バネ搭載を試みたが山エルフが既に完了していた。続いて居住区南側に鍛冶場を建設し、レンガ用窯、炭焼き窯を経て、鉄を融かすことに特化した大規模炉を三基完成させた。火入れでガットが中心となり、ハウリン村の慣習に従って安全祈願の「火の神」(鉄で作る炎の象り)を最初に制作した。初作品として村長の希望で剣を打つ流れとなり、大型鍛冶場の稼働で鉄製品の供給・修理が容易になる見通しが立った。
ハウリン村への補填懸念と今後
自前の鍛冶が進むと、ハウリン村から購入していた鉄製品が減り、採掘した鉄鉱石の買い取りは増える。村長はハウリン村の生活への影響を懸念し、当面は馬車用スプリングの発注を継続しつつ、ガットと補填策を相談する予定とした。
収穫期到来と季節感の転換
一回目の収穫期を迎え、今年も豊作であることを確認しつつ、暑さの到来を実感した。祭りの季節が近いことも意識され、今年の催しへの関心が示された。
閑話 ジャック前編
雰囲気で選ばれたリーダー
ジャックはフーシュに集められた移住者たちのリーダーを務めている。選挙や明確な指名ではなく、雰囲気の流れでその立場に収まった。移住者の多くは顔見知りで、親友や妻の知人も含まれている。悪い気はしていないが、他の者たちが一歩引く姿勢で目立とうとしない点には以前から思うところがあった。面倒を見る覚悟はあるが、内心では物足りなさも感じている。
豪華な宿への困惑
移住先で最初に驚いたのは亜人ではなく宿の豪華さであった。外観は木造で質素に見えたが、部屋にはベッド、カーテン、安定した椅子と平らな机が揃っている。しかも夫婦で一室、希望すれば個室も可能という待遇である。通常なら十人以上が詰め込まれる広さであり、ふかふかのベッドなど考えられない。恐れ多く感じ、呼ばれるまで部屋の隅の床に座っていた。
歓迎会と疑念の崩壊
歓迎会では見たこともない料理が並び、好きなだけ取れると言われたが、最初は「最後の食事」だと疑った。しかし料理は感動するほど美味で、しかも間に合わせだと頭を下げられた。自身のこれまでの食生活を思い返し、涙が出そうになる。夜はベッドが怖くて床で寝たが、翌朝こっそり寝転がるとその快適さに衝撃を受けた。食事も朝昼ともに美味で、期待と戒めが交錯する。
仕事への焦り
何もせずに食事を与えられるはずがないと理解しているジャックは、村での仕事を問いただす。しかし返ってきた答えは「まずは生活に慣れろ」というものだった。どんな生活も三日あれば慣れると考えていた彼にとって、その言葉は肩透かしである。
移動とケンタウロス
一ノ村への移動では馬車と改造された荷車が用意され、乗車場所を巡る真剣なジャンケンが行われた。結果、妻が負けたため交代し、ジャックがケンタウロスに乗ることになる。丁寧に頭を下げたが、乗せてくれたケンタウロスは穏やかで、ゆっくり歩き会話もしてくれた。恐怖は次第に薄れ、馬車よりも良い場所だったかもしれないと感じる。
家選びと新生活の実感
夫婦で住む家は自由に選べると言われ、二軒で迷った末に話し合いで決定する。家具は揃っており、寝室にはベッド枠だけが置かれていたが、世話役のマムからふかふかの寝具が支給される。再び歓迎会が開かれ、料理は前日と違う内容でやはり美味であった。村の豊かさを実感し、ここに住みたいと強く思う。
表札と決意
村長から渡された表札を、妻と共に玄関に掲げる。それは仮住まいではなく、この地で生きる住人となった証であった。ジャックは、ここで認められる存在になるために努力しようと心に決める。
閑話 ジャック後編
武具の支給と槍の選択
移住者たちは武具を支給された。最初は鉄製の鎧だったが、装着すると満足に動けず、革鎧へ交換してもらう。武器は各種揃っており、当初は見た目で剣を選んだ。しかし素振りをしてみて、剣には技量が必要だと悟る。武器管理を担当するリザードマンに相談し、扱いやすい槍を受け取った。振り回さず突きに集中しろという助言を素直に受け入れ、実際に構えてみると手応えを感じた。武器を持つことで自分が強くなったような錯覚を覚えるが、その力は村と仲間を守るために使うと心に決める。
キラーラビットとの遭遇
牙の生えた兎、いわゆるキラーラビットとの戦闘を経験する。歴戦の冒険者すら震え上がる魔獣と聞き、周囲は青ざめる。結果は敗北だったが、生き延びたことで互いの無事を喜び合い、絆が深まった。同時に、狼たちがその兎を一撃で仕留める光景を目の当たりにし、彼らの圧倒的な実力を思い知る。
適性探索と挫折
その後、各種作業に挑む。建設では小屋が半日で倒壊し、酒造りでは匂いに酔い、搾油や砂糖作りでは力不足を痛感する。村長が容易に風呂や倉庫を建てる姿を見て悔しさを覚える。小物作りでは評価され、わずかな自信を得る。発酵食品作りでは強烈な臭いに耐えつつ、完成品の美味さを思い出して踏みとどまる。鍛冶では高熱と重労働に耐えきれず倒れ、無理をしたことを叱られた。焦らず生活に慣れろという言葉を思い返し、自身の焦燥を自覚する。
豊かな生活への戸惑い
三食十分に与えられ、夜は安全に眠れ、清潔なトイレと豊富な水がある生活は、これまでとは別世界である。フーシュのもとで学んだ生活よりもさらに整っている。この環境に慣れることこそが課題だと理解し、覚悟を決める。
歓迎会後の注意事項
移住初日の夜、歓迎会後に全員が再び集められた。そこを仕切ったのは村長の妻ルールーシーであった。彼女は三つの注意を告げる。畑で遊ばないこと、トイレを清潔に使い手を洗うこと、そして村長と敵対しないこと。どれも理にかなっている。食料の浪費は命取りであり、衛生は病を防ぐ基本である。最後の項目も、組織の秩序として当然と受け止めた。
村長の実力と確信
後日、村長自らが巨大な首のない猪を引きずって帰還し、血抜きから解体、調理まで行う。狼たちが誘導した獲物とはいえ、その腕前は圧倒的であった。完成した料理は美味であり、村長の力量を実感する。
敵対行動を取る理由など、どこにもないとジャックは確信するのであった。
閑話 新しい犬
外周任務と密かな期待
語り手はクロ率いる群れに属するインフェルノウルフである。数頭規模の行動時にリーダーを任される程度の実力を持つが、自身ではほどほどだと自覚している。現在の任務は森の探索と縄張りの主張であり、村を中心に円を描くように移動し、二十日ほどかけて外周を巡る。村から長く離れるため敬遠されがちな任務だが、討伐した獲物をその場で食べられる特典がある。さらに、群れに属さない個体と遭遇した場合の勧誘、すなわちパートナー探しの機会でもあった。
森で拾った子犬
任務十日目、牙の生えた兎を仕留めつつ巡回していた際、ぐったり倒れた子犬を発見する。インフェルノウルフの匂いではなく、正体は不明。見捨てる選択もよぎるが、異物発見時は持ち帰るか印を残せという規則に従い、自ら村へ連れ帰る決断をする。背に乗せ、水や食事を与えながら帰還し、なんとか命をつないだ。
救助と評価
村でボスに報告すると、即座に治療が手配される。子犬を救ったことを褒められ、頭や腹を撫でられたことで任務以上の満足感を得る。パートナー探しを中断してまで持ち帰ったことを後悔しない結果となった。
急成長と異質な力
三ヶ月後、子犬は急成長し、語り手よりも大きくなった。最初はボスが世話をしていたが、運んだ縁から語り手に懐き、面倒を見る役目が定着する。体当たりは強烈で、魔法も使いこなし、炎を吐いて兎を仕留めるほどの実力を示す。リンゴを分け合う姿は無邪気だが、その存在感は圧倒的である。
恋の季節と正体への疑念
恋の季節が訪れ、銀色の毛並みと狼らしい顔立ちから、もはや犬ではないと確信する。群れ内で語り手の恋路を妨げる形で常に側にいるため、パートナーを見つけられなかった一因でもある。子犬もいずれ自立すると考えつつ、どこか複雑な心境を抱える。
周囲の視点と真実
村長とハイエルフの会話では、拾われた個体がクロの子供と特に仲が良いこと、そしてその性別が雌であることが明かされる。勇ましい名前を付けた村長は意外そうにする。さらに吸血鬼の始祖と姫の会話では、その正体がフェンリルである可能性が示唆される。だが、この村ではそれすら特別視されず、気にしないことが最善とされるのであった。
閑話 ガット
次期村長候補からの転落と家族の再会
語り手ガットはハウリン村長の息子で、次期村長候補であったが過去形となっている。人間の女性ナーシィを妻に迎えたことが問題になったのではないかと自問しつつも、彼女を深く愛していた。別れが決まった夜に泣いて眠れなかったほどである。その後の経緯を経てナーシィと再び一緒になれたが、別離期間中にナーシィが子を産んでいた事実を知らなかった。娘ナートは外見が獣人族そのもので、四歳ながら大きく、ガットは強い父性と後悔を抱きつつ「娘とナーシィを守る」と決意する。
死の森への移住と恐怖への適応
ガットは大樹の村に「客」ではなく「村の一員」としている。死の森は禁足地として恐れられ、インフェルノウルフやデーモンスパイダーは遭遇すれば死を覚悟する存在だという認識を持つ。村内にそれらが多数いる現実に怯える一方、ナーシィは積極的に馴染もうとし、娘ナートはインフェルノウルフに乗って遊ぶ。ガットは不安を抱えながらも踏みとどまり、飯と酒の美味さで立ち直っていく。
妹セナとの序列逆転と劣等感
先行移住している妹セナたちとの関係が懸念である。ハウリン村では自分が上だったが、大樹の村ではセナが先輩であり、自分は下だと自覚して受け入れる。セナたちの仕事を手伝い、その過酷さと、セナが「女の戦い」までこなしている姿に感心する一方、自身の成長の遅さに落ち込む。ただし鍛冶の腕には自負があり、村で鉄を叩く音を聞いたことで状況が変わる。
鍛冶の再起と大樹の村での役割獲得
ハイエルフが小さく粗末ながら窯を持ち、鉄加工をしているのを見て、ガットは強く惹かれる。頭を下げて窯を借り、技術的には自分が上であるため、自然に「大樹の村の鍛冶師」として働く流れになる。ただし窯の規模上、修理や釘・矢尻など小物中心である。それでも「自分に合った仕事ができる」ことが重要であった。
一ノ村への鍛冶指導と“教える”決断
春になり、一ノ村に人間の移住者が住むことになったため、彼らに教える役を頼まれる。職人は技術秘匿が常道だが、大樹の村への恩を理由に惜しまず教えると決める。さらに、鍛冶は簡単に身につかず、一人前まで最低五年、追いつくには二十年はかかるという見立てもあり、教える余裕があった。教え方に悩む中、ハイエルフの提案で一ノ村に鍛冶場を作る案が採用され、ハイエルフの建設力と魔法乾燥で十日ほどで立派な窯が完成する。
教習の挫折と“夜鍛冶”問題
鍛冶は高熱・重労働であり、見学や下働きから始めようとするが、移住者は誰もついてこれず、頑張った男も熱で倒れてしまう。ガットは見守り不足を反省する。窯自体は新鍛冶場として自分が活用し始めるが、鍛冶終盤は火の温度を色で判断するため夜作業が必要である。大樹の村では騒音で夜作業が禁じられ、一ノ村でも同様に注意される。最終的に村長へ相談し、ハイエルフも交えて「大樹の村の離れ」に新施設を作ることが決まる。
増強された鍛冶場と火の神の儀式
ハイエルフが褒賞メダル五枚を投じ、ガットも残り一枚を差し出して施設増強を願う。結果として、工夫を凝らした立派な炉が三基、広い作業場、展示場所まで備えた大規模鍛冶場が完成する。初回の火入れ後、鍛冶場の守り神「火の神様」を最初に作る慣習を実施し、緊張しながら成形する。
初作品“剣”と決意の再確認
火の神の次が初作品となるため、村長に希望を聞くと「刀と言いかけて剣」を指定され、ガットは驚く。農具を予想していたためである。移住者向けなら槍の方が実用的では、と一瞬考えるが、特殊素材が豊富にある環境を前に発想が広がる。最終的に頭を下げて依頼を受け、「名剣と呼ばれる剣を打つ」と決意する。かつて怯えていた移住直後の自分を思い出し、今の自分を笑える程度には、この村での役割と覚悟が固まっていた。
弟子の呼び寄せとハウリン村への配慮
大規模鍛冶場が整うことで、ハウリン村からの鉄製品購入が減り、向こうの鍛冶師が余剰になって廃業者が出る懸念が生じる。ガットは特に置いてきた弟子二人(男と女)を守りたいと考え、村長に呼び寄せの許可を求め、認められる。また村長側も、取引減少の補填や鉱石買い取りの安定など、ハウリン村との関係維持を課題として捉えており、ガットは「自分はここで鍛冶を諦めない」ことを前提に、村と故郷双方の落としどころを探る姿勢を固めていく。
4 酒とお祭り実行委員会とクルミ
果実酒の量産判断とハチミツ酒の禁断
村長はドノバンと実験場で新しい酒の試飲を行い、ザクロ・トマト・スイカの三種について生産継続を決めた。初回は「大樽三つずつ」とし、果実確保(特に増やしにくいザクロは据え置き、トマトとスイカは次回増産)を指示する。価格設定は市場反応を見つつ、マイケルに相談する方針となった。
続いてドノバンは自信作として村産ハチミツで作ったハチミツ酒を提示する。村のハチミツは最高級で、マイケルから「酒にせず売ってほしい」と懇願されていたため、本来は酒造に使わない前提だった。ドノバンは褒賞メダル交換分のハチミツで自費研究として仕込み、年に大樽一つを「村用」として作らせてほしいと願い出る。村長は味を評価し、供給を約束するが、当面は極秘運用とする。生産決定した酒は大樹の社に奉納され、酒スライムが飲み干した件は「味の保証」という形で不問にしつつ、次回からの自制を注意した。
発酵の“コツ”と万能農具の介入
発酵は腐敗もあり運任せの側面が強いが、実験場では温度管理と酵母投入が成否の鍵として扱われている。酵母は本来ブドウなどから得るが、村長は「万能農具」で解決している。甘いものを放置すれば酒になるという酒飲みの言葉が引かれ、ドワーフの酒への執着と神意のような理屈が、酒造拡大の空気を後押ししている。
お祭り競技『タワー』の崩壊と“山崩し”への転換
今年のお祭りの試験競技は『タワー』で、各自が切った木を決められた場所に積み、高さを競う想定だった。しかし死の森の木は切断自体が重労働で、ハイエルフが半日かけて腰ほどの木を一本切るのが限界、文官娘衆は傷すら付けられず、切った木を事前に用意する方針に変更される。
だが「大きい木を確保した者が有利」「ミノタウロスに優位」「木組みはハイエルフの独壇場」「そもそも翼のあるハーピーが参加しにくい」と種族差が拡大する懸念が噴出し、試行錯誤の末、競技はバランスゲームへ変質する。チーム戦でスタッフが複数の木を積み、その上のシンボルを交互に一本ずつ抜いて落とした側が負け――木でやる山崩し方式である。
ただし「盛り上がるか」という不安が残り、実行委員会は前座として“弾かれた案”を追加しつつ、本番を「山崩し」として新名称で進める流れとなった。結果として『タワー』の原型はほぼ消え、実行委員会は木の形・組み方など設計面の詰めを続ける。
クルミの硬さと、ガット製クルミ割り器の普及
後日、クルミの硬さが問題となり、村長は割る手段を考える。山エルフやドワーフは素手で高速に割れる一方、人間には握力不足が壁となる。工夫として「堅い実同士で割る」「ペンチ型・万力型・落下式」など多様な発想が浮かぶが、最終的に村長はガットにクルミ割り器を依頼する。
完成したガット製クルミ割り器は一ノ村で愛用され、村長は少し寂しさを覚える。用途は「酒に合う」「割れないと死活問題」と実利で正当化され、道具として定着したためである。村長自身はトンカチを渡され、「目的が果たせれば過程は問わない」と折り合いを付けつつ、ペンチ型などの発想も捨てきれず、道具改良の余地を残している。
5 精霊魔法と一ノ村の色々
モルテの精霊魔法の実演
一ノ村移住者のリーダーであるジャックの妻モルテは精霊魔法を使えた。精霊を使役して効果を得る魔法であり、火の精霊を呼び出して火を灯してみせた。精霊のいる場所では効果が強いが、対話には疲労を伴うという。村では木と水の精霊が強く、土の精霊も回復傾向にあると説明した。木の精霊の実演では変化が見えなかったが、切り株姿のニュニュダフネが現れ、彼女が木の精霊のような存在であると判明した。
移住者の食料問題と意識の変化
移住者たちには保存食三十日分と十日ごとの食料を渡して様子を見ていたが、任せた途端に消費量が極端に減った。役に立てていないうちは食料を使うのが心苦しいという理由であった。そこで日持ちしない食材を中心に配ったところ改善し、現在は各自の役割も定まり、食事も十分に取るようになった。
一ノ村の主な仕事の確立
一ノ村では農業、小物作り、紙作りが主な仕事となった。農業は男女問わず行い、小物作りは男衆が竹細工を中心に担当した。編み物に熱中する者も現れた。紙作りは女衆が中心で、読み書きを学んだ経験を活かして写本から発展したものであった。
活版印刷と紙作りの発展
写本をきっかけに活版印刷を試み、山エルフの協力を得て完成させた。文字判子は竹製で、数を揃えるため男衆が担当した。印刷に備えて紙の自作を開始し、試行錯誤の末に形になりつつあった。大量印刷は写本で生計を立てる者を脅かす可能性があるため、当面は子供向けの本に限定し、孤児院へ寄贈する方針とした。
祭りの準備と警備体制
一ノ村の奮闘に応じて大樹の村では祭りの準備を進めた。会場補修やトイレ増設を行い、鬼人族メイドが新作料理を考案した。祭り当日の警備を担うクロの子供たちとは事前に遊びや狩りを行い、強さを確認した。狩りで得た獲物は祭り用の食材となった。
ザブトンの子供たちとの交流
ザブトンの子供たちとは狩りや催しを行い、等身大彫刻も制作した。最後に彫った作品にはコーヒーを飲みながら指揮をするザブトン将軍と題が付けられた。
6 お祭り 山崩し+a
ハクレンの昼夜逆転と是正
妊娠中のハクレンは荒れる様子もなく、食べては寝る生活を送っていたが、夜になると活動し、周囲を困らせていた。竜は夜行性ではないとラスティが否定し、昼寝が原因と判明した。対応に悩む中、ハクレンはライメイレンへの相談を拒んだが、最終的に夜は寝るよう促され、十日ほどで生活は整った。
祭り前の来訪者と準備
祭りの季節となり、一ノ村、ニノ村、三ノ村から参加者が集まった。宿が足りず急遽テントも設営された。来賓も多く、マイケルやドライム、魔王国領からユーリ、ビーゼル、グラッツ、ランダン、ホウが到着した。始祖とフーシュ、ドースとライメイレンも訪れ、ハウリン村のガルフ、ラミア族、巨人族、死霊騎士も加わった。
前座のクイズ大会
山崩しの前にクイズ大会が行われた。村の生活に関する問題が出題され、希望者が参加した。ヒラクの名を問う問題では意外に知られておらず、驚きがあった。最後の問題ではマイケルの孫に関する設問が出され、新たな孫の誕生が明かされると全員不正解となったが、全員復活となり盛り上がった。優勝はユキであった。
予定変更と二日目へ
クイズが予想以上に長引き、気づけば夜となったため山崩しは翌日に延期された。祭りは二日目へと持ち越されることになった。
7 クイズ大会の夜
宴会の進行と来賓の配置
夜は予定通り宴会となったが、明日が本番のため抑え目に運営された。来賓は帰らず、急な予定変更への申し訳なさが語られた。魔王国の来賓ホウは財務担当で寡黙な女性として紹介され、ドワーフ中心の卓で黙々と飲み続けたため、酒だけにならぬよう食事が差し入れられた。グラッツはロナーナのいる二ノ村住人の卓、ビーゼルは三ノ村住人の卓に入り、三ノ村住人の知り合い探しの進捗として二十人ほど見つけたが移住希望は半々で、少数ずつの移住をグルーワルド確認後に許可する流れとなった。
宴会での交流の様子
ユーリはフラウや文官娘衆と食事と会話を続け、甘味が差し入れられたが愚痴が多い内容であった。ランダンはマイケルとチェスをしながら酒を飲み、盤面も会話も酔いの影響で散漫であったため氷水が渡された。フーシュは当初輪に入りにくかったが、ジャックが話題を振って場を作り、戦闘のコツを語って盛り上がった。ドライム、ドース、ライメイレン、ラスティの卓では、ハクレンの子供の性別や名前、さらに暗黒竜ギラルの娘の大人しさと嫁ぎ先の心配が話題となった。始祖は死霊騎士、猫、酒スライムという変則的な面子の場でまったりし、ガルフは獣人族の輪で飲食しつつ剣の品評も行ったため、酒を飲みながら刃物を扱わないよう注意が入った。ラミア族と巨人族はダンジョン住民同士として交流し、ブラッディバイパーを特に気にしていないという認識が示された。
食事運営と各村の出店
昼の運営は不手際はあったが概ね成立し、特に食事関連が整理された。鬼人族メイドの食事処に加え、二ノ村と三ノ村に一品提供を依頼し、食材は大樹の村が負担した。二ノ村は野菜のみの炒め物を出し、注文した油の癖が強い味になったが悪くはなく、ロナーナの料理はグラッツが独占した。三ノ村のケンタウロスは牛の丸焼きを提供し、塩が基本だが醤油や味噌も使われ、美味しさから六頭分が夜までに消えた。クロたちが列を作って待つ様子に、ケンタウロス側が少し困る場面もあった。一ノ村には出店を求めず、初参加として雰囲気把握を優先させたが、彼らは何もしないのは心苦しいとして演劇を披露した。
余興の演劇と山崩し延期の反省
一ノ村の余興は演劇で、起承転結が明確な有名話として進行した。背景や衣装が不足する中、山エルフとリザードマンが樽や箱で背景を作り、ザブトンたちが衣装を即席で用意し、ハイエルフや獣人族の演奏も加わって本格化した。始祖の幻影魔法で虹まで出たため見栄えは良かったが、内容が人間の英雄が竜に挑む話であり、ドースたちは微妙な表情を見せた。演劇と余興大会、さらにクイズ大会で時間を使い過ぎ、本来の山崩しが実施できなかった点は問題として残り、クイズの時間見積もりと難易度調整が課題として認識された。
夜更けの注意とウルザの就寝
夜が更け、明日に備えて子供は寝るよう促され、大人も徹夜を控えるよう注意された。アームレスリングやチェスは良いが、模擬戦は避けるべきだとされた。クロたちの一部は警備として働くことになり、村長は休むつもりであった。日中元気だったウルザは夕食後に背中に飛びついたまま眠り、村長は信頼の表れとして受け止めつつ、ベッドへ運ぶことになった。ルーとティアが羨ましそうに見る場面もあったが、受け入れはしない流れで締められた。
8 山崩し
二日目開始と会場整備
急遽二日目となったが混乱は少なく、準備が進められた。飲み過ぎて寝ている者は転がされて移動させられ、会場が整うと山崩しの開始が宣言された。
山崩しの装置と基本ルール
会場中央に木材を縦に並べ、その上に平らな板を置き、さらに丸いクッション三つを載せた山が用意された。競技はチーム戦で、交互に木材を抜き、クッションを一つでも落とした側が負けとなった。相手が振った特殊サイコロの目の数だけ木材を抜かねば交代できず、観客にも見える大きなサイコロが用意された。
参加二十四チームの編成
参加は二十四チームで、種族や村ごとに分かれていた。イレギュラーチームは始祖、フーシュ、酒スライム、猫、死霊騎士で構成され、一ノ村チームはニュニュダフネたちであった。村の少年少女チームはウルザと獣人族の子供たちで、村長チームは村長と土人形の二人であった。
一回戦の主な勝敗と特徴
ザブトンチームはサイコロ運でハーピー族に勝利し、観客は倒れる派手さを楽しんだ。一ノ村チームは慎重に進めたが、攻めるリザードマンにサイコロ運も重なり敗北した。吸血鬼チームは考えた抜き方をしたが、ラミア族の勘に押されて敗れた。山エルフ対ユキでは審判が常に三を出し続けたこともありユキが勝ち進んだ。ドワーフは斧で木材を切って倒すが、四天王は真面目に相談して進め、二日酔いのホウを抱えつつ四天王が勝利した。悪魔族は気合が空回りして自滅し、巨人族が勝った。イレギュラーチームは酒スライムの判断が当たり、文官娘衆を僅差で下した。獣人族はガルフが出しゃばらず支えに徹し、三ノ村の大雑把さを押し切って勝利した。二ノ村は検討に時間をかけ過ぎて規定本数を抜けず、クロが勝利した。天使族はティア主導で勝ち、鬼人族は相談型で仲間割れの気配も見せた。ハイエルフは重心を見ながら進め、勘の村の少年少女をサイコロ運も含めて退けた。
村長チームの敗北と傾向の分析
村長チームは竜チームと対戦し、ハクレンは妊娠中のため安全な位置から会話のみで参加した。竜側は慎重に進め、ドライムが特に奮闘した。村長は外側から抜いて内側を残す型と、内側から抜いて外側を残す型の傾向を整理し、竜と逆に外側から抜く方針を選んだが、重心の読み違いであっさり負けた。
勝ち上がりと準決勝の特殊ルール
二回戦以降でザブトン、ユキ、四天王、イレギュラー、クロ、竜などが勝ち上がった。三チームによる準決勝では板が大きくなり、木材の数も増え、丸いクッションが十個積まれた。敗北チームが脱落し、残り二チームが決勝へ進む形式であった。
準決勝の駆け引きと四天王の敗退
準決勝は激しい駆け引きとなり、四天王が怪しい木材を抜いて勝負を仕掛けたが、サイコロ目が互いに一となり、クロとザブトンが切り抜けた。四天王の番で崩れ、四天王は敗退した。続いてクロはサイコロ二で二本抜きを迫られ、外の二本を同時に抜く決断で耐え切り、優位を作った。
決勝の結末と表彰後の宴会
最終局面でザブトンチームが一本を抜いた直後、板のバランスが崩れてクッションが落下し、優勝はクロチーム、準優勝はザブトンチーム、三位は四天王チームとなった。表彰式後は宴会へ流れ、祭りは成功と受け止められた。村長は土人形との仲が深まったと感じ、次は勝つと語り合いながら夜を楽しみ、妊婦は無理をしないよう意識した。
9 反省会と各村
祭りの後片付けと来賓の帰路
祭りは終わり、朝から昼にかけて後片付けが進められ、来訪者は順次帰路についた。ドース、ライメイレン、ドライムは昼過ぎに出発し、ライメイレンはハクレンを頼むと言い残した。マイケルはドライムに乗って巣へ移動し、部下の護衛で馬車移動する段取りとなり、護衛としてガルフが同行してシャシャートの街へ見聞を広めに行くため、小遣いが渡された。
魔王国勢と滞在者の動き
魔王国の四天王とユーリも昼過ぎに出発し、ホウはドワーフと深く打ち解け、無言で酒樽を贈られた。グラッツはロナーナとの別れを惜しみ、ビーゼルとユーリはフラウや文官娘衆に挨拶し、ランダンはリザードマンに挨拶していた。魔王向けの土産は多めに渡され、向こうで癒やされるという話になった。始祖はフーシュを転移で送り、死霊騎士と温泉へ向かい、ウルザは死霊騎士に手を振った。ラミア族と巨人族はもう一泊して帰る予定で、ラミア族は秋頃の仕事の相談を求め、巨人族は作物が欲しいので仕事口を尋ねた。
各村の帰還と護衛
一ノ村、二ノ村、三ノ村の者たちは集団で移動し、クロの子供たちとグランマリアたちが護衛として同行したため、問題はないと判断された。
実行委員会の反省点の整理
人数が減った大樹の村では反省会が行われた。最大の反省点はクイズ大会が予定以上に長引いたことであり、大人数ゆえの移動時間と、足の速さや体格などの種族差が要因とされた。会場を広く取る案も出たが、観戦や食事との両立が難しいと整理された。出題順を完全ランダムにせず、後半に簡単な問題が偏らないよう管理する案も挙がった。来賓からは来賓関連の問題を増やしてほしい要望も出た。山崩しは進行自体は円滑だった一方で、チーム戦の意味や戦略性の薄さ、サイコロ方式の見直し、罠やシンボルの不安定化など競技内容の改善案が多く出た。夜の宴会と朝の片付けの反省も行われ、反省会は一区切りした。
各村の農業状況と三ノ村の移住者対応
続いて各村の報告が行われ、ニノ村と三ノ村の農業は大きな問題がなく、豊作ではないが収穫は見込めるとされた。一ノ村はまだ本格的に始めておらず来年に期待とされた。三ノ村の帰還時にケンタウロスの新規移住者が来ることが伝えられ、ビーゼルからは三ノ村にいる者のリスト提供を求められた。ビーゼル側は代表グルーワルドら一部しか名前を記録しておらず、相手から誰が探しているのか問われて答えられない事情があったためである。さらにリスト外の同族移住希望も数人おり、受け入れ判断はグルーワルドに委ねられた。村長は誰が来ても代表はグルーワルドであると念押しし、後日ビーゼルがグルーワルドを連れて面接する流れとなった。
一ノ村からの手紙と名簿作成の決定
フーシュから、一ノ村移住者を心配する者がいるため手紙で連絡が欲しいという希望が伝えられ、代表ジャックが手紙を書くことになった。村のことは隠さず自由に書くよう言われたが、ジャックは初日の夜に書き上げ、内容確認では誤字が見つかった。移住者や人数が増えたことを受け、挨拶だけでなく名簿登録をもって移住完了とする仕組みを導入する方針が示され、最終管理は村長が担う形になった。手紙の配送は時間がかかり紛失もあり得るため複数ルートで送る慣習が語られ、街ではメッセンジャーが走り、手紙は富裕層の連絡手段であり、紙は高価で識字者も少ないという事情が共有された。なお、その手紙に使った紙は一ノ村製であった。
第三回武闘会の議題化と長時間協議
反省と各村報告の後、第三回武闘会が本日のメイン議題として提示され、村長は油断するとすぐ時期が来ると促され、前倒しで準備する意識を固めた。話し合いは夜まで続き、村長は膝の上で眠る猫を撫でながら対応した。
閑話 手紙の受け取り先
二十人の失踪と疑念
ハシシムはレイワイト王国で孤児をまとめる組織の一員であった。コーリン教の本部があるこの国では孤児の失踪は珍しいはずだったが、自身の管理区で十五歳以上の孤児二十人が一度に行方不明となった。陰謀や誘拐を疑い同僚に確認したが、他に失踪者はおらず、手がかりも得られなかった。時期的にフーシュの人狩りの噂が消えたことと重なり、ハシシムは疑念を抱いた。
フーシュとの面会と真相
覚悟を決めて教会本部に通い続け、半年後にようやくフーシュと面会した。多忙を極める姿を見て疑念は薄れていたが、直接否定の言葉を求めた。事情を説明し謝罪すると、フーシュも連絡不備を詫びた。二十人は紹介した移住先で元気に暮らしており、本来は上司経由で伝わるはずの連絡が混乱で止まっていたと判明した。
届いた手紙と新たな疑問
安心を求めたハシシムのもとに、代表ジャックから手紙が届いた。挨拶や内容から教養の高さが感じられ、移住先で家や食事を得て元気に暮らしている様子が綴られていた。孤児特有のサインも記され、偽りではないと確信した。しかし手紙は羊皮紙ではなく紙に書かれていた。高級品であるはずの紙が使われていることに、ハシシムは新たな疑問を抱いた。
【三章】夏と秋とヒイチロウ
1 デスボール
大量発生の予兆と最初の迎撃
森を転がる球状の魔物デスボールが百ほど確認され、大樹の村へ三日で到達すると報告された。ラミア族の警告を受けた遠方偵察により発見されたもので、畑への被害を防ぐためヒラクは最前列に降り立ち、「万能農具」で迎撃した。硬い外皮も問題なく処理できたが、百体の撃破に半日を要し、進路を変える個体も出るなど効率の悪さが露呈した。
二千体の出現と危機
直後に約二千体の大群が接近しているとの報告が入った。戦場での計測法による確実な数であり、百体でさえ苦戦した状況を踏まえると、ヒラク一人では対処不能であった。避難命令を出そうとした矢先、森からザブトンの子供たちが現れた。
ザブトンの子供たちによる制圧
ザブトンの子供たちは四匹一組で糸を張り巡らせ、即席の網でデスボールを捕縛し木々に吊り上げていった。殺さずとも動きを封じれば脅威ではなく、夜明けには約二千体が無数の木に吊られる光景となった。転がれない状態となった個体は他の魔物や魔獣に捕食され、村への危機は回避された。
後処理と外皮の検証
数体を持ち帰り外皮の利用を試みたが、クロの子供やラスティが容易に破壊できる程度で、素材としての価値は低かった。切り刻まれた外皮は玩具となり、肉はあっさりした鶏肉風で悪くはないが量は少なかった。
反省と今後の方針
結果として村は無事であったが、ヒラクは単独で対処しようとした点を反省した。ラミア族のように危険を避ける知恵や、他種族との連携の重要性を認識し、今後は協力体制で臨むべきだと心に刻んだ。
2 天使族の槍
デスボール戦を踏まえた強化案
グランマリアたち天使族の槍は、重量と速度を生かした直線突撃用の武器であり、鉄の盾を容易に貫く威力を持っていた。しかし回転するデスボールには通用せず、外皮の硬さと回転が障害となった。彼女たちは更なる強さを望み、ヒラクは武器の改良を決意した。
竜の鱗入り槍の試作
ガットの助言により、槍先素材の強化が課題と判明した。ハクレンとラスティの鱗を粉末化して鉄に混ぜ、ハイエルフの協力を得て槍先を製作した。完成品は外見こそ変わらなかったが、投擲試験で鉄盾を貫通し、地面に深く突き刺さる性能を示した。強度面では十分な成果であった。
クロの角という発想
試作の最中、クロの子供が折れた角を見て、ヒラクは角を槍先に転用する案を思いついた。角を竿に装着し試験を実施したところ、鉄盾に命中した瞬間に大爆発が発生し、周囲を吹き飛ばした。角は単なる硬質素材ではなく、魔法効果を宿す存在であった。
爆発の正体と威力検証
ルーの説明により、角は生えている間は魔法の杖の役割を果たし、抜け落ちると属性固定のマジックアイテムとなると判明した。明確な攻撃意思を伴えば発動する性質を持つ。再度の実験では、ハクレンの鱗を破壊する威力を示し、炎と雷属性を併せ持つ特級魔法級と評価された。
武器化の断念と用途変更
圧倒的威力は確認できたが、制御困難で危険性が高すぎるため、武器としての採用は断念された。天使族の槍強化は竜の鱗入り槍先に留めることとなった。一方で角の爆発は祭りや武闘会の開始合図など演出用途に活用可能と判断された。
反省
二度にわたる爆発実験により村内を騒がせたことを、ヒラクはアンに叱責された。軽率な実験であったと認め、謝罪する結果となった。
3 染料と花火
染料がもたらした変化
マイケルから届いた多彩な染料は、当初ヒラクの関心を引かなかった。しかしザブトンの子供が誤って染料壺に落ち、体の半分を赤く染めたことをきっかけに状況は変わった。体調に問題はなく、外皮は剥がせると判明したため、ヒラクは残りの染料で全身を塗装した。これを契機に他の個体も染色を望み、村には赤や青、水玉や迷彩柄など色鮮やかなザブトンの子供たちが増えた。迷彩模様は衣服にも応用され、ハイエルフたちに好評を得た。
穏やかな妊娠と甘味の要求
ハクレンの妊娠は順調に進み、気性が荒れる兆候もなかった。夜も眠り、適度に運動し、健康を保っていた。欲しいものを問われると甘い菓子を所望し、ヒラクは台所で菓子作りに励んだ。
角槍の花火実験
クロの角を用いた爆発槍は危険性から武器化を断念したが、演出用途として再実験が行われた。天使族は急降下投下の精度を確認し、命中率は九割以上を示した。最後に本物を一本ずつ使用する予定であったが、四人編隊による同時投下で的を吹き飛ばし、実験は花火のような様相となった。見学者が集まり、実験は長時間に及び、最終的にアンの叱責を受けた。用意した二十本は全て消費されたが、参加者は満足げであった。
角管理への警戒
爆発力の大きさを踏まえ、角の管理は厳重に行う方針が再確認された。特に興味を示すクーデルの視線に、ヒラクは若干の不安を覚えた。
マツタケとトリュフの収穫
ヒラクは赤松から育てたマツタケを収穫し、従来人気の高いトリュフも大量に用意した。需要を考慮し、比率は一対五十としたが、予想に反してマツタケも好評を博した。決めつけはよくないと認識しつつ、自室用のマツタケを出すかどうかで少し悩む結果となった。
閑話 ガルフの冒険(すぐ終わった)
大樹の村で知った自分の立ち位置
ガルフはハウリン村一の戦士としての自負を持っていたが、大樹の村でその自負が通用しない現実を知った。インフェルノウルフやデーモンスパイダーには及ばず、人型相手でも手も足も出ない場面が多かった。特にリザードマンのダガを目標に据え、尻尾攻撃の封印を条件にしても勝てない状況を受け入れ、鍛錬意欲を強めた。
シャシャートへの同行と再登録の目的
祭りの後、ガルフは商人マイケルに同行してシャシャートの街へ向かった。目的は冒険者登録の再取得である。活動停止により登録が剝奪されていたため、再登録でランク一からやり直すことになった。シャシャートの冒険者ギルドはコーリン教系の有名な組織で、街は以前より活気と建物が増していた。宿泊はマイケルの商会が経営する真新しい宿に無料で手配され、ガルフは厚遇に戸惑いつつも受け入れた。
ギルドの名物と無駄な揉め事
再登録を終えた直後、ガルフはギルド周辺のチンピラに絡まれた。初心者扱いされたことに不快感を抱き、関節を外して沈黙させたが、職員が介入して中断となった。その後も類似の連中が三組、計十二人現れ、ガルフは自分が弱そうに見えるのかという疑念とショックを抱えた。
調味料で埋めた食事の落差
宿の食事は一般的には上等であっても、ガルフには物足りなかった。大樹の村の食と調味料に慣れたためである。ガルフは村長から託された醤油・味噌・マヨネーズを使用し、食事を自分の舌に合う形へ調整した。周囲の客にも少量を分ける場面があり、調味料の価値を実感することとなった。
武闘会参加と拍子抜けの優勝
ガルフの第二の目的は、シャシャートの武闘会への参加であった。マイケルの資金で大会が整備され、定期開催と大規模化が進んでいると聞き、興味を抱いていた。結果としてガルフは優勝したが、対戦相手が弱く、感動は薄かった。煽り口上ばかりが目立ち、賞金額だけが大きい大会であった。複数の貴族から勧誘を受けたが断った。
ランダンとの会話で見えた誤解の理由
大会後、魔王国幹部ランダンが声をかけ、ガルフの装備が相手の油断を誘った可能性を示唆した。ガルフの武器は大樹の村で鍛錬に使っていた木剣で、服装も私服、鎧も着けていなかった。大樹の村では鎧が狙われやすく実用性が薄かったためだが、外から見れば舐めた装いに映り得た。さらに大会が年一回の特別大会であったことが判明し、それでも集まった戦力が低かった点にガルフは不満を抱いた。
二十日で帰還し、土産で恩返し
ガルフは見聞を広めるつもりで行動範囲を広げようとしたが、二十日後には大樹の村へ戻っていた。シャシャートで買った民芸品を大量に土産として持ち帰り、村長へ渡した。ウルザやナートが人形をねだり、アルフレートやティゼルも彫り物に興味を示し、反応は上々であった。ガルフは日頃の自由な生活、戦闘訓練、乗馬練習、食事の世話への返礼として納得していた。
調味料の枯渇と移住の芽
ガルフは旅の途中で調味料を消耗し尽くした。欲しがられる場面が多く、特にランダンに強い立場で持っていかれたことを悔やんだ。調味料の残量が行動限界に直結する現実を悟り、大樹の村への本格移住を考え始めた。娘とガットがいること、強者が多いこと、食の満足度が高いことが理由である。
余談:依頼としての“調味料”
冒険者ギルドには、醤油・味噌・マヨネーズの確保、または武闘会優勝者ガルフへの連絡を求める依頼が出た。依頼主は貴族の若者で、報酬は非常に高額であった。
4 夏のプール
ため池遊泳の危険とプール建設の開始
ウルザ、ナート、獣人族の男の子たちがため池で泳いだことをきっかけに、安全面と水利用の観点から遊泳を止めさせる必要が生じた。村長は村の西側に正式なプールを新設し、ため池から川へ戻す水を水源にしてスライムで浄化し、清潔な水を確保した。最初は深さ一メートル・長さ十五メートル・幅三メートル程度で作ったが、狭さを指摘され、二十五メートル四レーンへ拡張した。
年齢・体格差への対応としての追加設備
利用者が増えるにつれ、既存プールでは小さい子には深すぎ、大人には浅すぎる問題が顕在化した。村長は幼児向けとして深さ三十センチの円形プールを新設し、必ず大人の監視下で入る運用にした。さらに大人向けとして、両端二メートル・中央三メートル、長さ五十メートル五レーンの深いプールも整備し、リザードマンたちが尻尾を使って泳ぐ様子などが見られた。スタート台を設置しつつ、誤解が生じたため表彰台も追加したが、飛び込み台は安全上の理由で見送った。
施設の拡張と“流れるプール”の成立
混雑の原因が「泳ぐ者」と「涼む者」の混在にあると判断した村長は、住み分けのため追加工事を指示した。十日後、既存の五十メートル・二十五メートルプールを囲むコース状プールが完成し、深さ二メートル・幅五メートルで全長は曲線のため不明ながら長距離となった。大人に一定方向へ歩かせて流れを作り、浮き輪の代わりに桶や樽を投入したことで、ウルザを先頭に遊覧が流行し、流れるプールが主役級の人気となった。
周辺整備と屋台の定着
プール周辺には脱衣所・トイレが整備され、鬼人族メイドや文官娘衆が屋台を出した。提供品はカレー、ラーメン風、ヤキソバ風、かき氷、ジュース、酒である。飲酒後の遊泳は禁止とし、ドワーフたちは泳ぎ切ってから酒と食事を楽しむ形に落ち着いた。人気の中心はカレーで、次いで“再現しきれない”麺類が定番料理として広まった。村長自身も「醤油ラーメン肉増し」を注文し、味には満足していた。
各種族・各人物の過ごし方と夏の生活リズム
ハクレンは妊婦としてプールサイドで身体を冷やし過ぎないようにし、酒スライムと猫が並んで涼む場面があった。天使族はホバリングから斜め入水・潜水・浮上を繰り返し、水鳥のような遊び方を見せたため、底への衝突や潜水時間の長さを村長が注意した。ルーは浅いプールでアルフレートとティゼルの面倒を見ており、村長はジュースを運ぶ役回りも担った。夏の間は、仕事の合間にプールで遊び、風呂の後は家で食事という生活が定番化した。
麦酒需要の増加と閉鎖イベント
冷やした麦酒が大人気となり、ドワーフたちは翌年の大麦作付け増を要求した。秋が近づきプール閉鎖を決めると、寂しさへの区切りとして文官娘衆と相談し、閉鎖イベントを実施した。内容は村全体でのバーベキューであり、「涼しくしてくれたプールに感謝して」という趣旨で夏を締めくくった。
閑話 ヴォルグラフ
嫡男としての自負と父の監督役
ヴォルグラフは魔王国貴族ゴフリル子爵家の嫡男であり、家を支えるのは自分だという強い自負を持っていた。父は優し過ぎて不利な約束をしがちだと考え、会議や会食の前に釘を刺すことを日課としていた。家督譲渡の申し出もあったが、父を楽隠居させるつもりはなく、自身を「厳しさ担当」と位置づけていた。
ランダンの妹との縁談という難題
父がクローム伯との会食から上機嫌で帰宅し、ヴォルグラフはメモ内容を確認した。そこに記されていたのは、魔王国四天王ランダンの妹との見合い話である。ランダンは庶民出身の英雄で四天王位は公爵家相当とされ、断るには相応の理由が必要だった。身分差・年齢差(三歳年上)といった理由も、過去の発言で使えず、ヴォルグラフは追い込まれた。
叶わぬ憧れと逃避としてのシャシャート滞在
ヴォルグラフには憧れの女性がいた。クローム伯の娘フラウレムであり、学園を辞めて消息が途絶え、結婚の噂すら否定し続けていた。見合いから逃れるため、シャシャートの街での武闘会を口実に滞在を決めるが、安宿は満室で高い宿に一人で泊まる羽目になり、身の回りの不便さを痛感した。節約のため食堂利用を選び、部下の武闘会出場も賞金折半で契約していた。
武闘会の誤算と“強者の現実”
大会は年一回の特別大会で、魔王も注目し、ランダン本人も来場していた。ヴォルグラフは自身の存在が露見し、見合い話が直行する事態を恐れたが、部下は全員あっさり敗北した。さらに、防具も付けず木剣で相手を軽くいなす獣人族の男が勝ち進み、優勝する。ヴォルグラフは「世の中は広い」と痛感した。
ガルフと調味料、そして見合いの決着
優勝者は宿で最上級の料理を食べていた獣人族で、名はガルフだった。ランダンはガルフと親しい様子でヴォルグラフに近づき、見合い話は避けられなくなる。その場でランダンは、見合いの席の料理のためにガルフから醤油・味噌・マヨネーズを「妹の幸せ」を理由に取り立て、金貨払いを提示するが、ガルフは四分の一だけ渡した。ヴォルグラフは会話の中心が料理と調味料で進む様子を見て、見合いに「楽しみな点」ができたと感じた。
料理で意識を奪われた見合いと決意
後日、見合いの席で出た料理があまりに美味く、ヴォルグラフは食べた瞬間に意識を持っていかれ、気づけば話がまとまって結婚が決まっていた。料理はランダンの妹の手作りであり、ヴォルグラフは「相応しい夫になる」と決意する。結婚は学園卒業後で、当時十二歳のヴォルグラフには五年の猶予があった。
余談:賭け情報の伝達ミスとメイドの勝利
大会直後、ヴォルグラフは賭けで小遣いを失っていたが、メイドは「ガルフはゴロウン商会推薦枠で優勝候補筆頭、賭けるなら彼」との情報を本来伝えるつもりだったと判明する。メイドの兄がゴロウン商会勤めで情報源があり、メイドは利益を得た側だった。ヴォルグラフは悔しがりつつ、商会利用時の割引提案を「覚えておこう」と受け止めた。
5 秋と新しい住人
秋の収穫と加工の繁忙
秋に入り、手の空いた者たちで収穫を進め、文官娘衆が量を記録した。豊作であることは喜ばしいが、保管のため倉庫増設が課題となった。脱穀が必要な作物は、山エルフが改造した水車を用いて処理し、効率は上がった一方で騒音が問題として残った。ワイン用ブドウの圧搾は膨大な量となり、産業規模の作業として定着しつつあった。
ラミア族の白ワイン造りと巨人族の圧搾作業
今年も白ワイン造りのためラミア族を雇い、人数は二十人に増えた。報酬は作業期間中の衣食住と作物で、希望があれば前年の白ワインも分けることになった。さらに北のダンジョンに住む巨人族を五人雇い、油などの圧搾作業を担わせた。住居は洞窟でよいという要望により掘削し、換気は風の精霊魔法で常時行われていた。
ブラッディバイパー卵の衝撃と食文化の共有
巨人族は手土産としてブラッディバイパーの卵を百個ほど持ち込んだ。茹でて殻を剥くと、透明な白身状の塊が現れ、黄身が見当たらない特殊な構造であった。食感は硬めのゼリーに近いが、味は濃厚な卵として極めて好評となり、村人も巨人族も驚いた。巨人族は従来丸呑み中心で茹で食いを知らず、調理法や調味料の共有を通じて生活技能を学ばせる流れが生まれた。
キノコ・竹・果実の追加収穫と役割分担
ハイエルフにはキノコ類(シイタケ等)とトリュフ採取を依頼し、クロの子供を同行させて掘削地点を特定させた。併せて竹の伐採も行い、冬の作業資材として一定数を残す運用とした。果実の収穫はザブトンの子供たちが担当し、身体ほどの果実をバケツリレーで運ぶ様子が労働力としても景観としても印象的に描写された。収穫自体は二十日ほどで一区切りとなったが、発酵食品、酒造り、圧搾、脱穀は継続し、冬支度へ作業が移行した。
二ノ村・三ノ村の収穫評価と独立採算への課題
二ノ村(三百…ではなくミノタウロス族中心)と三ノ村(ケンタウロス族中心)の収穫状況を確認した。現状は収穫物が大樹の村側(実質的に村長の管理下)へ集約され、住民は雇用者扱いである。将来的には各村の独立採算を目指すが、二ノ村は収穫量が予定より少なく畑拡張を希望し、三ノ村は概ね良好だが一部作物が未達で対策検討中とされた。世話役として二ノ村はリザードマンのナーフ、三ノ村は文官娘衆のラッシャーシが対応した。
交易体制の調整と小さな収穫祭の決定
妊娠中のハクレンが竜の姿になれず輸送力が落ちる中、ドライムが支援に来た。ラスティはドースやライメイレン方面の長距離輸送を担当し、近場のドライムの巣への輸送はラミア便で回すなど、今年は輸送負荷が偏った。収穫を祝う小さな収穫祭を大樹の村でも行い、さらに二ノ村・三ノ村にも追加食料を渡して各村で収穫祭を許可した。一ノ村についても仲間外れを避ける意図で参加を認め、世話役の獣人族マムから移住者の努力状況が報告された。
収穫祭の演目と“花火”の定着
収穫祭は大樹の社への奉納を中心に進行し、なぜか始祖が仕切った。冒頭演出はクロの角による爆破を“花火”として実施し、天使族七人が高高度から七つの穴へ同時投下して縦長の爆炎を立ち上げた。穴に落とすほど高く派手に上がると判明して以降、天使族は精度向上に熱中し、八十センチ穴へ確実に落とせると豪語するまでになっていた。続く演目は各種族が持ち回りで披露し、最後はウルザら子供中心の演劇が本命として大盛況となった。
新しい住人の加入と適応の壁
この収穫祭の流れで新たな住人が増えた。天使族のキアービット、双子のスアルリウとスアルコウの三人が移住し、加えてティアがハウリン村から連れてきた獣人族ガルフ一家(本人・妻・息子・娘の四人)が合流して計七人となった。ガルフの移住は意外だったが、ハウリン村側に問題がないことを前提に受け入れた。先に移住していたガルフの娘が最も喜び、リザードマンのダガも強く歓迎した。移住者の多くはクロやザブトンの子供たちに圧倒され、気絶と着替えを繰り返しつつ、慣れることが当面の課題として残った。
6 豚と新たな生活と爵位
豚の導入と移住者の定着
マイケルが来訪し、収穫祭に参加できなかった鬱憤を晴らすように食事を楽しんだ。村ではブラッディバイパーの卵料理が好評で、持ち込まれた百個は短期間で消費された。マイケルは文官娘衆と買い付け交渉を行い、調味料や各種物資の需要増が確認された。村には子豚二十頭が到着し、食用であることを踏まえて一ノ村で飼育する方針となった。狩猟依存による資源枯渇を避ける目的もあり、まず繁殖を優先し、増え次第二ノ村・三ノ村にも展開する計画が立てられた。豚舎と柵の整備はハイエルフに依頼された。
ガルフ一家と天使族三人の生活基盤
移住したガルフ一家は大樹の村の居住区に家を建て、ガット宅の近隣で問題なく馴染んだ。ガルフの息子はハウリン村に婚約者を残しており、将来的に呼び寄せたい意向を持つが、相手側の両親が採掘現場の責任者で引き止められている事情が判明した。娘は家事担当で、抜けると家庭が回らないという抵抗もあった。村長は協力姿勢を示しつつ、呼び寄せに固執しないよう助言した。ガルフ一家は獣人族としてセナ配下に入る想定だったが、ガルフが「隊長はできてもリーダーは無理」として前面に立つのを避け、セナ体制が維持された。
一方、天使族のキアービット、スアルリウ、スアルコウは一人暮らしが難しいとして村長の屋敷の空き部屋に住むことになった。家事は手伝え、食事を強く楽しみにしている様子が描かれた。スアルリウとスアルコウは上空警戒に編入されたが、低空飛行中に魔獣の襲撃を受け、クロの子供たちに救助されて負傷し、治療が必要となった。
買い付けの拡大とケンタウロス移住の増加
ビーゼルが貴族付き合いの事情で来訪が遅れたと説明しつつ、複数の要望品(調味料、酒など)を持ち込み、文官娘衆へ実務を委譲する形で購入を進めた。依頼元にはホウ、魔王、ユーリ、ランダン、グラッツらが含まれ、グラッツからはロナーナ宛の手紙も託された。続いて、ケンタウロスの移住希望者が四十一人に増えていると判明し、三ノ村の代表グルーワルドと世話役ラッシャーシを交えて協議が行われた。増加の背景には、冬の口減らしとして避難先がケンタウロスを「労働力から負担」へ扱いを変える現実があった。
爵位問題と“コール子爵”の誕生
移住希望者の中に爵位持ち(男爵)が一人いることが問題化した。代表は庶民のグルーワルドであり、貴族である男爵の将来の立場問題が懸念された。男爵位放棄は、その爵位が戦場を取り戻す大義名分に結びつくため不可能と整理され、しかも当人は十歳の少女であったため排除は現実的でなかった。
解決策として、魔王が村長の屋敷ホールでグルーワルドを叙爵し、グルーワルド=ラビー=コールを子爵にした。通常では不可能に近いが、今回は権利の多くを放棄し、義務も極力免除する「名目上の爵位」として設計され、目的は男爵を統制できる上位身分を用意する点にあった。国からの俸給に当たるものも辞退された。叙爵後、グルーワルドは価値観の崩壊をこらえるように固まり、ラッシャーシも同様に価値観への衝撃を述べた。新規ケンタウロスの受け入れは、三ノ村での住居建設が進んでからとなった。
出産準備と温泉地の異変
ドースは面会名目でハクレンの様子見に来訪し、ライメイレンも出産時期が近いとして合流予定となった。ドライムは悪魔族を連れて出産準備に入る計画が示された。始祖は温泉目的で滞在し、宿泊施設がないため村長の屋敷に泊まる流れとなった。温泉では卵の追加調達を検討する一方、温泉地周辺で魔物の死骸が山積みになり、死霊騎士が三体に増えているなど不穏な状況が確認された。パニックカリブーが敵意なく集まって管理を手伝っているらしい点も含め、温泉地の環境が以前より変質している兆候が示された。
7 投石器
投石器の製作と試射
秋の多忙(冬支度、武闘会準備、新規ケンタウロス移住対応)の最中、水車動力の追加活用を検討する会話が暴走し、村長と山エルフが車輪付きの大型投石器を自作した。南側の競馬場に設置し、約二百メートル先の的へ試射した。弾は岩ではなく一メートル四方の木製サイコロ弾(三発)を用意した。一発目は飛び過ぎて的の後方に着弾、二発目は的にかすり、三発目で的の中心を貫いて粉砕する威力を示した。完成度には満足したが、農業用途としては不適と村長は判断した。
安全管理と“飛ばす遊び”への転用
事故防止のため、クロの子供やザブトンの子供、見学者に退避指示を出し、射線上だけでなく後方も立入禁止とした。試射後、酒スライムが現れ、村長は生き物の発射は拒否したが、提案を受けてサイコロ弾にパラシュートを装着し、高く打ち上げて落下させる実験に移行した。百メートル程度まで上がって落下し、パラシュートが開く様子が娯楽として成立した。酒スライムは上空搬送を望み、キアービットがパラシュート付き酒スライムを運搬したが、風で森側へ流されかけたところを、ザブトンの子供が糸で回収補助し、凧揚げのような運用で安全に回収した。ウルザの発射希望は、投石器の発射自体は許容されても本人搭乗は却下された。
打ちっ放しの流行と作業回帰
希望者が増えたため、複数の的に点数を付け、サイコロ弾を量産して打ちっ放しが始まった。パラシュート付き弾は意外に命中率が高かったが、弁当輸送など実用案は破損の想像が先に立ち、村長は実用化を見送った。山エルフは改良案を考え始めたが、文官娘衆の視線もあり、水車動力の本題へ戻るよう促された。投石器を放置すると危険なため、村長は仕事に戻り、残る者に見張りと安全運用を任せ、生物を飛ばさないこと、改良はほどほどにすること、パラシュートは正しく畳むことをキアービットへ注意した。
夕食後の反応と“敵対したくない村”の自覚
夕食時、山エルフは投石器で城壁攻略に必要な基数を議論していたが、村長は攻城予定がないと釘を刺し、キノコ鍋を勧めた。キアービットと双子の天使族は、突発的に投石器を持ち出す村の気風、そして角の槍投下が既に強力である点を話題にし、この村と敵対したくないという認識を共有した。
ガルフの息子は投石器の命中の難しさを体感し、魔法で作った水球弾が発射衝撃に耐えず失敗したことから、弾体強度の必要性を学んだ。父ガルフは、まずミニチュアで試作し、村長や山エルフのヤーに見せて意見を得てから進め、仕事を優先するよう助言した。
8 ハクレンの出産
ハクレンの産気と助産師の采配
ハクレンが産気づき、村長は動揺するが手出しできなかった。ドライムが連れてきた悪魔族のベテラン助産師二十人が揃い、近くに付くのは一〜二人に絞り、残りは村の女性陣へ助産を教えた。助産師たちは的確に部屋を取り仕切り、村長は邪魔者として排除された。
ウルザとグラルの睨み合い
屋敷の外で、ウルザが同年代ほどの女の子と睨み合っていた。近くにはドースと渋い中年が並んで座っており、正体は暗黒竜ギラルであった。ギラルの娘がグラルで、睨み合いの相手であることが判明した。
竜族側の説明では、伴侶が生まれる気配を感じると駆けつけて“獲得”しようとする本能があり、グラルはこれから生まれる子を狙って来た可能性が高いという。性別は未確定だが、グラルが来ている時点で男児の可能性が濃いと示唆された。村長は状況に納得しきれないまま、下手に刺激しない方が良いと諭された。
握手して猪狩りへ
ウルザとグラルは無言で近づいて握手し、そのまま並んで森へ向かった。村長は危険を察して追跡し、クロの子供たちも同行した。追跡側は走り慣れておらず、ドライムは枝にぶつかり、ドースは走る経験がほぼないと漏らし、ギラルは比較的余裕を見せた。途中で、ギラルとドライムの妻グラッファルーンが叔父と姪の関係にあることも明かされた。
追いつくと、二人は巨大な猪と戦っていた。グラルは小型の竜姿(全長五メートル程度)で弾かれ、ウルザも剣を刺すが決め切れなかった。村長は万能農具で猪を仕留め、二人を叱責した。理由は“生まれてくる子への贈り物”であったが、出産中のハクレンを不安にさせる行動として禁止された。
仕留めた猪は食料として回収し、ギラルが竜姿で運搬した。
【出産成功】竜族が取り囲む祝宴
村に戻ると、男児が無事誕生しており、祝宴の最中であった。周囲にはライメイレン、スイレン、セキレン、マークスベルガーク、ヘルゼルナーク、ドマイム、クォン、クォルン、グラッファルーン、ラスティなど竜族関係者が集まり、そこへドライム、ドース、ギラル、グラル、村長も加わった。
ハクレンも元気で、ウルザも姉として近づくよう促された。村長が赤子を抱こうとすると、助産師に「身体を綺麗にしてから」と止められ、森帰りの面々は風呂へ向かった。
【命名】竜族の命名規則と「ヒイチロウ」
竜族には名前で血筋や性別が分かるようにする傾向があり、ドースの子は頭に「ド」、ライメイレンの娘は末尾に「レン」、マークスベルガークの娘は末尾に「ク」、グラッファルーンの娘は末尾に「ン」、ギラルの子は息子が頭に「ギ」、娘が頭に「グラ」といった例が語られた。ただし絶対規則ではなく両親が自由に決められる。
村長は自分の名(火楽)から「ヒ」系を頭に置く案を考え、男児名の候補が潰れた末に「火一郎(ヒイチロウ)」を提案した。最終決定はハクレンに委ねたが、ウルザと相談しながら決める流れとなり、ドースやライメイレンの口出し、さらにグラルの参加まで懸念された。結果、命名は「ヒイチロウ」に決まった。
家族としての位置づけと締め
ヒイチロウは竜族に盛大に祝われた。アルフレート、ティゼル、さらにリリウス、リグル、ラテ、トラインらにも“弟”として紹介され、仲良くするよう促された。祝いの席では、ウルザとグラルが狩った(とされる)巨大猪を料理に回し、村長は子供たちに勝手な森入りを禁じ、狩りは教わってからにするよう言い含めた。その夜は遅くまで賑やかに続いた。
閑話 猛者
無敗の自負と武闘会での完敗
ギアーゴは幼少期から負けず嫌いであり、大人相手でも引かなかったが、身体が小さく勝てなかった記憶を持っていた。成長後は恵まれた体躯を徹底的に鍛え、左右に片手剣を持つ独自の戦闘スタイルを確立して以降、負けはなかったと自負していた。
しかし、シャシャートの街の武闘会で、木剣一本に普段着の獣人族の男に一方的に打ちのめされ、完敗した。油断や慢心を疑うが思い当たらず、やがて相手が自分より強い可能性を認めざるを得なくなった。
達人という仮説と揺れる心
武器と防具が許される大会に木剣と普段着で出場する姿から、相手は武術の達人なのではないかと考えた。達人であれば敗北も納得できると一度は気持ちを整理したが、翌朝には再び悔しさに悶えた。達人ならばもっと名が知られているはずだと否定し、自分の敗北を受け止めきれずにいた。
特訓の模索と戦法の見直し
対処法が分からず、まずは食事を取り、その後も悩み続けた。通行人に相談し、特訓という助言を得たが、普段から厳しい鍛錬をしているため具体策に迷った。そこで自身の戦闘スタイルを見直し、右手を攻撃、左手を防御に使う戦法が通じなかった事実に向き合った。右の剣をより強化すればよいと結論づけ、まずはそこから鍛え直すことを決意した。
目標の再設定と武神ガルフ
一撃で敗れた現実を踏まえ、短期間の特訓で勝てるとは思わなかったが、近づくことはできると考えた。対戦相手の名がガルフであると知り、目標として掲げることにした。達人ガルフでは物足りないと感じ、武王を経て武神ガルフと呼ぶようになった。数日後、他の者も同様に武神ガルフと呼んでいることを知り、ギアーゴはその強さに近づくべく訓練を続けた。
【終章】冬の準備と研究
1 新しい移住者とその他
石工を始めたガルフの息子
ハウリン村で採掘に従事していたガルフの息子は、大樹の村では採掘の機会が少なく、仕事に困った。採掘現場が森の中であり、主にハイエルフが担っているためである。熟考の末、彼は石工を始め、現在は石畳作りに取り組んでいた。屋敷から南への直線道路や居住エリアの主要道を石畳にする計画で、すでに屋敷前五十メートルほどが完成していた。文明的な印象を与えるが、最近は武闘会会場の床用石畳を優先していると説明された。
滞在を続ける竜一族と宴の様相
竜一族は帰還せず滞在を続けていた。表向きの理由は武闘会であり、実際にはヒイチロウを可愛がることと食事や酒が目的であった。助産に来た悪魔族へ鬼人族メイドが料理を教え、その悪魔族が竜一族の世話を担っていた。出産祝いも大量に贈られ、宴会のような状態になっていた。
出産後のハクレンと村の警戒
出産を終えたハクレンは、飛べなかった反動か竜姿で飛び回っていた。低空飛行により魔物や魔獣が驚き、クロの子供たちやザブトンの子供たちが対処に追われたが、結果的に食料備蓄は増えた。双子の天使族スアルリウとスアルコウは村生活に慣れ、ハーピー族との連携も向上して負傷が減っていた。
キアービットの奮闘
キアービットは警戒任務や村長補佐を務め、文官娘衆からも仕事を任されていた。仕事量を競うようなやり取りもあったが、無理をしないよう気遣われていた。
ケンタウロス族の移住開始
ビーゼルの転移魔法によりケンタウロス族が到着した。代表は十歳のフカ=ボロであった。村長の火楽とコール子爵グルーワルドが迎え、爵位にこだわらない姿勢を示した。世話役ラッシャーシ=ドロワとも顔合わせが行われたが、爵位の扱いに緊張が生じ、村長が和らげた。
土産の羊と三ノ村への案内
移住者は若い雄雌二頭の羊を土産として持参した。牧場へ放ち、将来的な増産や三ノ村での飼育も視野に入れた。移住者は一ノ村、二ノ村を経て三ノ村へ向かう予定で、クロの子供たちやザブトンの子供たちとの対面は事前に済ませていた。
竜の飛来による混乱
予定通り進むはずであったが、ハクレン、ラスティ、グラルが竜姿で飛来し、移住者たちは失神した。グルーワルドが竜たちの関係を説明し、ヒイチロウの将来の伴侶候補の存在も伝えたが、理解には時間を要した。
三ノ村での歓迎会
三ノ村には新居が用意され、防寒衣類も準備されていた。歓迎会は小規模であったが、食事は整えられ、移住者は料理や食器に感嘆した。竜たちの豪勢な場より落ち着くと強調され、笑顔の多い歓迎会となった。
2 武闘会の前の相撲
来賓の到着と竜の宴席
武闘会を三日後に控え、来賓が続々と集まり始めた。始祖とフーシュが到着し、始祖は自然に竜一族の宴席へ加わった。揉めていた国が潰れたことでフーシュの仕事は落ち着いたというが、状況の重さに反して忙しさは減ったらしかった。
続いてマイケルが海産物を携えて到着し、武闘会も観覧することになった。ラスティが迎えに行き、ガルフと談笑していた。さらに南のダンジョンからラミア族三人、北のダンジョンから巨人族十二人が到着し、開催まで各々自由に過ごすこととなった。
相撲大会の開始
武闘会に参加しない者から何か催しをとの相談があり、火楽の提案で武闘会会場横に相撲の土俵が設けられた。簡易ルールでマワシもなく怪我は少ない想定であったが、擦り傷や打ち身は続出し、フローラは早くも忙しくなった。
同種族同士の取り組みが推奨され、巨人族同士の三メートル超級の取り組みは特に盛り上がった。ラミア族の判定は難しく、ハーピー族には飛行禁止が念押しされた。観客も増え、武闘会前から熱気が高まった。
クロの子供たちの代表戦
二日前にはクロの子供たちが代表決定戦を行った。自主的にトーナメントを組み、観客の人気も高かったが、絡み合うと区別がつかなくなった。ザブトンの子供たちが衣装を着せて識別可能となり、フローラは引き続き治療に追われた。
魔王の到着と竜族の事情
前日には魔王、ユーリ、ビーゼル、グラッツ、ランダンが到着した。魔王は竜族の席に案内されたが、暗黒竜ギラルの存在に驚き、火楽の服を掴んで離さなかった。竜族の話題は相撲の勝敗と北の大陸の勢力争いであった。表面上はドース一族が優勢だが、内部では小規模な競争が起きているという。
かつて村を襲ったワイバーンの話題も出たが、強敵であったことや味の話で笑いに変わり、弱肉強食の価値観が示された。火楽は隙を見てその場を離れた。
前夜の盛り上がり
鬼人族メイドは翌日の料理準備に追われ、キアービットも駆り出された。一ノ村、二ノ村、三ノ村からも人が集まり、相撲はさらに白熱した。前夜には各種族の決勝戦が行われ、特に巨人族の対戦は圧巻であった。三メートル級の巨体が投げられ、歓声が上がった。
フリー対戦も始まったが、火楽は本番出場者に自重を求めた。相撲は武闘会に出られない者のための催しであり、本番は翌日であると改めて念押しされた。
3 第三回武闘会 開幕~模範試合まで
開幕の花火と竜の編隊飛行
武闘会当日は晴天で、天使族七人が上空に舞った。花火で開幕が告げられ、続いて十頭以上の竜による編隊飛行が披露された。興奮のあまりブレスを吐く竜もいたが、森を燃やさぬよう上空へ向けていたため許容された。
この演出により一ノ村住人や新しい三ノ村住人、さらに巨人族やラミア族までが動揺した。数の多さに圧倒されたことが原因であったが、周囲の支えで落ち着きを取り戻した。
一般の部と石畳の問題
武闘会は一般の部、戦士の部、騎士の部の三部構成で進行した。一般の部では一回勝負のため組み合わせの影響が大きい。初参加のガットの弟子とガルフの息子が対戦し、激戦の末にガットの弟子が勝利した。力量ではガルフの息子が上に見えたが、舞台の石畳を割ることを意識し過ぎて集中を欠いていた。
確認すると、意図的に割れやすい細工が施された石畳が見つかり、回収させられた。努力の方向を誤っていたのである。
一般の部で最も盛り上がったのは、三年前に生まれたリザードマンと獣人族の少年の一戦であった。体格で勝るリザードマンに対し、少年は剣技を駆使し、隠していた投げ技で勝利した。敗れたリザードマンも踏み込みで石畳を一枚割る健闘を見せた。
戦士の部とラミア族の壁
戦士の部は勝ち残り形式で、優勝の鍵は参加したラミア族二人をどう攻略するかにあった。グラッツとランダンも参戦したが、ラミア族に敗れた。ラミア族を攻略したのはドワーフのドノバンであり、これまで優勝を阻まれていた山エルフのヤーとガルフが騎士の部へ回ったことで、順当に優勝を果たした。
ランダンは健闘したが、元気なラミア族とばかり当たる不運も重なった。グラッツはロナーナに慰められた。
模範試合第一戦と中止騒動
騎士の部の前に模範試合が行われた。今年は抽選で二試合のみである。第一試合は竜王ドース対暗黒竜ギラル。観客は歓声を上げたが、周囲の竜族は顔色を変え、防壁を展開した。被害の可能性が高く中止となり、大ブーイングが起きた。
そこで勝負方法を変更し、竜姿での腕相撲に決定した。巨大な竜同士の力比べは白熱し、最終的にギラルが炎を吐いたことで反則負けとなり、ドースの勝利となった。
模範試合第二戦と綱引きの熱狂
第二試合は魔王対ザブトン。勝負方法は綱引きとされた。魔王はドライム、ドマイム、マークスベルガーク、クォルンを援軍に選び、ザブトン側はラスティ、グラル、ウルザと多数の子供たちが加わった。
声援が力を左右し、応援が一体感を生んだ。激闘の末、魔王側が勝利したが、再戦要求が出て再び対戦が行われ、今度はザブトン側が勝利した。見学者も次々と参加し、村対抗戦へ発展した。
その盛り上がりにより騎士の部は翌日へ持ち越しとなった。綱引きは夜まで続き、本番への影響が懸念される状況となった。
4 第三回武闘会 騎士の部
二日目の開始と参加者
武闘会は二日開催となり、朝は前日の後片付けから始まった。石畳の修理をガルフの息子が進める中、騎士の部が開幕した。参加者は三十二人で、吸血鬼のルー、天使族複数名、ハイエルフのリア、鬼人族のアン、リザードマンのダガ、悪魔族のブルガとスティファノ、助産師として来ていた悪魔族五人のうち五人、獣人族のガルフ、山エルフのヤー、ラミア族二名、巨人族二名、インフェルノウルフ三頭、デーモンスパイダー四匹、死霊騎士一人など多彩であった。人数合わせとして助産師たちが参戦し、実力保証も得られていたためトーナメントが成立した。
一回戦 悪魔族の台頭と波乱
一回戦では悪魔族勢が強さを示し、ブルガ、スティファノ、助産師四人が勝ち上がった。敗れた助産師の相手は死霊騎士で、木剣にもかかわらず剣技で封殺した。予想外の敗北はインフェルノウルフで、幻惑系魔法によりウノが敗れ、他二頭も一回戦で消えた。ラミア族二人、巨人族二人も敗退し、天使族のグランマリア、クーデル、コローネも姿を消した。
スアルリウとスアルコウは双子対決となり泥試合の末スアルコウが勝利した。ルー対ティアは好カードのはずが同様に泥試合となり、ティアが勝ち残った。ガルフ対キアービットは高速戦となり、キアービットの膝がガルフの鳩尾に入り決着した。ヤー対リアはリアが技術で上回り、リアが勝利した。
二回戦 残存勢力の整理
二回戦に残った十六人から八人へ絞られた。悪魔族同士、助産師同士の潰し合いが発生し、スティファノと助産師一人が勝ち上がった。ブルガはアンと対戦し、アンの重い連打に沈んだ。ティアは前戦の消耗が響き、ザブトンの子に敗北した。ダガ対キアービットは軌道を読まれ、ダガが勝利した。リアはザブトンの子を糸を避けて制し、特性に合う戦い方を考えるよう助言した。
助産師対ザブトンの子では、幻惑魔法が決まったように見せかけて演技であり、油断した助産師が糸で縛られ敗北した。
休憩 応援演目と空気の緩み
八人が揃った段階で休憩となり、有志の歌や踊りが披露された。フーシュの歌、ハーピー族の演目、マイケルの歌、さらにグラッツとロナーナの乱入などで、場はカラオケ大会のような雰囲気になった。責任者としての立場上、村長は落ち着いて食事を取り、審判役の始祖も食事に戻った。
三回戦 手の内が割れた後の勝負
三回戦はリア対助産師から始まり、手の内が割れた助産師が翻弄され敗北した。ザブトンの子対スティファノは、スティファノが糸を避けて接近し、上に乗る形で勝利した。アン対ダガは、アンが終始打撃で優位に立ち、ダガは抗しきれず敗れた。死霊騎士対ザブトンの子は、糸片の攻撃が木剣で全て弾かれ、力量差を悟ってギブアップとなった。床には針のような糸片が無数に落ちており、攻防の危険度と死霊騎士の強さが際立った。
準決勝 スティファノとアンの決勝進出
準決勝第一試合はリア対スティファノで、リアは弓矢、打撃、投げ、関節技まで仕掛けたが、スティファノが総合的に上回り勝利した。第二試合はアン対死霊騎士で、互いに足を止めた連撃戦となった。決着は死霊騎士の木剣が折れたことでつき、アンが決勝へ進んだ。村長は安全のため木剣を渡したことを悔い、死霊騎士には盾を作ると約束した。
決勝 瞬間決着と治療
決勝はスティファノ対アンであったが、開始直後にアンが石畳を割る踏み込みで決勝用の打撃を放ち、スティファノが回避して顎へカウンターを入れた。アンがダウンし即決着となり、優勝はスティファノとなった。ただしスティファノの腕は外れており、フローラがアンを治療した後に整復した。アンは温存した攻撃を避けられたことを認め、村長は慰めようとして背中を撫で、頭を撫でる場面だと叱られた。
表彰式後の宴会とフリーバトル
表彰式の後は宴会に移り、会場はフリーバトルの場となった。無理強い禁止、双方合意、審判必須といったルールが確認され、審判はドースたちが担うことになった。竜同士の戦いは禁止と念押しされた。文官娘衆はようやく食事と酒にありつき、村長も子供たちを寝かせに屋敷へ戻る予定を立てた。
一部では腕相撲が始まったが、腕が折れたと騒ぎになり、フローラの負担が増えた。こうして第三回武闘会は終了した。
5 武闘会の感想戦?
三ノ村の二人の興奮と目標
三ノ村のフカとグルーワルドは、居住エリア周辺を軽く走りながら武闘会を振り返っていた。フカは竜が多数いたこと、腕相撲や綱引きの異様な光景、そして食事の美味しさから「神話の国」と断じ、グルーワルドはそれを笑って否定しつつも、限りなく近いと受け止めた。フカは将来武闘会に出たいと宣言し、まずは身体を大きくする必要があると諭される。
四天王の反省と“引き抜き”の話
宿では魔王国四天王のランダンとビーゼルが食事をしながら反省していた。ランダンは個人戦の実力自体はあるが連戦前提の体力温存をする側に対し、勝つために全力で行ってしまい二戦目が続かないと自己分析した。あわせて獣人族ガルフを魔王国に引き込めないかと口にするが、ビーゼルは武人気質の相手に将軍や教官は難しいと見立て、シャシャートで先に誘うべきだったという悔いも出る。ラミア族や巨人族にも打診する流れになるが、統率や教育役としての適性には懐疑的であった。
ガルフとダガの“感想戦”と稽古の約束
獣人族ガルフとリザードマンのダガは体操をしながら試合を検討した。ダガは事前の手合わせ不足を口にするが、ガルフはそれを否定し、癖を見抜かれて潰されると指摘する。ダガは派生を増やしたと反論するも、根幹が同じなら派生前に潰されると返され、キアービットに敗れた理由を突かれる。結局、実力不足を認めた上で、両者はキアービットのもとへ行き、ボコボコにされる覚悟で稽古を申し込む段取りになっていた。
始祖とフーシュの礼拝巡回と温泉の作法
フーシュは社への祈りを終え、始祖に報告した。武闘会の盛り上がりを世界一決定戦級と評しつつ、自分は一般の部が限界で戦士の部は勝てないと冷静に見積もる。今後は部下、将来的には息子を鍛えたいと語り、始祖は息子の人生を勝手に決めるなと釘を刺すが、協力自体は惜しまないと応じた。礼拝は七箇所あり、礼拝前に温泉で身を清める流れが当然とされ、死霊騎士を温泉に戻す必要もあって、まず温泉に向かう段取りとなった。
ドースとギラルの“引退”と竜王論
昼から風呂に入っていたドースとギラルは、グラルをどう扱うかを巡って話し、ギラルがここに置きたいと言い出す一方、縄張り放棄や居住については拒まれる。ギラルは急に心が晴れ、日向ぼっこをするようになったと語り、闇属性のまま精神状態だけが変わったと示す。引退話に絡み、ライメイレンに引退を持ち出したら命まで取られかけたというドースの体験談が出て、竜王の器はむしろライメイレンではないかという会話に発展する。
さらに冗談半分で、村長が竜王を継げば次はヒイチロウへ繋げられるという案が浮上し、ヒイチロウとグラルの縁まで含めれば血統と称号が統合される可能性も語られた。称号案として「暗黒竜王」などが出るが却下され、結論は「よく考えよう」と先送りになる。魔王はその会話を聞きかけたが、グラッツが即座に「聞いていない」と処理し、場を収めた。
金貨が集まりすぎる問題と“外部施設”案
マイケルと文官娘衆は台帳を抱えて困っていた。取引が続くと魔王国中の金貨が大樹の村へ吸い込まれ、支出不足で魔王国側の経済が死ぬ恐れがあるという。村は自給自足で影響が薄い一方、被害は魔王国が負う構図になる。対策として、村の外、たとえばシャシャートの街に「金を使わせる施設」を建てる案が出る。食品工場(調味料関連)、競技場や舞台、魔法小屋、話小屋、飲食店、さらには風俗店まで候補として挙げられた。
この施策の狙いは消費促進だけでなく、評判対策と「村を隠すための組織」づくりでもある。村の評判が薄い今のうちに、悪意ある風評への耐性を作る意図が語られ、情報収集拠点として常駐者を置けば速度面も改善できるとまとめられた。文官娘衆は案を整理して村長に提案し、マイケルは全面協力を約束する。短期の消費としては、村長が欲しがる“大きいエビ”の大量調達も依頼され、金貨を持ち帰らないと街が危ないと切実に頼まれる。
クロの子供たちの集団走と、フローラ慰労の“実態”
クロの子供たちは珍しく集団で村の周囲を全力疾走しており、朝から日暮れ近くまで続けていた。一方、村長はフローラと小屋に籠もっていた。治癒魔法連発で酷使したフローラを労るつもりだったが、実際は「万能農具」のシャモジで発酵を促し続け、納豆の試作を進めていた。フローラは未知の食べ物への期待で高揚し、村長は納豆が苦手だと言いながらも完成を予感し、臭いを抑える食べ方を思い出そうとする。
6 冬前の会議
来賓の帰路とライメイレンの執着
武闘会が終わり来賓は順次帰っていったが、温泉巡り中の始祖とフーシュを除くと、最後まで残ったのはライメイレンであった。ライメイレンはヒイチロウから離れず、連れ帰ろうとするほどで、ハクレンとラスティの説得でようやく帰ったものの、再訪の気配が濃かった。男の孫である点が重要らしいと村長は推測するが、ハクレンによればラスティやヘルゼルナークの時も相応に構っていたという。
グラルの滞在許可と冬準備の総動員
ギラルの娘グラルは村に残ることになり、ハクレンとラスティが問題なしと保証したため村長は許可した。当面は屋敷の客室で寝泊まりし、仕事は急がせずウルザ同様に学習を優先させる方針となった。反省会後は冬準備を限界まで進め、加工食品の確保、狩猟、薪の備蓄を進める。
薪問題と代替策の模索
薪は村長が大半を用意していたが、死の森の木は切り難く燃え難く薪に不向きとされる。ただし村長は万能農具で伐採・加工しているため実感が薄いだけであった。死の森の木材をマイケルに売り、薪を購入する案もあったが、流通量の少ないマイケルとの取引が薪で埋まり、海産物を入れにくくなるため中止された。南のダンジョンよりさらに南には薪向きの木があるらしく、ラミア族に伐採と乾燥を依頼している。将来的には村長依存を減らし、薪代替燃料も含めた環境整備が課題となった。
冬前会議の開催と外部依頼の優先
村の代表、各種族代表、文官娘衆が集まり、冬の仕事配分を決める会議が開かれた。主眼は冬の間に進める外部依頼と村内課題の整理であり、生活を脅かさない範囲で外部依頼を優先する方針で進む。
麻雀牌二十セットと“規格”問題
クローム伯から麻雀牌二十セットの注文が入り、雑談しながら遊ぶ需要と、牌を自前で欲しがる貴族の増加が理由とされた。魔王国で作ってもよいはずだが、百三十六枚を同一規格で揃えるのが職人には至難であり、牌だけは村で引き受け、折り畳みテーブル・点棒・箱は魔王国側が作る分業となった。
馬車用サスペンション三十組とハウリン村連携
ゴロウン商会から馬車用サスペンションの追加十組が入り、既存二十組と合わせて三十組となった。要となるスプリングはハウリン村製で、納品は十組ずつでもよいなら対応可能とされる。山エルフのヤーが問題なしとし、村は受注を決めた。
創造神像二体と“魂が乗った時に”の条件
コーリン教から創造神像二体の依頼があり、一体は温泉地に設置希望であった。材質への拘りはないが、「魂が乗った時に作って欲しい」という条件が付与され、受け渡し時期は柔軟に扱うことになった。
ホウの酒造要望とサトウキビ嘆願
魔王国四天王ホウから、指定する穀物と方法で酒を造って売ってほしいという要望が届いた。領地で造れるはずだが「酒を理解している者にしか頼みたくない」との理由で、ドワーフの技量が当てにされた。さらに嘆願書として今年のサトウキビを売ってほしいと長文で求められ、蒸留酒目的が示唆される。ドノバンはホウが味の分かる者だとして後押しし、引き受けて酒造関連はドノバンに任される。
クローム伯の“礼状”と蜂蜜酒の怨念
クローム伯から礼状が届くが、内容は礼よりも「なぜあの酒がないのだ」と要求を重ねる怨念めいた文面であった。欠けていたのは村の蜂蜜で作った蜂蜜酒であり、希少で簡単に用意できないと伝えていたはずだが、執着は強かった。ドノバンは顔をしかめつつも、熱望されている事実としてどこか嬉しそうでもあった。
会議で出た村内課題と将来案件
会議では外部依頼以外にも、三ノ村移住者の食器不足、一ノ村の竹細工用竹不足、グラルの家づくり計画が話題となった。グラルの家ができれば使用人を連れてくる予定であり、ギラル来訪時の宿泊先にもしたい意図がある。ドースからも家の要望が出るが、冬の建設は避け、春にすぐ着工できる準備に集中する方向でまとまる。
また、競馬を今年も行うか、プールの活用、北ダンジョン巨人族と南ダンジョンラミア族の交流促進のための道作り案など、多岐にわたるが即決は少なく、冬の間に各自検討する宿題として残った。
納豆騒動の再確認と発酵小屋の“封じ”
会議後の食事会の流れで、納豆のタネ作りが引き金になった過去の騒動が想起される。納豆菌は酒やチーズ作りの天敵であり、発酵小屋に設置されていた「発酵させる精霊を大人しくさせる呪い」が警報を出すほど強力だった。ドワーフたちは発酵小屋の四隅で作業し、菌が広がらない状態を回復させた。発酵品の持ち出しは許容される一方、衣服や身体への付着菌まで外へ出さない仕組みがあることに、村長は理屈への疑問と、食を守る執念の強さを感じる。
軽い食事会のはずが宴会へ
会議後は軽い食事会のつもりだったが、目の前には食事と酒が並び、宴会の様相となった。会議に参加していない者まで集まり始め、村長はため息を吐きつつも、いつもの流れとして受け入れるしかなかった。
7 村長とキャンピング馬車
呼称問題の決着と「村長長」案の不発
複数の村ができたことで「村長」という呼び名が各村で被り、呼称整理が求められていた。種族代表会議の結論は、村長の呼称は従来通り「村長」とし、他村の村長は大樹の村に滞在中や客前では「村長代行」または「代行」と呼ぶ、というものであった。各村の内部では従来通り村長でよい、という限定運用であり、長らく揉めた割にあっさり決まった。村長が提案した自信作「村長長」は、アンに披露したものの笑顔だけが返り、目も合わせてもらえず、採用されなかった。
改造用馬車の入手とキャンピング馬車構想の始動
屋敷の工房には改造検討用の馬車が三台あり、サスペンション以外の改造案を求められていた。そのうち一台を村長が自由にしてよいことになり、村長は「移動する家」への憧れからキャンピングカーならぬ「キャンピング馬車」を思いついた。馬車内は広く、向かい合う三人掛け長椅子があったが、窮屈さから一人用快適空間への転換を試みた。
一人用快適空間への改造と実走で露呈した欠陥
長椅子を撤去し、ザブトンの布と毛皮でふっくら仕立ての肘掛け椅子を導入し、リクライニングでベッド化も狙った。出入口位置の変更、左右収納箱の設置、蓋をテーブル代わりにする工夫、椅子横から正面に出る可動式ミニテーブルの追加など、室内ギミックを詰めた。作業には山エルフが自然に加勢し、特にミニテーブル機構に二日を要した。
正面小窓が御者の背中しか映さない問題から椅子の向きと位置も変更し、進行方向に対して横向き、後部寄せとした。だが実走すると、出発直後に棚の物が落下し、ほどなく全て落ちる。馬車内に物を置かない運用の理由が理解され、棚の落下防止ガードや角度調整など根本改修が必要と判明した。
目的の再定義と「移動する家」への回帰
山エルフから「いつ、何のために使うのか」「一人で移動するのか」と問われ、村長は一人で馬車移動する場面がほぼ無いことに気付いた。御者やケンタウロス族が必ず同行し、快適空間を自分用に作る優先度が低いと結論づける。村長は初期コンセプトを捨てるべきではなかったとして、台所・シャワー・トイレを備えた「移動する家」を本線に戻し、乗車快適性は切り捨てる方針に転換した。
新車体の製作と変形機構の完成
現車体では無理と判断し、手の空いたハイエルフも招集して車体作りが開始された。車輪周りは山エルフが担当し、十日後、少し縦長の四輪馬車が完成した。車内に乗車スペースは無く、御者台と後方の台に座れる程度である。本領は停車時の変形にあり、前部と後部の車輪がそれぞれ前後に移動しつつ車体が沈下、足が出て固定され、車体が縦に割れて左側が九十度開く構造であった。
左側は料理道具が収納され、組み立て式テーブルと椅子、上面から伸ばす日除け布で即席の台所となる。竈は積めないが、野外で火を起こせれば十分な料理が可能である。右側は食材と縦長板八枚を収納し、板を四枚ずつ立ててシャワールームとトイレ区画を作る。屋根は布、床は竹の簀の子で排水性を確保し、水タンクから竹の水路でシャワーを引く。目隠しと着替え用の紐とカーテンも準備された。トイレは外付けオマルで、衛生のためスライム同行案も挙がる。手洗い場と尻拭き用の葉の備蓄場所も確保し、台所や食材近接は避ける設計となった。
変形を支える工夫として、車体を持ち上げるジャッキ機構と、水タンクへ水を送る小型手押しポンプも搭載された。設営は慣れた者三人で五分、撤収は少し長く見積もって十分とされた。
評価の分裂と実運用の検証
文官娘衆は「貴族用」「料理人同行必須」「トイレ管理の専任が必要」「水タンク重量で馬一頭引きは厳しい」と評し、厳しい反応を示した。一方で山エルフは技術面、とりわけ変形機構を高く評価した。ルーはジャッキとポンプだけで十分ではないかと現実的な指摘をするが、村長は量産はしないとしつつ、作った以上は試運転を決めた。
日帰りのためシャワーは未使用だったが、トイレは活躍し、台所には村長と鬼人族メイドが立った。希望者が増え、同行者は百人近くになり、食器は洗って回し続ける運用となった。護衛のクロの子供たちが獲物を狩って補給し、水辺が近く水の不安は無かった。ドワーフは酒を飲み、全体としては楽しめた。アルフレート、ティゼル、ウルザ、ナート、グラル、獣人族の男児など小さな子供たちは変形に目を輝かせ、村長はそれを成果と受け止めた。
「ピクニック」の命名と場所の制約
定期巡回中のケンタウロス族に「ここで何をしているのか」と問われ、村長は「ピクニックだ」と答えた。場所は大樹の村と一ノ村の間、川に架かる橋の近くで、村から五キロ程度の地点であった。馬車で行ける場所が限られる現実を踏まえた上での実施であった。
8 冬と魔道具と盾
冬の屋敷とコタツの名誉争い
冬が到来し、外は寒いが屋敷の中は暖かかった。今年もザブトンの子供たちが何十匹も屋敷内で冬越しをする。ザブトン本人にも屋敷で過ごしてほしいと思うが強制はできず、春の再会を期す。クロとユキは毛皮があるのに村長のコタツに入り浸り、足を洗っている点は良いが潜り込み過ぎを注意される。子供たちが順番待ちするほどで、専用コタツを与えているのに「村長のコタツに入ること」を名誉扱いし始めており、村長は困惑していた。
魔道具の現実と「料理用」発想の異端
村長はルーに魔道具について相談する。魔法を封じた道具は存在するが、上流階級が独占しており庶民は触れにくい。大樹の村には竜王や始祖が土産・出産祝いとして持ち込んだ魔道具があると聞き、村長はコンロや冷蔵庫のような生活系を期待するが、基本的に魔道具は「一つのことしかできない」ため、火を出す道具も火力・時間が固定で調整不能となり料理には向きにくいと説明される。
村長は例外として「迷宮の輝石」を挙げるが、それは伝説級の例外中の例外であり、すでにラミア族へ貸し出している。村にある魔道具の大半は攻撃・防御系で、村長の望む用途は揃っていなかった。
ルーによる魔道具制作の段取り
村長は「火力違いを複数並べる」などの工夫で料理用を成立させられると考えるが、材料が貴重で高コスト、そもそも料理に魔道具を使う発想が一般的でないため誰もやらないと一蹴される。さらに外の世界では料理自体が簡素で、魔道具で補うより料理人と道具を揃える方が安いという事情も語られる。
それでも村長が「馬車内で温かいお茶が飲みたい」などの動機を示すと、ルーは制作に前向きになり、素材と必要量を書いたメモを渡す。素材はゴロウン商会で入手可能で、村にある魔道具もいくつか潰して素材に回す方針となった。ルーは魔法・薬学だけでなく魔道具作りでも名が知られていることが示され、村長は指示を受け入れる。
盾作りの開始と「死霊騎士用」という目的
村長には作るべきものがあり、精神統一の末に直径一メートルほどの丸盾を作り上げる。山エルフが内側にベルトと取っ手を取り付け、取っ手固定は位置調整のため敢えてしない設計とした。用途は温泉地を守る死霊騎士向けであった。
ギミック盾の試作と事故
山エルフの提案で「一回防げれば十分」という割り切りのもと、変形ギミックや軽量化(穴あけ)も検討される。村長は厚みを増した二枚目を作り、取っ手に細いベルトを追加する。細ベルトがスイッチであり、起動用の仕掛けとなる。
試験役にリザードマンのダガと獣人族のガルフを呼び、ダガが盾で受け、ガルフが本気で攻撃する形で実験を開始する。攻防が激しくなる中、ガルフが盾で弾かれた隙を突いてダガの身体が露出した箇所へ斬り下ろす場面で、ダガがタイミング良くギミックを起動する。盾側面三箇所から木製の三日月ブレードが展開し、その一枚がガルフの剣を受け止める。
しかしブレードの展開範囲をダガ自身が把握しておらず、前に出していた太ももにブレードが刺さる事故が発生する。村長と山エルフは謝罪し、フローラを呼んで治癒魔法で治療する。
試験の評価と改善点の抽出
感想はガルフが「ビックリした」と率直に述べ、試合では通じにくいが実戦では効く可能性があると評価する。ダガも面白いとしつつ、ブレードを鉄製にできないか提案する。重量が問題とされるが、ガルフは「鉄盾より軽い。倍でも使える」と述べ、重量面の見積もりが見直される。
さらに両者から盾表面の性質について指摘が入る。表面が滑らかで剣が流れやすく、捌きやすい反面、相手の剣を弾くには不向きであり、滑って内側に流れると足に当たり得る。そこで端に「返し」が必要、表面にも軽い引っかかりが欲しいという結論に至る。突起を過剰に付ける必要はなく、彫り物程度でもよいという助言が出る。
改造と第二版の完成
工房に戻り、村長は盾表面に彫り物を施し、威嚇目的で怒れる竜を意匠に選ぶ。山エルフはギミックを改良し、三枚では受け止め範囲が狭いとして三日月ブレードを六枚展開に変更する。完成したのは、六枚ブレードが飛び出す怒れる竜の盾であった。
ダガの懇願と配分問題
ダガはその盾の使用を願い出るが、村長は本来の用途が死霊騎士用であるため断る。加えて現状のブレードが木製である点も理由となる。代替として、後日に鉄製ブレードで作った盾をダガへ渡す方針を提示する。ダガは彫り物のリクエストも可能と聞き、悩み始める。
一方でガルフも自身が盾を持つべきか考え、山エルフは籠手に付ける小型盾を勧める。村長は一枚目の盾(ギミック無し)を「彫り物+返し」付きで整備し、死霊騎士がギミック盾を嫌がる可能性も見越して準備する。余剰が出た場合の配分として、ギミック無しが余ればガルフへ回す一方、ギミック付きは既にダガへ断った手前渡しづらく、新規に作る判断へ傾いていく。
閑話 名前研究者
閑話 名前研究者
レイモンド=ゴルビークは、魔王国における名付けの傾向を「三つの法則」に整理して講義形式で語った。第一は親名の一部を受け継ぐ方式で、親子関係が分かりやすい利点がある一方、世代が進むほど似た名が増えて親族外には覚えにくく、婿入り・嫁入りの者が苦労しやすい欠点があると自虐混じりに述べた。第二は歴史上の人物にあやかる方式で、親の願いが分かりやすい反面、同一地域で重複しやすく、期待と違う成長をすると「名前負け」になる可能性もあると説明した。第三は由来のない自由命名で、研究者としては由来推定が困難になる一方、兄弟姉妹が増えるほど名付けが簡略化しがちだという家庭事情も示した。結論として、よその家庭の名前に文句をつけず、親からもらった名にも自分で付けた名にも誇りを持てと締めた。
質問への回答として、現魔王が名乗る「ガルガルド」は魔王即位時の名で、王都のある地方名に由来し、かつてのガルガルド王国の名残であると述べた。魔王が交代すると王都を移す慣例があるため、地方名を用いると新魔王名を浸透させやすいという実利も示した。さらに「あやかられる有名人」の例として、歴代魔王である征服王ゴーゼルウス、破滅王ガルゾナ、森林王アクリッシュ、文化王フラミーラを挙げ、伝説級として始まりの吸血鬼ヴァルグライフ、人間側の大英雄で英雄女王ウルブラーザ、物語由来の三悪魔グッチ・ブルガ・スティファノを紹介した。最後に次回予告として「禁忌の名前」を扱うと告げ、名付けの危険性を匂わせて講義を終えた。
閑話 変身
ラスティの変身と「本質」の説明
ラスティは竜の姿と人間の姿を自在に行き来し、その変身は見事であった。質量の違いなどを疑問に思うが、魔法の性質に踏み込むと理解が追いつかないため、深追いはしないことにする。変身に関心を持った理由は、妊娠中のハクレンが竜の姿になれなかったことにあった。
ラスティは、姿は変えられても本質は変えられないと説明する。性別変更は極めて難しく、技量の問題というより本質の問題であるという。ルーが男性に変身した姿は違和感が強く、可能ではあるが意味は薄いとされる。ラミア族やケンタウロス族、ミノタウロス族への変身も可能だが、本質は女性のままである。
外見調整と角・尻尾の扱い
角や尻尾のみを出す変身も可能で、獣耳なども再現できる。ただし普段の姿が最も自然であると感じられる。ルーにも確認すると、年齢相当の見た目を多少前後させることはできるが、本気を出せば角や尻尾を消すことも可能だという。ラスティが人間形態でも角や尻尾を残すのは意図的であり、竜形態は本質そのものだから細かな調整はできないと語る。人間の姿も本質の一つであるため問題はないと説明されるが、理屈は深く問わない方がよいとされる。
ハクレンと竜の姿
出産後のハクレンは竜の姿で大空を飛び回っており、妊娠中に竜化できなかったことを気にしていたのではないかと考えるが、当人は特に気にしていない様子であった。
若返った祖母ライメイレン
ふと見かけた見知らぬ美女の正体は、ラスティの祖母ライメイレンであった。ハクレンがヒイチロウに祖母と紹介したことが気に障り、若い姿へ変身したのではないかと推測される。事情を聞かなければ初対面と思うほどの変化であった。
女装する祖父ドースと顛末
さらに奇妙な姿の人物は祖父ドースであり、女装姿であった。ライメイレンにヒイチロウの元へ行くのを止められたため、変則的な変身を試みたらしい。本質と異なる変身は身体に悪いわけではないが疲労が大きいという。やがてライメイレンに見つかり、竜の姿に戻って逃げようとするも撃ち落とされる。自分の夫が女装していれば怒るのも当然だと納得し、女装はしないと心に誓うのであった。
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