物語の概要
本作は異世界転生×育成・高難度ファンタジーライトノベルである。前世をゲームに捧げたゲーマー・健一が、最高難度“ヘルモード”を選んで召喚士アレンとして転生し、仲間と共にダンジョン攻略を目指す。第5巻では、魔神撃破後に学園を早期卒業し、仲間紹介を兼ねて帰郷。白竜討伐を志し、S級ダンジョン「試練の塔」を目指して旅路を進む中、離れ離れだった仲間メルルと再会し、新たな戦いが始まる展開である。
主要キャラクター
- アレン:元廃ゲーマーで召喚士。難易度“ヘルモード”を極めるため、仲間を集め戦略的に戦う主人公。
- クレナ:剣聖と称される剣士。学園武術大会で優勝し、強者としての実力を証明する。
- セシル:魔道士系の仲間。家門とのわだかまりを乗り越え、信頼と協力の関係を築く。
- ドゴラ:斧使い魔獣討伐のエキスパート。堅実な戦力として信頼される仲間。
- キール:回復職。カルネル家を復興し、白竜討伐を支える重要な存在。
物語の特徴
第5巻の魅力は、アレンが学園卒業後すぐに冒険へ移り、成長した仲間たちとの再会と連携が描かれている点にある。設定重視の育成系異世界譚ながら、ストラテジー要素たっぷりのダンジョン攻略と、仲間の得意分野を活かすチーム戦構成には戦術的な爽快感が漂う。他作品にはない“育成と戦略の両立”というスタイルが際立ち、納得と熱狂を提供してくれる。
書籍情報
ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 5
著者:ハム男 氏
イラスト:藻 氏
出版社:アース・スターノベル
ISBN:9784803016246
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あらすじ・内容
廃ゲーマー流ダンジョン攻略、開始!!魔神を倒し、ローゼンヘイムの戦争を勝利に導いたアレンは学園へと戻り、S級ダンジョンの攻略を次の目標に定める。ダンジョン攻略を急ぎたいアレンは、ローゼンヘイムで得た人脈を活かし、一年早く卒業することを認めさせ、学園を後にするのだった。一時クレナ村へと帰郷したアレンは、家族に仲間を紹介するが……。戦争での貢献によってカルネル家復興を叶えたキール。アレンはキールに与えられた土地が白竜山脈側だったこともあり、ついに白竜討伐へと乗り出し……。S級ダンジョンのあるバウキス帝国への道中で、離れ離れになっていた仲間のメルルと合流し、再会を喜び合う。ついにS級ダンジョン「試練の塔」へと挑むアレンたちだが、そこは勇者ヘルミオスのみならず、過去の英雄も含めて誰一人最下層まで攻略した者は存在しないという。英雄たちが集う「試練の塔」で、アレンの新たな戦いが始まる!!
感想
今巻では、アレンたちがS級ダンジョン攻略に向けて動き出す様子が描かれていて、読んでいてとてもワクワクした。
特に、ドワーフの国を目指し、S級ダンジョンに挑む展開は、まさに「ヘルモード」というタイトルにふさわしい、一筋縄ではいかない難しさがあり、目が離せなかった。
S級ダンジョンには、各方面から選りすぐりの冒険者たちが集まってくる。そんな場所だから、当然、ダンジョン自体もただのダンジョンではない。
一癖も二癖もある仕掛けやモンスターが待ち構えていて、アレンたちの攻略を阻む。この手強さが、ゲーマー心をくすぐるんだよね。
そんな中、一度故郷に帰っていたメルルがパーティに復帰したのは、本当に嬉しかった。
メルルのゴーレム操縦は、アレンたちの戦力アップに大きく貢献するし、何より彼女がいることで、パーティの雰囲気が明るくなる気がする。
ゴーレムを操って暴れ回るメルルの姿を想像すると、思わず笑みがこぼれてしまう。
さらに、獣人族の王子が仲間に加わったり、鍛冶屋を紹介されたりと、アレンの人脈の広さには改めて驚かされる。
ローゼンヘイムでの活躍が、着実に実を結んでいるんだなと感じた。
ただ、鍛冶屋で火の神が弱っていることが発覚したのは、少し気がかりだ。今後の展開にどう影響してくるのか、注目していきたい。
全体を通して、今巻も「ヘルモード」ならではの、やり込み要素満載のストーリーが展開されていて、非常に楽しめた。
S級ダンジョンの攻略、メルルの復帰、新たな仲間との出会い、そして火の神の異変。
これらの要素がどのように絡み合い、物語を盛り上げていくのか、次巻が待ち遠しい。アレンたちの活躍を、これからも応援していきたい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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展開まとめ
第一話学園への帰還
情報交換と感謝の食事会
アレンたちはローゼンヘイムを離れ、学園都市の高級レストランでハミルトン伯爵家のリフォルと情報交換を行った。ラターシュ王国側の戦況や中央大陸の情勢を確認しつつ、ローゼンヘイムの700万の魔王軍との戦いの顛末を報告した。キールは妹と使用人の世話を頼んだことに対し、改めてリフォルに感謝を述べた。また、ローゼンヘイムからの礼としてエルフの霊薬を贈呈した。
学園卒業の交渉と承認
アレンたちは魔導列車で学園に戻り、卒業を希望する旨を学長に伝えた。ローゼンヘイムのルキドラール大将軍と長老フィラメールの助力を得て、規定に抵触しない形での卒業が認められた。セシルとキールの卒業が必要であったことから、アレンは女王に事前に依頼していた。
鑑定儀による成長確認
卒業手続きを終えたアレンたちは、学園内で鑑定の儀を受け、それぞれの能力値を確認した。新たな職業により能力値は大幅に向上しており、特にアレンはレベル61以降、能力上昇値が倍増していることを示した。クレナにもさらなる成長の可能性が期待された。
王都への移動と心境の変化
卒業から9日後、アレンたちはラターシュ王国の王都に到着し、高級ホテルで謁見の準備を整えた。キールは複雑な心境を抱えつつ、カルネル家再興のために謁見への同行を決意した。セシル、ソフィー、フォルマール、クレナ、ドゴラも合流し、それぞれの想いや目的を胸に行動を共にしていた。
装備強化と冒険者ギルドでの準備
アレンたちは冒険者ギルドを訪れ、オークションで落札したアダマンタイト製の大盾を受け取った。これはドゴラに持たせることでパーティーの防御力強化を図る目的があった。また、魔石の募集も依頼し、回復薬と共に戦力の補強を進めた。今後のダンジョン攻略に向けた準備を整えたうえで、国王との謁見に向けて行動を開始した。
第二話 謁見
王城での待機と武装解除の交渉
アレンたちはローゼンヘイムの重鎮らと共に王城を訪れ、華やかな一室で謁見の準備を待った。フル装備での来訪に対し、王城の役人は武装解除を求めたが、フィラメール長老が巧みに外交的駆け引きを見せたことで、緊張を含んだやり取りが展開された。最終的に一行は非武装で謁見の間に向かうこととなった。
国王との正式な謁見とソフィーの紹介
謁見の間では、国王や大臣、貴族たちが立ち並ぶ中、フィラメール長老がまずラターシュ王国への感謝を述べた。続いて、ソフィーが女王の名代として紹介され、正式な立場で感謝の意を表した。精霊神ローゼンが姿を現すと、その場にいた全員が驚きと畏敬の念に包まれた。
エルフの霊薬の献上とローゼンヘイムの意図
フィラメール長老は、謁見の場でエルフの霊薬を贈呈し、ローゼンヘイムが今回の戦争で多大な犠牲を出しながらも協力を得たことへの感謝の意を示した。その後、今後の関係を見据えた3つの提案と願いがあると前置きし、国王と宰相の注目を集めた。
アレンへの「参謀」叙任の通告
最初の内容として、アレンがローゼンヘイムの「参謀」に任命されたことが発表された。これは軍職として元帥に次ぐ地位であり、ルキドラール大将軍がその意義と役割を説明した。若くして叙任されたアレンの経歴に、ラターシュ側は驚きを隠せなかったが、ローゼンヘイム側の全会一致での決定とされた。
正式な国交の開始提案
次に、両国間に正式な国交を樹立し、外交官の常駐を開始したい旨がフィラメール長老から提案された。ラターシュ王国側はこの提案を歓迎し、ギアムート帝国との関係に苦慮していた状況からも、関係強化に大きな期待を寄せた。
S級ダンジョン挑戦への協力要請
最後に、ソフィーとその仲間たちがバウキス帝国のS級ダンジョン「ヤンパーニの神殿」へ向かうにあたり、ラターシュ王国が出国許可証を発行するよう要請がなされた。当初、国王は難色を示したが、ソフィーの毅然とした対応と国交交渉の延期を仄めかす姿勢に押され、最終的に渡航を許可した。
キールの家門再興の直訴と成功
謁見の終了間際、キールはかつてのカルネル家の再興を訴えた。アレンはローゼンヘイムの参謀としての立場を活かし、宰相に強く迫った。証拠として提出されたのは、キールの功績を記した羊皮紙であり、それを受けて国王はカルネル家の再興を認めた。領土はかつての半分、爵位は男爵とされたが、白竜山脈を含む重要な地域が与えられる結果となった。
謁見の終結と今後の展望
キールの願いが成就し、アレンたちはそれぞれの思惑を胸に、王城での謁見を終えた。今後、彼らは正式にラターシュ王国の許可を得て、S級ダンジョン攻略へと歩を進めることになる。
第三話故郷への帰宅
王都での社交行事と貴族との挨拶
ローゼンヘイムとの国交締結を祝うため、ラターシュ王国では舞踏会をはじめとする複数の社交行事が開かれた。アレンは当初参加を避けるつもりであったが、グランヴェル子爵の依頼を受けて、仲間たちとともに一度だけ王城での催しに出席した。その際には、A級ダンジョンで入手した豪華な衣服を着用し、キールも貴族復帰の儀礼に同じ衣装を使用した。
ローゼンヘイムの外交活動と王都での動き
ルキドラール大将軍とフィラメール長老は王都に留まり、今後設置される領事館に備え、王城に部屋を与えられた。アレンは両名をグランヴェル子爵とハミルトン伯爵に引き合わせ、王都における貴族間の連携を支援した。
開拓村への帰郷と家族との再会
アレンたちは王都からグランヴェル領を経て、ロダンの管理する開拓村へ帰郷した。村はわずか1年で大幅に開拓が進んでおり、召喚獣の協力により畑の整備や堀の建設が完了していた。帰還したアレンは両親、弟マッシュ、妹ミュラと再会し、ソフィーら仲間たちも同行していた。
仲間たちの紹介と家族との交流
夕食の席でアレンは仲間たちを両親に紹介した。セシルがグランヴェル家の令嬢であることや、キールが男爵としてカルネル家を再興したこと、ソフィーが隣国ローゼンヘイムの王女であることなどを明かした。親たちは驚きつつも、受け入れる様子を見せた。
ミュラへの才能付与と僧侶の選択
ミュラは学園に通いたいと願い、アレンが精霊神ローゼンの力を借りて、僧侶の才能を与えた。才能付与の儀式が行われると家族たちは驚愕しつつも、その場の現実を受け入れた。アレンはミュラの鑑定の儀の再受験についても、グランヴェル子爵に依頼済みであることを伝えた。
白竜討伐の計画とカルネル領の再建
会話の最後にアレンは、翌日、白竜山脈の白竜を討伐する計画があることを明かした。白竜の存在は、ミスリル鉱山の保護と領地確保の障害となっていたが、カルネル家再興後は討伐の必要性が明確となった。仲間たちの協力のもと、討伐への準備が整えられた。
こうして、アレンたちは故郷での再会と目的を果たしつつ、次なる戦いへと歩を進めることとなった。
第四話 白竜との戦い
褒賞と騎士任官
アレンたちは王都滞在中にローゼンヘイムでの功績に対する褒賞を受けた。キールはカルネル家の再興、クレナは学園卒業と共に名誉男爵、セシルはグランヴェル領の税減免を得た。ドゴラはハミルトン家の騎士に任官されたが、才能の星が1つのため爵位は授からなかった。学園卒業前の騎士任官は異例であり、伯爵家の騎士という立場は高い評価に値した。アレンはローゼンヘイムからの褒賞で十分とし、王都からの報酬は辞退した。
出発と準備
アレンたちは家族に見送られて開拓村を出発し、召喚獣に騎乗して白竜山脈を目指した。途中、召喚獣の構成やカードを調整しつつ、かつて掃討したゴブリンとオークの村を再度殲滅するよう指示を出した。また、戦力の変化に応じて召喚獣の配置を柔軟に変更しつつ、開拓地周辺の治安維持も進めていた。
白竜との遭遇
アレンたちは鳥型召喚獣で白竜山脈に接近し、視認範囲に入った白竜を千里眼で監視していた。白竜は非常に巨大で、魔獣とは異なり個体差が顕著であった。会話も可能な知性を有しており、セシルとキールが名乗ると討伐を歓迎するかのように戦闘態勢に入った。アレンは仲間たちに指示を出しつつ、ブレス攻撃への警戒を強めた。
戦闘の激化と戦術の応酬
戦闘は白竜のブレスによって激しく展開した。セシルは氷魔法で応戦するが、威力不足でブレスを抑えきれなかった。フォルマールの光の矢が口内に命中し、ブレスを封じることに成功した。その隙を突いてクレナとドゴラが接近し攻撃を仕掛けるも、白竜の鱗は非常に硬く、決定打にはならなかった。
拘束とエクストラスキルの発動
ソフィーの召喚した土の大精霊ノームと、アレンの竜・石属性召喚獣により白竜の動きが封じられた。白竜は仲間となったドラゴン型召喚獣に動揺し、動きを止める。アレンはドゴラに全身全霊の一撃を命じたが、発動には至らなかった。代わってクレナがエクストラスキル「限界突破」を用い、空中から白竜の首を断ち切った。
勝利と白竜の最期
首を落とされた白竜は、自らの死を悟り、かつてアレンが抱いた殺意を認識していたことを明かした。最後には竜神との契約のような制約から解放されることに満足し、静かに息絶えた。アレンたちは白竜を倒したことで経験値2800万を獲得し、仲間たちは一気にレベル52へと成長した。
第五話 領主の凱旋
白竜素材の回収と輸送準備
白竜を討伐したアレンたちは、その血液を薬として活用するため、王都で準備した皮袋を使って回収を行った。召喚獣の強力な攻撃手段を用いなかったため、白竜の肉体はほぼ無傷であり、高価な素材として最大限に活用できる状態であった。続いてアレンは4体の竜Bの召喚獣を召喚し、巨大な白竜の体を空輸するよう指示した。重量的に不可能と思える運搬も、召喚獣の飛行能力によって実現された。仲間たちはキールに豪華な服を着せ、カルネル領への凱旋準備を整えた。
カルネルの街への帰還と騒動
カルネルの街上空に到達したアレンたちは、住民たちや兵士たちの混乱を目にした。空から運ばれる複数のドラゴンの姿に街が襲われると誤解されたためである。だが、白竜討伐の日程を知らせていたハミルトン伯爵が騎馬隊を率いて迎えに現れ、状況を収束させた。白竜の遺骸は街の前で解体され、頭部は領民への戦果の示威として広場に運ばれることとなった。
領主としてのキールの帰還
アレンたちは白竜の首を従えて城門を通り、街に入った。新領主として帰還したキールに対して、住民は大歓声で迎えた。過去に白竜によって被害を受けた住民たちは、討伐の事実に対して歓喜と感謝、そして失われたものへの哀悼の念を抱いた。アレンたちは広場での行進を終え、カルネル領の館へ向かった。
キールと妹ニーナの再会
館に到着すると、キールは妹ニーナと再会を果たした。貴族らしい落ち着いた態度で駆け寄るニーナの姿に、アレンは自分の弟妹との再会との違いを実感した。王城から派遣された役人がキールに挨拶し、王家からの正式な手続きを進めようとするが、ハミルトン伯爵が割って入り、場の主導権を握った。
白竜素材を巡る王家との交渉
会議室に移動した一行は、キールが当面代官を置く予定であることを王家の使いに伝えた。代官の選任はハミルトン伯爵が請け負っており、既に候補者の到着も近かった。会話の中で、王家の使いは白竜の献上を求めたが、キールとアレンはこれを丁寧に拒否した。白竜によって破壊された採掘坑の修復や、新坑道の開発、遺族への弔慰などに費用を充てる必要性を訴え、献上は不可能であると説明した。
報酬の確保と献上の代替案
アレンは、王家の権威保持に貢献する形で、白竜の頭部を「買い取り」という形式で献上する案を提示した。王家の使いは動揺しつつも、提案を保留する形となった。さらに、アレンは数年前に王家が冒険者ギルドに出した白竜討伐依頼に基づき、報酬1000枚の金貨の支払いを求める意向も表明した。これは王家に対して正当な報酬を請求するという立場であり、グランヴェル子爵には報酬を辞退していることも説明された。
別れと今後の予定
交渉が終了した後、キールは妹ニーナから滞在予定を問われ、しばらく館に滞在することを伝えた。キールは今後もアレンたちと共に冒険を続ける予定であり、代官制度を活用して領主の責務を果たす構えである。一行は数日後に白竜の肉を届けるため開拓村とグランヴェル領を訪れた後、バウキス帝国へ旅立つ計画を立てていた。
第六話 バウキス帝国への旅路
旅立ちの準備と魔導船での出発
アレンたちはバウキス帝国への旅立ちのため、王都の魔導船発着場に向かった。見送りにはグランヴェル子爵とトマスが来ており、セシルとの別れが交わされた。ミュラの僧侶としての成長を考慮し、教会建設前倒しと神官派遣の手配が話題となった。乗船後は男女別の客室を確保し、開拓村への資金供与や今後の計画についての会話が交わされた。
外交官との邂逅と招待の拒絶
航行中、ギアムート帝国の外交官がアレンを訪問し、帝都到着後に皇帝陛下への謁見を求めた。しかしアレンは予定を優先し、謁見を丁重に断った。外交官は引き下がったが、帝国側の注視が続いていることが窺えた。
白竜の再出現と育成計画
魔導船の旅の途中、アレンは白竜山脈に残していた召喚獣の視界から、新たな白竜の存在を確認した。これは白竜がリポップする存在である可能性を示していた。アレンは討伐ではなく育成を選択し、幼体に竜Bの召喚獣を送り込み、餌を与えるよう指示した。彼は白竜の成長過程を観察し、魔王の影響や個体差、自我の継続といった検証を行うつもりであった。
バウキス帝国到着と外務大臣との交渉
帝都ドンバオに到着したアレンたちは宿泊のためのホテルを確保し、翌朝にはソフィーがバウキス帝国の外務大臣ヌカカイから招かれ、朝食をともにしながらS級ダンジョンへの挑戦に関する説明を受けた。S級ダンジョンは高い死亡率を誇り、挑戦には強い覚悟が必要であることが伝えられた。挑戦者には1年の挑戦期限と更新制度、死亡通知など厳格な規定が設けられていた。
メルルの同行と霊薬交渉
アレンたちの仲間であるメルルの同行について、外務大臣は皇帝が危険を案じているとして条件を提示した。アレンが渡した「魔力の種」が戦場で活用され、霊薬と誤解されたことをきっかけに、バウキス帝国はローゼンヘイムに霊薬の輸入を求めてきた。ソフィーは霊薬の数量に限りがあるとしつつも、友好のために前向きに応じる姿勢を見せた。これにより、メルルの同行が認められる流れが生まれた。
ゴーレムとS級ダンジョンの関係
メルルと再会したアレンたちは、彼女から魔王軍との戦いにおける奮闘と、ゴーレム使用の話を聞いた。バウキス帝国はゴーレムを提供することは拒否したが、S級ダンジョン「ヤンパーニの神殿」ではゴーレムの「石板」が手に入ることが明かされた。これにより、アレンたちは独自にゴーレムを得る道が示された。
冒険への意志と帝国の現実
バウキス帝国は魔導具によって国家として発展し、魔王軍との戦争を経て王国から帝国へと成長した国である。その国が示す商業主義と自己利益追求の姿勢は、アレンたちにとっては警戒すべき点もあるが、同時に強力な協力者でもある。アレンたちは、政治的駆け引きや情報の駆使を通じて、バウキス帝国での行動の基盤を固めていった。
こうしてアレンたちは、S級ダンジョン攻略に向け、バウキス帝国での準備と人脈を整えながら、新たな冒険へと歩みを進めることとなった。
第七話 S級ダンジョン
S級ダンジョンへの入場手続きと事前準備
アレンたちは外務大臣からの説明を受け、翌日にはS級ダンジョン「ヤンパーニの神殿」への入場手続きのために帝都の外に出た。帝都周辺にはダンジョンを囲うように施設群が並んでおり、その中心に登録所が存在していた。これまでのダンジョンとは異なり、登録には「全員の死亡時に通知する制度」が存在し、入場前の同意書に署名を求められた。さらに、滞在拠点として宿泊施設も用意され、街ではなくダンジョンの攻略が主目的であることが明確にされた。
案内人との対面と石板の提示
手続きを終えたアレンたちは、バウキス帝国から同行する案内人と対面した。その人物は大臣の部下であり、実質的には監視役でもあった。案内人からはヤンパーニの神殿に出現する敵の特徴が語られた後、ゴーレムの石板が渡された。石板からはゴーレム兵が召喚され、その性質や行動範囲などが確認された。アレンたちは、このゴーレムを活用してダンジョン攻略を進める方針を定めた。
ヤンパーニの神殿の特徴と出現モンスター
ダンジョン内は重厚な石造りの構造であり、床や壁の模様には旧文明の雰囲気が漂っていた。中ではゴーレム系モンスターが多数出現し、特に「神の使い」と呼ばれる白銀のゴーレムは高い戦闘能力と再生能力を持っていた。討伐の過程で、アレンは召喚獣を多数投入し、戦力の調整や配置を工夫することで敵を封殺した。
階層ボスとの遭遇と戦術
第一層の最奥部に到達した一行は、異形の巨大ゴーレム「神の守護者」と遭遇した。この存在は並の攻撃ではびくともしない硬度を持ち、通常の魔法や物理攻撃が無力であった。アレンたちは戦闘を通じて弱点を分析し、セシルの魔法と召喚獣による連携攻撃を駆使して撃破に成功した。
進行の区切りと今後の展望
ボスの討伐後、アレンたちはゴーレムの残骸から新たな石板を回収した。これにより、今後さらに多様な戦術展開が可能となる見通しが立った。S級ダンジョンの攻略は始まったばかりであり、今後も困難な戦いが続くと予想されるが、アレンたちは目的を見失うことなく、計画的に進行を続ける姿勢を示した。
第八話 ガララ提督と仲間たち
第二階層への突入と難易度の上昇
アレンたちはS級ダンジョン「ヤンパーニの神殿」の第一層を突破し、続いて第二階層へと進んだ。第一層に比べて敵の数や強さが大幅に増しており、とりわけ「強化型ゴーレム」と呼ばれる個体が出現するようになった。これらは魔法耐性や再生能力に優れ、従来の戦術が通用しにくいという新たな課題を提示した。
召喚獣の組み換えと戦術の再編成
戦闘の激化を受け、アレンは召喚獣の構成を見直し、特に竜系召喚獣と精霊系召喚獣の連携を強化した。さらに、召喚獣の一部に「兵化」の処理を施し、出力を高めることで打撃力を向上させた。戦闘の中では、アレン自身が状況判断を下しながら、仲間との連携で敵を各個撃破していった。
仲間たちの成長と役割の変化
仲間たちもそれぞれの役割を果たしながら成長を遂げた。セシルは魔法攻撃の精度と威力を高め、ドゴラは防御と攻撃を兼ね備えた騎士として安定した動きを見せた。キールは回復と支援に徹しつつも、状況によっては前衛の補助も担うようになった。こうした連携によって、高難度の敵にも対処可能な戦術的柔軟性が生まれていた。
第二階層ボスの出現と総力戦
階層の終盤では、巨大な複合ゴーレム「神の代弁者」との戦いが発生した。この敵は多段階で変形し、攻撃パターンも多岐にわたっていた。アレンたちは召喚獣を交替投入しながら、地形を活かして戦線を維持し、最終的にはセシルとアレンの連携による一点突破攻撃によって撃破した。
勝利の代償と回復の時間
激戦の末、アレンたちはボスを撃破したが、仲間の多くが重傷を負い、一時的に撤退を余儀なくされた。第二階層の攻略によって、ダンジョンの危険性と深さが改めて実感された一方、戦術の蓄積と戦力の充実も確認された。回復期間中には、次なる階層に備えた情報収集と装備の強化が進められた。
こうしてアレンたちは、さらなる深層への挑戦に向けた準備を整えながら、確実に英雄としての歩みを進めていった。
第九話 メダル集め
回復系魔獣ビービーとの遭遇と撤退判断
アレンたちは、高い耐久力と素早さを兼ね備え、さらに体力を全回復する能力を持つ魔獣ブラッド=ブラスト=ビートル(ビービー)と遭遇した。討伐に成功しても味方の犠牲が出る可能性が高いと判断し、アレンは即座に撤退を決断。鳥Bの召喚獣により安全に距離を取り、消耗を回復しつつ、ビービーの行動パターンの調査に着手した。
ビービーの生態調査と階層ボス討伐
鳥Eの千里眼を用いて調査を進めた結果、ビービーは人と接触せずに一定時間が経過すると別の場所に転移することが判明した。その後アレンたちはビービーを避けながら、他の階層ボスを探し出し、効率的に討伐を進めた。ブロンズメダルを合計3枚入手することに成功するが、宝箱は一つも発見できなかった。
第三階層への進行と地形の変化
必要なメダルを揃えたアレンたちは、階層管理システムS201の案内に従い、第三階層へ移動。そこは砂漠地帯であり、視界の良い開けたフィールドとなっていた。周囲には金属光沢を持つゴーレムが点在し、その中にドワーフが搭乗していることが確認された。
第三階層の特性と戦術の再構築
砂漠地帯では砂中に潜む魔獣による奇襲が多く、パーティーを守るためにゴーレムの防御力が活用されていた。また、ゴーレムの肩を足場にして弓兵が戦う戦術も見られ、ドワーフたちはこの地で有利に立ち回っていた。アレンはメルルに命じて、本体用石板の収集を開始。ゴーレムを戦力として確保するための準備を進めた。
ゴーレムの石板の種類と機能
メルルによると、石板には本体用、移動用、特殊用の三種があり、移動用は砂上航行などの機能、特殊用はゴーレムを家に変形させるなどの特性を持つ。アレンは家に変形する特殊石板の存在に強い関心を抱いた。
ダンジョンの攻略仕様とメダルの必要性
第三階層からは、戻れる階層が1階層か上の階層のいずれかに限定されており、各階層の進行には階層ごとに指定されたメダルが必要であった。次の第四階層には、ブロンズメダル4枚とアイアンメダル4枚が求められ、これまで以上に多くのメダルを集める必要があることが判明した。
岩山の探索と階層ボスの出現
アレンは空中から鳥日の千里眼を使って岩山に空いた穴を探索。いくつかの岩山では魔獣が出現しなかったが、最終的に大規模なサソリ型魔獣の巣を発見し、戦闘を開始した。戦闘では複数のB・Aランク魔獣、そして階層ボスとみられるデススコーピオンキングが出現。仲間たちとの連携と属性の弱点を突いた攻撃で次々と敵を撃破していった。
階層ボスの討伐と報酬の獲得
最終的にデススコーピオンキングを撃破し、経験値400万と共にアイアンメダルを獲得。アイアンメダルは1枚で金貨200枚相当の価値があり、アレンたちはその価値を実感した。素材の獲得はなかったものの、魔石とメダルの収集効率の良さから、この方法を活用していく方針が定まった。
次なる行動への移行
アレンたちは、魔石とメダルを回収したのち、次なる岩山を目指す。今後も戦闘と探索を繰り返しながら、ゴーレムの石板収集、仲間の成長促進、魔石の売却による資金調達など、多角的にダンジョンを攻略していく姿勢を明確にした。
第十話 思い出は記憶の中に
三日目の挑戦と新たな探索体制
アレンたちはS級ダンジョン挑戦の三日目を迎え、三泊四日の日程で探索を継続する方針を仲間たちに伝えた。他の冒険者パーティーを参考に、魔獣の湧かない広場で宿泊する形式を取り、召喚獣の活用により効率的な探索を進めた。特にこの日は霊Bと魚Bの召喚獣を用いて、砂中や岩山に潜む魔獣の調査を行い、魔石の消耗を最小限に抑えながら宝箱を探索した。
宝箱の発見と収穫
午前中の探索でアレンたちは岩山内に2つの宝箱を発見し、アイアンメダル3枚、ヒヒイロカネの兜と剣、AランクとBランクの魔石を入手した。目的の石板は出なかったものの、収穫としては上々であり、仲間たちは今後のレベル上げに適した環境と評価した。
メルルの葛藤とアレンの励まし
メルルは自分だけがゴーレムを扱えず、仲間たちに遅れを取っていると感じ始めていた。アレンは前世でタンク職だった経験を語り、職業に対する愛着は時間と共に育つものだとメルルを励ました。仲間たちもそれに同調し、メルルは少しずつ気を取り直した。
前世の告白と仲間たちの反応
アレンは、前世では聖騎士という職業を選んでいたことを打ち明けた。名前がかっこいいという理由で選んだ職業だったが、周囲には尊敬と誤解が広がり、クレナやドゴラは騎士への憧れから感動を示した。アレンはその反応に困惑しながらも、状況の打開に苦慮した。
隠しキューブとの遭遇と石板の獲得
召喚獣の探索により、岩山内で隠しキューブを発見したアレンたちは、警戒しながらも対話を開始した。このキューブはダンジョン報酬交換システムS302であり、アイアンメダル3枚と本体用石板1枚を交換する機能を持っていた。アレンは迷わず交換を行い、ゴーレムの頭部用石板を獲得。これによりメルルは初めて石板を魔導盤に装着でき、喜びを表した。
仲間の誤解とアレンの苦悩
石板の装着後、仲間たちはアレンの騎士的な振る舞いに納得し始め、誤解はさらに広がっていった。アレンは内心で焦りながらも、表向きは受け流し、探索を継続した。次の目的地を定めた直後、召喚獣の視界を通じて異常を察知し、急遽行動を変更することとなる。
スカーレット=サンド=ワームとの戦闘
視界の変化からSランク階層ボス「スカーレット=サンド=ワーム」の出現を確認したアレンは、討伐を試みることにした。この魔獣は非常に巨大で、回復能力に特化した存在であり、物理・魔法共に耐性がなく、代わりに圧倒的な再生能力を持っていた。アレンたちはエクストラスキルと覚醒スキルを駆使して総攻撃を仕掛け、一度は頭部を破壊したが、短時間で完全に再生されてしまった。
戦力不足による撤退
数十分に及ぶ戦闘の末、与えるダメージが再生能力に追いつかず、アレンは戦力不足と判断し、撤退を決断した。スカーレットは追撃せずに砂中へと姿を消し、アレンたちは悔しさを滲ませつつも、次なる強化に向けて前進する必要性を痛感する結果となった。
第十一話男者パーティーとの合流
ゴーレム石板の完成と感動の涙
アレンたちはS級ダンジョン3階層でアイアンゴーレムの本体用石板を探索していた。頭部や胴体などの石板は揃ったが、右腕だけが見つからず苦戦していた。運よくキールが隠しキューブから右腕の石板を引き当てたことで、ついに本体すべてが揃った。メルルは感動のあまり、魔導盤を抱きしめて泣き出す。石板が揃ったことで魔導盤には幾何学模様が浮かび上がり、ゴーレム起動の準備が整う。
ダンジョン生活と拠点の往復
アレンたちは5日間で3泊4日ダンジョンに籠り、残りは休息と物資整理にあてていた。魔石との交換や魔力の種の生成、装備売却なども兼ねて1階層に定期的に戻っていた。休息日は、メルルが酒を求めるため近所の店に通っていたが、ダンジョン内では禁酒としていた。
ヘルミオスとの再会と拠点の占有
冒険者ギルドで合流予定だった勇者ヘルミオスは、何の許可もなくアレンたちの拠点に大量の荷物を運び込み、拠点を共用する形となった。アレンはこの事態に呆れつつも、人数割りで家賃を徴収することで妥協することにした。拠点の管理面でも人手不足を補えるため、実利を優先した判断である。
二つのパーティーの酒宴と出会い
一行は近所の酒場で合同の食事会を開いた。メルルは大喜びで注文し、アレンたちはヘルミオスの仲間「セイクリッド」10人と初対面を果たす。ヘルミオスのパーティーは聖女や剣聖を含む女性中心の編成で、対照的にガララ提督のパーティーは全員がゴーレム使いのドワーフで構成されていた。
転職を求める剣聖ドベルグの願い
ガララ提督の部下であるドベルグは、精霊神ローゼンに転職を懇願する。命を代価に転職を望んだが、神界では現在転職に関する調整中であるとローゼンから伝えられ、今は待つよう諭された。ドベルグはその場で静かに酒を飲みつつ、心中に思いを募らせる。
ゼウ獣王子の登場と礼の申し出
店にアルバハル獣王国のゼウ獣王子が現れ、20日前に同胞を助けたアレンに礼を申し出た。アレンは具体的な報酬を求めず、後日の助力という「貸し」として礼を受け取ることにした。この王族の義理堅さにアレンは一定の好感を抱いた。
ヘルミオスと獣王の過去の試合
ゼウ獣王子の発言から、かつてヘルミオスが獣王との試合で惨敗した過去が明かされた。ギアムート帝国が「世界の英雄」と称したことに異を唱えた獣王が、会議の場で実力を証明したのであった。獣王は対人戦に特化した才能を持ち、勇者すら歯が立たない存在であった。
獣王国の内情と中央大陸への脅威
もし現獣王が崩御し、ベク獣王太子が即位すれば、獣王国は5大陸同盟を脱退し、中央大陸に侵攻する可能性が高いとヘルミオスは語る。ギアムート帝国は、ゼウ獣王子や戦姫といった穏健派の台頭を望んでいる。アレンはラターシュ王国が帝国の盾として存在し続けている理由を理解し、この世界が表面的な平和の裏に複雑な政治的均衡で成り立っていることを改めて実感する。
第十二話ゴーレム降臨!
獣王国と中央大陸の関係
アレンは、獣王国がかつて数百万の獣人を率いて中央大陸に侵攻した歴史を知った。現在は五大陸同盟に加盟しているものの、中央大陸にとっては依然として潜在的な脅威と見なされている。魔王軍が獣王国を攻めないのは、両者の地政学的な関係性を考慮してのことかもしれないとアレンは推察した。
ゼウ獣王子への期待とアレンの覚悟
アレンは中央大陸との友好を望むゼウ獣王子が、次期獣王となることを願っていた。一方で、もし獣王国が中央大陸へ侵攻すれば、自らが魔王となってでも村と家族を守る覚悟を語った。仲間たちはその発言に息を呑んだが、勇者ヘルミオスは笑って平和的解決を促した。
拠点の共同生活とダンジョン攻略の準備
アレンたちとヘルミオスのパーティーは3階建ての拠点を共有し、共にS級ダンジョンを攻略していた。ダンジョンでの活動方針をすり合わせながら、生活スペースの調整も行われ、女性メンバーの部屋割りに一部変更が加えられた。ヘルミオスのパーティーは英雄王に転職した彼の育成を進めていた。
ゴーレム「タムタム」の降臨実験
魔獣が出現しない3階層の広場にて、メルルがゴーレムを降臨させた。魔導盤に反応し、10メートルの鋼鉄の体を持つゴーレムが召喚された。操縦には魔導盤を通じた搭乗が必要であり、内部での操作によって歩行や攻撃動作が可能となることが確認された。
ゴーレムの強化と石板システム
ゴーレムは魔導盤に装着された石板によって性能が向上する仕組みであり、体力・攻撃力・素早さの各ステータスが強化用石板により2000ずつ上昇した。石板には種類ごとにスロット消費量が異なり、戦術に応じた配置が求められる。ステータスの強化とスキル育成が両立することで、メルルの戦力は着実に増していった。
初実戦と「メガトンパンチ」の威力
実戦では岩山の大穴から引き出したサソリ型魔獣を相手に、ゴーレムが「飛腕」スキルを用いた攻撃「メガトンパンチ」で応戦した。威力は高かったが、Aランクの魔獣には攻撃力4400では力不足であり、ステータスのさらなる強化が課題とされた。
仲間たちの転職と戦力再編
アレンを除く仲間たちはスキルレベルの上限に達し、精霊神ローゼンの手により転職を果たした。クレナは剣帝、セシルは魔導王、ドゴラは戦鬼、キールは大聖者、ソフィーは精霊使い、フォルマールは弓聖となった。それぞれの役割とスキルに基づき、今後の戦術構成が再編された。
ソフィーの精霊との契約と課題
精霊使いに転職したソフィーはローゼンヘイムで火の幼精霊サラマンダーと契約を結んだ。顕現には魔力の継続供給が必要であり、アレンは四六時中顕現させて精霊との親密度を高めるよう指示した。精霊との意思疎通の難しさと、戦闘での持続力の制限が明らかとなった。
召喚・降臨・顕現の違いと魔力問題
アレンは召喚士としての経験から、ゴーレム使い・精霊使いとの違いを分析した。召喚は生成・呼び出しごとに魔力と魔石を要するが、ゴーレムと精霊は維持中に魔力を消費する形態であった。そのため、魔力の総量が戦力維持に直結し、魔力の種の重要性が増していた。
転職制度への疑問と分析者としての姿勢
アレンは転職制度の導入時期に疑問を持ち、創造神がなぜ今まで転職を認めなかったのかを問い続けた。彼にとって、「なぜ」を追求することは戦術構築の基盤であり、精霊神ローゼンの沈黙に対しても分析を止めることはなかった。
次なる階層へ向けての準備
ソフィーの精霊契約を終えた後、アレンたちは3階層で1ヵ月間のレベル上げを実施し、レベル50に到達した。装備の売却で得た資金により、魔石の取引も拡大し、戦力と資金の両面で準備を整えた。そして、次なる4階層への挑戦へと踏み出すのであった。
第十三話精霊の力
門番との軋轢と精霊の受け入れ
アレンたちは、精霊サラマンダーを連れて神殿に入ろうとするも、門番に再び立ち塞がられた。ソフィーの説明にも耳を貸さなかったため、フォルマールが政治的圧力をかけて交渉し、ローゼンヘイム女王からも正式な抗議文が送られた。以後、門番は沈黙し、精霊の扱いに関する問題は沈静化した。
4階層の環境と構造
アレンたちはメダルを使い、初めて4階層へと転移した。そこは水上に浮かぶ巨大な蓮の葉で構成された広大な空間であり、葉の上に魔獣や冒険者が点在していた。水面の上を移動するため、グリフや召喚獣の鳥を駆使して探索を進めることになった。
次階層への進行条件の確認
キューブ状の階層案内装置から、5階層に進むには各階層ボスから入手できる異なる絵柄のブロンズ・アイアン・ミスリルメダルを5種ずつ集める必要があると確認された。Sランクの階層ボスを倒さなければならず、勇者パーティーがそれを避けている理由が明らかとなった。
ゴーレム戦術と新戦力の発揮
メルルがゴーレム「タムタム」を降臨させ、Aランク魔獣との戦闘に投入した。巨大化用石板により全長20メートルに強化され、タンクとして優れた耐久力を発揮。クレナとドゴラが連携し、魔獣たちを次々と討伐していった。
サラマンダー暴走とドゴラの災難
戦闘終盤、ソフィーが意識を失った隙にサラマンダーが暴走し、ドゴラやゴーレムを巻き込むほどの大火球を放った。ドゴラは尻を焦がされ、葉の上で悶絶。ソフィーは深く謝罪し、サラマンダーは満足気に彼女に抱きついたが、周囲は文字通りの地獄絵図となった。
精霊の力と魔力消費の危険性
サラマンダーはソフィーの全魔力と体力の半分を吸い取って攻撃を行っていた。精霊の攻撃力は消費魔力量に比例し、使い手の状態に大きく依存することが判明した。セシルのスキルとは異なり、消費量の決定権が精霊側にあるため制御が難しく、精霊神ローゼンも「今のままでは次の転職は危険」と警告した。
精霊使いの成長と今後の方針
ソフィーはまだ幼精霊すら制御しきれず、精霊との意思疎通には時間と経験が必要とされた。スキル経験値を稼ぐだけなら問題はないが、転職後の暴走を防ぐため、当面は転職を見送ることが決定された。アレンは魔力回復リングをヘルミオスから借りてソフィーに渡し、制御訓練の継続を支援した。
ゴーレムの修復と新スキル
サラマンダーの火球によって損傷したゴーレムは、メルルが新たに習得した「修復」スキルによって回復が可能であった。破損した部位の石板交換と、魔力を使っての修復という2つの方法が存在し、今回は後者が選択された。
宝箱発見と高性能装備の入手
ドゴラが宝箱を発見し、擬態型魔獣の可能性に備えて開封。中からは知力3000上昇の上位指輪が出現した。アレンはセシルにそれを渡すことで火力強化を図り、今後の攻略を有利に進める判断を下した。
4階層攻略の展望と新たな課題
初日から優れた装備を手に入れたことで、この階層が経験値とアイテム収集の両面で有効な狩場であることが示された。一方で、サラマンダーの暴走、ソフィーの制御訓練、Sランク階層ボスとの戦闘といった課題も山積しており、4階層攻略は波乱の幕開けとなった。
第十四話オリハルコンを求めて
剣聖との修練と自由行動の一日
ダンジョン探索を終えたアレンたちは、拠点の庭で自由時間を過ごしていた。クレナとドゴラは日課の素振りに励み、そこに剣聖ドベルグが加わったことで、三人は日々剣術修練を共にするようになった。アレンはそんな三人を「脳筋トリオ」と内心で評し、微笑ましく見守った。
水の幼精霊ケルピーとオリハルコンの話題
お茶の時間、ソフィーのもとに水の幼精霊ケルピーが現れ、周囲を騒がせた。アレンたちは4階層での装備収集が順調な一方、オリハルコンだけが見つからないことに懸念を抱いていた。ヘルミオスはかつて海底の大きな貝から発見したことを話し、怪盗ロゼッタの宝探知スキルによって発見されたことが判明する。
情報交換とダンジョン攻略報酬の真相
その夜、アレンたちは再び冒険者ギルドで魔石を売却後、獣人のウルとレストランで再会する。ウルとの会話から、ゼウ獣王子がダンジョン攻略を妨害されつつも仲間を守りながら活動していることが分かる。アレンは攻略報酬の存在を信じて活動を続けており、報酬の内容には強い期待を寄せていた。
オリハルコン探索と水中の脅威
4階層に戻ったアレンたちは、海底の大貝を探してオリハルコンを手に入れる作戦に出る。召喚獣たちが探索を続ける中、ついに破壊できない巨大シャコガイを発見するが、直後にSランク魔獣「クリムゾン=カイザー=シーサーペント」率いる群れに襲撃される。水中での戦いは激しさを増し、仲間たちは奮闘するが劣勢に立たされていく。
ケルピーの暴走と精霊の力
ソフィーが攻撃を受けて倒れたことに反応し、水の幼精霊ケルピーが暴走する。水面が巨大な傘状に盛り上がり、11体の海竜が空中の水の塊に閉じ込められるという異常な現象が発生した。精霊神ローゼンは、ケルピーが水の神アクアの眷属であり、精霊使いの全魔力と体力の半分を代償に強大な力を振るえることを明かす。
オリハルコンの入手と武器への加工決定
ケルピーの力により一時的に敵を拘束し、アレンたちは巨大シャコガイを無事回収する。その中には黄金に輝くオリハルコンの塊が存在していた。クレナの武器を優先して加工することに決まり、彼女は喜びを爆発させる。その後、さらなる探索を行うも、二つ目の塊は見つからなかった。
伝説の鍛冶師ハバラクとの邂逅と拒絶
オリハルコンの加工のため、ヘルミオスの案内で旧メルキア王国の鍛冶の町を訪れ、伝説の鍛冶師ハバラクの工房を訪問する。だが、ハバラクは神フレイヤの怒りを理由に加工を拒絶し、アレンを激しく叱責する。かつて信仰されていた神との確執が、思わぬ形でアレンたちの目的に影を落とすこととなった。
特別書き下ろしエピソード①動乱罪
誘拐事件の発端と王国の動揺
法務大臣の後任人事を巡り、派閥間の対立が激化したラターシュ王国では、対立派閥の一員であるカルネル子爵が、学園派に属するグランヴェル男爵の娘セシルを誘拐するという事件が発生した。従僕アレンによって事件は解決されたが、王宮内の政治的緊張は高まり、カルネル子爵に対する非難が貴族たちの間で広がっていった。
王太子の影響力と国王の懊悩
国王は、自らの発言力の衰退と王太子の政治的台頭を憂慮していた。カルネル子爵が王太子に多額の資金を提供していた事実も判明し、王家の権威を回復するため、毅然とした対応が求められる状況となった。国王は事態の収拾に向け、剣聖ドベルグと近衛騎士団長ライバックを寝室に招いた。
剣聖ドベルグの拒絶と近衛騎士団長の出陣
ドベルグは、魔王軍との戦いに全てを捧げる身として国政への関与を辞退し、カルネル子爵の討伐は近衛騎士団長ライバックに託された。国王は苦悩しつつも「動乱罪」を宣告し、カルネル子爵の身柄を拘束する命令を下した。騎士団第一部隊は即座に出動を開始した。
カルネル子爵の逃避と王太子への依存
召喚命令を無視し続けたカルネル子爵は、王太子の使いからの書簡にすがり、王太子の救済を信じて領内に留まり続けた。しかし、その書簡には王太子の署名もなく、徐々に疑念が募る中、王家の紋章を掲げた魔導船の接近が報告される。
近衛騎士団の降下と一斉展開
ラターシュ王国の王家紋章を掲げた魔導船がカルネル領上空に現れると、騎士団員たちは次々と広場に降下し、町の人々はその威容に恐れ逃げ惑った。大盾を持つライバック団長が先陣を切り、近衛騎士団の全隊が子爵館へ向けて進軍を開始した。
防衛の崩壊と最後の抵抗
子爵館の騎士たちは鉄門を閉めて防衛を試みるが、近衛騎士団の突撃で門は一瞬で崩壊。弓による迎撃もミスリルの鎧に阻まれ無力化される。ライバックの指揮により騎士団は着実に館内部に侵入し、脱出を試みた子爵もすでに潜入していた騎士によって包囲されていた。
逮捕と「グランヴェル家の変」の終焉
5階の窓からも騎士たちが突入し、逃げ場を失ったカルネル子爵はひざまずいて投降した。ライバックは西日を浴びながら勝利を確信し、騒動の終結を見届けた。こうして「グランヴェル家の変」は終焉を迎え、カルネル子爵は動乱罪により粛清されることとなった。
特別書き下ろしエピソード②怪盗ロゼッタ
華麗なる怪盗団と帝都進出の決意
ロゼッタはアベルら仲間とともに「ロゼッタ怪盗団」を結成し、貴族や大商人を狙って盗みを繰り返していた。ある夜、貴族邸に侵入して財宝を奪った彼らは、途中で屋敷の主人に見つかり追われるも、ロゼッタの卓越したスキルで追撃をかわして脱出に成功する。その後、ロゼッタたちは警戒が強まる街からの撤退を決断し、ついに帝都進出を決意した。
孤児院出身のロゼッタと才能による分断
ロゼッタは魔王軍との戦火で孤児となり、教会の孤児院で育った。幼くして「怪盗」という稀有な才能を鑑定された彼女は、修道女たちの導きで才能者のみが通う学園に進学した。一方、才能のない子どもたちは、北部の過酷な戦地へと送られていたことを知り、ロゼッタはこの体制に疑問を抱き、学園を脱走。アベルらを救出し、共に怪盗団として生きる道を選んだ。
成長する怪盗団と帝都での罠
ロゼッタは学園で学んだ技術を仲間に教え、怪盗団は拡大していった。しかし、帝都でのある襲撃で、警戒の薄さに違和感を覚えながらも油断した怪盗団は、最新の魔導具による罠にはまり捕縛されてしまう。彼らは牢獄に投獄され、処刑を待つ身となった。
皇帝との会話と処刑の決定
勇者ヘルミオスは皇帝と食事を共にする立場にあり、その席でロゼッタ怪盗団の捕縛を知る。皇帝は魔導具の成果を喜び、ヘルミオスの功績として処理することを決定。処刑も決行される予定となったが、ヘルミオスは創造神エルメアの神託により、ロゼッタを助ける使命を受ける。
処刑前夜の救済提案
翌朝、ヘルミオスは牢獄を訪れ、ロゼッタに釈放と引き換えに自身のパーティーに加わるよう提案した。ロゼッタは一度は戸惑いながらも、自身の過去と仲間の命を守るため、この申し出を受け入れる決意を固めた。
処刑場での劇的救出劇
処刑当日、ゴブリンの餌にされる寸前のロゼッタたちを、ヘルミオスが闘技場に現れて一刀両断で救い出す。彼は観衆と皇帝の前で堂々とロゼッタの罪を赦し、パーティーへの加入を宣言。観客は最初こそ混乱するも、徐々にその英断に喝采を送り、場は大きな拍手に包まれた。
未来を変える出会いとロゼッタの決意
ヘルミオスは、ロゼッタが自身の未来を掴む存在になるという啓示を信じて彼女を選んだ。ロゼッタはその意図に感づきつつも、冗談交じりに彼の心を掴むと宣言し、新たな人生への一歩を踏み出した。こうしてロゼッタは、多くの人々の前で勇者の仲間として生まれ変わったのであった。
特別書き下ろしエピソード③ メルルのゴーレム
バウキス帝国への帰還と戦争準備
メルルは学園から戻り、バウキス帝国の帝都に召集された。帝国は魔王軍の大規模侵攻に備え、国内外の才能ある若者を集めていた。メルルも旧友たちとともに海軍の魔導船に乗り、北の防衛基地に向けて出発した。
ゴーレム未経験者としての不安と提督の指導
船上で行われた適性検査で、メルルはゴーレムの降臨経験がないことが判明し、提督ガララの驚きを買う。しかし、将来有望な魔岩将の才能者として、即座に特訓を開始することになった。指導にはガララ提督の補佐官ペペクがあたり、実技を通じて訓練が進められた。
「タムタム」と名付けられたゴーレムの降臨
メルルは、故郷の思い出にちなんで自らのゴーレムを「タムタム」と命名した。ゴーレムは魔導盤を介して降臨し、メルルは初めてその内部に乗り込む体験を得た。ゴーレムの操作は感覚に反応する仕組みであり、視界や動作の共有によって戦闘を行う。
各部位ごとのスキルと性格診断
ゴーレムは合体により巨大な機体となり、各部位には適性や役割があり、メルルは攻撃を担う右腕に該当した。ペペクは部位ごとに異なる性格傾向についても語り、ゴーレム使い同士の相性や連携の重要性を説いた。ガララ提督が「頭」、ペペクが「胴体」として所属していることも明かされた。
ラムチャッカ海峡の防衛と実戦投入
船団は海峡の防衛基地に到着し、帝国軍は100万を超える魔王軍の侵攻に備えて布陣を整えた。メルルたち選抜部隊は実戦参加を命じられ、ガララ提督の作戦のもと、アレンから託された回復薬も活用されることとなった。
激戦と劇的勝利の理由
交代制の布陣と圧倒的な魔力回復力により、帝国軍は持久戦を優位に進めた。敵の指揮官たちは焦って前線に出撃し、ガララ提督が超合体ゴーレムで魔神やSランク魔獣を討ち取ったことで、帝国側の勝利が決定的となった。
勝利の凱旋と報酬の授与
戦後、メルルは帝都に招かれ、皇帝より名誉男爵と報奨金を授与された。選抜隊の他の隊員たちも各種の褒賞を受け、帝都で盛大な凱旋パレードが実施された。メルルは家族と再会し、報奨金を全て両親に贈った。
将来への葛藤と相談相手ペペク
宴の場でメルルは今後について思い悩む。S級ダンジョンに挑むため再びラターシュ王国へ戻る予定であることを、家族にどう説明するか迷っていた。ペペクは自身の過去を語り、親に黙って行動したことがあったと打ち明ける。
仲間とは何かの学びと決意
酔いつぶれるペペクの姿や、酒席で暴れるガララ提督の姿を見ながら、メルルは戦いを通して「仲間とは何か」を理解したと感じた。そして改めて、アレンたちとS級ダンジョンを目指すという決意を胸に抱いたのであった。
特別書き下ろしエピソード④前人未踏
アレンへの謁見拒否に不満を抱く皇帝
ギアムート帝国皇帝レガルファラース=フォン=ギアムート5世は、外務大臣らからアレンが皇帝の召喚を拒否したとの報告を受け、不機嫌な様子を見せた。皇帝は農奴出身のアレンが謁見の意味を理解できなかったのではと憤り、外交官に苛立ちをぶつけた。ヘルミオスは場を収めるため、アレンの考えを自分から聞くと申し出た。
マッカラン本部長の登場とアレンの実力評価
その後、冒険者ギルドのマッカラン本部長と随行の冒険者が皇帝の前に現れる。皇帝はアレンの実力について、本部長の見解を求めた。ヘルミオスはローゼンヘイムにおけるアレンの活躍を詳述し、アレンが魔王軍との戦いで重要な役割を果たしたことを説明した。本部長はアレンの能力が「召喚獣による他者の強化」に特化していると分析し、魔獣軍との戦いを支えたのはアレンの補助と装備の充実したエルフ兵たちであると述べた。
ギアムート帝国の思惑とアレンの立場
皇帝は、アレンの存在がギアムート帝国と自らの権威を脅かすものとして警戒し、5大陸同盟の次回会議でラターシュ王国を追及する意志を露わにした。また、ローゼンヘイムに贈られた霊薬の効果がアレンの能力によるものと解釈し、彼の影響力を警戒した。
S級ダンジョン「試練の塔」の難易度と前人未踏の意味
皇帝は、アレンが挑戦しているS級ダンジョン「試練の塔」の難易度について本部長に尋ねた。本部長は、成長の限界を迎えた英雄たちが最後の挑戦として挑む地であり、これまで誰も攻略に成功していないと述べた。かつての英雄アステルですら最下層攻略には失敗しており、その記録には「ダンジョンマスター・ディグラグニの遊び場」と記されていたという。本部長は、アレンがこの「前人未踏」の意味をこれから思い知ることになると断言した。
特別書き下ろしエピソード⑤ 商人ペロムスの契約
王城への突然の召喚
商人ペロムスは王都で商業学校に通う学生であり、アレンの助言を受けて「廃課金商会」を設立していた。ある朝、王城から突然「契約」の名目で召喚され、部下のレイブン、リタ、メルシーと共に急ぎ王城に向かった。彼らは豪華な部屋に通され、通商大臣とグランヴェル子爵が出迎えたが、契約の内容は一切明かされなかった。
ローゼンヘイム側の代表との交渉
しばらくして、エルフの長老フィラメールと外交官たちが入室し、正式な貿易契約のための会談が始まった。ローゼンヘイム側はペロムスの商会との単独契約を希望しており、ペロムスがアレンの友人であることを理由に他の商会を排除した。通商大臣は困惑しつつも黙認するしかなくなった。
契約の決断と動機
ペロムスは契約締結を即座に承諾した。彼には、グランヴェルの豪商チェスターの娘・フィオナとの交際を実現するため、商会を成功させるという強い動機があった。これはアレンが用意してくれた大きな好機であると判断した。
試練として提示された見本取引
フィラメール長老は契約の前に、実力を示す試練として輸出品の見本取引を提案した。台車に乗せられて運ばれた品々には武器や防具、楽器などがあり、特に300万点に及ぶ鎧の在庫が注目された。ペロムスはエクストラスキル「天秤」により鎧の需要を測定し、ギアムート帝国とバウキス帝国で大きな需要があると把握した。
大胆な買い取り宣言と条件提示
ペロムスは、すべての見本品の買い取りを申し出るとともに、三つの条件を提示した。第一に買値の交渉、第二に支払い期間の1年猶予、第三にギアムート帝国およびバウキス帝国との貿易認可の取得である。これにより、ラターシュ王国を越えて広域貿易を展開しようとする意図を示した。
フィラメール長老の承諾と新たな展開
フィラメール長老はアレンの信頼とペロムスの胆力を評価し、二国との交渉を請け負うことを承諾した。その後、1ヵ月も経たぬうちに両国の貿易認可を取得し、ペロムスの商会は広域貿易業者として大きな一歩を踏み出すこととなった。
特別書き下ろしエピソード⑥要塞化計画
魔導船と領民移住計画
アレンがS級ダンジョンに旅立った後、グランヴェル領では彼が購入し子爵に贈った魔導船が領内を巡航していた。魔導船は領民の移動手段として開放されており、今回はロダン村への移住希望者100世帯を運んでいた。この中にはアレンの祖父母やテレシアの両親も含まれていた。
開拓村の要塞化と雇用計画
ロダン村はアレンの父ロダンが村長を務める開拓地であり、堀や吊り橋など防衛設備が整備されていた。これは、アレンが魔王軍との戦いに備え、村を数百万の魔獣に対抗可能な要塞にするための計画による。作業のため、グランヴェルの街で新たな住民を募集し、彼らには税免除や金貨支給などの待遇が用意された。
召喚獣による作業支援と農作業の調整
堀の拡張作業には獣系召喚獣が投入されており、村人は秋のボア狩りシーズン以外の期間、要塞化工事に従事することになっていた。その代わり、農作業には移住者があたることで労働力不足を補った。抽選で選ばれた新住民たちは村の規模と待遇に驚きと期待を抱いていた。
村への到着と歓迎の準備
魔導船がロダン村に到着すると、祖父母たちは騎士にエスコートされ、移住者たちは村の広場へと誘導された。広場ではロダン村長が歓迎の挨拶を行い、アレンの資金で用意された食料や酒が振る舞われた。移住者の住居も既に用意されており、歓迎の宴が盛大に開催された。
家族の再会と感慨
歓迎会では、アレンの妹ミュラが祖母ジェニカに召喚獣の話を語り、久々の再会を楽しんだ。ロダンと父ゾハンは20年ぶりに言葉を交わし、村長となった息子の成長を喜ぶ父と、その父に恩を返したいと考えるロダンの親子の絆が描かれた。ゾハンは畑仕事を免除されたにもかかわらず、手伝う気満々で笑みを浮かべていた。
ロダン村のさらなる発展
こうして新たな領民とアレンの家族が加わったロダン村は、防衛と経済の両面で発展を遂げていくこととなる。アレン不在の中でも、彼の遺した支援と人々の思いが、村の未来を支え続けていた。
特別書き下ろしエピソード⑦精霊の住まう大地
ソフィーの転職と精霊契約のための再訪
アレンたちはソフィーの精霊契約のため、ローゼンヘイムに戻った。バウキス帝国でチャーターした超高速魔導船を用い、金よりも時間を優先する選択をした。首都フォルテニアは既に復興が進み、精霊の力で建物や外壁の修復が行われていた。
火の幼精霊サラマンダーとの契約
ソフィーは精霊神ローゼンの案内で、火山に棲む火の幼精霊サラマンダーと契約を結ぶ。幼精霊はソフィーに懐きすぎて暴走し、魔力を過剰に吸収して巨大火球を生み出してしまう。この事態から、精霊は契約者の魔力と密接に連動して力を行使する特性が明らかになった。
水・風の幼精霊との契約と成長要素の発見
続いて、水の幼精霊ケルピー、風の幼精霊エアルとも順調に契約を完了。精霊の顕現によってソフィーのスキル経験値が上昇し、魔力を維持することで職業とスキルの成長が促進されることが判明した。アレンはソフィーに魔力回復リングを与え、育成の効率化を図った。
精霊使いの特性と育成方針の確立
精霊使いには知力と魔力の両方が重要だが、過剰な顕現は命の危険を伴うため、現段階では1体ずつの顕現が推奨される。知力によって複数顕現が可能になるが、魔力が伴わなければ使用不能となる。ソフィーは精霊使いとしての適性と運用方針を学びつつあった。
土の幼精霊コルボックルとの邂逅と契約
最後に向かったのは、かつてダークエルフの街であった廃墟。そこには、石を運び続ける小柄な土の幼精霊コルボックルがいた。彼は失われた街を一人で修復し続けており、ソフィーはその哀しみに共感し、彼との対話の中でダークエルフとの和解の意志を告げる。精霊はその誓いを受け入れ、契約が成立した。
ソフィーに芽生えた新たな使命
4体すべての幼精霊との契約を終えたソフィーは、精霊使いとしてだけでなく、エルフの王女としてダークエルフとの和解と共存を目指す新たな思いを胸に抱くようになった。これは彼女にとって、S級ダンジョン攻略とは異なるもう一つの大きな使命となった。
特別書き下ろし。
精霊の恩返
幼精霊たちの反省と会話
休日の拠点で、顕現していない幼精霊たちはソフィーへの迷惑を反省していた。水の幼精霊ケルピーは前日の魔力暴走を気に病み、風の幼精霊エアルや土の幼精霊コルボックルが励ます。獣型精霊は力は強いが制御が難しいとされ、相性の差が議論される中、ソフィーへの感謝を込めた贈り物を検討し始めた。
街へのお散歩と贈り物探しの始まり
拠点の仲間たちが外出する中、ソフィーはアレンの回復薬生成の手伝いに向かおうとしていたが、火の幼精霊サラマンダーのいたずらにより、散歩へ誘導される。アレンの了承のもと、ソフィーはサラマンダーを連れて市場へ出かけることとなる。
ソフィーの興味を探る市場巡り
サラマンダーが案内する形で、野菜売り場や骨董品売り場を回るが、ソフィーは食べ物や壺には興味を示さなかった。しかし、手作りアクセサリー売り場では、ネックレスに目を留めていた。
精霊たちの作戦と買い物の実行
ソフィーが手持ちがなく購入できなかったことに気づいた幼精霊たちは、エアルがアレンの部屋から持ち出した金貨1枚を用いて、贈り物を購入することを決意する。コルボックとケルピーが魔力を貸し、エアルは顕現して少年の姿でネックレスを購入した。
贈り物のサプライズとソフィーの喜び
エアルたちはソフィーの部屋にこっそりネックレスを置き、サプライズを準備する。その後、ソフィーは回復薬生成の作業を終えて夕食を済ませ、部屋に戻る。テーブルの上に置かれたネックレスを見て驚くソフィーに対し、幼精霊たちは満足げに微笑んでいた。感謝と絆の表現として、ささやかな贈り物は大きな心の交流となった。
電子書籍特典 聖人の休日
サラとウルの穏やかな朝
猫の獣人サラと狼の獣人ウルは、S級ダンジョン攻略に向けた朝を迎える。前夜に飲みすぎたウルは記憶を失っていたが、サラは彼に家族からの手紙の返事を告げる。それは「挨拶に来ても良い」と記されたものであり、ウルは感激してサラとの未来に希望を抱く。2人は支度を整え、仲間と合流して「試練の塔」へ向かう。
突然の襲撃とウルの重傷
数日後、2階層での休憩中に階層ボス・ビービーが突如転移し、サラたちのパーティーを襲撃する。ウルはサラを庇い、内臓が露出するほどの致命傷を負う。必死の回復魔法も届かず、絶望が漂う中、仲間たちはウルを担ぎ、1階層への緊急転移を図る。瀕死の仲間たちを抱えて、希望を託してエルメア教会を目指した。
奇跡の癒しと聖人の存在
教会に到着したサラたちは、神官に助けを請う。応じたのは、金髪でチンピラ風の男・キールであった。彼の「グレイトヒール」により、ウルの傷は奇跡のように完治する。サラは号泣し、仲間たちも安堵する。命を救われた礼として金を渡そうとするが、キールは奉仕活動の一環だとして受け取らない。寄付は教会の恋に入れるよう促され、その中に既に多くの金貨があることに気づく。
教会に集う子供たちと広がる善意
子供たちが教会に遊びに来る様子や、続々と訪れる負傷冒険者の姿から、教会の活気が伝わる。キールの奉仕が教会の財政を潤し、孤児受け入れなどの社会的支援を可能にしたことを、ウルは悟る。休日を遊びに費やす代わりに人助けを続けるキールの姿に、ウルは心からの尊敬を覚え、「聖人かよ」と感嘆した。
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