スポンサーリンク
負けヒロインが多すぎる雨森たきび

小説【マケイン】「負けヒロインが多すぎる! 9」感想・ネタバレ

スポンサーリンク
負けヒロインが多すぎる!9の表紙画像(レビュー記事導入用) 負けヒロインが多すぎる

マケイン 8.5巻レビュー
マケイン まとめ
マケイン 10巻レビュー

スポンサーリンク

物語の概要

■ 作品概要

『負けヒロインが多すぎる! 9』は、恋に破れた少女たちである「負けヒロイン」たちと主人公が織りなす青春ラブコメディの第9巻である。

本作では、主人公の温水和彦と文芸部員たちが、友人である桜井弘人とその恋人・水島小春の関係を巡る騒動に深く関わっていく。小春が弘人との関係を進めるために計画した「飛騨高山への日帰り旅行」から物語が動き出す。しかし、その旅行の裏には、弘人、小春、そして従姉であり幼馴染の放虎原ひばりという三人が長年抱えてきた複雑な過去と感情が横たわっていた。豊橋市や高山市の実在する観光地を背景に、不器用な若者たちが自らの想いに一つの決着を下すまでの姿が、情緒豊かな筆致で描かれている。

■ 主要キャラクター

温水和彦:本作の主人公であり、文芸部の部長を務めている。水島小春の「既成事実作戦」に巻き込まれ、結果的に幼馴染三人の決着を見届ける「介錯」としての役割を果たすことになる。

八奈見杏菜:食欲旺盛な文芸部員である。小春の相談に乗って旅行計画に協力するものの、ハプニングにより温水と温泉宿で二人きりの夜を過ごす。

桜井弘人:温水の友人で、生徒会役員を務めている。恋人の小春を大切に思う一方で、幼馴染の放虎原ひばりに対しても特別な感情を抱いており、自らの過去と未来に向き合って覚悟を決める。

水島小春:アヤメ高校の生徒会役員で、弘人の恋人である。弘人との既成事実を作ろうと画策するが、その奥底には、弘人と放虎原の関係に対する長年の不安と嫉妬を抱え持っていた。

放虎原ひばり:ツワブキ高校の前生徒会長であり、弘人の幼馴染である。卒業後の上京を控え、二人の決着にすべてを委ねようとするが、自身も弘人への秘めた想いに苦しむ。

馬剃天愛星:ツワブキ高校生徒会長である。温水に好意を寄せており、花火大会に浴衣姿で現れて八奈見と静かな牽制戦を繰り広げる。

■ 物語の特徴

本作の最大の特徴は、コメディタッチが主流であった「負けヒロイン」の物語において、幼馴染三人のシリアスかつ重厚な関係性の終焉を丁寧に描き切っている点である。 恋愛における「一途さ」の裏に潜む「略奪」や「罪悪感」といったテーマが、かつて彼らが共有した秘密基地の思い出や、親族間の対立といった事実とともに克明に描写される。
飛騨高山への聖地巡礼や花火大会といった華やかなイベントの裏で進行する、小春と弘人の別れ、そして弘人と放虎原の最後の対峙は、読者の胸を打つ非常にドラマチックな展開となっている。 また、温水と八奈見が温泉宿に取り残されて一夜を過ごすエピソードなど、メインヒロインたちとの間にも静かに、しかし確実に変化しつつある距離感が描かれている点も見逃せない。

書籍情報

負けヒロインが多すぎる! 9
著者:雨森たきび 氏
イラスト:いみぎむる  氏
出版社:小学館ガガガ文庫
発売日:2026年7月17日
ISBN:9784094533002

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

あらすじ・内容

つぼみが花に変わるころ――
「正直に言うね。私――ヒロくんと既成事実を作ろうと思って」

桜井くんの恋人、水島小春さん。桜井くんと関係を進めたい彼女に巻き込まれ、俺と八奈見、二人の幼なじみの放虎原先輩も交えた五人旅行がはじまった。……あれ、なんでこうなった? 

ともかく「桜井くんと小春さんだけうっかり残して」帰る計画を実行しなければ。
決意も新たに、俺たちは飛騨の温泉地に向かったのである。いつも通りの放虎原先輩にどこか違和感を覚えながら。

敗走系青春ラブコメ、第9幕。斜陽はゆっくりと沈んでいく――。

負けヒロインが多すぎる! 9

感想

第9巻の中心となるのは、桜井弘人、水島小春、放虎原ひばりという幼馴染三人の複雑な関係である。

三人は幼い頃から家族同然に育ってきた。

しかし、桜井と小春が恋人となり、放虎原が同じ高校の生徒会で桜井と過ごすようになったことで、少しずつ均衡が崩れていく。

誰か一人が悪いわけではない。

三人とも相手を大切に思いながら、自分の本音だけを隠してきた。

その積み重ねが限界を迎えるまでの過程が、繊細に描かれた一冊であった。

小春の焦りと、無理をしてでもつなぎ止めたい恋

水島小春は、小学生の頃から桜井と付き合っている。

長い交際だけを見れば、安定した恋人同士に思える。

しかし実際には、二人の関係はほとんど前へ進んでいない。

別の高校へ進学したことで会う時間は減り、桜井は放虎原と生徒会で多くの時間を過ごす。

小春は桜井を信じたい。

それでも、幼い頃から桜井と放虎原の間に特別な感情があることにも気付いている。

だからこそ、日帰り旅行で意図的に終電を逃し、既成事実を作ろうとするほど追い詰められていた。

強引で危うい計画ではある。

しかし、桜井を騙して遊びたいわけではない。

このままでは自分の知らない場所へ桜井が行ってしまうという恐怖から、何とか関係を確かなものにしたかったのだろう。

小春の行動には危うさがある一方で、好きな人を手放したくない必死さも感じた。

桜井の優しさに隠された無関心

桜井は穏やかで優しく、小春の願いを否定しない。

遠くへの日帰り旅行も、小春が行きたいならと受け入れる。

一見すると理想的な恋人である。

しかし八奈見が指摘したように、何も聞かずに相手へ合わせることは、本当に優しさなのかと考えさせられた。

小春がなぜ突然旅行へ行きたがったのか。

なぜ焦っているのか。

桜井は疑問を持ちながらも、本気で向き合うことを避けていた。

桜井自身も、小春から別れ話を切り出されることを恐れていたのである。

小春が好きだからこそ、壊れる可能性のある会話を避ける。

その態度が、結果として小春の不安をさらに大きくしていた。

優しい言葉だけでは、人間関係を守れない。

時には格好悪くても、本音をぶつける必要があるのだと感じた。

放虎原ひばりが抱えてきた罪悪感

放虎原ひばりもまた、二人の関係を心配しながら、自分の気持ちを押し殺している。

卒業後は豊橋を離れ、その後も戻らないつもりだと語る彼女は、出発する前に心残りをなくそうとしていた。

桜井と小春がうまくいけば、自分は安心して離れられる。

そう考えて小春の計画に協力する姿は、潔く見える反面、どこか自分を罰しているようでもあった。

放虎原は小春を大切に思っている。

同時に、桜井へ特別な感情を抱いてきた。

しかし、その想いを言葉にすれば三人の関係が壊れる。

だから彼女は、幼馴染という立場に自分を閉じ込めてきたのだろう。

三人で過ごした時間が長いからこそ、誰か一人だけを選ぶことが、残る二人への裏切りになってしまう。

好きという感情だけでは動けない複雑さが印象的だった。

楽しい聖地巡礼の裏で進む別れ

高山への聖地巡礼は、本巻の中でも特に楽しい場面である。

温水と小春はアニメの舞台に興奮し、八奈見は飛騨牛や五平餅、高山ラーメンを食べ続ける。

放虎原は聖地巡礼の文化に興味を示し、桜井と小春も一見すると仲の良い恋人同士に見える。

だからこそ、この旅の裏で関係の終わりが近付いていることが切ない。

写真を撮り、食事をして、温泉に入る。

普通の旅行として見れば、楽しい思い出ばかりである。

しかし小春は桜井をつなぎ止めようとし、放虎原は自分が身を引く覚悟を固め、桜井は二人の間で本心から目を逸らしている。

明るい旅の風景と、三人の心の重さの対比が強く印象に残った。

八奈見と過ごす温泉宿の夜

作戦の失敗によって、温水と八奈見だけが平湯温泉に取り残される展開には思わず笑ってしまった。

二人で同じ部屋に泊まり、布団を並べて眠る。

状況だけを見れば、かなり特別な一夜である。

しかし二人の会話はいつも通りで、甘い雰囲気になりそうでならない。

八奈見が真っ暗な部屋を怖がり、常夜灯を残してほしいと頼む場面は印象的だった。

皆がいなくなり、自分だけがお花畑に取り残される夢を見る。

その告白に対して温水は、今日は一人ではないと伝える。

恋愛的な言葉ではない。

それでも、八奈見が温水の存在に安心して眠る姿からは、二人の間に積み重なった信頼が感じられた。

大きな進展はないが、ただの友達と言い切るには少し近すぎる。

この曖昧な距離感が、二人らしいと思う。

小春を受け止めながら、境界線を越えない温水

桜井と喧嘩した小春は家出し、温水の家へ泊まり込む。

その後、小春は夜の街で温水をホテルへ誘う。

桜井との関係に疲れ、自暴自棄になり、目の前で優しくしてくれる相手へ逃げようとしたのだろう。

ここで印象に残ったのが、温水の対応である。

温水は小春を強く責めない。

弱った気持ちを否定せずに受け止めながら、それでも一線を越えさせない。

小春の感情へ踏み込みすぎず、かといって見捨てもしない。

他人の恋愛という最も扱いにくい問題に対し、温水は絶妙な距離を保ち続ける。

普段は女子に囲まれて流されてばかりに見えるが、大切な場面では相手を傷つけない選択ができる。

温水の人間的な強さがよく表れた場面だった。

三人で始まった関係の終わり

花火大会で、桜井と小春はようやく正面から向き合う。

小春は、放虎原を今も好きだと認めながら、桜井を手に入れるためならどんな手でも使おうとしたことを告白する。

桜井もまた、自分の意思で小春と付き合い、彼女に救われたと伝える。

二人の気持ちは偽物ではない。

しかし桜井が放虎原へ特別な想いを抱えたまま、小春と恋人であり続けた事実も消えない。

小春は桜井を好きだったと伝えたうえで、別れを選ぶ。

嫌いになったから別れるのではない。

今でも好きだからこそ、これ以上自分を傷つける関係を終わらせる。

その決断は清々しさよりも、長く尾を引く切なさを残した。

最後まで格好悪くていい

小春との別れを受け入れ、立ち尽くす桜井に、温水は放虎原のもとへ行くよう背中を押す。

三人で始まった関係なら、二人だけで終わらせてはいけない。

そこで温水がかける「最後までカッコ悪くていい」「ちゃんとしてこいよ」という言葉が、本巻で最も印象に残った。

格好良く別れを受け入れるだけでは、逃げたままである。

自分の本音をさらけ出し、傷つけた相手とも向き合わなければ、本当の決着にはならない。

普段の温水は、面倒なことから逃げようとする。

それでも最後には、友人が逃げないよう背中を押す。

温水自身も三人の関係へ巻き込まれ、迷い続けてきた。

だからこそ、この言葉には説得力があった。

結ばれなかった桜井と放虎原

放虎原のもとへ向かった桜井は、小春と別れたことを伝える。

そして、昔から放虎原を好きだったと告白する。

放虎原もまた、勇気がなくて好きと言えなかったと涙ながらに答える。

長くすれ違ってきた二人が、ようやく本心を言葉にする。

それでも二人は、恋人になる道を選ばない。

放虎原には故郷を離れてかなえたい夢がある。

桜井には豊橋へ戻り、故郷を見守りたいという夢がある。

互いに好きだと認めながら、それぞれの未来を優先する。

恋が実らなかったから失敗なのではない。

本音を伝えたうえで、違う道を選べたことにも大きな意味があると感じた。

温水は本当に女の敵なのか

重い人間関係の物語と並行して、温水の周囲は今回も騒がしい。

八奈見と温泉宿で一夜を過ごす。

小春を自宅へ泊める。

花火大会では浴衣姿の八奈見と天愛星に挟まれる。

さらに志喜屋から背後へ密着され、妹の佳樹には首についた口紅を見つけられる。

校内で「女の敵」と噂されても、もはや完全な誤解とは言い切れない状況である。

本人は誰とも付き合っていないつもりだが、周囲の女子との距離は明らかに近い。

しかも、相手から向けられる感情に鈍い。

善意のまま複数の女子へ優しくする姿は、本人に悪気がない分だけ厄介でもある。

ただし、温水は相手を軽く扱っているわけではない。

誰かを選べないまま中途半端に期待させている危うさはあるが、それぞれの感情へ真剣に向き合おうともしている。

女の敵というより、恋愛から逃げ続けた結果、自分でも処理できないほど関係を増やしてしまった男なのだと思う。

読後の感想

『負けヒロインが多すぎる! 9』は、幼馴染三人の長い関係に決着をつける一冊である。

桜井、小春、放虎原の想いは、どれも嘘ではなかった。

それでも三人のまま大人になることはできない。

誰かを選び、誰かを失い、それぞれの道へ進まなければならない。

恋愛の成就ではなく、関係の終わりを丁寧に描いた点が印象的だった。

特に温水が、三人の関係を無理に修復しようとせず、終わりを見届ける役割を引き受けたところがよかった。

人間関係は、必ずしも元通りにすることだけが正解ではない。

きちんと終わらせることが、次へ進むために必要な場合もある。

切なさの強い物語でありながら、八奈見の食欲や温水の女性関係によるドタバタが重さを和らげている。

そして最後には、温水自身も今のままではいけないと感じ始める。

他人の恋愛を見届けてきた彼が、自分へ向けられる想いといつ向き合うのか。

三人の幼馴染の物語が終わったことで、次は温水自身の関係が動き始めるのではないかと期待したくなる一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。

マケイン 8.5巻レビュー
マケイン まとめ
マケイン 10巻レビュー

考察・解説

温水の悪評と誤解

校内に広がる温水和彦の「悪評」と誤解の全貌

『負けヒロインが多すぎる!』の作中において、主人公・温水和彦がツワブキ高校内で晒されている凄まじい悪評と誤解について、校内で囁かれる悪評のディテール、誤解と悪評を増幅させた主な原因、および教師たちからの生暖かい追及と不穏なアドバイスの各点から解説する。

校内で囁かれる「悪評」のディテール

温水は、自分が無節操に複数の女子に手を出す男であるという根も葉もない噂が校内に飛び交っていることに深く頭を悩ませている。具体的には、以下のような噂が流れている。

・傷心の女生徒を手あたり次第に家に連れ込んでいる:失恋直後の八奈見杏菜が温水家でカレーを食べたり、停学明けの白玉リコが自宅を突撃訪問したり、さらには家出した水島小春が数日間にわたって居候したことなどが、この噂に拍車をかけた。
・後輩を助け出そうとした某運動部の部長まで毒牙にかけた:テスト勉強から逃亡した焼塩檸檬の捕獲を文芸部に依頼してきた、女子陸上部の倉田部長と交番横のカフェなどで二人きりで会っていたことなどが原因とみられる。
・手を出した女子の妹まで抱いた:カモメリアで熱中症で力尽きていた志喜屋夢子を焼塩檸檬がおぶっていた際、妹の焼塩ナギがその光景に言葉を失っていた現場や、あるいは小鞠知花の4歳の妹・陽奈が迷子になった騒動に関連していると推測される。
・本命は中学生:妹の佳樹に対する並外れた過保護ぶりや、佳樹の親友である権藤アサミたち桃園中学校の生徒たちとの関わりが、周囲から奇異な目で見られているためである。
・生徒会全員がお手付き:現生徒会長の馬剃天愛星から告白を保留されている状態であり、書記の白玉リコからは偽の彼氏として扱われ、さらに前生徒会長の放虎原ひばりや志喜屋夢子とも密接な関わりを持っているため、生徒会全体を自分の影響下に置いているかのように誤解されている。

誤解と悪評を増幅させた「主な原因」

これほどまでに彼が女の敵として扱われるようになった背景には、新聞部による煽情的な報道と、彼自身がこれまでに引き起こしたハプニングの積み重ねがある。

・新聞部による恋愛劇場化:恋川ツクシ率いる新聞部が発行した選挙特集号で、生徒会選挙は恋愛代理戦だったというセンセーショナルな見出しと共に、温水と天愛星の関係が根拠のない憶測で書き立てられた。この報道により、彼の悪評は校内全体に定着してしまった。
・体育倉庫での密着:去年の夏、半裸の焼塩檸檬と体育倉庫で抱き合っているところを目撃された。
・偽装交際の露呈:白玉リコの自室に招かれ、彼女に肩に頭を預けられている現場を田中先生に目撃されるなど、付き合っているフリが周囲を混乱させた。
・三角関係の構図:去年の冬、体育館で志喜屋夢子と天愛星との三角関係を疑われ、さらに終業式の日にはスピーカーケーブルで転びそうになった志喜屋を支えた体勢が、またしても三角関係に見える誤解を招いた。
・借り物競走の悲劇:体育祭の借り物競走で、天愛星が引いたお題「好きな人」として温水が手を引かれて一緒にゴールし、観客の注目を浴びた。

教師たちからの「生暖かい追及」と「不穏なアドバイス」

温水のあまりの状況は学校の教師陣にも筒抜けになっており、追及を受けている。

・白玉家での面談の際、担任の甘夏先生からは周りの女子をとっかえひっかえするのはどうかと思うぞと釘を刺され、小坂先生からはリコちゃんを一番大切にしてあげて、あの子は傷つきやすいからと忠告された。
・小坂先生からは、刺されたときに大切なのはねじりを防ぐことよ、身体に入った切っ先をねじられると血管や神経に大ダメージを受けるから思い切りナイフをつかみなさいという、彼が近々誰かに刺されることを前提とした不穏すぎる防衛アドバイスを送られ、甘夏先生からはいい保険紹介してやろうかと優しい笑顔で言われる始末であった。

まとめ

校内に広がる温水和彦の悪評と誤解を巡る一連の全貌は、校内に飛び交う事実無根の噂の数々から始まり、新聞部による煽情報道や数々の誤解を招くハプニングの積み重ね、そして教師陣からの生暖かい追及と命懸けの助言に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
周囲の身勝手な決めつけや理不尽な評価という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、不憫な日常の受容と独自の立ち位置確立の記録である。
意図せぬ巻き込まれから、誤解の連鎖、校内への拡散、教師陣の介入、そして冷ややかな評言の受容へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

水島小春の登場

水島小春の登場と巻き起こした波乱の全貌

『負けヒロインが多すぎる!』第9巻において、物語を大きく動かす中心人物として現れる水島小春の登場と、彼女がもたらした波乱について、唐突で積極的な初登場の瞬間、登場の裏にある目的である既成事実作戦、登場の奥底に隠された不安と嫉妬、および物語に巻き起こした波乱の各点から解説する。

唐突で積極的な「初登場」の瞬間

小春が初めて温水和彦の前に姿を現したのは、土曜日の学校の渡り廊下であった。

・温水が八奈見杏菜と一緒に図書室の蔵書整理を手伝った帰り道、他校の制服を着た見慣れない女子生徒に目を留めた。
・バッチリ目が合ってしまい、温水が慌てて八奈見の後ろに隠れようとした瞬間、彼女は強引に二人の間に割り込んできた。
・小悪魔的なアプローチ:彼女は本物の温水君だと親しげに声をかけ、驚く温水に対していろいろ聞きたい話もあると、LINEではなく電話番号での連絡先交換を求めてきた。
・綿菓子が擬人化したような可愛さを持つ彼女の積極的な態度に温水はホワホワとした余韻に浸るが、この時点で、隣にいた八奈見は仏頂面でグイグイと割り込み、すっかり不機嫌になっていた。

登場の裏にある目的:「既成事実作戦」

温水は当初ナンパされたのではと文芸部室で八奈見や小鞠知花から厳しく追及されるが、すぐに彼女の正体が判明した。小春は、温水の友人である桜井弘人の恋人であった。

・進展しない関係への焦り:小春と弘人は小学生の頃から付き合っているご近所さんであるが、その関係はほとんど進展していない状態であった。
・そこで小春は、弘人との関係を決定的に進めるために既成事実を作ろうと決意した。
・そのために、温水や八奈見を巻き込んで飛騨高山への日帰り旅行を計画し、旅行先でわざと終電を逃して弘人とお泊まりをするという、あまりにも大胆な作戦の協力を求めてきた。

登場の奥底に隠された「不安と嫉妬」

一見、フワフワとしていて強気な既成事実作戦を企てる小春であるが、彼女がこれほどまでに焦り、強硬な手段に出た背景には、長年抱えてきた深い孤独と嫉妬があった。

・放虎原ひばりへの警戒:弘人が高校で生徒会に入ったことで、彼の従姉であり幼馴染でもある放虎原ひばりと一緒に過ごす時間が劇的に増えていた。それと引き換えに、自分と弘人が一緒にいる時間は減っていく一方であった。
・かつて放虎原の自室で弘人の短い髪の毛を見つけたことなどから、小春は二人が自分の知らないところで会っているのではないかという強い不安と、放虎原に対する嫉妬に苛まれていた。
・アヤメ高校で自ら生徒会に入ったのも、少しでも弘人との共通の接点を持ちたかったからに他ならない。

物語に巻き起こした波乱

小春の登場は、単なる日常のラブコメディから、幼馴染三人(弘人、小春、放虎原)の長年の関係性の限界を露呈させるシリアスな展開へと舵を切らせた。

・高山旅行から温水家への居候へ:高山旅行での計画が失敗に終わった後、小春は弘人と大きな喧嘩をして、なんと大荷物を抱えて温水家に家出・居候してしまった。甲斐甲斐しく家事をこなしつつも、実際には弘人を嫉妬させたいという歪んだ想いから温水を利用している危うさがあった。
・罰としての恋の終わり:最終的に、小春は花火大会の夜に弘人と正面から向き合った。
・彼女はひばりのことが好きだと知っていながら、それでも弘人を奪ったという過去の罪悪感を抱えており、現在の苦しみはその罰なのだと温水に語っている。
・そして弘人を心から愛しながらも、彼の視線の先に常に放虎原がいる現実を突きつけ、自ら頭突きを食らわせて別れを告げるという、切なくも鮮烈な幕引きを選んだ。

まとめ

水島小春の登場と巻き起こした波乱を巡る一連の全貌は、衝撃的なアプローチによる唐突な初登場から始まり、既成事実作戦の裏に潜む進展への焦燥、放虎原ひばりへの深い嫉妬と不安の告白、そして温水家への居候を経て過去の罪悪感と正面から向き合い別れを告げた決着に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
人間関係の膠着や一方的な諦念という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、一途な恋の闘争と自己選択の記録である。
歪んだ焦燥から、本音の露露、偽りの排除、罪の受容、そして自立した破局へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

幼馴染三人の葛藤

桜井弘人・水島小春・放虎原ひばりの葛藤と決着の全貌

『負けヒロインが多すぎる!』第9巻において描かれる、桜井弘人、水島小春、放虎原ひばりの幼馴染三人による葛藤について、葛藤の原点である過去の雨の小屋の事件と嘘、三人がそれぞれ抱え続けた歪みと葛藤、および花火大会の夜における決着と切なすぎる幕引きの各点から解説する。

葛藤の原点:過去の「雨の小屋の事件」と「嘘」

三人の間に横たわる決定的な亀裂と葛藤は、小学生時代に発生した一つの事件に端を発している。

・放虎原ひばりの傷と弘人との密着:過去、放虎原ひばりの兄が父親から絶縁されて家を出た際、深く傷ついたひばりは激しい雨の中に飛び出し、祖父の作業小屋に閉じこもった。そこへ駆けつけた弘人は、濡れたひばりに自分のシャツを貸し、ひばりは心細さから弘人に背後から抱きついた。弘人もまた、その震える手に自身の手を重ねて彼女を温めた。この出来事は、ひばりが自身の心細さを理由に、弘人の気持ちを利用した瞬間でもあった。
・親族の対立と、小春の「嘘(略奪)」:この出来事が大人たちに知れ渡ると、家や財産を巡る親族間の対立も重なり、弘人はひばりに夜遅く連れ回されたとして、父親から転校を強制されそうになるまでの大騒動に発展した。この危機に直面した当時小学六年生の小春は、大人たちの前に割って入り、あの夜、自分も弘人と一緒にいた、自分たちが付き合っていることを親に怒られたくなくて嘘をついたと宣言した。これにより親族間の争いは収まり、弘人の転校も免れた。しかし小春は、弘人とひばりがお互いに特別な好意を抱いていることをその時すでに悟っていた。彼女の嘘は、ひばりへの確かな好意を知りながら、弘人を強引に奪ったという、終わりのない罪悪感の始まりとなった。

三人がそれぞれ抱え続けた「歪みと葛藤」

この事件以降、装いとしての恋人関係を続けた三人は、それぞれの胸の内に異なる葛藤を秘めて高校生活を送ることとなった。

・水島小春の葛藤:小春は弘人を誰よりも愛していたが、同時に彼の心の奥底には常に放虎原ひばりがいるという現実を最も痛感していた。弘人がツワブキ高校でひばりと同じ生徒会に加わり、自分の知らないところで時間を共有し始めたことで、彼女の不安と嫉妬は限界に達する。アヤメ高校で自ら生徒会に入ったのも、ただ弘人との接点を作るためだった。小春が既成事実作戦という暴走に近い計画に温水たちを巻き込んだのは、進展しない関係に対する募る焦りの裏返しであった。彼女は、弘人を奪った過去を自分がいい子ではない証拠とし、今受けている精神的な苦しみを自分の罪に対する罰なのだと自嘲気味に捉えていた。
・桜井弘人の葛藤:弘人は、小春を傷つけたくないというお人好しな優しさを持つ一方で、ひばりに対する特別な想いを完全に消し去ることもできずにいた。彼は小春から別れを告げられること、あるいは自分の本当の気持ちを暴かれることを恐れるあまり、本質的な会話から逃げて煙に巻き続けていた。自分自身をそれっぽく装っているだけの、つまらない普通の男と評し、二人の女性の間で曖昧な態度をとり続ける自身に対して、深い罪悪感と自己嫌悪を抱いていた。
・放虎原ひばりの葛藤:ひばりは、かつて雨の小屋の事件の際に、自らの弘人が好きという想いを言葉にする勇気が持てず、結果として小春に弘人を譲る形で逃げてしまった自分を深く悔やんでいた。自分が大人びた態度で幼馴染の関係に甘えてきたことが、結果として小春を歪ませ、弘人を苦しめる原因になったと自責していた。卒業を機に豊橋を離れ、二度と戻らない覚悟を決めていたのは、彼女が自分の過去の想いと罪悪感をここに全て置いていくための曖昧な思い出への昇華を試みたからであった。

花火大会の夜における「決着」と切なすぎる幕引き

この長きにわたる不健康な平行線は、9巻の花火大会の夜に激しく崩壊する。

・小春の決別:小春は弘人に対し、ひばりと会うのをやめてと最後の一線を要求する。しかし、ひばりが豊橋を去るまでもう少しだけ見守らせてほしいと曖昧な態度を崩さない弘人の姿を見て、ついにこれ以上の関係継続を諦めた。小春は、ひばりを好きな弘人に愛されたいと期待し続けた自らの苦しみを全て吐き出し、別れようと強烈な頭突きを食らわせて、自らその手を引き抜いた。
・弘人とひばりの最後の対峙:別れを経て、温水に最後までカッコ悪くていい、ちゃんとしてこいと促された弘人は、ようやく覚悟を決め、一人でひばりの元へ向かった。ひばりの自宅の縁側で、二人は子供の頃のように他愛ない思い出を語り合った後、弘人は小春にきっぱり振られてきたと伝える。そして、自分のせいで全てを壊したと泣き崩れるひばりに対し、弘人は、ひば姉は心残りも思い出も全てここに置いて、夢のために東京へ行ってほしい、僕がこの町と、思い出の全てをここで引き受けて生きていくからと告げた。
・この弘人の精いっぱいの覚悟に、ひばりは初めて感情の砦を崩し、長年言えなかった好きという本心を泣きながら告白した。二人は、お互いが深く惹かれ合っている真実をようやく共有した。しかし、彼らは一緒になる道は選ばなかった。ひばりが春に故郷を去るまでの間だけ、その秘めた気持ちを弘人に預けるという、あまりにも切なく、美しい終わりを迎えることとなった。

まとめ

桜井弘人・水島小春・放虎原ひばりの葛藤と決着を巡る一連の全貌は、雨の小屋の事件と偽りの告白から始まり、各々が胸に秘めてきた嫉妬・優柔不断・罪悪感の相克、そして花火大会の夜における小春の決別宣言と弘人・ひばりの切なくも気高い決着に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
過去の執着や不自然な罪悪感という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、青春の相克と真実の選択の記録である。
偽りの恋人関係の解消から、誠実な告白、想いの受容、そしてそれぞれが新しい未来へ歩む決意へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

飛騨高山聖地巡礼

飛騨高山聖地巡礼の全貌と物語の展開

『負けヒロインが多すぎる!』第9巻のメインイベントである飛騨高山聖地巡礼について、聖地巡礼の対象である『あてなるもの』、巡礼された高山のスポットと出来事、八奈見杏菜の「地産地消」食べ歩き、および計画の崩壊とまさかの結末の各点から解説する。

聖地巡礼の対象『あてなるもの』

メンバーが巡礼した作品は、高山市が舞台となっている作中の名作アニメ『あてなるもの』であった。

・主人公の烏谷君や、作中の喫茶店でココアを飲んでいた絵里たんといったキャラクターが登場する。
・小春はカバンに烏谷君のラバーストラップをつけるほどの熱狂的なファンであり、温水もまたアニメの中に自分たちがいると熱弁するほどの巡礼への情熱を見せた。

巡礼された高山のスポットと出来事

温水や小春がアニメのオープニングなどの同じ構図での撮影にこだわる一方、八奈見がマイペースに割り込むドタバタな観光が描かれた。

・商店街の招き猫:オープニングに登場するスポットである。温水が撮影しようとするものの、八奈見がフランクフルトを持って謎のポーズで割り込み、邪魔をした。
・鍛冶橋:オープニングを飾る印象的な橋である。温水はキャラが目にした光景を共有し、体感するのが巡礼だと主張するが、八奈見にはめんどくさいと一蹴された。
・朝市:温水はオープニングの演出に合わせて反対側から進入するべきだとこだわるが、ここでも八奈見に背中を押し出されて普通に進入することになった。
・逆L字型の水飲み場:オープニングで烏谷君が横を歩いていた水飲み場である。現地を訪れると新しく樹脂製のものに改修されていた。ここで放虎原ひばりが車椅子に配慮した設計だとインフラの解説を始め、周囲を引き気味にさせた。
・巡礼の喫茶店:第3話で主人公が秘密を打ち明けられる名シーンの舞台となった、古い街並みの喫茶店である。温水は作中で絵里たんが飲んでいたウインナーココアを注文した。小春は烏谷君が吸い込んだ空気(ココアの湯気)を胸いっぱいに取り入れ、巡礼者特有の熱狂ぶりを見せた。
・県立志太高校:キャラクターたちが通う学校のモデルで、巡礼最大の聖地である。グラウンドが正門の外にあるため、校舎のすぐ近くまで寄ることができた。

八奈見杏菜の「地産地消」食べ歩き

ご当地グルメは地産地消だから太りにくいという独自の理論を掲げた八奈見は、聖地巡礼の傍らで高山グルメを食べ尽くした。

・食べたもの:味噌煎餅、飛騨牛串、五平餅、きな粉みたらし団子(豊橋の4玉と異なり5玉あるうちの、温水の分の1玉を強奪)、そして昭和から続く老舗のワンタン麺大盛りとライス大盛り。
・その圧倒的な食欲は、放虎原先輩からご近所の土佐犬に例えられるほどであった。

計画の崩壊と、まさかの結末

市街地巡礼の後、一行はバスで1時間ほど離れた奥飛騨温泉郷の平湯温泉へ向かった。

・当初の計画では、温泉から戻るタイミングで温水と八奈見が先に離脱し、小春と弘人の二人だけを温泉街に足止めして、最終バスを逃させる予定であった。しかし、事態は本末転倒なハプニングへと発展した。
・カバンの取り違え:八奈見が本物のカバン(財布、スマホ、帰りの切符入り)と、ダミーのカバンを取り違えて小春に預けてしまい、お金も通信手段もない状態になってしまった。
・バスの乗り遅れ:カバンを取り戻すために平湯バスターミナルへ引き返すものの、温水たちはバスの出発時間を17:32発と勘違いしていた。32分発は隣のバス停の時間であり、ターミナルは17:30発であったため、わずか2分の差で最終バスに乗り遅れてしまった。
・仕掛けを見抜いた弘人:不自然な全員の行動から計画を見抜いていた弘人は、小春と放虎原を説得して、自分たちだけで最終バスに乗って帰っていた。
・結果として、お泊まりするはずだったカップルではなく、温水と八奈見の二人が飛騨の温泉街に取り残され、小春が予約していた温泉旅館のひとつの部屋に一泊するという、あまりにも皮肉で甘酸っぱい結末を迎えた。

まとめ

飛騨高山聖地巡礼の全貌と物語の展開を巡る一連の全貌は、小春の企みによる聖地巡礼の開始から始まり、作中アニメ『あてなるもの』のカット合わせや八奈見の旺盛なグルメ巡り、仕掛けを見抜いた弘人の先行下山、そして勘違いとハプニングによる温水と八奈見の温泉街取り残されに至るまで、その歩みを明瞭に示している。
予想外のトラブルや策謀の崩壊という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、青春の一幕と偶発的な関係進展の記録である。
画策の開始から、観光のドタバタ、計画の破綻、予期せぬ宿泊、そして二人の距離の接近へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

桜井と小春の別れ

桜井弘人と水島小春の別れの全貌

『負けヒロインが多すぎる!』第9巻のクライマックス、豊橋祇園祭の花火大会の夜に描かれる桜井弘人と水島小春の別れについて、別れの背景である限界に達した小春の期待と苦しみ、花火大会の夜における衝撃の頭突きと本心の吐露、および切なすぎる幕引きと罰からの解放の各点から解説する。

別れの背景:限界に達した小春の「期待」と「苦しみ」

小春は小学生の頃から、弘人が従姉である放虎原ひばりに特別な好意を抱いていることを知っていた。

・それでも、弘人を守るためについた嘘をきっかけに、小春は偽物でもいいからと弘人の恋人という立場を手に入れた。
・しかし、高校生になり、弘人とひばりが同じツワブキ高校の生徒会で過ごす時間が増えたことで、小春の不安と嫉妬は限界に達した。
・小春は弘人にひばりと会うのをやめてと迫るが、ひばりの上京を理由にもう少しだけ見守らせてほしいと曖昧な態度を崩さない弘人の姿勢を見て、彼女はついに決定的な覚悟を決めた。
・弘人は自分を信頼してくれているから怒らないのではなく、自分に対して本気で怒ったり嫉妬したりしないという冷酷な現実に、小春はいつか私一人を好きになってくれると期待し続けることの限界を感じた。

花火大会の夜:衝撃の「頭突き」と本心の吐露

花火大会の会場である豊橋公園の芝生広場にて、温水、八奈見、天愛星が物陰から見守る中、ついに二人の対峙が始まった。

・弘人は、かつて小春の嘘に救われたことへの感謝を伝え、もう一度、僕にチャンスをくれないかと小春の両肩を掴んでやり直すことを提案した。
・しかし、小春はその手を拒絶した。
・小春は、弘人の胸倉を掴み、全力の頭突きを二発食らわせた。
・これは、曖昧な言葉で話をはぐらかし、話し合うことから逃げ続けてきた弘人に対する、彼女なりの最も強烈な決別の意思表示であった。
・小春は泣きながら、花火の音に負けない大声で本心を叫んだ。
・ヒロくん大好き、本気で好きだったと叫び、ひばりのことが好きなのに、自分と付き合ってくれて嬉しかったが、だからこそ、いつか自分だけを見てくれると期待して、自分を削り続けるのが苦しかったという、10年以上抱え込んできた愛と絶望をすべて吐き出した。

切なすぎる幕引きと「罰」からの解放

小春は、ボロボロと涙をこぼしながらも、最後は無理に笑顔を作ってゴメンね、弘人と告げ、弘人を思い切り突き飛ばしてその場から走り去った。

・その別れ方は、悲惨な決裂というよりも、花火のように夜空にハラハラと溶けていくような、清々しいほど晴れやかな幕引きとして描写されている。
・小春はひばりから弘人を強引に奪ったという長年の罪悪感から、自らその手を引き抜くことで、ようやく解放された。
・その後、小春は居候していた温水家から静かに自分の荷物をまとめ、自宅へと戻っていった。
・この出来事ののち、温水に背中を押された弘人は、一人でひばりの元へと向かい、もう一つの決着をつけることとなった。

まとめ

桜井弘人と水島小春の別れを巡る一連の全貌は、長年の嘘と諦念から生じた期待の限界から始まり、花火大会での二頭突きを伴う本心からの叫びと決別、そして罪悪感からの解放と自立した別れの完遂に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
曖昧な情念や自罰的な関係性という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、青春の決着と自己選択の記録である。
偽りの恋人関係から、苦悩の限界、誠実な対峙、自罰の克服、そして晴れやかな旅立ちへと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

放虎原の旅立ち決意

放虎原ひばりの旅立ちの決意と過去との決別

『負けヒロインが多すぎる!』第9巻における放虎原ひばりの旅立ちの決意について、旅立ちの決意とその目的、決意の背景にある深い葛藤と罪悪感、温水への相談と介錯の役割、弘人との最後の対峙と恋心の預け入れ、および旅立ちの決意が生んだ穏やかな変化の各点から解説する。

旅立ちの決意とその目的

放虎原ひばりは、ツワブキ高校を卒業した後に豊橋を離れ、東京の大学へ進学することを決めている。

・卒業をしたら私は豊橋を出る、その先も戻ってこないという、故郷との決別すら含んだ強い覚悟を抱いている。
・彼女の夢は、世界にある様々な国や人々を自分の目で見て、日本とその国を橋渡しする仕事に就くことである。
・その大それたとも言える夢に向かって突き進むために、彼女は故郷を去る決意をしていた。

決意の背景にある深い葛藤と「罪悪感」

ひばりが二度と戻らないほどの覚悟を抱く背景には、幼少期から彼女を縛り続けてきた、複雑にこじれた人間関係と罪悪感があった。

・過去の傷と自責の念:小学生時代、家庭の事情で深く傷ついていたひばりは、雨の作業小屋に閉じこもった際、駆けつけてくれた弘人に心細さから背後から抱きついた。この出来事は彼女にとって、弘人の優しさに甘え、利用してしまった瞬間であり、同時に弘人への特別な感情を自覚した瞬間でもあった。しかしその後、親族間でのドロドロとした対立に発展し、弘人が転校させられそうになった際、ひばりは恐怖から弘人が好きだと言い出す勇気を持てなかった。結果として小春が嘘を吐いて弘人を守り、弘人の恋人という立場を引き受けることとなる。ひばりは、自分の弱さと甘えが小春を歪ませ、弘人を苦しめる元凶になったと、長年自分を激しく責め続けていた。
・思い出は綺麗なままでという諦念:彼女にとって、豊橋の土地や親族の対立は守るべきものがある難儀さを象徴するものでもあった。進学を控えた彼女は、過去の想いや感情はここに置いていくべきだ、そうすればいつかすべてが曖昧な思い出になると自分に何度も言い聞かせ、過去を清算しようとしていた。

温水への相談と「介錯」の役割

旅立ちを前に、ひばりは心残りを消しておきたいと考え、温水にアプローチする。

・彼女は、小春が弘人との既成事実を作ろうと暴走していることを知りながら、あえてそれを止めず、むしろ小春の望みをかなえてやってほしいと温水に頭を下げた。
・自分が豊橋に残り続け、弘人と同じ生徒会で時間を共有していること自体が、小春を不安にさせ苦しめていると気づいていたからである。
・ひばりは自らが憎まれ役を買い、自分を排除した形での二人の決着を促すことで、幼馴染三人のねじれた関係を終わらせようとした。

弘人との最後の対峙と「恋心の預け入れ」

花火大会の夜、小春と正面から向き合ってきっぱりと振られた弘人は、覚悟を決めてひばりの元を訪れる。

・弘人はひばりに対し、自分は大学を卒業した後に豊橋に戻り、この土地とすべての思い出を引き受けて生きていくという自身の夢を語った。
・ひば姉は心残りも罪悪感も思い出も全部ここに置いて、夢を追いかけて東京へ行ってほしい、僕が全部引き受けるからと告げた。
・この弘人の精いっぱいの覚悟と救いによって、ひばりの感情の砦はついに崩壊する。あの日、私は勇気が出なかった、弘人のことが好きって言えなかったと、10年以上の時を経てようやく、涙ながらに本心を告白することができた。
・しかし、二人は一緒になる道を選ばなかった。ひばりは自らが春にこの地を離れ、二度と会わないかもしれないという未来を見据えながら、その時まで預かってくれないか私の気持ちを、お願い、明日の朝まで私をひば姉と呼ばないでと願った。
・彼女は自分の最も大切な恋心を弘人に預けるという形で、曖昧な思い出に逃げることなく、初めて自らの想いにまっすぐ向き合って決着をつけた。

旅立ちの決意が生んだ、穏やかな変化

すべての決着がついた後、ひばりは小春からの預かり物を届けるために温水たちの前に姿を現す。

・その時の彼女は、これまで彼女を包んでいた重苦しい罪悪感から解放され、どこか穏やかで大人びた、吹っ切れたような優しい笑顔を浮かべていた。
・これで私も、心置きなく旅立てると語る彼女の姿は、傷つきながらも過去を乗り越え、自分の力で未来へ歩み出す大人の階段を上ったことを示している。

まとめ

放虎原ひばりの旅立ちの決意と過去との決別を巡る一連の全貌は、故郷を去る強い覚悟と夢への希望から始まり、過去の雨の作業小屋事件に根差す長年の罪悪感、温水への介錯の要請、そして花火大会の夜における弘人への本心告白と恋心の預け入れ、そして晴れやかな旅立ちの完遂に至るまで、その歩みを明瞭に示している。
過去の罪悪感や曖昧な諦念という不条理な檻を打ち破り、自分たちの尊厳と平穏な生の主権を自らの選択と確固たる意志によって完璧に確立するに至る、自己選択と未来への自立の記録である。
過去の逃避から、真実の告白、責任の引き受け、恋心の託与、そして気高い自立へと繋がったプロセスは、どれほど不条理な事態の混迷や過酷な環境の激変によって状況が脅かされようとも、本質を突いた人間の知性と確固たる意志の果断によって打破され、新しい生き方を切り拓く輝かしい未来の道が厳密に証明されている。

マケイン 8.5巻レビュー
マケイン まとめ
マケイン 10巻レビュー

登場キャラクター

主要キャラクター

ツワブキ高校 文芸部

温水和彦

文芸部の部長を務める男子生徒である。彼は周囲の女子生徒たちに振り回される立場に置かれている。彼は妹の佳樹に対して過保護である。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校文芸部・部長。

・物語内での具体的な行動や成果
 期末試験の前に部員たちと勉強会を開催した。
 逃亡した焼塩檸檬の捕獲作戦に参加する。
 佳樹の誕生日に手作りのケーキを完成させた。
 名古屋旅行では部員たちと大須の散策をおこなう。
 夜のテレビ塔で焼塩檸檬と二人きりで会話を交わす。
 白玉リコの自宅で彼氏の役割を演じている。
 家出をした水島小春を自宅に数日間泊めた。
 桜井弘人と水島小春の別れの場に居合わせる。
 弘人に対して放虎原ひばりと向き合うよう促した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 馬剃天愛星から好意を告げられており返事を保留している。校内新聞などの影響で複数の女子生徒と交際しているという誤解を受けている。白玉リコからは偽の彼氏として扱われている。

八奈見杏菜

食欲が非常に旺盛な女子生徒である。彼女は自身のダイエットに何度も挑戦している。彼女は温水和彦の世話を焼くことを自負している。袴田草介とは幼馴染の関係にある。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校文芸部・部員。

・物語内での具体的な行動や成果
 焼塩の捕獲作戦に参加した。
 途中で疲労したため捜索から離脱する。
 中学時代の友人である新菜早苗とラーメン店を巡った。
 温水が自分に興味を持たないことに不満を漏らす。
 夜の歩行者天国へ袴田草介を誘っている。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 温水が名古屋で自分へのお土産として「鯱もなか」を内密に購入していたことを知る。彼女はそれを喜び温水と秘密を共有した。

小鞠知花

人見知りな性格の女子生徒である。彼女は文芸部の副部長を務めている。彼女は温水和彦に当たりが強い。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校文芸部・副部長。

・物語内での具体的な行動や成果
 こども未来館で妹の陽奈を見失い迷子にさせた。
 馬剃天愛星と協力して妹を発見する。
 過去の態度を謝罪する天愛星の言葉を受け入れた。
 焼塩のためにテストの対策資料を綾野光希に依頼する。
 名古屋旅行中に迷子になり玉木慎太郎と出会った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 卒業後に東京の大学へ進学する計画を玉木慎太郎に打ち明ける。彼女はその計画を二人だけの秘密にした。

白玉リコ

計算高い性格の女子生徒である。彼女は温水和彦に小悪魔的なアプローチをおこなう。彼女は温水の妹である佳樹とライバル関係にある。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校生徒会・書記。文芸部・部員。

・物語内での具体的な行動や成果
 義理の兄である田中先生への好意を諦めるためにウェディングフォトの計画を立てた。
 計画の成功後に文芸部へ正式に入部する。
 姉夫婦に交際を認めてもらうために温水を実家に招いた。
 温水に対して偽装交際から本当の交際への発展を匂わせる。
 温水の自宅を訪れて佳樹に本格的なクッキーを振る舞った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 姉のみのりから温水との関係について探りを入れられている。佳樹が作成する「お兄様のお嫁さん候補」の採点において厳しい評価を受けている。

ツワブキ高校 生徒会

馬剃天愛星

真面目で責任感が強い女子生徒である。彼女は規則を守ることを重視しています。彼女は温水和彦に好意を寄せている。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校生徒会・会長。

・物語内での具体的な行動や成果
 生徒会選挙で推薦人を温水に依頼した。
 こども未来館で迷子になった陽奈の捜索を志願する。
 過去の部長会での冷たい態度を小鞠知花に直接謝罪した。
 温水をカラオケに呼び出して二人きりで歌う。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 生徒会選挙を経て生徒会長に就任した。温水に対して告白をおこなう。その返事は保留された状態となっている。

桜井弘人

お人好しで穏やかな性格の男子生徒である。彼は周囲の女子生徒たちの関係に頭を悩ませている。水島小春とは小学生の頃から交際している。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校生徒会・副会長。

・物語内での具体的な行動や成果
 生徒会選挙への立候補を決意した。
 アヤメ高校の韮澤が生徒会室で小春との関係を誇示した際、静かに威圧して退ける。
 小春が望む「既成事実作戦」の計画を見抜いた。
 花火大会の夜に小春から別れを告げられる。
 放虎原ひばりの自宅を訪れて自分の将来の夢を語った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 生徒会選挙を経て生徒会副会長に就任した。小春との別れを決意する。放虎原ひばりから彼女の秘めた好意を告げられ、その気持ちを預かることになった。

放虎原ひばり

真面目で面倒見が良い女子生徒である。彼女は親族間の対立や過去の思い出に苦悩している。桜井弘人の従姉であり幼馴染である。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校生徒会・前会長。

・物語内での具体的な行動や成果
 旧校舎の倉庫で配線を調べていた朝雲千早と遭遇した。
 朝雲の嘘に矛盾があることを見抜く。
 小春と弘人を和解させるために花火大会での引き合わせを計画した。
 弘人の自宅にキャベツなどの野菜を届ける。
 弘人から将来の夢を告げられた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 生徒会長を退任した。高校卒業後は東京の大学へ進学し、豊橋には戻らない決意を固めている。弘人に対して長年言えなかった好意を告白した。

志喜屋夢子

独特のテンポで話すミステリアスな女子生徒である。彼女は実家の園芸店で働いている。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校生徒会・元役員。

・物語内での具体的な行動や成果
 熱中症で倒れていたところを焼塩檸檬に助けられた。
 お礼として冷たい身体を檸檬に密着させる。
 園芸店での職場体験に来た橘たちに作業を指導した。
 温水が自分について何か話していないか佳樹に尋ねる。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 生徒会役員を退任した。温水とはボードゲームゲームカフェに行くなどの個人的な交流を続けている。

アヤメ高校 生徒会

水島小春

可愛らしい容姿を持つ女子生徒である。彼女は桜井弘人の恋人である。弘人に対する強い焦りと不安を抱えている。

・所属組織、地位や役職
 アヤメ高校生徒会・役員。

・物語内での具体的な行動や成果
 弘人との関係を進めるために「既成事実作戦」を計画した。
 温水和彦に連絡先の交換とお茶の誘いを持ちかける。
 弘人と喧嘩した後に温水家へ家出をおこなった。
 温水家で家事を手伝い居候を続ける。
 花火大会の夜に弘人に別れを告げた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 弘人をひばりから奪ったという長年の罪悪感から解放される。別れの後は自宅へと戻っていった。

篠栗

真面目で冷静な女子生徒である。

・所属組織、地位や役職
 アヤメ高校生徒会・会長。

・物語内での具体的な行動や成果
 生徒会合宿の打ち合わせでツワブキ高校生徒会と会議をおこなった。
 室内の不穏な空気を察して別の話題へと促す。
 韮澤が勝手な話を始めた際にやんわりと制止した。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 アヤメ高校生徒会の会長を務めている。

韮澤

オシャレなマッシュカットの髪型をした男子生徒である。彼は大きな病院の跡継ぎである。

・所属組織、地位や役職
 アヤメ高校生徒会・副会長。

・物語内での具体的な行動や成果
 小春の相談相手として親密さをアピールした。
 弘人に対して生徒会室で挑発的な言動をおこなう。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 別の高校に恋人がいる。弘人からその恋人の存在や夜遊びの件を指摘され静かに威圧された。

ツワブキ高校 新聞部

恋川ツクシ

活動資金の獲得を目指す熱心な女子生徒である。彼女は特ダネを狙って行動している。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校新聞部・部員。

・物語内での具体的な行動や成果
 朝雲千早の勉強法を取材するために放送室を訪れた。
 校内新聞の売上を伸ばすための活動に尽力する。
 女子生徒たちの隠し撮り写真を保存したSDカードを落としてしまった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 朝雲千早と温水佳樹に隠し撮りの証拠を突きつけられた。朝雲から友達になることを提案され、その手を握り返した。

ツワブキ高校 その他の生徒

朝雲千早

学年主席の成績を持つ極めて優秀な女子生徒である。彼女は独自のアプリや機材を用いて問題を解決しようとする。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校2年E組・生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 焼塩檸檬の居場所を絞り込む追跡アプリを開発した。
 旧校舎の倉庫で図面にない配線を調査する。
 恋川ツクシの隠し撮りを暴いた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 恋川ツクシを自らの協力者として引き入れた。温水と八奈見の関係を注視している。

綾野光希

世話焼きで優しい性格の男子生徒である。彼は周囲の人間関係を大切にしている。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校・生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 小鞠の依頼を受けて焼塩のためのテスト対策資料を準備した。
 温水や桜井と生徒会選挙の打ち上げをおこなう。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 朝雲千早に追いつくために夏休みの塾合宿へ申し込んだ。温水と八奈見の交際を疑い応援の言葉をかける。

姫宮華恋

華やかなオーラを放つ女子生徒である。彼女は袴田草介と交際している。八奈見杏菜の親友である。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校・生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 移動教室の際に小鞠知花に声をかけて隣を歩いた。
 小鞠との会話を通じて少しずつ距離を縮める。
 自宅で草介と英語の勉強会を開いた。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 温水と八奈見が二人きりで宿泊したという噂を聞きつけて温水を問い詰めた。

沼田律子

中肉中背で少しだらしない着こなしをする女子生徒である。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校2年E組・生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 朝の並木道で田中先生から聞いたオナガの声を探していた。
 一眼レフカメラを片手に朝練の合間に活動する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 鳥を見る会の元会員である。夏休みに撮影旅行に行く計画を立てている。

ツワブキ高校 教職員

甘夏古奈美

生活指導に厳しく、私情をHRで語る傾向がある女性教師である。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校・教諭。

・物語内での具体的な行動や成果
 風邪と食あたりにより大みそかに自宅で寝込んでいた。
 白玉家での面談に同席して温水を追及する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 大学時代に小坂小夜が刺された際に助けた過去がある。

小坂小夜

温厚な雰囲気の中に不穏な知識を隠し持つ女性教師である。甘夏古奈美とは高校時代からの友人である。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校・養護教諭。

・物語内での具体的な行動や成果
 大みそかに寝込んでいた甘夏の自宅を看病のために訪れた。
 出汁をしっかりと利かせたおかゆを調理する。
 白玉家での面談に同席して温水に刃物から身を守るアドバイスをおこなった。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白玉リコを昔から知っており、彼女を大切にするよう温水に忠告した。

田中先生

ツワブキ高校の教師である。

・所属組織、地位や役職
 ツワブキ高校・教諭。

・物語内での具体的な行動や成果
 おうちデートをおこなっていた温水と白玉の部屋をノックしてケーキに誘った。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 白玉みのりと結婚した。白玉リコの義兄となった。

桃園中学

温水佳樹

兄の温水和彦を深く慕う中学生の少女である。彼女は家事や料理が得意である。兄を狙う女性陣に強い警戒心を抱いている。

・所属組織、地位や役職
 桃園中学・生徒。

・物語内での具体的な行動や成果
 兄の用意した誕生日サプライズの計画を把握していた。
 温水家でのパジャマパーティーを主催する。
 放送室で恋川ツクシにSDカードを突きつけた。
 温水の首に口紅の跡が付いているのを発見して問い詰める。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 文芸部女子たちを「お兄様のお嫁さん候補」として厳しく採点している。

キャラクターの家族

田中みのり

白玉リコの姉である。旧姓は白玉である。

・所属組織、地位や役職
 白玉リコの姉。

・物語内での具体的な行動や成果
 自宅を訪れた温水に対し彼氏としての適性を探る質問をおこなった。
 帰り際に温水を「部員さん」と呼ぶ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 田中先生と結婚した。温水とリコの関係が偽装である可能性を見抜いている素振りを見せた。

桜井の父

厳格な性格の男性である。

・所属組織、地位や役職
 桜井弘人の父。

・物語内での具体的な行動や成果
 雨の夜の小屋の出来事を知り激怒した。
 弘人を連れて放虎原の家に怒鳴りこむ。
 弘人を転校させようとした。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 小春の「自分も一緒にいた」という嘘によって納得し、その場を収めた。

放虎原の父

気性の荒い男性である。

・所属組織、地位や役職
 放虎原ひばりの父。

・物語内での具体的な行動や成果
 仏間で桜井の父親と言い争いをおこなった。
 畑や家などの財産分与について桜井家と対立する。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 小春の嘘の告白に対しては直接確認をおこなっていない。長男の絶縁や財産の件で悩んでいる。

放虎原の母

ひばりを心配する穏やかな女性である。

・所属組織、地位や役職
 放虎原ひばりの母。

・物語内での具体的な行動や成果
 木立の跡地に佇んでいたひばりを迎えに行った。
 ひばりに対して突然に曖昧な謝罪をおこなう。
 ぬかるんだ道でひばりの靴が汚れたことを悲しんだ。

・地位の変化、昇進、影響力、特筆事項
 ひばりの気持ちや葛藤を気遣っている。

マケイン 8.5巻レビュー
マケイン まとめ
マケイン 10巻レビュー

展開まとめ

消えない悪評

温水は、複数の女子に手を出す女の敵だという校内の噂に悩まされていた。学期末試験が始まると噂は下火になったものの、女子たちの視線は今も気になっていた。

八奈見の積み本集め

土曜日、温水は八奈見杏菜と図書室の蔵書整理を手伝い、廃棄本を抱えて渡り廊下を歩いていた。八奈見は積み本用のラックを買ったものの本がなかったため、廃棄本を集めようとしていた。

水島との出会い

温水は他校の制服を着た女子に目を留め、八奈見から注意された。女子はアヤメ高校の水島と名乗り、温水を知っている様子で話しかけてきた。水島は聞きたいことがあるとして連絡先の交換を求め、温水も可愛らしさに惹かれて応じた。

八奈見の不機嫌

八奈見は温水と水島の間に割り込みながら、二人分の本を持たされた。水島が去った後、温水が楽しげに余韻へ浸っていると、八奈見は本をすべて押し返して先に部室へ向かった。温水は八奈見が怒った理由を理解できないまま、重い本を抱えて後を追った。

~1敗目~ 初めまして水島小春です 

部室での追及

温水は、水島小春と連絡先を交換した件で八奈見と小鞠に責められた。小春が桜井弘人の彼女だと判明して疑いが晴れかけたが、彼女から弘人に内緒でお茶へ誘うメッセージが届き、八奈見も同行することになった。

小春の依頼

小春は、弘人との交際が小学生の頃からほとんど進展していないと打ち明け、二人の仲を取り持ってほしいと頼んだ。彼女は日帰り旅行で意図的に終電を逃し、弘人と既成事実を作ろうとしていた。温水は反対したが、八奈見は事情を聞くことにし、次の週末の計画へ加わった。

放虎原との遭遇

温水はファミレスで働く元生徒会長の放虎原ひばりと偶然会った。放虎原は小春を見て驚いたが、仕事中の失敗で呼び戻され、詳しい話はできなかった。

天愛星の反応

帰り道、温水と八奈見はコーヒー店の前で馬天愛星と会った。天愛星は温水と以前二人で喫茶店へ行ったことを明かし、八奈見を不機嫌にさせた。さらに小春の名前を聞くと反応を変え、その夜、温水へ電話をかけて翌日に直接会いたいと頼んだ。

佳樹の警戒

帰宅した温水は、体調を崩した佳樹を抱えて世話をした。佳樹は温水から知らない女性の匂いを感じ取り、天愛星からの電話にも強い関心を示したため、温水は会話を早々に切り上げた。

天愛星とのカラオケ

翌日、温水は天愛星とカラオケで会い、アニメソングを一緒に歌って楽しい時間を過ごした。温水はデートのような雰囲気に戸惑ったが、天愛星は小春との関係を確かめたかったと明かした。彼女は、小春が異性関係に奔放だという噂を聞いており、温水が狙われているのではないかと心配していた。また、温水に会いたかったことや、小春に嫉妬したことも素直に告げた。

白玉リコへの相談

小春の噂を確かめるため、温水はアヤメ高校に勤める田中みのりの妹、白玉リコを訪ねた。白玉は姉との食事に温水を誘い、情報を聞き出す機会を作った。

白玉姉の告白

食事の席で、白玉は小春に怪しい交流会へ誘われたという作り話をし、姉の警戒心をあおった。妹を心配した田中みのりは、小春が男性の扱いに慣れていると話し、さらに彼女にはアヤメ高校にも交際相手がいると明かした。温水は、弘人が二股をかけられている可能性を知った。

弘人への沈黙

温水は弘人に真実を伝えられず、問題を見て見ぬふりで収めようと考えた。昼食中、弘人が放虎原の将来について寂しそうに話す姿を見て、温水はますます口を閉ざした。

放虎原の訪問

帰宅した温水は、自宅で料理をしていた放虎原が目玉焼きから炎を上げている場面に遭遇した。温水と佳樹が火を止めた後、放虎原は温水に相談を持ちかけた。

幼馴染三人の関係

放虎原は、弘人と小春とは幼い頃から家族同然に育ったと語った。弘人と同じ高校の生徒会で過ごす自分に対し、小春が不安を抱き、彼との接点を求めてアヤメ高校の生徒会へ入ったのだと考えていた。二人の関係がぎこちなくなっていることにも気づいており、弘人には小春を安心させる必要があると話した。

豊橋を去る決意

放虎原は卒業後に豊橋を離れ、その後も戻らないつもりだと告げた。幼馴染という関係に甘えてきたことを認め、残された心残りを消すため、小春の望みをかなえる手助けをしてほしいと温水に頭を下げた。

Intermission つぼみが花に変わるころ 

ひばりの制服姿

中学の制服が届いたと聞いた桜井弘人と水島小春は、放虎原ひばりの家へ駆けつけた。セーラー服姿の放虎原を見た小春は素直に褒めたが、桜井は顔を赤らめ、まともに感想を口にできなかった。三人は幼い頃と変わらず騒ぎ合ったものの、放虎原の母親は娘に女の子らしさを求め、陸上を続けることにも否定的な態度を見せた。

桜井への問いかけ

母親と小春が部屋を離れると、放虎原は改めて桜井に制服が似合うかと尋ねた。桜井が黙って頷くと、放虎原は外れた襟のボタンを留めるよう頼み、髪を持ち上げて首元を見せた。

西陽の中の放虎原

桜井は緊張しながら放虎原の襟元へ手を伸ばし、ボタンを留めた。互いの鼓動を意識するような沈黙の後、放虎原が障子を開けると、西陽がその横顔と長い髪を照らした。桜井は照れながらも、彼女から目を離せなかった。

~2敗~ 削り氷に甘い蜜 

作戦会議からの逃走

温水は、小春が部室で開く既成事実作戦の会議を避けるため、普段と異なる靴や校門、駅を使って帰ろうとした。しかし途中で放虎原と遭遇し、さらに駅で八奈見と小春にも見つかったため、四人で話し合うことになった。

高山への聖地巡礼

小春は、桜井と二人で終電を逃す場所として、アニメ『あてなるもの』の舞台である高山を提案した。放虎原も計画に賛成し、温水、八奈見、放虎原、小春、桜井の五人で聖地巡礼へ行き、帰りに桜井と小春だけを残す作戦が決まった。

飛騨高山の旅

一行は高山で招き猫や鍛冶橋、朝市などの聖地を巡った。温水と小春は作品の風景に熱中し、八奈見は飛騨牛や五平餅、団子などの食べ歩きを楽しんだ。一方、放虎原は桜井に、小春を知ろうとするだけでなく、自分自身を理解してもらう努力も必要だと伝えた。

小春との距離

過去、桜井は生徒会へ正式に加わったことで、小春と一緒に登下校する時間を減らしていた。小春は笑顔で受け入れながらも、放虎原と過ごす時間が増える桜井との距離が開いていくことを感じ、最後まで関係を手繰り寄せようと決意していた。

二人の不安

平湯温泉で温水は桜井と二人きりになり、小春への気持ちを確かめた。桜井は、小春が好きである一方、別れ話を切り出されることを恐れ、真剣な話を避けていたと明かした。温水は、互いに別れたくないのに不安からすれ違っていたことを知り、作戦を見守ることにした。

放虎原の覚悟

女湯では、小春が放虎原に本当に計画を進めてよいのかと尋ねた。放虎原は、既成事実そのものより、桜井と小春が腹を割って話す機会を作ることが重要だと答えた。小春は自分が放虎原の思うほど善良ではないと告げたが、放虎原はその思いも受け止めた。

見破られた計画

温泉を出た後、温水と八奈見は忘れ物を装って離脱し、別のバス停へ向かった。小春と放虎原は桜井を足止めしたが、全員が五分刻みで動いていることや不自然な行動から、桜井は計画を見抜いた。小春と放虎原は謝罪し、三人で高山行きの最終バスに乗った。

取り残された二人

温水と八奈見は、預けるカバンを取り違えたことで引き返し、さらにバスの出発時刻も誤認していた。その結果、桜井たちとは合流できず、最終バスにも乗り遅れ、二人だけで平湯温泉に取り残された。

温泉宿の一夜

温水と八奈見は、小春が予約していた温泉宿へ泊まることになった。部屋には布団が二つ並んでおり、二人は互いを意識して気まずくなった。温水はロビーで寝ようとしたが、八奈見に止められ、同じ部屋で休むことになった。

ちっちゃい電気

就寝前、八奈見は真っ暗な部屋を嫌がり、常夜灯を残してほしいと頼んだ。八奈見は、皆がいなくなり、子供の自分だけがお花畑に取り残される夢を見ると打ち明けた。温水が今日は一人ではないと伝えると、八奈見は安心したように眠りについた。

飛騨の朝

翌朝、八奈見は目覚めるなり朝食を気にし、温水がいる理由も一時的に忘れていた。何かを夢に見ていたらしく、温水に内容を尋ねられると顔を赤くして枕を投げつけた。温水は理由を理解できないまま、飛騨の青空を見上げた。

Intermission 二人の世界 

祖父の小屋

桜井弘人は、放虎原ひばりが手入れしていた祖父の農作業小屋へ入った。小屋には、兄の隼人が残した百科事典が保管されていた。

畑の行方

桜井は、祖父が腰を痛めたため畑が貸し出されると聞き、自分が継げば喜ぶのかと尋ねた。放虎原は、祖父は桜井が好きな道へ進むことを望むはずだと答え、隼人も故郷には戻らないだろうと話した。

放虎原の夢

放虎原は、世界の国々や人々を自分の目で見て、日本との橋渡しをする仕事に就きたいと打ち明けた。桜井は、今は子供でもいつか大人になると励ました。その言葉は、大人扱いされがちな放虎原を安心させた。

二人だけの時間

幼馴染の水島小春が桜井を捜す声が聞こえたが、放虎原は桜井の手を握り、共に叱られると言って引き留めた。二人はひざ掛けを肩にかけ、寄り添って百科事典を眺めた。

守りたい居場所

放虎原は、国同士の争いでは何が始まりで、何を守るべきか分からなくなることもあると語った。やがて二人は本を読むのをやめ、互いに身体を預けた。この居場所を守る方法が分からないまま、二人は体温と重みを感じていた。

~3敗目~ 秘密の夜

小春からの連絡

休み明けの朝、温水は高山で八奈見と一夜を過ごしたことを意識しながら、水島小春と電話をしていた。小春は旅行後も頻繁に連絡し、桜井弘人との話を続けようとしたが、温水は佳樹に女性との通話を疑われ、慌てて会話を切り上げた。

広まった宿泊の噂

登校した温水は、綾野光希や姫宮華恋から八奈見との関係を探られた。朝雲千早が恋川ツクシから二人の情報を集め、その過程で宿泊の話が綾野と姫宮にも伝わっていたためである。温水は何もなかったと否定したが、姫宮には別の意味に受け取られた。

八奈見との気まずさ

温水は旅館での一夜を意識し、八奈見と顔を合わせないまま終業式を迎えた。非常階段では小鞠、焼塩、白玉リコと過ごし、以前より周囲との関係が広がった一学期を振り返ったが、八奈見が現れないことを気にしていた。

小春の家出

その夜、放虎原から小春が帰宅していないと連絡を受けた直後、小春本人が大きな荷物を持って温水家を訪れた。桜井と喧嘩して家を出た小春は、そのまま温水家に泊まり、家事を引き受けながら数日間居ついた。佳樹は、小春が桜井を嫉妬させるために温水を利用していると警戒した。

アヤメ高校の韮澤

温水は小春を帰すため、桜井と会ってアヤメ高校の生徒会打ち合わせに同行した。そこで副会長の韮澤が、小春の相談相手として親密さを誇示し、桜井を挑発した。しかし桜井は、韮澤に別の恋人がいることや夜遊びの事情まで調べており、静かな威圧で退けた。小春の二股疑惑は、韮澤が一方的に彼氏のように振る舞っていただけだと判明した。

桜井の仕返し

桜井は小春に避けられていたため、高山旅行で騙された仕返しとして、温水に協力を頼んだ。温水は小春を夕食へ誘い、お好み焼き屋で桜井と八奈見が偶然を装って合流する場を作った。

譲れない願い

小春は、自分が他の男子と会っても桜井が嫉妬しないことに不満をぶつけた。桜井は小春を信頼していると答えたが、小春は放虎原と会うのをやめてほしいと要求した。桜井は、卒業後に豊橋を去る放虎原をもう少し見守りたいと譲らず、小春は店を飛び出した。八奈見は、互いの譲れない願いが平行線なら、覚悟が決まるまで会わないほうがよいと告げた。

桜井と放虎原への疑念

温水と八奈見は小春を捜しながら、桜井が放虎原を好きなのではないかと考えた。桜井が小春を愛していることと、放虎原にも特別な想いを抱いていることは両立し得るため、温水は三人の関係が和解ではなく別の結末へ向かう可能性を意識した。

小春の嫉妬

過去、小春は放虎原の部屋で勉強していた際、桜井の髪を見つけた。桜井と放虎原が自分の知らないところで会っていることや、二人が同じツワブキ高校へ進むことを知り、放虎原への警戒と不安を深めていた。

夜の西駅

温水は西駅付近で、酔客に話しかけられていた小春を発見した。小春は目的もなく歩き続けた末、二軒のホテルの前で温水の手をつかみ、どちらに入るか選ぶよう求めた。桜井との関係に疲れ、優しくしてくれた温水へ逃げようとしていたのである。

八奈見の宣言

温水が小春を拒みきれずにいると、八奈見が駆けつけて二人の間に割り込んだ。小春が温水とホテルへ入っても問題ないと迫ると、八奈見は温水は自分のものだと言い放った。すぐに恋愛的な意味ではないと否定したが、温水が文芸部を心配しているのだと解釈したため、八奈見と小春はそろって温水の鈍さを責めた。

小春の告白

ファミレスで八奈見と意気投合した小春は、その後、温水と帰宅した。道中、小春は桜井が放虎原を好きであり、放虎原も同じ想いを抱いていることを以前から知っていたと打ち明けた。それでも自分が桜井を奪ったため、現在の苦しみはその罰なのだと語った。温水は、小春の吹っ切れた様子に危うさを感じ、ここにいない誰かの声を聞きたいと思った。

Intermission 百合が夜に染まるころ 

小屋にいない二人

水島小春は、キャベツ畑の奥にある小屋を訪ねたが、放虎原ひばりと桜井弘人の姿はなかった。二人が最近、自分に隠れて会っていることに不満を抱きながら、小春は帰ろうとした。

桜井の父への告白

小春は道で桜井の父親と出会い、弘人を捜していると伝えた。立ち去りかけた小春は思い直し、弘人と放虎原のことを話そうとした。まだ小学六年生だった小春は、その言葉が何を引き起こし、自分が何を失うのか理解していなかった。

~4敗目~ 残暑

放虎原の作戦

温水は放虎原ひばりと会い、水島小春が温水家に滞在し続けている状況を報告した。放虎原は花火大会で桜井弘人と小春を引き合わせ、自分は姿を見せずに二人へ決着を委ねる計画を立てた。温水は、三人の関係が修復ではなく終わりへ向かっており、自分の役割がその決着を見届けることだと悟った。

浴衣姿の二人

温水は馬天愛星と勉強しながら花火大会の計画を話し、同行者が必要だと漏らした。天愛星はそれを誘いと受け取り、浴衣で待ち合わせ場所へ現れた。温水が八奈見杏菜にも声をかけていたため、二人は互いに牽制しながら温水を責めた。

花火大会の再会

放虎原に呼ばれた小春と、温水に誘われた桜井は吉田神社で顔を合わせた。放虎原が来ないと知った二人は、温水たちと一緒に花火会場へ向かった。桜井と小春は重い空気をまといながらも、花火を見て幼い頃の思い出を語り始めた。

ひばりの最後の花火

放虎原は自宅で一人、浴衣を着て遠くの花火の音を聞いていた。家や畑をめぐる親族の対立を思いながら、故郷で聞く最後の花火を静かに受け止めた。

雨の小屋

過去、兄の隼人が父親から絶縁されたことで傷ついた放虎原は、雨の中を飛び出して祖父の小屋に閉じこもった。桜井は濡れた放虎原を見つけ、自分のシャツを渡した。放虎原は独りでは寒いと背後から桜井を抱きしめ、桜井もその震える手に自分の手を重ねた。

小春の救い

二人の出来事を知った大人たちは、家や財産をめぐる対立まで持ち出し、桜井を転校させようとした。そこへ小春が乗り込み、自分と桜井が付き合っており、問題の夜も一緒だったと嘘をついた。小春の言葉で争いは収まり、放虎原は泣き崩れた。小春は彼女を抱きしめ、大丈夫だと繰り返した。

小春の決別

花火を見ながら、小春は放虎原を今も好きだが、三人でいられなくなると分かっていたため、どんな手を使っても桜井を手に入れたかったと告白した。桜井は自分の意志で小春と付き合い、彼女に救われたと伝えてもう一度機会を求めた。しかし小春は、桜井が放虎原を想いながら自分と付き合っていたことへの苦しみを吐き出し、桜井を好きだったと告げたうえで別れを選んだ。

最後まで格好悪く

温水は別れを受け入れた桜井に、三人で始まった関係なら放虎原とも向き合うべきだと促した。桜井は小春が持っていたものと同じ古いストラップを手にし、放虎原のもとへ向かった。

放虎原への告白

桜井は放虎原の家を訪れ、小春と別れたことを伝えた。さらに、大学卒業後は豊橋へ戻り、故郷を見守って生きたいという夢を明かした。桜井は、放虎原に心残りや罪悪感を置いて夢を追うよう告げ、すべてを引き受けると約束した。

ひばりの本心

放虎原は、幼い日に勇気が出ず、桜井を好きだと言えなかったと涙ながらに告白した。桜井もひばりをずっと好きだったと伝えたが、二人は一緒になる道を選ばなかった。放虎原は春に故郷を離れるまでの気持ちを預かってほしいと願い、その夜だけはひば姉と呼ばないよう頼んだ。

小春の帰宅

温水が帰宅すると、小春はすでに荷物を持って自宅へ戻っていた。佳樹は温水の首に付いた口紅を見つけて追及したため、温水は逃げるように風呂へ入った。

肩書きの意味

温水は浴室に残された焼塩檸檬のシャンプーを見て、友人関係に置きシャンプーは不自然だと考えた。それでも返す前に使いながら、友達や恋人という男女間の肩書きにどれほどの意味があるのか、答えの出ない疑問を抱いた。

エピローグ 夏の始まり 

文芸部の花火大会

温水家の庭で、文芸部員たちは花火とスイカを楽しんだ。温水は桜井弘人と水島小春の別れを振り返りながら、八奈見杏菜や焼塩檸檬、白玉リコとのやり取りに振り回された。

同じ匂い

焼塩は温水が自分のシャンプーを使ったことに気づき、二人は同じ匂いだと耳元で囁いた。白玉も自分の香水と同じ香りの茶を渡し、温水の手を握って自分と同じ匂いにしようとしたため、佳樹は二人を警戒した。

放虎原の感謝

放虎原ひばりは、小春から温水家への菓子折りを届けに現れた。彼女は桜井たちの件で温水に世話になったと礼を述べ、すべてが収まったことで心置きなく旅立てると語った。温水は自分が何をできたのか分からなかったが、放虎原の笑顔が以前より穏やかになったと感じた。

小鞠との線香花火

温水は一人で線香花火をしていた小鞠知花の隣に座り、夏合宿の行き先について話した。二人は前年の合宿と失恋を思い返しながら、再び線香花火に火をつけた。

夏の始まり

八奈見も加わり、文芸部の夏合宿は海か山へ行くことになった。温水は、それぞれの未来へ進み始めた三人の幼馴染や、天愛星との関係を思い、自分もこのままではいけないと感じた。線香花火が落ちる中、夏は始まったばかりだった。

追憶 

偽りから始まった交際

水島小春と桜井弘人は、大人たちの前で交際を宣言した流れのまま、恋人同士を装っていた。小春はレンゲ畑で、弘人を好きな気持ちは本物であり、偽物でも今の関係を続けたいと打ち明けた。

烏谷のストラップ

弘人は交際についてよく分からないながらも、小春と付き合っていると思われることは嫌ではないと答えた。そして小春が好きな烏谷のストラップを渡し、改めて恋人同士でいてほしいと頼んだ。

レンゲ畑の涙

小春は喜びながら涙を流し、弘人はハンカチで拭った。小春の笑顔は本物だったが、弘人は胸の痛みを覚え、嘘から始まった関係も本物になればよいと考えた。そのうえで、これでよいのかと放虎原ひばりに問いかけるように呟いた。

マケイン 8.5巻レビュー
マケイン まとめ
マケイン 10巻レビュー

同シリーズ

負けヒロインが多すぎる! 1巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 1巻
負けヒロインが多すぎる! 2巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 2巻
負けヒロインが多すぎる! 3巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 3巻
負けヒロインが多すぎる! 4巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 4巻
負けヒロインが多すぎる! 5巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 5巻
負けヒロインが多すぎる! 6巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 6巻
負けヒロインが多すぎる! 7巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 7巻
負けヒロインが多すぎる! 8巻の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 8巻
負けヒロインが多すぎる!8.5の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 8.5巻
負けヒロインが多すぎる!9の表紙画像(レビュー記事導入用)
負けヒロインが多すぎる! 9巻

その他フィクション

フィクション(novel)あいうえお順の表紙画像(レビュー記事導入用)
フィクション(novel)あいうえお順

Share this content:

コメント

タイトルとURLをコピーしました