物語の概要
本作は異世界召喚ものファンタジーである。さえない35歳のコンビニ店員・乙木雄一が、高校生たちの召喚に巻き込まれた結果、女神から「余り物のクズスキル」群を押し付けられて異世界へ転移する。勇者とは異なる扱いを受けながらも、その大量のスキルを活用し、魔道具店を開業して成功を収め、人生逆転を果たす物語である。主にチートではない地道な努力と柔軟な発想を描く。
主要キャラクター
- 乙木雄一:35歳の主人公。さえないコンビニ店員だが、異世界でスキルを駆使して魔道具店を経営し成長する。
- 美樹本有咲:黒ギャルJKの姪。雄一の店の店員として働き、しっかり者で献身的。
- シュリ:宮廷魔術師で男の娘。雄一の周囲に集まる特殊能力者の一人。
- マルクリーヌ:女騎士団長。強く気高い女性で、雄一と関わりを持つ。
- マリア:未亡人で肉食系美人。双子の親としても登場し、雄一と関係を築く。
物語の特徴
- 「クズスキル」群という一見役立たずな能力を、雄一がアイデアと経験で逆転活用し、魔道具や店舗経営に役立てる点が本作の最大の魅力である。
- 主人公のリアルさと“凡人知恵で逆襲する”構成が新鮮で、成長物語として共感が得やすい。
- 多彩なヒロインたちとの関係性が描かれ、ラブコメ的な要素も含むので、異世界ファンタジーとしてだけでなく、人間ドラマや恋愛要素も楽しめる。
書籍情報
クラス転移に巻き込まれたコンビニ店員のおっさん、勇者には必要なかった余り物スキルを駆使して最強となるようです。 2
著者:結城焔 氏
原作: NarrativeWorks(日浦あやせ)氏
イラスト: 鱈 氏
出版社:ぶんか社(BKコミックス)
ISBN:9784821154616
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あらすじ・内容
猫背に無精ひげのさえないおっさん・乙木雄一は、異世界転移に巻き込まれ、女神様からクズスキルを押し付けられた。しかしそのクズスキルを有効活用し、コンビニのように便利な魔道具店を開き、事業拡大にいそしむ第2巻! 姪の黒ギャルJK・有咲、女騎士団長・マルクリーヌ、宮廷魔術師の男の娘・シュリ君などとの、ドキドキの交流の先に、おっさんは壮大な野望を抱く!
感想
本作は“努力系日常もの”の皮を被っていながら、その実、魔道具と人材育成による戦争終結を見据えたスケールの大きな構想が展開される物語であった。
前巻では余り物スキルで店を開き、自立を確保した乙木雄一が、今巻ではさらに視野を広げ、商業、福祉、軍事、教育を網羅する“総合計画”へと舵を切った。(微妙に)
「真面目にコツコツ評価されていく地味系日常漫画」だと思っていた者にとっては、突如として語られる“戦争終結計画”や“エネルギー供給革命”は衝撃であった。
特に女神ですら「それ全部使ったら人間死ぬ」と見誤った才能を乙木に与えていた事実が明かされたことで、「ただの余り物だった」という前提が崩れて行った。
ホントに駄女神だわ、、
シュリとの関係も、序盤では奇抜な魔術師との師弟関係として描かれていたが、今巻ではついに「乙木、脱童貞」の一大イベントへと到達した。
しかも相手は“女子ではなく、女に見える男”であるシュリ。
姪に「女にモテたい」と語っていた乙木の行動が、まさかのBLルートとして開花するとは、凄まじい拗らせ具合であった。
だが、その描写が物語の流れを崩すことなく、あくまで信頼と契約の延長線上として処理されている点が印象的であった。
いや、引っ張られても困るが。
また、乙木がこれまで“普通の人”として見せてきた地道な努力も、実際には“スキル運用と論理的思考を武器にしたイノベーター”としての片鱗にすぎなかった。
彼が照明魔石をベースにエネルギーシステムを考案し、戦力供給と教育・雇用・医療の改革に乗り出す姿には、もはや一商人の枠を超えた“指導者”の資質が漂っていた。
それでも乙木は、自分の過去――中退、無職、劣等感と孤独――を隠すことなく姪の有咲に語り、失敗の上に今の自分があることを冷静に見つめていた。
その姿は“理想の人”ではなく“失敗から学んだ凡人”であり、だからこそ説得力のある言葉を投げかけることができたのであろう。
姪の有咲もまた、乙木の語りに対して呆れつつも真正面から受け止め、自分なりの努力をすると宣言するに至る。
このやり取りは、“誰かが誰かに何かを託す”という行為の本質を端的に示しており、乙木の人生そのものが、誰かに希望を繋ぐ“橋”であることを感じさせた。
結末において、未亡人の雇用、孤児院との連携、子供たちの教育支援といった社会的施策が次々と始動し、乙木の店舗は“店”を超えて“仕組み”へと変貌しつつあった。
これは単なるビジネスの成功ではなく、「生きづらい世界で、誰もが生きていける場所を作ろう」という祈りに近い計画であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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登場キャラクター
乙木雄一
異世界に巻き込まれた元コンビニ店員であり、不要スキルを活用して魔道具店を経営しながら戦争終結を目指す現実主義者である。
・『洞窟ドワーフの魔道具屋さん』の店主
・照明魔石やボロ布ローブの実用化を進め、軍需・商業・福祉の三分野で事業を拡大した
・孤児院との取引や教育支援を通じて社会基盤の構築を図った
・マルクリーヌやシュリと協力し、照明魔石の工場設立とエネルギー供給体制の構築を進めた
・かつての人生を反省しつつも受け入れ、姪の有咲に自らの半生を語って導いた
美樹本有咲
乙木の姪であり、元勇者として召喚された高校生で、乙木の店舗で住み込み従業員として働いている。
・スキル「カルキュレイター」を有し、計算・情報処理能力の成長性が見込まれている
・乙木の支援を受けてスキルの実験運用を重ね、価格計算能力を獲得した
・乙木の過去を受け入れ、自らも前向きに努力する意志を示した
・日常の店番や作業補助を担い、戦力強化計画において中心的存在と位置づけられている
シュリ
宮廷魔術師であり、乙木の照明魔石技術に着目して出資を行った協力者である。
・乙木の店を宮廷指定の魔道具店に認定し、研究費名目で公費投入を約束した
・蓄光魔石工場の設立を提案され、国家予算による支援を決定した
・乙木と個人的契約を交わし、報酬として性的関係を持ったことが描かれている
・技術理解力と判断力に優れ、戦略的思考に共感を示して行動に移した
マルクリーヌ
王国の女騎士団長であり、乙木の計画に現実的な視点から助言を行う理解者である。
・シュリと共に軍需用照明魔石の大量購入を依頼した
・戦力増強と戦争終結構想について、乙木と建設的な議論を重ねた
・シュリとの契約内容について沈黙を守り、乙木に対して一定の信頼を寄せている様子を見せた
イザベラ
孤児院の院長であり、乙木との間で製品供給契約を結び、施設運営の安定化を図った人物である。
・乙木とボロ布ローブの製造契約を交わし、孤児院に定収入をもたらした
・乙木の教育支援の申し出に感謝を示し、協力関係を築いた
ローサ
孤児院の少女であり、裁縫の才能を認められて特別な育成対象となった子どもである。
・ローブ製作に関わり、その技術を評価された
・乙木から服飾部門の責任者候補として指名され、教材や衣服を贈られた
ジョアン
孤児院の少年であり、子どもたちの中でリーダー的な性格を持つ人物である。
・乙木に将来の幹部候補として期待されており、育成対象に選ばれている
ガイアス
C級冒険者であり、乙木の照明魔石を評価し、店の最初の購買客となった人物である。
・照明魔石を実際に使用し、その有用性を認めて購入した
・店の宣伝効果を高める役割を担い、商品の信頼性向上に寄与した
マリア
A級冒険者の未亡人であり、双子の子供と共に乙木の店に就職した女性である。
・夫を失った後、社会とのつながりを求めて自発的に雇用を申し出た
・身の安全と子供たちの生活を守るため、店内への同伴勤務を希望した
・乙木との信頼関係を築き、親子ぐるみでの協力体制を形成しつつある
ティオ
マリアの息子であり、ハーフエルフの少年である。
・乙木の店舗に母と共に勤務することとなり、護身用魔道具を貸与された
ティアナ
マリアの娘であり、ティオの双子の姉妹である。
・ティオと同様に乙木の店で働き、魔道具による安全確保が図られている
展開まとめ
6勤目 ボロ布ローブ
商店街での新たな発見と購入
乙木は商店街で、孤児院の子どもたちが作ったボロ布ローブに注目した。これは再利用布で製作された格安ローブで、貧しい冒険者の一時的な防具として販売されていた。乙木はその趣旨に感銘を受け、素材指定で十二着を購入した。支払いには溜まっていた小銭を使用し、店主の技術や販売方式にも関心を寄せた。
照明魔石の加工と店舗開店準備
乙木は照明魔石をガイアスに渡した後、ギルドでクズ魔石を回収し、有咲と共に付与魔法の作業を進めた。数日間、木材加工や店内整備に勤しんだ結果、一階部分は店舗らしい形に整った。開店当日、早朝から看板の設置作業に取り掛かり、乙木はスキル「粘着液」を用いて看板を掲げた。有咲との関係も和らぎ、互いに自然体で接するようになっていた。
閑古鳥の店と最初の来客
店の開店初日、来客はほとんど無く、訪れてもすぐに帰ってしまう状況が続いた。有咲は赤字を心配するが、乙木は照明魔石の評判が広まることを見込んでいた。そこへ噂を聞いたガイアスが来店し、照明魔石の有用性を認めた上で複数個を購入した。このやり取りを通じて乙木は商品の価値が実証され、今後の来客増加に確信を得た。
新人冒険者への提案と販売戦略
数日後、照明魔石の評判により来店者が増え、販売数も安定した。そんな中、装備資金に悩む新人冒険者三人が現れた。乙木は彼らに対してボロ布ローブの実用性を実演し、照明魔石とのセットで安価に提供した。ローブには防刃・衝撃吸収・形状記憶のスキルが付与されており、機能性を理解した冒険者たちは感謝して購入した。乙木はこの販売が新たな宣伝になると見込んでいた。
7勤目 孤児院への寄付
孤児院との取引開始とイザベラ院長との契約
乙木はボロ布ローブの仕入れ先である孤児院を訪れ、院長イザベラと面会した。ローブ製造の布を乙木側が支給し、完成品を一定価格で買い取る契約を提案した。この申し出は孤児院にとって安定した収入源となり、院長から深い感謝を受けた。契約書の作成と交付を終えた後、乙木は今後の協力体制に期待を寄せた。
子ども達との交流と将来への布石
契約成立後、乙木は孤児院の子どもたちと面会した。裁縫が得意な少女ローサやリーダー気質のジョアンなど、個々の特技を持つ子ども達と接しながら、乙木は将来的な労働力としての活用を視野に入れていた。子ども達への教育投資を名目に、書物や資金を寄付することも決意した。
照明魔石の軍需取引と融資の提案
孤児院から帰還した乙木の元に、シュリとマルクリーヌが訪れた。シュリは照明魔石を軍事目的で大量に購入したいと申し出、乙木はそれを了承した上で、納品の分割と融資の相談を持ちかけた。彼は戦争中の情勢では金貨数千枚でも生活保障にならないと説明し、より安全で豊かな生活を求めて多方面への投資を進める意志を明かした。
乙木の未来設計と最大目標の提示
乙木は、自身の目標が単なる金銭の蓄積ではなく、安全と生活水準の確保であることを強調した。そのために必要なのは戦争の終結であると断言し、シュリらに向けて、将来的には戦争を止めることが最終的な目標であると宣言した。
8勤目 戦う理由と願い
戦争終結への願望と理想の提示
乙木は戦争を止めるという目標を語った。召喚された日本人全体の幸福を取り戻すことを理想に掲げ、その願いは感傷的で自己満足的なものであったが、彼には実現のためのスキルと発想があると自負していた。シュリとマルクリーヌは現実的な観点からその可能性を否定したが、乙木は戦力強化を個人ではなく仕組みで行うという逆転の発想を展開した。
照明魔石を基盤としたエネルギー供給の構想
乙木は、魔道具の量産には自身で製作する必要が無いことを主張した。膨大な魔力量を必要とする付与魔法を他者が行えるようにするには、エネルギー供給手段として照明魔石の構造を応用する必要があると説いた。彼は蓄光スキルによって日光から魔力を得られる点に着目し、魔力を生み出す専用工場を作る計画を披露した。
技術革新による世界の変革構想
シュリは乙木の照明魔石の仕組みに着目し、その画期性に驚愕した。蓄光スキルを付与した魔石を大量に設置し、得られた魔力を他の魔石に転送することで、付与魔法のエネルギー問題を克服できると理解した。乙木はこの技術を工場化し、やがては人類の利用可能な魔力量を飛躍的に拡張する計画を立てていた。これにより魔道具の大規模生産が可能となり、戦力増強の基盤を築く方針であった。
軍事技術としての応用と勝利戦略の提案
乙木は戦争終結のため、戦局に影響を与える「質と量」両面の強化が必要と説いた。質においては有咲を中核とする個人の能力向上、量においては強力な魔道具を装備させた兵士の大軍を用意する構想を述べた。マルクリーヌとの対話を通じて、大規模な敵軍にも対抗可能な軍事力の創出が現実味を帯びてきた。
有咲のスキルとその可能性への期待
乙木は有咲のスキル「カルキュレイター」に注目していた。計算能力に特化したこのスキルは、表面的な数式処理だけでなく、情報処理の本質的機能を担う可能性があると推測していた。計算の定義を数式に限らず、あらゆる複雑な問題解決能力に拡張できるとする独自の理論により、有咲が究極の問題解決者となる未来を描いていた。
スキル成長性と運用実験の成果
乙木はカルキュレイターが成長性を持つスキルであると仮定し、有咲にレジ打ちを任せてスキルの成長を促していた。その結果、有咲は瞬時に価格計算ができるまでに成長し、スキルの有効性が実証されたと判断された。シュリもこの仮説に一定の理解を示し、今後カルキュレイターの成長によって多くの未解決問題の解消が可能になるとの展望が共有された。
9勤目 シュリ君と脱童貞
革命的技術への道と将来計画の輪郭
乙木は、カルキュレイターの成長が確かであれば、膨大な知識と技術が実用化され、あらゆる発明が実現可能になると予測していた。その実現にはスキルの成長と資金調達が不可欠であり、軍への協力を通じて融資を得ようとする計画に繋がっていた。シュリはその理論の不確実性を認めつつも、乙木の戦略に一定の理解を示し、計画に現実味を感じ始めていた。
出資交渉の成立
長い説得の末、シュリは乙木の計画を理解し、蓄光魔石工場の設立に協力することを承諾した。国の予算を研究費名目で融資する形をとり、正式に宮廷魔術師付きの魔道具店として認める手配を約束した。シュリは、乙木の人物像を見極めたうえで出資に踏み切ったのであり、純粋な商業的利益だけでなく、人物評価も考慮した判断であった。
契約成立と報酬の約束
シュリは出資を承諾したことで、以前乙木と交わした報酬の話に言及した。乙木はその内容を察し、興奮しながら店を出る準備を整えた。有咲が疑問を呈したが、乙木は何とかごまかし、彼女の了承を得て外出を決行した。マルクリーヌは沈黙を守り、乙木に同調する姿勢を見せた。
夢の成就
乙木はシュリと共に連れ込み宿へ向かい、ついに長年の夢であった脱童貞を果たした。詳細は語られていないが、シュリとの体験は乙木にとって極めて満足のいくものであったと示されている。
契約手続きと周囲の反応
事後、二人は店に戻り、正式な契約書面を交わした。シュリは疲労の様子を見せたが、有咲には事実は悟られていなかった。乙木は安堵しつつも、姪に正体が露見することへの強い恐れを感じていた。
乙木への問いかけ
夜の来客が途絶えた店内で、有咲は乙木に過去の職歴や生き方について問いかけた。乙木は、大学中退後に選べる仕事が限られていたこと、コンビニで働いていたのは就職先がなかったためであることを率直に語った。
社会的挫折と人生の選択
乙木は、大学時代に知識欲に突き動かされ単位取得を怠った結果、留年の末に中退した経緯を説明した。正社員として働けるだけの条件を満たせず、結局コンビニ店員という選択に至ったことを淡々と語った。
過去の価値観と行動原理の告白
乙木は、有咲に対して自身の若い頃の行動原理を二つ挙げた。一つは知識欲、もう一つは異性にモテたいという欲求であった。この告白に、有咲は呆れた表情を見せた。乙木の過去は、無計画でありながらも強烈な個人的欲求に支配されたものであったことが明らかとなった。
10勤目 乙木雄一の半生
幼少期の優越意識と歪んだ思想
乙木雄一は幼少期から知能が高く、その自負から周囲を見下す癖を持っていた。思春期には、自分より学力の低い者が異性から好かれる現象に強い疑問を抱き、次第に「馬鹿な者同士が惹かれ合う」という独善的な理論を形成していった。
大学進学と理想の崩壊
彼は、自身と同じように優秀な人間が集まる場所でこそ理解者や恋愛関係が得られると信じ、大学進学を決意した。知識の追求と同時に異性からの承認を望んだが、現実は厳しく、複数人と交際はできたものの関係は長続きせず、孤立していった。知識以外の魅力を持たず、他者を見下す性格が災いして、人間関係は破綻を繰り返した。
学業の放棄と挫折の蓄積
大学では必修を避けて興味ある授業や読書に没頭し、単位を取らないまま在籍期間を超過して中退した。社会に出ることができず、数年の無職期間を経て、ようやく選んだのがコンビニのアルバイトであった。企業面接も受けられず、選民意識が強かったことから人脈もなく、社会的信用を築く機会も持てなかった。
有咲への語りと自己の開示
乙木は自らの過去を姪の有咲に語った。気まずい雰囲気が流れたものの、有咲は「雄一お兄ちゃんは今でもすごい」と述べ、乙木の存在を肯定した。その言葉に、乙木は内心で強い感動を覚え、感謝の気持ちを抱いた。
職業選択への疑問と内面の告白
有咲から「なぜ普通の仕事をしなかったのか」と問われた乙木は、自身が人生に期待しなくなっていたこと、過去の思想に引きずられ努力を避けたこと、そしてコンビニでのささやかな充実感に満足していたと述べた。他人の役に立てることに喜びを見出していたため、現状を変える意欲は芽生えなかったと明かした。
年齢と経験がもたらす矛盾
乙木は、人は年を重ねるごとに経験に縛られ、矛盾した行動を取るようになると語った。優越感や見下しの感情が抜けず、理性では抑えても本質は変わらないままであること、そして自身が理屈と現実の狭間で迷走してきたことを自覚していた。
人生観と他者への願い
乙木は、自分が惨めな存在であることを認めつつも、その人生を肯定する姿勢を示した。そのうえで、他者には自分のような失敗をしてほしくないという思いを語り、有咲をはじめとする若者に良い人生を歩んでもらいたいと願った。それは、自分自身が惨めであるがゆえに、他者に幸福を与えたいというヒーロー願望に近い感情であった。
姪の言葉と希望の余韻
有咲は乙木の語りを受け止め、「自分なりに頑張ってみる」と前向きな姿勢を示した。乙木はその言葉に内心で強く安堵し、彼女の素直な人柄に誇りを感じた。暗い話を終えた後、意識を切り替えた乙木は日常へと戻り、有咲に夕食へ出るよう促した。去り際の彼女の声は、優しさを含んだものとして乙木の胸に残った。
11勤目 ある女神の傍観
契約の成立と資金確保
シュリが正式な書面を持参し、照明魔石の定期仕入れ契約を結んだ。それにより『洞窟ドワーフの魔道具屋さん』は宮廷魔術師付きの指定店となり、研究名目での予算が流入可能となった。資金面の見通しが立ち、借金ではない公費扱いの収入源を確保する形となった。
従業員募集と未亡人への戦略的アプローチ
商品の増加と多忙化に備え、従業員二、三名の雇用を決定した。即戦力となる未亡人層を暗に狙い、冒険者への世間話から自然な情報拡散を図った。その結果、夫を亡くしたC級冒険者の未亡人が応募し、即戦力として採用された。
変わり種の応募者・マリア親子との出会い
次に応募してきたのは、身なりの整った女性マリアと、そっくりな顔立ちの少年少女であった。彼女はA級冒険者の未亡人で、財産は十分にあったが、社会との繋がりを求めて子供と共に働きたいと志願した。双子の子供ティオとティアナがハーフエルフであることが判明し、身の安全確保のため店舗に同伴を希望した。
雇用決定と防犯対策の提案
マリア一家の事情を踏まえ、三人全員を雇用することを決定し、双子には護身用の魔道具を貸与することを約束した。マリアの人脈とエルフの血を持つ子供たちへの保護は、将来的な利益にも繋がると判断された。マリアからの厚い信頼と親密な態度が続き、親子ぐるみでの関係性が築かれ始めた。
孤児院訪問と教育支援の開始
従業員問題の解決後、自由時間を使って孤児院へ通い始めた。子供たちとの信頼関係を構築し、教育用書籍を寄付して学びの機会を提供した。孤児の中からローサとジョアンを将来の幹部候補として見込み、彼らへの特別な育成を計画した。
ローサへの裁縫教育と役割分担
ローサには裁縫の才能を見込み、教材や服を贈って知識と技術を伸ばさせることとした。既存のローブ製作は他の子に任せるよう指示し、彼女には新たな服作りと技術の伝達を任せた。将来的には服飾部門の責任者として育てる意図があった。
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